1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
はじまるよー
2 :
ぴ〜ちじょん ◆PJzxSE7gb6 :2010/04/08(木) 23:47:39.01 ID:2G9GMW+z0
おわるよー
3 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/08(木) 23:51:19.54 ID:8Me4YxrEO
4 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/08(木) 23:52:57.58 ID:8Me4YxrEO
第十三話「殴り合い」
5 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/08(木) 23:54:08.38 ID:8Me4YxrEO
(´・ω・`)「おはよう」
('A`)「うっす」
いつも通りのいつもの朝。
俺がこうして再び、このしょぼくれ眉毛にぶっきらぼうに挨拶を返せるのは『適応者』である俺がそう望んだからなのか……
なんて柄にも無い事を考えてしまうのはやはり昨日の件を経たせいだろう。
(´・ω・`)「朝っぱらから眉間に皺寄せちゃって、悪魔にでも会ったのかい?」
もうお決まりとなりつつあるコイツの戯言。
何故コイツはこうも的確に、それでもってさらりと俺の状況を当てられるのだろうか。
('A`)「盗撮機でも持ってんのかお前は」
(´・ω・`)「えっ? 本当に悪魔に会ったのかい?」
あくまでも惚けた面をしやがる。
コイツが嘘をついているか否かは向こう五十年一緒に付き合っても見破れないだろうな。
('A`)「ふん……笑えねー冗談だ」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/08(木) 23:56:01.48 ID:MujFHlf0O
きたきた!
支援
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/08(木) 23:56:07.20 ID:KQjXDvftP
読んだことないけどせっかくの遭遇だから支援
8 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/08(木) 23:56:17.46 ID:8Me4YxrEO
(´・ω・`)「それよりも……柄にも無く香水なんてつけてるみたいだね。少しキツ過ぎるんじゃないのかい?」
('A`)「ほっとけ」
香水なんて普段はルームスプレー程度にしか利用しない俺だが、今日ばかりは仕方無い。
兄者の血を浴びた俺の身体から滲み出る生臭さが一朝一夕で取れる筈も無く、こうして年甲斐もないババァの如く香水を塗りたくる事を余儀無くされたわけだ。
('A`)「昨日焼肉食べに行った時の匂いが取れねぇんだ。髪の毛からも匂いがプンプンしやがるぜ」
肉というのはあながち間違ってはいない。
もっとも、焼肉ではなく生肉の方だがな。
(´・ω・`)「焼肉……ねぇ」
しょぼくれ眉毛は俺の全身を舐める様に見つめる。
垂れ下がった眉をそのままに目を吊り上げた、何か言いたげな表情がそこにあった。
9 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/08(木) 23:57:51.69 ID:8Me4YxrEO
(;'A`)「んだよ気色悪い」
視線を振りほどく様に手を振る。
それに対してしょぼくれはさして物怖じする事もなく、ゆっくりと腰を引いた。
(´・ω・`)「ん……気に障ったのなら謝るよ。どうにも釈然としないものがあってね」
('A`)「んなモン知るかよ。さっさと自分の席に着け」
はいはい、とまるでガキを宥める様に溜め息をつき、しょぼくれが席を立つ。
だがそれは教室の戸が開かれる音によって遮られた。
( ω^)「…………」
傷を負った右目に乱暴に巻かれた包帯。
普段殴られたり蹴られたりでくたびれた学校指定のブレザー。
髪の毛は短いながらも量が多く、野暮ったさを感じさせる。
内藤ホライゾンが、そこに居た。
('A`)「…………」
俺が内藤に声を掛けようか掛けまいか悩んでいると、しょぼくれが俺に耳打ちしてきた。
10 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/08(木) 23:59:08.37 ID:8Me4YxrEO
(´・ω・`)「何だろうねあの包帯、怪我でもしたのかな?」
('A`)「んな事俺が知るかよ。モララーにでもやられたんじゃないのか?」
ぶっきらぼうに返した直後に俺の肩に何かが触れている事に気付き、反射的に振り返る。
( ・∀・)「人聞きの悪い事言うなよ。俺なら目に見える外傷は与えずにジワジワやるね」
('A`)「モララー……」
その端正な顔を不敵に歪めて、俺の肩をポンポンと叩きながらモララーが言う。
俺とモララーのやり取りを余所に、内藤はいつものニヤけ面で俺達の横を通り抜けようとするが……
( ・∀・)「おっと……」
( ω^)「…………」
咄嗟に前に躍り出たモララーによって内藤の歩は止められた。
やれやれだ。
またいつもの下らない光景を見る羽目になるんだろうな。
11 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:00:49.72 ID:8Me4YxrEO
( ・∀・)「内藤く〜ん、その怪我どうしたんだい?」
( ω^)「…………」
モララーが猫撫で声で問い掛ける。
だが内藤はそれに対して何も応えず、ただ俯くだけだ。
( ・∀・)「どした? 俺の質問に応えろよ」
(# ><)「モララー君シカトしてると酷い目見るぞなんです!」
どこからともなく現れた腰巾着のビロード。
未だニヤニヤと笑みを絶やさないモララーとは対照的に、大して威圧感も無いつぶらな瞳を大きく見開いて威嚇する。
('A`)(動物かよお前は……)
(# ><)「何か言えなんです! 殺されてぇのかなんです!!」
なおも俯き、沈黙を続ける内藤に業を煮やしたのか、ビロードは内藤の胸倉を掴み、空いた右手を大きく振りかぶる。
12 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:02:11.88 ID:8Me4YxrEO
(-A`)(南無三っ!)
俺は心の中で内藤に向けて合掌する。
だがそれは全くもって無駄な事となった。
殴りかかるビロードの拳を内藤は片手で払い、更に空いた左手でビロードの頭をがっちりと掴む。
そしてそのまま左手を薙ぐ様に、ビロードの顔面を俺の机の角に叩き付けた。
( ><)「ぶへらっ!」
(;'A`)「おいっ!」
ビロードは両手で鼻を抑えながらしゃがみ込む。
その手の間から大量の血が吹き出ているのが見えた。
( ω^)「…………」
(; ・∀・)「え?」
モララーは先程まで不敵に歪めた顔を引きつらせ、後ずさる。
内藤はまるで何事も無かったかの様なニヤけ面で、後ずさるモララーをゆっくりと一歩ずつ追い詰めてゆく。
13 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:04:03.03 ID:08JH9kTSO
( ω^)「うぜーんだお」
蚊が鳴く様な、だがそれでいてとても怒りに満ちた声で内藤が呟いた。
騒ぎに気付いた女子達の悲鳴がやけに耳につく。
だがそれよりも俺の意識を引きつけるものがあった。
( ω^)「お前もズタズタにしてやろうかお? 『適応者』……」
モララーに向けて放った内藤の言葉。
それが俺に与えられた僅かな安息の時を打ち砕いた。
(;'A`)(クソったれ!)
このままだと学校内で殺人事件が起こりかねん!
若干気が引けたが俺は即座に自分の席を立ち、空いた自分の椅子で内藤の後頭部を殴りつけた。
( ω゚)「がっ……!」
内藤は頭から血を流しながら糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちた。
女子達の悲鳴が耳を劈くような金切り声になるのを感じながら、俺は心の中で口癖になりつつある文句を呟いた。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:05:32.34 ID:rikxSFzBP
まとめ読みながらこっちで支援。楽な作業じゃないよっ!
15 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:05:39.35 ID:08JH9kTSO
(;'A`)(笑えねー冗談だ……)
グッバイ、俺の慎ましい学生生活。
これから俺が『普段は物静かだけどキレたら危ない人』なんてレッテルを貼られて、後ろ指を指されながら暗い学生生活を送るのが目に浮かぶ。
(;'A`)「あぁぁ゙っ!! クソったれ! どいつもコイツも人の気も知らねぇで好き勝手やりやがって!」
頭を抱えて無駄にジタバタしてみるが助け船など来る筈も無い。
それどころかもっと悪い知らせが耳に入った。
(;´・ω・`)「どーすんのさこの二人!? もう先生が来ちゃうよ!?」
(;'A`)「……っ!」
しょぼくれが伝える悪い知らせで我に返る。
処理すべき人間は二人。
先ずは鼻血を流して唸っているショタっ子からだ!
(;'A`)「ビロード! お前は泣いてないでさっさと席に着け!」
16 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:07:22.63 ID:08JH9kTSO
(; ><)「うわぁぁんっ! 血が出てるんです! 痛いんです!」
何歳児だよお前は。
(;'A`)「男の子だろうが! もっとシャキッとしなさい!!」
(; ><)「うっ…ぐすっ…ぐすっ」
鼻血を恐る恐る拭いながら自分の席に向かうビロードを横目に、俺は次の難関に目を向けた。
( ω゚)「」
(; ・∀・)「死んでんじゃね? コイツ……」
滅多な事言うんじゃねぇ!
と、心の中で突っ込むがモララーがそう言うのも無理は無い。
白目を剥いて倒れている内藤は時折びくびくと痙攣している。
(;'A`)「しょぼくれ! 雑巾をありったけ持って来い!」
(´・ω・`)「ほいさ」
言うやいなや、俺の隣に雑巾が大量に落ちた。
さぁ今から特命病棟二十四時名医鬱田ドクオの奇跡の始まりだ!
このマメなしょぼくれには名助手の称号をくれてやろう。
17 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:08:48.49 ID:08JH9kTSO
取り敢えず頭を持ち上げてやり、血の流れを抑える。
(;'A`)「しょぼくれ、抗菌ガーゼを寄越せ!」
(;´・ω・`)「君は僕をなんだと思ってるんだ!? そんなの持ってるわけないじゃないか!?」
くそっ! 名助手の称号は剥奪だ。
何か代用出来る物はないかと辺りを見渡していると、横から手が差し出された。
( ・∀・)「ほらよ」
その手には望んでいた抗菌ガーゼが握られていた。
何でこんな物をモララーが持っているのかは突っ込むまい。
(;'A`)「恩に着るぜ」
それを乱暴にひったくり、患部に押し当てる。
真っ白だったガーゼはあっという間に血の赤に染まり、湿った感触が手に伝わる。
(;´・ω・`)「これはかなり不味いんじゃない?」
(;'A`)「大丈夫だ、頭部の怪我で一番危険なのは内出血だ。この様子じゃあその心配は無さそうだからな」
18 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:10:45.41 ID:08JH9kTSO
とは言うものの俺に応急処置の知識は殆ど無い。
今の言葉も素人の付け焼き刃、気休め程度の予備知識でしかない。
(;'A`)「くそっ! 取り敢えず血を隠してモナーを騙すしかないか……」
(;´・ω・`)「そんな目茶苦茶な……」
( -∀・)「良いと思うぜ」
否定意見と肯定意見が一つずつ。
だが知ったことか!
今この場では俺がルールだ。
('A`)「しょぼくれ、モララー、取り敢えず辺りに散った血を拭き取ってくれ!」
( ・∀・)「あいよ」
(;´・ω・`)「バレても僕は知らないからね……」
知るか。
こないだ逃げた罰として巻き添えになってもらうさ。
(#'A`)「間に合えぇぇえっ!!」
各々が血を拭き取る中、俺は内藤の患部を抑えて血を止める事に専念した。
19 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:12:36.39 ID:08JH9kTSO
( ´∀`)「モナ? 何してるモナ、さっさと席に着かないと遅刻にするモナよ」
勢い良く戸が開かれ、モナー教師が現れた。
教室の空気がどよめく。
モララーとしょぼくれは上手くやったのだろうか。
ちらりと横目で二人の様子を確認する。
(; -∀-)「…………」
雑巾はポケットの中か……よし!
(;´-ω・`)「…………」
雑巾は俺の机の中か……良くない! がここはやむを得ないか。
('A`)「先生」
( ´∀`)「ん、どうしたモナ?」
モナー教師はまだこの惨状に気付いていないようだ。
担任が愚鈍である事を喜ぶのは恐らくこれが初めてだろう。
('A`)「内藤が貧血で倒れたみたいなんで保健室に連れて行きます」
('A`)ノ( ω゚)ダラーン
支援ぬ
21 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:13:41.80 ID:08JH9kTSO
(; ゚∀゚)「んぐwwwwww」
(;´゚ω゚`)「ぶっwwwwww」
ええい笑うな!
特にモララー、お前の場合は色々と不味い。
俺だってこんな苦肉の策なんか取りたくなかったさ。
だが仕方無いだろう?
内藤がいつ目を覚ますか分からない状況でこのまま放置しておくわけにもいかない。
かと言って今起きた事を正直に話すなんて俺には出来ない。
(; ´∀`)「何か深入りしたらいけない気がするモナ。じゃあ鬱田、内藤を頼むモナ」
しめた!
('A`)「じゃあモララー、しょぼくれ、運ぶのを手伝ってくれ」
(;´・ω・`)「はいはい」
(; -∀-)「りょーかい」
俺の一声で二人がそれぞれ胴と足を抱え上げる。
俺は血が出ている患部を抑える必要があったので頭を抱え上げた。
22 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:15:30.47 ID:08JH9kTSO
('A`)「……頭を見せるんじゃねーぞ」
( ・∀・)「……分かってらい」
(;´・ω・`)「……何で僕まで」
各々で目配せする。
モナーに悟られぬように教室の後ろ側の戸から廊下へ出る。
そしてしょぼくれが戸を閉めた時、ようやく俺達は安堵の溜め息をつくことが出来た。
(;'A`)「成るように成るもんだな……」
(´・ω・`)「何で僕こんな事してるんだろう……」
(# ・∀・)「さっきからブツブツうるせーぞ八の字眉毛」
それから保健室までの道程を俺達はどうでも良い世間話をしながら歩いていたのだが、保健室まで丁度後半分に差し掛かったところで俺はある違和感に気付いた。
('A`)(軽いな……)
気を失って倒れている内藤の身体は三人がかりで持っているにしても軽過ぎる。
('A`)「…………」
23 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:16:38.96 ID:08JH9kTSO
(´・ω・`)「どうかした?」
('A`)「いや、何でもない」
コイツの前で考え事をするのは今後控えよう。
このしょぼくれ、虫も殺せないような温厚でお人好しそうな顔をしているが俺のやる事、考える事に関しては異常なまでに目を光らせている気がする。
( ・∀・)「おっし、着いたぞ」
俺は内藤の患部を持ち上げつつ、空いた手で振り返らないまま保健室の戸を開けた。
消毒液の臭いが鼻につく。
(´・ω・`)「先生が居ないね」
('A`)「その方が都合が良いさ」
内藤を乱暴にベッドの上へと放り投げ、俺達は揃って安堵の息をついた。
俺、しょぼくれ、モララー。
まさかこんな奇妙な組み合わせで共同作業をする日が来るとは、夢にも思わなかったな。
24 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:17:55.77 ID:08JH9kTSO
(; -∀-)「やれやれだな」
モララーは溜め息を吐きながらブレザーのポケットに手を突っ込み、煙草を取り出した。
(´・ω・`)「副流煙って知ってる? 場所も場所だし控えて欲しいんだけど……」
しょぼくれがあからさまに嫌そうな顔をするがモララーはそんな事お構い無しにオイルライターも取り出す。
( ・∀・)「成績学年一位の俺にそんな質問するか? 手前の意見なんざ聞いてないんだよ」
オイルライター特有の甲高い金属音と共に炎が揺らめいた。
そのままモララーは煙草に火をつけ、大きく吸った。
( ・∀・)「ふぅーっ…一仕事終えた後の一服は旨いな」
煙がみるみるうちに保健室中に立ち込める。
俺は煙草の煙は苦手じゃないが、場所が場所なだけに気に入らない。
コイツは人が来た時の事を考えていないのだろうか。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:18:00.40 ID:549TuI5FO
祝規制解除
支援
26 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:19:07.91 ID:08JH9kTSO
('A`)「先生が来たら俺達まで停学になる。吸うなら余所で吸ってくれ」
( ・∀・)「この時間は誰も来ねーよ。保健教諭も事務作業中だ。知っててここに来たんじゃねーのかよ」
言いつつモララーは俺に煙を吹き掛けてくる。
煙草は苦手ではないとはいえ、非喫煙者の俺がこの煙たさに耐えきれる筈もなく、堪らず俺は咳き込んだ。
(;'A`)「ごほっ…何事もイレギュラーってモンがあるだろうが! そんな事も考えられないほどお前は馬鹿じゃないだろ?」
(; -∀-)「あーもう! うるせぇな、お前普段からそんな堅苦しい事考えてんのかよ。ちったぁ肩の力抜いたらどうだ?」
モララーは舌打ちしながら窓を開け、煙草を指で弾いた。
煙草は赤く揺らめきながら綺麗な放物線を描き、地面に落ちた。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:19:42.84 ID:ZWmjsUNAO
支援できる幸せ
28 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:20:05.79 ID:08JH9kTSO
(;´・ω・`)「ごほっごほっ…臭いが染み付いたら洒落にならないや。僕は先に行くからね」
しょぼくれはそれだけ言うと足早に廊下に出て、ぴしゃりと戸を閉めた。
よっぽど嫌だったんだろう。
モララーに代わって謝っておこう、心の中でだがな。
( ・∀・)「なぁドクオ」
('A`)「あ?」
出ていったしょぼくれからモララーの方へ視線を移す。
モララーは内藤ほどではないが、邪気を含んだ笑みを浮かべていた。
( ・∀・)「お前って意外にブッ飛んだヤツだったんだな」
モララーは顎で内藤を指す。
( ・∀・)「椅子で人をブン殴るなんてよっぽど喧嘩慣れしてねぇと躊っちまうモンなんだがな」
値踏みするような視線。
全く、俺も人の事を言えないが『適応者』ってのはどいつもこいつも一筋縄ではいかないな。
紫煙
30 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:21:18.47 ID:08JH9kTSO
('A`)「クラスのゴミを潰すのに何を躊う事があるんだ?」
( ・∀・)「違うね」
俺の言葉をモララーは即座に否定する。
( ・∀・)「それはお前の本心じゃない、それくらい俺でも分かるぜ?」
( ・∀・)「『適応者』がどうとかって言ってたよなコイツ。俺が聞いてなかったとでも思ってんのか?」
モララーは矢継ぎ早に言葉を連ねてゆく。
その言葉は俺が今最も触れて欲しくない核心へと近付いてきた。
( ・∀・)「お前、面白そうな事に一枚噛んでんだろ? 勿体ぶらずにここで全部吐き出しちまえよ」
(;'A`)「…………」
不味い事になってきた。
コイツがただの不良ならしらばっくれれば良い。
最悪、バレたとしても良いだろう。
一介の高校生が迂闊に手を出せるようなことじゃないからな。
31 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:22:48.49 ID:08JH9kTSO
だが内藤の言葉が真実だとするとモララーは間違いなく『適応者』だ。
恐らく……次に俺達の犠牲者になる人物。
ベルゼブブが言う世界を揺るがす力を持つ人間が、それぞれその自覚を持ちながらにして一堂に介する事になればどうなる?
(;'A`)(考えたくもねぇぜそんな事……)
それこそ世界変革どころの話じゃない。
そうなってしまえばもう後の祭り、人類は血祭りだ。
( ・∀・)「だんまりかよ。俺としては武力行使にでても良いんだがな……」
モララーは俺の肩に手をかけ、静かに力を込める。
骨が軋むような痛みと不快感が俺を襲った。
(#'A`)「いっ……!」
堪らずその手を振り払い、威嚇の意味を込めて未だ笑みを絶やさないモララーを睨みつける。
32 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:24:06.47 ID:08JH9kTSO
( ・∀・)「何だぁその目は? 内藤の時は気圧されちまったがよぉ……お前、俺とまともにやり合って勝てると思ってんのか?」
モララーは未だに笑みを絶やさないでいるが、目は全く笑っていない。
獲物を狩る狼の様に凶悪で、狡猾な瞳。
それは他の何者でもなく、俺だけを真直ぐに見据えていた。
(;'A`)「ちっ…うっせーな……」
( ・∀・)「反省してまぁすってか? つまんねーんだよボケが!!」
怒号とともに大振りなローキックが俺の左足に向かってきた。
俺はそれを咄嗟に空手の下段払いの要領でを左腕で受け止める……だが。
(;'A`)「ーーーっ!?
受け止めた筈の左腕が押し負けて弾かれた。
それと同時に強烈な痺れが腕を襲う。
33 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:25:44.65 ID:08JH9kTSO
痺れた腕を労る間も無く、モララーの追撃が襲いかかる。
先程蹴りに使った右脚を軸にした後ろ回し蹴り。
相手を一撃で屠る鈍器と化したモララーの左脚が俺の側頭部に狙いをつけてくる。
(;'A`)(くっ……!)
避けるには少し反応が遅過ぎた。
使える右手を出すのも間に合わない。
ならば……
(#'A`)「受け止める!」
狙われた頭部を脚にぶつけてやる。
骨張った感触と激しい衝撃が俺の脳を揺さぶる。
(;'A`)「ぐぁっ!」
(; -∀・)「っつ……!」
頭のダメージはかなりのものの、モララーもそれなりのダメージを受けているようだ。
渾身の蹴りを放つ足に渾身の頭突きによるカウンター。
両者共に無事でいられる筈がない。
34 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:26:53.29 ID:08JH9kTSO
(; -∀・)「いってーなおい……」
モララーは片足立ちで左足を擦っている。
これで何とかイーブンとまではいかないが一矢報いる事が出来たようだな。
(;'A`)「っつ……!」
だが脳の揺れと左腕の痺れは治まらない。
頭も腕も蹴りを一発ずつ食らっただけなのだがこの有様だ。
(;'A`)(化け物かよコイツは……)
その華奢な身体の何処にそんな力があるのだろうか。
プロの格闘家ですらストリートファイトの舞台なら倒してしまう。
そんな化け物染みた強さすら感じる。
( ・∀・)「お前なかなかやるじゃん。多分俺が今までやり合ったヤツの中でも五本の指に入る強さだぜ」
そりゃどうも。
言いながらモララーは鼻歌交じりに構える。
35 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:28:36.18 ID:08JH9kTSO
( ・∀・)「来いよ」
舌を鳴らし、俺を挑発してくる。
その挑発に乗れるのならどれだけ気が楽だろうか。
しかしモララーの構えに隙は無く、どこを狙っても強烈なカウンターをお見舞いされる未来しか見えない。
ならば……
('A`)「…………」
( ・∀・)「ブレザー脱いでどうすんの? 喧嘩の時に上着を脱ぐなんて漫画の見過ぎだっつーの!」
モララーの挑発を余所に俺は脱いだブレザーを未だに痺れる左手で掴む。
悪いなモララー、ちょっとばかし汚い手使わせて貰うぜ。
('A`)「こうすんだよ!」
(; ・∀・)「なっーー!?」
掴んだブレザーをモララーに被さるように投げる。
俺の予想外の動作にモララーの動きが鈍る。
その隙を……
逃さない!
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:28:40.07 ID:rikxSFzBP
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:30:11.26 ID:ZWmjsUNAO
支援
38 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:30:37.13 ID:08JH9kTSO
(; ∀ )「がっ……!」
首筋に手刀。
崩れ落ちる頭を掴み顔面にアッパーカット、駄目押しの前蹴り。
その全てに充分過ぎる手応えを感じながら、俺は天井を仰ぎ言った。
('A`)「悪いなモララー、まともにやり合ってたら十中八九俺の負けだろうが……」
(-A-)「これは試合じゃなく喧嘩。まぁ今回は、ズル賢く立ち回れなかったお前の負けってことだ」
(; ∀ )「ぐっ……」
モララーは力無く倒れた。
計らずも俺のブレザーが敗北したモララーを労る様に覆い被さった。
('A`)「まぁ俺はそこまで好戦的な人間じゃないし、お前との喧嘩も今回限りだろうけどな」
あるとすれば内藤を含めた二対一の殺し合いだ。
お前が『適応者』だとすれば……だがな。
39 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:32:42.55 ID:08JH9kTSO
('A`)「立てるか?」
(; ∀ )「さわんな……!」
俺が差し出した手を払い、モララーは倒れたままポケットから煙草のボックスを取り出した。
そしてその中から煙草を二本取り出し、一本を俺に差し出してきた。
('A`)「俺は煙草吸わねぇぞ?」
( -∀-)「良いから吸えって、喧嘩した仲だろうが……付き合いわりーぞ?」
そこまで言われると悪い気はしない。
差し出された煙草を口に咥え、一つのオイルライターの火で二人顔を近付けて煙草に火を点ける。
そして大きく吸い、肺の中が煙で満たされるのを確認してから吐く。
煙がゆらゆらと宙を舞い、束の間の存在感を醸し出して消えてゆく。
40 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:33:47.67 ID:08JH9kTSO
( -∀-)「ふぅ……お前吸い方わかんのか?」
(;-A-)「分かるが……頭がクラクラするな…」
脳に染み渡るニコチンが浮遊感に似たような感覚を引き起こす。
( ・∀・)「ははっ、やっぱり初めての喫煙でセブンスターは厳しいか」
モララーは立ち上がり、赤くなった鼻から流れる鼻血を拭う。
それとは逆に、俺はニコチンのせいで立っているのも怠くなり座り込む。
(-A-)「怠くなるな。もう捨てていいか?」
俺は目頭を抑え俯いた。
どうも煙草ってヤツは俺の身体には合っていないらしい。
「良いぜ、どっちみち持ってられなくなるからよ」
モララーの謎めいた言葉と共に脇腹に衝撃が走る。
(;'A`)「ーーっ!?」
痛みと衝撃に耐えられず、身体が横っ飛びする。
持っていた煙草が手から離れ、宙で揺らめいた。
41 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:34:57.29 ID:08JH9kTSO
( ・∀・)「はっはー! 昨日の友は今日の敵ってなぁ! 違うか?」
(;'A`)「くっ……そ…」
痛みとニコチンの毒で身体が上手く動かない。
そうこうしている内にモララーが俺の眼前まで歩み寄ってきた。
( ・∀・)「こいつぁ試合じゃなく喧嘩だ。今回はズル賢く立ち回れなかったお前の負けだ」
モララーの台詞に既視感を覚える。
返事を返す間も無く俺の顔面に拳がめり込んだ。
(;゚A゚)「ぶふっ……!」
痛い、なんて表現じゃあチープ過ぎる痛み。
脳の揺れと共に強烈な吐き気が俺を襲う。
(;'A`)「ぉえ゙ぇぇっ!」
( ・∀・)「きたねーモンブチ撒けてんじゃねぇぞ!」
身体が安息を求めるが、上を見るとモララーの追撃の手。
両手が組み合わされた形でハンマーの様に俺に迫る。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:35:48.67 ID:HzEi89MMO
俺の予想外の動作に って、マジパねえ地の文だな主人公は基地外設定なのか?
ちょっとまとめ読んでくるわ
43 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:36:54.79 ID:08JH9kTSO
だがその手が俺に届く事は無かった。
「爆ぜろ」
モララーの背中で小規模の爆発が起こる。
何度も助けられた、異形の者の力。
(; ∀ )「ぐぁあ゙ぁぁっ!!」
モララーは悲痛の叫びを上げながら俺の嘔吐物の上に倒れ込んだ。
狙って来た様なタイミングで乱入しやがって……
それなら最初から手伝えよ。
内藤……
(;'A`)「寝たフリはもうお終いか? つくづく趣味が悪いぜ」
( ω^)「お? いつから気付いてたのかお?」
見慣れたニヤけ面がそこに立っていた。
('A`)「お前を抱えてここまで来る時だ。知ってたか? 気ぃ失った人間ってのは力が抜けてる分、運ぶ時には重くなるもんなんだぜ?」
( ω^)「それは迂闊だったお」
44 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:39:46.81 ID:08JH9kTSO
コイツを運ぶ時の違和感は気のせいではなかった。
事もあろうかこの胸糞悪いニヤけ面は俺達が四苦八苦しているのを内心で笑いつつ、気絶したフリをしていたのだ。
( ∀ )「いてぇ……いてぇぞこら…」
('A`)「内藤、力を使うのは良いがちょっとは場所を考えてくれよ」
( ω^)「考えとくお」
(# ∀ )「俺を無視して呑気に話すんじゃねぇ!!」
モララーの怒号が響き、室内は水を打った様に静かになった。
('A`)「まだやんのか? さっきの食らって分かっただろうが……自分から首突っ込んで良い世界じゃないぜ?」
俺のモララーに対する最終警告。
有り触れた日常から、糞ったれの非日常になる最後の壁が……
( ∀ )「うるせぇ……」
破られた。
45 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:41:17.71 ID:08JH9kTSO
( ∀ )「ない……とぉ…」
モララーは端正な顔を般若の様に歪め、重い足取りで内藤に近付く。
( ω^)「やる気かお? 僕に普通の攻撃は効かないけど……」
内藤は構えるわけでもなく、ただニヤニヤ笑いながらモララーを見据えている。
だが何だろうかこの胸騒ぎは。
内藤は既にモララーの前で蝿の力を使ったのだから、蝿の絶対防御も隠す必要は無い。
だが……
(;'A`)「内藤!!」
(; ω^)「ぁぐっ……!」
モララーの拳が内藤の頬を捉えた。
クソが! 俺の悪い予感はどうしてこうも的中するんだ?
( ∀ )「へへ……へ…」
内藤は予測していなかったのだろう。
モララーの拳を前に成す術無く吹っ飛んでゆく。
モララーはそれに対し追撃するわけでもなく、ふらふらとした足取りで床に落ちた煙草を拾って開いた窓の縁に足を掛けた。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:42:46.84 ID:IlXGkA7kO
支援支援
47 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:44:05.42 ID:08JH9kTSO
(;'A`)「何処に行く!?」
俺の問い掛けに対しモララーは気怠そうに振り向き、未だに火が消えていない煙草を俺に見せつけて言った。
( ∀ )「サービス」
('A`)「は?」
俺がモララーの筋違いな返答に対して何を言えば良いか考えている内に、モララーは窓を飛び越えて去って行った。
窓辺に立ち、惚けていると内藤の呻き声が聞こえた。
('A`)「大丈夫か?」
( ω^)「大丈夫なわけあるかお。右目の傷も頭の傷も痛みを取り除いて身体を騙してるだけなのに……」
内藤は皮肉たっぷりに頭を撫でている。
('A`)「お前が場所も考えずに殺気立てるからだろうが……ああでもしないと教室の中で力を打っ放してただろ?」
( ω^)「まぁそれは反省するお」
48 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:45:35.26 ID:08JH9kTSO
あくまで飄々とする内藤。
ベルゼブブの中から出てきた時の目は何だったのだろうか。
('A`)「……と、んな事より、何で蝿になって攻撃を受けなかったんだ?」
( ω^)「受けれなかったんだお」
頬を撫でながらぶっきらぼうに言う。
( ω^)「正確には蝿になったけれどアイツの拳が僕に触れた瞬間、力をかき消された」
内藤は自分の両手をグーにしてぶつけ、片方の拳を開いた。
開いた拳をヒラヒラと振る動作でようやく、俺はその拳が内藤とモララーを表している事に気付く。
('A`)「これも『適応者』の力ってやつか……」
( ω^)「そういう事だお」
モララーは一体何を望んだから内藤を殴れたのだろうか。
またティンダロスの猟犬みたいなのが出てくるのは御免だぜ?
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:46:31.24 ID:rikxSFzBP
まとめ読むの休憩しつつ支援
50 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:48:12.10 ID:08JH9kTSO
( ^ω^)「まぁ単に僕を殴りたかっただけなら大した問題じゃないお」
('A`)「その言い方だと他の可能性もあるみたいだな」
内藤のような人間がこういう含みのある言い方をする時、往々にして事柄はその他の最悪の可能性が選択される。
それがどういうメカニズムを以てそうなっているのかを俺が知る術は無いが、それを素直に受け止める事が出来る程のタフな心を俺は獲得しつつあった。
('A`)「どうせ今回も一筋縄ではいかないんだろ? 勿体ぶらないでお前の見解を言え」
( ω^)「悪魔だお」
俺の言葉に対して即答で返された言葉に、俺は先日の光景を重ねた。
また昨日みたいな大惨事が起きるのか?
これが馬鹿げた夢ならどんなに気が楽だろうか。
51 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 00:49:40.14 ID:08JH9kTSO
('A`)「またあんな厄介なモンを相手にすんのか?」
( ω^)「違うお」
これまた即答。
( ω^)「恐らくティンダロスの猟犬よりも遥かに高位の悪魔だお」
(;'A`)「…………」
思わず息を呑んでしまった。
猟犬よりも高位の悪魔となれば昨日の件より多くの犠牲者が出かねない。
猟犬対ベルゼブブであの戦いだ。
下手すればこの街全てを巻込む大惨事になるのではないだろうか。
(;'A`)「どうすんだよ!」
( ω^)「どうもこうも……戦うしかないお」
そして内藤は言葉を続ける。
( ω^)「次のターゲットはアイツだお。条件は哀しみの中で殺す事、たまには全面的に役に立つ策を考えてくれお」
俺が内藤の言葉に何も返せないでいると保健室の戸が開く。
そこでようやく俺はモララーの去り際の言葉の意味に気付いた。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:50:25.24 ID:IlXGkA7kO
支援
十三話終わり
十四話の訂正の為、少し間を空けます
その間に何か質問などあれば答えられる範囲で答えたいとおもいます
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 00:59:21.71 ID:IlXGkA7kO
乙
いつもまとめで読んでる
頑張って欲しい
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:00:15.29 ID:rikxSFzBP
質問はないけどがんばれ支援
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:00:50.19 ID:TLuIEuQ70
おつ 今から14話も投下するのか?
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:02:26.28 ID:IlXGkA7kO
おお、連続か
ちょっと最後まで付き合えるか分からんが頑張ってくれ
>>56ケータイのメールで書き留めてたので半角記号などの修正をしているので、それが終わり次第投下します
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:09:14.77 ID:ZWmjsUNAO
最近の2chやってると支援出来るのも幸せ
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:11:24.30 ID:IlXGkA7kO
布団入って携帯からの支援は幸せだよなー
すみません遅くなりました
十四話投下します
62 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:30:25.78 ID:08JH9kTSO
第十四話「炎獄」
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:31:14.06 ID:MgMkok3xO
いやっほー
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:32:11.90 ID:uSZrKu+kO
支援
65 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:32:17.01 ID:08JH9kTSO
秀松モララー、職業高校生。
趣味は単車弄り、スポーツ全般。
やや非行が目立つがそれ以外は真っ当な高校生(自称)である俺は……
(; ∀ )「いてぇ……いてぇぞ畜生……!」
クラスに一人は居るような影の薄い同級生にボコボコにのされちまった挙げ句、俺がいつもおちょくっていた根暗な同級生にわけの判らない力を打っ放されちまった。
( ∀ )「はは……ははは……」
お陰で身体の節々がいてーし、背中は火傷しちまった様で痺れるような痛みがある。
それでも俺はこの状況を楽しんでいた。
(; ∀ )「退屈しねーなぁ……愉快過ぎんぜ」
あの二人はこの痛みと引き換えに、俺に最高に楽しそうな非日常ってやつを提供してくれた。
そう考えると傷の痛みは薄れ、心が奮い立つ気がした。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:32:40.48 ID:IlXGkA7kO
支援
67 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:33:04.65 ID:08JH9kTSO
身体の中から湧き上がる狂気が俺に語りかけているような気がする。
( ∀ )「何だぁ? てめーは」
実際に誰かが声をかけているわけではない。
そんな事は分かってる。
だが脳みそからアドレナリンがビンビン流れていて、とてもじゃないがそんな白けた事言ってられねぇ。
( ∀ )「…………」
しかし返事が返ってくる事はない。
だが確かに聞こえた。
俺の中でふつふつと湧き上がる得も知れぬモノが……
或いは俺の中でひっそりと佇む得も知れぬ者が……
「我が名を叫べ」
と、語り掛けてきたんだ。
68 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:34:05.49 ID:08JH9kTSO
(; ´∀`)「鬱田! 内藤! その怪我はどうしたモナ!?」
勢い良く開かれた戸の先にはモナー教師が居た。
モナーは俺達の顔に出来た痣を見て、直ぐさま俺達を労る。
('A`)「…………」
( ω^)「…………」
俺がちらりと内藤に目配せすると、内藤は俺の意を汲み取ってくれた様で、浅く頷いた。
('A`)「モララーにやられたんです」
(; ´∀`)「秀松が!? 何でまたこんな事に……」
俺が事を起こした張本人の名を告げると、モナーの表情が更に青褪めた。
('A`)「アイツがここで煙草を吸っていたから俺が注意したんです。そしたらいきなり殴ってきて……気が付いた内藤が止めに入ったけどコイツも巻き込まれて……」
(; ´∀`)「モナ……」
69 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:35:20.33 ID:08JH9kTSO
流石にモナーに本当の事を言うわけにはいかない。
既に忘れつつあったが、内藤と交わした制約の中に『この件については他言するな』という取り決めがあったしな。
( ´∀`)「内藤のその包帯はそれから自分で処置したのかモナ?」
('A`)「あー……あれは」
( ω^)「これは一昨日の怪我ですお」
俺が何と言うべきか考えていると、内藤がぴしゃりとフォローを入れる。
( ´∀`)「それで昨日休んでたモナ? 次からはきちんと連絡して欲しいモナ」
( ω^)「気をつけますお」
モナーと内藤の事務的やり取りが俺には何故かとてもおかしく感じた。
いや、何故か……と言うのは間違いだな。
コイツがこうして普通の高校生をやっているのを見て、俺は三流の喜劇を見ているような感覚に陥ったのだ。
70 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:37:09.08 ID:08JH9kTSO
('A`)「じゃあ掃除してから教室に戻るんで……」
( ´∀`)「それは先生方に任せておくモナ」
掃除ロッカーへ駆け寄る俺をモナーが引き止める。
( ´∀`)「それより君達は怪我の手当てをして貰うモナ。血が出てるのに放ったらかすのは良くないモナよ?」
モナーは俺の頬から頭にかけて優しく撫でた。
まぁ悪い気はしない。
流石兄弟と会う前、というよりこの件に巻き込まれる前の俺ならその手を一秒と待たずに払っていただろうが……
自分がこういう状況に置かれて初めて人の気遣いを有り難く思えるようになってきた気がする。
('A`)「じゃあ折角だから診て貰います」
( ω^)「僕も頼みますお」
うん。
レッツエンジョイ『健全な高校生活』
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:38:26.87 ID:2/XVracsO
タイトルにある炎の文字と高位のある悪魔でスルトしか出てこない
支援
72 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:39:11.38 ID:08JH9kTSO
( ´∀`)「これで良し……と」
痣になっているところにガーゼやら絆創膏やらを貼って貰う。
内藤の朝の傷もモララーのせいにする事が出来たが、内藤はあちらこちらに包帯を巻かれていてミイラ男みたいになっていた。
( ω^)「有り難うございますお」
( ´∀`)「モナ、内藤は教室に戻っていいモナ」
モナーの言葉を聞いて内藤は立ち上がる。
だが俺はどうなるんだろうか?
('A`)「え……? 俺は」
( ´∀`)「君は昨日休んだ理由を話してもらうモナ。場合によっては指導の対象になるモナよ?」
モナーの発言に俺は言葉を失った。
出て行く内藤がちらりとこちらを見て、卑しく微笑んだのが見えた。
(;'A`)「…………」
それから俺が一時間の間、生徒指導室でこっぴどく説教を食らったのは言うまでもないだろう。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:40:24.24 ID:I2NwtMqEO
支援
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:40:38.83 ID:jjVIkqZT0
支援
75 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:41:31.89 ID:08JH9kTSO
普段は心地良く感じる風が今は傷に染みる。
( ∀ )「…………」
咥えた煙草の灰が静かに地面に落ちる。
このまま学校に戻っても耳が痛くなるような説教を受けた挙げ句、停学処分が下されるのは目に見えている。
だからこうして何処へ行くでもなく、最寄りの公園のベンチに腰掛けて時間を潰しているんだが……
( ∀ )「ぐっ……またか」
あれから定期的にやってくる頭痛の波が俺を悩ませている。
( ∀ )「何なんだぁ? これは……」
頭の中に直接響くような声。
それは確かに頭痛の波が大きくなるにつれて鮮明に聞こえてくる気がする。
( ∀ )「テメェなんか知るかよ。呼んで欲しいなら自分から名乗りやがれ」
一人呟いても頭に響く声は変わらず訴え続ける。
ただ一言……
『我が名を叫べ』と。
76 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:42:45.18 ID:08JH9kTSO
(; ∀ )「つっ!……やってらんねぇなぁおい」
激しい痛みと空を飛んでいるような浮遊感が相俟って、とてもじゃないが何かするような気分にはなれない。
( ∀ )「だがあの二人にゃきっちり借りを返さねぇとなぁ……」
ドクオと内藤の顔を思い浮かべようとする。
だがそれは一段と強くなった頭痛の波によってかき消された。
(; ∀ )「あがっ……」
あの二人の顔を思い浮かべようとすればするほど痛みは激しくなってくる。
それと同じように大きくなる『我が名を叫べ』という声。
( ∀ )「んだよこりゃあ!…………いてぇ……洒落になんねぇぞこらっ……!」
それでも痛みは治まらない。
それどころかどんどん強くなってきている。
77 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:43:32.81 ID:08JH9kTSO
強烈な痛みと謎の声の間で、か細い声が聞こえた。
『わ……は…ア……ン…』
(; ∀ )「あんだって……?」
頭に響くこの声が耳を澄ませば聞き取りやすくなる筈がないのは分かってる。
それでも俺はそうせずにはいられなかった。
その声がとても重要で、俺の人生を左右しちまうモノに思えたから。
『わがな…はア…ン…』
(; ∀ )「…………」
徐々に鮮明に、力強く声が聞こえてくる。
『我が名はア……ン』
もっと……もっとだ!
俺に伝えたい事があるならもっと腹の底から叫びやがれ!
『我が名はアモン!』
( ∀ )「っ!!」
頭の中の歯車が噛み合って回り出すイメージ。
胸の内のガラスの曇りが拭き取られるイメージ。
胸のつっかえが取れるような感覚が俺の身体を支配した。
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:44:26.39 ID:bqq2e7t4O
しえ
79 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:45:24.87 ID:08JH9kTSO
( ∀ )「はは……ははは……」
脳からアドレナリンが流れ出るのが分かる。
自慢の単車を転がす。
強いヤツとの喧嘩。
極上のビッチとのセックス。
俺が今まで生きてきた人生の中で感じた快感全てがちっぽけに思えるほどの快楽がそこにあった。
『我が名を叫べ』
その声は未だに俺の頭の中で木霊し続けるが、痛みは不思議と消え失せた。
( ∀ )「そう急かすなよ……挿入前の淫乱ビッチかぁ?」
自然と軽口がこぼれる。
( ∀ )「夢でも見てるみたいだぜ……テメェの名前を呼んだらもっとブッ飛んだ快感ってヤツを味わえんのか?」
( ∀ )「だったらこの俺が呼んでやる。刮目しろ! そして聞きやがれ!!」
まだ知らない世界へ俺を導いてくれる魔法の名。
( ・∀・)「『アモン』!!」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:46:59.04 ID:jpSi8EKAO
支援
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:47:18.46 ID:sTEHIawJO
支援
82 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:47:25.18 ID:08JH9kTSO
(; ∀ )「がっ……は……」
その名を叫んだ瞬間、今まで感じたことのないような苦痛と快感が俺を襲う。
咳き込みと共に口から血が零れた。
( ・∀・)「……良いね良いねぇ!! イッちまいそうだよ糞ったれがぁ……!!」
『アモン』
ソロモン72柱の悪魔の一人。
強靱なる悪魔の公爵。
あらゆる知識が俺の中に流れ込んでくる。
そしてこの力の使い方も……
( ・∀・)「焼き尽くせ」
両手を地面に押し当てる。
それと同時に巻き起こる炎の嵐。
踊り狂うそれは草木、公園の遊具、その場に在った物を全て焼き尽くす。
( ・∀・)「あっちぃぃぃぃいい!!! 良いぜぇ……待ってろよ糞共が!!」
ゆっくりと歩を進め、公園の敷地から一歩外に出る。
それと同時に炎はより一層強く燃え上がり、公園だった場所は焦土と化した。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:47:41.85 ID:ltb4YRG+O
あん
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:48:53.67 ID:panKEWQrO
やっぱりアモンか
支援ぬ
85 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:49:25.54 ID:08JH9kTSO
(´・ω・`)「はは、それは災難だったね」
('A`)「笑い事じゃねーぞボケ」
時刻は十二時過ぎ。
例によって俺はいつも通りしょぼくれと机を並べ、昼食を摂っている。
だが周りの俺を見る目は、この顔中にベタベタと貼られた絆創膏やらも相俟って、より冷たいモノになっている。
(´・ω・`)「なんだか……食べづらいね。僕まで変人を見る目で見られてるみたいだ」
みたい、じゃなくてそうなんだがな。
('A`)「モララーにボコボコにされるよりかはマシだろ」
(´・ω・`)「どっちもどっちだよ。全く……らしくないじゃないか、君がこんな厄介事を持ち込むなんて」
厳密には周りの行動が原因で俺が四苦八苦してるだけなんだがな。
まぁ、ある程度大事な部分は暈して説明しているからしょぼくれがそう勘違いするのも無理はない。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 01:50:48.45 ID:2/XVracsO
俺の予想を軽く上回る上位悪魔だった
アモンって確か7つの大罪にも当てはめられてる位高位高いよね
支援
87 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:50:54.44 ID:08JH9kTSO
苛めの主犯が居ない時までこうも邪険にする必要はないだろう?
俺も少し前までは人の事言えた義理じゃなかったが……
お前達が内藤を煙たがる理由なんて今はこれっぽっちも無いんだよ。
そうだろ? 内藤よ……
('A`)「そんなとこで辛気臭く飯食ってねぇでこっち来い」
周りの空気がざわめく。
ちらりとしょぼくれを見ると、やれやれといった表情で苦笑いを浮かべている。
内藤は手ぶらのままで席を立ち、憮然とした態度で俺達の前に歩み寄り、言った。
( ω^)「なんだお?」
全く……下らない事に頭は回るくせに、こういう空気を読むスキルはからっきしなんだなお前は。
俺は慣れない笑顔を作る事に努めて、言ってやる。
('∀`)「たまには一緒に飯食おうぜ」
88 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:52:15.97 ID:08JH9kTSO
俺のこの行為も傍から見れば偽善にしか見えないだろう。
だが構わない、それで良いんだ。
こうして平和な日常を過ごせる時間もこれからは少なくなっていくだろう。
だからこそ貴重なこの時間に下らないしがらみは持ち込みたくない、そう思っただけだから。
( ω^)「笑顔が気持ち悪いお」
(´・ω・`)「なに善人ぶってんのこの人」
だからこの二人のあまりにも辛疎な言葉も甘んじて受け止めよう。
(# A )「と思ったが……」
だがそれを実行するには俺の心のキャパシティーはあまりにも小さ過ぎたようだ。
心の内から怒りがふつふつと湧き上がるのが分かる。
(#'A`)「言っていい事と悪い事があんだろうがお前らあぁぁぁっ!!」
俺はしょぼくれのまだ中身が入った弁当箱をひったくり、高らかと投げた。
89 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:53:41.68 ID:08JH9kTSO
(´・ω・`)「まったく……今日の君は本当にらしくないよ。もっと落ち着きなって、be coolだよ、ね?」
('A`)「お前は相変わらず胸糞わりーヤツだがな」
結局、俺が投げた弁当箱は物理法則に逆らうことなく床に落ち、辺りに米やら玉子焼きやらをブチ撒けた。
それによってしょぼくれの至高のランチタイムは終了した、という事でもなく、内藤と二人で質素なコンビニ弁当を二人で啄んでいる。
二人ともざまぁみろってやつだ。
折角俺が感動の空気を作ったというのにそれをこの二人は心無い一言によって打ち砕いた。
それくらいの罰が当たってもおかしくはないだろうよ。
(´・ω・`)「内藤、君が居たお陰で助かったよ。ありがとう」
(* ω^)「おっ!」
90 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:55:26.52 ID:08JH9kTSO
内藤はらしくないほどの満面の笑みを浮かべている。
そこにいつもの様な薄気味悪さは微塵も感じられない。
こんな日常が続けば良い。
この願いが叶うのならばモララーとも内藤とも、あのいけ好かない腰巾着のビロードとも仲良くやっていっても良い。
心からそう思う。
('A`)「こんな時間も良いもんだな、内藤よ」
俺は目の前の内藤と、極端に捻ねた考えを持っていた過去の俺に対して言ってやった。
( ω^)「おっ? 何か言ったかお?」
('A`)「妄言だ。気にするな」
弁当を掻き込むフリをして顔を隠す。
こんな感情を周りに悟られるなんて、拷問に近いものがあるからな。
それでも俺がこんならしくない感情を、いつか素直に周りに打ち明けられる日が来る事を、今は楽しみにしておこう。
91 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:56:30.60 ID:08JH9kTSO
―
――
―――
その炎は全てを喰らい尽くし……
その炎は踊り狂い、揺らめき……
その炎は鈍く、妖しく輝き……
その炎はそこに在る。
92 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:57:47.22 ID:08JH9kTSO
(;'A`)「っ!?」
( ω^)「っ!」
(;´・ω・`)「うわっ!?」
俺達が談笑している時、突然非常用ベルがけたたましい音を立てた。
先程まで俺達の様子を見てどよめいていた他の生徒達の声が、それと違ったどよめきに変わる。
(;´・ω・`)「火事かな……?」
('A`)「内藤……」
( ω^)「……」
しょぼくれが何やら不安げな表情を浮かべているのを余所に、俺は内藤に目で問い掛ける。
この騒ぎの正体があの件絡みであるか否かを。
内藤はそれに対して無言で頷いた。
それが意味する事。
これからこの学校で、悪魔同士の殺し合いが始まる。
(;'A`)(くそっ……! どうしてこうなった?)
やはりあの時、力ずくでもモララーを捕まえておくべきだったか。
それともモララーの問いに正直に答えておくべきだったか。
93 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 01:59:42.18 ID:08JH9kTSO
過ぎてしまった事に思案を巡らせていると、モナーが青褪めた表情で教室に駆け入ってきた。
(; ´∀`)「火事が起きたモナ! 直ぐに放送があるから指示に従って避難するモナ!!」
それだけ言うとモナーは直ぐに出ていった。
モナーのこの言葉に教室内は更にざわめく。
( ω^)「ドクオ」
(;'A`)「なんだよっ!?」
内藤が平坦に俺の名を呼ぶ。
その表情、声色から焦りは感じられない。
恐らくこの騒ぎの中でコイツが一番冷静なんだろうな。
( ω^)「君の慎ましい学校生活。多分今日で完璧に終わったお」
その言葉を聞いて、俺の視界はぼんやりと歪んでいった。
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 02:00:13.59 ID:uSZrKu+kO
アモンか、宮本アキラを思い出すな
95 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 02:00:49.32 ID:08JH9kTSO
(; ∀ )「はは……笑えねー……冗談だ」
放送を知らせるチャイムが鳴り、教職員が指示を出しているのが聞こえた。
他にも生徒のざわめき、廊下を人が駆ける音が耳に入るが、頭がその情報を受け取らない。
(;´・ω・`)「君達が何を言ってるのか全然分からないよ! 一体何が起きてるんだい!?」
( ω^)「いずれ解る事だお。それより君はさっさと避難した方が良いお」
内藤が手であっちへ行け、と合図するのを見てしょぼくれはちらりと俺の方を見てきた。
疑るような、刺すような目線が突き刺さる。
なぁおい。ほんとに笑えねーよ。
こんな時にどんな顔をすれば良いんだ?
どんな言葉を吐けば正解なんだ?
常に考えてきただろうがよ……
答えろよ俺!!
96 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 02:02:41.38 ID:08JH9kTSO
(#'A`)「あぁぁぁぁああ゛っ!!」
(;´・ω・`)「っ!?」
( ω^)「おっおっおっ」
自分で聞いていて五月蠅く思えるほどの咆哮。
いや、奇声と言ったほうが正しいか……
しょぼくれ、逃げ惑う生徒達の視線が痛々しく突き刺さる。
唯一内藤だけが、俺の奇行を見て満面の笑みを浮かべていた。
(#'A`)「どっせえぇぇいっ!!」
手頃な位置にあった椅子を持ち上げて教室の窓ガラスに向けて投げる。
気持ち良いほどに高らかな音を立ててガラスは砕け、グラウンドに直通した穴が出来た。
( ω^)「Welcome to Underground」
青褪めた表情でその場を一目散に離れてゆくしょぼくれを余所に、内藤はニヤけ面のまま拍手していた。
( ω^)「改めて、こちら側の世界にようこそ」
内藤が大袈裟に紳士気取りなお辞儀をする。
97 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 02:03:50.93 ID:08JH9kTSO
('A`)「そりゃどんな反応をして欲しいんだ?」
( ω^)「特に意味も無いし反応が欲しいわけでもないお。死闘の前の景気づけってヤツだお」
いちいちドヤ顔になるところが妙に気に障る。
だがまぁこいつの行動にわざわざいきり立っていると一日で神経を摩耗しきってしまうのは分かっている。
今はそんな事よりも……
('A`)「飛ぶぞ」
( ω^)「あいお」
もう少しだけ早く取り除くべき懸案事項だったもの。
今となっては大きな厄災と成り果てたもの。
悪魔をその身に宿したモララーを討つ事が先だ。
ぽっかりと穴が空いた窓ガラスの縁に足をかけ、そのまま地上に飛び立つ。
('A`)「……っ!」
浮遊感と恐怖が相俟って思わず息を飲む。
グラウンドに避難している生徒達が俺を見て悲鳴を上げているのが分かった。
98 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 02:05:27.86 ID:08JH9kTSO
地面に衝突する一歩手前で身体ががくりと揺れた。
落ちゆく俺の身体を掴み上げた者がいるからだ。
その正体は見なくても分かる。
( ω^)「勢いつけ過ぎだお」
('A`)「そいつぁすまねーな」
内藤が俺の身体を両手で掴み、そのまま背中に生えた羽をはためかせ浮上してゆく。
グラウンドに居る生徒達を見ると、これまた大きな悲鳴を上げている。
まぁ無理はないだろうな。
俺だって何も知らなかったら同じような反応をしていただろうよ。
('A`)「で、モララーは何処にいるんだ?」
俺は内藤が着けているベルトに手首を通し、そのまま落ちないように固定しながら尋ねた。
( ω^)「この校舎の丁度真裏だお」
('A`)「よし、行くか」
( ω^)「何で君が主導権握ってるんだお?」
99 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 02:07:01.44 ID:08JH9kTSO
内藤のある意味的確な突っ込みを華麗にスルーし、俺は視界に飛び込んできた惨状に目を向けた。
(;'A`)「……っ!」
(; ω^)「おっ……」
丁度俺達の教室から見て真裏に位置する棟は燃えていた。
血の様に真っ赤な炎が踊り狂い、そこにある命全てを刈り取らんとしている。
(;'A`)「明らかに異質だな」
( ω^)「…………」
遠目に見てもその炎が普通の自然現象で起こったものではないことが分かる。
かといって普通の人間が人為的に引き起こしたものでもない。
異常なまでに赤いこの炎は確実に悪魔の力によるものだ。
('A`)「モララー……」
逃げも隠れもせず、それを引き起こした張本人はそこに居た。
揺らめく炎を見つめ、上空にいる俺達にも聞こえるほどに高らかに笑っていた。
100 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 02:10:00.76 ID:08JH9kTSO
( ・∀・)「ぎゃっはははははははっ!! 良いねぇ……最高に気持ち良いぜっ!!」
モララーは俺達の存在に気付いていないようで、未だその笑いを止めない。
('A`)「内藤」
( ω^)「あいお」
一言呼び掛けただけで内藤は俺の意を汲んでくれた。
内藤が翳した手に蝿が集い、槍が形成される。
刺突の力を集結させた、内藤が持ち得る攻撃手段の中でも最高の攻撃力を誇る力。
ブリューナク。
視覚することもままならないこの槍を意識の外から打ち込まれるとなれば、いくら悪魔の力を持つ者といえどただでは済まない筈だ。
( ω^)「行くお」
内藤は頭上に手を翳し、ゆっくりとモララーに向けて振り降ろした。
101 :
◆4KLmqjbvG6 :2010/04/09(金) 02:11:34.63 ID:08JH9kTSO
その瞬間。
モララーがこちらに振り返った。
眉を吊り上げ、目を細めているのが見える。
やつが歪ませた口元からある単語が見えた。
聞こえるのではなく、俺がはっきりと視覚して感じ取った言葉はシンプルで解りやすいものだった。
『みーつけた』
(;'A`)「……っ!!」
俺がそれに気付いた時にはもうブリューナクは放たれていた。
だがそれはモララーに届かず、それに対抗する力によって焼かれ、打ち消された。
( ・∀・)「ヒャッハーッ!!」
ブリューナクはモララーの一寸手前の位置で燃えカスとなって崩れ落ちた。
モララーはそれを満足げに見つめると、両手を広げて狂ったように笑い声を上げた。
(;'A`)「なるほど……ね」
今回も一筋縄ではいかないんだろうな。
まぁ最初から分かってはいたんだが……
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 02:11:38.07 ID:uSZrKu+kO
最後の支援
以上で今日の投下は終わりです
何か質問などあれば答えられる範囲で答えたいと思います
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 02:17:00.73 ID:sTEHIawJO
乙
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 02:18:51.59 ID:EtllcI1tO
乙 何だかんだ楽しみにしてる
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/09(金) 02:40:54.32 ID:KCpit3jWO
乙
追い付いたら終わってた乙ですた
なんという生殺し
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
メフィストフェレス
アスタロトあたりも登場させとほすぃ