1 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:
代理だよ
2 :
◆eaGPXv4a4E :2008/12/03(水) 23:41:02.74 ID:LdizO2UPO
代理ありがとうございます。
3 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:45:26.38 ID:LdizO2UPO
_
( ゚∀゚) ……遅くなりました。
_
( ゚∀゚) なぜこんなに間があくのかって?
_
( ゚∀゚) MGS4を買う
ステルス+パトリオット+スネーク
=無双そして嘔吐
_
( ゚∀゚) ……要は遊んでましたすみません。
_
( ゚∀゚) まあ、何はともあれいっきまーす!
4 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:46:52.30 ID:LdizO2UPO
白の中を疾駆する。
すぐ後からついて来るのは車輪の音、蹄の音。
そしてその更に後ろからは、複数の蹄と、獲物を見つけ喜ぶ獣じみた哮りだった。
第四話 朝霧の剣劇
5 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:47:54.86 ID:LdizO2UPO
(´<_`;)「クソッ、厄介な!」
悪態を吐きながら、馬を走らせるオトジャ。
その顔には、焦りが浮かんでいる。
川 ゚ -゚) 「……これ以上は出せない、か」
(´<_`;)「ああ。大体今だって限界かもしれないんだ!」
独り呟いたつもりだったが、オトジャの耳には届いたらしい。
先と同じ調子で、前方を集中したまま返してきた。
後ろからは変わらず、ツンが走らす馬が地を蹴る音。
それと、下卑た笑い声。
6 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:49:54.18 ID:LdizO2UPO
―――今から数十分前。
(´<_` )「じゃあ、前方から来ると想定して……。
アニジャ、オレ、ツンの順で行こう」
川 ゚ -゚) 「では、私は万一後ろから来られてもいいように、オトジャの馬車に」
霧が立ち込める中、全員で輪になり話し合う。
とはいえ、アニジャとブーンは眠たそうに下がってくる目蓋と闘っており、
聞いてはいるのだろうが、理解しているかどうかは分からない。
川 ゚ -゚) 「ブーン、君はツンの馬車に乗り、もしもの時は頼むぞ」
( ^ω^)「は、はいですお」
それでも、名前を呼ばれたブーンは目が覚めたようだ。
確かめるように、腰に巻いたベルトに下げてある一対のナイフに手をやる。
柄を握るその手は、緊張しているのか小刻みに震えている。
川 ゚ -゚) 「大丈夫、君の出番はもしもの時だけだ。
ただ、ツンの傍にいて、守ればいいだけだ」
7 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:50:36.14 ID:zoHCX4YwO
来た!支援する!!
この( ゚∀゚)も久し振りだwktk
8 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:51:21.77 ID:LdizO2UPO
( ^ω^)「……はいですお」
ブーンはゆっくりと、頷く。手の震えも収まったようだ。
川 ゚ -゚) 「それでいい。落ち着いてやれば、な」
これでブーンに安心して、とまではいかないが、任せる事が出来る。
こちらの準備は出来た、とオトジャへ目配せする。
オトジャは小さく頷き、皆に聞こえるような声を出す。
(´<_` )「じゃ、そろそろ出発しますか」
―――……
9 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:53:52.67 ID:LdizO2UPO
ガタン。
大きな揺れ。
(´<_`;)「―――!」
川 ゚ -゚) 「どうした!?」
(´<_`;)「……まずいな。車輪がやばい……」
言いつつも右手で手綱を操り、速度を落とし始めている。左手は剣の柄に触れている。
(´<_` )「本当は血をあまり見せたくないんだがな……」
ぼそりと呟き深く息を吐く。
気づけば、前のアニジャも後ろのツンも速度を落としている。
息が合っているのだと感心している内に、オトジャは馬車から飛び降りていた。
一足遅れて自分も飛び降りる。
両手を覆う、冷たく重い金属を感じながら。
10 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:54:13.77 ID:7/EcgaK/O
期待の新人さん
支援
11 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:55:52.80 ID:LdizO2UPO
森の奥で待ち伏せをしているかと思ったが、
盗賊は獲物が通り過ぎるのを狙っていたのだった。
一本道と思われた道には、途中途中木陰に隠れ分かりづらいが、わき道があったのだ。
そこに馬を隠し、過ぎたところで追い立てる。
その狙いは。
( ´_ゝ`)「前からも来たな」
挟み撃ちだ。
12 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:57:52.07 ID:LdizO2UPO
(´<_` )「どう分担する?」
今はまだ、後ろも前も距離があるとはいえ、すぐに詰められてしまう距離だ。
速い判断が状況を少しでも有利にする。
( ´_ゝ`)「じゃオレがクーさんと後ろを……」
川 ゚ -゚) 「いや、そう多くもないし、私一人で充分だ。
それよりも、前から来る人数が分からない以上、君たちが」
(´<_` )「分かりました。オレたちで前方を」
川 ゚ -゚) 「ああ、頼む」
アニジャが不服そうに頬を膨らませていたが、それを流して後方へ向かう。
その途中、ブーンに声をかける。
川 ゚ -゚) 「ツンを守れよ」
「はいですお」
幌の中にいるため顔は見えなかったが、震えていないその返事だけで充分だった。
13 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:59:41.24 ID:zoHCX4YwO
ブーンの活躍フラグ支援
14 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/03(水) 23:59:53.52 ID:LdizO2UPO
川 ゚ -゚) 「水術参式、『海打』(アマウチ)!」
中心に『水』の字が入った、直径二メートル程の円陣が自分の正面に現る。
それは、淡い青い光を発している。
そして、そこから大量の水が溢れ出る。
速さはそれ程でもないのだが、とにかく量がある。
膝丈まである津波のように迫るそれを見て、盗賊たちは数秒目をしばたかせたが、
すぐに馬を反転させた。
しかし、時既に遅く、波の飛沫は最後尾の馬の脚を濡らしていた。
15 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:00:51.54 ID:f0NPYgzGO
支援す
16 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:00:53.01 ID:xmUPX+0BO
届く飛沫は波へと変わり、逃げ去ろうとする馬の脚を浸した。
次の瞬間、馬はバランスを崩し、横倒れする。
急な事に騎手は受け身をとる間もなく、馬もろとも波に呑み込まれた。
先を駆けていく者たちは、その不可解な現象に首を傾げ、しかし怯えるように馬を飛ばす。
だが、ここまでの距離はけして短いものではなく、馬の体力は確かに削れているのだ。
急激な転換、急激な叱咤にその速度は当然のように落ちていき、
一頭が、更に二頭が波に呑まれていった。
待ってたよ支援
18 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:05:27.16 ID:xmUPX+0BO
水術参式、海打。
方陣から大量の水を現出させ、波を打ち出すこの術は、それだけではない。
本来生じる水圧以上の圧がかかっている。
故に波に触れられたものは、まるで鯨に呑まれるがごとく、足をとられ波に姿を消す。
対多数用、かつ環境的破壊が比較的軽微で済む高位の術式。
19 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:07:06.07 ID:xmUPX+0BO
陽気に生い茂る森に不似合いな波が通った後に、残ったのは数人が倒れ、数頭が倒れる道。
そのどれもが死にかけの虫のようにピクピク小さく動いている。
川 ゚ -゚) 「……片づいたか。……ん?」
その中を、一歩一歩確かめるように歩いてくる影が一つ。
いや、影ではなく派手な刺繍を施した、紫のローブを纏う男が一人。
わずかに覗かせている口元は、不敵に歪んでいた。
―――……
( ´_ゝ`)「……八だな」
(´<_` )「いや、五だろ」
先頭の馬車の前で、剣を抜き右手に提げるのはオトジャ。
写したように左手に提げるのはアニジャ。
同じように空いている手を腰にあて、まるで鏡がそこにあるよう。
どちらが写し身かは解らないが。
20 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:08:56.39 ID:xmUPX+0BO
集団の先頭を駆けてきた、体格の良い男の馬がいななき止まる。
男は力量の測れない相手を前に、警戒するように、その場で小気味よい音をたて馬の歩を遊ばせる。
首を小さく動かし後ろを見て、他の四人の馬が追いついたのを確認し、
背中に着けた大振りの剣を抜く。
それと同時に後ろの四人は素早く馬を降りる。
馬上での戦いは慣れていないからなのか、
いずれにせよ無言で行動をとれる程の統率はあるようだ。
対する鏡はその鏡面を崩さずに集団と向き合った。
そして、暫しの沈黙の後――――
一人が飛び出した。
21 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:10:08.43 ID:xmUPX+0BO
四人の内、一人が両手で剣を振りかぶり、一撃を繰り出す。
鏡はついにその像を崩し、片方が左手に持った剣で受け止める。
高く響く、金属音。
( ´_ゝ`)「全っ然数が違った!」
(´<_` )「……この誤差はもう病気だな、アニジャ」
アニジャは刃を受け止めたまま、オトジャは右手の剣をさげたまま、
普段と変わらない調子の会話をしながら残りの三人が自分たちを囲むのを見ている。
( ´_ゝ`)「よっ……と。なんだよアイツ、高みの見物かよ」
剣を弾き、相手が囲いに戻るのを見送り、
尚も注視しながらリーダー格であろう男をちらと見るアニジャ。
(´<_` )「でもまあ……すぐ終わるだろ」
( ´_ゝ`)「だな。じゃあ、さっさと片づけますか」
視線を外し、見得を切るように左手の剣を横に払う。
そして、それに右手を添えながらゆっくりと正面に構える。
アニジャの動きを、首を巡らし確認したオトジャも同じように正面に構える。
(´<_` )「さて…………とッ」
不規則な間の空け方だった。
しかし、それでも双子が踏み出した一歩は、ほぼ同時だった。
22 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:12:09.14 ID:xmUPX+0BO
出した左足に力を込め、相対する二人を目掛け、剣を右から左に薙ぐ。此方から見て右の奴は身を引きながら剣で受ける。だが、それを弾きながらなお力を入れ、払う。
その金属音ののち、何の手応えもなく空を裂く刃。
左のは後ろに小さく跳び、避けたのだ。次いで前へとステップ。
下から上へ振られる刃を切り返しで弾く。
今度は体勢を直した右が、此方の胴めがけ鋭い突きを繰り出す。
切り返し、振り切った体勢のまま、体の軸を傾けそれを躱す。
軸を左前方に更に傾け、倒れる寸前に右足を出し体を受け止め、
そこからよろけるように斜めに抜ける。
腕には力を込めたまま。
迫る剣にようやく気付き、受けるか避けるか、
一瞬でも逡巡してしまった者の脇を抜ける。
そして、込められた力の当てである剣は、人の肉など容易に断つ殺意に成る。
23 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:14:00.28 ID:xmUPX+0BO
未だ霧の立ち込める森に鮮やかな赤を添える。それは胴を斜めに抜けた刃が為した事。
森を赤く染めている者は、ゆっくりと人から物へ変遷を辿っていく。
それを横目に剣を再び正面に構え、残った一人と対峙する。
相手も構えてはいるが、焦りが見える目は死体とこちらの間を忙しなく行き来している。
気後れしているのは明らかで、じりじりと距離を開け始める。
それに応えるように、こちらは距離を縮め始める。
おかげで位置は動いても、距離は一向に変わらず焦れったくなり、
一息に詰めようとしたところ、反転し走っていく。
逃げ出したかと思いきや、その先にはアニジャのいかにも無防備らしい背中が。
(´<_` )「あ、やっべ」
24 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:15:58.85 ID:xmUPX+0BO
( ´_ゝ`)「ちょいやさー」
聞いた者の力が抜けるような、ふざけたかけ声をあげるアニジャ。
それに対する二人の賊は、さっきから斬りや突きを何度も繰り返すが、
アニジャは事も無げに受け、流し、捌く。
その動きはけして最小限ではなく、それなりに隙があるのだが、
如何に攻めようが袖すら掠める事はなかった。
余裕ぶった彼に二人は怒り、そして恐れを抱いた。
自分たちは遊ばれているのではないか、と。
道化は彼に非ず、此方ではないのか、と。
しかし、彼らは起点を見つける。
それは、背後から駆け寄る仲間。そして道化は気づいていない。
―――これは好機。
25 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:17:35.76 ID:xmUPX+0BO
( ´_ゝ`)(四……三……)
剣と剣が奏で合う金属の不協和音の中にも、いや、それが高く響く中だからこそ、
その音――後ろから駆け寄る足音が分かる。
そしてそれは、オトジャのものでもツンのものでもない。
クーさんにしては重い。男のものだ。それが近づいてくる。
( ´_ゝ`)(……二)
それは直感だった。直感で後方に跳んだ。
二人の盗賊の剣が空を切るのと、アニジャが後ろに跳んだのは同時。
そして、そこからは数瞬の出来事だった。
26 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:18:19.73 ID:D7kKa/6eO
ちょいやさー支援
27 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:19:18.06 ID:xmUPX+0BO
まず、アニジャが一切振り向かずに滑るように後方に跳ぶ。
剣の切尖は後ろに向けて。
二つの刃が手応えなく空を彷徨う。
背後から忍び寄る賊は、胸に剣を正面から突き立てられ、
振り上げていた腕を力なく降ろす。
人を貫いた剣を抜きながらも、アニジャはその場から動く事なく。
その肩を踏み台にオトジャが飛ぶ。
晴れ始めた霧は、けれども高く飛んだ彼の姿を隠し。
次に現れた時は、仲間の死を認めつつあった二人の片割れを、
深く、深く肩から斜めに斬っていた。
そして、恐慌に陥りながらも――剣を向けた事は評価できるが――オトジャへと
向き直った、つまり、アニジャに横を向けてしまった残りの男は。
その隙だらけの横腹に、痛みが突き刺さり、それは抉るように捻るように。
背中へと、抜けていった。
絶望的な喪失感を伴って。
28 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:19:53.90 ID:xmUPX+0BO
意志疎通をせずに、見事な連携を演じた彼等。
双子らしい不可思議な絆、と言えよう。
( ´_ゝ`)「おk、ラスト一人」
(´<_` )「流石だな、オレら」
その口調や行動の端々に現れる余裕は、今まで命のやり取りをしていたとは
とても思えない緩んだもので、それはオトジャにも見られるものだった。
29 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:20:55.57 ID:xmUPX+0BO
( ´_ゝ`)「さァ、お次はアンタの番だぜ」
血を払うように剣に風を切らせる。
そしてそのまま、先を男に向ける。
「…………チッ」
未だ馬上にて四つの骸が増える様を傍観していた男は、
わざとらしく大きな舌打ちをする。
馬を降り、背負った大振りな剣を抜き、なす術なく横たわる死骸を、
構うことなく蹴り飛ばしながら歩み寄ってくる。
( ´_ゝ`)「……」
その行為を咎める訳でも、怒りを露わにする訳でもなく、静かに見る双子。
30 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:22:11.41 ID:xmUPX+0BO
と、オトジャがスッと後ろに下がる。
意図が分からない男は、逆撫でるようながさつで太い声を掛ける。
「おいおい、オレと一人でやり合うのか?
まあ、その方がコッチも楽だがな」
にやりと気味の悪い笑みを顔に浮かべ、己の力を誇示するように剣を振る。
それでもオトジャは、何の言葉も返さず、ただ黙って木の幹を背に、
腕組みをしてどこともなく視線を漂わせている。
「……ふん、ダンマリか」
それ以上は誰も言葉を発する事なく、アニジャと男との間合いは詰められていく。
31 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:23:14.84 ID:xmUPX+0BO
やや猫背気味のまま、男はアニジャに近付く。
対するアニジャは男に体を少し斜めにして立ち尽くし、
剣先は地を向いたまま。
二人の距離はどんどん縮まる。
互いの剣が届くまで近付き、そして空白。
暫しの睨み合いの後。
素早く打ち合わされる刃。
32 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:24:02.52 ID:D7kKa/6eO
支援支援
33 :
訂正:>>24と>>25の間に:2008/12/04(木) 00:27:33.76 ID:xmUPX+0BO
出来るだけ此方に注意を引きつける為、ここぞとばかりに猛攻を仕掛ける。
ここで一人でも討ち取る事が出来たのならば、状況は有利になる。
底の知れぬ道化の背後から走り寄る仲間に、
心中で一刻も早くその剣を突き立てる事を願う。
逸る心をそのまま映したような攻めのお陰か、
道化は気付く風もなくひたすらに此方の攻撃を受けている。
―――これならいける。
さあ、あと数メートル。
三――二――
不意に、剣が空を切る。
34 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:29:56.96 ID:xmUPX+0BO
右、左、正面、左。
男は体格のせいか所作は遅いものの、剣の振りは早く、
その上剣自体が重く、力強い。
一方、アニジャはそれを片手で受け止め、しかし受け止め切れずに弾かれている。
だが、崩されたはずの体勢は、次の一撃には既に戻っており、
男の剣を再び先と同じように弾かれては、受ける。
それが四度繰り返され、男の方から間合いを空けた。
男は何となく額を拭い、手の甲に冷たさを感じ、自分が汗をかいている事を知る。
粘つくような、気持ち悪い汗。
恐怖から来る汗だ。
汗は拭えても抱いたものは拭い切れない。
――――……隙は、なかった。此方ではない、あちらに。
寧ろ隙云々より、何処に刃を向けても通る気はしなかった。
確かに、剣は弾いていたのに。
……逆に、首を刈り取られる気さえした。
改めて、道化を見る。
計り知れない、笑う事のない道化を。
華やかな舞台などではなく、闇にその派手な身をやつし、
笑みさえ浮かべず、ただ、じっ、としているかのような道化を。
35 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:30:53.52 ID:xmUPX+0BO
( ´_ゝ`)「なあ」
ただの呼び掛けにすら身が震える。
最早剣を向ける気もせず、今すぐ平伏して許しを請おうとする本能を抑えつけ、
威勢を取り戻すために虚勢を声に、表情に張り付ける。
「……ッハ、何だよ?」
口元を不敵に片方だけ吊り上げたものの、汗が伝い、元より情けなく垂れる。
呼吸が荒くなっている。
恐怖だけではなく、先の攻めにもよるものなのだが、道化は汗の一滴も、
事によっては呼気の一つもしていないのではないか、と疑える程に見える。
( ´_ゝ`)「それらはアンタの何だ?」
その道化が、剣で地面に転がる四つの屍を指す。
表情に一切動きはない。
「……ただのゴミさ。使えねぇのはみんなゴミだ」
嘘はないが、見栄を張るように相手を馬鹿にするような態度を声に混ぜる。
しかし、それでも何ら変化を見せない。
( ´_ゝ`)「そっか」
36 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:32:07.65 ID:+VOQRgbVO
⊃支援
37 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:33:06.35 ID:xmUPX+0BO
余りに素っ気ない返答に男は気が抜けるようだったが、その間もなく、
アニジャは一歩で距離を詰める。
同時に男の真横に振られる、閃くような一撃。
男はそれを辛うじて防ぐ。
( ´_ゝ`)「いや、別にアンタの死生観に口出す気はないさ」
そう言いながらも、アニジャは力を込め、防ぐ剣を更に押し込む。
アニジャは片手で、男は柄と刃を両手で支え、なお押し込まれている。
( ´_ゝ`)「ただ、アンタとオレじゃ、センスが違うってだけさ」
その言葉が終わった瞬間、アニジャはふっと力を緩め、今とばかりに男は一気に押し返す。
それにより、アニジャには隙が出来、懐が開いたものの、男は保身の為か、
アニジャと逆の方向へステップを踏む。
となれば当然、そちらへ意識も目も向かう。
だが、それがまずかった。
38 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:34:00.93 ID:xmUPX+0BO
よろけたのち、しっかりと地に足をつける事が出来た男は、
アニジャの状態を確認するより先に、痛み、急な身軽さ、バランスの悪さを体感し、
次に拙い理性で理解した。
右腕は剣の柄を握り締めていたが、左腕は血を振り撒きながら宙をクルクルと舞い。
左腕を無くした体は、今までにない左右の重量の差に戸惑い。
最期に、真正面にアニジャの姿を見る。
それは、天地が逆転した映像だったが。
そして、それきり何も無くなった。
39 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:35:00.16 ID:xmUPX+0BO
( ´_ゝ`)「……ふぅ。これで終わり、と」
刃に付いた血を払い、鞘に収める。
霧は晴れゆき、日光が段々と注ぎ始める穏やかな森に似合わない、
血生臭さが充満しているが、此処は生きている森。肉は動物に食われ、
骨と血は自然に帰ってゆくだろう。
(´<_` )「……大丈夫……か?」
( ´_ゝ`)「なんだよ、珍しく心配してくれてるのかい、マイブラザー?」
おどけるように、オトジャに向かって両手を広げる。
ついでに小首を傾げる。
40 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:36:41.54 ID:xmUPX+0BO
(´<_` )「取り敢えずそれはキモいから止めろ。
……まあ……別にいいんだがな」
辛辣な言葉を述べると、頭をポリポリと掻きながら後ろを向いてしまった。
そしてそのまま振り返らずに、馬車隊の後方へと歩いていく。
それを、一つ大きく息を吐きながらぼんやり見やる。
……怒ってなんかないさ。
他人の価値観なんて所詮他人のものだからな。
オレがとやかく言う事じゃない。
生きてる者も死んだ者も、みんなそれぞれ、思うところがあるんだから。
全て吐き出し空っぽになった胸を、いっぱいの朝の空気で満たす。
ついでに空を見上げ、その清々しい青さに、自ずと目を細める。
――さて、クーさんはどうなったかな?
オトジャの背中に追いつくよう、少しだけ早歩きで歩き出す。
骸も何も、振り返らずに。
41 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:37:58.33 ID:xmUPX+0BO
――――……
影のような陰気な男は、先程から詠唱する訳でもなく、
フードの中からずっと気味の悪い笑みを覗かせている。
視力・聴力を限定し、外界からの影響を減少させ自身の集中を高め、
敵への威嚇を兼ねるような、如何にも“らしい”恰好をしているところを見れば、
術者だという事は容易に推量できる。
そして、一切口を開かず唱えもしないとなると、「待ち」のタイプだという事だ。
間違いなく此方の「海打」は見ている筈。
それでもなお、笑っているのは余裕からなのか、それとも術式を知らないだけなのか。
術式自体完全に体系化されていない為、我々術者すら知らない事が多い。
川 ゚ -゚) 「――はてさて、余裕か無知か」
誰ともなく呟き、指先から肘下まで覆う金属――籠手の具合を確かめる。
そして、彼の者の笑みの真意を測る為に、一歩踏み出す。
42 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:39:19.38 ID:xmUPX+0BO
此方が踏み出すのを認めて、かかった、とでも言いたげに笑みを深くし、
ローブの中から巻物を取り出し広げ、声高く術式を唱える。
「地術壱式、『舞礫(マイレキ)』!」
男の前に黄色に光る方陣が現れる。中には「地」の文字。
そこから十数の、小指の先程度から拳大までの礫が、自分目掛け飛んでくる。
大小様々、速度も様々な礫を正面に据えながらも足を止めず更に近付く。
一つ、二つ、躰を揺らすように礫を躱す。
躱されはしても前進するとは考えていなかったのか、にやついていた顔に焦りが浮かぶ。
しかし、すぐに口を引き締め近付く此方を見る。
避けきれない小さい物は痛みを押して腕や脚で受け、大きい物は籠手で打ち砕く。
あと一歩。
一歩踏み出せば拳が届く距離まで詰め、今正に踏み出し、一撃を繰り出す瞬間。
「地術弐式、『石盾(セキジュン)』!」
別の巻物を取り出した男が叫ぶと、地の方陣が現れる。
地面から壁が盛り上がる。
43 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:40:18.37 ID:xmUPX+0BO
具体的に言えば土の壁。
それも綺麗に長方形に象られた、自分よりも高さのある土の壁。
それなりの勢いがついた拳は止まらず、その壁に受け止められる。
受け止めた壁は少し崩れたのみで、砕けそうにない硬さをであった。
回り込もうかと思ったが、また『舞礫』を放たれる事を危惧し、後ろに下がる。
結局元の対峙した位置に収まった。
そのまま構えを解かずに相手の出方を見る。
しかし、一向に動く気は無いらしい。
44 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:41:12.81 ID:xmUPX+0BO
どうやら「地術」に頼った慎重な、いや臆病な戦法。
それも自分では一切唱えずに、物に刻んだ術式を発動させるだけの似非術者。
火術、水術が対外的な、攻撃に特化した術式である一方、
地術、風術は補助的な、環境に影響する術式である。
先の「石盾」が、術式唯一の防御術であるように。
……さて、どうするか。
この臆病者は長く戦っているらしく、「舞礫」や、「石盾」の
発動のタイミングからして、手慣れているようだ。
ならば挑発には乗って来ないだろう。
自らが臆病だと充分に理解しているだろうから。
けして自分からは出てこない。
ならば、真正面から潰してやろう。
45 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:43:14.80 ID:xmUPX+0BO
再び、踏み込んでいく。
相手の出方は変わらない。
敵が飛び込んで来たら「舞礫」、敵の間合いに自分が入ってしまったら「石盾」。
何とも単純な戦法。
なら、少し工夫すればいい。
「舞礫」を弾き、なお前進。
別のことに少し気を取られた隙に一つ、拳大の飛礫を腹に受ける。
胃が捩れるようだったが、足を止めず、“口”も止めず。
そして、拳が届く間合いまで詰まる。
その瞬間、此方は拳を打ち出す為に引き、彼方は「石盾」を発動させ。
ここまでは繰り返しのように。
しかし、ここから此方は二手加えよう。
46 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:43:40.67 ID:oOALnCHj0
支援
47 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:45:10.88 ID:xmUPX+0BO
先ず一手。
「石盾」の発動よりも僅かに早く、自分の口が一つの式を言い終える。
土の壁が現れた時には、赤い光が見えた。
川 ゚ -゚) 「火術弐式、『翔火(カケビ)』――」
壁の前方の空間に、火の方陣。
そこから「火蛇」よりも太い火が走り出す。
そのまま真っ直ぐいけば壁にぶつかる――が。
火は唐突に軌道を直角に曲げる。
そして相手に向かって滑らかな曲線を描き。
獲物を捕らえようと貫くように飛びかかる。
それを避けようと、男は体を反らす。
だが、急なことに思った以上に反ってしまったためか、
バランスを崩し後ろにたたらを踏む。
そこに。
川 ゚ -゚) 「――予想通りの反応だ。
風術壱式、『旋加(ツムジカ)』」
48 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:46:05.53 ID:xmUPX+0BO
籠手の甲に刻まれた、風の方陣が輝く。
それは淡い緑の光を発しながら。
振るわれた拳を後押しするように、風を創り出した。
躍り掛かる火を避けた男は、その反対側から現れたクーを認めたものの、
崩れた体勢からその疾風纏う拳を躱すことは為し難く、
纏う陰気さごと、紫のローブを撃ち抜かれ。
男は空を飛び。
地面に叩きつけられた。
49 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:48:09.18 ID:xmUPX+0BO
その様を体勢を戻しながら見送り、落ちた後も数秒そのまま、
起き上がろうとしない男を確認してから構えを解く。
死んではいないだろうが、重傷であることには変わらない。
あとは憲兵の所にでも連れていけば、報奨金くらい貰えるだろう。
川 ゚ -゚) 「これで全部、か……」
一息入れ、籠手を外しながら同時に具合を見る。
自分のサイズに合わせた鎖帷子を基礎とし、
指は自由が利くよう関節ごとに細かい造りになっており、
手の甲から平まで薄目の金属板で覆ってある。
50 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:49:39.69 ID:xmUPX+0BO
手首部分は指と同じ狙いで何も覆わず、
そこから上は前腕部の外側だけに金属板を付けてある。
女の力でも扱えるよう出来る限り使用する金属を少なくし、
軽量化したのだが、それでもやはり拳を打ち抜くには重く、
その補助の為に甲に術式を刻んである。
その術式が、「旋加」。
その内容は、風を発生させるだけ。
風向き、強弱、範囲は他の術式と違い調整可能で、
今ではあまり無いが、風が重要な、帆船を用いる海戦にてよく使われたものだ。
これはその範囲を更に限定し、拳を後押しするよう設定されたものだった。
籠手を外し終わり、双子の様子を見に行こうかと、振り返る。
しかし、その振り返った風景に違和感を覚える。
――……“一人”足りない。
51 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:51:03.89 ID:xmUPX+0BO
――――……
……後ろから水の音が聞こえる。
前からは剣を打ち交わしているであろう金属音。
しかし、どちらも長く続くことはなく、先に水音、しばらくして金属音が途絶える。
まさかあの三人がやられる、とは考えられないが、それでも、
と厭な予感じみた考えは拭えない。
ξ゚听)ξ 「……大丈夫。オトジャたちも、クーさんも、きっと」
荷が積まれ、窮屈な幌の中で膝を立てて座る、
彼女の断言ではないが確信したような言葉に、
自分は恐らく強張った表情だったのだろうと思い至る。
落ち着くように自分に言い聞かせ、ナイフの柄に触れる。
長い間この二本には世話になっているためか、不思議と安らぐのだ。
これを人に向けたことはあっても、切ったことは一度もない。
そこまで切羽詰まった状況に陥っていないからなのだが、今は違う。
もしかしたら、誰かを切るのかもしれない。
それが怖いから、自分は肩を張っているのだろう。
52 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:51:52.99 ID:xmUPX+0BO
彼女に目をやれば、凛と澄ました表情ではあるが、
手は不安げに前で組まれたり、横に置かれたりしている。
何かしら言葉をかけようと思い口を開きかけ、握っていたナイフに気づく。
……彼女が怯えているのは、僕のせいかも知れないな。
開きかけた口からは、かすかに歯ぎしりの音が漏れただけ。
……何故あんなことを……。
恥は一切無いが、後悔は幾らでも湧いてくる。
自分に対する評価はどうだっていいが、助けてくれた彼女に何をしてしまったのか。
そして、これから僕は何が出来るのか。
そこまで思い至った時に、既に緊張は収まり、
思考は、彼女を守ることに全力を費やし始めた。
53 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:53:00.49 ID:xmUPX+0BO
その単純になった澄んだ思考故か、感覚まで澄んだようだ。
澄み切った聴覚が、後方から来る足音を知ったのだ。
静かに、音を極力たてないようにして近づくそれは、
双子のものでも、師のものでもないだろう。
彼らに気配を消す必要はないのだから。
では、と考えられるのは一つ。
盗賊だ。
そう確信した瞬間、手が震えだす。ナイフを握っていても。
賊の意図は分からないが、この馬車に用があるのは確からしい。
閉じた幌の向こうで、手綱を取ろうとしているのがうっすら窺える。
このままだと、馬車は走り出すだろう。
だけど、オトジャ達が、クーさんが何とかして――
ダメだ。
恐らく僕と同じく賊を確認し、同じく震えているであろう彼女をそっと見る。
やはり、彼女も震えていた。
視線は幌の向こうの影に釘付けに、手は前に祈るようにしっかり組まれている。
その手に僕の手を、静かに優しく重ねる。
54 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:53:55.01 ID:xmUPX+0BO
ξ゚听)ξ 「…………」
彼女は僕を見る。
それに答えるように、ゆっくり頷く。
……震えは収まってくれた。
彼女のも、僕のも。
賊に悟られるよう、わざと大きな音を出して立ち上がる。
音に気づいたようで、向こうの影は――ハッキリとは分からないが――ゆっくりと、
こちらに向き直る。
左手で幌を持ち、右手は短剣を持っているようだ。
そして、ゆっくり、ゆっくりと幌が開かれていく。
55 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:54:43.38 ID:+BUTWXMPO
しぇ
56 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:54:54.13 ID:xmUPX+0BO
それを正面に見ながら、ナイフを両手に一つずつ持つ。
賊の手は警戒するよう、ゆっくりと幌を開いて。
――仕留めるのなら――
充分開いてから。
賊は、中を覗き込む。
――今。
僕は、ナイフを振るう。
57 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:56:25.09 ID:D7kKa/6eO
支援
58 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:57:05.61 ID:xmUPX+0BO
まず左のナイフで切りかかる。
それは短剣に弾かれる。
反応というより、反射というべきその防御は、後先を考えたものではなく。
賊は数瞬経った今になって状況に理性が追いつき、
そして、ようやく動き始めたそれで短剣を切り返す。
返る刃に反応が遅れ、その深浅は分からないが左腕を切られる。
賊は噴き出る血を認め、勝ったような笑みを浮かべる。
だけども。
( `ω´)「まだ……早いおッ!」
その笑みに向け、右手を振るう。
59 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:58:13.19 ID:xmUPX+0BO
ナイフの切尖を、柔らかいものが走っていく。
いや、ナイフが走る。
右手を振り切るが早いか、そのままタックルを仕掛ける。
馬車からもつれ合って落ちる。
賊の短剣を危惧して、すぐさま立ち上がり距離を取る。
そうして、いつの間にか速くなっていた呼吸が収まるまでいた。
それからようやく喉から血を噴出させている相手が動かないことを知り、
ナイフをしまおうとして、ぬめった赤い血が付いているのに目についた。
60 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 00:59:50.88 ID:xmUPX+0BO
それと分かった途端、思わず投げ出したくなったが堪える。
刃が重く感じる。この血の所為だろうか。
精一杯忌々しげに眺め、しかし膝からその場に落ちる。
膝は笑い、呼吸は静かだが浅い。
不意に、このまま地面に伏して泣いてしまいたくなった。
――覚悟はしていたけれど、こんなにも、こんなにも。
しばらく膝をついたまま、霧の晴れた爽やかな青空を見上げていた。
ナイフは二本とも手放している。
ふと、左腕に何かが触れる。
誰かが包帯を巻いてくれているのだ。
61 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 01:00:59.67 ID:xmUPX+0BO
不器用だけど、それでもいっぱいの優しさが感じられる。
左を向けば、そこには彼女がいて、一生懸命な表情で包帯を巻いている。
お礼の言葉でも口にしたいのに、声は形にならず、ただ漏れる空気になる。
それに気づいたのか、手を止めずに彼女は顔を上げて、まじまじとこちらを見る。
自然と目が合った。
微笑んでくれた。
たったそれだけで、ゆっくりと赤く黒く染まった心が融けていった。
涙は、もう、いい。
今は受け入れられる。
血も、刃も、死も。
前から二つの足音が、後ろから一つの足音が。
前は賑やかに言い合いをしながら、後ろは静かに一歩一歩確かめながら。
――……ああ、終わったんだ。
第四話 朝霧の剣劇 終
62 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/04(木) 01:04:07.68 ID:D7kKa/6eO
お疲れ様!これで眠れる!
63 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:
投下してる時、いまだに心臓バクバク。
ってわけでもう眠い寝ます。
代理、支援、乙、ありがとうございました。