1 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :
スレが落ちてたのでまた立てました。
次レスから続きを投下します。
2 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:35:11.74 ID:4C5Hx7O00
今北海岸――県の北東に位置する小さな海岸。本日の遊び場だ。
余りメジャーな海岸ではないので人が少なく、
大抵の場合はプライベートビーチとして使用できる海岸である。
今北海岸は小さな砂浜と岩礁地帯ばかりで更衣室などという立派な施設はないため、
ブーンたち男は岩陰で、ツンたちは軽トラの車内で着替えることになった。
男連中はものの10秒程で着替え終わってしまい、
今はただ女性群の着替えを待つだけという、まさに時間を持て余している状態だった。
_
( ゚∀゚)「しっかし、女っつーのはマジで用意が遅いな」
ジョルジュが痺れを切らし、悪態をついた。
( ^ω^)「きっと僕たちより着替えが大変なんだお」
ブーンはそんなジョルジュにフォローをいれた。
(´・ω・`)「まぁゆっくり待ってようよ」
ショボンは大人の対応をする。
(‘A`)「……」
ドクオは黙っていた。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:36:41.39 ID:bSv+Th7j0
待ってたぜ
支援
4 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:37:55.75 ID:4C5Hx7O00
_
( ゚∀゚)「着替えが大変って、俺らより上が一枚多いだけじゃねぇかよ」
ジョルジュがブーンに反論した。
( ^ω^)「上はほら、紐を結んだりして時間がかかるんだお」
ブーンがわかったかのような口を利いた。
(´・ω・`)「なんでブーンそんなこと知ってるの? 着た事あるの?」
ショボンは友人のまだ見ぬ世界に踏み込もうとした。
('A`)「……」
ドクオは黙っていた。
(;^ω^)「え、っていうかドクオは何でさっきから黙ってるお?」
('A`)「ブーン……頼む。頼むから帰りはおまえが助手席に乗ってくれ……」
ドクオはかすれた声でそう言った。
(;^ω^)「な、なんでだお。まさか、車内でしぃに振られたとかかお?」
('A`)「いや……」
3人共ドクオに視線を向ける。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:38:05.87 ID:VIINVzKp0
おかえり支援
6 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:40:04.58 ID:4C5Hx7O00
('A`)「会話が続かないんだよ……『しぃさん、結婚してください』って言ったら
『あははー』って笑われて……。それで会話終了」
_
(;゚∀゚)「いやいや、もっと話しただろ? 30分以上時間あったはずだぜ?」
そんなジョルジュの言葉にドクオは首を振る。
('A`)「それだけ……。なんか、二人きりだとダメだ……」
なんという会話センスのなさ……コイツは間違いなく童貞……!!
というかいきなり『結婚してください』はないだろう。いくらなんでも初っ端から飛ばしすぎだ。
冗談にしてもつまらなすぎる。しぃだって反応に困っただろう。
ブーンとショボンとジョルジュが憐憫の眼差しをドクオに向けていると、
ξ゚听)ξ「お待たせー」
背後からツンの声がした。ブーンがツンの方へ振り返ろうとする。
しかしそれよりも早く、迅速に、俊敏な動きで飛び出した男がいた。
――ジョルジュだ。
7 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:42:21.97 ID:4C5Hx7O00
_ ∩
( ゚∀゚)彡
( ⊂彡 「おっぱい! おっぱい!」
| |
し⌒J
ジョルジュは『そんなにブンブンしたらちぎれるんじゃねぇの?』という勢いで腕を振っている。
そう、ジョルジュは『3度の飯よりおっぱいが好き……
いや、3度の飯がおっぱいだったらいいと思っている』と豪語する程、生粋のおっぱい星人だった。
そのため水着おっぱいが堪能できる夏になると俄然元気が湧いてくる。
逆にそれ以外の季節は元気と勇気、そして正義の心が夏の5割減しかなかった。
_
( ゚∀゚)「おっぱい! おっぱい!」
実に楽しそうだ。しかし。
_
( ゚∀゚)「おっぱい! おっ……!」
ツンの胸を注視していると、段々と勢いがなくなっていった。
_
( ゚∀゚)「おっ……。……すまん」
ジョルジュは浮かれるのをやめ、ツンに心から謝罪した。
ξ;゚听)ξ「な、なによ!?」
8 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:45:01.91 ID:4C5Hx7O00
なにやら真剣な顔つきで謝罪を始めたジョルジュが気に食わないのか、
ツンが噛み付いた。
_
( ゚∀゚)「いや、おっぱいを見れると思って浮かれちまったんだが、
獲物をよく見ないで浮かれちまった。すまん」
ξ#゚听)ξ「ム、ムカつく……!
まるであたしのおっぱいじゃ浮かれられないみたいじゃない!」
_
( ゚∀゚)「いや、『おっぱい』だったら浮かれられるぜ? だが、それは……」
ジョルジュはそこで言葉を切り、嘆息した。
_
( ゚∀゚)「『盛り上がり』だ……」
ξ#゚听)ξ「ムッキー!! コイツ、ムカつく!
胸を見られたら見られたでムカつくけど、その態度の方がムカつく!」
(;^ω^)「ツ、ツン……落ち着くお」
ブーンは暴れようとしているツンをたしなめた。
ドクオは黙って見ていた。
ショボンは恥ずかしそうに下を向いていた。
ジョルジュは『やれやれ、おっぱいも無い人がそれを指摘されて怒るなんて、
滑稽ですな』という感じで肩をすくめていた。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:47:19.21 ID:bSv+Th7j0
sien
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:47:19.77 ID:VIINVzKp0
しえん
11 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:47:45.93 ID:4C5Hx7O00
('A`)「なぁ、しぃさんは?」
マーダーライセンスフェイス・ドクオがツンにそう尋ねた。
この男は会話も成立させられない程コミュニケーション力が低いというのに、
まだしぃと関わりたいというのだ。 なんという驚異的な胆力……!
ξ゚听)ξ「え、しぃちゃん? もうすぐ来ると思うけど……」
ツンの言葉が終わるか終わらないかの瞬間、
(*゚ー゚)「ごめん、待った?」
しぃが登場した。
_
(*゚∀゚)「おぉぉぉおお―――ッ! おっぱいおっぱい!! 今日はおっぱい祭りじゃワッセローイ!!」
ジョルジュが両腕をブンブン振り回している。なんか気持ち悪い。
(*'A`)「し、しぃさん……その、水着姿も一段とくぁwせdrftgyふじこlp」
(´・ω・`)「これでみんな揃ったね」
冷静なショボンとは対照的に、
ドクオは緊張と興奮の余り後半部分は謎の言語になってしまったようだった。
ドクオとジョルジュが次々に賞賛の言葉をしぃに浴びせる。
しぃの水着はツンとは対照的に黒の上下のビキニで、ポイントとして胸に金の糸で刺繍が入っている。
シンプルながらも大人の色気が出ていて、しぃによく似合っている。
12 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:49:59.54 ID:4C5Hx7O00
_
(*゚∀゚)「おっぱい! おっぱい!」
ジョルジュはそのうち胴上げでも始めるんじゃないかというほど高揚している。
――ツンだって、可愛いのになぁ。
ブーンは素直にそう思った。
胸や身長こそ平均値にかなり足りていないが、体つきでいえばしぃより細いし、顔だってしぃより可愛いと思う。
もちろんしぃの弟であるブーンがしぃの顔立ちを公平に判断できるはずはないのだが、
それを考慮してもツンのほうが全然可愛らしい顔をしている。と思う。
ブーンにしてみればツンの方が余程賞賛に値する容姿なのに、
胸の大小だけでこんなにも扱いが違うことが腑に落ちなかった。
ツンの方をちらと見てみると、なんだか寂しそうな、悲しそうな、いたたまれない表情をしている。
それもそうだ。
男女6人で海に来ていて、片方の女性だけがちやほやされて、
自分への扱いが無下にされていたら面白いはずがない。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:50:14.40 ID:bSv+Th7j0
PCなのにフォントミス多くね
いいけど
支援
待ってた
シエンタ
15 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:51:56.24 ID:4C5Hx7O00
それだけではなく、しぃも困ったような表情をしてるし、
ドクオはうまく喋れておらず壊れたロボットみたいになっている。
ショボンは優等生野郎だしジョルジュにいたっては最早狂っているとしか思えない。
このままでは、せっかく海に遊びに来たのにつまらない思いをする人が続出してしまう。
そう判断したブーンは、このカオスな場面を収めるべく、一歩前前進し声高に言った。
( ^ω^)「僕は、ツンの水着姿もいいと思うお」
確実に卑猥としか捉えられない事を。
ξ*゚听)ξ「ブーン……」
対してツンも、思わぬ味方に表情から喜色を隠せない。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:54:16.57 ID:VIINVzKp0
支援
17 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:54:36.85 ID:4C5Hx7O00
( ^ω^)「確かに、ツンは胸が平均以下だお。しぃだって決して大きいわけじゃないのに
それよりも圧倒的に小さいということは、これはもう、弁解の余地なく小さいと言うことだお。
しかし、『大は小を兼ねる』という格言はこと胸に限っては通用しないのではないかと僕は考えるお。
というのも全ての胸の価値は神の前に等しく平等であり、神が与え賜うた尊い胸について、
大が優、小が劣といった具合に人間の尺度で決め付けてはいけないのだお。
また、神はこうも仰っておられたお。『兄弟よ、隣人の胸を揉みなさい。
貴方はきっと全ての苦しみから救われるだろう』と。
つまり、胸というのは無知で罪深く、愚かで怠惰な人類に与えられた最後の救済処置なんだお。
みんな、海で溺れてる状況を想像してみて欲しいお。そこにゴムボートがあったらどうするお?
神に感謝し、慎み深くボートに乗るお? そのボートの大きさなど関係なく、
只々、そこにボートがあった幸運に感謝するお? 胸も同じだお。只そこにあるだけで救われ、
不浄な心が洗われ、人が生まれつき背負った罪が購われるお。その喜びに打ち震え、
落涙すべきが本来の在り様だお。
だけど昨今の人々はその感謝を忘れ、やれ巨乳は究極、
貧乳は至高だのと争い続け、わざわざその御名を地に貶めているのだお。
18 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:56:50.06 ID:4C5Hx7O00
( ^ω^)「だけど、そうじゃないお。『すべて胸は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、
社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない』これだお。
これが理想だお。全ての胸はその法の下に於いて平等であるべきだお。
大きさ、形、色、匂い、触り心地、味……そんな事で胸を等級分けするのはくだらないお。ナンセンスだお。
さっきのジョルジュはその気高い精神を忘れ、差別主義に走った唾棄すべき背徳者だったお。
ドクオもそう。ドクオは自分も顔が悪いという詰まらない理由で謂れもなく迫害を受けてきて、
その辛さをわかっているはずなのに、なぜ差別される胸のことは分かってあげられないお?
……でも大丈夫だお。胸はそんな蛇蝎視される君達でも、
その度量の大きさを少しも損なわずに赦してくれるはずだお。
だからもう胸を差別するなんてそんな悲しいことはやめて欲しいお」
ブーンはそう一息に言い切った。
みんなドン引きだった。
19 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 21:58:48.70 ID:4C5Hx7O00
ブーンは一人海岸の砂浜に座り、仲間たちが波打ち際で遊んでいる様を眺めていた。
先ほどの自分を思い出しては頭を抱えている。違うんだ、さっきの自分はおかしかった。
ツンを助けようと思い、胸の大きさで扱いを変えてはいけないということを言いたかっただけなんだ。
なのに、みんなドン引き。
『あ、あぁ、悪かったよ』『怖い』『キャラがブレてる』『マジキチ』そんなこと言わないでくれ。
自分でも暴走しすぎだったことはわかってる。悪かった。
ブーンはそんなことを考え、後悔した。周りに人がいなければ発狂したかのように叫んでいただろう。
ブーンが暴走した後に、少しの沈黙があり『とりあえず海で遊ぼうぜ』とジョルジュが提案した。
今はブーンの事なんか忘れて普通に楽しそうに遊んでいる。
( ;ω;)「みんな楽しそうだお。僕は独り……何でこうなったお」
もう、泣きそうだった。
その時、まるで廃人のように砂浜にしゃがみこんでいるブーンの首筋に冷たい感触がはしった。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:58:53.16 ID:+6wlN/3iO
おお帰ってたのか
支援するぜ
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:59:12.77 ID:bSv+Th7j0
支援します師匠
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 21:59:56.52 ID:GYeOgJZ6O
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:00:33.71 ID:VIINVzKp0
支援
24 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:01:08.78 ID:4C5Hx7O00
(;^ω^)「ひゃあ!?」
いきなりの冷たさに慌てて振り返ってみると、むすっとした表情でツンが立っていた。
手にはよく冷えた缶ジュースを持っている。どうやらブーンの首筋に缶をあてていたようだ。
(;^ω^)「な、なにするお」
ξ゚听)ξ「ジュース買って来てあげたのよ。あんたなんだか寂しそうにしてるし」
ツンはよっこいしょという掛け声をしながらブーンの横に座り込んだ。
ツンは何も言わずにしばらく黙り込んだまま海を眺めている。長い髪が波風にそよぐ。
ξ゚听)ξ「まったく、あんた馬鹿よね」
さっきのブーンの暴走のことだろう。
ブーン自身も自分がやってしまってた事に気付いているので、ツンの辛辣な言葉が胸に突き刺さる。
ブーンは何も言えずに俯いてしまう。空気が読めていない発言をしたことを謝るべきだろうか。
それとも『キモいこと言ってごめんなさい』? それもなんだか違う気がする。
ブーンがどう対応していいのか分からずもじもじしていると、続けざまにツンが口を開いた。
25 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:03:25.67 ID:4C5Hx7O00
ξ///)ξ「でも、ありがと」
( ^ω^)「えっ」
意外な言葉。その言葉にブーンは顔を上げ、ツンを見てみる。
少しふてくされたような、顔。でも心なしか頬が赤くなっている。
ξ///)ξ「さっきのあれ、あたしをかばおうとしてくれたんでしょ? みんなしぃちゃんばっか持ち上げてたから。
確かに、あたしもいい気しなかったしね。……だから、ありがと……」
最後のほうは声が小さくて聞き取りづらかった。でも確かに『ありがとう』と、そう言った。
きっとツンはお礼なんて言い慣れていないのだろう。
一緒にいた15年間はツンの口からありがとうなんて聞いた記憶があまりない。
ブーンは顔が綻んだ。
ツンが、わかってくれた。そして自分に感謝をしてくれた。そのことが嬉しかった。
ブーンはツンを見た。目が合った。
ξ゚听)ξ「ちょ、調子に乗らないでよね! 気持ち悪いことに変わりはないんだから!」
怒らせてしまった。結局評価は気持ち悪いというところにおさまった。でもそれでいいや。
ξ゚听)ξ「ほら、いつまでもうだうだしてないでみんなのところに行くわよ!」
そう言ってツンはブーンの腕を引き、強引にみながいる波打ち際に連れて行った。
26 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:05:07.86 ID:4C5Hx7O00
( ^ω^)「おおおおおおぉぉぉぉ!!」
ブーンは高く高く跳躍した。その体型からは想像もできないような軽快な動きだ。
そして、膝まで海に漬かっているドクオの背中を、蹴った。
_
(;゚∀゚)「で、出たぁぁーーー! ローリングソバットだ!!」
(;´・ω・`)「こ、これは痛い!」
背面を蹴られ、ドクオは頭から海に突っ込む。
(;'A`)「ぶはっ!」
そして慌てて海面から顔を出す。
水が入ってしまったのだろうか、むせながら鼻水を出している。汚い。
(;^ω^)「おぉ!? 汚ねーお!」
ブーンは慌ててドクオが撒き散らした鼻水から逃げる。
鼻水は海水に溶けることなく、辺りをゆらゆら漂っている。
(;'A`)「ブーン、やるな。お前のソバットを見るのは中学生以来だが、
相変わらずの技のキレだぜ。だが、今度は、俺の番だ」
いきり立つドクオ。そしてそれを制止するブーン。
(;^ω^)「いや、ちょっと待てお。リングがこんな状態じゃ試合を続けられないお」
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:05:33.65 ID:VIINVzKp0
デレ支援
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:07:13.46 ID:ZwVrAISj0
まとめ無いの?
29 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:07:45.13 ID:4C5Hx7O00
ブーンが指差す先にはドクオがたった今噴出した鼻水がある。『鼻水噴いた』という状態である。
確かにこんな状況の海に入水したら、皮膚に鼻水が付くことは必至だろう。
ドクオがバツの悪そうな顔をしている。
_
( ゚∀゚)「確かにこれじゃ試合は一時中断だな。ちょっと休憩をいれようぜ」
ジョルジュのその提案に異論があるものは誰もいないようだった。
みな一様に海から浜辺へとあがる。
ブーンたちが今、行っていたのは“海プロレス”。
普段の硬い地面の上では危険なプロレス技も、倒れても危なくない海なら心置きなくかけあえる、
という非常におつむの足りない遊びだ。
ちなみに今は第二試合、ブーンとドクオの試合だった。
先ほどの攻防を見るに、ややブーンが有利だといったところだろうか。
('A`)「ゴングに救われたな、ブーン」
ドクオが座りながらブーンを挑発する。
( ^ω^)「それはお前だお、ドクオ。今の僕のソバットで、ほぼ決着は付いたようなものだお」
ブーンも負けじと言い返す。
31 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:09:39.52 ID:4C5Hx7O00
_
( ゚∀゚)「お前ら、口でばっか争ってもしょうがねぇだろ。男だったら拳で語れ、拳で」
( ^ω^)「負け犬に言われたくねーお」
ブーンにそう指摘され、ジョルジュは黙ってしまった。
そう、今は第二試合、ブーンVSドクオ。ならば、第一試合は?
それはすでに終わってしまった試合、ジョルジュVSツンの試合だった。
試合開始後すぐに、ジョルジュはツンに向かって自分の胸をドンドンと叩いて見せた。
『かかって来い』というサインだ。
対してツンは悲しげな、物分からぬ者に対する哀れみのような微笑を浮かべると、
俊敏にジョルジュの足の間に己の腕をいれ、胴体を肩に乗せ、持ち上げそして投げた。
“飛行機投げ”と呼ばれる大技である。普通女子はこんな技やらない。
そしてその一撃で勝負は決まった。したたかに海底に頭を打ち付けたジョルジュは意識混濁、
最早試合どころではない。なんかフラフラしながら『シブいねぇ、おたく。まったく、シブいぜ』とか言ってた。
そのパンチドランカーぶりにすぐさまTKO負け。ツンに勝鬨の声が上がった。
( ^ω^)「女にやられるなんてみっともないお」
_
(;゚∀゚)「ぐっ……」
ジョルジュは言い返せない。確かに、女性に、しかもかなりのちびっ子に負けることなんて通常はあってはならない。
しかし、ジョルジュにも言い分があった。
32 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:11:44.90 ID:4C5Hx7O00
_
(#゚∀゚)「じゃあ、お前やってみろよ! マジ化けもんだぞ、あいつ!」
そう怒声を浴びせた。
自分が負けたのはツンが強すぎたからであって、貴様ごとき遅れはとらないぞ、という意思表示だ。
(;^ω^)「じょ、上等だお」
ブーンも先ほどのツンの試合を見ているので実力のほどは伺える。
そしてそれを思い出すと、決して楽勝という一文は浮かんでこないのだ。
視線をツンに向けてみる。
勝者の貫禄だろうか、みなより一段高いところに腰掛け、足を組んでいる。
セコンドのつもりなのか、しぃが肩をマッサージしている。
ツンはブーンが自分を見ていることに気付くと、不敵な笑いを浮かべ、
指をちょいちょい、と曲げた。『かかってこい』だ。
ちなみにしぃは試合に参戦しない。
本人はやりたがったのだが、仮に決勝でドクオとあたったら無条件で優勝してしまうから、
という理由でブーンが出場を辞退させた。
すると自然と一人余ってしまうショボンも試合に参加できない。シード、ということも考えたが、
それではショボンの圧倒的有利になってしまうということで、今回は出場を辞退してもらった。
(;^ω^)「お、お、や、やったるわい!」
悲しいほど空虚な虚勢。最早気概の面でも負けている。そしてそれに異議を唱える声。
33 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:13:16.24 ID:4C5Hx7O00
('A`)「いや、待てよ。まだ俺とブーンの試合が途中だろ?」
“鼻水のドクオ”だ。劣勢だったくせに根性だけは一人前だった。
_
( ゚∀゚)「いや、お前の負けだから」
('A`)「何でだよ!? こっから俺の巻き返しが始まるんだよ!
スクリューパイルドライバーがあるんだよ! ゲージ溜まってるんだよ!」
裁定を下そうとするジョルジュにドクオが猛抗議する。
ジョルジュは面倒臭くなって来たので採決をとることにした。
_
( ゚∀゚)「じゃあ、ドクオの負けだと思う人!」
手が挙がる。1、2……6本。
_
( ゚∀゚)「はいドクオの負け」
('A`)「いや待ておかしいだろ!
何で6人しかいないのに6本手が挙がってるんだよ! 俺は挙げてないぞ!」
注意深く見てみると、しぃが左右両手で2本挙げていた。
ドクオは負けた。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:15:00.87 ID:+6wlN/3iO
支援
35 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:15:03.85 ID:4C5Hx7O00
一陣の風が吹き荒れる。
それは沖から吹く海風で、海水パンツのみ着用しているブーンの肌に一段と冷たく感じられた。
泣いても笑ってもこれが最後。ブーンは自分を鼓舞するかのように、自身の頬に平手を食らわせた。
対峙するのは、ツン。冷徹の美少女だ。
_
( ゚∀゚)「いざ尋常に……勝負!!」
レフェリージョルジュの掛け声。試合の幕が上がった。
ブーンはツンを真正面から見据える。なんという圧迫感。
自分より二回りほど小さな体躯は、しかし今は巨大に見える。具体的に言うとラオウに見える。
( ^ω^)「まさかこんな形でおまえと決着を付けることになるとはお……」
ブーンがツンに話しかける。ツンはそれを無視し歩を進める。
(;^ω^)「ぼぼ、僕は悲しいお、本当はおまえと、こんな、そんな」
ツンは無言で間合いを詰める。その間、約2メートル。
(:@ω@)「やや、やったらぁぁ!!」
ブーンが吼える。追い詰められた獣のような咆哮だ。テンパッている。
そして上半身を回転させ跳躍する。
繰り出されるのは先ほどドクオ戦で見せたローリングソバット。ブーンが一番信頼している技だ。
36 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:16:28.58 ID:4C5Hx7O00
_
(;゚∀゚)「馬鹿め! 一流に一度見せた技をつかうとは!」
ジョルジュが怒声を浴びせる。
ブーンは上半身に追いつかせるかのように下半身を回し、足を持ち上げる。
狙うは首筋、延髄だ。
そして繰り出されるソバット。
――決まった。ブーンはそう思った。
しかし、ツンは身をかがめてその蹴りをよける。
そしてがら空きになったブーンの股座に腕をいれ、ラリアット気味に腕を振り回す。
ブーンの体躯が半回転し、頭から海に落ちる。ツンは無表情でそれを追う。
そして、そこで勝負は決まった。
ツンがブーンの足に関節技をかけている。水中4の字固めだ。これは辛い。
足の痛みに加え水中では息が出来ないという効果もある。
最早ブーンに、勝負を挽回できようはずもなかった。
37 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:18:42.34 ID:4C5Hx7O00
ξ*゚听)ξ「いやー、楽しかった!」
ツンは満足そうな顔で笑っている。それとは対照的にブーンはどんよりと暗い顔をしている。
(´・ω・`)「僕も参加したかったなぁ」
試合自体に参加できなかったショボンも不満そうだ。
(::::)ω^)「じゃあ、今からでもツンと戦ってみるかお?」
負け犬ブーンが世間知らずのショボンに提案する。
(;´・ω・`)「い、いや、やめておくよ。……勝てる気しないし」
けっ。チキンが。
しかしこの場で一番浮かない顔をしているのはドクオではないだろうか。
愛するしぃに自分が戦う機会を奪われたのだ。しかも決を採る際に、両手を挙げてまで。
そうか、と思った。ドクオの頭脳に一つの結論が出された。
つまり、しぃはドクオに戦って欲しくなかったのだ。決して認めはしないが自分より強いであろうブーン。
そのブーンを手玉に取るほどの化け物、ツン。そのツンと戦えばどうなるか。
恐らく無残な結果になるだろう。怪我をするかもしれない。どちらにせよ敗北は必至だ。
そんなドクオの姿を、悲惨な姿を、しぃは見たくないが故にドクオを戦わせなかったのだ。
38 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:21:08.01 ID:4C5Hx7O00
(*'A`)「そうか! そうだったんですね、しぃさん!」
いきなり何を言い出したのかみな理解できない。
ドクオの頭の中で出された結論など誰も分かりはしないだろう。
(*゚ー゚)「んー? 違うよー?」
しぃはノリで答えた。ドクオは泣いた。
一通り遊び終わると、誰ともなしに声が上がった。
“腹が減った”という声だ。
なるほど、言われてみれば確かに空腹を感じる。時刻を見てみると既に昼の2時過ぎ。
3時間以上もぶっ通しで遊んでいたのだ。腹も減るというものだ。
じゃあ昼食をとるか、という事になり食事どころを探す。
しかしここは秘境、今北海岸。脱衣施設もないのに昼食をとれるところなど望むべくもない。
だが心配は無用。
こんなこともあろうかとドクオがしっかりと全員から昼食代を徴収し、
人数分のカロリーメイトを購入しておいたのだ。
39 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:23:29.53 ID:4C5Hx7O00
( ^ω^)「……」
モソモソ。
ξ゚听)ξ「……」
モソモソ。
(*゚ー゚)「……」
モソモソ。
(´・ω・`)「……」
モソモソ。
_
( ゚∀゚)「……」
みな一様に無言だ。無言でカロリーメイトを口に運んでいる。
海でモソモソとカロリーメイトを食べている集団というのは、
もうそれだけで都市伝説に認定されるくらいの異様さだ。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:25:32.26 ID:+6wlN/3iO
支援す
41 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:25:51.68 ID:4C5Hx7O00
('A`)「うまいな……」
ドクオがそう言えば。
_
( ゚∀゚)「あぁ、うまい……」
ジョルジュが肯定する。
( ^ω^)「うまいけど、喉が渇くお……」
ブーンが感想を述べれば。
(´・ω・`)「確かに喉がぱさぱさだ……」
ショボンが同意する。
ξ゚听)ξ「飲み物はないの……?」
ツンが飲み物を欲しがれば、
(*゚ー゚)「ないよ……」
しぃが答える。
_
( ゚∀゚)「おい」
ジョルジュが痺れを切らしたようにドクオに声をかけた。
42 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:29:03.70 ID:4C5Hx7O00
_
(#゚∀゚)「おまえ、馬鹿だろ!? 何でカロリーメイト!?
何で海に来てこんなもん食わなきゃならねーんだよ! あぁん!?
しかも飲み物ないってどういうこと!?
ただでさえ海で泳いで喉渇いてるのに余計渇くっつーの! むせるわ!」
ジョルジュが我慢の限界という風に叫んだ。
確かにみな口も開かず通夜のような雰囲気の中でカロリーメイトを食している。
それは海でカロリーメイトを食べるという精神的な要因のほかに、
単純に喉が渇いて喋れないから、という側面もあるように思えた。
(;'A`)「いや、だっておまえ、弁当とかだと腐ると思って。夏だし……」
_
(#゚∀゚)「だからってカロリーメイト!? どういう発想!?」
ジョルジュの怒りももっともだ。
というより、みんなの気持ちをジョルジュが代表して言ってくれたようなものなので、
ジョルジュの怒声には全員胸がすく思いだった。
('A`)「しぃさん! しぃさんならわかってくれますよね!?
お出かけの時はカロリーメイトだということを!」
ジョルジュに責められ、そして誰も助け舟を出してくれないという状況に困窮したドクオは、大好きなしぃにフォローしてもらおうと思った。が。
(*゚ー゚)「ごめん、ないわ」
(‘A`)「!!」
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:29:08.95 ID:VIINVzKp0
支援
44 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:30:59.12 ID:4C5Hx7O00
_
( ゚∀゚)「おーい、何かいたか?」
ジョルジュが誰にというわけでもなく尋ねる。
( ^ω^)「いないお」
ξ゚听)ξ「いないわね」
とブーンとツン。
ドクオのせいで昼食がカロリーメイトだったという悲しい事件が起こった後、
ドクオを省いた全員で緊急会議が開かれた。テーマは“ドクオをどうするか”というシンプルな議題だ。
罪もない民草から徴収した昼食費をカロリーメイトにあてがうとは笑止千万!
左記の者、速やかに縛り首の刑に処す。という判決が下った。
しかし、元々空気が読めないドクオに昼食を買ってこさせるという神をも恐れぬ愚行を行ったのも自分達であり、
そのセンスはどうあれしっかりと昼食を買ってきたことは評価するべきだ、という声も上がったため、
折衷案として海神様を鎮めるための人柱になってもらうということで意見が落ち着いた。
具体的には、今ドクオは首から下を砂浜に埋められている。
そしてその回りを堀のように固め、口が漬かるか漬からないかというところまで海水を満たしてある。
あとは満たした海水に磯のお友達を放流して観賞する、という実に微笑ましい処刑方だ。
そしてブーン達はその仕上げの、磯のお友達を捕獲するという作業に没頭している最中であった。
(´・ω・`)「カニならいたけど」
ショボンが大きさ5cmほどのカニを掴んでいる。
45 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:33:27.52 ID:4C5Hx7O00
_
( ゚∀゚)「カニじゃあなぁ……気持ち悪くないし、あいつならそのまま食っちゃうかもしれないしなぁ」
(´・ω・`)「そっか」
ショボンが捕まえたカニを海に戻す。ぽちゃん、と水がはねてカニが水面下で揺らめいた。
(*゚ー゚)「あー、いたいた! いたよ!」
少し離れた場所でしぃがそう叫んだ。ブーンとツンはしぃの方に寄ってみる。
しぃの指すほうを見てみると、確かにカニがいた。
( ^ω^)「おっおっ、カニがいたお。しぃ、でかしたお」
ブーンはカニを掴み上げた。やや小ぶりのカニだが、まぁいいだろう。ドクオも許してくれるはず。
(;´・ω・`)「え!? カニならさっき僕も捕まえたじゃない! なんでしぃさんには甘いの!?」
確かにショボンもカニを捕まえていたが、野郎と女性じゃ同じカニでも意味合いが違う。
_
( ゚∀゚)「こっちにもいたぞー」
今度はジョルジュ。みんな田舎者だけあってなかなか野生生物の発見がうまい。
ジョルジュの方に行って見ると、なんだか気持ち悪い色をした気持ち悪い生き物がいた。
ξ;゚听)ξ「うわ、気持ち悪い。何よこれ」
ツンは少し身を引いてしまっている。
46 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:36:05.49 ID:4C5Hx7O00
_
(*゚∀゚)「アメフラシ! 気持ち悪くてドクオにぴったりだろ?」
随分な言い草だとブーンは呆れたが、なるほど気持ち悪い。
これならドクオも喜んでくれるはずである。
( ^ω^)「じゃあ僕はカニさんとアメフラシをドクオに届けてくるお。
みんなは引き続き磯のお友達を捕獲しておいて欲しいお」
ξ゚听)ξ「りょーかい」
_
( ゚∀゚)「わかったぜ」
(;´・ω・`)「僕もカニを捕まえたのに……」
それぞれ返事をする。うんうん、いい返事だ。きっと軍隊にいっても可愛がられるよ。
そして、ブーン。ブーンは、躊躇した。アメフラシが余りに気持ち悪すぎたのである。
カニはいい。カニは硬いし食卓に出てくるしまだ馴染みのある生き物だ。
触るぐらいどうって事はない。しかし、アメフラシ。
(;^ω^)「うーん……」
ブーンはまじまじとその姿を見てみた。色は黒地に白い斑点。
形はまるでなめくじだ。お世辞にも美しいフォルムとは言いがたい。
(;^ω^)「ごめん、ジョルジュ。僕は無理だお。やっぱり代わって……」
そう泣き言を言おうとしたら、ジョルジュは目線をそらし、いそいそと新たな磯のお友達を探し始めた。
どうやらこの軟体動物を掴むのはさすがのジョルジュもいやなようだ。ショボンやツンを見てみても同じようだった。
47 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:38:58.00 ID:4C5Hx7O00
(;^ω^)「やっぱり僕が持っていくしかないのかお」
ドクオに罰を与えるだけなのだからそんなに無理をすることはないのだが、
変な義務感に駆られたブーンは意を決する。
うりゃ! という短い掛け声と同時に手を伸ばし、その悪魔と見間違えるほど薄気味悪い生き物をわし掴んだ。
(;^ω^)「うわー! キモいお! キモいお! 何か汁垂れてる! そしてぱんぱんに丸まってる!」
アメフラシを手に持ちながらパニックに陥るブーン、という地獄絵図が展開されていた。
混乱しながらも小走りでドクオの方に向かっていくのはさすがだった。
そんな光景を目の当たりにして、ジョルジュとツンは共犯者同士がするような笑みを浮かべた。
ショボンとしぃは黙々と次の獲物を探していた。
(;^ω^)「うわー! ドクオドクオドクオ! パスパス、パース!」
なぜだかテンパりながら走ってきたブーンを見て、ドクオは不審に思った。
何をそんなに慌てている?
そしてパスと言われても首から下を砂浜に埋められているドクオにしてみれば、それは無理な相談だった。
ブーンが言葉どおり何かを投げてよこした。
それは自分以外のみんなが力をあわせて作り上げた堀の中にぽちゃん、と音を立てて落ちてきた。
('A`)「!!!!!」
驚愕。鬱田ドクオの驚愕。
48 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:43:36.87 ID:4C5Hx7O00
キモい。気持ち悪すぎる。何だこれは。
いくら普段から顔の造作についてあれこれ言われている自分でもここまでは気持ち悪くない。と思う。
その気持ち悪い生き物は、水場にたどり着いたことを確認するかのようにゆらゆらと泳ぎだした。
一層の不気味を感じてドクオは叫んだ。
(;'A`)「出してー! 新刊、新刊早く出してよー! 新刊ガボガガガ」
意味不明な叫び声に加えて、後半部分は口に水が入ったのだろう。
最早言葉を発することさえ叶わない。
(;^ω^)「あー、気持ち悪かったお」
そう言ってブーンはかがみこむと、ドクオを囲っている堀の中にカニを投入した。
パニックになっているドクオの回りをアメフラシが悠々と泳ぎまわり、
カニが静止しているというカオスな状況が生まれた。
しばらく放置しても良かったが、ドクオが余りに不憫になり、アメフラシだけを除いてやった。
(;'A`)「あー、しガガガガボ」
学習能力ないのかこいつ。ドクオは自分が先ほどした過ちを繰り返していた。
何か喋りたそうだったので、水路をひき、少し水を逃がしてやる。
(;'A`)「あー、死ぬかと思った」
今度はちゃんと喋れたようだ。ドクオははぁはぁと息づいている。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:45:46.53 ID:TlkwEqnAO
つC
50 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:46:54.50 ID:4C5Hx7O00
('A`)「おまえ……あれは反則だろ」
(;^ω^)「いや、僕もあれはまずいって言ったんだけどジョルジュが」
ブーンは華麗に、そして自然に責任転嫁をした。
('A`)「でも、楽しいよなぁ」
突然のドクオ述懐。ブーンは面食らう。
('A`)「おまえも楽しいだろ? ブーン」
ドクオはブーンを見据えてそう言う。
なんだか冗談を言えるような雰囲気ではなくなってしまったので、ブーンは黙った。
('A`)「おまえのソバットなんて久しぶりに見たよ。なんせ中学校以来だもんな。何でだか分かるか?」
そんなドクオの質問。分かるも何も、その言葉だけでは何を意図して聞いているのかがわからない。
('A`)「ツンがいるからだろ?」
ドクオは続けた。
('A`)「ツンが引っ越してから、おまえ、少し変わったもんな。何か前より大人しくなったっていうかさ。
俺らと遊んでてもどこかつまんなそうっていうか、心から楽しんでいないような感じだったぜ」
( ^ω^)「そんなことないお」
51 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:49:33.16 ID:4C5Hx7O00
いきなりそんなことを語りだしたドクオ。
しかし茶化すような雰囲気でもなかったので、ブーンは適当にお茶を濁す。
('A`)「でも、今日は凄い楽しそうだし、なんか昔のブーンに戻ったって感じがするんだよな」
確かに変わったといえば変わった。今日だって、こんなに心からはしゃいだのは何年ぶりだろう?
なるほど、ブーンが変化していったのとツンが引っ越してしまった時期はちょうど同じだ。
ツンが居なくなったことでブーンは日常に面白みを見出せなくなってしまったといえば、
それはそれで合点がいく。
なにせブーンはツンが好きだったのだ。そして今も好意を持っている。
そんなツンがいなくなれば多少は影響が出るというものだろう。
( ^ω^)「まぁ、そうかもしれないお」
今更改まってそんなことを言われると何だか据わりが悪い。ブーンは会話を中断させようとした。
気が付くと、日が少し傾いている。斜陽が、海を淡いオレンジ色に染めている。
なんだか、夏が終わってしまうような、そんな感傷的な気持ちにさせる光景だ。
あたりにはさざなみの音だけが響く。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:51:55.86 ID:VIINVzKp0
支援
53 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:52:11.34 ID:4C5Hx7O00
('A`)「いい加減告白しちゃえよ。もう何年になるんだ? ……振られると思うけど」
隣の不細工がそう言って静寂を破った。
なんだか煮え切らない奴を見るような視線でにやにやしている。
腹が立ったので、髪の毛に泥をこすり付けてやった。
ドクオの唾吐き攻撃に応戦していると、ツンたちが帰ってきた。
逆光のためはっきりとは確認できないが、しぃの手に何か握られている。
目を凝らしてよく見てみると、それがアメフラシであることが確認できた。
(*゚ー゚)「暗くなってきちゃったし、そろそろ帰ろうか」
しぃはそう言いながらドクオの周りの堀にアメフラシを放流する。
どうやらしぃはアメフラシを触ることに抵抗がないようだ。
_
( ゚∀゚)「そうだな」
ジョルジュも同意する。
(;'A`)「いや、しぃさんやめて! っていうか何でまたアメフラシなの!?
そんなにアメフラシたくさんいるの!?」
ドクオも朗らかに同意する。
満場一致で帰宅することに決定したので、それぞれ帰り支度をする。
最初と同じように、ツンとしぃは軽トラの中で、ブーンとジョルジュとショボンは岩陰で着替えることになった。
54 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:55:03.71 ID:4C5Hx7O00
あまり悪乗りしすぎても帰りが遅くなって困る、というみなの温情でドクオも砂浜から出してもらった。
(;^ω^)「ドクオ……汚いから海で砂を落としてくるお」
ブーンはドクオをそう促した。
みな帰り支度を整え、あとはドクオを待つのみ。
夕暮れの海から吹く風が、爽やかにブーン達の頬を撫でる。疲れた体に心地よい涼しさだった。
ふと先程のドクオとのやり取りが気になって、ブーンはツンに目をやった。
日焼けしたせいなのか、すこし赤みがかった頬。
まっすぐ寂しげに海を見つめるその瞳は、なんだか儚なさを感じさせた。
いい加減、好きだと伝えるべきなのだろうか?
しかし、ずっと言えなかった思いだ。言えないままで18年間。しかも今は離れ離れ。
今ツンに告白して、仮に成功して、それでどうなるというのだ。東北と関東。
余りに距離があるではないか。自分はツンのそばにいることも出来ない。
それに……迷惑ではないだろうか。ツンは幼馴染である。
家族ぐるみで付き合ってきて、ブーンの家族ともすこぶる仲がいい。
その関係に亀裂をいれてしまうのではないだろうか?
自分が余計な想いを伝えたら、変に気まずくなったりしないだろうか。
55 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 22:57:57.64 ID:4C5Hx7O00
ブーンが18年間温め続けたツンへの想い。
困ったことに、どんなに時を経てもその気持ちは腐ってくれないのだ。
熱を帯びるばかりで、少しも冷めてくれないのだ。
そのことが、逆に辛い。
ツンが視線に気付き、ブーンのほうを向いてくる。
目が合うと心臓が高鳴った。
やっぱり、ブーンはツンが好きなのだ。3年間会わなくたって、その気持ちは変わらない。
ひょっとしたら、今回のツンの帰省はチャンスなのではないか?
想いを伝えるために、神様がくれた機会なのではないか。
大好きなツンの横顔を見ていると、更に胸が熱を帯び始める。
そこまで思案したところで、
('A`)「おう、悪い。お待たせうんこ」
ドクオのうんこ野郎が帰ってきた。みな待ちくたびれた顔で迎えた。
('A`)「じゃあ、行こうぜ」
そう言ってドクオは運転席に乗り込む。ブーンは何だか拍子抜けした。
いや、ある意味いいタイミングだったのかもしれない。あのままだったら、ずっとツンを見つめていただろう。
目が合っているのに見つめたままなんて気持ち悪いか喧嘩を売られていると思われてもしょうがない。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 22:59:24.93 ID:+6wlN/3iO
ここからシリアス編ですね?
わかります
57 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:01:03.41 ID:4C5Hx7O00
そしてドクオはブーンに目配せをした。『助手席に乗れ』という意味だ。
どうやら昼間言っていたことは本気らしい。ブーンは頷く。
( ^ω^)「僕は助手席に乗るお。ドクオと男同士の話があるお」
そう言って助手席に乗り込もうとすると、ツンが声をかけてきた。
ξ゚听)ξ「じゃあジョルジュとショボン君も乗っけてよ」
_
(;゚∀゚)「え、俺も!?」
(;´・ω・`)「僕もかい?」
ジョルジュとショボンは自分たちが巻き込まれるとは思っていなかったらしく、
驚いた顔でツンを見た。
ξ゚听)ξ「だって、私たちも女同士の話があるもん。ねー、しぃちゃん」
「ねー」としぃも返す。多分、そんなものはない。
ブーン達も本当に男同士の話し合いがあるわけではないので、そこは責められる立場ではないが。
可哀相なジョルジュとショボンが抗議の声を上げる。
_
(;゚∀゚)「いやいや、っていうか中は2人乗りだろ!? 4人も乗れるか! 道交法違反だろ!」
当然の指摘。だが、
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 23:03:20.86 ID:VIINVzKp0
支援
59 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:05:07.79 ID:4C5Hx7O00
ξ゚听)ξ「荷台だって人が乗るとこじゃないでしょ。今さら何よ」
ツンに正論を返されて黙るジョルジュ。
かくして、荷台に女子2名、車内に男4人がぎゅうぎゅう詰めという世にもおぞましい光景が出来上がった。
_
(;゚∀゚)「おい、せまいぞ。もっと詰めろよ」
(;^ω^)「ちょ、ジョルジュが薄くなればいいお」
_
(;゚∀゚)「薄くってどういうこと!? 俺そんなスタンド持ってたっけ!?」
(;´・ω・`)「ドクオの……ドクオの顔が近い……」
('A`)「あー、おまえら、騒ぐのはいいが運転席に迷惑かけるなよ」
車内はむさくるしく騒がしい。
そんな喧々囂々とした車内とは裏腹に荷台の二人は涼しげな顔をして何かしゃべっている。
(*'A`)「おい、やっぱりツンが気になるのか?」
ドクオが下世話な笑みを浮かべてブーンに尋ねた。
(;^ω^)「やっぱりって何だお!? 気になってなんかねーお!」
_
( ゚∀゚)「あー? ツンが何だって?」
ジョルジュも会話に加わる。
60 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:08:05.66 ID:4C5Hx7O00
(*'A`)「コイツさ、久しぶりにツンに会ったらびんびんに意識してると思わないか? スキスキスーってさ」
ドクオがブーンを指差しジョルジュに同意を求める。
_
( ゚∀゚)「あー、そういえば確かにツンの前ではいつもよりハリキリスタジアムだな」
(#^ω^)「んなわけねーお!」
ブーンはからかわれて顔が真っ赤だ。
_
( ゚∀゚)「あれか? “今まで言えなかった気持ちを暖め続けて、今、君に大切な気持ちを伝えるよ”ってやつか?」
(*'A`)「“次の曲、聞いてください。ツンに捧げます。『I LOVE YOU』”ってやつだな」
がははは! くせーくせー! とドクオとジョルジュは大笑いした。
自分たちがこういった話題に縁がないくせに、いざ他人様にそういう気配が現れると一気に食らい付く。
なんとも救えない性格の二人だった。
(#^ω^)「おめーら、ぶっ殺すお!」
ブーンは後ろの二人に聞こえないように、しかし馬鹿二人を制することが出来るぐらいの声量で怒鳴った。
_
( ゚∀゚)「おい、ブーン」
ジョルジュが急にまじめな声で言った。いきなりの態度の急変にブーンは戸惑った。
(;^ω^)「な、なんだお」
一呼吸おき、ジョルジュは言い放つ。
61 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:10:58.59 ID:4C5Hx7O00
_
( ゚∀゚)「人を愛するって事は、そんなに恥ずかしいことか? 俺は素晴らしいことだと思う。
確かに俺らは今おまえをからかいすぎてるかもしれない。
だけど本心では応援してるんだぜ? なんせ、友達だからな」
いつもと違うジョルジュの物言いに、ブーンは面食らいながらも心の奥底でジーンとしていた。
( ^ω^)「ジョルジュ……」
_
( ゚∀゚)「だから、自分の気持ちに嘘なんかつくなよ。ちゃんと声に出して言えって。
ツンが、好きがははははは!」
そこまで言って二人で笑い出した。
やはりブーンをからかっていたのだ。
少しでも心の琴線に触れてしまったことを後悔し、改めて思う。こいつら最低だと。
(*'A`)「そうだぞ、ブーン! 人を好きになることは恥ずかしいことじゃうはは、ない!
俺なんて堂々と言えるもんね! しぃさん、好きだー! ってね」
ドクオはひときわ大きな声で叫んだ。そして気付いていなかった。窓が開いていることを。
荷台の二人が気まずそうに車内を見ている。
ドクオは泣いた。
ショボンだけはなぜか、一人物思いにふけっていた。
62 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:14:00.80 ID:4C5Hx7O00
('A`)「はーい、じゃあお疲れ」
遠足は家に着くまでが遠足だという。では海で遊んできた場合はどうか?
思うに、その場合も家に着くまでが海遊びだと思う。よく意味はわからないが、とにかくそう思うのだ。
つまり自宅に着いた今、本日の海遊びは終了ということになる。
軽トラの荷台からツンとしぃが軽快に飛び降りる。
ブーンもぎちぎちになった車内から命からがらという体で降りてくる。
( ^ω^)「じゃあ、また連絡するお」
そういってブーンはドクオとジョルジュとショボン3人に手を振った。
3人も手を振り返し、軽トラは元来た道を戻っていった。
(*゚ー゚)「さて、じゃあ家に入りますか」
しぃがそう促す。
あたりは既に闇が支配していて、頭上には眩く星が輝いている。
ブーンの自宅近辺の田舎っぷりを考慮すると、星が出ていてくれるとありがたい。
三人はぞろぞろと家に入っていった。
「ただいまー」としぃの後に二人も続く。
63 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:18:04.40 ID:4C5Hx7O00
J( 'ー`)し「おかえり。ご飯はいらないんでしょ?」
(*゚ー゚)「うん、もう食べてきちゃった」
くたくたになりながらも空腹はやってくるということで、帰り道にあったレストランで食事を済ませていた。
ドクオの過失告白から間がなかったので、食事風景は決して楽しいと呼べるようなものではなかったが。
しぃとツンがばたばたと部屋に上がって行くので、ブーンもそれに倣おうとしたところ、母親に呼び止められた。
J( 'ー`)し「そういえばお父さんが呼んでたわよ。和室で待っているって」
父が自分を待っている?
わざわざ呼び出される覚えがないので疑問に思いながらも、ブーンは和室に向かっていった。
襖を開けてみると、父親が上座に座り、厳粛な顔をしていた。ブーンが入室したことに気付くと、重い口を開いた。
( ´_ゝ`)「座りなさい」
いつもと様子が違う。いつものわけのわからなさはなくなり、父親としての威厳にあふれていた。
普段からその変人っぷりに悩まされてきたブーンは、呼び出されたことへの不安と同時に、ある種の誇らしささえあった。
ブーンも厳かに父親の対座に着く。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 23:20:54.91 ID:h9O5EFKVO
支援
65 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:21:37.73 ID:4C5Hx7O00
( ´_ゝ`)「おまえ、ツンちゃんと海へ行ったんだってな? なぜ私も誘ってくれない?」
ブーンは光の速さで退室しようとした。
一瞬でもこの男がまともになってくれたと思った自分が情けない。
しかし変人である実父に退路を阻まれ、ブーンは歩みを止めることを余儀なくされた。
( ^ω^)「どけ」
父親に冷たく言い放つ。
( ´_ゝ`)「どかない」
変人も真剣だ。
( ´_ゝ`)「なぜ、私も誘ってくれない? ツンちゃんと夏の海。いいじゃないか」
いいじゃないかと言われても。セリフがまるっきり変態だった。
( ^ω^)「どこの世界に友人間の行事に父親を連れて行く奴がいるんだお」
ブーンも父を睨みつけ、言ってやる。
( ´_ゝ`)「しぃは行ったんだろ?」
( ^ω^)「しぃとおまえを一緒にするなお」
66 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:24:55.92 ID:4C5Hx7O00
( ´_ゝ`)「水着、見たんだろ?」
( ^ω^)「海に行ったんだから当たり前だお」
そこまで問答を続けて、父親はハッ、とする。
(;´_ゝ`)「み……見たのか。こ、この変態! 母さん母さん! 大変だ! ブーンが変態だ!
ツンちゃんの水着姿を舐めるように見たそうだ! 大変な変態だ! 変態で大変だ!」
そう騒ぎ出す父。しみじみ思う。この父親は真性の、いわゆる“池沼”なのではないかと。
普段はまぁ、ちょっと変わっていて面白い男だと自分に言い聞かすことも出来なくはない。
しかし、今は異常だ。
ブーンは自分の父親が変なことが殊更哀しくなってきた。
構うだけ、無駄。
そう判断すると、重い足取りで和室を後にする。
途中で「どうしたの?」と不安げな母親とすれ違った。
「檻に入れとけ」と咨嗟し肩を叩いてやった。
67 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:28:45.48 ID:4C5Hx7O00
より疲れてしまった。それがブーンの素直な感想だった。
今日はドクオやジョルジュのアホにからかわれ、尚変人の父親を相手したのだ。
疲れないほうがどうかしている。
自室に戻るとツンが訝しげな顔でブーンを見てきた。
ξ゚听)ξ「どうしたの?」
当然の質問。
( ^ω^)「父ちゃんのいつもの病気が出たんだお」
ξ゚听)ξ「病気?」
( ^ω^)「『海に行くなら何で私も誘ってくれないんだ。ツンちゃんの水着姿見たかったのに』って」
ξ゚听)ξ「あぁ……」
( ^ω^)「あそこまで頭が可哀相だとは思わなかったお」
ξ゚听)ξ「でも、昔からあんな感じだったしねぇ」
確かに、とブーンは納得する。いや、前よりも激しさを増していたが。
会えない時間がより炎を燃え上がらせていたのだろうか。ブーンと同じように。
父子揃ってツンが好きなんだな、と苦笑した。父の場合は犯罪だが。
ξ゚听)ξ「でも今日は楽しかったぁ。友達と海行くなんて久しぶりだったのよ」
68 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:31:57.18 ID:4C5Hx7O00
( ^ω^)「久しぶり? 向こうでは友達と海に行かないのかお?」
ブーンが疑問を投げかけると、ツンは少し言葉に詰まった。
ξ゚听)ξ「……あっちは、ほら、海が遠いから」
( ^ω^)「? “少し南に下れば海もある”ってツン言ってたお?」
他意のないブーンの質問に、しかしツンは黙ってしまう。
何かまずいことでも言ったのだろうか。
ξ゚听)ξ「色々、あるのよ」
そして沈黙。何だか意味の分からない、それでいて若干空気の重さを纏った沈黙。
ブーンは狼狽した。なんだかわからないがこの沈黙を破りたかった。
しかし、下手なことを言ってしまうと、ドクオのようになってしまうのではないか。
そう思うと、ブーンは二の足を踏んだ。
(*゚ー゚)「ブーン、ツンちゃーん! 下降りて来てー!」
ふいに階下からしぃの声が響く。どうやら1階に降りてこい、と催促しているようだ。
思わぬ伏兵に沈黙を破ってもらい、ブーンは心中で快哉を叫ぶ。
思えばいつだって救世主はしぃだった。ありがとう、しぃ。
( ^ω^)「なんだろうおね?」
ξ゚听)ξ「さぁ? とりあえず下降りてみればわかるんじゃない?」
69 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/07(土) 23:34:56.78 ID:4C5Hx7O00
階段を降りると玄関口にしぃが立っていた。手には何やら袋を持っている。
(*゚ー゚)「おー、来たか。花火やろうよ花火!」
そう言って袋をがさがさと持ち上げる。
なるほど。透明なフィルムの袋の中には、手持ち花火がぎっしりと入っていた。
ξ*゚听)ξ「うわー、花火! どうしたの?」
(*゚ー゚)「お父さんが買ってきてくれたんだよ。せっかくツンちゃんが来てくれたからって」
( ´_ゝ`)「本当は家の権利書をあげたかったんだ……」
囁くような声が聞こえたほうを振り返ってみると、
リビングの扉の陰から星明子よろしく父がこちらを覗き込んでいた。
ξ*゚听)ξ「おじさん、ありがとう! 花火大好きなんだ! 今からやらせてもらうね!」
ブーンは父の声がした瞬間“ひぃっ”と小さな悲鳴が上がってしまったのに、
ツンは屈託の無い笑顔で礼をした。
何で今ので驚かないんだ? 僕がおかしいのか?
ブーンは自分とのリアクションがあまりにも違うので少し不安になってしまった。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 23:35:28.98 ID:hKpr1vel0
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 23:35:47.86 ID:+6wlN/3iO
支援す
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 23:40:32.01 ID:o7X7ZfEK0
支援
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 23:49:49.04 ID:VIINVzKp0
支援
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/07(土) 23:52:13.69 ID:h9O5EFKVO
支援
75 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:01:41.55 ID:MEDnFlFJ0
ξ*゚听)ξ「うわ! さすがに夜になるとちょっと寒いね」
外に出た途端、東北らしく少し肌寒い風が吹いた。
( ^ω^)「おっおっお。東北は夏でも夜冷えるお。もう忘れちゃったかお?」
ξ*゚听)ξ「いやぁ、うっかりしてたわ」
ツンはそれで暖をとるつもりなのだろうか、両肩を抱くようにしてぴょんぴょんと跳ねる。
ξ*゚听)ξ「よし。これでちょっとはあったかくなったわ」
(*゚ー゚)「確かに今日は少し肌寒いかもね」
同意するしぃにブーンは尋ねる。
( ^ω^)「ドクオとかは呼ばないのかお?」
(*゚ー゚)「うーん……わざわざ呼ぶ程のもんじゃないしね」
そう答えて花火の袋を見やる。
家庭用にと詰め合わされたその花火では、大人数でするには少し物足りなく感じた。
( ^ω^)「そうだおね。この量じゃ3人ぐらいでやるのが丁度いいおね」
ξ*゚听)ξ「そういう事」
76 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:03:55.59 ID:MEDnFlFJ0
早速と言わんばかりに袋を開け始めるツン。
そういう事も何も、ツンがそこまで思考を巡らせたかどうかかなり疑わしいのだが。
ツンは楽しげに笑いながら花火を手に取り火を点けようとする。
(;^ω^)「あ、こら。それは後にするお」
ξ゚听)ξ「いいじゃない」
ブーンの制止を振り切ってツンが点火した花火は“ドラゴン桜”と書いてある、
本来なら中盤ぐらいに地面に置いて火を点ける設置型の花火だった。
(;^ω^)「おわっ、手に持つなお! そしてこっちに向けるなお!」
キャッキャッと喜びながらツンがブーンに花火を向けてくる。
良い子ならば絶対にしてはいけない危険行為だ。
ξ*゚听)ξ「ほれほれ!」
(;^ω^)「やめるお! 熱っ!」
逃げ惑うブーン、それを追うツン、
全てを祝福し微笑むしぃという地獄のような絵図が展開されていた。
しかし、その阿鼻叫喚も花火の鎮火によって収束に向かう。
ξ゚听)ξ「あら〜」
しおしおのぱぁ、といった風に花火は沈黙する。
77 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:06:23.81 ID:MEDnFlFJ0
(;^ω^)「『あら〜』じゃないお! 危ないから人に向けるなお!」
ξ゚听)ξ「ドラゴン桜終わっちゃった……。桜、散っちゃった……」
(;^ω^)「う……なんか縁起が悪いおね」
(*゚ー゚)「ツンちゃん、危ないから今みたいな事はしちゃだめだよ」
しぃがツンを嗜める。笑って見てたくせに今更何を言うか!
とブーンは憤ったが、思ったよりツンが素直に従ったので良しと思うことにした。
それからはツンもおとなしく手持ち花火を正しい使用法で遊んでいる。
夏の夜に、ツンの横顔が花火に照らされている。
長いまつ毛を少し伏せて花火を見つめるツン。
そんなツンにブーンはそっと視線を向ける。
“このまま時が止まればいいのに”
“君に見とれて、花火なんて目に映らなかった”
と、かなりベタな事をブーンは考えていた。
ξ゚听)ξ「あ……」
どうやら今手にしている花火が役目を終えたようだった。
ξ゚听)ξ「あんたがじろじろ見てるからいつの間にか消えちゃったじゃない」
(;^ω^)「何で僕のせい……」
78 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:09:26.58 ID:MEDnFlFJ0
ブーンは不条理を感じたが今に始まったことでもないので軽く聞き流す。
花火は残りわずかだ。辺りに煙が立ち込め、火薬の匂いが漂っている。
人によっては悪臭だろうが、夏を想起させるその匂いが、ブーンは嫌いではなかった。
(*゚ー゚)「あー、あと少しで終わっちゃうね」
ξ゚听)ξ「だね。花火の終わりってなんか寂しいよね」
ツンにしては珍しくセンチメンタルな事を言っている。
(*゚ー゚)「じゃあこれやって締めにしますか」
しぃが線香花火を掲げる。花火の締めくくりにふさわしいそれを、
しぃは何本かずつブーンとツンに手渡す。
こより状になっている先端部に火を点けると、わずかに燃え上がり、やがて火花が散る。
パチパチパチ。
かすかに弾けるような音を立てて輝く線香花火。
しばらくの間、辺りを優しく照らしたあと、ジジジ、と小さな音を立て、やがて地面に落ちて消える。
ξ゚听)ξ「あーぁ、また終わりが近づいてきちゃった。寂しいなぁ」
どうやらツンは本当に花火が好きらしい。
いつもの挑発的ともいえる表情から一変し、今は儚げとも呼べる顔を珍しくしている。
79 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:12:11.20 ID:MEDnFlFJ0
( ^ω^)「でも楽しいお?」
ξ゚听)ξ「まぁね……でも、何だか寂しいわ」
( ^ω^)「おっおっおっ。それなら何回でも花火をやればいいお。
明日でも、明後日でも。来年でもいいお」
自分ならずっと、待ってるから。
ツンが寂しくないように、沢山の花火を持って、待ってるから。
そんな思いは、しかし心の中にしまっておいた。
ξ゚听)ξ「そうだね。じゃあブーン、来年も付き合ってよ。
この花火が終わっても、また来年があるって思えるように、待っててよ」
そんなツンの言葉にブーンはどきっとしてしまう。
ツンは何気なく言った言葉だろうが、ブーンにとっては激しく胸を締め付ける、魔法の言葉だった。
ツンが、待ってて、と言った。
待ってるとも。ツンが喜んでくれるなら、ずっと待ってるよ。
( ^ω^)「まぁ、僕との花火が待ちきれないなら、向こうの友達とでもやればいいお」
気恥ずかしさからでた言葉だった。しかし。
(*゚ー゚)「ブーン」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:14:03.00 ID:t+8qPO/LO
支援するよ
81 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:14:21.83 ID:MEDnFlFJ0
なぜかしぃから嗜めるような語調で名を呼ばれた。
ツンを見てみると、なぜか顔を伏せている。
なんだ? 何か問題なことでも言ってしまったか?
ブーンが自分が悪くしてしまった空気に戸惑っていると、
ξ゚听)ξ「あ」
最後の線香花火が終わってしまった。
(*゚ー゚)「あちゃー、終わっちゃったかぁ。んじゃ、解散しますか」
しぃが無理に明るく言ったような気がした。
やはり先ほどのツンの表情が気にかかる。部屋でも同じような顔をした。
その理由を、ブーンはすぐに知ることになる。
部屋に戻り、まず気になったのは服に染み付いた火薬の臭いだった。
花火をやったのだから仕方のないこととはいえ、四六時中嗅ぐには好ましくない香りだ。
思えば、昨日も風呂に入っていない。丁度いい、風呂に入ってさっぱりするか。
そう思った矢先。
ξ゚听)ξ「じゃあ臭くなっちゃたし、お風呂はいってくるね」
ツンに機先を制された。
その表情には先ほどのような翳りはなく、いつも通りのツンだった。
82 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:17:09.35 ID:MEDnFlFJ0
バタン、と戸が閉まる。
ブーンは苦笑するしかなかった。
浸かろうと思っていた湯船をツンに奪われ、ブーンは手持ち無沙汰になる。
なにかツンの入浴が終わるまでの慰みはないかと部屋を見渡すと、
携帯電話に着信があったことを告げるライトが点滅していた。
( ^ω^)「誰だお?」
着信履歴を見てみる。
そこに現れた人物の名前は――。
( ^ω^)「ショボン?」
ショボンだった。
自分と違って忙しい受験生であるはずのショボンがなぜ? しかもつい先ほど別れたばかりだというのに。
とにかく電話があったなら掛け直さなければならない。
ブーンは通話ボタンを押した。
1コール、出た。早いな。
(;^ω^)「相変わらず出るの早いお。暇人め」
(;´・ω・`)『なんだよ。暇なんかじゃないよ』
83 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:19:55.79 ID:MEDnFlFJ0
( ^ω^)「その暇じゃない受験生様がなんのようだお?」
(´・ω・`)『いや……』
ショボンは少し口ごもる。何か言い辛いことでもあるのだろうか。
(;^ω^)「何だお。用があるならはっきり言えお」
(´・ω・`)『いや、今日は楽しかったと思って』
なんだ、とブーンは拍子抜けした。律儀な奴め、わざわざそんな事を伝えるために電話してきたのか。
何事かと思ったブーンは気が抜けた思いだった。
( ^ω^)「そんな事を言うために電話して来たのかお。真面目君だお」
(´・ω・`)『いや、本題は別にあるんだ』
本題? つまり、今日の挨拶とは別に、何か言いたいことがあるということか?
(;^ω^)「なんだお。言いたいことがあれば言えばいいお」
(;´・ω・`)『うーん、いや、あの、その、さ』
ショボンはもごもごと口篭るばかりで要領を得ない。その進展のなさにブーンは憤りを覚える。
(;^ω^)「はっきりしない奴だお。早く言えって」
(;´・ω・`)『その、ブーンは、ツンさんのこと好きなの?』
84 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:22:49.38 ID:MEDnFlFJ0
頭が真っ白になった。いきなり何を言っているんだ? こいつは。
確かに“言いたいことがあれば言え”と言ったが、
こんな突飛な事を口走れと命じた覚えはない。
しかし、頭の切れるブーンはその一言で全てを察した。
(;^ω^)「ショボン……気持ちは嬉しいけど、僕にその気はないお。
このガチムチ野郎。友人も守備範囲なんて節操がなさすぎだお」
(;´・ω・`)『わわわ! ち、違うよ! 僕はホモじゃないってば!』
慌てて釈明するショボンに、ブーンは押しかけた電源ボタンから手を離す。
(;^ω^)「え? じゃあどういういことなんだお?」
(;´・ω・`)『え? むしろ今のでわからないの?
だから、僕は、ツンさんが、す、好きになっちゃったんだ』
ピッ、っと静かに電源ボタンを押し、通話を強制終了させる。
(;^ω^)「あわ、あわわわわ」
ブーンは混乱した。
ショボンが、ツンを好き? 何言ってるんだ? 今日会ったばかりだろう?
というか、会話らしい会話もしてなかったじゃないか。
85 :
鳥五目 ◆81qK7JAbYs :2009/03/08(日) 00:26:05.13 ID:MEDnFlFJ0
再びショボンからの着信。
たった今通話をしていたので出ないわけにもいかず、ブーンは恐る恐る通話ボタンを押す。
(;´・ω・`)『ひどいなぁ。なんで切っちゃうんだよ』
(;^ω^)「おち、おち、落ち着け! 落ち着くんだおショボン! 素数を数えるんだお! 1、2、3、4……」
(;´・ω・`)『落ち着くのは君だろ? それに1と4は素数じゃないよ。それじゃ数を数えてるだけじゃないか』
嫌味か、優等生。そんな言い返しも出来ないほど、ブーンはうろたえた。
(;^ω^)「いや、だって、なんでそうなるんだお!?
ショボンとツンは今日会ったばっかりだし、話もそんなにしてなかったお!?」
(´・ω・`)『うん、そうなんだけどさ。……一目惚れに近いのかな?
会ったとき、なんかこう、どきっとしたんだ。胸が締め付けられたんだよ』
ショボンは静かな口調で続けた。
(´・ω・`)『それに、楽しそうに笑っている彼女を見て、確信したんだ。
“こんな明るくて活発な人と一緒にいられたら、毎日が楽しいだろう”って』
口調は静かながらも、なんだか嬉しそうに感じる。
(´・ω・`)『まだ、さ。会ったばかりだから本当にはわからないんだけど、
多分間違いじゃないと思うんだ。だから、ツンさんを好きになったんだよ』
これは予期せぬ展開
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:33:58.22 ID:t+8qPO/LO
ふむふむ
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:35:22.00 ID:ZRmZj/mg0
寝取られフラグ支援
89 :
:2009/03/08(日) 00:48:27.92 ID:2mp06y020
告白するようです
ってスレ思い出した
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 01:03:49.14 ID:ZRmZj/mg0
どうした?さるさんか?
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 01:06:27.91 ID:t+8qPO/LO
さるか・・・
おつかれ
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 01:06:51.95 ID:4Wc/dHRw0
しええええええん
93 :
:
しえん