―――――
『では、優勝決定戦のルールを説明します。
皆さんがもう知っての通り、既にこの軽食コーナー・人気トップ10の食品は出尽くしてしまいました。
そこで、決勝に残った二組に食べていただくものは、こちら《わんこそば・無限地獄》!!』
「わんこ・・。」
「そば・・。」
インデックスとフレンダが声を挙げる。
司会者の女性は、スピーカーに口を当てたまま、説明を続ける。
『しかし、今回は、先ほどとは違う勝敗のつき方です。
どれだけ、わんこそばを食べることができるか、つまり、食べたわんこそばのお椀の数で決まります。
制限時間はありません、両方が食べきったときの合計のお椀の数で、勝敗が決まるということです。
さぁ、優勝し、100万円+フリーパスを手に入れることが出来るのはどちらのチームか!』
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:21:15.89 ID:kUdYmlHY0
おっと四円age
最後の二組だけとなり、新しく用意された円形のテーブル。
上条・インデックス、絹旗・フレンダの、良い意味で個性的な二組は、
それぞれ向かい合うように、敷かれた座布団の上に座っていた。
先ほどとは違い、少々シュールな光景である。
四人の目の前には、通常サイズのお椀が一つ、箸、そばの汁、そして、胃の潤滑油役である水が置いてあり、
さらに、各人の横には、わんこそばを素早く支給できるように、四人の店員の女性が立っていた。
よくテレビなどで見るように、この人たちは、容赦なく間髪入れずに
そばをお椀の中に放り込んでくるため、食べる方はおちおち休むこともできない。
フレンダは、向かいに居るインデックスの、わんこそばに向けられたギラギラとした眼光を捉えていた。
その腹ペコシスターの横に居る、不敵な笑みを浮かべた上条が口を開いた。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:25:30.75 ID:s2X7RCUW0
「まさか、さっき相席していた人たちが俺たちの相手になるとは思いませんでしたよ。」
「結局、こうなることは必然だった・・。真正面から叩き潰すわ、覚悟するんだね。」
「ふ、こっちの相棒は、食に関しては完全無欠・難攻不落の超鉄壁の牙城ですよ、
もうそちらの負けは見えていると思いますけどね・・。」
「御託は聞き飽きました。結局、最後に笑うのは私たちです。」
「(今から、100万円を何に使うか考えながら、食べるべきだなッ・・、頼むぞ、インデックス。)」
「(・・わんこそばじゃなくて、サバ缶だったら私の圧勝だったのに。)」
静かなる闘志を燃やす上条とフレンダ。
未だ一言も喋らず、今か今かと、これから食べるはずのわんこそばに涎を垂らし始めるインデックス。
そして、未だ机にげっそり倒れこんでいる絹旗。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:26:23.51 ID:MINqH5ml0
きた!
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:29:14.74 ID:xPad6kLJ0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:31:11.19 ID:s2X7RCUW0
「フ、フレンダ・・。」
「意識を取り戻したね、絹旗。結局、さっきの戦いぶりは見事だったね、よくあの激辛に打ち勝ったよ・・。」
「・・はい、ありがとうございます。
決勝戦はわんこそばですか・・、ふふ、辛さに超やられた私の胃袋には丁度良い解熱剤ですね。
ここまで来たんですから・・、お互い、死力を尽くして超頑張りましょう。」
ここまで共闘し、そして、これから最後の決戦へと一緒に向かう戦友に握手を求める絹旗。
フレンダも、これまでの健闘を称えるようにガッチリと握り返し、言った。
「うん、任せた。」
「・・え?」
「今から私、すごいこと言おうか?」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:34:56.36 ID:s2X7RCUW0
未だ体調の優れないような表情をしながらも、目をまん丸にしている絹旗。
対照的に、フレンダはニコニコ正座したまま、絹旗を見つめている。
『準備は良いですね?
では、健康ランド・食べ放題選手権、優勝決定試合・・・はじめッ!!』
カァァァァァァァァァァン
「結局、そばアレルギーなんだよね、私。」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:37:04.51 ID:s2X7RCUW0
―――――
『優勝は、わずか10分で、150杯を食べ切った銀髪のシスターちゃんチームです!
皆さん、盛大な拍手を! おめでとうございますッ!!』
とびっきりの声援と、惜しみない拍手に包まれる場内。
インデックスの清々しいくらいの豪快な食べっぷりは、見るものの心を鷲づかみにし、老若男女の瞳を潤ませた。
中には、試合中にステージのすぐそばまで来て、携帯のカメラや自前のビデオカメラで撮影を始めるお客も居た。
彼女が食べている間は、お椀が一つ積み重なるだけで、割れんばかりの大絶叫。
まさに、キングにふさわしい暴食っぷりであった。
『では、優勝賞金の100万円と、3ヶ月間無料で健康ランドを満喫できるフリーパス、
オマケに、可愛らしいカエルくんのスプーン・フォークセットをプレゼントします!!!』
支援
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:40:09.66 ID:s2X7RCUW0
何度目になるだろうか、凄まじい量の声援と拍手が、上条とインデックスに注がれる。
大きく100万円と書かれた台紙と、実物のフリーパス、スプーン・フォークセットを幸せそうに抱く上条。
ちなみに、これが上条当麻の人生のピークであった。
「(ひゃ・・100万円・・。これで・・、しばらくは貧乏生活とおさらばできる・・、
しかも、3ヶ月とはいえ、健康ランドに来放題だなんて・・。
俺、こんなに幸せで良いのかな・・、神様、居るのなら、今日ほど貴方を信じようと決めた日はありません・・。)」
「(できれば、優勝商品は食べ物が良かったんだよー・・。)」
今までの人生で最大級の幸福感を、眩しいスポットライトと共に浴びる上条と、どこまでも食欲に貪欲なシスターだった。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:40:51.64 ID:cKv5nEwu0
キテター
支援
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:43:16.91 ID:s2X7RCUW0
―――――
文字通り、死闘となった食べ放題選手権を終え、「アイテム」四人は、健康ランドの1階に戻ってきていた。
精神的にも食欲的にも敗残兵となった絹旗と、負けたにも関わらずなぜかテカテカしているフレンダ。
「うう・・、何かわんこそば超吐きそうです・・。」
「4時間経つまで、あと20分か・・、結局、どうする? もう上がる?」
「そうねー、私ちょっとシャワー浴びてくる。
どこの誰だか知らないけど、私の頭にド派手に焼きそばをぶっかけてくれたからね。」
「あれは、すごかったね、麦野。」
「ぉっけー、じゃぁ、私たちは先に更衣室行ってるよー。」
三人と別れ、更衣室のすぐ向かい側にあるシャワー室に入る麦野。
シャワー室は、他のアトラクションに比べると、大したものではなく、市民体育館などにあるものと同等の大きさである。
さすがにシャワーを浴びに健康ランドに来るお客はいないのか、シャワー室には誰の姿も見えなかった。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:45:52.82 ID:RPRf6xbx0 BE:3257016678-2BP(100)
来てたー
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:46:56.95 ID:s2X7RCUW0
「(ふふん、独り占めね〜♪)」
女性用シャワー室前の更衣室で手早く着替え、脱いだ服や下着を、すぐ横の棚の中に放り込む。
シャワー室のドアを開け、足早に一番手前のシャワースペースに入った。
キュッとノブを回すと、大量のお湯が、麦野の身体に降り注ぐ。
それと同時に、もくもくと湯煙が広がっていった。
焼きそばくさい髪の毛を労わりながら、今日一日の汗と疲れと臭いを洗い落とす。
ちなみに、テニスの後にも浴びているので、本日二度目のシャワーだ。
やはり、麦野は、脱いでもモデル同然のスタイルをしていることが分かる。
出るところはきっちり出て、ひっこむところはしっかりひっこんでいる、綺麗に凹凸の取れた肢体。
2キロ太った、と言っていた割には、120点満点の女性としての身体のバランス。
色白でシミ一つない肌は、白魚のような、という修飾句がお似合いだろう。
確かに、ノンケだったはずのフレンダがレズに目覚めてしまうのも頷けるプロポーションである。
支援
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:50:12.76 ID:s2X7RCUW0
「(ふうー・・、今日は色々と疲れたわー・・。)」
そのとき、ガチャリ、とドアの開く音がする。
どうやら、他の女性が入ってきたらしい。
無論、不思議なことではないし、知り合いではないと思われるので、気にも留めず、シャワーを浴びるのに没頭する麦野。
「うふふ・・お姉さま、そこにいらしたんですのね・・?」
「・・?」
妙な口調の、妙な言葉が、妙な悪意(?)に包まれたまま、麦野の耳に聞こえた。
「わたくし、もう限界ですのよ・・?
温泉に入っても、温水プールに入ってもそのお体を触らせてもらえず、
食べ放題大会では、私の望みどおりに一緒に食べ物をいただくことができたものの、
あんなにも激しく黒子のことをいじめ抜くだなんて・・、しかも大衆の眼前で・・。」
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:53:24.32 ID:s2X7RCUW0
シャワーの音のせいで彼女が何を言っているのか、正確には分からなかった。
万が一、すべてはっきりと聞こえたとしても、彼女が何について話しているのかは分からなかっただろう。
こういう場面では、とりあえず、知らん振りを決め込むのが一番だ。
しかし、麦野の身体中を駆け抜ける悪寒と肌で感じる殺気。
彼女の本能が、緊急退避のサイレンをけたたましく鳴らしていた。
「我慢強くなったわたくしは、そこに置いてあったお姉さまのであろう服や下着にも手は出しておりませんのよ・・?
しかし、黒のブラジャーに黒のパンティだなんて・・、黒子の知らない間に、大人になっていたのですね・・、
それに、こんな公共の場ではありますが、大丈夫ですの、既にシャワー室のドアはロックしてありますのよ。
もう何者も、わたくしたちの愛の築きを邪魔するものはおりませんわ。」
「(・・な、何なの・・、 私の後ろに誰が居るっ・・!?)」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:54:08.40 ID:s2X7RCUW0
尋常ではない気に当てられるも、とにかく、念のため、能力を発動させるために、冷静に頭を働かせる。
横に開くタイプの小さなガラスドアを挟み、彼女の背後に居た謎の人物に光線を浴びせるように演算。
あとは、敵が手を出した瞬間に、発動させ、蜂の巣にさせるのみ。
「(・・・・・いつでも、来い・・。)」
一瞬、背後の女の気配が消える。
「!?」
そして、その意識すらも、越える勢いで、
「・・お姉さまァァァァッ!!!」
「(・・な、なぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!???)」
消えたと思った少女は、いつの間にか麦野の目の前に、正しくは彼女の胸の中に飛び込んでいた。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:55:04.01 ID:s2X7RCUW0
麦野は、この理解不能の展開に当てはまる能力を導き出す。
「(こ、こいつッ・・『瞬間移動(テレポート)』を使って・・ッ!?)」
「このときを・・このときを待ってましたのよぉぉッッ!!
お姉さまが何の抵抗もせず、黒子のことを受け入れてくれるときをぉぉッッ!!!!」
「(や、やばい・・こいつ、まさかっ!)」
黒子、と名乗った少女は、麦野の顔も容姿も見ずに、彼女の身体に蝉のようにひっついている。
麦野が思った「やばい」とは、命の危機のことではない、ある意味では、貞操の危機のことである。
「お姉さま」というのが誰のことかは知る由もなかったが、
「お姉さま」というからには女性であり、そもそも女性シャワー室に居た人間を狙ったわけだから、確信犯だ。
さらに、この少女は、麦野の取り巻きのあの金髪少女と同じ人種であることは明らか。
つまり、女性の同性愛者(レズビアン)。
支援
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:55:54.50 ID:s2X7RCUW0
「うっふん、お姉さまのこの柔らかかつ、芯の通ったお体を、黒子はどれだけ待ち望んでいたかっ・・。」
「や、やば・・、ぁ・・ゃ、誰だか知らないっけど・・、ゃめっ!」
「あああん、このような状況においても、なお反抗するお姉さまッ・・、
わたくしのこの嗜虐心をそそりますわぁぁぁっっっ!!!」
「くッ・・ぁあ!、や・・、くぅぅっ!!??」
麦野の声は、この少女の耳に全く届いていなかった、まるで聞く耳を持っていない。
完全にスイッチが切り替わってしまっているのだ。
目を閉じたまま、うっとりとした表情を浮かべ、麦野の果実のような胸を楽しむ。
しかも、この少女、想像以上に手馴れていた。
女性の身体の全てを知り尽くしているであろう、ペッティング、キスからの舐め回しを矢継ぎ早に繰り出してくる。
少なくとも、あのフレンダ以上のテクニシャンであることが分かった。
支援
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:56:52.37 ID:s2X7RCUW0
「ぁ・・あぁ、ぅぅッ!!!」
「はぁぁぁん、お姉さま、黒子の気づかない間に、お姉さまの自己主張の少ないお胸は、こんなにも豊満に・・っ」
・・訪れたのは一瞬の静寂。
「・・・、ほう・・まんに?」
「はぁ、はぁ・・・、アンタ・・、誰よ・・。」
「あれ、お姉さまでは・・、ない?」
「・・はぁ・・はぁッ・・。」
限りなく狭い、密着したスペースでの痴態。
目の前の少女は、火照っていた顔を、さらに真っ赤にし始める。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 22:59:53.87 ID:s2X7RCUW0
黒子のバカ! バカバカバカッ!とシャワー室の床に、少女はその頭をすごい勢いで何回もぶつけている。
麦野は、その少女の異常な行動を見下ろしていたが、どうやら彼女には悪意があったわけではなく、
真っ当な(ある意味では、真っ当ではないが)人間であることが確認できたため、少しホッとしていた。
「そういえば、あそこに置いてあったブラジャーも、お姉さまのにしては少々サイズが大きすぎると思ったんですの・・。」
「あ、あの・・、大丈夫、貴方? 色んな意味で。」
「・・・え、ええ、すみませんですの・・、わたくしとしたことが、つい取り乱してしまいまして・・。」
そう言うと、差し出された麦野の手を取る黒子、生まれたばかりの小鹿のように立ち上がろうとする。
先ほどまでの、デンジャラスなアクティブさが失われていた。
「貴方・・、お願いですの・・、このことは内密にできませんでしょうか・・?
わたくし、このことがお姉さまに知られたら・・、嫌わ・・、嫌われて・・しま・・うあ゛あ゛あ゛、」
言い終える前に、どばーっと滝のように涙を流してしまう少女。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:00:28.21 ID:m9qLkiH30
これはブチコロシでも仕方ないwwww
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:05:56.72 ID:s2X7RCUW0
立ち上がったと同時に、溶け始めの氷塊のようにその場に泣き崩れてしまう。
喜んだり、悲しんだり、忙しい子ねぇ、と思いつつ、その涙をバスタオルで拭ってやる麦野。
「大丈夫よ、今のことは怒ってないし、そのお姉さまとやらに言うつもりもないから、安心しなって。」
「ほ、本当ですのっ・・?」
「本当よ、だからほら、泣くのを止めなさい、せっかく可愛い顔してるんだから。」
「あ、あうあう・・ですのぉっ・・。」
基本的に、このようなカタギの人間に対しては心優しい麦野。
相手が自分より年下の可愛らしい少女となっては尚更だ。
泣いている絹旗やフレンダを可愛がっているようで、少し親近感が沸く。
今、黒子の目には、麦野が聖母のように映っているだろう。
支援
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:09:58.54 ID:s2X7RCUW0
「うぅ・・貴方、何処の誰かは存じませんが、優しいんですのね・・。」
「(その何処の誰かは存じない人の胸にいきなり飛び込んでくるんだから、アンタは凄い子よ・・。)」
「わたくし、もう少し頑張ってみますわ・・、不毛な恋と分かっていても、
わたくしは、その恋の炎に身を焦がすしかありませんのっ・・!!」
うぅ〜っと、叶わぬ恋に恋する悲劇のヒロインのように、再び涙を流し始める黒子。
やはり、レズビアンというものは、本当に頭のおかしい奴しか居ないな、と麦野は痛感した。
そのとき、シャワー室前の更衣室から、声がする。
「黒子ー? そこに居るのー?」
「あ、お姉さまぁっ!!」
その声に、ほぼ反射的に、黒子が(気色の悪い)猫撫で声を上げた。
どうやら、彼女の言う「お姉さま」が探しに来てくれていたらしい。
ブチカクでもおかしくないのにwww
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:14:55.32 ID:s2X7RCUW0
麦野からも、ガラスのドアに映った、その「お姉さま」とやらのシルエットが見えた
元々、そのドアは半透明のつくりになっており、湯気のせいで曇っていたため、よく見えなかったものの、
身長は黒子よりも少し高いが、同年代くらいの雰囲気の少女であることが分かる。
「ったく、探したんだからねー、入るわよー?」
「あ、ま、待ってくださいですの! 私が『瞬間移動』でそちらに行きますから!」
「そう? とにかく、早くしなさいよねー。」
見知らぬ女性と話しているところがバレたら、事情を説明するのが面倒になる、という彼女の判断だったのだろう。
「では、色々とご迷惑をおかけしましたことを、お詫び申し上げますわ。」
「ああ、気にしてないから大丈夫よ、私の知り合いにも同じようなのが居るからね。」
「そ、それは大変ですのね・・。」
「もう慣れっこよ。」
支援
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:21:04.14 ID:s2X7RCUW0
その知り合いというのはもちろん、フレンダのことである。
彼女の麦野に対するスキンシップは、あのマフィン作りのとき以降、エスカレートして仕方なかったが、
貞操の危機というほどまでではなく、まだまだ可愛いものであった。
この少女とフレンダを絡ませたら、それはそれで面白い化学反応が起きるだろう。
「黒子ー、誰と喋ってんのー?」
「はーい、今行きますのー。少しお待ちを。」
くるりと振り向き、麦野に再度、深々とお辞儀をする黒子。
意外と礼儀正しい子なんだな、と麦野は、さっきとのギャップのせいか、不思議に思っていた。
「では、これにて失礼しますの。」
「まぁ、頑張ってね。 あのさ、・・その・・、絶対に叶わない恋って、ないと思うから。」
恥ずかしい台詞と自覚があったからか、少しモジモジしながら、顔を赤らめる麦野。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:24:07.49 ID:s2X7RCUW0
何歳も年上でありながら、自分と同じような少女の顔をする麦野を見て、黒子は静かに口を開く。
「・・・、お姉さまほどではありませんが、貴方も、素敵な女性ですわね。」
「ぇ・・、あぇ・・・。 ありがと。」
フフッ、と微笑む黒子。
そして、ツインテールのよく似合うその少女は、瞬く間に、麦野の前から消えた。
恐らく、愛しの「お姉さま」の胸に飛びこみに行ったのだろう。
その証拠に、ドア越しから、二人の少女の悲鳴が響いてきていた。
「(やっぱり・・、おかしな子ね・・・。)」
少女にかき乱されてしまった長髪をかき上げ、再び、麦野はシャワースペースに足を踏み入れた。
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:28:41.45 ID:s2X7RCUW0
―――――
「まったく、あそこまで行ったなら、最後まで突っ走っちゃえば良かったじゃない。」
「だって、結局、そば食べたら、ジンマシンでちゃうんだから、仕方なかったんだよー。」
「そばアレルギーにかかってるんじゃ、日本じゃ年を越せないわねー。」
「アイテム」の四人は、色々あった健康ランドを後にし、帰路についていた。
時刻は、既に七時を回っており、辺りは薄暗く、帰宅途中の学生たちで賑わっていた。
「・・うぇ・・、超孤軍奮闘した私を労わる言葉はないんですか・・、二人とも。」
「大丈夫、そんな絹旗を、私は心から慰める。」
だぎづぼざぁぁぁん゛!! と、唯一優しい言葉をかけてくれた滝壺に泣きつく絹旗。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:31:03.25 ID:qQKMsJuZ0
新しいの建ててたのか
C
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:33:56.10 ID:s2X7RCUW0
あのとき、ステージ上で、フレンダにある意味での絶縁宣言をされても、絹旗は頑張ってわんこそばを食べ続けていた。
じ、冗談ですよね? と顔をひきつらせる絹旗に対して、
結局、100万円が懸かったこの状況で、そんな笑えない冗談言うわけないじゃん、と澄ました顔をしたフレンダ。
強敵だった超激辛カレーライスが食道辺りまで逆流してきても、グッと堪え、彼女はわんこそばを口に入れ続けた。
その小さな体が、そばの入れすぎで破裂しようとも構わない、それだけの心意気を持って、臨んでいた。
しかし、相手は、絹旗の食べる5倍以上のスピードでわんこそばを消費していった、しかも、あの銀髪シスター一人だけで。
そんな敗北必至の戦いでも、勝ち目が200%ない戦いでも、絶対に任せられた任務の失敗は許されない。
それが、暗部組織で生き続けてきた絹旗の心と身体に染み込んだ信条。
せめて、この食べたわんこそばのエネルギーが自分の貧相な胸に行き届いたのを、願うばかりだった。
そして、絹旗は、箸を落とし、力尽きたのである。 ちなみに、たった15杯であった。
たった10分間で試合は終わり、(150+25)vs(15+0)というスコアにより、大惨敗を喫したのである。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:36:58.75 ID:s2X7RCUW0
「なーんか、ダイエットしに来たって割に、最後に色々食べちゃったから、痩せた気がしないわねー。」
「結局、一番やっちゃいけない、何も食べない、ってよりはマシってことで。」
「ま、健康ランドの存在を知れただけでも十分な収穫だったわ、ありがとね、絹旗。」
「・・・うぷ。」
絹旗は頷いたのか、吐きそうになったのを堪えたのか分からない動作をする。
「結局さ、次は、今日行けなかった温水プールに行こうよー。」
「そうねー、水泳ってかなりダイエットの良いらしいって聞くしねー。」
「でも、絹旗は泳げないからダメだね。」
「あら、絹旗って泳げないの、ホンット子供ねー。」
「こ、子供扱いしな・・、うぅぇッ・・・。」
はいはい、頑張れ頑張れー、と絹旗の背中を叩くフレンダ。
そもそも、彼女がそばアレルギーでなければ、絹旗がこんなにも苦しむこともなかったのだが。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:38:04.54 ID:V0ZNTRE+0
支援
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:40:43.08 ID:s2X7RCUW0
「・・それで、明日のはまづらの退院祝い、どうするの?」
唐突な滝壺の言葉に、麦野とフレンダが揃って「あ゛!」と声を挙げた。
そもそも、最初は浜面の退院祝いをどうするか、という話をしていたはずだった。
それがいつの間にか、麦野のダイエットの話に進み、四人で仲良く、テニスやら健康ランドやらを満喫してしまっていたのだ。
「あー、そうだねぇ、とりあえず、コンビニでお菓子とお酒買って隠れ家に帰ってから考えよっか、それで良い?」
「賛成ー、とりあえず、そこのコンビニで良いんじゃない?」
「私も。」
「・・・。」
麦野の提案に頷いたフレンダと滝壺。
しかし、絹旗の方から返答がなかった。
支援
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:45:44.38 ID:s2X7RCUW0
「絹旗?」
「どうしたの・・絹旗?」
「ずみまぜん・・・、私、もう・・超限界です・・。」
よろよろと歩きながら、口元を押さえていた絹旗が、不自然にピタリと止まった。
その不安定な行動に、三人は思わず、後ずさりする。
絹旗の表情が、より一層青ざめて行くのが、この暗さの中でも分かった。
体を震えさせる絹旗、目の焦点はふらふらして合っていない、いつもの快活さは完全に失われていた。
「・・え、冗談よね?」
「・・・屍は・・、うぷっ・・・、海の見える・・、綺麗な丘に・・、
・・・う、うげえ゛え゛え゛ぎげばああ゛あ゛あ゛あ゛゛あああああああ゛あ゛あ゛゛゛っっっ!!!!!!!!
人気のない夜道を、ギャーギャーわめく「アイテム」たち、そんな彼女たちを包んだまま、今日も学園都市の夜は更けていく。
支援
し
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:48:19.40 ID:s2X7RCUW0
☆おまけ☆
「うっひゃああーッッッ!! 100万だぞ、100万円! どうする、どうすんの、俺!! どうする!!??」
「私はそれよりも、何かお腹が膨れるものが良かったんだよー。」
こちらは、食べ放題選手権で見事優勝し、歓喜に沸く上条、インデックスの二人。
100万円贈呈に必要な手続きを終え、健康ランドの入り口、受付前の広間でギャーギャー、と騒いでいた。
受付のお姉さん方が、微笑ましい子供を見るように、クスクス笑っている。
そんな視線にも気づかず、久々に超幸せな出来事に、上条は天にも昇る勢いだった。
「ばっかだなー、インデックスよ、100万あったら何が買えるとお思いで?」
「・・え、どういうこと?」
「お前の好きな食べ物が山ほど買えるってことなんだぜぇッ!!!」
「う、うわああああああああああ〜〜〜っ!!!」
喜びの声をあげるインデックス。
本当に食べ物のことしか頭にないらしく、食べ物の話になった途端に、その目が輝きだした。
一週間で100万円が無くなるフラグか…
美琴ktkr
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:52:26.67 ID:s2X7RCUW0
「やっぱり持つべきものはインデックスだな! ありがとう!インデックス!!!」
「ようやく私の偉大さが分かってくれたんだね! 私も嬉しいよー! とうまー!」
インデックスー! とうまー!といったように、互いの名前を呼び合いながら抱きつき、くるくる回り始める二人。
人目を憚らないイチャつきっぷりは、かなり滑稽に見えてしまっていた。
「あのー、お喜びのところ・・、ちょっと良いですか?」
「え、あ、はい、俺たちですか、すみません、何かはしゃいじゃってて・・、気をつけますんで。」
「いえ、あの、それとは別のことなんですけど・・。」
「?」
二人に話しかけてきたのは、見覚えのある、先ほど食べ放題選手権で司会をしていた女性だった。
どうも、あまり良い知らせではないのか、少し複雑そうな表情をしている。
支援
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:54:42.19 ID:s2X7RCUW0
「えっと・・、何ですかね・・。」
「あのですね、つい2時間前のことなんですが、貴方の連れの、この・・銀髪の女の子なんですけど。」
「は、はい、このインデックスが、なにか?」
インデックスは心当たりのないような、キョトンとして顔をしている。
本人に心当たりがないのだから、上条にもピンと来なかった。
女性は暗い面持ちのまま、話し続ける。
「1階にあるフルーツ温泉に浮かんでた果物・・、全部食べちゃってますよね・・?」
「・・・・。」
ブワッと汗が噴出し、ダラダラと垂れる上条。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:54:54.89 ID:fCMkJ16k0
それまでのメシ代で100万突破か…
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:55:54.39 ID:s2X7RCUW0
「え、えーと・・何のこと・・、」
「あー、うん! あの果物のこと!?
すっごく美味しかったんだよ!! たぶん、すごい高級だったんじゃないかな!!」
「・・・・・。」
無意識に地雷を踏んで、爆死するインデックス。
しかも、爆発したことに気づいていないものだから、厄介だった。
「ごめんなさいねー、銀髪で緑色の眼をした、色白で外国人の女の子が全部食べちゃった、っていう通報があったみたいで・・。」
「・・・、それって誰のこと?」
「・・・・・、お前のことだろォがぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
「うえええええッ!!!!????」
今日一日、様々な美味しいものを食べていたせいで、フルーツを食べつくした記憶がぶっ飛んでしまっていたのか、インデックス自身もびっくり仰天していた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:57:33.23 ID:s2X7RCUW0
銀髪、緑色の眼、色白、外国人、そして、フルーツを食べつくすほどのその大食漢ぶりは、
先ほど食べ放題選手権で披露したばかりだ。
ロイヤルストレートフラッシュで、全ての証拠がインデックスという犯人を指し示していた。
恐らく、今彼女の胃袋を裂いてしまえば、たくさんの色とりどりの証拠品であるフルーツが溢れ出てくるだろう。
山積みしたお皿が印象的だった夕食と、食べ放題で食べた数多くのメニューとともに。
頭の悪い上条でも、どう考えても、言い逃れのできない状況にあることはすぐに分かった。
「で、あの・・、べ、弁償ですよね・・いくらですか?」
「い、いいえ、お支払いいただく必要はないんですよ!!」
それを聞いて、よ・・、良かった、と上条は心底ホッとする。
インデックスは未だ事の重大さが分かっていない様子だが。
「・・・その、お持ちになっている100万円の小切手さえ、こちらに渡していただければ・・。」
「!!??」
支援
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 23:59:34.97 ID:s2X7RCUW0
上条はギョッとした。
必死こいて手繰り寄せた(主にインデックスが)この100万円の小切手を、
たった数分間持っていただけで、手放さなければならない、そう言われたからだ。
「あの・・、こちら一応、その果物類の領収書になります・・。」
「!!!!!」
女性から渡された領収書を、念のため拝見する上条。
高級リンゴ、高級オレンジがそれぞれ8個、高級アボカド、高級パイナップルがそれぞれ5個。
それら4種の果物が、計75万円。
そして、トドめの超高級メロンが、たった4個にも関わらず、計25万円。
どれも学園都市の外、更には海外の国々から取り寄せた本場のものだったらしい。
優勝賞金とぴったんこカンカンで、その一枚の紙切れに<100万円>と記されていた。
それは酷いwwwww
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:01:50.29 ID:gLDAJ4cr0
そんな高級品を風呂なんかに浮かべるなよ・・・、と不快そうに思ったとと同時に、
この100万円がなかったら、自分はしがない高校生ながら、100万もの借金を背負うことになっていたのか・・、
とも思い、少しちびってしまいそうになる。
上条のアソコが、思わず<ヒュン・・・。>となっていた。
「あちゃー、やっぱりすっごい高いフルーツだったんだね・・、私の味覚に間違いはなかったかもっ!」
なぜか胸を張るインデックス、もう頭のネジという概念自体が存在してないだろうか。
食べ物のためなら、殺人を犯しても許されると思っているのだろう、きっと。
「わ、わかりました・・、これはお返し・・します・・。」
逃げようもない現実に打ちのめされ、小切手を差し出す上条。
ガクガクと手が自然に震えてしまう。
支援
上条さん…
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:05:23.50 ID:gLDAJ4cr0
「あ、あの・・あと1分だけ、1分だけで良いので、これ、まだ持ってて良いですか・・?」
「・・・えーと、あとですね。」
「・・・・・、ま、まだ何かあるんですか?」
「3ヶ月間、健康ランド、利用し放題のフリーパスなんですが・・。」
「あ、アレすらもなんですかッ!?」
「すみません、こういうことを今後、起こさせないように、という抑止ということで、『上』の人から言われたので・・。」
「あ、あぅッ・・。」
フリーパスでありながら、一度も利用することのなかったフリーパス。
100万円はもちろん、そのフリーパスも上条にとってはかなり惹かれる賞品だった。
「申し訳ありません! 食べ放題選手権を盛り上げていただいたので、私個人としてはすごく感謝しておりますから・・。」
「い、いえ・・貴方が謝ることはありません・・、元はといえば、わたくしの・・監督不行き届きで・・。」
「あ、そのカエルのスプーン・フォークセットは差し上げますから、大事にお使いになってくださいね!」
「ふ、不幸だ・・・。」
支援
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:07:48.98 ID:gLDAJ4cr0
心も魂も抜けた上条に残されたのは、妙ちくりんなカエルがデザインされたスプーンとフォークだけだった。
―――――
もうすっかり暗くなってしまった帰り道を、何もかも打ち砕かれた上条と、
平然とした表情をしているインデックスが二人並んで歩いている。
目の焦点が合っていない上条は、撫で肩、猫背、千鳥足と三拍子揃って、ダメな少年に変身していた。
「上条さん・・、さすがにあんな幻想はブチ殺せないよ、無理だよ・・。」
「良いじゃない、とうま。 とうまも私もタダでたくさんご飯食べられたし、そのカエルのセットもらえたんでしょ?」
「そ、そうですね・・。」
いつもなら、英雄でありながら、全ての元凶でもある彼女に対して食って掛かるのだが、
さすがに今回ばかりは、全身から力が抜け切ってしまっていたため、それは不可能だった。
足取りが重くなり、どんどん沼地に沈みこんでいくように前かがみになっていく上条。
とうとう、その場で膝からガクリと崩れ落ちてしまった。
えええええ
フリーパスだけは貰えるかと思ったのに…
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:10:01.98 ID:gLDAJ4cr0
「ちょ、ちょちょ! とうま! 気をしっかり持つんだよ! 明日があるさ、明日がある、なんだよ!!」
「ふふ・・、インデックス。お前は優しい子だな・・。」
「と、とうまー!!」
今にも自殺してしまいそうな上条と、それを支えるインデックス。
そんなあたふたしている二人を遠くから見ていた少女が居た。
「おーい、アンタ! 何やってんのよ、そんなところで、帰ったんじゃなかったのー?」
上条が赤ん坊のような、据わっていない首をもたげ、振り向くと、そこには御馴染みの美琴(と黒子)が居た。
「あー、短髪・・、短髪こそどうしたの?」
「わたくしたちも食べ放題選手権に参加してたんですのよ。」
「ちょ、何バラしてんのよ!!」
お年頃の女の子が食べ放題大会などに参加してると知られたら、どれだけ恥ずかしいか、
と、いうのに、アッサリばらしてしまう黒子。
支援
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:11:37.10 ID:gLDAJ4cr0
「へー、短髪も食い意地はってるんだねー。」
「アンタだけには言われたくないわ・・・。」
「でも、何で短髪たちもこんな時間にまだほっつき歩いてるのかな?」
「・・いやー、黒子がいきなりどこか行っちゃってさー、探し回ってたらこんな時間になってたのよ、
完全に寮監に怒られるっ時間だっつーの、まったく。」
愚痴を吐く美琴の腕に蔦のように自らの腕を絡ませる黒子、相変わらずのデレデレ顔である。
しかし、美少女二人が現れたくらいでは、上条が快活さを取り戻すことはなかったようで。
「ああ・・、さいですか・・。」
「ちょ、ちょっと!? さっきからどうしたの、アンタ! せっかく食べ放題の奴で優勝したっていうのに!」
「いや、それがですね・・聞いていただけますか、御坂サン。」
「ちょ、こんな類人猿の死体みたいな男の言うこと、聞く必要ありませんわ、お姉さま。」
「・・わ、分かった、聞くわよ、聞くから、ちょっと・・アンタ、しっかりしてよ!?」
「それがですね・・。」
支援
支援
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:14:02.83 ID:gLDAJ4cr0
かくかくしかじか。
上条は美琴に自分のすべての不幸っぷりを曝け出すように、説明した。
最初に、インデックスが温泉のフルーツを全て食べてしまったこと。
その弁償をするハメになり、食べ放題の優勝賞金100万円を使わざるを得なかったこと。
罰として、フリーパスすら没収されてしまったこと。
そして、失意の自分に残ったのは、必要のないカエルのスプーンとフォークだけ、ということ。
「な、なるほど・・、それは災難だったわね・・、
ってアンタ! ゲコ太のスプーンとフォーク、要らないの!?」
何故か一番どうでも良いところに食いつく美琴。
それもそのはず、彼女が食べ放題選手権を死ぬ気で頑張ったのは、その二点セットが欲しかったからだ。
美琴は何か言いたそうな表情をしているが、波際に打ち上げられた土左衛門のような上条に対して、口を開けないでいる。
そんな美琴の思いを察したのか、はたまたただの偶然だったのか、上条が言った。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:16:01.06 ID:gLDAJ4cr0
「・・ああ、お前、もしかして、こんなものが欲しいのか・・?
だったらやるよ・・・、変になにか残ってても、空しいだけだからな・・・。」
「・・・・え? そ、それ、本当!? それ、本当に私にくれるのッ!?」
ああ・・、と力なく返事をし、2点セットの入った箱を渡す上条。
思わず、両手を差し出し、それを受け取る美琴。
箱のデザインも特徴的で、箱の側面や底には、可愛らしい(?)カエルが何匹も描かれており、
どこからどう見ても、スプーンとフォークの使い方を覚えたばかりの子供が使いそうなものだった。
ちなみに、実はもう彼は死んでいるのかもしれない、いつもはどんなに不幸でも、
どんなに追い詰められた状況でも力を失うことはなかった目は、このときばかりは、死んだ魚のような目をしていた。
支援
支援
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:17:21.24 ID:gLDAJ4cr0
大好きなカエルのスプーンとフォークを、大好きな、想いを寄せる上条が自主的に譲ってくれたのである、
美琴が喜ばないわけがなく、両手で大事そうに、包み持ったまま、顔を赤くする。
「あ、ありがとう! これ、大切に使うからねッ!!」
「あ・・・あぁ・・・。」
上条は、未だ力なく、返事をすると、彼女たちに背を向けて、再び帰り始める。
普段は支えられる側のインデックスは、今回ばかりは、力いっぱいに彼の身体を支えてあげていた。
美琴は、彼の背中が見えなくなると、隣に居る黒子に構わず、とびっきりの笑顔を浮かべる。
思わぬ収穫があり、ルンルン気分で帰路につく美琴。
対照的な二人を包み、今日も、学園都市の夜は更けていく。
上条www
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:19:41.15 ID:EBgKPyST0
健気だなぁ…インデックス…
…あれ?
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:22:21.24 ID:FLLCHWz10
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:23:11.67 ID:gLDAJ4cr0
今回の分は、ここまでとなります。
健康ランド編完結と共に、このシリーズの中編が終了しました。
次回からは後編ということで、再び「アイテム」×浜面を中心に展開する予定です。
日付が変わったにもかかわらず、お付き合いいただきありがとうございました。
明日も同じ時間にお会いしましょう、では、おやすみなさい。
乙!楽しみにしてるぜぐっない!
乙!
お疲れ〜
おつおつです!
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:26:05.11 ID:JAbgAP340
お疲れ様でしたー
C
ビオフ女マジでウゼェ
乙〜
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:33:08.40 ID:uNxE5qwB0
おつ
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 00:52:34.63 ID:K1TVgXvKO
乙
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 01:25:17.71 ID:Rt0VYWjR0
乙
乙
ほしゅん
91 :
既にその名前は使われています:2010/03/04(木) 02:47:36.33 ID:qQJZkbmP0
ほしゅである^^
浜面超期待です
ほ
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 03:55:15.91 ID:7G5WXdZr0
アイテム勢みんな可愛いなあ…
しかし、上条さんとインなんとかさんに、一通さんと打ち止めまに、
美琴・黒子・初春・佐天の四人組まで出て来るとは…
まさに「健康ランドだよ!全員集合!」だな(浜面だけハブだがww)。
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 04:13:22.62 ID:JAbgAP340
ほ
必要悪の教会は上条さんにインポテンツさんの養育費を支払うべき
美琴が喜びのあまり上条さんにちゅーして禁書に噛られ黒子に刺されるかと思ったがそんなことはなかった
前スレから気になってたんだが、滝壺って人名呼ぶときは平仮名じゃなかったか?
確かに平仮名で呼ぶね
変換し直すの面倒なんでしょ、多分
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
ほ