木語:毒にも薬にもなる=専門編集委員・金子秀敏
<moku−go> 中国で覚せい剤を密輸した日本人が立て続けに4人死刑になった。
薬物事件でいま中国当局に拘束・収監されている日本人は30人。このうち10人が公判中なので、まだ死刑判決が出そうだ。
北京の日本大使館は、日本人の裁判が増えたので専門職員を置いてサポートするそうだ。
千葉景子法相は「日本の制度と比較して刑罰が重い」と言った。中国が重いのか、それとも日本のほうが軽いのか。
(中略)
最近もう一つ、日本と毒物がキーワードになるニュースがあった。毒ギョーザ事件の容疑者逮捕である。
中国当局は、有毒物質メタミドホスが中国国内でギョーザに混入した可能性はないと断言してきた。それが一転、食品工場の元職員の犯行ということになった。
容疑は「危険物質投与」。新聞などでは「投毒」と略称される。
最高は死刑の重罪だ。解雇された従業員が雇用主の家の井戸に農薬を投入するといった投毒事件は昨今の中国では珍しくない。
ギョーザ「投毒」事件で中国人が逮捕され、日本人「毒販」が死刑執行された−−同じ時期に続けて起きると奇妙なバランス感覚がある。
趙連海氏という被告人がいる。河北省石家荘市の「三鹿」という乳業会社が有害物質メラミンを混ぜたミルクを製造し、
全国の赤ちゃん30万人が腎臓結石などになった。「三鹿毒ミルク」事件だ。
原乳の納入業者は死刑、三鹿の経営者は無期懲役。だが会社は倒産し、被害者は賠償の請求先を失った。
被害児の父、趙氏は「結石赤ちゃんの家」という被害者団体を結成したら、「難くせ吹きかけ罪」で逮捕、起訴された。
判決は懲役3年が相場という。毒と名が付けば被害者ですら懲役刑だ。それほど中国は毒に厳しい。
http://mainichi.jp/select/opinion/kaneko/