――VIP警察署――
( ´ω`)「ふぅ…」
川 ゚ -゚)「なかなか進展がありませんね。」
私がオフィスのデスクで一人溜息をついていると、
コンビを組んでいる同僚のクーが声を掛けてきた。
( ^ω^)「あぁ、クーかお。
奴らが資金を隠している銀行の目星は付いているんだけど、
どうしても摘発の許可が降りないんだお…」
川 ゚ -゚)「検察も手出し出来ない状態ですし…」
( ^ω^)「検察も彼以外買収された人間ばかりだしお…
一応掛け合ってはいるが果たしてどうだか…」
川 ゚ -゚)「資金源さえ絶てれば活路が開けるのですが。」
やめちまえクズ
( ^ω^)「やはり時間を掛けて戦って行くしかないお。」
川 ゚ -゚)「そうですね。」
( ^ω^)「ん?」
不意に署内のスピーカーからアナウンスが響いた。
『署の皆さんは至急演説室へお急ぎください。』
川;゚ -゚)「あ、召集ですね。」
( ^ω^)「急がないと。」
( ´∀`)「………」
私達が演説室へ向かうと、
そこには演説台に立ったモナー本部長が仁王立ちで整列した警官達を見渡していた。
( ´∀`)「ん?」
遅れてやって来た私達にモナー本部長が一喝。
(#´∀`)「ブーン、クー、遅れて来るとは何事だっ!!」
( ^ω^)「申し訳ありませんお。」
川;゚ -゚)「申し訳ありません…」
私達は急いで整列に並んだ。
( ´∀`)「それじゃあ全員揃ったな…ゴホン」
( ´∀`)「諸君毎日ご苦労。今日君達に集まってもらったのは他でもない。
今年に入っても街の犯罪率の90%以上がマフィアやギャングによるものだ。
マフィアは日々勢力を拡大し、街にはびこるならず者達も横着無人に強盗や殺人を繰り返している。
奴らとの戦いで命を落とした同胞も多く、これから更に現状が悪化することも覚悟してもらいたい。」
( ^ω^)「………」
( ´∀`)「だが君達は強い。この戦いにも我々は必ず勝利を収めるだろう。
そして次にこの街を背負って立つ未来の希望達が安全に生活して行ける街に我々はしなくてはならない。
君達の家族の為でも誰かの為でも良い、常に信念を持って取り組んで欲しい。私の話はこれだけだ。」
( ´∀`)ゝ「以上、解散!!」
( ^ω^)ゝ
川 ゚ -゚)ゝ
( ^ω^)「あの、本部長。」
それぞれが解散して各自の持ち場へ戻る中、
私は退室しようとしていた本部長を呼び止めた。
( ´∀`)「なんだねブーン?」
( ^ω^)「やはり摘発の件はどうにかならないのですかお?
もう銀行の目星は付いているんです。後は許可さえ下りれば。」
( ´∀`)y━・~~~「まぁ君の気持ちも分かるがそう急いで奴らを刺激しても意味ないだろう。
もう少し待ちなさい。」
本部長はやる気のない様子でそう答えると、
胸ポケットから葉巻を取り出し火を着けて吹かし始めた。
(#^ω^)「待て待てってこっちはどれだけ待っていると思っているんですかお!!」
( ´∀`)y━・~~~「………」
本部長は私の怒りの声を顔色一つ変えずに聞き流し、静かにこう発した。
( ´∀`)y━・~~~「…君はもう帰りなさい。働き過ぎは良くないぞ。」
(#^ω^)「急に話をはぐらかさないでくださいお!
私は摘発の件について…」
( ´∀`)y━・~~~「君はかれこれ三ヶ月も家に帰っていないそうじゃないか。
かなり疲れているようだしちゃんと家族の所へも帰ってあげなさい。それじゃあ。」
(;^ω^)「待ってくださいお。まだ話は…」
本部長は一方的に会話を切り上げるとそのまま演説室を出て行ってしまった。
(;^ω^)「やはり駄目なのかお…」
またはぐらかされてしまった。
何度申し出ても返ってくる答えは少し待ての一点張り。
私は誰もいなくなった演説室に一人呆然と立ち尽くした後、一つの結論を出した。
( ^ω^)「…帰ろう。」
ここで悩んでいても仕方がない。
家族の顔を見れば少しは気分が晴れるはずだ。
それに、丁度良い機会だろう。
私は演説室を出てオフィスへ向かった。
( ^ω^)「………」
川 ゚ -゚)「あら、上がりですか?」
私がデスクで帰りの仕度をしているとクーが声を掛けてきた。
( ^ω^)「あぁ、一日だけだが家族の所へ。」
川 ゚ ー゚)「そうですか、早く帰ってあげてください。」
( ^ω^)「すまないおクー。」
川 ゚ ー゚)「いいえ。」
私は駐車場に止めてある車へ乗り込み早速家路に着いた。
( ^ω^)「………」
家族に会えるのが嬉しくないなどと言えば嘘になる。
だがこんな私を家族はどう思っているだろうか。
私は三ヶ月の間に六歳になった息子の誕生日を直接祝ってやる事が出来なかった。
電話越しで息子におめでとうと言う事しか出来ず、渡しそびれたプレゼントは今も車のトランクに眠っている。
( ^ω^)「…着いたお。」
そうこう考えている内に我が家へ到着。
私はトランクからプレゼントを取り出し家のインターホンを押した。
( ^ω^)つ
チャイム音が鳴りしばらくすると受話器を取る音が聞こえ、
『は〜い、だれですか?』
この声はビロードだ。
( ^ω^)「ビロード君にお届け物でーす。」
『パパです!!ママッ!!ママッ!!』
インターホンのカメラで私を確認したビロードが大声を上げる。
ξ゚听)ξ 「はいはい、落ち着きなさいビロード。」
( ><)「パパが帰ってきたんです!」
ツンが興奮するビロードをなだめながら玄関の扉を開いた。
( ^ω^)「ただいま。」
ξ゚ー゚)ξ「お帰りなさい。」
ツンは優しい笑顔で私を迎えてくれた。
( ><)「パパ〜お帰りなさいなんです!」
( ^ω^)「ただいまビロード。」
すかさず走り寄って来たビロードを抱き上げる。
久しぶりに抱き上げたビロードは心なしか少し重くなったように感じた。
( ^ω^)「おっ!ビロード六歳になってさらに大きくなったお。
ほら、遅れちゃったけどプレゼントだお。」
( ><)「わ〜いなんです!!」
ビロードはプレゼントを受け取るやいなや早速包み紙を破りあらわになった箱を見てはしゃいだ。
( ><)「これは!新しい野球グローブなんです!!
パパありがとうなんです!!」
( ^ω^)「誕生日おめでとうビロード。」
ξ゚ー゚)ξ「良かったわねビロード。」
( ^ω^)「ツン、ビロードごめんお…」
ξ゚听)ξ 「どうしたのブーン?」
( ^ω^)「なかなか家にも帰れず、ビロードの誕生日も祝ってやる事が出来なくて…」
ξ゚听)ξ 「仕方ないわよ、貴方は毎日毎日悪と戦っているんですもの。」
( ><)「パパはけいさつかんで悪い奴らをやっつけてるんです!!
パパは凄い人なんです!!パパは僕のヒーローなんです!!」
( うω;)「ツン、ビロード…」
ξ*゚听)ξ「な、なに泣いてるのよ。
ほら、お腹空いたでしょ?
シチューがあるから皆で食べましょ。」
( ^ω^)「あぁ、食べよう。」
( ><)「ママのクリームシチュー大好きなんです!」
――VIPシティ郊外ウツダ邸――
VIPシティの街外れにあるひときわ目立つ大きな屋敷。
そこには若くして大企業の社長となった一人の青年と執事の老人が住んでいた。
('A`)「………」
月の光以外明かりのないバルコニーでドクオは一人何をするでもなく椅子に座りじっと丸い月を眺めていた。
/ ,' 3 「ドクオ様、また物思いにふけっていらっしゃったのですか?」
アラマキは運んできたスープをドクオに手渡し問い掛けた。
('A`)「今日は決して忘れ去れやしない日だからな…」
/ ,' 3 「旦那様の命日、ですな…」
('A`)「あぁ、今でも脳裏に焼きついているよ。
安らかな顔の父の亡骸は…」
/ ,' 3「ドクオ様…」
('A`)「………」
ドクオはあの時の事を再び思い返していた。
――2年前――
ドクオは厳格で真っ直ぐで正義感の強い父と心優しい母、執事のアラマキの許に生を受けた。
母はドクオがまだ五歳の頃に癌に侵され、闘病の甲斐なく幼少のドクオを置いて先に天国へ。
母を失い失意の底に沈むドクオ。
そんなドクオに父は失意の底から立ち直らせ強く生きて行けるようにと心身を鍛えるべく武術を教え込み、
ドクオを父同様正義感の強い真っ直ぐな男へと育て上げた。
立派に成長したドクオは父の会社を継ぐ事を夢見て大学へ進み、卒業式を父とアラマキに見届けてもらうのを心待ちにしていた。
しかし大学の卒業式の前日、強盗に襲われていた老人を助けようと立ち向かった父が強盗の凶弾に命を奪われてしまう。
――VIP警察遺体安置所――
(;'A`)「ハァ、ハァ、父さんは!!」
/ ,' 3「ヒィ、ヒィ…だ、旦那様は!!」
大急ぎで遺体安置所に駆けつけてきたドクオとアラマキが息絶え絶えでブーンに尋ねた。
( ^ω^)「こちらです…」
ブーンはそう言うと担架に横たわった遺体袋のチャックを開き中を見せた。
(`-ω-´)
Σ(;゚A゚)「!!」
Σ/ ,゚ 3「!!」
あまりの驚きに声を失う二人。
悲報は事前に聞かされていたが、
こうして実際に遺体を目の当たりにしてしまっては現実を受け止めざる終えない。
( ^ω^)「胴体に5発もの銃弾を受けており、我々が駆けつけた時にはすでに…」
('A`)「………」
魂の抜け殻となった最愛の人を呆然と見詰め続けるドクオ。
だがそれでいて何かを必死に堪えているようでもあった。
( ^ω^)「君のお父上はとても勇敢な方だった。
老人は助かったが、犯人はその後我々に追い詰められた所を銃で抵抗し射殺されたお。」
('A`)「………」
( ^ω^)「…ご冥福を、お祈りしますお。」
/ ,' 3「ありがとうございました。」
( ^ω^)「いえ…」
/ ,' 3「ドクオ様、行きましょう…」
今の放心状態のドクオには何を言っても分からないだろうと察したアラマキは、
ドクオを連れて一度帰宅する事を決めた。
('A`)「………」
アラマキに促されるままドクオは重い足取りで安置所を後にした。
――ウツダ邸――
ドクオは屋敷に帰ってからも食事を摂る事も睡眠をとる事もせず一人部屋でうな垂れ続けていた。
('A`)「………」
/ ,' 3「ドクオ様、お食事をお持ちいたしました。」
ドクオがベッドに腰掛け窓の外の月を呆然と眺めていると、
そこにオムレツと水を乗せた盆を持ってアラマキが入ってきた。
('A`)「…いらない」
/ ,' 3「左様でございますか。
お食事は机に置いておきますので、それでは…」
('A`)「待ってくれ!」
運んできた食事を置き部屋を去ろうとしたアラマキをドクオがとっさに呼び止めた。
('A`)「アラマキ、僕は一体どうしたら…」
ドクオのその言葉を聞いたアラマキは意を決したかのように振り返り。
/ ,' 3「ドクオ様、お渡ししたい物がございます。」
上着のポケットから一枚の手紙を取り出しドクオに手渡した。
('A`)「これは?」
/ ,' 3「ドクオ様が大学をご卒業されたお祝いに旦那様が直接お渡しする予定だったのですが…
旦那様は不器用なお方でしたから、口では言えない感謝の意を手紙に綴ったのでしょう。」
('A`)「父さんの手紙…」
ドクオは封筒から手紙を取り出すと綴られている一文字一文字に目を凝らし食い入るように読み始めた。
「ドクオへ、大学卒業おめでとう。
口で言うのはなんとも照れくさくてな、こんな形ですまん。
妻が亡くなってからお前は本当によく耐え強くなろうと努めてきたな。
私は憎まれる事も覚悟でお前を鍛えたが、お前は何一つ不満を述べずただひたすら私についてきてくれた。
口には出さなかったが私は本当にお前に感謝している。これは嘘偽りのない私の気持ちだ。
私は常々お前に言い聞かせてきたな。「本当の強さとは腕っ節の強さではなく心の強さだ。私が教えた武術は人を守る為に使え」と。
お前はその言葉通り弱気を労わる心と弱気を守る為に力を使う真っ直ぐな心の男に育ってくれた。
大学を卒業したら私の会社を継ぎたいと言ったが会社の事は気にするな。お前はお前の道を進みなさい。
お前がやりがいや生きがいを見出せる事を見つけ、それに全力を尽くして真っ直ぐ進んでくれる事。
そして誰かに助けを求められてもそ知らぬ顔をするような男にならない。それだけが私のお前への願いだ。
ドクオ、自分の為でも誰かの為でも良い。全力で生きろ。
最後に、大学卒業本当におめでとう。」
('A`)「………」
ドクオは呆然と手紙を見詰めたまま固まっていた。
/ ,' 3「旦那様はドクオ様の大学卒業を心から楽しみにしておられました。」
('A`)「違うよ父さん、僕は無理に会社を継ぎたいだなんて思っていないよ。
僕が父さんの会社を継ぎたいと言ったのは父さんみたいに…父さんみたいに立派な人になりたいからなんだ…」
/ ,' 3「そのお言葉を…旦那様がお聞きになられたらどれほどお喜びに…なられるか…」
アラマキは溢れ出ようとしている涙を必死に堪え震える声で呟いた。
('A`)「アラマキ…」
/ ,' 3「ドクオ様が天国の旦那様にして差し上げられる恩返しは悲しみに暮れる事ではなく全力で生きる事でございます。」
(-A-)「全力で生きる、か…」
('A`)「そうだよな。」
ドクオは自分の心が晴れて行くのを感じると元気良くベッドから立ち上がり、
('A`)「何だか空腹だ。
このオムレツ頂くよ。」
机に置いてあるオムレツに手を伸し一口。
('∀`)「うん、美味い!!」
/ ,' 3「アラマキ特性野菜だけヘルシーオムレツでございます。」
('∀`)「また腕を上げたね。」
ドクオはそう言うとあっという間にオムレツをたいらげた。
('A`)「ふぅ、美味かった。そろそろシャワーを浴びて寝るよ。」
/ ,' 3「そうですな。明日は葬儀の手続きなどで忙しくなりますから。」
('A`)「あの…アラマキ、それは卒業式に出席してからでは駄目かな?」
ドクオのその問いにアラマキは、
/ ,' 3「いいえ、駄目なわけございません。」
満面の笑顔でそう答えた。
――現在――
/ ,' 3「あれから二年ですか。」
('A`)「もう二年か…
今までを振り返ってみると時の流れと言うのは本当にあっという間に感じるよ。」
/ ,' 3「振り返ると言えばそうそう、小中高と学生の頃のドクオ様は喧嘩ばかりするやんちゃ小僧で、
よく学校から呼び出しを受けておりましたな。」
(;'A`)「なんだい急にそんな昔の話…」
/ ,' 3「ですが喧嘩の理由は決まっていじめられている子や動物を助けてのものでした。」
(;'A`)「恥ずかしいから止めてくれって…」
/ ,' 3「喧嘩をしても旦那様には全く叱られずむしろ褒められておいでで。」
('A`)「喧嘩をして褒められるだなんて今思うと変な家庭だったかもね。」
ドクオは小さく笑い照れくさそうに言った。
/ ,' 3「今やドクオ様も二代目社長として立派に会社を支えられる程にご成長されました。」
('A`)「まだまだ周りに助けれてばかりのひよっこだけどね。」
/ ,' 3「ドクオ様はお若いのですから、まだまだこれからでございますよ。」
('A`)「あぁ、毎日が勉強だよ。」
/ ,' 3「もう冷えてまいりましたしそろそろお休みいたしましょう。
明日は早朝から会議の予定も入っておりますから。」
('A`)「そうだな。スープご馳走様、相変わらず美味しかったよ。」
/ ,' 3「それはようございました。さぁ、中へ入りましょう。」
('A`)「あぁ。」
ドクオが室内へ入ろうと椅子から腰を上げた時だった。
('A`)「ん?」
/ ,' 3「どうなさいました?」
('A`)「いや、今何かが羽ばたくような音が聞こえなかったかい?
何だか妙に聞き覚えのあるような音だった。」
/ ,' 3「はて?私には何も聞こえませんでしたが。」
('A`)「…ただの空耳か。」
外の冷たい風を肌に感じながら、ドクオはバルコニーを後にした。
――ホライゾン家――
( ^ω^)「それじゃあ行ってくるお。」
ξ゚ー゚)ξ「行ってらっしゃい。身体にはくれぐれも気をつけてね。」
( ^ω^)「帰りはまた何時になるか分からないけど…」
私が申し訳なさそうにそう言うと、
ξ#゚听)ξ「だからそんな事気にしなくて良いの!!」
すかさずツンに一喝されてしまった。
(; ^ω^)「ごめんお…」
ξ゚听)ξ「でも、暇があったら必ずビロードに声聞かせて上げて。」
( ^ω^)「もちろん…」
( ^ω^)「ん?」
奥の廊下から何やら慌しい音が近づいてくる。
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/25(水) 19:31:51.58 ID:PkGUK/jY0
支援
( ><)「パパ〜ッ!行ってらっしゃいなんです!」
まだ早朝の5時だと言うのにビロードが私の元へと走り寄ってきたのだ。
( ^ω^)「まさかパパを見送るために起きて来てくれたのかお?」
( ><)「はいです!パパをお見送りするんです!」
( うω;)「ビロード…また帰ってくるまでママを頼むお。」
( ><)「はいです。ママをお守りするです!」
ξ゚听)ξ「ほらほら、遅刻しちゃうわよ。」
( ^ω^)「ツン、ビロード行ってくるお。」
ξ゚ー゚)ξ「行ってらっしゃい。」
( ><)「いってらっしゃ〜いなんです!」
( ^ω^)「よし。」
私は庭に止めてある車に乗り込み家を出発した。
ξ゚ー゚)ξノシ
( ><)ノシ
ふとバックミラーを覗くと外に出てきたツンとビロードが遠ざかる私の車を見届けながら手を振っている。
( ^ω^)「ツン、ビロード、パパ頑張るからお。」
――VIP警察署――
[P]_
( ) 「おはようございますブーン警部補。」
( ^ω^)「おはようだお。」
受付の巡査官と軽い挨拶を交わした後、
自分のデスクへ着いた私は早速休んでいた間に上がった書類に目を通した。
( ^ω^)「いまだ進展はなし、か…
相変わらず尻尾を出さないお…」
( ´∀`)「やぁブーンおはよう。どうだったかね久しぶりの休暇は?
一日しか休んでいないようだが大丈夫なのかね?」
私のデスクへモナー本部長が尋ねて来た。
( ^ω^)「おはようございます。
いえ、おかげさまで妻と息子の顔を見ただけでもかなりリフレッシュ出来ましたお。」
( ´∀`)「それは良かった。出勤そうそうで悪いが早速事件だ。
ネラー通りのゴミ捨て場から死体が発見された。」
( ^ω^)「また死体ですか…」
( ´∀`)「すまないが至急出動してくれ。」
( ^ω^)「了解しましたお。」
川 ゚ -゚)
駐車場へ向かうと既にクーがパトカーの運転席で待機しており
私は急いでパトカーに乗り込んだ。
( ^ω^)「遅れてすまないお。」
川 ゚ -゚)「いえ、私が早く来すぎただけですから。
それより一日の休みで随分リフレッシュ出来たみたいですね。前は疲労困憊な顔してたのに。」
( ^ω^)「やはり家族の力は絶大だお。」
川 ゚ -゚)「私も素敵な恋人を作って警部補のような家庭を築きたいです。」
( ^ω^)「クーならいつか見つかるお。さ、無駄話はやめて急ぐお」
川 ゚ -゚)「了解。」
私達は現場へ急行した。
――ネラー通りゴミ捨て場――
( ^ω^)「VIP警察のブーン警部補だお。」
川 ゚ -゚)「同じくVIP警察のクール捜査官です。」
[P]_
( ) 「どうぞ。」
私達は警備の巡査官にバッジを見せ現場に足を踏み入れた。
(‘;)_-;メ)
川;゚ -゚)「酷い…」
想像を絶する暴行を受けたのだろうなぶり殺しにされた遺体の顔は血まみれで、
風船のように酷く腫れ上がっていた。
右手と左手の指も全て切断されている。
[P]_
( ) 「恐らくワカッテマスファミリーかと。」
( ^ω^)「だろうお。」
川 ゚ -゚)「それでこの男性は?」
[P]_
( ) 「マフィアを追っていたジャーナリストのようです。
わざとゴミ捨て場に遺体を放置したのは他者への見せしめの為でしょう。
遺留品はこの写真一枚だけでした。」
巡査官が私に一枚の写真を手渡した。
写真には笑顔の男性と女性、そして幼い女の子が仲睦まじそうに写っていた。
( ^ω^)「家族の写真かお…」
[P]_
( ) 「そのようです。」
( ^ω^)「…引き続き捜査を続けてくれお。」
[P]_
( ) 「了解しました。」
川 ゚ -゚)「…こんな事、何時まで続くのでしょうか?」
パトカーへ戻るなりクーが私に問いかけてきた。
( ^ω^)「分からない、だがそれを終わらせるのが我々の使命だお。」
川 ゚ -゚)「本当に終わるのでしょうか…」
( ^ω^)「あぁ、終わらせてみせるお。行こう。」
川 ゚ -゚)「はい。」
私達は再び署へと戻った。
――VIP警察署――
署に着いた我々は早速署長に現状を報告。
( ´∀`)「やはりワカッテマスファミリーだったか。」
( ^ω^)「はい、きっと奴らの情報を握りはしたものの、バレた所を捕まり報復を受けたのでしょう。
ジャーナリストの握った証拠も隠滅されたかと…」
( ´∀`)y━・~~~ 「相変わらずの横着無人さだな。」
本部長はそう言いながら葉巻きに火を着けプカプカと吹かし始めた。
むせ返るような煙の匂いが私の鼻を突く。
私はこの臭いが大嫌いだ…
( ^ω^)「…我々は被害者のご遺族に会ってきます。」
( ´∀`)y━・~~~ 「頼む。」
( ^ω^)「それでは。行くおクー。」
川 ゚ -゚)「はい。」
――クオリティエンタープライズ――
(#'A`)】「ですから、その件に関しては何度もお断り申し上げていますでしょう。
何度言われても答えは同じです。それでは!!」
('A`)「はぁ…」
ドクオは受話器を置くと小さく溜息を漏らした。
('A`)「全く、何度も何度もしつこい人達だ…」
('A`)「ん?」
一人社長室で愚痴を溢していると不意にドアをノックする音が。
('A`)「どうぞ。」
(-@∀@)「失礼します。」
顔を覗かせたのはクオリティエンタープラズ副社長兼開発事業部主任アサピー。
先代であるドクオの父とは旧友の仲であり、アサピーは企業面においてドクオをサポートしている。
(-@∀@)「お冠のようですね。」
('A`)「アサピーか。
あぁ、何度断ってもまた装備や武器を提供してくれとしつこくてね…」
(-@∀@)「我が社の技術力の高さには軍も一目置いていますからね。
先代と私は人々の為になるかと思い軍事業にも携わりましたが、
後に我が社の装備や武器が間違った方向に使われている事に気付き直ぐに手を引きました。」
('A`)「確かに君の考案、開発する装備や武器は芸術品と言っても過言ではないよ。
しかし僕はその高い技術力を人々を傷つける為ではなく人々を守り救う為に使いたいんだ。」
(-@∀@)「私も同じです。今でもあの時の過ちには後悔していますから…」
('A`)「アサピー…」
(-@∀@)「おっとすみません、こんな陰気臭い話をしてしまって。
そうだ、社長に見てもらいたい物があるのですがラボにお越し頂けませんか?」
('A`)「是非見せてくれ。」
(-@∀@)「それでは行きましょう。」
ドクオとアサピーは社長室を出るとエレベーターで地下の開発事業部のラボへ向かった。
――クオリティエンタープライズ開発事業部ラボ――
クオリティ社の地下にある広大なラボ。
ここでは日常生活で役立つ携帯電話やパソコンなどの電子機器はもちろん安全な車作り。
消防署や慈善団体とも提携を結び救済救命機器などの様々な発明がアサピーにより開発考案され世に送り出されている。
(-@∀@)「こちらです。」
アサピーに案内されるままドクオは開発事業部の車の走行テスト場へ。
テスト場とは言っても特別コースが敷かれている訳でもなくただの殺風景な広間である。
('A`)「見せたい物と言うのは車の事か。」
テスト場にはまだ明かりが灯っておらず、
ドクオには広間に広がる暗闇しか窺う事が出来ない。
(-@∀@)「ただの車ではありませんよ。」
アサピーがテスト場の明かりのスイッチを押すとその物体が姿を現した。
('A`)「これは…」
(-@∀@)「なんだか分かりますか?」
('A`)「戦車、いや装甲車かな?」
ドクオの目に飛び込んできたのはまるで戦車とも装甲車とも見て取れる程重厚な車だった。
全体を覆う装甲と漆黒のボディ、50cm以上はあろうかと言う大きなタイヤが圧倒的な存在感を醸し出している。
(-@∀@)「ええ、私はこの重装甲車を「タンブラー」と名付けました。」
('A`)「タンブラーとは、コップと言う意味かい?」
(-@∀@)「いいえ、「曲芸師」と言う意味でのタンブラーですよ。」
('A`)「この無骨なデザインからしてとても曲芸師には見えないがね…」
(-@∀@)「確かにそう思われても仕方ありませんが、まぁ聞いてください。
このタンブラーは全地形に対応する前方二輪、後方四輪の計六輪のタイヤで走行し、
5,7リッターエンジンの搭載により時速を200キロまで出す事が可能なのです。」
('A`)「そいつは凄い。」
(-@∀@)「他には見てお分かりのように搭乗者を衝突の衝撃から守る為の装甲が全体に施されており。
重量2300キロのタンブラーが200キロものスピードを出せるのは、
車体後部に付いている複数のフラップ(高揚力装置)が大きく作用しているからなのです。」
('A`)「フラップとは飛行機に付いているあれか。」
(-@∀@)「その通り。フラップの働きにより車体を浮き沈みさせて速度を自在に変えるのです。」
('A`)「流石だよアサピー。それにしてもこんな代物何時の間に作っていたんだい?」
(-@∀@)「元は軍隊用の車両でしてね。実は先代がまだご存命だった頃に作った物なのですよ。」
('A`)「こんな物があったなんて知らなかったな。」
(-@∀@)「軍事業から手を引いて以来ずっと封印していたのですが、
ふと救済用に逆利用できないかと思いまして社長にお披露目しようかと。」
('A`)「そうだったのか。」
(-@∀@)「元軍隊用なのでタンブラーの前方には装備が三つ内蔵されています。
一つはグラップリングフック発射装置(ガス式磁気鉤縄発射装置)
二つ目は40mmブラスト砲
三つ目は50口径マシンガン
そして後方からは撒きビシをばら撒く事が出来ます。」
(-@∀@)「グラップリングフック発射装置はフックの付いたケーブルを飛ばし、
他の車両を引っ張る、緊急停止、方向転換など用途は様々。
ケーブルはタンブラーの重量2300キロを支える事が出来るほど頑丈に出来ています。」
(-@∀@)「40mmブラスト砲は乗用車一台くらいなら軽く吹き飛ばす程の大火力の兵器で、
左右に二門装備され、走行の妨げになる障害物の排除などに使用します。」
(-@∀@)「そしてこちらも左右に二門装備されています50口径マシンガンですが、
こちらは完全に対人用なのでもう使う事はありませんね。」
(-@∀@)「後方の撒きビシは追跡してくる車両等の追跡を絶つ為に使います。
これももう使う事はありませんが。」
('A`)「確かに「曲芸師」だな。」
(-@∀@)「お気に召しましたか?」
('A`)「あぁ、素晴らしいよ。
これを武器を取り外して災害用に大量生産すれば多くの救命活動に貢献出来るはずだ。」
(-@∀@)「その方がこの子も喜ぶでしょう。」
(-@∀@)「ですが…」
('A`)「何か問題が?」
(-@∀@)「これを一台作るのにも物凄い費用が掛かるのです…」
('A`)「そう言う事か…
社長とは言え僕一人の独断でOKを出すわけにはいかないし、
経理や社員達と話し合うしかないな。まぁ、きっとみんな分かってくれるさ。」
(-@∀@)「だと良いのですがね。」
アサピーはそう言いながらテスト場の明かりのスイッチを押し明かりを消した。
テスト場の明かりが消えると、漆黒の曲芸師は再び闇と一体化しその姿は見えなくなった。
('A`)「そう言えば今は何時だろうか。」
テスト場を出たドクオは腕時計を見て時間を確認した。
('A`)「もう直ぐ一時になるな。」
(-@∀@)「もうそんな時間ですか。」
('A`)「そろそろ帰ろう。アサピーももう切り上げてくれ。」
(-@∀@)「分かりました。ですがまだ片付けがありますので社長はお先にどうぞ。」
('A`)「それじゃあ僕も手伝うよ。」
(-@∀@)「いえ、ただこれを仕舞うだけですから。」
アサピーはそう言うと机に置いてある一つのジュラルミンケースを持ち上げた。
('A`)「それはなんだい?」
(-@∀@)「これもタンブラーを蔵出しした時に出てきた軍用装備品でしてね。
軍隊の潜入用装備なんですよ。」
('A`)「潜入用と言う事は隠密に行動する為の物か。」
(-@∀@)「そうです。主に夜間に活用する物でして、
他には防弾スーツなどもありますがご覧になられますか?」
('A`)「いや、アラマキを待たせると悪いしまたの機会に必ず見させてもらうよ。」
(-@∀@)「分かりました。」
('A`)「それじゃあお疲れ様。アサピーもあまり頑張り過ぎないでくれよ。」
(-@∀@)「社長程ではありませんよ。御機嫌よう。」
――クオリティエンタープライズ前――
('A`)「もうこんな時間か…」
会社を出た頃には時刻はもう深夜の一時を過ぎており。
辺りは街頭の明かり以外光がなく、薄暗い闇が広がっている。
【('A`)「アラマキ、迎えを頼むよ。」
ドクオは携帯電話でアラマキに連絡した。
『ただ今向かっております。』
【('A`)「それじゃ。」
待つこと四分。
/ ,' 3「ドクオ様、お迎えに上がりました。」
('A`)「ありがとうアラマキ。」
迎えに来たアラマキに礼を言い車の後部座席に乗り込む。
('A`)「いや〜、何時もながら来るのが早くて関心するよ。」
/ ,' 3「旦那様がまだご存命だった頃も毎日送り迎えをしていましたからな。」
('A`)「通りでね。たまには他の社員のように徒歩や電車通勤なんてのも良いかなと思っているんだけど。」
/ ,' 3「ドクオ様は私の数少ない役目をお奪いになられるのですか?」
悪戯な笑顔を浮かべたアラマキがそう問いかけると、
('∀`)「そんなんじゃないさ、冗談だよ。」
ドクオもまた悪戯な笑顔で返答してみせた。
/ ,' 3「最近は毎晩遅くまでお仕事に励んでおいでですが、私はドクオ様のお身体が心配でなりません。」
('A`)「会社もやっとまた軌道に乗り始めてきたからな。」
/ ,' 3「たまにはフォックス様に全てお任せしてみてはいかがでしょう?」
('A`)「フォックスか、彼は父の無二の親友だしこんな若造の僕のアシストにも全力を尽くしてくれている。
確かに彼になら安心して任せられそうだが、やはり甘えてしまっては駄目だ。」
ドクオはそう言い終わると席の隣に置かれていた新聞を手に取った。
('A`)「昨日の夕刊か。」
新聞を開き記事を流し読みしているとある記事に目が留まった。
【今朝未明チャンネル地区ネラー通りのゴミ捨て場にて、
ジャーナリストのネクラ・ヒッキー氏(二十五歳)の遺体が発見された。
眼底骨と顎と鼻の骨折や内出血による腫れなどの外傷が見られ、
死因は過剰な暴行によるショック死と見られている。
ヒッキー氏がマフィアを追っていた事もあり、警察は事件はマフィアとの関連性が強いと見て調べを進めている。】
('A`)「………」
/ ,' 3「どうなさいました?どこかお体でも?」
バックミラー越しにドクオの暗い表情が見えたアラマキが心配そうに問いかけた。
('A`)「いや、大丈夫だよ…」
/ ,' 3「それなら良いのですが。」
('A`)「………」
ドクオは窓の外に視線を移し、
昼間の賑やかさが嘘のように静まり返った街の夜景をじっと眺めた。
/ ,' 3「………」
('A`)「………」
車内はいつの間にか沈黙に包まれ、聞こえるのは車のエンジン音だけ。
アラマキはラジオをつける事もせず真顔で運転に専念し、
ドクオは人形のように固まったまま窓の外の流れる夜景を眺めていた。
/ ,' 3「………」
会社から出発して二十分程、
快調に車を運転していたアラマキがブレーキを踏み、ようやく車が信号で停車した。
('A`)「………」
/ ,' 3「………」
信号待ちの間も続く沈黙。
ドクオは相変わらず窓の外を眺め、アラマキは信号を見詰めていた。
信号待ちの間の車内はまるでそこだけ時が止まっているかのような錯覚に陥る程、
二人は微動だにしなかった。
/ ,' 3「………」
心なしか長く感じた信号が青に変わり、
アラマキがアクセルを踏もうとペダルに足を掛けた時だった…
「キャ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」
(;゚A゚)「!!」
/ ,゚ 3「!!」
不意に響いた悲鳴が一瞬にして沈黙を破った。
(;'A`)「今誰かの悲鳴が聞こえなかったか?」
/ ,' 3「えぇ、聞こえました…」
('A`)「声の大きさからして近くみたいだな。何かあったのかも知れない。」
/ ,' 3「警察に電話をした方がよろしいでしょうか。」
('A`)「ちょっと見てくる!」
/ ,' 3「ドクオ様いけません!!」
アラマキの制止も空しくドクオは車を飛び出し薄暗い歩道へ駆けて行ってしまった。
(;'A`)「ハァ、ハァ、どこだ?」
悲鳴の聞こえた場所を見付けるべく、
聞こえた方角を頼りにアパートなどの建物が立ち並ぶ歩道を駆け回る。
「大声出すんじゃねぇっ!!マジでぶっ殺すぞ!!」
('A`)「あそこかっ!!」
路地裏の方から怒号が聞こえドクオはその場所へ急いだ。
(;、;トソン「お願いよ、お願いだから命だけは…お金ならあげるから…」
( ▼皿▼)「うるせぇ!!金以外のネックレスや指輪も寄こせっ!!」
( ^Д^) 「早く渡しなよぉ〜♪」
(;、;トソン「は、は、はい…」
女性は震える手でネックレスと指輪を外し強盗二人組みに差し出した。
( ▼皿▼)「へへっ、こいつぁ高く売れそうだぜ」
( ^Д^)「なぁなぁ、コイツ結構美人じゃね?
ついでに俺達で姦わしちまおっか。」
( ▼皿▼)「おっ!良いねぇ。んじゃ次はお楽しみタイムといきますか。」
(;、;トソン「嫌よ。金品は全部渡したんだから許してよ…」
( ^Д^) 「へへへ、妊娠しても恨まないでね♪」
(;、;トソン「嫌、嫌…」
力なくへたり込み震え続けている女性に手を伸ばす強盗二人組みだったがそこへ。
(#'A`)「やめろっ!!」
Σ(;▼皿▼)「!!」
Σ(;^Д^)「!!」
(#'A`)「お前達なにをしているんだ!!」
( ^Д^)「んだよ誰かと思えばただのリーマンじゃねぇ〜か。
ビビらすんじゃねぇよ。」
( ▼皿▼)「正義の味方参上ってか。」
二人組みは小馬鹿にしたようにドクオを笑った。
(#'A`)「さっさとその女性から離れろっ!!」
((;、;トソン「た…助け…」
( ▼皿▼)「あのね坊ちゃん、正義の味方気取るのも良いけどさ。
威勢が良いだけじゃこの世の中生き残れないのよね。」
( ^Д^)「そうそう、それにこれ以上邪魔するならさ、殺すよ?
ほら、俺達が持ってるこれ分かるよね?
ピ・ス・ト・ルだよ?」
強盗の一人がドクオに銃口を向けた。
(;'A`)「うっ…」
m9(^Д^)「分かったんならさっさと帰ってオナニーでもしてな。
あ、なんなら俺達がお楽しみしてるのを見ながら扱いてても良いよ。」
(;'A`)「くそっ…」
( ▼皿▼)「おっとその前に兄ちゃんも金目の…」
( ▼皿▼)「ん?」
パトカーのサイレンらしき音がこちらに近づいてくる。
(;^Д^)「ちっ!やべぇづらかんぞっ!!」
(; ▼皿▼)「糞がぁ〜」
音に気付いた二人組みは奪った金品の入った鞄を抱え慌しい足取りで退散して行った。
[P]_
Σ( ) 「いたぞっ!!大丈夫ですか!!」
[P]_
( ) 「二人とも怪我は!?」
駆けつけた警官二人がドクオと女性を見つけるなり叫んだ。
(;'A`)「え、えぇ、それより彼女を。」
((;、;トソン「うぅぅ…」
よほどの恐怖だったのだろう女性はまるで極寒に晒されているかの如く酷く震え続けていた。
[P]_
( ) 「もう大丈夫ですからね。」
一人目の警官が優しく声をかけながら女性をパトカーへと乗せた。
(;'A`)「………」
[P]_
( ) 「貴方はクオリティエンタープライズの社長ドクオさんですね?」
二人目の警官が呆然と立ち尽くしていたドクオに問いかけた。
(;'A`)「はい、そうです。」
[P]_
( ) 「あの二人組みは過去にも何度も強盗殺人を犯していまして。
貴方が我々が来るまでに二人を引き止めていなかったら恐らくあの女性も…」
(;'A`)「いえ、僕は何もしていませんよ…」
[P]_
( ) 「女性は我々が責任を持って保護し家に送り届けますので。」
[P]_
( )ゝ 「それでは。」
二人目の警官はドクオに一礼すると女性を乗せたパトカーに乗り込みその場を去って行った。
(;'A`)「………」
(#'A`)
ドクオはその場に立ち竦みしばらく放心した後、
今度は胸の底からふつふつと怒りの感情が湧いてくるのを感じていた。
(#'A`)(僕は、僕は、なんて無力なんだ!!)
強盗の銃に何も出来なかった無力な自分が憎い。
過去にこれほどまで自分を憎んだ事があっただろうか。
ドクオは止め処なく湧いてくる怒りの感情を必死に抑えていたが…
(#'A`)「くそっ、くそっ、くそっ!!
結局僕は誰も守れやしないじゃないか!!」
堪らずドクオは叫んだ。
己の中で渦巻く怒りを吐き出すかのように。
/ ,' 3「ドクオ様?」
(#'A`)「畜生畜生っ!!」
/ ,' 3「ドクオ様!!落ち着いてください!!」
Σ(;'A`)「はっ!!ア、アラマキ…」
ドクオはアラマキの声で我に返った。
/ ,' 3「ドクオ様、心の強さですぞ。感情に飲み込まれてはなりません。」
(;'A`)「すまない…アラマキが警察を呼んだんだろ?」
/ ,' 3「そうです。」
(;'A`)「………」
/ ,' 3「勇敢と無謀は全く別です。
旦那様譲りの正義感は素晴らしいですが命を落としてしまっては元も子もございません。」
(;'A`)「だけど…」
(#'A`)「だけどあのまま見過ごすなんて僕には絶対に出来ない!!
父さんだって僕と同じ事をするはずだ!!」
/ ,' 3「もし少しでも警察の到着が遅れていたら、
ドクオ様も旦那様のように命を落とされてしまわれる所だったのですよ?」
(#'A`)「じゃあなんだ!
アラマキは父さんが無謀者の馬鹿だったと言いたいのか!?」
/ ,' 3「そ、そのような事は…」
('A`)「…もういい、帰ろう。すまなかったアラマキ。」
/ ,' 3「いえ…」
心にわだかまりを残したまま、ドクオは無言で車に乗り込み帰路に着いた。
――ウツダ邸――
('A`)「ハァ…」
居間のソファーに座り暖炉の火を眺めながら溜息をつくドクオ。
/ ,' 3「またそんなに思い詰めないでくださいませ。ドクオ様の悪い癖です。」
('A`)「分かっているが…」
/ ,' 3「無力とおっしゃいましても相手は銃を所持していたのですから、
動けなくなってしまったのも無理ございません。」
('A`)「銃か…父さんは銃に殺された。
人はあんな物を持っているだけで強くなった気になれるのか?
銃は人を恐怖に陥れ、服従させ、簡単に命を奪ってしまう…」
/ ,' 3「そうですな。銃は使い道によって様々な顔に変化しますが、
この街では悪用されてばかりなのが現状です…」
('A`)「僕は、自分でも気付かない内に見て見ぬふりをしていたのか知れないな…」
/ ,' 3「どう言う意味でございますか?」
('A`)「いや、なんでもない。朝も早いしもう寝る事にするよ。」
/ ,' 3「さようでございますか。」
('A`)「おやすみアラマキ。」
/ ,' 3「おやすみなさいませ。」
――VIP警察遺体安置所――
(‘;)_-;メ)
(;、;*川「そんな…どうして…」
被害者の妻は嗚咽を漏らし震える声で呟いた。
無残な姿となった最愛の人を見詰めながら。
(;、;*川「どうして私達を置いて逝ってしまったの…」
*(‘‘)*「ママ、どうしてないてるの?パパがどうかしたの?」
父の死をまだ理解出来ないのだろう被害者の娘さんが母親に無邪気な質問を投げかける。
(う、;*川「…パパはね…パパは…」
(;、;*川「うぅ…」
*(‘‘)*「?」
川 ゚ -゚)「お譲ちゃん、ちょっと外に出ましょうか。ジュースでも飲みましょ。」
*(‘‘)*「う、うん…」
状況を察したクーが娘さんを安置所の外に連れ出した。
( ^ω^)「どうぞ。」
私は涙で顔がグシャグシャになった奥さんにハンカチを手渡した。
(う、;*川「ありがとうございます…」
( ^ω^)「いえ、私にも家族がいる身ですからあなたのお気持ちはよく分かりますお。
娘さんはまだ三歳でしたか。」
('、`*川「えぇ、一週間後には幼稚園の入園式が控えていまして…」
( ^ω^)「ご主人はさぞかし楽しみにしておられた事でしょうね。」
('、`*川「それはもう、とても楽しみにしていました…とても…」
(;、;*川「毎日カメラを磨きながら楽しみだ楽しみだと口癖のように言っていたんです。なのにこんな…」
( ^ω^)「ジャーナリストとしても有能な方だったようで。」
(;、;*川「とても正義感の強い人で、街の平和の為に決定的な証拠を得ようと常にマフィアを追っていました。
仕事に情熱を燃やし娘の良い父親でもあった主人は私達家族の誇りです。
だけどやはりマフィアを相手にしての仕事ですから不安がないと言えば嘘になります。
そして今日その不安が現実のものとなってしまいました…」
( ^ω^)「………」
(;、;*川「私は自分が憎いんです。どうして主人にもうマフィアと関わるのは止めるように言えなかったのか…
私が主人を殺してしまったのではないか。私が娘から父親を奪ってしまったのではないかと…」
( ^ω^)「奥さん、あなたのせいでは決してありません。
娘さんもこれから嫌でも父親の死を理解しなければならない日が来ます。
亡くなったご主人の為にもあなたがしっかり娘さんを支えてあげないと。」
(う、;*川「ごめんなさい私ったら…
そうですね。私がしっかりしないといけませんね…」
('、`*川「夫を置いて行くのは後ろ髪を引かれますが、
娘が待っているようなので今日は一度帰ろうと思います。」
( ^ω^)「そうですか。」
*(‘‘)*「パパはわるいひととたたかってるんだよ。すごいでしょ〜!」
川 ゚ ー゚) 「えぇ、本当に凄い。」
クーと娘さんは安置所を出て直ぐの廊下にあるベンチに腰掛けながら会話を弾ませていた。
オレンジジュースの入っていた空の紙コップを右手で握り締めながら嬉しそうに父親の事を話す娘さん。
*(‘‘)*「さっきママないてけどどうしてないてたのかな?おねえちゃんわかる?」
川 ゚ -゚)「…何時か必ず分かる日が来るわ。」
*(‘‘)*「それはいつ?」
川 ゚ -゚)「それは分からないけど、必ずくるわ。」
*(‘‘)*「へんなの〜」
('、`*川「ヘリカル、帰るわよ。」
*(‘‘)*「あ!ママだ!!ママ〜!!」
娘さんは迎えに来た母親の元へ駆け寄るとその足元に抱きついた。
('、`*川「走ったり大声出したりしないの。周りの迷惑になるでしょ?」
*(‘‘)* 「ごめんなさ〜い。」
('、`*川「どうもありがとうございます。この子何かご迷惑をお掛けしませんでしたか?」
川 ゚ ー゚) 「いいえ、とても良い子でしたよ、ね?」
*(‘‘)* 「いいこにしてたよ〜」
('、`*川「そうでしたか。ヘリカル良い子にしてたのね、偉い偉い。」
奥さんはそう言うと足元に抱きついたままの娘さんの頭を優しく撫でた。
*(*‘‘)* 「えへへ。」
('、`*川「本当にどうもありがとうございました。」
( ^ω^)「何かありましたら何時でもご連絡を。」
('、`*川「分かりました。ほら、ヘリカルちゃんとお礼を言いなさい。」
*(‘‘)*「おねえちゃんジュースありがとう。」
川 ゚ ー゚) 「どういたしまして。」
('、`*川「それでは失礼いたします。」
*(‘‘)*ノシ「おじちゃんおねえちゃんばいば〜い。」
奥さんに手を引かれながら笑顔で私とクーに手を振る娘さん。
( ^ω^)ノシ「お気をつけて。」
川 ゚ ー゚)ノシ「バイバイ。」
( ^ω^)「………」
私は親子が帰った後も署の入り口で立ち尽くしていた。
娘さんの笑顔と奥さんの涙が脳裏に焼きついている。
まだ何も知らない事はあの子にとって救いなのだろうか
奥さんもまた娘さんに父親の死を分からせなければならない時が来る。
ある意味で被害者は家族に一つの罪を残してこの世を去ってしまったのかも知れない。
( ^ω^)「………」
川 ゚ -゚)「警部補?」
( ^ω^)「すまないお。何だか思う所があって。」
川 ゚ -゚)「そうでしたか。奥さんと娘さんにはこれからまた辛い日が来るのでしょうね…」
( ^ω^)「…だろうお。
今日の昼は彼に会いに行かないといけないからすまないが後を頼むお。」
川 ゚ -゚)「分かりました。それとこの携帯警部補のですよね?」
クーはそう言うとスーツの上着ポケットから私の携帯を取り出した。
( ^ω^)「そうだけど…」
(;^ω^)「あれ?」
私は慌ててスーツの上着とズボンのポケットを探ったが見つかるはずもなく。
(;^ω^)「何時の間になくしてたんだお…」
川 ゚ -゚)「仮眠室に置いてありましたよ。今度から気をつけてください。」
(;^ω^)「すまないおクー。」
川 ゚ -゚)「それでは。」
クーは私に携帯を手渡すとそのままオフィスの方へと去って行った。
( ^ω^)「私とした事が、ん?」
ふと帰ってきた携帯に目をやると留守電が一軒入っている。
多分家族からだろう。
( ^ω^)】
『パパ〜!!
今日サッカーの試合で二点もとって大活躍したんですよ!!
きっとパパがくれたバットとグローブで練習したからなんです。
パパ、帰ってきたら一緒に野球するんです!約束です!!
お仕事頑張ってください!
ブーン、身体は大丈夫?
あまり無理はしないでね…なんて言っても無理するのが貴方だものね。
何時でも帰りを待ってるからねブーン。』
( ^ω^)】「ツン、ビロード…」
――クオリティエンタープライズ――
(‘_L’)「今年はZIP社と提携を結び慈善事業の規模をさらに広げてみるのはどうでしょうか?」
('A`)「………」
部下の提案が耳に入っているのか、
ドクオは上の空と言った感じで呆然と会議室の窓の外の青空を眺めていた。
(;‘_L’)「社長?」
Σ('A`)「ん?」
(;'A`)「あぁすまない。なんだったかな?」
(;‘_L’)「ZIP社との提携の件についてです。」
('A`)「ZIP社は我が社同様老舗の会社で信用性があるがもう少し様子を見たい。
向こうも提携を望んでいるようだが互いがより良い関係を築くにはもっと互いの事を知る必要があるからな。」
(‘_L’)「わかりました。」
('A`)「会議はここまでにしよう。みんな各自の持ち場に戻ってくれ。」
会議室に集まった社員達は各自の持ち場へ戻って行った。
('A`)「ハァ…」
社員達が出て行くのを見届けた後ドクオは再び窓の外に視線を移し溜息をついた。
(-@∀@)「悩み事ですか?」
会議室に残っていたアサピーがドクオに声を掛けた。
('A`)「あぁ、大した事ではないんだが。」
(-@∀@)「私で良ければ聞きますよ?」
('A`)「…そうだな。変な事を聞くが、
もし君が銃を持った相手に闘いを挑まなくてはならなくなったらどうする?」
(-@∀@)「そうですね。私なら、予め戦うような状態に陥らないようにします。」
('A`)「どうしても戦わなければいけなかったら?
しかも一人で。」
(-@∀@)「…それなら、それ相応の装備が必要ですね。」
('A`)「それ相応の装備とは例えば?」
(-@∀@)「頑丈な防弾スーツなどでしょうか。」
('A`)「頑丈な防弾スーツか…」
(-@∀@)「急にどうなさいました?」
('A`)「いや、ちょっとね。それよりその頑丈な防弾スーツと言う物の事なんだが。」
(-@∀@)「ありますよ。前の深夜に言っていた防弾スーツの事ですがね。」
('A`)「そういえば僕自身が見せてくれと言っていたっけ。」
(-@∀@)「ご覧になられますか?」
('A`)「もちろん。」
――開発事業部ラボ――
(-@∀@)「こちらです。」
アサピーはドクオをラボ内にある大きなロッカーの前に案内した。
('A`)「この中にあるのかい?」
(-@∀@)「えぇ、今開けますので。」
頑丈そうなロッカーの鍵を開け扉をひらくと、
中には全身黒尽くめのボディスーツ一式と様々な装備が立て掛けられていた。
('A`)「これが…」
(-@∀@)「ではご説明しましょう。」
アサピーはそう言うと立て掛けれているスーツの大胸筋部分を二度とノックした。
屈強な人間の大胸筋と腹筋の形が模られているそれは、見た目だけでもその頑丈さがうかがい知れる。
(-@∀@)「こちらのアーマーはケブラー繊維とカーボンファイバーで出来ていて、
何重にも織り重なったケブラー繊維が体を防護し、
カーボンファイバーが耐久性の強化と耐熱の役割を果たします。」
('A`)「耐久性はどのくらいなんだい?」
(-@∀@)「丈夫なケブラー繊維の二重織りで衝撃に強く、ナイフでも破れません。」
('A`)「耐久性は文句なしだな。」
(-@∀@)「ケブラー繊維の強度は鋼鉄の五倍ですからね。9mm程度ではびくともしませんよ。」
('A`)「胴体以外のスーツの腕や脚部分はゴムで出来ているようだが。」
(-@∀@)「胴体程の耐久性はありませんが、丈夫で柔らかいゴム素材を使っているので動きやすいですよ。
ウェットスーツのような感覚で身体にフィットします。」
('A`)「このスーツもタンブラー同様また再利用出来ると思ってとっておいたのかい?」
(-@∀@)「そうです。」
('A`)「…アサピー。」
(-@∀@)「なんでしょう?」
('A`)「このスーツを貸して欲しいと言ったら駄目かな?」
(-@∀@)「構いませんが、何に使うおつもりで?」
('A`)「えぇと…探検、かな…」
(-@∀@)「探検ですか。」
('A`)「そうだ。」
(-@∀@)「分かりました。どうぞお持ち帰りください。」
('A`)「良いのかい?」
(-@∀@)「私は社長の趣味にどうこう言うつもりはありません。
第一ここの発明品は社長の物でもあるのですから、どう使おうと社長の自由ですよ。」
('A`)「ありがとうアサピー。」
――ダイナー――
( ^ω^)「………」
私は彼の事務所の近くにある待ち合わせ場所のダイナーで、
注文したホットコーヒーを一口飲んでは腕時計を見やり、
窓の外を眺めると言う行為を十回以上繰り返していた。
窓の外では慌しい足取りで早歩きをするビジネスマン、
元気にペダルを漕ぐ少年達、優しげな表情で乳母車を押す母親。
広がる光景は平和そのものだ。
こんな光景を見ていると、本当にこの街はマフィアや犯罪者達の脅威に晒されているのかと疑問に思えてくる。
だが私は何度もこの街が顔を変えるさまを見てきた。
光と闇、まさにそんな表現がぴったり当てはまる。
( ^ω^)「………」
私が再びコーヒーを一口飲み、
腕時計で待ち合わせの時刻から32分が過ぎた事を確認しながら窓の外に視線を移そうとした時だった。