1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :
ある村に貧しい家族が住んでいました。家には食べるものも満足になく、子供はお腹をすかせて泣いています。
雛苺「ふえ〜ん、ひもじいの〜」
真紅「あなた、早く仕事を見つけて食べるものを買ってきて頂戴」
ジュン「うるさいな。こっちだって腹ペコで動けないんだ」
真紅「この甲斐性なし!この子が飢え死にしてもいいの?」
ジュン「……わかったよ」
ジュン「と、言っても仕事の当てなんてないし…。仕方ない、兄さんの所へ行ってみるか」
男の兄は離れた町に住む大商人でした。
※5分おきくらいに投下します。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:25:57.16 ID:ekeV3k7i0
蒼星石「やあ、また金の工面かい?」
ジュン「…うん」
蒼星石「駄目だなぁ、ジュンは。いつになったら本気出すの?」
ジュン「…ちょっと、今は…」
蒼星石「今夜は僕の誕生会なんだよ。あ、ちょうどいいや、庭掃除でもしてくれたらいくらか出すよ」
ジュン「そうだったね。そんな日にすまない…」
男は一日かかって広い庭を掃除しましたが貰えたのはごくわずかのお金と黒パンだけでした。
蒼星石「助かったよ。もうお客さんが来るから。じゃあ」
ジュン「ありがとう…」
つぶやくと男はトボトボと屋敷を離れました。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:31:00.11 ID:ekeV3k7i0
ジュン「疲れた…」
男は近くの道端に座り込むと、もらったお金を見つめてため息をつきました。
兄の屋敷を見ると、着飾った客たちを出迎える兄夫妻が見えます。
男は何度も帰ろうと思いましたがなぜか足は動きません。
真夜中になると客たちが歌を歌いながら上機嫌で帰っていきます。
ジュン「……そうだ、僕も歌でも歌って帰ろう。気分だけでも盛り上げないと」
ジュン「ヤングマン♪ さあ立ち上がれよ、ヤングマン♪ 今とびだそうぜ、ヤングm……」
明るい歌を歌ってみましたが余計みじめな気分になるだけでした。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:35:48.23 ID:ekeV3k7i0
???「もう悩むことは、な・い・ん・だから♪」
ジュン「えっ!?」
不意に聞こえた歌声に男が振り返ると、そこには白い服を着た少女がいました。
ジュン「…誰?」
雪華綺晶「私は雪華綺晶。貧しい人の友達です」
よく見ると実体がない感じではなさそうです。
雪華綺晶「あなたはお金がなくて困っていますね。かわいそうに…」
ジュン「…ああそうさ。誰も助けてくれないし、このまま一家全員飢え死にだよ」
雪華綺晶「…わかりました。何とかしてあげます」
と、言うなり雪華綺晶は男の背中におぶさってきました。
雪華綺晶「さ、行きましょう。マスター?」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:39:43.23 ID:ekeV3k7i0
ジュン「くっ…(何だこの重さは!?)」
背中の雪華綺晶は異様に重く、岩を背負っているかのようです。
雪華綺晶「どうしたの?マスター?せっかくだから楽しい歌を教えてあげますね」
私はきらきー、雪華綺晶〜♪
美人で可憐〜♪ 雪華綺晶〜♪
素敵な日常、守るため〜♪
まーずしい人の♪
味方する〜♪
雪華綺晶「ねぇ、せっかくだしお酒でも飲みましょう」
ジュン「…でもそんなお金は」
雪華綺晶「さっきもらったのがあるよね?飲めば気分も変わるから」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:45:15.68 ID:ekeV3k7i0
途中で酒を飲んだ男はいい気分で家に帰りました。
ジュン「ご主人様のお帰りだぞ!今日はご機嫌だぜ!」
真紅「まったく愛想がつきるのだわ…」
雛苺「ふええーん、うにゅー食べたいのー!」
妻の嘆きも子供の泣き声も男の耳には入りません。
ジュン「僕はもう寝るからな!」
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:45:17.91 ID:DQgXTlTu0
ロシア民謡?
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:46:52.30 ID:ekeV3k7i0
>7 いいえ、元歌があります。ちなみに内容は原作と同じ感じです。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:52:15.32 ID:ekeV3k7i0
翌朝
ジュン「あいたた…。二日酔いだ…」
雪華綺晶「おはよう」
ジュン「あ、うん」
不思議なことに妻や子に雪華綺晶は見えていないようです。
雪華綺晶「お腹空きませんか?」
ジュン「食べ物なんてないよ」
雪華綺晶「うふふ…、昨日の歌を忘れました?私がいれば大丈夫」
そう言うと雪華綺晶は家の中をあさり始めました。
雪華綺晶「このタンスは売れますね。この服も大丈夫。これも値段がつきそうですね…」
気の弱い男は言われるままに次々と家財道具を売ってしまいました。
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 20:58:11.22 ID:ekeV3k7i0
こうしてできたお金で男は酒を飲むようになりました。
ジュン「なんかもう、仕事とかどうだっていいよ」
雪華綺晶「うふふ…、楽しいでしょう?」
家には泣いている妻と元気のない子供がいるだけで他には何も残っていません。
真紅「……あなた…これでいいと思ってるの………」
ジュン「…………さすがにもう売るものもないな。今度こそ終わりだ」
雪華綺晶「あとは身売りかしら。お金なんて簡単に落ちてるものでもありませんし」
ジュン「そういえば子供の頃、村はずれの岩の下に宝が埋まってるって話を聞いたことがあるんだ」
雪華綺晶「ふふーん?」
ジュン「どうせ嘘だろうけど行ってみないか?」
雪華綺晶「わかりました」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 21:02:39.04 ID:ekeV3k7i0
村はずれ
ジュン「これだ。この下に宝があるらしい」
雪華綺晶「思ったより大きな岩ね。じゃあ持ち上げてみましょうか」
ジュン「わかった」
ググググググ…
二人がてこを使って岩を動かすとそこにぽっかりと穴が開いています。
ジュン「深そうだな…」
雪華綺晶「あそこに光るものが!」
ジュン「金色?てこを押さえておくから見てきてくれないか?」
雪華綺晶「はい」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 21:07:32.40 ID:ekeV3k7i0
しばらくすると闇の中から雪華綺晶が戻ってきました。手には金貨の詰まったツボを持っています。
ジュン「すげぇ!これで全部か?」
雪華綺晶「まだまだありました。もっと取ってくるから待っいてください」
ジュン「ああ。頼んだよ…」
ガスッ!
雪華綺晶が穴に戻った途端、男はてこの支えを外しました。
雪華綺晶「!!!!!」
元に戻った岩の下からはもう何も聞こえてきません。
ジュン「じゃあな、貧乏神…」
13 :
[―{}@{}@{}-] にかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 21:11:24.08 ID:VKXR4ytRP
民話・童話ってときどき残酷だよな
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 21:12:00.82 ID:ekeV3k7i0
男はツボを抱えて家に帰ると妻と子供に手をついて謝りました。
ジュン「今まで本当にすまなかった。僕は心を入れ替えるよ」
その言葉どおり、それからの男は人が変わったように真面目になり、金貨を元手に商売まで始めました。
そして数年後には立派な屋敷を建てるほどに成功を収めました。
男の噂はすぐに兄のもとへと伝わってきました。
蒼星石「まさかあのジュンが…。きっと同姓同名の他人だよね」
念のために、兄は弟を訪ねてみることにしました。
蒼「これは…。そんなばかな…」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 21:16:57.75 ID:ekeV3k7i0
やって来た兄を弟は温かく歓迎しました。
ジュン「やあ、兄さん、僕もここまでになれたよ」
蒼星石「さすが僕の弟だ。でも貧乏だったジュンがどうしてこんな屋敷を建てられたんだい?」
弟は今までの経緯を詳しく話しました。
蒼星石「それはよくがんばったね。すごいよ」
蒼星石「でも岩の下の宝の話が本当だったなんてね…」
その日、兄弟は遅くまで語り合いました。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 21:20:52.92 ID:ekeV3k7i0
弟の話を聞いた兄は帰ってからも残った金貨が気になって仕方ありません。
蒼星石「(やっぱりジュンはバカだな。どうせならもっと取り出してから閉じ込めたらいいのに)」
蒼星石「(やっぱり金貨を放ってはおけない)」
翌日、兄はさっそく村外れの岩へ向かいました。
蒼星石「これで残りの金貨は全部僕のものだ。フヒヒ…」
蒼星石「貧乏神が出てきた所でうまいこと言ってジュンの所に戻せばいいんだ…」
道具を使って岩をずらすと、兄は穴の中を覗き込みました。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 21:24:34.86 ID:ekeV3k7i0
蒼星石「うわっ!」
突然白い影が兄の肩に飛びついてきました。
雪華綺晶「戻ってきたわね!私がこんな穴蔵で朽ち果てるとでも思った?」
蒼星石「違う!お前を閉じ込めたのは僕じゃない!弟だ!」
雪華綺晶「あはははははははははははは! どっちだっていいのよ!」
蒼星石「重いっ! 離れろっ!」
雪華綺晶「うふふふ…、もう絶対放さないから…。よろしく。私のマスター♪」
蒼星石「うわぁああー!」
その後、兄の家はあっと言う間に没落し、行方もわからなくなってしまいました。
しかし、弟の方はその後もずっと豊かに暮らしたということです。
おしまい
以上です。読んでくれた方ありがとうございました。
18 :
[―{}@{}@{}-] にかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 21:26:23.06 ID:VKXR4ytRP
乙!
今日は南方系っぽいねなんとなく
こぶとりじいさんみたいだな
おつかれさん
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 21:30:12.16 ID:DQgXTlTu0
面白かったよ
蒼星石は完全に男なのか
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/24(水) 21:32:42.32 ID:ekeV3k7i0
>20 今回は男役です。
忘れていましたが、今回の元ネタは「Woe Bogotir」という話です。
また面白い話があったらやってみたいと思います。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 21:36:38.99 ID:FXHMBawa0
原作はどこで読めるの
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :
>22 Woe Bogotirでググってみてください。最初に出てくるやつですが英語です。