1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
規制解除ー。
嬉しい、2話目投下します。
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:18:26.41 ID:abNiI1ze0
とある村から歩き続けること丸七日。
引き連れている魔物がぶつくさと文句を垂れ始めた頃、辿り着いたのはやはり小さな村だった。
発展具合から見ても、前の村とは大差ない。
ただ、町の中心を流れる川が、村一帯に清涼感を漂わせている。
水面を乱反射する光が眩く、頬を撫ぜる風は爽やかで快い。
そんな平穏な村でも、頭を悩ませる出来事の一つや二つはあるものである。
魔物使いの旅人が巻き込まれることにはなるのは、そんなどこにでもある厄介事。
だがそれは、厄介事と一言で片づけるのでは物足りない悲劇だった。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:19:25.95 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)はモンスターマスターになったようです
第2話『旅人が触れた願い、包帯男の小さな夢の話』
【前編】
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:20:42.01 ID:abNiI1ze0
村人はスライムの姿を確認するなり、こう言った。
村人「君は魔物使い?
それは丁度良かった、ちょっと来てくれよ!」
(;^ω^)「お?お?お?」
言われるがまま、なされるがまま。
手を引かれ、どこかへと連れて行かれる旅人。
困惑するのも無理はない。
魔物使いが歓迎されるなど、滅多にないことなのだから。
そんな非常識を無視するかのように、人の良さそうな村人は言葉を綴る。
( ^ω^)「一体、何がどうしたんだお?」
村人「見ればわかるよ……ほら、あれだ!」
村人の指さす方向には、一人の男が佇んでいた。
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:22:12.03 ID:abNiI1ze0
いや、その男の様子がどこかおかしい。
千鳥足の様にふらつき、今にも倒れこんでしまいそうだ。
体調でも悪いのか、呻き声をしきりに漏らしている。
そして、何よりも奇怪なのはその格好。
手、足、頭部、体の全てが包帯に包まれていた。
( ^ω^)「『マミー』、かお」
村人「旅人さん、アイツを追い払ってくれないか?
村の内部でうろちょろされると、子供たちが怯えてしまう」
( ^ω^)「ああ、そういうことならお任せだお」
幸い、攻撃的な魔物ではなさそうだ。
旅人は快くその申し出を承諾した。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:23:58.17 ID:abNiI1ze0
人語を話さない魔物との会話は一般人には行えない。
しかし、魔物使いという職業はそれを可能とする。
もっとも、その違いが人から疎外される原因となることもあるのだが。
( ^ω^)「あー、ちょっと良いかお?」
マミー「あ、ア、う?」
( ^ω^)「ここで何をやってるんだお?」
マミー「家、見てる、カッコイイ」
(;^ω^)「かっこいい……のかお?」
マミー「うつく、しい」
マミーが見惚れているのは、どこにでもありそうな、レンガ造りの家である。
旅人は、やはり魔物とは感性が合わないと思った。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:25:29.75 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「申し訳ないんだけど、村の人が困ってるみたいなんだお」
マミー「なに、が」
(;^ω^)「えと……君がここにいると、その……困るって、うん……」
旅人はマミーには敵意も、悪意も無いのだろうと感じ取っていた。
だから、存在すること事態が迷惑だと伝えるのが、素直に心苦しかった。
そこに、スライムが口を出す。
( ゚∀゚)「だー、お前みたいな魔物が人間の集落にいると、人間がビビるだろうが。
さっさと、自分のなわばりに帰りな!」
マミー「う?人間、迷惑??」
( ゚∀゚)「そうだよ、早く帰んな」
ちなみに、この会話は一般人からすると『ピキー』と『ううう』としか聞こえない。
傍から見れば不気味なものである。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:26:49.96 ID:abNiI1ze0
マミー「わ、わかった、ごめんなざい」
しょぼくれた様子で背を向けたマミー。
その足取りは、やっぱり危なげを感じる千鳥足だった。
( ^ω^)「あんなにキッパリ言っちゃっていいのかお?」
( ゚∀゚)「良いんだよ、人間と魔物は違うってアイツだって分かってるだろ」
( ^ω^)「でも、なんか落ち込んでたみたいだったお」
(;゚∀゚)「う……村の人の頼み事なんだからしょうがねぇだろ」
魔物が人間の頼みを優先し、人間が魔物の事を心配していた。
滑稽ではあるが、平和な図である。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:27:58.71 ID:F1ejiemE0
しえん
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:28:40.12 ID:abNiI1ze0
村人「君、どうもありがとう!
あの魔物はいつもいつも、あそこに長いこといるから困ってたんだ」
聞けば、朝から晩までぼーっと立ち続けていることもしばしばだという。
子供達の遊び場が少なくなってしまうから、困っていたのだと。
( ^ω^)「でも、別に襲ってくる訳じゃないし、悪いやつでもないお?」
村人「……魔物は恐ろしいものだという常識が麻痺するのはマズイことなんだよ。
君たちの様な旅人ならともかく、ね」
( ^ω^)「どういうことだお?」
村人「例えば、村の子供たちがあの包帯男と仲良くなったとするだろ?
そしたら子供たちは他の魔物とも仲良くなれるかもと考えるかもしれない。
本当にそうなればいいけど……手違いが起きる可能性の方が高いからね」
確かに、人間に敵意のない野生の魔物なんて、そうそういるものではない。
あのマミーは極希と言っていいほどの特例なのだ。
もっとも、どんな魔物とでも意思の疎通を図れる魔物使いならば、
野生の魔物も、ある程度の仲間意識を持って接してくるせいか、争いをせずに済む場合もあるのだが。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:30:35.05 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「んで、マミーにはこの村から居なくなってほしいのか?」
村人「うわわわわわわっ!!しゃ、喋った!!」
村人は腰を抜かし、仰け反って尻もちをつく。
スライムは大袈裟だと、内心で舌打ちをした。
いらつくスライムをよそに、旅人は手を差し出す。
( ^ω^)「大丈夫ですかお?」
村人「……いや、すまない。人語を話す魔物を初めてみたもので。
不思議なものだな、どうやって覚えたんだい?」
( ゚∀゚)「知るか、生まれた時から何故か使えたんだよ。
というか、その前にまず俺の質問に答えるべきだろ」
(;^ω^)「コラ、失礼だお!!」
しかし、村人はそれを制し、悪いのはこちらだと謝罪する。
何故か旅人が申し訳ない気持ちになった。
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:32:48.92 ID:abNiI1ze0
村人「出来れば……こないでくれると嬉しいかな。
私はそれほどだけど、多くの人が気味悪がっているからね」
( ゚∀゚)「ほほう、それはそれは……」
スライムは大きな口をニヤリと広げた。
( ゚∀゚)「実は俺達、魔物関係の仕事なら色々と請け負ってるんですよね〜」
村人「本当かい!?」
( ゚∀゚)「ああ、金さえ出してもらえば、マミーの一匹や二匹……」
(;^ω^)「おまっ、アイツには何の落ち度も……」
( ゚∀゚)「うるせい」
(;゚ω゚)「ひでぶっ!!」
口を出そうとした所に、スライムが腹部に体当たりをブチかます。
抜け出しかける魂、旅人は冥界の扉を見たと語る。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:32:55.39 ID:Gzv40VMxO
待ってた
支援
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:35:05.27 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「別に俺たちはアイツに出ていくよう説得するだけでいいんだ。
美味しい話だと思わないか?」
( ^ω^)「でも、それって騙してるみたいじゃ……」
( ゚∀゚)「村の人はいなくなれば良いって言ってるんだから、騙したことにはならねぇって。
それに、アイテムは切れてるし、金は無いしで困ってるんだろ?」
(;^ω^)「うっ、痛いところを……」
この会話はスライム語で構成されている。
目の前で卑劣な会話がなされていることなど村人はまるで分からない。
( ^ω^)「マミーをこの村に来させなければいいんですお?」
村人「ああ、成功したなら1000G支払うよ」
( ^ω^)「おっおっ、それはやる気出るお!!」
( ゚∀゚)(ゲテモノ料理食わなくて済みそうだな……)
スライムはおおなめくじのステーキがトラウマになっているようである。
かくして、一人と一匹はマミーの討伐、もとい説得に向かうのであった。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:37:16.26 ID:abNiI1ze0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
( ^ω^)「あ、いたお、おーい!!」
マミー「う、う?お前ら、村の??」
川沿いに町を北上していると、マミーの影を見かける。
そう遠くない距離だった為、別の魔物だったという事はあり得ないだろう。
( ゚∀゚)「村のっていうか、旅人なんだけどな。お前さんは一体何をしてるんだ?」
マミー「お、おれ、花、好きだから」
( ゚∀゚)「……だから?」
マミー「花は、きれい、だ」
(#゚∀゚)「…………」
スライムはこいつとは会話出来ないと、旅人とバトンタッチした。
気の短い性格が災いしてか、のんびりとしたマミーの話し方に耐えられなかったようである。
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:40:06.26 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「花が好きだから、どうしたんだお?」
マミーは手ですくった水を大地に撒くというのを、幾度も繰り返していた。
大体の事情は推測できる。
( ^ω^)「……ああ、花を咲かせようとしてるのかお?」
マミー「う、うん、種、いっぱい撒いた、から」
( ^ω^)「へぇー、一杯咲くといいお!」
マミー「あ、ありが、とう」
こんな水撒きで大丈夫なのかは別として、旅人はマミーの心意気に感動する。
今ならスライムの言った、魔物も恋するというのも理解できそうだった。
( ^ω^)「花が咲いたら、どうするんだお?」
マミー「村の人に、あげ、る」
( ^ω^)「村の人にかお?」
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:43:04.35 ID:abNiI1ze0
マミー「そしたら、 きっと、よろこ、んで、くれる、 と、思う。
仲、良く、 なり、たいか、ら」
( ^ω^)「もしかして、村に何度も行ってるのは……?」
マミー「人、間と、あそび、たい。
あいつら、 笑った、り、泣いたり、 楽し、そう」
このマミーには群れがいなかった。
昆虫が光に誘われるように、孤独に耐えきれなくなった哀れな魔物は、人間の明るさに惹かれてしまったのだ。
それが、叶わない願いだとは知らずに。
( ^ω^)「……一緒に遊べたら、いいお」
マミー「う、うん、だから花、育て、る。
いっぱ、い 、いっぱい、咲いたら、 みんな、よろこ、ぶ」
旅人には、村に来るな、などとはとても言えなかった。
この些細な夢を摘む権利など、あるはずがないのだから。
心中に生まれる気後れを隠すように、旅人は爛然とした表情に変えた。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:43:34.27 ID:yggjThv50
支援
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:45:28.39 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「いざとなったら、僕が遊び相手になるお!」
マミー「お、おまえ、いいやつだ、な」
( ^ω^)「フヒヒwww照れるおwwww」
マミー「こ、これ、やる」
そう言いながら、旅人に何かを握らせた。
手渡されたそれは、生命の鼓動を示し、もぞもぞと蠢いていた。
ミミズだった。
マミー「うま、いぞ」
(;^ω^)「……後で頂くお」
余談だが、この時ポッケに入れられたミミズは地面に還される。
流石の旅人も、これは食べてはいけないという、脳からの警告を素直に受け取ることにしたようだ。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:47:46.08 ID:yggjThv50
支援
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:49:10.21 ID:qeUMGE92O
面白い支援
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:49:39.57 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「……じゃあ、僕たちは村の宿に戻るお」
マミー「わ、わかった」
それじゃと、大きく手を振り、別れを告げる。
マミーはそれに応えることは無く、一心不乱という様子で水撒きを再開した。
旅人がそれに対し苛立つことはなく、むしろ激励の念を送るほどだった。
( ^ω^)(花、かお……)
村人の話を聞く限り、花の栽培を開始してから過ぎた時間は短いものではないのだろう。
長い間、十分な愛と、十分な水を与えられて育成されているはずだ。
だというのに、未だその芽を地中に晒す気配すらない。
考えられる原因としては、水のあげ過ぎで種子が腐ってしまったということ。
または、マミーの知性レベルも考慮すると、そもそも種を植えてすらないのではと。
植えたつもりになっているだけで、あの場所に花が咲くなど、そもそも有り得ないのではないのかということ。
様々な疑惑が頭に浮かぶが、それでも尚、旅人はあの地に花畑が成る事を願わずにはいられなかった。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:50:55.76 ID:yggjThv50
支援
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:51:52.36 ID:abNiI1ze0
村とマミーの花の無い花壇までは、徒歩にして5分程といった距離である。
思考の波に漂っていればあっという間に終わる帰路なのだが、半分ほど行ったところでスライムが道を妨げた。
( ^ω^)「なんだお、邪魔だお」
( ゚∀゚)「いや、依頼破棄したらお金はどうなっちゃうの?」
成行きに身を任せ、口を閉ざしていたスライムだったが、流石に我慢の限界だったらしい。
金銭面の都合は、主に彼の回復アイテムや、食料に関わってくるのだから。
不安げに顔を覗いてくるその瞳に、旅人は満面の笑みで答えた。
( ^ω^)「喜べ、実は村の近くにおおなめくじの巣を見つけてあったんだお!」
( ;∀;)「またソレかよぉおおおおおおおおお!!」
実はおおなめくじのステーキを旅人は気に入っていた。
食事は旅人管理の為、スライムはその気まぐれな不幸から逃れる術はなかった。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:53:31.51 ID:abNiI1ze0
村に戻り、村人に任務の失敗と、一応の事情を説明する。
その返答は『まいったねぇ』という言葉と、落胆の隠しきれない苦笑いだった。
これでも恐らくは、寛容な、魔物差別意識の少ない人の対応なのだ。
世界の常識で言ったら、旅人の所業は避難を浴びせられる可能性も低くはない。
簡単には、魔物と人間の間に置かれた壁を取り除くことはできないのだなと、旅人は痛感した。
この日はそれ以降、特筆することもなく一日を終えることになる。
唯言うなら、宿屋が魔物の身であるスライムを、普通の勘定で泊めてくれたのは幸いだった。
当然と言えば当然なのだが、宿には食事が付いているものである。
夕食を何よりも杞憂としていたスライムは、これを涙して喜び、口に掻きいれた。
曰く、『人類の食文化万歳』だそうだ。
夜中までそんなことで騒ぐものだから、中々旅人は寝付けなかったという。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:54:59.05 ID:yggjThv50
支援
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:55:52.21 ID:abNiI1ze0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
(#゚∀゚)「っきろ、起きろっつってんだろ!!」
(;゚ω゚)「ぴぎゃっ!!」
旅人の眠りを打ち消したのは、スライムの大声とボディプレスだった。
それこそベッドが鈍い音を立てて軋み、下手をすれば破壊されるところだった。旅人が。
(;^ω^)「朝っぱらから何をするんだお……」
(#゚∀゚)「朝だぁ?寝言はこれを見てから言え!」
スライムが突き出したのは何ら変哲のない時計。
もっとも、その針が示す時間にはちょっぴり驚き入った。
(#゚∀゚)「午後零時三十分!!これのどこが朝なんだぁ!?」
でも、寝坊したのは昨日、夜遅くまでお前が騒いでたせいだぞ。
……とは、自分の腹の上に乗っかられているこの状況では言えなかった。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:57:13.56 ID:yggjThv50
支援
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:58:24.40 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「それはすまんかったお。
……んで、そんな慌てて起こすのは何でだお?」
旅をする者が朝に弱いというのは、正直言って大問題である。
だが、この一人と一匹の奔放っぷりに限っては例外となっていた。
実際、危険と謳われる夜中の旅をすることもしょっちゅうである。愚かなことではあるのだが。
そんな旅を続けるスライムが慌てるということは、やはりそれなりの事があるのだろう。
そして、推測は当たってしまうことになる。
(;゚∀゚)「そ、そうだった、ちょっと外に出てくれよ!!」
( ^ω^)「外かお?だったら着替えて……」
(#゚∀゚)「良いからっ!!さっさと来やがれってんだ!!」
スライムは旅人を急かし、外へ行くように執拗に促す。
その必死さに堪忍し、宿屋を出ると、一早く目に飛び込んだものがある。
―――それは紅、夕焼けよりも鮮やかに拡がる、紅。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:59:32.73 ID:yggjThv50
支援
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 20:59:58.04 ID:abNiI1ze0
それが人の血だと認識する事に、旅人はしばしの時間を要した。
その紅の領域は、道一面を染め変える程だったのだから。
同時に、所々に倒れこんでいる村人の姿がある。
それぞれの、腹部が、背中が、脚が腕が、切り裂かれていた。
流れ出る血の量から、一刻も早い処置が必要だということは、混乱した脳でも理解できる。
唯一の幸いなのは、一人一人意識を保っていたということ。
呻き声を上げ、苦悶の表情を浮かべてはいるが、死にはまだ猶予があるように感じた。
その中の一人、比較的軽傷で済んでいた村人。
それは、昨日会話した、人の良さそうな男だった。
村人「う……うう……」
(;^ω^)「大丈夫かお?一体、ここで何があったんだお?」
村人「ま、魔物が襲ってきたんだ……俺たちを切り裂き、そのまま町の中心部の方へ……」
(;^ω^)「やっぱり魔物の仕業かお……!!」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:00:48.04 ID:yggjThv50
支援
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:02:49.40 ID:abNiI1ze0
村人「あっちには村の子供が……早く、助けに……」
男は立ち上がろうとするも、力なく倒れこんでしまう。
無理もない、軽傷とはいえ、切り刻まれた手足からは動く度、血が溢れ出ていた。
(;^ω^)「そんな体で無理したら死んでしまうお!」
村人「それでもいい!!子供は宝、村の未来なんだ……」
(;^ω^)「…………!!」
村人「村を生かすんだ……その為には私はどうなっても……。
そうだ、例え死んだって構わないんだ……」
(;^ω^)「……だ、ダメだお!!
そんなのは僕が絶対に許さないお!!」
命を賭して子を助けようとする村人を旅人は否定した。
その目はどこか必死で、見方によれば怯えているようにさえ見えた。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:04:11.00 ID:yggjThv50
支援
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:04:44.03 ID:abNiI1ze0
村人「だったら、君は子供たちを見捨てろと……?」
(;^ω^)「ち、違うお!!僕が言いたいのは、その……」
( ゚∀゚)「あー、もうじれってぇな。
『僕が代わりに助けに行く』そう言いてぇんだろ?」
旅人は迷い、言葉を濁らせていた。そこにスライムが口を挟む。
だがそれは、的確に旅人の心境を見抜いた上での発言だった。
(;^ω^)「そうだけど……それを言うとなると……」
( ゚∀゚)「実際に戦うことになるのは俺だからってか?
何を今更、そんな小さいことを気にしてんだよ」
( ^ω^)「……良いのかお?」
( ゚∀゚)「あのなぁ、お前は仮にも俺のマスターだぞ?
だったら一言、戦えって命令を出せばいいんだよ」
スライムが人間だったらならば、ここで胸の一つもドンと叩いていただろう。
それほどまでに熱意を感じる言葉だったし、何より頼もしかった。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:06:48.84 ID:yggjThv50
支援
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:06:59.38 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「……それは嫌だお」
( ゚∀゚)「ちょwwwなんでだよwwww」
( ^ω^)「確かに実際に戦うのは君だけど、僕だって魔物使いとして一緒に戦ってるんだお。
あんまりな言い分だとは自分でも分かってるけど……その」
( ゚∀゚)「はいはい、んで、どういう命令なら満足なんだよ?」
旅人は嬉しそうに、けれども照れくさそうに言った。
( ^ω^)「僕と一緒に戦って欲しいお」
( ゚∀゚)「……へっ、了解したよ、マイマスター」
そう応えたスライムも、同じく嬉しそうに、照れくさそうであった。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:08:40.53 ID:abNiI1ze0
村人「……済まない、君は優しいんだね」
( ゚∀゚)「けっ、勘違いするんじゃねぇぞ、これは命令だしな。
それに昨日、飯が旨くて食い過ぎちまってな。
口を出したのはちょっくら運動してぇなと思っただけなんだからな」
村人から目を逸らし、明後日の方向を見ながら言うスライムを見て旅人は思う。
完璧だ、完璧すぎるツンデレだ、と。
( ^ω^)「じゃ、さっさと行くお」
( ゚∀゚)「お、一発でぶちのめしてやんよ」
遠ざかっていく一人と一匹の背を見て村人は思う。
彼らの関係は、二種族における理想的な共存形態だ。
私達の村もいつかはあんな風になるといい、そうすればあの包帯の魔物とだって……。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:09:12.21 ID:abNiI1ze0
包帯男の見た些細な夢は、その時、確かに叶っていた。
一人の村人の、言葉に出さない願いではあったが、叶わない夢ではないことを実証していた。
そんな事は露知らず、一人と一匹は村を駆け抜ける。
目指すは戦場、されども目的は争う為ではない。
心の中で立ち昇る炎は、人を守る熱意が為か。
【前編】
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:10:08.01 ID:abNiI1ze0
今、思い出したけど、一話のオチ投下してないんだった。
メモ帳消しちゃったから、2話投下し終わったら書いて投下します。
では後編
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:12:17.82 ID:/BfErNOa0
支援
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:16:58.58 ID:abNiI1ze0
駆け抜ける道からは呻き声が聞こえ、赤の地面が、人が目に映る。
趣味の悪い画家に描かれた惨状は、まさに地獄絵図と呼んでいいだろう。
苦痛に悶える人々を、歯を食いしばりながら通り過ぎていく。
今はこの悪夢の感染を拡げないことが優先だった。
元凶となっている魔物を、一刻も早く止めなければならない。
興奮と混乱で乱れる頭を抑えつけ、必死に思考を巡らせる。
鋭利な刃物で切り裂かれたようなこの傷、犯人は剣や刀を扱う魔物なのだろうか。
しかしそれでは腑に落ちない。刃物で一人一人傷つけていったにしては、あまりにも被害が大きすぎる。
見かけた人間全てに切りかかるような真似が出来るのだろうか……。
その疑問が解決するのと同じくして、現況と思わしき魔物が目の前に立ちはだかった。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:17:17.46 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)はモンスターマスターになったようです
第2話『旅人が触れた願い、包帯男の小さな夢の話』
【後編】
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:19:30.85 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「あれか……?でも、刃物なんて持ってねぇぞ」
( ^ω^)「いや、間違いないお。
アイツなら刃物なんて無くても、人を切り刻めるお」
一人と一匹が、睨む視線の先には一匹の魔物がケタケタと笑っている。
ソレの外見を一言で表すのならば貧弱。
青く染められた体は細く、どこか餓鬼を連想させた。
ソレは旅人達に気付いたのか、ピタリと笑いを止め、振り返る。
「なんだい、オイラに何か用があるのかい?」
( ^ω^)「……村をこんな風にしておいて惚けるんじゃないお」
「酷いなぁ、こんなか弱いオイラに何が出来るって言うんだい?」
わざとらしく両手をピラピラとさせる意味は『武器も持ってないのに?』というジェスチャーなのだろう。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:20:39.31 ID:/BfErNOa0
支援
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:21:39.94 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「いい加減、ふざけるのも大概にしろお」
「きゃっきゃっきゃっ、君は怖いんだねー!
そうだねぇ……うん……良いね……遊びたくなってきたよー」
青い魔物はパチリと指を鳴らす。
すると巻き起こる突風。葉は舞い踊り、樹木が揺らされる。
その風は徐々に魔物のもとで収縮されていき、体が空に浮き上がる。
風が目視できる程の高密度に化した時、風は魔物の身を守る鎧となった。
カマイタチ「じゃあ、あそぼっか?
今日のゲームは鬼ごっこ、もちろん鬼はオイラだよ?」
にやけた顔に狂喜が宿る。
ざわめく木々は魔物の魔力に怯えているかのようだった。
『かまいたち が あらわれた !』
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:22:03.42 ID:/BfErNOa0
支援
まぁかまいたちなんですけどね
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:23:10.67 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「なるほど、アイツをぶっとばせば終わりな訳だな!」
(;^ω^)「あっ、でもかまいたちは……!!」
旅人が何か言いかけたようだが、スライムは一目散に突っ込んでいく。
先手必勝と言わんばかりの突撃。その攻撃スタイルは毎度のことであった。
カマイタチ「速いっ!!――とでも言うと思ったの?馬鹿なの?」
( ゚∀゚)「……へっ?」
かまいたちの手がスライムに向けられる。
本来だったら、その程度のガードは、腕ごと持っていく程の体当たりである。
だが、空中、動けない状況の中、直感で理解する。
―――あの手は、何かが、ヤバい……!!
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:25:19.96 ID:abNiI1ze0
刹那、かまいたちの掌から小さな球体が浮き上がる。
その球体は手から離れると、爆ぜるように解放され、その体積を何百倍にも膨らませる。
圧縮されていたのは風。牙と、刃と化した風は、一直線にスライムへと突き進む。
『かまいたち の しんくうは !』
(;^ω^)「うわっ……!」
旅人のいる位置には刃は届かなかった。
ただそれでも、突風の勢いを感じ、尻もちをつきそうになる。
また、その真空波の威力は、かまいたちの逆位置にある樹木から確認できる。
直撃を浴びてしまった樹木は切り刻まれ、半分程、幹を削り取られてしまっている。
突風の影響も大きくなってしまい、グラグラとその身を振り子状に揺らしていた。
家屋の数倍はあろうかというサイズを誇る大木ですら、その様なのである。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:27:35.96 ID:abNiI1ze0
ならば、真空波を至近距離で浴びたスライムはどうなったのか。
結論から言うと生きのびている、何故なら真空波を浴びていなかった。
(;゚∀゚)「あっぶね……」
(;^ω^)「おま、突っ込むなって言おうとしたのに……」
空中で身動きのとれないあの状況下、逃げなくてはならないという指令が脳から電撃的に下る。
瞬間、反射的にスライムは右方向にベギラマを放つ。
その反動により、無茶苦茶な方法ではあるが、回避を成功させていた。
(#゚∀゚)「言うのが遅ぇんだよぉ!!」
(#^ω^)「いっつもいっつも、突撃するなって言ってるお!!」
言い争いを始める姿を見て、かまいたちは再び真空波を放った。
緊急回避。その時ばっかりは、見事に統一された動きを、一人と一匹は成していた。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:29:23.59 ID:abNiI1ze0
(;゚∀゚)「死ぬかと思った……」
(;^ω^)「僕もだお……」
カマイタチ「オイラを放っておいて、盛り上がっちゃあ、やーよ?
そんなに死にたいなら今すぐ、村人みたいに殺してあげるけどさぁー」
その言葉で、旅人の脳裏に血を垂れ流す村人の姿が映し出される。
かまいたちの戦闘力は予想外に高く、戦闘に思惑以上の時間を取られることは必須だった。
このままでは、応急処置をするのが相当な時間を経た後になってしまう。
怪我をしていない村人に手助けしてもらうことも考えた。
だが、命からがら逃げ出した人々が、もう一度、身を危険に晒すとは考えにくい。
旅人は、選択を誤ったと後悔する。
あの時、成すべきことは、怪我をした人たちに応急処置を施す事だった。
敵と対峙している今、道を選びなおすことは出来ない。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:30:44.81 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「……行けよ」
(;^ω^)「……!!」
しかし、思考の渦に飲まれた旅人を救う声。
スライムの瞳は威圧を放ち、真っ直ぐにその視線をかまいたちへと向けていた。
( ゚∀゚)「村の人を助けに行きたいんだろ?
だったら、ここは俺に任せてさっさと行きな」
(;^ω^)「でも、さっき一緒に戦うとか言ったばっかりなのに……」
( ゚∀゚)「へん、こんな雑魚的一匹くらい、俺に任せて貰いたいもんだね。
それとも、俺様が負けるとでも思ってるのか?」
( ^ω^)「まぁ、ちょっぴり」
(#゚∀゚)「てめぇ」
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:32:57.48 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「冗談だお……じゃあ、お願いしてもいいのかお?」
( ゚∀゚)「何回も言わせるなよ、俺に任せときゃ安心だって」
目の前にいる敵の恐ろしさを考えても尚、旅人には安堵の心が芽生え始めている。
スライムへの全幅の信頼を置くことで、その心は冷静さを取り戻していた。
今はただ、互いのやるべきことを成しに行く。
( ^ω^)「頼んだお、僕は怪我している人たちの所に―――」
カマイタチ「……へっへー、行かせるとでも思ったぁ?」
しかし、踵を返した旅人を阻もうとするかまいたち。
その手が旅人の進行方向を向き、かざした掌に魔力が集中されていき―――
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:34:30.19 ID:DJ6iLSAd0
支援
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:35:20.14 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「―――邪魔させるとでも思ったか?」
カマイタチ「……!?」
かまいたちの足元、素早く回り込んだスライムが魔力を込めている。
避けることもままならない至近距離、真空波を放つ隙は与えない、既に詠唱は終えている。
『スライム の ベギラマ !』
燃え盛る火炎が、かまいたちの体を包み込む。
だが、程なくして身に纏っていた風が、炎と煙を吹き飛ばした。
カマイタチ「くァッ、スライム如きがッ……!!」
(#゚∀゚)「へっ、かまいたち如きがよぉ……調子に乗ってんじゃねぇぜ!!」
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:36:25.70 ID:DJ6iLSAd0
支援
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:38:05.13 ID:abNiI1ze0
既に真空波の射程距離からは離れた安全地帯。
旅人は一度だけ振り返る。
( ^ω^)「モンスターマスターの極意!!
勝利への道は自らの手の中に落ちている!!だお!!」
( ゚∀゚)「ああ!?なんだそりゃ!?」
( ^ω^)「分からなかったら今までの戦闘を思い返せおっ!
それじゃ、ちゃんとかまいたちを倒して追いかけてくるんだお!!」
( ゚∀゚)「あたぼうよっ!!」
この時、旅人の逃げ脚はやたらと速かった。
なんだかんだで、かまいたちと対峙しているのが怖かったらしい。
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:40:06.97 ID:DJ6iLSAd0
支援
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:40:23.69 ID:abNiI1ze0
(;^ω^)(とりあえず荷物を持ってこないと……。
あ、でも確か薬草はあんまり残ってなかったような……)
よくよく考えてみれば、昨日もそのことでスライムともめていた。
回復アイテムは心もとない量しか残っていなかった。
(;^ω^)(ええい、あるだけマシだおっ!!)
右を向いても、左を向いても、悪夢の様な光景からは逃げられない。
家屋にすら深い傷跡が付いている。かまいたちの傍若無人な姿が目に浮かぶようだった。
小さな村と言っても、行ったり来たりを繰り返していれば距離もかさむ。
更に、つい先ほどまでは、居るだけで命が擦り切れる様な戦場にいたのだ。
衣服に染み込んだ汗はベタッとしていて煩わしく、額から流れおちるソレも爽やかとは言い難かった。
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:40:35.08 ID:dqjYP3Jq0
支援
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:41:59.49 ID:DJ6iLSAd0
支援
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:42:22.74 ID:abNiI1ze0
全速力で駆けていく中、一つの蠢く影を見つける。
どうやらその影は、怪我を負っている人達の下を巡っているようだ。
( ^ω^)「君は―――」
やや薄汚れた包帯と多量の薬草、村人全員に分け与えられる程の量がある。
それほどの道具が一体どこにあったのか。
旅人が今まで培ってきた知識は、その答えを導き出していた。
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:44:22.40 ID:DJ6iLSAd0
支援
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:44:35.74 ID:abNiI1ze0
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
( ゚∀゚)(さて、アイツには大口叩いたものの……)
カマイタチ「どこどこどこ??オイラもう怒っちゃったよー!!」
手当たり次第に真空波を放つかまいたち。
民家の壁に爪痕を遺し、大木を揺らす姿は、小型の台風と形容するのが適している。
( ゚∀゚)(どうしたもんかねぇ……せめて一発当てられればなぁ)
先ほどの至近距離からのベギラマ、まるで効果は無かったように見える。
しかし、これでも幾度もの戦いの経験を積んできたスライムにはダメージの度合いが見えてきた。
それは、ほんの少しの反応の遅れだったり、感情の揺れ動きだったり。
ダメージを負ってないように隠そうと思っても、僅かな違いまでは誤魔化しきれない。
その些細な変化から、スライムはかまいたちの特徴を掴んでいた。
『攻撃力は高いが、防御は弱いタイプ』と。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:47:52.98 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)(ただなぁ……)
かまいたちは、あまりにも極端過ぎた。
恐らく、打撃一撃で致命傷となるような防御力なのだろう。
しかし、その攻撃力は今まで見てきた敵の中でも上位レベル。
下手をすれば、こちらが一撃の下、破り去ってしまうかもしれない。
それほどに風が、かまいたちの得意とする真空波は厄介なものだった
( ゚∀゚)(さて、と)
思考に集中する為、瞳を閉じる。
スライムは今、かまいたちと民家一つを隔てた場所にいる。
頭に血が上っている敵の様子では、自分から攻め込まない限り見つかる可能性は低い。
だからこそ、思案する。
敵の攻撃の届かないこの場所で、確実に敵を倒す方法を画策する。
ヒントは、旅人の言った極意一つ――
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:47:54.51 ID:DJ6iLSAd0
支援
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:49:16.34 ID:abNiI1ze0
勝利への道は自らの手の中に落ちている。
それはつまり、自らの周りを見渡せば、そこに勝利のピースが落ちているということ。
あの場所に何があったかを深く思い出せ。
分からなかったら、今までの戦闘を思い返せ。
かまいたちとの戦闘開始から何があったか、何がその場所に残されたか。
細かい部分まで全て思い出せ、小さな事柄でもいい。
…………。
…………。
( ゚∀゚)「………よし!」
再び目を開けた時、スライムの頭ではとある図式が出来上がっていた。
それは勝利までの道であり、かまいたちを倒す方法だった。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:49:36.97 ID:DJ6iLSAd0
支援
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:51:42.97 ID:abNiI1ze0
チャンスは物理的に考えてもたった、一度きり。
しかし、その逆境がスライムに燃えざるを得ないという感情を与えていた。
基本的には熱血馬鹿なのである。
カマイタチ「出て来いよぉ〜、暇じゃんかよぉ〜」
( ゚∀゚)「―――そいつぁ悪かったなぁ!!」
家屋の影から飛び出すのと同時に、自らの限界まで魔法の構築を進める。
かまいたちが真空波の態勢に入るよりも早く、全力を相手にぶつける気迫だ。
高速の詠唱、それでも一つ一つに込める魔力はより強く大きなものを。
スライムの目前に、赤色の魔法陣が浮き上がる。
その数は3つ、三角形の頂点に位置するような隊形をとり、やがて発光し始めた。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:52:45.92 ID:DJ6iLSAd0
支援
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:55:14.09 ID:abNiI1ze0
(#゚∀゚)「――逝きやがれッ!!」
スライムの咆哮と共に、魔法陣から火炎弾が放たれる。
一般的なベギラマよりも高密度、小範囲になるように構造されていた。
スターキメラとの一戦で考え付いた魔法構築である。
その火炎弾のサイズは直径が、大人一人分はあるだろうか。
一発一発が、致死レベルのダメージを与えられる程の呪文である。
カマイタチ「……だから、そんなんじゃダメだって」
しかし、それ程の呪文を目の前にしても、かまいたいちの余裕は崩れない。
両の手を前に突き出した状態で静止、眼を瞑り、魔力を練り始める。
それは一秒を下回る時間であったが、かまいたちにはその程度で十分だった。
迫りくる火炎弾が目と鼻の先に来て、その込めた魔力を開放する。
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:55:59.12 ID:DJ6iLSAd0
支援
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 21:57:26.45 ID:abNiI1ze0
『かまいたち の しんくうは !!』
それは今回の戦闘で、間違いなく最大規模の真空波だった。
なにしろ、スライムが全魔力を込めて放った3連ベギラマを掻き消しても勢いは納まらず、
その直線状にあった木々や、民家なども吹き飛ばしていったのだから。
かまいたちの脳裏には、木片や石屑等と共に吹き飛ばされるスライムの姿が映し出されていた。
―――のだが、
カマイタチ「なにっ!?」
猛然と、勢い衰えることなくスライムは走り続けている。
既に至近距離。かまいたちが防御態勢に入るよりも早く攻撃を行える間合い。
スライム見抜いていた。
攻防一体を可とする真空波に付け入る隙。
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:00:44.18 ID:Of9jyEcZO
支援
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:01:21.80 ID:abNiI1ze0
真空波は広範囲の特技に見えて、実際はそうでもなかった。
吹き荒れる風は、確かにステップの一つや二つで逃れられるものではない。
しかし、風刃と化している部分は、それに比べてあまりにも極小の空間しか得ていなかった。
もちろん、それでも並の呪文と比べれば、広範囲の特技と言えるだろう。
だが、スライムは『ベギラマを放つことで、真空波を放つ場所を限定させた』
そこにくると分かっていれば、決して避けきれないものではなかった。
(#゚∀゚)「おおおぉぉぉオオオオオッッッ!!」
速度を持ったまま、飛び上がる。
全身を弾とし、完全な突撃体制に入った。
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:04:58.35 ID:abNiI1ze0
スライムの予想、かまいたちが攻撃タイプで、防御面に不安を持っているというのは的中していた。
同じく攻撃面に定評のあるスライムの攻撃を受ければ、一撃で、とはいかないが大きなダメージを残してしまうことになる。
そうなれば、重くなる体が隙を作り、敗北を導いてしまうのは必至だった。
一対一の戦いでは、どれだけ隙を見せないかが、戦闘の行く末を決定付ける。
つまり、かまいたちにとってこの攻撃は圧倒的な危機といえた。
カマイタチ(……けど、惜しかったねぇ!!)
超攻撃型タイプであるということは、全距離に得意な攻撃があるというのと同義。
故に、体力面に不安はあるものの、近接戦闘の術も手にしていた。
ガードする暇はなかった、しかし特技を放つ時間はある。
体に纏った風に魔力を込め、回転、無限の螺旋を描く。
小さな竜巻はドリル状に変化し、その身に触れるものを全て切り裂いていった。
『かまいたち の しんくうぎり!!』
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:05:25.50 ID:DJ6iLSAd0
支援
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:07:18.57 ID:abNiI1ze0
カマイタチ「―――あれ?」
だが、そこで気付く。
スライムの軌道がおかしい、言うならば高すぎる。
攻撃態勢にはいった風を避け、顔面に当て身を放つのか。
いや、それも違う。それよりも高く、空に向かって跳んでいる。
意図が理解できないかった。
何故、自分の体を飛び越えていく―――
( ゚∀゚)「残念、地形はよく理解しておこうぜ」
頭上のスライムの声。
脳がそれを理解すると共に前方を確認する。
視界に映ったのは、茶色と緑の入り混じった物体。
聴覚が捉えたのは、メキメキと何かが破壊していく悲鳴。
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:07:33.75 ID:Uh1I9z5/O
しえんくうは
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:08:13.48 ID:DJ6iLSAd0
支援
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:10:20.26 ID:abNiI1ze0
カマイタチ「え、ちょっ、これは――!!?」
それを認識した時にはもう遅かった。
大木だ。
中程から折れたであろう樹木が、自分に向かって倒れ込んで来ている。
目と鼻の先、避けきれな―――
……ズン、と大地を揺るがす音が響いた。
大木がかまいたちを下敷きにしたまま、地面に横になった音だ。
青色の右手が隙間からはみ出ていたか、ピクリとも動く気配はなかった。
スライムは二、三、その手を突いて戦闘不能を確認する。間違いないようだ。
( ゚∀゚)「モンスターマスターの極意、勝利への道は自らの手の中に落ちている、ねぇ。
敵が勝手に自滅しただけのような気がするわ」
勝利を確信したスライムは大きく息を吐き、安堵の色を示した。
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:14:25.31 ID:abNiI1ze0
倒れかけの樹木、真空波がとどめになるのは容易に推測出来た。
だから、『ベギラマを使うことで、真空波の放つ場所を限定させた』
丁度、樹木に真空波が当たるように。
予想が現実となり、かまいたちは大木の下敷きとなり、戦闘不能である。
もっとも、不安要素は多々あった。
位置確認をほぼ勘で行ったので、スライム自身も潰されるかと冷や冷やしていた。
木の倒れる方角は、削られ具合からベストの場所を選んだが、それでも確実性は少なかった。
( ゚∀゚)(ま、そこらへんはモンスターマスターの極意。
運もまた、実力の内ってやつだよな)
戦闘の反省も程々に、スライムは旅人の下へと駆け出した。
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:16:18.03 ID:Uh1I9z5/O
なるほど
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:16:20.31 ID:abNiI1ze0
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
( ゚∀゚)(おっと、いたいた)
少しばかり走れば、簡単に旅人の姿を見つけだすことが出来た。
近寄ってみれば、宣言通り、村人の怪我の手当をしているようだ。
( ゚∀゚)「おうおう、やってますね〜。
何か俺にも手伝えることはあるかい?」
( ω )「ないお、これで最後だから」
( ゚∀゚)(……ん?)
旅人の声が、あまりにも暗く、冷たい。
背中越しの会話ではあるが、旅人の様子がおかしいのは明らかだった。
その時、物陰で何かが揺らめいているのが目に入る。
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:18:45.69 ID:abNiI1ze0
マミー「う、うう、ああ」
( ゚∀゚)「お前、こんな所で何やってんだ?
……ていうか、何かボロボロだな、かまいたちにやられたのか?」
マミーは何も答えず、言葉になっていない声を漏らすだけだった。
みすぼらしい恰好は悪化しており、包帯のいたるところが千切れている。
所々の隙間から、中身の腐りかけの体が覗いていた。
( ω )「マミーの包帯を借りたんだお、薬草の上に巻いておきたかったから」
( ゚∀゚)「へぇ、そんな便利なことが出来るのか。
にしても、これだけの量の薬草がよくもまぁ、あったもんだな」
怪我人全員の患部に施すとなれば、膨大な量であった。
手持ちの薬草は切らしかけていたので、道具屋にでもあったのだろうかと推測する。
呑気に考えていると、いつになく気力の無い旅人が語る。
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:20:00.95 ID:dqjYP3Jq0
支援
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:20:51.62 ID:abNiI1ze0
( ω )「マミーの包帯の下には、何があるか知ってるかお?」
( ゚∀゚)「ああ?腐った死体もどきみたいなのが入ってるんじゃなかったか?」
( ω )「正解だお、でもその腐敗濃度はかなり高いものなんだお。
じゃあ、それをどうやって留めているのか分かるかお?」
( ゚∀゚)「……いや、聞いたことねぇぞ」
( ω )「簡単だお、大量の薬草でどうにか腐敗を抑えつけているんだお」
(;゚∀゚)「大量の……薬草?」
そこまで言いかけて、はっとする。
不可解な量の薬草の出所、道具屋がこの状況下で開いている筈がない。
緊急事態だからと貰い受けるにも、時間が嵩んでしまうだろう。
ここまで迅速な対応を出来たという事は、即ち。
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:22:53.16 ID:DJ6iLSAd0
支援
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:23:14.05 ID:abNiI1ze0
慌ててマミーの姿を再確認する。
瞳に残された光が、消えかかっているように見える。
命の灯火が、燃え尽きかけている。
( ゚∀゚)「お、おい、じゃあ、マミーは……」
( ω )「限界だお、魔物としての生もお終いだお」
(#゚∀゚)「――分かってんなら、なんでやってんだよ!!」
(#;ω;)「――僕だって、やらなくて良いならやらないに決まってるお!!」
振り返り見せた旅人の頬には、大粒の涙が零れていた。
怒りも悲しみも混ざった心を、ぐちゃぐちゃになった顔が表している。
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:23:56.63 ID:DJ6iLSAd0
支援
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:25:19.25 ID:abNiI1ze0
旅人は服の袖で顔を拭く。
しかし、充血した眼から流れる涙は、治まる様子を見せなかった。
( ^ω^)「村人の為ならと、言ってくれたんだお。
マミーのおかげで、何人もの人が救えたんだお」
(;゚∀゚)「だ、だけどよぉ……」
( ^ω^)「分かってる、分かってるから……もう何も言わないで欲しいお」
そして、最後の村人の手当が終わる。
あまりに静かだった。声が透き通るように響いていく。
川のせせらぎは、村の何処にいても聞こえてくるだろう。
ベホマ
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:26:22.24 ID:DJ6iLSAd0
なんていうか・・・好きだ、この作品
支援
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:28:07.62 ID:abNiI1ze0
( ^ω^)「マミー、これで全ての手当が終わったお。
君のおかげだお、ありがとう」
マミー「そ、そうか、よか…った」
そう言うと、マミーは立ち上がり、ふらつく足で歩きだす。
行く先を告げた訳でもないのに、旅人には何処へ行くかが分かっていた。
酷く遅い足取りだったが、後を追う様に付いていく。
マミー「村のやつら、と、仲良、く、なれるか?」
( ^ω^)「あたりまえだお、君は皆の命の恩人だお?」
マミー「……う、うん」
もしもマミーに表情があったなら、そこには笑顔があったはずだった。
しかし魔物の身である彼には、素っ気なく思える返事をすることしか出来ない。
心の奥で芽生えた温かい何かも、理解することは出来ていないだろう。
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:30:42.38 ID:Uh1I9z5/O
切ねえ
98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:30:58.99 ID:DJ6iLSAd0
支援
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:31:24.42 ID:abNiI1ze0
ゆったりと時間を掛け、歩き続ける。
普段なら文句を垂らす筈のスライムも、何も口出しすることもない。
村の外に出ても、マミーは足を止めることはなかった。
マミー「でも、おれ、は、魔物、だ」
( ^ω^)「……うん?」
マミー「あの、かぜのや、つ、を見て、思った。
やっぱ、り、魔物は、人間の、敵、なんだな」
( ^ω^)「……そんなことはないお。
きっと、君なら村の人たちとも仲良くなれるお。
だって君は人間よりも人間らしく……生きていたお」
自分の命を賭して、人を救おうとした者を虐げる人がどこにいようか。
誰よりも人のことを考えて行動する者を、拒絶する人がどこにいようか。
それでも、魔物だからと差別する人がいたのなら――
( ゚∀゚)「――力いっぱいぶん殴ってやる……ってな」
( ^ω^)「……うん」
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:33:50.96 ID:abNiI1ze0
マミーが死に場所に選んだのは、花の無い花壇だった。
いや、マミーの瞳には映っていたのかもしれない。
ここら一帯に咲き誇る花々と、遊びまわる子供達の姿が。
マミー「いつか、きっと、ホントの、花、咲く」
( ^ω^)「……うん」
マミー「お前も、遊びに、こい」
( ^ω^)「……うん」
それは些細な夢だった。
マミーが望んだのは、富でも名誉でも力でもない。
人間と笑いあうこと、たったそれだけだった。
今は夢と散りゆくだけなのかもしれない。
だが、人間と魔物の共存という意思は、受け継がれていく。
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:38:13.13 ID:kMEFmcr6O
さるさん再来。
ラスト付近になるとこれだ。
自分さる流しの術
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:38:58.03 ID:DJ6iLSAd0
支援
猿流支援
支援
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:40:09.46 ID:abNiI1ze0
マミー「ありが、とう、やっぱり、人間は、あった、かいな」
( ;ω;)「……うん」
マミーの体が光となって消えていく。
天に立ち昇っていく輝きは、いつしか虹と成り果てた。
鮮やかな色彩を帯びたそれは、マミーが咲かした花なのだろう。
彼の心が、優しさが村を照らしているのだろう。
旅人は、とても綺麗だと、残された包帯に呟いた。
しえん
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:41:27.90 ID:abNiI1ze0
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
( ゚∀゚)「薬草は?」
( ^ω^)「おーけー!」
( ゚∀゚)「ナイフ、ランプ」
( ^ω^)「カバンに詰め込んで!」
( ゚∀゚)「……肉は?」
( ^ω^)「現地調達で」
殺生なりとスライムが呟いた。
コロ助なりと旅人は答えた。
村人に謝礼を頂いたおかげで、財布に幾らかの余裕はある。
それでも計画性を持って使うのが、大事なのだという。
金は、あるに越したことはない。
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:42:39.10 ID:Uh1I9z5/O
支援なり
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:43:13.28 ID:DJ6iLSAd0
支援w
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:44:43.79 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「じゃーまぁー行きますか。
いつまでものんびりしてる訳にはいかねぇもんなぁ」
( ^ω^)「うん……あ、知ってたかお?」
( ゚∀゚)「何をだ?」
( ^ω^)「マミーの花壇に―――」
村人は、魔物に命を救われたことを、初めは受け入れられないでいた。
しかし、患部に巻かれた包帯を見るたび、実感せざるを得なかったようで、
旅人が村を出る頃には、マミーへの感謝を告げる程になっていた。
この村にあった魔物と人間の間にある溝は、僅かに取り除かれた。
きっと、マミーの作り上げた花壇も、村人が受け継いでくれることだろう。
いつしか、本当の花畑を作り上げてくれると信じよう。
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:46:24.37 ID:K70VTeGB0
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:46:41.91 ID:DJ6iLSAd0
支援
113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:48:26.65 ID:abNiI1ze0
――それは、旅人が触れた願い、包帯男の小さな夢の話。
包帯男はもういない。
夢は夢のままで終わってしまった。
……と、いうのは間違い。
夢は死ぬくらいで消えるようなものじゃない。
受け継がれ、形を取らずとも残るもの。
その証拠に、花壇に一つ、花が咲いている。
包帯男の努力は無駄じゃなかったと語っている。
でも、本当の夢は違うって?
死んだら叶わない夢じゃなかったのかって?
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:49:39.68 ID:abNiI1ze0
それなら、もう一度花壇を見ればいい。
一輪の花と、楽しそうに水を撒く子供たち。
その奥にひっそりと潜むもの。
白く無機質な、村人たちからの贈り物。
それは、包帯を巻かれた、お墓だったとさ。
第2話『旅人が触れた願い、包帯男の小さな夢の話』
おしまい
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:49:53.27 ID:DJ6iLSAd0
支援
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:51:30.10 ID:abNiI1ze0
いやもう、ホントに長いことありがとうございました。
猿さん流しまでさせちゃって……うふふ、感謝感謝。
ここからは一話の保管をながらで書くんで落ちちゃって良いと思います。
退屈でしょうし。
あと、7xさんまとめどーもです。
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:52:50.19 ID:Uh1I9z5/O
乙!
1話読んでくる
118 :
一話、後編、夜が明けた後:2008/11/09(日) 22:56:33.37 ID:abNiI1ze0
( ゚∀゚)「んじゃ、行くとしますか」
( ^ω^)「…………」
( ゚∀゚)「どうしたよ、まさかあの子達が気になってるのか?」
( ^ω^)「……だって、そう簡単に村の人たちが許すもんかお?」
( ゚∀゚)「でーじょうぶだよ、あの村長さんのことだし」
(;^ω^)「あの村長さんだから心配なんじゃないかお……」
( ゚∀゚)「大丈夫だよ、あの村長さんなら、な」
スライムの言葉は、どこか確信めいたものを秘めていた。
ここまで堂々と言い切られたのなら、旅人も反論する気も起きない。
そうまで言うなら間違いないのだろうと、納得した。
スライムへの信頼は大きい。
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 22:57:09.73 ID:DJ6iLSAd0
乙でした
心にジンときた。ええ話や,。・゚・(ノД`)・゚・。
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 23:00:45.51 ID:abNiI1ze0
―――それは、とある村、とある旅人の話。
この村にはおかしなことがあるんだな。
まず、訪れる旅人を異様に優しく迎える。
これは伝説の勇者のおかげなんだってさ。
次に、老若男女関わらず、村人全体の仲が滅法いい。
これは伝説の勇者のおかげなんだってさ。
最後に、魔物との争いを出来るだけ避ける。
これは伝説の勇者のおかげなんだってさ。
どれも勇者の話ばっかだって?
そこまで言うならどんな勇者なんだって?
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 23:04:32.46 ID:abNiI1ze0
それなら、町の中心部に行ってみるといい。
ヘンテコな勇者の石像が置いてあるからね。
何がヘンテコなのかって?
そりゃあ、見てみれば一目瞭然。
人の良さそうな旅人がふんづけられてるのさ。
魔物のスライムにな。
この一人と一匹が勇者って言うんだから、笑っちゃうだろ?
第一話『とある村、とある旅人の話』
おしまい
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 23:06:16.73 ID:abNiI1ze0
オワタ!
ありあとございましたー。
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 23:07:06.10 ID:DJ6iLSAd0
乙でした
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/09(日) 23:30:00.99 ID:nCrgvTYo0
RPG系はどうしてもワンパターンだなあ、なんか残念
それともアルファのポケモンが例外すぎるのかな
ほ
>>124 アルファアンチかと思ったけど某スレでID無いな
もしかして素で言ってるの?
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/10(月) 00:09:13.70 ID:cRx34rSZO
泣いた
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/10(月) 00:15:50.91 ID:YL4uX90B0
これは泣かざるを得ないだろ・・・
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
あ?