1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
代理
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 19:30:06.22 ID:QQpGqSbtO
ひっさしぶりだなぁ支援
第十二話「光石」
土砂降りの雨の中飛び込んだその店は、埃っぽいことを除いたら、人がいないこと以外は至って普通の酒屋に見えた。
ふいんき(ry)作りの為だろうか、古めかしいカンテラがカウンターの端に置かれ、
店内に備え付けられているらしい、これまた古いラジオからは女性の歌声が聞こえる。
人数分のタオルを小脇に抱えたシャキンに促され、ブーンはカウンターに近い古びた椅子に座りこんだ。
(`・ω・´)「喉が渇いただろう、今お茶を出すよ」
(;´_ゝ`)「俺はいらないからな」
(`・ω・´) 「ちっ」
(;´_ゝ`)「今舌打ちした? 俺一応客…」
('A`)「そんで? ブーンはシャキンに何の用があったんだっけ?」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 19:32:42.60 ID:BAyKFoiuO
久しぶりー!
シャキンに渡されたタオルで乱暴に頭を拭きながらドクオが尋ねる。
辺りに水滴が飛び散る中、ブーンはドクオの質問に答えた。
(∪ ^w^)「僕をこの姿にした奴の心当たりについて、詳しく聞くためだお」
(゚、゚トソン「本当に人が犬になるなんてことがあるんだな…」
短い自分の髪から水滴が滴るのも構わず、トソンはブーンの真っ白な毛を丁寧に拭いてやる。
(∪ ^w^)「兄者から聞いたのかお?」
(゚、゚トソン「あぁ、でも安心してくれ。僕は誰にも話さないよ」
(∪ ^w^)「ありがたいお」
(`・ω・´) 「さぁどうぞ。熱めに淹れたから火傷しないようにね」
カウンターの向こう側からシャキンはトレイを持ってやって来た。
トレイの上には、4つのコップと中華皿が乗っている。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 19:35:32.33 ID:JMup1ZntO
お茶独特の渋みの効いた匂いがブーンの鼻を擽る。
シャキンは慣れた手つきでコップをテーブルに置き、ブーンの前にはコップの代わりに、並々とお茶が注がれた中華皿を置いた。
湯気がゆらりと立ち昇り、お茶の匂いがテーブルの周りに広がる。
(`・ω・´) 「もっといい器があったんだけど…。埃かぶっちゃってたから、今日はこれで我慢してくれるかい?」
(∪ ^w^)「全然構いませんお。お気遣い感謝します」
犬の姿ではコップから何かを飲むのは不便だと、シャキンは気を回してブーンの為に中華皿に茶を注いできてくれたらしい。
喉が渇いていたブーンにはとてもありがたい気遣いだった。
乾燥したこの地域では、口の中がとても乾くのだ。
嬉しそうに茶を飲んでいくブーンを、兄者は物凄い顔で見つめていた。
この店の飲み物は全てが地雷だと、身をもって知っているからだ。
(;´_ゝ`)「ぶ、ブーン…」
(∪ ^w^)「お?」
(;´_ゝ`)「何か茶に変なもの入ってないか?体は大丈夫か?」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 19:37:51.94 ID:JMup1ZntO
(`・ω・´) 「兄者くん、今回は何も入れてないから安心して」
(;´_ゝ`)「そ、そうか。じゃあ俺も頂くよ」
この時、兄者は気付いていなかった。
トソンもドクオもシャキンも、ブーン以外は誰も飲み物に手を付けていなかったことに。
( ´_ゝ`)「ふむ、なかなかシャキンさんにしてはくぁwせdrftgyふじこlp;」
兄者の口から茶が霧となって噴き出された。
驚いて目を丸くさせたブーンに、やっぱりかといった表情のドクオ。
そして、楽しそうに笑うトソン。
その面々を見て、満足そうに微笑むシャキン。
(`・ω・´) 「コショウ…(;´_ゝ`)「シャキンさん、アンタ俺になんか恨みでもあんの?」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
夜も更け、空が白み始めていた。
夜中ずっとブーンたちの旅の話を楽しそうに聞いていたシャキンは、
雨が上がって白み始めた空を見上げて、ふと息を吐く。
(`・ω・´) 「夜が明けてきたから、本題に入ろうと思うんだけど…。
ブーンくんは、君をその姿にした人の話を聞きに来たんだよね?」
(∪ ^w^)「そうです」
(`・ω・´)「そうか。でも、最初に断っておくけど僕も『彼女』についてそこまで詳しく知ってる訳じゃない」
(`・ω・´) 「憶測の域を出ない事もあるし、もしかしたら僕よりもっともっと詳しい人がいるかもしれない。…それでも、いいかい?」
(∪ ^w^)「大丈夫ですお。お願いします」
ブーンの尻尾が、軋む椅子の背もたれを撫ぜる。
シャキンはテーブルに肘をつき、手を組んでその上に顎を乗せて、宙を見つめる。
そして、静かに口を開いた。
(`・ω・´)「長い話は苦手だから、結果をまず先に言おう。君をその姿にして、道中行く手を邪魔していたのは月神の仕業。
君が何度も見たという三日月模様や、『月下軍』を名乗った少女の話を鑑みても、十中八九間違いない」
(`・ω・´) 「でも、ここまでは君も大体予測はしてたんだろう?」
(∪ ^w^)「はい」
(`・ω・´)「月神は、気まぐれなひとでね。時には無償で人の命を助けたり、
時には君みたいに、そしてシュールのように人の姿を異形のものへと変えて――――」
シャキンの言葉に被さるように、コップが割れる音が店の中に響き渡った。
音を発生させたのはドクオで、床には細かいガラスの破片が散らばっていた。
('A`)「…すまん」
(`・ω・´)「いや、僕の方こそごめん。突然すぎた」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 19:43:19.00 ID:JMup1ZntO
シャキンとドクオが、割れてしまったコップを片付ける為にテーブルの下へ潜り込んだ。
割れたガラスは重なるたびに涼しい音を出し、テーブルの下からシャキンは続ける。
(`・ω・´)「人の姿を異形のモノへと変えて、その人が戸惑ったりしている様を見て楽しむんだ。
もちろん、姿を変えた後はほったらかし。彼女にとって、人間は『おもちゃ』でしかないんだと思う」
シャキンは近くにあった箒で床を掃き、ドクオは無表情で割れたコップの破片をカウンターの上に置いていく。
('A`)「…『おもちゃ』ですらないだろうよ、あの扱いは…」
割れたガラスを拾い集めながら、誰にも聞こえないくらいの小声でドクオは呟く。
その声には色々な感情が滲み出て、少なからずドクオは『月神』を好く思ってはいないようだった。
(`・ω・´)「ほんの最近までは、とても穏やかで優しい神様だったらしい。
ここ何年かになってなんだよ、彼女が生き物を『おもちゃ』として扱いだしたのは」
(∪ ^w^)「………」
(`・ω・´)「だから、何かが彼女の身に起こったんだろうと僕は考えてる」
('A`)「シャキン、このコップ、幾らだ?」
申し訳なさそうな表情で、ドクオは服のポケットからいくらかの金貨を取り出した。
財布という物を持っていないのか、その金貨はどれも汚れている。
(`・ω・´) 「お金なんていらないよ」
('A`)「でも」
(`・ω・´) 「いいんだよ」
(∪ ^w^)「…じゃあ、簡単に言ってしまうと、月神に会えば、僕は元の姿に戻れるかもしれない?」
(`・ω・´)「月神が君の姿を変えた以上は、そういうことになるね」
(`・ω・´) 「でも、そこに至るまでには少なからず試練があると思うよ。君はその壁を乗り越えられるかな?」
掃除を負えたシャキンは、箒とちりとりを片付けながら続けた。
(`・ω・´) 「不死の体を得て、今はそれでいいかもしれない。君はどうやら、仲間の為になら自分の身も省みない性格だろうからね。
でも、死ねなくなったって事は、生物であることを放棄したということ」
(`・ω・´) 「はっきり言ってしまうと、君は旅の道中に遭った『異形』のものと同じだ。
もしかしたら、元の姿に戻った後、君は―――」
(`・ω・´) 「あまり長生き出来ないかもしれない」
(`・ω・´) 「それでも君は、旅を続けるかい? それでも君は、月神に会おうと思うかい?」
(`・ω・´) 「神様相手に、君は最後まで自分を貫き通せるかい?」
畳み掛けるように問いかけるシャキン。
その質問の全ては、これからのブーンの覚悟がどれほどのものかを試しているようだった。
(∪ ^w^)「……」
黙り込んで、質問の答えを考えるブーン。
(∪ w )「僕は…」
真っ白で大きな犬が口を開いたのは、太陽が大分昇った後。
(∪ ^w^)「もう、月神に会いに行く理由は僕の問題だけじゃなくなったんですお。
ここで僕が旅を止めるなんて言ったら―――」
――――――――――
(,,゚Д゚)『連れてってもらうぜ、あいつに遭遇するまで。あいつの手がかりを見つけるまで。
俺はあいつに会って仲間の仇を討たなきゃならねぇ」
――――――――――
(∪ ^w^)「僕は、月神に騙されて殺し合った種族の人達に合わせる顔がありません。
僕に着いてきてくれていたのに、危険な目に遭ってしまった人に合わせる顔がありません」
(∪ ^w^)「だから、旅を続けます。月神に会います。そして、最後まで自分を貫いてみせます」
(`・ω・´) 「…そうか、なら僕は君達に協力せざるを得ないね」
(`・ω・´) 「月神というのは実に不安定な存在で、一ヶ月に一度だけその膨大な力を失う日がある」
(`・ω・´) 「いつだか分かるかい?」
(∪ ^w^)「……」
(`・ω・´) 「月が空に上がらない夜―――東では、その日の事を『新月』と呼ぶんだけどね。
その日に限っては月下軍も月神も、月の力によって働くものはみんな力がなくなるんだよ」
(`・ω・´) 「そして逆に、非常に長い年月を経て、月神が多くの力を発揮できる時間がある。
『日蝕』の日に限って、月神は一定時間だけ太陽神を上回る力を得られる」
(`・ω・´) 「それは本当に僅かな時間だけど、今の月神がそんな多くの力を手にしたら―――」
シャキンは言葉を切り、窓から射す太陽を眩しげに見上げた。
外の通りはすっかり賑やかになり、果物を売る元気な女性の声が静かな店内に引っ切りなしに飛び込んでくる。
(`・ω・´) 「……もしかしたら、僕たちは一生太陽に会えなくなるかもしれない。日蝕のまま世界は月神の天下になるかもしれない。
太陽は隠されたままになって、作物はみんな枯れて生物は生きられなくなる」
(`・ω・´) 「『もう月神に会いに行く理由は僕の問題だけじゃなくなった』。ブーンくん、君はそう言ったね」
(`・ω・´) 「君の言う通り、もう問題は君や、君の仲間の中だけでは済まなくなっている」
(`・ω・´) 「なぜなら、何百年か振りの日蝕が近付いてるから」
シャキンは、窓の外から視線をブーンたちへ戻した。
その表情は穏やかさに満ちており、これから起こりうるかもしれない永い戦いを悟っているようにも見える。
(;'A`)「それ、かなりヤバイんじゃないのか?」
(`・ω・´) 「そう。でも、月神が本当に太陽神から『昼』を奪おうとしているのかは分からない。
所詮これは僕の推測に過ぎないし、不確定要素もかなり沢山ある」
(`・ω・´) 「でも、最近の月神が異常なのは誰の目から見ても明らかだ。
それに、ブーンくんの夢の中で月神が洩らした言葉も気になるしね。
正直、僕の仮説は当たっていると思う」
(`・ω・´) 「だから、残された時間はほんの僅かしかないんだよ」
(`・ω・´) 「僕はもう老いぼれの身。君達と共に戦う事は叶わないけど、その代わり君達にこれを渡そう。
光石というんだけど、これは三つ揃わないと意味がない。
今僕はひとつしか持っていないから、なんとかしてすぐに、あと二つ用意しておく」
(`・ω・´)「自分の体を取り返すついでに世界を救ってくれる気があれば、
その間に君達は長旅の準備と心の準備をしておいてほしい」
(`・ω・´)「そして、太陽神の元から、またこの国に戻って来て欲しい。
その時までに、日蝕が始まるまであとどれだけ時間があるか調べておくから」
久しぶり支援
言いながらシャキンがエプロンのポケットから出したのは、透き通るような淡いオレンジ色の鉱石。
その鉱石を見たトソンと兄者が、不意に声を上げた。
(゚、゚;トソン「シャキンさん、僕もこれに似た鉱石を持ってる!」
(;´_ゝ`)「光石…東の大国で、俺と弟者が盗んで来た奴か!?」
シャキンの光石の隣に、少々小ぶりの光石が置かれた。
加工され、ネックレスになってはいるが、その光石の輝きは失われずにいた。
これはトソンが妹のしぃに貰ったものだ。
続いてシャキンの隣に置かれた光石は、かなりの大きさ。
綺麗に磨かれ、品質としても効能としても申し分ないとシャキンは言った。
この光石は、兄者が弟者と一緒に盗んできたものだ。
(`・ω・´;)「これは…」
(`・ω・´;)「ブーンくん、君は類い稀なる幸運の持ち主のようだ。こんな高価な鉱石が、一度に三個揃うことは滅多にない」
(`・ω・´) 「太陽神が、君達を歓迎してるのかもしれないね」
(∪ ^w^)「…シャキンさん、僕は行きますお」
(∪ ^w^)「僕は元より後戻りなんて出来ないんですお。後戻り出来ないなら、進むしかない」
(∪ ^w^)「月神に、会ってきます」
(゚、゚トソン「…」
ブーンの言葉を黙って聞いていたトソンが、テーブルの光石を眺めながらおもむろに口を開く。
(゚、゚トソン「乗りかかった船だ。
ブーン、君の旅に、僕も一緒に連れて行ってくれないか?」
トソンが、机の中心に手を置いた。
( ´_ゝ`)「『大泥棒が世界を救う』なんて、カッコよすぎで世の中の女が黙ってないな」
続いて兄者がトソンの手の上に自分の手を重ね、
('A`)「俺も行こう。ひとつ、月神に文句を言いたいことがある」
ドクオが兄者の手の上に、自分の手を重ねた。
(∪ ^w^)「行くお!」
そして、ドクオの手の上に―――
真っ白い毛に覆われた、犬の脚がそっと乗せられた。
(∪ ^w^)「そうと決まれば、この石を一体どうするんですかお?」
(`・ω・´) 「うん。これから、ブーンくん達には太陽神に会ってもらう。
一番月神について詳しく知ってるのは、太陽神だろうし、これからについて明確な指示もしてくれるだろうから」
(∪ ^w^)「分かりました」
(`・ω・´)「じゃあ、太陽神が住んでいる城について話すからよく聞いてね」
(`・ω・´)「この国から北上すると、三つ、等間隔に並んだ小さな集落がある。
その集落にはそれぞれ光石を置く台座があるはずだから、四日後の日の出に合わせて光石をその台座に置くんだ」
(`・ω・´) 「四日後は新月の日。月神の力に邪魔される事はないと思う。
それまでは、色々と邪魔が入るかもしれないけどね…」
(`・ω・´)「古い口伝によれば、光石は太陽神を呼び寄せる石。
定められた台座に置けば、太陽神は応えてくれる……らしい。光石は人を選ぶけど、きっと君達なら大丈夫だ」
(`・ω・´) 「これは、今では誰もやらなくなった古い古い言い伝えだけどね」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:05:00.89 ID:JMup1ZntO
(`・ω・´) 「いいかい? 光石を置くのは四日後の日の出に合わせて。それ以外ではきっと、月神の刺客が全力で邪魔しに来るかもしれない」
シャキンが念を押し、3つの光石をブーンに預けた。
(∪ ^w^)「分かりました。後ひとり足りない仲間を探したら、すぐに出発しますお」
光石を受け取ったブーンが、店の扉の前に座る。
早く行動したくて仕方が無い、といった様子だ。
( ´_ゝ`)「…ブーン、お前は台座の所へ行け。俺は弟者を探す」
店の扉の前で伸びをするブーンに、兄者が言った。
ブーンは驚いたように目を丸くさせ、兄者の足元へ戻る。
(∪;^w^)「そんな訳にはいかな( ´_ゝ`)「シャキンさんのいう事が全て当たっていたとしたら、時間がないんだろ?」
( ´_ゝ`)「弟者を探すのにそんなに人手はいらねぇよ。宗男辺りにでも手伝ってもらえるし」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:07:30.99 ID:JMup1ZntO
(∪ ^w^)「お……」
(∪ ^w^)「……」
(∪ ^w^)「…分かったお。僕達が戻ってくるまでには、弟者を見つけておくんだお!」
( ´_ゝ`)b「ああ」
(`・ω・´)「じゃあ、国の門まで見送るよ。もう発つんだろう?」
(∪ ^w^)「はいですお!」
ブーンが大きく返事をし、椅子に座ったままだった4人は一斉に立ち上がった。
ドクオが建てつけの悪い扉を開き、その隙間からブーンは外へと飛び出す。
色とりどりの飾りが施された屋台から漂う匂いも、元気に笑っていられる人々も、太陽あってこそ。
優しく出迎えてくれた太陽の光を浴び、ブーンたちは国の門を目指して早足で歩き出した。
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24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:09:16.12 ID:JMup1ZntO
::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ξ゚听)ξ「あ、来たわ!」
从 ゚∀从「ブーン!」
(,,゚Д゚)「遅ぇぞゴルァ!」
入国審査をした門の前でブーンたちを待っていたのは、
(,,゚Д゚)「ん? 知らない奴がいる」
ギコ。
从 ゚∀从「あまりにも遅いから、もう先にどこかへ行っちまったかと思ったぜ」
ハイン。
そして、
ξ゚听)ξ「こんな日差しの下で待たせるなんてね」
何故か踊り子の衣装から、普通の服へ着替えているツン。
(∪ ^w^)「ちょっと待て、何でツンがいるんだお? 君はVIPに移住するんじゃξ゚听)ξ「着いてくわよ」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:11:36.61 ID:JMup1ZntO
ξ゚听)ξ「間接的とはいえ、ニュー速を壊滅し、デレを誑かした月神に一発お見舞いしてやるわ」
(∪;^w^)「い、いいかおツン? ちょっと事態は僕が考えてたよりも壮大になってて―――」
ξ゚听)ξ「文句は言わせないわよ」
(`・ω・´) 「これはこれは、ブーンくんには随分と仲間が沢山いるんだね。
仲間がいるに越したことはないと思うよ。彼女に戦闘の心得があるのなら、連れて行ってもいいんじゃないかな」
どうやってツンを説得しようか考えあぐねていたブーンの後ろから、シャキンが口を挟んだ。
彼の言葉を聞いたツンが、大きく頷く。
ξ゚听)ξ「戦えるわよ、私だって」
(∪ ^w^)「でも(゚、゚トソン「ブーン、こんなところで考えているよりも、とりあえず先を急いだ方がいいんじゃないか?」
(∪ ^w^)「でm从 ゚∀从「何があった? 何がどうしてどうなった?」
(∪ ^w^)「話をk(,,゚Д゚)「ブーン、お前なんかしばらく見ないうちに疫病神に取り憑かれてるぞ」
('A`)「二回目……」
(∪ ^w^)「h( ´_ゝ`)「自分の身守れるんだったら、俺も別にいいと思うけどな」
(∪ ^w^)「ξ゚听)ξ「はい決定決定。これから私も月神に会う為に一緒に行きます」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:14:52.20 ID:JMup1ZntO
ξ゚ー゚)ξ「よろしくね」
発言の機会すら満足に与えられなかったブーンが、ようやく自分の意見を言う事が出来たのは、
シャキンと兄者に見送られてVIPから離れた頃だった。
砂漠を真っ二つに割るように、VIP国からまっすぐ北へ伸びる一本の道。
綺麗に整備された石畳を歩きながら、ブーンは、
「話すら聞いてもらえなかった…」
とブツブツ独り言を呟いていた。
VIPに兄者を残し、ブーンの少し後を着いて歩くのは、ツン、ギコ、ハイン、トソン、ドクオの5人。
ξ゚听)ξ「そういえば、これからどうするの?」
初めて会ったトソンやドクオと瞬く間に意気投合し、他愛のない世間話に花を咲かせていたツンが、
1メートルほど前を歩くブーンの後姿に声をかけた。
(∪ ^w^)「このまま北へ進むと、途中で道が三つに分かれてるらしいんだお。
そこで光石を持ってる僕、トソン、ギコが分かれて、
後の三人はひとりずつ誰かに着いて行く、って感じかお」
ξ゚听)ξ「なるほど」
('A`)「トソン、置いてくぞー?」
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:17:44.27 ID:JMup1ZntO
(゚、゚トソン「あ、すまない。初めて見るものが多くて、つい目移りしてしまった」
(∪ ^w^)「おっおっ、じゃあトソンは、ギコたちのような精霊や妖精を見るのも初めてかお?
魔法とか魔術とか召喚とか、あまり見る機会もなかったのかお?」
(゚、゚トソン「あぁ。精霊も妖精も疫病神も、この目で見るのは初めてだ。
ただ、ずっと昔に魔術を見せてもらった事はあったな。機械と魔法を融合して出す召喚だろう?」
(,,゚Д゚)「まぁそんな感じだな」
('A`)「ねぇ、俺一応人間だからね? 勘違いしないでね? 陰鬱な顔してるけど、頑張って生きてるから」
地平線の向こうまで真っ直ぐ伸びる、一本の石畳。
それを辿るようにブーンたちは進む。
その足取りは遅くも速くもなく、四日後を待たずして、三つの集落に着けそうなペースだ。
見える範囲の砂の海に荒れた様子はなく、砂嵐や塵旋風もここらではあまり起こらないらしい。
至って平和な道中、後ろで繰り広げられる魔法や魔術の話を小耳に挟みながら、ブーンは北を目指して歩き続ける。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:19:29.92 ID:JMup1ZntO
一度、石畳の脇で野宿をした。
月が煌々と砂漠を照らしていたが、特に砂に異常は見られず、結局その夜は静かに更けていった。
そして翌朝。
从 ゚∀从「一度一緒にサボテンをブッ飛ばしたけど、レモナなんかは魔術の才能ありそうだったな」
ξ゚听)ξ「あんなに小さいのに、凄いわね。そういえば、この前―――」
ブーンの少し後ろで尽きる事無く広がる話が、専門的なものから脱線した頃、
(∪ ^w^)「!」
ブーンの目に、三叉路が小さく見えた。
(∪ ^w^)「もうそろそろ三叉路だお。ここから先は、二人一組で行動する。
光石を集落の台座に置くのは、明後日の日の出と共にだお」
('A`)「時間を気にしなきゃなんねぇな」
ブーンたち一行は、三叉路の前で足を止めた。
(∪ ^w^)「石を置いた後、どうなるかは分からないけど…。
シャキンさんの話では、『太陽神の城が現れる』らしいお。
城が現れたら、各自そこへ向かって合流する。それでいいおね?」
(,,゚Д゚)「いいと思うぜ」
(∪ ^w^)「じゃあ、僕は左の道に――――」
ブーンが左へ続く道へ移動した瞬間。
突然何の前触れもなく、ブーンたちの周りを囲むようにして、砂が地中から空高く吹きだした。
从 ゚∀从「!」
(゚、゚トソン「あ、凄い。砂漠はこんな事も起きるのか」
(;'A`)「違う違う! 化け物に今、囲まれてるんだよ!」
(∪;^w^)「みんな気をつけるお!」
今もまだ噴きあがり続ける砂を警戒し、ブーンは姿勢を低くとった。
自然と背中合わせの状態になっていた5人も各々の武器を構え、来たる攻撃に備える。
(;'A`)「くそ、砂が目に…」
上から絶え間なく降り注ぐ砂に視界を奪われ、ドクオは思わず目を閉じた。
そして、その時を待っていたかのように、砂のシャワーは突然ぱたりと止む。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:32:06.02 ID:JMup1ZntO
辺りには不気味な程の静けさが戻り、ブーンたちを取り囲む緊張も最高潮に達していた。
(∪;^w^)「……」
砂のシャワーが止んで、数秒後。
僅かな地面の振動を、勘と共に感じ取ったブーンが突然叫ぶ。
(∪ ^w^)「下だ!」
ブーンの言葉が終わるか終わらないか。
危険をいち早く察知した彼の言葉に反応して、5人はその場から飛び退った。
それと同時に、今まで全員が背中合わせで立っていた場所に大きな穴が空く。
まるで地面が地中から喰われたかのように、その穴は深く、底が見えなかった。
ξ;゚听)ξ「! 何!?」
(∪;^w^)「巨大ミミズ!?」
一瞬だけ、砂煙のカーテンの向こう側で蠢いた不気味な影を認める。
ミミズの癖して、人間を脅かそうとする恐るべき俊敏さ。
そして、それは決して自分が不利になるであろう地上には姿を現さない。
まともに戦っても分が悪いと判断し、ブーンは大声で続けた。
(∪;^w^)「逃げろお! 逃げて、とにかく明後日の日の出までに台座に光石を!」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:33:04.40 ID:nl5YH+W50
支援しよう
(;,,゚Д゚)「分かった!」
(゚、゚;トソン「把握した!」
ブーンの指示を聞き、ギコとトソンは化け物の攻撃の隙を突いて逃げ出す。
そして、その後をハインとドクオも無事に追って行った。
ξ#゚听)ξ「この――――!!」
人数が減ったので、攻撃の的は自然とブーンとツンに集中する。
なかなか化け物の猛攻を切り崩せず、ツンは攻撃を防ぐので精一杯だ。
(∪;^w^)「くそおおおおお」
しかし、ブーンもあまり余所見はしていられない。
逃げ出すタイミングを窺う暇もなく、集団でミミズは襲ってくるのだ。
ξ#゚听)ξ「うるぁあああああああ!!!!!!!」
化け物の猛攻にとうとうツンがキレた。
腰に手を伸ばし、提げていたホルスターからごつい拳銃を引っ張り出す。
撃鉄を起こし、引き金に指をかけ、狙いも定めずにツンは引き金を倒した。
途端に辺りに響き渡る、耳を劈くような轟音。
銃弾はツンの手近にいた化け物の頭を寸分狂わず射抜いた。
化け物は、その音の凶悪さと銃弾の威力に恐れを為したようだ。
一瞬だけ、猛攻の手が止まる。
その隙を見逃さずに、ブーンは横からツンの首根っこを銜え、化け物たちの攻撃圏内から素早く三叉路の左へ退散した。
トソンとドクオは真ん中へ、ギコとハインは共に右の道を行ったようだ。
もう豆粒ほどに小さくなったその後姿を横目に、ブーンはツンをぶら下げたまま走って行った。
34 :
◆oC5Ka9HRMI :2009/12/03(木) 20:39:58.77 ID:JMup1ZntO
十二話『光石』終わり
支援ありがとう!ございました!
お久しぶりでした。
やっぱ投下するタイミングが最悪だったな!
Connectきてるもんね!
ここに来てからでアレなんですが、一応鳥つけときます!
なんかあったらどうぞ!
久しいね
支援
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/03(木) 20:58:46.58 ID:JzCtA0lTO
晒しあげ
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
乙!