唯「夢をあきらめない」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:21:13.07 ID:ZPXIo5BA0
けいおんSSは俺の命だ
続けたまえ
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:21:22.65 ID:/WMOK8jx0
>>1
ありがとうございます。


律「さわちゃんがプロデュースした1stアルバムは最高のサウンドだった。
  その後も何枚かアルバムを出したけど、ことごとく売れなかったのは、
  結局1stのあのサウンドを超えるものがどうしても作れなかったからだ」

澪「その点じゃ、唯の選択は賭けだったと思う」

唯「これでダメなら……いいや、それは考えちゃいけない……」

数瞬間後、唯のもとに一本の留守番電話が入る。

さわ子『唯ちゃん? 久しぶりね。HTTのデモテープ聴かせて貰ったわ。
   それで、一度みんなと会って話がしたいと思っているわ。場所は……』

HTTの未来に、一筋の光明が見えた瞬間だった。
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:21:52.61 ID:BDa0EIxX0
和ちゃん可愛ゆすなあ

いろいろあって一念発起で仕事なげうってマネージメントしてみたけど空回りでだめぽとかだと萌えすぐる
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:22:17.75 ID:/WMOK8jx0
都内某所、5人全員(無職1名を除く)が仕事を休み、
大御所プロデューサー山中さわ子の事務所に、緊張した面持ちで集まった。

さわ子「デモテープ、聴かせて貰ったわ。よくここまで素晴らしい曲を書き溜めたわね。
   それもこれも全て貴方達がここまで諦めずに活動を継続してきたからこそね」

澪「そ、それじゃあ……」

紬「アルバムをプロデュースしてくれるんですか!?」

さわ子「ええ。これだけの曲があれば、必ず最高のアルバムが出来ると確信しているわ」

律「マ、マジかよ……」

梓「夢じゃないんですね……」

さわ子「でも、それには条件があるわ」

唯「条件……ですか?」

さわ子「アルバムの制作には、最低でも300万円の費用が必要なの――」

5人「!!!!!」
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:24:31.06 ID:/WMOK8jx0
律「正直言って困ったよ……。
  300万なんて大金、そう簡単に用意できるわけがない」

澪「昔ならムギ辺りがポンと出してくれる額なんだろうけど、
  明日の社員の給料も払えるか怪しいムギの家に、そんなことを頼むのは無理だってわかってる」

梓「こうなったら、パートの時間を増やすしかないですね」

唯「私も……頑張って働く!!」

紬「私もバイトを始めます!」

澪「私もとりあえずハロワ行ってみる!」

しかし、律の言うとおり、それだけの大金が容易に溜まるわけがないし、
そもそも自分達の生活で手いっぱいだった5人に、貯蓄も殆ど無かった。
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:26:47.20 ID:/WMOK8jx0
5人が諦めかけたその時、手を差し伸べた人物がいた。

唯の実妹、平沢憂が、バンドに対し、アルバムレコーディング資金の出資を申し出たのだ。

憂「バンドで演奏している時のお姉ちゃんは、私にとってずっとあこがれの存在でした。
  ギターを弾いている時のお姉ちゃんが大好きだし、歌っている時のお姉ちゃんが大好きなんです。
  現実が厳しいことは理解しているけど、それでもお姉ちゃんが大好きな音楽を今後も続けていけるのだったら、
  私は助けてあげたいと思うんです。それが妹である私にできる、ただ一つのことです」

唯「憂、わたしは本当に最高の妹を持ったと思うよ……」

こうしてHTTの5人は、山中さわ子所有のスタジオで怒涛のレコーディングへと突入した。

書き溜めた自身の楽曲たち、最高のプロデューサーであるさわ子の手腕、そして気合いの入る5人のメンバー、
その化学反応は予想以上にすばらしく、レコーディングは順調に進んだ――かのように思われた。

しかし、事件は起こる。
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:27:08.94 ID:+P/a6u/sP
騙し取られるのか
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:28:32.48 ID:/WMOK8jx0
『このレコーディングが失敗すれば――バンドに未来はない』

そんなプレッシャーに最も苛まされたのは、軽音部時代からの部長であり、リーダーの律であった。

そして、律の溜まりに溜まるストレス――その爆発の被害を受けるのは決まってただ一人。

律「ふざけんなよ!! お前、どういうつもりだ!!」

夜のスタジオに、ドラマーの怒号が響く。

律が怒りの形相で掴みかかる相手は、澪だった。

律「唯がボーカルのレコーディングを一生懸命やっている最中だっていうのに、ボーっと座ってやがるのはどこのどいつだ!!」

澪「……やめろよ」

律「せっかく掴んだチャンスで、全員が一丸で頑張らなきゃいけない時にジメジメと暗い負のオーラを出しやがって!!
  それはいったいどういうつもりなんだって聞いてるんだよッ!!」
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:31:20.90 ID:/WMOK8jx0
澪「なんでいつも私なんだ……」

律「お前がいけないからだろ!?
  一人だけ職にもつかず、バンドに金も落とさない!
  かと思えばレコーディングもやる気がない!!
  おまけに歌詞もベースプレイも中途半端!!
  そんなお前がいけないからだろ!?」

梓「(オロオロ……)」

紬「りっちゃん! 暴力はだめよ!」

唯「そうだよ! 二人とも落ち着いて!!」

さわ子「ムギちゃんと唯ちゃんの言うとおりよ。二人とも、とりあえず座りなさい」

さわ子に促され、何とかソファーに腰を下ろす二人だったが、律の怒りは収まらない。

ひたすらにやる気のないベーシストの態度を糾弾すると、今度は澪が反論する。

澪「いっつもそうだ……。律はストレスがたまるとすぐ私に八つ当たり……」

律「お前なら……付き合いの長いお前なら……
  私がいつ爆発するか、そのタイミングが手に取るようにわかるはずだろ!?」
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:35:58.77 ID:/WMOK8jx0
澪「わかるよ。わかるけど、どうしていつも私なんだ?
  律は一度でも私の話を聞いてくれたことがあったか?
  私のことばかり言うけど、自分のドラムプレイが中途半端だって思ったことはないのか?
  どうしてHTTがここまで成功することができなかったか、考えたことはあるのか?」

律「なんだとッ……!!」

澪「私はもう……疲れたよ……」

律「わかったよ!!
  澪、お前はクビだ!!
  明日からはスタジオに顔を見せるんじゃない!!」

澪「それは……本気で言っているのか?」

律「!!」

澪「私は……律が本気で私のことをHTTから必要ないと思うのであれば、
  自分がHTTを辞めてもいいと思ってる」

律「………クソッ!!」

梓「律先輩が……」

紬「泣いている……?」
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:38:05.47 ID:/WMOK8jx0
律「本気で言ったと思うか……?」

澪「…………」

律「なぁ澪、お前と私……一緒にバンドやり始めてからどれくらい経つ?」

澪「随分と長くなるな」

律「そうだよ……。私たちが一緒にHTTを始めたのは15歳の時からだ!
  それどころか、お前とは幼稚園の頃から一緒につるんできた……。
  そんなお前はもはや家族同然だ!! 姉妹みたいなもんだ!! わかるだろ!?」

澪「…………」

律「喧嘩なんて数えきれないくらいした!!
  それでも私はお前と一心同体だと思ってる!!
  それは私だけの思い違いか!? なぁ!」

澪「…………」


13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:40:42.84 ID:/WMOK8jx0
律「確かに私は難しい人間だ!!
  リーダーとしての責任感にも、このレコーディングに対するプレッシャーにも、
  到底耐えきれそうにないし、今にも潰れそうだよっ!!
  だけど、こんな情けない愚痴を……クソったれな感情を……
  私は澪以外の誰に吐き出せばいいって言うんだよ……!!
  ガキの頃からずっと一緒にいる澪以外の誰に……こんなこと言えるっていうんだ!!」

澪「律……」

律「なぁ、澪……私、本当はお前と喧嘩なんてしたくないんだ……」

澪「それは私もだよ……」

律「澪……私が悪かった……どうか許してくれ」

そうして肩を抱き合った二人を、その場の誰もが固唾を飲んで見守っていた。
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:41:03.44 ID:BDa0EIxX0
最近虐めSSばっか読んでるから疑心暗鬼でいけない
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:42:14.87 ID:/WMOK8jx0
波乱万丈を経て、完成した放課後ティータイムの最新アルバム。

5人の汗と努力と歴史の詰まった最高の自信作。

しかし、業界の反応はといえば――

律「また契約を断られたよ……」

紬「これで10社目……ですか」

梓「レコード会社が決まらなければ、アルバムは発売できない……」

澪「手詰まりだな……」

唯「…………」

よくも悪くも『変わらない』ことが売りだったHTTの音楽性が詰まった最新アルバムは、
『時代遅れ』のレッテルを貼られ、契約を結ぼうなどというレコード会社は現れなかった。
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:43:10.10 ID:/WMOK8jx0
律「正直、そろそろ潮時かなと思う時もある。弟の聡には『ねーちゃん、いつまで夢見てるんだよ』なんて、手厳しい言葉をもらうこともあるよ」

澪「でももう今更戻れないし、戻る気もないんだ」

紬「琴吹グループも失墜した今、私にもう失うものはありません」

梓「HTTのアルバムを世に出すためなら、私はなんだってする」

唯「バカな夢だと言われるかもしれない。現実を見ていないと言われるかもしれない……」

唯「それでも私たちは諦めない!! HTTは絶対にビックになってやる!!」
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:46:10.74 ID:BDa0EIxX0
びっぐかめら
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:47:41.65 ID:/WMOK8jx0
思い続ければいつかは叶う――その言葉をまさしく地で行った5人に、その知らせが届いたのは突然であった。

唯「私たちのアルバムを発売したい……?」

とあるインディーズ・レーベルが、HTTのアルバムを自社から発売してもよいと手を挙げたのだ。

律「しかもライヴまで決定した……だと?」

それもとある大型ロックフェスティバルへの出演決定というオマケ付で――。
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:49:00.92 ID:/WMOK8jx0
律「ここが幕張○ッセか……」

フェス会場となる広いホールを見回し、律は溜息を吐いた。

紬「私たちの出番は……昼間の一番最初ですね」

梓「本当にお客さんが来てくれるんでしょうか……」

澪「大丈夫だ……信じよう」

唯「そうだよ。わたしたちはこんなに長く一緒にやってきた。その歴史は……ぜったいにうそをつかない!」

そして、ステージに出ると――

紬「うそ……」

梓「なんて……ことでしょう……」

律「こんなことって……」

澪「こんなことって……あるんだな……」

『ウワーーーーーーーーーーッ!!』

観客席を埋め尽くす人、人、人――。

放課後ティータイムは幾年ぶりかに大観衆に迎えられたのであった。
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:51:10.78 ID:/WMOK8jx0
そして、象徴的な出来事は次の瞬間に起きた。

夢にまで見た光景に、興奮を抑えられず、唯がマイクににじり寄り、

唯「それじゃあ1曲目行きます! ふわふわタイ……ぶへっ!」

興奮のあまり、マイクに顔面をぶつけて鼻血を出したのだ。

まるで、初めてライヴハウスで演奏したあの頃のように――。

大物「あのフェスには俺のバンドも出演する予定でさ、勿論トリでね。
   それで、会場に着いてみたらなんと出演者リストにHTTの名前があるじゃないか!! 
   驚いた俺はすぐさまステージ前最前列に陣取ってHTTのライヴを見たよ! 
   その日入っていた取材も何もかもすっぽかしてね(笑) 
   あの時ばかりは、初めてHTTを見てバンドに憧れた子供の気持ちに戻っていたよ! ああ、最高のライブだった!」

マキ「ラブ・クライシスもあのフェスには出演していた。
   私は舞台袖からHTTのステージを見たわ。
   持ち時間は少なかったけど、それが終わる頃には完全にHTTは観客の心を掴んでいた。
   平沢さんがまたマイクに顔面をぶつけたりして……そう、あの頃と同じようにね――。
   あのバンドは良い意味で何年たっても変わらないの」
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:54:12.58 ID:/WMOK8jx0
唯「どんな経験も、無駄になることはないって学んだ気がするよ」

律「そうだな……トラックの運転手みたいなキツイ仕事も」

梓「ギターの講師も」

紬「会社の倒産も」

澪「無職期間も」

唯「それでもやっぱり、私たちが帰るところはひとつ、音楽なんだね」

そう、放課後ティータイムの歴史はまだこれからなのだ――。

律「そうだな! 私たちはまだ夢半ばだ!」

梓「アルバムも出したばっかりですしね!」

紬「次はまたツアーができるように、いろんなプロモーターに売り込みましょう!」

澪「わたしも今度こそ職を見つけるよ!」

ロックスターになる、そんなばかげた夢を彼女たちはこれからも追い求めてゆくだろう。

唯「わたしたちは……絶対に夢をあきらめないよっ!」


おわり

22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:55:42.09 ID:+P/a6u/sP
最後のレスだけで良い何も残らない内容だったな乙
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:58:45.84 ID:TH9J4SI60
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:58:59.56 ID:/WMOK8jx0
終わりです。

前スレであったように映画『Anvil』のパロディでした。

あれはいい映画ですよー。昨日DVD見て、不覚にも泣きました。

ご指摘の通り、何も内容のない急仕上げのクソSSでしたが、興味持った方いたら原作を見てみてください。

バンドを知らなくても楽しめる内容だと思いますし。
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 02:00:48.20 ID:BDa0EIxX0
とりあえずおつ
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 02:06:13.27 ID:IBu99uHQ0
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 02:16:09.69 ID:rjtzvCGy0
うちのダチも初見は泣いたって言ってたわww
とりあえず乙
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ええ話やないか乙