ハルヒ「アナル、いじめ、シュールのSSはここまで来なさい!」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
,,彡彡彡ミミミ彡彡彡彡彡彡
ミミ彡彡゙゙゙゙゙""""""""ヾ彡彡彡
ミミ彡゙         ミミ彡彡      ●<古泉です
ミミ彡゙ _    _   ミミミ彡
ミミ彡 '´ ̄ヽ  '´ ̄` ,|ミミ彡
ミミ彡  ゚̄ ̄' 〈 ゚̄ ̄ .|ミミ彡
 彡|     |       |ミ彡
 彡|   ´-し`)  /|ミ|ミ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ゞ|     、,!     |ソ  < 小泉です
   ヽ '´ ̄ ̄ ̄`ノ /     \________
    ,.|\、    ' /|、
 ̄ ̄| `\.`──'´/ | ̄ ̄`
    \ ~\,,/~  /
     \/▽\/
・SS投下の際は空気を読んでくださぁぃ。byみくる
・長編は完結できるように、途中放棄した日にはあなたのアナルはいただきますよ!by ふんもっふ
・長編投下はわかりやすいようにトリップや文頭にアンカーを付けなさい!by ハルヒ
・…キャラクターの口調、及びそれぞれの呼称についてはまとめサイトを参照すること。by ユキ
・自分で投下した長編はなるべくWikiで自分で編集したほうがいいと思うぞ。by キョン
・落ちを予想するのはやめ・・うをっ チャック開いてるぞ!by wawawa
・荒らしさんにはスルーなのね。by 阪中
・とりあえず気楽に投下するっにょろよ。by めがっさ
・1レスには最大30行、全角で2048文字、1行全角120文字まで入るのです。by ○
DAT保管庫(停滞中)  http://haruhiss.xxxxxxxx.jp/
新DAT保管庫+SS推薦http://vipharuhi.s293.xrea.com/
新まとめサイト      http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/
DATうpろだ        http://www.uploader.jp/home/harussdat/
雑談所(避難所)     http://yy42.60.kg/haruhizatudan/
雑談所携帯用      http://same.ula.cc/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 18:13:18.53 ID:YtfXj/OT0
=====業務連絡===========

・まとめwikiの管理人さんが忙しいから、せめて長編だけでもSS作者は自分でまとめなさいっ!
・「SS作者だけど自分ではまとめられん!」と言うヤツは「まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド」に
 まとめ要請を書き込んでみるのも一つの手だな。
 まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド
 http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1196380901/ PC用 
 http://same.ula.cc/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1196380901/携帯用
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 18:22:21.17 ID:GijklnizO
おつ
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 18:25:34.96 ID:kwM+8CXhO
⌒○乙<乙なんかじゃなくてただのツインテールなのです、勘違いしないでほしいのです。
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 18:34:28.20 ID:fZgMMrlMO
位置をつ
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 18:51:00.98 ID:YtfXj/OT0
ほしゅん
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:03:07.19 ID:NJe1tj5j0
保守
8 ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:04:20.65 ID:yoBLlJzg0
>>1

スレ立って間もないけど、投下します。
46レス拝借。
長い間スレを占領することを先にお詫びしときます。
予告スレにでも書いておけばよかったんだけど

9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:05:56.51 ID:NJe1tj5j0
どぞー
10未来人に羽が生えて  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:05:57.49 ID:yoBLlJzg0
 日曜日の朝。枕元に置いてあるケータイから無機質な電子音が響いた。
 誰だよこんな朝早くに、と俺は電話を掛けてきた不貞な奴に対して内心で毒づきながらも腕を伸ばした。この
時点で既に脳内にはハルヒの顔が浮かんでいた。さながら条件反射のようでもある。こんな非常識な行為をする
奴はあいつしかいないからな。
 ああ、もう。腕が重いな。
 アラームということはない。前述したが、今日は日曜日だ。何の予定も入ってない、穢れ無き曜日だ。日々の
倦怠に軋み切った身体を爪の先まで癒すために存在するもの。なので、そんな日まで平日のように早起きする気
はさらさら無かった。昼近くまで惰眠を貪るつもりだったので、ケータイのアラーム機能をセットしていないの
も当然のことである。
 カーテンの隙間から朝の日差しが漏れていた。その仄かな温かさは俺を甘い微睡みから離れぬようしっかりと
縛り付ける。
 瞼は開かないので(目脂がはり付いていて)、手探りでケータイを探す。その拍子に何やらバサッと物が落ち
る。何が落ちたんだろうか。まあ、なんでもいいや。
「……もしもし」
 口から洩れるのは、我ながらなんともやる気の無い挨拶だ。
『今すぐわたしの家に来て』
 そこで会話は終了した。
 ……ったく、あいつにまでハルヒ菌が感染していたのか。悪いところばかり吸収しやがって。人にものを言う
時をもっと礼儀をだな、そもそも、それだけで用件が伝わるとか……って、もういいや。あいつの呼び出しだ。
どうせ、なにかとんでもないことが起きたんだろう。聞いてしまったら、もうぬくぬくと眠っていられるわけが
ない。パブロフの犬みたく忠実な俺だしな。あ、違うか。忠実なのはハチ公だった。
 俺は手短に長門宅に向けての身支度を整えた。
 空は澄み渡っていて、風が穏やかに吹いていた。
 自転車を漕ぐこと、数十分。長門のマンションに着き、インターホンを鳴らしてドアを開けてもらう。エレベー
ターを降り、708号室をノックする。
「お待ちしてました。さあ、どうぞ。中へ」
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:06:28.20 ID:WfftITu90
支援
12未来人に羽が生えて2/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:07:37.22 ID:yoBLlJzg0
 ガチャっと扉が開いた。俺はお前なんか待ってないし、待って欲しくもなかった。大切な日曜日に最初に見た
顔が古泉だなんてな。今日は厄日に違いない。というか、なんでお前がいるんだよ。
 疑問を抱きながらも、案内されるがままに長門の部屋へと上がった。
「よお、長門。こんな朝っぱら――、」
 俺の言葉はそこで途切れた。人間というものは驚きが大きすぎると声が詰まるものらしい。傍から見れば、俺
は口をポカンと開けたアホの子だろう。そうか、なるほど。通りで古泉が長門の部屋にいるわけだ。これは一大
事だ。こんなことになるなんて誰が予想できたのか。そうですよね? 朝比奈さん。


 朝比奈さんに羽が生えていた。


 いや、生えたと言っていいものかどうかはよくわからないが、「生えた」という表現がこの状況にはもっとも
言いえて妙なのでそうさせてもらっているだけだ。そもそも、見たまんまなんだけど。白い背中に羽が直に生え
ているのだ。
 俺の願い、それとも醜いただの妄想がどこぞの神様に通じたのかは知る由も無いことで、敢えてそれを追求し
ようとはしない。何故、朝比奈さんの背中に生えたのか。ハルヒのトンチキな妄想か。宇宙人からの贈り物か。
未来人からの秘密道具か。超能力者のコスプレセットか。はたまた、俺自身にハルヒじみた力が宿っているのか。
なんせ、朝比奈さんを天使と連日連夜崇めていたのは何を隠そう、この俺だからな。まあ、隠すべきなんだろう
けど。俺が原因をいくら頭を捻っても詮無いことで、その役割は隣であれやこれやと哲学や宗教じみた憶測を飛
ばしまくる超能力者と無言でじっと石像のように固まっている宇宙人が喜んで引き受けてくれるだろうさ。こう
いうのは解決策を自分で導き出せる奴らがするもので、俺に至っては端から諦観の意を表明しているので、現在
進行形で、加え今後暫くおろおろとするであろう朝比奈さんを慰めることだけに集中しようと思っている。
 だがしかし、あまり言うべきことではないだろうけど、俺の口から矢継ぎ早に嘆息が駄々漏れしているのは隠
しようもない事実である。正直、羽が生えた人の慰め方なんて知らないからな。根拠もなく「大丈夫ですよ」を
繰り返すだけの姑息な言葉ではどうにもならんさ。朝比奈さんには悪いとは思っているのだが。だから、やっぱ
りいつもの通り長門を頼りにしてしまうのは必然なんだと思う。それがどんなに情けないということも痛感して
いる。
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:08:01.50 ID:gJSStUsL0
しえn
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:08:33.95 ID:WfftITu90
支援
15未来人に羽が生えて3/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:09:14.29 ID:yoBLlJzg0
 当の朝比奈さんは、上半身に一切の物を纏わず、がっくりと項垂れている。その姿はさながら、コンピ研のパ
ソコン強奪が完了した後の体育座り朝比奈さんだった。彼女の頭上には現実には視認することはできないが、心
の目で注視すればきっとどんよりとした暗雲がかかっているのだろう。そして今にも無数の水の矢がとめどなく
降り注ぎそうな雰囲気だ。また、その重苦しい空気は我が物顔で、その存在が当然であるかのように長門の部屋
を隅々まで侵食していた。
 自分自身の乏しい機知を悔やむ。残念なことに、俺は気の利いたジョークの一つも浮かばなかった。この雰囲
気を打破することはできないのだ。ただその場に突っ立ているだけ。足とフローリングの床がぴったりとくっつ
いているような気もする。木偶の坊というに相応しい。
 しかし。よくまあ、この人はこれだけ不幸な目に会うもんだ、とも思う。こんなにも健気なのに。世の中不公
平だと天に向かって叫びたいのを抑える。なんの解決にもならないからな。もちろんこの事態を人事だとは思っ
ていない。どうにかしないといけないのだ。なんとかしないといけないのだ。
 腕を組んで胸を隠すだけの朝比奈さん。だが、当然と言うべきなのであろうか、朝比奈さんの華奢な両腕では
ふくよかな脂肪を完全には隠すことはできなかった。この角度から現在の表情を確認するのは難しい。泣いてい
る、に近いと思う。普段ならば、いくら金を積んでも見ることができない神秘的な光景なのだろうが、俺をそこ
まで下劣な人間ではない。今の状況じゃ上半身裸の朝比奈さんを見たって疚しい感情は塵ほども無いさ。せいぜ
い、俺の手で古泉の視線を遮る程度だ。
 そして、朝比奈さんの白い背中。その背中には真っ白な羽、これは比喩でもなんでもない本当に真っ白な羽が
生えていた。
 肩の下辺りから生えた一対の大きな羽。そして、腰の上辺りから生えた一対の小さな羽。計四枚の純白の羽だ。
当初その姿を見て、不謹慎ながらもお似合いだと思ってしまった。美しかったのだ。それは単純に美しいものへ
の憧憬。男女を越えて、種別を超えてのものだった。存在に対しての華麗で優美で高潔さ。ルーベンスの天使な
んて目じゃないさ。本物天使がはるか上空の天界から顕現したんだ、と勝手に想像してしまう。俺は世界で一番
美しい天使を目の当たりにしたんだ。まあ、今はそんな不埒な考えは払拭したけど。 
 羽は何でできているのだろうか。朝比奈さん承知の元、触らせてもらった。すべすべでふわふわで、一枚一枚
の羽毛が決め細やかで俺の吐息が当たる度にさよさよと揺れた。質量はあるのだろうか。軽すぎて、重さという
ものを少しも感じることができなかった。室内の蛍光灯の光を反射しているのか。皓々と荘厳な輝きを放ってい
る。しかし、俺の目にはその羽自身が輝きを発しているように思えた。
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:10:19.88 ID:WfftITu90
支援
17未来人に羽が生えて4/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:10:49.14 ID:yoBLlJzg0
「お恥ずかしいことに、全く見当がつきません。この羽は一体どのような物質から構成されているのでしょうか。
そもそも地球上に存在するのかも疑問ですね。それ以前に、朝比奈さんに羽が生えた理由が解明していないので
すけど」
 流石の古泉もお手上げ状態だ。眉を下げ、困ったように微笑している。
「古泉。まさか、ないとは思うが、朝比奈さんをお前の<機関>に送還したりはしないだろうな。人体実験や解剖、
変な薬物の投与。それ以前に、朝比奈さんに少しでも苦しめてみろ。ハルヒをけし掛けて、お前の親玉を潰すか
らな」
 俺は古泉に釘を指す意味で言ってみた。もちろん、古泉がそんなことをしないとは信じている。朝比奈さんか
ら、ひぃと小さく悲鳴が聞こえた。無駄に怖がらせてしまったようだ。
「少々心外ですね。僕を狂気に満ちた科学者扱いしないで欲しいですね。心配には及びませんよ。この事は誰に
も報告していませんし、そのような愚劣な真似をする気も毛頭ありません。知るのはこの場にいる四人だけです」
「そうだよな。すまん、変なこと言って」
 古泉はくすっ、と鼻で笑い、「でも、あなたそう考える気持ちも理解できます。なんせ、大切な仲間の一人で
すからね。必要以上に警戒するのは当然のことではないでしょうか」
 俺は古泉の言葉に目だけで答える。そうさ。大切な仲間を大切に思って何が悪い。
「長門は何かわかったか?」
 俺は未だ朝比奈さんの羽を念入りに触っている少女へと声をやる。
 長門はこちらへ首だけを向け、「なにも。全てが不明」と呟いただけで、再び朝比奈さんの羽へと視線を落と
した。
 正直、予想外だった。落胆、と言えるのかどうかはわからない。多分違うとは思うのだが、俺の中で何かが崩
れた。それは紛れも無いことだ。似てるんだけど、明らかに違う。この喪失感は一体なんだろう。長門なら、一
目見ただけで原因も解決策も得ることができる思っていた。いや、信じていた。そして、そう思っていた自分に
少し鼻白んだ。一から十まで長門任せにしていた自分に。とどのつまり、俺は長門最終防衛ラインが崩れれば為
す術がないのだ、と。再び、俺は無力さを痛感した。
「不明。何故朝比奈みくるに羽が生えた。情報統合思念体の仕業ではないのは確か。わかることはそれだけ。わ
たしたち以外の高度知性宇宙生命体。古泉一樹属する<機関>。朝比奈みくるが存在する時空平面含む未来勢力。
そして、涼宮ハルヒの力。どの可能性も考慮することができる。逆に、どれの仕業でもないと言える」
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:11:22.08 ID:gJSStUsL0
しえn
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:11:35.11 ID:YtfXj/OT0
しえん
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:11:50.96 ID:WfftITu90
支援
21未来人に羽が生えて5/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:12:25.35 ID:yoBLlJzg0
 長門は首も視線もそのままで言ってきた。見なくとも俺たちの位置を把握できるのだろう。 
「ごめんなさい。わたしには何も施すことができない」
 万策尽きたのか、長門は朝比奈さんの羽を調べることを止めた。そのまま朝比奈さんのそばに正座し、羽をじ
っと見つめる作業に入った。長門の顔には見てとれるほどに落ち込みの色が浮かんでいた。くやしいのだろうか。
何もできなかった自分自身が。
 気にすんな、長門。何もできなかったからって誰もお前を責めたりはしないさ。みんな、長門有希のことを信
じてるんだからな。
 気のせいかもしれないが、長門は一瞬俺のほうに目線をよこし、僅かに頷いた。
「そうだな。原因は不明か。まっ、それは置いとこう。それは全てが終わってからじっくり考えたらいい。長門、
お前の力で、朝比奈さんの羽を無理矢理にでも除去することはできないのか」
 俺は淀んだ雰囲気を払拭すべく口火を切った。朝比奈さんの羽を除去する方向で話を進めているが、いいのだ
ろうか。いや、いいはずだ、きっと、たぶん。現に朝比奈さんはそれが原因で落ち込んでいるんだし。
 でも、それが朝比奈さん以外なら話の方向は大きく変わって来るはずだ。分かりやすい例を挙げると、希代の
暴走屋、涼宮ハルヒ。あいつならきっと、自分自身に羽が生えたら狂喜乱舞するに違いない。あいつが「あたし
も羽が欲しいわ」と言った台詞を漏らしたかなんての記憶は曖昧だが、ハルヒなら言ってそうな気がする。そし
て、自分の羽を目いっぱい羽ばたかせ、世界一周旅行にでも飛び立ちそうだ。
 別に例えの人物がハルヒでないといけないということはない。羽を欲し、その翼で大空を縦横無尽に飛び回り
たいと願うやつらそこら中にいるだろう。純真無垢な小学生から、似非ニヒリズムな中学生、今年こそはと意気
込んでいたが結局落ちた浪人生。そして、身を粉にしても安いサラリーしか貰えない大人の方々。そんな人々の
願いが具現化されたのかは知らないが、そんな歌詞の童謡もある。というか、そういう願望があったからこそラ
イト兄弟は歴史に名を残したのだろう。 
 誰でも一度は無限に続く蒼穹を飛んでみたいのさ。
 なんか話が逸れてしまったな。ここで大事なのは朝比奈さんであって、他の有象無象は、はっきり言ってどう
でもいいんだ。飛びたきゃ、勝手に飛んでればいい。家族の人を悲しませない程度にな。
「できない」
 原因は不明、と先程と同じような言葉を付けたし、長門はきっぱりと答えた。そんな簡単にいくものではない
らしい。
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:12:31.01 ID:YtfXj/OT0
支援
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:12:39.57 ID:WfftITu90
支援
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:12:39.71 ID:kwM+8CXhO
支援
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:13:16.66 ID:kwM+8CXhO
しえん
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:13:24.53 ID:YtfXj/OT0
支援
27未来人に羽が生えて6/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:13:57.11 ID:yoBLlJzg0
「じゃあさ、消せはしなくとも、隠すことはできないのか? ほら、透明にしたりとかさ」
「できない。そもそもこの羽自身には如何なる情報操作も通用しない」
 意外と厄介なものだ。長門の力ですら無力だ。一体なんなんだよ、この羽は。
 力尽くで引っ張るとどうなんだろうか。そう言い出しかけて、止めた。朝比奈さんがそんな想像しただけで痛
いようなことを望むわけが無い。俺だって、そんな惨いことを勧めたくない。麻酔とか外科手術のに必要なもの
があれば、痛みも感じないのだろうが。しかし、数分前に、この場にいる人物だけで解決って決めたんだ。今更、
他の奴らを巻き込むようなことはしない。それに、朝比奈さんの綺麗な背中に痕でも残ってしまったらどうすん
だ。世界規模での喪失だ。
「羽自身が消せないのなら、その周りの空間を消すのはどうでしょうか」古泉がわざとらしく掌をぽんと叩いて
提案する。「朝比奈さんの背後の空間を操作するんですよ。細かく言えば、光の屈折を利用するのです。上手く
いけば羽は見えなくなるはずです。それなら長門さんの力でも十分可能でしょう」
 不可視遮音フィールド、なんてものを過去に長門が展開していたことがある。それに似たようなものか。確か
にそれなら長門ならできそうだ。羽自身ではなく、羽の周りの空間を操作するんだからな。
「光は波動と粒子の二重性を持つ。屈折、とは波動によって生じる現象のこと。エウクレイデスの光の直進の法
則により、光は通常、直進する。しかし、屈折率の異なる物質の境界面で光の速度が変化する。その結果、境界
面への入射角が直角でない場合には、光の進路が変化する。これを屈折と言う。その際、スネルの法則が成立す
る。スネルの法則に基づき、進行波の伝播速度と入射角・屈折角を調節する」
 いきなり、話が飛んだ。長門は淡々とそして正確に、俺にとっては子守唄にしか聞こえない解読不能の理論を
喋った。
「つまり、どういうことなんだ?」
「羽を見えなくすることは、可能、ということですよ。まあ、その場しのぎの策なんですけどね」
 長門に変わり古泉が答えた。
 古泉はさっきの光の屈折がどうたらとかってのは理解できていたようだ。 やっぱり、理系クラスのことだけ
はある。爽やかに話す古泉が妙に鼻につく。先に、この感情は嫉妬じゃないのを言っておく。
「朝比奈さん、大丈夫ですか」
 何度このような声を掛けただろうか。まったく解決には繋がらない、ただの偽善ぶった言葉。でも、この場
ではそう言うほか無い。
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:14:12.36 ID:gJSStUsL0
しえn
29未来人に羽が生えて7/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:15:19.07 ID:yoBLlJzg0
「……だ、大丈夫です。うん、もう、大丈夫だから」
 お。今日初めて朝比奈さんの声を聞いた気がする。いや、嗚咽とかの音なら聞いていたんだけどさ。まとも
に言葉が返ってきたは初めてだ。その声はしわがれていた。きっと俺が到着する前にはすごく泣いたんだろう。
普段の甘い舌足らずな声がとても懐かしく感じた。
「キョンくん、長門さん、古泉くん。へいき。へいきだよ、あたし。もう、心配しないで」
 朝比奈さんが顔を上げ、弱々しく笑う。涙を流しすぎたのか、眦は濃い桃色だった。瞳もまだ潤んでいる。
それらが余計に朝比奈さんの扇情さを引き立てるのだった。
「無理はよくない」
 長門が朝比奈さんを気遣うように言う。
「無理はしてませんよ、と言えば嘘になります。やっぱり、ショックは大きいです。でも、めそめそと泣いて
いてもどうにもなりませんから。あたしはあきらめます。あっ。あきらめちゃだめですね。そんなことしたら、
頑張ってくれたみんなに失礼です」
 朝比奈さんは軽く握った拳で、ごしごしと涙を拭う。動作が一々かわいい、というのは俺の心の奥深くにし
まっておく。それにしても強い人だ。理不尽な事件をちゃんと受け入れている。
「キョンくんと古泉くんは後ろ向いていてください」
 はい、と見事なまで返事が一致し、男二人は踵を返した。
「朝起きたらびっくりしたなぁ。背中に羽が生えてるんだもん。その瞬間に、もう何がなんだか分かんなくな
って、取り合えず、誰かに連絡って思ったんです」
「その誰かが長門、ってことですか」
 俺は後ろに向かって声を発する。
「ううん。長門さんに繋がったのは偶然なの。あの時は、誰でもいいやって自暴自棄になっていて。でも、今
になって思えば、繋がった相手が長門さんで良かった。そのおかげで、あたしは落ち着くことができたんです
から。もし、普通の人だったら――」
 朝比奈さんはそこで口を止める。その先は、聞かなくともわかる。朝比奈さんが畏怖の存在として見なされ
てしまうということが。それはとても辛辣なことだ。
「長門さん、お願いします。あたしの羽を見えなくしてくれませんか。羽がついているとお洋服が着れないん
です。恥ずかしいし。でも、見えなくなれば、なんとかなると思うんです」
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:15:53.15 ID:YtfXj/OT0
支援
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:16:08.07 ID:kwM+8CXhO
支援
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:16:14.79 ID:YtfXj/OT0
支援
33未来人に羽が生えて8/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:16:52.21 ID:yoBLlJzg0
 あたしの羽、というあたり、本当に諦観したようだ。朝比奈さんは普段頼りなさそうに見えても――実際、
頼りないんだけど――彼女の奥底に根を生やす芯は磐石なのだ。まあそれよか、見えなくなったからと言って、
何とかなるもんでもないと思う。精神的には幾分かラクにはなるだろうが。
「<機関>の方に連絡して、女性用の服を用意してもらいましょう。その服に、小さい穴を開け、そこに羽を通
しましょう。そちらの方が、羽に対し、圧迫感を持たなくて済むはずです。流石に手持ちの服を傷つけるのは
忍びないと思いますから」
 古泉がいかにもジェントルマンなことを言う。まったく、よくまあ目端が利く奴だ。
「ありがとう、古泉くん。そうしてもらえると嬉しいかな。服に穴を開けるって、抵抗ありますもんね。手持
ちの服はみんな、お気に入りだから」
 古泉が承知しました、と恭しく言う。本当にきざな奴だ。その後の古泉の段取りは迅速だった。ケータイを
取り出し、どこかに電話を掛ける。二言三言、社交辞令を述べると例の用件を述べる。
「一時間ほどで用意してくれるようです。口実は適当にでっちあげて置きました。心配に及びません。何も変
なことは言ってませんよ」
 その割には、いつもよりにやけている。古泉は生々しい含蓄のある視線を送ってくる。……信用していいん
だろうか、こいつのこと。
「もう一回言わせてください。古泉くん、ありがとう。色々してくれて。もちろん、キョンくんと長門さんも。
とても助かりました。あなたたちがいなかったら、きっと、あたし……」
 朝比奈さんは艶然と笑った、のだと思う。生憎、現在は朝比奈さんの姿を視認することはできないからな。
彼女自身には本当に申し訳ないが、背中の羽と相俟って、朝比奈さんが本当の天使ように思えた。いや、天使
よりも温かいもの、だ。 
「安心するのはまだ早いですよ。まだ根本的なものがどうにもなっていないんですから」
 もしかして俺の発言は空気読めてないのかもしれない。この台詞は雰囲気を台無しにする可能性が……。
「そうですよね。安心するのはもっと先です。うん、頑張りましょう」
 よかった。取り越し苦労で済んだ。背後からぺち、と音が聞こえる。朝比奈さんが自分の頬を叩き、気合を
入れなおしたのだろう。見てないのだから自信は無いけど。
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:16:59.52 ID:gJSStUsL0
しえn
35未来人に羽が生えて9/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:18:26.50 ID:yoBLlJzg0
       ○


 穏やかな午後だった。朝比奈さんの羽を除けば。
「その羽、痛くないんですか」と俺は幾分か元の調子を取り戻しつつある朝比奈さんに訊いた。
「そうですね。考えてみれば、まったく痛くありません。不思議なことに、ずっと昔から、あたしの背中には
羽が生えていたような感覚がするんです」
 なんだそりゃ。
「動くんですか、それ」
 朝比奈さんは僅かに小首を傾いだ。きっと、自分でもそんなことは思い付きもしなかったんだろう。
 ふわぁっと羽が揺らいだ。数枚の羽毛が宙を舞う。それらはまるで光の粒のようだった。
 朝比奈さんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしながら、「動きました」と律儀にも報告してくれた。見て
いたからわかるんですけどね。
「もしかして、飛べちゃったりします?」
「……飛べるんでしょうか。試してみないことには」
 ならば是非とも試してみてください。人類が始めて己の力のみで空を飛ぶという歴史にでかでかと刻まれる
大快挙ですよ。とは言えないんだな、これが。朝比奈さんには危険すぎる。仮に飛べたとして、おたおたしな
がら墜落していく朝比奈さんの映像を想像することは難くない。
「これからどうするんですか」
「これからどうなるんでしょうね」
 俺たちは傍から見れば侃々諤々喧々囂々議論を飛ばしているように見えるかもしれない。が、その実ほんわ
かとした、身体に控えめながらもしっかりと纏わり付く、よくわからない空気に包まれ、今後の対策含めたそ
の他諸々について長門が淹れたお茶を啜りながら談話していた。その空気にはとても不吉なものが孕んでいる
ような気がしないでもない。この現状に、悪い意味で慣れてきたようだった。
 そうなるのは仕方の無いことだと思う。だって、そもそもの根源の朝比奈さんが既にうふふ、と相槌を打ち
ながら俺たちと和気藹々と話しているのだ。そんな様子を見てしまえば、自ずと弛みが出てきてしまう。なん
とかしなければならないのは分かっているのだが、既に万策は尽きているので、焦ってもしょうがないやと根
拠も無く安心に似た感情を抱いてしまうのだ。これはこれで危機感が欠落しすぎだとは重々承知している。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:19:42.40 ID:kwM+8CXhO
しえん
37未来人に羽が生えて10/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:20:00.82 ID:yoBLlJzg0
 ただ。策が残っていない、というと嘘になる。一つだけ、賭けてみる価値が十分にあるものが残っている。
 涼宮ハルヒの変態的スーパー能力。
 長門でも無理。ならそれ以上の力ではどうか。可能性はあった。それが高いか低いかはまったく予想がつか
ないのだが。確実に除去できる、とは言い切れない。長門曰く、朝比奈さんの羽は全てが不明。今までの経験
則から考察すれば、ハルヒの力と考えるのがもっとも妥当で納得しやすいものだった。しかし今回はそう簡単
に決め付けていいものではない。
 宇宙人。未来人。超能力者。ハルヒの力。どの力が原因で朝比奈さんの背中に羽が生えたのかが分からない
のだ。もちろん、これ以外も十分に考えられる。異世界人、とかな。もしかしたら、想像もできないような超
常現象からきているのかもしれない。
 だから、下手にハルヒを誘導してしまうのも危険だった。どこかでミスをしてしまえば、さらに厄介な状況
になってしまうことが予想できるからだ。現時点で、ハルヒは抜きと結論を出した。もう少し時間を置いて様
子を見るのだ。本音を吐露すれば、そんな悠長なことでいいとは思わない。でも、今はこれしかできないんだ。
全てが不明なんだから。まあ一応、将来的にはハルヒの力を策に使うということも考えている。あくまでも、
それは最終手段。極力、いや絶対使わないようにはしたい。
「いやしかし、こう言ってはなんですが、朝比奈さんの背中に羽が生えたのが日曜日でよかったですね。平日
なら色々と困ることも出てきますでしょうし。不幸中の幸いですよ」
「あぁ、確かにそうですね。もし、今日が月曜日だったらさらに大変なりそうですからね」
 古泉と朝比奈さんが話していると、まるでドラマのように映える。二人とも、外見はトップクラスだしな。
それと、羽が生えたのが日曜だろうがそれ以外の日だろうがあまり関係ないと思う。一週間、生えっぱなしな
ら同じことだしな。いつ生えようが大変なことには変わりない。まあ、そんな無粋なことを敢えて言おうとは
思わないが。
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:20:13.78 ID:gJSStUsL0
しえn
39未来人に羽が生えて11/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:21:26.79 ID:yoBLlJzg0
 朝比奈さんは<機関>とどけられた洋服を着ている。俺が言うのもなんだが、そんな大した物でもなくごくご
く一般的なTシャツだった。背中には羽が通る最低限の大きさの穴が四つ開いている。何も知らない人が見た
ら、「あの人はきっと貧乏だから他の服を持ってないのよ」とか「虫食いに気付いていない間抜けな人」ぐら
いに思うだろう。そんな下衆な想像する奴がいたらあの手この手を使って懲らしめてやるつもりさ。
 しかし、普通のTシャツだからこそ朝比奈さんが持つ淫靡な曲線があらわになっている。少々サイズが大き
かったようで手の甲の辺りまで袖が掛かっているのだが、体のある一部分の大きな盛り上がりによって衣服が
引っ張られ、裾が捲くりあがり丸い臍が見えるか見えないという、なんとも悩ましい思春期の青年の心を擽る
姿になっているのだ。
 これはこれで僥倖だ。こんなことを考えられるくらいには余裕がでてきたのだろうか。
 まあ、貧乏で間抜けな人と思われたくなかったら、最初から背中が大きく開いた、というか背中が丸見えの
パーティドレスでも着ていればいい。そうすれば、ちょっと変な人で済むはずだから。もちろん、そんな想像
する奴も同様に懲らしめてやるつもりだ。
 朝比奈さんを愚弄する奴は全世界を敵に回したと同義だ。そんなバカ者どもは宇宙の藻屑となればいい。サー
ビスで宇宙人本人が執行してくれるさ。おまけに赤い玉もつけてやる。
 このまま何も解決することなく日曜日が終わるのだと思っていた。だがしかし、そうはならなかった。だっ
て、俺たちなんだ。不思議な事件に巻き込まれるのが日常茶飯事。朝比奈さんに羽が生えただけで「奴ら」が
満足するはずがなかった。「奴ら」ってのは俺もわからない。概念的感覚的なもんだ。
 さらにややこしいことが起こった。長門に言わせりゃ、「全てが不明」だ。


       ○
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:22:11.79 ID:YtfXj/OT0
支援
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:22:33.72 ID:kwM+8CXhO
支援!
42未来人に羽が生えて12/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:22:55.49 ID:yoBLlJzg0
「えっ」
 突然、朝比奈さんのどことなく抜けた、可愛らしい声が部屋に響いた。それはさして大きくない声量だった
が、会話を中断させるには十分過ぎるほど、俺たちの耳に届いた。
「どうかしたんですか?」
 羽が消えました、とか言ってほしいところである。そうすれば万事解決だ。だが、そんな都合よく事が流れ
る訳がない。経験則から鑑みてわかることだしな。
「え、め命令、コード……。しかも最優先の」
 未来人の使っている特殊な強制効果のあるやつ。この指令は何があっても遂行されねばならない。無視する
ことはできない。俺のあやふやな記憶を搾り出してわかるのはこんくらいだ。
 このタイミングでくるとはな。正直、誰かが書いた出来損ないの脚本の筋書き通りに進んでいるのではない
かと訝しんでしまう。これほど絶妙で不自然なことがあるだろうか。まるで頃合いを見計らっていた、いや、
全てを把握した上での行動だ。ふと思ってしまう。俺たちは「だれか」に操られているゲームの駒なんかじゃ
ないかって。
 勿論それは穿ち過ぎというものだ。そんなどこぞの馬の骨も知らないも分からない「だれか」がいるわけは
ない。胸は決して張れないが、俺は今まで俺自信の意志で行動してきたつもりだと自負している。それは高校
入学以前に限ることなんだけど。このあたりに胸を張ることができない負い目がある。俺は受動的ではあるか
もしれないが、強制的には動かされたことはない。全てはの俺の意志であり意思でもある。
 要は、もう奇天烈な存在は御免だってこと。既に涼宮ハルヒとその愉快な仲間たちで十二分に潤っているさ。
これ以上何を望めばいいんだよ。
 ――ま、とやかく言ったが、朝比奈さんに命令コードが送られてきたのはきっとただの偶然だ。運悪く時機
が重なっただけに過ぎない。羽と関係しているなんて話が上手く出来すぎだ。結局、俺の出した結論はこんな
のだった。我ながら、いい加減だ。
「いったいどこの誰から送られてきたんですか?」
 この時は大方、朝比奈さん(大)だろうと根拠も無く漠然とそう思っていた。
「それがわからないんです。送り主に関する情報が無い、というかあるにはあるんですけど、あたしには解析
できません。禁則にも該当しないコードです。多分、まだ開発されてない技術。もやもやしてふよふよしてる
っていうか。普通は分かるようになっているはずなんですけど」
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:23:05.64 ID:gJSStUsL0
しえn
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:23:23.32 ID:kwM+8CXhO
しえん
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:23:26.43 ID:YtfXj/OT0
支援
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:24:02.20 ID:kwM+8CXhO
支援
47未来人に羽が生えて13/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:24:25.80 ID:yoBLlJzg0
 もやもやふよふよと話す朝比奈さんは見て取れるほどにおろおろしていた。俺はそんな彼女を目の隅に置き
ながら、ずっと静観している長門と古泉を横目で見る。
 古泉は「お手上げです」と言わんばかりに肩をすくめる。流石のエスパーも管轄外の事態のようだ。そして、
長門はというと……何も無い。ただ事の成り行きをじっと見つめているだけだ。
 んで、俺は俺でいつ握ってしまったのか分からないイニシアチブの下、話を進めるのである。まあ、何も見
えない暗闇に放り出されて、さあ案内しなさいと言われたような理不尽さがごく僅かにあるのだが、これはこ
れで仕方ないと思う。
「送り主云々は置いときましょう。で、いったいどのような指令が送られてきたんですか? まさか、また時
間を遡れとか」
 もし、俺の言ったことが当たっているならば、今度は古泉をお供にして時間旅行をして欲しいものだ。時間
旅行は大変貴重で、世の人が喉から両手が出るほど体験してみたいことだと思うのだが、体験者から言わせて
貰うと、気持ち悪いことこの上ない。あまつさえ、ナビが朝比奈さんでもあることだしな。なので、前々から
体験したいとしつこく言っていた古泉を推薦したいのさ。古泉自身にとっても御誂えの機会だろうし。
 そして、古泉は超能力者らしくテレパシー能力でも備えてるのか、俺に向かって意味有り気な視線を送り、
顎を引いた。何をどう思っているのか知らんが、多分俺とお前はこの場において相互理解ができてないと思う
ぞ。というか、時間移動とは違った意味で気持ち悪い。
「あ、はい。えと、今すぐ公園に向かえって」
 きっと光陽園駅前公園のことです、と朝比奈さんはたどたどしく言う。
「今すぐに、ですか?」
「はい。今すぐです」
 言い方こそ強さは感じられないが、何かえもいわれぬ自信があるように思える。
「そこで何をしろとか、そういうのは分からないんですか」
「すみません。そこまではちょっと……。ただ、向かえ、としか」
 急転直下だな、と思った。もちろん根拠なんてものは無く、ただの直感に過ぎないのだが。おそらく、公園
に行けば何かが大きく変わるのだろう。その変化がどういうものかは想像もつかない。そもそも解決に繋がっ
ているのか。さらに事態を悪くするのかもしれない。まったく。分からないことだらけで情けなくなってくる。
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:24:51.08 ID:WfftITu90
支援
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:25:17.51 ID:YtfXj/OT0
支援
50未来人に羽が生えて14/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:25:58.25 ID:yoBLlJzg0
 ま、しかし。いつまでもこの事態を先延ばしにすることはできないんだ。遅かれ早かれ行動を起こす必要が
あった。どうせ先が見えないのなら、正体不明さんの思惑に踊らされても構わない。たとえ、それが罠だとし
てもな。朝比奈さんに送られてきた指令が彼女の羽に対する唯一の手掛かりなら、行くしかないと思う。
 なに、きっと大丈夫だ。罠だったとしても、俺たちは無事でいられるさ。なんせこっちには、宇宙人、未来
人、超能力者の全てのカードが揃っているんだからな。これほど心強いことはまい。それに、今までもずっと
そうだった。なんとかなってきたじゃないか。俺は説明のしようが無い安心感に覆われていた。それはとても
温かくて、堅固なものだった。 
「じゃあ、早速行きましょう。別に朝比奈さん一人で向かえ、とかではないんですよね。全員で行けば心配は
いりませんよ。俺は何の力にもなりませんが、長門と古泉もいる。恐いもの無しですよ。それに最悪、ハルヒ
を呼べばなるようになりますよ」
 いい加減な台詞だった。都合良く事が運ぶ可能性は低い。それに、やはりハルヒを関わらせるのは将来的に
も具合が悪い。そんなこと理解しているんだが、何故だか俺の口からはそんな言葉が発せられた。憶測の域を
出ないが、ハルヒも俺たちと一緒になってこの事態の解決に協力して欲しいという願望が俺の中にあったのか
もしれない。……ないか。
「朝比奈みくる。心配しないで。わたしが守る」
「鬼が出るか蛇が出るか。まあ、僕たちは既に鬼や蛇よりも恐ろしいものを乗り越えていますからね。何が来
ようと今更ですよ」
 長門は無表情だが力強く、古泉は気障ったらしいが妙に説得力のある、両者ともどことなくずれていて、熱
血漫画的な台詞を吐く。これから世界を不幸に陥れた魔王を倒しに行く直前のようなシーンだ。何が起こるか
分からないとは言ったが、必ずしも何者かが襲ってくるということはないと思う。俺はそれを指摘しようか迷
ったが、結局止めた。そういう展開も無きにしも非ずだろう。
「みんな、ありがとうございます。あたし……」
 朝比奈さんの声は尻すぼみになっていって、最後のほうは聞き取ることができなかった。ごにょごにょぼそ
ぼそだった。僅かに俯き、彼女の丸いおでこに栗色の髪が掛かり、表情は隠されてしまった。いったい彼女は
どのような顔をしていて、どのような思いなのだろうか。それを知る術は彼女自身に訊くことのみだ。
 でも。でも、そんなことをする必要が無いことは最初から理解していた。俺だって。俺たちだって、それほ
どまでに機微が分からない人間ではない。なんだかんだ言っても、結構深いのだ。
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:26:06.21 ID:gJSStUsL0
しえn
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:26:07.70 ID:kwM+8CXhO
支援ー
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:26:21.08 ID:YtfXj/OT0
支援
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:26:38.50 ID:kwM+8CXhO
しえん
55未来人に羽が生えて15/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:27:32.44 ID:yoBLlJzg0
 俺は不謹慎だと承知しながらも、口角を上げていた。目を眇め、この光景、いや、この光景から繋がる未来
を見ていた。それは俺にとって居心地の良いものだ。
 そんなことを考えていたから不覚を取ってしまったのだろう。俺が俺自身を傍から見れば、間違いなく「き
もい」と言っていた、と思う。実際見てないからどうとは言えないんだが。まさかだ。まさか、あの古泉に、
「何か変なものでも食べたんですか。えげつない表情ですよ」と言われてしまうとはな。この時ほど、穴に入
りたくなったことはない。《今日は待ちに待った遠足の日。ただし俺だけランドセル》みたいな。
 あの場に鏡が無かったことに俺は心の底から長門の生活観の無い部屋に感謝した。可笑しなことだけど。そ
れと、変なものは食べてない。口に入れたのは長門謹製のお茶だけだ。古泉め、少し気が回らなかったな。
 薄氷を踏んでいるのだろうなとわきまえておきながら、公園に行くと羽が消えるんだな、とどこまでも楽観
的なことを考るという自己撞着に陥りながらも謎の命令コードに指定された光陽園駅前公園に向かった。 


       ○


 夕暮れ、というにはまだ早い時間帯だ。鮮やかな青色が極限まで薄く滑らかに伸ばされような空を見上げた。
時折、緩やかな風が吹き、街路樹を控えめに揺らす。俺の前髪もそよそよと揺らぐ。何かわからないが、しっ
とりとしたどことなくノスタルジックな匂いが流れてきて鼻腔を擽る。明日は雨なのだろうか。こんなに良い
天気なのに。
 もうすぐすれば、太陽が傾き上天一面が燈色に染まり始めるのだろう。綺麗な夕焼けを見ることができそう
だ。そしてそれを合図にして、現在公園で遊ぶやんちゃなガキども、もとい無邪気で純粋な少年少女は腹を空
かせながら真っ直ぐと家に向かうのだろう。今日の晩御飯は何か。カレーかな、ハンバーグかな。うちは貧乏
だから今日ももやしだな、と。
 そして、そんなあどけない子供たちをいい年した高校生の集団が眺めているのだ。きっと、近所の奥様方は
こう思うに違いない。やあねぇ、最近の若い人は。勉強もしないでぶらぶらしているなんて。もっと社会の役
に立って欲しいわ。そうだわ。そうだわ。あ、だめよ。そんなにじろじろ見たら。切れて襲ってくるわ。
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:27:40.11 ID:kwM+8CXhO
支援
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:28:18.90 ID:YtfXj/OT0
支援
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:28:55.80 ID:kwM+8CXhO
しえん
59未来人に羽が生えて16/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:29:03.43 ID:yoBLlJzg0
 ほっといて欲しい。俺たちで好きでこんな公園の隅っこで怪しい集団よろしくのように屯しているわけはな
いんだから。ちゃんとした理由があるんだよ。朝比奈さん(と俺)の人生が懸かっているんだ。少しくらい目
を瞑ってくれても構わないじゃないか。だから、携帯電話片手にこっちを見るなって。
「あ、あの人たち、こっちを見てますよ。もしかして、羽、見えてるんじゃないでしょうか」と朝比奈さんが
怯えたように言う。
 その心配には及びませんよ、朝比奈さん。長門のおかげで『羽』はばっちり隠せています。でも、これは都
合上仕方のないことだとは重々理解しているんですが、あなたの白く美しい背中はしっかりと見えています。
なんというか、迸る情動です。
 俺はそんな下卑た考えを悟られないようにし、「違いますよ。きっとあの人たちは古泉を見ているんです。
古泉のことをテレビに映っているアイドルと勘違いしているんでしょう」と言った。
 古泉を見ていることには間違いはないだろう。その目線は、あからさまに俺たちを疑い、蔑んでいるものだ
が。まったく、誤解も甚だしい。
「身に余る光栄です」古泉は目を眇める。「しかし、ふざけている場合ではありません。僕たちは今まさに得
体の知れない存在と対面しようというのですから。罠かもしれない、と自覚しておきながらです。もう少し気
を引き締めておいたほうがよろしいのでは?」
「わかってるよ。俺だって十分に警戒してるさ。無力なりにな」
 なにが出てくるのか。なにが起こるのか。俺は不安と緊張に包まれながらも、不思議と恐怖は感じていなか
った。平和ボケでもしているのだろうか。しかし考えてみれば、俺はここしばらく平和とは言えない人生を歩
んできている。じゃあ、平和ボケとは違うか。じゃあ、あれだ。慢性化した非日常のせいでどっかの神経がい
かれているんだ。
 俺はそんなことを考えながら長門を見た。もしかしたら、この行動がヒントかもしれないな。
 長門は口を一文字に結び、前を見据えていた。長門、お前にはいったい何が見えてるんだ?

 いつだって、事態が動くのは突然だ。それが計算されているのかいないかなんてのは、わからない。わかっ
たところで、そんな瑣末なことはどうでもいいことで、すぐさま忘却の彼方へ旅立つ。
 どれくらい公園に居ただろうか。すぐこい、と指令を送っておきながらずいぶん待たされた気がする。こう
なるのがわかっていたなら、もう少しゆっくりできたぞ、おい。近所の方々に奇異の目で見られることもなか
ったしな。
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:29:14.66 ID:gJSStUsL0
しえn
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:29:21.82 ID:kwM+8CXhO
●<支援
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:29:39.84 ID:YtfXj/OT0
しえn
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:30:01.18 ID:kwM+8CXhO
○<支援
64未来人に羽が生えて17/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:30:35.63 ID:yoBLlJzg0
 公園には、先程まで元気に走り回っていた子供やその保護者と見受けられる方もいない。既に帰路に着いて
いる。この場に在するのは、団長不在のSOS団。そして俺たちと幾分か距離を取って対峙している、憎々
しい三人組。
 その俺たちと同年代の三人組は気付いたら存在していた、のだと思う。斜陽が公園に差し始め、辺りがすっ
と暗くなる。そんな時だった。何メートルか手前の空間が歪むような錯覚を捉える。そこから黒い影がぬっと
滑り出てくる。どんなに強い人間でも寂寥感を禁じ得ないその一瞬の、まるで不意打ちを食らったのかと思え
るタイミングで奴らは現れたのだ。
 俺はここぞとばかり、敵意と不信感を含んでそいつらを睨めた。
 鮮やかな夕映えだ。数時間前の俺の予想が当たっていたことに、むず痒い満足感がある。しかし、そんな幼
稚な感慨に耽っている余裕はなかった。
「まさかとは思うけど、あなたたちのせいなのですか? 彼に変な翼を生やしたの」
 挨拶もなく不躾に、三人組の内の一人の少女が問いかけてきた。余計な洒落口上は必要無いと目線で突き刺
し、不機嫌さ、というか億劫さを顕にしている。髪型のせいか、前にあったときより幼く見える。
「逆にこっちが訊く。朝比奈さんの背中に羽を生やしたのはお前らか?」
 瞬時に確信する。こいつらは朝比奈さんの羽が生えた事件について、何か情報を握っている。それが害にも
薬にならないものとしてもだ。俺たちの知らないことをこいつらは知っているはずだ、と。
 そっちがそういう態度ならこちらも相応の態度で返すのが礼儀だ、と傍から見れば稚気この上ない思想を抱
きながら、俺は訊き返した。当て付けられた少女は眉を下げ、一つ嘆息する。まるでお前じゃ話にならない、
と言わんばかりだ。
「質問してるのはこちらです。質問で返すのはよくないですよ。でもこれでわかったわ。彼の翼はあなたたち
のせいではないということが。んふ、ある意味、一番わかりやすい回答なのです」
 少女――橘京子は鼻で笑う。もしこいつの笑みが腕が届く範囲にあれば、間違いなく殴っていた。それぐら
いに嫌味な面をしていた。
 くそ。勝手に一人で納得しやがって。
「説明しろ。お前はなにがわかったんだよ。それに『彼に翼が生えた』とか言っていたな。彼ってお前の隣に
居る、そのいけ好かない未来人ことじゃないのか」
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:30:36.50 ID:YtfXj/OT0
支援
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:31:05.97 ID:kwM+8CXhO
◎<支援
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:31:47.23 ID:kwM+8CXhO
★<支援
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:32:00.30 ID:WfftITu90
支援
69未来人に羽が生えて18/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:32:08.31 ID:yoBLlJzg0
 橘京子の左側に立つ、いつにも増して不機嫌で不貞腐れた表情をしているを見る。口を開けば嫌味しか吐か
ない、未来人――藤原だ。そして、橘を挟んで反対側。思わず見落としてしまいそうだが、その存在感は他に
類を見ないという矛盾を孕んだ少女が存在していた。長門とは異なる親玉の遣い、周防九曜。敵さんまとめて
集合ってことか。
 橘は小さい動作で藤原と九曜を交互に見る。それから、落胆ように肩を竦めると俺たちの方に向き直った。
「この人たち全然ダメなのです。いっつも消極的で、他人任せ。九曜さんが本当のところどう思っているのか
は知らないけど。面倒な役はいつもあたしなのです。でも仕方ないのかもしれないわ。この人たちじゃ話にな
らないもの。適任といえば適任ですし」
 橘の言葉が癪に障ったのだろう。藤原は如何にも刺々しく橘を睨みつけていた。侮蔑といってもいいほどだ。
当の橘は気付いてないようだが。こいつら統率性というか協調性がないのか。俺は、別に声に出さなくてもい
いのにな、と思った。
「そもそも、なんであたしがこんなことしなくちゃいけないのですか? 無関係もいいところなのに。本心は
当事者で解決してください、って感じです。巻き込まないでくださいよ」
 こいつはまだ言うか。意外としつこい性格のようだ。橘はその後も不満を垂れ続けた。真面目に耳を傾けて
いたのは奴はいないだろう。朝比奈さんを除いては。
「――ふう。そうですよ。あなたの仰るとおり、隣の未来人さんの背中には大層ご立派で、見るもの全てが口
をぽかんとするような黒い翼が一対生えているのです。彼自身のようにふてぶてしいわ」
 どこまでも橘京子は橘京子だ。最後にいらん憎まれ口まで付け加えやがって。
 要するに、藤原の背中にも羽が生えた、ということらしい。朝比奈さんの純白で四枚の羽に対し、藤原は漆
黒で二枚の羽。未来人の間では羽を生やすのが流行しているのかよ。やはり時間の流れというものは時代を大
きく変化させるようだ。
 向こうも何か施してあるのだろうか(おそらく九曜が)、藤原の背後にあると思われるその立派な羽を拝見
することが出来ない。非常に残念なことである。止むを得ないので、そこは俺の日々鍛えられた想像力で我慢
することにした。――ひどく滑稽で無様な姿だな。いいきみだ。
 情報がないと今後の案も策も立てることができない。食い違いもあるようだしな。その判断の元、俺たちは
一時休戦し、互いの身に起こったことを説明し合った。剣呑な雰囲気を無視することにより(真実それが一番
難しいんだが)話し合いは恙無く進んだと思う。藤原の舌打ちが一々耳障りだった。
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:32:10.12 ID:YtfXj/OT0
支援
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:32:45.87 ID:WfftITu90
支援
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:32:51.50 ID:kwM+8CXhO
ё<シエン
73未来人に羽が生えて19/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:33:15.70 ID:yoBLlJzg0
 結果。藤原も朝比奈さんと同じってことが判明した。ある二点を除けさえすれば、事の発端から物事の経過、
そして現在に至るまで。羽が生え、謎の指令コード。表面や内側すらも、端から端までまるで定規で測ったの
かのように今回の騒動はぴったりと一致していたのだ。
 ついでだ。一つ目の異なる点とは、事件の関係者(朝比奈さん側は俺・長門・古泉、藤原側は橘・九曜)が
当事者に対して、自分の身のように心配し、思いやりを持ち協力的であったか否か。これはどちらがどうとか
は押して知るべしだ。二つ目は、朝比奈さんは可愛くて、藤原は可愛くないということだ。
 言うまでもないことのだが、橘たちが現れたことは、事件解決の手掛かりにも事件困惑の引き金にも繋がっ
ていなかった。本質は微塵も変化していないのだ。一が二になっただけなんだから。
 俺たちの間には、得も言われない微妙な空気が漂っていた。そりゃそうだろう。相互にこの異変の真相を有
していると一方的に思い込み諸悪の根源だと踏んでいて、しかし的が外れて勝手に落胆し、先見の明なぞ存在
するはずもなく立ち尽くしているのだから。肩透かしもいいところだ。
 敢えてこちら側の言い訳するのなら、橘たちが現れた間が絶妙だったことだ。誰にだって勘違いはあるだろ
う。ドラマでもあんな卑近な展開は使用しないのに。仕方ないことなのだ。そう思うしかないのが、惨めさを
露呈させる。加害者だと思っていた人が実は被害者でした、っていうのは、拍子抜けすると同時に自己嫌悪に
苛まれるようだ。
 風が公園を駆け抜け、木々を揺らす。ひゅー、という寂しげで陳腐な音が木霊する。誰だよ、こんなやすい
演出をしたの。……少し冷えてきたな。
 この八方塞の状況を打破したほうがいいのだろうか。打破するべきなんだろうな。このまま、はいさよなら
って訳にもいかないことだし。それは干渉して身としてとってあまりにもすげなく、酷薄だと思う。――取り
敢えず世間話でもしよう。このまま突っ立て居るのも気まずいし。いくら仲違いしてるって言っても、今回に
限りは同じ被害者だ。別に四六時中険悪な関係でいろってわけじゃないからな。
 俺は自身の寛大さに惚れそうだった。
「佐々木は一緒じゃないのか?」
「どうして佐々木さんが出てくるのですか。彼女は関係ないですよ。いたずらに変なことに巻き込んでもしょ
うがないし。あなたたちの中に涼宮さんがいないのと同じ理由だわ」
 予想はしていたが、答えてくれたのは橘だった。藤原はずっと仏頂面でたまに口を開けば毒づくだけ。九曜
は説明するのも面倒くさい。そもそも九曜はなんでここにいるんだよ。
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:33:21.82 ID:YtfXj/OT0
支那
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:34:01.73 ID:kwM+8CXhO
()<シエン
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:34:04.95 ID:gJSStUsL0
しえn
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:34:07.63 ID:WfftITu90
支援
78未来人に羽が生えて20/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:34:21.58 ID:yoBLlJzg0
 ちなみ、大部分の会話は俺と橘のみで構成されている。朝比奈さんは萎縮しているのかどことなく落ち着き
がないし、古泉は普段とは違った鋭さを纏っている。長門はいつも通りの鋭さで終始無言であった。
 よし、矛先転換だ。
「なあ、藤原」俺は努めて愛想良く話しかけた。「羽が生えた当事者としてどうなんだ? やっぱ、困ってた
りするのか?」
 少々タイムラグが生じた気もするが、藤原は一つ鼻で息をすると、なんとも嫌そうに応答をしてくれた。
「ふん。あんたには関係ない。ほっといてくれ」
 ずるっ、と無理矢理に貼り付けた笑顔の仮面がずり落ちそうになった。なんだこのやろう。
「そんな無関係ということもないだろう。一応、俺だって事情を知っているんだしな。話せることがあったら
聞くぞ。話せば楽になることもあるだろうし」と俺は柔和な笑みを取り繕う。
「現地民に話すことなんか毛の先程もないね。それよりもあんた。馴れ馴れしくないか? 僕はいかにも善人
ぶってその場しのぎのヌルイ関係を求めて自己満足に陶酔する奴が大嫌いなんだ。自重してくれ」
 ああ、俺だってお前みたいな刺々しくて捻くれた狭量な奴は大嫌いだよ。せっかくの優しさを無下にしやが
って。くそう、なんとしても古泉も真っ青のスマイリー藤原を召喚してやる。
「まあそう言うなよ。もしかすると、その場しのぎなんて関係では終わらず、ずっと続くかも知んないぜ」
「やめてくれよ。考えただけでも反吐が出る。ま、あんたと僕は一生仲良くすることはないね。これは既定事
項だ」
「既定事項? そんなことまで決まっているのか。ほう。じゃあ、現在この時点でお前の知る未来は無くなっ
てしまうな」
「……どういう意味だ?」
「どうもこうもないさ。俺とお前が友達になるんだよ。残りの高校生活を共にエンジョイするんだ。煌めく青
春を彩ろうぜ」
 ぐっと親指を前に突き出し、歯がキラリと輝くくらいに爽やかな笑みを作った。
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:34:33.57 ID:kwM+8CXhO
支援
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:34:53.90 ID:YtfXj/OT0
支援
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:35:01.97 ID:WfftITu90
支援
82未来人に羽が生えて21/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:35:25.95 ID:yoBLlJzg0
 自分でやっていてなんだが、俺は猛烈無性に病院に駆け込みたい気分だ。それも精神科があるところ。明日
の今頃には古泉御用達の病院に重症患者として運び込まれることになっているだろう。それほどまでとち狂っ
ている言動だと思う。
 藤原との爽やかな青春ライフだと? ふざけるな。誰が望むかそんなこと。俺は朝比奈さんとの壮大で華や
かなアバンチュールを望んでいるんだよ。 
 周りの視線がとても痛かった。俺のことをどんな目で見ているんだろうか。考えるのもおぞましい。想像す
るだけで身悶えしそうだ。
「どの口がそんな世迷言を」藤原は腹を抱えて憎々しく哄笑した。「愚昧の窮みだな。そろそろ、そのバカみ
たいな口を閉じて欲しいね。耳障りだから。ついでに、目障りだから消えてくれ」
 抑えろ。抑えるんだ、俺。藤原がこういう当て擦りしか言わない奴だってことは最初からわかっていたこと
じゃないか。何を今更。それを承知の上で、俺は羞恥心を金繰り捨ててまで、フレンドリーに話しかけたんだ
ろう。そう、だからこれは謂わば、自業自得なんだ。熱いとわかっていて触り、火傷したようなもんなんだよ。
藤原は悪くない。そうさ。素直になれなくてちょっと棘のあることを言ってしまうのは藤原のパーソナリティ
であって、ただそれを理解できなかっただけなんだ。だから悪いのは軽佻浮薄で軽挙妄動、自分の価値観で物
事を決め付けてしまった俺なんだ――
 って。
「んなわけあるかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 俺は堪らず咆哮してしまった。意外とマジで。
「てめえ、その態度は何なんだよ! 言うに事欠いて。こっちは心配してやってんのにさ。それはないだろ。
もう僅かでもいいから、人の気持ちを考えるっていうことをだな!」
 瞬間的に頭に血が上るのを感じた。脳内が上気する。熱くてどす黒いものが渦巻く。それとは対照的に、身
体は鈍い冷たさを帯びる。手足がゴムになってしまったような空疎感に包まれる。
 俺が藤原が殴らなかったのは古泉のおかげ、いや殴れなかったのは古泉のせいだ。やはり古泉は聡い奴だと
思った。雲行きが怪しくなってきたと理解するや否や、それ以上の事態の悪化を防ぐために素早く行動した。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:36:13.17 ID:gJSStUsL0
しえn
84未来人に羽が生えて22/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:36:30.11 ID:yoBLlJzg0
 背後から古泉に羽交い絞めされ思うように身体を動かすことができない。どこで訓練したのやら。上手い具
合に間接を押さえてある。無駄な抵抗でも試みれば、骨の一本や二本赤子の手を捻るよりも簡単に折られてし
まうだろう、と戦慄した。
「キョンくん、落ち着いて! 落ち着いてください!」傍から、朝比奈さんの悲鳴にも似た叫び声が聞こえて
くる。泣き出しそうな声だ。
「少しは冷静になりましたか。冷静になってもらわないと困るんですが」
 すぐ後ろから怒気を孕んだ古泉の声が首筋に当たる。普段ならば、そんなに近づくなよ気色悪いとでも悪態
を付いていただろうが、状況が状況だ。そんなふざけたことはしない。
 俺がへどもどしていると、さらに身体を締め上げられた。体の節々からギギギと軋むような音が聞こえる。
素直にとても痛い。
「あなたらしくもありませんね。それとも僕が買い被り過ぎていたのでしょうか。あの程度の煽りで自分を見
失ってしまうとは。がっかりですよ」
「――っ!」
 視界の端に朝比奈さんと長門の姿が入った。二人は不安そうに俺をじっと見ていた。あの長門もだぜ? よ
っぽどだったんだろうな。
「確かに、あなたの気持ちもわかります。どういう思惑で彼に接したということもです。それから、色眼鏡無
しで見ても全面的にあちら側に非があると思います。彼の態度はいただけないものですからね。しかし。だか
らといって、あなたがあのような醜態を晒していいことにはなりません」
 古泉の言葉が胸に突き刺さる。それは割れたガラスの破片のように鋭く、深いところまで抉りこんでくるよ
うだった。同時に、今まで頭ん中を駆け巡っていた熱く滾る血液がすぅっと急激に冷えていくのを感じた。
 まったく。どうかしてるぜ、ほんとに。
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:36:38.43 ID:YtfXj/OT0
支援
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:37:11.00 ID:kwM+8CXhO
シエン
87未来人に羽が生えて23/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:37:36.49 ID:yoBLlJzg0
「……古泉。すまん。感情的になり過ぎた。まだまだ子供だな、俺も」身体が開放された。古泉が力を解いた
らしい。「もう大丈夫だ。落ち着いた」
 先程とは打って変わって、温和な様子で「それはよかった。僕も少々出しゃばり過ぎたようです。とんだ粗
相を御許しください」と古泉は言った。
「なにを言う。お前が気にすることは何もないぞ。古泉は正しいことしかしてないじゃないか。まあ、文句を
あえて付けるなら、もう少し手加減して欲しかったな。いまだに肩がじんじんする」
「おや。それは申し訳ございません」古泉はいかにも慇懃な態度で言う。「よろしければ、腕の良い整体士で
も手配しましょうか」
 それはいい、と断った。
「朝比奈さん。それに長門。悪かったな。無様な姿を見せてしまって。本当情けないよ」
 俺は平謝りに謝った。朝比奈さんは安堵の表情を浮かべ、長門は一回大きく瞬きをしただけだった。これだ
けで十分だった。何に満足したのかは自分でもよくわからないが、そこはかとなく心がすっきりした。まった
く、俺も自分勝手な奴だな。
 少しばかし軽率な言動をしてしまった。反省せんとな。
 俺は息を大きく吸い込み、瞑目しながらゆっくりと吐き出した。
 さて、と。気を取り直してもういっちょいくか。お友達になりましょう計画はまだ続いているんだ。藤原が
ダメなら次だ。次は――九曜だな。こいつも個性的な奴だがきっと大丈夫さ。根も葉もなく確信した。妄信と
いうやつだ。もう同じ轍は踏まない。
 なんて立ち直りが早いのだろう。俺は自身の逞しさに賞賛を送りたくなった。
 余談だが、俺の復活していく様子を見て、橘は「野蛮人……」と呟き、藤原は嘲笑うかのようにこっちを見
て鼻を鳴らした。誰が野蛮だ、このやろう。
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:37:44.88 ID:gJSStUsL0
しえn
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:38:09.89 ID:YtfXj/OT0
支援
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:38:19.67 ID:kwM+8CXhO
支援
91未来人に羽が生えて24/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:38:46.32 ID:yoBLlJzg0
 俺は九曜が立つ方に向き直り、
「周防はそもそもの原因をどう考えてんだ? 長門曰く原因不明らしいんだがな。別視点からの意見も聞いてみ
たいんだよ」
 この台詞を言った瞬間に、絶対零度の視線を感じた。たぶん長門がいる方向だと思う。いや、長門自身の視線
なんだろう。毛の端から爪先まで冷気の電撃が一閃したようだ。これは憶測の域を出ないが、長門は九曜に嫉妬、
というか対抗心を抱いたのだろう。長門がわからないものを九曜に訊ねようとしたから、この辺りで当たらずと
も遠からずだろう。
 長門も気付いたら随分と人間臭くなったもんだ。出会った当初からでは考えられないほどの変化だ。俺はこの
傾向を歓迎するぜ。だから、そろそろ睨むのを止めてくれ。比喩じゃなしに穴が開きそうだ。
「――――」
 九曜は俺の方に顔を向けると、――固まった。
「ど、どうなんだ?」
「――――」
 九曜はやおらと口を開けた。やっと答えてくれるかと期待したが、それを気持ちいいくらいに裏切ってくれて、
また貝のように閉口してしまった。結局は元通りと。
「……どうなんですか? 周防さん」
「――――」
 かくっと九曜は小首を傾げた。なんだよおねだりか。そんな可愛い真似してもなんもでねえぞ。
 俺はひたすらに何かのアクションが起こることを待っていた。が、何も起こらなかった。まさか、こいつ寝て
るんじゃないだろうな。
「あきらめたらどうですか? 九曜さんにもわからないことはあるわ。時間の無駄なのです。しつこい男は嫌わ
れるわよ」
 この場の止まってしまった空気に痺れを切らしたのか、橘が容喙してきた。胸の前で両腕を組んで呆れたよう
に俺たちを見ている。
 ふと思った。相対する三人組の中でまともに言葉のキャッチボールができているのは橘だけじゃないか。藤原
はデッドボールしか投げてこないし、九曜はそもそもグローブを付けていない。我ながら言いえて妙なたとえだ
と感心する。
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:38:46.57 ID:kwM+8CXhO
93未来人に羽が生えて25/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:39:53.53 ID:yoBLlJzg0
 今まで橘のことは朝比奈さん誘拐犯人として忌みていたが、よくよく考えてみると実はいい奴なんじゃないだ
ろうか。空回りしているし独り善がりなところもあるが、橘はある一つの目的に向かって固い意志を持っている。
それが間違っているとしてもな。とても健気な人間だと思う。人間誰しも間違いはするもんさ。朝比奈さん誘拐
にしたって、それは目的達成のための苦肉の策だった可能性もある。たった一つの過ちでその人の人間像を創り出
すのは傲慢のほかならない。
 もしかすると、俺と橘はけっこう良い関係になれるかもしれない。きっとそうだ。
「あの、橘」
「はい?」
 橘は訝しげな表情をした。
「お前ってさ、案外いい奴だな」
「は?」
「俺、誤解してたよ。浅薄だった。だからさ、これからは仲良くしよう」
「……下心を教えてくれれば、考えてあげてもいいわ」
「何言ってんだ。そんなものあるわけないだろ。そりゃ確かに、佐々木を神とか云々には付き合ってられないけ
どさ、一高校生同士として、友情を育むことぐらいはできると思うんだ」
「あたしはできないと思います」
「わからんぞ。そうだな。手始めに俺と付き合わないか?」
「いやです」
 けんもほろろに即答だった。
「そうか。奇遇だな。俺もいやだった」
 橘は俺をまるで教室の片隅に忘れ去られた埃だらけのボロ雑巾を発見し、ああなんて汚らしいと嘆きたくなる
ような目で睥睨してきた。いくら俺でも傷付く。けっこうピュアなんだよ。そこまで拒否することないじゃない
か。
「それ本気ですか!」「それ本気ですか?」
 と見事なステレオ放送で朝比奈さんと古泉が問い詰めてくる。なにが本気なのかは訊くまでもない。二人の表
情は真剣そのものでふざけてお茶を濁すようなことはできない。正直なんでこうも二人がいきり立っているのか
が理解できない。嫉妬か? 朝比奈さんの嫉妬は嬉しいが、古泉のは塵ほども嬉しくないぞ。古泉の嫉妬なんか
ゆうパックで北極まで送りつけてやる。まあ、嫉妬とは違うと思うが。 
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:40:02.58 ID:gJSStUsL0
しえn
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:40:40.98 ID:kwM+8CXhO
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:40:50.00 ID:YtfXj/OT0
支援
97未来人に羽が生えて26/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:40:58.13 ID:yoBLlJzg0
「冗談に決まってるだろ。何で橘とそんな甘酸っぱい青春を送らなければいけないんだ。真に受けるなよ、そん
なこと」
 一応、弁解はしておいた。だが、どう考えてもこんな弁解は必要ないように思えるのだが。まあそれでも余計
な間違いが生じぬよう説明した。最中一番困ったのが長門だ。俺がいくら話しても「さらなる説明を要求する」
の一点通しだ。説明することなんかねえよ、ほんの茶目っ気だったんだから。
 舌の剣は命を経つ、と言う。まったくもってその通りだ。というか、まったく反省してないな、俺。
 滑稽な俺たちの様子を向こう三人組は憮然と眺めていたと思う。また、関心なぞ少しも無くただ五月蝿い集団
だなと煩わしく感じていたかもしれない。でも畢竟、あいつらが俺たちをどういう形で捉えていようと関係無い
んだけどな。
 SOS団と佐々木中心の偽SOS団が和解するのはまだまだ遠い未来のことだと思った。もちろん、そんな未
来が存在しないということもある。藤原だって既定事項だとか言っていたことだしな。それでいいのかと問われ
れば、正直答えに窮する。個人的の感想をいえば、偽SOS団のメンバー(佐々木除く)は気に食わない。どい
つもこいつも理解に苦しむ性質だしな。敵意が剥き出しな奴もいることだし。
 でも、じゃあずっといがみ合っていようぜと勧められても愚直に従うようなことはできない。別に休日は一緒
に遊ぶというような関係とまではいかなくとも、顔を合わせれば気軽に「よぉ」などと挨拶ができるくらいには
なれたらといいとは思ってる。そういうの悪くはないはずだ。
 何が正解かなんてわからない。そんなの主観でどうとでも翻るからな。
 ま、現実的な意見として、しばらくはそんなフランクな間柄に発展することはまずないだろう。あっちもあっ
ちだし、こっちもこっちだ。両者の間に漂う剣呑な雰囲気は簡単には除去できない。
 そしてもっと現実的なこととして、朝比奈さんの背中に生えた羽をどうにかしないとな。其の実、藤原とのい
ざこざ、理不尽な尋問などで忘れかけていた。おそらくだが、朝比奈さん本人も羽の件について失念しているだ
ろう。そう思ってしまうぐらい彼女は普段どおりの天真爛漫さだった。しっかりしてもらわないと困るんだがな。
そこがいいということもあるけど。
 いつの間にか、太陽が完全に落ち、辺りは闇に包まれていた。公園内に数本立っている水銀灯に明かりが灯り、
照らされた部分と闇のコントラストがはっきりしている。地面に映る遊具の影は歪に伸びたり縮んだりしていて、
そこはかとなくずれた感じがする。光の届かない木々周辺はまるでどこか違う世界にでも繋がっているんじゃな
いかと思うくらい日常とはかけ離れたモノを醸し出していた。
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:41:18.10 ID:kwM+8CXhO
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:41:46.00 ID:YtfXj/OT0
支援
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:41:49.19 ID:kwM+8CXhO
101未来人に羽が生えて27/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:42:04.31 ID:yoBLlJzg0
 ある二点だけ、特に水銀灯の光が集中している場所がある。それは偶然か必然か、朝比奈さんと藤原の位置だ。
なんのいたずらだよ。まさに羽の生えた二人に照準を合わせてスポットライトを当てているようじゃないか。こ
れから未来人によるステージの開演ってことなのか。
 俺の心臓が打ち鳴らす音のリズムが速くなっていたことに気付いた。


       ○


 さぁーと公園を走る夜風は涼しくて心地良いものだった。ちと冷たすぎる気もするが。
 頬を撫で髪を揺らす。肌と服の隙間に滑るように流れ込み、火照った身体を刹那の間だけど冷やす。どんよりと
した濁った空気が浄化、払拭されるのを胸の辺りで捉える。名状し難い快感を覚える。それはただ単純に新鮮な空
気が代わりに入ってきたことに対してだけじゃないはずだ。
 草木がさざめく。その響きの中に獣が呻くような気味の悪いものが混じっているような気がする。杞憂で済めば
いいと思う。
 そして――
 何の前触れも無く、なにがなんだか到底言葉では説明できないような防音遮蔽幕が下りてきた。誰かに聴細胞を
根こそぎ奪われたかと思うくらいに全ての音という音が消滅した。
 世界は水を打ったようなしじまに包まれた。
「ふん。やっとだな」静寂を破るように藤原は言った。その声はよく通った。「先に断っておくがこれは僕の意思
ではない。強制的な指令、規定事項だから言わなければいけないことなんだ。本当はこんなことは言いたくもない
んだ。僕のキャラじゃないんでね。でも、仕方がない。傀儡もいいとこだな。はっ、笑えよ。無様な台詞を吐く無
様な僕の姿を。しかし、笑った瞬間、僕はあんたを自身の憎悪の果てに刻み付けてやる。永久的にね」
 藤原が猛禽類のような鋭い視線で俺を睨みつけていた。
「さあ。愉快なショーの始まりだ」
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:42:19.19 ID:kwM+8CXhO
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:43:14.77 ID:YtfXj/OT0
支援
104未来人に羽が生えて28/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:43:41.07 ID:yoBLlJzg0
 そう言い終えるや否や藤原は顔を歪ませた。よほど言いたくなかったらしい。そのざまを見て、俺は怨まれても
いいから抱腹絶倒してやろうかと思った。指令を送った誰か――おそらく羽事件に関する奴――やつもなかなか粋
なことをするもんだ。
「ショーってなんだよ。もしや、お前がタップダンスでも披露してくれるのか?」
 俺は湧き上がる笑いを抑えるため、唇を噛み締めながら皮肉交じりに藤原に訊いた。
 藤原は汚らしいものを見てしまったという不快感を顕著にしたような、細い目でこっちを睨んだ。そのまま何も
答えることはなく、一つ鼻を鳴らしてそっぽを向いた。完全に嫌われてしまったようだ。別にどうてことはないん
だけども。
「あ、あ……、なに、これっ。羽が……」
 朝比奈さんの、薔薇の蕾のような唇から言葉とも言い切れない何かがとぎれとぎれに漏れ出している。
「朝比奈さん!」と問いかけると同時に、俺は千切れんばかりに首を降り、彼女の方に顔を向けた。不安が針のよ
うにちくりと俺を刺している。
 思わず言葉を失った。
 そこにいたのは我らが朝比奈さんだった。俺の心に癒しを甘い蜜のようにたっぷりと注ぎ込んでくれる天使。毎
日顔を突き合わせているんだ。間違えるようなことはあるわけもない。
 でも、その時の俺は、朝比奈さんが本当に朝比奈さんであるのかと躊躇してしまった。何故だ。わからない。自
分でもわからない。目は当然のことながら、五感のセンサーをフルにしているはずなのに、頭ですらちゃんと理解
しているはずなのに。俺の目に映る朝比奈さんがいつもと異なる。そもそもの概念自体が大きく隔たれていて、永
遠に交わることがない存在だと思った。いや、思わされた。
 水銀灯の光を反射し、夜空に輝く純白で荘重な四枚の羽。宙を舞う羽毛は、まるで黄金のようにたゆたい幻想的
で不可侵な領域を創りあげる。全てのしがらみから解放されたかのように、翼はゆったりと大きく羽ばたく。一振
りごとに既に眠っていた草木の頭をもたげてしまうような、生命力を感じさせた。そして、世に慈愛を降り注ぐで
あろう天使の凛々し――
「ふゃ〜ん! たたたすけてぇ。おっ、おちちゃいます!」
 ――くない顔つき。まったく、もう。どうしてかな。笑っちゃいけないのに、自然と頬が緩んでしまう。安心感
が滲む。そうさ。間違えるわけがないんだよ。あのおろおろ具合こそ朝比奈さんなんだからな。
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:43:42.68 ID:kwM+8CXhO
支援
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:43:54.76 ID:YtfXj/OT0
支援
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:44:19.77 ID:WfftITu90
支援
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:44:30.58 ID:YtfXj/OT0
支援
109未来人に羽が生えて29/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:44:51.77 ID:yoBLlJzg0
 朝比奈さんは虚空を掴むように手足を八方にバタバタさせもがいている。冗談抜きで落下してしまいそうだ。目
測でも地上から三メートル以上は離れている。大怪我するには十分だ。それに打ち所が悪ければ……。
「くそっ!」
 俺はそんな最悪な考えを頭を振って吹き消した。そんなこと考えるんじゃねえ。それににやにやと笑ってる場合
でもない。能天気なくそボケめ。自分で自分に困惑してしまう。何か事が起こってしまう前に、どうにかして朝比
奈さんを下ろさないと。
「古泉! 脚立とかそういうものはないのか? というか、長門。お前の力でなんとか!」 
 何故、朝比奈さんは空に浮かんでいるのだろうか。どう見ても自分の意思で飛んでいるとは考えられない。物理
学的にはどうなんだ。たとえ小柄で軽いにしても所詮人の体重だ。背中の皮膚が裂けてしまうようなことはないの
か。それに羽が見えるのはどうしてだ。長門の情報操作のおかげで隠すことができていたんじゃないのか。他にも
わからないことばかりだ。
「おい。現地民ども。なにを狼狽えている。ショーの始まりだと言っただろう。観客は黙って拍手の準備でもして
おくんだな」と上空からいかにも嫌味な藤原の声が降ってくる。
「あ?」
 藤原のほうを向いた。開いた口が塞がらなかった。 
「藤原。お前、飛んでる……」と俺。
「面白味がないな。見たまんまのことを言っているだけじゃないか」と藤原。
 夜に紛れ込む、黒い翼。朝比奈さんのそれとは違い、禍々しいものを纏っている。鋭く伸びていて、闇を切り裂
くように揺らめいている。橘が言っていた通りだった。本当に生えていたんだな。藤原の羽を見たら絶対に笑って
やろうと思っていたんだが、そんな余裕はどこ吹く風だった。
「朝比奈みくるのことについては心配しなくていい。彼女が無様にも落下するにはまだしばらく時間があるはずだ。
むやみやたらに暴れなかったらな。あんたは朝比奈みくるを落ち着かせてくれるだけでいい。いい加減じれったい
んだ。話が進まなくてね」
 動転している朝比奈さんとは対照的に、藤原は鷹揚な態度で俺たちを見下ろしている。
「なんでお前はそんなにわかりきったような口ばかり利くんだ?」こいつの言うことなんか鵜呑みにできるわけが
ない。「もしかして、全部お前が仕組んでいることなのか?」
 俺は月をバックに精悍と浮かぶ藤原を見上げ、訊く。癪に触るが、その姿は美しかった。
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:45:05.98 ID:kwM+8CXhO
しえん
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:45:14.33 ID:YtfXj/OT0
支援
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:45:18.89 ID:gJSStUsL0
しえn
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:45:40.30 ID:kwM+8CXhO
シエン
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:45:43.03 ID:YtfXj/OT0
支援
115未来人に羽が生えて30/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:45:56.88 ID:yoBLlJzg0
「そんなわけないだろう。ただ僕は送られてくる指令に従っているのみさ。それに朝比奈みくるの所にも同じもの
が届いているはずだ。恐怖のあまり咀嚼できていないだけだろう。ちなみに教えてやろうか。最新の指令を。こう
だよ。『対せよ』だ」藤原の顔が凄絶な笑みへと強烈に歪む。「そうだろ? 朝比奈みくる」
 自然と視線が朝比奈さんへと移る。なんとかバランスを取ることができたのか、危なげではあるが朝比奈さんは
空中で静止することに成功したようだ。その表情は戸惑、恐怖、不安、悲痛などが一緒くたにしたようなものだっ
た。
「はい……。そうです、けど」蚊の鳴くようなかすれた声で朝比奈さんが言う。目線を俯けてしまう。
 対せよ、だと? どういう意味なんだ。いや漢字そのもののニュアンスならわかる。でもそれでいいのか。裏に
別の意味でも隠れているのか。だとしたらそれはなんだ。俺は見当がつかなかった。朝比奈さんや藤原はその意味
を理解しているのだろうか。
  夜の闇に包まれ『対』峙する二人の羽が生えた未来人。片や月へと謳う純白の羽。片や月へと咆える漆黒の羽。
『対』照的な二色の羽はその圧倒的な存在感により星空に紛れることはなく、非現実な光景を生み出していた。だ
が、不調和ではない。月の輝きが、星の瞬きが、羽に追従しているようだった。
「朝比奈さ――」
 俺の問いかけは尻切れ蜻蛉となり、霧散した。急に心臓に錆びた釘をぶち込まれた気がした。皮膚を裂き骨を砕
き肉を潰す。目に見えない血が湧き出る泉のように噴出する。傷口からどんどん腐敗が広がっていく。現実味が薄
らいでいくのがはっきりと感じられる。世界は黒く溶けていく。
 ちがう。なにかがおかしい。
 殴られたわけでもないのに頭に鈍い衝撃が走り、体の軸がぐらつく感覚。闇が急激に収束し襲い掛かってくる。
心臓が大きな手で握り締められたように圧迫され、呼吸が苦しくなる。その闇に呑まれたのか俺以外の奴らは靄の
ように掻き消えてしまった。どうしようもない不安と恐怖に押しつぶされそうになる。脂汗が全身の毛穴から噴出
し、首を掻き毟りたい衝動に駆られる。俺は一人だ。耐え切れず、全てから逃げ出すように、目を閉じてしまう。
 結局俺は指を銜えてを眺めるしかできないのだと悟った。最初からわかっていたことなんだ。考えてもみろよ。
俺は今日朝比奈さんの為に何かできたか。何もしてないだろ。ただ古泉に頼り、長門に任せた。無意味な慰めを垂
れ流しただけだ。中心にいるように思えてもそれはただの思い込み。酷い勘違いだ。今までだってそうさ。特に何
かをしてきたわけじゃない。ただ流されるように事なかれ主義を貫いてきて、御膳立てされたピースを嵌めていっ
ただけなんだから。
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:46:07.56 ID:kwM+8CXhO
支援
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:46:17.75 ID:YtfXj/OT0
支援
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:46:51.00 ID:YtfXj/OT0
支援
119未来人に羽が生えて31/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:47:05.02 ID:yoBLlJzg0
 何故今こんな気持ちを味わなければいけないのだろうか。もっと別の機会があっただろうに。俺は途方もない虚
無感に苛まれた。
 それでも話は勝手に歩いていく。
 朝比奈さんと藤原は夜空の中で言葉を交わしている。内容を聞き取ることはできない。平面世界が、樹形図がな
どと言っている。それ以前に聞き取る気力すら起こらなかった。どうせ何もできないんだ。だったら端からやるだ
け無駄だ。できる奴がやればいいんだから。
 頭を上げる力すら入らない。俺はうっすらと目を開けて、地面へと視線を落としていた。頭上では音のやり取り
が繰り返されている。ふと誰かの視線を感じた。氷のように冷く、心を奪われそうな不穏さ。長門か? いや違う。
もっと異質なものだ。
 腕を掴まれた。細くて白い腕だ。反射的に体が跳ねる。
「……周防か。なんだ? さっきからジロジロ見て」いつ近づいたんだよ。足音がしなかった。
「――――」
「どうした?」
 返事がないので、いまだ腕を掴み続けている九曜へと向き直る。けっこう痛いんだけどな。目が合う。夜と一体
化している長い黒髪と光陽園女子の制服。遠めなら首だけが浮かんでいるように見えるだろう。白い肌がそれを一
層際立たせていた。
「――あなたは……なに?」お前が何だよ「もう逃さない――――八度目の――世界。わたしたちの……あなた――
あなたのわたし」
 さっぱり意味がわからん。
 陽光が届かない深海のさらなる深淵。有象無象の灯が消え、行き着く果て。無。九曜の瞳はそんな感じだった。
吸い込まれそうで、捕らえられたら脱することはできない。
 どれくらい見つめ合っていたのだろうか。ロマンチックな物言いかもしれないが語弊だ。ただ単純になんの理由
も意思もなしに見ていた。そして、九曜はこう呟いた。
「――おしまい――」


       ○
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:47:21.53 ID:kwM+8CXhO
しえん
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:47:30.15 ID:YtfXj/OT0
支援
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:47:50.14 ID:kwM+8CXhO
123未来人に羽が生えて32/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:48:13.27 ID:yoBLlJzg0
 夜の帳が降りてから大分と経った。
 羽の生えた未来人二人に動きはない。「対せよ」という指令を愚直にも守りずっと向かい合っている。
 おしまい――九曜が放った言葉。これが一体なにを意味しているのか。この事件が収束に向かっているというこ
となのだろうか。その意味を問いただしても、九曜は「――」と首を傾げるだけだった。なんで肝心なことを言わ
ないかな。九曜は抽象的すぎんだよ。
 正直言って、そんないきなりご都合展開があるとは思えん。
「あ! みっくる〜! そこで何してんの? 何かめがっさ凄いものが生えてるのが見えるんだけどさっ」
 もしそんな観客置き去りの愚かな筋書きを書くような脚本家がいたとすれば、俺はそいつの演劇なんか見に行か
ない。しかし、S席のチケットを只でくれるなら考えてやってもいい。
「え、みくるちゃん? どこどこ、どこ? いたっ! ちょっとみくるちゃん! なんで空なんか飛んでいるのよ。
手品の練習でもしてんの?」
 また読者を放り出して自己満足のための小説しか書かない作家がいたとすれば、俺はそいつの本をまとめて古本
屋に売り飛ばしてやる。値上がりするようなら時機を見計らうが。
「天使? 天使のコスプレにょろ。みくる、超絶似合ってるよっ!」
 もう! うるさいんだよ、通行人AとB。黙って通り過ぎろよ。これは見世物じゃないんだから。一般人が見る
と色々都合が悪いくなるんだ。早く帰って寝てしまえ。そして今見たことは忘れてください。
「キョン! あんた、何あたしに隠れて面白いことやってんのよ。おまけに有希も古泉くんも。団長をハブにする
とは豪胆じゃない。罰則受けたいの? そんなにあたしに苛められたい? 見下げたM属性ね。喜びなさい。団長
直々にあんたを快楽の道へ誘ってあげるわ。さあ! 手を地面につけなさい。そんであたしを乗っけてこの公園十
周よ。それゆけ、キョンスペシャル! 目指せ日本ダービー!」
「お前はアホか!」
 俺に強引に跨ろうとするハルヒを押しのける。バランスを崩したのか、ハルヒはころっと転がり尻餅をつく。痛
い痛いと喚き、俺の脛をボカスカ蹴ってくる。俺のほうが痛い。というか、速く立ち上がってくれ。自分の服装を
考えて欲しい。結構スカートの丈が短いじゃないか。見えてるぞ。まあ、直接言ったらさらに蹴られてしまうので、
見て見ぬ振りをするが。
「キョン! あんたのせいで転んだのよ。手くらい貸しなさいよ」
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:48:15.29 ID:kwM+8CXhO
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:48:47.14 ID:kwM+8CXhO
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:48:55.24 ID:gJSStUsL0
しえn
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:48:57.89 ID:YtfXj/OT0
しえん
128未来人に羽が生えて33/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:49:24.85 ID:yoBLlJzg0
「やれやれ」と溜息をつき、いまだ座り込んでいるハルヒへと手を伸ばす。
 で、案の定、ハルヒを必要以上に俺の腕を引っ張り込み、こかしてきやがった。やつ自身はその反動で悠々と立
ち上がり「ふ、甘いわね」と悪戯っ子のような笑みを浮かべて言った。
 俺は苦笑するしかなかった。
 通行人AとBがハルヒと鶴屋さんで、どこからどう突っ込めばいいとか、御都合展開云々などそういう瑣末なこ
とは一切合切捨てた。今はただ目の前に何の断りもなしに出てきやがった、不敵な微笑を輝かせてる太陽のぬくも
りに触れていたかった。色が戻ってきた。数分前の鬱々状態が嘘のように氷解していた。ぽっかり空いた空間に否
応なしに注ぎ込まれる光。それは隅々まで照らし尽くす。誰も迷ってしまわないように。なんだよこの根拠もない
安堵感は。俺もこいつみたいに笑ってみたくなった。
「キョン。あんたはただでさえ地味な面してるんだから、そんな陰鬱な表情してんじゃないわよ。何があったかは
知らないけど、いつも通りに図太く構えてなさい。団長命令!」ハルヒはビシッと人差し指を俺に突き刺す「でね。
その何があったかを説明しなさい。これも団長命令」
 こいつの明け透けとした口調に救われた、気がする。こんなことは認めたくはないんだがな。それに輪を掛けて、
そういう気持ちを抱いてしまったことをハルヒ本人に知られたくはなかった。だって、恥ずかしいだろ。
 俺は上空に浮かぶ未来人二人を指差して、「あれはだな、ちょっとした演劇の練習さ。ご覧の通り、朝比奈さん
は天使役で、もう一人は堕天使役なんだ」と説明した。嘘は意外と滑らかに出てくるもんだ。本当のことを話すわ
けにはいかないからな。
「ねえ、キョンくん! みくるの背中に付いてる羽は本物? めがっさリアルだね。あれはハリウッドにも十分通
用するにょろ。ワイヤーはどこにあるのかなっ?」
 そんでもって、どういう経緯でハルヒと一緒にいたかはわからないが、いつにも増してハイテンションの鶴屋さ
んがピンポイントで痛いところを質問してくる。勘の鋭い彼女のことだ。もしかしたら真実に気付いてるのに、敢
えて素知らぬふりをしているのかもしれない。あとどんな基準でハリウッドに通用するのか是非とも教えて欲しい。
 流石に返答に窮した。俺は助けを求めるべく、ハルヒ登場以来、絶対零度で凍らされたと思うくらいに固まり続
けている古泉へと視線を投げる。古泉の今の心理状態が手に取るようにわかった。最も見られたくない人物の目に、
最も見られたくないシーンが映っているのだから。この事件が集結してからのあいつが事後処理に四苦八苦する姿
が目に浮かぶ。古泉、俺も手伝うよ。
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:49:26.46 ID:kwM+8CXhO
支援
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:49:27.19 ID:YtfXj/OT0
支援
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:50:10.13 ID:YtfXj/OT0
支援
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:50:14.38 ID:kwM+8CXhO
しえん
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:50:27.49 ID:WfftITu90
支援
134未来人に羽が生えて34/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:50:30.23 ID:yoBLlJzg0
 俺のSOSに気付いた古泉は、切り替えが早く自分を取り戻し、ハルヒと鶴屋さん相手にセールスマン並みの流
暢さで一つ一つ丁寧に説明していく。もちろん嘘八百だ。それでいて揚げ足を取る隙を与えないようなそつの無さ。
この時俺は思った。屁理屈こそ最強の理屈だと。
 さてあの二人は古泉に任せるとして、俺は朝比奈さん(とついでに藤原)をどうにかしないと。しかし、一体全
体どうすりゃいいんだ。思いっ切りジャンプして朝比奈さんに飛びついて下ろしたらいいのか。それは妙案だ。朝
比奈さんを助けるという名目で、どうどうと彼女に抱きつくことができる。だが如何せん、俺にはそんなオリンピ
ック選手を超える跳躍力は有していなかった。遊具や木をつたうことも不可能だ。それらと離れすぎて腕を目いっ
ぱい伸ばしても届かない。やっぱり、脚立が必要なのか。
「長門。なんとかならんのか?」俺は静観していた読書好き宇宙人の元へ駆け寄った。
 長門は小さく頷き、「心配ない。全てが終わった」と言った。その目は黄金に輝く羽毛の光を映していて、星空
を閉じ込めたようだった。
 なにが終わったんだよ、と訊けなかった。いや訊いたつもりだったんだが、近所迷惑も顧みずにどこぞの団長様
が突き抜けるような大声を出したせいで、俺の声は上書きされて消えてしまった。
「ちょっと、そこのアヒル男! あんた、みくるちゃんを苛めてんだって?」アヒル男というのは藤原らしい。「と
んでもないことをしてくれたわね。罪はエアーズロックよりも重いわよ。土下座して額を地面に千回擦り付けても
許してやらないんだから。さっさと降りてきなさい! あたしと差しで勝負よ!」
「ハルにゃん。そんな美味しいことは簡単には譲れないね。そこのキミ! あたしの合気道と剣道と書道をミック
スした鶴にゃんオリジナル拳法でお仕置きだべぇ〜」
 おい古泉。てめえは二人に何を吹き込んだ? 血の臭いしかしないバイオレンスな道まっしぐらじゃねえか。穏
便に進めるところだろそこは。で、鶴屋さんは書道をミックスしてなんか意味あんのか?
「いやあ、困ったものです。詭弁を弄している内に話がどんどん逸れてしまいましてね。方向を修正しようと試み
てもどつぼに嵌るばかりで」古泉は大げさに眉根を下げた。なんだか嘘くさい。
 長門や九曜が言っていた「終わり」とはこの展開を予想してのことだろうか。羽事件の終結、という意味ならし
っかりと当たっていた。瞬きする暇も惜しいくらいに、あっという間にゴールへと風の如く駆け抜けていった。
「ちっ。なんだか騒がしくなってきたな。ショーは最後まで静聴するのが常識だというのに。メス犬風情がきゃん
きゃん吠え回るのはやはり聞くに堪えない」よし、決めた。藤原には手ごろな大きさの石をぶつけてやろう。本気
で投げてやる。「しかし。間が良いことに、もう終幕だ。最後の指令が送られてきた」
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:50:46.80 ID:YtfXj/OT0
しえmn
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:50:47.67 ID:gJSStUsL0
しえn
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:51:04.19 ID:YtfXj/OT0
支援
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:51:42.82 ID:kwM+8CXhO
シエン
139未来人に羽が生えて35/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:51:55.84 ID:yoBLlJzg0
 そう言い終えると、藤原の高度がゆっくりと下がっていき、地上へと降り立った。俺は一応念のために、ハルヒ
が藤原に噛み付きに行かないように、先手を打ってハルヒの肩を押さえていた。
「みくるちゃん!」
 が、しかし。そんな俺の制止を振り切ってハルヒは飛び出していった。藤原と同じタイミングで空から帰ってき
た朝比奈さんの元へ。
 二人の背中からは既に羽が消失していた。跡形も無く。それは嘘のようだった。


 終わったのだ。
 ハルヒと鶴屋さんは地面にへたり込んで涙を滂沱と流す朝比奈さんのすぐそばについて慰めている。朝比奈さん
はよほど恐かったんだろう。いきなり羽が生えて、宙に放り込まれ、藤原に罵詈雑言を浴びさせられ。傍観者の俺
ですら理不尽な仕打ちだと思ってしまうのだ。当事者の苦しみなんかは想像する以上に深いはずだ。「心配しない
で。東京湾に沈めるから」なんて物騒な台詞を吐くんだ。
 まったく、誰だよ。こんなこと企んだのは。不思議なことに、羽が消失してからの方がどす黒い炎が燻り始めて
いる。向けようのない、でも誰かにぶつけなければ消えることのない怒り。未来人か。朝比奈さん(大)はこうい
うことが起きてしまうのを知っていたはずだ。彼女も経験者なのだから。なのに、何故助けまでとはいかなくと、
忠告一つくれやしないんだ。たとえ自分のことだとしても薄情過ぎやしないか。
 橘・藤原・九曜の三人はそそくさとこの場をあとにしていた。用が済んだら、もう慣れ会う気はさらさらないら
しい。橘が小さく会釈し、「さようなら」と言い残したのみだ。それに対しては、古泉が「さようなら」と橘と同
様の言葉を返しただけだ。俺は藤原の背中にドロップキックで食らわしてやろうかなと迷ったが、子供っぽいので
止めた。
 九曜が一人立ち止まり俺のほうをじっと見ていた。俺もじっと見返した。
「――――」
「…………」
「――――」
「…………」
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:52:00.13 ID:YtfXj/OT0
支援
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:52:15.63 ID:gJSStUsL0
しえn
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:52:18.42 ID:kwM+8CXhO
支援
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:52:41.75 ID:YtfXj/OT0
支援
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:52:43.35 ID:WfftITu90
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145未来人に羽が生えて36/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:53:01.12 ID:yoBLlJzg0
 気が済んだのか、九曜はふいと振り返り、滑るようにして暗闇へ溶けていった。終始、あいつが何をしたかった
のかわからなかった。そう言えば、九曜は「おしまい」とか言っていた。黒幕の正体はあいつなのか。有り得る。
でも断定はできない。一つの可能性だ。
 後味が悪い終幕だった。
 羽は何故生えた。誰が生やした。長門の力が直接は通用しなかった。指令を送ったのは誰だ。この公園に呼ばれ
た理由は。藤原にも生えていた。二人の羽はまったく違うものだった。途中で長門の力が無効化された。何故だ。
しっかりと施されていたはずだろ。そして、羽が姿を現せると二人は空を飛んだ。全ての法則を無視して。仕舞い
には、消えてしまった。前兆無く。ただ藤原が「終幕」と言っただけで。
 何もかもが曖昧模糊なままで残された。
 何より。ハルヒが現れたのは偶然か。出来過ぎている。仮に偶然だとしよう。羽が消えたのはハルヒの力による
ものなのか。そうならば、羽が生えた根本もハルヒに繋がるんじゃないか。ハルヒは一体何を望んだんだ。
 再び思ってしまう。俺たちは誰かの手の平で踊らされている駒なんかじゃないかって。その「誰か」は何だ。宇
宙人か。未来人か。超能力者か。ハルヒの力なのか。それとも、未だ姿を見せぬ異世界人なのか。堂々巡りに陥っ
ている。今手元にある情報だけじゃいくら頭を捻っても詮方無いということは百も承知なのに。
 朝比奈さんの羽が消えたことについては喜ぶべきことだろう。紛うことがない。単細胞にそれだけのことに着目
して安心すればいいのに。何故こうも考えてしまうのか。余計に不安を煽る行為ほかならない。足元が崩れてしま
いそうな脆弱な感触を伝えてくる。
 薔薇の蔦が手足の先に伸びている。それを徐々にではあるが確実に這ってくる。腕を、腰を、腹を、首を。身動
きが取れなくなる。絡みつくたびに、棘が身体に刺さり、傷を作る。その傷口から流れる血は何色だ? 蔦は心臓
を狙っている。心臓に根を生やし、この世のものとは思えない、蠱惑で不吉な花弁を広げるのだろう。
 くらっと立ちくらみがした。支えになるものは、と手で虚空を掻きながらしながらふらふらする。その拍子に、
とんと何かにぶつかった。
「……すまん、長門。ちょっとよろけてしまった」
「大丈夫?」
 長門が俺の顔を心配そうに覗き込んできた。もう一度言う。心配そうに、だぞ。妙な感慨がある。
「ああ。大丈夫だ」
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:53:07.06 ID:kwM+8CXhO
しえん
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:53:48.71 ID:kwM+8CXhO
シエン
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:53:55.91 ID:YtfXj/OT0
支援
149未来人に羽が生えて37/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:54:07.77 ID:yoBLlJzg0
 長門が自らの肩を指差す。置いてもいいってことなのだろうか? ここは遠慮するべきところなのだろうが、な
んだか無下に断るのも躊躇われるので、「すまん」と一言つき、極力体重をかけないようにして長門の肩に右手を
ついた。体重をかけない時点で支えとしての意味はないんだが、そこはまあいい。長門の肩はガラスのように華奢
だった。手をついていると、自然と不安が和らいだ。
 傍から見ると妙な姿勢だ。誤解されるかもしれん。ハルヒとかに。
「どう思う?」俺は率直に訊いてみた。
「わからない」
 長門は相も変わらず淡々とした口調で言う。
「全部か? 羽が生えた原因とか生やした奴とか」
 長門は小さく首肯する。
「じゃあ。わからないでもいいんだ。お前自身の考えを聞かせてくれないか」
 長門は言葉を選ぶように一瞬沈黙し、「……ごめんなさい。わたしから言えることは何も無い。正体不明。判断
材料が極めて不足している。下手な推測は無意味。混乱を生じさせるだけ」
 引っ掛かるところがあった。一つだけ長門の言葉と矛盾している箇所がある。
「でもさ、長門はあの時、全てが終わったとか言っていたよな。あれはなんか理由でもあったのか」俺は悪いと思
いつつも質問を続けた。
「涼宮ハルヒが現れたから。わたしは彼女が事態を終結させる鍵だと判断した」
「それはどうしてだ?」
「勘」
 それははっきりとした言葉だった。勘なんて胸を張って言えるような単語じゃないのに、長門はそれ自体に何の
疑いを持っていなかった。手から長門の温かさと強さが伝わってきた。
 小さいな、俺って。うじうじしていた自分がバカらしくなってきた。無力だろうがどうでもいいんだよそんなこ
と。
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:54:14.78 ID:gJSStUsL0
しえn
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:54:33.92 ID:YtfXj/OT0
支援
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:54:35.93 ID:kwM+8CXhO
支援
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:55:00.78 ID:WfftITu90
支援
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:55:07.18 ID:YtfXj/OT0
支援
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:55:07.64 ID:kwM+8CXhO
しえん
156未来人に羽が生えて38/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:55:12.45 ID:yoBLlJzg0
 誰かの為に力になれるかということは重要だ。でもそれが絶対に必要ってことはないんだ。常に誰かを助ける主
人公ポジションにいるなんて無理だろ。誰しも助けて欲しい時はあるんだ。気張り続けなくていい。俺は勘違いし
ていただけなんだ。何もかもを一人で抱え込んでしまってたんだ。いい格好をしようとして。つまらない自尊心を
維持するためだけに勝手に落ち込んでいただけなんだ。だから無力な自分を悟った時にみっともなくもがいてしま
った。ずぶすぶと泥に沈むように。虚栄心なんていらない。誰かの手に縋ることは格好悪くない。格好悪いのはそ
の手を跳ね除けること。孤独じゃないだろ? ちゃんと俺を見てくれている仲間がいるじゃないか。無力だとして
も認めてくれる大切な。
 何もできなくてもいいんだろう。また別の機会で頑張ればいいんだ。そんでいつかはきっとは誰かのために役に
立てる時が来るはずさ。今回はただステージを間違っただけ。手前勝手に自分を中心に置いてしまったのだ。ギア
が噛み合ってないんだ。故障するのはそりゃ当然だ。
 なんでかな。この期に及んでこんなことに気付くなんて。知っていて当然のことのはずなのに。俺は誰かの助け
がないと生きていけないんだ。そして、誰かを助けるために生きていくんだ。先程まで湿った残滓だったものが、
今では胸の中でぱちぱちと火をあげていた。
「ハルヒのこと信頼してるんだな」
「してる」
「そうか」
「そう」 
 今日はやたらと心の浮き沈みが激しかった気がする。怒ったりおどけたり落ち込んだり震えたり。情緒不安定に
もほどがある。パラノイアかよ。自身のことを物事を客観的に見ることのできる、他人とは違うんだと自負するく
らいには冷静だと思っていたのに。自分の心ながら、お疲れ様と労を労ってやりたい。自業自得なんだけども。改
めて振り返ってみても、やっぱり今日の俺はおかしいと思った。影のように不確かな、黒い槍。その尖端には醜悪
な毒が塗られていた。
「一つだけ言っておきたいことがある」と長門が言った。
 俺は返事をしないで次の言葉を待った。
「わたしを信頼してほしい」
 長門が何故そんなことを言うのかよくわからなかった。何を今更と思い、僅かに憤った。同時に、無性に長門の
頭を撫でてやりたくなった。我慢したけど。
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:55:46.40 ID:YtfXj/OT0
支援
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:55:48.90 ID:kwM+8CXhO
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:55:51.47 ID:gJSStUsL0
しえn
160未来人に羽が生えて39/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:56:19.07 ID:yoBLlJzg0
「言われなくとも、してるよ。信用もしてるしな」トートロジーかもしれない。ま、いいや。「当然だ」
 ちょっとの間の沈黙後、長門は「そう」と呟いた。どことなく嚥下しきれてない長門の雰囲気を感じる。
 きっと俺の返答は長門にとって満足のいくものではなかったのだろう。自分にしたら正解とまでは言い切れなく
とも十分なものだとは思っていたのだが。なんとか真なるものを探し当てようと頑張ってはみたが、生憎俺は頓馬
だった。とどのつまり考えることを諦めた。だからと言ってもどうかと思うが、俺は長門のことを今まで以上に信
じることにした。
 この詰の甘さが引き金だったのだと思う。なんとしてでも聞き出しておけばよかったのだ。
 羽が生えた原因。その対象が未来人だったこと。天蓋領域の力。そして、長門が本当に伝えたかったこと。俺が
これらことに気付くのはもう取り返しがつかなくなってしまった頃だった。その先には全ての答えが待っていた。
 

 月下の公園で、太陽が笑顔を振りまいていた。
 まったく何が楽しいのやら。こっちが清々しくなってくる。ほんとたまらないよな。どうせならこのまま永遠と
輝き続けていろ。いつの時もどこの場所でもどんな相手でも、お前の尽きることを知らない明るさを感染させてや
れ。嫌がるやつにはがぶりついてでも擦り付けてやれ。俺が許してやる。そうすれば、世界の不幸の九割はなくな
るさ。まあその代わり甚大な迷惑が生じるだろうがな。でもそれもいいんじゃないか。つまらんことでグダグダ揉
めるよりは。だってさ、その迷惑は笑いの種なんだから。自然に笑みが零れ落ち来るんだよ。俺もなんでそんなこ
とが言えるかは知らないけど、実際そうなんだ。経験者だしな。綺麗ごとじゃないぜ。不思議だよ。あいつと一緒
にいるとさ、苦労ばっかしてるはずなのに、楽しい思い出しか浮かばないんだ。後悔もしたさ。無茶苦茶だろあい
つ。でもよくよく考えてみたらあいつと出会わなかったほうが後悔するって気がするんだ。あいつがいないと世界
が暗く湿ってしまうんだ。そうだよ。あいつは俺の太陽なんだ。
 笑い声は夜風にのって世界を走った。
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:56:33.85 ID:YtfXj/OT0
支援
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:56:40.84 ID:kwM+8CXhO
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:56:41.94 ID:WfftITu90
支援
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:57:01.56 ID:fZgMMrlMO
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:57:05.56 ID:YtfXj/OT0
支援
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:57:05.76 ID:kwM+8CXhO
167未来人に羽が生えて40/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:57:25.10 ID:yoBLlJzg0
       ○


 教室の窓から灰色の空を眺めていた。朝方から降り出した小雨は町に休息を与えているように思えて、静かな
世界を演出していた。もちろん丸っきりの静寂ということはない。窓ガラスや校舎を叩くたんたんという雫の音
が教室内に控えめに響いている。これぐらいなら無視できる。むしろ単調なリズムで響いてくるので、いい子守
唄代わりになるだろう。
 月曜日の一限目、一週間で最も気怠い時間はなんと自習だった。しかもプリント学習。担任岡部がホームルー
ムの時にその教科担任から渡されたプリントの束を持ってきて、教壇に無造作に置くと、「各自でやっておくよ
うに」と言い残し退出していった。
 即ち、睡眠学習のことである。
 既に何人かの生徒は、肘をついて舟を漕いでいたり、机に突っ伏して寝ている。なかには枕を持参して来てい
るアホなどもいる。谷口のことだ。
 こう言うと、我がクラスは大層不真面目だな、と言った印象を与えるかもしれんがそこは弁解しておこう。し
っかりと与えられた課題をこなす生徒もいる。こういう奴らが最後に笑うのだろう。そんな奴らを見て、感心し
た。
 俺はどちらだろうか。そんなの前者に決まっている。あまり威張って言うことじゃないが。
 色々理由があるんだ。普段の俺ならば、もくもくと作業をこなし、他人のを移すようなことはしたりせず自分
で教科書やノートを引っ張り出し自己解決するだろう。それでもわからないところは教師に質問しに行き、間違
えたところはできるまで繰り返しやるはずだ。
 でも今日は仕方が無いんだ。貴重な勉強時間を睡眠に費やすなんて優良学生の俺に取ったら拷問にも等しい。
学費を出してくれている両親に立つ瀬が無い。それでも我慢できないんだ。なにしろ、極度の睡眠不足なんだか
ら。頭が寝ぼけた状態で勉強して効果があると思うか。ないだろ。だから俺は次からの授業を万全を期して受け
られるようにするための苦肉の策なんだ。
 そう、これは正当な行いなんだ。俺は間違っていない――と、もっともらしい理由で自分を納得させ、早速俺
も甘美な睡眠学習を堪能することにした。
「寝てんじゃないわよ」
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:57:37.35 ID:gJSStUsL0
しえn
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:57:56.64 ID:kwM+8CXhO
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170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:57:58.18 ID:WfftITu90
支援
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:57:58.29 ID:YtfXj/OT0
支援
172未来人に羽が生えて41/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 19:58:31.74 ID:yoBLlJzg0
 背中に鈍い衝撃が走る。あと一歩でトリップするところだったのに。タイミングが良いいんだか悪いんだか。
いや悪いだろう。この野郎。地味に痛いじゃねえか。しかも、ぐーで殴りやがったな。
 俺はのっそりと体を起こし、半身だけ捻り後ろを向いた。そこにはご機嫌なのか、不機嫌なのかどうも捉えづ
らい表情をしたハルヒがいた。少なくとも、所在無くしていたことは間違いない。
「なんだ?」
「なんだ、ですって? あんた、あたしに話すこといっぱいあるでしょ。昨日のことについて。結局聞きそびれ
ちゃったんだから」
 聞きそびれた? 嘘吐け。昨晩は聞こうとするそぶりを見せなかったくせに。
 朝比奈さんの羽が消えた後、ハルヒは「宴会するわよ!」と的外れなことを言い出した。もちろん俺は抗議し
た。近所迷惑だろう、そんなことして警察に補導されても知らないぞ、と。するとどうだ。長門が「任せて」と
言ったのだ。長門にそんなこと言われてしまえば、もう俺にはどうすることもできない。めでたいことがあった
わけでもないのに宴会が催されることになった。宴会とは称しているが、酒なんか飲んでないぞ。それは流石に
具合が悪いから。
 ちなみにハルヒと鶴屋さんが一緒にいた理由は単純で、休日を利用してのショッピング、その帰りだと。公園
はたまたま帰り道だっただけらしい。数奇なもんだ。
 俺と古泉を近くのコンビニへとパシリに走らすこと数知れず。SOS団とその名誉顧問――不良六人組みによ
るどんちゃん騒ぎは深夜遅くまで続いた。別に何かをしたってことはない。ハルヒと鶴屋さんのハイテンション
が引っ張るがままだった。防音対策はばっちりだった。長門曰く「不可視遮音フィールドを展開した」と。能力
の無駄遣いだ。
 いつ帰ることができるのかと心配していたら、都合よく(申し訳ないが)朝比奈さんがつぶれてくれた。オレ
ンジジュースでで。しかしこれは当然のことなのだろう。なんせ彼女は今日、とんでもない目に遭っていたのだ
から。極度の
不安状態から解放されたんだ。いつ緊張の糸が切れても可笑しくはなかった。ふとした拍子にそれが切れてしま
ったんだろう。
 こうなれば自然とお開きムードが漂ってくる。言いだしっぺのハルヒも駄々をこねることなく解散となった。
すぅすぅと寝息を立てる朝比奈さんも含めて、俺たちは全員、古泉が手際よく準備してくれたタクシーに乗って
各家へと送られた。余談だが俺を送ってくれた運転手は森さんだった。別に期待とかそういうことはしていなか
ったのだが、森さんの服装はメイド服ではなく、普通としか言いようのないスーツだった。メイド服で夜の街を
爆走するシュールな姿をちらりと想像したのだが。疚しい気持ちはなしで。
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:58:37.79 ID:kwM+8CXhO
しえん
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:58:43.87 ID:YtfXj/OT0
支援
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:59:08.38 ID:kwM+8CXhO
シエン
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:59:12.00 ID:YtfXj/OT0
支援
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:59:27.63 ID:YtfXj/OT0
支援
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 19:59:54.88 ID:kwM+8CXhO
支援
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:00:01.79 ID:YtfXj/OT0
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180未来人に羽が生えて42/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 20:00:07.46 ID:yoBLlJzg0
 森さんに、またきっとかり出されてしまったであろう新川さんや多丸兄弟、会ったことも無い機関の方々には
本当申し訳ない気持ちになる。深夜なのにわざわざ来てもらってどう言えばいいか。心の底から感謝しています。
 自宅に着くと、森さんが「夜遊びもほどほどに」と優しく忠告してくれた。しかし、目は『いい加減にしろ、
ガキが』と割とマジで脅してきている気がした。穿ちすぎだといいが。俺は愛想笑いをしてその場を誤魔化した。
その後はよく覚えていない。ベッドに入り、泥のように寝入ったことはおぼろげに残っているのだが。
 気付けば朝だった。あやうく遅刻しかけた。 
 睡眠不足もやむなしだろう。ハルヒを責めようとは思っていないが、もう少したおやかな貴婦人へと成長する
よう望むばかりだ。それはそれで気味の悪いことだが。というか、こいつは昨日大丈夫だったのか。いい年下娘
が午前様とは。一応あのハルヒの両親といえど、心配はしたはずだ。罰として時代錯誤よろしくと部屋に監禁さ
れていたかもしれないんだ。
 どうもそこんとこに良心の呵責を感じる。もちろんハルヒ(他の女性人もひっくるめて)の両親に対してだ。
俺のせいではないとは言え、止めることはできたかもしれないんだ。事件に巻き込まれるようなことはなかった
が、それは今回は、の話だ。もしかしたら何かあったのかもしれない(この場合は羽事件じゃなくてもっと社会
的なことだ)。それじゃあ遅いんだ。やっぱ責任あるよな。
 と偽善者ぶった考え事をしていると、右の頬を抓られた。犯人は確認するまでもない。どう計算しても俺同様
に寝不足なはずなのに、それを微塵も感じさせない不良娘だ。
「いてぇだろ」
「答えないあんたが悪い」
 俺の抗議は儚くも一蹴された。さいですか。
 取り敢えず、俺は都合の悪いところは上手く隠し、話半分に潤色を繰り返し、あたかも筋道が通ったように説
明した。これでもかと誇張した。寝ぼけているはずなのに頭がよく回った。違うか。頭を回したから目が覚めて
きたのか。
 ハルヒに真実を話すことができないことに少し後ろめたくなった。いつか話せたらいいとも思った。その『い
つ』がいつかはわからないが。
「ふぅん。古泉くんが言っていた話とほとんど同じね。あの三人組はみくるちゃんの親戚の知り合いの人がやっ
てる演劇の団員、ってこと。前に駅前で見たときはそんなこと気付かなかったわ」
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:00:26.13 ID:gJSStUsL0
しえn
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:00:31.56 ID:kwM+8CXhO
しえん
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:01:01.93 ID:YtfXj/OT0
支援
184未来人に羽が生えて43/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 20:01:05.07 ID:yoBLlJzg0
 そりゃそうだろ。実際そんなことはないんだから。しかし驚いた。古泉も同じことを話していたなんて。偶然
とは恐ろしい。二つの捏造が事実を作り上げてしまった。
「ああ。朝比奈さんと藤原――ああ、お前がアヒルとか言っていた奴な――の間にはちっとばかし軋轢があった
んだ。お前が見たのは稽古の一シーンだ」
「わかってるわよ。台詞をなかなか覚えられないアヒルが、か弱いみくるちゃんに八つ当たりしていたんでしょ。
しょうもない男ね」俺はそこまで話してないぞ。古泉め尾鰭どころか羽まで付けやがって。「キョン、喜びなさ
い。少なくともあんたはあの男よりはマシな男よ。あたしが認めたげる」
「どうも。これほどまでに微妙の微妙たる微妙さを味わったことがないな」
「あたしが褒めてんのよ? それこそ微妙な反応ね。普通なら嬉しさのあまり窓から飛び降りても可笑しくないわ」
「その普通が可笑しいんだよ」
「そう? じゃあ、あんたの普通をあたしの普通に合わせなさい。そうすれば万事解決。生まれ変わったみたい
に世界が輝くから」
「そんな怪しい宗教の勧誘みたいなことはやめろ。杓子定規すぎる」
「あたしは定規なんかじゃ測れないわよ」
 上手いことを言ったつもりなのか、ハルヒは口角を上げて挑戦的な目で睨んでくる。
「……わかったよ。我が団長様は定規なんてもんじゃ測りきれないほど崇高で尊敬の対象。神聖なる存在ってこ
とだろ」
「キョン。あんたのそういう敬虔な態度は高く評価するけど、言い過ぎはよくないわ。わざとらしいのよ。面従
腹背が見え見え」
「まさか」ここで大げさな身振り手振りを付けた。「俺は見も心も涼宮ハルヒ様に捧げたつもりだぜ? そんな
御方からお褒めの言葉を頂いたんだ。歓喜のあまり噎び泣きそうなところを必死に耐えてるところだ」
「それが本当なら一生あたしの奴隷であることを誓いなさい。簡単なことよね。でも、もしそれが嘘だったら、
団長としてあんたに罰を下すわ。一生あたしの奴隷ね」
「どっちにしろ同じじゃねえか!」
 無意識の内に大声を出してしまった。寝ていた生徒が頭をもたげてこちらを窺っている。その目には「またか
よ」と言った生暖かいものが含まれていた。
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:01:29.28 ID:YtfXj/OT0
支援
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:01:28.91 ID:kwM+8CXhO
支援
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:02:01.11 ID:kwM+8CXhO
しえん
188未来人に羽が生えて44/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 20:02:06.85 ID:yoBLlJzg0
「うるさいわね。真面目に勉強している人に迷惑でしょ」
 普段無茶苦茶やっている奴に正論で諭されるとこんなにもむかつくものなのか。
 ううっ、と俺の口から呻き声が洩れる。
 そんな俺の様子を満足げに見てハルヒは、「はい。キョンはあたしの奴隷決定。一生そばにいて仕えるのよ。
命を狙われそうになったら壁になりなさい。あたしは勇ましいあんたの背中に身を隠すから」と言った。
 タイミングが悪かった。自習時間で私語を咎める教師はいない。教室は静まり返っていたのだ(俺たちを除い
て)。遮るものは何もない。当然のことながら、ハルヒの奴隷宣言はクラスメイトの耳に届いた。
 誰かが「プロポーズだ!」と言った。そこからはもうドミノ倒しかってくらいに次から次へと伝染していった。
「やっとかよ」「涼宮さん大胆なのね」「キョン死ね」「おめでとう!」「あぁ、羨ましいなぁ」「え? いま
さら?」「キョン禿げろ」とか。教室内は一瞬にして色めき立った。黄色い声がうっとうしい。
 誤解も甚だしい。誰が誰にプロポーズだ。どう考えてもそんなことがあるわけないだろう。俺個人の気持ちは
置いておくとしてだな、あのハルヒだぞ? 恋愛は精神病とか言う女子高生とは思えない偏屈だぞ? ありえな
い。お前らはハルヒをわかってない。ずっと一緒にいた俺が言うのだから間違いない。
 で、そもそもの根源のハルヒは「そそそんなことにゃいわよ!」と顔を紅潮させ、どもりながら反駁していた。
俺が言うのもどうかとは思うが、ハルヒそれはダメだ。火に油を注いでいるだけだ。奴らにしたらそれは照れ隠
しだと取られてしまう。もっと毅然に振舞って欲しい。
「おい、涼宮! キョンのどこが好きなんだよー?」と男子生徒。
「あんたには関係ないことでしょ!」と唾を飛ばすハルヒ。
 もう止めてくれ。どんな羞恥プレイだよ。俺の安穏なる睡眠学習はどこに行った。神は俺を見放したのか。と
いうか、神様のせいだよな、この状況。責任取ってどうにかしてくれ。
「キョンくん。涼宮さんを泣かせたら許さないからね」と女子生徒。
「うるせぇ!」と俺。
 この返答はまずかった。
 女子生徒どもは、「うわ、ひどっ!」「何様のつもり?」「絶対浮気するわね」「ほんとほんと節操なさそう
だもん」「涼宮さん頑張って」と、よってたかって俺を言葉の暴力で殴る蹴るを繰り返してくる。ひどいのはお
前らだ。
「かぁなぁしみの〜」歌うな、この野郎!
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:02:26.59 ID:YtfXj/OT0
支援
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:02:38.55 ID:kwM+8CXhO
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:02:42.70 ID:gJSStUsL0
しえn
192未来人に羽が生えて45/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 20:03:09.02 ID:yoBLlJzg0
 ハルヒの孤軍奮闘は虚しく、クラス全員は俺たちを肴のようにして弄んだ。悪意はなかったと思う。純粋に祝
福してくれているのだろう。それが余計にたちが悪かった
 放課後まで地獄だった。
 ハルヒはずっと机に突っ伏していた。たまにちらっと窺うと、耳が赤くなっていた。別の授業時間中、背後で
「ぐぅ」とかいう音が聞こえた。ハルヒも恥ずかしさのあまり壊れたのだろう。
 俺はハルヒの言葉通りに窓から飛び降りようと思った。その考えに至った経緯は全然違うが。


 放課後になり、俺とハルヒはそそくさと部室へ急いでいた。行き違う人の目線に怯えてしまう。なにか含まれ
ているんじゃないかって。ヒソヒソ話を目撃すると、回れ右をして退散したくなる。というか、何故ハルヒは俺
の横を歩く。好機の目を向けられているのに。
 もちろんそれらは考えすぎで、ようは疑心暗鬼というものだった。
 道すがら、
「みくるちゃんの背中にあった羽、すっごいリアルなセットだったわ」とハルヒは空気を読めてない、逆に言え
ば敢えてそうしているかと思うくらいに、ずれたことを言った。
 まあ、リアルに生えていたんだからな。
「でね。あたし閃いたのよ。まさしく天啓。ビビッてきたの。思いついたら居ても立ってもいられなくなって、
徹夜で作業しちゃったわ」
 なんと。こいつ寝ていなかったのか。あれか。朝の一挙手一投足は俗に言う寝不足ハイってやつか。
「あまり無理するなよ」俺は何の気なしに言った。
 ところがハルヒは、「わ、わかってるわよ。あんたに心配されるほど落ちぶれちゃいないわよ!」と過剰な反
応を示した。たぶん、朝の後遺症なんだろう。気付かない不利でもしておこう。
「なにしてたんだ?」
「みくるちゃんの衣装作り。昨日の天使のみくるちゃん、とんでも可愛かったじゃない。もうむしゃぶりつきた
いくらい。これを活かさない手はないって思ったのよ。だから、天使の衣装作ちゃった。つい」
 ハルヒは紙袋を持ち上げて、見せてきた。朝から何とは思っていたがそんなのが入っていたのか。
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:03:32.03 ID:YtfXj/OT0

194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:03:37.17 ID:kwM+8CXhO
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:04:11.68 ID:YtfXj/OT0
支援
196未来人に羽が生えて46/46  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 20:04:16.14 ID:yoBLlJzg0
「ついってな、お前。アグレッシブすぎる」
「あたしの長所の一つよ」ハルヒは傲岸に言う。否定はしない。
 ここで俺はどうするべきか迷った。
 朝比奈さんに天使のコスプレをさせるのは、昨日の事件を呼び起こさせるトラウマになりやしないだろうか。
なるだろうな。まだその件について朝比奈さんとは話すことはできていないが、ショックは残っているはずだ。
彼女に取ったら忘れたい記憶だろうし。
 ハルヒは無神経でもないし悪気があるわけでもないんだ。事情を知らないんだから。コスプレを止めようにも、
何故と訊かれてしまえば説明のしようがない。ハルヒのことだ。間違いなく朝比奈さんに天使のコスプレをさせ
てしまうだろう。
 部室に到着するまでに色々と考えあぐねたが、両方が立つ手段は思いつかなかった。
 ハルヒがドアノブに手をかけた。
 そして、固定されている螺子が吹っ飛んじまうくらいにドアを開け放つ。
「やっほー! みくるちゃん、いる?」
 室内には、割れた灰色の雲から漏れる陽光を背に、既にメイド服へと着替えを済まし、お茶の準備をしていた
朝比奈さんの姿があった。
「あ、こんにちは。涼宮さん。キョンくん」
 寝不足のせいか、朝比奈さんのみめ麗しい顔には薄っすらと隈が浮かんでいた。しかし、彼女はそんな疲労感
はおくびにも出さずに、にっこりと微笑した。その笑みから発せられるのは癒しとしか形容できない、温かいも
のだ。
 ハルヒは朝比奈さんに飛びつく。「お茶がこぼれちゃいますぅ!」とおたおたする朝比奈さん。二人は前世で
もそうであったかのように無邪気に戯れた。屈託のない笑いが室内に響く。
 俺の杞憂だったのかもしれない。
 天使はとても気丈だった。 

 
       〆       
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:04:17.05 ID:kwM+8CXhO
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:04:40.47 ID:YtfXj/OT0
支援
199未来人に羽が生えて  ◆FUYSNYFbfg :2008/12/25(木) 20:05:10.09 ID:yoBLlJzg0
終わりです。
支援に超絶感謝!
あと長時間占領ごめん。

久しぶりのSSはこうも書きにくいのかと痛感した。
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:05:49.02 ID:kwM+8CXhO
終わりかな?
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:06:19.56 ID:YtfXj/OT0
>>199
おっつん!
今から読むぜ!
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:06:51.24 ID:gJSStUsL0
なんだ、結局ハルヒかわいいで終ったのかwww
羽の謎も消し飛んだぜ。
GJ!
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:07:38.28 ID:kwM+8CXhO
>>199
乙!
俺も今から読む
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:11:41.16 ID:WfftITu90
乙!
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:12:38.78 ID:fZgMMrlMO
読んでる途中だけど、レス数が45から増えてないから投下終了かな、乙です
それともさるさん?
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:19:36.19 ID:YtfXj/OT0
リロードしる
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:21:06.43 ID:jwQtw/eLO
まさにパロディって感じだな。GJ!
あんたのSSはいつも安心して読めるから大好きだっぜ!
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:40:37.17 ID:yoBLlJzg0
>>207
まさか自分のことを覚えてくれている人がいるとは。
素直に嬉しいな
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 20:46:58.90 ID:kwM+8CXhO
読み終わった、やっぱ長編は読みごたえあるな!乙!
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:02:24.93 ID:YtfXj/OT0
クラスメイトに冷やかされてるあたりで2828したw
長編乙ですた。

211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:23:09.14 ID:NJe1tj5j0
保守
212 ◆.vuYn4TIKs :2008/12/25(木) 21:23:30.93 ID:cMGtyoqy0
保守ついでに投下行きます。クリスマスSSです。どうにか間に合ったかな?
213良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:24:45.24 ID:cMGtyoqy0
毎年飽きもせずによくもまぁイベントを盛り上げようとするもんだと思う。
まぁ? 世界を盛り上げるのがコイツの持って産まれた使命らしいから、そういう意味では職務を遂行しているだけだとも言うが、そんなもんに何の関係も無い俺が毎度毎度巻き込まれるのは一体どうしてだろうね?
そんな風に俺が疑問に思うのも詮無いことだと思う。だって、そうだろ? 誰だって両手に抱え切れない品物が乗ったカートを眺めれば溜息の一つも吐こうというもんだ。
某何でも取り揃う自称薬局(あのやたらと人名臭い看板掲げたあそこな)にて、パーティーグッズをキラキラした目で買い漁る団長様を見ながら俺は天井を見上げた。
今日も我らが涼宮ハルヒは元気一杯である。いや「今日も」だと語弊が有るな。「いつにもまして」に各自直しておいてくれるか?
さて、そんなこんなで何を隠す訳でも無い。本日は十二月二十四日。世間様で言う所のクリスマスイブって奴だ。
まぁ、俺みたいな無気力高校生にしてみたら、そんなイベントよりも午前中につつがなく終えた終業式の方が感慨深いのだが。
だがしかし、ハルヒがそんな穏やかな思考回路なんぞ持っている訳も無く。
鶴屋さんの家の一角を借り切って行われる「二学期お疲れクリスマスどんちゃんパーティー」をどう盛り上げようかで、今のコイツは子供のように目を輝かせている。
そんなハルヒの腕には「超宴会部長」と油性マジックで書かれた腕章が巻かれており……気合い十分なのはよく分かったよ。だがな、そんなに買い込んでも俺には手は二つしかない。いわんや、お前を入れても四本だ。
どう考えても持てる量じゃない事は目に見えている。それともアレか? お前には腕をもう二本、肩口から生やす機能でも搭載されてるのか?
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:25:09.54 ID:NJe1tj5j0
支援
215良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:26:24.05 ID:cMGtyoqy0
そんな俺の理路整然とした発言にもハルヒの奴は耳を貸しやがらねぇもんだから、必然コイツが次から次へとカートに投げ入れる商品を俺が一つ一つチェックして、棚に返す事になるんだが。
「ああっ! それはみくるちゃんに着て貰うんだから、返すんじゃない!」
……却下だ。
「むぅ……何よ!? ミニスカサンタコスはちゃっかりカートの奥に捻じ込んでるくせにっ!!」
うおっ、バレてたのか!? ……って、いやいや。なんでこれを着るのを朝比奈さんだと決め付けているんだ、お前は。
「なら、古泉君にでも着て貰おうか? 案外似合ったりしたりして!」
脳内で瞬時に作られた映像を頭を振って吹き飛ばす。悪いが、そんなもんは見たくねぇよ。
「なら、国木田?」
お前はなぜに男限定でこんなもんを着せようとするのか。ちょっと脳味噌をお手洗いでわしわしと水洗いしてくる事をオススメする。
「だって、そっちの方が面白いじゃない!!」
ハルヒが百Wの笑顔で俺に同意を求めてくるが、そんなおどろおどろしいモンを進んで見る趣味は俺には無い。
溜息を一つ。
「何よ何よ! 辛気臭い顔しちゃってさ! 高校二年生のクリスマスは一度きりなんだから、アンタももっとやる気出しなさい!」
ああ、そうだな。日本人の平均寿命近くまで生きると仮定した場合、後六十回程クリスマスと遭遇するのは避けられないのだが。つか、高校二年の、と仮定した場合どんなイベントであろうと一度きりだろう。
しかし、ここでそんな事を言ったところでハルヒの機嫌を損ねるだけなのは、これまでの経験からさしもの俺も理解している。
こういう時は「へいへい」とか適当に生返事を返しながら、ただじっと荷物持ちに徹しているのがハルヒと付き合う術だ。
ま、俺もこういう下らないお面やら被り物やらを眺めるだけなら案外嫌いではなく。暇を持て余すといった事は無かった訳で。
少しだけワクワクしているのも、正直な所では有ったりするんだ。
そんな事をハルヒの前で口に出したらここぞとばかりに、凄まじい買い物をさせられそうだから言わんけどな。
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:26:52.04 ID:NJe1tj5j0
しえん
217良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:28:19.16 ID:cMGtyoqy0
ちなみに、長門と朝比奈さん、それに古泉の三人は食材担当で別行動中だ。俺と古泉が別々なのはくじではなく、荷物持ちとして男手が必要だろうというハルヒなりの配慮である。
そしてハルヒは当然と「自分がパーティーグッズその他諸々の買い出しをする」と一方的に言い張り、これまた当然と俺を引き摺って買い出しに出たって訳で。
……頼むから引き摺るなら襟首じゃなくて、袖にして頂きたいものだ。シャツの首周りが伸びたらどこに賠償請求すれば良いんだろうな。古泉の機関とやらに言えば良いのか?
トナカイの衣装を手にうんうんと唸るハルヒを見ながら、朝比奈さんグループは今頃何をやっているんだろうな、と思いを馳せる。
ああ、向こうは両手に花か。チクショウ、古泉め。
鼻息荒くあーでもないこーでもないと商品を吟味するハルヒを遠目に見ながら、出来れば今回のクリスマスは平穏無事に過ごしたいなんて考えていた。
……オイ、そのちょんまげカツラは誰に付けさせるつもりだ、ハルヒよ。

「ねぇ、キョン。媚薬ってどこに置いてあるのかしら?」
……ねぇよ。こんなトコにゃ置いてない。
つか、そもそもそんなモン買ってどうする気だよ、お前。
「だって、お酒の席って言ったら目薬とか粉末状の睡眠薬とか媚薬とか、そういった物が登場するのはお約束じゃない!」
おーい、誰か金網の付いた救急車を今すぐ呼んでくれー。
「何をする気だ、この犯罪者予備軍が」
「大丈夫よ。コトに及ばなければみくるちゃんだってきっと笑って許してくれるわ!」
……被害者はコイツの頭の中で既に決まっているらしい。
いつぞやの、俺に向かって「お嫁に行けなくなったら貰ってくれますか?」と涙ながらに言う朝比奈さんの切なくも愛らしいお姿を思い出して、それも有りかな、と思ったりしないでもないが……って、待て待て、俺。
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:28:55.62 ID:NJe1tj5j0
しえn
219良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:30:09.23 ID:cMGtyoqy0
「あのな、ハルヒ。媚薬は勿論だが、睡眠薬なんてのは医師の処方箋が必要な代物だから、売ってないんだよ。諦めて普通のクリスマスパーティをやろうぜ?」
「普通のなんて、つまんないじゃない! アタシ達SOS団が主催するからには、ド派手に打ち上げないといけないのよ!」
どこから来るんだ、その義務感は?
そんな疑問を持った俺を置いて、ハルヒは薬売り場へと大股で突き進む。ああ、アイツを野放しにしておいたら、次は誰に迷惑をかけるのか。
なんで俺はよく分からない品物で一杯になったカートを押してハルヒを追いかけなきゃならんのだろうね。
既に気分は子供向け体操番組に出て来るお兄さんの心境である。頼むから厄介事を次から次へと起こしてくれるなよ、団長様。

ハルヒがカートにぶち込んだ「睡眠導入剤」を棚に返す時に、少し勿体無いかも知れないと思った自分に自己嫌悪だ。
全く、我ながら俗物だと思う。

さて、一通りと言わず三度程店内を回った所でようやく我らがお姫様はご満足されたようだ。俺はと言うと倦怠感でいっぱいである。今度から、ハルヒのお守りは古泉にも半分ほど擦り付けてやろうと思う程には疲れていた訳で。
「うん、こんなものね。さぁ、キョン。きりきりレジに向かいなさい!」
ジェンガみたいに不安定なカートを引き摺って速度が出る訳など無いのだから、急かすのはどうか勘弁して貰えないだろうか。
「結構買ったわね。幾らくらいになるのかしら?」
間違い無く諭吉さんにご登場頂く必要が有るだろう。つか、絶対買い過ぎだ。こんなに沢山のパーティーグッズ恐らく使い切れねぇぞ。
「良いのよ! 余った分は来年使えば良いんだから」
そういう問題では無いのだが、ここでコイツに何を言った所で馬の耳に念仏、ハルヒに説教。
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:30:28.90 ID:NJe1tj5j0
しえ
221良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:31:53.97 ID:cMGtyoqy0
「心配しないでよ。割り勘だから」
そう言ったハルヒだったが、レジで請求金額を示された時にはさすがに真顔になっていた。無理も無い。店員さんですら金額を告げた時に引いてたぐらいだからな。
「えっと、キョン?」
慌てて振り返るハルヒは、中々見れない顔をしていた。目に「調子に乗ってやり過ぎた」って書いてあるぞ。
「……俺が出すよ。こんな事だろうと思ってちょいと多めに持ってきた」
俺は懐から過去に類を見ないほどぱんぱんに張った財布を取り出した。全く、古泉に感謝である。
はい、ちょいと回想。

校舎のテラスには何度も来ているが、さすがに十二月も後半となれば吹きすさぶ風が身に凍みる。しかしながら、俺とコイツがのんびり歓談出来る場所なんざ数えるほども有りはしない。
安っぽい紙コップに入ったコーヒーだけが現在唯一の暖である。ソイツで両手を温めながら、俺の目は宙を泳いでいた。
「本当に……良いのか?」
そう言った俺の目の前の優男は封筒を差し出していた。中身なんざ見ないでも分かる。この厚みはプリントとか手紙とか、そういった類の物で形成されるものではないからな。
「ええ。今日はクリスマスイヴですから。何かと入り用でしょう?」
「……いや、それにしたって多過ぎるだろ」
「まぁ、一般の高校生が持つにしては確かに多い事は認めますが。しかし、貴方は『一般の高校生』ではないのですよ。そろそろ、自覚して下さいませんか?」
古泉は俺の手に強引にその封筒を握らせると、にやりと笑った。
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:32:04.96 ID:fZgMMrlMO
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:32:11.58 ID:gJSStUsL0
しえn
224良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:33:26.51 ID:cMGtyoqy0
「貴方の双肩には世界がかかっているのですから。この程度の出費で世界が平穏無事足り得るのならば、むしろ安いものです」
ずっしりと右手にかかる重み。オイオイ。冗談になってないぞ、この金額。
「ええ。僕達にとっては冗談でも何でも有りませんからね」
さらりと言う古泉は、やはりどこか俺達「普通の高校生」とは一線を隔しているのだな、と思う。
「それは持っておいて下さい。今日使い切れなかった分も返して頂かなくても結構です。毎週の喫茶店代とか、色々馬鹿にならないでしょう?」
有無を言わさぬ口調。こいつは返そうとしても、きっと受け取ってくれねぇな。
「……分かったよ。ありがたく頂いておく。ただ、使わなかった分は卒業時に返すぞ。そういう事で良いな?」
「律儀ですね」
くすりと笑う古泉。
「俺としちゃ、ハルヒを出汁にお前らに小遣いせびってるみたいであんまり気分は良くないんだよ。……レシートとかこっちで勝手に纏めとくからな」
「分かりました。そういう事でしたら……おっと忘れる所でした」
そう言って超能力者は懐から何やら取り出す。なんだ? 今度は何が出て来るって言うんだ?
「こちらはクレジットカードです。一応、限度無制限なので、手持ちで足りないような買い物をする場合にはコレを使って下さい。それと……」
古泉が出したのは真っ黒のカード。……ブラックカードを持ち歩いてる高校生なんざ、ゲームの世界でしか見た事無いぞ……。
「そしてこちらは僕からのプレゼントになります。クリスマスという事なので、森さんに頼んでリボンを巻いて頂きました。こういった物は女性の方がお上手ですね」
……ホテルの鍵?
225良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:36:39.96 ID:cMGtyoqy0
「ああ、本当はカードキーなのですが、こちらの方が雰囲気が出ると思いまして。フロントでそれを見せて頂ければ正規のキーとレストランでの食事券が貰える筈です」
……コレ、都内の某高級ホテルだよな。一泊がお父さんの月収くらいするトコだよな。
「いえ、最上階のスイートを取りましたので、もう少しします」
そう、何の戸惑いも無く口走る古泉。オイオイ。こんなもん、俺に渡してどうする気だよ?
「さぁ? どうにかするのは貴方なので、僕にはなんとも言えませんね」
手を口元に当ててくすくすと、心底楽しそうに古泉は笑う。
「では、ご武運を」
何と戦うんだよ、俺は。
「少女のプライドと、でしょうか。ああ、それはそうと……」
俺から離れていこうとした超能力少年が振り返る。そして、まるで同年代の友人にするように、微笑んだ。

「楽しい夜を。メリークリスマス、イヴ」
いつもの事だが一々芝居がかった奴である。

かくて、俺の手には封筒とカードとリボンが巻かれたホテルの鍵が残された訳だ。この寒空に、懐ばっかしが暖かいのだがそんなモンで暖など取れる筈も無く。
空になった紙コップをゴミ箱に投げ込むと、俺は古泉の後を追うように校舎へと引き返した。

以上、回想終了。
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:37:18.36 ID:YtfXj/OT0
今からバイトなので一回だけしかできんが支援。
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:37:35.55 ID:fZgMMrlMO
228良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:38:13.40 ID:cMGtyoqy0
「キョンのくせに、エラく気前が良いじゃない」
「ちょっとした臨時収入が有ったんだよ」
帰り道。俺とハルヒは両手に袋を抱えて並んで歩いていた。
「ちょっとした、って?」
「古泉に、時間に余裕の無い俺みたいな奴にも出来るバイトを紹介して貰ってな」
まぁ、この言い方で間違ってはいないだろう。うん、嘘は言っていない。
「ふーん……それにしたって、全額払う必要は無いのよ? さっきも言ったけどアタシだって半分払うし」
やけにしおらしいハルヒ。そんなにレジの前でやらかした失態が恥ずかしかったのだろうか。コイツらしくもない。
「いんや。半分なら古泉に既に出させたからな。心配要らねーよ」
そう言って俺は……ハルヒの頭を叩こうとしたが、手がレジ袋で埋まっている事に気付く。
「でも、ほとんどアタシの買い物だったし、出さない訳にもいかないじゃない?」
ふむ。ハルヒの話にも一理有る。
「なら、さ。お前は今夜、俺がびっくりするくらい着飾って来てくれよ」
俺もそうだが、この金を出した古泉も男だ。美少女が綺麗な衣装着てお酌をしてくれれば冥利に尽きようというものだろう。
「それで、チャラだ」
俺は笑った。顔を赤く染めるハルヒがやけに可笑しくて、笑うのを止められなかった。
クリスマスくらいこんな展開でも、まぁ、良いだろ?

「ところで、さっき買った中に入ってた『眠々打破』とか『無水カフェイン』とかはなんだよ?」
「決まってんじゃない! 今年こそサンタクロースの化けの皮を剥いでやるのよ!」
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:38:28.28 ID:WfftITu90
支援
230良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:40:44.49 ID:cMGtyoqy0
さて、ここまで読んで「ああ、普通の甘いSSか」とか思ったそこのアンタ。俺もその方向でお願いしたいのはやぶさかではないのだが、いかんせんこのSSを書いている書き手は根性が捻くれ曲がっちまってる。
だから真に残念ながら、コイツはクリスマスパーティーの話じゃぁ無いんだ。
なら、何の話かって?
そう問われると俺にも答えるのが難しいんだが……まぁ、一言で言うならばギャグコメディと、そう言う他無いだろう。
恋愛要素なんて、俺に期待するだけ無駄だと言うのは、周知の所であるだけに辛い所である。


十二月二十五日。午前零時。時計の長針と短針がカチリと重る音と共にソイツはやってきた。
俺はと言うとパーティーでさんざ飲まされた酒がようやく体から抜け切り、さて寝るかと布団に潜り込んだ丁度そんな時だったもんだから、口をあんぐりと馬鹿みたいに広げるしかなく。
クリスマスパーティーでは散々遊んだだろうが。もう、十分だろ。疲れてるんだよ。あんだけ俺を振り回しておいて、まだお前は何がしたいんだよ。

……長門よ?
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:40:53.66 ID:WfftITu90
支援
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:41:38.17 ID:fZgMMrlMO
あ゛う゛、また辛い展開ぽい
プリン向きじゃないのかと思ったが今無いんだっけ?
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:42:37.14 ID:NJe1tj5j0
ないっぽいね
234良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:42:42.23 ID:cMGtyoqy0
「違う。今の私は長門有希ではない」
なら、どちら様でしょうか?
「そこは見た目で悟って欲しく思う。貴方が鈍いのは知っているが、この格好をした私を見て、私が何者か分からないのならば、脳内回路の神経伝達になんらかの障害が入っていると推測する」
そういう長門はもこもことした茶色の着ぐるみに身を包み、頭には角の付いたカチューシャ。首にはカウベルって言うのか?大きな鈴の付いた首輪をして……極め付けはピエロがするような赤っ鼻。
そして今夜はクリスマス。もう、言わずともお分かりだろう。
「……トナカイ?」
「正解」
長門が少しだけ頷いて、首に付けた鈴がガランゴロンと鳴る。おい、深夜に近所迷惑だろうが。
「問題無い。良い子はもう寝ている時間」
そういう問題じゃなくて、だな……。
「それと私はトナカイはトナカイでも只のトナカイではない。赤鼻のトナカイ。赤鼻はソリを先陣を切って引く使命を与えられた、トナカイの中のトナカイにのみ許された栄誉の印。
言わば、隊長機に付いているツノと同じ」
……勝手にしてくれよ、もう。分かったから帰ってくれ。俺は寝るぞ。
「それは困る」
深夜に突然自室に現れた宇宙人相手に困ってんのはむしろ、俺の方なんだがな。
「貴方には子供達にプレゼントを運ぶという使命が有る。貴方がここで職務を放棄した場合、たくさんの子供達が夢を失う結果となる。それは私も寂しいと感じている」
……よし、寝る前になってようやくタイトルに合点がいった。
つまり、今回のSSは俺がサンタクロースになるって話なんだな?
「そう」
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:43:13.96 ID:WfftITu90
支援
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:43:14.61 ID:fZgMMrlMO
と思ったらおや?
わっふる!?
237良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:44:29.77 ID:cMGtyoqy0
長門、一つだけ言わせて貰っても良いか?
「なに?」
そう言った長門は吸い込まれちまいそうなブラックホールのあの瞳で俺を見つめてきて。ああ、柄にも無くワクワクしてるんだな、って気付いちまった。
そして、もう一つ。その瞳から気付いちまった事が有って。

コイツは……長門はサンタクロースを信じているんだって。サンタクロースは両親の仕業だなんて、知らない子供なんだって。

子供の夢を壊すなんて事は、たとえ核ミサイルの発射スイッチを押そうが絶対にやってはいけない事であって。
ならさ。俺達みたいなクリスマスの裏側に気付いちまった奴らは、夢を演出する側に回らなきゃいけないんじゃないだろうか。
だって仕方ないだろ? 俺達はその夢を見るキラキラした瞳に、なくしちまったモンを重ね合わせて少しだけしあわせを感じちまうんだから。
……だから、俺はその辺の言葉を全部飲み込んで。子供の夢と夜を守る赤服爺さんになる覚悟を決めた。

「俺の衣装はどこだ?」
長門が瞳の色を一層深くしたのを、俺は見逃さなかった。

ああ、チクショウ。なんで俺はこんな深夜に残業しなきゃなんねぇんだろうね。アレか。これもハルヒに関わっちまった奴の規定事項なんだろうか。

やれやれ。
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:44:36.52 ID:WfftITu90
支援
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:46:14.59 ID:fZgMMrlMO
わっふるではなさそうだが支援
240良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:47:00.03 ID:cMGtyoqy0
「勘違いしないで欲しい」
サンタ服を着る俺に背中を向けた長門が話しかける。うん? 俺が何を勘違いしてるって?
「いくら私でもサンタクロースが親の演技だという事は知っている」
オイ。知ってんなら、俺がサンタの代役をする必要なんて無いだろうが。
「一年間良い子にしていた子供にプレゼントを贈るのは親の義務と聞いた。これは言わばその時の為の予行演習」
真面目腐った声でそう言う長門。……俺の決意と今脱いだパジャマを返せ。俺は寝る。
「無理。このSSの作者が書いた他の某SSで貴方はサンタクロースになる事を決意した。それが貴方がサンタクロースに扮する理由。私がトナカイになる理由」
「いや、今回はハルヒ生きてるからな? ピンピンしてるからな?」
「……信じて」
そう言った長門の手の中で俺のパジャマがさらさらと光の粒になっていく……って何やってんだ、オマエ!!
「……情報操作?」
そう言って数ミリほど首を傾げる赤鼻のトナカイ。
「ちなみに先程、貴方の所有する服は今着ている物を除いて全て転送した」
長門の台詞に俺は慌ててタンスを開ける。マジかよ!下着に至るまで一枚も残ってねぇじゃねぇか!
「恐らく今夜が無事に終了すれば、自動的に衣服の類は貴方の部屋に返ってくると思われる」
いや、お前がやったんだから「思われる」じゃダメだろうが。
不思議そうに俺を見てもダメだぞ。今すぐ返せ。
「無理」
なぜにっ!?
「転送する際にコマンドの中に『貴方がサンタクロースとしての使命を果たした場合』という一文を入れておいた。既に私にはどうにもならない」

話を進めるには既定事項で攻めるのが一番手っ取り早いという話。
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:47:08.92 ID:WfftITu90
支援
242良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:49:11.80 ID:cMGtyoqy0
さて、そんなこんなで俺は今、サンタ衣装を身に纏って長門が引くソリに乗って大空を遊泳している。……非常に寒い。
真冬の深夜の空である。しかも長門が結構なスピードを出すもんだから、風が半端無く体を襲う。
「まっかなおはっなーのー♪ とっなかっいさっんはー♪」
抑揚も何も無くそう歌いながら、宇宙人は空を走る。ああ、こいつには気温とかまるで関係無いんだっけ? 寒いのは俺だけか。チックショウ、今頃は布団の中でぬくぬくと夢の中だった筈なのに。
誰が世界をこんな非常識な物に作り変えたんだ! ってハルヒに決まってんじゃねぇか、俺。
ソリから少しだけ顔を出して眼下の宝石箱をひっくり返したようにきらびやかな街を見下ろす。そう言えばクリスマスだったかとか、まるでETみたいだなとか、そんな事を考える余裕も上下の歯が鳴らすカチカチという音が根こそぎ奪い去っちまうのが切ないね。
「おい、長門! どこへ向かってるんだ!」
俺は前方で歌い続ける運転手に声を掛ける。
「私一人がソリを引くのでは今夜のミッションは荷が重いと判断した。先ずはトナカイを調達しに行こうと考えている」
……動物園にでも行く気だろうか、この宇宙人は?

「……勘弁して頂きたいですね」
日頃見た事が無い程に不機嫌な顔をしている超能力者。スマン、古泉。文句なら全部長門に言ってくれないか?
「ふにゅぅぅ、もう朝ですかぁ? 真っ暗ですよぉ?」
トナカイ姿で目を擦る朝比奈さん。そのお姿もお美しいのですが、もう、本当に何と言えば良いか……申し訳有りませんとしか言えない。
「役者は揃った」
満足気に……失礼。いつも通りに無表情な長門はそう言うと俺達に号を出した。
「……出発進行」
こうしてSOS団改めサンタクロースと愉快な仲間達は聖夜の空へと飛び出した。
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:49:58.63 ID:NJe1tj5j0
しえん
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:50:17.10 ID:WfftITu90
支援
245良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:51:23.05 ID:cMGtyoqy0
「一つ一つのプログラムが甘い。側面部の空間閉鎖も情報封鎖も甘い。だから私に気付かれる。侵入を許す」
孤児院の壁に大穴を空けて呟く長門。……お前、帰る時にコレちゃんと直しておけよ?
「まぁ、やっている事はそれ程悪い事ではないのが救いでしょうか?」
古泉が呟く。朝比奈さんはうつらうつらと首から上で小船を漕いでいる。この寒空で寝たら冗談ではなく命の危機ですから、起きて下さい、朝比奈さん?

とこんな感じで俺達、俄かサンタクロース軍団は何の問題も無くプレゼントを配っていき、ついに最後のお宅訪問と相成った!
ってか、このプレゼントどこから湧いて出たんだ、長門?
「……おもちゃ屋?」
いや、それは分かるんだよ? そのおもちゃ屋で購入する為の資金の出所を聞いているんであってだな……?
まさか、宇宙的能力で盗ったんじゃないだろうな?
「そんな事はしていない。これは正当に金銭を支払って購入した物。子供達が罪に問われる事も無い」
サンタクロースの贈り物が窃盗した物なんて洒落にならんとか、そういった事はさすがに宇宙人でも理解しているらしい。
「問題無い。今の地球の技術レベルではあのお札を偽造されたものだと見抜く事は出来ない」
……聞かなきゃ良かった。
「その節は、機関も大変お世話になっています。長門さん、いつもすいません」
「……いい」
古泉が一人造幣局に向かって頭を下げる。……ってちょっと待て。俺、昨日の昼にお前から金を預かったぞ!?
「既に薬局で一部を使いましたよね?」
超能力者がニヤリと笑った。
こういう場合は俺も共犯になってしまうのだろうか?
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:51:56.09 ID:fZgMMrlMO
しえn
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:52:28.40 ID:NJe1tj5j0
支援
248良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:53:14.42 ID:cMGtyoqy0
さて、という訳でサンタクロースとしての仕事もコレで最後である。ああ、長かった。
で、コレは誰の家なんだ? なんで最後だけ孤児院じゃなくて一般のお宅なんだ?
……嫌な予感がするが、ぐっと飲み込んで表札を検めてみる。
「涼宮」
こんなのが俺にとってのお約束である。

時刻は午前二時半。草木も眠る丑三つ時。俺達はハルヒの実家の前に居た。
サンタクロースが一人と、トナカイが三匹。他人様が見たら半分の確率で和み、また、半分の確率で通報されるであろう。
「……部屋まで侵入しなくても、玄関辺りに置いておけば良いんじゃないのか?」
長門の侵入プランを聞いた俺が漏らした感想である。
「それではダメ」
「なんでだよ?」
「サンタクロースは枕元に置かれた靴下にプレゼントを仕込むのが定番」
「お約束って奴ですか」
立ったまま眠っている朝比奈さんを支えたまま古泉が得心したように頷く。オイ、古泉。どうでも良いが朝比奈さんを支える役を俺と変わらないか?
「貴方には侵入するという使命が有る。朝比奈みくるは古泉一樹に任せておくべき」
「おやおや、これは思わぬ所でフラグ発生ですね」
立ってないからな、そんなもん。
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:54:47.12 ID:NJe1tj5j0
しえん
250良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:55:29.74 ID:cMGtyoqy0
「……しまった」
ハルヒの家を見上げながら、そう呟いたのはトナカイ隊長である。
「ん? どうしたんだ、長門?」
「たった今、涼宮ハルヒの室内をスキャンした。結論から言うと、涼宮ハルヒは起きている」
な、なんだってー!!
「キョン君。リアクションが芝居がかってますよ?」
いつも芝居してるみたいな超能力者に言われてもな……。
反論しようとして、そこで俺は昨日の昼の一幕を思い出した。

「ところで、さっき買った中に入ってた『眠々打破』とか『無水カフェイン』とかはなんだよ?」
「決まってんじゃない! 今年こそサンタクロースの化けの皮を剥いでやるのよ!」

……ハルヒの奴、眠る気ゼロだ。
これは本格的にヤバいんじゃないか? 主に俺の服の行方だが。
こんだけ苦労させておいて、最後の最後で手詰まりなんざ、さすがは団長様と言うか。
やってくれるぜ、ハルヒ。
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:55:38.06 ID:fZgMMrlMO
ちょっと眠くなってきた
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:56:16.25 ID:WfftITu90
支援
253良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:56:44.40 ID:cMGtyoqy0
「抜き足、差し足、忍び足、っと」
さて、なぜに俺は大きな袋を肩口に背負い、忍者の真似事をせねばならんのだろうか。もうお分かりだろう。現在、俺はハルヒ宅に不法侵入を試みている。その真っ最中だ。
『そこから真っ直ぐ行った所に階段が有る筈……頑張って欲しい、スネーク』
耳に付けたインカムから長門の声が響く。……誰がスネークだ。百歩譲ってもそこはサンタクロースだろ?
まぁ、とにかく長門に寄る的確な指示により、俺は何事も無くハルヒの部屋の前まで来た訳だ。
ま、薄暗いせいで何度か足やら腕やらはぶつけたけどな。小指を打った時は悶絶しながらも声を殺すのに苦労した。
……で、どうするんだよ、これから?

『貴方に託す』
投げるな、長門。

時刻は早朝三時半。俺達はハルヒの家の庭でコタツを囲んでカードゲームなんかをやっていたりする訳だ。
しっかし、情報操作って便利だな。某四次元ポケットよりももしかしたら万能なんじゃないだろうか?
「えっと……残りが一枚になったらウノって言えば良いんですよね?」
「はい、そうです朝比奈さん。では、ドロー4で……色選択は」
「必要有りませんよ、キョン君。同じくドロー4です。色は……」
「……ドロー4。指定は赤。朝比奈みくる。速やかに山札から十二枚引くべき」
「ひ、ひぃ〜ん!」
「トナカイだけに『ヒヒーン』ですか」
「いや『ヒヒーン』は馬だろ」
って、俺達は他人様の庭先で何をやっているんだろうね?
「問題無い。光、音、風その他諸々を遮蔽するシールドを展開してある……ウノ」
ああ、道理で寒くない訳だ。じゃなくて、だな。
「……俺にそのシールドとやらを張ればハルヒに見えないし、聞こえないんじゃないのか……ドロー2」
「その方法が有りましたね……ドロー4」
「……うかつ。その方法を失念していた」
長門は山札からカードを六枚を引きながら、ぽつりと呟いた。
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:58:25.56 ID:NJe1tj5j0
支援
255良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 21:58:42.08 ID:cMGtyoqy0
「実はその服には既に光学迷彩が施してある」
マジでか!?
「本当。試しに『テクマクマ○コンテクマクマ○コン透明人間になーれ』と天高く叫んでみて欲しい」
……公開羞恥プレイか。なんでそんな呪文を設定する必要が有ったんだ、長門?
「俺の正義が真っ赤に燃える! サンタレッド、推参! とかでも良くないですか?」
お前も何を口走ってんだ、古泉?
「……採用」
採用、じゃない! 大体、サンタにブルーとかピンクとかいないだろうが!! って俺のツッコミも的外れ極まりないな。
「……恥ずかしがっていては貴方の衣類は帰ってこない」
……間違いない。この宇宙人、俺をおちょくって楽しんでやがる。表情はちっとも変わらないが俺には分かる。
つか、悪意以外の何物でもないだろ。
「あーっ、チクショウ! 分かったよやれば良いんだろ、やれば! 謹んでやらせて頂きますよ!」
嬉しくて涙が出そうだね。……古泉、後で覚えてろよ。

「俺の正義が真っ赤に燃える! サンタレッド、爆☆誕!!」

「……台詞を間違えたので、もう一回」
「なんだかんだ言って、キョン君もノリノリじゃないですか?」
……地面が俺の拳の形に陥没したのは言うまでも無い。
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 21:59:28.40 ID:fZgMMrlMO
C
257良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 22:00:34.58 ID:cMGtyoqy0
公開羞恥プレイをどうにか済ませた俺を待っていたものは三人の奇異の視線だった。
「うかつ」
長門が呟く。おい、どうした? 俺の姿はこれで見えなくなったんじゃないのか?
「これは……ちょっとしたホラーですね……」
「キョン君……落胆しないで聞いて欲しいんだけど……」
朝比奈さんが申し訳無さそうに俺に向かって口を開く。なんだ? もしかして見えてんのか!? 服だけ透明になって素っ裸を晒してるとかそういうオチなのか!?
「ううん、体は完全に消えてるんだけど……」

「髭だけ、消えてないの」
オウ、シュール。

「って事は何か? 今の俺は髭だけ宙に浮いてるびっくりどっきり人間なのか?」
「……そうなる」
いや「そうなる」じゃなくて何とかこの髭を消せ。っつーか付け髭だし邪魔なだけだから取るぞ、コレ……って痛い!
「無理。それは日の出まで貴方の皮膚に癒着するように出来ている。そう作る事にばかり気を取られて、光学迷彩を施すのを忘れていた。これは私のミス」
……長門。今からでも遅くは無いぞ? この髭を外すか見えなくさせるかしてくれないか?
「出来ない」
なんでだよ!?
「面白い、から?」
宇宙人にも情緒が芽生えてきた兆しを見て取る事が出来て嬉しい限りである。
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:01:22.15 ID:NJe1tj5j0
支援
259良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 22:01:59.74 ID:cMGtyoqy0
で、ハルヒの部屋の前で立ち尽くすシーンに戻る。さて、どうすっかな。
今の俺は丸見えでは無いにしろ、宙を浮遊する白髭お化けである。そんなもんにばったり出くわした日には、あのハルヒの事だ。髭目掛けてドロップキックが飛んで来る事は想像に難くなく。
ハルヒの部屋の扉からは明かりが漏れている訳ではない。外から確認した時にも部屋の電気は消えていた事は確認済みだ。
となればハルヒは布団でも被ってサンタクロースの侵入を今や遅しと待ち構えているのだろうか?
ふむ、コイツは難儀だな。
と、考えてポケットを探る。そこに有ったのは某ホテルの鍵だった。
……こんなもん、今の状況で何の役に立つって言うんだ。と、そこまで考えて俺は思い直す。
待てよ……これをああ使えば……そうだ。上手くいけばハルヒを出し抜く事だって出来るんじゃないか?

刀に頼っているようでは剣とは言えぬ。光学迷彩に頼るばかりではサンタクロースとは言えないのかも知れない。
その手に有るもの、全てを駆使してこそ、真のサンタクロースである。ま、そんなもんになりたくもないけどな。

俺は扉が開いた時に丁度死角となる位置に潜むと、ミッションを開始した。
260良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 22:02:53.75 ID:cMGtyoqy0
俺は鎖に繋がれたその鍵を階段に向かって放り投げた。
ちゃりんちゃりんと音を立てて階下に落ちていく鍵。その音は寝静まった家の中によく響いて。

「来たわねっ! 今年こそ年貢の納め時よっ!!」
勢い良く扉が開いて室内からバッファローのようにハルヒが飛び出した。そのままの勢いで階下へと猛ダッシュをする少女。

まったく、行動が読みやすい奴である。が、今回ばかりはそこに救われたと言わざるを得まい。俺は速やかにハルヒの部屋へと侵入すると、その室内を物色する。
初めて入ったハルヒの部屋は、何と言うか想像よりも余程女の子らしい、整った落ち着いた部屋だった。暗いので良くは分からないが、少なくとも俺の部屋みたいに脱ぎ散らかされた制服が床を占領していたりしないし、大きな鏡も置いてある。
っと、こんな事を中継してる場合じゃないな。さっさと、用を済ませて退散するとしよう。
俺は闇に慣れた目でベッドを探す。枕元にプレゼントを置くのがセオリーなんだっけ? 枕元……枕元……っと。お、大きな靴下が置いてあるじゃないか。
クリスマス用のアレかね。へぇ、アイツにも可愛い一面が有るんだな、こんなもんをわざわざ購入するなんて。
ま、それに免じてこの中にプレゼントを入れてやるとするかね。

思えば俺は浅はかだったのだ。あのハルヒが。何の狙いもてらいも無く、こんなものを枕元に吊るしておく訳が無いのだと、気付いた時には手遅れだった。

がらんごろん!
クリスマスの夜にけたたましくカウベルが鳴った。紐でも括ってあったのだろう。靴下が動いた時点で鳴るように作られた、ごくごく単純なブービートラップ。
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:03:11.65 ID:NJe1tj5j0
支援
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:03:43.68 ID:WfftITu90
支援
263良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 22:04:44.71 ID:cMGtyoqy0
「こっちは囮って訳!? ちっ、サンタの分際で洒落た真似してくれるじゃないっ!!」
ハルヒが叫んでこっちに向かって引き返してくる。オイオイ、ヤバいぞ、長門!非常事態だ! 至急応援を送れ!!
『……分かった。少し待って欲しい。後、一つだけ伝え忘れていた事が有る』
何だよ! こっちは非常事態だって言ってるだろ!!
『透明になっていられる時間は三分間。大分前から貴方の姿は丸見えになっている』
オウ、ノウ。なんてこったい。

どうしようか。どうしようもない。出入り口は一つしかなくて。そしてその出入り口には今、まさにハルヒが向かっているのだから。
下手に逃げ出そうとすれば廊下でドロップキックが待ち構えている。
俺、絶対絶命。
どうする? 何て言って言い訳するんだよ、俺!?
今年一年良い子に過ごしたハルヒにプレゼントを届けに来た!? いやいや、変態の罵倒と共にぶっ殺されるのは間違いない!!
……俺だって、こんな事したくてした訳じゃねぇ、っつーの、チクショウ!
ああ、もう。どうすれば良いんだよ!

264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:05:20.24 ID:gJSStUsL0
しえn
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:05:31.07 ID:fZgMMrlMO
支援
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:05:31.63 ID:WfftITu90
支援
267良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 22:05:35.95 ID:cMGtyoqy0
そんな逡巡をする俺の、居る部屋の戸口に息せき切らせたハルヒが現れるのは当然で。
「さぁ、今年こそアンタの正体を白日の下に晒してやるわっ!!」
ハルヒがじりじりと詰め寄る。俺は少しづつ窓際に追いやられる。暗闇でお互い顔が確認出来ないのがせめてもの救いであるが、それも時間の問題。
とっ捕まってしまえば終わりであり、そして、今の俺にはこの状況から逃げ出す術が見つからなかった。
チックショウ! 長門、応援はまだか!!
窓に後ろ手を付く。ひんやりとした外気が硝子を伝って俺の手の平に届く。もう、後ろに下がる事も出来ない。

その時だった。
『少年、バックトゥザフューチャー2は好きかな?』
突然、インカムの向こうから聞いた事も無いしゃがれた声が聞こえてきたのは。

俺はその言葉の意味を自分でもびっくりするくらいに的確に悟ると、後ろ手で窓の鍵を開けた。
「何っ!?」
ハルヒが俺の意図に気付く。しかし、飛び掛ってくるよりも俺が飛び出す方が早い。

「メリークリスマス!」

俺はなるべく低い声を作ってそう叫ぶと、ハルヒの部屋の窓を開けてその向こうに何の躊躇いも無く飛び出した! 俺の持っていた袋の裾をハルヒが掴んだが、そんなモンはくれてやるよっ!
間一髪、俺はハルヒの部屋から逃げおおせる事に成功したのだった。
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:05:53.02 ID:NJe1tj5j0
支援
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:05:57.88 ID:WfftITu90
支援
270良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 22:06:48.49 ID:cMGtyoqy0
しっかしね。アンタが来てくれるとは思わなかったよ。
「ほっほっほ、そうかいそうかい。間一髪じゃったな、少年よ」
まぁ? アイツが実存を願っているものってのは宇宙人や未来人でさえ居るんだから、考えてみたらアンタが存在してない訳も無いんだが。
「そうじゃなぁ、ほっほっほ」
だけど、助かったよ。今回の事に関しては本気で礼を言わせて貰う。
「いやいや、助かったのはワシの方じゃよ。お前さん達のお陰で仕事が少し減ったわい」
ああ……ならそれで、俺が貴方を信じてなかったって事もチャラにして貰えませんかね?
「勿論、良いとも」
そう言って俺の頭をぽんぽんと叩く手は大きく。そして暖かかった。
「さて……ワシは太陽が出て来るまでにもう一仕事しなければならんのだが……最近は重い物を持つのが多少厳しくなってきてのぅ。ここで知り合ったのも他生の縁だと思うて、ワシの仕事を手伝ってくれんか?」
赤と白の服がこれほど似合う爺さんは他にいないだろう。そして、ここでこの人の頼みを断れる奴も、そういないとは思うんだ。

「手伝ってくれた暁には、プレゼントも用意しとるぞぃ?」
そう言って本家本元サンタクロースは目を半月型にしてにっこりと微笑んだ。
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:07:10.33 ID:WfftITu90
支援
272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:07:26.64 ID:NJe1tj5j0
シエン
273良い子の味方は聖夜に踊る:2008/12/25(木) 22:08:02.15 ID:cMGtyoqy0
「ちょっと、キョン!」
朝からハルヒの大声で目を覚ます。……なんだよ、こんな早朝から電話なんて。俺は昨晩遅くまで起きてたんだ。頼むから、寝かせてくれないか?
「そんな事言ってる場合じゃないわよ! 今年も出たのよ!!」
……何がだよ?
「サンタに決まってんじゃない!!」
ああ、お前が阿呆なのはよく分かったから耳元で怒鳴るな。サンタクロースなんて空想の産物なんだよ。
そんなものは居る訳は無い。現実を見ろ。
「いいえ、居るわっ! 今回は証拠だって有るのよ! 大きな袋とサンタが宿泊していたと思われるホテルの鍵が!!」
あ……そう言えば回収出来んかったな、アレ。
「そうと決まれば駅前に十時集合よ! 早速、そのホテルに敢行するわっ! 今日の内ならまだ引き払ってないかも知れないし、実物に会えるかもよっ!!」
テカテカとした顔のハルヒを思い浮かべる。ああ、俺は本当に睡眠不足なんで、今日ばっかりは勘弁して頂けないだろうか。
「なぁに言ってんのよ、キョン! 不思議を追い求めるSOS団とも有ろうものが、すぐ傍に転がってる不思議をこちらからみすみす見逃してどうすんのよっ! アタシが監督なら即刻一軍落ちを通告してるわっ!」
朝からテンションの高いハルヒの相手は本当に堪える、ってもんで。俺は半自動的に生返事を返していたんだ。
「それにね……今回は驚くべき事が分かったのよ!!」
ハイハイ、驚くべき事ってなんでしょうか? 聞くだけ聞いてやるからさっさと言え。

「サンタって実は二人組だったのよ! この事はまだどこも知らない真実でしょっ! 大スクープだわっっ!!」
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:08:23.30 ID:WfftITu90
支援
275良い子の味方は聖夜に踊る 以上です:2008/12/25(木) 22:10:10.26 ID:cMGtyoqy0
ハルヒは電話が音割れする程の大きさで、そう叫んだのだった。

さて、最後に。
俺はサンタクロースから約束通りにあるプレゼントを頂いた。ん? 何かって?
「お前さんの未来は波乱万丈だが、必ず笑顔が待っているじゃろう。このサンタクロースが祈るんじゃから、確実じゃよ。それにな、少年……」

「お前さんのしあわせを誰よりも祈っとる女神様が居るじゃろうて。ほっほっほ」

たまにはこんな、非日常なクリスマスも悪くは無いのかも知れないと思った。
たまに、で十分だけどな?
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:10:27.16 ID:fZgMMrlMO
もうすぐ?
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:11:35.14 ID:WfftITu90
支援
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:12:12.57 ID:fZgMMrlMO
17秒差で遅かったか
279 ◆.vuYn4TIKs :2008/12/25(木) 22:13:19.03 ID:cMGtyoqy0
支援ありがとうございました。
拙い&どこかで既に誰かがやっていそうなネタですね……。
プロットとか立てずに勢いだけで書いたものなのでどうか大目に見て頂ければ幸いです。

ではでは、皆様。メリークリスマス!
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:14:14.65 ID:WfftITu90
乙!!
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:14:36.44 ID:NJe1tj5j0
おつかれー
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:31:04.37 ID:tFZFlhKtO
おっつ
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 22:53:05.64 ID:tFZFlhKtO
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 23:16:28.60 ID:GijklnizO
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 23:25:42.68 ID:kwM+8CXhO
支援できんかったが乙!
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 23:40:37.55 ID:fZgMMrlMO
15分

ねる
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 23:50:32.31 ID:kwM+8CXhO
おはよう
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/25(木) 23:59:03.79 ID:kwM+8CXhO
日付変更前
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 00:11:55.77 ID:ynpQek/GO
メリー平日!
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 00:20:45.90 ID:7VT3iOjI0
ほ?
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 00:29:18.28 ID:7VT3iOjI0
し?
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 00:41:20.33 ID:ynpQek/GO
ゅ?
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 00:53:02.49 ID:7VT3iOjI0
ありがとう
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:01:57.25 ID:ynpQek/GO
どういたしまして
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:40:03.83 ID:ivfIFYjvO
●<ほ
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:40:32.72 ID:S7rHawPw0
こちらこそ
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 01:47:11.06 ID:ynpQek/GO
夜食食う
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 02:17:30.65 ID:ynpQek/GO
うまかった
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 02:53:57.04 ID:y62EEBNJO
保守がてら保守
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 03:00:57.47 ID:ynpQek/GO
0300
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 03:20:17.68 ID:9WvAj6YB0
ほしゅ
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 03:22:47.99 ID:9WvAj6YB0
ほしゅ
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:05:33.04 ID:y62EEBNJO
ゅしほ
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:44:35.46 ID:y62EEBNJO
補習
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 04:51:01.79 ID:r645lTzS0
ビックカメラ終了です
ポイントの精算はお早めに
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/news/1230224159/

このレスを見た人はコピペでもいいので1人でも多くの人に教えてあげてください
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 05:03:35.93 ID:ynpQek/GO
5時過ぎた
冬至は過ぎたが流石にまだ夜は長い
307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 05:17:18.96 ID:OEmrSq0yO
某曲風に

ハルヒ「キョーンキョンキョンキョーンキョーン」
他「キョーンキョンキョンキョーンキョーン」
ハルヒ「キョーン!」
他「キョーン!」
ハルヒ「キョーン!」
他「キョーン!」
ハルヒ「キョン!」他「キョン!」ハルヒ「キョン!」他「キョン!」
全「KYOOOOOON!!!!!!」

ハルヒ「ふうっ、やっぱりキョンが一番しっくりくるわね!」
みくる「他は語呂が悪いですからねぇ」
キョン「………」

308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 05:56:18.94 ID:OEmrSq0yO
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 06:20:47.74 ID:OEmrSq0yO
ねむい保守
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 06:25:21.12 ID:ynpQek/GO
早朝にしちゃ人多いな
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 06:28:51.67 ID:i/UURF/aO
ハルヒ「自分の存在を証明するのって難しいわね」
キョン「どうした、いきなり」
ハルヒ「なんとなくね、昨日偶々みたアニメを見てそう思っただけ」

古泉「僕が僕であることを僕自信は証明出来ません」
長門「人は他人からの視覚によって認識されて自らの証明にしている」
みくる「む、難しい事はわかりません…保守です」
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 06:56:45.01 ID:OEmrSq0yO
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 07:23:03.58 ID:ynpQek/GO
●<アーユーレディー?
ё<イェーイ!
(略)
キ<アッアッー!
●<みんなライバルさ〜!
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 08:06:44.63 ID:ynpQek/GO
昼間頼む
午後まで残っていますように
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 08:26:07.34 ID:NFtVus11O
学生は冬休みか
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 09:21:40.00 ID:jzfvnoQDO
保守
317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 10:00:49.80 ID:zwSnecqmO
寒いお…
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 11:15:03.48 ID:GKi64JP0O
めかたし
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 12:28:38.57 ID:zwSnecqmO
320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 13:49:23.05 ID:zwSnecqmO
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 14:29:04.95 ID:zwSnecqmO
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 14:59:17.64 ID:i/UURF/aO
単行本最新刊入手
なんかサインぽいのがはさまってた
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 15:19:17.56 ID:zwSnecqmO
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 15:26:25.84 ID:i/UURF/aO
>>323
あ、そんなのあったんだ…そっちの方がいいな
ツガノのサインだったよ
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 16:21:33.58 ID:ynpQek/GO
ハルヒちゃん買っちまった
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 16:21:47.90 ID:i/UURF/aO
ttp://imepita.jp/20081226/588130
ちなみにこんなの
327以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 16:33:41.13 ID:zwSnecqmO
>>324 あれは拾い画だから手元にはないっさ

最近、ハルヒちゃんの2巻が出たんだっけ?
328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 16:41:46.84 ID:i/UURF/aO
>>327
あれは一体…

今日、ハルヒ7巻と一緒に発売だよ
329以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 16:46:28.25 ID:ynpQek/GO
漫画の発売日どっちも二十日じゃなかったっけ?
まあ俺買ったの一昨日だった
330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 16:52:20.06 ID:S7rHawPw0
ハルヒちゃんのながもんが可愛くなりすぎててワロタ
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 17:13:04.61 ID:GKi64JP0O
ハルヒちゃんはSSみたいなノリがあっていいよな
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 17:18:34.02 ID:Hw+hM34o0
どきんしゃい
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 17:52:01.14 ID:zwSnecqmO
どきんちゃん
334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 18:25:35.04 ID:IAds0pP40
保守
335以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 18:25:36.23 ID:ZJpWnqVfO
ほし
336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 18:45:54.21 ID:zwSnecqmO
保守
以降は誰か頼む
337以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 19:03:09.84 ID:ynpQek/GO
どすこい
338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 19:25:14.91 ID:IAds0pP40
●<ほ
339以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 19:42:38.21 ID:7VT3iOjI0
●<し
340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 19:42:38.60 ID:ZJpWnqVfO
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 19:54:33.26 ID:Hw+hM34o0
目障りだ
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 19:56:27.72 ID:QSzXfhPsO
>>341
糞パートスレageんなカス
343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:15:46.14 ID:7VT3iOjI0
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:26:11.70 ID:ynpQek/GO
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:45:33.55 ID:ZJpWnqVfO
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:51:28.17 ID:77RXGSTb0
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:55:43.74 ID:ynpQek/GO
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:11:55.12 ID:7VT3iOjI0
349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:13:51.88 ID:Hw+hM34o0
近寄んな
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:29:17.14 ID:ynpQek/GO
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:48:05.21 ID:ZJpWnqVfO
352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:59:18.78 ID:77RXGSTb0
353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:20:25.90 ID:ynpQek/GO
354以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:20:55.66 ID:zwSnecqmO
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:22:56.95 ID:7VT3iOjI0
356以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:34:11.43 ID:zwSnecqmO
キョン「…で飛んできたボールを受けた訳だが、どうしろと……」
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:39:51.55 ID:Hw+hM34o0
目障りだ
358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 23:01:30.96 ID:ynpQek/GO
>>356
三杯酢で和えて食べるとおいしいよ
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 23:20:48.27 ID:7VT3iOjI0
寝る前の保守!
360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 23:47:43.23 ID:ynpQek/GO
ほっほ
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 23:57:11.30 ID:ynpQek/GO
http://imepita.jp/20081226/860290

保守がてら購入物を晒してみる。

森さん分を補給したくて買った、今ではハマグリしている。
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 23:59:09.23 ID:HRDoBeoO0
日付変更前
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:00:47.85 ID:bUg6y5q00
土曜日!
364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:01:46.11 ID:zHRUZjjeO
てすてすっ
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:18:12.35 ID:Bv6IZub4O
○<むっひょぉーう!
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:18:38.60 ID:zHRUZjjeO
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:31:49.91 ID:bUg6y5q00
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:48:12.46 ID:1OTyysU40
どけ!
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:49:00.39 ID:bUg6y5q00
    ∧ ∧
〜′ ̄(´ー`)<ギコニャーニャー
 UU ̄ U U
370以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 01:12:55.70 ID:bUg6y5q00
まあ寝る
後は頼む
371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 01:13:34.18 ID:hnMu0bvRO
キョン「いい加減ネタ切れだな…」
谷川「大変だねぇ、僕はこれから旅行に行くんだけど君も行くかい?」
キョン「おいおい、他人事かよ」

ハルヒ「おせち料理って大変ね」
みくる「難しいのが多いです」
長門「次はカオスヘッドやろう…ノア出るし」
朝倉「手伝ってよ長門さん…」

谷口「尊敬する人はロシアの荒熊。どうも谷口です」
国木田「谷口、クリスマスはガチムチに追いかけられたらしいね」
谷口「言うなよ…思い出したくねぇよ…」



本当にネタが無い
372以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 01:37:59.57 ID:+Ann2U6UO
おやすみ
373以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 02:25:09.71 ID:jbQ4QvOiO
●<ほ
374以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 03:11:57.09 ID:hXyQIJgeO
会社が冬休み突入
ほしゅ
375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 03:16:19.18 ID:bUg6y5q00
寒くて目が覚めた
寝なおす
376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 03:23:46.61 ID:1OTyysU40
どけ…
377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 04:45:20.76 ID:Bv6IZub4O
谷川先生!新刊まだですか!?
378以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 05:23:56.72 ID:Bv6IZub4O
京都アニメーションさん、ハルヒちゃんでもちゅるやさんでもこの際構いません!
早く制作してください!
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 06:24:57.43 ID:jbQ4QvOiO
これだけ延期して、いざ出した時の評判は恐くないのかね角川は……
380以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 07:55:58.68 ID:zHRUZjjeO
結露が凄いのね
381以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 08:33:26.47 ID:hnMu0bvRO
単発スレであった、ハルヒは実は入院してて世界はハルヒの夢ってSSなんだっけ?
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 09:15:48.36 ID:+Ann2U6UO
涼宮ハルヒの現実
383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 09:18:55.84 ID:1OTyysU40
どけよ
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 09:52:29.20 ID:hnMu0bvRO
>>382
ありがとう
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 10:30:47.54 ID:+Ann2U6UO
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 11:02:44.94 ID:+Ann2U6UO
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 11:43:26.66 ID:hXyQIJgeO
長門「昨日、主流派との忘年会で飲み過ぎた。今日は穏健派との忘年会……」
長門「つらい……」
長門「ウコン飲まなきゃ……」
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 12:34:34.76 ID:+Ann2U6UO
昼は任せる
389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 13:11:38.28 ID:IlcjUNdt0
ho
390以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 13:42:09.89 ID:q54Nt8qE0
syu
391以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 14:07:04.53 ID:1OTyysU40
おらっ、どけ
392以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 15:09:17.97 ID:HwtlmcLw0
危なかった
393以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 15:30:35.04 ID:zHRUZjjeO
ほひゆ
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 16:06:49.59 ID:zHRUZjjeO
36分
395以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 16:31:33.07 ID:zHRUZjjeO

396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 16:56:29.47 ID:HwtlmcLw0
早めに
397以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:02:01.98 ID:M6zBdJYqO
「報告もご苦労なこったな」
「ですね」
「ところで、古泉」
「はい」
「やらないか」
「えぇ、良いですよ」
「そうこなくっちゃな」
「久しぶりにハッスル出来ますね」



鬼で遊ぶどん!

きたさいたま2000

「オラァァァァアアアアアッ!!」
「僕も負けませんよ!」


神レベルが二人並ぶと神々しいと思った。不可どころか可すら出さずにフルコン。
そんなイトーヨーカ堂のゲーセンの一角の光景。子供も大人もポカ〜ンとしてるよ、二人とも。
あたしはSOS団の団長として叱るべきなのか、それともこの不思議な二人を応援すべきなのか悩んだ。
そんなあたしを他所に有紀はドラマニ、みくるちゃんはポップンをフルコンでクリアし続けていた。

…あれ? あたしだけ仲間外れ?

そう思うと何でだろう…涙が止まらなかった
398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:04:42.09 ID:Bv6IZub4O
ナストラップは欲しいです!ナストラップは欲しいです!

でもハルヒ以外の漫画は(略
399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:10:58.29 ID:M6zBdJYqO
あったら嫌なキョンの最後

 今日は久しぶりにキョンが早く来ていた。でも様子がおかしい。
「キョン…?」
「ふ、不思議探索で遅れないようにって徹夜してたら風邪引いちまったみたいだ…」
「馬鹿! 何でそんなこと!!」
「悔しかっ、た…いつも…いつも…遅れて…お前に罵られるのが………」
「!!」
 あたしは動揺した。
 まさかそんなに思い悩んでたなんて…。
「俺だって…しっかりして、っ、るんだって…思わせてやりかった…そしたら…あはは…このザマだ…」
「御免なさい、キョン! あたしのせいで…あたしのせいで…!!」
「…ハルヒ。これで俺も…立派な…SOS団か、な?」
「うん! キョンは立派よ!! 誰よりも立派よ!!」
「そう、か…良かっ…た………」
「…キョン?」
「……………」
「キョン? キョン!? キョン! キョン!!」

 そしてキョンは、この世を去った。優しい微笑を浮かべながら、あたしの手の中で…。
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:17:25.05 ID:Bv6IZub4O
無茶しやがって…(AA略
401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:23:39.85 ID:M6zBdJYqO
あったら嫌な長門VS朝倉

 今目の前では総勢な戦いが繰り広げられております。実況は俺、キョンがお送りいたします。
「引っ込め、芋虫眉毛」
 おっと長門が攻撃を仕掛けた。槍がビュンビュン飛びます飛びます!
 しかし朝倉、青筋を立てながらそれをしっかりと避けた!
「貴女こそ引き込みなさい、エセ綾波」
 負けじと朝倉も攻撃を開始! これは凄い戦いだ!
口は子供の戦いだが行なってるのは次元を超えた凄まじい戦いです!
 おっと…どうやら朝倉の言葉が長門の逆鱗に触れたようだ!
「滅せよ、クソキモい眉毛ビッチ」
 長門の切札が発動した! エクソードフレイム! 攻撃力は無限!!
 朝倉なす術が無い! 朝倉涼子ノックアウト!!
 だがまだ長門の攻撃が続く!!
「ル・ラーダ・フォルオル! フェルエリア・フォン・エターナリティ! ニフラム!!」
 朝倉涼子、完全に消滅!
 勝ったのは我らの嫁、長門有希! 長門有希が勝った!



 次回のバトルは
 ストパー掛けても直らない喜緑さんVS前髪が生えない鶴屋さん
 お楽しみに!!
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:31:35.81 ID:Bv6IZub4O
鶴屋さんのデコ磨きたい!鶴屋さんのデコ磨きたい!
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:32:38.04 ID:M6zBdJYqO
 あったら嫌すぎるENOZ

 壇上に上がったハルヒ、長門、それどころかENOZの皆様もゴスロリを着ている。
 どことなく嫌な予感がしておりますが、私としてはハルヒを止める術はないのでありまして。
 とにかく、SOS団団長、涼宮ハルヒはステージの上に立っておった。
「ゴスロリヤタ━━━━━━ヽ(゚∀゜)ノ」
 と騒ぐ聲も聞こえるが一体全体何が始まるのか解ってるのかこいつらは。
 と、
「WHERE'S THE FORTUNATE FUTURE? WHERE DOES OUR FORTUNATE FUTURE?」
 Dir en greyやっちまったぁぁあああああああ!!
 全国の掲示板で「文化祭でやったらドン引きされました」と必ず言われるDir en greyを!!
 こいつらは!!
 こいつらはぁああああああ!!


 その日、一つのライヴが伝説となった。
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:40:36.56 ID:bUg6y5q00
なんだか知らんがとにかく良し!
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:41:32.97 ID:M6zBdJYqO
 あったら嫌とは言わないが違和感が生じる鶴屋さん



 その日、一つの事件が起きた。
 何と鶴屋さんに前髪が生えたのだ!
 ん? 今まで下ろしてなかっただけだろうって?

 否! 真なるデコとは前髪すら生えないのだ!!

 そして鶴屋さんは真なるデコだった…だが! しかしッ!!
「鶴屋さんに…鶴屋さんに………」
 SOS団のみんなはすっかり震えあがってしまい、机の下に隠れてガクガクと震えている。
 あの長門すらも
「揃えエクゾディア! 助けてえーりん! 諦めたくない安西先生!!」
 と訳の解らない言葉をしゃべっている。
 正直、俺も―――怖い。
 だが勇気を持って顔を真っ赤にしている鶴屋さんに近づいて俺はよく見た。

 ………立派な前髪だった。

「鶴屋さん…これは一体………」
「あたしにも良く解らないけど、なんか生えちゃって…」
 むぅ…可愛いかもしれない。だが前髪生えたらそれは鶴屋さんではない。
 鶴屋さんを指していた夜道すら照らす立派なデコは今じゃすっかり前髪の下だ。
 そう、これは鶴屋さんの真の姿。
「真・鶴屋さんだ…」
 デコがなくなり、その分の新しい萌えポイントこそ無いがそれでもこの鶴屋さんは素敵だ。

 俺は前髪の生えた真・鶴屋さんに一目惚れした。
406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:43:36.30 ID:Bv6IZub4O
岡島さん首輪エロいよ!岡島さん首輪エロいよ!
あんな短いスカートでドラム叩いてたら中身まる見えだよ!
407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:45:51.55 ID:bUg6y5q00
シーマ様
408以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:48:24.90 ID:Bv6IZub4O
おもちうにょ〜ん
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 17:59:16.42 ID:M6zBdJYqO
 なるほど…あったら嫌なエロいキョン


 文化祭でハルヒの演奏を見ていて俺はある事に気付いた。
 ドラムの岡島瑞樹先輩。そのスカートの中が…中が、見える!!
 白いパンツが! 見える、見えるぞララァ! 私にも白が見える!!
 一気に集まる血液at股間。凝縮するエネルギー。
 広がる妄想! 無限の宇宙のような白いパンツ!!
 あぁ、美しい…美しいぞ!!

 ありがとう神様!
 ありがとう岡島先輩!

 今晩はおかずに困らないぜ!! ヤタ━━━━━━ヽ(゜∀゜)ノ━━━━━━!!

 そして演奏が終わり、文化祭も終わったころ、俺は岡島先輩に呼び出された。
「ねぇ、ずっと見てたでしょ?」
 照れながら言われ、そして



 ―――恋が始まった
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:01:36.55 ID:zHRUZjjeO
言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごいCHAOSだ!
411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:13:35.32 ID:M6zBdJYqO
 あったら嫌な主人公

「(前の奴が自己紹介終わったらあたしの番…はぅ〜…ドキドキしてきたよぉ…)」
 ガタンッ
「俺の名前はアーカード。ヘルシング機関から高校生活とやらを学びにきた、よろしく頼むぜ」
 ………なんか、凄い奴が自己紹介したせいで自分の番にかなりカミカミになってしまった。
「なぁー、そっきの何処までが本気だったんだ?」
「え、えっと…」
「くくっ…解ってるさ。全てだろう? …ほう、お前、処女か。匂いで解るぜ」
「!?」
「隙あらば、その血を頂くからな…常に油断するなよ、涼宮ハルヒ」
「え、えっと………」
 本当に…あたし大丈夫なのかしら?
412以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:15:04.84 ID:Bv6IZub4O
観客一堂一致団結してまる見えだよ!
でも北高祭で一番エロいのはENOZって書いた紙めくってる女の子だよ!

そして別な漫画で似たキャラがを見てwktkしたら男の娘キャラだったよ!
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:18:29.09 ID:M6zBdJYqO
 あったら嫌なSOS団。

「古泉一樹です、よろしく」
 僕は予定通り涼宮さんの居るSOS団に入りました。
 …僕は本当は超能力者。なので、変な物には慣れているのですが…。
「私はゴットゥーザです。関東一体のスケバンをまとめてます」
 可憐なのにえらい事を言う未来人や、
「俺はアーカード。よろしく頼むぜ」
 かなりゴツい自称一般人の僕らの機関の言う「鍵」に、
「長門有希。全てを壊し再生するもの」
 中二全開の宇宙人。

 この任務から下りても良いでしょうか…僕は。

414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:18:57.07 ID:Bv6IZub4O
前に拾った画像見て『こんなかわいいキャラいたっけ?』と思ってよくよく調べたら性転換谷口だったよ!
415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:19:24.76 ID:M6zBdJYqO
>>412
同士が居て嬉しいw
公式はENOZの紙をめくる奴に名前を付けるべきだ
416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:22:15.35 ID:Bv6IZub4O
ぷよの書く女キャラは妙に男前だと思う今日この頃だよ!
417以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:25:36.60 ID:Bv6IZub4O
>>415
あの女の子もパンチラしたと思うんだよ!だよ!
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:29:54.83 ID:M6zBdJYqO
 あっても嫌じゃないハルヒ

「え、えっと…ひっ! 東中出身涼宮ハルヒ!! ただの…ただの…た、ただの人間には興味ありましぇん!!
 あっ、かんじゃった…ごめんなさい! この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が居たらあたしのところに来なさい!! ……………あ、以上です!!」



「キョン、もしかして涼宮ハルヒを狙ってるのか? ならやめとけ」
「別に狙ってはないが…何でだ?」
「あいつの天然ボケは奇跡を起こす。天然ボケで机を廊下に出したり、天然ボケで校庭に落書きしたり」
「………そうか」



「ハルヒ、いつだったかお前のポニーテールは最高にハイって奴だったぜ!」
「ふぇ!? んっ…んぅ〜!?」
 涼宮ハルヒ―――高速思考―――展開!
 うわわわ!? あたしキョンとキスしてる!? キョンとキスきゃー♪ 嬉しいけどどうしよう!
 ギュッとしたら良いのかな? でもしたいけど恥ずかしいし、だからと言ってこのチャンスを逃すわけには!
 あぁ、いきなりキスするのがいけないのよ! あたし…あたしどうしたら!? えっと…でも幸せ…。
 あっ! でもこれが現実だったら明日からキョンの顔を直視出来ない!!
 夢にしなきゃ夢にしなきゃ!! でも夢だと寂しい…け、けどいきなりこんな関係になっても心の準備が…はわわわ!
 夢オチになれ〜! 夢オチになれ〜!!

 ―――この間、僅かに二秒。
 ―――こうして二人は閉鎖空間から脱出出来たという
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:35:14.02 ID:bUg6y5q00
ハルヒをちょっとおバカにするとかわいい
ハルヒを俗物にしてデレ分と外見のかわいさを抜くと俺の妹になる。
新ジャンル「ツンダケ」
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:38:38.94 ID:Bv6IZub4O
ぷよの書く古泉は妙にキモカッコイイよ!
ぷよってハルヒちゃん以外どんな漫画書いてるなか不安になったよ!
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:39:31.25 ID:M6zBdJYqO
 カリスマキョン

キョン「…ステージに立ってるのはハルヒか…」
周りの女子1「キャアアアア! キョン様が座っていらっしゃる!!」
周りの女子2「キョン様の前にいる奴等キョン様の邪魔よ!!」
キョン「良いさ、別に。君達にも楽しんで貰いたいからね(爽やかな微笑)」
周りの女子241「ギュルルォアアアアアンギュルルォアアアアアンギュルルォアアアアアン!!」
周りの客119「惚れる惚れる惚れる惚れちゃあああああウアアアアアッ!!」
周りの男子110「ドタワプァイッギャイアイアォア〜〜ン!!」
ハルヒ「キョンが見てる〜イヤァアアア見られるだけでピクッピクッピクッ」
長門「ビクンッビクンッ…ドォォォォォォ――――――――――ンッギャ〜〜〜〜ォン!!」

北高の体育館「ブルルォアアアアアアアアアアアアバァァアアアォォォォォォォォォンッ!!」



422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:43:01.86 ID:bUg6y5q00
流石カリスマだな!w
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:52:57.36 ID:M6zBdJYqO
 ほとばしるカリスマ

女子1「あっ、キョン様がハードルをなさってるわ」
女子2「キョン様は体育中なのね」
女子14「あっ! 飛んだわ!!」
通り掛かった主婦「優雅過ぎるぅうううンニャアアアアアアォアアアアォォォン!!」
女子51「そして優雅にずっこけた!!」
女子42「キョン様キョン様キョン様キョン様キョン様アアォアアアアアアォアアアアォォォン!!」

ビュルレロロロアバアガガガァァアアアアアアンッ!!ビクンッビクンッ

谷口「なんであいつだけあんな扱いなんだ…」
国木田「谷口みたいな底辺の人間には一生解らないしうるさいから死ね」
谷口「(´Д⊂ヽ」
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:54:47.98 ID:bUg6y5q00
谷口w
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 18:58:22.16 ID:HwtlmcLw0
国木田にはキョンのカリスマがわかるってことは……つまり
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:06:20.82 ID:Bv6IZub4O
アッー?
427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:13:16.76 ID:M6zBdJYqO
 @425

国木田「僕には解るんだ…」
谷口「へぇ…」
国木田「だから、僕は悔しかった。男に生まれた事を」
谷口「ま…まさか………」
国木田「こんなにキョンが好きなのに」
谷口「ゲッ」
国木田「それで僕はキョンに言ったんだ」
谷口「な、なんて…?」
国木田「僕は女になりたいって」
谷口「意味が解らないから!」
国木田「そしたら…女体化したの」
谷口「あぁ、なるほど。なんで女子の制服を着てたのか変態になったのかと思ったらそういうことか」


正直国木田にコラージュで女子の制服着せてみたけど違和感が無い
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:17:31.56 ID:Bv6IZub4O
こんなかわいい子が女の子の訳ないんだよ!だよ!





いやマヂで女になったら藤岡ハルヒと見分け付かなくなるから許して下さいw
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:25:21.69 ID:bUg6y5q00
国木田は女顔だが意外と肩幅あって胸板厚いぞw
430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:31:54.45 ID:1r0yf0y1O
>>427
そのコラとやらをうPしようか
431以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:36:07.60 ID:M6zBdJYqO
誰か代わりにマッスル国木田うpしてやってwww
432以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:36:49.71 ID:bUg6y5q00
>>431
考えていたネタを先に言うな!(゚д゚)
433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:41:50.70 ID:bUg6y5q00
俺の国木田フォルダが火を吹くぜ
http://up2.viploader.net/pic2/src/viploaderf146852.jpg
434以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:43:01.05 ID:Bv6IZub4O
久しぶりに見たんだよ!だよ!
435以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:46:07.56 ID:zHRUZjjeO
ひでぇ…ひでぇよアンタ
436以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:55:09.07 ID:bUg6y5q00
別な国木田の画像も貼るから元気出せよ
ttp://www.ndl.go.jp/portrait/datas/262_1.html
437以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 19:57:47.16 ID:M6zBdJYqO
CoCo壱番屋のカレー吹いたwww酷すぎるwwwwww
438以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:00:11.92 ID:Bv6IZub4O
もしもし
携帯からだと容量オーバーなんだよ!だよ!
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:02:04.40 ID:zHRUZjjeO
鬼だ…やっぱ鬼だよアンタ
440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:03:40.24 ID:1r0yf0y1O
>>436
誰しもが通る道だなwwwww
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:12:26.18 ID:bUg6y5q00
ちょっと晩飯食ってくるぜ
中華だぜ
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:30:42.71 ID:Bv6IZub4O
みくる「チャイニーズチャオズ!チャイニーズチャオズ!」

長門「…Chaosの読みは餃子ではない」

みくる「チャイニーズチャオズ!チャイニーズチャオズ!」
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:30:50.76 ID:w3yQlU0K0
>>436
宝塚の星組的な何かを感じる……
444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:44:28.07 ID:Bv6IZub4O
ё<ムッハー
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 20:59:46.07 ID:zHRUZjjeO
9月から参加の俺を始めとする新参に↑の由来を教えてくれ
446以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:17:23.32 ID:Bv6IZub4O
ё←マッスル国木田
ё←くにょう
ё←くにょうの真似をしているマッスル国木田
★←みくる
()←中河
◎←藤原
(゚p゚)←ウッウーちゃん
(=ω=)←泉こなた
〆←朝倉涼子
○←橘京子
●←古泉一樹
>>1←小泉純一郎



多分こうだよ!だよ!
447以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:20:14.88 ID:w3yQlU0K0
1.マッスル国木田というコラ画像が出来る
2.体がこれでなんという童顔www
3.そういやёってなんかアヒルっぽいし国木田っぽくね?
4.時期が重なり、自然とёがマッスル国木田となる

しかし九曜AAにёを埋め込んだくにょうが出来たが、乱発し過ぎでスレの空気が悪くなりёは自重するようになっていった。
448以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:24:12.92 ID:Bv6IZub4O
実は始めて知ったよ!たよ!
449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:31:13.81 ID:bUg6y5q00
俺来るようになったの去年の十月ごろだが、当時から一文字AAは廃れ気味だったなー。
過去ログでしか知らないや。
●と○と★は最近でも良く見るけど。
450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:36:16.56 ID:+Ann2U6UO
●<我が赤丸は永久に不滅です!
451以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:41:07.05 ID:bUg6y5q00
新しいの考えたぜ!

∞←由良

∞←成崎
452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:41:26.17 ID:bUg6y5q00
がいしゅつだったらスマソw
453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:41:26.52 ID:HwtlmcLw0
代理で投下します

「夏の夜空に家無き子」
454以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:41:46.85 ID:bUg6y5q00
バッチコーイ
455「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:41:57.68 ID:HwtlmcLw0
「んー…今日も良い天気ですね」

学校の屋上は密かにお気に入りの場所です。
行くと決めた日は誰も登校してないくらい早く学校に行き、のんびりと空を見る。

「…最近は閉鎖空間ばかりで睡眠優先でしたからねぇ」

久しぶりだなぁ、ここに来るのも。
まだ太陽も上がりきっていないせいか、夏の空気は程よい温かさとなっていた。

風が気持ちいい。

フェンスから町を見て、ひたすらにボーッとする。
時間を忘れるほどに、次第に暑くなるのも気が付かない程にその行為に夢中になる…まぁボーッとするだけですが…

しかし、それも何時もならばのことである。

風が気持ちよくないわけではない。
別に自分の体調が不良だとかそんなわけではない。

いつもの屋上と、今日の屋上を比べてはっきりとわかるイレギュラー要素。


…なんであんなところにダンボールハウスがあるんでしょうか。


控えめとも巨大とも言えないいかにもな大きさのそれは、屋上の隅にきっちりと陣取られ、やはり人が住んでいるのか、ご飯を炊いているような良い匂いがした。
456「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:42:28.00 ID:HwtlmcLw0

「………」

………。

…駄目だ。気になります。
無かったことのように振る舞いたいんですが、時折ダンボールハウスから聞こえてくる物音がする度に反応してしまう。

というか屋上に住み込んで良いのだろうか…いや、恐らくは無断だろう。
…一応注意した方が良いのかな?

そう思い、もう一度ダンボールハウスを見る。
…あ、誰か出てきた。

「………」
「………」

出てきてすぐにこちらに気が付いたようだ…僕のことをガン見している。
小柄な身長にセーラー服、ショートボブの紫髪。

「…おはよう、古泉一樹」
「…何をしてるんですか長門さん」

『夏の夜空と家無き子』

「…鍵を無くした」

長門さんが言うには、三日前、いつもの様に団活を終えて家に帰るとあるべき場所に鍵がない。
このままでは家に入ることができないので、情報統合思念体にアクセス、しかし…
457「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:42:48.09 ID:HwtlmcLw0

『前略…というわけで鍵の再構成の許可を…?』
『はい、こちらは情報統合思念体です。只今我々はお盆休みのため休暇に入っております…』

…とのことだそうで。
…しかし留守電じゃないんですから…

「よくバレませんでしたね」

どこかで購入したのだろうか、歯ブラシでモゴモゴしている長門さんに聞く。

「…運が良かった」
「…そうですか。ちなみに思念体とアクセスできるのはいつになるんですか?」
「…ガラガラ…ペッ…恐らくは今夜か明日の朝」

…というか今うがいした水を屋上から吐き捨てましたよね?

「…それまで凌げば問題は無い」

…無視ですかそうですか。

「…HRが始まる」
「あぁ、もうそんな時間でしたか」

とりあえず僕と長門さんはそれぞれの教室に向かうことにしました。

「…古泉一樹」

階段を下りる僕を長門さんが呼び止める。
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:42:55.60 ID:bUg6y5q00


459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:43:16.45 ID:Bv6IZub4O
支援
460「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:43:25.43 ID:HwtlmcLw0

「どうかしましたか?」
「…秘密にしておいて」
「…はい、わかりました」

◇◆◇◆◇

…さて、どうしましょうかね。
流石に長門さんのあんな状態を見なかったことにするのも心が痛い。
…長門さんなら自分の力で全て解決できそうなのですが…いや、許可が降りないと使えないのかな?

…というか、僕に何ができるんでしょうか?

…何にしろ、長門さんがダンボールハウスで暮らしているのは事実なんだ。
…もう少し人を頼っても良いと思うのですが…涼宮さんも朝比奈さんも、長門さんを拒まないと思い──

「おい、古泉。お前の番だぞ」
「…すいません、考えごとをしてました」
「なんかまた面倒なことでもあったのか?…ハルヒ絡みで」

自分が取ったチェスの駒をいじりながら彼が尋ねる。
勿論、団長机でパソコンをいじっている涼宮さんには聞こえないように。

「いえ、そういうわけではありませんので安心してください」
「…そうか」

そう言って自分が取ったチェスの駒を弄り始める。
…しかし、相変わらず勝てませんね。
やはり僕が弱いのでしょうか。
461「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:43:50.75 ID:HwtlmcLw0

「…と、ここにルークを動かします」
「…いや、普通にチェックメイト」

…あ。

「…良い入門書貸してやろうか?」
「いえ…お気遣いなく」

…やはり僕が弱いんですか…

「そういやさっきからハルヒは何調べてるんだ?」
「んーとね、流れ星。丁度今夜あたりに流れるのがあるらしいんだけど」
「流れ星ですかぁ…」
「おや、朝比奈さんは見たことがあるんですか?」
「いえ、私はいっつも流れ星を待っている間に眠っちゃって…」

そういえば僕も無いですね。

「…まさかお前、今夜全員で見に行くとか言い出さないよな?」
「その通りよ!と言いたい所だけど、今回はダメよ」
「珍しいな」
「流れ星一つには一人分のお願いしか乗せられないの、だからみんなで集まって願い事をするわけにはいかないわ」

…まぁ涼宮さんがそう思うなら本当にそうかもしれませんね。
流れ星か、久しぶりに眺めてみたいものです。
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:43:58.48 ID:Bv6IZub4O
463「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:44:15.23 ID:HwtlmcLw0

「全く、ケチケチしないで流れ星の一つや二つ、盛大に流せば良いじゃない!」
「…そんなに沢山降り注いだら有り難みも減ってしまう」
「…長門の言いたいことはわかるが、流れ星に有り難みは無いと思うぞ、希少性ならわかるが」
「…それが言いたかった」

そういうと長門さんはパタンと本を閉じる。
あぁ、もう帰宅時間ですか。

「よし、それじゃあ帰りましょうか!」
「じゃあ私は着替えますね」

じゃあ、僕達は部室からでましょう。

「あれ、長門さん?」
「…先に帰る」

あぁ、屋上で住んでるのは秘密にしたいんでしたか。

「そうですか…あの、何か問題があったら連絡してください。可能な範囲で手助けしますから」
「…了解した」

立ち去る長門さんを見送りながら彼が呟く。

「…長門、何かあったのか?」
「いえ、何もないですよ」

…まぁ、約束なので。
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:44:35.82 ID:bUg6y5q00
支援
465「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:44:37.51 ID:HwtlmcLw0
◇◆◇◆◇

「…疲れた」

家に帰って鞄を下ろす。
何てことのないアパートだけど、やはりほっとできる。

…寝ますか。
何故かはわからないが瞼が重い。
少しだけ寝て、夕ご飯を食べよう。
閉鎖空間が発生したなら…きっと携帯が…鳴る………















466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:44:59.52 ID:Bv6IZub4O
467「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:45:24.04 ID:HwtlmcLw0
ピリリリリリ…ピリリリリリ…

「ん…」

携帯が鳴ってる…閉鎖空間が発生したか…

ピッ

「もしもし、場所はどこですか?」
「………」

沈黙。
…あれ?

「あの…閉鎖空間の発生した場所は?」
「…私」

その声を聞いて携帯電話のディスプレイを覗く。

「すみません。長門さんでしたか。機関の者と勘違いしてました」
「…構わない。それより助けてほしい」
「何かあったんですか?」
「…食料が底をついた」

…さて、寝るとしますか。

468以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:45:34.09 ID:Bv6IZub4O
469「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:45:47.32 ID:HwtlmcLw0
「………」
「冗談です。沈黙しないでください。怖いです」
「…今から指示する物を持ってきてほしい」
「…わかりました」

◇◆◇◆◇

長門さんに頼まれたものをスーパーで購入する。
…肉類が多いのは何でだろうか。
ついでに僕からたかろうとでも考えているのでしょうか?

…まぁいいです。

「…暗いですね」

夜の学校、か。
…大丈夫なんでしょうか、長門さん。

人気のない校舎に入り、階段を上って屋上にでる。

「…何でダンボールハウスから電気が?」

勝手に配線を引いたのか、それとも単に懐中電灯の灯りか。
…何でもいいか、とりあえず長門さんに食料を渡して帰ろう。

「長門さん?持ってきましたよ」

そう言ってダンボールハウスの扉らしきものを開く。
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:46:07.18 ID:q54Nt8qE0
支援
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:46:20.79 ID:bUg6y5q00
ちょ・・・ダンボールハウスとかテラヒドスwwww
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:46:42.04 ID:w3yQlU0K0
肉じゃがの人のかな?
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:46:58.11 ID:Bv6IZub4O
支援だよ!だよ!
474「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:47:40.13 ID:HwtlmcLw0

「…待ってた。ありがとう」

…あぁ、やっぱり灯りはランタンの物か、電気も通ってないみたいだ。
…いや、そうじゃなくて…

何故あなたはバスタオル一枚で待機しているんですか。

「…お風呂に入っていた」
「あぁ、だから外にドラム缶が置いてあったんですか…じゃなくて、失礼します!」

すぐさま扉を閉める。

…はぁ…心臓に悪い。
…いや、確認しなかった僕も悪いんですが…
というか得した気分になったのはなんででしょうね。

脳内に焼き付けた先ほどの画像を展開してみる…長門さんの肌…綺麗だったなぁ。

…しかし、やはりまな板…

「…すり潰されたい?」
「いや、人の心を読まないでください」

ほんのりと湯気を立てて、パジャマに着替えた長門さんがでてくる。
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:47:48.18 ID:bUg6y5q00
シェソ
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:47:53.92 ID:M6zBdJYqO
支援…おぇぇぇッ!!
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:48:52.35 ID:bUg6y5q00
ちょ・・・まな板とかテラヒドスwww
478「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:49:02.27 ID:HwtlmcLw0
「…すり潰されたい?」
「…わかりました、ごめんなさい…あ、これ、頼まれたものです」
「…感謝する。これでカレーを作ることができる」

…カレー好きなんですね。

「質問していいですか?」
「…何?」
「何故にダンボールハウスなんですか?涼宮さんや朝比奈さんなら快く泊めてくれると思うんですが…」
「…可能なことは自分でやりたかった」
「食材は?」
「…お金が無かった。ダンボールなら道端に落ちていたからタダ。ドラム缶も拾った」

…そうなんですか。

「…心配?」
「…それは…まぁ心配ですよ。こんなところに女性が1人なんですから」
「…そう…ありがとう」

そう言うと長門さんはスーパーの袋から食材を出す。

「…カレー、食べる?」

そういえば何も食べてませんでしたね…

「なら、お言葉に甘えて」
「…了解した。調理にかかる」
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:49:23.19 ID:Bv6IZub4O
支援
480「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:49:30.77 ID:HwtlmcLw0
そうですか。
いや、調理に入るのは別に構わないんですよ?

「…何故に薪を並べているんですか?」
「…燃やす」
「駄目ですよ!火事にでもなったらどうするんですか!?」
「…問題無い、昨日は火事にならなかった」
「道理で朝方いい匂いがすると思いましたよ!米を炊くのにも火をおこしていましたね!?」
「…そう」
「この調子だと風呂を沸かすのにも火を起こしたでしょう!?」
「…仕方がなかった」

…はぁ。
…何だかんだ言ったって、力が制限されたら1人の女の子なんだなぁ。

「仕方がないと言ったって、鍵を無くしたあなたが悪いのでしょう?少しは僕達のことも頼ってください」
「………」
「…とりあえず、僕が家からガスコンロを持ってきますから、絶対に焚き火を始めないでくださいね?」

長門さんの頭が数ミリ縦に振られる。
わかってくれたみたいだ。

「では行ってきます。すぐ戻ってきま…あれ?」
「…どうかした?」
「いや…あの…ですね…」
「………」
「…鍵を落としたみたいで──」
「馬鹿」
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:49:46.67 ID:bUg6y5q00
しえん
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:50:24.09 ID:M6zBdJYqO
支援、です…っ
483「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:50:29.64 ID:HwtlmcLw0

…今間髪いれずに馬鹿って言いましたよね?

「…言ってない」
「いやいや…普段は使っている三点リーダも使用しないくらいの速度で言ったじゃないですか」
「…馬鹿?」
「言い直しましたね!?しかも今度は疑問系ですか!!」
「…その話は置いといて…火はどうするの?」
「…あ」

…どうしましょう。

「………」
「…昨日は火事にならなかったんですよね?」
「…コクン」
「…なら…やってしまいましょうか」

古泉一樹、焚き火初体験です。

◇◆◇◆◇

「…火事にならずに済みましたね」
「…良い匂い」

火の粉がダンボールハウスに飛び移った時はどうなることかと思いましたよ。

「…いただきます」
「いただきます…しかし、どこで鍵を無くしたんでしょうか…」
484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:50:37.96 ID:Bv6IZub4O
しえん
485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:50:49.54 ID:+mb++CbC0
どかす
486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:51:06.98 ID:Bv6IZub4O
支援
487「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:51:09.93 ID:HwtlmcLw0

家を出たときには確かに鍵をかけたのですが。
…やはり来る途中に落としたのでしょうか。

「…おかわり」
「自分で盛ってください」

…携帯も家に置いてきてしまいましたしね…
閉鎖空間が発生したらどうしましょうか…

「…おかわり」
「だから自分でやってください。食べるのが早すぎます」

…確実に森さんに怒られますね。

「…スッ…パクパク」
「しかしよく食べますね…あれ?」
「…もぐもぐ…何?」
「…それ僕の分…」
「…気のせい」

いやいや、僕の目の前に置いてあった皿が無くなってるじゃないですか。
488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:51:22.33 ID:M6zBdJYqO
支援…
489以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:51:40.39 ID:bUg6y5q00
こいずみーww
490「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:51:49.99 ID:HwtlmcLw0
「おかわりくらい自分で鍋から…え?」
「…ごちそうさま」
「長門さん?鍋の中身は?」
「…全て食べた」

…いや、僕は何も食べてないんですけど。

長門さんは満足そうに夜空を見上げる。

…お腹空いたなぁ。

「…私は満腹」
「そりゃあなたはそうでしょうよ…」
「…あなたはこれからどうするの?」

カレーを横領したことなど気にもせず話しかけてくる。

「どうする、とは?」
「…寝床」

…あ。
491以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:52:08.52 ID:M6zBdJYqO
し、支援…っ
492「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:52:12.17 ID:HwtlmcLw0
「…ここに住む?」
「住みません」
「………」
「…そんな顔をしてもダメです」
「…心配してくれたのは嘘?」
「いや、嘘というわけじゃないんですが…男女で一晩一緒にというのが…」
「…1人だと何があるかわからない」

…二人の方が何があるか…はぁ。

「…わかりました。今回だけですよ?」

…どうせ何を言っても無駄でしょう。

「…わかった。ならば先にすることがある」

え?

そう言うと長門さんはドラム缶をポンと叩く。

「…入浴」
「全力でお断りします」
「…何故」
「嫌だからに決まってるじゃないですか」
「…汚っ」
「そういうことじゃなくてですね!別に入浴くらいしますよ!体洗ったりしますよ!」
「…ならば入るべき。カレーを食べたことにより少なからずあなたは汗を掻いている」
493「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:52:33.12 ID:HwtlmcLw0
確かにそうですが…

「あのですね、色々と恥ずかしいので勘弁してもらえませんか?」
「…私のは見たのに?」
「…はい?」
「…私のは見たのに?」
「あれは不可抗力です!しかもタオルでしっかり隠してたじゃないですか!」
「…どこを?」
「どこって…あー…」
「…どこ?」
「…勘弁してください。本当に」
「…入浴」
「…わかりました」

…意志弱いなぁ…僕…

◇◆◇◆◇

「…ドラム缶風呂は初めてですね」

ギッチギチにタオルを巻いてドラム缶を一望する。
ちなみに長門さんにはダンボールハウスで待機してもらっています。

あぁ、暖かい。

気恥ずかしさはありますが、こう…夜空の下で入るお風呂も良いですね。
良くも悪くも、やはり屋上はお気に入りの場所です。

…まぁダンボールハウスで住もうとは思いませんが。
494以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:52:43.78 ID:M6zBdJYqO
支援…ぅぷっ
495「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:53:03.04 ID:HwtlmcLw0
「…湯加減は?」

中から長門さんの声がする。

「丁度良いですよ」
「…そう」

そう言えば熱くなってきた気がしないでも無いが、きっと季節が夏だからであろう。
暑い時に熱いものもなかなかオツなものではある。

…そう言えば長門さんもお風呂に入ったんだっけか。

「…そう」
「だから人の心を読まないでくださいって…というか覗かないでください」

気が付けば長門さんがドラム缶の横で本を読んでいた。
いやいや待て待てそうじゃない。

…これ、長門さんの残り湯?

「…そう」

だから心を読まないでと…
496以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:53:19.12 ID:M6zBdJYqO
支援………
497「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:53:30.93 ID:HwtlmcLw0
「あの…長門さん?」
「…何」
「色々ともうアレなので上がろうかと思うのですが…」
「…1000」
「はい?」
「…1000数えるまであがってはいけない」
「いやいや…」
「…あなたが数えるまで見張り続ける」

…本当に勘弁してください。

「…早く」

…わかりましたよ。

「1…2…3…──」

これは新川さんの残り湯なんだこれは新川さんの残り湯なんだ……

「298…299…300…──」

良い匂いなんかしない良い匂いなんかしない良い匂いなんかしない……

「731…732……73…4?……」

……………。

「…999…1000」
498以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:53:34.23 ID:bUg6y5q00
さる大丈夫か?
499以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:53:47.59 ID:Bv6IZub4O
しえん
500「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:53:59.26 ID:HwtlmcLw0
…熱い。
…後半は我慢くらべみたいになってましたよ。

「…数えましたよ」
「…そう」

それだけ言うと、長門さんはふいっとダンボールハウスへ戻っていく。
…あがっていいんですよね?

「…はぁ」

自然とため息がでる。
…こんなに疲れる入浴は初めてです。

茹で蛸のような状態で着替えに戻ると、長門さんが用意してくれたのか、タオルとパジャマが置かれていた。

…何で僕のサイズのパジャマがあるのだろうか。

「…先程ようやく思念体にアクセスできた」
「だから覗かないでくださいって」
「…驚かない?」
「もう馴れましたよ」

そうか、それならば鍵を探し出して帰ることができますね。

「…今日は屋上で過ごす」
「あ、そうなんですか」
「………」
「大丈夫ですって、僕もいますから」
501「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:54:22.50 ID:HwtlmcLw0
そう言うと長門さんは少しだけ満足そうに

「…お揃い」

と、僕と長門さんのパジャマを指差した。

「…古泉一樹」
「何でしょうか?」
「…何故頭を壁にぶつけているの?」
「あ、いえ…煩悩を少し」

あぁ、理性が危なかった。
お揃いって、お揃いですか。

長門さんが言うと破壊力抜群なのは何故なのでしょうか。
僕だけですかね?…僕だけなんでしょうか。

「兎に角、着替えたいんであっち行って下さい」
「…了解した」

◇◆◇◆◇

「ふぁ…」

入浴で疲れて眠くなりました…

着替えて戻ると、長門さんは相変わらずランタンの灯りで本を読んでいました。
…目、悪くならないんですかね。
502以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:54:24.36 ID:M6zBdJYqO
っ…支援
503「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:54:51.25 ID:HwtlmcLw0
「長門さん」
「…何?」
「…疲れたので先に眠らせてもらいます」
「…そう。なら一緒に」
「一緒には寝ません。僕は外で寝ます」
「………」

だからその目でじっと見ないで下さいって…

「流石にこればっかりは…」
「…なら、せめて私が眠るまで側にいて」
「…いや…僕も眠いんです」
「…お願い」

…結局、気が付けば僕は長門さんと一緒にダンボールハウスの中にいるわけでして。

…狭い。

「………」
「………」

毛布が一枚だけ敷かれた中には何もなく、長門さんが横になると僕が座るスペースはほとんどなかった。

というか本当に狭くて僕が長門さんに膝枕しているようなそんな体勢になっていてまた色々ヤバいというか…

…長門さん、もう寝たかな?
…でも長門さんの頭をずらしたら起きてしまうような…
504以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:54:59.10 ID:bUg6y5q00
ナガモンの出汁!
505「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:55:21.92 ID:HwtlmcLw0
「…まだ起きている」
「…眠れないんですか?」
「………」

目を瞑ったまま長門さんが呟く。

「…星が見たい」
「さっきさんざん見たじゃないですか」
「…流れ星」
「そういえば今夜流れるんでしたっけ」

…待ってる間に眠ってしまうと思うのですが。

「…残念」
「願い事でもしたかったんですか?」
「………」

…顔だけだして確認してますから。
流れ星が来たら教えますよ。

「…それでは間に合わない」
「大丈夫ですよ、流れる前に光るんですよ。すぐ呼べば…あ、光りました!」
「…!?」

痛っ!
…そんなに勢いよく出てこなくても。
506「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:56:02.45 ID:HwtlmcLw0
「…どこ?」
「謝罪無しですか…ほら、あそこです」
「………」
「あー…そっちじゃなくて…」
「…あれは?」

別の星も…光ってる?

「…あっちも」

長門さんが指さす方にまた一つ、また一つと光が灯る。

『全く、ケチケチしないで流れ星の一つや二つ、盛大に流せば良いじゃない!』

…無意識下の望み、か。

「…綺麗」

先程まで静かだった夜空には、今や幾百もの星が行き来していた。
流星群。
そんな言葉がぴったり合うようなとても賑やかな流れ星。

涼宮さんが強く望んだからだろうか。

「願い事はしなくて良いんですか?」
「…流れ星が見たかった」
「…そうですか」
「…もう少しだけ見ていても良い?」
「えぇ、勿論です」
507以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:56:04.99 ID:Bv6IZub4O
支援だよ!だよ!
508以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:56:09.96 ID:M6zBdJYqO
支援…支援…支援…
509「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:56:35.41 ID:HwtlmcLw0
結局、最後の一つが流れ落ちるまで僕と長門さんはのんびり空を見ていました。

◇◆◇◆◇

…眠いです。

屋上で一夜を過ごした日から早数日。
長門さんから自宅の鍵を再構成してもらい、再び僕は普通の生活をしていました。

…森さんにめちゃめちゃ叱られましたよ。
丸一晩連絡もとれずに何をしていたのかって。

「星を見てました」

…無理です。
絶対に言えません。

…はぁ。

ため息をつきながら屋上に向かう、どんな時でもお気に入りの場所。

うん、今日も良い天気です。

…しかし何故か感じる妙な既視感。


…何でまだあのダンボールハウスが屋上にあるのでしょうか。
510以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:56:39.37 ID:bUg6y5q00
∞<支援
511「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:57:10.32 ID:HwtlmcLw0
「………」
「…そしてさも当たり前のよいにダンボールハウスから出てくるのは止めて下さい長門さん」
「…ここの住み心地が気に入った」

…まだ何も聞いてませんよ。

モゴモゴと歯を磨きながら、長門さんはのんびりと空を見上げる。

「…好きなときに星が見える。綺麗」

…相当気に入ったんですね。

「…ガラガラ…ペッ」
「とりあえず水を吐き捨てる癖は止めましょう」
「…善処する」
「ちなみに食料とかはどうなさってるんですか?」
「…思念体から仕送りして貰っている。今週はピーマンがあった。苦手」
「好き嫌いすると大きくなりませんよ?」
「…どこが?」
「身長がですよ」
「…どこ?」
「だから身長ですって!」

…とりあえず教室に戻りますよ?

「…そう」
「では、また後で」
「…待って」

屋上を去ろうとする僕を長門さんが呼び止める。
512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:57:15.60 ID:bUg6y5q00
●<シッエーン↓
513以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:57:44.07 ID:M6zBdJYqO
…支援
514「夏の夜空に家無き子」:2008/12/27(土) 21:58:04.17 ID:HwtlmcLw0
「…楽しかった」
「おや、奇遇ですね。僕もとても楽しかったですよ」

たった一晩のことでしたけど

「…また鍵を無くしたら来ると良い」
「ふふ、考えておきます」

普通の日常とは少しズレただけだけど

「…もし貴方が望むなら」
「……?」

たまにはこんな日があっても良いなと思いました。

「…一緒にここに住む?」
「絶対に住みません」

…あくまでたまーにですけど、ね。

おわり

以上になります、支援ありがとうございました〜
515以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:58:15.92 ID:Bv6IZub4O
ワイルド長門だよ!だよ!
516以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:58:47.77 ID:M6zBdJYqO
し…え……
517以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 21:59:33.51 ID:Bv6IZub4O
代理投下乙だよ!だよ!
作者さんも乙だよ!だよ!
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:00:39.89 ID:bUg6y5q00
>>514
おつんつん!
519以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:05:41.66 ID:bUg6y5q00
俺前に真冬にキャンプした事があるww
空が澄んでて綺麗だったが死ぬほど寒くて(略)な状態で寝たww
でもこれ良く見たら夏場が舞台なんだな、一本取られたぜww

あと野生化したナガモンにちょっとワロタw
520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:21:03.24 ID:zHRUZjjeO
風呂&洗いもので離れてた
>>447ありがとー

長編来てるな今から読むぞ
521以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:24:01.61 ID:Bv6IZub4O
寒い季節なら裸で抱き合うのがお約束だね!だね!
522以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:37:30.38 ID:zHRUZjjeO
>>514GJ!
上の方でも誰か書いてるけど、肉じゃがの人の箱入り娘っぽくてかわいいなw
523以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:43:16.51 ID:EYSFKmMJ0
GJGJ!
古長は久しぶりだ
規定事項の流れ星の人かなと個人的には思ったんだが
524以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:49:50.35 ID:bUg6y5q00
明日コ●ケ行くので寝るわ。
525以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:54:52.82 ID:lAOpekBy0
投下予定が無い様なので短編を二つ
まずは『佐々木某の結婚生活』です
どうぞよろしく
526以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:55:33.78 ID:bUg6y5q00
寝られないじゃないか!
527以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:55:40.89 ID:lAOpekBy0
「君はいつもそうだ。いつもそういう風にしか僕に接してくれないんだ!」
「そういう風にってお前… 俺の接し方の何がいけねえって言うんだよ!」
「それだよ! 今のこそ僕が不満に思っている事の全てが詰まっていたよ。ホント… どうして君はいつもそうなんだいキョン?」
 だあああ、訳っ分からん!
 こいつは一体俺の何が駄目だって言いたいんだよ!
 さっきからず〜〜〜〜っとこれだ。
 それより、『君はいつもそうだ』ってお前はドラえもんかよ!
「あ〜、キョンは僕の話なんか聞いてくれないんだね」
「な!! 俺はさっきからずっとお前さんの話は訳の分からん不満を聞いてるだろが」
「訳の分からない不満だって? 君は正気かいキョン?」
「ああ、いたって正常だ!」
 少なくとも俺はお前さんみたいにヘンテコな要素のない一般ピーポーだよ。
「全く、呆れて物が言えないよ」
「はあ、どういう意味だ?」
「そのまんまの意味さ。キョン君は成長ということを知らないのかい? はっきり言って君の鈍感さは学生時代から何一つ進歩していない」
「だったら、それが俺っていう人間だってことだ。違うか?」
「いや、確かに君の言わんとすることは分からなくも無い。しかし、今はそのことを話しているんじゃない」
「じゃあ何なんだよ!?」
 ああ、こいつはぐちぐちと…
 そろそろ、俺はきてるぜ。
 色々ぶちまけるぜ。
 理不尽な位ぶちまけるぜ。
「これだからキョンは… 仕方が無い。いいだろう教えてあげよう僕の不満を」
 そうしてくれ。
 とっととぶちまけてくれ。
528以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:55:51.35 ID:bUg6y5q00
バッチコーイ
529以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:56:42.49 ID:Bv6IZub4O
>>525
ドゾー
530以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:56:55.90 ID:lAOpekBy0
「なんで君は僕の事を名前でよんでくれないんだ?」
 んな…………
「どうして何時も何時も『お前』ってしか呼んでくれないんだ?」
 いやですね… あのー…
「あ、勘違いしないでくれ『お前』って呼ばれるのが嫌だって言っているんじゃない。むしろそう呼ばれたほうが興奮する時だってある。
だけどキョン、君は一度として僕の事を名前で呼んでいないじゃないか。どうしてなんだ?」
「あのですね… そのー、これに関してはかなりの禁則事項というかそのー…」
「禁則事項? 一体何が禁則事項だって言うんだ? この世界には僕と君との関係を円滑に進めさせない禁則事項があるっていうのか?」
「い、いや、そんなんじゃなくてだな…」
「じゃあ何なんだ?」
 か、顔が近い… その上怖い。
 いや、お前さんの不満は分かった。
 確かにこれはお前さんとしては許せない事なんだろうな。
 だがな… こればっかりは…
「…はあ、もういいよキョン。君には失望した」
「失望ってお前…」
「だってそうだろ? 愛している人が自分の名前を呼んでくれない悲しみがどんなに辛いものか位はいくら鈍感な君にだって分かるはずだ。
にもかかわらず君は僕の事を名前で呼んでくれない。…キョン、君は僕の事を愛してはいないんだね。
もういいよキョン、あきらめることにする、すまなかったね」
「       」
531以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:57:35.21 ID:lAOpekBy0
「え?」
 皆、色々と許してくれ。
 俺自身こいつにこんな風に悲しんでほしくは無いんだ。
「どうした? お前さんのことだろ、それとも間違ってたか?」
「…キョン」
 ああ、泣くな泣くなこの位のことで。
 全く仕方がねえ奴だな…
「なあ、今まで名前で呼んでやらなくて悪かったな。ホント悪かった… これからはちゃんと名前で呼んでやるからな、
もう泣くな、頼むよ」
「グスッ…、ホントに悪い人だ君は…、キョンこの際だからもう一ついいかい?」
「…物によるが、言ってみろ」
「ちゃんと僕のことを名前で呼んでもう一度プロポーズをしてくれないか?」
 
 
 ああ、お前さんたちの言いたいことはよ〜〜っく分かる。
 二回目のプロポーズはどうだったかだろ?
 ……最低だよ。
 羞恥の極みだ。
 だれか刃物を貸してくれ。
 今なら浅井長政も驚愕する様な見事な切腹が出来そうだ。
 …まあ、冗談だがな。
 だってよ、今俺の胸の中で寝ているこいつの寝顔を見てたらそんなの小さい事なんだと思えてならなんのだわ。
 にしても可愛い寝顔だ…
 差し詰め欲しいものを与えられて満足して眠る子供ってとこか。
 ああ、子供欲しくなってきたな…
 …よっし今度は俺が願い事聞いてもらう番だ。
 明日にでも頼んでみるか。
『子供作ろうぜ』ってな。
532以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:58:02.98 ID:Bv6IZub4O
533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:58:23.89 ID:lAOpekBy0
続きまして『周防九曜の結婚生活』です
どうぞ
534以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:59:09.91 ID:HwtlmcLw0
535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:59:12.76 ID:bUg6y5q00
C.V.ささきのぞみ(嘘)
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 22:59:13.24 ID:lAOpekBy0
「ただいま〜…、ってうぉい! どうしたんだ九曜!?」
「−−−−」
 頼むから何か言ってくれ。
 そんな実験に失敗した科学者みたいな髪の毛もどうにか頼む。
「−−台−所−−」
「はあ? 台所がどうかしたk……、やべええええ!」


「ふう、火は収まったか。おい九曜、雑巾持ってきてくれ」
 にしてもなあ、台所で爆発とは…、昭和の漫画かよ全く。
「−−−−」
「おお、雑巾かサンキュ…、よ〜し九曜ちゃん地球のお勉強しようか。九曜ちゃんがいま持っているのはカーテンだ。しかもそこら辺の公立校にありそうな汚ったないカーテンだ。
こいつをどっから持ってきたのかとか子一時間ほど問い詰めたいことがあるが、今は雑巾のお勉強をしようか。雑巾って言うのはだな汚いもの、つまり汚れを拭くための汚ったない布だ分かったか」
「−−−−」
 俺のことをガン見、分かったのサインだな。
「それじゃあ、そのカーテンをどうにかして…」
 九曜さん、何故その汚いカーテンを俺に突きつけてくるのですか?
 自分で片付けるのが面倒とか? そうなのか??
「く、九曜、言っただろ? その汚いカーテンを片付けてくれって」
「−−−−」
「お、お〜い、九曜〜」
「−−−−雑−−巾」
「…………やれやれ」


537以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:00:00.43 ID:lAOpekBy0
 あれから三十分ほど雑巾と公立校の汚いカーテンの違いについて九曜に説明した俺は今、風呂に入っている。
 ちなみに九曜も一緒にだ。
 九曜の奴、昔に比べたらまともに家庭生活を送れるようにはなったんだが…
 まだ今日みたいな事が頻繁にあるんだな…
 はあ〜、こんな状態で子供でも出来たらどうするんだよ全く。
「−−−−かゆい−痛い?」
「いや、ちょうどいいよ」
 まあ、不器用ながらも頑張ってるってのは伝わってくるからな、俺としちゃあ嬉しい事なんだが、ただな…
 こうして風呂に入っている時に風呂場の鏡越しに九曜を見ると(特にそれが後ろ向きの九曜なら尚更なのだが)…
 悪いが巨大なゴキブリが俺を這っているようにしか見えん!
 正直初見の時は腰が抜けるかと思ったくらいだ。
 もっとも、九曜としては俺に巨大ゴキブリの恐怖を味わわそうとしている気などさらさらないだろう。
 しかし、だ…
 いや、もう止めておこう。
 いくらなんでも九曜に失礼すぎるな。
 それに今だって九曜は一生懸命俺の体を洗ってくれている訳だ。
 感謝感謝。
 ってあれこれ考えているうちに俺のサイドブレーキが…
「九曜、そろそろ…」
「−−−−」
 ガン見は分かったのサインっと。
 じゃあ、二人の愛の巣へ向かいますか。
538以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:00:14.12 ID:q54Nt8qE0
支援
539以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:00:26.00 ID:Bv6IZub4O
540以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:00:45.55 ID:HwtlmcLw0
541以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:01:19.48 ID:bUg6y5q00
―――…―――
542以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:02:01.58 ID:Bv6IZub4O
543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:02:21.70 ID:bUg6y5q00
ん?
544以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:02:23.95 ID:lAOpekBy0
以上です
支援してくださった方
黙って見ていてくださった方
ありがとうございます
以前、投下の際『次回はミヨキチ編を投下します』とほざきましたが…
無理ですごめんなさい
俺の中であまりにもミヨキチのキャラが無さ過ぎて書けませんでした
雑談所でもミヨキチに期待といったお言葉を頂いていたのにこの体たらく…
ほんとごめんなさい

後、これで短編『結婚しよう』は終了です
ここまで『仲間はずれをつくっちゃ可愛そうだろ』っていうマンマユート精神でこの短編SSを書かせていただきました
しかし『それなら鶴屋さんはどうしたこのアホンダラゲ』とお思いでしょう
鶴屋さんに関しては俺の嫁なのd…、ゲフンゲフン
鶴屋さんに関しては『結婚しよう』とは別に長編で書いています
皆さんが満足いく出来になるかどうかは分かりませんが完成しだいまた投下させていただきます
では、良いお年を


>>409があまりにもツボ過ぎて岡島さんが気になって仕方がない
どうしてくれるんだwwwwwww
545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:03:03.60 ID:q54Nt8qE0
乙でした!
546以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:04:46.82 ID:bUg6y5q00
よろしい、ならば岡島さんSSを頼もうか、いやマヂで、お願いします、この通りです。
547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:05:35.69 ID:+Ann2U6UO
ちなみに九曜の台詞のあれは───(ダッシュでいうんだっけこの記号)だと思うよ

お疲れ様でしたー
よいお年を
548以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:06:24.49 ID:Bv6IZub4O
乙だよ!だよ!

あ、甘ぁぁぁぁぁぁい!
549以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:07:21.13 ID:zHRUZjjeO
じ、G……
550以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:08:01.47 ID:lAOpekBy0
>>546
>>409を見たとき真剣に考えましたが…
ミヨキチですら無理だったので諦めることにしましたwwww

>>547
ご指摘ありがとうございます
次にく〜ちゃんを書くとき参考にさせていただきます
551以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:10:11.24 ID:zHRUZjjeO
さるったかとオモタw
今までの分もまとめてGJなんだぜ>>544
552以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:11:30.35 ID:bUg6y5q00
>>550
真摯な人だwww

まあ俺は寝るぜ、みんな乙なんだぜ、愛してるぜ。
俺が帰るまでみんな待ってて欲しいんだぜ。
553以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:17:05.08 ID:Bv6IZub4O
おやすみだよ!だよ!
554以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:21:02.25 ID:HwtlmcLw0
>>527 gj代わりに

 真備しい日差しが窓の隙間から差し込んでいる。
 どうやら朝が来てしまったらしい――ってのはわかるんだが、半覚醒状態の体は動き出そうとしてくれない。
 ……眠い……あ〜もうこのまま寝てしまおうか?
 僅かに開きかけていた瞼を閉じ、再び眠りの中へとしていると……柔らかな感触が俺の額に触れて、俺の意識は
現実へと急浮上するのだった。
 目を開いた俺を迎えてくれたのは眩しい光と、
「えへへ……お兄さん、起きてください」
 真っ赤な顔で俺を見ているみよきちの顔だった。
 ……なんていうか最高の起床だな、これは。
 おはよう、みよきち。
「おはようございます」
 なあ、そろそろお兄さんって呼び方はやめないか? 夫婦なんだし。
「で、でも。そのまだ少し恥ずかしくって……」
 そんなに赤くならなくても……可愛いなぁ。 
 自分の幸福に酔いつつも、俺は再び眠りの中へと……
「あ、あの! もうそろそろ起きないと会社の時間に間に合わなくなってしまいますから」
 ん〜さっきのキスじゃ起きられないなぁ。
「ええ?っ」
 額じゃ目が覚めない。
 俺の言わんとする事がわかったのか、みよきちは更に顔をしていたが……一向に俺が起きる気配を見せないので
覚悟を決めたようだ。
「……こんなに甘える人は、もうお兄さんじゃないです」
 小さなみよきちの唇が触れて、俺はわざとらしく目を開いた。
 目の前にあったのは、恥ずかしそうで嬉しそうなみよきちの顔。


 翌朝から、みよきちは俺が何も言わなくてもキスで起こしてくれる様になったなんて事は言う必要はないよな。
5551/3:2008/12/27(土) 23:22:45.67 ID:+Ann2U6UO
彼が買ってきた飴の袋が机の上に置いてあります。なんでも、涼宮さんが遅刻常習犯である彼へ与えた罰だそうです。今日は来るのが遅いとは思っていましたが、パシリだったんですか。
彼がくたびれた様子で買ってきた飴を机の上に広げた瞬間に涼宮さんが鷲掴みにして持って行きました。
「おいこら」
「あたしだけその机から遠いんだから当然でしょ!」
「にしても取りすぎだ」
「うるさいわね…」

飴はまだ沢山あるので、そう簡単には減らないと僕も思っていました。
しかし、みんなが手を伸ばし、口の中が空になればまた…。
そのお陰で誰も喋ることなく個々の作業に集中していたのので部室内は静かです。物音を立てるのが憚られる程です。

…と、気付けばもう残り一つになっていました。5人もいれば、一袋はあっという間です。

「最後の一つだが」
「ええ構いませんよ」
「いい」
「どうぞ」
皆からの了承を得てからその最後の一つを彼が取り、包みを開けた瞬間でした。
556以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:22:51.53 ID:Bv6IZub4O
ミヨキチもエロいよ!いよ!
557以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:23:31.48 ID:+Ann2U6UO
うわすまん。続けてくれ…
558以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:25:10.26 ID:HwtlmcLw0
>>555
ごめんごめん>>554はあれで終わってるんだ
だから気にしないでくださいな
559済まない 2/3:2008/12/27(土) 23:26:06.86 ID:+Ann2U6UO
丁度歩いてきた涼宮さんがそれをひったくると、自分の口に放り込みました。
「おい! それは俺のだろ!」
「いいじゃない、飴の一つくらい」
「お前だけ大量に持ってっただろうが」
「鞄の中に入れちゃったから出すのが面倒なのよ」
「そんなのが言い訳になるか!」
珍しく彼が怒っていますね…。食べ物の恨みは恐ろしいと聞きますが。
すると涼宮さんが彼のネクタイを掴むと、引っ張って出て行ってしまいました。
ドア越しに聞こえた彼の声に、我々は硬直し、目を見合わせました。
「ちょ、ハルヒ、んむぁ◆@*……………!!」






560以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:26:23.21 ID:Bv6IZub4O
>>554の人は一レス完結じゃないかな?かな?
561以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:27:15.51 ID:Bv6IZub4O
出遅れたよ!たよ!
562以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:27:42.59 ID:HwtlmcLw0
わっふるわっふる
5633/3:2008/12/27(土) 23:29:28.48 ID:+Ann2U6UO
戻ってきた彼は耳まで真っ赤でした。涼宮さんは下を向いて何かぶつぶつと呟いています。
何があったのですか?
「訊くな…」
おや、口の中に何か…
「それ以上言うな…」
彼は顔を両手で覆うと動かなくなり、それ以降は返事もしませんでした。
対局中だったんですけどね…。

朝比奈さんも、二人を交互に見ながら赤面しています。僕はどんな表情なんでしょうか。彼が言う「むかつくスマイル」なのかもしれません。
「お熱いこと」
長門さんのその一言に、何か誤魔化すようにパソコンの画面とにらめっこをしていた涼宮さんも真っ赤になりました。
564以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:29:59.79 ID:lAOpekBy0
>>554
最高だ!
あなたに書いてもらってミヨキチも小躍りしてるだろうwwwww
565以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:33:57.48 ID:HwtlmcLw0
>>555
GJ!
>>564
いえいえ、便乗してしまってごめんなさい
>>554は邪魔でなければ結婚生活シリーズの末席にでも置いてあげてください
566以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:36:39.81 ID:Bv6IZub4O
>>563
乙だよ!だよ!
甘いのは飴だよ?だよ?
567以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:38:41.05 ID:lAOpekBy0
>>563
全くけしからん位お熱いですなwwww

>>565
ほんとですか??
ありがとうございます
では早速そうさせてもらいます
568以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:39:06.01 ID:+mb++CbC0
どかす
569以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:49:50.09 ID:Bv6IZub4O
驚愕はいつ出るのかな?かな?
570以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 23:54:52.56 ID:zHRUZjjeO
>>554ミヨキチ素晴らしきかなgj

おやすむ
571以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:00:26.33 ID:ATV5Ebh8O
今日最初の書き込み
572以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:01:26.54 ID:kcHtS4nbO
ナァー
573以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:02:18.38 ID:uHPWjqDwO
ガッ!

おやすみ
574以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:02:34.61 ID:EE56pPUAO
ハルヒちゃん二巻が面白くてフクザツな気分
575以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:02:34.44 ID:y5GaPsx50
日付変更!
576以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:26:26.52 ID:qLFUkGW/O
日付変更!



ホラー書き ブレーカー落ちて ビビる俺
577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:27:57.04 ID:ATV5Ebh8O
ハルヒちゃんは毎月ちゃんと連載してる+増刊や読み切りも描いてるのは凄いね。

面白いけど複雑な気分になるがw
578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:57:06.15 ID:uHPWjqDwO
ホラー書き
背後が気になり
眠れない

今の俺
579以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 00:57:09.26 ID:y5GaPsx50
さて、寝ますかね
580以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 01:12:22.72 ID:qLFUkGW/O
古泉「怖くて眠れない…そんな夜はありませんか?」
キョン「昔はな。今は非現実に触りすぎたせいか怖いって事を知らない」
古泉「羨ましいですね…」

581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 01:15:12.68 ID:nTPlK2Q10
>>563
GJ.
582以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 01:26:54.03 ID:qLFUkGW/O
本物の幽霊「うらめしやぁ〜」
ハルヒ「きゃあ! 幽霊!!」
キョン「へぇ…幽霊だ。幼いな、何歳だ?」
本物の幽霊「じゅうにさいだよ…って…だめだよ、こわがってよぉ!!」
キョン「そう言われてもな…しかし妹と同じ年齢かぁ…若いな。可哀想に」
本物の幽霊「こわがらなきゃゆーれいじゃないよぉ!!」
583以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 01:51:32.97 ID:qLFUkGW/O
 あったら嫌なSOS団

コンピ研部長「SOS団やっつけるぞぉ!!」


キョン「ふん…愚かな」
ハルヒ「あら…如何様してるわね、うふふ」
みくる「これで自分が有利に立ったつもりなのかしら」
古泉「小賢しい真似をしますね」
長門「五秒あれば十分」

五秒後

コンピ研部長「ウワァァアアアアッ!!」
584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 02:47:00.17 ID:B6pAdBRA0
どかす
585以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 02:57:35.50 ID:q2beClLQ0
>>582
新たな萌えキャラ登場か?w
586以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 02:59:30.42 ID:qLFUkGW/O
新しい萌えキャラ(?)は433だけで充分だwww
587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 03:10:50.72 ID:q2beClLQ0
いやマッスル国木田(>>433)は相当古いぞ、去年の夏には既にあった。
初出は多分もっと前。
ついでに言えば俺リアルタイムじゃ知らないw
そして寝るw
588以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 03:16:14.59 ID:qLFUkGW/O
いや、二年以上前から居るから知ってるっちゃ知ってるけどさ

なんか凄まじく下手くそなコラージュだった気がするんだが
589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 03:39:44.82 ID:VWstdJBJ0
あげ
590以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 03:53:34.75 ID:q2beClLQ0
なんか>>588に申し訳ない感じがしてきたので自作の国木田コラでもうpしよう。
こういうのまともにやった事ないので色々アラが目立つが勘弁してくれ。
下半身が入りきらないのは元画像のレイアウトの都合だ。

今度こそ寝る。

ttp://up2.viploader.net/pic2/src/viploaderf146925.jpg
591以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 03:56:38.93 ID:q2beClLQ0
三十分以上かかってこんなもの作ってたのか俺はorz
592以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 04:02:26.88 ID:qLFUkGW/O
OK、気に入った

やらないか
593以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 05:05:12.05 ID:FVv+YtylO
>>590
阪中「ちょっとその娘あたしに紹介するのね。さぁ! 今すぐに!」
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 06:01:07.54 ID:BdRvKRw/O
ねむ

ねむ
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 06:56:06.27 ID:tRObBpQe0
jp
596以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 07:51:05.54 ID:B6pAdBRA0
どかす
597以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 08:25:54.84 ID:ATV5Ebh8O
おはよう
598以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 09:07:54.21 ID:7ad7UWn1O
>>544
GJ
ミヨキチ×キョンもいつか書いて下さい。そのシリーズ婿がキョン以外の作品も面白いかも
599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 09:29:35.04 ID:BdRvKRw/O
さむさむ
600以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 10:06:30.22 ID:ATV5Ebh8O
この>>600は頂いて行く!ジオン再興のために!
601以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 10:36:31.91 ID:uHPWjqDwO
(´、ヽ)
602以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 11:12:02.76 ID:uHPWjqDwO
キョン「パウーwwwwwwww」
603以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 12:32:06.74 ID:uHPWjqDwO
人否
604以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 13:14:28.17 ID:6beh05+K0
「……今だけで良い。私の傍に居て欲しい」
長門が俺にしな垂れかかってくる。オイオイ、何の冗談だよ!
「分からない。貴方に縋ろうとする、この行動を実行しようとする理由が、私には分からない」
長門の部屋で、二人。俺と、長門の二人きり。
何度も有ったこの状況。だけど始めてのこの状況。
俺の脳回路は完全にショートしていた。
「私は、もうすぐ帰る」
長門の眼は、俺を映していなかった。窓の向こうでしんしんと降る、雪に其の身を重ねていた。
「もしも願いが一つだけ叶うなら」
そう言って長門は眼を閉じる。
「貴方の傍で一度、こうやって眠ってみたかった。私には眠るという機能が付加されていないけれど」
少女の腕が俺の腰に回る。その足元から、さらさらと光の粒になっていると言うのに。その顔は穏やかで。
「ありがとう。ようやく……叶った」
「なが……と?」
俺が少女の体に腕を回そうとした時、ソイツは既にこの世界から消えてしまっていて。俺の腕は情けなく空を切った。

ひらひらと、一枚の栞が少女の居た場所に残されていて。俺はそれを手に取った。
そこにはただ一言だけ、添えられていて。

「保守」

朝倉に続いてお前も意味が分からんぞ、長門!!
俺の叫びが部屋に反響した。
605以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 13:19:39.01 ID:uHPWjqDwO
またお前かっ!
プロットの無駄遣いすんな勿体無い!
606以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 13:51:51.33 ID:6beh05+K0
「ねぇ、この現実の全てが夢なんじゃないか、って思った事は無い? アタシは有る」
二人で帰る、なんてのは久し振りで。そしてこんな話を振るハルヒも久し振りだったもんだから。
俺は生返事を返す事しか出来なかった。
「ハルヒらしくもないな。如何したんだよ?」
「胡蝶の夢、ってそう言うらしいの。夢と現実がごっちゃごちゃになるって言うか、現実を夢だと思おうとするって言うか」
俺の話を聞いていない所ばかりはいつも通り。だけど、今日のハルヒはやはりいつもとは違った。
まるでSOS団発足当初の様な、とでも言えば良いのか。その姿に小さな女の子の姿が重なって見える。
「色々、やってるんだけど。実際に色々有ったんだけど。でも、生きてるって確証が乏しい気がして」
こっちを見て、無理やりに笑ってみせるハルヒ。
「いっそキョンにでも押し倒されたら実感も湧くのかもね」
「こんな往来のど真ん中でか? お断りだ」
「アタシだってお断りよ」
そう言ってハルヒは俺に向かって舌を出した。気丈に振舞っているように見える。
そう。「振舞っている」ようにしか、俺には見えなかった。
「何か俺に出来る事は無いか?」
気付けば俺はそんな言葉をハルヒに投げ掛けていた。俺の言葉に少女がニヤリと笑う。
「そーね……じゃあ……」
団長様はハレハレな笑顔で叫んだ。

「アタシが大活躍するSSが投下されるまで、スレを保守して頂戴っ!!」

はい、お約束。……もう、慣れたよ。
607以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 13:55:19.66 ID:y5GaPsx50
はい、おはようございます
608以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 14:13:48.24 ID:B6pAdBRA0
どかす
609以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 14:39:52.02 ID:d/EunOev0
もどす
610以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 15:01:49.65 ID:VWstdJBJ0
ほほほ
611以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 15:52:08.84 ID:6beh05+K0
「本当に……行ってしまうんですね、朝比奈さん」
「うん。私の任務は、全部終わっちゃったから。だから……とっても寂しいんだけど、帰らなくちゃ」
朝比奈さんの瞳には涙が滲んでいた。俺はけれど、ハルヒって恋人が居る手前その震える肩を抱く事が出来なくって。
下手な事を言って、少女の決意を揺るがす訳にもいかなくって。
もしも俺の言葉一つで、この人とこの時代でこのまま一緒に生きていけたとしても。
俺に朝比奈さんを受け止める事は出来ないんだ、決して。だから、何も言えない。
「また、会いに来て下さい」
って、こんな事しか俺には言えない。つくづく自分が嫌になる。
けど、そんな俺の内情を知る由も無い朝比奈さんは、俺の言葉を素直に受け取って微笑んでくれた。
「また、会えるかな?」
「また、会えますよ。俺が保証します」
それが少女にとって何年先の話かは分からない。朝比奈さんにとっては未来でも、俺にとっては全て過去で、少女に会う事など俺にはもう無いのかもしれない。
そんな、お別れ。
だってのに、俺には何も言えなくて。引き止める事なんて出来なくて。
下を向く。そんな俺に、朝比奈さんが声を掛ける。
「キョン君、どうか涼宮さんをよろしくね。えっと、それと……」
何ですか? 未だ何か有りますか? また、例のアレですか?

「保守もどうか、よろしくお願いします」

少女風に言えば既定事項と、そうなるのだろうか。
今生の別れかも知れないって言うのに、俺の頬はひくついていた。
そりゃ半笑いにもなろうってもんだろう。
612以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 16:32:28.95 ID:ATV5Ebh8O
未来派
613以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 16:50:50.08 ID:BdRvKRw/O
みくる×キョン=藤原
614以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 17:06:06.61 ID:EiDf8ZtWO
>>613
佐々木×キョン=藤原
ハルヒ×キョン=みくる


だな
615以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 17:33:46.90 ID:6beh05+K0
「キョン君……聞いて欲しい事があるんだよ……」
「分かりました、鶴屋さん。保守ならしておきますから、もう結構です。ご退場下さい」
「……にょろ〜ん」
616以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 17:42:41.05 ID:ATV5Ebh8O
にょれろ〜ん
617以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 17:45:35.28 ID:B6pAdBRA0
どかす
618以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:11:00.11 ID:BdRvKRw/O
>>614
真実はながるんの頭の中のみなんだよな…
619 ◆.vuYn4TIKs :2008/12/28(日) 18:29:28.75 ID:6beh05+K0
投下行きます。戦友五章。
多少書き直した前半戦も併せて投下しますので20レス前後、かな?
先に言っておきますが、微グロ注意。

良ければ始めます。
620以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:34:38.53 ID:7ad7UWn1O
>>614
理論的には
みくるの役目は「キョンとハルヒとを友達以上の関係」にして、なおかつ「恋人未満の関係」に止まらせる、というのも有り得る
隣りにみくるがいなければキョンはSOS団を辞めようと本気で考えることも有り得、そして、みくるがいるためにキョンはハルヒと恋人になろうとはしないから

藤原にしても、「キョンの敵として現れることにより、仲間である旧友佐々木にも嫌悪感を持たせる」ことにより佐々木×キョンルートを潰してある可能性がある
621涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:40:10.94 ID:6beh05+K0
キョン<おーす。って、あれ?国木田だけか?谷口は?
国木田<谷口なら文化祭で上映する映画撮影の為に二輪免許取りに行ったよ?
キョン<アイツ……もう出番来るぞ?
国木田<何でも古泉君達が作った映画台本の谷口の役が妙に格好良かったらしくてさ。「コレで俺も彼女ゲットだぜ!」とか言ってたけど
キョン<あの馬鹿を今すぐ呼び戻せ!

今回の舞台裏はモノクロシンドロームより拝借。作者さんには許可を頂きました。

「すっげすっげすっげぇぇぇっっっっ!!」
語彙の少ない馬鹿な餓鬼みたいな上の台詞は俺のものな。だけど、仕方無いじゃないか。かの有名な俳人の爺さんだって「松島や ああ松島や 松島や」って俳句を残してる。
人は本当に心打たれる景色を目の当たりにした時、言葉を失うもんなんだ。
そんな俺の眼下には上空……どれ位高いのかはよく知らんが、取り敢えず東京タワーとかは眼じゃないね……の大パノラマが広がっていたりして。
飛行機に乗った経験も無い俺にとって、コイツは一寸したスペクタクルだったりする。
「僕の台詞を取らないで頂きたい」
隣に居た古泉がボヤく。髪の毛を風に靡かせたソイツも、この光景には感動しているらしい。先刻から何を言うでも無く、眼を輝かせていたのが其れを何より如実に物語っている。
幾つになっても男は少年だって事かね。まぁ、他人の事を言えた義理じゃないのだが。
こんな光景を見せられれば、空を飛ぶ事を夢見た某兄弟の、その気持ちが俺にも分かろうと言うものだ。
622涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:42:23.81 ID:6beh05+K0
さて、訳が分からないとは思うので説明をさせて貰うと、だ。俺達一行は今、空の上を旅している。
理由は簡単。海を越えた先の都市が次なる目的地だからである。
あん?なら、船で行けば良いんじゃないのか、って?
勿論、其れも考えたさ。
でもな。ファンタジー世界の移動手段と言ったら何を想像するよ?
船よりも先に飛空挺とか飛行竜とか不死鳥ラー○アとかを想像しちまうのは俺だけじゃない筈だろ?
竜を丸呑みにしちまえる大きさの鳥に乗って目的地まで行けるチケットが船旅の二倍弱の値段で買えちまう、ってんなら断然こっちを取るというもので。
船旅は何時でも出来る……っつーか某孤島に行った時に経験済みだし、飛行機に乗る機会は訪れても鳥(ロック鳥って言うらしい)に乗る機会はこの先絶対に無いと言い切れる。
浪漫を胸に抱いて一致団結する青少年二人のごり押しにも似た要求によって、今俺達は機上の人……鳥上の人となっているって訳だ。
嗚呼、しかし要求して良かった。この風景はちょっと感動で涙出そうだ。
「見ろ!人がゴミの様だ!!」
いや、気持ちは分からんでもないがな。其れにしたって何言ってんだよ、古泉。

どうも……前回から話が繋がってないな。読んでくれている人の頭の上に浮かんだハテナマークが手に取るように分かるぞ。うん。
あれ?これって回想入らなきゃいけない感じなのか?

どっかーん 第五章 『ハイリスク・ハイスタンダード/ハイジャック・ハイウェイスター』
623以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:44:04.79 ID:ATV5Ebh8O
シェーン
624涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:44:30.74 ID:6beh05+K0
さて、前回俺達は全滅の憂き目に遭った事を覚えていらっしゃるだろうか? その過程で俺はハルヒによって首筋にキスを食らった訳なのだが……。
「アンタなんかでもなかなか似合ってるじゃない?」
俺はものの見事に呪われてしまった訳だ。曰く、俺の残り寿命は一週間だそうで。
「その首筋の蠍のタトゥー、イカすでしょ?」
ハルヒが笑う。クソッタレ! コイツ、ベタな事しやがって! ジョジョの第二部かよ!?
「あ、安心して良いわよ。其れ、アンタとあたし以外の眼には映らないから。まぁ? 逆に言えば、あたし以外には其の呪いは外せないって事なんだけどね!」
……周到にも程が有るだろ、ハルヒ。
「あたし、アンタみたいに考え無しじゃないからね」
うっさい。俺だって好きでこんな脳みそで産まれて来た訳じゃねぇ。
「で?アンタ達を麓の村にまで運べば良いんだっけ?」
「頼む」
「お願いします、デショ?」
「っ……お願いします」
下げた頭の向こうから、ハルヒの笑い声が聞こえた。
625以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:45:19.69 ID:EiDf8ZtWO
>>620
そういう考え方もあるか…
だがその考え方に則れば合法的に鶴屋さんルート及びその他のルートもありえるな

ま、合法的ってのはちょっと違うかもしれんがwwwwwwww



支援
626涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:46:21.79 ID:6beh05+K0
移動は、一瞬だった。後から聞いた所によると「空間移送方陣」とか何とか言う、今となっては中々お目に掛かれない伝承から消失した呪文なんだそうだ。ロストミスティック、とか何とか。
「ルー○」とかは結構早くに覚えるもんだが、如何やらこの世界はド○クエでは無いらしい。
っつか、ドラク○だったら他人様とネタが被るしな。おっと、こんなのんびりとした話をしている場合ではない。
目に見えて重傷の鶴屋さん。岩肌に凄まじいスピードで叩き付けられて後、全く微動だにしない長門。そして、何が有ったかは見ていないので判然としないが昏倒している古泉。腕と脚を一本づつひしゃげさせた朝倉。
俺達パーティーは満身創痍も良い所だった。
「鶴屋さんッ! 長門ッ! ……ついでに古泉ッ!!」
ついでに、って台詞に対してのツッコミが来ない。コレは古泉もヤバいか!?
「キョン君、鶴屋さんは私が診ます! 長門さんと古泉君を連れて来てッ!」
朝比奈さんが叫びながら鶴屋さんに駆け寄る。
「朝倉はッ!?」
「眠ってますっ! 無事です!」
「分かりましたッ! 今、そっちに長門連れて行きますッ! 其の後直ぐに古泉も!」
こうして、俺達の決死の救命活動が始まった。

627涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:48:16.52 ID:6beh05+K0
俺は背に長門を負ぶった侭で宿の扉を蹴り飛ばした! 行儀が悪い云々言ってる場合ではない。事は一刻を争うんだ。
「お金なら後で幾らでも請求して構わないんでベッドを貸して下さい! 負傷者です!」
俺は叫んだ。驚いた顔の宿の主人が奥から出て来るが、気に留めているだけの余裕が無い。俺は階段を駆け上った。
一段飛ばしで上る度に体が揺れ、背中の長門の息が乱れる。もう少しだけ……もう少しだけ耐えてくれよ、長門!
「一番近い部屋を使ってくれ! 他に負傷者は居るか! 居るなら何処だ!!」
階下から店主の怒鳴り声が聞こえる。察しが良い人で心底有り難い。俺は長門を一番近い部屋のベッドに寝かせると、階段を転げ落ちる様に降りた。
「広場の辺りに負傷者が更に三人です! この村に医者が居たら、その人を呼んで来て下さいっ!」
俺は叫びながら宿を飛び出す。息が切れるが構わず走った。

人が死ぬ所を目の当たりにするのは、例え俺が死んでも御免だった。

「キョン君、鶴屋さんをお願い!」
朝比奈さんが俺に叫ぶと、宿に向かって走り出す。恐らくは場所を変えて長門の救命作業に移る気だろう。
「古泉は大丈夫ですか!?」
「古泉君は大事には至ってませんでしたっ! 彼よりも長門さんと鶴屋さんがっ!」
鶴屋さんを背負った俺と朝比奈さんは宿に向かって走った。これ以上無いくらい全力で。ローブが濡れて、背中に張り付く。
唾液にも似た生温い、液体の感触。
背に負った少女の出血量は、何の洒落にもなっていなかった。
「今、一番危険なのはこのお二人ですっ!」
628涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:50:09.57 ID:6beh05+K0
宿の一室。向かって手前に長門、奥のベッドに鶴屋さんが寝ている。いや、倒れている。
朝倉と古泉を別室に運び込んだ俺が、三人の様子を伺おうとして眼にしたのは戦場と化した客室だった。
朝比奈さんが息吐く暇も無い程に連続で回復呪文を唱えている。泣いている場合じゃないと眼を見開いて。親友を救う為に必死で泣き崩れるのを堪えて、少女は戦っていた。
……朝比奈さん以外に誰も入り込めない重苦しい空気に包まれた室内。って、この村に医者は居ないのか!?
「ワシも医者だが……出て行っても、あの少女の邪魔にしかならないんじゃよ」
俺の直ぐ傍に居たお爺さんが申し訳無さそうに俺に呟く。チックショウ!
「キョン君! 鶴屋さんの背中に刺さった矢を抜いて下さい!!」
俺の誰に向けた訳でもない罵倒に、朝比奈さんが振り返って告げる。了解です。俺で役に立つ事が有ったら何でも言って下さい!
「鎧のお陰で余り深くは刺さってないんだけど、火傷が酷いの……多分、古泉君が矢に込めた電気の所為だと思う……そっと抜いて下さい」
言われなくても分かっています。俺は鶴屋さんの背中から慎重に一本、また一本と矢を引き抜く。其の度に血が吹き出して、顔に掛かった。少女の体がビクンビクンと跳ねる。
思わず唾を飲む。口の中に少女の血の味が広がった。ソイツは苦くて。
だけど、朝比奈さんが必死に頑張っているってのに、俺だけが投げ出す訳にもいかない。込み上がってくるものを口に入り込んだ血と一緒に必死に飲み下す。
何より、一番頑張っているのは鶴屋さんと長門だってのに。何、被害者面してんだよ、俺は!
そんな場合じゃないだろうが!
「朝比奈さん、長門の容態は!?」
「外側はそんなに怪我とかしてないんだけど、内側……臓器の類が大分傷んでますっ。二人とも、一刻の予断も許さない状況です」
……やっぱりか。最悪のビジョンが俺の頭をかすめる。
「キョン君、其れが終わったら鶴屋さんの鎧を脱がしてあげて下さい! 本格的な治療に移りますっ!」
「了解ッ!」
室内は血の臭いで溢れていた。
629涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:53:00.59 ID:6beh05+K0
俺は夜の闇の中を疾走していた。朝比奈さんのMPが尽きかけていた為、村で一つの道具屋に魔法薬を買出しを強要されて……其の帰りの事だった。
「あの娘。ドラゴニュートの方。あの侭じゃ死ぬわね」
木陰の奥から声がした。がさがさと此方に向かって歩いてくるソイツの姿がゆっくりと月明かりの下に晒される。
「……ハルヒ……」
魔族の姫は俺の持っている魔法薬を指し示して、言った。
「そんなモン幾ら持って行っても無駄よ。両手にどんだけ抱えても、あの直ぐ泣いちゃう娘の手には余る重傷だわ」
何時もなら流せるハルヒの挑発的な台詞。
「見れば分かるでしょ?」
だけど、この時ばかりはダメだった。俺の中でぶつり、と何かが切れた音がした。
「なんで……」
俺は、叫んだ。腹の其処から、罵倒した。
「なんで、お前にそんな事が言い切れるんだよ! 大体、元はと言えばお前の所為じゃねぇか! ふざっけんなよ! お前に朝比奈さんの何が分かるってんだ!
彼女がどんだけ鶴屋さんを救いたいって思ってんのか、お前に分かるってのかよ!!」
八つ当たりも良い所だった。今のハルヒは俺達の敵で、俺達を殺そうとするのはごく自然な事だとは分かっていた。
其れは俺達が牛や豚を食べ物として見るのと同じくらい、当然の事だって頭の隅で理解していたのに。
でも、俺には其の時、溜まっていた感情を堰き止める術が無かったんだ。溢れ出した瞬間、そいつは嵐みたいに俺の心の中を荒れ狂って。
「朝比奈さんは、絶対に鶴屋さんを救う! 此処であの人の思いを汲まないなら」

「こんな世界作った奴は屑だ!クソッタレだ!!」

月に向かって吼える狼みたいに、俺の雄叫びが夜の闇に反響して残響した。

630涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:55:21.23 ID:6beh05+K0
頬に冷たいものが伝う。乾いた血を滲ませて、地面に滴る。俺は泣いていた。
「こん、な……世界作った奴……なんて」
地面が揺れた気がした。バランスを崩す。両手で作った籠の縁から魔法薬のビンが一つ零れて地面に落ち、割れる。
まるでスローモーションみたいに、ソイツは砕け散って。まるで希望みたいに、ソイツは無慈悲に俺の腕の中から転がって、地面にぶつかって砕け散る。
無理をして其れを空中で掴み取ろうとした為に、更に二つのビンが腕から零れ落ちて割れた。
チクショウ!
チクショウ!!
チクショウ!!!
チクショウ!!!!
何でこんな目に遭うんだよ何で俺の周りの人が死ぬんだよ何で俺ばっかりこんな思いしなきゃなんないんだよ!!
吼えた。何度も何度も。世界を呪った。吼えて吼えて、呪詛を辺り構わず撒き散らした。
地面が揺れてるんじゃなくて、俺の脳の方が揺れてるんだと、気づいた時には俺は耐え切れなくて地面に膝を付いていた。

ありったけの侮蔑を吐き散らして、息を吐く。ぜいぜいと、獣みたいな荒い呼吸の音だけが夜に響く。……嗚呼、コレは俺の息か?
「……クソッ」
力無く呟く。
「気は済んだかしら?」
ハルヒが言った。俺に向かって、先刻と何ら変わらない口調で。
そうだ。コイツに関わっている時間は無い。朝比奈さんが……鶴屋さんと長門が待ってる。
行かないと。早く、コレを届けないと。
死んじまう。

俺の友達が。仲間が、死んじまう。
631以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:56:58.28 ID:ATV5Ebh8O
支援
632涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 18:57:43.79 ID:6beh05+K0
俺はよろよろと立ち上がり、歩き出した。足が縺れる。転んで、また、薬を一個ダメにした。
「無様ね」
後ろから呆れ切った、馬鹿にし切った声が掛かる。
「……うるせぇ」
俺はまた、立ち上がって歩き出す。平衡感覚が無くなっちまったみたいにふわふわぐらぐらした地面を、歩く。
俺の後ろを、ハルヒが歩いて着いて来た。
「ねぇ、そんなに大事な娘なの?」
お前の知った事じゃない。良いから黙ってろ。帰れ。
「連れないのね。まぁ、良いわ。帰れ、って言われたし、此処に留まる理由も無いし、帰るわ。じゃあね」
ハルヒが闇に消える。俺は涙と血と土でぐちゃぐちゃの顔を、ビンが少なくなった所為で空いた右手を使って拭った。
「早く、朝比奈さんにコレを届けないと」
唯其れだけを考えて、必死に歩いた。

「あ、キョン君! 先刻あの窓から涼宮さんが入ってきて……凄く良く効く薬を持って来てくれたんです! お陰で鶴屋さんも長門さんも、何とか峠は越えました!!」
朝比奈さんが戻ってきた俺に向かって、涙でぐしゃぐしゃになった顔で告げた。

腰が抜けて、全身から力が抜けて。両腕がだらんとぶら垂れる。
折角買った魔法薬は全部お釈迦になっちまった。

633以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:00:05.20 ID:ATV5Ebh8O
シェスタ
634涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:00:21.09 ID:6beh05+K0
以上、回想終了である。嗚呼、恥ずかしいからあんまりやりたくなかったんだけどなぁ……。
「シリアスな戦友は僕としても微妙な気がします。元々はコメディの心算で書いていた筈なので」
古泉がボヤく。全く、其の意見には賛同させて貰う。
ちょいと俺の扱いが酷過ぎるよな、最近……コイツは抗議モンだぜ?
「其れよりも女性陣の扱いに問題が有るでしょう。瀕死の状況に置いて読者をヤキモキさせようと言う魂胆は分かりますが……分かり過ぎて逆に鬱陶しいくらいです」
そうだな。でも、ソイツのお陰で俺達は今、ロック鳥の背に乗って遊覧飛行なんて事が出来ているんだから、まぁ一概に悪い奴じゃ無いのかも知れん。
「確かに、この景色には其れだけの価値が有りますね。成る程。何事も良い面と悪い面が有ると、そういう事でしょうか」
つか、そうとでも思わないとやってらんねぇだろ?
「全くです」
俺と超能力者は、展望台の桟に凭れ掛かり、同時に溜息を吐いた。

「「やれやれ」」

そんな感じで俺達が風に吹かれていると、何処かから調子外れの歌が聞こえて来た。そんな所から今回の話は始めさせて貰う。
「WAWAWA、忘れ物〜♪ 俺の忘れ物〜♪」
口に含んだコーヒーを盛大に吹いた。
635以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:02:04.88 ID:ATV5Ebh8O
支援
636涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:04:09.65 ID:6beh05+K0
状況を速攻で察し、全力で他人の振りを始める俺と古泉。何も聞いてない。俺は谷口の歌なんて聞いてないし、飲み物を粗末にしてもいない。
「ねぇ、谷口。流石にこんな人がいっぱい居る場所で歌うのはどうかと思うよ? ほら、皆が僕達に……って言うか君に注目してる。恥ずかしくないのかい?」
そうだぞ、谷口。国木田の言う事はもっともだ。恥ずかしくないのか、人として。
……って、国木田まで一緒かよ……。
まぁ? 岡部が召喚されていたくらいだから、コイツ等がこっちに来ていない道理も無い訳で。むしろ、やっぱりか、と言う思いでいっぱいな訳だが。
「……マズいですね」
古泉が背中の谷口達をチラリと一瞥した後に呟く。ん? 如何した、超能力者?
「考えてもみて下さい。僕等のパーティーの上限は六人。これは既に全員集合しています。つまり、以降は味方となる登場人物は殆ど居ない、と考えて良いでしょう。
そうですね……勇者なり、賢者なりといった役どころの方ぐらいですか、残されているのは。では、其れを踏まえて今回現れた二人を見てみて下さい」
古泉に促されて俺も二人に悟られない様に注意深く、その姿を観察する。そして、溜息を吐いた。
熊か何かの毛皮を上半身に巻いた「ザ・ワイルド」って出で立ちをした半裸の谷口。そして真っ黒なフードとローブに身を覆った、胡散臭さ全開の国木田。
「気付きましたか?」
優男が俺に問いかける。どうでも良いがどさくさに紛れて顔を近付けるなよ?
「嗚呼。確かにアレは俺達の味方には見えないな……」
むしろ、悪役此処に極まれり、って感じだ。
「そうですね。そしてまた、涼宮さんから見た彼ら二人の印象を鑑みても、彼等が勇者の類であるとは思えません。彼女なら……谷口君と国木田君には非常に申し訳無い話ですが……二人を喜んで悪役に抜擢するでしょうね」
「……悪いが俺も其の意見に賛成だ」
国木田は兎も角として、谷口はなぁ……。愛すべき馬鹿、とでも言うか。三流悪役が良く似合うと言うか。いや、良い奴なんだけどな。
でもなんか、どっかでタイミングを外すのが上手いんだよな……悪い意味で。
「まぁ、女性陣もいらっしゃらない事ですし、幸いにも二人は僕達に気付いていない様子です。此処は下手に事を荒立てないで、大人しく他人の振りを決め込むのが良作でしょう」
俺と古泉は顔を見合わせて頷いた。
637以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:08:47.66 ID:qLFUkGW/O
支援
638以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:09:29.89 ID:qLFUkGW/O
支援支援
639以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:09:56.15 ID:qLFUkGW/O
支援支援支援
640以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:10:40.26 ID:qLFUkGW/O
支援支援支援支援
641涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:11:03.99 ID:6beh05+K0
そんな俺達二人の会話の向こう側で、谷口と国木田も話し合っている。しかし、声がデカい。主に谷口の、だが。俺を含めた周辺の皆様方に一言一句全部筒抜けだ。
「なぁに言ってんだよ、国木田。普通はこういう乗り物に乗ったら、歌の一つも歌うもんなんだぜ?」
「何処の普通だよ……。仮に其れが普通だったとしても、今回は僕も残念ながら一緒に行動する様に言われてるんだから。そういうのは一人の時にやってくれないかい?」
今、国木田さり気無く「残念ながら」って言ったな。他人の事は言えないが、酷な発言だ。ま、馬鹿の谷口はそんな事に全く気付いてないけどな。
「お、かわい子ちゃん発見! なぁ、国木田! ナンパしようぜ、ナンパ!」
ほら、人の話、全然聞いてない。まるでハルヒのような奴だ。国木田が一つ、大きな溜息を吐く。嗚呼、其の気持ちは痛いほど分かるぞ。
「悪いんだけど、断らせて貰うよ……」
「なんだよ。ノリ悪いな」
谷口が口を尖らせて、そして国木田は溜息の量産を開始した。
「谷口はなんで自分が此処に居るのか、分かっているのかい? 一応、任務なんだよ、任務」
「なんだよ、真面目な奴だな。どうせ、コイツが目的地に着くまで後二時間は有るんだぜ? なら、多少は仕事以外の事をやったって、罰は当たらないだろ?」
「君は其の侭仕事を忘れてしまいそうだから困るんだよ……」
「なら、先に任務を終わらせちまったら、付き合うんだな、ナンパに!?」
どうやら谷口はかなりナンパに拘りが有るらしい。負けると分かっている戦いに挑む其の姿はある意味で勇者と言えなくも無いな……。
「……分かった。僕の負けだ。ナンパには付き合うよ。だから、さっさと終わらせてしまおう」
国木田は渋々頷くと、谷口に笑いかけた。

「地獄絵図を見せてくれよ?」
「任せろ」
そして二人の悪魔は、蹂躙を開始する。
642以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:11:19.45 ID:qLFUkGW/O
支援支援支援支援支っ、ごほっごほっ
643以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:12:41.55 ID:qLFUkGW/O
支援(照)
644以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:13:26.60 ID:qLFUkGW/O
支援(泣)
645涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:13:53.87 ID:6beh05+K0
危険な行いをしている客が居ないかどうか。其れを監視する為に展望台には乗務員が居たりする。市民プールとかで高台に座って「飛び込まないで下さい」とか言う、あんな感じを想像して頂きたい。
スピーカを片手に、中々大変そうなあの人だ。彼が最初の犠牲者だった。
「ちょいと、其れ貸してくれねぇ?」
やおら乗務員に近づいて行った谷口はそう言うと、本当に自然な動作で彼を殴り飛ばした。手に持った物を取り落として吹き飛ぶ青年。
谷口は満足そうに痙攣する被害者を眺めると、床(ロック鳥の背中)に転がったソレに手を伸ばした。
「国木田、見てみろ。スピーカゲット」
そう言って、無邪気に笑う谷口。元々これでもかと注目を浴びていたソイツの、余りにも突拍子も無い行動に、展望台のそこかしこから悲鳴が上がった。
「君にしてはやり口がスマートだったね、谷口」
「俺は何時もスマートだっつーの」
「そうだったかな?」
「ひっでぇ!」
まるで深夜通販番組の二人組みたいに笑う、少年達。悲鳴の渦中に在って、其の事をなんら介していない様に見える。
急に背筋が寒くなった。アイツらは「地獄絵図を見せる」と、そう言った筈で。
もしも、其の言葉が言葉通りの意味で。そして其れを行えるだけの力を持っていたとしたら。
「不味い事になってきましたね」
そう隣で言う古泉の額には少しだけ汗が滲んでいた。

646以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:14:34.83 ID:ATV5Ebh8O
シエラレオネ
647以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:14:36.37 ID:qLFUkGW/O
支援(笑)
648以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:15:26.30 ID:ATV5Ebh8O
●<尻ん
649以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:15:30.33 ID:qLFUkGW/O
支援(泣笑)
650以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:16:08.67 ID:ATV5Ebh8O
シゲタ
651涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:16:22.13 ID:6beh05+K0
『えーえー、マイクテス。テス。……おお、中々性能良いじゃん?』
獣皮を身に纏った少年がふざけた様に拡声器越しに喋る。
『静粛に願うっす。俺達には乗客の皆さんに危害を加える心算は余り無いんで。どうか、静かに其の場に伏せて風でも感じながら大パノラマを存分に楽しんで下さい、ってハナシ』
「この状況じゃ無理があるでしょ、谷口」
『其れもそうか? あー、なら今の無しで。ぶっ殺されたくなかったら縮こまって脚を抱えて震えとけや』
「うん、其れくらいが悪役らしくて良いと思うよ」
『何だよ、其れ』
悪役二人組は笑った。俺は色々と思う所は有ったが、古泉に促されるままにしゃがみ込む。
「オイ、結構屈辱だぞ、コレ」
「お気持ちは分かります。しかし、僕達は兎も角としても客室には絶対安静の患者が眠っているんです。此処は堪えて下さい」
言われて、長門、朝倉、其れに鶴屋さんの三人が朝比奈さん看病の下ベッドに眠っている事を思い出す。俺って奴は本当に思慮が足りない。
少女達は前日の戦闘で負った傷の為に、未だ本調子ではなく。もしも此処で騒ぎ、アイツらを戦闘へと駆り出したとしたら。

前回はたまたま運が良かっただけだ。分かってる。
今度こそ、惨事になりかねない。

652以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:16:53.52 ID:qLFUkGW/O
支援(微笑)
653涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:18:09.99 ID:6beh05+K0
「分かった。……すまん」
「いえ。分かって頂ければ、其れで結構です」
俯く俺の背中を、古泉がポンポンと叩いた。おい、馴れ馴れしいぞ。
そんなやり取りを俺達が交わしていると、乗客の一人が立ち上がった。
「あんまり調子に乗ってんじゃねぇっ!!」
見た目から察するに俺達と同様、この鳥に乗っていた冒険者だろう。ソイツはツーハンデッドソードって言うのか? 大剣を振り翳して谷口目掛けて突撃する。
『お、こんなトコにも勇敢な奴が居るもんじゃねぇか! そうそう、抵抗する乗客が居てこそハイジャックも遣り甲斐が有るってもんだ』
谷口は余裕綽々で、スピーカすら捨てようとしやがらない。そんな無防備な少年に向かって冒険者が剣を振り下ろす!
「え?」
俺は目を疑った。振り下ろされるべき剣が、彼の腕の動きに付いて来なかったからだ。いや、正確に見たままを説明するべきだろう。
男性の、肘から腕が、有るべき場所に無かった。
「アァァァァアアァァアッッッ!!!!」
黒フードの少年の手の中に握られている「其れ」を見て男性が絶叫する。
「返せッ! 俺の、腕をッ! 返せェェエェッッ!!」
「うーん、人に物を頼む時の礼儀って言うのは知っておいた方が良いと思うよ? だから、これは勉強代だね。うん。こうすれば、もう忘れないだろう?」
国木田は何て事無くそう言ってのけると、切り口から血を吹き流す其の腕を展望台の外、中空へと放り捨てた。当然、其れは重力に従って落下していく訳で。
そして、此処は今まさに飛翔中の巨鳥の背の上。
『残念。アレは流石に回収出来ねぇなぁ』
心底楽しそうな笑い声がスピーカ越しに辺りに響いた。

654以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:18:53.41 ID:ATV5Ebh8O
しらね(護衛艦)
655以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:20:32.30 ID:B6pAdBRA0
どかす
656涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:20:44.03 ID:6beh05+K0
「オイ、国木田だよな、今の?」
「分かりません。谷口君が動いたようには見えませんでした。しかし、国木田君がやった其の瞬間を確認した訳でも有りません」
……お前の動体視力でも追い付けない動きをした、って事かよ!?
「はい。……恐るべき事ですが、其の通りです」
三流悪役なんてアイツらを評したのは誰だよ? ああ、俺か?
「三流どころではありませんね。彼らは間違い無く一流ですよ。其れも、超の付く……騒ぎにしなくて本当に良かったと、胸を撫で下ろしている所です」
奇遇だな、古泉。俺も今、同じ事を思ってたよ。
「恐らく、涼宮さんと同程度の高レベルだと、そう思って良いでしょう。其れが二人。正面から戦えば、今度こそ死人が出ます。保証しますよ」
分かってる。俺だってそんな馬鹿な真似はしない。
腕を失くして気絶してる奴には申し訳無いが、俺達は生憎正義の味方じゃないんだよ。
俺は目を瞑った。黙って、この状況が行き過ぎるのを待つしか無かった。

展望台に、警備の人間が入ってきたのは其れから三分も無かっただろう。だが、体感時間から言えば半時と言っても決して言い過ぎじゃないように思う。
『お、嬉しいねぇ。続々といらっしゃいまして、俺の出番も有るんじゃないの、コレ!?』
さっきのは国木田の仕業、か。って、分かった所で何になると言うのか。
「いえ、此処で相手の手の内を知っておくというのは非常に有意義な事です。これから犠牲になるであろう警備の皆様には申し訳有りませんが」
「俺達は正義の味方じゃない、か」
「そういう事です。一般人である貴方には此処から先に展開される光景はキツいとは思いますが、どうか堪えて下さい」
分かってるよ。
人の命は平等じゃない。少なくとも俺にとっては。そんな事を、俺は今から再確認させられるんだろう。
仲間を生かす為なら幾らでも非情になってやるさ。世界を守る使命を持った勇者だって悪魔に売り渡す覚悟なんだ。
何処まででも、鬼になろう。
657以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:21:24.29 ID:ATV5Ebh8O
シェーク
658涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:22:41.09 ID:6beh05+K0
警備の連中は息巻いて走ってきたは良いが、展望台で繰り広げられている光景に絶句していた。
そりゃ、そうだろう。誰だって腕を失って倒れている人間を見たら怯えちまうってもんで。しかし、彼らだって役職上何もしない訳にはいかず。
食われるのを待つだけのガゼルみたいな目をして、震える警棒を握り直すしか無いんだ。其れが地獄への片道切符だと分かっていても。
彼らには乗客の身の安全を守る義務が有るから。
『やる気満々じゃんかよ! ひぃふぅみぃ……もっと揃えてきてくれても構わんぜ! 待っててやるからよ!』
「さっさと終わらせないと、ナンパしてる時間がなくなるんじゃないの、谷口?」
『のわっ! そいつもそうだ! 予定変更して、さくっと殺すぜっ!』
谷口がスピーカを取り落とす。
「要求を聞こう!! 乗客に手を出さないで貰いたい!!」
警備の隊長っぽい髭のおっさんが声を張り上げる。しかし、谷口は聞いているのかいないのか、素知らぬ振りで国木田の方を向いて口を開いた。
「なぁ、アレ全部俺がやっちゃって良いか?」
「好きにすれば良いと思うよ。元々、僕は君のサポートでしかないんだから」
「よっしゃ。なら、やっちまうぜ!」

「――体は輪剣で出来ている。血潮は鉄で、心は硝子。
幾度の戦場を越えて不敗。唯の一度も敗走は無く、唯の一度の勝利も無し。
担い手は此処に一人。輪剣の丘で鉄を打つ。ならば、我が生涯に意味は無く。
この体は、きっと――無限のWA(=輪剣)で出来ていた――」
659以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:23:21.88 ID:ATV5Ebh8O
ちと抜ける
660涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:24:35.66 ID:6beh05+K0
「「なぁっ!?」」
俺と古泉の驚愕の声が重なる。谷口の周囲に百は下らない数のチャクラム(だよな、多分)が現れたからだ。ソイツは高速回転しながら宙に浮いている。
その光景は、正しく「無限の輪剣」。
警備の人達があるいは後退り、あるいは腰を抜かし、あるいは逃走を始める。
「行くぜ、雑魚ども。責務と一緒に挽き肉になる覚悟の貯蔵は十分か?」
輪剣に囲まれて今や姿すら殆ど見えない谷口の、辛うじて確認出来る口元がニヤリと笑みを浮かべたのを、俺は見た。
――仕掛ける。俺がそう感じたのと、谷口が叫んだのは同時だった。

「切り刻めっ、アンリミテッド=チャクラム=ワークス(無限の輪剣製)ッ!!」
俺の見ている目の前で幾百の高速回転するチャクラムが、男達を襲う。

鳥の背に血の雨が降った。

其れは、惨劇だった。惨劇でしかなかったし、惨劇としか呼べなかった。
鋼の刃が雨と降り、谷口の号令を受けて嵐となる。其の場に居た人間はジューサーに掛けられた果物でしかなかった。
胃液が逆流する。
661以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:26:22.96 ID:0VQgXHX20
しえn
662涼宮ハルヒの戦友 第五章:2008/12/28(日) 19:26:42.83 ID:6beh05+K0
「うおえぇぇっっ!」
臆面も無く、外聞も無く吐いた。そんな俺の背中を擦りながら、古泉は目を逸らさずに其の光景を見つめている。
長門とは別の意味で、つくづく、コイツも俺みたいな一般人とは出来が違う事を痛感させられる。
「キョン君。堪えられそうに無かったら眼を閉じていて下さい。今、また警備の増援がやってきました」
「……スマン」
俺は古泉の言葉を素直に受け入れて、眼を閉じて耳を塞いだ。
「良いんですよ。人には得手、不得手が有るものです。決してこういった状況を僕が得意としている訳ではありませんが。しかし、こんな時くらいは頼って下さい」
そう言って俺にハンカチを差し出す、古泉の手は震えていた。
……コイツもまた必死に堪えているのだ。飛び出したい感情を。必死に押し込もうと戦っているんだろう。

どれだけ強く耳を塞いでも、指の隙間から悲鳴が聞こえてきて。俺の頭は今にも如何にかなっちまいそうだった。
だけど、どれだけ悲鳴が聞こえても。救いを求める声が俺の耳に届いても。
俺は正義の味方ではないから。
俺の手には何の力も無いから。
俺には誰を犠牲にしても守らなきゃいけない仲間が居るから。
そう自分に言い聞かせて、必死に耳と眼を塞ぎ続けた。

無力な自分を呪ったのは、蔑んだのは、これが何度目になるだろう?
663涼宮ハルヒの戦友 以上です:2008/12/28(日) 19:27:30.11 ID:6beh05+K0
『もう、抵抗してくる奴は居ないのかよ?』
スピーカで拡張された谷口の声で我に返る。眼を開けた。展望台から艦橋に向かう、通路の周りは真っ赤に濡れていた。
どれだけの人が犠牲となったのかなんて分かる筈も無い。けれど、まるで赤いペンキの缶を幾重にもぶちまけたかの其の様は、一人二人の人間で作り上げる事が出来るモンじゃぁ無かった。
「……古泉?」
隣の険しい顔をした少年に問い掛ける。何を聞きたかったのだろうか。俺にだって分からない。
古泉は唯、首を横に振った。
其れが何を意味するのかも、分からなかった。

『ブリッジで怯えて出て来れねぇ、責任者ども! よっく聞きやがれ! この鳥は俺達が頂く! ……えっと、何っつーんだっけ、国木田?』
こんな状況でも、谷口は意に介さず何時もの阿呆な谷口だ。いや、こういう風に作られているのかも知れない。ハルヒがそうであった様に。
「お前達が取れる対応は、だよ」
『おう、其れ其れ。お前らが取れる対応は唯一つだ! 今から俺の言う事を素直に聞き入れれば俺達はこれ以上手荒な真似はしないし、乗客の安全も保証してやる!』
谷口は息を一度吸い込むと、スピーカに向かって大声で叫んだ。

『この鳥に乗ってる乗客の中に居る、キョンって奴を俺達の前に連れて来い!!』

……え?
「キョン君、名指しですよ?」
……そういう展開かよ。俺と古泉は顔を見合わせると揃って溜息を吐いた。
664以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:27:50.16 ID:qLFUkGW/O
支援(黄昏)
665以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:29:20.55 ID:BdRvKRw/O
ちょっとだけ支援
666以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:34:34.05 ID:qLFUkGW/O
我が名は支援…
667 ◆.vuYn4TIKs :2008/12/28(日) 19:37:02.43 ID:6beh05+K0
以上で、第五章は幕です。
微グロになってしまったのは本当にすいませんでした。
668以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:38:43.62 ID:ATV5Ebh8O
おっつー
後で読む
669以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:40:06.89 ID:qLFUkGW/O
GJです〜ぅ
670以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:43:28.31 ID:kcHtS4nbO
戦友来てたのか
今年は単発スレでながら投下してないなぁ…
単発の奴をリメイクして投下するのもありなんだろうか?
671以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:51:23.89 ID:kcHtS4nbO
>>670
よく見たらおかしい
ながら投下しかしてないだ。
672以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:05:11.13 ID:BdRvKRw/O
乙でし〜
673以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:08:12.06 ID:ATV5Ebh8O
>>670
自分の作品なら問題無いんじゃないかな?>リメイク投下
674以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:30:27.33 ID:0VQgXHX20
乙!
675 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:32:03.48 ID:tRObBpQe0
 投下します

 これもまた、1つのハッピーエンド

 カカオ 
 ttp://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5331.html
 からのIFルートになります

 微エロ注意
676 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:33:05.72 ID:tRObBpQe0
 これもまた、1つのハッピーエンド




 あたしには、それは苦痛じゃなかったの。


 自分の上に圧し掛かるキョンの体重や匂い、汗ばんだ肌も切なげな吐息も……
その何もかもが愛しくてしかたがない。
 この部屋はあたし達だけの物、誰の邪魔も入らない。
「ハルヒ……ハルヒ」
 大丈夫、あたしはここに居るから。ね?
 彷徨っていたキョンの手を掴んであげると、その手の震えはすぐに止まった。
 ほら、大丈夫。


 あたしと付き合い始めてから、キョンはまるで人が変わってしまったみたいに
家に篭りがちになってしまった。
 それまでの穏やかな性格を思い出せないくらいに荒んでしまって、一時期はS
OS団のみんなや家族まで近づけない程だったわ。
 あたしはそんなキョンを放っておけなくて、2人で同棲したいとキョンの両親
に頼んでみたの。まともに会話をできるのはあたしだけだったし、時期が時期だ
ったからキョンがそうなってしまった責任は自分にあるのかもしれないって思っ
たから。
 状況がよくなるのであれば、そう条件をつけた上で疲れきった顔をしていたキ
ョンの両親は同棲を納得してくれたわ。
677 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:33:32.95 ID:tRObBpQe0
 それからすぐに、古泉君の紹介で入れた格安のマンションであたしとキョンは
同棲を始めたの。
 2人っきりの生活が始まって、キョンの様態は目に見えて回復していったわ。
 家族はもちろん、SOS団のみんなとも普通に話せるようになったし、気分が
いい時は外へ出かけたり、一緒に部屋で映画を見たりもできるようになったの。
 ただ……私以外の誰かが来た時は、決まってキョンは大人しかった。
 一見すれば、まるで以前と同じように戻った様に見えてしまう位に。
 そして今日も――
「キョン君、また部室で会いましょうね」
「新しいゲームを準備してお待ちしています」
「また、明日」
 ……ほらキョン、みんながあんたの返事を待ってるわよ?
 玄関口で頼りなさそうに笑うキョンは頭をかきながら、
「ああ、またな」
 そう恥ずかしそうに呟いた。
 ゆっくりと扉が閉められ、みんなの足音が遠ざかっていく。
 この後に起きる事がわかっていたあたしは、そこから動こうとはしなかった。
「ハルヒ」
 ただあたしの名前を呼びながら、キョンの手があたしの体を乱暴に掴む。
 抵抗すればキョンは悲しそうな顔をする事を知っていたあたしは、されるがま
ま床に押し倒されていた。
 みんなが部屋に来た日は、キョンはいつもこうしてあたしを求めてきた。
 されるがままでいるあたしの顔を、キョンの切なそうな顔が見ている。
 キョンの顔は、あたしの言葉を待っていた。
 ……いいよ。あたしには、何をしてもいいの。
 あたしのその言葉を引き金にして、キョンはまたあたしに溺れていった。
678 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:34:01.20 ID:tRObBpQe0
 まるで誰も居ないみたいに静かな部室の中、私達は涼宮さんとキョン君が戻っ
てくるのをずっと待っています。
 誰も座って居ないキョン君と涼宮さんの席を見ていると、まるで2人とはもう
会えない様な気がして、私はわざとその場所を見ない様にしていました。
 大丈夫……涼宮さんがついてるんだから、きっと良くなるはず。
 2人が同棲を始めて数日が過ぎると、涼宮さんは私達に部屋に来ないように言
ってきました。その方が、キョン君の回復が早いから……だそうです。
 涼宮さんはお医者さんじゃないけど、彼女が信じてればきっとそうなるんだと
信じて、私達はそれに従いました。
 ――それから電話、メールと次々と連絡手段が禁止されていって……キョン君
の情報が途絶えてしまった頃、古泉君は部室に来なくなりました。
 ……きっと何か忙しいんですよね。
 放課後、長門さんと2人の部室は静かだったけど、今の私にはそれでよかった
んです。
「……」
 口を開いたら、不安な言葉しか出てこなかっただろうから。
 人が少なくなって、殆ど汚れなくなった部室を掃除する事が私の今の日課です。
 いつかみんなが戻ってきて、
『みくるちゃん久しぶり! あ、部室が綺麗なままだなんて流石みくるちゃんね!
団員の鏡よ!』
『ったく、お前もたまには手伝ってやれよ。……ご心配掛けました、朝比奈さん』
『これはこれは、久しぶりに勢ぞろいですね』
 きっとみんな喜んでくれるますよね?
 ……そう信じなければ、私は壊れてしまいそうでした。
 雑巾を絞っていたはずの私の手に、何故か上から冷たい雫が落ちていました。
 おかしいなぁ……なんでだろう?
679 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:34:31.96 ID:tRObBpQe0


 プルルルル――プルルルル――プルルルル――ピ
「もしもし」
 七日振りに聞いたその声は、わざと抑えた様な声だった。
 お久しぶりです、涼宮さん。
「みくるちゃん、どうかしたの?」
 どうしたんだろう、涼宮さん……怒ってるみたい。
 えっと、キョン君の様態はどうかな……って。
「キョンは大丈夫。今は元気にしてるし、その内に学校にも行けると思うわ。み
んなにもそう伝えておいて」
 あ、あの!
「何?」
 涼宮さんの声は、早く電話を切りたそうだった。
 ……あの。涼宮さんは休まなくて大丈夫ですか? キョン君のお世話は大変だ
ろうし。
「……ありがとう。でもあたしは全然大丈夫だから心配しないで」
 今度の言葉は少しだけ優しくて、私はその言葉を信じたかったんです。
 はい。それじゃあ。
 彼女に電話を切られてしまうのが怖くて、私は自分で電話を切った。

680 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:35:01.97 ID:tRObBpQe0
 今の俺にはタバコや酒を止められない奴の気持ちがよく分かる。
 それはもう自分の体の一部みたいな物で、それが無いって事は自分が欠けてい
るのと同義なんだよ。
 それを依存症と言うのならばまさしく依存症だな、今の俺にはハルヒ無しの生
活なんて考えられやしない。
 俺は自分の隣で寝ているハルヒの体を、起こしてしまわない様にそっと抱きし
めた。ハルヒの傍に居る事で感じるこの安堵感はいったいなんなんだろう?
 これが愛って奴だとしたら、まさしく世界でもなんでも救えそうな気がするぜ。
 時折、俺は今の生活を不安に思うことがある。
 学校にも行かず、家族やみんなとも会わないでずっと部屋に篭っていていいの
かってな。
 しかし、今までどおりに過ごそうといくら努力しても、何故か体はそれを否定
するのだった。
 これは精神病か何かなのかわからんが……ハルヒによれば、人間誰しもそんな
状態になる事はあるんだそうだ。
「あたしも、以前そんな状態になってたからわかるのよ。だからキョンは何も心
配しなくていいの」
 医者でも専門科でもないあいつの言葉は、俺にとってまるで魔法だった。
 その言葉を聞けば、憂鬱な思いも未来への不安も何もかもが色あせて、俺には
ハルヒしか見えなくなる。
「……眠れないの?」
 ん、ああ悪い。起こしちまったか。
「いいの。あたしも、まだ起きてたかったから」
 シーツの下で、ハルヒの腕が俺の肌の上を優しく撫でる。
 その瞬間、俺の思考はいつもの様に急に姿を消し、迷う事無く俺の体はハルヒ
を求めていたのだった。
681 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:35:42.07 ID:tRObBpQe0


「どうも、呼び出してしまって申し訳ありません」
 遅くなっちゃってごめんなさい。
「いえ僕も今来た所ですから」
 すっかり氷が解けたアイスコーヒーを前に、古泉君はそんな気の使い方をして
くれます。
 その日、私は古泉君に駅前の喫茶店に呼び出されて居ました。
 お久しぶりです。あ、あの。どこか体の調子が悪いんですか?
 そう聞かずにはいられない程、久しぶりに見た古泉君の表情は暗いものです。
「いえ、お気遣いなく。最近はバイトの方もご無沙汰ですからね」
 彼が言う通り、キョン君達が同棲を始めてからというもの世界はとても安定し
ています。
 小規模な閉鎖空間すら発生しませんし、時空振も一度も観測されていません。
「さて……今日、貴女を呼んだ理由なんですが……」
 私から視線を逸らしながら、古泉君は言葉を選んでいるみたい。
 ……なんだろう、何か怖い気がする。
 やがて意を決したように、彼は口を開きました。
「正直、僕は貴女には事実を伝えるべきではないと思っています。ですがこのま
ま、貴女をあの部室に行かせ続ける事になるのは……耐えられないんです、これ
まで一緒に過ごしてきた仲間として」
 え……? それって、どういう……。
「結論から言います。涼宮さんと彼は、もう二度と学校に来る事も部室に来る事
もありません」
 その言葉の意味も、何故か悲しそうな古泉君の顔も、私には何の事なのかわか
りませんでした。
「事の始まりは、言うなれば僕なのでしょう。御2人の関係を進展させる事を望
んでいたのは僕だけのようでしたからね。その後2人はお互いを意識しあう様に
なり、結果恋人同士となった。2人の関係が上手く行くようにサポートすれば世
界は安泰、そう考えていたんです」
682 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:36:16.58 ID:tRObBpQe0
 古泉君の口調は、まるで罪の告白の様に重いものでした。
「しかし、涼宮さんは彼と恋人同士になった事でそれまでになかった感情を持つ
ようになってしまった。手に入れた物を失いたくない、今までよりもより強い絆
が欲しい。いわゆる独占欲と呼ばれる物です。涼宮さんは自分の独占欲を満たす
為に自分が彼を求める以上に、彼に自分を求めて欲しかった。その強い思いはす
ぐに形になって現れました。……もう、おわかりですね」
 じゃあ……キョン君が急に変わってしまったのは……。
 私の言葉に古泉君は頷き、
「涼宮さんの力による物です」
 悲しそうにそう答えてくれました。
 

 それは俺にとって大事な物だったはずだった。
 携帯電話、アドレス帳、映画を撮った撮影データ、旅先での写真。
 みんなとの繋がりであるはずのそれらを、俺は順番に処分してしまった。
 そうする事でよりハルヒの傍に居られる気がして……俺には、ハルヒしか居な
いって事をわかって欲しかったんだよ。
 過去を1つ処分するたびにハルヒは困ったような顔をして、その後でとても優
しくしてくれる。
 まるでご褒美をねだる犬だ。
 ばらばらになった写真が散らばる部屋で、俺はハルヒの笑顔を待っている。
 最後まで残していたみんなとの写真もこれで終わりだな。
 残り一枚になった写真の中では、みんなが楽しそうに笑っている。朝比奈さん、
長門、古泉、鶴谷さん……さよなら。
 俺は何の抵抗もなく、ハルヒ以外の部分に鋏を入れた。
683以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:37:14.95 ID:qLFUkGW/O
ツエン
684 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:37:21.24 ID:tRObBpQe0


 喫茶店からの帰り道の事は、よく覚えていません。
 古泉君は機関の方針に疑問を感じて抗議してくれていたそうですけど、安全な
状態を確保できた以上、涼宮さんを刺激するような事はできないと言われたそう
です。
 古泉君の目的は……そうですよね、世界崩壊の危機を救う事なんです。
 そう考えてみれば、今の状態は悪くなんかないんですよね。
 ……それでも……それでも、本当にそれでいいんですか?
 私が言いたい事は古泉君にも分かっているみたいで、結局無言のまま彼は帰っ
ていってしまいました。
 このままじゃ……このままじゃキョン君が……。
「朝比奈みくる」
 え?
 暗い歩道を歩いていた時、急に背後から聞こえてきたのは、
「……」
 いつの間にかそこに立っていた、長門さんの声でした。
 あの、どうしたんですか?
 まさか涼宮さんに何かが……。
 静かに長門さんの言葉を待っていた私に告げられたのは、
「お別れを言いに来た」
 そんな一言でした。

 
685 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:37:56.74 ID:tRObBpQe0
 街灯で所々照らされた歩道に、私の走る音が響いていく。
 お願いです、今だけでいいですから早く足が動いてください!
 ――任務が終了した為、私に機関命令が出ている。
 い、急がないと……急がないと!
 ――涼宮ハルヒに今後変化は訪れない。統合思念体はそう判断した。 
 2人の住んでいるマンションまで……もう少し。
 ――私としても、この結果は残念でしかない。
 涼宮さんやキョン君ならきっと止められる、そうですよね?
 ――貴方達と過ごした時間は、私という固体にとって最も大事な時間だった。
 エレベーターの降りてくる時間すら待ち遠しい。
 ――……さようなら。
 602号室……この部屋に。
 キョン君! 長門さんが! 長門さんが!
 そう叫びながら私はドアを必死に叩いたけど、何故かドアを叩く音はしなくて、
私の声を聞いて部屋から出てくる人も居ませんでした。
 ど、どうして?
 考えてみると不思議なんです、町にはまだ人通りがあったのにこのマンション
に入ってからは誰の姿も見ていません。それと、今は夜なのにマンションのどの
部屋にも電気がついていないんです。
 ……いったい、何が?
 この場所が静か過ぎる事に気がついて私が脅えていた時、その足音は聞こえて
きました。
 階段の方から聞こえてくるその足音は、まっすぐ私が居るほうに近づいてきて
いるみたいです。
686以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:40:44.02 ID:qLFUkGW/O
し、しえんなんかしてあげないんだから!
687以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:42:19.65 ID:qLFUkGW/O
 これは…その………べ、べつにしえんじゃないだから!
688以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:43:11.93 ID:qLFUkGW/O
しえんしえん
えんしえんし
んしえんしえ
しえんしえん
えんしえんし
んしえんしえ
689以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:45:46.60 ID:kcHtS4nbO
支援
690以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:46:58.45 ID:qLFUkGW/O
2+2円
691以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:49:20.61 ID:qLFUkGW/O
しかし
えろい
ん〜…
692以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:51:03.82 ID:qLFUkGW/O
悲しいけどこれ支援なのよねぇ〜!
693以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:52:53.13 ID:0VQgXHX20
しえn
694以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:53:58.07 ID:qLFUkGW/O
私とてアナルの人間だ!無駄支援はしない!!
695以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:56:11.15 ID:Sl7ceHueO
思いっきり無駄になっ…
696以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:57:01.81 ID:ATV5Ebh8O
坊やだからさ
697 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 20:59:33.19 ID:tRObBpQe0
 誰だろう……もしかして……キョン君?
 そんな期待と共にその場で待っていた私が見たのは……。
 容易には信じられはしない。
 でも、間違えるはずもない。
 呆然と見守る私の前に現れたのは……
「こんばんわ。はじめまして……よね」


 「私」でした。


 今の私よりも背が高くて、顔つきも大人びているけれど……間違えるはずない
んです。
 だって……それは自分なんだから。
 異時間同位体との接触、それは私達の様に時間を移動する存在にとって、最も
犯してはならない禁則事項。
 それなのに、こうして未来の自分が目の前に居るのに、私の体は強制送還され
る事もなくこの場に存在し続けています。
「驚いてるわよね……。というよりも、私はここで驚いたんだから間違えるはず
はない、か」
 寂しそうに笑う「私」は、そっと近づいてきて私の体を抱きしめてくれる。
 ……その暖かさも、匂いも。何もかもが一緒でした。
 彼女は私の体を抱きしめて、顔は見ないままで静かに話しはじめました。
「あの時わたしが聞いた言葉を伝えます。涼宮ハルヒと鍵である彼の居るこの部
屋の時間を、私が凍結させました」
 ……私……が。2人を閉じ込めたんですか?
698 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 21:00:11.14 ID:tRObBpQe0
 キョン君と涼宮さんを?
「そう。未来の貴女である私がね。……貴女が少し前に聞いた古泉君達と同じ判
断を、私達も選んだの」
 古泉君達と同じって……。
「彼らは、2人をこの場所に閉じ込めておく事が最も安全であると判断した。で
も、2人は人間である以上いずれ時間の経過で不安要素が生まれてくる。だから
機関は我々と取引きしたの」
 と、取引き?
「機関の出した条件は涼宮ハルヒに関わる全ての情報と記録を差し出す事。代わ
りにこちらに望んだのは、この部屋の時間を凍結させる事」
 そんな! そんな事の為に2人を!
「聞いて!」
 離してください!
 逃げ出そうともがく私の体を捕まえたまま、彼女は続ける。
「機関が条件として出した情報なんて、本当はどうでもよかったの。私達が望ん
だのは未来の安定、それだけなのよ」
 あんまりです! もっと酷いです? だって、自分達の為に2人を犠牲にする
なんて許されないです。そんなの……そんなの。
 泣きながら私は……心のどこかでわかっていました。
 これはもう、私が泣いてもどうにもならない事なんだって。
「……これは言い訳でしかないけれど。私達の技術レベルでは長門さんの様な完
全な時間凍結はできないの。だから2人の時間はほんの少しづつだけど進んでい
て、2人には何の変化も感じられていないはずよ」
 じゃ、じゃあ。いつか2人はまた自由に。
 静かに体を離した彼女は、私の顔を見て……首を横に振りました。
699 ◆Yafw4ex/PI :2008/12/28(日) 21:01:17.35 ID:tRObBpQe0
「今はまだ、貴女は何も考えなくていいの。近い未来、貴女は数分前に私がした
様にこの部屋の時間を止めに来ます」
 そんな事絶対にしません! 2人を閉じ込めるような……そんな事、絶対にし
ません!
 泣きながら叫ぶ私を見て、彼女もまた泣いていました。
 彼女が何故泣いていたのか? その時の私には……わかりませんでした。


 静かな部屋で、2人は身を寄せ合うように眠っていた。
 壊れてしまっても翌日になれば何故か元通りになっている家具も、いつまで経
っても無くならない冷蔵庫の中身も気にならない。
 不自然な程変化の無い日常の中で、ただ求め合うだけの毎日。
 ――誰も彼の心を奪わない。
 ――誰も私達を邪魔しない。
 ――そしてキョンは、あたしが居ないと生きていけない。
 そう、こんな時間が永遠に続けばいいのよ。


 現実とは異なる世界で、少女の願いは叶ったのでした。



 これもまた、1つのハッピーエンド 〜終わり〜
 お題「ヤンデレキョン」カプ指定キョン×ハルヒ

 以上です、支援ありがとうございました
700以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:15:17.29 ID:ATV5Ebh8O
おつ&>>700
701以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:20:39.31 ID:uHPWjqDwO
おっつん
702以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
亀だけど
>>673 リメイクは投下したことあるんだけど、修正版の投下はまずいかな。話の根幹が全く変わってないのはまとめに直投下した方がよろしい?
いや別に今する訳ではないんだが