1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
このお話は、読者参加型の短編です。
あなた好みのカップリングやシチュエーションをお挙げ下さい。
安価に従い、作成致します。
コピペなどで安価がずれ込んだ場合は次のレスになるのでご注意の程宜しくお願いします。
大体の目安は5〜7レス、所用時間は1レスにつき15分程度です。
産業用説明
俺、安価出す。
お前、好きなカップリング、シュチ挙げる。
俺、書く。
安価
>>5 お久しぶりです。ほら、今日は恋人たちのクリスマスイブだしね。うん。カップルできるだけ苦しんで死ねばいいのに。
そんな感じで ブーンたちの恋愛事情のようですは、おはようからおやすみまで
無為な時間を有意義に ブーン小説グループの提供でお送りします。
http://boonnovel.g.hatena.ne.jp/bbs/154?mode=tree
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 13:45:48.16 ID:73dq2H88O
こんな時間人なんていないだろ!
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 13:48:02.59 ID:Iaq37rOJ0
>>2 で す よ ね ー ☆
まっ、落ちたらそのときはそのときかなって。
時間もそうだけど今日はクリスマス・イブだから人いないとかいうなよ!! 絶対いうなよ!!
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 13:49:58.60 ID:C8tQIJ7UO
クー
ヒート
やる
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 13:50:47.96 ID:rDDolRns0
トソンとヒッキー
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 13:52:33.41 ID:Iaq37rOJ0
>>4 三行目が見えない。
>>5 了解です。
のんびりいきますね。
久々だから筆がぜったいに さび付いてるね! ごめんね!
おうふ、久しぶり
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 14:09:51.64 ID:73dq2H88O
シエンタ
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 14:26:50.38 ID:Jifvy4YaO
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 14:56:20.19 ID:Iaq37rOJ0
所要で席はずしてた。ごめんこ。
のんびり投下するよー。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:00:43.99 ID:Iaq37rOJ0
「引田くん。とりあえずその黒板消し、私にもちょうだい」
女子にしては低い、アルトの声。
聞こえた途端、僕の肩は上下する。
(-_-) ヒッキーと(゚、゚トソントソンの恋愛事情のようです
夕方5時の黄昏時、放課後、一人で黒板消しの作業をしていると、そう声を掛けられた。
(゚、゚トソン「……その反応はひどくない?」
(-_-)「っご、ごめんなさい……都村、さん」
僕は少し泣きそうになりながら頭を垂れた。
視界に飛び込んできた、じんわりと歪む板張りの床は、靴との摩擦により磨り減っている上、変な方向に折れた釘をめり込ませている。
……涙目って、まばたきしないでいいから楽かも。
頭の隅で走る、変に余裕のある思考回路。
(゚、゚トソン「あー……謝らないで、イライラする」
気まずそうなアルトが響く。
後半の台詞に再度触れた肩に、ただひたすら重いだけのため息が教室に響いた。
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:17:10.55 ID:xB1r+o0w0
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:29:00.00 ID:Iaq37rOJ0
(゚、゚トソン「とりあえず顔あげて」
先ほどとは打って変わって、聞こえてきたのは優しい響き。それにつられ、うっかり僕は顔を挙げてしまったのだった。
――そして再び移り変わった視界に入ったのは、予想外に柔らかい視線。ただそれだけが、僕を捕らえていた。
それは僕を油断させるために意図して作られたものだったかも知れないけれど、
その計算のにおいを嗅ぎ分けられるほど僕の鼻はまだ上等じゃなくて、だから僕は、右手をこちらに伸ばした彼女から、
(゚、゚トソン「じゃあ、よこせ」
と、投げかけられたのだか投げつけられたのだか分からない勢いの言葉を受けるまで、ぼぅっと彼女を見ているしかなかったのだ。
都村トソン。
ラクロス部所属。身長170センチ。
僕よりも頭ひとつ分高い彼女は男子よりも女子から人気の、古きよき男前を突き通すクラスメートだった。
(-_-) 「で、でもでもっ何で?」
(゚、゚トソン「そう言うことはどーでもいいでしょうが」
(-_-) 「よ、よくないよ!」
(゚、゚トソン「いいの」
(-_-) 「駄目だってっ」
(゚、゚トソン「いいっったらいいの。ほら、かせ」
(-_-) 「都村さん!」
(゚、゚トソン「アンタ変なところで頑固だよね……」
(-_-) 「都村さんこそ……」
苦笑い気味の僕ら。
板張りの床に、二つの影がのびていた。……もちろん、高いほうが彼女だ。
こう言うのを青春って言うのだろうか。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:30:38.01 ID:XCGneYm6O
久しぶりだな
久々期待支援
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:42:18.29 ID:Iaq37rOJ0
――それとも。
(゚、゚トソン「いいよ。解った。じゃあ貸さないでいい。勝手にして」
(-_-) 「…………」
今度の今度そこ、突き放すような言い方だった。
(-_-) 「…………」
しかしそう言いながら、都村さんは黒板のレールの上にあった黒板消しを手に取ったのだ。
(-_-) 「つ む ら さ ん !」
(゚、゚トソン「諦めてね。私はアンタの100倍は頑固だし、その上意地が悪いから」
それとも。
こう言うのを幸せと言うのだろうか。
にしし、とまるで少年のように笑う都村さんを視界に治めたあと、
僕はまいってしまって天井を見上げた。跳ね上がる心拍数を気のせいにして、蛍光灯の光を見つめる。
(-_-) 「……じゃあ、頑固で意地悪な都村さん意地に甘える」
(゚、゚トソン「ちょっと苦いかもしれないね」
陽気に朗笑する都村さんにつられて、僕も笑った。
ごしり、と現代文の授業の残りかすを消しながら、僕は教室の埃っぽい空気を肺いっぱい吸う。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:46:54.18 ID:rDDolRns0
とむらかと思っていた
支援
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:53:47.71 ID:Iaq37rOJ0
(゚、゚トソン「ごめん」
(-_-) 「へ?」
僕の身長では爪先立ちしなくては消せない、上の方の文字を消しながら、都村さんは切り出した。
彼女の真剣な、だけれどもどこか寂しそうな目に、強烈に引き込まれる自分の視線。
(゚、゚トソン「イライラするとかいって」
(-_-) 「…………本当のことだから、いいよ」
ぽつり、と。本当の本当に、自分で聞いててもイライラするような声が出た。ひどく軟弱で、自分で自分がいやになるほどの。
再び歪んだ視界。瞬きしないで、じゃなくて、今は瞬きができなかった。今、したら。こぼれる。いろいろ。
(゚、゚トソン「――…………」
たっぷり数十秒の沈黙。
――――ホント言うと、僕は都村さんがとても苦手だった。
だって、彼女は焦れてしまうほどに男前なのだ。
何事にも威風堂々としていて、まるで僕が思う理想の僕みたいで、
だから僕は見ぼれてしまうし、だから肩が振れてしまう。現実の僕との違いを、むざむざ見せ付けられるようで。嫌だった。
(゚、゚トソン「あのね、引田」
『くん』が抜けていた。怖かった。
(゚、゚トソン「私ね、アンタのそういうところが大嫌いなの」
あくまで威風堂々と、運動会の選手宣誓みたいな感じの言い切りで都村さんが言う。
面と向かって初めて言われる拒絶の言葉。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 15:57:03.95 ID:YscYpQzT0
支援 支援・・・っと
期待してるよ
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:03:08.33 ID:Iaq37rOJ0
(-_-) 「………………」
ああああ、ああああああ。逃げたい。と言うか引きこもりたい。自分の部屋に。オアシスに回帰したい。
何だここは。少なくとも心を落ち着けられる場所ではないことは確かだ。
何だこれは。ああああ、あああああー。
僕を尻目に都村さんはまっすぐ僕を見据えてくる。
立ち位置も制服も人間性もスタンスもかがみ合わせのように反対な僕らは、
お互いに黒板消しを片手に見つめあい、数秒。
ブツン、と、僕の中で何かが切れる音がした。
わかった。都村さんは、僕が嫌い。そういった。
――ああ、そうか。なら僕も吐き出そうじゃないか。
もうどうだっていい。僕だって都村さんが苦手なのだ。お相子じゃないか。お似合いじゃないか。
僕は息を吸い、
(゚、゚トソン「ホント言うと、私はアンタがとても嫌いだった。
だって、アンタってすっごい女の子らしいじゃん。
何事にもおしとやかで、 まるで私が思う理想の私みたいで、
だからね、すごく、イライラするの。私になりたい私が、私じゃなくてアンタだから」
(-_-) 「ホント言うと、僕も都村さんがとても苦手なんだ。
だって、君は焦れてしまうほどに男前じゃないか。
何事にも威風堂々としていて、まるで僕が思う理想の僕みたいで、
だから僕は見ぼれてしまうし、だから肩が振れてしまう。現実の僕との違いを、むざむざ見せ付けられるようで」
ほぼ二人同時に同じような――ただしかがみ合わせのように反対の――口上を述べていた。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:25:17.38 ID:Iaq37rOJ0
(゚、゚トソン「「――…………」」(-_-)
たっぷり数十秒の沈黙。 冗談抜きで永い沈黙のあと
(゚、゚トソン「は?」
(-_-) 「へ?」
あっれェ……? とでも続きそうな語尾上がりの言葉を二人して吐いて、同じタイミングで首をかしげた。
いや、だって。ああああ、ああああああ。逃げたい。と言うか引きこもりたい。自分の部屋に。オアシスに回帰したい。
何だここは。少なくとも心を落ち着けられる場所ではないことは確かだ。
何だこれは。ああああ、あああああー。 ああああー!!
デジャビュを感じながら思考をまわす僕。いや、だってさ。ありえないよ。ありえないくらい恥ずかしいよ。
(゚、゚トソン「…………っ、は」
先に言葉を発したのは、都村さんだった。
(゚、゚トソン「っは、あは、あははははははははは!! あははははははは!!!!」
そして豪快に笑う彼女。
つられてから笑いを漏らした僕は、耳まで真っ赤になっていた。
鬼のような勢いで全身をめぐる血液を自覚しつつ、僕はため息をつく。
一方、笑いつくした都村さんは、よたよたと年老いた猫のような力ない歩きで僕の方へ来、
並んだかと思うと、左手を 振りかぶってバシンと僕の肩をめいっぱいたたいた。
(-_-) 「いっ……!?」
息を呑む僕を尻目に、都村さんは目じりに浮かんだ涙をふき取って(笑いすぎだ)こう言った。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:31:13.38 ID:Iaq37rOJ0
(゚、゚トソン「ねえ、引田くん。うん。さっきので気がついたわ」
都村さんはにっ、と口角をつりあげた。少年のようなしぐさだった。
(゚、゚トソン「私ね、アンタの事が苦手で大嫌いで、大好きみたい」
ブツン、と、僕の中で何かが切れる音がした。
わかった。都村さんは、僕が、……以下略。
やっぱり思考にデジャビュを感じつつ、僕は息を吸い、
(-_-) 「……どうやら僕も、都村さんのことが大嫌いで苦手で、大好きみたいだよ」
面を食らったような顔をした都村さん。
してやったり、だった。
(゚、゚トソン「引田」
女子にしては低い、アルトの声。
聞こえた途端、僕の肩は上下する。
了
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:33:03.01 ID:Iaq37rOJ0
おまけ
(-_-) 「でも、ひとつだけ質問。どうしていきなり手伝ってくれたの?」
(゚、゚トソン「ん? ああ、私今日日直だから」
(-_-) 「…………お礼なんてぜったい言わないからね」
放課後+男女+日直イコール青春
なにこの途方もない難産。ということでヒッキーとトソンでした。
なんか、ごめん。
次安価
>>30
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:35:05.56 ID:9K/Ewq1f0
乙
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:39:41.29 ID:9K/Ewq1f0
ksk
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:43:42.57 ID:Iaq37rOJ0
やっぱり普段から書いてないとだめだなぁ
ksk
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:44:55.94 ID:9K/Ewq1f0
>>1 気にするな、ここにストーカーが居る
ksmsでもおkなん?
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:46:28.59 ID:pO/ajny/0
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:46:43.82 ID:9K/Ewq1f0
( ・∀・)×【+ 】ゞ゚)
嫌われ暴君モララーにどこまでも従う狂信者オサム(男装)
エロでもSMでもヤンデレルートでもry
www
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:50:34.38 ID:Iaq37rOJ0
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:52:17.60 ID:9K/Ewq1f0
>>30 正直すまんかった
変な組み合わせ期待してる
男装好きです^q^
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:52:55.06 ID:9K/Ewq1f0
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:55:26.90 ID:Iaq37rOJ0
>>33 そういうこと言われたらガチを書く人間です本当にありがとうございました。
それでは言ってきます。
エンジンかかってきたぜ!!!
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:58:00.22 ID:9K/Ewq1f0
>>35 期待www無理だったら訴えてアク禁にどうぞwwww
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 16:59:36.08 ID:Iaq37rOJ0
>>36 気にするなって言ってくれてありがとう><
う、うれしくなんかないんだからね!!!
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:12:08.20 ID:Iaq37rOJ0
私にとっての世界はアナタなんです。
アナタが私のすべてであり、私のすべてがアナタなんです。
アナタの許可なしでは食事をすることも睡眠をとることも呼吸することすらしない、
誓ったのです。あの、妙に月の赤さが目立つ夜の日に。
一介の、アナタにとって取るに足らない下賤な奴隷となることに。
ああ、でもアナタは。
――どこまでも冷たく冴え渡る廊下にカツン、と足音だけを響かせて、私は歩いた。
【+ 】ゞ゚) 「――――――……」
<ヽ`∀´>「…………」
向こう側から歩いてくる給仕姿の男に 立ち止まって会釈をすると、
まるで道端に捨て置かれた猫の死体を見たかのような顔をされた。気にはならない。
<ヽ`∀´>「……チッ」
顔色を変えない私への舌打ちだろうか。それとも、『そんな私』にすらうだつの上がらない自分への苛立ちだろうか。
給仕は歩のスピードを上げて、こちらへ向かって――あくまで気にしていない体を装ったままで――私をすり抜けていった。
よくやる、とは給仕からすれ違い様に掛けられた声だった。
そしてそれはどこまでも憐憫と哀れみに満ちていて、私はそっと、手のひらの肉に爪を食い込ませた。
( ・∀・)モララーと【+ 】ゞ゚) オサムの恋愛事情のようです
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:15:40.50 ID:9K/Ewq1f0
支援だよハァハァ
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:25:53.34 ID:lsIJB4IPO
こういうスレ立てると結局腐が独占するんだよね
かわいそうに
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:27:17.00 ID:Iaq37rOJ0
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:29:24.53 ID:lsIJB4IPO
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:31:17.63 ID:8oSC5M1aO
(;`゚ e ゚)「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:33:09.34 ID:Iaq37rOJ0
石造りの城内は、無機質な冷たさにしん、と静まり返っていた。
たとえるならそれは 体の体温を芯から徐々に奪っていくような優しみのない冬だ。
獰猛な鷹ですら体温を温存することに走るであろう寒さ。
――いや、或いは、この徹底した寒さに慈悲を感じるのかも知れない。
そんなとりとめもない事を考えていた頭を一端停止させ、私は立ち止まり、扉の前に立った。
息を吸い、――白い息を吐き。――最低限の身嗜みとしてネクタイを直す。
数メートルの間隔で吊るされたランタンからの光と、窓からもれて来る月光だけが頼りの凍てついた城に立ちながら、
私は重厚な木製の扉を三回ノックする。
向こうから返答が帰ってくるよりも早く、私は言葉を発した。
【+ 】ゞ゚) 「オサムです。モララー様、よろしいですか?」
( )「――ああ」
ぶっきらぼうな返答だったけれどそれもいつものことだ。
私はドアノブに手をかけ、扉をあけた。
ひゅぅ、と。
廊下よりも何段階か寒い――身を切るような――風が吹き込んできた。
私は思わず片目を瞑る。
寒々しいほどに広い部屋。
その中央に鎮座する椅子に、一人の男が座っていた。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:35:46.85 ID:FX7g8iyZ0
おー久しぶり
支援
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:41:46.85 ID:i/fQVWEG0
男装ってあったからオサム女だとばかり……
まぁどっちでもいいよ久々支援
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:42:18.80 ID:9K/Ewq1f0
♀オサムのつもりだったけどな支援
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:44:53.24 ID:Iaq37rOJ0
( ・∀・)「おいで」
その一言に、甘い水に寄っていく蝶のように引き寄せられてしまう。
ああ、
( ・∀・)「よく来たね」
ああ!
擦り寄るように私は、部屋の中央へ――彼の元へ向かった。
糊の張った黒のスーツ。首に巻かれた銀のチョーカーは、彼が私の主であり――この城の主である証だった。
( ・∀・)「オサム。ここに来る途中、二ダーにあっただろう?」
すべてを見透かしたように笑う彼に、私ははっと息をのんだ。
どこで、ばれたのだろう。ごくりと生唾を飲んでコブシを固めたところで、気づいた。
自分の手のひらに血がにじんでいる。四本の赤い線が、うっすらと走っているのだ。
――たったそれだけでばれたのだと自覚すると、今度は背中に薄ら寒いものが伝った。恐怖ではなかった。そう、これは――ただの、ああ。畏怖だ。
ああ。
【+ 】ゞ゚)「…………」
( ・∀・)「答えなよ」
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:54:13.04 ID:Iaq37rOJ0
【+ 】ゞ゚)「……はい」
( ・∀・)「そうか。ああ、大体はわかるよ。――まったく、ニダーも悪い子だねぇ。……うん、今度あったら殺しておこう」
【+ 】ゞ゚)「!」
どこまでも笑顔でそう伝える彼に、今度は頬に冷たいものが伝う。
思わずはっとなって拭うと、袖口に水分が付着していた。
( ・∀・)「なぁに?」
【+ 】ゞ゚)「いえ」
緩やかに首を横に振る。
ずれてもいないネクタイを直してしまう私に、彼は微笑んだ。温度のない笑顔だった。
( ・∀・)「もう殺すな、とでも言いたいのかい?」
【+ 】ゞ゚)「…………」
ぐぃ、とネクタイが引っ張られる。か、顔が! 気がつけばすぐ近くに彼の顔があった。跳ねる心臓。脈が速いスピードで打つ。
そしてそのどこかで、ああ、新調した燕尾服が皺になってしまうな、と私は思った。
( ・∀・)「三千はいた召使たちが、今は百足らず――あはは、その内、二人きりになってしまうかもね?」
彼を見た万人は、その笑顔に心奪われることだろう。決して目の奥は笑っていない――だけども、花のような笑顔に。
彼を知った万人は、その暴君たるやに心折られることだろう。決して目の奥は燃えていない――だからこそ、氷のような瞳に。
【+ 】ゞ゚)「――モララー様」
誓って嗜めるつもりはなかったのだが、言葉の響きにそんな要素が滲んでしまっただろうか。
寒々しい部屋の中央。その椅子に座し、足を組んでいた彼は気分を害されたらしくむっとした表情を作った。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:58:17.07 ID:qpFR76tEO
久し振りだな…
>>1×川 ゚ -゚)の時と比べたら全て無問題
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:58:50.65 ID:Iaq37rOJ0
( ・∀・)「オサム」
【+ 】ゞ゚)「はい」
その言葉ひとつで、私は忠臣のように跪く。
だんだんとせり上ってくる感情は、慶びで塗りつぶされていた。
( ・∀・)「お舐め」
そう言って、彼は私に革靴の、つま先を向けた。
【+ 】ゞ゚)「――……」
数秒迷ってしまった。
その隙を彼はもちろん見逃さず、猫のようにしなやかに――しかし目の奥では一片の氷を浮かべながら――笑った。
( ・∀・)「お舐め」
再度強かに言われ、私は両手で彼の革靴を包み込み、
【+ 】ゞ゚)「ん……ふっ――」
舌を伸ばした。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 17:59:23.16 ID:i/fQVWEG0
なんと支援
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:00:17.57 ID:9K/Ewq1f0
靴舐めに支援
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:04:02.53 ID:Iaq37rOJ0
ぴちゃぴちゃと、粘りのある水音が聞こえてきていた。
無駄に広さがある分、この部屋は音が嫌に響く。
それがステレオで聞こえるため、私はただ恍惚とした気分になってしまった。
ああ、下腹部にどうしようもない熱を抱えてしまうのは仕方がないことだろう。
( ・∀・)「僕は変態だろうか」
ふいに、彼が言った。
【+ 】ゞ゚)「――……」
( ・∀・)「答えて?」
広い広い大広間。
音が響く大広間に、
【+ 】ゞ゚)「解りません。しかしひとつだけ」
私の否定の声が響いた。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:09:02.00 ID:Iaq37rOJ0
( ・∀・)「なぁに?」
まるで子供のように聞き返される。
靴から手を離し、私は彼を見据えた。しなやかな、猫の様な目線が私を捉える。
【+ 】ゞ゚)「モララー様がお望みならば、どのような事でもいたします。
へ、変態であるとか、変態ではないとか、そういう事は私には関係ありません」
( ・∀・)「…………」
無言のままの相手。それをいいことに、私は続けた。
【+ 】ゞ゚)「私には、モララー様だけで十分です」
ここは、ひどく寒い。
手がかじかんでしまう。
その寒ささえ心地いいと彼が目を細めたのはいつのことだっただろうか。
( ・∀・)「僕、だけ――か」
ふいに、彼が言った。
( ・∀・)「君はいつもそう、――もっともらしく言うけれど、君には僕だけだったんじゃないだろう?
君には僕だけ『しか』いなかったんだ。選択の余地がなかった。ただそれだけなんだよ」
【+ 】ゞ゚)「そんな、ことは」
ふるると、力なく否定する。言葉にも力はなく、私は私自身の言葉にあやうく絶望しかかってしまった。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:13:03.69 ID:9K/Ewq1f0
支援
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:14:45.30 ID:Iaq37rOJ0
( ・∀・)「あるだろう?」
淵に立たされた私を笑うかのように、彼は言う。
そんなこと、あるだろう? と。足を組みなおしながら、彼はいった。
( ・∀・)「ちゃんちゃらおかしいよ、まったく。まったくもって僕は変態だ。何故君に執事の格好をさせて、そして靴を舐めさせて興奮しているのだろう。
前代の城主の一人娘で、誇り高いバルバトス伯爵家の最後の一人――オサム・バルバトスちゃん」
決定的な一言だった。
【+ 】ゞ゚) 「――!!」
息を呑む私を尻目に、このとき初めて彼は――いや、バルバトス伯爵家の財産であり、
誇りでもあったこの城を力に任せて略奪し、強奪し、蹂躙したモララー公爵は愉快そうに笑った。
( ・∀・)「あの妙に赤い月が印象的なだったね。僕が、ここで」
ふるる、と体全体が震える。ああ、そうだ。
( ・∀・)「君のお父上を殺したのは」
『アナタの許可なしでは食事をすることも睡眠をとることも呼吸することすらしない、
誓ったのです。あの、妙に月の赤さが目立つ夜の日に。
一介の、アナタにとって取るに足らない下賤な奴隷となることに。 生きるために。』
フラッシュバックするあの日の出来事が、ああ、ああ、ああああ、あああああああ!
「だから僕は、君を自由にする」
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:15:59.10 ID:FX7g8iyZ0
シエンヌ
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:24:36.46 ID:Msm+DtwnO
携帯から
>>1 ちょっと席はずす。
すまん。多分すぐ戻る。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:24:49.54 ID:9K/Ewq1f0
把握
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:28:24.09 ID:i/fQVWEG0
ほほう支援
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:36:50.14 ID:Msm+DtwnO
読み返したら恥ずかしくて死にそうになるな
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:44:53.15 ID:Iaq37rOJ0
戻った。ごめんね。また投下始めるね。
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:45:14.00 ID:9K/Ewq1f0
お帰り支援
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:54:25.29 ID:Iaq37rOJ0
【+ 】ゞ゚) 「……!?」
一瞬、私はその言葉が誰から発せられたものなのかわからなかった。
乾いて行く喉が、干からびて行く言葉が、絡みつく舌が、言葉を刈ってしまって。
だから私は、瞳孔をを驚愕に広げさせることしかできなかったのだった。
だって、いや――そんな。
そんな。
( ・∀・)「――君が執事の服に身を包んだのは、何の為だい?」
【+ 】ゞ゚) 「…………」
私は、
( ・∀・)「――答えられない、か。いいよ、別にそれでも。
僕は、僕には、それが仮に生きる為だったとしても復讐の為だったとしても、
どっちでもいいし、どれでも関係ないんだ。オサム。
だって、僕がこの城を手に入れたのも、邪魔な配下を処分したのも、君を飼い殺したのも、こうして僕の手から離すのも、」
カーテンから吹き込んで来る寒々しい風が身を切り、私の思考回路を寒さで凍らせる。
( ・∀・)「君の事が、」
そう言って、彼は静かに瞳を閉じた。
深く、一度だけ息を吐き、そして彼は、モララー公爵は、 すべてを止めた。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:56:24.81 ID:Iaq37rOJ0
静かになった部屋。だだっ広い
【+ 】ゞ゚)「――ああ、そうでした、そうでした。私が、貴方様のそばにいたのは――」
生きる為でも 復讐の為でもなく。
【+ 】ゞ゚)「愛の、ただ、愛の為でした」
頬を伝う冷たい物を袖で拭った所で、私は自分がずっと泣いていたのだと言うことに気がついた。
私にとっての世界はアナタなんです。
アナタが私のすべてであり、私のすべてがアナタなんです。
アナタの許可なしでは食事をすることも睡眠をとることも呼吸することすらしない、
誓ったのです。あの、妙に月の赤さが目立つ夜の日に。
一介の、アナタにとって取るに足らない下賤な奴隷となることに。
ああ、でもアナタは。 それすら踏みにじって言うのでしょう。
「愛している」と。
了
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:57:29.36 ID:Iaq37rOJ0
愛してるんだけど愛せなくて
愛せないからこそ愛してなんていないと言ってしまう愛し合ってる二人って言うかなんかもう混乱した。
男装は俺も好きだよ。
次安価
>>75
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 18:57:32.97 ID:9K/Ewq1f0
乙!!
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:01:21.06 ID:0bK3PpdPO
かそく
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:02:47.35 ID:Iaq37rOJ0
時間的に次で最後かな……。
すっげー眠いけどがんばる。
彼女じゃねぇよ、バイトだよ。
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:06:43.96 ID:Sbw35VZoO
ksk
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:08:50.91 ID:0bK3PpdPO
ドクオとトソン
ドクオが部活の先輩、トソンが後輩って感じで!
見ててもどかしくなるような、青春ものお願いします!
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:09:43.88 ID:0bK3PpdPO
かそく
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:10:12.85 ID:Iaq37rOJ0
>>72 ばかめ安価近くなったら伸びるとかこのスレでは都市伝説だからな
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:10:16.82 ID:0bK3PpdPO
ドクオとトソン
ドクオが部活の先輩、トソンが後輩って感じで!
見ててもどかしくなるような、青春ものお願いします!
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:10:32.56 ID:Sbw35VZoO
(´<_` )川 ゚ -゚)
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:11:04.11 ID:0bK3PpdPO
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:12:10.25 ID:Sbw35VZoO
ドクオトソンwktk
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:12:32.37 ID:Iaq37rOJ0
>>75 了解しました!
先輩と後輩物ね! 首を洗ってまってろよ!
ばかめ期待は裏切るとかこのスレでは定説だからな
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:15:26.14 ID:0bK3PpdPO
>>79 それを見越して書いたと言ったら君はどうする!
いや、見越してないけど
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:28:59.63 ID:Iaq37rOJ0
あ、ひとつ聞きたいんですけれども、
トソンって普通の女の子な感じでいいんですかね?
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:32:18.46 ID:0bK3PpdPO
>>81 少しだけ無口で少しだけ高圧的だけど、意外とノリがいいって感じなら主にMの俺が喜びます
無理なら普通でお願いします
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:33:14.03 ID:Iaq37rOJ0
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:37:26.56 ID:0bK3PpdPO
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:41:58.79 ID:Iaq37rOJ0
ぼっちら投下はじめます。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:44:00.84 ID:Iaq37rOJ0
(゚、゚トソン 「……先輩」
('A`)「なんざましょー」
(゚、゚トソン 「……流石にこれは付き合ってられません」
('A`)「普通にしたいならあーた、かってにしなさいなー」
(゚、゚トソン 「…………」
黙ってついていくしかない私の弱いこと弱いこと。
('A`)ドクオと(゚、゚トソン トソンの恋愛事情のようです
あ、あいつらだ、と後ろ指さされてしまって何だかバツの悪い気持ちになった。
だからもう普通に帰りたいと申し出たのだけれど、
『帰宅部』
無所属の代名詞にされるこの部活動名であるが、県下一の進学校、
都立ニュー速高校には公式にその部活が存在する。と言っても、成立から一年と三ヶ月、そして部員が二人と言うこともあって
正式には帰宅部、ではなく
『帰宅同好会』
なのだけれど、
私の前方を至極まじめな顔で――後ろ向きに歩く――先輩はいつだってこの同好会の名称を帰宅『部』として譲らない。
頑固親父もびっくりの頑なさで主張しつづける帰宅同好会部員、二分の一の構成要素であり、
一応部長の彼の名前は、門司馬ドクオ。
ひょろっとしたもやしっ子体系の高校二年生だった。
どれくらいもやしっ子かと言うと、全世界もやしっ子選手権が開かれれば千万代は難くない。それくらいのもやしっ子だった。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:44:35.77 ID:Iaq37rOJ0
どの部活だって限定しなかった結果がこれだよ!!
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:48:08.78 ID:0bK3PpdPO
帰宅部だと…wktk
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 19:52:49.79 ID:Iaq37rOJ0
ああ、話がとんでもない方向にずれてしまった。
とにかく、生徒だけではなく通行人の皆さんにも後ろ指指されたりしてもう恥ずかしくて死にたいくらいなので、
私は普通に帰りたいのだけれど、そうにもいかなかった。
前途した『帰宅同好会』のレッテルと私の前方を歩く先輩がそれを良しとしないのだ。
だから私は苦虫を押しつぶしたみたいな顔で、歩くしかない。
ただし、後ろ歩きで。
前方を歩く先輩の言葉が、私の背中に投げられた。
('A`)「帰宅部、鉄則いーち」
(゚、゚トソン「……『帰宅』の可能性を探求する為、様々な帰宅方法を試すべし」
('A`)「帰宅部、鉄則にー」
(゚、゚トソン「……『帰宅』の偶発性を重んじる為、様々な帰宅経路を辿るべし」
('A`)「帰宅部鉄則、そのさーん」
(゚、゚トソン「……帰宅部帰宅部って、だからこれ帰宅同好会じゃん」
('A`)「なんかいったか」
(゚、゚トソン「いえ何も」
背中に投げられた声に凄みのエスプリが効いていたので私は秒速で否定する。
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:01:54.78 ID:Iaq37rOJ0
付き合いきれない、と言うのは都村トソンの本心である。
いや、だってこの人、この前なんか猫だ猫だと言いながら白いビニール袋を一時間半に渡って追い掛け回して、
事実を知った瞬間\(^o^)/こんな顔から/(^o^)\こんな顔になってトボトボ帰っていったし、
この間なんか唐突に海を見ながら帰宅したいとか言い出して海岸線に向かってただ只管歩くだけの2キロをつれまわされた。
(゚、゚トソン「…………」
付き合いきれない、と言うのは都村トソンの本心である。……はずなのだけれど。
私は、こうも、ありえない位に律儀に、先輩に付き合っていると言う矛盾を抱えている。
何でだろう、と思いつつ、私はまた一歩背後に向かって足を踏み出してしまう。くるりと身を翻せば、それで、終わりなはずなのだけれど。
なんでだろう。
夕焼け小焼けに日が暮れて、西日に当てられて地面に伸びる自分の影を見つつ、私は嘆息を漏らした。
(゚、゚トソン「…………先輩」
('A`)「なんざましょー」
(゚、゚トソン「……付き合いきれません」
('A`)「それ、さっきも聞いたね」
鼻で笑われた。――だからアンタモテないんだよ、と眉根が寄る。
――顔はいいのにその分性格が悪いからすごく残念だ。
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:06:16.84 ID:0bK3PpdPO
顔変わってないwww
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:11:40.64 ID:Iaq37rOJ0
(゚、゚トソン「先輩、一つきいていいですか?」
('A`)「なんざましょー」
(゚、゚トソン「先輩は、楽しいですか?」
カァ、と。遠く彼方の上空で、嘶く様にカラスが誰かへ求愛している。
私はざり、と。近く此方の地上で、小石を靴べらで擦った。
沈黙がカーテンの様に引かれ、私の呼吸音が嫌に体内で響いて、
たっぷり、スープを煮込むかのように緩やかな時間経過があって、やがて。
( )「楽しいよ」
先輩のやさしいやさしい声色が、背中に掛かった。
卑怯だ、と唇をかんでしまう。ああ、この人は、ひょろっとしたもやしっ子体系の高校二年生で
帰宅同好会部員、二分の一の構成要素であり、 一応部長なこの人は。
振り向きたくなる衝動が。
それだけはやってはいけないと自分を戒めるのと同じくらいに強い衝動が。
(゚、゚トソン「――つきあって、られません。」
私は言った。振り向くと、心底嬉しそうに瞳の奥を歪ませ、だけどどうか悲しそうな雰囲気をかもし出した部長がいた。
ああ、卑怯だぁ、と。非難の声が口をつついた。部長は言った。
('A`)「帰宅部鉄則、そのさん」
(゚、゚トソン「――――帰宅を途中放棄した奴は、強制退部」
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:20:56.45 ID:Iaq37rOJ0
('A`)「―― 一年三組、都村トソンさん、お疲れ様でした。」
先輩に名前を呼ばれたのは、これが初めてだった。
彼はやっぱり心底嬉しそうに瞳の奥を歪ませ、だけどどうか悲しそうな雰囲気をかもし出している。
(゚、゚トソン「ぁ……」
死亡宣告のほの暗い色で彩られたその言葉は、衝動に負けて軽率な、とても軽々しく行動してしまった私の頭の中に
ゴーンゴーンとチャペルの鐘よろしく響き渡っていて、私は何だかとてもなきそうになってしまった。
だって、それは。お疲れ様、何て。その言葉は。――もう一緒に、帰れないって意味じゃないですか。
やるんじゃなかった。
ごめんなさい。違うの。
私は、ただ。ごめんなさい。
ぐるぐると無限ループのように言葉がめぐり、私はそのすべてを喉に詰まらせてしまった。
ただ出てきたのは、せんぱい、と言う、彼を呼ぶ言葉だけ。
(゚、゚トソン「――ね、先輩」
('A`)「…………」
返答はなかったれど、私は気にせず続けた。
(゚、゚トソン「この部活、疲れたししんどかったし雨の日にフルマラソン並みのスピードで競歩やらされた時は
もういっそこのアホ死ねばいいのにと思ったともありましたけど、でも、やっぱり」
私は。いや、私も。
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:25:35.04 ID:Iaq37rOJ0
できる限りの、極上の笑顔を浮かべながら、私は言った。
(゚、゚トソン「わ、私も、楽しかったです。先輩と一緒に帰れて、楽しかったです。
そりゃ、乗せられやすい体質だって事もあります、だけど、私。だって、私、」
息を吸って、はいて。
カラス程の情熱さはないけれど、夕日よりも赤い言葉を。
(゚、゚トソン「先輩の事が、大好きですから」
――今世紀最大の勇気を振り絞っていった言葉に、先輩は――
('A`)「ひきょう――だぁ」
とつぶやき、首からどんどん血を上らせていった。決して西日の赤さじゃない血色の良さだ。
ニヤニヤと見つめる私に、先輩はついにどこか頭の回線を切らせたのか、
歯を強くかみ締めると、みるなぁぁぁ!! と叫んでくるりと身を翻した。
(゚、゚トソン「あ」
( )「……あ」
つぶやいた言葉は、二人ほぼ同時。
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:31:56.63 ID:Iaq37rOJ0
('A`)「あんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
と、モンスターハンターに駆られた獣みたいな金切り声で叫んだのは先輩だった。
……『('A`)「帰宅部鉄則、そのさん」
(゚、゚トソン「――――帰宅を途中放棄した奴は、強制退部」 』とは、つい先ほどのやりとりだ。
今日の帰宅方法は、後ろ歩き。……ともすれば。
(゚、゚トソン「帰宅同好会、これで部員いなくなっちゃいましたね……」
('A`)「うふ、うふふ、うふふふふふふ、――ああああああああああああああ!!!!」
絶望したぁ!!!!!!! と膝を突いて頭を抱える先輩。
その瞬間にも世界は回っているわけで、カァ、と。遠く彼方の上空で、嘶く様にカラスは誰かへ求愛しているわけで。
だから私はざり、と。近く此方の地上で、小石を靴べらで擦ったのだ。
(゚、゚トソン「先輩。二年一組門司馬ドクオ先輩。」
(;A;)「…………うっ、うぅっ……」
鼻たらしながら涙眼(きめぇ)の先輩の肩をやさしく叩きながら、先輩の横に座り、私は笑った。
手をとり、指をからめ、言う。
(゚、゚トソン「いっしょに、かえりましょうか。」
まっかな顔して頷く先輩を見れるまで、そう時間はかからないだろうと推測しながら。
了
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:33:25.40 ID:Iaq37rOJ0
はい、と言う訳でお疲れ様でした。
最後、最初ほんとに帰宅部以外何も考えずに書いたんだけど、偶然に偶然が重なってこんなんが出来上がりした。
全部がつながった瞬間物凄いン゛ッキモチイイ状態でした。
んでは、おつきあいありがとうございました!!
安価達成……できたですかね!!! ホンではな!!
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:33:42.15 ID:sn8m7ESxO
支援
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:34:03.68 ID:0bK3PpdPO
甘酸っぱいなぁ…トソンがかわいすぎる…乙です
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/24(水) 20:45:56.66 ID:Msm+DtwnO
正直都村のキャラクターを未だにわかってないんだが、喜んでくれたようで嬉しい。
今回、
「あ、後ろ向きで帰ってるのこのオチのためか!」とか、
「鉄則をさんでとめたのはこのためか!」とか、
「トソンが付き合ってられないっていいまくってたのは!」とか、
作者ですらびっくりするって久々だった。
だから文字書きはやめられないね。
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
乙ー。帰宅部良いなw