1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
代理
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:06:19.75 ID:xBpx68jv0
やれやれ
初遭遇ktkr
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:07:49.44 ID:fvHuxlBo0
期待
5 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:10:24.85 ID:BQDeB8+DO
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:11:04.99 ID:9KWdSpqRO
支援
7 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:11:52.45 ID:BQDeB8+DO
〜track-β〜
━━月が綺麗な夜だった。
遠くで聴こえる歓楽街の喧騒も、今は耳にも入らない。
( )「……」
足元に転がる、人間だったものを見下ろす。
切り刻まれ、最早原型を留めぬ肉塊からは、それが生前にどんな人間“だった”のかすら想像もつかない。
( )「……呆気ない、ものだな」
血に塗れた自らの双掌を見つめる。
この手が、二秒と要さずこの肉塊を作り上げた。
造作も無い。苦にもならない。
こんなにも簡単に、人は死ぬ。
どんなに偉大な人物だろうと、どんなに卑しい人物だろうと、それは変わらない。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:11:53.80 ID:fvHuxlBo0
楽しみだぜ
9 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:13:56.36 ID:BQDeB8+DO
命が消える、その一瞬、「人間」は殺戮者にとって、ただの血と臓物の詰まった肉袋と化す。
そうやって「あの人」もまた、物言わぬ肉袋と成ったのだ。
( )「……ふざけている」
そんなものは、ふざけている。
そんな単純な道理で、「あの人」が死ぬことなど許されない。
そんな理不尽がまかり通ることなど、決して許されていいことではない。
10 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:16:01.35 ID:BQDeB8+DO
( )「そんなものは……」
しかし。
どれだけ嘆こうと。
どれだけ叫ぼうと。
その主張が通らないこの世界で、自分はどうすればいい。
( )「……」
答えは、考えるまでも無かった。
( )「っぁぐぅ…うっ……」
込み上げてくる吐き気に、体内のドラッグホルダーを開く。
インプラントされた“ペインキラー”が血管内に流し込まれ、遠退く意識。
( )「るるぅぅぅぅおぉぉおぉおお!!!!」
一匹の獣が、月に吼えた。
11 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:17:35.80 ID:BQDeB8+DO
※ ※ ※ ※
━━これじゃ不審者だ。
私の常識が、右往左往するこの身に向けて警鐘を発している。
ξ;--)ξ「あー…うー…」
目の前の薄汚れたアルミ扉に、赤いペンキでデカデカと描かれた「fuck my uss!」の文字。
それに隠されるように、汚い字で綴られた表札は「D-GARD」。
ξ;--)ξ「うー…あー…」
件のボディーガードの事務所の前を行ったりきたりすること三十分。
未だに私は扉を開けてからの第一声を決めあぐねていた。
ξ;--)ξ「一体何て言えばいいのよ……」
口実として一番単純なのは、この間のツケを払いに来た…だろう。
しかし、あんな奴に守られたなど私のプライドが許さない。
金を払うなど、持っての他だ。
ξ;--)ξ「お礼を言いに…」
いやいや、何を礼を言う必要が有ろうか。
確かに命を救われたのは事実だが、それはヤツが一方的に、しかも下心有ってしたことだ。
不誠実な行為に下げる頭など、私は持ち合わせていない。
12 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:18:37.56 ID:BQDeB8+DO
ξ;--)ξ「えーと…うーと…」
不肖、ツン・デリア・オルデンブルグ。
例え泥水を啜る身に落ちようと、誇りだけは失わないようにと今まで生きてきた17年。
こんなところで、その誇りを汚すわけにはいかないのだ。
何かないか。私のプライドが傷つかず、尚且つここを訪れるにたる口実は。
考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。
ξ--)ξ「考えろ…考えろ…考えろ…あなたはツン・デリア・オルデンブルグ。やれば出来る子よ…考えろ…考えろ…」
('A`)「……」
ξ--)ξ「考えろ…考えろ…考えろ…考えろ…」
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……」
あ。
('A`)「……気にせず、続けて下さい。最近の若者には考える時間が必要だと思いますし」
爽やかな笑顔と共に、私を避けてドアを開けようとするヤツ。
ξ;゚听)ξ「ちょっと待ちなさいよ!」
いつから私の背後に立っていたのか。意表をつかれて声を荒げた私は、思わずそのよれよれのジャケットの裾を掴んでいた。
13 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:19:59.64 ID:BQDeB8+DO
(;'A`)「何だよ!離せよ!知り合いと間違われたら社会的にアレだろうが!」
ξ;゚听)ξ「ちょっ!あんたねっ!それどういう意味よ!」
(;'A`)「いいから!もういいから!お金とか払わなくていいから早く離して!」
ξ;゚听)ξ「別にあんたに金を払いに来たわけじゃ無いわよ!」
(;'A`)「じゃあ何だよ!何の用だよ!」
ξ;゚听)ξ「そ、それは……」
それは……。
ヽ(;'A`)ノ「あー観たいアニメが有るからまたな!さいなら!永遠にばいばい!」
ξ;゚听)ξ「依頼よ!依頼!仕事の依頼に来たのー!」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:20:25.21 ID:fvHuxlBo0
支援
15 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:25:03.31 ID:BQDeB8+DO
('A`)「え?」
ξ゚听)ξ「え?」
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「それは…どういう……」
何言ってるんだろう私。ヤツが抵抗するから思わずこんなこと言っちゃったけど、ぶっちゃけ何も考えて無いわよ。
ξ;゚听)ξ「えーと…」
考えろ。考えろ私。
ξ;゚听)ξ「その…」
(;'A`)「……」
ξ;^竸)ξ「そう!護衛依頼!今日一日、私の護衛をしてちょうだい!その仕事ぶりを見て、こないだの分も払うかどうか決めるわ!」
取り返しのつかないことをした。
そう思ったのは、ヤツがため息をついた後だった。
16 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:26:58.49 ID:BQDeB8+DO
※ ※ ※ ※
━━気まずい。
('A`)「……」
気まずい。
ξ゚听)ξ「……」
めちゃくちゃ気まずい。
('A`)「……なぁ、目的地はどこなんだ?」
何度目になるかわからない問い掛けを無視して、私は歩き続ける。
そんなもの知るもんか。私だって正直これからどうしたらいいのかわからないのだ。
('A`)「……なぁ」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:27:14.22 ID:X+aFeC5kO
支援支援
18 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:28:05.84 ID:BQDeB8+DO
ξ#゚听)ξ「うるっさいわね!どこまで歩こうが私の勝手でしょ!依頼人に口答えする気!?」
(#'A`)「正式な契約を交わしたわけでも無いのに、オレを連れ回すような奴を依頼人とは呼ばないね」
ξ;゚听)ξ「うぐっ!」
(#'A`)「何様なのか知らないけどよ、いきなりオレを連れ出して一体どうするつもりなんだよ!こっちは暇じゃないんだ!」
ξ#゚听)ξ「あらそう!だったらさっさと帰ったら?そしたら私もお金を払わないで済むわ」
(;'A`)「てめぇ……」
あらあら、何だかんだ言ってお金にはがめつくいらっしゃるのね。
ξ゚听)ξ「……そうだわ」
(;'A`)「な、何だよ……」
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:29:14.51 ID:KHMnX3kXO
しえん
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:29:44.14 ID:X+aFeC5kO
支援
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:29:49.59 ID:fvHuxlBo0
支援ぬ
22 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:30:29.82 ID:BQDeB8+DO
このままこいつを嫌という程連れまわしてやろう。
そう、自分から「もうついていけない」と音を挙げるくらいに。
なかなか素敵なアイデアね。こないだのお返しには充分だわ。流石私。流石ツン。やっぱり本格派は違うわね。
ξ゚听)ξ「そうと決まれば、先ずはあそこに行くわよ」
天啓を得た私は、ずびしっとある一点を指差す。
('A`)「……は?」
人混みでごった返すニーソクの14番通り。
ヤツが間抜けな声と共に見つめる先。
私の指は、ストリートホロの看板を射抜いていた。
23 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:33:20.33 ID:BQDeB8+DO
※ ※ ※ ※
━━染みの浮いた壁とタイルの剥がれた床を交互に見る。
ξ゚听)ξ「うわっ…ばっちぃ…」
流石は天下のニーソク区。ロクに掃除もされていないのだろう。
('A`)「……おい、どういうことだよ」
隣でぶつくさ言っている似非ボディガードを黙殺して、私はチケット売り場へと進んでいく。
窓口では、ドレッドヘアに右目が義眼の胡散臭い黒人が船を漕いでいた。
ξ゚听)ξ「大人二枚」
ガラスをノックして彼を起こし、チケットを受け取る。
ξ゚听)ξσ「あと、ポップコーンとコーラ。どっちもLLサイズで。お金はあそこの唐変木から貰って」
(;'A`)「おいてめっ!」
うすら瓢箪が何か口答えしているが徹底的に無視。
ξ゚听)ξ「えーと、今の時間は何をやってるのかしら……」
窓口からホールへと進み、壁際の立体ホログラフに映し出された予告編の映像達を眺める。
(;'A`)「おい、まさかホロムービーを観るなんて言うわけじゃねぇよな」
財布をしまいながら追い付いて来たうすら瓢箪には振り返らず、私は頷いた。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:33:46.51 ID:fvHuxlBo0
ツン可愛いなあ
25 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:35:18.71 ID:BQDeB8+DO
(#'A`)「ヘイヘイヘイヘイヘイ!冗談はよしてくれよお嬢さん!あんたオレにさっき何を依頼した?護衛じゃなかったか?あ?」
ξ゚听)ξ「そうよ?それが何か?」
(#'A`)「だったらどうしてこんなところでポップコーンを摘んでるんだ?オレまたこれから鉄火場にカチコミでもかけると思ってたんだがね」
ξ゚听)ξ「うーん…どれを観ようかしら」
(#'A`)「それとも何か?今からここでロイヤルハントの作戦行動でも起こるってのかい?えぇ?」
ξ*゚听)ξ「あ、これ面白そぉー」
(ノA`)「……はぁ」
ξ゚听)ξ「うわっ、後二分で始まるじゃない!行くわよ、ヘチマ顔!」
('A`)「ファッキン、ジーザス」
26 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:37:45.85 ID:BQDeB8+DO
※ ※ ※ ※
━━がらがらのシートの群れを眺めて、私は一人溜め息をついた。
ξ゚听)ξ「…最悪。まさかあんたと二人きりだなんてね」
('A`)「こいつぁ神様のはからいかね。くたばれイエス」
お互いに毒づきながら、最後尾の列の真ん中に腰を下ろす。
ξ゚听)ξ「あら。こんなに空いてるのに、わざわざ隣同士で座ることは無いでしょ」
('A`)「先に座ったのはオレだ。あんたがよって来たんだろ」
ξ゚听)ξ「離れて。性病にかかったらどうするの」
('A`)「オレがストレスで禿げたら、あんたに植毛代を請求させて貰うとするよ」
27 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:39:19.99 ID:BQDeB8+DO
二人、譲らず平行線のまま。
気付けば予告編を垂れ流していたホログラファーは、ハリウッドのロゴを写していた。
ξ゚听)ξ「上映中はお静かになさって下さいましね」
('A`)「あんたよりもオレがお喋りに見えるか?」
ξ゚听)ξ「育ちが悪そうだからマナーを教えてあげたまでよ」
('A`)「そいつはお世話様で。授業料はどの講座に振り込めば?」
ξ゚听)ξ「しっ!始まる」
┓('A`)┏「やれやれ…」
28 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:41:05.71 ID:BQDeB8+DO
ど派手な爆音を上げて、一組の男女が殺し合う様から映画は始まった。
('A`)「なんだ?アクション映画か?」
日本刀を振り回す女と、鎖を振り回す男が対峙する様を見ながら、ヤツは隣で溜め息をつく。
('A`)「君は一体いくつだ?こんな子供騙しの映画……」
ξ゚听)ξ「黙ってて」
('A`)「へいへい……」
私の声に肩をすくめると、ヤツは私の手に握られたポップコーンへと手を伸ばした。
ξ゚听)ξ「……」
無言でその手をはたく。
('A`)「……けっ」
ヤツはむっつりとした顔で腕を組むと、それきり黙り込んだ。
いいわよ。この調子。そうやって、この映画が終わるまでの時間を苦痛と共に過ごしてくれれば、好都合だ。
私だってこんな退屈そうな映画を見たいわけじゃ無い。つまりは、そういうことだ。
『僕は…僕はクーを守るんだお!』
ホログラフの中で、両手に白いグローブをはめた少年が叫んでいる。
このホロムービーの主人公だろうか。どうせなら、私もこんな男の子に守られたかったな。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:41:36.19 ID:X+aFeC5kO
支援支援
30 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:42:29.99 ID:BQDeB8+DO
ξ゚听)ξ「……」
傍らに座る男の顔を覗き込む。
('σA`)「んぁ〜…」
考えたら負けだ。そうよ、現実なんてそんなものよツン。
白馬の王子様なんて存在しないのよ。あれはお話の中の存在なの。フィクションなの。
『オーバーペニス!』
装飾過剰な爆音に、私はホロへと向き直る。
いきなり馬鹿でかい音を出したことに文句の一つでも言ってやろうかと思ったのだ。
『うぉぉぉぉお!!』
先の少年が、別のキャラクターに拳を叩き込んでいる。
連打、連打、連打、連打、連打、フィニッシュ。
31 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:44:23.56 ID:BQDeB8+DO
はいはい、カッコイいカッコイい。どうせここで臭い台詞をと一緒に決めポーズ何でしょ。そんなのわかって━━。
『なっ!?まだやられないのかお!?』
ξ゚听)ξ「え?」
『甘いな…それ程の攻撃が我が輩に通用するとでも…?』
ちょっと、どういうことよ。あれだけぶん殴られて立っていられるわけないじゃない。
『我が輩を倒せるものは、魂のこもった拳のみ!』
(;'A`)「なん…だと…?」
『そんな……』
ξ;゚听)ξ「どうしたら、勝てるのよ…」
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:44:25.31 ID:fvHuxlBo0
支援
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:45:07.59 ID:v76Krm9mO
支援
34 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:46:12.66 ID:BQDeB8+DO
異常なまでのタフネス。一体、主人公はこの敵にどうやって勝つというのか。少し、興味が湧いてきた。
『さぁ、見せてみろマスクメロン!貴様の魂を!貴様の真の力を!』
(;'A`)ξ;゚听)ξ「「……ごくり」」
『うわぁぁぁぁあ!』
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと、そこで突進したって……」
『ぬぅぅおぉぉぉお!!』
(;'A`)「行け!行け!そこだぁぁぁあ!」
『ぐはぁぁぁあ!』
ξ;゚听)ξ「あぁ!やっぱり!だから言ったじゃない!」
『依存は、ただの停滞だ』
(;'A`)「クサギコォォオ!」
『成長したな…マスクメロン…』
35 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:46:47.93 ID:BQDeB8+DO
ξ;;)ξ「あぁ〜んロマ様が死んじゃったぁぁぁあ!」
『貴様は、僕が直々にぶちのめすお!』
(#'A`)「ぶちのめせぇぇえ!」
『これは!ショボンの分!』
ξ#゚听)ξ「これは!ヤムチャの分!」
『そしてこれが……』
(#'A`)ξ#゚听)ξ「『ロマネスクの分だぁぁぁぁあ!!』」
スクリーンが、ドクオが、私が、叫ぶ。
気付けば私達は立ち上がり、拳を振り上げ怒鳴っていた。
36 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:48:16.67 ID:BQDeB8+DO
『ぐおぉぉおあぁっ!?』
壮絶な爆音。ホワイトアウトするホロ。
映像が再び色を取り戻した時、そこには地面に倒れた宿敵を見下ろす主人公の姿が映し出されていた。
『何故…私は貴様などに…敗れたのだ……』
『違うお…お前は、僕に負けたんじゃないお…』
『それは…どういう…意味だ…』
『お前を倒したのは僕じゃない…みんなが…平和を願うみんなの想いが!フォックス!お前に打ち勝ったんだお!』
『ふっ…想いか…そんなものに敗れるとは…私も…焼きが回ったものだ…』
目を閉じる宿敵。ブラックアウトする映像。
37 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:48:49.77 ID:BQDeB8+DO
(;'A`)「……やった」
ξ;゚听)ξ「やったわ…」
しばらくの間をおき、流れ出すスタッフロール。
ξ*^竸)ξ「やった!やったわ!やったのよぉ!」
(*'∀`)「うぉぉぉぉお!やったずぇぇえ!」
こらえ切れなくなり、私達は手を取り合って歓声を上げた。
ξ*^竸)ξ人('∀`*)「「やりました!遂にやりましたぁぁぁあぁあ!」」
繋いだ手を振り回し、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねる。
38 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:49:58.56 ID:BQDeB8+DO
ξ*゚听)ξ「やっぱり、正義は必ず勝つのよ!」
(*'A`)「いやぁ、熱かった!近年稀に見る良作だな。いや、神作と言っても過言じゃない!」
ξ*゚听)ξ「ねぇねぇ、どのシーンが一番良かった?」
(*'A`)「やっぱあれだろ、フーンがマスクメロンの仇を討つために一人でキャバクラに突入するとこ!熱いね!漢の友情を見事に描いてる!」
ξ*゚听)ξ「えぇー!それだったらロマ様がクーを庇って月面兎にやられちゃうシーンの方が感動出来るじゃない!身を挺して愛する人を守る…それでこそ男よ!」
(*'A`)「いやいやいや…わかってないねぇ」
ξ*゚听)ξ「わかってないのはあなたよ。この映画は……」
(*'A`)「……」
ξ*゚听)ξ「……」
ちょっと待って。
いやいやいや。ちょっと待って。何?何で私、こいつとこんな和気あいあいとしちゃってるわけ?
ξ;゚听)ξ「あ、うっ…」
そうじゃない。そうじゃないでしょツン。目的を間違えてはいなくて?
思い出せ。“何故私はこの映画館に入った?”
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:50:12.84 ID:fvHuxlBo0
wktk
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 21:51:32.66 ID:Gqko4NCqO
待っていた。ずっと待っていたぁあ!!!!
41 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:52:49.37 ID:BQDeB8+DO
ξ;゚听)ξ「あぁーおほん」
('A`)「ん?」
ξ゚听)ξ「映画も終わったし、さっさとここを出るわよ」
('A`)「あぁー、そだな。で、次はどこに行くんだ?」
ξ;゚听)ξ「えーと、それは……」
('A`)「あらら?もしかして、決めてないんですかい?」
ξ;゚听)ξ「ば、馬鹿言わないでよ!そんなわけないでしょ!」
('A`)「じゃあ、どちらへ向かわれるのです?」
ξ;゚听)ξ「えぇーと…えぇーと…」
('A`)「お・嬢・さん?」
ξ#゚听)ξ「う、うるさいわねっ!いいからついてきなさいっ!」
ニヤニヤと締まらない笑みを浮かべるヤツに背中を向けると、ぷりぷりと海老のように肩をいからせ、私は歩き出す。
やっぱり、この男は気に食わない。
そう、無理矢理に思い込むことにした。
42 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:56:09.10 ID:BQDeB8+DO
※ ※ ※ ※
━━あっちへふらふら。
ξ*゚听)ξ「あ、あの服可愛い!」
こっちへふらふら。
(Δ゚*ξ「うわぁ、ね、ね!見て見て!」
露天の軒先を次々に渡り飛ぶ私は、さながら蜜を求めてさ迷うアゲハチョウかしらん。
('A`)「どっちかつーと蛾だろ」
ξ゚听)ξ「大丈夫、グレゴール・ザムザ。それは毒蟲では無い」
('A`)「体が健康な証明ってか?お盛んなのは結構だが、付き合うオレの身にも……」
ξ*゚听)ξ「あぁー!ミラックマの抱き枕だぁー!」
('A`)「……」
ニューソクのセンターアーケード。
世間的には終戦記念日らしい休日の街では、今フリーマーケットが開かれているようだ。
電脳ゲームセンターやキャバレーなどといったいかがわしい店々にも、今は軒先ビニールシートが広げられ、大学生らしき若者達が様々な品物を並べて健全な汗を流している。
ξ*゚听)ξ「うーん。どれもこれも私のツボを的確にスナイプしてくるわ。出来るわね」
こういった催しものは、ニーソクの闇市ぐらいしかお目にかかったことの無い私にとって、その光景は新鮮なものだった。
43 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:57:16.93 ID:BQDeB8+DO
ξ*゚听)ξ「あ、もしかしてあのマグカップ!」
気付けば私は本来の目的も忘れて、フリーマーケットの誘惑に肩までどっぷりと浸かってしまっていたのだった。
('A`)「……だりぃ」
まぁ、ヤツの心底うんざりしたような顔を見る限りでは、この作戦も成功と言えるだろう。
ξ*゚听)ξ「あー!やっぱり!やっぱりウェッジウッドだ!凄ーい!こんなところで出逢えるなんて夢みたぁい!」
とある露天の前まで駆けてきた私は、並べられた色とりどりの雑貨の中から、そのマグカップを手に取った。
白磁にスミレの花の絵が描かれたそれは、長い間私が探し続けていたウェッジウッド製のマグカップ。
何しろもう何十年も前に倒産したブランドの品物だ。
ネットオークションで見かけたとしても、どれも天文学的な値段で私には手が出せなかった。
それがこんな場末のフリーマーケットに出ているとはなんたる暁光。
見たところ値札は貼られていないようだが果たして。
44 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 21:59:43.54 ID:BQDeB8+DO
ξ*゚听)ξ「あの、これいくらですか?」
( ^ω^)「……お?それは、売り物じゃないお」
私の問いに、ビニールシートの隅で俯いていた青年が顔を上げる。
大学生ぐらいだろうか。ふっくらとした体格に優しげな面持ち。癒し系、って感じかな。
でも、心なしかやつれたような感じが有る。
ξ゚听)ξ「あ、そうなんですか……」
がっくりと肩を下ろし、マグカップをシートの上に戻す。
ここに来て、一気にテンションはがた落ち。
零れる溜め息も、質量的な重みを増すってもの。
ξ゚听)ξ「……はぁ」
( ^ω^)「……」
やっぱり、そう簡単にウェッジウッドが手に入る分けないよね。
何たってプレミアだもん。どうして私の欲しいものはこうも皆、入手難度が高いのかしらん。
アンティーク趣味の道とは、かくも険しいものなのか。
( ^ω^)「……欲しい、んですかお?」
私が未練がましくも溜め息をついているのを見かねたのか、彼は私の顔を見つめながら聞いてきた。
45 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:03:34.41 ID:BQDeB8+DO
ξ*゚听)ξ「あの、これいくらですか?」
( ^ω^)「……お?それは、売り物じゃないお」
私の問いに、ビニールシートの隅で俯いていた青年が顔を上げる。
大学生ぐらいだろうか。ふっくらとした体格に優しげな面持ち。癒し系、って感じかな。
でも、心なしかやつれたような感じが有る。
ξ゚听)ξ「あ、そうなんですか……」
がっくりと肩を下ろし、マグカップをシートの上に戻す。
ここに来て、一気にテンションはがた落ち。
零れる溜め息も、質量的な重みを増すってもの。
ξ゚听)ξ「……はぁ」
( ^ω^)「……」
やっぱり、そう簡単にウェッジウッドが手に入る分けないよね。
何たってプレミアだもん。どうして私の欲しいものはこうも皆、入手難度が高いのかしらん。
アンティーク趣味の道とは、かくも険しいものなのか。
( ^ω^)「……欲しい、んですかお?」
私が未練がましくも溜め息をついているのを見かねたのか、彼は私の顔を見つめながら聞いてきた。
支援
ツンが可愛いんだが実際に居たらまず殴るんだろうな…
47 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:05:35.63 ID:BQDeB8+DO
ξ;゚听)ξ「え?そりゃあもう、これを逃したらまた何時出会えるかもわからないですし……」
覗き込んでくる彼の瞳に、私は若干たじろぐ。
日本人独特の黒い瞳は私を写しているにも関わらず、どこか遠く、異国の地でも望んでいるのかと思う程に虚ろだった。
( ^ω^)「そうですかお……」
やがて、彼は何かを吹っ切るようにして苦笑すると。
( ^ω^)「あなたは、何だか僕の知人に似てますお。だから、今回はサービス」
そう言って、ウェッジウッドのマグカップを私の手に手渡した。
ξ゚听)ξ「え?」
( ^ω^)「お代はいりませんお。どうせ、客寄せの展示品ですお」
ξ*゚听)ξ「ほ、本当にいいんですか!?」
( ^ω^)「おっおっ。……あぁそうだ。それペアカップなんですお。せっかくだから、こっちもどうぞ」
青天の霹靂に歓声を上げる私の手に、もう一つ陶器の重みが加わる。
ξ*゚听)ξ「うわぁ!有難うございます!有難うございます!」
( ^ω^)「いえいえ。本当なら捨てるつもりだったんですが、あなたのような人に引き取って貰えて僕も嬉しいですお」
48 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:06:48.53 ID:BQDeB8+DO
どこか寂しげな笑顔を浮かべる彼に何度も頭を下げながら、私は露天の前を後にした。
ξ*^ー^)ξ「ふふふ…ラッキー!まさか、タダで手に入っちゃうなんてね」
('A`)「タダより高いものは無いって言うぜ?」
ほくほく顔で幸せ満点の私の心に水をさすように、ヤツが横に並ぶ。
ξ゚听)ξ「何だ、あんたまだ居たの」
ヤツの存在など遥か二億光年前に忘れて久しかったが。まさかまだ生きて居たとは。
('A`)「一応プロですから。……にしても、意外だね。君にそんな乙女チックな趣味があったとは」
面白くも無さそうに、ヤツは私の手の中のマグカップを顎で指す。
ξ゚听)ξ「…乙女だもん。何も違和感なんて無いじゃない。それともあんた、私が四六時中ライフル振り回してるとでも思ってるわけ?」
('A`)「……いや、似合ってるよ?」
ξ゚听)ξ「何で語尾が上がるのよ。失礼な男ね」
('A`)「オレは悪魔だから、生憎嘘はつけないんだ」
ξ゚听)ξ「あら、確かにそういえば悪魔みたいね。その憎たらしいところとか、ヘチマみたいな顔とか。何の悪魔?」
したり顔でお互い、毒を吐く。冷戦状態再発。
49 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:08:02.77 ID:BQDeB8+DO
('A`)「まぁ、そんな軽口はどうでもいいとして、だ」
そんな不穏な空気を無理矢理払うように、彼は再び私の手元に目を落とした。
('A`)「ウェッジウッドなんて、随分と通だな」
藪から棒に何を言うかと思えば。
ξ゚听)ξ「…あんた、わかるの?」
('A`)「90年も前に倒産になったイギリスの食器メーカーのマグカップだろ?知識だけなら人様よりかは有るぜ」
ξ;゚听)ξ「へぇー意外。あんたがそんなこと知ってるなんて……ヘチマ顔のくせに」
('A`)「顔はほっとけ」
あら、つい本音が。
ξ゚ー゚)ξ「でも、ウェッジウッドのことがわかる人と会ったのなんて初めてだわ。私の友達も、だぁれも知らないんだもん」
('A`)「だろうな。ウェッジウッドなんてそれこそ骨董品の部類に入るだろう。君みたいな世代の趣味じゃないね」
ξ゚听)ξ「あら、それは私に対する嫌みととってもいいのかしら?」
('A`)「お好きに解釈して下さいお嬢様」
ヘラヘラと勝者の余裕をかますようにせせら笑うヘチマ顔。
50 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:10:52.56 ID:BQDeB8+DO
ξ゚听)ξ「……やっぱり、似合わないかな」
この歳でアンティーク趣味というのは可愛げが無いのだろうか。
所詮はヘチマ顔の弁とは言え、ちょっぴり自信を無くすというものだ。
('A`)「…あ?」
ξ゚听)ξ「ウェッジウッドはね、お父様の影響なの」
('A`)「ふーん……」
ξ゚听)ξ「ウェッジウッドっていうか、私の古物趣味は全部お父様の影響。うん」
口をついて出たのは、そんな言い訳になっていない言い訳。
ξ;゚听)ξ「ほら、人は環境で作られるって言うし……それに……」
ごめんなさいお父様。嗚呼、何だか自己嫌悪。
('A`)「……別に、いいんじゃね?」
ξ゚听)ξ「へ?」
('A`)「いや、趣味なんて人それぞれだし。他人様の顔色伺って趣味を選んでたら、それって…何か違うじゃん」
ξ゚听)ξ「…そう、かな?」
('A`)「そうだろ。他人の意見に合わせて、自分が楽しめないなんて虚しすぎるっつーの」
ξ゚听)ξ「……うん」
51 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:12:31.30 ID:BQDeB8+DO
('A`)「まぁ、あくまでも趣味の話な。この狭い日本では協調性を重んじる傾向が強いから、色んな場面で他人に合わせなきゃならなくなるだろうけど……」
ξ゚听)ξ「いや、それは常識でしょ」
(;'A`)「あ、うん…」
ばつ悪そうに頭をかくヘチマ顔。
ξ゚ー゚)ξ「……でも、ちょっとは吹っ切れたかな」
('A`)「さいですか」
ξ゚ー゚)ξ「ランチ代は奢って貰うつもりだったけど、ワリカンで許してしんぜましょう」
('A`)「あんまり嬉しく無いんだけど……」
ξ゚ー゚)ξ「そういうワケで、美味しいシュニッツェルを出してくれるお店に連れてってくれるかしら?」
('A`)「しゅに…何?」
ξ゚听)ξ「ほーらさっさと案内するぅー!」
問い返す彼を置き去りにして、私は歩き出す。
まぁ、悪いヤツじゃないのかな。
そんな考えが、ちらりと頭を掠めた。
52 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:13:54.58 ID:BQDeB8+DO
※ ※ ※ ※
━━乾いた音を立てて、九つのボールは全てのポケットに収まった。
('A`)「ナインボール、ゲットだ!」
手にしたキューの先端を吹きながら、ヤツが気取った台詞を吐く。
('∀`)「さてさて、そろそろ実力の差がわかって来たんじゃないかな?」
ξ;゚听)ξ「むぅ……」
バーボンハウスニーソク支店。安酒場の隅のビリヤード台。
もう何ゲーム目になるだろうか。
酒を飲むつもりで立ち寄った私は、店の隅に置かれていたビリヤード台につい昔の血が騒ぐのを抑えられなかった。
お父様に磨かれたキュー捌きでもって、目の前のヘチマ顔に一泡吹かせてやろうと思ったのだ。
('∀`)「“ベルリンのハスラー”とか言っちゃって…本当のところは隠す実力が無いんじゃないかなwwwwww」
思ったまでは良かったのだ。
ξ#゚听)ξ「……」
だというのに、何なのだこれは。
このへちゃむくれが、こんなにビリヤードが上手いなんて聞いていない。
こんなのは反則だ。インチキだ。きっと私の知らぬ間にプロのプレイヤーと入れ替わったに違いない。
いやぁ、ツンかわいいなぁ
54 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:15:39.85 ID:BQDeB8+DO
ξ゚听)ξ「そうよ。絶対そうだわ。こんなぶ男がビリヤードが上手なわけないじゃない」
('A`)「平然と失礼なことを言ってのけるね、君。オレのバックボーンとか完全に無視しちゃってるよね」
ξ゚ー゚)ξ「ふふ、ごめんなさい。冗談よ、冗談。真に受けないで」
(;'A`)「え、あ…う、うん…そう…?」
破顔する私に、彼は戸惑ったような顔を浮かべる。
何だろう。私、何かおかしなこと言ったかな。
ξ゚ー゚)ξ「ねぇ、そろそろ終わりにしてお酒でも飲まない?」
(;'A`)「へっ?…えと、あぁ、うん、そだな。うん。…うん」
キューを片付けながらバーカウンターへ向かう私の後に、ギクシャクとした動きでついて来る彼。
ξ゚听)ξ「ブラッディーメアリーをお願い」
(;'A`)「あ、じゃあ僕オレンジジュース…」
ξ゚听)ξ「は?もしかして下戸?」
(;'A`)「い、いや、そうじゃないけど……」
ξ゚听)ξ「だったら酒を頼みなさいよ。つまんないじゃない」
(;'A`)「あ、はい…じゃあジントニックで……」
55 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:17:37.13 ID:BQDeB8+DO
私達の注文を聞いたバーテンは、静かに後ろへと下がっていった。
店内に響いているのはジュークボックスから流れるメロウなジャズナンバーだけ。
私達以外に客は三、四人ばかりで、その誰もが酒を飲む以外に口を開けることは無かった。
ξ゚ー゚)ξ「あなた、なかなか上手いじゃない。どこで習ったの?」
バーテンが差し出したグラスを受け取りながら、私は隣に座った彼に体を向ける。
('A`)「高校の時に、ダチとよく放課後ここで遊んでたんだ。ただ、それだけさ」
ξ゚听)ξ「ふーん。…なんか、気に食わないけどまぁいっか」
('A`)「オレからも一ついいか?」
ξ゚听)ξ「なに?」
('A`)「いや、なんつーか…随分とトゲが取れたというか…そこら辺に違和感を感じるんだが」
ξ゚听)ξ「……」
言われてみれば、確かに。
初めはこんなヤツ、振り回すだけ振り回して適当にあしらうつもりだったんだけど。
むぅ。何なのだろうか。居心地が良いのかな。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:17:55.10 ID:fvHuxlBo0
支援
57 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:19:45.23 ID:BQDeB8+DO
ξ゚听)ξ「……もう、いいや」
('A`)「は?」
ξ゚ー゚)ξ「何でも無ーい」
('A`)「……はぁ」
どうにも釈然としない面持ちでジントニックを呷るドクオ。
私だって、どうしてこんなヤツと自然な空気になれるのかわからないんだ。
きっと考えるなってことなんじゃないの?ね、そうでしょ?
('A`)「……で、報酬金の件についてなんだが」
急に真面目くさった顔で彼は言い出す。
それが何だか無粋なことのような気がして、私はちょっぴり不機嫌になった。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:21:04.27 ID:08tfKvG6O
支援ッ!
59 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:22:17.98 ID:BQDeB8+DO
ξ゚听)ξ「んー……」
('A`)「そろそろ日も暮れる。今日一日、君の注文通り護衛してやったんだ。もう充分じゃないか?」
バーの壁掛け時計の針は16時を回った辺り。
さっきランチを食べたと思っていたら、もうそんなに時間が経っていたのか。
アインシュタインの相対性理論じゃないけど、あっという間だった。
ξ゚听)ξ「むぅ〜……」
('A`)「どうなんだ?」
正直なところ、今なら彼にお金を払ってやってもいいと思っている。
だけど、ここで払ってしまったら彼とはこれまでだ。
それは何だか惜しいような気がする。
60 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:23:55.56 ID:BQDeB8+DO
Σξ゚听)ξ「って、何が惜しいのよ」
('A`)「は?」
いやいやいやいや、待て待て待て。
何を考えている?それじゃあまるで、私がヤツに未練が有るみたいじゃないか。
そんなに私は寂しいのか?そんなに私は人恋しいのか?
ξ;゚听)ξ「うぅ〜……」
ちょっと。意味わかんない。
自分の感情がわからない。私はどうしたいの?嗚呼、イライラする。
('A`)「なぁ…」
ξ#゚听)ξ「わかんないわよ…」
('A`)「はぁ?」
ξ#゚听)ξ「だ・か・ら!わかんないの!」
(;'A`)「いやいや、オレも意味わからんが」
怒鳴る私、呆れるドクオ。
61 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:26:14.40 ID:BQDeB8+DO
私はどうしたいわけ?
わからない。わからないけど、何だかこのままここで「はいおしまい」は嫌だ。
ξ;゚听)ξ「うー……」
(;'A`)「あのぉ……」
でも、それじゃ私が今日一日してきた行為は何だったの?ってなるし……。
ξ#゚听)ξ「むむぅー……」
(;'A`)「その、なんなら、料金の方は保留ってことにしてくれてもいいから……」
私がうんうん唸っていると、彼はおずおずといった様子でそう提案してきた。
62 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:27:38.16 ID:BQDeB8+DO
ξ;゚听)ξ「うー…でもそれじゃけじめが……」
(;'A`)「いや、別にそういうの気にしなくていいから。うん。お金はそのうちでいいよ」
そう言いつつ、若干腰を浮かせ気味にしている彼。早くこの場から去りたいのか。
何だか心外だ。
ξ;゚听)ξ「でも……」
(;'∀`)ノ「気にすんなって!な!それじゃ!」
と思う間もなく、ドクオは爽やかな笑みと共に席を立つ。
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
(;'∀`)「あぁ、勘定はオレが払っとくから!じゃあね!」
引き止めようと手を伸ばすも、時すでに遅し。
エレキペイでバーの勘定を済ませた彼は、店の扉をくぐって消えた。
ξ゚听)ξ「……」
掴むべき目標を見失った右腕が、宙で所在なげにゆれる。
やり場の無い意味不明のモヤモヤを持て余した私は、ただ呆然と口を半開きにしてバーの玄関を見つめていた。
ξ゚听)ξ「……行っちゃった」
何で、あんな唐突に?
ちょっと前まで、あんなにお金にがめつかったのに。
私が払いたく無いように見えたのかな?
63 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:28:48.52 ID:BQDeB8+DO
ξ゚听)ξ「……だったとしても、あんな風に行くことないじゃない」
逃げるように立ち去った彼の背中を思い出しながら、まんじりともせずに呟く。
胸の中のモヤモヤが、また大きくなった気がした。
64 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:29:58.00 ID:BQDeB8+DO
※ ※ ※ ※
━━深く息を吸い、長く長く吐き出す。
肺の中が一瞬、冷たい夜気で満たされ、頭の芯まで冷えわたる。
高ぶった心臓を鎮めるには、些か手間取った。
('A`)「あー…またやっちまった」
ぼやきながら懐からマルボロを取り出し、火をつける。
じわじわと込み上げてくる自己嫌悪を誤魔化す為のシケモク。
最近覚えた現実逃避も、そろそろ様になってきた。
('A`)y-~「……はは、先が長くないのが目に見えてるな」
苦笑いと共に歩き出す、ニーソク駅までの道のり。
思い出されるのは、今日一日の「お仕事という名のデート」のこと。
ツン。年の頃は17、8ってところか。良くも悪くも世間擦れしてない、ガキだ。……まぁオレも大人ってわけじゃないが。
('A`)y-~「……ふぅ」
女と話すなんて久し振りだ。
あれ以来、「女」って単語を聞くだけで蕁麻疹が出るようになったオレにしては、よく一日中彼女の隣を歩けたものだ。
('A`)y-~「……まぁ、最後の最後にあれじゃあな」
溜め息一つ、タバコをくわえなおす。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:31:44.45 ID:p0aG7nRwO
支援
66 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:32:13.16 ID:BQDeB8+DO
不思議なもので、酒が入るまではオレも彼女を“女”と意識せずに接することが出来た。
これはどういうことなのだろうか。
単純に青臭すぎて、脳核が彼女を“女”と認識しないのか。
とにかく、これは喜ぶべき兆候なのかも知れない。
('A`)y-~「……どう、なんだろうな」
ツンをどうこうしたい、というわけじゃない。
ただ、彼女と接することでこのどうしようもない「体質」が改善されるなら。
67 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:33:52.17 ID:BQDeB8+DO
(;'A`)y-~「ん━━っ!?」
めまいは唐突だった。
赤く染まる視界。明滅するスペクトル。尾を引いて歪んでいく世界。
(;'A`)「うっ……おぅぇ……」
こみ上げる吐き気に膝を突く。
くわえていた煙草が落ちて、水たまりに消えた。
(;'A`)「おぇ…おっぶ…うぅ…っぷ……」
脳髄が痺れる。五感の感覚が麻痺していく。
赤と黒に染まった世界で、“アレ”が叫び声を上げた。
(;'A`)「あ…あ…お…う…」
叫び声、笑い声、金切り声、笑い声、笑い声、笑い声、笑い声、笑い声、笑い声、笑い声。
“アノ顔”。
(;'A`)「うっ━━」
絶叫。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:34:22.66 ID:45recvaTO
支援
69 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:35:00.08 ID:BQDeB8+DO
オレは気がつくと、胃の中の内容物を全てアスファルトに吐き散らかしていた。
(;'A`)「はっ…はっ…はっ…」
肩で息をしながら、目尻に溜まった涙を拭う。
(;'A`)「……ままならねぇわな」
背中にかかる折り畳んだ状態のクリスタルシールドの重みは、心なしか何時もより重かった。
next track coming soon...
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:35:30.37 ID:j33ZuCpsi
支援だぜファッキン作者!
ただあれだ!「Fuck my ass」だと思うんだぜ!
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:38:21.13 ID:fm74+Qh3O
初リアル遭遇
これかなり好きだ。支援
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:38:26.01 ID:p0aG7nRwO
乙!
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:39:39.46 ID:5ErN3J4g0
乙!
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:40:19.17 ID:45recvaTO
乙ー
おつおつ
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:43:56.82 ID:j33ZuCpsi
てか終わってやがりますか!乙!
オーバーペニス!
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:44:32.88 ID:0Lrv+FbTO
乙
他のブーン系を映画で出すとか…ニヤッとしてしまったじゃないか
78 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:51:30.21 ID:BQDeB8+DO
読んでくれた皆さん、支援してくれた皆さん、有難うございます
お粗末様でした
次回投下予定は明言出来ませぬ
ただ、ツンの外伝で遅れを取りたくはないので、一週間以内には書き上げたい所在です
何か質問があればドゾ
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:53:41.47 ID:Onv1vr1hO
どこ攻められると感じますか?
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:56:17.04 ID:L3VmubXli
毎度楽しみなんだぜ。
がんばってくださいだぜ。
で・・・その・・・書き上げたい「所存」?
81 :
◆fkFC0hkKyQ :2009/03/13(金) 22:57:01.59 ID:BQDeB8+DO
著作権関連のクレームは一切受け付けません。ご了承下さい
>>79 うなじ////
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/13(金) 22:59:33.24 ID:45recvaTO
83 :
◆fkFC0hkKyQ :
>>80 やぁね、携帯の予測変換のせいよ。見なかったことにしてくれると助かるわぁ
>>82 有難う!有難う!有難う!嬉しいよ!嬉しいよ!嬉しいよ!
大切なことなので三回ずつ言いました