1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
代理だよー
2 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:38:51.04 ID:/psCwdqO0
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 23:39:17.62 ID:13pGIySqO
し
4 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:41:24.57 ID:/psCwdqO0
从;゚∀从「はぁ……はぁ……」
擦り剥いた右膝が闇の中でも赤々と目立つ。
軽くびっこを引いて、ハインは壁伝いに進み続ける。
ここは西校舎二階。現在、彼女は追っ手から逃げ惑う最中だ。
从;゚∀从「くそ……最悪だぜ……全く!」
追跡者は徐々に距離を詰め始めている。
まるで、この追跡劇を楽しむかのように、一思いに近付いては来ない。
負傷し、体力もないハインは所詮、逃げ切ることは不可能と高を括っているのか。
え
6 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:44:02.80 ID:/psCwdqO0
从 -∀从 (付け入る隙はそこだ! あのデブが油断している今こそ……)
どうするのか。
从 ゚∀从 (戦うのか……逃げるのか……)
例え逃げたとして。
実際問題、彼女の怪我や体力面から見れば逃げ切るのは難しい。
敵の判断が、決して油断や過信からくるものではないということだ。逃げれば、いずれ追い付かれる。
从 -∀从 (やるのか……武器も無しに……!)
それも望みが薄い。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 23:45:56.11 ID:13pGIySqO
ん
8 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:46:34.30 ID:/psCwdqO0
曲がりなりにも、一端の運動部。
殴った蹴ったでは話にならない。敵の間合いに入り込めば、まず間違いなく倒される。
しかし飛び道具もない以上、遠距離から一撃必殺の火力を用いることは難しい。
从;゚∀从 (倒せなくとも時間を稼ぐしかない。誰かが……誰かが救援に来るはず!)
それも、来ないかもしれない。
从;-∀从 (最初から諦めてどうする! 少しでも可能性があるなら、それに備えて最善を尽くすんだよ!)
心の隅に滞る不安を振り払うように、傍にある教室のドアを叩く。
从 ゚∀从そ 「…………っ? 鍵が?」
その手に残る、違和感。
9 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:49:05.64 ID:/psCwdqO0
改めて引き戸を調べる。確かに、ドアに鍵はかかっていない。
見上げる表札には『家庭科研究室』と、うっすらとした文字が闇の中に浮かび上がる。
音を立てないように、扉をスライドさせる。
中に首を突っ込めば、普通の教室とは違った雰囲気が漂っていた。
コンロがそれぞれ取り付けられた大柄な机が、いくつも配置されている。
教室の壁一面に設置された流し台たちが、漏れたわずかな光を鈍く反射した。
从 ゚∀从「家庭科研究室……」
手札が無い、と思われてた極限状況。
窮地に焦る彼女の心に、一筋の希望が生まれ始めていた。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 23:49:06.91 ID:K+N1/kX90
支援
11 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:51:33.55 ID:/psCwdqO0
ノパ听)と('A`)は部活動に勤しむようです
第二十三話『Bomb A Head!』
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 23:52:33.68 ID:13pGIySqO
支援!(力強く抱きしめる)
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 23:53:39.41 ID:t09vfNrY0
俺も支援(力強く抱きしめる)
14 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:54:07.21 ID:/psCwdqO0
* * *
( ´∀`)「…………」
のっそり、のっそりと歩を進めながら、辺りを警戒する。
二階廊下に辿り着いた追跡者――柔道部部長、『考える柔術家』のモナーは闊歩を続けた。
人っ子一人の気配すら感じない闇の中、それでも用心深く視線を這わせる。
( ´∀`) (さっきので、改めて確認させられたモナ)
モナーは理解する。
やはり、ハインリッヒ高岡はただの非力な少女ではない。
厄介なことこの上なし。真っ向から戦うのならまだしも、逃げ惑われる上では余計にだ。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 23:56:01.96 ID:1iukZhtb0
( ゚д゚)ボッボッボッ ボンバヘッ ボッボッボンバヘッ!!!
16 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:56:35.26 ID:/psCwdqO0
( ´∀`) (それでも、あの歩き方から見るに奴は負傷してるモナ)
それなら追いつくのは容易い。
問題なのは追い詰めた時に、彼女が一体何をやらかすかだ。
( ´∀`) (しかし武器も力もない――と、油断すれば必ず裏をかいてくるはずモナ)
怪我のことも考え、そう遠くまでは移動できないはず。
ハインは必ず二階にいると、モナーは判断した。それと同時に、追跡速度を上昇させる。
いつまでも余裕を見せているわけにもいかない。
彼が軽く駆け足を始めようかとした、その時――
( ´∀`)「……モナ? 明かりが……」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 23:57:43.51 ID:13pGIySqO
しえん
18 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/05(土) 23:59:05.23 ID:/psCwdqO0
気付く。
それは廊下の向こう。
とある教室の明かりが、窓を突き抜けて煌々と廊下を照らし出している。
闇に目が慣れた中、その黄色味がかった温かな光は酷く刺激的だ。
( ´∀`) (……十中八九)
罠、としか思えない。
そこにハインがいてもいなくても、必ず何かがある。
そうでもなければ、わざわざ明かりまで点けて注意を引き付ける意味もない。
( ´∀`) (もしかしたら本当に明かりだけ点けて、逃げるための時間を稼ぐ気かもしれない……)
19 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:01:35.78 ID:6TtQC0mR0
それでも、無視は出来ない。
裏の裏を読んでその教室を見逃し、潜んでいたハインが別方向に逃げては最悪。
渡り廊下は、流石兄弟の狙撃によって封鎖はされている。されてはいるはずなのだ。
(; ´∀`) (いや、しかしこれはどうしたモナか……)
二階廊下の窓は、見た所は一枚も割れてはいない。
狙撃は一発も行われていない、ということだ。
流石兄弟の役目は、あくまで戦場の封鎖。
しかし、射程内をふらふら逃げ惑う獲物を全く無視するのも、無理な話。
可能な限り排撃するべきだ。モナーという、確実な追跡者がいたとしても。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:02:34.15 ID:IU7DXOZ5O
し
21 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:04:10.50 ID:6TtQC0mR0
ではハインが終始、狙われぬよう窓の死角に潜んで進んで行ったのか。
( ´∀`) (あるいは……最悪の事態も考えられるかもしれないモナ)
流石兄弟が、狙撃『できない』状況に陥っている。
( ´∀`) (やられたのか、現在戦闘中なのか。考えすぎならいいモナが……)
歩調を早める。
考えている間も勿体ない。今は一刻も早く、その教室に向かうべきだろう。
例え罠であろうとも、進んで足を踏み入れなければ始まらない。
22 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:08:09.66 ID:6TtQC0mR0
( ´∀`) (やってみるモナ! 何をしようとも、貴様は必ず捕縛するモナ!)
辿り着くと共に、乱暴に取っ手へと手をかける。
息を吐く間もなく、力一杯スライドさせた。
こじ開けられた長方形から、さらに量を増した光がモナーの両眼を刺し貫く。
躊躇はない。
モナーはハインの罠へと、勇猛果敢に踏み込んで行った。
しえ
24 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:10:38.39 ID:6TtQC0mR0
* * *
( ´∀`)「…………」
踏み込んだ部屋の内部。
並んだいくつもの流し台や。
教室後部にある硝子戸の中に陳列された大量の皿。
設置されたコンロに電子レンジ。
どう見ても、家庭科研究室。
( ´∀`) (……厄介な)
道具がある。
火種があり、刃物があり、それだけで充分に脅威的だ。
武器を持たないはずのハインにとって、この教室は非常に有利に働くはず。
25 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:13:04.18 ID:6TtQC0mR0
( ´∀`) (まさか包丁で一突きにされる――なんてことは無いと思うモナ)
だが、それでも安心は出来ない。
熊手のように険しくに構えた両手を、探るように前へと突き出しながら歩を進める。
摺り足になるのは個人的な癖から。出来るだけ裸足に近い状態にするため、足袋も装着している。
故にそのじっくりとした移動は重みを伴う。
亀のようにただ遅いわけではない。
走り出す前の猪が、前方の目標へと睨みを利かせる――そんな重厚感がある。
(; ´∀`) (どこから来る……? 何をしてくる……?)
しかし十分な警戒をしていても尚、ハインの気配は悟れない。
26 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:15:31.88 ID:6TtQC0mR0
虎視眈々とこちらの隙を窺っているのか。
それとも彼女は既におらず、とっくに別の場所へ逃走しているのか。
考えれば考えるほど、「どつぼ」にはまる。
動きが滞り、思考が二転三転した。これも彼女の術中の内なのか。
(; ´∀`) (この部屋に先に辿り着き、電気を点けた……!
それだけで奴は、僕を完全に足止めしている。恐ろしい奴だモナ!)
考えまい考えまいと思っていても、焦りが生まれてくる。
早く、少なくともこの教室をさっさと検め、その上で行動に移るべきだ――と。
焦燥感は行動に粗を出す。正確な動きは乱れ、研ぎ澄ました神経は削れていく。
教室を一通り見回り終わると、モナーは露骨に舌を打った。
27 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:18:03.40 ID:6TtQC0mR0
(; ´∀`)「やられたモナ! やっぱり奴はここにはいないモナ!」
荒々しく走り出し、すぐさま教室の出口へと向かう。
ハインはどこへ逃げたのか。
そのまま二階奥へと進んだのか、あるいはここまで来たルートを遡っているかもしれない。
(; ´∀`) (これは僕の不覚モナ! 最初の時点であの女を捕まえておけば……!)
そこまで考えて、彼はネガティヴな思考を振り払う。
失敗したのならば、結果を出して挽回すればいい。
最終的にハインを捕まえ、セントジョーンズの前に引っ立てることが自身の仕事なのだ。
問題ない。流石兄弟の様子も、こちらの思い過ごしだろう。
どうせ、ハインはこの校舎からは出られない。
28 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:20:32.63 ID:6TtQC0mR0
そう思った矢先だった。
――がらり。
( ´∀`)そ 「――――っ!?」
ドアを開けようとしていた彼の背後から、聞こえる別のスライド音。
薄い板状のものがレールを滑るような音。しかして、その元は自分が触れている引き戸ではない。
振り返るモナーが目にするのは、机の物陰から身を躍らせるハインだ。
从#゚∀从「喰らえや!」
机に飛び上がる彼女は汚れた白衣の裾をはためかせ、何かの塊をモナーへ投げ付ける。
咄嗟に構えた腕へとそれがぶつかると共に、視界が白く包まれた。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:22:20.28 ID:IU7DXOZ5O
しえん!
30 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:23:04.05 ID:6TtQC0mR0
(; ´∀`)「モナッ? ゲホゲホッ! これは……ゴホッ?!」
細かい粉状物が、顔に、鼻に、目に、腕に、思いっきりブチ撒けられる。
露骨な目潰しに狼狽しながらも、身を低く保ちながらモナーは前へ出た。
柔道着の袖で顔を拭い拭い、やっと目元がハッキリした所に――
从 ゚∀从「おらっ!」
再びの白粉。
(# ´∀`)「クソ! 目くらましが好きな女だモナ! いい加減に――……」
悪態を吐く最中も、ハインは移動しながら滅茶苦茶に粉袋を投げ付けてくる。
それもモナーを狙うばかりではなく、あちらこちらに撒き散らしている様子だ。
これでは目を潰される以前に、教室一面がホワイトアウトしてしまうだろう。
31 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:25:50.85 ID:6TtQC0mR0
(; ´∀`) (一体、この粉は……?)
低姿勢を保ちながら前進。
ふと、先程ハインが踊り上がっていた場所辺りに辿り着いた。
モナーはそこで、ようやっと全て理解する。
家庭科研究室の机は大きく、ガッチリとした造りだ。
それも、机の下部に収納が備えてあり、中に鍋などの道具を入れられるため。
当然、中が空でも、とても人が入れるような広い収納ではない。
しかし、人一倍小柄なハインなら、あるいは身を丸めて隠れることぐらいは可能だろう。
そしてその開き戸の周りには、大量に捨てられた小麦粉の袋がある。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:25:51.06 ID:qF12+XhXO
これは…おそらく…
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:26:42.83 ID:IU7DXOZ5O
今回のタイトルと粉…ゴクリッ
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:27:55.74 ID:ORm2l8IT0
ずどーん支援
35 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:28:12.32 ID:6TtQC0mR0
( ´∀`) (さっきから奴がブチ撒いているのは、小麦粉だったモナか)
一袋や二袋なんて数ではない。
十や二十は山となって積まれている。調理実習用に、この部屋に備えてあるものなのだろう。
これだけの量があれば、教室一つを覆い尽くすことは不可能ではない。
だが、疑問が残る。
( ´∀`) (何故、ハインリッヒは隠れて僕をやり過ごそうとしなかったモナ……?)
あの時、教室を一回りした時。
モナーは焦りもあってか、完全にハインの気配を捉える事は出来なかった。
あのまま彼女が飛び出してこなければ、このような隠れ場所など気付きもしなかっただろう。
それが、なぜ自ら姿を現したのか。
36 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:30:39.76 ID:6TtQC0mR0
わざわざ小麦粉で、晒した姿を隠してまで。
( ´∀`)「……まさか、あの女」
辿り着くのは一つの答え。
( ´∀`)「僕を倒すつもりかモナ……!」
そうとしか思えない。
無茶な行動の果てに、何故わざわざこの教室におびき寄せるようなことまでしたのか。
それは全て、ここでモナーを仕留めてやろうという意気込みからだ。
( ´∀`) (面白いモナ)
獲物が無謀な勇気で立ち向かってくると言うなら、好都合この上ない。
背中を追いかけるよりも、遥かに楽だ。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:32:17.20 ID:9+jv3NBfO
うひょーー
支援
38 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:33:01.81 ID:6TtQC0mR0
この教室がどれだけのメリットを、彼女にもたらすのかは分からない。
しかし、モナーとて格闘の経験者。限定された空間で、さらに一対一の勝負となれば彼にも有利に働く。
( ´∀`) (散々、コケにしてくれた礼を返してやるモナ!)
もう一度、顔に纏わり付く小麦粉を払い、モナーは前進を始めた。
この最悪な視界の中、ハインもこちらの動きを把握するのは難しいはず。
あくまで静かな移動を心がける。彼女を間合いに捉えさえすれば、一撃で勝負はつくだろう。
( ´∀`) (さっきの廊下のように一本道じゃないモナ。この小麦粉は、お前の視界も悪くするのみ!)
39 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:35:43.86 ID:6TtQC0mR0
耳をそばだて、彼女の気配を探る。
この状況で、足袋は効果的。足音を可能な限り抑え、敵に悟らせない。
対するハインはただのローファー履き。どれだけ静かな移動を心がけようと、有利なのはモナー。
( ´∀`) (すぐに見つけてやるモナ。あとは叩き伏せて、奴をセントジョーンズの元へ――)
しかし、ここでアクシデントが生じる。
突如、照明が落ちた。
(; ´∀`)「――ッ!?」
動揺する。
視界を覆い尽くす眩しいくらいの白い壁が、暗闇に落ちる。
暗がりを粒子が舞う様子は、深海のような息苦しさだ。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:37:14.43 ID:9+jv3NBfO
まさか………
いやねーよ
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:37:46.62 ID:qF12+XhXO
あると思います
42 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:38:16.86 ID:6TtQC0mR0
このようなタイミングで、ブレーカー等が落ちるわけはない。
明らかに、ハインが故意に照明を落としたのだ。
(; ´∀`) (何をするつもりモナ……?)
異常事態を前に、一時前進を止めるモナー。
そんな彼が闇の中へ目を這わせていると、ふと光の帯が走った。
細い光線がしゅっと暗闇を切り裂いている。何か小型のライトのような、光。
次いで、聞こえる女の声。
从 ∀从「どーした腰抜け? オレはここにいるぜ。とっととフン捕まえてみな!」
研ぎ澄ました神経を逆撫でする、挑発。
43 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:40:38.79 ID:6TtQC0mR0
モナーが机の陰から顔を覗かせる、その時。
黒板の前に佇むハインが、こちらに向かってちかちかと懐中電灯を灯していた。
にんまりと、口の端を歪める少女のシルエット。
それは、想像以上にモナーのむかっ腹を立たせる。
(# ´∀`)「…………ッ!」
彼女が何故、姿を見せたのか。
まるでモナーを嘲るようにちらちらと、隠したはずの姿を見せるのはどうしてか。
恐らく――いや、間違いなく罠だ。そう頭で理解していても、怒りは判断を鈍らせる。
気が付いた時には、彼は立ち上がっていた。
そして猛然と走りだす。
し
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:42:52.99 ID:9+jv3NBfO
これはw考える(笑)柔道家じゃね〜かww
支援
46 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:43:05.07 ID:6TtQC0mR0
(# ´∀`)「人を馬鹿にするのもいい加減にするモナ――ッ!」
大声を上げ、足元もはっきりしないような中、一直線にハインへと突進していく。
彼の頭の中には、もう冷静に考える余裕はない。
ただハインをとっ捕まえ、痛めつけてやろうという思考しか存在していなかった。
そんな彼の、憤怒に歪む表情を一瞥。
ハインはまた嫌味ったらしい笑みを浮かべると、懐中電灯のスイッチを切る。
再び闇に落ちる教室の中。それでも、モナーは突進を止めない。
(# ´∀`)「モナァアアアアアッ!!」
激突。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:43:20.61 ID:IU7DXOZ5O
モナー…(力強く抱きしめる)
48 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:45:43.85 ID:6TtQC0mR0
しかし、それは小柄な少女を押し砕いた感触ではない。
もっと硬質な当たり。教卓だ。
モナーは教卓へと頭から突っ込み、壁へと衝突した。
スチール製のそれが、突進と壁との衝突によって無残にもひしゃげ折れる。
回避されたのだ。
(; ´∀`)「ちぃ……っ!」
小賢しい、と舌を打つ。
身を起こそうとも、再び最悪となった視界の中では彼女を発見できない。
(# ´∀`)「モナァアア! どこにいるモナ?! とっとと出てくるモナ!」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:46:47.07 ID:XRx6PVdOO
シエン
50 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:48:05.28 ID:6TtQC0mR0
躍起になり、あちこちの調理道具を弾き飛ばしながら練り歩く。
鍋を床に跳ね、積まれた皿が割れた。
そこら中の物を壊し、砕き、彼は闇の中を進み続ける。
その横っ面に、再びの光。
振り返れば教室の反対側から、またもハインが懐中電灯の光を浴びせてきている。
白い光線の向こうで、相も変わらずの笑みが浮かんでいた。
モナーはもう爆発寸前だ。その度重なる挑発を前に、冷静な判断は不可能。
(# ´∀`)「そこを動くんじゃねーモナ!」
我武者羅に、前へ。
机に乗り上がり、彼はその上を八艘跳びのように駈け巡る。
餌に飛びつく虎のような、獰猛で荒々しい跳躍。
51 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:50:48.33 ID:6TtQC0mR0
小太りの男が、今は一匹の獣のような気配と動きだ。
踊り上がる彼の眼が、再びハインへと向けられた時。またも光は消え去る。
すかさず、着地と共に右腕を薙ぎ払った。
(; ´∀`)「…………っ」
しかし、またはずれ。
(; ´∀`)「くっ……ちょこまかと……!」
小柄故に、一度身を隠されると発見は困難だ。
その上、障害物の多いこの教室では移動も制限される。気配を悟ろうとすぐには追いつけない。
焦りが思考をぐちゃぐちゃに乱す。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:52:06.18 ID:IU7DXOZ5O
し
53 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:53:06.31 ID:6TtQC0mR0
どうすればいいのか。どうやれば捕まえられるのか。どうやれば彼女を見つけられるのか。
分からない。落ち着いた考えが湧かない。
五月の夜にもかかわらず、彼の全身は汗で滴る。
今にも崩れそうな闘志を前に、トドメの追い打ち。
モナーの視界で、三度目の発光が現れる。闇の中に灯った、黄色い光明。
明滅するそれは不安定な彼の精神に、更なる揺さぶりをかける。
(# ´∀`)「……くそぉおっ!!」
突っ込んで行くしかない。
ハインが下らない挑発で、こちらの考えを乱そうとしているのは明白。
それでも、今モナーに出来ることは彼女をその手に掴み、叩き、屈服させることだけ。
どれだけ状況が変化しようと、変わらないのはそこだけだ。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:53:31.57 ID:9+jv3NBfO
良く見たら柔術家だった
支援
55 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:55:33.35 ID:6TtQC0mR0
(# ´∀`)「捕まえてやる!!」
捕まえてやる捕まえてやる捕まえてやる捕まえてやる捕まえてやる捕まえてやる捕まえてやる捕まえてやる。
一色に染まる、脳裏。
弾けていく、理性。
それらに後押しされるように、異常な加速を行うモナー。
彼は接近していく、光源へと。自身を嘲る、憎き光の元へと。
消し去ってやるぞと、振り払ってやるぞと。
叩き込まれる右腕が、目の前の一切合切を薙ぎ払う。
56 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 00:58:36.34 ID:6TtQC0mR0
* * *
从;゚∀从「げほっ! チクショーめが!」
ハインは廊下へと飛び出る。
勢い余り、頭から転げ込む不様な姿だ。
それでも今は、恰好をつけている場合でもない。
振り仰げば、未だモナーは教室内にいるらしい。彼女に気付いた様子もない。
即座に、扉を閉じた。
从 ゚∀从 (計画通り!)
家庭科研究室からの脱出を図った彼女は、すぐさま踵を返し、走る。
その両腕が抱えるのは、小型のオーブン。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:00:48.92 ID:khnZNEt6O
支援
58 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:01:17.43 ID:6TtQC0mR0
自身が持ち運びが出来る、最低の大きさの物を選んできた。
電源コードは地を伝い、家庭科研究室の扉の隙間へ。
中で適当に見繕った延長コードにより、ある程度の距離を稼げている。
振り返り、教室から数メートル離れたことを確認すると、ハインは立ち止まった。
从 ゚∀从「悪いな。オレはやられっぱなしのまま、ケツまくって逃げるなんてのは――」
重そうにオーブンを足元へ投げ捨て、代わりにコードを手繰り寄せる。
このコードが先の教室の電源プラグの一つに、取り付けられているのは言うまでもない。
それも教室の中央にある、机の傍に供えられたプラグにだ。
从#゚∀从「気に喰わねーんだよ! 吹き飛びやがれッ!」
渾身の力を両腕に込め、彼女はコードを引っ張った。
59 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:03:37.10 ID:6TtQC0mR0
* * *
モナーの太い腕が吹き飛ばしたのは、少女の小柄な体ではなかった。
(; ´∀`)「モナッ!? これは――」
もっと硬質、もっと軽量。
冷たい鉄の感触が、まだ手の平に残っている。
目の前にあるのは電子レンジ。
衝撃で横倒しになったその中で、ちかちかとまだ小さな光が見える。
( ´∀`)「…………?」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:05:17.21 ID:ORm2l8IT0
しえんしえん
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:05:54.89 ID:khnZNEt6O
しえ
62 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:06:03.95 ID:6TtQC0mR0
不自然に思いながら、ガラス越しに中を窺った。
そこにあったのは一本のスプーン。
レンジの内壁に引っ掛かったそれは、見ているそばからぱちりと小さく弾ける。
モナーはそこで、全てを理解した。
何故、ハインが身を隠したにもかかわらず姿を見せたのか。
何故、ハインが教室をすっかり覆うほどに小麦粉を撒き散らしたのか。
何故、ハインがわざわざ懐中電灯であからさまに挑発してきたのか。
彼の考えは間違っていなかった。
ハインは間違いなくモナーを倒す気だった。
それは今も変わらず、むしろ進行の途中。
(; ´∀`) (この小麦粉は――っ!!)
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:06:32.72 ID:qF12+XhXO
キタコレ
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:06:34.24 ID:9+jv3NBfO
オワタ支援
65 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:08:36.85 ID:6TtQC0mR0
今更のように、周囲を見渡す。
照明が落ちたことを含んでも、異常なほどの視界の悪さ。
自分が暴れ回ったお陰で、尋常じゃない量の粉末が浮遊している。
窓も扉も閉められた、この密閉空間で。
(; ´∀`) (目くらましじゃあ、ない!)
どこかで、ばちんと小さな音が上がる。
ほんの小さな、それでもモナーにとっては十二分に脅威となる音だった。
空間が、爆裂する。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:09:07.26 ID:74pQlIQb0
( ゚д゚)ボッボッボンバヘッ!!!
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:09:17.89 ID:IU7DXOZ5O
案の定である
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:09:45.19 ID:khnZNEt6O
粉塵爆発とはやってくれたな!
粉塵爆発かww
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:11:04.78 ID:qF12+XhXO
やっぱりきたね
71 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:11:10.35 ID:6TtQC0mR0
* * *
視界を覆う、紅蓮の炎。
鼓膜を揺らす、轟音。
燃焼は爆発となり、闇夜に全てを吹き飛ばした。
从;゚∀从「うがっ!?」
衝撃に、ハインは吹き飛ぶ。
突風に吹かれるかのような、勢いと重み。空気が牙を向いて襲いかかってくる感覚。
小柄な彼女は呆気なく弾かれる。さながら人形のように。
72 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:13:35.11 ID:6TtQC0mR0
そして床に叩きつけられる。
走る痛みは肩に、胸に、腰に、響いて響いて染み入ってくる。
頭だけは懸命に庇いながら、廊下を滑っていく彼女はボロボロだ。
白衣は汚れ、煤け、あちこちが破れている。
ようやく滑走が止まった頃に、ハインは身を起こした。
从;-∀从「う、う、くそ、いってぇ……」
持ち上げた身が異常に重く感じられる。
耳は爆音に劈かれ、まだ自分の声さえよく聞こえない。
体のあちこちに痣と擦り?けが増えている。
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:15:41.08 ID:9+jv3NBfO
これは殺人事件だろ…
74 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:16:26.25 ID:6TtQC0mR0
それでも、これは軽傷で済んだ方だろう。
从;゚∀从「はぁ、はぁ……やっちまったぜ。
教室丸々ひとつ吹っ飛ばすなんて、滅多にやるもんじゃあねえな」
軋む体に鞭を打ち、立ち上がった。
躊躇もなく、壁伝いに吹っ飛んできた道を辿っていく。
家庭科研究室に近づいていくにつれ、辺りの惨状がはっきりしてきた。
壁面は真っ黒に焦げ付き、衝撃でヒビが走っている箇所もある。無論、窓の類は全壊だ。
从 ゚∀从 (爆轟がここまで……鼓膜が破れなかったのは奇跡だな)
息を呑み、自身の幸福に感謝をする。
痛む両脚を少しずつ少しずつ進め、到着する家庭科研究室。
爆破の中心となったそこの崩壊は、とても比べ物にならない程だ。
75 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:19:05.45 ID:6TtQC0mR0
ありとあらゆる器具の類は、真っ黒に焼け焦げ吹き飛んでいる。
全て砕け散り、何も残っていない。机ぐらいが、半壊程度で形を保っていた。
瓦礫を踏む足元で、燻ぶった炎がちろちろと覗く。
从 ゚∀从「あのデブも吹っ飛んじまったか」
もはや、動けないであろうことは間違いない。
この燃え落ちた教室のどこかで、気絶か再起不能になっているはず。
ハインは一際大きく鼻息を吐き、ブッ倒れてるであろう彼を探し始める。
从 -∀从 (ムカッ腹はスッキリしたし、もう戦えないだろう。
万が一死なれても困るし、バッジも回収しなくっちゃあな)
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:20:45.27 ID:IU7DXOZ5O
し
77 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:21:40.65 ID:6TtQC0mR0
バッジを奪ったうえで、必要なら応急処置くらいは施してやろうという気持ちで。
練り歩く、崩れ落ちた部屋を。その時の彼女には、明らかな隙があった。
それを、彼は逃さなかった。
(# ´∀`)「モナアァアア゛あ゛あ゛――ッ!!」
大声と、瓦礫を踏み砕く音が上がる。
上半身裸となったモナーが、牙を剥いてきた。
从;゚∀从そ「や、野郎――」
(# ´∀`)「遅いぃぃぃいいいッ!!」
78 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:24:07.26 ID:6TtQC0mR0
驚くハインが振り返った時には、言葉通り既に遅かった。
飛びかかるモナーが、細首を掴む。
信じ難いほどの怪力で、その手は万力のように絞り上げてきた。
吊り上げられる体は自由を失い、乱れる呼吸と歪む思考。
从 ∀从「うぁあ、あ、あ゛……!?」
掠れた、悲鳴。
それでも、掴む手の力が緩むことは一切無い。
むしろハインが苦しんでいると分かると、よりいっそう強く締められる。
(# ´∀`)「……粉塵爆発! よくも……こんなことが出来たもの!」
79 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:26:34.29 ID:6TtQC0mR0
怒りに目は血走っている。
モナーの全身は燻ぶっていた。煤に身を突っ込んだかのように。
しかし、爆発の中心にいたにしては軽傷。
何より立ち上がることすら、驚嘆の一言だろう。
(# ´∀`)「懐中電灯の挑発は、僕を暴れさせて小麦粉を少しでも長く空中に巻き上げるため!
そして電子レンジに入れたスプーンの発光でおびき出し、自分は教室を抜け出て扉を封鎖する!」
口角泡を飛ばし、彼は自分を焼き払ったハインの策略をなぞらえる。
(# ´∀`)「とどめは外に引き出した電源コードのスパークで発火!
イカレた奴だモナ! 一つ間違えば、僕は爆炎に飲まれて死んでいたモナ!」
从;゚∀从「が、く、なん、で……! てめえは……!?」
80 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:29:08.19 ID:6TtQC0mR0
(# ´∀`)「お前と同じ方法だモナ! 机の下の収納!」
ハインが一時的に身を隠していた、小さな収納スペース。
(# ´∀`)「全身は入らなくとも、上半身だけ潜り込んで爆発から逃れたモナ!
どうしても入りきらない下半身は、脱いだ道着に包んでやり過ごしたモナ!」
やり過ごした、と彼は言う。
しかし、本当の意味では防ぎきれていない。
何故なら厚手で丈夫な柔道着さえ、その尋常ならざる衝撃と熱には耐え切れなかった。
焦げ付き、ボロ屑と化した下履き。
そこから覗く太い脚は、真っ赤な火傷で痛々しく爛れている。
(# ´∀`)「イラつく奴だモナ! ムカつく女だモナ! 舐めやがって、舐めやがってぇえ!」
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:30:12.36 ID:khnZNEt6O
しえ
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:32:02.12 ID:6TtQC0mR0
从 ∀从「ぐぅ、が、ぁああ、ああ゛あ゛……!」
(# ´∀`)「締め上げてやる! 音をあげさせてやる! 死にかける苦しみをお前も味わえ!」
ハインの全身が、びくりびくりと激しくのたうつ。
鍛え上げられた、曲がりなりにも柔道を嗜む大の男に、渾身の力で首を絞められる。
それが華奢な少女相手にだ。当然、呼吸は出来ない。
酷ければ、頸骨がヘシ折れるだろう。
見る見るうちに、真っ白い彼女の肌が余計に青ざめ、開けっぱなしの口から唾液が滴ってきた。
从 ∀从「か、く、く……は、ぐぅ、ぅ」
危険な状態だ。それでも、彼は止まらない。
83 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:34:47.02 ID:6TtQC0mR0
宙ぶらりんになっていた彼女を地面に叩きつけると、馬乗りになる。
体重が加わった、より危険な首締め。もがく両腕を膝で抑えつけ、今度こそ本当に抵抗できない。
裂けるような笑みを浮かべ、モナーは勝ち誇った。
(# ´∀`)「くたばれぇぇぇえええぇぇぇえぇぇえええ!」
叫びが木霊し、ハインの意識が吹き飛ぶ刹那。
ミ,, Д 彡「ハインを――」
狂気に歪むモナーの横っ面へ、叩き込まれるボール大の拳。
84 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:37:03.13 ID:6TtQC0mR0
ミ#,,゚Д゚彡「――離せぇええッ!!」
今度は、モナーの顔が衝撃に歪む。
こめかみから、鉄骨で殴られたかのようなパワーが響いていく。
肉が震え、骨が打ち鳴らされる。
( ∀ )「モナガッ!?」
止まらない、止められない。耐えきることも出来ない。
( ∀ )「モナァァァアアア――――ッ!?」
駆けつけたフサギコの、放った渾身の右ストレート。
モナーはそれをダイレクトに受け、吹き飛んでいった。
85 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:39:42.40 ID:6TtQC0mR0
ミ;,,゚Д゚彡「ハイン!!」
敵が間違いなく吹っ飛んでいったのを確認し、フサギコはハインを抱え起こす。
押し退け、四つん這いになった彼女は、苦しそうに何度も何度もむせ返った。
白衣から覗く、陶器のような首筋に残る痣が、痛々しい。
从;-∀从「げほっ、げほっ、くそ……がふっ! う、ぐっ、がはっ……!」
ミ;,,゚Д゚彡「しっかりしろ! 息は出来るか?!」
丸まって余計に小さくなった背中を、彼は懸命に撫でる。
手の平から感じる少女の鼓動が、今だけは早鐘のようだ。
从;゚∀从「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ、あぁ、くそ、くっそ野郎!」
ミ,,゚Д゚彡「ハイン……」
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:39:49.07 ID:ORm2l8IT0
しえんしえんしえん
87 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:42:07.72 ID:6TtQC0mR0
从;-∀从「もういい、大丈夫だ。それよりも……よく、来てくれた。礼を言う」
ミ,,゚Д゚彡「当たり前だろう。あれだけの爆音と光だ。気付かない奴なんていない」
もっとも、と彼は付け加える。
ミ,,-Д-彡「あの爆発のお陰で、西校舎に着いてすぐ、お前の場所を把握出来たんだがな」
从;-∀从「それこそ当たり前だ。そういうつもりで、わざわざ部屋一つ吹き飛ばしたんだからな……」
白衣の袖で口元を押さえつつ、振り返るのは家庭科研究室の残骸。
ミ;,,゚Д゚彡「しかし、これは……」
从;゚∀从「はは、まぁ悪く思うな。これも週明けにゃあ、風紀の奴らが修繕してくれるさ」
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:43:51.20 ID:ORm2l8IT0
しえんいたする
89 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:44:35.31 ID:6TtQC0mR0
ミ;,,-Д-彡「わ、分かってはいるが……」
頭を抱えるフサギコ。
そんな仲間の姿を見て、ハインはどことなく安心していくのに気が付く。
この夜、最初っからたった一人で闘い続けて、ようやっとの救援。
その存在の大きさ――仲間の大きさに、胸が熱くなる。
ただ、それを正直に伝えるのは、彼女にはまだ難しかったようで。
从 -∀从「とにかく……遅いんだよ! もっと早く助けに来やがれ、ボケ!」
ハインはフサギコの向う脛を蹴っ飛ばした。
ミ;,,゚Д゚彡「助けに来た奴に向かって、そりゃないだろう……。これでも急いだんだ」
从#゚∀从「うるせえ! オレが一人でどんな目に遭ってたか、少しは考えろ!」
ミ;,,-Д-彡「分かったから、脛を蹴るのはやめろ」
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:45:05.70 ID:EL95RcDy0
胃炎
91 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:47:06.57 ID:6TtQC0mR0
小学生のような細い脚で、何度も何度もフサギコのそれを蹴る。
彼女のちょっと捻くれた感情表現に、やれやれとフサギコも肩をすくめた。
そんな折、いきなりハインの重心が崩れ、膝からすとんと床に落ちる。
从 ゚∀从「あ、あれ……?」
本人も驚いたらしい。
くたりと床に座る、その姿は力無い。
ミ,,゚Д゚彡「ハイン? どうした?」
从 ゚∀从「え、いや、わからない。何だか、いきなり力が抜けて――」
立ち上がろうとしても、全く腰に力が入らないのか。
失敗しては尻餅を突く彼女の、華奢な肩がふるふると震えていく。
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:47:58.06 ID:m7O133utO
しえん
93 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:49:33.14 ID:6TtQC0mR0
ミ,,゚Д゚彡「お前……怖かったのか?」
从;゚∀从「ちが、違う! そ、そんなことはない!」
ミ,,゚Д゚彡「震えているぞ」
从;-∀从「違う! 何でだよ、クソ! 何で……!」
フサギコの言葉を跳ね返すように、ハインは立ち上がろうと躍起になる。
しかし、弛緩し切った筋肉にもう力は戻らない。座ったまま、体は震えを増していく。
当然だろう。
これまで彼女は誰かを利用し、もとい協力して戦ってきた。
それは自分が戦闘向きではないと熟知しているがため。
94 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:52:06.34 ID:6TtQC0mR0
そんな彼女が、恐らく初めてであろうたった一人の戦いに臨んだ。
乗り切ったことは乗り切ったが、危なかったことは間違いない。
フサギコの助けがなければ、彼女はリタイアされていたかもしれないのだ。
孤独な戦闘の果ての、安心。
それが彼女の、全身から力を奪っていく。
時間差でやってくるのは、恐怖。
从;-∀从「オレが……こんな、クソ、ふざけんなよ……カッコ悪ぃ……」
体は正直だ。
負けたかもしれない予感、敵意むき出しで自分だけに向かってくる敵。
思い出せば、蘇る。恐れは、彼女を腰砕けにするまでに苛む。
ミ,,-Д-彡「――掴まれ」
95 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:54:33.87 ID:6TtQC0mR0
怯える自分に恥じ入り、悔しそうに唇を噛むハインに手を差し伸べる。
フサギコの大きな掌が、ハインの小さな小さなそれを無理矢理握った。
从#゚∀从「が、ガキじゃねーんだ! 一人で立つくらい――」
ミ,,゚Д゚彡「そんなに気負うな、馬鹿野郎」
驚くほど軽々と、持ち上げられたハインは地に足をつく。
不思議と、今度は崩れなかった。フサギコの手が支えとなることが、とても力強い。
ミ,,゚Д゚彡「お前は良くやった。偉いよ。一人で頑張ったな」
从#゚∀从「や、やめ――」
ミ,,^Д^彡「だから、後は俺に任せろ」
96 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:57:06.34 ID:6TtQC0mR0
くしゃりと、大柄な手が跳ねっ毛を撫でる。
力任せでめちゃくちゃな撫ぜ方。見る見るうちにハインの髪形は、もさもさと乱れる。
それでも、そんな彼の行為が、ハインにとっては温かくて、重くて。
从 ;∀从
ハインは胸が、頭が、目頭が熱くなった。
从;-∀从 (い、いやだ、泣くな! こんな、他人に泣き顔なんて見せるな!)
目の縁に溜まったものを見られたくなくて、懸命に顔を隠す。
それでも、どんどんと込み上げて来て、もう声に出せば泣いているのが丸分かりになるだろう。
それをフサギコが追求しないのは、彼女にとって幸運だった。
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:59:14.29 ID:PEoxd8P/O
支援
98 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 01:59:34.79 ID:6TtQC0mR0
しかし、
(# ´∀`)「おおお゛、お前らぁあ! よくも、よくもやってくれたモナ……!」
まだ戦いが終わっていないことは、不運なのか。
立ち上がる。闇の中からモナーは再び向かってくる。
フサギコの攻撃を受けて尚、まだ彼は立ち上がってくる。
口からついて出るのは、呪詛の言葉。
彼の荒れ狂う闘志は、一切鎮まっていない。
(# ´∀`)「捻り潰してやるモナ、『野獣コック』! その次はお前だモナ、ハインリッヒ高岡!」
ミ,,゚Д゚彡「言ってろ」
99 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 02:02:04.40 ID:6TtQC0mR0
進み出るその身で、ハインを庇うように。
ミ,,-Д-彡「こいつには手出しさせん」
フサギコは両腕を構える。
固く握られた拳は真っ直ぐにモナーへと向かっていた。
今度こそ、本当の戦い。守るべき者がいる、フサギコの戦。
ミ,,゚Д゚彡「下がっていろ、ハイン」
从 ∀从「…………」
背中越しに、未だ顔を覆う少女へと呼びかける。
彼女も、声を出すのを躊躇うせいか、小さく唸るように「うん」と答えるのみ。
100 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 02:04:37.37 ID:6TtQC0mR0
それで、いい。
それだけで、フサギコには伝わった。
ミ,,゚Д゚彡「行くぞ! ここからは俺の戦いだ!」
守護者の戦い。
フサギコは真っ直ぐな思いを胸に、前へと踏み出たのだった。
第二十三話・終
101 :
◆b5QBMirrJE :2009/09/06(日) 02:07:13.93 ID:6TtQC0mR0
( ゚д゚)ボッボッボンバヘッ!!!
今夜の投下分はこれで終わりです ここまで支援・ROMありがとうございました
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:08:05.89 ID:m7O133utO
乙
フサいい男だ
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:08:09.98 ID:ORm2l8IT0
乙でした!
次回を楽しみにまってます!
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:10:30.69 ID:VLVOZSN8O
乙ですわぃ!
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:12:38.31 ID:74pQlIQb0
( ゚д゚)ボンバヘッ!!!
なんか目が覚めたから覗いてみたらこんな時間に…
乙