ローゼンメイデン「楼善盟伝〜人形達の挽歌〜」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
神の死んだ町「アリスシティ」

法は御伽噺と化し、全ては力が決める

弱き者はその命すら奪われ、強き者はより強き者に蹂躙される

正にこの世の掃き溜め、それがこの「アリスシティ」であった

だが、人々は今日もこの町で生きていく……
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 19:32:27.49 ID:bBR8yEd20
JUM「ちっ、今日の稼ぎはこれっぽっちかよ……パンとコーヒー一杯で消えちまうぜ……」

JUM「ん?なんだ、誰か倒れてる?」

男「……ううっ……」

JUM「っと、まだ生きてるのか。まぁいいさ。何か金目の物はっと」

ゴソゴソ

JUM「よし財布の中身は……凄いな、5万アリスドルはあるんじゃないのか?他には・・・」

JUM「・・・随分大きなトランクバッグだな。旅行者か何かだったのか?って!?」

男「はぁはぁ・・・頼む!こ、このバッグを・・・このバッグを持ってここから逃げてくれ!!」

男「そして何処か安全な場所でバッグを開けるんだ!ゴホッ!も、もう全てを君に託すしか・・・」

JUM「わ、わかったから手を離せよ!悪かった、悪かったよ!財布も返すから・・・」

?「おい、いたぞ!こっちだ!」

男「ゴホッゴホッ!こ、ここは私が時間を稼ぐ!早く!早くっ!!」

JUM「畜生!何だッてんだよ!!」


これが、俺、JUMにとってどんなに重大な事なのか
運命すら知らない僕にとって、まだ知る由も無かった
3チンカス式フランケンクサイナー ◆V2J9lvBO6Y :2008/07/16(水) 19:34:09.68 ID:xs0LSEuEO
―――完―――
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 19:41:05.92 ID:8+Q6pqihO
期待はしてない適当に来い
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 19:41:12.35 ID:bBR8yEd20
ザー・・・ザー・・・
その場から逃げる様に立ち去った俺は、行き付けの寂れたレストラン「ロストVIP」へ立ち寄った
正直、今日の稼ぎじゃ寄れる所じゃ無いが、あの男から頂いた財布の中身を使えば話は別だ

店主「よぅ、JUM!今日の稼ぎはどうだい?」

JUM「ああ、今日は随分上手くいってね。あぁ、腹が減ったし外は寒いし。体が暖まって美味い奴を頼むよ」

店主「へぇ、そいつぁ豪気な話だ。だが最低でも100アリスドルはかかるぜ、財布は大丈夫なのか?」

JUM「いいんだよ、おっさんはそんな心配しなくても。何なら先払いでもいいんだぜ」

そうして僕は200アリスドルを叩きつける
店主は一瞬訝しげな顔を見せたが、すぐいつもの調子に戻った

店主「あいよ、お待ちどうさん」

JUM「ああ、美味ぇや!久しぶりだぜ、この味は」

出された料理に夢中だった俺は、店主がトランクバッグを凝視している事も気づかずに、ただただ今日の食事にありつけた事を感謝していた
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 19:48:13.24 ID:bBR8yEd20
JUM「やっぱりここの料理は最高だ。それじゃ、またくるよ」

店主「おう、何時でも来いよ。外は雨が酷い、気をつけてな」

〜バタン〜

店主「しかし、JUMの奴。随分羽振りが良かったが、何かヤバい事に首つっこんじゃいないだろうな」

店主「まぁ俺に迷惑がこなきゃそれでいいさ。さて、この雨じゃ客も来ないし店じまいとするか」

〜バタン〜

店主「ん、お客さんかい?すまないがもう店じまい・・・あ、あんたらは・・・」

       ガスッ
ドカッ

店主「ほ、本当だ!俺は何も知らないんだ!!」

??A「隠し立てをするとためにならんぞ・・・」

??B「・・・おい、今情報が入った・・・」

??A「・・・質問を変える。大きなトランクバッグを担いだガキは来なかったか?」

店主(・・・!JUMのあのバッグか!?しかしこいつらに話したら)

??A「・・・その表情・・・知っているな・・・?」
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 19:56:47.69 ID:bBR8yEd20
〜ボロ家〜

JUM「今帰ったぞ〜」

のり「あ、ジュン君。おかえりなさい」

JUM「よせよ、その名前。この町じゃ自分を偽らなきゃ生きていけやしないんだ。舐められたら終わりなんだ」

のり「ご、ごめんなさい」

JUM「それよりも。今日は臨時収入があったんだ!見ろよ、これ。5万アリスドルはあるぜ!」

のり「どうしたの、こんな大金!!」

JUM「それが笑っちまうくらいボロい話があってさ。旅行者っぽい奴が行き倒れてたから頂いてきたのさ」

のり「……駄目よ、そんな事したら。お父さんとお母さんが聞いたら何て思うか……」

JUM「俺達を捨てて逃げ出した奴らなんか知った事かよ!・・・これだけあれば一月は余裕で持つさ」

JUM「姉ちゃんも薄汚い連中相手にウェイトレスをやる事だってないんだ・・・これを元手に何か出来るかもしれない!」

のり「・・・JUM。・・・?あら、そのバッグはどうしたの?」

JUM「ああ、これはその旅行者が持ってけってくれたんだけど」

JUM(そういえば安全な場所で開けろって言ってたな)

JUM「まぁ、どうせ大したもんじゃないさ。それより今日はもう疲れた。暫く働く必要も無いし、今日はゆっくり休むよ」
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:05:23.53 ID:bBR8yEd20
〜寝室〜

僕は、ようやくゆっくりと簡素なベッドに腰を落ち着けた
そして大きなトランクバッグに目をやる

JUM「慌ててあそこから逃げたのはいいけど、どう考えても厄介事だよな」

JUM「中身を確認してヤバそうなブツなら何処かに捨てるか、『グループ』にでも渡せばいいかな」

一通り自分の考えを巡らせた僕はバッグを開けてみる事にする
鍵は掛かっておらず簡単にそれは開いた

JUM「人形、なのか?それにしても随分良く出来てるな」

中には、一瞬人間と見紛う様な綺麗な人形が入っていた
長く伸びた金髪、端整な容姿、時代がかった紅いドレス
思わず見とれてしまう

JUM「あの旅行者、こんなのを大事に抱えてたのか。ん、ゼンマイ?」

バッグには古ぼけたゼンマイが一緒に入っていた
どうやらこの人形はゼンマイ仕掛けらしい

JUM「ちょっとくらいなら、いいよな」

そうして僕はゼンマイを巻いてみる事にした
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:10:34.66 ID:yhEqLYDJ0
なにこのハードボイルド
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:15:57.57 ID:OQWBsIu20
『婁然銘伝(ろうぜんめいでん)』

 明代の白話小説。現存する唯一の版本は羅貫中著とされているが、文体などから複数の女性が編んだものという説も唱え
られている。道士・婁然が山中の石柩に封じ込められていた六人の妖女を解き放った事でと彼女と交わって七人の娘を授か
りその娘達が等が成長して後、仕える主を違えてそれぞれが誕生時より身に付けていた宝玉を巡って荒唐無稽な戦いを繰り
広げる様を描く。

 婁然の七人の娘は実在が確認されているが、文献史料に於いてはそれぞれ特異な才を持ち主を違えたことなど簡単
な事跡が宋・遼の野史や書簡などに散見されるのみである。しかし彼女達の活躍ぶりは民謡・民話・講談・演劇など
に脚色されて伝わっており、南宋期の演劇の題目の中に『銀公主』『真紅賦』などが見える。また元代に初めてこれ
らの伝承をまとめた『婁家烈女伝』が刊行される。しかしこれは荒唐無稽かつご都合主義な描写が多く、時代考証に
も誤りが多く、各説話の整合性も拙く、知識人や士大夫が読むに耐えうる代物ではなかった。

 これより後、明代に荒唐無稽描写を残しつつ、説話の取捨を行い史書等も参考にして編纂し直されたものが『婁然
銘伝』である。初めのうちはやはり小説は下賎の読むものとされ、もっぱら市井の間で講談師によって読み継がれて
いたが弘治年間に主客の高官である麻生(ませい)がこれを高く評価する発言をした事から、士太夫や知識人階級の間
でも爆発的人気を博した。当時の士太夫の日記の中にも七人の中で誰が理想の女かについて問答となった記述も見ら
れ、また彼女達を題材にした詞や絵画も多く作られたという。最盛期にはかの四大奇書を凌ぐほどの人気を得、「昔
は良家の子弟必読の書といえば『論語』や『孟子』であったが、いまやそれは『婁然銘伝』に取って代わられた」と
いわれるほどであったが、清代に入ると儒教的価値観からかけ離れたその内容から焚書とされ、その二次創作物を含
めて『婁然銘伝』は徹底的に消し去られ、またこれに関する演劇の上演も一切禁止、以後婁然の七人の娘に関する創
作も禁止されるに至り、その存在は人々の記憶から忘れ去られていった。
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:16:23.57 ID:OQWBsIu20

 こうして中国大陸から姿を消した『婁然銘伝』であるが、明末に日本に渡来した版本がかろうじて残っており、
江戸期は国産の読本が隆盛するまで一部の知識人により細々と読み継がれていたようである。あの曲亭馬琴も、
『水滸伝』とならんでその作風に少なからず影響を受けたと自著に記している。尚判本は長らく行方不明で『婁
然銘伝』に関しては辛うじて当時の文書記録等にその存在、大まかな内容や人気の程が伺えるのみの幻の書とな
っていたが戦後になってから山陰の旧家の土蔵から見つかった大量の古書の中に『婁家烈女伝』と『婁然銘伝』
が含まれており俄かに日中両国の研究者の間で注目の的となっている。また近年一世を風靡している某漫画との
関連性は定かではない。
                    
                          出典(民明書房刊『中国 闇に葬られた奇書・怪著』)



【禁書】婁 然 銘 伝【伝奇】
http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/chinahero/1164689569/
まさかvipでこの焚書の存在を知るものがいたとは
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:19:17.74 ID:bBR8yEd20
JUM「ゼンマイを巻いたけど・・・動く様子は無いな・・・古いから壊れてるのか?」

人形は動かなかった。どこかにスイッチがあるのかと頬を引っ張ったりデコを押したがサッパリだ
もしやと思い股間を探そうとしたが、下着が履いてあり、恥ずかしくなって止めた
興味を失った僕は寝る事にしたが、その時だった

コトン

JUM「ん、姉ちゃんか?・・・!!」

紅い人形「全く。人が動けないのをいい事に随分あちこち触ってくれたわね。人間の雄は沿想像以上に下品だわ」

JUM「う、うわ・・・何で人形が動いて・・・喋ってるんだ!?」

紅い人形「そんな事はどうでも良いわ。それより私を巻いたのは貴方ね?」

JUM「そ、そうだよ。お前が入っていたバッグに一緒にあったから、それで動くと思って、痛っ!」

紅い人形「レディーに対する口の聞き方がなってないわね、それに私には『真紅』という名前があるのだわ」

JUM「わ、わかったよ。真紅、でいいのか?」

真紅「学習能力はあるようね。早速だけれど人間。私と契約なさい」

JUM「け、契約?一体何の事だよ!?」

真紅「文字通り契約よ。そうね、判りやすくいうなら、貴方は私にエネルギーを供給する、と言った所かしら」

JUM「そ、それで僕に何かメリットはあるのかよ?一方的に力だけ奪われるなんて、まるで呪いじゃないか!」
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:29:50.29 ID:bBR8yEd20
真紅「この私と契約できるのよ。それだけで光栄ではなくて?」

JUM「訳の判らない人形に力を奪われるなんて、まるで呪いじゃないか!ご免だ!」

真紅「……!しっ!静かになさい!……」

真紅「ねぇ、人間。残念だけど貴方はここで死ぬわ」

JUM「は?いきなり何を言い出すかと思えば・・・」

ドカッ
その時、玄関を乱暴に、そう蹴り破る音が聞こえた
そして複数の人間が入り込んで来る音が続く

JUM「な、何なんだよ、これ!」

階下から喧騒、そして姉と誰かが言い争う声が聞こえる

のり(な、何なんですか、貴方達は!警察を呼びますよ!?)
??(一階にはいないようだ。二階を探せ)

タァンッ
そう、それはこの町では取り立てて珍しい音では無い
人が人から何かを奪う時に頻繁に、そして誰かを、邪魔者を殺す時はもっと頻繁になり響く
拳銃の音

JUM「あ・・・あ・・・あ・・・姉ちゃんっ!?」

真紅「決断しなさい、人間。貴方が助かるには私と契約するしかないわ」
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:35:32.95 ID:3RD7AYBY0
のり……
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:36:04.53 ID:bBR8yEd20
横で真紅とか言う人形が何事かほざいているが、そんな事は耳に入らなかった
階下の拳銃音、そして途切れた姉の声
僕は自分の最悪な想像が頭で膨らむのを抑えるので精一杯だった
その時

パンッ!

真紅が僕の頬を思い切り叩いた
ようやく彼女の声が頭に入ってくる

真紅「もう一度だけ言うわ、人間。助かりたければ私と契約なさい」

JUM「そんな事いったって・・・契約ってどうすればいいんだよ・・・?」

真紅「左手の薬指を御覧なさい。その指輪に口づけをすれば契約が成立するのだわ」

慌てて左手を見ると、何時の間にか薔薇を象ったであろう指輪が薬指に嵌っていた
その時、僕の部屋のドアが乱暴に開かれる

??「この部屋にいるぞ!『ドール』は既に稼動している!」

真紅「急ぎなさい!今すぐ契約するのよ!

そうして僕は
この得体の知れない人形と得体の知れない契約を結んだ
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:37:53.33 ID:bBR8yEd20
感想ありがたや
何でもいいから乾燥貰えると嬉しい

続きます
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:47:49.36 ID:bBR8yEd20
契約を結んだ直後の事はあまり覚えていない
ただ銃を持った男達が次々と現れて、それを真紅が薙ぎ倒していった事だけだ
尋常じゃない速さで動く彼女は、銃弾をかわし、男達を叩きのめしていった
部屋の隅で震えていた僕は、動く音が全て消えた後に恐る恐る部屋の様子を確かめようとした


JUM「ぜ、全員倒れてる……僕は、助かった、のか?」

真紅「ええ、そうよ」

JUM「うわあっ!」

真紅「あまり大きな声を出さないで頂戴。驚いてしまうのだわ」

JUM「ご、ごめん。それよりこいつらは・・・生きてるのか?」

真紅「いいえ。全員殺したわ。気絶で済ませる事も出来たけれど、それでは私達の情報が漏れてしまうから」

JUM「お前、一体全体なんなんだよ。……あ!」


情けない話だが、僕は自分の事だけで精一杯で、大事な人の事をすっかり忘れていた
それに気づいた時、今思い出しても、情けなさと悔しさで涙が出そうになる


JUM「姉ちゃん!姉ちゃんっ!」
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 20:54:27.78 ID:bBR8yEd20
慌てて階段を駆け下りると、姉ちゃんは、桜田のりは玄関の前で倒れていた
急いで駆け寄り抱きかかえる


JUM「姉ちゃん!姉ちゃん!おい、起きろよ、姉ちゃ・・・!!」


そして気づいた
彼女の額に開いた穴を
姉ちゃんは既に事切れていた
せめてもの慰めは一瞬で逝けた事だろう
突然の事に、恐怖も痛みも感じなかったに違いない
僕は、姉ちゃんの、まだ開いたままの目蓋をそっと指で閉じた
抱きかかえた彼女はどんどん冷たくなっていく


JUM「……嘘だろ。何でこんな事になったんだよ……」


今日の臨時収入で一月は楽に暮らせるはずだった
いつも苦労を賭けっ放しの姉に、何かプレゼントでもしてやろうと思っていた
この世界で信じられる只一人の肉親だった


JUM「なんで……こんな事になったんだよっ!!!誰の!!誰のせいでっ!!!!」

真紅「恐らく私ね。それ以外は考えられないわ」
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 21:09:59.77 ID:bBR8yEd20
この人形は今、何て言った?
騒ぎの原因は、理由は自分だと言ったのか?
姉ちゃんは、のりはこいつのせいで死んだ、と?


JUM「は・・・?何言ってるんだ・・・?お前の・・・せいだって・・・?」

真紅「ええ、そうよ。連中は私を捕まえに来た、それは間違いないのだわ」

真紅「ただ、あの人数で来たという事は、ここにいるという確信は無かったはず。私がいると判っていればあの程度のはずがないもの」

真紅「連絡が途絶えた事に気づいて増援が来るまでに、ここから出来るだけ離れましょう」

JUM「・・・ちょっと待てよ。さっきから自分の都合ばかり話しやがって・・・。一体お前は何なんだよ、真紅!!!」

真紅「落ち着きなさい、人間。説明してもいいけれど今は駄目。貴方の…姉の死が無駄になるわよ」


……癪な話だが、確かにここにいれば、さっきの男達の仲間が現れる可能性が高い
そうなればきっと、今度こそ僕は死ぬだろう
真紅から話を聞くためにも、この理不尽な状況を把握する為にも、まずは生き残らなければならなかった


JUM「わかった……今はここから離れよう。でも、必ず納得の行く説明をしてもらうからな」

真紅「……いい顔になったわね、人間。それでこそ契約を結んだ甲斐があるというものだわ。そういえば名前を聞いてなかったわね」

JUM「僕はJU……」

ジュン「ジュン、桜田ジュンだ」
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 21:13:01.74 ID:yhEqLYDJ0
JUMからジュンに覚醒か
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 21:26:27.00 ID:bBR8yEd20
真紅「そう、ジュンというのね。ジュン・・・良い名前だわ」

ジュン「で、これからどうすればいいんだ。もうこの家は駄目だ。必要な物だけ持って逃げないと」

真紅「そうね。まず私のバッグとゼンマイは絶対に必要ね。あとは紅茶、ティーセットと当面の食事を準備なさい」

真紅「それと。私はこの周辺を全く知らないわ、当然だけれど。ジュン、どこか安全な場所は無いの?」

ジュン「ウチに紅茶なんて上品な物は無い、コーヒーで我慢しろ。で、安全な場所、か」

ジュン「そうだな、あそこなら……」

真紅「心当たりがあるのね。何処なのかしら?」

ジュン「学校だよ。と言っても機能なんかしてないし、この町じゃ必要ない所さ。何年か前に廃校になって誰もいないはずだ」

真紅「ここから遠いのかしら?」

ジュン「一時間、て所だな。ここから近すぎず遠すぎず、隠れるには最適だと思う」

真紅「採用、ね。じゃあ早速準備なさい」


言われるままに準備を整えた僕は家を出た
玄関を出る前に、のりの遺体をそっと抱きしめ、彼女の眼鏡を形見として胸のポケットに入れる
真紅をバッグに入れた事を少しだけ感謝した
涙を見られるのは、男にとって恥ずかしい事なのだ
そうして玄関をくぐった僕は
姉の仇を取る事を胸に誓った
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 21:34:17.06 ID:bBR8yEd20
飯から戻るまで落ちませんように
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 21:38:38.59 ID:oNfMNBrP0
はやくつづけろ

嫌いじゃないんだ
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 21:56:16.43 ID:P2Zvt5aW0
おっと、ここは支援しとくぜ
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 22:07:42.14 ID:gfMs0uhZ0
ししゅ〜ししゅ〜!
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 22:18:03.75 ID:gfMs0uhZ0
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 22:28:00.00 ID:bBR8yEd20
家から学校までの道のりは、僕にこれからどうするかを考えるのに十分な時間をくれた
そして今日一日の事を思い出す

今日の仕事、スリはサッパリだった
いつも目をつけているサラリーマンは給料日のはずなのに金を殆ど持っていなかったのだ

不貞腐れた僕は帰りに旅行者風の男から財布の金とバッグを譲り受けた
そしてロストVIPで夕食を食べた

恐らく店主が僕のバッグを見ていてそれがバレたのだろう
きっと店主も無事ではいまい、悪い事をした

そして真紅に出会ったと同時に桜田家は襲撃を受け
……のりは奴らに殺されたのだ

僕を今突き動かしているのは姉の仇を討つ、それしかなかった
叫べるなら思い切り大きな声で怒りを叫んでいただろう

とにかく学校へ、まずはそこからだ
僕は歩む速度を早くした



巴「あ、桜田君」
運転手「どうなさいました、巴様?」
巴「ううん、何でもないの」
巴(この時間にこんな所を歩いている訳ないものね)
??「巴ー!早く帰ってうにゅうを食べるのよー!」
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 22:28:35.83 ID:bBR8yEd20
丁度一時間たった頃、僕達は学校に辿りついた

正直、良い思い出の無い場所だ
担任の梅岡は子供達へ、勉強だけじゃなく犯罪のやり方を教えた
それは、この町で生き抜いて欲しいという彼なりの思いやりだったのかもしれない

現に、今日まで僕達姉弟が生き残れたのは、彼に習ったスリによる所が大きい
だが、僕はスリなんか嫌いだった
そして学校にも行かなくなっていったのだ

それから暫くして学校はギャングの襲撃を受け、事実上の閉鎖となった


ジュン「変わってないな、ここは」


今いるのは中等部の教室、僕がいたクラスだ
一応周囲を警戒し、誰もいない事を確かめてから中に入る

机等の備品はボロボロだが文句は言っていられないだろう
校長室にあったソファーを持ち込んでベッド代わりにする
これで寝泊り出来る程度にはなっただろう

簡単な整理が終わった所で、僕は真紅とバッグを思い出したように開いた


真紅「ここが学校という所なのね。随分小汚い所だわ」
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 22:39:54.21 ID:bBR8yEd20
真紅は一通り教室を見渡した後、つまらなそうにソファーベッドに腰掛ける


真紅「あぁ、長いこと揺さぶられていたから疲れたのだわ。紅茶を淹れて頂戴」

ジュン「家を出る時に言ったはずだぞ。家には紅茶なんてない。代わりにコーヒーセットを持ってきたけどな」

真紅「そうだったわね。仕方ないからその『こーひー』という物で我慢するのだわ。早く淹れて」

ジュン「僕も一息ついたからな、一緒に淹れてやるよ。幸い電気が通ってるからポットも使えるみたいだ」


インスタントコーヒーをマグカップにいれてお湯を注ぐ
その時、普段は姉ちゃんがいつもコーヒーを作ってくれていた事を思い出した
気づかぬ内に目から溢れた涙はコーヒーへ零れ静かに混ざっていった


ジュン「おい、出来たぞ。熱いから火傷するなよな。火傷とかするのかしらないけど」

真紅「苦いわね。人間はこんな物を好んで飲むのかしら?」

ジュン「五月蝿いな、だったら飲まなくていいんだぞ」

真紅「でも、優しい味ね。そして、とても悲しい味がするわ」

ジュン「……さっさと飲めよな。聞きたい事は山ほどあるんだ」
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 22:41:35.99 ID:yhEqLYDJ0
話の展開が遅い
他のドールも出てくるだろうし
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 22:57:32.60 ID:bBR8yEd20
小さな口のせいか、ようやく真紅はコーヒーを飲み終わった
タイミングを計って、僕は話を切り出す


ジュン「もういいだろ。お前の知ってる事、話してもらうぞ」

真紅「いいわよ、まずは何から聞きたいのかしら?」

ジュン「お前の事からだ。自分で動いて話をして、挙句に人間を殺す人形なんて聞いた事が無い」

真紅「私は父ローゼンが生み出したローゼンメイデンの第5ドール、真紅」

ジュン「第5って、それじゃお前みたいなのが何体もいるのか!?」

真紅「そうよ。それぞれのドールは各々が違ったコンセプトの元に作られているの」

真紅「その中でも私は局地制圧に特化した戦闘型ドール。そうね、ケンプファーのような物と言えば判りやすいかしら?」

ジュン「さっぱり判らないぞ。で、ローゼンってのは何でお前達を作ったんだ!?お前達は何をしようとしてるんだ!」

真紅「お父様の望み、それは『アリスゲーム』。それを成す為に私達ローゼンメイデンは作られたのだわ」

ジュン「『アリスゲーム』・・・?」
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 23:10:29.61 ID:bBR8yEd20
真紅「そう、アリスゲーム……」


父は、このアリスシティを憂いていたわ
神の見捨てた町、アリスシティ
力が全てを支配する町を救うには、それを上回る力しかないと父は考えた

そして、その力を体現する為にローゼンメイデンは作り出されたの
それぞれが異なった力を持つ私達の力でアリスシティに秩序を蘇らせる
それがアリスゲーム
でもコンセプトの違いは性格の違い、そして行動の違いも作ってしまったのだわ

動き出した私達は、各々がそれぞれの手段で町の秩序構築に動き出したの
ある者は力を持って裏社会の実力者を排除していった
ある者は自らの組織を作り力を蓄えて町のトップになろうとしたわ
でも、誰も協力しようとはしなかったの

父は私達を再調整し、互いに助け合うようにしようとしたのだわ
でも……


真紅「父は殺されたのだわ。それも私達ローゼンメイデンの一員に、私の目の前で」

真紅「それ以降、私はその姉妹に捕まっていたけれど、父の知り合いが隙を見て助け出してくれたのだわ」

ジュン「それがあの男で・・・僕がお前を受け取ったって訳か」
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 23:10:35.78 ID:9qXDcvd10
ケンプファーってお前wwwwwwww
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 23:22:57.55 ID:bBR8yEd20
真紅「後は貴方の知ってる通りよ。私を捕まえようと追っ手が放たれ」

ジュン「そのとばっちりで、姉ちゃんは殺されたって訳か」

真紅「……ごめんなさい。それについては謝るわ。まさかこんなに荒っぽいやり方だとは思わなかったの」

ジュン「今更それをどうこういうつもりは無いよ。お前には命を助けられたしな」

ジュン「……教えろよ。そのお前の姉妹を。姉ちゃんを殺させた奴の名前を」



男「す、すいません、水銀燈様!真紅は既に覚醒し逃走、追っ手の内、一つの班が全滅しました」

水銀「それでぇ?真紅は何処に逃げたのかしらぁ?」

男「それが…既に現場から立ち去っており、手がかりはまだ何も」

水銀「……私、お馬鹿さんって嫌いなのよねぇ」

男「お、お許しを!必ず真紅を見つけ、ギャッ!」

水銀「さっさと奴の、真紅の居場所を突き止めなさい!こうなりたくなかったらね!!」

男B「は、はっ!かしこまりました!」



ジュン「水銀燈……それが、姉ちゃんの仇の名前か!」
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 23:32:43.13 ID:bBR8yEd20
今日はねるぽ
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 23:40:52.05 ID:yhEqLYDJ0
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/16(水) 23:41:02.78 ID:xE/JXZ/P0
寝るなよ
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
まじか