( ^ω^)ブーンが都市伝説に挑むようです 体験版
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :
2009/04/21(火) 00:06:55.01 ID:Lr4vIsXS0 正規品は一体いつ? 代理
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:12:04.06 ID:rsiNMDzpO
そんな長くないけどクソめんどくさいやり方で投下がもたつく可能性あり よろしくどうぞ
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:14:32.02 ID:rsiNMDzpO
(;^ω^)「……」 ハハ ロ -ロ)ハ「……」 狭い事務所の中、テーブルを挟んで向かい合った男女。 女はじっと男を見つめ、男はその視線でじっとりとした汗をかく。 と言っても、ちっとも色っぽい状況なんかじゃない。 (;^ω^)「……あー、お茶飲みますかお?」 ハハ ロ -ロ)ハ「What?」 (;^ω^)「あれ……えーっと、ティー! グリーンティーオーケー?」 ハハ ロ -ロ)ハ「tea? Ah...no thank you」 (;^ω^)「オ、オーケー! イエスイエス! 」 無意味に大きなリアクション。恥ずかしがる余裕すらない。 僕は、いざ立ち上がろうと持ち上げた腰をソファに戻し、再びなんら変わらない状況に落ち着いた。 腰を降ろした時、「ぎぃ」と、あまり他人に聞かせるべきではない音がした。 ……さて、こうして向かい合って座ること、約十数分。 待ち人は来ないまま、ただ時間だけが過ぎていった。 視線はきょろきょろと空へ、手の動きは忙しなく――ああ、緊張で喉が渇く。 ノーサンキューとは言われたものの、自分の分だけお茶を用意しに行こうか。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:17:00.38 ID:8Pnw7x4QO
メガネでけえ支援
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:17:36.67 ID:rsiNMDzpO
(;^ω^)(あ、緑茶じゃなくて紅茶なら……) と、無価値な思考が巡る。何故無価値なのかというと。 そもそも、ここには紅茶は置いていないわけで。 ――とりあえず、話は一週間前に遡る。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:18:26.74 ID:AKZDNcUQ0
巨ロボ書いてる(書いてた?)人だっけ?
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:22:10.82 ID:OOiWJXHe0
ハローがおかしい
場所は、再び事務所。というか、近頃は事務所にいるのがしょっちゅうだった。 ああ、仕事のなさが目にしみる。 今までの業務内容その他諸々が記された書類をまとめ、百円ショップで買ってきたファイルに挟む。 ほんの数分で終わってしまう、そんな作業の簡単さに辟易していた、そんな時だった。 ( ^ω^)「依頼? ですかお?」 ξ゚听)ξ「うん」 持参したノートパソコンで何か作業をしながら、デスクを占領した玲子さんが急にそんなことを言ってきた。 さっきまでは他愛の無い雑談だったのが、少しばかり驚く。 今日の玲子さんは黄色のタートルカットソー、ジーンズに茶色のエンジニアブーツ。 そして、室内なので脱いでいるが、赤いピーコートと手袋を身に着けて来ている。 最近寒くなっているので、それ相応の格好というわけだ。 当然僕も防寒対策として、シャツの上にユニクロで買ったフリースジャケットを着ている。 まあ、僕にとっては特に変わり映えのしない格好なんだけど。 今日は会社自体は休みだそうで、ここには僕に用事があって来たらしい。 しかし、何故だか彼女はずっとパソコンで作業中だ。なんでも、仕事で残っている箇所があるから、先に済ましたいらしい。 だからといって、なんでわざわざこっちでするのかはわからないけど。 そういえば、パソコンの電源ケーブルはこの事務所のコンセントに刺さっている。 どうか長くならないで……なんて考えている間に、玲子さんはようやく話す気になったようだった。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:28:12.88 ID:rsiNMDzpO
( ^ω^)「依頼って、玲子さんの?」 ξ゚听)ξ「いや、あたしじゃなくて。最近あたしの会社に来た子なんだけど」 玲子さんはカタカタとキーボードを叩きながら、こちらを見ずに話を続けた。 器用なものだ。女性の方が分割した思考ができるというのは本当なのかもしれない。 見ると、ディスプレイ越しにツインテールがわっさわっさと上下していた。 顔は見えないが、手元の資料と画面を何度も見比べているようだ。 赤いフレームの眼鏡をかけているので、なんとも知的な感じがする。 まあ、こんな姿を見れただけでも、来てもらった価値はあるのかな。 それに、もっと貴重な仕事の依頼が貰えるようであるし。 ( ^ω^)「はあ。それで、どんな依頼なのかお?」 ξ゚听)ξ「なんか、最近奇妙なことが起こるから困ってるって……それで、自分の周りを調べて欲しいみたいよ」 なるほど、身辺調査の依頼――若い女性によくある依頼だ。 奇妙な、というフレーズに若干の感慨を得ながら、僕はファイルを棚にしまった。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:32:26.37 ID:rsiNMDzpO
( ^ω^)「奇妙なこと……どんなことですかお?」 ξ゚听)ξ「んーと……なんて言ってたっけな……そうそう、願いが叶うんですって」 ( ^ω^)「は? 願いが、叶う?」 ξ゚听)ξ「そう。自分の思ったことが本当になるんですって」 そこで、一旦会話が途切れる。なんだろう、返事に戸惑ってしまった。 ということはつまり、玲子さんの知り合いの人は“願いが叶うから困る”ってことか。 ……いや、それって何が困るんだ。普通なら逆なんじゃないのか。僕だって、そんなのしょっちゅう困っている。 なんとも贅沢な悩みだ。流石に腹まで立てないものの、ちょっと首を傾げてしまう。 ( ^ω^)「……よくわからないんですがお?」 ξ゚听)ξ「あー、実際はちょっと違ったわね。“叶わなくていい願いが叶う”のよ」 いや、ちょっと違ったと言われても。それはそれでまた理解に苦しむのだけれど。 「叶わなくていい願い」とは、一度願ったものの、実際に叶っては困る、ということだろうか。 えーと、巨人を応援してるけど、実際はダイエーが優勝した方が生活的にはお得……いや、これは違うか。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:32:44.95 ID:AKZDNcUQ0
こっちも結構楽しみだけど、巨ロボも楽しみにしてるぜ支援
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:35:40.71 ID:VZ+5vUubO
おお、懐かしいタイトル……と思ったらやはり。久しぶり。 wktk
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:37:06.77 ID:rsiNMDzpO
(;^ω^)「……?」 ξ゚听)ξ「いい感じに混乱してるわね。とりあえず、私がその子から聞いた話によると……」 と、そこで玲子さんは作業を止め、顔をこちらに覗かせて話し始める。 できれば、もっと早くにそうして欲しかった。もちろん、文句なんかは言えない立場であるが。 ――さて、そうして玲子さんから詳しい説明を受けたわけではあるが。 それでも、その内容はああそうですかと簡単に受け止められるものではなかった。 まず、依頼者の名は“ハロー・サン”という二十代前半の女性。 その名前からわかるように、国籍は日本ではなくアメリカ。 遠い親戚に日本人がいるらしいが、外見にその影響は全くといってないそうだ。 予てから日本に興味を持っていたそうで、いつかは来日したいと思っていたという。 実際にその夢が叶ったのは彼女が高校を卒業してからのことで、どうしても日本の大学を受けたいと、親に必死で頼み込んだらしい。 そして、どうにか親に許しを貰って来日した彼女は、無事希望した大学に合格。 大学を卒業するまで思う存分日本を満喫したらしい。 その結果、彼女は思いの外日本を気に入ってしまい、大学だけでなく、就職までも日本で行いたいと思ったそうだ。 だが、流石に親もそこまでは納得しなかった。というのも、彼女の両親がアメリカで運輸会社を経営していたからだ。 名前も知られていないような小さな会社ではあったが、どうしても両親は彼女にその後を継いで欲しかったらしい。 彼女としても、両親を悲しませてまで日本に居座る気はなく、両親の頼みをすぐに了承したそうだ。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:48:16.42 ID:rsiNMDzpO
それでは、何故彼女が玲子さんの会社に来たのか。それは、やはり彼女が日本に未練を持っていたからだった。 そのため、彼女はわずかの間だけでも日本で働くことを許して欲しいと、再び両親に嘆願した。 用いた理由としては、日本の経営方法を学ぶためとか、いざという時のために人脈を作っておくとかだったらしい。 やがて、無類の日本好きを知っていたせいか、最後には両親も折れ、期限付きの就職を彼女に認めたそうだ。 そうして、彼女が就職したのが、玲子さんの勤める企業だったわけである。 ξ゚听)ξ「たまたま部署が私のところだったんだけど、明るい子でね。歳も近いから、すぐに仲良くなっちゃった」 ( ^ω^)「へえ……異文化交流ってヤツですかお?」 ξ゚听)ξ「いやでも、その子ホントに日本について詳しいのよ。徳川歴代将軍とか知っててね」 ( ^ω^)「じゃあ、日本語も?」 ξ゚听)ξ「うん、簡単なものなら話せてるわ。だから文太郎でも簡単な会話ならできると思うわよ」 今ちょっと馬鹿にされた気がするが、だからと言って僕に英語が話せるわけではない。 日本語が話せるのは単純にありがたいことだ。依頼を受けるのでも、当人と会話できないんじゃどうしようもない。 この仕事を成功させるには、まず第一に依頼人とのコミニュケーション。 調査を円滑に進めるためには依頼者の協力が必要不可欠だ。当たり前のことだけど。 ( ^ω^)「それじゃ、直接会って話したいんで、その人の連絡先を教えて貰えますかお」 そう言って、玲子さんにメモとペンを手渡す。 かくして、僕は久々にそれっぽい内容の、そして貴重な収入源――もとい、依頼を受けることになったわけだ。 ……そうそう、僕の名前は内藤文太郎。依頼を受けるだのなんだの言っているのは、僕がしがない私立探偵だからだ。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:49:31.35 ID:rsiNMDzpO
case.2「Monkey Majik」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:51:31.73 ID:VZ+5vUubO
しえん
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:53:09.40 ID:rsiNMDzpO
……そして、いざ現在の状況に戻るわけだが。 (;^ω^)「……」 ハハ ロ -ロ)ハ「……」 ――どうしよう。 ――喋った方がいいのかな。 ――そもそも何を喋れば。 様々な言葉が、僕の脳内を駆け巡る。しかし、その中で実際に発したものは何一つない。 狭い事務所で、初対面の、しかも外国の人と二人きり。一体何を話せばいいというのか。 まあ、こうなることを予想して、通訳として玲子さんも来ることになってはいる。が、その当人がまだ来ていない。 ( ^ω^)「……」 どうも、会話ができないと相手のことを必要以上に観察してしまう。 対面に座るハローさんはベージュのトレンチコートを膝に置き、青の暖かそうなセーターと女性用のジーンズを身に着けている。 それと、上着を脱いだのでわかったが、首筋にシルバーのネックレスを巻いていた。 赤のフレームの丸みがかった、女性的なデザインの眼鏡。そして、玲子さんよりも濃い、“それらしい色”のブロンドショート。 レンズの奥にあるブルーの瞳は、やや沈んでいるように見える。 それにしても睫毛が長い。鼻も高いし、肌も綺麗だ。どう考えても美人である。 僕個人の問題だけど、アメリカ人の女性ってなんだかキツイ感じがするように思っていた。 しかし、ハローさんからはそういうのは全く感じない。むしろ、儚げなものさえ受け取れる。 今の彼女がそういう気分だからかもしれないが……とりあえず偏見を払拭するには十二分な印象だった。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 00:57:07.85 ID:rsiNMDzpO
ハハ ロ -ロ)ハ「……アー」 (;^ω^)「ひょ! ひゃ、はい!」 突然沈黙が破られたので、緊張して変な声を出してしまった。 恥ずかしさに顔が熱くなる。外国の方だから、何か英語として受け取ってもらえないだろうか。 「HO!」だとか。いや、それもおかしいけど。 ハハ ロ -ロ)ハ「レイコサン、コナイ。オソイネ?」 (;^ω^)「そ、そうですNE! 一体どこで油を売ってるんだか……」 ハハ ロ -ロ)ハ「アブ……ナンデスカ?」 (;^ω^)「あっ? えーと、あ、油……オイル! レイコサン、バイ、オイル!」 僕は何を言っているんだ。いくら国が違ったって動揺してるかどうかはわかるに決まっている。 「ははは……」と、精一杯の笑顔を作ったが、ハローさんの表情は暗いままだった。 ああ、まずい。依頼を受ける立場として、相手に頼りない印象を与えるのはタブーだ。 悩んでいる相手に明るくなれというのも酷い話だが、今はとにかく落ち着いた対応をしなければならなかった。 しかし、そもそも土俵が違うのだ。僕に取れる手段は少ない、いや、ほぼ無いと言っていい。 ここは素直に負けを認め、然るべき行動に出なければならない。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:01:13.07 ID:rsiNMDzpO
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお! えー、ジャストモーメンツ!」 勢いで複数形にしてしまったが、そんなことを気にしている場合じゃない。 僕はソファから立ち上がり、その場からそそくさと離れる。 そして、懐から携帯電話を取り出し、着信履歴からとある番号を呼び出した。 一度目は留守電になり、再チャレンジでのコール音三回の後、電話が繋がる。 (;^ω^)「もしもし、玲子さん?」 ξ゚听)ξ「あ、文太郎? なに、どしたの?」 どうやら外を歩いている最中らしい。がやがやとした喧騒が声と一緒に聞こえてくる。 その中に、聞き慣れた呼び込みの声があった。 (;^ω^)「今、商店街ですかお?」 ξ゚听)ξ「そうよ? よくわかったわね、流石探偵の端くれ?」 (;^ω^)「どうもですお……じゃなくて!」 暢気な物言いだ。まるで、台風の目の中にいるかのよう。 こちとらグローバルな暴風雨に身を焦がされているというのに。 ただ、今商店街にいるというのなら、事務所まではそう遠くない。 「走れ!」とは絶対に言えないが、僕なりにできるだけ毅然とした態度で催促する。 (;^ω^)「で、できれば急いで欲しいかなぁ、なんて……」 あくまで僕なりの毅然とした態度に、玲子さんは「はいはい」とだけ言って電話を切った。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:07:54.05 ID:5LR/GeDMO
しえしえ
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:10:45.40 ID:rsiNMDzpO
結局、玲子さんが事務所に着いたのはそこから五分そこら経った頃だった。 時間にすれば短いものだが、僕には地球の発生から生命が誕生するまでの悠久の時に等しかった。 玲子さんは事務所に入ると茶色のニット帽を取り、ハローさんの隣に腰掛ける。 今日はグレーのフード付きワンピースと黒のパンツ。そして、茶色のブーツを身に着けていた。 ( ^ω^) 「えーと、じゃあ具体的なお話を聞かせてもらえますかお」 ξ゚听)ξ「Speak to him, your story(彼に話してちょうだい)」 早速、玲子さんがハローさんに英語で話しかける。 すると、彼女は頷き、僕に対してゆっくりと話し始めた。 ハハ ロ -ロ)ハ「At the previous state by about two weeks from now(現在からおよそ2週間の前ので)」 ハハ ロ -ロ)ハ「I will have swept the room though I lived in the apartment(アパートに住んでいましたが、私は部屋の掃除してしまうでしょう)」 ハハ ロ -ロ)ハ「And, the ceiling of it was possible to break in found it following the attic when cleaning it (そして、それの天井は押し入るのが、それを掃除するとき、それが屋根裏に続いているのがわかったのが可能でした)」 ハハ ロ -ロ)ハ「Then, the box of a medium size where the pattern of something was drawn in the attic was found (そして、何かのパターンが屋根裏で作成された中くらいのサイズの箱は見つけられました)」 ハハ ロ -ロ)ハ「I am anxious by all means, and have inadvertently inadvertently opened the box(私は、必ず、心配して、うっかりうっかり箱を開けました)」
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと待って! Have a break! Have a kit kat!」 突然会話を止めた玲子さんによると、いくらなんでも言葉がエキセントリック過ぎるらしい。 よくわからないが、とりあえず話を知っている玲子さんが説明してくれるそうだ。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:17:38.87 ID:rsiNMDzpO
ξ゚听)ξ「それで、ハルが部屋の掃除をしてたら、屋根裏から妙な箱を見つけたらしいんだけど……」 先ほどハローさんが何を言っていたのかは結局わからなかったが、とりあえず事の始まりはわかった。 そういえば、玲子さんはハローさんのことをハルという愛称で呼ぶみたいだ。 僕は外国人の友達を持ったことはないが、二人は仲が良さそうに見える。 相手が日本好きだから、話も合ったりするんだろうか。 ( ^ω^) 「それで、箱の中には何が?」 ξ゚听)ξ「えと……それはハルにも説明が難しいらしくて……だから、ね?」 ハハ ロ -ロ)ハ「Yes, hold on...(うん、ちょっと待ってね……)」 そう言って、ハローさんは手持ちのバッグから数枚の写真を取り出す。 どうやら、その箱と、その中身を撮影したものらしい。 玲子さんも見るのは初めてだそうで、僕たちは食い入るようにその写真を見つめた。 ( ^ω^)「これは……」 ξ゚听)ξ「木の……枝?」 写真に写っていたのは、まるで錆び付いた金属のような色合いをした細長い物体だった。 玲子さんの言うように木の枝にも見えるが、恐らくそうではないだろう。 箱の中には柔らかい布のようなものが敷いてあり、その真ん中にそれが鎮座している。 よく見ると、それは片方から少し伸びて、杓文字のように広がっており、そこからまた五つに分かれていた。 しかも、その分かれた部分はそれぞれ長さと太さが異なっている。
後で読むから、読んでないけど支援させてれくれ
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:21:02.10 ID:rsiNMDzpO
やはり、写真の物体は木の枝と言うにはその形が特殊過ぎるだろう。 いや、それどころか、恐らくこれは―― ( ^ω^)「……手?」 ξ゚听)ξ「え? あ、ホントだ……」 思うに、写真の物体は何かの「手」なのではないだろうか。 細長い部分は腕、平べったい部分は手のひら、そして、分かれた部分は五指。 そう当てはめてみると、その物体はしっかりと手の形をしていた。 恐らく何かの生物の手なのだと思うが、それならばこの色はミイラ化しているためのものだろう。 ただ、切断面が綺麗なので、何かの作り物なのかもしれない。 ξ゚听)ξ「まさか……人間の手、なのかしら……」 ( ^ω^)「いや、人間じゃないですお。人間だとしたら、指が長過ぎますお」 ξ゚听)ξ「え? じゃあ何よ? 動物?」 ( ^ω^)「うーん……はっきりとは言えないけど、猿とかの手がこういう感じなんじゃないですかお」 ξ゚听)ξ「猿? ……あれ、それって……」 ( ^ω^)「なんですかお?」 すると、急に玲子さんはぶつぶつと呟きながら何かを考え出した。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:25:55.67 ID:frxULwakO
猿の手か…… 逆境ナインでしか知らんな支援
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:26:04.09 ID:rsiNMDzpO
ξ゚听)ξ「猿……そうよ、そうよ! 猿の手よ!」 やがて、玲子さんは何かを思い出したように言い放ち、驚いたような表情を見せる。 その場にいた僕、そしてハローさんも、その行動に首を傾げるばかりだった。 ( ^ω^)「どうしたんですかお?」 ξ゚听)ξ「ちょっと、知らないの? 何でも願いが叶う“猿の手”っていう都市伝説よ!」 言われて、僕は自分の記憶を掘り返す。 猿の手――それは、確か外国の小説だったはずだ。 子供の頃、たまたま図書館で読んだ記憶がある。 その内容は、とある夫婦が魔力があるという猿の手のミイラを手に入れるというものだった。 ( ^ω^)「それは知ってますお……でも、まさかそんな……」 ξ゚听)ξ「だけど、それならすごくしっくりこない?」 ( ^ω^)「じゃあ、ハローさんの願いはこの猿の手みたいなのが叶えたっていうんですかお?」 確かに、小説では猿の手が持ち主である夫婦の願いを三つだけ叶えていた。 しかし、それはあくまで小説の中の話。いきなり現実のことにするのは、あまりに急な話だ。 玲子さんは小説ではなく都市伝説と言っていたが、それもこの小説から派生した創作だろう。 所詮、架空のものから産まれたものは、架空の域を出ることはない。 架空から現実になるなど、そんなことがあり得るはずはないんだ。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:29:56.76 ID:rsiNMDzpO
――と、以前の僕なら、きっとそう思っていた。 いや、今現在だって、僕の中にそういう考えがないわけじゃない。 きっと、玲子さんも本気でそう思ってはいないはずだ。 冗談混じりで、それでも条件がぴたっと当てはまるから、勢いでそう言っただけに違いない。 だが、僕は知っている。 あくまで「伝説」だったものが、実際に現実のものに成り得ることを。 僕は、実際に見たのだ。 人間の顔を持つ犬の姿を。そして、その切ない結末を。 あの日、写真で実物を見た時から、何か不思議な感覚を憶えていた。 そして、それは今も僕の体を離れていない。 だから、僕は玲子さんに疑問を投げかけながらも、本当にそうなのではないかと思えていた。 この、写真に写った奇妙な物体が、本当に持ち主の願いを叶えるという“猿の手”なのであることを…… ( ^ω^)「……」 改めて、僕は写真を覗き込む。やはり、何かの生き物の手のミイラにも、ただの木の枝にも見える。 しかし、自分の体が一番憶えている。 あの不思議な感覚が、今再び蘇っているのだ。 そういえば、この箱には何か模様が描かれた紙が貼り付けてあったそうだ。 まあ、十中八九それはお札の類だろう。 少なくとも、何かしらいわく付きの代物であるのは間違いない。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:34:54.37 ID:rsiNMDzpO
ξ゚听)ξ「どうしたのよ文太郎? そんなにじっと考え込んで」 ( ^ω^)「……いや、なんでもないですお……そうだお、それよりもそのハローさんのした“願い”ってのを教えてくださいお」 そうである。問題は、この写真の物体が本当に猿の手であるのかどうかではない。 ハローさんのした願いというのが、叶うのを望まないものであるということだ。 ξ゚听)ξ「あ、そうね。えーっと、これも私が説明した方がいいわよね」 ( ^ω^)「お願いしますお」 ξ゚听)ξ「それじゃハル。もう一度詳しく教えてちょうだい?」 ハハ ロ -ロ)ハ「Okay(ええ)」 そうして、ハローさんは粛々と語りだす。果たして、「叶うのを望まない願い」とはどういうことなのか。 と言っても、その会話は全て英語なので、僕に理解できるはずがない。 僕がわかるのは、せいぜい話してる間のハローさんの表情が依然として暗いものであり、どうやら話し辛そうにしているということだけ。 玲子さんを通して、その内容はこちらに伝えられることになる。 合間合間で僕が質問をするが、それを聞くのも玲子さんだ。 もし、僕とハローさんの二人だけで会うことになっていたら、こんな円滑に事は進んでいなかっただろう。 そうして、話が終わった時、僕はハローさんが何故そんなに話し辛そうにしていたのかを理解した。 通訳を終えた玲子さんも、彼女と同様にばつの悪い表情を作っている。 そして、それはさらに認識を深めることになった。 その、彼女の身に起こった出来事に、写真の物体が関与しているのだということが――
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:38:10.36 ID:rsiNMDzpO
無理を言ってまで日本の企業に就職したものの、それからの彼女は決して順風満帆というわけではなかった。 日本に憧れや理解を持っているといっても、そこで住んでいくとなれば全くの別物だ。 暇や余裕も多かった大学時代に比べ、一分一秒が忙しない日本の職場というのは、彼女にもついていくのに辛いものがあった。 本来ならば、新人は慣れない仕事を必死で覚え、社会に馴染んでいくものだろう。 しかし、彼女には周囲との大きな違いがあった。言語という問題である。 まだ外国語に理解の深い若者が多かった大学に比べ、年配がひしめく一般企業において、それは十分な問題になり得た。 彼女とて、来日してから日本語の勉強を欠かしたことはない。 だが、それに加えて日本社会での礼儀作法や書類の書式など、覚えることはどんどん増えていった。 必死で覚えようとする彼女に、サポートしてくれる仲間の存在もあった。 しかし、だからといって、それで許容されるほど社会は甘くない。 仕事の失敗が起こる度に繰り返される、上司からの叱咤。 信頼してくれる人物の期待に応えられない、自分の不甲斐なさへの嫌悪。 それらは彼女の心を蝕み、隠し切れないストレスとして大きくなっていった。 そして、彼女が屋根裏から一つの箱を見つけたのは、そんな時だった。 まるで、不満が彼女の心を支配するのを待っていたかのように、それは突然現れたのだ。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:41:57.87 ID:rsiNMDzpO
本来、彼女は部屋の掃除をしようとしていただけだった。 部屋の電球を取り替えようと見上げた天井に、不自然な隙間があることに気が付いたのだ。 なんとなしに触ってみると、パカッと蓋が開くようにしてその部分が外れた。 そして、彼女はその時初めて、この部屋に屋根裏があることを知った。 好奇心の強い彼女にとって、それは大変興味をそそられるものだった。 ホームセンターで購入した懐中電灯を片手に、開いた天井の穴から中を覗き込む。 埃っぽさとどこかひんやりした空気を感じながらその空間を照らしていると、彼女はその奥で四角いものを見つけた。 手を伸ばして近付けてみると、それが箱であることがわかった。 そして、その箱を確かめるため、一旦彼女は屋根裏から頭を引っ込める。 チカチカと明滅する光の下に照らされたその箱は、多少埃をかぶっていたものの、しっかりとした存在感を放っていた。 年代物であろう古臭さはあるものの、屋根裏に放置されていたとは思えないほど保存状態が良かったのだ。 当然ながら、彼女は最初その存在を訝しげなものとして受け取った。 大家からも伝えられていなかった屋根裏に、ぽつんと無造作に置かれていた箱。 その蓋を開けることを禁ずるように貼られていた札も、その思いを強くする要因だった。 しかし、好奇心なのか、異国人故の無知なのか、彼女はその蓋を開けてしまった。 中から出てきたのは、布にくるまれた木の枝のような異様な物体。 そのグロテスクな見た目から、彼女の気味悪さは一層大きなものになった。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:44:43.48 ID:VZ+5vUubO
支援
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:45:56.80 ID:rsiNMDzpO
ハハ ロ -ロ)ハ(前に住んでた人のものかな……) 流石に触る気にはなれなかったものの、彼女はまじまじとその物体が何なのか確かめる。 しかし、切れかかった明かりの煩わしさばかりが目立ち、そちらをなんとかする方が大事であった。 時刻はまだ正午頃であったが、その日は日曜日で、近くの電器屋が開いているか確証が持てない。 もし開いていなければ、少しばかり遠くまで出向かなければならなかった。 彼女は箱のことは一旦置き、部屋着のスウェットからジーンズに履き替える。 そして、外した蛍光灯と財布を持って玄関へと向かった。 ハハ ロ -ロ)ハ(やっていればいいんだけど……) 部屋から出て鍵を閉め、何度かドアノブを回して掛かっていることを確認する。 念のため、移動は自転車で行うことにした。 大学時代の友人から教えてもらった店で買った中古だが、状態は悪くない。 少しペダルが重くなったかな、などと思いながら、彼女はアパートを後にする。 その時にはもう、箱については大家さんに言えばいいだろうと、ほとんど興味は薄れてしまっていた。 しかし、空虚な場所であるはずの彼女の部屋では、ある一つの変化が起きていた。 それは、誰にも聞かれず、誰にも見られず。ほんの少し、何かが動き、音が鳴っただけ。 ――ぱきり、と。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:48:09.04 ID:rsiNMDzpO
体験版はここまでとなります 続きは製品版でお楽しみ下さい
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 01:53:28.60 ID:rsiNMDzpO
やっぱりモチベを回復するには投下だな 巨ロボも期待してるとか泣きそうになった でも巨ロボはちょっとお休みなんだ、ごめんね しかし、この投下の仕方はやっぱダメだ さる対策にはなるけど手間とトラブルが多すぎる でも書き直す部分もわかった できれば読みにくかったかとか教えて欲しいよ 1レス全部地の文とかザラだからね
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 02:04:57.52 ID:rsiNMDzpO
てかダイエーってもうなかった・・・
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 02:21:05.52 ID:rsiNMDzpO
んがが・・・流石に月曜の深夜はキツイか 読んでくれた人、支援してくれた人ありがとね、んじゃまた
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/21(火) 02:35:16.90 ID:VZ+5vUubO
乙だ!頑張れ
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :
2009/04/21(火) 03:30:59.38 ID:I7z/fGZ6O 乙ー