翠星石が家出をするお話

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
「お前が悪いんだろっ」
「それはこっちの台詞ですっ」
閑静な住宅街の昼下がり、桜田家のリビングに怒声が響き渡っていた。
「大体、こんな程度の事で怒りすぎなんだよ。雛苺だって僕だって、こんなに謝ってるだろ」
「こんな程度……お前は本気で言っているんですか」
翠星石はジュンを睨む、二人の傍らにはこの騒動の元である割れた鉢。
そして周辺に散乱する土と、倒れてしまっている花があった。
「うぅ……ごめんなさいなの」
「もういいよ雛苺、十分僕たちは謝っただろ。コイツには許す気なんて無いんだよ」
翠星石は黙って二人を睨みつけている。
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:14:24.95 ID:Qi7J0zjO0
つづき
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:14:31.55 ID:kQqTBAkV0
isoでよこせ
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:18:13.46 ID:sMqv0Mrw0
出家って誤読した
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:18:31.74 ID:0R+3YhGU0
「確かに僕と雛苺がふざけてて割ったのは悪かったよ……
 でもどれだけ謝っても許さないってのは酷いんじゃないのか」
「お前は……翠星石がどれだけこの花を大事にしていたのか分からんのですか」
「誰もそんなこと言ってないだろ。だからこそあれだけ謝ったんだ」
「散々注意したはずですっ。割らないように気をつけてってあれだけ……」
翠星石の両目には涙がたまっていた。

近くでテレビを見ていた真紅も、いつもとは違う雰囲気に少し躊躇い、テレビを消して見守っている。
ジュンと翠星石が口喧嘩をすることは決して珍しい事ではない。
だが、大抵はどちらかが折れて大事になる前に終わるのだ。
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:23:06.24 ID:0R+3YhGU0
契約した媒介とドールはとても近い存在になる。
心を全て読めるわけではないが、時には相手の考えが分かるときがある。
翠星石には分かっていた。
自分にとってこの花がどれだけ大切なものなのか、ジュンは少しも理解してもらえていない事に。
それが無性に悲しかった。
「翠星石、ごめんなさい。許して欲しいの」
沈黙に耐え切れなくなったのか、雛苺は再び謝った。
「そもそもお前がいけないのです。ジュン上りーとかふざけた事を鉢の傍でやるからっ」
「おい、何で雛苺だけ責めるんだよ。僕が雛苺を降ろしたのが鉢の傍だったから、ってのも原因だろ」
「なんでチビ苺を庇うのですかっ。お前はいつもの様に軽くチビ苺をあしらっていただけですっ」
「それでも、コイツ一人のせいにするのは間違えてるって言ってるんだ。だから僕も一緒に謝っていたんだろ」
二人が暑くなりすぎているのを雛苺も真紅も感じ取っていた。このままでは悪い方向に向かってしまう。
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:27:42.89 ID:0R+3YhGU0
「二人とも…」
雛苺は何とか落ち着いてもらおうと声を発するが、それはこの場では逆効果であった。
「お前は黙っているですっ。……よく分かったですよチビ人間、
お前は私の事をちっとも理解してくれていないです」
「何だよそれ、口に出さなきゃ分からない事だってあるだろ。はっきり言えよ」
「全て言葉で言わなきゃいけないなんて本当に馬鹿ですぅ、
こんなマスターを持った翠星石はとんだ不幸者です……」
「待てよっ、僕は誰も好き好んでお前と契約したわけじゃないぞ。そんなに嫌だったらココから」

「ジュン!」

真紅は途端に大声を出してジュンを睨んだ。
部屋が真紅の一言によって静まり返る。
部屋には雛苺の嗚咽の音だけが響いていた。
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:31:30.73 ID:0R+3YhGU0
「……よく分かったですよ。チビ人間、それがお前の本当の気持ちなのですね。」
しばらくして、震えた声で翠星石がそう言った。
「翠星石、貴女も分かってるでしょう。ジュンがそんな事を本気で言うはずが無いわ」
「真紅には聞いていないですっ。……もういいのですよ、長らく世話になったです」
そう言うと翠星石は走って部屋から出て行く、その目からは大粒の涙が流れていた。
「いやぁ、まって翠星石ぃ」雛苺は泣き崩れるが、もう翠星石はリビングには居なかった。
「待ちなさい、翠星石!……ジュン、何をしているの。追いなさいっ」
「……僕は、悪くない……」
そう言い放ったジュンは、真紅に怒鳴られることを覚悟した。
しかし、真紅は悲しそうな目でジュンを一瞥し「もういいわ」と言うと、
翠星石を追って二階のジュンの部屋へ向かった。
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:36:23.69 ID:0R+3YhGU0

「落ち着きなさい、翠星石。今出て行ってどうなるの、
 貴女にとってあの花がどれだけ大切か。もう一度話し合って……」
「いいのですよ真紅。翠星石が悪かったのです……鉢が割れたくらいであんなに怒って」
「違うわっ、ジュンだって説明すればきっと分かる。だからもう一度」
「チビ苺……雛苺に、ごめんなさい。と伝えて欲しいのです。」
そう言うと、真紅の制止を振り切るように窓を開け。
鞄に乗って飛び出していった。
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:41:33.85 ID:0R+3YhGU0
真紅が俯き、階段を降りてくると、ジュンと雛苺は割ってしまった鉢を片付け。
花を新しい鉢に植えなおしていた。
「……アイツは?」
「出て行ったわ」
「そうか」
「それだけなの?」
「どうせすぐ戻ってくる、それにアイツの行く場所くらい分かるさ。一葉さんの所だろ」
「すぐ戻ってくる、本当にそうかしら」
「お互い頭を冷やせば誤解も解けるよ」
「誤解?あなたはあの子の事を理解しようとしていないわ、あの子が意味も無く許さないなんて、言うと思うの」
しばしの沈黙、雛苺は俯いたまま花を見つめている。
真紅は窓の外の変化に気付き、そちらに目をやり表情を曇らせる。
ザーと言う音と共に大粒の水が窓に当たっては弾けていた。
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:46:20.78 ID:0R+3YhGU0
運が悪い事に、雨が降ってきたようだ。
「何だよ……お前まで、一体この花が何だって言うんだ」
「いいわ、教えてあげる。その花は、ソバの花よ。」
「ソバ……?なんだよ、結局食い意地が張ってただけじゃないか」
ジュンは鼻で笑いながらそう言い放った。
真紅はそれを無視して続ける。
「そして……簡単に言うとね、それは蒼星石の形見…といえばいいのかしら」
「えっ……」
その瞬間ジュンは目を見開いて唖然とする。
「時々あの子が薔薇屋敷に出かけているのは知っているでしょう……?
 その花はね、あの屋敷の庭園に一輪だけ植えてあった。蒼星石が植え、世話をしていた花なのよ…」
「そんな、だってあいつそんな事一言も」
「えぇ……あの子は言わなかった、きっと照れくさかったのね。
 けれど、とても大切に育てていたことは貴方も知っているでしょう。」
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:51:50.98 ID:0R+3YhGU0
ジュンは黙って立ち上がると「ちょっと出かけてくる」と言って足早に部屋を出た。
それを見送ると真紅は、雛苺に向き直る。
「貴女も、元気を出しなさい。翠星石はこんなあなたを見ても喜ばないわ」
「ヒナのせいなの……ヒナが割っちゃったからジュンと翠星石は」
小さな手を結んで震える妹に、真紅は頭を撫でながら言った。
「……心配しなくても平気よ。翠星石は貴女の事を嫌いになったりしないわ」
はっと顔を上げる雛苺に、真紅は優しく微笑んだ。
「貴女の考えそうな事ね……安心なさい。翠星石は言っていたわ。貴女に、ごめんなさいと伝えて欲しいって」
雛苺が顔を歪め、泣きながら抱きついてきた。
「大丈夫よ、ジュンが連れて帰ってきてくれる。待ちましょう、それまで」
雛苺の頭を撫でながら、真紅はそう言った。
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:54:01.61 ID:F8fN2DGw0
shien
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/24(土) 23:57:32.75 ID:0R+3YhGU0
桜田家を飛び出した翠星石は、ジュンの言った通り一葉の家を目指して飛んでいた。
だが、翠星石にとって手痛い誤算が発生していた、雨である。
徐々に強くなっていく雨に、翠星石は顔をしかめながら辺りを見渡した。

「ホント……ついてないですぅ」
そういいながら、高度を落としていく。
それほど大きくない公園に降り立つと、屋根つきの遊具に鞄を引きずりながら入っていく。
「こんな雨じゃ、鞄の中まで水が入ってきてしまうですよ……」
そう言うと遊具の隅に腰を下ろして膝を抱えた。
雨の日に公園に来る人間なんて要るわけが無い、そう思い外を眺めていた。
思い出すことは、先ほどのやり取り……確かに自分は大人気なかったのかもしれない。
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:01:25.76 ID:hrQWbVJm0
ジュンに説明もせずに理解をしてもらおうとした自分に、無理があったのではないか。
あれだけ謝っていた雛苺も傷つけてしまった。
しかし、ジュンにだけは自分の気持ちを分かっていて欲しかった。それは我侭なのだろうか?
考えれば考えるほど、自己嫌悪に陥ってしまう自分を止める事は出来なかった。

どれ位そうしていただろうか、外を見るとあれだけ酷く降っていた雨が止んでいる。
恐らく夕立だったのだろう。そう思い、立ち上がるとドレスについた汚れを手で払った。
「早くおじじの家に言って紅茶でもしばくですっ」
自分を元気付けるようにそう言うと、翠星石は再び鞄に乗り薔薇屋敷を目指した。
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:07:11.32 ID:hrQWbVJm0
程なく薔薇屋敷に着いた翠星石は、大きな窓の下に降り立ち、窓を叩こうとした。
「おじ……」
そこまで声を発した翠星石は目を見開いた。
中では一葉とジュンが紅茶を飲んでいる、
雨宿りをしている間に先を越されてしまったのだ。
ジュンはタオルを首にかけ、時折愛想笑いを浮かべながら紅茶を飲んでいる。
一葉はというと、最初は談笑しているように見えたが。
話の途中で、慌てるようにジュンを連れて奥の部屋へ行ってしまった。
すぐに物陰に隠れ、中の様子伺っていた翠星石は、出て行こうか。とも考えた。
だが、翠星石の脳裏に先ほどのジュンの言葉がよみがえる「こんな程度の事……」
その瞬間大きく首を横に振ると、翠星石は鞄に乗ってあても無く飛び出した。
自分が意地を張っているのは分かっていたが、
今はどうしてもジュンと会いたくなかった。
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:08:06.67 ID:n/n8TGtK0
いいね
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:09:26.64 ID:jxDHapAEO
てす
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:10:19.18 ID:oWXxaiOf0
長い
1レスは3行でまとめろ
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:11:48.49 ID:hrQWbVJm0
空ははもう赤く染まっている、ジュンは心配そうな顔で夕日を見ると溜息を吐いた。
一葉は車椅子に乗ったまま、ジュンを玄関まで見送りに来ている。
「結局、翠星石は来なかったようだね」
「そうですね……必ずここに来ると思ったんだけどな」
「もし来たとしたら、すぐに連絡をしよう」
「はい、お願いします」
「今日はもう帰りなさい、外はもう暗くなる」
「……でも、もう少し探して帰ります。あいつだって夜一人だなんて……」
「私もこんな足ではなかったら、手伝う事が出来たのだが」
そう言って足を擦る。
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:17:42.33 ID:hrQWbVJm0
「大丈夫、きっと見つかる……君達はこんなに想い合っているのだから。」
「えっ」
呟くように言った一葉に、不思議そうな顔でジュンは聞き返した。
「本気で喧嘩を出来る相手は早々いるものではない、彼女を大切にしてあげなさい」
「……はい。それじゃあ僕は行きます」
駆け出して、徐々に遠ざかるジュンを見て一葉は顔をしかめた。
「もしかしたら、彼がここに居る所を見られたのかも知れないな……
 彼を安易に招き入れたのはやはり得策では無かったか」

一葉は自室に戻ると、窓から外を見る。
先ほどまで真っ赤に染まっていた空は、早くも黒くなり始めていた。
部屋にはアンティークな家具が並んでいて、
そこに自然に溶け込むようにある一つの鞄に近づいた。
手入れがされているのだろう、埃一つ無いその鞄を撫でながら一葉は呟いた。
「何か嫌な予感がする、蒼星石……どうか、あの子達を守ってやってくれ」
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:19:23.91 ID:hrQWbVJm0
>>19
長くて読みづらいか……
ごめん、なんとなく感じてたけど
こんなの書くの初めてでそこまで綺麗に纏められないんだ
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:20:53.70 ID:wMAPpLMHO
小説なんだから長くていいよ
とにかくわっふる
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:20:53.78 ID:n/n8TGtK0
いや長くていいよ
むしろ長い方がいい
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:22:17.48 ID:YkkAbGFv0
>>22
いやいや、3行ってのはただの煽りだろw
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:22:35.12 ID:hrQWbVJm0
翠星石は先ほどの公園に戻り、
先ほどと同じ場所で膝を抱えてジッとしていた。
ジュンはもう帰っただろうか?
それともまだ、自分を待っているだろうか、探してくれているだろうか。
ここに居ると、人に見つかる危険がある。
だが翠星石には、もう行くあては無かった。

翠星石は、今まであまり孤独と言うものを経験した事は無い。
以前は蒼星石と行動を共にし、彼女と離れてからは真紅たちが傍に居たからだ。
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:27:21.98 ID:hrQWbVJm0
真紅から雛苺が孤独に耐え切れず暴走した話を聞いたとき、
翠星石は幼稚だと言って笑い、馬鹿にしたことを思い出した。
今になって雛苺の気持ちが理解し、笑ったことを後悔する。

徐々に暗くなっていく外を見て、より一層の恐怖が彼女を襲った。
震えて涙を流していた翠星石は、さらに恐ろしいことが自分の身を襲っている事に気付いた。
ギ……ギギ……と脚部が音をたている、若干感覚が鈍くなっていた。
「そ、そんな…」
翠星石は思い出した。最後に螺旋を巻いたのは昨日の朝である、本来毎朝巻いているのだが。
今日は朝に巻いてもらわなかった、正確に言うならば巻いてもらえなかった、のである。
螺旋の巻くのは人間でなくても構わない。
いつもならドール同士、そして時折ジュンに巻いていてもらっていた。
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:31:24.55 ID:hrQWbVJm0
そして今朝は、ジュンに巻いて貰おうとチャンスをうかがっていたのである、
しかし、素直に頼めずチェンスを伺っているうちにし喧嘩をして飛び出してしまっていた。

こんな所で停止してしまってはもう二度とジュン達に会えなくなる。
そう思った翠星石は、急いで鞄を持って遊具から飛び出した。
「もう……帰るです。嫌ですけど……あいつらに謝ってやるですよ。」
そう言って鞄に乗り込んで飛ぼうとした。

……しかしその次の瞬間。後ろから強い衝撃を受け、翠星石は前方に吹き飛ばされた。
1メートル程は吹き飛ばされただろうか。
顔から地面に突っ込んでしまい、口の中は砂の味がした。
突然の出来事に驚き、後ろを振リ向くと。
翠星石よりも一回りほど大きい犬が、舌を出して息を整えていた。
「なっ、何ですかお前はっ」
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:36:36.26 ID:hrQWbVJm0
だが、すぐに翠星石は気付く。
犬は首輪をつけて居る、という事は近くに人間が居ると言う事だ。
「こらっ、なにやってるのノタロウ!辞めなさいっ」
人間の怒声が響き渡る。
マズイ、このままでは人間に見つかってしまう。
そう思って鞄に駆け寄ろうとしたところでバランスを崩して倒れこんだ。
飛び立とうとした瞬間の衝撃、さらに打ち所が悪かったのだろうか。
翠星石の螺旋は切れかけて、意識は遠のき始めていた。
駆け寄る足音が聞こえ、そちらに目を向ける。
「だ、大丈夫!?本当に御免なさい、うちの犬が……」
人間は自分の姿をみて、驚いている。
「嘘っ。人形?でも、さっき動いてたじゃ……」
「ジュン……ゴメンなさい……です……」
そう呟くと、翠星石の意識は途絶えた。
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:38:05.25 ID:zNuq53Q7O
ああああああああ翠星石いぃぃぃぃぃぃぃ
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:41:12.66 ID:qK9cn3yn0
いいな
日常の創作も良いもんだ
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:42:37.23 ID:hrQWbVJm0
ジュンが家に着いたのは、すでに午後九時を回っていた。
「ただいま……」
「ジューン!翠星石は居たー?」
雛苺が玄関に駆け寄ってくる。
その後ろから真紅とのりが歩いてきた。
無言で首をふるジュンに、真紅は驚いて訊ねた。
「薔薇屋敷には行ったのでしょう」
「ああ。でも来なかったんだ」
「そう……ならあの子はどこに……」
「僕も探してみたんだけど。どこにも……」
玄関を重苦しい空気が漂う。
「と、とにかく。ジュン君、晩御飯まだでしょう?できてるわよぅ」
俯いた三人をみて、極力明るくのりは言った。
「ごめん、食欲が無いんだ」
「そう……」
「ジュン、明日も探しに行くのでしょう?」真紅は言った。
「ああ、明日は朝から出るから、もう寝るよ」
「だとしたら尚更よ、晩御飯を食べなさい」
「真紅……」
「お腹が減っていて満足に動けるの?明日は私も一緒に探すわ。」
「ヒナも頑張るのっ」
「お姉ちゃんも部活だけど、明日は休んじゃうわっ」
「心配をしているのは貴方だけではないのよ、ジュン」
ジュンは三人の顔を見ると、諦めたように言った。
「分かった、食べるよ。ありがとう、みんな」
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:44:08.81 ID:lt9iFHEt0
翠星石いいいあああああああああああハムハムペロペロナデナデモミモミ
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:46:36.07 ID:hrQWbVJm0
「いい子ね……雛苺、私達はもう寝るわよ。九時を過ぎてしまっているわ」
「うぃー」
二人は階段を上がっていく。
「ジュン君もご飯食べて、お風呂に入ったら早めに寝ましょ」
「うん……」
そしてジュンとのりはリビングに入っていった。

ジュンが自分の部屋に入ったのは、時計の針が十時半を回ったところだった。
すぐにベッドに潜り込んだジュンだったが、なかなか寝付くことが出来ない。
喧嘩をした時の事が頭に纏わりつき、何度も寝返りをうっていた。
「眠れないの?」
ジュンは突然の声に驚き、体を反応させたが、
暗闇の中でも声の主はすぐに分かった。
「ああ、悪い起こしたか?」
「いえ……私も眠れないの」
「そうか、アイツも今頃どこかで怖がってるのかなって思って」
「そうね……」
真紅にはもう翠星石の螺旋が切れている事が分かっていた。
だが不用意に不安を煽る事は無い、と黙っていた。
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:51:37.81 ID:hrQWbVJm0
「雛苺はよく寝れるよ……やっぱり子供だな」
「あら……それは違うわよ」
「えっ?」
「雛苺は、ずっと自分のせいだと思っているわ。
 だから二階に来てから……鞄の中でずっと泣いていたのよ」
「……さっきはそんな素振り全然見えなかったけど」
「きっと、心配をかけたくなかったのよ。今は泣きつかれて眠ってしまったようだけど」
「そうか……」
「貴方も余り気負わないで、詳しく話さなかったあの子にも責任はあるのだから」
「でも、何でお前は花の事知ってたんだ」
「少し前に……話してくれたのよ。薔薇屋敷に行くようになって、翠星石は気付いたらしいわ」
「何に?」
「蒼星石が、庭園には元々無かったあの花を植えていたという事よ、マスターも気付いていなかったのに」
「そうか……やっぱり双子なんだな。でも何でソバなんだろう」
「さあ、そこまでは教えてくれなかったけれど。それでマスターの許可を得て、鉢植えに移して持ち帰ったのよ」
しばしの沈黙が流れる、暗闇の中。体をひねって時計を見ると。もうすぐ十一時になろうとしている。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:53:30.08 ID:aJOFvmisO
続きが気になって寝れん!
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:54:08.65 ID:u3APN+aTO
試演
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:54:16.29 ID:qK9cn3yn0
起きている価値がある
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:56:35.38 ID:hrQWbVJm0
「もう寝なさい、心配しないでもあの子に会うこと自体は難しくないはずよ」
「え……?なんでだよ」
「忘れたの?正確とはいえないけれど、私達姉妹はお互いの場所が分かるのよ」
「あっ……そういえば。じゃあ今の翠星石の方角も分かるのか?」
「ええ、だから早く寝なさい。もう私も眠るわ」
「分かったよ……なんだか安心したら眠くなってきた……」
「明日は忙しいのだから、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ……」

「真紅」

しばしの沈黙の後、ジュンは眠そうな声で呟いた。
「なに?」
「ありがとな、色々と」
真紅は少し意外そうな顔をすると、嬉しそうに微笑んで答えた。
「……えぇ」
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 00:57:33.42 ID:ufXN+S8D0
こういう真面目なやついいな
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:01:17.29 ID:hrQWbVJm0
「ジュン!朝なのよ、起きてー」
「ゲフッ」
突然の声と。腹部に強い圧迫感を感じたジュンは、ついうめき声を発してしまった。
「おまえなぁ、もうちょっとまともな起こし方は出来ないのかっ」
朝から大声を出すジュンに、雛苺は耳を塞いで反論した。
「うー、だって。ジュンってばいくら声をかけても起きないんだもん」
「もう六時半よ、翠星石を探しに行くのでしょう?」
「……あぁ、そうだな」
朝になれば元に戻ってるのではないか、という儚い希望を打ち砕かれたジュンは。
パジャマを脱いで外出用の服に着替える。
「みんなー、朝ごはんが出来たわよぉー。降りてきてー」
一階からのりの大声が聞こえる。
三人は返事をすると、部屋を出て行った。

簡単に朝食を済ませ。ジュン、真紅、雛苺の三人は身支度を終えて玄関で待っていた。
「遅いな、何やってるんだよアイツ」
「レディーの身支度には時間がかかるものよ」
「でもでも、真紅は全然時間かからなかったのよ」
「わ、私はいいのよ。そもそも持って行くもなんか無いもの」
「お待たせー、色々持って行こうと思ったら時間がかかっちゃって」
のりの姿を見た三人は驚いた。
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:02:50.24 ID:lt9iFHEt0
わっふるわっふる
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:03:49.92 ID:xymlF8340
支援
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:04:41.46 ID:qK9cn3yn0
し え ん
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:05:54.78 ID:hrQWbVJm0
「おい……お前これからどこに行こうとしているんだ」
「え?翠星石ちゃんを探しによ?」
「アイツは雪山で遭難したわけでも、樹海に迷い込んでるわけでもないんだぞ」
「分かってるわよぅ、でも何が起こるか分からないし」
「そんなサバイバルセットが必要になることなんて起きないだろ!
 大体なんだよその馬鹿でかいリュックは。お前は登山でもする気か!
 もっと身軽で動きやすい服装にしろよっ」
ジュンは大声でまくし立てる。
「そ、そうかなぁ。分かったわ、少し置いてくるわね」
「少しってなぁ……」
「ジュン、私が付き添ってくるわ……
 これ以上時間がかかるのは私も不本意だもの」
「ヒナもヒナもー」
そうしてのりの自室に消えていく三人を見ながら、ジュンは溜息を吐いた。
身軽になったのりを連れて家を出たのは、それから十分後の七時半頃だった。
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:10:30.59 ID:hrQWbVJm0
「次はどっちだ?」
「そうね、次の十字路を右に曲がって頂戴」
家を出てから三十分、すでにジュンは後悔し始めていた。
真紅と雛苺は外で大騒ぎにならないよう、
バスケットの中に入ってジュンとのりが持ち運んでいるのだが、
さほど重くないドール達の体重も、長時間持っていると若干腕が痺れてくる。
引き篭もりのジュンには想像以上に辛かった。
「ジュン、もう少し丁寧に持って頂戴。揺れが酷いわ」
「うるさいっ……お前重いんだよ」
「お、重いですって。貴方の体力が無さ過ぎるのよっ」
「ジュン君、私が真紅ちゃんも持とうか?」
「いいよっ……これ位、なんとも無い」
「のりー、ジュンはひきこもりだから、すぐ疲れちゃうの?」
「もう……勝手に言ってろ」
通学途中の学生に会う事を恐れていたジュンも、今日が土曜日のおかげか。
部活に向かう数人とすれ違うだけで、気兼ねせずに歩けていた。
その後も真紅と雛苺の指示を聞きつつ。ジュンとのりは歩き続けた。

どれだけ歩いただろうか。
疲れて明らかに口数が少なくなったジュンだったが、不機嫌そうな場所で呟いた。
「おい、さっきと同じ場所を歩いてるぞ」
「あら?おかしいわね、もう大分近くに居る気がするのだけど」
「ヒナもそう思うの」
「あのマンションを。ぐるっと一回りしたわよねぇ」
そう言うと、のりはとあるマンション群を指差す。
「って事は、あそこに翠星石が……行こう」
そう言うと足早にジュンは歩き出した、のりもそれを追うように歩き出す。
時計はすでに正午近くを指していて、太陽は空高く上っていた。
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:14:52.99 ID:hrQWbVJm0
キリキリキリ……翠星石が最初に聞いたのは、もう聞きなれた螺旋の巻く音。
時代を飛び越えるたびに幾度も聞く始まりの音を聞きながら翠星石は考えた。
ここは何処だろう、もしかしたらジュンが見つけてくれたのかも知れない。
徐々に意識はしっかりした物になり、翠星石は目を開いていく。
しかし、そこは翠星石が望んだ光景は広がっていなかった。

マンションの一室だろうか、余り家具は置かれていなく広々としている。
腹部には人間の腕が回りこんでいて、背後からは人の気配がする、螺旋を巻かれているのである。
恐る恐る振り返ると、そこには見知らぬ人間の女の顔があった。
「いやぁ、離してですっ」
「きゃっ」
翠星石は身をよじって腕から脱出すると、部屋の端に行って向き直った。
腰まで伸ばした長い黒髪、年は20代前半だろうか。
眼帯を左目しているが。もう片方の目を見開いて彼女は言った。
「うそっ……まさか本当に動くだなんて、あなた一体……」
「近づかないで、ですっ」
「余り大声を出さないで、昼間で人は少ないけど。あなたも騒ぎにしたくは無いでしょう」
相手は冷静な顔で、人差し指を口元に当てている。
一定の距離を保ったまま、お互いに睨みあう。
翠星石はまず最初にジュンとの契約が解けていないかを確認した。
祈るように一瞬目をつぶると、微量ながらもジュンの力を感じる事が出来る。

「質問に答えて、あなたは人間じゃないわよね。何者なの」
一瞬の安堵の隙を付かれての質問に、若干驚くが。
質問を無視して周りを見る、鞄に乗り込んで窓から脱出する事も考えたが、
鞄は人間を挟んで自分の反対側にあり、叶いそうも無い。
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:16:47.64 ID:xymlF8340
いいねいいねー
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:17:56.17 ID:qK9cn3yn0
眼帯・・か
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:18:26.07 ID:4KC40o4+O
支援
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:19:32.57 ID:hrQWbVJm0

「ねぇ、聞こえているの」
「ち、近づかないで。って言ったはずです」
一歩こっちに近づいた相手を見て脅えながら翠星石は叫ぶ。
「私はあなたに危害を加えるつもりは無いわ。
 あなたも無いのなら、話を聞いて頂戴」
「人間は信用ならないです……
 それに人形が動くところを見ながら、落ち着きすぎですっ」
「そうかな……あなたが動く姿は。昨日すでに見ていたし」
「お願い……鞄を返して欲しいです」
人間は黙って自分の後方にある鞄に目をやったが、すぐに向きかえり言い放った。

「ダメよ」

「なっ、何でですか」
「あなた、逃げる気なんでしょ?その前に、もう少しお話しましょう」
「私は話す事なんて無いです。お願いだから、返して……」
「お願い!」
突然叫んだ人間に、翠星石は驚いて後ずさりをする。
「今は……一人にしないでっ……お願い」
鬼気迫った表情で人間は言い切った。
翠星石は戸惑った、相手の目を見る。とても演技には見えない。
そして何より……昨日の自分と被って見えてしまう。
「……どうしたのですか?」
「あなたの言うとおりよね……人間なんか、信用出来ない。」俯いて人間は呟く。
「えっ……?」
「ううん、こっちの話よ。私の名前は萩峯(はぎみね)マナ、あなたは?」
相手目を見て翠星石は思った……この人間は何を考えているのだろうか。
計り知れないところはあるが、悪い人間では無いのかも知れない……。
「翠星石です」
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:24:23.37 ID:hrQWbVJm0
「そう……翠星石、何であんなところに居たの」
「お前には関係のないことです……そういえば、あの犬はどこに行ったのですか」
「え?……ああ、あの子はね。妹の犬なの、住んでるところは違うんだけどね」
「妹……一緒に住んで居ないのですか?」
「うん、でも私はあの子の事を誰よりも理解しているし。仲の良い姉妹よ」
「そう……ですか」
「ねぇ、あなた帰ろうとしてたけど。何処に帰ろうとしてたのっ」
近づきながら興味津々に聞いてくるマナに、翠星石は警戒を解く事は無かったが。拒絶する事も無かった。
「……翠星石のマスターの所にです。残念ですけど翠星石はマスターのものですから。
 お前の人形にはならんですよっ」
「なんだ……持ち主が居たのね。でも、捨てられちゃったんでしょ?」
「なっ……!!捨てられてなんか無いですっ。捨てられてなんかっ……
 ちょっと喧嘩をしただけですっ」
目を見開いて翠星石は相手を睨みつける。
「ご、ゴメンなさい。そんなに怒るなんて……
 だけど、翠星石はマスターさんが好きなのね」
「ななっ、何を言うですか馬鹿人間っ。誰があんなチビ人間のことっ」
先ほどとは一転、顔を赤らめながら反論する翠星石に、マナは笑いながら答えた。
「マスターの事を話しているとき、嬉しそうな目で話すんですもの」
「で、でたらめを言うなですっ」
「ねぇねぇ、あなたのマスターってどんな人なの」
「人の話を聞けですっ」
身を乗り出して聞くマナに、翠星石は必死に反論をしている。
二人の距離は、手を伸ばせば届くほどまでに近づいていた。
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:29:14.70 ID:hrQWbVJm0
「なぁ、正確な位置は分からないのか」
「残念だけど、これ以上詳しくは分からないわね」
「そうか……クソッ。ここまで来たのに」
ジュンは周りを見渡して落胆し、溜息をついた。
周りには十階建てのマンションが四棟、ジュンを囲うように並んでいる。
「翠星石ちゃん、ここにお友達でもいるのかしら」
のりはマンションを見上げながら言った。
「それは無いわね、基本翠星石はジュンの家と薔薇屋敷にしか知り合いは居ないわ。
 後は巴と草笛さんだけど、家の場所までは知らないはずだもの」
「うゅ……誰かに拾われたのかなぁ」
「大方そんな所だろうな。螺旋も切れてただろうし」
呟くようにジュンは言った。
「ジュン……あなた、知っていたの?」
「ああ、お前らを朝巻いた時に気が付いたんだ……」
「そ、そんなっ。じゃあ翠星石ちゃんはもしかしたら悪い人に……」
「えーっ!?は、早く探すのっ」
「落ち着きなさい、ここに居るのは確かなのだから。
 見つけられるはずよ」
「でも、どうやって見つけるの?翠星石ちゃんは居ますか?
 って聞いても教えてくれないかもしれないわ」
心配そうな顔でのりは言った。
「そ、それは……きっと中からあの子が反応してくれるはずよ。」
「うぅ……すいせいせきぃ」
「雛苺、静かになさい。周りに気付かれるじゃないの」
のりと雛苺が騒ぎ、真紅がそれをなだめる中、ジュンは眉間にしわを寄せて考えている。
そして、はっきりと頷くと。三人を制止するようにジュンは言った。
「僕にいい考えがある」
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:33:05.02 ID:V4YKuRp1O
おもしろい
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:33:15.83 ID:hrQWbVJm0
「まきますか?まきませんか?」
突然の質問に、意味が分からず聞き返した。
『はい?あの、どちら様ですか?』
「あっ、突然すみません。僕の中学校で、節分の日に豆をまく家の割合がどれ位なのか
 アンケートを取る事になりまして」
『あら、そうなの?言ってくれないと分からないじゃない』
「ゴメンなさい。あまりこういうの慣れてないんです」
『……そうね、家は撒かないで食べるだけよ。散らかってしまうからねぇ』
「分かりました、ありがとうございます。」
『いえいえ、頑張ってね』
プッと音と共にインターホンからの反応は無くなった。
深い溜息を吐くと。時計に目をやってジュンは呟いた。
「ここも違うか……結構時間かかるな」
「そうね。でも、良く考えたわね。ジュン」
「別に……アイツの螺旋を巻いたなら。必ず反応がある言葉だし
 まずまきますか?って聞かれて螺旋の事を思いつく奴も居ないだろ」
「私達がマンションを虱潰しに探して行って、のり達は外で待機して外出者のチェックをする。
 中々の策よ、少し見直したわ」
「だけど時間がかかりすぎる、日が暮れちゃうよ……」
「そうね、早く見つけてあげましょう」
ジュンは頷くと。呼吸を整え、次の家のインターホンを押した。
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:36:33.76 ID:qK9cn3yn0
四円
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:37:24.33 ID:hrQWbVJm0
時計の針は六時を回り、すでに外は暗くなり始めていた。
窓から空を見ると、月だけが暗闇の中で寂しそうに輝いている。
「へぇ、酷いね。そのジュン君って子」
「そうなのです、せっかく翠星石が特別にスコーンを焼いてやったというですのに」
「スコーンかぁ、今度食べさせてね。
 ……こんな話してたらお腹が空いちゃった。そろそろご飯にしましょうか」
「そーいえば、少しおなかが空いたですぅ」
「あら、やっぱりお人形さんでもご飯が要るの?」
「要るです、必要不可欠ですっ。ついでに翠星石はハンバーグが好きですよ」
「あら、残念ね。今ある材料じゃ野菜炒め程度しか出来ないわ」
「むー、しゃあないからそれでガマンしてやるですぅ」
翠星石の警戒心は、ここ数時間ほどの会話で殆ど解かれてしまっていた。
ジュンの愚痴を聞いてもらい、スッキリ出来たのもあるだろうが。
なぜか彼女に親近感を持っている自分が少し不思議だった。
しかし、マナに全ての事を話した訳ではない。
契約の事、アリスゲームのこと、夢の庭師の能力。
そして真紅、雛苺以外のドールについても話すことは無かった。
「もうこんな時間だし、今日は泊まっていって……それに。
 ジュン君って子に少しは心配させた方がいいわよ」
「……お前はいいのですか」
「私はむしろ泊まって言って欲しいわ。一人暮らしって結構寂しいのよ」
「じゃあ、お言葉に甘えるです……その、ありがとうです」
「ううん、気にしないで」
マナは冷蔵庫を探りながら答える。
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:41:28.98 ID:hrQWbVJm0
「……その目、どうしたのですか」
「あぁ、この眼帯? ちょっと事故にあってね、もうこの左目は殆ど見えないの」
「事故……?」
「うん、右目もね。少し視力が下がっちゃって……」
「ご、ごめんです」
「いいえ、気にしないで。本当の事だもの」
料理を続けるマナを見て、気まずくなったのか。翠星石は窓の外を見た。
もう暗くなった空を見ながら翠星石はジュン達の事を考えた。
自分の事を探してくれているだろうか、と……
そして気がついた、真紅と雛苺の反応がすぐ傍に感じられる事に。
自然に顔が綻ぶのが分かる、マナの言うとおり。
少し位心配をかけてやろう、と思った。

晩御飯を食べ終え、二人はテレビを見ながらお互いの事を話していた。
そして時計に目をやると、時計の針が九時を回ろうとしていた。
「ふあぁ、もうこんな時間ですか。
 翠星石は寝るですよ……おやすみなさいですぅ」
「あら、結構早く寝るのね。おやすみなさい」
「夜は眠りの時間です、お前も早くねるですよぉ」
そう言うと翠星石は鞄に入り込んだ。
一連の動作を目で追いながらマナは呟いた。
「ええ、私ももうすぐ寝るわ。」
翠星石が入り、部屋にはテレビの音だけが響いていた。
マナは険しい表情で、翠星石が入った鞄を見つめ続けている。
そして声を押し殺すように呟いた。

「可奈……もうすぐよ、もうすぐであいつに……」
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:43:09.02 ID:qK9cn3yn0
マナカナwwww
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:45:29.40 ID:hrQWbVJm0
「はぁ……はぁ……」
階段を駆け上がり、ジュンは息を整えていた。
「ジュン、もう今日は帰りましょう」
「嫌だ、もしかしたら次こそ……」
「もう九時よ、さっきも住んでた人間に『こんな時間に非常識だ』と怒られたばかりでしょう。
 のりや雛苺だってそろそろ限界のはずよ、少しは周りのことも考えなさいっ」
真紅は小さい声だが、怒ったように言った。
「翠星石は、もしかしたら苦しんでるかもしれないんだぞっ
 あんな人見知りで怖がりな奴が。こんな状況で耐えられるわけ無いだろっ」
「あなただって限界じゃないのっ。あんなに他人と接する事を拒絶していたあなたが……
 このままでは心が壊れてしまうわ、翠星石を見つける前に」
「何だよ、お前はあいつが心配じゃないのかよっ」
ジュンは真紅を見て言葉に詰まった。
「私だって翠星石が心配よ、けれど。同じくらいあなたも心配……
 昨日、あの子と喧嘩をしてからあなたの心はずっと緊張している……」
真紅はジュンの手を取り、真剣な目でジュンを見つめる。
「このままでは本当に心が壊れてしまう。翠星石はここにいるわ、必ず。
 きっと移動することは無い、移動しても私が見つけ出して見せるわ。
 だからお願い……帰りましょう」
「けど……」
ジュンは困ったような顔で真紅の顔を見つめ返す。
確かに限界だった、足も一日中歩き回って棒のようになっており、
決して良い対応ばかりでない住人を半日も相手にしてきたのだ。
「真紅……ごめん。今日はもう帰ろう」
俯きながらジュンは答えた。
「そんな悲しそうな顔をしないで、あなたは良くやったわ」
真紅は悲しそうに微笑んで言った。
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:45:46.24 ID:s7cYJiKZ0
おもしろいぞ。wktk

マナカナw
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:49:23.81 ID:hrQWbVJm0
ジュンはこの日、4つの棟の内1つと半分ほどの棟を調べ終えていた。
ゆっくりと階段を下りていくジュンに抱かれたバスケットの中で、真紅は考えていた。
本当に些細な違いだが、今朝とは翠星石の反応に変化がある。
やはり、目が覚めていると見て間違いないだろう。
ならば、何故帰ってこないのだろうか。
やはり悪い人間に捕まってしまったのだろうか。
そして、庭師の能力を使った悪事を……?

いや、たまたまローゼンメイデンを見つけただけの
人間が夢の庭師の能力などを知っているとは考えにくい。
そして翠星石自らがそのようなことを言うとも考えられない。
しかし、ローゼンメイデンで悪巧みを考える人間は居るのかも知れない、
だが、そんな人間に協力するとは思えないし、
契約を終えている翠星石なら逃げようと思えば逃げ出せるはずだ。
翠星石は、自らの意思で帰ってこないのだろうか。

「翠星石、あなたは一体。何を考えているの……?」
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:56:21.65 ID:hrQWbVJm0
翌朝、のりは心配そうに体温計を覗き込んだ。
「37度3分……風邪かしらねぇ」
ジュンの額に手を当てながら言った。
「だからたいした事無いって言っただろ、そんなの風邪のうちにも入らないよ」
「でもでも、お顔が真っ青なの」
「ジュン……今日あなたは寝ていなさい。昨日の疲れが出たのよ」
「何言ってんだよ、何でもないって言ってるだろ」
ジュンの変化に最初に気付いたのは、のりだった。
顔色が優れず、朝食時もどこか呆けているジュンをみて心配したのだ。
「翠星石なら、のりと私で探してくるわ。あなたは雛苺とお留守番していて」
「嫌だ、こんな状況で寝てられる分けないだろ。僕も行く」
「病気が悪化したら大変でしょうっ、主人の言う事を聞きなさい」
「誰が主人だ!なんて言おうと僕は行くぞ」
「二人とも落ち着いて。ジュン君、今日は寝ていて……
 真紅ちゃんと二人で必ず翠星石ちゃんを見つけてくるわ」
口論になり始める二人をのりが制止する。
「嫌だ、姉ちゃんが何て言おうと僕は行くからな」
まっすぐな目で見つめてくるジュンと目が合い、のりは諦めたように溜息をついた。
「わかったわ。でも、具合が悪くなったらすぐに言うのよ。
 それが守れるなら一緒に行きましょう」
「のりっ」真紅は声を荒げる。
「分かった、約束するよ」
ジュンは、準備してくる。といって部屋から出て行く。
「ごめんね、真紅ちゃん。ジュン君はああなったらたぶん言う事を聞いてくれないわ。
 ……それに、あんなに真剣になってるジュン君を止めたくなかったの」
「……もういいわ」
そう言うと真紅は目もあわせず部屋から出て行った。
「ジュンの病気は大丈夫なの?」雛苺は顔をしかめながらのりに尋ねた。
「そうよ、でももしかしたら。悪くなっちゃうかも知れないわ、そしたら一度帰ってきましょう」
「うぃ、分かったの」心配そうな顔で雛苺は頷いた。
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:58:46.66 ID:kMraEi9yO
わっふる
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 01:58:47.66 ID:qK9cn3yn0
おもしろいな
マナカナは一体・・・。
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:00:07.65 ID:A0zfOBJ2O
wktk
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:00:13.63 ID:K45v76X20
面白い。
実に楽しめる。
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:03:58.76 ID:hrQWbVJm0
ジリリリリリリリ
けたたましい機会音が部屋に響き渡った。
マナは布団から出る事は無く、手を伸ばして時計を手探りで探している。
数回の空振りののち、時計の上に手を乗せると。手繰り寄せてスイッチを切った。
右目を擦りながら体を起こしたマナは気がついた。

「いい匂い……パン?」
「やーっと起きたですか、スコーンが焼けてるですよ。
 顔を洗ったらさっさと食べるです」
声の方向に目をやると、オッドアイの人形が仁王立ちしてこちらを見ている。
「おはよう……ええ、分かったわ」
マナはダルそうに立ち上がると、洗面台の方へフラフラと歩いていく。
洗顔を終えて戻ると、翠星石はテーブルに座ってテレビを眺めていた。
テーブルの上には香ばしい香りのスコーンが、お皿に並べられている。

「へぇ〜、美味しいじゃない。こんなの初めて食べたわ」
「翠星石の作りたてですから、美味しいのは当たり前ですぅ。
 ……世話になったですが、食べ終わったら翠星石はジュンの所に帰るですよ」
「えっ……そんな突然」
「もうこれ以上心配はかけられないです、長居しすぎたくらいですよ」
「ま、まって……お願い。今日付き合って欲しい所があるの」
「付き合って欲しいところ?」
「えぇ……お願い、私の妹の所なんだけど」
「なっ、何でお前の妹に合わなきゃいかんのですか」
「お願いっ、それが終わったら帰ってもいいから」
しばしの沈黙、翠星石は黙り込んでしまった。
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:04:57.26 ID:A0zfOBJ2O
死亡フラグ
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:06:16.69 ID:qK9cn3yn0
いい良いいぃいいいぃいぃぃっっっちゃぁぁぁぁぁぁだめぇぇぇぇ
                
                     ・・・・・・・なのか?
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:08:05.90 ID:hrQWbVJm0
「……分かったです、それが終わったら翠星石は帰るですよ」
溜息をつきながら、翠星石は答えた。
「えぇ……ありがとう。これを食べ終えたら、早速行きましょう」
そう答えたマナの顔は、どこか悲しそうだった。


食事を終え、翠星石は流しまで持ってきた椅子の上に乗って食器を洗っている。
リビングではマナが出かける準備をして動き回っていた。
「そんなに遠くじゃないですよね」
「ええ、タクシーを呼んでおいたから。車で三十分って所かしら」
「結構かかるですねぇ、またあの犬とも会わなきゃいけないのですか」
「あら……苦手なの?大丈夫よ、あの子は今動物病院の預かってもらってるだけだから」
「え……妹の犬ではないのです?」
「そうだけど……ちょっと事情があってね、行けば分かるわ」
食器を洗い終え、椅子から飛び降りると。
椅子を引きずりながら定位置に戻した。
「もう準備はいい?」マナが顔を覗き込んでくる。
「準備も何も、翠星石のものは鞄しかないのです」
「そういえばそうだね、じゃあそろそろ行こうか」
翠星石は鞄を開けると中に座って相手を見上げる。
「ゆっくり丁重に運ぶですよ。外では翠星石は声は出さないですからね」
「分かったわ。安心して」
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:10:21.14 ID:7zCHx+IQ0
行くなっ!!
いくんじゃないっ!!
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:13:10.11 ID:hrQWbVJm0
鞄を閉めると、マナはそれを両手で抱えてゆっくりと部屋から出た。
鍵を閉めると、なるべく揺らさないよう慎重に歩いていく。
エレベーターの前で止まり、スイッチを押した。

その時、階段の方から誰かの気配を感じて咄嗟に鞄を隠すようにそちらに背を向けた。
だが、その気配の主が現れる前にエレベーターが到着し、ドアが開いた。
急いで乗り込むと、閉のボタンを強く二、三度押す。
ゆっくりと扉が閉まり、ふとドアの窓に目をやると、
メガネをかけた少年が、息を切らしながら歩いている。
明らかに顔色が悪い。
「ここにあんな子住んでたかな」
独り言のように呟くと。徐々にエレベーターは下っていった。

1階に着き、マンションから出ると、
あらかじめ呼んで置いたタクシーが待っていた。
「すみません、お待たせしちゃって。ここまでお願いします」
マナは住所を書いた紙を運転手に渡す。
「分かりました。では、行きますね」
タクシーはゆっくりと、目的に向けて発車して行った。
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:14:38.46 ID:qK9cn3yn0
ジュン・・・・。
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:14:46.73 ID:yqGzzSTxO
よくあるよくある
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:18:32.82 ID:hrQWbVJm0
「ったく忙しいのに……まくよまく。これでいいんだろ」
「ありが……」
お礼を言うよりも先にインターホンの反応は消えた。
廊下は静まりかえり、ジュンの声だけが響いていた。
ジュンは多少の頭痛を感じるも。しっかりした足取りで隣の部屋えと移る。
バスケットの中の真紅は反応も無く、終始無言のままだ。
もうすでに二棟目を調べ終え、三棟目にかかっていたジュンだが、
ジュンは不安と焦りを感じ始めていた。
もしかしたら、この質問の意味に気付かずに普通に答えてしまっているかもしれない。
それとも頭の回転の速い人間が質問の意図に気付き、普通に受け答えしてしまっただけなのではないのか。
どちらにしろ、今まで調べてきた中に翠星石は居るのかもしれない。
表札に目をやると「萩峯」と書かれている。
「何て読むんだ。コレ……」
静かな廊下にジュンの声が響く。
「真紅……まだ怒ってるのかよ」
やはり、反応は無い。
「……分かったよ、勝手にしろ」
そう言ってインターホンのボタンを押した。
暫く待つが、反応は無く。もう一度押してみる。
「留守なのかな……まぁ、外出者は姉ちゃんがチェックしてくれてるし」
そう言ってポケットから出したメモ帳に部屋の番号を書き込む。
次の部屋に移ろうとしたとき、いきなり持っているバスケットの蓋が開いた。
「うわっ、何だよいきなり。驚かすなよ」
「あの子の反応が、離れていくわ……」
「え?姉ちゃんからは何も連絡……」
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:23:51.66 ID:hrQWbVJm0
ピピピピピピピ。
突然の発信音に驚き、ジュンは急いで携帯電話を取り出す。
姉からであった。
『ジュン君!?ごめんなさい、ごめんなさい』
「お、おい。どうしたんだよ。見つかったのか」
『たぶん……としか言えないんだけど。
 マンションの敷地にタクシーが入ってきてね、それに女性が乗り込んだの。
 その人が……真紅ちゃんたちの鞄にそっくりな鞄を持っていたのよ』
「な、何で引き止めなかったんだ」
『少し遠かったし、すぐにタクシーで出ちゃったからどうすることも……ごめんなさい』
「分かった、すぐそっちにいくよ」
ジュンは駆け出した、勢い良く階段を下っていく。
急激な運動によってジュンは吐き気に襲われていたが。
出そうになるそれをもう一度飲み下し、一気に駆け下りた。
下では姉と雛苺が待っていたが、ジュンの顔を見るとのりが驚いて言った。
「ジュ、ジュン君。顔が真っ青よ、大丈夫……」
「うるさいな、今はそれどころじゃ無いだろ。真紅、方向はわかるか」
「えぇ……分かるわ。けれど、あなたに教える事は出来ない」
「なんだよ、またかよッ。いい加減にしろよっ」
怒鳴るジュンを尻目に、真紅はバスケットから飛び降りた。
「お、おい。人に見つかったら……」
慌てるジュンを尻目に真紅はジュンの上着の裾を掴み、力強く引き寄せる。
うわっ、とバランスを崩して引き寄せられたジュンの頬を、真紅は平手打ちした。
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:23:56.29 ID:A0zfOBJ2O
支援
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:28:13.90 ID:qK9cn3yn0
寝れん
明日早いのに・・・。


支援
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:28:53.94 ID:hrQWbVJm0
「いてっ、何すんだよお前っ」
尻餅をつきながらジュンは睨みつける。
「いい加減にするのはあなたの方よっ。こんな程度で倒れる状態じゃ、行動するだなんてもう無理だわ」
「無理なもんか、ただの風邪だろっ。人間はそんな簡単に死なないんだよ」
「死ぬわよ」
「なっ……」
「私の以前の媒介で、風邪から発展する病気で死んだ人間がいる……
 風邪は万病のもとなのよ、甘く見ると酷い目に会うわ」
「……僕は平気だ」
「これだけ言っても分からないのっ」
「これは僕の責任だっ、僕が探さないで誰が探すんだよっ」
「ジュン君……あなたが翠星石ちゃんを心配してるのは分かるわ。
 だけど、真紅ちゃんやヒナちゃんの気持ちも分かってあげて」
二人を落ち着かせようと、のりは静かにそう言った。
「分からないよ、こいつらの気持ちって……」
雛苺は心配そうな顔でこちらを見つめている。
真紅に目を移すと……こちらを睨む力強い瞳の端に、涙が溜まっていた。
言葉を失った、滅多に涙をみせる事が無い真紅が涙を必死に堪えている。
心がチクリと痛みが走った。

「みんなね、翠星石ちゃんと同じくらいジュン君が心配なのよ……」
「……ごめん。翠星石と喧嘩してから、成長してないよな。
 僕……また人の気持ちを無視して」
「ジュン君……そんな事無いわ。今回は気付けたんだもの」
「今日は帰るよ。一人で帰れるから、みんなはアイツの事お願い……」
そういうと、その場に座り込んでしまった。強がってはいたが、ジュンも限界だった。
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:32:22.94 ID:hrQWbVJm0
真紅は涙を拭うと、バスケットの中に戻って雛苺に問いかけた。
「雛苺、抜かりは無いわよね」
「うぃ……あの子だってやれば出来る子だもん」
「真紅ちゃん、ヒナちゃん?」
「私達ももう少し待機よ。のり、たくしーとやらを二台読んで頂戴」
「えっ?は、はい」
そう言うと携帯電話を取り出すのり。
「おい、どういう事だよ。あの子って?」
「簡単なことよ、もし見逃しそうになった場合。人口精霊を飛ばすように言っておいたの」
「ベリーベルがあのたくしーを追跡してくれてるのっ」
「そういう事か、雛苺の人口精霊が戻ってきてから向かうんだな」
「えぇ……後はその場所から移動しないことを祈るだけね」
しばらくしてベリーベルは戻ってきた、運良くそれほど遠くでもなく。
ヨロヨロとおぼつかない飛行ながらも、居場所は特定できたようだ。
「本当に一人で大丈夫ね?」
「大丈夫だって、家でちゃんと休んでる」
「そう……なら、私達は行くわ」
「あぁ……頼んだぞ」
到着したタクシーにそれぞれが乗り込み、片方はジュンが乗って桜田家に。
もう一つは翠星石を探しに向かった。

のりは、雛苺と真紅の指示を小声で仰ぎなら
運転手へ道を説明し、目的地へ移動をする。
30分後、目的地に着いた三人はタクシーを降りて建物を見上げる。
中からはドールの反応が……二つ。
「どういう事なの……金糸雀のマスターは病院には居ないはずだから。
 七番目の子か……水銀燈」
真紅の顔に不安の色が浮かび上がる。
「のりー、あれなんて読むの?」雛苺はバスケットの隙間から顔を見上げて尋ねた。
「えっと、有栖川大学病院。よ」のりは微笑みながら答えた。
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:37:42.51 ID:hrQWbVJm0
ベッドに腰掛けていた水銀燈は、異変に気付いて顔上げた。
ここは有栖川大学病院の一室、白で統一された病室は。
質素というより、どこか寂しげであった。
ベッドの上に横たわっていたやせ衰えた少女は、
水銀燈の異変に気付き、首を傾げなら尋ねた。
「どうしたの?水銀燈」
「こんな所に姉妹の気配が……どういう事なの」
「え?気配?」
「何でもないわ、めぐ……」
そう言って自分の翼を擦りながら考えた。
真紅との戦いでつけられた傷は、大分癒えて来たとはいえ。
まだ戦闘に使えるほどではない、もしや弱っている自分を叩きに来たのではないか。
だが……ドールの反応は一つ、群れてばかりの真紅や翠星石、雛苺ではないだろう。
「金糸雀か……七番目の子」
「もしかしてっ、アリスゲームが始まるの?」
嬉々とした表情で問いかけてくるめぐに、水銀燈は顔をしかめて答えた。
「違うわよ……大体、あなたには関係のないことよ」
「そっかぁ、残念」
水銀燈は立ち上がると、翼の具合を確かめる。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:38:36.19 ID:zNpjCSeV0
wktk
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:41:56.63 ID:hrQWbVJm0
「出掛けるの?」
「そうよ」
「行ってらっしゃい、早めに帰ってきてね」
「はぁ?何で私がこんな所に帰ってこなきゃいけないわけ?」
「窓の鍵、開けておくから」
人の話を聞かないめぐに溜息をつくと、水銀燈は窓枠に乗った。
「メイメイ、レンピカ。行くわよ」
そう言うと窓から飛び出した。
二つの発光体がついて来る事を確認すると。
水銀燈は近くの木に降り立ち、病院を見上げる。
「めぐと一緒に居るところを見つかるわけには行かないわ。
 相手も私に気付いているでしょうし」
紫色の発光体が水銀燈の近くを飛び回る。
「大丈夫よメイメイ、本格的な戦いは出来なくても。
 威嚇や撤退する事なら問題なく出来るわ。
 それに、何の為にこんな場所にきたのか。聞き出しておかないとねぇ」
水銀燈は余裕の無い笑みを浮かべながら言った。
「メイメイ、レンピカ。この病院の居る姉妹を探してきなさい、なるべく急いで。ね」
それを聞いた紫と青の発光体は、それぞれ病院に向かって飛んでいった。
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:46:48.51 ID:hrQWbVJm0
「翠星石、そろそろお茶にしようか」
「もう少しだけ、キリの良い所までやるですよっ」
「でも、ほら。マスターが待ってるよ」
「ダメですっ、中途半端にするのはこの子達にも悪いですよ」
翠星石は土を弄りながら答える。
「翠星石は優しいね」蒼星石は笑いながら答える。
「相手は選びますけどね」
土で汚れた顔で蒼星石を見ると、微笑んだ。
「翠星石……もし僕が、ローザミスティカを奪われてしまったとしても
 その相手を憎まないであげて」
「えっ……」
立ち上がり、真顔で蒼星石を見つめながら言った。
「突然何を言い出すのですか」
「僕は君のローザミスティカが誰かに奪われたとしても、恐らく憎む事は無いよ。
 逆に僕のローザミスティカが奪われても、僕が誰かを憎む事は無い……」
「蒼星石……?そんな事、分かってるですよ。それが私達に与えられた運命なのですから」
「そう、それならいいんだ」
「……蒼星石?」
周りが急に暗くなる、空が、地面が、次々に闇に沈んでいく。
「えっ、何です?一体これは……」
翠星石は目を見開いた、蒼星石までもが闇に溶け込んでいく。
こちらを見て微笑んだまま、動く事も、喋る事も無く。
「いやっ、蒼星石。待って、一人にしないでっ」
蒼星石に縋ろうとするが、触れる事は出来ず前に倒れこんでしまう。
「いやっ、蒼星石、蒼星石!」
必死に手を伸ばした先、一瞬だが青白い光が見えた。
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:47:05.93 ID:JsDL9AmrO
なんて面白いんだ
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:49:30.77 ID:nnTw9m2A0
どんどん書いてくれたまえ
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 02:53:20.50 ID:hrQWbVJm0
「蒼星石!」
翠星石は鞄から飛び起きた、周りを見渡すと、そこは病室だった。
マナはベッドの傍らに椅子で座って、驚いてこちらを見ている。
そしてベッドには、もう一人のマナ……いや、マナにそっくりな人間が横たわって眠っている。
「大丈夫?寝ていたみたいだから起こさないでおいたんだけど」
「大丈夫です……」
夢だったのだろうか、久々に蒼星石の夢を見た気がする。
何故今になって、あんな事を言うあの子の夢を見たのだろうか。
そう思いながら鞄から出て記憶を探ってみる。
タクシーに乗り込んだところまでは記憶に残っている、
恐らくはタクシーに揺られながら寝てしまったのだろう。

「そうせいせきって……誰?」
翠星石は一瞬戸惑うが、素直に答える事にした。
「私の……双子の妹です」
「双子の妹?」目を見開いてマナは答える。
「そうです、今はずっと遠くに行ってしまっているけれど。
 私の、誰よりも大切な妹です……」
「遠くに……そう」
「そのベッドに寝ている人間は、お前の妹ですよね」
指を刺しながら翠星石は言った。
「ええ、そうよ。紹介するわね、私の双子の妹の可奈、萩峯可奈よ」
「双子の……驚いたです、お前にも双子の妹がいたですね
 今はお昼寝中ですか?」
「ええ……そうね、きっとお昼寝中なのよ」
はっきりしない答えに翠星石は首をかしげた。
「可奈はね、もうずっと目が覚めないの。
 ある事件でね、お医者様が言うにはもう絶望的だって……」
「目が……覚めない?」
翠星石は思った、まるで蒼星石の様だと。
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:00:05.58 ID:hrQWbVJm0
そして理解した、昨日から感じているこの人間への親近感の
正体は、恐らくこれだったのだ。
最愛の妹を失っている二人だからこそ、どこか共感するところがあったのだろう。
「……ごめんなさいです」
「……私達はね、本当に中のいい姉妹だった。
 もうすぐこの子ともあのマンションで一緒に暮らす予定だったのよ」
「……」
「小さい頃はいつも一緒だった。何をするにも、どこに行くにも。
 まさに二人で一つだった」
懐かしむような目でマナは俯いた。
「でもっ」
突然の大きな声に翠星石は驚いて相手の顔を見る。
「全部あいつに、あいつに奪われてしまった」
マナの表情は一変する、そこに昨日までのマナは居なかった。
「あいつ……?」
「翠星石、あなたにお願いがあるの。これが最後の、一生のお願い」
「えっ……一体どうしたのですか」
明らかに今までと違う様子のマナに、脅えながら翠星石はたずねた。


「殺して欲しい人間が居るの」
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:00:30.82 ID:RKFoquneO
支援頑張れ>>1
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:00:46.70 ID:qK9cn3yn0
まじめだけど、見入れる
いいなぁ
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:02:04.39 ID:xymlF8340
面白いなあ
こんなイメージで見てます

http://pict.or.tp/img/58541.jpg
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:03:29.45 ID:hrQWbVJm0
部屋が静まり返る、まるで時間が止まったかのように。
いや、翠星石の時間は、確かに止まっていた。
そして、翠星石は自分の耳を疑った。
まさか、何かの聞き間違いだ、そう思った。
「今……なんて言ったんですか」
「聞こえなかったのかな、あなたに殺して欲しい人間が居るの」
「なっ、何を言い出すんですかっ。冗談にも……」
「冗談じゃこんな事言わないわ」
淡々と静かな声で、マナ答える。
「で、でもっ、何で翠星石なんですかっ」
「本当なら私が殺してやりたい……でもね」
マナは自分の左目の眼帯を擦りながら答える。
「私は目が悪い、それに力も無いわ……
 実際に一回やってみたんだけどね、見事に返り討ち。
 相手は通報さえしなかったけど、この目はその時に怪我してしまったの」
「……」
「それに、あなたは人形でしょ。指紋もないし、動かなければ疑われる事も無い。
 罪は私が被るわ、あなたが殺してくれたら。私が自首をする」
「……最初から、そのつもりで私を拾ったのですか」
翠星石は下を向き、震えた声でそう言った。
「……そうよ」
「翠星石を殺人の道具として見ていたのですか」
大粒の涙を流しながら。翠星石は相手を見る。
「……最初はね」
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:06:14.02 ID:qK9cn3yn0
>>92
す、すげぇ
感服する
雰囲気にあってるな



>>1さん支援
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:06:37.06 ID:hrQWbVJm0
>>92
ヤバイ……なんか凄い感動した、ありがとう
まさにそんな感じ、というか想像していたより美人だ
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:07:25.70 ID:8666KLngO
>>92
うめえ!!
大人になっためぐが眼帯した感じだな
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:08:07.75 ID:9DRVyCRL0
>>92
俺もそっちでイメージする事にするようにします

ttp://www2.uploda.org/uporg1442356.jpg
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:08:26.13 ID:hrQWbVJm0
「冗談じゃないです、お父様は……私達に言ったですよ。
 私達は人間を傷つけたり不幸にする為に作られたのではないって。
 絶対に……絶対にそんな事しないですっ。
 大体そんなの間違えてるです!」
「しょうがないじゃない、許せないんだもの……
 この子をこんな目にあわせておいてのうのうと生きてるあいつが、あいつがっ。
 私は自分が正しいだなんて思ってない、悪でいい、地獄に落ちてもかまわないっ
 だからあいつを殺してよ!」
二人の怒声が響き渡る。
パタパタと足音が廊下から聞こえ、トントンとドアをノックする音が響いた。
「あの……大丈夫ですか」
恐らく看護士であろう、少し騒ぎすぎただろうか。と思いながらマナは答える。
「ゴメンなさい、何でもないわ。もう静かにしますから」
「そう……ですか、分かりました」
足音は徐々に遠ざかっていく、そして廊下から人の気配が消えた。

しばしの沈黙が病室を支配する、二人はお互いに睨みあっていた。
「どうしても、やってくれないの」
「当たり前です、もう翠星石は。ジュンの所に帰るですよ」
そう言って鞄に手をかける翠星石に、マナは言った。
「そう……じゃあしょうがないわね、私は桜田ジュン君を殺すわ」
翠星石は目を見開いて相手を見る。
「なっ……」
「今は名前しか分からないけど、近所の中学校二年生で桜田ジュン君。
 見つけられないとは思えない」
「ジュンは関係ないですっ」
「目が悪くて非力な私でも、引き篭もりの中学生の子には負けるとは思わないわ」
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:09:00.69 ID:8666KLngO
>>97
ちょwww
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:09:25.73 ID:qK9cn3yn0
>>97
ちょっとまてwwww
その画像何だwwwwwwwwww
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:11:54.18 ID:7zCHx+IQ0
えええええええええ
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:12:17.86 ID:hrQWbVJm0
「スィドリーム!」
そう叫ぶと、鞄から緑色の発光体が飛び出してきて。
翠星石の手には如雨露が召喚される。
「そんな事っ、させないですっ」
翠星石の目は怒りで満ちている。
「へぇ……そんな事も出来るんだ。
 それで私を殺すの?ならそうして……」
「……」
「どうせこのまま生きていても、私はもう一度あいつを殺そうとして
 捕まるか、殺されるか……それしかないもの」
翠星石は思った、この人間は私と近くなんか無い。
そして、本当にジュンを殺そうとするかもしれない。
勿論真紅たちはそう簡単にそうはさせないだろうが、100%守りきれる保障は無い。
「選んで……私の言うとおりあいつを殺すか。
 桜田ジュン君を見捨てるか。
 それとも私を殺すか……その場合は、恐らくこの子も治療を続けられないけれど」
そう言って可奈の頬を撫でながらマナは言った。
「……ずるいです、選べるわけが。無いですよ……」
マナに向けていた如雨露は、カタカタと震えていた。
目からは大粒の涙が溢れ出してくる、それを止める事は出来なかった。
「お前のこと、信じてたですのに……」
カタン、と如雨露が落ちる音が病室に響く。
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:14:09.61 ID:K45v76X20
雰囲気を壊すな。
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:14:45.12 ID:qK9cn3yn0
創作キャラまで出して、よくここまで面白くできるなぁ
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:16:45.99 ID:+Tge2ffwO
なんかバットエンドになりそう
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:16:46.71 ID:t9ib2Oaf0
描いてやったですぅ
ありがたく思いやがれですぅ

http://or2rakugaki.a.orn.jp/cgi-bin/src/orn17869.jpg
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:16:51.01 ID:YkkAbGFv0
支援だ
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:17:39.39 ID:hrQWbVJm0
翠星石は膝を突いて両手で顔を覆って泣き出してしまった。
「ひっ、くぅ、何でそんな事を言うのですかぁ」
「……考える時間を上げるわ」
「うっ…うっ…」
「もう一度夜に来る、面会時間ギリギリに……それまでに決めておいて」
「……」
「こんな事私が言えた事じゃないけれど。本当にゴメンなさい。
 最初はあなたのこと道具として見ていたけど、今はそんな事無い。
 あなたのこと、好きよ」
そう言うとマナは病室を出て行った。
病室には寝ている可奈と、未だ泣き続けている翠星石が取り残された。
そしてその一部始終を窓から見ていた蒼い発光体は、今の主人の場所へ戻っていった。
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:22:48.17 ID:+Tge2ffwO
>>106
地下鉄サリン事件のあの人に・・・
いや何でもない
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:23:39.83 ID:zNpjCSeV0
>>106
あれ?愛せないんだけど
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:24:33.06 ID:hrQWbVJm0
これで半分位かな……?
キリが良さそうなので今日はここまでです、
自分も明日はちょっと用事があるので。

明日の夜には後編を投下予定です。

創作キャラについては……大分抵抗がありましたが、
なるべくローゼンの世界観に近づけたつもりです。
苗字に植物が入る→柏葉巴→柏餅→和のデザート?
→お萩→萩峰って感じで作りました……
名前はお察しの通り 双子=マナカナ?
って感じでです、カナだけ漢字なのは金糸雀と被るから

初めてで結構緊張しましたが、支援してくれた方本当にありがとう!
ではまた夜に……
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:25:19.26 ID:RKFoquneO
乙!!!楽しみにしてるぜ!
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:25:38.82 ID:GO4J8lpjO
乙!
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:25:39.97 ID:K45v76X20
乙です。期待してます!
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:25:56.94 ID:7zCHx+IQ0
お疲れ!!
アニメ化しようぜこれ
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:26:19.11 ID:zNpjCSeV0
まってます
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:27:21.55 ID:xymlF8340
>>111
乙です!
続きを楽しみに今日一日生きます
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:28:16.73 ID:8666KLngO
もし良ければ明日は今日よりもう少しばかり早めに初めて頂けたら嬉しいです。
楽しみにしてますよ。
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:28:28.47 ID:JsDL9AmrO
乙だなあ
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:28:54.24 ID:9DRVyCRL0
水銀鐙の黒い部分が出てきそうで怖いな(´・ω・`)
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:38:48.40 ID:PRY2wfSyO
素晴らしい
原作の雰囲気もどことなく感じられる
続きが楽しみ
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:39:11.26 ID:lt9iFHEt0
乙!
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 03:41:51.46 ID:YkkAbGFv0
これ保守するの?
それとも今回はこれで落とす?
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 05:00:39.17 ID:ofqdFRzGO
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 06:59:01.60 ID:fJ9xhhO1O
保守
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 07:03:47.11 ID:qK9cn3yn0

面白かった
後編に期待
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 08:33:52.65 ID:UpNAOOBc0
おもしろかったよん
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 09:09:39.09 ID:tcPPoFfWO
雰囲気出てて好きだな

保守
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 09:15:38.72 ID:u3APN+aTO
保守
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 09:18:00.57 ID:4KC40o4+O
保守
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 09:45:54.11 ID:QEVNEU3tO
ジュン、翠星石死ぬなよ
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 09:57:58.22 ID:RTa3F1GMO
おもしれえ!
ほし
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 10:23:29.18 ID:S1Wt2XvJO
ほしゅ
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 10:32:37.37 ID:4KC40o4+O
保守!
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 10:49:04.84 ID:1MvesY/MO
保守!
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 11:26:30.96 ID:ufXN+S8D0
保守か
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 11:42:22.85 ID:2uZgk3epO
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 12:08:00.03 ID:YkkAbGFv0
まだ残ってるのか。
保守
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 12:13:31.28 ID:kMraEi9yO
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 12:14:54.90 ID:4KC40o4+O
資格試験終了まで残ってますように…
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 12:50:12.69 ID:YkkAbGFv0
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 13:27:47.34 ID:xU0T2APX0
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 13:35:42.40 ID:OSc7e792O
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 13:50:19.52 ID:YkkAbGFv0
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 14:04:52.86 ID:4KC40o4+O
wktk保守
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 14:17:03.81 ID:Qe+wcg/IO
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 14:32:27.30 ID:u3APN+aTO
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 14:38:27.31 ID:YkkAbGFv0
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 14:44:10.54 ID:TGGuwo1fO
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 15:07:13.30 ID:YkkAbGFv0
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 15:15:07.08 ID:mdj1MMq/0
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 15:18:52.48 ID:d+S5amdG0
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 15:44:13.71 ID:HMzuBNezO
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 15:58:25.37 ID:w2ArTyMD0
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 16:16:37.85 ID:YkkAbGFv0
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 16:23:39.15 ID:mdj1MMq/0
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 16:28:18.78 ID:1cL7AWqg0
(ローゼンの英語ファンダブがようつべにあがる)
Kはファンダブ作った中の人。

N > ”DESU”がないぞ
K > ”DESU”は日本語だ。これは英語ダブ
r > ”DESU”が無いからダメだな
K > ”DESU”を英語の語尾につけちゃうのもあれだしなぁ
N > Di Gi Charatでは”Nyo”はついてたぞ
K > それとこれとは違う。”DESU”は日本語の一部。”Nyo”はノイズだ
N > ”DESU”は重要な特徴だ。"DESU"か、その代わりをつけられないのではダメだ
K > じゃぁどうしろと。Suiseisekiの特徴はちゃんと取り入れて作ったんだぜ
T > いい質問だ。…”DESU”って書いたちっちゃい吹き出しを貼ってけばいいんじゃね?
T > 努力は認めるけどさ、”DESU”が入ってないとローゼンファンには認められないよ?
   ”DESU DESU DESU!”がないとSuiseisekiとは全く別物だからな
K > ”DESU”って入れてみたけど不自然だったんだよう T-T ごめんよぉ
s > NEEDS MOAR DESU! (もっとDESUを!)
a > DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU
   DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU
   DESU DESU DESU DESU DESU DESU DESU
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 16:34:17.05 ID:qHgCiIgD0
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 17:10:01.30 ID:8666KLngO
保守
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 17:35:17.84 ID:gmvOGLVfO
ほす
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 17:56:27.82 ID:2iZAd/U8O
支援です
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 18:13:40.14 ID:ufXN+S8D0
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 18:24:56.16 ID:pBeei2RQ0
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 18:25:16.45 ID:YkkAbGFv0
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 18:39:16.40 ID:5X+X+s9y0
ho
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 18:53:18.01 ID:GO4J8lpjO
mo
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 19:05:09.67 ID:YkkAbGFv0
ta
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 19:26:23.09 ID:kVYW52WR0
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 19:29:13.02 ID:2uZgk3epO
 
真紅「ふぅ…保守も大変ね」
 
JUM「こらー!勝手にパソコン使うなー!!」
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 19:38:11.44 ID:YkkAbGFv0
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 19:40:45.38 ID:4KC40o4+O
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 19:59:51.97 ID:YkkAbGFv0
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 20:12:29.04 ID:2iZAd/U8O
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 20:19:04.88 ID:YkkAbGFv0
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 20:29:54.46 ID:YkkAbGFv0
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 20:29:58.21 ID:GO4J8lpjO
アッー!
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 20:49:10.39 ID:5X+X+s9y0
ウホッ
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 21:04:20.51 ID:JsDL9AmrO
ウボァッー
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 21:27:22.86 ID:2uZgk3epO
あげるですぅ
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 21:35:44.56 ID:YkkAbGFv0
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 21:52:21.19 ID:GO4J8lpjO
ほしゅなのだわ
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 21:52:33.85 ID:hrQWbVJm0
戻りました……
まさか残ってるとは思わなかった。
保守してくれた方たちありがとう!

では、10時から後編を投下し始めますね。
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 21:53:18.19 ID:GO4J8lpjO
待ってたぜ
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 21:56:11.19 ID:YkkAbGFv0
お、来たのか
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:01:10.98 ID:hrQWbVJm0
未だに翠星石は泣き続けていた、部屋の隅の物陰で膝を抱えて
人間に見つからないよう声を殺しながら。
また人間に裏切られてしまった、信じた人間に。
翠星石に残された選択肢は、あまりにも残酷なものだった。
どれを選んでも、大切な何かを失ってしまう気がした。
「人間なんてっ、人間なんて……」
そう呟いた翠星石の頭には、ジュンの顔が浮かび上がっては消えていく
「ジュンだって人間ですっ、何時私の事を裏切るか……」
ドールとの契約する事の意味を知りながら、自分と契約をしてくれたジュン。
「大体今回の事だって、あの人間がもっと花に気を配っていれば」
真紅のため、過去のしがらみに抗いながら腕を取り戻したジュン。
「あの人間は私の事を追い出したですし……」
傷つき、弱っている自分達の前に。言葉どおり命を懸けて守ろうとしてくれたジュン。
ジュンと翠星石は、確かに喧嘩をすることが多かったが。
それだけにお互いの事を分かっていた、少なくとも翠星石はそう思っている。
ジュンは始めて人間と人形。では無く対等な立場で接してくれた人間だった。
「人間なんて……」
流れる涙を止めようともせず、翠星石は膝を抱く腕に力を入れて呟いた。
「会いたいですっ、会いたいですよ。ジュン……」

「あらぁ、誰かと思ったら翠星石じゃないの。
 いつもくっついている真紅と離れて別行動?意外だわぁ」
突然の声に驚いて顔を上げた翠星石は、直ぐに立ち上がると如雨露を構える。
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:06:32.36 ID:hrQWbVJm0
今まで気付かなかった姉妹の気配に、迂闊であった自分を呪いながら翠星石は答えた。
「一体何の用ですかっ、水銀燈」
「こわぁい、そんなに怒鳴らなくても……あなた、泣いてるの?」
「そんなの、お前には関係ないですっ」
「ぷっ、あははは。ださーい、部屋の隅っこに?蹲って?
 とてもローゼンメイデンのすることじゃあ無いわね」
「うるさいですっ、お前こそローザミスティカを横取りしておいて……」
「まだ根にもってるのぉ?うざったいわねぇ」
「蒼星石のローザミスティカを返すですっ」
翠星石は身構えた。

「あら、やろうって言うの?こんな場所で。
 守ってくれる真紅やあのマスターも居ないのに?私は別に構わないけどぉ」
翠星石は寝ている可奈に目をやると、相手を睨みながら如雨露を降ろした。
「いい子ね、翠星石。ところであなた、こんな所で何をやってるの?
 この人間は誰?」
「お前こそ何をしにここに来たのですか……まだ羽も治ってないですのに」
ピクッと目じりを反応させながら水銀燈は言った。
「質問を質問で返すんじゃないわよ、
 それに羽はもう戦闘でも使えるほど回復しているわ。見くびらないで頂戴」
「……お前は、殺したい人間が居る。そう言ってた事があるですよね」
「何よ突然……それがどうしたって言うの」
「何故殺そうと思ったのですか」俯いて、翠星石は尋ねた。
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:11:36.13 ID:hrQWbVJm0
「はぁ?」
「何故ですか?憎しみで人間を殺しても。誰も喜びはしないですのに……」
「馬鹿じゃないの、喜ぶ為に殺すんじゃないわ。許せないから……殺すのよ」
「人間を糧としか見て無かったお前に、許せない人間なんて居たのですか?」
「ふん、糧の分際の人間が私のモノに手を出した。だから殺そうとした。それだけよ」
「そう……お前にも、大事な人間が出来たのですね」
少し微笑みながら、翠星石は言った。
「……ジャンクにされたいの?何を聞いたらそんな事が分かるのよ」
相手を射殺すような目で水銀燈は翠星石を睨んだ。
「目ですよ」
「……目?」
「言葉は酷いですが、さっきの言葉を言ってるお前の目は。
 いつもと違って優しかったです」
「なっ、馬鹿じゃないの。そんな口からでまかせ……」
「でも……お父様の言いつけを破ってまで、なんで殺そうとしたのですか」
少し戸惑った水銀燈だったが、すぐに落ち着きを取り戻して翠星石に言った。
「……それを一番分かっているのはあなたのはずよ、翠星石」
「えっ?」
「双子の妹のローザミスティカを横取りした相手が目の前に居るわ。
 さっきの如雨露を構えたときのあなたの目には、確かに殺気が宿っていたわよ」
「……」
「相手が人間か、人形か。の差よ……
 あなたの心にも憎しみって感情は存在してるわぁ。
 だから、いい子ぶるのはやめなさい。翠星石」
翠星石は反論をすることが出来なかった、相変わらず俯いて考えている。
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:16:46.06 ID:hrQWbVJm0
「それに、私自身が人間を殺したいと憎んで居た訳じゃないわぁ」
「えっ?」
顔を上げる翠星石の疑問を無視して、水銀燈は相手を睨む。
「質問には答えてあげたわ。今度は貴女がこたえなさい。
 なんでこんな場所に居るの?さっきの質問の意味はなに?」
「……」
目を逸らさずに見つめあい、沈黙が病室を包んだ。
「質問に答えてくれてありがとうです……水銀燈。
 私は今日……人間を殺すかもしれないです」
「………はぁ?」
水銀燈はあまりの驚きで間抜けた声を出してしまった。
人間を殺す?この姉妹の仲で一番臆病で、平和ボケをしている子が?
「どういう意味……」
最後まで声を発することなく、水銀燈の言葉はまばゆい光にさえぎられた。

「そこまでよ。水銀燈」
「翠星石!迎えに来たのよ」
まばゆい光と共に鏡から飛び出してきた真紅と雛苺は、
翠星石と水銀燈の間に入って水銀燈を睨みつけている。
「真紅……貴女まで一体何の用なの」
「とぼけるのはやめなさい、水銀燈。
 全部貴女のせいだったのね」
「はぁ?」
「翠星石がなかなか帰ってこなかったのは、あなたが……」
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:21:13.20 ID:hrQWbVJm0
「違うですよ、真紅」
真紅の声をさえぎって翠星石は、水銀燈の方へ歩き出した。
「す、翠星石?どうしたの?」
雛苺は心配そうな顔で尋ねる。
「どうもしないです、ただ翠星石は水銀燈と話をしていただけですよ。
 それから……私はもう、あの人間の家には戻らんです」

「え……、何ですって」
驚いたのは真紅や雛苺だけではない、
水銀燈も驚いていた、先ほどの言葉が頭によみがえる。
「何を言っているの、翠星石。
 まさかあんな口げんかを真に受けて」
「……あの人間は私を必要としてなんか無いです。
 大体出て行けって言ったのは人間ですからね」
「……本気で言っているの」
「本気です、大体あんな人間はこちらから願い下げですよ」
翠星石は無表情で答えた。
「……冗談はやめて。お願い」
真紅は弱弱しく答える。
「冗談なんて言ってないです」
「翠星石!」
真紅は翠星石を押し倒すと、平手打ちをする。
「貴女はジュンが、どれだけの思いで貴女を探していたか分かるのっ。
 それこそ倒れるまで、貴女を探し続けたのよ。
 今も苦しんでいるジュンの気持ちが、あなたには……」
真紅の目からはポロポロと涙が流れている。
平手打ちの痛み、顔に落ちてくる涙を感じながら翠星石は考えていた。
普段泣かない真紅が、こんなにも涙を流している。
それほどにジュンは、私の事を探していてくれたのだろう。
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:26:32.40 ID:hrQWbVJm0
「どいて欲しいです、真紅」
「どかないわ、貴女が謝るまで」
「どきなさい、真紅」
羽を広げながら水銀燈は真紅を睨みつけた。
「水銀燈、この子に何を言ったの」
「別に、何も言って無いわ」
「嘘はやめて、お願い。翠星石を元に戻して」
「何?都合の悪い事は全て私のせい?」
「じゃあ、何でこの子はこんな事を……」
「……考えも無しでその子がそんな事を言うと思うの」
予想外の言葉に、真紅は目を見開いて水銀燈を見つめる。
「水銀燈……なにか、知っているの?」
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:27:33.67 ID:GO4J8lpjO
支援
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:31:27.37 ID:hrQWbVJm0
「スイドリーム!」
突然翠星石が叫ぶと、緑色の発光体が真紅の目の前で眩く輝いた。
思わず目を瞑ったその次の瞬間、前方から強い衝撃を受けて真紅は後方に吹き飛んだ。
「水銀燈、来るですよっ」
「まって、翠星石〜」雛苺は追いすがるように翠星石にしがみつく。
「離せですぅ」翠星石は手のひらで力強く雛苺を押し倒した。
「いたっ……」
尻餅をついた雛苺に、あっ。と一瞬戸惑いを見せるが、
直ぐに水銀燈の腕を引っ張り、可奈の夢の扉を開けた。
そして飛び込んだかと思うと。夢の扉は閉じてしまった。
部屋には唖然としている真紅と、泣き喚く雛苺が取り残された。
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:37:00.07 ID:hrQWbVJm0
一面真っ白な世界、しかしその世界を縦に割るように緑色の線が走っている。
その線の根元、世界樹の枝が突き出しているふもとに翠星石と水銀燈は居た。
「一体なんのつもりぃ?」
「あのままあそこに取り残されたかったですか……」
「別にそれでも、なんとでもなるわ」
「お前の羽はまだ戦闘には使えないです……
 それに、あの付近にはマスターが居たのでしょう?」
「……」
「答えたくないのならいいです……
 nのフィールドへの入り口は開けてやるですから。お前は帰るですよ」
「知ってたのなら。なんで、真紅たちに言わなかったの」
「……なんでお前のマスターを真紅に教えなきゃいけないのですか」
「……ふん、貸しだとは思わないわよ」
「思わなくていいです、とっとと帰るですよ」
目の前に黒い渦巻きが出現する、nのフィールドへの入り口だった。
「そうさせてもらうわ」
「水銀燈」
水銀燈が入り口に入る一歩手前で、翠星石は呼び止めた。
「なによ」
数秒の静寂の後、翠星石は決意したように言った。
「お前の言うとおりです、最初は……お前を憎んでました。
 お前を壊して、ローザミスティカを取り返すしかない、そう思いました。でも」
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:41:19.16 ID:LuKR7vHg0
wktk
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:42:15.71 ID:hrQWbVJm0
「……」
「お前を壊しても蒼星石は帰ってこない。
 それに……きっと蒼星石はそんな事を望んでないです」
「詭弁ね、上辺だけの意味なんか無い、一番嫌いなタイプの言葉だわ。
 蒼星石が望んでないからアリスゲームなんかしない?あなたは馬鹿にしているの?
 蒼星石は私を恨んでいるわよ、少なくとも拒絶しているわ」
「勘違いするんじゃねぇです」
「はぁ?」
「蒼星石はローザミスティカを横取りしたお前をそう簡単には許さないと思うです……。
 翠星石だってそうです。でも、憎しみを持ってアリスゲームをするべきじゃないって、
 きっと蒼星石はそう言うですよ……
 あの子は、どんな辛い事にもまっすぐ立ち向かっていく子でしたから……。
 だから私も、私なりのやり方でアリスゲームをやっていくです」
「……あなたなりのやり方?」
水銀燈の頭には、真紅の顔が浮かんだ。
「本当に馬鹿ばかりね……私達は、絶望をして、憎みあう為にうまれてきたのよ」
「それに……お前を壊したら、私みたいに悲しむ人間がきっと出てくるです」
「私が壊れて悲しむぅ?そんな人間は居る訳無いじゃない」
「お前のマスターは悲しまないのですか」
「……そんなもの、知らないわ」
「とにかく……すまなかったです」
「……」
「お前のことは許せないですっ。でも、もうお前を憎む事を止めるですよ」
「それって、矛盾してるわよ」
「してないです、きっといつか。
 お前を壊さずに蒼星石のローザミスティカを取り返して見せるです」
「……勝手にすればぁ?せいぜい返り討ちにあわないようにね」
そう言うと相手の顔を見ずに水銀燈は渦の中に消えた。
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:46:19.54 ID:hrQWbVJm0
水銀燈が消えた後、翠星石は周りを見渡した。
白い、ただただ真っ白な世界だ。
「夢が……無いです」
ここは9秒前の白に近い世界なのかもしれない、
そう思いながら歩き進んでいくと、思ったよりも簡単に目的のものは見つかった。
大きい、とはいえない樹がそこには立っている。
まだまだ若木なのだろう。そう思い樹を見上げた翠星石は、意外なことに気がついた。
「枯れて……ないです。……そうですか。お前はただ、迷子になっているだけなのですね」
優しく樹を撫でながら翠星石は若木の根元に腰をかけた。
「決めたですよ、マナ……
 ううん、本当は真紅達に会ったときに決めていたのかもしれないです」
そういって翠星石は震える手で膝を抱える。
「蒼星石、勇気を……少しだけ分けてくださいっ」

197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:51:31.83 ID:hrQWbVJm0
「そう、翠星石ちゃんは見つからなかったのね」
病院の入り口でひたすら待っていたのりは、
真紅たちと合流して外にて話していた。
「……えぇ」
「ヒック……」雛苺は泣きじゃくっている。
「大丈夫よ、きっと見つかるわ」
雛苺を撫でながらのりは微笑んでいた。
二人はのりに本当の事を言わなかった。
心配させてしまうし、何よりも翠星石の言葉が信じられなかった。
そして真紅は引っかかっていた、水銀燈の言葉が。
翠星石があんな事を言ったのには必ず理由がある、
なるべく早く突き止めなければ。
「のり、お願いがあるの」
「なあに?真紅ちゃん」
「ジュンが心配だわ、私達の螺旋を巻いたら。
 もう今日は帰って頂戴、私達はもう少し探していくわ」
「で、でもっ……」
「お願い、明日には必ず帰るから」
のりはダメだ、と言おうと真紅を見るが。
その瞳の力強さが、ジュンと重なって見えてしまう。
「分かったわ……そうだ。コレを持っていって」
溜息をつくと、のりは携帯を手渡した。
「けいたいでんわ、というものね」
「困ったら、電話してね。すぐにジュン君と駆けつけるわ」
「ありがとう、のり」
真紅は元気なく微笑んだ。
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 22:57:27.20 ID:hrQWbVJm0
「雛苺、何時まで泣いているの?」
「グスッ……だって」
「静かになさい、人間に気付かれるわ」
バスで帰るというのりと別れ。
二人は病院の屋上に上がっていた。もう太陽が沈み、黒くなった空を眺めて二人はジッと時を待っている。
「翠星石、きっと怖い事されたの」
「どうして……?」
「だって……翠星石の顔。泣いてたの」
「えっ?」
「涙の後が残ってたから……」
真紅はあの時冷静では居られなく、そんな事には気付いていなかった。
「そう……なら尚更よ、助けてあげましょう」
「うん」雛苺は必死に涙を堪えながら答える。
「必ず翠星石はまたあの病室に戻る。
 あの部屋に寝ているベッドに、萩峰可奈と書いてあったわ」
「うゅ……」雛苺は唸って考えている。
「今日の朝ジュンと回ったマンションの最後の家の苗字が、萩峰だった。
 そしてあの部屋にはのりが見たタクシーに乗る込む女の人は居なかったわ。
 かならずあそこに迎えに来る、今日来なくても。繋がる筈よ」
「直接マンションに行くのはだめなの?」
「ダメよ……翠星石と一緒に居るところで見つけないと。
 人間だけ見つけても、翠星石に戻る気が無い限り解決はしないわ、
 もしさっきの部屋にドールの反応が戻ってきたら。
 またnのフィールド経由ですぐに行くわよ」
「うん」
二人は空を見上げる、徐々に見え始めてくる星を眺めながら、真紅は呟いた。
「また……あの生活に戻れるわよね……翠星石」
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:01:36.45 ID:hrQWbVJm0
薄暗い病室の中、ガラガラと音を立ててドアが開いた。
時計の針は七時四十五分を差そうとしている、面会時間もじきに終わるだろう。
部屋の中に一歩踏み込み、中を見渡したマナは俯いて呟いた。
「そう……あなたまで私を裏切るのね」
「勘違いするんじゃねぇです」

病室にある鏡が光り輝き、翠星石が飛び出してくる。
「……本当にいろんな事が出来るのね」
驚く様子も無く、マナは冷たい目で翠星石を見据えて言う。
「逃げたかと思ったわ」
「そんなわけ無いです……ここに居ると人間に見つかるから。
 少し他の場所で待ってただけですよ」
「そう、疑ってゴメンなさい。
 ……それじゃあ、早速だけど答えを聞かせてもらえるかな」
翠星石は相手を見つめて、黙り込む。
「……早く答えて、黙っているなら拒絶だと受け取るわよ。
 アイツか、私か、ジュン君か。
 どちらにしろ誰かが死ぬの、早く答えなさい。簡単な選択肢でしょ」
「私は、他の選択肢を選ぶですよ」
翠星石は静かに答えた。その目はまっすぐとマナを見据えている。
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:07:10.94 ID:ufXN+S8D0
しえん
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:07:11.77 ID:hrQWbVJm0
「何いってんのよ、三つ以外の選択肢なんて無いわ……」
「スイドリーム」
翠星石が静かに呟くと、病室は眩い緑色の光で包まれる。
「なっ、何を……」

光が静まったとき、マナは床に倒れていた。
そして翠星石はマナの頭上にある黒い渦に飛び込むと、渦は消えて静寂は戻った。
次の瞬間再び鏡は光り輝き、中から真紅と雛苺が飛び出してくる。
「くっ、少し遅かったわね」
「翠星石っ、どこに行ったの」
「雛苺、nのフィールドへ戻るわよ」
「え?」
「見なさい、翠星石はそこに倒れている人間の夢の中に入ったのよ。
 nのフィールドからなら……たどり着けるかもしれない」
「う、うぃ……でも真紅、ジュンが居ないと長い時間は……」
「分かってる、それは翠星石だって一緒よ。急ぎましょ」
二人は顔を見合わせて頷くと、鏡に再び飛び込んでいった。
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:11:24.19 ID:hrQWbVJm0
「うぅ……ここは」
上体を起こしたマナは目を見張った。
辺りは一面闇に包まれている、上下左右、天地でさえ今の自分には分からない。
自分は翠星石に殺されてしまったのだろう、そう思うと自嘲の笑みを浮かべた。
「目を覚ましたですか」
声の方に目を向けると、翠星石が如雨露を持って立っている。
「なっ……あなた、私を殺したんじゃ」
「誰がそんな事するですか、私は言ったはずですよ。
 お前の出した選択肢は選ばないって」
「じゃあ、ここは何処なの」
「ここは、お前の夢の世界ですよ」
「夢……」
マナは辺りを見渡すと、翠星石を睨む。
「こんな暗いところが?
 まぁいいわ、すぐにここから出してよ」
「嫌です」
「出しなさいっ」
マナはナイフを取り出すと翠星石に向けた。
「それで私に人間を殺させようとしていたですか」
「そうよ、あなたの移動手段があれば簡単な話でしょ」
「……お前は憎しみで周りが見えなくなってしまっているですよ」
「知ったような口を利かないで。
 あの子があんな事になったのはあいつのせいよ。
 なのにアイツは能天気に、少しも悪びれずに生きてるわ」
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:15:44.53 ID:w2ArTyMD0
shien
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:16:33.25 ID:hrQWbVJm0
「本当にそう思うですか」
「当たり前じゃない……私がアイツに会いに行った時だって、
 何時も留守で……やっと会うことが出来ても
 復讐すら果たせず返り討ち」
怒りに震えながらマナは叫ぶ。
「殺してやるっ、あんな奴は私の手で!
 もうお前にも頼らない。桜田ジュンも殺してやるっ」
「マナ……」
息を荒げてナイフをこちらに向けるマナを、
翠星石は悲しそうな目で見つめた。
「お前の樹は、枯れかけているです。
 あの子とは対照的に……」
「は?樹?何を言って……」
「憎しみで身動きが取れなくなっているのです」
「……うるさいっ、早くここから出せっ」

『おはよう』

暗闇の世界に突然声が響き渡る。
その声は、どことなく寂しそうだった。
「なっ……何でアイツの声がこんな所に」
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:19:09.01 ID:poWZbGu/O
支援
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:20:03.45 ID:fuYifPNx0
支援せざるおえない
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:20:18.01 ID:fuYifPNx0
あげわすれ
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:20:22.28 ID:JsDL9AmrO
なんてシリアスなんだ・・マナカナのくせに悔しい・・・ビクビクッ
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:22:01.81 ID:hrQWbVJm0
『今日も遅くなってゴメンな……』

「これは、スイドリームが流してくれている記憶ですよ」
「えっ……」

『今日は少し顔色がいいんじゃないか?
 いい事があったのか』

「翠星石、なんのつもり?
 あなた、コイツと会った事があるの」
「……これは、お前が帰った後に。
 私がベッドに寝ている妹の夢の中で聞いた声です」
「え?」

『そうか、きっとマナさんが会いに来てくれたんだな』

「……何これ、出鱈目をみせてお涙頂戴って訳?いい加減にやめてよ」
「マナ……気付こうとしなければ、気付けない事だってあるです」
「うるさいっ、例え本当の事だとしても私には関係ない!」

『ゴメン…本当にごめんな』
青年の声は震えている。

「こいつは私の妹の命を奪ったのよ!誰よりも大切な」

『僕は弱い男だ、いざって時は自分のことしか考えられない』

「そうよ、コイツはいつも自分のことばっかり」
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:27:26.77 ID:dmOxaJRO0
期待している
しえん
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:27:32.48 ID:hrQWbVJm0
『君のお姉さんにも、酷い事をしてしまった』

マナはハッとすると、俯いて黙り込んでしまった。

『自分可愛さに身を守ろうとしたはずみに、彼女を傷つけてしまうなんて……』
『ほとほと自分の事が嫌いになるよ』
『やっぱり、僕はマナさんに殺されるべきだったのかな』
『可奈、本当はこうなるのは僕だったのにね……』
『そう言えば今日……』
他愛も無い近況報告が続く……一方通行の会話。
しかし彼はどこか嬉しそうに、話していく。
マナはそれを黙って聞き続けた。
『……そうだ、今日はいい報告がある』
『長い間待たせてゴメンな、もうすぐなんだ、もうすぐお金が溜まるよ』
『そしたら、もっといい病院に移って、いい先生に見てもらおう』
『早く目を覚ましてくれよ……可奈』

「もう止めて……」

『早く会いたいよ』

「もう止めて!!」
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:29:14.86 ID:GO4J8lpjO
激しく応援
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:31:00.40 ID:hrQWbVJm0
マナの叫び声に、翠星石は驚いてスイドリームを止めた。
「何よ、そんなの勝手だわ。あのこの命を奪っておいて、私を傷つけておいて」
マナの顔は涙でくしゃくしゃになっている。
「無駄よ、どんな事をしてもあの子は帰ってこないんだものっ」
「……」
「早くここから出して!あいつを殺してやるっ」
「嫌です」
翠星石の両目には、涙が溜まっている。
「もう……いいわ、あなたを壊してここから出てやる!」
マナは目を瞑り、ナイフを突き出して突進をしてくる。
どう見ても簡単に避けられる突進、
マナ自身にも殺意は無かった。
あくまでコレは脅し、怖がりの翠星石ならコレで従うかもしれない。
そう思った。



ザクッ



「あうっ……」
「……え?……」
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:32:29.72 ID:GO4J8lpjO
翠星石ぃぃぃぃいいぃぃ!!!!!!
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:39:16.46 ID:hrQWbVJm0
恐る恐る目を開いたマナが最初に見たものは、腹部に深々と刺さっているナイフ。
手にはしっかりと分厚いドレスを貫き、その奥の柔らかい体を引き裂く感覚が残っていた。
翠星石はマナの方に倒れこんで、全身から汗を噴出している。
「う……嘘、何で避けなかったの……」
「……くっ、少しは……落ち着いたですか」
「どうして……どうして!」
「言ったじゃ、ないですか……私はお前の選択肢は選ばない……
 どうしても誰かが死ぬなら、それは……翠星石ですよ」
「どうして……」
壊れたように同じ質問を繰り返すマナに、翠星石は微笑みながら言った。
「いい事を教えて…やるです、お前の妹は……もうすぐ目を……覚ますですよ」
「えっ……?」
「お前の妹の心の樹は……少しも枯れてなかったです」
「……心の樹?」
「なぜだか分かるですか……?お前や、お前が憎んでいるあの人間が
 毎日懸命に話しかけて居たからです……」
「……」
「でも、今のままじゃ……目覚めないです」
「え……」
「それは……
 お前が妹の事を忘れているからですよ」
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:45:24.67 ID:USfer7Ta0
クオリティー高いな
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:46:09.84 ID:hrQWbVJm0
「そ、そんな事無いわ、私は何時だってあのこの事を……」
「じゃあ答えるですっ、お前は最近あの子に会いに来ていたですかっ」
翠星石は痛みに顔を歪めながら、相手の体を揺さぶった。
「お前は妹の事を諦めてたんじゃ無いですかっ。
 復讐にばかり気を取られて、
 話しかけることも無かったんじゃないですかっ」
「そ、そんな事」
「妹は少し迷子になってしまっているだけです……
 姉やあの人間の言葉を頼りに扉の近くまで来たのに」
「……」
「扉の近くまで来たのに、呼ぶ声が途絶えてしまったのですよ……」
「そんな……」
「大切な妹じゃ無いのですか!」
翠星石は大粒の涙を流しながら叫んだ。
「大切な妹なら、他の誰が諦めようと。
 呼び続けるべきですっ」
翠星石の頭には、蒼星石の顔が浮かぶ。
「お前があの人間を殺したら……
 もう誰も妹を呼んでくれないのですよ……」
「そ、そんなの嘘よ……」
「嘘だと思うのならそれでもいいです……だけど、
 あの人間を殺す前に一日でも、一日だけでも、妹の傍に……居てあげて下さいっ」
翠星石は膝を突いてマナに倒れこんだ。
「翠星石!」
それをマナは受け止めた。
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:50:36.47 ID:USfer7Ta0
てか蒼の死後の世界ですか
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:51:32.33 ID:hrQWbVJm0
「翠星石!」
真紅と雛苺が叫び駆けつけてくる。
世界樹の枝を伝ってきた二人は、息を切らしながらもマナを睨みつける。
「人間、お前が翠星石を……」
「ちが……うです……よ」
翠星石は力なく二人を見て答える。
マナは喋る事も無く、翠星石を抱いてただ泣いていた。
「翠星石、喋らないで」
真紅は傷の具合を見る。
深い……もし生き残って人工精霊で治療をしても。長い時間がかかるだろう。
「いやぁ、翠星石しなないでぇ。もう悪戯もしない。
 お花の傍では遊ばないわ、いい子になるからぁ」雛苺は泣きながら叫んだ。
「オバカ……苺、もう翠星石は……あんな事……怒ってないですよ」
「翠星石、しっかりしなさい。このまま壊れるなんて、私は許さないわよ」
真紅でさえ涙を浮かべていた。
「あんな事を言った私を……許してくれるのですか?」
「何を言ってるのよ、あなたが本気じゃなかった事位分かるわ。
 だって……私達、姉妹なのだから」
翠星石の手を握りながら真紅は答えた。
「真紅……」
「何?」
「マナは……何も悪くないですよ」
真紅は壊れたように泣いているマナを見上げる。
「でもっ」
「翠星石が……自分で……選んだことなのです」
「……分かったわ」
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:56:28.07 ID:hrQWbVJm0
翠星石が微笑んだ次の瞬間、暗闇の世界は大きく揺れ始める。
「これはっ……夢が終わろうとしているわ」
真紅は立ち上がって周りを見渡す。
あちらこちらにひびが入って崩れ始めている。
「早く避難を……きゃっ」
突如真紅たちの足元に大きな地割れが発生し、
バランスを崩した彼女達を飲み込もうとする。
「あっ、翠星石!」
何とか地割れから逃れたマナの手から、
滑り落ちるように翠星石は奈落の闇に落ちていく。
意識はもうすでに途切れているようだ。
「翠星石!私は翠星石を追うわ、あなたはジュン達にけーたいで連絡を取って頂戴」
「ひ、ヒナも行く!」
「ダメよ!頼んだわよ」
そう言うと真紅は有無を言わずに地割れに飛び込んでいく。
真紅の姿が見えなくなると、雛苺はマナに視線を移した。
少し迷うような素振りを見せるも、立ち上がるとマナの手を引っ張って扉へと走った。
「しっかりするの!ヒナ達まで飲み込まれたら、翠星石が怒るわ」
マナは虚ろな目をしながら引っ張られて行く。
涙を流しながら引っ張る人形と、引っ張られる人間は。そのまま扉へと消えていった。

221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/25(日) 23:58:44.94 ID:l/UCptcR0
しえん
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:00:29.77 ID:p6N5Ltu40
水銀燈は夜の暗闇の中、桜田家に程近い電柱の上に腰をかけて。空を見上げていた。
「ったく、あいつ等いつまで病院にいるのよ」
めぐの発覚を恐れた水銀燈は、病院からいったん離れて様子を伺っているのだ。
「……まぁ、あんな病院戻れなくてもかまわないけどぉ」
「鞄が置いてあるし、どちらにしろあの子達は邪魔だわ」
誰に話しかけているのか。
一人でそう呟いた水銀燈だが、心中穏やかではなかった。
そして何かに反応して目を見開いた水銀燈は、溜息をつくと立ち上がって桜田家を見た。
「翠星石の反応が小さくなっていくわね……本当にお馬鹿さん」
そういって右手を桜田家に向ける。
「行きなさいレンピカ、私はあんな子に借りを作るだなんてゴメンだわ。
 今日はあなたは自由。せいぜい馬鹿な人間の為に動いてあげなさい」
そう言うと、宛もなく水銀燈は飛びたって行く。

223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:02:12.61 ID:oFXI3vZp0
かっこいいなw
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:06:54.77 ID:p6N5Ltu40
「う……う……」
微かに聞こえてくる声に反応し、ジュンは目を覚ました。
頭に手を当てる、頭痛はすっかり消え去っていた。
少しだるい体を起こして、時計に目をやる。
8時過ぎを刺している時計を見ると、目を見開いた。
「やばっ、寝すぎた……あいつら帰ってきてるだろうな」
飛び起きたジュンは、足早にリビングへと向かった。
「うう……真紅ちゃん、翠星石ちゃん……」
リビングからは、のりの泣き声が響いている。
それを聞いたジュンは、リビングへと駆け込んだ
「お、おい!どうしたんだよ」
「ジュン君!真紅ちゃんが、翠星石ちゃんが……」
受話器からは雛苺の泣き声も漏れている。
「何が起きたんだよ、教えろよ!」
「真紅ちゃんと、翠星石ちゃんが……迷子に」
「迷子?」
「うっ……うっ……」
「くそっ、電話を貸してくれ」
ジュンはのりから受話器を奪う。
「おい、雛苺。真紅は?泣いてたら分からないだろ」
「……」
「……え?」
事情を聞いたジュンは、青ざめて受話器を落とした。
「す、翠星石が……?嘘だ……真紅もそれを追って……」
膝から崩れ落ちると頭を抱える。
「僕のせいだ……僕が……」
『ジュンのばかぁ!』
受話器から雛苺の声が聞こえる。
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:08:03.54 ID:peI87VbrO
信じられない構成力…。
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:11:16.50 ID:p6N5Ltu40
『うっ……ヒック、ジュンは諦めちゃダメなの』
「……」
『真紅はnのフィールドの隙間に自分から落ちちゃったの……
 でも全然怖がってなかったわ』
「え……」
『ジュンが助けに来てくれるって信じてたからなのよっ』
「助け……られるのか?」
『うん……今からヒナが迎えに……ジュン?』
雛苺の返事を聞くなりジュンは駆け出していた、鏡の部屋に。
「おい!nのフィールドへ行かせてくれ!」
ジュンは鏡を叩きながら叫ぶ。
「あいつらを助けなきゃ……助けなきゃいけないんだ!
 翠星石が苦しんでるんだ…真紅だってきっと怖がってる……
 全部僕のせいなんだ!頼むから行かせてくれよ!」
ジュンは膝を突いて鏡にもたれかかる。
「頼む……頼むから……ここを」
その次の瞬間、青白い光が鏡に映った。
「えっ……人工精霊?」
振り向いたジュンの目には、蒼い発光体が映った。
「たのむ、ここを開けてくれ……おい!」
そのまま廊下を進んでいく人工精霊に、ジュンは叫びながら後を追った。
「何処に行くんだ!たのむからnのフィールドへの扉を……」
行き着いた先はリビング、そして……蕾になっているソバの花の上であった。
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:11:46.96 ID:ItytnvsT0
明日面接で、今履歴書書かないといけないのに…
まぁいいか
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:13:02.83 ID:64j3HGU20
支援
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:15:42.40 ID:p6N5Ltu40
「ジュン君……その妖精さんは……?」
のりは懸命に涙を堪えながら言った。
次の瞬間、花の上には黒い渦が発生する。
「nのフィールドへの入り口……?お前……」
蒼い発光体はその中に入っていく。
「……姉ちゃん、行ってくる。あいつらを迎えに」
「えっ……」
「きっと、連れ戻してくるから」
そう言ってジュンはリビングに置いてあるドールズの螺旋をポケットに
突っ込むと、黒い渦に飛び込んだ。
その直後に黒い渦は消滅する。
「ジュン君……」
そう呟くと、のりは涙を拭った。
「ヒナちゃん、ジュン君は真紅ちゃんたちを迎えに行ったわ」
「ううん、蒼い妖精さんがね。ジュン君と」
「うん、きっともう大丈夫だから……ヒナちゃんは帰ってきて……」
そう言って受話器を置くと。
のりはソバの花の前に座り込んだ。
「……あなたには、蒼星石ちゃんの想いが入っているのよね?
 お願い……みんなを……」
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:16:03.66 ID:f+YS5oJGO
追試があるのについつい見てしまう
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:19:56.06 ID:64j3HGU20
俺も明日テストだったな・・・でも支援
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:20:39.49 ID:p6N5Ltu40
暗闇の中、真紅は翠星石を背負い。懸命に飛び続けていた。
同じ場所を回らないよう、薔薇の花弁を撒きながら。
「しっかりして、翠星石。
 ジュンの所に行けば、傷の治りも早くなるわ」
「……」
もう意識がない翠星石に、真紅は話しかけ続ける。
「まだローザミスティカは出ていない、単に螺旋が切れてしまっただけよ」
「……」
そう言っている真紅も気付いていた、自分の螺旋ももう長くは持たない。
足の感覚が鈍くなり始めている。
「私達、ここで朽ちて終わってしまうのかしら」
「こんな所で眠りに着いたら、もう見つかるわけ無いものね」
そう言うと、真紅は辺りを見渡す。一片の光さえ見つけられない。
「暗闇……怖い、怖いわ……助けて……ジュン」
真紅はとうとう飛ぶことを諦めてしまう。
地面すらない、何処までも落ちていく感覚を感じて。
真紅は翠星石を抱きながら目を瞑った。
「どんな事があっても……翠星石、あなただけは……」

233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:21:30.74 ID:oFXI3vZp0
少しうるってきた

頼む>>1よ!!
そのクオリティーで蒼い子主人公の小説を!!
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:23:53.96 ID:p6N5Ltu40

ジュンはただひたすら、蒼い発光体を追いかけている。
「なぁ、本当にこっちにあいつらが居るのか」
微塵も反応を見せない人工精霊に、ジュンは一抹の不安を覚える。
「お前……蒼星石の人工精霊だろ、今は水銀燈にくっついてるんじゃ」
辺りは白い霧に包まれ始め、進むことも難しくなってくる。
「お、おい。もうちょっとゆっくり進んで……」
人工精霊はぐんぐんと先に進んで行き、とうとう見失ってしまった。
「おい!……くそっ、あいつらはここら辺に居るはずなんだよな」
周りを見渡すが、何も見えないどころか。戻る道すらも分からなくなっていた。
「……待ってろよ、必ず見つけるから……真紅、翠星石」
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:27:19.78 ID:oFXI3vZp0
保守
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:29:09.50 ID:p6N5Ltu40
……白い、真っ白です……
ここは……9秒前の白ですか……?
……あれ、9秒前の白って何でしたっけ

「やあ、ここにお客さんが来るだなんて久しぶりだね……君の名前は?」

名前?私の名前……なんでしたっけ……お前は何者ですか?

「名前なんてものの本質を示すには至らない些細なもの……」

……でも必要なもの、だから大切にした方がいいです……あれ?

「そう……僕は自分の名前を、自分自身の事を見失ってしまった。
 それを探して、僕はもうずっと彷徨っている」

私は……お前を知っている気がするです……うっ…うう……

「そう……?僕も君を知っている気がする、
 ……何故泣いているの?泣かないで……君の泣き顔を見ていると、何故か不安になる」

分からない、分からないですけど……止まらないですよ
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:30:29.98 ID:kI8EPAPGO
上手いなあ
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:34:12.71 ID:p6N5Ltu40
「君は……どうしてこんな所に来たんだい」

分からないです……何も思い出せない

「そう。でも、君の目には迷いがある」

迷い……ですか?

「ここはさっき君が言っていた通り、9秒前の白。
 君は……まだここに来るには早いよ」

そう、なのですか?

「君にはまだ帰る場所がある、
 まだ遣り残している事があるんじゃないかな、違うかい?」

……

「おいで、一緒に探そう、君自身への帰り道を」

ま、待ってください。置いていかないで

「僕が導いてあげる……無意識の海。
 現在過去未来 奔流するイメージ
 交流する時間と記憶、始まりと終わりの源流
 ━━記憶の海に身を任せて、君を探すんだ」
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:34:16.68 ID:KEIfXEkpO
なにこのクオリティ
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:38:38.68 ID:p6N5Ltu40

待って、流れが速くてっ……

あれは……さっきの子…
一緒に居るのは、私?

「それは君の記憶の映像だよ、へぇ……
 やっぱり僕たちはお互いに知っていたんだね」

そうですね……私の顔、とても嬉しそうです……

「くすっ、そうだね。僕の顔も」

色々な風景……全部、お前と一緒に見たものなのですね……

「……」

やはり、私の居場所はもう無いのかも知れないです。
お前と一緒にここに……どうしたのですか?

「いや、なんでもない」

あっ……あれは誰?冴えない顔の人間

「でも、その隣で君は幸せそうに笑っているよ」

そ、そんな事無い……と思うです……
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:41:32.22 ID:vvpDvrjyO
支援
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:42:30.15 ID:p6N5Ltu40
「あの赤やピンクのドレスの子、僕も知ってる気がするな……」

私も、そんな気がするですよ

「どう?少しは何か思い出せたかい」

……いえ、でももういいのです。私はお前と……

「僕は思い出したよ、少しだけ……」

えっ?

「君には聞こえないのかい?さっきから聞こえるあの声が」

何を言ってるのです?何も聞こえないですよ

「気付こうとしなければ、気付けないよ……君を呼ぶ声も、君自身の本当の気持ちも」

私の本当の気持ち……?

『す……せ……すい………き』

えっ?

「君にも聞こえたかい……君を呼ぶ声が」

『翠……石、翠星石!』
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:47:07.34 ID:p6N5Ltu40
突如、凄い勢いの水の流れが翠星石を襲った。
「思い出した……全てっ、全て思い出したですよ」
「しっかりするんだ、流れに逆らっちゃいけない!大事な人を思い出して!」
「嫌ですっ、私はここに残るです。蒼星石っ」
言葉は水にかき消され、蒼星石まで届かない。
「君は帰らなくちゃ、大事な人を思い出すんだ」
「いやですっ、私はお前とここに」
「君には前にも言ったはずだ。君は一人で歩ける強さをもう、持っている!」
「えっ……?」
「あの声は君を呼んでいる、君には帰らなきゃいけない場所があるんだ」
「蒼星石……」
「振り向いちゃダメだ、大切な人を思い出して!

 翠星石!」

翠星石は両目から大粒の涙を流した。
とても懐かしい感覚……最愛の妹に名前を呼んでもらったのは、
もう随分と久しい気がした。
翠星石は蒼星石の方を見て力強く頷くと、
蒼星石に背を向けて流れに身を任せる。
流れる涙をそのままに、必死にさっきの人間の事を考える。
いつも我侭で、引き篭もりで、喧嘩ばかりしていた相手。
だが時々見せる優しさ、強さは。
今まで見てきたどんな人間とも違っていた。
「ジュン……私を呼んでくれているのは……お前なのですか?
 ジュン……ジュン……ジュン!」
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:51:26.59 ID:ItytnvsT0
イイハナシダナー
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:51:38.53 ID:p6N5Ltu40
「翠星石……翠星石……」
ジュンは翠星石を抱えて、涙を流して名前を呼び続けている。
「ジュン……私がついていながら、ゴメンなさい」
「真紅のせいじゃないだろ……
 お前が居なきゃ、こんな暗闇の中お前らと会えなかったんだ」
ジュンは偶然にも二人を見つけることに成功していた。
レンピカを見失った場所、丁度その場所から薔薇の花びらが漂っていた。
真紅が最後の力を振り絞って出していた薔薇の花びらをたどり、真紅たちを発見したのだ。
そして持ってきていた螺旋で真紅たちを巻いたのだった。
「螺旋を巻いても、やはり起きないのね……」
「翠星石……起きろよ、翠星石……」
「……」
「こんなのって無いだろ……何でだよ、何で……」
「ジュン……」
「まだ僕は謝ってない……花の事、出て行けなんていってしまったことっ」
「……」
「目を開けろよ!翠星石!」
ジュンは大声で叫んだ。
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:53:43.52 ID:64j3HGU20
支援
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:55:00.96 ID:ySG1mlwL0
ぐすん(´・д;`)
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:55:33.30 ID:p6N5Ltu40
その直後、何処から現れたのか。辺りは大量の水に包まれる。
「うわっ、いきなり何だ……溺れるっ」
ジュンは真紅と翠星石を必死に掴むと、水から逃れようとする。
「落ち着きなさい、ジュン!これは……無意識の海よ」
「無意識の……そうか、前に僕も」
二人は顔を見合わせると、頷いた。
「翠星石、そこに居るのでしょう?
 あなたの返る場所はここにある、流されないで」
「翠星石、僕たちはここに居るんだ。
 戻って来いよ」
真紅とジュンは呼びかけるが、反応は無い。
ジュンは俯くと、搾り出すような声で言った。
「ふざけるなよ性悪人形……こんなの僕は認めない。
 もし出てこないんだったらあの花は僕のものだ!
 悔しかったら……出てきて文句の一つでも言ってみろよ!」
次の瞬間、水はいきなり消滅して、ジュンは尻餅をついた。


「ゴホッ……何勝手な事を言ってるですかチビ人間……」
翠星石は起き上がる。苦痛で顔を歪めながら立ち上がると。
ジュンの懐に飛び込み、顔を埋めて服を掴んだ。
「あの花は、絶対お前にはやらんです……絶対に」
「翠星石……そんなこと、分かってるよ」
腹部に冷たい感覚を覚えつつジュンは、涙を流しながら翠星石の頭に手を置いた。
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:55:39.48 ID:f+YS5oJGO
眠れないィィィィィッーー!!
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:57:26.31 ID:z3QtEr/80
両翼側涙腺崩壊っ!
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:57:54.59 ID:tfV0IcRJO
(*´д`*)'`ァ'`ァ
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 00:59:02.97 ID:p6N5Ltu40
パンパンパン
辺りに手を叩く音が響く。
「ブラボゥ!見事でしたよ坊ちゃん、まさか本当に魂を呼び戻す事が出来るとは」
「ラプラスの魔」
真紅は声の主を見つけると、ジュンとの間に入って手をかざした。
「一体何の用なの?」
「はて、用などあるわけがございません。
 私が興味があるのはアリスゲームと……その坊ちゃんのみ」
「あなた……最初から見ていたのね」
「その通りです。なかなか楽しませて頂きましたよ」
「だとしたら……」
「力を貸して欲しかった……そう言うのですか?」
「……」
「ククク、私は単なる観客。誰の味方も、手助けする気もありませんよ。あしからず……
 しかし、今回の出来事はなかなか楽しませて頂きました。そのささやかなお礼を致しましょう」
白いウサギは手を上げると、ゆっくりと引き降ろす。
その空間は引き裂かれ、中には桜田家にリビングが見えた。
「……一体何のつもりなの」
「この扉を使わないのもあなた方の自由です。
 しかし使うなら早くした方がいい、道化ウサギは気が変わりやすいから」
ラプラスは目を笑わせながら言った。
「行こう、真紅」
ジュンは翠星石を抱えて言う。
「そうね……今の私達に、nのフィールドの隙間から抜け出す力は残されて無いのかもしれないのだから」
真紅とジュンは警戒しながらもラプラスがあけた扉を潜っていく。
暗闇に一人残されたラプラスは、面白そうに一人笑っていた。
「ククク、ここで朽ちられてもつまらないですからね。
 はてさて、四番目のお嬢さん。あなたが撒いた種は、
 はたして貴女の思いを果たしたのか、それとも単に危険に晒しただけなのか……」
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:03:13.25 ID:p6N5Ltu40
「ねぇ可奈、私は間違えてたのかな」
柔らかい日差しが窓から入り、部屋を優しく包んでいる
「そういえば、最近こんな風にあなたに話しかけて無かったわね」
「ごめんね、弱いお姉ちゃんで……私はやっぱりまだ一人じゃ、歩いていけないわ」
マナは、目じりに浮かんだ涙を拭いた。
「昨日、翠星石が言ってくれたわ。可奈の心の樹は、少しも枯れてないって」
「パパとママでさえ諦めて、私も諦めてたのかもしれない……でも」
「看護婦さんに聞いたよ、アイツは毎日来てたんだってね」
「私ね、もう憎むのをやめるわ。可奈が目を覚ましたとき、怒られちゃうし……」
ガラガラ、と音を立てて扉が開く。
入室者をはマナを見ると驚いて、一歩後ずさった。
「マ、マナさん……今日は仕事のはずじゃ」
「今日は休んだわ、あなたに言いたいことがあって」
「……」
明らかに恐怖の色を見せる青年に、マナは頭を下げて言った。
「ゴメンなさい」
「えっ?」
「本当にゴメンなさい、あなたを襲った事。許して欲しいの」
目を見開いた青年は、すぐに頭を下げて言った。
「……いや、僕のほうこそ許して欲しい……可奈をこんな目にあわせたのは」
不自然に言葉を切ると、青年は目を見開いてこちらを指差している。
その目には、涙が浮かんでいた。
不思議そうな顔で青年を見つめるマナの背後から、突然声が聞こえた。

「お姉ちゃん……おはよう。聞こえたよ……お姉ちゃんが、私を呼んでくれた声」
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:06:20.34 ID:p6N5Ltu40
「なぁ、翠星石……一つ聞いていいか?」
「何ですか?」
リビングで、翠星石の髪をとかしながらジュンは尋ねる。
「真紅から聞いたんだけど、このソバの花って薔薇屋敷から持ってきたんだよな」
「そうですけど?」
「蒼星石が植えたんだよな……一体どんな意味があるんだ?
 僕がお前らのところに向かうときだって、この花から扉が……」
「そ、そうなのですか?」
翠星石は若干顔を赤らめながら答える。
「あぁ……なんで鏡からじゃなくてこっちから……」
「そんなの、お前には教えてやらんですよっ」
「何だよ、気になるだろ」
「自分で考えろですっ」
翠星石は嬉しそうに答える、
首を傾げるジュンの耳元に、怒声が響いた。
「ちょっと翠星石、もう怪我は問題ないはずよ!
 いい加減ジュンに介抱して貰うのはやめなさい」
「な、何を言ってるですか、翠星石の傷はまだまだ痛むのです。
 自分で動くだけでも激痛モンですぅ」
翠星石の傷は、三体の人工精霊とジュンの力によって順調に直っていき。
すでに包帯も取っていた。
「そうなのか?翠星石」
髪をとかす手を止めると、ジュンは翠星石を睨んだ。
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:06:32.46 ID:peI87VbrO
映画化いつ?
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:06:34.44 ID:64j3HGU20
ご都合ウサギ・・・嫌いだがいいキャラだ
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:07:34.24 ID:6jxq2OYz0
お父様、翠星石の破損を直してあげて
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:10:15.22 ID:p6N5Ltu40
「な、何を言ってるですか。傷が痛むのだからやらせてやってるのです」
「ねぇジュン、ヒナの髪もとかしてー」
「雛苺は黙ってなさい。大体ジュンは私の下僕なのよ。
 最近紅茶だってろくに淹れて……」
「なんですぅ。真紅ってば焼餅ですかぁ?」
「違うわよっ。そういえば翠星石、昨日雛苺と鬼ごっこしてたわよねぇ」
「うっ……一体何の事ですか?」
「楽しかったよねぇ翠星石ー」
雛苺は無邪気な顔で答える。
「お前ら……人を下僕だの、仮病使って介抱させてるだの……
 いい加減にしろ!そこに並べぇ」
「きゃー、チビ人間が怒ったですぅ」
「きゃー、ヒナも逃げるのー」
「ちょっと翠星石、待ちなさいっ」

賑やかなリビングの様子を、のりは幸せそうに見つめている。
そして、もう一つ……
美しく咲き誇った白いソバの花が。彼らを見守っていた━━
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:12:33.40 ID:64j3HGU20
オーベルは銀の話だったから、次はこれでいいな
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:14:02.01 ID:p6N5Ltu40
「ねぇ知ってる?水銀燈」
「何を?」
「もう目覚めないだろうって言われていた患者さんがね。
 永い眠りから目を覚ましたんだって」
「……そう」
「勿体無い事をしたよね……」
「何故そう思うの?」
「だって、こんな世界に生きていたって仕方が無いじゃない」
「……」
「みんなお互いに憎んだり、裏切ったり。穢れきってるもの。
 私は……水銀燈に、穢れないまま命を吸い取ってもらえるけどね」
嬉しそうに笑っている相手を水銀燈は見つめた。
「馬鹿ね……私は穢れているわ、今まで散々相手を憎んで、裏切って。
 恨まれてきたわ……そんな私と契約なんかしたら……」
「水銀燈……?」
「……なんでもないわ、少し散歩してくる」
そう言うと、水銀燈は窓から飛び出した。
飛びながら翠星石の事を考えた。
「翠星石……貴女は言ったわね、私を恨まないって」
「正直驚いたわ……一人じゃ何も出来なかったあなたが……」
「でも、ローザミスティカは渡さない。ただの一つも」
胸を手を当てながら眼光を鋭くし、水銀燈は言った。
「私にとってお父様は全てよ、
 憎まれても、穢れても構わない。絶対に全てのローザミスティカを集めてみせる。
 それが……私のアリスゲームよ」
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:15:32.43 ID:6jxq2OYz0
マナカナが翠の庭師能力をどこで嗅ぎつけたのかは気になる
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:15:57.92 ID:peI87VbrO
それにしても、登場人物が一人も空気化してないってのは本当にすごい。
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:16:56.92 ID:kI8EPAPGO
>>262
もう一人のカナが…w
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:18:00.69 ID:p6N5Ltu40
それほど大きくない、静かな公園。
翠星石は一人、遊具の中に座っていた。
やがて、人の気配を感じて。遊具の入り口から外の様子を伺う。
そこには、息を切らしてる一人の女性が立っていた。
「ごめんなさい……まった?」
「私も今さっき来た所ですよ」
「まだ、きちんと言って無かったよね……ごめんなさい」
「……しゃーないですね、許してやらんことも無いです」
「そして、ありがとう。私を止めてくれた事、可奈を助けてくれた事」
二人の間を、心地よい風が通り過ぎる。
「妹は元気にしていますですか?」
「うん、リハビリも順調よ。もうすぐ退院できそう」
「そう……よかったですね」
「あの子がね、夢の中で見たんですって」
「え?」
「緑色のドレスを着た、綺麗な目の女の子を」
「……そうですか」
「でもね、貴女の事は教えてあげなかった
 だって……貴女は、私のお人形さんだもん」
「なっ、何を……」
「あはは、冗談だよ、冗談。
 翠星石は、ジュン君の物だもんね」
「からかうんじゃねぇです!」
翠星石は赤面して叫ぶ。
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:20:12.84 ID:c9aGvVYm0
4時起きなのに読んでしまった
まあ面白かったので悔いはないけど
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:21:23.49 ID:p6N5Ltu40
「ふふ……翠星石、私ね。
 少しこの町を離れる事にしたの」
「えっ?」
「左目はもう見えないけれど、この右目なら……治療する方法があるらしいわ」
「そうなのですか?」
「うん……だから治療に言ってくる。
 でも、必ずまた戻ってくるから……そしたら、また会ってくれる?」
「何言ってるんですか、当たり前ですよ」
「……ありがとう」
そう言ってマナは眼帯を外した。
左目の美しい灰色の瞳が、翠星石を映した。
「怪我でね、目の色が変わっちゃってたの……
 あの時のことを思い出すし、少し前までの私は憎しみで、この目が嫌いだった。
 だけど……今はそんな事ない。
 この目を見るたびに、貴女を思い出せるから」
最初は驚いた翠星石だが相手の目を見ると、嬉しそうに頷いた。
「それじゃあ……行くわね、翠星石」
「はいです、マナ」
ゆっくりと離れていくマナを見ながら翠星石は思った、
もうマナは、一人で歩いていける強さを持っている。
やはり彼女は、自分と近い存在だったのかもしれない。
翠星石は鞄に乗り込むと、空高く舞い上がった。
「蒼星石、私もお前の事を諦めないです。
 何時までも呼び続けるです、お前が戻ってくるまで。ずっと……」
そういった翠星石は、何処までもまっすぐ、前を見つめていた。
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:24:10.75 ID:p6N5Ltu40
「蒼星石、そろそろ時間だ……」

「はい、マスター」
庭の手入れをしていた蒼星石にそう告げると、一葉は屋敷に戻っていく。
蒼星石は立ち上がると、足元にある小さい芽に目をやった。
僕には……守りたいものがある、救いたいものがある。
それは、僕みたいに自分で自分を縛りつけ、苦しんでいるマスター……
そして、誰よりも優しく、誰よりも自分の事を思ってくれる最愛の姉だ。
だけど二人を一緒に想う事は難しく、出来ないかもしれない。
だから僕は姉を傷つけてしまった、僕のせいで。
これは僕の決意だ、姉と同じくらい素直に物を言えなくなってしまった僕からの。
マスター、翠星石……もしこの花が育ったときまで僕が生きていたら。
この花を二人へ贈ろうと思う。
そしたら、きっと……全てが上手く行く気がするから。
この花の花言葉はね……


       『あなたを救う』

         

     翠星石が家出をしたお話 終わり
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:25:22.52 ID:M+zwstsm0
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:25:28.98 ID:P2AiUg4N0
>>1乙!!
書き方が珍しいし話もよく出来てて本当に面白かった!!
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:26:15.96 ID:MMRe0ndyO
超感動した。
ありがとう。乙
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:26:19.61 ID:GAu6mOE5O
>>1
感動をありがとう
272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:26:31.46 ID:f+YS5oJGO
>>1乙!!!


楽しませてもらったよ!!
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:26:32.11 ID:kI8EPAPGO
>>1ブラボー
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:27:04.59 ID:DEYLQ+hJO
>>1乙!良かった
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:27:20.62 ID:aTw3CaWLO
なんというクオリティ………
>>1乙!!!
ついでにまとめサイトの管理人さん、俺をラストに使ってください><
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:27:40.18 ID:KDCb9NW30
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:27:51.56 ID:jaw8zg5YO
>>1
泣いた
文の書き方もよかったし
とにかく乙
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:28:15.30 ID:tfV0IcRJO
>>1
お疲れ様です
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:28:20.56 ID:wVjCZsBv0
激しく乙!
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:29:00.98 ID:p6N5Ltu40
終わりました……
初めての作品で終わりまで投下できたのは
支援してくれたみんなのおかげです、本当にありがとう!

最後の方はちょっと描写不足な所もあったと思いますが、
感想や注意等書いてやってください。
もし次作品を作るとしたら……参考にさせてもらいます。

>>261
双子は庭師どころか、ローゼンメイデンすら知らない設定でした。
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:29:01.74 ID:o56Pu26xO
素晴らしかった!睡眠時間削って正解だったわ!
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:29:32.44 ID:8yfZXP/K0
文章力、構成力、そしてキャラクターの精神描写
全てが非常に高いレベルにあって引き込まれずにはいられなかった。

素晴らしい物語をありがとう。
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:29:47.93 ID:peI87VbrO
>>1
乙!
感動をありがとう。
本当に乙でした。
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:29:49.38 ID:64j3HGU20
乙!おもしろかった
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:30:41.26 ID:wT0hYY9K0
アニメしか見てないけど、蒼星石って死んだっけ?
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:31:09.58 ID:gLHgF36U0
>>285
アニメ見直して来い
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:31:16.75 ID:6jxq2OYz0
そばの花言葉を調べたら
「懐かしい想い出」「喜びも悲しみも」「あなたを救う」
何という含意。。。
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:31:56.40 ID:tgI4e/kzO
これは乙と言わざるをえない。
次回作に期待
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:33:01.68 ID:pAMAnVDC0
今北>>1
これは素晴らしいわ…
全キャラを遺憾なく使いこなすわ、オリキャラ蛾うざくないわ…
庭師ネタも此処まで使いこなせるとは…
ホント乙
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:33:29.78 ID:fvyTFAICO
鳥肌たった
お前は天才だ
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:33:35.15 ID:FE0OyueLO
0時から追い続けてやっと今追いついた。
感動したよ。ありがとう!
292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:34:55.76 ID:ItytnvsT0
マジ乙!
最初は犬にレイプされる展開wktkしてた自分を刺したい。
いいもん読ませてもらったよーーーー!!!
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:35:30.18 ID:LlUAjN940
お疲れ様でした。

これほど充実した読後感を得られたのは
いつぶりかわかりません。

本当にありがとうございました。
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:36:36.06 ID:l+Y3ekK0O
1先生の次回作をご期待下さい
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:37:24.31 ID:duMU3M8OO
感動したぜ。乙!!

小説自体はよく書いたりするの?
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:39:05.55 ID:nf/uHPeCO
>>1乙です
俺は犬が体当たりしたからとりあえず
パンツ脱いで続き期待してた自分に絶望しました
次はパンツ脱いでいいほうを作ってください
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:44:54.53 ID:5UQcT0Ii0
>>1
圧倒的乙
原作よりだった気がして、嬉しかった
というか初めてでクオリティー高すぎだ
ほんとありがとう
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:45:33.37 ID:6jxq2OYz0
>>296
期待のあまり、こんなスレを立てたりはしませんでしたか?w

ローゼンメイデンの獣姦を描いてくれる人をひたすら待つスレ
http://ex25.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1211722850/

余韻の残るよい読後感で、アニメ化すればオーベルを上回る質の特別編の元ネタになりそうな内容でした。
ただ僭越ながら、>>89,>>93辺りは唐突な感じで繋がりがやや不自然かもしれませんね。。。
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:47:59.65 ID:p6N5Ltu40
>>295
いや……いつもは読む方専門ですね。
少し前に真紅が死んじゃったりするお話をココで読んで。
自分も何か作れたなぁ。って思って書いてみたのがこの作品です。
だから、これが処女作ってことになるのかな
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:50:48.07 ID:peI87VbrO
>>1にはこれからもちょくちょく何か書いて欲しいな。
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:51:34.71 ID:KVkUU8FD0
やっと追いついた。

初めて書いたってのが信じられないほど面白かったw
また書いてくれ。
ありがとう。
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 01:53:58.07 ID:p6N5Ltu40
>>289
なるほど……なるべくインパクトのでかいシーンにしたかったんですが。
力量不足が否めませんね……もっと色々な物を読んで勉強します。
ありがとう!
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 02:02:54.89 ID:BWdG2kiN0
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 02:04:30.38 ID:Z1KSgHXF0
>真紅が死んじゃったりする話
ひょっとしてこれ?


http://rozen-thread.org/2ch/test/read.cgi/news4vip/1205285059/
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 02:12:26.15 ID:5TaJhgVJ0
乙…

最近見た10年後の薔薇乙女たちと同じレベルでwktkできた
次回作にかなり期待する
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 02:16:09.62 ID:5TaJhgVJ0
>>304
あの真紅を思い出させるなああああああああああああああ
307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 02:17:08.18 ID:eO7GUx840
乙っ!!
これが処女作って・・・・信じられん!
一つのキャラを悪役というか、悪者にするんではなくて、
すべてにキャラにいいとこがある。
正統派の模範だと思う。
308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 02:24:21.80 ID:d+ToZeW8O
ローゼンスカトロSS読んだ後だからこういう真面目な話は新鮮だ
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 02:34:09.24 ID:9AJg3oBR0
面白かった
オリキャラが出るのは珍しいな

そばの花ってのは良かったと思う。花言葉ぴったりだし、物珍しさで引き付ける効果もあったし
こういう良作を見ると自分も書きたくなるよねー

そしてカナは空気……
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 03:04:35.37 ID:vsxoE5aEO
乙!
>>299
例のその人にも全然負けてない出来だぜ、次回があったらよろしくな
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 03:19:47.03 ID:mVuL0QEeO
涙ぼろぼろです…
すばらしい作品をありがとう、次回作にも期待してます!
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 04:33:20.39 ID:B2ZITWZD0
>>1
面白かった
また書いてくれ
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 04:48:04.88 ID:LAXGPYMpO
>>1お疲れ様です
この作品が処女作と書いてありますけど、凄い才能だと思います
感動しました。
また、1氏の作品に出会えたら嬉しいです
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 05:14:43.46 ID:KkA/7zXe0
しかしキムはどこまでも不憫だw
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 07:17:32.34 ID:IFSMNFqx0
                ,ー、--―--、-、 _
             rーく__  `ー-、 _r-、,-、_\_
            / ,j\ \  ノ`r' ̄ ヽrク=rヽ_
            i ,イ   \ `ーr┤___,-riー、 `イi
           ///     \  ))::::::::::f { fハ!} j`}
           ソ/       `ーLヽ ̄ヽ二トク:\!
           V ー '     ` ―ヽメト、  _ィノヽ:|
              | ,=、      , ==、 ゝrクィ"l  |
            f!イ:::::r     イ:::::::iヽ _ゝ, -、 ノ
         γ゜ i| ゞっ'      r-ク   リ r /ク-、  イイハナシカシラー
           ,ィ/// 、     ///   _ノ/ ´  _>
          / ,∧   、 _       _r ー'ヽ/,/_i-─、<
          ヽ、イ> 、       _ イ     ` く , ―r_
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           /  ヽ´三匕メ-イL./            |ヽ-ニ-、
             /    f rj lil::|o |::|入          ) `−ノ
          ゝヽ   ffノi |L! oL:i  \|      ノ rー、_'
           `7    /ノノ  o   ノノ |    rイV   ノ
            l   く > == =‐'  ,|    L_-L--<二`─--
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/26(月) 07:32:11.03 ID:A7kphyoeO
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321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
>>1
今更だけど乙!