1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
細波のような風が吹いている。チューリップが、ゆらゆらと踊っているよ。綺麗だね。
泣き疲れた君を連れて、僕らは植物園を巡る。
誰もいない植物園の中は、昼間とは違う顔を見せる。
あの大きなソメイヨシノの桜の木についたら、僕たち一休みしようか?
「全然余裕ですぅ!」
お花畑の奥に、フラワーステージを見つけた君は、子猫みたいにはしゃいで駆けていく。
まるでこれから観覧車にでも乗り込むかのように、ニコニコ笑顔で僕の手を引いて駆けていく。
ああ、楽しいね。嬉しいね。喜びは肉の底から沸いてくる――――でも悲しいね。
幸せが溶けたこの蜂蜜のような夢の中で、僕は溺死してしまいたいと思った。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:06:59.71 ID:kc6YHAlTO
ニャオーン
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:09:54.43 ID:6YcL2A6J0
やがて、フラワーステージにたどり着いた君は、一人芝居を始める。
演じる少女は薄幸だが、暗い路地裏の中に一握りの陽光を垣間見る。
入り組んだ遮蔽物をすり抜けて流れ込む一筋の光は、きっと綺麗だろうね。
ああ、月の光が凝縮できれば、君にスポットライトを当てるというのに。残念だ。
でも大丈夫。目には目をのこの世界で、全ての人はもうすぐ盲目になるのだから。
君の声が聞こえれば、それで十分さ。
さあ、泣きはらした眼は乾いたかい?
「もう大丈夫ですぅ!」
なら安心だ。フラワーステージに飽きた君は桜並木を歩き出す。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:12:38.84 ID:6YcL2A6J0
くるりくるりと舞い散る桜が、すごく綺麗だ。
絢爛に咲き誇る白桃色がいいね。君の血の赤に、とても冴えるよ。
だけどそれは、真夏の雪のように明らかな異質。すぐに環境に淘汰され、痕跡すら残せない。
ソメイヨシノの桜には着いたけど、やっぱり休んでいくかい?
「いいから、早く歩くですぅ!」
そうかい。次は薔薇園だ。
薔薇園に着いたら、ココアを入れてあげよう。
血を拭いてあげよう。涙も拭いてあげよう。
君のことは大体、わかっているからさ。
誰も言わなくても、血みどろになっても――綺麗だ。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:16:28.82 ID:6YcL2A6J0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
植物園で倒れ 泣き崩れちゃっても
君は綺麗だな 血みどろになっても
綺麗だ
G U R U
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:19:48.39 ID:6YcL2A6J0
このSSは大槻ケンヂさんの名曲「Guru」を原作としています。
なんども聞いていたらローゼンメイデンの話にしか聞こえなくなってきたので、こういった妄想話を書かせて貰いました。
個人的な解釈や、改悪が満載なので、ファンの方がいらしたら世界観を壊す可能性が大なのでご注意ください。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:23:05.91 ID:6YcL2A6J0
忍び込んだ植物園の中、僕たちはお花畑にたどり着いた。
色とりどりの花々が、豊満なフレーバーで僕らを迎えてくれる。
中央にある噴水の縁に腰掛けて、ティータイムとしゃれ込もうか。
僕は持ち込んだ水筒から、君のカップに温かいものを注いだ。
たまには外で楽しむお茶も、いいよね。
君は、一口飲んでニコリ。僕もニコリ。そして沈黙が続く。
ひどく心地よかった。
この沈黙を保ったまま、カップの中のまどろみに飲み込まれて、消えてしまいたいかもしれない。
君はどうだろうか。またもニコリ。それは肯定か、もしくは否定か。全ての諦めか。
風が気持ちいいね。色とりどりの花々を揺らしている。綺麗だ。
きっと夜が明ければ、春の日差しを全身で受けて、また新たな顔を見せてくれるに違いない。
できることなら、二人でまた来よう。
僕ら立ち上がる。
どこへ行こうか。
僕ら歩き出す。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:27:00.10 ID:6YcL2A6J0
でもその足は、希望を無くして止まってしまう。
背後から、規則正しく響く足音。
誰の足だよ――おい。全身が、ぞっと泡立つ。
僕は錆びた螺旋のように、ぎこちなく振り向く。僕が向き終わる頃には、既に君は足音の主を見据えていた。
刃のないナイフで心臓を突かれるような、恐れの混じる不快感が僕を襲う。
出かけた言葉が喉の奥に引っ込み、崩れて溶けた。
君と彼女の間には、まるで強い磁場ができあがっているようだった。
ゆっくりと、しかし確実にその体と体は引き合っていた。
「こんなところにいたのか、翠星石。探したよ――」
軽快に跳ねる馬蹄のように、心臓がコミカルなリズムを刻む。
意識は汚濁の中に陶酔していく。
「さあ、始めようか」
やめろ、やめてくれ。
全てを否定するかのように頭を抱え、耳を塞ぐ。目を伏せる。だが、それでも宣告は、僕の手を突き抜けて届いた。
「――最後のアリスゲームを」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:30:13.66 ID:6YcL2A6J0
『最後の聖戦』
蒼装の少女の右手には、冗長とも言えるほど大きな鋏が握られている。
金色の外装。だが、その鋏は刈り取られた姉妹達の、見えない血潮で染まっているのだ。
それは、翠星石も同じことだった。構えた如雨露から流れるのは透明な鮮血。
散っていった姉妹達の魂の涙だ。血の涙だ。
お互いが、にじり寄る。こぼした水が、和紙に浸透していくようにじわじわと、確実に。
やがて二人の距離が、蒼星石の斬撃の間合いとなる。
「メイメイ」
翠星石が呟く。まばゆいい光とともに、静と音を立て現れる黒翼の剣。
「君の能力は、夢の世界でしか使えない……。だからといって、僕を相手に接近戦を挑むんだ」
蒼星石が歪に微笑む。血が染みついた、哀しい貌だ。
「蒼星石、どうしてもやるというですか?」
「今更やめることが出来るというのかい?」
蒼星石が、鋏を構えた――。
「僕らのゲームは始まってしまったんだ。幾体もの屍を積んだ舞台の上で、アリスを決めなければいけない」
――行くよ。
その言葉が耳に入る前に、閃光が疾った。蒼星石が地を蹴り、飛び込む。
響く剣戟。衝撃が腕から体全体に伝わり、お互いの視界を揺らす。
初撃は相殺。刃が上になった蒼星石はもう一度振り下ろす。
地に向かって弾かれた翠星石は、その勢いを利用し体ごと縦に回転斬り。
再び閃光。肉を切る音。悲しい朱色が飛び、ドレスを醜く染め上げる。
アリスに近づいたものだけに流れる、人のソレとも違う、朱い血しぶき。
反動を利用した分一瞬早く、翠星石の剣が蒼星石の腕をかすめていた。
蒼星石の鋏は虚空を斬りさく形となった。が、先手をとった翠星石は着地できず、地を転がる。
好機。逃さない。
間髪入れず、鋏が、突く、突く、突く。
その全てを翠星石が躱す、躱す、躱す。
――――躱したはずだった。蒼星石の口元が妖艶につり上がる。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:35:07.35 ID:6YcL2A6J0
「甘かったね、翠星石」
鋏は一度として、翠星石の体に触れてはいなかった。
だが、その最後の一突きは、彼女のロングドレスを釘の様に打ち抜いていた。
「チェックメイトだ」
「――――」
身動きのとれなくなった翠星石の右腕を踏みつける。手の腱を圧迫され、握っていた剣を落としてしまう。
下になった翠星石は懸命に足掻くが、蒼星石は体全体でそれを制し、奪った剣先をゆるやかに喉元にあてがう。
眼前の勝利に、蒼星石は嗤う。
直後、鈍という音。
背後から伸びる大木の枝が、蒼星石を羽毛のようにはじき飛ばした。
蒼星石は頭に疑問符を残したまま、体を2度バウンドさせ、前方はるか10メートル先に顔面から墜ちていった。
すぐに気づく。それは進化したスィドリームの能力。現実世界の樹木さえも操る、如雨露の力。
「あの時構えた如雨露……まいったよ。使えないんじゃなくて、使わなかっ――」
振り向いた矢先に、赤い衝撃。連撃。連打。
止まらない。伸縮自在の枝による追撃。追撃。追撃。畳み込む。
打突は蒼星石の顔面を正確に捉え、触手のように伸びる枝木は蒼星石の体を絡め取り、肉を完全に固定させる。
「チェックメイトです……」
翠星石が沈痛な表情、蒼星石が苦悶の表情を浮かべる。
あげ
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:39:52.23 ID:6YcL2A6J0
「……油断した…………この一番大事な場面で……最後の闘いで……」
激しい闘争の後、多様な花々は衝撃ではじけ飛んでいた。花弁は風圧で、勝者を祝福するライスシャワーのように空高く舞い上がっていた。
「あはは、舞い散る花弁が……綺麗だなぁ」
「蒼星石……翠星石はもう……!」
闘いの中止を懇願する翠星石の上方、蒼星石は空を見上げる。見上げた空に落ちていくかのような、遠い目をして。
「君は、まだそんなことを言うのかい?」
声が、糸のように甲走る。
「翠星石は……翠星石は……」
限界だった。翠星石の両の瞳から、泉のように涙がわき出る。
「滑稽だよ、ひどく滑稽だ」
その姿を、蒼星石は睨め付ける。
「理由はどうあれ、僕たちは姉妹をこの手に掛けてここまで来たんだ。
過酷だが、それが使命だったから。お父様の望んだことだから」
「翠星石は、蒼星石を壊してまでアリスになんかなりたくねーです!」
怒気を張る。荒げた声は、夜の闇に染み渡る。
「僕だってそうさ。だが、一度回り出した舞台は止まれない――。
ここでやめるのは、途中で舞台に散った姉妹達に対する侮辱。違うかい?」
「――――」
張り詰めるような沈黙。
翠星石は何とか言葉を紡ごうと思案するが、なにも導き出すことが出来ない。
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:42:08.05 ID:NukMx7Nl0
久々に読み応えのある大作期待age
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:44:10.96 ID:6YcL2A6J0
>>11 >>13 支援ありがとう。
でも大作じゃないんだ。原稿用紙20枚ほどの短編なんだ(´・ω・`)
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:46:14.69 ID:6YcL2A6J0
「反論はないということは、了解してくれたのかな?」
「それは……蒼星石に、トドメを刺せと言うことですか?」
自分で言って、背筋が痺れあがりそうになる。
その悲痛な姉を見つめ、蒼星石は微苦笑を浮かべる。
「そうだね――ところで、気づいているかな。さっきから舞っているこの花弁。てんで落ちる気配がない」
「え……」
二人を囲む空間に、舞乱れる血染めの花弁。相対的に異様な量の赤。
「綺麗だなぁ……真紅の薔薇も、こんな感じだったよねぇ」
翠星石は、出しかけた声を噛む。本能的に回避行動をとる。空気の流れが変わる。
舞い散る花弁の殆どが、異常なスピードでねじ曲がり、咲き誇る深紅の薔薇が、翠星石に向かって一斉に爆ぜる。
「ローズテイル!」
その威力は、翠星石の能力の比ではなかった。蒼星石の全エネルギーを注ぎ込んだ、会心の一撃。
破壊を目的とする薔薇の尾が、疾風の如く唸りをあげ、翠星石の体を貫く。
一瞬のことだった。嫌な音を立てて、一目で致命傷とわかる裂け目をその胴に作り出した。
「きぃぃぃぃぃぃぁぁぁああああああああああああああああ」
悲鳴は、遅れてきた。溢れる涙が拡散する。
力のゆるむ一瞬を逃さず、蒼星石は触手の束縛から脱出する。
「油断したね、翠星石。今度は僕が地形を利用させて貰ったよ」
力の供給源を無くした枝木は、あるべき姿に戻っていく。
追い付くのが大変だな
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:55:13.40 ID:WviZN7HR0
…残酷なものだ
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:56:40.24 ID:6YcL2A6J0
蒼星石は疲弊しきった体を引きづるように、一歩づつ、確実に翠星石に近づいていった。
翠星石は地に伏し、虫のように小気味よく蠢いている。止めを刺さなければ。
今度こそ、本当に終わりにしよう。鋏を、今、緩やかに突き立てよう。
その行動には、一切の躊躇も孕んではいなかった。考えてはいけないのだ、全てはもう遅い。
だが、蒼星石は、最後の最後に、この最愛の姉に、手向けの言葉を贈りたかった。
繕った言葉ではなく、ありのままの気持ちを贈ろうと思った。
『ありがとう』か『ごめんなさい』か。何が出るかは、そのときまで自分でもわからない。
不条理だ。でも、その一言で行為を正当化しようとする自分は、エゴイストだ。
それでもよかった。例え誰に非難されようとも、伝えたい心は確かにあったのだ。
幾重にも鍵を掛けて閉じこめていた哀しみを、今最愛の人に打ち明けよう。それを自分の闘いの終止符としようと考えていた。
少女の前に立ち尽くす。
蒼星石が翠星石の元にたどり着いたとき、既に翠星石は事切れていた。
別れの言葉も許されないまま、翠の少女は潰えていた。
瞬間、ジャンクとなった少女の体から、きらきらと輝くもの――ローザミスティカがはじき出される。
その輝きは、月明かりとともに勝者を照らす。悲しい悲しい灯火だ。
綺麗だ。しかし、今にも消え入りそうな弱さ。
触れる。光の中で、蒼星石の何かが崩れた。暖かい魂の中で、凍らせていた心が、音を立てて溶けていく。
覚悟はしていたはずなのに、涙が溢れた。止まることなく流れ続ける涙は、溜め続けた哀しみ。
舞台は終結へと動き出す。
『最後の聖戦』 終
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:09:00.68 ID:6YcL2A6J0
泣き疲れた君と真夜中、植物園に忍び込んだ。
君は嬉しくなっちゃって、はしゃぎまわるまるで子猫。
僕たちのやりきれなさが、誰に分かるもんか。
それでも君のかわいさを、伝えるためだけに僕の人生がある。
――綺麗だ。
植物園で倒れ、泣き崩れちゃっても。
君は綺麗だな、血みどろになっても。
さみしい魂が、夜の花を照らし、綺麗だ……。
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:16:40.66 ID:6YcL2A6J0
メイメイ、ベリーベル、そしてスィドリーム。
3つのローザミスティカが、宙に揺らぐ。
どうした、持って行けよ。なんだ、お前も泣いているのか。
この結果を望んだのはお前じゃないか。これで、お前がアリスだ。
さよならだ。終わりだ。お別れだ。早く行け、超えてゆけ。いつまでそうやって立ち尽くしているつもりだ……。
俺は、物言わぬジャンクと化した君を抱き上げる。
気にしなくて良いよ。血みどろだってね、君は綺麗だ。
僕のシャツはさ。白けてるから、君のからだからの赤は、ちょうどいいくらいの模様さ、綺麗だ。
涙が止まらない。綺麗だ。
君の小さな体を抱くと、いつも腕が余っちゃうんだよね。
綺麗だ。物言わぬ君に繰り返す。綺麗だ。
久々に凄いSSに出会った気がする
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:24:11.27 ID:6YcL2A6J0
そうだ、君のアイホールからルビー色の瞳が抜け落ちているね。
代わりに薔薇を詰めてあげよう。君がさみしくならないように。
体に開いた穴は、風鈴で塞いであげよう。歩くたびに音が鳴って、楽しいね。
赤虫がはったような細い傷跡には、生クリームを塗ってあげよう。白くて甘くって、美味しいね。
たまらない衝動。魂が打ち震える。
溶岩のようにドロドロした熱。煮えたぎる感情が、肉の底から迫り上がってきて、体を満たしていく。
綺麗だ。だが、涙が止まらない。
ぽとり。僕の涙と君の涙が混じり合う。
僕たちの魂は個体であるがゆえ、ぶつかり合わなければいけない。
もしもこの涙のように、液体と定義されれば、君と僕は一つになれるというのに。綺麗だ。
意識がまどろみの中で、濁流に巻き込まれる。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:31:15.32 ID:6YcL2A6J0
ああ星影よ、もっと照らせ。照射せよ。あまねく全ての輝きを、この少女に集めるんだ。
クレオパトラがハンカチ噛んで悔しがるように。
プラトンが、少女の中にイデアを見い出せるように。
ルイス・キャロルは僕と一緒に本を作れ。この少女を物語として世に送り出すのだ。
やがてその本は増刷に次ぐ、増刷。聖書を超え、人から人へ、国から国へ。
いつしか空を超え、星から星へ。遠くきらめく星座まで届くんだ。神様は君の美しさに嫉妬する。
綺麗だ。この姿を、伝えるんだ。綺麗だ。
蒼星石・・・(´・ω・`)
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:34:04.71 ID:6YcL2A6J0
なんでプラトンとか知らないのに書いちゃったんだろう(´・ω・`)
理性 欲望 気概
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:35:48.48 ID:WviZN7HR0
>>23 洞察力があるのだな…これで七回目だ
今日は、ただドールズの幸福を望むばかりだ
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:39:02.15 ID:6YcL2A6J0
蒼薔薇の少女の身体に、光が満ちていく。
なんだい。とうとう、行ってしまうのかい?
メイメイが身体に飛び込んでいく。
ベリーベルが身体に飛び込んでいる。
輝きはいっそう増してゆく。まるで、この世の全ての光が蒼薔薇の少女に吸収されていくようだ。
眩しいな。僕の卑しい瞳では、もう蒼薔薇の少女を見つめることは出来なくなっていた。
アリスへの孵化が始まっている。
蒼薔薇の少女は恍惚の表情。見えないけれど、見えている。
その小さな身体いっぱいに、お父様の愛を独り占めしている。
究極の少女の象徴として、新たな生を受けようとしている。
それでも、僕の腕の中君は綺麗だ。見劣りなんてしないよ。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:41:48.69 ID:6YcL2A6J0
>>29 プラトニックの意味が実はよくわからんのですよ
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:49:27.45 ID:6YcL2A6J0
そのとき奇跡が起きた。
神の気まぐれか、運命の悪戯か。それともローゼンの計らいか。
アリスの光に当てられ、双子の姉の身体に人工精霊が舞い戻る。
ガラクタとなった血まみれの身体で、少女は再び目を覚ます。おそらくは、夜が明けるまでのか細い命。
されど僕らは笑いあった。泣きながら、笑いあった。悲哀を感じる暇はない。
僕と双子の少女達で、手をつないで植物園をまわろう。
夜が明けるまで、はしゃぎまわってもいいよね。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:54:29.57 ID:6YcL2A6J0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それから僕ら、お花畑を巡り、フラワーステージでお芝居を観て、桜並木を仲良く歩いた。
植物園の中を、夜が明けるまで遊び尽くそう。
薔薇園に着いたら、ココアを入れてあげよう。
血を拭いてあげよう。涙も拭いてあげよう。
君のことは大体、わかっているからさ。
誰も言わなくても、血みどろになっても――綺麗だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:58:08.16 ID:6YcL2A6J0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜が明けるまで、はしゃぎまわってもいいですか?
かなしみは植物の中で、やがてドロリドロリと溶けていきました。
翠星石は今、自分がとても綺麗だと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜が明けるまで、はしゃぎまわってもいいよね?
かなしみは植物の中で、やがてドロリドロリと溶けていった。
僕は今、自分がとても綺麗だと思う。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:03:31.49 ID:6YcL2A6J0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
双子の姉の女の子と、植物園に行った。
やるせない娘で、やさしく美しかったが、誰もそれに気づいてはいない。
気づくものか、わかるものか、わかってたまるものか。
だが、お前だけはわかってあげなさい。
お前が悲しみにあるとき、彼女は喜びにある。
春の夜の伽藍の底に、シンメトリに双子の少女がいて。
遊びとは言えない、殺し合いのようなキャッチボールをしている。
ぶつけ合っては血の色の、泣き笑いの双子の野球だ。
その姉のギリギリの思いを、怒りを、やるせなさを、
お前が何故人に伝えないというのかこのバカ野郎。
俗世間に飲まれたか?
伝えろ! 伝えろ! 伝えろ! 伝えろ! 伝えろ! 伝えろ! 伝えろ! 伝えろ! 伝えろ!
お前が本当に伝えたいことだけを、
お前は今から、彼女の綺麗な魂のみを伝えたらいいじゃないか。
大丈夫だ。君なら出来るよ。
世界は、伝道師よ、世界は!
遊びとは言えない、殺し合いのようなキャッチボールなんだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
俺の脳のキャパを超えそうだぜ・・・
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:06:29.87 ID:6YcL2A6J0
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
双子の姉の女の子と、植物園に行った。
やるせない娘で、やさしく美しかったが、誰もそれに気づいてはいない。
気づくものか、わかるものか、わかってたまるものか。
だが、お前だけはわかってあげなさい。
お前が悲しみにあるとき、彼女は喜びにある。
春の夜の伽藍の底に、シンメトリの双子の少女がいて。
遊びとは言えない、殺し合いのようなキャッチボ
END
乙!!!
誰か・・解説を・・・
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:11:13.48 ID:6YcL2A6J0
これで終わりです(´・ω・`)
はい、お目汚しすいませんでした。
最後の方に失速しまくりでしたね。でも、どうしてもラストの語りだけは、元ネタの大槻さんを超えることが出来そうになかったんです。
それでもちゃんと描写するべきだったかな……。元となった歌詞張るだけとか芸も何もありませんでしたね……。
最後に、素晴らしい原曲を張っておきます。
ぶっちゃけ、俺の文は読まなくて良いんで、これを一度聞いてみてください。俺は毎日聞いてます。
http://jp.youtube.com/watch?v=TUoXd47LxGU
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:12:21.50 ID:WviZN7HR0
考えさせられるものだな、感謝する
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:13:37.86 ID:Sb5+pYfj0
面白かった
こんなテンポのSSは久しぶり
乙
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:15:23.13 ID:2ZyeaCGb0
うおおおおおおう。まさかここで筋少に出会えるとは! 盛大に乙!!
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:16:00.12 ID:6YcL2A6J0
意外と受け入れてもらえて良かったです。
一応コンセプトは、「語らずに語る」だったのですが、達成できたかな?
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:39:57.07 ID:aEPGa8/kO
深夜なのに30分放置しただけで総合スレが落ちた
このSSにのめり込んだせいだろjk
>>1は責任取って今度双子のハッピーSSを書いて投下するべき
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 02:42:12.10 ID:6YcL2A6J0
>>44 ごめん、双子同士でJUMを取り合う不倫SS書いてるわw
原稿用紙200〜300枚くらいいきそうで、完成しないかもしれないけど。
幸福な終焉を望む
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
今更だけど、所々にしこんだオーケンネタに気づいてくれた人はいるのだろうか