1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:31:05.28 ID:33MaeCYd0
从 ;∀从(怖い……怖い……)
ハインリッヒは膝を抱え震えていた。
その目に涙を浮かべ、戦う事に、そして死ぬ事に。
何故自分がこんなものに乗らねばならぬのか。
ハインリッヒは点灯する計器を見ない様に頭を抱え、顔を伏せる。
志願したのは確かに自分だ。
売られたケンカは買う。
あの時は勢いで、兄と共に飛び出していた。
しかし戦いの空は、自分がこれまで生きてきたどの世界とも異なる様相を呈していた。
呆気なく人が死ぬ。
ほんの数時間前まで、隣で馬鹿な事を言っていた人間が簡単に死んでいった。
それがさほど遠くはない未来の自分の姿だと気付くのに、さして時間はいらなかった。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:32:57.93 ID:33MaeCYd0
从 ;∀从(何でアタシが……こんな……)
突如として現れた異形の生物、フェイス。
その侵攻は瞬く間に広まり、幸か不幸かハインリッヒはたまたま兄と共に帰省していたVIP島でフェイスの侵攻を目の当たりにする
事になった。
しかしフェイスの侵攻が激化し、当時のVIP島司令部はこの島の放棄を決意。
島民を見捨て、脱出を企てたがフェイスにより、敢え無く殲滅された。
残された島民、それとこの島を見捨てる事を良しとしなかった一部の軍人は、自分達だけで戦う道を選んだ。
大型トラックを始めいくつかの特殊免許を所持していたハインリッヒは、持ち前の勝気な性格も後押しして、人型兵器SAに搭乗する
事を志願した。
从 ;∀从(こんな……人が……死ぬ空に……)
その初陣、ハインリッヒは緊張と高揚の相俟った極度の興奮状態で出撃した。
作業用のSAなら乗った事もあったハインリッヒは、SAの性能にも助けられ、初陣とは思えぬほどの活躍を見せたが、自分の隣を
飛んでいた僚機が墜とされた瞬間、その心は一転して恐慌に囚われた。
スロットルレバーを持つ手は震え、ペダルを踏み込む足が竦む。
戦いの空で棒立ちになったハインリッヒのSAは海に沈んだ。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:35:00.51 ID:33MaeCYd0
何が起きたのかと問う司令部からの通信にも答えることなく、ハインリッヒはただ震えていた。
「──vw─ちら司令部──SAvヘ√レ───ますか?─vv─」
从 ;∀从(怖い……怖い……)
音声のみの通信が幾度となく呼びかけるがハインリッヒは答えない。
ただただ恐怖に身を震わすのみだ。
「───SAvヘ√レ──フェイスvヘ√レ─vw─接近!!!ヘ√レvv─」
突然、呼びかけるオペレーターの声が焦りの色を帯びたのに気付いたのか、ハインリッヒは顔を上げ、メインモニターをぼんやりと眺める。
わずかに光が届く、深い青を湛えた海の底。
眼前の景色が不規則に揺れている事に気付いた時と同時に、激しい揺れがSAを襲った。
从 ;∀从「!?」
フェイスの攻撃がハインリッヒのSAを打つ。
海中での緩慢な動きとはいえ、動かない目標に対して攻撃を外す相手でもなく、フェイスの攻撃はハインリッヒのSAを確実に破壊していく。
从 ;∀从「あ……あ……」
逃げようにも身体はピクりとも動かせず、ただなされるがまま、ハインリッヒは己に迫る死を呆然と眺めていた。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:36:42.86 ID:33MaeCYd0
从 ;∀从「あ……」
メインモニターに広がる鈍い光。
フェイスのコアが発するその光を、ハインリッヒはそれが自身が最後に目にする光景だと受け入れていた。
「おぉぉぉぉぉッ!!!」
从 ;∀从「え……?」
獣のような雄たけびが聞こえたと同時に、眼前の鈍い光が霧散した。
元の静けさを取り戻した海に、再び何かの影が差した。
「だ、大丈夫ですかお? い、生きてますかお?」
从 ;∀从「あ……?」
接触回線から響く声に、ハインリッヒは自分が誰かに助けられたのだとようやく気付いた。
何度も響く呼びかけに、自分も答えるべきなのだと気付くのにはそれからさらに数分の時間を要した。
从 ;∀从「だ……大丈夫……」
「お!? だ、大丈夫!? ホントですかお? ケガは? 動けますかお?」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:38:24.66 ID:33MaeCYd0
矢継ぎ早に繰り出される質問に順に答えていく内に、ハインリッヒはやっと落ち着きを取り戻していた。
そして今がどういう時で、自分がするべき事を思い出した。
从 ゚∀从「……もう大丈夫。まだ戦闘中だろ。アンタは行ってくれ」
「お……、しかし……」
从 ゚∀从「大丈夫、アタシもすぐに行くから……」
「無理はしないでくださいお。1度帰投した方が……」
从 -∀从「大丈夫……やれるから……アタシは……やらなきゃ……」
「……わかりましたお。くれぐれも無理はしないでくださいお」
納得し、ゆっくりとその場を離れる機影に、ハインリッヒは自身の機体を起こし、追随する。
从 ゚∀从「……そうだ、アンタ、名前は?」
ハインリッヒは回線を合わせ、先を行く機体に呼びかける。
( ^ω^)「僕は内藤ホライゾンといいますお」
モニターに映し出されたその姿は、自分よりいくつも幼いであろう子供の姿であった。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:40:18.15 ID:33MaeCYd0
世界が暗転した。
从 ゚−从
見慣れた天井が霧散した先ほどまでの光景が何であったのかを教えてくれる。
ハインリッヒは額に手を当て、大きくため息をついた。
从 -∀从「……随分と懐かしい夢を見たもんだな」
ハインリッヒは苦い笑みを浮かべ、ベッドを抜ける。
冬場だと言うのに肌に張り付いたシャツがこの上なく不快だ。
ハインリッヒはシャワーを浴びる事にし、浴室に向かう。
从 -∀从「何で今更あんな夢を見るかな……」
ハインリッヒにとっては悪夢と言ってもよい夢であろう。
弱かった自分の汚点、今となっては恥ずかしい醜態を晒した自分の姿だ。
しかしながら、ほんの少しだけ良い夢であるとも言えるのかもしれない。
忘れる事の出来ない大切な思い出だから。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:42:05.62 ID:33MaeCYd0
从 -∀从「……」
自分にとって、戦う理由が出来たあの日の夢なのだから。
それが決して伝わる事のない想いでも。
それが決して伝えるつもりのない気持ちでも。
从 ゚∀从「アタシにとっては……」
それが生きる理由で、戦う理由。
自分がレルヒェで空を駆ける理由。
この島を守る理由。
从 -∀从「大切なんだ……」
守りたいものがあるから、ハインリッヒは戦うのだ。
たとえそれが、報われる事のない一方的な想いだとしても。
从 ゚∀从「さて、シャワーシャワー」
ハインリッヒは洗い立てのタオルを手に取り、顔を埋めて浴室に入った。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:44:01.68 ID:33MaeCYd0
_
( ゚∀゚)「……」
全ての墓の前に真新しい花束が置かれている。
大方、先日目を覚ましたしぃが置いていったものなのだろう。
_
( ゚∀゚)「……ごめんな、しぃさん」
面と向かって謝っても、きっと困った顔をされるだけだろう。
ギコの事を、ジョルジュ達の所為だとしぃは微塵も思っていないはずだ。
ギコとしぃは本職の軍人で、自分達は民間人だったという事や、自分達の方が年下という事もあるが、それ以前にしぃの性格なら、
自分達を恨む様な事は決してしないはずだ。
_
( -∀-)「むしろ、恨んでくれた方が良かったかもな……」
行き場のない怒り、悲しみ。
しぃはそういったものを抱えながら、自分達の前では軍人として、年長者として毅然とした態度で居続けなければならない。
先ほどすれ違った時の様子では元気そうではあったが、いつ心の変調を来たしてもおかしくはないかもしれないとジョルジュは思う。
あれだけ長らくの過酷で孤独な任務をこなせたのも、この島でギコが待っていてくれている事を信じていたからなのだろうから。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:46:00.93 ID:33MaeCYd0
_
( ゚∀゚)「もう、しぃさんはSAに乗せるべきじゃないよな?」
ジョルジュは一つの墓に手を当て、語り掛ける。
親友であった男の墓は、当然の如く何も語らない。
_
( ゚∀゚)「……だな」
ジョルジュは納得した表情で頷き、再び墓に話しかける。
どうでもいいような日常の些細な出来事を、在りし日の、くだらなく素晴らしい日々の時の様に。
_
( ゚∀゚)「でさ……わりぃんだけど……お前ら置いていくわ」
先日の会議で決まった事。この島の放棄。
当然の如く、ジョルジュもその決定に納得出来るはずもないのだが、偵察に赴き、フェイスの侵攻の現状を目の当たりにしたのは
他ならぬジョルジュ自身だ。
どうあがいてもあの戦力を相手にこの島を守り切れるものではないと、考えるまでもなくわかりきっている。
_
( -∀-)「わりぃ……俺の力不足でさ……」
ジョルジュは両手を墓に付け、突っ伏すように額を墓に当てた。
許して欲しいわけじゃない。
慰めが欲しいわけじゃない。
ただただ、己の無力さが歯痒かった。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:47:39.09 ID:33MaeCYd0
(*゚ー゚)「私もナハティガルで出ます」
(;^ω^)「え!?」
しぃが目覚めてから数日後、島からの脱出まで後1週間と1日となった日の事だった。
脱出経路の確保の為、四方のフェイスの内、東側の巨大フェイス達を掃討する作戦が決行されるに辺り、内藤達は最終的な
ブリーフィングを格納庫で行っていた。
_
( ゚∀゚)「ちょっと待ってくれ、しぃさん」
(*゚ー゚)「何かな、ジョルジュ君?」
作戦は内藤、ジョルジュ、ハインリッヒの三人で執り行う予定だった。
というより、三人しかいないというのが現状ではあったのだが。
当然、前回のドクオがいた時のような作戦は取れないし、厳しい状況ではあった。
_
( ゚∀゚)「あんた、目覚めてからまだ数日だぜ? 流石に無理がある」
ジョルジュの言葉に内藤を始め、居合わせた皆は一様に頷く。
しかし、しぃは笑顔でその点はドクターの許可は得たから大丈夫だと主張する。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:48:46.23 ID:BqFmXP+50
支援妖精
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:49:56.35 ID:33MaeCYd0
_
(;゚∀゚)「いや、身体だけの問題じゃなくてだな……」
(*゚ー゚)「ジョルジュ君」
_
( ゚∀゚)「はい」
他に理由を探そうとするジョルジュに、しぃは真っ直ぐに見据えてその名を呼ぶ。
一瞬硬化した空気に、ジョルジュは反射的に真剣な面持ちで返事をしていた。
(*゚ー゚)「ありがとう」
_
(;゚∀゚)「はい?」
同じ言葉を今度は間の抜けた調子で発したジョルジュは、きょとんとした顔でしぃを見る。
しぃは再び笑顔で、心配してくれてありがとうと再び礼を述べる。
_
(;゚∀゚)「いや、心配とかじゃなくて……いや、それもあるんですが戦略的にも今のしぃさんだと……」
(*゚ー゚)「戦略的な話をすれば、今は1機でも多くSAが必要な場面でしょ?」
それが弾除けにしかならなくてもと、しぃは続ける。
笑顔のままで言い放たれたその言葉に、ジョルジュは苦い顔で口をつぐんだ。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:51:51.58 ID:33MaeCYd0
確かに、今回の作戦は必ず成功させなければならないもので、その為にはSAは多いに越した事はない。
しぃが言うように、本調子ではなかろうが的が分散出来るだけでもありがたいのだ。
加えて、しぃの搭乗機、ナハティガルの機体特性は今回の作戦に必ず役に立つ事もわかっている。
(*゚ー゚)「みんな、心配かけてごめんね。でも、私は大丈夫」
从 ゚∀从「心配はするのは当たり前だし、あんたの言い分が正しいのもわかってるが……」
( <●><●>)「本当に作戦の参加に支障はありませんか?」
ハインリッヒの言葉の続きを、この場の責任者であるワカッテマスが拾う。
戦力は欲しいが無駄にSAとその搭乗者を失う気はないと、ワカッテマスははっきりとしぃに告げた。
( <●><●>)「徒に死にたがる人間を戦場に出す気はありません」
(;^ω^)「ワカッテマスさん!?」
あまりにワカッテマスのストレート過ぎる物言いに、内藤を始め皆は驚くと同時に非難の視線を向ける。
それが誰もが危惧していた事だったとしても、それは本人に言うべきではないと考えていた。
しかし、しぃは大きく頷き、内藤に、大丈夫と声を掛けた。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:53:43.72 ID:33MaeCYd0
(*- -)「そうですね……そう思われるのも当然かもしれませんが……」
(*゚ー゚)「私は大丈夫です、肉体的にも、精神的にも。死ぬつもりで戦いに出る気はありません」
(;^ω^)「しぃさん……」
しぃは再び内藤の方に大丈夫だからと笑顔を向る。
(*゚−゚)「そりゃあね、フェイスは憎いよ。多くの仲間を、そしてギコ君を殺したフェイスは」
(*゚−゚)「今すぐにでも飛び出して、命懸けでギコ君の仇を討ちたいと思いもした」
_
( ゚∀゚)「……」
从 ゚−从「……」
(;^ω^)「……」
(*゚−゚)「でもね、それじゃ駄目なの」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:55:32.72 ID:33MaeCYd0
(*゚−゚)「それだと、この島を、皆を守れないから」
(*゚ー゚)「ギコ君達が守ってくれたこの島を守るのが、私の役目なんだから」
(;^ω^)「しぃさん……」
(*^ー^)「自分勝手な事して、守れるものも守れなかったら、後でギコ君に怒られちゃうからね」
そう言って笑うしぃに、居並ぶ皆は何も言えずに立ち尽くしていた。
ギコがいた頃と何ら変わる事のないしぃの笑顔に、内藤は何故か涙が溢れそうになる。
その笑顔が、ツンが内藤の前で涙した理由と同じである事に内藤は気付く事が出来なかった。
(*゚ー゚)「どうですか、副司令?」
( <●><●>)「……戦力的には、ナハティガルの防御能力は欲しい所です」
ワカッテマスはいくつかの戦略的な自己の見解を示し、しぃが作戦に参加するメリットを並び立てた。
从 ゚∀从「理由はもういいんじゃねぇの?」
あとは実際にやれるかどうかだけだろうと、ハインリッヒはワカッテマスの説明を長ったらしいと切り捨てた。
ワカッテマスは肩をすくめ、それに同意する。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:57:08.37 ID:33MaeCYd0
( <●><●>)「出てみて、無理そうなら引き返してください。3機による作戦に変更します」
(*゚ー゚)「大丈夫ですよ」
( <●><●>)「皆さんもそれでよろしいですね?」
从 -∀从「本人がやれるって言ってんだ。良いも何もないさ」
( ^ω^)「はい、よろしくお願いしますお」
_
( ゚∀゚)「……」
( <●><●>)「ジョルジュ君?」
_
( -∀-)「……ああ、了解した」
まだ納得のいかないという顔をしていたジョルジュだが、渋々ながら頷く。
これ以上何を言ってもしぃの意思は変わらないという事はわかっている。
そういう所はギコにそっくりだと、ジョルジュは呆れながら昔を思い出していた。
_
( -∀-)(もう戦わせない方がいいって、決めたばっかだったのにな……)
実際の話、今のしぃからは以前と変わらないしっかりとした印象を受ける。
状況が状況だっただけに、もう少し不安定な様子を見せるかと思ったが、そんな素振りは一切見られない。
久しぶりに見たと思ったらかなり進んでた。まとめよんでくる支援
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 22:59:53.53 ID:33MaeCYd0
_
( -∀-)(どちらにしろ、守れば良いだけの話だな)
それほど人の心の機微に気付けるほど繊細な感覚は持ち合わせていない。
そんな自分が色々と勘繰った所で、わかる事はないだろう。
であればやる事は一つだと、ジョルジュは自分を納得させた。
(´<_` )「ふむ、そうなってくると作戦は変更した方がいいのかな?」
それまで搭乗者達のやり取りを黙って聞いていた弟者が口を挟む。
同じ様に黙していた兄者の方に目を向けると、兄者からはそのつもりで入力し終えたとの言葉が返って来た。
( ´_ゝ`)「作戦の大筋は変えず、フォーメーションの変更だけで十分だろ」
そう言って兄者は手元のノートPCの画面を弟者に向ける。
(´<_` )「兄者にしては手際がいいな」
_
( ゚∀゚)「既にしぃさんが参加する前提でやってたというのは気に入らねえが」
( ´_ゝ`)「まあ、しぃちゃんの頑固さは知ってるからな」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:02:25.78 ID:33MaeCYd0
それ以前に、既にナハティガルの修理が済んでいる時点で司令部の意向としては、あわよくばしぃを作戦に参加させる
つもりだったのだろう。
その事に気付いたジョルジュだが、敢えて何も言わなかった。
(*゚ー゚)「あら、兄者君? しばらく見ない内に言う様になったわね?」
( ´_ゝ`)「男子三日会わざるば、というやつだよ。俺も日に日に素敵に進化してるのさ。彼女も出来たし」
(*゚ー゚)「ふーん……え!?」
(*゚−゚)「かの……じょ……? それはモニターの……」
( ´_ゝ`)「HAHAHA、んなわけないだろ? ちゃんと三次元の女性だよ」
(;*゚д゚)「兄者君、犯罪は駄目だよ!?」
(;´_ゝ`)「え? いや、そういうのじゃ……」
なおも信じられないと言い張るしぃに、渋々ながら弟者が説明する。
何とか納得はさせられたものの、未だにしぃの顔には驚きの色が浮かんだままだ。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:04:00.52 ID:33MaeCYd0
(;*゚ー゚)「ある意味帰って来て一番のサプライズだよ……」
(;´_ゝ`)「色んな意味でひどくね?」
ξ゚听)ξ「しょうがないわよ、兄者だし」
从 ゚∀从「しょうがねーな、兄者だし」
( ;_ゝ;)「弟者〜、みんながいじめるよ〜」
(´<_` )「うぜぇ」
( <●><●>)「さて、兄者さんの件は仕方ないとして、作戦を詰めてもよろしいでしょうかね?」
( ;_ゝ;)「副司令まで……」
兄者は泣きながらも自分のやるべき事はきちんとこなし、ワカッテマスが立つ傍の壁にかけられたモニターに情報を映し出す。
そして弟者がそれを見ながら作戦の中身を説明し出す。
(´<_` )「今回は前回あの巨大フェイスとやった時の様な電撃戦ないし隠密作戦は使えない」
時間の猶予はあるので、無理に作戦難度を上げる必要もないから使う必要もないのだがと続ける。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:05:34.25 ID:33MaeCYd0
(´<_` )「前回の戦いから、あれと再戦する時の対策は準備して来たからな」
( ´_ゝ`)「前回は突貫工作業で武器を組み上げた事もあり、使用制限が厳しかった」
(´<_` )「しかしながら今回は違う」
そう言って兄者と弟者は視線を内藤の方に向ける。
( ^ω^)「ヴェノムですおね」
( ´_ゝ`)「そうだ。あれなら巨大フェイスのコアを貫くのに十分な長さがある」
二人の言葉に内藤は深く頷き、周りの反応を確かめる。
皆を見回す内藤の目が、ジョルジュの所で止まった。
_
( ゚∀゚)「……」
ヴェノム、内藤のシュトルヒの装備であるそれを使うという事は、必然的に今回は自分がアタッカーという事になる。
その事に対し、ジョルジュは何と言うのであろうか、内藤はその反応を窺った。
_
( ゚∀゚)「無策でブーンを突貫させるわけじゃねーよな?」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:08:01.55 ID:33MaeCYd0
(´<_` )「当然だ、策はある」
内藤はてっきりジョルジュは自分にやらせろと言い張ってくるかと思ったのだが、すんなりと自分にその役目を
譲ってくれるようだ。
少し意外に思ったが、ジョルジュにはジョルジュなりの考えがあるのだろうと深くは追求しなかった。
( ´_ゝ`)「こいつを見てくれ」
モニターは先ほどの画面から変化し、巨大フェイスが映し出される。
前回の戦いのものだが、ジョルジュの偵察の結果からは今回と前回で巨大フェイスが格段に進化しているという事はなさそうだと
結論付けられていたから問題はないのだろう。
( ´_ゝ`)「今更説明するまでもないが、音響壁に再生する触手群と厄介極まりない相手だ」
从 -∀从「面倒くせえやつだよな」
(´<_` )「……だな。しかし、穴がないわけでもなさそうなんだ」
( ^ω^)「そうなんですかお?」
内藤の言葉には答えず、弟者はモニターを指差す。
指されたモニターに映る巨大フェイスの画像がある一点を中心に拡大された。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:11:17.13 ID:33MaeCYd0
ξ゚听)ξ「これは? 大きい方の触手?」
( ´_ゝ`)「ザッツ ライト。そこが狙い目だ」
(;^ω^)「あれがですかお?」
内藤は表情を歪め、兄者を凝視する。
内藤の記憶の限りでは、あの腕こそが巨大フェイスの最大の攻撃手段のはずだ。
(´<_` )「そうだな。しかし、だからこそあれを排除すればだいぶ楽になるだろ?」
( ´_ゝ`)「覚えてるか、無尽蔵とも思しき再生能力を誇る巨大フェイスだが、ジョルジュが墜としたあの大腕だけは再生しなかった事を」
( ^ω^)「あ……」
_
( ゚∀゚)「なるほどな」
(´<_` )「先にも言ったように、前回よりは時間がある」
( ´_ゝ`)「まずはあの大腕を全て排除してからコアに仕掛ける」
(´<_` )「ヴェノムがある分、前回よりは攻撃手段の制限も軽いしな」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:13:06.65 ID:33MaeCYd0
兄者達の説明に、内藤達は納得した様に頷いた。
確かにあの大腕があるのとないのとでは、コアに仕掛ける際の危険度が段違いだ。
あの大腕を墜とす事自体が難航しそうだが、これだけ時間があれば何とかなるだろう。
( ´_ゝ`)「その後、ナハティガルを中心として防御姿勢を固め、コアまで前進」
(´<_` )「隙を見てブーンが突貫、という流れだな」
从 ゚∀从「最後がちとアバウトだな」
( ´_ゝ`)「綿密に決めてもお前ら無視するだろうが」
(;^ω^)「状況次第ではしないとは言い切れませんお……」
_
( ゚∀゚)「しねーよ」
从;゚∀从「いや、おめーが一番勝手な行動取るだろうが」
(*゚ー゚)「そうね、最後は臨機応変に仕掛けるしかないでしょうね」
( <●><●>)「では、作戦概要は以上の様に決定という事で、あとは仔細を詰めましょうか」
ワカッテマスがこれまでの話を最初から順を追って端的にまとめ、それを決定事項として伝える。
大まかな方策はすでにミルナと話し合っていたようなので、今回の決定の裁可ワカッテマスに委ねられているという。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:13:50.01 ID:aBx0KRQT0
支援爆撃
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:14:56.91 ID:33MaeCYd0
( <●><●>)「司令は司令で、向こうの計画の方を詰めておられますからね」
( ^ω^)「向こうの……脱出計画かお?」
肯定の意を返すワカッテマスに、内藤は表情を失くした顔で頷き返した。
( <●><●>)「まだ、納得はいきませんか?」
( ^ω^)「お……それは……」
_
( ゚∀゚)「いくわきゃねーだろ? 俺だって納得はいってねえ」
言葉に詰まる内藤を押しのけるように、ジョルジュが口を開く。
状況を考えて、そうするしかない事はわかっているのだが、島を捨てるという決定自体に納得がいっているわけではない。
出来るならば、誰もがこの島を捨てたくはないと思っているのだ。
(*゚−゚)「……ごめんね」
(;^ω^)「い、いや、しぃさんの所為では……」
申し訳なさそうに謝るしぃに、内藤は慌てて取り成そうとする。
自分が帰ってこなければ、島を捨てるという決定に至る事はなかったとしぃは思う。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:17:54.72 ID:33MaeCYd0
しかし、しぃの持ち帰った情報がなかったら、この島で全滅する恐れもあったのだ。
しぃが悪いわけではない事は全員が理解している。
勿論、しぃ自身もその事はわかっているのだが、島を捨てるという決定を受け入れられない内藤達の気持ちもわかるのだ。
しぃもまた、出来る事ならば島を捨てたくはないと強く思っている。
そんな割り切れない気持ちが、しぃを謝らせてしまっている。
_
( -∀-)「納得はいってない。しかし、状況は理解している」
言葉の続かない内藤に代わり、ジョルジュが誰に言うでもなく口を開いた。
その口ぶりは、自分自身に言い聞かせているようにも聞き取れた。
_
( ゚∀゚)「要するに、不甲斐ない自分自身が腹立たしいだけだ。気にしねえでくれ」
しぃの方に向け、それだけ言い放つとジョルジュはくるりと向きを変え、エレベーターの方へ向かう。
从 ゚∀从「どこ行くんだよ、兄貴?」
_
( ゚∀゚)「会議はおしまいだろ? んで、作戦決行は……」
( <●><●>)「明朝、8:00です」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:19:43.08 ID:33MaeCYd0
_
( ゚∀゚)「という事で、また明日な」
ひらひらと手を振り、丁度降りて来ていたエレベーターに乗り、さっさと上がっていってしまった。
結局行き先を答えなかったジョルジュに、ハインリッヒは少々不満気な顔を浮かべる。
(´<_` )「ジョルジュはジョルジュで色々と思う所もあるのさ。そういう顔をしてやるな」
从 ゚へ从「わかってるよ」
全くわかっている様子の見えないハインリッヒの口調に、弟者は苦笑を浮かべる。
四六時中ケンカをしているようにも見える兄妹だが、お互いの事を大事に思っている事はよくわかっている。
ジョルジュが以前と比べて笑わなくなった事を、ハインリッヒがひどく心配している事も弟者は知っていた。
(´<_` )(笑える状況じゃないのもわかっているんだがな……)
弟者はジョルジュが消えたエレベーターの方に目を向け、深くため息を吐いた。
ξ゚听)ξ「で、向こうの進行状況はどうなんですか?」
重くなり掛けた空気を払うかのように、ツンが普段通りの口調で話題を変える。
これ以上、幼馴染を沈ませたくないのだろう。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:22:24.13 ID:33MaeCYd0
( <●><●>)「そういうお話は直接司令の方に聞いてあげると喜ばれると思いますが」
ξ--)ξ「別に、誰から聞いても同じだと思います」
从 ゚∀从「ちったあ、トーチャンにやさしくしてやれよ」
ξ゚听)ξ「厳しくもしてないわよ」
ここの所ミルナが忙しい所為もあるが、ほとんどミルナと会話をしていない。
こないだの公民館での会議の事に腹は立ったが、別にミルナを避けているわけでもないし、嫌っているわけでもない。
単純に話す機会がないだけなのだ。
( <●><●>)「確かに、今はお忙しいですからね」
ξ゚听)ξ「そういうわけだから、現状の説明をしてもらってもいいですかね。……こいつにも」
そう言ってツンは内藤の方を指差す。
公民館での会議も途中で抜け出し、それ以降、率先して脱出計画の話を聞こうとしていない内藤にもそろそろちゃんと計画を
理解させておくべきだろうとツンは思う。
SA搭乗者である内藤は、当然、脱出計画の際にも重要な役割を担わなければならないのだから。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:24:25.22 ID:33MaeCYd0
(;^ω^)「お……僕は……」
ξ゚听)ξ「聞くだけはちゃんと聞いておきなさいよ」
(;^ω^)「でも……」
ξ゚听)ξ「聞いて、それから考えなさい」
煮え切らない返事をする内藤の両肩を、ツンは高く挙げた両手を振り下ろして思い切り叩いた。
反射的に、はいと答える内藤の姿に、その場の皆の 表情が少し和らいだ。
(;^ω^)「痛いお……少しは手加減してお……」
ξ゚听)ξ「うっさいわね。いつまでもうじうじしてるからよ」
( <●><●>)「さて、これ以上内藤君の身体に痣が出来る前に説明を始めましょうかね」
再び手を挙げたツンを遮るように、ワカッテマスが口を開く。
ツンは手を挙げたまま、ワカッテマスを一瞥し、肩をすくめてその手を下ろした。
( <●><●>)「今回の皆さんの作戦が脱出経路の確保の為だという事は理解されてますよね?」
そう言ったワカッテマスの視線が内藤に向けられる。
頷く内藤にワカッテマスは説明を続けた。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:26:20.73 ID:33MaeCYd0
( <●><●>)「島の東側のフェイスを掃討し、そちら側からアメリカ西海岸に向け脱出します」
( ^ω^)「脱出手段は何を使うんですかお?」
内藤は質問をしながら、過去に失敗した脱出計画の事を思い出していた。
あれはただの無計画な逃避だったにしろ、下手すれば同じ状況になりかねないのではと危惧している。
( <●><●>)「フェイスはセイクリッドを求めて侵攻してきますからね」
その心配はもっともだとワカッテマスは内藤に向かって深く頷いた。
( <●><●>)「ですから、今回はセイクリッドを使わない方向で行きたいと思っています」
(:^ω^)「セイクリッドを使わない?」
予期せぬワカッテマスの言葉に、内藤はひどく驚いた。
現在、基地内の設備を始め、家電製品に至るまで、セイクリッドを動力として用いていないものは何一つないはずだ。
セイクリッドを使わずしてどうやって脱出するというのか。
(:^ω^)「歩いて……は流石に無理ですから、ひょっとして人力とか……」
内藤は、兄者が作ったセイクリッド永久機関と謡われていた自転車の事を思い出していた。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:28:16.22 ID:33MaeCYd0
( ´_ゝ`)「流石にそれはないな。内藤が漕いでくれるなら考えもするが」
(´<_` )「単純な話だ。別の燃料を使う」
(:^ω^)「別の燃料ですかお?」
オウム返しに聞き返す内藤。
物心ついた頃には既にセイクリッドしか燃料が存在しなかった身だ。
別の燃料と言われても何も思い付かない。
ξ゚听)ξ「それっとひょっとして……」
しかし、内藤と同じ年齢であるはずのツンが、何か思い当たる事があるのか、彼女にしては珍しく控えめなトーンで口を挟む。
ξ゚听)ξ「化石燃料?」
( ´_ゝ`)「正解だ」
( ^ω^)「化石……燃料?」
首を傾げ、全く理解出来ていないでいる内藤に向け、弟者が化石燃料がどういったものかの説明をする。
そんな内藤に、ツンは呆れた視線を向けて言う。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:31:28.97 ID:33MaeCYd0
ξ゚听)ξ「あんたね……、学校で歴史の時間に習ったでしょうが?」
( ^ω^)「そうだっけかお?」
ξ#゚听)ξ「そうだっけかお? じゃないわよ。あんたはちっとも授業聞いてないでしょ? 大体──」
(*゚ー゚)「まあまあ、ツンちゃんそのくらいで、ね?」
( ´ω`)「おー……」
内藤に対し、お説教モードに入ろうとしたツンをしぃがやんわりと制する。
なおもブツブツと文句を呟いてたツンだが、宿題ぐらいは自分でやるようにとの言葉を最後にお説教は終わった。
そんな相変わらずの二人の姿に、しぃは笑顔を浮かべざるを得ない。
変わらぬもののある事が、自分が帰って来れたという事を実感させてくれる。
(´<_` )「大昔、この島はそういった燃料が採掘されたりはしてたらしい」
この国自体が天然資源に乏しくはあったが、セイクリッドの発見以降、採掘はされていなかったので多少は残されていたという。
(´<_` )「以前から脱出計画自体はあった。しぃさんの任務もその一環だ」
その頃から万が一の為、採掘して貯蔵はしていたと弟者は言う。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:33:34.60 ID:33MaeCYd0
ξ゚听)ξ「なるほど、準備万端というわけね」
(´<_` )「うーん……、そうならよかったんだがな……」
( ^ω^)「お?」
(´<_` )「問題点が一つあってだな」
弟者の話によると、現状だとアメリカに到達するには若干燃料が足りないという。
(´<_` )「こうも早く脱出する羽目になるとは思ってなかったという事もあるのだが」
( ´_ゝ`)「セイクリッドと違い、そう大量に生産出来るものでもないからな」
ξ゚听)ξ「じゃあ、どうするの? もう時間はないんでしょ?」
(´<_` )「うん、そうなんだが……」
( ´_ゝ`)「手段も考えてはいるんだが……」
( <●><●>)「途中まではセイクリッドを使う予定です」
言い淀む二人に代わり、ワカッテマスが口を挟む。
この島を出てから途中まではセイクリッド燃料として進み、その間はフェイスからの攻撃を防ぎつつ進むという。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:36:23.45 ID:33MaeCYd0
( <●><●>)「到着可能限界である目標地点に到達次第、化石燃料による隠密航行に切り替えます」
フェイスがセイクリッドを求め侵攻するならば、化石燃料で進む分には寄って来ないであろうという目算の下だ。
ξ゚听)ξ「……SAはどうされるつもりですか?」
( <●><●>)「防衛任務終了後は、エンジンを切り、荷物として運ぶしかないでしょうね」
最悪の場合は捨てていくとワカッテマスは言う。
(;^ω^)「捨てちゃったら、以降の防衛に差し障りがありませんかお?」
( <●><●>)「その為の隠密航行です。アメリカに辿り着けさえすれば、こちらの技術提供で新たに開発も可能でしょうしね」
当然ながら、SAもアメリカに運んだ方が今後の戦いにおいても有用な戦力となる事はわかりきっている。
しかしながらそれは、SAと共にその搭乗者をもまた、戦いの空に飛ばす事に繋がる。
ならばいっそ、SAは捨ててしまった方が内藤達を戦わせずに済むかもしれないとワカッテマスは考えていた。
同時にそれは、他の誰かを戦わせる事にも繋がるのだが、せめて内藤のような子供だけでも戦闘から外したいと願う事は自分の
エゴであるのだろうかとワカッテマスは煩悶する。
( ^ω^)「なるほどですお。無事向こうに着けば、また作り直す事も出来ますおね」
そんなワカッテマスの気持ちに気付くことなく、内藤は屈託なく笑う。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:40:06.65 ID:33MaeCYd0
(´<_` )「流れとしてはそんな感じだな」
( ´_ゝ`)「まずは東の巨大フェイスを確実に墜とさなきゃならん」
( ^ω^)「残りの3体はどうするんですかお?」
(´<_` )「それは……」
( <●><●>)「島を捨てるのですし、放置ですね」
( ´_ゝ`)「……脱出経路を確保出来ればそれでいい」
( ^ω^)「……そうですおね。捨てるんですおね……」
兄者達の言葉に、内藤はまた沈んだ表情を見せる。
頭では理解していることだが、改めて捨てるという言葉を聞くと、どうしても割り切れない思いが胸を刺した。
( <●><●>)「さて、話はこの辺にしておきましょう」
( <●><●>)「内藤君達もそろそろ帰って、明日に備えてください」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:44:00.34 ID:33MaeCYd0
从 ゚∀从「へいへい、そうすっかね」
( ^ω^)「お、僕も帰りますお」
(´<_` )「あ、しぃさん、すまないがちょっとナハティガルの事で話があるんだが」
(*゚ー゚)「あら、奇遇ね。私もちょっと色々と聞きたい事があったのよ」
( ´_ゝ`)「レディファースト、と行きたい所だが、恐らく用件は同じだろうから時間の掛かるのものから行かせてもらうよ」
(*゚ー゚)「ええ、よろしくね」
( ´_ゝ`)「ナハティガルの修理共に出力も増強させたんで、武装の追加をしたいんだが……」
話し込む兄者達を横目に眺めていた内藤は、安心と少しの悲しみが混じった複雑な感情が湧き上がっていた。
しぃが元気そうで良かったと思うと同時に、また戦いに身を投じる事が悲しい。
ジョルジュが抱いていたものと同じ様な気持ちを内藤もまた感じていた。
( ^ω^)(割り切れないお……)
仕方ないと、一言では片付け切れない。
戦う人間が必要な事も、しぃが高い戦闘力を有している事もわかっていても割り切れない。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:46:11.63 ID:33MaeCYd0
全ては守る為、そして生きる為。
そう言い聞かせて、納得するしかないのかもしれない。
この島を捨てる事も。
まとまらない考えを振り払うように大きく息を吐き、内藤は傍にいたツンに話しかける。
( ^ω^)「ツンはまだ帰らないのかお?」
ξ゚听)ξ「私はまだ帰れないわよ。AIの最終調整がまだ残ってるし」
( ^ω^)「そうなのかお? じゃあ、終わるまで待ってようかお?」
ξ゚听)ξ「私の事はいいから、帰って休みなさいってば」
( ^ω^)「お……でも……」
ξ゚ー゚)ξ「いいから……ちゃんと晩ご飯食べなさいよ?」
( ^ω^)「わかったお。ツンもがんばってだお」
内藤はワカッテマス達に一礼し、ツンに手を振り、エレベーターの方に向かった。
ハインリッヒがエレベーターを止めて待っていたので、一緒に乗り込む。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:49:57.12 ID:33MaeCYd0
从 ゚∀从「ツンは帰らないのか?」
( ^ω^)「まだ仕事があるらしいお」
从 ゚∀从「そっか……」
ハインリッヒは地上階のボタンを押し、視線を閉まる扉に向けた。
仕事に向かうツンの横顔が一瞬だけ見えたが、その顔はいつも通りの顔であった。
从 ゚−从「……」
( ^ω^)「……」
特に何も話すことなく、エレベーターは地上階へと辿り着く。
無言のままエレベーターを降り、基地から外に出た。
( ^ω^)「おー、もう真っ暗だお」
冬の日は落ちるのが早い。
まだ夕方頃のはずだが、空はすっかり夜のそれに変わっていた。
从 ゚∀从「外は寒いな……」
( ^ω^)「だおね。早いとこ帰ってご飯にするお」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:52:12.26 ID:33MaeCYd0
从 ゚∀从「お、そうだ、晩飯……」
( ^ω^)「お?」
从 ゚∀从「ツンいないんだろ? 飯どうすんだ?」
( ^ω^)「そうだおね……食堂行ってもいいけど、冷蔵庫に食料まだ残ってたから、自分で作るお」
从 ゚∀从「へえ、ちゃんと食えるようなもん作れるようになったのか?」
( ^ω^)「失礼な。僕の料理の腕を甘くみんなお?」
从 -∀从「ハッ、以前ギコ達を悶絶させてたのはどこのどいつだったかな?」
(;^ω^)「あ、あれはちょっと砂糖と洗剤を間違えただけで……」
必死に弁解する内藤を後目に、ハインリッヒはスタスタと歩き出す。
慌てて内藤も追いかけてくるが、ハインリッヒは笑って言葉を受け流した。
(;^ω^)「あれから時間も経ってるし、ちゃんと美味しいもの作れるようになったお!」
从 -∀从「そうか? ツンが言ってたぞ? ほっとくと外食とかインスタントばっかだとか……」
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:55:11.88 ID:33MaeCYd0
(;^ω^)「それはたまたま、そんな気分だっただけで……時間があればちゃんと!」
从 ゚∀从「んじゃ、何か作ってみてくれよ」
(;^ω^)「お?」
从 ゚∀从「晩飯、どうせお前もアタシも食うんだから、一緒に食ってもいいだろ?」
(;^ω^)「お……そういう事かお」
一瞬、ハインリッヒが何を言いたいのかわからなくて足を止めた内藤だが、すぐにその意味を理解して不承不承頷く。
上手く乗せられた気がするが、確かに一人で食べるよりはいいだろうとも思う。
( ^ω^)「しょうがねーお。僕のスーパーでスペシャルな料理をご馳走してやるお」
从*゚∀从「ほほう、それは期待出来そうだねぇ」
少しからかうような笑みを浮かべるハインリッヒに、内藤は挑戦的な笑みを浮かべる。
元が元だけに締まらないのだが、本人はその事に気付いていない。
( ^ω^)「絶対美味いって言わせてやるお」
从 ゚∀从「はいはい、御託はいいからさっさと行こうぜ? 寒いし」
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:57:29.85 ID:2jofThaC0
トリを守るバードウォッチャーの話かとおもた
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/14(金) 23:57:34.74 ID:33MaeCYd0
先に立ち、歩き出すハインリッヒに向け、盛大なため息をついて内藤も歩き出す。
( ^ω^)「……しかし、こういうのって普通、女性が……いや、女性などいないか」
从 ゚∀从「おい、今なんか言ったか?」
( ^ω^)「何にも言ってないお!」
从#゚∀从「ウソつけ! はっきり聞こえたぞ? 女性がなんだって?」
(^ω^ )「ハインには関係ない話だお」
振り向いて内藤に詰め寄るハインリッヒをかわし、内藤は走り出す。
从#゚∀从「てめえ、待ちやがれ!」
それを追い、ハインリッヒも駆け出した。
( ^ω^)「待てと言われて待つバカはいないお!」
从#゚∀从「待てコラ! つーか、足はええよ、待ちやがれ!」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/15(土) 00:00:23.04 ID:t5Q9shNV0
街灯のまばらな暗い冬の夜空の下、内藤とハインリッヒは白い息を吐きながら走る。
暗い気持ちも、悲しい思いも今だけは忘れてただ走る。
残されたこの島でのわずかな時間を、沈んだ顔のままで過ごすのは寂し過ぎるとわかっているから。
辛くとも笑顔で。
泣かないと決めたあの日から、笑って生きようと決めたあの日から。
从;゚∀从「おま、ちょい待て! マジで待て! 早過ぎんだよ!!!」
⊂ニニニ( ^ω^)ニニ⊃ 「ブーン」
内藤は走る。
力いっぱい、全力で島の上を走る。
割り切れない心の靄が晴れるように。
( ^ω^)「僕の家まで競争だお! 負けた方が晩ご飯作るんだお!」
从;゚∀从「ちょ、いつそんな勝負になったんだよ!? 待て! 待ちやがれェーッ!!!」
聞く耳持たないというジェスチャーをして見せ、笑顔で走り出す内藤。
その笑顔に釣られるように、苦笑混じりながらも笑みを浮かべるハインリッヒ。
二人はバカみたいに騒ぎながら、笑い合いながら内藤の家まで走った。
しかし、全力で走り切った内藤が、ハインリッヒの作った晩ご飯で悶絶するのはまた別の話である。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/15(土) 00:02:00.91 ID:t5Q9shNV0
('、`*川「さて、今日の所はこんなものかな」
ペニサスは大きく伸びをし、長時間のデスクワークで凝り固まった身体をほぐす。
すっかり夜も更けたブリッジにはペニサス一人しかいない。
('、`*川「やる事は山積みだけど、明日は掃討作戦もあるから寝ておかないとね……」
席を立ち、ブリッジルームに接した休憩室に向かう。
現在の所、フェイスの接近の兆候などは見られていないが、それでも有事に備え、ブリッジに泊り込む人間は必要なのだ。
('、`*川「……それもあと少し、なのよね」
今後、島が取る方針は決まっている。
それに対して、ペニサスにも思う所は多々ある。
ペニサスもまた、この島を捨てたくないという思いを抱えているのだ。
皆が、そしてドクオが守ったこの島を捨てるのは寂しいと、ペニサスは思う。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/15(土) 00:03:49.25 ID:CZgkNCco0
今追いついた 支援
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/15(土) 00:03:56.45 ID:t5Q9shNV0
('、`*川「……生き残る為,よね」
納得するしかない。
ペニサスも他の多くの島民と同じ様に、そう結論付け、思いを断ち切ろうと必死に心を押さえつけていた。
('、`*川「あら……?」
不意に背後のドアが開いた。
振り向いたペニサスは、既に帰ったものだと思ったその人物の来訪に少し驚いたが、極めて自然な調子で声を掛けた。
('、`*川「どうしました? 忘れ物とかするタイプだとは思いませんが……」
「協力して欲しい事があります」
('、`*川「え?」
単刀直入に用件を切り出した男のいつも以上に真剣な眼差しに、ペニサスは思わず頷いていた。
( ^ω^)は島を守るようです 後々々編 終わり
また順調に1ヶ月以上空きました。
後編の終わりであと3話以内と書いた気もしますが、多分ここからあと3話以内ぐらいかなと。
何とか1クールで終わりそうなぐらいでしょうか。
当初の予定では3〜4話完結の話だったのにね。
支援とかありがとうございました。
また次回に。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/15(土) 00:06:17.80 ID:CZgkNCco0
乙!!
ふふふ、一ヶ月間たのしみにしてるぜ
あ、作者さん無理しないでね
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/15(土) 00:17:19.71 ID:mrpCMuEC0
せいぜい頑張ることだな
ちょっぴりだけ応援してやろう
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/15(土) 01:15:09.10 ID:SNuAUzXC0
乙
乙