32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:23:20.57 ID:d+jr+Yf5O
僕はペンを持ち、腕組みをして画面を見据える。
両手を広げたこの子は、とても楽しそうだ。
この子はこの両手でふわふわと空を飛び、でも、泣いてる子を見たらブーンと勢いよく飛んでくるのだ。
(´・ω・`)「……ブーンと……か」
( ^ω^)
(´・ω・`)「うん、君の名前はブーンだ」
僕はペンをタブレットに走らせ、絵の足元に名前を書いた。
/⌒ヽ
( ^ω^)
⊂ つ
| |
し⌒.J
ブーン
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:26:04.59 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「中々いいかも……」
(〃^ω^)
心なしか、ブーンの笑顔も一層晴れやかに見えた。
【】<PiPiPiPiP
(;´・ω・`)「うおっと!?」
満足げに画面を眺めていたら、滅多にしゃべる事のない、携帯電話が自己主張を始めた。
メールならまだしも、この電話番号を知ってる人間はほとんどいない。
仕事の用件はほぼ全てメールで賄える。
(´・ω・`)「仕事の催促じゃないのは助かるけど……」
僕は携帯電話を開き、画面に映る名前に目を落とした。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:29:05.28 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「伊藤さん?」
電話は件の編集者、伊藤さんからのようだ。
僕は受話ボタンを押し、携帯電話を耳に当てた。
(´・ω・`)】「はい」
(´・ω・`)】「あ、まだです。後は仕上げだけですね」
(´・ω・`)】「いえ、回して頂いて感謝してますよ、ホントに」
(´・ω・`)】「アハハ、まあ、趣味は趣味ですからね」
(´・ω・`)】「身の程は弁えてますよ」
(´・ω・`)】「それで、今日はその確認……ファックス?」
(´・ω・`)】「いえ、見てませんが。ああ、これから送るんですね、はい」
(´・ω・`)】「わかりました。返信もファックスの方が……はい、わかりました」
(´・ω・`)】「それでは」
良い絵か
"いいえ"かと
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:29:48.05 ID:fndQ0a17O
紫煙
某コテを思い出す
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:31:10.58 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「ふぅ……」
今回のこの仕事は、伊藤さん経由で僕の所に来た。
てっきりその進行状況の確認かと思ったら、用件はまた別で、何でもアンケートに答えて欲しいとの事だった。
また前回のような企画をやるみたいだ。
と言っても、今度はもっと広く浅く、新進のデザイン関係の仕事に就く人間にアンケートを取って記事にするらしい。
雑誌に名前が載る事は、こちらとしては願ってもないことだから断る理由がない。
あれ以降も伊藤さんには色々と目をかけてもらっている。
本当にありがたい事だ。
そんな事を考えていると、ファックスの着信を伝える電子音がキッチンの方から聞こえてきた。
(´・ω・`)「どんなアンケートなのかな?」
僕はアンケート用紙を手に取り、中身にざっと目を通す。
(´・ω・`)「あなたがこの仕事を目指したきっかけは何ですか」
(´・ω・`)「あなたが今までで一番気に入っている作品をあげてください」
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:31:12.82 ID:9hmPssvrO
トソいつの人か?
支援
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:33:09.58 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「随分と真面目な質問だな……」
アンケートはオーソドックスな物で、経歴やら考え方などそう珍しくもないものだった。
これなら楽に書けるだろう。
(´・ω・`)「しかし、これならメールでもいいのにね……」
先に述べたように、デジタルデータでやり取りする仕事がほとんどだ。
まれにこうやってファックスでやり取りをし、郵送なり手渡しなりでデータを届けたりする事もある。
ただ、今回の場合は相手が伊藤さんだからだ。
彼女はあまりPCが得意でない。
絵はともかく、文章などはこうやってファックスで送るか電話で話す事がほとんどだ。
(´・ω・`)「ちょっと昔気質なんだよね」
これを本人に言うと殴られるだろう。
年寄り扱いするなと。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:36:12.61 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「今の内に書いてしまうか」
僕はモニターの前に戻り、アンケート用紙を机の上に広げた。
どうにも面白味のない回答を、上から順に1つずつ書き込んでいく。
(´・ω・`)「明日の昼までならそんなに急がなくても……ん?」
アンケートの最後辺りに、それまでと少し毛色の変わった質問を見つけた。
(´・ω・`)「あなたを動物に喩えるとなんだと思いますか?」
何だか心理テストの様な質問だ。
その他にもいくつか似たような質問がある。
どういう意図なのかは知らないが、単に伊藤さんが最近、心理テストにはまっているとかそういうオチかもしれない。
(´・ω・`)「何だろう? たぬき?」
おっとりしている動物といえばそのくらいしか思いつかない。
(´・ω・`)「ええっと、あなたは今の仕事に満足していますか?」
そこからは、はいかいいえの2択で答えるような質問がずっと並んでいた。
やはり構成に脈絡がないように思える。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:39:13.18 ID:uoJHLNE1O
良い絵といいえをかけてんだろ
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:39:35.84 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「まあ、伊藤さんの事だからね。考え過ぎてもしょうがないか。はい、と」
僕には出来過ぎなくらい、今の仕事は安定してきた。
フリーのイラストレーターで何とか食べていけるくらいなのだから。
(´・ω・`)「あなたは今の自分に満足していますか?」
はい、はい、はい、質問に促されるまま、僕は回答を綴る。
こうやって改めて自分を顧みると、案外悪くない人生になって来ているのかもしれない。
(´・ω・`)「おっと、これで最後か……何々?」
「あなたは、自分の夢に正直に生きていますか?」
(´・ω・`)「……」
僕は反射的に、解答欄に答えを書き込もうとしたが、何故か手が止まってしまった。
はい、ただその一言を書くだけなのに。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:42:05.79 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「……僕は夢を叶えたよね」
大好きな絵を描く事を仕事に出来たのだ。
僕は本当に恵まれている。
それが僕の夢で、僕は今、夢を叶えてここにいるのだ。
でも……
(´・ω・`)「夢……か……」
僕は鉛筆を置き、画面に目を向けた。
( ^ω^)
相変わらずブーンは、にこやかな笑顔を僕に向けてくれる。
(´・ω・`)「……名前、消さないとね」
僕が依頼されたのは絵であって、キャラクターの設定ではない。
ネーミングは専門のコピーライターがやってくれるだろう。
僕がでしゃばる場面ではない。
俺なら子供受けを狙って顔半分を機械にしてリベットつけまくるな支援
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:43:27.07 ID:hiv8y5lH0
支援
すごく良い雰囲気だ
支援
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:44:53.16 ID:d+jr+Yf5O
( ^ω^)
(´・ω・`)
でも、この子は僕の中ではブーンなのだ。
僕が描いた、僕のキャラクター。
ブーンは雲のようにふわふわと空を飛び、泣いている子供にマシュマロをくれる。
お空の旅人だ。
(´・ω・`)「夢……」
僕は、本当は絵本作家になりたかった。
僕には文才がなかった。
僕はいい絵が描けて、それで生きていけるならそれで良かった。
僕は……
(´・ω・`)「僕はいい絵を描いたよね」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:45:28.89 ID:gtMxAvdoO
好きだ
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:47:04.07 ID:d+jr+Yf5O
僕はいい絵を描いた。
僕は仕事としていい絵を描いた。
僕はいい絵が描きたかった。
僕はいい絵が描けて満足だ。
( ^ω^)
(´・ω・`)
僕はこの子を描けて満足だ。
僕は仕事としてこの子を描く機会を得られて満足だ。
僕はこの子──
( ^ω^)
いや、ブーンを描いたんだ。
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:49:02.27 ID:9oxDdkgdO
支援させてください
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:49:07.18 ID:d+jr+Yf5O
僕は椅子に座り直し、頭を集中モードに切り替えた。
モニターに目を向け、ペンを手に取る。
( ^ω^)
(´・ω・`)「まずは仕上げよう」
僕は描いたブーンは、いつも笑顔だ。
心優しいブーンは、皆を幸せにしてくれる。
僕はいい絵を描きたかった。
では、僕は何の為にいい絵を描きたかったのだろうか?
僕がいい絵を描きたかったのは……。
( ^ω^)
僕はブーンの顔に綺麗な白を塗り付けた。
・・・・
・・・
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:51:02.06 ID:d+jr+Yf5O
(´-ω-`)「……ん」
外が明るい。
どうやらカーテンも閉めずに寝てしまったようだ。
(´-ω-`)「朝か……」
時計を見ると、ギリギリ朝と呼べるぐらいの時間だった。
4時ぐらいまでの記憶はある。
その頃に完成させた絵をクライアントに送信した。
( うω-`)「あんな時間でも届けられる文明の利器に感謝したよね……」
眠い目を擦りながら立ち上がる。
身体の至る所が凝っているのがわかる。
自分の部屋なのに椅子で寝る無意味さは控えようと思う。
(´・ω・`)「ふぅ……」
顔を洗い、お湯を沸かし、コーヒーを淹れる。
その香りに妙に腹が刺激されると思ったら、昨日は結局何も食べていない事を思い出した。
一日一膳所の騒ぎじゃない。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:52:13.78 ID:fndQ0a17O
支援
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:52:47.07 ID:fvnNxL5XO
支援だ
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:54:06.50 ID:d+jr+Yf5O
(´・ω・`)「食事でも買ってくるか……」
モニターの前に戻り、PCの電源を落とそうと思ったがいつの間にか一通のメールが届いていた。
(´・ω・`)「どこから──」
【】<PiPiPiPiP
(;´・ω・`)「うおっと!?」
昨日に引き続き、また携帯電話が鳴り出した。
週に2度もこの音を聞くのは久しぶりな気がする。
僕は携帯電話を開き、画面に映る名前に目を落とした。
(´・ω・`)「また伊藤さん?」
(´・ω・`)】「はい、もしも──ええ!? 昼までって……」
(;´・ω・`)】「いや、まあ、確かにお昼ですが……」
(;´・ω・`)】「僕が最後? はい、わかりました、この電話が終わったらすぐ……」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:57:06.07 ID:d+jr+Yf5O
それだけ急を要する修正があるのだろう。
僕は、少しげんなりとした気分でメールを読み進めた。
(´・ω・`)
(´-ω-`)
(´・ω・`)「……フフ」
僕は読み終わったメールを閉じ、昨日送ったファイルを開いた。
昨日と何も変わらない、晴れやかな笑顔のブーンが姿を見せる。
(´・ω・`)「おめでとう、ブーン」
(〃^ω^)
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/22(月) 23:59:21.40 ID:d+jr+Yf5O
僕はPCの電源はそのままで、財布を手に玄関へ向かった。
(;´・ω・`)「って、ヤバ、アンケート! 忘れたら伊藤さんに殺される!」
あわててモニターの前に戻り、アンケート用紙を引っつかむ。
(´・ω・`)「あ、まだ書いてない箇所が……」
モニターの方へ首を回し、ブーンの笑顔を眺める。
(´・ω・`)「正直に……ね……」
鉛筆を手に取り、1つ息を吐いた。
僕の答え、正直な気持ち。
(´・ω・`)「今はまだ……」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:01:53.46 ID:RJMSNmPaO
てす
しえしえ
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:03:22.63 ID:AGKXJZYOO
僕の夢。
(´・ω・`)「でも……」
いつかきっと。
僕は1つだけ残っていた空欄に、はっきりと“いいえ”と書いた。
/⌒ヽ
( ^ω^)
⊂ つ
| |
し⌒.J
ブーン
− (´・ω・`)はいいえをかきたいようです おしまい −
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:04:05.94 ID:dyNIJDJmO
支援
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:05:04.60 ID:NdMf9F4kO
乙
ほんわかしててよかった!
乙
「NO」の方だったー!?
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:06:16.03 ID:FxGGaufqO
乙です!
すごいよかったです
ギャグ書こう書こうとネタ考えてたら、似非シリアス風ネタばっかり浮かぶって何なんでしょうね。
途中でオチも書き手も当てられるしζ(´ー`*ζウフフフフ
オチはまあ、タイトルで丸わかりでしょうが。
全般的にフィクションで、イラストレーターの仕事や作業工程とかわかりません。
その辺の表現でおかしいとこがあっても、鼻で笑って流しといてください。
ついでに言いたいこともよくわかりませ(ry
支援とかありがとうございました。
では、また。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:08:42.22 ID:xybvvtKsO
乙!よかったよ
つか先にオチを書いちゃうやつなんなの
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:10:03.33 ID:AwirR7ctO
乙!
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:11:31.30 ID:NPjG0/+AO
乙!
さわやかな気持ちになれました
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:12:02.65 ID:RJMSNmPaO
IDかわってるだと
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:14:32.05 ID:/vcVNC27O
良かった!すごく良かった
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:24:39.90 ID:kQqmS6E+O
書き手当たってたwww
いい話でした
乙
あなたのファンですw
また書いてください
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:27:39.74 ID:FPH8uNL5O
乙ー
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:29:09.59 ID:DuVpZSt80
乙
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:33:22.26 ID:t8k60qe0O
ほ
乙
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/23(火) 00:55:00.23 ID:kQqmS6E+O
今までのパターンならそろそろ戻ってくるはずwww
短編は質問とかない限りは戻ってこねっスよζ(´д`;ζ
と言いつつ戻って(ry
きたw
けいおんみたいなスレだね
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
良かった