ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
長編投下の際の注意

 

・超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ! でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ?
・前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ……あの、お茶どうですかぁ?
・基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョンたんの恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ
・当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ……けど、今はほとんど皆無。別に時事ネタでなくてもいい…気にしないで
・キョン君、過度な性的描写はやめようね〜、タンスにエロビデ隠してるのハルにゃんに言っちゃうよ
・台詞や他者への呼称等、その人物に対する統一性は違和感が生じないように推敲が必須だね。もし不安であるのならば、まとめ等を参照すること。
・1行には全角120文字、1レスには最大30行まで入るけど、全角で2048文字の制限があるから気をつけて欲しいのね。
・要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな
・次スレは970以降、臨機応変に対応してくれ!無理なら他のヤツらに頼むってのもありだな…すまん!ごゆっくり〜
・スレが立ってから三日過ぎたスレッドは>>1000まで行かなくても落ちる……これは僕にとっても既定事項だ
・自分で投下した長編はなるべく自分で編集してください、わかりましたか?んん…!もうっ!
・それじゃ、さっさと投下しなさいっ! いい? あたしを退屈させたら罰金だからねっ!

DAT保管庫(停滞中)  http://haruhiss.xxxxxxxx.jp/
新DAT保管庫+SS推薦http://vipharuhi.s293.xrea.com/
新まとめサイト      http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/
DATうpろだ        http://www.uploader.jp/home/harussdat/
雑談所(避難所)     http://yy42.60.kg/haruhizatudan/
雑談所携帯用      http://same.u.la/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:00:20.32 ID:tk68H7Is0
  =====業務連絡===========

・まとめwikiの管理人さんが忙しいから、せめて長編だけでもSS作者は自分でまとめなさいっ!
・「SS作者だけど自分ではまとめられん!」と言うヤツは「まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド」にまとめ要請を書き込んでみるのも一つの手だな。

まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド
 http://yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1196380901/ PC用 
 http://same.u.la/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1196380901/ 携帯用

3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:02:51.27 ID:Vezz4h+R0
いちおつ
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:02:57.43 ID:jG/oQXpH0
乙!
カップラーメン湯を入れてたらロスタイム切れてたw
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:03:14.91 ID:uNvFQ61VO
一乙
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:04:10.98 ID:5OBYOnSgO
>>1
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:06:47.77 ID:Vezz4h+R0
そういえばパリーグ開幕したんだよな〜
我が楽天はサヨナラ負けでした・・・。
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:08:45.72 ID:fU8ZY+bfO
>>1
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:12:31.14 ID:QM1Ip1/hO
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:33:13.51 ID:uNvFQ61VO
保守
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:33:45.39 ID:04LUfHX0O
>>1乙ー

あー前スレでハンコの感想くれた人ありがとう
もしかしたら時々保守代わりにハルヒ(コ)シリーズの消しハンうpるかもしれないが駄目ならスルーかうざいと言ってくれ、他スレ池とか言われそうだが
文才なき俺には読むだけでSS書く事などできないんだぜ
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:35:48.57 ID:KV/Mql/Y0
>7
帽子に「毛」と書いてある球団ですね。 わかります。
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:52:08.64 ID:+cY4Ep7gO
>>11
ずっと「保守」だけが続くより、少しでもネタがあった方が良いからいいと思う。
原作にも挿絵があるしねw
14もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:53:53.41 ID:k3gZlmBk0
6-7レス
15もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:54:09.84 ID:k3gZlmBk0
――涼宮ハルヒは有頂天だった。
全てのカメラは彼女の眼だった。ヒトの目に見えない光を見た。
全てのマイクは彼女の耳だった。ヒトの耳に聞こえない音を聞いた。
物理空間の制限は無意味だった。壁を突き抜け、空を飛び、丸い地球をみおろす。

彼女はこれは仮想現実、エンターテイメントだと信じ込んでいた。

 何処まで行けるんだろう。銀河の中心?アンドロメダ?
 さすがに無理ね。未踏の地のデータなんて無いだろうし。
 なら…… 一番遠いところまで!

彼女はボイジャー1号を追いかけようとして、知らず空間情報を塗り替えた。

―――――

「ハルヒは何をやった? 地球圏外ったって、そんなところにネットなんて無いだろ」
長門は、情報フレアの観測を告げてからずっと見上げたまま沈黙していた。
やがてキョンに視線を向けたが、その瞳には微かな感情の色があった。

それを彼は見逃さなかった。
「どうかしたのか? まさかハルヒに何かあったのか?」
上半身を起こして長門を詰問する。
長門は一瞬の逡巡-まばたき-を見せたが、視線を外さずに言った。

「情報統合思念体の意思を伝える」
『涼宮ハルヒの保全を最優先とせよ。そのための一切の損失を許容する』

16もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:54:57.85 ID:k3gZlmBk0
長門は再びキョンを椅子に押し倒して言った。
「急がないと追いつけない。始める」

そこに古泉が割り込んだ。
「ちょっと待ってください。'損失'とはまさか、彼のことではないでしょうね?」

それを聞いたキョンは、さっきの朝比奈さんの言葉を思い出してハッとした。
 『涼宮さんのことだけ考えて』
まさか、あれは…… 思わず朝比奈さんの方に顔が向いてしまう。
朝比奈さんと眼が合った。怯えた瞳が、勘の正しさを物語っていた。
朝比奈さんはへたり込み、両手で顔を覆って泣き出してしまった。
くぐもった泣き声の下、ごめんなさいのつぶやきがやけに大きく聞こえる。
ああすいません朝比奈さん。責めてるわけじゃないんです。
まったく、余計なときだけ察しがよくなる自分の頭が恨めしい。

横では、長門と古泉のやり取りが続いていた。
「そんなバカな! たとえ涼宮さんが無事に帰ったとしても、彼がいなくては」

17もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:55:18.48 ID:k3gZlmBk0
「もういい。古泉、やめろ」
「朝比奈さんも立って。ほら、泣き止んで」

キョンは長門に視線を投げて、「危険なのか?」と訊いた。
長門は微かにうなずき、肯定した。
「そうか」

キョンは残る二人を見渡しながら、できるだけ重々しくならないように言った
「なにも死ぬと決まった訳じゃない。死ぬつもりなんて全然無いしな」

「ですが」
まだ何か言おうとする古泉を手で制して
「俺が行く。これは俺の意志だ。それに、他に選択肢はない。そうだな?」

「……わかりました。ですが、必ず無事に帰ってください。涼宮さんのために」

ああ、と手を振って答え、長門へ振り返ったキョンは
「待たせたな、長門。やってくれ。よろしく頼むぜ」

長門は小さくうなずき、椅子の横に立った。
「大丈夫。誰も失ったりしない。私が、守る」

18もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:55:51.52 ID:k3gZlmBk0
―――――

次の瞬間、キョンは地球を見下ろしていた。妙にスケールが狂ったように感じる。
が、狂っているのは地球ではなく自分のほうだとすぐに気づいた。
キョンにとって、地球はサッカーボールほどの大きさだった。

突然、どこからか声が聞こえた。
『あなたの外殻は私が保持する』

「長門? いるのか? どこだ?」
『あなたの内側』
内側って…… なんだかヘンな気分だな。

『涼宮ハルヒは現在、木星軌道まで拡大している。思念体の観測によると
 地球で'イオ'と呼称される天体の観察を行っている。』

「まるで観光旅行だな」
ハルヒらしい、思わず笑いが漏れる。次は観光スポットは土星の輪っかあたりか?

『あなたの外殻を木星軌道まで拡大する。涼宮ハルヒは空間情報に新しい因子を追加して
 外殻保持の足がかりとしているが、思念体にも新しい因子の概念は解析できていない』
『そのためあなたは、既存の情報因子を使用することになる』

「何か問題でもあるのか?」

『わからない。新しい因子は涼宮ハルヒ、地球人にとって都合よくできていると予想される。
 既存の因子で拡大を行った場合、あなたへの影響は未知数』

19もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:56:34.66 ID:k3gZlmBk0
「今も既存の因子を使ってるんだろう? 特に違和感もないし、大丈夫だと思うぞ?」

『変調があったらすぐに言って』

「よし、追跡開始だ。昼飯までには帰ろうぜ」

地球が小さくなっていく。振り向くと巨大な月があった。
ぶつかる!? と思った瞬間、突き抜けた。どうなってんだ?

『今のあなたは情報体。存在の仕方は情報統合思念体のそれに近い。
 物体へ干渉することも干渉されることも、情報操作能力が必要』

「ん? それじゃあ、外殻ってのは何なんだ?」

『ヒトの形は知覚の境界。外殻は境界。あなたの躰』

「よくわからんが…… まぁ、なんとなくわかった」

「ハルヒに追いつくまで、あとどれくらいだ?」

『予測邂逅時間まであと2分7秒1828。ただし、涼宮ハルヒがイオにとどまる場合』
『……。涼宮ハルヒが拡大を再開』
20もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:57:09.23 ID:k3gZlmBk0
「やれやれ、落ち着きのないやつだ。それで、追いつけそうか?」
続く長門の声が悔しそうに聞こえたのは、気のせいじゃないと思う。
『彼女の拡大速度は私の約3倍』
「3倍ね…… 赤く塗って角でも付けてやるか」
「ハルヒはたぶん、土星のわっか観光でしばらく止まるだろう。土星軌道までどのくらいかかる?」

『……』

「長門?」

『私の能力では土星軌道に到達できない…… あなたに、賭ける』

「ちょっとまて、どういうこととだ? 賭けるって、何をだよ」

『'長門有希'というパーソナルをパージして、すべての情報操作能力を外殻の維持拡大に回す。
 能力の行使には何らかの意志が必要。あなたに託す』

「そんなことしたら長門はどうなるんだ? 消えちまうんじゃないだろうな?」

『'損失'には私も含まれる』

「そんなこと認められるか!」

『他に選択肢はない』

「そんなわけないだろ! だいたい統合なんたらも長門一人に押しつけて知らん顔かよ?」

21もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:57:23.42 ID:k3gZlmBk0
突然、長門ではない別の声が響いてきた
『そういうわけでもないんですけどね』

『江美里?』
緊張した感じのする長門の声。しかし予想はされてたが、喜緑さんもやっぱりそうだったんだな。

『地上の、私を除く全てのインターフェイスを解体、パーソナルネーム'長門有希'がこれを吸収する』
『以上が統合情報思念体の決定です』
『では、私に同期してください。でも、私まで吸収しないでくださいよ?』

『了解した。――感謝する』

俺の中で起こっているはずのことなのに、俺には何の変化も感じられなかった。
が、吸収は終わったようだ。

『これで地上のネットワークは空っぽです。'損失'に見合う結果を期待しますよ、長門さん』
『では私はこれで。地上のことは任せてください』

『わかった。――重ねて感謝する』

俺たちは追跡を再開した。ハルヒの拡大は予想通り、土星起動で止まっている。
22もう一人の秘された神 第三章:2008/03/20(木) 23:57:50.57 ID:k3gZlmBk0
今回は以上です
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:57:57.73 ID:Vezz4h+R0
支援
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/20(木) 23:58:17.92 ID:Vezz4h+R0
>>22
乙!
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:09:54.50 ID:fBH+Ji760
保守
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:15:12.23 ID:sWdhlZYz0
投下していい?
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:17:19.84 ID:NFtLO87c0
>>22
支援遅かったか

>>26
連続ktkr こいやー
28とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:18:23.83 ID:sWdhlZYz0
では次からいきます。ちょい長め長めなんで支援お願いします。

まとめのあまい短編に載せてもらってる悪くない人生,悪くない家族計画,家族の絆の続きになります
ほんとは前作で終わりのつもりだったんですが、どうにも頭の中の電波が消えないんで書きました。

ひとつのキーワードから無理やり作った話なんで時間関連とかで突っ込み所満載ですが
出来たらその辺はスルーしてやってください
29とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:21:54.19 ID:sWdhlZYz0
すいません、ちょいテスト
30とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:23:43.60 ID:sWdhlZYz0
高校とは違うベクトルに慌ただしかった大学を無事卒業してから四年あまりの月日が経った現在
おれたち家族は騒がしくも楽しく平穏な日々を過ごしていた。
それなりに色々あったわけだが、高校卒業から一年して生まれたハルカとハルキのヨチヨチ歩きの可愛さに打ちのめされていたおれが、
うっかり"やっぱり子供はたくさんいたほうが賑やかでいいな"なんて口にしてしまったからかはわからんが
次に生まれた子供もまたしても男女の双子だったりとか、
普通の会社勤めを望んでいたおれに対し、ハルヒの"普通の会社勤めなんてつまらない"
なんて一言で会社を立ち上げるハメになり、ハルヒや有希の人知を越えた万能さを見込んだ鶴屋さんの資金面や仕事の斡旋などの
全面支援でうまく立ち上がり、その後鶴屋家の全面支援という信用からか仕事が途絶えることもなく、
この歳では破格の収入を得るまでになっていた。
まぁ、トントン拍子にうまくいっていたのだが、その平穏な日々は実に意外な所から乱れることになった。

古「お願いします!妹さんとの結婚を許可してください!」
……さて、まったくわけがわからない状況なわけであるのだが、一体こいつは、なにを言っているのだろう。
結婚?誰が?古泉が?誰と?おれの妹と?
………まったく、なにの冗談かはわからんがおれの妹まで巻き込むとは言語道断だな。少し説教してやらんt…
古「先日、お義父さんとお義母さんの許可は頂きました。
ですが、僕としてはあなたの許可なく結婚は出来ません。どうかお願いします!」

モノローグくらい最後まで喋らせろ。………とりあえず、冷静に状況を見てみよう。
おれの隣にはハルヒが居てその膝の上に二歳になる娘のコハル。おれの膝の上に双子の弟のハルヒコ。
後ろにはこんなときも相変わらず無表情な有希。
その有希に無邪気にじゃれついて遊んでいるのが六歳になった上の娘、ハルカ。それとその双子の弟ハルキ。
いつもの我が家の団欒風景だ。ちがうのはおれに向かって土下座する古泉とその隣にいつになく真剣な表情の妹とい……

ハ「なにブツブツ言ってんのよ?ちゃんと話聞いてたの?」
31とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:26:27.39 ID:sWdhlZYz0
だからモノローグくらい最後まで喋らせろ。

キ「いや、しかしだな、いきなり妹と結婚なんて戸惑うなってほうがおかしだろ」

ハ「いきなりじゃないわよ。あたしは前から知ってたし。」

キ「知ってたなら言えよ。つーか、いつからそういう仲になったんだ?」

妹「・・・えっと、付き合い始めたのはわたしが高校卒業したときから」

キ「二年も前じゃねーか!なんでおれに言わなかったんだ!?」

ハ「あたしが言わなくていいって言ったのよ。あんたなんだかんだ言って、シスコンを疑いたくなるくらい妹ちゃんのこと溺愛してるじゃない。
ややこしいことにならないように将来見据えるまで黙ってろって言ったのよ。あのときの状況考えたらあんた反対するに決まってたからね。」

あのときの状況ねぇ・・・、まぁ正直、こうなった心当たりが無いわけでもない。
それについてはおれたちが大学の3年、妹が高校1年の時まで遡るわけだが・・・。

幼馴染のミヨキチとともに北高に進学した妹はどういうわけか童顔で小柄でナイスプロポーションを誇った
あの高校時代の朝比奈さんそっくりの美少女へと成長していた。
もしそのときの北高に谷口がいたらミヨキチとともに、確実に奴的ランキングSランクをつけていただろうことは容易に推測できる。
そんな妹が北高に進学して1ヶ月あまりがたったある日のこと、唐突に妹に相談を持ちかけられた。
32とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:28:49.96 ID:sWdhlZYz0
キ「バイトがしたい?」

妹「そう、どういうのがいいかな?」

キ「いや、バイトするのはかまわんと思うが、いきなりどうした?小遣いなら十分もらってるんじゃないか?」

妹「そうなんだけど、前から考えてたの。高校生になったらアルバイトしようって。」

キ「それはまたなんでだ?」

妹「んとね、アルバイトしてもらったお金でハルちゃんやハル君、お父さん、お母さんに誕生日とかのプレゼント買うの。
やっぱりプレゼントはおこづかいじゃなくて自分で働いたお金で買いたいなって思って、
もちろん、キョンくんやハルにゃんにもね、だからどんな仕事がいいかなって」

・・・・・・いやはや、あのちんちくりんだった妹がよもやこんな立派なことを考えるまでに成長したとは、兄として感慨深い。

そんなこんなで妹のバイトが始まったわけだが、そんな朝比奈さん級の美少女へと成長した妹に男どもの注目が集まり、
結果ろくでもない男が言い寄ってくるのも十分考えられることだったわけだ。

妹がバイトを始めて1ヶ月ほどたったある日、今度は深刻な顔で再び妹に相談を持ちかけられた。
聞けば、バイト先の男にしつこく言い寄られているのだという。何度も断っても諦めてくれず、
直接教えたわけでもないのになぜか携帯に深夜、早朝に関わらず電話やメール来るようになり、さすがに怖くなったという。
そんな状態でバイトも続けていられるわけもなく、早々にバイトを辞めるハメになったがそれでも相手の男は諦めず
ついには自宅にまで押しかけてきた。まぁ、そんな奴を相手にわが妻、ハルヒや娘の有希が黙っているはずもなく、
相手の男がどういう末路を辿ったかは想像に難くない。ただ一つ、怒り狂うハルヒと黒い怒りのオーラを立ち上らせる有希を前に
おれはただただ、事の成り行きを見守るしか術はなかったとだけ言っておく。
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:29:03.14 ID:DeLhysUpO
支援
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:29:54.37 ID:kej29Es70
sien
35とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:31:10.22 ID:sWdhlZYz0
そんなことがあり、落ち込んでいる妹を兄としてどう慰めてやるべきかと思案していると、古泉から連絡が入った。

古「実は、この前、久しぶりに小規模ですが閉鎖空間が発生したのですがなにか心当たりはありませんか?」

おれは古泉に妹のことの詳細を説明してやった。

古「・・・そうでしたか、実はそのような事態は機関でも把握していたのですが、今、機関ではあなた方家族の生活には極力干渉すべきではない
との方針を打ち出していまして、どうやらそれが裏目に出てしまったようですね。それで今、妹さんの様子は?」

キ「まぁ、まだ働きたいって意志はあるんだが、こんなことのあった後だ、また同じようなことになるんじゃないかと
落ち込んだままでな。元気付けてやりたいとは思うんだが、なかなか難しいな。」

古「でしたら僕の方から妹さんにアルバイトを紹介するというのはどうでしょう?」

キ「おまえが?あてはあるのか?」

古「ええ、機関の関連している企業を当たればそれなりに良い条件で紹介できると思います。」

キ「おまえんとこの組織が関わってるのが引っかかるぞ。」

古「機関が関連しているとはいえ普通の一般企業ですからご安心下さい。ご心配でしたら僕も妹さんと一緒にバイトとして
潜り込みますが、どうでしょう?」
36とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:33:35.94 ID:sWdhlZYz0
キ「ありがたい話だがいくらなんでも妹のためにそこまでしてもらうのは悪い気がするな」

古「いえ、ただ僕も幼いころから知るあなたの妹さんの真摯で純粋な想いを手助けしたいと思ったまでですので。」

正直、妹ことを考えれば願ってもない話だ。
機関のことは気になるが森さんや新川さん、多丸さん兄弟には世話になってるし、ある程度信頼もしている。
なにより古泉が付いてくれるなら安心出来る。おれは古泉の提案を受けることにした。
まぁ、その後古泉は妹のボディガード役としてバイト先や自宅への送迎など色々と良くしてくれたわけだが、
妹にとって古泉は小さい頃からの顔見知りで兄の友人という信頼出来る年上の男性なわけだ、そんな相手がなにかと自分を気にかけてくれるんだから
年頃の妹が古泉に特別な感情を抱くのもごく自然なことということにこのとき気付くべきだったんだな………
長々とそんなことを思い返していたらいきなり後頭部へ衝撃が走った。

ハ「ちょっとキョン、何またブツブツ言ってんのよ、それで、どうするわけ?」

キ「痛えな、なにすんだ。って、どうするって、なにがだ?」

ハ「古泉君に対する答えに決まってるじゃない。本来ならお義母さんとお義父さんの許しはもらってるんだから、
あんたに許可とる必要なんてないのよ。それでも古泉君はあんたの顔立てて来てくれてんだからちゃんと答えなさい。」

……さて、どう答えればいいだろう。すっかり頭が混乱してわけがわからない。

キ「あー・・・、すまんが今は混乱して正直どう答えればいいかわからない、少し時間をくれ。ちょうど片付けないといけない
仕事もあるからそれをしながら頭ん中整理してくる。とりあえず二人とも今日は晩飯食っていってくれ。ハルヒ、二人の分も頼むぞ。」

ハ「そのつもりよ。それより早く答えてあげなさいよね。」

キ「ああ、わかってるよ。」
37とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:35:56.96 ID:sWdhlZYz0
そう言っておれは仕事部屋へ向かった。実際は急いで片付けなきゃならない仕事があるわけでもない、ただ一人で考えを整理したかっただけだ。

キ「・・・・・・それにしても妹が結婚ねぇ、しかも相手は古泉ときたもんだ・・・。」

古泉か・・・、普通だったら悔しいが申し分ない相手だ・・・。だがなぜだろう、心にもやもやしたものがあり気が晴れないというか・・・。
そのとき携帯が鳴り出した。表示は朝比奈さんからだと示している。朝比奈さんがおれに直接かけてくるのは珍しいな。
少し驚きながら出ると昔から変わらない愛らしい声が聞こえてきた。

朝「こんばんわ。キョンくん、みくるです。今、大丈夫ですか?」

キ「ええ、平気ですよ。珍しいですね、朝比奈さんがおれに直接かけてくるなんて。」

朝「えっと、実はハルヒさんに聞かれるわけにはいかないお話があるんです」

キ「……ということはなにか未来に関することですか?」

朝「そうなの、難しいことじゃなくてキョンくんにある事を伝えればいいんですけど、とても大切なことなの。聞いてくれますか?」

キ「まぁ、そんな風に言われたら聞かないわけにいかないですね。話してください。」

朝「ありがとう、えっと、今、キョンくんのお宅に古泉くんとキョンくんの妹さんが居ると思うんですけど、二人の結婚についてなんです。」

正直驚いた。まさか未来的話で二人のことが出るとは予想してなかった。
38とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:38:02.25 ID:sWdhlZYz0
キ「二人の結婚がなにか未来的にまずいことでも?」

朝「いえ、そうじゃなくて、逆です。二人が結婚することは未来にとってとても重要な既定事項なんです。ううん、未来だけじゃない、
私たちSOS団やそれに深く関わる全ての人たちの未来や現在、過去にまで影響を与えるくらいとても、とても大事なことなんです。」

キ「…いやいや、ちょっと待って下さい、二人の結婚がそんな大きな話になるとはさすがに思えないんですが」

朝「でも大事なことって言われたんです。指令はここまでで詳しくはわたしも聞いてないの。
ただこのことをキョンくんに伝えること、それが今回の指令なんです。」

キ「このことを聞いておれはなにをすればいいんですか?」

朝「他はなにもないんです。ただこのことをキョンくんに知っていてもらう。それだけなんです」

キ「そうですか……。」

朝「ごめんなさい…。わけがわからないですよね、いきなりこんなこと…でも、本当に大切ことなんだってこと。それだけは覚えていて。」

キ「……いや、なんとなくわかりますよ」

なんだか情けないな、おそらくおれのヘタれっぷりはどうやら未来人たちまで心配させているらしい。

キ「…情けない話なんですがさっきから妹の結婚ってことに動揺して落ち着かなかったんですよ。
たぶん、なんか父親的な寂しさというか感傷というか、そんな感じです。ですがお陰で腹は決まりました。これで古泉に安心して妹を任せられますよ」
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:40:09.51 ID:poXsgVDq0
支援
40とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:40:23.86 ID:sWdhlZYz0
キ「二人の結婚がなにか未来的にまずいことでも?」

朝「いえ、そうじゃなくて、逆です。二人が結婚することは未来にとってとても重要な既定事項なんです。ううん、未来だけじゃない、
私たちSOS団やそれに深く関わる全ての人たちの未来や現在、過去にまで影響を与えるくらいとても、とても大事なことなんです。」

キ「…いやいや、ちょっと待って下さい、二人の結婚がそんな大きな話になるとはさすがに思えないんですが」

朝「でも大事なことって言われたんです。指令はここまでで詳しくはわたしも聞いてないの。
ただこのことをキョンくんに伝えること、それが今回の指令なんです。」

キ「このことを聞いておれはなにをすればいいんですか?」

朝「他はなにもないんです。ただこのことをキョンくんに知っていてもらう。それだけなんです」

キ「そうですか……。」

朝「ごめんなさい…。わけがわからないですよね、いきなりこんなこと…でも、本当に大切ことなんだってこと。それだけは覚えていて。」

キ「……いや、なんとなくわかりますよ」

なんだか情けないな、おそらくおれのヘタれっぷりはどうやら未来人たちまで心配させているらしい。

キ「…情けない話なんですがさっきから妹の結婚ってことに動揺して落ち着かなかったんですよ。
たぶん、なんか父親的な寂しさというか感傷というか、そんな感じです。ですがお陰で腹は決まりました。これで古泉に安心して妹を任せられますよ」
41とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:42:05.26 ID:sWdhlZYz0
すいません、間違えました ↓続き

そうだよな、最初から答えては決まりきってる。古泉が相手なんだ。
長い付き合いだし妹を信頼して任せられる相手としてこれ以上は望むべくもない。
やれやれ、こんな妹離れ出来てない兄じゃハルヒに"シスコンを疑いたくなる"なんて言われてもしょうがないな。

朝「よかった、なんか混乱させちゃわないか心配だったんですけど、少しはお役にたてましたか?」

キ「ええ、十分過ぎるくらいですよ。ありがとうございます。あ、それと朝比奈さん、この先…」

ここで"妹は幸せになれるでしょうか"と聞こうとしてやめておいた。おそらく聞いても朝比奈さんは答えられないだろう。
それに先ほど古泉を信頼して任せると決めたんだ。ヤボなことを聞くのはよそう。

朝「?なんですか??」

キ「いえ、その、妹の結婚はいつ知ったんですか?おれは付き合ってたことも知らなかったんですよ。」

朝「えっ!?そうだったんですか?」

キ「なんかおれだけが知らなかったみたいですね」

朝「わたしは少しまえに妹さんから聞きました。たまに妹さんと連絡取り合って一緒にお買い物とか行くんですよ。そのとき聞きました。
そうそう、妹さんと一緒に買い物行くとなぜか必ず姉妹と間違えられるんです。なんでかなぁ?」
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:42:13.77 ID:mqYc5NdlO
支援
43とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:44:09.53 ID:sWdhlZYz0
キ「それはそうでしょう。兄のおれから見ても朝比奈さんと妹は本当によく似ていますよ」

朝「そうなんですか?自分ではよくわからないけど…」

ん?なんか今の会話になぜか引っ掛かりを覚える……。なんだろう、なぜかはわかんが。
そのとき部屋のドアがノックされた。まさかハルヒか?

キ「すいません、朝比奈さん。誰か来たみたいです、今日はこの辺で、ありがとうございました」

朝「あ、はい、こちらこそ話を聞いてくれてありがとう。じゃあ。」

電話を切って扉の外の人物に中にへ入るように促す。ドアを開け入ってきたのは妹だった。

キ「どうした?古泉と一緒にいなくていいのか?」

妹「うん…、ちょっとキョンくんと話がしたくて……。」

そう言ったきり妹は黙ってうつ向いてしまった。まぁ、なにを話したいのかはなんとなくわかる。だがおれは妹が話出すのジッと待った。

妹「あのね…、一樹くんと付き合ってたのずっと黙っててごめんなさい…。」

キ「気にすることはないぞ、ハルヒが口止めしてたんだろ?」

妹「ううん、本当はそうじゃないの、一樹くんとも何度もキョンくんに伝えようって話ししたの。
でも伝えてもし反対されて、もしキョンくんと一樹くんが喧嘩しちゃったりしたら、とか考えたら怖くなって、
でもよく考えたらそんなことあるはずないのわかってたのに、でもなんか……」
44とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:46:32.91 ID:sWdhlZYz0
妹は目に涙を浮かべ混乱しながらも必死に言葉を紡いでいる、おれはそんな妹の頭をくしゃくしゃ撫でながら言ってやった。

キ「なにも心配するな、わかってるよ、古泉になら安心しておまえを任せられる。」

妹はその涙を沢山浮かべた目を驚いたように見開いて俺を見つめている。

キ「しっかり古泉を支えてあいつを幸せにしてやれ、見返りに3倍幸せにしてもらうのを忘れるなよ。」

妹の目に浮んでいた涙が耐え切れないといったように溢れ出す、同時に抱きついてきて胸に顔を埋めてきた。

妹「・・・・・・ありがとうお兄ちゃん・・・。」

久々に聞いた”お兄ちゃん”という呼び名はどうにも照れくささや、くすぐったさを感じさせながら、でもどこか心地よい響きだった。


妹と共に居間へ降りるとまるで”全部わかってたわよ”と言わんばかりの豪勢な夕食が並べらていた。
やっぱりハルヒには全てお見通しだったみたいだな。その後はお祝いムード一色の騒がしい時間が過ぎていき、
日付も変わった深夜、子供達とハルヒと有希、結局泊まることになった妹はすでに就寝し、静かになった居間にはおれと古泉だけが残っていた。
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:47:19.45 ID:poXsgVDq0
支援
46とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:49:02.54 ID:sWdhlZYz0
古「こんなぎりぎりまで黙っていることになってしまって申し訳ありませんでした。お義兄さん。」

キ「謝ることねえよ、つか、その”お義兄さん”はやめろ。鳥肌がたつ」

古「いえいえ、義兄になる方相手にそういうわけにはいきませんよ、お義兄さん」

キ「・・・それ以上言うなら高校のとき、おまえにガチホモ疑惑があったこと、妹にばらすぞ?」

古「どうぞ、大丈夫ですよ、そんなことでは僕たちの仲は揺らぎません。」

キ「ノロケてんじゃねえよ」

古「あなたとハルヒさんほどじゃないと思いますが。」

キ「いってろ。・・・・・・・・・なあ、古泉」

古「・・・なんでしょう?」

キ「・・・・・・妹を頼んだぞ」

古「・・・かしこまりました。全力で、この命が尽きるまでお約束します。」

今までに無い真剣な顔でそう言った古泉を見てなにか安心感のようなものをおれは感じていた。
47とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:51:09.98 ID:sWdhlZYz0
そんな感じで数ヶ月後、妹と古泉の結婚式が盛大に催された。
その結婚式のときだが、古泉と妹からそれぞれ”二人の親友へ””大好きな兄、姉へ”のメッセージとともに
式を挙げていなかったおれとハルヒへのサプライズとして、なぜかおれたちも同時に式を挙げることになり
その計らいに不覚にも涙を零してしまったことなどは恥ずかしいので割愛させてもらう。
ただ、ハルヒと妹、二人のあの幸せそうな顔は一生忘れることはないだろうな。

そんな騒がしかった年の明けた正月、我が家には古泉、妹夫婦と朝比奈さんが集まり、
こういうイベント事は全力で楽しむハルヒの号令の元、初詣や羽根突き、福笑い、凧揚げなどを
子供達と全力で楽しむという、正月らしい正月を満喫していた。
夜も深けてきたころ、近くに新居を構えていた古泉と妹は帰り、朝早くからお節作りだのなんだのと
精力的に動いていたハルヒはさすがに疲れたのか子供達と早々に寝てしまった。
今はおれと有希と朝比奈さんの三人でまったりとした時間過ごしており、
久しぶりに朝比奈さんに淹れて頂いた極上のお茶を啜りながらおれと朝比奈さんは世間話に興じていて、
有希は片手で本を読みながら煎餅を咥え、もう片方の手でみかんを皮を剥くという器用なことをしていたわけだが、
ここで、ふと気になっていたことを朝比奈さんに尋ねてみた。

キ「朝比奈さん、一つ聞いていいですか?」

朝「はい、なんですか?」

キ「前に言っていた古泉と妹の結婚の重大な影響ってのは一体なんだったんですか?
話せることだけでもいいんで聞かせてもらいたいんですが」

朝「えっと、細かく正確には禁則なので話せないんですが、実は時間の流れ的にキョンくんとハルヒさんの出会いや
SOS団の結成にも関わっていることなんです」
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:52:03.52 ID:kej29Es70
お義兄さんとお呼び!sien
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:52:19.63 ID:DeLhysUpO
支援
50とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:54:25.69 ID:sWdhlZYz0
キ「そんな昔までですか?なんかよけいに話が見えないんですが・・・」

朝「どこから説明したらいいかな・・・、その、ハルヒさんが直接関わっていた既定事項の多くはキョンくんが発端になってるんです」

キ「おれがですか?身に覚えが無いんですが?」

朝「考えてもみて、SOS団が出来たのもキョンくんの言葉がきっかけで、
ハルヒさんが北高へ来たのも時間遡行して会いに行ったキョンくんがきっかけなんです。」

キ「SOS団が出来た原因についてはまぁ、わかるんですが・・・」

朝「キョンくんとハルヒさんの結婚もキョンくんとの会話でSOS団の終わりを連想して、キョンくんと離れたくない気持ちからの行動だったと思います」

キ「ああ、まあ、言われてみれば・・・」

朝「有希さんの養子のこともそうです。キョンくんの”SOS団はもうひとつの家族みたいなもの”って言葉がきっかけだったでしょ?」

キ「たしかに・・・」

朝「でも、この”SOS団はもうひとつの家族みたいなもの”って言葉はそれで終わりじゃなくて、この言葉が一番大きな意味を持ってるんです」

キ「それは一体どういう・・・」

朝「あのときハルヒさんはたぶんこう思ったんだと思います、
”みんないつか離れ離れになるかもしれない、でももし家族だったならずっと離れないで繋がっていられる”って」

キ「じゃあ、妹と古泉が結婚したのはハルヒの力のせいなんですか?」
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 00:56:37.22 ID:/hLtdEiK0
52とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:56:38.53 ID:sWdhlZYz0
朝「あ、ううん、誤解しないで。それに関してはハルヒさんはただ、きっかけを与えただけ。結婚はちゃんと二人の想いが通じ合ったから。
ハルヒさんが人の想いまで無理に動かしたりしないのはキョンくんが一番よくわかってるでしょ?」

キ「・・・そうですね、よくわかってます」

朝「でも、そのきっかけで結果的に古泉くんもキョンくんとハルヒさんの家族の一員になりました。」

キ「そこまではわかりました、ですが妹と古泉が結婚したこととSOS団が出来たことの繋がりががやっぱりわかりません。
それとSOS団が家族になるなら朝比奈さんはどうなんです?この先まだなにかあるんですか?」

朝「それについてはキョンくんはもう答えを知っているはずです。」

キ「答えを知っている・・・?おれがですか?」

朝「はい、そうですよ、キョンくんは以前わたしに言ったはずです、キョンくんの妹さんとわたしが”兄のおれから見ても朝比奈さんと妹はよく似ていますよ”って。」

キ「ちょ、ちょっと待ってください、まさかそれじゃあ・・・朝比奈さんは・・・・・・。」

朝「ふふっ、お察しの通りです。わたしも知ったときはさすがに驚きました。」

キ「そうか、朝比奈さんがいなければおれがハルヒにジョン・スミスとして会う事もないわけだから・・・」

朝「それにそんな沢山の既定事項も有希さんがいなければ、ほとんど叶わなかった。
わたしがここに居られるのはみんなのおかげなんです。きっかけはキョンくん言葉とハルヒさんの力、でも、わたしたちは誰か一人でも欠けたら
誰もこうしてここに居ることが出来ないんです。みんなが絶ちがたい絆で結ばれている。時間はそんな積み重ねで出来ているんです」

そうか・・・。みんな繋がっている。おれはそのとき長い間心の中に燻っていたなにかが消えていくように感じた・・・。
53とりあえず無題:2008/03/21(金) 00:59:29.30 ID:sWdhlZYz0
朝「でも変だなぁ・・・。」

キ「なにがですか?」

朝「本当はこんなに話せるとは思わなかったんです。もっと禁則に掛かると思ったんですけど・・・。なんでだろう・・・。」

有「それは一つ重大な既定事項がクリアされたため。」

ここで今までひたすらみかんと煎餅を食べつづけながら黙って話を聞いていた有希が突然話を切り出した。

朝「そ、それ本当ですか!?それって一体なんなんですか!?」

有「この時間軸における朝比奈みくるの出生に関する既定事項が満たされた。それによりいくつかの禁則事項が解除されたと思われる。」

キ「お、おい、朝比奈さんの出生ってことは、それじゃあ、妹と古泉に関係することか!?」

有「そう、現在、彼女は妊娠状態にある。いまは4週目、本人もまだ気付いていない。」

キ「な、なんてこった、い、妹に子供が・・・。まだあんな子供っぽいてのに・・・。」

朝「ふえぇぇ・・・」

有「おとうさんはおじさん。おかあさんはおばさん。わたしはいとこ。・・・・・・楽しみ。」

そう言った有希はどこか嬉しそうな、楽しそうな、わくわくしているというように見えた。
まったく、なんだかもうすっかり子供好きだな。・・・やれやれ。
54とりあえず無題:2008/03/21(金) 01:01:48.40 ID:sWdhlZYz0
翌日、いつものようにハルカとコハルに妹直伝のボディープレスツープラトンアタックをくらい目が覚めた。
それにしても昨日は色々とショックだったな・・・。妹と古泉に子供が出来てたなんて本人たちより
先に知っちまって知らされたときどんなリアクションとればいいんだか・・・。
居間へ行くとすでにハルヒと有希は朝食の支度をしていた。最後に起きてきたおれが
”遅いわよ、いつまで寝てんのよバカキョン!”なんて怒られるのもいつも通りだ。
鼻歌なんかを歌いながら機嫌よさそうに朝食を作るハルヒを見て昨日の朝比奈さんの話を思い出す。
朝比奈さんは様々なきっかけはおれだと言っていた。しかしやはりハルヒが願わなければ
今のこの幸せな気分は到底味わえなかっただろう。そんなハルヒを見ながらおれはなんとなく言ってみたくなった。

キ「なぁ、ハルヒ」

ハ「なぁに?ごはんならまだよ?」

キ「愛してるぞ」

ハ「はぁっ!?ち、ちょっと、あんた朝からなに・・・・・・むぅ・・・(///// 」

まったく本当にとんでもない奴だ。ちょっと願うだけでこんなにも周りの人間を幸せにしちまうんだから。
まぁ、一番幸せなのはそんなとんでもない奴を嫁にもらったおれ自身だろうがな。
真っ赤になってふくれているハルヒを見ながら改めておれは思った。この繋がってる絆を生涯、絶対守り続けようってな。

おわり
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 01:04:46.44 ID:NYhNuGxcO
thx
56とりあえず無題:2008/03/21(金) 01:05:09.68 ID:sWdhlZYz0
以上です。支援ありがとうございました。

”SOS団はもうひとつの家族みたいなもの”を軸に無理やり話を作ったんで
まとまりないうえ、最後がなんかgdgdですいません。
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 01:05:56.43 ID:jSuHKQ2p0
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 01:10:19.04 ID:DeLhysUpO
まさか古泉と妹ちゃんが結婚するとは……
GJ!
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 01:10:28.18 ID:poXsgVDq0
GJでした!
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 01:15:02.57 ID:clCM8jnI0
GJ
乙!
61とりあえず無題:2008/03/21(金) 01:28:49.78 ID:sWdhlZYz0
>>57-60
ありがとうございます。
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 01:34:19.99 ID:z7eg2Qwp0
>>56
すげえ良かった
このシリーズ大好きだ
ぜひ続けてくれ
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 01:45:03.21 ID:sWdhlZYz0
保守

>>62
こんな拙いSS好きだと言ってもらえて感謝です。
ありがとうございます。
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 02:35:29.45 ID:DeLhysUpO
保守
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 03:02:22.13 ID:6OvHV8kn0
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 03:28:11.21 ID:jSuHKQ2p0
67 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:45:18.20 ID:mHc5xSZz0
だいたい約10レスぐらい前後借りますー。
68朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:47:02.25 ID:mHc5xSZz0
「よく解らん・・・」
俺は今、ある場所を訪れている。教会だ。何でもここは聖堂教会の管轄下の中でも結構蔵書が多い場所らしい。
そこで最低限読むべきだと大野木に言われた本を読み漁っていた。
色々な書物があり、それを読むうちにちょっとずつ記憶が目覚めている。
だが分厚すぎるのと細かすぎるのとで何ページも読まなければ目覚める事がない。
これは俺にとっての地獄であることは言うまでもないだろう。あぁ、本当にありえない。
「本当に不思議な人。知識も無しにあれだけ理解した動きを取れるんだから。はい、紅茶」
かたん、と目の前に置かれた紅茶はとても素晴らしい香りを放っている。
多分・・・う〜ん・・・この感じは、アールグレイか。記憶力には自信が無いんだが。
「ありがとう、大野木」
「朝倉さんも」
「わざわざごめんね」


朝倉涼子を婚約者

第七話「Et la princesse de visages de lune le fate.」


今、教会の書物庫には俺、朝倉、大野木、そしてあの殺人狂・・・と言いたいところだが、生憎ナルバレックは職務中だ。
何でも殺人狂と呼ばれると同時に物凄く嫌われているらしく、それ故に監禁に近い状態で仕事室に居るのだとか。
執務はきちんとこなすあたり、どうやら不真面目ではないらしい。
大野木は結構な頻度で相手をさせられているらしく、だからこそ扱い慣れていると言える。
殺されかけた事もあったらしいがその都度、扱い慣れている故の方法でぎりぎり逃げているらしい。
まぁ、本気で殺そうとしていないのは明白で本気なら二秒も経たずに死んでるだろう、との事。
何と言うべきか、死ぬかもしれないのにお気楽だなと俺は思うよ。
「朝倉さんは読むのが早いのね。人とは思えないわ」
「そう? 結構、じっくり読んでる方なんだけど、これでも」
どうやら大野木とナルバレックは人の匂いにはあんまり敏感ではないらしい。
まぁ、そりゃそうか。ネロ・カオスやメレム・ソロモンは吸血鬼だからな。血の匂いに敏感だから解ったんだろうし。
69朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:48:01.48 ID:mHc5xSZz0
人外レベルに到達しなければ見分けるのも難しいんだろう。
と、
「二人ともちゃんと読んでるか? 特にそこの馬鹿」
そこにナルバレックがやってきた。職務を全て片付けたから暇なんだろうな。
よし、ならば俺がいじって暇をつぶしてやらなくちゃいけないな。
決して本を読んでるうちにストレスが溜まって、その解消をするわけではないぞ。
「言われなくても読んでるぞ、殺人狂」
「会った早々から、叩き殺してや、もがっ」
大野木が毎度のようにナルバレックを押さえながら口もついでに押さえる。
「まぁ、ナルバレックさん落ち着いて下さいよ」
朝倉が何とか宥めようと身振り手振りで頑張っている。
しばらくナルバレックがじぃーと朝倉を睨んでいたが、はいはいと動作で示してきた。
それを合図に大野木がナルバレックを開放する。まぁ、今はこれぐらいのいじりで良いだろう。
「・・・それにしても・・・たまに読めない文字があるんだが」
「まぁ、古い本だからな」
「ちょっとずつ俺が修理しなきゃいけないのが面倒臭い話だよな・・・」
「・・・修理? それはもしかして魔術か?」
そう尋ねてくるナルバレックの顔はしかめっ面だ。
まぁ、当然か。聖堂教会の人間は魔術に関しては色々とうるさいからな。
「さぁ? 魔術なんじゃない? あぁ、超能力の事を教会が選ばれた聖人に持つべき物だと考えてるの知ってて使ってるから」
俺の答えに若干目を大きく見開き、すぐに諦めたように溜息を吐いた。
「お前という奴は・・・まぁ、外部協力者である以上は許すしかない、か・・・・・」
聖堂教会にとって、奇跡は選ばれた聖人が持つべきだと考えている。
そんな訳で
「しかし、お前だってこれぐらい出来るだろ?」
「ちょっとぐらいならな。シエルならお前並に出来るだろうが・・・大野木は、どうだ?」
「同じく少し程度なら」
これは意外だった。あの吸血鬼を専門に扱う部署だからな、こいつらが居るのは。
多少の魔術は使うものだと思ってたのだが・・・。
「我々、魔を滅する代行者は礼装や教典等を使用しているからな。装備無しで特攻すればそうそうには勝てん、シエルは別としてな」
70朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:50:26.97 ID:mHc5xSZz0
シエル。
ついさっきも出てきた名前だが一体何物なんだろう。
「そのシエルって奴は、強いのか?」
「まぁ・・・死徒であるが、そうではない。そんな人間だから、奴は強い」
「なのにナルバレックが一位なのか・・・」
疑問が残るな。ここは年功序列が強いらしいが・・・まさか。
「仕方あるまい。代々そういう家系なのだから。年功序列に逆らってるのは私とメレムとシエルぐらいだ」
そのシエルってのはどっちの意味で年功序列に逆らっていると言うんだ・・・。
もし実年齢より番号が低いという意味なら、俺が教えて貰った範囲内での記憶と照らし合わせると相当なものなんだが。
・・・まぁ、どうでも良いか。
「生まれながらの運命ってのは辛いな」
とりあえず、同情してやるか。
「まぁな。だが、胃界教典を用いればシエルとて一撃で死にざるを得まい。まぁ、彼女とはいずれ出会うだろう、お前らは」
「うわぁ、まだ出会うのか」
これ以上どんな人や人じゃない奴に出会えば良いんだろうな、俺は。
何と言うか気分が重い。ただでさえ吸血鬼やこの殺人狂とその部下たるクラスメイトと出会う前ですら、なのに。
もう。人外は宇宙人、未来人、超能力者だけにして欲しいところだね。
・・・あれ? でも、この中で人類学上の人外って宇宙人だけじゃないか?
未来人は未来の人間だし、超能力者は超能力持った人間だし・・・。
・・・。あれだ。うん、一般人じゃない奴は、にしておこうか。
「まぁ、あれだ。メレム・ソロモン曰く『ホントにつまらない』と呼ばれるロンドンの魔術協会の連中に会うよりはマシだろう」
その言葉に記憶が反応する。どうやら魔術協会の本部らしい。
「ロンドンの魔術協会がどれぐらいつまらないか解らないし、何より人によって価値観は違う。だろう?」
「お前も固い男だな。どうしてそこの女、朝倉と言ったか? こいつを好きになったんだ?」
突然話を振られて朝倉が驚いた猫みたいにビクッとした。いきなり何て事を聞きやがるこいつは。
俺が止めようとしたが朝倉は恥ずかしそうに、少しだけもじもじしながら口を開きだした。
「えっと・・・鈍感なところとか、ぶっきらぼうだけど優しいところとか、たまに凄く格好良いところとか・・・」
「あぁ、もう良い。そのまま言わせ続けると終わりそうにないからな」
ちぇっ。惜しい事しやがって。折角日ごろから気にしてる事聞けるチャンスだったのに。
・・・止めようとしていたのに結局はこうなんだよ、俺は。あぁ、そうとも。
71朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:52:17.73 ID:mHc5xSZz0
俺はちらっと朝倉を見ると丁度目が合った。朝倉は顔を真っ赤にするとゆっくりと視線を本に戻していった。
くっ、可愛い奴め。
「さて、今日はそろそろここを閉める。読んでる本は貸してやる。また明日学校終わったら持って来い」
ふとナルバレックが書物庫に鍵を閉めながらそう言った。
「明日も読むのか?」
「まだ全部読み終えてないんだろう? 当然じゃないか」
俺は不快と深いを掛けた溜息を思いっきり吐き出した。あー、やってられない。
全くもって不愉快だろう、常識的に考えて。
「まぁ、良いや。とりあえずとっとと帰らせて貰っても―――・・・ナルバレック、大野木、朝倉」
「どうした、キョン」
「・・・血の匂いだ・・・・・」
教会の真ん中。
そこに不気味なぐらい真っ白い少女が立っていた。比喩表現ではない。本当に真っ白なのだ。
色白の肌。そこまでは良い。髪の毛も白。唇の色も人より薄く、瞳も同様。身に着けている衣服も純白だった。
汚れが何一つ見えない。何も言わずとも解る。明らかに人ではない存在だ。
その少女はただじっと無機質な目で、俺を睨んでいた。
他の奴には目も向けずに、ずっと俺だけを少しも動かずに。
そのまま対立するように睨めっこが続いたが、
「・・・警戒しないで下さい・・・。・・・私は、ただ主の命によって見に来ただけですから・・・」
やっとその一言発した。
「主? ご主人様は誰だ?」
ナルバレックが概念武装・黒鍵を構えている。場合によってはこの場で殺害するつもりだろう。
大野木もいそいそと黒鍵を構えだした。そんなにのろのろしていて大丈夫なのかよ。
しかしそれを見ても少女はまるでそのような物はどうでも良いという表情で微動だにしていない。
死徒を六回程滅ぼすだけの力があるというのに。

―――ゾクッ。

久しぶりにあの感覚を強く感じた。あの、どうしようもないぐらいに壊したくなる衝動。
しばらく押さえ込んでいたというか衝動が表立ってなかったせいで油断していた。
72朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:54:37.56 ID:mHc5xSZz0
「キョンくん?」
朝倉が俺の様子に気付いたらしい。だが、もう遅い。
完全にスイッチが入ってしまってる。理性が残っていてもこの状態を抑えるのは難しい。
もしここで戦闘が始まったら間違いなく止まらないだろうな。
だが、今回はそれだけじゃ無かった。様々な記憶が急激に目覚めだしたのだ。
攻撃、魔法、魔術、防御、結界、ルーン、降霊。様々な知識が一気に身に染みていく。
勿論、俺はそんなのには耐えられる程強い精神はしていない。正直言って、吐きそうだ。
それでも平然としていられるのはこの状態だからだろう。
「・・・そこの人には悪いですが、私は、もう帰ります・・・。・・・戦うつもりではないのですから・・・」
少女がその場から身を翻す。それを見てさっと俺の横を影が通った。
「お前は何物か聞かせて貰ってからにしようか、帰るのは」
凄まじい速さでナルバレックが結界を張り出しているようだ。
だが、それは意味を成すことは無かった。と、言うのも少女がいともたやすく破壊しちまったんだな、これが。
「こんないともたやすく・・・冗談でしょ。貴女、本当に何物なの?」
そう言って嘆くナルバレックには悪いが、俺は自分の頬が緩むのが抑えられなかった。ざまぁ見ろと。
久しぶりに、体の底から殺したいと思える相手が目の前にいるのだから。
「――――――」
目覚めた記憶を頼りにシングルアクションで大魔術を発動できる、高速神言を用いる。
だが俺はそれを言い終える前に止めた。その場の魔力が急速に廃れていったからだ。
これは俺が弓塚さつきと共にナルバレックと大野木の二人に襲われたあの夜にも起きた現象だ。
「・・・リアリティ・マーブル発動させるタイミングが遅いですね・・・。・・・あとで叱らなくては・・・」
少女はそう呟くとその隙にとさっと教会から飛び出た。
その瞬間、俺を支配しかけていた例の衝動は瞬時に身を潜めた。
久しぶりに浴びた自我すら打ち崩しかねない衝動。これは相手のせいだろう、多分。
あの少女は恐らくレヴェル的にナルバレックと比べる比べないという立ち位置に居ない。
「逃げられちまったけど、仕方ないよな」
俺はそんな気持ちも込めて、ナルバレックに同意を求めた。
対するナルバレックはと言うと何か末恐ろしい物を見るような目で俺を見ていた。
俺としては気分が悪いな。こいつに人外を見るような目で見られるのは。
「・・・お前、さっき神言を使ってたな」
73朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:56:09.55 ID:mHc5xSZz0
「ん? あぁ・・・何と言うかいきなり出来るようになってたんだ」
「現代の人間の発音器官では不可能と言われるのにか。全く・・・お前は神話時代から来たのか?」
「は? 何を言ってんの? お前だって耳コピできるだろ?」
いきなり何を言い出すんだ、この女は。そう思わずにはいられないね。
人が喋れない言語をどうして俺が喋れるんだ。俺も人間だぞ。こいつ、それを解って言ってるのか?
そんな俺の心情を知ってか知らずか、多分知らないと思うがナルバレックは呆れたように首を横に振った。
「もう良い・・・。しかし、本当に謎だらけだなお前は。真祖の姫よりも性質が悪い」
「俺はただの人間だ。吸血鬼レベル以上の外道にされては立場が無い」
「ただの人なら良いんだがな・・・。少なくとも、私はお前と戦いたくは無いね」
「そもそも戦いたくないんだがな、俺としては」


―・・・―・・・―・・・―・・・―。


「キョンくん、夕飯どうする?」
「そうだなぁ・・・」
帰り道。朝倉と並んで俺は帰路を歩いている。
夕飯の献立を二人で考えながら、スーパーにでも寄ろうかとしている。
そんな光景からまだ完全には消えていない日常の姿を見出して何となくほっとする。
俺は人間から完全には逸脱し切ってないのだと。
そりゃ勿論、周りは逸脱したような連中ばかりだし、俺もその仲間だけどな。
だけどこうして俺は人を過ごしている。こうして人間を生活している。
「どうしたの、キョンくん?」
朝倉がふと俺の視界に飛び込んで首を傾げる。
「いや、何でもない」
目の前の宇宙人の少女も人間をしているのだ。そう、完全には逸脱していない。
こんなにも微笑ましい日々がまだまだ続いている。それで十分、俺は一般人だ。
「夕飯か・・・とりあえず、朝倉の作ったものなら食べるよ、何でもな」
74朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 03:57:52.99 ID:mHc5xSZz0
「何でも、か・・・じゃあ、毒が入っていてそれを解っていたとしても?」
一瞬、俺はその言葉に止まった。朝倉が笑顔なのに落ち着かない。
それは何かのフラグなのだろうか。
まぁ・・・いいや。例えそれが現実になってもそんなの関係ねぇ。
「朝倉が作ったものなら残さず食そう」
そうだ。朝倉が作った食べ物なら毒入りでも食べるべきだ。
「あ・・・それは駄目。キョンくんが死んだら嫌だもん」
おいおい、言い出した本人がそれかいな。
「じゃあ、間違ってでも毒を入れるなよ?」
「勿論。キョンくんが死んだら、私も死んじゃうんだから」
う〜ん・・・これを朝倉が冗談で言うとは思えないしなぁ・・・。
多分、俺が死んだら本当に死にそう。インターフェースに死とか何とかあるのかはさておき。
「駄目だぞ。朝倉は俺の分までその時は生きなきゃ。生きて何があったか、笑顔で俺に話してくれ」
「何か寂しいなぁ・・・それ」
想像してみよう。俺の仏壇に話しかける笑顔の朝倉。
・・・凄い寂しい。うん、これは幾らなんでも悲しすぎやしないかい?
かと言って死なれたら困るな・・・。まぁ、でも、逆はそうでもないな。
「あぁ、でもな、朝倉。朝倉が死ぬときは俺も死ぬぞ?」
「それズルい!」
「そして朝倉が死ぬのは俺が殺す時だ。病魔にも何にも朝倉を取らせない。俺が独占してやる」
「・・・なんかちょっと怖いよ? でも・・・愛されてるんだなぁ、私」
当然の反応だな。解ってるさ。
「あぁ、ずっと愛しているよ」
これぞ、愛の極みだな。あぁ、世の中のバカップルよ、我々を見習うが良いさ。
・・・さて、と・・・。そろそろ歩を止めるか。
「で、誰だ?」
「え?」
「さっきからずっと感じてた・・・居るんだろう? 気配、消せてないぞ」
後ろに居た気配が動く。
「えへへ・・・バレてた?」
75朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:00:27.49 ID:mHc5xSZz0
そう声がして見たことのある吸血鬼、弓塚さつきが立っていた。
「当たり前だ。教会出た頃からずっと三人の気配を感じてる。あとの二人も隠れてないで出てきたらどうだ」
更に二人が闇の中から出てくる。
一人は先程の白い少女。もう一人は弓塚に出会った夜に擦れ違った変な格好の少女。
何となくおかしいと思っていた疑問が多少は解凍された。
だが、まだまだ疑問がある。明らかな力量の差だ。
どう見ても白い少女が弓塚と変な格好の少女より上。
つまりこいつらはご主人様じゃない。白い少女が言っていた主とは別の人物だ。
ならばその主はどこに居るのか。どこにも居ない。気配の欠片すらしない。
「・・・主とこの二人は利害の一致で動いています・・・。・・・それだけです・・・」
俺の考えが読まれたか・・・。
心を読んでいるという訳では無さそうだが、なかなかの洞察力だな。
「朝倉。場合によっては逃げろ」
「何を言ってるの、キョンくん?」
俺の考える最悪の事態は、この場に居る三人と戦う事だ。
その場合、朝倉がインターフェースの力をフル稼働して俺を支援しても勝てる見込みが薄い。
俺の予想が正しいならここに居る三人は全員が死徒か吸血鬼、もしくは吸血種。
情報連結解除がどういうシステムなのかは俺には解らないが、使ってもどこまで通用するかが解らない。
頭の中にあったエーテライトの例やネロ・カオスの獣の例にしても情報連結がこいつらに通用するとは思えない。
通用しても倒すまでとはいかないだろう。
「・・・戦うつもりはないです・・・。・・・戦うとしても私は手出ししません・・・」
「それは好都合だ」
この少女はともかく後の二人だけなら確実に勝利し得る自信があるからな。
「キョンさん・・・私と戦うのは無駄ですよ」
ふと変な格好をした少女がぼそっと呟いた。
「なんだと?」
「私の頭の中では常に複数のパターンが高速思考により展開されている。貴方如きの動きはさらりと読めます」
「ちょ、ちょっと、シオン!?」
弓塚が若干慌てているあたり、どうやら予想外の行動に出たみたいだが・・・。
「そうか、お前の名前はシオンというのか」
76朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:04:13.45 ID:mHc5xSZz0
「私の名前はシオン・エルトナム・アトラシア。以後お見知りおきを」
「以後が無い事を祈りたいね・・・是非とも」
「それは叶わぬ望みですね。ここでどちらかが死なない限りは」
・・・やるしかないのか?
「なるべく平和的な解決をしたいんだけどな・・・」
俺は苦笑いを浮かべた。それしかどうしても出来ない。
もしかして、聖杯でも叶わぬ望みとはこういう事を言うのではないだろうか。
「なら手を組んでください。私は貴方にワラキアの討伐を手伝っていただきたくここに来ました」
「ワラキアの? なら教会に言えば・・・」
「教会とは別に、滅せねばならないのです。私達は」
「どういう理由で?」
「それは言えません。ただ・・・エーテライトの機能を破壊するだけの力を持つ貴方が仲間になれば心強いと思ったのです」
強い意志だ。それをとにかく感じる。だけど、それは俺に関係ない話だ。
例えどれだけの強い意思を持っていてもそれが通用しないならどうしようもないからな。しかもエーテライト破壊したの朝倉だし。
「・・・無茶な話だな。何も解らずに仲間になれと? 冗談を言うな」
断るのが、ここでの正しい選択肢だ。
「では力ずくで仲間になって貰うしかありませんね・・・。貴方が遠野志貴のように素直な人間なら良かったのですが・・・・・さつき」
「解ってるけど、あんまり気がすすまないなぁ・・・。あの夜、助けてもらったし・・・んー・・・。だいたい戦うのは駄目だって言―――」
「じゃあ、貴女はあの娘をお願い」
「うぅ・・・戦わなきゃいけないんだね・・・。あ〜ぁ・・・我慢してやらなきゃいけないのかな」
俺は朝倉をちらっと見る。
「私は大丈夫よ、キョンくん」
「じゃあ、お互い検討を祈ろうか」
ふと白い少女を見やると、丁度目が合った。
「・・・私は介入しません・・・。・・・戦いはしないようにときつく言われますから・・・」
これで最終確認。
俺はシオン、朝倉は弓塚との一騎打ちという事だな・・・。
これなら大丈夫そうだが、問題は朝倉の力がどこまで弓塚に通用するかだ。
・・・まぁ、朝倉がインターフェースインチキパワー使えば楽勝しそうな気がするけどな。
「余所見していてはすきだらけですよ?」
77朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:06:08.01 ID:mHc5xSZz0
「っ!」
揺れる空気を肌が感じる。
俺は反射的にその一撃を間一髪で避けきった。ふぅ・・・危機一髪だぜ、本当に。
「まだまだ序の口ですよ。これから貴方を徹底的に追い詰めます」
「危ねぇな・・・そりゃ」
「アトラスをなめて掛かると痛い目に遭いますよ?」
アトラス。その単語に反応して記憶が目覚める。
錬金術師の集まりですか・・・。高速思考・・・なるほど、これは厄介だ。
俺は本能のままに動きまくるからな・・・。行動パターンが本人の思っている以上に簡単そうだ。
でもそれをもってしても俺を殺すのは勿論、倒すのも不可能だろう。
ようは考えて攻撃するなって事だろ。全て考えずに、全て体の思うがままに決める。
殺すとまではいかない。俺は殺生は好きじゃないからな。
「・・・・・」
あいつの武器は・・・何だ? ・・・あれは・・・何だ?
あの細い糸は・・・。何の塊だ・・・エーテル? あれが、エーテライトなのか?
「まさか・・・エーテライトが見えてるのですか?」
あれを使用するとなれば蹴りや殴りが届く範囲には入れない。
となると・・・やや間合いは遠い方が良い。それに必要な武器とは何だ?
やや遠い間合いで、あれに当たらないよう範囲で届く武器。
武器じゃなくても良い。あれを倒せるのなら生き物でも良い。
・・・なら、アレで良いや・・・。
「・・・グラデーション・エア」
魔力に形を与えながら、魔術を構成。
この場を世界から封鎖し、俺の影響が及ぼす空間内における因果律を破壊、自分用に再構成。
「っ・・・!?」
投影するのは別に物質じゃなくても良い。俺が。それを。
その空間を手繰り寄せてここに呼べ。そして、この場に広げろ。
「―――――」
「何ですか、この空間は・・・・・」
あぁ、駄目だ。この戦闘を楽しもうとしてる俺がいる。
78朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:07:57.32 ID:mHc5xSZz0
もしかしたら本気で殺しちゃうかもしれない。まぁ、別に良いか。
俺の記憶。知らない記憶が叫んでる。叫びすぎてよく聞こえない。
けど・・・これなら良いかも知れない。
しかし魔術たる固有結界を魔術たる投影でコピー出来るのか。・・・まぁ、出来るだろう。
出来ない事なんか無い。この空間は俺の物だ。そうなんだろう?
あぁ、駄目だ。考えることもうざい。体が動くままに動かそう。
「・・・完了」
その場が一瞬にしてガラリと代わり、シエルがそれを見回して目を見開いて驚いている。
「こんなの聞いた事も、見たことも無い。魔術を投影するなんて・・・。投影の詠唱だけで・・・」
「魔術と言えど魔で構成されただけの物質だ。物理的かどうかの違いだけのな。見せてやるよ、アイオニオン・ヘタイロイを」
荒涼とした平野が突如として広がっている。ここは異空間だ。
これを発動させるのは異空間。発動と同時に対象と自分をテレポートさせてここに連れてくる必要がある。
空間の内部に現れるのは英霊の軍勢。イスカンダルと共に英霊と化した生前の近衛兵団。
俺ではない誰かの部下達。だが、今だけは俺がその権利を強制的に執行する。
世界の情報を破壊し、世界からの修正を阻害し、ここに俺の確立をする。
今だけは俺が主人だ。お前の主人ではないが、動け。
奴を・・・。目の前に居る奴を・・・。
奴を、倒せ。
「っ!!」
シオンがこの軍勢の攻撃に備えているがただの吸血鬼に太刀打ち出来るわけがない。
「無駄だ。ただの死徒であるお前如きに、そのサーヴァントの群れは倒せない」
「サーヴァントと言えば・・・馬鹿な・・・そんな事が起こるわけが・・・!!」
「この事象における因果律を全て破壊し、構築すれば俺には関係話だ」
「まるで噂に聞く死徒二十七祖の五位のORTの水晶渓谷ですね・・・」
「多少は真似してるのかもしれないな」
だが実際問題、ある事象に対して別の事象が必然的・規則的に起きるのなら、
ある事象に対して別の事象が起きないという状態を覆してそれを起こせるようにしたら良い。
そうすればここに新しい因果律が成立するわけだからな。
そういう意味で考えるとなるほど。固有結界というのは使えれば使いやすい。
「・・・おかしい。貴方の力はおかしすぎます・・・。まるで真祖が全力を出している状態如く・・・」
79朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:10:16.70 ID:mHc5xSZz0
「俺の空間に居る限り、全ては無駄だよ。ここでは俺が絶対のルールだ」
とは言っても、投影した既に無いものを世界が修正しようとするから長時間の具現化は難しい。
これだけ大規模な魔法を投影したんだ。維持出来ても二分が限界だな。
「私だって負けていられませんね・・・高速思考展開」
「・・・ん?」
シオンの動きが急に変わった・・・? いや、違う。たったの僅かな間に戦略を立ててるのか。
一番近い奴の状態を見てそこからすぐ様全てを計算しつくしているのか・・・。
おかしい・・・。人数的にも戦闘能力的にもこっちが格段に上のはずなんだが。
まさか、こうも簡単に軍勢が倒されるなんて。これが分割思考による高速思考か・・・。
戦闘能力が劣っていてもそれを上回るだけの戦略を立てる頭脳・・・厄介だな。
「甘いですよ、考え方が。アルクェイド・ブリュンスタッドにすら刃向かったこの私ですよ?」
「・・・これはマズいな」
軍勢の半分を倒されたらこの空間は持たないんだよなぁ・・・。
仕方ない、王の軍勢解除。
「・・・元に戻りましたか」
しかし困ったな。あれが通用しないとなると、肉弾戦か?
必要だな。武器だ。武器を寄越せ。さっさと武器を寄越せ。
武器に関しての記憶が俺に応じて蘇る。この世界中にあった中で俺が知っている奴を。
最強の武器を。
「投影―――」
「遅い! ロック解除。バレルレプリカ―――」
武器では駄目だ。身を守る為の何かを、何かを。
「開始」
「フルオープンッ!!」
俺に向かって一直線で飛んでくる攻撃。
そして視界が一瞬にして光で覆われていく。凄まじい衝撃だ。だけど、
「無駄だ。アヴァロンの前には、五つの魔法すら無意味だ。・・・構成が間に合ってよかった・・・」
「何なんですか!? 貴方は本当に・・・ありえない!!」
「では改めて・・・投影、開始」
「膨大な魔力・・・これは・・・さつき! お願い!!」
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 04:16:20.01 ID:qZuHprP7O
81朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:16:29.11 ID:mHc5xSZz0
「え? う、うん、ちょっと待って! こっちが忙しいから!!」
遠くで弓塚に朝倉が凄まじい勢いで迫っている。
インターフェースは非科学的戦いならともかく、あぁいう殴り合いの戦いなら勝てそうだな、確かに。
「話をする暇は与えないわよ?」
「あぁぁぁぁあ、邪魔しないで!!」
弓塚の咆哮が轟いて、凄まじい衝撃が空気を震わしていく。
右腕の一撃が朝倉を思いっきりぶっ飛ばしていく。
「っ・・・もう、なんなの!!」
朝倉がちょっとだけイラッとしたらしく叫んでいる。だが、俺にとってそれよりも問題なのは弓塚の動きだ。
「よし、今だ・・・!!」
気合を入れたように叫んですぐ。世界が作り変えられていくのを俺は見た。
「これは・・・」
美しい庭園が広がる世界。しかし、段々と空は赤くなり、地面は乾いた土へと変貌していく。
何もかもが枯れ果てて見る影もなくなっていく。これが奴の心象世界・・・。
・・・それだけじゃない。全てが変わる。空気中のマナが失せていく。
あのナルバレックや大野木に弓塚と共に襲われた時のあれか・・・。
「何てレベルだ・・・まるで、二十七祖だな」
これでは魔法行使が出来ない。苦笑するしかないな。
世界、自然に満ちる星の息吹たるマナと生物の体内で作られるオドでは絶大的な差があるからな・・・。
・・・だがそれがどうした。確かに若干やり辛くはあるが、どうって事は無い。
投影には俺の体内にあるオドだけで十分だ。
「投影、開始」
インビジブル・エアは使う程の余裕もないし、初っ端から姿晒してるけど、大丈夫か。大丈夫だろう。
しかし避けられないか。・・・いや、光を避けるのは不可能だろう。
「馬鹿な・・・こんな、こんな魔力が・・・!!」
「朝倉、避けろよっ!!」
「はぁい、キョンくん!」
投影した約束された勝利の剣を、魔力を光に変えて、目の前に存在するのを全て破壊する。
「さつき、ここは退くわよ!」
「う、うん!」
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 04:17:15.67 ID:DeLhysUpO
支援
83朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:19:39.68 ID:mHc5xSZz0
逃がすか。絶対に殺す。
「エクス、カリバー!」
全てを巻き込んで全てを破壊する光が放たれる。
そしてあたりは光に満ちていく・・・。

静寂・・・・・・・・・・。

あの二人は、居ない。直撃を食らって死んだ、という訳ではなく単純に
「逃がしたか・・・」
という事だ。
ふと視界に真っ白い何かが見えて俺はそっちを見る。
そういえば、真っ白少女をすっかり忘れていた。
「・・・凄い力です・・・。・・・これは、恐ろしいですね・・・」
そう呟いてフッと消える。
その時、ガクッと体に凄まじい疲労感が襲い掛かってくる。立っているのも難しいぐらいだ。
「ハァ・・・疲れた・・・・・」
この戦いだけで凄まじい知識が蘇ったからな。
それを使ったんだ。ろくに予習復習せず数学に挑んでその場で方程式を発見して問題を解くようなものだ。
しかし一体、何事なんだ。よくあれだけの膨大な量の知識を俺が処理できたな・・・。ビックリだ。
いつもなら数学の授業やら何やらでもう頭が破裂しているところなんだが・・・。俺って案外凄いな。
・・・いや、違う。俺がおかしくなっているんだ。俺が、俺じゃなくなっているような・・・。
あぁ、駄目だ。もう久しぶりに本当に疲れた。身が持たない。
「キョンくん、大丈夫?」
朝倉が近寄ってくる。俺の顔を覗き込んでいる顔はとても心配そうだ。
「大丈夫・・・ではないな」
「おや、キョンと朝倉じゃないか。どうしたんだ?」
「岡部先生・・・いや、メレム・・・か?」
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 04:20:20.94 ID:uqIPrYYfO
支援
85朝倉涼子を婚約者 ◆41zceJmqdc :2008/03/21(金) 04:23:07.43 ID:mHc5xSZz0
「うん。だいぶ疲れているようだね」
天使のようなショタっ子、メレム・ソロモンが視界に見える。
朝比奈さん以上の天使スマイルに癒される。が、眠くなるな、こいつは。
「まぁな・・・固有結界展開したり、宝具を投影したり、何したりで・・・・・」
「それは恐ろしいことをしているね。個人的には注意したいところだよ、キョン」
あぁ、もう怒るのは堪忍してくれ・・・。
「あの、岡部先生・・・どうしたら・・・」
「大丈夫だよ、朝倉。単純に休ませてあげてれば良いんだよ」
「それで良いんですか?」
「それで良い。これはただの疲労だからね」
二人が何かを言っている。あぁ、駄目だ。もう体がダルい・・・。
眠い。本当に眠い。疲れたとかそういうレベルじゃない。
「おや、キョンはもう持たないようだね」
「もう・・・仕方ないなぁ。いいよ、ちゃんと私が連れて帰るから寝ても」
なら・・・甘えようか。もう、寝る・・・。
「おやすみ・・・・・大好きな人」
意識がどっぷり沈む手前。
「大好きな人、ねぇ・・・。良いカップルだね」
「あ、あう・・・」
メレムに何かからかわれている朝倉の声を聞いた。
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 04:23:22.22 ID:mHc5xSZz0
今回は以上です。支援ありがとうございました。
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 04:50:21.51 ID:uqIPrYYfO
乙!
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 05:59:52.58 ID:edYJqjLW0
乙でした
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 06:36:57.06 ID:uqIPrYYfO
保守
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 07:12:00.17 ID:GJeG22ZEO
>80
雑談室にも貼ってたけど、これなんだ?
恐くて踏んでないけど。
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 08:13:21.89 ID:Zbj4iyrm0
「VIP SOS団inMOTHER」なるサイトに飛ばされた、一応ウィルス反応は出てない。
宣伝なのかそれを装った荒らし依頼なのか不明。
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 08:49:18.72 ID:mqYc5NdlO
保守
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 08:59:11.86 ID:GJeG22ZEO
>>91
あぁ、なんかそんなスレあったな。まとめの宣伝か。
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 09:38:15.55 ID:uBE4I8QKO
おはよう保守
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 09:38:34.00 ID:PxVWFKko0
保守
断水\(^o^)/
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 10:21:51.39 ID:U3mVF56RO
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 10:59:59.24 ID:PxVWFKko0
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:25:37.89 ID:nFQ40WY+0
14レスくらいお借りします。
古長の連載の、最終話です。
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:26:52.18 ID:YXGlw/0hO
支援準備おK
100スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:29:01.32 ID:nFQ40WY+0
>>99 ありがとうございます

気まぐれに打ち始めた物語は佳境に入った。そこで、指が止まる。プロットなんてない、展開も決めていない。無心でただ、
場面場面を繋ぐように文を補足していけば、どうしたって、ラストに近付くにつれ進捗は下がっていった。とにかく先へ進
める為にキーを押そうとしても、指は思う様に軽快に動いてはくれない。至って当然の話だ。だってわたしは白雪姫がどう
なるのかをまだ、決めかねている。毒林檎を食べて伏せてしまった哀れな白雪姫が、王子様に出遭えず仕舞いで、どんな結
末を迎えるのか。
「愛しいひと」にも巡り合えぬままに、生涯を閉じようとする、薄幸の少女。
――ハッピーエンドに、してあげたいのに。


「長門さんどうしたの?こんな時間まで居残りなんて、珍しいわね」
「あ……」
部室の扉を開けて、堂々と踏み込んできたのは、朝倉涼子――朝倉さん。セミロングの綺麗な髪。優等生らしく背筋の伸びた
、頼れる女性を思わせる温和な微笑。クラスでもリーダーシップのある才女で、泰然自若としていて人望も厚い。わたしとは
何もかもが違うのに、あなたはそれでいいと笑ってくれる、密かにわたしの憧れの人。
「どうして」
「もし帰るのなら、一緒にどうかと思って捜してたの。まだ下駄箱に靴があったから……ああ、それ。書き掛けの小説ね?前
に話してた」
「……そう」
PCの前からウィンドウを覗き込むようにした彼女は、ワード文書の打ち掛けのファイルに眼を落とした。白地の上に点滅する、
一向に右へ走り出さないカーソル。
「ふうん。途中までよく書けてるじゃない。何か悩んでるの?」
わたしは、素直に打ち明けることにした。幸せな終わり方にしたいけれど、毒林檎を食べてしまった白雪姫がどうすれば幸せ
になれるのかが分からないのだと。発想が貧困なのか、辻褄合わせが苦手なのか、どうしても思い浮かばない物語の結び。
彼女は、そんなことで悩んでたの、と暗がりを吹き飛ばすように一笑した。
「それなら、書き直しちゃえばいいじゃない」
「え……」
「だってこれは、長門さんの物語なのよ?不都合を消しちゃえ、とまで乱暴なことは言わないけど。どんな風にだって物語は
変えられるわ。例えば――」
101スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:30:05.93 ID:nFQ40WY+0
彼女はにこりと大勢の男子生徒を恋に落としそうな微笑みを浮かべて、
「白雪姫が林檎を食べる前に、急にお妃様に娘を愛しいって想う気持ちが沸いて止めに入ってくるかもしれない。王様がお妃
さまが追い詰められているのに気付いて、兵を差し向けて、王様の愛に触れたお妃さまが改心するかもしれないわ。林檎を食
べた白雪姫も、王子様のキスじゃなきゃ目覚めないなんて決まってることでもないし。――そうね、他に……もしかしたら目
覚めないままの終わりもあるかもね」
「それが、ハッピーエンド?」
「だって、そうじゃない。何がハッピーエンドで何がハッピーエンドじゃないって、誰が決められるの?幸福の道なんて、き
っと幾らだってある。それに大概の人が気付かないだけよ。そういう全部を、ご都合主義で片付けちゃうのは寂しいと思うの


けれど、白雪姫が目覚めない結末は、わたしにはハッピーエンドには成り得ないような気がした。お妃様は、白雪姫を屠って、
空っぽの心を胸に埋めて生き続けていく。――林檎を食べた白雪姫は硝子の棺の中で眠り続ける。小人は王子の現れない白雪
姫の傍で、ずっと、白雪姫を護り続ける……。

「でも、それは……」
「長門さんがそんな小人を不憫だと思うなら、それはハッピーエンドじゃないと思うなら、きっとそれも正解。あなたのハッ
ピーエンドを書けばいいの。姫を蘇らせるのは王子様?誰がそれを決めたの?」

わたしのハッピーエンド。
朝倉さんは、微笑っている。独り立ちする子を見護る親のような――そんな喩えを持ち出したら、流石に、叱られてしまうだ
ろうか。彼女は誇り高く、勇ましく、それでいて愛情深い姉のような人だ。
彼女の助言に、胸の支えが取れたような気がした。わたしの望むように、願うように、物語を紡げばいい。その結末に責務は
あるだろうけれど、それがわたしの選んだ最終章ならば。
「……やってみる」
わたしはそっと、キータッチを、再開した。
102スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:30:54.32 ID:nFQ40WY+0
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白雪姫は王子と出遭いはしませんでしたが、小人と共に幸せになりました。
お妃様は白雪姫に赦され、白雪姫を赦して、心から笑えるようになりました。
もう誰も白雪姫を傷つけず、お妃様の心を蝕みません。


皆が皆、――幸せに。
幸せになるために、生きられるのです。



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雪解けの水から、掬い上げられたような穏やかな覚醒。
蕗の薹が溶け込んでいた夢から覚めた、――比喩を用いるなら、そんな静かな目覚め。古泉は眠りっ放しで上手く機能しない
頭を小さく傾ける。夕暮れの陽に彩られたくすんだクリーム色の天井。枕に沈んだ後頭部を持ち上げると、「よお」、と随分
と懐かしいような気もする声を聞く。
「やっとお目覚めか」
仏頂面の少年の、それでも安堵感を散りばめた、帰還を教示する一言。古泉が遣った視線の先に、椅子に腰掛け慣れた手つき
で林檎を剥いている少年の姿が反転して眼に入る。
現実感を取り戻すのに、長くはかからなかった。――戻ってきた。彼等の居ない封鎖世界から。その安心感が、どんな感慨よ
り先に立って、古泉が初めにした事といえば腹底に貯めこんでいた溜息を自由にする事だった。知らずのうちにシーツを掴ん
でいた指の端から力が抜ける。
103スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:32:05.06 ID:nFQ40WY+0
「やっとお目覚めか」
仏頂面の少年の、それでも安堵感を散りばめた、帰還を教示する一言。古泉が遣った視線の先に、椅子に腰掛け慣れた手つき
で林檎を剥いている少年の姿が反転して眼に入る。
現実感を取り戻すのに、長くはかからなかった。――戻ってきた。彼等の居ない封鎖世界から。その安心感が、どんな感慨よ
り先に立って、古泉が初めにした事といえば腹底に貯めこんでいた溜息を自由にする事だった。知らずのうちにシーツを掴ん
でいた指の端から力が抜ける。
数日間顔を合わせなかっただけのことで大袈裟なことだ、と笑う者もあるかもしれないが。古泉にとってのSOS団は、もう、
そうやって笑い飛ばせる程度のものではなかった。

「なんだ、まだ夢見心地か?ここは何処、私は誰とか言い出すんじゃないだろうな」
今一に反応の鈍い古泉を訝しむ少年――キョンに、古泉は苦笑を返す。
「はは、それはそれで中々面白い観測が出来そうですね。いえ、冗談です。意識の方ははっきりしていますよ。機関の……病
院ですか、此処は」
「ああ。俺が前に運ばれた時と同じ処だ。その減らず口なら心配は要らなそうだな」
キョンは一端手を止めたナイフを軽く上下に振りながら、疲れた顔を窓の外に向ける。古泉は、上体を起こして彼と視線の先
を同じくした。
窓辺は夕暮れ時の光の明澄さに染められている。
数羽の鴉が山なりに並び、夕闇の果てに優艶に飛び去ってゆく、日常の風景。眼に痛いほどに赤い。――古泉が神人を狩るこ
とで護り続け、キョンが昨年にエンターキーを押し込んで明確に選んだ、それは彼等の生きる世界だった。

「……先程の仰り様から察するに、僕が意識を途切れさせてから、何日か経過しているようですが」
「お前と長門が一緒に階段から落ちて、っていう、何処かで聞いたようなシチュエーションでな。意識不明に突入して今日で
七日目だ。外傷もゼロなのにお前も長門も眼が覚めないってんで医師もお手上げ状態だった」
「長門さん」
僅かに力の制御が効かずに跳ね上がった声を、聞き咎めた少年が意味ありげに古泉を見る。だが間もなく俺は何も察知しちゃ
いないと素知らぬふりをする老人のように惚けた表情に戻ると、彼はナイフの切っ先を垂直に立てて、壁面を示した。
「長門なら隣の病室だ。今はハルヒと朝比奈さんが付き添ってる。まだ目覚めちゃいないがな。
お前はともかく、長門が階段から足を滑らせて意識を失うなんてドジっ娘みたいなポカをやらかすとは到底思えん。というか
、有り得んだろ。――何があった?」
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:33:09.90 ID:YXGlw/0hO
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105スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:33:13.58 ID:nFQ40WY+0
「それは、……」
語ろうと思えば幾らでもできる。大本の原因から顛末まで。ただそれは、長門の内面を無遠慮に彼に晒すことだ。
「追々、説明します。ですが今はまだ、諸々の整理がついていませんので。……待っていて下さいませんか。長門さんのため
にも」
「やっぱり、長門も纏わってのことなのか」
少年は気難しい思案顔になり、けれどすぐに、「分かったよ」と嘆息して応じた。
「俺はどうやら、今度ばかりは蚊帳の外だったみたいだからな。何があったか知らんが、当人同士の話し合いなら任せる。た
だ、事後報告はしろよ」
「了承しました」
「ま、お前の目が覚めて長門が覚めないなんてことはないだろうからな」
その言葉には大いに、古泉も同感だった。大丈夫の筈だ。浄化されてゆく空間で彼女に与えられた声は今も、古泉の耳に残っ
ている。

キョンはやれやれと肩を落とすと、林檎の皮むきを再開した。赤皮がピューレを利用するよりずっと綺麗に、くるくると回転
しながら解けるように剥けていく。露になる白い果実を手にとって眺めると、彼は剥き終えたそれを躊躇いなく自分で齧り付
いた。汁が少し飛んで、瑞々しい果肉の芳香が漂う。
「おや、僕に剥いて下さっていたのではないのですか」
「其処に積んであるから、食いたいなら自分で剥け」
つれなく突っ撥ねてから、言い訳のように一声。
「……お前が去年のあの時、俺が起きるまで林檎剥いてた理由がよく分かった」
ベッド横に、編み籠にこれでもかとジェンガの如く積まれた林檎の山から、古泉は一つを手に取った。よく熟れた赤い林檎だ

彼の遠回しの小言が、酷く可笑しかった。
「物を考えたくないときに、手作業が一つでもあるとなかなか便利でしょう?」
「森さんが大量に届けてくれたから、何をするかに悩むことはなかったな。……お前が寝てる内に何個食ったか分からん。今
の俺はお袋より早剥きできる自信があるぞ」
「早剥き勝負でもしてみますか」
「いらん。一生分は食ったから、当分林檎は見たくもないな」
106スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:34:27.18 ID:nFQ40WY+0
少年の目許には、黒い隈が浮いている。
少年の裏表のない悪態は、古泉には何より薬だった。有難いと思う。長ったらしい謝辞を彼が不要としていることは分かった
ので、古泉は声を抑えながらも笑って、手元の林檎を皮上から齧った。皮の少量の苦さと新鮮な果実の甘酸っぱさが、口の中
に広がる。

古泉は思う。
――毒でない林檎の方が、世の中にはきっと、多いのだ。
人の感情の擦れ違いなんて、それに気づくか気づかないかの差でしかないのだろう、と。




「古泉くん……!眼が覚めたのね!」
長門の病室を訪ねた古泉を、沈黙の支配する一室にて椅子に腰掛けていたハルヒとみくるが、立ち上がって出迎えた。何所か
しらに困憊の有様が見て取れて、古泉はやつれた二人の姿に胸を痛めた。――七日間に及ぶ団員二人の欠落。少女たちに、こ
の上ない無理を強いたことは間違いない。
古泉の心境を露知らぬ、二人娘の驚愕は笑顔に取って代わった。ハルヒの歓声は悲鳴じみていたし、みくるに至っては笑顔が
半泣きへと移り変わって、「よ、かっ…!もう眼を覚まさないんじゃないかって、ふ、ふぇえ」と、ぼろぼろと玉の涙を零れ
させる。
「お二人とも、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。僕の方はもう、大丈夫ですから」
「うん、でも、まだ安静にしてなきゃ駄目よ!再検査してみなきゃ、何所が悪いのかだって――キョン!古泉くんが起きたら
真っ先に知らせなさいって言ったでしょ!」
「だから、真っ先に連れてきたろうが。あと声量を落とせ、此処は病院だ」
「僕が無理を言って連れてきて頂いたんですよ。――長門さんの様子が気になったものですから」
あ、とハルヒが口を噤む。傍らで眠りに就いたきりの長門のことを思い出したのだろう。ハルヒは肩を竦め、少女を振り返っ
た。
「有希は……まだ眠ってるわ。ちょっとやかましいぐらいで起きてくれるなら、寧ろ願ったり叶ったりなんだけどね」
「で、でも!古泉くんが…起きてくれたんなら、きっと長門さんも起きてくれます」
みくるが涙を服の袖で拭って、そう綺麗に笑う。ハルヒも同調して、「そうよ!そうに決まってるわ!」と吊り上げた眼差し
に力強く頷いた。
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:34:39.31 ID:YXGlw/0hO
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108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:35:15.38 ID:YXGlw/0hO
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109スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:35:36.78 ID:nFQ40WY+0
古泉は、長門に眼を移す。個室のベッド、あたりは見舞いに持ち寄られた色とりどりの花で溢れ返っていた。長門有希は寝息
さえ微弱で、呼吸をしているのかすら一見しては分からない。白皙の姫君のような、静謐な眠り姿。まるで氷の棺に横たえら
れたかのような。
ベッド横に立つと、古泉は囁くようにそっと、眠り姫に呼び掛ける。


「――長門さん」

世界は戻りましたよ。
これから、また、始めましょう。

――あなたの、恋する一人の少女としての生を。


長門を注視する古泉の眼前で、変化は克明だった。
ハルヒが息を呑み、みくるが掌で口を抑え、キョンは瞠目して、ただその光景を見つめていた。
少女の瞼が、まるで悪しき魔法が魔法使いの手によって解呪されたように、宝石箱がやっとぴったり口に合う鍵を差し入れら
れたように、―――ぱちりと、開く。
少女は、冷や水のように凛と、雪の柔らかな触感に覚えるような優しさで応えた。確かに、古泉一樹に合わせた双眸を瞬かせ
て。
「―――おはよう」
「はい。……おはようございます」
お帰りなさい、という言葉は彼等の眼を憚って告げなかったけれど。古泉はただ愛しさだけで、そんなありふれた小さなやり
取りさえ、心に刻み付けられるような思いがした。
白雪姫でもお妃様でもない、
『長門有希』は、微かに、古泉の意図するところを汲んで、笑ったようだった。


110スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:37:06.32 ID:nFQ40WY+0
///




『身体検査』の名目で、もう一晩の病院の滞在を命じられた古泉と長門を残し、SOS団の面々は帰宅の途に付いた。ハルヒな
どはまだ心配だから最後まで付き添う、とまで言い放っていたのだが、キョンと古泉による渾身の宥めで渋々ながらも引き下
がった。
医師が、恐らく大事はないだろうから間もなく退院できると、彼女に太鼓判を押したことも功を奏したようだ。珍しく立場を
逆転させてキョンに引き摺られるように仲睦まじく去っていくハルヒを見送る、長門の感情の読めない瞳が、古泉には気懸か
りではあったのだが。
みくるは愛らしい笑みを添えて小さく手を振り、二人の後を追って小走りに駆け出していく。早いうちに彼女が淹れるお茶が
飲みたいですね、漏らした言葉には長門も相槌を打った。

実質、検査のし直しは形式的なものに留まった。古泉と長門の意識が一週間に渡って昏迷していた事は、古泉の証言で身体的
な異常が原因でなかったことがより瞭然としたものになったからだ。森、新川、多丸兄弟らの訪問もあった。二人が昏睡中の
折、閉鎖空間が発生の兆しを見せることもあったが、本格的に展開されるまでには至らなかったという報告に古泉は安堵の息
を深めた。どうやらキョンが気を遣い、ハルヒを励まして発生を寸でのところで食い止めていてくれたらしい。それでいて古
泉と長門を見舞い、当人は表層では平気な顔を貫いてみせていたのだから、「彼」も随分と豪胆になったものだ。
感謝状の贈呈式を「機関」で演出してもいいわね、と本気混じりの冗談を吐いた森に、古泉はひとしきり笑って同意した。

やがて上司等も去り、独りきりになった病室を脱け出して、古泉は長門に誘いを掛ける。
――夜、二人は屋上にいた。


「少し夜風が冷たいですね。……長門さん、大丈夫ですか」
「平気。あなたは」
「僕も大丈夫ですよ。『病み上がり』扱いとはいえ、身体の方は何ら問題ありません。――今晩は、星が綺麗ですね」
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:37:16.57 ID:YXGlw/0hO
支援
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:38:18.18 ID:YXGlw/0hO
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113スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:38:31.90 ID:nFQ40WY+0
夜天に煌々と星屑。一度にはとても掴み切れない、無限の空の宝玉。
昨年夏に行った天体観測の記憶を蘇らせて、古泉は感慨に耽った。エンドレスサマーに翻弄された暑い暑い、夏休み。あの頃
は、こんな思慕の情に振り回されるようになるとは、思っても見なかった。世界の安寧を何より願いながら、傍らに控える少
女に堆積したエラーのことなど、僅かにも、思い馳せたことはなかった。
それが此処まで来てしまうのだから、人というものは分からないものだ。日夜、その考えは流転し、消長し、移り染まる。確
かなものなど無いのかもしれないと思いながら、それでも「確かさ」を得ようとして苦しむ。
――それがきっと、長門有希の抱え始めた、面倒な人間の在り方でもあるのだろう。
人故に、持ち続けねばならないもの。長門は着実に「人」に近付き始めている。


「……依然として、エラーはある。『わたし』は統合され元に戻ったに過ぎない。わたしはいつか、また同じ事態を引き起こ
すかもしれない」
口を暫し閉ざしていた長門が、不意に、忠告のように古泉に投げ掛ける。
「そのとき――」
「それが、どうかしましたか?」
古泉は不遜な調子で、何を敵に回そうとも決してたじろがぬ不敵さで笑った。古泉一樹が垣間見せた笑い方としては、初出の
、彼の本質を一端覗かせた微笑だった。
「あなたが何度エラーによって世界を改変したとしても、僕が、『彼』が、朝比奈さんが、涼宮さんが――必ず救いに行きま
す。あなたを取り戻す為に走ります。先程も言いましたが、長門さんの生きたいように生きればいい。己の能力を疎ましく想
うなら捨て去っても構いません。その分だけ、僕等があなたを護ります。あなたの想いが均衡を崩すほどSOS団は柔じゃあり
ませんよ」
あなたの力になりたい、手助けを、させて下さい。
どうか僕の傍に居てください。
――最後の一句を、古泉は飲み込んだ。
僕等の、じゃない僕の傍に――などと、気障極まりない台詞を素面で吐けるほど、古泉一樹もまだ心情整理は出来ていない。
彼の上司の森園生くらいの人生経験を積めば、それくらいの積極性も生まれるのかもしれないが。

「わたしは以前から、あなたの視線を知っていた」
「……」
「『わたし』があなたを召還した、それも、恐らく理由の一つだった」
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:39:28.38 ID:YXGlw/0hO
支援
115スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:39:54.38 ID:nFQ40WY+0
唐突に随分な爆弾発言だ、と思ったのは意識し過ぎだろうか?古泉は格好付けた笑みは何処へやら、少々赤らんだ頬を誤魔化
すように咳払いを一つした。
「そ、うなんですか」
「そう」
「では、僕の気持ちなんて、とっくの昔に知られていたということですか」
「そう」
「……そうですか」
どうしよう、気まずい。
古泉は余所見をする振りをして、何時になく激しい音を立てる心臓を押さえつけた。――落ち着け鼓動。
けれども今回の騒動で、大いに吹っ切れていたこともある。古泉は息を吸う。

「『彼』には、どのように話しますか」
「……今回の改変についてはわたしから、説明をする。……わたしの、想いについても決着をつける」
「それは、『彼』に告白をする、ということですか」
直球に直球を返す。長門有希は首を、はっきりと横に振った。「違う」

「そう、ですか。――もしそうなったとしても僕はあなたを応援できませんから、少しほっとしてしまいました」
無機質だった黒の瞳が、コーヒーにホットチョコレートを溶かしたような、ゆるい温度を宿して渦を巻いている。古泉はその
瞳に訳もなく口付けたい、という衝動にかられた。触れれば、五臓六腑を丸ごと溶かし尽くすくらいの激しい感情に心が水没
するに違いない。古泉は一握りの勇気を、日常会話するような気軽さに溶け込ませて、

「僕は、長門さんが好きですから」
「……そう」

古泉は気恥ずかしさから逃れるように天を仰ぎ、少女は、煽られる風に任せて髪を遊ばせながら、微かに何事かを呟いた。
古泉の耳にまでは入らなかったその極小の言葉は、白く曇った吐息に混ざる。

「そう」

――それはとても、静かな夜だった。
116スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:41:27.81 ID:nFQ40WY+0
///






退院から数日。
取り戻したごく真っ当な学生生活に、身体はすぐに馴染み、何事もなかったように古泉と長門は復帰した。当時はちょっとし
た騒ぎであったというが、古泉の目には特にそんな雰囲気を引き摺る様子もない、懐かしい日常だ。

「なあ、古泉。頼んどいたアレできたか?」
昼休み時間。拝むような仕草でやって来たクラスメートに、古泉がしれっとプリントアウトされた紙束を差し出すと、文化祭
の劇作家担当である少年は「おー、サンキュ。やっぱ出来る奴に頼むと違うよな!」と調子の良い声を上げ口笛を吹き、古泉
の背を痛めつけるのが目的かと疑うほど激しく叩き、古泉の制止が入るまでそうしていた。クラスのムードメーカーとしての
役回りを心得た彼は、一年時から古泉とは見知った仲で、持ち前のテンションの高さで委員長役を務めている。今度の文化祭
劇でも誰もやりたがらなかった脚本作業を一手に引き受ける形になり、お陰であちこちで奔走しているようだ。
翻訳を任されていた『Snow White』原版。退院後、数日の間に纏めて翻訳作業を仕上げ、字が汚いとよく指摘されることも考
慮してわざわざPCに打ち直した古泉だ。英語は不得手ではない古泉も古い活字を相手に苦戦したが、約束は約束と、期日通り
に纏め上げてきたのだった。

「構成の方は出来上がったんですか?」
「いんや、まだまだ。やっぱ原書の方も合わせてみないとなあ。そういうわけで、これから読む。煮詰まってたからマジ助か
ったぜ」
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:42:41.14 ID:YXGlw/0hO
支援
118スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:42:44.38 ID:nFQ40WY+0
「……まだ脚本の下敷きが出来ていない状況なのなら、少し、提案があるんですが」
少年は受け取って読み掛けていた紙を捲る手を止めた。
「なんだ、お前から改まって提案なんて珍しいじゃん。――何?」
「この『Snow White』なんですが……優しい話に、出来ないかと」
言葉を区切って、古泉は真摯に語る。
「原書そのまま、でも勿論いいとは思いますが、物語が酷に成り過ぎるのではないかと思いまして。文化祭という場で公表す
る演目ならば、見終わった人が微笑ってくれるようなものを望みたいのです」
昨年演じたものは、そういう意味では失敗だったと思いますから、と付け加えると、少年は「はーん」と悩んでいるような感
心しているような妙な奇声を出した。
「……なんか、あったみたいだなあ。先週の入院から様子変わったなー、とは思ってたけど」
「そう……ですか?余り自覚はないのですが」
「おう。俺の目は確かだね!まあでも、言ってることは最もだ。今度の話し合いんときに議題に出すから、意見提示してくれ
れば俺も支持するわ。脚本書いてて思ったけど、やっぱ暗い話は性に合わないっていうかさ」

陽気な少年はそうやって翻訳文書を抱えて何処へか、やはり何か打ち合わせがあるのだろう、慌しく去っていった。古泉はほ
っと一息をつき、腕時計を見遣る。
昼休みは、まだ時間があった。
部室へ寄ってみようかという気まぐれを起こしたのは、古泉自身、錯綜した感情の行く果てを見届けていないからだ。
古泉はあれから、長門とキョンの間にどんなやり取りがあったのかを知らない。事後報告も少女が請け負い、それきりだ。彼
の態度にも一見変化はなく、総てが元の鞘に収まったような、そんな日々が続いていた。

変わったのだろうか。あの一連の事件に、幾らか変わることが出来たのだろうか。
少年の、おどけたような言葉が耳に痛い。
――ただ古泉は、優しい話を、少女に見せてあげたかった。裏方担当だろうと何だろうと。文化祭の日に、「どうぞ、見に来
てください」と微笑んで長門を招待できる、そんな物語を、彼女に贈りたかったのだ。
119スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:44:27.01 ID:nFQ40WY+0
――文芸部室の読書愛好家の少女は、其の日、稀なことに書物を手にしては居なかった。


「……何をして居られるんですか?」
「執筆活動」
珍しい――少女は、普段は隅に仕舞われて見向きもされないノートパソコンを立ち上げて、人並みの調子でタイピングをして
いた。ホワイトボードに赤い水性ペンで走り書きをされているのを古泉は目敏く見つけ、事態を理解する。「締切・来週まで
!ジャンル自由、原稿20枚分」と、かなりの達筆で大きく書かれているそれは、見慣れた団長涼宮ハルヒの直筆。
「これは……もしかして文化祭にも、機関誌の発行をすることになったんですか」
事前にハルヒから聞き及んでいなかった古泉の当然の疑問を、長門があっさりと回答する。
「今朝涼宮ハルヒに遭遇し、わたしが提案した」
「……長門さんが?」
益々予想外だ。ハルヒが独断専行してのことなら、キョンを始めとした面々も言い訳を交えつつ抗議する所だが、それが長門
有希たっての提起。古泉が眼を丸くすると、少女は人らしい印象を強めた柔らかな瞬きをして、「書きたいものがあった」と
古泉に告げた。

書きたいもの。その察しがつかないほど、古泉は愚鈍でもなければ不敏でもない。
零れ落ちた古泉のその笑みは、古泉も己で意識が追いついていない、ただ、蕩けるように甘やかなものだった。ミーハーな女
子ならば、黄色い悲鳴を上げたかもしれない。唇を綻ばせた古泉が、そっと長門に囁く。

120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:45:08.95 ID:Zbj4iyrm0
shien
121スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:46:02.67 ID:nFQ40WY+0
「――タイトルを、お聞かせ願えますか」

長門は、淡々と打ち進めていた指を止めると、既に印字されていた一枚の原稿を摘み上げて、ひらりと古泉に翳した。窓から
差し込む射光に浮かび上がる、黒インクで刻まれた一文。
題名のみがプリントされた、原稿の表紙を飾る一枚。

「これが、わたしの決着」

わたしのあなたへの答え、と。

その声が何処か満足気に、強く胸を打つような感情を湛えて響いたのは――
多分、気の所為ではないのだろう。


122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:46:18.89 ID:YXGlw/0hO
支援
123スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:48:05.13 ID:nFQ40WY+0
---------------------------


白雪姫は王子と出遭いはしませんでしたが、小人と共に幸せになりました。
お妃様は白雪姫に赦され、白雪姫を赦して、心から笑えるようになりました。
もう誰も白雪姫を傷つけず、お妃様の心を蝕みません。


皆が皆、――幸せに。
幸せになるために、生きられるのです。



レクイエムは要りません。
白雪姫は、小人と笑い合って、最後にそうお妃様に告げました。


「わたしを葬るための歌も、お義母様を葬るための歌も、今は必要ありません」

何故なら皆が皆、生きて、泣いて、恨んで、――恋をして、誰かを愛して。
幸福を選び取って、わたしのためにあなたのために生きてゆくのだから。



Snow White Restart.

――この物語終わりが、わたしたちの、お義母様の、始まりになりますように。


---------------------------
124スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:50:06.25 ID:nFQ40WY+0



賑やかな人の群れを縫って、古泉が紛れて消えてしまいそうな小さな少女に大声を張り上げる。鮮やかなビラが撒かれ、ポッ
プが至る所に立ち並ぶ、活力に漲った高校生たちの祭典。一般客も含め、笑い声が、談笑が、そこかしこ溢れる中、波に揉ま
れながらも彼女の元に辿り着いた演劇衣装を身に纏った古泉。

その格好は、彼の容姿にはそぐわない、道化師のようにカラフルな小人の衣装。

古泉はそっと少女に、何処から持ち出したのか手土産の林檎を差し出し、
窓際にて立ち止まった少女は、仄かに首を傾けて、少年に微笑んだ。


「――とても、よく似合う」




[Snow white Requiem]

fin.
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:50:15.72 ID:Zbj4iyrm0
私怨
126スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 11:51:08.03 ID:nFQ40WY+0
以上でスノーホワイト・レクイエムは完結です。
支援、本当にありがとうございました。
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:51:57.41 ID:w342wril0
超乙!
凄い面白かった、良作をありがとう
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 11:58:18.23 ID:Zbj4iyrm0
支援ズレちまった・・・
作者乙!
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 12:02:08.53 ID:sYiie0tU0
これでまとめてみれるよ。
乙でした。
130スノーホワイト・レクイエム:2008/03/21(金) 12:07:18.86 ID:nFQ40WY+0
>>127->>128
ありがとうございました…!

あ、と、補足ですが。
最終話の「クラスメート」は、教科書文通さんのY田君の個人的なリスペクトを含んでいま(ry
作者さんすみません。
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 12:31:38.48 ID:YXGlw/0hO
乙だぜ
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 13:09:36.17 ID:w342wril0
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 13:18:53.11 ID:PxVWFKko0
ランドセルの日
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 13:43:04.12 ID:hKvKE7ObO
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 14:09:13.72 ID:GC8p8pnSO
保守
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 14:31:41.18 ID:uBE4I8QKO
>>135
インプ乙
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 14:56:44.60 ID:PxVWFKko0
jp
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 14:59:18.42 ID:ACJCwm/X0
スノーホワイト・レクイエム読んだぜ
最高過ぎワロタ
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 15:24:52.29 ID:dxyr6GJ0O
保守
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 16:04:35.17 ID:clCM8jnI0
作者さん乙
あれ・・・眼から汗が・・・
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 16:36:46.78 ID:hKvKE7ObO
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 16:58:10.02 ID:w342wril0
ほしゅ
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 17:13:34.44 ID:oIGB4PuFO
レクイエムきてた!
超乙です
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 17:31:49.16 ID:vss3rg8z0
保守
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 17:54:09.34 ID:PxVWFKko0
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 18:12:40.09 ID:hKvKE7ObO
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 18:31:41.52 ID:poXsgVDq0
保守
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 18:53:15.15 ID:cz9rP3vh0
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 18:56:31.23 ID:sDzLnZrD0
保守
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 18:58:49.82 ID:PxVWFKko0
jp
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 19:00:20.54 ID:XYSvZCzyO
ktkr
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 19:28:15.40 ID:q6CepLQt0
保守
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 19:43:33.21 ID:5Oaw0ujd0
投下しよう・・・
と思ったけど、魔界大冒険が余りにも懐かしすぎるから、見終わってから投下しようと思う保守
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 19:59:47.35 ID:clCM8jnI0
長門がおよそ言いそうにない台詞を思い浮かべて笑っていたら
ゴンッと本の角で叩かれてしまった
あなたもしかして今俺の心読みました?読心術ですか?エスパーですか?

「ダジャレ?」
「そう」
「ダジャレがどうかしたのか?」
「日本には、似たような語呂を持つ言葉が存在する。それらの掛け合わせて日本人は面白いと思う」
「そうだな。それがダジャレというものだな」
「私は、先程の’ふとんがふっとんだ’という一連の言葉の繋がりが持つ面白さを理解できないわけでもない」

・・・、やっぱり心読んだだろ?
まぁ、長門がダジャレ言うなんて想像できないからな。
「私にもそれくらいできる」
そうなのか?是非聞いてみたいもんだな。

「ダジャレを言うのは、誰じゃ」

空気が凍りついたのは言うまでもない。

という保守
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 20:13:18.05 ID:ZGUujExiO
ハルヒ「明日遠足にいくわよ!」
放課後。いつものように文芸部室もとい団室で朝比奈さんのお茶を飲んでいると、ハルヒがまた突拍子のないことを言い出した。
いい加減、こんな事態にも慣れた俺である。とりあえず話を聞こうかと思ったそのとき
長門「質問がある」
意外にも声を発したのは長門だった。普段ならまず古泉がハルヒに賛同するんだが、幸いなことにあいつは今日風邪をひいたとかで学校に来てないらしい。
長門「・・・おやつはいくらまで?」
ハルヒ「三百円!」
長門「把握」
少ないな。ガムにポテチぐらいしか買えないぞ・・・?
キョン「って違うだろ!他に聞くことあるだろ!」

みくる「わたしも質問いいですか?」
おお、朝比奈さんならちゃんと聞いてくれるはずだ。
みくる「バナナはおやつに含まれますかぁ?」
ハルヒ「含まれないわ!」
みくる「把握」
そうかそうか。バナナはいくらもっていってもいいのか・・・
キョン「って、オイ!そうじゃなくてなんでいきなり遠足なんだよ!?」
ハルヒ「行きたいからに決まってるじゃない!」
キョン「それにしても明日ってのはいきなりすぎないか?」
ハルヒ「だって他の日にしたら古泉くんの風邪が治ってついてきちゃうじゃない」
キョン「把握」
みくる「把握」
長門「把握」

古泉「把握しました(はぁと)」
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 20:32:34.85 ID:jSuHKQ2p0
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 20:49:47.04 ID:DeLhysUpO
保守
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 21:11:56.18 ID:PxVWFKko0
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 21:28:08.85 ID:kej29Es70
今日は1行も書けなかっただ……
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 21:46:01.93 ID:ZTQvg7Yp0
161p2009-ipbf702kokuryo.gunma.ocn.ne.jp:2008/03/21(金) 22:01:54.21 ID:r/nOgVAm0
新アニメーションと2期ってどう違うの?
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:06:17.01 ID:q6CepLQt0
何故フシアナ……
163p2009-ipbf702kokuryo.gunma.ocn.ne.jp:2008/03/21(金) 22:06:59.08 ID:r/nOgVAm0
以前フシアナしたアホがいてな
そいつのIPをコテにした
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:10:44.82 ID:sNi2ZE8B0
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:28:31.45 ID:ZTQvg7Yp0
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:33:36.14 ID:CmtA5XPf0
保守
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:38:16.94 ID:X7yXDaFaO
さてと、今日も数レス借りるぜ
とことん目立たないSS饒舌な殺人者の始まりだ
http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4469.html?PHPSESSID=db6ed5d8b3a315e398c516bb57de5fc4&flag_mobilex=1
↑前回まで
168饒舌な殺人者:2008/03/21(金) 22:39:16.67 ID:X7yXDaFaO
第2文節
と、いうわけで1年5組の教室にやってきた
なぜ俺はこんなにお人好しなのだろうか
お人好しを治す薬があるならぜひがぶ飲みしたいね
扉を開けて中を覗けば朝倉が笑顔を向けてくる
「よかった、来てくれないと思ってたから」
しかし、その笑顔に裏がないとは今の俺には到底思えず、入り口で教室に入るのを躊躇していた
「入ったら?」
そんな俺を催促する朝倉の笑顔にどうリアクションしていいのかわからず、引き続き立ちすくむしかなかった
「…はぁ仕方ないわね」
朝倉が例の何か呪文のような言葉を発する
まずい、逃げろと思った時にはすでに遅く、壁に押されるような力で俺は教室に押し入れられて尻餅をついてしまった
その瞬間、見慣れた教室が以前のようなわけのわからない空間に変わっていた
まずい、二の舞か!?
危険性はなかったんじゃないのかよ、長門!
「長門さんの助けを期待しても無駄よ、長門さんは今の私に協力的だもの」
立ち上がった俺にゆっくりと近づいてくる朝倉
距離がだんだん縮まっていくのは俺の背後が壁だからだ
…長門が協力的!?
なんだってんだ!?情報なんとか体は俺を殺すっていうのか!?
もう古泉でもスネークでもいいから助けてくれ!
ん…なんだ!?体が動かないぞ!
くそっ!前にもあったぞ、こんなこと!
169饒舌な殺人者:2008/03/21(金) 22:40:48.41 ID:X7yXDaFaO
「今度は始めからこうするの、だって逃げられたくないじゃない♪」
満面の笑みの朝倉はまだナイフを持っていない
だからこそどういう手段で俺を殺そうとしているのかが不安でしょうがない
朝倉が零距離まで近づいてきて、俺は恐怖で目を瞑った
だが次に感じたのは痛みではなく、ぽふっと優しく当たる感触だった
肩透かしを食らった俺は思わず目を開けた
そんな俺を驚愕させたのは朝倉が俺の胸に顔を埋め俺を抱き締めているその光景だった
なぜ?WHY?
「…ごめんなさい」
蝶の羽音ぐらいの声で弱々しく発される朝倉の台詞
わけのわからない空間で女が男を抱き締めているという光景だけ見ればなかなかシュールなひとこまだったが、俺の思考はシリアスだった
「宇宙人産のアンドロイドでも申し訳ないと思うのか?」
「…いじわる」
朝倉の声に先程までの悲観さはなかった
俺の声から悟ったからだろう
もう、俺にとって朝倉はトラウマではないと
さっきトラウマはそんな簡単に構成されていないと言ったが撤回しよう
ごめんなさいの一言で消滅するトラウマならわりと単純に構成されていた
「情報統合思念体はね、長門さんから採取されたエラーをもとに私に感情を実装したの…もちろんまだ試験的だけどね」
俺を抱き締めたままの朝倉が俺に言う
宇宙人産アンドロイドが感情か
…意味がわからないし…笑えないな
なぜって今の朝倉に俺も特別な感情が芽生えちまったからな
170饒舌な殺人者:2008/03/21(金) 22:42:12.84 ID:X7yXDaFaO
「ところでそろそろ離してくれないか」
少し間を空けたあと朝倉が何か呪文を唱えた
そしてまわりの光景が教室に戻る
…って何で体が動かないままなんだ?
「うん、それ無理♪だって私は本当に放課後の教室で抱き合う男女っていうシチュエーションに憧れていたんだもの」
朝倉は俺の胸の中で初めて俺に視線を向けた
潤んだ目で頬を赤く染めている
しかも態勢からどうしても上目使いになっているわけで
…ありかよ!?反則だ!!
どれほどの間、理性と本能が格闘をしていただろうか、最低でも教室のドアががらりという音を出すまで思考も体もとまったままだった
「WAWAWA忘れ物〜♪ってぬおっ!!」
ザ・WAールド!
時が止まった
この光景を見られてどう弁解しようかなんて考えても無駄無駄
「すまん!」
ネクタイの位置を調整して谷口はきびすを返す
「…羨ましいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
忘れ物番長はロベルト・カルロスの蹴ったボールぐらいの勢いで駆けていった
どうでもいいが、前回といい今回といい忘れ物は持って帰らないのか?
あ、体が動く、谷口GJ
171饒舌な殺人者:2008/03/21(金) 22:42:57.20 ID:X7yXDaFaO
さて…なぜこんなに俺が落ち着いていられるかというと…
「朝倉、情報操作で谷口の記憶をなんとかしてくれないか?」
こいつはあの頃の長門とは違う
この言葉の意味も理解してくれるだろう
「やだ」
頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向く朝倉
…お前、そんなキャラだったか?
「やだってお前…そんなこと言ったらハルヒに知られてとんでもないことに…」
もちろん、世界がではなく俺が
増えるわかめ一袋丸飲みの刑で俺のお腹がパンパンになり、破裂して喜緑さんが生まれてしまうかもしれん
「言ったでしょ?私には感情があるの、どうしてもって言うなら彼の該当記憶の私の部分を古泉くんにしてもいいわよ♪」
「そのままでいいです」
ここはプリンなんだ
そういうのはアナルでやれ
と、いうわけでハルヒの時とはまた違った意味で俺の意見は受け入れられず、せめてもの抵抗に明日の増えるわかめ一袋丸飲みに備え、夕飯をあまり食べずにした
そしてあの上目遣いが忘れられず、いささか睡眠不足で次の日を迎えた
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:45:04.62 ID:X7yXDaFaO
今日はここまで
目立ちたいような目立ちたくないような
こういうふうにひっそりとやるのが俺流なのか
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:51:54.52 ID:OdTSlNfZ0
乙!!
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:56:47.44 ID:uqIPrYYfO
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:58:40.29 ID:q6CepLQt0
なんという謙虚さwww
乙!
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 22:59:41.34 ID:Zbj4iyrm0
なんで古泉を持ち出す朝倉w
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 23:10:37.21 ID:YJ5UKo470
保守
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 23:19:09.98 ID:ZTQvg7Yp0
保守
179名前変換夢小説:2008/03/21(金) 23:25:14.30 ID:LTOLWO9m0
名前変換夢小説をつらつらと書いているものです。
長門が相手の夢小説ができたので投下します。
クラスとかの矛盾が生まれたのは片目瞑って見逃してください。すみません。

http://www.geocities.jp/haruhidream/yuki03.html
飛んだらスプリクトでるので自分の名前入力してください。
すると新しい世界が見えるかもしれません。当社比。


希望の相手とかありましたらぜひぜひリクエストおねがいします。
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 23:35:36.72 ID:OdTSlNfZ0
gj
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 23:37:28.71 ID:q6CepLQt0
毎回、最後のひと言が面白いなw

>>179
キョン頼む。
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/21(金) 23:50:24.91 ID:LTOLWO9m0
>>181
あなたが読みたいのはキョンですか? キョン子ですか? それともふたなりですか?

キョン了解しました。
主人公が男じゃなくて女って、需要あるんですかね……
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 00:08:58.60 ID:pAJvPEut0
保守
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 00:09:51.02 ID:RbCTMYHG0
というか、本来…って言い方も変だが、夢小説ってのは女性向きなんだぜ?
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 00:26:07.95 ID:P+urZD8LO
保守
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 00:35:08.14 ID:rRcDGSUp0
寝る前保守
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 00:46:07.77 ID:gI0UPpLM0
保守
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 00:48:29.76 ID:J1c4QA3K0
あげ
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 01:12:30.29 ID:P+urZD8LO
保守
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 01:28:17.57 ID:wJzQcVx5O
保守
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 01:53:32.38 ID:17C407sCO
そういえば、この冬は企画が無かったけど、次の夏はどうなのかな
もし、するなら早めにテーマ決めたほうがいいのでは…
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 02:13:47.22 ID:P+urZD8LO
もう夏企画かよw
6月でも大丈夫じゃないか?
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 02:30:42.29 ID:17C407sCO
ちょっと気が早かったか
すまん
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 03:20:53.04 ID:QYvvFUYfO
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 03:41:29.11 ID:tq22Anaw0

196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 04:37:04.53 ID:QYvvFUYfO
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 05:16:00.13 ID:tq22Anaw0
何か>>179氏のを読んでいたら電波を受信したので
長門で名前変換夢小説を書いてみました

http://www.geocities.jp/kingodom4/nagatoyuki04.html

あれ・・・、もうこんな時間・・・、スズメが鳴いてます・・・。
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 05:45:49.59 ID:z89/7hoiO
保守
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 06:25:12.46 ID:P+urZD8LO
>>197
なんかこんな長門は新鮮だw
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 06:45:56.66 ID:VC219Uty0
おはようございます。
早速ですけど、投下しますね。
朝なんで、少し間隔空けて投下します。
201橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:47:54.11 ID:VC219Uty0
 その身を淡い桃色に染めていた木々は、今は打って変わって鮮やかなディープグリーンで辺りを支配している。枯れた木が寒々しく連なっていた山々も、見違えるほど隆々活々としてこの町に鎮座していた。
「ふう……」
 自然界では様々な移り変わりがある一方、しかし俺はいつもと変わらず早朝ハイキングに精を出していた。そう、今年で3年目となる通学路でのワンシーンである。
 しかし、慣れとは怖いものである。入学当初はこの坂を見て、後3年近くもこの坂を上ったり降りたりしなければいけないのかとただひたすら鬱な気分で俺のハートは溢れかえっていたのだが、いつの間にやらそれが苦にはならなくなっているのだから。
 それどころかこの坂を上らないと半分寝ている脳が活性化しないらしく、最近では休日にどこかへ遊びに行ったところで、どこか間の抜けた一日を過ごすことになってしまうのである。
 おかげでハルヒに何度叱られたことか……これは余談だったな。

 慣れといえば、俺はこの2年間でSFともホラーともつかぬ、常識を逸脱した体験をしてきたものだ。しかも幾度と無く、である。
 宇宙人同士の闘争、未来人とのミッション遂行、超能力者達がしでかした偽殺人事件……人間の範疇に止まらないことから3歳児でもわかる稚拙なことまで、ありとあらゆる事象に身を費やし、そして現在に至っている。
 確かに希少価値の高く、2度と経験できないようなことばっかりだった。正直それらに巻き込まれながらも自分が五体満足でいること自体奇跡に近いと思う。ああ、でもナイフで脇腹をグリグリされたときはさすがに死ぬかと思ったけどな。
 だが、そんな珍事件ですら霞ませるようなことがここ一年で発生していた。

 ……そう、珍事である。決して人知を越えた展開が発生するわけではないのだが、少しおつむが足りなくてとってもKYなある一人のサイキック少女によって、俺の人生はより波瀾万丈なものへとシフトしている。
 彼女はアクシデントを発生させる特技を持っていた。しかも見ず知らずのうちに、である。
 そして困ったことに、その件に関して自覚を全く持っていないのである。
 まるでハルヒが持つ能力を、本人が自覚していないのと同様に。
 ……以前もこんな事があった。
 詳細は省かせてもらうが、あいつがあらぬ事をしでかしたおかげで、俺はハルヒと佐々木、そしてなぜか谷口にボッコボコのけちょんけちょんにされたのだ。
 言われの無い行い、冤罪だと主張したのだが聞き入れてもらえず、俺の内に秘める憤りを打ち払おうと、諸悪の根源である橘京子を呼び出した。
 そしてどういう事だちゃんと説明しろと問いつめると、奴は
『あたし何にも変なことはしてません! キョンくんの迷惑になるようなことなんてしてないのです! 誓ってもいいのです!』
 等と言い張りやがった。
『お前以上に俺に迷惑をかける奴なんざいないんだよ。最近はハルヒの方がよっぽど大人しいんだ』
 みたいなことを言ったら今度は
 『違うもん違うもん!』
 と大声を上げて泣きだしやがったのだ。
202橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:50:26.66 ID:VC219Uty0
 公衆の面前で女の子に泣かれると分が悪いのはこちらだ。俺は観客と化した通りすがりの皆様に白い目を向けられ、仕方なく橘をあやしながらその場を後にした。どうやってこいつに言い聞かせてやろうかと腹の中で考えつつ。
 だがしかし確たる物的証拠が見つからない以上、問いつめてもしかないと思い、せいぜい自重するようにとしか言えなかったのである。
 ……たく、本気で勘弁してもらいたいね。機関で引き取ってもらって矯正したらいいんじゃないかと思うんだがどうだろうか? 森さんに教育指導をしてもらったら、一週間くらいで常人の半分くらいのマナーを身につけて戻ってくるかもしれない。
 しかし、そんな痛い少女に対して、最近では逆に皆が慣れてきたらしく、事あるごとに原因は彼女と決めつけるようになってきた。そのため最近ではそのようなトラブルは無くなってきた。あの時の一回を除いて。
 その件に関しては……どうせそのうちトラブルが発生すれば話さなければいけないから、今回は省略。

 結局何が言いたいかというと、俺もハルヒも佐々木も、勿論長門や朝比奈さんや古泉……多分九曜や藤原だって、橘京子の奇行に慣れてきたってことだ。
 俺がこの通学路を苦渋と思わなくなってきたと同様に。
 古泉曰く、ハルヒの閉鎖空間の発生は、佐々木達に出会ってから一時的に増えたものの、それでも減少の一途を辿っているそうだ。
 佐々木に対して当初戸惑いみたいなものがあったようだが、それと同じだ。ハルヒは持ち前のパワーで佐々木にはすぐ慣れてしまった。
 橘に対してもそれは同じ。時間が経つにつれてハルヒは平常心を取り戻しつつあるようだ。
 ……ま、佐々木よりはかなり時間がかかっているみたいだけどな。
 そのため、以前は橘が奇行を起こすたびに閉鎖空間がひっきりなしに出現してきたが、ここ最近では橘のせいで閉鎖空間が発生することは極めて希になってきているという。
 これもひとえに、『橘だからしょうがないか』という、ハルヒの諦めにも似た感情がそうさせているのだという。
 佐々木の方も同感で、以前のように紅い巨人が発生しなくなってきているのだという。橘が残念そうに話してくれた。
 だがな橘。お前は佐々木の心を平穏にするのが使命だろうが。なぜ波風たたせるようなことを望む?



 そんなわけで、多少の不確定要素はあるものの、世界は往々にして平和であった。
 しかし、平和な世の中を嫌う我が団長様はここ最近つまんないを連発しており、俺に何かイベントをせがむのがここ数日の既定事項となりつつあった。
 その姿に内心慌てているのは言わずもがな古泉と機関であり、姑息ではあるが何やら面白いイベントを計画敢行中だという話は聞いている。
 全く、機関の仕事も楽じゃないよな。将来仕事に困っても、いくら給料がいいからといっても、機関にだけは出稼ぎに行きたくはないね。
 ともあれ、そんなわがままっぷりを全開にしているハルヒであったが、しかしここ最近は少々考えが変わっていた。
 自分の興味の対象が「不思議なこと」から、「『橘京子以外』で不思議なこと」に変更していたのだ。
 これを聞いたとき、俺は鷹揚に頷き、ああようやくハルヒも人並み程度のインターレストを持つ風になったんだなって、しみじみ思ったよ。
 もしかしたら、『人の振り見て我が振り直せ』っていう言葉を肌で実感したのかもしれない。ある意味、橘の本来の目的を達成させているのではないかと思うな。
 まあ、少々違うかもしれないが、橘のおかげで、世界は崩壊せず安定な方向へ向かっているといってもいいだろう。
203橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:52:26.25 ID:VC219Uty0
 だが、喉元過ぎれば熱さを忘れるとはよく言ったもので、ハルヒだけでなく、俺もこの平和な日常に食傷気味になっていたのだ。
 だからあんなことをふと思いついたんだろうな。『何か面白いことはないかな』って。
 橘が巻き起こすのでなければ、別に少々の事件が起きても構わない。ちょっとした事件があって、それに俺たちが卵の薄皮一枚くらい関わっている程度であればじゃんじゃん起きてほしいという、不埒な考えが沸いてきたのだ。
 我が校が見え始めた、いつもの通学途上の坂の上で、そんなことを考えながら歩いていた。

 しかし、罰当たりなことを願うもんじゃないな。
 俺が願ったからかどうかは知らないが、このとき既に『不埒な考え』というのは渦を巻いて発生していたのだ。



 予兆は確かにあった。
 昨日――週明けの月曜日のこと。その日も今日と、そしていつもと同じようにこの坂道を上って登校していた。
 朝とはいえ、日差しは結構暖かい。いや、暑い。この坂を上るのには慣れたと入ったものの、これだけお天道様が出しゃばってくるとさすがに堪える。
 そう言えばハルヒの思いつきで、なんだか良くわからない同好会未満のこのサークルを立ち上げたのもこんな天気だったか。……そうか、もうすぐ2年がたつというのか。
 ふと思い返す。去年はこの時期に『SOS団創立一周年記念パーティ』と称して、どんちゃん騒ぎをしたんだったな。鶴屋家所有の山荘で山桜を鑑賞しながら。
 ……そうそう、思い出した。去年のリベンジも忘れず執り行わなければならない。半強制的にやらされたとはいえ、ちょっと自信があった岡部のモノマネがあまりにも不評だったから、見返してやらないとな。

 ……うむ、正直それは今回の件とは関係ない話だ。スマン。
 つまりはそんな事を思いながら丘の上の学校を目指していたのだ。



 ようやく校門までたどり着き下駄箱から内履きを取り出して履き替えようとすると、ある人の姿が目に入った。
「よう」
「…………」
 クールビューティならぬサイレントビューティを絵に書いたかのような表情で、彼女――長門有希は玄関の前に突っ立ったまま俺を凝視していた。
「長門、お前はいつもこんな時間に登校しているのか?」
204橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:53:57.59 ID:VC219Uty0
「……違う。今日は特別。少し遅れた」
 だよな。俺は長門と登校時間に出くわしたことなんて一度も無かったし、長門ならもっと早くに登校しているだろうと思っていたさ。
 余談ではあるが、俺は登校時に他のSOS団の面子と顔を合わせたことがない。もしこれがいつもの土曜日と同じなら、俺は毎日ハルヒの昼食分のジュースを奢る羽目になってしまうかもしれない。
 ……いや、それは無いか。稀に俺より遅く登校してくるときもあるからな。ハルヒは。本当に稀だけど。
「昨日」
 ん?
「何かあった」
 長門の、いつもにもまして文節区切りの口調が印象的だった。
「何か――とは、何だ?」
「…………」
 長門はしばし沈黙し、
「何か、あった」
 間に句読点を挟む程度の違いを見せつつ、そう囁いた。
 何かあった、というのは昨日の日報を俺に報告してくれているのだろうか? それとも俺が昨日朝起きて夜寝るまでの一日を、長門に報告すべきなのだろうか?
 語尾の口調のイントネーションだけはつけて欲しいものである。日本語でも英語でも、肯定文を尻上がり口調にするだけで疑問文として捕らえてくれるんだ。それくらいのことをしてくれても罰は当たらないぜ。
「………………」
 だがしかし、長門は更に集光点を3平方マイクロメートル程狭めて俺を見つめたのみであった。
 殆ど変化していないその表情だが、しかし俺は感じ取っていた。長門がこれだけ表情を露にしているのは珍しいと。
 そして、何故かは知らないが、長門は不機嫌な態度を俺に示している、と。
「どうした長門。昨日何かあったのか?」
「……別に」
 長門の声は、振動数こそいつもと同じであったが、その内なるものは間違いなく1オクターブ低かった。できれば腕組みしてそのセリフを放って欲しかったぜ。あの芸能人みたく。
「そうかい……俺のほうは取り立てて何も無かったけどな」
「そう……」
 俺が昨日の出来事を一文で簡潔に述べると、長門は燕返しを切り返すが如く素早い動作で靴を履き替え、エミューの如くスタスタとその場を走り去った……いや、歩き去っていった。
「おい、長門?」
「なに」
「俺に何か聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「聞きたいことは、聞いた」
205橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:56:09.79 ID:VC219Uty0
 はて……俺は何か重要なことを暴露したのだろうか? 特になんて事のない会話をしただけのような気がするが……あれでもう全て分かってしまったのだろうか?
「そうじゃない。あなたから聞くことは、もうない」
 少し距離が離れたためであろうか。自位置から寸分違わずコリメートさせたその視線は、某スーパーロボットの冷凍ビームも凍らせるような冷たいものであった。
 長門、もしかしてお前怒っているのか? そのような雰囲気を感じざるを得ない。
 だが、何故? 何故長門は怒っているのだ?
 会話からして、『その原因は、あなた』とでも言いたげな表情なのだが、まかり間違っても俺は長門を怒らせるようなことをしてはいない。
 第一長門と最後に会ったあの日だって……

・・・・・

 ……土曜日の不思議探索の日だって、長門はいつもと変わらぬ無表情を醸し出していた。
 いや、午後の組み分けで俺と一緒になって行動していたときは、むしろ良い意味で感情が豊かになったといっても差し支えない。
 午後に俺たちの二人組となったその日、俺は新装開店のマンガ喫茶に行った。そら難しい本を読むのもいいが、たまには息抜きで簡単なものを読むのもいいんじゃないかと思っての措置だ。首を傾げていた長門を少々強引に連れて行ったのはご愛敬だ。
 手続きを済ませて足を伸ばせてリクライニングのできる席を確保し、長門をコミックコーナーに立たせ、『好きな本を読んで良いぞ』と言い残し、俺は一冊のマンガを手に取って自分の席へと戻った。
 長門は暫く本棚とにらめっこしていたようだが、暫く経つと他称本の虫が正常動作をし始めた。
 そう、恐ろしい勢いでマンガを読み漁っていったのだ。
 せっかく確保した席にも座らず、笑い声も上げず。マンガを手に取り、同じテンポでページを捲り、そして本棚に返す。まるでマンガ一冊一冊と対話するように、長門のコミック黙読は行われた。
 図書館と違ってそこそこ五月蠅い店舗内にもかかわらず、長門は初めからそこにあった花瓶の如く身動き一つとらない。
 ……そういや、初めて図書館の存在を教えてやったときと同じ反応だったな……
 その時俺はそんな事を思い出していた。
 読み終えたマンガを顔に乗せて居眠りモードに入っていると、いきなりその本を取って『これ、読んでいないなら読ませてもらう』とって搾取したのには少し驚いたけどな。

 結局、集合時間間際になってもぴくりとも動かず、俺が説得してようやく帰らせ、その日の不思議探索は幕を閉じたのだった。

・・・・・

 もしかしてあの時、無理矢理帰らせたことを根に持っているのか……いや違う。あの時の長門はむしろ上機嫌だったといってもいい。人一倍長門の表情に詳しい俺が断言する。
 また一緒にここに来るか? との問いに、『行く』と、レスポンスをした事を覚えている。いつもの長門とは段違いに力強い声だった。たとえるなら、蚊の鳴くような声が鳩が鳴くような声に変わったくらいの変化だ。
 そう。確かにその時までの長門は気分上々だったはずだ。
206橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:57:34.62 ID:VC219Uty0
 しかし。
 今の長門はそれとは真逆。無表情の長門よりも厳しい表情をしていた。表情が無いというわけではない。以前より数ミクロンのオーダーで喜怒哀楽に溢れてきているその表情は、『怒』を表しているのだ。
 これだけ怒りの表情を露わにしているのは、コンピ研とのゲーム勝負の一件以来かもしれない。
 しかし、何故……?

「…………」
 俺の中の意見が固結びをし始め、エンドレスループに突入していようとしていた矢先、長門は振り返り自分の教室の方へと歩き始めた。
 俺は何も声をかけなかった。いや、できなかった。
 一人廊下をぽつぽつと歩く長門の背中に、『喋りかけないで』という張り紙がしてあるように見えた。



 頭をポリポリ掻きながら、俺はやや上の空状態で教室へと向かっていった。先ほどの長門の態度が妙に気になって、そこはかとなく呆然としながら歩いていた。俺が膨らませた風船を、自身の爪で割ってしまった時のシャミセンくらい惚けていただろう。
 暫く長門が怒っている理由を、幾度となく模索し反芻し――
「……何だかわからないが、また後から謝っておこう」
 その結論に達したとき、自分の教室のドアが寸前に迫っていた。
 気分を入れ替え、ドアを開き自分の席へと進み……

「…………」

 ……いや、もうね。何と説明したらいいんだろうか。まあ、状況を説明することはそんなに難しくないし、結論だけを言うのであれば至極簡単だ。生卵を握りつぶすよりもな。
 だが、何故かどうしてだと、理由を聞かれると俺は答える術を持っていない。そりゃあそうだろう。その理由を知っているのは当の本人――涼宮ハルヒ以外あり得ないだろうからな。
「……なによ」
 俺が達磨のように沈黙を続けていると、ガラス越しに映った俺に気づいたのか、そう声をかけてきた。
 だが俺はかける言葉が見つからない。
 必死になって脳内活性物質を注入するように脳に命じ、妹が自分の手の爪を切り終わるくらいの時間をかけて慎重に言葉を選んだ。
「……今日は、水曜日だったか?」
207橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:58:20.57 ID:VC219Uty0
「ばっかじゃないの? 月曜に決まってんじゃない」
 完全に侮辱した声でやる気なく喋るハルヒ。表情は窓の向こうを向いたままなのでわからない。
 それは奇遇だ。実は俺もそう思っていたんだ。昨日はシャミセンとどっちが多く寝ていられるか勝負した覚えがあったし、もしかしたら月曜じゃないかと9割9分9厘くらいはそう考えていたんだ。
 だがお前のことだから、もしかして曜日を変更してしまった可能性も否定できなかったっていうわけで……
「いつまでそんなところでボーッっと突っ立ってんのよ」
 うるさい。全部お前のせいだろうが。
 ……等とは言えず、適当な言葉を模索する。
「ああ、ちょっと空気になってみたくてな。空気は自由でいいな、って考えてて」
「何馬鹿なこと行ってるのよ。空気だって実際は常温常圧で一秒間に数億回衝突し合っているわ。あんたみたいにふらふらしてたら生きていけないわよ、空気の世の中は」
 そう言うものなのか……
「そう言うもんよ」
 俺は諦めて自分の席に着く。ハルヒは未だ空を眺めていた。
「…………」
 言わねばならない、のだろう。しかし、なんと言うべきか……
「ハルヒ。もう一度聞くが、今日は水曜日か?」
「……あんた、頭大丈夫?」
 正直自信はない。
「勉強ってやりすぎると痴呆になるのかしら? なかなか面白そうな研究内容ね。調べて文化祭で発表しようかしら?」
 嫌だ。誰が調べるんだ……って、このままハルヒのペースに巻き込まれててもしょうがない。
「話がある。真剣な話だ」
「何よ。藪から棒に」
 俺は自らを奮い立たせて、ハルヒの目元から口先までをじっと見据え、そして言い放った。



 ――お前、その髪型……そのツインテールはいったい何だ?――
208橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:59:02.28 ID:VC219Uty0
「いいじゃない。別に」
 あっけらかんと言うハルヒ。
「あたしだって女の子なんだし、たまにはいつもとは違う髪型にしたい日もあるわよ。それとも何? あたしのこの髪型は似合わないとでも言うの?」
「い、いや……決してそう言うわけではないが……」
 正直に言うと、似合っていない。あのちょんまげライクのポニーテールもそうだったが、それに輪をかけてひどい。
「もう少し髪を伸ばしてからの方がいいかな、なんて個人的に思ったりするわけでしてね……」
「橘さん、みたいに?」
「は?」
「ツインテールは橘さんの専売特許って訳ね。……わかったわよ。やめれば良いんでしょ、やめれば」
 何をどう理解したのかはわからないが、ハルヒはそう言って自らのツインテールを解いた。ハルヒ独特の、鳥類系の唇を形成しつつ。
「ほら、これでいいんでしょ? ……ふんっ」
 いつもの髪型に戻ったハルヒは、不機嫌レベルを2ポイントほど上げてまた空の彼方へと視線を戻していった。

 ……ホント、つまんないわね……

 ハルヒがそうつぶやいたのは、気のせいだったのだろうか?



 その後のハルヒは、いつにも増して不機嫌であった。そして不思議なほど俺にちょっかいをかけてくると事もなかった。
 珍しい日もあるもんだなと振り返ってみると、そこには口の中に銀紙と鷹の爪を放り込んだようなハルヒの顔。
 なんだかその表情が俺の瞼の裏にこびりついて離れない。何故だろうか?

 とはいえ、ハルヒが放つ不機嫌オーラの量が著しく増加していることを除けば、至って普通の一日であった。
 授業もハルヒに邪魔されることなく、飯時も誰かに呼び出されることもなく、平穏に過ぎ去っていった。
 放課後の団活だってそうだ。いつもの如く愛くるしい振る舞いで俺にお茶を給仕してくれる小柄なメイドさん(毎日毎日大学から来なくても良いのに……ご苦労様です)、薄いスマイルを浮かべてボードゲームに興じる理系特進組生徒。
 そして何があろうと無表情で黙読する文芸部員……
209橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 06:59:29.79 ID:VC219Uty0
「…………なに」
「いや、何でもない。すまない」
 ……そうだった。そう言えば長門も朝から不機嫌だった。いつもなら俺の視線に気づくことなく読書にふけっているのだろうが、今日に限っては俺が長門に視線を向けると、キッとした表情で睨み返してくるのだった。
 こりゃ、機嫌が直るまでまだまだ相当時間がかかるな。暫くは大人しくしておくことにしよう。
 機嫌が悪いと言えば、ハルヒも朝からずっとそうなんだが、こちらはいつもの如く団長専用席に座ってネットサーフィンに興じている。
 面白いページでも見つけたのか、たまに見せるニヤケ顔がハルヒの機嫌を底上げしているようにも見えた。
 俺はそんな中、珍しく朝比奈さんが仕入れてきたカードゲーム(。大学で流行っているカードゲームらしいが、名前は忘れた)に興を注ぎ、その一日は過ぎ去っていった。



「よっ、キョン。どうしたんだ? 難しい顔して。何か考え事か?」
 ここでようやく冒頭に戻る。右斜め後方から、我が悪友の参上だ。
「……いや、そんな大それたものじゃない。昨日の行いを鑑みて、今日に活かそうと瞑想していたんだ」
「そう言う事は寝る前にやるもんだ。通学途中になるなんざ、お前もとうとうイカれてきたな。だからあいつとつるむのは止めとけってったんだよ、俺は」
 うるさい。後者はまだ検討の余地はあるが、前者は真っ向から否定してやる。俺はいたってまともな精神を有している。それはハルヒと会う前からだって変わりないと自負している。
「キョン。確かにお前の自由意志を尊重したいが……あいつの対応には、誰もが手に余る。巻き添えを食らわないようにもっと離れたほうがいいぜ。……ま、すぐ後ろの席だからそれも叶わないか」
 ああ、そうだな。だが流石にもう慣れてきたぜ。
「いいや……あいつの本性はあんなもんじゃない。いいから深い関わりを持つなよ。分かったな?」
 谷口は、2つ前の席のヤツが発表している傍ら、必死に英和辞書をめくるリーディングの授業時の如く険しい顔で俺に迫ってきた。
 はて……少し様子がおかしい。何故谷口は今更そんなことを言い出すのだ? そんなことは2年前からの既定事項だ。
 それにハルヒの異常行動は大人しくなってはいるものの、相変わらず健在であるし、谷口だってそんな事は百も承知のはずだ。

 ……いや。
 前にも谷口の調子がおかしいことがあったが、あの時は……
「谷口」
「何だ? 改まって?」
「俺のクラスには、涼宮ハルヒなる人物が存在していたか? そんな人物は聞いたことが無いんだが?」
210橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 07:01:21.98 ID:VC219Uty0
「ははは、何言ってんだキョン。俺をハメようたって無駄だぜ。涼宮の存在をお前が忘れるわけがない。かれこれ2年もあいつの変な思いつきに付き合ってて、お人よしにも程があるぜ」
 とんち合戦に勝負した高僧のような表情をした谷口が若干嘲り口調で喋るのを尻目に、俺は安堵の溜息をついた。
 ……大丈夫。ハルヒは存在している。また皆が消えた世界に逆戻りしたかと冷や冷やしたぜ。
「……キョン、おまえやっぱおかしいぞ。やっぱり俺の言ったとおり、症状が出てきたんだよ」
 いや、単なる確認だ。これが夢かどうか確かめるためのな。あの悪夢とはもう金輪際付き合いたくないからな。
 ハルヒが存在する……即ちこれは悪夢じゃない。俺が知っている、傍若無人で猪突猛進、そして妄想を既定にしてしまう、凡庸ならぬ能力を備え付けたあの涼宮ハルヒは、この世界に光臨しているのだ。教室の最後方の席に鎮座しながら。
 加えて可愛いだけの元上級生も、他校に追いやられた超能力の使えない男子生徒も、そして何の特別な力を持たない、読書好きの内気な少女も存在しない。
 そう、存在しないんだ。
 ここは俺が望んだ世界なんだ。あいつの申し出を断ってまで居る事を望んだ、俺が楽しいと思ったこの世界なんだ。
「ちっ、長生きするぜお前は……」
 賛辞とも侮蔑ともつかぬ言葉を吐く谷口を無視し、俺はそう再確認していた。



 しかし、俺を嘲け笑うかの如く、運命は俺の望みを瓦解したのだった。



 取り留めの無い話をしながら、俺と谷口は教室までやってきた。
 幸か不幸か、俺は3年になっても谷口と同じクラスであった。これも悪友の成せる業とっても差し支えないのかもしれない。
 もちろんハルヒも同じクラスで、ポジションも変わらず俺の後ろである。こちらもやはりというかなんというか……いやはや、これだけ同じだと逆に怪しまれる気がするのだが……何故誰も怪しまないのだろうか?
 とは言え、2年時と全く同じではない。大凡の奴が同じクラスなのも確かなのだが、それでも数人は別のクラスに鞍替えとなっている。
 例えば……元々理系希望であった国木田とか。
 国木田がいなくなったお陰で、俺は谷口と共に宿題写しをさせるくれる人員確保に錯綜するハメになったのだが、それはご愛嬌である。
 ハルヒに聞けばミッチリと教えてくれるのだが、受験生ともなって、あたりに陰湿な空気を漂わせたくは無いため自重している。
 ま、そんなこんなで、これが俺の今のクラスだ。何だかんだと説明したが、結局のところ、さして大きな変更点は無い。3年になったとはいえ。
 それが証拠に、俺がこのドアを開けると、ガラス越しに空を見上げるハルヒの姿が見えるのさ。ほら、こうやってドアを開くと――
211橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 07:02:56.18 ID:VC219Uty0
 ガラガラガラ……


「よっ、ハルヒ。元気……か……??」
 ――違和感が、あった。



「遅いじゃない、キョン」
 ――いつもとは異なる違和感が。見ただけで分かった。



「谷口なんかとつるんでちゃ、何時までたってもみくるちゃんと同じ大学にはいけないわよ」
 ――声やその喋り方は、涼宮ハルヒ。その人に相違ない。



「あんただけ違う大学に入学するのは許されないわ」
 ――しかし、その髪型は……一体……?



「浪人も勿論ボツ。予備校に行くだけでどれだけ金がかかるかわかってんの?」
 ――いや、それ以前に、お前は黒髪だったはず……どうして栗色の髪になってるんだ……?
212橘京子の分裂 ◆SG9FMCTTAI :2008/03/22(土) 07:04:13.36 ID:VC219Uty0
「自宅で勉強するってのもダメよ。あんた自ら進んで勉強するタイプじゃないんだから」
 ――長さだって、昨日よりもあからさまに長い……一日でそれだけ伸びるはずは無い……



「SOS団の活動は、場所を移して更に隆盛を極めるんだから」
 ――何よりその髪型。……それはまるで……



「分かってるの、キョン!!」



 空を向いていたその顔は、くるりと反転、廊下側へと……俺の方に向けられた。

 俺の瞳に入ったのは、俺の知る涼宮ハルヒではなかった。
 2つに束ねた栗色の髪、ぱっちりと見開いた瞳、幼げな顔。
 そう、それはまさしく――


 ――北高の制服を着た橘京子が、ハルヒの席に陣取っていたのだ――
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 07:06:07.62 ID:VC219Uty0
とりあえずここまでです。
・・・やっぱり朝は誰もいないですね。
でもおかげでさる回避調査も達成できました。
00分を挟めば一人でも20レスまで可能そうです。

朝から失礼しました。
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 07:18:18.19 ID:q8dBjjEs0
支援できなかった、乙!
橘なにやらかしたんだ?!
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 07:46:44.91 ID:vpvYdkwZ0
今起きたってアッー!
支援できなかった乙
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 08:10:57.35 ID:vpvYdkwZ0
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 08:11:01.64 ID:vpvYdkwZ0
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 08:58:15.93 ID:vpvYdkwZ0
谷口はハルヒにモザイクガーデンで振られた
ソースは昨日のらっきーちゃんねる
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 09:27:41.72 ID:vpvYdkwZ0
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 10:00:36.18 ID:vpvYdkwZ0
jp
221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 10:46:45.17 ID:rjXmomOAO
保守
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 11:05:39.72 ID:P+urZD8LO
>>213
分裂ktkr
とうとう原作に追い付いたか。
続きwktk!
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 11:50:11.85 ID:ggnF4gRF0
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 12:13:36.86 ID:TqOQwpSG0
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 13:03:40.69 ID:vpvYdkwZ0
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 13:28:50.46 ID:BCkvDJND0
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 14:16:00.16 ID:tq22Anaw0
ho
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 14:45:49.23 ID:BCkvDJND0
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 15:06:48.72 ID:vpvYdkwZ0
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 15:46:00.76 ID:rjXmomOAO
ほし
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 15:58:13.65 ID:evU+6qwx0
戸惑やりながら保守
たまにキョンのセリフが原作の人格に沿ってないんでイライラする ちゃんと原作嫁
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 16:03:35.92 ID:nEa4sqYA0
そんなに改変されているのか?
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 16:16:19.64 ID:tq22Anaw0
約束の長門ルートで泣いた
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 16:27:50.19 ID:vtaqBDVgO
架空のキャラだすのはタブーじゃないよね?
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 16:36:08.36 ID:bKuy/HNj0
ものによる。目立たなく上手く処理するのが最善。あるいは悪役ならそれなりに許容されるかも。
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 16:43:07.35 ID:Q/CshSMp0
よかった。俺だけじゃなかったかw ちょっと違和感があるんだよな
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 16:48:25.89 ID:vtaqBDVgO
ありがと
もういっこ質問

何レス連続投下が可能なの?
また、連続投下数についての決まりはあるの?
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 16:56:57.11 ID:bKuy/HNj0
連続して10レスぐらい投下すると、ばいさる規制に引っかかって投下できなくなる。
そうなったらしばらく待つしかない。

そうならないためには、大量の投下を行う前に雑談所の投下予告スレに書いておいて
支援要請しておく必要がある。自分の投下の合間に他人のレスがついていれば、それなりに規制回避が可能。

一度の投下は200レスとかそんなのじゃなければ、大丈夫だと思う。
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 17:16:34.29 ID:vtaqBDVgO
ありがと
さぁ、書きためる作業にもどるとするか…
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 17:38:35.86 ID:bKuy/HNj0
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 18:03:03.85 ID:bKuy/HNj0
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 18:24:46.92 ID:bKuy/HNj0
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 18:50:03.29 ID:P+urZD8LO
保守
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 18:53:25.97 ID:gR+YFlYa0
保守
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 19:14:21.85 ID:vpvYdkwZ0
jp
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 19:36:09.68 ID:bKuy/HNj0
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 19:49:17.78 ID:BRK6S9Y30
保守
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 20:10:57.67 ID:bKuy/HNj0
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 20:11:02.99 ID:vpvYdkwZ0
jp
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 20:30:32.05 ID:P+urZD8LO
保守
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 20:53:17.11 ID:DpMYOYYl0
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 21:00:40.11 ID:zilNY4jT0
>>234
オリキャラ(キョン母+ハルキョンの娘)で一本うpした俺から一言。

うp前にオリキャラ注意とでも入れておけば、あとは他人のスルー力次第。
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 21:09:07.25 ID:Wh2ZCnqUO
保守
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 21:10:30.83 ID:zilNY4jT0
>>234
オリキャラ(キョン母+ハルキョンの娘)で一本うpした俺から一言。

うp前にオリキャラ注意とでも入れておけば、あとは他人のスルー力次第。
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/22(土) 21:10:51.64 ID:zilNY4jT0
しもた。リロードボタン間違えた
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
jp