*(‘‘)*ふたりは!ディスガイザーのようですl从・∀・ノ!リ人
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
お内裏様とお雛様
はじまるよー
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:09:23.93 ID:bChrgoY4O
きたな
支援
3 :
◆1Sb5PoZaUXZt :2010/03/07(日) 14:10:55.71 ID:uR7zO8hs0
>>1 代理ありがとうございます
【注意!】
・萌えない
・今日のグロ度:(なし?)
・遅くなりました。今日は番外編アリアリのレスだく投下なので、長丁場になります
くるくる川 ゚ -゚) 様がまとめてくださっています
いつもありがとうございます
ttp://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-374.html -----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
↑で視点が変わります
【適当なあらすじ】
〃'´⌒` ヽ カタカタ
〆i i((リノ))〉/ ̄ ̄ ̄ ̄/ 『5レンジャーや仮面ライダーは
l从*・∀・ノ./ FMV ./__ 敵を倒した後はどうなるのじゃ?』っと、
 ̄\つ\./____/
〃'´⌒` ヽ リアルな話するとたぶん政府側に消される
〆i i((リノ))〉/ ̄ ̄ ̄ ̄/ あれほどのパワー持った個人が野放しとか危なすぎるし
l从 ;゚д゚ノ./ FMV ./__ ましてそれが政府側にたてついてきたら最悪のテロが発生する
 ̄\つ\./____/ 放っておいたら国どころか、正義の味方で地球がヤバイ
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:11:01.79 ID:gLUdKPqyO
wktk
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:12:21.02 ID:uR7zO8hs0
*(‘‘)*ふたりは!ディスガイザーのようですl从・∀・ノ!リ人
番外編
8.5話 「閑」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:12:37.30 ID:bChrgoY4O
しえん
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:13:00.83 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
伊藤ペニサスにとって、日々は大変つまらないものであった。
何故ならば、刺激というものが皆無であるから。
彼女はこれまで本屋でアルバイトとして働いていた。
しかし、本屋とはいえ小さなものであったから
有体に言えば彼女は人件費削減の煽りをくったわけである。
実家暮らしであるから、そこまで食い扶持に困っているわけではない。
だがこのまま自宅を警備しているわけにもいかない。
彼女は働き口を探した。
案外簡単に見つかった。
彼女の母の伝手で、近所の個人経営の塾で事務仕事、というわけだ。
伊藤ペニサスはちょっとげんなりした。
('、`*川「出会いが期待できねぇえええ!」
彼女は乙女であった。
婚活に手を出すにはまだ少し早い。
短大卒、23歳、彼氏無し。
これが少し前の彼女である。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:13:35.42 ID:N1EJYx5F0
*(‘‘)*ふたなり!ディスガイザーのようですl从・∀・ノ!リ人
番外編
8.5話 「悶」
に見えた支援
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:14:55.07 ID:bChrgoY4O
しえーん
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:15:31.15 ID:uR7zO8hs0
新しい職場へ彼女は足を運んだ。
( ^ω^)「伊藤さん、よろしくですお!
塾長の内藤ホライゾンと言いますお」
ξ゚听)ξ「私は妻のツンです。よろしくね」
('、`*川「よろしくお願いしますー」
2人はペニサスの思っていたよりも、かなり若かった。
塾長は小太りだが、優しそうで、愛嬌のある人柄。
その妻のツンは、痩せて小柄だったが、少々つり気味の瞳の、中々の美人だ。
( ^ω^)「塾生からはブーン先生と呼ばれてるんですおー。
呼びやすいほうで構いませんし、小さい職場ですから、気軽にしてくださいお」
ξ゚听)ξ「あなたは砕けすぎよ、もー!」
( ^ω^)「お?」
仲の良い夫婦である。
('、`*川「ご夫婦だけで教えてらっしゃるんですか?」
ξ゚听)ξ「ううん。あと講師が1人と、アルバイトが1人いるの」
塾長の内藤が地歴公民、その妻のツンが国語と英語、アルバイトの学生も英語。
理数系は、勤務の講師がすべてみているらしい。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:15:46.24 ID:WzmORkU7O
支援
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:16:51.52 ID:bChrgoY4O
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:17:54.08 ID:uR7zO8hs0
( ^ω^)「今日はちょっと遅れるって言ってたけど、もうすぐその先生も来るお。
アルバイトの子は今日はないんだおー」
('、`*川「あ、はい。わかりました」
働きやすそうな、いい環境だ。
講師が来たら挨拶しよう、と考え、彼女は与えられたデスクで
渡された書類の数字をセルに打ち込む作業を始めた。
15分ほど後。
入り口のドアがぎぃと軋んだ。
子ども達が来るには、まだ時間が早すぎる。
先ほど言われた講師だろう、とペニサスは考えた。
ノートパソコンを軽く閉じ、椅子から立った。
('、`*川「こんにちは、今日から事務に入った伊藤で、す……」
通勤コートにスーツとマフラーの、いかにもサラリーマンか教育職らしい人物が立っていた。
20代半ばから後半辺りの、大分背の高い男だった。
【+ 】ゞ゚)「ああ、この前塾長が言っていた。こんにちは、始めまして黒川です」
眼帯男であった。
伊藤ペニサスは何も言えなくなった。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:20:03.81 ID:aPAlt+oO0
支援!
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:20:05.86 ID:uR7zO8hs0
彼女の脳裏に、とあるアニメキャラクターが浮かんできた。
震撼と共に、そのキャラクター名が脳内にフラッシュする。
:;(゚、゚*川;:(学園ANGELのカノッサ機関スポンサー巨大コングロマリット結城財閥の私設部隊アンチ・アイズ
副隊長にしてネロ・アーラの使い手黒井翼にそっくりむしろ本人レベルjあwせdrftgyふじこlp;@:!!)
伊藤ペニサスは重度のアニヲタであった。
出会いがないうんぬんも、これが原因の一端である。
一方男性は脅えていた。
【+; 】ゞ゚)(何で何も言ってくれないんだ……
凝視されてるし。あれか。顔か。顔が怖いのか?)
:;(゚、゚*川;:(やべぇえええ!! 黒スーツやべぇ! これはむしろ知っていてやってるんか!?
部隊制服コスさせてぇ! デジタル一眼で4GBいっぱいに撮っても惜しくはねぇ!)
両者にらみ合ったまま、微動だにしない。
無論この男はアニメ自体見ない。
それに、伊藤の脳内で絶賛再放送中の『学園ANGEL』は深夜アニメである。
某コミュニティ内では大絶賛され、先日3期放映が決まったほどだが、彼はそんな事は知らない。
伊藤はそのアニメの大ファンであった。
彼女の部屋の天井には、このアニメの関連ポスターが所狭しと貼られている。
原作とアニメ設定資料集は2冊ずつ所持している。
アニメは全話録画し、DVDに焼いてあった。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:22:36.98 ID:uR7zO8hs0
腐女子ではない。
純粋にアニメとキャラクターを愛しているのである。
女オタクというやつだ。
:;(゚、゚*川;:(嫁が3次元に光臨なされたでぇ!)
ただし末期であることに違いはない。
異変に気づいたのは塾長であった。
(;^ω^)「お、おぉ? どうしたお?
何があったんだお、まさか喧嘩?」
【+; 】ゞ゚)「塾長ー! 自分は何もしていません信じてください!
この顔は生まれつきなんです無愛想で申し訳ないとは思いますが
こちらとしては特にこれといって彼女を傷つけるような事は何もっ……!」
内藤は事務室の様相を努めて客観的に見ていた。
どう見ても、興奮しきりのハブが脅えきったマングースを丸呑みにする場面だった。
マングースがしきりに、自分はハブを攻撃していないと言う。
カオスだった。
ξ゚听)ξ「あら? 黒川さんこんにちは。タイムカード押しておくわね」
【+ 】ゞ゚)「あ、ありがとうございます……すみません」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:24:55.30 ID:uR7zO8hs0
( ^ω^)「ツン……流石だお。愛してるお」
ξ*゚听)ξ「ぁい……っ!? ひ、人前で何言ってんのよ小ピザっ!
恥かしい事言ってる暇があったらトイレでも掃除してきなさいよねっ!」
ピザだ豚だと罵ってはいても、今内藤の前にいるのは間違いなく女神だった。
( ^ω^)ノシ「伊藤さん? 伊藤さーん?
どうしたんだおー?」
('、`*川「え、うぉっ! いや、すみません! 何でもないんです、大丈夫ですバリバリです!!」
ペニサスは段々嫌な笑顔に変形し始めた唇の端を袖口で拭った。
よだれが垂れそうだったとはいえない。
塾長の不信感に溢れた素振りに、あわてて取り繕う。
( ^ω^)「バリバリ……ですかお?」
('、`*川「はい大丈夫です! 今ならエターナルフォースブリザード食らっても生きてると思いますので!」
ξ゚听)ξ「エター、ナル?」
ペニサスは自分が空回っている事に中々気づかなかった。
【+; 】ゞ゚)(何なんだろう、この人……ちょっと怖いな)
若干1名に酷く脅えられている事にも、彼女は気づかなかったのである。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:28:07.02 ID:uR7zO8hs0
これは例えばの話だが、想像してみて欲しい。
あなたは転職を余儀なくされ、新たな職場に勤める事になった。
そこに現れたのは、あなたの大好きなアニメ、もしくはゲーム、マンガ、小説など
その中でもとびきり大好きなキャラクターそっくりな人物だ。
しかもその人物はなかなか常識を持っていて、独身である。
('、`*川(落ち着くんだペニサス……ここでオタ趣味をばらしたら面倒な事になる)
すでに滅茶苦茶に取り乱した後だった。
しかし、ペニサスは何とか落ち着きを取り戻した。
('、`*川(なに……なんてことはない。3次元が2次元に近づくなどありえないことよ。
それも翼たんに似ているなど……見間違いでしょう。
あの、逆光っぽかったから。そのせいそのせい)
('、`*川 チラッ
【+ 】ゞ゚)「?」
:;(∩、∩*川;:(あかん、似てるわ……特に眼帯が)
ここでペニサスは気づいた。
眼帯である。
そう、この眼帯が悪いのだ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:30:17.24 ID:rol8M0XC0
しえええええん!
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:31:00.92 ID:uR7zO8hs0
どうしてそんな厨二アイテムを着けているのかは知らないが、市販のガーゼのそれではない。
薄手の布に、何か硬い裏地が貼ってあるらしい。しっかりとした出来だ。
何故そんな物をつけるのだろう?
彼女の好奇心は一気に加速した。
黒川という男に目をやると、丁度携帯電話が鳴ったようだった。
一言断って、彼は席を立つ。
入れ違いにやってきた塾長に、ペニサスは話しかけた。
('、`*川「あの、」
( ^ω^)「お、どうしたおー?
分かんないことがあったら、どんどん聞いてお!」
やはり塾長は人当たりのよい人物だ。
ペニサスは外堀から徐々に埋めていく事にした。
('、`*川「黒川さんって、下の名前はなんておっしゃるんですか?」
( ^ω^)「ああ。何でも絶対呼ばれたくないらしいんだお。
僕もあんまり呼ばないから忘れちゃって……」
お恥かしい、と後頭部をポリポリ掻く小太りの男に、彼女は本題を切り出した。
('、`*川「じゃあ、眼帯はどうしてしてるんでしょうか?」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:34:01.72 ID:bChrgoY4O
支援!
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:34:14.74 ID:uR7zO8hs0
内藤は少しだけ眉を顰めた。
ミーハーでゴシップ好きの女だと思われたかしら、とペニサスは一瞬慌てた。
しかし、そうではないらしい。
_,
( ^ω^)「……実は、子どもの頃に何かあって、傷跡があるんだってお。
見せられて気持ちのいいものじゃないだろうから、って眼帯で隠してて。
かわいそうだおー、そこまで気が使える良い人なのに」
小声でひそひそ言われたのは、何やら良く分からない理由である。
眼帯からはみ出した頬や額には、何も傷など無かったけれど。
塾長は資料だけ取ると、さっさと教室に戻っていった。
しんとした事務室の外から、男の小声が聞こえる。
電話中なのだろう。
聞いてはいけない、と思いつつも、聞こえてしまうのは仕方が無い。
そう自分に言い聞かせて耳を欹てるペニサスは、かなり暴走中であった。
『たい……戦力に……るとは思えな……
……報も漏れ……な……
と……青……今月……で移動……』
『なら、まず……安泰……
……えず、続き……てから……皆で……談……』
('、`*川(何この会話めっちゃ滾る)
電話を終えて、男性がもそもそ戻ってくる。
ペニサスは慌てて緩んだ顔を引き締めた。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:37:01.30 ID:uR7zO8hs0
そっと彼の横顔を盗み見る。
考えれば考えるほど、原因は眼帯だけじゃないかと思えてくるのである。
もうお分かりだろうが伊藤ペニサスは1つのことに集中すると周りが見えなくなるタイプだ。
しかし、割と仕事はできる。
現在も彼女は頭を別の方向にフル回転させつつ
書類の数字を打ち込み続ける、という働き者ぶりを発揮していた。
とうとう、好奇心が遠慮に打ち勝った。
('、`*川「黒川、さん?」
【+; 】ゞ゚)「はい!?」
('、`*川「あのぅ、どうして眼帯してるんですか?
すみません、失礼だと分かってるんですが……」
彼はビクビクと脅えている。
眼帯、といわれて少々面食らったようだ。
自分の右目のあたりを眼帯越しに触れ、納得したように、ああ、と声を出した。
【+ 】ゞ゚)「これ、ですか。気になりますよね」
('、`*川「ええ、かなり気になります」
【+ 】ゞ゚)「傷があるんです。結構気持ち悪いですよ」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:37:26.90 ID:bChrgoY4O
しえん
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:40:36.85 ID:uR7zO8hs0
('、`*川「そんな事、気にしませんよ!」
ペニサスにとっては古傷より素顔の方が気になるのである。
口に出したらかなり失礼な思考だが、『この男性には』読心術など備わっていない。
【+ 】ゞ゚)「じゃあ、見ます?
見たらきっと納得すると思いますよ」
('、`*川「よろしければ」
後頭部でリボン状に結ばれた紐を解く男を見て、ペニサスは小さくガッツポーズをした。
(∩"_ゞ゚)「悲鳴とか、上げないでくださいね?」
('、`*川「はい!」
何故だか、小さく笑いながら、男はゆっくり手をどけた。
('、`*川「……あ、れ?」
晒された右目は軽く閉じられていたが、その周りは傷跡も引き攣れもなく。
生白い皮膚が元の通りに続いていた。
ゆっくりと開かれた目も、白目は白。虹彩も左目と同じ、茶色がかった黒、と普通だ。
('、`*川「え、傷なんて……」
( ゚"_ゞ゚)「『古い火傷の痕があるでしょう?』」
('、`*川「へ?」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:41:42.99 ID:bChrgoY4O
支援
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:43:47.23 ID:uR7zO8hs0
言葉を聞いた瞬間、ペニサスの脳に薄く靄がかかる。
( ゚"_ゞ゚)「『右目の周りがケロイド状になって、かなり気持ち悪い眺めでしょう。
だから、あまり俺の顔を気にしないで下さい』」
('、`*川「ケロイド……は、ぁ……」
(∩"_ゞ゚)「はい、もう分かりましたね」
彼は、用は済んだとばかりに、てきぱきと眼帯をつけてしまう。
その様子をぼうっと見ていたペニサスの前に、湯気の立つマグカップが置かれた。
【+ 】ゞ゚)「すみませんね。気持ち悪いものをお見せして」
('、`;川「い、いえぇっ! かえってすみません、失礼な真似を」
【+ 】ゞ゚)「いいんですよ。じゃ、授業があるので」
数冊のテキストを持って、彼は出て行った。
あんな酷い火傷、どうして負ったのかしら。眼帯取ったらあんまり似て無かったわ、と。
ペニサスは先ほどの、焼け爛れ固まった彼の顔を思い出し。
淹れてもらったインスタントのコーヒーを啜りこんだ。
動作に無駄がなく、仕事のできる男然とした彼の顔を思い浮かべる。
中々悪くない気分である。
この職場に出会いを期待できるかどうかは、なかなか分からなくなった。
これが、伊藤ペニサスの話である。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:45:19.29 ID:bChrgoY4O
しえん
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:46:03.25 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
流石兄者とその弟にとって、日々は大変忙しいものであった。
何故ならば、彼らは妹のために金を稼がなくてはならないから。
彼らは数年前に両親が相次いで急死してからというもの、自分たちの食い扶持と
妹の将来のためにブンブン働いてきた。
初めはアルバイト。
土方、コンビニ店員、ティッシュ配り、キャバクラの客引き。
警備員に、交通整理に、工場の検品業務ですら経験済みである。
『大学行くのは面倒臭い』『おにゃのこに触りまくれる仕事とか無いの?』
などと言っていた当時からは見違えるほどだ。
今ではアルバイトでなく、自分たちで起こした仕事を、変わらず頑張っている。
ただ、結局彼らは女性にベタベタ触りまくれる仕事に就いたのだ。
( ´_ゝ`)「え……黒井翼似?
それって結構イケメンって事じゃん……なに、もう、むかつく……」
しゃき、と軽い刃物が髪を滑る軽快な音。
銀色の鋏が兄者の手の中で一定のリズムで動く。
その度に黒く湿った女性の髪が細く束になり、ハラハラと落ちていった。
('、`*川「うん、眼帯取ったらあんまり似てなかったかもだけど。
まあフツメン以上だったわぁ」
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:46:09.73 ID:RbQjnlktO
しえ
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:46:39.97 ID:bChrgoY4O
支援
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:49:08.96 ID:uR7zO8hs0
(´<_` )「そんな人が居るモンなんですね」
しゃ、と手首を返すようにして、素早く。
手にしたバッファーというヤスリで女性の爪を磨いていった。
柔らかい消毒綿で爪先の研磨屑を拭い、女性の指をマッサージしながら弟者は首を傾げた。
クロスをかけた女性の左右から、兄弟は交互に相槌を打った。
2人の現在の職業は、移動美容院の変化形のようなものだ。
兄は美容師と着付師、弟はネイルアートとメイクの担当をしている。
この兄弟だけで、必要ならば着物の着付けから。メイク、髪、ネイルまで仕上がるという
言うなれば、美人製造機なのである。
ボックス車に必要な用具を全て詰め込み、首都近隣なら何処へでも出かけて行き
個人宅や、その庭や、公園などに椅子を置けば、それで仕事場にしてしまう。
('、`*川「あたしもびっくりしたんだけどねー。
今はあんまりそう思わないし、むしろ」
(´<_` )「むしろ?」
('、`*川「ちょっと、いや、うー……ん、何でもない」
少々頬を赤らめた女性が目をそらした隙に、兄弟は一瞬視線を交わした。
ニヤリと、お互いの顔があまりよろしくない笑顔を作るのを見、彼らは作戦を決行した。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:51:39.49 ID:bChrgoY4O
支援支援
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:52:07.43 ID:mtENgzDc0
支援!
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:52:32.02 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「伊藤さん、今日ちょっと雰囲気変えてみない?」
(´<_` )「サービスで値段は変えませんから」
('、`*川「へ?」
顔を上げた女性の顔を覗きこむのは、先ほどとは違う笑み。
人当たりの良さそうな笑顔を貼り付けた兄弟である。
( ´_ゝ`)「ちょっと短めにして、すいて軽くしよー。シック系で」
(´<_` )「じゃ、ネイルも合わせて、モノクロでチェック柄にしましょう」
('、`;川「え、え、え、ちょっとちょっと!」
慌てたようにぱちぱち瞬きをする女性の肩をぽんと叩き、2人は言った。
(*´_ゝ`)「だいじょぶですって! 気に入らなかったら料金取りませんしね」
(´<_` )「そうですよ。仕上がって、それが嫌だったら俺たちを2・3発殴ってもかまいません」
(;´_ゝ`)「え、俺痛いの嫌だ……弟者だけで……」
(´<_`;)「アンタってやつは……」
初めてこの兄弟にカットとネイルを頼んだ時と同じ文句を口にされ、女性は少しだけ笑った。
どうしますか、と聞き返す2人に、こう返す。
('、`*川「じゃあ、可愛くしてね」
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:53:16.20 ID:bChrgoY4O
支援しえん
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:54:54.28 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「はいはい。カラーとパーマはしないからお任せあれー」
(´<_` )「ラメとラインストーンは嫌なんですよね?」
('、`*川「まだギリギリスイーツ(笑)にはなりたくないっつーの」
綺麗な鋏がサクサクと髪を削り、指先には微かに冷たい感覚。
目に髪が入らないように閉じているうちに、彼女はうつらうつらと眠ってしまった。
幸いこの女性は、ふらふら頭が動いてしまうような癖はない。
兄弟は集中して『作業』を進める。
鋏を丁寧に使って、髪を削っていくようなカットで輪郭を作り、梳き鋏で量を減らす。
髪の内側だけを、鋏をスライドさせるようにゆっくり動かしてカットした。
よくこの行程を高速でスライドさせ、テクニックを見せびらかすようなカットをする美容師が居るが
あれは相当な技術が無いと髪を傷めるだけだ。と兄者は知っている。
精々その技術があるのは日本じゃ両手の指程度だろう。後は大概どこか傷めている。
急がずに、しかし手際よく。
刃物を器用に操る様は、よく見かける大振りなパフォーマンスよりもかえって目を引く。
今回の仕事場はこの女性の自宅であるから、カットが済んだら自分で風呂に入ってもらうしかない。
30分程度で作業を終えて、兄者は弟の作業を覗き込んだ。
(´<_` )「ん……何?」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:57:02.48 ID:bChrgoY4O
しえん
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:57:40.19 ID:7jDY4tQjO
きてたあああああ
支援!
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 14:57:51.70 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「どんくらい?」
(´<_` )「10分」
言葉は最低限だ。
そのせいで、相手が怒っているのか、などと心配したりすることもない。
兄弟の絆と言えば、この2人は断固反対するだろう。
ただ単に、相手が怒っていても知ったことかと思っているだけなのだ。
遠慮がまったくない。
最後に、綺麗にラインを引かれた爪の1番上に紫外線コーティング用の液体を塗り
それを乾燥させるために特殊ライトの下におく。
弟者が軽く首をまわし、ゴキゴキと関節を鳴らしている間に、兄は女性を起こしにかかった。
( ´_ゝ`)「伊藤さん、終わったよー」
('、`*川「ふぉえ?」
( ´_ゝ`)「終わりました。髪洗ってきてな」
('、`*川「はいはぁい」
細かい髪が落ちないよう、頭をタオルで包んだまま、女性は髪を洗いに行った。
その間に、椅子の周りに敷いてあったビニールシートから髪を掃き集め、ゴミ袋にまとめる。
代わりにドライヤーやスタイリング剤やメイク道具を出し、ネイルの用品を片付ける。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:00:36.76 ID:uR7zO8hs0
手早く戻ってきた女性は薄化粧がとれて、さっぱりした顔を恥かしがる事もなく晒している。
この兄弟の顧客にはよくある事だが、要するに『異性』のカテゴリーに入れてもらえないのである。
('、`*川「ほい、お願いします」
( ´_ゝ`)「ん、把握した」
ドライヤーで手早く髪を乾かし、洗ったことで目立つ切り損じを整えた。
ブラシで全体をブロー。スタイリングは最小限に、軽くスプレーし、流す程度。
( ´_ゝ`)「あと最後に仕上げる」
(´<_` )「はいバトンタッチ」
ドライヤーとブラシを置いた兄に代わり、弟が化粧品のワゴンを出す。
前髪をクリップでまとめて、露になった顔に基礎化粧品から順に乗せていく。
保湿の上から、美容液混合の下地。
パウダーファンデーションを振り、形良く整えられた眉を更に彼女の顔に合わせて調整する。
パステルのライトカラーを瞼全体に。そこからグラデーションになるよう、ほんのりとしたオレンジ色を。
目尻にライトブラウンを刷く。
目の下にはハイライトの白を入れる。
まつ毛はファイバーインのマスカラで、アイラインと同様、けばけばしくならない程度。
少し顔を離し、弟者は出来を確かめた。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:02:54.97 ID:bChrgoY4O
しえんしえん
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:03:27.11 ID:uR7zO8hs0
(´<_` )「伊藤さん、ちょっと目を開けてみてください」
('、`*川「はぁい」
ぱちりと女性が目を開く。
その目が、いつもの垂れ目より少し大きく見えることに、弟者は満足した。
頬に気持ち程度に赤みを入れる。と言っても、殆どハイライトに近い。
リップペンシルとブラシを使い、丁寧に唇に色を注す。
最後にグロスを乗せ、弟は道具を片付けた。
兄が女性の肩からクロスを取り、手櫛で整える。
( ´_ゝ`)「はい、できあがり」(´<_` )
大き目の鏡を持って、2人は女性の前後に立った。
合わせ鏡を覗き込んだ女性が、驚いたような顔で瞬きをする。
('、`*川「……あんたら本当は美容整形でもしてんじゃないの」
(´<_` )「それが本来の伊藤さんのお顔なんですよ」
背に重たく垂れていた黒髪は、肩口までで切りそろえられている。
ふんわり、癖を生かすような内側へのカール。
('、`*川「パーマかけてないんでしょ?」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:04:43.90 ID:bChrgoY4O
しえん
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:06:15.95 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「え? うん」
('、`*川「セットどうやんのよ、コレ」
( ´_ゝ`)「乾かす時内側からブラッシングしながらドライヤーかけてー
出かけるときは軽いスプレーかけて手櫛で。ブローすると綺麗にできるよ」
('、`*川「うっそ……それだけ?」
( ´_ゝ`)「短くしちゃったから、そこは悪いんだけどねー。
ただ寝癖とか、もつれは減ると思われ」
毎朝酷い寝癖と格闘し、アイロンで必死に真っ直ぐ伸ばして、
というスタイリングをしていた女性にとって、これは天恵である。
女性の朝の支度は、時間をかけようと思えば幾らでもかけられるのだ。
短縮はありがたい。
実は、その寝癖・もつれの原因は、アイロンで頻繁に伸ばしていために痛んだ毛先。
兄者が思い切ってバッサリ切ってしまったこと、スタイリングする前に
ヘアバターという特殊な天然植物油脂でトリートメントしたことで、髪質自体が変わっている。
('、`*川「そんなの全然良いわよ! 惰性で伸ばしてただけなんだかjら。
ふわー。なんか、ほんと魔法みたい……」
( ´_ゝ`)「魔法魔法って言わんといて……にわかに現実味帯びてきてんだもん」
(´<_` )「魔法使い化まで、あと6年ぐらいはあるぞ」
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:07:00.78 ID:bChrgoY4O
兄者w
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:08:02.19 ID:7jDY4tQjO
大丈夫、まだ6年『も』あるさ…………!
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:09:40.09 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「6年しかねーよ……弟のくせに、余裕シャクシャク非道帝め……!!」
明らかに落ち込んだ色を見せた兄が、弟の頭をぺしぺしはたく。
弟者は嫌そうに避けた。
(´<_`;)「嫌な漢字変換するなよ。ってか言うなバカ」
( ;_ゝ;)「あー! ばかって言った。いけないんだー。
お兄ちゃんにバカって言ったらいけないんですー。
おにいたんガラスのハートなんですぅー!
非道帝なんて野蛮な生き物とは違いますぅー!」
うわぁ、と盛大に泣く真似をする。
真似じゃないのかもしれないのが、この流石家長男の流石なところだ。
(´<_`;)「あああ、もう。お客様の前で恥かしいぞお前!
お兄ちゃんなら泣くんじゃない!」
( う_ゝ`)「じゃあ今日からお前が兄ね。兄ちゃん金くれ」
(´<_`#)「仕舞いには張っ倒すぞ、このアホ兄め」
仕舞いには、と言い、張っ倒す、と言ったのにも関わらず。
弟は身長と比例した長い足で、兄の腹部をどこりと蹴った。
くぐもった声をあげ、腹を抱えて床にのた打ち回る兄者の頭部を踏みつけながら
弟者は女性に営業スマイルを向けた。
(´<_` )「髪型は大丈夫ですか?
気に入らない点が御座いましたら、どうぞこのアホを踏んでやってください」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:12:41.57 ID:uR7zO8hs0
('、`*川「遠慮しとく。満足だもの」
(´<_` )「メイクとネイルはどうでした?」
促されて、女性が手元に視線を落とす。
('、`*川「はぁ……これ手書き?」
(´<_` )「はい」
精緻な落ち着いた色のタータンチェック。
華美すぎないが視線を集めるデザインだ。
季節柄か、左の薬指にだけ雪の結晶のモチーフが描かれていた。
('、`*川「かわいい……」
(´<_` )「それは良かった」
コロコロ表情を変える兄に比べて、弟者は無表情だ、愛想が悪い、と思われがちだ。
ただ、仕事を褒められた時は素直に笑うのが救いである。
もっとも兄者の方は躁病の気質でもあるのかと思うほどに賑やかであり。
弟者は年齢以上に落ち着いた様子である。
自分たちが母の胎内で色々能力を分け合ってるうちに
お互い半分に分けるべき所を総取ってしまったのだ。
2人は日頃からそう思っていた。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:12:49.52 ID:bChrgoY4O
兄者wwww
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:15:05.57 ID:uR7zO8hs0
完璧に分けたということはない。
兄者も偶には真面目な事を言うし、弟者も大爆笑する事もある。
そういうとき2人はまったく同じ人間のように見えるが、普段は真逆の事ばかりである。
だから彼らの妹に『正反対でそっくり』などと哲学的な事を言われるのだ。
('、`*川「ねぇ、これメイクで何か特別な事やった?」
(´<_` )「いえ。色の配分を変えただけです」
目の縁に入れたラインの所為で、かなり目が大きく見える。
まつ毛も長く、目立つが、けばけばしくない程度にわきまえてある。
弟者は厚化粧を女性に施す事をあまり好まない。
注文なら何でもやるが、何も言われなかった場合は、極力薄く施す。
顔に沢山化粧品を乗せれば、綺麗に見せることは簡単だ。
全て覆い隠して、上から理想的な色をさせば良い。
ただ、それだと皮膚に負担はかかる。
洗顔で落とすのも大変で、少しでも化粧品が皮膚に残れば、肌ストレスの元。
だから敢えて表現の面倒な薄化粧を選んでいるのだ。
('、`*川「いや、私さ、メイクここで教えてもらうまではもうちょっと濃い化粧だったんだけど。
やっぱ影響されてるのかな。最近普段も薄くしてんの」
( ´_ゝ`)「あー、良い事じゃん」
(´<_` )「メイクの時間削って、スキンケアに時間かければ同じ事です」
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:16:24.90 ID:bChrgoY4O
支援
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:18:07.46 ID:uR7zO8hs0
('、`*川「そーよねー。前より肌綺麗になったもん。化粧品合わなかったのかな?」
(´<_` )「基本的に無くて当たり前の物を四六時中ベタベタ塗ってるわけですから。
できれば薄い方肌は楽なんです」
ふむふむ、と頷く女性は、気づいてはいないのかもしれないが
他の美容院などに行っていた頃よりも余程表情が明るくなっている。
基本的に彼女は地元の美容院に行くが、気が向いたときだけ
3ヶ月に1度程の割合でこの兄弟に任せているのだ。
値段は、そこまで変わらないが、ただ出張の交通費もある。
ほんの野口札2枚程度、こちらの方が割高。
しかし、メイクとネイルを施され、セットやメイクについてよくよく教えて帰るので
その授業料としては安いものだと女性は考えている。
それに彼女は美容院があまり好きではない。
近場にあって楽だからそこへ通うが、セット面にいざ座らされると家に逃げ帰りたくなってしまう。
何を話せば良い? 雑誌を読んでもいいの、眠っていいの、無愛想な客と思われていない?
色々気にして肩が凝る美容院より、自宅で施術してくれる方が気分はいい。
この兄弟、否、兄者の方が大変に砕けた男であるためだろうか。
客と美容師というより友人にやってもらっている感覚で、気楽である。
そもそも遠慮せずに『暇だからしりとりしよう』だの、『最近のアニメ云々』だの言ってくるアホは、この兄の方だけだ。
馴れ馴れしすぎると思うと、弟がそれを敏感に察知して兄にブレーキをかけるので、大変快適だ。
('、`*川「これのやり方も教えてくれる?」
(´<_` )「はい。じゃあ伊藤さんの持ってるものの中から使える色を見ていきましょうか」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:19:22.20 ID:bQYZcDDNO
支援
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:20:58.67 ID:uR7zO8hs0
ばらばらとポーチから化粧品を出す女性と自分の弟を、兄者は後ろからにやにやと眺めていた。
ふと、その視線に気づいたのか、弟者が振り返る。兄弟の視線が一瞬合った。
にや、と。また嫌な企み顔を微笑ませて、2人は即座に元通りの顔を形作った。
('、`*川「あー、これ買ったは良いけど使えなかった色なのよねー」
女性はもちろん、気づくことすらなかった。
('、`*川「……んじゃ、はいっ! これ今回の分ね」
(´<_` )「お預かりします」
ぺらりと渡された紙幣を、弟者は丁寧に数えた。
釣銭を入れておくケースから硬貨と新札をつまみ出して、女性の掌に乗せた。
彼らの商売は家に押しかけるものであるから、当然トラブルがあれば疑われる。
窃盗やら暴行やら引き起こす気など微塵も無い事を示す為
できるだけ客に対しては丁寧に振舞うのが弟者の仕事だ。
そして
( ´_ゝ`)「なぁー、今日ピザ食べない?」
(´<_` )「ダメ。高い」
その堅苦しさをぶち壊すのが兄者の仕事。
弟がケースをしまい、荷物をキャリーに入れるのを邪魔しながら、兄者はにへらっと顔を緩ませた。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:23:56.87 ID:uR7zO8hs0
(*´_ゝ`)「ほら配達なしで、取りに行くと結構割り引いてくれんだろ?」
(´<_` )「食パンにケチャップとチーズ乗せて焼いたら同じ」
( ´_ゝ`)「えーロマンがないな。Lサイズのピザとコーラを腹いっぱい食うのが夢なんだよ、俺ー」
こんな事を言っておいて、兄者はいざ食べるとLサイズ1枚では足りないと言い出す。
そして2枚目のピザを注文すると、それを1切れ食べて『飽きた』と言う。
今までも兄に付き合ってテラサイズのハンバーガーやでかいパフェを食ってきた弟者には、お見通しだ。
とんだ『芋粥』である。
喰いたいというから喰わせれば、もういらんと遠慮なしであっさり投げる辺り五位の侍より性質が悪い。
もっとも兄者にとって弟者は自分と同格の弟であるから遠慮などするはずも無い。
女性が2人のやりとりに笑った。
野口札1枚、掌と小銭の間から抜き取り、弟者に返す。
('、`*川「ん、ピザ代ね」
(´<_` )「え」
('、^*川「チップってやつよー。たまにカッコイイ真似くらいさせなさい!」
不器用ながら、慣れないウインクを寄越す女性に、弟者はすまなそうな笑顔を見せた。
諸手を挙げて喜ぶ兄者の膝を後ろから蹴り飛ばしながら礼を言う。
(;´_ゝ`)「いて! お前のつま先何で出来てんだよ、なにこれ本当に痛っ!」
(´<_` )「伊藤さん、ありがとうございます。それじゃ、俺たちはこれで」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:28:18.21 ID:uR7zO8hs0
弟が兄の頭を叩き、一礼させる。
自分も頭を下げてキャリーを掴み、駐車された古いボックスカーの鍵を取り出した。
('、`*川「次は……そーね、1月後くらいに」
1月後、の一言に、不貞腐れていた兄者がまた相好を崩す。
(*´_ゝ`)「はーい、どうもね」
(´<_` )「詳しい日時はご都合のよろしい時にでもお電話を」
('、`*川「ん」
玄関を出て、また一礼。
ぴらぴら手を振る女性は、彼らがここに来る前より確かに美人になっていた。
手早く荷物を車の後部に乗せ、兄者が助手席、弟者が運転席に詰め込まれる。
ダッシュボードから予約スケジュールのノートと地図を取り出しながら、兄者は今度こそ噴出した。
弟者もつられて笑う。
(*´_ゝ`)「ぶふっ……!」
(´<_`*)「くくっ……」
(*´_ゝ`)b「おk、固定客ゲット」d(´<_`*)
清々しいほどにニヤつきながら、2人は成功を喜んだ。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:28:22.32 ID:bChrgoY4O
しえん
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:31:06.27 ID:uR7zO8hs0
(*´_ゝ`)「結構アッサリ行ったな! 1月後だってよ。
ネットで口コミも期待できるかもだ」
(´<_`*)「地元の美容院の接客が悪いって言ってたからな。
今回のサービスは正解だろ?」
ごちんと親指を立てた互いの拳をぶつけた。
それを合図に、兄者はスケジュールのノートを見る。
弟者がキーを捻ってエンジンをかける。
スケジュールと依頼主の元までのナビは兄者の仕事。
カーナビとしては中々優秀だと弟者は考えている。
(´<_` )「次も近場だっけ?」
( ´_ゝ`)「ん、あー……」
兄者が少しだけ声のトーンを落とした。
(´<_` )「どこ」
_,
(∩_ゝ`)「ん、ん?」
弟に地図もスケジュールノートも見せず
兄者は顎で目的地と思われる方角を示し、右目を覆って見せた。
それだけで弟者も行き先を把握する。
(´<_` )「あぁー」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:37:19.90 ID:bChrgoY4O
しえんしえん
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:37:36.01 ID:XXt2AidVO
なんだってこんな時間に……支援!
62 :
ちょっとPC固まってました:2010/03/07(日) 15:47:53.07 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「面倒」
(´<_` )「俺、暇だ」
ゆっくりアクセルを踏み込み、車は発進した。
( ´_ゝ`)「だろうな。……200mほど先、左方向です」
次の仕事は団体客。
5人のヘアカラーと、プラスでカットも施すが、5人の内、女性は1人のみだ。
こういう時弟者は暇を持て余す。メイクもネイルも、男性で頼む者は極めて少数なのだから。
待っているだけが癪だから、便利屋よろしくその依頼人の手伝いをしまくる。
( ´_ゝ`)「また内職でも手伝ってやれば。……この先3つ目の信号で左折です」
(´<_` )「んん。それとネイルチップ作りでもしてる」
( ´_ゝ`)「おk。……しばらく道なりです」
兄者がダッシュボードをゴソゴソと漁る。
白無地のCD-ROMを取り出して、カーステレオに放り込んだ。
アップテンポのポップスが会話の邪魔にならない程度に空間を満たす。
ハンドルを握る弟者の指がぱたぱたと動き、リズムを刻む。
男性ボーカルでカバーされたヒット曲のメロディーに、兄者の機嫌が良さそうな鼻歌が重なった。
( ´_ゝ`)「2つ先の信号、右折です〜♪」
これが、流石兄弟の話である。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:51:13.63 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
レッドという男にとって、日々は大変楽しいものであった。
何故ならば、そこに嫌な非日常はなく、ただ嬉しいばかりの変化が訪れるから。
そして彼には、その日々の中で特に楽しみにしている『声』がある。
それを言う者は時によって変わる。
ただ、その『声』……いや、その言葉を。
( -∀- )
彼はただただ心待ちにしている。
その言葉というのが、これ。
( ゚д゚ )「ご飯でーすよー!」
(〃゚∀゚ )「あひゃうっ」
我、食う。故に我あり。
腹が減っては戦はできぬ。
食べる事。
口の中に物体を放り込み。
咀嚼し、飲み下し。
栄養として吸収する事。
それが、彼にとっての生きがいである。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:51:40.57 ID:bChrgoY4O
支援
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:52:39.69 ID:bQYZcDDNO
PCトラブルは大変だな……支援
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:54:25.86 ID:uR7zO8hs0
なんて食い意地の張った奴だろう、と、人は思うかもしれない。
( ゚∀゚.) ガツガツ
とにかく食べるスピードが早い。
よく噛んでいるが、一口が大きいのだ。
いつもフォークやスプーンで掻きこむようにして食べる。
パンや握り飯のような、手づかみできる物は、両手で、まさに放り込むように喰う。
だから、『がつがつ』『わしわし』と、意地汚く見えてしまう。
o川*゚ー゚)o「レッド、おべんとさんついてるよぉ?」
( ゚∀゚.)「あーあぅぇ?」
この日の昼食はサンドイッチだ。
焼いたバゲットに粒マスタードの混ぜられたバターが薄く塗られ
香ばしい匂いが立っている。
間に挟まっているのは卵とハム。
卵サンドは、ほんの少しのバターとマヨネーズ、乾燥バジル、
刻んだオニオンピクルスに半熟のゆで卵を粗くほぐす。
それを混ぜあわせたペーストに、ぱりっとしたレタス。
ハムサンドの方は、薄切りのロースハムにきゅうり、トマト、スライスした玉ねぎ。
オリーブオイルのドレッシングで和え、台所で水栽培されているクレソンが添えてあった。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 15:57:50.18 ID:uR7zO8hs0
掌に乗るくらいの大きさにカットされたサンドイッチを1つにつき3口で平らげ。
彼は、困ったように軽く笑った。
どこ? と、首を傾げる。
o川*゚ー゚)と「ココね」
同居人達は、彼の暴食とすら言える食欲をとがめる事をしない。
絶対に。
_,
(つ゚∀゚.)「うぁ? あーひゃ?」
o川*゚ー゚)oつ「ココ、だよ」
綺麗に切りそろえられた爪が、彼の頬にくっついたパン屑を拭う。
子供のようにその頬を拭って、彼は手に持っていたサンドイッチの残りを頬張った。
o川*^ー^)oつ.「レッド、もっとゆっくり食べていいのよぅー。
誰も取らないものー。心配しないでね?」
(; ゚∀゚ )「ん、うー」
もぐもぐと噛んでいるので、返事はくぐもった物だった。
何度も頷きながら、彼は意識してゆっくりと咀嚼を繰り返した。
口に物を入れている間は喋らない、と、朝晩食事を作る男に散々言われている。
だから、食いしん坊であっても、彼はお行儀がいい方であった。
カップに入ったインスタントのコンソメでパンを飲み下し、彼は一息つく。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:01:39.53 ID:uR7zO8hs0
( ゚∀゚ )「あー、あひゃう」
o川*゚ー゚)o「もっといる?」
( ゚∀゚ )"「うーう」
彼はそっと首を横に振った。
ズボンのポケットに入れてあった携帯電話を取り出し、手早くキーを打ち込む。
( ゚∀゚ )つ白「ひゃ」
手渡された携帯画面を、彼女は覗き込んだ。
o川*゚ー゚)o「うん?」
( ゚∀゚ )つ白『今はもうお腹いっぱい。ごちそうさま』
o川*゚ー゚)o「うん、わかった。お茶飲む?」
( ゚∀゚ )つ白『できれば紅茶がいいな』
o川*゚ー゚)o「そうだよね、わたしも。ちょっと薬缶かけてくるね」
そう言って、彼女は立ち上がった。
彼は盆の上に食器を積み重ね、その後を追う。
聞いているだけなら、女の方が1人で話しているだけだが、この『家』ではよくある事である。
( ゚∀゚ )〜♪
彼は、喋る事ができないのだから。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:03:12.90 ID:bChrgoY4O
しえん
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:05:09.93 ID:uR7zO8hs0
o川*゚ー゚)o「おまたせっ」
食器を2人で洗い、籠に積み重ねる。
一息ついた彼の前に、程なくして湯気をまとったマグが置かれた。
この家では、皆色違いの物を使うのが習慣になっている。
その色が彼らをつなぐ絆だからだろうか。
それとも、あの1年で組み込まれた癖なのだろうか。
彼の手には大きな赤いカップ。
にこにこ笑う女は、桜色のカップを両手で包み込んでいた。
(〃゚∀゚ )「あぅ」
砂糖のたっぷり入った熱いミルクティーは、美味かった。
きっと、美味かったのだろうと、彼も思った。
女性はそれを飲み終えると、荷物を持って仕事へ。
彼は大人しく内職作業を始めることにした。
大量のバーコード付きシールのはられたシート。
箱詰めされた、これも大量の文房具。
ボールペンや蛍光ペンの側面にラベルを貼るのが、彼のやるべき仕事である。
( ゚∀゚ )「うぅーあ」
何度も確かめて、ゆっくりシールを貼っていく。
きっと彼のやり方は同じ作業をしている人々に比べて、かなり遅々としたものだろう。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:06:24.51 ID:mtENgzDc0
支援
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:06:41.61 ID:bChrgoY4O
支援
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:07:54.71 ID:XXt2AidVO
支援
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:08:36.77 ID:jFc7b9oPO
支援
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:09:45.78 ID:uR7zO8hs0
彼は、指先が不器用だ。
箸も上手く扱うことができない。
いつも食事はスプーンとフォークで済ませる。
同居人たちも、これを了解している。
指先の感覚が薄く、よく震えがくる。
触感も鈍い。
例えば、自動販売機に小銭を放り込むのにも、彼は緊張するし
紙幣の枚数を数えるのも下手糞だ。
元からここまで不器用だったかというと、そうではない。
『生前の』彼は、割と器用な方だった。
( ゚∀゚ )〜♪
原因は、5年前に大量投与された、細胞を造りかえる新薬。
それから前代未聞の大手術。
彼は最初の症例であって、最悪の犠牲者だった。
今生きている者の中では、だが。
徐々に薬も改良され、手術法も見直された。
だから彼の後に続くレンジャー、ライダー達にここまで酷い後遺症はない。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:12:39.22 ID:uR7zO8hs0
彼の後遺症は、指先の麻痺に留まらない。舌も麻痺が強い。
話すこともできない。
舌が縺れて、発音もままならないのだ。
この2つ以外のの障害を知っているのは、彼のすぐ後に製造された現在の同居人のうち、一人だけだ。
1番長く一緒に居たため、そして、その男が読心術を持っていたため、彼だけが知っている。
他の者は知らない。
彼には味覚がない事を。
舌も麻痺しているのだ。
甘いも塩辛いも、彼にはわからない。
匂いはわかる。だが、そこに味はない。
だから、彼は研究所で出されていた『クソ不味い流動食』もガツガツ食べた。
彼が食べ物に執着し、空腹を恐れているのは、もしかしたら味覚がないからなのだろうか。
彼には何もわからない。
わからなくてもいいと、彼は思う。
どうせ分析して理由がわかっても、彼の味覚は戻らない。
他にも、全身の痛覚が極端に鈍かったり、左の耳に軽い耳鳴りがあるが、それもどうせ、治らない。
どうでもいいのだ。
それは皆同じで、彼ほど酷くはないが、その読心術を持っている男は左耳が殆ど聞こえない。
その男の場合、何を言っているかより何を考えているかがすぐに分かるから支障はないらしい。
ふたなり支援
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:16:38.12 ID:7jDY4tQjO
アヒャ……
支援
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:17:23.76 ID:uR7zO8hs0
また、黄色い髪の同居人は、耳と鼻はいいが、目が悪い。
薄い緑色のセロハンを通したような世界が見えているらしい。
要するに視覚異常だ。
それ以外の2人は、ぐっとマシになって、殆どと言っていいほど後遺症はない。
それも、どうでもいい事だった。
いい事だと思いはする。しかし、それを羨んだり、妬んだりはできない。
そういうものだからだ。
何故なら、彼に味覚はないが、それでも。
5人で食べる食事は変わらずに美味い。
赤いマグカップに入った熱いミルクティーは、美味い。
そして、全員で研究所を抜け出してから、初めて食べたあのお祝いのケーキ。
コンビニの廃棄を分けてもらった、ぱさぱさとした安っぽい、味の濃いそれは。
確かに、確かに甘く、とびきり美味しいものだったから。
(〃゚∀゚ )〜♪
彼は、あと2時間後に食べる予定である今日のおやつに思いを馳せた。
ぺたりぺたり、ゆっくりと。
台紙のシールをボールペンに貼る作業を繰り返した。
これが、レッドの話である。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:21:11.79 ID:bChrgoY4O
支援…
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:22:08.31 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
埴屋ギコにとって、日々は大変疲れるものであった。
何故ならば、共に行動している男がどうしようもない奴であるから。
そのどうしようもない奴というのが、これ。
(*・∀・)σ「ギコ君、見なさい! 黒ゴマソフトクリームがあるらしいぞ。
今すぐ僕の分を買ってきたまえ!」
守屋モララーである。
関係上ギコの上司という事になるが、年齢も1つしか変わらず、何より
彼の態度は万事こんな調子なので、ギコとしてはベビーシッター気分である。
現在彼らが居るのは首都からほんの少し離れた郊外の道の駅。
大型バイクに寄りかかったままで、ギコはモララーの指差す先に目をやった。
『黒ゴマソフトクリーム』、『おいしい』と書かれたのぼりが、交互に並んではためいている。
軽い頭痛を覚えながら、ギコはきっぱり言い切った。
_,
(,,゚Д゚)「ダ・メ・だ!」
( ・∀・)「えぇー良いじゃないかいケチ。250円だよ、たったの」
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:25:32.52 ID:uR7zO8hs0
(,,゚Д゚)「絶対ダメだゴルァ。
何でこの道の駅でバイク停めるハメになったか、あんたもう忘れたのか」
埴屋ギコの言い草は、おおよそ上司に対するそれではない。
まるで小さな子供を宥めるような言い方だ。
しかし、モララーの方もそれを注意する事はない。
そもそも、傍から見る者にとっては、彼らが
上司と部下だとは到底思えないだろう。
バイクに寄りかかるギコは、少々小柄ながらも
しっかりと鍛えられた筋肉質な体つきをしていた。
それを強調しないよう、細身のライダースジャケットと
色落ちした黒いジーンズを纏いいかにも男らしい雰囲気を漂わせて。
文句なしの『男前』である。
アメリカンバイクのクセに国産という、妙に無難なヤマハドラッグスターの1100を愛車にしている。
ただ、ギコ自身、その愛車を自分の一部として完全に乗りこなし、仕草はかなりこなれていた。
( ・∀・)「トイレ休憩に決まってるじゃないか。
アルツハイマーかい、ギコ君」
対してモララーの方は、仕立てのいい3つ揃いのスーツに、傷1つ無い革靴。
乗っているのは白の古いベスパである。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:29:41.75 ID:uR7zO8hs0
そのシートに横向きに座りながら足をぶらぶら揺らせている姿は
『気まぐれそうな金持ちの御曹司』といったところか。
焦げ茶がかった髪は全体的に長め。
いつもは斜めに額にかかる前髪を、持ち上げたゴーグルでかきあげている。
走行中、風に弄られ続けていたためにスーツは皺が寄っている。
それを含めたとしても、文句なしの『イケメン』であり、どう見ても優男風の人物だ。
並んだ2人は、上司部下どころか、まったく接点を持っていないさそう。
それが遠慮なしに話し込んでいるのだ。
ギコとモララーは通り過ぎる人々の視線を色々な意味で集めることになった。
(,,゚Д゚)「正しくは『俺が止せって言うのにシェーキをLサイズなんぞで頼んだから』
こんなトコで休憩挟む事になったんだぜ」
モララーは未だにバニラシェーキのにおいを撒き散らしながら笑った。
( ・∀・)「それの何が悪いんだい!」
高々と脚を組み、その上に頬杖をつく。
子供っぽい仕草の癖に不思議と似合っているのは彼の精神年齢が低すぎる所為か。
とにかく言動の全てにおいて、モララーは尊大な態度を見せる。
生粋の殿様根性の持ち主であった。
(,,゚Д゚)「こちとら忙しいんだゴルァ! さっさと奴を見つけないと、また面倒事になるぞ」
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:33:34.25 ID:uR7zO8hs0
_,
( ・∀・)「君って男は……急がば回れ、という言葉を知らないのかい?」
(,#゚Д゚)「そりゃ回り道でも確実な方法を選べと言ってるだけだっ!
黒ゴマソフトクリームを食えなんて言った奴はいねぇぞゴルァア!!」
怒髪天を衝くという言葉を辞書で引いて、そこに挿絵が載っているとしたら。
まず間違いなく現在のギコが相応しかった。
茶色っぽい短髪は本人の怒りを示すようにツンツンと逆立っており
更に、生まれついての三白眼が視線をも凶暴に見せている。
だが彼の上司には、その姿もあまり意味を成さなかった。
(*・∀・)σ「じゃあー、大判焼を買ってきたまえ!
トイレに行きたくならないから、それならいいだろう!」
その指差す先には、小さめの張り紙。
『大判焼、はじめました 1個 80円』
そして、ふんわりと甘い香りのする湯気が漏れている。
_,
(,,゚Д゚)「あああもう、あんたって上司は!」
そう言いながらも、ギコはもたれていたバイクを離れ、大人しく売り場に向かった。
こうなったモララーはもう、どうしようもないのを彼は知っているのだ。
放っておくとゲーム機をねだる子供のように延々とダダをこね始めるモララーである。
これは懸命な判断であった。
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:36:48.93 ID:uR7zO8hs0
とぼとぼと歩くギコの背中に、モララーは容赦ない注文を浴びせた。
(*・∀・)「僕はカスタードとうぐいすでね!
領収書を取って経費で落としなさい!」
こんなものが経費で落ちるわけが無い。
ギコは溜息をつきながら、自分用にも小倉を1つ注文した。
_,
(,;-Д-)「こんなんじゃ、いつまで経っても研究所につかねーんじゃねぇかぁ」
あーあ、と。
ぷかぷか逃げていく幸せが見えるような溜息である。
室内で大判焼を引っくり返す売り場の親父は、何を思ったか。
憐憫の情を持って、小倉餡を1つ余計に袋に放り込んだ。
ギコが気配を感じてふと振り返ると、すぐ後ろで両腕を前に差し出した上司がいる。
自分が『買って来い』と言ったくせに、待ちきれなくなったのだ。
(*・∀・)「う・ぐい・す! かす・たー・ど!」
(,,゚Д゚)「D・V・D! っぽく言うんじゃねーよゴルァ」
詰めてもらったばかりの暖かい紙袋をその両手に乗せられると
モララーはスキップより軽い足取りでバイクの駐車スペースに駆け戻った。
苦労人の部下は、あーあと溜息を吐き、ポケットマネーで支払いを済ませた。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:37:45.13 ID:bChrgoY4O
支援支援
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:39:24.40 ID:iaB37gzyO
ふたなりきてた支援!
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:40:23.83 ID:bQYZcDDNO
しえーん
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:41:08.38 ID:iaB37gzyO
支援
90 :
さる:2010/03/07(日) 16:45:24.40 ID:uR7zO8hs0
受け取った紙袋。
中の平たく潰れた円柱形を取り出し、二つに割った。
卵色のふかふかとした生地の中に、もっと薄い卵色のカスタードクリーム。
(*・〜・)゛「んー、なかなかほいひぃ」
齧ると熱いクリームが舌にとろりと乗っかりる。
甘みの少ない生地が噛む度にクリームのしつこさを薄れさせる。
夢中でモサモサと大判焼を頬張るモララーも、内心これからどうしようかと思案していた。
ギコと2人、ここまでバイクで来たことは何度もある。
しかし、あの山奥の研究所まで攻め入る事が出来た例はない。
門番に見つからず、センサーを潜り抜け、監視カメラにも映ることなく侵入するのは、不可能だ。
あるいは、あの研究所周囲に繁る雑木。
そのの上を飛び移りながら移動できるなら、可能ではあるかもしれない。
( ・∀・)「どうするべきだろうかねー」
(,,゚Д゚)「何がだよ」
ようやく戻ってきたギコは元通りバイクに寄りかかり、湯気の立つ甘味を貪った。
( ・∀・)「研究所さ。どうやって忍び込んだものか」
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:46:08.82 ID:bChrgoY4O
支援支援支援
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:47:39.84 ID:XXt2AidVO
せまるー支援!
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:48:40.89 ID:uR7zO8hs0
(,,゚Д゚)「忍び込むって……人聞き悪ぃな」
でも事実だろう、と言う上司に、ギコは気まずそうな唸り声を返した。
( ・∀・)「……僕はね、ギコ君」
今度はうぐいす餡の大判焼も2つに割り、半分ずつ交互に口に運びながら続けた。
( ・∀・)「そろそろ僕達は武力に訴えてもいいんじゃないかと思うのさ」
そう言い、ニコニコと微笑む。
いつも笑顔を絶やさずにヘラヘラと笑っている上司だ。
しかし、割かし優秀であるこの部下は、モララーの目が本気である事をすぐに見て取った。
(,;-Д-)「はぁ、守屋サン」
( ・∀・)「何かね? 埴屋君」
2人とも、あえて仕事中に使う呼び方でお互いを呼ばわった。
(,;゚Д゚)「つまり?」
"ヽ( ・∀・)ノ゛「埴屋君=門番と警備員ぶっ飛ばす。僕=愛しの彼女に求婚する。
これが成功の方程式さ!」
両手に一口ずつ残った大判焼を振り回しながら。
守屋モララーは一息にこれだけ言うと、食べ残してあった甘味を口いっぱい頬張り、部下の反応を待った。
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:52:43.83 ID:7jDY4tQjO
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:56:02.21 ID:bChrgoY4O
支援支援
96 :
さるさる:2010/03/07(日) 16:56:02.91 ID:uR7zO8hs0
(,;゚Д゚)「……おい、当初の目的」
( ・∀・)「んんー、ふぁかっへるひょ。んぐっ! アレの奪還だろう」
あとから取り付けたコンビニフック。
そこにかけてあったバッグからボトル缶を取り出し、ごくごくと、一気に中身を半分ほど煽った。
練乳の味しかしないほど甘い、と有名なメーカーのコーヒーを勢い良く飲む上司に
さほど甘いものが好きではないギコは呻き声をあげた。
とことん趣味が反りあっている。
_,
(,,゚Д゚)「うう、ならいいが……いや、よくねぇよ。俺と役割替われっ!」
( ・∀・)「ごめんこうむるよ。僕は」
(,,゚Д゚)「うむぅ」
埴屋ギコは、こういうときに何も言えなくなってしまう。
どうあってもこの男は上司である。
腐っても上司だ。
その上頑固、我侭、これでもかと言うほどの王様主義。
(,;゚Д゚)「うぅ」
( ・∀・)「ま、今すぐってワケにもいかないね。今回はまた地道にやるしかない」
まだ今は、と笑う男に、ギコは眉間の皺を深くした。
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:57:17.30 ID:bChrgoY4O
支援!支援!支援!
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 16:59:32.80 ID:uR7zO8hs0
( ・∀・)「そういう訳だから、さっさと行こう。追い返されない事を祈ってね」
無理である。
( ・∀・)「ああ、せめて彼女に一目でも見えたいものだねぇ」
(,,゚Д゚)「はぁ……、まあ、俺も……逢いたい人は居ますがね」
( ・∀・)「だろう」
しょんぼりと肩を落としている。
上司の無言の要求に答え、ギコはなぜか1つ余計に入っていた大判焼を差し出した。
しょんぼりのポーズを崩さないまま、彼はモサモサ大判焼を頬張り、練乳味のコーヒーを飲んだ。
モララーがぐしゃぐしゃに丸め、ぽいと投げ捨てた大判焼の紙袋。
溜息吐いた部下が拾い、捨てに行く。
彼が戻ってきた頃、守屋モララーは固形ブドー糖をがりごりと齧っていた。
どんな歯をしていやがる、なんて味覚だ、なんという食欲、とギコは眉をしかめる。
( ・∀・)「何ジロジロ見ているんだね、君は」
_,
(,,゚Д゚)「いや」
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:01:33.59 ID:uR7zO8hs0
眉間の皺を揉み解しながら、ギコはバイクのエンジンをかけた。
( ・∀・)「ん、行こう」
遅れてかかった軽めのエンジン音が、それに被さり、響く。
(,,゚Д゚)「もう研究所まで何処にも寄らねぇぞ」
( ・∀・)「善処しよう」
少し変わったデザインのヘルメットを被って。
スタンドを蹴り、再びバイクは目指し始めた。
「今度は成功するといいなぁ」
深い林の中の閉ざされた研究所を。
伝わる振動を音として聞きながら、彼は確信した。
必ず上司がコンビニに寄りたいと駄々をこねるだろう事を。
これが、埴屋ギコの話である。
番外編
8.5話 「閑」 おわり
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:02:59.18 ID:bChrgoY4O
支援
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:03:16.54 ID:7jDY4tQjO
乙!
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:03:59.41 ID:uR7zO8hs0
番外編は終わりです
すみませんが、ちょっと休憩
休憩後には9話を続けて投下します
>>94 うわあああありがとうございます!
o川*゚ー゚)oが可愛いなぁ
保存しました
それと、この前総合で絵を下さった方も、ありがとうございました
しっかりと保存させていただきました
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:04:45.15 ID:ZUb/80cYO
終わってた…乙でした!
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:05:34.48 ID:bQYZcDDNO
乙!!
そして再び支援
さっきくるくる川 ゚ー゚)のまとめでラジオのやつ読んだばっかだわ
頑張れ
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:07:50.33 ID:bChrgoY4O
おつん。待ってるよ
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:08:27.58 ID:7jDY4tQjO
wktk
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:15:31.82 ID:uR7zO8hs0
【登場人物紹介】 ()内は年齢です レンジャー達の年齢は(体の年齢/本当の年齢)で書いています
*(‘‘)* 沢近ヘリカル (9)
主人公その1。わりと毒舌。ブルーとは仲が悪い?
l从・∀・ノ!リ人 流石妹者 (9)
主人公その2。わりと泣き虫。けっこうブラコン。
o川*゚ー゚)o ピンク/キュート (25/29)
重力を操れる元レンジャー。クールの妹にあたる。偽名は桜井。
从 ゚∀从 高岡ハインリッヒ (20?/30)
地球環境清浄協会の研究者。レンジャー達を作った1人。メンヘラ。
川 ゚ -゚) クール (28/33)
地球環境清浄協会の医師。レンジャー達を作った1人。ワーカーホリック。
ノパ听) ヒート (27)
クールの助手で、クールとキュートの妹にあたる。強気だが、怖がり。
lw´‐ _‐ノv シュール (24)
協会の衣料・防護服デザイン、生産をする仕立て屋。クールたちの末の妹にあたる。
(-_-) ヒッキー (29/34)
地球環境清浄協会の技術者。レンジャー達を作った1人。ヒキコモリ。
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:16:36.08 ID:bChrgoY4O
お、支援
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:17:08.35 ID:uR7zO8hs0
ちまり、ちまり、こまごまとした手先仕事が好きだ。
趣向を凝らしたり、地味に見えても機能美を充実させるのも楽しい。
自分の家族で、他にこのような気質の者はいない。
きっと、幼い頃亡くなった母の遊び好きと、顔も知らぬ父の職人肌が合わさったのだ。
好きなことだけやる。
金なぞはない。ただ、食うに困らない。
寝床もある。服も自分で作れる。
それで不満はない、なんて言うと思ったか。
lw´‐ _‐ノv「あまい」
あれが居ないのが不満なのだ。
不定期にやってきては日の目を見ずに帰っていく、あの恋人さえ、横に居てくれたらなぁ。
そいつの名さえも知らないけれど、好きで焦がれている事は確かなんだろう。
lw´‐ _‐ノv「あーあ」
奴が言うように、自分はどうしたって快楽主義者で、ないものねだりなのであるよ。
あーあ。
困ったもんだ。
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:18:04.30 ID:bChrgoY4O
支援!
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:18:23.12 ID:uR7zO8hs0
*(‘‘)*ふたりは!ディスガイザーのようですl从・∀・ノ!リ人
第9話 「眠」
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:19:14.99 ID:uR7zO8hs0
クールは、静かな寝息を立てていた。
それを察知していたのか、音も立てずに入り口のドアが開く。
高岡が立っていた。
从 ゚∀从「寝ちゃった?」
(-_-)「うん」
後ろ手にドアを閉めた高岡は、Uネックのだぼだぼとしたセーターに、お決まりの白衣。
どうも、本人は自分の胸部が貧相であるという事に気付いていないらしい。
*(‘‘)*「センタク板!」
从#゚∀从「うるせぇな! お前には言われたくねぇっ!」
そして、片手で危なっかしく持っていた盆を、ヒッキーに差し出した。
从 ゚∀从「ほら、これ貰ってきた。喰えよ」
(-_-)「何?」
从 ゚∀从「お粥。山村さんが作ってくれた」
盆に乗っていたのは、1人用の土鍋と、茶碗。
ヒッキーが、その蓋を開けると、湯気と共に5分粥に炊かれた米の甘い匂いが立つ。
昆布やら梅干やら青菜やらも各種別皿に取り揃えられており、大分量が多そうだ。
(;-_-)「こんなに食べられないよ?」
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:21:00.29 ID:ZUb/80cYO
支援
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:21:19.76 ID:bChrgoY4O
しえん
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:22:53.55 ID:uR7zO8hs0
从 ゚∀从「喰えって。
手伝ってやるからさ」
高岡が手を伸ばし、茶碗に大盛り粥を盛る。
ヒキコモリの手に無理やりレンゲを持たせる。
(-_-)「だめだ……絶食してたから、かえって食欲なくなってる」
从 ゚∀从「また拒食かモヤシ!」
l从・∀・ノ!リ人「ごはん食べないとダメなのじゃー」
(-_-)「でも……」
その様子を遠くから眺めていたシュールが音もなく近寄ってくる。
後ろからヒッキーを羽交い絞めにした。
(;-_-)「わ、何?」
lw´‐ _‐ノv「ハインちゃんよ。その辺にガムテープなど無いかね?」
从 ゚∀从「あった」
高岡の手から満足そうにガムテープを受け取り、ヒッキーの両腕を後ろ手にぐるぐる巻き。
(;-_-)「何してんの!
……固っ! 取ってこれ!」
l从・∀・ノ!リ人「しーなのじゃ。クールさん起きちゃうのじゃー」
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:24:37.64 ID:bChrgoY4O
支援
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:26:10.82 ID:ZUb/80cYO
ハインにあーんしてもらえるとはうらやましえん
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:26:44.73 ID:uR7zO8hs0
lw´‐ _‐ノv「飯を食わんからこんな鶏ガラみたいな体になるんじゃい。
鍋でコトコト煮込まれたくなかったらじっとしておいで。
本当にあねさまを起こしてしまうぞよ」
混乱してじたばたと暴れていたヒッキーが、ぴたりと静かになった。
シュールは何度も頷き、後ろからヒッキーの顔が背けられないよう固定。
ヒキコモリの肩から、洗ったのを適当に乾かしただけの長髪がざらざら零れた。
まとめていないために、もつれ絡まっている。
lw´‐ _‐ノv「よし。口に突っ込んでやれぃ」
从 ゚∀从「合点だ」
*(‘‘)*「ええ……なにこれ……」
高岡が粥を茶碗にとりわけ、1匙すくう。
从 ゚∀从「おし。口開け!」
l从・∀・ノ!リ人「あーんなのじゃ」
(;-_-)「いやだ! 食べたくない!」
歯を食いしばり、無理やり顔を背けるヒキコモリ。
しかし、シュールがしっかりと固定しているため、上手くいっていない。
後ろから焦れたシュールが手を伸ばし、ヒッキーの鼻を摘んだ。
(;-_-)「むぁっ!?」
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:31:07.29 ID:uR7zO8hs0
lw´‐ _‐ノv「よし入れろー」
从 ゚∀从「ふー、ふー。はい、あーん!」
(;-_-)「ひやややややや!!」
ぱかりとマヌケに開けられた口に、女2人がかりで粥を流し込まれる。
lw´‐ _‐ノv「お米にはな、八十八の神様が宿るのじゃ。
お百姓さんに感謝して一粒残らずたいらげよ。
残したら祟られるぞい」
(;-_-)「やだやだ、こんなに無理!
シュール君も食べればいいじゃないか!」
lw´‐ _‐ノv「ふむ。どれどれ」
シュールは両手でヒッキーの顎と鼻を摘んだまま、高岡に向けて口をあんぐりと開けた。
从 ゚∀从「ふー、ふー。あーん」
lw´‐ _‐ノv「あー……んぐ」
歯ごたえのない粥を、よくもそこまで味わえるものだ。
もくもくと噛んで、こくりと飲み込み、シュールは満足そうに言った。
lw´‐ _‐ノv「美味い美味い。とろりとしてて、粒が崩れてない。
昆布出汁で炊いてあるから味が染みていて大変美味であるぞー」
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:31:10.22 ID:ijv76x10O
久々支援
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:32:29.79 ID:bChrgoY4O
しえん
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:32:44.00 ID:ZUb/80cYO
普通に美味そうな粥だな支援
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:33:30.61 ID:7jDY4tQjO
かゆうま支援
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:34:34.45 ID:uR7zO8hs0
大絶賛である。
そこまで言われると、人間食べたくなってくるものだろう。
(-_-)「そんな事言って僕が食欲増進すると思ったら大間違いなんだからね」
从 ゚∀从「お前って結構面倒臭いやつだよなァ」
なんだかんだ言いながら、ヒッキーは土鍋の半分を口に押し込まれた。
残りはシュールが横から口を開いてぺろりと食べてしまった。
(;-_-)「ううう。きもちわるい……」
从 ゚∀从「モヤシめ」
ぐったりしたヒッキーがこたつの天板にもたれる。
高岡が盆を下げに行った。
顔を上げる元気もないのか、突っ伏したヒッキーの頬を、巨大な猫が元気付けるように舐める。
いや、ただ頬についた粥を舐めとっているだけだった。
(-_-)「あー、そうだシュール君。
要らないヘアゴムとか、ないかな?」
lw´‐ _‐ノv「おやや? 前にあげたのは失くしたのかね?」
(-_-)「なんかなくなっちゃってさ」
ブルーが盗み取っていったのを知らないらしい。
私は黙っている事にした。
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:36:15.09 ID:bChrgoY4O
支援
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:36:57.20 ID:bQYZcDDNO
粥食いたい支援
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:37:14.23 ID:uR7zO8hs0
lw´‐ _‐ノv「ふぅむ。まぁいいさ。
どれ、結ってやろうかえ」
(;-_-)「変な風にするから嫌だよ」
lw´‐ _‐ノv「問答無用じゃ」
道具入れから櫛とブラシを取り出し、手早く絡まった長い髪をまとめていく。
何故そんな物が道具入れからすぐに出てくるのか、ちょっと不思議ではあった。
*(-_-)*「絶対、遊んでるでしょ……」
lw´‐ _‐ノv「うむ。それにしても癖がなくて良いのう」
⌒*リ;-_-)リ「そう簡単に肯定されても」
lw´‐ _‐ノv「我は癖毛だし、髪の量が多すぎて困るというに」
|゚ノ -_-)「えー。確かに癖はないんだけどさ。
まとまらないから大変だよー。逆に短くすると物凄い癖ついちゃう」
*(‘‘)*「昼休みのじょしこーせーかよ……」
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:38:18.01 ID:ZUb/80cYO
中華粥食いたい支援
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:39:37.08 ID:tttolHyn0
ふたなりが来ている…だと……
支援するけど良いよね。答えは聞いてないけど。
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:40:19.87 ID:uR7zO8hs0
色々といじくり回された末に、後ろでゆるく1本の三つ編みにされて、ヒキコモリは開放された。
(-_-)「おお……何か軽いー」
ごきごきと首を鳴らす。
(-_-)「10日、殆ど動いてなかったから体痛いや」
とはいえ普段も殆ど動く事はなさそうではある。
なにしろ、彼はヒキコモリだ。
lw´‐ _‐ノv「リボンつけて良い?」
(-_-)「いやだ!」
lw´‐ _‐ノv「ちぇ、せっかく約束通り持ってきてあげたのに」
(;-_-)「持ってこなくていいよって言ったじゃないかぁ」
シュールはふくれ面で、自分の髪をリボンでまとめ始めた。
高岡が帰ってきて、ヒッキーの三つ編みにされた頭を見てひとしきり笑い出した。
クールはそれでも眠っていた。
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:40:55.36 ID:7jDY4tQjO
髪型wwwwwww
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:44:39.84 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
縫い物を始めたのは、ろくに通っていない中学生の時分であった。
初めは、趣味として洋服やら小物を作っていた。
安い生地を大量に買い、それと分からないよう、丁寧に縫製を施す。
それをまとめてフリーマーケットなどに出すと、小遣いと言うには些か多いほどの金が入った。
入った金で、少し良い生地を買い、縫い上げて少し高く売った。そうして細々やっていた。
高校は行かなかった。
その頃、既に長姉のクールが医学の道に進んでおり自分の他の2人もそれを追うように看護学を。
姉たちは、自分が高校へ行かないと言うのに猛反対した。
ただ、幼い頃に亡くなった母に代わり自分の面倒を1番見てくれたクー姉さまは何も言わなかった。
ノパ听)「やっぱり、高校行かないの?」
lw´‐ _‐ノv「うん……」
川 ゚ -゚)「好きにしなさい。シューはやりたい事がもう、分かってるもの、ね?」
o川*゚ー゚)o「クー姉さまがいいなら、わたしも賛成。シューちゃんお洋服作り上手だもの
それでやっていけるわ」
lw´‐ _‐ノv「ありがと、クー姉さま」
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:46:16.51 ID:tttolHyn0
し
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:47:07.94 ID:IYJHTBLZO
いかにも萌え豚向けって感じだね
気持ち悪い
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:48:06.30 ID:uR7zO8hs0
自分は勉強は好かない。
物事を小難しく考えるのは面倒だ。
もっと簡単にすればいい。
本の登場人物の心境なんか、言葉に出来なくたっていいじゃないか。
外国の言葉なんて、辞書を引いたらいい。
数字が読めて、型紙の縮尺の計算さえできれば。
だから、高校へ行く時間を省き、物を作った。
姉たちも忙しく働いていた。
金だけはあった。
使い道がなかったのだから。
姉妹は、それでもずっと河原近くのボロのアパートで暮らしていた
o川*゚ー゚)o「ただいま、シューちゃん」
lw´‐ _‐ノv「ん……ごはん?」
o川*^ー^)o「うん。今日は里芋の煮たの、買って来たよ」
いつも近くのスーパーで、惣菜とサラダと、炊いてあるパックのご飯を買う。
それを全部4等分して食べた。
それだけだった。
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:48:25.44 ID:bChrgoY4O
しえん
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:49:31.55 ID:7jDY4tQjO
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:51:38.95 ID:uR7zO8hs0
自分は押入れの下の段に電気スタンドを3つ持ち込んで。
端切れにまみれて寝起きし、作業をしていた。
それが自分の城であった。
だから、今自分が急に外に放り出されても、生きていく自信はある。
押入れ1段分の隙間と、裁縫の道具さえあれば、自分はこの腕だけでやっていける。
姉たちもそうだった。
優秀な医師と、その補佐だった。
彼女らとは、種族が違うのではないかと、何度も疑ってはみたが
どちらにせよ自分たちは、頑丈で自分に頓着しない性質と言う面ではそっくりであった。
クー姉さまも、キュー姉さまも、ヒー姉さんも、自分も。
lw´‐ _‐ノv「……」
ただ今となっては、放り出されては困るのだ。
ここに居ないと彼は自分の事を訪ねてきてはくれないだろう。
追い出されては困るんだ。
逢いにきてくれなくては、嫌なんだ。
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:54:16.08 ID:ZUb/80cYO
誰のこっちゃ支援
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:56:01.58 ID:uR7zO8hs0
从;゚∀从「あああ!? 他のレンジャー奴らも居たァ!?」
(;-_-)「しー、ハイン、静かに」
クールがむにむにと寝言をこぼし、寝返りを打った。
むがむがと口を塞がれた高岡を驚かせたのは、私たちが聞かせたある情報の所為だ。
从 ゚∀从「おいおい、ってことはあの日はレッドにブルーに……
ピンクだけじゃなく、全員が乗り込んできてたって事か。
……まだチームで動いてたってのかよ」
*(‘‘)*「そですね。帰りは5人いましたよ」
高岡だけでなくヒッキーまでが、うわぁっと溜息をつく。
(-_-)「本当、よく生きてたねぇ」
*(‘‘)*「へ?」
从 ゚∀从「でもさ、」
これで納得したよ、と高岡は続けた。
l从・∀・ノ!リ人「なっとく?」
从 ゚∀从「ああ、ここの警備は門の所に集中してるんだ。
あの状態のブルーを探索で捉えられなかったのも
イエローとブラックが来ていたのなら」
(-_-)「ああ、納得できるなぁ」
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:57:38.59 ID:bChrgoY4O
支援!支援!支援!
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 17:59:52.60 ID:uR7zO8hs0
犬は追い返され、研究所の門付近の警備は記憶を改ざんされる。
l从・∀・ノ!リ人「そいえば、そんな事してたのじゃ」
*(‘‘)*「でもころされそう、とは思わなかったけど……」
甘い! と高岡がぴしゃりと言う。
从 ゚∀从「アイツが、今の所、ブラックが1番厄介だ」
*(‘‘)*「? ブルーとおんなじような事しかできないのに?」
l从・∀・ノ!リ人「そうなのじゃーレッドさんが1番こわいのじゃ」
ヒッキーが軽く首を横に振った。
(-_-)「ううん、彼は武力行使だもん。この前みたいに固定したり、捕まえてしまえば大丈夫。
けど同じようにブラックを捕まえても、『お前は俺の味方』って記憶を変えられたら」
l从;・∀・ノ!リ人「あ……逃がしちゃうのじゃ!」
それだけではない。
もし彼が記憶を書き換えれば、政府の要人を自殺願望者にする事もできる。
すれ違っただけの一般人にテロを起こさせる事も。
从 ゚∀从「アイツにとっては常人には無理な事でも簡単に実現できる。極端に言えば、そうだなぁ……」
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:04:08.96 ID:uR7zO8hs0
从 ゚∀从「ん、アイドルのライブに行くだけでそのアイドルを性奴隷にすることm(;-_-)「教育的指導ー」
_,
l从・∀・ノ!リ人「せーど、れ……?」
妹者ちゃんが首を傾げ、不思議そうに呟いた。
そのままのあなたでいてください。
*(‘‘)*「ええと、お手伝いさん(性的な意味で)みたいなです」
l从;・∀・ノ!リ人「シ、シンデレラみたいに!? こきつかうのじゃ!?」
*(‘‘)*「いや、えー……どちらかと言えば小人の家にいるときの白雪ひめですか」
(;-_-)「なんなの、この子……」
l从#・∀・ノ!リ人「めしつかいなのじゃ! それはひどいのじゃー!」
そうだね、セイドレイは酷いね。
高岡も珍しく真面目そうな顔つきで続きを話した。
从 ゚∀从「まあ、それは冗談としてもさ。影響力のデカさはレンジャーの中では1番。
しかも後期に作られてるから、身体強化もかなり進んでる。再生速度も速い」
(-_-)「それにあの装備は……」
从 ゚∀从「それだ。お前ら、武器のようなものを見たか?」
武器、と思わず聞き返してしまった。
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:08:00.76 ID:7jDY4tQjO
ヘリカルは何で知ってるんだwwwwwwwww
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:08:08.58 ID:uR7zO8hs0
*(‘‘)*「特には……あ、レッドの」
(-_-)「あれだけかなぁ。装備は既にどこかに捨てている可能性も」
从 ゚∀从「ん……足がついてないから、売ってはいないな」
タダでさえ強い所に、加えて武器まであるのか。
一体どういうつもりだ、と思ったが、あの昆虫と戦わせるには必要だったんだろう。
l从・∀・ノ!リ人「武器持ってるのじゃ?」
从 ゚∀从「いや、持っていたらここまで持ってきたはずだ。考えなくていーだろ」
少しだけ安心したような気もするが、どちらにしろ私たちに彼らをどうにかできるなんて。
到底そうは思えない。
私は、聞きたかった事を口に出す事に決めた。
*(‘‘)*「あのさ」
从 ゚∀从「ん」
*(‘‘)*「私たちにも」
死なない薬を、使うの?
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:11:24.87 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
暖かい室内で、紙に鋏を入れて型紙を切り抜く。
ふと過去に馳せていた思いが、少女の一言で急に引き戻された。
死なない薬。
その正体を、自分も何となくは知っている。
いつだか、興奮したように目を輝かせるクー姉さまに聞かされた。
川*゚ -゚)『凄い。あれはもう人智を超えた発明なの。
何せ細胞だけでなく、核内部の染色体も、テロメアまで再生分裂させているんだもの。
それも殆どの細胞に全能性を持たせヒト多能性幹細胞に変えて急再生を……あれはまるで』
再生ではない。
生きながらにして、自らの体の破損部分をクローン再生させているような。
人智を越えた発明なら、それを成した彼女は何なのだろう。
他の姉妹と違って、自分は御伽噺をよく読んだ。
その中によく出てくるではないか。
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:12:58.56 ID:bChrgoY4O
支援支援
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:13:14.80 ID:tttolHyn0
しえ
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:14:47.00 ID:uR7zO8hs0
そう思っていた矢先だった。
彼女の精神が壊れ始めたのは。
地に落とされたのだろうと思った。
なら、彼女に作られた彼らは?
人間の、生物の特徴をなくして、単細胞や原核生物のように、ぶよぶよと再生を続け。
老いる事もなく生きている彼らは。
o川*゚ー゚)o『シューちゃん、ご飯だよ』
キュー姉さまは、何なのだろう。
lw´‐ _‐ノv「……」
そして、自分の思い人は、彼は、何だ。
可哀想だけれど自分にそれは分からない。
物事を難しくしてしまうのは苦手だ。
ただ、彼に焦がれていればいいだけ。
もし彼が化物ならば、自分もまたそうなればいいだけだ。
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:18:16.53 ID:bChrgoY4O
しえん
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:19:01.93 ID:uR7zO8hs0
それまでの音が一切止んだ。
高岡の目が大きく開かれていた。
*(;‘‘)*「ぅ」
静かな静かな部屋、体の内側から、こく、と骨の動く音がした。
从 ゚∀从「……いや、薬は」
見開かれていた目をす、と細め。
ぎゅうとつぶってから高岡は続けた。
从 -∀从「投与、しない。お前らには」
l从・∀・ノ!リ人「え?」
*(;‘‘)*「そ……ッそれじゃムリですよ! 何もできないで、本当にころされ」
从 ゚∀从「正しくは、できない」
目を開けた高岡は、少し静かな声で言った。
ヒッキーが幽かに息をついた。
また発狂するところだったのかもしれなかった。
从 ゚∀从「薬の在庫は、ない。もう作れないんだ。
それにお前らじゃ、投与の反動の副作用に耐えられない。死んじまう」
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:20:08.26 ID:bChrgoY4O
支援
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:22:10.25 ID:uR7zO8hs0
从 ゚∀从「だから、お前たちは生身だよ」
それは、つまり
从 ゚∀从「酷い怪我をしたら、死ぬ」
*(‘‘)*「……」
死ぬ、という言葉が、妙に重たかった。
(-_-)「勿論、防護装備や医療チームの計画はできてるよ。死ぬ事は滅多に」
从 ゚∀从「いや、死ぬよ」
(;-_-)「……ハイン」
ヒッキーの声を、無理やり視線でねじ伏せて。
高岡は私たちをじっと見つめた。
从 ゚∀从「覚悟をしてくれ。死ぬ覚悟」
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:23:15.59 ID:bChrgoY4O
支援しえん
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:25:52.10 ID:uR7zO8hs0
耳障りの悪い会話だった。
どろりとした、コールタールにでも浸かっている様な気分だった。
妹者ちゃんが、そっと私の袖口をつまんだのに、気づかない振りをして。
掌にかいた冷や汗をシャツで拭って。
*(‘‘)*「やれるもんなら、ころしてみやがれ」
l从・∀・ノ!リ人「まきこまれて死ぬカクゴなんて、しないのじゃ」
高岡の顔から、能面じみた無表情が消えた。
眉が少し下がり、ふ、と笑うような声が聞こえた。
从 ゚∀从「じゃ、死なない覚悟をしてくれよ」
2人で頷くと、高岡は今度こそ笑った。
泣き笑いみたいな顔だったが、彼女もなかなか美人なのだと思った。
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:27:17.60 ID:bChrgoY4O
支援
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:29:07.99 ID:bQYZcDDNO
支援支援
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:30:58.81 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
考え事をしている間に、彼らの話も、作業も済んでいた。
ヒキコモリの男に防護布と型紙を渡し、自分の仕事は仕舞いである。
*(‘‘)*「れ? シュールさんが作るんじゃ」
lw´‐ _‐ノv「我は図案の係さ。寸法さえおおせつかれば上の自室で型紙を抜く。
今日は採寸してくれる者が居なかったから、出向いたけれどね」
一目見れば採寸などせずとも、服の型紙を抜ける、そういう目をもっている。
けれど、この生地だけは、縫えないのだ。
何しろ尋常でない硬度としなやかさを持つ、金属のような新素材の代物で。
それを切り抜き、突き抜くには特殊な金属の鋏と針、とんでもない馬力のミシンが要り様だ。
自分ではできないことである。
その鋏とミシンはたった一つしかないのだ。
(-_-)「あ、ハイン、ハサミとミシンを取ってきてくれない?」
从 ゚∀从「ああ、さっき探しておいた。部屋に運び込むから、コタツにでも引きこもってろ」
(-_-)「うん……」
それを、このもさもさと炬燵布団にもぐりこむ男が持っている。
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:33:46.80 ID:Zi+KkjDr0
支援
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:35:32.40 ID:uR7zO8hs0
lw´‐ _‐ノv「ガラ、ガラや」
(-_-)「……それ、僕の事?」
lw´‐ _‐ノv「あたりき」
首だけ出してこちらを見ている彼が、うぐぅと鳴いた。
lw´‐ _‐ノv「頼んだぞ」
(-_-)「あぁ、ハサミとミシン」
lw´‐ _‐ノv「そう、あれと同じのんが欲しい」
(-_-)「あとで手配しておくから、出来上がったら届けるね」
つまるところ、あの鋏とミシンがあれば自分だって作れるのだ。
防護布は有り余るほどに在庫をおいている部屋を知っている。
多分そのミシンがあれば、分厚い革も縫える。財布やら鞄やら、靴も作れる。
(-_-)「ご機嫌だね」
lw*‐ _‐ノv「嬉しくなろうとも」
天職、気狂い、物好きと、何でも好きに呼ぶがいい。
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:39:10.15 ID:uR7zO8hs0
完成した防護服の型紙は、ちっとも服になるようには見えなかった。
ばらばらした変な形の布が床に沢山並べてある。
高岡が隣の部屋から、何か大きな機械を持ってきたのも、不思議で仕方がなかったのだが。
从 ゚∀从「ほら、ミシン」
ぺす、と機械を叩く。
よくよく見れば台の上には、いかにも業務用のミシンが据え付けられていた。
学校の家庭科室に1台だけ見本として置いてある、古ぼけた足踏みミシンに似た形状だ。
(-_-)「わ、ありがと」
コタツから這い出したヒッキーが、その前にやってきた。
高岡からもう1つ、馬鹿でかい鋏を受け取る。
巻き取られていた布を床にばらりと広げ、型紙を上に乗せ、軽い接着剤で留める。
黒く、若干の伸縮性があり、艶消しの絹のような風合いだった。
ヒッキーが鋏を慎重に入れる。
じゃき、じゃき、じゃき、と。
厚みの割には随分と固そうな、重い音を立てて、じれったいほどにゆっくりだ。
じっと見つめていた私に気づいたシュールが、くくと笑い、私に先ほどの工作用の鋏を渡す。
*(‘‘)*「?」
lw´‐ _‐ノv「この布、この端のところ、それで切ってご覧」
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:41:13.45 ID:bChrgoY4O
支援支援!
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:43:24.09 ID:uR7zO8hs0
*(‘‘)*「へ?」
lw´‐ _‐ノv「たしかにあれは見ていてじれったいものな」
さあさ、と急かされるままに、私は布の隅に鋏を入れた。
*(‘‘)*「あ、あれ?」
鋏を閉じると、つるりと布地が逃げる。
しっかり握り締め、固定しても、する、つる、と零れる。
*(;‘‘)*「切れない……?」
l从・∀・ノ!リ人「うそー、妹者も、妹者もー」
妹者ちゃんに鋏を渡し、場所を交換。
ぐにぐにと鋏を動かしていくが、どうやっても切れなかった。
l从;・∀・ノ!リ人「このはさみ、切れないのじゃ?」
lw´‐ _‐ノv「ふふん」
シュールは、彼女から鋏を受け取ると、その鋏で髪を結ったリボンの端を、しゃっきんと切り落とした。
l从;・∀・ノ!リ人「あれ?」
きたあああああ
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:46:48.76 ID:uR7zO8hs0
lw´‐ _‐ノv「この布はちょっと繊維のつくりが変態じみているんだねぇ。
のらくら逃げるし、あの鋏でしか切れないのさ。それも、ゆっくりしないといけない」
*(‘‘)*「ふぅん……」
布を撫でると、さらさらと指にすべり、柔らかだった。
到底そんな特別な代物には見えない。
从 ゚∀从「オラ、遊んでないで、お前らはこっちだよ」
今まで嫌がる巨大猫の腹に顔をうずめて虐めていた高岡が、出入り口までさっさと移動し、言った。
∧ ∧
(,;-_-)「……グレ……」
(-_-)「よしよし、いいこ」
グレ、と呼ばれていた猫は、ぐったりとヒキコモリ男の傍に擦りより、入念な毛づくろいを始めた。
高岡は余程嫌われていると見える。
l从・∀・ノ!リ人「何かやる事あるのじゃ?」
从 ゚∀从「大有りだよ」
(-_-)「それに、ここもうすぐ危ないよ?」
*(‘‘)*「あぶない? 何でです?」
(-_-)「ミシンを使うから」
もしもし
>>1?
待ってたよ!無理のないようにね!
支援
しかも規制とけてたあああああああ
支援
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:48:17.62 ID:uR7zO8hs0
完全に子供扱いをされている。
だがしかし、ここで逆上しては思う壺。
素直にいう事を聞いておくに限るのだ。
*(‘‘)*「そうですか。じゃあがんばってねおじさん!」
(-_-)「うん、ありがとねー」
*(;‘‘)*そ
l从・∀・ノ!リ人「そのこうげきは、きかない人もいるのじゃ」
ちぇっと舌打ち1つして、私は転がっていた靴を履きなおした。
シュールが後ろで道具を片付けていた。
从 ゚∀从「部屋に戻るのか?」
lw´‐ _‐ノv「うんむ。作りかけのものがたくさんあるでな」
从 ゚∀从「んあ、また白衣つくってくれよー。これ以外の、もうずたぼろでさァ」
lw´‐ _‐ノv「ハインちゃんすぐずたぼろにするから、いやん」
そう言わないで、と高岡は食い下がった。
私たちはこの間彼女がその白衣を1枚ダメにした場面を見ているだけに
シュールにちょっぴり同情した。
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:48:38.59 ID:bChrgoY4O
支援!
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:51:22.92 ID:uR7zO8hs0
从 ゚∀从「ん、クール起こさなきゃ……」
(-_-)「いいよ、大丈夫」
もう一度靴を脱ぎ、上がりこもうとしている高岡を、ヒッキーは軽く手を上げて制した。
(-_-)「まだ寝かしときたい。多分僕しかいなければ、うるさくしても起きないだろうし……」
从 ゚∀从「そ? なら置いてく」
当の本人は、柔らかい毛布とこたつ布団に潜りこみ、体を小さく丸めるようにして眠っていた。
.∧ ∧
(,,-_-)「グレグレ……」
小さく鳴いた大きな猫が、私たちの視線からクールを守るよう、その傍に寝そべる。
その毛並みを一撫でし、ヒキコモリはこちらに向き直った。
(-_-)「うん、そうして……それと」
あんまり酷い事にならないでね、と、まるで兄か父であるかのように、高岡の瞳を覗き込み。
高岡がゆっくりと頷き、大丈夫だと返答すると、その髪をかき回すようくしゃくしゃ撫でた。
そのままヒッキーはこたつに潜った。
中からくぐもった声で許可が下りて、やっと私たちはドアを開けることができる。
ハイパーヒキコモリめ。いちいち面倒臭いことだ。
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:52:42.89 ID:bChrgoY4O
しえん
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:54:18.41 ID:uR7zO8hs0
真白い廊下をかつかつ音を響かせ、私たちはばらばらのテンポで歩んだ。
lw´‐ _‐ノv「ふぅ、我はここでな」
从 ゚∀从「ああまた」
いくつ目かもわからない廊下の角で、シュールは足を止める
太ももの道具入れから、小さなリモコンを取り出し、エアコンでも操作するように斜め上に向けた。
ピピピ、かちりと。
電子機器特有の音に上を見上げる。
*(‘‘)*「おーっ」
天井に半畳ほどの穴がぽっかり開き、銀色の踏み板の広めのハシゴがかしゃんかしゃんと下りてくる。
リモコン1つ、電動で現れたからくりについ感嘆した。
lw´‐ _‐ノvノシ「じゃあの、小童たち」
*(‘‘)*ノシ「へいほーい」
l从・∀・ノ!リ人ノシ「なのじゃー」
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:57:17.33 ID:bQYZcDDNO
しえーん
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 18:58:20.35 ID:uR7zO8hs0
軽やかにハシゴを上ったシュールは、打ち掛けた振袖までさっと引き上げる。
それに背を向けた直後、あっと声がした。
lw´‐ _‐ノv「おうい、稚児やい」
声に、つと振り返る。
隣で妹者ちゃんが、ひゅくと息を呑む音が聞こえた。
ハシゴの穴から、シュールが逆さまに顔を覗かせていた。
長い髪が重力に従って下がっている。
l从・∀・ノ!リ人「……うん?」
lw´‐ _‐ノv「こんど、我の部屋に遊びにおいでな?」
*(‘‘)*「う、はい! こんどね」
少しだけ声が上ずった。
シュールはにんまりと笑い、ひらりと手を振って穴に戻っていった。
振り返った瞬間に彼女を見て思い返した。
あの夜、天井に腰掛けていた女性の事を。
彼女とあのひとは姉妹なのだなぁ、と。
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:00:49.19 ID:qdnejiaL0
きてたのか!支援
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:03:58.49 ID:uR7zO8hs0
また聞こえ始めた靴音に我にかえると、白衣の背中が遠ざかっていくところだった。
l从;・∀・ノ!リ人「あ、わ、待ってなのじゃー」
小走りでその背中を追う。
この女は予告も無しに廊下の角を曲がるし、その廊下自体、目印も何もないのだ。
迷ったら面倒なことになりそうだった。
从 ゚∀从「遅れるなよ?」
*(‘‘)*「そっちが早いんですよ! ぺちゃ!」
从#゚∀从「だァから、お前にだけは言われたくないっての!」
ふん、とそっぽを向き、高岡は白衣のポケットから小さめの鍵をつまみ出した。
ランダム間隔で配置されている真白いドアの1つ。
その前に立ち止まると、手の中の鍵を慎重に差し込んだ。
横にあるタッチパネルに何かを打ち込む。
そのドアのプレートには、他と違い何も書かれていない。
銀色のつるりとしたプレートがくっついているだけだった。
从 ゚∀从「ん、入れ」
先に私たちを部屋に入れ、彼女は後ろ手にドアを閉めた。
二箇所の鍵を内側からさらにかける。
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:10:21.75 ID:bChrgoY4O
しえんしえん
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:10:48.28 ID:IYJHTBLZO
萌え豚死ね
あとつまらん
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:12:14.34 ID:uR7zO8hs0
*(‘‘)*「ずいぶん、げんじゅうなんですね」
从 ゚∀从「んあ、まあなぁ」
部屋の中は窓がなく、昼だというのに殆ど真っ暗だ。
ぱちりと照明が点けられた途端、やはり白の、タイル張りの床が眩く光る。
*(;‘‘)*「わ」
部屋自体はヒッキーの研究室と同じくらいの広さだろうか。
部屋の四方を取り囲む作り付けの棚が天井まで伸びている所為か、圧迫感があった。
いや、棚の所為じゃない。
原因は、中央にある大きな椅子状の台だ。
銀と黒のそれは一見歯医者によくある診療台に見える。
しかし、何本もの黒く太いベルトがその左右に垂れ下っているのが余りにも高圧的だ。
死刑に使う電気椅子など、見たこともないようなモノを連想する。
l从;・∀・ノ!リ人「何の部屋なのじゃ……?」
从 ゚∀从「投薬室」
*(‘‘)*「トウ……何?」
从 ゚∀从「薬を打つ部屋だ。使用されたことは4回程しかないけどな……
手術室や病室に防音設備はないし、ここは拘束設備も完備しているから」
*(‘‘)*「……は?」
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:14:42.75 ID:bChrgoY4O
支援!支援!
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:15:00.56 ID:GxHasS+SO
しえん
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:15:40.56 ID:uR7zO8hs0
思わず聞き返す。
薬を打つ?
先ほど、ヒキコモリの部屋で薬を使わないと言ったのはこの女の筈だが。
もしかしてまた頭でもイカレてしまったのか。
きっとそんな思考が顔に出ていたのだろう。
女はふっと笑い、心配するなと言った。
从 ゚∀从「あの、怪我が勝手に治る薬は使わない。お前らが使うのはこっちだ」
棚を開け、高岡はおもちゃの注射器によく似た、針のないシリンジを2つ取り出した。
1つずつ手渡される。
*(;‘‘)*「? これ?」
从 ゚∀从「無針注射器。これがアンプル」
よく見るコーラボトルをミニチュアにしたような、少量の薬液を閉じ込めた薄いガラス。
それが12個収まった小さめのケースを渡される。
上部に細長いくぼみがあり、手にしたままの注射器がそこにすっぽりと収まった。
从 ゚∀从「これは身体強化薬のβ剤。
オリンピックなんかで、よくドーピング云々というだろ? その最たるものがコレ」
研究者モードに切り替わったのか、女は饒舌になる。
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:19:18.44 ID:uR7zO8hs0
从 ゚∀从「お前たちに、今からこれのα剤を投与する。
これだけで日常生活において運動能力が向上することはないから、安心しろ」
l从・∀・ノ!リ人「? でも、それじゃ意味ないのじゃ」
从 ゚∀从「いや、α剤を投与された奴がβ剤……今渡した薬だな。
これを投与すると、一定時間のみ運動能力が飛躍的にアップする」
よくわからない。
あるふぁとべーたが何だと言うのだ。
高岡が小さく笑った。
从 ゚∀从「リモコンでしかスイッチを入れられないテレビを考えろ。
α剤が主電源、コンセント。β剤はリモコンの電池だ。
テレビをつけるにはコンセントだけじゃ無理。リモコンの電池は一定の時間で切れてしまう」
ほんの少しだけつかめてきた。
*(‘‘)*「いっていじかん……?」
从 ゚∀从「お前らなら、そうだな。大体1時間って所か」
l从;・∀・ノ!リ人「うぇ、何か短いのじゃ」
从 ゚∀从「まぁな。効き目が切れたらまた電池を取り替えればいいんだが、連続でも4回、1日に4時間以上はできない」
1日に、たった4時間。
普段なら長く思えるが、例の人物たちを捕まえるには短すぎる気もした。
185 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:20:46.21 ID:bChrgoY4O
しえん
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:21:59.27 ID:iaB37gzyO
支援支援
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:22:04.23 ID:qdnejiaL0
支援
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:22:32.11 ID:uR7zO8hs0
从 ゚∀从「この強化薬は、昔レンジャーとライダーに投与された物を更に改良したものなんだが」
高岡が続ける。
どこか愛しげな目をしてアンプルのケースを眺めていたが、その表情が少しだけ寂しそうになった。
从 ゚∀从「……あれは、適合者を選ぶ薬でな。
適合しない奴は強化薬投与時に死亡してたんだ。恐ろしい話だよ、な」
だから、高岡もクールもヒッキーも、再生はするけど、運動能力は凡人並だ。
ひょっとすると凡人よりも低い。
*(‘‘)*「死にたくないから、自分たちに使わなかったの」
从 ゚∀从「ああ、あたしたちは、まだ死ねないんだ。死んじゃいけない」
l从・∀・ノ!リ人「いけない?」
从 ゚∀从「あたしたち3人が死んだら、世界中が困る。
新しい薬も、新しい研究結果も、新しい発明も、全部発見が遅れる。
3人が死んだら世界中の進歩が緩む」
大した自信家だと思ったが、実際にこの話はありうるのだろうか。
この3人が居なかったら、日本も、世界も、虫が蔓延るだけの腐敗した土地に変わっていたのだろうか。
無いと言い切れない。
この研究施設には、それだけの、強大な力が潜んでいる。
その力が、哀しいほどに彼らを無力にしていた。
C
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:24:32.72 ID:bChrgoY4O
支援
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:25:44.91 ID:uR7zO8hs0
女は泣きそうな顔のまま、少しだけ口角を上げて見せた。
从 ゚∀从「あ、安心していいんだ。これは改良してあるから。
活動時間が限定される変わりに死ぬ事は絶対にない」
*(‘‘)*「じゃあどうして自分たちに使わない?」
微笑んでいるつもりなのだろうに、彼女の顔はこっちが笑ってしまうほどに泣き出しそうな子供の顔。
从 ゚∀从「……改良して出来た欠点が2つ。
これを投与した場合、使用後に激しい筋肉痛が起きる」
l从・∀・ノ!リ人「あと、1つは?」
从 ゚∀从「これを」
高岡は、1度言葉を切り、かさついた唇を舐めた。
从 ゚∀从「これを投与できるのは」
成長期前の、子供だけだ。
手の中のアンプルケースが、ずしりと重くなった気がした。
从 ゚∀从「いいのか」
2人とも、同時にかくりと頷くことができた。
なんにしても、あの人々を助けなければいけないんだと思った。
何故だかはわからなかった。
192 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:26:30.30 ID:iaB37gzyO
支援
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:26:30.94 ID:IYJHTBLZO
萌え豚が喜びそうな話だ。気持ち悪いにもほどがあるぜ
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:27:34.43 ID:7jDY4tQjO
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:29:01.85 ID:uR7zO8hs0
順番に椅子につけと言われ、まず私が座った。
从 ゚∀从「細胞再生させる薬剤と違って、特別痛みは無い筈だから」
拘束具をつけず、ただちょんと座っただけで、私はニットパーカーとシャツを脱ぎ、腕を出した。
別の大き目なアンプルから、注射器で吸い上げられた薬剤は、綺麗なオレンジ色。
从 ゚∀从「これが、お前専用に調節された薬」
いつの間に調整されたのだろうか。
アルコール綿で肘の内側を消毒されながら、ぼうっとそのシリンジの中を眺める。
从 ゚∀从「力を抜け」
*(;^‘)*「う……っつ!」
じわり、ひんやりとした感覚が襲う。
ぎゅうと目を瞑っていると、すっと高岡の手が離れていった。
*(;‘‘)*「え、あれ?」
从 ゚∀从「終わりだ。痛くなかったろ?」
押さえろと言われて、消毒綿の上から注射跡をぎゅっと押さえた。
妹者ちゃんと席を替わりながら、ぽかんと見つめていたのが伝わったのだろうか。
高岡はこちらにぞんざいな口ぶりで言った。
从 ゚∀从「今日、風呂入っても大丈夫だぞ。あんまりこするなよ」
196 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:30:37.65 ID:bChrgoY4O
しえん
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:31:25.96 ID:iaB37gzyO
支援支援
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:32:28.53 ID:uR7zO8hs0
彼女の白衣も相まって、予防注射の時に学校にやってくる医者を思い出した。
老いぼれた校医よりも、数段注射は上手かったけれど。
妹者ちゃんの注射も早業で終わり、私たちはアンプルケースを手にその部屋を出た。
从 ゚∀从「おしまいだ。このケースは預けておくから、今日はお家に帰りな。
使い方は今度防護服が出来上がったときに教えてやるから、1人でやるなよ」
その時はまたここに来るのだろうか。
手の中の小瓶は、そんなに力を秘めているんだろうか。
私たちは、本当に何か変えられるんだろうか。
今更夢でも見ている気持ちになって、帰りの車の中でも、ずっと黙ったままでいた。
自宅の前でアサピーの車から降りてからも。
何かもやもやした不安感の正体を目隠ししたまま探していた。
ふと振り向くと、向かいの家の玄関で、妹者ちゃんがこちらを振り向くところだった。
l从・∀・ノ!リ人
*(‘‘)*
何も言わずに、どちらとも無く。
少しだけ微笑んだ。
軽く手を振り、私は自宅のドアを開いた。
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:34:07.22 ID:bChrgoY4O
支援
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:34:18.25 ID:7jDY4tQjO
支援
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:35:00.80 ID:iaB37gzyO
支援
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:36:09.49 ID:uR7zO8hs0
*(‘‘)*「ただいまー! ママー? お腹すいたーぁ」
(*‘ω‘ *)「おかえりっぽー」
( ><)「おかえりなんです。あっ、昨日クッキー戴いたんです。
手を洗ってくるんですー」
*(‘‘)*「はぁーい」
自室に戻り、ランドセルを置いた。
ちょっと考えて、アンプルのケースはランドセルの中に滑り込ませる。
( ><)「ヘリカルー? 紅茶とココア、どっちがいいんですー?」
*(*‘‘)*「ココアがいー!!」
洗面所に駆け込むときに、台所からシチューの匂いがした。
(*‘ω‘ *)「ご飯前だから、少しだけっぽよ?」
(*><)「はぁいなんです!」
暖かいお湯でハンドソープを泡立てながら、私は思い出したように肘の内側の小さな絆創膏を見た。
きっと、大丈夫。
助けてあげられる。
根拠もないけど、私にはそれでよかった。
窓の外は、もう冬の夕暮れだった。
支援ッ
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:38:04.65 ID:bChrgoY4O
しえん
205 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:39:14.32 ID:uR7zO8hs0
-----------------------×8--キ-リ-ト-リ--------------------------
自室に戻るために分かれてから、ううんと伸びをした。
久しぶりに外部の人間と。
それも、あんな子供と話をした。
lw*‐ _‐ノv「ふふん……」
腿の辺りの道具入れを外し。
突っかけていた靴をたたきで脱ぐ。
自室は無理を言って通した畳の座敷である。
いぐさの香りがふんわりと柔らかだった。
衣紋掛に羽織っていた安物の振袖をかけた。
溜息1つ。敷きっ放しの布団に倒れこむ。
子供を可愛いと思ったことは無かったが、この年になってみれば可愛いものだ。
姉たちも、自分の事はあんな風に見えていたのだろうか?
母は死んでしまい、父は誰かも分からぬ。
妹が自分に出来る事はないだろう。
今度会ったら、あの子供たちともう少し話してみたいなぁと、少しだけ思う。
あの布地で服を作ってたのだから、そんな暇があの子たちに与えられるか、わからないけれど。
くるくるとそんな事を考えながら、布団にくるまる。
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:40:49.96 ID:qdnejiaL0
支援
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:42:03.22 ID:Zi+KkjDr0
支援
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:42:07.20 ID:uR7zO8hs0
lw´‐ _‐ノv「あ」
白衣。白衣をつくらなければいけない。
あの女性はすぐ服をめちゃくちゃのずたぼろにする。
でも必要な消耗物資だもの、仕方ない。
ひょいと体を起こし、道具入れを掴んで隣の部屋へ続くドアを開けた。
自室の隣は物置のような物で、殆どの布地はここにある。
手芸屋や、ちょっとした生地屋よりも多くの布。
巻き取られた布から白衣の生地を選び取る。
3着分と目安をつけ、道具入れの鋏でざっくり切り取った。
自室に戻り、部屋の中央にある大きい作業机に布を広げた。
真上には大きな天窓。
これも電動で開閉できる。
最上階に部屋を取ってもらったのはこれが原因だ。
縫い物は目を酷使する。
少しでもいい、明るい、窓の多い部屋が欲しい。というのが、押入れに籠っていた女の願いだ。
あの女性に合わせてサイズをとった型紙を取り出し、針で留めて鋏を持った瞬間。
階下から、突き上げるような細かい震動が襲った。
_,
lw´‐ _‐ノv「……ぅー」
ヒキコモリの部屋のあたりを軽く睨む。
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:42:54.05 ID:iaB37gzyO
支援支援
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:43:11.36 ID:bChrgoY4O
支援
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:45:06.29 ID:ZUb/80cYO
支援
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:46:08.91 ID:uR7zO8hs0
あのミシンの欠点だ。
いや、ミシンというより、あの布地の。
あまりにも頑丈、あまりにも防護性が強いため。
馬力の強いあのミシンで縫うと大変な事になる。
ドリドリぎゅがががギリギリギリ、と。
まるで板金工場か建築現場もかくやという轟音。
それと暴れるミシンを固定するため、強い振動が起きる。
同じ部屋にいるものは耳詮をつける事を余儀なくされる。
あの状況でも、クー姉さまは眠っているのだろうか。
眠っているのかもしれない。彼女にとっては唯一の安息の地だ。
とにかく、今は作業はできない。
布を畳んで机の上に置いてから、何をするか考えた。
lw´‐ _‐ノv「ん」
風呂に入ることにした。
さっそく机を乗り越え。
部屋の隅の洗面台の下から風呂用の籠を引っ張り出す。
風呂の支度をして、部屋を出た。
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:47:08.17 ID:Ee2DgVCzO
>>193 萌え系でなにがわるいの?
嫉妬すんなよw
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:49:19.71 ID:uR7zO8hs0
まるで銭湯にでも行くようだが、それに近いものだ。
個人利用できる風呂は、この施設内に4箇所。
いや、バスタブだけなら、もう1箇所あるだろうか。
シャワールームはもっと沢山あるが、湯船が併設されているのはそれきり。
内、1つはヒキコモリの男が自室に作りつけたもので
事実上自分には使用できないのだから。
大抵使うのは、自室のすぐ近くにある風呂場だ。
扉の所にかけてある札を『使用中』に変える。
内側から鍵をかけた。
服を脱ぐ。
扉を開けると、中から暖かな湯気が漏れ出した。
風呂は好きだ。
石鹸を泡立て、髪を濯ぎ、湯船にたっぷりと張った暖かい湯に浮かんで。
あっという間に時間は過ぎ去っていく。
気づく頃にはのぼせる一歩手前で、のんびりと石鹸やらを籠に収め
濯いでよく絞った手ぬぐいで髪の水気を切った。
脱衣所に常設されているバスタオルで全身を拭き、髪をよく乾かし。
そんな事をしても、重たく湿ったままの長い髪にドライヤーかけた。
柔らかい、暖かい時間だ。
それでも足りない。幸福が、彼が遠い。
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:52:28.21 ID:uR7zO8hs0
藍色の浴衣、朱色の兵児帯、肩に乾いた手ぬぐいと、まだ少し湿った髪を広げて。
籠を手に廊下に出ると、丁度そこを。
度のきつい眼鏡をかけた男が通りかかった。
(-@∀@)「あ、シュールさん、こんばん……ッ!!」
lw´‐ _‐ノv「おおや、お疲れ様」
(;@∀@)「え、ッ……と……」
かろん、と突っ掛けた下駄を鳴らすと、男はしゅっと後ずさり、廊下の壁に張り付いた。
lw´‐ _‐ノv「?」
(;@∀@)「し、しゅ、しゅールさん……」
lw´‐ _‐ノv「なんじゃ?」
じりじりと壁に張り付いたままで、瓶底眼鏡の男は更に後ずさった。
(;@∀@)「ええと、あの、廊下でそのような服装はよろしく、ないか、と」
自分の格好を見下ろしてみる。
ぼうっとしながら着付けていた所為か、襟元が緩み胸部の生白い肌がかなりの広範囲で露出していた。
lw´‐ _‐ノv「おおっと、失礼」
(;@∀@)「い、いえ、こちらこそすみません……お気をつけ下さい……」
男はそっとスーツの上を脱ぎ、こちらに差し出してくれた。
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:53:05.21 ID:7jDY4tQjO
しっえん
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:54:59.73 ID:iaB37gzyO
支援
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:56:02.26 ID:uR7zO8hs0
lw´‐ _‐ノv「これは、ありがたく」
大人しく上からそれを羽織る、ふりをして見せた。
そそくさと、報告があるからと言って立ち去る後姿を見送ってから
近くにあったドアのノブにそのスーツを引っ掛けた。
lw´‐ _‐ノv「これじゃ、ないんだ。違うんだもの……」
ハシゴを上り、自室に戻ると、何の気力も無く。
また布団にもぐりこむ。
lw;‐ _‐ノv「ぅ、ん、んあー……」
やはり、すこしのぼせたらしい。
暑い暑いと思っている間に、眠ってしまった。
彼にどれだけ、逢ってなかった。
ああ、そんな事分かっている。
今日で丁度20日。
そろそろ禁断症状だ。哀しすぎる。寂しすぎる。
ぽっつりと残されて。
もしかしたら好きになっているのは、求めているのは自分だけなのかもしれない。
ぞっとした。
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:56:58.11 ID:iaB37gzyO
支援支援
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 19:57:41.46 ID:bChrgoY4O
しえん!
221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:00:55.49 ID:uR7zO8hs0
自分は彼に逢いにいけない。
彼の居場所も、名前も、年も、何もかも知らない。
知っているのは、ただ……
まどろんでいる中、頬を涙が伝っていく感覚だけを知覚していた。
そして、その頬を冷たい風が撫でるのを。
lw´ぅ _‐ノv「!」
ぱちぱち、と瞬くと、電気も付けなかった部屋はすっかりと暗くなり、天窓からは月が見え。
それを背にした人影が天窓の縁に腰掛け、じっとこちらを眺めていた。
/▽▽「うん? 起きた」
lw´‐ _‐ノv「あ」
妙、としか言いようのない、逆三角形を並べたようなデザインのヘルメット。
フルフェイスに偏光グラスで完全に顔を隠しているが、それはいつもの事で。
静かにかけられた声は、確かに彼のものだった。
/▽▽「久しぶりだな、仕立て屋」
彼は自分の事を仕立て屋と呼ぶ。
lw´‐ _‐ノv「うん、久しぶり電気屋」
自分は彼の事を電気屋と呼ぶ。
222 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:01:02.16 ID:qdnejiaL0
支援
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:02:12.04 ID:iaB37gzyO
支援
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:02:41.90 ID:uR7zO8hs0
これは、決まりだ。
お互いの事を知らないから。
知っているのは、お互いの顔、声、肉体。
触れる肌の、吐息の、暖かさ。
どろどろと漂い、全身を浸すほどに溢れた感情。
それに、彼が数年前、此処から逃げ出したこと。
彼が昔昆虫を退治するために作られた、所謂最新型。
ライダーと呼ばれる存在。
その、電気を操る者であること。
/▽▽「入っても?」
lw*‐ _‐ノv「ん」
天窓から靴を脱いでしゅるりと滑り込み、彼は人差し指を上に向けて天窓を指した。
ぱしん、と紫電が走り、電動の天窓がゆっくりと閉まる。
/▽▽「寒い」
lw*‐ _‐ノv「布団入る?」
/;▽▽「お前な……」
溜息を吐きながらも、こちらにやってくる彼のために、布団の奥に退ける。
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:02:56.37 ID:IYJHTBLZO
よけいな模写が多すぎないか?だらだらしすぎ
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:04:19.16 ID:iaB37gzyO
支援支援
227 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:05:58.97 ID:bChrgoY4O
支援
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:06:06.49 ID:uR7zO8hs0
ヘルメットを被ったまま、黙って布団の縁に腰を下ろした。
その頭部を包みこむ縁に手をかける。
ゆっくりと、上に持ち上げた。
中に納まっていた長くもない髪が、ぱさりと音を立てて。
その下から現れたのは、数少ない彼の識別情報。
彼の唇が薄く微笑んでいるのに、どうしようもなく嬉しさがこみ上げる。
枕元にごとりと重たいヘルメットを置いて、ぎゅうっとその体に抱きついた。
理由も聞かずに彼の暖かく大きな掌が、ゆっくりと腰に回ってくる。
曇り空だったのだろう。
月に影がかかり、ゆっくりと部屋を真っ暗闇が満たした。
何も見えなかった。
それでも、何もかも、分かった。
「遅いぞ、電気屋さん」
「悪かった。……色々あるんだ」
「っ、ぁ、仕事?」
「ん? まぁ、それもな」
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:09:07.48 ID:uR7zO8hs0
闇に紛れるようにか、いつもどおりの黒っぽい衣服なのだろう。
袖口をつまんで引っ張る。
抵抗せずに、ぱさりと布団に倒れてくれる。
女の力ではびくともしない筈なのに、そんなになってくれるのが、たまらなく愛しい。
そうっと頬の辺りに触れると、うわぁと情けない声があげられた。
「手、冷たい、お前」
「え? 湯冷めしたかもねぇ」
「暖めろよな。仕立て屋の癖に、手は商売道具だろう」
手を包み込み、はぁっと息をかけて暖めてくれる。
それがぞくぞく心地よい。
骨ばった手にそっと頬を寄せた。
「暖めて」
「やってる」
「っ……そうじゃない、ぼけ」
きゅ、と。
未だに冷たい手で頬を摘んでやった。
「いて」
230 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:11:25.89 ID:XXt2AidVO
せまるーしっえーん
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:11:39.14 ID:ZUb/80cYO
エロい支援
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:12:18.28 ID:uR7zO8hs0
小さくもれた不満の声にも、湧き上がるのは喜びだけだ。
「布団の中で女が暖めろと言うに、何をもたもたするんだ。野暮、ぼけ、かまとと野朗っ」
耳元に小声で囁くと、仕方ない奴、とまた溜息を。
その吐息が首筋にかかるのさえ。
嬉しい。気持ちがいい。
「慎みを持て、淫乱」
そう言いながらも、月の光しかない部屋の中、狭い布団の中で唇の端を舐められる。
静かに唇を開きながらも内心はまだどきどきと疑いの気持ちが残る。
これも、この数日に何度か見た、ただのいやらしい夢なのか。
こんなに幸せなのに、目覚めたら消えてしまうんじゃないか。
ひやりとした指で自分の頬を抓ってみた。
痛い。
痛かった。
嗚呼、嗚呼これは夢ではない。
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:13:11.40 ID:iaB37gzyO
支援
234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:13:19.68 ID:bChrgoY4O
うん、えろい
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:13:39.79 ID:7jDY4tQjO
( ・∀・)<エロいな
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:13:40.66 ID:XXt2AidVO
わっふるわっふる
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:15:26.85 ID:uR7zO8hs0
そんな事をしている自分を、彼はきっと呆れ顔で見ているのだろう。
嬉しいものは仕方がない。
溜息ばかりつくしょうもない喉笛をがぶりと甘噛みして、耳元で囁いた。
「大ぼけなす。お前にだけなの。言わせるんじゃ、ない」
「訂正するよ、ド淫乱」
肋骨がゆるく軋むほどに、抱きしめられる。
その幽かな苦しさも。
いつのまにか互いの足首に絡んだ、解けた兵児帯。
その、もどかしい束縛も。
月はまだ高く。
冬の夜はまだ、長い。
第9話 「眠」 おわり
238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:16:12.32 ID:qdnejiaL0
しえん
239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:16:16.10 ID:bChrgoY4O
おつ!
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:16:45.75 ID:uR7zO8hs0
おまけ ごにんは! レンジャーのようです
【ちゅうい】
・てきとう だ!
・おまけも ぐろく ないぞ!
・よまなくても ぜんぜん ししょうは ない!
【さんぎょうでわかるレンジャー】
かいぞうされたりも したけれど
かれらは げんきです
みんなで、いっしょに くらしています
【とうじょうじんぶつ】
( ゚∀゚ ) レッド
レンジャー1ごう。さいきん つめを きろうと おもっているが いつも わすれる!
( <●><●>) ブルー
レンジャー2ごう。さいきん えぷろんが くたびれてきたので あたらしいのが ほしい!
( ゚д゚ ) イエロー
レンジャー3ごう。さいきん まえがみが じゃまなので ぴんで とめている!
o川*゚ー゚)o ピンク
レンジャー4ごう。さいきん でんきもうふの ありがたみに きづいた!
【+ 】ゞ゚) ブラック
レンジャー5ごう。さいきん しょくばの じむいんさんが なんかこわい!
241 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:16:48.71 ID:7jDY4tQjO
乙!!
242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:18:12.11 ID:uR7zO8hs0
( <●><●>)「今日、髪切る日ですから、全員時間には帰ってくるように」
( ゚∀゚ )「あひゃぅ」
( <●><●>)「他の人も、いいですねー?」
\ ハ ー イ /
( ゚д゚ )o川*゚ー゚)o【+ 】ゞ゚)
【ひるすぎ】
ピンポーン
( <●><●>)「はい」
『移動美容院でーす』
( <●><●>)「どうぞ」
( ´_ゝ`)「お邪魔します」(´<_` )
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:19:15.31 ID:bChrgoY4O
支援!
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:20:08.09 ID:7jDY4tQjO
支援支援
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:20:51.43 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)ノシ「おひさしー」
(´<_` )「いつもありがとうございます。こちらの馬鹿はお気になさらず」
( <●><●>)「……なんというか、弟さんも大変ですね。
まあ気楽にしてください、色々とわかってますので」
(´<_` )「ああ、うん正直しんどい」
( ´_ゝ`)「このやろう」
( ゚∀゚ )ノシ「あひゃひゃー」
( ´_ゝ`)ノシ「おーひさしぶりー髪伸びすぎだお前」
( ゚∀゚ )「うぁ?」
( ´_ゝ`)「もうプリンってレベルじゃねーぞ。色的にもだけど……」
(´<_` )「ああ、本当にな。カラー何番?」
( ´_ゝ`)「これ40gと、あ、その横」
(´<_` )「これ?」
( ´_ゝ`)「10g。あとマルチオキシ3パー」
(´<_` )「把握」
びようしさんの とくしゅのうりょく。カラーのちょうごうが いっしゅんで できること。
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:21:12.70 ID:ZUb/80cYO
やっぱり次の客はレンジャーだったか支援
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:22:15.53 ID:uR7zO8hs0
Λ_Λ
( ´_ゝ`) 〜♪
( つ Λ_Λ
) 「( ゚∀゚ ) 〜♪
|/~~~~~~~ヽ
/ |つ□ ヽ
( ´_ゝ`)「いやー量が多くてやり甲斐があるぜぇオキャクサーン」
(〃 ゚∀゚ )「ぅひゃー」
( <●><●>)「別に褒められてるわけじゃないと思いますよ?」
( ゚∀゚ )そ
( ゚д゚ )「たっだいまでーす」
(´<_` )「お帰りなさい」
( ´_ゝ`)「こっちも伸びてるな」
(´<_` )(暇だ……)
( <●><●>)(ああ、暇そうだな)
( <_ ;)(ネイルチップ作ろうと思ったらデザインブック忘れてきた。死にたい)
(;<●><●>)「いや、あの……お茶でも?」
(´<_` )「どうも。……ん、これ……?」
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:22:41.73 ID:7jDY4tQjO
成る程、兄者が片目を隠したのはオサムを指していたのか
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:24:12.73 ID:uR7zO8hs0
( <●><●>)「ああ、それは赤木さんの内職です。出しっぱなしですみませんね」
(´<_` )「このシールを、ここに貼る? やってもいい?」
(〃 ゚∀゚ )「うあひゃー」
(´<_`*) セッセッ ペタペタ
(;<●><●>)(プロの速度……器用貧乏ですね……)
( ´_ゝ`)「はいカラー放置、25分タイマーで、次! 黄色頭おいでー」
( ゚д゚ )「はーい」
( ´_ゝ`)「どうする? 今回ベリーショートにでもする?」
_,
(;゚д゚ )「えっ……い、いちごのケーキ?」
( ´_ゝ`)「なにそれおいしそう」
( ゚д゚ )「よくわかんないからお任せしまーす」
(*´_ゝ`)「せっかくだからいちごのケーキにしようかー」
(*゚д゚*)「わーい」
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:26:10.77 ID:bChrgoY4O
しえん
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:27:15.43 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`) シャキシャキシャキシャキシャキシャキ
(;-д- )(あっ……ど、どうしよう、ほっぺたがかゆいですーよ!) ソワソワ
( ´_ゝ`)(手裾から出していいのに……)
ピピピピピピピピピピッ
( ´_ゝ`)つと「おっしゃ。手袋して洗い流してらっしゃいー」
( ゚∀゚ )つと「あう」
(;<●><●>)「手伝います手伝います。いつも洗面所泡まみれにするんだから、やめてくださいよ」
( ´_ゝ`)「こっちはあと10分くらいだから、待っててなー」
( -д- )「はーい」
o川*゚ー゚)o「ただいまぁー」
(´<_` )「お邪魔してm(*´_ゝ`)「お帰りなさいませー!」
(*´_ゝ`)「いやー今日も可愛いねー! ロリボイスも健在でおにいたん嬉しいよー」
o川*゚ー゚)o「? えっと、荷物置いてくるね?」
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:29:03.73 ID:bQYZcDDNO
兄者w
支援
253 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:29:04.38 ID:bChrgoY4O
支援!
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:29:45.66 ID:uR7zO8hs0
(*´_ゝ`)「いやぁ、あーいうロリ巨乳系の妹も欲しかったよなぁ」
(´<_` )「姉巨乳はいるじゃないか」
( ´_ゝ`)「アレは姉じゃなくてゴリラだろ」
(;-д- )そ(ゴリラ!?)
( <●><●>)「洗髪終わりました。
桜井さん帰ってきたので、次彼女をお願いします。まあ揃えるだけですが」
(;´_ゝ`)「えーっ! カラーは!? カットは!?」
( <●><●>)「殆ど伸びてないらしくて、本当にちょっと揃えるだけでいいそうです」
( ´_ゝ`)「……やだ、もう帰りたい」
( -д- )「黒川さんと青山さんは染めて切るから、元気出してくださいー」
( ;_ゝ;)「元気でない……あ、髪洗ってきていいよー」
( ゚д゚ )「じゃあもうお風呂入っちゃいます」
( <●><●>)「そうしてください」
( ´_ゝ`)「……おし、切るぞー」
( ゚∀゚ )「あうあー」
255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:31:41.63 ID:ZUb/80cYO
ようです
256 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:33:01.72 ID:uR7zO8hs0
(;´_ゝ`)「やっぱ髪の量多ッ!! 時間かかるなぁこれ絶対」
o川*゚ー゚)o「ぷー。ただいまぁ」
( <●><●>)「おかえりなさい」
(´<_` )「あ、桜井さん、ネイルやりませんか? サービスで。今回髪殆ど切らないんでしょう」
o川*゚д゚)o「えーっ! ほ、ホント?」
(;´_ゝ`)「あ、ずるい! ずるいぞ愚弟!」
(´<_` )「いや、暇なんだよ……さっきの内職の奴終わっちゃったし」
(;<●><●>)「えっ! あれ今月のノルマ……ただ働きさせてしまいましたね……」
(´<_`;)「あ、いや、暇つぶしにやってただけなんで」
( <●><●>)「そうはいきませんよ。夕食くらい食べて行きませんか?」
(*´_ゝ`)「ピザ食べたいピザ」
( ´と(´<_`;)「シャラップ」
( <●><●>)「ピザ? いいですよ」
257 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:35:42.02 ID:bChrgoY4O
しえん
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:36:26.97 ID:uR7zO8hs0
(´<_`;)「でも本当そんなつもりでやったんじゃ……」
o川*゚ー゚)o「いいじゃないー。わたしもピザ食べたくなってきたかも」
(*´_ゝ`)「だよねー」
( <●><●>)「じゃあ今晩それで。食べていって下さいね」
(´<_` )「すみません。だったらやっぱりネイルサービスしますよ。どんなのにしましょう。何色がいいですか」
o川*゚ー゚)o「わ、いいの? んと、洗い物できるくらいで、薄い桜色がいいかな」
(´<_` )「はい。では道具を準備しますね」
( ゚д゚ )「お風呂ごちそーさまです。さっぱしです」
o川*゚ー゚)o「楽しみ楽しみ」
( <●><●>)「よかったですね」
o川*゚ー゚)o「うんっ! 黒川さん帰ってきたら見せるの!」
( ´_ゝ`)「もげちまえ、そんな野朗」
( ゚д゚ )「もげ?」
259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:38:34.81 ID:7jDY4tQjO
兄者www
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:40:32.42 ID:uR7zO8hs0
【30分後】
(;´_ゝ`)「おっしゃあー! やっとおわり! 風呂ってこいや!」
( ゚∀゚ )つ『ありがとう、さっぱりした』
(*´_ゝ`)ノシ「お、おー」
(´<_` )「冥利に尽きるか?」
( ´_ゝ`)「胸が熱くなるな!」
(´<_` )「よかったな。……はい、できました」
o川*゚ー゚)o「わ、桜模様だー! 可愛いですっ! すごーい、見て見て」
( <●><●>)「へぇ、綺麗ですねぇ」
(´<_,` )「やってやろうか?」
(;<●><●>)「嫌です」
( ゚∀゚ )「あひゃ?」
o川*゚ー゚)o「お風呂早いなぁ、もう」
(´<_` )「んあ? 爪伸びてるじゃないか。切ってやる」
( ゚∀゚ )つ「あ!」
261 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:41:05.84 ID:bChrgoY4O
しえん!
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:42:18.12 ID:qdnejiaL0
兄者wwwww
263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:43:55.00 ID:uR7zO8hs0
o川*゚ー゚)o「次髪の毛揃えてください!」
(*´_ゝ`)「おk」
(*´_ゝ`) ショキショキ ショキ
( ´_ゝ`)「……うん、終わり……です……」
o川*゚ー゚)o「ありがと! お風呂入ってくるねー」
(*´_ゝ`)
( <●><●>)「余計な妄想しなくていいです。次お願いします」
( ´_ゝ`)「余韻に浸らせろよ、このギョロ目……」
( <●><●>)「シャンプーは兼用ですから、私もそこの2人も彼女と同じ匂いですよ」
( ´_ゝ`)「盛大に萎えた」
( <●><●>)「朗報です」
( ´_ゝ`)「えーと、カラー剤作って……おし、根元だけだからこれで。15分だな、早いから」
(´<_` )「じゅう、ご、っと」
( <●><●>)「あ、そろそろ」
( ´_ゝ`)「うん?」
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:46:20.28 ID:uR7zO8hs0
【+ 】ゞ゚)「ただいま」
( <●><●>)「お帰りなさい」
(;´_ゝ`)「うげー。ラス1来たぁー」
【+ 】ゞ゚)「?」
(´<_` )「仕事中」
( ´_ゝ`)「いらっさいマセー」
【+; 】ゞ゚)「ええと……まぁ、着替えてくる」
o川*゚ー゚)o「あーおかえりなさい! 見て見てー、これ爪やってもらったの」
【+ 】ゞ゚)「どれ?」
o川*゚д゚)o「……!」
【+ 】ゞ゚)「可愛いな。似合ってるんじゃないか」
o川*´д`)o「……!!」
【+ 】ゞ゚)(桜色で桜模様だし、名前的に……)
o川*´ー`)o「うふふ……お台所の様子みてきまぁーす」
( <●><●>)(脳内までピンク色に)
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:48:38.70 ID:bChrgoY4O
支援!
266 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:48:44.14 ID:ZUb/80cYO
爪切ってあげるとか可愛いなぁ
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:50:23.02 ID:bQYZcDDNO
なにこれ和むww
支援
268 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:50:27.10 ID:uR7zO8hs0
(#´,_ゝ`)「よーしじゃあそこのデカイの、座ろうか?」
(´<_`;)「兄者、頬っぺたの内側噛み締めるの辞めろ。
また後で口内炎がって大騒ぎするんだから」
【+ 】ゞ゚)「眼帯外すから、ちょっと待っててくれ」
( -"_ゞ-)つ【+ 】
( ´,_ゝ`)「うん、じゃあ染めましょうねー! 目を開けないでなー!」
(*´,_ゝ`)つ【メソズ ビゲソ 白髪染め】
(´<_` )(嫌がらせが細かすぎて伝わらないタイプ……)
( <●><●>)「私もそう思います。時間なので髪洗い流してきますね」
(´<_` )「? ああ」
( ゚д゚ )「僕たちピザ取りに行ってきますーね! 配達だと高いから!」
( ゚∀゚ )「あぅ!」
o川*゚ー゚)oノシ「いってらっしゃーい!」
( <●><●>)「戻りました」
( ´_ゝ`)「切りまくってやんよ。そっちのスケコマシはあと7分後に洗髪!」
(;-"_ゞ-)(誰の事だろう……)
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:52:54.14 ID:iaB37gzyO
兄者www
270 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:54:16.49 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「ざくざく〜♪」
( <●><●>)「伸びた分だけ切ってくれればいいんで。短くしすぎないで下さいねくれぐれも」
( ´_ゝ`)「ちぇ」
o川*゚ー゚)o「童顔気にしt( <●><●>)「シャラップ」
( -"_ゞ-)「? 俺、もう洗ってきていいのか?」
o川*^ー^)oつ「洗面所、こっちだよ。大丈夫?」
(つ-"_ゞ-)つ゛「あ、すまん。ちょっと方向が……」
o川*^¥^)o「じゃ、じゃぁ、連れてったげるねー? えへっ! えへへへ……」
(;<●><●>)(それにしても凄い顔ですね……)
( ´_ゝ`)「ほい、こっちもカット終わりっと。あとは眼帯だけー」
( <●><●>)「どうも。じゃあ風呂に入ってきますね」
( -"_ゞ-)「洗った」
o川*゚¥゚)o(洗い髪萌へ……)
(;<●><●>)
271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:56:00.95 ID:7jDY4tQjO
偽モナー化してるwwwwwwwww
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:57:11.69 ID:uR7zO8hs0
( ´_ゝ`)「さて……角刈り?」
( -"_ゞ-)「この前と同じで」
( ´_ゝ`)「坊主?」
( -"_ゞ-)「同じで」
( ´_ゝ`)「パンチパーマ?」
( -"_ゞ゚)「……ええ加減にィ、しんさいや?」
( ∩_ゝ∩)「サーセン」
(´<_` )「ばかたれ」
( ´_ゝ`) シャキシャキシャキシャキシャキ
( <●><●>)「風呂お先戴きました」
o川*゚ー゚)o「みんな髪の毛さっぱりしてきたねぇー」
( ´_ゝ`)「おらっしゃぁ! 出来です!」
( -"_ゞ-)「ありがとう。風呂……」
o川*^¥^)o「連れてったげるー!」
273 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 20:59:12.36 ID:bChrgoY4O
キュートwww
274 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:00:31.02 ID:uR7zO8hs0
( -"_ゞ-)「あ、ありがとう。悪い」
_,,_
( ´益`)
(´<_`;)「兄者……顔が流石な事になってるぞ……」
( ゚д゚ )「たっだいまですー」
( ゚∀゚ )「アヒャひゃうぅー」
( <●><●>)「黒川さんが出たら、ご飯にしましょう。スープとサラダくらいは作ります」
( ゚∀゚ )「うあ、アヒャン」
( <●><●>)「はいはい、おにぎりもですね」
( ゚д゚ )「スープはコンソメでいいですーか? 野菜何があったかなぁー」
(´<_` )「何かやることがあれば」
( <●><●>)「先に片付けてしまってください。追加椅子を持ってきます。どっちかお誕生日席ですよ」
(*´_ゝ`)「憧れのお誕生日席wwwww」
275 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:01:30.83 ID:bQYZcDDNO
ちょwwww兄者の顔wwwwww
276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:03:09.94 ID:bChrgoY4O
兄者wwww
277 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:04:00.64 ID:uR7zO8hs0
【数時間後】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
―――――――――――――‐┬┘
|
____.____ | < アヒャヒャー
| | | |
| | | | <ワイワイ
| | | |
| | | | <ピザー!
 ̄ ̄ ̄ ̄' ̄ ̄ ̄ ̄ |
|
おきゃくさんが くる ときも ある!
ごはんは みんなで たべるのが おいしいね!
おわり
278 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:05:05.49 ID:uR7zO8hs0
支援など、レスありがとうございました
前回の投下からかなりの間が開いてしまい、すみませんでした
本当に、すみませんでした
長時間の投下にお付き合い下さり、心から感謝です
もし何か質問などありましたら、受けさせていただきます
279 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:05:51.98 ID:7jDY4tQjO
乙!
280 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:06:11.30 ID:bChrgoY4O
おつ!面白かったよ!
281 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:06:48.38 ID:qdnejiaL0
乙!
282 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:10:18.33 ID:bQYZcDDNO
乙!
髪型の細かい設定とかある?
283 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:11:11.89 ID:Zi+KkjDr0
乙です!
284 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:11:20.74 ID:iaB37gzyO
乙ー。みんな可愛いな
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:13:30.01 ID:uR7zO8hs0
>>282 基本的なキャラはなんとなく決まっています
でも限定せずに皆さんの脳内のキャラクタ像で想像してくださるとうれしいです
ただキュートは耳の下辺りで、髪飾り大き目のゴムで2つ縛りです
ファンネルとか手じゃないつもりです
286 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:16:04.81 ID:bQYZcDDNO
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:21:58.43 ID:ZUb/80cYO
乙!
シューの相手って、今まで顔出てきた?
288 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:24:01.75 ID:uR7zO8hs0
>>287 すみません
その辺はネタバレになるので伏せさせていただきます
まだ出てきていないキャラも沢山居ますので、確率は半々と言ったところでしょうか
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:25:07.25 ID:qdnejiaL0
2週間くらい前に知って、面白くて一気にぜんぶ読んだよ
今日遭遇できて嬉しいわ
290 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:35:18.30 ID:uR7zO8hs0
>>289 そう言っていただけてこちらが嬉しいです
ありがとうございます
では、今日はこの辺で失礼します
皆さん長時間色々とお疲れ様でしたw
いつも、ありがとうございます
おやすみなさい
待ってたよ〜!
乙!
292 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/07(日) 21:44:28.57 ID:qdnejiaL0
>>290 次回も楽しみにしてます!おやすみなさい
乙。
まとめの一話から4時間くらいで今読み切った
正直ナメてた
なんだこのグロぼの
次から貼りついてやるから覚悟しやがれ
294 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
次回を楽しみにしてるよ!お休み