1 :
KOB ◆389csq25ho :
企業間戦争の激化に伴い、新たな協定が結ばれた
クローバー・クラブ協定の締結
――『我々は軍人ではない。我々は労働者である』――
――『故に、今後如何なる闘争に於いて、兵器の使用を永遠に禁ずる』――
――『労働者よ。その手に持つのは兵器であってはならない。繰り返す。兵器であってはならない』――
――『労働者よ。棒を持て。労働の証たるクラブを持て』――
――『労働者よ。その手に掲げろ。商品を』――
クローバー・クラブ協定締結以降、
企業間戦争は、次第に同業他社の殲滅から、
全業全社間の広告戦争へと、そのフィールドを広げ、
……戦争は激化の一途を辿った
『企業間戦争に於いて、企業戦士は殺人を許容してはならない』
『労働者も一歩外に出れば消費者である。故に、これを無闇に殺害する事を禁ずる』
……昔の話だ
……俺が、中学生で、兄者がまだ高校生だった頃の話だ
(´<_` ) 「兄者。兄者は、将来、何になりたいんだ?」
( ´_ゝ`) 「……急に、どうした?」
カチカチと、俺の方なんて、少しも見ないで、兄者はマウスを操作した
パソコンなんて、少しもわからない俺にとって、兄者のそんな姿は、格好よく見えた
(´<_` ) 「やっぱり、パソコン関係に進むのか?」
( ´_ゝ`) 「なんで、そう思う?」
(´<_` ) 「だって、得意じゃないか」
まるで、自分のことみたく、俺は自慢げに、言っていたと思う
でも、兄者は、そうは思っていなかったんだろう
パソコンの操作を止めて、背もたれに思いっきり寄りかかって、言った
( ´_ゝ`) 「俺は……警備員になりたい、かな」
(´<_` ) 「警備員?」
くるりと椅子を回して、兄者は俺に、笑って言った
( ´_ゝ`) 「ああ。俺は、自宅警備員になりたいんだ」
(´<_` ) 「自宅なんて、守るものも何もなくないか?」
あるさ、って、兄者は心底楽しそうに、笑って言った
( ´_ゝ`) 「父者も、母者も、姉者も妹者も……それからお前も、皆、守ってやりたいんだ」
真顔で、こんな恥ずかしい事を言う兄者を、俺は、素直に、尊敬していた
――数年後
(´<_` ) 「いらっしゃいませー」
コンビニの店員というのも、楽ではない
品出しやら何やら、力仕事ぐらいなら、何とでもなるものの、
接客というのはどうにも気疲れする
(´<_` ) 「父者、そろそろ休憩に入るぞ」
父者が酒屋を止め、『流石マート』を開いたのが、俺が生まれて間もない頃
数年前に、個人経営からコンビニチェーン『シベリア』の傘下に加わり、
我が家は、全国の何処にでもある、コンビニの一つになった
24時間営業が可能になった分、売上も多少は伸びたが、
バイトの人件費とロイヤリティを引くと、個人経営の時とさして儲けは変わっていない
雇用問題やらを考えると、気苦労の分、損をしているような気がしないでもない
いや、バイトの内引きが判明したのも一度や二度ではない
『流石マート』の時よりも万引きだって増えている
警察にお世話になる分、損の方が確実に多くなっているのだ
いっそ、『シベリア』との契約を切って、酒屋からやり直した方が、楽かもしれない
何度も考えた。そんなことは、もう本当に何度も
(´<_` ) 「…………」
けれど、その選択肢を選ぶ事は、俺には出来ない
父者も母者も、姉者も、選ばないと、思う
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:34:37.93 ID:Eh8EkCYO0
sien
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:36:06.62 ID:Eh8EkCYO0
実際内引きは多い……
6 :
KOB ◆389csq25ho :2008/03/08(土) 22:36:36.46 ID:9qJrNoZL0
住居部分に繋がる階段を上り、
俺は自分の部屋のではないドアの前で、しばし、動かずにいた
こうして、何をするでもなく、立ち尽くすのは、もう何度目だろうか
(´<_` ) 「…………」
ノックをしようと、上げた手が、震えた
逆の手で、抑え、やはりノックは止めにする
一言、声をかければ、済む話じゃないか
(´<_` ) 「あに……。……」
今度は、のどが震えてくれなかった
nの音で閉じたのどは、そのまま息を詰め、言葉を飲み込ませる
(´<_` ) 「…………」
カタカタと、聞こえる、キーボードを叩く音を耳にしながら、
俺は結局、ドアの下から、タイムカードを渡し、部屋へと帰った
キーボードの音は、薄い壁越しに、まだ聞こえてくる
タバコを吸えば、部屋は煙で白く染まっていく
換気扇なんて、無い部屋だ。窓を開ければ、まだまだ寒さが身にしみる
どうしたものか、くわえタバコのまま考えたのも、数秒
(´<_` ) 「……まぁ、いいか」
結局、寒い部屋よりも、煙い部屋を選んだ
ノドを地味に焼く、煙の感触を味わいながら、溜息
(´<_` ) 「兄者……兄者、聞いてるか?」
薄い壁だ、張り上げなくとも、こちらの声は、ハッキリ聞こえているはずなのに
兄者は、返事を返してはくれない
(´<_` ) 「……俺も、人のことは言えない、か」
ついさっきの事と、ここ数年、続けている行動を思い出し、首を振る
ドアより先に、踏み込もうとしない俺が、
安全な場所からしか、声をかけられない俺が、今更、何を考えているんだか、と
(´<_` ) 「なぁ、兄者。仕事の調子は、どうだ?」
『自宅警備員』に、仕事の調子もくそもないのは、解っている
俺は、返事を期待せず、
しかし、我侭に、いつものように、声をかけ続けた
(´<_` ) 「こっちの方は、またバイトが問題起こしてさ……」
独り言のような、愚痴のような、どうしようもない、取り留めの無い呼びかけに、
何の意味があるのか、わからないままに
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:42:52.94 ID:G+lMcHcR0
支援
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:44:38.70 ID:HK++DcOi0
フーン
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:47:35.62 ID:Dyvd05p9O
支援
11 :
KOB ◆389csq25ho :2008/03/08(土) 22:47:57.85 ID:9qJrNoZL0
俺が、高校に入る年……だったと思う
兄者は急に、なんの前ぶりもなく、学校へ行かなくなった
部屋に篭り、毎日パソコンに向かい、終いには、食事にも降りてこなくなった
当然、母者はそんなことを許すはずもない
部屋に乗り込み、兄者をボコボコにしたんだそうだ
けれど、それでも兄者は部屋から出てこなかった
母者はそれ以来、兄者の部屋には行っていない
どうして、と、何度聞いても、理由を教えてはくれなかった
しつこく、しつこく、聞いてみたけれど、母者の答えは素っ気無かった
……兄者の口から、直接聞け
父者も、姉者も、それから、妹者も、
皆、一度兄者の部屋へ行った後、何も言わなくなった
理由を聞いても、皆答えはおんなじだ
……兄者の口から、直接聞け
家族全員からそう言われ……もう、数年
俺は大学も卒業し、店の経営に加わるようになった今になっても、
兄者の部屋に、入れずに、いる
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:48:22.47 ID:DdyspUzkO
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:48:26.78 ID:V14OBBV00
支援
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:54:00.90 ID:pU7PX1QsO
兄者はパソコンの中に電人ハルならぬ電人兄者を残して死んだんだよ!
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:55:41.78 ID:dleRFyn70
京太郎並の読点使いだな。
それからしばらくして、父者と母者は、一つの決断をした
『流石マート』をたたむことにする
理由は、こうだった
企業間戦争が、今よりももっと血なまぐさく、企業同士の潰しあいだった頃
いくつかの法も、激しくなる戦争に合わせ、変化していった
その中には、警備員法も含まれていた
従来ならば、警備会社に所属し、研修を受けたものしか認められなかったものが、
激化する企業戦争の中、準企業戦士という名称で、認められるようになったのだ
個人経営の店舗では、企業ではない事を理由に、準企業戦士を雇用する事が出来ない
だが、『シベリア』のような企業の傘下に加われば、書類一つで、一名まで、雇う事が出来る
業務内容も報告する必要のない、準企業戦士は、それこそだれでもなれる
それを利用し、父者と母者は、『シベリア』の傘下になることで、兄者を、準企業戦士にしようとした
俗に『自宅警備員』と呼ばれる準企業戦士だが、しかし、社会的に認められた職業でもある
実質はどうあれ、大学を出ていない兄者の今後を考え、
履歴書に書ける職歴を作ることで、兄者の未来を、『流石マート』の看板と引き換えにしようと言うのだ
(´<_` ) 「……まったく、兄者のおかげで、慣れないコンビニ経営が、きついよ」
憎まれ口を叩き、けれど、本心ではそうは思っていない
父者と母者が、どうしてそこまで、兄者の引きこもりを容認しようとしているのか、わからない
だが、兄者の未来。それは、俺自身、どうやっても残したい、そう、思っていた
理由なんて、そんなのは、決まっている。俺は……
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:57:03.81 ID:V14OBBV00
支援
18 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:58:02.15 ID:zfpp2530O
ちょっと期待
――コンコン
ドアをノックする音に、ふっと我に帰った
窓を開け、軽く換気をする。煙った部屋を見られるのは、少し具合がわるい
(´<_` ) 「入っていいぞ、妹者」
从・∀・ノ!リ人 「ちっちゃい兄者! なんで入る前からわかったのじゃ?」
ノックなんて物を律儀にするのは、妹者ぐらいだ
が、素直にそういうのも、面白くはない
(´<_` ) 「まぁ……家族だからな」
从・∀・ノ!リ人 「おー。流石ちっちゃい兄者なのじゃ!」
大げさに喜び、抱きついてくる妹者の頭を撫で、
俺も一緒になって、笑った。が、
(´<_` ) 「家族……か」
一瞬の間をおくと、その言葉の空々しさに、なんだか、むなしくなってくる
家族家族と、言っておきながら、自分は、
家族であるはずの兄者と、顔を会わすことを恐れて……
从・∀・ノ!リ人 「? ちっちゃい兄者?」
(´<_` ) 「ああ、いや……なんでもない」
それより、と話題を強引に変え、
(´<_` ) 「それで、何か用か?」
从・∀・ノ!リ人 「おお! 父者が呼んでいるのじゃ! それで来たのじゃ!」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 22:59:10.60 ID:Eh8EkCYO0
wktk
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:01:12.17 ID:zNgzC4N1O
支援
まだ、休憩は終わっていないはずだが……何かあったのだろうか
店に降りると、父者は眉根を寄せ、難しい顔をしていた
(´<_` ) 「父者、どうした?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「弟者か。……いや、本社から連絡があってな」
(´<_` ) 「? それが、どうかしたのか?」
説明するより、見た方が早いだろう
そう言い、父者は手に持っていた封筒を渡した
宛名には、何故か店名ではなく、個人の名前が記載され、そこには……
『流石兄者様へ』
(´<_` ) 「!? これは……?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「わしにも、よくわからん。内容は、本社に来いとだけあってな」
(´<_` ) 「……」
可能性は、いくつか、頭の中に浮かんだ
が、そのどれをも口に出さず、俺は極力、平然と、言った
(´<_` ) 「まぁ、俺が、代わりに行っても問題ないだろう?」
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:07:34.64 ID:Dyvd05p9O
支援
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:07:46.09 ID:V14OBBV00
支援
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:08:27.55 ID:8cSipqLN0
支援
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:08:42.73 ID:Eh8EkCYO0
支援
『シベリア』の本社は、思ったよりも小さいビルだった
一応、全国に展開しているとは言え、他の大手コンビニに比べれば、
まだまだ店舗数も少ない会社だから、当然といえば当然なのかもしれない
(´<_` ) 「……一体、何なんだ?」
着慣れないスーツを着て、応接室で待たされている間、
俺は、気が気じゃあなかった
彡⌒ミ ・ ・ ・ ・
( ´_ゝ`) 「そうだな……兄者は、あんな事を言っているし、な」
(´<_` ) 「……」
ズキリ、と、胸が痛んだ
父者の言葉は、ある共通の認識がある前提で、言っているのだと、気付いたからだ
俺は、未だに兄者の部屋には、行っていない
けれど、父者達には、そう、言っていない
見栄とは違う、ただ、和を保とうとしてついた、ごまかしのような嘘だった
(´<_` ) 「まぁ、気構えなくとも、大した事じゃあないだろう。じゃあ行って来る」
その嘘が、今になって、俺を苦しめる
……父者は、俺の知らない兄者を知っている
……俺は、父者の知っている兄者を知らない
今日、ここに呼ばれたのは、果たして、
俺の知っている兄者なのか、そうではない兄者なのか、わからない
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:12:49.76 ID:9AqeR/k2O
しえん
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:13:05.64 ID:Dyvd05p9O
支援
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:14:34.64 ID:QLJNRZyV0
支援
31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:14:49.67 ID:8cSipqLN0
支援
十分かそこらほどして、秘書らしき女性を連れ、男は入ってきた
( ^Д^) 「いやー、すいません。お待たせしたみたいで」
(´<_` ) 「いえ」
にやにやとした顔が、どうにも気に障る男だ
いや、問題は顔じゃあない。本当に気に障っているのは……
( ^Д^) 「あれ? 失礼ですが、貴方は……」
(´<_` ) 「ええ、兄者の弟の、弟者です。今日は兄の代理で」
( ^Д^) 「……そう、ですか」
やはり、あの封筒は、兄者宛だったと知り、思わず眉をひそめ、ふと、思った
……お前は、兄者の何を知っているんだ?
( ^Д^) 「せっかくですし、この際、貴方にもお話しておきましょうか。ご家族ですしね」
(´<_` ) 「……。はぁ」
……その言い方、お前は、兄者の何なんだ?
……お前は、俺の知らない兄者を知っているのか
……俺が聞けずにいる兄者を、知っているのか
八つ当たりじみた、本来なら自分に向かうべき感情が、男に向かっている
そう気付いたが、不快感はどうにもぬぐえない
こんな、なんでもない、ごくごくありふれたやりとりですら、こう思ってしまう、
自分の重症さに呆れながら、続きを促した
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:17:40.01 ID:8cSipqLN0
支援
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:22:29.52 ID:Eh8EkCYO0
支援
秘書から受け取った書類を片手に、横柄な態度で、男は話を始めた
( ^Д^) 「えーとですね、確認しておきますが、貴方のお兄さんは、準企業戦士、ですよね?」
(´<_` ) 「ええ、そうですが何か?」
準企業戦士、という肩書きを蔑視している事を、
隠そうともしない口調に、冷静に返す
男の表情が、若干揺れたように見えたのは、気のせいだろうか
( ^Д^) 「……いえ、ただの確認ですので」
それにしては、不自然な間を置いて、
男は視線を手元に落とし、こちらの目を見ようとはしない
書類を一枚二枚とめくり、手を止めると同時
( ^Д^) 「……本題の前に、一つ、お伝えしておきます」
しばし、沈黙を置き
( ^Д^) 「端的に言いますと、うちの会社は、なくなります」
(´<_` ) 「!?」
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:24:32.85 ID:8cSipqLN0
支援
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:27:10.42 ID:9AqeR/k2O
しえん
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:27:32.71 ID:Eh8EkCYO0
これは気になる
置いた間の間、心の準備をしていたとしても、その発言は衝撃が強すぎた
『シベリア』の経営が右肩下がり、とは、聞いていたが、まだそこまで行っているわけがない
いや、それ以前に、兄者にそんな話をして、一体……
( ^Д^) 「ああ、落ち着いてください。なくなる、は言いすぎでした」
(´<_` ) 「ど……どういうことですか?」
ぐるぐると混乱気味に回る思考を、強引に収めようと、息を整える
男は、息を整えている間も、悠々と喋り続けた
( ^Д^) 「正確には、『シベリア』は他所の会社に吸収合併される事になりまして」
(´<_` ) 「……それで、名前が変わる、とか?」
( ^Д^) 「はい、まだ合併後の名前は決まっていませんが」
落ち着き払った男の声から察するに、この合併による、大きな影響は出ないのだろう、
少なくとも、この男の地位が危うくなるようなレベルでは
いや、問題はそこではない
(´<_` ) 「その話は……兄とどういう関係が?」
( ^Д^) 「……うちには、企業戦士がいないのは、ご存知ですよね?
準企業戦士もあまり多くはありません。そこで、兄者さんにお願いしたいのですよ」
(´<_` ) 「……待ってください、合併の話なんか、企業戦士に何が……」
最後まで、言い切る前に、男は今日一番の笑顔で、
( ^Д^) 「企業戦士だからこそ、出来ることがあるんですよ。なに、むずかしくはありません」
本当に、本当に、心の底から、期待している、と言いた気な笑顔で、
( ^Д^) 「今度、広告戦争で、兄者さんには、少し死んでもらいたいって、だけですから」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:29:36.37 ID:Dyvd05p9O
支援
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:29:40.62 ID:8cSipqLN0
支援
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:30:27.74 ID:V14OBBV00
支援
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:31:55.23 ID:QLJNRZyV0
支援
瞬間、頭の中が、凍りついた
俺の反応がわからないわけでもないだろう、なのに、男はにたにた笑い
……今、コイツハ、何ヲ、言ッタ?
( ^Д^) 「今や、広告戦争ほど注目されているメディアはありませんからねぇ……」
……ダカラ?
( ^Д^) 「ただの吸収合併という形ですが、ここで接点を作っておけば、インパクトが違いますからね……」
……アア、アア、コイツハ、ソウカ
( ^Д^) 「『自宅警備員』の一人や二人で、この宣伝効果は……」
……オ前ハ、ソウ、見テイルノカ
( ^Д^) 「そうそう。話には聞いていましたが、兄者さんは、アレなんでしょ?」
( ^Д^) 「 だって言うじゃないですか。だったらねぇ? あなたにとっても別段……」
――ガッ
( ^Д^) 「は?」
止まっていた思考が動くのと、身体は同時に動き、気がつくと男の襟首を掴んでいた
(´<_` ) 「だからどうした?」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:37:28.03 ID:8cSipqLN0
支援
俺は、兄者を尊敬していた
兄だからと言って、えらぶるわけでもなく、
対等に、弟の俺と目線を合わせて、話してくれた兄者を
『 』だからと言って、そんなこと、
まるで気にせず、振舞っていた兄者を
パソコンを難なく使いこなし、
俺にはさっぱりわからないトラブルも、
魔法のように解決してくれた兄者を
時々、バカもやるけど、
それだって、俺にはとてもできるようなことじゃあなかった
兄者のそんなところも、俺は尊敬していた
俺は、兄者みたいな兄に、なりたかった
だから、兄者が『自宅警備員』になってしまった理由を、怖くて、聞けなかった
父者も、母者も、姉者も、妹者も、
皆が皆、納得するような理由だったの知っても、怖かった
失望してしまうんじゃないかって、思うと、怖かった
そのぐらい、『自宅警備員』というのは、不名誉な事だと、解っている
解っているけれど…………
(´<_` ) 「兄者の事を何も知らずに、勝手な事を抜かすな」
そこまで、考えたところで、頭の熱は急速に冷めていった
( ^Д^) 「ひ、い……」
(´<_` ) 「失礼」
襟首から手を離し、男を解放する
これがあと少し遅かったら、あの秘書は人を呼びに飛び出していたかもしれない
(´<_` ) 「これでも一応、家族、ですので。失礼しました」
( ^Д^) 「い、いえ。私も、少々、口がすぎました」
襟を直し、ようやく落ち着きを取り戻した男は、
説明が行き過ぎであった、と謝罪して、続けた
( ^Д^) 「……死んでいただく、というのは言葉の綾でして」
当然だ。企業戦争では、クローバー・クラブ協定で殺人が禁じられている
だがしかし、
( ^Д^) 「ですが、どの道。プロの企業戦士と戦えば、無事に済まないでしょう」
(´<_` ) 「……」
それは逆に、命さえあれば、どれだけの重症であっても、黙認されるということでもある
( ^Д^) 「先ほども申しましたが、企業戦士が不在なのも事実でして、他に適任者は……いません」
(´<_` ) 「……」
真剣な男の口調に、嘘はない
つまり、冗談を抜いた所で、事態はほとんど変わってはいないのだ
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:39:40.38 ID:Eh8EkCYO0
wktk
49 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:39:58.14 ID:9AqeR/k2O
しえん
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:40:25.61 ID:8cSipqLN0
支援
……そういえば、あの時、兄者は、何て言っていたっけ
( ^Д^) 「正直、今回の宣伝が上手く行かなければ、合併の話も白紙になりかねないんです」
(´<_` ) 「……」
( ^Д^) 「先ほどの暴言は、撤回します。その後の補償も、可能な限り……」
黙ってうつむく俺の態度を、どう思ったのか
矢継ぎ早に、次々と取引の材料を提示してくる男を無視して、
(´<_` ) 「……なぁ」
( ^Д^) 「は、はい?」
本社の人間が、一店舗の従業員に敬語を使うだなんて、どんな状況だ
と、思ったが、言わないでおこう
まさか自分でも、あそこまで平坦な声が出せるとは、思っていなかった
いや、そんなことはどうでもいい
それよりも、言っておくべきことが、ある
(´<_` ) 「その、企業戦士というのは……俺じゃあダメなんですかね?」
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:42:33.57 ID:Dyvd05p9O
支援
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/08(土) 23:42:43.39 ID:8cSipqLN0
急に投下が早くなったなw
支援
……ああ、そうだ
……そうだったじゃあないか
……ようやっと、思い出したよ
俺が、なんでここまで兄者を尊敬したのか
俺が、なんで兄者みたいな兄になりたいと思ったのか
全部、これから始まったんだった
『( ´_ゝ`) 「父者も、母者も、姉者も妹者も……それからお前も、皆、守ってやりたいんだ」』
( ^Д^) 「それは……」
(´<_` ) 「補償も出るんですよね? なら、問題無い」
広告戦争の参加者が、どういった目に会うのか、知らないわけではない
震えそうになるのを、堪えるのも、なかなかに難しい
それでも、俺はできる限り、なんでもないように、取り繕う
( ^Д^) 「……いえ、こちらも特に問題はありませんが……よろしいのですか?」
『自宅警備員』ではないだけで、ここまで態度を変えるとは
やはり、世間は、兄者に厳しいらしい
なら、俺はなおさら、平気な顔で、こう、言わなければならない
(´<_` ) 「ええ。家族を守るためなら、なんでもしますよ、俺は」
失望とか、尊敬とか、知っているとかいないとか、関係無い
ただ、家族だから。それだけの理由で、俺は……守るさ