( ^ω^)常夜の世界のようです

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
エコーちゃんに口移しで解毒剤飲ませ隊 隊員募集中
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 17:52:39.35 ID:yj6HQHSR0
前回までのあらすじ

来たか……ついに来たか……
二話投下中に規制を喰らって約一ヵ月半。
長い長い規制を経て俺は自由になった。
そしてそこでとんでもねぇミステイクに気づいちまった。

タイトルに"ブーンと"って入ってやがる。

とんでもねぇネタバレだぜ!だけど別に気にしない。
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 17:53:26.90 ID:yj6HQHSR0
と言う事は、魔力さえあれば美和は姿を取り戻せると言う事か。

爪'ー`)y‐「とーぜん。僕の仲間にツンって幽霊が居るだろ?あれも同じだ。
       ホライゾン君からの魔力の供給を受けて"現れ"ているわけだな」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「しかし、魔力と言うと……」

渋沢家は商人の一家であるゆえ、魔術関連の品を手にすることはあれ魔術そのものには疎い。
それは自分に限った事ではない。魔術以外の技術が発達している厨房領には魔術に精通したものは少ない。

爪'ー`)y‐「まあ僕はそこで提案をしに来た訳だよ。『私と一緒に来る気は無いか?』ってな」

成程、仲間に前例が居るのを考えるに、彼も魔術に精通していると見て良いだろう。
だが、彼らは何なのか。俺はそれを知らない。それを知ってからでも――遅くは無い。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「何なんだ……お前らは、一体」

爪'ー`)y‐「……何なんだろうね」
  _、_
(;,_ノ` )y━・~「は……?」

爪'ー`)y‐「僕が何なのかを語るのは容易いが、他がどうなのか。
       少なくとも内藤君は僕と"同じに"なったが、デレ嬢は違うね」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「それは……?」

ああ、とフォックス殿は頷く。

爪'ー`)y‐「……まぁ、霊装の根源であるラウンジを叩き潰そうって奴らさ。
       わけあって他にもいろいろやらなきゃいけないけど、ね」
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 17:54:40.12 ID:yj6HQHSR0
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「霊装が……ラウンジ?」

爪'ー`)y‐「まあ色々あるのさ。最近霊装ってもんは増えて来てるが、その出所……否、霊装を"作ってる奴"はラウンジだ。
       恐らく、その美和っつー人を殺したのもラウンジの人間だ。何故そうしたかは知らないけどね」

ラウンジ、霊装、その対抗組織。
これらが導き出す、俺に与えられた可能性は。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「復讐、か」

爪'ー`)y‐「君がその気なら可能だろうね。
       霊装を扱う為の魔術も教えてあげられる。どうだ?」

フォックス殿は此方に手を差し出す。
その手を握る事に、迷いなどあるものか。
握手を返すと、彼は笑顔を作った。

爪'ー`)y‐「今後とも宜しく、シブタク君。
       それじゃあ早速修行と行こうか」
  _、_
(;,_ノ` )y━・~「え?ちょ、おま……」

彼は握手を放す事無く、その手を引いて俺をずるずると引きずる。
その細い体の何処にそんな力があるんだ。
否、ひ弱なのは此方も変わりは無い。商人の一家で、昔から勉強ばかりさせられて来たからな。

ああ、体力使うのかね、これ。心配だ。

5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 17:55:33.88 ID:yj6HQHSR0
view.( ^ω^) Horizon Naito.

現在地は商店街。
ラウンジでは弾圧され気味であり、触れることの無かった極東文化に御嬢様は興味津々だ。
ただ、人目もはばからず足を地面から浮かすのは止めて欲しい。
さっきからその辺の人々がドン引きだ。
屋台で団子を売っていたオッチャンも、僕から代金を受け取る時の笑みが何だか引きつっていた。
まあ、気持ちは解らんでも無い。人間は"普通は"空を飛ばないし、ぶつかれば痛い。
今人の目を引きまくっている御嬢様は普通じゃないので空を飛ぶしぶつかっても痛くないどころかすり抜ける。
昼時近くで人気も盛んなのだが、僕らの目の前には左右に分かれた人ゴミが道を作っている。モーゼか何かか、僕は。

ξ゚听)ξ「いーじゃんいーじゃん。ホライゾン人多い所嫌いでしょ?私もだけど。
       私のお陰でスイスイ進めるんだから逆に褒めて欲しいもんよ」

(;^ω^)「いや、それは違う。断じて否だお御嬢様。それは思っていても決して口に出してはいけない」

目の前を歩いていた着物姿の女性が僕らの会話を聞いてしまったのか、びくっと肩を震わせて横跳びで僕らに道を譲った。

ξ゚听)ξ「ねーホライゾンあれ買ってよあれー」

御嬢様が指差した先には、天ぷらを売っている屋台がある。
指差された方の屋台の店主は非常に居心地が悪そうに天ぷらを揚げている。
って言うかそもそもあんた物食う必要ないじゃん。

ξ゚听)ξ「気分気分」

そう言われると文句の一つも言えない。言わせてもらえない。
何故なら彼女は僕を危険から護ってくれる守護霊なんかではない。彼女にとって僕は単なる出力機器だ。
僕が居なければ彼女も"居られない"のだが、元が主従関係。彼女がそれを僕に感謝している節は見たことが無い。
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 17:56:46.39 ID:yj6HQHSR0
故に逆らえば彼女は授けられた実体化の能力を駆使して僕にお仕置きを始めるだろう(一つ前の話で前例があったね)。
仕方なく天ぷらのオッチャンに金を渡し、海老の天ぷらを二つ紙包みで受け取る。
震えた声の「ありがとよ!」が何とも痛々しい。いや、僕等の所為なんだけど。

( ^ω^)「どーぞ」

ξ゚听)ξ「ん。苦しゅうない」

串に刺さった天ぷらを御嬢様が口にする。習って僕ももう一つの方を齧った。
歯が衣をさくっと抜け、それを海老の身の弾力が僅かに阻むが、ぷつりと気味の良い感触を残し口に一切れが入る。
質素な塩の味付けは素材の味を引き立てるだけでなく、食感を殺さない事にも一役を買っているようだった。

ξ゚听)ξ「極東の食べ物ってこう……味が薄いわよね?」

( ^ω^)「へっ、それを『悪い物』として見る内は食を語るには甘いですぜフロイライン」

御嬢様はまた始まったか、と言う顔をして溜息を一つ。
そもそも味が薄い事が何の欠点になろうか。
ラウンジの文化圏では料理にソースなどの調味料を用いるが、それは単に素材の持っている"味"を殺しているだけだ。
悪く言っているわけではないが、それでは極論ソースの味のみが料理の優越を決する。それでは駄目なのだ。
真に料理の優越を見るには、料理人がかけた手間を余す所なく考慮しなければならない。
それは調理方法であったり、それ以前の素材選びの工程から始まっているかもしれない。
その際ソースによる味付けが全てをぶち壊しにしてしまう可能性と言うのは、中々に高い(ソースを作るのも手間だと言われればそれまで)。
故に私ホライゾン・内藤は濃い味付けは料理人の食す者への"見破る"勝負の放棄と見る。
料理とは文化。人はいつでも文化に向上を求め、それは単なる栄養摂取に留まらない域へと達した。
即ち、それは食う側と作る側の真剣勝負。"量"でなく、"質"のフードファイト……!

とかいう話を延々としていたら御嬢様にドン引きされた。
おかしいよね、似たような話は僕が美味しい物を食べるたびに何度もしているはずなのに。
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 17:57:53.24 ID:yj6HQHSR0
view.爪'ー`)y‐ Fox.

シブタク君との修行を(シブタク君の再起不能により)終えた僕は例の工房に来ている。
横道逸れるが、シブタク君は割りと頑張ったと思う。才能に関しては僕は何とも言えないが、努力に関しては申し分ない。

(2 0w0)「アンタか、兄貴が言ってたのは」

爪;'ー`)y‐「兄貴……?ああ、オメガ君ね」

工房を見渡してみると、作業員は皆オメガ君に似た顔をしている。

(2 0w0)「ここはシベリアに代々仕えるオメガ家――通称パシリ大隊の技術部隊の拠点だ。
     俺はここの管理を任されているオメガ2――」

爪;'ー`)y‐「は?名前は?」

(2 0w0)「名前か……俺がオメガになったとき、それは捨ててしまったよ。
     今の俺はオメガ2。それ以上でも、それ以下でも無い」

確かオメガ君の本名は「オメガ・オンドゥル」……自称だったから本当かどうかは怪しいが。
と言うことは目の前の彼は「オメガ・"2"・オンドゥル」辺りが妥当だろうか。まあ本人の希望通り――否

爪'ー`)y‐「次郎君……と呼ばせて貰おうか」

(2 0w0)「別に構いはしないが俺達オメガを全員その名前で呼んでいくとそのうち発狂するぞ。
     ここだけでも、ざっと十人ほどのオメガが居るからな」

成程、パシリ大隊の事はオメガ君から聞いてはいたが、そんなに人数が多いのか。
そのトップに居るわけだから、オメガ君も中々偉かったんだなあ。
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 17:59:41.36 ID:yj6HQHSR0
(2 0w0)「ところで、俺達への仕事の話じゃないのか?」

爪'ー`)y‐「ああ、そうだったね。これだよ」

僕はポケットから四つ折の紙を取り出すと、次郎君に渡した。
それを開いて確認し、開口一番に、

(2 0w0)「何だこれ……魔術分野じゃないか、殆ど」

爪'ー`)y‐「錬金術、って奴だよね。殆ど」

(2 0w0)「ここに魔術系技術に長けた奴は二人しか居ないが……殆ど機械系技術専門なもんでな、ここは。
     と言うか何でこんな魔術的なものを俺達の所で?」

爪'ー`)y‐「二人も居れば十分だよ。僕はあれが使いたかっただけだしね」

僕が指差すのは、五人ほどが囲んでいる円柱状の水槽。
コードを大量に取り付けられたそれは、

(2 0w0)「いや、あれ飛行機械のパーツだから。燃料タンク」

爪'ー`)y‐「とりあえずでっかい円柱だったら何でも良かったのよ。
       ま、技術に長けた二人にはお使いと僕が居ない間の"彼女"の世話を頼もうかな。
       全部紙に書いてあるから、それじゃあ!」

腕時計で時間を確認すれば、もうすぐ正午。
その時間にはシブタク君の家で落ち合う予定なので、僕は工房を後にした。

ああ、待ち遠しいな。ようやっと僕もまともに戦線復帰が出来る。
そうなったらまずは――何をすることになるだろうな。
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:00:20.88 ID:yj6HQHSR0
view.ζ(゚ー゚*ζ Dere Rounge.

起きてみたら大変な事になっていた。
立ち上がり、眩んだ意識を取り戻すまで数秒、そこまでは良かった。
部屋の仕切りとなっている障子を開けると、そこには
  、_
( ,_ノ )y━・~「……」

物言わず倒れた渋沢さんが居たのである。

ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ……だだだ、大丈夫ですかっ!?」

屈みこんで肩をゆすってみるものも、全く反応はなし。
顔を覗き込んでみても、空虚な瞳に私の顔が唯映りこんでいるのみ。

ζ(゚ー゚*ζ(目開けたまんまぶっ倒れてるって中々怖いですよね……)

大変な事はそれだけで終わりにならなかった。

(;^ω^)「あー……デレ様?」

内藤さんと御姉様が、町から帰ってきたのだ。
しかも、最悪のタイミングで。

ζ(゚ー゚;ζ「え!?いいいいいいえ、ち、違うんですよこれは?起きてみたら倒れてただけでわわわ私が手にかけたわけじゃ」

爪'ー`)y‐「殺す時は目立たないようにやれってアレほど言ったでしょーに」

ζ(゚ー゚;ζ(さ、最悪の奴が最悪のタイミングで場を乱しに来やがった……!)
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:05:05.18 ID:yj6HQHSR0
爪'ー`)y‐「ま、そういう下らん話は置いといて、現状と今後の確認と行こうか」

どこからともなく卓袱台と座布団を持ち出して、畳の間にセットしながらフォックスさんは話を切り出した。
四角の卓袱台の四つの辺に一枚ずつ座布団を敷くと、私達に手で勧めた。正座は苦手なんだけどな、私。
ぶっ倒れてる渋沢さん除いた全員が座ると、フォックスさんは話を再開した。

爪'ー`)y‐「数日前話したとおり僕らは数日後……三日後かな。迎えに来る飛行機械に乗ってシベリアを目指すことになってたんだが……、
       急な仕事が入った。飛行機械に乗ってタシロ島に向かうことになった」

( ^ω^)「タシロ島って言うと、獅子王が平定した?でもどうしてだお?」

ξ゚听)ξ「ホライゾン、タシロ島と獅子王って?」

(;^ω^)「まずそっからなのかお……」

爪'ー`)y‐「それじゃあ内藤君の授業と行こうか。はい説明スタート」

(;^ω^)「いいのかお……まあタシロ島ってのはこの大陸の西側にある小さな離島だお。
      元々は大海創世時代から極東系民族が住んでいたんだけど、暫くしてニチャンネル系民族が移民して来たんだお。
      その後一世紀位は平和だったんだけど、世代が混血系にシフトしていくにつれ血筋の問題が深刻になってきてね。
      で、集落がベースとなった"領"がタシロ島の中にいっぱい出来て、それが小競り合いをしていたんだお」

ふう、と一息を入れると内藤さんは腰の竹筒から水を飲んだ。
恐らく、町で買ってきたものだろう。

( ^ω^)「まあその小競り合いがどんどん深刻化してきて、マジもんのドンパチに発展していったんだお。
      その状況をこりゃやばいと見て、マーシィ領の杉浦って言う一族がタシロ島の平定を目指したんだお。
      まあ、大体の決着は先代の時点で済んだけど、完全にタシロ島を平定したのが今の"獅子王"杉浦ロマネスクなんだお」
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:14:44.35 ID:yj6HQHSR0
ξ゚听)ξ「どうして殆ど仕事して無いのにロマネスクは"獅子王"なんて大層な二つ名を持ってるの?」

( ^ω^)「平定に最後まで渋っていたのはタシロ島でも屈指の軍事力を誇るミニタコ領・荒巻家だったんだお。
      彼はロマネスクの祖父の時代から杉浦家と衝突を繰り返していて、それに決着をつけたのがロマネスク。
      その時の戦いぶりから彼は"獅子王"と呼ばれているんだお」

爪'ー`)y‐「まあ、タシロ島と獅子王についてはこんな所だよね。
       これで僕も話を続けられるってもんだ。ありがとよ内藤君」

(;^ω^)「え?もうちょっと感謝とかしてくれて良いんじゃないの皆?」

爪'ー`)y‐「僕は知ってたしなあ、っつうか、当然」

ξ゚听)ξ「元々教育係だったんだから、ホライゾンが私に知恵を授けてくれるのは当然」

(;^ω^)「こんだけ長ったらしい説明させておいて、お前らは本当に心が鬼だお……」

内藤さんは竹筒の水を一気に飲み干すとそれをぶん投げて(渋沢さんの頭にクリーンヒット)仰向けに身を倒した。
あーくそやってられっかお、などと言う恨みがましい呟きが世の中に対する彼の不満を表現していた。

ζ(゚ー゚*ζ「あー……私は……説明ありがとう御座います、内藤さん」

自分にとってはその知識は知らない事だったし、覚えておく事が有益にも感じる。
ならば私にとっては例を言うのは当然だろう。
私の言葉に内藤さんはがばっと起き上がって、

( ^ω^)+「本当ですか!この私、デレ御嬢様のお役に立てて嬉しい限りで御座います!」

(^ω^ )「チッ、それと比べてこっちの奴は全く……」
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:19:49.81 ID:yj6HQHSR0
今、顔面を陥没させられた内藤さんは渋沢さんと並んで仲良く(?)ぶっ倒れている。
うつ伏せに付した彼の頭らへんに転がる竹筒が何とも哀愁をそそるのは気のせいだろうか。気のせいだろうね。

ξ゚听)ξ「あれには私が後で伝えておくわ」

爪'ー`)y‐「そうだね、じゃあ話を続けようか」

ζ(゚ー゚;ζ(二人とも凄い棒読みなのは何でだろう……)

爪'ー`)y‐「まあその仕事ってのが簡単に言えばタシロ島に侵入してきたアスキー軍の撃退なんだけど……」

何かを考え込むように右手を口元に当てて数拍、その手を放して再び口を開く。

爪'ー`)y‐「……士気を下げるような事を言って申し訳無いんだけど、恐らく僕達は間に合わない。
       やるなら、タシロ島軍の撤退戦……になるだろうね」

ξ゚听)ξ「ちょっと待って」

御姉様が遮りに入る。強い口調で紡がれる言葉は、

ξ゚听)ξ「まさかデレまで巻き込むつもり?ホライゾンと私は覚悟できてるけど、デレはただ成り行きでここに居るだけじゃない」

確かにそうだ。
これを認めるのは恥ずかしい事だが、私はただ成り行きでここに居て、出来れば戦いには巻き込まれたくないのは事実。
それに対するフォックスさんの回答は、まるで予期していたかのように迅速だった。

爪'ー`)y‐「飛行機械の中に居ればいい。もし守りが破られたとしても、僕が責任を持って君を全力で護り抜く。僕が死んでも、だ。
       もし僕が出来なければ――汚いと罵ってくれても構わない。絶対に誰かに君を護らせる。君を死なせはしない」

13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:21:45.07 ID:twCzHBhc0
まぁ支援
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:24:28.67 ID:yj6HQHSR0
ξ゚听)ξ「……アンタがそこまでマジになるなんて珍しい……少しは信用できるんでしょうね」

爪'ー`)y‐「当たり前だ。元々そこで失われるべきじゃない人命だよ、デレ嬢は。
       出来れば飛行機械を二機回してもらってデレ嬢だけ先にシベリアに行って貰いたかった。あそこに居れば安全だからな。
       それが出来なかった――否、デレ嬢を危険に巻き込まざるを得ない状況を作ったのは僕の落ち度だ。
       着いて来てくれるか……デレ嬢?」

いつものフォックスさんとは違う、真剣な表情だった。
それの作り出す重い雰囲気に、私は言葉を発する事ができない。
ただ――その言葉は、信用するに値すると、私は思った。
だから、首を縦に振ることで同意の証とした。

爪'ー`)y‐「……ありがとう。それじゃあ、後三日だな。寝床はシブタク君がこの家を貸してくれる事になっている。
       とりあえず食事は各自外で摂る事にしよう。シブタク君もそうしているそうだ。
       これを心に留めて、三日間は自由にするとしようか」

仲良く倒れる二人の男が喋れないのは仕方ないとして、部屋の空気はしんと静まり返っていた。

爪'ー`)y‐「……空気重いよ?耐えられないなあ、僕。出て行きづらいじゃん。
       君たちもさ、街中で何かやりたい事あるんじゃないの?」

不意を付かれたように、御姉様はへ?と間の抜けた声で反応し、慌てて態度を作り直す。

ξ゚听)ξ「あ、ええ。とりあえずホライゾンが復活しない限りは私は外に出られないし……。
       それに、デレが悪くなければ久々に姉妹二人で話しをしたいと思っていたし、ね」

爪'ー`)y‐「そうかい。それじゃあ僕は心置きなく退散するとしようか。
       夜はここに戻るから、何か聞きたいこととかがあったらそん時にでも頼むよ」
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:29:11.70 ID:yj6HQHSR0
view.ξ゚听)ξ Tsundere Rounge.

フォックスのあれだけ真剣な様子は、私も見たことは無かった。
というか、あれだけ真剣な人間になれるのかと思った。
普段のふざけた姿は道化か何かだろうか。でなければ、あそこまで重い雰囲気を作り出せることに説明が付かない。

ξ゚听)ξ「……ま、良いか。んじゃあデレ、話よ」

ζ(゚ー゚;ζ「え?あ、はい……どうぞ」

ラウンジから出て三日デレと一緒に居たが、まだデレからは怯えに似た何かを感じられる。今もそうだ。
そりゃあ、いきなり死んだはずの姉が出てきてびびらない妹は居ないだろーが。

ξ゚听)ξ「単刀直入に聞くけど……貴女、どうしたい?」

きつい質問だったか、と口にした瞬間思った。
訳もわからずに父親に殺されかけて、それで何か出来るわけでもなく、信用しきれない人間の助言に従って逃げて、ここに至った。
彼女の頭は未だ混乱しているだろう。移動中はずっと気分を悪くしていたんだから、なおさら。

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたい……と言いますと?」

予想通りの回答。それでも、訳もわからず回りに従うと言う回答が出てこなかったぶん、安心はする。
私からしてみれば、デレには危険に関わって欲しくない。
だけど、三日後のタシロ島行きだけは避けられない。それさえ超えれば、シベリアで彼女は護って貰える。
シベリア王シュールならそうしてくれる、とフォックスと、ホライゾンも言っていたから。
だから、

ξ゚听)ξ「貴女は今危険に巻き込まれているわ。それだけは解っているでしょう。
       そして、自分の行動を選ばなきゃいけない。ま、放って置いても回りは貴女を安全なところで護ってくれるかも知れない」
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:30:06.96 ID:twCzHBhc0
うん、まぁ前話読んでくるからじゃーねー
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:35:03.18 ID:yj6HQHSR0
ξ゚听)ξ「けれどそれは可能性の話でしかないの。貴女は、貴女の意思で選ばなければいけないかもしれない。
       もし自分の意思と反する事が現実になりかけた時――貴女が意思を決めていれば、状況をどうにかできる可能性だけはある。
       貴女が出来なかったとしても――力を貸してくれる人が居るはずよ。意思さえ決めていれば」

私は。
私は、どうにかできなかったから。
私が殺されたあの日は、あまりにも突然だったから。

と言うと非常に幻想的かもしれないが、後でホライゾンの首をシメながら問い詰めた所、

(;^ω^)「いや、処刑時間が変更になったのはフォックスさんの落ち度で――え?何で御嬢様が殺されることを教えなかったって?
      僕だってたまにはかっこいい所を御嬢様に見せた――っうああああ!!それ以上絞めないで!アウトアウト!」

……私は男の見栄で殺されたわけだ。
まあ、結果的に私の野望であった永遠の美貌の入手は叶った訳で、恨むかどうかと聞かれれば8割は"No."なわけだ。
これをフォックスに聞かせた所、

爪'ー`)y‐「良い感じにセカンドライフ満喫してるねぇ御嬢様は。
       その死霊と言うネガチヴイメージの合わない太い生き様に僕は感動し……僕何か悪いこと言った?その手を降ろしてよ!」

……容赦なく鉄拳を飛ばしたのはなんとなく想像つくだろうよ。
ともかく、情報も得ているデレに足りないのは後自分の意思だけ。
それが無ければ、私の二の舞を踏む事になるだろう。私は、デレにそうなって欲しくない。

ξ゚听)ξ「……ぁー。でも、全てのしがらみから開放されて霊として生きるのも割と悪くは(ぼそ)……」

いかん、つい本音が。
小首を傾げる様子から、聞かれては居なかったようだ。セフセフ。

18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:37:57.31 ID:yj6HQHSR0
ξ゚听)ξ「ともかく、貴女はどうしたい?
      安全な所に居たいと言うも良し、戦いたいと言うも、それが貴女の意思なら私は出来る限り全力で助ける」

様子を窺う。
普段から俯きがちであるが、唇を軽く結ったその伏目から、考えを深めているのは容易に想像できる。

ξ゚听)ξ「……まあ、どうですかと聞かれてこうですとすぐに答えられるような問じゃないから、気にすることは無いわよ。
      深く考えなさい。深く考えて、決心したら、周りに打ち明けなさい。御姉様からのアドバイスは、ここまで。
      ――最後に、私は貴女が何を決めようが、手助けはするつもりよ……ホライゾンの敵に回るような事じゃなければ、ね」
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:40:28.16 ID:yj6HQHSR0
view.爪'ー`)y‐ Fox.

『さっきから何を歩き回っているのですか……?』

爪'ー`)y‐「美和とか言う人が霊装にされた、シブタク君が霊装を手にした、しかし彼はそれを霊装とは知らない。
       となれば、居るはずだろ。彼女を霊装にして、シブタク君を霊装使いにして、自分の陣営に引き抜こうって奴が、まだ」

言いながらも、僕は気配察知の魔術を自分にかける。
脳に広がる、人間がドットと化した周囲のヴィジョン。霊装の気配は見えない。
自分の無力に、思わず溜息が出てしまう。

爪'ー`)y‐「僕が霊装使いなら、強力な隠蔽魔術でも見抜けるんだろうなぁ。
       若しくは、気配察知自体を霊装経由で使って、もっと広域に強力に検索かけたり、ね」

『……申し訳御座いません』

おっと、いつもの癖が出てしまった。
取り返しの付かない事に自分を叱責しながらも、フォローを入れる事は忘れない。

爪'ー`)y‐「……気にしないで良いよ。どうも僕は、無意識に他人を傷つける節があるよな……」

と、突然意識の中に広がる無数のドットの内の一つが、激しく己を主張し始めた。

爪'ー`)y‐(何だ……?自ら隠蔽を解いたって言うのか?酔狂な……若しくは……)

目の前に歩み寄ってくる女性と、ドットが同期している。
その独特のプレッシャーに、眩暈すら覚えそうになる。

爪'ー`)y‐「よほど自分に自信があると、そう言いたいのかな?霊装使いさん」
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:43:31.96 ID:yj6HQHSR0
駄目だ、逃げろ。
死霊術士としての自分が警告している。これには勝てない。
その女性は、極東独特の和装を着ていた。
薄青の着物に、群青の帯を締め、腰元には刀。
表情を始めとし、全体的に見た目だけは平和ボケした印象を見せるが、その刀が、異常なまでのプレッシャーを発している。

(゚、゚トソン「そうで御座いますね、フォックス殿」

爪'ー`)y‐「何だ、僕も有名になったものだね……」

ふふ、と眼前の女性は優しく笑う。
そこに敵意は全く感じられない。
ただ、その発する重圧は精神的なものから身体的なものにシフトしていた。
重いのだ。まるで金縛りにでもあったかのように、五体が動かない。

(゚、゚トソン「交渉に参りましたのよ、フォックス殿。
     その前に、私も名乗っておきましょう。都村トソン。以後、宜しくお願いします」

爪'ー`)y‐「その"以後"って言う含み……実に気になるもんだね。
       それと、その腰の霊装。そいつは交渉人が使うシロモンじゃないね」

(゚、゚トソン「あら、失礼」

笑みを崩さないまま、彼女は刀の柄に触れた。
その瞬間、僕の五体にかかっていた重圧が全て降りる。

(゚、゚トソン「これで、宜しいかしら……?」

爪'ー`)y‐「うん。だいぶ軽くなったよ。それじゃ聞かせてもらおうか、全部な」
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:46:57.32 ID:yj6HQHSR0
(゚、゚トソン「フォックス殿はシベリアに従事しているとの事。
     ここで私……が持ち掛けたい話は一つ。フォックス殿にはタシロ島へ赴かないで貰いたい」

爪'ー`)y‐「……話が見えないね。それに、"僕がタシロ島に行かない事"に見合った何かを、君は出せるのかい?」

(゚、゚トソン「簡単な話で御座います。フォックス殿がタシロ島に赴かれれば、結果が変わってしまう。
     それでは困るのです。故に、これを提案いたしました」

爪'ー`)y‐「……わけのわからない話だ。それに、対価を提示していない」

(゚、゚トソン「早まらないで下さい。もし、フォックス殿がタシロ島に赴かれるとしたら――私もその地へ赴かなければならないでしょう。
     ……強いですわよ?私と、彼女は」

都村が指を鳴らすと同時、僕の体に重圧がのしかかった。
さっきのとは比べ物にならない重圧。むしろ引力にも似た、全身に巨石を吊り下げたような重圧に、僕は片膝を付かざるを得なかった。

(゚、゚トソン「それと……交渉成立の暁には、これを」

トソンは、僕の足元にそれを転がした。
赤い液体の満ちた小瓶。その赤は、

(゚、゚トソン「私、都村トソンの血液に御座います。渋沢殿には必要かと」

爪;'ー`)y‐「……お前か、殺ったのは。
       否、そんなことはどうでも良い。どこまで知っている、都村とやら」

(゚、゚トソン「おやおや、化けの皮が剥がれましたか」

爪;'ー`)y‐「僕のプライドはどうでもいい。答えろ」
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:49:44.79 ID:yj6HQHSR0
(゚、゚トソン「んー、この状況でフォックス殿が私を問い詰められるとは私到底思えませんが……良いでしょう。
     まず第一、渋沢殿の婚約者、高崎殿を殺し、霊装に封じ込めたのは紛れも無く私に御座います」

それを発した相手は僕の手で八つ裂きになっていただろう発言。
しかしそれは五体の自由が利き、かつ僕の力が及ぶ相手であったらの話だ。
後者は例え力が及ばなかったとしても一矢報いる努力はするが、五体の自由が利かない今それすら適わない。
僕の屈辱を感じたのか、都村とやらは笑みを濃くする。

(゚、゚トソン「そしてフォックス殿は、渋沢殿をうまく言いくるめて自分の陣営に引き込んだ。
     私、失礼ながらこの手口は卑怯であると思いました。
     まあ、私も同じ事をしてやろうと思っていましたので、あまり強くは申し上げませんが」

爪'ー`)y‐「ありがとう。お陰で僕のしたことは間違っていないと信じられたよ、都村。
       自分の恋人を殺した者に従い、恋人の敵と"呼ばれた"者を討つ。これほど虚しい生き方はシブタク君にはつらいだろうね」

(゚、゚トソン「ふふ、それは私の知り及ぶ所には御座いません。
     ただ、事実を知らない者にとっては知らされた事実のみが事実となる事もまた事実に御座います」

爪'ー`)y‐「……腐ってやがるな、性根から。この体を使ってる誰かさんを思い出すよ」

(゚、゚トソン「私の主人の受け売りで御座いますのよ。
     それに、フォックス殿がここ厨房で開発を進めているアレ……真に脅威なのは、あちらの方に御座います。
     それが私……否、私達をタシロ島に駆り出し、その地に悲劇をもたらすので御座います」

爪'ー`)y‐「悲劇とはこれまた大層な……」

(゚、゚トソン「嘘には御座いません。私のこの力、本気を出せば戦場ひとつ分くらいには効果を及ぼせますゆえ。
     その結果がどうある事か……想像に難くは無いと思いますが?」

23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:52:12.01 ID:vAznEsuJ0
支援
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:53:02.73 ID:yj6HQHSR0
今僕が受けているこの力は脅威だ。
だが、これだけが問題になるわけではない。先程の発言にもあった"私達"。
それは、彼女以外の霊装使いが敵側に居ると言う事だ。

ここは死に所ではない。
タシロ島からの撤退を成功させられれば、獅子王杉浦ロマネスクを味方に付ける事が出来る。
それに、シベリアにはシュール王も居る。
内藤君やシブタク君も、まだまだ力を付ける事が出来る。
勝負を仕掛けるなら、その後。シュール王もそう考えているだろう。
そうなれば、僕が欠けていても、確実に撤退を成功させる事が出来るこの一手を取るしかない。

爪'ー`)y‐「一つ、確認して置こう。僕がタシロ島に行かなければ、お前達もタシロ島に行かないんだな」

(゚、゚トソン「無論に御座います。私は約束を破る事が苦手であるゆえ。
     当日まで、私は気配を消さないで、厨房に滞在する事に致しましょう。
     それが一番の証明に御座います」

信用するのも癪だが、確かにそれなら"少なくとも厨房に都村が居る事"は把握できる。
それに、"行けばお前ら全滅"を仄めかされている以上、行かない事が上策だろう。
――そもそも、シベリアに帰るのは僕だけであった筈だから……否、この考えは残酷すぎるな。

爪'ー`)y‐「解った。交渉成立だ」

都村は笑みを深めると、

(゚、゚トソン「結構。ご協力、感謝致します」

重圧が降りた。都村は去っていくが、追う気にはなれなかった。何故なら、一つの策が浮かんできたから。
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:55:59.99 ID:yj6HQHSR0
view.( ^ω^) Horizon Naito.

二日は意外と早いものだった。
何故なら極東の食はまさにこの世の美を尽くした――

(;^ω^)「待て、御嬢様。知らないのか?極東には『思想の自由』と言う――」

ξ#゚听)ξ「   問   答   無   用   」

view.ζ(゚ー゚*ζ Dere Rounge.

内藤さんはアッパー食らってノックアウトした。
ここは飛行機械発着用の広場。もうすぐ飛行機械が来る事になってるが、気絶しっぱなしで良いんだろうか。

ξ゚听)ξ「なーに、大丈夫よ。誰かが積み込んでくれるでしょ」

爪'ー`)y‐「そういう根拠も無い自信が素敵だよねぇ御嬢様は」

ξ゚听)ξ「アンタも食らいたい?」

爪'ー`)y‐「勘弁だねぇ」

いつも思うのだが、彼らのノリには到底付いていけない。
否、それが正解なのだと思う。私の隣に立っている渋沢さんも会話に入るタイミングを見失っている感じだ。
たぶん、彼らについていけるようになったら人間終わり――

ξ゚听)ξ「何かデレが凄い失礼な事考えてるような気がしたんだけど、気のせいかしら?」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うん……気のせい、だと思うよ?」
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 18:58:31.34 ID:yj6HQHSR0
会話は、轟音によりかき消された。
音源は空中。船舶をより流線型に近めたフォルムの巨大な機械が、降りて来た。
搭乗口が開き、そこから折りたたまれていた階段が広げられ、道を作る。
そこから降りてきたのは、三人の人だった。
内一人は見知った男、残るは一組の見知らぬ男女だ。

( 0w0)「や。毎度お馴染みオメガだ。正式名称はオメガ・オンドゥル……通称オメガリーダー」

爪'ー`)y‐「そういう話はどうでもいいから」

(;0w0)「旦那よ、出番が少ない俺への気遣いってもんは無いのか」

爪'ー`)y‐「しょうがないじゃん。空気なんだから」

一組の男女もまた居づらそうな感じだ。
やっぱり、彼らは異常なんだなと改めて実感する。

爪'ー`)y‐「まあそういうわけでオメガ君にドクオ君にミセリちゃん……頼んだよ」

フォックスさんは私達の後ろに回り、背を押す。

ξ゚听)ξ「ちょっと何?アンタは乗らないつもりなの?」

私が感じた疑問は、御姉様が先に口に出した。

爪'ー`)y‐「んー。ちょっと都合が入っちゃってな。
      大丈夫だよ。ドクオ君もミセリちゃんも強いから、デレ嬢の命の心配は要らん……今の僕は非常に情け無いがね」

フォックスさんが内藤さんの腕を掴んで機内に投げこむのを、私は階段の上から見た。
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:00:04.27 ID:yj6HQHSR0
続いてオメガさんとドクオさん、ミセリさんも乗り込むと、階段が内側に折り畳まれて搭乗口が閉まった。

('A`)「さ、こちらです」

そこで始めて、ドクオさんが口を開いた。
彼の先導に従い出た先には、たくさんの椅子が並んでいた。
劇場をイメージさせるが、違うのは船舶と言う形に合わせて、横四列の椅子が真ん中に通路を開けて並んでいる事だろう。
後ろの方には五十人ほど、既に座って雑談やら何やらをしている。彼らは恐らくシベリアの兵達だろう。

('A`)「どこでも好きな所へ。私は操縦席へ行きますので、何か疑問がありましたらミセリかオメガリーダー殿まで」

そう言い残すと、ドクオさんはさっさと行ってしまった。何だか義務的な人だ。

ζ(゚ー゚*ζ(それにしても、大きいなぁ……)

輸送船をそのまま流用したかのような機械だ。
これがどのように飛ぶのか、非常に興味がある。
と、突然船内がひと揺れすると、上から軽く重圧のかかる感触を覚えた。

ζ(゚ー゚*ζ(とりあえず、座っておいたほうが良いかな……)

見れば、御姉様は「凄い凄い上がってくわよー!!」等と窓の外を見て興奮している。
ちなみに内藤さんはその辺に転がされっぱなしだ。
とりあえず、窓際に腰掛けた。外を見てみると、確かに厨房の町がミニチュアのように小さくなっている。

ミセ*゚ー゚)リ「あの……デレ様?」

突然右――窓ではないほう――から聞こえた声に驚く。
そこには給仕服を着た少女――確かミセリさん――が座っていた。
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:00:47.32 ID:vAznEsuJ0
支援
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:03:34.40 ID:yj6HQHSR0
ζ(゚ー゚;ζ「えと……ミセリさん、でしたっけ?」

私が名前を口にすると、ミセリさんは驚いた様子で口に手を当てる。
頬をほんのり赤に染めて俯き気味になると

ミセ*゚ー゚)リ「あの……私の名前……覚えていてくれたのですか……?」

伏し目がちの少女は、殆ど床を向きながら言う。
注意していないと聞きそびれるような、か細い声だ。

( 0w0)「よーミセリ、大丈夫か?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ……オメガ、さん……」

口下手なミセリさんに代わりオメガさんが説明した所によると、彼女は元シュール王の専属の給仕だったと言う。
給仕といっても身の回りの世話だけでは無い。シュール王に刃向かう物があれば、それを撃破するのも、彼女の務めだったと言う。
幼い頃からその修行に明け暮れていた為、友人、ましてや同い年のそれと交わる事がなく、結果として閉鎖的な性格になってしまったらしい。

( 0w0)「それで……今回デレ嬢の護衛にミセリが当たる事になった訳なんだが……」

ミセ*゚ー゚)リ「あの……よ、よろしくお願いします……っ!」

口にするとすぐ、彼女の顔は紅く染まって、俯いてしまった。

( 0w0)「あー……ちょっと、お願いがあるんだが」

オメガさんは私にだけ聞こえるように耳打ちする。
今回ミセリさんを私の護衛にするに当たっては、フォックスさんが一役買ってくれたらしい。
が、シュール王としては、ミセリさんに同い年の人と交流を持ってもらいたい、その願いが一押しになったらしい。
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:05:35.90 ID:yj6HQHSR0
( 0w0)「我侭な話かも知れないけどよ……お願いできるか?デレ嬢」

ζ(゚ー゚*ζ「はい……」

実を言うと、私もそれは同じなのだ。
幼い頃から屋敷から出ることを許されず、同い年の友人を持つ事も無かった。
と言う訳で、私としてもそういう事は内心嬉しいわけだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ミセリ……さん?」

ミセ;゚ー゚)リ「あっ……は、はい!何でしょうか……?」

俯いていた彼女はびくんと体を震わすと、真っ赤になった顔に驚きの表情を浮かべて答える。
私はなるべく怖がらせないように、そっと彼女の手に私のを重ねる。

ζ(゚ー゚*ζ「これから……よろしくお願いします」

ミセ;゚ー゚)リ「は……はい!こちらこそ……!」

答えるとまたすぐに彼女は俯いてしまう。
オメガさんは、何だか困ったように笑っていた。
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:08:31.73 ID:yj6HQHSR0
view.爪'ー`)y‐ Fox.

飛び去った飛行機械を、それが小さくなって見えなくなるまで見送った。
その後、隣のシブタク君が静かに口を開いた。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「……行くか、フォックス殿」

勿論、そこは都村の所。
勿論、それは復讐の為。

あの時思いついた策とは、わざわざ気配を出してくれているのを利用してぶっ殺しちまおうと言う、至極単純な作戦。
ただ、それには穴があった。無論それは彼女の扱う霊装の発するあの重圧。
本気を出せば戦場全てに適応できるあの重圧に、どう対処すべきか。
その答えは、シブタク君の霊装にあった。

― 一日前

爪'ー`)y‐「……どーだい、何か変わった?」

都村の血液を赤い刀身に垂らして、それをシブタク君が握る。
シブタク君自身の魔術のほうは大体形になってきた。僕の教え方と、シブタク君の熱意の表れだろう。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ん……何だか、元気になってくるような」

青い月の照らす暗闇の中、刀身がほのかに赤い光を発す。
すると、突然刀身が燃えた。シブタク君はびっくりした様子でそれを放す。
放された刹那、炎は何事も無かったかのように収まり、カランと言う音を立てて刀は地に落ちた。

爪'ー`)y‐「元気になる……炎……となると……、清め、かな」
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:11:56.82 ID:yj6HQHSR0
古来、炎は清めを意味してきたと伝えられている。
事実、外傷治癒系以外の治癒魔術……例えば病気払いなんかは炎の魔術式を基礎としている。
それらは人間にとっての穢れを払い、清める事が治癒の仕組みとなっている。

ここで現在に戻ろう。あの重圧の正体は、僕の推測では瘴気の一種。
つまり、得体の知れない穢れが体の動きを鈍くしていると言う事となる。
その"穢れ"をシブタク君の霊装で払う事ができれば、勝機がある。
それに、"僕の霊装"も完成したのだから。

後は、シブタク君がどれだけ実戦についてこられるか、だ。

爪'ー`)y‐「高崎さん……のことは、残念だったな」

霊装の機能を起動させるには、人間の体液(出来れば血液)が必要になってくる。
命を源とする死霊術の産物であるからか、そのスイッチは命によって入れられる。
よって命に最も近い血液が最も良い触媒になるわけだが……
量が足りなかったのか、それとも別の要素か、都村の小瓶に入っていた血液を垂らしても高崎さんは現れなかった。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「まぁ良いさ。必要な分はそいつを斬って手に入れる」

爪'ー`)y‐「やる気だね。そいじゃ行こうか」

敵のドットは森林の中に見えた。
こうなる事を予期していたのだろうか。
黙々と歩いていたが、そこまでの道はやたら短く思えた。

(゚、゚トソン「おや、フォックス殿に渋沢殿。お揃いで何の御用でしょうか」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「黙れ。今からお前を殺す」
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:14:20.50 ID:vAznEsuJ0
支援
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:15:46.16 ID:yj6HQHSR0
都村は笑みを崩さない。

(゚、゚トソン「あらあら、物騒な事で……」

来た。重圧。
シブタク君にとっては未経験だ。彼が動揺していなければ――
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「……来い!」

何とか刀を抜いた。
赤い刀身に炎が宿る。
  _、_
(#,_ノ` )y━・~「せぇぇぇぃ―――ッ!」

振り抜く。その焔は永久の闇を切り裂かんばかりに明るく照らし、硝子の割れるような音と共に僕にのしかかっていた重圧が消えた。

(゚、゚トソン「おやおや……ま、相性と言う物もありますしね」

重圧が破られた筈なのに、全く動揺を見せない都村。
だがその手は腰に挿した刀の柄に伸びていた。
すうっと、鞘走りの音も滑らかにそれを引き抜く。

爪'ー`)y‐「へぇ。"対"って所かな」

その刃は青色。
赤い月の元にあっても、その青は褪せる事無く己を誇示している。

(゚、゚トソン「参りましょう――貞子」

――( ^ω^)常夜の世界のようです opening-2 end.
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:16:44.74 ID:yj6HQHSR0
             終       了

三話はすぐに投下できそうと言うかする
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/19(土) 19:22:00.92 ID:vAznEsuJ0
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
はいはい支援