('A`)が武器で、もとい('A`)と武器で戦うようです
1 :
代理人 ◆V7opfVQ4yQ :
ひとまず代理だ。
楽しみにしてたやつも、「とりあえず読んでみるか」なやつも大人しく作者様を待とうぜ。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 00:29:48.49 ID:gjR1WVZ50
エスパークーといい珍しいのがくる日だな 支援
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 00:31:02.69 ID:V4jFb2CdO
支援
4 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:31:24.40 ID:Ji2X2R7aO
5 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:32:37.56 ID:Ji2X2R7aO
('A`)が武器で、もとい('A`)と武器で戦うようです
第三十話「ギコは本気で戦えない」
6 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:33:12.47 ID:Ji2X2R7aO
微かな風と、波の音が聞こえる。
コンテナの積まれた港。大型トラックも何台か止まっている。
首をこきりと鳴らし、男が一歩足を前に踏み出した。
(,,゚Д゚)「………………」
そこで立ち止まり
ぺしゃんこに潰れた、自身の投げたコンテナを見つめる。
そしてそのコンテナが微かに動いたのを見て、左の平手に右の拳を打ち付けた。
(;'A`)「っつ………いってー………」
(;^Дメメ)「発動が遅れていたら死んでました………」
平たくなったコンテナを裏返して這い出た。
立ち上がり大剣を持つ。
見ると肘に擦り傷が出来ている。これだけで済んだか。
やはり武器化の効果は大きいな。
(,,゚Д゚)「頑丈だな………テメェら」
暗闇に人影が浮き出る。
武器持ち。手首の腕輪を見ればそうだと分かる。
しかしそれを「発動もしていない」のはどういうことだ。
武器を発動しない状態のその腕で、コンテナを投げたなんて。
そんなことあり得るのだろうか。
そう思考し、俺達が困惑している中で
静かな重たい声が、空気を静かに揺らした。
7 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:34:12.06 ID:Ji2X2R7aO
「手を挙げろ」
(,,゚Д゚)「………あ?」
暗闇に目を凝らすと、赤いワイシャツを着た男一人と
イカツイ顔をした、いかにもそっちの道の人四人がその男を囲んでいる。
ん、よく見えないが、更に奥にはもう一人か。合計で六人がその場に現れた。
_、_
( ,_ノ` )「………ここは俺達の縄張りだ、確かにデカい図体しているが
ケツの青い小僧が出しゃばるんじゃあねぇよ」
( `ハ´)「渋沢! 早くやっつけるアル! 息子がこいつにやられたアル!」
渋沢と呼ばれた男の指の先がきらりと光る。
黒く光った。そう、今気づいた。
(;^Дメメ)「アレは………拳銃………!」
(,,゚Д゚)「………………」
その囲んでいるほとんどの人間が、銃を構え、立った。
コンテナの衝撃のせいで、速くなった心臓の鼓動は
あまりにも現実的すぎる「死」へ隣接したがために、ますます速くなる。
しかし、俺が驚いたのは、ここからだった。
8 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:35:33.69 ID:Ji2X2R7aO
(,,゚Д゚)「それ………武器か?」
_、_
( ,_ノ` )「………………」
(;`ハ´)「………………」
(;^Дメメ)「え………」
(;'A`)「は?」
手であごを覆うようにしてまじまじと拳銃を見つめる。
本当に銃を知らないかのようだ。俺とプギャーも見合わせて、首を傾げる。
(,,゚Д゚)「これ、どうやって使うんだ? 殴るにゃあリーチが短いし
斬れるわけもねーよな。なんだコレは?」
余裕こいて、武器の分析まで始めて
挙げ句の果てには近くで見ようと、一歩踏み出し始めた。
馬鹿だ、真性の馬鹿だ。ナメクジ並の知能しかない。
が、その一歩で状況が一変する。
気の抜けた雰囲気が引き締まり
渋沢が微笑を浮かべた。
_、_
( ,_ノ` )「クックッ………面白い冗談言うじゃねぇか小僧。
それじゃあ試してみるか。コレがどんな武器なのかよ」
9 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:37:03.60 ID:Ji2X2R7aO
(;'A`)「………! お、おい………」
(,,゚Д゚)「あぁ、お願いしようか」
_、_
( ,_ノ` )「それじゃあ………」
渋澤が拳銃を男の頭目がけて構えた。
おいおいおい、何やってんだ、冗談じゃ済まないぞ。
駄目だ。もう俺が助けにいかなくては、しかし間に合わん。
(;'A`)「おい! お前」
声を振り絞って吐き出すが、上手く声が出ない。
生まれつきのアガリ癖だ、なんでこんなときに。
渋澤と男の距離は10mに満たない。
そう考えた瞬間には既に、無情にも銃声が海を渡った。
緊張で汗が耳の側を流れ落ちる。
(;'A`)「う………」
(;^Дメメ)「撃った………本当に」
息を呑み、目を見開き驚愕。人間が本当に撃たれた。
だがしかし、その感情が押し寄せる前に、すぐ異変に気づいた。
何故だ? 撃たれた男が倒れずに立ったままだ。
あの極道の六人も異変を感じている。
すると。
10 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:37:48.60 ID:Ji2X2R7aO
(,, Д )「成る程」
声を発した男に、渋澤の足が一歩下がる。
_、_
( ,_ノ` )「お前………!?」
(,, Д )「火薬で鉛を吹っ飛ばす武器………。
この威力なら、当たりさえすれば簡単に人一人殺せるな」
(;`ハ´)「こいつ………!」
そして男は口の中から弾丸を取り出して
それを親指で上に弾き、にやりと笑う。
(;`ハ´)「弾丸を噛んで止めやがったアル!」
(,,゚Д゚)「押忍」
次の瞬間には既に、渋澤の腹に男の右腕がのめり込んでいた。
渋澤はその場に崩れ、一瞬の出来事に周りの奴らは声を漏らす。
そして改めて銃を構え直し、男の体目がけて連射した。
(,,゚Д゚)「残念」
男はその両腕を信じられない速度で稼動させ
何発撃たれたか分からない弾丸を、全て弾き飛ばした。
(,,゚Д゚)「そんなもので俺を倒すことは出来ない」
11 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:39:27.61 ID:Ji2X2R7aO
(;`ハ´)「ば………化け物アル! 皆逃げるアル!」
背中を向けて走り出した五人。だが、その逃げだした足に
偶然なのか、弾かれた弾丸が壁に跳ね返って
見事に突き刺さった。
(;`ハ´)「あぐっ!………う………」
全員その場に倒れ、アスファルトに額を擦らせた。
男は、その内の一人の胸ぐらを掴んで持ち上げた。
(#゚Д゚)「テメェらが、くじびきに宝石を用意してるっつーから、やったのによぉ
くじを全て引き終わっても当たってねーじゃねぇか、オイ」
(;`ハ´)「ひっ………!」
(#゚Д゚)「しぃがどれだけガッカリしたと思ってんだゴルァ!」
(;`ハ´)「わ、悪かったアル! その宝石は渡すから許………」
(#゚Д゚)「この究ゥ極アホがぁ―――ッ!」
(; ハ )「げふぅっ!」
(#゚Д゚)「しぃは「くじびきで」宝石が欲しかったんだよ! ゴルァァ!!」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 00:39:33.07 ID:9eU5i9pd0
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 00:41:05.81 ID:wCo9Ncm/O
強いってレベルじゃねぇ
支援
14 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:42:03.12 ID:Ji2X2R7aO
中国風の男を蹴り飛ばして、海へと落下させた。
足に弾丸が入った他の人間も、それを目の当たりにして
よろめきながらも、一目散に逃げ出した。
(;'A`)「………なんなんだあいつ」
(;^Дメメ)「全く分かりません………」
武器未発動であの強さ。とんでもない。
出来れば関わりたくない相手だ、が。
(,,゚Д゚)「おい」
男はこちらに向き直る。
(,,゚Д゚)「テメェらもこいつらの仲間だろゴルァ。
その立入禁止のとこを抜けたんだからな、言い訳は聞かねーぞ」
( ^Дメメ)「ハハハ、違いますよ。私たちもそいつらを追ってて………!」
(#゚Д゚)「言い訳は聞かねーって言ってるだろうが!!」
問答無用。アスファルトを蹴り飛ばして、重低音が男の体をこちらへ押し出した。
畜生、厄日だなおい。話して分かる相手じゃねーぞ。
何を勘違いしているか知らないが、俺達は無関係だよ。
(;'A`)「来るぞ!」
15 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:42:54.53 ID:Ji2X2R7aO
( ^Дメメ)「あんまり闘いたくないんですが………」
体勢を低くしたまま、男が向かってきた。
まるで飛び跳ねるように。一歩一歩が大きい。
勢いをそのままに、俺達へ拳を突き出した。
(#゚Д゚)「ラァッ!!」
(;'A`)「おぉっ」
(;^Дメメ)「あっぶ………」
左右に分かれて、その拳を躱す。
拳は激しい音を立て、後ろのコンテナに当たった。
間一髪か、と安心。が、すぐにその安心は、耳から逃げていく。
拳の衝撃は電気が走るように別のコンテナへ伝わり
その伝わった衝撃は次のコンテナへと伝わった。
そして、その次のコンテナ、その次の次のコンテナ。その次の次の次のコンテナ
衝撃は止まることなく、びしりびしりと音を立てて進んでいく。
そうして冷静にもう一度辺りを見回したとき
目の前にずらりと50は積まれてあった全てのコンテナが、木っ端微塵になり
そこには、一つの綺麗な道が出来上がっていた。
16 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:46:43.41 ID:Ji2X2R7aO
(;^Дメメ)「えーと………」
(;'A`)「逃げるぞ! プギャー!」
戦いの経験からか、今の衝撃の強さのせいか。
不思議と冷静さは保てていた。
だが心臓の鼓動は強烈。胸をバチで叩かれているようだ。
(,,゚Д゚)「ち………避けられたか」
まず、この男を間近で見て、今まで「最強」だとか「無敵」だとか。
そんな言葉を軽々しく使っていたな、と後悔する自分がいた。
まるで周りにカゲロウが出来ているよう。「次元が違う」。
恐怖や不安よりも「勝てない」という直感だ。
俺が倒すには時間が足らなさすぎる。
おそらくクー達やツチ全員を合わせても分からないレベル。
いや、それでもこいつには勝てない。
(;'A`)「一旦、会場まで戻るぞ!」
(;^Дメメ)「分かりました」
俺は大剣、プギャーはランス?のようなものを持ったまま
立入禁止の看板があった入り口まで走る。
走る。走る。ここで初めて、異常な焦りを感じた。
17 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:48:03.39 ID:Ji2X2R7aO
(,,゚Д゚)「闘う気ゼロ………ああ、良い判断だ。
だが、逃がすわけにはいかねぇな………!」
その大きな足音が聞こえたのは100m弱走ってからだった。
振り向くと、やはり男は追いかけてきていた。
(;'A`)「いっ!?」
(;^Дメメ)「っ!」
目の前まで迫った入り口を
空から降ってきたコンテナが塞いだ。衝撃音にひるむ。
他の道を探そうと辺りを見回すが、遅かった。
(;'A`)「くそ………どこか他に………」
(;^Дメメ)「仕方ありませんね、これを壊して―――」
18 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 00:49:38.31 ID:Ji2X2R7aO
(;'A`)「っ! プギャー!」
(; Дメメ)「がっ!!」
すぐそこまで迫っていた男の掌打を受け
プギャーが入り口とは別の方向へ大きく突き飛ばされた。
(#゚Д゚)「ラァアアッ!!」
(;'A`)「つっ!」
連続して放たれた回し蹴りに大剣を合わせ
ガード。しかし、衝撃は抑えきれず
地面に足が着いたまま、2mほど押し出された。
(;'A`)「ちっ………この野郎ッ!」
踏み込み。突きによる斬撃。
(,,゚Д゚)「………っと!」
体勢を低くして避け、逆に男は踏み込む。
俺が突き出した右腕の下で、拳を握りしめるのが見えた。
回避しなくては。しかし遅い。
(#゚Д゚)「っしゃぁ!」
痛みも感じぬまま、衝撃を受け吹っ飛ぶ。
風の音がまとめて耳へ入る、高度が下がって、地面に着く背中
その後回転してコンテナに突っ込んだ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 00:58:01.19 ID:V4jFb2CdO
支援
20 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:01:44.95 ID:Ji2X2R7aO
(; A )「がはっ……く………痛…」
大の字になってめり込んでいる体を起こし
拳を握りしめ、放してしまった大剣を手元に戻す。
痛みはあるが、大丈夫だ。
少し呼吸が苦しくなったのは確かだが。
(;^Дメメ)「ドクオ………こっちです」
(;'A`)「つっ、プギャーか、大丈夫か?」
( ^Дメメ)「えぇ、それよりも………」
プギャーの視線の先を見る。
(,,゚Д゚)「………武器持ち、あそこまで頑丈になるとはな………」
男は一歩一歩たしかめるように近づく。
プギャーが口を開いた。
( ^Дメメ)「このコンテナを飛び越えて港を出ます。
ここら辺の地形は調査済みです。
ここを越えれば今は無人のビル街に出るはずなので………そこから」
(;'A`)「いや………俺もこの辺来たことあるから分かるが
「コンテナを越えて」? 三段重ねだ。5mはあるぞ」
( ^Дメメ)「………そう言えば、私の能力の説明をまだしていませんでしたね」
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 01:01:58.17 ID:oRxbhr60O
支援
22 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:02:47.56 ID:Ji2X2R7aO
プギャーは手に持った武器を
くるりと回して地面に突き刺し
今まで閉じていた傷のある左目を、見開いた。
( ^Дメメ)「私の能力は………」
突き刺された地面が、ぷくりとたこ焼きのように小さく膨らむ。
そのサイズは風船が膨らむようにだんだん大きくなっていき
灰色のアスファルトにならった、大きな灰色の風船が、発現した。
( ^Дメメ)「「突き刺した物に空気を入れるランス」
さぁ、これで跳べばこのくらいの高さ。簡単に超えられます、よっ!」
プギャーはその風船に飛び乗り、一度大きく沈み
その後トランポリンのように、コンテナの上へ跳び上がった。
驚いたが、時間もないので、見たままに跳び上がった。
想像していたよりも勢いよく跳んだので驚いたが、無事コンテナの上に着地できた。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 01:03:39.08 ID:dwk27vjoO
支援
24 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:04:38.14 ID:Ji2X2R7aO
(;'A`)「っと………ふう、便利な能力だな」
( ^Дメメ)「もたもたしていられません。早く逃げますよ」
プギャーは自分の服の端っこ破り
それに空気を入れて、コンテナの下に投げる。
そこへ飛び降りると、今度はクッションのように衝撃を抑え
簡単に着地することが出来た。
( ^Дメメ)「さ、行きますよ」
('A`)「あぁ」
足を動かして港から離れる。
これでいいのだろうか。
自分でも予想だにしない考えがふと頭をよぎった。
('A`)「………………」
言葉には出なかったが奇妙な感覚だった。
今俺は闘わなければならないんじゃないか。
奴を倒せば武器持ちが一人減る。それにこのまま逃げ切れる気もしない。
('A`)(だがしかし………)
やはり言葉には出ない。
潮の香り徐々に薄れていった。
街灯のない暗いビル街を、プギャーの後ろについて走った。
25 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:07:22.36 ID:Ji2X2R7aO
安心感が湧きつつあったその時。
予想通り。破壊音が俺達の耳へ入った。
( ^Дメメ)「!」
(;'A`)「………やっぱり来たか」
破壊音と共に、右前方のビルの壁が突き破られる
舞い上がった砂ぼこり。その中に見えた人影。
(,,゚Д゚)「よう………また会ったな」
(;'A`)「………………」
(,,゚Д゚)「しぃをガッカリさせた罪は重い………
ズタズタのメタメタにしてやる………」
やはり単純に逃げるだけの策は間違いだ。
俺達はこれからもっと厳しい戦いに挑んでいく。
ここで逃げて、何になるというのだ。
そんな言葉が俺の頭をよぎった。
空っぽになっていた頭は、それに従うしかない。
(;'A`)「プギャー、逃げろ」
( ^Дメメ)「………?」
('A`)「クー達に知らせるんだ。
このまま逃げ切れるとも思えない」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 01:08:18.05 ID:6la0w/LyO
支援
27 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:09:41.91 ID:Ji2X2R7aO
( ^Дメメ)「………何を言ってるんです?
この男と一人で闘う気ですか?」
('A`)「あぁ、出来るだけやってみる」
向けた剣先。方向は無論、男へ。
恐怖なんてのは、いわば体からの危険信号だ。
危険な道を全て避けるなんて出来るわけがない。
(;^Дメメ)「しかし………もともと私が………」
('A`)「早く行ってくれ。こいつ今にも襲ってきそうだ」
(;^Дメメ)「………………」
数秒沈黙し、プギャーは背中を向けて走り出した。
葛藤はあっただろうが、判断は早い。
有り難いことだ。
男は追わずにただそれを目で追うだけ。
しばらくして向き直り、呟くように話し始める。
(,,゚Д゚)「………ほう、面白いな。男らしいぜ。
だが、勇気と無謀は違うってこと。分かってるか?」
何かが追ってくると考え込むな。
今自分は、試練。壁の前に立っている。
こいつを倒せば、俺は成長できる。
('A`)「分かってるよ、だから別にお前みたいな奴と、まともに勝負する気はない」
28 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:12:45.05 ID:Ji2X2R7aO
(,,゚Д゚)「は?」
('A`)「「閃き」でお前を倒す。
油断とか………しない方が良いと思うぞ」
(,,゚Д゚)「ほう………相当な自信、やはり面白いな。
一応聞いとくが、お前、名前は何つーんだ?」
('A`)「ドクオだ」
(,,゚Д゚)「ドクオ………ね。俺はギコ。
お互い覚えておこうか、とはいっても………」
地面近くで舞っていたほこりが一瞬で消し飛んだ。
(#゚Д゚)「お互いリタイアしなかったときの話だがな!」
(;'A`)「っ!」
29 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:13:39.42 ID:Ji2X2R7aO
一歩で大きく縮められた距離。
ギコはその一歩で、飛び上がったのを利用し
空中から強力な掌打を繰り出す。
(;'A`)「うぅおっ!」
大剣で防いだ直撃。
しかし伝わり来る衝撃に俺は体を仰け反らせる。
倒れまいと足を一歩後ろへ進めたところに
一歩踏み込んだギコの体が迫る。
(#゚Д゚)「ッ!!」
ガードの空いた体へ入れられた肩。
入れたと同時に体勢を高くし、宙へ突き出された俺の体。
(; A )「ぐおっ…!」
衝撃から漏れ出た声も言い切らないうちに
無防備になった体へ拳が一撃。
(; A )「がはっ!!」
感じた腹痛。
のめり込むような鈍い一撃を受け
俺は血ヘドを口から吐きだした。
30 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:14:19.05 ID:Ji2X2R7aO
(; A )「や………べ」
そして曲げられるギコの膝。
重量感のある攻撃が俺を襲うだろう。
俺は精一杯体を固める。
(#゚Д゚)「ッラァアア!!」
ぶつかったのは背中だった。
体全体を半回転させ、半ば体当たりの形での攻撃。
弾けた衝撃は俺の体をほこりのように吹き飛ばした。
(; A )「ごはぁっ!」
体は無人ビルの中へ突っ込む。
物の崩れる派手な音が立った。
破片が頭に掛かっている中で考える。
武器化しているはずなのに、化け物か。
ただその時の感情だけ。
(; A )「……あ………く、ゲホッ、ゲホッ
畜…生………本気出し過ぎだろ………」
ギコの声が聞こえる。
(,,゚Д゚)「お望み通り、次は本気で行かせて貰おうか。
ちなみに今ので30%ってとこだな………」
(;'A`)「………」
31 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:15:03.61 ID:Ji2X2R7aO
(,,゚Д゚)「面白いと思ったが、期待はずれか。
閃きで倒すとかなんだか言ってたがな………」
「………………」
(,,゚Д゚)「これじゃあ時間稼ぎにも、って………ん?」
ギコの口が止まる。
数秒沈黙し、返事のない状況を不自然に思う。
一旦開きかけた口を閉じ、その後再び開いて言う。
(,,゚Д゚)「………おい、お前。いつまで埋まって―――」
不審に思ったギコがクオが崩した部分を覗こうと近づくと
そこにドクオの姿はなく
瓦礫が重ねられているだけであった。
(;,,゚Д゚)「―――つ、逃しちまったか。俺としたことが………。
やはり………油断はするべきではなかったな………」
ギコは溜め息を吐いて
ゆっくり歩き始めた。
・
・
・
32 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:15:58.44 ID:Ji2X2R7aO
・
・
・
(;'A`)「何とか逃げられたが………」
俺は相変わらずこのビル街にいた。
一旦距離を離して考える時間を作ろうと逃げたが
時間があっても、そう簡単には閃かない。
(;'A`)「閃き………何かアイディアが………」
分かっていることと言えば、ギコが戦いを放棄するとは思えない。
プギャーの方を追っただろうか。
いや、おそらく俺だろう。見つかるのも時間の問題か。
港近く。ビル街。夜。街灯が少ない。
パズルを解いているようだ、完成にはピースが少ない気もするが。
とにかく正々堂々やりあっても仕方がない。
強い、奴の。強いからこその癖とか………。
(;'A`)「っ!」
足音に反応し、瞬時にビルの陰へ隠れた。
恐る恐る覗いてみると、想像通り奴がいた。
33 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:16:39.38 ID:Ji2X2R7aO
(,,゚Д゚)「………こっちか?」
畜生。姿を見ただけで汗が噴き出す。
ギコ。奴は強いが、武器を発動しない。
そのおかげで、攻撃を受けた今も立っていられるし
こちらの攻撃もおそらく通じやすいだろう。
しかしそれを差し置いても
攻撃を何度も受ければ確実に気絶してしまう。
当たれば強い攻撃は当たらない気がする。
手に汗が滲む。下唇を噛んだ。
(;'A`)(閃き………閃き………)
考えている内にもギコは近づいてくる。
追いつめられ、無意識に右足を一歩後ろへ進める。
そのとき、進めたかかとに何かがぶつかる。
何かと思えば。
34 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:18:36.95 ID:Ji2X2R7aO
(;'A`)「これは………」
階段だ。
見上げるとどうやら、この隠れているビルの屋上へ続いているらしい。
高さは、五階建てくらいだろうか。
ここに上ってやり過ごせば、上からギコの癖を監視できるかもしれない。
しかしやり過ごせればの話だ。
もしも追いつめられたならば、袋の鼠。
敗北は必至。ここに上るのはハイリスクだ、が。
(;'A`)(しかし………!)
ただ逃げるのは良策ではないと判断したばかり。
何か変化がなければ奴を倒すことは出来ない。
俺は階段を駆け上がり、全力で屋上を目指した。
(,,゚Д゚)「ん………?」
階段を上る音に気づいたか。
だが、気にして、上る速度を落としても
上っているところを見られれば即刻アウトだ。
屋上へ上がることだけを考えた方が良い。
35 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:19:13.48 ID:Ji2X2R7aO
駆け上がる足。二段とばしで上る。
何度か折り返しながら、屋上へと近づく。
途中で一度振り返る。ギコの姿はない。
最後の一歩でブレーキをかけ、屋上に着いた。
(;'A`)「………ふぅ、ちょい疲れるな………」
ボロボロのビルの屋上はやはりボロボロで
強い衝撃を加えたら簡単に壊れてしまいそうだ。
そんなことを考えつつ、四つんばいになって
屋上からギコのいる場所を覗いた。
俺の体は微妙ながら震えていた。
(,,゚Д゚)「………気のせいか?」
ギコは辺りをきょろきょろと見回した後
俺のいるビルとは別の方向へ歩いていき
そのまま角を曲がったところで見えなくなった。
どうやらやり過ごせたようだ。
36 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:20:11.52 ID:Ji2X2R7aO
(;'A`)「とりあえず一安心か」
監視できるかと思ったが、想像以上に低かった。
と言っても結構な高さがあるのだが、ビル街故に、それ以上大きいものも複数あったのだ
俺は大剣を肩にかけて立ち上がり
ギコの姿が見えなくなったので、祭り会場の明かりが見える方へ目を向けた。
ここにも車が通るらしい、そのライトがここから見える。
しかし、プギャーはいつ頃帰ってくるだろうか。やはり倒すには仲間も欲しい。
('A`)「ギコが俺を見つけられないなら………
それもそれで閃き勝ちってことか………?」
そんな言い訳まがいの、誰に言ったわけでもない独り言。
しかしそれに、思わぬ反応があった。
「残念ながら、そうはならないな」
(;'A`)「!」
誰の声だ。
反射的に振り返って、俺は見た。
予想外から来る衝撃で、心臓が押しつぶされそうになる。
37 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:21:41.41 ID:Ji2X2R7aO
(,,゚Д゚)「気づかないとでも思ったか?」
見つかっていたのか。
ギコの表情はよく分からない。
(,,゚Д゚)「俺も特段耳が良い方じゃないが
あんな音立てて上がれば分かるに決まってんだろ。
あなどりすぎだぜ、俺を」
(;'A`)「袋の鼠か………」
俺は限界までギコから離れ、大剣を構え
いざとなれば飛び降りて逃げようと、屋上の縁に立った。
息は荒い、俺は本当に勝てるだろうか。
38 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:22:41.34 ID:Ji2X2R7aO
沈黙の中でぐるぐると考えが回るが
実は不完全ながら策はいくつか頭にある。
俺はそれが尽きるまで、どうにか「絶望する」という事態は避けられるだろう。
ギコは拳を出すよりも先に、口を動かした。
(,,゚Д゚)「………追いつめられている割には
随分と余裕だな………開き直ったのか?」
俺の表情をじっと観察し
人差し指を額に当てて、なんと俺の分析を始めた。
これは何か不味い。そう感じた。
(,,゚Д゚)「いや…違うな………脅えながらも勝利に執着している。
開き直った奴は、勝利への執着なんてまったくねぇ」
ぐっ、と喉が詰まる思いをした。
見られているせいか、どんな表情をしたらいいか分からなくなる。
動揺しているのは確実に伝わっているだろう。
(,,゚Д゚)「罠の臭いがプンプンするな。
何か策でも考えているのか? ドクオ」
39 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:23:26.15 ID:Ji2X2R7aO
(;'A`)「!」
図星。
ぎょっとして肩が大きく動いた。
やはりギコ。ただものじゃあない。
(,,゚Д゚)「罠があるようだな………まぁ考えられるのは
お前の「武器の能力」か、「道連れで俺をビルから落とす」か………」
こいつどこまで言うつもりだ。
俺にはもう策しか残っていない、それを待つことしかできない。
選択肢はたったの一つしかないんだ。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 01:23:33.80 ID:p8VlMsbEO
支援
支援してやろう
42 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:24:30.95 ID:Ji2X2R7aO
(,,゚Д゚)「「武器の能力」と考えるのが普通だが………
お前は俺が港で吹っ飛ばしたとき、手から離した大剣を能力で戻していた。
「一つの武器に一つの能力」そう考えればお前の能力は
おそらくこの状況を覆すほど強力な物ではないはずだ」
額に当てた人差し指を拳に戻し
そして。と続ける。
(,,゚Д゚)「残されたのは「道連れで落とす」。
武器化されている自分なら、この高さから落ちても大丈夫だろう。
そう考えているかも知れないが、あいにく。俺もこの程度の高さ、なんともない。
例え頭から落ちようとも、気絶なんて事はあり得ない」
(;'A`)「な………」
なんということだ。
当たりだ、「道連れで落とす」。それだけが頼みだった。
このガタの来ている地面を壊し道連れにし
頭から落とそうと、そう考えていた。
それなのに。
(,,゚Д゚)「「それも通用しないのか」か?」
(;'A`)「………!」
精神的にも追いつめられた。
後ろを振り返れば何もない、ただの道路。
43 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:25:10.70 ID:Ji2X2R7aO
(;'A`)「い、いや………まだだ。
もう少しでプギャー達が助けに来る。
それまでくらいなら………俺だって時間を稼げる………」
(,,゚Д゚)「と、思うのか?」
(;'A`)「………」
(,,゚Д゚)「それは不可能だ。それに仲間が来たところでどうなる。
大前を助けるほどの力を持ち合わせているのか?」
確かにそうだ。
クーもブーンも兄者もつーも。
誰が来ても一人ずつ着実に倒される映像が浮かぶ。
追いつめられている、勝つための道がない。
(,,゚Д゚)「穴は全て塞いだ。さて、策にハメられる物ならハメてみろ。
策がなければ、一瞬で腹に膝が入って、ジ・エンドだ………。
「閃きで勝つ」………少し期待してたんだがな………」
ギコは両手が地面に着くほど体勢を低くし
地面と向かい合った後、ゆっくりと顔を上げ
そして。
44 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:26:20.01 ID:Ji2X2R7aO
(#゚Д゚)「行くぞッ!」
一瞬で姿を消した。
残されたのは影のみ。
(;'A`)(………いや)
違う。冷静になる意識。
たったの一歩で俺の目の前まで来た。
やはり「一歩が大きい」。それがこいつの長所にして弱点
ギコの膝が出るよりも先に大剣を地面へ突き刺した。
('A`)「これでっ!」
(;゚Д゚)「む!?」
ビルは当然、突き刺したところから崩れる
足場が崩れた俺は、猛スピードで落下していく。
それを食い止めるべく、ビルの壁に突き刺し、壁にへばりついた。
それと同時に上空へ目を向ければ、到着点を失ったギコの体は
空中へ放り出されている。当然重力に逆らえないまま急降下。
ギコと地面は急接近する。
ギコは今こう考えているだろう。
「地面に激突したところで俺は何ともない」
確かに。ただ激突しただけじゃあダメージは薄いだろう。
45 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:27:36.25 ID:Ji2X2R7aO
しかし。
('A`)「「ヤイバロ組」が何を運んでるのか知らないが………。
この大きな通りは大型トラックがよく通る、港へ何か運ぶためかもな。
それも極道の下っ端のチンピラがアホみたいに猛スピードを出してだ
………………言ってることが分かるか?」
(;゚Д゚)「っ!」
気づいたときにはもう遅い。
屋上へ上ったときに見えた車。
それに合わせて落下させた。
('A`)「お前が話してくれていたお陰で、時間ピッタリだ」
耳を刺すようなトラクション音。
ライトに照らされたのは落下中のギコ。
大剣で壁に張り付いたまま、俺はギコを指さして叫んだ。
(#'A`)「「閃き勝ち」だッ!」
(,, Д )「く――――――」
ガラス皿が割れた音。
咆吼か、悲鳴か、ギコのそれは衝突音にかき消される。
突き当たりにあったビルへ、何かが突っ込んで崩れ落ちた。
46 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:28:58.64 ID:Ji2X2R7aO
スピードを緩め、やがてトラックは止まる。
中から二人出てきて、状況にうろたえる。
「なんだ今のは………ひ、人に見えたが………」
「そんなまさか………」
「だが………」
聞こえたそんな会話。
俺は大剣でへばりついたまま、どうするか考える。
あのギコのことだ、まさか死んではいないだろう。
遠くを見たがトラックがもう一台来るようだ。
あまり大事にしたくはない。
とりあえずここから逃げ出そうか。
「っ!?」
('A`)「ん………?」
突き当たりのビルへ様子を見に行った男の一人が
崩れた部分を指さし大声で叫んだ。
「おい! 変だ! ちょっと来てみろ!」
「どうした!? おい………まさか死体が………!」
「違う! その逆だ!」
47 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:30:34.53 ID:Ji2X2R7aO
('A`)「逆………?」
その男はその壊れたビルを改めて見渡してから、迷いのない声で叫んだ。
「ここに………何もないんだ!」
(;'A`)「な!?」
「なんだって………? でも今はねたのは確かだぞ………?」
「だから変だって言ってんだよ! 来てみろよ! 本当にいないんだ!」
(;'A`)「どういうことだ………?」
ギコは策にはまって吹き飛んだ。
吹き飛ばされた先にギコがいないのはおかしい。
まさか元気バリバリで動き回ることも………。
(;'A`)「つっ!?」
壁に突き刺した大剣に何かがのしかかった。
まさかと思い、その大剣に目をやる。
何故だ、そんな、そんなこと、あるわけ―――
(,,゚Д゚)「押忍」
額から出たほんの少しの血を
ギコは拭ってにやりと笑った。
第三十話「ギコは本気で戦えない」 終
48 :
◆Ez.6FOopuQ :2009/01/23(金) 01:31:10.23 ID:Ji2X2R7aO
支援ありがとうございました。質問があれば受けます
なければ寝ます
おつ!
ありがとうございました
おやすみなさい
面白かったけど、同じ条件で勝ち抜きに参加してるんだよね?
『敵が毎回なぜか主人公たちより強い』ように見えてしまいそうなので
あー何か考えがまとまんねーと悩んでたら寝ちゃった
弱い敵は別の場所でやられてるって脳内補完が一番健全
>>51 ツチはVIP周辺で噂になるほど強いグループという設定なので…。
ドクオ達が参加した二週間ほど前から武器持ちの戦いは始まっていたので、スタート時点でかなり強い敵に限られていた、というのもありますね。
>>52さんの言う通り脳内補完して頂ければ。
あと一応エクストや弟者を襲った無名AA(忘れた)、この港でギコに簡単にやられた二人の武器持ち。などなど、弱いのも一応います。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 02:10:16.12 ID:gjR1WVZ50
乙
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/23(金) 02:18:22.96 ID:+uCAV6VL0
乙
始めて見たんだけどおもしろそう、まとめサイトで一気読みさせてもらうぜ!
これから先の展開に超wktk