文才無しは小説を書く夢を見るか?

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここは筆力のある人・ない人がお題をもらって自由に小説を書き、それぞれの筆力を向上させるスレです
※※※お題をもらわないでの小説投下はスレの主旨と違いますのでご遠慮下さい※※※

各まとめ入口:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/
まとめwikiコラム:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?%A5%B3%A5%E9%A5%E0
初心者の方は上記のまとめwikiコラムの他、掲示板を一度ご覧下さい。
小説を書く際の禁則やテクニック等が具体例付で説明されています

(三行テンプレート)
1:お題をもらう(安価より「↓」を推奨)
2:もらったお題に沿った作品を書いて、完成させる。
3:「投下します」と宣言し、作品投下。メール欄は無記入、名前欄には「もらったお題」を表記する。タイトルは無くても可。

・1レスは30行、4096バイトまで、一行は全角128文字まで(読みやすさの為に50〜60文字推奨)
・書きながらの投下は禁止
・お題をもらっていない作品はたとえ投下されてもまとめサイトには掲載されません

詳細は>>2-3辺りをご覧下さい
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:35:45.06 ID:fCiRqTsT0
まずはお題をもらいましょう。基本的に過疎スレなので↓でもらうと良いです
→人のお題を使って書くのもありです。作品がたくさん投下されればスレも盛り上がります

▽投下の際の注意点
・投下宣言は「投下してもいいですか?」ではなく「投下します」。投下宣言が被らない限り、許可はいりません
・投下する人は最後に「終」「完」「了」など、投下完了の合図をお願いします
・名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』 (例:『BNSK(お題:文才) 1/5』)を書いて下さい
・まとめる際にコピペがしづらいので、メール欄は空にして投下してください。
・作品を投下する際は、テキストエディタで仕上げてから、完成品をまとめて投下して下さい

▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です
・落ちた場合は立てられる人が新スレを立てて下さい。人がいる時間を目安に

▽その他
・通常作品でもトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:36:31.95 ID:fCiRqTsT0
▲週末品評会
作品は土曜日の0:00から日曜日の23:30までの間に投稿してください
その後それぞれに評価をして頂き、月曜日の0:00から火曜日の24:00まで投票を受け付けます

▽作品投稿
・ジャンルは自由、時間を過ぎての投稿も選考外ではありますがまとめサイトに掲載します
・スムーズな流れを保つため、メモ帳等の機能を使って全部書き終わってから投下するようにお願いします
・優勝時の本人確認のため、週末品評会参加者は出来れば酉を付けて下さい(酉は名前欄に#と自由な文字列)
→毎回同じコテや酉で出続けると周囲にわかりやすいです
・作品のタイトルは現在レス数/総レス数、酉を除いて、全角二十文字以内にしてください。

▽締め切り間際の作品投稿について
週末品評会では、投下締切時間の間際に集中的に投下が起こります。
それを無管理で放っておくと大変な事になるので、23時から「予約」という形を取り、運営の指示に従って順番に投下してもらいます。
予約締切は23:30で、以降は時間外の扱いになります

▽投票
・本スレへの書き込みでお願いします(複数選択可)
・ぜひ書き手の方も他の人への感想や投票を行って下さい
・簡単でよいので、感想、批評等書いて下さい。書き手の次への糧になります!
・投票は投票用テンプレを使うか、【投票】と書いて書き込んで下さい

▽優勝者特権
・投票で一番支持を得た作品の作者の方には、次回品評会のお題決定権が与えられます
・投票数が同数の場合は、気になった作品の投票数の差で決定します
・お題の発表時間は優勝者に一任されますが、遅くても土曜日の午前中には提示して下さい
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:37:17.21 ID:fCiRqTsT0
くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくる

第134回週末品評会  『まわる』

規制事項:五レス以内

投稿期間:2008/10/25(土)00:00〜2007/10/26(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2008/10/27(月)00:00〜2008/10/28(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:39:48.59 ID:wr6/9TPpO
いち乙
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:43:58.92 ID:wpODSNMNO
>>1
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:44:17.10 ID:WprWjVdj0
乙一
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:44:43.26 ID:3kcwtAH40
イチモツ
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:52:47.23 ID:UEVIgrCtO
>>1条さん乙

まわる〜まわってく〜☆
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:54:34.99 ID:fCiRqTsT0
あいあいあー
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/24(金) 23:56:17.20 ID:Ad6WZec80
>>1さん乙です

お題お願いします
12『ミトコンドリア(お題:まわる)』0/2 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 00:00:03.52 ID:loyp19CXO
週末品評会に投下致します

拙い文章ですが、どうぞよろしくお願いします。
13『ミトコンドリア(お題:まわる)』1/2 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 00:00:38.57 ID:loyp19CXO
 視界が一定しない。
 『ここはどこ、わたしはだれ?』
 随分と使い古されていて、ステレオタイプな、もしかしたらこんな言葉は時代遅れだと笑われるかもしれない。
 でも今は違う。
 断言してもいい。なぜなら僕には、自分が何処に居て、そして誰なのかが分からないから。
 僕の見開いた目はぐにゃぐにゃとした緑色しか映してくれない。使えない目だ。
 僕の顔の両側に付いている耳もごぼごぼという騒音しか聴かせてくれない。使えない耳だ。
 僕の胸にしまわれている肺は呼吸することすらも許してくれない。
 使えない身体だ。
 主人である僕に盾突くだなんて、なんて生意気!
 そういえば、細胞の中にあるミトコンドリアは人間が進化の過程で他の生物を取り込んだ結果なんだっけ? ……自分の名
前も思い出せない癖に、たいした脳味噌だ。だけど、僕の身体の一つ一つのミトコンドリアが、一致団結に一心不乱に僕に反
乱しているのなら、納得だ。
 僕が、水中を回るように漂っているのにも、納得だ。
 ぐにゃぐにゃした緑色。
 ごぼごぼという騒音。
 息が、呼吸ができない。
 導き出されるべきは水中。
 冷静になれば、なんてことはない。水中にいれば、辺りは緑色だし、波が立てばぐにゃぐにゃにだってなる。必死に息をし
ようとすれば、渦を巻く泡が口から鼻からごぼごぼと漏れる。
 苦しい。
 何故だろう、かなり長い時間水中を漂っていたはずなのに、苦しいと思うことなんてなかった。
 他でもない、僕から忘れ去られていた感覚が戻ってくるのが分かる。
 自分が誰なのか、ここが何処なのかが徐々に思い出されるのが分かる。
 僕の名前も、思い出すにはそう時間は掛からないだろう。名字がふ……だということまでは思い出せた。
 次に頭に浮かんだのは、ここが何処なのかだった。
 池。
 郵便局の裏手にある池だ。間違いない。……今はまだ思い出せない……と郵便局で待ち合わせ、季節の変わり目を感じなが
ら池を見つめている背後から後頭部を殴打された。きっと、それから今までは意識を失っていたのだろう。
14『ミトコンドリア(お題:まわる)』2/3 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 00:01:51.30 ID:loyp19CXO
 段々と、意識――僕は意識を失っていたのだろうから、感覚について敢えてそう書こう――が回復してゆくに連れて、苦し
さが増す。必死で、生きながらえる為にもがくが、それも単なる徒労に過ぎなかった。不幸なことに、僕は今服を着ている―
―尤も、着ていないなんてことは有り得ないのだから、不幸でもなんでもないのかも知れないが――ので、身体が必要以上に
重い。まず、浮かび上がって呼吸をしたいところだが、どうやら僕のジーパンはそれすら許してくれないらしい。
 水を飲んだ。不味い。こんなに不味い水で作られた物をよく口にできるな、と僕は我ながらに感心した。
 それから、僕は冷静さを再び失いかけていたことに気付く。だから、訳の分からぬことを考えているのだ、と。何をするに
したって、冷静さを失ってしたのでは最良と言える結果は得られよう筈もない。だから僕は、冷静になろうと努めた。
 服が邪魔なら脱げばいい。冷静さを取り戻せば、その程度の発想に辿り着くのも全く容易だった。まず、ボタンを上から一
つずつ外そうとした。だが、ふやけた指は自分のものとは思えぬ程に扱いづらかった。
 使えない、指だ。
 僕は、そう声に出したかったが、肺には限られた酸素しか残っていないので、無駄遣いができない。
 やっとのことで、ボタンを全て外し終えた頃には、僕の意識はまた朦朧としていた。
 僕の使えない目は、緑色の中に赤いものを見出だす。池が赤い訳ないのに。
 僕は、眼球を精一杯回す。赤いものがなんなのか、僕には分からない。
 今度は、身体ごと捩って後ろを振り返る。すると、赤いものは僕を嘲笑っているかの様に、僕の後ろにいた痕跡を、僕の後
ろに引っ張った。
 赤いものは、僕の背後から容赦なく、まるで、僕を呼んだ彼が僕を殴り付けたように僕の体力を奪っていく。
 僕を呼んだ彼。
15『ミトコンドリア(お題:まわる)』2/3 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 00:03:18.05 ID:loyp19CXO
 段々と、意識――僕は意識を失っていたのだろうから、感覚について敢えてそう書こう――が回復してゆくに連れて、苦し
さが増す。必死で、生きながらえる為にもがくが、それも単なる徒労に過ぎなかった。不幸なことに、僕は今服を着ている―
―尤も、着ていないなんてことは有り得ないのだから、不幸でもなんでもないのかも知れないが――ので、身体が必要以上に
重い。まず、浮かび上がって呼吸をしたいところだが、どうやら僕のジーパンはそれすら許してくれないらしい。
 水を飲んだ。不味い。こんなに不味い水で作られた物をよく口にできるな、と僕は我ながらに感心した。
 それから、僕は冷静さを再び失いかけていたことに気付く。だから、訳の分からぬことを考えているのだ、と。何をするに
したって、冷静さを失ってしたのでは最良と言える結果は得られよう筈もない。だから僕は、冷静になろうと努めた。
 服が邪魔なら脱げばいい。冷静さを取り戻せば、その程度の発想に辿り着くのも全く容易だった。まず、ボタンを上から一
つずつ外そうとした。だが、ふやけた指は自分のものとは思えぬ程に扱いづらかった。
 使えない、指だ。
 僕は、そう声に出したかったが、肺には限られた酸素しか残っていないので、無駄遣いができない。
 やっとのことで、ボタンを全て外し終えた頃には、僕の意識はまた朦朧としていた。
 僕の使えない目は、緑色の中に赤いものを見出だす。池が赤い訳ないのに。
 僕は、眼球を精一杯回す。赤いものがなんなのか、僕には分からない。
 今度は、身体ごと捩って後ろを振り返る。すると、赤いものは僕を嘲笑っているかの様に、僕の後ろにいた痕跡を、僕の後
ろに引っ張った。
 赤いものは、僕の背後から容赦なく、まるで、僕を呼んだ彼が僕を殴り付けたように僕の体力を奪っていく。
 僕を呼んだ彼。
 思い出した。鮮明に――如何なる映像媒体をも再現不能な程に鮮明に――脳内に映像が再生される。
 一九八九年一月七日、兵庫県尼崎市。僕の名前は藤崎幸一。会社員の父、元教師の母。二つ上の姉に智恵。地元の小中学校
を卒業。高校は近場で、かつ県内でも有数の進学校に合格。恋愛経験は程々。高校卒業後は一年間浪人。大学入学と共に上京。
半年後、祖父の葬儀の為に帰郷。高校時代のある同級生と再会。
 そして、その同級生――名前だって、思い出した。名は神坂仁――と仲の良かった数人で小さく同窓会の約束を取り付けた。
16『ミトコンドリア(お題:まわる)』3/3 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 00:03:43.46 ID:loyp19CXO
 僕は、待ち合わせ場所の郵便局に少し早めの時間に着いた。東京では味わえない風景に懐かしさを感じた。赤い蜻蛉が、ぐ
るぐると郵便局の裏手にある池を旋回している。池を眺めながら、僕はじっと蜻蛉を観察していた。
 一瞬、蜻蛉がその規則を乱した。
 僕は殴られ、池に落ちた。
 全てを思い出した僕は、清々しささえ感じられた。何か、窮屈に僕を束縛するものが外れ、僕は自由になれた。自由は他の
何物よりも心地よく、何物よりも気高い。
 ここはひとまず死のう。
 生まれ変わったら、神坂のミトコンドリアになって、神坂を内部からぶち殺してやろう。
 僕は決心した。この自由に身を委ねよう、と。
 僕は、自由に抱かれながら、静かに沈んだ。
17『ミトコンドリア(お題:まわる)』4/3 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 00:04:42.76 ID:loyp19CXO
終了です

2/3が重複してしまいましたが、後ろの方が本物です。
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 00:05:52.75 ID:D7/60Ayx0
素早いまとめ乙です
19 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 00:08:25.88 ID:loyp19CXO
1/2も1/3の間違いですね…
度々すみません
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 00:13:01.25 ID:PTMfgvHo0
>>1
乙!
でも投稿期間があいかわらずで笑ったw

>>11
二千円札
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 00:21:04.19 ID:GhgonNhE0
よし、じゃあそろそろ品評会の書き始めるか
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 00:30:40.65 ID:stu1eDVL0
>>1乙!

残念ながら間に合わなかったか。
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 00:30:42.77 ID:D7/60Ayx0
前スレ落ちたね
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 00:43:06.66 ID:wPpbyb+GO
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 01:04:24.89 ID:stu1eDVL0
おやすみ
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 01:46:40.93 ID:myM5kMlu0
h
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 02:15:08.09 ID:SKSXeFiW0
前スレでもらった「ヴィトゲンシュタイン」「空き地」をとりあえず投下します
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 02:15:52.79 ID:SKSXeFiW0
いつものように自分は、この狭い空き地に来る。
子供の頃に偶然見つけた空き地。どうして見つけたのかはもう覚えてない。
だけど、嫌なことがあるとここでボーっとするのが自分にとって定番になった。
この隙間を通り抜ければ、そこには私だけの静寂が――

「んだよもう……別に註が無いくらいで何で学位貰えないんだよぉ…………」

静寂が――

「ムーアの馬鹿ッ! 何でそんなくだらない規定があるんだ! 地獄へ堕ちろぉぉ!」

何も無い空き地のド真ん中で、誰かが体育座りで愚痴っている。それは、自分の思考能力を遥かに超える光景だった。

「ちくしょう……どいつもこいつもコケにして――ん?」
「あっ」

やばい、目が合った。
そして――

「うわああああああああああああああああん!!」

そいつはイキナリ、俺に向かって飛び込んできた。

「ちょっ!?」

そして自分は――
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 02:16:34.88 ID:SKSXeFiW0





「あの……大丈夫ですか?」
「大丈ぶ――ぬぁぁぁぁぁ……」

何が起こったかというと、こいつが涙と鼻水でぐっちゃぐちゃな顔から突撃してきたので、とっさに後ろ回し蹴りをしてしまったということだ。
そして、さっきこいつが座っていた場所で、お互い体育座りで向かい合っている。

「いや〜、しかしなかなかいい蹴りだった。そして驚かせてすまなかった」
「いえ、こちらこそ……」
「アテテテ……ふう――そういえば自己紹介がまだだったね。」

自分が渡したティッシュを鼻に詰め、そいつは改めてこちらを見る。

「私はヴィトケンシュタイン。哲学者だ」
「哲学……ですか……」
「正確には、言語哲学と分析哲学だな。まあ工学なんかも少しかじってるがな」
「そうですか……」
「あくまで、君の蹴りによって私の記憶が揺らいでなければだがね」
「すいません……」
「強いんだな。関心したぞ」
「いや――そんなことないです。今日だって……」
「どうした?こう見えて教師志望の私に相談してみなさい」

目の前で、満面の笑みと共にそいつはワケのわからん事を言い出した。
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 02:17:42.01 ID:SKSXeFiW0


「いえ……そんな……」

何で初対面の人間にそんなカミングアウトをせねばならんのだ。

「む〜ん。よし、ひとまず私の悩みを打ち明けてやろう」
「はぁ?」
「大したことはないんだがな、まあまあ聞いてくれよ」

仕方ない。逃がしてくれそうにもないさそうだし

「いやね、どうも研究が行き詰ってさぁ。ラチがあかんからちょっと大学から離れて山の中で一人で研究に没頭してたのよ」
「はぁ」
「んで、気晴らしと言っては少し違うかもしれないが、ちょっと学位を取ろうと思ってね。論文書いて先生に預けたのさ」
「はぁ」
「でもさ、その先生というのがイキナリ“註がなければ学位はあげられない”とか言い始めてさぁ」
「はぁ」
「そんなくだらないことで私の論文が台無しになったんだぞ……おまけに……おまけに大学の友達とも何か気まずくなって……」
「はぁ」

ん、様子がおかしい?

「くそおおお! 規則がなんぼのモンじゃあああい!!」
「ちょっ落ち着いて!」

その後、またしてもこの自称哲学者は本気で泣き始め、体育座りで“ムーア”という人と大学への愚痴というか呪詛というかそんなカテゴリーの言葉をボソボソ垂れ流し始めた。
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 02:18:44.50 ID:SKSXeFiW0

「あの、元気出してください。別に註を入れるだけでいいんじゃないですか?」
「うん、頑張る――」
「はぁ……」

何が悲しくて初対面の人間にここまで世話を焼かねばならんのだまったく。

「そういや、君の悩みをまだ聞いてなかったね」
「あ〜、別に友達と喧嘩して負けちゃっただけなんで、大丈夫です」

そう――この哲学者の愚痴を聞いてるうちに、どうでもよくなっていた。信じられないが

「そうか――ん?」

突然、ヴィトゲンシュタインが何かを考え始めた。その目は、さっきまでのとはまるで別人だ。

「あの?」
「――相互に連結された――――事実を――――――真理関数――」
「もしもし?」
「すまない。もう帰る。話を聞いてくれてありがとう」

そう言って、ヴィトゲンシュタインは去って行ってしまった。

「…………帰ろ」


のちにこのヴィトゲンシュタインは、哲学界に名を残す偉大な人物になるらしいが、自分には知ったことじゃない。

32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 02:20:23.52 ID:SKSXeFiW0
ヴィ(ryのキャラがわかりません。そして駄文\(^o^)/

書くにあたって、ヴィトゲンシュタインと論理哲学論考のwikiを参考にさせていただきました。
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 02:24:24.19 ID:Hfcb7jvN0
一人称がバラバラ
描写がほとんどと言っていいほどない
よって情景が全く頭に入ってこないし、話の流れが掴めない
そもそもやおい
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 03:05:37.13 ID:Hfcb7jvN0
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 04:26:29.89 ID:/QxEMjUb0
ほしゅ
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 05:50:51.64 ID:loyp19CXO
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 07:07:56.25 ID:tYnDwNJLO
保守したりされたり
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 08:19:01.19 ID:loyp19CXO
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 09:26:44.85 ID:24K8fl/N0
ho
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 09:39:45.06 ID:x35wkslM0
フィッフィーを馬鹿馬鹿言うなよ・・・
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 09:50:49.97 ID:24K8fl/N0
もう☆バカバカ!
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 09:56:00.81 ID:XgQqnZteP
フィッフィー「吊ってくる」
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 09:56:16.60 ID:FcTWVvJS0
もしかして恋をしないと恋愛小説ってかけないのか?
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 09:58:05.03 ID:x35wkslM0
リアルな恋愛小説はね
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:01:52.05 ID:1ogfR9Io0
宇宙に行った事無い人が面白いSF小説を書いてるように
恋愛をした事無い人が面白い恋愛小説を書くのはそう不思議な事ではない
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:03:00.19 ID:NykbHnah0
お題 ↓
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:04:41.70 ID:kI9RgfqA0
紅茶

お題くれ
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:05:34.36 ID:XgQqnZteP
>>45
その喩えは違うな
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:11:19.02 ID:FcTWVvJS0
>>47
鈍器
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:11:54.79 ID:kI9RgfqA0
鈍器把握
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:17:17.17 ID:FcTWVvJS0
SFは妄想を書いてるだけなのかな
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:26:52.57 ID:FcTWVvJS0
というわけでお題ください
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:31:03.49 ID:NykbHnah0
図書館
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:31:45.30 ID:XgQqnZteP
>>51
ん〜・・・俺はそうだなぁ
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:33:22.37 ID:x35wkslM0
宇宙という未知の概念を知ってのSF小説
恋愛という無限の世界を知っての恋愛小説

妄想にも元があるってことか?
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 10:38:52.94 ID:FcTWVvJS0
図書館把握
57此岸(お題:天国と地獄・今際の際)0/5 ◆XnSHXsXstA :2008/10/25(土) 11:25:34.79 ID:yreATCNf0
通常投下
58此岸(お題:天国と地獄・今際の際)1/5 ◆XnSHXsXstA :2008/10/25(土) 11:25:54.64 ID:yreATCNf0
 僕はもう死んでしまう。
 別に死にたくて死ぬわけではない。僕は生まれつき遺伝子が原因で起こる病気を
持っていて、どうやらそろそろ死んでしまうのだ。主治医はそれでも僕が
15年も生きながらえたことを喜ぶ。僕より5年先に生まれた姉は、同じ病気で
10歳で死んだ。姉が僕の病室まで何度か両親に抱かれて遊びに来たのを覚えている。
僕の肌は普通の人と違って、紫色の斑点ができて、茶色く濁っている。
姉の肌もそうなっていた。僕はその存在に、自分と同じ存在に
少しだけ安心したものだった。
 姉の死を知ったとき、姉の死それ自体を悲しむことはなかったと思う。
ほとんど言葉を交わしたことがなかったからだろうか。僕が幼すぎて、
死を悼むということがわからなかったからだろうか。
 ただ僕と、僕のこの体と、同じものを持つ人がいなくなってしまったという絶望感は
確かに感じた。
59此岸(お題:天国と地獄・今際の際)2/5 ◆XnSHXsXstA :2008/10/25(土) 11:26:30.87 ID:yreATCNf0
 そして僕は「僕も死んでしまうんだ」とその時確信した。そのしばらく後で
僕の父と母は、子どもを作ってもお互いの遺伝子からは僕や姉のような
不完全な子どもしか生まれないと悟って離婚を決めた。
母は今違う人の子どもを身ごもっていて、体を大事にしないといけないとかで
もう二月ほど顔を見ていない。誰もはっきりと言わないけれど、
そういうときに僕の姿を見たくないんだろう。
 僕は自分の体が目を覚ますたびに腐っていくような気がする。僕の遺伝子は
僕の体が僕のものであることを受け入れられない。僕の肉体を僕の免疫系統が
異物と判断して攻撃し、弱らせていく。だから僕は生まれたときからずっと
免疫抑制剤の入った生理食塩水を鎖骨の下に開けられた穴から点滴されている。
 それでも僕の体はやはり腐っていく。僕は眠ったきり二度と目が覚めない
かもしれないと思いながら毎日眠りに付く。最近はそういう考えが頭から離れない。
たぶんそれは近いうちに本当になる気がする。もうやせ衰えたこの体が、重くて
仕方がないんだ。
60此岸(お題:天国と地獄・今際の際)3/5 ◆XnSHXsXstA :2008/10/25(土) 11:27:40.77 ID:yreATCNf0
昔はきっと治ると信じていた。主治医は「もうすぐいい薬ができますよ」と言った。
僕はそれを信じた。でも一向に「もうすぐ」は来なかった。幼い頃は
大人の「もうすぐ」と子どもの「もうすぐ」は時間の長さが違うんだと思っていた。
10歳をすぎて、そうじゃないってことがわかった。大人の「もうすぐ」は
ただの気休めなんだなって。もうすぐなんて永遠に来ないんだってわかった。
 死ぬとどうなるのかな。そればかり考えている。天国や地獄はあるんだろうか。
小さい頃、病室に保育園の先生が来て、お話を読んでくれたことがある。
子どもは死ぬと親よりも先に死んだ罪で賽の河原に送られる。
親が死んで迎えに来るまで三途の川を渡ることができない。
 それは地獄みたいな話だ。僕もそうなるのだろうか。姉もそうなのだろうか。
61此岸(お題:天国と地獄・今際の際)4/5 ◆XnSHXsXstA :2008/10/25(土) 11:28:21.77 ID:yreATCNf0
 天国に行くとか、地獄に行くとか、どうやって決まっているんだろうか。
罪を犯したかどうかなんだろうか。僕はどんな罪を犯したのか。
人を殺したことはない。物を盗んだこともない。嘘もつかなかった。
いや、少しはついたかな。痛くても母や父に痛いと言えなかったことがあった。
もうがんばれないのにがんばるよ、大丈夫だよって言ったこともあった。
 でも母や父は僕の姿を見ると悲しそうだった。母はいつも泣いた。
こんな体に産んでごめんねって。苦しいよね。ごめんね。
 僕の大罪はこれだ。僕が生まれてしまったことが、毎日両親を傷つけた。
何もできなくてごめんね。元気に生まれられなくてごめんなさい。
 母が見舞いに来ないことに、本当は僕はどこかで安心している。
 僕が死ぬときも、母が傍にいなければいいと思う。母にこれ以上後悔してほしくない。
母が今度産む子どもは、僕や姉のようでないといい。母や父より長く生きて、
まっすぐに天国へいける人になるといい。
62此岸(お題:天国と地獄・今際の際)5/5 ◆XnSHXsXstA :2008/10/25(土) 11:28:59.25 ID:yreATCNf0
 姉も僕が生まれたときそう思っただろうか。今どこにいるのだろうか。
僕の気持ちをわかるのは、たぶんこれまでもこれから先も姉しかいないように思う。
 もうすぐ僕も姉のところへ行く。姉と同じところへ。
 今になって、姉と話したいことがたくさんある。 

<了>
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 11:44:08.49 ID:MstKLlWn0
乙です
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 12:02:18.47 ID:wPpbyb+GO
>>31
読んだ。ごめん全くわけがわからなかった。
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 12:17:10.55 ID:wPpbyb+GO
>>62
読んだ。まず文章について一点
> 僕は自分の体が目を覚ますたびに腐っていくような気がする。
これは「僕は目を覚ますたびに自分の体が腐っていくような気がする。」
にした方がわかりやすいと思う。

全体にほぼ主人公の内面告白で、何かしらの物語があるわけじゃない。
こういうのは、よほど深く描けてないと、人に読ませるのは難しいと思う。

身重の母親が遺伝病の息子に会うのを躊躇う、というのはなかなか良い観点。
母親を主人公にした方が面白いものが書けたんじゃないかと思った。
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 12:30:52.27 ID:x5/sWnpG0
お題をくださいな
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 12:32:26.98 ID:NihAgoS60
>>66
シェイク
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 13:04:15.97 ID:loyp19CXO
お題お願い
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 13:05:37.66 ID:24K8fl/N0
>>68
四分の一
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 13:06:33.86 ID:loyp19CXO
>>69
おk、やってくるぜ
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 13:39:15.31 ID:9jRQMoTsO
お題おくれ
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 13:46:50.26 ID:24K8fl/N0
>>71
どっちつかず
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 13:48:02.78 ID:9jRQMoTsO
把握
74唐変木と変な僕 0/4 ◆fSBTW8KS4E :2008/10/25(土) 14:38:34.01 ID:73Qospx60
品評会投下
タイトル・唐変木と変な僕
レス数・4レス
75唐変木と変な僕 1/4 ◆fSBTW8KS4E :2008/10/25(土) 14:38:46.84 ID:73Qospx60
 目覚まし時計が鳴っている、昨日も鳴っていた、どうせ明日も鳴る。僕は音の方へ手を伸ばし、昨日と同じよ
うに、明日もするのだが、止めた。ガラスがはめ込まれていない窓から見える景色には、荒んだ広野があって、
朝日が昇っている。昨日と同じ角度から、明日になってもその動きを忘れないように、昇っている。相も変わら
ず、月曜日の朝は憎たらしい青だった。
 ベッドから起き上がると、まず僕はネットワークのつながらないパソコンを起ち上げ、日付を確認する。見慣
れた「6月13日 月曜日」の文字を確認するとすぐに電源を落とした。それから壁に掛けてある小さな黒板へ
と向かう。そこには七十個の「正」の字が右隅から詰めて書かれており、僕はその一番下に横線を一本引いた。
351回目の作業だ。明日は352回目。もうすぐ一年間になる、この6月13日の月曜日を生き続けて。
「おはよう」
 いつも通り、本当にいつも通り、唐変木が挨拶をかけてきた。僕は手を挙げて応える。
「今日の朝ご飯は何にしようか」
 唐変木は目玉焼きしか作れないくせに、聞いてくる。僕に頼まれて作るのが嬉しいのだ。そのささやかな幸福
を得るために、唐変木は毎日10キロ離れた養鶏場まで卵を取りに出かける。奴のレパートリーに焼き鳥はない。
「卵焼きがいいな」
 優しい僕は唐変木に幸福を捧げる。それから唐変木が卵焼きを作っている間、僕はテーブルに座り、空をにら
む。この家に天井はない。見つけた時から無かった。最初は雨の心配をしたが、いままで過ごしてきて雨が降っ
たことはなかった。むかつく青にはただ一つの雲もなく、絶えず移ろう青の濃淡が風の存在を知らせているだけ
だ。その風が窓ガラスのない我が家を駆け抜け、唐変木の焦がした卵焼きの臭いが僕を取り巻く。
「はい、卵焼き。ちょっと焦がしちゃったけど」
 唐変木は毎日同じミスをしながら、ちっとも上達しない。こいつは本当に唐変木で、木偶なのだ。
「構わないよ、ありがとう」
 優しい僕は、それでもスプーンを取り、焦げた白身と固い黄身を割いていった。口に運ぶ、上手いはずもなく、
かといって慣れたこの不味さは僕の味覚を蝕んでいく。
「今日も君は養鶏場まで行くのかい?」
 スプーンを上手く使えないでいる唐変木に尋ねる。
「そのつもりなんだ、あいつら僕がいないと世話してやる奴がいないし、きっと寂しくて死んじゃうよ」
「そうかい」
 いつもと同じ会話、同じ食事、全てを昨日と同じ段階を踏み成し遂げる。
 僕ら二人は食器をシンクに投げ、床に脱ぎ散らかしたTシャツを着て外に出る。この家にはドアもない、なん
てスムーズな暮らしだろうか。
76唐変木と変な僕 2/4 ◆fSBTW8KS4E :2008/10/25(土) 14:39:09.32 ID:73Qospx60
 外には埃にまみれたジープがある。僕と唐変木はそれに乗り込み、エンジンを入れる、鍵はいつも差しっぱなしだ。
 アクセルを踏み込み、僕らは唐変木の養鶏場まで出発した。唐変木は車の運転ができないのでこうして僕が運
転してやっている。優しい僕はそれを苦にも思わない。
 家から養鶏場まで、直線で結んでも遮るものは何もなく、僕はただまっすぐに走るのを意識してアクセルを踏み込む。
「ラジオつけるね」
 唐変木がカーステレオをいじった。不思議なことにスピーカーからはいつも人の声がした。その人のしゃべる
言葉は僕らにはわからなくて意味は伝わってこないが、声の感じや出し方からなんとなく呼びかけてるように思
えた。おそらく彼も僕らと同じ、月曜日を生きるもので、近くに誰かいないか探しているのだと思う。この意見
は唐変木もうなずいている。
「まだ仲間が見つからないんだね、この人」
 仲間、唐変木は僕のことを仲間と思っている。優しい僕は彼のその考えにつきあってやっている。退屈だった
し、それも心地いいかなと思ったのだ。
 その後、10キロにわたるロングドライブは、カーステレオからの救難信号をただ聞いて過ごした。見渡す限
りに何もなく、運転しているだけで眠りそうだ。
 途中一回だけ、唐変木が泣き出した。唐変木はこのラジオの男に会って仲間がいるのを教えてあげたかったの
だ、だけど彼がどこにいるのか唐変木にはわからないので泣いてしまう。昨日と同じように。
 優しい僕はなるたけ優しい言葉を探して、唐変木をなだめる。そしてなだめ終えた頃、たいてい車は養鶏場の
近くまで来ていた。
 養鶏場の中からは車の音を聞いた雌鶏たちの声が聞こえてきた。唐変木が入り口をくぐるのに続き、僕はすぐ
横の丸椅子に座る。唐変木はえさを容器に流し入れ、雌鶏たちに声をかける。
「元気だったかい? 僕はこの通り元気だよ。君たちは僕がいなきゃ生きていけない。そうだよね」
 唐変木が雌鶏たちに話しかける内容はたいていこんな感じだ。どこまで唐変木なんだろうかと、思いながら、
外を見やる。すでに昼は過ぎている。空の青にもだんだんと柑橘系の匂いが紛れてきた。
「見てくれよ、こいつらまたこんなに卵をくれた。よっぽど僕のことが好きなんだよ」
 唐変木は卵を集め終えた唐変木は卵を詰めた段ボールを抱え戻ってきた。
「家に戻ろうか」
 僕らはまたジープに乗り込み、発進した。
 つけっぱなしだったカーステレオからはもう、男の声はして無く、無音の空気が響いていた。男はどこから発
信しているのだろうか、僕も唐変木と同じくそんなことを考えたりする。もし会えるのなら、僕も会ってみたい。
 僕と唐変木は黙ったきりで、たまに入るラジオのノイズと、転がるタイヤの振動音が車内に渦巻いていた。
77唐変木と変な僕 3/4 ◆fSBTW8KS4E :2008/10/25(土) 14:39:29.30 ID:73Qospx60
 僕は毎回、この帰り道が憂鬱だった。唐変木は喋ろうとしないし、外は変化しているにもかかわらず退屈な景
色があって、行きにはあった目標もなく、ただの空っぽな家へと戻るだけ。面白みもないハンドルを握っている
と、無茶苦茶に回したくなる。この場でハンドルを回したらきっと、猛スピードのジープはスリップを起こすの
だろう。きっと中を浮いて大回転の大惨事だ。もし生き延びられたとしても、こんな標識もない広野で投げ出さ
れたら、家にたどり着くこともできないだろう。唐変木の持っていた卵は段ボールごと潰され、車体の下からは
溢れる血のごとく黄身が流れるのだ。そんなどうしようもなく、絶望的な光景を、見たくなる。
 僕は息を大きく吸い込み、ハンドルを力強く握った。やってやる、やってやるのだ、でも。
「やめようよ」
 決まって、唐変木が口を挟んだ。
「死ななくていいよ、僕ら」
 優しい僕は、唐変木の言葉に素直に従い、手に込めた力を抜く。そうやって毎日、帰り道を過ごしていた。
 早く、火曜日が来ればいいのに。そう思うが、火曜日が来たところで、僕らに変化はあるのだろうか。こんな
何もない世界の火曜日は、いったいこの月曜日とどう違うのだろうか。
「もうすぐ着くよ」
 唐変木の声に、僕の目の焦点は合う。空っぽな家が見えた、ブレーキに足をやる。
 晩飯はいつものように、卵だけだった。ゆで卵が8個、これはいつも完食できない。卵3個分の目玉焼き。コッ
プに入った7個の生卵。これらを作業として、次の月曜日を迎えられるようにするため、口に運んだ。
「おいしい?」
 晩ご飯の時はなぜかいつも、唐変木は目玉焼きを上手に焼き、ゆで卵も丁度よい半熟でゆでることができた。
「うん」
 僕はここで毎日笑顔を見せる、すると唐変木も笑うのだ。上を見るとまだ始まったばかりの夜がきらめきだしていた。
 僕らは食べ終えるとすぐ眠りの準備に入る。唐変木が食器を水で洗っている間、優しい僕は二人分の布団を床
に敷いてあげた。それから朝止めた目覚ましをセットする。
 そうしてから、二人はそれぞれの布団に潜る。
「おやすみ」
 僕らは声をそろえて、一日を終える。これで毎日の月曜日は終了する。昨日と同じ一日だった。明日も、また。
78唐変木と変な僕 4/4 ◆fSBTW8KS4E :2008/10/25(土) 14:39:48.14 ID:73Qospx60
「君は」
 不意に唐変木が声を出した。今まで過ごしてきて、このタイミングで唐変木が口を開くのは初めてだった。
「いつになったら、卵を産むんだろうね」
 僕はすでに眠りに落ちた風を装い、聞こえないふりをした。
 唐変木の問いかけを頭の中で繰り返しながら、少しだけど、月曜日が変化してきたのを感じた。来たる火曜日
は、もしかしたら明日かもしれない。そう考えていると新しい月曜日の一日が終わった。
 眠りに落ちる僕の眼は、ゆで卵に振りかけた塩の味がした。

 了
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 14:43:19.35 ID:Aipsct1C0
まとめるのは待った方がいいか…
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 14:54:16.43 ID:24K8fl/N0
なにゆえ?
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 14:56:14.40 ID:Aipsct1C0
No.01で修正待ちの箇所があるとかなんとか
82『破片を探しに』0/2 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 15:02:09.10 ID:ZPPRpUTI0
投下します
お題>>69
83『破片を探しに』1/2 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 15:02:39.38 ID:ZPPRpUTI0
 私の目は、片方だけ赤い。
 充血した、というわけじゃない。おばあちゃんの一人が、海の向こうで生まれた人で、薄茶色の目をしていたそうだ。それ
が隔世遺伝したから私の目は赤いのだと小さい頃から教えられてきた。
 薄茶色が不思議に濁って赤くなった左目。
 それは私にとって、邪魔なものでしかなかった。
 目が赤い。
 それは虐める対象となるには充分過ぎる特徴だった。回りは皆、日本人。瞳の色はみんな黒いのに、私だけは、赤。それも
片方だけ。
 学校にはいい思い出なんて何にもない。虐められて、それだけ。
 今になって思えば、義務教育の九年間は、私への学習の猶予だったのだと思う。学習した私は、高校進学を放棄し、家に篭
って読書ばかりしていた。
 そうしているうちに、私は人間と触れ合うことを忘れてしまった。外に出れば他人の好奇の目線が気になり、独りよがりに
それらと格闘した。近所の住人からは「あそこの娘はおかしくなった」と言われ、私の家族も人間関係から隔離されていった。
 私は、ファンタジーが好きだった。本の中の世界に入り込むことで、自分自身が置かれている嫌な状況から逃げ出せた。勇
者になって、冒険の旅に出て、お姫様を救って。私は女だけれど、そういった展開に憧れていた。
 私が家を出る決心をしたのは、この夏のある日のことだった。私を苦しめた諸悪の根源である祖母は私が産まれた時には既
にこの世の人ではなく、顔を見たこともなかった。しかし、私はその日偶然見つけた古い写真立てに祖母の顔を見つけた。ク
リーム色の髪、白い肌、薄茶色の瞳、そのどれもが彼女が日本人ではないことを指し示していた。
 その顔を見た途端に、私はどこから湧いてきたのか分からない感覚に支配された。
 この人のことを、もっと知りたい。
 それは、幼心に憎悪の対象としていたことへの贖罪かも知れないし、単なる好奇心なのかも知れない。けれど、私の中には
確かに、祖母をもっと知りたい気持ちがあった。
 祖母の娘である母に、そのことを話したら、とても喜んでくれた。何より、私が太陽の光を浴びようとしたことを喜んだ。
ふと、壁にかかったカレンダーに目を向ける。知らないうちに五年も経っていたようだった。
 私は、二十歳なのか。
 私の人生の四分の一は私の部屋の中に吸い込まれてしまったのか。それまで全く自覚のなかったことが、目の前に晒された
ことで急に恥ずかしさが込み上げてきた。けれど、もう私は決めたのだ。祖母を辿り、祖母を知り、変わってやる。目が赤く
たって、今はもう構わない。私の割れた破片を拾って元通りになってしまおう。
84『破片を探しに』2/2 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 15:03:49.36 ID:ZPPRpUTI0
 私は箪笥をひっくり返し、ありったけのお洒落をした。今までそんなことをしたこともなかったが、そんなことはどうでも
よかった。私は白く飾られ、鏡の向こうの私は、今までの私とは全くの別物だと思えた。
 家を出よう。
 今なら、私は何も怖くない。
 玄関で靴を履いた時、母に声をかけられた。
 「これを、持って行きなさい。あと……」
 金色のネックレス。私は急いでそれを付け、無我夢中で家を飛び出した。
 私はその時、母が話し終えていないことなど気にもならなかった。
 私が一銭も持っていないことに気付いたのは、駅まで全力疾走した後のことだった。
                                                       終
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 15:14:17.88 ID:24K8fl/N0
>>81
空行のやつかー

>>84
>私の人生の四分の一は私の部屋の中に吸い込まれてしまったのか。
この一文がすごく気に入った。お題もかなりうまく消化してるなー。
雰囲気は好きだけど、アンバランスな印象を受けた。
いじめや引きこもりといった生々しい話、空想の話、祖母への思い、急な旅立ち。
水彩絵の具を原色のまま着色に使ってる感じ。調和が取れてないというか。
鬱や引きこもりが急に治ったり、御洒落をしたとあるが五年間で服のサイズは変わらなかったのか
とか細かいところも気になった。でも勢いのある後半部分は嫌いじゃないです。
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 15:20:50.00 ID:ZPPRpUTI0
>>84
感想どうもです。
アンバランス、ですか。
一貫性がないとはよく言われて育ってきたが、それなのかね…。
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 15:58:36.83 ID:24K8fl/N0
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 16:30:53.68 ID:24K8fl/N0
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:09:52.55 ID:NihAgoS60
h
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:10:31.13 ID:yVwiCN8mO
ここは初めてなので稚拙ながら通常のお題で書かせていただきたいです。
お題↓
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:15:40.63 ID:UDPwEscG0
冷やし中華はじめました
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:15:41.01 ID:zSQG6Lol0
メモ

↓俺のお題
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:17:08.82 ID:NihAgoS60
キッチン
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:17:25.41 ID:+LXyc+Xz0
チキン
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:17:31.48 ID:24K8fl/N0
>>92
速度
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:18:36.19 ID:zSQG6Lol0
>>93-95
把握
97アンプリファー トランスファー 0/3 ◆cfUt.QSG/2 :2008/10/25(土) 17:19:25.23 ID:NihAgoS60
通常作品投下します 3レスを予定。お題は「トランスファー」
98アンプリファー トランスファー 1/3 ◆cfUt.QSG/2 :2008/10/25(土) 17:20:23.81 ID:NihAgoS60
 拡声機と変換機、どっちが欲しいだろう。音楽スタジオでギターの個人練習をしていた彼は、ふと思った。
 とは言っても、音楽的な機材の話ではない。マイクやギターアンプ、スピーカー等、この部屋にはいろいろな
機材があるが、そのような役割を果たすものが自分の生活における意思伝達に組み込まれた時にどうなるだろう
かという話だ。
 他人とのコミュニケーションが下手だと、彼は常々思っていた。話す時はぼそぼそと小声で、しかもよくども
り、思ったことは頭の中で整理できてもいざという時には伝えられない。曖昧な返事をすればはっきりしてほし
いと言われ、イエスかノーで答えれば極端だと言われる。小学生の頃に人を笑わせることが無理だと悟って以来、
ギャグの一つも言えなくなってしまった。
 そんなだから友人も少なく、俄然一人でいることが多かった。学校が終われば家へ直帰し、ゲームをするか本
を読むか。持っているソフトはRPGか育成ゲームばかりで、対戦ゲームは持っていなかった。相手がいないの
だ。
 そんな彼が音楽に触れたのは高校生の時。英語の教師が授業の教材としてビートルズの曲を流そうとしたのだ
が、教室に鳴り響いたのは歪んだギターが轟々と唸るパンクロックだった。教師が慌ててプレイヤーを停止した
ため聞いたのはほんの2,3秒だったが、彼にはそれで充分だった。いつも以上の速さで家へと帰り、貯金を全
て握りしめて楽器屋へ飛んで行った。
 ただいまー、いってきまーすというやんちゃ坊主のような彼を見たことのなかった母はたいそう驚いたらしく、
呆然と見送るだけだったが、帰ってきた彼の半ば狂喜に満ちた瞳を見て逆に希望を感じたそうだ。ひょっとした
ら彼の興味が外の世界へ向かうのではないかと。彼の世界が自室からもっと広い空へと広がるのではないかと。
 ただひたすらゲームの主人公のレベルを上げていた彼は、その日からギターの腕のレベルを上げるようになっ
た。それまで授業以外で口を聞いたことのなかった件の英語教師に例の曲のタイトルを教えてもらいもした。よ
ほど普段とは別の表情をしていたのだろう、英語教師は少々圧倒され、若干退きながらも答えたそうだ。
 その教師は似たようなジャンルのバンドや、アツいリフ、しびれるソロのある曲などをいくつか教えてくれた。
その後も雑誌やインターネットを使って有名なギタリストやバンドを探し回り、CDを入手してはヘッドホンに
かじりつくかのように聞き込み、そしてそれをひたすら真似た。はじめはさっぱり分からないことばかり。まと
もにコードも押さえられないし、何の音がどこを押さえればなるのかも分からない。すべてが手探りで、前も後
ろも見えなかった。
99アンプリファー トランスファー 2/3 ◆cfUt.QSG/2 :2008/10/25(土) 17:21:11.67 ID:NihAgoS60
 それでもたくさんの曲を聴き、たくさんの失敗を積み重ね、ある程度の規則性を見いだせるようになった。心
地よい響きや、惹き寄せられるギミック、曲の構成や各パートの絡み合い。ただ聞き流しているだけの、空気と
同じようなものであった音楽が、もっと深く、面白いものだと知った。
 それなりに技術も知識も手に入れると、彼はバンドをやってみたいと思うようになった。スピーカーから流れ
てくる演奏に合わせて一人ギターを鳴らしているだけでは物足りなくなってきた。はじめはおっかなびっくり、
心に不安を満たしたまま見に行ったライブも、今では爆音が心地よいと感じるようになった。生の音というのは
それだけで価値のあるもの。誰かと音を合わせてみたい、互いに相手の音を聞きながら。そう、彼は聞いてほし
いと思うようになったのだ、自らの生み出す音を。
 しかし人間すぐには変われない。コミュニケーションが苦手だという負の意識は、今も拭えていなかった。音
楽的に成長しただけで、彼は彼自身が変わったとは思っていなかったのだ。誰かに話しかけるのですらためらわ
れる彼に、バンドを組もう、一緒に音楽をやろうと言うのはハードルが高すぎた。
 そんなわけで今日も彼は一人。自宅では鳴らせない爆音を出すためにスタジオに来ているのだ。そしてふと浮
かんだ二択。声を拡大して誰かに拾ってもらうのを願うか、心の声を変換して誰かに伝えるか。前者は自分の言
葉であり、聞いてもらうことは出来る。が、ぼそぼそとどもって話したのを大きくしたところで果たして誰かに
言いたいことが理解してもらえるのだろうか。かといって後者は自分の言葉とは到底言い難い。相手には理解し
てもらえるかも知れないが、ほんとにそれで自分の思いを投げかけたことになるのだろうか。
 ボコーダーを通した声を使った曲が彼は嫌いだった。その人が歌う必要がないじゃないかと常々思っていた。
商業的な面からすれば、生きた人形が不思議な曲にあわせて歌い踊っているというキャラクター性は斬新で魅力
的かも知れない。しかしそこに意志はあるのだろうか。言いたいことは伝わるのだろうか。
 どっちだ、どっちを選べばいい。分からない。伝えることに悩む自分と、何を伝えたいのか分からない人。彼
はギターのアンプのツマミを弄り、全てを最大にした。ボリュームも、ゲインも、トーンも。
 そしてギターを弾いた。弦を掻き切らんばかりの勢いで。最大限に歪んで、音程も和音も分からないほどだ。
それでも良かった。吹き飛ばしたかった。今まで練習してきたフレーズを、物凄い速さで弾いた。甘いトーンの
ブルースソロも、規則正しく高速で繰り返されるシーケンスフレーズも。積み上げてきたもの、すべて押し出そ
うとした。体の中から、指の先へ、そしてギターへ。リズムも正確さも気にしなかった。それでもよかった、些
細なことだ。
 何も言わなかった。指先だけを見つめていた。アンプがギャンギャンと返してくる。彼の生み出した音を、そ
して彼を。鼓膜を震わせ、頭蓋骨の中に鳴り響く。全身が共鳴している。感じていた。たくさんの思いを、たく
さんの言葉を。
100アンプリファー トランスファー 3/3 ◆cfUt.QSG/2 :2008/10/25(土) 17:21:59.91 ID:NihAgoS60
「ゲインをもう少し落とした方がいい。歪みすぎだ。それから中域をもうすこし下げること」
 耳元で叫ばれて、彼は手を止めた。誰の声がするんだ。分からなかった。理解しようともしなかった。
「上手いのに音作りしてないの? 変なの」
 そういうとその男はアンプを弄り始めた。細かい調整をすると、彼の方を向き、もう一度弾くようにと指示し
た。あっけに取られながらも、彼は指を動かした。
 耳には心地よい音が流れ込んできた。清らかな水で洗練されたかのようだ。普段の彼はちゃんと音にもこだわ
っているが、こんなに気持ちの良い音を出したのは初めてだった。
「ほら、このほうがいいじゃん。全然違うよ」
 男がアンプの方を見たまま言った。音の微調整をしている。
 満足したのか手を止め、振り返った。
「俺と一緒にバンドやらない。あんたのギター、上手いだけじゃなくて言いたいこと伝わってくるから好きだよ」
 ギターを弾く手を止めた。男を見た。言葉は出てこなかった。ただ、頷いた。
「ん。じゃあよろしく」
 男が手を差し出した。彼はその手を握った。
 目の前にあった。拡声器が、変換機が。気付いてなかった。悩む必要なんてなかったんだ。



完。
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:28:18.05 ID:yVwiCN8mO
>>91
ありがとー(`・ω・´)

『冷し中華はじめました』把握しました!これは時間かかるかも……
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 17:53:04.78 ID:D7/60Ayx0
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:24:07.10 ID:D7/60Ayx0
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:38:31.01 ID:+LXyc+Xz0
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:42:13.83 ID:v0Szlo/P0
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:43:35.65 ID:v7dhrcvm0
皆面白い文が書けて凄いな
これ書いてる人何歳ぐらい?高校生とかだったら鬱になるわ
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:45:19.19 ID:v0Szlo/P0
下は10歳、上は45歳くらいまでかな。守備範囲

お題ください
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:47:35.24 ID:XgQqnZteP
山芋
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:47:37.79 ID:TzF0Sn7r0
幼女趣味
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:49:49.09 ID:XgQqnZteP
お題、5つください
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:52:06.30 ID:tKb7ulzb0
>>110
五大湖
四天王
三大欲求
二枚舌
一直線
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:55:59.71 ID:Gb7rgk+A0
>>110
お茶
饅頭
ピザ
パスタ
チャーハン
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:59:19.48 ID:tYnDwNJLO
>>110
五人天衰
四面楚歌
三面記事
二律背反
一旦休憩
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:00:27.40 ID:tYnDwNJLO
って天人五衰だった…orz
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:15:41.70 ID:24K8fl/N0
>>100
面白かった。音楽に疎い自分としては、用語の連発はやや辟易したけど
それでも面白かった。気持ちのいい話だ。
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:34:13.06 ID:v0Szlo/P0
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:41:19.55 ID:NihAgoS60
>>115
説明臭くなるのを嫌って用語は何気なく使用しましたが、伝わらなかったら意味がないんですよね。次回からの作品に活かします。
面白いと言っていただけたのが次への活力です。ありがとうございました!
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:42:31.68 ID:cfW6fQiK0
おだい くれ
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:43:10.50 ID:v0Szlo/P0
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:46:54.35 ID:D7/60Ayx0
なんというperfume批判wwww
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:46:57.90 ID:QbEBvTM+0
ちょっとやってみようか
お題plz
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:48:38.53 ID:v0Szlo/P0
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:02:21.76 ID:/CO48joV0
おだいくれい
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:07:26.62 ID:ZSSSPVzoO
コイン
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:29:34.78 ID:g42UX3JR0
お代はいらないぜ、じゃなくてお題くれ、
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:32:57.47 ID:24K8fl/N0
>>125
食い逃げ
127父たちの罰 0/3  ◆dFCvHEdsNk :2008/10/25(土) 20:33:12.00 ID:QbEBvTM+0
即席だが書いてしまったので投下します。
お題は>>122さんの「闇」
128のこぎる ◆y./LicNoKo :2008/10/25(土) 20:33:39.75 ID:Yi6i/dpIP BE:2460651089-2BP(25)
>>125
立ち食い蕎麦屋の店主
129父たちの罰 1/3  ◆dFCvHEdsNk :2008/10/25(土) 20:35:42.74 ID:QbEBvTM+0
昔、父に押入れの中に閉じ込められたことがあった。そのきっかけは忘れてしまったが、些細な悪戯か何かだろう。
ともかく押入れの闇の中で私は泣きじゃくって、動かない扉を引っかきながら、外にいるかもしれない父に必死で謝った。だが扉は動かず返事もなく、狭い空間、その闇ににおびえて震えつつ、また泣くのだった。
しばらくすると扉が開いた。父は私の顔を見るなり、何も言わずどこかへ行こうとした。私は父の背中に抱きつき、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返した。父は複雑な顔つきで、もういいよ、というだけだった。この父の罰はその後も数回はあったと思う。

130父たちの罰 2/3  ◆dFCvHEdsNk :2008/10/25(土) 20:38:18.21 ID:QbEBvTM+0
自分の昔を思い出していると、自分の息子を少し前に同じ押入れに閉じ込めていたのを思い出した。思えば息子も私が始めて罰を受けた頃と同じ位の年になったことに気づいた。
そんな息子に同じ罰を自分が与えている。血は争えない。また変なことを考えながら、私は立ち上がった。
急ぎ足で押入れがある部屋に戻ったが、息子にはその事が知れないよう、足音に気をつけて歩いた。
131父たちの罰 3/3  ◆dFCvHEdsNk :2008/10/25(土) 20:39:34.16 ID:QbEBvTM+0
泣き声のする部屋に入ると、息子はもう押入れから出ていた。そして私の父、つまり祖父に抱きついて泣いていた。押入れのつっかえ棒が下に落ちている。全く父は孫に甘い。
息子は私に気づいたとたん走り寄ってきて、足に抱きついた。彼は少し震えながら泣き声のまま、ごめんなさい。と何度も言った。
息子にどう言ったらいいかわからず、ふと父のほうを見ると、こっちを見ながらにこにこと笑っていた。私はひとまず息子の頭をなでつつ、もういいよ、と言った。それくらいしか思いつかなかった。
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:56:11.97 ID:EclVpWPN0
品評会まだ二つ?
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:56:43.33 ID:EclVpWPN0
あっ、今日土曜日か。
134お題「食い逃げ」1/1:2008/10/25(土) 21:11:21.02 ID:g42UX3JR0
「すいませんクイニゲ知りませんか」
今日5度目の台詞を繰り返す。僕の喉は乾いた落ち葉みたいにからからだった。
「知りません」
その女の人は緑色の顔をしてそう言った。
僕は緑色の顔をされては為す術もなかったので、キーボードを叩くみたいにして自然に頭を下げた。
「ありがとうございました」

僕はクイニゲを捜していた。
クイニゲは僕の祖父の友達だった。
クイニゲというのはある人間のニックネームかも知れないし、もしかしたら本名なのかもしれない。
あるいは、こちらの方が可能性としては高いが、動物なのかもしれない。
僕が知らないだけで「クイニゲ」という動物が存在するのかもしれないのだ。
でも「クイニゲ」が祖父の友達だった以外には何の手がかりもなかった。
僕のクイニゲにたいする知識は、ほとんどと言っていいほどなかったのだ。
それでも僕は「クイニゲ」を捜した。
これはある意味僕のアイデンティティーかもしれなかった。
古いレコードを収集する人間のような、そういう類の自我だったのだ。(これはレコードを収集する人にあるいは失礼かもしれないが)
 ここの所はよく「センセイ」の所へ相談に行っている。
「センセイ」は僕の話をよく聞いてくれるし、それなりに助言をしてくれるからだ。
「センセイ」の所へ行った後は「垢」が取れたみたいにすっきりできる。
だから僕は週に1回は、多いときは1か月に5回は行く。
そうして、体にこびりついた歯ブラシを拭うのだ。
 そういえば昨日携帯電話が「コンコン」と声を立てて笑った。
僕はあまり金がないから、本当は携帯電話は飼いたくはないのだけれど、
ある人が塩と交換してくれたために、僕は携帯電話を飼っている。
しかし携帯電話は本当に面倒がかかって困る。
一昨日などはランプを1ダースも食べてしまった。
そのおかげで僕は松明を食べて生活して行かなくてはならなくなった。

だけど、このようにして地球は回っている。何も止めるものはないし「緑色」だってこればかりは適わない。
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:28:53.28 ID:CZN7vSmi0
お題下さい
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:30:46.20 ID:TzF0Sn7r0
冬憂い
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:31:21.59 ID:TzF0Sn7r0
浮遊霊って書こうとしたのに……
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:33:55.01 ID:24K8fl/N0
>>134
引き込まれるような文章だがいかんせん意味が分からなかった。
暗喩なのかそもそも意味を持たせていないのか……
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:36:33.14 ID:CZN7vSmi0
>>137
把握w
ありがとう
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:48:13.50 ID:FcTWVvJS0
お題を貰おうか
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:52:54.60 ID:n3tmD/Bn0
夜の王
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:54:10.74 ID:CpzlkXyAO
昼の長嶋
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:55:44.43 ID:FcTWVvJS0
ながしま?
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:58:11.66 ID:FcTWVvJS0
とりあいず>>141を把握
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:03:40.00 ID:NihAgoS60
野球だしょ 王と長嶋
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:04:20.96 ID:FcTWVvJS0
ああ、なるほど
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:07:54.08 ID:n3tmD/Bn0
>>142
>>145の解説みてわろたwww
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:12:48.93 ID:+LXyc+Xz0
僕っ子をあざとくなく書くことってできないのかしらん
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:17:16.50 ID:FcTWVvJS0
>>148
男らしく書けばいいんじゃない?
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:18:28.00 ID:/CO48joV0
幼女「ぼく、サッカーで優勝したよ!」
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:18:58.95 ID:Qg8yWFBk0
ちょい、すまん
今回のお題>>4のみで、他に説明なし?
まわる、という言葉をどう捉えてもいいのかな
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:24:00.45 ID:TzF0Sn7r0
輪廻とか回るコマとか無限ループとか
なんでもいいんじゃない?
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:25:24.89 ID:+LXyc+Xz0
男らしく書いちゃうとなんかグッとこないんだよなー
でも女の子女の子した感じの子に僕を使わせるとあざとくなるっていう
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:28:50.08 ID:CpzlkXyAO
間をとってオカマっぽく書いたらいいんでね
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:32:13.65 ID:FcTWVvJS0
というか僕なんて使う女の子なんてあざとる以外の理由があるわけがねぇ
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:33:11.92 ID:j1J37i1t0
必要がないなら僕っ子にしなければいいだけでは
意味があるなら自然に合うだろうし
157『匙加減』(お題:シェイク)0/4  ◆Ivef/e06aM :2008/10/25(土) 22:38:28.84 ID:x5/sWnpG0
初めてだけど投下しますよ。
>>67のお題「シェイク」より。
158『匙加減』(お題:シェイク)1/4  ◆Ivef/e06aM :2008/10/25(土) 22:39:52.79 ID:x5/sWnpG0
 頭上で、チン、と音がした。
 硬質で澄んだ高音は、やがて狂ったように乱打を始める。チンチンチンチンチンチンチンチンチンチン
チンチンチンチンチンチンチンチンチンチンチンチンチンチンチン――
 さながら狂った目覚まし時計のようだが、それほどの騒々しさはないくせにそのテンポは機械仕掛けの
目覚ましのような整然さを持ち合わせていない。
 今夜もかと思いながら僕は瞼を開けたが、視界は薄闇に包まれている。僕は掛け布団をめくって起き
上がると、頬を掻きながら膝立ちになった。騒がしい音の方に意識を向けたまま右手で頭上を手探りし
て電灯の紐を見つけて掴むと、気だるさの残る右腕の力を抜くようにして紐を引いた。
 数回の点滅の後、蛍光灯の白い光が眼を刺した。思わず俯いて瞼の上に掌をかざしながらまばたきを
すると、明るさにも慣れてきた。顔をあげて前方を見ると、寝る前と変わらない光景があった。くすんで
黄色がかった白い壁紙、本の詰め込まれたカラーボックス、14型のブラウン管テレビ、ささやかな服の
かかったハンガーラック、灰色のカーペット、自分の座り込んでいる敷布団。
 けれど、それらがどんなに微細に変化していようと間違い探しをする気にはならないだろうし、今はまさに
注目しなければならないものがあった。枕元の方を振り返る。そこには卓袱台ほどの小さな白いテーブル
がある。その上にはノートパソコンや筆記用具が散らかっていたが、整然と散らかる物の中で一か所だけ
異彩と騒音を放っているものがあった。
 ノートパソコンの右手におかれたマグカップ、空になって底にコーヒーの残滓がこびり付くその中で、スプ
ーンが踊っていた。銀色のスプーンは、その柄をカップの内壁にぶつけながら激しく跳ねまわっている。その
スプーンがチンチンチンチンという音を立てていたのだ。だが、もちろん僕は空のカップをスプーンで掻きまわ
すようなことはしていない。スプーンはひとりでに跳ねまわっているのだ。透明人間が透明ジュースを力いっ
ぱい思うさまかき混ぜるとこのような光景になるのだろうか。けれども、激しくシェイクされた液体が雫になって
飛んでくる感触も無ければ、カップの上の空を手で切ってみても何も無い。スプーンは自律運動していた。
いや、あるいはカップのほうに動力があるのかもしれないが、安眠をたたき起こされた頭にしてみればどうでも
よいことだった。
159『匙加減』(お題:シェイク)2/4  ◆Ivef/e06aM :2008/10/25(土) 22:41:04.49 ID:x5/sWnpG0
 とにかく音を止めなければならない。この部屋は集合住宅の一室なので、深夜にこの怪音は隣人への
迷惑にもなる。僕はスプーンの踊るマグカップを掴むと、流し台へ向かった。蛇口の下にマグカップを据え、
水栓を捻る。スプーンは注がれる水に抵抗するように振動して水飛沫を撒き散らしていたが、カップの半分
あたりまで水が溜まってくると、まるでスイッチを切ったかのようにその動きをピタリと止めた。
 この法則に気づいたのは3日前のことだ。スプーンの怪現象が起き始めたのはちょうど1週間前。初めの
4日間で僕は怪現象の起きる条件を見出した。スプーンが踊るのはカップが空の夜中。カップの中に飲み残
しが残っているときは静かに朝を迎えることができた。どうやらカップの中に液体が入っているとスプーンは
行儀よくしているらしい。しかし、いちいちカップに水を入れるなどという煩雑なことをせずとも、そもそもカップ
にスプーンを入れなければ済む問題だ。それは僕もわかっている。けれど、何か飲むときにはこのマグカップ
で、このスプーンを使うようにと指示されているのだ。だから仕方がない。それに、この部屋には他にカップと
スプーンの代わりになるものが無い。だから使わざるを得ない。欠伸を一つしたあと流し台にカップを放置する
と、僕は布団に潜り込んだ。



 翌日の午後、僕は例のマグカップでコーヒーを飲みながら、ノートパソコンで昨日の出来事を思い出しながら
日記をつけていた。昨日の夜のうちにつけておくべきなのだろうが、ここ数日代り映えのしない毎日で退屈なので、
夜になるとどうしても怠惰な気分になってすぐ眠くなってしまうのだ。だから次の日に前日の事を思い出しながら
記録をつけるというサイクルが常態化していた。
書き終えたドキュメントを保存しようとしたとき、不意に天井から声が降ってきた。
160『匙加減』(お題:シェイク)3/4  ◆Ivef/e06aM :2008/10/25(土) 22:43:27.14 ID:x5/sWnpG0



 今、僕は薄青の入院着を着てドアの前に立っている。この部屋に入って、一度も開けたことのない玄関のドア。
何故ならそこには鍵がかかっていたから。つまり僕は鍵のかかった密室で過ごしていた。その鍵が、たったいま
外された。万感の思いというほどのものは湧かないけれど、背伸びをしたくなる清々しい気持ちになっている。
僕は鈍く光る銀のドアノブを握りしめると、それを回してドアを押し開けた。


「内藤さん、お疲れ様でした」
 ドアを開けると、すぐそばに博士と医師が立っていた。ノブを掴んだまま僕は会釈をする。
「いえ、先生方も御苦労さまでした」
 顔を上げると、博士は微笑を浮かべてこちらを見ていたが、医師はなんだか申し訳なさそうな、ほっとしたような、
変わった表情を見せている。医師がクリップボードを手に歩み寄ってくる。
「一週間お疲れ様でした。体調にお変わりはありませんか」
「いえ、問題ありません。入るときと大して変わらないと思いますよ」
 僕は笑顔を浮かべてできるだけ溌溂そうに答えたが、医師はなお気になる様子で僕の目をしっかり見据えながら言う。
「でも一応実験後ということで精密検査はしないといけませんから、これから休憩室に移っていただいた後、改めて
診察に伺います」
 真面目な顔で告げる医師には黙って頷き返すしかない。僕は話し相手を変えようと、博士の方に顔を向けて訊いてみた。
161『匙加減』(お題:シェイク)4/4  ◆Ivef/e06aM :2008/10/25(土) 22:46:30.06 ID:x5/sWnpG0
「アレ、やっぱり磁石か何かですか」
 この言葉には博士も医師も驚いた様子だ。博士はいたずらがばれた子供のように笑って、説明してくれた。
「あら、お気づきになってましたか。マグネチックスターラーというのをご存じですか。化学の実験などで溶媒に
溶質を溶かす際、磁力を使って液を攪拌する装置です。液の入ったビーカーの中に、攪拌子という紡錘形の磁石を
入れて、その下から電磁石の磁力を与えることで攪拌子が回転し、その回転力で液がまんべんなく攪拌されるのです。
あのマグカップに、そのような仕掛けがしてありました」
「そんなところだと思いました。」
 実験用のマグネチックスターラーは通常、マグカップ2個分くらいのサイズだ。この最先端の研究所なら、特製の超コン
パクトスターラーくらい開発していても驚かない。それでも、カップに液体が入るとスプーンの皿の部分が液体の抵抗を
受けて動かなくなってしまったというわけだ。ある時間にならないとスプーンが動くことがなかったのも、遠隔操作による
ものに違いない。僕は理系の大学を出ていたので、その程度の想像はできた。でも、そのおかげで彼らの期待通りには
ならなかったかもしれない。その点には、若干の良心の呵責があった。
「僕は被験者としては失格でしたかね」
「いえ、何も悪いことは無いのですよ。イレギュラーな因子を全く考慮しないのは真摯な見方ではないし、イレギュラーな
被験者に目くじらを立てるのも無為なことです」
 博士は笑いながらそう言ってくれた。僕は、部屋から出ると左右に伸びる廊下の先を見渡した。僕が今出てきたものと
寸分たがわぬドアが30はずらりと並んでいる。この一つ一つの部屋の中で、ひとりひとりが様々な怪現象と一緒に過ご
しているのだろうか。
 最後に、僕はこの実験中ずっと気になっていたことを訊いてみることにした。
「やっぱり、やりすぎちゃうとアブなくなったりする人もいるんですか」
 博士は一瞬眉間に皺を寄せて渋面を見せたが、すぐに柔和な表情に戻って、
「そうですね、たまにそういう方もいらっしゃいます。だから、実験とはいっても大切なのは匙加減なんですね」

                                                                      ―了―
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:05:07.23 ID:4EAugGnE0
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:11:21.65 ID:x35wkslM0
かっこよさそうなお題pls
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:13:33.60 ID:TzF0Sn7r0
慟哭
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:13:49.05 ID:/CO48joV0
ビルトイン・スタビライザー
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:14:02.62 ID:loyp19CXO
さすらいの旅人
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:15:22.72 ID:x35wkslM0
>>164-165
すまん分からん
>>166
thx

あとひとつ!
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:17:01.24 ID:x5/sWnpG0
オイディプス
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:17:45.22 ID:x35wkslM0
>>168
すまん分からん
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:19:29.41 ID:D7/60Ayx0
エディプス
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:22:56.69 ID:x5/sWnpG0
>>169じゃあ密室。
品評会に係らないものは結構スルーなのね。
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:24:01.18 ID:loyp19CXO
>>161
読み終わった。
研究所の存在が唐突な感じがしたな。
もうちょっとオチに波を立てないと読んでる方は展開についていけないかも、と思った。

あと、文の一つ一つが短くてぶっきらぼうな感じがしたけど、俺だけなのかな?
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:31:15.22 ID:x35wkslM0
>>171
ごめんちょ

密室把握
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:35:11.89 ID:TifeG9gCO
品評会書けないわ……
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:40:35.15 ID:FcTWVvJS0
回ると聞いてあくつしか思い出せないのは俺だけじゃないはず
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:41:33.58 ID:loyp19CXO
>>174
けっこう漠然としてるよね
それ故に柔軟さがあるけど


明日7時に羽田だが眠れそうにないんだぜ
寝落ちするかも知れんが、お題Please
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:41:54.54 ID:loyp19CXO
>>174
けっこう漠然としてるよね
それ故に柔軟さがあるけど


明日7時に羽田だが眠れそうにないんだぜ
寝落ちするかも知れんが、お題Please
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:43:43.14 ID:4EAugGnE0
分からんってなんだろうね。辞書引けよググれよ。

慟哭は悲しみで泣き叫ぶこと
ビルトイン・スタビライザーは経済用語みたいだね
オイディプスはギリシア神話の登場人物
エディプスはオイディプスに由来するコンプレックスの名前

>>177
連続
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:43:44.91 ID:j1J37i1t0
>>171
一応、読んでたんだけど、何かイマイチ言うことが
思い浮かばなかったので感想書いてなかった。

最後にネタばらしがあるわけだけど、主人公はそれを知ってるのに、
なんでそのことをもっと考えないのだろうか。何日も同じ現象が続くなら、
飲み終わった後、スプーンを出しとけば良いだけと考えるだろう。カップの指示だけじゃなく、
このカップを使って、スプーンを入れて、そのまま放置しろ実験前に言われてるのか?
隣人を気にしてるのはどういうことなのか? 他の部屋も実験中だと知ってるんじゃないのか?
そんな感じのことが、読む側に隠すために無理矢理条件を作ったようでおもしろくはなかった。

装置の説明もこれだけじゃまったくわからない。
そもそもこんなスプーンが動くだけの実験に何の意味と価値があるのか。
こんなんで気が狂う人が出てくるといわれても納得できなかった。
180 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/25(土) 23:46:22.37 ID:loyp19CXO
>>178
thx!てかスマソ……orz
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:50:00.81 ID:x35wkslM0
>>178
知らねぇよ・・・
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:52:57.61 ID:p6vAfAQh0
母ちゃん大好き父ちゃん死ねってやつだっけ
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:54:25.56 ID:4EAugGnE0
>>182
そうだよ
俺も詳しくは知らんけど
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:55:57.61 ID:j1J37i1t0
>>181
ググルという言葉も知らないんじゃしょうがないな
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:58:17.79 ID:XgQqnZteP
>>184
そういうのもういいから
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 23:58:27.05 ID:x5/sWnpG0
>>172>>179
わざわざ読んでくれてご免よ。
主人公の感性がオカシイという考えオチにしたかったけど、うまく処理できなかったという感じです。
ショートショートの長さでもっと大きなオチをつける力量が無いから困る。
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:00:46.50 ID:GpBmifXC0
フィッフィーの名前を挙げる奴に碌なのはいないな
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:02:15.62 ID:M0JhiF3hP
>>187
嫌な言い方するなぁ
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:03:20.41 ID:jAxZ7ghj0
>>186
すごい不満ぽい感想を書いたけど、
こういう科学っぽいのは結構好きだから次のを期待して待ってる
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:03:55.14 ID:Ba/zEIIp0
悪くないじゃん、フィッフィー
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:10:04.59 ID:G1zzhOvv0
つーかフィッフィーってなんだれ
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:12:33.31 ID:Ba/zEIIp0
醜い争いが勃発する前に・・・阻止!

|  ^o^ |ふたりはなかよし( ,'3 )
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:24:50.15 ID:YkC0MNDiO
ふたなりなかよしに見えた俺は死ぬべきだ
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:26:55.58 ID:7gWGD7iw0
そうだな。ふたなりより女装少年だよな
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:27:16.41 ID:Ba/zEIIp0
ごめん間違えた

ωふたなりなかよし(i)

だった
196「約束」(お題:胴の長い白ウサギ)0/6:2008/10/26(日) 00:31:13.20 ID:tnAjtPELO
日付変わってしまった……
前スレの>>439より胴の長い白ウサギ
通常6レス投下します
197「約束」(お題:胴の長い白ウサギ)1/6:2008/10/26(日) 00:31:54.30 ID:tnAjtPELO
夏も盛りとは言え、日がな一日暑いと言う訳では無い。街中を遠く離れ、およそ必要最低限の開発で設計され
たこの介護支援センターにおいては、むしろ冷え込みすら感じる事もある。アスファルトやコンクリートで完全
に覆われた大地に、いくつも立ち並ぶビルディング。青々と繁る木々にどこまでも吹き渡っていく風、夜を経れ
ば熱の余韻すら感じさせないありのままの自然の前では、ヒートアイランドなぞまるで無関係な話だ。
肌寒いくらいの朝の空気を体中に送り込み、私はセンターのある病室の前に立つ。スライド式のドアは、その
実抵抗を感じさせないほどに軽いのだが、私の取っ手を握る手は重い。不安がる相手を見て不安にならない者な
どいない。己を一喝し、覚悟を決めると先の重さが嘘のようにドアは開く。
「おはようございます、お父さん」
開け放たれた窓から入って来た爽やかな風が頬を撫でて行った。

八十、若くて七十代が多くを占めるセンターの中で、彼のように五十代のうちから施設への入所を希望する人
は稀である。もっとも、彼をそこへ入らせしめるに至った原因であるアルツハイマー症は、一度発症したが最後
、年齢を問わずゆっくりと、しかし確実にその魔の手を伸ばす。珍しいというだけで、決して起こり得ないと言
う訳では無いのが現実だ。
――今日は気持ちのいい、良い天気ですね。私がそう話かけると男性は、そうですね、心なしか草木も元気そ
うに見える気がします、と非常にはっきりとした受け答えをする。
「今日も編み物の方を?」
そう問い掛けると、お恥ずかしながら、と気持ち照れた様子で編み途中のそれを私に見せてくれる。
「少しでも進行を遅らせられればと思いまして」
多少不格好ですけど、やり始めにしては上出来だと思いませんか?と付け加え、彼は軽く笑って見せた。現状を
自覚し、受け入れる事は、この種の病にとってそれだけで力となる。ただ、次第に自らを失って行く恐怖を前に
それを行うはまさに難き事であり、それを身を持って実践している彼を、私はあらゆる意味で尊敬している。女
として、一人の人間として。そして――
198「約束」(お題:胴の長い白ウサギ)2/6:2008/10/26(日) 00:32:12.31 ID:tnAjtPELO
ただ、少しばかり困った事がありましてね、と彼は続けた。
「締めの部分の編み方を忘れてしまうんですよ」
そしてここが大事な所なのですが、と私にそれを見せ、
「挑戦する度に胴ばかりが長くなってしまうんです」
そういうデザインかとも思っていたが、言われて見れば全体のバランスに合致していない印象も受ける。
「そこまで気にする程でも無いと思いますけど、よろしかったら――」
いや、いいんです、と柔らかに私の言葉を遮り、彼は続けた。
「出来る事なら自分で最後までやり遂げてみたいですし――まだ時間にも余裕があるんです」

森の木々の衣替えも終わり、季節はすでに冬の色を見せ始めていた。少しばかり乾燥した、肌を刺すような冷
めたさの空気は、気の抜けた我が身を引き締めるのに一役買う。日ごとに重たくなるそのドアを開けると、外気
と同じ空気が私を取り囲む。
「初めまして、今日から担当となりました――」
私の心を締め付ける。
季節の変わり目は、私の場所を削り取った。彼の中で、私は何度もリセットされる。その度に私は自己紹介を
し、忘れず彼の持つ編みかけのそれの事を聞く。そうする事で、彼は初めてそれに気付き、何かに縋り付くかの
ように作業を始めるのである。
あれからも胴は長くなり続けた。とは言え、現状の認知と行動にきたす齟齬は、皮肉にも見映えが悪くなり過
ぎる程にそれを編み続けるには大きな障阻となっているのも事実。途中で教書を見ようものなら手元の作業の具
合を忘れるばかりか、もはや教書が何を指し示しているのかが理解出来ない。それでも彼は胴を編み続ける。ま
るで助走をつければゴールにたどり着かんとでも言わんばかりに。かつて純白であった毛糸玉はかすかに色褪せ
、秒針の零と一の間を力無く揺れ動く時計を静かに見つめている。

僕にはこれくらいの娘がいましてね、と彼は中空に手をのばし、彼の娘らしき人物の身長を示す。彼の記憶の
川を遡る旅はもはやそこまで行き着いてしまったのかと、私ははるか下流からそれを眺めている。
「娘さんがいらっしゃるのですか」
それなら次からはお父さんとお呼びしなくてはいけませんね、と私は続ける。何度やり取りが繰り返されようと
も、彼の言葉は一字一句に至るまで揺るぎはしない。
「今が可愛い盛りでしょう?」
「自分の子というものは、いつになっても可愛いものですよ」
199「約束」(お題:胴の長い白ウサギ)3/6:2008/10/26(日) 00:32:51.48 ID:tnAjtPELO
この地方には珍しく雪が降った。日本海を渡る風は連なる山々に隔てられ、降雨そのものが少ない。なおも行
き着いたこの雪に感じるものがあったのか、彼は七日ぶりにその目を開いた。
「お具合の方はいかがでしょうか」
そう問い掛ける私のそぶりは落ち着き払い、慌てて駆け付けた事などおくびにも出さない。睡眠の働きの内で、
精神面にかける時間は二割ほどと思いの外少ない。長らく目覚めなかったという事がどの意味での整理であった
のか。幾分か力の戻った目で、私にこう返した。
「寝起きでぼんやりとはしていますが、調子はいいようです。――夏以来ですね、お久しぶりです」
彼の手には、編み針が握られていた。

――どうも長く作り過ぎてしまったようで、お彼は手を休め、私にそう切り出す。
「これ以上胴だけが長くなってしまうと、娘に怒られてしまいます。僕だけでは、どうやらこの仕事を締め括る
には役者不足のようです。――いつだか、あなたは僕を手伝ってくれると、その時僕は遮ってしまいましたけど
、そう言ってくれましたね。もし良かったら、僕の最後の仕事を手伝ってもらえないでしょうか」
来るべき時が来たのだと、私はそう感じた。日が短くなるにつれ彼の取る睡眠の時間は増えていった。薄々と
は感じていたが、それはここで明確な形を持った。彼は、そう遠くないある日のために、活動を止め、心と記憶
を留める事で自分が自分らしくあれる姿を保とうとしていたのだ。おそらく彼は、この後すぐにでも眠りに就く
のだ。そして目が覚めるのは七日後。これは確信に近い。黙っている私を見つめたまま、彼は薄く微笑んでいる
。出来るなら、このような日は来て欲しくなかった。終わりなど無くていい、ただ永遠と長くなる胴を見ていら
れるだけで良かった。しかし、彼がそれを終わらせてしまう寂しさの裏には、彼自身が終わりを選べたという安
堵感も、またある。何にせよ、これは彼が決めた道なのだ。最期まで彼を見続けると決めた私には他の選択肢な
ど、元よりない。私の返事に顔を優しくほころばせ、彼は長い眠りに就いた。それをしばらく見つめ、やおら部
屋を出た私は、後ろ手にドアを閉めながら思う。次に彼が目覚めた時、私はそこにいるのだろうか。勿論私は来
る。しかし、そうしてドアを開けた私は私として在り得るのだろうか。取っ手から強張った指を引き剥がし、病
室を後にした。
200「約束」(お題:胴の長い白ウサギ)4/6:2008/10/26(日) 00:33:39.85 ID:tnAjtPELO
「すると、僕が手伝ってくれるように頼んだ相手があなたという事ですか」
こちらから言い出しておきながら申し訳ない、と彼は頭を下げた。内心酷くショックを受けた私ではあったが、
誰より辛いのは彼自身である。ただ申し出の事ははっきりと覚えていたのが救いであった。――お急ぎの仕事な
のでしたよね、と私が問い掛ける。
「そうでしたね。それでは、よろしくお願いします」
はい、と頬笑み、私は彼のかける椅子の後ろへ回り、編み針をしっかりと握る彼の手に、自らのそれを重ねた。
ここ数年で、彼は一息に老いてしまった。しばらく使われることのなかった、薄く、筋の浮き出た両の手は硬
く強張っていた。私はそれを優しく解きほぐしながら、改めてそう感じていた。しばらくそれを続けると、彼は
、もう充分です、と私に頷いてみせた。

二人がかりでの作業は簡単なものではなく、しかし思ったよりは難しくは無いと言うのが感想である。息が合
う、とでも言うのであろうか。彼の手の大まかな動きを、それを覆う私の手が微調整するという流れの中には一
切の力の無駄が無く、寄り添うように重なる手は片時も離れる事がない。作業はゆっくりと、しかし確実に終わ
りへと向かって行った。
所々で説明を加えながら編み続け、しばらくすると、彼はおもむろに口を開いた。
「娘が、ちょうど六歳の頃でした」
いいかな、と首を傾ける彼に、私ははいとだけ頷く。
「小学校に上がり、情操教育も兼ねて与えたウサギが、しばらくして病気で死んでしまったのです。――娘は優
しい子でしてね、お墓の中で一人になってしまったら、寂しくて天国でも死んでしまう、なんて言うのです。僕
はひどく心を打たれまして、一つ約束をしてしまったんです」
手の動きが止まり、彼はここからでは見ることの出来ない、どこか遠くを見るように目を細める。
「あの子のぬいぐるみをお父さんが作ってやる。おまえが一生懸命愛してあげれば、想いはあの子に届き、寂しくなんてならない」
彼は皮肉げに片笑み、作業を再開した。
「ただ、男手一つで子供を育てなければならなかった僕には、とてもそれを作る気力などありませんでした。き
っとそれはどんなものでも良かったと思うんです。例え小さくても、どんなに不格好でも、気持ちがこもってい
たのなら、きっと娘は受け入れてくれたのでしょう。だけど僕は忙しさを理由に、来週、来月、再来月といった
ようにそれを作る日を延ばし延ばしし、ついには絶対と決めた誕生日にすら間に合わず、出来合いのものを渡す
事で決着をつけてしまったのです」
201「約束」(お題:胴の長い白ウサギ)5/6:2008/10/26(日) 00:34:05.75 ID:tnAjtPELO
「全く、心打たれたのはどこの親だったんでしょうね。その時の娘の、笑っていいのか泣いていいのかわから
ないといった表情は、それからずっと、何をするにも僕に付き纏って止みませんでした。親失格もいいところで
す。――と、どうやら終わってしまったみたいですね」
彼の話に耳を傾けていた私は、いつの間にか彼が自身の力で作業を終わらせる事が出来た事にとても驚いた。し
かしすぐに、そのような事は問題では無いとでも言うように微笑む彼を見て、私は平静を取り戻す。そして同時
に、彼の終わりを感じた。
「長く続けた作業が終わってしまうのは、何だか残念にも感じますね」
言外に、いつまでも終わらないで欲しかったのだ、との含みを持たせ、彼から手を離そうとした。すると不意に
彼の手が伸び、思いがけない程の力強さで私の手を掴んだ。
「ありがとう、本当にありがとう。これでようやく約束を果たせそうだ。――だいぶ遅れてすまなかったね、お
誕生日、おめでとう」
その瞬間、私は呼吸をすることを忘れていた。そこに、中空に示された娘はいなかった。

最初はわからなかったし、むしろ今でも確信は持てていないのが現実、と父は言う。
「顔を見てもピンとこないし、いくつになっているのかもわからないんだ。けれど――」
握った手に力を入れ、そして私もそれに応える。
「おまえを連れて歩いた時に繋いだ手のひらは、忘れない。――大きくなったね。それにだいぶ苦労をかけたよ
うだ。すまないね」
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:34:14.50 ID:7gWGD7iw0
さる
203「約束」(お題:胴の長い白ウサギ)6/6:2008/10/26(日) 00:34:26.43 ID:tnAjtPELO
――そんな事ない、謝らないで。そう言いたかった。声を殺して嗚咽する私は、しかしそれを口にする事が出
来ない。だけどきっと伝わっている。父が私を感じたように、視界の滲んで前の見えない私が、それでも繋いだ
手のひらから父の暖かさを感じているように。
「――今まで必死に繋ぎ留めてきた。そしてこれを渡したら、それもおしまいだ。――受け取ってくれるだろう
か。嘘つきで、今もこうして大切な人を残して行こうとしている駄目な父親の、それでもおまえを愛していた父
親の、最後の贈り物だ」
あらんばかりの力を込め、父の手を握りしめていた私の手は自然に解け、導かれるかのように父の持つぬいぐる
みにたどり着く。胴が長く不格好で、それでも暖かかな温もりを逃がさぬよう、私はそれを胸に掻き抱く。そん
な様子を満足げに眺め、目を細めていた父は、どれ、との掛け声と共に、私を包み込むように抱きしめる。私が
幼かった時よりも小さく、しかしなお大きい父は、私を胸に抱いたまま、安心仕切ったかのように目を閉じた。
父は旅立ったのだろう。ここからでは見えない、何処か遠くへ。父の想いがここにあり、それを想う事で私は父に届く。見えない、しか
し二度と途切れる事の無い親子の繋がりが、確かにそこにあった。
スライド式のドアは、本当に僅かな力で開け閉めが出来るようだ。成る程、お年寄りの方にも優しい造りをし
ていると感心する。私は病室を後にした。色褪せた白ウサギは、私の手に収まらなかった長い胴を風に遊ばせて
いる。世界は、早くも春の色を見せ始めていた。
204「約束」(お題:胴の長い白ウサギ):2008/10/26(日) 00:35:24.49 ID:tnAjtPELO
以上です
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 00:59:04.76 ID:nBQhU3W90
携帯なのに長文すげえ
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 01:26:19.55 ID:7gWGD7iw0
ねるほ
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 01:42:13.34 ID:0onss2/K0
一瞬ガッしようか迷ってしまった
208『めぐりめぐって』 0/3 ◆IRnBaWgO4. :2008/10/26(日) 01:43:22.35 ID:D0k5LRCD0
品評会に投下します。
拙いですが、よろしくお願いします。
209『めぐりめぐって』 1/3 ◆IRnBaWgO4. :2008/10/26(日) 01:43:38.61 ID:D0k5LRCD0
 僕がサトウと出会ったのは、高校二年生の秋だった。
 転校生が来るってさ。朝の教室は、その噂で持ちきりだった。何でも、帰国子女だとか――美人らしいとか――様々な情報が飛び交う。教室は浮足立っていた。
 先生が連絡事項を述べるだけの、いつもの退屈なホームルーム。その最後に、 
「もう噂になっていると思うが、このクラスに転校生がやってくる」
 そう先生が言った瞬間、俄かに教室がどよめいた。
「みんな、仲良くしてやってくれ。……サトウ、入れ」
 がらり、扉を開けて一人の女の子が入ってくる。教室中の視線が殺到する。
 大人びているな。僕が抱いた第一印象はそれだった。
 女子にしては高い身長に、端正な顔立ち、長い黒髪。転校初日の緊張など全くものともしていない様子で、口元には柔らかい笑みをたたえていた。
 教壇までゆっくりと進み、黒板に自分の名前を書く。癖のない、整った字。
「サトウです。よろしくお願いします」
 落ち着いたアルトの声。ふわりと礼をする。本当に簡潔な自己紹介だったが、教室の空気を落ち着かせる、不思議な力があった。
「席はあそこな」
 そう言って、先生は教室の隅――窓側、一番の後ろの席を指さす。はい、と返事をした彼女は、ゆっくりとその席に向かった。

 初めてサトウと一緒に帰ったのは、それから二週間ほど経ってからだった。
 放課後、僕はいつも図書館で一、二時間ほど読書をしてから帰ることにしている。その日も、外が少し暗くなった頃に昇降口に向かった。
 そこにはサトウがいた。ちょうど靴を履き替えるために、中腰になっているところだった。
「あ、サトウさん。今帰り?」
 自分の口とは思えないほど、滑らかに言葉が出てきたことを今でも覚えている。サトウはこちらを一瞥すると、
「君は……ミウラ君だったかな?」
 少し思い出す素振りを見せてサトウは言う。僕は頷き、肯定する。
「そうか、良かった。今帰るところだが……折角だから、一緒に帰るかい?」
 僕は再び頷く。サトウはにこりと微笑む。そうして、帰途をともにすることとなった。
 その日は色々な事を知った。サトウは父子家庭ということ。父は転勤が多く、今までも何度も引っ越しをしたということ。
 気がつけば分かれ道に着いていて、「じゃあまた明日」、そう言って別れた。
 それからだ、僕がサトウと一緒に帰るようになったのは。
210『めぐりめぐって』 2/3 ◆IRnBaWgO4. :2008/10/26(日) 01:43:56.61 ID:D0k5LRCD0
 毎日の帰り道、サトウとは色々な話をした。話というより、議論といった方が正しいかもしれない。どちらかが質問をして、僕、サトウがそれぞれの考えを述べる。お互いの考えについて突っ込みをいれる。
 質問は、「目玉焼きには醤油かソースか」といった庶民的なものから、「感情とは何だろうか」という抽象的なものまで多岐に渡った。
 どの議題に対しても、お互い真摯に向き合い、そして誠実な答えを返した。真剣な顔で議論したあと、サトウは満足そうに微笑んだ。僕はその微笑みが大好きだった。そしてその後は、他愛もないことを話しながら帰るのだ。

 あの日の議題は、「犬と猫、飼うならどっちか」というものだった。
 議論を終えたあと、サトウはおもむろに話し始めた。
「水っていうのはね、循環しているんだよ」
 しとしとと雨が降っていた。サトウは飾り気のない、紺色の傘を差していた。
「今こうして雨が降っているだろ。それは川から海へと流れて、蒸発して雲になり、そして雨になってまた地上に降ってくる」
 サトウはどこか遠くを見ながらそう言った。傘の外に手を差し出し、しずくを手に取る。
「この雨もそういう段階を経て、いつかは別の場所に降るんだろう。私と、この雨は二度と会うことがないかもしれない」
 手の平についた水滴を見つめながらサトウは言う。
「でも、もし、めぐりめぐって、再び出会うことができたなら、それは運命のようだと思わないかい?」

 サトウが転校したと知ったのは、その次の日だった。 
 朝のホームルームで、先生がさらりと告げた。親の仕事の関係で、引っ越したらしい。急なことだが、本人の希望で今まで言わなかった、とも。
 クラスメイトは、急な転校に多少戸惑ったみたいだが、一週間、二週間と経つとすぐに元通りになっていた。誰もがサトウのことを忘れたかのようだった。
 サトウは物静かだったし、誰かとそこまで親しかったわけでもない。みんなの反応は当然とも言えるだろう。
 僕の頭の中では、サトウが最後に言った言葉がぐるぐると回っていた。
211『めぐりめぐって』 3/3 ◆IRnBaWgO4. :2008/10/26(日) 01:45:24.17 ID:D0k5LRCD0
「夕食ができたよ」
 書斎の扉を開けそう言った妻の声に、私は振り返った。隙間から妻の顔がのぞく。
「そうか。冷めないうちに行く」
 今の今まで見ていたアルバムを閉じ、ケースへと差し入れる。
「ん? アルバムでも見ていたのかい? いつのだい?」
「高校のだよ。本棚の整理をしていたら、つい懐かしくてな」
 そう言いながら立ち上がり、本棚へとアルバムを戻す。
「高校か、懐かしいね。あれから10年にもなるのか……うん、あの頃は若かった」
 思い出をいとおしむように、頷く彼女。口元には柔らかな微笑み。
「めぐりめぐって、出会えたから良しとしよう」
「そんなことまで覚えているのか。恥ずかしいな、もう」
 そう言いながら、食卓へと向かう。
 サトウではなく、ミウラになった彼女とともに。

212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 02:02:32.76 ID:1vP9p6U80
まとめ修正乙です
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 02:07:54.97 ID:yFrjcft1O
>209
きれいな話だけど、なんだこの毒にも薬にもならない感じは?
起承転結どこにもアクセントがない、ただのいい話じゃないか
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 03:11:57.41 ID:QM10iPUMO
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 03:41:10.12 ID:bEC+PAt50
保守
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 03:43:27.37 ID:tZJ9n/21O
創作発表板で修行してきた私。
テスト(文字数的な意味で)の為にお題下さい。1レスで終わらせたい。
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 03:46:27.42 ID:EBJdAAB/0
昨日
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 04:05:35.28 ID:QM10iPUMO
今日
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 04:29:07.49 ID:tZJ9n/21O
投下します
220(お題:昨日)1/1 ◆R4Zu1i5jcs :2008/10/26(日) 04:30:00.08 ID:tZJ9n/21O
 今日から明日。たったそれだけの境界を越えただけで俺は死んでしまう。
 全く滑稽だ。犯人を捕まえようとしたら逆にやりこめられ、こんなところに繋がれている。現在、十一時五十五分。あと五分で傍らにある時限爆弾が俺を殺す。
 手錠の無骨な鉄に抉られた右手首が痛む。抜けないことは当の昔に実証済みだ。脱出は不可能。
 あぁ、酷く長い五分。五分あれば色々と考えてしまうというものだ。唯一の嗜好品である煙草も恐怖を麻痺させる麻薬として使い切ってしまった。
「二階級特進、か」
 ぶるりと身体を震わせる。死など怖くないなんて言うがそんなのは嘘だ。いざ死ぬという時、こんなに怖いものはない。ましてまだ時間がある。その瞬間を前に心が押し潰されてしまいそうだ。
 俺の心は摩耗し、折れかかっていた。が、ふと犯人の顔が浮かび、めらめらと何かが燃え上がる。そうだ、これでは犯人の思うがまま。その瞬間までせめて毅然としよう。
 俺は覚悟という麻薬を心に打ち込んだ。
 静かだ。さっきまで頭の中ががちゃがちゃと騒がしかったというのに。
 俺には明日がない。そして今日この瞬間死に、昨日までを生きた。
「昨日まで勤務。ご苦労様でした」
 たった独りの敬礼。だから左手だって誰も咎めない。そして、数字のゼロがずらりと並ぶ。
 次の瞬間、俺の命は爆裂の音とともに炎になって燃え上がった。

221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 04:33:16.87 ID:tZJ9n/21O
ねーよ……てか終わり。
まぁ、書き込めました。やっぱりVIPは字数ちょっと
すくないな? ちなみに酉は前とは違います。
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 04:53:11.18 ID:QM10iPUMO
>>220読んだ
筆が速いのは素晴らしい。ただこの場面だけ見せられてもな
例えるなら、間違えて長い映画のラストシーンだけ見ちゃったと言うか
なので評価の仕様がない。文章は特に問題ない、くらいしか言えない
223リコリタハチマルイチ 0/2 ◆pxtUOeh2oI :2008/10/26(日) 05:07:47.98 ID:jAxZ7ghj0
品評会投下します。
2レス。
224リコリタハチマルイチ 0/2 ◆pxtUOeh2oI :2008/10/26(日) 05:08:37.79 ID:jAxZ7ghj0
 ひざまずいて王様の命令を待つ。しだれる髪の隙間からは地面が見えた。きっと、どこまでも続いているに違いない。
 ファンファーレが鳴り響いた。もうすぐ。顔を上げると王様が立っているのが見えた。舞台の上からこちらを見下ろしている。
 緊張はしていない。むしろ早くして欲しいと思う。周りの皆もそうだろう。好きだから、この仕事を選んだ。
身体は今にも動き出そうとしている。頭は既にスタートを切っていた。日々の記憶とすぐそこに近づく未来のイメージが
鮮明に走っている。最後までずっと、止まることは望まない。
 王様が手を高々と掲げた。ファンファーレが鳴り止む。待っていた始まりの合図。何故か、腕が震えた。心は、決まっている。
一瞬の静寂を耳が捉えると、それを掻き消すように鼓たちが音を発てた。
 風布を揺らしながら目を閉じて立ち上がる。腕を胸の前で交差させ、すぐに力を抜き、垂らした。耳に響く鼓の音。
足は地面を蹴っている。揺らす腕に風を感じた。
 暗い瞼に絵が浮かぶ。森の中心にぽっかりと空いた広場。舞台からは王様が見ている。観客たちは森の境界にそって立つ。
そして広場の中心では十人の離娘たちが風にチャムナの風布を揺らしながら円を描いて身体を弾ませている。誰かの息切れが聞こえた。
青い空には、白い太陽が全てを照らすように輝いているだろう。見なくてもわかる。練習の日々と今の空気が描いている。
 音楽のペースが上がった。楽器が加わっていく。メインはチェロへ。ジャンが一度だけ鳴り、空気を盛大に奮わせた。
 目を開ける。日差しが眩しい。それでも体を止めてはいけない。視界は開かれたそのときからずっと止まることはない。
音楽に合わせて、揺れる身体に合わせて、景色もまた移ろいでいく。空と森の境界には観客たち。隣には仲間の離娘。
首を曲げ、上を見上げれば太陽と王様が見えた。どれも一瞬で腕や髪に隠れると、もうそこには存在しない。
 二度目のジャン。離娘の半数が地面に倒れた。実力のない者、諦めた者から消えていく。円は小さく中心に収束していった。
 旋律はさらに早く。風が森の樹を揺らし、さざめきを立てる。綺麗な自然。緑が鮮やかでまるで天幕のように広がっている。
 中心は青く。明かりは、ずっと白いまま。幸せを感じる。生を感じる。腕を流れる風の感覚。音が、光が、この場に存在する
全てのものが喜びに変わる。王や観客にもそれを伝えるのが仕事。今日はそれができる。確信を感じ、それがまた至福の喜びとなる。
 風の振動を感じた。遅れて届くジャンの音。三度目の音笛、三人が倒れて、残りは二人だけとなった。
 音楽はよりテンポを上げた。視界が混ざる。青と緑と地の色が統一されていった。
 対称に中央へ向かう。糸を巻きつける独楽のように一瞬のゼロに会う。顔半分を覆うシージャの影から微かに顔が見えた。
 笑っていた。笑い返した。そしてすぐさま背を向け離れる。右の方へ。彼女は左へ行っただろう。対称に。存在しない鏡の如く
存在しているのだから。
 中央から離れる。巻きつけた糸は既に勢いへと変換された。刹那よりも短く、伝わるはずのない意識の伝達行為終えた。
それでも彼女は目の奥に言葉を持っていた。どちらが先で、どちらが後か、決める必要がなく、定まることさえない言葉を交換した。
 音量が上がった。そう感じたが、正しくはないように思える。上がったのは耳の精度か。光量も上がっているように感じる。
鮮明に、精確に、移ろい行くはずの視界が徐々にゆっくりとしていくように早さを落としていく。疲れか? いや、違う。
疲れは確かにあるだろうが、身体から伝わるものは倦怠感ではなく高揚だ。それならば……きっと、誰かの命令なのだろう。
225リコリタハチマルイチ 2/2 ◆pxtUOeh2oI :2008/10/26(日) 05:09:27.06 ID:jAxZ7ghj0
もっと激しく、もっと豊かに、もっと喜びを描き伝えよと、神様とも呼ぶべき何かが才と時間をくれた。きっとそうに違いない。
それほどの高揚感、それほどの喜びが身体から溢れてくる。止まることなどありえない。
 倒れたのが見えた。さっきまでの自分、でも彼女には何かが足りなかったのだろう。望んで手に入るレベルではなく、
生まれ持っているものでもなく、気まぐれに誰かが与えてくれる何かが、彼女には存在しなかったとわかった。
 拍手と歓声に包まれて、私は踊っていた。なぜだろう、どこから見ているのか。私が踊っているのが見えた。
 小さな国の森の中、その中心に用意された森の切れ目、神様が見る為の踊り舞台。私は舞っていた。
いつまでも止まることもなく。鼓の音。チェロの音。時折、空気を奮わせるジャンの響き。私は堪えきれない笑顔で身体を震わせ踊る。
 何が楽しいのだろう。何故、踊るのだろう。観客の拍手は誰の為のもの? 神様がくれた才も時間も、そんなものに価値があるのか?
 気づいたらまた私は私の中にいた。目に髪が被さる。疲れた。でも、止まることは許されない。王の命令。
その上から王を動かす神の命令を待たねばならない。
 傲慢だ。何が神だ。何故、皆、笑っているのだ。何故、こんなことで涙が流せるのだ。見上げた空は病人の顔色のように
気持ちの悪い青。太陽は自分の力を示す為だけに輝く。熱い。必要がない。早く夜になればいいのに。
 森のさざめき。煩い。何故、静かに止まっていられないのか。誰もがそうだ。みんな自分を見せ付ける為に動いている。
 木も太陽も地球も、そしてもちろんヒトも、その為に動いている。活動している。笑い泣いている。
 止まりたい。永遠に変わることのない何かになりたい。風化もせずにずっとそのままで、ただ動いて消えていくものたちを見ていたい。
笑うこともなく、悲しむこともなく、何も考えず、何も知らずに、見ていることさえも忘れて、ただ存在したい。でも、それは無理なのだ。
だから、皆、自分を存在を確かめようと動くのだ。誰かに触れれば、自分を確かめることができる。誰かの行動に感激する自分、
誰かの行動に憤る自分、誰かに優しくすることも、誰かを傷つけることも、自分の為にやっている。消えたくないから皆、踊るのだ。
 なんてつまらない世界。なんて自分勝手な世界。綺麗と言う言葉は、身勝手を褒める為に作られた言葉だ。
 憎たらしく笑う観客、倒れた離娘たちを心配する様子も見せない。王は上でほくそ笑んでるのだろう。
誰の為に踊っているのかわからなくなって来た。民の為、王の為、神の為? いや、自分の為に踊っている。
選ばれることを喜んで、綺麗だと言われて、照れたフリをして、他人の為と言いながら踊っていた。
 そんなものは踊りでも何でもない。綺麗でも大切でもない。誰かの為の踊りなんて存在しない。
 踊りたい。こんな意味のない動きではなく。何の音楽も光さえも存在しない世界で、ただひとり、誰にも見られず踊りたい。
 世界は止まって見えるだろう。きっと、とても美しいはずだ。全ての後に、何の感情もない世界を見て笑えたらいいのに。
そこには終わりよりも豊かな恍惚があるのだろう、きっと。                  <了>
226リコリタハチマルイチ 3/2 ◆pxtUOeh2oI :2008/10/26(日) 05:10:26.49 ID:jAxZ7ghj0
以上です。
1レス目のタイトル数字と、sageを消すのを忘れてごめんなさい。
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 06:27:09.95 ID:1+4UmhrwO
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 06:47:23.03 ID:QM10iPUMO
ほほ
229『パラメータ・ステイション(お題:連続)』0/1 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/26(日) 07:08:16.62 ID:1+4UmhrwO
投下します。
お題が上手く消化仕切れなかった感が否めないですが……
230『パラメータ・ステイション(お題:連続)』1/1 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/26(日) 07:10:44.27 ID:1+4UmhrwO
 新宿駅。その一言で最早、それ以上の説明は必要ない。それくらいに大きな駅だ。全国でも屈指の利用客数や、北は宇都宮
から南は小田原までカバーできる広い鉄道網など、その規模を語るものは枚挙に暇がない。
 山口から単身上京してきた佐久間俊和は、この春に入学が決まった大学へ向かっていた。阿佐ヶ谷にある下宿から、新宿で
乗り換え高田馬場へまでのそれほど長くはない道のりだ。入学式の前に、一度通勤ラッシュを経験しておこうなどという、田
舎育ちならではの発想で、朝は七時半に下宿を出た。下宿は四畳半一間で風呂と台所がなく、トイレがあるだけだが、
大学生一人が生活するには何の支障もなかった。
 駅には、サラリーマンから学生まで様々な身分の人間が混在していた。高校時代は自転車通学だった俊和の目には地元の電
車とは違う、銀色の車体に帯が一本というスマートなデザインが都会的で格好がよく見え、そんな電車で通学できる東京の高
校生は憧れの的と映った。
 ホームの最後尾に並んでいると、オレンジ色の帯を纏った中央線の電車が到着した。既に車内は満員で俊和はさらに後ろに
並んだ背広達に押し込まれた。扉が閉まるのにも苦労するほどに人間が詰め込まれた電車は、のろのろとその速度を上げた。
 満員電車、というものは俊和にとって初めて乗るものだったが、回りに体重を預けられることもあり、想像以上に辛くない
なと感じた。
 程なく、電車は新宿駅に着いた。車内に詰め込まれたたくさんの背広が扉から吐き出され、階段へ向かって一心に流れてい
った。俊和もその流れに逆らうことなく――尤も、初の体験なので逆らうことが出来なかったのだが――階段へ流れた。何万
人という、俊和の故郷では大きな祭でもない限り想像できないほどの数の人間がそこにはいた。それぞれが一つの点としてそ
こに存在し、その点の集合が新宿駅という壮大な場所に大きな図形を描いていた。留まることもなく、同じ図形を描き直すこ
ともないその光景は、俊和に神秘さえ思わせた。
 俊和は、そのキャンバスに足を踏み入れ、図形の一部となった。この行為が社会の一員に組み込まれる儀式であるような気
がして、俊和は複雑な気分になった。俊和の中で、一つの時代が終わりを告げたような、そんな気分だ。まるで、子供の俊和
は死んでしまったような。まるで、社会に隷属を誓わされてしまったような。
 形ないものを失くしたような、都会の残酷さが身に染みた。
231『パラメータ・ステイション(お題:連続)』2/1 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/26(日) 07:12:07.59 ID:1+4UmhrwO
終わりです
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 07:13:03.12 ID:mZZC+ovnO
お題ください
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 07:37:49.34 ID:iQHJvrs6O
>>232
すみっこ
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 07:39:08.48 ID:mZZC+ovnO
把握thx
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 07:45:01.37 ID:tnAjtPELO
内容について誰も触れてくれ無くてちょっと寂しかった…

お題ください
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 07:49:59.10 ID:iQHJvrs6O
>>235
まだ寝てるんだよ

歯痛
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 07:54:19.78 ID:tnAjtPELO
そう言われれば投下したの日付変わってからだったか…
>>236
ありがとう
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 08:46:43.32 ID:eSfeqkZ00
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 08:47:26.43 ID:zsifyIVDO
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 09:41:56.90 ID:5+qd3OOrO
おはよう
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 10:18:52.33 ID:CNmnZ4rm0
NHK、同じ名場面流すな保守
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 10:54:40.79 ID:CNmnZ4rm0
やっと始まる保守
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 11:45:34.42 ID:SO1uuzn/0
保守をすることが出来る。こんなに嬉しいことはない。
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:01:04.30 ID:jkgf9/QBO
お題ある?
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:03:22.30 ID:1+4UmhrwO
南国
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:16:19.98 ID:jkgf9/QBO
明るそうなのは無理
もっと暗くて陰鬱なお題たのむ
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:19:43.62 ID:M0JhiF3hP
白い血を出す街
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:19:57.49 ID:4LTPIQP50
どぶ川
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:20:16.17 ID:1+4UmhrwO
じゃあカビ
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:24:15.24 ID:jkgf9/QBO
わかった
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:33:26.67 ID:Z/2XaHz50
プロットが思いつかなくてプロットなしで書き始めたら案の定詰まった。
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:41:16.83 ID:djF6DeRQ0
書き込めたら品評会今から書く
253 ◆8wDKWlnnnI :2008/10/26(日) 12:41:32.52 ID:QM10iPUMO
品評会投下しまっす

題名 オルゴール 1/1レス
254オルゴール 1/1 ◆8wDKWlnnnI :2008/10/26(日) 12:43:28.84 ID:QM10iPUMO
 そして今日もまた、いつもの様にオルゴールを手にとり、ネジを回す。
 母からもらった小さなオルゴール。それは、どんなに巻いても数十秒程ですぐに止まってしまう、年季の入った年代物だった。
 それでも子供の頃はこの音をずっと聞いていたくて、何度も回していた。それこそ何度も繰り返し繰り返した。
 オルゴールはいつでも変わらないあの少し寂しくなる音色で、いつでも小さくて消えてしまいそうだった。
 昔、僕はある人に恋をした。その人はいつも笑顔だった。
 そしてその笑顔は、多分それ自体が何か特別な魔法だった。周りにいる人達を動かすようなネジの役割りを持つ、そんな人だった。
 ある人はその笑顔に巻かれて、何万馬力もあるモーターのような、頼もしいヒーローになった。
 また別のある人は、いくらでも愛の言葉の花を咲かせるタイプライターのような、麗しき詩人になった。
 その頃の僕はただ遠巻きに見ていた。その笑顔を遠巻きに見ているだけで十分だったし、とても近くには寄れなかったから。
 それでも心のネジが巻かれたのが確かに分かった。そのうちに、僕の心はとても小さな音を奏でだした。
 その音は、母からもらったあのオルゴールによく似ていた。
 やがて小さなオルゴールの音がオーケストラに変わっていった。それは止めようがない程大きくなっていった。
 やがて僕はどこか諦めに似た感情と共に、彼女に告白をした。もちろん、僕は振られた。
 いくら心の中で高らかに音楽が流れていようが、そんなのは一切関係ない。当然と言えば当然の結果だ。
 とはいえ心の中に響く不況和音が消えるまで、しばらくはかかった。これも当然と言えば当然だ。
 でもその時からだろう、自分の好きな物を見つける度に、心の中であの小さいオルゴールの音が響くようになった。
 心のネジが巻かれる度に、胸の中で小さく高なるオルゴールの音が聞こえた。
 だから今日も、僕はオルゴールのネジを回す。少しでも心のオルゴールを鳴らすために。
 この気持ちを忘れてしまわぬように。何度も巻き何度も回していく。
 幾度も繰り返し繰り返す。幾度でも。

 オルゴールは回る。
 いつでも変わらないあの少し寂しくなる音色で。
 いつでも小さくて消えてしまいそうに、ゆっくり回る。


終わり
255 ◆8wDKWlnnnI :2008/10/26(日) 12:44:30.01 ID:QM10iPUMO
投下完了

うはww久しぶりに早く書けたww
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:46:42.14 ID:M0JhiF3hP
気取らず書けば、いい作品ができるよね
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:47:18.53 ID:G1zzhOvv0
品評会ネタは大体できてるけど指が冷たくてやる気が出ないでござる
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:49:00.23 ID:djF6DeRQ0
げえー!規制解除!
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 12:52:37.83 ID:Z/2XaHz50
俺が書く作品の多くはBNSK向きではないらしい……。それが問題だ。

>>257
冷え性の俺がアドバイスすると、あったかい靴下履いて、蒸しタオルで首を暖めると一発。
下手に手を温めても、またすぐ冷たくなる。

>>258
おめ。品評会期待。
260「虫歯」(お題:歯痛)0/4:2008/10/26(日) 13:20:41.93 ID:tnAjtPELO
>>236
お題:歯痛
通常4レス投下します
261「虫歯」(お題:歯痛)1/4:2008/10/26(日) 13:21:03.31 ID:tnAjtPELO
「あなた、そろそろ削った方がいいんじゃないの?」
諦めなさい、と呆れた顔付きで、妻は僕に言う。何を言っているんだか、と惚ける手には中ほどからちぎれたフ
ロス。中々歯の隙間に入らないそれを力を込めて引き上げ、勢い余って歯茎に食い込ませる。気を取り直し、軽
く前後へと擦り付けるように引き下げた所でその付加価値を失ったナイロンの加工糸は、弱った歯茎から滲む血
に染まっていた。往生際が悪いわよ、と睨まれること、まさに蛇と蛙のそれが如し。誰か、誰かこの局面を覆してくれ――
「朝から何やってるの、父さん」
窮地に現れた息子を見つめる僕の眼差しは、まるで今にも投げられそうなフリスビーを前にする犬。僕の手元を
見、状況を把握した我が愛息は口を開く。
「虫歯は口臭の原因だから」
そりゃあ妹も口をききたくなくなる、と付け加えたこの生意気なガキは自らの整った白い歯を見せニヤリと笑う。
そんな事無いよな、と現れた愛娘に視線を投げかける私のそれは、減刑を求める死刑囚の眼差し。
「喋らないで。あと私のシャンプー使わないで」
リンスも使ってます、とは彼女の御達示があるので口にしない。
 まさか唯一の安らぎである我が家こそが敵地であったなどとは夢にも思わなかった。庭先で唯一の友である飼
い犬と見つめ合い、ぼやく。期待に呼吸を荒げ、長い舌をだらりと垂らす彼の口には白く光る歯牙の数々。貴様
のそれはこれのおかげか、と骨型のアイテムを奪い取り、猛り噛み付く私はさながら荒野の孤狼。しかしくわえ
た口の端から漏れる誇らしげな息は、それを見下す六つの瞳に晒され、止まる。
「――予約は入れておいたけど」
頭の方も必要かしら、僕の遺伝子の半分がこれだなんて、キモい、と口々に罵倒するその姿勢は父親に対するそ
れでは無かった。
262「虫歯」(お題:歯痛)2/4:2008/10/26(日) 13:21:25.39 ID:tnAjtPELO
秋晴れだろうか、雲一つない青く澄み渡る空が僕を見下ろしている。僕が心を曇らせているのにお前が晴れや
かとはどういった了見なのだろう。大地を取り巻く全ての大気に一瞥をくれ、僕は玄関を出た。距離は歩いて十
分足らず。しかしその白い建物へ向かう足取りは重く、まるで踏み出す足の、大地に飲み込まれんと言った錯覚
が、僕の行くその道のりを一時間にも感じさせる。父さんは頑張って来るぞ――。暖かく送り出してくれた皆を
想う。都合良く塗り替えられた記憶の家族に励まされ、僕は建物の自動ドアをくぐった。
予約の者ですが、と受け付けに声をかけると、僕の顔を見た係は、お待ちしておりました、いつもの部屋へど
うぞ、と僕を通す。いくつもある治療台の間にはちょっとした仕切りがあるのみで、治療が被った時などは他人
のそれをも聞くはめになり、泣き出してしまう子供もいる。そんな子供のために用意されたのが、完全防音の個
室での治療である。
実の所、この個室治療はとても好評とは言えなかった。と言うのも、設計自体のミスか、何か理由でもあった
のか、この完全防音の部屋は小さな会議室大程の空間が設けられていたからだ。その中心にぽつんとある治療台
の上、僕はある映画のワンシーンを思い出す。全てが白で覆い尽くされた部屋の中心、敵に捕らえられた諜報員
が歯という歯に、ドリルで次々に穴を開けられてしまうといったものだ。広い場所に一人でいると、嫌な想像が
次から次へと湧いてくる。需要が無いのも仕方がないだろう。――今日はもう帰ろう、そう独り言ち立ち上がる
なり、彼女が入って来た。
「まさかまた逃げるなんて事無いわよね、あなた」
まさか、君を迎えに行こうと思っただけさ、と言う声は裏返っている。妻の形をした悪魔が、その口を開いてい
た。
263「虫歯」(お題:歯痛)3/4:2008/10/26(日) 13:21:45.61 ID:tnAjtPELO
「一時間、随分待たせてくれたじゃないの」
予想はしていたけど、と妻は僕を台へ促す。ダイアモンドコーティングされたドリルの先端を取り付け、機材の
試運転をする様はまるで先の映画の拷問官。目には目を、歯には歯を、悪魔には悪魔を、と言う訳か。己の得物
を見せ付けるという残酷な前戯に、僕は口を真一文字に結ぶ事でしか震えを抑える事が出来ない。
「――あなた、そんなに口を閉じてたら何も出来ないでしょうに」
しょうがないわね、と開口機を取り出し手際良く装着する妻。
「あ、あうええうえぇ」
助けてくれと、そう叫ぶ声は完全防音の壁に虚しく吸い込まれる。もっとも、この場の特質上届いた所でどうにかなるような事も無いのだが。
ふふ、何言ってるのやら。そう笑う妻が手にしたのは、銀色に光る、細長い鎌。悪魔などでは無かった。彼女
は死に神だったのだ――。
「これから歯垢を取ります。ちくっとするけど、我慢でき――」
もう耐えることは出来ない。逃げるしか無い。僕が慌てて立ち上がろうとしたその時だ。
「――あなた、いい加減にしてください」

大の大人、それも一家族を支えなくてはならないあなたがそんな事でどうするの。今まで見たことも無かった色の悲しみを目に浮かべる彼女に、私は呆然とするほか無かった。
「確かにあなたは歯医者が嫌い。娘が治療を受けていた中、泣いていたのは隣で手を握っていたあなただけだっ
た程」
私の目を見つめ、彼女は続ける。
「あの子は、泣きたいのは私だったのに、隣で泣かれたらどうしていいかわからない、なんて呆れていたわね。
でもね、あの子、本当は少し嬉しかったのよ」
この時の私の口は、恐らく開口機が無かったとしても、同じくらいに開いていたに違いない。
「自分を、それも泣いてしまう程に心配してくれる親を嬉しく思わないはずがないでしょう。――今のあなたを見たら、あの子はどう思うかしらね。」
お願いだから、しっかりして。それは妻だったのか娘だったのか。私の道は、既に定まっていた。
「――ううええうえ」
264「虫歯」(お題:歯痛)4/4:2008/10/26(日) 13:22:04.49 ID:tnAjtPELO
続けてくれ。あらゆる意味で締まらない私の言葉に、妻は満足げに頷いた。再びあの鎌を持ち、私の歯に添え
る。ざりざり、ぎちぎち。既に歯の一部になりかけていたそれは、我が身を削ぎ落とすかのような不快な感触と
音でもって私の精神を攻める。頭を覆い、叫びたくなる衝動を、愛しい娘を想う事で耐え忍ぶ。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。死に神の鎌はその役目を終え、私は力無く、スタンド型の光源の向こ
うにある天井を見つめていた。これから始まる事を考えると、摩耗し尽くしたとさえ思われた精神が、再び悲鳴
をあげる。しかし僕には選択肢が無い。道が一つなら、覚悟はすぐに決まる。重く響く回転音が、口内に侵入し
た機械から発せられる。ガガガ、ガガガ。歯の表面をなぞるように、鈍い振動が顎へと響く。削り飛ばされた何
か、削りながら、同時に射出される水流の異様なまでの感覚に、あの日娘の手を握り続けていた手を握り締め、
私は静かに意識を手放した。

気が付けば、既に私の口には開口機は無かった。片付けをしている妻に尋ねる。
「終わった、のか――?」
寝ていたら気付かないでしょうね、と返す妻は呆れながらも微笑んでいる。
「手、痛く無いの?」
そう言われて見てみれば、硬く握られた手は依然としてその強張りを失っていない。静かに力を抜き、優しく指
を解きほぐす。上体を起こし、部屋を見回してみた。白で統一された、清潔感のある部屋からは、以前とはまるで違う印象を受けた。
「やっと、やっと終わったんだな――」
色々とありがとう、と振り向くと、妻は不思議そうな目でこちらを見つめていた。頭が理解するより先に、体が
震え出していた。空は相も変わらず澄み切った天気だ。対する私の曇天たる心は雨雲の様を呈している。
「――今日終わったのは歯石取りだけよ?」
虫歯治療はまた次ね、と妻は片付けを再開する。
人が本当に絶望した時、目の前は本当に真っ暗になるのだという事を、僕は実感した。
265「虫歯」(お題:歯痛)/4:2008/10/26(日) 13:22:47.27 ID:tnAjtPELO
以上です
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 13:42:42.05 ID:doNpiTpA0
>>230
最後から二つ目の段落、「俊和」が何度も使われていてテンポ悪い。

物語として動きがないように感じた。人物に名前を与えている割に感情の動きが
ほとんど感じられない。無機質な高層ビルを眺めている感じ。
華やかな話ではないのは分かるけど、少し味気ない。
テーマに置かれている部分は興味深いので、もっと丁寧に書いてほしいかなー、とか。

やたら偉そうになってしまった。スマソ
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 13:49:05.07 ID:doNpiTpA0
>>265
くどい。コミカルな話にしたかったんだろうけど、大げさな表現や比喩がやかましかった。
字下げをきちんとした方がいいかと。
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 13:50:39.83 ID:jkgf9/QBO
>>265
1レスで読むのやめた。文章がうざい。
269「虫歯」(お題:歯痛)/4:2008/10/26(日) 13:58:41.45 ID:tnAjtPELO
>>267-268
字下げは一行間を開けるって事でいいんだろうか

歯医者で本当に逃げ出す人はどんな気持ちでそうするのかを考えながら書いたつもりだったけど、やっぱり大袈裟過ぎたり、くどかったりしたようだから注意してみる

構造考えるの苦手だからどうしても長くなっちゃうんだ
それでも読んでくれてありがとう
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 14:03:38.26 ID:doNpiTpA0
>>269
段落の始めは一マスあけましょう、ってやつ
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 14:10:09.25 ID:tnAjtPELO
まとまりごとに最初は一マス空けてたつもりだった
申し訳ない
>>270
ありがとう
272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 14:18:42.13 ID:1+4UmhrwO
>>266
感想thx
取り置き御礼まで
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 14:52:41.71 ID:TFvdkdAh0
よし。とりあえず下準備はできた。
後はストーリーを考えて5レスにおさめるだけだ。
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 15:08:39.54 ID:SNYIkGrlO
わたしもようやく日本語を覚えましたのでstoryを考えはじめたく思う
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 15:19:03.91 ID:Z/2XaHz50
小説書くときなんかBGM付けてる?
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 15:52:04.56 ID:doNpiTpA0
つけたりつけなかったり
基本的に歌なし
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 15:59:25.91 ID:djF6DeRQ0
タイトル考えたら映画で使われていた
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 16:28:24.51 ID:6gAKIyIV0
自分の作品まとめられてた、まとめ人さんありがとうございます。

>>275
last.fmで適当に垂れ流ししてる
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 17:19:29.00 ID:Z/2XaHz50
おったま保守
280 ◆rEGWXIt34Y :2008/10/26(日) 17:46:16.14 ID:KY85/Pa70
品評会へ2レス
投下します
『幼馴染の葛藤』
281『幼馴染の葛藤』 1/2 ◆rEGWXIt34Y :2008/10/26(日) 17:47:12.34 ID:KY85/Pa70
「待ってよ!」
 後ろから掛けられる声に振り向きもせず、女の子は「やーだよ!」と叫ぶのみで走るスピードを落とそうとすらしない。
追いかける男の子はもう一度声を掛ける余裕もなく、ひたすらに追いかける。広々とした公園を自由に駆ける女の子。
追いつくだろうか? 男の子はそれほど足が速くない。それでもいつも、この二人は追いかけっこをして遊ぶ。
隣あった二人の家。そこから五分も歩かない近くの公園。
 女の子は鉄棒の下を通り抜け、ベンチの脇を通り、砂場を駆け抜け最後には背の高い滑り台へ。
色とりどりに塗られた柱の一つ一つに触れながら、そんなものなど障害ではないとでも言うように走っていく。
最後の柱に触れて、走る勢いのまま左手で柱に掴まりくるりと一周。男の子はそこでようやく追いついて、満面の笑みを浮かべる女の子に敗北宣言をする。
 座り込んで一言。
「やっぱり速いなぁ」
 肩で息をする男の子に、こちらはまだ余裕有り気、女の子はさらに笑みを深くした。
「私に勝つのはまだ早いわよ」
 誇らしげなその姿を見るのが――自分が負けたのにもかかわらず――男の子は好きだった。
282『幼馴染の葛藤』 2/2 ◆rEGWXIt34Y :2008/10/26(日) 17:50:51.35 ID:KY85/Pa70
 それが幼稚園の頃の記憶。幼稚園を卒業して小学校に入っても二人はずっと追いかけっこをするのが好きだった。
同じように追いかけっこをする記憶など、数え切れない程ある。結果はいつも同じだった。
 中学二年、あの頃を思うと驚く程久しい追いかけっこ。最後にしたのは一体いつだったか?
考えながら男の子は追いかける。女の子の走るルートは毎回同じ。久しぶりの今日だって、鉄棒ベンチ砂場ときて、滑り台。
 二人にはもうこの公園も広くない。ほとんどの遊具よりも背丈は大きくなって、鉄棒も下をくぐるのには一苦労してしまう。
鉄棒の塗装は新しくなり、ベンチは古ぼけ、砂場の砂は減ったようだ。それでも、女の子は記憶とまったく同じに、
滑り台の柱に触れてまわり、最後の柱でぐい、とまわった。
けれど最後に見せる笑顔だけが、あの頃に重ならない。その表情は寂しげだった。
「もう滑り台にも頭ついちゃうね」
 それは追いついた男の子のことだ。女の子はあと五センチ程滑り台の天井部分に足りない。
小学校まではずっと女の子の方が背が高かった。身体測定で悔しい思いをするのはいつも男の子の方だった。
それが周りより少し早い成長期のおかげで、男の子は女の子をすっかり抜かしてしまっている。
「ほんとはもう追いつけるでしょう?」
 女の子に負けるのが悔しくて、男の子は中学で陸上部に入った。お互いにうっすらと気づいてはいたけれど、
今日のこれではっきりと結果がわかってしまった。男の子はもう簡単に女の子に追いつくことができる。できるけれど、今日は男の子の負けだ。
それは花を持たせようとか、そういうことではなく、ただ大好きな、女の子のあの笑顔を見たいだけだった。
 だが女の子は同じには笑ってくれやしない。男の子が今まで感じてきた悔しさすべてにも劣らない悔しさを、自分の中でやり過ごすのに精一杯で。
思っていたよりも早く、このときは来てしまった。それが、どちらにも衝撃であったのだ。それほどに、時は容赦なく二人を変えていく。
 けれど、変わってしまったものをそれぞれに嘆いて、すべて嘆いて済んでしまったら。
変わっていくことに希望を見出せるだろうか。変わっていくことを受け入れてしまえるだろうか。
 ふいと雲が夕日を遮って、影が一段と濃くなった。その影の大きさにまた改めて驚いて、二人は顔を見合わせて、笑ってみる。
笑ってみれば、案外上手く笑えたように思えた。

283 ◆rEGWXIt34Y :2008/10/26(日) 17:52:04.26 ID:KY85/Pa70
以上です
品評会初投下
割と緊張しますねw
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 17:52:28.33 ID:wCxV/xIK0
お題くれ〜
簡単にかけそうな
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 17:55:27.31 ID:M0JhiF3hP
混合生物 ディネミュラ
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 17:57:29.80 ID:tnAjtPELO
>>284


お題ください
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 17:58:29.95 ID:KPMlSfc+O
大きい靴
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:00:15.29 ID:doNpiTpA0
>>286
はずれ
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:01:16.06 ID:wCxV/xIK0
鍵把握
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:04:02.64 ID:TFvdkdAh0
まにあわない
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:05:52.72 ID:doNpiTpA0
まとめ乙です
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:06:37.71 ID:yFrjcft1O
ああ、今ごろやっとスレタイの元ネタがわかった
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:09:50.76 ID:KY85/Pa70
まとめ早くて驚き
乙です
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:10:09.38 ID:jAxZ7ghj0
ピカチューはメダロットの夢を見るか
295『おもしろい社会』0/3 ◆xyAZ5VvW6Y :2008/10/26(日) 18:21:48.42 ID:WKd3r0kW0
前回の反省を生かして、今度は時間内に投下w
品評会投下します。
296『おもしろい社会』1/3 ◆xyAZ5VvW6Y :2008/10/26(日) 18:23:20.82 ID:WKd3r0kW0
昔から、規則正しく回っているものは嫌いだった。
一秒おきにきちんと動く時計の秒針が嫌いだった。
決まった時間に家を出て、決まった時間に帰ってくる父が嫌いだった。
昇っては落ち、また昇っては落ちる太陽と月が、嫌いだった。
どうしてみんな、規則正しく動いているのだろう?
どうしてみんな、自分から好きなように動かないのだろう?
そんな生き方、つまらないじゃないか。

いつものように物思いにふけっていると、いつものように先生から声をかけられた。
「またボケーッとしてるな。何を考えてたんだ?」
「別に……」
「授業中は授業のことを考えてくれよ」
「……はい」
先生は軽くため息をついて、黒板に向き合う。黒板には台形がかかれている。
「いいかー、台形の面積ってのは……」
そんなこととっくに知っている、と心の中でぼやき、また物思いにふける。
ああ、僕は何で学校に来ているのだろう……

子供らしくない、大人びている、と周りからはよく言われる。
別にそんなつもりは全くないのだが、どうやら大人たちからはそう見えるようだ。
どうやら今の時代、物思いにふける子供というのはあまりいないらしい。
でも、そんな大人たちは僕が普段何を考えているかを聞いたら、きっと驚くのだろう。
僕はただ、「どうしたら毎日がおもしろくなるか」を考えているだけだ。ほかの子供たちと、そう変わらないだろう?
297『おもしろい社会』2/3 ◆xyAZ5VvW6Y :2008/10/26(日) 18:24:03.59 ID:WKd3r0kW0
そんなある日、突然父が死んだ。それも、過労死で。
父は毎日のように決まった時間に会社に行き、決まった時間に帰ってきた。
大人風に言えば、シャカイのハグルマってやつになってぐるぐる回っていたのだろう。
母は何も教えてくれなかったが、日に日にやつれていく父の顔を見れば、小学生でも十分推測することができた。
僕はますます回るものが嫌いになった。時計はデジタルに変えた。カーテンを閉め切るようになった。
そして、ランドセルを背負って毎日決まった時間に通学する自分が父と重なり、自分が嫌になった。

僕がこの力を身につけたのは、きっとこのときに違いない。

気づいたのはたまたまだった。図工の時間に、みんなでコマを作った。
作ったら当然回すだろうと言うことで、みんながコマを回し始めた。
僕はとても不快だった。たくさんのコマが一度に、しかも同じ向きにくるくると回っている。

止まれ、とまれ、トマレ……!!

僕が半分無意識に、悲鳴のように念じると、不思議なことに、全員のコマがぴたっと止まり、カタッと倒れた。
はじめは何が起きたかわからなかった。周りも皆あっけにとられている。
が、しかし、ただ一人僕だけが違う事を考えていた。もしかするとこれは……

うちに帰るとすぐ、僕はCDプレイヤーを取り出した。長年使っていなかったが、試すのにはちょうど良い。
僕は適当にCDをセットし、音楽を再生した。耳障りな曲が部屋に響き渡る。次に僕は、止まれ、と念じてみる。
すると、音楽がぴたっと止まった。これはもう間違いない。僕は確信した。これはおもしろくなってきた。

次の日から僕の生活は一変した。
手当たり次第いろんな物を止めてみた。
家の扇風機に始まり、レンジ、蛇口、サッカーボール。車のタイヤを止めたときには、あわや事故になりかけた。
僕はここぞとばかりにみんなにこの能力を言いふらした。最初は誰も信じなかったので、わからせるために時間を宣言し、その時間ちょうどに山手線を全線止めてやった。
ちょうど、飛び降り自殺を図った人がいたらしく、この奇跡的な出来事は一躍ニュースになった。
298『おもしろい社会』3/3 ◆xyAZ5VvW6Y :2008/10/26(日) 18:24:38.33 ID:WKd3r0kW0
これでもう僕を信じない人はいなくなった。
それどころか、このことをマスコミがどこからか嗅ぎつけ、テレビの取材を申し込んできた。
当然といえば当然の話だ。タネもしかけも無しに、10歳の僕が電車を止め、命まで救ったのだから。
これをきっかけに、僕は天才英雄マジシャンとしてテレビに出るようになった。
僕が望んだ、「おもしろい生活」だ。
毎日が忙しくなった。学校よりもテレビ局に行く日が増えた。お金がたくさん手に入った。

しかし、現実というのはそう甘い物ではない。
他の芸能人からの妬み、仕事でのトラブル、過密スケジュールによる疲労、ストレス。
僕は気づいてしまった。結局ここにも、僕が望んだ「おもしろい生活」はない。
ただ、父と違う状況で、やっぱり社会の一部になっているに過ぎない、と。
その考えが僕の頭をよぎったとき、とても素晴らしい事を思いついた。
そうだ、それなら、社会を壊してしまえばいい。

社会を壊すのは簡単だった。社会を作っているのは人間だ。なら、人間が無くなればいい。
僕はありったけの力を込めて、僕が一番嫌いだった物を、止めた。

そう、地球を。

その瞬間、人、物、動物、自然、全てが吹き飛んだ。
轟音と悲鳴が鳴り響く。その中で僕は一人ほくそ笑む。
当然といえば当然の話だ。何の前触れも無しに、10歳の僕が地球を止め、命を消そうと思ったのだから。

後にはなにも残っていなかった。何かのよくわからないものの上に、何かよくわからないものが乗っかっていた。
僕はその上をたださまよい歩く。そして、また何かよくわからないものの上に座り、決意を固める。
ここから、僕が新しい、そしておもしろい社会を作るんだ。
僕は力をゆっくりと弱めた。地球がまた、ゆっくりと回り始めた。

え?どうして僕だけ生きているのかって?
……簡単な話さ。僕の輪廻って奴を止めてみたんだ。
299『十五年後のふたり』0/4 ◆bwVfaj/.fQ :2008/10/26(日) 18:38:24.51 ID:KOsptXdD0
品評会作品投稿します。
4レスあります。
300『十五年後のふたり』1/4 ◆bwVfaj/.fQ :2008/10/26(日) 18:39:26.79 ID:KOsptXdD0
 親友である真奈美から一年ぶりに電話がかかってきた。「ミカリン、あのね」と泣き声で真奈美は言った。「あたし、振られた」
 真奈美は大学時代の同期である。同じ年に大学に入り、同い年で、同じ血液型で、同じ星座で、同じ先輩を好きになった。十八歳のときのことだった。
 私と真奈美はよく恋の話をした。恋愛に関してはライバルでもあった私たちは、夜が来るたびに大量のチューハイを買い込んで互いの部屋に足を運び、
どちらがより先輩のことを愛しているのか喧嘩口調で語り明かしたものだった。
 どちらも真剣に恋をしていた。それは毎日続く会話の中で、お互いにわかっていた。
同じ想いを持っている親友がいるということがたまらなく嬉しかった。その曖昧な関係性が心地よかった。
 そんなわけでどちらも先輩にアプローチすることには及び腰になっていたのだが、真奈美と仲良くなって六ヶ月目のクリスマス、私の方が我慢できずに先に告白してしまっ

た。
案の定、失敗した。
 いままでにないほど落ち込んだ。世界が終わったみたいだった。枯れる事のない涙をボロボロとこぼしながら、ほとんど無意識に真奈美の電話番号にダイヤルを合わせてい

た。
「振られた」と嗚咽をこらえながら私は言った。真奈美は一瞬の間を置いて「それはとても辛いね」と慰めてくれたが、
小さな声で「よし」と言ったのが聞こえていたので全然楽にはならなかった。
 次の日、今度は真奈美の方から電話があった。「ミカリン、振られた」と真奈美は言った。「あたし振られた。仲間だね」と言って躾の悪い犬みたいにわんわん泣いた。
よっぽど「よっしゃ」と叫んでやろうかと思ったが、我慢した。
 それから数日間、私と真奈美は大学をサボって街で飲み歩いた。持てる限りのお金をすべて使い、毎晩毎晩飲み明かした。
二人で肩を組んで繁華街を歩き「ばかやろー」と叫びながら拳を突き上げたら、少しは楽になった。
「少し楽になったね」と隣にいる真奈美に言うと、「全然」と言いながら次の居酒屋の方向を指差し、「つぎー」と吼えて、それから大声で笑った。
私もつられて笑い、ゲラゲラと肩を揺らしながら居酒屋の暖簾をくぐった。
 あれからもう十五年経つ。お互い仕事を持ってそれなりに忙しくもなり、最近は少し疎遠になっていた。
 そんな親友である真奈美からの電話である。
301『十五年後のふたり』2/4 ◆bwVfaj/.fQ :2008/10/26(日) 18:40:27.04 ID:KOsptXdD0
 真奈美が振られた相手は、先月から通い始めた英会話教室の講師である英国人であるということだった。
 あの学習嫌いだった真奈美が英会話教室に通っているということにも驚いたが、相手が外国人であるということにも驚いた。真奈美が英国人ねえ。
「枕元では一緒に国に帰ろうってささやいてくれたのに」と真奈美は言った。
 恋人が別れも告げずに突然遠い祖国に帰ってしまうということはどのような気分だろうかと考えてみた。考えてみたがわからなかった。
「どこか遠くへ行こう」と私は提案した。考えたってわからないものはわからない。わからなければ慰めることもできないのだ。
 真奈美は最初少しだけ渋ったが、ちょっと説得したらすんなりと乗ってきた。最初から誘われたかったんだろう。
真奈美が何を求めているかなんて、私にはすぐにわかる。
 電話を切ると私たちはすぐに荷物をまとめ、仕事先に休暇の申請を出し、とりあえず大阪までの新幹線のチケットを取って、次の日に博多駅に集合した。
 一年ぶりに会う真奈美は以前より少し太っていた。昨日振られた女が太っているということは何か矛盾しているような気もしたが、
考えてみれば三十路女が一年前より太っていても何の不思議もないと思い直し、あまり気にしないことにした。
 私たちは大阪で新幹線を降りた後、電車を乗り継いで熱海まで行き、そこで宿を見つけて宿泊することにした。熱海か、と真奈美は言って、なんだか満足そうに笑った。
 熱海。英国ほど遠くはないが、傷を癒すには十分な距離だろうと私は思った。きっと真奈美もそう思ったのだろう。三十女の二人旅にもなんとなく似合う場所だ。
302『十五年後のふたり』3/4 ◆bwVfaj/.fQ :2008/10/26(日) 18:41:14.40 ID:KOsptXdD0
 女将から通された部屋の中で茶菓子を食べながら、私たちはかつて二人が憧れた先輩の話をした。
 結局薬学部の美人に持ってかれたね。いま思えば大騒ぎするような男でもなかったな。見る目がなかったんだ。彼今頃なにしてるのかね。あの頃は本当に可愛かったよね私

たち。
「いまでも可愛いよ」と真奈美は言った。「こんなに純粋な三十三歳がどこにいる」
 なるほどねえ、と思いながら真奈美の純粋性について考えていると、突然真奈美の目から涙がこぼれ始めた。
「だから騙される。あたしね、見る目ないんだ」
 戸惑った。萎れたタンポポみたいにうつむいて声を震わせる真奈美にどんな言葉をかけていいのかわからず、私は自分の恋愛についての話をした。
それが正しいのかどうかわからないけど、とにかく何か声をかけたほうがいいと思った。
「私もね、いま、恋してる。同じ職場の上司。七つ上で、奥さんと子供がいるんだけど、私のこと好きっていつも言ってくれてる」
 真奈美はゆっくりと顔を上げて、くうん、と子犬みたいに鳴いてから、上目遣いで私の方を見た。
「ミカリンの話、もっと聞きたい」
 私は真奈美に促されるままに、自分の置かれている状況について話した。
 彼は奥さんより私のことを愛している。だからいつか別れて私と一緒になってくれる。子供は問題だが、なんとかする。いまは過去を清算すべき時間なんだ。
 彼が私に言ってくれた言葉のひとつひとつを思い出しながら、丁寧に伝えていく。
 いつの間にか真奈美の涙は収まっていて、両手で頬杖をついて私の話に聞き入っていた。話が途切れると「ふうん」と言って茶菓子をかじり、お茶を一口すすった。
 「とにかく」と、私の話を遮って真奈美は言った。「ミカリンも大変なんだね」
 なにが大変なのかはよくわからなかったが、真奈美の言っていることもなんとなくわかる気がしたので「そうねえ」とひとまず同意して私も茶菓子をかじった。
 しばらく茶菓子をかじるボリボリという音だけが部屋に響いていた。三回かじり、合間にお茶をすすって、また三回かじる。そして静寂。
 何度か繰り替えしたあと、また真奈美が口を開いた。
 「このままずっとこうしてたいね。ふたりで」そう言ってまたお茶をすすった。
 真奈美の発したずずず、と言う音を聞きながら「そうねえ」と再び同意して、私もお茶をすすった。
 こうしていると、十八歳に戻ったみたいな妙な気分になった。私たちの気持ちなんて、本質的にはあの頃となにも変わってはいないのだ。
303『十五年後のふたり』4/4 ◆bwVfaj/.fQ :2008/10/26(日) 18:42:22.64 ID:KOsptXdD0
 結局熱海には三泊してから、来たときと同じように電車を乗り継いで大阪まで行き、そこから新幹線で博多へと帰った。
 私たちはもう大人で、ずっと熱海でお茶をすすっているわけにはいかないのだとわかっていた。
 帰り道、真奈美は何度も何かを言いかけて、苦い薬でも流し込むような表情で、ぐっとそれを飲み込んでいた。
 新幹線の中で、私たちはお互いほとんど言葉を発さず、ぼおっと窓の外を見たり目を閉じて考え事をしたりしていた。

 博多駅で真奈美と別れ、家にたどり着いたちょうどそのとき、恋人から電話がかかってきた。
「もう終わりにしよう」と彼は言った。私は何度も説明を求めたが、彼は取り合わなかった。仕方がないんだ、と何度も繰り返して、最後は唐突に電話を切られた。
 世界が終わった、と私は思った。何もかもがぼんやりとしていて、何かを考えることができなくなっていた。
全ての感情が抜け落ちてしまったようで、涙さえも出てこなかった。
 いつか感じた気持ちに似ていた。そう、あれは十五年前だ。真奈美と一緒に恋して、夢中になって、そして振られたときだ。
あのときに私の世界は一度終わっている。
 反射的に電話を手にした。無意識のうちに番号を押した。呼び出し音の後、真奈美が出た。
「真奈美、あのね」
 十五年前は、私が先に振られて、それから真奈美だったな、とぼんやりと考えた。
今度は逆。順番が変わっただけで、それ以外はやっぱり、あの頃となにも変わってはいない。十五年経って、全てが一周して戻ってきただけのことだ。
「私、振られた」

真奈美が口を開くのが受話器越しに感じられた。回っているのだ、と私は思った。
304 ◆bwVfaj/.fQ :2008/10/26(日) 18:44:18.06 ID:KOsptXdD0
初投下でした。みなさんいい作品投下されてるので緊張しますね。
改行がうまくいかなかったかもしれないです。今後は気をつけよう。
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:45:22.68 ID:4LTPIQP50
流れにのって品評会作品投下
306秋晴れニキビ 1/5  ◆TQd9MjVDR6 :2008/10/26(日) 18:46:09.24 ID:4LTPIQP50

「雲になりたいなあ」
 彼は私の存在を忘れたように呟く。だから私は何も言わずに、一人で笑顔を作ってみせる
のだけれど、もちろん彼は気付かない。
 私たちの『丘』はやはり秋晴れの下にあるべきだった。
 たとえば、この丘がテレビドラマや映画のシーンに使われたのならば、ただその風景だけ
で人々の心を魅了しきるだろうと思う。彼にしろ私にしろ、そういう映像的で現実的な虚像
を求めていた。そこに昆虫や蛾のような虫は存在するべきではなかったし、白い吐息は有り
にせよ、身体を震わせるような寒さがあってはならなかった。
「大きな雲じゃなくて小さな雲がいいな。誰にも気付かれないくらいの大きさと形で、ふわ
 ふわしながら世界の空を回りたい」
 彼は調色板に空色を作りながら呟いて、それから恥ずかしそうに笑う。
「それって、なんかエロいよね」
 私が冗談めかして言うと、彼は、陽気にあてられたかなと続けて笑った。
 空は予報通りに晴天で、風もほとんどなかった。その内、彼が絵を描くことに熱中しはじ
めたので、雲の一つを目で追うことにしたのだけれど、全くといっていいほど動きがなくて、
それも止めた。まるで時間が止まっているようだった。
 しかし太陽が赤みを帯び始めたところで、やはり穏やかな休日は終わりを告げて、彼がと
どめを刺すように絵具の片付けを始めた。
「絵って明るいところで見るものなのかな。だとすると暗いところで描いちゃ駄目なんだ?」
 私が彼の背中に訊ねると、彼は、「昼間の空と夜の空は違うからね」と言った。
 それからスケッチブックと絵具一式を脇に抱えると、普段の、のんびりとした口調とは違
って、だけれどあっさりと事も無げに告げた。
「日本の空と外の空も違うらしいんだ。だから来週には日本を出るよ」
307秋晴れニキビ 2/5  ◆TQd9MjVDR6 :2008/10/26(日) 18:46:55.54 ID:4LTPIQP50
 地上の都会には秋という秋がなかった。あるとすれば、街を闊歩する女たちの服装だけだ
ったが、それにしても季節特有の侘しさは確かに感じられた。これから冬を迎え、その類の
寂寥感は彼の不在とは別にずんずんと重みを増すはずだった。
 私は丘へ行くこともやめて、ただ毎日を過ごしていたのだけれど、時々は職場の先輩にあ
たる草子さんという人に連れられてお酒を呑みに街へ出ていた。
 草子さんはバツサンの独身女性で、同性の私からみても彼女の妖艶さはどこかずば抜けて
いた。それでも、計算なのかどうかは別にして人懐こさはあったから、職場では「魔女さん」
だとか、「まじょこさん」などと親しみを込めて呼ばれている。
「オトコね」
 草子さんは席に着いて飲み物を注文するなり、そう言った。
 居酒屋はいつものようにサラリーマンや学生などで騒がしかったが、草子さんの声は周り
のどんな声にも被せられずにはっきりと耳に届く。
「例の絵描きの恋人か」
 草子さんは続けて言うと、出されたお手拭を汚いものでも持つような手つきで持ち上げる
と、テーブルの角にちょこんと置いた。そうして、「これって本当はばっちぃのよ」と言う。
「なんで彼のことを知ってるんです? 誰にも話していないのに」
「そのくらい分かるわよ」
「魔女だから?」
「魔女だから」
 私は可笑しくなって、ぷっと吹き出した。私が笑うと、草子さんも笑って、そうしている
うちに私が頼んだカシスオレンジと、草子さんのビールがやってきて、二人でグラスを合わ
せた。
 それからは全く彼の話題は出ずに、草子さんの元旦那たちの話や、出産がどれくらい痛い
ものだろうかなどという話をした。私がなぜ旦那たちとの間に子供を作らなかったのか訊ね
ると、彼女は「魔女でいたいからよ」と言って私は意味も分からずに笑った。そして私が笑
い終えると、そろそろいい時間だということに気が付いて、私たちは席を立った。
 帰り際に、草子さんは私に顔を近づけて、「ここ見て」と自分の頬の辺りを指差した。
「にきびがあるでしょう?」
 私が頷くと、彼女は薄く微笑んで「また明日」と駅の方向へ一人で歩いていった。
308秋晴れニキビ 3/5  ◆TQd9MjVDR6 :2008/10/26(日) 18:47:55.19 ID:4LTPIQP50
 十一月に入ると、頃合を見計らったように一気に寒さが厳しくなった。例年よりもずっと
雨の日が多くて、それが一層秋から冬への移り変わりを後押ししたような気がした。
 私は相変わらずの生活を続けていたけれど、少しだけ変化があった。草子さんは度々、男
を連れてきては私に紹介した。仲介というほど大層なものではないにしろ、彼女は私に男を
見繕って、それを楽しんでいるらしかった。
 はじめは乗り気でなかった私も、呑みに出掛ける度に男を紹介されるので段々と楽しくな
ってきて、とうとう一人の男とデートをしたりするような関係にまで発展した。
 その男はとあるメーカーに勤めている一般的な男性で、「雲になりたいなあ」などと言う
ような面白い男でもない代わりに、「来週には日本を出る」などと突拍子もないことを言う
ような男でもなかった。
「なんで草子さんじゃなくて、私なの?」
 彼と食事をした帰りがけ、私はふと思った疑問を口にしてみた。
「草子さんは魔女だからね。僕には荷が重過ぎる」
 つまり妥協したということだろうかと、内心ムッとしないでもなかったが、確かに大抵の
男ならば草子さんを持て余すに違いなかった。
「キミも草子さんに似てるけれど、彼女よりはまだこっち側の人間だと思うから」
 彼は四角いメガネの位置を直しながら、にかっと笑ってみせた。その笑顔はどことなく嘘
っぽく見えたが、少なくとも現実に則した笑い方だった。
 私は、またふと思い立って、彼に顔を近づけて耳打ちした。
「ここ見て」
 彼は多少面食らった様子で、まじまじと私の指差すところを見つめ、それから私に目で問
いかけた。
「にきびがあるでしょ?」
 得意気に私が言うと、彼はきょとんとした顔で、「気付いてたけど?」と言った。
309秋晴れニキビ 4/5  ◆TQd9MjVDR6 :2008/10/26(日) 18:48:40.87 ID:4LTPIQP50
 恋人が出来たからといって生活が大きく変わることはなかった。デートをする回数よりは
草子さんと呑みに出掛ける回数のほうが多かったし、彼は仕事に忙しい男だった。
 しかし年末に近付くにつれ、彼は一段と忙しくなり、彼が忙しいと、なぜだか私も忙しい
ような気がして、すると月日が流れるのも早くなるらしかった。この頃になると、職場の飲
み会でも、「もう今年も終わる」だとか「今年も早かった」などといった言葉が次々と聞か
れて、これまではそういうことにあまりピンと来なかった私も確かにそうだと感じた。
 十二月の中旬には草子さんが四度目の結婚をした。いわゆる『出来ちゃった結婚』で、彼
女は「これでもう魔女じゃなくなったわね」と微笑みながら言った。それから草子さんの妖
艶さはみるみるうちに薄れていき、私は、彼女がやはり魔女だったこと、もう魔女ではない
ことを知った。
 それから十二月中旬の同じ頃に、絵描きの彼からの絵葉書が届いた。手書きの絵葉書で、
空模様を背景に、短い挨拶と近況が綴られていた。彼は向こうでも絵を描き続けているらし
く、こちらは元気です、と締められていた。アメリカの東海岸からだった。
 クリスマス・イヴには雪が降った。風もなく、大きな白い粒がひらひらと舞い降りてくる
様子はドラマのように幻想的だったけれど、その代わり異常に寒かった。風景に目もくれず
に私は彼との待ち合わせ場所であるレストランに急ぎ、そこで私たちは食事をした。彼はな
にやらプロポーズめいた言葉と、それから指輪を渡してきたけれど、プロポーズなのかどう
かは分からなかった。まだ出逢って僅かしか経っていないし、だけれど草子さんの結婚より
は急な話でもないように思えた。
 草子さんに相談すると、彼女は「それは幾らなんでもちょっと早すぎるんじゃない?」と
言い、結婚するにあたっての三か条なるものを教えてくれた。一に年収、二に健康、三に性
癖よ、と草子さんは真剣な眼差しで語った。
310秋晴れニキビ 5/5  ◆TQd9MjVDR6 :2008/10/26(日) 18:49:26.94 ID:4LTPIQP50
 年が明けると、また更に月日の流れは早くなったようだった。一月はやたらと行事が多く、
二月もまた忙しかった。彼との交際はクリスマスからも上手く行っていて、未だにあれがプ
ロポーズだったのかは不明だけれど、彼の口ぶりから察すると、それなりに結婚を意識して
いるらしかった。
 三月になると仕事は年度末ということで、やはり忙しかった。草子さんはそろそろお腹の
膨れ具合も目立ってきて、事ある毎に産休をとりたいと周囲に洩らしている。魔女の面影は
ちっともなかった。
 そうして仕事も無事に一段落つくと、私は急にあの丘へ行きたくなって、週末に彼との約
束を取り消して、丘へ向かった。
 丘までの道は登山道のようになっていて、この頃の季節らしく雑草が生い茂っていた。天
気は少し肌寒かったけれど、それでも春晴れの陽気は充分に差し込んでいる。私は足をせか
せかと動かして、急いで坂を昇った。
 腕時計の針がちょうど十時を指すころに、丘に着いた。やはり丘にも雑草が背丈を伸ばし
ていて、とても座れるような状態ではなかった。
 私は立ったまましばらくぼうっとする。何かを考えなければならないはずもなくて、ただ
空を眺めた。どこかで出来た雲がゆっくりと流れていて、だけれどそれだけだった。
 絵描きの彼を思い出す。
 やはりこの丘は秋晴れの下にあるべきだったのだ。

                               おわり
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 18:58:49.90 ID:wCxV/xIK0
>>297が私的に面白かったんだが
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 19:00:54.88 ID:9vyBReo10
まとめ乙
だがNo.09の1レス目、4レス目 ちょっとミスってるね
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 19:04:38.36 ID:iQHJvrs6O
>>311
投票にさんかしなよ
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 19:22:27.68 ID:QM10iPUMO
まとめの人おつ
>>311日付変わって夜12時過ぎたら投票できるよ、ぜひ参加してねー
315義眼徒マスターピース0/5 ◆LBPyCcG946 :2008/10/26(日) 19:24:52.54 ID:sq+WSKL90
品評会投下
316義眼徒マスターピース1/5 ◆LBPyCcG946 :2008/10/26(日) 19:25:17.90 ID:sq+WSKL90
 木偶。私は木偶だ。今にも倒れそうな体を支えるのは、これまた今にももつれそうな足で、一度倒れれば地
面にキスし、頭の中をさらけ出す事はまず確実だろう。目が1つ足りない。片目だからバランスが悪いのか、
空虚を埋める物はそう簡単に手に入らない。決して道端に落ちてなどいない。
 私とすれ違う人もまた似たようなもので、姿勢こそきちんとしているが、心は大きく傾き歪み、私と同じく
空っぽなようだ。せいぜい100歩程のひどく狭いこの通りに、義眼を売る店が無数にひしめいている。私は
ここに、失ったもう片方の眼を探しにきたような気がしてならない。平行、それでいて価値あるその眼を、何
としても私の隙間に埋め、取り繕わなければ私は木偶のままだ。
 1軒の店が残った右目の視界に入った。錆びた看板と、身を縮めてようやく入れるくらいの小さな扉だ。私
は急速に体を圧縮し、回転が生む遠心力によって、地面から突き放されそうになりながらもどうにか、その扉
を開く事に成功した。思うにこれは快挙だった。ふらつきながら、店に入った。
 店の中では小人が、ルーペを片手に何かを見ていた。
「ようこそいらっしゃい、いらっしゃい、いらっしゃいました」
 からからの喉を無理やり捻って、私も声を出す。
「眼を探しているんです」
「なるほど、それはもちろんこの店にござい、ござい、ございますよ」
 耳につく嫌な声だ。にわとりの首を絞め、1枚1枚羽を抜いていけば、ちょうどこんな声が出るだろう。
「まず、まず、まず、そこにお座りください」
 差し出された椅子に、私は座った。椅子が私に座った訳ではない。
「どんな眼をお探し、お探し、お探しですか」
 私はすっかりと店内の雰囲気に飲み込まれていた。現実的空想と、空想的現実が入り混じった、やけに遠く
感じる空間だ。カラス、胃袋、「E」、針金、血、そして義眼。それらはまるで連想ゲームのように、小人と
同じくらいに収縮した私を威圧している。見た所同じ程度の背丈、いつの間にやら。
「1人で店をやっているんですか?」
 先ほどよりもいくらか滑らかに、私の口から言葉が出た。威圧されたのが功を奏した。自分の形が、しっか
り作られるからだ。
「いえ、いえ、いえ、私の他、約10億人の従業員がこの店で働いておりますよ」
「そうは見えませんが」
「目に見える物だけが真実とは、限りませんから」
 と言って、小人はケースを1つ取り出した。恭しいケースだ。開けると眼、眼、眼。小人ではないが繰り返
し、眼。小人の手に収まる程の大きさの眼が、いくつも入っている。
317義眼徒マスターピース2/5 ◆LBPyCcG946 :2008/10/26(日) 19:25:42.54 ID:sq+WSKL90
「これらは全て、全て、全て義眼ですが、元は本物の眼球だった物なのです。例えばこれ」
 そう言いながら小人が手にしたのは、琥珀のような瞳。小人はそれを私の窪みに近づける。私には拒否する
事ができない。体がいつの間にか膨れ上がり、椅子に拘束されているからだ。その眼は私にぴったりと嵌り、
今までぼやけていた左の視界が徐々に明らかになっていく。
「何が見えますでしょう、でしょう、でしょうか」
 私は正直に、見えたままの物を述べる。そうしないと、膨らんでいく体で店の中を壊してしまいそうだから
だ。
「霧が見える。あなたに霧がかかっている」
「その霧は、霧は、霧は、『隠し事の霧』です」
 霧でぼやけて、小人の顔はほとんど見えない。
「それは元々、裁判官だった男の眼をくりぬいて作った、作った、作った義眼でございます。隠し事をしてい
る人物を見ると、霧がかかって、かかって、かかって見えるはずです」
「という事は、あなたは隠し事をしているんですか?」
 私が切り返すと、小人は窮屈な笑い声混じりにこう答えた。
「隠し事の全く無い人間なんていませんよ」
 裁判官の眼を取り出し、小人に戻すと、いよいよと言うべきか、小人の体の方が私の体の大きさを上回って
いた。もはや小人ではない。ただの大柄な義眼屋だ。私はその義眼屋に、疑問に思った事を率直に尋ねた。そ
うしなければ、ならなかった。
「という事は、その眼は全くの役立たずではありませんか? 隠し事をしている人間しかいないのに、隠し事
をしている人間を見分ける眼があったってしょうがない」
「それこそが、」
 義眼屋は別の眼を取り出し、ハンカチで一拭き。
「疑心暗鬼と呼ばれる物でしょうな」
 霧の晴れた義眼屋の顔には、もっと深い闇が覆いかぶさっていた。
「当店の義眼は特別製です。生きた人間から眼を摘出し、それをカラスの血で三日三晩漬けて、完成させるの
です。もちろん工程はこれだけではございませんよ。当店特別の技術があればこそなのです」
 意気揚々と語る義眼屋。おぞましいといった感情はこれといって浮かばず、特別製であれば仕方の無い事か
もしれないと逆に納得したくらいだった。そんな私に畳み掛けるよう、義眼屋はセールストークを始める。
「今度はこれなんかどうでしょう。霊媒師の眼です」
「まさか霊が見えるのですか?」
318義眼徒マスターピース3/5 ◆LBPyCcG946 :2008/10/26(日) 19:26:07.16 ID:sq+WSKL90
「いえ、相手がいくらくらいお金を持っているか、大体分かるのです」
「それは詐欺師の眼では?」
「本物の霊媒師、なんているものですか」
 核心を抉り、ゴミ箱に捨てるような会話だった。義眼屋は巨大化し、私を圧倒してくる。圧される、潰され、
ひき肉にされる。そんな恐怖を感じつつも、まだまだ深みに嵌れそうな、奇怪で淀んだ安心感。
「この眼は手練の格闘家の眼。相手の動きがはっきりと見えるでしょう。こちらは名だたる射手の眼。遠くの
物が良く見える事でしょう。そしてこれは人生の全てを費やした哲学者の眼。あなたなりの真理が見える事で
しょう。まだまだございますよ、これは……」
「違う、私は……」
 言いかけて、義眼屋と私との絶望的な差に驚愕した。潰そうと思えば、義眼屋はその親指一本で私を潰せる
事だろう。空間が捻じ曲がり、不可解な現象が進行している。義眼屋が大きくなった訳ではない。私が小さく
なったのだ。かろうじて言葉を編み、喉を通過させた。
「私は、私の眼を探している」
 一瞬にして、全ての物が元に戻った。より正確に言うならば、義眼屋と私の背丈はほぼ同じ。部屋にも異常
はなく、義眼屋は涼しい笑みを浮かべ今紹介した義眼を手に持ち転がしている。
 ふと、現実味が露になって、私は眩暈を覚えた。私は私の眼を探している、のか。自分の口から出た言葉な
のに、どんな嘘よりも胡散臭かった。
「なるほど、あなたの眼ですか……」
 義眼屋は、私の言葉を理解したのかしていないのか、別のケースを取り出した。先ほどのよりも小さく、ま
たその見た目を裏切らず、中にはたった1つの義眼しか入っていなかった。義眼屋はそれを手に持ち、前に掲
げると、私の窪みと照らし合わせるように見つめた。私もその義眼を見る。
 それは義眼とは名ばかりの、不思議な球体だった。義眼屋がそれまで出した義眼はどれも、元々人間の眼な
だけあって、まさしくその形だったが、今度のはそうではないらしい。青と緑がほぼ半分半分に、所々白いも
やのような物がかかっている。そして最も驚くべき事に、義眼屋がその義眼を机に置くと、義眼はひとりでに
回転を始めるのだった。
「これぞまさしく当店自慢の一品でございます。ささ、どうぞお嵌めになってください」
 私は義眼屋に勧められるがまま、回る義眼を窪みへと落とした。先ほどの威圧にて、拒否権をすっかり奪わ
れてしまったらしい。このままではまずい、と予感が走る。
 そしてその義眼もどうやら、私の物ではないらしかった。義眼は私の左目で回り、視界はぼやけたままだっ
たが、心地は裁判官の眼とさほど変わらず、違和感を吐瀉する。
319義眼徒マスターピース4/5 ◆LBPyCcG946 :2008/10/26(日) 19:26:32.12 ID:sq+WSKL90
「私の眼をご覧下さい」
 義眼屋は、2つの眼で私を見つめた。私は右目だけで、義眼屋を見つめた。空気が刺激を持ち始め、静寂が
私の体にこびりついた。
「あなたは美しい眼をしている」
 義眼屋の台詞、安らぎの中からいずる、さも真実じみた言葉だった。
「あなたがこの店に入って来た時、その美しさに私は圧倒されました。最初私は小さかったでしょう。あなた
が大きかった訳じゃないんです。そして不自由な言葉を寄り合わせ、どうにか礼儀を保っていたのです」
 告白は続く。
「あなたの眼は、どうやら特別製なようだ。例えるなら生命そのもの、才能を兼ね揃え、どんな職業についた
眼よりも実に機能的で、かつ芸術性を保っている」
 私はそうは思わなかった。私はあくまで、木偶だからだ。
「唯一あなたと釣り合う眼というと、今あなたが嵌めているその義眼しかない。その義眼も特別製。例えでは
なく生命そのものですよ」
 困惑の渦に飲み込まれていく。感覚が、段々と何かに支配されていく。
「私はあなたの眼がどうしても欲しい。新しいコレクションだ。その眼の本当の能力をお教えしましょう」
 気付いた時にはもう遅かった。
「その眼には、10億の人が住んでいるのです。彼らは皆腕利きの職人で、義眼を作る事に生涯を捧げてきま
した。新しい義眼を作っていく内、次第に普通の素材では飽き足らず、本物の眼を使い始めた。研究に研究を
重ね、やがて職人達は義眼に住む事に成功したのです。それがその義眼。またの名を『惑星』と言います」
 私の眼孔の中で、ぐるぐると惑星が回っているのが分かる。拘束された体とは対照的に、そこには自由があ
った。空っぽの頭の中に、何かがなだれこんでくる。イメージとは別の、もっと現実的で残酷な物。者。モノ。
「さて、これだけ時間を稼げば十分でしょう。あなたの眼を、いただきます」
 義眼屋は私を騙したらしい。くやしくて仕方ないはずなのに、私の空虚な頭には、煙も立たなければ火種も
無かったのだ。義眼の惑星から私の右眼へと移住を済まし、仕事を終えた職人達が、元の義眼へと帰っていく
のが分かる。私の体内の居心地はどうなんだろう。良いのか悪いのか。それは私自身であるはずなのに、私に
は知る由も無い。
 コトリ、と音を立て、義眼が落ちた。回転を伴い、義眼屋の方へと転がる。義眼屋はそれを丁重に拾い上げ、
元のケースにしまった。そして私の右眼はゆっくりと、その視界を閉ざしていき、ある時ずるりと世界が回っ
た。完全な暗闇がやってきた。両目を失った私は、さぞかし滑稽な事だろう。左眼を探しに来て、右眼まで騙
され奪われてしまったのだ。目も当てられない。
320義眼徒マスターピース5/5 ◆LBPyCcG946 :2008/10/26(日) 19:26:56.77 ID:sq+WSKL90
「義眼屋さん」
 私は穏やかな口調で、見えはしないがそこにいるはずの義眼屋に向かって言った。
「私の眼を、返してくれませんか?」
「それは無理です。あなたの眼は実に美しい。私はあなたを騙しましたが、一言も嘘をついていないのですよ。
でなければ、あなたはきっと騙されなかった」
「そうかもしれませんね」
「もう帰っていただいて結構ですよ。眼の無い人間に興味はありませんから」
 冷たく言い放ったその言葉にも、また偽りは無いのだろう。義眼屋は、たった今取り出したばかりの私の眼
を、カラスの血が入った入れ物に丁寧に入れ、私の体にはまるで興味がなさそうだった。
 見えてる。その事に気付いた。
「義眼屋さん、私、もう1つ眼があったみたいです」
「嘘はおやめなさい。私は嘘はつかなかった」
 はっきりと見える。義眼屋の薄気味悪い笑みも、室内を彩る飾りも、さっきまで私の右眼だった義眼も。
 私は義眼屋に、そっと手を差し伸べた。義眼屋は一瞬ぎょっとし、椅子から立ち上がると、私の手の届かな
い範囲に退いたが、私の手はまだまだ伸びる。先ほどとは打って変わって、今度は私が僅かに巨大化している。
義眼屋は口を押さえ声を漏らさないように、部屋の中を音も無く逃げ回ったが、私には義眼屋の姿が見えてい
た。意味の無い措置だ。
「どうして、どうして、どうして、見え、見え、見えてる」
 義眼屋はすっかり小人になった。最初私がここに来た時よりも、遥かに小さい。決して勢い良く振り下ろす
事などせずに、大らかに慈悲深く、私は親指で義眼屋を潰した。哀れ自らの店にまで裏切られた義眼屋は、極
小さな断末魔を上げ、椅子の汚れとなった。
 ようやく私は、私の左眼の在り処を思い出していた。私はひたすら大きく大きくなり、義眼屋を裏切ったこ
の部屋も、ついていけない大きさになった。破壊し、路地を跨ぎ左の窪みもそれに比例する。空に頭がつき、
全てのバランスは崩れ、急速な崩壊。その勢いは止まらず、私は最大になる。
 そして私の左眼は、まるでパズルの最後の1ピースのように、あるべき場所にぴたりと嵌った。全ての物が
見えるようになった。いや、元々見えていたはずなのだ。私の今まで立っていた場所こそ、私の探した眼なの
だから。それは回る、とある惑星であり、私は惑星の傑作、つまる所、木偶だった。

321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 19:28:10.86 ID:sq+WSKL90
まとめスレにある奴ってスパム?
挟まない方が良いよね
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 19:32:55.47 ID:9vyBReo10
ですな
一応No.09も修正してほしいし
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 19:39:41.75 ID:G1zzhOvv0
品評会用に書いたのが170行あったわけだが
どこ削るかな
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 19:53:45.68 ID:eu4Jd8vT0
自分を奮い立たせてみる
お題ください
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:07:04.78 ID:9vyBReo10
長考
326傘を盗めば靴屋が儲かる1/5 ◆mEnrXcph1I :2008/10/26(日) 20:19:20.12 ID:djF6DeRQ0
テスト
327 ◆mEnrXcph1I :2008/10/26(日) 20:21:11.60 ID:djF6DeRQ0
じゃあ投下します。
328傘を盗めば靴屋が儲かる1/5 ◆mEnrXcph1I :2008/10/26(日) 20:22:22.67 ID:djF6DeRQ0
 テーマは「再生産可能な循環型社会に必要な要素」だった。聞くだけで気の重くなるレポートには、暗く冷た
い金属の箱がお似合いだ。
 印刷したての紙を提出ボックスの中に放り込んだ。曇り空の土曜の午後だ。それだけで気が滅入る。さっさと
大学を出よう。
 うっかりボックスの上に置いたカバンを落としてしまった。ぶちまけられた中身にまた暗い気分になった。散
乱したファイルケースには水道料金と携帯電話の請求書が挟まっていた。自動引き落としにするのを長いこと先
延ばしにしている。帰りにコンビニに寄らなければならない。
 生きていくのは難儀なことだ。六時から始まる塾のバイトも、女子高生と楽しくお話をしてお金がもらえる訳
ではない。確かに相手は女子高生だけれども、彼氏だっているし、目標とする大学のレベルも高い。必然的に指
導にもクオリティが求められる。現実は厳しい。
 階段を下り、長い廊下を歩く。
 窓に雨粒がしたたり落ちてきた。目に見えて雨が強くなる。
 俺は無意識に頭をかき上げた。雨が降っているのに傘がない。という状態はぐったりとしてしまう。
 技術が進歩しているにも関わらず、定型文のごとく「天気予報は当てにならない」言われるのは、外れた時の
ショックが大きいからだろう。
 気象予報士がどれほど努力を積み重ねて気象図を読み解いても、人間の心理にアプローチするのは難しい。た
った一度でも外せばそれが強く印象に残るのだ。結果、「天気予報は当てにならない」という誹りをうける。非
常に理不尽な職業だ。
 ともかく、雨が降っている。見知らぬ気象予報士に思いをはせても天気は変わらない。
 雨足によっては走れないこともない。まずは玄関まで下りることにした。
 雨音に紛れてサックスの音色が聞こえる。サークル棟で誰かが練習をしているようだ。一方で本部棟はひっそ
りとしていて、学内には自分一人しか居ないような感覚に陥る。
 玄関を一周して、どこかに傘でも落ちてないかと見て回る。
 傘立てに一本だけあった。どこにでも売っているビニールの傘だ。
 助かった、傘を取ろうと足を進めたその時、男が傘に手をかけた。もう少し早くレポートを終わらせていれば、
と悔やむ。やはり大学には常に誰かが居るのだ。
「ちょっと待て」
 男は身体をこわばらせて立ち止まった。予想通りだ。
 向こうは俺を知らない。だが俺は奴を知っている。講義室の最後尾でいつも眠りこけているか、退席して電話
で話し込んでいる傍若無人な男だ。学部ではマイナスの意味で有名だ。
329傘を盗めば靴屋が儲かる2/5 ◆mEnrXcph1I :2008/10/26(日) 20:23:54.41 ID:djF6DeRQ0
「別にいいじゃねえかよ。それにこれがお前のものだって証拠はあるのかよ」
 悪役じみたセリフに吹き出しそうになる。下っ端で、真っ先に殺されるタイプの悪役だ。
 少なくとも「これは俺の傘だ」くらいの演技はないのか。そのセリフでは罪を認めたのと同じだ。
 だからそのセリフは俺が頂くことにした。
「それは俺の傘だ」
「だから証拠はあんのかってんだよ」
 傘を指さした。
「その傘には『APO』というロゴがあるが、それがどういう意味か分かるか?」
 カモはこれから何が始るのか、という顔をした。もちろん答えられない。
「『APO』とはすなわち、ポリオレフィン系樹脂のことだ。と言っても分からないだろうから簡単に説明する
と燃やしても有害ガスが発生しない素材だ。正確には非晶質ポリオレフィンと言う」
「それが何だってんだよ」
「環境に良い素材だろう? もっとも、二酸化炭素が発生するから、循環型社会を目指して作られた素材、とま
では言えないがな」
 ここまでまくし立てただけで、男が挫けそうになっているのが分かる。情けない奴だ。
 単にレポートの内容をそのまま喋っているだけなのに。
 威圧感を全身にみなぎらせて男に近づく。
「だが、その傘を確認して欲しい。手触りに違和感があるとは思わないか? 普通の傘のビニールとは少し違う
だろう。それは燃やせば有害ガスが出る偽物だよ。そしてそれが偽物だと分かる者は、持ち主以外に居ない」
 真っ赤な嘘だ。だが男はその嘘よりも赤い顔になっている。
「なあ、『傘は天下の回りもの』って言うだろ?」
「あほか。天下を回るのは金だよ。その傘だって金が無ければ買えないだろう? いいか。それは俺が金を払っ
て買った、俺の傘だ。暴力をふるうか? それなら通報するまでだ」
 男はしぶしぶ俺に傘を渡した。そして雨の中を走り抜けていった。
 少しの間カモの背中を眺めていた。スタイリング剤で立ち上げた髪の毛がみるみるしおれていく。
 不意に背後から声を掛けられた。
「それは私のよ」
 振り返ると俺と同じくらいの背丈の女が立っていた。語気の強さと相まってかなり威圧感がある。濃い目鼻立
ちは化粧でいっそう強調されている。
 好みのタイプだった。
330傘を盗めば靴屋が儲かる3/5 ◆mEnrXcph1I :2008/10/26(日) 20:25:51.25 ID:djF6DeRQ0
「まさか」
「まさか、じゃないわよ。盗人猛々しい」
「そんな。証拠はあるのか?」
「私はたった今大学に来たばっかりなのよ。レポートを出すために。傘が濡れているでしょ? それが証拠よ」
 確かに濡れている。
「じゃあこうしよう。今からこの傘は僕らのものだ。半分づつ所有権がある。だから相合い傘だ」
 女は「はあ?」と言って俺の傘を奪い取る。
「ちょっとまってくれよ。だって、外は雨だぞ」
 彼女の容姿が気になったというのもあるが、現実的な問題が控えていた。傘が無い。
「雨がやむまで待っていたら? そうでなかったらさっきの人みたいにそのまま走っていけば良いじゃない」
 それは困る。この後、塾のアルバイトがあるのだ。濡れ鼠のまま、あの女子高生を指導するなんてとんでもな
い。
「でも奴から君の傘を守ったのは僕だ」
「結果的には、でしょ?」
 ビニール傘が勢いよく開いて、彼女は外に出て行く。俺は強引に彼女の傘に入り込んだ。
 彼女があっ、と言ってしかめっ面を向ける。
「お願い。半分と言わず、三分の二で良いから、入れさせて!」
「それじゃあ半分より多いでしょ? それにもう入ってるし」
 怒りながらも、下らない冗談に彼女の警戒心が解けるのが分かる。
「質問。何でこんな時間に大学に来たの?」
「どうでもいいでしょ」
 とにべもない。だが俺を雨ざらしにするつもりはなさそうだ。会話を伸ばせばバイト先まで持ちこたえられる
かもしれない。
「当ててみよう。レポートの提出だ」
 彼女はぎょっとした顔をする。
「どうして分かったの?」
「さっき自分で言ってたから」
 と言うと、あきれ果てた顔をしてため息をついた。何かが彼女の中で決着したようだ。
「分かったわ。どこまで行くの?」
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:26:08.87 ID:jfpWVHYL0
332傘を盗めば靴屋が儲かる4/5 ◆mEnrXcph1I :2008/10/26(日) 20:27:16.16 ID:djF6DeRQ0
「駅前の塾に。これからバイトがあるんだ」
「傘の盗みかたでも教えるつもり?」
 彼女の唇が悪戯っぽくゆがんだ。俺は釈明をする。
「普段は絶対に傘なんて盗まないよ。今日はバイトがあったし、大学には誰も居そうに無かった。週明けには傘
を元の場所に戻すつもりだったんだ」
「そうだといいけど」
 彼女とは同じ学部で、同じ講義を取っていた。レポートは家で作成し、大学には提出のためだけに来たという。
名前は針生香奈。
 全ては締め切りを日曜日の朝に設定した教授が悪い。意味が分からない。俺も香奈もその点で意見が一致した。
「コンビニに寄ってもいいかな。携帯と水道の料金を払いたいんだけど」
 香奈は承諾した。
 中央通りに出ると車の交通量が格段に増える。路面が車のライトにぬらぬらと光っている。すっかり暗くなっ
てしまった。
「あそこに入ろう」
 コンビニは他にもあったが、あえてミニストップを選んだ。
「何かおごってよ。傘の半分を貸してるんだからそれくらい良いでしょ?」
 もちろんそう言ってくれるのを見込んでいた。
 軽口を叩いたその瞬間、香奈はものの見事に転んだ。今時の女子大生にしては珍しい派手な転び方だった。
 ヒールが脱げ、膝から血が出る。濡れた道を不安定な靴で歩くもんじゃない。
 俺は香奈に肩を貸して店に入った。店員が不安そうにこちらを見る。しかし俺はもっと動揺しているのだ。
「ちょっとマキロンと絆創膏買ってくるわ。待ってて」
 椅子に座らせた彼女は申し訳なさそうにしていた。
 携帯と水道料金の支払いと一緒にマキロンと絆創膏を買った。
 持っていたティッシュにマキロンを浸し、むき出しの膝に塗布する。
「……痛い」終始強気だった香奈が涙目になって、痛みをこらえている。
「あの靴高かったのに」
 ヒールが根本から折れていた。懐と膝とどちらが痛いのか気になるが、そんなことを聞いたら殺される。
「後で買ってやるから」
「別に良いよ。本当に高かったし、限定モノだからもう無いかもしれない」
 香奈が落ち着くのにそれほど時間はかからなかった。
333傘を盗めば靴屋が儲かる5/5 ◆mEnrXcph1I :2008/10/26(日) 20:30:06.69 ID:djF6DeRQ0
 予定通り食べ物をおごって、少し話しをした。香奈はたこ焼きのようなものを食べた。
 バイトの時間が迫っていた。幸い駅に近いミニストップだったので、まだ余裕はある。
「駅まで送っていこうか? すぐそこだし」
「良いよ。そこまでしてもらって悪いから。あ、マキロンと絆創膏いくらだった?」
「いやいやいや、元はと言えば傘を盗みそうになった俺が悪いんだし、それこそ申し訳ない」
 俺も固辞した。
「とにかく、もうバイトに行かなきゃならないから。込み入った話は今度しよう」
 香奈と連絡先を交換し店を出た。店員は怪訝な視線を我々に向けていた。さぞかし騒々しい客だったことだろ
う。

 雨足は強くなっていた。重量感のある雨粒がばちばちっ、と路面を叩いていた。
 そこで俺は重要なことに気づいた。
「傘が無い」
 一瞬、何が起ったか分からなかった。彼女も傘があった場所を呆然と眺める。
 次第に彼女の視線が怒気を含みだした。嫌な予感がする。
「ねえ、やっぱり靴買ってよ。傘の弁償」
 傘だったら店に戻れば百円やそこらで買えるだろう。
 だがそんなものよりも俺は今、香奈の靴を買いたい気分でいる。


 ――了
334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:31:49.62 ID:djF6DeRQ0
じゃあ投下しました。乙であります。
335Neck 0/5 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/26(日) 20:33:15.71 ID:G1zzhOvv0
品評会投下します
336Neck 1/5 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/26(日) 20:33:48.81 ID:G1zzhOvv0
 始めは、本当にほんの少しの額だったのだ。
 それがいつの間にか元の何倍にも膨れ上がり、今では真っ当に働くだけではとても返せ
ないであろう額に達していた。さらに、俺には真っ当に働かせてくれる所さえ無い。要す
るに無職だ。俺のその、借金は、俺の人生を現在進行形で大きく狂わせていた。
「はぁ……」
 今ので今日何回目のため息だろう。自分は数えていない。ため息なんか吐いても、何の
解決にもならないことは当然解かっている。しかし、出るものは仕方が無い。
 俺は平日の、昼の町を歩いていた。出歩いている理由は至極単純だ。家に居るとうるさ
い。借金取りが。平日の昼、と言っても意外と人が居るものだ。学校や会社に行っていた
頃は知らなかった。中には高校生ぐらいの年齢に見える少年少女も居たりする。恐らくだ
が、彼らは学校には通っていないのだろう。彼らの雰囲気が俺にそう思わせていた。そし
て、そこからさらに推測するに、彼らは所謂「ろくでなし」と呼ばれる人間だろう。
 まぁ、それでも自分よりは大分ましだろうが。
 俺は高校には行ったし、大学にも行った。しかし、今ではこんな目に合っている。結局
学校に行くか行かないかなんて、その個人を計る上ではほんの少しの意味しか持たないの
だろう。今ならそれが解かる。学歴社会、とかいうやつも今に消えていくだろう。
「おい」
 不意に後ろから、そんな声が聞こえた。自分に声を掛ける人なんか借金取りしか居ない
筈だが。
「おい」
 二回目。二回声を聞いて、とりあえず自分のどの知り合いの声とも違うであろうことは
解かった。しかし、声を掛けられているのが間違い無く自分である、ということも同時に
解かってしまう。どうしよう、逃げるか。
「おい!」
 とか思ってるうちに、肩を掴まれた。物凄い力だ。「にげる」という選択肢はこれで強
制的に削除される。
「おい、あんた、大崎 悠だろ?」
 何故か、名前は割れていた。
「……そうだけど、何か?」
 俺は振りむかないまま、答える。
337Neck 2/5 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/26(日) 20:34:21.79 ID:G1zzhOvv0
「あんたに良い話を持ってきた」
「良い話?」
「ああ、借金、返したいだろ?」
 借金があることも割れていた。まぁでも、それぐらいしか見ず知らずの人間が俺に声を
掛ける理由なんかないだろうが。
「まぁ、借金は返したいけど、そんな言葉で騙される奴なんか、今時居るのか?」
「話に乗るか乗らないかはお前の自由だ。しかし、詐欺ではない」
「……解かった解かった。話を聞こう」
 まぁ、どうせ今更、詐欺なんか合っても合わなくても同じだ。それなら、こいつが言う
「良い話」に乗ってやるのも一興だろう。
「よし、ではついて来い、大崎」
「ああ」
 と、俺はそこで始めて振り向き、さっきまで背中を向けて会話をしていた人間の姿を見
た。サングラスを掛けた、どう見てもヤクザ風の大男だった。
「車に乗れ」
「…………」
 俺は早速、話を受けたことを後悔し始めていた。
 ……つーか俺、「話を聞く」としか言ってないんだけど?

「待っていたよ。大崎君」
 車で連れてこられた先は、幸いにもヤクザの事務所ではなかった。いや、多分事務所は
事務所なんだけど、穏やかな方の。しかし、置いてあるのは机と椅子一個ずつだけの、実
に殺風景な事務所だった。
 そして、連れてこられたその事務所(みたいな所)で待っていたのは、ここまで俺を車
に乗せてきた大男とは全く違う、若い二枚目の男だった。ちなみに大男の方は扉の前で手
を後ろに組んで黙って立っている。帰れん。
「で、良い話って何すか?」
 立場上、敬語を使うべきか迷った結果、微妙に体育会系になってしまった。
「その前に、自己紹介からさせて貰っていいかな」
 その男は、座っていた椅子から立ち上がり、右手を俺の方に差し出した。
338Neck 3/5 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/26(日) 20:35:00.41 ID:G1zzhOvv0
「私は今泉 春樹。訳あって、小さな会社の社長をやっている」
「俺は大崎 悠。無職っす」
 名前は既に割れていることは解かっているが。俺は今泉の手を握った。
「それで、良い話って何すか?」
「急かすね」
 今泉は実に自然な動作で俺の手を離し、机の裏から一つのダンボール箱を取り出した。
「何すかそれ」
「ルーレットだよ」
 そう言いながら、今泉はダンボール箱からそれ、ルーレットを取り出し、机の上に置い
た。テレビでしか見たことがないが、多分ラスベガスのカジノとかに置いてあるのと同じ
タイプの物だろう。一生関わることはないと思っていたが。
「まさかそれで、俺の借金を賭けて勝負とか?」
「そうだよ」
 当たり前のことのように、今泉は答えた。
「ただし一回勝負だがね」
 俺は何も言わないのを見て、今泉はルールの説明を始めた。
「このルーレットには赤と黒、二種類の穴がある。ルーレットを回す、ボールを入れる。
赤か黒、どっちにボールが入るか君が当てたら君の勝ち。簡単だろう?」
「俺が勝ったらどうなるんすか?」
「君の借金はチャラだ」
「チャラ!?」
「ただし外せば、君の借金は十倍だ」
「十倍!?」
「実は君の借金は既に私が全て返しているんだよ。だから、君の頭を悩ませていたあの借
金取り供とももう会うことはないだろうな」
 俺は何も言えない。
「イカサマなんて言われたら敵わないからね。ルーレットは私が回すが、ボールを投げ入
れるのは君で良い。どうだい、やるかい?」
 今ならまだ断ることが出来るが。今泉の言葉にはそんなニュアンスが含まれていた。
「一つ、聞いて良いっすか?」
339Neck 4/5 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/26(日) 20:35:32.27 ID:G1zzhOvv0
「何だい?」
「こんなことして、あんたに何の得が?」
 普通に考えれば、得はある。俺が負ければ、俺の十倍の借金がこの男のものになるのだ。
 しかしそれは、俺がそんな金を払えればの話だ。元の借金ですら返すことは半分諦めて
いた。十倍なんか、ひたすらにどうやって踏み倒すかを考えるか、死ぬかしかないだろう。
俺には、払えない。この男には得がない。
「だって、」
 しかし、今泉はその顔に微笑みを湛えながら答えた。
「だって、楽しいじゃないか」
「は? 楽しい?」
「そうだよ。君の人生はもう終わっている。それをどうひっくり返すか、それとも返せな
いのか。見るのが楽しい」
 勝負に挑戦する俺を見るのが楽しい。
 勝負に勝って、終わった人生をひっくり返す俺を見るのが楽しい。
 勝負に負けて、終わった人生をさらに終わらせる俺を見るのが楽しい。
 なるほど、この男に損はないのだろう。俺には理解出来ないが。
「じゃぁ、なんで俺なんだ?」
「君が余りにも、借金をしている人間らしくなくってね」
「どういう意味だ」
「借金をしている人間は普通、街中であんなにキョロキョロしていない」
 ああ、確かそんな意味の諺があった。
「いやでも、それだけ?」
「それだけさ。逆に言えば、借金をしている人間は余りにも皆同じなんだよ」
 おもしろくないことにね、と今泉は付け加えた。
「それで、勝負、やるのか? やめるのか?」
「…………」
 元々、詐欺に合うつもりでやってきたのだ。こっちはこんなに割の良い話だと知って安
心したぐらいだ。気になる事も全部聞いた。断る理由は無いだろう。
「やる」
「よし、ではボールを取れ」
340Neck 5/5 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/26(日) 20:36:07.57 ID:G1zzhOvv0
 言われた通り、俺はテーブルに置かれた球を一つ取った。
「では、私がルーレットを回したら、君がボールを投げ入れてくれ。して、赤と黒。どっ
ちに賭ける?」
「黒」
 別にどっちでも良かった。どうせどっちも確率は同じだ。
「では、始めよう」
 そう言って今泉は、慣れた手つきでルーレットを回転させた。
 俺はボールを――――投げない。
 俺も今泉も、何も言わない。
 十数秒後、ルーレットの回転は遅くなり、しばらくすると完全に停止した。
 それから俺は、止まったルーレットの黒の穴にボールを入れた。


 俺の借金はこうしてなくなった。
 今泉は、借金がある人間は周りを見ない、なんて言っていたが、言われてみれば、俺は
借金をしていたときは、する前より周りを見ていなかった気がする。首を振ると、借金取
りと目が合うかも知れない、なんて心配はもうする必要が無いのだ。
 今泉は約束を守ってくれた。借金がすべて返済されていたことは、既に確認済みだ。あ
んなやり方では正直認めてくれないだろうと思っていたが、今泉は大笑いして負けを認め
てくれた。金持ちの考えることは解からん。
 俺にはもう借金は無い。身が軽い。軽すぎる。
「軽すぎる……」
 確かに、俺にはもうマイナスは無かったが。プラスも無かった。今ある金ではもう一週
間も持つまい。
 しかし、金は天下の回り物。いつ俺のところに回ってきてもおかしくないのだ。
 そして、運命は引き寄せるものだと、俺は思う。回って来るのを待つのでは駄目なのだ。
 だから俺は、飛ぼう。ラスベガスへ。

 飛行機代は、新たな借金になったが。
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:37:07.13 ID:G1zzhOvv0
終わりです
今回も少なめな感じですかねー
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:41:24.13 ID:9vyBReo10
>>316-320 No.10
>>328-333 No.11
>>336-340 No.12
いちおまとめ
343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:50:18.80 ID:Z/2XaHz50
カオスを考えると、多い気がする。
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:51:21.47 ID:a1liMEDv0
ところで、ブレードランナーではなくアンドロイドは電気羊の夢を見るかを読んだことのある人はどれくらい居るんだろうか?
俺は攻殻とこれのせいでサイバーパンクに両足突っ込んだが
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 20:56:55.33 ID:doNpiTpA0
読みたい本リストに名を連ねております
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:01:51.31 ID:iQHJvrs6O
ディックとギブスンはSF考えるとき頭の片隅にある
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:12:52.01 ID:ET4IFkoi0
お題をおくれ
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:15:05.79 ID:M0JhiF3hP
石化した魂
349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:16:18.31 ID:ez6m72r3O
パンとコーラ
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:19:44.66 ID:TFvdkdAh0
とりあえず書きあがったけどどうするか。あきらかに五レスに納まらないしな。
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:27:17.55 ID:8IL1kdvW0
>>344
ギブスンからなら完璧な涙とかそっちに行かないか?


↓お題。
352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:29:11.46 ID:YkC0MNDiO
入口


電気羊も好きだけど夏への扉も好きです
後者はパンクではないかな。SFだけど
353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:32:51.34 ID:8IL1kdvW0
把握
354仕掛け時計 0/2 ◆3rYRhluiQ. :2008/10/26(日) 21:39:56.19 ID:YE2RBFBI0
拙いですが品評会投下します
355仕掛け時計 1/2 ◇3rYRhluiQ:2008/10/26(日) 21:43:18.50 ID:YE2RBFBI0
 彼の半生は順風満帆と言って差し支えないものだった。大抵の人間は彼の歩んできた人生に羨望の眼差しを注いだし、彼の仕事
ぶりは上司にも同僚にも好評だった。大学からの友人や仕事仲間にも恵まれ、彼自身も全く自分の人生に満足していた。未来は希
望に満ちていると彼は信じていたのである、少なくともこの頃までは。
 親しい仕事仲間から久しぶりに家に食事に来ないかという誘いを受けた翌日、株価は暴落した。街は蜂の巣を突いたような騒ぎ
になり、騒ぎが収まった後、誰もが遂に自分達は栄光を失ったのだと理解した。彼もまたその恐慌から逃れることなど出来なかっ
たし、いくらか上手く立ち回っていたがそれは首吊り台の前に並んだ長い列の後ろのほうに陣取っているというだけだった。
 数週間の後、光り輝いていた全てのものはこの街から姿を消し、代わりに疲れきった灰色の空気が街の底に澱んでいた。
 その日、彼は街中の誰もと同じように疲れた顔で家へと帰り、そして、食事の約束をした彼の友人一家がこの世から天ではない
方のあの世に姿を消した事を知った。
 彼はこれまでに無い程の恐怖を覚えた。自分とて彼らと同じような未来がやってきても何らおかしくないのだと、初めて現実感
をもって思い至ったのだ。今までの未来への希望は病的なまでの恐怖感にまるまる置き換わってしまった。彼は逃げるようにベッ
トに潜り込み、嘗ては愛おしかった“明日”に震えながら眠りについた。
 彼はそれからの数日間、止め処なく訪れる未来にただ恐怖し続ける日々を過ごした。
 ある朝、犬が吠えるのを聞いて彼は目を覚ました。布団から這い出るとぐるりと首を回し時計を探し、夜中のうちにベットから
転がり落ちたのだろう時計を漸くのことで床の上に発見したとき、彼は漠然とした一種の違和感に襲われた。手間取った割りに、
その時計がそこにあるという事がまるで当然であるかのように感じられたのである。
 この漠然とした違和感は、ラジオを点けたり、新聞を読んだりしているうちに一層強く感じられ、ある一点を超えると明確な形
を持ちはじめた。彼はそれら全てにあるはずのない“見覚え”を感じたのである。彼はいよいよ混乱しはじめた。既視感というに
はそれはあまりに具体的ではっきりとしていたし、最早それに現実的な何かしらの既存の定義を与えることは不可能になっていた。
 彼は外の様子を確かめに行こうと思い立った。それは好奇心というには切実すぎる、いわば焦燥感による衝動であったので、そ
れが自らの日常を自らの手で完全に終わらせるに等しい行為であると予感していても、その衝動には抗いがたかった。
 そして結局の所、そんな葛藤とは関係無しに彼の行動は既に彼自身の手から離れていたことに気づかされることになる。
 おぼろげだった“未来の記憶”は次第に明確なヴィジョンを帯びて、舞台か何かの台本のように決まりきった行動を彼に要求し
それに背くことは絶対のタブーなのだと主張しはじめた。その縛りは彼が如何に抵抗しようとも緩められることはなかったし、そ
んな時は彼の身体は彼の言うことなどまるで聞かなくなり、元の主人を置き去りにしてその“台本”の元に駆け去ってしまうのだった。
 彼はただ“未来の記憶”に付き従うしかなかった。少なくとも自分自身がそれに従順さを示している間だけは仮初であっても
彼は自身の支配者でいられたからだ。
356仕掛け時計 2/2 ◇3rYRhluiQ:2008/10/26(日) 21:46:02.40 ID:YE2RBFBI0
 街に出ると、彼は常識的な世界が既にどこか遠くに消え去ってしまったのだと理解した。彼がいつも朝食を買うベー
グル屋も、オフィスビルの前で性懲りも無くこれで幾度目かの注意を警備員に受けている少年達も、忙しそうに歩くビ
ジネスマンも、彼の目には何か異様なものに変わってしまって見えた。それは丁度、時間が来ればくるくると踊りだす
仕掛け時計の人形のようであり、未来への神秘性や可能性といった人間が人間たらんとする――又は生物全てに共通す
る――大切な要素を剥ぎ取ってしまった成れの果てだった。彼の中に芽生えた未来への果てることのない恐怖心は遂
に、彼から未来を奪い去ることで終止符を打ったのだ。彼はこの世界でただ独りになった。
 悲壮感のうち、導かれるまま公園にたどり着いた彼はそこでおかしな女に出会った。女に出逢う“予定”はなかった
のである。女はこちらに近づき赤い唇を開いた。

 「貴方、悲しそうな顔をしているのね」
 口はやっぱり開けなかったが、少なくとも“身体”の方に話しているわけではなさそうだったから、そのまま頭
の中で話すことにした。
「ああ、全く悲しいよ。どうしてこんな風になっちまったのかな」
 女が楽しそうな顔をした。
「あら。ご自分で望んだことでしょう?」
「少なくとも、こんなことは望んでないと思うよ」
「そんなことは無いわ。だってずっと願っていたでしょ。明日なんて来なくて良いって」
「そうだとしてもこれはあんまりだ。これに比べたら元の方が随分とましだ」
「でも貴方はまたこれを望むわよ。貴方は未だに怖がっているもの」
 そうかもしれないのは確かに分かっている。
「もう戻れないのだろうか?」 
「そうね」
 随分と淡白に女が告げた。私は最早抵抗する気力をすり減らしていたし、元の世界に戻れたとしても行き着く
先など目に見えており、その途中でずっと恐怖し続けるのはやはり耐え難かった。
「ならば、この私を解放してくれないだろうか。この世界で独りいるのには耐えられない」
「それが望み?」
 女が怪しく嗤った。この女は悪魔なのかもしれない、私の魂が欲しかったのだろう。だがそれでも良い。
何だか疲れてしまった。

 そして、世界にはただ仕掛け時計だけが残った。くるくると人形が回っていた。
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:47:30.85 ID:YE2RBFBI0
終了です
358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:06:54.10 ID:TFvdkdAh0
あらあら
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:09:49.63 ID:9vyBReo10
うふふ
360まわる 0/5 ◆IPIieSiFsA :2008/10/26(日) 22:26:23.48 ID:TFvdkdAh0
品評会投下します。
5レスです。
久しぶりに昔に戻っていっぱいいっぱいです。
先に謝ります。ごめんなさい。
361まわる 1/5 ◆IPIieSiFsA :2008/10/26(日) 22:26:44.82 ID:TFvdkdAh0
 警視庁捜査一課の平島隆は頭を悩ませていた。現在自分が担当している連続放火事件が解決しないからである。しかも、解決の糸口すら見えていない状況だった。
 これまでに報告のあった放火は六件。いずれも小火程度で、中には消防が到着した頃には住民の手により消化されていたケースもあった。なので人的被害は出ていない。これまでで最も大きな被害といえば、自動車工場の大型扇風機が全焼した
くらいである。平島はこの六件に共通点を見出せずにいた。時間帯や曜日もバラバラで、まったくのお手上げ状態だった。
「例の連続放火か?」
 デスクで捜査資料と睨めっこをしていた平島は、不意に掛けられた声に顔を上げる。そこには捜査一課の先輩でもある五里川がコーヒーを手に立っていて、平島は疲れた顔で頷いた。
「俺もその事件は気になっててな。上は小火だからって重く考えていないみたいだが、いつ大きな火事になるともわからん。どうにも、な」
 渋い顔でコーヒーをすする。平島が尊敬する五里川の言葉だけに、彼の身にも重くのしかかる。
「けど正直、手詰まりなんすよね。現場で聞き込みしてもこれといった話は聞けないし。現場を繋いだ円を書いてみても、その中心は花の日時計っすからね。犯人に繋がりそうな物が何にもないんすよ」
 平島の口調はうんざりとしたもので、どうしようもないもどかしさが表れている。
「なるほどな。まあ、事件の概要を説明してみろ。他人に話すことで、何か糸口が見つかるかもしれんぞ」
 五里川に言われ、一理あると思った平島は自身の整理の意味も込めて説明を始めた。自分は手帳を開き、捜査資料を五里川に渡す。
「最初に事件が起こったのは、五週間前の水曜日。『江戸前回転寿司』っていう寿司屋のゴミ箱が燃やされました。12時頃、店員がゴミを捨てに外に出たところ発見、すぐに消火したそうです。
 二件目はその次の週の水曜日です。『新井Laundromat』ってコインランドリーで起きました。店内で、ご丁寧にも濡れた洗濯物で囲んでおいて、新聞紙を燃やしたみたいです。10時過ぎに通報者が店に来たところ、もう火は消えかかっ
ていたそうです」
「大事にはしたくないってことか。馬鹿にしやがって。それで『らうんどろまーと』ってのは何だ?」
「英語でコインランドリーのことをそう言うらしいですよ。
 そして三件目は二日後、金曜日に『藤川オート』って自動車工場の扇風機が全焼しました。一番の被害は今のところこれですね。通報は21時15分です。従業員が忘れ物を取りに戻ったところ、扇風機が燃えていたそうです。
 四件目は翌週の土曜日。川向こうにある『運動公園』の回転遊具の中で新聞紙が燃えてました。時間は19時を回っていたので、子供などに被害はありませんでした。
 五件目はさらに次の週の金曜日。先々週の話ですね。自転車屋の店先で機械油に火をつけたみたいです。もっとも、道路で燃えただけで被害はありません。6時から6時半の間に火はつけられて、自然に消えたみたいです」
「なんだその曖昧な情報は」
「この自転車屋の前を毎朝のジョギングコースにしてる人がいて、「6時に通った時は火はついていなかったけど、7時前に通った時にはもう火は消えていた」だそうです」
「なるほどな。もう少し時間がずれてりゃ、犯人と鉢合わせたかもしれないな」
「鉢合わせなくても、後姿だけでも目撃できてたら、もう少しなんとかなるんですけどね。
 で、六件目が先週の金曜日。現場は『JW‘s HairSalon』。店で使ったタオルを外で干してるんですが、15時頃そのタオルが燃やされました。これも幸い店員がすぐに気がついてタオルが一枚燃えただけですみました」
 平島は開いていた手帳を閉じる。一緒に軽くため息もついた。
「今のところはこれだけか。さっき言ってた、中心がどうこうってのは?」
「それはこれです」
 五里川に現場周辺の地図を見せる。そこには放火のあった地点に印がつけられていて、それをたどった綺麗な円も描かれていた。ただ、印の位置としては円の左半分に偏っていて、右側は一つしか印がなかった。
「こうなると、こっち側であと二件くらいやりそうな気がするな」
 印の寂しい円の右側を指差す。それは平島も感じていたことだ。そしてもしそうなら、この円の線上だろうとも思っている。だが、この円の半径は五キロはある。どこかに絞り込もうにも、平島には絞り込めなかった。
362まわる 2/5 ◆IPIieSiFsA :2008/10/26(日) 22:27:04.91 ID:TFvdkdAh0
「犯行時間が昼夜問わずだからな。犯人は主婦か学生か、無職ってところか。勤め人ってのは考えにくいな」
「そうなんすけど、それって全然絞り込めてないっすよね」
 平島は大きくため息をついた。事件の整理はできたが、新たな発見はなかった。お互いに言葉を無くす。しばらく無言の時が流れたが、五里川がそれを破った。
「俺の知り合いで等々力という男がいるんだが、そいつに相談してみるか?」
 突然の言葉に平島は眉根を寄せた。
「ここだけの話だが、俺もいくつか助けてもらったヤマがあってな。頼りにしている男なんだ」
 照れたように笑い、後頭部をかく五里川。五里川の階級は警部。数多くの場数を踏んでいるベテランで、捜査一課のエースといってもいい。その彼の口から出てきた言葉に、平島は驚きを隠せなかった。
「勿論、口は堅いし信用できる人間だ。何より、俺よりも頭が切れる。どうだ、お前がよければ連絡してみるが」
 八方塞となっていた平島は、驚きながらもその申し出を喜んで受けた。

 翌日の木曜日。五里川に教えられた一軒家に平島はやって来た。実は先ほどまで、七件目の現場にいたのだ。何故七件目と断定できるかと言うと、被害にあった『Super Pools』という室内型のプール施設が、現場を繋いだ円上に
あったからだ。何者かが深夜に忍び込んで、流れるプールの案内板に火をつけたようだった。やはり犯人には大きな火事を出す気はないらしく、こちらも案内板が少し焦げただけだった。
 そういう訳で平島は気が重たかったが、それ以上に今から会う人物のことを考えて緊張していた。自らが尊敬する五里川が頼りにしている人物である。どれだけの英傑なのかと、恐る恐る呼び鈴を鳴らした。
 程なくして開かれた扉から現れたのは、メイド服の女性だった。
 予想外の展開に平島は呆気に取られた。しかし女性はそんな平島に構うことなく、深々と頭を下げて挨拶をする。慌てて平島も頭を下げた。
「等々力家へようこそ、平島。私は橘。ここのメイド。等々力が中で待っている」
 淡々と短く告げるその口調は、彼が持っているメイドのメージを完全に覆した。平島はそのことに驚きを隠せなかったが、何も言えないまま彼女に促されて家の中へと入った。そして自分の方からは名乗っていないことに気づいたが、こちらも
言い出すタイミングを見つけられないまま、リビングへと通された。
 ソファにテーブル、テレビにサイドボード。ちらりと視線をやった程度だが高級そうな家具は見当たらなく、ごく普通の一般家庭のリビングといって差し支えのない様相だった。平島が室内に入るのに合わせて、ソファに座っていた男が立ち
上がった。ゆったりとした足取りで近づいてくるその男は、にこやかな笑みを浮かべて右手を差し出した。
「はじめまして、等々力です。お話はゴリ川警部から伺っています」
「はじめまして、平島です。……どうぞ、よろしくお願いします」
 等々力の手を握り返した平島は、少し迷った後で、そう返した。メイドに驚いた平島だったが、等々力本人にも驚かされた。五里川警部が信頼する人物が、柔和な笑顔の青年――それも自分と歳の変わらない、二十代半ばだったからだ。
 等々力に促されてソファに腰掛けた平島は、懐から名刺を取り出して彼に渡す。にこやかな笑顔で受け取った等々力は「ありがとう」と言った後、「申し訳ないのですが、仕事柄、名刺というものを持っていないのです。すみません」と続けた。
「失礼ですが、お仕事は何を?」
「自宅警備員です」
 平島には何のことかわからなかったが、等々力がやはり笑顔のままだったので深くは聞かず、どこかの警備会社に勤めているのだと理解した。そういうところでは仕事柄、名刺がないことも不思議ではない。
「失礼する」
 橘がトレイにティーセットを乗せて現れた。優雅な手つきでティーカップを配し、紅茶を注ぐ。それだけで美味しさが増しているかのように平島には感じられた。紅茶を注ぎ終えた橘は再びトレイにティーポットを乗せると「自宅警備員と言え
ば聞こえはいいが、ようはニート」と言って頭を下げ、リビングを出て行った。平島は呆然とそれを見送る。
363まわる 3/5 ◆IPIieSiFsA :2008/10/26(日) 22:27:24.04 ID:TFvdkdAh0
「彼女は正直なんですよ。せっかく私が対外的な事を考慮して聞こえの良い名称で伝えたのに」
 相変わらず等々力は笑顔だった。平島は二人についていけていない自分を感じながら、五里川がこの二人とどういう風に接しているのかが気になった。
「さて、それでは本題に入りましょうか。今日は、その為にいらしたんでしょう」
 等々力の顔が真剣みを帯びる。締めるべきところは締めるようで、平島は少し安心した。
「まず、これを見てください」
 平島はそう言ってテーブルに地図を広げる。昨日、五里川にも見せたものだ。
「これは、放火のあった現場に印をつけて、線で結んだものです。見ての通り、綺麗な円が描けます。そして」
 ポケットから赤のサインペンを取り出して、六件目の事件から北北東の円上に印を付け足した。
「これが昨晩から今朝のいずれかの時間に起こった、七件目の現場です」
 地図を眺めていた等々力はゆっくりと顔を上げた。
「よろしければ、事件の概要を教えていただけますか?」
 平島は捜査資料を手渡し、昨日、五里川にしたのと同じ説明を繰り返した。等々力は五里川と違って質問してくることはなく、黙って聞き、資料を見ている。説明を終えて、自分の手帳から視線を等々力へと戻した平島は、いつの間にか彼のす
ぐ後ろに橘が立っているのに気づいた。何となく平島が持っているイメージでは、メイドはもう少し離れて立つような気がしたが、他所のことだけに口に出すのは憚られた。
「なるほど。最初の事件をスタートとして、まさに円を描くように順番に事件が起きているのですね。円の中心から見て最初の事件は12時の方向。二番目が10時、三番目が9時。四番目が7時で五番目は6時。六番目は3時で、最新の事件は
2時ですか。綺麗に逆時計回りですね」
 等々力は最初に見せていたのと同じ笑顔を作る。
「そうなんです。だから、もしかしたら昨晩の件でもう終わりかもしれない、そうも思っているんです」
 平島は素直な思いを告げた。そう、これが綺麗な円を描くことを目的としているのなら、これで終わりだという可能性は高い。そうなると、犯人の手がかりはないまま、事件は迷宮入りしてしまう可能性もある。
「確かにそれ」
「いいえ。まだ事件は終わらない」
 平島に同意しかけた等々力を遮って、橘が口を開いた。等々力が読んだ後の捜査資料を手にしている。
「公になっていない事件が四つあるはず。地図で言うと、ここと、ここと、ここと、ここ」
 そう言って橘が指し示したポイントを先ほどの等々力の説明に倣って言うなら、11時の地点と、8時、5時と4時の四つだった。
「この四つに、ですか?」
 疑問を抱きつつ平島は尋ねる。
「そう。これは12をスタートとしたカウントダウン。それぞれの事件が起きた時刻、24時表記で書かれているからわかり難いけれど、12時表記に直せば12、10、9、7、6、3ときている。恐らく昨晩の事件は2時に起きたはず」
「つまりカウントダウンだから、抜けている数字があるはず。そして、まだ2なので終わっていない、ということかい?」
 等々力が補足をして尋ねる。橘は小さく首を縦に振った。
「そうか、ついつい習慣で24時で書いているけど、そういうことだったのか」
 平島はしてやられた、という表情で額を手で打った。
364まわる 4/5 ◆IPIieSiFsA :2008/10/26(日) 22:27:51.60 ID:TFvdkdAh0
「ということは後、一件……いや、カウントダウンならゼロも含めて二件あるのか」
 橘は頷く。彼女の言葉は短く、説明の足りない部分もあるが、彼女の眼差しは信じるに足る、平島はそう判断した。
「そうですか。ではとりあえず、次に行われる犯行現場を考えましょう。犯行時間は昼の1時ですから、場所さえ絞り込めれば犯人を捕まえられます!」
 現実味を帯びてきた犯人逮捕に、平島も興奮を隠せないようだった。
「場所でいうと、円の中心にある日時計から1時の方向で円上……あ、くそっ」
 平島が舌打ちをする。どうしたのかと等々力が覗き込むと、そこは『DREAM ELDORADO』という遊園地だった。
「遊園地じゃ広すぎて、絞り込めませんよ……」
「等々力、電話帳」
 橘の指示に、等々力が素早く動く。その光景に、平島はどっちが主かわからなくなっていた。
「この遊園地で、まわるアトラクションを探せばいい。そこが現場」
「まわる? どういうことです?」
「すべての現場の共通点。回転寿司、洗濯機、扇風機、回転遊具、自転車、ヘアサロンのサインポール、流れるプール。いずれも『まわる』もの」
 平島は橘の解説に思わず声を上げた。これまで、事件に共通点などないと思っていた。けれど、あったのだ。『まわる』という共通点が。
「そうか。犯行そのものも時計の逆周り。これも『まわる』もの。ということは、遊園地だと観覧車か……いや、あそこには観覧車はなかったな。となると……何か回転するアトラクションか」
「メリーゴーランドとかもありますよね。回転木馬」
 言ったのは等々力。胸に抱えた電話帳を平島に手渡す。相変わらず微笑んでいる。が、彼の言葉に橘が表情を崩した。
「今何時?」
 平島に問いかける。彼が1時半だと告げると、彼女は微かに眉をしかめた。
「遅かった。たぶん、もう犯行は行われた。恐らく、火をつけられたのはメリーゴーランド。」
 橘は言う。しかし、平島にはそこに至った経緯がわからない。けれど、ちょうど電話帳で『DREAM ELDORADO』の電話番号を見つけたこともあって、橘に尋ねる前に電話をした。五分ほどの応答の後、平島は疲れた顔で言った。
「先ほど、メリーゴーランドの案内板に火がつけられたそうです。警察には通報したそうなので、私も行きます。また後日、伺ってもよろしいですか?」
 等々力はにこやかに、橘は無言で、二人とも了解してくれた。平島は二人に礼を言って等々力家を後にした。

 二日後、等々力家を訪れた平島は二人――彼の心情的には橘に報告した。彼女の指摘したとおり、消防や警察に通報のない小火が四件あった。すべてを時系列で表すなら、二件目が陶芸教室を開いている『藤本陶芸』。一件目と同じ週の土曜日、
夜の11時頃。窯に使う薪が燃えただけだったので通報しなかったようだ。五件目は『GROW UP』という名のラブホテル。運動公園で事件のあった週の水曜日。時間は朝の8時。回転ベッドの上に置かれたバケツの中で新聞紙を燃やしたよ
うだった。これが通報されなかった理由は、ホテル側に警察に踏み込まれたくない理由があったらしい。平島は今回、その件に関しては不問にしていた。元々、部署が違うこともある。八件目と九件目は先週の水曜日と木曜日。つまり水、木、金と三
日続けて犯行が行われた事になる。『SKATING PLAZA』というスケート場と私鉄環状線の『桃谷』駅。いずれも、夕方の5時と朝の4時頃だった。どちらも、騒ぎにもならないほどの小火だったから、警察に連絡はしなかった。事件では
なく事故だったとして処理したようだ。これで、彼女の説は正しかったことが証明された。そしてそれは同時に、まだ事件が残っているという証明でもある。
「最後の事件はどこであると思いますか。これまでの事件から、考えられます?」
「カウントダウンが時計に見立てられていること、そしてゼロは数学のグラフなどで中心となる。このことから、ここであると考えられる」
365まわる 5/5 ◆IPIieSiFsA :2008/10/26(日) 22:28:17.61 ID:TFvdkdAh0
 彼女が指し示したのは、地図に描かれた円の中心。『花の日時計』だった。それは、平島の考えとも一致している。しかし、彼には犯行日が特定できなかった。
「犯行日時は明日の日曜日、深夜0時。犯行日の特定は、犯行現場より推測が可能。これまでの事件に関わる物が曜日と関係している。自動車工場なら金属。プールが水。コインランドリーも洗濯に使用する水。それぞれが曜日に対応している。メ
リーゴーランドは回転木馬から木曜日だった。この場合、日時計の『日』がそれに当たる。つまり日曜日」
 橘は淡々と説明する。等々力はソファに座りにこやかに笑い、彼女は彼のすぐ真後ろに立っている。相変わらず等々力越しに彼女と会話をしている平島だが、それにも慣れていた。
「ありがとうございます。絶対捕まえてきます!」
 平島は勢いよく立ち上がると、深く頭を下げた。見た目は二人に。心情的には橘に向かって。

 果たして彼女の言葉どおり、日時計に放火しようとしていた犯人を平島は捕まえた。取調室で犯人は独りごちる。
「くそっ、ここで捕まらなかったら、もっと面白いことになったのに」
「警察署に火をつけるつもりだったんだろ」
 平島の指摘に、犯人は驚きの表情を作った。
「……何で、知ってるんだ?」
「お前が考えることくらい、警察はわかってるんだよ」
 余裕の笑みを浮かべて答える平島。
「何だ。どっちにせよ、俺の負けだったのか……」
 犯人は激しくうなだれ、以降、素直に取り調べに応じるようになった。

 あの日、等々力家を出ようとした平島に橘が告げた。
「ここで捕まえられなかったら、恐らく円内の警察署が狙われる」
「どうしてです?」
「犯行現場をすべて英語に直してその語尾を組み替えると、『POLICE STATION』になる。だから」
「あっ、そんな……。でも、なんで警察なんですか。ただの偶然じゃ。それに、警察にはまわるものなんてないですよ」
 平島の言葉に、橘は僅かに口元を緩めた。恐らく、彼女が見せる笑顔なのだろう。
「ある。おまわりさん」
                              ―完―
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:28:52.50 ID:TFvdkdAh0
はい。完了。
では、カオスのない日曜でありますように。
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:30:10.46 ID:Z/2XaHz50
またいつもの、はじめ天才、中ぱっぱ。終わり複雑、後の祭りジレンマに陥りそうだ。
今終わり複雑状態。推敲しなければ。
368 ◆R4Zu1i5jcs :2008/10/26(日) 22:31:54.29 ID:tZJ9n/21O
品評会投下します
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:32:09.39 ID:RkiHUdLP0
初めの部分ですら天才と称してしまえるのはナルシストだけ
370LOVER SOUL 1/5 ◆R4Zu1i5jcs :2008/10/26(日) 22:33:25.29 ID:tZJ9n/21O
 えー、今の世の中は日進月歩。絶え間なく技術は発展。現実がSFの世界に追いつくなんてことも遠い未来ではなくなって来ている。
 そんな訳でウチの研究室でも最先端の研究が行われていた。
「魂の、解析ですか?」
「その通り、我々人類はこれまで様々な謎を解き明かし、生活をより豊かなものにして来た。が、生命。それでもこれが何なのかさえ分かっていない」
 教授は熱弁をふるう。もっともここは一個人の研究室で大学とかではない。教授を名乗っているのはカッコイイからだそうだ。
「そこでだ。私は魂の解析をする装置を開発した。まだ試験的だがな」
「えっ!? 凄いじゃないですか」
「そう、私は凄いのだ。では小宮君」
 ぽんぽんと肩を叩かれる。そう、小宮君は自分だ。
「実験台になってもらう」
「ええぇー」
「仕方あるまい。助手は君一人だ」
 無駄に広いこの部屋には教授と自分しかいない。
「危険はないんですか?」
「大丈夫。保険には入っているだろう」
 にっこりと微笑まれても怖いだけだ。
「いやいや。危険なんですね?」
「まぁ、試験段階だからな。まぁ、死にはしないだろ。植物人間とかにはなるかもだけど」
 と教授は遠い目。しかし、あまり逆らう事は出来ない。合衆国の非人道的な研究から逃げ出した自分を教授は助けてくれたのだ。
371LOVER SOUL 2/4 ◆R4Zu1i5jcs :2008/10/26(日) 22:34:46.63 ID:tZJ9n/21O
「まぁ、分かりました。教授を信じます」
 そう言うと別室に連れて行かれた。
「こんな部屋いつ……」
「ほらほら。寝転がって」
 中央には手術室みたいな寝台がありまわりに五、六個の大きな箱がある怪しい部屋だった。
 寝台に寝転がると大量のコードを体中に繋がれ、上からカプセルみたいなもので閉じ込められた。
「そこから抽出した魂をこの超ウルトラデリシャススーパーコンピュータで解析。ちなみに容量は天文学的数字過ぎて言えません」
 ああ、まわりの箱は超ウルトラデリシャススーパーコンピュータの一部……ああ、なんだか意識が遠く、なって、来、た……。

 目が覚めると教授は喜々としてキーボードを叩いていた。
「いや〜、脳の解析の時より情報が膨大でびっくりだ」
「あぁ、あの時は超スーパーコンピュータで対応出来ましたからね」
 画面を覗き込んでいると、はたと教授の手が止まる。
「これによると輪廻転生はあるみたいだ。ほら」
 見るとrinnetensyoなんてフォルダが。まるでお笑いだ。
「ちょっと見せてくださいよ」
 マウスに手をかけようとすると教授がそれを阻む。その拍子に選択されていたrinnetensyoフォルダが削除されてしまった。
372LOVER SOUL 3/4 ◆R4Zu1i5jcs :2008/10/26(日) 22:35:54.61 ID:tZJ9n/21O
「あっ」
「あーっ、何をするんだ小宮君!!」
 大声で叫ぶ教授。
「あのな、魂一つ一つが世界の根源に繋がって輪廻転生しているんだ。だからこのrinnetensyoフォルダが消されたらお前は輪廻転生されなくなるらしいんだ」
「で、でも来世の話でしょ? 別に構わないですよ」
 あまりの剣幕に思わず腰が引けてしまう。
「たとえどんな小さな歯車でも取れてしまえば機関は壊れてしまう。だから世界の崩壊を意味する。それに……」
「そ、それに……?」
「来世でも愛してくれると言ったじゃないか……」
 こんな時に乙女になられても……。確かにそんな風なことは言ったけどさ。
「でも今は実験中。教授と助手です。私生活を持ち出すのはやめましょう」
「だって……だって」
「まだ手はあるはずです。世界に歪みが出来る前に何とかしないと」
 生憎、消去されたファイルの復元は不可能だった。
「もう駄目……」
「まだです! 教授のrinnetensyoフォルダをコピーして移植すれば!」
373LOVER SOUL 4/4 ◆R4Zu1i5jcs :2008/10/26(日) 22:37:20.86 ID:tZJ9n/21O
 その妙案はすぐさま実行された。超ウルトラデリシャススーパーコンピュータの容量も残り一バイトと本当にぎりぎりの所だった。
「なぁ、このrinnetensyoファイル。私のをコピーしたから私と同じところに転生されるのか」
「そしたら、双子っていうことか?」
「そんなの嫌よ。時代場所は近いのがいいに決まってるけど血が繋がってたら意味がない」
 かしゃかしゃとキーボードを叩きrinnetensyoファイルをいじる。
「だったら幼馴染みにしないか? 憧れなんだよなー」
「もうなんか怪しいわよ?」
「るっせ。漢の浪漫って奴だよ」
 なんて幸せな言い合いをしているうちに夜は更けそして朝が来る。
 時計がくるくるくるくると日常の時間の経過を示し、やがて自分たちの身体は朽ちて寿命を迎えた。


「魂の解析ですか?」
「そうよ。私たちは来世でも一緒なんだから!」
 自分のことを教授と呼ばせる彼女が無邪気に笑った――。


 そう、たとえそれが仕組まれた愛だとしても、世界が何回まわったとしても、自分たちの愛は永久に不滅なのだ。

374 ◆R4Zu1i5jcs :2008/10/26(日) 22:38:35.28 ID:tZJ9n/21O
投下終わり
久し振りだから1レス目を間違えた。馬鹿だね
375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:40:52.29 ID:TFvdkdAh0
まとめスレ、変なのはまあどうでもいいとして、No.09を編集しないといけないのね。
376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:46:22.23 ID:doNpiTpA0
まとめ修正されてる
乙です
377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:00:36.42 ID:uFRx6DIa0
           >>356まで転載完了しましたが、ちょっと時間切れでした。

    ∧,,∧    23時を回りました。
    (´・ω・)   これ以降、品評会作品を投下する方は予約の上指示に従って投下して下さい。
   ( O┬O   予約条件は「レス区切りまで終わり、後は投下するだけ」の状態であること。
≡◎-ヽJ┴◎   予約の締切は23:30となっております。規制中の方は救済スレッドまで。

           では、どうぞ。
378【品評会】メリーゴーランドは二回転 0/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/26(日) 23:01:25.12 ID:Z/2XaHz50
品評会。拙作投下。の予約。
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:03:08.09 ID:uFRx6DIa0
◆BqgMEgxWzg氏、どうぞ。

【順番】
−−−
380【品評会】メリーゴーランドは二回転 1/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/26(日) 23:03:14.79 ID:Z/2XaHz50
ぼくとメリーさんは恋人同士ではないし、最近、巨大な遊園地がオープンした。

 ぼくはいつものように、メリーさんと二人で河原を散歩していた。
「ぼくが高校生の時にね、相思相嫌の仲の男子がいたんだ」と、隣で歩いているメリーさんに話しかけた。
 今日のぼくはなんとなく昔話の気分だった。メリーさんは白いワンピースと麦藁帽で、彼女の少し茶色がかった黒髪がよく
映えている。
 メリーさんはこっちを向き、少しほほえんで頷いた。
「何で彼がぼくのことをきらいになったのかは分からないけど、ぼくは前々からよく敵を作るタイプだったみたい。中学校の時は
男子にはそこそこ人気があったけれど、女子には影で色々言われていたみたいだもん。」
 メリーさんはぼくの半歩後ろで頷いた。いつも彼女はぼくの半歩後ろを歩く。そしてぼくは車道側。でも車が走る道を歩くことは
めったに無い。大抵は今日のように、川沿いの土手を並んで歩く。雨の日には二つ傘を差して、少し暗い話を、晴れの日には
たん、たん、と靴音を響かせて、明るい話をする。今日は曇りだ。
「その男子はいつもぎりぎりぼくの聞こえる所でぼくの悪口を言うの。『あいつ頭大丈夫かよ』『人間かどうかさえ怪しいよな』
って」
 メリーさんは顔をしかめた。
「でも悲しいことにぼくは言い返すことができないの。ああ、でも中学校のころだったら何か言えたかも。あのころは荒れてた
からね。怖いもの知らずだった。その時にたくさんやんちゃした反動か、高校生になったらあまり喋ることが得意じゃなくなった。
だからただ黙って口の中でくやしさを噛んでいるだけなんだ」と、ぼくは前を向きながら自嘲気味に言った。
 メリーさんはぼくの二歩ほど後ろでうつむいている。

 メリーさんとは大学の、イタリア語の講座で知り合った。ぼくが講座で座る席はいつも決まって一番右の、一番前の席。
ぼくがまだ高校三年生だった時、その一年間、ぼくは何度席替えをしようとも、ずっと、右側前方一番目の席だった。何となく、
その時の習慣が抜けず、ぼくは今でもその位置で講座を受けている。
 そして、メリーさんはいつもぼくの隣で講座を受けていた。
 高校が『全』を重んじる感じだとしたら、大学は『個』を重んじる感じだと言える。その中で、高校生のように一つの決まった
381【品評会】メリーゴーランドは二回転 2/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/26(日) 23:04:15.05 ID:Z/2XaHz50
グループを作ることは簡単じゃない。だから交友の幅が広くなって、その質が落ちるのは、ある種当然だ。
 そして、その広くなった交友の幅の端っこに、メリーさんがいた。
 ぼくらの間に、特に劇的な何かがあったわけじゃない。では何故、ぼくとメリーさんは仲が良いのかというと、陳腐な言い方を
すればただ単に、『ウマ』があっただけなのだろう。ぼくらはただ単に、ほとんど理由もなく、淡々と仲がよくなっていった。
 ぼくとメリーさんの間には、電話やメール、手紙といった、一般的なコミュニケーションはなかった。なんとなく、それが
ただしいような気がした。
 ある日、なんとなしに
「二人で散歩に行こう」と、ぼくが提案した。
 最初の散歩はとてもしずかだった。川とぼくとメリーさんの時間だけがさやさやと流れた。空を流れる雲でさえ、ぼくらに遠慮
して、流れることをやめてしまったかのようだった。
 その時もメリーさんはぼくの半歩後ろでほほえみながら歩いていた。
 こうしてぼくらの散歩は習慣になった。

 後ろのメリーさんが目で「高校はたのしくなかったの?」と尋ねてきた。ぼくは首を振り、「たのしくはなかったかな」と答えた


「友達といったら根暗な子が二、三人。みんなクラスのあまりもの。鍋みたいなもんだよ。あまったからみんな一緒に鍋に
放り込む。ただ、ぼくらは余り者だからみんなにきらわれていて、だれも箸をつけようとはしなかったけれど。ぐつぐつと、
ただ煮られるだけ」
 メリーさんは目を伏せた。
「『群れるのはきらいだ』とか言いながら、ちゃんと鍋の中で群れていたんだよなあ」と、ぼくは空を仰いだ。薄い雲が空を
覆っている。
 メリーさんの高校はどうなのだろう、とぼくは訊きたくなったけど、すぐにぼくはその考えを捨てた。
 メリーさんは自分のことについて、何一つ語ろうとしなかった。ぼくは時々探りを入れてみるのだけれど、そのたび彼女はぼくの
腕からすり抜ける。泳いでいる魚を手で掴めないのと同じように、ぼくでは彼女の過去を捕まえることが出来ない。例え掴むことが
できたとしても、ぬるっ、と握った手から逃げてしまうだろう。
 過去だけではない。ぼくは何度かメリーさん自身を掴もうとしたことがあるが、さっぱりだった。今度はメリーさんが逃げていく
382【品評会】メリーゴーランドは二回転 3/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/26(日) 23:05:34.73 ID:Z/2XaHz50
のではなく、ぼくが抵抗を感じてしまうのだ。両手がメリーさんに近づくと、何かが優しくぼくのてを押しのける。正体の
分からない何か。おそらくぼくの一部。それがぼくとメリーさんを分け隔てる。
 メリーさんの方はというと、決して彼女からぼくの方へと近づくことはないし、自分から話すこともない。
 ぼくらの仲は大体そんな感じだ。
 今日の雲も流れていない。ごちゃごちゃとひしめき合っていて、動く隙間が無いから。

「あ、見えてきたよ」と、ぼくは例の遊園地を指差した。
 最近出来たばかりの話題の遊園地。大きいわけではない。遊園地の端から端まで、十分もあれば横断できる。超巨大なジェット
コースターがある訳でもないし、身の毛もよだつお化け屋敷がある訳でもない。
 あるのは、こうもり傘のように遊園地を覆う、巨大なメリーゴーランド。遊園地全体がメリーゴーランドの屋根で覆われている
ので、ジェットコースターや、バイキングなど、高さのあるアトラクションは無い。ゴーカートや、コーヒーカップが
ぽつりぽつりとあるだけだ。
 そのメリーゴーランドの直径は五百メートル。その円周を、馬や馬車がくるくると回る。一周するのだけで十五分はかかるらしい


 入り口にはそこそこの人が居た。話題にはなっているが、あまり人は入っていないらしい。巨大なメリーゴーランドの需要なんて
そんなものなのかもしれない。
 入場券を買い、地下道を通って中に入った。出口はメリーゴーランドのど真ん中だった。
 薄暗い。明かりは、ちらほらと天井からぶら下がっている、オレンジがかったライトだけだ。
「なんだか、ものすごく大きなきのこの傘の下みたいだね」くらくてじめじめしていて。
 メリーさんは頷いた。頼りないライトの光が当たり、メリーさんの白い頬も、オレンジ色に染まっていた。
 彼女の目に、ぼくはどう映っているのだろう。
 ぴー、とお湯が沸いたような音がして、ぼくらの周りをくるくる回っていた馬たちのスピードがだんだん遅くなった。続いて
アナウンスが入り、
「次の発車は十分後です。お乗りのお客様は、メリーゴーランド受付までお越しください」と告げた。
 先ほどの、ぴー、はブレーキの音だったようだ。
 ぼくがメリーさんに、「乗る?」と訊くと、彼女は小さく頷いた。ぼくらは黙って、受付まで歩いた。
 ぼくらが乗ったのは馬車の形のメリーゴーランドだった。向かい合って座ると、「発車いたします」とアナウンスが鳴った。
383【品評会】メリーゴーランドは二回転 4/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/26(日) 23:06:26.03 ID:Z/2XaHz50
「なんだか緊張するね」とぼくはメリーさんに微笑みかけた。
 馬車が、がたん、と大きく揺れて、動き出した。

 動き出すと、もうそこは元いた世界と違った。
 初めての感覚だった。ぼくらの時間だけが止まっている、そんな感じ。外の景色は光のように過ぎていくのに、僕らの時間は
止まったまま。そこは、ぼくと、メリーさんだけの世界で、ぼくとメリーさんだけの時間だった。
 馬車が上下するのにあわせて、ぐん、と、へその中から引っ張られるような気がする。くすぐったい。
「くすぐったい?」とメリーさんに訊くと、彼女はくす、と笑って頷いた。
 メリーさんが、シェイクスピアの、ジュリエットの家のバルコニーみたいな手すりに手をかけ、ぼくを見つめている。なんだか
切り絵みたいだった。彼女の髪が、風に揺れている。髪が、ちろちろ、とぼくの目をくすぐった。
 ぼくは、メリーさんにとってなんなのだろう、とぼくは止まった時間の中で考えた。
 メリーさんに、ぼくを欲して欲しい。そう、思った。ぼくが欲するのじゃだめなんだ。メリーさんに欲してもらわなければ。
 ぼくは席をメリーさんの隣へと移動した。欲して欲しい。
 メリーゴーランドは、もう半分回っていた。
 メリーさんはぼくを見ていない。メリーさんは回っていなかった。ぼくだけ、回り始めていた。くるくるくるくる、すごい速さで
回っていた。
 ずいぶん黙っていた。黙ってメリーさんを見つめていた。一度だって、メリーさんはぼくのことを見てはくれなかった。
 ぼくのなかで、何かがこんがらがって、ぐしゃぐしゃになった。胸のなかで、ぐしゃぐしゃが暴れている。
 もう、メリーゴーランドの終わりが近い。ぼくは、ぐしゃぐしゃになりながら、彼女に言った。
「メリーさんは――」
 彼女がぼくを見た。
 ぷつん、とぼくの中で、切れた。

 気づくと、ぼくは回り始めた場所にいた。
 でもそこにはあの大きな大きなメリーゴーランドはなくて、メリーさんもそこにはいなかった。
 ぼくのメリーゴーランドが次に回り始めるのは、いつになるのだろうか。
384【品評会】メリーゴーランドは二回転 5/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/26(日) 23:07:11.76 ID:Z/2XaHz50
以上。割と久しぶりの作品でした。

まとめの方おつです。
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:19:19.02 ID:TFvdkdAh0
あらあら
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:20:05.12 ID:uFRx6DIa0
お疲れ様でした。

救済スレッドより、新しい試みに挑戦する ◆6UfJsbhsG2氏の作品を転載します。

【順番】
−−−
387『この洗濯機の回る音』 0/5 ◆s6O8QJeB1Q :2008/10/26(日) 23:20:47.89 ID:w/FOPhWV0
品評会作品の予約をさせていただきます。
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:21:05.53 ID:uFRx6DIa0
 静かなひとときを破ったのは、階段を駆け上がる「どだだだだだ」なんて豪快な足音だ。
 それが俺の部屋までまっすぐに届く。「やれやれ」と、俺は机の上から視線を離し、いすをくるりと回してドアの方を向いた。
 誰の足音かは考えなくてもわかる――クラブ帰りのさくらのご帰宅だ。
 ソファに座って本を読んでいたかえでが、露骨に嫌そうな表情をして読み掛けの本から顔を上げた。
 多分ミステリーか何かを読んでいたんだろう。そしてオチ間近だったらしい、が、さくらの足音が聞こえてきた、事情はそんなところのはずだ。
 かえではひとつ小さなため息をつくと、俺に何やら言いたげな視線を送ってきた。
 けれど途端、どがん、と遠慮のない音を立て、部屋のドアが開く。
http://bnskvip.jp.land.to/up/src/up1973.jpg
「にーちゃん、500円玉ひろったぁ!」

 さくらとかえでは小学5年の双子の姉妹。俺から見ればどちらも妹なわけだけれど、本人たちはずいぶんと、この姉&妹関係を気にしているらしい(ちなみにさくらが姉でかえでが妹だ)。
 しかし、というか何というか。この二人、同じ家で育ったとは思えないほど性格が正反対なのだ。
 趣味はクラブ活動のテニス、ばりばりのアウトドア派さくらに対して、暇さえあれば本を読んでいる、物静かなかえで。
 俺はこの二人には勝手に、それぞれピンクと水色というイメージカラーをつけている。もちろん二人には内緒だけれど。
「……拾った?」
 黄金色の硬貨を満面の笑顔で掲げるさくらに、ひとまず俺は状況確認。うん、うん、とうなづくさくら。かえでは「つきあってらんない」とばかりに、ぷい、と横を向いてしまった。
「どこに落ちてたんだ?」
「どーろのまんなか!」
「それはそれは……」
 さくらは500円玉を指先でぴーんと高くはじき、それをクロスさせた両手でキャッチ。
「どちらに入ってるでしょう?」ってやつだ。
 どこで覚えたのか知らないけれど、上手いものだと思った。500円玉はずいぶん重たいはずだから。
「ねえねえー、にーちゃん」
「ん?」
「これでおかし買おーぜい!?」
「……おかし?」
「うん。3人ぶん買ってみんなで食べる、さくら的にはグッドアイディアだと思うんだにゃー!?」
「にゃーって……」
 どこで覚えたんだ。兄の与り知らぬ成長がときどき怖い俺であった。
「んで、どーお、にーちゃん? さくらの甘い計画は?」
389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:21:43.96 ID:doNpiTpA0
名前欄ー!
390金は天下の 2/5 ◇6UfJsbhsG2:2008/10/26(日) 23:21:46.81 ID:uFRx6DIa0
「そうだなあ……」
 実際のところ、俺は諸手をあげての大賛成なのだった。実は最近、さくら・かえで・俺の3人で一緒に何かをする、ということが減ってきた気はしていたのだ。
 ある意味で、俺の部屋は3人の集会場になっている。けれど近頃、かえでは読書、さくらはゲーム、俺は勉強していたりと、3人が3人。同じ場所でもばらばらに過ごしていることが多いからだ。
「なあ、かえではさくらの提案どう思う?」
 俺は話の輪から離れていたかえでに、わざと訊いてみた。
 ソファの上のかえでは、また本を開いて読み進めていたようだったけれど、俺の問いかけに仕方なさそうに顔を上げた。
 本心ではさくらの相手などしたくないのだろう。けれど、俺の問いかけだから答えている、かえではそんなやつだ。
 かえではさくらの方を向くと、早口で一気にまくし立てた。
「……私は却下。そのお金、姉貴はケーサツに届けてきたほうがいい。立派な遺失物」
「ええー? かえでちんはいっつもさくらにきびしいなあ、おカタいなあ」
「ケーサツが嫌なら元の場所に戻して来なさい」
「って、500円玉を捨て猫扱い!?」
「やれやれ……」
 どうもこの二人、近頃は妙に折り合いが悪いのだ。趣味が180度違うのも理由のひとつにありそうだけれど、それだけが理由のすべてではないだろう。
 さくらにはさくら、かえでにはかえでのスタンスはある。しかしとにかく俺としては、できるだけ、3人仲良い状態を保っていたいのだ。
「じゃあさじゃあさー、500円を3つに分けてそれぞれ好きなように使うっていうのはどお? それならかえでちんも文句ないでしょー?」
「どうやって500円を3等分にするの」
「う……」
 かえでの言葉にさくらは二の句を次げなくなってしまった。口げんかではさくらはかえでに絶対敵わない。さくらの500円玉を持つ手もたらり垂れてしまった。かえでは、もう用なしとばかりに再び本に目を落とす。
「……かえでちんは」
「………」
「さくらのこと、じつは嫌い?」
「階段上がるときドタドタうるさくしなくて一々何かあるたび兄貴に報告しなくて私が本読んでるときに話しかけてこなければ姉貴のことは二番目に好きだよ」
「ちっ、ちくしょお……」
 悔しがるさくらに対して、うっすら含み笑いすらしてみせるかえで。
 さくらは助けを求めるように俺を見たけれど、「兄貴に頼るな、バカ姉貴」と、それすらかえでに咎められる始末。
 なんというか、かえでのさくら嫌いは悪意が無いとはいえ真に迫ったものがある……。ひとまず、状況を落ち着けた方がいいだろう、と俺は判断した。
「うーん、そうしたらよ」
 俺はひとつの提案をする。
「さくらとかえでが200円づつ、俺が100円、そうやって500円を分けるなら文句ないだろ? 全員ハッピー、それで問題なしだ」
391金は天下の 3/5 ◇6UfJsbhsG2:2008/10/26(日) 23:22:38.71 ID:uFRx6DIa0
 さっきの会話の途中で思いついた考えだ。数学の苦手な俺なりの名案だと思ったのだが。
「「それはダメ!」」
 という二人の見事なハーモニーにあっさりと玉砕されてしまった。
「な、なんで……」
「にーちゃんだけ少ないなんてそんなのだめだよー」
「兄貴までこのバカ姉貴の遊びに付き合うことない。バカなんだから」
「なっ、かえでちん、バカバカ言われたさくらのかんにん袋の緒もそろそろ限界ですにゃ……!」
「……500円玉泥棒猫」
「にゃああああああお!」
 さくら、かえでの座るソファにそのままダイブ。そのままくすぐり攻撃を始めるさくらへの抵抗もむなしく、かえでの読書はあえなく中断されてしまったようだ。
 かえでの上に馬乗りになって妖しく微笑むさくら。それを尻目に、ふと俺は、さくらの手を離れた500円玉が床に転がっているのを発見した。
「にゃああああお! かえでちん、これがお姉ちゃんの底力ですにゃ……こちょこちょこちょっ」
「ちょっと、やめ、くっ、こ、の、バカ姉貴っ……!」
「やれやれ……」
 二人の絡み合いを見ていたら、今度はかえでが俺に助けてと言わんばかりの視線を送ってくる始末。
 くすぐられて顔を上気させたかえでの視線は、一歩間違えるとアブない領域に誘いかねない代物だ。けれどひとまず、俺は行為を中断させるべくさくらに声をかけた。
「なあさくら」
「ひゃ、ひゃい!」何だその返事は……まあいいけど。
「さくらの食べたいお菓子って何なんだ?」
「え? えっと……」
 かえでに乗ったまま考え出すさくら。その隙にかえではさくらの下から這い出て、何事も無かったかのようにぽんぽんと服を払うと、済ました顔で本を拾い上げた。
 かえでの切り替えの早さは本当に尊敬に値する。
 一方のさくらは、
「えっと……ぷ、ぷりん? ……うん、プリン!」
http://bnskvip.jp.land.to/up/src/up1974.jpg
「プリンか……」
 500円とプリン。俺は手元の硬貨と頭の中のプリンを交互に見つめながらしばらく考えた。
 部屋の中では、懲りないさくらがまたかえでを捕まえてちょっかいを出している。
 かえでも何とかさくらから逃げようとはしているものの、逃げれば逃げるほどさくらは面白がるし、逃げる場所も部屋の中だと限られている。
 やがてかえでは捕まって、やれ胸が無いだの脇が弱いだの、どこで覚えたのか下世話な話をさくらに次々投げかけられて、顔を真っ赤にして困り果てている。
392金は天下の 4/5 ◇6UfJsbhsG2:2008/10/26(日) 23:23:10.92 ID:uFRx6DIa0
 やれやれ、と俺は思う、上手く二人を納得させうる都合のいい妥協案は無いものか。
 お菓子食べたいというさくらと、金は返して来いというかえで。
 鍵はプリン……それで二人を納得させられないものだろうか。コンビニですら買えるプリン。100円ですら買えそうなプリン。
 ふと俺は、ひとつのアイディアを思いついた。

「やれやれ……」
 俺は手元のプリン3個を見ながら、今日何度目かになるため息をついた。今頃、二人は上手くやってるだろうか。
 まぁかえでがついていれば大丈夫だとは思う。けれど、問題はそんなことよりも、二人を上手く納得させられたかどうかだった。
 俺の提示した妥協案――それは、100円のプリンを3つ買って(消費税分はこっそり俺が出した)、残りの200円を遺失物として警察に届ける、というものだった。
 今頃かえでとさくらは一人100円づつを持って、近くの交番にいるか、あるいはその帰り道を歩いているかのはずだ。
 はっきり言ってしまえば姑息も姑息、どちらの考えも中途半端にしか採用しないという民主主義も真っ青な俺流プランなのだが。
 二人の仲を出来るだけ壊さずにこの関係を――ある意味ではユートピアを――保つには、もっとも適したアイディアのはずだった。少なくとも俺は、うまくやったという自信を持っている。
 そんなことを考えていると、ばたん、という小さな音が俺の部屋まで届いてきた。
 二人が帰ってきたのだろう。続いて聞こえてきたのは二人ぶんの、とんとんとんと階段を上がるリズミカルな音。さくらが極端にドタドタ音を立てていないから、少なくとも二人の仲は上手くまとまっているらしい。
 やがて、俺の部屋のドアが開いて二人が顔を見せた。
「おう、おかえり」
「ただいま、にーちゃん!」
「兄貴ただいま……」
 二人揃って部屋の中に入ってくるさくらとかえで。でも何かがおかしい、と俺は思った。
 どうも二人とも元気がない。いや、さくらは単にかえでが気にかかってるだけなのかもしれない。調子が変なのはかえでだ。
 心配になった俺は、回りくどいことはせずに直接かえでに訊いてみた。かえでには、その方がいいのだ。
「なあかえで、何かあったのか? その、問題になるようなことでも……」
 かえでは一瞬、逡巡するそぶりを見せた。
「実はさ、兄貴……」
 けれど、そう言うと、かえでは俺のそばまで歩み寄ってきて、そして握っていた手のひらを開けた。
 そこには、持たせたはずの100円玉が鈍く光っていた。
「あれ? これは……」
 俺は思わずかえでの顔を見た。いろいろな考えが頭をよぎったが、かえではしっかりしたやつだ。何があったのか、すぐに自分の言葉で説明を始める。
 ――かえでの話を要約するに、結局こういうことらしかった。
 交番に入ったかえでとさくらは、家の近くの道路に200円が落ちていたことを当番の警官に告げた。もちろん警官との会話を全て行ったのはかえでだ。
393金は天下の 5/5 ◇6UfJsbhsG2:2008/10/26(日) 23:23:50.33 ID:uFRx6DIa0
 たとえ細かいことを聴かれても、虚実を交えながら上手く話し切るだけの自信がかえでにはあったという。
 かえでの言葉に、警官は、どうもありがとう、わざわざ偉いね、というと、200円を二人から受け取った。
 そこまでは良かった。ところが、だ。警官は口に手を当てて「内緒だよ」というそぶりを見せると、自分のポケットから200円を出して二人に渡してくれたのだ。
 これに喜んだのはさくらだ。お礼を返したのもさくらだったらしい。一方のかえでは、けれど大いに不満だったという。
 かえではまだ何か言いかけた。けれど、警官の「これはおじさんからのプレゼントだからね」という言葉には、ついに返す言葉を無くしてしまったのだった。

「子供扱いされた……」
 かえでは手のひらの中の100円玉を見ながら言った。相当不本意だったろう。
「早く大人になりたい」というのが口癖のかえでだ。もしかしたら、さくらとの折り合いの悪さもそのあたりにあるのかもしれない。
 一方のさくらは、両手を頭の後ろにあてたまま、至極のんきそうだ。
「まーまーかえでちん、現にさくらたち子供なんだし別にいーじゃん。あと5年も立てばかえでちんの胸だってそれなりの大きさに」
「このバカ姉貴ッ!」
「にゃおおおおかえでちん怖い! さくら退避! 台所行ってプリン用のスプーン取ってきまーす! あでぃおす!」
 そう言うとさくらは部屋を飛び出して、ドタドタドタと階段を駆け下りて行ってしまった。まったく、やれやれ、だ。
 ふと後に残ったかえでを見ると、何やら言いたげに口元を動かした。俺はかえでに何か言うべきかもしれなかった。俺にとってのかえでは絶対に子供じゃない、とか、そういうことを。
 けれど結局、先に口を開いたのはかえでだった。100円玉を俺に差し出すと、かえでは俺にこう言うのだった。
「……この100円、兄貴にあげる」
「えっ? いや、それはかえでのモノだし、受け取るわけには」
 かえでは俺の手を取ると、手で握った100円玉をそこにぎゅっと押し付けた。外から帰ったばかりだというのに、かえでの手は、暖かかった。
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「受け取って、これは」
 かえでは、俺がもう片方の手に持つプリンの袋を指さしながら、
「プリンの代金。これで私は何も見てないし、バカ姉貴の拾った500円玉のことなんて、これっぽっちも知らないんだから」
 それだけ言うと、かえではぷいっと知らん顔をして、ソファにふわりと座ると読みかけの本を再び読み始めてしまった。それっきり何か言う様子もない。やがてドタドタと、さくらが階段を駆け上がる音がする。
 やれやれ、だ。
「スプーン、登場っ! 実はコップとオレンジジュースも持ってきたのだ! お盆さんは今にも崩壊寸前っ!」
 さくらの声とともに勢い良くドアが開く。かえではうんざりしたように本から顔を上げた。いつもの光景、どこかで見た光景。
 けれど、それはひとつの平和の形だ。俺は思う。こういう生活が、この先もずっと続けばいい、と。

 <了>
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:24:45.90 ID:uFRx6DIa0
投下した瞬間に気づいても修正できないのが辛いところです。

◆s6O8QJeB1Q氏、どうぞ。

【順番−−−】
395『この洗濯機の回る音』 1/5 ◆s6O8QJeB1Q :2008/10/26(日) 23:26:47.65 ID:w/FOPhWV0
 まだ洗濯が終わらない。
「ねえ、アエリール、買ってきてよ」
 嫁さんの声が、心地よい睡眠から俺を呼び起こす。
「アエリール?」
「洗剤よ。洗濯用の!」
「洗濯かあ、お前、洗濯好きだよな」
「好きってわけじゃないわよ。でも、これでも一応主婦だからね!」
 嫁さんがふんぞり返る姿がまぶたに浮かぶ。
 古い洗濯機が回る音を耳にしながら、俺は昼時のバラエティ番組を見ていた。
 嫁の美春は洗濯をし、俺はテレビを視聴する。
すっかり汗を吸いこんだワイシャツと、悲惨なにおいのする靴下。
乱雑にハンガーにぶら下がった、企業戦士の一張羅。
つまりは、安物の背広。
毎週やってくる日曜日というオフの日を、俺はゴロゴロと謳歌していた。
ブラウン管の向こうの笑い声が、このボロっちい我が家に響く。
今日も我が家は快晴である。
少し自堕落な亭主と、少し体が弱いが、元気だけは闊達なマイワイフ。
「テレビばっかり見てないで! ほらほら」
「美春、お前も見たらどうだ? 最近の番組は、意匠の凝らし方がすごいぞ?」
「意匠の凝らし方じゃなくて、衣装の洗濯の番組が見たいわね」
「……ギャグか?」
「うっさい! さっさとアエリール買ってくる! ほらほら!」
 嫁さんがトタトタとかわいいエプロン姿で洗濯機のある脱衣所から飛び出してくる。
「当家の少しばかりかわいい鬼嫁は、こうして俺を初夏の日差しのもとへと追いやるのだった」
「誰に言ってんのよ、誰に」
 美春は仁王立ちをする。俺の頭をくるぶしで挟むかのような構えだ。
「全国にいる、鬼嫁圧政に苦しむ、旦那衆に対してだよ」
 しばらく意味のない雑談をする。
 こういうときに浮かぶ美春の笑顔が、俺はたまらなく好きだった。
396『この洗濯機の回る音』 2/5 ◆s6O8QJeB1Q :2008/10/26(日) 23:28:24.90 ID:w/FOPhWV0
「よっと」
 俺はひょい、と勢いをつけて起き上がる。
 美春は思わず少しのけぞったようだ。ぶすっとした顔で、ほっぺたを膨らませている。
 こういうどうしようもなく子供っぽい、俺の嫁さん。
 全く、困った嫁さんを捕まえたもんだ。
 洗濯機の回転音を聞きながら、俺は玄関をゆっくりと開けた。
 初夏の熱気が、むあ、と室内になだれ込んでくる。
 まあ、行くしかないんだけどな。
「ポールドだっけ? 宣伝が有名な奴だよな?」
「アエリールよ。いい? 柔軟剤じゃなくて、洗濯用洗剤だからね?」
 へいへいと相槌を打ち、買い出しへと出かけた。
 俺を送り出す声は二つ。
「それにしても最近、洗濯機の調子が悪いのよね」
 嫁さんのかわいい声と、
「買い替え時かしらね」
 洗濯機の回る音。
 ガコンガコンと、洗濯機は回る。
 俺の靴下を巻き込みながら。

 時は夕暮れ。洗剤等などを買った、その帰り。
「はァッ……はァッ……、畜生、美春!!」
 美春が待つ自宅へと、俺は全力で走っていた。
 街の風景が色あせて見えるほど、今の俺は焦燥感に包まれている。
 いやな予感はしていた。
 何故かはわからない。
 だが漠然とした悪寒が、俺の背中を貫いていた。
 以前も同じようなことがあった。
 帰宅途中に電話をかけた。だが美春は電話に出なかった。
 俺が会社から帰った時、室内には物音ひとつなかった。
 いつも帰宅時には回っている、洗濯機の雑音すらも。
397 ◆VXDElOORQI :2008/10/26(日) 23:28:50.47 ID:CNmnZ4rm0
よやく
398 ◆EqtePewCZE :2008/10/26(日) 23:29:23.44 ID:wBp55A0d0
yoyaku
399『この洗濯機の回る音』 3/5 ◆s6O8QJeB1Q :2008/10/26(日) 23:29:53.54 ID:w/FOPhWV0
 その日美春は、脳梗塞で病院に収容された。
 今日もあの人同じように、美春は、電話に出なかった。
 恐怖の光景がよみがえる。
 自然と涙が浮かんだ。美春が、死んでしまう。
「美春ッ!!」
 玄関の鍵が開かない。手が震えているからだ。
 足がもたつく。膝が笑っているからだ。
 頭が酸素を欲する。呼吸が乱れているからだ。
 靴を脱ぎ棄て、美春のいる居間へと。
「美春……ッ!!」
 短い廊下が延々と長く感じられる。
 何故か廊下に積まれた洗濯カゴに足を取られるが、蹴飛ばす。
 洗濯物が散らばるのも厭わず、強引に歩を前に進める。
「美春ッ!」
 ドアを思いっきりぶち明けて、俺は思わず絶句した。そして、
「……美春?」
 間抜けた声が、俺の喉から漏れた。
 そこには俺が恐れた惨劇なんて存在していなかった。
 脳の疾患で気を失った美春なんていなかったし、洗濯物を取り込む
途中に足を滑らせて後頭部を打ち、気を失った美春だっていなかった。
というか、そもそも、そこに美春はいなかった。

 その代り、リビングのテーブルには何かが一枚置かれている。
「……メモ?」
 最悪の事態を回避でき、少しだけ落ち着いた心で、そのメモを手に取る。
 離縁状ではないだろうが、なんだか、不気味な感じがする。
 メモを読むにつれ、徐々に俺のほほがピクピクと引きつる。
 自分でも滑稽なほどだ。
「……美ぃ春ぅ……!!」
 ゆっくりと、俺の悪寒は取り除かれていった。
400『この洗濯機の回る音』 4/5 ◆s6O8QJeB1Q :2008/10/26(日) 23:33:02.39 ID:w/FOPhWV0
 その代り俺の心にはふつふつと、とある感情が首をもたげていた。
 何と形容したものか。
「心配……、掛けやがって……」
 すべて、納得がいく。部屋から物音ひとつしなかったこと。
 美春が家の固定電話に出なかったこと。
『ついに洗濯機が壊れました。ランドリー行ってくるね?』
 あなたの美春、と最後にポツンと書かれたメモ帳を握りしめ、ふ、と自嘲の笑みを漏らす。
 俺の心に浮かんだ感情。
 それは俺に無用な心配をかけた美春への恨みでも辛みでも、腹立たしさでもない。
 ただただ、途方もないほどの、
「ホント、心配させやがって……」
 安堵だった。
「……ふぅ」
俺はどっぷりとため息をつこうとして。
 全身を、寒気が貫いた。……、違う。
 待て、よく考えろ。悪寒がぶり返す。
 一度俺の体に染みついた安堵が、見る見るうちに消え失せていく。
 冷汗が額を流れる。俺は猛烈な違和感を感じた。
 何か途方もない間違いを犯している時の違和感だ。
 何か、何か……。俺は何かに気が付いていない。いったい何なんだ。
 俺はゆっくりと、室内を見回す。
 少し散らかった居間を一通り目視した。問題はない。次に視線は廊下へと向かい、
「……あ、ああ、あああああああッ!!!」
 俺は絶叫した。全身からドッと汗が噴き出す。
 全身に鳥肌が立つ。何故俺は気がつかなかったんだ。
 廊下にまだ、「洗濯カゴ」が残されているということに。
「み、美春ッ!! 美春ぅぅ!!」
 残された洗濯カゴ。俺が蹴飛ばした洗濯カゴ。飛び散る洗濯物。俺の靴下。
 つまりそれは、まだ、美春が、この、家の中に……! 悪寒が、全身を支配する。
「どこだッ、美春!!」
401『この洗濯機の回る音』 5/5 ◆s6O8QJeB1Q :2008/10/26(日) 23:34:23.33 ID:w/FOPhWV0
 俺は部屋という部屋を探した。どこかで、美春は、気を失っている。
 居間、いない。寝室、いない。……トイレ。
 ……いた。
「み、みは、美春!」
 ぐったりとした美春は、俺がドアを開けた瞬間廊下へと倒れこんだ。
「おい! おい! しっかりしろ!」
 きゅ、救急車、と俺は情けなく救急へと通報した。
 ガコンガコン、とまるで主人を弔うかのように奇妙な音を上げる、壊れた洗濯機とともに、俺は救急車の到着を待った。

 もう、洗濯機は回らない。
 俺の靴下を、洗わないまま。
 もう洗濯は、終わらない。
 洗濯の主を、失ったまま。

 一週間後、俺は病棟のコインランドリーで、美春の衣類を洗濯していた。
 一命はひとまず取り留めた。しかし、全快までには時間がかかるという。
 ならば、俺がそれまでがんばろう。
 洗濯の主は、この俺が務めるのだ。それが、美春にできる俺なりの、恩返し。

 そして、俺は洗濯を再開する。
 うとうとと、眠気が俺を取り込む。
 俺は静かに、美春の夢を見ていた。
 心地よく規則的な音を立てる音を聞きながら。
 そう、まるで胎児のようだ。俺は美春のお腹の、胎児のようだ。
 心地よいその音。そう、その音は。

 この洗濯機の、回る音。

(了)
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:35:55.65 ID:uFRx6DIa0
お疲れ様でした。

◆VXDElOORQI氏、どうぞ。

【順番】
◆EqtePewCZE
403『この洗濯機の回る音』 ◆s6O8QJeB1Q :2008/10/26(日) 23:36:20.19 ID:w/FOPhWV0
終了です。
まとめの方乙です。

1/5で一文字目を空け損ねたのは純粋なミスですww
404頭の回転の速い彼女はどこへ行く(1/1) ◆VXDElOORQI :2008/10/26(日) 23:37:45.54 ID:CNmnZ4rm0
 彼女は僕の学校で一番の有名人。成績が良く、頭の回転も速い。
 そんな彼女に放課後、体育館裏に呼び出された。一体僕がなにをしたというのだろう。
 体育館裏に行くと、そこにはすでに彼女が来ていた。スカートの裾を両手でぎゅっと握って、俯い
てる。少し震えているのかもしれない。そんな彼女を見るのは初めてだった。
 僕と彼女は同じクラスで、よく他の女子の勉強を見てあげていたり、相談にのっている姿を見かけ
る。女子たちの評判では勉強の説明も先生のよりもわかりやすく、相談ごとにも的確なアドバイスを
くれるということだった。
 そういう僕も一度相談にのってもらったことがある。僕の要領の得ない話もちゃんと理解して、噂
通りすごく役に立つアドバイスをしてくれた。一度、彼女が他の女子と口喧嘩しているところを見た
ことがある。彼女はすごい勢いで正論と、それと同じくらい相手をねじ伏せる屁理屈を言っていた。
 それを見て、頭の回転が遅い僕は羨ましかった。彼女はすごい速さを頭を回転させている。その速
さはきっと新幹線よりも速いだろう。リニアモーターカーとはよくわからない。僕はリニアモーター
カーを見たことないから。このたとえを見ても、僕の頭の回転の遅さがわかると思う。とっさにうま
い例えが出てこない。頭の回転と新幹線の速さは別物だと思う。そして思うのだ。彼女はすごいと。
 だけど、今の彼女は僕がそう思った彼女とはかけ離れている。小さくて、弱々しくて、今にも消え
てしまいそうだ。
「えっと、遅れてごめん。僕になにか用事?」
 僕が声をかけると、彼女はびくりと震えて、ツインテールがぴこんと跳ねる。
「えっと、そのご、ごめんね。わざわざこんなところに呼び出したりして……」
 さっきも思ったけれど、やっぱり今の彼女はいつもの彼女と全然違う。
「いや、それはいいんだけど。……どこか体調でも悪いの?」
 僕が彼女のおでこに手を伸ばすと、彼女は小さく叫び声を上げて後ろに飛び退った。ちょっとショ
ックだけど、いきなり女の子に触ろうとすれば当たり前だということに、やったあとに気付く。
「ご、ごめん。そ、その来て貰った理由はね。えっと。なんて言ったらいいんだろう。あのね。その」
 こんなに言いよどむ彼女を見るのもはじめてのことだった。彼女の頭はオーバーヒートでもしたの
だろうか。ものすごい勢いで頭が回転している。
「……す、好きです!」
 そう言った瞬間、彼女は竹とんぼみたいに回りながら空へと飛んでいった。ツインテールをプロペ
ラみたいに回転させながら。
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:39:30.71 ID:uFRx6DIa0
お疲れ様でした。

では最後に◆EqtePewCZE氏、どうぞ。

【順番】
終了
406ものかたる 1/5 ◆EqtePewCZE :2008/10/26(日) 23:40:55.80 ID:wBp55A0d0
 子供の順平の目から見ても、なつきは変わった子供だった。
順平は、朝誰よりも早く学校へ行った。誰もいない教室に真っ先に足を踏み入れたときの、よそよそしい気配が好きだったからだ。
小学生生活は順平に優しかったが、それが時々見せる横暴さや、粗野な態度がいつか自分に向けられるのではという
あてどない不安感が不意に立ち上ることが、彼にはあった。
早朝の、物音のしないひっそりとした教室に置かれている机や椅子はただの物だ。
それは同じ空気の下で退屈や愉快を共にする仲間ではなく、ただの無機物だった。それが順平には心地よかった。
その中では、自分もただの人として居られる。自分の存在が、単なる一つの生物であることに過ぎないという孤独が、
かえって彼を安心させた。
この感情のことを彼は級友に話すことはなかった。まともに言葉にできるほど、彼自身それに対して理解があるわけでもなかった。
彼に次いで、教室の戸をくぐるのがなつきだった。
「おはよう」と順平は毎朝声を掛ける。しかし、それに対する返答はない。なつきの方から視線を合わせることもない。
ただ毎朝順平の横を素通りし、彼の右斜め後ろの自分の席につくだけだ。
それでも順平は毎朝「おはよう」と声を掛ける。それはほとんどなつきの為ではなく、自分の為だった。
もしある日自分が声を掛けることをやめてしまったら、事態はより悪化するように思えた。
いつも通りただ一言「おはよう」と言って、あとは黙って誰か級友が一人来るのを、じっと堪えて待てばいいのだ。
一時の気まずさは、それで終りを告げる。
407ものかたる 2/5 ◆EqtePewCZE :2008/10/26(日) 23:41:25.05 ID:wBp55A0d0
 なつきはいじめられているわけではなかったが、親しい友人もいないようだった。
順平は、教室移動のときなど、一人でのろのろと歩いているなつきをよく見かけた。男子からは「寺内さん」と呼ばれていた。
なつきは教科では国語の音読が得意で、ゆっくりとだが正確に読んだ。体育はほとんどの競技が苦手だったが、
のぼり棒は得意だった。手のひらと足のうらをぴったりと棒に引っ付け、ぐっと上を見詰めて一気にのぼった。
髪はあごまでのおかっぱで、一本一本が細く、暗いところでもてろてろとしたつやを作っていた。
 順平となつきは帰り道が一緒だった。なつきが歩く速度はおそろしく遅かったが、順平には教室での位置同様、
常に右斜め後ろからなつきのぴったりとした存在を感じていた。
 五月の晴れた日で、アスファルトからはむっとする匂いが立ち上っていた。
順平は五月が嫌いだった。植物だけがいきいきとしているのも気に入らなかったし、濃くなる緑がわざとらしい気がした。
その日はとくに、地面から立ち上るむんむんとした熱気が濃く、一定の速度でついてくる足音がひどく癇に障り、
順平は痛々しいほど苛苛していた。
突然、なつきに対して理由のない腹立ちが降って湧いた。
順平は黒いランドセルの肩に掛ける部分を両手で握ったまま、勢いよく振り返った。
なつきは反射的に彼の顔を見上げる。なんの感情もこもっていない真黒な瞳が彼を見詰めた。
順平は両手を突き出し、なつきの体を突き飛ばした。それはぎょっとするほど簡単に、つつじの植え込みの上に倒れた。
「あ、あ」順平にはもう、瞬間前の突発的な怒りは霧消していた。
「びっくりした」全然びっくりしていないような声色で、なつきは言った。
順平は片手をおずおずと差し出したが、なつきは自力で起き上がった。もともと、順平の手が見えていないようだったので、
彼は気まずさを感じながらも手を戻した。
なつきは腕や服に付いた葉を、一枚ずつつまんで取った。順平はしばらく立ち尽くしたままだったが、ふと目に入った
なつきの足に茶色く変色したかりかりの葉が付着しているのを見て、屈んでそれを払った。
その拍子に、なつきの腿からしゅっと赤が伸びて、真白な靴下に血が付いた。
「あ。……ごめん、血が出てる」順平は自分の手に付いた血を見ながら言った。なつきは、聞こえているのかいないのか、
腕をぺたぺたと触っている。
「……腕も?」
「みつ」
「みつ?」
「つつじのみつ。腕がひちひちする」さわってみる?と言って、なつきは無造作に腕を突き出した。
これが、初めてのつきと交わした会話らしい会話だった。
408ものかたる 3/5 ◆EqtePewCZE :2008/10/26(日) 23:42:03.99 ID:wBp55A0d0
 その日を境に、なつきは朝、順平に挨拶を返すようになった。
かといって、それから何か会話があるかと言えばそうではなかったが、順平はそれでも満ち足りた心持になった。

 「いってきます」そう言って順平は家を飛び出した。いつも通り、公園を目指して駆け出す。
何も約束をしていなくても必ず誰かがそこにいた。その顔ぶれが変わることはあっても、毎日誰かがいるのだ。
その道の途中に、なつきの姿を見た。彼女はらせん状の非常階段を延々と上っていた。
順平はそれが空の上まで続くかのように見え、声も発せずに黙ってそれをみ続けていた。ひどく高尚なもののように思えた。
ふと、なつきと目が合った。
「井林君ものぼる?」なつきが尋ねた。
うん、と言ったのか、本人にもほとんど分からないようなことをうめいて、順平はそちらへ向かって走り始めた。
なつきは待ってくれているわけではなく、息を切らせて最上階に辿り着いてもなつきの姿はどこにもなかった。
それでも、なにかを誘うように薄く開いた扉の向こうになつきがいることはすぐに分かった。
なつきは屋上でただ呆然と風に吹かれていた。
「このビル、寺内さんの家?」息を整えながら、順平は言った。
そう、となつきは短く答え「井林君、友だちと約束してるんじゃないの」と心配そうに言った。
自ら誘ったにもかかわらず、なつきがそんな感情を見せることに内心驚きつつ、順平は「いいんだ」と言った。
いつも誰かがいる公園は、誰かがいなくてもなにも変わらないことを知っていた。
それでもまだなつきが不安げに順平の顔を見てくるので、彼は思わず吹き出した。
「寺内さんは変わってるね」
そう言うと、なつきは不思議そうな顔をして、「井林君の方が変わってる」と言うのだった。
409ものかたる 4/5 ◆EqtePewCZE :2008/10/26(日) 23:42:32.01 ID:wBp55A0d0
 「井林君は、どうしてあんなに学校に来るのが早いの」
順平が屋上を訪れるようになって何度目かの日に、そう尋ねられた。
順平はあの早朝の空気をうまく言葉にできるか不安だったが、
ひとつずつゆっくりと――なつきが音読するときのことを思い浮かべながら――言葉にした。
「朝の教室ってしずかで、なんか、自分が自分らしくいられるっていうか、物が、物のままある気がするんだ。
 それが、ええと、どう言えばいいのかな」
ごめん、うまく言えないや。消え入りそうな言葉とは逆に、目元にじんわりと涙が浮かび上がってきた。
なぜ自分が泣きそうなのか分からずに、順平は空を見上げた。ふうん、というなつきの声が風に乗って耳に届いた。
「物か」
そう言って、なつきは順平の隣に座った。それだけで、順平は自分の言いたかったことを理解してもらえたような気がして、
また泣きたくなった。
「寺内さんは?」そこで、そう言った。他の事を言えば、こらえたものが零れそうだったからだ。
「あたしは、朝がきらいだから」うつむいたなつきは、つっぱねた言い方に反して、とても傷ついて見えた。
「なんで歌とかで、日はまた昇るとか、明けない朝はないとか言うのかな。
 それなら、暗くならない夜はないって言ったほうがいいよ。夜のほうがずっとやさしいくて、空気が濃いんだもん。
 昼より、ずっと息がしやすい気がする。
 あたしは、夜のほうがすき。早く学校に行けば、地球がさっさと早く回って、すぐ夜になってくれる気がする」
順平にとって夜は、ただ眠るために用意されたものだった。
眠る以外のことに夜を使っているなつきを想像すると、なぜか胸が騒がしくなった。
「毎日毎日、朝が来るのにも、もう飽きちゃった」なつきも、順平がしたように空を見上げた。
「ずっと、時計を見るの。時計の針。狂わないかなって。ずっと」そう言って、なつきは自分の腕を掲げて、順平に見せた。
細い腕には腕時計が巻きついており、
それは当然のことながら、止まったり、逆に回り始めることなく、しずかに文字盤の上を滑っていった。
410ものかたる 5/5 ◆EqtePewCZE :2008/10/26(日) 23:42:59.04 ID:wBp55A0d0
 ある日の理科の時間、教師が「植物は夜は光合成をせず、呼吸だけして酸素をだします」と言った。
順平はほとんど無意識のうちに、振り返ってなつきを見た。
なつきは当然だ、という顔をして、神妙にうなずいた。

 順平が白夜のことを知ったのは、そんな日々の中だった。
姉が見ていたテレビで「白夜って、本当に夜でも明るいんですね」という言葉が聞こえたのだ。
順平はしつこく姉に「白夜ってなに」と尋ねたが、明瞭な答えは帰ってこなかった。
 次の日、普段足を踏み入れることの少ない図書館に寄って、白夜を調べた。詳しいことは順平には分からなかったが
「ごご9じ スウェーデン」というキャプションの上にある、まるで朝のような風景を写した写真に釘付けになった。
そのページに学校で配布されたプリントをはさみ、順平は屋上へ向かった。
なつきにならって、そこへ行くのにエレベーターは使わない。くるくる回って、同じような景色が繰り返し続いても、
いつかはなつきの元へ辿り着ける。そればかりが、くるくる頭の中を回っていた。

 「びゃくや」なつきは小さく息を呑んで、その写真を見詰めた。
「だけど、時間が狂うということじゃないんだ」順平は息を弾ませたまま、そう言った。「残念だけど」とも。
なつきはそれを聞いてしばらく沈黙していたが、やがて「そうだ」と言って顔を上げた。
「あたしが狂えばいいんだ」ようやく答えを解く方法が分かったのかのように、晴れ晴れとした表情で言った。
その瞬間、順平には太陽が黄ばみ始めたような気がした。隣り合う距離が、不意に変わったような感覚を覚えた。
立ち尽くしたままの順平は、心の中でしゃがみこんだ。
僕も、と絞り出すような声が出た。
「僕も、一緒に狂いたい」
なつきは、ますますにっこりと微笑んだ。どうかこのまま僕の隣にいて欲しい。
それは、もう手の届かなくなった物に対する懇願だった。

411ものかたる 了/5 ◆EqtePewCZE :2008/10/26(日) 23:43:35.42 ID:wBp55A0d0
以上です。
412以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:44:02.60 ID:uFRx6DIa0
ちょうど20作品、でしょうか。

現在、週末品評会134thの投票受付中です。今回の品評会お題は『まわる』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/bnsk/ -週末品評会134th- にてご覧頂けます。
投票期間は2008/10/28(火)24:00:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

******************【投票用紙】******************
【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
               ―感想―
      <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
               ―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
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携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。 
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書き途中の方は是非。
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:44:55.56 ID:TFvdkdAh0
>>412
お疲れ様ー。
カオスらなくて何よりです。
414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:45:07.21 ID:doNpiTpA0
うわーコピペができなくなったよ?
415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:45:50.90 ID:TFvdkdAh0
忘れてた。
まとめ人たちもお疲れ様。
ここに一覧春人にもお疲れ様を
416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:47:27.35 ID:Z/2XaHz50
ナンバー5までよんだけど、三レス以下の作品が多いな。
いつものように、五レス作品が多いわけではないから、分量的にはそんなに無い。
よってみんな! 全館しようぜ!
417以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:47:49.81 ID:uFRx6DIa0
No.01 ミトコンドリア ◆pEiFbPF7ug氏
No.02 唐変木と変な僕 ◆fSBTW8KS4E氏
No.03 『めぐりめぐって』 ◆IRnBaWgO4.氏
No.04 リコリタハチマルイチ ◆pxtUOeh2oI氏
No.05 オルゴール ◆8wDKWlnnnI氏
No.06 『幼馴染の葛藤』 ◆rEGWXIt34Y氏
No.07 『おもしろい社会』 ◆xyAZ5VvW6Y氏
No.08 『十五年後のふたり』 ◆bwVfaj/.fQ氏
No.09 秋晴れニキビ ◆TQd9MjVDR6氏
No.10 義眼徒マスターピース ◆LBPyCcG946氏
No.11 傘を盗めば靴屋が儲かる ◆mEnrXcph1I氏
No.12 Neck ◆DuoCt8/SKk氏
No.13 仕掛け時計 ◆3rYRhluiQ.氏
No.14 まわる ◆IPIieSiFsA氏
No.15 LOVER SOUL ◆R4Zu1i5jcs氏
No.16 メリーゴーランドは二回転 ◆BqgMEgxWzg氏
No.17 金は天下の ◆6UfJsbhsG2氏
No.18 『この洗濯機の回る音』 ◆s6O8QJeB1Q氏
No.19 頭の回転の速い彼女はどこへ行く ◆VXDElOORQI氏
No.20 ものかたる ◆EqtePewCZE氏
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:53:24.11 ID:m1R/QUzc0
>>412
お疲れ様です。作品一覧まで……
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:56:56.58 ID:iQHJvrs6O
運営さまみなさまお疲れ様でした
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:57:58.08 ID:G1zzhOvv0
運営乙

多いな……
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:17:09.54 ID:7ghaJ1550
あらあら
422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:19:17.43 ID:hw0U6umtO
寝る前にお大工れ
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:21:17.09 ID:hrVXNJ1xP
>>442
白い血を出す十字路
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:24:28.48 ID:7ghaJ1550
>>422
地震
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:31:57.65 ID:hw0U6umtO
把握。じや寝るわ
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:41:22.49 ID:yMDWfFNz0
うふふ
427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:55:16.74 ID:tuxNb0PU0
えへへ
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:57:10.46 ID:UVlmX0U30
おほほ
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:59:05.86 ID:C6uHTGKc0
げへへ
お題くれよ
430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:00:04.66 ID:7ghaJ1550
>>429
431以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:00:24.33 ID:yMDWfFNz0
きめぇw

>>429
笑顔
432以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:01:42.47 ID:C6uHTGKc0
>>430-431
ぐふふ
ありがとよ
433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:01:44.60 ID:tuxNb0PU0
お茶会
434以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:02:37.84 ID:C6uHTGKc0
>>433
でへへ
お前のもいただいていくぜ
435以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:05:38.09 ID:UEms+yGy0
みんな乙
二十作品なんて久しぶりやね
436以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:29:31.15 ID:Tf3VZEZ/0
ディ・ミケーレってウェストハムに行ってたのね保守
437以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:53:01.18 ID:yMDWfFNz0
堀さんと宮村君が面白くて眠れない保守
438以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 02:37:39.62 ID:C03u6NSP0
聖女の救済とデカルトの密室を読み終わった
頭痛い……
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 03:14:42.21 ID:wO+xOQ/jO
440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 03:31:34.97 ID:NbgQ1HO70
お題お願いします
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 03:41:52.55 ID:yMDWfFNz0
ねむてー

>>440
雪降る夜
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 03:47:20.27 ID:NbgQ1HO70
良いお題さんくすこ
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:20:15.93 ID:3Z9mSsUB0
保守寝
444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:24:19.52 ID:yUIR4u330
お題欲しいようなそうでないような
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:24:41.26 ID:+5a0cNMX0
暇だ
お題お願いします
446以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:27:09.15 ID:yUIR4u330
>>445
うじ虫
447以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:29:45.87 ID:+5a0cNMX0
お題サンクス 早速書いてみよう

448以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:33:52.01 ID:yUIR4u330
俺もお題貰おう
くだちい
449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:40:07.69 ID:+5a0cNMX0
>>448
少女とてんとう虫
450以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:43:23.83 ID:yUIR4u330
>>449
ありがと
一晩寝てイメージして書いてみます
451以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:46:41.38 ID:YoMBW40a0
ついでにこっちにもお題をお願い
452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 04:57:01.38 ID:dds2ueWcO
>>451
ワークアウト
453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 06:01:17.37 ID:dds2ueWcO
ねむい
454以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 07:06:59.76 ID:dds2ueWcO
455交ざり、混ざる。(お題:足し算、放射能を巻き散らす人造生物フィッフィーБ):2008/10/27(月) 08:04:05.50 ID:/nVonEzSO
お題の元ネタ斜め読みしただけだから色々ずれてるかも

 あいつはいつもの通り、ビルとビルの隙間を這いずるように歩きながら「わたしって、かわいいでしょ」と誰にともなく呟いていた。
うねうねと伸びたり縮んだりする生白い体は日を追うごとに少しずつ大きく成長しているような気がする。 「ねえ」
声をかけると奴は一瞬固まり、ぬるりと振り返って私を見た。
「ねえ、あんた何なの」
微かに声が震えた。目が合って初めてまともな思考が戻り、何故話し掛けてしまったのだろうと思う。
 いつもは遠巻きに見るだけだし、その薄ら寒さにそそくさとその場を離れ、こいつのことを忘れようとしていたのに。それでも、何故か分からないけれど話し掛けてしまった。
何ヵ月経っても癒える素振りを見せないこの鬱屈した気分が私を妙な衝動へと突き動かしてしまったのだろうか。
 「あたし フィッフィー かわいいでしょ」
うさぎとも縫いぐるみとも、生き物とも物とも言える物体はそう名乗る。
「かわいいでしょ ねえ かわいいでしょ。わたしって かわいいでしょ」
無表情に伸びたり縮んだりしている。張り付いたように動かぬ顔は可愛いとは言えない。可愛いというより味気無く、味気無いというより不気味で、不気味というより滑稽だ。
456交ざり、混ざる。(お題:足し算、放射能を巻き散らす人造生物フィッフィーБ):2008/10/27(月) 08:06:47.21 ID:/nVonEzSO
 我慢出来ず接触したものの名前の他は「かわいいでしょ」しか言わないので想像よりつまらなかった。言わないのでなく、言えないのかも知れない。
 「あんた、何」と実験的に訊いてみた。これでまた「かわいいでしょ」と返事をされたらこんなの放って行くつもりだったが、フィッフィーは僅かな間の後、小首を傾げながら「へいき」と答える。まるでそれを恥じるかのような小さな声だった。
 「兵器? じゃあミサイルとか出せるんだ」
立って歩くのもやっとであろう針金みたいな脚の奴が兵器の訳がない。私は弱々しい物体を前に鼻で笑った。
 「ミサイルはでないよ。もっと、じわじわしたもの」
「じわじわ?」放射能かなにかだろうか。どの道、こんな存在するのがやっとのような物にそんな大層な機能付いている訳がない。
「で、兵器の癖にどうしてこんな町中を歩いてるの。あんたは」
 「ここが戦場だから」
頭の悪そうな声だ。実際知能が低いのだろう。
「ここで戦争するつもり?」
「もう始まってる。ここじゃなくて、ここに居るニンゲンで」
そして意思を宿さぬ目が二つ私を射る。「あなたの中でも」
 硝子のような目線に焙られてまず服が焦げた。彼がまだ私の側に居た頃、買った服。可愛いよ、って褒めてくれたのに。服の模様が皮膚に焼き付いていく。熱い、とは感じなかった。代わりに氷の塊を当てがわれたような底冷えするような心地だ。
 全身がただれてきた。これが放射能の威力なんだ。どうしてか、悪くない気分だった。彼が優しく愛撫した体が消滅へと向かうのを感じた。肌がぐずぐずと崩れ始める。もう良い。こんなのもう要らない。
457交ざり、混ざる。(お題:足し算、放射能を巻き散らす人造生物フィッフィーБ):2008/10/27(月) 08:13:08.44 ID:/nVonEzSO
 「わたしってかわいいでしょ」フィッフィーは際限なく伸びやぐ腕二本で、私を抱いた。細い毛のように柔らかな腕からは想像もつかないくらいの強さで、絡み付き、閉じ込めるように抱きすくめる。
体が崩れているのもあいまって煮すぎた南瓜に凧糸を結ぼうとしたように細い腕が私の中心へと食い込む。
「かわいいでしょ。わたしって、かわいいでしょ」
のめり込んだ腕が細々と裂け、それぞれが枝の末端のように伸びた。四方八方の太い血管に忍び込み、赤い流れにあらがうことなく進んでいくが、どの管も最後に行き着くのは心臓だった。
私の核で集合した末端たちはまた二本だけの腕へと戻り、私の肉と溶けあった。
 髪も毒気にあたり、次々と枯れ葉のように乾いて抜けていく。
「わたしって、かわいいでしょ。私って可愛いでしょかわいいでしょ、可愛いでしょ。私って、わたしって。可愛いでしょかわいいでしょ可愛いでしょ」
言葉がフィッフィーから出ているのか、はたまた自分の口から出ているのか分からなかった。
 空洞になった無数の毛穴から白く柔らかな、フィッフィー色の毛が生えた。
不自然なくらいの生命力に溢れ、夏草のように伸びる。おかしいなあ私はもう死ぬのになあ。
「可愛いよ」彼の声がした。
「ホントウ?」フィッフィーと私の声が完全に溶けあった。
「可愛いよ、可愛いよ。可愛いよ可愛いよ可愛いよ可愛いよ可愛いよ可愛いよ可愛いよ可愛いよ可愛いよ可愛いよ」
声を注ぎ込まれ過ぎて溶ける体は膨れて弾け飛びそうになった。容量オーバーした私は無意識のうちに息苦しさでフィッフィーにしがみついた。
フィッフィーの真白い体は餅のように私を呑み込む。圧迫感に元の形を失い、ぐちゃぐちゃの私はフィッフィーの一部になった。
私一人分成長したフィッフィーは彼の「可愛い」を余すとこなく一気に受け止めてくれた。安心感と満足感の中、私はフィッフィーの体の一部として思考を停止させた。
458交ざり、混ざる。(お題:足し算、放射能を巻き散らす人造生物フィッフィーБ):2008/10/27(月) 08:14:15.16 ID:/nVonEzSO
以上です
携帯からの投稿なんでパソから見たらおかしかったらすんません
459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 08:53:30.61 ID:7UbTRtBc0
最期は急速な展開がよかったかもしれんが、悪くなかったよ
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 09:06:11.28 ID:eu1ZvNIw0
>>458
あまりにもカオス。何を言えばいいのかわからない。

表現、描写にところどころ差があるように思えたので、
携帯じゃなく、きちんとパソコンで書かれたものを見てみたいな、とは思った。
この話がじゃなくて、氏の作品という意味で。

携帯だから、というのはとりあえず置いておいて。
名前欄には『レス数/総レス数』が欲しい。
これがあると、投下途中でトラブルとか、作品の終わりとかちゃんとわかるから。
もしそれでタイトルとお題が入れられなくなるのなら、投下宣言にお題を書いてしまえばそれでいい。
ということで、投下宣言も必要。
過疎だと大丈夫だと、人が多い時にはやっぱり宣言しないとプチカオスにもなりうる。
字下げに関して、>>1からいけるコラムを見ることをお勧めする。
461以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 10:12:43.59 ID:eu1ZvNIw0
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 11:07:24.17 ID:eu1ZvNIw0
463以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 11:20:44.34 ID:wO+xOQ/jO
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 11:59:41.52 ID:Ng80SvEU0
465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 12:13:08.87 ID:hw0U6umtO
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 13:32:23.15 ID:Ng80SvEU0
カギを掛ける保守
467以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 14:24:54.23 ID:C2PkcvNI0
hosyu
468 ◆8wDKWlnnnI :2008/10/27(月) 14:48:59.40 ID:Y5E7n/LUO
とりあえず投票だけ投下する

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: No.10 義眼徒マスターピース ◆LBPyCcG946氏
      No.14 まわる ◆IPIieSiFsA氏

気になった作品:No.07 『おもしろい社会』 ◆xyAZ5VvW6Y氏
        No.12 Neck ◆DuoCt8/SKk氏
        No.20 ものかたる ◆EqtePewCZE氏

********************************************************


気になる作品はもっとあったけど、絞るとしたらこの二つかなと
全巻は多分明日ぐらいに投下しまっす

いやー、しかし相変わらず力作ばかりで本当にビビった
文才無いスレじゃねーのかここは、お前らちゃんとスレタイ読みやがれ
469以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 14:58:19.66 ID:rxtr3YdGO
敢えてこのスレで、お前らのチンコを勃てる事を目的に何か書いたら怒られるだろうか
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 15:01:19.96 ID:Ng80SvEU0
お題に沿ってればいいんじゃないの
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 15:55:23.31 ID:cxHqLu+m0
伝説の左ッ!
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 15:57:58.06 ID:Iv3XMFPG0
おだいくれ
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 16:00:38.04 ID:cxHqLu+m0
>>472
階段
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 16:04:45.44 ID:Iv3XMFPG0
はあく
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 17:03:39.39 ID:cxHqLu+m0
ぼんばーへっど!
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 17:37:14.54 ID:cxHqLu+m0
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:05:14.70 ID:cxHqLu+m0
478以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:39:56.22 ID:wO+xOQ/jO
過疎ってるな
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:59:00.76 ID:hw0U6umtO
お題もらうだけもらっとく
480以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:00:24.34 ID:iJcYrh2sO
>>479
ドミンゴ
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:10:03.13 ID:NYM9V9dyO
おだいを三個ばかしください
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:13:29.49 ID:cxHqLu+m0
目覚めの悪い朝
ぽかぽかの昼
騒がしい夜
483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:17:57.11 ID:deSE9K0w0
滑舌が悪いって言葉をもっと上手く表現するにはどうしたらいいんだろうか
484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:19:15.70 ID:uaxPk1r80
すっかり文章の書けない人間になってしまいました。
485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:23:14.73 ID:NYM9V9dyO
>>482
いただきます!
486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:25:41.16 ID:tuxNb0PU0
ごちそうさまんもすうれぴー
487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:34:40.99 ID:cxHqLu+m0
もう2か月以上も何も書けないよ

>>483
実例を挙げてみるとか
488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:35:35.37 ID:zVIpYjjT0
失礼、噛みました
489以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:40:38.55 ID:K3UzNaq3O
お題下さい!
490以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:45:48.83 ID:dFN2pC9h0
>>489
神様の携帯電話
491全館 0/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/27(月) 19:45:57.50 ID:wRi7aK380
>>489
全否定。もしくは言い訳。

全館投下。四レス。
492全館 1/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/27(月) 19:47:42.62 ID:wRi7aK380
No.01 ミトコンドリア ◇pEiFbPF7ug
やおい(ヤマなし・イミなし・オチなし)に近いものがある。だから何?、と聞きたくなる。
下手に回りくどい文を使わずに、素直に書けばいいと思う。

No.02 唐変木と変な僕 ◇fSBTW8KS4E
通常全館の人ですね。
玉子焼きと目玉焼きが摩り替わっているのには突っ込んで言いのだろうか。笑ったが。
僕は食われちゃうの?まあ違うよね。深読みのしすぎだよね。
全体としては、これが書きたい、という気持ちが先を行き過ぎていて、空回りしている感じ。
ツンデレな僕が書きたいのだろう、とは伝わって気たけど。

No.03 『めぐりめぐって』 ◇IRnBaWgO4
なんという超展開。超展開過ぎはしないだろうか。悪い意味で。もっと話を膨らまそう。
ありがちな話なんだから、骨組みだけじゃなくて、もっと自分なりの肉付けをしたほうが良いと思う。

No.04 リコリタハチマルイチ ◇pxtUOeh2oI
マルイチは、俺んちから徒歩三十秒のところにある。それは置いといて。
これは縦書きにして、紙の上で読みたいな。ネットじゃあちょっと読む気にならない。読んだけど。
俺には何となく視界に入りきらないものを見せられたように感じられた。と、いえば聞こえはいいが、
ようするに何がなんだか分からなかった。

No.05 オルゴール ◇8wDKWlnnnI
詩的である。というか詩と小説のあいこみたいな。詩と小説の畑の真ん中のあぜ道みたいな。カントリーロード。
493全館 2/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/27(月) 19:48:44.46 ID:wRi7aK380
No.06 『幼馴染の葛藤』 ◇rEGWXIt34Y
つまらなくはない。でも情景描写に毛が生えた程度というか。もっと膨らみを。

No.07 『おもしろい社会』 ◇xyAZ5VvW6Y
オゥ、ベリー陳腐ネ。一番俺の好みじゃないやつ。芥川賞っぽいのを書こうとしているやつ。自己満。
俺もその手のをよく書くけど、いい評価がついたことはまずない。こういうのは土台がしっかりしてから
かかなければ。

No.08 『十五年後のふたり』 ◇bwVfaj/.fQ
やっぱしそういうオチか。
なんかお題を消費するために無理やり話を作ったように感じられた。もっと、話がお題を引っ張るように出来れば
いいと思う。むつかしいけれども。

No.09 秋晴れニキビ ◇TQd9MjVDR6
絵は明るいところで見ると、絵の具が傷むよ。だから証明は薄暗いんだよ。どーでもいいか。
あんまり回ってないよね。あと、ドラマかなんかのあらすじみたいな感じがした。もうちょい
長い文で読みたい。あと一レスあるんだから、もっと膨らませてもいいじゃないか。

No.10 義眼徒マスターピース ◇LBPyCcG946
土偶、というのがよく分からなかったけれども、最後のオチは、あんなに説明しなくても良いと思う。さらっと。
奇妙な作品ですね。まあそれくらいしか言えんけども。あ、一人称でやる必要はあったのかな、と。
まあ三人称でやる必要も無いけども、そっちのほうが適切かな、と思た。
でも、神っぽい土偶を描写するのが神の目線ってのもヘンか。どちらでも良い。
作風なのだけれども、淡々としし過ぎて読みづらい。ほどほどにね。

No.11 傘を盗めば靴屋が儲かる◇mEnrXcph1I
前半は必要だったのか、と。雰囲気作りと言われてもピンとこないし、主人公の設定の説明と言われても微妙。
傘は盗まれたんだろうが、なぜ主人公がそれを弁償しなきゃいけないのか分からん。
もう一度読み直す気にもならない。話としてはまあ普通。
494全館 3/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/27(月) 19:49:30.65 ID:wRi7aK380
No.12 Neck ◇DuoCt8/SKk
うーむ。お題を消化するだけの話。みたいな。読みやすくはあったけど、なんか漠然としすぎのような。
ご都合主義みたいな。

No.13 仕掛け時計 ◇3rYRhluiQ
最後の一行は少し考えさせられた。でもさ、時計は見る人あってのものだよね。人形も。
これで見る人は一人減ったわけだが。どうなんだろうね。割と好みのタイプ。読みにくさは少し合った。

No.14 まわる ◇IPIieSiFsA
ゴリ川久しぶり。橘萌え。おまわりさん。

No.15 LOVER SOUL ◇R4Zu1i5jcs
だまって、三レスくらいにしておけばいいのに。レス数が多ければかっこいいというわけではない。
読んでいるときはまあ楽しかったけど、読み終わるとどうってことはなかった。いじょ。

No.17 金は天下の ◇6UfJsbhsG2
もうこのお題で何度、何か(多くは金)が天下を回ったことか。
感想つけづら。貶すにもそういう小説じゃないし。褒めるといってもかえで萌えくらいしかないし。

No.18 『この洗濯機の回る音』 ◇s6O8QJeB1Q
おお、二転。いじょ。

No.19 頭の回転の速い彼女はどこへ行く ◇VXDElOORQI
しけてる野郎の方。想像したらワロタ。

No.20 ものかたる ◇EqtePewCZE
なつきは何になったんでしょうね。もうちょっと書く量を積んだ後の作品が見たい。
次次次次次回作くらいの作品が読みたい。
495以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:50:01.93 ID:deSE9K0w0
>>487
いや、滑舌が悪いってのをもっと文学的な言葉に言い換えたいんだけど語彙が貧困だからなかなか思いつかなくて
496全館 4/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/27(月) 19:50:16.32 ID:wRi7aK380
******************【投票用紙】******************
【投票】: <<なし>>
               ―感想―
     ピンとこなかった。

気になった作品:リコリタハチマルイチ ◇pxtUOeh2oI氏
               ―感想―
        なんか圧倒されたので。
        
        義眼徒マスターピース ◇LBPyCcG946氏
               ―感想―
        世界観に。

        頭の回転の速い彼女はどこへ行く ◇VXDElOORQI氏
               ―感想―
        超回転に。
**********************************************

いじょ。感想はその時の気分により大いに作用されているので、あまり参考にしないように。
あと、俺の感想に対してのつっこみ、質問などにはなるべく答えるので「おい! ◆BqgMEgxWzg !」
みたいに呼びかけてくれれば返事する。「お前の作品だって糞なのに!」とかの文句でも、
返事する。あと、俺の作品に対する、質問、返事が欲しい場合の罵倒などにも返事をするので
呼びかけてくれ。そのうちに言い訳もする。いじょ。おったま。

しもた。最後のレスは全館じゃなくて投票だった。
497全館 5/4 ◆BqgMEgxWzg :2008/10/27(月) 19:51:12.89 ID:wRi7aK380
いじょ。
498以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:54:15.05 ID:hrVXNJ1xP

    / ̄\  ソニックはおもいます
    |  ^o^ |  なんでしょうせつのなかのひとは
  ∠ \_/ ρ   ぶんぽうやらたんごのつかいかたが
 ∠ムO  )∨     ちゃんとできているのでしょう?
  ∠ |^|
    ┛ ┗
499以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:56:41.11 ID:c8m9DiJu0
全巻おつー
投票するときはNo付けたほうがいいよ
500以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:57:50.90 ID:cxHqLu+m0
ぜんかんおつ
501以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:01:56.55 ID:H3YWlMd30
>>498をみてこんなのを思い出した。

読者「『〜』を読みました。
   とても面白かったのですが、1箇所だけ気になるところがあります。
   ●ページの、●●という記述ですが、これは正確ではありません。
   正しくは▲▲です。ご存じなかったのでしょうか?」

森博嗣「僕は知っていますが、西之園萌絵は知らなかったみたいですね」
502以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:02:51.66 ID:cxHqLu+m0
>>495
彼の舌はよくもつれる

いまひとつだ
503以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:09:14.33 ID:dds2ueWcO
>>495
彼が喋るたんびに、言葉が沼に埋もれてくようなもどかしさを感じる

全感乙
通常全感の人は酉違う気がする
504以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:14:39.86 ID:deSE9K0w0
>>502-503
ありがとう。参考にさせてもらう
505以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:15:56.43 ID:wRi7aK380
>>503
なんという東北人。
通全の違かったか。ごめ。両者ごめ。
506以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:24:42.47 ID:2uJ9e2xIO
まぁ面白かったって書いてあったから良かった
507以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:25:21.31 ID:A3xKEav00
>>497
全館のツー
ゴリ川を覚えてくれているだけで嬉しい
508以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:47:55.05 ID:wRi7aK380
全館少ないのかな保守。
509 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/27(月) 21:11:24.20 ID:4EcuBbsiO
全館乙です
やおいか…。読み返したら、確かにごもっともだな。意味がわからん。

お題下さい
510以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:13:13.73 ID:Ng80SvEU0
フォーメーション
511 ◆pEiFbPF7ug :2008/10/27(月) 21:15:08.76 ID:4EcuBbsiO
>>510
いただき
512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:31:01.76 ID:6LF6j3VW0
おだいくえ
513以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:31:43.68 ID:Ng80SvEU0
ファンタジスタ
514 ◆IPIieSiFsA :2008/10/27(月) 21:36:12.88 ID:A3xKEav00
全感と言えば聞こえはいいがただの恥さらし。
投票含めて3レス。
515 ◆IPIieSiFsA :2008/10/27(月) 21:36:29.01 ID:A3xKEav00
No.01 ミトコンドリア ◆pEiFbPF7ug氏
 それで始まり、締めてもいるのだけれど、ミトコンドリアが唐突に出てきた感じ。
 しいて言えば出てくるまでに2行くらい足りなくて、さらに説明で1行足りない感じ。
 赤いもの、のあたりが素敵だと思った。

No.02 唐変木と変な僕 ◆fSBTW8KS4E氏
 冒頭1文目。『読点』『読点』『句点』だけど、全部『句点』の方がスッキリすると思う。
 なかなか面白かった。繰り返しだと認識させるのをもっと上手くすればさらに良かったかも。
 気になるのは主人公たちのサイズ。車を運転する人はわかるだろうけど、10キロは別に長くない。
 障害もない道で、我々がイメージする『猛スピード』なら、5、6分で着いてもおかしくない。
 けれどそれをロングドライブというなら――これが揶揄めいたものでないなら、彼らは小さいのだろう。
 『「いつになったら、卵を産むんだろうね」』これは恐ろしさを感じさせてすごく良かった。

No.03 『めぐりめぐって』 ◆IRnBaWgO4.氏
 2行目に違和感がある。
 『「そうか、良かった。今帰るところだが……折角だから、一緒に帰るかい?」』ここで吹いてしまった。
 物語は予定調和で終わっていく。そこに面白さや楽しみはないけれど、こういう終わりがやはり好きだ。
 3レス目が年寄り臭いので、あの文章をそのまま生かすならもう少し年齢をあげたほうが良いと思う。

No.04 リコリタハチマルイチ ◆pxtUOeh2oI氏
 ダンサー。『笑っていた。笑い返した。』ここがちょっと良かった。
 他には特に言うべきこともない。タイトルで作者もそう言っているし。

No.05 オルゴール ◆8wDKWlnnnI氏
 オルゴールの音色は好きです。言うとおり、少し寂しくなるような音色。
 淡々と記すだけじゃなくて、それぞれに肉付けしていくと物語らしくなって、私は好きです。

No.06 『幼馴染の葛藤』 ◆rEGWXIt34Y氏
 これはいい。するりと二人の思いが伝わってきた。
516 ◆IPIieSiFsA :2008/10/27(月) 21:36:45.28 ID:A3xKEav00
No.07 『おもしろい社会』 ◆xyAZ5VvW6Y氏
 子供じみた考え方でスタートする物語。お父さんは何で死ぬんだろう。
 ラストの考え方で死なせれば面白かったと思う。『輪廻を切る=死なない』とは限らないし。

No.08 『十五年後のふたり』 ◆bwVfaj/.fQ氏
 たぶん多くの人は、何で熱海なのに大阪なの? って思うだろう。
 綺麗に対比で馬鹿な女性が描かれている。けれど特に二人に魅力があるわけでもない。

No.09 秋晴れニキビ ◆TQd9MjVDR6氏
 良くも悪くも風景画のような印象。それも晩秋。これは作者の狙い通りだろうか。
 思考の飛躍についていけないところもあるが、違和感なく終わっている。

No.10 義眼徒マスターピース ◆LBPyCcG946氏
 途中はよくわからないところもあるけれど、発想力というか、そういうのが好き。

No.11 傘を盗めば靴屋が儲かる ◆mEnrXcph1I氏
 終始「傘を買えよ」と言いたいのを我慢した。最寄のコンビニが遠いなら生協に行け、と。
 最後の三行に完全についていけなかった。

No.12 Neck ◆DuoCt8/SKk氏
 これはやられた。なるほどね。
 でも、無職になった理由と借金の理由。いま現在働けない理由があれば、もっと納得できた。

No.13 仕掛け時計 ◆3rYRhluiQ.氏
 1レス目の回りくどくもったいぶった、わかりにくい言い回しは2レス目への複線かな、と思っていたら違った。
 なんだかわからないままに終わってしまった。

No.14 まわる ◆IPIieSiFsA
 きっと「横に長い」「改行しろ」と言われるだろう。だから言おう「できたらやってるわ。ごめんね」
 完全版にしたら、長編が書けるなー、と思いました。
517 ◆IPIieSiFsA :2008/10/27(月) 21:37:00.74 ID:A3xKEav00
No.15 LOVER SOUL ◆R4Zu1i5jcs氏
 オカマなんだと思っていたら女だったのか。
 「実は女」というのもカードの一つなのだろうけど、それなら見せ方を失敗した感じ。
 システムというか、アイディアそのものというか、こういうのは好きです。

No.16 メリーゴーランドは二回転 ◆BqgMEgxWzg氏
 ぼくの性別も含めて何がなんだかわからなかった。

No.17 金は天下の ◆6UfJsbhsG2氏
 挿絵いいよ挿絵。この物語には、最終的に物事を金で解決するという嫌らしさがある。
 なんていうつもりはありません。
 小学生の時に読んだ本で「鉄の処女」とか出てきて意味わからなかったのもいい思い出。

No.18 『この洗濯機の回る音』 ◆s6O8QJeB1Q氏
 なんか締めに違和感。あと、洗濯は朝しましょう。

No.19 頭の回転の速い彼女はどこへ行く ◆VXDElOORQI氏
 くそう。笑っちゃった。頭の回転的に先のことを突っ走ると思ってたのに。

No.20 ものかたる ◆EqtePewCZE氏
 途中まではなつきに萌えていた。まあ要するに思考についていけなかった。
 字下げとか段落とか勉強したほうがいい。

******************【投票用紙】******************
【投票】:なし
気になった作品:No.02 唐変木と変な僕 ◆fSBTW8KS4E氏
        No.06 『幼馴染の葛藤』 ◆rEGWXIt34Y氏
        No.12 Neck ◆DuoCt8/SKk氏
        No.19 頭の回転の速い彼女はどこへ行く ◆VXDElOORQI氏
**********************************************
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:38:30.96 ID:A3xKEav00
久しぶりに品評会に参加できたので全感も久しぶり。
楽しかった。
でも今回全感少ないね。
519以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:42:02.81 ID:dds2ueWcO
>>518
全感乙
多分もうすぐ三日落ちだから、次スレ待ちと予想
520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:54:54.17 ID:wRi7aK380
BNSKに来てから早半年弱。
未だに三日落ちとはなんなのか、よくわからない。容量がどうのこうの、だっけ?
521以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:56:56.76 ID:A3xKEav00
>>519
なるほどね。

>>520
VIPのスレはすべて三日経つと落ちる。
BNSKスレ云々じゃないのです。
522全感 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:02:02.49 ID:zVIpYjjT0
全巻みたいなの書き散らしたんで落としますー
523全感 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:02:47.92 ID:zVIpYjjT0
No.01 ミトコンドリア ◆pEiFbPF7ug氏
えーっと、良く解からんです。
最終的にはなんとなーく解かるんだけど、解かるまでが長い。その間置いてけぼり。
あと、最初の数行が色々説明不足だったり、余計なこと言ってたりで、解かり難い。
例えば、この辺↓
> 『ここはどこ、わたしはだれ?』
> 随分と使い古されていて、ステレオタイプな、もしかしたらこんな言葉は時代遅れだと笑われるかもしれない。
ここは2行目が、『ここはどこ、わたしはだれ?』ってセリフについて言ってるってことが、なんとなく解かり難い。
んで、説明がちょっとくどいかも。 『随分と使い古されたセリフだ』ぐらいに簡潔な方が読みやすいかな。
> でも今は違う。
時代遅れに『今は違う』はないんじゃない? 過去にタイムスリップでもせん限り。
直すとしたら『しかし、今このセリフを使わずに一体何処で使うのかー』とか? 直すってレベルじゃねーぞ。

No.02 唐変木と変な僕 ◆fSBTW8KS4E氏
えーっと、これもよく解かんないっす。
こっちはNo.01と違って最終的に解かんなくなっちゃった。
オチは「主人公は鶏でした」ってことなの?
「主人公=鶏」と置いた上で、もう一度読んでみてもなんか新しい発見がある訳でもないし。
つーかパソコンの電源とか入れるし、車運転するし?
結局、唐変木が変なこと言ってるだけなんだろうか。それはそれでよく解かんない。
こんな言っといてなんですが、雰囲気は好きです。

No.03 『めぐりめぐって』 ◆IRnBaWgO4.氏
特にコメントできませんです。
なんか、「ああ、良かったなー」って感じ。
読みやすかった、話も解かりやすかった。それは良いけど、なんかもう足りん!みたいな。
他人の事言えんけど。
こんな言っといてなんですが、こういう女の子は好きです。
524全感 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:03:21.23 ID:zVIpYjjT0
No.04 リコリタハチマルイチ ◆pxtUOeh2oI氏
えっと、この人は何をしてるんだ?
最初は徒競走なのかと思ったけど、最終的に踊ってるし。
世界観もよく解からん。んで解からん単語がちょくちょく出てくる。
説明を入れるのが嫌だったんなら、もうちょっと解かり易いものを題材にすればよかったんじゃ?

No.05 オルゴール ◆8wDKWlnnnI氏
詩?
というか、詩ですよね、これ。
自分は詩集とか読んだことないからよく解かんないけども。
最後の方とか特に詩っぽいです。
その上で、詩としては多分好きです。

No.06 『幼馴染の葛藤』 ◆rEGWXIt34Y氏
何処が「まわる」なのかは敢えて聞かない。
まぁこれもNo.03と同じ感じで、特にコメント無いです。
切ない雰囲気は伝わってきた。

No.07 『おもしろい社会』 ◆xyAZ5VvW6Y氏
超個人的に、こういうの好きです。
でもなんか、拙いって言うか、考えた話をそのまま文章に起こしただけ、みたいな。上手く言えん。
あと一個思ったこと。
>しかし、現実というのはそう甘い物ではない。
>他の芸能人からの妬み、仕事でのトラブル、過密スケジュールによる疲労、ストレス。
ここが何というか、普通で、まともで、何かなーと思った。いきなり現実的。
あと、輪廻を止めると死なないってどうなん? って思ったけど、
調べてみたら間違いではなさそうだったんでそこは突っ込みません。
525全感 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:03:54.08 ID:zVIpYjjT0
No.08 『十五年後のふたり』 ◆bwVfaj/.fQ氏
最後の一行が「お題はちゃんと消化してます」アピールっぽいのがどうも。
いや、他人の事言えんけどね。
まぁ話はスイーツかっこわらいっぽいなと思いました。
超どうでもいいけど、福岡の人かしら。

No.09 秋晴れニキビ ◆TQd9MjVDR6氏
とりあえずこれは聞きたい。何処が「まわる」なんですか。
にきびは話の内容と関係あったんかな?
あとタイトルが「ニキビ」なんだから、本文も「にきび」じゃなくて「ニキビ」に統一した方が良いんでない?

No.10 義眼徒マスターピース ◆LBPyCcG946氏
超個人的に、こういうの大好きです。
つーか突っ込むところねぇ。
スレ違いだろこれ。

No.11 傘を盗めば靴屋が儲かる ◆mEnrXcph1I氏
No.3、No.6の上位互換って感じ。
最初の方の男が傘を盗もうとする下りに若干の違和感があったけど。
楽しい文章でした。

No.12 Neck ◆DuoCt8/SKk
自分の。
今まで「いかに回りくどくお題を消化するか」をテーマにしてきて失敗したんで、
今回は素直にお題消化しにいこうと思って書いたのがこれ。三重にお題消化してます。
でも書いてから気づいた。なんかこんなドラマあったぞ。
526全感 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:04:27.84 ID:zVIpYjjT0
No.13 仕掛け時計 ◆3rYRhluiQ.氏
これもよく解かなんない。
まず「株価は暴落した」だけでこんな恐慌になるのがイメージし難い。
株価が落ちるのにも理由があるだろうしね。その辺説明欲しいかな。
あと何より解かんないのがオチ。
この女何者やねん。

No.14 まわる ◆IPIieSiFsA氏
よく書かれてるなーと思った。
でも長い。5レスは5レスの筈なんだけど、長い。横に長いせいか。
一応ミステリーな訳だから事件の説明→解決を書かないといけないって考えると、当たり前っちゃ当たり前だけど。
あと等々力って何て読むの? ららりき?

No.15 LOVER SOUL ◆R4Zu1i5jcs氏
これも好き。
強いて突っ込む所を挙げるなら、最後に小宮の口調がいきなり砕けてたとこに違和感があった。

No.16 メリーゴーランドは二回転 ◆BqgMEgxWzg氏
>ぼくとメリーさんは恋人同士ではないし、最近、巨大な遊園地がオープンした。
最初の文でいきなり突っ込みたくなった。おかしくない? 狙い?
話は単純に好みでは無いです。多分好きな人も居ると思うけど。
メリーさんって言うと、「今あなたの後ろに居るの」が浮かんできてどうも。

No.17 金は天下の ◆6UfJsbhsG2氏
この作品のためにまとめ掲示板をJaneに入れました。
新しい試みは結構なんだけど、せっかくだからもっと意味のある絵にすれば良かったんじゃない?
これじゃ、絵無くても普通に読めちゃう。
まぁ普通挿絵ってそういうもんだけど、ここでわざわざするならって意味ね。
絵自体は2、3枚目も1枚目みたく線を太くした方が整って見えると思います。
文はハルヒっぽい。
527全感 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:06:02.37 ID:zVIpYjjT0
No.18 『この洗濯機の回る音』 ◆s6O8QJeB1Q氏
主人公が慌て出す辺りから読者置いてけぼり。
以前そういうことがあったからって言うのは解かるんだけどね、電話出なかっただけで焦りすぎだろうと。
前半で主人公がそういう性格だって解かってれば良いんだけど、自分はそういう印象は受けなかった。

No.19 頭の回転の速い彼女はどこへ行く ◆VXDElOORQI氏
どうすりゃ良いんだこれ。誰か拾ってあげて下さい。
優勝なんかいらんから関心票いっぱいくれ、みたいな作者の声が聞こえます。きっと気のせい。

No.20 ものかたる ◆EqtePewCZE氏
どんな小学生だよ……なんて言うのは野暮ですね。
でも「僕も、一緒に狂いたい」はエロすぎると思います。
528全感 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:06:52.79 ID:zVIpYjjT0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.10 義眼徒マスターピース ◆LBPyCcG946氏
          ―感想―
          うめぇ。としか
気になった作品:No.11 傘を盗めば靴屋が儲かる ◆mEnrXcph1I氏
          ―感想―
          楽しかったです。
**********************************************
529以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:08:40.95 ID:dds2ueWcO
全感おっつん
530 ◆DuoCt8/SKk :2008/10/27(月) 22:08:45.33 ID:zVIpYjjT0
おわり

偉そうなこと言ってるかもだけど、
自分もあんなんしか書けないへタレなんで気にすることないです
531以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:13:46.27 ID:A3xKEav00
>>530
等々力は「とどろき」です。
サッカーの等々力競技場とか。
普通に東京の地名だったはず。
532以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:14:01.80 ID:A3xKEav00
書き忘れ。
全館のツー。
533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:14:32.35 ID:zVIpYjjT0
>>531
ああ、普通に自分が無知だったか、ごめん
534以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:17:47.49 ID:B00aBfAJO
なあファンタジーの設定考えたんだけど意見くれないか?
535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:26:16.28 ID:zVIpYjjT0
一応書いてみれば良いんじゃないの?
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:33:22.72 ID:B00aBfAJO
>535
助かるよ、そのレス

 ある世界で2人の魔女が戦争を始めた。魔女大戦と呼ばれた。
彼女らは様々な時空から生き物や武具を召喚し、
知略と暴虐の限りを尽くし戦った。
なぜ彼女らが戦うのか知るものはいなかった。

 そして、魔女大戦は突然終わる。
2人の魔女は忽然と姿を消し、後には荒れ果てた世界だけが残った。


ごめん、レス分けるわ
537以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:42:08.40 ID:k/YhB9Th0
え、まさか終わり?
538以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:42:59.11 ID:B00aBfAJO
 100年後、人々は世界に残されたままになっていたモンスターの討伐に明け暮れていた。
 同じく魔女たちが残していった武器や防具を手にとって。

 ある日、新米兵士のアーサーは、
村を荒らすゴーレムを討伐するために仲間とともに洞窟に入る。
 そこで全滅の危機に陥るアーサーたちであったが、
1人の少女に助けられ九死に一生を得る。
その少女こそ、100年前の魔女大戦を繰り広げた当事者である魔女の1人だった。
時を同じくして、もう1人の魔女も目を覚ます。
 第二次魔女大戦が始まろうとしていた。


みたいな感じ
539以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:49:26.96 ID:OnAzNSrR0
オチ次第だな
540以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:51:31.01 ID:tuxNb0PU0
設定って表層だけじゃん
541以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:52:23.23 ID:C03u6NSP0
武器とか防具とか一人で使うなら出しすぎじゃねと思った
魔物も使う設定なんだろうか、それだと今度は人間用がなくなりそうだが
542以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:52:35.60 ID:k/YhB9Th0
まだ小説になってもいないし、設定すら完結してないのでどうとも言えないけど、
ラノベな感じ。
魔女たちの戦う理由やいきなり戦争が終結して二人とも眠り始めたわけを
いかに説得力を持って書ききるかに終始する気がするけど。
世界観がそれだけだとわからないけど、
たった二人の魔女に人間や他の魔女や生き物は抵抗しなかったのかとか、
そういう部分は描かれる予定なんだろうか。それとも絶対無比な二人の魔女で、
他の人々は手を出そうとすらしなかったのかな。

しかし設定だけ書かれて「意見は?」とだけ聞かれると困るものだね。
アリかナシかと聞かれても
書きようによっては猫がウンコするだけの話でも芥川賞取れるかもしれないし、
人生を掛けた意味深長な物語でもウンコになりえるよね、としか言えない。腕じゃね?
543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:54:13.05 ID:B00aBfAJO
>539
アーサーとアーサーと出会った方の魔女が
協力してもう片方の魔女を倒す
っていう展開になる予定なんだけど……
544以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:54:27.08 ID:zVIpYjjT0
>>536
まぁありがちって言うか、特に真新しい感じはしない。
よって文章にされんと何とも言えん。小説にするのかは知らんけど。
突っ込むなら、魔女も一対一の喧嘩を「大戦」と呼んで良いものかな、とか。

俺が楽しみに待ってるBLAZBLUEってゲームがあるんだけど、それとなんか似たものを感じる。
545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:55:31.61 ID:NYM9V9dyO
>>536は短いプロローグなのかな
>>536>>538も本編だとしたら、同じ争いが繰り返されるから、
よっぽど引き出しがないとダレそう

まあラノベはヒマさえつぶせればいいと思ってしまうんだ。
だから350枚くらいさらっと書けるなら迷わず書いとけ
546以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:56:30.11 ID:OnAzNSrR0
>>543
ひねりもなんもないのな

でもそれが逆にいいかもしれん
547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 22:57:01.23 ID:lB/+NmrQO
548以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:00:00.74 ID:B00aBfAJO
なるほどね
破綻してないか確認したかったんだ
ワルサーVS正宗とかオーディーンVS酒天童子みたいなバトルを描ける設定を考えてたら
こんなんでてきた
549以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:01:48.98 ID:C03u6NSP0
魔女は最強に近いんだから、味方になると雑魚戦はつまらないような気もするな
10レスぐらいでここで書いてみればいいんじゃね
お題しだいだけど
550以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:03:06.78 ID:k/YhB9Th0
それならお題は「魔女」だろうなやっぱ。もし>>548が書くのならね。
551以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:06:06.51 ID:tuxNb0PU0
>様々な時空から生き物や武具を召喚し

これは能力に制約つけないと危険だと思う
召喚できるなら別の時空に飛ぶことも可能だろうし
時間が一方向にしか流れないわけじゃなくなるから、終わりがなくなる
552以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:06:28.25 ID:OnAzNSrR0
そういえば男も魔女っていうらしいね
最近知った
553以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:07:52.65 ID:B00aBfAJO
>549
100年では回復しきってなくて、
2人とも不完全な状態で復活した、みたいな
PCが死んでるんだよorz
『ギャーギャーうるさい盾オハン』とか、
『グングニルを食い止めろ!』みたいな小ネタのストックが結構ある
554以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:07:56.73 ID:wRi7aK380
男女共通してウィッチだからかな?
ウィッチ=魔法使い=魔女。まあ納得できるな。
555以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:17:35.70 ID:B00aBfAJO
>551
そりゃそうだな
・時空移動はできない
・何が出るかわからない
・魔力を消費する
くらいは考えてた
556以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:19:48.48 ID:C03u6NSP0
>>554
ウィザードはなんだっけ?
557以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:21:54.28 ID:wRi7aK380
>>556
童貞だろ。
558以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:24:43.24 ID:zVIpYjjT0
看護婦が差別用語なら魔女も差別用語だよね
559以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:26:55.15 ID:tuxNb0PU0
受精卵って子宮じゃなくても着床するらしい
つまり男でも妊娠できる
よって妊婦も差別用語
560以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:29:09.87 ID:C03u6NSP0
>>557
攻殻機動隊で少佐がウィザードクラスだと言われてたが
そうだったのか……
561以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:29:20.23 ID:OnAzNSrR0
もうなんでも差別になりそうだ
562以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:35:57.66 ID:Ng80SvEU0
そろそろか?
563以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:38:22.28 ID:C03u6NSP0
にゃにが?
564以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:39:02.23 ID:OnAzNSrR0
落ちるのが
565以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:39:08.95 ID:tuxNb0PU0
だから日付変わるくらいまで持つでしょ
566以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:46:56.71 ID:C03u6NSP0
小説を書くのに日本語はとても面白い言語だと思うが、
漢字があっているか自信がないことがよくあるから困る

かかる。の使い分けが本気でわからない。
567以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:48:56.96 ID:tuxNb0PU0
腕にとまった蚊を叩き潰すときは「蚊狩る」
568以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:49:39.49 ID:Ng80SvEU0
蚊る。だろ
569以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:49:42.31 ID:C2PkcvNI0
>>556
意図的にかかるを多用した文章を一回でも書くと自然と慣れる、わかるようになる。
570以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:50:06.69 ID:C2PkcvNI0
>>569安価ミス>>566
571以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:50:41.53 ID:zVIpYjjT0
解からんかったらひらがなでも良いと思うんです
572以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:56:24.84 ID:hw0U6umtO
最後なら俺にドストエフスキー並の文才が芽生える
573以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 23:58:08.35 ID:tuxNb0PU0
ネットだと傍点打てないからひらがな続くと読みにくいよね



最後なら、明日の朝目を覚ましたら中原中也並のイケメンになってる
574以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:00:45.87 ID:IPgyxMbZ0
>>573
阻止
575以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:00:54.53 ID:25pFCkcq0
最後なら爆発する
576以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:00:56.21 ID:bHcv/ew+0
それってたいしてイケメンじゃないようなw
577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:01:52.94 ID:DxjGTBH00
最後なら、明日の朝目を覚ましたら萩原朔太郎並の手品好きになってる
578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:02:36.68 ID:bHcv/ew+0
最後なら音楽の趣味が合ってくたくたのセーターとニーソの似合う彼女が出来る
579以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:02:59.18 ID:IPgyxMbZ0
最後なら、明日の朝目を覚ましたら虫に変身している
580以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:04:14.59 ID:saRiSB/S0
最後奈良さようなら
581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:04:22.23 ID:bHcv/ew+0
最後なら次スレも最後になれる
582以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:05:01.38 ID:yS7+ldlE0
最後ならBNSK消滅
583以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:05:49.17 ID:ODUETkWM0
最後なら文才王に俺はなる
584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:07:53.62 ID:25pFCkcq0
最後ならいいネタ思いついた
585以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:08:29.49 ID:9Zz9ow0+0
最後なら文才が手に入る
586以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:08:38.39 ID:saRiSB/S0
阻止絵
587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:10:32.99 ID:DxjGTBH00
最後ならシャンプーとリンスの減りにばらつきがなくなる
588以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:10:57.67 ID:25pFCkcq0
さいごならみんな不幸せ
589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:11:17.32 ID:ODUETkWM0
最後ならみんな幸せ
590以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:11:28.42 ID:saRiSB/S0
誰か収集をつけるんだ
591以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:12:19.55 ID:25pFCkcq0
さいごっごー
592以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:13:13.17 ID:DxjGTBH00
最後ならとうもろこし食べても皮が歯に挟まらなくなる
593以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:13:35.74 ID:yS7+ldlE0
眠い
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:13:40.58 ID:25pFCkcq0
いいなそれ
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:14:10.49 ID:R+HTYoGG0
むしろ続ければ
596以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:15:40.91 ID:saRiSB/S0
というか次スレは?

最後なら↓の人がすごいスレタイの次スレをたてる
597以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:16:56.33 ID:DxjGTBH00
把握
598以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:17:29.08 ID:ODUETkWM0
最後なら原稿用紙300枚分書き上げる
599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:17:32.95 ID:XbM2MkmB0
なんという撞着
600以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/28(火) 00:21:37.23 ID:lwTGUE/gO
文才なんて関係ねぇ! 俺の小説を読め!
601以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします