1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:03:08.85 ID:N/2DE7Y00
見たことあるようなないような
とりあえず支援だ!!!!!!
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:05:43.80 ID:FBLinu+Q0
律「それに、もう一つこの窓には奇妙な点がある」
梓「奇妙?」
律「犯人が外部の人間だと思わせるために割られた窓だ――でもこれは結果として、唯たちの首を更に絞めた。この窓にはすんごく奇妙な点がある。何が変かわかるか、梓?」
梓「わかりました。もし仮に私たち以外の誰かがいたとして、外から入ってきたとしたら、
窓の穴は真ん中ではなく、一番左側になければおかしいってことですよね。だって窓のガラスを割ったのはカギを開けるためなんだから、
真ん中よりもカギに近い左側の部分を割るのが普通のはずです」
律「そうなんだよ。普通なら外から入ろうとするならそうするんだよ。じゃあ、逆に窓の
真ん中に穴が開くというのは、どういう場合か。こうすりゃいい」
私は右側の引き違い窓を少し開けて身を乗り出す。そして体をひねって窓をコンコン、と叩く。
律「こうすれば、確かに窓ガラスは中に飛び散ることになる。あたかも外側から割った
みたいに。けれどその代わり、窓と窓が重なって結局真ん中あたりにしか穴は開けれないけどな。
和、どうして外から窓を割らなかったんだ?」
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:08:17.57 ID:FBLinu+Q0
和「雨が降ってたでしょ?今でも降ってるけど。濡れたくなかったの」
律「ふうん。その結果、憂ちゃんに感づかれてしまった、と」
唯「和ちゃんとは思えないようなミスだよね」
律「まあ、お前のミスはもっと致命的だったけどな」
唯「ほえ?わたしなんかミスした?」
律「物置の部屋からこの部屋に来るまでの間に」
唯「どういうこと?教えて教えて〜」
どうやらわかっていないらしい。
律「じゃあ、聞くけど澪の死体を発見する前、なんで私らはあの物置部屋からこの部屋に来たんだ?」
唯「それは……わたしが窓ガラスが割れる音を聞いて不安になって確かめに行こうって言ったからだよ」
律「それなんだよ。明らかにおかしいんだよ」
唯「そ、そうかな?」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:08:52.49 ID:Qr8rSXzf0
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:11:44.94 ID:FBLinu+Q0
ありがとうございます
律「この部屋からあの物置部屋から五十メートル以上は離れてるんだぜ」
五十メートルという距離が人の家の中に存在すること自体がある主の矛盾な気がする。いや、さすがは琴吹家の別荘ってことにしておこう。
律「その上、この部屋の扉は相当分厚いんだよ。分厚い。ちょっとやそっとじゃ音が漏れないくらいにな。
それこそ窓ガラスが割れるくらいの音じゃあな」
唯「おお!なるほど」
律「つまり、音が聞こえたっていうだけでもありえないのに、まるで唯は音を頼りに窓ガラスが割れたのがこの部屋であると、ここに私たちを連れて来た。
明らかにおかしいだろ?」
梓「ちょっと待ってください。音が聞こえたって言ったのは唯先輩だけじゃないです。
憂も音が聞こえたって言ったよね?」
憂「うん、音が聞こえたのは本当だよ。でもそれは窓ガラスが割れた音じゃなかったんだ」
律「そうなんだよ。あの場で憂ちゃんは一言も窓ガラスが割れた音がした、なんて言ってないんだよ。
言ったのはムギと唯の二人。憂ちゃんが聞いた音は――」
どこからか不意にブ ブっと音が鳴った。この時代の人間なら誰だって一度は聞いたことはあるだろう。
音の発信源は唯からだった。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:17:08.25 ID:FBLinu+Q0
律「この音だよ。ケータイのバイブ」
ポケットから取り出した自分のケータイを唯の目の前で見せてやる。表示されている画面は唯の顔を白く照らした。クリアボタンを押す。唯のケータイのバイブ音が止んだ。
唯「やっぱり憂にはバレバレだったんだ」
憂「うん。お姉ちゃんはちょっとケータイが鳴ってから消すのが遅すぎたよ」
律「それでも私と梓は気づけなかったけどな!」
澪「いばってどうする」
ケータイのバイブは合図だったのだろう。準備完了。そして、今からこっちに来い。
和はもうあの部屋から出た。それらを唯に教えるためのものだった。
律「今ので、少なくとも唯が犯人だっていうのはこれで濃厚だな」
梓「どういうことですか?」
律「私たちの荷物が荒らされた際に盗まれたのは何か?――ケータイだろ。唯も言ったはずだぜ。
私も含めてみんなのケータイが盗まれたってな。犯人に盗まれたはずのケータイを持っている、疑うには十分な材料だ。
ちなみに私のコレはさっき澪から返してもらったものだからな」
梓「でも、どのタイミングで盗まれたんですか?やっぱり、私たちが物置で扉と格闘していたときですか?」
律「さあ?わかんない」
梓「わかんないって何ですか。ずいぶんテキトーですね」
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:18:32.76 ID:ozW9Uum50
たわしだ
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:21:34.24 ID:FBLinu+Q0
律「まあね。やっぱ完璧にはわからないよ。でも、ある程度、特定はできるぜ。
確実性っていう点から考えると私らが扉と格闘していた時よりもっと前だろうな。
ケータイをカバンに置いたのは一日目の風呂に入る直前。まずこのタイミング。
あるいは、みんなが演奏会をする前に仮眠をとった際に。最後に和の死体を見つけた次の日の早朝、つまり私らが寝ていた時。
まあ、ケータイを一番確実に盗める時間帯は、風呂に入る直前じゃないかな。確実にみんながケータイをカバンに入れたからな。
そういえば着替えを取りにこの部屋に入った時、唯が言ったんだよな。『打ち上げなんだからケータイなんていらないよ』って。それに、ちょっとみんなより後に部屋から出るなり、
早めに風呂から出て部屋に戻るなりすれば、ケータイを盗むのもそれほど難しくない。
しかも風呂に入るのも出るのもみんな一斉に入ったわけじゃないしな」
食事の直後で片付けをしていて後から風呂に入ったヤツもいたし(覚えてないけど)。
のぼせたと言って、早めにあがったヤツもいたし(こっちも私ははしゃぎまくっていたのでよく覚えてないや)。
律「まあ、今私が言ったとおり風呂の前後にケータイを盗んだとしたら、荷物を荒らしたタイミングはそれよりもずっと後になるけどな」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:25:10.65 ID:FBLinu+Q0
梓「そういえば、私たちが和先輩を発見したときはまだ荷物は荒らされていませんでしたもんね」
唯「りっちゃん名探偵みたいだねっ。カッコいいよ!」
律「ハハハっ、まあな」
実際に事件を解いたのはお前の妹だけどな。
梓「でも、何でケータイなんか盗む必要があったんですか?」
律「理由は大きくふたつある。ひとつは私ら以外にもこの別荘にいると、より思わせるため。荷物を大胆に荒らしたのもそう思わせるためだろ?」
和「そのとおりよ」
梓「じゃあ、もうひとつは?」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:30:23.36 ID:FBLinu+Q0
律「もし仮に私らが外部に犯人がいると思い込んだままだったとするぞ。唯たちの思惑どおりに。
それで私がこんなことを提案するんだ。『こうなったら澪や和を殺した犯人をとっ捕まえてやろう!』って。
そしたらどうする?確かにこの屋敷のサイズはでかい、いや、でかすぎるくらいなんだけど。
それでも犯人を探そうと思えば探せないこともない。この別荘の形は長方形型とシンプルだからな。
下の階から手分けして探していけば犯人――つまり、澪と和を見つけることも不可能じゃない。
犯人が別荘の外に逃げ出す可能性は、この場合は考慮する必要はない。だってそうだろ。こんな豪雨の中、外に出るなんて無謀も無謀だ。
危険すぎるし、無事だったとしても風邪を引くかもしれないしな。いや、百歩譲って勝手に出るのはいい。でもそんなことしたら、この大雨でまず、びしょ濡れになる。
別荘に戻っても、それこそ犬のマーキングみたいな感じに痕跡が残って、かえって自分たちの潜伏場所をさらすハメになる。
――と、まあこんな感じの不測の事態に対応するためにケータイ電話を盗んでおくわけだ。本当に必要なのは連絡する側とされる側だから、唯とムギの分。
あるいはどちらか一個。そして、澪と和の分。しかし、それでは怪しまれる可能性が出てくる。『なぜ、犯人は私たち全員のケータイを盗まなかったのか』って。
そこで全員分のケータイを盗んだわけだ。まあでも、ケータイを盗んでくれたおかげで事件の解決はより早くなったわけだけど」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:36:32.09 ID:FBLinu+Q0
唯「そういえば、どうやって憂は澪ちゃんと和ちゃんを見つけたの?わたしそこらへんまだ聞いてないよ」
律「もう答えは言ったようなもんだけど……まあ、いいや。今説明したとおりだよ。つまり、唯かムギ
の両方、あるいはどちらかがケータイを持っている。だったらケータイさえあればこっちから澪たちに
連絡することは可能だってわけだ」
唯「ああ、なるほどお。ってじゃあ………」
律「そう。唯はもっと警戒しておくべきだった。
最初はさ、ムギだけがケータイを持っているんじゃないかな、と思ったんだ。だって唯がケータイ持ってたら
どこでドジ踏むかもわかんないからな」
唯「りっちゃん本当のことだとしてもひどいよ〜」
律「ワリイワリィ。でもそうだろ?実際、私と憂ちゃんで唯のパジャマのポッケをさがしたらあっさり
ケータイが出てきちゃうからさ」
唯「ううぅ〜」
律「そんで、後は憂ちゃんが唯のふりして電話をかけた。『ちょっと困ったことが起きて相談したい。
できれば直接会って話し合いたい』って。まあ、そんなカンジの内容をな。姉妹の容姿は瓜二つ。
声質まで似ている上に電話越とキタもんだ。さすがに澪にも和にもその電話の主が憂ちゃんだとは気づけなかった」
もちろんコレを考えたのも憂ちゃんだった。私の考えたローラー作戦よりよっぽどスマートな案だった。
13 :
以下、名無しにかわりましてvipがお送りします:2010/03/24(水) 15:42:06.46 ID:11GQJ9SlO
後から読むで支援
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:42:27.39 ID:FBLinu+Q0
梓「あれ?そういえば、ケータイ以外にもなにか盗まれてませんでしたっけ?」
律「ああ、和と澪の着替えのこと?」
梓「そう、それですっ」
律「この時期ってまだまだ暑いじゃん? とくに台風が多い季節だし。蒸し暑い日はまだまだ続いている。
そんな日に風呂に入らないなんてうら若き乙女に耐えれると思うか?まして服を変えるな?
そんなことできるわけがないだろ?」
梓「ええと、じゃあもしかして着替えが盗まれたのは……」
律「そう。単純に同じ服をずっと着ているのが嫌だったんだ」
梓が澪と和を交互に見る。そうなんだ。二人を見れば一瞬でわかる。服装が一日目と変わっていることに。
律「ついでにコレにはきちんとした物的証拠もある。昨日の夜中、みんなが寝ている間に
憂ちゃんと一緒に風呂に入ったんだよ。ね、憂ちゃん」
憂「はい。それでついでにお風呂から出る前に私と律さんで掃除しておいたんです。“排水溝”も含めて全部ね」
梓「排水溝?」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:47:46.89 ID:FBLinu+Q0
また5時から出かけないといけなくなったorz
律「和と澪の二人はどうしても風呂に入りたかった。でも、みんなに見つかったらもともこうもない。
だから必然的に私らが確実に寝ているときを見計らって風呂に入るしかなかったんだ。昨日も、二人は風呂に入った。
断言する。間違いなく入った」
私はポケットにツッコンでおいたチャック付きの透明のビニールを取り出す。梓に見せてやる。
梓「これは、髪の毛?」
律「そう。最後に入ったのが私と憂ちゃんだったら、当然こんなものが排水溝から発見されるわけがないんだよ」
ビニールの中には長い髪と短い髪。特に長い黒髪は特徴的で一目でもすぐわかる。
澪「だって私、髪長いし……洗わないと気持ち悪いし」
澪はきまり悪そうに後頭部をかいた。私にはわかる。
風呂にどうしても入りたいと言い出したのはコイツだ。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:50:43.65 ID:FBLinu+Q0
律「これもまだみんなには言ってなかったことだけど、私と憂ちゃんは昨日、風呂に入る以外にもうひとつ
したことがあったんだ。いや、別にたいしたことじゃない。
現場検証、まあそんなかんじのことをしようと、あの物置部屋に入った。入ろうとした。でもな、
部屋に入る前に気づいた。部屋の中に誰かいる、ってな」
梓「誰か?誰かって誰ですか?」
律「窓ガラスを割ったナゾの人物――最初のナゾに人物。これは和、お前だな」
完璧にはわからない。さっきはそう言った。しかし、荷物を荒らすタイミングと窓ガラスを割るタイミング。
そして唯へ合図を送る適役は誰か。それらを考えれば、和が窓ガラスを割った犯人だと誰でもわかる。
何より、決め手は唯のケータイだった。唯からケータイを奪取した際に、唯のケータイを確認したら和からの着信履歴があった。
和「ええ、そうよ」
和はあっさり首肯した。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:55:35.54 ID:FBLinu+Q0
律「話を戻すぞ。私と憂ちゃんは咄嗟に廊下の角に隠れた。誰かわからなかったし、少なくとも私は例の犯人かも、と思ってたしな――そして、誰かが物置部屋から出てきた。暗くかった
からその誰かの顔は見えなかった。まあ、ソイツは何事もなく立ち去ろうとしたんだけど、ここで私がヘマした。
情けない話、澪じゃないけどビビっちゃってさ。懐中電灯を落としちゃったんだ。いやあ、マジであの時は殺されると思ったね。
りっちゃん隊員最大のピンチみたいな。でも、ソイツは不思議なことにさっさととんずらこいちまった。
安心したけど、正直奇妙だな、って思った。んで、憂ちゃんと一緒に結局物置部屋に入った。
そしたら、また同じことが起きた」
梓「同じこと?もしかして……」
律「そう。今度は澪の首がなくなっていた。残ったのは赤いシミの付いたテーブルクロスだけ……ぱっと見た限りはな。
ところがどっこい。テーブルクロスを引っぺがすと、面白いものが出てきた。真ん中に穴の開いたテーブルだ。これ――」
私は脇にあるテーブルを指差す。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:58:38.72 ID:FBLinu+Q0
律「と、まさに一緒。それだけじゃないぜ。部屋を探すともっと面白いものが見つかった。鏡だ。両方とも今回の事件の要になったものだ。
ちなみにそれもこの部屋にあるヤツとまったく一緒だ。ていうか、この部屋のテーブルも鏡もそのときに
見つけたのをそのままこの部屋まで持ってきたんだから当然なんだけどね。さて、ここからが問題。
なんで犯人はこんな一番大事な証拠品を残したまんまにしちゃったのか。いや、その前にこっちにも触れておこうか。
この部屋で起きた事件のテーブルについても後に調べたんだけど、こっちのテーブルには穴なんか開いてなかったし、
もちろん鏡もなかった。だけど、鏡を利用したテーブルのマジックが使われたのは私たち自身が見ている。
つまり、こっちは証拠品になるものはきちんと回収しているってことだ。じゃあ、なんで物置部屋のほうは証拠品を回収しなかったのか。
当然の話だけど回収しなかったんじゃない。回収できなかったんだ。私たちが部屋に来てしまったせいで」
梓「どういうことですか?」
律「あの夜、物置部屋から出てきたどっかの誰か。コイツの正体が澪だったら全部話がつく」
梓「澪先輩だったら……」
律「まず、なんで澪の死体が消えたのか――澪があの犯人だったら……」
梓「死体の役をすでにやめてるんだから、当然の話ですね」
律「うん。証拠品を持ち出せなかった理由ももう想像できるだろ。鏡にしろテーブルにしろ一人で運ぶには
ちょっち重い。だから、澪は和を呼びに行こうと部屋から出た。でも、ここでトラブルが発生したんだ。物音がした。
明らかに人がいる、って。澪は気づいたんだ。本来なら死体のフリをすれば誤魔化せたかもしれないが、
みんなも知ってのとおり、怖がりの澪は、きっとパニックになっちゃったんだろうな。一目散に逃げた。証拠品を残したまんまで」
そもそも冷静に考えれば、澪があの真っ暗な部屋で一人でいたり、死体のフリしていただけでも驚嘆に値することなんだけどな。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 15:59:14.18 ID:sgpTHCHb0
こんなドッキリ仕掛けるなんて趣味悪いよな
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:03:59.09 ID:FBLinu+Q0
律「かろうじて首を通すための、穴の開いたテーブルクロスだけは代えておいたみたいだけどな」
紬「……じゃあ、最後に私がこの事件に噛んでるって根拠を聞かせてもらっていいかしら?」
律「ようは、この事件がはじめから唯たちによる自作自演だったとしたら、当然この事件の場所を提供した
ムギだって怪しいって思うのが筋だろ。特に窓ガラスを割ったりするのはイタズラでもちょっとやりすぎだしな」
紬「それだけ?それだけじゃないでしょ?」
律「うんまあ、後、唯が窓ガラスが割れた音を聞いたって言ったとき、ムギも私も聞こえたって言ったからな。
それでもやっぱりムギは行動が一番少なかったから、正直確信みたいなものは最後まで、もてなかった。だよね、憂ちゃん?」
憂「はい、そうです」
律「ああ……でもな、私たちの行動でどうしてもおかしいと思えることがあった」
紬「私たち……それは私や唯ちゃんだけでなく、りっちゃんたちもってこと?」
律「うん。やっぱりさ、おかしいと思わないか。人が死んだんだ。たとえ、パニックになっても普通は
警察呼ぶぐらいはさすがにするだろ?犯人である唯たちならともかく。私も梓も憂ちゃんも全然そうしようとしなかった」
紬「うんうん。それで」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:06:55.42 ID:FBLinu+Q0
律「まるで酒飲んで酔っ払ったみたいだった、って後から振り返って思ったんだ。梓や憂ちゃんはどうだった?」
憂「私もあの時は何だか体調が優れませんでした」
梓「そう言われてみると、そんな気がしないでもないです」
律「……だ、そうだ」
紬「どうやら完璧に見破られているみたいね」
律「いや、今のムギの言葉を聞いて私ははじめて確信したよ。私らの飲み物に睡眠薬を混ぜてたんだろ」
睡眠薬――飲んだことがないからよくは知らないし、そもそもどのような手段を用いればそれが
入手できのかも定かではないが、憂ちゃんによれば、睡眠薬は眠気を促すだけが効果ではないらしい。
様々な種類があって物によって色々な効果があるんだとか。だから睡眠薬遊びなんてものも一部の界隈では流行っているらしい。
私には一生縁がないことを祈ろう。
まあ、どの種類の睡眠薬かはさすがの憂ちゃんもわからなかったらしいが、飲むと睡眠と
同時に酩酊してしまうものもあるらしい。
言われてみれば、私のあの時の症状はまさに酔っ払いのそれだったのでは、と思えなくもない。
強烈な眠気と酷い頭痛。おぼつかない足取り。特に澪があの物置部屋で駄々をこねた時はもう、
思考が半分以上停止しかけていたし。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:10:16.08 ID:FBLinu+Q0
梓「……あれ?」
律「どした?」
梓「でも、どうやって睡眠薬を仕込んだんですか?私たち、普通に夕飯の時は紙パックで
各々好きなものを飲んでましたよね?」
律「バーベキューだったしな。じゃあ単純にもうひとつのほうだ」
梓「もうひとつのほう?」
律「夕飯の後、風呂に入っただろ。その後に私らきちんと食べたんじゃん。夕食後のデザートをさ」
梓「たしかに美味しく頂きましたけど」
律「さて、問題。わたしら軽音部がお菓子食べるときに一緒に飲むものと言えば?」
梓「紅茶です」
律「正解。では、誰がその紅茶を淹れてくれるでしょう?」
梓「ムギ先輩です」
律「じゃあ、最後の問題。あの晩私らが飲んだ紅茶を淹れてくれたのは?」
梓「……ムギ先輩」
律「そういうこと。日ごろの習慣っていうのは恐ろしいもんで無意識にムギが紅茶を淹れるのを
当たり前だって思っていたんだ。だから、今回だって進んでムギが紅茶を淹れたって誰も口を挟まなかったし何も思わなかった。当たり前、だからな」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:13:23.73 ID:sgpTHCHb0
このまま謎解きして終わるのかどんでん返しがあるのか気になる
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:14:27.50 ID:FBLinu+Q0
白状すれば私はあの日、みんなでお菓子を食べたとき誰が紅茶を淹れたかなんて覚えていなかった。
そもそも考えようとすらしていなかった。ムギが紅茶を淹れる――私にとってそれはあまりにも当たり前だった。
しかし、普段から軽音部にそれほど関わりのない憂ちゃんはだからこそ、その点に気づいたのだろう。
律「適当にスキを見て睡眠薬を入れれば後は勝手にみんなが飲んでくれる、そうだろ?」
紬「はい、そのとおり……りっちゃんに惚れちゃいそう」
律「なんか言ったか?」
紬「いえ、なーんにも。ワタシニハユイチャンガイタンダッタ……」
唯「え?ムギちゃん今私の名前呼んだ?」
紬「いえいえいえいえいえいえ」
澪「六回……」
梓「あれ?でも何でそんなことをしたんですか?睡眠薬を私たちに飲ませることに
何かメリットがあるんですか?」
律「ああ、ひとつは私たちを泥酔状態にして混乱させる。そしてもうひとつは夜中に証拠品をきちんと回収するためだよ」
梓「なるほど。私たちを眠らせておけば誰にも見られることもなく安全かつ確実にものを運べますもんね」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:16:59.40 ID:FBLinu+Q0
もっとも二日目は事はうまく運ばなかった。私は後半からずっと気絶した状態だったため睡眠薬を飲ませることなどできなかった。
そしてあの時点でほとんど真相を看破していた憂ちゃんも十二分に経過していたため、そちらも同様に睡眠薬を飲ませることが
できなかった。
律「だいたい事件の流れはこんなもんだけど……」
唯「ストップストップ。最後に一番の謎が残ってるよ」
律「へ?なんかあったけ?」
唯「あの物置部屋の扉が開かなかった理由だよ。なんで、カギがなかったのになんであの扉が開かなかったの?」
唯の声には得意げなニュアンスが墨汁のように滲んでいた。
……そういえば、これについては憂ちゃんも何も言わなかったな。
唯「りっちゃんにコタエがわかるかな〜?」
…………嬉しそうだな、オイ。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:27:24.85 ID:FBLinu+Q0
図らずとも憂ちゃんの顔を見てしまった。こまったような表情の憂ちゃん。
あれ?もしかして憂ちゃんも答えがわかっていないのか?
いや、憂ちゃんにわからない答えが私にわかるわけないぞ。
唯「は〜やく、りっちゃん答えてよっ」
律「ええと、だな」
得意顔の唯とそんな唯を楽しそうに眺めている憂ちゃんを交互に眺める。
私でも、今ならたとえ二人が同じ髪型をしていても、区別をつけることができr
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:38:42.68 ID:FBLinu+Q0
律「――――!!」
答えがわかった。
律「澪、微妙に髪、短くなったな」
澪「…………さすがに律は気づいたか」
澪「さすがに律は気づくか」
律「あったりまえだろ。何年一緒にいると思ってんだよ」
唯「ふたりの世界禁止〜。りっちゃん、それでコタエは!?」
唯が私と澪の間に割って入った。ていうか、ふたりの世界ってなんだよ?
律「わりわり。答え? そんなの名探偵律様にかかりゃ簡単なもんよ」
今度は私が得意顔になる番だった。
律「答えは単純明快。鍵がないんだったら、鍵を作ればいい。鍵穴に南京錠の代わりのものを通せばいい」
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:40:24.09 ID:sgpTHCHb0
さっぱり分からない
推理とかサスペンスとか苦手
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:50:42.00 ID:FBLinu+Q0
たぶん僕の説明が下手なんだと思いますすんません……
梓「代わりのものってなんですか?そんな南京錠の代わりになるものなんて……」
律「南京錠ってさ、すごい原始的じゃん。ようは鍵穴に金属を通すだけでいいんだからさ。つまり、鍵穴に通るものだったら南京錠じゃなくてもいいんだよ。
たとえば“髪の毛”とかさ」
梓「じゃあ、澪先輩が髪を切ったっていうのは……」
律「そういうこと。南京錠の代わりに切った髪の毛を鍵穴に通しておく。髪っていうのは
意外と丈夫なんだ。こま結びにでもしておけばまず、外れることはない。後はみんなが物置部屋から
出てったらハサミかなんかで切ってやる。で、後はみんなが再び戻ってくるまでに
死体になればオッケー」
澪「……さすがは憂ちゃんだな」
律「いや、これは私の推理だよ」
澪「……本当に?」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:53:15.69 ID:FBLinu+Q0
澪が露骨に驚いた顔をした。私には目の前の幼馴染が何を考えているのか手にとるようにわかった。
憂「本当ですよ。私にはその謎が解けなかったから」
律「へへん、どうよ?」
澪「……驚いたな」
この推理にははっきりとした根拠があった。澪の死体を見たとき、私は気絶した。
その瞬間、地面にひざまずいたのは覚えている。そのときに切られたはずの澪の髪が私のひざについた。
おそらく気絶から目覚めたとき、私のひざについていたものがそれだ。あの髪の毛が澪のものにしては
短すぎたのも、すでに切られた後の髪だったからだろう。
律「この密室トリックの目的は私たち全員をあの場にとどめて、和があの場から撤退するための
時間稼ぎをさせることだ。後は和からのケータイの合図を唯が受け取って、みんなを誘導させる。
唯はなにげない言葉でみんなを文字通り誘導していったんだ」
唯「……なんか全部見透かされてるみたいだね……りっちゃんこわ〜い」
律「何度も言うけど私じゃなくて憂ちゃんだぞ」
憂「お姉ちゃんのことならなんでもわかるよ」
紬「ふふふ、この姉妹いいわぁ〜」
心なしかだんだん萎びれていく唯とその妹の憂ちゃんのやりとりを、ムギはとろけるような
眼差しで眺めている。ホットケーキを蜂蜜漬けにして、その上からメープルシロップを塗りたくっても
あんな甘い視線にはならないだろう。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:55:50.06 ID:FBLinu+Q0
律「話しを戻すぞ。
たとえば和の死体を発見したとき。唯はさりげなく電気がつかないって言った。本当はつくのに。
少し確かめればわかる嘘をあえてついた。たぶん、死体のデキに自信がなかったからじゃないか?
少しでも暗くしておいて死体を見づらくしたかったんだろ。他にも、二日目の朝。澪の按配を
確認する際、みんなで澪のところへ行こうと言ったり、な。和の部屋の状況を確認しに行くときも、
唯が先導してたし。まあこれで証明終了。A・E・D」
澪「自動対外式除細動器!?」
紬「正しくはQEDね」
梓「ところで結局なんでこんなことしたんですか?」
唯「ああそれはね――」
梓の疑問はもっともなものだった。梓の疑問に唯が答えようとして、私はそれを遮った。
律「みんなを驚かしたかったんだろ?」
唯「りっちゃん、わたしのセリフとらないでよ〜」
律「唯。最近学校で噂になってる珍事件のこと知ってるか?」
唯「へ?」
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 16:59:14.97 ID:FBLinu+Q0
律「いや〜この最近噂になっているこの事件ってさ、決して悪質なものではないんだよな。
器物破損とか誰かが怪我したとかそういうのは起きたことないだろ?どちらかというと
イタズラって言ったほうがいいかな」
唯「う、うん」
唯は私の言葉の意味を咀嚼するように目をしばたたかせた。が、不意に石のように固まった。
律「今回の唯が考えたこれも立派なイタズラだよな?」
唯「え?あ〜まあ〜その、ね?」
律「そして今回の事件の唯以外の犯人役――ムギ、澪、和。この三人には共通点がある」
梓「共通点?」
律「学校の珍事件の被害者、ってことだ。そうだろ?」
澪の口から大量のラブレターが下駄箱に突っ込んであった話は、その事件が起こった日に
すでに聞いていた。ムギから唯に告白されたという話も以前に。そして和からも夏休みに、
唯の家に泊まった際にメガネのフレームが上下逆になっていたとかいう話をそれとなく聞いていた。
他にも私たちのクラスが最もそのイタズラが起こっている回数が一番多いとか。まあ、
これに気づいたのもやっぱり憂ちゃんだったのだが。
つくづく優秀だった。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 17:02:23.67 ID:FBLinu+Q0
律「なあ、和」
和「何かしら?」
律「仮にこの学校の事件の犯人が捕まったら、生徒会は何かしたりするの?」
唯「え?え?え?あのぉ……」
涙目で戸惑う唯をよそに、空気の読める和は思案するかのようにあごに指を当てた。
レンズの奥の双眸はどこか爛々と光っていて、唯にとってはろくでもないことを考えているのが私にも窺えた。
和「生徒会新聞で犯人を大々的に報告して、朝会で晒し者にして、もうやめてくださいって
言うまでハートマン軍曹的スパルタ教育でその曲がった根性を叩きなおしてあげるつもり。
今のところの予定はね」
唯「…………」
律「だってさ。唯」
唯「アワワワワワワワワワワワワワワ」
今や紙のように白くなった顔は生気が抜けて悲惨なことになっていた。
もっとも同情するヤツなんてもちろんいない。自業自得ってヤツだ。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 17:04:27.09 ID:FBLinu+Q0
律「まあそういうわけだから帰ったら楽しみにしてろよ、犯人さん」
唯「え?」
突然唯は正気に戻った。
律「どうした?」
唯「もしかしてこれがオチとかじゃないよね!?」
律「いや、これ以上話を広げるのは無理だろ」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 17:09:03.27 ID:FBLinu+Q0
紬「うん、私も疲れちゃったし、それに色々な絡みも見れて満足できたし今回の旅行は、最高だったわ」
澪「私は犯人役で疲れた……」
和「私なんて一日目からぶっとおしだったから余計に疲れたわ」
梓「私も。なんだかただ単に唯先輩に振り回されただけの休日のように思えてきましたし」
唯「そんな〜ういぃ〜」
憂「お姉ちゃん。悪いことはしちゃダメってことだよ」
唯「うえええええええええええん」
まあ、何はともあれこれで今回のちょっとしたお話もおしま――
唯「もういいや。次回はりっちゃんが犯人役の話をやr」
律「おわれ!!」
♪おしまい♪
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 17:09:59.55 ID:FBLinu+Q0
誰も見てないと思うけどありがとうございました
さようなら
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 17:12:54.21 ID:xccbdhncO
見てた!乙
おつ! 推理は簡単だったけどな!
ただ、澪の髪の毛だけは想定外だった
39 :
以下、名無しにかわりましてvipがお送りします:2010/03/24(水) 17:20:45.13 ID:11GQJ9SlO
髪の毛だけは予想できんかった
乙
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 18:03:53.45 ID:sgpTHCHb0
乙前スレから読んでたけど面白かった
しかしROM専ばっかりだな
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 18:53:55.86 ID:sgpTHCHb0
前スレ落ちて消化不良の人もいるだろう
少しだけ保守
唯「そういえば、どうやって憂は澪ちゃんと和ちゃんを見つけたの?わたしそこらへんまだ聞いてないよ」
律「もう答えは言ったようなもんだけど……まあ、いいや。今説明したとおりだよ。つまり、唯かムギ
の両方、あるいはどちらかがケータイを持っている。だったらケータイさえあればこっちから澪たちに
連絡することは可能だってわけだ」
唯「ああ、なるほどお。ってじゃあ………」
律「そう。唯はもっと警戒しておくべきだった。
最初はさ、ムギだけがケータイを持っているんじゃないかな、と思ったんだ。だって唯がケータイ持ってたら
どこでドジ踏むかもわかんないからな」
唯「りっちゃん本当のことだとしてもひどいよ〜」
律「ワリイワリィ。でもそうだろ?実際、私と憂ちゃんで唯のパジャマのポッケをさがしたらあっさり
ケータイが出てきちゃうからさ」
唯「ううぅ〜」
律「そんで、後は憂ちゃんが唯のふりして電話をかけた。『ちょっと困ったことが起きて相談したい。
できれば直接会って話し合いたい』って。まあ、そんなカンジの内容をな。姉妹の容姿は瓜二つ。
声質まで似ている上に電話越とキタもんだ。さすがに澪にも和にもその電話の主が憂ちゃんだとは気づけなかった」
もちろんコレを考えたのも憂ちゃんだった。私の考えたローラー作戦よりよっぽどスマートな案だった。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:26:48.83 ID:sgpTHCHb0
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:41:31.37 ID:hTs1ExRw0
また立ってた
支援
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:42:42.16 ID:hTs1ExRw0
と、思ったら終わっていたてござる。
乙!!
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 19:45:09.96 ID:P8m1no3gO
唯「ところでりっちゃんて、コナンの園子に似てるよね」
律「はっ…!」
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 20:11:55.93 ID:lD8jompl0
!
残っててよかった