1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
立つかな?
立たなかったよ
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:26:51.59 ID:fWH0GfSZ0
残響が音楽室を駆け抜けていく。
余韻を拭い去るようにクラッシュに手を添え、深く溜め息を吐いた。
澪「ふぅ……取り敢えず今日はこのぐらいにしておくか」
唯「うぅ〜……疲れた〜」
紬「うふふ、すぐにお茶を入れるから、ちょっと待っててね」
唯「おぉ〜、今日のおやつはな〜にっかな〜♪」
梓「まだまだ元気じゃないですか、唯先輩」
アンプの電源を落とし、楽器の手入れを行うみんなを見るとはなしに見る。
律「………………」
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:30:32.24 ID:fWH0GfSZ0
スティックを手の中でくるくると回しながら、そんな光景を一歩退いたところから見る。
律「………………」
拭いきれない違和感が身体の中を、自身の感覚をちりちりと煽る。
今まで感じたことのないその正体不明の衝動に、私の心は暗く沈んでいた。
律(やっぱり……私だけ……)
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:31:20.92 ID:Z7+bBhVW0
ワッフルワッフル
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:37:59.67 ID:fWH0GfSZ0
澪「律? どうしたんだ。お茶入ったぞ」
律「あ、あぁ。今行く」
紬「ダージリンのファーストフラッシュが手に入ったから、
今日はシンプルにスコーンでいただきましょう」
唯「ふぁーすとふらっしゅ?」
梓「ダージリンの春摘みの茶葉って意味です」
いつもと同じわきあいあいとした雰囲気のティータイム。
だけど今の私にはそれを素直に楽しめるだけの余裕がない。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:45:34.18 ID:fWH0GfSZ0
澪「律? りーつー」
律「ん、え? 悪い、聞いてなかった。なに?」
澪「だから今日もドラムが走ってたぞって話。
グルーブのあるドラミングも悪くないけど、
リズムの要であるお前がもうちょっとしっかりしてないと、
まとまりに欠けるぞ?」
聞き慣れた澪のお小言が今日はやけに耳に痛い。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:51:19.66 ID:mQgw62rQO
見てっから早く
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:52:07.21 ID:fWH0GfSZ0
律「……あっはは〜、悪い悪い」
いつもと同じように軽く流す振りをする。
呆れたような顔付きの澪から視線を外し、ティーカップに注がれた紅い液体をじっと見る。
そこにはいつもと同じように能天気な笑みを浮かべた私の顔が映っていた。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 22:58:00.85 ID:fWH0GfSZ0
煌びやかなネオンで彩られた夜の街を、浮かない顔で歩き回る。
女子高生が一人で徘徊していたら、間違いなく補導されるような時間。
そんなもの、お構いなしに私は当て所なく、街を彷徨う。
律(私じゃ駄目、なのか……?)
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:04:07.07 ID:fWH0GfSZ0
夜を歩く自分とは別に、心はあの通いなれた音楽室にあった。
ぽかぽかと暖かい陽が差し込むあの空間。
心地好い音楽を紡ぎ、他愛の無いお喋りで仲間達と過ごす楽しい一時。
今の自分にはひどく不釣合いに思え、それがまた正体不明の感情を刺激する。
これは、そう───焦燥感だ。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:06:56.82 ID:fWH0GfSZ0
焦っていた。
始めはそんなことにも気付かず、徐々に違和感を覚え始めてからも、
気付いていない振りをしていた。
だけどそれももう限界だ。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:09:44.72 ID:fWH0GfSZ0
律(唯……)
絶対音感と類稀なる集中力を持つ、天性の塊ような女の子。
軽音部に入る前はほとんど音楽に触れたことのないような奴だったのに、
気付けば驚くべき速さでギターを弾きこなし、ボーカルを務め上げ、
今では名実共にバンドのフロントマンだ。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:14:25.83 ID:fWH0GfSZ0
律(ムギ……)
幼い頃から培ってきたピアノの演奏技術と音楽的センスは、
もはや放課後ティータイムには無くてはならない存在だ。
事実、楽曲のほとんどの作曲はムギの手によるものだ。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:19:28.75 ID:fWH0GfSZ0
律(梓……)
あいつが入ってきてから音の厚みが一気に増した。
ジャズを愛好する両親を持つ梓のロックとは違ったインスピレーションは、
時に私達には思いも寄らなかったケミストリーを引き起こした。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:27:26.30 ID:fWH0GfSZ0
律(そして、澪……)
同じものを見て、同じものを聴いて、共に音楽を志した幼馴染。
誰よりもひたむきに音楽と向き合い、ここまでバンドを牽引してきた女の子。
独創的な世界観の詞は始めのほうこそ戸惑ったものの、
今では放課後ティータイムのカラーとして立派に確立されていた。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:29:46.23 ID:mQgw62rQO
なんか俺ばっか支援してると気まずいな
まあいいや支援
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:30:24.86 ID:AsmhyD600
なんか不安な方向に進んでる気がする
とりあえず支援
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:32:12.67 ID:fWH0GfSZ0
律「それに比べて、私は……」
自身を彼女達と比べる。
何もない。
何もありやしない。
『律、またドラム、走ってるぞ』
聞き慣れた澪の言葉がリフレインする。
始めはこんな癖、そのうち治るだろうと高を括っていた。
だが実際は一年以上経っても治ることはなく、
未だに私のドラムはバンドを引っ掻き回している。
律「くそ……っ」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:36:16.45 ID:Z7+bBhVW0
りっちゃんメタラールートか
支援
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:37:12.45 ID:fWH0GfSZ0
治そうと努力はした。
だが彼女達についていこうと必死になればなるほど、
スティックを握る手は逸り、リズムは焦燥感に支配された鼓動の如く乱れていく。
もう自分だけではどうすればいいのか、分からなかった。
こんな時、独りの力はなんと無力なのかと痛感する。
だけどみんなにそれを打ち明けることなど出来なかった。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:41:58.33 ID:fWH0GfSZ0
怖いのだ。
きっとこの不安を打ち明ければ彼女達は我が事のように
親身になって力になってくれるだろう。
だけどそれは彼女達の足を引っ張ることに他ならない。
それは、嫌だ。
そんなことは許せなかった。
きらきらと輝く少女達のあの光を遮るような真似はしたくなかった。
だけど独り、取り残されるのはどうしようもなく怖かった。
そして今日も心は乱れたまま、夜の街を彷徨い歩く。
まるでそこに何か素晴らしい解決策があるのを期待するかのように。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:49:25.26 ID:fWH0GfSZ0
月の光も差さない暗い裏路地へと入る。
うすぼんやりとしたネオンがぽつんぽつんと奥へと続いていた。
一瞬、薄ら寒いものを覚えるが、今の自分が身を置くには
ぴったりの寂しい場所に思え、足を踏み入れる。
どこまで続くか分からない細い路をそぞろ歩く。
どれほど歩いたのか、ふと視線を上げると淡い蒼に輝く看板が目に入った。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:49:55.65 ID:pG5T7ih10
なぜか引き込まれる
しえn
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 23:55:32.51 ID:fWH0GfSZ0
律「ジャズ・バー……バードランド……」
歩き通しで足が疲れていたというのもあったのだろう。
気付けばふらふらと光に誘われる蝶のようにその店に入っていった。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:00:59.98 ID:Vk3Km2KM0
格調高そうな重い扉を押し開き、落ち着いた照明に支配された空間に身を滑り込ませる。
入り口でチャージ料代わりのチケット代を払い、奥へと歩を進めた。
店の中では妙齢の男女が落ち着きを払って
カクテルグラスやビアグラスを交わし、密やかに談笑していた。
その場違い感ばりばりな雰囲気に一瞬、呑まれながらも、
ここで引き返すのも癪に思え、カウンターの椅子に腰を掛ける。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:03:05.37 ID:gF/2KsmSP
期待支援
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:06:21.63 ID:Vk3Km2KM0
律(え〜と……)
メニュー表らしきものに目を走らせる。
が、見慣れない文字の羅列に気は焦るばかり。
バーテンダー「お客様、今日はどのようなものをご所望で?」
メニューとにらめっこしていた私を見兼ねたのか、目の前のバーテンダーが声を掛けてきた。
意地を張ってもしょうがないと思い、素直に不慣れなことを告白する。
律「実はこういうお店、初めてで……。お任せしちゃってもいいですか?」
バーテンダー「かしこまりました」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:08:57.81 ID:GIUbBm/XO
しえんしえん
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:10:20.11 ID:1DP0n7Ip0
レイプ展開なくてよかった
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:11:11.71 ID:DfGzBle80
りっちゃん制服?
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:12:55.98 ID:j1SSpv1u0
お金あるんかい
って心配になってしまった・・
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:13:51.06 ID:Vk3Km2KM0
>>31 私服という設定でどうか一つ……。
そう言うや否や、バーテンダーはシェイカーに材料を入れ、
リズム良く、宙に8の字を描く。
バーテンダー「どうぞ、インマイライフでございます」
差し出されたグラス手にし、恐る恐る口を付ける。
律「あ、おいしい……」
爽やかな酸味と甘み、ほのかなお酒の風味が口の中に広がる。
咽喉の渇きを覚えていた私は、すぐさまそれを飲み干した。
お腹の中に小さな火が灯ったような感覚。
そういえばお酒を飲むのなんて初めてだ。
少しだけ気分が軽くなったような気がして、もう一杯おかわりしようとメニューを手にする。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:17:18.80 ID:gF/2KsmSP
ヤられちゃうとかは勘弁してくれよ
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:20:36.53 ID:Vk3Km2KM0
メニューを眇め見ていたら突然、ステージの方が明るくなった。
何事かと目を遣るとそこには楽器を手にしたおじさん達がいた。
律(そういえばここ、ジャズバーだったっけ)
編成はピアノ、ウッドベース、ドラムにサックスなどのブラス隊。
これぞジャズといった布陣だ。
一時期、ドラムの研究のためにジャズも聴いていたことを思い出す。
そんなことを思い出し、ドラムはどんな人かと見てみた。
律(なんというか、あれは……)
良く言えばファンキー。悪く言えば胡散臭い。
そんな風体のおじさんがドラムの前に鎮座していた。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:21:09.82 ID:grp4LaR/O
どうなっていくのか楽しみだな。
レイープは堪忍な
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:26:15.44 ID:Vk3Km2KM0
ドラマー「1・2、1・2・3!」
リズムを刻むライドに、ブラスが高らかに被さる。
深みを感じさせながらも、どこか陽気なメロディに、軽快なリズムが華を添える。
バディ・リッチの『Straight,No Chaser』
所々に差し挟まれたアレンジが心地好かった。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:27:37.34 ID:dw5rs2yg0
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:33:44.06 ID:Vk3Km2KM0
各パートにスポットが当たり、それぞれが思い思いのソロを奏でる。
インプロビゼーションのソロが終わる度に、客席のあちこちから拍手や喝采が上がる。
私もそれに倣って控えめに拍手をしてみた。
いよいよドラムにピンスポットの照明が当たり、ドラムソロが始まった。
律(な、んだ、これ……っ!?)
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:39:13.00 ID:hWnnt8ToO
支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:39:54.37 ID:zy5ws+pI0
おそい
萎える
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:41:49.54 ID:Vk3Km2KM0
目の前で繰り広げられる即興劇に言葉を失う。
トニー・ウィリアムスばりのシンバルレガート。駿馬の蹄の音のような軽快なリズム。
イアン・ペイスのようなグラヴィティ・ロール。機銃掃射を思わせる抜けの良いビート。
惚れ惚れするほどのフリーハンド・テクニックの応酬。
パフォーマンスと実用性を兼ねた、魅せるドラミングの妙味が目の前の空間で繰り広げられていた。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:43:38.01 ID:Vk3Km2KM0
>>41 申し訳ない……。
さるさん防止&書き溜め分投下しつつ続きを書いているので、少々時間が掛かります。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:44:14.19 ID:gF/2KsmSP
別に投下速度は普通だろ
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:47:18.27 ID:s8o3/2wN0
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:48:30.96 ID:slINOXgT0
いや遅いです
早くしてください
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:48:41.98 ID:bMYW6ah00
十分遅いだろ
さるよけしてやるからたまってる分ガンガン投下してくれ
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:49:34.34 ID:zM+j18+00
支援
たまってるならその分は早くくれよ死にそうだ
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:49:46.96 ID:Vk3Km2KM0
律「凄い……っ!」
感嘆の言葉が我知らず零れる。
惹きこまれていた。
同じドラマーとして───いや、比べるのもおこがましいだろう。
───目指すべき頂点の一つがそこにはあった。
僅か数分の熱狂が終焉を迎える。
ホールは奏者を褒め称える拍手で溢れていた。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:51:16.72 ID:Vk3Km2KM0
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:52:18.20 ID:Vk3Km2KM0
律「凄い……凄いっ!」
手が痛くなるまでバカみたく拍手を続ける。
自分もあんな風にドラムが叩けたら、どんなに気持ちいいだろう。
私にもあれ程のテクニックがあったら、ぐじぐじと悩んだりなんてしないのだろう。
そうだ。あの演奏技術があれば───あいつらの足を引っ張ることもないのだろう。
酒気が血管の中を駆け巡っているのか、身体中が熱い。
その熱が私の中である一つの決意を促す。
意を決した私はチェックを済ませ、バーを出た。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:53:19.04 ID:Vk3Km2KM0
律「おじさんっ!」
おじさん「あん?」
律「私を弟子にしてください!」
重い扉から出てきた見覚えのある顔に、有無を言わさず頭を下げる。
おじさん「……はぁ?」
訳が分からないといったおじさんの声に下げていた頭を上げて、
真っ直ぐにその瞳を見据える。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:54:21.14 ID:Vk3Km2KM0
律「先ほどのおじさんのドラム、とても感動しました。
……私もあんな風にドラムが叩きたいんです。
お願いします、私にドラムを教えてください!」
思いの丈を相手にぶつけ、また深々と頭を下げる。
おじさん「……お嬢ちゃん、未成年だろ。
そんな奴がこんな時間にこんな場所で何やってんの?」
痛いところを衝かれる。だが今の私にはそんなこと、関係ない。
律「お願いします!」
今の私にとって重要なことは少しでもドラムの腕を磨くこと。
それ以外のことは些末なことだ。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:55:34.77 ID:Vk3Km2KM0
おじさん「……話にならん」
おじさんがこちらの脇をすり抜けて立ち去ろうとする。
律「お願い、します!」
それを前に廻りこんで行く手を遮る。
おじさん「ふぅ……」
苛立たしげに吐き出される溜め息。
今の自分の行動が非常識極まりないことは承知だった。
だけど形振り構っていられるほど、今の私には余裕がない。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:55:37.14 ID:BxbEg69B0
し
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:56:32.05 ID:e4BKXL9SO
さるよけ
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:57:13.08 ID:Vk3Km2KM0
律「お願い……します……!」
ただひたすらに頭を下げる。これ以外の遣り方が思い浮かばなかった。
おじさん「……迷惑だ。子供はさっさとお家に帰んな」
再び脇をすり抜けて立ち去ろうとするおじさん。
そうはさせまいと廻り込もうとするが、一睨みされ、
こちらの足が止まっている間に立ち去ってしまった。
後に残されたのは、遠くから聞こえてくる喧騒とネオンの薄明かりだけだった。
律「………もんか」
おじさんが立ち去った方向を睨み、自身を鼓舞するように呟く。
律「諦めるもんか……!」
やっと見つけた光明なのだ。今更諦めるわけにはいかない。
あいつらに追いつくためなら、今の私はなんだってやってやる。
なりふりって形だったんだな・・・なんか意外
すんげーどうでもいいことだけど
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 00:58:30.13 ID:Vk3Km2KM0
律「お願いします!」
おじさん「……またあんたか、お嬢ちゃん」
あれ以来、私はストーカーのようにおじさんに付き纏っていた。
バーで演奏する日をチェックし、
何か技術が盗めないかと食い入るようにおじさんの演奏を見て、
出待ちをして拝み倒す。
ストーカーのようにではなく、ストーカーそのものだった。
さるっていつから?
何年か来ない間にバーボンじゃなくなってたよ
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:00:06.17 ID:gF/2KsmSP
支援だ
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:00:06.76 ID:1DP0n7Ip0
しえn
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:00:15.58 ID:Vk3Km2KM0
律「私にドラムを教えてください!」
おじさん「何回目だよ、その台詞……」
この十日ほどで五回以上は吐いたであろう台詞を、一言一句違えずに口にする。
おじさん「別にドラムが上手くなりたけりゃ、音楽教室にでも通えばよかろうに。
何を好き好んでこんな小汚いおっさんなんかに教えを請おうとしてんのよ?」
律「確かにそう考えたこともあったけど……おじさんじゃなけりゃ駄目なんだ」
あのドラミングを見た後では、別の誰かに師事することなど出来やしない。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:02:14.03 ID:Vk3Km2KM0
おじさん「大体なんでドラムなんか上手くなりたいんだ?
お嬢ちゃん、見たとこ女子高生ぐらいの年頃だろ。
他に楽しいことなんざ、いくらでもあるだろう」
律「……楽しいだけじゃ駄目なんだ。
こいつは私一人だけの問題じゃないから」
そうだ。今の私じゃあいつらと音楽を楽しむことが出来ない。
律「一緒に音楽をやりたい奴らがいるんだ。
……そのために、あいつらに追いつくために、
私はドラムが上手くなりたい……!」
拳を握り締め、己の覚悟の程を示す。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:03:10.38 ID:gF/2KsmSP
支援
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:03:48.74 ID:Vk3Km2KM0
おじさん「……ばっかじゃねーの、お嬢ちゃん」
律「んなっ!?」
おじさん「音楽なんてのは楽しんだものがちなんだよ。
バカが小難しいこと考えても空回りするだけだぜ。
もっとシンプルになれよ、シンプルに」
律「ぐ……!」
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:05:03.41 ID:Vk3Km2KM0
それが出来ないから苦しんでいるのだ。
自分の決意を鼻で笑われたような気がして、腹が立った。
だけど言い返せない。それは少し前までの自分の姿だからだ。
それを忘れてしまった私には言い返すことなど出来やしない。
悔しさのあまり、奥歯を噛み締めて俯いてしまう。
そんなことしたって何がどうなる訳でもないのに。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:06:30.31 ID:Vk3Km2KM0
おじさん「はぁ……ついてきな、お嬢ちゃん」
律「え……?」
おじさん「そんなバカな事、考える余裕がなくなるぐらいにしごいてやるよ」
律「……それって……」
おじさん「ドラムを教えてやるって言ってんだ」
律「ほ、本当か!?」
おじさん「こっちが折れなけりゃ、ずっと付き纏いそうだしな、あんた」
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:07:44.86 ID:Vk3Km2KM0
律「ぃや……ったあぁーっ!」
ガッツポーズを取り、喜びを噛み締める。
律「よろしく頼んます、師匠!」
おじさん「なんだそりゃ……」
こうして私のドラム漬けの日々が始まった。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:08:22.43 ID:gF/2KsmSP
ドラムの練習てどんなことすんだろ
よかったな
「報酬は体で払ってもらうぜ フヒヒ」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:09:35.22 ID:SJuiHEoRO
きくのすけフラグはやめて
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:09:38.27 ID:FaVHRbes0
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:11:27.77 ID:Vk3Km2KM0
唯「りっちゃーん、部活行こ!」
律「あー……悪い。私、今日も用事があるからパス」
紬「今日は頂き物のおいしい葛饅頭を持ってきたの。
お茶するだけでもいいから、音楽室に顔を出さない? りっちゃん」
律「葛饅頭……いや、やっぱいいや。じゃな〜、また明日」
りっちゃんはごくりと生唾を飲んで、一瞬だけ迷う素振りをするが、
すぐに思いなおしたように首を振り、走り去って行ってしまった。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:13:27.58 ID:Vk3Km2KM0
唯「あぁ、今日もりっちゃんが遠くへ行ってしまふ……」
紬「ここのところ、あまり部活に顔出さないけど、一体どうしたのかしら?」
ムギちゃんが頬に手を当て、首を傾げる。
唯「りっちゃんがいないとつまんないよー。練習もなんか味気ないし……」
紬「そうね……。打ち込みのドラムで音を合わせるだけというのも、
やれることが限られてくるし……」
音楽室へと向かう道すがら、ムギちゃんとここのところ、
様子のおかしいりっちゃんについて、あれこれと推測を巡らす。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:15:12.33 ID:Vk3Km2KM0
唯「バイトでも始めたのかなぁ」
紬「何か欲しいものでもあるのかしら?」
唯「りっちゃんの欲しいもの……ってなんだろう?」
紬「新しいシンバルとかペダルとかかしら?」
唯「はっ、もしかして彼氏が出来たとか!?」
澪「それはないな」
紬「澪ちゃん」
梓「こんにちは、唯先輩、ムギ先輩」
唯「あずにゃん」
音楽室へと続く階段でみおちゃん、あずにゃんと合流する。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:16:27.89 ID:gF/2KsmSP
支援
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:17:46.06 ID:Vk3Km2KM0
唯「それはないってどうして分かるの、みおちゃん?」
澪「格好が全然変わってないからさ。
恋人が出来たんなら、もう少しお洒落に気を遣うはずだろ」
梓「なるほど」
紬「じゃあやっぱりアルバイトでもしてるのかしら?」
澪「それもどうだろう。特に金回りが良くなったようには見えないけど……。
欲しい物のために貯金してるなら話は別だが」
唯「うぅ〜、気になるよぅ。もういっそりっちゃんの後、尾けて確かめてみようか?」
澪「それは止めておけ。
まあ何かあったら、そのうちあいつから話してくれるだろ。
それまで気長に待っていよう」
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:19:35.12 ID:Vk3Km2KM0
紬「うふふ」
澪「なんだよ、ムギ」
紬「いえ、やっぱりりっちゃんのことは澪ちゃんが一番よく分かっているなと思って」
澪「お、幼馴染なんだから当たり前だろ」
紬「その当たり前のことが出来るのって、とっても素敵なことだと思わない?」
澪「ば……、からかうな」
みおちゃんが顔を真っ赤にして、すたすたと一人、先に行ってしまう。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:20:17.24 ID:gF/2KsmSP
澪はもっとお洒落に気を使え
しまむらばっかり着てるんじゃない
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:21:14.66 ID:Vk3Km2KM0
唯「りっちゃんを想う気持ちならわたしも負けないよー!」
梓「唯先輩、別にそこは張り合うところじゃないと思います」
だけど今のわたし達には思いも寄らなかった。
信じるということがその人の口を閉ざしてしまうということもあるのだと。
信頼。
それが今のりっちゃんを追い込んでいるということに、
わたし達は気付くことが出来なかった。
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:21:28.76 ID:e4BKXL9SO
>>83 澪はシマムラーなんだよわかってあげようよ
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:25:53.76 ID:Vk3Km2KM0
律「師匠〜、この練習、もう飽きたよ〜……」
師匠「つべこべ言わずに続ける。ほら、また余計な力、入ってんぞ」
クリックに合わせて延々とスネアを叩く。
右手4拍、左手4拍を交互に。それを8拍、12拍、16拍……と増やしていき、
64拍までいったら、4拍へとループする。以下それの繰り返し。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:28:14.94 ID:Vk3Km2KM0
師匠にドラムを教わり始めてからそれなりになるが、
主な練習方法はこのストーンキラーだった。
師匠「お前は速く叩く時に力に頼る癖があるからな。
まずは手首を脱力して叩く癖を身に付けなきゃ話にならん。
……ほら、BPM上げるぞー」
律「ひ〜……」
師匠「後で応用の利くテクニックも教えてやるから、今はそれに集中しろ」
律「ほんとか!? ぃよっしゃあ! やる気出てきたぁー!!」
師匠「こらこら、走ってる走ってる」
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:29:45.06 ID:LaMZa5MQ0
こいつら私服のセンスなさすぎだよな
2話のとかなにあれ・・・
ドラムって最も才能が要求される楽器のような気がする
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:30:52.61 ID:gF/2KsmSP
てか律は今まで全部独学だったんかな
まあ中高生がドラム教わる場所なんてそうないだろうけど
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:33:11.52 ID:Vk3Km2KM0
律「ふひ〜、つ……っかれたぁ〜」
二時間ぶっ通しでドラムを叩いていたので、さすがに手首とか腕がくたくただ。
吹き出る汗がTシャツを濡らし、肌に張り付いて気持ち悪い。
師匠「ほらよ」
律「あ、ありがと、師匠」
師匠がタオルとグラスに注がれた冷たい麦茶を手渡してくれた。
汗を拭い、渇いた咽喉を潤す。
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:35:16.42 ID:Vk3Km2KM0
律「っぷは〜ぁ、やっぱこれだな!」
師匠「親父か、お前は」
律「おかわり!」
師匠「へいへい……」
師匠は苦笑しながらも空いたグラスに麦茶を注いでくれた。
師匠「それにしても、ここのところ毎日、練習に来てるけどいいのか?」
律「いいのかって何が?」
師匠「一緒に音楽、やりたい奴らがいるって言ってたろ」
律「あ〜……」
グラスをテーブルに置いて、曖昧な笑みを浮かべる。
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:38:11.78 ID:LaMZa5MQ0
mi行く中高生なんて聞いたことないです
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:38:36.11 ID:Vk3Km2KM0
律(師匠になら、話してもいいかな、私の悩み……)
あいつらにも言えなかった悩み。
私を信じてくれる親友達だからこそ言えない悩み。
この人になら話しても大丈夫な気がした。
この人なら私の悩みなんか「バカ」と言って笑い飛ばしてくれるだろう。
その方がいっそ気楽に思えた。
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:38:50.84 ID:BukPqgH6O
>>90 よりによってMIとかww
もっとも行ってはいけないところを
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:41:53.42 ID:Vk3Km2KM0
律「ん〜……一緒にやりたいのは山々なんだけどさ。今の私じゃ駄目なんだ」
師匠「………………」
師匠は次の言葉を促すでもなく、あくまで私のペースで話せるように、
ただ静かに聴いてくれていた。
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:42:35.61 ID:gF/2KsmSP
>>93 これはちょっと・・・
専門学校じゃね?これ
とりあえず中学生(多分)でドラムセット買った律はすごいと思う
普通の人はドラムセット買ってどこに置いとくの?
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:45:45.53 ID:Vk3Km2KM0
律「ギターボーカルが唯って奴でさ。こいつ、凄ぇんだ。
絶対音感持ってて、ギターの上達もめちゃくちゃ早くてさ。
もうびっくりしたね、天才ってやつは本当にいるんだって。
それなのに全然気取ってなくってさ、
いっつも私と一緒にバカやったりしてさぁ……」
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:48:18.64 ID:Vk3Km2KM0
律「キーボードがムギ……あ、ほんとは紬ってんだけどね。
小っちゃい頃からピアノ習ってて、本当に上手いんだ。作曲とかも出来ちゃったりしてさ。
しかもお嬢様で、その上美人で優しいときてるんだぜ?
どこの完璧超人ってかんじだよなー。
たまに女の子同士が仲良くしてるのが好きとか言ったりするけど、そこもまた可愛くてさぁ……」
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:49:35.26 ID:Vk3Km2KM0
律「新入生で入ってきた梓って奴がいてさ。
もうギターの腕前はサラブレッドかっつーぐらい上手いの。
それなのに最初、あんま上手くないですけどなんて言ってたんだぜ?
謙遜しすぎだっつーの。
真面目でたまに羽目を外したりするとそれを恥ずかしがったりして、もう可愛いのなんの……」
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:52:25.29 ID:Vk3Km2KM0
律「んで、幼馴染の律。あいつがいたから私は音楽を始めたんだ。
あいつがベースで私がドラムで。一緒にバンド作ろうって約束してさ。
何だかんだ言って、付き合いのいい奴だからさ、
私の我が侭に文句を言いながらも付き合ってくれて。
ほんとはあがり症で恥ずかしがりやなくせにさ、
ここ一番ではみんなの足を引っ張るまいと頑張ってさ……」
え?
ゑ?
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:55:26.50 ID:Vk3Km2KM0
宝物を自慢する子供のように親友のことを話す。
口にすることで自分が如何に友人に恵まれているか、改めて気付いた。
それはとても誇らしいことだった。
こんな素晴らしい親友達がいる。
ただそれだけのことがこんなにも心を温かくしてくれる。
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:55:35.60 ID:icB+EXUh0
幼馴染の
律!
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:56:40.17 ID:8/3UGwMp0
>>107 いっちゃだめだ!
つーか律おっさんに怒られそうだな
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:56:49.34 ID:Vk3Km2KM0
だけどそれをもう一人の私が遠くから見詰めている。
そんな素晴らしい親友達とお前は釣り合っているのかと冷ややかに問いかける。
果たしてその親友達はお前と同じ気持ちを抱いているのかと。
律「ほんと、凄ぇやつらばっかりでさ……」
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:57:06.86 ID:gF/2KsmSP
支援
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:58:24.18 ID:Vk3Km2KM0
>>107 ああぁぁあぁ……。なんという凡ミス……。
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:59:42.85 ID:e4BKXL9SO
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 01:59:59.88 ID:Vk3Km2KM0
知るのが怖かった。
あいつらが本当は私のことをどう思っているかなんて。
別にあいつらとの間にある友情を疑っているわけではない。
だけどそれでも不安は付き纏う。
そんな不安は知られたくなかった。
だからそれを押し隠すようにいつも笑顔でムードメーカーに徹した。
空元気な笑みの裏にあるコンプレックス。
そんなのが私、田井中律という少女の正体だった。
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:02:13.62 ID:Vk3Km2KM0
律「だから、さ……私もあいつらに胸張れるような奴になりたいんだ。
一緒に肩を並べても恥ずかしくないような、そんな奴に」
手にしたタオルを握り締める。不安や弱音を握り潰すように。
師匠「……こういうのは他人に言われて気付くようなもんじゃないから何も言わんが……」
律「え……?」
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:04:34.12 ID:Vk3Km2KM0
師匠「やっぱりお前、バカだわ」
律「ひっでーなぁ、そんな馬鹿馬鹿言わなくても言いじゃんかよー」
師匠「ま、悩め悩め若人よ。バカも貫き通せば見えてくるものもあるだろうよ」
律「師匠ー、なんかそれおじさんくさい」
師匠「おっさんだからな。伊達に歳はくっとらんさ。……惚れるなよ?」
律「そっちがな」
にやりと不敵な笑みを浮かべる師匠。
その笑みは途轍もなく胡散臭かったけど、それでもどこか私を安心させてくれた。
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:06:12.39 ID:Vk3Km2KM0
律「おぃーっす」
唯「りっちゃん!」
紬「りっちゃん、今日は部活出れるの?」
律「おう、お前らが寂しがってるだろうと思って、来てやったぞー。
感謝して崇め奉ればいいと思うよ?」
澪「馬鹿なこと言ってないで、練習するぞ。新曲の打ち合わせとかもしたいし」
律「なんだよ、澪ー、つれないなぁ。
いくらツンデレだからって、こんな時ぐらい素直に喜んでもいいんでちゅよー?」
澪「えぇい、寄るな暑苦しい」
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:07:01.81 ID:gF/2KsmSP
シエン
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:07:45.59 ID:Vk3Km2KM0
梓「それにしてもここのところ、あまり顔を出さなかったですけど、
何かあったんですか?」
唯(おおぅ、あずにゃん……)
紬(いきなり直球で訊くなんて……やるわね、梓ちゃん)
律「ん〜? まあちょっとな」
唯「ちょっと? ちょっと何があったの、りっちゃん!?」
紬「くわしく」
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:09:17.27 ID:Vk3Km2KM0
律「ふふふ……そこはまあ秘密ってことで。
女を秘密を持つ生き物。秘密に包まれた生き物こそが女……。
今ここに宣言しよう! 女・田井中律、完全体の爆誕であると!」
唯(やっぱ彼氏が出来たんだよ、彼氏!)
紬(女って響きが妖しいわ!)
梓(や、やっぱり、彼氏さんと、その……)
澪(違うと思うけどなぁ……)
なにやらこそこそと話し込む澪達。
慣れ親しんだ馬鹿なやり取りが心地好い。
たった数週間、部活に出ていなかっただけなのに、ひどく懐かしく感じた。
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:11:05.49 ID:Vk3Km2KM0
律(そうだ……今日の私は一味違うんだ)
師匠の下でみっちりとドラムの修練を積んだ。
その成果を試すために久しぶりに音楽室へとやってきた。
今の私ならみんなについていくことが出来るはずだ。
律「さあさあ、遊んでないでさっさと練習やろうぜ!」
梓「えぇ!?」
紬「りっちゃんが率先して練習を……!?」
澪「明日は台風でも来るかな……」
唯「そんなのりっちゃんのキャラじゃないよー……」
律「うおおぉいっ! たまに顔を見せればこれかい!?」
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:12:20.67 ID:Vk3Km2KM0
お約束をかましつつ、ドラムの調律を確かめる。特に目立った狂いはなかった。
律「よしっ、じゃあ何からやる!?」
澪「あ、あぁ、そうだな。じゃあまずは……」
私の只ならぬ気合を感じ取ったのか、みんなも楽器を手にして定位置に就く。
逸る心を抑え、腕と足を意識から切り離し、別の生き物の意思でも宿したかのように動かす。
澪「じゃあ『わたしの恋はホッチキス』から行こうか」
律「オッケー、んじゃあ行くぜ。1・2・3・4……」
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:14:38.55 ID:Vk3Km2KM0
聞き慣れたフレーズの中を、小気味良いリズムが駆け抜けていく。
律が後ろでドラムを叩いてくれている。
たったそれだけのことがバンド全体に安心感をもたらす。
相変わらず走り気味だが、それが放課後ティータイム独特のグルーブを生み出していた。
澪(うん……?)
その違和感に気付いたのは恐らく私だけだろう。
同じリズム隊というのもあったのかもしれない。
以前に比べて走ることは少なくなっていたのだが、その代わりにというか、
妙に不安定な時がほんの一瞬だけある。
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:17:00.54 ID:Vk3Km2KM0
澪(律?)
違和感の正体を探るため、ドラムを叩く律に視線を送る。
視線のその先。
そこにあったのは戸惑いを隠し切れずに顔を歪めた律だった。
澪(どうしたんだ、律のやつ……)
不安定とは言っても、そこまで気になるほどのものでもない。
事実、私が気付けたのも単なる偶然に近かった。
だから分からなかった。律がなぜそこまで戸惑いの表情を浮かべているのかが。
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:18:32.09 ID:gF/2KsmSP
どうしたんだ
しえん!
生理じゃね
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:20:40.06 ID:Vk3Km2KM0
梓「ふぅ……今日は久々に気持ちよく出来ましたね」
唯「うん! やっぱりりっちゃんのドラムがないと駄目だねぇ」
紬「じゃあお茶にしましょうか。今日はりっちゃん復帰ということで、秘蔵の茶葉を使っちゃおうかな♪」
澪「………………」
一時間近くぶっ通しで演奏し続けて今、練習が終わった。
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:22:07.05 ID:Vk3Km2KM0
律(なん、で……?)
練習が終わってしまった。思い描いていた結果を何一つ残せないまま。
律(なんでだ……!?)
確かに私の演奏技術は上達していたはずだ。
そのためにここ数週間、部活を休んで特訓に明け暮れていたのだから。
律(なんでなんだよ……!?)
結果は惨憺たる有様だった。確かにすぐに走り気味になる癖は少しは改善されていたように思う。
だがその代償を払うかのように、以前のような一体感が感じられなくなっていた。
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:23:07.20 ID:Vk3Km2KM0
律(まだ……)
焦燥感が再び私の心を襲った。
練習前に抱いていた淡い希望なんか、とっくの昔に消え去っていた。
律(まだ足りないのか……?)
足りない。
届かない。
見えていたと思っていたみんなの背中が遠くなる。
伸ばした手は宙を掴むばかりで、掌には何もない。
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:24:56.58 ID:Vk3Km2KM0
澪「律……?」
律「………………」
現実に視点を戻し、手を見つめる。
握られているのは一対のスティック。掌にはまめの潰れた跡がいくつも残っていた。
律「……みんな、ごっめーん。私、今日も用事あるんだった!
悪いけど、先帰るわ!」
唯「えぇ!? りっちゃん、行っちゃうのぉ?」
紬「りっちゃん、お茶だけでも飲んでいかない?」
梓「今日のお菓子、おいしそうですよ! 律先輩」
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:25:32.17 ID:gF/2KsmSP
どうなっちゃうのりっちゃん
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:26:28.38 ID:Vk3Km2KM0
みんなが口々に私を引き止める。嬉しくないといえば嘘になる。
だけど今ここで立ち止まることは許されなかった。
許すことが出来なかった。
律「ほんっと、ごめん! んじゃあまた明日な!」
澪「律……」
澪と目が合った。
私を気遣うその視線に居た堪れなくなり、鞄を引っ掴んで音楽室を飛び出す。
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:28:22.53 ID:8UWc2sDqO
バーボン
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:28:38.09 ID:Vk3Km2KM0
律(足りない……足りない、足りない足りない足りない、足りない!!)
さわ子「うわっと……ちょっと、りっちゃん!? 廊下を走るんじゃありません!」
さわちゃんの制止の言葉も振り切って廊下を駆け抜ける。
律「足りねぇ! こんなんじゃあいつらに追いつけない……。
あいつらと音楽が出来ない。
あいつらと、笑えない……!」
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:30:00.60 ID:Vk3Km2KM0
逃げるように。
追い縋るように。
律「やだ……やだやだやだ、やだよぅ……!」
気付けば涙を流していた。
空元気で塗り固めた笑顔の仮面は脆く崩れ去っていた。
律「うっ……ふぐ、ぅ……ぅえぇ……」
嗚咽を漏らしながら、校門を飛び出す。
途中、生徒達の奇異の視線が投げかけられるのを感じたが、
構っていられるほど余裕がなかった。
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:30:18.28 ID:gF/2KsmSP
まだ結構長いのかな
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:33:08.50 ID:Vk3Km2KM0
書き溜め分投下終了です。
そして昨日の夜勤明けから一睡もしていないので、眠気が……。
申し訳ないのですが、寝てきます。
スレが残っていたら、また書き溜めて投下したいと思います。
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:34:32.44 ID:gF/2KsmSP
とりあえず乙
もし落ちてたら同じスレタイでお願いしたい
139 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:36:55.97 ID:1DP0n7Ip0
保守時間の目安
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 210分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内
乙です
続き期待してます
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:40:21.40 ID:lMMxezOdO
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 02:42:17.94 ID:aqCHFkf20
乙
結構面白い
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 03:03:47.01 ID:6tiHZJ6cO
乙です
今日見た中で一番面白いよ頑張れ
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 03:43:02.73 ID:V1wwbR7s0
ほ
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 04:05:11.04 ID:vHVaYBjnO
ほ
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 04:33:31.13 ID:aqCHFkf20
楽しみ保守
ほ
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 06:12:41.85 ID:VZx/o3IW0
ほほほのほ
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 06:20:08.43 ID:Y90mEUDAO
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 07:31:12.88 ID:x8P/VbGwP
げ
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 08:24:03.27 ID:JsSlJFQMO
ほげ
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 08:40:57.82 ID:5SNWtk+XO
おれが起きるころには再開しとけよ
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 09:21:19.55 ID:VZx/o3IW0
ほs
何故終わりまで書き溜めておかないのか
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 09:40:18.33 ID:Vk3Km2KM0
おはようございます、
>>1です。
今起きたので、書き溜めが全然ありません……。
なので考えながら書き込みしていきたいと思います。
>>150 はい、その1です。
>>155 前回と同じ轍を踏まないよう、すぐ修正出来るようにと思ったのですが、
まさかこんなに早く書き溜め分が無くなるとは思わず……。
では続き行きます。
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 09:41:38.43 ID:Vk3Km2KM0
涙を手の甲で拭おうとしたところで、握られたままのスティックに気付いた。
スティックはスネアのフープに打ち付けられた跡だらけで、もうぼろぼろだった。
柄の部分なんか、汗と手垢で真っ黒になるまで使い込まれていた。
これでもかと練習をした。
文句を言ったりもしたけれど、師匠から教えられたことは何度も何度も繰り返した。
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 09:43:13.45 ID:1DP0n7Ip0
来てた しえn
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 09:47:36.01 ID:Vk3Km2KM0
律「……うぅ、っく……それ、でも」
それでもまだ足りないというのなら。
律「わたしは……!」
練習するしかない。今以上に。
涙は流れるままに任せ、薄曇の白けた空の下を走る。
私は制服のまま、師匠の住むマンションへと向かった。
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:01:08.92 ID:Vk3Km2KM0
師匠「……もうその辺にしといたらどうだ、お嬢ちゃん」
律「いえ、まだやりたいんです……やらせてください」
一心不乱にドラムを叩く。
師匠は呆れるでもなく、こちらの我が侭に付き合ってくれている。
あの後、制服のまま師匠の下へと押しかけた私は、
こうして連日学校から練習に直行するのが日課となっていた。
師匠は家に居ないときは大抵、例のジャズバーで演奏をしていることが多かったので、
そちらに向かい、師匠の演奏を見て勉強する。
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:07:49.88 ID:Vk3Km2KM0
部活にも毎日顔を出している。
ちょっと気まずかったけど、練習にだけ参加して、
ムギの出してくれたお茶にも手を付けずに音楽室を後にする。
そうして次の練習場所へと向かう。
練習を終え、夜遅くに家に帰ってきてからも、練習は続く。
無心のままトレーニングパッドを叩き続ける様は、相当異様らしく、聡に心配されたりもした。
ドラム、ドラム、ドラム───。
とにかくドラム漬けの毎日だった。
寝る間も惜しんで、とにかく叩き続ける。
スティックの消耗も激しく、叩き折られた木片が部屋の隅に何本も転がっている。
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:10:39.73 ID:GIr2zWTEO
りっちゃんを応援するんや(^p^)
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:12:44.46 ID:hWnnt8ToO
りっちゃあああぁん…
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:13:30.24 ID:Xzwl2RrVO
支援
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:15:34.99 ID:Vk3Km2KM0
律「はあ……はぁ……ぁ」
腕や手首が悲鳴を上げ、身体全体が疲労を訴える。
師匠「……はい、今日はここまで」
律「……平気です。まだ、やれます」
師匠「そんな根を詰めても得られるものなんてねえよ。
大体それが平気って面か。いいから顔でも洗ってこい」
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:19:43.65 ID:Vk3Km2KM0
師匠の言葉に渋々と頷いて、洗面所へと向かう。
師匠「こりゃどうも悪い方向へと転んじまったみたいだな……」
師匠が何事かを呟くが、今の私にはそれを気に掛けるだけの余裕はない。
冷たい流水で顔を洗い、目の前の鏡に目をやる。
そこには目の下に隈をこさえ、しょぼくれた顔をした私がいた。
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:26:47.14 ID:gKwE54oH0
し
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:28:05.10 ID:Vk3Km2KM0
最近、ドラムを叩いていないと不安でしょうがない。
スティックを手にしていないと、どこかに堕ちていってしまいそうで、始終恐怖に駆られていた。
これだけがあいつらと繋がっていられる確かなものなのに、今はひどく頼りなげに思えた。
鬼気迫る形相でドラムを叩く私と、ドラムを叩いていない時のひどく不安げな私。
そのギャップにみんなも心配して声を掛けてくれるのだが、どうにか空元気を出し、誤魔化していた。
そんな虚勢、いつまで続くか、分かったものじゃないが。
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:34:30.26 ID:Vk3Km2KM0
律「待っててくれ、みんな……絶対に追いつくから……」
頬を伝い落ちる水滴も拭わずに、ただ鏡の中の自分に言い聞かせるように呟く。
律「絶対に、追いついてみせるから……だから……」
置いていかないで。
縋るような想いが胸の中を渦巻く。
伝う水滴に混じって、温かな雫が目から零れ落ちたような気もしたが、
気付かない振りをした。
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:49:12.94 ID:Vk3Km2KM0
取り敢えずどこかに飯を食いにいこうという師匠の言葉に従って、夕飯を外食で済ませる。
師匠は今日もオフらしいので、また師匠の家に戻って練習の続きをすることにした。
師匠はジャズバーでのライブ出演以外、何をしているのか分からない人なので、
たまに本当にこれで生活出来ているのか疑問に思う。
まあ相手の都合も考えず四六時中押しかけている私がどうこう言える義理でもないのだが。
師匠「なあ、お嬢ちゃん」
繁華街の隙間を縫うようにして、師匠の家へと向かう。
律「ん? なに、師匠」
陽はとうに沈み、街を支配するのは色とりどりのネオンサイン。
師匠「お前はなんのためにドラムを叩くんだ」
そんな猥雑な街の真ん中で、師匠は出し抜けにそんな問いを私に投げかけた。
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:54:35.73 ID:KdpDffNE0
紫煙
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 10:58:27.36 ID:Vk3Km2KM0
そんな猥雑な街の真ん中で、師匠は出し抜けにそんな問いを私に投げかけた。
律「なんのためにって……前にも言ったろ。一緒に音楽をやりたい奴らがいるって」
師匠「それはそこまでしてやりたいことなのか?」
律「それ、は……当たり前だろ。バンド組もうって言ったの、私なんだし。
あいつら巻き込んで、潰れかけてた軽音部を立ち上げたのも私なんだし」
師匠「そりゃただの義務感だろ。言い訳にもなりゃせんよ」
律「言い訳なんて……」
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:05:20.44 ID:Vk3Km2KM0
師匠「楽しいから音楽やってるんじゃないのか?」
律「………………」
師匠「それはそんな面になるまでして、やらなきゃならんことなのか?」
律「……だって」
師匠「だって?」
歩道の真ん中で立ち止まる。
人の流れの中に取り残された私は、ある一つの感情に晒されていた。
寂しい。
寂しいんだ。前のような繋がりをみんなとの間に感じられなくて。
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:16:13.06 ID:Vk3Km2KM0
律「だって、私にはそれしかないんだ。
それしかあいつらとの繋がりが感じられない……。
だから私はあいつらに見合うだけの実力を付けなきゃいけないんだ……」
師匠「それはみんながそう言ったのか?」
律「そんなわけないだろー……。
みんな優しいからさ、絶対にそんなこと言わないし、思ってもないよ。
だからこれは───」
そう。だからこれは私が勝手に引け目を感じているだけ。
私が勝手に距離を取っているだけ。
そんなこと分かっていた。
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:25:34.48 ID:Vk3Km2KM0
だけど駄目だった。
自分勝手に抱いたコンプレックスはどうしても拭い去れない。
あいつらと演奏している時。
あいつらと楽しいティータイムを過ごしている時。
あいつらと一緒に笑い合っている時。
いつもびくびくしていた。
誰かに、もう一人の自分にお前はその子たちの友達に相応しくないと言われるんじゃないかって。
相応しい誰かは、放課後ティータイムのドラマーはどこか他にいるんじゃないかって。
律「私じゃ駄目、なのか……?」
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:32:49.57 ID:KdpDffNE0
紫煙
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:34:27.77 ID:Vk3Km2KM0
気付けばそんな言葉と共に、また涙を流していた。
身体が弱っているのも手伝って、情緒不安定になっているのだろう。
気を抜くとすぐ泣きたくなる。弱音を吐きたくなる。誰かに縋り付きたくなる。
そんな重荷にはなるまいと気を張っていたのだが、それももう限界が近かった。
律「みんなと、友達でいたい……。一緒に、いたい……!」
ただそれだけなのに。
律「なんで……わたしは……!」
こんなにも弱いのだろう。
一人で勝手に悩んで、あがいて、臆病になるあまり、
みんなの心配にまで虚勢を張って強がって見せて。
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:38:01.33 ID:Vk3Km2KM0
涙が止まらない。子供のようにしゃくりあげ、人目も憚らずに泣く。
人が涙を流すのは不安やストレスを和らげるためとか聞いたことがあるけど、そんなのは嘘だ。
だって今、私はこんな姿をみんなに見られたくない、こんな弱い私は私じゃないとまた必死に強がろうとしている。
師匠が優しく頭を撫でてくれる。
無骨なその手からは想像出来ないような優しさで。
その優しさが心に沁み、また涙を流させた。
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:42:17.67 ID:Vk3Km2KM0
ちょっと用事&ご飯食べに外出してきます。
続きはまた後ほど書かせていただきます。
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:49:24.13 ID:gKwE54oH0
ほ
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:49:31.27 ID:QfJEwQ4JO
支援
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 11:54:38.53 ID:KdpDffNE0
ほっしゅ
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 12:16:15.63 ID:GIr2zWTEO
りっちゃんがんばれ!
台本形式じゃないSS久しぶりですげぇ良いわ
保守☆
追い付いた
保守
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 12:51:02.05 ID:6tiHZJ6cO
あ
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 13:05:18.14 ID:GIr2zWTEO
ら
188 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 13:09:05.33 ID:FSQfMBwj0
や
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 13:10:50.03 ID:6tiHZJ6cO
190 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 13:50:02.55 ID:QDp8nDvtO
保守
ほ
ho
193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 14:39:45.32 ID:hWnnt8ToO
保守あげ
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:05:12.63 ID:j1SSpv1u0
ほしゅ
195 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:29:02.03 ID:Vk3Km2KM0
ただいま戻りました。
ではバイトの時間まで続きを書いていきたいと思います。
196 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:33:23.69 ID:Xzwl2RrVO
わっほい
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:34:48.87 ID:Vk3Km2KM0
唯「りっちゃん、大丈夫かなぁ」
梓「今日も様子、変でしたもんね……」
あずにゃんと並んですっかり日も暮れた街の中を歩く。
10GIAに弦やらピックやらを買いに行ったのだが、
ギターの試奏をしてたらすっかり遅くなってしまった。
歩道は仕事帰りのサラリーマンや、学生で溢れかえっている。
198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:37:39.76 ID:YQK2znYRO
支援
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:38:15.70 ID:TOyxhVYW0
楽しみにしてるよ
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:42:31.42 ID:Vk3Km2KM0
唯「ほんと、どうしたんだろう、最近のりっちゃん。
練習してる時も全然楽しそうじゃないし、お茶もせずに帰っちゃうし……」
梓「心配です……。
律先輩があんな調子だと、私達も気が気じゃありませんよね……」
いつも笑顔で私達の空気を明るいものへと変えてくれるりっちゃん。
ここ最近、その彼女が様子がおかしいということで、その影響はバンド練習にも現れていた。
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:52:59.45 ID:Q7+RVr2p0
病んでるりっちゃんって良いよね
202 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 15:54:35.25 ID:Vk3Km2KM0
唯「早く良くなってくれればいいんだけど……」
梓「原因が分からなければ、相談にものれませんしねぇ」
唯「みおちゃんはりっちゃんから話してくるのを待った方がいいって言ってたけど……
やっぱり気になるよ〜……」
梓「ですね……」
ギー太を背負い直して、繁華街を突っ切る。
こんな時間に女子高生がうろついていたら補導されかねないので、
足早に人ごみの中をあずにゃんの手を引いて行く。
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:02:42.06 ID:EhSiHd14O
支援
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:03:34.58 ID:KdpDffNE0
お帰り
紫煙
205 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:05:57.13 ID:Vk3Km2KM0
梓「あれ……? 唯先輩」
唯「ん? なぁに、あずにゃん?」
梓「あれ、律先輩じゃないですか?」
唯「どれ?」
梓「あそこの桜高の制服を着た人です」
あずにゃんが指差した方向に目を凝らす。
唯「ほんとだ……」
人ごみで気付かなかったがすぐ数メートル先に制服のままのりっちゃんがいた。
何やら男の人と話している。
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:07:44.44 ID:ZG7m03U7O
支援
207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:15:42.87 ID:Vk3Km2KM0
唯「何を話してるんだろう……?」
そのただならぬ雰囲気に思わず近くの建物に身を隠す。
梓「唯先輩、覗き見は……」
唯「でもあずにゃんも気になるでしょ?」
梓「まあ確かに……」
あずにゃんと二人、こそこそと物陰からりっちゃんの様子を窺う。
喧騒にかき消され、断片的にしかりっちゃんの話し声は聞こえてこない。
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:19:35.80 ID:KdpDffNE0
円光フラグくる?
209 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:21:50.71 ID:j1SSpv1u0
これはすれ違いフラグじゃね?
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:22:57.54 ID:Vk3Km2KM0
『私じゃ駄目、なのか……?』
唯「え……?」
梓「律、先輩……?」
泣いていた。いつも元気いっぱい笑顔のりっちゃんが。
『……………で、いたい。一緒に、いたい……!』
目の前の男の人に激情をぶつけるように、泣きながらそんなことを口にしていた。
泣き続けるりっちゃんを落ち着けようとしたのか、その男の人がりっちゃんの頭を撫でる。
まるで愛しい人を慰めるように。
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:24:29.49 ID:8/3UGwMp0
断片wwwwww
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:26:38.74 ID:BTWCdBP00
やっべぇwwww
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:35:02.83 ID:Vk3Km2KM0
唯「これは、いったい……」
梓「もしかして私達、とんでもない場面に遭遇してしまったのでは……」
ようやく落ち着いたのか、りっちゃんとその男の人はどこかへと歩き始めた。
唯「……あずにゃん、後を尾けてみよう」
梓「ほんとなら駄目なんでしょうけど、場合が場合ですからね……」
あずにゃんは一瞬だけ躊躇う素振りを見せたが、やはり彼女もりっちゃんが心配なのだろう。
特に反対することもなく尾行に賛成してくれた。
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:37:13.32 ID:ZG7m03U7O
は〜や〜くぅ〜 は〜や〜くぅ〜 は〜や〜くぅ〜
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:41:58.04 ID:Vk3Km2KM0
りっちゃんはまだ完全には泣き止んでいないのか、時折肩を震わせ、洟を啜っていた。
一緒にいる男の人は知り合いみたいだけど、一体何をしているのか。
今すぐりっちゃんのところに行って、抱きしめてあげたい衝動に駆られる。
唯「いったいどういう関係なんだろう、りっちゃんとあの男の人……?」
216 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:48:53.33 ID:lztwkyZW0
しえんこ
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:48:55.09 ID:KdpDffNE0
紫煙
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:49:20.39 ID:Vk3Km2KM0
梓「さっき、律先輩、私じゃ駄目なのかってあの男の人に訊いてましたよね」
唯「あぁ〜、そういえば……」
梓「で、その後の一緒にいたいという台詞……」
唯「あずにゃん……それはもしかして……」
梓「もしかしてあの男の人、律先輩の、こ、恋人さん、なんじゃあ……」
唯「ええぇ───ッ!?」
梓「声が大きいです、唯先輩!」
急いで物陰に身を潜ませ、前を行くりっちゃん達の様子を窺う。
男の人がちょっと振り返ったが、またすぐに歩き出す。
私達も安全を確認して、また尾行に戻った。
わっふるわっふる
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:54:32.64 ID:KdpDffNE0
さて、ファンキーで胡散臭いおっさんをどう脳内イメージするか・・・
妄想力の見せ所だ
>>220 俺はどう頑張ってもブラザートムしか思い浮かばなかった
223 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 16:58:20.95 ID:Vk3Km2KM0
唯「でもでもみおちゃんがそれはないって言ってたし!」
梓「でも現にああして男の人と歩いてますし、さっきの意味ありげなやりとりは……」
さっき見た男の人の顔を思い出す。
百歩譲っても怪しいとしか言えないその背格好。
私達よりかなりの年上のようだし、あの人がりっちゃんの恋人と言われても、
なかなか想像しづらいものがある。
唯「だって相手の人、どう見てもおじさんだよ?」
梓「う〜ん……」
りっちゃんとは恋の話とかはあまりしたことがなかったので
好みのタイプとか知らないけれど、
あの人はどう見ても女子高生が恋人に選ぶタイプとは思えない。
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:09:16.17 ID:Vk3Km2KM0
唯「はっ!?」
梓「どうしたんですか、唯先輩?」
唯「あずにゃん……わたし、気付いてはいけないことに気付いちゃったかもしれない」
梓「なんですか?」
唯「私じゃ駄目なのかという質問、一緒にいたいという言葉、そして相手は歳の離れたおじさん……。
ここから導き出される答えは……」
梓「唯先輩……それはもしかして……」
唯梓「不倫」
唯「ええぇ───ッ!?」
梓「なんで自分で言って、自分で驚いてるんですか!?」
唯「ふがふが……」
あずにゃんに口を塞がれながら、また物陰に身を隠す。
前を行くおじさんが再び立ち止まり、後ろの様子を窺っている。
しばらくこちらを探っていたようだが、何も無いと判断したらしく、また歩き始めた。
少し距離を取って、わたし達も尾行を再開した。
225 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:11:12.45 ID:KdpDffNE0
紫煙
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:17:00.18 ID:Vk3Km2KM0
梓「律先輩に限ってそんな……」
唯「でもでもここのところりっちゃんの様子おかしかったし。
授業中も上の空だし、泣きながら学校を出てったって噂もあるし……」
梓「う、う〜ん……」
あずにゃんと二人、頭を悩ませる。
たとえ不倫でも本人が真剣なら応援すべきでは……。
でもでもりっちゃん泣いてたし、私じゃ駄目ってことは相手には本命がいるってことで……。
いやいや……。
でもでも……。
228 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:27:31.72 ID:Vk3Km2KM0
思考が堂々巡りを起こし、頭から湯気が出始める頃、
ようやく前を行く二人が目的地に到着したようだ。
唯「ここは……」
梓「マンション、ですね……」
いよいよわたし達だけでは手に負えない事態にまで発展しているような気がした。
それでも出来ることだけはしておかねばと、
オートロックのドアが閉じてしまう前にマンションの中へと侵入する。
梓「唯先輩、さすがにこれはまずいのでは……」
唯「部屋番号を確かめるだけだから。ギー太、ちょっとお留守番しててね」
あずにゃんとギー太を置いて、エレベーター横の階段を駆け上がる。
りっちゃん達はエレベーターを使って上へと上がっていた。
いつ停まってもいいようにエレベーターの動きに気を配りながら、
極力足音を起てずに上を目指した。
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:29:51.82 ID:KdpDffNE0
紫煙
230 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:35:48.71 ID:Vk3Km2KM0
エレベーターは五階で停まり、りっちゃん達が降りてきた。
荒くなった息遣いを覚られないように静かに深呼吸をしながら、
二人が部屋に入っていくのを確認する。
503号室。それがりっちゃん達が入っていった部屋だった。
その部屋番号を心に刻み、足早にその場を後にする。
梓「あっ、唯先輩」
一人で落ち着かなかったのか、
きょろきょろとしていたあずにゃんが私のところに駆け寄ってきた。
唯「じゃあ出よう、あずにゃん」
梓「は、はい」
あずにゃんからギー太と鞄を受け取り、マンションから出る。
ギー太支援
wktk
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:45:05.19 ID:Vk3Km2KM0
唯「取り敢えずわたし達だけで考えても分からないことだらけだから、
明日みおちゃん達に相談しよう」
梓「そう、ですね。あれこれと推測しても事態が好転する訳ではありませんし……」
突然のことにあずにゃんも混乱しているみたいだ。
そういうわたしも充分に混乱しているわけなのですが。
唯「りっちゃん……」
聳え立つマンションを見上げながら、りっちゃんの名前を呼ぶ。
その言葉は誰かに届くこともないまま、ただ夜の闇へと解けていった。
234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:46:50.64 ID:Vk3Km2KM0
申し訳ありません。
そろそろバイトに行く仕度をする時間なので、きりのいいところで止めておきます。
また明日残っていたら、続きを書かせていただきます。
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 17:48:54.18 ID:KdpDffNE0
乙!
期待して待ってる
明日まで保守できるかな
237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 18:11:35.13 ID:QVas5A0z0
保守
238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 18:37:31.81 ID:Q7+RVr2p0
明日はきつい
239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 18:44:09.96 ID:g/CRoopLO
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 18:50:45.16 ID:zKq6jBgUO
君には期待しているよ
241 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:02:53.26 ID:3B0cRxeA0
シールケレイプまだかよカスが
242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:03:58.79 ID:3B0cRxeA0
誤爆
だが律レイプでもいい
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:14:58.19 ID:lmo1+O8G0
一気に読んだ
俺も同じようなことで悩んだなあ、結局は自分のできる範囲でやるしかない
って開き直ってプレイできるようになったんだが
泣きながら校門を出る律を想像してちょっとキュンってなった
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:16:55.12 ID:oQnpmOrR0
ふうん
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:24:30.59 ID:g/CRoopLO
自分語りイタイ子…
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:31:25.41 ID:6tiHZJ6cO
ムギに話したらおっさん消されるぞ
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:32:24.96 ID:w+1E8x4c0
追いついちまった・・・
期待してるぜー
248 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:36:16.62 ID:5jyVkVnn0
ほ
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 19:41:52.04 ID:JOR23bzL0
ほっしゅ
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 20:04:39.26 ID:5l/RPzbm0
なんか・・・ぞくぞくする・・・
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 20:20:26.85 ID:hWnnt8ToO
保守
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 20:42:42.77 ID:o+urqSPu0
保守
253 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 20:46:35.04 ID:lmo1+O8G0
あ
254 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 21:09:34.92 ID:hWnnt8ToO
ミ☆
255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 21:13:21.23 ID:5jyVkVnn0
ほ
も
さ
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 21:40:46.11 ID:6tiHZJ6cO
落ちるぞ
明日まで無理だな
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 21:56:53.65 ID:ZG7m03U7O
ほす
ほ
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 22:03:07.71 ID:o+urqSPu0
ほ
263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 22:17:47.98 ID:hWnnt8ToO
保守
久々にwktkがとまらねぇwww
保守に徹する
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 22:29:55.76 ID:YQK2znYRO
ほ
266 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 22:33:02.24 ID:j1SSpv1u0
ハッピーエンドで頼む
保守
267 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 22:40:47.29 ID:kzqd0ksi0
268 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 22:58:19.40 ID:QVas5A0z0
保守
269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 23:09:30.03 ID:IfAaQhsdO
あるあるすぎるwwwwwwwwww
270 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 23:25:02.59 ID:QVas5A0z0
保守
271 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 23:33:53.30 ID:V+1Hb8FG0
は
272 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 23:49:55.47 ID:j1SSpv1u0
ほしゅ
273 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/04(火) 23:51:41.14 ID:xW/NkH4QO
この内容って、りっちゃんスレにあったメンバーとりっちゃんの比較みたいなやつ?
まあ、アンチくさかったんだけども
ほ
275 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 00:04:16.26 ID:Rnm/UavkO
もう少しの辛抱であろう
保守
276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 00:13:28.28 ID:4AD2vv9Y0
ほ
277 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 00:25:31.92 ID:4AD2vv9Y0
ほ
ほ
ほ〜たる
280 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 00:42:12.84 ID:50fb+YeE0
こい!
いか!
かす!
すみ!
284 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 01:15:53.58 ID:3WsqzqpdO
みち!
285 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 01:17:18.37 ID:bNz9zgB40
ちんちん!
286 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 01:28:33.43 ID:y9jZGN74O
んどん!
……あれ?
287 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 01:46:43.68 ID:4AD2vv9Y0
れず!
288 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 01:49:16.72 ID:dSUmaVaW0
続きまだか?
289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 02:07:21.60 ID:4AD2vv9Y0
ほ
290 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 02:15:12.86 ID:jLonoz6c0
保守時間の目安
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 210分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内
291 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 02:38:13.55 ID:4dHLhgmS0
保守っと
ほ
293 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 03:21:41.88 ID:1XoU15vbP
寝よう
294 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 03:37:32.04 ID:4dHLhgmS0
ダメだ眠い・・保守
ho
296 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 04:22:36.67 ID:BtASjxceO
☆
297 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 04:25:18.90 ID:dSUmaVaW0
りっちゃんおやすみ
298 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 04:54:43.00 ID:lcBo6AomO
すまん、後はだれか頼んだ…。
最後の保守。
299 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 05:19:00.50 ID:+QjsaMnmO
な
300 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 05:49:12.11 ID:BtASjxceO
か
301 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 06:09:57.55 ID:5RrtnKCl0
だ
302 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 06:30:16.38 ID:a2xvLuu90
し
まだ大丈夫だと思うが一応な
304 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 07:32:33.47 ID:giThJNqF0
ほ
305 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 07:44:04.92 ID:BtASjxceO
り
306 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 08:17:21.26 ID:V1IcdHliO
う
307 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 08:25:47.23 ID:PG2lxEFE0
ち
308 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 08:45:41.48 ID:OdvXIgeW0
け
309 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 09:05:04.67 ID:TRbTzszuO
ん
310 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 09:32:41.41 ID:4AD2vv9Y0
オハヨー
ほ
312 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 09:54:40.06 ID:gesEp1XwO
>>304-
>>309 空まで飛んでけパラグライダー!
ほ
ほ
315 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 10:55:38.83 ID:fNBfbOQPO
りっちゃんかわいいよぅ
316 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 11:00:53.19 ID:tEzsOINoO
そんな・・・恥ずかしい///
318 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 11:40:28.40 ID:BtASjxceO
りっちゃんちゅっちゅ
319 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:06:55.72 ID:hpBNbO3j0
ほ
320 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:07:30.81 ID:xFLay5Tq0
お早うございます、
>>1です。
では続きを書いていきます。
321 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:09:09.61 ID:y9jZGN74O
キタァ!
322 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:10:58.89 ID:xFLay5Tq0
紬「りっちゃんがふ、不倫!?」
澪「………………」
練習前のティータイム。今日のおやつはプリン・ア・ラ・モードだった。
何が悲しくてプリンを食べながら不倫の話をするという
性質の悪いギャグみたいな一場面を繰り広げなければならないのかとも思ったが、
昨日の事を話さないわけにもいかないのでそこは無視した。
キタ━(゚∀゚)━!
324 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:26:51.34 ID:EEGiXe1MO
期待してる
325 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:27:06.87 ID:xFLay5Tq0
唯「かもしれないってだけだけど……」
梓「不倫云々を抜きにしても、男の人と何かあったのは間違いないみたいで……」
紬「そういえば隈が酷くて気付きにくかったけど、確かに目元が腫れていたわ……。
あれは泣きはらした跡だったのね」
澪「あはは、律が不倫だなんてそんなことあるわけないって」
そういって笑い飛ばすみおちゃんのプリンの器を持った手はあからさまに震えていた。
プリンがぷるんぷるん揺れて崩壊寸前だ。
326 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:35:21.37 ID:xFLay5Tq0
唯「ここ最近、りっちゃんの様子がおかしかったのもそれが原因なのかなぁ……?」
紬「状況から鑑みるに、そう考えるのが妥当でしょうね……」
梓「私達に出来ることってないんでしょうか?」
紬「もし仮にりっちゃんが不倫をしていたとしたら、
彼女から私達に相談を持ちかけるなんてことはないんじゃないかしら。
それは……言えないわ。たとえどんなに困っていたとしても」
澪「………………」
唯「何かりっちゃんの力になれればいいんだけど……」
梓「あんなぼろぼろの律先輩を見ているのは、正直辛いです……」
律「おす……」
唯「りっちゃん!?」
327 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:40:29.90 ID:EEGiXe1MO
しえぬ
328 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:44:44.05 ID:ump60Hzv0
しええん!
329 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:46:42.13 ID:xFLay5Tq0
重い足取りで音楽室へと向かう。
昨日もほとんど眠れなかった。
道端で泣きはらした後、またドラムの練習に没頭したが、ちっとも上達した気がしない。
胸の裡では焦燥感がぶすぶすと燻り、諦念に取って代わられようとしていた。
律「なに考えてんだ、私は……」
こんなところで諦めちゃいけない。諦められるわけがない。
このたった一つの繋がりを手放すということは、あいつらの信頼を裏切るということだ。
それだけはしてはならないことだ。
だけど今の私にはその繋がりを握り締めるだけの力がない。
331 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 12:54:11.14 ID:xFLay5Tq0
音楽室の前にたどり着く。
ガラス窓から中を覗くと、何を話しているかは分からないが、
みんながいつものようにお茶をしていた。
深呼吸をして気分を入れ換える。
こんな沈んだ顔であいつらの前に出るわけにはいかない。
律「おす……」
だが出てきた声はとても弱々しいものだった。
唯「りっちゃん!?」
332 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:00:48.76 ID:xFLay5Tq0
気まずい空気が流れる。
みんなの顔には一様にこちらを心配する色が見て取れた。
みんなの顔を曇らせているのが自分のせいだと思うと、
申し訳ない気持ちと悲しみでいっぱいになる。
律「………………」
梓「あ、じゃ、じゃあ律先輩も来たことですし、練習しましょう、練習」
紬「……そうね。りっちゃん、ここのところ頑張っているもの。
私達も負けないようにしなくちゃ」
唯「わたしも今日は頑張るよー」
澪「今日だけじゃ駄目だろ」
333 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:02:20.14 ID:koDH+FAL0
きたい
334 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:06:15.94 ID:+kJ3rbh9O
プリンがぷるんぷるんで
リアルに道端で吹いたwwwww
どうしてくれるwwwwwwww
335 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:10:57.26 ID:4dHLhgmS0
プリン食べながら不倫話で吹いた
ちくしょう・・・
336 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:14:56.79 ID:xFLay5Tq0
みんなが席を立ち、楽器を手に執る。
そうだ。悩んでいる場合じゃない。今は少しでも多くドラムを叩かなきゃ。
鞄からスティックを取り出し、ドラムの前に陣取る。
澪「じゃあまずは───」
ただひたすらに目の前のドラムに集中する。
337 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:15:44.00 ID:xFLay5Tq0
律「……っ!」
滞りなく曲は演奏されているように、思う。
だけど今の私には何が駄目で何がいいのか、それすらも分からなくなっていた。
自分が何を叩いているのかも分からない。
338 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:16:33.07 ID:MBMOtYCyO
澪いい子だな
339 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:22:47.24 ID:xFLay5Tq0
律(もう……)
みんなの音が分からない。聴こえない。
そこにあったと思っていた絆はもう見えなかった。
340 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:26:51.50 ID:xFLay5Tq0
律(もう、分から、ないよ……!)
限界だった。
張り詰めていた何かは簡単に崩れ去り、
気丈に振舞おうとしていた自分はどこかに行ってしまった。
頭の中はぐちゃぐちゃで、気付けばスティックを握る手は止まっていた。
澪「律……!?」
341 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:28:00.30 ID:EEGiXe1MO
紫煙
342 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:31:44.15 ID:+kJ3rbh9O
禁煙
343 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:32:00.91 ID:eqMoqxe20
purple haze
私怨
345 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:36:38.99 ID:xFLay5Tq0
律「……っふ、ぅぐ……え、っく……」
涙が止められない。
みんなの前でだけは泣くまいと思っていたのに。
昨日、師匠の前で泣いてしまったせいで、涙腺がバカになっているようだった。
みんながどうしたらいいのかとおろおろしていた。
それが申し訳なくて、居た堪れなくて、私はまた逃げ出していた。
346 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:46:31.82 ID:xFLay5Tq0
澪「律!」
澪が引きとめようと手を伸ばす。
その手を振り払って私は音楽室を飛び出していた。
律「あ……」
もう駄目だ。
一番見られたくない自分を、一番見せたくなかった人達に見られて。
子供のように泣いて。逃げ出して。
心配してくれた親友の手を振り切って。
もうどうしたらいいのか。自分がどうしたいのか。
それすらも分からなかった。
347 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:47:05.51 ID:eqMoqxe20
支
348 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:47:21.76 ID:1XoU15vbP
ふおおおお
349 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:49:04.04 ID:PG2lxEFE0
いいよいいよー
師匠がザムドの雷魚で再生される
351 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:49:40.87 ID:bfGsogNI0
面白くなってきたな
352 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:52:38.89 ID:xFLay5Tq0
澪「………………」
唯「………………」
紬「………………」
梓「………………」
律の家へ向かう途中、何を言うべきかも分からず、みんな、黙っていた。
律が音楽室を飛び出した後、誰もが何が起きたのか、理解出来ずにただ呆然と立ち尽くしていた。
誰も律の後を追うことが出来ず、互いに顔を見合すばかりだった
353 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 13:54:55.80 ID:G5pS4ciQO
おい このスレデジャブなんだが
354 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:01:15.55 ID:xFLay5Tq0
さわ子「貴方達、まだ残ってたの? 下校時間、過ぎてるんだから、早く帰りなさい」
さわ子先生の一言で取り敢えず解散することにし、帰り支度をする。
ドラムの横には律の鞄が放られたままだった。
帰りに律の家に寄って届けてやろうと思い、何も言わずにその鞄を手にする。
気付いたら示し合わしたかのように、みんなで律の家に向かっていた。
澪「律、いるかな……?」
355 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:09:23.30 ID:xFLay5Tq0
インターフォンのスイッチを押して、反応を待つ。
聡「はい、どちらさまですか?」
澪「あ、聡。澪だけど、律、いる?」
聡「姉ちゃんならまだ帰ってませんけど」
澪「帰ってない?」
律の下駄箱からは靴が消えていたそうだから、学校を出たのは間違いない。
では一体どこに?
356 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:10:38.96 ID:4AD2vv9Y0
しえん
357 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:10:51.23 ID:y9jZGN74O
支援
358 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:13:13.15 ID:xFLay5Tq0
すいません、お腹が空いたのでちょっと席を外します。
359 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:13:24.77 ID:P7hTv8L5O
age
360 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:14:34.60 ID:CgT+JfFUP
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/ ̄ ̄ ̄ ̄/三三三三// ̄ ̄ ̄ ̄l ̄ ̄ ̄ ̄l +
/ ̄ ̄ ̄ ̄ /三三三三// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄i、 ̄ ̄ ̄ i、
/ ̄ ̄ ̄ ̄ _/三三三三// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄', ̄ ̄ ̄ ̄l
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/三三三三// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄',三二二ニl +
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/三三三三// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
古代都市ワクテカ (B.C.8000年頃)
361 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:26:19.31 ID:VxbLVTdM0
☆
(゚д゚)面白すぎる
聡がまともだw
364 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:34:15.63 ID:emELkRjmO
りっちゃん、卑屈になんないで…
365 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:40:48.23 ID:099YUsqsO
この律はすごく共感できる
366 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:53:03.62 ID:emELkRjmO
りっちゃんはホントはプロ級!
367 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 14:53:46.96 ID:9+aUksLL0
澪「そうか、ありがとう。ここに律の鞄、置いておくからよろしく」
唯「みおちゃん……」
紬「りっちゃん、一体どこに……」
梓「変に思い詰めてなければいいんですけど……」
唯「やっぱりあの男の人とのことが原因なのかなぁ……?」
澪「唯」
唯「うん?」
澪「その男の人の家はどこか覚えてるか?」
唯「うん、覚えてるけど……」
試演
369 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 15:00:44.62 ID:KMdQj3o8O
支援
370 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
律が今、何を悩んでいるのか、それは私には分からない。
あいつが不倫をしているなんて思わないけど、その男の人なら何か知っているかもしれない。
本当は私が口出しするようなことじゃないのかもしれない。
それが律のためだと自分に言い聞かせていたけど、もう限界だった。
澪「行こう。その人なら何か知っているかもしれない」
唯「みおちゃん……!」
紬「澪ちゃん……!」
梓「澪先輩……!」
今、あいつが何かに苦しんでいるというのなら、助けてやりたかった。
だって私達は親友なのだから。
これまでも───これからも。