1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :
2009/09/22(火) 02:10:26.14 ID:PQcuu3t80 避難所
2 :
前スレ1 :2009/09/22(火) 02:14:26.76 ID:SUCj4HiVP
>>1 すみませんでした。
「バイバイさるさん」ていう規制文章が・・・
ありがとうございます!
しえん
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:16:38.60 ID:MxK+qnTsO
寝落ちじゃなくて良かった
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:16:54.42 ID:PQcuu3t80
待ってたよ 適当に間をあけながら投稿してね。空けすぎる必要はないけど
7 :
前スレ1 :2009/09/22(火) 02:18:45.97 ID:SUCj4HiVP
>>3 ありがとうございます。
レス返したいんですけど、なぜか前スレ読み込めなくなってしまって
・・・続けますね。
何時間ウトウトしていたかは覚えていないけど、
突然、「请问!○△*□吗?」と、大荷物を抱えた女性に話かけられて飛び起きた。
俺を中国人だと思ったのか、いきなりの中国語だった。
女性は焦っているようで、半分泣きそうな表情で必死に何かを説明しようとしているが、
生憎中国語は全く分からなかった。とりあえず
「自分は日本人だから中国語は分からない」
「何か尋ねたいことがあれば落ち着いて欲しい」とたどたどしい英語で伝える。
すると泣きそうな顔が一層暗くなる。
英語が分からないのかと思うと、突然ノートを取り出して英文を綴りだした。
『友人と待ち合わせをしているが、自分の飛行機が遅れたために会えなかった。』
『電話の掛け方を教えてほしいが、英語が下手で相手にされない。中国人なら助けてくれると思ってあなたに声を掛けた。』
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:23:00.13 ID:fwDZ1Pf3O
バイ猿は時間だけじゃなくて、コメ挟まなきゃいかんかったような…。 1のレス無しでも、読んでる人は書き込み推奨。
ほいよ
中国人と間違えられたことにはイラっときたが、 初めて海外に来た時の不安な気持は自分も知っている。 身振り手振りでテレフォンカードの販売場所と公衆電話の使い方を教えてあげた。 暗かった顔が次第に明るくなり、公衆電話の前で 「Thank you」「謝謝」「アリガト」を繰り返し言われた。 垢抜けてはいないけど、かわいらしい子で、少しだけ照れくさくなった。 その子は受話器を持ち上げて「もう約束の時間を4時間も過ぎている。会えないかもしれない」とつぶやいた。 (英語話せるじゃん!)かなり訛っていたけど普通に理解できる英語だった。 やっぱりアメリカ人って下手くそな英語には冷たいのかなと思った。 (飛行機遅れたら待ち合わせも大変だよな・・・って、俺も待ち合わせしてたんだ!) この子に起こされてから、シャオルーの乗る飛行機の到着はまだチェックしていなかった。 掲示ディスプレーを見上げると、該当便は30分以上前に到着していた。 電話のプッシュボタンと格闘する女の子に『ごめん、もう行かなきゃいけない!』と伝える。 言って慌ててゲートに走り出そうとした次の瞬間、俺のポケットの中の携帯電話が着信音を鳴らした。 ディスプレーには【public phone】と表示されていた。 「ハロー?」俺が電話に出ると、公衆電話の前でその子が奇怪な顔をした。 まさか。。と思いつつ、受話器から聞こえる言葉を待つ。 女の子が公衆電話に向かって「もしもし。シャオルーです」というと、 俺の携帯から『もしもし。シャオルーです』と聞こえた。
しえん
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:26:58.87 ID:fwDZ1Pf3O
保守
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:28:40.36 ID:xqZOYdfS0
眠いけど最後まで見たいw
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:29:50.06 ID:SUCj4HiVP
>>all みんな、ありがとう 。・゚・(ノ∀`)・゚・。 笑ってしまうような偶然。 俺はその女の子−シャオルーの顔を見て微笑んだ。 シャオルーはまだ自分が誰に電話をしているのか分かっていなかったようだった。 俺は折れまがった画用紙をカバンから取り出して広げて見せた。 「We Welcome You, Xiaolu(小路)! 」の文字。 半分怒ったように恥ずかしそうに笑ったシャオルーの顔は印象的だった。 そのあとすぐにタクシーを捕まえて家に向かった。 タクシーの中で『‘友達’と待ち合わせてるって言わなかった?』と聞くと、 『知り合いじゃない人との待ち合わせをうまく説明できなかった。メールが中国語だったからてっきり中国人が来るのかと思ってたよ。声かける時は《あなたかも》とは思ったけど、日本人だったから・・・。』 とのこと。とりあえず無事に会えてよかったと、お互い胸をなでおろした。 シャオルーの荷物は物凄い量だった。 自分が渡米した時の3倍はある。彼女は紐で縛った布団まで持っていた。 「ベッドは部屋にあるのに。掛け布団もそんなに高くないから買えばよかったんじゃない?わざわざ大変だったでしょ?」と聞くと、「中国人からすると、掛け布団一枚分でも持ち込んだ方が安い」と返されバツが悪くなる。 「ごめんごめん、気にしないで。」彼女はそう言ってほほ笑んだ。
紫煙
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:31:19.34 ID:TN2TUCCWO
支援支援
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:31:41.58 ID:QBgh/nub0
今北産業
引きこもり 留学 若さゆえの過ち
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:33:16.93 ID:SUCj4HiVP
家に着き、シャオルーの部屋へ荷物を運ぶのを手伝う。 オーナーは不在だった。 ピックアップを押しつけて、自分は遊びに出ているらしい。 バイト時間を無駄にしたことをどうしてくれると詰め寄ってやろうと思ったのに残念だ。 荷物の運び入れも一段落して、シャオルーにお茶を淹れてあげた。 トシとチエが送ってくれたもので、チビチビと大切に飲んでいた日本茶だった。 シャオルーはお茶を飲みながらため息をついた。 これから始まる生活が不安で仕方ないんだろう。 ちょっと前の自分の姿と重なって見えた。 しばらくすると、シャオルーは北京に残してきた両親のことを思い出し、泣きだしてしまった。 『アメリカでも一人じゃないから大丈夫だよ。俺がいるから。』 驚くほど自然に英語で言葉が出た。冒険王と呼ばれて成長していたのかも知れない。 彼女の隣に座って手を温めるように握った。 体を抱き寄せると一瞬強張ったが、しばらくそのままでいると落ち着いたように俺に体重を預けてくれた。 女特有の、石鹸のような良い匂いがして、心臓が高鳴った。 最初は頭をなでているだけだったが、我慢できなくなって額に、頬にと唇を軽く付けた。 一度顔をはなして向き合うと、今度はシャオルーの方から唇を求めてきた。 服の中に手を入れて肌に触れると暖かくて軟らかかった。 そのままベッドの上に倒れ込んで絡み合った。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:34:56.62 ID:fwDZ1Pf3O
>18 そして栄光への道がキタ-!
ちょwwwwwっうぇwwwwwwwっうぇ何その行動力
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:36:21.19 ID:Lgb0BPvtO
( ゚Д゚)!? 会って間もないうちにヤったのかよwwwwwwwwwwwwwww 冒険王乙wwwwwwwwwwwwwww
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:39:08.34 ID:hR44qxQ0O
テラ冒険王wwwwwwwwww
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:41:42.10 ID:SUCj4HiVP
たぶん、こういうのって、勢いが物を言うんだろうか。 自分の場合は計画的にゆっく事を進めるよりも、思い切って当たって行く性分なんだと気付いた。 結局その日、出会ったばかりのシャオルーを抱いた。 緊張のせいか、彼女の中はほとんど濡れていなく、あまり気持ち良くはなかった。 向こうも痛かったんだろうか、抱き合った背中に爪を立てられ掻き毟られた。 コトが終わった後、激しい自己嫌悪に襲われた。 「相手の不安に付け込んだ」「痛がっても止めなかった」 本当に自分勝手なことをしてしまった。。そう思ったけど、たぶんこれは建前。 本音は「これから一緒に住む相手にこんなことして・・・面倒にならなきゃ良いけど」だったと思う。 この晩の出来事がこれからの生活に吉と出るか凶と出るか、大きな不安を感じた。 彼女も同じような事を考えていたと思う。 朝、『私はどうかしている』と、しきりにつぶやいていた。 シャワーを浴びると背中の爪痕が酷く痛んだ。
4
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:44:31.74 ID:fwDZ1Pf3O
なんかせつないな…
1度ドーテーを捨てると会ったばかりの女とも平気でヤるのか… 恐ろしやwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:50:52.68 ID:SUCj4HiVP
シャオルーは俺と同じ学校へ入学した。 一緒に学校へ行き、一緒に飯を食い、バイトの時間以外は四六時中行動を共にした。 幸い、シャオルーとの生活は心地よかった。 お互いにつたない英語でコミュニケーションを取るうちに、 いつの間にか俺は中国語訛りの、彼女は日本語訛りのオカシな英語を話すようになった。 ただ、彼女との毎日の生活の心地よさにかまけて勉強をおろそかにする自分に焦りを感じるようになっていった。 シャオルーが渡米してから数か月後、カレッジ卒業の時期がやってきた。 最終試験を目前にして俺の焦りはピークに達していた。 大学の合否が決まる、重要な試験だった。 勉強時間は何とか足りているはずだったが、不安がぬぐい去れなかった。 ここで落ちたら今までアメリカでやってきたことが全て無駄になる。 負け犬として帰国し、また日の当たらない生活に落ちるのだけは避けたかった。 俺は考えた挙句、一方的にシャオルーに別れを告げた。 彼女には相当にひどい仕打ちだと思う。 申し訳ないとは思ったが、なぜだか謝れなかった。 自分のキャパの無さを環境のせいにして正当化しようとした。精神的に未熟だった。 彼女は初めのうちは「別れたくない」と毎晩迫ってきた。 俺は極力家に帰らないようにし、バイトの後も深夜までカフェやファーストフード店で勉強し、 家には寝るためだけに帰った。 彼女も次第に俺を避けるようになっていった。 だけど、同じアパートに住んでいる限り、キッチンや洗面所でどうしても顔を合わせてしまう。 引越したかったが、オーナーとの契約期間が終わっておらず、 金が無かった俺は敷金が戻るまで住み続けなければならなかった。 ひとつ屋根の下、気まずい生活が続いた。
しえ
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:53:16.83 ID:Cy66HZtDO
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:53:29.78 ID:fwDZ1Pf3O
展開早ぇぇな! オマイを責める気はないけど、やっぱその子可哀想だ。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:57:27.92 ID:SUCj4HiVP
ある日、チエから電話が入った。 大学が決まったというめでたい知らせだった。 トシの方は残念ながら浪人すると言っていた。 心配してトシに電話したものの、トシはケロっとしていて 「一年後は志望学部のランクを上げて受験する」と言った。 俺は自分の試験を目前に控えていることを伝えた。 お互い頑張ろうと誓った。 その後俺は無事大学入学を果たした。 チエとトシに真っ先に連絡した。 二人とも祝福してくれた。 トシは「先、越されちゃったな」と笑っていた。 親も電話越しで泣いて喜んだ。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 02:58:29.61 ID:31ehIHTwO
支援
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:00:41.44 ID:fwDZ1Pf3O
入学おめ。 続き頼みます。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:03:33.60 ID:SUCj4HiVP
大学生活が始まり、仕送りのおかげで生活が多少楽になると、俺にも仲の良いといえる友達が出来た。 ダイスケ(仮)という日本人と、ナム(仮)・バリ(仮)というインドネシア人だった。 ダイスケは落ち着いた性格なんだけど、酒に弱く、飲むと目茶苦茶なことを平気でしでかす面白いやつだった。 意味の分からない美意識(自分ルール)を持っていて、よく分からないことで急に怒り出す熱い面もあった。 頭はそれほど良くないが、かなりの努力家で好青年だった。 また、空手を習っていたこともあり、武道をかじった者同士、妙にウマが合った。 ナムもバリも華僑3世というやつで、いわゆる金持ちの息子だった。 二人とも「金」に関する教育をずっと受けてきており、拝金主義者的なオーラを持っていたので、始めは好きになれなかった。 バイトの時給を聞かれ、素直に答えて嗤われることもあった。 「「俺たちならその三倍は稼げる」」と言われた。 腹が立ったけど、それまでずっと日本食レストランやカフェでの単純労働しかしてこなかったことを考えさせられた。 二人が親の七光りでなく、自分の力で人生を開拓しようと努力する奴らだったことも大きかった。 バリは学生の身で、完全歩合制の営業マンのバイトで月に5,000ドル(当時の為替で50万円以上)を稼いでいた。 とにかく喧しいやつで、口を開くとしゃべるのが止まらないタイプだったが、その分英語力もバツグンで、何よりユーモアのセンスがあった。 俺にセールスのバイトを紹介してくれたのもバリで、コツを教わりながら頑張るうちに俺の稼ぎは大きく変わった。 ナムはどちらかというと大人しい性格で、周りへの配慮を欠かさない出来た人間だった。 ナムはバイトであろうが事務職、管理職としての職種に拘り、キャリアアップを常に図っていた。 ナムは日本のアニメに詳しかった。思春期をアニメで殺した自分とは話がよくあった。 日本語は全く分からないくせに、ガンダムのセリフだけは異様なほどに暗記していた。 この三人は、カズ、トシ、チエと同じく、俺の生涯の親友となります。 思い出話もいろいろあるけど、エピソードは後ほど紹介させて下さい。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:07:32.48 ID:31ehIHTwO
しえん
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:08:47.29 ID:0AgJZTBo0
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:10:16.97 ID:SUCj4HiVP
ある日、トシから電話が入った。 トシの声色はなんとなく暗かった。 久しぶりのトシとの会話は嬉しかったが、バイトの時間が押していた俺は「またかけなおす」と言って電話を切った。 浪人生活で不安を抱えているんだろうなと心配になったが、俺はそのまま仕事に戻った。 俺はトシに電話する約束をそのまますっかり忘れた。 バイトも忙しかったが、大学生活は徐々に充実したものになっていった。 進学した大学には日本の大学と同様にサークルのようなものの勧誘会があった。 俺は剣道部を見つけてダイスケ・ナム・バリを連れて見学に行った。 練習風景を見ると久々に体が疼いた。 親に電話して「もう一度剣道やりたい」というと、わざわざ防具と竹刀を送ってくれた。 入部を決め、書類を提出するとマネージャーに『君は有段者じゃないか!明日の試合は是非出てくれ!』と言われ、入部翌日に試合出場が決まった。 たかだか初段、ブランクも長く弱小剣道部員だった俺に、クラブの期待が集まった。 試合当日、ダイスケ・ナム・バリの三人が冷やかしで見に来てくれた。 予選は一本勝負の団体戦。俺は次鋒を任された。 一回戦の相手は鈍重そうな白人。 ブランクはあっても、正直楽勝に思えた。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:10:18.57 ID:skDl4Ch20
…ケイケンって重要だわ
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:11:18.10 ID:fwDZ1Pf3O
新キャラ把握できねぇ。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:11:29.37 ID:xqZOYdfS0
自伝出版されたら買うレベル
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:15:04.20 ID:SUCj4HiVP
試合が開始される。 『シャァァァァァァラアアアアアアア!!!!』 白人剣士は咆哮を上げて突撃してきた。 俺は相手の体当たりを正面から受けとめようとして、無残に吹き飛ばされてよろける。 次の瞬間 ゴスッッ!!!! と凄まじい衝撃が頭から首へ走った。 一瞬だった。 三名の審判全員は彼の見事な面に一本の旗を揚げた。 俺はピザデブ白人剣士に秒殺された。 久しぶりに半端じゃなく落ち込んだ。 ダイスケ・ナム・バリの三人は俺を慰めようと必死だった。 試合後、首がしばらく痛んだので病院に行くと、ムチ打ち患者にするような大げさな手当をされた。 その日、剣の道を完全に捨てた。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:17:08.94 ID:fwDZ1Pf3O
久々に爆笑したww
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:17:55.70 ID:31ehIHTwO
支援
今の俺にはそんな屈辱味わったらもう二度と立ちあがれないレベル
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:23:54.40 ID:SUCj4HiVP
>>all こんなおそくまで付き合ってくれて本当にありがとう。 ここから鬱展開入りますので、お願いします。 数日後、突然チエが真夜中に電話をしてきた。 チエは終始泣きっぱなし、「トシが・・・トシが・・・」と繰り返すばかりで、 何を言っているのかさっぱり分からなかった。 (別れたのかな・・・嫌な予感だ。)その予感が的中する程度まだならよかった。 「どうしたん?落ちついて言ってよ」と何度もなだめて話を聞きだした。 「・・・死んじゃった」 チエは嗚咽しながらその一言を発した。 「・・・・え?」時間が止まったみたいな感覚を味わった。彼女の言葉の意味が分からなかった。 泣きじゃくるチエに「泣いてたんじゃ分かんないって!何言ってんだよ!」と怒鳴りつけた。 チエは「トシは最近様子が変だった」と言った。 事故で怪我して、入院していたことを聞かされた。 そんなこと俺は全く知らなかった。 院外外出中に階段から転落死した、自殺かもしれないとチエは言った。 それを聞いて、何か喋ろうとしたけど、出るのは意味不明な叫び声だった。 お互い会話にならなくなっていた。 口にしょっぱいものが入って、泣いている自分にその時気付いた。
支援
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:25:12.88 ID:fwDZ1Pf3O
は? マジかよ
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:27:25.23 ID:Lgb0BPvtO
トシ何やってんだよ… 自殺するほど何を思い詰めてたんだ? 彼女もいるのに
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:30:11.19 ID:SUCj4HiVP
ふと俺は数日前にトシが暗い声で電話をかけてきたことを急に思い出した。 電話をかけなおす約束をして、そのまま忘れていたこと。 一気に青ざめた。 「・・俺がちゃんと電話してれば」 「え?」 「・・・・俺がちゃんと電話返してやればよかった」 そんな感じでつぶやいたんだと思う。正直あまり思い出したくない。 チエは急に泣きやんで、怖いぐらい静かに言いだした。 「・・・酷いよ。(俺)ちゃん・・・・トシの事見捨てたんだ」 「・・・何で見捨てたの!!!!??」 その後はさんざんに罵倒された。 彼女は半ばパニックで、コントロールの効かなくなったスピーカーのように俺をなじった。 【人殺し】とも言われた。 でも、彼女の言葉は正直もう頭に入ってこなかった。 一人叫び続けるチエの声を無視して受話器を置いた。 俺はリビングで笑うように泣き、その後絶叫しながら電話をぐちゃぐちゃになるまで叩き壊した。
支援
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:35:23.21 ID:SmESMZBI0
壮絶だな…
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:40:24.06 ID:SUCj4HiVP
暴れる俺の様子をシャオルーが物陰からオドオドしながら見ていた。 視線に気づいた俺は「何見てんだ!!ふざけんな!!!」と日本語で怒鳴りつけた。 彼女の怯える視線が心に突き刺さるように感じた。 俺はもう原型をとどめていない電話機を振り上げてまた床に叩きつけようとした。 「Please! Stop it! You’re gonna hurt yourself!!」急に彼女が叫んだ。 彼女からしてみたらいきなり暴れだして怖いはずだし、そもそも勝手に自分をフッた男。 それでも『もうやめて!怪我する!』と心配してかけてくれた言葉だと思う。 彼女は俺に飛びかかり、叫びながら俺の手を掴んだ。 『大丈夫だから・・・落ち着いて』 シャオルーの声を聞くと体から一気に力が抜けた。 俺はそのまま膝から崩れ落ちた。 もうどうでもよくなって、プラスチックと金属の破片が散らばる床に倒れ込もうとしたけど、すんでのところでシャオルーに抱きかかえられた。 彼女はそのまま俺をソファーの上に押し倒して、抱きしめた。 俺は後悔と恐怖と情けなさで顔をグチャグチャにした。 彼女の服もベチャベチャになったが、彼女は気にせず、ずっと俺の頭をなで続けた。 俺は泣き疲れて眠りに落ちた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:42:48.71 ID:31ehIHTwO
つらいな…
周りに恵まれてるな 俺と変わってほしいぐらいだw
>>56 冗談でもそんなこというもんじゃないと思うぞ
周りに人がいるっていいな
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:47:58.02 ID:SUCj4HiVP
その日は最悪な夢を見た。 水たまりの上を歩いている自分。周りは暗く、何も見えない。 ただ、先にぼんやりと光るものがあって、俺はそれを追うように歩き続ける。 追いかけると、だんだんとそれが形を現し出した。 ・・・人形のような形、あのキャンプの時、祠からカズが持ち出そうとした木の人形だった。 水たまりだと思っていた地面はいつの間にか池のような水場に変わっていた。 人形は誘導するようにスーっと闇の中を進んでゆく。 水はいつの間にか膝元まできていた。戻ろうと思った瞬間、自分の進む先に岸が見えた。 岸の上ではカズとトシが俺に向かって叫んでいた。だが二人の声が届かなかった。 「聞こえない!まってよ!」と叫びながらジャブジャブと水の中を進んだ。 胸元までに迫る水をかいて、必死に叫び続けた。 トシとカズの声もなんとなく聞こえる。 「・・・な!!!」「・・・・・・せ!」 俺は岸に近づこうと必死に泳いだ。 (また二人に会える!)そう思った瞬間、二人の声が聞こえた。 「「・・・るな!・・・来るな!!引き返せ!!!!」」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:51:31.04 ID:xK+o59mG0
眠いが続きが気になって寝れん・・・
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:52:07.22 ID:SmESMZBI0
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:53:09.56 ID:fwDZ1Pf3O
人形って高一のキャンプのあれか。読み返したら怖っ! オカルト板が好きそうな話だな。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:54:07.69 ID:SUCj4HiVP
「ッ!!!!!!!」 息が詰まらせたような声を上げて飛び起きた。飲み込もうとした唾が器官に入ってむせた。 体中から汗が噴き出ていた。これが今まで見た中で一番キツイ夢だ。 起きてすぐに、夢の中の川の向こう側 = 二人が死んだことを強烈に意識させられる。 普通、夢なんて起きたら忘れてしまうけど、この夢はあまりに印象が強くて忘れることができなかった。 窓の外を見ると夕方なのか明け方なのか分からないような明るさだった。 ひんやりした空気を感じて恐ろしくなって震え出した。 「クソッ!!!」と声に出すと、頬に何かが触れる感触がした。 シャオルーの手だった。彼女は俺の顔を見て何も言わず、ただ俺の頬と頭をなでた。 彼女の服の胸元が黄ばんでいた。血のようなシミもついていた。 唇が妙に痛み、自分で噛み切っていたことに気づいた。
支援
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:59:16.26 ID:fwDZ1Pf3O
続きを…
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 03:59:38.90 ID:SUCj4HiVP
『・・・落ち着いた?』彼女が尋ねる。 『・・・ごめん・・・服』 『気にしないで。・・まだ明け方だからもうちょっと寝る?』 『寝たくない・・・怖いから』 『・・そう』 シャオルーの目はただ優しくこっちを見つめていた。俺はまた泣き出した。泣きながら、彼女に全部打ち明けた。 高校の時に親友の一人を失ったこと、病気になって高校を中退したこと、日本に残してきた親友に支えられてアメリカに来たこと、 シャオルーを突然突き放した理由、そして、また、親友が一人死んだこと。 『・・ごめんね。辛らかったよね。でも私は(俺)のそばにいるよ。』 初めてシャオルーと会って、慰めた日にかけた言葉をそのまま返された。 そう言って彼女は一層力強く俺を抱きしめた。ずいぶんと勝手にシャオルーを突き放したはずだった。 こっちが落ち込んだ時に勝手に甘えるのは申し訳なく、情けなく、辛かった。それでも彼女はそんな俺を受け入れてくれた。 その後、何回も同じ夢を繰り返し見るようになった。眠るのが怖くなり、睡眠時間を意図的に削った。 疲労が溜まり、またパニックの病状がぶり返すようになったが、シャオルーの支えもあり、なんとか大学へ通い続けることが出来た。 ダイスケ、バリ、ナムと一緒にバイトを始めて、仕事もなんとか励まされながら続けることが出来た。
>>57 軽率な発言すまない
ただ単純にどんなに辛い出来事があっても、「必ず」支えてくれる人がいるってのが羨ましいだけだったんだ
俺も数は少ないが辛い出来事があっても周りは無関心だったからな…
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:07:07.23 ID:fwDZ1Pf3O
みんな悲しみを背負ってんだよな。 まだ1や他の奴の鬱なレスで切なくなれる自分は正常なんだと信じたいよ。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:07:45.94 ID:SUCj4HiVP
高校の頃と比べ、学校も私生活も、何もかもが恵まれていたおかげかもしれない。 カズの時と比べて精神的な回復は早かったと思う。 ただ、不定期にチエからかかってくる電話にはずっと気を揉んだ。 電話の内容はいつも決まっていた。まず前の電話で俺を責め立てたことを謝る、そして、自己卑下を繰り返す。 俺が励ますと、それに反発してまた興奮し俺を責め立てる。その繰り返しだった。 俺は夜の時間のほとんどをチエとの電話に費やした。 睡眠不足と疲労で倒れたこともあったけど、今回どん底にたたき落とされたのは俺ではなくチエだった。 今度は俺が支えてやりたいと思った。 普段物静かなシャオルーは、決して人の悪口を言うような人間ではなかったけど、俺が日本に残してきた親友 = チエに対してだけは、敵意をむき出しにした。 一度、電話中にシャオルーに受話器を奪われ、『いい加減にして!(俺)がどんなに苦しんでるのか知らないくせに!!』と叫んだことがあった。 英語だったので、当然チエは何を言われたのか分かっていなかったけど、状況だけは直ぐに理解したようだった。 「そういうことか。・・・自分は幸せだから、トシも私もどうでもいいんだろ!!死んじまえ!!」と言われて電話を切られた。 これには正直堪えた。シャオルーは俺に謝ったが、彼女を責めるわけにもいかない。ただ悲しくなった。 そんなことがあっても、チエは俺への電話を止めなかった。 泣きながら「あんなこと言ってごめんね」と言い続けた。 受話器越しの会話でも、チエがただ俺に縋っていることだけは感じ取れた。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:14:15.69 ID:SUCj4HiVP
午前の授業中に突然電話がかかってきた。 ディスプレーには【unknown number(非通知)】の表示でチエなのはすぐに分かった。 時間を計算すると日本では夜中だった。ため息をついて教室を抜け、電話に出ると 「もう(俺)ちゃんに迷惑かけない。ごめんね。さよなら。」 とだけ言われて電話を切られた。すぐに掛け直したけど繋がらなかった。 嫌な予感がして、俺はチエの妹に電話をかけた。幸い妹は起きていたようですぐに出た。 「チエがおかしなこと言って電話を切った!あいつ、今どこにいるの!?」と妹に聞いた。 すぐさま階段を昇る音、ドアを無理やり開ける音が受話器から聞こえてきた。 「姉ちゃん!!!!」妹の叫び声が聞こえてきた。 何があったかはもちろん見えないけど、妹がパニクっていたので直感的にチエがどんな状態なのかを感じて、すぐに救急車を呼ばせた。 チエは手首を切っていた。全治2週間。通院して体は治っても、心の傷が癒える見通しは全くなかった。 それからチエの不幸は重なった。妹が重い病気にかかり、家族は妹に付きっきりになった。 チエは家庭でも孤立した。手術や入院でとてつもない額の金が必要になったらしい。 チエは高校の頃から努力家で優秀だったが、トシが死んでから大学にはほとんど通わなくなっていた。 単位も危ういような学生に付く奨学金は当然なく、チエは大学を辞める羽目になった。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:16:16.65 ID:xqZOYdfS0
悲しすぎる
俺も恋人三人亡くしてる いまでも自分には死神がついてるんじゃないかって思う
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:18:31.12 ID:fwDZ1Pf3O
もう駄目だ…。鬱すぐる。 何でみんなそんな目に遭わなきゃいかんのだ。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:20:14.65 ID:SUCj4HiVP
チエに連動するように俺の精神状態も悪化した。家にいても常に嘔吐感に襲われるようになった。 ほとんど食べ物を受け付けない体になり、些細なことにすぐに反応して狂ったようにキレるようになった。 シャオルーにも何かにつけて当たり散らすようになった。それでも彼女は懸命に俺の面倒を見てくれた。 毎日滋養のありそうな中国の料理を作ってくれた。一口食べては吐き戻したが、シャオルーは何も言わずに汚物の掃除をした。 彼女は俺にチエと縁を切るように迫った。心使いには感謝していたが、彼女の口からチエの名前が出るのが無性に癪に障った。 シャオルーは俺がどれだけ酷いことを言っても我慢した。 彼女は学校の勉強の合間に日本語を勉強し、日本語での日常会話とまではいかないまでも、英語と日本語まぜこぜの会話ができるようになっていた。 彼女は俺にも中国語を勉強するように勧めてきた。休みには一緒に中国に旅行に行こうと誘われた。 俺は彼女に意地悪をしたかったんだろうか、そういう誘いは断固として拒否した。 優しく温かい彼女から一時も離れたくないと普段は思っていたが、シャオルーが中国人であることを意識した瞬間、俺は何かのスイッチが入ったかのように彼女に敵意を向けた。 中国人を見かけると、カレッジ時代、アジア人留学生に馬鹿にされていた鬱憤をなすりつけるかのように、彼女の前で中国人を馬鹿にした。 「同じアジア人にくくられるだけで反吐がでる」と言い棄てて無意味な優越感に浸ろうとした。 俺がそういうことを言うと、彼女は決まって何も言わずにうつむき、ただ悲しそうな顔をした。 俺も言った後で虚しくなるだけだったが、言うのを止められなかった。 中国人である彼女の前で、何でこんな酷いことを言ったのか。 今考えると、あの時の自分が何を考えていたのか全く分からない。 ただただ本当に自分は最低だった。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:24:26.66 ID:SUCj4HiVP
シャオルーに中国旅行に誘われたのと同じころ、ダイスケに「日本に一度帰ったらどうか。俺も用事があって帰らなきゃならなくなったから、一緒に帰ろう」と誘われた。 ダイスケは俺の悩みを知っていた。「日本に帰って友人を励ましてやればいい」そう言った。 俺はチエを励ますことに加え、きちんと通院して自分の病気も治したいと考えた。 シャオルーが一緒に中国へ行きたいと言っていた夏休みの計画。 ほとんど迷うことなく、日本への一時帰国を選択した。 帰国前夜、シャオルーは荷造りをしていた俺をいきなり押し倒した。 いつもの彼女とは思えない激しい口付け。すぐに服を脱がされて丸裸にされた。 シャオルーは普段絶対に自分から俺を求めたりしなかった。 彼女の初めての行動に始めは戸惑ったが、嬌声を上げながら腰を振る彼女の姿が戸惑いを激しい興奮へと変えた。シャオルーは泣いていた。泣きながら俺を求めた。 果てた後も、ずっと泣いていた。 シャオルーに対する愛情(そんなこと言う資格があるかは分らないけど)を感じたのはこれが初めてではないけど、この時ほど彼女を手放したくないと思ったことはなかった。 『ごめん、すぐ戻ってくるから。今まで嫌なことばっかり言って本当にごめん。友達を元気づけて、俺もカウンセリング受けて病気を治してくるから。そしたら、シャオルーのこと、今度は絶対大切にするから。』 と伝えた。行為の後もずっと心臓が高鳴っていた。 シャオルーは俺の顔を見つめて目を瞑るとまたキスをした。涙と汗の味がしてしょっぱかった。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:27:29.39 ID:xK+o59mG0
支援
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:29:09.42 ID:xqZOYdfS0
シャオルーまで鬱展開になるようなことはありませんように
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:30:55.98 ID:SUCj4HiVP
帰国の日、ダイスケとは一緒のフライトで成田へ行き、途中の駅に着いてから別れた。 別れ際に「友達の事、辛いかもしれんがガンバって励ましてやれよ。お前はいいやつだから、絶対にみんな良くなるって。」 「夏休み中はお袋のケータイ持ってるから、愚痴りたくなったらいつでも電話してこい。」 といろいろ励まされた。日本での連絡先を交換して、俺は実家へ向かった。 地元に着いてから、荷物を抱えたまま一番に墓地に向かった。 カズが眠る場所。前に来たのは一回きりだった。カズが今頃どんな思いでこっちを見てるのか、知りたかった。 トシもそっちに行ってしまった。チエや俺のことで気をもんでくれているに違いないが、できれば二人で楽しくやっていて欲しいとも思った。 トシの家にも挨拶へ行った。部屋はそのままにしてあると言われたけど、トシの部屋の家具の間取りは俺の知っているものと違っていた。 チエとの思い出の品っぽいものもたくさん置いてあった。 たかが1年強だけど、お互い顔も見ることができずにいた時間の長さを感じた。 リビングにはえらく立派な仏壇が飾られていた。焼香し、手を合わせてトシに伝えるように(お前のおかげで俺はなんとかやっていけてる。このまま頑張るから)と念じた。 帰り際、おばさんに「トシの分まで頑張って、ちゃんと卒業して日本にまた帰ってくるんだよ。」と言われた。おばさんの目は真っ赤だった。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:33:42.19 ID:SUCj4HiVP
数日後、チエに連絡を入れて彼女の家を訪れた。 ブザーを鳴らす時は心拍数が跳ね上がった。チエに会いたくなかったわけじゃないけど、正直何を話せばいいのか分からなかったし、覚悟が定まってなかった。 「(俺)ちゃん?」 チエの声だった。恐る恐るドアを開ける感じでチエが外を覗いていた。 「・・・久しぶり」 それしか言えなかった。姿を見せたチエは、高校の頃と比べてかなり痩せていた。 俺も人のことを言えた状態ではなかったが、拒食症状を起こしているとすぐに分かった。 それでも綺麗な顔立ちとセミロングの髪はそのままだった。 家にはチエ以外にだれもいなかった。きっと家族は妹の看病で病院にいるんだろう。 チエの部屋は俺の知っていたものとまるで違っていて、グチャグチャだった。 小一時間くらい近況を報告して、いろんな話をした。 アメリカがどんな所か自慢げに語った。チエのおかげだとも言った。 チエは楽しそうだったが、トシの話になると二人とも押し黙った。 「ごめん、飲み物でも持ってくるね」チエはそう言って部屋を出ていった。 部屋はエアコンも入っておらず、めちゃくちゃに蒸し暑かった。喉がカラカラだった。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:39:32.88 ID:SUCj4HiVP
部屋に戻ってきたチエは様子がおかしかった。しばらくうつむいていたチエは急に「(俺)ちゃん・・・ごめんね」と言って立ち上がり、いきなり服を脱ぎ出した。 俺はすっとんきょうな声を上げた。あまりの驚きに、座ったままのけぞり、思わずあとずさった。 チエはあっという間に上も下も脱ぎ捨て、俺の目の前で丸裸になった。 胸も下も隠さず、ただ、左腕だけを隠すようにして立っていた。 「な!?・・・え!?・・・ちょっと!」 尻もちをついたまま思わず目をそらすと、チエは俺に覆いかぶさった。 「わたし・・・わたしにはもう誰もいないから。(俺)ちゃん以外・・・」 チエの行動を理解できなかった。「わかったから服着なって!」と叫んだ。 チエは全く聞くそぶりを見せず、俺の頭を抱え込んで耳にキスをした。 俺は暑いのと驚いたので汗だくになっていた。「・・・好きなようにしていいから、そばにいて」 チエの言葉に頭がおかしくなりそうだった。中学・高校時代に俺が夢にまで見た女が目前で抱いて欲しいと懇願していた。 チエを想像して自慰行為にふけった時でも、ここまでのシチュエーションは想像したこともなった。 男の欲求に飲み込まれそうになった時、チエが隠していた手首が見えた。彼女の手首は傷だらけだった。 ぞっとしたが、かえってそのおかげで頭が冷静になる。
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:41:01.95 ID:fwDZ1Pf3O
エロイ…のに勃たない。。
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:44:00.97 ID:SUCj4HiVP
「・・・ごめん、離れて」そう言うとチエの体が一瞬強張った。 お互いに顔が見られる距離までチエの頭が離れた。「(俺)ちゃんが私のこと気にしてくれて、嬉しかった。・・・だから」 俺は最後まで聞くことができず、目を背けた。その瞬間、唇が温かい感触に覆われた。口の中に何かが入ってきた。 チエの舌だとわかるのに結構時間がかかった気がする。俺はチエの豹変ぶりに半分恐怖して目を瞑り、されるがままになった。 その時間が長かったのか短かったのか分からない。急に瞼の裏で何かがチラついた。 シャオルーなのかトシなのかわからない誰か。とにかく知ってる顔だった。 俺は大切なだれかを裏切ることになることに恐怖を感じて、チエを突き飛ばした。 唾液が糸のように口と口の間をつたった。それを片手で拭ってチエが言う。 「・・・知ってるよ。(俺)ちゃん、ずっと私のこと好きだったでしょ?」 挑発的な目だった。彼女の言っていることに間違いはない。が、その一言を聞いて、今度は違う意味で頭に血が上った。 「・・・トシが怒るから、そういうのは止めよう」 かなり怒気を含ませて言った。 トシの名前を出したせいか、怒っているのが伝わったせいか、チエの体が固まった。 すぐにでもその場から逃げ出したかったが、チエの腕の傷が気になった。また馬鹿な真似をしそうで心配だった。 「俺もカウンセリングがあるから今日はいったん帰るよ。明日一緒に飯食いに行こう。」そう言って、服を着させた。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:44:17.24 ID:8KXQw6OnO
前半部分、とくにカズの葬式のへんまで読んだことある気がするんだけど気のせい? またデジャヴかな…
しえん
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:46:06.30 ID:xqZOYdfS0
鬱展開の終わりが見えない……
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:48:12.22 ID:SUCj4HiVP
家を出ると外は大雨だった。自分の股間が痛いくらいに勃起していることに気づいた。 濡れながら全力で走った。走りながら大声で叫んだ。叫び声は雨音にかき消された。 久しぶりに走ったせいですぐに息切れした。立ち止まって息が少し整うとまた全力で走った。どれだけ走って叫んでも勃起が止まなかった。 翌日から通院を始めたものの、カウンセリングにはまったく集中できなかった。 医者の話はいつも上の空だった。ただ、処方された薬の効果か、日本にいる間、症状は抑えられた。 それからチエと何回かあった。会うたびに彼女は間違いなく孤独なんだと感じた。 なるべく多く時間を取って、彼女と外に出かけるようにした。チエはアプローチ的な行動をとることがあったけど、何とか平静を保った。 夏休みは長かった。高校の同級生とばったり顔を合わせると「生きてたの?ww」と言われた。 こいつらの顔を見るのが嫌で仕方なくなった。親とチエ以外に会うべき人間がいなかった。 チエには申し訳ないが、早くアメリカに戻ってシャオルーや友達と会いたいと、すぐに考えるようになった。 シャオルーに電話して『早く会いたい』と何度も言った。電話をすると彼女はいつも嬉しそうだった。 そんな夏休みも終わりに近づいた。俺はダイスケと帰りの便を合わせていた。 成田の待ち合わせ場所に向かう途中で、皆へのお土産を買った。 シャオルーは日中英語の電子辞書、ナムにはガンプラ、バリには必勝鉢巻とオナホールを買った。 荷物がパンパンになったが、お土産に喜ぶ(バリ除く)皆の顔を想像してほくそ笑んだ。
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:52:22.53 ID:SUCj4HiVP
空港でダイスケを発見し、手を振った。ダイスケは何故か丸坊主になっていた。理由を聞くと照れながらもはぐらかされた。 久しぶりに友達と会えた俺は終始ニコニコしていた。空港、機内でずいぶんと酒を飲んで、アメリカに着くころには二人とも二日酔いになっていた。 空港に着くと、バリとナムが迎えに来ていてくれた。 ガンプラを手渡すと飛び跳ねて喜ぶナム。『家に帰ったら速攻つくる!』とはしゃいだ。 バリへのお土産は『なんじゃこりゃ!?』と、予想通りのリアクションだった。 ダイスケが『全裸になり、鉢巻を頭に巻いてからホールに挿入するのが日本流だ』と言と、『Fuck you! www』と笑いながら声を上げた。 自分たち4人と、こっちを見ていた外人全員が大爆笑した。 その後、四人でタクシーを捕まえた。バリは帰り道、何故かずっと必勝鉢巻を逆さに巻いていた。 家に戻った俺はリビングに荷物を放り投げ、シャオルーの部屋をノックした。 一秒でも早くシャオルーを抱きしめたいと思っていた。 俺はプレゼントを背中に隠して彼女が出てくるのを待った。
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:55:20.85 ID:0AgJZTBo0
いやな予感が・・
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 04:58:31.40 ID:SUCj4HiVP
扉が開いた瞬間、満面の笑みを浮かべていた俺の顔は歪んだ。 出てきたのは見たことのない白人の女だった。 『あれ?シャオルーの友達?』 『私、最近引っ越してきたの。あなたの事はオーナーから聞いてるわ。リビングに住んでるんだよね?これからよろしくね!』 女は元気にそう答えた。 シャオルーが俺の前から消えた。オーナーは、俺がアメリカに戻る1週間ほど前に突然引っ越したと言った。 電話をかけても全く繋がらなかった。リビングに行くと、俺の荷物はきれいに整理されていた。 シャオルーの部屋に置いていた俺の小物も、丁寧に俺のベットの上に置かれていた。 枕もとには書き置きがあった。後に破り捨ててしまったため、詳細は覚えていない。 ただ、「(俺)のもとを去ると決めた」という内容が綺麗な筆記体で書かれていた。 手紙の終わりには下手くそな平仮名で「ごめんなさい」とあった。 その部分は一度水で濡れてふやけたようにボコボコしていた。俺は呆然とした。
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:02:10.78 ID:8KXQw6OnO
紫煙
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:02:52.91 ID:SUCj4HiVP
そのあとしばらくふさぎこんだ。畳まれた自分のシャツを抱き抱えると、シャオルーの残り香がした。 俺は帰国前のシャオルーの涙の意味を考えた。彼女はもうあの時から別れを決めていたのかも知れない。 シャオルーに渡すはずだった電子辞書を開けた。発音機能付きの高価なものだ。 「wo yao ni 我要你」 文を入力して何回も発音させた。機械音が虚しく響いて涙を誘った。 一度入力をデリートして「我爱你」と入れたけど、発音ボタンが押す資格はないと思い押せなかった。 自分が初めて、本当に人を好きになったということに気づいた。 なんで彼女のことをもっと考えてやらなかったのか、何でいつも悲しませるような態度しかとらなかったのか、後悔なんていう言葉じゃ言い表せないほど、過去の自分をズタズタに殺してやりたいと思うほどに自らの行いを悔いた。 俺はその日からまた家に帰らなくなった。毎日バリやナムの家に入り浸って、酒を飲んだ。 ただ、チエの電話には俺は気丈にふるまった。 チエの電話は相変わらずだった。チエと電話越しに喧嘩して落ち込むたび、シャオルーがどれだけ俺の為に気を使ってくれていたか気づいた。
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:03:11.55 ID:Tu7i2kF5O
部活だけど頑張って支援
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:06:07.19 ID:SUCj4HiVP
ある日ダイスケは電話で俺を呼び出した。実はダイスケにも華僑の彼女がいて、ずっと一緒に生活していた。 彼女と同棲してる奴の部屋には流石に入りづらい。だからダイスケの家に行くのはこの時が初めてだった。 ダイスケの部屋に案内されると、一匹の子犬が飛び出してきた。ダイスケが動物を飼っていたことを初めて知った。 部屋は男臭く、とても女と住んでいるは思えなかった。聞くと、彼女は夏休みになると同時に故郷のマレーシアに帰国してしまったそうだ。 ダイスケはグラスに酒をついで俺に差しだすと言った。 「いつまで塞込んでるつもりだ?」いきなりだった。 「まぁ、女につけられた傷がなかなか癒えないのはわかるけどな。・・・お前、友達と会ってきたんだろ?・・・日本に帰るように焚きつけた手前で悪いけど、 正直彼女、お前がどんだけ励ましても良くならないだろ?」 いきなりチエの話題を振られ、俺は固くなる。「今のお前と一緒なんだよ、そいつも」 思わずダイスケを睨むが、奴は構わずに続けた。 「落ち込んでる奴に周りが手を差し伸べても、本人に‘そこから抜け出そう’って意思がなきゃ絶対助けられないんだよ・・・わかるか?」
しえん
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:09:49.70 ID:SUCj4HiVP
俺はハッとした。確かにそうだ。俺はいつもチエを励まそうと言葉をかけるが、彼女はそれを否定して自分を卑下し続けた。 俺はダイスケやナム、バリに対して全く同じ行動を取っていた。自分を全て見透かされた気がして、俺はその場で縮こまった。 「実は俺、お前に言ってないことがあるんだよね。俺の彼女のこと。あいつもその手の病気持ちでさ、帰国させたのもそういう理由だよ。」 「手首切ったり、首吊ろうとしたり、もう滅茶苦茶だったよ。故郷に帰れば少しは良くなるのかと思って説得したんだわ。」 「彼女だけじゃないな。正直言うと、俺自身の人生もお前と張れるくらいヤバくなってきたしな。」いつも馬鹿なことしか言わないダイスケの顔が一瞬曇った。 「俺が今回帰国した理由言ってなかったよな?俺の家さ、親が自己破産して離婚したんだ。」 「は?」 ダイスケの言葉に思わず間抜けな声を上げる。「帰ってからパスポートも書き換えたんだよね。」 ダイスケは「ホレっ」とパスポートを放り投げた。慌ててキャッチして中を開くと、ダイスケの苗字が別のものになっていた。 「母親についてくことになって、苗字を移したんだよ。」言葉が出せなかった。 いつも何食わぬ顔で俺を励ましてきたダイスケにこんな事情があったなんて全く予想外だった。
しえん
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:11:35.76 ID:SUCj4HiVP
「今まで親の脛かじりで勉強も適当にしかしてこなかった俺が、こんな状況受け入れられるわけないと思ったけどな。こうやってまたアメリカに戻ってきたのはお前のおかげなんだよ。」 また予想外の言葉。 「カレッジの時のお前の境遇、知ってるからな。俺も頑張らなきゃいかんと思って髪も剃ったよ。あんま意味無いけど、気合いってやつ?」 今あるものを全部捨ててでも目標を達成する。ダイスケはそんな覚悟に満ちた男の目をしていた。 俺もカレッジにいた時はこんな顔をしていたんだろうか。ダイスケの言葉は一語一語全てが重かった。 「俺もバリもナムも、お前にずっと手伸ばしてるんだから、いい加減に自分で掴んで、早く這い上がって来いって。」 俺はボロボロに泣いていた。男友達に涙を見せたのはダイスケが二人目だった。 ダイスケはその後すぐにもとのいい加減なキャラに戻ったが、その時言われた言葉はずっと頭の中に残った。 ダイスケは尊敬に値するすごい奴だと感じた。 「だいたいお前は固すぎなんだよ。羽目外したっていいじゃねえか。そういうのならいつでも付き合ってやるぞ。羽目じゃなくて道踏み外しそうになったら俺らがまた引き戻してやるからさ。フラれた時くらい思いっきり馬鹿やろうや。」 ダイスケは半分照れながらそういった。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:12:38.77 ID:8KXQw6OnO
>>1 ほど壮絶じゃないが自分を見てるようだ
忘れかけてた大事なこと思いだしたよ
しえん
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:14:32.60 ID:SUCj4HiVP
俺はその後、ベロベロに酔っぱらい、ダイスケに連れられて初めて風俗へ行った。 アメリカでの売春行為は、一部の州を除いて非合法だ。だが、ダイスケはその辺の裏事情に異常に詳しかった。 法の目を掻い潜った本番アリの風俗をいくつも知っていた。俺が選んだ嬢は韓国人で容姿はモデル並に綺麗だった。 (日本のシステムとの違いを後で知ったんだが、あっちは日本と違って写真だけじゃなく、実際に女を見て選ぶことになっている。もちろん指名料もかからないし、イイ子がいなければ帰ってもよい。) ダイスケの方はと言えば、俺に先に選ばせたのはいいものの、残った嬢が結構不細工でずっと唸っていた。 これで同じ金額なのは納得いかないだろうが、奴は悩んだ挙句、一人を指名して別の部屋に消えていった。 プロの技は正直言ってすごい。今までに経験したセックスとは全然違った。 女にフラれて心に穴が開いた俺が簡単にのめり込んだのは言うまでもない。 それからはバイトの給料日にダイスケと風俗に行くのが恒例となった。 稼ぎが少なかった時はお互いに食費を削って融通した。また、風俗通いをするようになって、いつしか煙草も吸うようになっていた。 「なぁ、俺今道踏み外してね?」というとダイスケは「今頃気づいても遅いなぁ〜ww」と笑って言った。
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:16:58.43 ID:fwDZ1Pf3O
ちょwww 久々の冒険王か! しかしダイスケは凄いな。 大学生とは思えない。 外国の風俗マスターって、冒険皇帝かよw
のゎまえできたお 気持ち悪いお
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:20:07.54 ID:SUCj4HiVP
ある日ナムから電話がかかってきた。 『俺、アパートの契約がもうすぐ切れるんだけど。お前の契約は?よかったら一緒に住むところ探さないか?』 ナムはそれまで一人でアパートを借りて住んでいた。契約の更新も出来たが、賃料が上がるためにそれは考え中で、どうせなら独り身になった俺と共同生活をして家賃をうかそうと思ったらしい。 俺はその提案に飛び付いた。シャオルーが去ってから、なんとなく自分の家にいるのが嫌だったし、もう敷金が戻ってくる契約期間は過ぎている。俺は2年以上住み続けた家から出る決意をした。 ナムとの部屋探しを始めてしばらくすると、ダイスケが共同生活に参加したいと言い出した。 理由は「犬が不動産屋に見つかった」からだった。『犬を処分するか、今すぐ出て行け』と言われたらしく、ダイスケは憤慨していた。 不動産屋の言うことは当然だが、ダイスケの気持ちもわかる。 その犬は元々彼の犬ではなかった。どこぞの金持ち中国人留学生のカップルが元の飼い主で、女の我儘で飼い始めた犬。 恋が冷めて二人が別れると、面倒を見切れなくなった男の方がダイスケに一時的に預かってくれないかと尋ねたらしい。 当然アパート住まいのダイスケは飼うことができないが、保健所送りになるならばと、新しい飼い主が見つかるまでの約束で引き取った。 その中国人はその後音信不通。ダイスケは止む無く隠れながら子犬を養うこととなった。 そんな性格のダイスケだ。不動産屋の『処分』という言葉に激怒し、『今すぐ出てってやんよ!Fuck You!』と伝えて家を出ることを即決した。 そして俺とナムとの共同生活の話を思い出し、連絡を入れてきた。新しく見つけたアパートはバリの住むマンションの向かいだった。 間取りはベットルームが二つと広いリビング。家賃もそこそこに安く、なかなかの物件だった。 俺とナムが一部屋ずつ寝室に使い、リビングのスペースにダイスケと子犬が住むことに決めた。
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:21:46.84 ID:SUCj4HiVP
親友と同じ家に住むってのは本当に貴重な経験ったと思う。 四六時中一緒にいると良い面・悪い面合わせて今まで知らなかった一面がわかるし、そのおかげで絆も深まった。 バリも近所だったので、結局俺達の家に入り浸りで、ほとんど毎日一緒に仕事に行ったり、学校に行ったり、遊んだりした。 こう言うのもなんだけど、3人とはカズやトシ以上の仲になれたと思う。3人は自分の一生涯の友達だと思ってる。 バリとナムのエピソードをまだあまり語ってないので、ここらでどんな奴らだったか紹介させてください。
しえん
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:27:40.02 ID:SUCj4HiVP
バリの親は事業家だった。親の事業の為に、三人の中で唯一米国のグリーンカード、いわゆる永住権をもっていた。 その生まれもあって金銭感覚にシビアで、金の話に目がなかった。 前にも書いたけど、俺はバリと会った当初、彼の拝金主義者的な考え方が嫌いで、自分からバリと仲良くしようとは思わなかった。 でもバリは俺が今まで嫌悪してきたボンボン達とは違った。 カネの使い方を心得ていて、自分のしたいことや欲しいものがあれば、親にねだらずに自分で努力してそれを必ず稼ぐ男だった。 俺やダイスケに稼ぎのいい仕事を紹介してくれたのもバリだった。俺は彼のおかげで自分のキャリアや将来についていろいろと考えるようになった。 バリはビジネスとプライベートの分け方が4人の中で一番上手だったと思う。 客や知らない人間の前ではネイティブと殆ど変わらないような流暢な英語を喋ったが、 俺達3人とはブロークンなお馬鹿英語ばかりを使った。 日本語訛りやインド訛りの英語をマネするのが上手く、よく俺の英語をからかってきたが、不思議と嫌な感じはしない。バリが口を開くと俺はいつも笑った。 遊びにはいつも真剣で、ゲームをしている時もガキのように熱くなった。 今時小学生でも言わないような戯言を口にし、人に面白いことをさせようと煽る。 バリが突然『警官の前で貧血のふりして倒れこんだ奴が優勝!』というと、ダイスケが何も考えずに即実行する。 何ともくだらないけど、そのやり取りが実に面白かった。 ただ、自分がやるように煽られると、ひたすらチキンな性分を晒した。 加えて、ダイスケが酔って暴れると、すぐに部屋の隅で固まって大人しくなる。 あまりの根性の無さが、また、彼のオモシロイ性格を際立てた。
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:28:22.68 ID:Lgb0BPvtO
>>1 今日仕事とか大丈夫なのか?
連休とはいえ仕事に行くやつもいるからな…
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:32:03.19 ID:xqZOYdfS0
支援
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:33:30.19 ID:SUCj4HiVP
>>108 心配してくれてありがとう。一応休みだから大丈夫ですよ。
>>all も付き合ってくれてありがとう!
ナムの方はと言うと、どちらかというと控え目な人間で、アニメ好きだったこともあって、俺と性格は近かったのかもしれない。
ただ、それが災いして大学でも彼女ができなかった。顔はバリより全然カッコいいのだが、いかんせん押しが弱く、女っ気が全くなかった。
ある日バリがナムに言った。
『お前、アメリカに永住したいならこの国のカルチャーに従わなきゃいかんだろ!
自由の国の文化、フリーセックスって知ってるか?ダイスケに風俗でも連れてってもらえよ!』
ちなみにバリは童貞ではないものの、自分自身はそういう遊びをしない。
根性無しのバリこそ風俗でプロの技を知るべきだと思ったが、この時は俺もダイスケも奴の提案を持ち上げてナムを煽った。ナムはその場では『誰が行くか!』と顔を赤くして断った。
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:35:50.71 ID:SUCj4HiVP
夜、バリが自宅に帰ったあと、俺達三人は酒を飲みながら恋愛について語った。 すでに出来上がっているダイスケが言った。 『女ってのはつまりあれだ、・・・てめえの息子のシェルターだ。オェェェ。・・・・自分の持ち家があっても旅行に行けばホテルに泊まるもんだ。うぃぃっっ。・・・風俗ってのはそう言うもんだろうが。・・・ヒック。 ・・・付き合ってる女がいたって、家と同じで、今よりいい物件があれば当然のように引越すべきだ!自分の気持ちよさが全てだ! ・・・畜生、あの不動産屋の女、絶対犯してやんぞ・・・いや、(犬)に犯させてやる。。ゲェェェ。』 シラフでは、思いやりだの、男なら女のために人生を賭けろだの、クサイことを平気真顔で言うくせに、酔った時は女を物以下に扱うような発言をする。 いつも言うことが滅茶苦茶だ。(犬)と飼い主の汚物で酷い有様になったリビングも掃除して欲しい。 ナムは戸惑いながら言った。『俺も女を知っておいた方がいいのかもしれん』 酔ったダイスケもこれは聞き逃さなかった。俺と顔を見合わせてニヤリと笑った。 「これはアレだな!久しぶりに行くしかなさそうだね!」「だな!ナムの門出だ!乾杯!」 俺がいきなり日本語で叫ぶと、ダイスケもそれに合わせる。二人で最後の酒を飲みほした。 俺達二人はナムを魅惑の夜の街へと誘った。悦楽の園への道中、俺は笑いながらナムに話した。 『知ってるか?ダイスケの奴この間風俗に行った時、部屋に入った瞬間にフル勃起させて全裸待機してたらしいぞ。部屋に入ってきた嬢が驚いて叫び声上げたんだってw』 (普通は嬢に促されて脱ぐか、脱がしてもらう) 『言うなって言っただろが、(俺)!マジで酔ってたんだよ!w』 ナムから乾いた笑いが聞こえた。
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:35:54.00 ID:Lgb0BPvtO
>>110 そうか、そりゃ良かったw
続き楽しみにしてます
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:39:11.82 ID:SUCj4HiVP
店は俺達がよく行く場末の風俗店。不細工が多いが、アタリの日は格安でかなりの女が抱ける。 が、生憎その日三人の前に出てきた女は、金を貰っても抱きたくない、どう見ても40を超えた超絶不細工ババァばかりだった。正直ここまでハズレたことはなかった。 奇特な少数派をターゲットにマーケティング路線を変更したのかと思った。 ナムが目を丸くさせて『あれならお袋の方が全然マシだよ!』と言ったのを聞いて爆笑した。 俺達は当然店を変えて仕切りなおした。そこには一人しか可愛い子がいなかった。 『今日はナムの為の日だ。俺達二人は待合室で待とうぜ。』というダイスケの提案に乗った。 一人奥へと案内されていったナムはドナドナの子牛のようだった。 俺とダイスケは待合室のソファーで煙草を吸いながらナムの生まれ変わりを待っていた。 15分後、ナムが待合室へ戻ってきた。 一時間一本勝負のはずだ。帰還には明らかに早い時間だった。ナムはプルプルと震えていた。 店を出るとダイスケがおもむろに聞いた。『どうだった!?大人になった感想は??』 ナムが口を開いた。 『緊張ですぐ出たよ。最悪なのはその後だ。女に散々罵倒された。Fuck you, son of a bitch!だと。俺は客だぞ!?』 『『マジで!?』』 深く聞くと詳細はこうだった。部屋に入ってきた嬢には最初、王様のように扱われた。 愛想も良く、かなり気に入って貰えたようで、アメリカの風俗では絶対にやらないはずの生フェラサービスをされたらしい。(病気の管理とか、日本より全然厳しい) だが、それがいけなかった。初体験で興奮ゲージもマックスだったナムは秒殺され、口内発射された嬢は激怒して彼を罵倒したそうだ。当然サービスも打ち切り、いきなり部屋を追い出されたのだと言う。
sienn
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:43:54.60 ID:VIQEHoARO
続きが気になって仕方ない
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:45:45.58 ID:VIQEHoARO
また連投規制だって 本スレへGO
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:47:30.58 ID:fwDZ1Pf3O
今追い付いた 本スレどこ
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 05:51:37.71 ID:4oUMOK140
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/22(火) 06:39:26.37 ID:VIQEHoARO
ほ
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :
2009/09/22(火) 07:06:01.26 ID:VIQEHoARO ほ