とある世界、とある場所に、一人の剣士がいた。
幼い少女がとてとてと、着物の裾を揺らしながら無言でよってくるのは、彼にとっては日常茶飯事であった。
川 ゚ -゚)「…………」
少女が手にしているのは一つの林檎であった、赤く、みずみずしいその果実を床に置き、数歩離れて正座の姿勢をとる。
('A`)「腹が減ったか? 暫し待て」
くたびれた、浅黄色の着物を着た、右手のない男は、その様子を見て刀に手をかける。
片手、残された左手で刀の柄に手をかけ、刃を一瞬露にし
――キィン。
('A`)「――また」
瞬時に納刀する、ただ刀を出し入れしただけに見える動作だが、その実。
川 ゚ -゚)「……!」
('A`)「つまらぬものを斬ってしまった……」
しゃらら、と音を立てて皮、実、種の順に、人の口に入れるための形へと加工されていく林檎。
その筋では達人とまで呼ばれた男、ドクオ。
彼は、剣士である。
('A`)はつまらないものを斬るようです。
( ^ω^)「なんだ、この娘は言葉が喋れぬのかお」
川 ゚ -゚)「…………」
屋敷の入り口を背に立つ役人は、ドクオの背に隠れた、少女を訝しげに見下ろした。
( ^ω^)「噂に伝え聞く伝説の剣豪、ドクオ殿がどんな男かと思っていれば、こんな瘤付きだったとは」
('A`)「悪いが伝説になった覚えは無い」
その露骨な嫌味に、ドクオは表情を動かさず告げた。
('A`)「だが、この娘への愚弄は許さん」
刀に手をかけると、役人は慌てて手を振る。
しえん
( ^ω^)「すまぬ、ほんの冗談だお」
('A`)「ならば、いい」
川 ゚ -゚)「…………」
役人は静かにその場を横に動く。
少女の手を引き、ドクオは静かに扉をくぐった。
( ^ω^)「恐るべき男よ」
その姿が見えなくなって、役人の口から言葉が漏れた。
( ^ω^)「謝罪が遅ければ、斬られるところであった」
彼が着ている着物が、真ん中からするりと落ちた。
それは鋭利な切断面であった。
◇◆◇◆◇◆◇
(´・ω・`)「お主がドクオか」
('A`)「そうだ」
口の利かぬ少女を背に、片腕の浪人は立つ。
この地域を統括する、大名ショボンは値踏みをするように男を、そして刀を眺めた。
(´・ω・`)「お主がここに呼ばれた訳はわかっておるか?」
('A`)「さぁ、一介の浪人にはわからぬ事だ」
その言葉に、周囲の女中達が一斉に微かな悲鳴を上げた。
このショボンの前で無礼な態度を取るということがいかなる事か、まるでこの男はわかっていない。
しかしドクオはただ平然と、常に動かぬ表情を、当然今の動かさず。
('A`)「まして俺は流れ者、貴殿のような雲の上の存在に呼び立てられる理由など心当たりもない」
(´・ω・`)「ふふふ、はっはっはっは!」
その答えのなにが面白かったのか、ショボンは大声で笑い出す。
(´・ω・`)「話に伝え聞くその不遜さ、まさしく伝説の剣豪よ!」
川 ゚ -゚)「…………」
少女はドクオの着物の背をそっとつかんだ。
('A`)「悪いが、伝説になった覚えは無い」
この言葉は、男の口癖となっているようだった。
(´・ω・`)「謙遜か、まあいい、お主にたのみたい事がある」
('A`)「何だ」
(´・ω・`)「実はな――」
8 :
131 ◆wS/59jRQ4. :2009/07/06(月) 02:54:07.81 ID:zKOdtMTs0
ショボンは大体以下のようなことを語った。
最近、この微意符町へ向う途中の商人や旅人を、山賊が襲っているらしい。
対策の為に数人、私兵を向わせ討伐を計ったのだが、全員返り討ちにあい、あろうことか首を届けられてしまったという。
放置しておくわけには行かないが、これ以上大規模な出兵となるとお上にこの不祥事がもれてしまう。
そこで。
('A`)「俺にその山賊を斬れ、と言うわけか」
(´・ω・`)「その通りだ」
ショボンは続ける。
(´・ω・`)「無論、金は十分な額を支払う。引き受けてくれるのならば、今夜の宿と食事は任せてもらいたい」
('A`)「…………」
ドクオは考え込む仕草をした。
彼には引き受ける理由も引き受けぬ理由もないからだ。
川 ゚ -゚)「…………」
少女は無言で、ドクオの袖を引っ張った。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 02:55:09.25 ID:jj8C9GjxO
しぇ
('A`)「…………そうか」
それが意思疎通の合図なのか、ドクオは頷いた。
('A`)「引き受けよう、その仕事」
(´・ω・`)「おお、そうか!」
('A`)「ただし」
はやるショボンを、ドクオは制した。
(´・ω・`)「…………?」
('A`)「俺からも条件を一つ、付け加えたい」
(´・ω・`)「……なんだね?」
('A`)「俺を裏切るな、俺は、裏切られる事が最も嫌いなのだ」
◇◆◇◆◇◆◇
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 02:58:10.59 ID:Xh/sJxfu0
何故この時間に・・・
しえん
( ^ω^)「出発は朝、それまで歓迎させてもらうお」
('A`)「感謝する」
女中が、お猪口に酒がなくなるたびに注ぎ、男はまたそれを煽る。
川 ゚ -゚)「…………」
少女は出された食事を黙々と食べた後、すぐにドクオの横で眠ってしまった。
肩を預ける少女を横目で見、またすぐ注がれる酒を口に運ぶ、の繰り帰し。
( ^ω^)「……しかし、訪ねてもよいかお」
('A`)「なんだ」
表情は無いが頬が赤い、酒が回っているのだろう――男に役人、ブーンは言う。
( ^ω^)「なぜ山賊退治など引き受けたのだ?」
('A`)「その事か」
なんともないことの様に、答える。
('A`)「こいつが腹をすかせていたのでな。食事と言う言葉に惹かれたらしい」
( ^ω^)「く、くく、はっはっはっはっは!」
その答えに、ブーンは腹を抱えて笑った。
('A`)「静かにしろ、起きる」
( ^ω^)「おおっと、すまぬお」
口に手をあて、しかし、と続ける。
( ^ω^)「お主ほどの男が、どうして娘を連れて旅などしておるのだ」
('A`)「…………」
ドクオは寝ている少女の髪を、手で梳きながら。
('A`)「約束なのだ」
( ^ω^)「約束?」
◇◆◇◆◇◆◇
その村は燃えていた。
山賊の略奪にあい、滅ぼされる村はこの時勢、珍しくもない。
火を放たれ、でてきたところを殺され、身に着けているものも命も持っていかれてしまう。
('A`)「……」
数日ではあるが、世話になった村の者達は皆例外なく死んでいる。
彼らを殺した山賊たちもまた、村を出て異変に気がついたドクオが切り捨てた、が。
('、`*川「……剣士、様」
血にまみれた女は、血にまみれた娘を抱いていた。
まとわりついている血は、女、母親のものだろう、娘には傷一つないようだ。
川 ゚ -゚)「…………」
少女は怯えていた、ガタガタと振るえ――もう先の短い母親の腕の中で、涙を流していた。
('A`)「お前達の村を滅ぼした連中は、皆片付けた」
('、`*川「そう――です、か、仇を……討ってください、ましたか……」
だが。
('、`*川「……ですが、私はもう、駄目……なようで、す」
('A`)「……」
('、`*川「どう、か、この子を、守って……ください、ませんで、しょうか」
('A`)「……俺は子を育てる事など、できん」
('、`*川「わかっております……」
女は言う。
('、`*川「アナタは剣士です……、剣士は子育てなどできないでしょう、私の夫も、剣士でした……」
血を吐きながら、続ける。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:02:35.53 ID:xtRaoTq7O
wktk支援
('、`*川「あの人は家族を持つことを嫌い……出て行って、しまいました……ですが」
川 ゚ -゚)「……!」
母親の手が、ずるりとその娘から離れる。
('、`*川「この娘の生をあきらめる事など……できませ……」
それが最後の言葉となった。
それから数日が経過した。
ドクオは、娘と手分けをして、村人の墓を作ってやった。
('A`)「……娘」
川 ゚ -゚)「…………」
何も言わず、母親の墓の前で座り込む娘に、ドクオは言った。
('A`)「俺は剣士だ、俺は浪人だ、流れ、そして旅を続けるものだ」
川 ゚ -゚)「…………」
('A`)「だから道中、いつかお前の父親とめぐり合うこともあるやもしれん」
川 ゚ -゚)「……!」
は、とその言葉に、振り向く。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:04:23.52 ID:Rut4Jxjk0
いいねえ支援
('A`)「お前がついてくるのなら、俺はお前の父親が見つかるまでの間だけ、お前の世話をしよう。生きていくための知恵も、教えよう」
川 ゚ -゚)「……」
ゆっくりと、起き上がる。
('A`)「お前の母親はお前に生きろと望んだ、俺はそうして欲しいと思う」
お前の母親は決して。
('A`)「つまらぬ物ではない、立派な生き様だった」
川 ゚ -゚)「――――」
わ、と声にならない声を上げて、少女は男にすがった。
しばらく――数時間、泣き続け、ドクオはその肩を抱いていた。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:05:20.13 ID:/GhQz5w00
しえん
('A`)「口が利けぬか」
川 ゚ -゚)「……」
こくり、と頷く。
無理も無いだろう、目の前で身内を、母を、同じ村のものを殺されたのだから。
('A`)「ならば、文字は書けるか」
その問いに、また頷く。
('A`)「ならば、名前を教えてくれ」
すると、ゆっくりと指を地面につけて、自らの名を書いていく。
('A`)「……クー、か、良い名だ」
◇◆◇◆◇◆◇
( ^ω^)「…………成程」
('A`)「以来、俺はこの娘を、その日まで守ると決めた。これは約束だ」
( ^ω^)「約束、か」
('A`)「そう、約束を破る事は裏切るという事だ。俺は絶対にそれをしたくない」
酒を飲む速度が上がる、女中にもその話が耳に入っていたのだろう、悲しそうな表情でまたお猪口に液体を注いだ。
( ^ω^)「何故裏切りを嫌うのだ?」
('A`)「腕だ」
存在しない、自らの右腕を示し。
('A`)「親友に、俺は腕を斬られた。裏切られたのだ」
( ^ω^)「……そうかお」
ブーンはそれ以上何も言わず、自らも酒を煽った。
◇◆◇◆◇◆◇
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:07:40.69 ID:q7Ejc0NGO
ぶったぎる的なノリを想像していたら…これは支援!
その山賊が出るという場所に、クーがついてくる事を、ドクオは反対した。
川 ゚ -゚)「…………」
だが少女はドクオの着物をつかんで放さず、仕方なく、危険になったら証人としてついていく事になったブーンとともに守るという事で、連れて行くこととなった。
('A`)「お前は大丈夫なのか?」
( ^ω^)「お主ほどではなくとも心得はあるお」
自らも腰に携えた刀をみせ
('A`)「ならば良い」
それから二時間ほど、微意符町へ続く街道を歩き。
唐突に、ドクオは声を上げた。
('A`)「いるのだろう」
( ^ω^)「……?」
川 ゚ -゚)「…………」
ドクオの台詞に、ブーンは首をかしげた。
( ^ω^)「居るって……誰が」
瞬時。
('A`)「!」
ドクオはブーンの首をつかみ、地面に引き倒した。
('A`)「クー! そいつの傍にいろ!」
その声と同時、ブーンの居た空間を、刃が通り過ぎた。
「ふうむ」
ゆらりと、現れたその影は、抜き身の刀をぶら下げていた。
右目に刀傷を持つ男だった、筋肉隆々とした肉体が着物の上からでもわかる。
( ゚Д゚) 「やはり、不意打ちでは斬り捨てられぬか、ドクオ」
('A`)「……ギコ!」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:10:18.56 ID:lNoGszKN0
寝ようかなと考えた時に限ってこういうスレを見つけてしまうから困る
支援
ぶった斬るの続編じゃないのか
まぁ支援
( ^ω^)「知り合いかお!」
クーを庇うようにしながら、後退するブーン。
('A`)「ああ」
ゆら、と左手が腰の刀へと伸びる。
('A`)「俺の右腕を斬った男だ」
( ゚Д゚) 「そしてお前は俺の右目を奪った」
言葉が錯綜する。
それはお互いの刃を届かせるための牽制の開始でもあった。
川 ゚ -゚)「! !!」
クーはブーンの腕の中で、慌てるように両手足を動かす。
( ^ω^)「落ち着け! 危険だお!」
静止の声が聞こえないかの様に、腕を振りほどこうとする娘。
('A`)「クー!」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:12:05.27 ID:Rut4Jxjk0
ちきしょう、寝る!・・・・・・前に最後の支援
川 ゚ -゚)「!」
('A`)「案ずるな、約束は果たす」
川 ゚ -゚)「…………」
俺は死なん、と胸中で付け加え。
( ゚Д゚) 「いざ、参る」
('A`)「ふん」
鞘に納まった刀と、抜き身の刀。
( ゚Д゚) 「伝説の剣士と、伝説になり損ねた剣士――こうしてまた向かい合う事になろうとはな」
('A`)「悪いが伝説になった覚えは無い」
ゆらり、と力を抜いた姿勢、それが絶対の最速の準備である事が、ギコにはわかっていた。
十年前も、そうだった。
二人は友人同士であった。
剣を打ち合わせ、剣の腕を磨きあう、よき友であった。
( ゚Д゚) 『はああああああああああああああ!』
('A`)『ぐあああああああああああ!』
当時から『最強』の称号と共にあった、ドクオの名。
それを打ち倒さんと後ろから、刀を振り下ろされるその日までは。
――――キィン。
片腕を切断されてもなお、その速度は落ちることなく。
( ゚Д゚) 『がはっ! ド、ドクオォ……!』
('A`)『ギコ、何故だ、何故俺を!』
( ゚Д゚) 『友情より……最強を選んだまでだ!』
二人は向き合う、十年前も、現在も。
('A`)「あの時は、勝負がつかなかった」
( ゚Д゚) 「だが今は違う」
筋肉が膨れ上がる錯覚が見えた、柄を握る力が、目に見える。
( ゚Д゚) 「俺の右目を奪った貴様に、復讐を誓ったぞ、ドクオ!」
('A`)「下らん」
ドクオは、一歩前に出る。
('A`)「剣士としての誇りを捨て、野盗に成り下がったお前などと」
くく、と笑いながら、ギコは言う。
( ゚Д゚) 「片腕を失ったお前に負けた俺は――剣を捨て、家族を得た」
じり、と地面が、草鞋の底とこすれ、削れる。
( ゚Д゚) 「だが――すぐ捨てた、貴様に斬られた右目が、刀をもてとうずくのだ、人を斬れと叫ぶのだ」
いいぞ、とギコは言う。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:18:15.07 ID:xtRaoTq7O
しえん
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:18:46.31 ID:OMn5c+HzO
ん?どこかで読んだな・・・?
( ゚Д゚) 「どんな弱者も死の間際には抵抗する、俺はそれを斬る。金や物資など二の次よ、その命の最後の力を、俺は味わいたいのだ」
('A`)「――堕ちたな、ギコ」
お前の裏切りで俺は腕を失い
それでも最強の称号は、いまだこの手にあり
またそれを狙って、お前は現れた!
ならば!
('A`)「また、つまらぬ物を……斬り捨てただけだ!」
( ゚Д゚) 「つまらぬなどとおおお!」
――――キィン。
残された男の左腕が、宙を舞う。
地に落ちる音を確認し
( ゚Д゚) 「……ふ、ふ」
ギコは押さえられぬ興奮をその身から解放さんとするように、笑いながら自らの身体を抱きしめた。
( ゚Д゚) 「ふふふはははは! 勝った! 私は伝説に勝ったのだ!」
('A`)「悪いが――伝説になった覚えは――ない」
( ゚Д゚) 「ふん、負け惜しみを」
もはや目の前の存在は塵芥に等しい、最強となった自分の前には。
( ゚Д゚) 「いまや最強の剣士はこの俺、そして刀を振れぬお前はもはや剣士ではない」
('A`)「…………」
( ゚Д゚) 「つまらぬ物とは言わせん、貴様は俺を斬れなかった!」
トドメを刺さんと、自らの刀を振り上げ。
('A`)「つまらんよ」
血の気の無い顔で、迫る死を前に、ドクオは呟いた。
よく見ると、その腰にある刀の位置が、交差する前と違っていることに気がついた。
( ゚Д゚) 「……な、何……?」
('A`)「この俺が、斬るものは」
ドクオは、両の腕を失ってなお、既に刀を納め終えていた。
('A`)「全て例外なく」
そしてこの男がその作業をしているという事は。
( ゚Д゚) 「ま、まさか……そんな……」
自らの身体に走る、幾数多の死の線は
『須らく、つまらぬべきであるが故』
ギコの認識が至る前に、その生を終了させた。
('A`)「終わった、出てきてよいぞ」
地面に座り込むと同時に、腰の鞘から刀が滑り落ち、金属が鳴らす清んだ音が響いた。
どうやら納刀に失敗したらしい。
川 ゚ -゚)「…………」
がさ、と茂みから、ブーンとクーが現れる。
( ^ω^)「……お主」
('A`)「言うな」
ドクオは左腕の、もうその先はない肘から、ドクドクと流れる血にすら興味がなさそうに。
('A`)「俺の仕事は終わった」
それだけを言った。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:23:57.55 ID:xtRaoTq7O
支
援
川 ゚ -゚)「…………」
クーは地面に転がった刀を拾い上げ、そのあまりの剣速に血がついていない、美しい刃と
川 ゚ -゚)「…………」
原型を留めぬ肉の塊となった、ギコを見比べた。
( ^ω^)「? ……どうした、それは危険――」
ブーンが刀を降ろさせようと手を伸ばしたその瞬間。
川 ゚ -゚)「――――!」
クーはそれを、ドクオの肩に向って打ち下ろした。
('A`)「!」
か細い少女の腕ですら、全てを斬ってきた刃は等しく自らの主までをも斬る。
('A`)「――――」
心臓部まで達しているであろう、自らの傷に打ち震えながら、ドクオはクーの顔を見た。
川 ゚ -゚)「――――――!」
鬼の形相。
それは怒りに震える、武士の顔だった。
その険しい面から、ほろりと一つだけ、涙がこぼれる。
( ^ω^)「な、何を――!」
ブーンの言葉が耳に入ると、クーはそちらに向けても刃を振るう。
( ^ω^)「うお!」
見て取れるほど、その速度は遅く、一歩飛びのくだけで死の恐怖は遠ざかる。
('A`)「そうか――」
げふ、と血を吐きながら、ドクオは言った。
('A`)「今の男が……」
かつての友であり、そして、今斬った男が。
('A`)「お前の父親か」
( ^ω^)「!」
川 ゚ -゚)「――――!」
ふー、ふー、と荒い息が少女の口から漏れる。
口の利けぬ少女は、口の利けぬまま、口の利けぬ也の罵詈雑言を、その顔に浮かべていた。
('A`)「そうか、最後に俺は――」
失われていく体温を感じながら
('A`)「お前を、裏切ってしまったのか……」
川 ゚ -゚)「…………」
その一言に、少女は、今度はぼろりぼろり、と涙を流す。
一滴では足りぬ、雨のような涙が、滾々とわいて出る。
('A`)「すまなかった……俺は、お前との約束を、破ったのだな……」
( ^ω^)「それは仕方のない――」
('A`)「仕方なくなど無い!」
ドクオは叫び、クーを見据える。
もう消えかけている命の火を、最後に燃え上がらせるかのように、男は舌を動かした。
('A`)「俺は今まで、つまらぬ物を斬ってきた。 俺が斬るものは全てつまらぬ物だったし、俺に斬れる物は全てつまらぬものだった」
川 ゚ -゚)「――――」
涙を流す少女は、悲しそうに男の頬に手をやった。
もう片方の手から、こぼれそうになる刀――
('A`)「放すな」
川 ゚ -゚)「!」
その声に、刀をとっさに握りなおす。
初めて血にぬれたその刃が、少女と男を鈍く写す。
('A`)「その刀も、また、つまらぬ物だけを斬ってきた」
故に。
('A`)「お前が切り捨てたのもつまらぬ男だ、お前との約束を破ってしまった、裏切り者だ」
川 ゚ -゚)「…………」
('A`)「斬られて当然の男だ、お前が気に病む必要は無い」
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:27:33.69 ID:Rut4Jxjk0
ちくしょおお
支援
川 ゚ -゚)「ぅ、あぁ……」
('A`)「その刀はお前にやる、お前の道を、お前の未来を、阻むものは全て、実はつまらぬ、他愛も無いものだろう」
ぐらり、と体が揺れ。
('A`)「だからお前はそれで斬れ、つまらなくなどない、守りたい者のために」
どちゃり、と血の池に、男の体が倒れた。
目を見開いたまま、動かぬそれを、少女は抱きしめ。
川 ゚ -゚)「あ、ぁ、ああああああ!」
泣いた。
ブーンはしばらくの間、その姿を眺めていた。
川 ゚ -゚)「…………」
その時間がどれほどのものだったのか、ブーンにはわからなかった。
( ^ω^)「はっ!」
気がつくと、少女は倒れた男の体から、鞘を引き抜き、もう血が乾き始めた刀を納め。
( ^ω^)「ま、待」
静止を聞かず、駆け出していった。
◇◆◇◆◇◆◇
しえん
とある世界、とある場所に、一人の剣士がいた。
(*゚ー゚)「誰か、助け――!」
しぃは逃げる、自らを追ってくる山賊に対して、少女が対抗するすべは無い。
(*゚ー゚)「あっ!」
転び、地面に手を付き、上を見上げると。
( ・∀・)「へへへ、往生しやがれェ!」
折れた刀を手に、それを振り下ろそうとする山賊の姿が見えた。
(*゚ー゚)「いやあああ!」
――キィン。
川 ゚ -゚)「…………」
その音と同時に、刀を携えた剣士が、何時の前にか、倒れたしぃの前にいた。
長い髪を揺らし、鞘からそれを抜く気配は無い。
(*゚ー゚)「た、助けてください!」
その言葉に、剣士は首を振る。
(*゚ー゚)「……え」
背後で、何かが倒れる音がした。
しぃが振り向くと、そこには首と胴が離れた、山賊の姿があった。
(*゚ー゚)「い、今のは……」
しぃの疑問に
川 ゚ -゚)「たいした……ことでは……ない」
剣士は、答える。
川 ゚ -゚)「……つまらぬ物を斬った……だけ、だ」
◆('A`)はつまらぬ物を斬るようです。 終
◇お題 ブーン系小説総合案内所より
◆
>>132 怒りからくる涙
◇
>>133 ('A`)「またつまらない物を斬ってしまった…」
◆
>>134 裏切り者達
◇作者 131◆wS/59jRQ4.
◆誤爆 マジごめんなさい
◇深夜の支援ありがとうございました
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:32:43.80 ID:lNoGszKN0
乙、面白かった
十死を終わらせて、十死以外のブーン系小説がかけるかどうかふと怖くなり、総合案内所で御代を貰って書いた形になります。
お題も最初と最後が微妙で微妙な感じがするのですが!
支援してくださった方々、ありがとうございました。お疲れ様でした。
いいね。おつ
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:34:38.39 ID:FXiZwKqfO
これは支援
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:35:02.12 ID:xtRaoTq7O
乙!
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:36:23.63 ID:FXiZwKqfO
と思ったら終わってた 乙
GJ
おもしろかった
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:43:48.14 ID:YmzS0gOSO
一瞬btgrを期待してしまった
乙
おもしろかたあ
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/06(月) 03:57:48.07 ID:GHovdkYxO
すげぇ!面白い!乙!
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
伏線の張り方が自然すぎてまったくオチが読めなかった。
腕はちっとも衰えてないみたいだぜ?
乙!