1 :
◆tAdHw/rYVY :
2 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:07:28.89 ID:pM/hw1Wh0
三十八章 人 < 後編 >
川 ゚ -゚)「行くぞ!!」
ドクオから離れたクーは、待ち構える二人の元に駆けた。
速い。距離は、あっというまに消失する。
それに対して、すっと弟者が前に出た。
兄者も前に出ようとしたが、弟者はそれを手で制す。
(´<_` )「来るが良い」
言葉と同時。
弟者の姿が下方へと流れる。
その一瞬の後、横薙ぎにされた刀の刃が、しゃがんだ弟者の髪の毛を切り飛ばして抜けた。
(´<_` )「ふっ!」
しゃがんだ状態から回転するようにして、地面と水平に足を横薙ぎにする。
それは見事に、クーの足を捉えた。
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:08:31.32 ID:wuMX0lo1O
パン
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:09:08.76 ID:9D2xTKpC0
すいません、パンについて詳しく教えてください
5 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:09:45.69 ID:pM/hw1Wh0
川 ゚ -゚)「ぐッ……!」
ぐらり、と彼女の体勢が崩れる。
弟者は追撃として、倒れゆく彼女の脇腹を拳で突き上げようとして―――
(´<_` )「!?」
何も捉えず、上方へ抜ける。
突如。その拳と腕に深い一閃が刻まれ、弾けるように血が噴いた。
見れば、クーの左手が振るわれている。
握られた青い刀には、血糊。
(´<_` )「“フリ”か」
川 ゚ -゚)「その通りだな」
崩れていた筈の彼女の体勢が、一瞬で整えられる。
対する弟者もすぐさま立ち上がり、彼女に相対した。
眼にも止まらぬ斬撃が、連続で空を刻んだ。
斬り刻まれた空は甲高い叫び声をあげ、やがて風切り音は途切れぬ一つの音となる。
しかし響くのは、いつまで経っても風の切れる音のみ。肉を刻む音は混じらない。
弟者はほぼ完璧に刀の軌道を読んで、全ての斬撃をいなし、かわしていた。
もはや舞うように、無駄のない動きで―――しかも隙があれば、反撃すら試みている。
洗練され尽くした運動能力と戦闘経験は、無能である筈の彼をこうまでも“異能”にしていた。
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:10:41.28 ID:wV1rdBlmO
パンツキター
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:11:12.93 ID:wV1rdBlmO
支援
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:11:34.26 ID:wV1rdBlmO
支援
9 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:12:26.41 ID:pM/hw1Wh0
だがやがて、刀の青い軌跡の中に紅が混じった。
刀をいなしている弟者の掌が、少しずつ切り刻まれているのだ。
紅は少しずつ増え、やがて床に小さな血溜まりを作る。
だがそれは、痛覚というものが存在しない弟者にとっては、何の影響もない。
そう、痛覚が存在しない。
だから彼は突然―――何の躊躇もなく、彼女の斬撃の軌道に自分の腕を差し出した。
血飛沫が舞い、刀は止まる。
川;゚ -゚)「ッ!?」
想いもしなかった事象から、彼女に生じる一瞬の停滞。
その一瞬の内に弟者は刀を跳ね上げ、彼女の手首を握り締めた。
(´<_` )「……捕まえた」
手首を思い切り引っ張り、それと入れ違えるようにして膝を突き出す。
膝は吸い込まれるように彼女の腹を抉り、鈍い音を経てた。
川;゚ -゚)「がっ!」
呻きと共に、口から血の塊が吐き出される。
しかし痛覚どころか感情すらない弟者に、容赦というものは存在しなかった。
10 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:13:25.47 ID:pM/hw1Wh0
彼女に生まれた隙に、弟者は更に拳を撃ち込む。
それは彼女の頬を強烈に捉え、更に血塊を吐き出させた。
その拳で脳が揺さぶられたのか、彼女の身体がぐらりと揺れる。
弟者は更に攻撃を加えようとして―――
(´<_` )「!」
軽いステップを踏んで、クーから離れる。
直後、轟音。彼が立っていた箇所の床を突き破って、無数の巨大な何かが現れた。
(´<_` )「これは……」
現れたそれは、鋭く尖った頂点を持つ巨大な氷筍だ。
あと一瞬遅ければ、弟者の身体は貫かれていただろう。
(´<_` )「……本気、か」
川メ゚ -゚)「あぁ」
口の中に残っていた血液を床に吐き捨てて、クーは弟者を睨みつける。
弟者はその眼光に―――背筋が凍りつくかのような感覚を覚えた。
彼女の瞳に宿っていたのは、余りにも冷酷な殺意。
見えない圧力に軋む身体を無理矢理に動かして、弟者は構える。
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:13:49.16 ID:wV1rdBlmO
支援
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:14:07.00 ID:wV1rdBlmO
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:14:42.24 ID:wV1rdBlmO
支援
14 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:16:22.77 ID:pM/hw1Wh0
川メ゚ -゚)「この“力”は強力である分、使うと疲れやすくてな。
こんなところでは、出来る事ならあまり使いたくはなかったんだが……。
しかしお前は私が思っていたより強かった―――」
刀の刃の先端を、床に置く。
握る手には力を込め、そして一つ、深く息を吐いた。
川メ゚ -゚)「だから出し惜しみはしない。全力でいかせてもらう!!」
刀を、下から上へ振り上げる。
床に深く刀の跡が付けられ、刀の青い軌跡は上空へ抜け―――
そして一瞬。
振られた刀の延長線上―――クーと弟者を繋ぐ直線の床から、巨大な氷筍が次々と現れた。
(´<_` )「!!」
迫りくる氷筍に、弟者は身体を思い切り横に投げ出す。
それでも少し間に合わず、顔を出した氷筍に右足が深く抉られた。
(´<_` )「ぐっ……!」
それによって、弟者の体勢が崩れる。
その一瞬の間に、クーは床を蹴った。
川メ゚ -゚)「散れ!!」
一瞬で弟者との距離を詰め、青い右腕を引き絞る。
弟者の体勢は整えられていない。感情のない瞳が、細められた。
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:17:22.46 ID:wV1rdBlmO
支援
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:17:54.18 ID:wV1rdBlmO
支援
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:18:16.79 ID:wV1rdBlmO
支援
18 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:18:56.64 ID:pM/hw1Wh0
しかし。
振るわれた異形の腕は、またしても弟者を捉えられない。
異形の腕は何もない空間を引き裂いて、抜けるのみ。
一瞬の間に、弟者は眼の前から掻き消えていた。
川;゚ -゚)「!? 何!?」
視線を前に飛ばして、クーは舌打ちする。
少し離れた位置に轟音と共に着地したのは兄者―――その腕の中には、弟者だ。
その異形の足の機動性を以てして、兄者は弟者を運んだのだ。
川#゚ -゚)「兄者……!!」
( ´_ゝ`)「弟者だけで事が済むかと思ったが、流石はクー。そう簡単に終わってはくれないか」
弟者を降ろし、兄者はクーに相対する。
そしてその足が後ろに引かれると―――
( ´_ゝ`)「ならば私が終わらせよう!!」
振るわれた。
同時に発生する、疾い不可視の刃。
川メ゚ -゚)「ッ!!」
右腕を前に突き出す。
僅かに力を込めると、その空間が凍りついた。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:19:17.76 ID:wV1rdBlmO
支援
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:19:58.12 ID:wV1rdBlmO
支援
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:20:16.06 ID:wV1rdBlmO
支援
22 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:21:12.83 ID:pM/hw1Wh0
不可視の刃と凍りついた空間は衝突し、共に破砕する。
それとほぼ同時に、クーは思い切り後ろに跳んだ。
直後。クーの目の前に何かが凄まじい速度で墜落してくる。
その何かは床に衝突し、爆音と共に砕いた床を巻き上げた。
( ´_ゝ`)「ほぅ、避けるか」
墜落してきたそれは、兄者だ。
クーは間髪置かずに刀を振るうが、しかしそれも兄者を捉えられない。
兄者はまたも遠く離れ、刀は虚しく空を斬りつけるのみ。
( ´_ゝ`)「遅いな、クー。欠伸が出そうだ」
川メ゚ -゚)「なら勝手に出すが良い。その喉を掻っ切ってやろう」
( ´_ゝ`)「のろい割に、口だけは達者だな。
どうせお前の遅さじゃ、私の喉は掻っ切れまいよ」
川メ゚ -゚)「試してみれば良いじゃないか。どうせ試す度胸もないのだろうが、な。
それに、確かにお前は速いが―――それがどうしたというのだ?
お前はその速さで、何をした? 逃げているだけじゃないか。それで何を誇っている、凡愚め」
どこまでも嘲っているような笑みを、口に浮かべた。
しかし実のところ、クーの内心にあるのは必死の懇願であった。
兄者の速さは実際脅威で、その速さを以てすれば、クーは兄者にダメージすら与えられない。
そして彼が放つ風の刃でじわじわと消耗させられ、いずれは敗北するだろう。
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:21:55.52 ID:wV1rdBlmO
支援
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:22:28.30 ID:wV1rdBlmO
支援
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:22:48.08 ID:wV1rdBlmO
支援
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:23:26.00 ID:0r5ZQqQqO
支援
27 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:23:59.67 ID:pM/hw1Wh0
だから彼を、近付かせねばならない。
『逃げながら徐々に削って行く』という戦い方を、彼から奪わねばならない。
だからここで彼に、この意思を悟られてしまえば……クーの戦闘は、苦しいものになる。
だが幸いにも―――
( ´_ゝ`)「……貴様」
彼は、乗ってきた。
内心の歓喜を嘲弄の笑みに変えて、クーは更に言い募る。
川メ゚ -゚)「頭に来たか? 腹を立てたか? なら、来てみろ。すぐにでも、その不健康そうな色の肌を切り刻んでやる。
それとも、またその足で逃げるか? 良いだろう、逃がしてやるよ。
どこまでも逃げるが良いさ、臆病な兄者。所詮お前は、私にとっては通過点に過ぎん」
( ´_ゝ`)「本当に、口だけはよく動くな。
……良いだろう。そこまで望むなら、殺してやろうじゃないか」
ふっと、風が踊る。
風は兄者に纏わりつくように集まり、そして小さな旋風となった。
( ´_ゝ`)「逃げる事も許さん。叩き潰してやろう」
瞬間。兄者の足元の床が爆ぜ、そして彼の姿が掻き消える。
それとほぼ同時に、クーは眼の前の空間に向かって異形の腕を振るった。
空を切る筈であったその腕は、金属音を経てて止まる。
腕が捉えた物は、振るわれた兄者の足だ。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:24:57.11 ID:wV1rdBlmO
支援
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:25:09.40 ID:0r5ZQqQqO
IDが地味に凄かったのに今気づいた
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:25:32.56 ID:wV1rdBlmO
支援
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:26:00.96 ID:wV1rdBlmO
支援
32 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:26:18.90 ID:pM/hw1Wh0
( ´_ゝ`)「ほぅ。捉えられたか」
少しだけ驚いたかのように、片方の眉が上がる。
その表情が、突如上へと流れた。
跳んだ兄者を追うように、その足元から氷筍が迫り出してくる。
兄者は中空で足を振るい、襲いかかってきた氷筍を蹴り砕いた。
川;゚ -゚)「ッ……逃がすか!」
クーは更に、右腕の周囲に氷塊を作成。放つ。
兄者はしかしそれすらも蹴って粉砕すると―――
( ´_ゝ`)「逃げないさ」
中空からクーに向けて、風の刃を放った。
クーは舌打ちすると、襲い来る不可視の刃を右腕で粉砕。
続いて、再度氷塊を作成―――ただしその数は先ほどとは比べ物にならない。
少なくとも、足の一振りでどうこうなる数ではない。
川メ゚ -゚)「着地する前に勝負を付けさせてもらおう!」
叫んで、放つ。
作成された氷塊群は容赦なく兄者に襲いかかって―――
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:28:20.71 ID:wV1rdBlmO
支援
34 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:28:41.27 ID:pM/hw1Wh0
( ´_ゝ`)「無駄だ」
ご、という音が響いた。
直後、兄者に襲いかかっていた氷塊が何かに弾き飛ばされ、ばらばらと床に落ちてくる。
川;゚ -゚)「な―――」
( ´_ゝ`)「私の“力”は風を操る事だぞ」
言いつつ、着地。
そして軽く腕を前に突き出すと―――
川;゚ -゚)「ッ!!」
クーの身体を、密度の高い風の波が打った。
その強さに、クーは数歩、後退る。
( ´_ゝ`)「跳んだり走ったり、風の刃を生み出すだけが能じゃないさ」
川メ゚ -゚)「……なるほどな」
( ´_ゝ`)「さぁ、行くぞ。逃げてみろ、生きてみろ。それが出来るというのならな」
そして、消えた。
巻き上げられた床の破片と爆音が、彼が床を蹴ったのだという事を後から認識させる。
同時、彼女は横に跳んだ。
その一瞬の後、彼女の脇腹を掠めるようにして、草色の異形の足が空間を薙いでいく。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:28:40.38 ID:wV1rdBlmO
支援
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:29:02.62 ID:wV1rdBlmO
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:29:55.56 ID:wV1rdBlmO
支援
38 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:30:32.86 ID:pM/hw1Wh0
直撃は、避けた。―――筈だった。
しかし彼女は吹き飛ばされ、堅い床に強かに身体を打ちつける。
見えぬ圧力に弾き飛ばされ、意味が分からないと言いたげな表情を浮かべる彼女に、兄者は言い放った。
( ´_ゝ`)「私の“力”は風。言ったばかりの筈だが?」
川;゚ -゚)「……なるほどな。無駄な“力”だな」
( ´_ゝ`)「その無駄な“力”に押されてるのは誰なんだろうな?」
クーが立ち上がるのとほぼ同時、兄者は地を蹴る。
距離は一瞬にして消滅。兄者の右足が跳ね上がり、クーの右腕が空を薙いだ。
激突。鈍く低く、部屋の空気を震わせる壮絶な金属音。
純粋な力の衝突は、一瞬の停滞の後に弾け飛んだ。
クーは右半身を大きく後ろに飛ばし、兄者も彼女と同じ体勢になる。
互いに生まれた隙を、互いに逃そうとする筈がない。
クーは左手の刀を斜めに斬り上げ、兄者はそれに風の刃で対抗した。
川#゚ -゚)「はぁっ!」
咆哮。軽い音を残して、風の刃は粉砕。緩やかな風となって霧散する。
しかし太刀筋は大きくズラされ、斬り上げた刀は兄者の前髪を斬り飛ばして上方へ抜けた。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:31:06.17 ID:wV1rdBlmO
支援
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:31:37.46 ID:wV1rdBlmO
支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:31:55.22 ID:wV1rdBlmO
支援
42 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:32:37.69 ID:pM/hw1Wh0
( ´,_ゝ`)「残念」
川#゚ -゚)「まだだッ!!」
踏み込み。そのまま手首を捻り、刀を唐竹割りに振り下ろす。
片腕による斬撃は、しかし十二分の速度と太刀筋を以てして、兄者に喰らいつこうと牙を剥いた。
が、しかし。
ぐらりと兄者の身体が後方に傾いたかと思えば、彼の身体がぐるりと天地逆転した。
結果、跳ね上がった足は振り下ろされた刀を直撃する。
川;゚ -゚)「ッ!?」
極限まで鍛えられた刀は、折れる事はしなかった。
しかし刀を通じて、手に痺れるような痛みが走る。
それによって、思わず刀を握る拳から力が抜けてしまい―――
そして、刀がするりと手を抜け出していく。
刀は空を鋭く貫いて、そして硬い音を立てて天井に突き刺さった。
クーは舌打ちし、兄者は嘲弄の笑みを浮かべる。
そして、猛攻が始まった。
まるで、空間を引き千切るかのような勢いで横薙ぎにされる足。
クーは体勢を低くして、間一髪でそれを回避。風で、クーの長髪が激しくはためいた。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:32:51.36 ID:wV1rdBlmO
支援
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:33:18.09 ID:wV1rdBlmO
支援
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:33:35.74 ID:wV1rdBlmO
支援
46 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:34:53.89 ID:pM/hw1Wh0
攻撃を加える為に接近しようとして―――僥倖。そして舌打ち。
たった今攻撃を回避したばかりの筈なのに、彼女の目の前には膝が迫っていたのだ。
川;゚ -゚)「チィッ!」
まるで彼女の胸部に吸い込まれるかのように伸びた膝を、クーは右腕で防御。
しかし右腕を越えてなお伝わってきた衝撃は、彼女の呼吸を一瞬、途切れさせる。
川;゚ -゚)「――――――ッ!」
その隙に迫ろうとする兄者に向けて、右腕を構えた。
即座にその掌に冷気が集束。複数の鋭利な氷の槍へと姿を変え、兄者に放たれていく。
( ´_ゝ`)「ふん」
しかし兄者は、床を蹴る右足の一歩で完全に接近の勢いを殺し、後退。
放たれた氷槍は兄者に掠る事もなく、全て床に食い込んで止まった。
クーはすぐに呼吸を整え、兄者を見る。
後退していた兄者は、しかし床に左足が着くと、その一歩で更に床を蹴った。
―――後退していた影が、あっと言う間に眼前まで迫る。
( ´,_ゝ`)「どうやら余裕がないようだが?」
嗤いながら、直進の勢いを乗せた前蹴りを放った。
横に跳んで回避するが、しかし一瞬遅かったようだ。
僅かに掠った爪先が脇腹を抉り、内臓にダメージを残して血をぶちまけていく。
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:35:11.87 ID:wV1rdBlmO
支援
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:35:49.03 ID:wV1rdBlmO
支援
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:36:05.16 ID:wV1rdBlmO
支援
50 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:38:19.86 ID:pM/hw1Wh0
川;゚ -゚)(速い。隙が、見付からない……!)
後退しながら、いや、と脳内で否定。
隙は見付けている。しかし、それを叩く前に、兄者の速さはその隙を埋めてしまうのだ。
ならば―――
川メ゚ -゚)(……作るしかないか)
叩ける隙がないなら、作るしかない。
彼の速さを以てしても埋められない隙を。
方法はいくつかある。
何が有効かは分からない。―――虱潰しに試していくしかない。
そしてもし隙が生まれたのなら、そこにありったけの攻撃をぶち込まねばならない。
一度突いた隙は警戒され、もう中々現われてはくれない。つまり、同じ方法で隙を作るという方法は取れない。
だから、隙を突くならば、それは致命傷を与え得る攻撃でなければならない。
川メ゚ -゚)(まず―――)
接近してくる兄者に、クーは更に後退した。
出来るだけ、速く。出来るだけ、長く逃げられるよう。
( ´,_ゝ`)「! 逃げるか、クー! 良いだろう、逃げろ逃げろ!!
しかし何時まで逃げられるかな!? 私から逃げるには、いささか遅すぎるな!!」
笑みを深めて、一際強く強く床を蹴りつける兄者。
それに対して、クーは―――
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:38:56.85 ID:wV1rdBlmO
支援
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:39:23.73 ID:k3KcwOqaO
またつまんねー糞小説か
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:39:25.24 ID:wV1rdBlmO
支援
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:39:46.65 ID:wV1rdBlmO
支援
55 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:41:18.99 ID:pM/hw1Wh0
川メ゚ -゚)「確かに逃げられないな。ならば、向かって行こうか」
後退する足を、その一歩で止める。
そして次の足は後ろでなく―――前へ。
瞳は兄者の胸を睨みつけ、そこを食い荒らす為の異形の右腕は、既に引き絞ってある。
(;´_ゝ`)「ッ!?」
兄者の嘲笑が、驚愕と戦慄に取って代わった。
大きく踏み出していた為に、足は床に付いていない。―――後退は、出来ない。
対するクーは、床をしっかりと足裏で踏み締め、距離を詰めていく。
そして引き絞った右腕を撃ち伸ばそうとして―――
(;´_ゝ`)「お……おぉおおぉぉぁぁあああぁっ!!」
川;゚ -゚)「ッ!?」
突如、兄者の身体が左に吹き飛んだ。
まるで何かに殴り飛ばされたかのように。
クーの振るった右腕は脇腹を抉り取り、血煙を巻き上げて抜ける。
クーの瞳が驚愕に見開かれた。
そんな。兄者の足は、床に着いていなかった筈……と。
直後。巻き上げられた血煙が横に流れ―――
そして彼女の頬を打っていった小さな衝撃に、彼女ははっと息を呑んだ。
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:42:02.22 ID:wV1rdBlmO
支援
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:42:25.34 ID:wV1rdBlmO
支援
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:42:58.93 ID:wV1rdBlmO
支援
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:43:42.04 ID:uxwRjoNJ0
支援
60 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:44:18.07 ID:pM/hw1Wh0
川;゚ -゚)「……風、だと?」
(;´,_ゝ`)「あぁ」
吹き飛んだ先、兄者はゆっくりと立ち上がる。
手で抑えた脇腹からは血が溢れ、指の間にも紅の筋が見えた。
(;´,_ゝ`)「避けようがなかったからな。仕方なく、自分の身体を吹き飛ばした。
ダメージは少なくないが……背に腹は変えられまい。命を捨てるには、まだ惜しいからな」
咳をすると、少量の血が口から吐き出された。
それでも、兄者は笑う。まだ、自分の優位を確信しているようだ。
( ´,_ゝ`)「しかし、惜しかったなぁ? ここで仕留められていれば、まだ勝機もあったろうに。
悔しいか? 悔しいだろうなぁ。数少ないチャンスを、逃してしまったのだからな」
川メ゚ -゚)「あぁ、悔しいな。
だがチャンスは、自分から作るさ―――数が少ないなら、増やしてやるまでだ」
言いつつ、彼女は兄者に右腕を向ける。
兄者はそのアクションに警戒し、足を構えた。
川メ゚ -゚)(次は―――)
力を入れる。
すると、伸ばした右腕の前に、小さな水の球体が発生した。
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:45:10.47 ID:wV1rdBlmO
支援
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:45:37.71 ID:wV1rdBlmO
支援
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:45:48.11 ID:uxwRjoNJ0
支援
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:46:04.64 ID:wV1rdBlmO
支援
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:46:15.91 ID:CY72iUnJ0
支援
66 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:47:08.99 ID:pM/hw1Wh0
( ´_ゝ`)「……何だ?」
不審げに眉根を寄せる兄者。
それに対し、クーが発生させた水の球はというと
( ´_ゝ`)「大きくなっている?」
徐々に徐々に、そのサイズを成長させていた。
川メ゚ -゚)「その通りだが」
( ´_ゝ`)「何を考えている。氷ならまだしも、水の球などで……」
川メ゚ -゚)「さぁな、お楽しみだ。
だが兄者、水を舐めてると痛い目を見るぞ?
まぁ元より、痛い目を見せてやるつもりなのだがな」
会話をする内にも、水の球はどんどんと肥大していく。
そしてやがて、そのサイズが彼女の背丈を越し―――
川 ゚ -゚)「とくと味わえ」
それが、放たれた。
( ´_ゝ`)「ふん。何を考えているかは知らんが……水程度で何が出来る」
対する兄者は、足を一振り。
その軽いアクションによって、風の刃が発生。
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:47:35.03 ID:wV1rdBlmO
支援
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:47:54.06 ID:uxwRjoNJ0
支援
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:47:55.00 ID:wV1rdBlmO
支援
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:48:15.15 ID:wV1rdBlmO
支援
71 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:49:52.12 ID:pM/hw1Wh0
硬度も何もない水の球は、ド真ん中から断裂。
凄まじい勢いで水をぶち撒け、それは水のカーテンを空間に生み出した。
しかしその即席の滝を、複数の何かがぶち破って兄者に飛来する。
( ´_ゝ`)「ぬっ!?」
飛んできたそれらを、兄者はその足を以てして回避し、そして粉砕。
しかし尚も、滝を突き破って飛来するそれは続いた。
( ´_ゝ`)「なるほど、これが本命か!」
飛来してきたそれは、鋭利な氷の刃だ。
無数に飛来するそれらを、兄者は次々と捌いていく。
( ´,_ゝ`)「だが、これもダメだったようだな!」
川メ゚ -゚)「そうかな?」
ふっと、クーは両腕を広げた。
それと同時、床にぶち撒けられた水が、兄者を包む濃霧と化す。
( ´_ゝ`)「……また目晦ましか! くだらない!」
兄者は旋風を起こし、霧を散らそうと試みた。
しかしその霧は、まるで兄者に纏わりつくかのように蠢いて離れない。
兄者は舌打ちをすると、目の前の白い空間を睨みつける。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:50:18.11 ID:wV1rdBlmO
支援
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:50:51.23 ID:wV1rdBlmO
支援
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:51:11.84 ID:a96/LFHH0
パンッ
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:51:17.09 ID:wV1rdBlmO
支援
76 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:52:28.01 ID:pM/hw1Wh0
( ´_ゝ`)「……ただの霧じゃない、か?」
異常なほど濃密な霧は視界をほぼ完全に埋め尽くし、クーの姿を彼の眼から隠していた。
軽く駆けてみる。が、やはり視界は変わらない。
風を起こしても跳んでみても、霧は白く厚く、彼の世界を染め上げていた。
( ´_ゝ`)「ふむ」
呟いて、彼は足を止めた。
クーの考えている事は明確だ。
霧で視界を遮り、死角から攻撃を仕掛けること。
ならば、むやみやたらと動き回るのは得策ではない。
疲れてしまえば、そこを突かれてしまう。
ならば極力動かないようにして、攻撃を仕掛けてきた際の回避の為に、体力は残しておくべきだ。
それに、動かなくとも、攻撃を回避する自信はある。
この両足を以てすれば、クーの攻撃を視覚してからでも十分に回避出来るのだから。
そして攻撃を回避すれば、こちらのターンだ。
攻撃の方向から、奴の場所は概ね特定出来る。
そこをまるごと、この霧ごと吹き飛ばしてしまえば良い。
( ´_ゝ`)「慌てる必要はないな。……来るが良い」
そして攻め来た時が、お前の最期だ。
77 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:53:00.13 ID:wV1rdBlmO
支援
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:53:03.30 ID:36Uy3kfG0
しえん
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:53:22.06 ID:wV1rdBlmO
支援
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:53:39.13 ID:CY72iUnJ0
かっこいい
支援
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:53:41.43 ID:wV1rdBlmO
支援
82 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:54:57.86 ID:pM/hw1Wh0
―――足に力を入れる事もなく、そこに佇む。
眼はどこを見るでもなく、出来る限りの広域をぼんやりと捉えていた。
無気力なその姿は、「かかってこい」という意思表示だ。
奇妙なほどの静寂が訪れる。
数分が経過しても、その静寂は破られない。
濃霧の中に動きも見られず、流石に兄者も眉根を寄せた。
( ´_ゝ`)「随分と焦らすな。集中力が途切れたところを狙うつもりか?
つくづく卑怯者だな、クー。やることが姑息だぞ」
分かってはいたが、返って来る音はない。
ただ霧だけが、ゆらゆらと不気味に蠢いただけだった。
ゆらりゆらり、流れて行く細かい水の粒。
その流れはまるで、自分の周囲に集まって来るかのようだった。
いや、それは「ようだった」ではなく―――
( ´_ゝ`)「霧が、集束している?」
突然。まるでその言葉が引き金になったかのように。
霧の流れが高速になり、兄者に集束。そして―――彼の両足が、凍結した。
(;´_ゝ`)「!? 何!?」
慌てて動こうとするが、出来ない。
兄者の両足を包んだ分厚い氷は床とも繋がり、兄者の移動の一切を制止していた。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:55:43.77 ID:wV1rdBlmO
支援
84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:56:08.16 ID:wV1rdBlmO
支援
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:56:10.52 ID:36Uy3kfG0
しえん
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:56:27.11 ID:wV1rdBlmO
支援
87 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:56:57.16 ID:pM/hw1Wh0
(;´_ゝ`)「くそ、小賢しい……! こんなもの、すぐに破壊してくれる!」
両足に力を込める。だが、やはり動く事は出来ない。
力を抜いて伸ばしきっていた足は僅かに曲げる事すら出来ず、力を込める事も許されない。
両足を、完全に封じてられていた。
「姑息な手でも何でも、勝てれば良いのさ。兄者。
卑怯者とでも、何とでも呼ぶが良い。それでも私は前へ進む」
(;´_ゝ`)「―――チィッ!!」
手を足に向け、小規模の風の刃を発生させる。
しかしそれでも厚く硬い氷には細いヒビ程度しか入らず、風の刃は耳障りな音を経てて砕けた。
舌打ちして、もう一度手を足に向けるが―――
川メ゚ -゚)「させるものか」
いつの間に接近していたのか。
若干薄くなった霧のすぐ向こう側に、クーの影が浮かび上がった。
その手には、先ほど弾き飛ばされた刀も握られている。
(;´_ゝ`)「クソッ!!」
足に向けていた手を、影に向けた。
そして連続で風の刃が霧を切り裂いていくが―――影は風の刃を難なく砕いていく。
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:57:31.74 ID:6mRhKyBD0
支援
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:58:04.93 ID:wV1rdBlmO
支援
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:58:29.39 ID:wV1rdBlmO
支援
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:58:46.58 ID:wV1rdBlmO
支援
92 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/13(火) 23:58:56.62 ID:pM/hw1Wh0
全ての風の刃が粉砕されると、クーは兄者に暇を与えず、霧の壁を破って接近。
未だ行動を取れない兄者の頭蓋狙って、右腕を撃ち伸ばす。
だが。
「させるか」
声。同時に霧の中から腕が飛び出て、伸び行くクーの右腕の二の腕を掴んだ。
そして間髪置かずして足が払われ、彼女の身体は右腕を掴まれたまま倒れ込む。
川;゚ -゚)「ッ!?」
驚愕に息を呑みながらも、彼女はすぐに体勢を立て直して跳び退る。
直後、彼女の身体があった空間を、斬撃のような回し蹴りが薙いでいった。
(´<_` )「……良かった、間に合った」
川;゚ -゚)「弟者か……!」
クーと兄者の間、丁度兄者を護るような位置で構える弟者。
先程の戦闘で、血を幾分か失ってしまったのか、その肌はまるで周囲の霧のように白い。
だが表情に苦痛の色はない。
身体も、軋む事なく稼働している。
死ぬほどのダメージを与えぬ限り、彼はずっと最初の状態のまま戦えるのだ。
(´<_` )「焦ったよ。霧で、何も見えなくなってしまったのだからな。
ずっと、音だけを頼りに霧の中を奔走していた」
93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:59:20.03 ID:wV1rdBlmO
支援
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:59:22.41 ID:36Uy3kfG0
しえん
95 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 23:59:45.19 ID:wV1rdBlmO
支援
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:00:07.60 ID:1S6Yut2hO
支援
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:00:19.18 ID:pPst0ZaY0
支援
98 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:01:19.84 ID:ZqM1Z8oR0
川;゚ -゚)「そのまま走っていれば良かったものを……」
(´<_` )「それは無理だ。兄者を失ってしまっては、私は何も出来なくなってしまう」
そこで弟者は、クーに視線を定めたまま、背後の兄者に言葉を飛ばす。
(´<_` )「さっさとその氷をどうにかしてくれ、兄者。
ここは私が受け持つが……きっと長くは持たないぞ」
(;´_ゝ`)「……すまない、弟者。感謝する」
(´<_` )「感謝なぞいらん。急げ」
短く残し、そして弟者は駆けた。
クーは刀を弟者に向け、待ち構える。
川メ゚ -゚)「兄者が動けるようになる前に、潰させてもらう。
―――悪く思うな、弟者」
(´<_` )「相手の心配をするとは、余裕だな」
駆ける足、次の一歩を踏み込みにして正拳を放った。
クーはその拳を刀の腹で受け、そして横へと流す。
すかさずクーは刀を翻そうとしたが―――脇腹に走った鈍痛が、それを拒んだ。
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:01:39.87 ID:ZtCaAwAL0
しえん
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:01:59.38 ID:1S6Yut2hO
支援
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:02:18.45 ID:1S6Yut2hO
支援
102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:02:53.02 ID:1S6Yut2hO
支援
103 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:04:19.16 ID:ZqM1Z8oR0
川;゚ -゚)「ぐっ!?」
脇腹に突き刺さっていたのは、弟者の肘。
拳を流された弟者は、咄嗟に肘を曲げて、クーの脇腹を穿ったのだ。
クーの動きが、ほんの僅かに鈍る。
その間に、弟者は畳みかけるように攻撃を繰り出した。
(´<_` )「―――ッ!」
アッパーカットの形で拳を跳ね上げる。
クーは上半身を反らす形でその拳を回避―――直後に、その腹を逆の拳が抉った。
呻きを漏らして、僅かに身体をくの字に折り曲げたクー。
その背を、弟者の後ろ回し蹴りが蹴りつける。
川;゚ -゚)「が……はっ!」
体内から空気が抜け出すような感覚。
しかし実際、口端から滴り落ちたのは空気ではなく、血液であった。
川;゚ -゚)「―――チィッ!」
身体を反らせたような状態から、旋回するようにして刀を振るう。
遠心力と速度を身に付け、空気を裂いて迫る刃は、縦に構えられた弟者の腕に深い線を刻んだ。
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:04:43.91 ID:ZtCaAwAL0
しえん
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:04:52.65 ID:1S6Yut2hO
支援
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:05:08.84 ID:1S6Yut2hO
支援
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:05:33.08 ID:1S6Yut2hO
支援
108 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:06:58.13 ID:ZqM1Z8oR0
(´<_` )「無駄だな。私に痛みはない。
致命傷となる傷以外、私には意味がないよ」
弟者の言葉を聞きつつも、クーは更に刀を横薙ぎにする。
弟者はやはり、それを腕で防御。青白い肌が裂け、紅い奔流が滴り落ちた。
しかし弟者に動揺はない。
出血など、まるで気にしていないようだ。
川メ゚ -゚)(痛みがないとは言え、奴も人間。
生存するのに必要最低限の血液が流れ出れば死ぬ筈だ。
問題は―――)
鈍い音が響き、突如、彼女の身体が腹からくの字に折れ曲がる。
抉るような弟者の拳が、彼女の腹を捉えていた。
苦痛に一瞬、意識にモザイクがかかり、それを跳ね飛ばす。
喉の奥から這い上がってきた呻きを血液と共に吐き出して、彼女は更に刀を振るった。
川メ゚ -゚)(それまで私が耐えられるかどうかだ)
血液を枯らすのが先か、命が果てるのが先か。
妙に冷たい頭で、そう思考した。
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:07:34.21 ID:1S6Yut2hO
支援
110 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:07:58.31 ID:1S6Yut2hO
支援
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:08:28.73 ID:1S6Yut2hO
支援
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:08:41.12 ID:pPst0ZaY0
支援
113 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:09:09.55 ID:ZqM1Z8oR0
その時。
(´<_` )「―――刀に頼り過ぎだな」
刀を振るった腕が、ぴたりと停止した。
見れば、弟者が合わせた両手の間に、己の青い刀が挟み込まれている。
川;゚ -゚)「何だt―――」
言葉は最後まで続かない。
弟者が刀を捕らえたまま、クーの脇腹に膝をぶち込んだからだ。
体勢が少し前に崩れたところで、その顎を蹴り上げる形で逆の膝が跳ね上がる。
膝は見事にヒットし―――しかしそこで仰け反る事は許されない。
後ろに傾きかけた彼女の頭を、弟者は掴み、そして頭突きを喰らわせた。
クーは連続で襲い来る苦痛に、思わず膝を折りかけた。
しかし歯を食い縛って立ち直そうとして―――次の瞬間には、地面に倒れていた。
くるぶしに鈍痛が走っている。足を払われたのだ。
倒れた彼女に、弟者は踵を振り上げ、そして落とす。
彼女はそれを、転がる事で何とか回避。
(´<_` )「やたらしぶとい。さっさと死ね」
川;゚ -゚)「……クソッ!」
数回転の後、立ち上がろうと試みた。
しかし弟者の前蹴りが肩を捉え、吹き飛ぶ。立ち上がれない。
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:09:22.58 ID:ZtCaAwAL0
しえん
115 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:09:43.62 ID:1S6Yut2hO
支援
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:10:16.86 ID:1S6Yut2hO
支援
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:10:41.29 ID:1S6Yut2hO
支援
118 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:12:11.26 ID:ZqM1Z8oR0
舌打ちして、倒れた状態のまま刀を振るおうとする。
しかし刃を踏みつけられ、振るう事さえ許されなかった。
川;゚ -゚)「速―――」
言葉は最後まで続かず、呻きとなる。
弟者が、彼女の脇腹を蹴り飛ばした為だ。
彼女は数度転がった後、腹を抑えて苦しげに咳込んだ。
口から出る物は詰まった呼吸と、そして血液だ。
やがて咳は止み、クーは弟者を睨みつける。
苦痛に耐える為に食い縛った歯からは、低い呻きと血が滲み出ていた。
(´<_` )「速くもなるさ。お前と違って、私には余裕はないのだからな」
川;゚ -゚)「何……だと?」
(´<_` )「痛みはないが、出血量くらいは分かるさ。
もうあまり、私は血を流せない。出血許容量が半分を切った。
だから血を流す前に、血を流させる存在を消さねばならないのさ」
言って、弟者は倒れたクーに歩み寄ろうとする。
川;゚ -゚)「くっ!」
クーは倒れた状態のまま、右腕で床を軽く叩く。
すると弟者の足元の床が爆ぜて、幾本もの氷筍が顔を出した。
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:12:26.00 ID:ZtCaAwAL0
しえん
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:12:45.86 ID:1S6Yut2hO
支援
121 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:13:15.15 ID:1S6Yut2hO
支援
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:13:32.72 ID:1S6Yut2hO
支援
123 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:15:22.62 ID:ZqM1Z8oR0
弟者は軽く後退のステップを踏んで回避。
しかし氷筍は弟者を追うようにして、次々と床から生え出てくる。
(´<_` )「……ち。鬱陶しい」
弟者が離れていくその間に、クーは立ち上がって体勢を立て直していた。
彼女が右腕を軽く振るう。
すると無数に乱立していた氷筍が、一斉に溶解し水となった。
(´<_` )「む―――?」
弟者が眉根を寄せた、その瞬間。
それらの水が、一瞬で凍結する。
(´<_` )「!!」
咄嗟に、跳び上がって回避しようと試みた。
だが
川メ゚ -゚)「逃がすか!」
クーが右腕を軽く上げると、弟者の足を追って水が伸び上がる。
それは弟者の足に絡み付き―――そして、それも凍りついた。
(´<_` )「ちィ―――」
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:16:19.37 ID:1S6Yut2hO
支援
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:16:41.19 ID:1S6Yut2hO
支援
126 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:17:02.36 ID:ZqM1Z8oR0
川メ゚ -゚)「終わらせてもらうぞ!!」
動けぬ弟者に向けて、右腕を構えて駆ける。
そして頭を粉砕せんと、異形を振り上げて―――
背後から、硬い破砕音。
それとほぼ同時に響く、風切り音。
そして、一瞬。
川;゚ -゚)「がっ……!!」
クーの背中が斜めに深く切り裂かれ、大量の血が爆ぜた。
彼女は苦痛に表情を歪ませると、ゆっくりと前に倒れ込む。
川; - )「な……に……・?」
熱い呼吸を冷たい床に這わせて、クーは前を見やった。
弟者は冷たい無感情な瞳でクーを見下ろし―――
(´<_` )「遅い。危なかったぞ、兄者」
言葉の直後、クーの身体の横を足音が通過していく。
緑色の異形が奏でる足音は、金属質なそれだった。
( ´_ゝ`)「すまなかった。思った以上に、氷が厚く硬くてな」
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:17:06.73 ID:1S6Yut2hO
支援
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:17:48.95 ID:1S6Yut2hO
支援
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:18:12.60 ID:1S6Yut2hO
支援
130 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:20:21.89 ID:ZqM1Z8oR0
(´<_` )「そうか。まぁ、良い。間に合ってくれたのだから。
もう少しでも遅ければ、私は殺されていたろうさ。
この女は、私の予想よりずっと強かった」
( ´_ゝ`)「あぁ、恐ろしい人間だよ、こいつは。
私達二人を相手にして、生き続ける―――どころか、殺しにかかってきているのだからな」
(´<_` )「……なるほど、やはりこいつは、“管理人”にとっての、最大の危険因子だな。
ここで殺しておかねばなるまい」
( ´_ゝ`)「あぁ。そのつもりだ」
兄者が、ゆっくりと足を後ろに引く。
そして足に力を込めると、
( ´,_ゝ`)「善戦したが、これまでだ」
口元を歪めて、言った。
クーはそれを見て、悔しげに歯を噛む。
川; - )「こんなところで―――」
こんなところで、終わるわけには、いかないんだ。
やや色が薄れ、ぼやけた視界の隅に映るのは、妹や仲間達。
姉として、リーダーとして、彼らを護らねばならないのだ。
ファーザーとの約束を、護らねばならないのだ。
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:21:06.91 ID:1S6Yut2hO
支援
132 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:21:27.23 ID:ZqM1Z8oR0
ここで死んでは、全てが終わってしまう。
今までの自分達の全てが、崩れて消えて、意味を失ってしまう。
死んではならない―――
生きねば、ならない。
勝たねばならない!
( ´,_ゝ`)「死ね、クー」
引かれた足が、残像と音を残して振り抜かれた。
一瞬。発生する、サイズも速度も威力も特大の、風の刃。
それは倒れたクーの身体を微塵に引き裂こうとして―――
川# - )「ォ―――アァァアアアァアァッ!!」
咆哮と同時。彼女の前に突如現れた巨大な氷の壁に阻まれ、壁ともども砕け散った。
( ´_ゝ`)「むっ!?」
兄者はその状況に警戒し、再度足を引く。
だが
( ´_ゝ`)「!」
兄者の視界が一瞬で白に埋まった。
兄者は素早く後退。直後、彼が立っていた床に突き刺さったのは、鋭く尖った雹だった。
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:21:26.38 ID:1S6Yut2hO
支援
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:21:45.35 ID:1S6Yut2hO
支援
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:22:14.03 ID:1S6Yut2hO
支援
136 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:24:27.80 ID:ZqM1Z8oR0
( ´_ゝ`)「……何だと」
彼の世界の色は白。
吹き荒れるは突如発生した雹の嵐。
( ´_ゝ`)「―――いや、どうせまた、眼晦ましの小細工か。くだらない事を」
右手を前に突き出し、“力”を込める。
間もなく連続して発生したのは、風の塊。
それらは雹の嵐を吹き飛ばし―――
( ´_ゝ`)「む?」
その先に、クーの姿はなかった。
( ´_ゝ`)「どこに―――」
その時。背中を走った刺すような寒気に、声が喉に詰まる。
背後から、何かが見ている。いや、距離を詰めてきている。
分かっていても、振り返れない。
鋭すぎて、そして冷たすぎる背後の存在は、恐怖そのものであった。
来ている。
狙っているのは心臓。背中から、心臓を破壊しにかかるつもりだ。
しかしもう間に合わない。振り返る時間も、逃げ出す時間も与えられていない。
死ぬ―――
137 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:25:10.44 ID:1S6Yut2hO
支援
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:25:38.94 ID:1S6Yut2hO
支援
139 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:25:39.50 ID:ZqM1Z8oR0
(´<_` )「兄者!!」
声と同時。左肩を引っ張られて、身体が左に流れる。
一瞬。凄まじい速度で青の異形が、兄者の右肩を深く噛み千切って前へと抜けた。
(;´_ゝ`)「づッ……!」
痛みに表情を歪ませる兄者。
しかしその苦痛のおかげで、恐怖が幾分か薄れたようだ。
軋む脚を動かして、全力でその場から離脱する。
直後に、立っていた床が氷筍によって破壊された。
すぐに弟者もクーから離れ、兄者に並ぶ。
感情のないその瞳は鋭く細められ、全身の筋肉は既に撓められていた。
(´<_` )「……まだ動けたのか?
背中の傷からの出血は、重大なものだった筈だが」
言って、それから気付いた。
クーの足元に、血溜りがない―――あれだけの傷が、血を吐くのを辞めている。
川#゚ -゚)「動けなくとも、私は動かねばならないんだよ。
感情のない貴様には、分からないだろうな」
彼女の背中に走る深い傷痕。
そこから溢れ出ていた血液は既に、凝固していた。
……いや、違う。
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:25:56.68 ID:1S6Yut2hO
支援
141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:26:19.18 ID:1S6Yut2hO
支援
142 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:26:45.46 ID:1S6Yut2hO
支援
143 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:28:18.19 ID:ZqM1Z8oR0
(´<_` )「……なるほど。傷口付近の血液を凍結させたのか」
川#゚ -゚)「…………………」
(´<_` )「考えたじゃないか。しかし、良いのか?
傷口を凍結させれば、確かに出血は止まる。
だが、そこは―――」
川#゚ -゚)「時間をかければ壊死するだろう。そんな事は分かっている。
分かっている上で、こうしているんだ。今、戦い続ける為に。
私は今ここで、こんなところで足を止めるわけにはいかないんだよ」
(´<_` )「……大した強さだな」
荒い息を吐くクーを見て、弟者は不思議な感覚を覚えた。
むず痒い、何かが疼くような感覚。
そして、妙な寂寥感と空虚感―――まるで自分の中に、隙間があるかのような。
この感覚を、弟者は知っている。
そしてどうにか、隙間を埋められないものかと思考している。
決して埋められない隙間を。自分には、埋め方の分からない隙間を。
抜け落ちた『感情』というピースが作り出した、どこまでも大きな隙間を。
気付けば弟者は、その薄い唇から言葉を吐き出していた。
(´<_` )「クー。お前は何故、そんなに戦える?」
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:29:06.05 ID:1S6Yut2hO
支援
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:29:32.40 ID:1S6Yut2hO
支援
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:30:02.21 ID:1S6Yut2hO
支援
147 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:31:22.09 ID:ZqM1Z8oR0
川#゚ -゚)「……?」
( ´_ゝ`)「弟者?」
(´<_` )「戦う必要なんてない。戦う意味すらない。
だというのに、自身の身を痛めつけてまで戦う理由は何だ?
何が、何の力が、お前を動かしている?」
川#゚ -゚)「復讐だ。お前達が、一番よく知っているだろう」
(´<_` )「それが分からないというのだよ。何の意味も、メリットもないじゃないか。
復讐したところでどうなる? ファーザーは返ってこないし、ホームだって戻らない。
どころか、復讐の為の戦いで、自身の命や仲間を失いかねないじゃないか」
( ´_ゝ`)「……おい、弟者。お前は何を―――」
(´<_` )「異能者の闘争を無視して、平和に暮らそうとは思わないのか?
そうすればお前も仲間も、命は危険に晒されない。人としての、新たな未来も築けるだろう。
ファーザーもそれを望んでいる、とは思わないのか? お前がそうまでして戦い続ける理由は、そこにあるのか?」
なかった筈の熱意すら感じられる、弟者の問い。
それに対して、クーは
川#゚ -゚)「くだらない。
関係ないんだよ、そんな理屈は」
斬り捨てた。
(´<_` )「……何?」
148 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:32:07.75 ID:1S6Yut2hO
眠い
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:32:34.20 ID:1S6Yut2hO
支援
150 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:32:53.72 ID:1S6Yut2hO
支援
151 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:34:22.76 ID:ZqM1Z8oR0
川#゚ -゚)「分かってるさ、そんな事はな。
あぁ、この戦いで得られるものなどないだろうな。失われていくものばかりだ。
しかしな、それでも、この戦いに背を向ける事は出来ないんだよ」
川#゚ -゚)「そんな事をして、これからの生を過ごしたところで―――それはただの、命の浪費だ。
私は死ぬまで『私』として生きる事は出来ないだろうし、満足のいく人生などは作れない。
ブーンの言葉を借りるとすれば、それは『死んでいるのと同じ』だ」
(´<_` )「……意味が分からない。そんな事―――」
川#゚ -゚)「分からないだろうさ。意味なんてない。
敢えて言うならば、これは『意地』『けじめ』……感情のないお前には、分からぬ事だ。
何せ私でさえ、それの意味がよく分からないのだからな」
そして、動き出した。
右腕を突き出す。
同時に無数の氷塊がそこに発生。弾丸の如く発射された。
そして間髪置かず、クーは走り出す。
(´<_` )「…………………」
納得のいかない表情のまま、弟者は襲い来る氷塊の弾幕を横に回避。
直後、走り寄って来たクーを見て―――
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:35:22.07 ID:1S6Yut2hO
支援
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:35:43.56 ID:1S6Yut2hO
支援
154 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:35:57.41 ID:pPst0ZaY0
支援
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:36:17.95 ID:1S6Yut2hO
支援
156 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:36:51.70 ID:ZqM1Z8oR0
(´<_` )「何?」
眉根を寄せた。
クーの刀は、腰の鞘に仕舞われている。
距離を詰めてきた彼女は、素手だ。
(´<_` )「何を考えている? 素手などで、私と戦おうとは」
川#゚ -゚)「お前だから、素手なんだよ」
青の異形の右腕を、袈裟掛けに振るう。
弟者はそれを軽く受け流すと、足を跳ね上げた。
ハイキック気味のその蹴りは、しかし、左手で柔らかく防御される。
(´<_` )「……なるほど」
彼女の左手は、そのまま弟者の足を握り締める。動きを封じたのだ。
そして先ほど振るった異形の右腕が、裏拳の形で跳ね上がった。
(´<_` )「ふっ!」
弟者は自ら後ろに体勢を崩して、その拳を回避。
そして床に両手を着くと、身体を旋回させてクーの手を足から外す。
それから手で床を押して、華麗に体勢を整えた。
(´<_` )「気付いたか」
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:37:30.12 ID:1S6Yut2hO
支援
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:37:38.78 ID:ZtCaAwAL0
しえん
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:37:58.36 ID:1S6Yut2hO
支援
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:38:25.03 ID:1S6Yut2hO
支援
161 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:39:21.07 ID:ZqM1Z8oR0
川#゚ -゚)「あぁ。お前との戦闘に於いて、刀は不要だ。
動きの一つ一つが大きくなり、隙を作ってしまう要因になる。
だから、素手だ」
(´<_` )「だが、それでもお前は勝てないよ。
異能者であっても、お前は女だ。格闘で私に対するには、力が弱すぎるだろうさ」
川#゚ -゚)「舐めるなっ!!」
大股の二歩で距離を詰め、そして三歩目で跳躍。
そして中空で、弟者の顔面目掛けて脚を横薙ぎにした。
(´<_` )「ふっ!」
僅かに身体を落として回避。
そして逆に、中空のクー目掛けて足を跳ね上げる。
しかしその足は、クーの右腕によって防御された。
地に足が着くと、クーは即座にしゃがみ込む。
直後、彼女の頭上を横薙ぎにされた足が抜けた。
それとほぼ同時、クーは片足立ちの状態の弟者に足払いを仕掛ける。
(´<_` )「むっ……!?」
ぐらり、と弟者の体勢が崩れる。
体勢を整える暇は、与えられない。
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:39:52.33 ID:1S6Yut2hO
支援
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:40:27.92 ID:1S6Yut2hO
支援
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:40:57.78 ID:1S6Yut2hO
支援
165 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:41:37.94 ID:ZqM1Z8oR0
クーは流れるように、弟者の脇腹に肘を叩き込む。
口から僅かに息と血を漏らして、身体を折り曲げた弟者。
その肩を掴んで、深く抉るような膝蹴りを放った。
(´<_` )「こんな……!」
苦し紛れに放った裏拳は、しかし予測されていたかのように難なく回避される。
それどころか、伸び切った腕を掴み取られ―――
川#゚ -゚)「ぉ―――ぉぉぁあっ!!」
投げ飛ばされた。
受け身も取れずに、弟者は床に叩き付けられる。
(´<_` )「なっ……!」
僅かな驚愕を口から漏らしつつも、弟者はすぐに立ち上がろうと試みた。
しかし許されない。すぐさまクーに、腕を捩られ叩き伏せられる。
(´<_` )「こんな……筈は……」
川#゚ -゚)「腕は折れなかったか。だが、終わりだ」
左手と足で弟者を押さえたまま、クーは異形の右腕を振り上げた。
( ´_ゝ`)「―――させるかぁぁあっ!!」
咆哮。そして兄者は、全力で床を蹴る。
二人の距離は一瞬で埋まり、兄者はクーから弟者を救おうとして―――
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:42:10.96 ID:1S6Yut2hO
支援
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:42:34.86 ID:1S6Yut2hO
支援
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:42:49.91 ID:klh41/KBO
支援
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:42:57.05 ID:1S6Yut2hO
支援
170 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:44:28.68 ID:ZqM1Z8oR0
川#゚ -゚)「予測通りだ」
突如、クーが振り返った。
その左手には弟者の腕ではなく―――抜き放った刀。
(;´_ゝ`)「!?」
焦燥の表情を浮かべるが、もはや遅い。
兄者とすれ違う瞬間に、クーは刀を袈裟掛けに振るう。
兄者はクーの横を抜けて、数メートル先で足を止め―――そこで、右肩から左脇腹にかけて生まれた紅い線から、大量の血を吐き出した。
クーは兄者に背を向けたまま、刀を振って付着した血を飛ばす。
だが
川#゚ -゚)「ち。浅かったか」
呟いて、静かに振り返った。
ほぼ同時に兄者も振り返り―――傷から紅を滴らせながら、戦慄を含んだ笑みを浮かべる。
(;´,_ゝ`)「貴様は本当に化け物だな、クー。
人間の耐久力・戦闘力じゃあない。
……だが、ここで仕留められなかったのは痛いなぁ?」
川#゚ -゚)「知るか。すぐにでも仕留めてやる」
(;´,_ゝ`)「虚勢を張るなよ。こちらは分かっているんだ。
お前は確かに化け物だが―――しかし、もう長くは持たないだろう?
肉体的にも精神的にも苦しい筈だ。血液だって、そろそろ足りなくなるんじゃないか?」
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:45:00.04 ID:ZtCaAwAL0
しえん
172 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:45:32.31 ID:ZqM1Z8oR0
川#゚ -゚)「それがどうした、と言っている。
私が終わる前に、お前達を終わらせれば良いのだろう。
何を勝ち誇っている。虚勢を張りたいのは、そちらではないのか」
(#´_ゝ`)「! ……貴様……!」
歯を噛み締め、足に力を込める兄者。
しかし床を蹴りつける瞬間、彼は横合いから伸びた白い腕に制された。
(´<_` )「落ち着け、兄者。挑発に乗るな。
確かにこちらの状況は苦しい。虚勢も張っていると言えるが―――しかしそれはあちらも同じだ。
ここでは、挑発に乗ったら敗けだ。奴の思い通りに、事が運びかねない」
(;´_ゝ`)「弟者。……あぁ、すまなかった」
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:46:13.54 ID:1S6Yut2hO
支援
174 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:46:15.03 ID:ZqM1Z8oR0
(´<_` )「仕方のない事だ。感情のある人間とはそういうものなのだろうから。
―――さぁ、終わらせよう。兄者」
一歩、前に出る。
人形のような暗く光のない瞳は、無感情にクーを見据え。
痛覚を失った、傷だらけの白く細い体躯を、積み重なっていくダメージに軋ませ。
床に小さな血溜まりを作りつつ、口端から滴り落ちる血液も無視して、彼は言った。
(´<_` )「クー。お前は強い。兄者も私も、お前にはとても勝てない。
しかし『私達』であれば。『私達』としてお前に対すれば、お前を圧倒出来る。
だから『流石兄弟』として、お前を終わらせてもらう。―――さぁ、行くぞ」
口端からの血液が、後方に流れる。
駆け寄る弟者に、クーは右腕を構えた。
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:46:34.20 ID:1S6Yut2hO
支援
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:46:53.23 ID:1S6Yut2hO
支援
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:47:35.69 ID:1S6Yut2hO
支援
178 :
◆tAdHw/rYVY :2008/05/14(水) 00:48:19.62 ID:ZqM1Z8oR0
すみません。
時間的にそろそろ睡眠を取らねばならないので、今日の投下はここまでにします。
明日、特別な用事がないようならば、この続きを投下させていただきます。
長い間を開けてしまい、申し訳ございません。
それでも数多くの支援をしてくださった方、本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
それでは。
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:49:25.82 ID:1S6Yut2hO
乙
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:50:25.49 ID:GAjw8gU70
乙!
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 00:51:06.79 ID:ZtCaAwAL0
乙
182 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 01:02:59.91 ID:G8skBdDl0
なんという気になるところで…乙!
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/14(水) 01:06:53.00 ID:Y9jZ7fxo0
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
よ