1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
水銀燈「資源ごみの日だってのに、寝坊だなんて……」
見当違いの方向を主張する髪の毛に手櫛を入れながら、
水銀燈は縛られた新聞紙の束を静かに地面へと落とした。
ごみ置き場は既に蛻の殻と化しており、『指定されたもの以外を
捨てないでください』という看板だけが水銀燈を見詰めている。
水銀燈「……全く、なぁんて様なのぉ」
肩を竦めながら回れ右すると、視線があった。
翠星石「ぜぃ……ぜぃ……間に合わなかったですぅ」
水銀燈「……」
翠星石「……っ!」
目が合うや否や疲弊し切った顔が一瞬で引き締められ、
翠星石「す、水銀燈ォ! どうしてこんな所に……ええい、
ここであったが百年目、ジュンの家には行かせねぇですぅ!」
どこからともなく愛用の如雨露を取り出し、構えた。
水銀燈「……はっ、朝っぱらからあんたの相手なんてして
られないわぁ。朝は気分が乗らないの、良い子だからおうちに――」
翠星石「っぷぅわァっはっはっはっは! 水銀燈もごみ出し間に合って
ねぇですぅわぁっはっはっは、ざッまあねぇですぅ」
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:15:01.97 ID:ZcusfewL0
水銀燈「……相手にしてらんないわぁ。真紅に宜しくねぇ」
背を向けようとした刹那、背後から手が伸びた。
翠星石「ちょぉっと待つです、水銀燈。そのまま、そのままほんの
少しだけ待ってるですぅ」
水銀燈「私は忙しいの。あんたの下らない思いつきなんかに
構ってあげてる暇はないわぁ」
翠星石「そう慌てる事はないですぅ。慌てるなんとかは貰いが
少ないって知らないですか! そもそもごみ出しに間に合わないくらい
爆睡してて何が忙しいですか!」
水銀燈は再び肩を竦めると、一度地面に置いたごみ袋を持ち上げる。
水銀燈「あんたなんかと一緒にしないでぇ。私は『ごみ出しに行くのも
忘れる』くらい忙しかったのよぉ? お馬鹿さぁん。……普通はこう考えなぁい?」
翠星石「……ぐぬぅぅ、相変わらず口の減らねぇ奴ですぅ! いいからそこで
じっとしてるですぅ!」
言いながら翠星石は全速力で元来たであろう道を戻っていった。
どう見ても他の連中に話して笑いものにする気満々である。
あと数分もすれば桜田家は爆笑の渦に飲まれるだろう。待っていろと
言った以上、後続を連れてくる事は間違いない。
水銀燈「……はぁ」
水銀燈は溜め息一つ、そしてごみ袋を“両手”に持ち、その場を
後にした。
銀様とラブラブお好み焼き作りたい
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:17:55.54 ID:ZcusfewL0
翠星石「早くするですぅ! 千載一遇の機会ですよ! これを逃せば
一生後悔の念に苛まれることうけ合いですぅ!」
玄関で小刻みに跳ねながら両手を振りまわす翠星石は宛ら買い物に
行く前の子供のようである。
そしてその親役は靴の履き具合を確かめつつ、顔を顰める。
蒼星石「……でも、その話が本当だとしても水銀燈はもういないと
思うけど」
翠星石「そんなの行ってみねぇと分からんですぅ! 蒼星石も
せっかく来たんならジジイに土産話の一つでも持って帰るが良い
ですぅ」
「持って帰っても喜ばないと思うよ?」と言い、蒼星石はさらに
眉根を寄せる。
翠星石「さぁさぁ準備が出来たらさっそくGOですぅ! 口から腹筋が
飛びださないようマスクの用意は良いですか? 明日も明後日も笑う
ためのカメラは持ったですかあ?! ほぉら急ぐですぅ!」
まるで嵐のような喧噪は「雛は行かないのぉぉぉ」という小さな
叫びと、「僕は興味ないって言ってるだろぉぁああああ」という悲痛の
叫びを引きずりながら遠のいていった。
しえん、しておこうか
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:18:59.16 ID:ZcusfewL0
真紅「……全く、忙しないわね」
台所のテーブルにて一人紅茶を口に運ぶ真紅の表情は至って
淡々としたものだった。
真紅「いつもあんな感じなのよ、こっちの身にもなって欲しいものだわ」
誰もいない部屋に、涼しげな声だけが響く。
真紅はティーカップを置き、閉じていた目を緩やかに開いた。
その一挙一動は可憐に咲き誇る一輪の薔薇を想像させる。
真紅「あなたに言ってるのよ、水銀燈」
背後から冷蔵庫の扉を閉める音が鳴る。
「乳酸菌、」
黒い羽が室内にてありもしない風に舞うが如く真紅の周囲を漂い、
鼻先を掠めた。
水銀燈「摂ってるぅ?」
真紅は突然目の前に現れた黒い銀髪にたじろぐ事なく、「全く」と返す。
水銀燈「あぁら、そう」
対して水銀燈も、返答には然程興味無さげに流した。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:19:09.34 ID:7QInNyXLO
銀様かわいい
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:20:19.59 ID:ZcusfewL0
真紅「今朝は何の用なの? 生憎だけど忙しいのよ、今。とっても」
ティーカップを手に取り、中身に螺旋を描かせる。
目は鋭く、朝の優雅な一時を邪魔する侵入者へ嫌悪という形で
突き刺さる。気の弱い者であれば『槍の様』と形容するだろう。
水銀燈「大した用事じゃないわぁ。すぐに帰るわよ」
言いながら左手を一文字に振ると、漆黒の羽々が集い、
その中からやや大きめのごみ袋を吐き出した。
水銀燈「……そちらさんの忘れ物よ。今ならあなたのローザミスティカと
交換してあげても良いわぁ」
真紅は堪え切れずにくすりと口元をにやつかせると、「脅迫する気?」と
だけ辛うじて繋ぐ。
水銀燈「本当はアリスゲームを挑みに来たのよねぇ。でも、
あなたのだらしない笑い方を見たらその気も失せたわ。……じゃあ、
今度会う時で良いから、ローザミスティカは頂戴ねぇ」
ごみ袋を廊下に投げると、
水銀燈「ばいばぁい、真紅ぅ」
黒い羽に包まれながら消えていった。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:22:03.99 ID:ZcusfewL0
真紅「……」
主演の去った舞台の上で、真紅は静かに紅茶の残りを口に含み、
真紅(……変わらないわね)
余韻と共に飲み込んだ。
冷蔵庫にまた大量に詰め込まれているであろう何か。
廊下に投げ捨てられたごみ袋が、翠星石が持っていった時よりも
一回り、二回り程膨らんでいるのは何故か。
全てを理解した真紅はもう紅茶の残っていないティーカップを
置き、呟いた。
真紅「……全く、なんて様なの」
END
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:23:44.45 ID:ZcusfewL0
オチが思いつかなかった
一桁のうちにオワタ 寝よう
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:23:44.86 ID:zMGdU6wk0
ちょっと待てw
>>10 俺はこういうの好きだ
だから伸ばせとは言わん もう一個かけ
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:27:35.20 ID:ZcusfewL0
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/16(土) 23:30:45.32 ID:X+iZ8dJ1O
嫌いじゃないがVIP向けではないな
焼却
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
再構築