1 :
◆K8iifs2jk6 :
いっそブログでやれよ
3 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:52:03.96 ID:+Mf/PStT0
私はこの国が好きだ。
包み隠さず、恥じらうことも無しに、私は素直にそう言うことが出来る。
私は私が生まれ育った国が好きだ。妹達や両親と共に過ごす家が好きだ。
生憎、無神経な性格とこの無愛想な表情のせいもあって、
あまり友人は多い方ではないが、数少ない私の友が、私はとても大好きだ。
だから、私は戦争をすることを躊躇わなかった。
この国と、この国に住まう者と、私の家族を守る為ならば、
どんな非情な命令も行えて、また、命じられた。
淡々とそれをこなしていく内に、戦争は終結した。
私は、これほどまでに手古摺るとは思ってもいなかった。
それもそうだろう。世界中の国を相手にたった一国が、誰が6年も耐えると予測する?
軍人の家系の娘である私は、少しばかり賢いつもりであったが、これには驚いた。
そして、今なお抗い続ける者達がいることにも。
あの亡国の兵士は、この亡国の兵士達を、どう見ているのだろうか?
「俺は機械だ」
無表情で、感情を窺わせない表情で言う彼は、
ただ与えられた命令を果たし続けている。立ちはだかる者が、例え元戦友であろうとも。
―――――命令を下さい。
人として朽ち果てたお前がそう言うのならば、望むのならば私は、
命じてやろう――――――
4 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:52:58.39 ID:+Mf/PStT0
('A`) ドクオは亡国の兵士のようです
第5話 亡国の狼煙
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 22:53:13.03 ID:oWSF97DYO
きたこれ
6 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:53:44.97 ID:+Mf/PStT0
******
軍学校≪VIP≫を卒業し、俺はとある小隊に配属となった。
毎日のように訓練を行い、兵器の点検を行い、俺は日々を過ごしていた。
命令が出れば出撃し、敵を倒して生き延び、給料を得る。
もちろん、訓練で死ぬ者もいれば、実戦で死ぬ者もいる。
俺は運良く死を逃れ、日々を生き延びていた。
まぁ、それも。ほんの三か月の間だけだったのだけども。
俺が小隊に配属され、約三か月がたったある日。
ニーソク、オオカミ、テンゴク、パーソク、シベリアを筆頭とする、
五大国連合から、ニューソクに対する宣戦布告がなされた。
世界の総意とも言えるそれに、ニューソクは真っ向から立ち向かった。
我等こそが世界であるとでも言うかのように、堂々と、己の罪を背負って。
世界最大の領土を誇り、世界最新の兵器を配備し、
世界最強の軍隊を保有する、最も発達した先進国であるニューソク。
他国の20年は先を行くとも言われた、驚異の技術力を誇り、
その最たるものがロボット技術と軍事技術で、
二足歩行戦車AAと全身義肢化手術“強化骨格”がそれらの代表格だ。
7 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:54:52.26 ID:+Mf/PStT0
俺はその国で戦っていた。驚異的な物量で包囲し、迫ってくる五大国連合を相手にして。
厳しい戦いだった。毎日が恐怖の連続であり、死線を逃れ、
辛うじて生き延びることが出来た。
たった3ヶ月しか兵隊としての経験のない俺は、新兵となんら変わりは無い。
もっとも、ニューソクの軍学校VIPはスパルタ教育もいい所で、
他国で言う新兵とニューソクの“新兵”では雲泥の差があるのだけれども。
日々、戦場で怯えながら過ごしている俺に、
突然、転属命令が出た。
ニューソクの最先端の技術をもって新兵器を開発する、
≪強化兵士計画≫で製造された兵器や装備が支給され、
実験的に運用する、特殊部隊。
≪強化兵士部隊≫へと、俺は転属することになった。
ハイテク装備を取り扱う特殊部隊ともなれば、
最前線へと送り込まれることになるだろう、と。
死刑宣告にも似た通告に、死の覚悟をした。
だが、そこで待ち構えていたのは、戦場とは別の恐怖であった。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 22:55:40.35 ID:oWSF97DYO
しえ
9 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:55:56.73 ID:+Mf/PStT0
******
強化兵士部隊に転属となり、強化兵士計画を提唱した、
科学者達のいる研究所が置かれた基地に辿り着いた俺は、
同じく転属となった者達と共に、ブリーフィングルームで待機していた。
楽にしていろと言われていたので、俺は設置されたベンチに腰を落ち着ける。
そのまま10分以上待機していたのだが、一向に指示が出ない。
(;'A`) 「あのさ、ここで何するのかな?」
不安で一杯な中、待たされることに緊張感を覚え、
それを紛らわす為に隣に座る、あらゆる方向に髪が跳ねた男に声をかけてみた。
<_プー゚)フ「え? 何かって、何だよ」
男はこちらを振り返って疑問を返してくる。
いや、そう言われてもな……。
なんて話しかければいいのか分からず、ふと口にしてみただけの言葉だったので、
自分で言っといてなんだけど、返答にすごく困る。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 22:56:18.81 ID:Vc/FtXZ9O
キター 支援
11 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:56:53.47 ID:+Mf/PStT0
コミュニケーション能力ねーな……俺……。
(;'A`) 「うーん、例えば……この中で選抜試験でもして、失敗すれば死ぬ……みたいな」
は? なんだそれ。
訳のわからない発言に、自分で嫌気がさしてくる。
<_プ∀゚)フ「ハッハ、何だよそれ。兵隊の数これ以上減らしてどうすんだっつーの」
だが、この男はあちこちに跳ねた髪を揺らして、笑みで返す。
にしても、と男が続けて、
<_プー゚)フ「こんだけ一遍に転属させるなんて、普通じゃあねーなぁ……。
見たところ、ざっと200人はいるぜ。
ここだけじゃなく、別のとこでも待機してる奴らがいたからな」
(;'A`) 「………やっぱり、みんな死んだのかな」
<_フ;゚ー゚)フ「おい、縁起悪いこと言うなよ。しかも、配属初日によ……」
ギクリとしたような表情をする男。
わあい支援!
13 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:58:12.04 ID:+Mf/PStT0
……お前もそう思ってんのかよ。
はぁ、と溜息をついた俺は、
('A`) 「ババを引き当てたのかもしんないな……」
そう呟いて天井を見上げる。
白の蛍光灯が目に眩しく、視線を地面へと向け直す。
<_プー゚)フ「なぁ、お前はなんて言うんだ? 後、どこの所属だった?」
('A`) 「俺は、鬱田ドクオだよ。前は≪オカ≫の基地の小隊に配属されてたよ」
<_プー゚)フ「オカ、かぁ……あそこ、春でも暑くて苦手だ。
俺はエクスト=プラズマンだ。前は、北方基地で務めてたな」
そんでよ、とエクストと名乗った男は更に、
<_プー゚)フ「お前、初年兵だろ? VIPから上がったばっかの」
('A`) 「なんで分かった?」
<_プー゚)フ「んー、なんとなく。つーか……」
<_プー゚)フ「俺も、新米だしな。もしかしたらってな」
('A`) 「へー、じゃあ、強化兵士部隊は新人を集めてるのかもな」
<_プー゚)フ「いや、流石にそりゃねーだろ。
いかにもな伝説の兵士的オッサンとかいたぜ」
14 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 22:59:13.82 ID:+Mf/PStT0
あっ、と突然エクストは言って、
<_プー゚)フσ「ほらほら、あのオッサン。ちょっと悪っぽいイイ男」
こいつが指さす方向には、ガタイの良い、
さっき言ってたように“いかにも”な男がおり、
そいつに何故か生理的嫌悪感と言うか、防衛本能が働いて、
(;'A`) 「エクスト、やめとけよ。静かにしろ」
そう制すが、え?と気楽な声を返してくる馬鹿。
“いかにも”な男は気付いたのか、こちらを振り返り、
N| "゚'` {"゚`lリ「ウホッ」
溜息(なのか?)を吐く。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 22:59:40.74 ID:oWSF97DYO
支援
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:00:36.26 ID:PpN+dL/9O
しえん
17 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:00:57.90 ID:+Mf/PStT0
マジヤバイッ!
伝説の兵士? 俺にはどう見てもガチホモにしか見えないんだけど!
戦線離脱しないとやばい、危ない!
(;'A`) 「え、エクスト。俺、トイレ行ってくるわ」
<_プー゚)フ「おぉ、早く行ってこいよ。上官が来たら言っといてやるからさー」
サンキュー。と礼をして、俺はその場を離れる。
が、
N| "゚'` {"゚`lリ「…………」
ズン、ズン、と俺に付いてくるガチホモ。
歩幅を大きくして、早歩きで俺は出口へと向かう。
だが、ガチホモも足を速めてくるので、距離が開くことはない。
逃げないと。その一心で歩みを進めた俺は出口へと辿り着いた。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:01:30.86 ID:8XUt9IIMO
好き支援!
19 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:01:41.08 ID:+Mf/PStT0
すると、突如としてドアが開き、
「遅かったじゃないか……やらないか」
肩幅の広い、軍服を身に纏った男が入ってきた。
(;'A`) 「ヒッ」
男の言葉に、俺は身を竦め、情けない声を上げてしまう。
「整列しろ、ブリーフィングするぞ」
だが、次いで放たれる言葉には、ほっとした。
N| "゚'` {"゚`lリ 「チッ……」
背後で舌打ちが聞こえるのが、気になったが……。
20 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:02:59.31 ID:+Mf/PStT0
******
ふと、目が覚めた。
(;'A`) 「はっ―――ッ!?」
辺りを見回せば白一色の壁に、あちこちに機械が置かれた部屋で、
俺は機械が取りつけられたベッドの上で横になっていた。
身体中に透明な管が付けられており、中には白い液体が流れている。
時折機械の電子音がピピ、と鳴り、問題無く稼働していることを告げていた。
あぁ、ここはニーソクの研究所か……。
顔に片手を当てて、そのまま拭い、頬を引っぱたく。
パン、と張りのある音が室内に響いて、過去から今へと意識を立ち直らせる。
俺が夢を見るだと……?はっ、馬鹿馬鹿しい。
余程都合の良い頭をしているようだな。
それも、まだ機械の体では無かった頃の夢だなんて。
21 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:04:01.15 ID:+Mf/PStT0
馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しい!
後悔しているのか?お前は。お前はいつ後悔したって言うんだ?
裏切り者と言われた時か?ゲリラとして戦い始めた時か?
ニューソクが敗戦した時か?
それとも、それとも。
強化兵士の一員となり、あのガサツな白髪の科学者に、
身体中を機械に作り変えられた時か?
だろうなあ。そうだろうなあ。
戦場での地獄は、死は覚悟していたが、
まさか、人として生きることを殺され、機械として地獄を生きることなど、
覚悟していなかったのだからな。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:04:41.40 ID:dUv52FvF0
しえーん
23 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:04:50.81 ID:+Mf/PStT0
しかし、初めこそ絶望したが、
从 ∀从 「満足出来る力を、持て余すほどの力を、アタシは与えたつもりなんだがね」
(;゚A゚) 「――――――ッ!!」
フラッシュバックする記憶。
白衣を翻し、両手を広げ、
不満を述べる俺に堂々と立ち向かって見せた科学者の姿。
ギリ、と音が鳴るまでに歯を噛み締め、俺は自分の頭を殴りつけた。
衝撃が頭に走り、痛みと様々な苦しみに顔を険しくして、
(#゚A`) 「クソが……クソがぁっ!」
乱暴な言葉を吐き捨てて、込み上げてくる怒りを、
自分に募った怒りを振り払った。
24 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:05:52.06 ID:+Mf/PStT0
******
数分後、ベッドの機械から長い電子音が響いた。
('A`) 「………?」
その音が何を表わすのか分からないドクオは、首を傾げていると、
从'ー'从 「あ〜、起きてたんですね〜。おはようございま〜す」
クリっとした丸い瞳の愛らしい、
ウェーブの掛かった栗色の髪をした、白衣姿の渡辺が部屋に入って来た。
('A`) 「おはよう」
暗い表情でドクオは挨拶を返し、
('A`) 「何かさっき音が長くなった後止まったんですけど。何なんですか?」
渡部にそう聞いてみた。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:06:08.69 ID:fVIeqH1iO
キタキターしえん
26 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:06:53.22 ID:+Mf/PStT0
从'ー'从 「≪人工血液≫の供給が終わったんですよ、それ。
そろそろ終わるころかな〜って、様子見に来たんです」
('A`) 「あぁ、それで」
从'ー'从 「今、チューブとか外しますね〜」
間延びした声で彼女が言うと、
ドクオは体中に張り巡らせた管に手を掛け、
('A`) 「え、いや。普通に取れますよ」
Σ从;'ー'从 「そんな乱暴にしなくても取れますけど!? 痛いですよ!」
力づくで引き抜こうとするドクオを、渡辺は慌てて止めようと声を上げる。
それに驚いたように彼は管に掛けた手を放した。
次いで、渡辺は枕の置かれた場所から、少し上にある機械の操作盤をいじる。
直後、ドクオと繋がっていた数多くの管が、
圧縮空気を噴き出して排出された。
从'ー'从 「体調、大丈夫ですか?」
不安げな表情で聞く渡辺に、
ころころと表情が変わる人だと思いつつ、口を開き、
27 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:07:50.19 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「はい、何も問題はありません」
从'ー'从 「よかった〜。今までドクオさんが使ってた≪ブラックブラッド≫が作れないから、
≪ホワイトブラッド≫で代用したんですけど、拒否反応とか起きたらどうしようかと思ってたんですよ」
('A`) 「大昔に作られてた強化骨格は、
ホワイトブラッドを使ってたし、大丈夫っちゃ大丈夫ですよ」
Σ从;'ー'从 「ふぇ〜! 大昔の技術ですいませ〜んっ!!」
突如、頭を下げる渡辺。
(;'A`) 「あ、いや。そう言う意味で言ったんじゃないんですけどね」
从;'ー'从 「あ、うん。そう言う意味じゃない……よね?」
語尾に疑問符の付いた声で返され、ドクオは、
(;'A`) 「そうですよ。ホワイトブラッドでも何も問題無いですし」
从'ー'从 「よかった〜。こんな粗悪品使ってられるか!って思ってるのかと思いましたよ〜。
拒否反応は無いみたいですけど、毒素を抜く為に半日に一回透析を受けて下さいね」
28 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:09:06.85 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「分かりました。でも、あー……。
これから色々と行動に制限が出ちゃいますね。それじゃ」
从'ー'从 「うん。そこは、クーさんにも言ってあるから大丈夫。
でもスゴいよね〜、ニューソクって。毒素を含まない人工血液作っちゃうなんて」
('A`) 「あの国は、もう。ホントにすごかった。でも、正直調子に乗り過ぎたんですよ……」
伏せ目がちで言う彼に、渡辺は次に繋げようとした言葉を飲み込み、
二人の間を沈黙が支配する。
だが、渡辺は急に思い出したように、あっ、と言って、
从'ー'从 「クーさんで思い出したけど、人工血液の供給が終わったら、
中隊長室に来るようにって言ってましたよ。
なんか、急ぐ用事かもしれないから早く行った方がいいかも」
(;'A`) 「えー、めんど……分かりました」
聞いた彼は、ベッドに背を向けて部屋から出て行った。
文句、いや。不満はある物の、クールの部下である彼は率直に命令に従う。
29 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:10:22.73 ID:+Mf/PStT0
******
(`・ω・´) 「おーい、ドクオ。ちょっと来てくれないか?」
中隊長室のある兵舎には、俺の整備室がある研究所からだと、
隣接する倉庫を横切るのが早い。
その中を出口へと向かって歩いていると、つなぎ姿のシャキンが声を掛けてきた。
まあ、行きかけの駄賃と言うか、ついでと言うか。
正直に言えば、クーに言われるがままというのが気に食わないので、
ちょっとシャキンのほうへと寄り道をすることにした。
戦場であれば、俺は彼女の命令を忠実に果たすだろう。
全身が機械と化した、この身で。
どこまでも冷徹に、非情に、素直クールの意思を力で叶えてみせる。
だが、戦闘に関することでなければ、盲目的に付き合う気も無い。
重要な話であると言うのならば、俺が起きるのを待たないだろうしな。
その時だと言うのならば、緊急であると言うのならば、
クーは機械である俺を容赦なく酷使するだろう。
………まぁ、それについて文句は無いのだけれども。
そんな思いを得ながら、無情の機械はシャキンに声を掛ける。
30 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:11:36.13 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「なんですか?」
短く、愛想のない声音。
コミュニケーション能力の無さだけは、昔と変わらないな。
(`・ω・´) 「現在制作中のパワードスーツ。≪駆動機甲服≫について意見を貰いたい。
これを見てくれ。現在組み立て中で、まだ胴体しか組み上がっていないのだが……」
そう言ってシャキンは右手を差し、それが示す先には、
コンテナのような長方形をした鉄塊が置かれていた。
左右上下からそれぞれコードが伸びており、ロボット工学や、
サイバネティックスが進んでいた国に住んでいた俺には、
それらが何の為にあるのか、理解できる。
パワードスーツ、か。
ニューソクで言う≪装甲服≫。
しかし、これほど大きな物は作られてはいなかった。
31 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:12:42.08 ID:+Mf/PStT0
これは恐らく、完成すれば6m程の物になるのだろう。
胴のバランスからして、それほどの大きさでなければ、
態勢を維持することが出来ず、倒れてしまう。
………いや、浅知恵だけどもね。
勉強嫌いだった俺の憶測はアテにならない。
(`・ω・´) 「武装については、あまり考えていないんだ。
というよりも、これほど大きな兵器に何を搭載するべきか分からないのだ」
ふーん、と俺は気楽に声を漏らして、
('A`) 「今のところ、何を搭載する予定で?」
(`・ω・´) 「右腕部にチェーンガンを装備し、左腕部にパイルバンカーを格納するつもりだ」
('A`) 「ってことは、量産を考えているんですか?」
(`・ω・´) 「あぁ、もしコストを度外視したワンオフ機を作ったとしても、
ニューソクのAAに数で劣り、物量戦になれば負けてしまうからね」
('A`) 「対二足歩行戦車戦を想定……か」
(`・ω・´) 「安定した性能を持ち、戦闘以外にも、物資の運搬などに扱う為に、
私達はニューソクが棄てた人型のロボットを作ろうとしているのだ」
32 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:14:13.70 ID:+Mf/PStT0
(`・ω・´) 「コストがかさむだろうが、もし量産化が可能となれば、
AAよりも機動性に富む凡庸性に長けた物が完成するはず。
数では劣るが、AAや戦車の脅威になりうるだろう」
('A`) 「じゃあ、贅沢を言えば、重量200kを超えるバトルアックスが欲しいですね。
それなら、パイルバンカーと違って弾薬の制限もありませんし、整備不良も起きない」
('A`) 「だけどその場合、運動器や装備者、いや、これの場合操縦者か。
操縦者に掛かる負担を減らす配慮をしないといけない」
(`・ω・´) 「ほう、バトルアックスか。原始的だが、それゆえに扱いやすいか。
しかし、現在のモーターやアクチュエータでは、
200kを超える重量物は、ただの重荷でしか無いな」
('A`) 「ニューソクの≪生体式人工筋肉≫が作れれば、問題は解決するんですけどね。
アクチュエータとか、従来の≪機器式人工筋肉≫だけじゃ難しい」
('A`) 「だから、今のとこはパイルバンカーの弾薬を多めに搭載しとく、これしか出来ないですね。
武装については、特に問題無いはずです。でも、バリエーションは多い方が良い。
スティンガーみたいな地対空ミサイルとか、RPGみたいなランチャーとか、散弾銃とか」
(`^ω^´) 「ニューソク人らしい考えだな。お前達は、いつだって大口径主義だ。
お前の持ってる、スティレットだったか? あれを見た時、正直引いたよ」
ハッハッハ、と愉快そうにシャキンが笑って言う。
33 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:15:37.40 ID:+Mf/PStT0
('∀`) 「35mm弾使用のリボルバーなんて、ゲテモノ以外の何物でも無いよな。
パワーアシスト無しじゃ、撃てる人間なんていねーもん」
釣られて、俺も笑った。
(`^ω^´) 「しかし、それによって生まれるパワーは、
直撃すれば生物はもはや即死は免れず、急所から外れても、
着弾点が原型を留めることはないだろう。戦車の複合装甲を撃ち抜くことが可能なのだからな」
('∀`) 「まっ、戦車の場合は、
零距離射撃じゃないと撃ち抜ける保証はないんですけどね」
(`^ω^´) 「35mmとはいっても、歩兵が携帯を目的としたリボルバーだからな。
銃身が足りん。短すぎる。機関砲ならば遠距離でも撃ち抜けるかもしれんが……」
('∀`) 「強化骨格が戦車を倒す為の銃だから仕方ない。
それに強化骨格の性能なら、戦車へは充分接近できるからな」
(`・ω・´) 「強化骨格、強化兵士専用の特殊兵装というわけか。
ところでドクオ。話が脱線したが、駆動機甲服にはブースタを取り付けるべきだろうか?」
閑話休題。
改めて問われて、俺は緩みかけていた頬を引き締め、
何時も通りの無表情に戻り、
34 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:16:39.26 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「量産化前提なら、いりませんよ。
一点特化の兵器ってんなら、拠点制圧用には使えるだろうど、
凡庸性に富んだ兵器を作るのなら、扱いやすさも含めて、付けない方が良い」
('A`) 「対G訓練とか必要だろうし。コストもかさみますから」
(`・ω・´) 「そうか。参考にさせて貰う」
('A`) 「じゃ、俺は用事があるので、これで」
(`・ω・´) 「あぁ、じゃあな。時間を取らせてすまない」
俺は手を上げてシャキンへと背を向けると、出口へと足を進めた。
35 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:17:25.67 ID:+Mf/PStT0
******
荒い息を吐きながら、ビルの窓へと狙撃銃を構える。
息が漏れるのは止まらず、覗きこんだスコープの十字線がぶれてしまい、
照準を定める為、急いで俺は息を整える。
凄まじい勢いで深呼吸を繰り返し、深く息を吸い、
_
(;゚∀゚) 「はぁ――っ!」
呼吸を止める。
すると、肩の震えが止まり、周りの音がゆっくりと耳に流れ過ぎて、
集中力の高まりを感じ取る。
十字線のぶれも治まり、俺は標的へと照準を定める。
息が保つ限り、ゆっくりと。
窓から周囲を見渡すと、市街のあちこちから黒煙が上がり、
戦車や装甲車などが破壊されているのが分かる。
36 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:18:15.94 ID:+Mf/PStT0
建築物は破壊され、人の死体が転がり、酷い様だ。
その中でも、戦車が走っているところを覗きこむ。
いた。
敵だ。
戦車隊へと向けて、人間の脚力を超えて跳躍を行う者達、
ダイビングスーツのようなゴム質の防護繊維に身を包んだ兵士達。
強化骨格。強化兵士部隊。
奴らは、戦車隊へと向けて突撃していた。
カエルの如く跳ねまわり、ハイエナの如く獲物に群がる奴らは、
ビルを足場として跳躍して、人間の身でありながら三次元機動を行い、
戦車隊やそれに付いていく歩兵たちを翻弄していた。
いや、奴らは、人ではないのだろう。奴らは人でありながら機械の身だ。
接敵し、戦車に取り付き、別の者が歩兵を排除し、
そのまま戦車に馬鹿デカいリボルバーを押し付けて、撃ち抜く。
たったの4人で奴らはそれを可能とし、それで戦車隊を殲滅しかけていた。
37 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:19:26.49 ID:+Mf/PStT0
俺は、それを止める。
_
( ゚∀゚) 「―――――ッ!」
気合いを込め、引き金へと掛けた指を倒す。
木製のボルトアクションライフル、モシンナガンの銃口から銃弾が発射される。
俺が描いたイメージ通り、風の影響を受けながらも弾丸は突き進み、
戦車に取り付いた強化骨格の頭に直撃したようだ。
奴の頭が穿たれ、黒い血が飛び散った。
薬莢を吐き出す為のレバーを引き、押し戻して倒す。
金属音と共に銃の中に残っていた弾丸が装填され、俺はもう一度スコープを覗く。
だが、いきなり誰かに肩を叩かれた。
振りかえると、そこには見知った顔の男がいた。
('A`) 「………」
傷まみれの顔に垂れ下った目をした無表情な男。
ドクオだ。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:20:14.67 ID:Vc/FtXZ9O
支援
39 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:20:27.18 ID:+Mf/PStT0
ドクオは奴らと同じ強化兵士。
強化骨格を纏った、敵国であるニューソクの兵士だ。
いや、ニューソクの兵士“だった”。
今では俺達の仲間だ。
こいつは裏切り者の汚名を被ってまで、ニーソクの為に戦ってくれている。
ニーソクのある村を占拠したニューソクのゲリラ部隊と戦い、
民間人の武装グループが占拠した銀行に、たった一人で突入し、
あまつさえ、戦友であった『白猫』と対峙し、仲間を守ってくれた。
話してみれば悪い奴でも無いし、どこか自閉的な一面もあるが、
気の良い奴であり、信頼の出来る俺達の戦友だ。
信頼?ホントに?
ん?
('A`) 「………」
無言で銃を引き抜き、無骨で巨大なリボルバーを俺に突きつけてくるドクオ。
素早い動きであり、その動きに対応できず、俺は撃たれた。
しえん
41 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:28:13.62 ID:+Mf/PStT0
******
目を開くと、自宅であるアパートの一室に居た。
ベッドの上で横になり、俺の視界にはくすんだ白の天井が広がっている。
_
(;゚∀゚) 「なんだってんだよチクショー」
じっとりと汗をかいた背中が気持ち悪い。
何だってあんな夢見なきゃいけねーんだよ、チクショーめ。
………まぁ、あんなことがあった後じゃ仕方ねーかもしんねーけど。
頭に浮かぶ二重の悪態に、俺は溜息を吐く。
失態だ。
俺は仕事をミスった。
ドクオがニューソクの英雄である『白猫』と戦っている時に、
隙を見せた『白猫』を撃ち抜くのが、俺の仕事だった。
あいつが破壊したAAの蔭に隠れて、身を伏せて、
息を殺してじっと、そのチャンスを待っていた。
そして、ドクオがあの『白猫』を上空で撃ち抜き、そこから体勢を崩し、
ドクオが反撃された時、あの『白猫』はそれを見せたのだ。
42 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:29:11.10 ID:+Mf/PStT0
指を掛けていた引き金を、倒そうとした。
でも、俺には出来なかった。
黒い強化骨格を纏ったドクオと、白い強化骨格を纏った、
あの『白猫』の、人知を超える戦闘を見て、
異常とも超常とも言える殺し合いをその目にして、撃てなかった。
『白猫』の、『鉄血猫』とも『白い悪魔』とも『不眠の山猫』とも『白い閃光』とも呼ばれる、
ニューソクの英雄の覇気を、威圧感をその身に感じて俺は圧倒されてしまい、引き金を引けなかった。
………ようは、ビビっちまってたんだ。
それだけならまだ、あんな夢なんて見なかったかも知れない。
ドクオに撃たれるなんて、そんな夢は見なかったかも知れない。
あの時、感じてしまったのだ。
俺達とドクオとの違いを。
黒の強化骨格と白の強化骨格の、殺し合いを見た時に。
英雄を、あんな化物じみた奴を相手にしても、物怖じ一つせずに、
何時も通りの無表情で向かっていくドクオと俺達の違いを。
43 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:30:03.67 ID:+Mf/PStT0
だって、装甲車と戦車がたったの一振りで真っ二つだぜ?
めっちゃくちゃ早いんだぜ?
二つ名どおり、猫みたいな早さだった。俊敏って、あの事を言うんだろうな……。
ドクオも、同じく強化骨格を纏った兵士だ。
でも、あいつは『白猫』のように素早い動きは出来ない。
出来ないのだけれども、それでもあいつは対応してみせた。
多分、直感と先読みで何とか追いついていったのだろう。
………やっぱ、人間じゃねーよ。
でも、だけれども。
_
( ゚∀゚) 「あいつは今、ニーソクの為に、いや。少なくとも、俺達と一緒に戦ってんだよな」
呟くも、疑念が生まれる。
………そう簡単に自分の国を捨てられるのか?
自分が生まれ育ち、戦争にまで出て守ろうとした物を、捨てられるのか?
命を賭けて、命を捨てて、
身を捨てて機械となってまで守ろうとした物を、裏切れるものか?
俺には、さっぱり分からない。
国を失ったあいつの気持ちが、全く。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:30:57.93 ID:Vc/FtXZ9O
しえん
45 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:31:03.20 ID:+Mf/PStT0
あぁ、と思い直し、
_
( ゚∀゚) 「俺は、勝った側の人間だもんなぁ……」
理解できないはずだ。
俺達の国が、あいつの国を滅ぼしたのだから。
奪った側に立つ人間なのだから。
でも、まぁ……。
思いを心の内で呟いて、俺は部屋の壁に立て掛けた、
黒のケースに近づき、それを持ち上げてベッドに運ぶ。
その上でケースを開くと、懐かしい、古い銃が姿を現した。
取り回しの難しい長身を持つ、木製の銃。
古臭い造形であり、薬莢排出用のレバーの付いた、
ボルトアクション式の狙撃銃。
モシンナガン。
ニューソク国解体戦争当時の、俺の相棒。
46 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:32:02.93 ID:+Mf/PStT0
_
( ゚∀゚) 「名銃は何十年にも渡って扱われる物……だよな」
あいつが当時、敵として戦っていたとしても、
今は俺達の仲間であり、
_
( ゚∀゚) 「こいつは大量生産されて、鹵獲され、他国にも流れた。
そんで、その国の為に戦う連中の為に、使われた」
銃とドクオを同じにするつもりはないが、
あいつは今、俺達の国に流れ着いて、俺達と同じ目的の為に戦っている。
それに変わりはない。
_
( ゚∀゚) 「まっ、細かいことは関係ないよな。あいつを信じるしかねぇ」
昨日の戦いで、自分達とは違うものだと実感させられたが、
俺は迷い無くこう言うことにしよう。
_
( ゚∀゚) 「戦友よぉ、お互いがんばろうぜ」
47 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:33:40.53 ID:+Mf/PStT0
******
ドンドンと部屋の壁から打撃音が響く。
後に怒声が響き、
「ちょっと!! うるさいですよ長岡さん!! 酔っぱらってるんですかっ!?
壁薄いんだから静かにしてくださいよっっ!!!」
_
(;゚∀゚) 「あっ、は〜い。すいませ〜ん」
迫力ある声に気圧されて俺は壁に向かって土下座した。
48 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:34:47.07 ID:+Mf/PStT0
*******
コンコン、と中隊長室のドアが叩かれた。
川 ゚ -゚) 「いいぞ、入れ」
私は扉越しに声を掛けるが、
入れ、と言い切るよりも僅かに早く、ドクオが入室してくる。
('A`) 「何のご用でしょうか大尉殿」
大仰な仕草で、無表情にそう言うドクオ。
川 ゚ -゚) 「わざとらしい奴だ」
('A`) 「階級も持たないただの兵器には、相応しい態度だと思うんだけどね」
川 ゚ -゚) 「無表情で、よくもそこまで虚言を言える物だ。
まぁ、その通りかもしれんがな。楽にしろ」
('A`) 「で、何の用かな?」
疑問を口にしたドクオは、直後に「あっ……」と言って、
('A`) 「大した用事でも無さそうだな」
私が向かう机に置かれた、ケーキを見てそう言った。
49 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:36:01.97 ID:+Mf/PStT0
川 ゚ -゚) 「あぁ、大した用事でもないかもしれないな。お前も一口どうだ?」
手に持ったフォークをドクオの前でひらひらと揺らし、
私はケーキを薦めてみる。
('A`) 「いや、俺は味覚無いから、いいよ」
その言葉に、この男は機械であるのだと、意識を改められた。
川 ゚ -゚) 「味覚が無かったのだったな。そうだった、忘れてたよ。
だが、強化骨格とは、身体の機械化だけを、身体を義肢化するだけでは無かったのか?」
('A`) 「ただの義肢化なら、感覚器をいじる必要はないんだけどね」
('A`) 「強化骨格は、あくまでも戦闘用。舌が無かったら、話せなくなるだろ?」
('A`) 「ダカラシタヲジンコウブツニカエテ、ジンコウセイタイヲウメコンデイルンダ。
ココマデロコツニコワネヲカエレバワカルカナ?」
急に声が変わり、パソコンなどでよく扱われている、
合成音声が発され、人の物ではない声でドクオが話す。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:36:26.79 ID:oXJzq5eU0
支援
51 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:37:14.17 ID:+Mf/PStT0
川 ゚ -゚) 「うわぁ……気持ち悪い」
率直な感想が口を突いて出た。
('A`) 「ひどいな……」
元の声に戻ったドクオに、私は更にダメだしをする。
川 ゚ -゚) 「それに、カタカナだけだと読み難いからな」
('A`) 「何のこと?」
川 ゚ -゚) 「内緒」
('A`) 「ふーん……」
お互い、表情が乏しいせいか、
私達の会話は非常にシュールな光景になっているかもしれない。
それに、とドクオが言って、
('A`) 「舌ってのは、無くなったら死ぬほど痛いしね。
それに、ブラックブラッドが車で言うガソリンの役割を果たして、
食事を取る必要もないから、味覚はいらないんだ」
川 ゚ -゚) 「ほう、便利なような、悲しいような。微妙だな」
('A`) 「あー、正直面倒だよ。物を食べる感触はあるのに、味がしないって」
52 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:38:21.01 ID:+Mf/PStT0
川 ゚ -゚) 「お前は何でもかんでも面倒ですませるから、本当に困っているのか分からん」
('A`) 「いや、面倒としか言えないんだよこれが。
なにか食っても、食った感じがしなくてさ。食事が面倒で、噛むのも面倒」
川 ゚ -゚)+ 「それはそれで、ダイエットの効果があっていいかもしれん」
ドクオのその一言に、私は惹かれる。
食べた感じがしないと言うことは、
つまり、食事の回数自体を減らせるということだ。
食べてもつまらないのだから、食欲自体が低下するはずだ。
でもな、と彼は付け加えて、
('A`) 「正直辛いよ? 俺の場合、もう元に戻せないし。
解体戦争でさ、一時期大量に強化骨格を量産する計画があったんだよね」
('A`) 「そん時、ざっと5000人ぐらいが強化骨格の手術受けたんだけど、
戦時中に1000人ぐらいの奴が自殺したらしいんだ。生きた心地がしないって」
川 ゚ -゚) 「1000人だと? 多すぎやしないか? 仮にも、戦時下の緊迫した状況で」
('A`) 「だからこそ、だと思うけどね。俺の知り合いにも、拳銃自殺した奴とか、
手榴弾で爆死した奴とか、たくさんいるよ? まぁ、追い詰められた戦況ってのもあったんだろうけど」
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:38:27.82 ID:fVIeqH1iO
シエンヌ
54 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:40:45.44 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「流石に、1000人はホラだと思うけどね〜」
気楽に、当時のニューソクの事を語ってみせるドクオ。
出会った時は「お前は命令を下す。俺は命令を果たす。機械らしくな」などと、
そんな事を言っていたのだが(昨日もそんな感じの事を言っていたかな?)、
無表情ではあるが楽しげに語る彼は、私に少しは心を開いてくれているのかもしれない。
川 ゚ -゚) 「流石に、1000人はな。まぁ、それだけ大勢の者が亡くなったとすれば、
ニューソクの敗北も頷けるかもしれん。勝つ為に、大勢の者を利用した罰だと言えるな」
('A`) 「罰ねぇ……ニューソクは罪深いな」
呟いた彼の表情は、相変わらず変化がないが、
少し、悲しみを帯びているように見える。
いかん。もしかしたら、私は無神経なことを言ったのかもしれない。
川 ゚ -゚) 「……すまん」
短く、私は謝った。
55 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:42:40.87 ID:+Mf/PStT0
すると、ドクオは機械らしく平静のままで、
('A`) 「何が?」
疑問符を浮かべた。
………私もあまり人の事を言えないが、こいつは鈍いな。
川 ゚ -゚) 「まぁ、気にするな。さて、話が脱線してしまったな。
そろそろ、お前を呼んだ用事をすませようか」
閑話休題といこうか。
では、話を本筋へと切り替えて、
川 ゚ -゚) 「私の肩を揉んでくれないか?」
56 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:44:50.43 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「は?」
川 ゚ -゚) 「ん? 聞こえなかったのか? 私の肩を揉んでほしいんだ。
出来れば腰の方も頼む。最近疲れが取れなくてね。三十路を手前にした身には堪えるよ」
すると彼は、怒りの形相を浮かべ、
右腕を振り上げ、
(#'A`) 「豚のような悲鳴を上げろッ!」
川 ゚ -゚) 「ギャー! ガッシボカ、あたしは死んだスイーツ(笑)」
私を机ごと彼の右手が断ち切った。
('A`) ドクオは亡国の兵士のようです(完)
皆様のおかげでここまで頑張ることが出来ました
酉◆K8iifs2jk6の次回作にご期待ください^^;
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:46:26.82 ID:oXJzq5eU0
えっ
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:47:53.65 ID:fVIeqH1iO
どゆこと?
59 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:48:11.37 ID:+Mf/PStT0
何事も無かったかのように再開。
**********
('A`) 「は?」
川 ゚ -゚) 「ん? 聞こえなかったのか? 私の肩を揉んでほしいんだ。
出来れば、腰の方も頼む。最近、疲れが取れなくてね。三十路を手前にした身には堪えるよ」
('A`) 「マジ?」
川 ゚ -゚) 「マジマジ、バッチグー」
('A`) 「使い方がおかしい」
川 ゚ -゚) 「まぁ、それは本題として」
(;'A`) 「本題だったら変わらないだろ!!」
川 ゚ -゚) 「あの銀行の事件以来、お前のことを“亡国の鬼”と軍の広報が触れまわっている。
今やお前は、ニーソク軍の象徴であり、ニューソク人の象徴だ。国民にとってのな」
('A`) 「あぁ、知ってるよ。大げさな渾名を付けるもんだ」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:48:52.41 ID:oXJzq5eU0
くそ、びびったwwwwwwww
支援
61 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:49:44.38 ID:+Mf/PStT0
川 ゚ ー゚) 「大袈裟だな、たしかに。だがな、私達の目標はこれで少し達成された」
自然と、頬が綻び、笑みの表情を作った。
だがな、と私は気を引き締めて続け、
川 ゚ -゚) 「お前は、国民の、ニーソク人の怒りを、自国の民を殺した、
軍に対する恨みを、一身に引き受けることとなってしまった」
あの場でマスクを外していた私も、幾分かはそれを受けてはいるが、
ドクオの物とは比較するのも憚られるような、微々たるものにすぎない。
何故ならドクオは、
川 ゚ -゚) 「ニューソク人にも、お前は恨まれているぞ」
自分と同じ国に住んでいた者にも、恨まれているのだから。
私は、ニューソク人を排斥しようとした者達を排除したニーソク人として、
ニューソク人にとっては特に恨まれてはいないのだろうが、
ニーソクの兵士として戦っている、ニューソク人であるドクオは、そうもいかないだろう。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:50:50.93 ID:oXJzq5eU0
支援
63 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:51:03.94 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「まっ、いいんじゃない? 裏切り者なんて言われ慣れたさ」
ドクオが、本人が言うとおり、裏切り者なのだから。
彼等の恨みから逃れることは出来ない。
どうしても、憎まれてしまう。
('A`) 「俺は、クーの命令を果たす。それだけだよ」
そう言ってのけた彼の顔は、どこか儚げに見えた。
自分の出来る、唯一の行動は戦いであると。
割り切っているかのような物言い。
ドクオに、そんな彼の背後に襲いかかる者がいた。
扉を破壊して、破砕音と共に侵入してきた男はナイフを振りかぶり、
川;゚ -゚) 「避けろドクオッ!!」
未だこちらに視線を放つドクオの首に、強化骨格を纏った男の刃が迫り――――――
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:51:34.78 ID:oXJzq5eU0
しえすた
65 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:53:48.00 ID:+Mf/PStT0
ここで第5話亡国の狼煙終了です
続いておまけを投下する
作者が深夜のテンションで書いたNGシーンです
ジャキーの映画の最後に流れるあれだとでも思ってくれ
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:54:02.90 ID:Vc/FtXZ9O
支援
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:54:40.35 ID:fVIeqH1iO
こちら支援するっ!
68 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:55:06.86 ID:+Mf/PStT0
NGシーン
**********
('A`) 「は?」
川 ゚ -゚) 「ん? 聞こえなかったのか? 私の肩を揉んでほしいんだ。
出来れば、腰の方も頼む。最近、疲れが取れなくてね。三十路を手前にした身には堪えるよ」
('A`) 「マジ?」
川 ゚ -゚) 「マジマジ、バッチグー」
('A`) 「だが断る」
川 ゚ -゚) 「いやいや、君のように人間的に可笑しくてありがたい部下に、
略してオカシタイ部下に、優秀な部下に是非とも頼みたいわけだよ」
('A`) 「パロネタが誰にだって通じると思うなよ。パクリと言われてもいいのか?」
川 ゚ -゚) 「ふふふ、犯してやろうか?」
(;'A`) 「違った! 本音だった!! 隠された真実!!」
69 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:55:53.38 ID:+Mf/PStT0
川 ゚ -゚) 「真実は何時も一つ!」
('A`) 「NEXT コナーンズヒィーント」
川 ゚ -゚) 「首輪付き」
('A`) 「所詮大量殺人だ、刺激的にやろうぜ」
川 ゚ -゚) 「クレイドルの住人、1億人殺人の犯人は……ッ!」
('A`) 「はい俺――――――ッ!」
川 ゚ -゚) 「よく知らない癖にパロるんじゃない」
('A`) 「ん? パロディするってそう略すのか?」
川 ゚ -゚) 「知らん。私の直感で言葉を選んだだけだ」
('A`) 「そうか、まぁ、パロディって原作をよく知らないでやると、
原作の作者さんに失礼になるもんな」
70 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:56:35.56 ID:+Mf/PStT0
川 ゚ -゚) 「リスペクトBTCM」
('A`) 「I LOVE BOON系」
川 ゚ -゚) 「I D`ONT KNOW AFTER 2008 IN BOON系」
('A`) 「ワタシ、最近のゲンコーしらなーい、しらなーい。( ´ー`)シラネーヨ」
川 ゚ -゚) 「HAHAHA、1話で死んだキャラがセリフで何と!」
('A`) 「くっ、ドミナントの力、こんなはずでは!」
川 ゚ -゚) 「笑わせる……偽物は私のほうだったか」
('A`) 「偽物語面白いねー」
川 ゚ -゚) 「ねー」
('A`) 「アニメは基本見ないけど、偽物語は見るぜ」
川 ゚ -゚) 「私、女だけど、神原さんになら抱かれでもいいと思うの」
('A`) 「キャー、ヴァルハラコンビだわ、ヴァルハラコンビが出たわ!」
川 ゚ -゚) 「ふむ、私はガハラさんが大好きだ」
71 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:57:23.73 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「結婚しよう」
川 ゚ -゚) 「あぁ、この戦争が終わったらな」
('A`) 「HAHAHA、俺死亡フラグ確定〜」
川 ゚ -゚) 「HAHAHA、銀行で暴れ過ぎたからなお前は」
('A`) 「mjsk」
川 ゚ -゚) 「mjds」
('A`) 「ネタにマジレスかっこわるい」
川 ゚ -゚) 「NO THANK YOU」
('A`) 「I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー」
川 ゚о゚) 「蒼き光を灯すそれは破壊、眠り蘇生、ゲーシュペンストイェーガー」
72 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:58:12.26 ID:+Mf/PStT0
('A`) 「おい、やめろ。シリアス路線の作品だろうが」
川 ゚ -゚) 「ふむ、ほのぼのカオスになってきたな」
川 ゚ -゚) 「あぁ、作品と言えば、お前じゃなくてビロードが主人公の方が、
絶対に良かったと思うんだが、私は」
('A`) 「mjsk」
川 ゚ -゚) 「ビロード君ならば、私はエピローグで結婚しても良かったのだが」
('A`) 「エピローグ……だと?」
川 ゚ -゚) 「あぁ、プロットには私がお前とくっつくなど、一切記されていない」
('A`) 「マジ?」
川 ゚ -゚) 「I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー」
('A`) 「え、マジですかクーさん」
川 ゚ -゚) 「今時クー×ドクオなど流行らんぞ。そうだ。
もう兄者は亡国の〜か、ビロードは亡国の〜にしないか?
ビロードならジョルジュをワカッテマスに変えて、な。人気出るぞきっと」
('A`) 「えー……主人公誰でも良いの?」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:58:51.38 ID:Vc/FtXZ9O
本編との格差がw
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 23:58:51.05 ID:fVIeqH1iO
おまけしえん
75 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/29(月) 23:58:56.94 ID:+Mf/PStT0
川 ゚ -゚) 「HAHAHA」
('A`) 「HAHAHA」
('A`) 「I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー」(゚- ゚ 川
('A`) 「はぁ………」
川 ゚ -゚) 「ビロードきゅんとちゅっちゅしたいよ〜」
('A`) 「鬱だ死のう」
川 ゚ -゚) 「I can fry」
('A`) 「私は飛ぶことが出来る」
川 ゚ -゚) 「中学生並みの訳だな」
('A`) 「何て訳すんだよお前なら」
川 ゚ -゚) 「我は飛翔を可能とする――――ッ!」
(;'A`) 「それ厨二だ―――ッ! 厨坊に変わりないよそれ!」
76 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/30(火) 00:00:32.51 ID:BLuzjccw0
川 ゚ -゚) 「中学生、なんと甘美な響きか―――ッ!
湧き溢れるエロス! 抑えきれぬ性欲! 女教師や隣のあの子に惹かれる毎日!」
('A`) 「俺、軍学校でスパルタ教育受けてたから分かんないわ」
川 ゚ -゚) 「それを優しく包み込む私」
('A`) 「青春にお前は付きものかよ」
川 ゚ -゚) 「あぁ、私は時空を超越し、不老不死の身となり、
あらゆる厨坊の性欲を満たす」
(;'A`) 「最低だ! 最低の下ネタ言った!」
川 ゚ -゚) 「む、最低だと? 初めに出会った時に私を良いようにした癖に。
嫌がる私にお前は欲望を丸一日ぶつけ続け、その償いとして私の手駒となって戦っているんじゃないか」
('A`) 「うわー、俺とお前の謎の出会いが下ネタで飾られた」
川 ゚ -゚) 「ところでお前、ついてるのか? 戦闘用義肢だから、無駄を省いていると思うのだが……」
('A`) 「えーと、それはね」
77 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/30(火) 00:01:15.60 ID:BLuzjccw0
('A`) 「―――――――――」
川 ゚ -゚) 「ほう」
('A`) 「―――――――」
川 //-/) 「そんな……」
('A`) 「――――――――――」
川 //-/) 「らめぇ――――――」
('A`) 「――――――――――――」
川 ゚ -゚) 「―――――――――?」
('A`) 「――――――――――」
川 ゚ -゚) 「――――――――――――」
('A`) 「I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー I`m Thinker トゥトゥトゥトゥー」(゚- ゚ 川
('A`) ドクオは亡国の兵士のようです(完)
皆様のおかげで(ry
◆K8iifs2jk6(ry^^;
―――――――悪乗り終了―――――――
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:02:09.34 ID:2RFKXAKS0
乙wwwwww
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:02:25.82 ID:WLqKE7YDO
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:02:39.29 ID:93cp6KqLO
乙www
81 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/30(火) 00:05:24.60 ID:BLuzjccw0
支援の数々ありがとうございました
深夜のテンションって恐ろしいですよね
ネタを理解できる人がいてくれたら嬉しいです
最近の現行知らなくて困ってます
俺に休日を下さい
化物語楽しみ
82 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/30(火) 00:10:17.63 ID:BLuzjccw0
>>79 サイボーグのちんこって気になるよね
一応、謎のままにしておきます
明確にしたらネタが(ry
作者の日常会話は下ネタが9割占めてます
他に何か気になることがあればお答えします
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:15:44.43 ID:WLqKE7YDO
>>82 ドクオとあべさんはその後ナニかありましたか?
84 :
◆K8iifs2jk6 :2009/06/30(火) 00:21:50.46 ID:BLuzjccw0
>>83 ブリーフィングを受ける時に整列したら、
阿部さんに尻揉まれてトラウマになったけど、
別の分隊に配属されてほっとしたのはまた別なお話
というのは今思いついた話
ドクオは童貞です
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:25:37.99 ID:/ywJQQ0TO
乙!最後ワロタwww
次も楽しみにしてるよ!
86 :
◆K8iifs2jk6 :
遅れましたが、乙ありがとうございます
とても励みになります
それでは、質問もないようですし、
投下を終えたいと思います