1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 18:36:30.80 ID:uSFOE6B40
蒼「さあ週末! 僕と翠星石のくんずほぐれつ大放送始まるよー!」
翠「きゃうう〜ん…♥」
そんな訳でまったりいきませう
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 18:45:19.16 ID:LT5GN3rbO
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 18:57:59.81 ID:uSFOE6B40
人が来るまで保守しながらSSの推敲
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:08:54.86 ID:LT5GN3rbO
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:14:12.46 ID:fbZSN0dfO
翠「今日のおやつは…」
雛「いちごと
ちょこと
おいもで
つくるのー!」
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:30:09.95 ID:SForDzgyO
イチオツ
念願の蒼薔薇キボンヌ
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:40:51.51 ID:uSFOE6B40
ほ
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:47:58.94 ID:O8vZIB0V0
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:49:53.11 ID:uSFOE6B40
>>9 相変わらず上手くてGJ!翠星石の困りつつ嬉しそうな顔が良い!
背景二人組にワラタw
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:55:40.53 ID:uSFOE6B40
出来たけど大分長いからばいさるさん喰らう事必至に…途中で止まったら猿が来たと思ってください。
雛銀燈シリーズ50回達成という事で、妊娠していた翠星石の出産話です。
気付けば20レス近くという長さに…。
では投下します。
12 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 19:57:24.02 ID:uSFOE6B40
「雛苺、お皿テーブルの上に置いておいてやったですよぉ」
「もう、翠星石はじっとしててって言ったのよ」
「大丈夫ですよこれくらい」
雛苺はキッチンで昼食の準備をしながら、休んでおくように言っておいたのに勝手に動く翠星石に苦笑いを浮かべた。
翠星石が臨月に入り庭師の仕事を休むようになってからは、蒼星石が仕事でいない間に雛苺がよく家に来るようになった。
一人で居るときにもしもの事があっては大変と心配しているからだ。
翠星石はその事に心配性なんだからと口では言っているが、その実かなり感謝している。
やっぱこの時期に一人、しかも初の子供だから余計に不安になる。
それを素直に口に出せないのが翠星石なのだが。
それから数分もせずにオムライスが出来上がり、それをお皿に盛った。
「相変わらず、昔の雛苺からは想像出来ない出来栄えですねぇ」
「そりゃ何年も主婦やってるからなのよ。それじゃ、いただきますなの」
「いただくですぅ」
二人ともテーブルに着き、手を合わせてから二人とも食べ始めた。
「ん。なかなか良く出来たの。どう?」
「…まあ、良い味ですよぉ。ま、私が作ればもっと美味しいですけどね」
「もう、翠星石ったら…」
一言付け足して言う素直じゃない翠星石に雛苺はやれやれと苦笑いを浮かべる。
もっとも、昔からこういう性格なので特に気にしたりはしないのだが。
13 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 19:57:53.20 ID:uSFOE6B40
食べながらカレンダーに目を向けると、仕事や家の予定が書いてある中一つだけハートマークが多く書かれている日があった。
そこには「出産予定日」としっかり書かれていた。
「そう言えば予定日までもうすぐだけど、名前って決めたの?」
「…いえ、まだ決まってないですぅ。色々二人で考えたりするんですけど、どれも捨てがたくって…」
「例えばどんなの?」
「そうですね…碧星石とか紫星石とか…私達の子だから星と石はどうしても入れたいですねぇ」
「その気持ち分かるの…ヒナも雛銀燈の名前決めるのはかなり悩んだのよ。水銀燈と二人で夜遅くまで出し合ったりして…」
「一生背負うものですからね…まあ、予定日までまだ一週間以上あるから、それまでに考えるですぅ」
そこで話を区切り、二人ともテレビを見ながらオムライスを再び食べ始めた。
「ふう、ごちそうさまなの。…どうしたの、翠星石?」
雛苺が先に食べ終わり翠星石を見ると、三分の一程オムライスを残して手が止まっていた。
その顔からはさっきのお気楽そうな顔は消え、険しいものに変わっている。
「い、痛…」
「…あ、また『雛苺のご飯食べたらおなか痛くなったですぅ〜』とか言うんでしょ? もう引っ掛からないのよ」
過去の冗談を思い出し、やれやれと肩を竦めお皿を片付けようと立ち上がった。
しかしそれでも翠星石の顔から険しさは消えず、むしろ強くなり脂汗まで浮かんできた。。
そして最後にはその手からスプーンが床に滑り落ち、そこで冗談じゃない事が雛苺にも分かった。
慌てて駆け寄って体を擦る。
「え…ほ、本当なの!? 本当に陣痛が始まったの!?」
「ちょ…ちょっと嘘でしょ…まだ一週間以上あるんですよ…!」
「た、大変なの! とにかく今タクシー呼ぶから! あと蒼星石にも…! ちょっと待つのよ!」
翠星石のおなかを摩りながら片手で携帯を使ってタクシー会社へと電話を入れる。
それはすぐに繋がり、タクシーもすぐに来れそうだ。
「よし、これでタクシーはOKなの。次は蒼星石に…」
14 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 19:58:23.80 ID:uSFOE6B40
―※―※―※―※―
「参ったなぁ…この雨じゃ仕事になんないよ」
「でも大方終わってるんでしょう? なら別の日でも良いじゃなぁい」
「そうなんだけど、他の日に持ち越すのってあまり好きじゃないんだよね…予定通り仕上げないと失礼だし」
突然降り出した雨を、ビルの自販機コーナーの窓から見上げる蒼星石。
その蒼星石に水銀燈が自販機で買ってきた紙コップに入ったコーヒーを差し出す。
今日の蒼星石の仕事は水銀燈達が働いてるオフィスビルの中庭の手入れだった。
今はちょうど昼食時でみんなで食事を取っているところだ。
「蒼星石は相変わらず真面目ね」
「本当、蒼星石の爪の垢でも煎じて真紅に飲ませてやりたいわぁ」
「な、なんでよ。聞き捨てならないわ」
「仕事中にエロ小説書いておいて、何言ってるかしら」
「う…」
「そんな事してるの、真紅は…」
呆れたようにジト目で真紅を見る蒼星石。
「そうよぉ。この間なんて、私の家をモデルに書いてたんだからぁ…」
「うわぁ…それはさすがにドン引きだね…」
「ち、違うわ! あれはただの暇つぶしで、名前を借りてただけで…」
必死に釈明をする真紅に聞く耳を持たず距離を取っていく蒼星石。
「一回脳みそを診てもらったほうが良いわねぇ。めぐに今度お願いしようかしらぁ」
「賛成かしら」
「私もですわ」
「僕もそう思うよ」
水銀燈の台詞にみんなが同意して手を挙げていき、それを見て真紅は泣く様に声を上げる。
「ちょっと、そこまで言わなくてもいいじゃない!」
「はは、冗談だよ冗談。…っと、電話だ」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 19:58:46.28 ID:SForDzgyO
支援
16 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 19:58:50.73 ID:uSFOE6B40
笑って水銀燈から貰ったコーヒーを一口飲んだところで、蒼星石の携帯が鳴り出した。
それを鞄から取り出しディスプレイを見ると雛苺の名前が映っていた。
普段掛かってこない雛苺からの電話に首を傾げ、通話ボタンを押し耳に携帯を当てる。
「雛苺? どうしたの?」
『もしもし、蒼星石なのね? …いい、落ち着いて聞くのよ。翠星石がもう産まれそうなのよ』
「な、何だって!?」
突然のことに思わず立ち上がり、みんなの視線が蒼星石に集まる。
『今、翠星石と病院に向かってるから…もしもし、もしもし?』
「あああどうしよう! 翠星石が、翠星石が産まれるって!!」
「何ですってぇ!?」
翠星石が産まれるということを知って、みんな騒然となった。
だが肝心の蒼星石は雛苺の注意を無視して完全に落ち着きを失い、取り乱して思わず水銀燈に縋りついた。
「ど、どうしよう!」
「大丈夫よぉ、雛苺が付いてるんでしょう?」
「で、でもまだ予定日まで一週間以上あるし…大丈夫なの!?」
「そんなの私が知るわけないでしょう! …ああもう、携帯貸しなさい! もしもし、雛苺?」
縋りつかれた水銀燈は蒼星石がダメだと判断し携帯を半ば強引に奪い取った。
『あれ、水銀燈なの? そっか、今日水銀燈の会社だったっけ…とにかく、翠星石が産まれそうだから一緒に病院に行くの』
「ええ。分かったわぁ」
『…それで、ヒナが付いてるから大丈夫って言おうとしたんだけど…さっきの取り乱しようだと…』
「…もう大丈夫じゃないわよぉ」
17 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 19:59:26.15 ID:uSFOE6B40
電話しながら呆れたように横目で見ると、今度は雪華綺晶に泣きついていた。
「ね、ねえ!! どうすれば良いの!? もしもの事があったら…!!」
「落ち着いてくださいませ蒼薔薇お姉さま! 苺お姉さまが付いていらっしゃるから大丈夫ですわ!」
「大体蒼星石が慌てても何にもならないかしら!」
「…聞こえてるぅ?」
『……大パニックみたいなのね…とにかく、そう伝えといてなの』
「分かった。あとで蒼星石もそっちに行かせるわぁ」
『お願いするの。…あと、雛銀燈のお迎え、頼んでも良い?』
「了解。こっちの事は心配しないで、翠星石を支えてあげてねぇ」
『うん。それじゃ、色々頼んだのよ』
そこで電話を切り、水銀燈は慌てている蒼星石の肩を叩いて自分の方を向かせた。
「な、何だって?」
「雛苺が付いてるから大丈夫よぉ。…それと、今すぐ病院に行きなさぁい。雨だし、まず今のあなたじゃ仕事にならないでしょう?」
「…いいの?」
「事情は説明しとくから。ほら、早く行ってあげなさぁい」
「分かった!! すぐに行くよ!!」
それだけ言い、慌ててドアの方へ駆け出して行った。
が。
18 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 19:59:55.56 ID:uSFOE6B40
「蒼星石! 危な…」
「へぶっ!!」
ろくに前を見なかった為に目測を思いっきり誤り、ドアではなく壁に直撃して後ろにぶっ倒れた。
それを見てみんな心底呆れた溜息を吐き、水銀燈が鼻を押さえている蒼星石の腕を掴んで立ち上がらせた。
「…私が送ってくわぁ。この状態じゃ100%事故起こすわよぉ」
「…それが懸命かしら」
「そうね…」
「すぐに戻ってくるからぁ。ほら、行くわよぉ!」
「お願い…あいったたた…」
痛む鼻を押さえる蒼星石を半ば強引に連れて自販機コーナーから出て行った。
そんな水銀燈を金糸雀達は心配そうに見送る。
「…大丈夫かしら…」
「大丈夫ですよ。苺お姉さまが付いていらっしゃいますし」
「いや、蒼星石が…」
「……」
19 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:00:17.99 ID:uSFOE6B40
―※―※―※―※―
それから蒼星石を車で病院まで送り雛苺に任せると、水銀燈は会社に戻ってきた。
「どうだった?」
自分の机に着くと隣の真紅が声を掛けてきた。
「翠星石は出産準備室に入ってるわぁ。夜頃に分娩室に入るみたいよぉ」
「そう。…で、蒼星石は?」
「…今にも泣きそうだったわぁ…」
「…あれでちゃんとした親になれるのかしら…不安だわ」
「うん…」
二人して溜息を吐くと、真紅が思い付いたようにみんなに目配せした。
それに気付き、金糸雀と雪華綺晶が真紅の方を向く。
「仕事終わったらみんなで様子見に行きましょう。蒼星石が心配だし、雛苺もきっと大変だと思うわ」
「それは素敵ですわね。うちのばらしーちゃんも呼びますわ」
「確かに雛苺だけに二人の面倒見せられないかしら。真紅もたまには良い事言うかしら!」
「…たまに、は余計よ」
二人とも笑顔で賛成したが、水銀燈は渋い表情を浮かべた。
「…私もそうしたいんだけど、家で雛銀燈の面倒見なきゃいけないし…」
「ああ、そうか…雛銀燈ちゃんがいたわね」
「雛苺からも頼まれてるからねぇ、ちょっと無理だわぁ。ちょっと顔は出すかも知れないけどぉ…」
「分かった。私達は病院に行くから、何かあったら連絡するわ」
「お願いねぇ」
20 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:00:59.40 ID:uSFOE6B40
そう決めてからは仕事を早めに終わらせ、定時にはみんな会社を後にした。
「じゃあ病院に行って来るわね」
「ええ。雛苺も翠星石も、蒼星石も頼んだわよぉ」
「任せて頂戴。みんな、行きましょう」
それから真紅達は病院へと向かい、水銀燈は車に乗って雛銀燈の幼稚園へとお迎えに向かう。
「…やっと小雨になってきたわねぇ…」
昼に降り出した雨は勢いが弱まってきているが、もう夕暮れという事もあって外は大分暗い。
この天気じゃ雛銀燈も心細いだろうと、水銀燈はアクセルへの力を少し強めた。
はやる気持ちとは裏腹に、帰宅ラッシュで道が混んでいた事もありお迎えに来れたのは六時近くだった。
残っている園児は雛銀燈しかおらず、慌てて教室へ向かう。
「あ! 銀ママだぁ!」
「雛銀燈ごめん、遅くなって…。すいませんのり先生、こんな時間まで見てもらっちゃってぇ…」
「いいえぇ。気にしないで下さい。私も雛銀燈ちゃんと遊んでると楽しいし」
謝る水銀燈に笑って答えるのり。その水銀燈のズボンの裾を雛銀燈が引っ張った。
「ねぇねぇ。雛ママはどうしたのぉ?」
「雛ママはねぇ、今病院よぉ」
「病院!?」
「え…どこか調子悪いんですか?」
「いえ、雛苺は大丈夫なんですけど、その友達が赤ちゃん産まれそうで付き添ってるのよぉ」
「そうだったんですか…」
「そういう訳で遅れてしまって…では、ありがとうございました。雛銀燈もバイバイしなさぁい」
「のりせんせぇ、ばいばーい」
「ええ。また月曜日にねぇ」
21 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:01:25.04 ID:uSFOE6B40
雛銀燈がのりに手を振りながら教室を出て、傘を差しながら駐車場へと向かう。
車に乗り込み雛銀燈をチャイルドシートに固定すると、エンジンを入れて雛銀燈に声を掛けた。
「よしっと…雛銀燈。今晩雛ママ帰ってこられないかもしれないけどぉ、大丈夫よねぇ?」
「うん。…そう言えば、誰が産まれるのぉ?」
「…ああ、そういえばまだ言ってなかったわねぇ。翠星石…翠お姉ちゃんよぉ。ほら、お腹大きかったでしょう?」
「翠お姉ちゃんなのぉ?」
ここで初めて翠星石が産まれる事を聞いて雛銀燈は驚きの声を上げた。
その事実を知って感嘆したように「へぇー…」と言って黙る。
「そう。翠お姉ちゃんに付いてるつもりらしいからぁ、家で待ってましょう」
「…わたしも行くのぉ!」
「え、行くのぉ!?」
いきなり行くと言いだした雛銀燈に思わず驚いてしまった。
「…雛ママと一緒が良いのぉ?」
「…それもあるけど、赤ちゃんが産まれるところ見たいのぉ!」
「でも、いつになるか分からないわよぉ」
「それでも行くのぉ! 翠お姉ちゃん応援したいのぉ!」
「っ…雛銀燈…」
真剣な眼差しで目を覗き込んできて、水銀燈は何も言えなくなった。
そうだ、よく考えれば雛銀燈も翠星石に昔からずっと仲良くしてもらっていた。
ある意味自分の姉として感じているのかもしれない。その姉が大変だからこそ傍にいたい…。
そう思うのは当然の事だろう。
「…あなた、子供だと思ってたけど結構しっかりしてるわねぇ…」
水銀燈もその思いを理解し、微笑んで雛銀燈の頭を撫でた。
「うゆぅ…」
「…明日は休みだし、それも良いわねぇ。よし、じゃあ翠お姉ちゃんの所に行くわよぉ」
「うん!」
予定を変更し、翠星石がいる病院へと向かってアクセルを踏み込む。
「…翠お姉ちゃん…頑張ってなのぉ…!」
雛銀燈の表情はいつに無く真剣で、手と手を合わせて必死に祈っていた。
その気持ちは、当然水銀燈も同じだ。
22 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:01:49.55 ID:uSFOE6B40
―※―※―※―※―
一時間ほどして病院に着き、看護婦に案内された方へ行くと、薔薇水晶も加わったみんなが分娩室前のホールに集まっていた。
その内の金糸雀が水銀燈達に気が付き、それに釣られてみんなも気が付いた。
「あれ、水銀燈かしら! それに雛銀ちゃんも…」
「雛ママぁー」
雛苺を見つけると、雛銀燈は駆け寄っていって雛苺が抱き上げた。
「ああ、よしよしなの。水銀燈、あなたまで来たの?」
「ええ。雛銀燈が翠星石の傍にいたいってぇ」
「雛銀燈が?」
意外、と言った様子で雛苺が雛銀燈の顔を見る。
それに雛銀燈はうん、と大きく首を縦に振った。
「翠お姉ちゃんの応援に来たのぉ」
「…いい子だね…雛銀ちゃん…」
「雛銀燈…きっと喜んでくれるのよ。ありがとね」
「うん!」
雛銀燈をいい子いい子と頭を撫でる雛苺、それを見てみんなの緊張が少し和んだ気がした。
この緊張した空気の中で、雛銀燈の明るさはみんなの癒しになったかも知れない。
「それで、今どういう状況なのぉ?」
来たばっかで状況をまだ完全に把握し切れてない水銀燈が雛苺に尋ねた。
「ついさっき分娩室に入ったところなの。やっとお産が始まったところなのよ」
「そう。…で、蒼星石は?」
「…蒼星石は…」
翠星石の様子を知り、次は不安気味にそう尋ねる。
尋ねられた雛苺はやや呆れ気味に蒼星石がいる方へと目を向け、水銀燈もその方を見た。
23 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:03:11.20 ID:uSFOE6B40
「…ああ、どうしよう…翠星石…」
「大丈夫だからしっかりしてください…看護婦さんも大丈夫って仰ってたじゃないですか」
「でも、万が一の時には…!?」
「私達は医者じゃないんだから、万が一何かが起こってもどうしようもないわよ」
「そんな! それじゃ翠星石はどうなるんだ!」
「真紅もそんな不安にさせる事言うんじゃないかしら…」
「…ごめんなさい」
「蒼星石、きっと上手くやってくれるから大丈夫かしら」
みんなにたしなめられているものの、昼間とあまり変わっていない蒼星石がそこにいた。
「…全然変わってないわねぇ…」
「ここに来た時からああなのよ…もう落ち着いてと言うのもバカらしくなってきたの…」
「蒼お姉ちゃん、大丈夫なのぉ?」
「まったく…」
水銀燈はやれやれと肩を竦め、自販機でコーヒーを買ってそれを蒼星石に差し出した。
「あれ、水銀燈…いつ来たの?」
「ついさっきよぉ。ほら、これでも飲んで少し落ち着きなさぁい。雛銀燈も来てるわよぉ」
「雛銀燈ちゃんも?」
それで雛苺から降りて駆け寄ってきた雛銀燈に気が付いた。
「翠お姉ちゃんの応援にきたのぉ!」
「…ありがとうね。雛銀燈ちゃん」
震え気味の手でコーヒーを受け取り、雛銀燈に笑顔を作ってからコーヒーを飲み始めたが…。
24 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:03:58.80 ID:uSFOE6B40
「ブフッ!!」
焦って飲んだせいか、変な所にコーヒーが入って思いっきりむせて噴きだした。
その近くにいた真紅達にその飛沫が降りかかる。
「やだ、噴き出したのだわ!」
「ぎゃー! コーヒーが掛かったかしらー!」
「さ、さすがにこれは堪りません!」
「き…きったない…」
「…もう付き合ってらんないの…」
「ねえ蒼お姉ちゃん、大丈夫なのぉ?」
みんなが呆れる果てる中、雛銀燈だけが心配してむせ込んでいる蒼星石の背中を擦る。なんとも情けない光景だ。
それで何とか蒼星石のむせも収まり、涙目のまま雛銀燈の方を向く。
「ゲホッゲホッ…だ、大丈夫だよ…ゲホッ…」
「何が大丈夫よぉ…。はぁ…来なさい。話があるわぁ」
溜息を吐き、蒼星石の腕を掴むとそのままエレベーターの方へ向かって行く。
いきなり連れて行かれそうになり、蒼星石は訳が分からなくなる。
「ちょ、ちょっと! 翠星石の傍にいないと! どこに行くのさ!」
「今のあなたなら近くにいないほうがマシよぉ。五分だけちょっと付き合いなさぁい」
「いや、ちょっと…!」
半ば強引に蒼星石を連れ、そのままエレベーターに乗り込んで行ってしまった。
その様子をみんなは何もせず傍観していた。
「…どこに行ったのぉ?」
「大丈夫なの。水銀燈なら落ち着かせてくれるのよ」
25 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:05:00.51 ID:uSFOE6B40
―※―※―※―※―
そのまま連れられて出た場所は病院の屋上だった。
雨はもう止んでいるが暗い雲が空を覆っていて、光源は夜景の明かり以外無い。
「…何なの話って…」
相変わらず落ち着かない様子で蒼星石が尋ねた。
水銀燈は柵に身をもたれさせると、一つ息を吐いて口を開く。
「あなたを見てると思い出すわぁ。雛銀燈が産まれた日の事を」
「え…?」
「今でこそあなたに落ち着けとか言ってるけど、私もあの時はずっと落ち着かなくてオロオロしてたわねぇ」
その時を思い出して、水銀燈は照れくさそうに苦笑いを浮かべた。
「…あの時は私一人で雛苺に付いてたから余計心細かったわぁ。それに比べれば、今のあなたなんてかなり心強いじゃなぁい」
「うん…」
「で…その時に雛苺に言われたのよ。『水銀燈がそんなんじゃこの子も安心して産まれて来れないの』ってねぇ…」
照れくさそうな、それでいて懐かしそうな顔をして水銀燈は続ける。
「私ったら、相当情けない顔してたのねぇ。笑っちゃうでしょう?」
「水銀燈がねぇ…」
今では散々雛苺の尻に敷かれているのだが。
「…それを聞いて、私よりも雛苺の方がしっかりしてる気がしたわぁ。一人で気を張りすぎてたのねぇ」
そこまで言い切ると、蒼星石の肩を叩いてしっかりと目を覗き込んだ。
「…私だってあの時は不安だったから、あなたの気持ちはよく分かるわぁ。だからこそ、こうして言ってるのよぉ」
「…水銀燈…」
「赤ちゃんが安心して産まれてこれる様にもっと胸を張って堂々としてなさぁい。何が起こっても大丈夫ってぐらいにね」
それだけ話し終えると、水銀燈は優しく蒼星石に微笑みかけた。
それに蒼星石も微笑んで返す。
26 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:05:27.26 ID:uSFOE6B40
「…何だか落ち着いてきた。もう大丈夫だよ」
「…なら良かったわぁ。ごめんなさぁい、何だか説教臭いこと言っちゃってぇ…」
「ううん。ありがとう、話してくれて」
「やれやれ、やっと親になる人の顔になったわねぇ」
二人ともやっと安心して笑い合った。
そこで不意に辺りが明るくなり、空を見ると雲が晴れて満月が煌々と輝き、星空が華麗に瞬いていた。
その美しさに思わず二人とも見惚れてしまう。
「凄い…綺麗…」
「雨が空気中の塵を洗い流してくれたのねぇ。綺麗な月…そう言えば雛銀燈が産まれた日も満月だったわねぇ」
「そうなんだ…何だか、星空が歌ってるみたい…」
「そうねぇ…そろそろ戻りましょう。赤ちゃんの産声って言う最高の歌を聞き逃したら大変よぉ」
「そうだね。行こうか」
先に水銀燈がエレベーターに向かい、蒼星石が後から着いて戻って行った。
みんながいるホールに戻ると、一斉にこっちの方を向いた。
「あ、蒼星石。もう大丈夫かしら?」
「もう大丈夫。みっともない姿見せちゃったね…」
「まったく…初めからそうしてれば良かったのだわ」
「ごめん。心配掛けたね…」
「…まあ、蒼星石も元に戻ってよかったの。水銀燈、ありがとなの」
「さすが、一番最初に親になった事だけありますわね」
「…銀ちゃん、すごい…」
「大した事してないわぁ。…じゃあ蒼星石も戻った事だしみんなで翠星石の応援してましょう」
「うん! 頑張るのぉ!」
それからみんなソファに腰掛け、ひたすら翠星石の無事を祈り続けた。
一時間、二時間と過ぎ、静かな時間だけが過ぎていく。
27 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:05:57.41 ID:uSFOE6B40
「…ふあぁ…」
「雛銀燈、眠かったら膝枕してあげるから寝ても良いのよ」
「…大丈夫…なのぉ…」
やがて日付が変わって雛銀燈の眠気もピークになりウトウトと雛苺にもたれかかってきた。
その時。
――…ギャ…ホギャー…――
「っ!」
分娩室の中から聞こえて来た声に、蒼星石が一番に反応して立ち上がり他のみんなも立ち上がった。
「…雛銀燈、ほら」
「うゆぅ…?」
立ち尽くしていると、しばらくしてから中から看護婦が出てきて蒼星石に微笑みかけた。
蒼星石は看護婦に駆け寄り、その顔をじっと見つめる。
「翠星石は…?」
「予定日よりちょっと早かったですけど問題ありません。元気な女の子ですよ」
それを聞いて一瞬の静寂が流れたあと、歓声が一気に湧き上がった。
「やった、やったかしらー!!」
「ついに産まれたのー!」
「おめでとう蒼星石、翠星石! おめでとう!!」
「あなたも親になったのよぉ! おめでとう!」
「こんなに素敵なことは滅多にありませんわ!」
「おめでとう…!」
「ばんざーい、ばんざーい!!」
みんなが歓声を上げる中、肝心の蒼星石は未だに何の声も出さないで立ち尽くしたままだ。
それを不思議に思って真紅が覗き込むと…。
「ちょ、ちょっと泣いてるのだわ…」
「だ…だって…こんな嬉しいの初めてだから…! どう表現して良いのか…!!」
笑顔で大粒の涙を幾つも流して嗚咽を漏らし、その場に立ち尽くしていた。
涙も拭わずないでいる蒼星石を、水銀燈は笑顔で背中を押した。
「ほら、言ったでしょう? 赤ちゃんが安心できるようにしろって…ほら、涙を拭きなさぁい」
「うん…!」
28 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:06:40.26 ID:uSFOE6B40
―※―※―※―※―
しばらく経って、翠星石の病室前…。
「夜も遅いし、母親の方も大分疲れてるので面会は短めにしてくださいね」
「分かりました」
看護婦の注意を聞き、蒼星石を先頭に中に入っていく。
そして静かに翠星石のベッドを覗き込むと、ウトウトとしている翠星石とその隣に可愛らしい茶髪の赤ん坊が一緒にいた。
「…翠星石…」
「…蒼…星石…みんな…。雛銀燈ちゃんも来てくれたんですか…」
目を覚ましてみんなの姿を確認し、翠星石の顔に笑顔が浮かぶ。
蒼星石はベッドサイドにあったイスに腰掛け、翠星石の手をしっかりと握り締めた。
「頑張ったね…お疲れ様…」
「…私だけじゃねえですぅ…その子も頑張ったですよぉ…」
そう言って視線を隣で横になっている赤ん坊に向ける。
みんなの視線も赤ん坊に向き、蒼星石はその子の頭をそっと撫でた。
「…この子が僕達の…」
「うん…」
慈愛に満ちた目で赤ん坊を見つめる二人。
しばらく見つめていると、翠星石が雛苺の方を向き二人とも目が合った。
「…雛苺には世話になったですぅ…。…本当に、ありがとう…感謝してるですよ…」
「うふふ…良いのよ。こうして無事に産まれたんだから…」
普段こんな事を言わない翠星石に多少驚きつつも雛苺も微笑んだ。
それから翠星石と蒼星石を残し、水銀燈たちは病室を静かに後にした。
「私達はお邪魔みたいねぇ…行きましょう」
「そうするの」
それからみんな解散し、それぞれ家に帰っていった。
29 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:07:11.30 ID:uSFOE6B40
「赤ちゃん、可愛かったねぇー!」
水銀燈が運転する車の中、興奮冷め止まぬ様子で雛銀燈がそう言った。
二人ともそれに同じ思いで、優しく微笑み水銀燈がバックミラーで雛銀燈の顔を見ながら口を開いた。
「そうねぇ。…雛銀燈、憶えてないだろうけどあなたもああやって産まれたのよぉ」
「わたしも?」
「そうなの。あなただけじゃない、銀ママも雛ママも、蒼お姉ちゃんや翠お姉ちゃん…みんながああやって産まれたの」
「へぇー…」
感嘆の声をあげ、ワクワクした様子で隣にいる雛苺の顔を覗き込む。
「わたしね、あの子に絵本読んであげるのぉ」
「それは良いのね。きっと喜ぶのよ」
「それに一緒に遊んだり、面倒見てあげるのよぉ」
「素敵ねぇ。雛銀燈…あなた妹が出来たみたいで嬉しいんでしょう?」
「うん!!」
何も隠す事無く、輝く満面の笑みで頷いた。
これは興奮して夜は寝られそうにないなと、二人とも思った。
30 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:08:40.52 ID:uSFOE6B40
―※―※―※―※―
それから数日後の、翠星石の病室。
今日は赤ん坊の名前が決まったと言う事でみんなが集まっていた。
「みんな来てくれてありがとう。あの日、みんなに支えてもらったからみんなに真っ先に知らせたくて…」
「そんな気にしなくても良いのにぃ。…で、何て名前にしたのぉ?」
「そう急かすんじゃねえですぅ。まずは蒼星石の話を聞くですぅ」
急かすみんなを制して、蒼星石と翠星石が目配せしてから蒼星石が口を開く。
「あの日、水銀燈と屋上で話をした時に見えた月と星空が凄く素敵で今でも目に焼きついてる。
それであの月と星空のように素敵で、心が綺麗な人になって欲しいという思いで…この名前にしたんだ」
そう言うと翠星石がベッドの中から丸めた紙を取り出し、それを二人で持つと指を離して紙を広げさせた。
「…げっせいせき…月と僕らの名前の星石を合わせて『月星石』って名前にしたんだ」
「どうですぅ? 良い名前でしょう?」
照れくさそうに言う蒼星石と、自慢げに言う翠星石。
その命名に誰も文句を言う物などいなかった。二人が決めた名前なのだから。
「月と星と石…綺麗にまとまってるかしら」
「そうね、素敵な名前よ」
「素晴らしいですわ。ねえ、ばらしーちゃん」
「うん…凄く良いよ…」
「神秘的で良い名前なの」
「そうねぇ。文句無しよぉ」
みんなに褒められ、二人とも嬉しそうに笑った。
31 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:09:31.11 ID:uSFOE6B40
「当然ですぅ。二人で考えたんですから」
「月星石ちゃんっていうのねぇ!」
名前を知って、雛銀燈は嬉しそうに月星石がいるベビーベッドへと駆け寄った。
「よろしくね、月星石ちゃん!」
雛銀燈がそう言い、手を差し出すと嬉しそうに笑ってその指を握った。
「よろしくね、だって。雛銀燈ちゃん、仲良くしてあげてね」
「うん!」
まるで本当の姉妹みたいなその光景に、みんなの顔もほころんでいった。
これから先、長い付き合いになる事を予想して。そして、健やかに育ってくれる事を祈って。
終
32 :
オーロラ ―キミの始まりの日へ―:2008/07/11(金) 20:13:11.19 ID:uSFOE6B40
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 20:15:18.44 ID:uSFOE6B40
そういや、ばいさるさん来なかった…無くなったのかな? 前別スレでくらったけど…
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 20:16:41.96 ID:EXlfvNJ90
なんだこの気持ち悪さは
心が子供のままの奴が体だけ大人になっちまって
変な妄想が止まらんのか
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 20:18:48.02 ID:LT5GN3rbO
乙です!
家帰ったら読ませてもらうぜ!!
猿は10レス超えたぐらいで発動するけど一時間ごとにリセットされるから8時を挟んだことでリセットされたんじゃないか?
>>12-31 時間をかけてゆっくり読ませていただきました
出産前の緊迫した空気がびんびん伝わってくるからすごい
作者は出産の経験ありなのか?w
冷静さを失った蒼い子が可愛かった
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 20:44:07.33 ID:uSFOE6B40
保守
>>36 出産の経験はおろか立ち会ったこともないです
サーセンw
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 21:03:51.81 ID:uSFOE6B40
ほ
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 21:26:12.68 ID:8jJExDCpO
ほし
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 21:27:39.79 ID:Hq/8xwjSO
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 21:34:39.74 ID:LT5GN3rbO
>>32 読み終わったぜ…
普段冷静な蒼星石も翠星石の一大事となると頭が真っ白になるんだな
周りの友情がなかったらどうなってたか想像できんぜ
さて、雛銀燈は雛苺色が強かったが月星石はどっち似になるんだろう…
どっちにしても真紅のネタ(ry
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 21:55:18.72 ID:8jJExDCpO
ほ
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 22:16:35.22 ID:SForDzgyO
後で読ませてもらうぜ!
ほし
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 22:35:38.72 ID:8jJExDCpO
ほ
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:02:01.74 ID:SForDzgyO
し
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:04:08.92 ID:PW17PzdHO
ほ
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:13:21.27 ID:uSFOE6B40
翠「真紅、何のゲームしてるですか?」
紅「クーロンズ・ゲートとというゲームよ」
蒼「またマニアックなゲームを…」
紅「…ところで、このゲームでは双子には特別な力があるって言われてるけど、あなた達には何か無いの?」
翠「特別な力ですか…特に無いですねぇ」
蒼「僕はあるよ。翠星石の汗を舐めるとあらゆる情報が一瞬にして分かるんだ。どれ、実際に…」
ペロリ
翠「ひゃあっ!」
蒼「ふむ、最近ちょっと疲れやすいみたいだね。夜遅くまで起きてるから寝不足気味のようだし…もっと調査を…」
翠「寝不足って、それは蒼星石が寝かせて…ひあ、だ、ダメれすぅ…はあううぅ〜ん…♥」
紅「ううん…道に迷ったのだわ…(無視)」
>>18 あーあせっかくいい話だったのに糞キムみたいなゴミが出てきたせいで台無しだ
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:14:33.52 ID:hEAbwACz0
>>12-32 乙!なんかすげーリアリティがあるw
翠星石と蒼星石の子供ってどんな感じだろうか?想像つかねえw
>>19 糞キム出てくんな死ね
スレの雰囲気悪くするだけのクズが
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:15:24.65 ID:hEAbwACz0
>>22 ほんと糞キムって何の存在価値もないクズだな
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:20:58.76 ID:hEAbwACz0
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:23:55.34 ID:hEAbwACz0
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:26:03.57 ID:hEAbwACz0
前スレ「ローゼンメイデン蒼星百合は砕けない」の
>>312に送る
遅れてすまない
『新婚生活』
「おかえりなさい」
水色の真新しいエプロンを付けた女性が、にっこりと微笑んだ。その女性の向かいには、スーツの女性が立っており、その女性もにっこりと微笑む。
「ただいまぁ、ハニー」
「………その呼び方はどうかと思うよ」
「やっぱり?一度言ってみたかったんだけどねぇ」
先程の清楚な世界観は何処へやら。ガラガラと音をたてて崩れていく様は、誰にでも見えただろう。
けれど、確かなものはそこにあった。
>>56 「なんたって、新婚生活初日だものぉ。色々とやってみたい事はあるわぁ」
「はぁ……程々にね?」
二人は女性同士、つまり同姓である。同姓同士が結婚出来る筈もない。
籍を入れている訳ではない。外から見ればただの二人暮らしに見えるが、ちゃんと式は挙げていた。親しい友人の中でだが。
「改めて。ただいまぁ、蒼星石」
スーツの女性は、蒼星石と呼んだエプロンの女性の頬に口付けを落とした。
「おかえりなさい、水銀燈」
唇の温もりを感じた頬を赤らめつつ、優しい微笑みで答える。
お互い、今の幸せを実感していた。
―――――
>>57 「す、水銀燈…くっつきすぎだよ…」
「いいじゃなぁい。夫婦なんだし」
キングサイズのベッドの上で、四本の腕が絡み合う。
ちなみに、蒼星石は青いパジャマを着ているが、水銀燈はキャミソール一枚だった。
「へ、変な事しないよね…?」
「そう言われるとしたくなるけど、初日はまだしないわぁ」
「初日以外は!?」
「今日だけは……」
少しだけ警戒を見せる蒼星石を、ギュ、と抱き締める。
「貴方を抱き締めて、眠りたいわぁ……」
>>58 「……今日だけじゃなくても、良いのに…」
「…………」
「……水銀燈?」
呼び掛けても、何の反応も返って来ない。不思議に思い水銀燈の顔を見てみると、いつも余裕の笑みを見せるその顔は、幸せそうに眠る少女になっていた。
「……水銀燈も、こんな顔するんだ……」
暫く寝顔を見つめていた。が、ふと自分も眠気に襲われ、それに従う事にした。
意識が完全に落ちる前に、水銀燈を、ギュ、抱き締めた。
end
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:42:12.82 ID:p41QmSEpO
>>56-59 投下しゅーりょー
ひたすら甘々を意識したらただのばかっぷるにwwwwww
お題ありがとう
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/11(金) 23:58:41.28 ID:ra1K2LJnO
>>60 イイヨイイヨー!
携帯みながらニヤニヤしてる俺キメえw
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:00:34.86 ID:PH4ep7Q20
>>60 投下乙!
甘甘は正義です
式の時翠星石はどんな様子だったのか気になるw
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:03:22.39 ID:BFvVjF9pO
>>9 学校でも有名な百合姉妹って感じだな
>>32 乙
蒼星石の動揺が伝わってくるようだったぜw子供にも期待
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:05:01.40 ID:BFvVjF9pO
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:07:21.47 ID:BFvVjF9pO
>>60 銀蒼もいいな
なんかこの二人すごいエロそうw
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:16:48.14 ID:BFvVjF9pO
真
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:17:09.78 ID:PH4ep7Q20
翠「ふぁ…さてと、私も寝るですぅ」
ガチャッ(鞄を開ける)
蒼「やぁ」
翠「そ、蒼星石、私の鞄で何してるですか!?」
蒼「何って、君を待ってたのさ」
翠「…私はもう眠いんですぅ…」
蒼「じゃあ一緒の鞄に入ろう! 寝れるかどうかは分からないけどね!」
ガシッ(翠星石の腕を掴む)
翠「い、いや、本当に疲れてるから、あ、あ、アッー!」
おやすみノシ
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:21:36.47 ID:f3WYCc5+0
支援
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:41:11.39 ID:UWmVTrEYO
蒼翠投下するよー
NGワード eroero
──C or D
雑誌をめくる音というものは案外響くものだと知ったのは今しがた。
翠星石は暇そうにクッションを抱きながら雑誌を黙読している少女を見つめている。
何も会話はない。それ故に雑誌の音が耳に届くのだ。
「蒼星石は犬、ですよね」「……は?」
蒼星石と呼ばれた少女は怪訝そうに手元の雑誌から顔をあげた。その表情には警戒の念さえ浮かんでいる。
「また何を…僕は人間だよ」
「そういうことじゃねぇですよ」
「じゃあ、なんだい?」
「だから、犬っぽいですね、っていう話です!」
蒼星石に瓜二つ──双子なのだから当然ではあるが──の翠星石がクッションを抱きながら言う。
その様子に蒼星石は小さくため息を吐くと、雑誌に視線を落とした。
「無視するなです!」
そのつもりはなかったのだろう。不幸にも、投げたクッションは蒼星石の手元を弾いた。
>>70 「翠星石…」
「な、なんですか…!」
後少しで、本気で怒り出しそうな妹に怯えながらも強気な口調は変わらない。
クッションと雑誌は蒼星石の位置より1mほど離れてしまった。
「雑誌、取ってきて」
「は?嫌ですよ」
蒼星石に体の力を抜ききって、動く気配は微塵もない。
対して、負けず嫌いの性格が出てしまった翠星石は謝ることもせず、蒼星石を睨む。
「君が飛ばしたんでしょ?君が取るべきだよ」
「嫌だって言ってるです。…犬なんだから蒼星石が取ればいいんですよ」
「………」
「そうですよ。『取って来い』するのは犬の仕事です」
「翠星石。本気で怒るよ?」
普段は仲の良い彼女達だが、蒼星石の方は専ら道徳心が強く、遊びと言えど物を大事にしないことを良しとはしない。
「躾のなってない犬です」
「……──もう、いいよ」
話し出す前に間があったのはそこで深くため息を吐いたから。
蒼星石は立ち上がると雑誌を拾い上げ、ドアノブに手をかけた。
「ちょっ…待ちやがれです!」
ドアノブを捻り、将にドアを開けようとしたところで慌ててその背中に飛びつく。
>>71 「どこ行きやがるですか!」
「言ったでしょ?本気で怒るよ、って」
「…っ!約束は!?」
「無効」
約束というのは、普段から部活動で忙しい二人の休みが久々に重なったので、今日はずっと一緒に居ようね、と言ったことだ。
「裏切り者!」
「君が最初にふざけたこと言い出したんでしょ?」
「貴女が…っ!」
蒼星石の腰を抱く翠星石の腕に力がこもる。
「貴女が、ずっと雑誌読んでたから…」
蒼星石は腰の腕を緩めさせ、振り返ると片割れの前に片膝を付いた。
「泣かないでよ…」
「寂しかったんです…」
二人でゆっくりすることなんて、本当に久々なのに。蒼星石は翠星石を見ようともせず、ずっと雑誌とにらめっこしていた。
蒼星石は翠星石の頭を抱き抱えるとポンポンと宥めるように頭を叩いた。
>>72 「だから…構って欲しかったんです…!」
「こうやって一緒にいるじゃない」
「でも、ずっと雑誌ばっかりじゃなかったですか!」
「翠星石…」
蒼星石にとっては、一緒にいること自体が充実したことで。例えお互い何をしていようとも楽しい時間であった。
しかし、比較的精神年齢の低い翠星石にとっては、一緒にいるのなら同じことをしたいと思っている。
そこに食い違いができた。それだけの話であった。「ごめんね…」
耳元にそう囁きながら口付けを送りながら、ぼろぼろ溢れる涙を指先で拭ってやる。
「愛されてない気がします…」
「僕は愛情表現に乏しいんだよ。どうしていいか分からないんだ…」
翠星石の顔中にキスを送っておきながら、何が乏しいものかと問いたくもなるが、事実、自分ではそう思っていた。
「なら…」
次に翠星石から蒼星石の頬へキスが送られた。
翠星石の瞳には特有の熱っぽさが浮かんでおり、蒼星石は誘われるままに翠星石を抱き上げた。
>>74 健全な光の射し込む寝室には不似合いである妖艶な空気が充満していた。
「っあ…も、ぁぁっ!…そうせ…っ!」
「まだ、だよ…」
快楽に翻弄され跳ねる翠星石の首筋にギリと食い込むほど歯を立てる。
「っやぁぁ!…あ、あ、っ…っい、たっ」
もうどのくらいこうしているのか分からない。分かるのはただただ早く満たされたいということ。
言葉をいくら重ねるより、体を重ねる方が翠星石には分かりやすい愛情表現であった。
「そうせ、っ…っあああっ…もう、…はやくっ…」
「早く、…何…?」
できるだけ低い声でそう囁くとそれにも反応して体が大きく波打つのが分かった。
「あ、あっ…や、イジ、ワる…しない、でぇ…」
「ほら…」
中の指のスピードを上げてやると、甘い声が一層強くなる。
「ひぃっ、あぁっ…も、もぅ…イ、イき…」
「何?」
「イ、か、せて…くださ、」
その言葉にうっすらと嫌な笑みを浮かべて、指を一本増やし、スピードを更にあげる。
きゅうきゅうと締め付けてきて絶頂までのカウントダウンを始める。
「っく…ひゃぁ…っアアアアアァァァっ!」
ビクンビクンと痙攣のように体を跳ねさせ、翠星石は絶頂に達した。
>>75 はぁ、と首筋を撫でながら深くため息を吐く翠星石を振り返る。
今は汗だなんだとべたべたになってしまった体を清めるために浴槽に浸かっている。
「どうしたの?」
「やっぱり蒼星石は犬です」
「え?またその話?だから僕は人間…」
「そうじゃなくて!」
翠星石が言うにはこうだ。
先日、真紅と週刊誌を読んでいたところ「犬よりか猫よりか」という何気ない記事を見たという。
凛とした態度にしっかりと芯の通った性格が蒼星石っぽいと思いそう言ったらしい。
「すぐ噛みつくですし…、跡になってませんか?」
行為の最中。ほんの稀ではあるが、自分の欲望を押さえるために首筋に噛みつくことがある。
ほほう、それなら。と蒼星石はにやりと笑う。
「なら君は猫だね」
「は?私は人間ですよ」
「天の邪鬼な性格に躾の行き届いてない態度…極めつけに」
蒼星石は後ろを向いて、翠星石に背中を見せた。
「……っ!」
「引っ掻き傷」
蒼星石のそれよりも高確率で付くその傷跡。
絶頂に達するまでもがくために、蒼星石の背中にくっきりと残る細い痕。
「君は猫、僕は犬。まぁ、いいんじゃない?そんな関係でも」
首筋の痕を慰めるようにペロリと舐めあげると、翠星石から再び甘い声が上がる。
二人の夜はまだまだこれから。
http://rozeen.rdy.jp/cgi/sym/1215790774.jpeg 終わり
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 00:50:37.43 ID:UWmVTrEYO
終わりですー
だー、久々に書いた
エロ要素少なくてすまんこ
一回ハードなエロエロ書いてみたいが乏しいエロ能力では、ふたなりにしないとエロくできない
しかし、ふたなりは許せない狭間に揺れている
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 01:18:19.20 ID:LQrD4xo8O
ほ
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 01:21:46.54 ID:U0Sin9w3O
GJすぎです!
最近、蒼翠なかったから感動です!
素晴らしい!絵も上手いWWやっぱ双子はいいですね!
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/12(土) 02:13:41.39 ID:kUdVJjqHO
保守。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:
GJ
犬猫蒼翠萌えた