文才ない毛もないけど小説書く

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここはお題をもらって小説を書き、筆力を向上させるスレです。


◆お題を貰い、作品を完成させてから「投下します」と宣言した後、投下する。

◆投下の際、名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』を記入。メール欄は無記入。
 (例 :『BNSK(お題:文才) 1/5』) ※タイトルは無くても構いません。
◆お題とタイトルを間違えないために、タイトルの有無に関わらず「お題:〜〜」という形式でお題を表記して下さい。


※※※注意事項※※※
 容量は1レスは30行、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)
 お題を貰っていない作品は、まとめサイトに掲載されない上に、基本スルーされます。

まとめサイト:各まとめ入口:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/
まとめwiki:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/
wiki内Q&A:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?Q%A1%F5A
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 11:38:43.49 ID:F5AOl10Q0
▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です
・【!】お題:保守=ただ保守するのも何だから小説風に保守する=通常作扱いにはなりません

▽規制されている方へ
>>1から辿って行けるまとめ板に、規制者スレがあります。
 そちらの方に投下していただければ、心ある人が転載してくれます。

▽その他
・作品投下時にトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
・ただし、作品投下時以外のトリップは嫌われる傾向にありますのでご注意を

▲週末品評会
・毎週末に週末品評会なるものを開催しております。小説を書くのに慣れてきた方はどうぞご一読ください。
 wiki内週末品評会:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?%BD%B5%CB%F6%C9%CA%C9%BE%B2%F1
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 11:43:54.09 ID:F5AOl10Q0
 78  ◆VrZsdeGa.U  mail:  2010/04/28(水) 19:50:47.04 ID:p9btV1zE0

小説!小説!小説!小説ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!小説小説小説ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!小説たんの美しい文章をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!間違えた!モフモフしたいお!
モフモフ!モフモフ!文字文字モフモフ!モジモジモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!

第213回週末品評会  『性的倒錯』

規制事項:7レス以内

投稿期間:2010/5/01(土)00:00〜2010/5/02(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/5/03(月)00:00〜2010/5/04(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 11:45:06.05 ID:F5AOl10Q0
  96  ◆Lq1ieHiNSw  mail:  2010/04/29(木) 00:31:54.76 ID:Mawk5Jsl0

    ∩_∩     人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人
   / \ /\   < すごい文才を感じる。今までにない何か優れた文才を。        >
  |  (゚)=(゚) |   < アイデア・・・なんだろう沸いてきてる確実に、着実に、俺たちの中に。.>
  |  ●_●  |   < 中途半端はやめよう、とにかく最後までやってやろうじゃん。      >
 /        ヽ  < BNSKには沢山の仲間がいる。決して一人じゃない。          >
 | 〃 ------ ヾ | < 信じよう。そしてともに書き続けよう。                    >
 \__二__ノ  < フルボッコな感想はつくだろうけど、絶対に諦めるなよ。        >
              YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY


第213回週末品評会  『勘違い』

規制事項:7レス以内

投稿期間:2010/5/01(土)00:00〜2010/5/02(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/5/03(月)00:00〜2010/5/04(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 12:46:30.34 ID:FvWsy1jb0
文才ないけど乙
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 13:36:42.37 ID:vwnuZTgn0
ho
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 14:26:53.61 ID:FvWsy1jb0
フォッフォッフォッ
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 15:46:05.60 ID:yxZ+yaQW0
久々に書きたいからお題クレ
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 15:52:23.18 ID:r6VhEl/p0
>>8
生鮮
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 16:10:32.28 ID:xIrXa17RP BE:1388137695-2BP(9)

じゃあ俺も暇なんで何か書く
お題くれ
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 16:31:57.57 ID:tJVE+wSq0
>>10
ユートピア
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 16:49:46.00 ID:xIrXa17RP
>>11
お題ありがとん
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 17:56:18.98 ID:yvPnkqQFO
>>1おつ
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 18:53:09.74 ID:vwnuZTgn0
ho
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 19:05:28.84 ID:rvusdHtF0
もしもお題をもらわずにオリジナルの話を書いたら、どこに書き込めばよろしいですか?
避難所の方がいいですか?
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 19:26:11.40 ID:Pm2FzTfs0
2chじゃなくていいだろそれ
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 19:59:07.92 ID:MoI1BU/E0
文才無いから保守する
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 20:19:03.39 ID:Jhw/7f8A0
文才無いけどお題クレ
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 20:21:59.95 ID:r6VhEl/p0
>>18
アイナメ
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 20:23:31.52 ID:Jhw/7f8A0
アイナメってなんだ?とりあえずお題サンクス
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 21:02:27.94 ID:H0VXFvEpP
hash
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 21:43:43.71 ID:t6wo53uH0
うふふ
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:15:23.71 ID:FvWsy1jb0
キャッキャッ
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 22:59:44.34 ID:H0VXFvEpP
hash
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:17:02.05 ID:FvWsy1jb0
ほっしゅほしゅ
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:20:34.44 ID:p5Gss1lH0
誰かお題くださいな
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:24:13.68 ID:FvWsy1jb0
>>26
砂埃
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:27:40.99 ID:p5Gss1lH0
>>27
承知した
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:39:57.81 ID:NyQxD6Aa0
たまに厨二小説が書きたくなるよね。
お題↓
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/01(土) 23:40:45.22 ID:r6VhEl/p0
>>29
謀略
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:07:46.25 ID:1RLN69/c0
品評回はまだ0か。今週も少ないのかな。
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:38:17.96 ID:U/jG8pNNO
よっしゃ一個終わった。もう一個間に合うかな。
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:42:16.20 ID:+H/GAtrE0
GW終わって人が増える頃に出品するお
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:45:25.94 ID:1RLN69/c0
じゃあおれは人少ない間に優勝ねらう……
名案だなぐへぐへ
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:49:12.51 ID:+H/GAtrE0
人少なくて優勝しても得られるものは・・・
前回のように関心票1票での優勝だぞ
面白いかのかそれ?

優勝するのが目的の人ならそれもありなんだろーけどさ
俺は文才上げるのがメインだからなー。もちろん優勝したいってのはるけど、それは二の次だなー
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:54:32.55 ID:Z3FCmqle0
情けない品評会に出品して、勝つ意味があるのか!?
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:55:31.16 ID:z0TZ64wL0
お前らみんなが出品して投票すれば情けなくはなくなるだろうに
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 00:58:20.48 ID:i4ngEPUG0
文才上げたいなら人数に関係なく今書けよ。得られるものにこだわってる時点で二の次では無いな。
とマジレス
39 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 00:58:38.62 ID:3tLqxy2u0
品評会作品投下します。
40マゾヒストが犬を飼う 1/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 00:59:36.57 ID:3tLqxy2u0
 直立した裸の男。首は鎖で繋がれて、両腕は後ろ手に縛られている。
 男の頬を平手で打つ。小気味良い音が響く。何度も何度も何度も打つ。
 手の平に柔らかい肉の感触。指先に硬い骨の感触。
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。泣きながら許しを請う哀れな男。しかし露になった下半身では、
ペニスが天を仰いでいる。なんだか指を指されているみたい。
 そして私は空いた左手の爪を立て、彼の亀頭に食い込ませる。うぎッ、と悲鳴をあげる彼。
「なに? 喜んでるの?」
 だらしなく涎を垂らす彼は苦悶に身を歪めるだけで答えなかったが、さらに硬化しようと脈打つペニスが肯定
を示していた。もう一度、頬を打つ。力の弱い私だが、何度もやれば赤く腫れる。
 痛いですごめんなさい許してくださいもうしません。嬉しそうに泣き言を言う彼が惨めで、許せなくて、だけ
どそれでも愛おしくて。
 左手を亀頭から陰嚢へと滑らせる。爪を立てながら、引っ掻くように。そして睾丸を激しく握る。
 声にならない声を出し、男は白く穢れた欲望を放出した。放出された体液が私の皮膚にかかる。
「舐めろ」
 一言そう言うと忠実な犬はしゃがみこみ、私のヘソの辺りを舐め始めた。ざらりと鎖が擦れる音がする。柔ら
かな舌が私の皮膚を這う。己の精液を舐める、軽蔑すべき男が目の前にいる。
 哀れで惨めで卑しくて。どうしようもないこの男、潤一は私の彼氏である。
「今日はもう終わりよ、潤一」
 首輪を外してあげるわ、と言うと、潤一の表情は弛緩する。
 許してくれるの? 許してくれるの? ねえ、ねえ、ねえ?
 しかしその顔は、どこか残念そうでもある。
「うん、今日はこれぐらいで許してあげるわ。明日からはいい子になりなさいね」
 心の篭もっていない口調で読み上げる。そして潤一もこう言った。
「ごめんね、僕いい子になるから、お母さん」
 聞き飽きた言葉が返ってきた。
 首輪と手錠を外し潤一を解放すると、彼は何も言わずにベッドに身を沈めた。その姿を無感動に見届けた後、
私はバスルームへと向かい、染み付いた背徳を流しに行った。風呂から上がれば私も眠ろう。この夜を早く終
わらせよう。朝が来れば、全てが白く浄化されるのだから。
41マゾヒストが犬を飼う 2/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 01:00:18.79 ID:3tLqxy2u0
「あ、おはよう紗希」
 朝目を覚ましトイレに向かう途中で潤一に声を掛けられた。私よりも早く起きていた彼は、既に朝食の用意
を始めていた。私も用を足した後、彼と共に朝食の準備をした。
 簡単に朝食を取り終えると、私達はそれぞれ仕事へ行く用意をした。彼はスーツに、私は私服に着替える。
「それじゃあ、先に出るから後はよろしくね」
 靴を履き、鞄を持って玄関を出て行く潤一。出て行く前に、軽くハグもしてくれる。
 大きな眼、キリッとした眉、高い鼻、細目で小さな輪郭。白い歯が覗く笑顔に、上げた前髪。爽やかで格好
良くて優しくて。とても素敵な私の彼氏。
 しばらくして私も戸締りをしっかり確認し、職場へと向かう。自転車で五分程で着く保育園が私の勤め先だ。
今日も、無邪気な子供達の遊び相手となる。クタクタになるまで全力で走り回る子供達。遊び疲れると、無防
備に眠りだす。
「こんだけ毎日子供達の相手してたら、自分の子供も欲しくなっちゃいますよね」
 子供達のお昼寝の時間は、私達保育士にとっては雑談の時間となる。近くにいた斉藤先生が話しかけてきた。
斉藤先生は私より一つ年下の、男性保育士だ。
「喜多見先生は結婚はまだしないんですか? 同棲してるんですよね、今の彼氏さんと」
「喜多見先生の彼氏ってカッコいいよね! こないだも帰りに先生のこと待ってたの見たわ」
 先輩の中西先生も会話に参加してくる。そして中西先生の発言に、斉藤先生が横目で視線を送る。ほんの僅
か嫉妬が込められたその挙動を、しかし中西先生は意に介さない。この二人は、多分付き合っているのだろう。
公言はしてないが、そんな雰囲気が漂っている。
「結婚ねぇ。うーん、まだちょっと考えられないかな。今は仕事頑張りたいし。多分、彼も同じだと思う」
「あんまし引っ張って逃してしまわないようにね。あんないい男そうそういないよ」
 中西先生はわざとだろうか、またも斉藤先生の嫉妬心を煽るようなことを言う。これが、彼女達の関係性な
のだろう。そして私と潤一の関係性は。
 格好いい。いい男。それは、確かにその通りだ。彼女である私がそう言うと惚気ているようで、あまり言い
たくはないが、しかし潤一の見た目は本当にいい。見た目だけじゃない、性格だって真面目で優しくて人格
者だ。彼を知る私の知人は、みんな彼のことを褒め、私を羨ましがってくれる。
 だけど彼は、どうしようもないマゾヒストなのである。
 私にサディスティックな行為を要求してくるのである。
 夜が来れば、彼の歪んだ性癖が発露する。そんな姿はおくびにも出さず、彼は太陽の下で実直を演じている。
いや、演じているわけでは決してない。それも彼の真実の姿なのだ。だからこそ私は彼に惚れたのだ。だから
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 01:01:43.65 ID:JVjbz4bn0
さる。ところで、どっちのお題を誤使用で?
43マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) 3/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 01:02:30.17 ID:3tLqxy2u0
こそ、彼の変態的な欲求を甘んじて受け入れているのだ。私は決してサディストではない。私は彼と一緒にい
たいが為に、やりたくもないSM行為に身を投じているのだ。
「いいなー。私ホント喜多見先生の彼氏みたいな人ってタイプなんだー」
 全てを知ってもそう言えるのか。中西先生にはサドの気があるのだろうが、潤一が求めるソレはきっとあな
たの許容を超えている。それでもあなたはそう言えるのか。
 私は、言える。
 彼がどうしようもない変態マゾヒストであっても、それでも私は彼を愛している。どれだけ奇態な夜を過ご
しても、太陽が昇れば彼はこの上なく素晴らしい男性なのだから。
 お昼寝の時間は終わり、日も傾き始め、多くの子供達は親の元へと戻っていく。
 そして私もこの日はこの時間に退園した。家に帰る前にスーパーに寄り、夕食の食材を購入する。そして潤
一より先に帰った私は、二人分の夕飯の用意をした。
「ただいま。お、もうご飯できてるの?」
 丁度頃合いよく潤一が帰ってきた。
 二人で食卓を囲み、テレビを見ながら夕飯を食べた。食べ終わると彼はこう言った。
「片付けは俺がやるよ。先に風呂入ったら?」
 大して面白い番組もやってなかったので、彼の進言通り風呂に入ることにした。
 バスルームに行き、服を脱ぎ、シャワーを浴びる。シャワーが疲れを洗い流す。しかし同時に、なんとも言
えない不安が体に纏わりつく。そしてその不安の正体は、やはり彼なのだ。
 風呂から上がりキッチンに向かうと、そこではお皿が一枚割れていた。割れた皿の前では裸になった潤一が、
叱られる前の子供ような顔で正座していた。
「お母さん、ごめんなさい」
 予想通り、幕は上がった。
 私はヒステリックに彼の名前を叫ぶ。険しい形相を作り彼を睨め付ける。
 怯えた子供が肩を竦めていた。涙を目に溜め私を見上げていた。
 割れた磁器の破片を避けるようにして彼に近寄る。床に座る彼を見下ろす。そして、脚を振り上げ彼の肩あ
たりを蹴飛ばした。床に這い蹲った彼。その惨めな犬に命令する。
「片付けろ。今すぐ」
 はひッはひッ今すぐ片付けますッ、と彼は言う。裸で這い蹲って、破片を素手で拾い集める。その間に、私
はドライヤーで髪を乾かすことにした。
 しばらくすると、仕事を終えた彼が私の所へやってきた。
44マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) 4/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 01:03:11.23 ID:3tLqxy2u0
「お母さん、終わったよ」
 目を輝かせながら彼は言う。私はもう慣れてしまった。だから、このやるせなさを発散する術も心得ている。
 手にしていたドライヤーの送風口で彼の脇腹を殴った。彼はこうすることを要求している。だからこれが正
解なのだ。それ以外にこの状況を終わらせる手はない。
 脇腹を押さえた彼の眼には歓喜が宿っている。だから殴る。ドライヤーで何度も何度も身体を殴る。お母さ
んお母さんごめんなさいごめんなさい。謝りながら、みるみるうちに勃起する彼。そのペニスは、決して私の
中には入ってこない。
 彼は私とセックスをしない。過去に一度したきり二度としない。その時も、私が無理矢理迫ったのだ。彼は
その後吐いた。私とセックスをして吐いた。私とセックスをすることは、彼の世界を乱すことだったのだ。彼
は言った、母親とセックスをすることは倫理に反すると。マゾヒストが倫理を持ち出すなんて馬鹿げた話だと
は思ったが、それでも私はそれ以降彼とセックスをしていない。もちろん彼以外の人ともセックスをしていな
い。こんな男を愛してしまった以上、それは仕方のないことだったのだ。
「お母さん、やめて、お母さん、痛い」
 お母さん。彼の中のマゾが眼を覚ます時、私は彼の母親なのだそうだ。
 なぜ私が母親なのか。ある日の昼間、彼が通常の状態にある時にそれを問い質した。日中彼はあまり自分の
性癖についての話をすることを望まない。しかし日が沈めば、彼はまともな会話をしなくなる。だからその時
に口を割らせたのだ。
 彼は母親に虐待を受けて育った。彼の母は何かしらに理由をつけ、彼の身体を痛めつけていたのだそうだ。
虐待は彼が高校生の時、母親が死ぬまで続いた。父親にも友人にも誰にも言わずに虐待を受け入れていた彼は、
かなり早期のうちに痛みを快楽に変える術を身につけていた。そうすることで、身に降りかかる苦痛に対処し
ていたのだ。母親を無くし悲嘆に暮れた彼は、やがて母親以外の女性にも苦痛を強いられることを求めた。し
かし彼の眼には、暴力を振るう女性の姿が全て母親に見えたのだ。ただのマゾヒストならまだ良かったのだろ
う。しかし彼は同時に重度のマザーコンプレックスでもあったのだ。それ故に、女性は彼を受け入れない。ど
んなに美しい宝石であっても、たった一つの傷がその価値を貶める。そして彼の傷は、あまりにも大きすぎた。
 しかし、私は彼を受け入れてしまった。とてつもなく魅力的で、傷には眼を瞑ってしまったのだ。
「お母さんお母さんお母さんお母さんお母さん!」
 気が付けば彼は射精していた。今日は精液が身体に付くことはなかったので、シャワーを浴びなおす必要も
ない。ペニスがビクビクと痙攣している。射精を終えた直後のソレは、未だ逞しさを感じさせるほどに硬化し
ている。ソレを見つめる私の顔は、物欲しそうに見えるのだろう。毎日男の裸を見ながらも、私は一年以上セッ
クスをしていないのだから。その日の夜は、そこで閉じた。
45マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) 5/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 01:03:52.30 ID:3tLqxy2u0

 ある日のこと、私と斉藤先生は延長保育を任されていた。
 親に早く会いたいだろうに会えない子供達の寂しさを私達が取り払ってあげていた。もちろん私達は笑顔で
子供達の相手をしなければならない。日々マゾヒストを痛めつけている私だが、そんな自分は決して見せな
い。だけど、斉藤先生は浮かない顔をしていた。ぎこちない笑顔を無理矢理作っているのが私には解った。彼
は今日一日中ずっと、そんな顔をしていたのだ。
「先生、何かあったんですか?」
 子供達の帰りを全て見届けた後、私は斉藤先生に声をかけた。
「ん? いや、別に、何もないですよ? 僕はいつも通りです」
 嘘が下手ですねと言って、少しだけ微笑むと、斉藤先生も苦笑した。
 彼は溜息を一つついて語り始めた。ある程度予想していたことだが、中西先生とのことでの悩みだった。実
は、という切り口で中西先生と付き合っていることを告白した彼に、気付いてましたと返すとまたも苦笑した。
「どうもね、彼女、浮気しているみたいなんです」
 というのが悩みの原因だった。
 中西先生は奔放な性格をしており、浮気をしていると聞いても私は然程驚かなかった。対して斉藤先生はど
こか内気で気弱なところがあり、その差異が彼らを互いに惹きつけたのだろうか。
 斉藤先生は続ける。
「喜多見先生にこんな話をするのは、その、ちょっと気が引けるんですけど」
 ここ二ヶ月程、セックスをさせて貰えないそうだ。たかが二ヶ月で、と私は思ったがもちろん口には出さな
かった。それで疑念に駆られた彼は、こっそり中西先生の携帯電話の中を覗いたと言った。そしてそこには浮
気の証拠があったと、彼はそう言った。
「真紀には、何もまだ言ってません」
 いつの間にか下の名前で呼んでいる。
「勘違いならそれでいいんです。携帯を勝手に覗いたことを謝るだけです。でも、もし認められたりしたら」
 斉藤先生は情けない表情を作り、下を向いた。
「とりあえず、場所を移しましょうか。今日は私の驕りでいいですから」
 そして私は斉藤先生を連れ立って電車に乗り、歓楽街の居酒屋へと向かった。潤一に、ご飯はいらないとい
うことと、帰りが遅くなることをメールで伝えた。
 斉藤先生はすこぶる酒に弱かった。弱いくせに無理に飲んでいた。それでも大した量じゃない。
「僕ァね、実は真紀が初めての相手だったんですヨ。対して真紀は多くの男性と付き合ッてきた。そりゃネ、
46マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) 6/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 01:04:38.92 ID:3tLqxy2u0
比べられたら僕がエッチ下手なのは当たり前じゃないですか。でしョ? そうでしョ? それなのに真紀は」
 私は同僚の愚痴をずっと聞いてやっていた。
 店を出たころ、斉藤先生は真っ直ぐ歩けなかった。見ていて危なっかしいので私は肩を貸してあげた。
「ごめんなさい中西先生、ごめんなさいごめんなさいごめんごめん。僕ァ情けない男なんです」
 別に酒臭い息を吐いているわけでもないのに、彼はただの酔っ払いと化している。とても情けない、哀れな
男だ。潤一と比べるとその駄目さ加減が際立ってしまう。
 潤一と、いや。
 いや、一緒だ。潤一だって情けない。どうしもなく哀れだ。きっと斉藤先生以上に。彼はきっと今頃、餌を
与え忘れられた犬のような顔をしているのだろう。私が遅く帰る日、また帰らない日の次の朝はいつもそんな
顔をしているのだ。
「ごめんなさい先生。もう大丈夫ですから。ちゃんと帰れますから」
 本当に帰れるのだろうか。甚だ心許ない。
「無理しちゃ駄目ですよ斉藤先生。ちょっと」
 ちょっと休憩していきましょうか。
 私も少し酔っている。それは、自分への言い訳だ。そして私達はラブホテルの一室に入っていった。

「喜多見先生、喜多見先生、喜多見先生」
 斉藤先生が私の名を呼ぶ。ぎこちなく腰を振りながら。
 私にとって久しぶりのセックス。だが彼はセックスが下手だった。浮気したくなる中西先生の気持ちも解る。
 体勢を変え私が上になった。自分で自分が気持ちいいように腰をくねらせる。思わず声が漏れてしまう。
「先生、喜多見先生! 気持ち、いい、です」
 私の下で斉藤先生が悶えている。そして。出る、出ます。
 呆気なく果ててしまった。
 あまりに味気のないセックスだった。いや、元々セックスなんてこんなものだったのかもしれない。
 その後は各々別にシャワーを浴び、斉藤先生の酔いもかなりマシになっていたのでホテルを出た。電車に乗
り、家を目指す。帰り道、二人の間に会話はほとんどなかった。保育園の最寄駅で私は降りる。斉藤先生は、
さらに何駅か行ったところに住んでいるので、ここで別れた。
「じゃあまた明日」
 と私が言うと、斉藤先生は気まずそうに曖昧な返事を寄越した。罪の意識でも感じているのだろう。それは
中西先生とお互い様だと言うのに。
47マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) 7/7 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 01:05:30.37 ID:3tLqxy2u0
 駅からしばらく行くと家に着く。家に着きリビングに向かうと、自らを首輪で繋いだ情けない男がそこにい
た。裸の潤一がそこにいた。待ってましたと言わんばかりに破顔する。今日も私に要求する。虐めてくれと懇
願する。そして私もそれに答えた。
 近くにあったテレビのリモコンで彼の尻を叩く。首輪の鎖を引っ張り苦しめる。勃起したペニスに爪を立て
る。そして彼は声を出す。ごめんなさいと許しを請う。涙を流し、涎を垂らし、喜びに身悶えする。哀れな犬
を、無感動に痛めつける。
 そして私は気が付いた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 私は、そしてあなたは思い違いをしている。
 私。私こそがマゾなのだ。
「許して許して許して」
 確かに痛めつけているのは私だ。虐げられているのは彼だ。
 首輪をつけられているのは彼だ。鎖を引っ張っているのは私だ。
「ごめんなさいもうしません。だから、ねえ」
 だけど、飼われているのは私で、飼い主は彼なのだろう。
 私は彼の要求を全て受け入れる。拒まず彼を痛めつける。それが、私の意に反したことにも関わらず。
 命令されているのは私だ。首輪をつながれているのは私だ。サディストの真似事をしたマゾヒスト、それが
私の本質なのだ。そして彼は、己をマゾヒストと思い込んでいるサディストなのだ。
「どうして? ねえ、もう許して」
 私が彼から離れられないのも。
「僕いい子になるから」
 彼を愛しているからではなく。
「ちゃんといいつけ守るから、ねえ」
 彼に飼いならされていたいから。
「お母さん」
 そして今日も、私は彼の母となる。あなたがそれを望むから。
 あなたがオアズケするからだ。私は他所のゴハンを勝手に食べた。けれどそれじゃあ全然足りない。
 ねえ、あなた。いいえご主人様。お願いだから、私を犯して。

<了>
48 ◆Lq1ieHiNSw :2010/05/02(日) 01:06:31.84 ID:3tLqxy2u0
以上です。初めお題明記するの忘れてました。ごめんなさい。
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 01:08:22.64 ID:nHmlUDEq0
テスト
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 01:10:21.37 ID:U/jG8pNNO
おお、投下おつ。よかったぜトップバッター免れた。
じゃあ俺も品評会投下します

《使ったお題》性的倒錯
《題名》白骨と少女 全5レス
51白骨と少女(お題:性的倒錯) 1/5  ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/02(日) 01:13:35.78 ID:U/jG8pNNO
 それはいつもの様に新聞紙を読んでいる時だった。ふいに、女性の骨壺が相次いで盗難されるという、二面に載っていた小さな記事が目に入ってきた。
 その変質的な事件が起きたのは富山県東部の墓地で、女性の骨壺ばかりを狙った、どこか狂気じみた盗難事件だった。
 犯行を示す『もらった』と書かれたメモや、骨壺の仏に対して宛てた手紙からも犯人は精神になんらかの欠落を持ち合わせているようだ。
 この事件の犯人である彼(あるいは彼女)は、一体どのような気持ちで持って、犯行に及んだのだろう。
 もし骨そのものに性的興奮を覚え、その欲望からくる窃盗なのだとしたら。このわたしに彼を非難する権利はないと言えた。
 事件のあらましとは違う、わたしの心にある、決して忘れる事のできない、整理できないある思い出のために。

 わたしは子どものころ、不注意で大きな穴に落ちてしまった事がある。
 穴は近所の割と閑散とした平地の森、奥にあった深さ二メートルぐらいのポッカリ開いた物だった。
 夏休みの朝方、昆虫採集をしようとカゴと虫とり網を手に、森の中を歩きまわっていた時の事。
 意識を集中させ、木の幹を見上げながら進んでいると、ある地点でわたしの足があるはずの地面を踏めずに落ちた。
 支えのなくなったわたしの体は、木こりに切り倒されたすぎの木の様にゆっくりと倒れ、そのまま穴の中に落ちていった。
 その穴はかなり深かった。が、わたしの体にはどこもケガはなかった。もちろんすぐに穴を出ようとした。
 ところが穴の上まではジャンプしても手が届かないほど高かったのだ。しかも周囲の土はひどくもろく、手を掛けて登る事ができなかった。
 幾度目かの失敗の後、わたしは仕方なく諦めその場に腰を下ろした。せわしなく鳴くセミの声が穴の中にまで響いていた。
 中は日が届かないため薄暗く、空気は湿りしっとりと何かが朽ちたような湿っぽい香りがした。
 朽ちた木が腐っているのだろうか、それにしてはどこか落ち着かない匂いで、鼻腔全体を被う様にまとわりついてくる。
 周囲の暗さにやっと目が慣れてきた頃、ふと何かが視界にはっきり入ってきた。わたしはみっともなく悲鳴を上げていた。
 骨だった。割と大型の犬の白骨死体。すでにその肉は剥げ、内臓も抜け落ちてしまっている。
 間違って切り取られた余白じみて白い、ひどく現実味のない白骨死体には、何かしら人を不安にさせるのに充分な不気味さがあった。
 顔に穿つ虚ろな目の窪みは、漆黒の闇を湛え天を仰いでいる。わたしはますますこの場から抜け出すことを強く願い、幾度となく神頼みをしていた。
 やがて三十分後、穴の近くを通る誰かの足音が聞こえてきた。わたしは急いで声をあげ助けを求めた。
 穴の中に響いた声は、それが自分の物だとは思えないほど反響していた。しばらく後、頭上からこちらを伺う様な声が聞こえてきた。
「大丈夫?」
 その久しぶりに聞いた人の声に、死ぬほど心細く縮み上がったわたしの心は染み渡るように暖かく広がっていった。
 しばらくは安堵で息が苦しいほどだった。
「助かった!ねえ助けて!ここから出られなくなっちゃったんだ」
 すると声の持ち主が穴の淵からすっと顔を覗かせた。
 少女だった。同い年くらいだろうか。長い髪が穴に落ちる様に垂れている。
 少女の目がキョロキョロと覗き込み、穴の中を忙しく探索している。
52白骨と少女(お題:性的倒錯) 2/5  ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/02(日) 01:15:41.67 ID:U/jG8pNNO
「ふーん、ねぇ中は暗い?」
「ん、外よりは暗い。ねえ、それより……」
 助けてと言おうとしたところで、上から少女の手が伸びてきた。わたしはその手に必死でしがみつき、なんとか壁をよじ登った。
 足の下でぼろぼろと壁が崩れ落ちる中、少女の手に支えられなんとか穴を脱出できた。視界が開け、森の緑の木々が見えた。
「ありがとう、ホント助かったよ」
「いい、いい。それよりあんな穴の中で何してたの?」
 少女は飽き足らず穴を興味深そうに見つめている。わたしは土を払う手を止めて、照れ臭さで笑いながら、落ちた訳を説明した。
「違うんだ、樹液に集まるかぶと虫やクワガタを取りに来てたんだ。それで幹を見ながら歩いてたら、ずっこけちゃって穴の中にドテっと」
「ふーん」
「怖かったよ。このまま誰も来てくれないんじゃないかって。穴の中には骨みたいのがあるしさ」
「骨?」
 少女が怖えた様に声をあげる。自分が骨を見た時の恐怖が、強く相手に伝わった気がした。
 その事でなんだか気がよくなり、ついつい大げさに身をよじらせてしまった。
「うん、穴の底に犬かなんかの骨があるんだ。もう完全に白骨死体。ううーっ、怖かったー」
 すると少女はどこか熱に浮かされた様な朧気な表情を浮かべ、穴を見つめ始めた。
「……見たい。ねぇ、わたしも穴の中に入れないかな」

 それから十分後。わたしたちは長めのロープを太い幹にくくり付けて垂らし、再び穴の底に降りていた。
 このロープのおかげで、多少ふらつくが問題なく下までたどり着く事ができた。わたしがつくより先に、少女は先に降りて穴の底にしゃがみこんでいた。
 小さな膝を抱えるようにして、少女は件の白骨を、無言で食い入る様に見つめている。
 彼女の様子がよくある様なお化け屋敷のノリではない事に、わたしは少し戸惑ってしまった。
「どう?怖くない?」
「ううん。白くて綺麗」
 彼女は嬉しそうに微笑んで答える。それはまるで花がそうであるかの様に、その骨の美しさを自然に褒め讃えていた。
 彼女の手前怖がるわけにもいかなかったが、わたしはどうも腑に落ちなかった。
 なぜなら彼女にそう言われて改めて骨を見てみると、どこかその余白が清潔さに見えてきたのだ。目をこすってみたが何も変わらなかった。
 とりあえず落ち着こうとしゃがみ込んだ。するとそこに彼女の顔があった。それは息がかかるほどの近しい距離だった。
「これって死んでからどのくらい経ってるのかな」
「さぁ? 一ヶ月とか?」
 その当時のわたしには、死体が白骨化するまでどれくらい掛かるかなど、さっぱり見当もつかない問題だった。
53白骨と少女(お題:性的倒錯) 2/5  ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/02(日) 01:17:44.26 ID:U/jG8pNNO
「綺麗だね……」
 彼女の言葉にわたしはまだ綺麗とはいえずに、『そう』とか『よかったね』と曖昧な相づちを打っていたと思う。

 次の日も、そのまた次の日も、わたしは森に足を向けた。ただしその目的は虫を取りに行く事から、穴を見に行く事に移り変わっていた。
 時間によってまちまちだが、かなりの確率で少女はいた。彼女はそこにしゃがみ込み、ただ骨をじっと見つめている。
 わたしは彼女の隣にいき、少しの間だけ喋る。彼女は黙って聞いている。
 その内二人とも黙ってしまう。あとは長い間ただ見つめているだけだ。白くて脆く危ういあの骨を、見つめて過ごした。

「ねぇ、この子ひとりで寂しくないのかな?」
 ある日わたしはなんの気なしにその事を口にしてみた。すると彼女は困ったように何も答えなかった。
 そしてそれは、その明くる日の事だった。彼女がいきなりわたしをある一軒家まで引っ張っていったのだ。
 そのまま無言で、軒先でスコップ手渡たされた。その意味は、どうやらここを掘れという事らしい。
「まさか……」
 嫌な予感がした。『大判小判がざっくざく』ではない事は確かだ。何かは分からないが、とにかく嫌な予感がしていた。
 彼女は微笑む。頷いて、わたしに紹介する。
「あの子の新しい友達。一ヶ月前に死んだ猫のミーちゃん」
 死体だ。前の日そんな趣旨の事を言ったのはわたしだ。だが果たしてそれはやっていい事なのだろうか。
 子供ながらの道徳心が働いた、というよりは、親に烈火の如く叱られる様なそんな気がしてならなかったのだ。
 子供の頃、死やそれに纏わるその他の事は、雰囲気的にでさえ侵してはならない、強固な絶対領域であった。
 だがそんな葛藤とは裏腹に、彼女の真剣な眼差しに押し流される様にして、わたしはその小さな墓標の下の土をざくざくと掘り返していた。
 それはただ単純に彼女に対して、精一杯格好付けたかったというそれだけの事なのだろう。
 無言で約三十センチほど掘り進めてみたところ、土のしたに埋葬物が、ブチ色の毛並みが段々と見えてきた。
 そこからは傷をつけないよう慎重に慎重に、周りの土を掬っていく。すると、辺りに一気に強烈な腐敗臭が立ち上り始めた。
 その匂いは生き物としては絶対に嗅いではいけない、脳が苛烈に拒否反応を起こす類いの、そんな匂いだった。
 咳き込みながらなるべく鼻で息をしない様に気を付け作業を続ける。
 ただし匂いは強烈だったが、その猫の死体はそれ自体にはまだほとんど目に見える変化がなかった。
「あれ? 全然変わってないね」
 わたしはひどく拍子抜けした気分になり、猫の死体の上に残った土をぱっと軽く払った。
 嫌な感触がした。皮膚に、変に張りがないのだ。払った部分が形もなくもろく崩れさってしまった。
 その時、崩れた毛皮の下で何かがが動いているのが見えた。ずるりとめくれた皮膚の一部から、白く波打つ大量の蛆が出てきた。
54白骨と少女(お題:性的倒錯) 4/5  ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/02(日) 01:19:03.51 ID:U/jG8pNNO
「お……え」
 わたしは限界に達し、胃のなかの全てを吐き出していた。
 彼女は死体をビニール袋に入れ、大事そうに持ち運んだ。来たときと同じように玄関を通らず、塀の横から通り抜ける。
 その様子から、もしかしたらここは他人の家なのかもしれない、そう思った。でもその事を詳しく聞く勇気と気力はすでになかった。
 森の穴に到着すると、彼女は死体をそっと取出し、白骨死体の真横に安置した。 穴の中には一気に腐った匂いが立ちこめた。
 でも彼女の様子はとても満足そうな物だった。何度か大きくうなずき、ありがとうと言いながらわたしに体を預け、ぎゅっと抱きついてきた。
 わたしは、そのまま動けなかった。しばらくは呆然となり、彼女の、なすがままになっていた。
 しばらくして、彼女はゆっくりと、抱きついてきた時とは反対に、ひどくゆっくりとした動作で体を離した。
 その時、わたしの中で何かが弾けそうになった。幼いわたしはその正体が分からないため、ひどく切ない切迫感で一杯になり、手をこまねいていた。
 彼女はそんなわたしの手を握りながら、死体をじっくりと眺めている。そしてわたしは、それでもわたしは、あの日のあれは、たぶん恋だった。

 わたしたちはシロ(最初の白骨死体)に、その後も何体かの新しい友達を紹介する事にした。
 ただしあまりにも死体その物の絶対数が少なく、また探す伝手もないため、数の方はなかなか増えていかなかった。
 ただ彼女はその事に関してはあまり気にしていない様子だった。
「死んでしまうと体はこうやって、段々と消えてなくなっていくのね。あまり恐くないから驚いたわ」
 穴の中で横たわる仲間を見ながら、彼女は自分の新しい発見を、しみじみと口にしていた。
「まぁ確かにドロドロになったり虫が湧いたりするのは、かなりぞっとしないけれどね。でも骨になっちゃえば綺麗な物じゃない」
 そしてわたしはただ何となくそれを聞いていた。彼女もわたしに対して、特にはっきりとした同意を求めている訳ではなさそうだった。
 穴の中での時間の流れ方はまるで、ゆっくりと進む河川敷の下流の様だった。流れ方自体は遅く感じるのに、ふと気づくとかなり経っていたりした。
 その流れの中で、ときたま彼女の声だけが、木の葉の様に静かに浮かび上がってくる。
「知ってた?日本では人が死ぬとね……焼いちゃうの。一気に骨なんだよ。あれだね、死ぬってつくづく驚異的だよね」
 会話もどこか流動的で、頼りなかった。そこでは、彼女の手の温もりだけが、実感できる全ての要素だった。

 ある日、いつもの様に二人で穴に向かうと、突然穴が埋め立てられていた。
 側に土地の私的利用を禁止するの注意書きが掲げられ、その他は跡形もなく埋められ平地にならされていた。
 それを見た瞬間、わたしは自分の頭からマグマが吹き出すのではないかと思う程、怒り狂ってしまった。
 なんて勝手な事をするのだろう、大人の理不尽さに目を白黒させてがなり立てていた。
 だが反対に、彼女の方はひどく冷静だった。そうなる事がわかっていた様に、静かに受け入れた。
「仕方ないよ。あそこはシロたちのお墓になったんだ。それでいいんだよ」
 一人釈然としないまま、わたしたちはその穴という特殊な場所を失った。
55白骨と少女(お題:性的倒錯) 4/5  ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/02(日) 01:19:59.28 ID:U/jG8pNNO
 それから一週間後、彼女が死んだ。
 僕がその事を知ったのは彼女の親から届いた葬式の案内状からだ。
 彼女はあの微笑みを浮かべて、写真に納まっていた。そのすべてがモノクロだった。
 わたしは葬式で始めて彼女の両親と会った。彼らはわたしを知っていた。
 彼らが話してくれた、彼女はずっと不治の病を患っていたという。彼女には伏せていたが、それとなく彼女は悟っていた。
 それでも最近明るくなっていた事。そして彼女の口から出た、わたしの名前とシロという犬の名前。
 あの夏、あの日あの場所で、わたしは彼女と出合った。そして同時に永遠に、そのどちらも失う事しかできなった。

 そしていまわたしの手には、彼女の骨がある。これは彼女の手の骨の一部だ。
 わたしは、いまでも彼女の事を思い出す。この骨を愛して止まない。
 彼女の骨を愛し求めている。恋愛感情を持って接していて、性的興奮すら覚えている。わたしはおかしいだろう。
 そしてあれは初恋だった。わたしにとって、かけがえのない恋だった。

《終わり》
56 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/02(日) 01:24:21.29 ID:U/jG8pNNO
投下終了しました。

途中の名前欄、レスNo.ミスってるけど、本文は投下した通りで合ってます。
紛らわしくてすいませんでした。
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 01:37:45.76 ID:+ZcRqZoL0
・マゾヒストが犬を飼う
サディスト=奉仕者というのはありふれたテーマ。だけど手探りで書いている感じが良かった

・白骨と少女
静謐で美しいけど、主人公が彼女の遺骨を手に入れる描写があれば
さらに印象的になったと思う
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 01:48:41.14 ID:6BQTIZKv0
お題prz
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 02:15:07.57 ID:JKqSAynv0
>>58
カゲロウ
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 03:10:30.31 ID:+ZcRqZoL0
ほす
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 03:14:43.21 ID:3tLqxy2u0
多分大半の人が性的倒錯で書くんだろうな。
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 03:19:11.51 ID:G0+wfZkk0
僕も性的倒錯で書いてるけど、なんか全然面白く無いから今週諦めようかって思ってる!
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 04:13:38.13 ID:CyUT5a+m0
>>35
「文章が上手い」というのは褒め言葉じゃないんだが
64 ◆F00SERh74E :2010/05/02(日) 05:22:17.16 ID:1RLN69/c0
徹夜とか……初めてしたし……。死ぬし……。
品評会投下します。
65ゑひもせす(お題:性的倒錯)1/5 ◆F00SERh74E :2010/05/02(日) 05:23:37.12 ID:1RLN69/c0
 アサキの部屋にある娯楽といえば、スーファミくらいのものである。漫画や雑誌の類はなく、書棚
に並ぶのは訳のわからぬ中途半端に古臭い、それも名作とは言いがたい海外小説ばかりだ。オーディ
オ機器もない。ビデオ、DVD、ブルーレイその他の映像機器を期待するのが間違いで、おまけに42イン
チのアナログテレビは去年の七月をもって写るのをやめた(今は2012年の5月である。ついでに言えば、
夜の8時過ぎである)。
 僕とアサキは三色コードを哀れなアナログテレビに正しく繋いでやり、ナイーブな二十年モノの電
源コードを注意深くプラグに差して、レトロなゲームに興じていた。『がんばれゴエモン〜ゆき姫救
出絵巻〜』。アサキが実家から本体といっしょに持ってきたいくつかのソフトは、これもまた訳のわ
からぬものばかりだった。ほとんどがややこしい英語名だったり、あやしげなマモノの絵が描いてあ
ったりする、見るからにC級タイトルだった。ゴエモンが一番まともだった。アサキが1コンでゴエ
モンを操作し、僕が2Pキャラのエビス丸を動かす。笛やヨーヨーや手裏剣や小判投げを駆使して、浪
人やらひょっとこやらおたふくやらを薙ぎ倒しながら進むのだ。そしていつも六面のボスで詰まって
やめる。
 僕は地べたに座ってコントローラーを握っている。アサキの定位置はベッドの上。彼女はいつも膝
を立てて座るので、僕が何気なく横を向けば、捲れ上がったスカートの中に形の良いふとももと、か
わいい下着を拝むことができた。
 僕とアサキは初々しいカップルよろしくきゃあきゃあとはしゃぎながらゲームを進めた。彼女は敵
を殴りつけるたびにとうっ、だのてやっ、だの声を発し、僕が3体のひょっとこを一撃でやっつけた
時などは二人して大いに笑った。そして奮戦むなしく六面のボスに負けた。
 ふうっと息を吐いて、アサキはベッドの上で倒れ込んだ。
「なんだか疲れちゃった」
「そろそろやめるか」
 僕は立ち上がってスーファミを片付けにかかった。僕がコード類をまとめカセットを収めている間、
彼女は唸りながらごろりと転がり、僕の方を上目使いにみていた。顔は上気して、うっすらと赤みが
かっていた。なんと無防備なのだろう。だが僕が彼女に襲いかかったりすることはない。そのあたり
が僕らと初々しいカップルの決定的な違いである。アサキは清純にして聖純。だから僕はここにいる。
そして僕は草すら食わない。
66ゑひもせす(お題:性的倒錯)2/5 ◆F00SERh74E :2010/05/02(日) 05:24:31.93 ID:1RLN69/c0
 ひとり台所へと向かって、二人分の食器を手際よく洗った。
「ありがと。ねえ、冷蔵庫にお酒があるよ。今日は飲んでいきなよ」
 腹這いから上半身を持ち上げたかっこうでアサキが言った。思わせ振りな鎖骨の奥に色の薄い果実
が覘き、その先端までが見えそうだった。
   街にざくろの乳首したトルコ娘がいれば/私は大金を費やして購った
「悪いけど、もう帰るよ」
 ルダキーの詩を引用して誤魔化して、僕は言った。ここで酔うわけにはいかない。
「ええー。つれないなあ」
 とアサキは抗議したけれど、僕がひらひらと手を振って別れの合図をすると、
「うん、バイバイ」
 と素直に引き下がった。

 玄関から出て隣の部屋の前を通り過ぎるのと同時に、背後で扉がガチャリと開いた。振り返ってみ
ると、半開きのドアから大きなカエルの顔が覘いていた。それは不適な笑みを浮かべた女の顔だった。
 カエルはガチャリと扉を開けた姿勢のまま黙って僕を見ていた。外出しようとしたら僕に出くわし
てびっくりした、という様子ではないことだけは確かだった。僕はカエル子と名前をつけた。
「あなた、とても静かにやるのね」
 たっぷりとした沈黙の後、わざとらしい声でカエル子がいった。
「何を言っているんですか」
 と僕は言ったが、なんとなく話は見えていた。
「あなたたちみたいな若い二人が集まってやることといえば一つしかないわ。でも、いくら感度を上
げても音が拾えないんだもの。嫌になるわ」
 表札には霧島という苗字が書いてあった。霧島カエル子。いい名前じゃないか。
「壁にコップでもあてていたんですか」
「そんなんじゃないわよ。壁にボウルみたいな電子集音器をくっつけて、コードにつないでパソコン
で処理するの。二十一世紀の出歯亀をナメないで」
 (光の加減で)緑色の顔を膨らませて、カエル子はげこりと笑った。
「申し訳ないですが、僕とアサキはあなたの期待するようなことは何もしていませんよ」
67ゑひもせす(お題:性的倒錯)3/5 ◆F00SERh74E :2010/05/02(日) 05:25:26.92 ID:1RLN69/c0
 僕がそう言うと、カエル子はげろげろと笑い出した。
「や、や、ひい、やってないですって。嘘、ひ、おっしゃい。げほっ。恥ずかしがらなくてもいいの
よ、かわいい坊や」
「そう言われましてもね、ないものをあるとは言えないんですよ。この際だから言っておきますが、
僕はゲイでバイでその上インポなんです」
「ゲイバイインポ……」
 カエル子は顔をひきつらせて絶句した。
 僕が踵を返して歩き去ろうとした時だった。
「受けなのね」
「え?」
 振り返ると粘膜に覆われた目をにぶく光らせたカエル子の顔があった。
「ゲイでインポってことは受けなんでしょ? ねえ、その話もっと聞かせて。私、他人のヘテロも好
きなんだけど、ホモやアブノーマルにはもっと興味があるの。バイでインポってどういうこと?」
 僕は本気で気分を害し、逃げるように立ち去った。

「あっはっはっは。それは災難だったね」
 僕の話を聞いたヒロミは無邪気に笑った。
 カウンターのグラスを口に持ってくる。アルコール度数は低い。隣に腰掛けたヒロミを相手に話す
ことで、僕の気も幾分晴れていた。
「俺は本当にゲイでバイでインポなんだろうか」
「あは、そんなの私にわかるわけないじゃん」
 屈託なく笑い飛ばしてくれるヒロミに、僕は実際救われている。
「でも、ゲイバーに入り浸ってるくらいだから、わからないよねえ」
 ヒロミは小ざっぱりとしたボーイッシュなゲイボーイだった。彼、いや彼女、の、同僚達が皆髪を
やけに伸ばしたり大げさなマスカラをつけていたりわざとらしいスカートを身に着けていたりする中
で、ヒロミはショートヘアに女物のシャツとジーンズにあっさりとした上着を合わせた出で立ちだっ
た。そしてヒロミは店の誰よりもきれいだった。
「もしもゲイだったとしても、ケンちゃん(僕はここではそう呼ばれていた)店でやっていけるくら
68ゑひもせす(お題:性的倒錯)4/5 ◆F00SERh74E :2010/05/02(日) 05:26:12.20 ID:1RLN69/c0
い綺麗な顔してるから安心したまえー」
「ばかなこというなよ」
 僕たちは笑った。笑いが収まった後に間ができた。
「んー? なんだか調子悪いなあ。もしかして本当に悩んでるとか?」
「さあね。そうかもしれない」
「ふむ」
 ヒロミは黙ってその大きな目で僕をじっと見据えた。
「ケンちゃん、こんな店で働く私達も、似たような悩みを持っていないわけじゃないよ。マチコだ
ってゴスロリのミチルだってそう。ヨーコさんは……微妙だけど。とにかく、そういうのってみんな
多かれ少なかれ抱えてる。私達みたいじゃない、普通の人だってそうだと思うよ」
 僕は耳に流れる心地よいボーイソプラノを聞きながら、静かにアルコールを口に含んだ。
「でも、私達は自分の意思で選んだんだよ。大事なのは有り様さ。ケンちゃんが健全な男の子になる
のも、そのまま断食系ラマダーン男子を続けるのも、はたまたダークサイドに堕ちるのも、一つの有
り様だ。ゆっくり選べばいいんだよ」
 ヒロミはじっと僕の目を見ていた。ヒロミの水晶のように澄んだ目に僕は魅入っていた。
「ダークサイドの自覚はあったんだな」
 僕がそう言うと、ヒロミはちょっと驚いたような顔をした。僕はその顔を引き寄せてキスをした。
「お客さん、おさわりはダメよ」
 ヒロミがおどけて言った。
 僕は席を立った。ケンちゃん、お勘定ー。ヒロミが明るい声で言った。

 曇りの日、僕はあるいてアサキの家に向かった。手に下げた袋には、中古屋で手に入れたマリオカー
トとボンバーマンが入っていた。いつまでもゴエモンはつらい。
 目的地の一軒手前で、忌まわしき扉が死の宣告のように開いた。僕は無視して通り過ぎようとした。
「ぼく、いいもの聞かせてあげようか」
「いらない」
69ゑひもせす(お題:性的倒錯)5/5 ◆F00SERh74E :2010/05/02(日) 05:27:48.49 ID:1RLN69/c0
 そう、僕はこの時、なりふり構わずアサキの部屋に飛び込んでしまえばよかったのだ。「どうした
の」とアサキが心配そうに訊ねて、僕は「突然変異の両生類に出くわしちゃってね。大丈夫、何とも
ないよ」と応えればよかったのだ。
 そうすれば僕はカエル子のICプレイヤーの放つピンク色の天使の囁きを聞かずに済んだのに。
 僕は呆然として立っていた。
「ずいぶん前に録ったものよ。安心して。この3人目の相手とももう切れてるみたいだから」
 雨が降り出したのかと思った。カエル子があまりにもゲロゲロと鳴くものだから。
 水のない所にカエルは巣を作らずというのを格言の列に並べよう。

「どうしたの」
「大丈夫。何とも、うん、何ともないよ」
 アサキは不思議そうに僕を見て、僕の下げた袋に目を留めた。
「プレゼントだ。今日はこれをやろう」
「やった。ありがとう。うれしいよ」
 僕たちはファミコンの準備をして、僕は地べたに、アサキはベッドの上に座った。アサキのスカー
トの中に下着はなかった。僕は猛烈にヒロミに会いたくなったし、一方でそこから目を離すこともで
きなかった。
 電源スイッチを入れても、赤いランプは点かなかった。何度やっても同じだった。
「ありゃ、ついに壊れちゃったのかな」
 アサキが言った。
 二十年モノの電源コードはつながらなくなってしまった。

70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 05:29:02.73 ID:1RLN69/c0
投下おわり
あーしにそ
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 05:34:04.86 ID:1RLN69/c0
No.03 ゑひもせす(お題:性的倒錯)5/5 ◆F00SERh74E
セルフで完了
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 07:33:35.04 ID:JKqSAynv0
うおおおお保守
今回こそは時間外脱出する!
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 08:36:51.17 ID:z0TZ64wL0
いってきます
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 09:47:03.91 ID:1RLN69/c0
保守でい
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 11:11:56.05 ID:1L3vMmm/0
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 11:40:19.80 ID:1RLN69/c0
ほし
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 12:01:28.14 ID:ss0hG6/Z0
ここにラノベ臭い作品投下するのは何となくお門違いな気がする
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 12:39:40.06 ID:G0+wfZkk0
もう……諦めた、ごめん……みんな……
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 13:04:19.79 ID:1L3vMmm/0
>>78
諦めるなよ!!諦めるなお前!!
どうしてやめるんだ!!そこで!!
もう少し頑張ってみろよ!!駄目駄目駄目駄目諦めたら!!
80 ◆iCtTUGkd7k :2010/05/02(日) 13:16:25.15 ID:N7QJhLUy0
品評会投稿します
てかトリなんぞ初めてつけるからこれでいいのかよく分からん
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 13:17:09.46 ID:1RLN69/c0
修造はん……
82日曜日はゴミ袋を持って(お題:性的倒錯)1/4 ◆iCtTUGkd7k :2010/05/02(日) 13:20:26.53 ID:N7QJhLUy0
 彼女はどこまでも美しい人であった。
 その若い肌は陽光のように白く、化粧もせずとも頬は淡く染まり、しなやかな手足が揺れる
姿が、まるで世間の風雨を耐え忍ぶ白百合のようであった。
 彼女は何物にも染まらず、寄せ付けず、気高き獅子のようにその背筋をぴんと伸ばし、ただ
前だけを向いて歩いていた。
 本当に、美しい人だと思った。だから今、彼女の側に居られる事は、都合の良い夢ではない
かとも思っていた。
 彼女がその美しい腕をくねらせ、椅子に座ったこの体を舐めるように触れる。
 その手付きは決していやらしくなく、けれども余す所なく味わうようにして触れる。
 そんな私達を、無数の黒が、見つめていた。
 四角い部屋の隅中に、腕や足や首や胴が散らばっていたのだ。
 だがそれは生身の人間の物ではなく、ショーウィンドウのマネキンから玩具売り場にあるよ
うな着せ替え人形まで、ありとあらゆるヒトガタの偶像であった。
 この光景を客観的にみれば、酷く奇妙で不気味であったに違いない。
 数多の人形に埋め尽くされた部屋と、その中で一人座る私と、その私だけを愛でている女。
 こんな奇妙な部屋の一部になった経緯は、正直言って覚えていない。
 ただ、彼女が私を見て「欲しい」と呟いた唇は、今でも夢に出てくるほど鮮明に焼き付いて
いる。
「今日はね、学校で数学を習ったの」
 彼女が呟く。私は答えない。
「ね、だから私、言ってやったの。アナタには興味無いです、って」
 彼女が見つめる。私はただぼんやりと、虚空を見つめ、ふと思い出したように瞬きをした。
 彼女の部屋に居る間、私は一切を面に出してはいけなかった。それは私が彼女の部屋に居る
為の唯一のルールだった。
 このヒトガタに埋もれた部屋で、毎週日曜日の十七時から十九時までの二時間、私は彼女の
人形としてのみ、存在を許されていた。
83日曜日はゴミ袋を持って(お題:性的倒錯)2/4 ◆iCtTUGkd7k :2010/05/02(日) 13:22:16.47 ID:N7QJhLUy0
 そうして夜、私は真っ暗な我が家に帰る。母と二人暮らしだが、もっぱら仕事に出ている為
、私は独りで夕食を済ます事が多い。
 冷蔵庫にある加熱する必要のない物と、母が朝作りおきしてくれた総物を食べる。その間、
私は彼女との時間を反芻する。 
 もぐもぐ、ごっくん。
 記憶とご飯が混じりあって、味の分からない何かが、私の体を満たした。
 それから私は、暗い廊下にある電話に向かい、明滅を繰り返す緑色のボタンを押し込む。
 メッセージハイッケンデス。
 ピー
 ママダケドレイゾウコノオカズハチンシテタベルノヨソウソウモウアノオトコハシラナイヒ
トダカラネモウアソコヘハ、
 ピー
 変換して。
 ママだけドレイ象この岡豆八んしてたベルの世そウソうも雨あのお床は申白ないひ戸だから
根毛あそこへは、
 結局訳が分からなかったから、何も考えない事にして風呂に入った。そうして私の日曜日が
終わり、また繰り返された。

 そしてまた日曜の夕方、月曜回収の生ゴミを出した後、私は彼女の元へ向かう。彼女の家の
玄関の前には、回収指定外の黒いゴミ袋が置いてあった。
 中身は気にすべきではないし、知る気はさらさらなかった。私は玄関のチャイムを鳴らし、
返事を待つ間、側にあるガレージの車の中に何か潜んではいないかと目を凝らした。
 もちろんそこには何もなく、埃を被ったフロントガラスが、光を反射することなくあったの
みだった。
「はい」
「すみません、松田人形店ですが、ご注文の品を届けに参りました」
 返事はなく、代わりに玄関の扉が開かれた。
 ふと、中から出て来た彼女の顔を見つめる。出会った頃からいったいどれほどの時間が経っ
たのだろうか。
84日曜日はゴミ袋を持って(お題:性的倒錯)3/4 ◆iCtTUGkd7k :2010/05/02(日) 13:23:20.83 ID:N7QJhLUy0
 美しかった肌には僅かに皺が宿り、その肢体は緩み始めていた。月日はどこまでも残酷に、
彼女を食らいつくしていたのだった。
「入って」
 その言葉を合図に、私は人形へと成り上がる。無機質に、何も考えない人形に。
 出会った頃よりも人形の増えた部屋へ入ると、中の住人がこちらを睨んでいるように錯覚し
た。
 定位置の椅子に座ると、何時ものように虚空を見つめる。彼女が愛でるのを待つ為に。
 後方で鍵の閉まる音がして、首筋に腕が這わされる。さらに滑り落ち胸元へ到着し、体の中
心部に手を当てた。
 人形とは違い、そこは生命を感じさせるようにドク、ドクと波打つ。この音が続く限り、私
が彼女から真に愛されることはないのかもしれない。
 私は知っている。
 私が居ないとき、彼女が人形と何をしているのかを。この奇妙な部屋で、一体何が行われて
いるのかを。
 かち合った人形の瞳が、私を見て嘲笑う。
 私はそれに、口角をわずかに上げて答えた。
 そら、今に見ていろ、この部屋の住民どもよ。今日は革命の時なのだ。私だけが、彼女を独
占する記念すべき日なのだ。せいぜいそこで眺めているがいい。
 忌々しい鼓動がわずかに早くなり、私を急かした。  
「今日はとっても嫌な事があったの」
 彼女が話し始める。何度も聞いた声だけが、あの時のままで愛おしかった。
 このまま聴き続けてしまいたい。けれども今日は革命の日なのだ。
 私は覚悟を決め息を吸い込み、ただ一つの、禁断の言葉を紡いだ。
「……今日、誕生日なんだ。姉さん」
 ぱきぃんと、硝子の割れる音が聞こえた気がする。
 もちろんそんな事はさらさらなかったのだが、けれど確かに何かは割れたのだ。
 そうしてそれは、紛れもなく、彼女と私の中から聞こえてきたのだ。
「あ、ああ」
 世界で誰よりも美しかった私の姉が、醜い姿で涙を流している。
85日曜日はゴミ袋を持って(お題:性的倒錯)4/4 ◆iCtTUGkd7k :2010/05/02(日) 13:25:54.90 ID:N7QJhLUy0
 私はその日、最も美しかった頃の姉と同じ、十八歳になっていた。あれからもう、八年が経
っていたのだった。
「泣かないで、姉さん」
「あ、あああ」
 壊れた傀儡のように、四肢をだらりと垂らし姉は動かない。もう美しくない、最愛の存在で
あった姉。
 そういえば、姉の黒いゴミ袋の中には、彼女の夫の服が捨ててあったのだ。では、私のゴミ
袋には一体何が捨ててあったのだろうか。
 「大丈夫だよ姉さん、これからもずっと側に居るからね」
 姉さんの家からはもう何日も生ゴミが出ていない。しばらく料理を作っていないのだろう。
 「そうだ、免許を取ったらドライブに行こう。姉さん、免許無かったろう?」
 人形しか愛せなかった姉。可愛そうな姉。だから誰よりも愛おしい姉。
 姉さんの夫はもう帰ってこない。
 だからその人の分まで、姉さんを一生愛そうと思った。
 

 了
86 ◆iCtTUGkd7k :2010/05/02(日) 13:27:31.23 ID:N7QJhLUy0
以上です
やっぱり改行微妙にミスってるorz
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 14:46:09.81 ID:+ubI7tjN0
88世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ(0/3:勘違い) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/02(日) 16:01:26.93 ID:h8ZY1Hk+0
久々に品評会作品を投下しようかね。お題は『勘違い』 で。
89世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ(1/3:勘違い) ◆PYVfMgJkes :2010/05/02(日) 16:03:36.53 ID:h8ZY1Hk+0
 地球上のどこかにあるかもしれない国、X国。
「BN―7SCっすか? まじで怖くないっすよ。いや。全然」
 土居端ミチオ博士は、高らかに宣言する。
「私が開発した新ECM装置を使えば、絶対にミサイルあたりませんから。いや、まじっすよこれ」
 ECM。Electronic Counter Measure。日本語にすると電子対抗手段のことである。
 博士はどの乗り物にも乗せられる、超小型で安価の電磁波発生装置を開発した。
 この装置に敵国各種ミサイルのデータを記録、各種ミサイルに応じた妨害電波を自動的に発生させることで、ミサイルが
全く当たらなくなるという寸法である。
 半年前の戦争で一部の戦闘機のみに搭載され、高い効果を上げたこの装置は、このたびのZ国への奇襲攻撃作戦に伴い、
全戦闘機に搭載されることになった。
「本当に、大丈夫なんだね?」
「お任せください!」
 ミチオ博士は胸を張る。
 その様子を見て国中元帥は、少しだけ安堵する。
 ここまで破竹の勢いで領土を拡大してきたX国。戦闘機や爆撃機の性能が他国より一段と優れていた。何より、急降下や
急上昇を繰り返してもパイロットに軽度の重力負荷しか掛からないようにする、安価の反重力発生装置が開発されていたの
である。これにより立体的で自由自在な空中戦術を可能とし、如何なる強敵であっても易々と空中優勢を獲得することがで
きた。そして空中からの爆撃による地上行動支援。X国の強さは、何といっても空軍にあった。
 無論、相手国もただ指をくわえて見ているだけではない。
 真っ向勝負ではX国の空軍には敵わないとして、地上から対空ミサイルや擲弾筒などで打ち落とす作戦に出た。
 とくにS国の、射程距離の異なった対空ミサイルを相互に組み合わせることにより互いのミサイルの短所を補う戦術は、
X国の戦闘機を大いに苦しめた。博士が開発した新ECM装置がなければ、もしかしたら負けていたかもしれない。今回
打倒を計画しているZ国相手では、対空砲火がさらに熾烈となることが予想される。
 Z国は、世界の盟主とも言える存在である。国際情勢を省みないX国の軍事行動に、Z国は何度も警告を発してきた。
このままでは、いつ二国間で戦争が勃発してもおかしくない状況である。ならば、先制攻撃だ。X国が達した結論が、それ
であった。
「スパイから新型ミサイルの情報が上がってきたときはどうしようかと思ったが、とにかくこれで予定通り作戦を決行できる」
 国中元帥は、各軍首脳を前にして言い放った。
「作戦は予定通り明日、五月三日午前零時に決行する。我が軍が誇る高速爆撃機集団を戦闘機に援護させ、一時間のうちに
Z国D沖を集中爆撃せよ。敵が混乱したところで上陸部隊を投入、反抗の隙を与えずにD沖を占領せよ。さらに五十キロ西方
90世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ(2/3:勘違い) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/02(日) 16:05:52.10 ID:h8ZY1Hk+0
にある敵国首都Eまで、空軍の援護を受けて戦車隊が驀進せよ。わずか半日のうちに、敵の中枢を奪い取るのだ」
 アイアイサー! の声が会議室中に響き渡る。
 軍事力による他国への侵略路線へX国が舵をとったときから、もはや戦火は切って落とされている。後には引けないのだ。

 * * * * *

「ふぅ……勝利の美酒の赤ワインは美味い……」
 夜。
 ミチオ博士はベランダで二人掛けの椅子に座り、妻・美智子とワインを飲んでいた。
 ミチオは普段は酒を飲まない。しかし明日、奇襲攻撃の成功によって、自分は益々その名声を確かなものにするだろう。
そんな状況となれば、酒を飲まずにはいられないのだ。
「このX国の躍進とともに、わしの人生は始まったのだ。最初は発明品を持っていっては、名も知れぬ軍人に『くだらない』
と言われて、その場で発明品を踏み潰されたものだった……」
「あなた……」
 ワイングラスを回し、薄目で底を眺める博士。
 美智子は陶酔した瞳で博士を眺める。
 今宵の夜も熱くなるだろう。
「おっと」
 美智子が博士に身体を預けようとしたとき、前のテーブルに置いてあった資料が風で飛ばされそうになった。
 博士はそれを慌てて右手で掴む。
「危ない危ない。これが流出してしまうと、奇襲攻撃でも何でもなくなってしまうからな。ま、それもあと数時間の話だが」
 ガラス越しに見える部屋の壁仕掛けの時計は、午後八時頃を示している。
 美智子を左手に抱え、右手には資料を持ち、風にまかせてペラペラと捲られる資料を気持ち良さそうに見つめていた。
「ん?」
 ペラペラと捲られる資料の一ページに、ふと見慣れない文字列を見つけたような気がした。
 そのページまで右手で器用に捲り、顔を近づける。
 一瞬、体が石のように硬直した。
「あなた?」
 熱っぽい顔で、美智子が博士を見上げる。
 三十路を迎えて放つのは、成熟した色気だ。
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 16:07:11.14 ID:Nmv2BuwN0
おだいください
92世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ(3/3:勘違い) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/02(日) 16:08:11.67 ID:h8ZY1Hk+0
 いつもなら博士はたまらず、美智子をベッドに連れ込むのだが――
「美智子」
 博士は直立で立ち上がった。
 右手から資料が離れ、風に飛ばされていった。
「荷造りしてくれ」
 空へと巻き上げられる資料。その一ページには、『BN―NANASC』と書かれてあったという。

 * * * * *

「この人の所業は神の仕業か悪魔の仕業か?! それでは登場していただきましょう! X国を破滅へと導き、世界を平和
へと導いたマッドサイエンティスト、土居端ミチオ博士です!」
 セレモニーの舞台に一斉に、歓声とブーイングが巻き起こる。
 高価なドレスを着た白人女性のエスコートを受け、博士が壇上に立った。
「えー、皆さん。私がただいま紹介を受けました土居端ミチオです。私の所業について、もっと他のやり方があったのでは
ないかとの批判をこれまでにいくつも受けています。しかしながら、悪夢的侵略構想に取り付かれたX国軍部を止めるため
には、当事者としましては、あのような歴史的敗北を喫させるしか方法がなかったのです」
 土居端ミチオ博士は、見渡す一面に集まったZ国市民に対して、胸を張って堂々と言い放ったのであった。

(終わり)
93世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ(3/4:勘違い) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/02(日) 16:11:09.04 ID:h8ZY1Hk+0
>>91
天才。できれば、他の人物が「こいつは天才だ」って説明するんじゃなく、行動で示してほしい。

終わりです。(1/3)でミスってトリップが変わってしまったけど、気にしないでください。
前にもらったお題「橋」、まだかけねぇー
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 16:32:05.19 ID:1RLN69/c0
>>93
名前長すぎで転載できないんですがどうしましょう。
酉列をコピペせずに酉入力すればいけると思うので、セルフで転載してもらえると助かりますが。
95 ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/02(日) 16:35:21.84 ID:oQtH/xhH0
>>94

すみません。セルフで転載します。
というか自分でもやろうとして、転載できないと言われて困っていたところでした。
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 17:55:52.31 ID:1RLN69/c0
ほいほい
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 18:00:14.36 ID:b/JarVEk0
文才ない奴が書く小説ほどクソなものはない
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 18:21:49.93 ID:CIkFFwXVP
>>97
もういい・・・・休め・・・・!!
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 18:24:56.07 ID:FfWdZt70i
かなり久しぶりにお題くれ
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 18:32:09.06 ID:Nmv2BuwN0
睡眠不足
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 19:12:18.85 ID:i4ngEPUG0
ダメだわ。今回はなんにも思いつかん。思いついてもありきたりすぎる
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 19:25:42.12 ID:oQtH/xhH0
>>101
ありきたりでも、面白ければそれでよし。

しかし、何で性的倒錯ばっかりがお題に選ばれてるんだろ。
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 19:37:18.01 ID:i4ngEPUG0
そりゃ・・・おま・・・エロい住人がおおいからだろ
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 20:30:47.64 ID:G0+wfZkk0
あっと
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 20:45:46.94 ID:OyCvbGDV0
おだいください
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 20:50:15.19 ID:wpnmRXKc0
奇跡
107流星の軌跡(お題:勘違い) ◆t/J8vPD8kA :2010/05/02(日) 21:03:29.93 ID:cSFEyiCw0
 真夜中、僕と洋子は曇天の空を見上げる。
「流れ星、見えないね」
「ちょっと天気悪くなってきたからな」
 なんでも、今日はなんたら流星群が見られるとかで、洋子につれられここまで来た。
 だが、天気も悪く冷えてきた。帰りたい、そんな気持ちが頭を満たしていた。
「洋子、今日は寒いしそろそろ帰ったほうがいいんじゃないか? 風邪ひいちまうぞ?」
「でも……まだ見れるかもしれないし……」
「わかったよ。とりあえず、見れるのは一時くらいまでなんだろ? じゃあ一時までだか
らな」
「うん、そうだね」
 後、三十分。この曇り空の上ではすでに星は流れだしているのだろうか。そして、それ
を見ることが出来るのだろうか。そんなことを考えていると、洋子はふいに口を開く。
「秀介はさ、なんだかんだで優しいよね」
「なんだよ急に」
「昔からさ、なんだかんだで私の言うこと聞いてくれたし」
「そりゃ昔の話だろ。というかどうした? なんかあったか?」
「ああ、ゴメンゴメン。らしくなかったよね」
 そう言って空を見上げる。
 その横顔は、なんだかいつもより可愛らしくて、妙な雰囲気も相まって嫌でも意識して
しまうものだった。
「あっ、見て!」
 洋子の指さす先には、無数の流星が空を覆っていた。
「……洋子はさ。こういう時になんか願い事とかするの?」
「え、ああ。うん」
 なんだか慌てた様子の洋子を見て、顔がほころぶ。そうだ、僕もなにか願おうか。
 頭上を流れる一際大きな光に、ずっと洋子といられるように。そう願った。

 この日、洋子と秀介には忘れられない日となるように、世界もこの日を忘れない。
 後の第三次世界大戦の引き金となった、某国のミサイルが日本を直撃したのもこの日だっ
たから。
108 ◆t/J8vPD8kA :2010/05/02(日) 21:06:16.81 ID:cSFEyiCw0
品評会投下
1レス作品書きたいな、と思って書いてみたらお題とかもうなんかどうでもいい感じになってしまった
109犯ってから殺るか、殺ってから犯るか(お題:性的倒錯)0/5 ◆LBPyCcG946 :2010/05/02(日) 21:23:38.50 ID:8hytW/tV0
品評会作品投下します
110犯ってから殺るか、殺ってから犯るか(お題:性的倒錯)1/5 ◆LBPyCcG946 :2010/05/02(日) 21:25:49.18 ID:8hytW/tV0
 以下、三つの条件に当てはまる山というものはそう多くない。
 まず、夜中に人が少ないという所。次に、自宅から車で行ける距離にあるという所。そして、掘り返される可能
性がまず無い所。
「もしかして、あなたも……ですか?」
 肝心な部分を濁らせ、尋ねてきたその男は、僕と同じように大きな荷物を持っていた。僕の方は背中に背負った
大きなリュックサック。男は手提げのボストンバックを二つ。
「はい?」
 僕は内心戦慄しつつ、平坦な声調で答えた。元々感情が表に出ないタイプなので、おそらく相手には、焦りの欠
片も伝わってないだろう。
「えっと、その大きな荷物」
 男はボストンバックを持った手を少し開いて、僕のリュックサックを指差した。辺りは暗かったので、その小さ
な動作が見えないと思ったのか、顎をしゃくった。
「これが、何か」
「もしかして、僕のこれと中身は同じ物かな、と思って」
 僕はじっと男の表情を伺った。黒目がちな瞳の印象的な、三十代、いや、二十代にも見えるやさ男。暗くて髪の
毛の色は確認できないが、おそらく茶色に染めている。とはいえ不良という印象も受けない、品も学もある雰囲気。
とてもじゃないが、僕と同じ人種だとは思えない。
「ああ、突然後ろから話しかけてすいません。びっくりされましたか。でも、人と出会うにしては、時間が遅すぎ
るし、場所も悪すぎるし。少し気になった物で、もしも良かったら中身をお聞かせもらえますか?」
 僕は内心で躊躇いながらも、至って普通に、いつもの仏頂面で答える。
「中身は、女の死体ですよ」
 ほんの一瞬だけ、男の顔色が青く凍りついた。かと思いきや、すぐにやわらかな色味を取り戻し、頬が緩んだ。
「ははは、冗談ですか?」
 なんと答えようか、僕はここまでのやりとりで一番迷った。
 何せ、もしも僕の告白を本気に受け取られた場合の言い訳を、男の方が先に言ってきたのだから。
「……どうやら、冗談じゃないみたいですね」
 そう言うと、男はボストンバックの片方を置いて、僕の位置から見えるようにそのチャックを開けた。

 その中から、人の顔が出てきて、僕は途端に嬉しくなった。
111犯ってから殺るか、殺ってから犯るか(お題:性的倒錯)2/5 ◆LBPyCcG946 :2010/05/02(日) 21:28:00.83 ID:8hytW/tV0
「何せ立地が良いでしょ、ここ。だからいつか同じ趣味の人間に会うんじゃないかなぁっていう予感はしてたんで
すよ。まさか本当に実現するとは思ってなかったですけどね」
 僕の方も、リュックの蓋を開けて彼女を見せた。すると、彼は心から安堵したため息を零して「話しませんか、
せっかくだから」と僕を誘った。僕もその提案に賛成だった。何せ、バイクだとかゲームだとかとは明らかに違う、
語り合える仲間のいない趣味だ。こんな機会は、滅多に来る物ではない。
 僕と彼はとりあえず休憩所まで登って、そこに座って話をし始めた。
「ここは夜、人こないですからね」と、僕。
「そうそう。俺もここにめぐり合う前、色々調べたんですよ。でも、どこも何かと問題がある。例えば、不法投棄
業者が使ってたり、峠になってて、そこを車がひっきりなしに走っていたり、あるいは有名な心霊スポットになっ
てたりね」
 男は良く喋り、良く笑った。心霊スポット、か。この山がそうならない辺り、幽霊なんてあてにならない物なの
かもしれないな、と僕は思った。
「それでいて、交通の便がそんなに悪くない。車から降りて少し登るだけですからね」
「まあ、確かに」
「それと、何と言っても掘り返される事がまず有り得ない。特にこのあたりは土が軟らかくて、建物が建たないん
ですよね。リニアでも通らない限り、崩される事はまずないですね」
 用済みになった死体を捨てるにはうってつけの場所。彼の言った事と、僕の考えていた事は、ほぼ完全に一致し
ていた。単純な興味が湧いてきた僕は、彼に尋ねてみる事にした。
「ちなみに、今まで何人ほど?」
「十七人です。あ、これを含めて十八人。はは、なんか自慢してるみたいだ。あなたの方は?」
「三十人、くらいですかね」
「もしも捕まったら死刑ですね。……それはお互い様か」
 男はにこにこと笑いながら、ボストンバックを撫でた。
「十八人全員、美しい女でした。もちろんこの子も」
 感慨深く男が呟いたので、僕は先程見た顔を思い出して苦笑いした。きっと世間一般で指す「美しい」という定
義から離れてしまったそれは、僕にとってはそこそこにそそる表情だった。僕は確認してみる。
「あなたは、ただ殺すだけですか」
「いやいや、そんなもったいない事する訳ないじゃないですか。もちろん、犯りますよ。あなたもそうでしょう?」
「ええ、まあ」
112犯ってから殺るか、殺ってから犯るか(お題:性的倒錯)3/5 ◆LBPyCcG946 :2010/05/02(日) 21:30:19.11 ID:8hytW/tV0
 やたら潔く答えられたので、また一枚、僕と彼の隔たりは無くなった。
「それにしてもリュックとは、考えましたね」
「そうですか?」
「俺の場合は、風呂場で身体を二つに切断してこうしてボストンバックに詰めるんです。最初はもっとバラバラに
して運んでたんですが、面倒くさくなっちゃって。でも、そんな大きなリュックがあるのは初めて知りました。そ
れなら身体を丸めれば入るし、登るのにもうってつけですね」
 人の身体をバラバラにした事があるのか。そちらの方に僕は感心した。血を見るのが好きではないので、僕はし
た事が無かった。そして編み出した苦肉の策がこのリュックだったという訳だ。
「万が一、警察に見つかった時は登山するという言い訳にも使えますね」
「いや、下山する途中だと言った方がいいです」
「なるほど」
 和やかに談笑が弾む。こんな風に、誰かと語り合える日が来るとは、昨日まで思っても見なかった事だ。しかも、
彼は思ったよりも好青年だ。何の気なしに尋ねてみる。
「二つに切断するのは、何かコツでもあるんですか」
「まあ犯ったらすぐに作業するって所ですね。そのまま放置してると、堅くなって折り曲げられなくなるから」
 僕はその台詞を聞いて、僕と彼の決定的な違いに気づいた。
「えっと、もしかしてあなたは、女を犯してから殺すんですか?」
「え? はい、そうですが。……もしかして?」
 僕は質問の意味を汲み取り、答える。
「僕の場合は、殺してから犯します」
「死姦、という奴ですか」
「ええ、まあ。そうですね」
 思わず申し訳なさそうに答えてしまった僕は、彼の表情を伺った。驚いてはいるが、引いている感じではない。
とはいえ、引かれたって何という事はない。僕も彼も、犯罪者には変わりないのだ。
「やった事ないなぁ……」
 彼はそう呟いて、僕のリュックサックを見た。そしてボストンバックを叩いて、こう尋ねた。
「こいつも犯ります?」
「いや、遠慮しておきます」
 流石にこんな場所で、しかも人前で行為を始めるのは、かなりの抵抗があった。
113犯ってから殺るか、殺ってから犯るか(お題:性的倒錯)4/5 ◆LBPyCcG946 :2010/05/02(日) 21:32:45.49 ID:8hytW/tV0
「少し突っ込んだ質問してもいいですか」僕はどうぞ、と促す「死体を犯しても、反応が無いのはつまらなくない
ですか? 僕なんかは、相手を拘束した後、犯り終わったら必ず殺すという事を何度も何度も言い聞かせなが犯す
のが好きなんですよ。人によって色んな反応しますね。無駄な抵抗をする子や、何もかも諦めてただ泣く子、取引
を持ちかけてくる子。だから、死姦なんてこれまで考えた事も無かった」
 反応が無い、イコールつまらないという発想は、サディスティックな人間にしか出来ない発想だ。
 僕は彼の質問に、ただただ正直に答える。
「死体は、美しいじゃないですか」
 彼は一瞬呆けたような表情を見せた後、「わからないな」と首を傾げ、続けた。
「僕にとっての死体は、用済みのおもちゃですよ。使用済みコンドームと言った方が正しいかもしれない。とにか
く、置いておいても場所をとるし、臭いもきつくなってきますから、こうして捨てにきてる。でもあなたにとって
の死体は、いわば恋人なんですよね。きっと、価値観が違うんだろうな」
「そうでしょうね。僕は、生きている女にはあまり興味がない」
「独身ですか」
「あなたもでしょう」
 彼は豪快に笑った。そして答えた。
「いや、妻も子供もいるんですよ。これでもね」
 僕は驚き、だけど顔には出さずに尋ねる。
「バレませんか?」
「バレませんね。もちろん、自宅でやる訳じゃないですから。いくつかスポットがあるんですよ、うってつけのが。
まあこれも、浮気の一種、というのかな」
 彼は笑いながら、ポケットから財布を取り出した。それを開くと、彼と彼の妻と、彼の娘らしき子がどこかの遊
園地で撮影したと思われる幸せそうな写真が入っていた。僕はそれを見て「良い家庭ですね」と感想を述べた。
「これは別に自慢してる訳じゃないですよ。ただ、あなたがもし街でこの女を見かけても、殺さないで下さいと頼
みたいだけです」
 彼はそう言って、僕の両目を見てにこりと微笑んだ。これまでの笑顔とは違って、戒めるようなニュアンスが表
情に含まれていたのは確かだ。だが、それは僕のこれからの行動には何の影響も与えない。だからこそ、嘘をつく。
「分かりました」
「まあ、これであなたが妻を殺して、俺が復讐の為にあなたを殺したら、社会にとっては良い影響なんでしょうけ
どね。あなたは三十人、俺は十八人だから、差し引き十二人分、俺の方が正義の味方だ」
114犯ってから殺るか、殺ってから犯るか(お題:性的倒錯)5/5 ◆LBPyCcG946 :2010/05/02(日) 21:34:57.33 ID:8hytW/tV0
「確かに、そうかもしれない」
「冗談ですよ。男を殺すのは面倒だし得がない。それにこの趣味は、同志と出会う機会がなかなかありませんから」
 僕もそれには同意見だ。
「だけど、よく考えてみたらそう珍しい事ではないかもしれないですね。何せ、日本には年間で十万人の行方不明
者がいるそうですから」
 僕はそれを訂正する。
「十万人という数字は、行方不明者の届け出数ですよ。八割の人は、その後で見つかっています」
 彼はほんの一瞬、嫌な表情を見せた。間違いを正されたのが、気に喰わなかったのかもしれない。僕は少し慌て
て、だけど表情には出さずに、フォローを入れた。
「届け出が出ていない行方不明者もいますし、行方不明者の七割は女性だそうですから、同じ趣味の人間は意外と
いる、という意見には僕も同意します」
「そうですよね!」
 途端に彼の表情は、ぱぁっと明るくなった。それでようやく僕は、彼の人となりを理解する事ができた。
「それに、十万人とか、その二割の二万人とか、数字が大きすぎてピンとこない。俺とあなた合わせても、たかだ
か五十人殺してるだけなんだから。うんうん、良い意見だ。もしも逮捕されたらこの言い訳を使おう」
 彼は、子供の皮を被ったわがままな子供だ。人当たりは良く、懐きやすい。だけど気に入らない事があると、急
激に機嫌を悪くする。女を犯してから殺すのは、その女が他の男に取られるのが嫌だからだ。自分の行為を正当化
したい欲求が強く、それでいて自分を制御する術を見につけている。精神は幼いのに、どこか抜け目がない。アン
バランスな人格。だからこれまで捕まらずに、犯行を積み重ねてこれた。
僕は決定的な質問を放る。
「いつか自分は逮捕されると思いますか?」
「いや、無いでしょうね。あなたがバラさない限り」
 自信家のくせに臆病。相反する心象風景。僕も自分以外の殺人者と話したのはこれが初めてだったが、これまで
重ねてきた会話によって、なるほどと納得させられた。
「おや、もうこんな時間だ。そろそろ埋めて帰りましょう」
 こうして、僕と彼は別れた。埋める場所を伝え合う必要はないし、連絡先を聞いておくのも無粋だ。
 それから数日後。街で偶然、彼の妻が買い物袋を提げて歩いているのを見かけた。声をかけようか迷ったが、や
っぱりやめておいた。
 その時の僕の心は、きっと誰にも理解出来ないだろう。
                                                                    終
115あこがれ(お題:性的倒錯)0/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 21:46:17.53 ID:X3uoLpe7P
続いて品評会投下。7レス
116あこがれ(お題:性的倒錯)1/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 21:47:22.42 ID:X3uoLpe7P
「もうやめてくれよ。硝子の欠片で手を切ったみたいだ」
 僕がそう言い終えるのも待たずに、隼人は僕の脇腹を蹴り上げた。激しい衝撃と苦痛で呼吸を奪われた僕は、その場にうずくまって
悶える。
「う……うぇ……」
「顔、上げろよ」
 言いながら隼人はおかまいなしに僕の顔を泥だらけの靴で踏みにじる。僕にはその足を払いのける力も残っていなかった。
「気づいてねぇと思ってたのか。何時から覗いてたんだ?あん?」
「……やめ……」
「何言ってんのかわかんねえよ」
 今度は顎に強い衝撃を受け、一瞬意識が飛びかけた。隼人の固くて太い足が僕の顔面を蹴りつけたのだと思った。
「お前、もう死ねよ」
 隼人がまだ何か言っているが、もはや理解することはできない。全身の痛みのせいで、自力で何かをしようという考えは既に失われ
ていた。
 僕は冷たい床の質感を身体中で感じながら、ただ自分が置かれている状況について考えた。下から見上げる隼人の肉体は本当に大き
く、力強く、逞しくて、まるで暴力そのもののように思えた。圧倒的な暴力が白くやせ細った非力な僕の身体の上に覆いかぶさってい
る。それはとても正しい出来事だった。僕が最も正しいと信じ、そして僕自身の存在を最も強く否定する、そんな真理に基づいたあま
りにも正しい出来事だった。

 僕は九条遥のことが好きだった。好きだ、と言うよりただ憧れていた。それは僕だけではなく、学園中の殆どの男子生徒が(そして
女子生徒も)そうだった。彼女は別格の存在だった。
 高等部から編入してきた彼女と同じクラスになった僕は、いつも教室の隅から彼女を盗み見ていた。彼女の整った横顔を、白く細い
指を、肩まで伸ばした黒髪を、そして深く冷たい瞳をただ遠くから眺めているだけで、僕は満たされた。近寄ろうなどとは思わなかっ
た。他の皆も多かれ少なかれ同じように考えていたのか、彼女を取り巻く人間は多かったが、そこには目に見えない壁のようなものが
いつも存在していた。
 だが、宮原隼人は少し違った。彼もまた特別な存在だった。容姿端麗で、アメフト部では一年からレギュラーに選ばれ、男女を問わ
ず人望があった。家は医者で、彼自身も医学部を目指していた。
 九条遥に釣り合う人間がいるとしたら隼人しかいない。皆、なんとなくそんな風に考えているようだったが、二人が学園内で親しげ
にしているところを見たことのある人間はあまりいなかった。もっとも、既につき合っているから人目のあるところではよそよそしく
振る舞っているだけだと、周囲からは見られていたのだが。
 そんな隼人と僕は幼なじみだった。小さい頃から華奢で喧嘩が弱かった僕を、隼人はいつも守ってくれていた。影でいつも震えてい
117あこがれ(お題:性的倒錯)2/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 21:58:43.63 ID:X3uoLpe7P
た僕はそんな隼人の強い身体にいつも憧れていた。そして、まるで女の子みたいに色白で弱々しい自分の腕や足をただ忌々しく思って
いた。

 中等部二年の夏、僕はクラスメートの女の子に告白された。そういうことはそれが初めてではなかった。女のような顔つきをしてい
る僕は、一部の女子にはひどく魅力的に映るらしい。
「クラスの子、みんな言ってるよ。学年で一番美人なのは、畑野くんだって」
僕にとっては屈辱的な言葉だったが、彼女はむしろ褒めているつもりらしかった。
「私なんか、畑野くんと釣り合うとは思えないけど……」
釣り合うかどうかはともかく交際するつもりはないと言うと、彼女はその場で泣き出した。そういう事態に慣れていなかった僕は、な
だめるつもりでとりあえずつき合うみたいなことを言ってしまい、結局関係が始まった。
 隼人が僕に冷たく当たりだしたのはそれからだった。初めは事態がよく呑み込めなかったが、どうやら僕がつき合っている女の子の
ことを隼人も好きだったのではないかと思い至った。当然ながら隼人はよくもてたし、その女の子ははっきり言ってそれほど魅力的で
はなかったので、なぜ嫉妬されるのか僕にはよく理解できなかったが、他に考えつく理由はなかった。
 隼人との関係を悪くしたくなかった僕はその子とつき合うのをやめた。しかし、その後も隼人は僕を無視し続けた。そればかりか、
はっきりと嫌がらせさえするようになっていった。学年で最も影響力を持つ生徒である彼に目の敵にされた僕の運命は惨めだった。皆
が僕を無視し、虐めるようになった。高等部に入ってからも、そんな状況は続いていたのだった。

 二ヶ月ほど前のある放課後、僕は図書室で一人本を読んでいた。きりのいいところまで読み進んで図書室を後にする頃には、陽が沈
みかけていた。校庭にも人影はまばらで、物憂い静寂が校舎全体を覆い尽くそうとしていた。
 その時僕はふと、旧校舎の屋上から夕闇に沈む街並みを眺めてみたいと思った。新校舎の裏手にある旧校舎は現在は使われていない
が、中等部の頃はよく屋上に上って街を見下ろしたりしていた。何となく、そういうことを久しぶりにやってみたいと思ったのだった。
 旧校舎の正面玄関は施錠されていた。確か裏口があったはずだと思い、建物に沿って歩いていた僕は、数十メートルほど先の人影に
気づいた。辺りは暗くなりかけていたものの、九条遥と隼人だということはすぐに分かった。僕はとっさに物陰に身を隠した。
 隼人たちもどうやら裏口から旧校舎に入ろうとしているらしかった。こんな時間に、こんな人気のない場所で二人きりで。まさか僕
のように屋上から景色を眺めたいわけでもないだろうと思った。
 自分の胸が異様に高鳴っているのに気づいたのはその時だった。僕は混乱した。なぜこんなにどきどきするのだろう?初めは嫉妬だ
ろうかと考えた。憧れの九条遥を隼人がものにしている事実を目の当たりにし、妬んでいるのだと。だが、そういう苦しさとは何かが
違っているようにも思えた。
 僕が立ち尽していると、ちょうどそこから中を覗き見ることができる位置にある教室に二人が入ってきた。もちろん僕が見ているこ
となど知りもしない二人は、その場で濃厚なキスを交わした。僕は目を凝らしてその様子に見入った。自分自身の心臓の鼓動音が周囲
118あこがれ(お題:性的倒錯)3/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 22:00:46.73 ID:X3uoLpe7P
に聞こえてしまうのではないかというほどに興奮しながら。そう、僕は興奮していた。嫉妬などという感情とはかけ離れた妖しい期待
に、胸を躍らせていたのだった。
 やがて、隼人の太い腕が九条遥の制服を乱暴に脱がせはじめた。明かりのない教室の闇にもくっきりと白い九条遥の肌が露わになっ
ていく。抗うこともなく隼人のなすがままにされている九条遥の口元には笑みさえ浮かんでいるように見えた。その唇に再び隼人が己
の唇を重ねる。既にソックス以外何も身に付けていない九条遥は机の上に足を広げて座り、隼人の愛撫を受け入れていた。
 見つかる危険性も顧みず僕は窓際まで近寄っていった。僕は激しく勃起していた。興奮と期待と恐怖とが、身体中の血管を駆け巡っ
ているみたいだった。隼人は九条遥を四つん這いにさせると、後ろから彼女を激しく突きはじめた。浅黒く力強い隼人の腕に白い豊満
な乳房を鷲掴みにされながら、九条遥は激しく喘ぐ。机がガタガタ鳴る音と彼女の喘ぎ声とが、窓越しに僕の耳にまで聞こえてきた。
隼人が九条遥の口に指を入れ、更に激しく腰を動かしはじめた時、僕は自分自身の性器を握りしめていた。九条遥は左足を机にかけ、
犬みたいな姿勢で隼人に突かれている。隼人の逞しい肉体が力強く規則正しく動くのに合わせ、彼女の細くしなやかな腰がうねる。ひ
と際大きな声で九条遥が喘いだ瞬間、僕は窓の外で一人射精した。
 すっかり闇に沈んだ旧校舎の壁に、僕の精液がぬらぬらと光っていた。それを見た僕は急に我に返った。教室の中からはまだ声が聞
こえてきていたが、静かにその場を離れたのだった。
 その夜、僕は自分の部屋で自慰に耽った。もちろん夕方に目撃した出来事を回想しながら。想像の中で僕は、隼人自身となって九条
遥を犯していた。毎日教室で密やかに眺めていた憧れの九条遥の身体を、やはり子供の頃から憧れ続けた強く逞しい隼人の肉体でもっ
て激しく犯すという想像は、今までに味わった事のない興奮を僕にもたらした。朝が来るまで何度も何度も僕は自慰を行った。射精す
る瞬間、僕の身体と隼人の肉体は一つのものとなっていた。果ててしまった後では、自分の細い腕や足はまるで何かの抜け殻のように
しか感じられなかった。
 それからも僕は毎晩同じ空想で自慰を試みた。自分自身が九条遥を犯すところは想像しなかった。想像してみても、それは興奮をも
たらさなかった。大きくて強い隼人の肉体が荒々しく九条遥を陵辱する場面を想像する時のみ、僕の中の欲望は燃え盛ったのだった。
 そして昨日。やはり旧校舎の方に向かって歩いていく二人の姿を偶然見かけた僕は、こっそり後をつけた。僕の記憶の中であの日の
出来事は徐々にその印象を弱めており、新たな刺激が欲しいと思っていた矢先だった。前と同じように窓の外から覗いたが、二度目と
いうことでどこかに気の緩みがあったのかも知れない。隼人が窓の方を振り向いた瞬間姿を見られた気がして、僕は慌ててその場を離
れた。はっきりとした確信はなかったが、たとえ見られていたとしても、僕だと言う事まではわからないだろうと高をくくった。だが
それは甘い見通しだった。今日、隼人は帰宅しようとする僕を捕まえて旧校舎まで来いと言ってきた。行くまでもなく、用件が何であ
るかは明らかだった。
 
 床に転がって動けない僕の顔を、なおも執拗に隼人はその力強い足で踏みつけてきた。
「……顔しやがって」
「な……に?」
119あこがれ(お題:性的倒錯)4/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 22:03:15.50 ID:X3uoLpe7P
ひとしきり僕を痛めつけて気が済んだのか、隼人の声は少し落ち着きを取り戻しているようだった。足で僕の顔面を弄びながら何か
言ったようだったがよく聞こえなかったので反射的に聞き返したが、苦痛ではっきりとした言葉にならなかった。
 だが隼人は、ゆっくりとかがみ込むと僕の顔を覗き込むようにしてもう一度言った。
「女みたいな顔しやがって」
 何か返事をしようとするより早く、僕の血と泥にまみれた唇は隼人の唇で塞がれてしまった。僕は驚いて隼人を押しのけようとした
が、鋼鉄のように力強いその肉体をどうすることもできなかった。
「……なにを……」
 ようやく唇を離した隼人の顔を見ながら、僕はそれだけ言うのがやっとだった。だが、僕のその眼か、その声か、あるいは存在その
ものが再び逆鱗に触れたらしく、隼人は立ち上がると上腕の辺りを激しく蹴りつけてきた。
「気めぇ目で俺を見るな!このホモ野郎が」
 腕や顔を見境なしに蹴りつけられながら、僕はこの状況について必死で考えようとしたが、既に頭が混乱していた。
「子供のころから、お前が泣きそうな目で俺をじろじろ見るのが一番我慢できなかったんだよ」
そう言うと隼人は僕のスボンのベルトを手をかけた。
「……や……やめ」
「俺と遥がやるのを見ながら何回抜いたんだ?ええ?ずっと前から覗いてたんだろ?」
 隼人の太い腕が僕のズボンを引きずり下ろしにかかる。僕にそれを止める力は残されていなかった。
 犯される。
 恐怖や嫌悪というより、この状況を何とかコントロールしたいという本能的な衝動に突き動かされて、僕は右手の先に触れた何かを
掴むとそれを渾身の力を込めて隼人の頭に叩き付けた。がきん、と思ったより大きな音がして、僕の腕に重く強い衝撃が伝わってきた。
「お……お前」
 隼人はそう言いながら殴られたあたりを抑えようとしたが、そのまま僕に覆いかぶさるようにして倒れ込んできた。半分ズボンを脱
がされて露になった僕の太腿に、隼人の頭から流れ出した血液の熱さが伝わってきた。
「……おい。隼人」
 僕は隼人の肩に手をかけたが揺さぶったが、反応はなかった。僕は自分が右手に握りしめていた物を見た。それは小型の万力のよう
なものだった。ここはかつて工芸室だったらしい。どこにそんな力が残っていたのか、小型とは言っても何キロかはるに違いない鉄の
塊であるそれを、僕は隼人のこめかみに叩き込んでしまったのだった。
 僕は力を失った隼人の体をもぎ離すと、尻を床についたまま壁際まで後ずさった。頭の中が痺れたように麻痺し、何も考えることが
できない。目の前の現実を、現実としてうまく理解することがどうしてもできなかった。
「死んじゃったみたいだね」
その時、部屋の入り口で女の声がした。驚いた僕が振り返ると、そこには九条遥が立っていた。
120あこがれ(お題:性的倒錯)5/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 22:05:07.24 ID:X3uoLpe7P
「どうするの。救急車呼ぶの」
 九条遥はそう言いながら教室の中に入ってきた。驚いた様子は全くなかった。隼人の体に手を触れながら彼女は淡々と言った。
「でも、もう駄目ね。きっと手遅れだわ」
「救急車、呼びなよ。まだ助かるかもしれない」
 その無感動に戸惑いながらも僕がそう言うと、九条遥は僕を見て笑った。
「呼んだらあなた捕まるわよ。それでもいいの」
「捕まる……?隼人に助かって欲しくないの。君たち、つき合ってたんだろ」
「あまり喋らないほうがいいんじゃなくて。あなた、苦しそうよ」
 九条遥はそう言うと立ち上がり、壁にもたれている僕の隣りに来て同じように座った。
「もう死んでるわ、彼。あんな重いもので殴るなんて、あなたそんな身体で意外に力あるのね」
「見てたのか」
「これでおあいこでしょ」
 九条遥がそう言うのを聞いて、僕はため息をついた。
「……君も知ってたんだ。僕が覗いてるの」
「私も、じゃなくて、私だけ気づいてたのよ。2ヶ月前に」
 それは意外だった。だとすれば、覗かれていたことを知っていながら何食わぬ顔で二ヶ月間僕に接していたと言うことになる。
「気づいたんなら、どうして騒がなかったの。あの時……」
「だって勿体ないじゃない」
 九条遥は笑った。
「ねえ、あなた知らなかったの?隼人くんがあなたのことを好きだってこと」
 僕は返事をしなかった。今となってはもう、そう考えるしかないと思った。
「想像してみてよ。彼と私がセックスをしていて、その一部始終を彼が好きで好きでたまらないのにどうしても思いを遂げられない本
命の誰かさんに覗き見られていて、でも本人はそのことに気づいてなくて、私だけが知っているの。これって素敵じゃない?面白いと
思わない?」
「君はどうかしてるよ」
 僕は言った。
「君たち恋人同士だったんだろ。それを、あんなところを人に見られて……。何とも思わないの」
「覗いてた張本人が言う台詞じゃないわね」
 そう言って九条遥はまた笑った。
121あこがれ(お題:性的倒錯)6/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 22:06:19.38 ID:X3uoLpe7P
「私たち、別に恋人でもなんでもないわ。ただああやって時々セックスしてただけ。隼人くんは最高の身体の持ち主だったし、彼にと
って私もそうだったはずだから。でも彼にとっての本命は、あなただったのよね」
「やめてよ」
「残酷よね。あなたたち幼なじみだったんでしょ?隼人くん、いつから自分の気持ちに気づいてたのかしら。どれだけの間、自分の燃
えるような感情を押さえ込んでいたのかしら。それが今日、とうとう長年の思いを遂げられるはずだったのに……」
「やめろ」
 僕は声を張り上げた。脇腹の辺りに激しい痛みが走った。
「君は面白がってるのか?今日だって、隼人が僕を襲うだろうと分かってて後をつけてきたってわけか」
「そんなこと、私に分かるわけないわ。だってあなたたち二人の関係でしょ。もちろんどうなるのかなって興味はあったけど、まさか
こんなことになるとはね」
 隼人の頭の横には大きな血溜まりが出来ていた。どう見ても、もう生きているとは思えなかった。
「で、どうするの」
「自首するよ。僕がやったんだもの」
「どうして」
「どうしてって……。当たり前だろ、そんなの」
「でも、知っているのは私だけよ」
 九条遥は立ち上がり、僕の正面に回って言った。
「ねえ、こういうのはどう?今から二人で死体を埋めに行くの。で、この校舎にも火をつけちゃって、証拠も何も全部燃やしちゃうの。
素敵じゃない?」
「馬鹿言うなよ。そんなの上手く行くわけない。大体、そしたら君も共犯だよ」
「構わないわよ」
 九条遥はかがみ込むと僕の目を覗き込んだ。
「あなたとなら。だって、私あなたのこと好きだもの」
「だから、ふざけるのはやめろって」
「私本気よ。あ、でも勘違いしないでね。私、あなたとセックスする気はないから」
「何だよそれ」
 僕は痛みをこらえて立ち上がり、隼人の死体のそばまで歩いていった。
 それはつい先ほどまでと同じ大きさと形をしていたが、もはや全ての力を失っていた。力強くも、逞しくも、雄々しくもなかった。
僕が子供の頃から憧れ続けた宮原隼人の肉体は、もうそこには存在しなかった。
「で、どうなの。このアイデア」
122あこがれ(お題:性的倒錯)7/7 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 22:07:09.70 ID:X3uoLpe7P
「そうだな」
 九条遥の方を見ずに僕は言った。
「君が僕と寝てくれたら考えてみる」
「何よそれ。本気で言ってるの」
「さあ。どうかな」
 僕は窓の外を見た。外は日が暮れかけ、はるか遠くの方から生徒たちの笑い声が微かに聞こえてきた。
「そんなことより、お願いがあるんだ」
 九条遥の方に向き直って僕は言った。
「僕と一緒に、隼人の死体を見ていてくれないかな」
「え?」
「朝まででいいからさ。すぐに警察に行ってもいいけど、なんとなく、もう少し隼人の体を見ていたいんだ」
「どうしてそんなことするの」
「僕にも分からないよ。ただ、自分の中でもまだ上手く気持ちが整理できていないのかも知れない。だから、今夜一晩だけつき合って
欲しいんだ」
「ふうん」
 九条遥はまだよく分からないという顔をしていたが、やがて言った。
「いいわ」
「よかった」
 立っているのがつらくなった僕は、壁際まで戻って床に座った。九条遥も僕の隣りに来て座った。
 教室の中はもう真っ暗だった。月明かりの中に浮かび上がる、かつて宮原隼人の肉体だったものの影を見ながら、僕と遥は体を寄せ
合っていた。
「こうしてると、私たち恋人同士みたいね」
 遥が囁くように言った。
「私、本当にあなたのことが好きだったのよ」
「僕もだよ。僕も君のことがずっと好きだった」
「本当に?じゃあ私たち、もっと上手くやれば恋人同士になれたのかな」
「どうだろうね」
 僕は言った。遥は返事をしなかった。
 少しずつ夜が更けていく。右肩に遥の温もりを、目の前に隼人の冷たい影を感じながら、このまま朝が来ないでくれればいいという
報われることのない願いを僕は願った。 (完)
123 ◆rQ6/ZYPWWM :2010/05/02(日) 22:08:33.41 ID:X3uoLpe7P
以上です。ちょっと手間取ってしまいました、すいません。感想よろしくお願いします
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 22:14:19.57 ID:i4ngEPUG0
ひんぴゅーかいおおいな
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 22:19:38.28 ID:Dbw6W6K70
おだいくれれ
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 22:30:35.51 ID:1RLN69/c0
>>125
掃除
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 22:35:10.32 ID:U/jG8pNNO
>>124
今からカオスタイムにかけてまだまだ来そうだよな
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 22:48:31.39 ID:Dbw6W6K70
>>126
把握。
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:10:13.03 ID:bZFEnH9F0
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  23時を回りました。
 |   CAUTION   .|  これ以降品評会作品を投下する方は、予約の上指示に従って投下して下さい。
 |________|  予約条件は「レス区切りまで終わり、後は投下するだけ」の状態であること。
   ∧,,∧ ||        締切は23:30となっております。規制中の方は救済スレッドまでどうぞ。
  (´・ω・)||        その際は、30行を超えていないか確認してくださいね。あちらは30行を超えても書き込めてしまいますので。
   /  づΦ
130 ◆2KdEK73apg :2010/05/02(日) 23:24:52.12 ID:JKqSAynv0
品評会投下予約します
お題:性的倒錯で全七レスです
131 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:25:06.15 ID:CIkFFwXVP
よやくー
132 ◆VrZsdeGa.U :2010/05/02(日) 23:27:16.60 ID:bZFEnH9F0
ついでに私も予約。では◆2KdEK73apg氏投下をどうぞ
【順番】
 ◆oF7EeUteGY氏
 私
133 ◆HmfYvBHWkM :2010/05/02(日) 23:28:28.58 ID:1L3vMmm/0
よやく
134 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/02(日) 23:28:43.12 ID:MZrSsm8G0
予約
135 ◆2KdEK73apg :2010/05/02(日) 23:30:23.25 ID:JKqSAynv0
すみません。長すぎる行があるようで、順番を最後に回してもらえませんか?
本当に申し訳ないです。
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:31:57.30 ID:i4ngEPUG0
すげぇ。一気に5人もきやがった・・・
137 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:34:40.07 ID:CIkFFwXVP
もう投下しても良い感じなのでしょうか?
138 ◆VrZsdeGa.U :2010/05/02(日) 23:35:08.00 ID:bZFEnH9F0
ほんとは一通り準備を終えてから予約してもらいたいんですけどね。ま、公式の運営じゃありませんしいっか。
今回だけですよ、次からは気を付けてください。では◆oF7EeUteGY氏投下どうぞ
【順番】
 私
 ◆HmfYvBHWkM氏
 ◆D8MoDpzBRE氏
 ◆2KdEK73apg 氏
139 ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/02(日) 23:35:40.89 ID:oQtH/xhH0
飛び入りで私も予約させて。
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:36:17.87 ID:i4ngEPUG0
30分以降は時間外だわさ
141最後まで勘違い野郎のまま(お題:性的倒錯)1/5 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:36:50.63 ID:CIkFFwXVP
「ごめんなさい」
 Kさんは僕に向かって、はっきりとそう言い切った。凛とした声は、誰も居ない公園に薄く響き渡っていった。
 公園の真ん中にある電灯が、ペンキが禿げてしまったシーソー、急な下り勾配の滑り台、誰かが忘れていった
黄色くて小さいバケツを、平等に明るく照らしていた。
 公園の前にある道は静かで、人も猫も通らない。アスファルトごと死んでしまったようだ。
 そしてその道から、静かに風が吹いてきていて、草と木を優しく揺らしていた。
「私、山木君のこと、男とかそういう風に考えられないの」
「友達としか考えられなくて」
 Kさんはぽつり、ぽつりと言葉を重ねていった。
 ダマにならないように、水を少しずつ加えていくみたいに。
 僕は何も言わなかった。口を開こうとしても、接着剤が塗られてしまったように上と下の唇は離れない。
 これから来る言葉に緊張して、喉の奥が異常に乾いていく。
「だから、ごめんなさい」
 Kさんは緊張した面持ちで、重々しく口を開いた。
「私、山木君とは付き合えません」
 その瞬間、時間は止まった。吹いていた風は止んで、死んだ道は相変わらずそのままで、公園を照らしていた
電灯は少しだけ暗くなった。
 そして僕は、自分の身体の変調に気付き始めた。来た、と心の中で薄く笑った。
 まず下腹部辺りからじわっと、射精したときのような快感が生まれる。
 それは、ぬるぬると体内に広がっていき、僕は目眩を覚える。
 心臓に快感が届くと、狂ったように鼓動が早くなっていき、手さき足さきに届くと、快感でふるえて止まらな
くなる。やがて、快かんは頭のてっぺんまでとどき、そのしゅん間ぼくは頭のなかがまっしろになる。きもちよ
すぎて、なにもかんがえられない。ふくかぜが、しろいひかりが、ぜんぶきもちいい。
 Kさんは、ふられたからといってなかないでよ、といっている。
 めめしいわね、などとこころのなかでおもわれてるのだろうか。
 だけど、べつにないているわけじゃない。ぼくはきもちいいのだ。
 そのしょうこに、ぼくはなみだのかわりに、よだれをたらしている。
 ふられることが、さいこうにきもちよくて、ぼくはなんかいもぜっちょうしている。
 のうみそがどろどろと、そとにとけていくようなかんかくがそこにある。
 ぼくはかいかんにみをあずけて、いしきをとばした。
142 ◆cuo2T0EVi6 :2010/05/02(日) 23:37:15.16 ID:P+vn7b9h0
時間外予約させていただきます…
143最後まで勘違い野郎のまま(お題:性的倒錯)2/5 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:37:42.31 ID:CIkFFwXVP
 初めてフられることに快感を覚えたのはいつだろうか。記憶は既に曖昧になっている。
 だがフられることが気持ちいいと感じ始める前の僕は、いろんな人に猛アタックしていた。そのことだけは鮮
明に覚えている。
 僕はあの頃焦っていたのだ。周りの友達は既に性交を経験し、僕だけが後ろに後ろに取り残されていく気がし
ていたからだ。
 だから好きで無くとも、敷居が低そうな人には、優しくして会話して仲良くする。そして、頃合を見て告白す
る。このサイクルを機械的に繰り返していったのだ。
 しかし、告白は一回も成功しなかった。そしてある時、フられることに快感を覚え始めるようになった。
 何故かは分からない。ただ、僕の中にそうしたスイッチがあって、何回もフられ続けることによってオンになっ
たのは確かだ。
 今まで築き上げてきた努力が、ごめんなさいの一言で水の泡になってしまうことがたまらなく気持ちよくて、
僕は好きでも無い人にまで告白してしまうようになった。
 僕はKさんのことは別に好きでは無い。ただの、趣味が合う女友達ってだけだ。でも、明日からはよそよそし
い関係は始まるのだろう。何十回とフられても、アフターケアだけは慣れることが無い。
 僕はKさんが居なくなってから数十分と経った公園で、ふにゃふにゃになった意識を取り戻した。
 パンツの中を覗くと、大量のカウパーでぐっしょりしていた。陰茎は拍動に合わせて、上下に動いていた。
 どんどんと、フられる回数が多くなっていくほど、快感は累乗するように高まっていく。
 いつかは、快感のせいで死んでしまうかもしれない。
 でも、この気持ちよさの為なら死んでも構わない。
 僕はズボンについた砂を払い、公園を出た。次に告白する女の子は誰にしようか、と考えながら。

 次に告白する人は、大田さんに決定した。
 大田さんというのは、高校生の時のクラスメイトのことで、常人離れした可愛さを持ち合わせている。
 サイドポニーなんて滅多に見ない髪形をしているのだが、それがまた良く似合っているのだ。
 身長も低く、そしてあどけない微笑み。全てが洗練された芸術のようだった。
 そんな可愛い彼女なのだから、もちろん世の中の男は黙ってなんかいない。
 彼女の周りには常に男関係の噂が流れていて、誰が告白しただの、誰をフっただのといった情報が一日おきに
慌しく更新されていた。
 当時まだフられることの快感を知らなかった、ただの告白魔だった僕は、大田さんには告白しても無駄だろう
と思ってスルーしていた。あの時の僕は、付き合えれば誰とでも良かったので、わざわざ大きい賭けに出るよう
144最後まで勘違い野郎のまま(お題:性的倒錯)3/5 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:38:49.99 ID:CIkFFwXVP
な真似はしたくなかったのだ。
 僕は大田さんと何の接点も無かったので、高校を卒業してからはまるっきり連絡がつかなくなったし、そもそ
も連絡する用事もなかった。
 ところが、つい二週間ほど前、僕は大田さんと偶然、夜の駅のロータリーで出会ったのだ。
 その日ロータリーは人がたくさん居て、時折鍋が吹き零れたみたいに人が車道に飛び出たりしていた。
「山木君?」
 後ろから僕の名前が呼ばれ、振り返るとサイドテールの女の子が立っていた。
 相も変わらない愛くるしさに、僕はすぐにピンと来て
「大田さん?」
 と彼女の名前を口にすることが出来た。
「やっぱり山木君だ。久しぶりだね」
「ほんと、高校なんて何十年も前みたいだよ」
「それは言いすぎだよー」
 キャハハ、と無邪気に笑う大田さんの近くには、彼氏らしき男は見当たらなかった。
 もしかして一人なのだろうか。
「今家に帰ろうと思ってたところなの。ただ、ほら。こんな良い夜空だし。真っ直ぐ帰るのは勿体無いな、と思っ
てたの。そこにちょうど山木君が居てさ。偶然ってすごいよね。とりあえず、どこかでゆっくり話そうよ」
 その後僕たちは、スターバックスに行って、お互いの近況を話した。
 大田さんは彼氏が居ないが、好きな人が居るらしい。大田さんに愛されてるなんてどんなに幸運な男なのだろ
う。
 さらに実しやかに飛び交っていた噂は全部嘘で、本当は誰とも付き合ったことが無いらしい。
 これには僕も驚いた。
「それ本当のことなの?」
「うん、本当。さっき、好きな男の人って言ってたじゃん。その人、実は高校の時から好きなの。でも、結局振
り向いてくれることなんて無くて……。私が消極的すぎただけなんだけど」
「へえ、大田さんに興味ない男っているんだ」
「居るよ」
145最後まで勘違い野郎のまま(お題:性的倒錯)4/5 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:39:32.74 ID:CIkFFwXVP
 大田さんは即答して、その後に顔を赤らめてしまった。
「ご、ごめん。何か自分ことばっか喋っちゃって」
「いや、良いんだよ。僕なんて話すような近況なんて何も無いよ」
「そっか」
 テーブルの間に、まるで天使が通って行ったかのように、沈黙が訪れる。
 少し気まずくなってきた瞬間、大田さんは立ち上がり、そろそろ行こうと言った。
「待って、大田さん」
「な、何?」
 僕は自分の携帯を取り出し、メルアドと口の形だけで大田さんに伝えた。
 それが、彼女と僕の接点となった。

 それから大田さんと僕は何回か遊びに行き、2日に1回くらいメールのやり取りをした。
 大田さんは高校時代と変わらず天真爛漫で、一緒に遊んでる僕もすごく楽しい。
 ただその楽しさは、フられることの快楽というテンプレートによって形作られたものだ、と僕は思った。
 結局は、その枠組みの中でしか快楽を享受できなくなっていたのだ。快楽を貪っているのは僕だと思っていた
が、気がついたら自分が快楽に縛り付けられていたのだ。滑稽で仕方が無かった。
 ある日、僕は大田さんを家まで送り届けた。大田さんの住むマンションは、オレンジ色のような照明で、優し
く照らされていた。しかし、エントランスのすぐ横に自転車置き場があって、そこだけが異次元のように、鋭く
白い蛍光灯の光で眩しかった。
 僕はその光で決心した。ずるずるやっていても、仕方ない。ケリをつけて、快楽に溺れるのはここだ。
「大田さん」
 彼女がマンションに入っていこうとするのを、言葉で制した。
「ん? どうしたの」
「ずっと前から言いたかったことがあって」
 大田さんはこっちに半身を向けたまま、固まっている。
 僕は大田さんとは逆の方向を向いた。空にはくっきりとした下弦の月が浮いていた。
「いや、もしかすると高校時代からかもしれないけど、僕は大田さんのことが好きだ。いっつも目で大田さんの
ことを追ってたりしてたけど、今の今までこれが恋だなんてこと気付かなかった。好きな人のことはよく分から
ないけど、でも僕は大田さんに付き合って欲しいんだ」
146最後まで勘違い野郎のまま(お題:性的倒錯)5/5 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:40:15.83 ID:CIkFFwXVP
 そこまで言い切って向き直ると、大田さんは足元を見つめていた。
 その姿を見て僕は、また失敗に成功した、と内心でニヤリとほくそ笑んだ。
 そして、大田さんはゆっくりと顔を上げ、言った。

「嬉しい」
 大田さんの顔は涙で濡れていた。僕は涙で反射する光に戸惑った。
「私、意地悪なこと言っちゃった。この前ね、この前会った時に好きな人って言ったの。あれ、山木君のことな
の。でも山木君、私には見向きもしないし、駅前で会った時もそんなに感動してなかったし。やっぱり私って女
の子として見られてないのかなあ、とか思ってた。でも、山木君も私のこと好きだ、って言ってくれて、私すご
く嬉しいの。こんなことで泣いちゃって、重い女みたいでサイアクだよね」
 大田さんは語りながら、右の目を擦って、左の目を擦って、また右の目を擦っていた。
 まさかこんな事が起こるだなんて。僕は、泣きじゃくる大田さんの目の前で呆然としていた。
 鋭い光とやわらかい光とくっきりした光がごちゃ混ぜになって、僕の目に届く。
 ここからずいぶんと離れた所を走る車の、アスファルトを蹴る音が、僕の耳に届く。
 道からそれてしまった僕を置いて、時間の秒針は正確に時を刻んでいく。
 そのカチリ、カチリという音に僕は目を覚まさせられた。
 そうだ、僕はとんでもない勘違い野郎だったのだ。
 誰が、これくらいの女の子となら付き合える、セックスできると思っている男と付き合うのだ。
 僕なら、そんな奴と付き合うわけない。
 それなのに、僕は思い上がって、落ち込んで、倒錯していって。何てバカなのだろう。

 僕は小柄な大田さんを抱きしめた。
 顔と顔の距離が近づいた瞬間、お互いが唇を求め合うように動いて、舌を絡め合わせた。
 二度、三度。息を継ぎながら、口付けを交し合った。
 そこに、昔の、勘違いして快楽主体で動いて人を傷つけるような僕は、もういない。
 僕は、決して大田さんを離さないと、誰にでもなく誓った。
 それは都合の良い男の戯言に違いないし、後で反動も帰ってくるのだろう。
 だけど、だからこそ僕は誓ったのだ。それが罪滅ぼしの1%にでもなればいいのだが。[了]
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:41:34.58 ID:i4ngEPUG0
しっかしvipperのゴールデンウィークはこうだよなぁ。自宅警備
148 ◆oF7EeUteGY :2010/05/02(日) 23:41:47.77 ID:CIkFFwXVP
以上です
149 ◆VrZsdeGa.U :2010/05/02(日) 23:43:10.38 ID:bZFEnH9F0
お疲れさまでした。では私が投下します。
>>139>>142
時間外での予約でしたのでご了承ください。

【順番】
 ◆HmfYvBHWkM氏
 ◆D8MoDpzBRE氏
 ◆2KdEK73apg 氏
(時間外)
 ◆7C6LTZ08z6氏
 ◆cuo2T0EVi6氏
150山草子1/3 ◆VrZsdeGa.U :2010/05/02(日) 23:45:07.26 ID:bZFEnH9F0
 澄み渡る蒼穹の下、西に見える山脈は群青の肌をあらわにし泰然と佇立している。南から北へなだらかな稜線が伸びる中、
一か所、傾斜のきつい尾根が馬の背を模したように盛り上がっている。そこをくだり、うねる稜線を少したどると今度は傾斜
の緩やかな小さい尾根に行きあたり、さらにたどれば頂点が判然としない饅頭を乗せたような尾根に出くわす。
 その様は女が寝そべっているように見える。一つ目が足首、次が胸、最後が顔。
 豊かな姿態を見せつつも、折り重なった山稜の上にひっそりと伏せているせいか、淫らなところはない。強かに求めること
はなく、訪れる陽光や空模様を穏やかに包み許容するような慈愛だけがある。
 山下に見える村は、背に広がる母性へもたれるように屋根や田畑を並べていた。

 大らかな姿勢は矮小なものを軽々と包む。
 しかし全幅の愛情はそこにない。大きなものにとっての小さきものたちとは群がる迷羊に過ぎず、いわんや一個の人間をや。
一個の人間にとって分け隔てない隣人愛は、わずかなるおこぼれに過ぎない。
 しかし、そうしたことは大きなものにとって意識の如何を問わず与り知らぬ所であり、やがて愛情は徒花となる。
 静謐な魅力は時に人を狂わせる。
 苛烈な求愛をしようとも相手が揺らがねば甲斐がない。次第に人は無駄を悟る。だが無駄と知りつつも愛し続ける者もいる。
そこには自負心がある。我こそあの美しきものを抱ける者だという誇り。
 応えてくれぬことを知りつつも、ではない。応えてくれぬことを認めぬのだ。深みにはまった思慕は見ようによっては悲壮
だが、掘り返してみると狂気が根付いているものである。狂気はとどまることを知らず愛情を先鋭化させ、人間本来の望みを
明らかにする。
 動物的な欲望をあらわにした人間は恐ろしい。が、それを他人事とできようか。成就の叶わぬ欲望がはけ口を求める時、
我々は人間の内に潜む本性をまざまざと見せつけられるのだ。

 赤焼けが山を彩る。
 春先の桃に近いほのかな光は乙女の目覚めにふさわしい。
 昼の光で稜線をつまびらかにされていた山脈は、姿をしばし韜晦する。稜線を覆う雲海がそれをよく助け、山相は初めて淫
靡となる。光にたゆたう稜線はいじらしく脈動する。山は淫らな色を肌に示し、沈みゆく太陽という威容を誇るものを呑みこ
むことで、本来の性格を涵養していく。
 やがて訪れる夜闇にまぎれた姿態は、いかにうごめいていることだろう。

 目に焼きつく美しき姿と、その内奥をみれぬもどかしさによって、人の心には葛藤が生まれる。美しさは罪ではない。惑わ
される者こそ罪がある。
151山草子2/3 ◆VrZsdeGa.U :2010/05/02(日) 23:46:14.19 ID:bZFEnH9F0
 春の山には侘しさがある。
 乾いた空気と柔らかな陽光によって、山の肌は淡く霞んだ青に染まる。冬の名残を残した雪渓の白がそれに混じり、侘しい
粧いの効果を高めてくれる。
 下々には緑が萌え出でているにもかかわらず、中天へと伸びる山峰はあくまで超然としている。
 下界に遅れを取った姿には、季節の去り際の儚さが宿る。

 行き場のない憧憬と反動としての暴力は頂点をむかえる。浮世を超越した存在は多くの愛をまぬかれない。それを受け止め
きれる力は、人間にはない。

 夏の山には豊饒さがある。
 芳醇な自然を蓄え、涼しげな山気を漂わせた道には、多くの人が招き寄せられる。
 せせらぎや囀りが反響し、草花の彩りが辺りを覆う様は過剰なところがなく、全てが意図のもとで設えられたかのように整
然としているため、見る者を安らぎへといざなう。
 あらゆるところから声が上がり、重層的に成立する賛歌には粗がまるでなく、山という舞台を通じて生まれる調和だけがあ
りありと表れる。
 それを愛でてならぬ道理などない。人の敬慕も山が織りなす協奏の一つとなる。

 とはいえ、それに比べればやはり人は矮小なる存在にすぎない。少しでも多くのものを取り込めばひずみが生まれ、ひずみ
が広がる頃には不純物を溜めこもうとも吐き出そうとも、その身は滅びゆくしかない。

 嵐の山は大いに乱れる。
 大きな渦を巻き襲いかかる暴風は木々を揺らし、分厚い雲海が招く闇は山脈に幕を巡らし、地上に先んじて届く雨は地面を
濡らし、岩壁を崩し、川を氾濫させ、凄絶な光景を山にもたらす。
 山は堪える。いずれ訪れる平穏を祈り、いかなる困難に見舞われようともその身を崩すことなく泰然と立ち続け、最後には
自らが持つ鷹揚さで嵐さえ取りこんでしまう。
 嵐が去り、滴る水の照り返しで輝く山相は忍苦を潜り抜けた後の晴々しさに満ちている。湛えた表情は、男よりも雄雄しい。

 ひずみは極地へと向かう。抑えきれぬ衝動は他人の尊厳を略奪する。
152山草子3/3 ◆VrZsdeGa.U :2010/05/02(日) 23:47:47.39 ID:bZFEnH9F0
 秋の夕焼けは鮮烈な印象をもって映える。
 碧空は漸進的に色を変え、眩く淡い光に覆われる。
 散乱した鰯雲は紫に近い色となって怪しげに浮かぶ。
 山は肌を覆う紅葉さえ地肌に取りこんでしまうほど赤く染まる。
 山際はひたすら揺れる。乱反射する光を空に投げかけ、あられもない姿を地上にむき出しにする。身をよじる様は陶酔に満
ち艶めかしい。
 一通り嬌声をあげ、夕焼けを取り込んだ後、山は薄闇に包まれる。先刻の狂乱を追いやり、しじまへと落ち着く稜線には全
てを知った本物の優しさがあふれ出ている。
 
 血は興奮さえ醸さない。殺める者には、ただ絶望だけがある。

 絢爛たる装飾が失われ、冬の山は再び寂寥に見舞われる。
 めかし込んだ姿は季節と共に去り、枯れ果てた自然は静寂を呼ぶ。多くの風が通り抜け、陽光は静まり、茫漠とした風景が
露わになる。
 しかし、ほどなく雪が訪れる。季節の風情をもっとも良く表す来訪者は、稜線を白く染め清らかな粧いを施してくれる。
その様は華美なところがなく、愚直ともいえる澄んだ趣きが息づいている。

 失意によどんだ心は抑制を失い、完全なる狂気によって突き動かされる。最早、人間の身は壊れるしかない。

 夜の山は幽玄な帳の中に身を隠す。空に輝くものは、ない。

 現世から引き離され、何も見えなくなった時人の欲望は失われる。届かぬ想いに対する諦念と無念を心に宿しながら。

 季節は巡りまた春がやってくる。
 山は笑う。生い茂る緑をまとい、かすかな光を浴びながら、慈悲深い表情で地上を見据えている。
 山はひたすら受け入れる。受け入れぬものはない。そのかわり、特定の何者かを愛すこともない。
 寛容と残酷の表裏一体を体現する姿は人知を超えてしまっている。しかし、それで山が咎められるはずもない。
 消えゆく命も山は受け入れる。地上を母性豊かな抱擁をもって囲みながら、愚劣さも何もかも自らの中に引き入れ、今日も
西の空に泰然とそびえている。
 この堂々たる自然に見下ろされた人間という存在は、なんと脆弱であることか。
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:48:47.84 ID:bZFEnH9F0
投下終了。では◆HmfYvBHWkM氏、投下をどうぞ

【順番】
 ◆D8MoDpzBRE氏
 ◆2KdEK73apg 氏
(時間外)
 ◆7C6LTZ08z6氏
 ◆cuo2T0EVi6氏
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:48:48.73 ID:U/jG8pNNO
志村ー、使ったお題ー
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:49:50.69 ID:bZFEnH9F0
あら失敬、使ったお題は性的倒錯です。
156Sister Princess(お題:性的倒錯) 1/5 ◆HmfYvBHWkM :2010/05/02(日) 23:50:06.06 ID:1L3vMmm/0
「ごめんね、裕也、真美……ふたりで、強く、生き…て…」
 それが、母さんの最後の言葉だった。同室していた看護婦さんが、木綿のハンカチを片手に涙を流している。血縁関係でもないのに、何で泣いてるんだろうね?
 まあいいや。とにかく、これからは妹と二人っきり。誰にも邪魔されない二人だけのパラダイスが始まるんだ。
 母さんの死は悲しい。二年前に父さんが消えてから、義務教育を終える今年度まで育ててくれた事実に感謝している。借金とは無縁の生活を送れたのも母のおかげだ。
 そして何より親孝行をしてやれなかったことに後悔している。けど、それはそれ。これはこれだ。
 この理想的なシチュエーション、想像するだけで顔がにやけてしまう。
 幼くして父親が蒸発し、母親が死んでしまったかわいそうな真美。この子にはもう、僕しか頼りになる人間はいないのだ。
 未だに母の死を理解できず、ただきょとんとするだけの妹を見て、僕は心の中でぽつりとつぶやく。
「さあ、楽園生活の始まりだ」
 わずかに開けられていた窓からは、新春の陽光に照らされた風が心地よく吹き込んでくる。それは僕ら兄妹の人生の門出を祝っているようで心地良かった。


「おはようじょおおおおおおおおおお!」
 午前7時過ぎ、起床を知らせる恒例の掛け声と共に、目前の布団を盛大に引き剥がす。中から現れたのは、眠い目をこする麗しい我が姫君。中村家の一日がこうして始まった。
「さあ、今日ははじめてのがっこうだよ、遅刻しないようにさっさとお着替えしましょうねぇ〜」
 起き掛けで無防備状態なお姫様に対し、素早く胸部を抱きかかえて立たせる。よし、違和感なく極自然的に第一のミッション「ぱいたっち」成功だ! 直の感触を確かめられなかったのが不満だが、今日も相変わらずぺったんこで何よりである。
「朝からきもいなぁ、着替えくらいもう一人でできるから」
 ボブカットの幼女はぼそっとつぶやくと、枕元に置いてあった衣類に手を伸ばす。うおおおおお、ようじょの生着替えきたあああああ!
「気持ち悪いっ、このへんたいっ!」
 不機嫌な果実はすっかり弛緩しきった僕の顔面に張り手を食らわす。乾いた音が派手に鳴り響くがなんの、こんな事で我が愛しのつるぺたおっぱいを諦める訳にはいかない。第二のみ……ぎゃあああああ!?」
 張り手では効果がないと悟った真美は、あろうことか人差し指と中指を僕の鼻の穴に勢いよく突っ込んできた。この予想もしてなかった一撃に僕は転倒し悶絶、部屋中を勢い良く転げ回る。
 妹はそんな僕を汚物を見るような目で一瞥すると、着替えと一緒に別の部屋へ消えていった。
157Sister Princess(お題:性的倒錯) 2/5 ◆HmfYvBHWkM :2010/05/02(日) 23:51:32.24 ID:1L3vMmm/0
 くそっ、第二のミッションは失敗に終わってしまったか。
 ここ最近は未達成に終わってばかりという残念な事実を噛み締め、明日はどんな作戦を展開しようかと考えながら、朝食を二人で一緒に食する。
 目の前にいるくりっとした目が特徴的な女の子。もちろんこれも毎日の日課となっているのだが、一挙一投足を注意深く観察する。
 ケチャップとマヨネーズを混ぜたものに、とろけるチーズをのせてこんがり焼いたパンをおいしそうに頬張る真美。その小さな口で一所懸命にエネルギーを摂取する姿は、見ているこちらも微笑ましくなってくる。
 そしてトーストを食べ終え、まだ湯気が立ち上るミルクティーを桃色吐息で冷ます妹は、この世のどんな生物よりも輝いて見えた。
「今日も……くるの?」
 不安を顔いっぱいに表しながら、真美が消え入るような声で質問を投げかける。
「もちろんだぜ、始業式もお兄ちゃんに任せろ」
 本当は行けないけどその憂いを吹き飛ばしてやるため、胸を張って自信満々に優しい嘘をつく。なあに、周りから注目されるのは慣れっこだ。入学式もそうだったが、奥様方の中に一人若い男が混じるというのも趣があってなかなか悪くない。
「いやっ! へんたいが来ると恥ずかしいっ!」
 失敬な、こう見えて僕は対外的には紳士として通っているんだぞ? 公園デビューも立派に果たしてるし。
 このまま妹の困った顔を見るのも中々にオツなものだけど、我が家のプリンセスにはいつでも輝いていてほしいから、始業式には行かない事を伝える。まあ、バイトがあるからどっちみち今日は駄目なんだけどね。
 安心したのか、喜色満面の笑みを浮かべる我が妹。うん、やっぱり笑顔が似合ってるな。続けて集団登校に同行しようかという提案をすると、慌てて全力で拒否されたのでここは自粛する事にする。
 愛する妹を悪ガキどもに取られないか心配だけど、まあ問題ないか。間違いは起こらないと信じたい。
 食べ終えた真美が食器を洗い場へ持っていく。ちょこちょこと動き回る様が小動物を連想させて何とも言えない愛くるしい気持ちを覚えてしまう。
 ああ、これでギシギシィという耳障りな音がなければ完璧なのに。床板が鳴るような貧相なアパート暮らしをお前に強いてしまう愚かな兄を許してくれ。いつしかお金を稼いで普通のマンションに引っ越そうね。
 学校の用意を手早く済ませると、行ってきますの声と共に、愛くるしい天使は我が家から飛び立っていった。


 ごめんよ真美、許してくれ。お兄ちゃんはお前のことが心配なんだ。
 集団登校中の小学生達を後ろから尾行する僕。前を歩く小学生の固まりの中には我がエンジェルの姿も見える。物陰に隠れつつ、息を殺しながら前方の小学生達を凝視する。もちろん視線の先には、妹だ。
  親御さんも複数いるし、日中から襲うような愚か者はいないだろうけど、もし暴漢に襲われでもしたら即効で飛び出してやる。そして渾身の金的をお見舞いしてやるんだ。
158Sister Princess(お題:性的倒錯) 3/5 ◆HmfYvBHWkM :2010/05/02(日) 23:52:28.73 ID:1L3vMmm/0
 そんな心配をしながら家を出て約10分、それは杞憂に終わった。
 無事に登校を果たした真美を見届けると、思わず安堵のため息を漏らす。
 が、校門の近く、イチョウの木の下に立つ人影と目が合ってしまう。その瞬間、僕の緊張は再び高められる。
 数日前から僕ら兄妹の周りにつきまとうストーカーだ。逃げていてもラチがあかないし、こいつとは一回きちんと話し合わなくちゃいけない。
 僕は意を決すると、視線が交錯した人物の元へつかつかと歩み寄る。
「やあ裕也、やっと近くに来てくれたね」
「とっくの昔に僕らを捨てたくせに、今更どうしたんです? もう用はないはずですが」
 以前父親だった人物を正面から睨みつける。気まずいのか、相手は僕から目線を外す。
「用があるからここに来たんだ。単刀直入に言おう。真美と三人で一緒に暮らさないか?」
「よくそんな都合の良い事が言えますね。母さんの葬儀にも来なかった人間が」
 間髪入れずに言い返してやる。用件内容は想定内のものだったし、母さんに対して謝罪の言葉ひとつすらない自分勝手さには腸が煮えくり返る。
 そして何より、これまで築き上げてきた妹との生活を壊そうとしているこいつが許せなかった。このロリコンめ、ふざけるんじゃないよ!
「母さんのことは悪かった。あの時は俺も他の女に惑わされてしまったんだ。今は事業が成功したおかげで、財産も手に入った。裕也と真美には迷惑をかけてしまったが、これからは何不自由ない暮らしがさせてやれる」
 父親だった人間は必死に僕に呼び掛ける。相手は僕達の事を思って言っているのかもしれないけど、僕だけの妹を奪おうとするのは絶対に許せない。顔も見たくない。
「四年間の間に何があったか分かりませんが、僕達は今のままで十分生活できています。帰ってください」
 ここで興奮して大声を出しても何もならない。心を押し殺して冷静に対応するが、対峙する方はなおも食い下がろうとする。
「そうだ、真美の意見を聞こう。それがいい」
「その必要はありませんので、速やかに僕達の前から消えてください。では僕はバイトがありますので失礼します」
 このまま押し問答を繰り広げても埒があかないし、シフトの時間も迫っている。この鬱陶しい男に対し軽く一礼すると、後ろを振り返らず駆け足で立ち去る。
 何なんだよ一体。突然僕達の前に出てきて! この幸せを壊されてたまるかよっ。
 僕はとにかく走った。脳裏で必死に妹の可愛らしい笑顔が浮かべる。そうでもしないと僕の手の届く所から消えてしまいそうで怖かった。
159Sister Princess(お題:性的倒錯) 4/5 ◆HmfYvBHWkM :2010/05/02(日) 23:53:36.71 ID:1L3vMmm/0
 バイトが終わると、寄り道もせず足早に自宅のアパートに戻る。妹に鍵は持たせているが、心の中には辺り一面の不安が覆っていた。
 これまで僕は真美のためならいくらでも働いた。高校時代から普通に働いてたし、卒業してからは大学には行かずひたすらバイト漬けの日々を送る毎日。
 幸い、母親の保険金があったので高校時代は何とか生活できたし、卒業後はバイトを掛け持ちしてやっていけている。
 僕だけのプリンセス、僕だけのお姫様。その屈託のない笑顔、柔らかい肢体、未成熟な身体。その全てを一人占めできるなら、どんな日々も楽しく過ごせる。
 真美への想いを高めつつ、ボロアパートの階段を上る。次のバイトの時間まで家で休もうと思ったら――先客がいた。僕らの愛の巣の前に。
「おかえり、裕也」
「いい加減にしてください、警察呼びますよ?」
「呼ばれちゃ困るなぁ、はははっ」
 かつて父だった男――松岡亮介は愛想笑いを浮かべるが、目は笑っていなかった。
「なあ、本当にすまなかったと思っている。自分の我儘で二人に迷惑をかけた事も、お母さんに報いられなかった事も」
 目を伏せがちにして言葉を続ける松岡。
「だから……ウチに来ないか」
 母さん以外の女に飽き足らず、今度は自分の娘に浮気ですか? 見下げ果てたもんだ。僕のように一途な愛に突っ走ってみろよ。
 たまらず何か罵倒する文句を投げかけようと思った時、ふと、僕の後ろに人の気配を感じた。
「おお、真美か? 大きくなったなぁ、父さん帰ってきたよ」
 ハッとして後ろを振り返る。そこには赤いランドセルを背負ったボブカットの女の子が立っていた。今の状況が飲み込めないのか、特徴的な小さい口を半開きのままぼーっとしている。
「おとう、さん?」
「そうだよ、お父さんだよ。お兄ちゃんと一緒に僕と暮らさないかい。」
 天敵はなおも言葉を続ける。やめろ、僕だけの妹を奪わないで。
 愛する妹は突然の事で全く反応できていない。一気に押し切ろうと思ったのか奴は矢継ぎ早に話しかける。
「お金もある。何不自由なく生活できるし、三人で一緒に暮らせればそれだけでいんだ」
 やめて、それ以上近づかないで、喋らないで……僕からいもうとを取り上げないで!
「これ以上妹をたぶらかすのは止めてください! お引き取りください!」
 無我夢中で松岡に詰め寄る。その時の僕はどんな顔をしていたかは分からないけど、僕の表情を見た妹がヒッと小さな叫び声をあげた。
「もう気は済んだでしょう? これ以上僕達を困らせないでください、よけいなお世話です!」
 相手が何かを言いかけるが、そんなの関係ない。
160Sister Princess(お題:性的倒錯) 5/5 ◆HmfYvBHWkM :2010/05/02(日) 23:54:29.10 ID:1L3vMmm/0
「さあ、早く帰ってください、帰ってくださいよっ!」
 解き放たれたマシンガンのように喋り続ける。だめだ、もう止まらない。昔の父につかみかかろうとしたその時、
「やめて、お兄ちゃん!」
 甲高い声が辺りに響く。
「もうわかんない……お父さんが出てくるし、お兄ちゃんは怖いし……」
 真美の両頬には、光る一筋の雫が流れ落ちている。
「みんないやだよっ、こわい顔しないで……」
 自分もしっかりしないといけないと思ったんだろう。ある時から、僕の手をほとんど煩わせなくなった真美。
 それは僕が久し振りに見る、愛する妹の泣き顔だった。
 ――しばらくの、沈黙。
 悲しい気持ちになってしまう。妹にこんな辛い思いをさせてしまったのは誰だ?
 その答えを考えた時、突然とてつもない嫌悪感が襲ってきた。
「分かりました、お話は聞きます。同居の件は真美とじっくり話し合って検討したいと思いますので、今日はお引き取りください」
 そう絞り出すのが、やっとだった。


「その、怖がらせてしまってごめんな」
 部屋に戻った僕らは、応接間でゆっくり話し合う。沈んだ空気を引きずりながら。
「僕、真美の事が好きなんだ。だから、お前を取られてしまうか不安になって……」
「いいよ、許してあげる。だから、泣かないでね」
 えっ……とてつもなくあっさり許してくれた。
 にこやかな笑顔を浮かべ、さらに話を続ける可愛い我が妹。
「へへっ、あたしお兄ちゃんが頑張ってるの知ってるもん。だから、今日は許してあげるっ」
 そっか、良かった。本当に良かった。やっぱり真美は僕の最高のプリンセスだ!
「ありがとう。よしっ、そうと決まったら、第二のミッション遂行だっ!」
 気合一番、真美の服を脱がせようとする。さあ、裸になっておどろうy……ぎゃあっ!
 股間に強烈な衝撃が走る。妹の渾身の金的が決まったのだ。
「ばかっ、へんたい! もう知らない!」
 そう言うと、別の部屋へ逃げ込んでいく愛する妹。放置された僕、団子虫のように丸まって身をよじる。
 正直、これから解決しないといけない問題は山積みだ。だけど、妹となら必ず乗り越えられると思う。そう感じさせてくれた一日だった。
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:55:11.75 ID:1L3vMmm/0
以上です
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/02(日) 23:56:12.26 ID:bZFEnH9F0
お疲れさまでした。では◆D8MoDpzBRE氏、投下をどうぞ
【順番】
 ◆D8MoDpzBRE氏
 ◆2KdEK73apg 氏
(時間外)
 ◆7C6LTZ08z6氏
 ◆cuo2T0EVi6氏
163手をつないで(お題:性的倒錯) 1/7 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/02(日) 23:56:47.92 ID:MZrSsm8G0
 私が杏子さんという女性に告白をしたのは、桜がまだつぼみも付けていない時期だった。前の週に東京では珍しく大雪
が降ったので、その日は街の至るところに残雪が見られた。
 駅の改札を通り抜けようとしている杏子さんを見たときから、そうしようと決めていた。雪が溶けてからでは遅いのだと、
根拠もなく気が急いた。寒い日に人混みをかき分けるのは気持ちが悪い。やっとの思いで杏子さんの姿を見つけた。夕
日を顔に受けて、少し分かりづらかった。
 総武中央線、市ヶ谷駅。帰る向きが違うから、話をできる時間はとても短い。
 きちんと伝えられるだろうか。私は女で、杏子さんも女。本来ならば私たちは永遠に交わることのない平行線のはずだ。
 でも、その手の噂がされているのを、私は小耳に挟んだことがある。つまり、杏子さんはあっちの人だ、という類の噂だ。
何を根拠にしていたのかは分からない。傍目から見て、その気云々に関しては、気づかれるレベルではなかった。
 でも、私はその噂話にも乗せられる格好で、ともかく杏子さんに惹かれていった。これはどうにも抗いがたい流れであり、
私にとっては必然だったのだ。
 杏子さんは私よりも二つ年上で、この春から社会人になる人だ。つまりまだこの時点では、間近に卒業を控えた一介の
大学生だ。同時にサークルの先輩でもある。腰のあたりまで伸ばした黒いストレートヘアが特徴的な、とても物静かな女
性だ。
 柱にもたれている杏子さんに話しかける。こんにちは、とか。杏子さんは右手を少し挙げて応えてくれた。慌てて追いか
けてきたという素振りを隠すために、息継ぎを我慢し、私の脳は酸欠になる。
「もうすぐ、卒業、ですね」
「うん、そうね」
 世間話に対して、素っ気ない態度。早くもくじけそうになる。杏子さんはコートのポケットから携帯電話を取り出し、おもむ
ろに画面を眺め始めた。幸いまだ電車は来そうもない。
「六週間」杏子さんはそう言って、携帯電話を折り畳んだ。
「え?」
「大学生にもなって卒業式、か。着物っていまいち好きになれなくて。着て行かなきゃいけないものかしら」
「先輩なら、似合いますよ。別に、スーツみたいなのでも、いいかも知れませんが」
 自分が何のためにここまで急いできたのか、少し忘れそうになっていた。深く息を吸い込む。二月の空は夕焼けまでも
が湿っぽく、肺の底にまで重い空気が忍び込んでくるようだった。
 吐き出すものまで湿っぽくならなければいいけれど。
「でも、残念です。先輩が卒業して会えなくなるのは。私、先輩が好きだったから」
 あわよくば、どうとでも取れるように言葉を選んでいた。白い吐息がすぐ消えてしまうのと一緒で、言葉が重みを持つ前
に消えてしまうなら、それでも構わない。その時の私は、きっとそういう気分だったのだろう。
164手をつないで(お題:性的倒錯) 2/7 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/02(日) 23:57:23.24 ID:MZrSsm8G0
 気がつけば、上り電車と下り電車がほぼ同時に、駅のホームに迫っていた。
「その言葉、私にそういう趣味があるのを知ってて言ってる?」
 杏子さんはそう言った。まるで物怖じせず、むしろ大した興味を抱いていないかのような平静さで。
 自分のことをあちこちで噂されていることも、知っていたに違いない。そうした事実すら平然と飲み込んで、別に?みた
いな顔をして生きているのだ。
「……何となく、そうかもって思ってました」
「あなたの何となくは当たるのね」
 そう言って、杏子さんは構内に入ってくる電車に目をやった。私たちは、うねるような風に巻き込まれた。身をすくませる
と、杏子さんの腕が私の腰のあたりに回ってくるのが分かった。
 すがるように受け止めた杏子さんのすべて。私のことを試そうとしたのか、弄ぼうとしたのか、それともそれが彼女の本
気だったのか。ともかく杏子さんはあらゆる意味で手練だった。
 いつもと異なる帰り道。たどり着いた先がホテルだったときも、私は努めて平静を装った。やっと届いた気持ちが、きっと
これを拒んだら終わってしまう。日はすっかり落ちていた。暗がりの中で、ホテルの電飾がやけに目に痛かった。
 ……
 私にとっての初めてが終わったとき、杏子さんは優しかった。たくさんキスをしてくれた。へとへとになった私の体を、
お姫様にするように扱ってくれた。素っ気ない言葉や態度とは裏腹に、体で触れ合うときの杏子さんはとても情が深
くて、暖かくて、柔らかい。
 肺の底にたまっていた不安の種は、いつの間にか消えていた。ベッドのシーツから漂う布地の匂いが、私の体を軽
くしているみたいだった。
 杏子さんは言った。私のことをかわいいと何度も。そして、私の髪を指で弄ぶのだ。いつまでも。
 きっといつか、これをしてくれないと眠れなくなってしまうかも知れないくらいに、杏子さんの手つきはとても気持ちよかった。
 まぶたが、私の視界に小さな陰を作った。
 部屋の調光は、暗さに馴染んだ目にもちょうどいい。
 遠くから、雨の音が聞こえた。

 やめようと思っていたのに、ついにやめられなかった。きっかけは新たなきっかけを作る。スプリングコートを着ると少し
暑くなりそうな陽射しだったが、夕方になればどうせ寒くなるのだろう。美紀ちゃんが待っている。
 会社の研修が一段落し、平日であるにも関わらず休みをもらうことが出来た。僥倖には違いない。そのことを美紀ちゃん
に話そうか少し迷ったが、結局は包み隠さず伝えてしまった。喜ぶ彼女の顔はかわいい。きっと男の子にだってモテるだろ
うに、と思うけれど、言わない。何を言ったら機嫌を良くし、何を言ったら機嫌を損ねるか、短いつきあいの中で分かること
165手をつないで(お題:性的倒錯) 3/7 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/02(日) 23:58:01.89 ID:MZrSsm8G0
もあるのだ。
 女の子とつきあうのは、これが初めてではない。高校時代に後輩に告白されたのがきっかけで、私にしてみればそれは
ちょっとした好奇心にすぎなかった。男と別れたばかりでむしゃくしゃしていたというのもあるし、女の子同士のじゃれあい
の延長だと思っていたのだ。
 でも私の好奇心は、今考えるとちょっと行き過ぎた面もあった。つまり、つい先日までつきあっていた男と経験したアレや
コレを、女の子同士でも試してみようとか、そういう流れを作ってしまったのだ。
 気持ちよければそれでいい。だから、女の子とだってつき合える。極論してしまうと、私にとってセックスと恋愛は別物だ
し、恋愛と人生だって別物だ。でも、この人の規格から逸れたセックスのせいで、私はまともな恋愛から遠ざかってしまった。
 みんな、どうしてそこを不合理に考えるのだろう。
 東京駅にしよう、と美紀ちゃんが言った。まずは丸の内を見て、そのあと銀座の方に歩いてショッピングをしたいとか。
私には特に買うものがなかったし、美紀ちゃんだってそんなにお金を持っているわけではない。それでも、別にウインドウ
を眺めているだけでもいいらしい。手に届かないものの姿をガラス越しに楽しむのだ。
 久し振りに山手線に乗った。人が多いところは嫌いだが、特に電車は最悪だ。無限の円環を回り続ける山手線内回り。
連鎖を断ち切るにはどうすればいいのだろう。最近そんなことばかり考えている。電車が走り続けているのはダイヤのた
めであって、惰性の結果ではない。だから、いま私が乗っているこの山手線に、答えも手がかりも用意されていない。
 それにしても今日は暑くなりそうだ。そろそろ日焼け止めを用意してもいいな、と思う。

 桜は散ってしまった。あれだけたくさんあった桜の花びらは、どこへ消えてしまったのだろう。人に踏まれ、アスファルト
の隙間に押し込められ、今やこの世のどこにもいないのだ。
 彼らのことを思うと、ちょっぴりだけ切なくなる。
 皇居のお堀を離れて、丸の内のビル群へ足を向けた。平日の午前中だから、人の影はまばらだ。私のように暇な女
子大学生が、そうそう油を売りにこんなところまでくることはないらしい。しっかりここまで大学の単位を取ってきた私への
ご褒美だ。
 もっとも、私の場合はデートをしにきたのだ。油を売るばかりではない。
 秘密のデート。
 やましいところは何一つないのだけれど、他人には話しづらいことがある。不倫を隠しているわけではない。でも、不倫
のカップルが自分たちを偽装するようには、私たちはうまく擬態できない。
 私は女性が好きだ。性的な意味で、同性である女性が好きなのだ。
 好きになってしまったのがたまたま女の子だった、というのとも違う。男に対する幻滅だとか不信・恐怖があるわけでも
ない。弁解のしようがなく(するつもりもないが)、私は生まれながらに女の子以外を好きになることができないのだ。
166手をつないで(お題:性的倒錯) 4/7 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/02(日) 23:58:58.32 ID:MZrSsm8G0
 通りを挟んで杏子さんの姿を見つける。コートの前をはだけて、少し着込みすぎたなという顔をしていた。信号は中々青
にならない。
 男同士ではそうはいかないのに、女同士なら往来の真ん中でも堂々と腕を組める。何なら手をつないだって、そうそう
不自然ではない。歩行者専用の交通標識は、大人と子供が手をつないでいる構図になっている。ちょっと体格差が極端
だけど、私はそういうのに憧れていた。
「何をにやけているの、気持ち悪がられるよ」
 いつの間にか信号は青になっていた。
 杏子さんが私の頭を軽く撫でる。そうやってきっと私の気持ちを全部読んでしまうのだ。だから、私は嘘をついて意地悪
をしたくなる。
「イヤらしいこと考えてたの。私、杏子さんの舌使いが好き」
「今日はおいしい中華料理を食べようか。王将の餃子なら、食べたら一週間はニラ臭さが抜けないし最高よ」
「もう、杏子さんって意地悪」
 閑散とした丸の内の中通りを歩く。何もかもが静かで、風が吹いた時だけ時間の流れを感じられる。並木は青々として
いて、見ているだけで心の芯から洗われるようだ。
 ショップのウインドウが近づいてくると、少しだけ歩行者が行き交うようになった。
「何かプランはあるの?」
 杏子さんが言う。
 普段あまりショッピングとかをしない杏子さんは、こういう場所に疎いらしい。かくいう私も、それに見合った予算を組ん
だり出来ないので、結局はウインドウショッピングだけで終わることも多い。
「お店を見てて、あれも欲しい、これも欲しい、って思っているうちにお腹が空くの。ランチはお勧めのお店があるから、そ
こに行きましょ。王将じゃなくてね」
「丸の内ってオフィス街だと思ってた。就活の時もこの辺りには来なかったし、へぇ、こんなところもあるのね」
「杏子さん、それ疎すぎ」
 ウインドウショッピングとは言いつつも、気に入った服をいくつか試着なんかして、もう少しバイトを頑張っておけば良かっ
たなと悔やむ。流石に杏子さんに買ってもらうわけにもいかない。
 自分が試着に飽きると、今度は杏子さんにも着てもらいたくなって、あれこれ選んでみた。スタイルのいい杏子さんには、
ボディラインの出るような服がいいんじゃないかと思う。正直少しうらやましい。恥ずかしがらずに、もう少し色々試して欲し
かったけど。
 結局、自分用にワンピースを一着買ってしまった。
 会社が昼休みになると人でごった返しそうだから、少し早めにランチを取ることにした。
167手をつないで(お題:性的倒錯) 5/7 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/02(日) 23:59:47.13 ID:MZrSsm8G0
「ここ」
 と案内したのは、明るい雰囲気のイタリアンだ。
 窓際の席をキープする。ランチメニューには、先ほど少し痛んだ懐にも優しい値段設定だ。それでもデザートは控えて
三五〇円を浮かせてみる。それに気づいてか、杏子さんがデザートのセットを二人分注文した。
「変な遠慮はしないでいいよ、昼食くらい年長の私がおごるから」
 この人は、やはり人の心が読めるのだ。
 話題は私の就活について。杏子さんは物事を色々知っている。年を取ってまで仕事を続けることはないだろう。でも、
その後はどうするのか。就職のことは考えていても、その先のことは全然考えていない。考えたくない。
 私には、杏子さんがいればいい。
 だから、こういう話をする時はどうしても気分が乗ってこない。
 メインを食べ終えてデザートが来る頃には、店内は少しずつ混雑してきた。急かされているように感じる。生クリームを
トッピングしたシフォンケーキは、そうそうかき込めるものではない。全てを食べ終えた杏子さんが、笑っている。
 年長者の余裕かなあ、正直悔しい。私はきっと子供扱いされているのだ。
 ようやくデザートが片付いて、会計をする。杏子さんがテーブルの上に五千円札を置いて「お手洗い」と言い残す。仕方なく、
私はレジの方へと向かった。
「あれ、原島さん?」
 後ろの方から名前を呼ばれる。振り返ると、そこには男の同級生がいた。
 背丈は高い方ではない彼は、今日はスーツ姿だった。髪も普段と違ってかっちり分けられており、そういうギャップを見つ
けるとついつい可笑しく思えてしまう。どうせ就活か何かだろう。
「あれ幹元君か、偶然だねぇ。どうしてこんなところにいるの? 今日は平日のはずだし」
「同じ台詞を返すよ。まあ、僕の場合は就活の一環で、OB訪問ってところ」
 やっぱり。
「それは立派だね。私は、ショッピングかな」
 そうこうしているうちに、杏子さんがお手洗いを済ませてやってきた。
 私たちを見る幹元君の目つきが、明らかに変わった。
 見てはいけないものを見てしまったけれど、何とかそれを気取られないための表情。顔の筋肉で無理をした分、目線は
正直に泳ぐ。そういうのに特に敏感であるという自覚はないけれど、わかりやすすぎるという人も世の中にはいる。
 杏子さんは、私が考えている以上に有名人だったのだ。
「実は、私たちデートしてたの」
 私は杏子さんの腕をとる。下手にいいわけをして傷口を広げるよりは、少しおどけてみて流れを変えてみようかと思った
168手をつないで(お題:性的倒錯) 6/7 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/03(月) 00:00:30.19 ID:MZrSsm8G0
のだが、あまり変わらなかった。他の客の視線まで集めているように感じて、気が遠くなりかける。
「バカッ、あなたが就活の相談をしたいからって、無理に私を呼び出したんでしょう」
 額にチョップを食らう。これ以上ない機転だ。
「じゃあ、俺行くからさ」
 幹元君は、勘違いに気づきましたみたいな顔になって去っていった。もっとも、それは私の希望的観測が作り出した虚像
に過ぎないかも知れない。外は、少し風が強くなっていた。表通りを小さなほこりや紙くずが舞っている。
 少し寂しく感じた。私たちの関係は、あまり表沙汰にしない方が良いのかも知れない。やましいことをしているわけではな
い。ただ、少し秘密であった方がやりやすいだけだ。気持ち悪いものを見るような目つきを向けられると、どんな無神経な
人間だって心に傷の一つくらいつく。
 でも、いつまでそれを続ければいいのだろう?
 どれほど時間をかければそういう風向きが変わるのか。全然分からない。
 分からないから、いつまでも行き先を決めかねている紙くずの行方を目で追っていた。

 夕食を済ませ、私たちはホテルへ向かった。最近では係員と顔を合わせずに宿泊できるホテルがかなりある。いまさら
何の心配をしているのかと、自嘲のため息が出た。もう随分と、男の人とはご無沙汰しているなと思う。
 薄暗い部屋には、広いベッドと小さな机とテレビが設置されていた。あと、隅の方に小さなアダルトグッズの自動販売機。
道具を使うこともあるけれど、こういうところで買ったりはしない。
 美紀ちゃんがキスをねだる。昼間はずっと我慢していたんだから、と顔にも書いてある。私は、無駄に着込んでしまった
コートを脱ぎながら、美紀ちゃんのことをなだめ続けた。
「杏子さん、今日はありがとう」
「ショッピングも一日かけると結構疲れるね。給料が出て、もう少し買えるものが増えてから来たいかも」
「ごめんなさい。でも、ショッピングもそうなんだけど、あのとき私をかばってくれて」
「あのとき?」
 言っていることがよく分からない。
「同級生の前で。彼、誤解してそうだったから。いや、誤解じゃないか」
「別にかばった訳じゃないよ。あなたのおふざけが過ぎるから」
「でも私、そういうのが人にばれても平気だよ。大丈夫だから」
 私は軽いめまいに襲われる。
 連鎖を断ち切るためには、犠牲にしないといけないものがある。もし連鎖を続けるなら、とりあえず今のままではいられる。
美紀ちゃんはかわいい。正直、私のために女を投げ出してしまうには惜しいと思うくらい。でも、言わない。いざという時の
169手をつないで(お題:性的倒錯) 7/7 ◆D8MoDpzBRE :2010/05/03(月) 00:01:18.26 ID:MZrSsm8G0
踏ん切りは、いざつけるべき時が来るまでとっておく。
「愛してる」
 美紀ちゃんが言う。私はそれを受け入れる。それを恋愛とは別物だと割り切りながら。
 唇を重ねる。心はここになく、体だけがそれを感じ取る。それでも、快楽に溺れるには十分だ。
 もう随分と、男の人とセックスをしていない。それは、逃げていたから? セックスの先にある恋愛から、そして恋愛の先
にある人生から。
 あなたのことは手慰みなの、とは言えない自分がいる。美紀ちゃんはかわいい。私にだって、それを愛おしいと感じるくら
いの感情はある。それを恋愛と隔てて考えているのは、やっぱり逃げているから?
 答えは出ない。ただ、ダイヤを失った電車のように、千々に乱れて回り続けるだけだ。
 美紀ちゃんが声を上げると、私の体も熱くなる。
 同じことが今夜も繰り返される。
 美紀ちゃん、あなたは、何を望んでいるの?
 それを聞くのが怖くて、今日も必死で何かをやり過ごす。

   <fin>
170手をつないで(お題:性的倒錯) ◆D8MoDpzBRE :2010/05/03(月) 00:01:35.67 ID:MZrSsm8G0
以上です
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:02:43.64 ID:bZFEnH9F0
現在、第213回週末品評会の投票受付中です。今回の品評会お題は『性的倒錯』『勘違い』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1272474374/ にてご覧頂けます。
投票期間は2010/05/04(火) 24:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、
同得票の際の判定基準とする方法をとっております。ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

******************【投票用紙】******************
【投票】:<<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
     <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
【関心】:<<気になった作品のタイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
************************************************
― 感 想 ―

携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書いている途中の方は是非。
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:03:59.21 ID:bZFEnH9F0
コピペするの間違えた。誤爆です。
お疲れさまでした、◆2KdEK73apg氏、投下をどうぞ
【順番】
(時間外)
 ◆7C6LTZ08z6氏
 ◆cuo2T0EVi6氏
173雀蜂1/7(お題:性的倒錯) ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:04:14.86 ID:lBTz9vnV0
 八月の森は草いきれと発酵臭で満ちていた。
 むせ返るような空気を肺に吸い込みながら、男は息を殺して目的地へ歩を進める。汗ばんだ手のひらをシャツ
の裾で拭い、捕虫網を握り直す。腐葉土の地面を踏みしめながら進む彼の周囲を複数の蚊が飛び回る。それを払
おうともせず、ただひたすらに男は森の奥を目指す。
 一際葉を茂らせたクヌギは暗い森の中で圧倒的な生命感を放っていた。この森の中でも特に大きなこの樹は男
の目的地であり、彼が数年前の探索で発見したものであった。
 樹へ近づくにつれ男は、甘酸っぱい腐臭がより濃くなるのを感じた。大木の根元は湿り気を帯び他の樹皮より
も色を濃くしている。蠱惑的な腐臭はそこから放たれていた。滴る蜜を求めて多くの森の住人が群がっている。 
艶やかな羽を持つ蝶々、その傍らには立派な角をこれ見よがしに掲げた甲虫。その隙間を縫うように小さな蟻
が列を作る。男はそれらを認め、しかし抱えた網を振るうことなくその場に片膝をついた。流れる汗を拭おうと
もせずに彼は待ち人の到来を待つ。
 果たして彼女は現れた。
 薄く陽が射す森の静寂を破り、彼女はゆっくりと湿り気を帯びた樹皮へ飛ぶ。その唸るような羽音に男は全身
の粟立ちを抑えられなかった。樹液のレストランから蝶々が退席し、甲虫が席を譲る。そんな先客を気にもとめ
ずに彼女は特等席を占領し食事を始めた。
 その夢中な様子を確認した男は息を殺して樹へ歩み寄った。
 大樹から溢れる生命のシロップを舐めとることに夢中な彼女は、男の接近に気がつかない。一足先に角を持つ
甲虫だけが人間の気配を感じてその場を離れた。彼女は時々、咽ぶように羽を震わせた。男は呼吸を荒くしなが
ら、しかしけっして彼女の食事を邪魔せぬよう気を使いながらその媚態を余すこと無く焼き付けようと眼を開い
た。クヌギの根元は彼にとっては愛しい彼女との待ち合わせ場所で、森を飛び回る彼女にとっては優秀な餌場の
一つであった。
 森を抜ける風が少しだけ冷気をはらんできた頃、男は捕虫網をゆっくりと振り、彼女へ被せた。白い布で周囲
を覆われても、彼女は薄く強靭な羽を震わせるだけでその場に留まっていた。それは彼女の強者としての余裕で
あり油断だった。
 網を滑らせて男は、やんわりと彼女の足元を払う。食事を中断された彼女は先程までとは違う音で羽を震わせ
柔らかな薄布にしがみつく。彼女の抗議を聞きながら、男は網を絞り彼女を奥へと追い詰める。尚も震える羽を
痛めぬよう、袋状になった端だけを紙袋で覆って視界を奪う。途端、彼女は息を潜めて抗議を辞めた。怒りが収
まったわけではない。これは彼女のどうしようもない癖なのだ。
 苛烈な女の意外な一面を覗いたようで、男は暗闇で黙り込む彼女をいとおしく感じた。
174雀蜂2/7(お題:性的倒錯) ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:05:00.08 ID:JKqSAynv0
 目隠しをした彼女を軽自動車の助手席に乗せて男は家路を急ぐ。彼女を窮屈な場から開放してやるために。そ
して膨れ上がった自身の欲望を満たすために。
 彼のアパートは市街地の郊外にあった。会社へ向かうには不便だが彼女との待ち合わせには便利なその部屋で
男は日々を淡々と過ごしていた。会社と彼女を迎えに行く以外で男が外出することはなかった。学生時代の友人
とはもう随分と会っていないし、会おうと思ったことも無い。会社では真面目だが積極性が無いとの評価で、特
に期待も顰蹙も買うことなく勤めをこなしていた。
 彼にとっての楽しみは彼女との逢瀬であり、それ以外の事柄はただ義務としてこなすだけであった。
 黙り込む彼女をそっと抱きかかえて、蝶番の軋む扉を開けた。締め切った部屋は夏の日差しで蒸し上げられ、
窓を開けても森のように風がそよぐことは無い。

 テーブルに置かれた透明なガラス水槽へ網を入れ、素早く彼女を解放する。すぐに蓋がわりの金網をガラスの
檻へ被せる。急に明かりの元へ投げ出された彼女は再び羽を震わせて狭い水槽を飛び回る。セミのように慌てて
体をぶつけることはしない。器用に中空を旋回し、やがて隅へ降り立ち羽を休めた。慎重に運んできたが、羽が
少しだけ欠けて破片が頼りなく揺れている。強靭な羽と体を持つとはいえ、慣れない道中で体力を消耗したので
あろう。彼女は隅で身を潜めたまま微動だにしない。男は彼女の肢体を眼で堪能するためにガラス越しに顔を寄
せた。途端に彼女は低い音で羽を鳴らし、更には両腕を上げて男の接近を妨げた。羽音にはギチギチと顎を鳴ら
す音まで混ざる。その様子に男は苦笑する。
「君は随分と気が強いようだ」
 そう独り言ちると少し距離を置いて、怒りに震える彼女の肢体を眺め始めた。
 均等が取れた体は三つの部分からなっている。艶々とした頭部には更に輝きを放つ大きな瞳。丸みを帯びて発
達した顎は彼女が働き蜂という身分であることを示していた。この顎で彼女は蜜をすすり、獲物を噛みちぎる。
暗褐色の胸は丸く膨らみ両側から琥珀色の羽が伸びている。腹は山吹色と暗褐色で交互に彩られ、森を舞う蝶々
らとはまた異なる鮮やかさだ。彼女が持つこの色彩は他への警告である。事実、森で彼女を好んで襲うものはま
ずいない。好んで捕獲する人間はよほどの物好きで、男はその中でも特に異質な部類に入ると自覚していた。

 遅い夕暮が訪れたのか部屋はいつのまにか暗くなっていた。闇が濃くなるとともに彼女は落ち着きを取り戻す。
そのタイミングを見計らって、男は金網をずらして水槽へ手を入れると素早く彼女の胸を掴んだ。ここを抑えら
れた彼女は余りにも無力だ。指に阻まれて羽は思うように震わず、たとえ威嚇したとしても人間にとっては驚異
にならない。唯一にして最大の武器である毒針は驚異ではあるが、それがしまわれている腹部は一方向にしか動
かすことが出来ない。
175雀蜂3/7(お題:性的倒錯) ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:05:42.98 ID:lBTz9vnV0
 男は彼女を目線の高さまで持ち上げる。羽音が一層耳を突き、大顎を鳴らす悲鳴のような威嚇音がいじらしい。
森では恐れるものがない彼女をこの様に蹂躙出来るのは人間くらいだろうと男は思う。
 彼女はくびれた腰を必死に捩らせる。毒針を男に突刺さんとしているのだ。腹部の先端から突き出した針は鋭
く長い。鈍い輝きを放つ様はまるで黒い錐だ。この針は蜜蜂などとは違い一度獲物の体に刺さっても抜け落ちる
ことはない。
 鈍色の針を男は撫でる。先端が肉に食い込まなければ、彼女の針は男にとって愛撫の対象にすぎない。針を押
さえられた彼女は更に激しく体を捩らせる。男は自分の呼吸が荒くなっていることを感じた。たまらず男はベル
トを緩め、立ち上がるとズボンを下着ごと一気に引きずり下ろす。そうしている間にも暴れる彼女の羽や足が可
愛らしく彼の指をくすぐっていた。彼女からの積極的な愛撫に男は全身を震わせる。針は相変わらす腹部から剥
き出しになっており、彼女は腰を捻りながらそれを挑発的に見せつけた。男はたまらずに左手で自分のモノを慰
め始めた。下半身に力が入らなくなり、男は再び床に腰を落とす。そして彼女の剥き出しの先端で、ゆっくりと
自らの体を撫で回し始めた。毒針が食い込まぬよう慎重に、しかし肌から離しすぎることもなく、その危うい均
衡は男の快感を更に高みへ押し上げる。
 男は彼女を自分の鎖骨まで連れてきた。俯くと彼女が上目遣いにこちらを睨んでくる。しかしそれがいい。彼
女けっして微笑むことも彼に媚を売ることもない。彼女は最後までひたすらに彼を威嚇し、その辱めから逃れん
とむなしく腰を振り続けるのだ。
 男の鎖骨上には薄い傷跡があった。彼はその一点を彼女の毒針で執拗に撫で始めた。耳一杯に広がるる羽音と
針の感触に男は眼を閉じた。そうする時、彼の思考はいつも夏のあの日へ及ぶ。彼が彼女と出会った記念すべき
夏の日だ。
 少年であった彼は夏になると森で友人らと昆虫採集に励んでいた。
 ある日、仲間の一人がクワガタが集まる木を発見したと言うので、友人らと連れ立って森へ入った。
 確かにそこにはクワガタやカブトムシなど少年であれば誰もが憧れる昆虫が樹液を求めて集まっていた。
 ただ、そこにいたのはそんな魅力的な虫ばかりではなかった。甲虫らに混ざって樹液を啜っていたのは大きな
スズメバチであった。
 少年らの高揚は一瞬で水を打ったようになった。スズメバチの危険性は親や教師から十分に聞かされていたし、
そうでなくともあの羽音と毒々しい姿は人を萎縮し恐怖させるには十分だ。少年たちはその場を離れようと静か
に後ずさった。
 しかし、彼はただ一人網を構えて樹へ近づいた。そこにいたクワガタは魅力的な大きさで、仲間の誰もそんな
立派なクワガタを捕獲したことは無かった。スズメバチの危険性はもちろん彼も知っていたが、それよりも少年
ならではの見栄と興奮が彼を動かした。
176雀蜂4/7(お題:性的倒錯) ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:06:27.23 ID:JKqSAynv0
 スズメバチはただ一匹で食事に夢中な様子であった。これならば蜂に触れずにクワガタだけに網を被せれば襲
われることは無いと彼は判断した。しかし、事はそう上手く運ばなかった。素早く振り下ろした網はスズメバチ
の食事を阻害し、瞬間、飛び上がった蜂は一目散に彼へ迫った。
 駆け出すことは出来なかった。初めて間近で聞く羽音は不吉な機械のモーターのようで、昆虫と言うより小型
の爆弾が意志を持って襲いかかってくるようだった。彼は悲鳴を上げて友人らに助けを求めた。しかし彼らは逃
げろと叫ぶばかりで遠巻きに見守ることしかできない。迂闊に手を出せば蜂を猛らせるばかりであろうし、ひょ
っとすると自分たちがその毒牙の餌食になるやもしれないのだ。
 蜂は振りかぶる彼の手をすり抜け、少年のか細い鎖骨に体を降ろした。激しく震える羽が威力を増し、彼は世
界が蜂と自分だけになったような錯覚に陥った。
 鎖骨元に止まった蜂は焦るそぶりもなく体を揺らしている。間近で見た森の覇者を、彼は払うことが出来なか
った。恐ろしかったわけではない。眼前に降り立った毒々しい肢体は少年の心に衝撃を与え、一瞬にして心を奪
った。甲虫類とは違う硬さを感じさせるその体は、木漏れ日に反射して艶めかしい艶を放った。これまで籠に入
れて観察してきたどの昆虫とも違う圧倒的な強さとしなやかさに少年は囚われてしまったのだ。
 ゆっくりと体を揺らしていた蜂が動きを止めた。動ことしない少年の耳に遠くから友人が呼びかける。しかし、
かれは微動だにせず蜂の挙動を見つめた。蜂は丸々とした縞模様の腹部から毒針を露出すると、少年の柔らかな
薄い肌にそれを埋め込んだ。彼は自分の体に毒牙が突き刺さるさまを静かに見つめていた。
 毒液を注ぎ込んだ蜂は針を引き抜くと、何事もなかったかのように飛び去った。少年は残された刺し痕をそっ
と撫でる。と、見る間に肌は赤みを帯び、激痛に少年は膝を付く。そのまま彼の視界は遮られ、次に眼を覚まし
たときは病院の白いベッドにいた。病室は静まり返り、カーテンの隙間から月明かりが差し込んでいた。
 刺し痕は分厚いガーゼで覆われ、体は熱を持っていた。一旦、眼を覚ました少年はまた瞳を閉じる。瞼の裏に
は彼を襲った蜂の姿がありありと浮かんだ。熱に浮かされなが彼は記憶をたぐりその瞬間を何度も何度も頭に
描写する。気がつくと彼の腕は自らの性器にに伸びていた。熱によって速まった鼓動をさらに加速させながら、彼
は自分を慰める。それは少年にとって初めての性的行動であった。
 絶頂によって荒くなった呼吸を整えながら男は眼を開けた。囚われの彼女は相変わらず指の間でもがいている。
慣れない頃は達した瞬間に力を入れすぎて彼女の丸い胸を握りつぶしてしまうことがあった。その旅に彼は涙し
ながら物言わぬ彼女へ謝罪を繰り返した。それは命を奪ったことに対する謝罪ではなく、美しい体に傷をつけて
しまったことに対してだ。
 欲望の痕を処理した男は左手で引き出しを開けると、そこから試験管のようなガラス瓶を取り出した。瓶には
コルクで蓋がされている。彼は片手で器用にコルクを開ける。そして彼女と目線を合わせると、その美しい頭部
に口を付けた。彼女は相変わらず厳しい表情で男を睨めつける。
177雀蜂5/7(お題:性的倒錯) ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:07:22.86 ID:lBTz9vnV0
 彼は彼女を瓶へ落とし素早く蓋をした。彼女は瓶の底で一旦は飛び上がらんと羽を震わせたが、すぐに仰向け
に転がった。そうして六本のしなやかな足をめちゃくちゃ動かして腹部を痙攣させる。
 ガラス瓶は殺虫管と呼ばれるもので、中には予め彼女の命を奪う薬剤が充満してあった。
 自分が愛する女が苦悶する姿に男は涙し、そして同時に胸を震わせた。殺すことと愛することは同じ方向にある
と男は考えている。命を奪えば彼女は彼の手元から逃げ出すことはないし、寿命によって醜く体を腐らせるこ
ともない。夏の盛りに輝く彼女を、その瞬間を永遠として留めることが出来るのだ。
 足を折り曲げて動かなくなった彼女を瓶から取り出し、発泡スチロールの寝台に仰向けに寝かせる。ぐにゃり
とした肢体にはまだ命あったころの光が残っているようであった。
 ダラシなく足を開いて横たわる彼女に、男は針を突き刺した。少し欠けた羽を丁寧に開き、先端を止める。一
枚ずつ開いていくと、二枚の様に見えていた羽が実は四枚あることがわかる。かつて音を立てて振るわれた羽
はもう動くことはない。しかし琥珀色の薄衣は寝台の上で広がり、彼にその美しさを見せつけ続けるだろう。
 まだ柔らかさの残る腹部に針を埋めていく。かつて針を突き刺す側であった彼女が、傷つける側であった彼女
が段々と金属に蹂躙され戦前ではありえない形に体を開いていく。数十本の針を体に受け、彼女は新たな形で男
の眼を楽しませた。
 貼付けになった恋人を、男は部屋の比較的風通しの良い、日の当たらない場所に寝かせた。ひと月もすれば彼
女は針を抜いてもあられもない姿のままになるだろう。そうしたら今度は別のしんだいを用意して今度こそ永遠
の眠りにつかせる。今回の気が強い彼女も、今までに彼が愛して蹂躙した女達と一緒に並ぶこととなるのだ。
 彼の部屋にはそんな風に、永遠を留めた女たちが大量に眠っている。彼は愛した女を全て手元に置いておきた
かった。普通の男性が好みのアイドルや女優の写真を欲しがるように、恋人との情事をイタズラに写真へ納める
ように、彼は森から連れきた彼女らを針で突き刺し視線で犯した。
 日が短くなって森の逢瀬へ行けなくなると、彼は部屋でかつての恋人を眺めながら自慰をしていた。

 男は床中に並べた女の遺骸の真ん中で寝そべり物思いにふけっていた。男は毎週、新たな女と出会うことを楽
しみにしていたが、同時にある不満を抱えていた。
 網で捉えるとき、彼女らは抵抗し脱出せんと暴れる。そうすと、どんなに丁寧に扱っても体に傷が付くのだ。
 今日の彼女は羽を掛けさせたし、先週はあろうことか足が一本脱落してしまった。
 取ったその場で薬を使っては家で楽しむことが出来ないし、麻酔のたぐいも試してみたものの、目覚めた彼女
はどこか生気が無く、猛々しさを顕にして男の手でもがくことはなかった。
 彼は完璧な彼女と交わりたかった。少年のあの日、彼の初めての女だったあのスズメバチはどこの欠損もなく
男の眼前に現れた。彼は今でも彼女を求めてやまなかった。
178雀蜂6/7(お題:性的倒錯) ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:08:07.83 ID:lBTz9vnV0
 夏が終に近づいた頃、男はある決心を固めた。以前から考えていた計画を実行に移すことに決めたのだ。
 その日も男は森へ出かけ、いつもの待ち合わせ場所へ歩みを進めた。しかし、いつもと違う点が一つあった。
 彼は捕獲用の昆虫網を携えていなかったのだ。
 食事中の彼女らは随分と無用心だ。それは狩る側の余裕であろう。森には彼女らに牙を剥くものはまず存在し
ないのだ。そこを逆手に取る事を男は決めた。
 より完璧な彼女と交わるために、少年の日のあの胸の高鳴りを再び手にいれるために、彼は自らの手で彼女を
捕らえ、そのまま森の中で行為を行うことにしたのだ。
 なるべく音を立てぬよう、無駄な呼吸音を出さぬよう、蜜に溺れる彼女に男は手を伸ばした。今日の待ち合わ
せ相手はしばらくお目にかかっていないような素晴らしい体を持っていた。
 その肢体に初めてのあの女性をの面影が重なったようで、男ははっとした。
 しかし気持ちを平静に保ち、そろそろと腕を伸ばす。
 もう少しで彼女を手中に納めるというその瞬間だった。
 彼女はぱっと羽を広げて彼の指をすり抜ける。突然の出来事に男は腕を伸ばした姿勢のまま体を硬直させた。
 彼女は重低音を響かせ、真っ直ぐに男へ飛びよった。そして迷うこと無く傷跡が残る鎖骨へ舞い降りた。
 男は顔ごと視線を首元へ向ける。早鐘の様に鳴っていた心音は不思議と静かになっていた。
 彼女は鎖骨の窪みをうろうろとくすぐる様に歩き、男は恋人のそんな挙動を静かに見守った。あの夏の日が、
少年の心に消えることのない衝撃を残したあの夏が、今、眼前で再現されていた。
 鈍色の針を彼女は悠然とした仕草で丁寧に突き刺した。奥まで埋め込んだ瞬間、彼女の腹部が痙攣するように
震えたのを男は見逃さなかった。毒液を注ぎ込む彼女は恍惚に震えているようで、そこには男が今までに見たこ
とのない媚態があった。
 行為を終えた彼女はまた羽を広げるとあっさりと飛び去って行った。その時に、男は彼女と眼があったように
感じた。彼女から視線を向けられたのはこれが初めてであった。釣り上がった黒い瞳には怒りも侮蔑もなく、た
だ男の痴態を嗤っていた。。
 彼女の手荒い口づけの痕確かめようとした男は、そのまま手を左胸へ移した。
 締め付けるような痛みに彼は腐葉土の上を転がった。熱く火照っていた体からは冷たい汗が流れ落ち、手足は
ブルブルと震えた。痛みに明滅する意識の中で、男はある単語を思い出していた。
 ――アナフィラキシーショック。
 体に侵入したアレルゲン物質に対する抗体の過剰反応で、体がショック状態を起こし、適切な治療を受けなけ
ればそこに待つのは死だ。
179雀蜂7/7(お題:性的倒錯) ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:08:54.18 ID:lBTz9vnV0
 苦しみに喘ぎながら、男は去り際の彼女の表情を思い出していた。彼女は知っていたのだ。この口付けで男が
どうなるのかを。あの嗤いは死にゆく哀れな男へ向けられた最後の手向けだったのだ。
 男は痛みに顔を引き攣らせながらも、薄く口角を上げていた。左手で胸を抑えたまま右手でチャックを下ろし
て自らの半身を露出させる。
 男は苦しみに喘ぎながら、同時に快楽に喘いでいた。心臓の痛みは彼女の愛撫で、苦しい呼吸は唇を塞がれて
いるからだ。速る鼓動とに合わせて男は右手を上下に動かした。一際強い痛みのあと、彼の体は草いきれと腐臭
の間で痙攣し、森に種をまき散らした。彼は蒼白な微笑を湛えたまま、それきり動かなくなった。
 その傍らではクヌギの巨木が相変わらず蜜を吐き出して、森の生命を活気づかせていた。
 
 アパートの鍵を開けた彼の両親と大家は息を呑んだ。部屋に残されたのは最低限の家具。そして彼が愛した女
達の遺骸であった。
 彼の死は地方新聞の片隅にひっそりと掲載された。その記事に彼の異様な死に様に言及した文は無く、年間数
十件あるスズメバチ被害の一つとして少しの人々に認識され、そして消えていった。
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:09:33.33 ID:3545H6nR0
現在、第213回週末品評会の投票受付中です。今回の品評会お題は『性的倒錯』『勘違い』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1272474374/ にてご覧頂けます。
投票期間は2010/05/04(火) 24:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、
同得票の際の判定基準とする方法をとっております。ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

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【投票】:<<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
     <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
【関心】:<<気になった作品のタイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
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― 感 想 ―

携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書いている途中の方は是非。
181 ◆2KdEK73apg :2010/05/03(月) 00:10:16.83 ID:lBTz9vnV0
以上です。
ご迷惑をおかけして本当に申し訳ないです。
以後、こんなことがないよう気を付けます。
ありがとうございました。
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:10:30.33 ID:3545H6nR0
はい、色々とすいませんでした。時間内の品評会投下はこれで終わりとなります。
時間外投下をなさる方は各々が順番を守った上で投下してください。
183何もかもおかしい一日(1/7:性的倒錯) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 00:10:51.54 ID:DHyeO2o80
「性行為とは元来、子孫を残すための行動である。それ以外の目的、自らの性的欲求のためだけに性行為を行うことは、
生命の倫理から外れた行為と言えよう。よって今日より、生殖目的以外での性行為を全て禁止する」
 正教分離もなんのその、白民党を裏から操り政界全体、果ては日本国全体まで乗っ取った宗教団体“光子会”。その
教主・天野川ヒカルが教団の上、全国民にテレビを介して公然と言い放った。
「はっ?」
 港区の高校二年生・橘恭平は、ラーメンを掴んでいた箸を、どんぶりの中に落とした。
「無論、コンドームなど必要ないので販売を禁止する。他、性的行為を連想させるような道具全てもだ。本やインター
ネット等の情報も徹底的に規制する」
「おいおい、何いってんだよ」
 音を立てて恭平が立ち上がる。
 生殖目的以外での全ての性的行為を禁止するだって? そんなふざけた事がまかりとおると思っているのか。
 恭平は、ブラウン管に向かって声を出さず語りかけるが、中の人物は恭平の疑問について、全く答えを返さない。
 教主が鷹のような鋭い目を瞑り、少し俯き加減に言葉を続ける。
「なお――」
「おい! ここに橘恭平という男はいるか! 港区甲南高校の二年・橘恭平だ!」
 ラーメン店のステンレス製扉が勢いよく開かれる。やけに白い全身プロテクターを身につけた三人の人間が、携帯
式機関銃を手に店内へと飛び込んできた。
「おいオヤジ! 橘恭平は、今日はここには居やがらねぇのか!」
「ひっ、ひぇぇっ! 恭平君ならそこに……あれ……?」
 銃を突き付けられた店長は、震えながら恭平がいるはずの席に目を向ける。
 しかし、そこには恭平はいなかった。
「! いま、厨房に人影が見えたぞ!」
「やべ!」
 恭平は一瞬で危機を判断、厨房に忍び込み、裏口から逃げる手段を選択した。
 その恭平に向けて、容赦なく銃口が向けられる。
「撃て撃て撃て撃てー!!」
「まじで?!」
 無数の銃声と破壊音が一斉に鳴り響く。
 寸胴鍋がひっくり返り、裏口のドアのガラスは割れ、壁棚の調理器具が次々と床に落ちる。
「止めー!」
184何もかもおかしい一日(2/7:性的倒錯) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 00:12:59.16 ID:DHyeO2o80
 白プロテクター集団のリーダーらしき一人が声を上げると、全員が一斉に射撃を中断した。
 そのリーダーがゆっくりと厨房前のカウンターに近づき、そこから厨房内を見回す。
「逃げられたか……」
 厨房に残ったのは、屈んで怯える店長と、雑多に散ばった調理器具、ラーメン等のみ。
 標的は逃してしまった。やけに静かになった店内に、テレビの音が響き渡る。
「繰り返す。とくに性的倒錯が激しいと認められた者については、新たに東京都内に設置する強制収容所に収容し、その
性趣向の改善が見られるまで、“光子会”が作成した人格再形成プログラムを毎日受けてもらうことにする」

「くそ、なんなんだよあいつら!」
 恭平は必死に逃げる。サッカー部で鍛えた足で大通りをひたすら突っ走る。
 足にはそれなりの自信があったが、後ろから迫ってくる連中を振り切ることができない。一直線に走った場合は機関銃
で撃たれ、ジグザグに逃げた場合は走って迫られる。ようするに持久戦にもつれ込まれているわけだが、その作戦は恭平
のスタミナを次第に蝕みつつあった。
(くそ、このままじゃ逃げ切れませんよ……てっ!)
 横道から突然の銃撃!
 間一髪、恭平は上着を脱ぐ。銃撃された方向に、それを両手でぴんと張った。
 銃弾がその上着で食い止められる。やはりゴム弾だ。服を突き抜けることはない。
「けど、これってやべぇー!」
 上着を片手に恭平は走る走る。
 脇道やら、ビルの窓やら、果ては下水管の蓋が空いて次々と射撃されたが、恭平は持ち前の運動能力で避け続けた。
 が、これも敵の作戦のうちである。徐々に追い詰められていることに、恭平は気付いていた。
(相手の思う方向に逃げているだけだこりゃ……)
 逃げるルートが次第に絞られていく。一本になったときが最後だ。
(こうなればビル内に逃げ込むか?)
 このまま逃げても捕まるのは目に見えている。ならばいっそ戦ってみれば?
 敵はゴム弾。ビルの壁を砕く能力はない。ならばビル内で戦った方が、機関銃の優位性を低くできるだろう。
「よし! 腹は決まった!」
 恭平は九十度旋回、右手側のビルに飛び込んだ。
 その恭平の顔が、ぶん殴られる。
「ぶへっ!」
185何もかもおかしい一日(3/7:性的倒錯) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 00:15:06.63 ID:DHyeO2o80
 一撃で気絶する恭平。薄暗いビルの中から、屈強な体格の白プロテクターが現れた。
「たく、手間かけさせやがって……」


 突如、強烈なスポットライトが一箇所に浴びせかけられる。
 目を閉じていても届くその光の眩しさに、恭平は目覚めさせられた。
「ようやくお目覚めかね。“足の裏フェチ”の橘恭平くん」
 上から声が聞こえてくる。少しずつ目が光に慣れてくる。
 鮮明になってきた視界に浮かび上がるのは、巷で最近話題になっているあの人物だ。
「天野川ヒカル!」
 吹き抜けとなった二階、柵にもたれかかって話しかけるのは“光子会”教主・天野川ヒカル。
 テレビに映るその姿は聖人君子そのものだったが、恭平に浴びせかけられる冷徹な視線や、柵に肘をつくその姿からは、
普段の様子は全く見られない。
「俺をこんなところに連れてきて、一体どうするつもりだ!」
「聞いてなかったのか? テレビから語りかけた僕の言葉を」
 天野川ヒカルは片方の手を上に掲げる。
「性的倒錯が激しいと認められた者については、強制収容所に収容し、我らが“光子会”作成の人格再形成プログラムを
受けてもらう。無論、その愚劣な思考が改善されるまで毎日、だ」
 高く掲げられた手が、碁盤に石を打つように強く振り下ろされる。その指先は、恭平へと向けられた。
「君はあろうことか、高等学校という公な場で自らの性的趣向を堂々と公言し、悪友たる高畑秀樹とアダルトビデオの貸し
借りをしていたというではないか」
「な、なぜそれを!」
 恭平はたじろぐ。天野川ヒカルは攻勢の手を緩めない。
「君の自宅に強制捜査で踏み込んだところ、全部で百五点の猥褻物が見つかった。よって君を第一級性的倒錯者として、
この収容所では扱うことにする」
「ちょっとまて! 犯罪も犯していないのに、強制捜査で踏み込むなんて、そんなの許されるのか!」
「残念ながら今日の日本では、君は立派な犯罪者だよ」
 天野川ヒカルは、背後にいる“光子会”団員にわかるように、小さく首を横に振る。プログラム開始の合図だ。
 団員が小さく礼をして、闇の奥へと消えていった。
「お前! なんでこんなことをするんだ! 世の中の犯罪を失くすことが、お前達の使命じゃないのか! だから皆は、
186何もかもおかしい一日(4/7:性的倒錯) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 00:17:16.03 ID:DHyeO2o80
これまでお前達を支持してきたんだぞ」
「この措置が、その一環だよ。痴漢やレイプなどの犯罪はもちろん、女を買うカネを得ることが目的で多種多様な犯罪が
行なわれているだろう? だから、根本から正すのさ」
「そんなメチャクチャな言い分、あるか! ぐわっ!」
 瞬間、恭平はもだえ苦しんだ。
 恭平の頭には、何かの機械がセットされていた。それから電流か何かが流れ込んでくるのだ。機械を取ろうにも両手は
縄で後ろに縛られ、どうすることもできない状態である。
「ぐぅぅ、ぐぅっ」
「橘恭平。できれば君が早く更生されることを望むよ。君の他にもプログラムの適用が必要な人間が、この国には大勢
いるのでね」
 スポットライトが消える。全てが闇に沈んだ。
 
 〜 〜 〜 〜 〜
 あれ? どこだろう、ここは。
 何故ぼくはこんなところにいるの?
 あ、足だ。足の裏だ。わーい!
「足の裏好きな子はいねーがー」
 な、なんだ?
 目の前にある足の裏が、急激な変化を見せる。
 無数の毒々しい棘が足の裏から飛び出した!
「ウギャアアアアアアアアアアア!!」
 全身に突き刺さった恭平が上げるのは断末魔だ。痛い。痛い。痛い。イタイ。
 一つ一つの針が、まるで人食い虫であるかのように皮膚の中へと入り込んでくる。君の悪い音をたてて肉が裂ける。
 目に迫る。容赦なく眼球へと、針がつきたれられる。熱が帯びだし、目玉が内側から焼き焦がされる。
「ヴアアアアアアアアアッ!」
 全身を貫く気が狂いそうな痛みが容赦なく、恭平を襲った。
 〜 〜 〜 〜 〜

「あ? あー、あー、あー」
 恭平は息も絶え絶えに床へと倒れこむ。
187何もかもおかしい一日(5/7:性的倒錯) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 00:19:22.75 ID:DHyeO2o80
 気付けばずっと、彼は同じ部屋にいた。
 死にたくなるような気分が全身を支配する。このまま寝てしまいたい。しかし周りの気配に気付き、彼は仰向けに
なって天井を見上げた。
「橘くん、大丈夫?」
 彼が視界に捉えたのは、少女だった。部屋はなぜか明るかったが、逆光で顔がよく見えない。しかし自分と同じ高校
の制服を着ており、黒髪、ロングヘアー。優しい光を携えた瞳から何となく、清楚な感じの少女であることが感じられた。
「君は?」
「私は井上瑞穂。君と同じ学校の生徒。クラスはとなりのB組よ」
「いのうえ、みずほ……」
 上半身を起こして、その少女の名前を反芻してハッとする。
 井上瑞穂とは校内一、いや、港区一の美少女と言ってよかった。数々の芸能事務所からスカウトが引っ切り無しにやって
くるくらいだし、何より自分も彼女の足の裏を……足の……裏……?
「うわあああああああああ!!」
 恭平はいきなり飛び下がった。
「どうしたの?!」
 瑞穂が慌てて恭平に声をかける。
 恭平の顔は、恐怖に歪んでいた。
「足の裏こわい足の裏こわい足の裏こわい足の裏こわい……」
 ブツブツとつぶやきながら後ずさっていく様は、まるで薬物で精神異常をきたしているようであった。
 “光子会”の人格再形成プログラムは、それほどの威力があったのである。
「橘くん……」
 もしかしたら自分も、このような状態になっていたのだろうか。
 そう思った瑞穂は居た堪れなくなり、ある重大な決心をする。
「大丈夫、足の裏は怖くないわ」
「えっ?」
 恭平は驚いた。
 あの、井上瑞穂が脱いだのだ。女子高生が日常的に履く、あの革靴を。
 ハイソックスの靴下も、止まることなく脱ぎ捨てられた。
 瑞穂の利き足である右足。その足の裏が余すところなく、恭平の目の前に晒されている。
「ほら。足の裏なんて、どこにも怖がるところがないでしょう?」
188何もかもおかしい一日(6/7:性的倒錯) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 00:21:44.37 ID:DHyeO2o80
 瑞穂が顔を赤らめながら、恭平に優しく語りかける。しかし恭平はもはや、瑞穂の言葉を聞いていなかった。
「あ、あぁ……」
 先ほどの怖がりようはどこへやら、恭平は瑞穂の足の裏へと近づき、舐めんばかりの距離に顔を近づけていた。
 ずっと歩き続けていたのであろう。足から漂う熱気や、臭いが凄い。何故このような美少女から、このような臭いが発せ
られるのか。興奮した吐息が、足の裏にかかる。
「顔を押し付けちゃっても……いいよ?」
「アアアアアアアッ!」
 瑞穂の言葉に、恭平は理性を失った。


「ぎゃあああああああ!!」
「し、首領!」
 国会議事堂内で、ゴム弾による激しい銃撃戦が行なわれていた。
 “脇の下フェチ首領”高畑秀樹をはじめとする性趣向解放同盟軍が強制収容所を強襲、さらに機関銃を奪い、“光子会”
本丸である国会議事堂へと攻め込んだのだ。電撃戦による中枢制圧を目論んだ強行作戦、しかし教主・天野川ヒカルには
読まれていた。国会議事堂で待ち伏せしていた多くの“光子会”団員達の逆襲にあい、次々と戦死者が相次いでいた。
「くそ、脇の下フェチ首領……このアザじゃあ、もう戦うことは無理だ……」
「おのれ、ヤツさえいてくれれば……」
 緒戦で時間を稼ぎ、性趣向解放同盟軍の皆々が逃げる時間を作ってくれた盟友・橘恭平。井上瑞穂を初めとする“匂い
嗅がれ隊”が救出に向かったはずだが、余りにも遅すぎる。彼女達もやられてしまったのだろうか。
「これでもう、終いのようだな」
 赤絨毯の上を天野川ヒカルが悠々と歩いてくる。アレクサンドロス大王が戦争から帰ってくるような、そんな堂々とし
た登場だった。
「自分勝手な汚らわしい欲望のために、よくもこんな大それたことをできるものだ」
 感心と呆気を会わせたような表情を天野川ヒカルが浮かべる。しかし目は、汚物を見るかのような冷たさだ。
 高畑秀樹はうつ伏せで倒れた状態で悔しさを滲ませながらも、堂々と天野川ヒカルに言い放つ。
「我が世の春だな、教主。しかし、そうしていられるのも今のうちだぞ」
「お前が僅かでも当てにしている橘恭平なら、もはや君達の軍には加わらんよ」
「何ィッ?! どういうことだ!」
 秀樹は驚愕の表情を浮かべる。そんなはずはない。やつに限ってはそんなことは……
189何もかもおかしい一日(7/7:性的倒錯) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 00:24:02.05 ID:DHyeO2o80
「橘恭平にはすでに、人格再形成プログラムを実行済みだ」
「なっ」
「『足の裏こわい、足の裏こわい』って、何度も叫んでいたよ。ハハハハハハハーッ!」
「なんということを……」
 秀樹は床に拳を打ちつけた。
 我らが甲南高校で堂々と足の裏フェチを公言し、なになにフェチ人の市民権を拡大してくれた英雄。
 他校の人間も次々と救ってくれたあの賢人が、もういない、だと?
「く、くぅ……」
「さて、君たちにも早速、同じプログラムを受けてもらうとするかな」
「そうはさせないぜ!」
 天野川ヒカルの後方から無数の銃弾!
 その銃弾とともに一人の青年が、宙を舞って飛んできた!
「サッカー部で鍛えたボレーシュートだぁ!」
「ぐばあああああ!!」
 天野川ヒカルの身体が五メートルはすっ飛んだ。

「ぐ、ぐふぅ……なぜ……お前は足の裏が怖くなったはずでは……」
 口から血を流し、息も絶え絶えの表情で天野川ヒカルが声を上げる。
「俺の理想とする足の裏に出会ってわかったのさ。足の裏は怖がるもんじゃない! 癒してくれるもんだって!」
 かつて自分が指さされたときのように、今度は恭平が天野川ヒカルを指差す。
「性的趣向ってのはよー、その人の個性だ! たとえ性的倒錯が行き過ぎたっていいじゃねーか! 同じような人間
ばっかりが生まれるよりはマシだぜ!」
 橘恭平は言い切った。俺たちは正常だ! 俺たちこそが正常なんだ!
「な、なんという思考回路よ……しかしその思いが我らを打ち破ったのだ。本当に、正しいかもしれんな……」
 その言葉を最後に、天野川ヒカルは気絶した。
 橘恭平は振り返る。理想の足の裏を持ち、今も悶えている少女・井上瑞穂を。
「足の裏、クンカクンカしたい!」
 高らかな勝利宣言であった。
 きっと歴史上のどんな大事件にも劣らない、そんな一日だった。
(終わり)
190 ◆cuo2T0EVi6 :2010/05/03(月) 00:25:50.53 ID:Fbhm/kUC0
時間外投下しますー
191mint candy ☆ citrus drop(お題:性的倒錯) 1/4:2010/05/03(月) 00:26:41.33 ID:Fbhm/kUC0
からん、と音を立てて缶から出てきたのは、またしても薄荷味だった。
ドロップ缶を開封してから三粒、三連続で同じ味が出てきたのだ。
「なんという…」
内容量約二十五粒・味が全十種のこのドロップ缶で、私が唯一嫌いな味が、これほど続いて出るとは。
私は天を仰いだ。
青い空がどこまでも広がり、頂点に近い太陽の日差しがそよ風によって少しだけ和らぐ、実にいい小春日和ではある。
空に浮かぶ白い雲と薄荷ドロップが重なり、首ごと視線を元に戻した。
「日ごろの行いだよねえ」
隣に座っている彼女が、私の手から薄荷ドロップを奪いつつ言った。
「私が何をしたというの…」
「例えば…アレとかアレとかあのときのアレとか」
心当たりが無い出来事の掘り返しを聞き流しつつ、じっとりした横目で彼女を見る。
少女は優しい風にショートの髪を揺らされながら、整った顔つきの中で一際目を引く大きい瞳を、実に楽しげに輝かせていた。
「…楽しそうだね」
そう口に出してみる。
彼女は一瞬疑問の表情を浮かべ、すぐに満面の笑みに変えた。
「おいしいしね」
実に眩しい笑顔だった。
192mint candy ☆ citrus drop(お題:性的倒錯) 2/4 ◆cuo2T0EVi6 :2010/05/03(月) 00:27:55.43 ID:Fbhm/kUC0
山を開拓して建てたであろう、坂道に沿った住宅地の合間に、家屋三件程のスペースを占める公園がある。
階段を挟んで上部と下部に分かれていて、下には遊具があり、上はレンガと樹木が通路を成して外に繋がる、と言う構成だった。
上下ともに大してスペースが無く、ボール遊びで思い切り走り回ったり、何かの大会を開いたり、と言った事が出来ない広さである。
よってこの公園に集まってくるのは、砂遊びを目的とした幼児、あるいはブランコで一回転を目指す勇猛な小学生くらいだ。
休日なら、午前中の今頃に遊びに来る親子連れは多い。
が、今日は平日であり、その場に人気はほとんど無かった。
そんな閑散とした公園の下部にある木製のベンチに、私と彼女は座っていた。
ドロップ缶を振り、手のひらに新たな飴を出す。からんからん、と言う無機質な音が、あたりに柔らかく響いた。
「あ」
「お」
今度はシトラス味だった。ようやく好みの味が出たことに、思わず声が出た。
ちらと、彼女の方を見る。黄色がかったオレンジ色の飴を覗き込む顔が少し残念そうなのは、恐らく気のせいだろう。
彼女が顔を上げた。こちらと目があうと、端整な顔に、少しだけ意地悪さの混ざった笑顔を浮かべた。
「惜しかったねえ。四連続で薄荷が出たら良い事あったよ絶対」
「それ自体が既に悪い事だよ。薄荷は嫌いなんだって」
「ならそれ以上悪い事は起きなかったよきっと。その次からは多分シトラスが何連続、とかだったかも」
「薄荷が出ること自体が嫌なんだってば。それに周期性を考えるなら今それは期待できないじゃない…四連続だったし」
「そうかあ。うん。でもね、もし次薄荷が出たら私に寄越してくれていいよ。私も薄荷味は嫌いだけど、そこまで嫌いだって言うのなら、仕方が無いから処理してあげる」
「…ばか」
「薄荷って怖いよね」
「はいはい」
不思議理論をぶん回す彼女を横目に、シトラスドロップを口に含む。
柑橘系の特長的な香りが鼻を満たす。嗜好品らしい甘味と、自己主張しない酸味が程良い。
「おいしい?」
と彼女が訊いて来た。きらきらと光る、さわやかな笑顔だ。
甘酸っぱさが心地良かった。私は「おいしい」と答えた。
193mint candy ☆ citrus drop(お題:性的倒錯) 3/4 ◆cuo2T0EVi6 :2010/05/03(月) 00:28:40.78 ID:Fbhm/kUC0
昼前の、暖く静かな空間が公園を包む。私と彼女は、その内に他愛も無い話を散らしていった。
私の何気ない一言に彼女は驚き、笑い、その短い髪をふわふわと漂わせながら、絶妙なタイミングで相槌をうち、時に質問を返した。
コロコロ変わるその豊かな表情が、彼女の可愛らしい顔をさらに際立たせる。
好奇心の強さと感情表現の強さが、まるで子供の様だった。
話す一方、私は彼女の一転の曇りも無い肌と黒く艶やかな髪が陽の光にきらめく様子を、時にはちらと見、時にはじっと見つめていた。
ふと目が合った瞬間に彼女が浮かべる優しい表情が、私に不思議な感覚を呼び起こした。
シトラスドロップを噛み砕いたかのような、じんわりと沁みる感情。
その詳細と理由には、心当たりがある、どころかとっくに見当が付いていた。
私はその度、ほんの少し頬を染めた。
「…今日も良い天気だねえ」
話題が切れた合間、彼女が空を見上げ唐突に言った。
私も空を見る。青い空と白い雲。葉桜の緑が視界の端に入る。
緩やかに時間が流れていく。彼女は幸せそうに目を細めていた。
「…そうだね」
私は答えた。
なんでもない日常をなんでもなく幸せと感じている。
私はそんな彼女が「好き」なのだ。
194mint candy ☆ citrus drop(お題:性的倒錯) 4/4 ◆cuo2T0EVi6 :2010/05/03(月) 00:29:30.02 ID:Fbhm/kUC0
この感情を常に是と肯定できる訳でもないし、「恋愛は自由だ」と言いきれる国柄でもない。
世間から見れば性的に倒錯している自分。
なのに私は、それでもいいかな、と思える。
「綿飴のような雲だねえ」
そんな、脈絡無く言い放たれた物欲しげな彼女の声に反応し、口が物寂しいことに気が付いた。
からん、とドロップ缶を振る。
「げ」
出てきたのは四つ目の薄荷であった。
出した頭五粒の内、四つが薄荷。工場のランダム製法に恨みを覚えている間に、彼女がこちらを見た。
「あ、え、薄荷だ。凄い封入率」
先程はジョークで軽く流していたが、それが本当になると流石に驚きを隠せないみたいだった。
それでもすぐにあの意地悪っぽい笑顔を浮かべ、「さて処理してあげるよー」と提言してきた。
私はすぐには答えず、一旦視線を手のひらに落とした。
薄荷ドロップは、まるでおはじきみたいに光を反射している。
それを見つめているうちに一つの考えが頭に浮かび、そしてそれが私を行動に移らせた。
―彼女と過ごす宝石のような瞬間を、いつまでも共有していたい。
そんな気持ちをこのドロップに込め、口の中へ放り込んだ。
「あ」
彼女は呆気に取られた様だった。
私は口をもごもごしつつ、率直な感想を言い放った。
「…おいしくないなあ」
それを聞いて、彼女は眩しく笑った。

195 ◆cuo2T0EVi6 :2010/05/03(月) 00:30:36.23 ID:Fbhm/kUC0
以上です。
1/4に酉を付け忘れたけど大丈夫ですよね!
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:34:48.44 ID:PhCYZsd00
人多すぎだろwwwwwwwwwww
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:39:50.96 ID:WJm635dh0
性的倒錯多くねえかwwww
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:40:17.20 ID:kgf8TRJ7O
参加者や運営さんそれぞれお疲れー。今回ボリュームありそうだな、楽しみだ

>>196
まだだ!一時期に比べたら、まだまだ参加者が少ない!
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:41:29.71 ID:zAVHNHXG0
>>196
信じられるか?
ちょっと前はこれでも少ないくらいだったんだぜ?

ちょっと忙しくて見に来ないでいたら過疎ってた
そんな俺にお題ぷりーず
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:44:58.52 ID:DHyeO2o80
>>199
「強さ」
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:46:39.39 ID:zAVHNHXG0
>>200
了解

というか今回の品評会7レス作品多いね
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 00:58:35.43 ID:5EK/XXFg0
◆LBPyCcG946氏のが名前欄長すぎで転載できないからやらん。
残りもセルフでやってくれ。
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 01:02:35.26 ID:kgf8TRJ7O
スレ見てるかどうか分からんな、どうするかね
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 01:10:47.09 ID:5EK/XXFg0
今のテンプレ、これが無いんだもんな。

>・作品のタイトルは現在レス数/総レス数、酉を除いて、全角二十文字以内にしてください。

今回どっちのお題使ったか書いてあるから、全角二十文字越えてる。
それ抜かせば多分書きこみ出来ると思う。どうすりゃいいんだ。
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 01:15:50.30 ID:kgf8TRJ7O
(お題:性的倒錯)←この部分のお題の文字を削るのはどう? 
後はスペースとかは関係ないの?
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 01:20:35.02 ID:5EK/XXFg0
◆LBPyCcG946s氏のは1レス目のメ欄に「お題:性的倒錯」を入れました。
以後、同じような状態になったら同じように対処します。
嫌だったら次回からセルフ転載してください。

>>205
書き込んじゃってから読んじゃった…。
スペースも関係あると思うんですが、見易さを考えると容易に削るのもどうかなーと。
ひとまず上記の通りメ欄にお題という形で対処してみました。
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 01:27:33.67 ID:kgf8TRJ7O
>>206
ごめん、まとめ重複しちゃった。俺も転載試してて、リロードし忘れてた……。
そしてまとめ乙
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 01:30:29.40 ID:5EK/XXFg0
>>207
重複分なんて後で消せばいいんだ。可愛いものです。
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 02:06:07.32 ID:bpVlQipB0
No.01 マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) ◇Lq1ieHiNSw氏
No.2 白骨と少女(お題:性的倒錯)◇DSM7XB0fYQIy氏
No.03 ゑひもせす(お題:性的倒錯)◇F00SERh74E氏
No.04 日曜日はゴミ袋を持って(お題:性的倒錯) ◇iCtTUGkd7k氏
No.05 世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ(お題:勘違い) ◆7C6LTZ08z6氏
No.06 流星の軌跡(お題:勘違い) ◇t/J8vPD8kA氏
No.07 犯ってから殺るか、殺ってから犯るか (お題:性的倒錯) ◇LBPyCcG946氏
No.08 あこがれ(お題:性的倒錯)◇rQ6/ZYPWWM氏
No.09 最後まで勘違い野郎のまま (お題:性的倒錯) ◇oF7EeUteGY氏
No.10 山草子(お題:性的倒錯)◇VrZsdeGa.U氏
No.11 Sister Princess(お題:性的倒錯) ◇HmfYvBHWkM氏
No.12 手をつないで(お題:性的倒錯)◇D8MoDpzBRE氏
No.13 雀蜂(お題:性的倒錯)◇2KdEK73apg氏
時間外No.01 何もかもおかしい一日 (お題:性的倒錯) ◇7C6LTZ08z6氏
時間外No.02 mint candy ☆ citrus drop(お題:性的倒錯) ◇cuo2T0EVi6氏

今回の作品一覧
違ってたらごめん
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 02:19:03.94 ID:lA7+TqgU0
多いかと思ったらそんなことなかったな!
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 02:49:36.33 ID:IkzskhPz0
こうやって見ると性的倒錯ばっかりだね。
勘違いとかいうお題出した俺が勘違いみたいな。
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 03:33:55.01 ID:lBTz9vnV0
今夜は眠れそうにない
お題ください
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 03:36:25.94 ID:D/kBSRAi0
>>212
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 03:42:12.60 ID:lBTz9vnV0
>>213
了解
215全感(週末品評会213th 『性的倒錯』or『勘違い』) ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/03(月) 05:22:13.33 ID:DHyeO2o80
とりあえず一行感想+投票。
No.01: ああ、これはよく出来ていますね。性癖を後天的なものと捉えているのかな。現実逃避するためにMになった。そう感じます。
No.02: 文章的には分かりにくいところがありましたが、話の面白さで読まされてしまいました。けど、突如出てきた『僕』はいただけないなー
No.03: こういうモヤモヤした感じで終わるのはあまり好きじゃない。とはいえ、良いところで話が区切られていると思うんだけど。
No.04: ぶっちゃけ、よくわからなかったんだ。けど、留守番の録音を適当に解釈しまくるセンスは良いね。
No.05: 自作。数少ない「勘違い」作品。いくらなんでも反重力装置はやりすぎたかな。
No.06: 悪くないけど良くもない。1レスで破壊力を出すのは、相当なセンスがないと難しいと思う。挑戦する気概は買う。
No.07: ここで一つレベルが違う作品が来ちゃった感じだねぇ。明らかに異常な人間をここまで平然と書けるのには感心する。
No.08: 5レス目ぐらいでスパッと切った方が良かったんじゃないかな。最後はよくわからない作品になってしまった。
No.09: 死んでくれ! 思わずそう言いたくなるようなアホさでした。ようやく俺が望んでいた作品がきた!
No.10: 文章に「読むな!」と言われている感じがして、読めない。
No.11: 最初は嫌悪感しか感じなかったんだけど、元父親が出てきたあたりから少しだけ共感できるようになりました。けど、出だしは最悪。
No.12: うまくまとめられているけど、話の動きがほとんどないので、面白さには欠けるかな。
No.13: こういうストレートに変態な作品って、今回は少なかったね。いや、しかしこれは良い出来ですよ。
時間外No.01: 自作。俺以外の作品であれば「死んでくれ!」って感じだけど、俺の作品なので許す。いや、やっぱり許さない。
時間外No.02: 最後はうまくまとめてくれた。少なくとも、時間外作品の順番が逆にならなくて良かった。こういう、爽やかな気持ちで読み終われる作品を書きたいものです。

******************【投票用紙】******************
【投票】:No.07 犯ってから殺るか、殺ってから犯るか ◇LBPyCcG946氏
【関心】:No.09 最後まで勘違い野郎のまま ◇oF7EeUteGY氏
     :No.13 雀蜂(お題:性的倒錯)◇2KdEK73apg氏
     :時間外No.02 mint candy ☆ citrus drop ◇cuo2T0EVi6氏
************************************************
― 感 想 ―
No.07が一位で文句ありません。私が同じ題材を取り上げたとしても、絶対にこれよりはうまく書けないでしょう。
No.09とNo.13は変態度が他の作品よりも一歩抜け出ていたし、時間外No.02の甘酸っぱさは心地よかった。
で、今回は、『勘違い』よりも『性的倒錯』を取り上げる人が圧倒的に多かったんだけど……
何故みんなもっとドストレートに行かないのか? 「ルイズぅぅうううわぁあああああん」に優る作品を期待していたのに。
性的行為を現実逃避のために使用している作品が多かったが、それは果たして性的倒錯と言えるのか?
もっと常識を突き抜けたような作品が、今回のお題では欲しかった。
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 07:08:20.04 ID:pPGY/tcW0
ほしゅ
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 08:18:25.72 ID:pPGY/tcW0
ゅしほ
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 09:13:34.92 ID:lBTz9vnV0
ほしゅ
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 09:53:09.20 ID:TqlP/SpWP
ゅしほ
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 10:49:25.12 ID:lBTz9vnV0
ほしゅ
全感書き終わらぬ
221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 11:34:03.19 ID:lBTz9vnV0
ゅしほ
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 12:23:54.70 ID:0g/MGSYs0
ほしゅ。お題もちょーだい
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 12:27:30.32 ID:PFvypXAN0
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 13:00:08.67 ID:0g/MGSYs0
>>223
りょーかい
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 14:29:18.24 ID:0g/MGSYs0
ほしゅ
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 15:03:48.02 ID:z03pkarR0
ヤバイ、暇
お題ください
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 15:28:47.30 ID:31Bk/+fi0
幻想
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 15:38:56.73 ID:z03pkarR0
                       ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧  
                     /  /
                 (^o^)/ てめえが何でも
                /(  )    思い通りに出来るってなら
       (^o^) 三  / / >
 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /
 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち壊す

幻想っていうとやっぱりこれが一番最初に浮かぶよね
了解しました
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 16:02:00.14 ID:TOGdfQK00
お題ください
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 16:04:36.74 ID:gq2+m6o30
>>229
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 16:08:54.00 ID:TOGdfQK00
>>230
了解しました
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 17:10:07.65 ID:TqlP/SpWP
ゅしほ
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 17:54:00.54 ID:oVy3BgBo0
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 18:40:47.71 ID:31Bk/+fi0
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 19:09:09.30 ID:0g/MGSYs0
ほし
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 19:39:42.22 ID:BaxCuE8/0
824 名前:文才無しさん :10/04/28 17:39:24 ID:+yXWoj40
過去ログを見れないせいで感想を読めないときがたまにある。
ネコさんが長期休暇に入ってからはダレも纏めてくれないし……。
そこで提案なんだけど、全感はここの全感まとめに乗せてから、
本人なり有志が本スレに転載する、という流れにしてくれないかなあ、なんて。

237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 20:12:19.11 ID:31Bk/+fi0
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 21:01:47.06 ID:gq2+m6o30
あんっ
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 21:38:46.58 ID:0g/MGSYs0
しっし
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 22:21:42.29 ID:+Byda9yR0
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 22:22:01.17 ID:dQyxxsUI0
お題ください
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 22:38:06.71 ID:lBTz9vnV0
>>241
サイレン
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 23:07:03.71 ID:D/kBSRAi0
hos
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 23:11:34.22 ID:JQLosrVZ0
>>236
ああ、なんか忘れてるなぁと思ってたら、全感まとめだったか。
そのうちやっとくよ。
誰も過去ログからは転載していかないだろうしね。
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 23:35:20.20 ID:JQLosrVZ0
とりあえず203回の全感はまとめに転載したけどさ、
前から思ってたんだけど、これてそれぞれの回の投稿まとめに転載した方がいいんじゃない?
とか思ったけど、最近はそうでもないけど、容量オーバーもありえるからダメだね。
とか思ったしだいです。
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 23:46:21.75 ID:pPGY/tcW0
むしろ回をまたいで全感まとめとしているのがネックなのでは。
転載したいけど前回のはちゃんとまとまってるかしらor前回以前から滞ってるし……
みたいな状況は多々あったでしょうし、今現在まさにそうですね。
回ごとにスレを立ててしまうようにしてしまっていいのではないでしょうか思いますかと語尾を濁しておきます。
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 23:48:54.78 ID:pPGY/tcW0
一行目はいらないですね無視してください
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/03(月) 23:53:36.48 ID:JQLosrVZ0
それでもいいのだけれど、スレが多いのって掲示板的にどうなんだろう?
毎週一つスレが増えていくのだけれど、それが二倍になると、いつしかスレが立てられなくなる、
とかいうことにはならないのかな?
249屁のような人生(お題:屁) 0/2 ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/04(火) 00:06:31.64 ID:ty3aiuMF0
ここで空気を読まず、作品投下。
>>223
「屁」で書きました。
250屁のような人生(お題:屁) 1/2 ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/04(火) 00:08:31.61 ID:ty3aiuMF0
 小学校に入学した頃から、ずっと悩んでいることがあった。
 屁、だ。
 
 俺は先天的な屁コキ虫だ。
 俺が母胎から取り出されたとき、最初に上げたのは産声ではなく屁だったという。
 生まれた後はすぐに保育器に入れられたが、その中でも屁をこきまくり、メタンガス中毒になりかけたという。
 一日平均四十発を下回ったことはない、そんな、そんな俺なんだ。
 周りにいる皆、俺が屁をこいたら微妙な顔をするけど、それでもすぐに笑顔になって何も言わなかったから。
 だから、別に気にしなくてもいいって思ってたんだ。あのときまでは。

 小学校のクラスって、最初は名前順で席を決めるだろ?
 俺は遠藤っていう苗字なんだ。だから一番左の列、前から四番目の席だった。その後ろには、大谷さつきって子がいたんだ。
 可愛かったなぁ。俺は一目で恋をした。
 初対面のときは全然話しかけられなかったけど、一時間目の授業が終わったら、勇気を持って話しかけようと思ったんだ。
 仲良くなりたい。心の底からそう思った。
 そして、一時間目の授業が終わった。
 僕は精一杯の笑顔で後ろを振り向いた。
 けど、その大谷さつきって子は、僕のその顔を見るよりも前に、勢いよく立ち上がってたんだ。
「せんせー、えんどーくんがオナラばっかりしてクサイです」
 笑うだろ?

 それからだよ。俺は努力した。
 肛門奥に残る残糞感は、屁の発生を助長する。だから朝は三十分以上トイレに篭もって、可能なかぎり糞を全部出すようにしたんだ。
 他にもいろいろ気をつけたさ。尻の肉を持ち上げて座ったりして、肛門が極力閉まらないようにもしたさ。
 どうしても屁を出さないといけないときは、ばれない様にスカしっぺにする技術だって身につけたんだぜ。
 だけど、あの子は全然振り向いてくれない。
 どうしてだい?
 ときおり俺の半ズボンが風で揺れていたのを、本当はスカしっぺだってこと、君は気付いていたのかい?
 
 もう何をすればいいのかわからなかったけど、俺には屁を減らす努力しかできない。
251屁のような人生(お題:屁) 2/2 ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/04(火) 00:10:44.86 ID:ty3aiuMF0
 だから、もっと努力した。
 菜食主義者かと思うほど野菜ばかりを食べるようになり、ヨガ教室にだって通うようになった。
 だんだんオカルトじみてきたけど、それほど俺は真剣だったんだぜ?
 
 ある日、俺は急に屁が出なくなった!
 どれだけ普通に歩いても、走っても、飛び跳ねても、俺は屁コキ虫じゃなくなったんだぜ!
 やった!
 けど、そのときはもう、あの子はいなかった。
 中学二年生のときに、転校したんだ。
 俺の屁が出なくなったのは、その一ヶ月後だったんだけど、時すでに遅しだったんだぜ。
 
 あれから、俺は社会人になった。
 大学時代にスポーツで活躍した俺は、結構良い会社に入ることができたんだぜ。
 だけど俺の心の中には、いつまでもモヤモヤしたものがかかっていた。
 なんとなく、コイバナシってやつに極力関わらないようにしてきたんだ。
 憂鬱な気分で、俺は街中を歩いていた。
 
 いたんだ、あの子が。
 
 俺は夢中で追いかけ、話しかけた。
 あの子、最初は俺のことをわからずに手間取っていたんだけど、俺が勇気を持ってあの頃の話をすると、笑いながら思い出してくれたんだぜ。
 あぁ、そうさ。俺は「オナラばっかりしてクサイ」って言われた、あの遠藤さ。
 だけど、いろいろな努力の甲斐あって、もう屁をこかなくなったんだぜ。
 だからさ、俺と付き合ってくれ!

「ごめんなさい。私、来月に結婚するの」

 ……転校するとき先輩に告白されて、ずっと遠距離恋愛を続けていたそうなんだ。
 
 屁のせいで、だいぶ時間を喰ってしまったなぁ。だけど、それも人生なんだぜ☆(終わり)
252 ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/04(火) 00:16:14.72 ID:ty3aiuMF0
以上です。
またお題ください。

感想はむしろWikiの「週末品評会まとめ」に置くっていうのは無理なんですかね。
と思ったら、「週末品評会まとめ」はWikiじゃないんですね……
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:22:01.29 ID:Si5w1wR+0
>>250-251
なんだろう、何ていうかこう、屁とかどうでもいい気がするのは何でなんだろう
いや、話の基本になるのは屁なんだけど、それが何だかどうでも良く見えるというか
うーん、あれかな、結局初恋の子に失恋する部分に屁が関わってないからかな
屁の所為で告白は遅れたけど、それが調節的な原因ではない気がして
馬鹿馬鹿しい話ではあるけどね
254 ◆7C6LTZ08z6 :2010/05/04(火) 00:41:18.12 ID:ty3aiuMF0
>>253
感想ありがとうございます。

> 屁の所為で告白は遅れたけど、それが調節的な原因ではない気がして
むしろそういう話を書きたくて、
「屁、屁って、それ以前にテメーなんか生理的に受けつけねーんだよ! バーカ!」
というのを女の子に喋らせようとしたんですが、それじゃあんまりに思えたので、
少し控えめにしてみました。

けど、お題が根幹に関わっていないって言われると、そのとおりで……
グサッときました。
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:49:03.06 ID:cbHxhLck0
なんとなくロマンチックなお題くれ
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:54:07.67 ID:8ziDeUTL0
>>255
一期一会
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:58:44.92 ID:8ziDeUTL0
なんかまとめ復興な流れに乗って、とりあえず過去スレ、過去ログ、品評会210回まで編集してきたです
今日はこれが限界 通常まとめは無理と判断 申し訳
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:01:41.94 ID:eCJbPSMM0
>>257
超乙です
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:02:43.46 ID:8ziDeUTL0
よく見たら209回までしかできてなかった
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:30:56.87 ID:5S4Qe5Lv0
>>259
なんにせよ乙

ついでに誰かお題くれたら嬉しいな
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:31:25.87 ID:ZuKe1kmP0
お題くださいな
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:32:12.82 ID:8ziDeUTL0
>>260
ポン酢
>>261
カリフラワー
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:33:11.90 ID:ZuKe1kmP0
>>262
カリフラワー苦手だ。

ありがとう
264 ◆F00SERh74E :2010/05/04(火) 01:41:46.13 ID:pG2mhsMS0
PSPの仕様上、一度に書き込める量に制限があるので二分割します。
後編は水曜以降になりそうです。さっそくまとめ人泣かせですみませんねまったく。
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:42:48.68 ID:5S4Qe5Lv0
>>262
ポン酢とかリアルで食ったことが無い

なんにせよがんばってみる
266全感前編1/2 ◆F00SERh74E :2010/05/04(火) 01:43:00.48 ID:pG2mhsMS0
No.01 マゾヒストが犬を飼う ◆Lq1i氏
二組のカップルの対比っぽい構図とその関わり合いとか、描写とか、良くできていると思う
んですが、いかんせん面白みに欠ける感があるのは何ゆえでしょうね?
実は私が……というのも種明かしとして十分でしょう。そこからタイトルのダブルミーニン
グも見えます。それがおおナルホド! というより、……へえに近かったのは、それまでの
展開からのフリが細いからだと思うのです。前フリ皆無とは言いませんが、7レス目に入っ
てから「私」が気付く流れがほとんど独立しているように見えるのです。

No.03 自作じさーく

No.04 日曜日はゴミ袋をもって ◆iCt氏
おネエさんと私くるってまんがなくらいしかわからないですね。

No.05 世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ ◆7C6T氏
仕掛けというにはあまりにお粗末だと思いませんか。
267全感前編2/2 ◆F00SERh74E :2010/05/04(火) 01:44:19.79 ID:pG2mhsMS0
No.02 白骨と少女 ◆DSM氏
まさかの富士の山いEND。
少女の骨に対する執着の源泉も見えないことはないですが、弱い気がしますね。
少女との思い出に根ざす以上、それが性的であっても新聞の墓堀り野郎と「わたし」では
「わたし」の方に超えられない軍配があがると思うので、「わたし」はもっと自信をもつべき。
そしてやはり気になるのは富士の山ですね。コイツはおざなりに扱ってしまうとエライ目に
会います。

No.06 流星の軌跡 ◆t/J8氏
北の国から-2012-

No.07 犯ってから殺るか、殺ってから犯るか ◆LBPy氏
これまでの中で一番さらりと読めたあたりさすがだと思いますが、設定の時点で
終わってないですかこれは。
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 02:51:37.17 ID:iXas1BjV0
ほす
269白い記憶(お題:カリフラワー) 0/4:2010/05/04(火) 03:00:11.69 ID:ZuKe1kmP0
作品投稿します
お題は>>262のカリフラワーです。
270白い記憶(お題:カリフラワー) 1/4:2010/05/04(火) 03:01:19.00 ID:ZuKe1kmP0
「カリフラワーって嫌いです」
 彼女はそう言って、ハンバーグの横に添えられているカリフラワーをフォークで突いた。
 ハンバーグやポテト、ニンジンなどはおいしそうに口へ運ぶのに、彼女はカリフラワーだけを異様に嫌った。
 昔から親にしつこいほど好き嫌いはいけないものだと教えられてきた私は、彼女にこう言ってやった。
「佳代子くん。好き嫌いはあまりよろしくないよ」
 すると彼女は笑顔を崩し、非常に不満そうな顔をしてカリフラワーをフォークで刺した。
 貫通したフォークが皿に当たり甲高い音を鳴らした。
「徹さん。嫌いなものは嫌いなんです」
「と言ってもね佳代子くん。せっかく農家の人が精を出して育てたカリフラワーなんだから、食べる努力くらいしてみたらどうだい」
「嫌いなんだから仕様がないじゃないですか。一度でも嫌いの箱に詰められた私の感情は中々取り出せなんですよ」
「君は箱すら開いていないじゃないか」
「うるさいです」
 彼女はフォークを皿に投げ出し、右の窓へ顔を向けた。
「いや、別に私は怒っているわけじゃ」
「うるさいです」
 出逢った当初からそうだった。
 彼女は一度気分を害すとなかなか元には戻らない人だった。彼女の箱は相当頑丈なようだ。

 私たちは勘定を終えると店を出て、事務所へと戻った。客なんか滅多にやって来ない探偵事務所だ。
 そして、私は、今日も彼女の淹れた珈琲を片手に新聞や小説を読んで時間を潰す。食い潰すと言っても良い。

 彼女はというと、小さな窓から町を見ており、瞬きをする以外の動作は一切なく何処か哀しげだった。
 彼女の瞳には一体何が映っているのだろうか。それは私にはわからない。
 私は彼女を見ていることが出来ず、本の世界へと逃げ込んだ。
271白い記憶(お題:カリフラワー) 2/4:2010/05/04(火) 03:02:02.78 ID:ZuKe1kmP0
 本から視線を戻し、時計を確認すると時刻は六時近くになっていた。

 窓から差し込む夕日が、知らぬ間にソファで寝ていた彼女の顔を優しく照らしている。
 彼女の瞳のすぐ傍で何かが光っていた。近づいて確認すると、涙だった。夕日が涙に反射して光っていた。
 彼女は何を思い出しているのだろうか。何を思って泣いていたのだろうか。

 私は、そっと毛布を掛けてから、事務所から出た。そして、近場のスーパーへと夕飯の買い物に行った。
 
 スーパーでは大勢の主婦やら学生やらが買い物に来ていた。
 特売の野菜や肉を求めているのだろうか、少し小走りの人が多かった気がする。
 もやしを買うために野菜売り場へ行くと、私は山積みになっているカリフラワーを見つけた。
 白く淡い色が非常に不健康なイメージを感じさせた。
 そして、すぐ横には緑色をしたブロッコリーが置かれていた。
 こうして並べて見て見ると、ますますカリフラワーは美味しくなさそうに見えてきた。
 佳代子さんもそんな感じなのだろうか。
 
 私はカゴにもやしとカリフラワーを入れ、他にも肉などを買っていった。
 カリフラワーを買ったのは、彼女に克服をしてもらおうと思ったからだ。ただそれだけだ。
 事務所へ戻ると、佳代子さんは丁度起きたところのようで、立ち上がり目を擦っていた。
272白い記憶(お題:カリフラワー) 3/4:2010/05/04(火) 03:02:44.03 ID:ZuKe1kmP0
「おはよう」
「おはようごさいます。何時の間にやら寝てしまっていました」
 彼女は太陽の様に笑いながらそう言った。
「今日は私が料理を作ってあげるよ。夕飯は此処で食べていくと良い」
「本当ですか? では、お言葉に甘えさせてもらいます」
 私は小汚いキッチンに向かい、買った物を袋から取り出していると、後ろから彼女がやって来て何かを言った。
「また……」
 彼女は目を大きく開き、固まっていた。
「またカリフラワー……」
「あぁ、君にカリフラワーを克服してもらおうと」
「止めてください! カリフラワーは嫌いなんです」
 彼女は走り、私が持っているカリフラワー取り上げ、ゴミ箱へと投げ捨てた。床を見つめながら、長い髪を垂らして震える彼女は少々異常だった。
「君、そこまでしなくても」
「カリフラワーは嫌いなんですってば!」
 再び瞳に涙を浮かべながら彼女は叫んだ。そして、小さくごめんなさいと呟きながら、倉庫になっている小部屋へと逃げて行った。
 私は追うように彼女の立てこもる部屋へ向かったが、鍵を閉められており入ることが出来なかった。
「佳代子くん、この鍵を開けるんだ」
「嫌いなんです……カリフラワーは……」
「わかったわかった。もう金輪際カリフラワーは見せないから」
「もう遅いんです!」
 彼女は再び叫ぶ。扉越し聞こえる彼女の声は泣いていた。
273白い記憶(お題:カリフラワー) 4/4:2010/05/04(火) 03:03:55.75 ID:ZuKe1kmP0
「お母さんは帰ってこないんです。遅いんです」
 何故いきなりお母さんが出てくるのだろうか。
 沈黙が数秒の間続き、彼女は語り始めた。

「お母さんは病気で死にました。私が七つの時です。お母さんは病気に罹りました。
現在の医療では到底治すことの出来ない難病らしかったです。
そして、日に日にお母さんは衰えていきました。
太陽の様に眩い笑顔をするあのお母さんが、見る度に弱っていくのは見ていて苦痛でした。
顔色も悪くなり、白くなっていきました。そして、最後には笑うことすら出来ぬまま死んでいきました。
そうです。あの不健康な白さが、あの太陽を浴びていないような顔色が、カリフラワーにそっくりなんです。
だから、あれを見る度にお母さんを思い出すんです。だから、カリフラワーなんて、大嫌いなんです!」
 彼女は扉を力強く叩いた。その振動が扉に添えていた私の手のひらまで伝わった。

「ごめん。それなのに私は克服しろなんてふざけた真似を」
「いや、徹さんは悪くないんです。悪いのは、馬鹿なのは、私なんです」
 彼女のすすり泣く声が二人だけの事務所に微かに響く。
 それは数分だったのだろうが、私には数時間、否、数日以上の体験に感じた。
 暇があればいつも笑っている彼女が、泣くのは辛かったのだ。
 
 私は扉から手を離し、キッチンへと向かった。そして、彼女に聞こえるように大きな声で叫んだ。
「佳代子くん、夕飯にしよう。今日はハンバーグだ」
 ガチャリと扉の音が聞こえると、彼女は笑いながらこう言った。
「徹さん、私、今日のお昼もハンバーグでしたよ」
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 03:05:18.13 ID:ZuKe1kmP0
投稿完了です。

なんだかうまくまとまってないかもしれないけど、
感想をくれると嬉しいです。
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 04:00:20.78 ID:hCDpDX5X0
大学を舞台にシナリオ書いてみませんか?

vipでエロゲ作ろうぜ!!!!!!!!!!!!!
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1272892730/92n-
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 04:01:01.66 ID:DqdjQa9w0
そんなことより小説かこうぜ!
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 05:38:24.83 ID:pG2mhsMS0
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 05:50:47.84 ID:QBdsUk/T0
ほうほう
279 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:27:19.91 ID:aShA0zY/O
全感投下する
280 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:28:29.06 ID:aShA0zY/O
No.01 マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) ◇Lq1ieHiNSw氏
 変態!変態!変態!変態!ほほぅ、なにやら高度なプレイが展開中ですな。出会うなら、イケメ〜ン!ちきしょう腐ってもげろ!
 変態のくせにっ!変態紳士でイケメンなんてズルいぞ!しかも………彼女がこんな尽くすタイプ……だと……?!
 いい関係性ですな。見てて安心感がある。うんうん、なるほどうんうん………うわぁー……やっぱ厳しー……。
 うわお、へへ変態、ぬわおっいやちょ無理!許容範囲越えた!変態変態変態変態変態変態!しかもやんないの?マジで?吐かれたかーそりゃ無理だな。
 いやしかし倒錯オンステージ、性癖のカオス。大変だこりゃ。こりゃ難儀な付き合いだわ。
 ふむふむ、なんか危ない感じだね。あー、一発やっちゃったか。溜まってただろうしなー、仕方ないか。
 うはwwww侘びしーwwwwwんで帰ってからも切ねーwwwwwwうーん、役どころがちぐはぐなんですね。
 にゃるほどー。これはいいですな。いつ関係性が崩れるんだろうとか考えるとドキドキしますね。ダム決壊。潤一しだいなんでしょうね。

No.2 俺んだな
 文章くさってるな。推敲足んなすぎオワタ。
 最初はもっと現在の話を書こうとしんだけど、回想シーンが膨らんでこんな感じに。
 (禁じられた遊び+乙一っぽい雰囲気)÷文才無し=駄作って感じです。
 次回頑張るよ次回……。

No.03 ゑひもせす(お題:性的倒錯)◇F00SERh74E氏
 アサキ。字面?と言えばいいのかな、カタカナ表記なのがなんかこういいね。スッと入ってきた。訳分かんない事言ってるなスマン。
 がんばれゴエモンとか懐かしいな。そして主人公死ね、氏ねじゃなくて死ね。……下着っ……!立て膝の下着っ……!お前の彼女の何色だっ……!
 えー!?君らまだなのかい!?おお……なんか変な人でてきたな。ええっ?まさかの変態さん登場?
 ふーむ。カエルみたいな顔か。ゲロゲーロ。ゲロゲーロ。だめだなんか青空球児好児のネタしか出てこない。横に広がってる感じだろうか。
 これはまた強烈なキャラだ……。うん?ヒロミ?また新しい人だ、こんなに出して収集つくのかな。
 うーん?悩み?なんか初めてでてきたな。彼女との事なのだろうか。ふーむ、まだやってないってだけじゃないんだ。
 んん?んんん?お、お前の彼女の何色だっ……!ゲロゲーロ!ゲロゲーロゲロゲーロ!エロエーロ!エロエーロ!エロ!エロい!
 ふーむ。ここまで終始思わせ振りな小説世界だと、途中のゲイバーのくだりが浮いてる様な。
 やけに主人公の現状が説明的になってて、そこだけ浮いてる気がしました。粋な例えとかがあるともっと違う印象だと思う。
 あと倒錯ではないかも。性的ではあったけど。もう少しアサキと主人公の絡みも欲しかったかな。そんな感じでした。
281 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:29:20.78 ID:aShA0zY/O
No.04 日曜日はゴミ袋を持って(お題:性的倒錯) ◇iCtTUGkd7k氏
 うーん?読み終わるまでずっとはてなマークって感じだった。
 倒錯?うーん?人形の様に扱うって所?ああ、ピグマリオンどうたらって性癖か。
 感覚としてはふた昔前のレディースコミックにありそうな感じかな。あれ誰だっけ、森園くるみとかなんとか。
 あと、主人公が男なんだか女なんだかいまいち分からない所も、なんかすごくモヤモヤする。
 最初は女っぽいのに、この最後らへんの口調の雰囲気からして男?……かなりモヤっとボール投げたい。
 うん?え、美しくなくなったからって、別に……そんなにショックなの?へー、女の人って大変なんだな……。
 だとしたら最初の方で彼女が自分の美しさに酔っている記述が欲しかったかも。
 というより、なんでか省いてしまってる原因のエピソードを書けば全部解決しそうだな。
 ぼやかしてる人形愛を前面に出して、姉のナルシシズムとか倒錯した美的感覚とか。そっちの方が話も締まりそうだし。
 終始思わせ振りな雰囲気のままで、最後まで終わっちゃったって感じでした。原因のエピソードと、欲を言うならあともう一展開欲しかった。

No.05 世紀のマッドサイエンティスト 土居端ミチオ(お題:勘違い) ◆7C6LTZ08z6氏
 ほほぅ、ショートショートっぽいですな。設定凝ってるなー。
 なんで口調ちょっとDAIGO風なんすか。マジやばすぎですよ。もうまともに読めなウィッシュ。勘弁してほしウィッシュ。
 これはあれっすかウィッシュ、第三次世界大戦の幕開けとかっすかウィッシュ。なるほどウィッシュ、もうDAIGO飽きたウィッシュウィッシュ。
 いやいやワシて。急にオッサンになった。どっちやねん。ふーむ、どんなオチがくるのか。
 え?どういう事?いや、最後までの流れは分かったけど、なんでそうなったのかがさっぱり分からん。
 あんま軍関係詳しくないからかな。よく分からん。7がNANA?へー、あんたも木の実ナナなんだ?
 じゃなくて此処で大事なのは、英数字じゃなくてローマ字だった所か?つまりミチオがミサイルの種類を勘違いしていたんだ。
 なるほどうんうん、……なんか微妙だ……普通に開発してるなら、そこは一番大事な部分だと思うんだけど。
 勘違いの仕方もかなり微妙だし……納得しうる理由なりエピソードなりがあると良かったと思う。
 あとロジックが回りくどいかな。普通だったら読み飛ばすところだった。そんな感じでした。
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 06:30:47.70 ID:aShA0zY/O
No.06 流星の軌跡(お題:勘違い) ◇t/J8vPD8kA氏
 短っ!あー、最近1レス作品少ないね。今度の品評会1レス縛りとかになんないかな。ちょっと楽しそうだよね。
 ふんふん。オチがあるのは嬉しいですな。これはつまりカップル死ねって事ですね、……え?違うの?
 うーん。やっぱオチが戦争のミサイルなんだから、配置させる人物像的に平和の象徴みたいな人達の方がいいんじゃないでしょうか。
 子供が親に、「僕お星さまに平和を願うんだ」と話すみたいな。「平和ってお前意味わかってるのか?」ってなって。
 「うん!〇〇だよ(全然思いつかない)」「ハハッまったくコイツ!」とか言って。
 「あっお星さま!」最後ドカーン的な。微妙か、まぁいいや。
 まぁあれですよね。現実がつまらなすぎて、ミサイル落ちないかな、とかよく妄想しちゃいますよね、うんうん。
 え、しないですか?俺だけですか?そうですか……すいません……。

No.07 犯ってから殺るか、殺ってから犯るか (お題:性的倒錯) ◇LBPyCcG946氏
 今週の◆LBショートショート劇場ですか。ほうほう今回はどんな趣向が……ふむ、まずはいいシチュエーションですな。
 これはやがて殺し合いにまで発展する流れなんでしょうか。ふんふん。うーん?なるほどー。犯罪者の人間模様を描いたんだ。
 普通にすらすら読めてしまうな。この人たち人殺しなのに……。
 犯罪の何が怖いってたぶん普通にできてしまいそうな所でしょうね。慣れというか。
 ルーチンワークの一部みたいになるんだろうなきっと。これは嫌な話ですね、自分勝手ですごく嫌な話。
 性的な倒錯というよりも、むしろそういった所にスポットライトを当てるんだ。意識的な造り方が印象的な話でした。
 面白い面白くないの話ではないかと。長い小説の中で締める部分を作りたい時のワンシーンというか。印象深い話だった。

No.08 あこがれ(お題:性的倒錯)◇rQ6/ZYPWWM氏
 ほう、いじめ?いや親友か。これから色々とあるんだ。フェミニンな男の子とか、腐女子垂涎のキャラだね。
 うはwww隼人ホモフラグwww三角関係っぽいwww……いいじゃないか、続けたまえ
 うん?覗き魔覚醒?タシーロ神?これは……ドキドキしますな。おお、やっとるやっとる。フェミニンな男の子が……。シンジくんなのか……。
 存分に倒錯してますな。なにやら古典の香りさえしてきました。ふんふん。おおう、ねじれたややこしい関係ですね。
 そうくるか。んんん!せっかくだから半分くらいレイプさせてから殺せばいいのに!フェミニン!フェミニン!
 え?……なにこの冷静さは……セックスフラグ?うーん?なんだなんだ?なるほど、ここで倒錯を重ね塗りする訳ですね
 うは、はるか黒キャラだ……なんか萎えてきた……正直怖い……な?この状態で付き合うの?凄いな……引くわ……
 うーん……九条遥の強烈なキャラに正直引いてしまって……それでも好きなんだろな……
283 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:32:16.03 ID:aShA0zY/O
 ふーん。ちょっと引いた。性的倒錯さにじゃなくて。殺してしまった後がけっこう強めに。どうにも引っ掛かります。
 故意じゃなくて偶然の事故なら、やはりそれなりの何かが欲しいかな。あと遥がなんだか変に冷静すぎて、そこがお話に見えちゃう様な。
 三人の関係図や話の流れは良かったと思う。たぶん倫理観の処理の仕方かな。

No.09 最後まで勘違い野郎のまま (お題:性的倒錯) ◇oF7EeUteGY氏
 おおう、なんかいきなりふられたぞ。突然とかトラウマが蘇るからやめ……変態だー!変態!変態!変態!変態!
 特殊な性癖だなー。精神的なマゾに、足し算で自己憐憫からくるシンデレラシンドロームの特化型……まぁあんま考えても意味ないか。
 おいおい最低な男だな。ナンパとか合コンの最後の手じゃないか。わかるわかる。こちとら数打っても当たんねえんだよ、神様のバカ野郎!
 築き上げてきた努力ってどうなんだろう。告白までの通過イベントなんて、けっこうたいした事ない様な…………それより成功する努力しなきゃダメだろ。
 大学生なのかよ。大丈夫かこの主人公。ソープ連れてって一発やらせた方がよさそうだぞ。
 んー?これは……OKもらったのに気持ち良くなくてウワァアアアな流れかな。おおお……。なんかドキドキしてきますな。
 おお、やっぱOKだったか。うん?……てめえこの野郎!嘘だっ!完全に快楽だけが目当てだったじゃないかっ!チクショウ羨ましい死ねっ!
 どっちに転んでもハッピーとか、どんだけ人生楽しんでんだよ。
 なんか………なんでかこう釈然としねえラストだ……。まぁいいや、おめでとう変態……大田さんにこの事全部バラしてぇ……。
 トラウマというか主人公が快楽を得る様になったきっかけとしての特別な思い出が欲しかった様な。
 それがあった方が物語に説得力がでたような気がしました。

No.10 山草子(お題:性的倒錯)◇VrZsdeGa.U氏
 お、なんだか古風な始まり。ちょwww語り手たんなる変態じゃないかww
 しかしくどいなー。装飾やらなんやらがついた、こってりした文体だ。
 ついていけなくて、なに言ってるか段々よく分かんなくなってくるよう。
 えーと、つまり山並みや大自然を女の人に見立ててるんだよな。ずいぶん大げさだなぁ。
 まぁでも大自然だしねぇ。でも自分的には男かな。山オヤジとか言うぐらいだから、そんなイメージなような。
 ……え?まさかこのまま行くの?このまま山を女に例えて妄想ワクテカすんの?んんん?ありゃ、真面目に戻ったな。
 あらら、終わっちゃった。……ふざけんなお!なんだおこれ!流れが綺麗すぎるおプンスカ!
 詐欺だお!もうホント、いい加減にして欲しいお!このギンギンにたぎってるますらおをどうすればいいんだお!
 うーん、もう少しふざけても良かったかと。なんというかとにかく綺麗でした。これお題なければ分かんなそうだ。
284 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:33:30.64 ID:aShA0zY/O
No.11 Sister Princess(お題:性的倒錯) ◇HmfYvBHWkM氏
 おいおいおい。ちょっと待て何言いだしてんだこいつ、おいおい。
 ヤバい……何か一行一行からとてつもない危険な物を感じる……誰か警察呼んでー!男の人呼んでー!誰かー!
 いやいやあんた………………………。うわぁ………パイタッチって……。
 ヤダー( 'д)ヒソヒソ(´д`)ヒソヒソ(д` )ヘンタイキモーイ
 ほう、朝食でようやく普通の兄貴になったか。しかし妹可愛いな。幼女かわいいよ幼女。
 ストーカーとか……ダメだコイツ、なんとかしないと……不審なのはお前だろ……。へー、父親がいたんだ。ほうほう。
 うーん、注いでる愛情の強さは良しとしても、なんつーか主に体目当てじゃねーかこのペド野郎!死ね羨ましね!
 えーっと……、己の欲望を丸出しにしすぎだろ……。すげーな……。なるほどなー、それにしてもよく出来た妹ちゃんじゃないか。
 おい。おいおいおい、それは人としてアウトだろ、ダメだコイツやっぱ危ない!誰かー!今すぐ警察呼んでー!
 これ置いときますね→便利アイテム:血の綱がってないという免罪符

No.12 手をつないで(お題:性的倒錯)◇D8MoDpzBRE氏
 ほう、百合物ですな。いいよね、禁断の花園……溢れ返る芳香……知り尽くした体……うんうん。
 はいもちろん官能小説の受け売りです。受け売りの知識と教養しか持ち合わせてません。
 なるほど。ビアンの人ってなぜかイメージ的に杏子みたいな人が多そうだけど、美紀みたいな普通っぽい方が多いらしいですね。はい受け売りです。
 昔のバイト先にオカマの人がいたけど、もの凄く普通なんだよな。どっかキャラは強かったけど。
 ふんふん。なるほどなるほど。つまりレズビアン的な倒錯というよりは、二人の関係性と杏子の気持ちが性的に倒錯してるって事か。
 こう、二人で手を繋いで楽しそうにぐるぐる回るカップルのイメージがよくあるけど、あれが出てきました。
 杏子が支点になってて、美紀が体を任せっきりにしてる様な構図。楽しそうだけど、杏子は時々浮かない顔をしてて。
 美紀はまだ気づいてないけど、いつか崩れるそんな予感が見え隠れしてるというか。
 いつかお互いの気持ちにズレが生じていくんだろうな。綺麗なお話でした。
285 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:34:48.44 ID:aShA0zY/O
No.13 雀蜂(お題:性的倒錯)◇2KdEK73apg氏
 ほうほう。昆虫収集家の雀蜂に対する偏執的な愛情とかなのかな。虫に欲情かー。いや深いね。
 おお、性欲膨れ上がったとして一体どうするんだろう。手で掴んだぞおい。危ないんじゃ……。
 これは……まさか虫レイプ開始なのか? 逃げてー!雀蜂逃げてー!いやああああ雀蜂がああああ!
 ……うわぁ。なんか凄いなコレ。ほうほう一体どんなトラウマが。いたたた。見てるだけで痛い痛い痛いうわわ。
 ちなみに蜂に刺された時の痛みは半端ない。蜜蜂でもすげー痛い。ふむふむ。ふむー。なるほど。
 ちょwwwフリーズあられもない姿wwwなんか笑ってしまったwww……うーん、いや凄いよ実際。
 ふ、藤岡隊長!……す、素手ですか?それはさすがに無茶です!隊長?隊長ーー!!隊長ーーーーー!!
 なんか自分のと場所とかちょっと被ってるけど、この人の方が文章うまいから俺の方が完全に不利だぜチクショウ。
 まさか夏休み書いてくる奴がいるとは、まぁいいや。とにかく楽しみました。
 彼はいい変態でした。隊長を尊敬します。でもフェチも極めると蜂に欲情できる様になるんだろうか。深い、深すぎて分からんぜ。

時間外No.01 何もかもおかしい一日 (お題:性的倒錯) ◇7C6LTZ08z6氏
 品評会二個目かー。速筆羨ましい。
 なんかどっかで聞いた事のある考え方だなー。どこだっけ、新興宗教?まぁいかにもありがちなしょうもない言説だよね。
 ああ、最近改正されるとかいう規制法と絡めてんのかな。あれもひどい法律だよね。
 そんないっぱいいっぱいにさせてどうしようってんだろう。逆に犯罪増えそうだけどね。
 んー?ずいぶん急展開だな。どことなくラノベっぽいかな。うーん。うーん?最後夢オチ?
 あっさり捕まったな。おお、拷問シーンはいいよね。それだけで絵になるというか。
 うーん?イメージとしては二十世紀少年の世界観でコメディタッチみたいな感じなのか?ちょっとドタバタしてるけど。
 うん……。ずいぶん急にヒロイン出てきたな。やっぱどっか夢オチっぽい。
 ほうほう、話のペース上げたな。うん、匂い嗅がれ隊はちょっと笑ったw
 あれ?そのまま終わっちゃった。うーん、ちょっと……無理があるかなー。これをそのままで食えってのはないかな。
 このまんまで行くとしたら、やっぱりどこか大事なポイントでシリアスモードな雰囲気を差し込む必要があると思います。
 引っ掛ける所がないので、そのままダラッと最後まで終わってるというか。詰まらないとかではないんだけど。そんな感じでした。
286 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:35:45.11 ID:aShA0zY/O
時間外No.02 mint candy ☆ citrus drop(お題:性的倒錯) ◇cuo2T0EVi6氏
 うは、なにコレ。爽やかだなおい爽やかだよう。こってり変態チックな性的倒錯を選ぶ人が多かったせいか、こう逆にくる物があるな。
 やっぱたくさんあるとどうしても読み合わせみたいのが出てくるよな。一つ一つ切り替えて見ないといけないんだけどね。
 おお、百合第二弾。恋は突然に。ふーむ。ふーむ?ふーむふむ。ロロップロロップー。サクマロロップー。
 節子!好き嫌いいうもんやない!なんでも食べなあかん!薄苛嫌いな人けっこう多いよな。スースーするのが苦手らしいね。
 内容的には掴み所のない淡い印象の話だなー。好きな人の隣にいる少女の恋心だけでできてるというか。
 ふむー。倒錯ではないかな。性的でもないし。でも爽やかで素敵でした。青春の1ページって感じだね。


******************【投票用紙】******************
【投票】: No.01 マゾヒストが犬を飼う(お題:性的倒錯) ◇Lq1ieHiNSw氏
【関心】: No.07 犯ってから殺るか、殺ってから犯るか (お題:性的倒錯) ◇LBPyCcG946氏

      No.13 雀蜂(お題:性的倒錯)◇2KdEK73apg氏
************************************************

―総評だな―
 ふーん。文才ないスレってそうなんだ。本当にねえ。……ヒソヒソ……
 面白いの多かったな。ただ投票に関しては決め手がない感じのが多かったなー。
 じゃあお疲れ、変態。
287 ◆DSM7XB0fYQIy :2010/05/04(火) 06:43:57.02 ID:aShA0zY/O
ああ、しまった。やってもた。

集計する方>>286のレスの中で一緒に投票もしてます。宜しくお願いします。気を付けます。

それにしても勘違いで書いてるの今日中に終わるかな……文才欲しい……。
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 06:56:23.83 ID:pG2mhsMS0

全感と同じレスの中で投票するのってだめだっけ?
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 07:14:52.58 ID:aShA0zY/O
>>288
いや、よくは知らないけど、携帯の書き込みは名前欄に【投票】って入れないと分かりにくいらしい
テンプレの一番下に書いてあるんだよ>>180
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 07:16:38.12 ID:QBdsUk/T0
どっちでもいいでしょ。集計はログを抽出すればいいだけだし。
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 07:28:58.87 ID:pG2mhsMS0
ああ、それはたぶん投票用紙の形式をとらないもしくはとれない時のルールでしょう。
***があればなんら問題ないはず。
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 07:45:11.49 ID:aShA0zY/O
>>291
なるほどー。知らんかった。サンクス
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 08:07:37.63 ID:Si5w1wR+0
そうだね。携帯でアスタリスクを打つのがメンドイだろうからって、理由だった気がする
投票用紙に投票の二文字が入ってれば抽出できるんで問題ないです
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 08:50:54.32 ID:Si5w1wR+0
>>270-273
カリフラワーの白さ= ってのがちょっとアレかとも思うけれど、読みやすい文章でおもしろかったです。
というか、最後で綺麗に吹いたw
見事ですね。
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 09:46:19.60 ID:iXas1BjV0
ゅしほ
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 10:06:06.72 ID:aCjlOWiO0
お題とかいうものをもらってみようか、いやください
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 10:07:54.96 ID:iXas1BjV0
>>296
レントゲン
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 10:10:18.27 ID:aCjlOWiO0
>>297
むずw
把握したよん
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 11:10:53.25 ID:rYvi4S3J0
お題ください
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 11:14:02.19 ID:PQJuy24l0
旅行
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 11:14:37.71 ID:rYvi4S3J0
>>300
はあく
302投票 ◆LBPyCcG946 :2010/05/04(火) 11:29:37.09 ID:pzQGcGiD0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.11 Sister Princess(お題:性的倒錯) ◇HmfYvBHWkM氏
      ただただ純粋な好みにおいて投票。母の死を軽んじる主人公が好きだ。

【関心】:No.2 白骨と少女(お題:性的倒錯)◇DSM7XB0fYQIy氏
      性対象物のチョイスが良かったかな。展開もなかなか。

     No.12 手をつないで(お題:性的倒錯)◇D8MoDpzBRE氏
      関心票と一緒に百合ポイントを1Pあげよう。10P貯めると地球から男が消滅する。
************************************************
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 12:30:29.05 ID:A6S01Ic50
ほしゅ
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 13:11:48.25 ID:hlMKKyJW0
お題くだしあ
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 13:13:42.36 ID:ZHerMvvs0
>>304
ストレス
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
>>305
把握