川 ゚ -゚) クーは夜の管理者のようです

このエントリーをはてなブックマークに追加
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 14:46:10.18 ID:80yzHpW/0
食事が済むと、ちょうどそのタイミングでミセリがコーヒーを運んできた。
ありがとうと礼を言うと、彼女からは一礼が帰ってくる。

ミセ*゚ー゚)リ「デレ様、御登校の方は……」

言われるまで気づかなかった。
昨夜からカルチャーショックを受けっぱなしであったし、他に服が無い為制服は休日でも着ているからだ。

川 ゚ -゚) 「心配するな、あれが用意できている」

ζ(゚ー゚*ζ「あれ?」

成程、とミセリは顎辺りに右手を持ってきて思考する。
"あれ"について解らないのはこの場では自分だけのようだ。

ミセ*゚ー゚)リ「デレ様がそれで良いと仰るのであれば……」

同意を求められても、その正体がわからないのではどうしようもない。

ζ(゚ー゚;ζ「あの、"あれ"って?」

川 ゚ -゚) 「転送魔術……と言うか、転送紋章だな」

転送、魔術。デレは記憶の糸を手繰る。
昨夜、目の前に跳びかかってきた魔神の上方に突然現れて拳を食らわせたクーの姿が浮かんでくる。

ζ(゚ー゚;ζ「でも、瞬間移動って難しいんじゃ……?」

35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 14:49:04.83 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「なに、心配は無い。ただ起動するだけで良い。場所の指定も済んでいる。便利だぞ?」

クーの中指と親指に摘まれていたのは、一枚の下敷きのようなものであった。
クリアブルーのそれの真ん中には、円をベースとした模様が大きく描かれている。

ζ(゚ー゚*ζ「体力の消耗とか、そういうのは……?」

川 ゚ -゚) 「無い。こいつは機械に切れない燃料筒が付いているような物でな、魔力の生成から式の発動まで一人でやってくれる。
      発動するには真ん中の紋章の外周を指で辿ればOKだ。時計回りに辿れば学校、反時計回りならこの屋敷に着く」

そのまま、差し出してくる。
デレは両手でそれを受け取った。

川 ゚ -゚) 「とりあえず、反時計回りになぞって見てくれ。デレの部屋に着くはずだから、そしたら登校の用意を済ませてここに戻ってきてくれ」

言われた通りにすると、反応はすぐ起こる。
まず紋章が発光。続いてその光が体を包むほどに強くなる。
手を見てみると、先の方からみるみる消えていく。良く目を凝らすと、塵のようになって霧散しているのがわかる。
手足、胴、首、頭と消えると、閉まったシャッターを下に下ろし開けるように視界が広がっていく。
ここまで全て一瞬。周りを見てみると確かに自分の部屋だった。

ζ(゚ー゚*ζ(……すげえ)

鞄を肩に引っ掛け、食堂まで戻ると変わらない位置にクーとミセリはいた。

川 ゚ -゚) 「問題は無いな」

肯定を返す。

川 ゚ -゚) 「それじゃあ時計回りになぞって行ってらっしゃい、だ。もし失敗しているようだったらすぐに助けに行く」
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 14:52:00.11 ID:80yzHpW/0
ζ(゚ー゚;ζ「最後に怖い事言わないでよ……」

川 ゚ -゚) 「何、心配は要らないさ。私を信じろ」

従い、時計回りに指でなぞる。
再びの発光、体の分解、視界の開帳。
校門前に現れた自分を見て、何人かは驚いているようだった。

ミセ*゚ー゚)リ「……一晩で用意されたのですか?」

デレが転送された食堂で、ミセリは問うた。
クーの態度を見るに、転送は成功しているようだ。

川 ゚ -゚) 「まあ、原理はこれと同じだろう?」

右手を差し出す。そこに光るのは黄色の宝石の指輪。

川 ゚ -゚) 「時間が無かったから多少サイズが大きくなってしまったのは仕方ないな」

ミセ*゚ー゚)リ「いえ、そうではなくて……」

一拍置いてから、尋ねる。

ミセ*゚ー゚)リ「何故、デレ様の学校を知っておられたのですか……?」

沈黙。

川;゚ -゚) 「い、いやー……ははははは」

37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 14:55:10.33 ID:80yzHpW/0
ξ#゚听)ξ「笑ってごまかさないの!」

どうしても、納得がいかないらしい。
机を挟んで向こうに立っている少女、ツンが机を叩く。

ζ(゚ー゚;ζ「いや、だから見間違いだって……」

ξ#゚听)ξ「見間違いで人が突然現れるわけ無いでしょ!」

ζ(゚ー゚*ζ「授業とテストの結果以外存在感ゼロの私でも?」

ξ#゚听)ξ「アンタだったら気づくわよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「それ、ツンだけでしょ?」

言われて、思考モードに入る事五秒。ツンは結論を出した。

ξ゚听)ξ「まあそれもそうよね。私以外が普段からアンタを一々気にするわけないもの」

ζ(゚ー゚;ζ(地味に傷つくなぁ……)

ξ゚听)ξ「それじゃあそういう事にして置いてあげるわ。今日も一日頑張りなさいね」

おほほほ、とわざとらしい笑いを残して、ツンは自分の席に帰る。

ζ(゚ー゚;ζ(あ、あっぶねぇぇぇーーー!)

クーは"突然人が現れたらそりゃ普通大騒ぎだろ"とは考えていなかったのだろうか。
帰ったら転送場所を検討してもらおう、と思いつつ、デレは次の授業の用意をした。
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 14:55:14.16 ID:8ayhznLNO
支援
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 14:57:59.46 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「しかし暇だな」

ふと、クーが口を開く。
屋敷に残ったクーとミセリの二人は現在、庭にテーブルと椅子を用意してティータイム中である。

ミセ*゚ー゚)リ「下手に仕事が無いのも困りもので御座いますね」

川 ゚ -゚) 「全くだ。身分で食っていける今の状況も手を貸しているに違いない」

ミセ*゚ー゚)リ「そこは……働いてみては如何でしょうか?」

仕事か、とクーは頭を抱える。
そのままの姿勢で結論を先に下した。

川 ゚ -゚) 「無理だと思う。魔獣狩りでしかも魔術師だからな」

ミセ*゚ー゚)リ「国から止められるのでしょうか?」

川 ゚ -゚) 「だろうなあ。魔術が知れ渡るのは構わないんだろうが、私が何をするかわからないとか言われてな……。
      国からしてみれば私達は魔獣狩ってれば良いのだろうよ。尤も、今回の戦いが終わったら、その役目も終わりだな」

ミセ*゚ー゚)リ「制御機関……ですか」

川 ゚ -゚) 「ああ。ドクオからあれを取り戻してヴィップに送れば、それで魔獣は全部消えるさ。
      ドクオのやってる"産み出す"方法だと、どうやら『シベリアの鐘』経由じゃなくても使えるようだけどな」

ミセ*゚ー゚)リ「あれを使うんですか……だとすると、歴史に名前が残りますよ」

川 ゚ -゚) 「だろうな。創世以来の『シベリアの鐘』の出番だ」
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 14:59:46.28 ID:0RrMy13uO
つまらん
冗談抜きで
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:01:01.54 ID:80yzHpW/0
シベリアの鐘。その言葉に昨日の苦痛が蘇りかける。

ミセ*゚ー゚)リ「……御嬢様」

川 ゚ -゚) 「何だ?改まって」

ミセ*゚ー゚)リ「もし……もしもですよ?この先に現れる魔神がとてつもなく強大で、一目見ただけで敵わないと解る位強大で……、
       それでも、御嬢様は退かずに戦われるのですか?」

川 ゚ -゚) 「そうだな。共に研究した仲間や、デレの両親の命を奪ったドクオの勝手は許しては置けん。
      独りよがりだが、デレを家に護る事で、両親を失わせてしまった償いもしなければならない」

予想通りであった。
即ち、これで魔神に関する自分の予想も合っていたならば、彼女の命は――

川 ゚ -゚) 「どうした、ミセリ?お前らしくもないぞ?」

気づかずに表情が暗くなっていただろうか。
慌てていつもの表情を作る。

ミセ*゚ー゚)リ「その……自分の命も、大切に扱っていただかなければ……」

川 ゚ -゚) 「心配か?ますますお前らしくないな」

プラス思考が大きな力となるのはミセリも知っている。
しかし、魔神――その強大な敵の正体――は、その思考をたやすく打ち破るだろう。
それを告げることは、力を奪う事に他ならない。

42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:04:09.11 ID:80yzHpW/0
ミセ*゚ー゚)リ「しかし、強大な力を目の前に――」

右手が伸びてきた。
それは頭に触れるとくしゃくしゃと撫で回す。

川 ゚ -゚) 「心配は要らないぞ、私は夜の管理者だからな。
      必ず勝って帰ってくる。ミセリが待っててくれるから。デレはどうか解らないが、彼女のためにも帰るつもりだ」

ミセ*゚ー゚)リ「――――有難う御座います、御嬢様」

上出来だ、と返事を評価すると、クーは右手を戻す。
その右手を腰辺りのポケットに突っ込み、懐中時計を取り出して見る。

川 ゚ -゚) 「四時、か。もうすぐと言えばもうすぐだな。
      ……街に出る。その方が、遭遇は早いだろうからな」

時計をポケットに戻し、立ち上がる。
歩いていく後姿に戸惑いは無い。銀の髪は夕の灯りに照り、歩む微風をはらむ。

川 ゚ -゚) 「ミセリ」

後ろに呼びかける。

川 ゚ -゚) 「帰る私をもてなす準備を忘れるなよ?」

彼女の回答は決まっている。
それが給仕の仕事だから。

ミセ*゚ー゚)リ「――――畏まりました、御嬢様」
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:07:03.42 ID:80yzHpW/0
屋敷は森の中にある。
そこから歩いて町へ出ると、一時間はかかることになる。
五時。
まだ明るい時間ではあるが、可能性は棄てきれない。
何故ならば、違和感を感じるからだ。

目に見えているものが"見えているのに存在を感じられない"感覚。
非常に精巧に存在を作られてはいるが、魔術に精通したものならば一瞬でその違和感を見抜く。
裏空間。
特定のあるべき空間を『裏返す』事により、魔獣の被害を最小限に減らす大規模魔術だ。
魔獣の出没地帯ではないこの区域には発生装置が存在しないゆえ、魔術の都ヴィップから魔術師が数人派遣されている。

川 ゚ -゚) (この感覚だと……今日は何のイレギュラーも無いようだな……)

その例が、一日目、二日目のデレである。尤も、二日目はある意味例外である。
何故なら、この裏空間はクーと魔神を目安とし展開されるものだ。
そしてその裏空間に『入れられる』のは、その二者のみである。
しかし、二日目のデレは裏空間が展開された時にちょうどクーの近くに居た。
よって半ば巻き込まれる形で裏空間に取り残されてしまった、所謂ミスである。

一日目のデレがクーの言う『イレギュラー』である。
これは単に裏空間を形成した魔術師のミスでしかない。

川 ゚ -゚) 「さあ」

声を上げる。
フィールドは既に市街地。偽物の塀に囲まれた偽物の家が立ち並ぶ虚像の空間。

川 ゚ -゚) 「私はここだ魔神、殺せるものなら殺してみろ」
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:10:10.34 ID:80yzHpW/0
「随分なものの言いようじゃあないか」

「俺達を舐めてもらっては困る」

声は二つ聞こえた。
地面から生えるように現れた陽炎。それが人の形を形成する。
黒のスーツに身を通した二人。その顔は、ひどく似通っている。

( ´_ゝ`)「始めまして夜の管理者。活躍は聞いている」

(´<_` )「七十年ぶりの出番に相応しい相手だと、私達は判断した」

川 ゚ -゚) 「は、見当は付いている。おおかたシベリアで殺された人型だろうが」

笑いに感情は込めない。
近い感情があるとするならば、嘲り。

( ´_ゝ`)「良く知っているな夜の管理者。勉強好きは嫌いじゃあない」

(´<_` )「尤も、貴様が軽く言ってのけたシベリアがどんな場所かは予習不足なようだがな」

川 ゚ -゚) 「何を戯言を、お前らが墓標を立てた場所だ。この回答で百点は硬いな?
      そして次のテストにはこう出してやろう。"熱と渇きの二つ目の墓は?"答えは勿論――――」

光が右手に満ちる。
夜を切り裂く、眩い力が。

川 ゚ -゚) 「極東大陸 新都・東京」

45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:13:08.75 ID:80yzHpW/0
( ´_ゝ`)「言ってくれるな夜の管理者」

(´<_` )「だが私達は"本物"だ」

( ´_ゝ`)「ドゥルジやアエーシュマ等の寄代とは訳が違う」

(´<_` )「七十年前の 『魔神』 」

川 ゚ -゚) 「減点三十だ」

空高く右手を掲げ、その指を一つ鳴らす。
霧散する光は帯を成して空に上り、氷柱の形を取る。

川 ゚ -゚) 「それも含めての『二つ目の墓』だと、読み取れ!」

降り注ぐ。
硝子の割れる快音を上げて地面に殺到すると思われたが、それはならなかった。
鼻の高い男の両手には、炎が宿る。
その片方を上空に弧を描くように振ると、殺到する光の氷柱を炎が切り裂く。
炎が空気を破る音と共に、それら全ては無音で霧散。

( ´_ゝ`)「……本物 だ」

川 ゚ -゚) 「成程、それでは本物に敬意を払おう」

光は、既に宿っている。
話す間にも、それは密度を増している。

川 ゚ -゚) 「灰に帰すか塵に帰すか……どちらを取るはお前ら次第だ」
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:15:44.21 ID:0BV6XzP7O
つC
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:16:09.54 ID:80yzHpW/0
(´<_` )「……"ほ・ん・も・の"だよ夜の管理者」

後ろから聞こえる声に疑問は抱かず、クーは無言で右手を裏拳で叩きつける。
右の爪先を軸にし、体を独楽のように回す事で、高速の拳が水平に飛ぶ。
しゃがんで回避した鼻の低い男は距離を取るように地面を蹴った。

川 ゚ -゚) 「……思ったよりは厄介じゃあないか、墓の数でも増やす気か?」

後ろから飛来する炎の矢に、そちらは向かないまま右手の光を盾としてぶつける。
狙い通り攻撃は防ぐことができたが、爆煙が満ちる事となった。
しかし目の前には関係ない。鼻の低い男は何をするでも無くそこに立っている。
命取りだ。地を蹴って加速。右手の光が虚空に漏れ、一直線を描く。
到達点は鼻の低い男。一気に一人を仕留め、終わらせる。

川 ゚ -゚) 「貰った……!」

加速と共に突き出された右腕は、体を貫いた。
そのまま腕、肩、胴、肩、腕と貫いた所で、この立体の正体に気づいた。

川 ゚ -゚) (こいつも虚像か……!)

視界上に、此方を飛び越える男の姿が見えた。
何を考えるでもなく、反射的に右手の光を開放し、衝撃で追うように飛ぶ。
間違いだった、と感じたのは体が浮いた直後であった。
自分が相手をしているのは一人だけではない。

( ´_ゝ`)「落ちろ」

鼻の高い男の指から、炎のつぶてが放たれる。
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:17:49.22 ID:YIwuwY7/0
支援しよう
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:19:01.64 ID:80yzHpW/0
その軌道は直撃コース。
空に逃げ場は無い。
右手の指輪が光を集め始めるが、完全な防御には間に合わない。

被弾スレスレまで光を集めると、それを開放する。
霧散したそれは体を覆う膜となる。しかし、護る盾とはならない。
五連の爆発を受ける。煙を突き破って、勢いを弱めたクーが地面に降り立った。
手や顔に受けた煤とその苦い表情がダメージを物語る。

川 ゚ -゚) (何だ?この大した事のない攻撃……目的は殺傷ではないな)

恐らくは虚像と関係している。
光を集めながら、静まり返る周囲に警戒を配る。

(´<_` )「さて、流石に生きているな」

電柱から鼻の低い男が下りる。

川 ゚ -゚) 「小細工しか仕掛けずに何を言う。まさかこれしか出来ないとは言わないだろうな」

( ´_ゝ`)「そういう台詞は小細工を破ってから言うものだ」

後ろの上空から言葉と共に地面を斜めに穿つよう飛来した炎弾を、後ろに跳躍して回避。
地面を穿ったそれは煙を上げる。
それらの弾を追うように鼻の高い男が煙に飛び込むのが見えた。
地を擦る音。
煙の向こうから、再び放たれた炎弾もまた避けるに容易い。

川 ゚ -゚) 「発射が見えなければ良い訳ではない……!」
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:22:09.73 ID:80yzHpW/0
跳ぶ。前に行われたそれは炎弾と対面するたび地面を蹴る事で進路をずらし、それを横に見送る。
全ての弾を抜けると、右手を目の前にかざす。手首を軸に回る円盤が形成され、そこから光の弾が連続する。
それらは煙を破り、向こうに突き刺さる。
速度は、クーに煙を突き破らせる。
見える双子。
円盤を剣に変化させると、左腕の向こうに構える。

川 ゚ -゚) 「厄介なら……纏めて葬る!」

振り抜く。
しかし手ごたえは無い。
迷う事無く、前に投げる脚で上に跳躍する。
その地点に、とびきり大きな炎弾が飛来したのはその一瞬後だ。

体を捻り、向きを百八十度変える。
下を望んでも敵は居ない。あるのは巨大炎弾の生み出した爆煙のみだ。

川 ゚ -゚) (煙の中か!)

溜めていた光を爆発させる事で推進力を生み、煙に突っ込む。
薄暗いその中に、二つの濃い影が見えた。

川 ゚ -゚) 「終わ――――」

「待っていたよ夜の管理者」

声が聞こえたのは前からではない。
ならば、と振り向こうがそこは煙幕だ。しかし声は間違いなく後ろから聞こえた。
背に一筋汗が伝うのを、クーは間違いなく感じた。
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:25:29.71 ID:80yzHpW/0
突然煙を突き破り飛来した赤の熱弾を、防ぐ事はできなかった。
連続。鳩尾を五回穿つ。
衝撃がクーの体を浮かし吹き飛ばすと共に、黒い飛沫が散る。

川  - ) 「が……ッ!」

突き抜ける。煙の向こうは見えない。
地面落下の衝撃は、意識を一瞬暗転させた。
尤も、その一瞬を意識出来なかっただけかも知れないが。

視界が開けてくるとすぐに、炎の弾が飛来するのが見えた。
防御は間に合うだろうが、それをさせるための思考が間に合っていない。
爆発音は無機質に響く。

煙幕が路地を支配するのを、双子は眺めていた。

( ´_ゝ`)「やったか」

(´<_` )「動きは止めただろうな」

自分の姿を隠す反面、向こうも隠れるのが煙幕の難点ではある。

( ´_ゝ`)「動きを止めたと言うのは?」

(´<_` )「相手は夜の管理者だ。その力なら、この程度の魔術攻撃で絶命したりはしない」

( ´_ゝ`)「成程そういう事か弟者。私の力を馬鹿にするか」

(´<_` )「事実は認めるべきだ兄者。私も自分の力を半ば諦めてはいる」
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:26:06.82 ID:8ayhznLNO
しえん
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:28:00.89 ID:q4PpEVCa0
構わん続けろ
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:28:15.13 ID:80yzHpW/0
( ´_ゝ`)「何、動きが止まっているなら死んだも同様。肉体的に殺れば良い」

(´<_` )「魔術に特化した人型とは思えない台詞だな兄者よ」

( ´_ゝ`)「なあに元は魔獣。力に訴えるのがその生き方よ」

煙幕に歩む。
その足音までも一体化させて、双子はその距離をつめる。

「確かに便利で御座いますね、煙幕」

響く声に、双子は振り返る。
左腰に垂らす右手に光るカードを一枚摘んだ少女。
黒のドレスを白のエプロンで染める黒髪は、不敵な笑みを浮かべていた。

( ´_ゝ`)「誰お前」

(´<_` )「何でここに居るの」

ミセ*゚ー゚)リ「この程度の裏空間への侵入、造作も無い事で御座います」

カードを握りつぶす。
塵となった光は少女の両手に宿り、消えた。

( ´_ゝ`)「とりあえず殺すか」

(´<_` )「魔獣らしくな」

ミセ*゚ー゚)リ「……御嬢様、お迎えに上がりました」
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:30:46.07 ID:0BV6XzP7O
しえ
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:42:02.26 ID:0BV6XzP7O
捕手
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:46:35.47 ID:8ayhznLNO
サルゥータ?
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:48:57.70 ID:q4PpEVCa0
しえん
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:54:21.25 ID:0BV6XzP7O
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:56:04.24 ID:YIwuwY7/0
猿にしても長いだろ
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:56:25.52 ID:q4PpEVCa0
心が折れたか?
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:57:35.17 ID:8dM4HM7nO
さる
→作者「やっべまださるかな」
→投稿ミス
→さる
→作者「やっべまたさる?」
→投稿ミ(ry

たまに、ある
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 15:58:02.92 ID:YIwuwY7/0
>>61

シーッ

てかお前ら支援はしないのにいなくなると何処からか沸いてくるのな
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:03:05.19 ID:80yzHpW/0
「心配しないで待って居ろと、言っただろう?」

煙が晴れる。
夜の管理者は、傷一つ無い姿でそこに立っていた。

ミセ*゚ー゚)リ「お帰りが遅かったので、心配になって」

( ´_ゝ`)「どういうことだ弟者、夜の管理者、無傷だぞ」

ミセ*゚ー゚)リ「煙幕は便利なもので御座いますね」

割り込むようにミセリが言う。

ミセ*゚ー゚)リ「時には姑息な手段も悪くは無いものです」

( ´_ゝ`)「何言ってる、こいつ」

(´<_` )「煙にまぎれて傷を治したらしい」

( ´_ゝ`)「なんて卑怯な……!」

ミセ*゚ー゚)リ「それでは私は此方の相手をしますので、御嬢様は其方をぶちのめしてくださいませ」

そう言うが早いか、弟者に蹴りを放つ。
自分の視界の端を吹き飛んでいく弟者とそれに続くミセリを見送り、クーも右手に光を宿す。

川 ゚ -゚) 「一人だけならお前なぞ煙を撒き散らす公害に過ぎんよ」

( ´_ゝ`)「それは承知している」
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:04:33.65 ID:dHxjBgG/O
一度猿喰らうと暫くは喰らい易くなるから、気をつけろよー
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:05:54.44 ID:q4PpEVCa0
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:03:05.19 ID:80yzHpW/0
「心配しないで待って居ろと、言っただろう?」


読者に言ってんだな。わかります
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:07:50.71 ID:80yzHpW/0
兄者の両手に、炎が生まれる。

( ´_ゝ`)「だが腐っても魔神、人間に劣るようではその名を持てん!」

頭上に持ってきた両手を、地面に振り下ろす。
そこに宿る炎は地を伝いクーに襲い掛かる。
虚像のアスファルトを砕きながら進む炎を、クーは光の盾で止めた。
それを飛び越え、兄者に接近する。

( ´_ゝ`)「望むところだ、夜の管理者!食らえぃ!」

交差させた手に宿る炎は溶岩の如き密度を持つ。
対するクーの、空を走る勢いに任せ後ろに残したままの右腕も、眩い光に覆われていた。

( ´_ゝ`)「これが私のマグマ・アクシスだ……!」

川 ゚ -゚) 「パクリは良くないぞ、魔神」

魔神が両腕を突き出すと、そこから炎が噴出する。
竜の如きそれにクーは右手の光を叩きつける。形は円盤を組み合わせた盾だ。
半透明のそれを通し、視線が対峙する。

川 ゚ -゚) 「成程……確かにッ……魔神だ……な!」

( ´_ゝ`)「言った……だろ……う?その名は……簡単には……ッ持てん!」

焼かれる盾と、焼く炎。
クーの右腕には血管のように光が辿っているし、兄者の手からは炎が濁流のように噴出している。
辿る光は盾に力を与え、噴出する炎は盾を破らんとする。
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:10:16.79 ID:8ayhznLNO
しえん
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:12:37.61 ID:80yzHpW/0
やがて、その均衡が破られる事となる。
兄者の手からは炎が生まれなくなった。
両腕をだらりと下げ、肩で息をする。

(;´_ゝ`)「ハァ……ッ……み、見事、夜の管理者……!」

川 ゚ -゚) 「当然だろう。単純な力比べでは私が上だ」

さて、とクーは前置きし、兄者の頭を左の手で鷲掴みにする。

川 ゚ -゚) 「塵になるか灰になるかは選ばせてやる。どちらだ?」

(;´_ゝ`)「敗者に……口を出す権利……は無い」

川 ゚ -゚) 「そうか」

速度は激流、指先から肩まで、赤黒い何かが幾筋も通る。
鷲掴みした兄者の頭から何かが流れ出ているのだ。
正確には、吸い出していると言った方が妥当であろうか。
兄者は痙攣する。目は既に白を剥き、口はだらしなく開いていた。
激流が終わると兄者は気絶したように頭を垂れるが、すぐにそれを上げてクーの顔と対面する。

( ´_ゝ`)「……何故私は生きている?」

川 ゚ -゚) 「私にも解らん。ただ、単純に魔力を構造体とした魔獣は魔力を吸われると消える」

( ´_ゝ`)「何故だ……七十年前に倒された時は確かに消えた筈。今の私は―――」

は、と笑うクーの声が響く。直後に成程、の言葉も付随。
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:13:04.75 ID:0BV6XzP7O
支援
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:16:07.16 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「恐らくお前はこれで魔術回路を失っている筈だ。人型の魔獣は……お前は魔神か。人として産まれているらしい。
      七十年前に消えたって言うのは、恐らくお前を産み出した奴が消したんだろうな。魔術回路の漏出防衛の為に」

( ´_ゝ`)「どう言う……?」

川 ゚ -゚) 「鹵獲防止の為に兵器を爆破するようなものだ。尤も、この例えがお前に通用するかは解らんが。
      ところでお前はどうする?今やお前は魔獣ではなく人間だ。恐らく、向こうも同じ結果にはなっているだろうが」

後ろを指差す。
その先には弟者とミセリが戦っているはずだ。

( ´_ゝ`)「弟を誇ってやりたい気持ちはあるが、おおむね同感だ」

溜息をつき、うわごとのように呟く。

( ´_ゝ`)「結局私達は昔も今も利用されていただけか」

川 ゚ -゚) 「利用とは……主、と言う奴か」

( ´_ゝ`)「ああ。我が主は昔も今も変わらん。
      アカ・マナフ……悪しき思考を司る、野心に溢れた神さ」

その名前に、クーは疑問を覚える。
すぐさま問う。

川;゚ -゚)「待て、"アンリ・マンユ"の間違いではないのか?」

( ´_ゝ`)「アンリ・マンユ?聞いた事の無い名前だな。
      少なくとも私を呼ぶ声は"アカ・マナフ"と名乗っていた。今も昔もそうだ」
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:20:44.72 ID:80yzHpW/0
ミセ*゚ー゚)リ「さて」

右手が押していた弟者を、地面に叩きつける。
肺から息を漏らす音と背中が地面に叩きつけられる音が同時に鳴る。

ミセ*゚ー゚)リ「私は目を離しませんし貴方を隠す煙幕もありません。
       果たして貴方はその能力でどう私に抵抗しますか?」

(´<_`;) 「難しい質問だな。はっきり言って無理だ」

ミセ*゚ー゚)リ「ならば、負けを認めますか?出来る事なら私も面倒は掛けたくないもので」

(´<_` )「兄が戦っていると言うのに、弟である私がそれを裏切るわけにも行くまい」

それを聞くとミセリはくるりと振り返り、三歩遠ざかる。
後ろを向きながら弟者に告げる。

ミセ*゚ー゚)リ「なら十秒待ちます。その後、私は本気で貴方を倒しに掛かる。
       ……後ろを向いている今なら虚像を作っても判りませんよ?」

数える。聴こえるように声を出して。
十のカウントが終わると、ミセリは右足を軸に回転し、振り向く。
両手には既に光が宿っている。
地を蹴り、目の前に立つ弟者に容赦なく拳を叩き込む。
しかしそれは虚像。拳は貫通する。

(´<_` )「ワンパターンで悪いが、これしか能が無いものでな」

その隙に、実像の弟者は後ろからミセリに跳びかかった。
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:25:13.76 ID:80yzHpW/0
自分の力は強くは無いが、それでも頭を思い切り殴れば戦闘不能に陥らせる事は可能だ。
弟者はそれを狙っていた。
跳びこみの加速を持って突き出された拳は、当たったならば確かにそれ相応の威力を持つだろう。
しかし、頭に接触するかしないかのところで、突然そこに光の円盤が具現、打撃を防いだ。

ミセ*゚ー゚)リ「本日の私は万全ですので、これくらいは朝飯前なのです」

振り返る事もなく言い放つ。
直後、弟者の足元から光が伸びる。
それは高く伸び、十字架を形成する過程で弟者の身を拘束した。

ミセ*゚ー゚)リ「還りなさい」

赤い何かが拘束された弟者の身から染み出し、幾束もの筋を作って十字架を伝って根元に殺到する。
根元に渡ったそれは地面を伝いミセリの足元に一直線を描く。
弟者は声を発さなかったが、その表情が声を発していたならば恐らく叫びだろう。
何かを絞りきると、ミセリは右手を横に切るように振る。
すると十字架は硝子の割れるような音と共に砕け、拘束を解かれた弟者は糸を切られたマリオネットのように地面に落ちる。

ミセ*゚ー゚)リ(……なんで体が残っているんです?)

川 ゚ -゚) 「終わったか、ミセリ」

振り向くと、声の通りにクーが居た。
その隣に兄者が居る事から、恐らくそれも同じ状況だろう。

ミセ*゚ー゚)リ「これは一体?」

ミセリは地面にくず折れた弟者を指差して言う。
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:29:43.93 ID:sFn2wiI1O
支援
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:29:54.94 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「どうもこいつらは人間と魔術的視点から見た構造が同じらしい。
      魔術回路を失っている以上こいつらは人間の害にはならないだろう。人格的にも。
      と言う訳で殺すのも忍びないと思うんだが……ミセリはどう思う?」

( ´_ゝ`)(え?決定権譲ってくれたんじゃないの?)

ミセ*゚ー゚)リ「まあ大丈夫でしょう。大した事もない奴らですし」

(;´_ゝ`)(何て奴らだ……)

川 ゚ -゚) 「と言う事だ兄者とやら。その弟引きずって何処へでも行け。着いて来るなよ」

去ろうとするクーとミセリに、兄者は待ったを掛けた。

(;´_ゝ`)「待てよ!私達はどう生活すれば良いんだ?家とか!」

それを聞くと二人は立ち止まる。
顔を向き合わせていることから、一応は取り合ってくれていることを判断した。
話し合いが終わると、クーだけが振り向き結果を告げる。

川 ゚ -゚) 「最近住人が引っ越した家があってな。彼女が許しさえすればだが、その家を使って良いぞ。
      一応今から聞いてやる。駄目だったら諦めて飢えろ」

懐から携帯電話を取り出し、コール。
ベル三回でそれは相手に繋がった。

川 ゚ -゚) 「もしもし……え?何で知ってるかってそんな事はどうでも良いだろう。
      そんな事より前にデレが住んでいた家なんだが、ちょっとホームレスを拾ってな。住ませてやっても良いだろうか?
      ……もう自分の家じゃないって?そんな悲しい事は言うな。出来れば断って欲しかったんだが。ん?気にするな。それじゃ」
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:31:43.42 ID:j5QRlm6iO
支援
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:33:23.97 ID:80yzHpW/0
川 ゚ -゚) 「OKらしいぞ、良かったな。じゃあな」

結果だけ告げると、二人はスタスタと帰って行ってしまった。
残された兄者は一応は安心する。
そう、一応は。

( ´_ゝ`)「……で、その家は何処にあるんだって言う」

気絶している弟者も含めて、問題は山積みである。

- 3rd night. 熱と渇きの双子の兄弟 end
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:37:26.25 ID:80yzHpW/0
書いていて思ったんだ。
この回のタイトルは三夜目なんだが、話の中身は殆どニ夜目じゃね?
と言うわけで以上第三回でした。
支援どうもありがとう!

疑問質問ばっちこいなんだぜ
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:47:56.01 ID:YIwuwY7/0
とりあえずおつかれ
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 16:56:03.21 ID:8ayhznLNO
乙かれ
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 17:05:12.53 ID:0CSZbAdoO

いまいち掴めなかったんだが、世界観は現代でいいのか?
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 17:21:14.35 ID:80yzHpW/0
ちょっと遅れた。申し訳ない。
現代でおk。
詳しい時代説明は終わった後か要望にこたえて次回とかにでもしようと思う。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
把握。
そしてミセリは琥珀っぽい感じと認識しておくぜ。