攻殻好きにはたまらない作品
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 22:30:29.37 ID:uOpBgEfQ0
バンバンバン
3 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:39:13.25 ID:e6CmJCojO
>>1乙かれさまです
まとめサイト(ブーン芸様)
http://boonsoldier.web.fc2.com/maiden.htm 初北産業
サイバーパンク
だよね?
違うの?
登場人物紹介
从゚∀从…聖騎士。第五のシャードを受け継ぐ者
('A`)…駄馬。鞭をくれると人格が変わる
( ^ω^)…VIP公国十五代公王。魔剣キングオブグローリーの使い手
マト#>д<)メ…今作のヒロイン。天上人の生まれ変わりらしいが…?
(=゚ω゚)…犬
それでは、disc 3.推理編をお届けします
4 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:40:56.36 ID:e6CmJCojO
〜track-β〜
━━時間の感覚が判らなくなる。
そんな現象、今まで体験した事が無かったよ。
('A`)「頭が…頭痛です……」
読んでいた革装丁のテキストファイルから顔を上げ、目頭を押さえる。電子体だから意味は無いけど、習慣というやつだ。
( ・∀・)「どうです?大体のところの概要は掴めました?」
('A`)「んー、まぁ大体はね」
“都市伝説の館”。その図書館に入り浸って、かれこれ三日ぐらいだろうか。
合間々々にログアウトして飯を採ってはいるが、凄く不健康な事をしている気がする。
それもこれも、“電子の海を泳ぐ街”についての情報を得るためだ。
ここらで一つ、今までここにある資料を読んで分かった事を、確認の為に振り返ってみよう。
('A`)「えーと、正確に“街”が確認され始めたのは、今から十年も前。噂が広まり始めたのが、七年前。噂が今の形になったのが、五年前。だったかな」
( ・∀・)「はい。十年前に確認されたのが、本当に“電子の海を泳ぐ街”かどうかは判らないにしろ、この街が結構昔から存在していた事を匂わせていますね!」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 22:41:48.66 ID:E6rrIEzJ0
支援
6 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:42:12.66 ID:e6CmJCojO
('A`)「十年前か……リアルではその頃どんな事があったっけ?」
( ・∀・)「うーん……ツクバ軌道エレベーター事故、とか?」
('A`)「あぁ、そう言えばそんな事故があったな」
大気圏外、星の海に漂うスペースコロニーと地上を繋ぐ梯。それが軌道エレベーターだ。
現在、世界に存在する軌道エレベーターは北海道のニセコエレベーターの一つだけだが、当初この軌道エレベーターは世界の技術の最先端を行く筑波学園都市に建設される予定だった。
しかし天を目指して創られていたそれは、建設途中の思わぬ事故により倒壊。その下の筑波学園都市を押し潰した。
更に最悪な事に軌道エレベーターの倒壊は地下のバイオラボラトリーをも破壊。
当時そこで研究されていた人工バクテリアがばらまかれ、未曽有のバイオハザードまでもが発生した。
軌道エレベーターの倒壊に巻き込まれ、人喰いバクテリアに蝕まれた筑波学園都市の犠牲者総数は約二万五百人。
今世紀最大の大災害として、オレ達の記憶に残る事となった。
('A`)「でも、それはあんま関係ないかもな」
( ・∀・)「でしょうねぇ」
7 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:44:03.79 ID:e6CmJCojO
('A`)「じゃあ話を戻すか。えーと、噂の基本概要ね。……ネットの中をふらついていると、無人の電脳都市が漂っているのを見つける事がある。
アクセスしてみようとすると、強固な防壁に阻まれて中に入ることが出来ない。しかし、その防壁を破って中に入ってみても、中は無人のゴーストタウン」
( ・∀・)「そして、その電脳都市に入った者は何故か誰一人として生きて帰って来なかった。これが現在の“電子の海を泳ぐ街”の噂の形態ですね」
('A`)「で、実際にその街を目指していた奴がフラットラインしたのがニュースにも取り上げられている……と。おさらいはこんなとこかな」
( ・∀・)「はい。そんな感じです」
('A`)「んー……でもさ、やっぱり引っかかる事が有るんだ」
( ・∀・)「はい?」
('A`)「中に入った奴で、生きて帰った奴は居ないんだろ?じゃあ、何で“中は無人”なんて話が伝わってるんだ?よく考えたらおかしくないか?」
( ^ω^)「それは僕が説明するお」
聞き慣れた声に振り返ると、図書館の入り口に塩豚のアバターが立っていた。
奴にはオレがここのアドレスを教えておいた。三人共同で調査にあたろうという事だ。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 22:45:59.31 ID:Hmq7luDAO
しえーん
9 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:46:42.51 ID:e6CmJCojO
( ・∀・)「おやや!ドクオさん、もしや彼が……」
('A`)「ああ。心強い味方だ」
( ^ω^)「ども。ブーンです」
('A`)「それで、何を説明してくれるんだ?」
( ;^ω^)「だから!どうして生還者が居ないのにそんな噂が広まったかって事だお!」
('A`)「あぁはいはい。で?」
おほんと咳払いすると、奴は語り始めた。
( ^ω^)「えーと……」
( *・∀・)「それについては僕から!」
元気よく挙手するモララー。
( ;^ω^)「ちょwww」
10 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:48:29.70 ID:e6CmJCojO
( ・∀・)「いいじゃないですか!只でさえ僕は影が薄いのに、得意の都市伝説解説まで奪われたら、何のためにここに居るのか判らなくなっちゃいますです!」
自分の知識を披露したい。うん。典型的なオタク気質だ。
('A`)「お兄さん積極的な子は大好きだ。よし、言ってみたまえモララー君」
( ^ω^)「まぁ、別にいいけど……」
( ・∀・)ゞ「はっ!長官殿!」
( ・∀・)「これは、僕のサイトの常連さんが体験した話なので確かなソースなんですが…何でもその常連さん、その“街”の中に入った事がある人と知り合いらしいんです!」
11 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:49:39.67 ID:e6CmJCojO
('A`)「は?いや、よくわからん」
( ・∀・)「えーと具体的に言うとですね、その常連さんとその知人さんも“電子の海を泳ぐ街”を探してた口なんです。当時はまだ、“中は無人”だという事がわからなかった時期。
“一体中はどうなっているんだろう”と思った二人は、それを暴いてやろうと乗り込んだらしいのです」
( ^ω^)「…で、片方が実際に乗り込んで、もう片方が何かあった時の為に外で待機していた」
( ・∀・)「ああんもう取らないで下さいよぅ!」
('A`)「いいからさっさと続きを」
( ・∀・)ゞ「はっ!それで、中に入った知人が脳核通信で常連さんに言ったそうです。“誰も居ない。しかし妙だ。何か、誰かに見られているような気がする”。
それを最後に、その知人は交信を断絶。後日、彼がフラットラインした事をその常連さんは知る事になったのです」
('A`)「……なる程。つまり、それが電脳都市の中は無人だという噂の元祖って事なわけだな」
( ・∀・)「いえ、これは噂では有りません。事実です。その会話を記録したものが、うちのサイトにありますから」
12 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:51:02.91 ID:e6CmJCojO
( ;^ω^)「本当に何でも有るんだおね」
( *・∀・)「ふふっ。それ程僕が都市伝説に情熱をかけているという事ですよ。…一応ことわっておきますけど、ちゃんとその常連さんから許可は貰ってますからね」
('A`)「……となると、いよいよこの“電子の海を泳ぐ街”がただの都市伝説じゃ無いって事になってきたわけだ」
( *・∀・)「えぇ!“電子の海を泳ぐ街”は必ず存在します!これだけの目撃者が出ているんですから!」
( ^ω^)「……で、それはどこに有るんだお?」
( ・∀・)「えーと……」
('A`)「だから、“電子の海”を泳いでるんだろ?ころころ場所を変えて、一つところに止まらない。神出鬼没。アドレス非表示だから、一度見つけてもう一度行こうとしても辿り着けない。だから、“電子の海を泳ぐ街”」
( ^ω^)「そうだお。いくら目撃情報があったとしても、その中に入ってフラットラインした人が居ても、結局行こうと思って行けるところじゃないお」
('A`)「うーむ……」
そういう事になるな。
幾ら噂の真偽を確かめたところで、肝心の行き方がわからなければどうしようも無い。
13 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:52:14.66 ID:e6CmJCojO
('A`)「どうしたもんかね……」
まだまだ謎だらけなのに、ここに来ていきなり暗礁に乗り上げるとは。
( ・∀・)「それならば、行った事があるという人に話を聞いてみてはどうでしょう?何が解るかはともかく、何もしないよりはいいかと……」
('A`)「うーん……確かに。捜査の基本は聞き込みからってか」
( ^ω^)「……で、心当たりはあるのかお?」
( ・∀・)ゞ「はっ!お任せを!不承モララー、真相究明の為に全力を尽くす所在です!」
そう言うとモララーは立ち上がり、図書館の扉に手をかけた。
( ・∀・)「付いて来て下さい。最も信頼出来るソースを紹介しますよ」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 22:52:39.43 ID:U1F2e3tr0
いらっしゃああああああああい
15 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:55:41.89 ID:e6CmJCojO
※ ※ ※ ※
(#゚ж゚)「その説は聞き飽きたでござる!大体何だね、君の言うアカシックレコードというのは!甚だ現実味に欠けているとは思わんのかぞなもし!」
(#-@∀@)「何を言うかねちみ!アカシックレコードというのは、遥か昔ブラブァッキー婦人の頃より唱えられてきた由緒正しき学説なのだよ!
ちみが言う、全ての精神存在が解放される理想郷の方が甚だ疑わしいと言うものだよ!」
('A`)「……ソースはソースでもこのソースは…」
凄く……濃いです。
( ;^ω^)「流石の僕でもこれは引くわ……」
モララーに導かれるまま、電子の海を泳ぐこと約十分。
辿り着いたチャットルームの中、唾を飛ばしながら都市伝説に熱弁を振るうオタク達。
('A`)「……本当に、こんな胡散臭い奴らの中に、その目撃者ってのは居るのか?」
( ・∀・)「まぁ、まぁ。こういうジャンルにはつきものですよ。……おぉーいみんなぁ!ちょっと聞いてくれぇ!」
熱気溢れるオタク討論会の会場へ果敢に飛び込んでいくモララー。逞しい。
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 22:56:15.32 ID:Hmq7luDAO
支援
17 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 22:57:50.43 ID:e6CmJCojO
(:゚ж゚)「おぉっ!これは同士モララー!お久しぶりでござる!」
("仝3仝)「久しいな……以前に会合したのは、蒼月の刻だったか…」
(-@∀@)「ふっ…最近姿を見なかったから、公安の奴らに消されたのかと思ってたぜ……」
('A`)「……あれ?デジャブ?」
( ^ω^)「?」
('A`)「まぁいっか……」
何だか違和感があるけど、気にしたら負けかなと思う。
( ・∀・)「同士達よ、皆元気そうで何より。今日はちょっと皆に聞きたい事があって来たんだ」
(:゚ж゚)「聞きたい事……とは?」
( ・∀・)「うん。“電子の海を泳ぐ街”について何だけど……」
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 22:58:07.31 ID:Hmq7luDAO
しえーん
19 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:00:02.92 ID:e6CmJCojO
“電子の海を泳ぐ街”。その単語に、暑苦しいオタク達がざわついた。
(;-@∀@)「おまっ…それはタブーだぜ?」
(;"仝3仝)「公安に消されるぞ……」
(;゚ж゚)「あれ、誰か来たようだ。こんな時間に誰だr」
( ;^ω^)(;'A`)「「うっぜぇぇぇ!」」
( ・∀・)「まぁまぁ。で、確か皆の中にその街を見たことがあるって人が居たと思うんだけど……」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:00:12.31 ID:Hmq7luDAO
支援
21 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:01:58.74 ID:e6CmJCojO
(*-@∀@)「おぉ!それはまさしく私の事ではあるまいか!」
(:゚ж゚)「なにっ!?アサピー…貴様、拙者を差し置いてそんなところに行ってたのか!?何故そんな大事な……」
('A`)「お前はきめぇから口開くな」
(;゚ж゚)「ひぃぃぃい!?これが噂のDQNでござるかぁ!?怖い!怖いでござるぅぅう!」
アバターでアバターを殴れないのが、今は凄く惜しいと思った。
( ^ω^)「……で、あなた…えぇとアサピーさんかお?あなたは、いつ、どこで、どんな状況で、“電子の海を泳ぐ街”を見つけたんですかお?良かったら教えてくれませんかお?」
(-@∀@)「ふぅ…さて、あれは確か五年も前だったかな…どこ、と言われてもあまり覚えていない訳だが…どこぞのネトゲサーバーを出た後だったのは確かだ。
サーバーに入る前には無かった構造体が目の前にあったから、不思議に思ってアクセスしようとしたんだ……」
( ^ω^)「ふむふむ。それで?」
(-@∀@)「そしたら…そう、防壁だよ。バチッてさ。驚いたな。見た感じ小さな電脳都市なのに、攻性防壁なんか張ってるんだもの」
22 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:03:47.80 ID:e6CmJCojO
( ^ω^)「その時は、それっきりかお?」
(-@∀@)「あぁ。防壁を破ってまで中を見ようとも思わなかったし、第一ハッカーじゃないんだ。クラッキングなんか出来る訳ない」
( ^ω^)「で、後でそれが“電子の海を泳ぐ街”だって気付いたと」
(-@∀@)「その通り!」
('A`)「嘘くせぇ……」
(;-@∀@)「ちょ!ちょっと待て!何を根拠に嘘だと決め付けるんだ!」
('A`)「今のはオレの率直な感想だ。聞き流せ。どうせこういうのを議論したって決着は付かないんだ。水掛け論にしかならんよ」
(#-@∀@)「ムキー!その上から目線がムカつくー!」
('A`)「どうどう。酷い顔がもっと醜くく歪むだけだ。あと、ムキーっていうのは擬音語にしてはちょっと古いと思う」
(#-@∀@)「くっそー!なら、見た事がある奴しか無い証拠を見せてやるよ!」
('A`)「あぁ、はいはい。あまり気張るな」
(#-@∀@)「私はな、その構造体の近くで電子体幽霊(ワイアードゴースト)を見たんだよ!」
('A`)「はぁ?幽霊?お前さん頭がアホか?大丈夫?」
23 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:05:40.92 ID:e6CmJCojO
( ・∀・)「……」
('A`)「そいで、電子体幽霊って何?」
(;-@∀@)「……」
( ;^ω^)「……」
え?何?オレ、なんか冷たい視線にさらされてるんですけど……。
( ^ω^)「電子体幽霊っていうのは、ネットの中でフラットラインした人達の亡霊の事を言うんだお。
結線したまま死んだら、精神はネットに置き去りにされるんじゃないかって言う理念の下に噂されてる都市伝説みたいなもんだお」
('A`)「なんだよ、やっぱり胡散臭いもんじゃねぇか」
(;-@∀@)「わ、私は本当に見たんだ!電脳都市の壁をすり抜けて消えるなんて…そんなの、電子体幽霊ぐらいしか出来ない芸当でしょう!?」
ネット空間を現実に近付ける為に、色々な法則がネットを管理するAIによって設定されている。
( ^ω^)「……電子体幽霊、かお…」
意味深に呟かれたブーンの言葉は、何か心当たりがあるように見えた。
24 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:08:54.97 ID:e6CmJCojO
※ ※ ※ ※
━━果たしてブーンの呟きに込められた意味を知ったのは、それから何人かの目撃者に話を聞いてからの事だった。
('A`)「……しっかし、ここまで来て全員が見てるとはな…」
( ^ω^)「うん…僕も、まさかとは思っていたけど……」
あのオタク臭いチャットルームを出た後、オレ達は他に“電子の海を泳ぐ街”を目撃した事があるという人物達に話を聞きにいった。
それぞれがそれぞれ、目撃場所や時間帯などはバラバラなのに対し、彼らはその誰もが最後には口を揃えてこう言うのだった。
『そういえば、電脳都市の壁を通り抜けて誰かが出て来たんだよな。ありゃ、もしかして電子体幽霊ってやつかね』
('A`)「電子体幽霊、か……」
ネットで死んだ人々の亡霊は、リアルの幽霊のように壁をすり抜けて現れたり、消えたりするという。
( ^ω^)「僕のチームの奴も、同じ事を言ってたお。一瞬の事でどんな姿だったかも覚えてないって言ってたから、そいつの目の錯覚だと思っていたんだおけど……」
しかし、誰もがその電子体幽霊がどんな奴だったかについては、よく見ていないとしか答えなかった。
こういうの本当に好き。
投下頻度も高い。大好き。
26 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:10:33.16 ID:e6CmJCojO
('A`)「うーむ……しかし、話を聞く限りじゃそれが電子体幽霊かどうか解らんな。つうか、電子体幽霊自体の存在自体が不確かだ」
( ^ω^)「……とにかく、現時点では彼らは不振な人影を見たとしか言いようが無いおね」
('A`)「だな。しかし、手掛かりらしい手掛かりが集まらんなぁ……」
聞けども聞けども、増えるのは新たな噂と不確かな逸話ばかり。
“電子の海を泳ぐ街”の所在についての情報は皆無だ。
('A`)「こりゃ、やっぱ地道にネット空間を探して回るしかないのかね……」
( ^ω^)「それが、今出来る最善策かお」
オレ達は、溜め息をついてテーブルに突っ伏する。
“都市伝説の館”の図書館は、今や完全にオレ達三人の作戦会議室となっていた。
( ・∀・)「……じゃあ方針も決まった事ですし、早速行きましょうか」
今まで黙ってオレ達のやり取りを見守っていたモララーが、元気に立ち上がる。
('A`)「……はぁ、めんどくせぇ」
長時間の没入にオレの脳核は疲労を訴え続けていたが、それは無視してモララーに続いた。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:12:34.89 ID:eTTA1sALO
支援
28 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:12:37.86 ID:e6CmJCojO
何かにのめり込むなんて久し振りで、好奇心が肉体の限界にかかったリミッターを外したのか。ここ最近のオレは、妙にパワフルだ。
('A`)「ネットの中限定、だけどな」
これが本当のネット弁慶。うはっ。誰うま。
( ^ω^)「で、さしあたってはどこを探す……」
そんな馬鹿な事を考えていたからだろうか。
( ;^ω^)「ドクオ!危ない!」
('A`)「え?」
オレは、眼前に迫りつつあった黒影に気付く事が出来なかった。
(;'A`)「な!?」
( ;・∀・)「あわわわ!」
( #^ω^)「おぉぉぉ!」
29 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:14:32.21 ID:e6CmJCojO
スローモーションの世界。こだますのはモララーの悲鳴、ブーンの雄叫び。
オレの顔面、クロスレンジまで迫った“それ”が何かを理解する前に、オレ飛び出してきたブーンに突き飛ばされ、尻餅をついた。
(;'A`)「お、おい今のは……」
言葉を紡ぎ終わる前に、今度こそ事態を把握したオレの背筋を悪寒が駆け抜ける。
( ;^ω^)「くぅ……どうしていきなウイルスが……」
テレビの接続不良よろしく歪むブーンのアバター。
それは電子体へのウイルスによる直接介入により、精神を構成する情報が不確かになった事に起因する現象だ。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:15:17.55 ID:Hmq7luDAO
しえーん
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:17:44.25 ID:ZDVd6vBoO
支援
32 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:19:11.92 ID:e6CmJCojO
(;'A`)「おい、大丈夫かブーン!」
未だノイズを放ちぶれるブーンの姿を見上げる。
( ;^ω^)「不意打ちだったけど、大したウイルスじゃなくて良かったお。なんとか、僕のファイアウォールで防ぐ事が……」
振り返り無事を告げる言葉は、モララーの頓狂な悲鳴によって遮られた。
( ;・∀・)「ま、まだ来ますよ!」
モララーが指差す先には、戯画化されたピラニアの群れがこちらへ向けて飛来する光景。追尾式ウイルスのアバター群だ。
( ;^ω^)「ドクオ、ウイルスバスターは!?」
(;'A`)「しまった!い、入れてねぇ!」
オレの返答に軽く舌打ちすると、ブーンはオレ達を庇うよう前に出て両手をピラニアの群れへ向けた。
( ;^ω^)「二人とも下がってるお!僕がなんとかデリートしてみるお!」
言われるがまま、ブーンの背に隠れるオレ達。
直後、ブーンの両掌で緑色の光が爆裂する。
無音の爆発、光に包まれる、ウイルスの魚群。辺り一帯の空間が激しく揺れた。
(;'A`)「うぉっ!」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:20:35.51 ID:Hmq7luDAO
支援
34 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:20:35.29 ID:e6CmJCojO
苛烈な情報の書き換えは、ネット空間を構築するロジックをも歪め。
( ;^ω^)「……ふぅ」
直ぐに昼下がりの湖面が如き静寂を取り戻した。
( ;・∀・)「あ…あぅ…あぅあ……」
ウイルスの襲撃は初めてだったのか、モララーは腰を抜かしてへたり込んでいる。
(;'A`)「な、なんだ…いきなり……」
かく言うオレも、突然の襲撃に戸惑っていた。
今さっき、オレ達に襲い掛かってきたウイルスは追尾式。無差別破壊などではなく、明らかにオレ達を殺す為に誰かが放ったものだ。
( ;^ω^)「わからないお……恨まれるような心当たりも無いし…」
(;'A`)「……じゃあ、何故?」
( ;^ω^)「もしかしたら……今僕たちが追っている事に関係があるのかも……」
まさか。
(;'A`)「冗談じゃねぇ。何でオレ達が襲われなきゃなんねぇんだよ。“街”を探してる奴らなんか、オレ達の他にも……」
( ;・∀・)「僕たちは、襲われるだけの真実に近付きつつある…という事でしょうか?」
モララーの呟いた言葉は、オレ達の間に重苦しい沈黙を落とした。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:20:54.27 ID:LuQSh8MtO
支援
36 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:22:27.04 ID:e6CmJCojO
※ ※ ※ ※
━━それからの調査は、オレ達に慎重さと困難さを強いた。
誰が放ったのかも知れないウイルスの襲撃に、オレ達は“電子の海を泳ぐ街”に近付く事を許さない何者かの存在。
それが誰かなのかは、やはり皆目見当が付かない。
('A`)「“電子の海を泳ぐ街”の存在が明らかになる事で、不都合な人間……か」
あれから三日間。それでも調査は続けられている。
地道なフィールドワークは、手掛かりも無い状態では成果を上げる訳もなく。
从゚∀从「おい、タンパク質の塊」
時たま現れるウイルスの群れに、自らの生命の危機を実感する毎日だ。
('A`)「……本当に、オレ達は真実に近付いてなんかいるのか?」
それが一番の疑問だった。手掛かりは何も無いのに、何故オレ達は真実に近付いているというのか。
从゚∀从「おい、聞いてるのか?」
唯一、それを示すのは何者かがオレ達の口を封じたいと送ってくるウイルスだけ。
('A`)「うーん……」
わからない。
从゚∀从「おーい」
37 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:24:48.18 ID:e6CmJCojO
('A`)「どん詰まりだぁ」
ソファーに寝転び、天井を見上げる。
コンクリートに入ったひびを数えようと目を凝らすと、白くて丸い何かがぬっと視界に割り込んできた。
从゚∀从「ねぇ、聞いてるのぉ?」
('A`)「うーん……」
これは何だったかな……。白くて丸い。大福?違う。赤くてつり上がった瞳が付いているから、大福では無い。
从゚∀从「ねぇったらぁ!」
('A`)「……大福では無い。じゃあ何だ?」
从//∀从「パンツ…見せちゃおっかなー」
(*'A`)「ジップでくれ!」
从゚∀从「フィィッシュ!」
38 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:27:44.84 ID:e6CmJCojO
がばっと起き上がったところで、頭を見事に鷲掴みされました。アイアンクローだと?前が見えねぇじゃねぇか!
(# A )「ぬがぁー!離せぇぇえ!パンツ!パンツを見せろぉぉお!」
从゚∀从「教育上不適切なので、口頭で述べよう。水色の水玉模様だ」
(* A )「水玉ぱんちゅ……おぉ…おお!」
アイアンクローされたまま、彼女のワンピースの下に広がる桃源郷に思いを馳せる。
秘密の逆三角地帯を覆う、水玉模様の薄布……。ああ、なんと!なんという!拙者は!拙者は!
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:29:24.29 ID:Hmq7luDAO
ついでに俺もフィッシュされちまった
全く油断ならねぇ
40 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:30:06.81 ID:e6CmJCojO
(* A )「じゃあブラは!?」
从//∀从「……付けてない」
(* A )「うひょー!鼻血!鼻血が止まらんですっ!あばばば!」
从*゚∀从「…ドクオが買ってくれないから」
( A )「あ」
从*゚∀从「ね、ねぇ…その、だから今日…一緒に…買いにいこ?」
(* A )「ももも勿論ですともっ!」
何だ何だ何だ!?今日のハインリッヒ嬢は妙にしおらしくあらせられますぞ!?
どういう事だ?落ち着けドクオ。何かがおかしい。これは何か、そう、奴が何かを企んでいる気がする。このしおらしさは、嵐の前の静けさに違いない。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:31:49.81 ID:Hmq7luDAO
謀り事の匂い
支援
42 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:31:53.45 ID:e6CmJCojO
('A`)「貴様、何を企んでいる!」
アイアンクローから解放されての第一声で、びしぃと指を突き付ける。
从;゚∀从「べ、別に何も企んでなんかないよぅ……」
(;'A`)「きゃぁぁあ!何この子!何でこんなに萌えるの!?意味わかんない!意味わかんない!夢なら醒めろぉぉお!」
事務所の壁に何度も頭を打ち付ける。
醒めろ!醒めろ!
(;'A`)「はぁはぁ…さ、醒めたか?」
从゚∀从「手ぇ、繋ご?」
(;'A`)「うわぁぁぁぁあ!」
オレはもう一度、今度は床に頭を打ち付けた。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:32:49.04 ID:Hmq7luDAO
ドクオwww
44 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:35:26.91 ID:e6CmJCojO
※ ※ ※ ※
━━ブラは買えませんでした。
('A`)「ねぇ、ブラを買いに行くんじゃなかったの?」
从゚∀从「そんな訳があるかたわけ。あれは貴様を外に連れ出す為の撒き餌だ」
('A`)「……何だよ。期待しちまったぜ」
女性用の下着売り場…行ってみたかったです。
从゚∀从「貴様があまりにもネットにばかり接続しているものだからな。たまには外に出た方がいいと思ったのだ」
そういう訳で、わざわざニューソクまで出て来て自然公園なんかを歩かされてるのね。
('A`)「あぁ…悪いね、オレみたいなのの健康を気遣って貰っちゃって」
从゚∀从「全くだ。貴様に拾われた事を、今でも後悔する事がある」
('A`)「……すんませんねぇ」
从゚∀从「とにかく。ネットに潜って何をしているのかは知らぬが、自分の体の事を少しは考えろ。最近まともに寝ているのか?」
言われてみて、初めて気付いた。最近は、ソファーばかりで自宅のベッドで寝ていない。
('A`)「どうりで体のあちこちが痛い訳ですね」
从゚∀从「貴様の体は貴様だけのものでは無いのだ。それをゆめゆめ忘れないように」
45 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:37:09.89 ID:e6CmJCojO
('A`)「あいよー」
生返事をしながら、近くにあったベンチへと腰を下ろす。ハインもそれにならい隣に腰を落ち着けた。
既に日は傾き始め、自然公園内は閑散としている。
('A`)「あぁ、オレの知らない間にも時間は流れているのね」
事務所は完全にハインリッヒに任せきりにしたままで、延々とネットに潜る生活をしていた為、時間の感覚が完全に狂ってしまっていた。
从゚∀从「それで、一体ネットに潜って何をしているのだ?」
('A`)「うーん……」
まさかこいつに、『都市伝説を調べている』なんて言えるわけが無い。言った後の反応まで、手に取るようにわかるからな。
('A`)「ちょっと、金儲けをね」
从゚∀从「株式投資か何かか?」
('A`)「そんな感じ」
从゚∀从「分かりやすい嘘だな。そんな金、貴様の懐に有ろう筈がない。真実を吐け」
('A`)「真実。それは時として、人を傷付ける事にもなる」
从;〜从「……私にも、言えない事なの?」
目を潤ませ、オレを見上げる合法ロリータ。その手には引っかからないぞ。デコピンしてしんぜよう。
うおおおきてた支援
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:40:52.92 ID:Hmq7luDAO
しえーん
48 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:40:55.77 ID:e6CmJCojO
从゚∀从「おい、誤魔化すな」
デコピンしてもまばたき一つしない女の子。そうだ、機械に萌えるなんて有り得ないんだからな。
('A`)「君は事務所で留守番してればいいの。そのうち講座にマンションを買えるぐらいの金が入ると思うから、その時までは借りてきた猫みたいにしてなさい」
从゚∀从「信じられぬな」
('A`)「オレに任せとけ。大丈夫。主人公補正で何とかなるさ」
从゚∀从「どう見ても貴様は三下脇役止まりだが……」
散々言ってくれる。まぁ、本当に埋蔵金が埋まってるなんて説など信じてないが。
('A`)「……」
从゚∀从「……」
沈黙。お互い言葉を紡がないと、自然とオレの思考は“電子の海を泳ぐ街”へと向けられてしまう。
これ以上の手掛かりが、果たして見つかるのだろうか。正直、期待は出来ない。
モララーが言った通りオレ達が真実へ近付いているとは到底思えない。
('A`)「じゃあ、何であのウイルスはオレ達を襲ったんだ?」
从゚∀从「ウイルス?貴様、一体ネットでどんな事を……」
やはり、「真実に近付いた者を消す」為なのか。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:42:28.94 ID:vMWb2ckj0
しえん
50 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:42:32.18 ID:e6CmJCojO
('A`)「じゃあ、逆に考えてみよう。既に、オレ達が握っている情報の中に最大の秘密が隠されているとしたら……」
从゚∀从「……なんだ?まさかネット経由で仕事を受けてきたのか?それならそうと……」
オレ達が持っている情報か。
“街”の起源について。
電子体幽霊が“街”の近くで目撃されているという事。
“街”に関する諸説紛々。
('A`)「この中に、鍵が有るのか……」
ずっとオレは「どこに“街”が有るのか」ばかり調べてきたが、ここで一つ胡散臭い噂なんかもひっくるめて、“街”の正体について推理してみるべきなのではないか?
从゚∀从「鍵?あれか、貴様がよく買ってくる18禁ソフトウェアのブランドの事か」
先ず、“街”の中に何が隠されているのかという説。
理想郷へ続く扉、アカシックレコード、巨大電脳兵器、埋蔵金。
主にこの4つが、噂の主流だがさて。
('A`)「何故、この説が言われるようになったか……だよな」
火のない所に煙は立たない。この説が普及するには、何か理由がある筈だ。
それはもしかしたら、“街”の正体を浮き彫りにするものでは無いのか?
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:42:41.50 ID:U1F2e3tr0
支援するよー
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:43:19.67 ID:vMWb2ckj0
しえん
53 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:45:27.57 ID:e6CmJCojO
('A`)「考えろ……考えろドクオ……」
先ずは理想郷へ続く扉について。
この説で言われる“理想郷”とかいうのは、全ての生物が電子体として永遠の命を得る事が出来る場所の事を言うらしい。
これは果たして何を暗示しているのか。
('A`)「電子体幽霊?」
何だか、繋がりそうだ。電子体幽霊というのは、その理想郷へ行くことが出来た人の姿では無いのか?
いや、それはあまりに現実味にかける。
何か、もっとオレ達の身近な事を誇張したものなのでは無いか。
('A`)「次は……」
アカシックレコード。宇宙開闢から、その終焉までを記録した概念的な媒体。
“街”にはそれが隠されているという説だが、アカシックレコードという存在そのものを肯定するのは、現実的では無さ過ぎる。
アカシックレコードというのもやはり、何か別なものが誇張されて伝わったものなのでは無いか。例えば、世界中のネットのログが保管されている情報端末だとか。
('A`)「……んで、電脳兵器説か」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:46:36.07 ID:vMWb2ckj0
しえん
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:47:28.33 ID:Hmq7luDAO
ハイン無視するなよ・・・
56 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:47:29.08 ID:e6CmJCojO
“街”の中には電脳兵器が存在する、もしくは電脳兵器の起動実験に巻き込まれて人々が“街”から姿を消したという説。
これは、そのままな感じがする。
('A`)「埋蔵金説は……」
敢えて追求する必要が有るのか。
取りあえず、この四つの説をパズルのように組み立てていく事で、もしかしたら“街”の正体が解るような気がする。
('A`)「うーむ……」
从゚∀从「おい」
('A`)「何だよ煩いなぁ」
从゚∀从「もう日が暮れるぞ」
言われて気付いた。太陽さんは既に地平線におでこまで隠れ、ルナたん(月の擬人化。クーデレなお姉様キャラ)がそろそろ顔を見せ始めている。
('A`)「あぁ、悪い。じゃあそろそろ帰りますか」
从゚∀从「早く帰って、早く飯を食って、早く寝る。規則正しい生活リズムを身に付けろ。今日のネットは禁止だ」
('A`)「へいへい」
ベンチから立ち上がり、伸びをする。
とにかく、考えれるだけは考えよう。そう意気込みながら、駅への道を歩くオレだった。
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:49:04.87 ID:vMWb2ckj0
しえん
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:49:07.32 ID:LuQSh8MtO
どーしても、うん、あれだと…おや、誰か来たみたいだ
59 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:51:23.59 ID:e6CmJCojO
※ ※ ※ ※
━━駅まできたものの、丁度いいリニアが無かった。
('A`)「ちぇっ。只でさえ金がピンチなのによ」
仕方なくオレはロボタクシーを止める。
从*‖*从「へい、旦那ぁどちらまで?」
ドアを開けると、威勢のいい江戸っ子ドロイドが振り返った。
('A`)「あぁ、ニーソクの四番街まで頼む」
座席に腰を下ろし、財布を開く。なんとか足りるかな。
从*‖*从「へい、地獄の一丁目までですね!かしこまりました」
面白い冗談を言うなぁとか思いながら顔を上げれば、眼前に突きつけられた銃口。
('A`)「は?」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:52:43.30 ID:vMWb2ckj0
ハインの出番きたー
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:55:17.50 ID:Hmq7luDAO
支援
62 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:56:14.88 ID:e6CmJCojO
从*‖*从「繰り返します。地獄の一丁目で、宜しいんですよね?」
銃声。破砕音。割れる、窓ガラス。
(;'A`)「うぉぉおっ!?」
とっさに頭を下げる……が、シートに着弾した気配は無い。
(;'A`)「あれ?」
頭をゆっくりと上げると、後部座席を振り返ったまま、座席に頭をもたれている運転手ドロイド。
从゚∀从「降りろ。まだ周りに何体か、貴様を狙ってる奴がいる」
ハインの右腕から飛び出した格納式ショットガンが、全てを語った。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/15(水) 23:58:05.05 ID:Hmq7luDAO
しえーん
64 :
◆cnH487U/EY :2008/10/15(水) 23:58:30.16 ID:e6CmJCojO
(;'A`)「はぁ?オレを狙ってるやつ?」
意味がわからん。ほざく間も無く、オレの左耳を何かが掠めた。
(;'A`)「狙撃!?」
从゚∀从「だから言ったろう。こっちだ」
ハインに腕を掴まれ、無理矢理にタクシーを引きずり出される。
直後、派手な爆音と共にタクシーが爆ぜた。
(;'A`)「おいおいおい!」
引きずり出されたままの体勢で、オレはハインに引っ立てられ走る。
夕暮れ時の駅前、人の海は突然の爆発にどよめき波立っていた。
从゚∀从「相手は何を考えている。こんな目立つ所で……それともテロリストか?」
戦の乙女となった彼女が目指す先は、ビルとビルの合間。
それにしても、半端ないスピードだ。引っ張られるオレの足はもつれ、転ばずに足を回転させるのに必死だ。
(;'A`)「もうちょっと、スピード落としてくれると助かるんだけど!」
从゚∀从「一般市民は巻き込めない。貴様を殺される訳にもいかない。これぐらいは我慢しろ」
喋る間も、フル回転する足。人混みを避け、アスファルトを蹴り、ビル街の谷間、路地裏の暗がりへと飛び込んだところでようやくオレ達は停止した。
65 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:00:43.29 ID:6QWhMkEOO
(;'A`)「はぁはぁはぁ……一体全体、何でオレが襲われにゃ……」
ハインの手を振りほどき、膝に手をつく。
「心当タリは無いノカナ?」
聞きなれない電子音声と同時、オレの頬に触れる冷たい感触。
(;'A`)「のわぁぁああるか馬鹿ぁ!」
とっさに背後へ肘鉄を見舞い、前へと転がった。
从*‖*从「嘘はイケナイ。ドクオ君。君は、多くを知りスすぎタンダよ」
前転の勢いで立ち上がり振り返ると、暗がりから現れたのは右腕から突出式ブレードを生やしたピエロの仮面を被ったドロイド。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:01:11.49 ID:Nb+h+GHpO
果てしなく支援
67 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:02:15.61 ID:6QWhMkEOO
(;'A`)「……御約束な台詞だな…」
腰を弄り、デザートイーグルに手をかける。隣の戦乙女に目配せし。
(#'A`)「もっと独創的な事を言えやぁ!」
バックステップ。同時、オレを庇うよう前に出る戦姫。
从゚∀从「ドロイドに独創性を求めるのはお門違いであろう」
彼女の右腕から飛び出した格納式ショットガンが、火を噴いた。
从*‖*从「分かりヤスいキャラ作りダッタんダケドナァ……」
飛び上がるピエロ。的を外した散弾が、背後に詰まれたダンボールの山を噛み砕く間抜けな音。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:02:24.75 ID:BQMUlsvA0
ハインの出番きたー
69 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:05:06.57 ID:6QWhMkEOO
ピエロは壁に張り付き、三段跳びの法則で宙を舞うとオレ目掛けて落下してくる。
从*‖*从「気に入っテ貰えナクて残念無念!」
素人でもここまで分かりやすい攻撃ならかわせる。前に転がりやり過ごせ。脳が体へ命令する…が、体は動かない。
(;'A`)「なっ!?」
オレの脇をがっちり捕らえて離さない金属の腕。
从"*‖*从「ザマァ!ザマァ!」
思わぬ伏兵の登場に、オレは結構ヤバい事態に陥った事を自覚した。
从゚∀从「おい、貴様死ぬぞ」
ハインの突き放した言葉。頭上に迫る刃。これは、死んだだろ。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:05:52.73 ID:BQMUlsvA0
支援
71 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:06:41.70 ID:6QWhMkEOO
(#'A`)「おめぇがな!」
全力を込めて、上半身を前に倒す。相前後、金属を裂く音と共に背中に掛かっていた重さが人一人分増えて、直ぐに減った。
(#'A`)「ザマァ!ザマァ!味方を刺してやんの!ザマァ!ザマァ!」
脇を掴んでいた腕が外れたのを確認し、振り返る。
从*‖*从「フッ……ソレハ残像ダ」
从.*‖*.从「残像ダ」
从-*‖*-从「残像ジャ」
ピエロが三人居た。
72 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:08:28.68 ID:6QWhMkEOO
(;'A`)「ねぇよ!」
足元には頭を割られたピエロが転がっている。増援って事か。
从*‖*从「ドクオ君。久しブリに会っタノニ僕の話ヲ聞いてクレナイの?」
从-*‖*-从「寂しイナァ。寂シいナァ」
从.*‖*.从「ドナルドと一緒に、お話シヨウヨ!」
ゆらゆらと体を揺らしながら近づいてくるピエロ軍団。手に手に、突出式ブレードを構えた奴らは一昔前の殺人ピエロを彷彿とさせる。
从゚∀从「貴様の知人にはロクな奴が居ないな」
('A`)「これでも友達は選んでるつもりだが」
ハインと並び、銃口をピエロ軍団に向ける。先の機動力を見たら、オレの技術では奴らに命中させるのは困難だが、まぁ形だけ。
从゚∀从「取りあえず、こいつらとは絶交しろ。いいな?」
(#'A`)「分かったよママン!」
デザートイーグルの引き金を引く。その瞬間を待っていたかのように、一斉に飛びかかってくるピエロ軍団。
一人が宙を舞い、一人が地を這い、一人が壁を蹴り、同時に飛来する道化のアクロバティックショー。
73 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:10:39.36 ID:6QWhMkEOO
从*‖*从「ドナルドは!」
从-*‖*-从「嬉しくナルト!」
从.*‖*.从「ツイ殺ッチャウんだ!」
オレの弾丸は当たらない。もとよりただの鏑矢。ハインへの合図。
从゚∀从「テリヤキバーガー三つ、テイクアウトで」
三方の道化達の動きを捉え、左腕を構え。
从゚∀从「直火でよぉく焼いてくれよ」
構えた左腕、飛び出したのはバーナー。吹き付ける炎が、三人の道化達を一瞬で包んだ。
(;'A`)「あちち!あち!馬鹿!オレも焼き殺すつもりか!」
慌てて戦姫の後ろへ下がり、彼女肩からテリヤキバーガーの製造過程を見物する。
薄暗い路地裏を照らす緑色の炎の揺らめきの中、舞い踊るように手足をばたつかせる三つの影。
超高熱の熱波は、オレの顔面すら焦がしてしまわないかと少し心配だ。
从゚∀从「さて、よく焼けたかな」
影達が動かなくなったのを見計らって、炎の噴射を止める戦姫。
地面に転がるテリヤキバーガーは皆、炭化してしまい原型を留めているものは皆無だった。
('A`)「これじゃあ食えねぇな」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:11:31.77 ID:BQMUlsvA0
すえん
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:11:50.96 ID:BOtNg7nV0
しっえっんー
76 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:13:10.23 ID:6QWhMkEOO
アクロバティックショーの終わりを確認した戦乙女は、両腕の暗器をしまう。
从゚∀从「さて、何故貴様がこのような輩に狙われているのか。大方察しはついている」
('A`)「あぁ…ううん…」
从゚∀从「ネットだな。そうだろう?」
('A`)「はい……」
頷くオレにも実感は持てないが、やはりこいつらはオレが“街”について何か重要な情報を握っているから襲ってきたのだろう。
从゚∀从「……私としては、危険がある事を黙ってやらせて置くわけにはいかないな」
('A`)「はい……もう、ネットには潜りません」
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:14:16.88 ID:gMuziBxSO
携帯で見てたら
>飛びかかってくるピ
エロ軍団
こんな感じで改行されてた支援
78 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:14:18.03 ID:6QWhMkEOO
从゚∀从「だから私も同行させてもらう」
(;'A`)「えぇ!?」
ちょっと待て。それは、何だかその…やましい事をしている身としては…非常に都合が……。
从゚∀从「貴様の許可は求めていない。先も公園でウイルスがどうのこうのと言っていたであろう。事情は知らんが、とにかく同行させてもらうからな」
(;'A`)「えっと、あの…その……」
オレが答えに窮していると、懐の携帯端末が振動した。
(;'A`)「あ、ちょっと電話みたいです」
誰か知らんが、いいタイミングだ。これでなんとか誤魔化せるぜ。
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:15:25.48 ID:BQMUlsvA0
すえん
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:16:10.00 ID:CZf3MB89O
追いついた
ハイン同行したらリアルで護衛する人がいnゲフンゲフン
81 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:16:28.44 ID:6QWhMkEOO
('A`)「はいもしもし、こちら地球防衛軍……」
端末の受話ボタンを押すと、手のひらの上に切羽詰まった塩豚の立体ホロが浮かび上がった。
( ;^ω^)「ドクオ!大変だお!」
('A`)「どうした、ブーン隊員。ロリータ怪獣でも現れたのかね?」
( ;^ω^)「“街”の場所を知ってるって人が解ったんだお!と、とにかく早くチャットルームに!」
オレはゆっくりと終話ボタンを押すと、ハインの背中におぶさり、口を開く。
('A`)「運転手さん、ニーソクの四番街まで頼む!」
从゚∀从「……」
運転手さんの眼差しが、心に痛かった。
next track comingsoon...
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:17:31.00 ID:PvocRWJoO
まとめで読み始めました
しえ
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:17:38.31 ID:CZf3MB89O
乙
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:17:47.61 ID:BQMUlsvA0
乙!
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:18:06.69 ID:gQofMFw90
いいコンビだわ乙
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:18:33.81 ID:Dl/8biyaO
おつおつー
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:19:08.07 ID:hTUvpQF80
やべえハインやべえええええ
おもしろかった乙
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:21:04.81 ID:Y/3hfptlO
このハインになら進んで罵られたい
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:21:28.10 ID:fm2Aw4NsO
支援
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:23:30.67 ID:9p97djRHO
乙です
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:23:41.57 ID:fm2Aw4NsO
ありゃ、終わってた
乙
92 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:26:08.85 ID:6QWhMkEOO
というワケで今回の投下はおしまい
ブーンにちょっとスポットライト当てようとしたら、ハインの出番が少な過ぎてオレの筆が進まない\(^o^)/
遅くなりましたが、絵スレでイラストを描いて下さった皆さん有り難うございますです!
レスは返せなかったけど、一枚一枚全部大切に保存させていただきました!
支援や乙をご飯に例えるならば、絵はおかずと言えるでしょう。今夜も、投下された絵をおかずにシコシコと筆を取る所在です。有り難う!本当に有り難う!
さて、質問とか批評とかリクエストなどがあればどしどしレスして下さい。マト#>д<)メの代わりに中の人が事務的にお答えします
乙
これからはもう
電脳世界が舞台でいいんじゃね?
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:38:48.24 ID:iRH7ud4HO
おつんつん
95 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 00:46:04.18 ID:6QWhMkEOO
>>93 ははは、こやつめ
マジレスすると電脳社会でのネトゲとか、他にも色々と電脳空間の話は書いていく予定なので、楽しみにしていて下され
マジか
楽しみにしてるよ
待てよ
ってことはハイン要らないよな?
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 00:57:03.58 ID:lh2flAmrO
98 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 01:01:48.09 ID:6QWhMkEOO
>>77 携帯だとたまに変な改行のされ方をするみたい。と言ってもオレのミスの可能性も大いに考えられる訳だ。
まとめられたらPCサイトビュアーで見てみるよ
>>97 ほら、こんな感じでオレはよく誤字をするんだ。すまない。みんな、誤字を見つけたら脳内補完してくれ。本当にすまない……
99 :
◆cnH487U/EY :2008/10/16(木) 01:05:38.49 ID:6QWhMkEOO
>>96 え?何言ってるの?バリバリ出てくるよ?ハインなんかもうネット空間でも超強いからね?
多分('A`)
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
おーきてたのか
超乙