20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:52:36.11 ID:BrkImdWYO
( ∵)「……」
封筒を裏返す。何も書かれてはいない。
ただ、その膨らみを考えるに、中身は入っているようだった。
从 ゚∀从「開けてみようぜ」
何の躊躇いもなく、ハインが言う。
封はされていない。
自分が封筒を逆さまにすると、
ストン、と三つ折りにされた紙が滑り落ちて来た。
開くと、それは縦書きの便箋で、何行か文章が綴られていた。
『もうダメです。
精神的に耐えられません。
さようなら』
( ∵)「……」
どうしたものか。
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:55:16.25 ID:BrkImdWYO
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
('A`)「しっかしまぁ、随分と軽い遺書だな」
場所は移って部室。
遺書発見の報を受けた部長、副部長と部室で集合し、再びその文面に目を通し、
部長が言い放ったその一言に、自分は内心賛同した。
「軽い」。つまり、確かに文章は遺書でありながら、遺書として何かが欠落している。
どこか投げやりな感じが否めないからか。
('A`)「しかしまぁ、逆にどーでも良くなってしまった故に、
投げやりな文章になってしまった可能性も否定できないか」
左手で顎をさすりながら、部長は呟く。
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:56:16.19 ID:7O2muy9V0
支援
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:56:44.40 ID:BrkImdWYO
从 ゚∀从「やべぇ……部長がまともな思考してる……」
ハインがそれを見て若干引く。
確かに、今の発言はどちらかといえば副部長の口から語られる感じのモノだ。
('A`)「まぁ、放っておく訳にも行かないよな。
もしかすれば本校の生徒が書いたかもしれんし」
失敬な、と憤慨した後、遺書をピラピラと揺らしながら、部長が言う。
川 ゚ -゚)「イタズラの可能性もありますが。
そもそも誰が書いたのかすら不明ですからね。
その可能性は限りなく低いでしょう」
('A`)「それならそれで構わないじゃないか。
先生方にこんな文章の、しかも道端に落ちていた遺書に対応しろと言っても期待はもてないし、
一応は遺書が本気で、かつ本校の生徒が書いたかもしれないという可能性があるのなら、
俺の正義感は黙っちゃいられないな」
最後の一文を除けば、至って正論である。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:57:06.53 ID:BrkImdWYO
从 ゚∀从「でもさ」
テーブルにもたれ掛かりながら、ハインが言った。
从 ゚∀从「誰が書いたのかさっぱり分からないんだろ?
どうすんだよ?何が出来んの?」
確かに。
('A`)「出来るか出来ないかじゃない。
やれるかやれないかだ!」
从 ゚∀从「……」
川 ゚ -゚)「……」
( ∵)「……」
('A`)「あれ?今俺いいこと言わなかった?」
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:58:05.80 ID:BrkImdWYO
川 ゚ -゚)「出来るとやれるは同意義語でしょう。
やるかやらないか、じゃないのですか?」
('A`)「……細かいところは気にしないでくれたまえ」
川 ゚ -゚)「心意気は結構ですが、具体的な案を出すということはされないのですか?」
('A`)「そりゃ手は一つしかないだろ」
从 ゚∀从「何すんだ?」
('A`)「自殺できそうな場所に張り込むのさ!」
( ∵)「……」
何だって?
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:58:29.67 ID:BrkImdWYO
川 ゚ -゚)「……本気ですか」
('A`)「無論だとも!
一度やってみたかったんだよ、張り込み!」
もはや手段が目的になってしまっている気がする。
川 ゚ -゚)「もし本気で自殺しようとしている生徒がいるとするなら、
その生徒に殴られても文句は言えない発言ですね」
まったくだ。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/01(日) 23:59:31.34 ID:BrkImdWYO
('A`)「しかしやらないよりはましだろう?
張り込みすることによって、誰かの自殺を食い止められるかもしれないのもまた事実だ」
从 ゚∀从「いいんじゃねーの、どうせ暇だし」
ハインがあくびをしながら言う。
そういう理屈ではないだろう、と内心突っ込む。
('A`)「なら決定だ。
明日から早速張り込みを行う!」
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:01:15.36 ID:07bcR+P+O
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
从 ゚∀从「退屈だな」
( ∵)「……」
学校の屋上。
校内からそこに通じている出入口。
屋上に置かれた立方体のようなその上で、ハインは欠伸混じりに呟きながら自分の隣で背伸びをした。
あの時部長の案に「面白そう」と賛同し、結果自分達が実行に移さなければならなくなったのは誰のせいなのかと問い質してやりたがったが、
毎度のことながら止めた。
从 ゚∀从「飯食うと眠くなんだよなー」
既に空になった弁当箱を脇に退け、
彼女は伸ばした背を更に湾曲させて、後ろに倒れ込む。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:02:52.92 ID:07bcR+P+O
从 ゚∀从「しかしまぁ、自殺だなんて何でしたくなんのかねぇ」
空を仰ぎながら、ハインはまるで理解出来ないと言いたげに呟いた。
彼女が死にそうになるのは、退屈過ぎるか空腹になるかのどちらかの場合のみなのだろう。
別に思い返すと死にたくなるよう赤っ恥な思い出や大失態が無いわけではないのだろうが、それらはあくまで一般的に考えて赤っ恥な思い出や大失態であり、
彼女自身にとっては取るに足らない出来事として脳みその奥深くに埋葬されているのだ。
うじうじと悩める子羊から見れば羨ましく見える性格である。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:03:31.82 ID:07bcR+P+O
尤も、自分と性格を交換するかと問われれば、NOと即答する。
ポジティブも突き詰めれば甚だしく迷惑なものだ。
そう思い、彼女を一瞥すると、
从 ー∀从「Zzz……」
既に寝息を立てていた。
天真爛漫とは素晴らしいオブラートに包まれた四文字熟語だと思う。
結局言い出しっぺはめくるめく夢の世界に逃避し、残った自分は誰もいない屋上を虚しく眺めるのみである。
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:04:09.49 ID:Hp0WJVwBO
支援
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:05:36.57 ID:07bcR+P+O
−−何で自殺なんかしたくなんのかねぇ−−
( ∵)「……」
まだ本当に自殺したい人間がいるとは決まってはいないが、
理由なんてゴロゴロと転がっているものだ、と、既に夢の世界へ旅立ったハインに心の中で答える。
記憶から消し去ってしまいたいほど猛烈に嫌な思い出を思い出すと、
頭を掻きむしり、奇声を発し、ベッドと枕の間に頭を突っ込み、手足を無意味にバタバタと動かし悶絶するなんてことは、
よくある人にはよくあることで、
そうやって自分の嫌な過去をいつまでも引きずって行く人種には、「絶望した!自分自身に絶望した!」なんて思うことは日常茶飯事だ。
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:06:15.09 ID:07bcR+P+O
それが軽度ならば思うだけで済むが、中にはその思い出や抱え込むものが想像を絶したり、
または自身の根が弱い為に本気で死を考える奴がいる。
でなければ自殺者など生まれない。
今回の事も十中八九悪戯であるにしろ、その可能性もあるのだ。
なまじあの感覚を経験し理解できるだけに、ハインのようにすやすやと眠る気にはなれなかった。
悪戯ならそれでいい。
下校時間になっても誰も現れず、騙されたと理解出来たなら、
あるいは自殺を思い止まりあそこに封筒を投げ捨てたなら、
誰かが誰にも止められずこんな柵も何も無いちんけな屋上から命を絶つよりはよほど良い。
( ∵)「……」
……何か恰好良くない?
そんな長い思考の末に、自分に惚れていた時だった。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:07:01.67 ID:07bcR+P+O
「待てコラァァァァァァァ!!」
自分の真下、屋上への階段から、聞き覚えのある声が聞こえた。
次の瞬間には金属製のドアが勢いよく開き、二人の人影が踊り出て来た。
一人は見知らぬ男子生徒で、ドアを開けたのも彼。
屋上に来るなり端へと移動した。
(;'A`)「待てと言っているだろう!」
もう一人はご存知我らが部長。
どうやら言葉から察するに彼を追って来たようだ。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:07:50.43 ID:07bcR+P+O
(;-_-)「来るなよ!」
見知らぬ男子生徒は屋上の縁に足を掛けて、近付こうとする部長を牽制した。
その行動で大体の状況は把握出来た。
自分は屈み、男子生徒から身を隠す。
(;'A`)「馬鹿な、真似は、止めろ」
恰好良い台詞とは裏腹に、部長は膝に両手をついて肩を揺らして荒い呼吸をしていた。
どうやら男子生徒は部長の張り込み場所で自殺をしようとしていたらしい。
そこを部長に止められて、ここまで追いかけっこしてきたわけだ。
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:09:07.67 ID:07bcR+P+O
(;'A`)「自分の、命を、粗末に……オェ……」
説得の途中でえずいたきり、部長は喋らなくなった。
完全にバテてんじゃねーか。
(;-_-)「……お、思い知らせてやるんだ……」
男子生徒はそんな情けない彼を見つつ、縁に踏み出した足を更に進める。
(-_-)「あいつらに……自分たちが何をしたのか……」
……これはヤバイ。
男子生徒が、自身が背にしている何もない空間を振り返って見たのを見計らって、自分は身を起こして立方体から飛び降りた。
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:09:41.97 ID:07bcR+P+O
流石に音を立てずに着地するのは不可能で、男子生徒と目が合ってしまう。
(;-_-)「……ッ……!」
もう一度彼は背後を顧みて、学生服のポケットから何かを取り出そうとした。
(;-_-)「あれ……無い……?
……! あ、穴が空いてる!?」
男子生徒は少しばかり焦りの色を見せてポケットを探り、その手が服を貫通していることに気付く。
( ∵)「……」
その捜し物ならうちの部室にあるぞと内心つぶやきながら、自分は彼との距離を詰めた。
(;-_-)「……く、来るなよっ!」
言いつつ彼は後ずさる。
しかし、その足が踏みしめる足場は、無かった。
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:12:33.05 ID:07bcR+P+O
(;-_-)「うわあっ!」
( ∵)「!」
身体を大きく傾かせ、もはや重心を戻せない恰好になった彼に、自分は手を伸ばした。
彼の襟に手がかかる。
それをしっかりと掴み、自分は余り自慢できない程度の、ありったけの腕力で引っ張った。
……あら不思議。
襟を掴んだその手が作用点になって、自分と彼の位置関係が逆転する。
それによって生じた遠心力が、自分の手から彼の襟首を引き剥がす。
( ∵)「……」
自分は校舎の屋上から数十センチ脇の空中にゆっくりと飛び出した。
勘弁してくれよ。
ギャグアニメじゃないんだぞ。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:13:57.66 ID:07bcR+P+O
浮遊したのは一瞬きりで、重力と体重に比例した加速度で落下を始める。
目の前の屋上にへたりこんでこちらを見つめる男子生徒と、本格的に吐いてしまっている部長、
そして目覚めの背伸びをするアホを視界に捉えた。
( ∵)「……」
何てこったい。
正に予想外DEATH、などと言っている場合では無い。
この高さからコンクリートの地面に落ちたら、運がよくて下半身不随である。
看護婦さんに一生下のお世話をしてもらえると言えば聞こえが良いが、
看護婦さんがどんな人か見当もつかないギャンブルなんてそんなのは真っ平御免だ。
しかしながら空中にいる自分に為す術は無く、加速した自分の身体はグングンと地面に迫る。
あー、神様。
どうか綺麗な看護婦さんのいる病院に生きた状態で搬送されますように。
心の中で切に願い、自分は落下した。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:14:25.51 ID:07bcR+P+O
ボフン
……あれ?
落下の衝撃はそれなりに強かったが、思っていたよりは軽かった。
固く閉じていた目を開ける。
自分の落下した屋上が見えた。
どうやら逝ってしまった訳ではなさそうだ。
川 ゚ -゚)「まさか君が落ちてくるとは思わなかったな」
淡麗な声と共に視界に入ってきたのは、逆さまの副部長の顔だった。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:16:08.66 ID:07bcR+P+O
川 ゚ -゚)「全く、本当に自殺志願者がいたことといい、予想外が多いな、今日は」
屋上を見上げ、やれやれと呟く彼女を見ながら起き上がる。
傍らには何故かモナー先生がいた。
川 ゚ -゚)「万が一の為にマットを引っ張ってきていて正解だったな」
副部長はそういって笑った。
ああ、アンタ最高だよ。
俺の命の恩人だよ。
上でゲロゲロ吐いてる役立たずから部長の座を奪っても誰も文句言わないよ。
心の中で副部長に賛辞の言葉を送りつつ、
とりあえず墓には行かなくて済んだことに自分は安堵の息を吐いた。
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:16:27.27 ID:07bcR+P+O
自分と副部長、そして何故かマットを運ぶのを手伝っていた( ´∀`)が一緒に屋上に行くと、
彼は未だにへたりこんだままで、ハインがその脇で彼を慰めていた。
部長?涙目で何か言ってたけど知ったことじゃあない。
胃液が枯れるまで吐いてればいい。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:17:02.17 ID:07bcR+P+O
从 ゚∀从「ほら、アイツ生きてるから泣き止めって」
ハインは泣いている男子生徒の肩を叩き、自分の方向を指差し、彼を慰めていた。
从 ゚∀从「な。アイツちゃんと足あるから。
お前呪ったりしないから」
お前にはデリカシーがないよな。
むしろ足と引き換えにデリカシーを身につけろ。
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:18:19.05 ID:07bcR+P+O
(;´∀`)「よく状況が飲み込めないモナが……、彼が?」
( ´∀`)の抽象的な問いに、副部長が頷いて肯定の意を示す。
从 ゚∀从「つーかさ、何で自殺しようとしたのさ。
ヒッキー先輩」
ようやく鳴咽が収まり始めた男子生徒は、どうやらヒッキーと言うらしい。
「先輩」が付くあたり、2、3年生だろう。
ハインは彼を知っていたようだ。
というか、大抵の生徒の名前を学年問わず把握している。
情報源は不明である。
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:18:51.20 ID:07bcR+P+O
ヒッキー君は正座に直り、どちらかと言えばショt(ryの顔を袖で拭い、
鼻を啜って、小声で話し始めた。
(-_-)「……チョコレートを貰ったんだ」
从 ゚∀从「チョコレート?」
(-_-)「バレンタインの日に、下駄箱の中に包装されたチョコレートがあったんだ」
从 ゚∀从「ほうほう。それで?」
興味津々だ、といった顔を取り繕いもせず、ハインは話を急かす。
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:19:51.26 ID:07bcR+P+O
(-_-)「包装の中に手紙が入っていて、それには「去年から好きでした。
付き合ってください。答えは昼休みに体育館の西で待っています」って書いてあった」
从 ゚∀从「で、行ったわけだ」
ヒッキー君は頷いて、続ける。
(-_-)「でも、誰も来なかった」
(-_-)「日にちが書いてなかったから、今日じゃないのかも知れない、日にちは書き忘れたんだって思った。」
それから、彼は律義に毎日昼休みに体育館の西に向かったらしい。
(-_-)「でも結局誰も来ないまま……。
一月が経って、どこかですれ違いでもしたのかなって思い始めていたら……」
以下は彼が嗚咽しながら語った部分なので、整理した。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:20:14.68 ID:07bcR+P+O
結論。
チョコレートは彼のクラスメートが仕掛けた悪戯で、彼の性格を逆手に取り、
毎日体育館に通う彼を陰ながら笑っていたらしい。
仕掛けたクラスメートの一人が口を滑らせ、彼はそれを知ることとなってしまった。
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:20:38.13 ID:07bcR+P+O
(-_-)「断ろうと思ったんだ」
彼は俯き、時折涙を拭いながら言う。
(-_-)「好きな人がいるから、ごめんなさいって。
そうしたら……」
仕掛けたクラスメートの一人が、好きな人だった。
それを搾り出すように言って、彼は再び黙り込んだ。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:21:13.64 ID:07bcR+P+O
( ∵)「……」
……何という。
イタズラのレベルを遥かに超えている。
精神的には自殺したくなるのもよく分かる。
新たな学校生活の初日にクラスメートを病院送りにした自分に重なる部分がある。
誰もが彼にかける言葉を見つけられず、気まずい沈黙が漂った、その時。
('A`)「良かったじゃないか」
意外を通り越してとんでもない発言をしたのは、いつの間にか復活した部長だった。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:22:03.36 ID:07bcR+P+O
('A`)「好きな人がそんな最低なアホだったと、その気持ちを声にする前に分かって良かったじゃないか」
何故か力強く立った部長は、語気を強めて言う。
(#'A`)「しかしな!それくらいのことで自殺を考えるなどお前はソイツ以上にアホだ!」
ヒッキー君は部長を見上げる。
っていうかどうしたんだ部長。
顔が真っ赤ですよ。鼻息荒すぎますよ。
興奮してるの?死ぬの?
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:22:19.38 ID:07bcR+P+O
(#'A`)「いいか!俺なんかなぁ!」
この後十数分間、自分達は( ´∀`)が「予鈴が鳴るモナよ……」と言うまで、
部長の想像を絶する「死にたくなった思い出ランキング」を聞かされる羽目になった。
あえて抜粋して語ることはしない。
あまりにも哀れすぎて語る気分になれない。
あの「びっくりするほどユートピア!」がぶっちぎりのランク外だったと言えば、
その哀れさが理解できることだろう。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:22:53.38 ID:07bcR+P+O
从*゚∀从「……!……!」
ハインは抱腹絶倒し、呼吸困難に陥っている。
余程、人の不幸が面白いらしい。
川 ゚ -゚)「……」
副部長はやれやれ、と言った様子で平然としている。
既に聞いたことがあるのだろう。
(#'A`)「いいか!これぐらいになってもな、まだ俺は自殺なんて一度も考えたことはないんだ!!
それしきのことでせっかく授かった命を無駄にすんな!」
スゲーよ。アンタスゲーよ。見なおしたよ部長。
ヒッキーを指差し、毅然と立ちながら言い放った部長に、自分は思わず拍手をしたくなった。
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:23:09.14 ID:07bcR+P+O
部長はその後いきなり泣き出した。
やっぱり頭がおかしくなったのかと思ったら、副部長いわく、
川 ゚ -゚)「たまにある。自分で暴露しておいて辛くなるらしい」
だそうだ。
ともあれ、一連の騒動は一応の解決を見たのだった。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:24:11.87 ID:07bcR+P+O
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(-_-)「僕は、下らないことで馬鹿な行動にでたのかな……」
屋上から下りる階段の途中で、ヒッキー先輩は、自嘲するようにそう言った。
部長のアドバイスがマイナスに作用しているようだ。
あれだけの恥を曝したというのに逆効果とは、合掌。
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:25:32.33 ID:07bcR+P+O
从 ゚∀从「別に良いんじゃないの?」
が、そんな彼に対し、その前を進むハインが相変わらずのお気楽トーンでそう言った。
从 ゚∀从「生きてるんだし。
悪いことが起きても、めげずに生きてりゃ何か良いことだってあるある」
(-_-)「……そう、かな」
从 ゚∀从「そうそう」
(-_-)「……ありがとう」
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:26:52.53 ID:btfM/Is70
しえん
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:28:40.46 ID:07bcR+P+O
幸い、ヒッキー先輩の自殺騒動は学校側の大事にしたくないという思惑も相まって、
大した騒ぎにならず、学校の中でも知っている人数は両手で足りるほどに収まった。
ただ、何故か数人の二年生の恥ずかしい写真が学校の掲示板に拡大されて貼られていたらしいが、
犯人は見つかっていない。
無論、自分はその犯人が誰かなんて知らない。
部室にあるパソコンに画像修正ソフトとその写真データがあるなんて知らない。
結局、学校には、自業自得な輩と、ほんの一部の生徒を除き、騒動による影響は無かった。
……そう、「ほんの一部の生徒」は被害を被ったのだ。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:29:10.48 ID:07bcR+P+O
騒動の翌日。
「自殺……飛び降り……」
( ∵)「……」
自分が飛び降りる羽目になったことだけは何故か学校内にしっかりと伝聞し、
「自殺しようとしていたらしい」とのある意味正しい尾ヒレが付いて、クラス中の知るところとなっていた。
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:30:05.50 ID:07bcR+P+O
……ああ、久しぶりだな、この状況。
明らかに自分をネタにして笑っている奴らの笑い声や突き刺さるような視線が懐かしい。
頼むからわざわざ隣の隣の隣の隣のクラスから見に来るなよ。
从 ゚∀从「……」
( ∵)「……」
何をしに来た。
从 ゚∀从b「ガンバ!」
( ∵)「……死ね」
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:30:32.87 ID:07bcR+P+O
……ああ、神様。
こんな日常は望んでません。
そんな自分の心の叫びは、誰にも聞こえはしなかった。
( ∵)ビコーズの災難のようです 第五話 おしまい
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:31:28.32 ID:qdPas+sVO
62 :
◆L66fmP/Ue6 :2008/06/02(月) 00:37:16.19 ID:07bcR+P+O
以上、お付き合いありがとうございました。
特に、代理、前スレ提供、支援の方々には感謝です。
突然ですが、しばらく休止しまず。
理由は諸事情ありますが、とにかく今、作品を投下するのが色んな意味で難しい状況です。
いつ戻るか未定です。
一週間後、とか早くはないし、また数年後とか遅くはないとは思いますが、期間は未定です。
復帰できても、またこの作品の続きを投下するかすら分かりません。
こんな作品でも読んでくださった方には、分かりませんばかりで申し訳ないですが、許してくだせぇ。
まだちょっと起きてますので何かあったらどうぞ。
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:38:55.37 ID:+5s1GwiK0
なんか病気してるんだって?
体が資本だからな お大事に
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:43:48.53 ID:jw5WpkI80
乙。期待してたんだが・・・気長に待つ
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:45:50.96 ID:btfM/Is70
乙
投下できるようになったらまた戻ってきてくれよ
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:53:18.46 ID:HyuTalI0O
えええええ!!続きなしか?読むのほとんどないのに
まあ乙。お大事に
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 00:53:49.93 ID:07bcR+P+O
>>63-65 期待に添えられずすいません。
休止の理由は伏せさせてください。
早く戻ってこれるよう、努力します。
では、また。
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/06/02(月) 01:09:53.42 ID:aKbOSn9u0
あるぇー
これにあんま支援つかないのか
戻ってきてほしいねぇ
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。: