1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
唯「ういー、また依頼来たよ。明日事務所に来るって」
憂「今月入って12件目かぁ……少し仕事減らさないと体もたないなぁ」
私が「便利屋」の仕事を始めてそろそろ1年が経つ。
便利屋。何でも屋。よろずや。呼び名は違えどやる事は同じ。
でも私の事務所は――と言っても私とお姉ちゃんの二人だけしかいないけど、
犯罪やいかがわしい依頼以外は、本当に「何でも」やる。
「初めまして、当事務所代表の平沢憂です。それで、ご依頼の内容はどういったものでしょう」
「はい、今回の依頼というのはですね……「ダム」、なんですが……」
……作れってか。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:30:10.99 ID:5yhO7A9v0
「あ、でもダムと言ってもですね、」
「?」
「砂防ダムの方でして」
「……。『あぁ砂防ダムの方ならなんとか!』……って言うと思ってます?」
「やっぱり無理ですかねぇ……?」
「さ、さすがにちょっと……」
――さっきから、視線を感じる。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:32:36.67 ID:5yhO7A9v0
といっても、事務所には3人しかいないのだから視線の主は明らか。
お姉ちゃんだ。
(いけない……すっごいキラキラした目で見てる……)
正直に言えば、多分余裕で作れるだろう。でも……
そもそも、私が便利屋なんて始めたのにはとある理由がある。
最初は、アイスだった。
「……ういー、あいすー」
「はいはいお姉ちゃん、ちょっと待ってて」
コンビニに走った。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:33:28.62 ID:pT6kPAzeO
けいおん(笑)
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:34:31.67 ID:t1QZEWTSO
前の続きかい
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:34:47.44 ID:WTLWKHPk0
前にどこかで見たことあるような
しえん
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:35:52.37 ID:5yhO7A9v0
次は、カレーだった。
「……ういー、コルマカレー」
「こるま……?ちょ、ちょっと調べてみるね」
メニューを出している店に通いつめ、味を盗んだ。
次は、そばだった。
「……ういー、更級10割そばー」
(10割……?え、そば打ち未経験の妹にのっけから10割?)
職人に2週間限定で弟子入りし、跡を継げと言われた。
次は……
「……ういー、BD/DVDレコーダー」
(ついに食べ物じゃなくなった……)
UI規格なるものが、世界的に採用された。
ういー、パルテノン神殿ー
ういー、ガリガリくん宮崎産マンゴー「太陽の卵」味ー
ういー、大陸間弾道ミサイルー
ういー、ういー、ういー、ういー、ういー、ういー、ういー、ういー、ういー……
私に、出来ない事は無くなっていた。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:38:33.56 ID:5yhO7A9v0
昔お姉ちゃんがあの目をした時、依頼を断った時がある。
その落ち込みようたるや、半端なものではなかった。
(うぅ、断りづらい……でも砂防ダムって確か……)
砂防ダム。
何やら悪い噂を聞いた事がある。
どうしよう……
「え、えぇと……ダム、ですよね。……ガンダムじゃなくて」
「ガ、ガンダム作れるんですか!?」
「憂、ガンダム作れるの!?」
しまった墓穴を掘った。
UI作戦
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:41:53.71 ID:5yhO7A9v0
「い、いや作れません作れません!!」
「……そうですよね……さすがにガンダムは……」
「ガンダムはむりかぁ……はっ!!」
「……いやジムも無理だよお姉ちゃん」
――しょぼーん……
妹がガンダムを造れると信じている姉が、この世のどこにいるというのか。
とにかく、依頼は断ろう……
最近仕事し過ぎだし。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:44:51.99 ID:5yhO7A9v0
「すみません、今回のお仕事はお断りさせて頂きたいのですが……」
「そうですか……さすがに無理ですかガンダムは。かの平沢憂さんといえども」
――イラッ
あれ、ひょっとして挑発されてる?
というか依頼はダムだよね?ガンダムじゃなくて。
「そっかぁ、無理かガンダムは。いくら憂といえども?」
いやいや、いえども?じゃないよお姉ちゃん。
その誇らしげな顔ははんなの。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:46:57.47 ID:5yhO7A9v0
……くっ、まさか身内にも敵がいたなんて……!
――チラッ
――チラッ
見てる、二人してすっごい見てる!!
「……か、」
「か!?か、なんですか!?」
「か、何!?憂!!」
「……開発費として、とりあえず30億用意してください」
私の、ガンダム開発が始まった。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:50:44.89 ID:5yhO7A9v0
ガンダム。
名前くらいしか知らなかった私は、まずネットで情報をあさった。
正直、
「いやそこまでは聞いてない」
という感想を持つページも少なくない。
そして驚きの新事実。
「これ、核で動いてたんだ……」
正直2足歩行さえ妥協しようと考えていた私にとって、衝撃以外の何者でもなかった。
そして、4速歩行でいい?と聞いた時のお姉ちゃんの怒り具合も、衝撃以外の何者でもなかった。
しぇん
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:53:58.65 ID:5yhO7A9v0
核、か。
過去に扱った事はある。そして、2度と関わらないと決めた。
「……よし、」
翌日クライアントを呼び、意を決して伝えた。
「動かなくてもいいですか?」
二人して、「ハァ?」という顔をしている。
そして、早口でまくし立てる。
「動かないガンダムに何の価値があるというんですか?」
「そうだよ憂、台詞が「こいつ、動かないぞ!」になっちゃうよ!」
「動かなくてもィィですヵ?」
「……なんで女子中学生のメールみたいになってるんですか?」
「……う、憂……ひょっとして怒って……」
「動かなくてもいいですよね?」
『は、はい……』
勝った。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 22:56:24.60 ID:5yhO7A9v0
これで目処は立った。
動かなくてもいいなら楽勝だ。
無類の日本好きというドイツ人の依頼で、40メートルの大仏の立像を作った事もある。
それと大差ないはず。
……ただ、
数々の依頼をこなして来た便利屋としてのプライドが、憂にこれ以上の妥協を許さなかった。
(なになに、月面の重力下で……ふむふむ)
――
―
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 23:00:20.24 ID:5yhO7A9v0
2ヵ月後
「たった2ヶ月で作っちゃうなんてさすが憂だね!!」
「なんて迫力……今にも動き出しそうだ!!」
「ありがとうございます。頂いた開発費の30億からこちらの報酬を差し引いた物を返金しましたのでご確認ください」
起動戦士ガンダム
装甲材質名:ルナ・チタニウム合金
『月面上という特殊な重力下で精製することにより従来のチタン系合金に加え、様々な特性を有する』
平沢憂のプライドが、世界初の完全な重力操作技術を生んだ。
制作期間、わずか42日間での出来事だった。
ガンダム台場に立つ 終
これはよい
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 23:10:15.46 ID:DYRDu2B+O
憂パネェなwwww
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 23:17:36.39 ID:8gP3iZ35O
部員が皆障害もってるやつがやってた時の
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/10(木) 23:20:58.57 ID:5yhO7A9v0
寝オチして投げ出したのが気がかりでね……無理やり終わらせました。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
憂さん凄すぎ・・・
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ほしゅ