代理らしいよ
2 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:24:16.10 ID:IHneakuKO
初めての戦闘は、彼の口によって火蓋を落とされた。
物陰から出て来た者は四名。
まさに彼の言った通りである。
(,,゚Д゚)「ふっ!」
まず一人、飛び掛かって来たところを男の槍がはたき落とした。
その隙に続けて来た二人目は、彼女の剣の石突きによって沈んだ。
「なんだと!?」
「つ、強い……」
残りの二人が怯んだところに彼は飛び込み、一人を石突きで顎を打ち上げ、そのままの勢いを殺すことなく、穂先を残りの脇腹へと振り抜いた。
全てが一瞬で終わった。
そう、僕の初めての戦闘も、僕は全く何もせずに終わりを告げたのだった。
3 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:26:27.03 ID:IHneakuKO
(,,゚Д゚)「ふー、肩慣らしにもならねぇな」
男は槍を肩に置きながら、首をならして戻ってきた。
(*゚ー゚)「ねぇ、大丈夫?」
女の子にはここでも気遣われた。
見た目は僕より幼いのに、彼女も十分に戦っていた。
それに比べて自分はと思うと、情けなくなる。
(,,゚Д゚)「ん? 自分が戦えなかったからって気を落とすなよ。
むしろ最初から普通に戦える方がおかしいってもんだ」
そう言ってまた豪快に笑った。
よく笑う人だなぁ。
けど、こういう人は素直に尊敬できる。
そう思った。
第五話――旅路――
4 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:28:01.49 ID:IHneakuKO
( ^ω^)「あの、ありがとうございましたお。
僕はブーンと言いますお」
(,,゚Д゚)「ああ、気にすんなよ。俺らも襲われたようなもんだしな」
(*゚ー゚)「私はしぃ。で、彼がギコ。
私達も冒険者なの」
( ^ω^)「私達も? なんで僕も冒険者だと分かったんだお?」
(,,゚Д゚)「愚問だな。武装してる奴なんて、騎士団か野党か冒険者しかいない。
騎士団の奴が戦闘経験ないなんて言わないし、野党なら群れてる。
そう言うこったよ」
なるほど、なかなか鋭い人だ。
(,,゚Д゚)「んで、あんたはどうしてこんな場所にいるんだ?」
( ^ω^)「お、そういえば……」
5 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:29:31.65 ID:IHneakuKO
そういえば、目的地は僕は知らなかった。
彼女があれこれいうものだから、てっきり知ってたものだと勘違いしてた。
( ^ω^)『そういえば聞いてなかったお。
で、目的地はどこだお?』
ζ(゚ー゚;ζ『ブーンさん話聞いてなかったんですか……。
私達の今の所の目的地はこの国の首都、VIPですよ』
聞いてなかったとは心外な。
……確かに、異世界の街を見てた時に興奮して耳を貸さなかったかもしれないが。
(*゚ー゚)「どうしたの?」
(;^ω^)「え。あ、失礼しましたお。
取りあえずはこの国の首都を目指そうとは思ってますお」
6 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:32:09.30 ID:IHneakuKO
(*゚ー゚)「へぇー、じゃあさじゃあさ、私達と一緒だね」
(,,゚Д゚)「そうだな。
旅は道連れとも言うし、どうだブーン。一緒に行くか?」
渡りに船とはこのことだ。
僕は有り難くその申し出を受けることにした。
ζ(゚ー゚*ζ『ラッキーでしたね』
( ^ω^)『ホントだお』
(,,゚Д゚)「ついでにだが、お前が良ければ、ちょっと指南してやってもいいぞ」
(*^ω^)「ホントですかお!?
それは助かりますお」
(*゚ー゚)「気をつけてねー、ギコの教えはきっついよー」
(,,゚Д゚)「まぁ、軽くはないな」
だが、全く初心者のまま、過ごす訳にもいかない。
その申し出も、有り難く受けさせていただいた。
(,,゚Д゚)「じゃあこいつらが目を覚まさない内に行くか」
(*゚ー゚)「そうだね」
言われて見れば、確かに皆気絶してはいるものの息はあった。
改めて思う。この二人は強いと。
7 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:33:37.80 ID:IHneakuKO
道行く時、彼は何かを探しているように見えた。
(*゚ー゚)「すぐに分かるよ」
彼女はそう言っていたが、僕には未だに理解出来ない。
そう思っていると、おもむろに彼は太い木の枝を二本拾い上げ、内一本を僕に手渡した。
(,,゚Д゚)「VIPに着くまでの間、これを使って稽古するからな。大事に持っておくんだぞ」
と言われた。
なるほど。そう言うことだったのか。納得。
(,,゚Д゚)「VIPまでは距離もあるし、稽古は野営の準備が終わって、寝るまでだな」
( ^ω^)「了解ですお」
8 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:35:36.59 ID:IHneakuKO
確かに彼の稽古は熾烈だった。
その日の夜、早速相手をしてもらったが、相手が相手だ。
まず一撃も当たらない。
(;^ω^)「フッ、やっ、シッ」
(,,゚Д゚)「おら、大振りすんな。そんな振り方じゃ動物さえ狩れないぞ?
……それっ!」
(;^ω^)「くそぅ……痛っ!」
僕が切るのは空ばかり、そして、直後に決まってギコさんのカウンターが直撃するのだ。
(,,゚Д゚)「それに、相手に隙を見せるな。
攻める時は相手に息つく暇も与えるんじゃない!」
ギコさんの一撃は痛い。
手加減されたものだと分かっていてもやはり痛いものは痛いのだ。
9 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:39:21.24 ID:IHneakuKO
ζ(゚ー゚;ζ『あの、大丈夫……じゃないですね』
(メメ^ω;)『じゃないお……』
僕はその日だけでも十を超える青痣を作ることとなった。
口の中も切れたのだろう。
その日の夕食は血の味の他には痛みしかしなかった。
ζ(゚ー゚;ζ『うわー、痛そー』
(メメ^ω^)『痛そうじゃなくて痛いお。
こりゃ眠れるか分からんお』
ζ(゚ー゚*ζ『子守歌でも歌いましょうか?』
(メメ^ω^)『……遠慮しておくお』
10 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:40:38.23 ID:IHneakuKO
気が重い。
夜なんてこなければいいと思う。
分かってほしいが、それだけギコさんとの稽古は厳しいのだ。
『……ん』
ああ、鬱だ。
太陽よ、出来ることならそのまま落ちないでくれ。
ζ(゚ー゚*ζ『ブーンさん?』
( ^ω^)『お、なんだお?』
ζ(゚ー゚;ζ『なんだおじゃないですよ、全く。
これからのためにこの世界の情勢などを知る必要があると言ったじゃないですか』
前言撤回。
早く落ちてくれ。
ζ(゚ー゚*ζ『コホン、では改めてこの世界の国々から始めましょう』
11 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:44:20.51 ID:IHneakuKO
この世界は主に四つの国に分けられます。
ヴィップ、VIPプラス、ラウンジ、鬼国です。
ヴィップとVIPプラスは元はVIPという一つの国でした。
しかし先代国王が崩御した後、VIPプラスは独立を宣言。
VIPも国名をヴィップへと変え、また、国内の治安を守るのに必死で独立を黙認した形となります。
ヴィップの現在の王位には空位という訳ではありませんが、実権は宰相が握っています。
VIPプラスは共和国です。
国を運営する議会には百人程が参加しており、長もいます。
ラウンジは常に侵攻の機会を伺う軍事帝国として知られていますが、今は飢饉の影響が酷く、それどころじゃないようです。
皇帝は仮面を着けてると言う有名な話もあります。
鬼国は国というよりは、いくつかの集落の集まりといった方が近いでしょう。
長は特には決められていませんが、一番力のある部落が指揮を取るため、それぞれが力を蓄えています。
12 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:45:50.77 ID:IHneakuKO
ヴィップは主に異世界の技術では医療に力を入れています。
理由はおそらくですが、先代の治療のためだったのでしょう。
また、その他には軍事関係にも手を伸ばしています。
VIPプラスは新興国ですので、今は内政がてらに日用雑貨関連の技術を取り入れてます。
軍事関係はヴィップと違い、自衛程度だと聞きます。
ラウンジは先程話した通り、軍事国家です。
その名の通り、軍事に力を注いでいますね。
しかし皇帝はあまり戦争は好きではないと言う噂もあります。
鬼国ですが、それぞれ牽制しつつ内で勢力争いをしているため、こちらも軍事関係には強いと考えた方がいいでしょう。
ただ、他に何に力を注いでいるのかまでは分かりません。
13 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:47:26.34 ID:IHneakuKO
( ^ω^)『お? 力を注ぐってどういうことだお?』
ζ(゚ー゚*ζ『冒険者の存在がそれを支えているんですよ』
冒険者とはつまり、遺跡に辿り着いた異世界の文化と技術を、国に売り渡すことを生業とする者達のことなのです。
( ^ω^)『お、なるほど』
そして、冒険者はそれぞれどこかの国につくというのが普通ですが、たまにそういったものに縛られない冒険者もいます。
分ギコさん達もその中に含まれるでしょう。
冒険者といっても、国に所属する者は、単独行動ではなく団体で行動するのが基本ですからね。
ζ(゚ー゚*ζ『分かりましたか?』
( ^ω^)『お、大体は把握したお』
ζ(゚ー゚*ζ『大体ですか、じゃあクイズ形式でおさらいしましょう』
(*^ω^)『そう言うのは大好物だお』
彼女の講義は、僕の学校にいたどの先生よりも、僕を楽しませ、また分かりやすくしてくれた。
14 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:49:13.66 ID:IHneakuKO
時は過ぎて、地獄の時間が始まった。
(,,゚Д゚)「おし、じゃあ今日の稽古を始めるか」
(;^ω^)「よろしくお願いしますお」
(,,゚Д゚)「しかし、昨日まであれほど青痣作ってた筈なのに、まさか完治するとはなぁ。
お前、回復力にかけては化け物だな」
(;^ω^)「はは……」
思わず苦笑した。
化け物か……。
ツンも、僕をそんな目で見てたな。
(,,゚Д゚)「まあ、細かいことは気にせずやるか!
どうせ今日も山程作るんだからよ」
(;^ω^)「……」
出来ればお手柔らかにお願いしたい。
けどそんなこと、言える訳もなかった。
15 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:50:46.85 ID:IHneakuKO
(メメ^ω(#)「いただきますお」
(*゚ー゚)「いただきまーす」
(,,゚Д゚)「ん」
炊事は主にしぃちゃんがやっていてくれる。
そのお陰で、僕は稽古に集中出来るのだ。
ただ、彼女の腕前までは分からない。
だって血の味しかしないんだもの。
ζ(゚ー゚*ζ『美味しいですか?』
(メメ^ω(#)『……皮肉かお?』
ζ(゚ー゚*ζ『いえ? ただ純粋に、彼女の味が知りたいだけですけど、何故です?』
こいつ……実は確信犯だろ。
こっちの苦労も知らないで……。
その日の夕飯は、昨日と違い、少しだけしょっぱかった。
(;゚ー゚)「あれ? もしかして不味かった?」
(,,゚Д゚)「きっと泣く程美味しいってこったよ」
(*゚ー゚)「そうかなぁ……」
16 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:52:32.53 ID:IHneakuKO
洞窟の中だろうか。
焚火の明かりで分かる。
先程ブーン達を襲っていた四人が、仲間とおぼしき者達と共にいた。
ただし、内三人は絶命していたが。
( )「で、失敗した訳だ。ん?」
「すいませんお頭……。連れの奴が滅法に強くて……」
( )「黙れよ」
「ヒッ……!」
たった一言。
しかしその言葉だけで、その者を怯えさせるのには十分だった。
( )「言い訳なんざ聞きたくねぇ、お前はあいつから金目のものを奪えなかった。
そう言うこったよ」
「お、おたすゲェッ!!」
命乞いも虚しく首は飛んだ。
彼の恐怖に取り付かれた最期だった。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:53:03.32 ID:mqDvFlGe0
支援
18 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:53:39.89 ID:IHneakuKO
( )「まぁいいか、済んだもんは仕方ねぇ、お前ら、ここも飽きたし、とっとと違う場所にでも漁りに行くぞ」
そう言って一歩踏み出す。
彼の顔が赤く照らされた。
_
( ゚∀゚)「さて、次の狩場は楽しませてくれるのかね」
第五話――旅路――
完
第六話へ続く→
19 :
◆F3K21PdX56 :2009/04/13(月) 15:55:23.55 ID:IHneakuKO
今回は以上で終わりです
質問や批評などあればお願いします
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 15:58:20.05 ID:FZE+62eMO
わざわざスレ立てて投下する量じゃねーぞ・・・・
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:07:02.91 ID:GaePG+p+O
お前は空気じゃない
見てるよ
このぐらいの量なら2・3話書いて来てから投下する方が良いんじゃね?
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
月曜投下とは…見逃すところだったぜ