唯「中学生のころの話しようよ!」和「じゃあ、最後は唯ね」
1 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :
私は 私が――
私が 私を――
私を 私に――
私に 私は――
どうして こんなことをしてしまったんだろう
たくさんのひとを きずつけて
たくさんのひとを 悲しませて
たくさんのひとを 泣かせてきて
そうして 私はここにいる
それに なんの意味があるというのか――
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 18:25:28.35 ID:k4I1f68k0
vip女の子宣言o(^-^)o
アタシ逹女の子は
正々堂々と
女の子vipperとして
恋愛戦士であることを
ここに誓います☆
(^_-)=☆
3 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:26:47.96 ID:8d+C+zlm0 BE:606208027-2BP(2050)
音楽準備室には、いつものように5人の少女がいる。
私の、平沢唯の大切な人たちだ。
この人たちがいなかったら、私は今も……。
「唯ちゃん。お砂糖いくつ?」
「え? あ、2つでお願い」
と。
変なことを、考えていた。
この人たちと出会わなかったら、なんて、そんな馬鹿な例え話は在り得ない。だという
のに、私はそんなことを一瞬、考えてしまった。
思わず、溜め息が漏れる。
私は馬鹿だ、と。
「どうしたんですか? 唯先輩」
梓が私を案じて声をかける。
大丈夫、なんでもないよと答える。
大丈夫なんかじゃないことは、私が一番よくわかっているのに。
外を見ると、すでに日は傾いていた。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 18:28:52.43 ID:f0JgmzzDO
またお前か
支援
5 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:30:11.52 ID:8d+C+zlm0 BE:692808544-2BP(2050)
私の隣には、田井中律が座っている。
2年も同じ部活動をしていると(梓は一年だが)こういった席というものにも決まりが
生まれる。いつの間にか、律の席は私の隣になっていて、私の向かい側に座るのは紬
になっているのだ。
いつからだったか。
――それは、いいか。
また今度の機会に考えよう。
「唯、疲れてないか?」
「……そう見える?」
そう、見えるのだろうか。
私が疲れているように。
……ああ。そうか。
私は、少しはマトモになれたのかもしれない。
だったら。
だったら、私だって話さなくてはならない。
みんなが話してくれたように。
「みんなが話してくれた昔話。私もするけど、いい?」
と。そんなことを尋ねてみた。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 18:31:16.68 ID:sUGNAxPm0
アウフヘーベン
ごめん、なんか無性にアウフヘーベンって書きたくなってしまったんだ。
何でか説明してもいいんだけど、長くなるから割愛させてもらうよごめんね
それじゃ
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 18:33:22.30 ID:LM7a1WTL0
お前くそつまんねーから
8 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:33:42.46 ID:8d+C+zlm0 BE:779409263-2BP(2050)
私の隣には、田井中律が座っている。
2年も同じ部活動をしていると(梓は一年だが)こういった席というものにも決まりが
生まれる。いつの間にか、律の席は私の隣になっていて、私の向かい側に座るのは紬
になっているのだ。
いつからだったか。
――それは、いいか。
また今度の機会に考えよう。
「唯、疲れてないか?」
「……そう見える?」
そう、見えるのだろうか。
私が疲れているように。
……ああ。そうか。
私は、少しはマトモになれたのかもしれない。
だったら。
だったら、私だって話さなくてはならない。
みんなが話してくれたように。
「みんなが話してくれた昔話。私もするけど、いい?」
と。そんなことを尋ねてみた。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 18:34:35.88 ID:S/Oy0//90
笑み社ってよく寝落ちするけど、書き溜めしてないの?
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 18:35:25.32 ID:crC5cz4YO
またお前でまた全く同じ内容か
11 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:35:50.50 ID:8d+C+zlm0 BE:389705033-2BP(2050)
みんなの視線が私に注がれる。
何故か、心配したような顔をしている。
どうしてかはわからない。
でも、そんな顔をされると少し、昔を思い出して苦しくなる。
「……」
誰も言葉を紡がない。
口を閉ざして、私を見ている。
ぼんやりと。
私も、そんな顔をされるのは嫌いだった。
だから。
私も、下を向いた。
そうして、話し出す。
私が、なにも考えない子供だった頃の話を。
なんだ糞コテか
13 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:39:52.63 ID:8d+C+zlm0 BE:1558819049-2BP(2050)
――平沢唯は普通な子供だった。
周りからどう思われているのかは別として、少なくとも、自分ではそう思っていた。
平凡で。
凡庸で。
中庸で。
そんな子供なんだと、私は幼稚園児の頃から考えていた。
周りからは、呆としている子供と思われていたのだろう。
だが、それは普通の許容範囲だ。
人は、行動に依って人格を決定付ける。故に行動していない私は周りから見ても、
決して変わった子供ではなくて、少し抜けた子ていどの評価だったのだ。
一般的に考えた場合、平沢唯という女の子はどこにでもいる子供だったのだ。
「ゆいちゃん。カスタネット上手だねー」
「うん! わたし、カスタネットだいすき! うんたん、うんたん」
こうして、友達と話している時も。
「おねーちゃーん!」
「あ、ういー」
妹と話している時も。
――私は、努めて呆とをしているようにしていた。
14 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:46:47.00 ID:8d+C+zlm0 BE:606207072-2BP(2050)
どうしてそんなことをしているのか。
私にもわからない。
ただ、みんなに対しての違和感があった。
――どうして、みんなはこんなに簡単なことができないのだろう。
そんなことを思い始めていた。
無論、私だって初めてやることを完璧にはこなせない。
それはどうにもならない。知らないことを知っている人間はいない。
ただ、私の場合はほんの少し。一日だけそれに触れてしまえば、一定の水準まで達
することができた。
だから、私の友達たちが馬鹿に思えた。
なんて覚えが悪いのだろうと見下した。
無意識の中で思っていた。
そんなことを。
幼稚園児の私は、自分と他人の差を知らなかった。
自分ができることは他人にもできて、それが当り前なのだと思っていたのだ。
それが間違っているということを知ったのは、いつだっただろうか。
15 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:51:23.37 ID:8d+C+zlm0 BE:519606443-2BP(2050)
幼稚園の砂場で、女の子が暴れている。
どうやら、男の子に砂のお城が壊されたようだった。
女の子は拳を振り上げて、男の子に襲いかかる。
……それを、少し離れたところから眺めているのは私。
隣には砂の山を作って遊んでいる、幼馴染の姿。
幼馴染の和は、私を時折チラリと見ている。
「ゆいちゃん? どうしたの?」
「んーん。なんでもなーい」
私は、あの子のように怒ったり、感情をあらわにしたことがなかったと思う。
何も考えず、何も感じず、ただ生きていたのだ
とすれば、この気持ちは必然だ。
その、元気な女の子が妙に輝いて見えたのは。
「りっちゃんは女の子なんだから、そんなことしちゃいけませんよ」
悔しそうな女の子の顔が見える。
それも、私にはないものだ。
ないものを欲しがるのは、人間の性質というものだ。
でも。
私には、それは届かない。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 18:55:18.37 ID:1Icd83rx0
笑み者の写真みたけど残念な顔だったw
17 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:55:37.66 ID:8d+C+zlm0 BE:346404342-2BP(2050)
夕方になると、母が迎えに来てくれる。
妹の憂は、いつだって母にくっついていて、私はお姉さんだからという理由で母に対
して甘えられずにいた。
それでも、母は優しく言ってくれる。
「唯は、今日の晩御飯なにが食べたい?」
憂は母に甘えているけれど、晩御飯の話をされるのはいつだって私だ。
夕日に染まった道。
それに照らされる、母と妹。
何故か、幸せな気持ちになる。
「わたしは……アイス!」
「アイスはご飯食べてからね。それじゃあ、カレーにしようか?」
そう言うと、母はその右手で私の左手を握る。
憂も笑って私を見ている。
なら、私も笑っていよう。
だって――
――そうでもしなきゃ、二人は悲しい顔をするだろうから。
18 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 18:59:40.09 ID:8d+C+zlm0 BE:1515517875-2BP(2050)
家に帰ると、私は決まって居間で寝転がる。
もちろん制服から普段着に着替えてからだが、このゴロゴロタイムが、私の一日の楽
しみなのである。
「ういー。ういもゴロゴロしよーよー」
「ええ! わ、わたしはいいよぉ! おねえちゃん見てる!」
憂はそう言って、ソファに座って私を眺めている。
ならば仕方ない。
見られているのなら、尚更ゴロゴロするほかない。
まるでアザラシかセイウチのようにだらける。疲れるようなことなどしていないが、こう
していると妙に安らぐ。
きっと、私は元来、怠けることに特化していたのだろう。
だから、なにかに真剣に取り組むことなんてなかったのだ。
だから――誰も私を見てくれないのだ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:02:16.02 ID:/AxATNDC0
またやってんのかwww
まぁがんばれwww
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:02:26.37 ID:qrXFlPMl0
――頑張ること――
それは、古来から美学とされてきた。
努力することで、それを周りに見せつけることで、人は人を認める。
結果は二の次なのだと。
たとえ、結果がついてこなくとも、努力は裏切らないと。
そういって、彼らは自分をごまかしてきた。
自らの無力さを。
つまるところ、それは『才能』への当てつけなのだ。
努力をせずとも、これといった頑張りを見せずとも結果を出してしまうものへの、嫌悪
に他ならなかった。
なんて、理不尽な不等号。
100の結果を出したものよりも、70の不完全な結果を残したものが認められる。そ
んな、そんなおかしなことがあるか。
だって、『私』にとってその結果というものは。
――ほんの少し、指を動かすだけで出てしまうのだから。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:03:18.10 ID:qrXFlPMl0
私は、なんとなくわかっていた。
憂は私よりもカスタネットが下手なのに、両親からは私以上に褒められていた。
和は私よりもザリガニを獲るのが下手なのに、皆から私以上に褒められていた。
それは、私がなんの努力もなしに結果を出してしまったからだ。
カスタネットだって、殆ど練習なんてしなかった。
ザリガニ捕りだって、なんとなく糸を垂らしていただけだ。
だから、人は私を見てなどくれない。
一生懸命がんばった二人ばかりに視線が行き、私はその視界には決して入らない。
入れてくれない。それが、なんとなく悲しいから、私は少しだけ頑張ってみようと思っ
た。
頑張れば。認めてくれると。子供ながらに感じてしまったからだろうか。
気がつけば、私は川に糸を垂らした。
「……いっぱいだ」
バケツにザリガニが蠢く。
――なにか、厭だ。
それでも、私はザリガニを釣る。
バケツには、真っ赤なザリガニがたくさん。
それでも、私はザリガニを釣る。
それでも、私はザリガニを釣った――
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:04:36.17 ID:qrXFlPMl0
気がつくと、私の目の前には浴槽があった。
真っ赤な、浴槽。
うじゃ――うじゃ――うじゃ。
……気持ちが悪い。
どうして、こうなっているのか。
わからない。
でも、きっと私の所為なのだろう。
隣には和の姿。
泣いているのか、怯えているのか。
当然だ。自分の家の浴槽に、数え切れないほどに、夥しいまでのザリガニがひしめ
いているのだ。これは、一種のホラーだ。
なのに――
どうしてか。
親友が隣で震えているのに。
私の頬は――不気味に吊り上っていた。
23 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:04:56.93 ID:8d+C+zlm0 BE:1299015465-2BP(2050)
頑張ること。
それは、古来から美学とされてきた。
努力することで、それを周りに見せつけることで、人は人を認める。
結果は二の次なのだと。
たとえ、結果がついてこなくとも、努力は裏切らないと。
そういって、彼らは自分をごまかしてきた。
自らの無力さを。
つまるところ、それは『才能』への当てつけなのだ。
努力をせずとも、これといった頑張りを見せずとも結果を出してしまうものへの、嫌悪
に他ならなかった。
なんて、理不尽な不等号。
100の結果を出したものよりも、70の不完全な結果を残したものが認められる。そ
んな、そんなおかしなことがあるか。
それでも、私にはそれがついて回ってしまった。
だって、『私』にとってその結果というものは。
――ほんの少し、指を動かすだけで出てしまうのだから。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:05:20.63 ID:qrXFlPMl0
幼稚園を卒園する頃になると、私の世界は少しだけ、否。大きく広がっていた。
なにかに熱中すること。
というよりも、固執することにした私は周りからどういう目で見られていたのかはわか
らない。わからないけれど、私にとってその行為はきっと間違いではなかったのであ
る。
「唯ちゃん。砂のお城を作ってくれない?」
そんなことを先生は言った。
だから、私は他には何も考えなかった。
否否、考える必要がなかったのである。
私には、砂のお城を作るという固執するべき対象が与えられた。
だったら、それを実行するまでだ。
自分が納得のいくまで?
そんなブレーキ(もの)は存在せず。
ただ、止められるまで。
ただ、制止されるまで。
常軌を逸していると言われても。
私は、砂のお城を作り続けた。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:05:31.82 ID:kv3Dh0TO0
こんなのよりも昨日スクリなんちゃらで落とされた12月14日の続きが読みたいんだけど
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:07:14.69 ID:qrXFlPMl0
人は、私をこう言った。
「――平沢さんところのお姉ちゃん。少しヘンよ」
「そうよね。間違えても間違えても同じことしてるし、できるようになると、今度は見境な
く続けるのよ」
「まるで、ブレーキのないクルマみたいね」
ブレーキのないクルマ。
――ああ。言い得て妙だ。実に的を射ている。
ブレーキがない、ということはマトモに走らないということだ。
それでも、マトモに近づけようと走り続けて、ある程度はマトモに走れるようになった
ら、今度はスピードを出し始める。止まれないのだから、行きつく先は破滅か、どちらに
せよ求めた結果(マトモ)には程遠くなる。
それが私だ。
小学校に上がっても、それは変わらず。
呆としていても、やれと言われたことにはロボットのように固執した。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:07:35.84 ID:kv3Dh0TO0
ところでカルアスレは誰も立てないの?
せっかく初代カルアがゴールデンタイムズに載ったのに
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:08:19.24 ID:qrXFlPMl0
私の家は5人家族だ。
私と、妹の憂と両親と祖母の5人。
小学校に入る際に必要な『ランドセル』は、祖母から買ってもらったものだ。入学式
の一日前、私はそのランドセルことラン子と一緒に寝た。それくらいに、大事なものだ
ったのだ。
……思えば、私が名前を付けたモノは、それが初めてだった気がする。
「唯、ゆいー」
「なあに? おばあちゃん」
私は、祖母が大好きだった。
変な目で私を見ないし、私の頭を優しく撫でてくれる。
その手は暖かくて、
その手は優しくて、
その手は私を包んでくれた――
「唯は小学校にあがったら、友達をたくさん作るんだよ」
「うん! 私、友達100人作る!」
そうだ。
私は――トモダチを100人作るんだ。
29 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:09:47.12 ID:8d+C+zlm0 BE:692808544-2BP(2050)
私は、なんとなくわかっていた。
憂は私よりもカスタネットが下手なのに、両親からは私以上に褒められていた。
和は私よりもザリガニを獲るのが下手なのに、皆から私以上に褒められていた。
それは、私がなんの努力もなしに結果を出してしまったからだ。
カスタネットだって、殆ど練習なんてしなかった。
ザリガニ捕りだって、なんとなく糸を垂らしていただけだ。
だから、人は私を見てなどくれない。
一生懸命がんばった二人ばかりに視線が行き、私はその視界には決して入らない。
入れてくれない。それが、なんとなく悲しいから、私は少しだけ頑張ってみようと思っ
た。
頑張れば。認めてくれると。子供ながらに感じてしまったからだろうか。
気がつけば、私は川に糸を垂らした。
「……いっぱいだ」
バケツにザリガニが蠢く。
――なにか、厭だ。
嫌悪に近い感情を覚える。
それでも、私はザリガニを釣る。
バケツには、真っ赤なザリガニがたくさん。
それでも、私はザリガニを釣る。
それでも、私はザリガニを釣った――
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:10:27.00 ID:qrXFlPMl0
……それから、私は学校でたくさんの友達を作った。
どうやら私は、人と話したりすることが得意な性格らしく、人見知りもしなかった。そう
なれば、周りの子供たちは私に寄ってくる。それが、なんとなくだけれど誇らしかった。
私は好かれているのだ、と。
存在を認められ、こうしてこの場にたくさんの人に囲まれて生きているのだ、と。
そう考えると、胸が熱くなって、妙に嬉しかった。
――そう。
私には、友達がいたのだ。
たくさんの友達が。
私の、そばに。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:11:41.91 ID:qrXFlPMl0
「和ちゃーん」
小学4年生になった。
そんなある日のことだった。
学校での昼休み、それは小学生にとってしてみれば友達との時間に他ならない。30
分ほどの時間を如何にして過ごせるのか、それを養い、友人とのコミュニケーションを
とる時間が、昼休みなのだ。私にとって、この昼休みは和との時間なのである。
友達が何人できても、私は和との時間を大切にした。
どうしてか。
それを問われると、答えられない。
ただ、私は昔からの友人を大切にしたかったのだと思う。
和という、私にとって初めての友達との時間は、きっと特別だったのだ。
「図書室行こうよ!」
「唯が図書室なんて珍しいね。読みたい本でもあるの?」
「うーん。なんだろ。あるかな?」
「知らないわよ」
和は、昔からかっこよかった。
勉強もできるし、人当たりもいいし、運動もできるしと、私は彼女に一種の憧れを抱
いていた。
というよりも、その感情は畏敬の念に近かった。
彼女はまぶしくて、だから一緒にいたのかもしれない。
光源に近ければ、その恩恵を受けやすいから。
……彼女は、私にとって最も『褒められる』人間だったからだ。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:12:33.83 ID:qrXFlPMl0
私が通う小学校『桜ケ丘第一小学校』の図書館は、少し広めで設備もしっかりして
いるらしい。
司書のような役割の先生もいるし、図書委員はこの学校でも最も大変な、ある意味
学級委員よりも仕事量が多いとされる委員会だった。
私は、あまり本を読むことが得意ではなかったのであまりここには来ていなかった
が、和は、まるで自分の家のように歩き出し、本棚から本をとる。私もそれを真似て、
隣の本をとって見てみる。
……まったく、意味がわからない本。
なにか偉い人の伝記のようだが、私にはその人がどれだけ偉い人なのかはわからな
い。ただ、和の真似をしているだけなのだから。
「和ちゃん。この人だれ?」
「……えと。野口英世ね。黄熱病の人って覚えておけばいいよ」
なるほど。さっぱりわからない。
勉強ができる上に、ものもよく知っている和は私の誇りだ。彼女の友人になって本当
によかった。
それはそうと、この人がなにをしたかに関してはすでに忘れてしまった。というよりも、
割とどうでもいい。
和は手に取った本を持って椅子に座る。もちろん、私も同じく隣に座って子供百科を開く。
――気がつくと1時10分の予鈴が鳴っていた。
子供百科には涎がついていた。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:13:24.19 ID:qrXFlPMl0
――授業の時間は退屈だ。
国語の時間も算数の時間も、なにもかも。
学校とは、友達を作るために来るものだ。だって、祖母は私にそう言ったのだから。
目の前には黒板。一番前の席に座っている私は、先生からいつも見られている。見
られているのだ。
「――」
今の時間は、なんだったか。
ああ、そうだ。今は理科の時間だ。
醤油の瓶に、どうして二つの穴があいているのか。それについて、先生は一生懸命
私たちに話してくれている。
……あまり、興味がなかった。
「ようするに、空気が入ることで穴から醤油が出るわけです。どうしたの? 平沢さん」
「……」
みんなの視線が私に集まる。
……わからない。
どうしてだろう。
どうして、みんなは私を見ているのだろう。
「唯!」
次いで、和の声がする。
床には、水が滴っていた。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:14:21.04 ID:qrXFlPMl0
どうやら、私はお漏らしをしてしまったようだ。
気がつけば、スカートは濡れていて、パンツはびしゃびしゃになってしまっていた。
そうなってしまったのは、いつからだろう。
思い出せない。
ただ、周りの同級生は私を非難しなかったのを覚えている。
保健室から帰ってきた私を、みんなは素直に心配してくれた。
これも、普段の行動が影響していた。
普段から、私は周りには優しくしていた。
友達を作るためには、これが一番いい方法だからだ。
遠回りなんて必要ない。
私にとって、友達を作るという行動は祖母から与えられた『存在理由』だからだ。こう
していれば、私は私でいられるという条件じみたものだったのだ。
故に――
故に私は、無意識の中であるが『人に好かれるように』行動していた。
だって、そうでもしないと周りは私に優しくなんてしてくれないと思ったから。
35 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:15:10.85 ID:8d+C+zlm0 BE:389705033-2BP(2050)
気がつくと、私の目の前には浴槽があった。
真っ赤な、浴槽。
うじゃ――うじゃ――うじゃ。
……気持ちが悪い。
どうして、こうなっているのか。
わからない。
でも、きっと私の所為なのだろう。
隣には和の姿。
泣いているのか、怯えているのか。
当然だ。自分の家の浴槽に、数え切れないほどに、夥しいまでのザリガニがひしめ
いているのだ。これは、一種のホラーだ。
なのに――
どうしてか。
親友が隣で震えているのに。
私の頬は――不気味に吊り上っていた。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:15:29.89 ID:qrXFlPMl0
その反面、私は勉強が苦手だった。
というよりも、やる必要がなかったのだ。
なにせ、私には友達を作る以外の必要性を学校という場所に感じなかった。ならば、
勉強なんてしたって意味はない。そう思ったからだ。
「唯、テスト何点だった?」
「えへへー。30点だったー」
本能的に理解していた。
人が、人の結果を訊く理由はつまるところ『優越感』を得たいがためだ。
だから、私が悪い点数をとったところで友達たちは私に対して失望したりはしない。な
にせ、自分よりも下の人間なのだから、歯牙にかける必要はないからだ。警戒する必
要がある要素のない人間に対して、人はある程度は優しくなれる。もとより、私にはそ
ういった要素がなかったので、敵を作る理由もなかった。無害というものは、なによりも
強力な武器となりえる。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:15:40.69 ID:S/Oy0//90
面倒くさいからオチだけ書けよ
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:16:14.42 ID:qrXFlPMl0
「和ちゃんは100点かー。すごいなー」
そして、相手を褒める。
これで完了だ。これで、自分と対象との友好な関係は継続される。自分を、必要程
度に自虐することで、対象はさらに優越感を感じる。
それは、決して不快になるほどのものではない。運動も、限界に近くなるとつらく感じ
るように、こういったプラスの感情も度が過ぎると不快になる。
だから、私は褒めすぎないし自虐しすぎない。
「でも、お母さんに怒られちゃうかもなー。この点数じゃ」
「大丈夫だよ。唯は他にもいいところがたくさんあるんだから」
そうすれば、私に味方してくれる人だって増えるのだから。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:16:58.73 ID:qrXFlPMl0
しかし、問題はあった。
確かに問題は存在していたのだ。
「唯―。もう少し、勉強しなさいね」
ほんの少しだけ、咎められる程度なのだが、母に叱られる。
小学生にとって、両親というのは優しいものなのであるが最も畏怖するべき存在でも
ある。
なまじ傍にいるから、評価が低かったり機嫌が悪かったりするとどうにもいい気持ち
はしないからだ。月に一度会う程度の人間相手には在り得ない感情が存在する。
「唯、ちょっと来なさい」
自分の部屋でゴロゴロしていると、祖母がドアを開けて私を呼ぶ。
憂は友達の家に遊びに行っている。
祖母は最近、憂に色んなことを教えていて、そのことに私は少しだけやきもちを妬い
ていたのだが、久しぶりに祖母が私になにかを教えてくれるようだ。なんとなく嬉しい気
持ちになって祖母の部屋へと向かう。
――この家の唯一の和室。そこが、祖母の部屋だった。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:17:54.60 ID:qrXFlPMl0
――和室、というよりも私は祖母の部屋の匂いが大好きだった。
なにか、やさしい。
私を、心まで包んでくれそうな気持ちになる。
そんな部屋が、私は昔から大好きだった。
「唯、ちょっとここに座って」
祖母が優しく笑って手招きする。
それに倣って、座布団に正座する。
この部屋に来ると、なんとなく引き締まった気持ちになる。
どうしてだろうか。
「どうしたの? おばあちゃん」
「うん。唯は、学校楽しいかい?」
やんわりと祖母は話し出す。
それに対して、私は大きく頷く。
楽しいと、答える。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:19:20.00 ID:qrXFlPMl0
「そうかい。よかったねえ」
皺だらけの顔に、さらに皺が増える。
祖母は満面の笑みで、また皺だらけの手を私の頭に乗せる。
それは、私が大好きな行動(こと)だった。
でもね、と祖母は話を続ける。
「でもね、学校はそれだけじゃなくって。唯が大人になった時に困らないように、お勉強
する場所でもあるんだよ。だから、少しだけでもいいから、お勉強してほしいな」
――それが、私に与えられた新しい、存在理由だった。
42 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:19:51.00 ID:8d+C+zlm0 BE:1299015465-2BP(2050)
達成感があった。
どうしてか。なにかをやりきったという、爽やかな感情があった。
親友が肩を震わせて怯えていても、
妹が信じられないという顔をしていても、
母が和の母親に頭を下げていても、
父に叱られていたとしても、
私は――誰かに構ってもらえる嬉しさを感じていた。
なんだ、簡単じゃないか。
こうすれば、みんなは私を見てくれる。
こうすれば、私はみんなを見てあげられる。
止められるまで、やってみようじゃないか。
なにもかもを。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:21:00.98 ID:qrXFlPMl0
それからだ。
私は、また一つ変わった。
勉強をしてみることにした。
そうでなくては、周りが私に興味を持ってくれないような気がしたから。
以前とはまったく違ってしまった。
価値観も、
倫理観も、
優先順位も、
なにもかも。
「ねえ唯ちゃーん! 外で鬼ごっこしようよー」
「……私、図書室行くから、いい」
友達との関係、それがどうでもよくなっていた。
以前まではなによりも大事なのだと心から思っていたのにも関わらず、今の私はまる
でロボットのように学習という一つの行動に傾倒していた。
手には本が握られていて、なによりも優先するべきは知識を増やすことだった。
それが何を意味するのか、私にはわかってなどいなかった。
今まで築き上げてきたものを放棄してまで続けるということが、なにを意味しているのかを。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:22:44.39 ID:qrXFlPMl0
――気がつけば、私は1番になっていた。
テストでは90点以下を獲ることはなくなった。
授業中も集中して先生の話を聞いていた。
休み時間は勉強して、次の授業に備えた。
昼休みは友達の誘いを断って図書室で本を読んだ。
私は楽しかった。
頑張った結果が出ることが、なによりも楽しかった。
周りは私の結果を褒めてくれる。
先生は私に良くできたと言ってくれた。
100点をとると、周りは私に注目してくれた。
でも――どうしてか。
どんどんと、友達はいなくなっていった。
そう。
誰も、私を遊びに誘ってなどくれなくなっていたのだ。
親友だった筈の、和も含めて。
45 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:22:57.79 ID:8d+C+zlm0 BE:519606926-2BP(2050)
幼稚園を卒園する頃になると、私の世界は少しだけ、否。大きく広がっていた。
なにかに熱中すること。
というよりも、固執することにした私は周りからどういう目で見られていたのかはわか
らない。わからないけれど、私にとってその行為はきっと間違いではなかったのであ
る。
「唯ちゃん。砂のお城を作ってくれない?」
そんなことを先生は言った。
だから、私は他には何も考えなかった。
否否、考える必要がなかったのである。
私には、砂のお城を作るという固執するべき対象が与えられた。
だったら、それを実行するまでだ。
自分が納得のいくまで?
そんなブレーキ(もの)は存在せず。
ただ、止められるまで。
ただ、制止されるまで。
常軌を逸していると言われても。
私は、砂のお城を作り続けた。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:23:49.09 ID:qrXFlPMl0
「唯って、変わったよね」
「うん。付き合い悪くなった」
「いつからだっけ? 4年のころからかな」
「そうだね。確かそれくらいだった気がする」
「6年になってから唯と遊んだ?」
「ううん。だって、ずっと勉強してるか本読んでるんだもん」
「唯って、変わったよね。和」
「ホントに。昔は、あんな子じゃなかったのに」
教室の端から、声がする。
私の話をしている。
でも。
どうでもいい。
私は私。
彼女たちは彼女たち。
だから、私はこのままでもいいと思う。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:25:26.45 ID:qrXFlPMl0
小学6年生ともなると、『異質なもの』に気づく。
自分とは違うもの。
否、自分たち、コミュニティとも言っていいそれとは違うもの。
道を違えたもの。
異端。
そういったものに気がつき、排除しようとする。
子供というものは素直故に残酷だ。
捉えたものは捉えたもの。自分の価値観を絶対としているがために決して曲げな
い。
自分がオカシイと決めたモノには容赦なく烙印を押す。
もとより、動物とは群れで行動するものが多いのだから、人間もそれに該当してもお
かしくない。
だから人は群れる。
コミュニティを作って、部外者との線引きをする。
自分を抹殺せしめんとする天敵に対して、これ以上なく残酷な振る舞いを見せる。
だからこそ、子供は恐ろしい。
ただ、私も自分の価値観を絶対として、それを行動基準として動いているのだから、
文句は言えないのだが。
周りの子供たちにとって、突如、一心不乱に勉強に打ち込みだした私は異質なもの
でしかなかった。
だって、私は彼らに対してあまりにも存外な態度だったのだから。
彼らも、私に対してそういった態度をとったって、おかしくはないのだ。
48 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:25:49.51 ID:8d+C+zlm0 BE:1385616184-2BP(2050)
人は、私をこう言った。
「――平沢さんところのお姉ちゃん。少しヘンよ」
「そうよね。間違えても間違えても同じことしてるし、できるようになると、今度は見境な
く続けるのよ」
「まるで、ブレーキのないクルマみたいね」
ブレーキのないクルマ。
――ああ。言い得て妙だ。実に的を射ている。
ブレーキがない、ということはマトモに走らないということだ。
それでも、マトモに近づけようと走り続けて、ある程度はマトモに走れるようになった
ら、今度はスピードを出し始める。止まれないのだから、行きつく先は破滅か、どちらに
せよ求めた結果(マトモ)には程遠くなる。
つまり。
それが私だ。
小学校に上がっても、それは不変ず。
呆としていても、やれと言われたことにはロボットのように固執した。
たとえ、マトモではなくなっても。
前回、明らかにさる食らわない超スロー投下だった癖に保守頼んで落ちただろ
どうしても伸ばしたい注目されたいって考えしか見えなくてガッカリしたわ
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:26:20.16 ID:OxduyeNmO
支援
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:27:00.63 ID:qrXFlPMl0
なら、私にとってそれは同じものだ。
因果応報ともいえた。
自分がやってきたものが、自分に対して跳ね返ってきても文句は言えない。というよ
りも、文句を言う相手なんて存在しない。
狂気じみた行動は、たちまち敵を増やしていった。
群れるための行動は味方しか生まないが、孤立するための行動は際限なく敵を生
む。
「今日クレープ食べに行かない?」
「行く行く! 羊の斎藤でしょ?」
声が聞こえても、感じない。
私にとっての存在理由というものは勉強以外に在り得ないからだ。
定められたことをただひたすらに固執する。
それが平沢唯という存在なのだから、仕方がないというものだ。
喩え、大事な誰かのアイデンティティを奪っていたとしても、これを止めることはできな
い。私はブレーキのないクルマ。止めようとするには壊すしかない。
「……ねえ、唯」
そんな私に、かつての親友は話しかけた。
何故か、悲しそうな目をして、だ。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:28:47.41 ID:qrXFlPMl0
「――」
私はなにも答えない。
ちらり、と和の顔を見てからはもう一度本に目を落とすだけだ。
和は私のその態度に怒ったのか、手をとって引っ張る。
……少し、痛い。
「クレープ。食べに行こうよ。唯」
静かに、和は言った。
周りの和の友達は『そんな奴なんかに構わないで早く行こう』といった顔をしている。
なんて、冷たい表情だ。
本を机にしまって、もう一度和の顔を見る。
「――あ」
泣いていた。
その目には、涙が光っていた。
顔を赤くして、肩を震わせて、泣いていた。
あの日とは違う。
私が泣かせてしまった恐怖と怯えの涙とは違う。
――私を、心底心配する涙だった。
53 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:29:14.95 ID:8d+C+zlm0 BE:1039213038-2BP(2050)
私の家は5人家族だ。
私と、妹の憂と両親と祖母の5人。
小学校に入る際に必要な『ランドセル』は、祖母から買ってもらったものだ。入学式
の一日前、私はそのランドセルことラン子と一緒に寝た。それくらいに、大事なものだ
ったのだ。
……思えば、私が名前を付けたモノは、それが初めてだった気がする。
「唯、ゆいー」
「なあに? おばあちゃん」
私は、祖母が大好きだった。
変な目で私を見ないし、私の頭を優しく撫でてくれる。
その手は暖かくて、
その手は優しくて、
その手は私を包んでくれた――
「唯は小学校にあがったら、友達をたくさん作るんだよ」
「うん! 私、友達100人作る!」
そうだ。
私は――トモダチを100人作るんだ。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:30:00.05 ID:qrXFlPMl0
「和ぁ……いいよ、こんな――」
「――そんなふうに言わないで! 私、唯が独りでいるのが寂しそうだと思ってたの!
小さいころから一緒に遊んでたのに、突然本を読みだして勉強しだして、テストだっ
て、私よりもできるようになって……。ホント言うと、邪魔だった……」
そうだ。
私は、和の居場所を奪ってしまった。
クラス、否。学年1の秀才という称号を、和から奪い取った。
だから、私は彼女に嫌われて当然だった。
嫌われるものなのだと、私は5年生のころに気がついたからだ。
「でも――! でも唯は私の親友なの。ほっとけなくて、変わってて、そんな唯が大好き
なの。それは……どうしても嘘をつけない……。嘘なんて、つけないの……」
和が私に抱きつく。
私よりも少し大きい彼女の体は震えていて、私に抱きつくというよりももたれかかって
いた。
――それでも、わからなかった。
これだけの言葉を聞いても。
これだけの言霊をぶつけられても。
ここまでの思いを知ったとしても。
私には、彼女の気持ちが理解できなかった。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:31:06.40 ID:qrXFlPMl0
「……」
どうして。
どうして、わからないのだろう。
それが厭だった。
親友だった人が泣いているのに、その気持ちを全く理解できない。
ただ『ああ、この人は悲しいんだなあ』程度にしか感じない。
肘の裏をつねられている感じだ。触られているのは分かっても、痛くも痒くもない。
人の気持ちがわからない。
それは、ほんの少しの恐怖に思えた。
足が、震えてくる。
寒気がする。
他者の痛みを感じないのは仕方がない。私は他者ではないのだから。ただ、理解で
きないというものは意味が違う。男は出産や生理の痛みを知ることはないが、痛いと
いう感覚はわかる。だが、私には悲しいという感情を理解しきれない。
和の顔を眺めていると――先生が焦ったような顔で、教室に入ってきた。
泣いている和のほうへと向かうのかと思った。先生とはそういうものだから。しかし、
先生は私に向かって――
「平沢さん! おばあちゃんが病院に運ばれたそうです。先生が送っていくから早く来
て、憂ちゃんはもう向かってるから」
そんなことを、言った。
56 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:31:36.15 ID:8d+C+zlm0 BE:433005252-2BP(2050)
それから、私は学校でたくさんの友達を作った。
どうやら私は、人と話したりすることが得意な性格らしく、人見知りもしなかった。そう
なれば、周りの子供たちは私に寄ってくる。それが、なんとなくだけれど誇らしかった。
私は好かれているのだ、と。
存在を認められ、こうしてこの場にたくさんの人に囲まれて生きているのだ、と。
そう考えると、胸が熱くなって、妙に嬉しかった。
それが気のせいだったとしても。
――そう。
私には、友達がいたのだ。
たくさんの友達が。
私の、そばに。
確かに、いたのだ。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:31:57.64 ID:qrXFlPMl0
ここまでしかログなかったわ
っていうか、なんか不評みたいだしスレタイに沿ってSS書いてみようかな
好きにやればいいんじゃね
59 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:34:46.50 ID:8d+C+zlm0 BE:779408892-2BP(2050)
「和ちゃーん」
小学4年生になった。
そんなある日のことだった。
学校での昼休み、それは小学生にとってしてみれば友達との時間に他ならない。30
分ほどの時間を如何にして過ごせるのか、それを養い、友人とのコミュニケーションを
とる時間が、昼休みなのだ。私にとって、この昼休みは和との時間なのである。
友達が何人できても、私は和との時間を大切にした。
どうしてか。
それを問われると、答えられない。
ただ、私は昔からの友人を大切にしたかったのだと思う。
和という、私にとって初めての友達との時間は、きっと特別だったのだ。
「図書室行こうよ!」
「唯が図書室なんて珍しいね。読みたい本でもあるの?」
「うーん。なんだろ。あるかな?」
「知らないわよ」
和は、昔からかっこよかった。
勉強もできるし、人当たりもいいし、運動もできるしと、私は彼女に一種の憧れを抱
いていた。
というよりも、その感情は畏敬の念に近かった。
彼女はまぶしくて、だから一緒にいたのかもしれない。
光源に近ければ、その恩恵を受けやすいから。
……彼女は、私にとって最も『褒められる』人間だったからだ。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:36:30.51 ID:qrXFlPMl0
唯「私の中学生の頃?」
律「なんとなく想像つくけどなぁ」
澪「あんまり今と変わらないだろうし」
唯「むぅ、それってどういう意味?」
紬「唯ちゃんはいつも可愛いってことよ♪」
唯「え?そうかな?えへへ」
梓「唯先輩、単純すぎます……」
61 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:38:43.90 ID:8d+C+zlm0 BE:519606443-2BP(2050)
私が通う小学校『桜ケ丘第一小学校』の図書館は、少し広めで設備もしっかりして
いるらしい。
司書のような役割の先生もいるし、図書委員はこの学校でも最も大変な、ある意味
学級委員よりも仕事量が多いとされる委員会だった。
私は、あまり本を読むことが得意ではなかったのであまりここには来ていなかった
が、和は、まるで自分の家のように歩き出し、本棚から本をとる。私もそれを真似て、
隣の本をとって見てみる。
……まったく、意味がわからない本。
なにか偉い人の伝記のようだが、私にはその人がどれだけ偉い人なのかはわからな
い。ただ、和の真似をしているだけなのだから。
「和ちゃん。この人だれ?」
「……えと。野口英世ね。黄熱病の人って覚えておけばいいよ」
なるほど。さっぱりわからない。
勉強ができる上に、ものもよく知っている和は私の誇りだ。彼女の友人になって本当
によかった。
それはそうと、この人がなにをしたかに関してはすでに忘れてしまった。というよりも、
割とどうでもいい。
和は手に取った本を持って椅子に座る。もちろん、私も同じく隣に座って子供百科を
開く。
――気がつくと1時10分の予鈴が鳴っていた。
子供百科には涎がついていた。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:39:35.49 ID:kv3Dh0TO0
まぁ、普通に考えて唯の過去がこんなに重苦しい筈が無いよね。
けいおんでやる必要性を語る人がここまでキャラ崩すなんて、びっくりした
63 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:40:22.21 ID:8d+C+zlm0 BE:433005825-2BP(2050)
――授業の時間は退屈だ。
国語の時間も算数の時間も、なにもかも。
学校とは、友達を作るために来るものだ。だって、祖母は私にそう言ったのだから。
目の前には黒板。一番前の席に座っている私は、先生からいつも見られている。見
られているのだ。
「――」
今の時間は、なんだったか。
ああ、そうだ。今は理科の時間だ。
醤油の瓶に、どうして二つの穴があいているのか。それについて、先生は一生懸命
私たちに話してくれている。
……あまり、興味がなかった。
「ようするに、空気が入ることで穴から醤油が出るわけです。どうしたの? 平沢さん」
「……」
みんなの視線が私に集まる。
……わからない。
どうしてだろう。
どうして、みんなは私を見ているのだろう。
「唯!」
次いで、和の声がする。
床には、水が滴っていた。
64 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:41:29.75 ID:8d+C+zlm0 BE:692807982-2BP(2050)
どうやら、私はお漏らしをしてしまったようだ。
気がつけば、スカートは濡れていて、パンツはびしゃびしゃになってしまっていた。
そうなってしまったのは、いつからだろう。
思い出せない。
ただ、周りの同級生は私を非難しなかったのを覚えている。
保健室から帰ってきた私を、みんなは素直に心配してくれた。
これも、普段の行動が影響していた。
普段から、私は周りには優しくしていた。
友達を作るためには、これが一番いい方法だからだ。
遠回りなんて必要ない。
私にとって、友達を作るという行動は祖母から与えられた『存在理由』だからだ。こう
していれば、私は私でいられるという条件じみたものだったのだ。
故に――
故に私は、無意識の中であるが『人に好かれるように』行動していた。
だって、そうでもしないと周りは私に優しくなんてしてくれないと思ったから。
おい折角ブログ見てやったのに批判が集中してた記事消すとか都合よすぎだろ
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:42:39.35 ID:S/Oy0//90
>>62 内心とはいえ唯が律や和を呼び捨てにしてるのが物凄い違和感
67 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:43:54.86 ID:8d+C+zlm0 BE:433005825-2BP(2050)
その反面、私は勉強が苦手だった。
というよりも、やる必要がなかったのだ。
なにせ、私には友達を作る以外の必要性を学校という場所に感じなかった。ならば、
勉強なんてしたって意味はない。そう思ったからだ。
「唯、テスト何点だった?」
「えへへー。30点だったー」
本能的に理解していた。
人が、人の結果を訊く理由はつまるところ『優越感』を得たいがためだ。
だから、私が悪い点数をとったところで友達たちは私に対して失望したりはしない。な
にせ、自分よりも下の人間なのだから、歯牙にかける必要はないからだ。警戒する必
要がある要素のない人間に対して、人はある程度は優しくなれる。もとより、私にはそ
ういった要素がなかったので、敵を作る理由もなかった。無害というものは、なによりも
強力な武器となりえる。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:44:19.62 ID:f0JgmzzDO
俺も思った
69 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:45:16.22 ID:8d+C+zlm0 BE:2727932279-2BP(2050)
「和ちゃんは100点かー。すごいなー」
そして、相手を褒める。
これで完了だ。これで、自分と対象との友好な関係は継続される。自分を、必要程
度に自虐することで、対象はさらに優越感を感じる。
それは、決して不快になるほどのものではない。運動も、限界に近くなるとつらく感じ
るように、こういったプラスの感情も度が過ぎると不快になる。
だから、私は褒めすぎないし自虐しすぎない。
「でも、お母さんに怒られちゃうかもなー。この点数じゃ」
「大丈夫だよ。唯は他にもいいところがたくさんあるんだから」
そうすれば、私に味方してくれる人だって増えるのだから。
70 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:46:43.26 ID:8d+C+zlm0 BE:606207072-2BP(2050)
しかし、問題はあった。
確かに問題は存在していたのだ。
「唯―。もう少し、勉強しなさいね」
ほんの少しだけ、咎められる程度なのだが、母に叱られる。
小学生にとって、両親というのは優しいものなのであるが最も畏怖するべき存在でも
ある。
なまじ傍にいるから、評価が低かったり機嫌が悪かったりするとどうにもいい気持ち
はしないからだ。月に一度会う程度の人間相手には在り得ない感情が存在する。
「唯、ちょっと来なさい」
自分の部屋でゴロゴロしていると、祖母がドアを開けて私を呼ぶ。
憂は友達の家に遊びに行っている。
祖母は最近、憂に色んなことを教えていて、そのことに私は少しだけやきもちを妬い
ていたのだが、久しぶりに祖母が私になにかを教えてくれるようだ。なんとなく嬉しい気
持ちになって祖母の部屋へと向かう。
――この家の唯一の和室。そこが、祖母の部屋だった。
71 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:47:59.11 ID:8d+C+zlm0 BE:1212414274-2BP(2050)
――和室、というよりも私は祖母の部屋の匂いが大好きだった。
なにか、やさしい。
私を、心まで包んでくれそうな気持ちになる。
そんな部屋が、私は昔から大好きだった。
「唯、ちょっとここに座って」
祖母が優しく笑って手招きする。
それに倣って、座布団に正座する。
この部屋に来ると、なんとなく引き締まった気持ちになる。
どうしてだろうか。
「どうしたの? おばあちゃん」
「うん。唯は、学校楽しいかい?」
やんわりと祖母は話し出す。
それに対して、私は大きく頷く。
楽しいと、答える。
72 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:49:27.72 ID:8d+C+zlm0 BE:519606443-2BP(2050)
「そうかい。よかったねえ」
皺だらけの顔に、さらに皺が増える。
祖母は満面の笑みで、また皺だらけの手を私の頭に乗せる。
それは、私が大好きな行動(こと)だった。
でもね、と祖母は話を続ける。
「でもね、学校はそれだけじゃなくって。唯が大人になった時に困らないように、お勉強
する場所でもあるんだよ。だから、少しだけでもいいから、お勉強してほしいな」
――それが、私に与えられた新しい、存在理由だった。
73 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:50:52.83 ID:8d+C+zlm0 BE:519606926-2BP(2050)
それからだ。
私は、また一つ変わった。
勉強をしてみることにした。
そうでなくては、周りが私に興味を持ってくれないような気がしたから。
以前とはまったく違ってしまった。
価値観も、
倫理観も、
優先順位も、
なにもかも。
「ねえ唯ちゃーん! 外で鬼ごっこしようよー」
「……私、図書室行くから、いい」
友達との関係、それがどうでもよくなっていた。
以前まではなによりも大事なのだと心から思っていたのにも関わらず、今の私はまる
でロボットのように学習という一つの行動に傾倒していた。
手には本が握られていて、なによりも優先するべきは知識を増やすことだった。
それが何を意味するのか、私にはわかってなどいなかった。
今まで築き上げてきたものを放棄してまで続けるということが、なにを意味しているの
かを。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:52:34.93 ID:p2QMs3vV0
この人頑張って書いてるけど
Vipperが好むSS向きの文体じゃないような…。
75 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 19:52:39.69 ID:8d+C+zlm0 BE:2121725077-2BP(2050)
――気がつけば、私は1番になっていた。
テストでは90点以下を獲ることはなくなった。
授業中も集中して先生の話を聞いていた。
休み時間は勉強して、次の授業に備えた。
昼休みは友達の誘いを断って図書室で本を読んだ。
私は楽しかった。
頑張った結果が出ることが、なによりも楽しかった。
周りは私の結果を褒めてくれる。
先生は私に良くできたと言ってくれた。
100点をとると、周りは私に注目してくれた。
でも――どうしてか。
どんどんと、友達はいなくなっていった。
そう。
誰も、私を遊びに誘ってなどくれなくなっていたのだ。
親友だった筈の、和も含めて。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 20:00:07.22 ID:f0JgmzzDO
さるかよ
77 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 20:01:00.51 ID:8d+C+zlm0 BE:2121725077-2BP(2050)
「唯って、変わったよね」
「うん。付き合い悪くなった」
「いつからだっけ? 4年のころからかな」
「そうだね。確かそれくらいだった気がする」
「6年になってから唯と遊んだ?」
「ううん。だって、ずっと勉強してるか本読んでるんだもん」
「唯って、変わったよね。和」
「ホントに。昔は、あんな子じゃなかったのに」
教室の端から、声がする。
私の話をしている。
でも。
どうでもいい。
私は私。
彼女たちは彼女たち。
だから、私はこのままでもいいと思う。
78 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 20:03:16.20 ID:8d+C+zlm0 BE:1212414274-2BP(2050)
小学6年生ともなると、『異質なもの』に気づく。
自分とは違うもの。
否、自分たち、コミュニティとも言っていいそれとは違うもの。
道を違えたもの。
異端。
そういったものに気がつき、排除しようとする。
子供というものは素直故に残酷だ。
捉えたものは捉えたもの。自分の価値観を絶対としているがために決して曲げな
い。
自分がオカシイと決めたモノには容赦なく烙印を押す。
もとより、動物とは群れで行動するものが多いのだから、人間もそれに該当してもお
かしくない。
だから人は群れる。
コミュニティを作って、部外者との線引きをする。
自分を抹殺せしめんとする天敵に対して、これ以上なく残酷な振る舞いを見せる。
だからこそ、子供は恐ろしい。
ただ、私も自分の価値観を絶対として、それを行動基準として動いているのだから、
文句は言えないのだが。
周りの子供たちにとって、突如、一心不乱に勉強に打ち込みだした私は異質なもの
でしかなかった。
だって、私は彼らに対してあまりにも存外な態度だったのだから。
彼らも、私に対してそういった態度をとったって、おかしくはないのだ。
79 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 20:04:55.25 ID:8d+C+zlm0 BE:519606162-2BP(2050)
なら、私にとってそれは同じものだ。
因果応報ともいえた。
自分がやってきたものが、自分に対して跳ね返ってきても文句は言えない。というよ
りも、文句を言う相手なんて存在しない。
狂気じみた行動は、たちまち敵を増やしていった。
群れるための行動は味方しか生まないが、孤立するための行動は際限なく敵を生
む。
「今日クレープ食べに行かない?」
「行く行く! 羊の斎藤でしょ?」
声が聞こえても、感じない。
私にとっての存在理由というものは勉強以外に在り得ないからだ。
定められたことをただひたすらに固執する。
それが平沢唯という存在なのだから、仕方がないというものだ。
喩え、大事な誰かのアイデンティティを奪っていたとしても、これを止めることはできな
い。私はブレーキのないクルマ。止めようとするには壊すしかない。
「……ねえ、唯」
そんな私に、かつての親友は話しかけた。
何故か、悲しそうな目をして、だ。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 20:05:21.06 ID:mkS3fZTGO
笑み社って必ず最後まで書き溜めてるんだよね
それをレスが付くのを待ちながら10分間隔くらいで投下してるんだよね
要するに早く投下しようと思えばさるさん食らわない限りいくらでも早く投下出来るんだよね
それなのに前回、途中で眠くなったから保守頼んで落ちたんだよね
笑み社って前に書いてる途中で落ちる書き手や保守頼む書き手を批判してたよね
それって何かなんかだよね
81 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 20:07:31.75 ID:8d+C+zlm0 BE:1558818566-2BP(2050)
「――」
私はなにも答えない。
ちらり、と和の顔を見てからはもう一度本に目を落とすだけだ。
和は私のその態度に怒ったのか、手をとって引っ張る。
……少し、痛い。
「クレープ。食べに行こうよ。唯」
静かに、和は言った。
周りの和の友達は『そんな奴なんかに構わないで早く行こう』といった顔をしている。
なんて、冷たい表情だ。
本を机にしまって、もう一度和の顔を見る。
「――あ」
泣いていた。
その目には、涙が光っていた。
顔を赤くして、肩を震わせて、泣いていた。
あの日とは違う。
私が泣かせてしまった恐怖と怯えの涙とは違う。
――私を、心底心配する涙だった。
82 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 20:09:41.09 ID:8d+C+zlm0 BE:433005252-2BP(2050)
「和ぁ……いいよ、こんな――」
「――そんなふうに言わないで! 私、唯が独りでいるのが寂しそうだと思ってたの!
小さいころから一緒に遊んでたのに、突然本を読みだして勉強しだして、テストだっ
て、私よりもできるようになって……。ホント言うと、邪魔だった……」
そうだ。
私は、和の居場所を奪ってしまった。
クラス、否。学年1の秀才という称号を、和から奪い取った。
だから、私は彼女に嫌われて当然だった。
嫌われるものなのだと、私は5年生のころに気がついたからだ。
「でも――! でも唯は私の親友なの。ほっとけなくて、変わってて、そんな唯が大好き
なの。それは……どうしても嘘をつけない……。嘘なんて、つけないの……・」
和が私に抱きつく。
私よりも少し大きい彼女の体は震えていて、私に抱きつくというよりももたれかかって
いた。
――それでも、わからなかった。
これだけの言葉を聞いても。
これだけの言霊をぶつけられても。
ここまでの思いを知ったとしても。
私には、彼女の気持ちが理解できなかった。
83 :
笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2010/03/26(金) 20:11:24.47 ID:8d+C+zlm0 BE:2078424386-2BP(2050)
「……」
どうして。
どうして、わからないのだろう。
それが厭だった。
親友だった人が泣いているのに、その気持ちを全く理解できない。
ただ『ああ、この人は悲しいんだなあ』程度にしか感じない。
肘の裏をつねられている感じだ。触られているのは分かっても、痛くも痒くもない。
人の気持ちがわからない。
それは、ほんの少しの恐怖に思えた。
足が、震えてくる。
寒気がする。
他者の痛みを感じないのは仕方がない。私は他者ではないのだから。ただ、理解で
きないというものは意味が違う。男は出産や生理の痛みを知ることはないが、痛いと
いう感覚はわかる。だが、私には悲しいという感情を理解しきれない。
和の顔を眺めていると――先生が焦ったような顔で、教室に入ってきた。
泣いている和のほうへと向かうのかと思った。先生とはそういうものだから。しかし、
先生は私に向かって――
「平沢さん! おばあちゃんが病院に運ばれたそうです。先生が送っていくから早く来
て、憂ちゃんはもう向かってるから」
そんなことを、言った。
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見習い戦士のふつうの攻撃
MP159使ってへっぽこの呪文を唱えた。
★ミ (スレのダメージ 0)
このスレは1回目のダメージを受けた (150/1000)
ぼうそうがはじまった!! さらにこのスレは2回目のダメージを受けた (300/1000)
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真の勇者のさすがの攻撃
MP292使ってへっぽこの呪文を唱えた。
★ミ (スレのダメージ 0)
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ぼうそうがはじまった!! さらにこのスレは2回目のダメージを受けた (300/1000)
追加攻撃!! さらにこのスレは3回目のダメージを受けた (320/1000)
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まほうつかいたんのつよめの攻撃
MP401使ってへっぽこの呪文を唱えた。
★ミ (スレのダメージ 620)
このスレは6回目のダメージを受けた (770/1000)
こうかは ばつぐんだ!! さらにこのスレは7回目のダメージを受けた (920/1000)
ぼうそうがはじまった!! さらにこのスレは8回目のダメージを受けた (1070/1000)
追加攻撃!! さらにこのスレは9回目のダメージを受けた (1080/1000)
MPが足りません。(5285/2050)
( ̄ー ̄)ニヤリッ (わっ)
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