1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
代理
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:08:39.66 ID:QKPtqF730
わーい
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:11:12.99 ID:QKPtqF730
俺は親父が嫌いだ。
遊び盛りな子供だった時も、お袋が死んで父子家庭なったあとも、俺は親父に遊んでもらったことが一度も無かった。
平日は仕事、休日は外で大人の付き合い、家にいることなんてほとんどなかった。
たまに顔を合わせれば厳めしい表情で俺を睨み、それが怖くて面白くなくて、俺は親父を避けていた。
親父も俺を避けていた。
食事は各自で自分の分だけ作り、一人黙々と食べる。
早朝も深夜も親父は家にいなかった。
同じテーブルで食事をしたことなど、皆無だった。
授業参観にも、運動会にも、入学式にも、卒業式にも。
親父は一度も現れたことがない。
金を稼いで俺を養ってくれたことに感謝はするが、尊敬はできない。
それが息子としての、正直な感想だ。
休日に父親とキャッチボールをする。
そんな話は都市伝説だと信じていた。
だから俺は高校を卒業すると故郷を出て就職し、気がねない一人暮らしを始めた。
それから一度も、実家に帰ったことはない。
必要がないと思っていたからだ。
そんな俺のもとに、つい先日、地元の病院から電話があった。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:13:05.35 ID:QKPtqF730
親父が、倒れたそうだ。
('A`)と親父のようです
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:15:57.33 ID:QKPtqF730
数年ぶりに訪れた故郷は、やはり懐かしかった。
見慣れた風景の中に点在する、見覚えのない建物が、ひどく不自然に感じられた。
('A`)「変わったなぁ・・・ま、当然か・・・」
俺が今回職場からいただいた有給は三日間。
病院からの連絡を受けた時は、親父の見舞いになどいくつもりはなかったのだ。
話によると、親父は命に別条はなく、倒れたのは老いと過労のせいだろうとの事だったからだ。
俺が見舞ったところでどうなるわけでもない。
親父と話すことなんかないし、第一どうやって話せばいいのかすら分からない。
運が悪かったのは、その電話が、俺の職場にかかってきたことだった。
支援
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:16:10.60 ID:HtYgzhta0
小遣いはどうしてたの(´・ω・`)?
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:16:43.67 ID:QKPtqF730
(,,゚Д゚)『鬱田、今の電話、なんだ?』
('A`)『はぁ・・・病院からです』
(,,゚Д゚)『なんだ、お前、どこか悪いのか?』
('A`)『いえ、地元の病院からで・・・』
(,,゚Д゚)『身内か』
('A`)『はい、親父です。でも大丈夫ですよ。明後日にも退院できるそうなので』
(,,゚Д゚)『何言ってる。すぐ見舞いに行け』
('A`)『はい?』
(,,゚Д゚)『行けよ。有給があるだろ。たまには親に顔見せてこい』
('A`)『でも・・・』
(,,゚Д゚)『上司命令だ。明日、朝一番の電車に乗れ』
(,,゚Д゚)『いいな』
('A`)『・・・』
(,,゚Д゚)『さぁて、仕事仕事』
('A`)『・・・はぁ』
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:18:48.18 ID:QKPtqF730
('A`)「有難迷惑ってのは、こういうことを言うんだろうな」
一応見舞いということなので、俺は駅前の花屋で適当な花を買った。
ややくすんだ外壁の病院を前に、俺はため息をまんべんなく吐きだした。
ここまで来てしまったのだから、仕方がない。
気が乗らないが、行くしかないだろう。
受付で親父が入院している部屋の場所を聞き、看護師さんの笑顔に見送られて、俺は目的地へ向かう。
すぐに退院できるということなので、相部屋だ。
どっちにしろ、あの親父に一人部屋は贅沢という物だろう。
('A`)「失礼します・・・」
横開きのドアをゆっくりと動かし、病室を覗き込む。
いくつかのカーテンで細かく仕切られた部屋の、一番奥。
窓際のベッドの上に、親父はいた。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:21:14.69 ID:QHGiN+b5O
しえ
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:22:29.23 ID:QKPtqF730
(`・ω・´)「・・・」
親父は上体を起こして窓の外に目を向けていた。
血管の浮き出た腕の腹に点滴を吊るし、白髪の混じった後頭部をこちらに向けている。
('A`)「親父」
他の患者の迷惑にならない程度の声で、親父を呼んだ。
親父は一瞬間をおいて、俺に顔を向けた。
(`・ω・´)「・・・あぁ」
('A`)「見舞いに来た」
(`・ω・´)「・・・」
('A`)「これ、東京バナナ。わりとうまいよ」
(`・ω・´)「あ、ああ・・・」
('A`)「花も持ってきた。看護師さんに活けてもらって」
(`・ω・´)「ああ」
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:25:07.11 ID:QKPtqF730
('A`)「調子はどう?」
(`・ω・´)「・・・悪くない。すぐに退院できる」
('A`)「そう」
平静を装っているけど、口の中はカラカラに乾いていた。
長い時間をかけて深い溝を掘ってきた俺たちにとって、会話というものが、不自然に感じてならなかった。
まるで馬鹿げた芝居をしているような気分だ。
('A`)「それじゃあ・・・」
(`・ω・´)「あ、ああ」
('A`)「俺は行くよ」
(`・ω・´)「毒男、どれくらい、こっちにいるんだ」
('A`)「明後日の昼には帰るよ」
(`・ω・´)「そうか、うむ」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:27:30.62 ID:HtYgzhta0
ねぇ、小遣いは(´・ω・`)?
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:27:42.25 ID:QKPtqF730
(`・ω・´)「家の鍵は、持ってるか」
('A`)「持ってるよ」
('A`)「じゃあ」
(`・ω・´)「そうだ、毒男」
('A`)「なに?」
(`・ω・´)「風呂、掃除してないんだ」
('A`)「俺がしておくよ。他にすることもないし」
(`・ω・´)「毒男」
('A`)「うん?」
(`・ω・´)「お前の部屋、そういえば、カーテン、代えたんだ」
('A`)「そう」
(`・ω・´)「土産と花」
('A`)「あ、うん」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:30:14.89 ID:QKPtqF730
>>14 小遣いなんて貰ってないよ!
高校上がってからバイトしたよ!
上京する時の金はさすがに貰ったよ!
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:31:50.23 ID:QKPtqF730
(`・ω・´)「ぁ・・・ありがとうな」
('A`)「・・・う、うん」
('A`)「じゃあ」
逃げるように、病室を後にした。
病院を出て実家へ向かう道中、俺の頭の中は言いようのない感情で溢れていた。
父親と息子の会話。
何もおかしいところはない。
世界中のどこにでも転がっている、ありふれた風景だ。
('A`)「・・・」
少年時代、うんざりするほど駆け抜けてきた道を歩く。
陽は傾き始め、懐かしい故郷の夕日があたりを赤く照らしていた。
気づけば、俺はすでに実家の玄関の前に到着していた。
無意識に鍵を取り出して、久しぶりに見るカギ穴に差し込む。
横にひねれば、数えきれないほどに聞いたパチンという解錠音がこだまする。
扉を開けて家に入り、靴を脱ぐ。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:35:43.86 ID:QKPtqF730
('A`)「ただいま」
懐かしい匂い。懐かしい空気。懐かしい光。
台所へ行き手を洗い、迷わず自室へ向かう。
部屋のドアに吊るされた木の板には、『俺の部屋』と書かれている。
ドアを開けるたびにそれが跳ねて、コツコツという音を立てる。
あの頃の記憶が蘇る。
('A`)「へぇ・・・案外きれいだな」
数年ぶりの自室は、俺が最後に出ていった時と、あまり変わっていなかった。
猫足テーブル、勉強机、パイプベッド、クローゼット。
('A`)「ああ、あったなあ、こんなの」
壁に立てかけられたアコースティック・ギターには、錆だらけの弦がしっかりと張ってあった。
高校生になってすぐにバイトを始め、その初給料で買ったものだ。
ずいぶん熱を入れていた気もするが、今では一曲も弾けないだろう。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:36:43.90 ID:427bbzGwP
C
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:38:04.22 ID:QKPtqF730
ブラウン管テレビの前に置かれた二人掛けのソファーが、居心地悪そうに佇んでいた。
彼女が出来たときに役に立つと言われ、近くの家具屋で購入。
シングルソファーで良かったと気づいたのは、高校三年の冬だったと思う。
('A`)「本当に・・・」
ベッドの下に隠していた灰皿は、今でも変わらずにそこに置いてあった。
今思えば匂いや壁に染みついたニコチンの色でバレバレなのだが、親父が俺の部屋に近付く事はなかったから、まあいいのだろう。
('A`)「・・・懐かしいな」
親父が言っていた通り、カーテンが新しくなっていた。
その生地を透して、夕陽が部屋をオレンジ色に染めている。
なぜ親父はカーテンを替えたのだろうか。
俺が帰ってこなければ、何の意味もなかったのに。
('A`)「・・・」
('A`)「・・・風呂掃除・・・するか」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:41:42.80 ID:QKPtqF730
洗剤まみれのスポンジで風呂桶を擦りながら、俺は考えていた。
ひょっとして――――
俺は、親父に会いたかったのだろうか?
('A`)「・・・まさか」
頭を振って、奇妙な感情を追い払う。
まさか、そんなはずない。
古い記憶を掘り起こしても、親父との良い思い出など、一つもないのだから。
('A`)「・・・」
いつだったか、俺は一度だけ、親父にねだったことがあった。
(・A・)『お父さん、キャッチボールがしたい』
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:43:59.74 ID:QKPtqF730
('A`)「はは・・・あの時はまだ『お父さん』だったっけ・・・」
その時の親父の態度は、息子にとって残酷に過ぎるものだった。
親父はいつもの顔つきで、俺から顔をそらし、玄関の扉を開けて言った。
(`・ω・´)『そんな時間、ない』
(・A・)『でも、でも、友達はみんな、お父さんとキャッチボールしてるよ』
(`・ω・´)『ウチには』
(`・ω・´)『グローブも、ボールも、ない』
('A`)「ひーまー・・・だー・・・」
風呂掃除を終えて、何をするでもなく廊下をぶらついた。
実に暇だ。
地元の友人に連絡を取ろうとも思ったが、考えてみれば皆進学やら就職やらで、この土地を出て行ってしまっていた。
正月でもないのに地元で暇そうにしている人間は、俺ぐらいしかいないだろう。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:45:48.75 ID:ZJ8rkG0eO
支援
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:46:27.26 ID:QKPtqF730
('A`)「ん・・・」
とある光景が目に留まる。
廊下の突き当たりに、親父の部屋があった。
親父の寝室兼書斎であるその部屋は、その昔、毒男少年にとって悪魔の根城のように映ったものだ。
今ではなんの脅威も感じない。
当然だ。
俺だって大人になったのだから。
考えてみれば、俺は親父の事をあまり知らない。
仕事の内容や、休日に何をしていたのかなど、知る術もなかった。
普段何を考え、何を思っていたのか。
俺の事を、どう思っていたのか。
それを知りたいと願うのは、息子の俺にとって、罪にはならないだろう。
俺は意味もなく忍び足になって、ドアノブに手をかけた。
('A`)「失礼しまー・・・す」
部屋の中は、実に雑然としていた。
壁を覆う本棚と、それを埋める本の数々。
隅に置いてあるベッドが、やけに小さく見えた。
木製の大きな机には、図面の引かれた紙や資料が束になって重ねられている。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:49:05.38 ID:OXBgOH+rO
支援
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:53:32.95 ID:QKPtqF730
('A`)「・・・」
その中に埋もれるように、数冊の分厚い本が並べて置かれていた。
表紙に書かれた、『DIARY』の文字。
親父の日記だった。
('A`)「こんなの書いてたのかよ・・・まじめだねえ」
俺の独り言が、親父の部屋の中に響く。
日記を持つ手は、少し、震えていた。
('A`)「・・・」
最初のページをめくってみた。
少しだけ、少しだけだ。
チラッと眺めて、それで終わりにする。
('A`)「えーと・・・・」
最初の日記の日付は、十年以上前のものだった。
お袋が死んで数か月後から、この日記は始まっていた。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:55:30.12 ID:QKPtqF730
『3月25日』
『今日から日記をつけようと思う。理由は特にない。
ただ、このままではいけない。
あいつはいなくなってしまったが、まだ毒男がいる。
来年には、毒男も小学生だ。』
('A`)「・・・ふうん」
一日分の文章は、それほど長いものではなかった。
内容は、大抵が仕事の話だった。
日記が面白くなければいけない理由はないが、実に読みごたえのないものだと言わざるを得ない。
何気なくページをめくっていくと、ひとつ、目を引く記述があった。
『9月25日』
『今日は毒男の運動会があった。
今年は初めて間に合うと思ったのだが、仕事のトラブルで遅れてしまった。
運動場に着いた時には、もう閉会式も終わり、生徒たちも帰っていた。』
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 20:58:47.81 ID:QKPtqF730
('A`)「・・・本当かよ」
呟きが漏れる。
文字は続いていた。
『息を切らしてグラウンドに駆け込んできた俺を、残っていた先生方は胡散臭そうな目で眺めていた。
仕方ない。俺が悪いのだ。
毒男は果たして、頑張ったのだろうか。』
('A`)「・・・ふん」
『話を聞きたいが、最近では目も合わせてくれない。
汚れた運動服も、毒男は自分で洗濯をしていた。
申し訳なくて、声もかけられない。
来年こそは、絶対に間に合おうと誓った。』
('A`)「・・・」
ページをめくる。
俺の指の動きは止まらなかった。
『毒男』という文字を探して、俺は紙の上に指を滑らせた。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:00:56.31 ID:QKPtqF730
『3月14日』
『今日は毒男の誕生日だ。
10歳になった。
毒男が生まれたあの日から、もう10年が経った。
しかし祝ってやる時間がない。
祝ってやる言葉が出ない。
会社の人間にはどんなことでも言えるのに、実の息子に「おめでとう」の一言さえかけてやる事ができない。』
『今日、会社へ行く前、毒男に話しかけられた。
キャッチボールがしたいと言われた。
でもやはり、そんな余裕はなかった。
そもそもこの家には野球道具がない。
断った時の毒男の顔を、まともに見ることができなかった。』
日記を持つ手が震える。
『出張先で、小さなスポーツ店を見つけた。
ふと毒男の言葉を思い出して、立ち寄ってみた。
子供用のグローブと大人用のグローブ、それと軟式の野球ボールを買った。
同僚に茶化されたが、構わなかった。』
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:03:04.38 ID:QKPtqF730
親父。
あんたはどうして―――――
『家に帰ったら、毒男にグローブを渡そう。
キャッチボールをしようと、提案してみよう。』
('A`)「どうして・・・渡してくれなかったんだよ」
机の引き出しの、一番下。
その奥に、二つのグローブと野球ボールがひとつ、埃をかぶっていた。
古いけど、傷一つない。
俺はそれを手にとって、また日記の続きを読んだ。
支援
こういうSSもいいよね!
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:08:26.59 ID:QKPtqF730
『今日、毒男に「親父」と言われた。
「お父さん」じゃなく、「親父」と言われた。
そのことが嬉しくて、涙が出そうになった。
高校生の男子は父親の事を親父と呼ぶものだそうだ。』
『距離が、近づいた気がした。』
『今日は毒男の15歳の誕生日だ。
勇気を出して、毒男にプレゼントは何が欲しいか、聞いた。』
何もいらねえ、自分で買う。
バイトしてるんだ。
俺はその時、そう言った。
『ギターを買ったらしい。
毒男の部屋から、今も音が聞こえてくる。』
『頑張れ。お前には絶対に音楽の才能がある。』
『いつか俺に聴かせてくれたら、いいな』
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:12:54.46 ID:QKPtqF730
『毒男の就職が決まった。
東京に行くらしい。
俺には何の相談もなかった。
仕方ない。
こんな父親だから。』
『この歳になって、夢ができた。
里帰りした息子と、酒を飲むこと。』
『どうか健康に気をつけて。』
( A )「・・・」
『毒男がいなくなった。
この家は、俺一人で使うには広すぎる。
息子が出て行ってから、ようやくその事に気づいた。
夜中に家に響いていたギターの音は、もう聞こえない。
たまに俺に向けられる無愛想な顔は、もう見ることができない。
あいつの履き潰されたスニーカーも、着古した学生服も、錆だらけの自転車も。』
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:16:21.70 ID:Dq2e++UV0
このスレ読んで切なくなって親父に電話したけど相変わらずダメ親父だった。金返せ
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:16:22.90 ID:QKPtqF730
日記の上に、ぽたぽたと、水滴が落ちた。
それが自分の涙だと気づくのに、少し時間がかかった。
(;A;)「・・・」
『妻と息子を失ったこの家は、まるで俺のための棺桶のようだ。
寂しくて冷たい、大きな箱。』
『この日記も、今日で終わりにしようと思う。』
『毒男、すまなかった。いつか、また会う日まで』
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:19:19.59 ID:sAGsd7d2O
これは泣ける
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:22:49.50 ID:QKPtqF730
退院した親父を、病院へ迎えに行った。
すこし足取りが不安定な親父を車に乗せ、病院の駐車場をあとにした。
助手席に座る親父は、いつもの親父だった。
('A`)「親父」
(`・ω・´)「・・・ん」
('A`)「体はどう?」
(`・ω・´)「ん、問題ない」
('A`)「風呂、掃除したから」
(`・ω・´)「そうか」
('A`)「カーテン替えてくれて、ありがとう」
(`・ω・´)「ん」
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:25:30.58 ID:9wkAE3HcO
良い話しだ
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:25:32.27 ID:biL5oNEFO
電車の中でウルウル支援
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:27:06.18 ID:HtYgzhta0
ここでもあくまで突っぱねる親父がみたい
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:27:19.37 ID:QKPtqF730
('A`)「・・・」
('A`)「親父」
(`・ω・´)「なんだ」
('A`)「少し寄り道してもいいかな?」
親父はゆっくりと俺に顔を向けた。
どこへ行くのか、聞きたいんだろう。
でも俺は何も言わなかった。
いけばわかるさ。
車を止めたのは、自宅の近くにある公園の脇だった。
太陽は青空にのんびりと浮かんでいて、時折雲に隠れて地上に影を作った。
ベンチには老人と猫が並んで座って、眠そうに欠伸をしている。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:29:46.13 ID:QKPtqF730
('A`)「キャッチボールしよう」
車に積んでいたグローブの片方を、親父に向かって投げる。
戸惑いを押し殺したような表情で、親父はそれを受け取った。
俺は子供用のグローブを左手にはめ、何度か右拳で叩いた。
('A`)「行くよ」
(`・ω・´)「・・・む」
('A`)「ぃよっと」
放物線を描いて飛んだボールは、親父のグローブに当たって、地面に落ちた。
親父はしばらく伸ばした腕を見つめて、それから屈んでボールを拾った。
(;`・ω・´)「・・・」
('A`)「おい親父、しっかりしろよ」
(;`・ω・´)「あ、ああ・・・すまん」
('A`)「このグローブ、小さくてさ。手が痛いよ」
(;`・ω・´)「そ、そうか・・・」
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:33:40.61 ID:9wkAE3HcO
良い親子だ
生まれてこのかた親父とキャッチボールなんかしたことないわ
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:34:46.83 ID:QKPtqF730
(;`・ω・´)「いくぞ、毒男」
ぎこちなく振りかぶる親父。
もうすでに顔は汗だくだった。
('A`)「親父、スポーツ苦手だろ?無理すんなよ」
(;`・ω・´)「うりゃっ」
親父が放ったボールはなぜか俺の方ではなく、白い雲を浮かべた青空に向かって舞い上がった。
やがてそれは重力に引かれて地上に落ち、肩で息をする親父の足元を転がった。
('A`)「おうい、ぜんぜん届いてないぜ」
(;`・ω・´)「わ・・・悪いな」
('A`)「やっぱり、病み上がりには辛いかな」
('A`)「また明日やろう。帰ろうか、親父」
(;` ω ´)「・・・」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:34:59.13 ID:BymZT1JXO
PC規制中だが思わず携帯開いちまった
泣ける…
支援
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:36:46.45 ID:QKPtqF730
(` ω ´)「悪かった・・・毒男・・・」
(`;ω;´)「こんな父親で・・・悪かった・・・」
親父は泣いていた。
地面に膝をついて座りこみ、大粒の涙を流していた。
無精髭の浮いた頬を伝ってこぼれおちた涙が、乾いた地面に染み込んでいく。
子供のようにしゃくりあげ、長い時間をかけて溜まっていった言葉にできない感情が、嗚咽と共に溢れ出ていった。
(`;ω;´)「・・・すまないな・・・毒男・・・」
――――――そうだ。
家に帰ったら、一緒に風呂に入ろう。
背中を流し合って、語ろう。
酒を飲んで、酔っぱらって、笑い合おう。
伝えられなかったことを伝えよう。
喧嘩だってするかもしれない。
構わない。すぐに分かり合えるさ。
俺たちは親子なんだから。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:38:10.24 ID:QKPtqF730
('A`)「親父」
あんたは俺の、かけがえのない、親父なんだから。
('A`)「家に帰ろう」
('A`)と親父のようです
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:38:21.15 ID:5LnpJ4cy0
支援
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:40:02.36 ID:HtYgzhta0
終わり・・・じゃないよな・・・?
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:40:08.71 ID:Dq2e++UV0
親父にガンバレとだけ伝えておくか
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:40:10.77 ID:9wkAE3HcO
支援
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:42:07.97 ID:BymZT1JXO
終わり…か?
あっさりな終わり方だがそれもまたいい
乙でした
泣かされたよ
ちょっと親父に電話かけてくるわ
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:43:14.18 ID:WD9kvr9jO
なんでオレが泣かなきゃいけないの?
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:44:41.46 ID:5LnpJ4cy0
あれ、終わり……?
乙、いい話だった。
明日実家へ電話かけるかな……
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:46:26.38 ID:QKPtqF730
え・・・その・・・終わりです
なんかすいません・・・
支援ありがとう。
親父もお袋も、大切にしましょう
いつまでも生きていてくれるわけじゃないのだから
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:52:42.34 ID:biL5oNEFO
乙
母ちゃんは大事にしようと思う
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 21:54:56.19 ID:OXBgOH+rO
乙
文章の量と感動って比例しないのな
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:01:52.33 ID:dcV1wwEx0
乙 こういうスレ見るたびに親はだいじにしようとおもう
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:02:47.71 ID:9wkAE3HcO
乙
長ければ良いというもんじゃない
読みやすい、良い短編だったよ
感動した
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:06:23.57 ID:aoJ0oF3FO
乙。泣いた。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:09:35.63 ID:SGKmkLL/0
ふむ。読みやすい
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:14:30.38 ID:kPGQ8VaRO
イイハナシダナー
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:23:14.09 ID:fyEacA0qO
不覚にもちょっと泣いたけど、よく考えたら俺母子家庭だった
乙 面白かったよ
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 22:28:45.93 ID:lSvmBWdtO
乙!
泣いた
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
>>1乙
感動したよ。
来月、親父の誕生日だったな…
もうずっと口きいてないけど、なんか買って行こう