1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
立ったら処女作投下
立たなかったらギルガメッシュナイト
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:41:10.83 ID:x8T+6Yj+O
釣りスレは立たないのに…
ドヴァ帝国に栄光あれ!
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:42:40.26 ID:x8T+6Yj+O
女性が椅子に座るような体勢で、箒の柄に腰をかけて夜空を進んでいます。
満月の光、それと燦然と輝く星々が、女性の容姿を淡く照らし出しました。
無造作に伸びた白髪の片側に、だらしなく垂れ下がっている黒いリボン。
服はリボンと同じ黒色で、飾り気が全くないよれよれのローブを着ています。
そんな胡散臭そうな格好の女性は、遥か前方をピッと指差してこう言いました。
川 ゚ -゚)「あれを見たまえ、ヒート」
その声に呼応して、どこからともなく女性の声が響きました。
ノパ听)『で?』
川 ゚ -゚)「……………」
受け流すかのような返答。それは白髪の女性が座る箒から発せられた物でした。
余りに素っ気ない言葉に、白髪の女性は指差したまま固まりました。
十数秒間の沈黙の末、ゆっくりと指を下ろして白髪の女性は説教を始めました。
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:44:24.87 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「ヒート。君は伝説の大魔法使いであるこの私、
クー=W=ポスタルの使い魔だ。分かるね?
使い魔という事は主人に忠実で…ほら、なんて言うの?
会話を弾ませたりさー? そういう気概で主人に接するべきで――」
自称大魔法使いのクーは、彼女の使い魔ヒートに滔々と説教をします。
ですが、ヒートは再び短い返事で一蹴してしまいました。
ノパ听)『ハハッワロス』
川 ゚ -゚)「あ、そんな返事をするワケ? 素直でクールな私でも流石に怒るぞ」
ノパ听)『素直でクール? 素直でフールの間違いだろ!』
川 ゚ -゚)「………………」
ノパ听)『………………』
二人の間に気まずい空気が流れます。
ヒートは堪えきれなくなり、クーに謝ったのでした。
ノパ听)『……ごめん、言い過ぎたかも分からん』
川 ゚ -゚)「え? 何がだ? 今、エロい事考えてたんだ」
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:46:48.56 ID:x8T+6Yj+O
ヒートの心のどこかで何かが生まれちゃいました。きっと殺意ですね。
クーを振り落とそうと、ヒートが力の限りを尽くして暴れます。
ノハ#゚听)『うおおおぉぉぉぉぉ! 死ね! 死んでしまえ!!』
ヒートは空中を猛スピードで縦横無尽に飛び回ります。
襲いかかる風圧で、クーは柄からお尻を滑らせてしまいました。
しかしそこはクールなクーです。クールに死への片道切符を受け取った瞬間、
彼女はクールに右手で柄を掴んで、宙ぶらりんの格好になりました。
川 ゚ -゚)「死んだらご飯が食べられなくなる。勘弁願おうか」
無表情にそう呟くとクーは、暴れるヒートに動じずに小さな声で呪文を唱えました。
するとヒートの動きは緩慢になって行き、ついには動かなりました。
クーは右手から対象者を制御する類いの魔法を注ぎ込んだのでした。
ノハ#゚听)『スロウムーブ……チッ!』
川 ゚ -゚)「クックック…。主人に歯向かおうなど、一億と二千年は早い」
6 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:48:32.03 ID:x8T+6Yj+O
*よいこのまほうじてん*
・スロウムーブ
属性:水
なんか水の力を借りて 行動を遅くさせてしまうよ。
早漏でお悩みの方には もってこいだね!
でも 腰の動きまで遅くなるから 注意が必要だ。
「デニム。貴方って顔は良いけど、ヘタクソね」
川 ゚ -゚)「よっこいしょっと」
ノハ#゚听)『…』
完全に停止してしまったヒートにクーが颯爽とよじ登りました。
今度は魔法使いらしく柄を腿で挟み、しっかりと両手で体を支えています。
怒気をまるで隠さないヒートを気にせず、クーが顔を前へ向けました。
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:49:48.57 ID:9ZvxBwi+0
寝るけどがんばれ
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:50:21.93 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「話の続きをしよう。前方に見えるあの街、名前はビップという。
穏やかな性格で知られているモナー王が統治している。
近隣諸国と仲が良く、戦争など愚かな物とは全く無縁な国だ」
ノパ听)『で?』
ヒートは興味が無さそうに、さっきと同じ受け答えをしましたが、
クーは一度口を開けば止まらない性質のようです。
遥か前方、微かに見える街に顔を向けたまま、話を続けて行きます。
川 ゚ -゚)「平和その物だな。平和は良い、心が洗われる。
付近に海と山があるから食べ物に期待が出来そうだ。
山の幸にしようか、海の幸にしようか、今から悩むな」
ノハ--)『はいはい、そうだな』
内容が一貫しないクーの長話に聞きあきたヒートは眠ろうとします。
ですが数分後、ある言葉を聞いて大きく目を開ける事になります。
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:51:52.87 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「で、私は近頃考えるんだよ。"人と人との距離感"を。
近すぎたら気持ち悪いし、遠すぎたらよそよそしい。
丁度良い距離感とはどれくらいの物なのだろうな。
…いやはや、人間関係とは本当に難しい」
ノハ--)『Zzz………』
川 ゚ -゚)「距離感…距離…お祭り……? ああ、そう言えばヒート。
あのビップでは近々お祭りが開かれるそうだよ」
ノハ-听)『……お祭り?』
ノハ*゚听)『まじか!? そいつは楽しみだな!!』
ヒートはぱっちりと目を開けて、声を弾ませました。
お祭りなどの騒がしい催しがヒートは大好きなのです。
川 ゚ -゚)「本当だとも。私は――風の便りにそう聞いている」
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:55:02.93 ID:x8T+6Yj+O
ノハ*゚听)『へぇ! 一体どんなお祭りなんだ!?』
とても明るい声でヒートが問い掛けました。
魔法で箒に変化しているので表情は分かりませんが、
彼女の声から察するに、相当楽しみにしているようです。
川 ゚ -゚)「簡単に言ってしまえば競争だ。
モナー城城門から大通りが外に向かって真っ直ぐ延びている。
その大通りをスタート地点に、沢山の魔法使い達が
ゴールである隣国、ニューソクを目指し、箒に乗って競うんだ」
ノパ听)『隣国との親善交流ってヤツか。…まさか、参加する気か?』
ヒートの言葉を聞いたクーは「いや」と、小さく首を横に振りました。
川 ゚ -゚)「参加資格は15歳の若い魔法使いのみだ」
ノパ听)『クーはもう年寄りだから無理だな!』
川 ゚ -゚)「失礼な。私はまだ180675回の夜しか越えていない」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:57:41.09 ID:x8T+6Yj+O
ノパ听)『十分に年寄りだ。それも口うるさいタイプの』
川 ゚ -゚)「ふん。脱いだらまだまだ凄いんだぞ。
……年齢を偽って参加したいんだがな。
なんせ優勝に輝くと、賞金百万ゴールド貰えるそうだし。
有難い名誉も貰えるらしいがそれはいらん。
旅人が名誉なんて貰ってどうする。食えるの?」
クーはため息を一つ溢して、両目を細めます。
だんだんとビップが、目に大きく映るようになって来ました。
ノパ听)『日頃の行い、だな。この大悪党』
川 ゚ -゚)「大魔法使いだっつの」
ノパ听)『じゃ、大魔法使い兼大悪党だ!』
川 ゚ -゚)「略してD・D。私のバストサイズきたこれ」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:58:08.39 ID:FC2QVKeu0
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 01:59:10.02 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「そーなのかー。道理でさっきから腹が鳴るわけだ」
ノパ听)『どうする? 飯付きの安宿でも探すか?』
川 ゚ -゚)「ふっ、そんな金があるとでも?」
何故だか偉そうにクーが胸を張って言いました。
ヒートは諦めたかのような口調で、か細い声を漏らしました。
ノハ--)『はぁ、また…やるのか……』
川 ゚ -゚)「いや、私はどうもこの街が気に入った。
此処には何日か滞在する事にしよう。
だから初っぱなから騒ぎを起こすのは不味いだろう」
ノハ#゚听)『おいおい! 私は長旅で疲れてるんだ! 野宿は嫌だぞ!?』
ヒートは語気を荒げて猛抗議をします。
しかし、次の瞬間、クーの顔を見てぎょっとしました。
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:00:56.65 ID:x8T+6Yj+O
川ヽ´¬`)「ところで、この顔を見てくれ。こいつをどう思う?」
涎を垂らし、頬は痩せこけ、今にも死にそうな顔を魔法で作っていたのでした。
ノハ;゚听)『すごく……瀕死状態です……』
川ヽ´¬`)「だろう? この顔を使ってタダ飯にありつこう」
ノハ;゚听)『人の良心に付け入る気かよ! …上手く行くのか?』
「大丈夫さ」クーはそう言い、街から少し外れた所にある森を指差しました。
見ると森の木々の間から、空へともくもくと灰色の煙が登っています。
街外れの森に誰かが住んでいるのでしょうか?
ノパ听)『木こりでも住んで―――』
ノハ--)『…………クーの考えてる事が大体読めた』
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:03:00.94 ID:x8T+6Yj+O
川ヽ´¬`)「ああいう場所に住んでる人は気難しいが、
根は優しい爺さんと相場は決まっている」
ノハ--)『お爺さん、私達はもう何日もご飯を食べていないのです』
川ヽ´¬`)「……………入れ。食ったらさっさと出ていけよ」
ノハ--)『ありがとう、お爺さん。でも是非、お礼がしたい。
私達に何か出来る事があれば言って下さい』
川ヽ´¬`)「……ふん、勝手にしろ。…物置に毛布があるからそれを使え」
ノハ--)『ありがとう、ありがとう。お爺さん……』
(お爺さんは自分の部屋へと姿を消す。そして、一人呟く)
川ヽ´¬`)「……人と話すのは何年振りだろうか。
あの娘達…、昔出ていってしまった娘達に似ている」
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:05:56.59 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「完璧じゃないか。頭良すぎるだろ」
わざとらしい芝居を終えたクーは魔法を解いて元の顔に戻しました。
今さらですが彼女は、黙っていれば非の付け所が無い顔付きをしています。
ノハ--)『ソウデスネー。だが全知全能の大魔法使い様』
ノパ听)『仮にも―――――のする事じゃあないな!』
ザアアァァァァ……―――。
ヒートが放った嫌味の一部が、突然吹いた強い風にさらわれて行きました。
強風に煽られたクーは身を屈め、巧みにバランスを取ります。
ふと、夜空を見上げれば黒い雲が満月を隠し始めていました。
川 ゚ -゚)「雨の匂いが風に運ばれて来た。今宵は嵐になる」
ノパ听)『最悪だな。さっさと気の良いお爺さんに泊めて貰うとするか!』
シニシズムたっぷりなヒートを横目にクーは口を閉ざしました。
それから深く目を閉じて、風に耳を傾けます。
川 - -)(…)
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:08:11.71 ID:x8T+6Yj+O
長い長い沈黙。物思いに耽るクーの凛とした横顔。
いつまで経っても動かないクーにヒートが怪訝そうに呼び掛けます。
ノパ听)『クー? どうした?』
川 - -)(例えば軍記小説で、例えば冒険譚で、或いは恋愛小説で。
何かが始まろうとする時、生まれようとする時、風が)
ノハ#゚听)『早くしてくれ。私はお前の魔法のせいで動けないんだぞ!』
ヒートの大きな怒声でようやくクーはぱちりと目を開けたのでした。
そしてヒートにかかったままだった魔法を解いてあげました。
川 ゚ -゚)「悪い悪い。またエロい事考えてた」
ノハ#゚听) ビキビキ…。
ヒートの怒りのボルテージがMAXに達しました。
屋上に行きましょう。久々にキレちまいましたよ。
まぁ、君のたどり着く先は屋上よりも高い場所ですけどね。
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:08:13.26 ID:5ENhxcn+0
支援
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:10:21.33 ID:x8T+6Yj+O
晴れて自由の身となったヒートはゆっくりと天高くを目指します。
立ち込め始めている雲よりもさらに上、月に昇らんとする二人。
ノパ听)『えー、お客様、天候不良が予想される為、かっ飛ばします。
遺書や辞世の句など、お忘れのないようお願い致します』
川 ゚ -゚)「わーわー、たかいたかーい」
空気が薄い所まで到達した時、それは起こりました。
ノハ#゚听)『アクセスッッ!!!!』
ヒートが大声を上げて全魔力を振り絞ったのでした。
直後、ヒートの身である箒が震え、真っ赤な炎が燃え盛ります。
川 ゚ -゚)「おい、待てこら」
ノハ#゚听)『ルテケ・ヅツシガサヲーメ・ユジナオ!!』
ノハ#゚听)『バァニシング…バスタアアアァァァァァァ!!!!!』
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:12:16.55 ID:x8T+6Yj+O
*よいこのまほうじてん*
・アクセス
属性:厨二
使い魔のヒートが本来の姿 ヒートブレイザーに変身する時に使うよ。
唱えると凄い力が働いて 魔力がパワーアップするんだ。
名前のダサカッコイイところが ヒートは気に入っているみたい。
・バニシングバスター
属性:つ……粒子
ヒートブレイザーに変身すると 使える必殺技だよ。
全身から高威力の 何だかよく分からない 粒子っぽいのが出ちゃう。
多大な魔力を消費するため 使用後は変身が解けちゃうんだ。
「英雄のお姉さんとアレコレしたい」
21 :
>>13の前に挟むの忘れてた:2008/05/13(火) 02:14:43.96 ID:x8T+6Yj+O
ワイワイ会話をしている二人。気付けばビップ上空に着いていました。
眼下には街を左右に分けるように敷かれた石畳の大通り。
魔法で作られた数々の小さな球体が優しい光で道を照らしています。
夜遅くにも関わらず、大通りには人々が行き交い、活気に満ち溢れています。
大通りの先には、先程クーが言っていたモナー城が聳えています。
城門は開けっ放しで、警備の兵士の姿も見当たりません。
恐らく穏和なモナー王は民衆を信じきっているのでしょう。
川 ゚ -゚)「良い街だな」
ノパ听)『そうだな。この街にはあたたかい人が多そうだ』
クーとヒートは街並みを見て素直な感想を述べました。
一通り空の上から街の様子を見た後、クーがとある事を思い出しました。
川 ゚ -゚)「あのさ、私達、最後にご飯食べたのいつだっけ?」
ノパ听)『五日前』
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:16:40.80 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「ぬわーーーーーーー!!」
ヒートは高火力のレーザーを後方に放ち、まっ逆さまに滑空を開始しました。
猛スピードで雲を突き抜け、ビップの街並みがグングンと迫って来ます。
クーが魔法で制御しようにも、箒が炎に包まれ、熱くて集中出来ません。
川 ゚ -゚)「お尻熱い! お尻だけはやめて!」
ノハ#゚听)『主人の命令に従い目的地まで届けてやるよ!!
もっとも、無事に到着させる気は無いがなッッッ!!!』
川 ゚ -゚)「\(^o^)/」
煙突から煙が出ている小さな家が見えて来ました。
小屋の側には色とりどりの野菜が植えられた畑があります。
大根。クーが意識を失う前に見た物、それは大根でした。
川 ゚ -゚)(私の最期は大根か。ふふ、悪くはない)
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:18:50.15 ID:x8T+6Yj+O
从'ー'从(……)
年の頃は十代前半でしょうか。まだあどけない顔をした少女が一人、
古びた椅子にちょこんと座りながら本を読んでいます。
本の内容は陳腐な冒険譚。勇者が旅に出て、道中で仲間と出会って…。
少女はその本を憧れと憂いの入り交じった表情で読んでいます。
丁度、胡散臭そうな魔法使いが登場した場面で本を閉じました。
从'ー'从(…お風呂に入ろうっと)
本をテーブルの上に置いて、少女は腰を上げました。
その時。ガタガタガタガタ……と窓が激しく揺れる音がしました。
少し驚いて窓の外に顔を向けると、満月に黒い雲がかかっています。
少女が窓に近寄ってそっと開けると、強い風が入り込んで来ました。
从;'ー'从「雨の匂い…。お野菜大丈夫かなぁ……」
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:21:02.54 ID:5ENhxcn+0
支援
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:21:21.75 ID:x8T+6Yj+O
「お野菜に布でも被せてあげよう」そう思い、踵を返そうとした瞬間、
少女は夜空に輝く、有り得ない物を見つけました。
何かが赤い光の尾を引きながら、空から高速で降って来ているのです。
从;'ー'从「彗星? ううん、違う。違うかなぁ?
彗星ならもっとバァーって輝くもん…」
しばし呆然と未確認飛行物体を少女は眺めます。
すると、少女が重大な事実に気付きました。
从'ー'从(あれれー? こっちに向かって来てない?)
そう思ったのも束の間、家を揺らす程の地響きが起こったのです。
窓の柵に必死に掴まり、転びそうになるのを堪えました。
从;'ー'从「!? 音が近かった…」
恐る恐る少女は歩を進め、玄関に向かいます。
壊れかけたドアノブに手が触れたと同時に、ノックの音がしました。
少女は息を呑んで恐怖で一杯、顔が青ざめてしまいました。
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:23:35.11 ID:x8T+6Yj+O
ですが、ノックの次に聞こえて来た声に少女は安堵しました。
何故なら、その声の主は女の人の声だったからです。
「夜分にすまん。誰か居ないか!?
空を飛んでいたら事故で墜落してしまって…」
从;'ー'从「事故!? ちょ、ちょっと待ってねぇー!」
あの地響きは、何らかの事故で魔法使いが墜落した衝撃ゆえにでしょうか。
少女は戸棚から救急箱を持ち出して、急いで玄関の扉を開けました。
扉の外には赤いジャージを着た赤髪の少女が立っていました。怒り顔で。
ジャージの下に覗く体操着には"3―A 素直ヒート"と書かれたゼッケン。
ノハ#゚听)「私は使い魔のヒートという! 馬鹿主人、クーが事故ったんだ!」
从'ー'从(使い魔……)
事故をした、と言う割には赤髪の少女、ヒートは全く慌てていません。
少女は疑問に思いつつも「そのクーさんはどこ?」、と聞きました。
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:25:57.17 ID:x8T+6Yj+O
ノハ#゚听)「あれだ! あの引っこ抜いたら発狂する系の植物がそうだ!!」
从;'ー'从「発狂? 植物??」
ぶちギレて捲し立てるヒートが野菜畑の方を親指で示しました。
そこには確かに土から、新種っぽい植物が生えていました。
从;゚ー゚从「なぁに、あれぇー!!」
1.先ずは人を逆立ちの状態にしましょう。
2.次にその状態のまま土に植えましょう。
この際、顔のみ植えるのがベストです。
3.次に股をVの字に開かせると良いでしょう。
4.完成。マンドラゴラの出来上がりです。
**人自身が肥料となるので、肥料は特に必要ありません**
从;'ー'从「と、とにかく引っこ抜かないとぉ…」
少女はおっとり刀で駆け寄ってクーの足を懸命に引っ張ります。
うんとこしょ、どっこいしょ。
けれどもクーは抜けません。
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:28:37.27 ID:x8T+6Yj+O
………ここはどこだ。辺り一面が真っ白く、何もない。
そして、前、後、左、右…感覚が分からない。
川 ゚ -゚)「全く、奇妙な場所だよ」
「そうだろう」
遠くからか、又は近くからか、女の声が聞こえた。
私はその声に聞き覚えがある。
「私は君がよく知っている人物だよ」
だろうな。だって君は――。
「こちらに来ないか? 私はこんなにも寂しい」
首を横に振った。
まだ、そちらに行くには早すぎるからな。
「残念だ…」
川 ゚ -゚)「なぁに、絶対いつか会えるさ」
川 ゚ -゚)「来世の私よ」
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:30:43.22 ID:x8T+6Yj+O
川メ- -)「今はまだ大切な仲間がいるからな……ムニャムニャ」
从;'ー'从「……これ、寝言?」
ノパ听)「こいつはこういう奴だから、気にすると胃に穴が開くぞ!」
二十分にも渡る苦闘の末に、少女はやっとの思いでクーを引き抜いたのでした。
その間、ヒートは全く手伝わなかった事を付け加えておきます。
クーは今、少女の寝室のベッドに横たわり手当てを受けています。
从 ー 从「……治癒魔法、使えたら良いんだけど。
それならこんなの直ぐに治せるのに」
絆創膏を張り終えた少女は弱々しく呟いて、暗い表情を落としました。
少女から漂う形容し難い雰囲気にヒートは、
ノパ听)「…………あれはかなりの技術がいるからな。私も無理だ」
嘘を吐きました。
本当は、この世界で高等魔法にあたる治癒魔法をヒートは使えます。
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:32:46.87 ID:x8T+6Yj+O
从'ー'从「……私、ご飯作って来るね」
ノハ;゚听)「あ、いや…お構い無く」
ヒートの遠慮に少女は微笑みで返して寝室から出て行きました。
残されたヒートは腕を組んで先程の少女の表情を思い出します。
ノハ--)「どうやったらあんな顔が出来るだろ……」
何かを諦めてしまった表情。
何かを悟ってしまった表情。
何かを投げ出してしまった表情。
ノパ听)「…ま、私達には関係無い事か」
川 ゚ -゚)「関係は有るに決まってるだろ」
ノハ;゚听)ノノ「ひえっふ!?」
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:32:53.06 ID:5ENhxcn+0
支援
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:34:57.89 ID:x8T+6Yj+O
背後からの突然の声にヒートは大袈裟に悲鳴を上げました。
振り向けば気絶は何処へやら、元気溌剌としたクーが立っています。
ノハ;゚听)「気絶してたんじゃなかったのかよ!?」
川 ゚ -゚)「ヒート、私を誰だと思っているんだ。
奇跡の大魔法使い、クー=W=ポスタルだぞ。
あの程度のダメージなど、なんのそのだ」
伝説から奇跡へと進化を遂げたクーはこめかみに指を当てて自慢します。
あれだけの事をしても、凹ませられなかったヒートはがっくり項垂れました。
ノハ#--)「くそっ! 追撃をすれば良かったか!!」
ヒートは愚痴ります。クーはそれを無視して部屋を見回しました。
川 ゚ -゚)「……この寝室にはベッドが三台。居間には椅子が三脚。
だが今、この家にはさっきの少女しか居ない」
ノパ听)「? 突然何だ? 親は出掛けてるかなんかしてんだろ」
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:36:42.35 ID:x8T+6Yj+O
要領を得ないヒートに対して、クーは声のトーンを少し低くして言いました。
川 ゚ -゚)「運ばれてる途中に見たんだが表には野菜畑と、…二基のお墓。
お墓の状態から察するに三年程前か」
ノハ;--)「………なるほどな」
少女のあの表情は両親を亡くした悲愴から来ているのでしょう。
ですが、ヒートはまだ心に何か引っ掛かる物を感じています。
他にも何か、少女を苦しめている原因があるような気がします。
川 ゚ -゚)「それとな、私達とは関係無いと君は言ったが、
大いに関係はあると私は思うよ。
手当てをしてくれたし、ご飯も振る舞ってくれるみたいだ。
これでも私達とあの少女の間に関係が無いと言えるのか?」
ノパ听)「……………はぁ、分かった分かった。
クーのそういう所は、数少ない好きな所だ」
川 ゚ -゚)「あれ? 数少ないんだ?」
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:38:30.91 ID:x8T+6Yj+O
ノパ听)「まずはお礼を言うか!」
納得が行ってないクーを余所にヒートは木製の扉を開けました。
扉を開けると鼻腔をくすぐるシチューの良い香りが寝室に入って来ました。
そして、ヒートの前に立ちはだかる一匹の奇妙な生物。
長身に白い肌、こっちを見ながら変な踊りをしています。
ハ,,ハ
( ゚ω゚ )
/ \
((⊂ ) ノ\つ))
(_⌒ヽ
ヽ ヘ }
ε≡Ξ ノノ `J
ノパ听)「………………」
ヒートは黙って扉を閉じました。
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:41:39.24 ID:x8T+6Yj+O
ノパ听)「さて、と」
川 ゚ -゚)「?」
ノパ听)「カ・ンモ・スナハヲテ・ノコ」
呪文を唱えるとヒートは右手を背中に忍び込ませました。
スルスルと引き抜くと、赤色の光沢を放つバールのような物が現れました。
ヒートが握りしめるバールのような物。彼女の最強武器、レーヴァテインです。
*よいこのまほうじてん*
・レーヴァテイン/両、片手剣
属性:炎
使い魔ヒートが最も得意とする 接近戦専用の魔法武器だよ。
何の変哲もない バールのような物に見えるけど
内部に灼熱の炎を宿した 炎系最強に属する武器なんだ。
「今日未明、会社員**さんがバールのような物で――」
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:43:36.31 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「どうした? 気でも触れたか?」
気が触れてるのはお前だよ、と言いそうになるのをグッと堪えて、
ヒートはレーヴァテインを両手に持って構えました。
そして、クーに背中を向けたまま緊迫した声で答えます。
ノパ听)「クー、この先に魔物が居るぞ」
川 ゚ -゚)「魔物だと? 気配は感じな」
ノハ#゚听)「うおおおお!!!」
バタン!
クーの言葉を待たずにヒートは叫びながら扉を開けました。
目の前には先程の生物。ヒートはレーヴァテインを脳天目掛けて振り下ろします。
しかし、
( ゚ω゚ )「お断りします」
ノハ;゚听)「え?」
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:44:02.65 ID:5ENhxcn+0
しえん
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:46:07.48 ID:x8T+6Yj+O
ヒートが放った一撃は生物の指先一つで受け止められてしまいました。
攻撃を軽々と受け止められたヒートは、驚愕で大きく目を見開きます。
ノハ; )「馬鹿な…」
川 ゚ -゚)「ほう、こいつはオコトワリ妖精じゃないか。
君の勝てる相手では無い。その剣を下ろしたまえ」
ノハ;゚听)「妖精? こんなのが妖精かよ…」
一部始終を見ていたクーがやや驚いた面持ちでそう告げました。
ヒートは渋々と従って、背中にレーヴァテインを仕舞い込みます。
それと同時に奇妙な生物、もとい妖精は白い煙と共に消えました。
*よいこのまほうじてん*
・オコトワリ妖精
種族:妖精
オコトワリ妖精は どんな事でも断るよ。
攻撃魔法 支援魔法 宗教勧誘… お断りします。
ちなみに妖精は 世界を影から支えてくれている 尊い存在だよ。
「ここのコメントもお断りします」
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:48:27.99 ID:x8T+6Yj+O
从;'ー'从「ど、どうしたんですかぁ〜?」
騒ぎを聞き付けたのか、少女がバタバタと足音を立ててやって来ました。
村娘が着るような地味な服の上に薄緑のエプロンをかけています。
ノハ;゚听)「やばっ!」
騒ぎの主犯であるヒートは取り乱しました。怒られるかもしれません。
最悪の場合、家からほっぽり出されるかもしれません。
言い訳を考えるヒートを、クーがチラリと横目で見て早口で喋りました。
川 ゚ -゚)「やぁ、君が助けてくれたんだね。ありがとう。
聞けばご飯までご馳走してくれるようで。
いやー、それにしても此処は良い家だな。
妖精が棲まう家、素晴らしい素晴らしい。
大切な事なので二回言ってみたよ。ははは」
从;'ー'从「え? あ…ありがとうございます?」
こうなれば完全にクーのペースです。
クーの雰囲気に飲まれた少女は、すっかりと騒ぎを忘れてしまいました。
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:49:25.99 ID:AP0MYFy9O
逆さ読みの呪文見るとときめきトゥナイト思い出す
支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:51:11.13 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「ふふふ、自己紹介をしよう。私はクー=W=ポスタル。
歴史に名を残す大魔法使いと皆から称えられている。
で、そこの赤い奴は私の使い魔のヒートという」
ノパ听)「…歴史に、ね。さっきも言った気がするがヒートだ。よろしく」
从;'ー'从「あの、えっと、私は渡辺といいます」
川 ゚ -゚)「ほう! 渡辺というのか。良い字数な名前だ。
しかも、とても可愛いらしい顔をしている。
街の男衆は放ってはおかないだろうな。はっはっは」
从////从「ふえぇ……あの、ここじゃ何なので居間に…ご飯も出来てますのでぇー」
そう言い残して渡辺は早足で居間の方に消えて行きました。
ヒートは大きな溜め息を吐いて、お得意の皮肉を呟きます。
ノハ--)「お前、口の達者さだけは歴史に残るよ」
川 ゚ -゚)「君が原因だろうに。さ、行こう」
歩く度にギシギシと音を立てる木造の廊下を二人は進みます。
壁には色褪せた絵画が立て掛けられています。
埃臭さの中にシチューの香りが漂っていました。
川 ゚ -゚)「ハラヘリヘリハラ」
居間にたどり着くと一台のテーブルとそして、
…三脚の椅子が部屋の真ん中に置かれていました。
テーブルの上にはクリームシチューが入った白いお皿があります。
二人は礼儀正しく渡辺にお礼を言ってから椅子に座りました。
从'ー'从「残り物を温めただけで…ごめんなさい」
渡辺は縮こまってお辞儀をして、二人の前に座ります。
川 ゚ -゚)「何を言う。私は渡辺の気遣いだけで十分だ」
ノパ听)「それには珍しく同意する!」
川 ゚ -゚)「珍しく?」
二人の言葉を聞いて、渡辺は照れながら笑顔を溢します。
川 ゚ -゚)「ハムッ、ハフハフッ、ハフッ!」
長旅でお腹がすいていたクーはシチューを飲み物のように喉へと流し込みます。
ヒートはクーを睨みながら「きめぇ」と一言漏らしました。
从'ー'从「…お腹、減ってたんですねぇ〜」
ノパ听)「五日間何も食って無かったからな!」
从;'ー'从「五日っ!?」
渡辺は目を丸くして声を荒げました。
川 ゚ -゚)「ハムッ、ハフハフッ、ハフッ!」
ノパ听)「うん。ニュープラ砂漠を渡って来たから」
从;'ー'从「ニュープラ砂漠…? あの、死の砂漠をですかぁ?」
川 ゚ -゚)「ハムッ、ハフハフッ、ハフッ!」
44 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:57:53.45 ID:5ENhxcn+0
逆さ読み普通に気付いたよ支援
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 02:58:28.37 ID:x8T+6Yj+O
ここビップから東に別名、死の砂漠と呼ばれるニュープラ砂漠があります。
気温は時に五十℃を越え、休憩する場所は無く、危険な魔物達が徘徊しています。
賢明な旅人は遠回りになりますが、普通はそこを避けて通る物です。
けれども、何ゆえ危険なニュープラ砂漠を通って来たのでしょうか。
渡辺は聞かずにはいられなくなりました。
从;'ー'从「どうしてそんな危ない道から来たんですか?」
ノパ听)「それは」
川 ゚ -゚)「知りたいか? 渡辺は冒険譚が好きみたいだからな」
ヒートの言葉を遮ってクーが口を挟みました。
シチューが入っていたお皿は既に空になっています。
从'ー'从「…何で知っているんですか?」
問われるとクーはテーブルの片隅にある一冊の本に視線を遣りました。
川 ゚ -゚)「いや、何となくだ。間違ってたらすまん」
从'ー'从「うぅん。大好きですよぉ〜」
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:00:16.37 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「そうかそうか、なら聞かせてあげよう。但し条件がある」
从'ー'从「……条件、ですか?」
川 ゚ -゚)「タメ口で、とは言わんが渡辺の話易い言葉で喋って欲しい。
私は君の優しい所が好きだ。友達になりたい」
从'ー'从「友達…」
川 ゚ -゚)「握手を、友情の証を」
いつ友情を育んだのかは分かりませんが、クーがそっと手を差し出しました。
指をワキワキと忙しなく動かせており、あまり触りたくはありません。
ノパ听)「キモッ!」
その様子が可笑しかったのか、渡辺は頬を緩ませてクーの手を取りました。
ノハ;゚听)「何で?」
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:02:33.31 ID:x8T+6Yj+O
*よいこのまほうじてん*
・素直ヒート/貧乳
種族:使い魔
自称大魔法使いクーによって "チキュウ"という別次元の世界から召喚されたよ。
昔は良い子だったけど 傍若無人なクーのせいで 皮肉屋になっちゃった。
御主人様のクーにこき使われたり ツッコミを入れるのが仕事だ。
だから 胃の痛みに効く薬草を いつも持ち歩いてるらしいよ。
熱い事が大好きで ド派手な魔法をもっとも得意とするよ。
フラグを立てると 体操着のキャストオフが可能になるんだ。
作者「ヒートと合体した・・・・」
ノハ;゚听)「いやいやいやいや! 説明のタイミングおかし過ぎるだろ!?
フラグとかお前何を言ってるんだ!!
合体した、って過去形かよ! してないって!!
ていうか、作者って一体誰だよ!?」
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:04:44.48 ID:x8T+6Yj+O
どこかから来た旅人と、その旅人を快く迎え入れた住民の握手。
様々なジャンルの小説でよく見かける場面。
そして、大抵その場面から何かが始まります。
川 ゚ -゚)「………………」
从; ー 从「………………!?」
渡辺が握ったクーの手は、感触があるのか無いのか、ハッキリとしない物でした。
例えるとするならば…風。まるで向こうから彼方へと、
暖かさや冷たさ、時には優しさを運ぶ風のようです。
从 ― 从「…………………」
川 ゚ -゚)「そろそろ放して貰っても良いかい?」
从;'ー'从「え? あ……」
クーの声で渡辺が我に返りました。見れば彼女の手が赤くなっています。
気付かぬ内にとても強く握っていたのでしょう。
渡辺はパッと手を放して「ごめんね」と謝りました。
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:07:02.52 ID:x8T+6Yj+O
从;'ー'从(……今のは?)
川 ゚ -゚)「で、私達が何故ニュープラ砂漠を通ったかというとだな――」
赤くなった手で、黒いリボンを弄りながらクーは口を開きます。
細かい事を気にしない人。
前に座る白髪の魔法使いが渡辺の目にはそのように映り、
自分とは大違いで羨ましい、と心の底から思ったのでした。
川 ゚ -゚)「風が"そっちから行け"と言ったんだよ」
从'ー'从「風が?」
川 ゚ -゚)「ニュープラ砂漠の近くにある村を出た時、一枚の葉を空に投げたんだ。
すると、風に運ばれてニュープラ砂漠の方に飛んで行った」
ノハ--)「お陰さまで散々な目に遭ったがな」
从;'ー'从「……………」
つまり、風任せで二人は危険な旅をしてきたのです。
渡辺は呆気に取られて言葉を失いました。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:09:22.73 ID:x8T+6Yj+O
ノパ听)「巨大なサンドワームに飲み込まれ事件」
川 ゚ -゚)「あったな。食事中には言えない所から脱出したんだよな」
ノパ听)「…飲み水が底をついた事件」
川 ゚ -゚)「あったな。魔法で砂を消し飛ばして地下水脈を掘り当てたんだよな。
今思えば、水系の魔法を使えば良かったんじゃないか?」
ノハ--)「……食べ物が底をついた事件」
川 ゚ -゚)「あったな。お互い、悟りを開くまで苦労したよな」
ノハ#--)「………私だけに働かせて、クーは寝ていた事件」
川 ゚ -゚)「あっ……それは無いだろ。事件の捏造はやめろ」
ノハ#--)「と、こんな感じの旅をして来たんだ!」
从'ー'从「へぇー、大変だったんだねぇー」
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:11:14.52 ID:x8T+6Yj+O
川 ゚ -゚)「渡辺、最後のは違うから。私はそんな人間では断じてない」
ノハ#゚听)「渡辺! 目を閉じろ! 私は今から明日の一面記事を飾るような事をする!!」
部屋揺らす声量でヒートが叫ぶと、クーに襲い掛かりました。
魔力の篭ったパンチ、キック、チョップ、ハミングをクーに浴びせます。
ギャアギャアと暴れる二人を渡辺は笑顔で眺めて、
从'ー'从「クーさんとヒートさんって仲が良いんだねぇー」
と言いました。
ヒートが振り上げた拳をピタリと止めて全力で否定します。
ノハ#゚听)「眼に効く薬草をあげようか!?」
川メメ)- )「前が見えん……」
それからクーとヒートは罵り合い、渡辺はその話を黙って聞く構図が続きました。
夜遅くになり、大粒の雨が降り始めました。
時折、雷が光り、窓を揺らす程の轟音が響きます。
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:13:16.49 ID:5ENhxcn+0
支援
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:13:34.49 ID:x8T+6Yj+O
騒ぎ疲れたヒートはテーブルに突っ伏して眠っています。
クーはリボンを弄り倒しています。彼女の癖なのでしょうか。
渡辺が窓に視線を遣って雨露の流れて行く様子を見て言いました。
ノハ--)「Zzz」
从'ー'从「凄い雨……泊まって行くよね?」
川 ゚ -゚)「すまないな。明日、朝早くには出るよ」
渡辺は大きく首を横に振りました。
从'ー'从「良かったら何日か泊まってって欲しいの。旅のお話聞きたいし」
クーがリボンを弄る手を止めて、渡辺の目をジッと食い入るように見つめました。
突然の事に渡辺は驚き、吸い込まれるような黒い瞳に釘付けになります。
川 ゚ -゚)「……タダで泊めて貰うのは気が引けるな。
家の掃除、畑の世話、その他諸々手伝うよ。
――"魔法の家庭教師"とかもな」
なんていうか全体的に滑ってる
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:16:41.58 ID:x8T+6Yj+O
从;'ー'从(……………)
川 ゚ -゚)「諦めた時点でゲームオーバー、現状を"そ"の手で切り開こうか。
…ヒートが居た世界の"あにめ"とやらの歌だそうだ。
こいつは歌が好きでね。よく音痴な歌を聴かされるよ」
「歌詞は好みなのが多いけどな」。言葉を区切り、クーは立ち上がりました。
そして、眠りこけているヒートを小脇に挟んで抱え上げます。
渡辺は口を一文字に結んでクーの言葉を待ちます。
川 ゚ -゚)「では、寝室を借りさせて頂こう。
あぁ、作物の心配は要らないだろう。
今宵の雨は、そんなに長く降らない」
どんなに激しい雨でも、どんなに鬱々とした雨でも、
いつかは気持ちの良い青空に晴れるでしょう。
クーはヒートを担いで寝室へと姿を消しました。
一人、居間に残された渡辺はうつ向き加減に呟きます。
从 ― 从「……お母さんに似てる」
確かに旅の話をもっと聞きたいという理由もありました。
ですが、それよりもクーが母親に似ていたのが、数日の滞在を求めた一番の理由です。
容姿、声、風の如く捉えられない性格。何から何までそっくり生き写し。
从'ー'从(…あの光景)
握手を交わした時、渡辺の脳内にあるイメージが流れ込んで来ました。
沢山の静止画を整えて、一枚一枚パラパラと捲り、動かせたイメージが。
そこでは、家で塞ぎ込んでいる自分が嘘のように生き生きとしていました。
箒に跨がって大空を斬るように飛び、誰にも負けない速さ。
強大な魔物を前に一歩も退かず、勇猛果敢に魔法を振るう強さ。
从-、-从(……)
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:20:28.84 ID:x8T+6Yj+O
――"魔法の家庭教師"とかもな。
クーは相手の意識を操る程の魔力を持っていました。
大魔法使いと自己紹介してましたが、あながち嘘では無いのかもしれません。
从;'ー'从「私の事、全部バレちゃってるのかなぁ」
畑に新種の植物が生えました、妙な旅人を泊める事になりました。
…普通の人にとっては厄日極まりないでしょう。
しかし渡辺にとってこれは。大きな運命の転機と成り得たのでした。
从'ー'从「よっこいしょ」
渡辺はゆっくりと椅子から腰を上げました。
お皿を手際よく片付けた後、一棹のタンスと向かい合います。
激しい雨の音。長くは続かない雨空。
渡辺は上から二段目の引き出しを開けました。
从'ー'从「……お母さん、私、やってみるね」
薄暗い部屋で毛布にくるまれた金色のトロフィーがキラリと輝きました。
そのトロフィーに幾つか言葉をかけた後、渡辺は静かに引き出しを閉じました。
58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:21:47.42 ID:x8T+6Yj+O
寝室ではクーがノートを開いて、何やら作戦会議のような物を開いています。
つらつらと書き綴られる文字を、ヒートは胡座をかいて目で追います。
川 ゚ -゚)「それで、だ。私の計画はこうだ」
ノパ听)「お前って本当に最低だよな!」
川 ゚ -゚)「おやおや。では、加担する君は最低を通り越して最悪かな」
ノハ#゚听)「…ッ! 使い魔じゃなかったら今からでも牢獄に――」
コンコン。
寝室の扉をノックする音がしました。
ヒートは大慌てでノートをズボンの中に隠して、然るべき位置に移動します。
ノハ;゚听)「やっべ! やっべ!」
川 ゚ -゚)「ヒート! 半ケツになっとるで!」
ノハ;--)「どこの方言やねん! グーグー…」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:23:46.84 ID:x8T+6Yj+O
从'ー'从「お邪魔しまーす」
可愛く挨拶をして渡辺が入って来ました。
クーはベッドの上でクールにブリッジをしています。
一方、ヒートは半ケツのままうつ伏せで寝たふりをしています。
ゆっくり移動した結果がこれです。
(。-。 川「此処は君の家だろうに。お邪魔しまーす、て…」
从;'ー'从「そう言われればそうかもぉ…」
ノハ;--)(あれ? 別に慌てる必要無かったんじゃ…)
从;'ー'从「あの…何をしているの?」
渡辺はクーとヒートの異様な光景を見て問いました。
ブリッジと半ケツが寝室を蝕んでいるのです。疑問も仕方有りません。
(。-。 川「寝る前の魔法の鍛練だ」
ノハ*--)(wwwwwwwwwww)
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:25:17.83 ID:x8T+6Yj+O
从;'ー'从「ふえぇ、学校ではそんなの教わらなかったよぉ〜」
(。-。 川「だろうな。こいつは、ある民族の間でのみ伝わる秘密の鍛練法でね」
ノハ*--)(どんな民族だwwwwwwwwwwww)
(。-。 川「で、君、何か言いた気な顔をしているね」
从'ー'从「…………」
クーの鋭い眼光に射抜かれ、渡辺は大きく息を吸って静かに、
けれど力強く、自分の思いの丈を伝えました。
「――魔法を、魔法を教えて下さい」
「…良いだろう。まずはブリッジからだ」
(ブwwwリwwwwッwwwwwwジwwwwwww)
61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:26:52.17 ID:x8T+6Yj+O
モナー城・城内。
(;´∀`)「ショボン、それは本当モナ!?」
(´・ω・`)「えぇ、まぁ、多分、いや、やっぱり違うかなぁ」
(;´∀`)「ハッキリするモナ! もうすぐニューソクとの親善交流があるモナ!!」
(´・ω・`)「"白髪の魔法使いを見た"っつー町人の情報しかまだ無いんスよ。
白髪の魔法使いなんてこの世界には腐る程いますし」
( ´∀`)「……しかし、念には念をモナ。警備員を動員するモナ」
(´・ω・`)「あい」
( ´∀`)「白き魔女め。この平和な国で何を企んでるモナ」
(´・ω・`)「さぁ」
( ´∀`)「……………………君、ちょっとドライ過ぎない?」
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:29:20.95 ID:x8T+6Yj+O
投下終了ス
初めてで見辛いかもしれませんが、支援ありがとうございました。
釣りスレやるより難しいwwwwwwwww
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:30:15.43 ID:5ENhxcn+0
支援ならぬ5円
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:31:44.88 ID:5ENhxcn+0
おつかれー
次も楽しみにしとく
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:32:28.04 ID:3Qy7l3Gl0
続きが気になるなぁ。
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/13(火) 03:34:10.45 ID:x8T+6Yj+O
乙サンクス
これは釣りじゃないから続き書かせて貰うお
何かあったら適当に聞いたってちょー
67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
そろそろ寝ます
深夜にお付き合いありがとでした