1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
代理
2 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:18:57.36 ID:O0YNWcPZ0
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:20:28.44 ID:daQfJu3SO
支援
4 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:20:48.30 ID:O0YNWcPZ0
.
三十七章 開戦
ようやく、始まった。
長い年月と、血の滲む様な苦労をかけて作り上げた、最高の喜劇が。
何人もの哀れなピエロが、舞台を跳ねまわってくれるだろう。
誰が死に、誰が泣いて、誰が嗤うのだろうか。
怒りと憎しみと悲しみ、そして死が編み出す舞台は、考えるだけでも笑いが込み上げてくる。
死にたくなるくらい長かったこの人生で、最大の楽しみだ。
幼い頃から、この世界は死ぬほどつまらなかった。
周りの人間は殺したくなるほど愚鈍で、汚穢していたように思う。
少なくとも、人の“内側”を視る事が出来る自分にとっては、それは紛れもない事実だった。
だから、この世界を面白くする為に『物語』を書いた。
人の感情が複雑に絡み合う、悲しくも滑稽な物語を。
人の血と死と涙をインクに、どこまでも際限なく巨大な物語を。
5 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:23:25.96 ID:O0YNWcPZ0
.
犠牲は厭わなかった。
それがどんな物であっても、どんな者であろうとも。
心苦しさなんて感じなかったし、人生を面白くする為には、そんな小さな事には構ってられなかった。
だから無数の人を利用したし、必要であれば殺した。
一般人も、異能者も。 聖人も、罪人も。 敵も、味方も。
実の兄でさえも、僕にとっては駒の一つでしかなかった。
おかげで、この通り。
理想以上の、本当に面白い物語が出来上がってくれた。
人が死に、誰かがそれに涙し、そして怒りと憎しみに従って、また誰かを殺す―――。
反吐が出そうなほどにくだらない、転落の運命の螺旋。
そして、腹を抱えて笑い転げてしまいたくなるほどに面白い、人の感情が作り出す物語。
さぁ、始めよう。
その命を燃やして、全力で僕を楽しませておくれ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
6 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:26:20.03 ID:O0YNWcPZ0
.
( ^ω^)「あれっ……?」
気付くと、僕は真っ白な部屋に立っていた。
上にも下にも前後左右にも、汚れ一つない。
というか、白以外の色というものが存在しなかった。
視界は明瞭だが、どこに明かりがあるのかは分からない。
それどころか壁や天井がどこにあるのかが分からない。
だから実際、そこは部屋というよりかは、空間という方が正しいのかもしれない。
ただただ不気味なほど真っ白な空間で、僕はただ立ち尽くしていた。
( ^ω^)「? ここ、どこだお?」
勿論のこと、僕はこんなところは知らない。
ここがどこであるかも、どうやってここに来たのかも分からない。
とりあえず、足を進めてみた。
しかしどこまで行けども、果ては見えてこない。
どこもかしこも真っ白であるから、景色も変わらない。
……何時間歩いたのだろうか。
それとも数分しか歩いてないのだろうか。
どちらにせよ、僕はいつしかこの風景に心底うんざりしていた。
7 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:28:52.98 ID:O0YNWcPZ0
.
しかし不思議と、疲れはない。
それどころか、どこか心地良いような感覚さえある。
何でだろうか、と考えたところで、気付いた。
( ^ω^)「ここは……夢、かお?」
「ようやく気付いたかお」
背後からのその声は、余りにも突然だった。
驚愕に包まれながら振り返る。
しかしそこには、誰もいない。
( ^ω^)「今のは……?」
眉根を寄せる。
今の声、今の喋り方は―――
「そう、君が考えている通りだお」
驚愕に眼が見開き、息が詰まった。
眼の前に、男が『現われていた』。
まさに、瞬きの間を狙ったとしか思えないほど、唐突に。
きたぁぁぁぁぁぁぁ
支援
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:31:04.24 ID:Go4DrLg8O
支援
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:31:11.20 ID:9TXk4fs5O
支援
11 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:31:20.81 ID:O0YNWcPZ0
しかし僕が驚いた本当の理由はそこではなく―――
( ^ω^)「……僕?」
眼の前に立っていた男が、僕と『同じ』だからだった。
背丈に、目付きに、口元……ほとんど、寸分違わない。
鏡を見ているような気分さえする。
違うところと言えば、男の頬に醜い傷痕があるところくらいだ。
(メ^ω^)「そう、君だお。……厳密に言えば、違うけれど」
優しい瞳で僕を見つめて、男は言う。
彼の言葉の意味が分からず、僕はただ眉根を寄せた。
(;^ω^)「……どういう事だお? 誰だお、君は」
(メ^ω^)「僕はブーンだお」
(;^ω^)「ブーンは僕だお」
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:31:54.83 ID:9TXk4fs5O
支援
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:32:03.16 ID:daQfJu3SO
支援
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:33:11.26 ID:i4QVSXg/O
来た!やったぁぁぁ
支援
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:33:30.60 ID:9TXk4fs5O
支援
16 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:34:02.08 ID:O0YNWcPZ0
(メ^ω^)「僕もブーンなんだお。
ただし、君とは違う未来を歩いたブーンだけど」
( ^ω^)「おっ―――?」
(メ^ω^)「僕は、誰も救えなかったお。
救おうと、出来得る限り頑張ったのだけど」
(メ^ω^)「……ドクオもギコもジョルジュも、クーもツンもしぃも、モララーも、誰も。
本当に、誰も救えなかったんだお。
みんなみんなこの手をすり抜けて、悲しい運命の中に呑み込まれてしまった」
優しい表情を浮かべつつ、彼は言う。
一瞬、その瞳にふっと走った感情は、一体何だったのであろうか。
(;^ω^)「君は……何を……」
(メ^ω^)「いくつもの未来があるって事だお。
例えば、君がよく知っている、こんな未来も」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:34:44.52 ID:9TXk4fs5O
支援
18 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:37:31.83 ID:O0YNWcPZ0
その声も、そしてそれから起こる出来事も、唐突だった。
周囲の空間がぐにゃりと歪曲し、この不思議な空間が変化していく。
空間の歪みがなくなると、僕は廊下に居た。
夢の中での研究所―――“管理人”が基地として利用するあの白い建物の、白い廊下に。
壁を這う色とりどりのコードを見て、ぞくり、と背筋が寒くなった。
最近はずっと見ていない『あの夢』と、まったく同じ情景だったからだ。
(;^ω^)「この世界は……この、夢は」
(メ^ω^)「そう。君の見るあの夢は、『僕の未来』。
何も救えなかった僕の事を、君は夢で見ているんだお」
( ^ω^)「夢、で……?」
呟く僕の脳裏に浮かぶのは、あの光景。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:37:39.04 ID:9TXk4fs5O
支援
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:40:01.33 ID:Go4DrLg8O
支援
21 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:40:54.84 ID:O0YNWcPZ0
視界に入るのは、惨殺という惨殺。
飛び散る血飛沫、跳ねる首、破裂する頭蓋。
耳に入ってくるのは、気が狂いそうになる叫喚。
逃げ惑う人々。追う狩人。築かれる死体の山。
そして起こる爆発。
視界を覆う煙。炎の中で笑う、人々を惨殺した狩人―――
そうだ。
人ならざる力を持ったあの狩人は、どこか見たことがあるような顔をしていた。
そう、とても近いところで。
(;^ω^)「……もしかして」
呟く声は、掠れていた。
それに応える男の声は明瞭で、その眼は、やはりどこまでも優しげなそれだった。
(メ^ω^)「そうだお。それが、僕だお」
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:41:00.67 ID:9TXk4fs5O
支援
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:42:23.90 ID:daQfJu3SO
支援ぬ
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:43:43.30 ID:9TXk4fs5O
支援
25 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:44:47.34 ID:O0YNWcPZ0
(;^ω^)「何であんな事……ッ!」
(メ^ω^)「仕方なかったんだお。あの時の僕は、僕だけれど僕じゃない」
(;^ω^)「……さっきからあんたが言ってる事は意味が分からないお。
何なんだお、あんたは。僕に何をしたいんだお?」
(;^ω^)「昔っから何度も夢に出て来て僕を苦しめて、今もこうして僕を困らせてる。
何がしたいんだお? 何を伝えたいんだお? お前は誰なんだお?
僕には、お前が言ってる事の意味がまったく分からないお」
(メ^ω^)「僕は、ブーン。
君とは違う未来を歩き、多くの者をこの『物語』に巻き込んでしまった存在だお」
(;^ω^)「まずその意味が分からないっつってんだお!
いいかげんにしろお!」
(メ^ω^)「今は分からなくて良いお。きっと、後で分かるようになる」
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:45:25.34 ID:9TXk4fs5O
支援
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:46:25.22 ID:Go4DrLg8O
パンッ
28 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:47:43.22 ID:O0YNWcPZ0
(;^ω^)「……ああ、もう。じゃあ、それについてはもう良いお。
それじゃ、お前は僕に何を伝えたいんだお? 何がしたいんだお?」
(メ^ω^)「お願いしに来たんだお」
( ^ω^)「おっ? 何を、だお?」
(メ^ω^)「今度こそ、救ってほしいんだお。ドクオを、ギコを、ジョルジュを。
クーを、ツンを、しぃを。そして、モララーを。
彼らを、悲しい物語の渦から救い出して欲しいんだお」
(;^ω^)「……やっぱり、あんたの言ってる意味はよく分からないお。
つまりは、この戦いに勝てっていう事じゃないのかお?
それに、何で僕がモララーを救わなきゃいけないんだお?」
(メ^ω^)「それも、いずれ分かるお。
君にはただ、僕のお願いを覚えておいてほしいだけだお」
ふいに、男の両手が持ち上がった。
それは僕の肩を堅く掴み、軽い痛みを伝えてくる。
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:47:44.76 ID:9TXk4fs5O
支援
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:49:31.54 ID:ds1++4IcO
支援
31 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:49:32.35 ID:O0YNWcPZ0
何なのか、と訊こうとして、息を呑んだ。
僕のと同じ高さにある男の瞳―――先程まではただ優しげだったその瞳が、炯々と輝いていた。
その輝きは、凄絶なものだった。
そこにあるのは、溢れんばかりの悲しみ。
(メ^ω^)「君は、僕と同じ道を歩まないでくれお。
今度こそ、救って欲しい。これ以上の悲しみの連鎖は、ごめんだお」
(メ^ω^)「君に全てを託す形になって、ごめんお。
何も出来なかった僕を許してほしいお。
……お願いだお。今度こそ、今度こそ―――みんなを救ってくれお」
言葉が終わるのと同時、肩から指が離れる。
そして彼は僕に背を向け、廊下の奥に向かって歩き出した。
( ^ω^)「……待ってくれお」
しかし彼は振り返らない。
それでも僕は、言葉を止めない。
32 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:49:38.52 ID:9TXk4fs5O
支援
33 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:51:31.41 ID:O0YNWcPZ0
( ^ω^)「やっぱりあんたの言う事は意味が分からないお。
でもいずれ分かるって言うなら、それについてはまぁ良いお」
( ^ω^)「でも、これだけは教えてくれお。
あんたは、誰だお?」
応える声は、ない。
( ^ω^)「あんた、もしかして―――」
「ブーン」
男は足を止め、しかし背中を向けたまま呟いた。
僕と同じ声だというのに、その声は押し潰されそうになるほど重い。
「君はきっと、苦しくて悲しい想いを味わう事になると思うお。
でも、諦めないで頑張って欲しいお。きっと、希望はある筈だから」
変化は、またも唐突だった。
僕の周囲の空間が、眩いほどに光輝き始めたのだ。
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:51:36.49 ID:9TXk4fs5O
支援
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:51:40.52 ID:sG9oKHVf0
支援
36 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:54:21.21 ID:O0YNWcPZ0
.
床や壁、天井が光に呑まれ、辺りは白銀色の光に染まる。
全身を浮遊感が包み、僕はただ混乱した。
前を歩いていた男も光に呑まれ、その姿は見えない。
しかし、彼の声だけが、どこからともなく聴こえてきた。
「……僕が誰であるか。
その質問には、次に会った時に答えるとするお。
もう、起きる時間だお。今日のところは、さよならだお」
「さようなら。
また、会おうお」
その言葉が、最後だった。
眩かった光が急速に膨らみ、僕の全てを包み込む。
音すらも遠ざかる中、僕は彼の事を考えていた。
彼は誰なのだろう。
もしかして、“彼”だとしたら―――
そこまで考えたところで、突然、視界が暗転した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:54:25.08 ID:9TXk4fs5O
支援
38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:55:01.65 ID:sG9oKHVf0
支援
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:56:52.39 ID:9TXk4fs5O
支援
40 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 21:56:57.63 ID:O0YNWcPZ0
耳を劈くベルの音が、部屋の空気を震わせた。
凄まじい音を発しているのは、大型の目覚まし時計だ。
それが頭のすぐ横に置いてあるとなると、睡眠中のブーンはさぞかしうるさいだろう。
実際、彼の眉根はぎゅっと寄せられ、表情は凄まじく迷惑そうに歪んだ。
_, ,_
(;^ω^)「うーん……」
呻きつつ、ブーンはその目覚まし時計を止める。
ベルの音はピタリと止み、残響は殷々と残って、徐々に消えた。
上半身を起こす。
時計が指しているのは、午前二時半。
尋常でなく早い起床だが、寝たのが早かった為、睡眠時間は十分だ。
( ^ω^)「……妙な夢だったお」
呟いて、頭を振った。
夢のせいか、眠気はほぼ完全に晴れていた。
目覚めは、間違っても良くはなかったが。
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 21:57:55.70 ID:9TXk4fs5O
支援
42 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:00:13.00 ID:O0YNWcPZ0
テーブルの上に置いておいた、水の注がれたグラスに手を伸ばす。
それを一気に飲み干すと、幾分か気分が良くなった。
( ^ω^)「ん、しょっ……」
立ち上がる。
それから一つ、溜息を吐くと、胸に触れた。
鼓動は少しだけ強く、早い。
緊張―――そして少しだけ、興奮していた。
言うなればその心持ちは、部活での試合前のようなそれだ。
( ^ω^)「とうとう、今日だお」
今日で、決着が付く。
勝っても敗けても、終わる。
勝てば望む結果が手に入るし、敗ければ全てが奪われる。命さえも。
43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:00:21.35 ID:9TXk4fs5O
支援
うわああああ痛いししぬほどつまんねwwwwwwww
45 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:02:43.81 ID:O0YNWcPZ0
―――敗けるわけにはいかない。
心中で呟くと、自然と心が引き締まった。
( ^ω^)「……頑張るお。
あの日常に、戻るんだお」
呟き、時計を見やる。
そして頷くと、ブーンは戦いに向けての準備を始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:02:45.62 ID:9TXk4fs5O
支援
47 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:04:46.57 ID:O0YNWcPZ0
.
川 ゚ -゚)「よし、集まったな」
その呟きは、凛とホールに響き渡った。
応える声はない―――が、全員が静かに頷いた。
それぞれの眼に輝くのは決心と覚悟だ。
川 ゚ -゚)「一応聞いておこう。準備は良いだろうな?
得物は持ったか? 出来得る限りの装備は?」
( ^ω^)「分かりきったことを聞くなお」
応えるブーンの手には、白いバッグだ。
中からは金属同士が擦れる音―――ガントレットが奏でる声が聞こえていた。
ギコやジョルジュにドクオ、クーとモナーも、それぞれの得物をしっかりと持っている。
川 ゚ -゚)「ふむ、忘れ物はないようだな。
……気合いは入ってるだろうな?」
ミ,,゚Д゚彡「ふん。今更、だな。
気合いなんざ、とっくの昔っから入れっぱなしだ」
(,,゚Д゚)「あぁ。十分過ぎるぐらいに、気合い入ってんよ。
今日は、絶対に敗けるわけにいかねぇからな」
川 ゚ -゚)「よろしい。じゃあ、行くぞ」
('A`)「どうやって?」
48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:04:55.19 ID:9TXk4fs5O
支援
49 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:06:04.20 ID:O0YNWcPZ0
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川 ゚ -゚)「そりゃあ、車やらバイクやらでだろう」
('A`)「んなもん、どこにあるってんだ?」
川 ゚ -゚)「ここの地下には、駐車場がある。
そこに、バイクも車もあるぞ」
('A`)「……ほぅ。準備がよろしいな」
川 ゚ -゚)「行くぞ」
言い残し、彼女はエレベータに乗り込んだ。
続いて他のメンバーも乗り込み、彼らは地下へ。
エレベータの扉が開いて最初に感じたのは、驚くほどの冷たい空気だった。
口からの吐息は白く、ふわりと空気に流れ、溶けて行く。
エレベータの前は、細い通路だった。
少し先に、曲がり角がある。
通路には最低限の灯りしかなく、かなり薄暗い。
足音を冷えた壁に反響させながら、彼らはその中を歩む。
(;゚∀゚)「寒ッ!」
川 ゚ -゚)「そうか?」
(;゚ー゚)「いやいや、姉さん。これは普通に寒いよ」
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:06:40.49 ID:Go4DrLg8O
支援
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:07:28.29 ID:9TXk4fs5O
支援
52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:08:41.36 ID:FjWPxmSxO
こんなクソ小説に支援するなんてブーン系終わったな^^;
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53 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:09:25.19 ID:O0YNWcPZ0
.
ミ,,゚Д゚彡「どうでも良いな。それよりも、クー」
川 ゚ -゚)「分かってるさ」
その声と同時、通路の角を曲がった。
そこにあった光景に、ブーン達は思わず息を漏らした。
(;゚Д゚)「……多いな、おい」
川 ゚ -゚)「まぁな」
そこにあったのは、相当な数の車とバイク。
種類も豊富だ。
(;゚∀゚)「こんなに揃えて、どうする気さ。
こんだけあっても使わないっしょー?」
( ´∀`)「一応置いてある、という事だもな。気にするなもな」
( ゚∀゚)「……ま、良いんだけどさー」
川 ゚ -゚)「さて、ここでブーン達に質問だ。
“管理人”の基地までは、出来るだけ小回りの利くバイクで行きたいのだが……。
君達はバイクに乗れるか?」
( ^ω^)「乗れないお」
('A`)「同じく。っつーか、乗れちゃいけないわけだが」
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:09:36.03 ID:9TXk4fs5O
支援
55 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:10:22.98 ID:FjWPxmSxO
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56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:11:10.86 ID:Go4DrLg8O
パンッ
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:12:01.65 ID:9TXk4fs5O
支援
58 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:12:26.96 ID:O0YNWcPZ0
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ミ,,゚Д゚彡「お前達は?」
(,,゚Д゚)「……乗れるぞ」
( ゚∀゚)「同じく」
_, ,_
( ^ω^)「……何でだお」
(,,゚Д゚)「……趣味というか、何と言うか」
( ゚∀゚)「ほら、ね? 乗れると便利だし」
('A`)「DQNめ」
(;゚Д゚)「違う! それは断じて違うぞ!!」
(;゚∀゚)「バイクに乗れるってだけでDQN扱いは酷いなー」
('A`)「うるせ。DQNが反論すんな」
ミ,,゚Д゚彡「やかましいぞ、お前達。
とにかく、ギコとジョルジュは乗れるんだな?」
(,,゚Д゚)「あぁ」
( ゚∀゚)「いぇす」
59 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:13:35.60 ID:daQfJu3SO
支援
60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:13:48.75 ID:9TXk4fs5O
支援
61 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:14:59.05 ID:O0YNWcPZ0
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ミ,,゚Д゚彡「じゃあ、ギコの後ろにブーンが、ジョルジュの後ろにドクオが乗れ」
( ^ω^)「把握だお」
('A`)「おk」
( ゚∀゚)「そっちはどうするんだい?」
川 ゚ -゚)「私とモナーとフサが運転出来る。
だから私の後ろにしぃが乗って、フサの後ろにツンが乗る」
(,,゚Д゚)「ほぅ」
ミ,,゚Д゚彡「よし。じゃあ各々、乗る機体を選べ。
好きなものを選んで構わんぞ」
(,,゚Д゚)「あいよ」
各々、バイクの元に足を運ぶ。
結局、誰も特に選ぶ事もなく、眼に付いたバイクを運んできた。
ミ,,゚Д゚彡「乗れ。エンジンをかけろ」
短い指示に、全員がすぐさま従った。
まもなく五つのエンジン音が唸りを上げ、地下の冷えた空気を焦がす。
川 ゚ -゚)「ギコ達は、私達の後について来てくれ」
(,,゚Д゚)「OK。先導は頼んだ」
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:14:59.46 ID:FjWPxmSxO
こ ん な ク ソ 小 説 に 支 援 す る な ん て ブ ー ン 系 終 わ っ た な^^;
63 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:15:51.23 ID:9TXk4fs5O
支援
64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:16:45.67 ID:Go4DrLg8O
支援
65 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:17:35.28 ID:O0YNWcPZ0
.
川 ゚ -゚)「あぁ。それじゃ―――行くぞ!」
その声に応じるかのように、クーの駆る銀のバイクが咆哮をあげた。
そして、出口らしき一角に向け、急発進。
それにフサとモナーのバイクが続き、どこか追いすがるようにしてギコとジョルジュのバイクが続く。
エンジン音の荒々しい響きだけが、地下に残された。
誰もいなくなり、その駐車場は再び沈黙に閉ざされる。
冷えきった空気の中、忍び笑いの響き。
誰が発しているのか―――それどころか、どこから発されているのかも分からない。
しかしその音は明確に、どこまでも邪悪に、無人の地下駐車場の空気を震わせていた。
笑い声は唐突に止み、そして空気よりも冷えきった言葉が紡がれる。
「始まりだ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:17:56.59 ID:sG9oKHVf0
支援
67 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:19:58.80 ID:O0YNWcPZ0
.
東の空が薄らと白んできた時間。
舗装されたアスファルトの上を、銀のバイクが凄まじい速さで駆け抜けた。
ほとんど並ぶようにして続くのは、黒いバイクとメタリックブルーのバイク。
三つの機体にやや遅れて駆ける機体は二台。
赤いバイクと、白いバイク。
つまり、ギコとジョルジュの車体だった。
(;^ω^)「ちょっ、ギコ!! 飛ばし過ぎだお!!」
(;゚Д゚)「俺に言うな! あいつらが速過ぎるんだよ!!」
(;゚∀゚)「確かにあの速さは尋常じゃないねー!
この時間だから良かったけど、車の通りが激しかったら絶対事故るよこれ!!」
('A`)「……喋る余裕があんなら、追いつけ。
離されたら、もうどうしようもねぇぞ」
(;゚∀゚)「わーってらい!」
(,,゚Д゚)「…………っ!」
アクセルを更に強く捻り込み、加速する。
風が容赦なく身体を殴りつけ、運転手の二人は軽く呻いた。
(;゚ω゚)「ちょおおおおっ! 速いお! 速過ぎるおおおぉぉぉおぉっ!!」
(;゚Д゚)「るっせーな、口閉じてろ! 舌噛むぞ!!」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:20:33.24 ID:G+94rdTGO
文最初の点が気になる
69 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:22:21.71 ID:O0YNWcPZ0
.
('A`)「……事故るなよ? この速さなら、即死だからな?」
(;゚∀゚)「不吉なこと言わないでくれるかなーっ!?」
更に加速して、クー達に追いすがる。
見るとクーの後ろに乗っているしぃ、そしてフサの後ろに乗っているツンも、それぞれ恐怖の表情を浮かべていた。
(;゚∀゚)「クーさん! お願い! もうちょい遅く走って!!」
川 ゚ -゚)「む? 何故だ?」
(;゚Д゚)「速過ぎだっつの! 追いつけるか!!」
ミ,,゚Д゚彡「今こうして追いついてるじゃないか」
(;゚ω゚)「この速さは危険すぎるお!
戦いに臨む前に死んじまうおっ!!」
川 ゚ -゚)「むー……?」
( ´∀`)「クー。確かに、この速度は一般人にはキツいもな。
時間はある。ちょっと速度を落とすもな」
川 ゚ -゚)「……ふむ、分かった」
言葉と同時、速度がやや緩やかになる。
とは言っても、その速度は一般人からすれば十二分以上に速い。
70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:22:28.60 ID:9TXk4fs5O
支援
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:23:41.91 ID:FjWPxmSxO
俺はお前らリア充の非童貞、非処女達に対して声を高らかにして言いたい
なぜ、何でいい年して童貞とか、彼女いたことないからってだけで軽蔑するような態度を取ってくるのかが納得いかない
どうして見下すような態度を取る?周りがみんなセクロス経験してるの当たり前になってるから?10代で童貞なり処女なり捨ててんのが普通になってるから?意味が分からない
個人差なんていくらでもあるじゃん?20過ぎても30過ぎても童貞だから、彼女いたことないからって変人とか人としてヤヴァイとか言うのって普通に差別にあたるんじゃないのか?違うか?
だいたいよ、セクロスしてないし付き合ったことがないからってお前らに何か世間に迷惑でもかけてんのか?そういう法律とか条例とかあるのか?ねぇだろ?
お前らリア充が勝手に「童貞ダセーwwwwwwwww」とか言って見下してるだけだろ?
くだらねぇ偏見ばっかしやがって、ふざけんな
72 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:24:25.57 ID:O0YNWcPZ0
.
しかしブーン達の表情は緩み、口からは安堵の溜息が漏れた。
異能者となって身体能力が上がり、かつ訓練によって鍛えられた彼らの能力は、既に一般人のそれではなくなっていた。
覚醒してから、今まで。
この短期間の間に、彼らは立派な『異能者』に成長していた。
戦闘に特化した、超人間に。
しかしそれを聞いても、彼らは心の底から喜びはしないだろう。
彼らは“力”を―――戦闘を望んでいたわけではないのだから。
何かを護る為に、戦わざるを得なかったのだ。
ブーンは日常を護る為。そして、人々の悲しむ顔を見ない為。
ギコは己の正義を護る為。悪の存在に蹂躙される人を失くす為。
ドクオは大切な者を護る為。大切な友の元に戻る為。
ジョルジュは己の存在を護る為。そして、真実を知る為。
護る為に、彼らは奪う力を得た。
護る為の力が、奪う為の力となった。
人は護る物があれば、強くなる。
だから彼らは短期間の間に、これほどまでに強くなった。
(,,゚Д゚)「クー! あとどれくらいだ!」
( ゚∀゚)「もう結構走ったよねー!? そろそろ着いても良いと思うけどー!?」
73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:25:31.83 ID:sG9oKHVf0
支援
74 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:27:11.56 ID:O0YNWcPZ0
.
川 ゚ -゚)「案ずるな。もうすぐだ」
ミ,,゚Д゚彡「……あれだ。あちらに、黒い影があるだろう。
あれが奴らの森だ」
眼を細めて先を見るフサ。
その方向に眼をやれば、確かに、少し先にぼんやりと黒い塊が見える。
( ^ω^)「あそこかお!」
('A`)「……もう、そう時間はかからないな」
川 ゚ -゚)「森の中、基地近くまで行って、そこで一度降りるぞ。
そこからは四チームに分かれて、徒歩で進む」
(,,゚Д゚)「了解!」
( ゚∀゚)「りょーかーい!」
会話はそこまでだった。
声を置き去りにして、五台のバイクは走り行く。
十数分後。
欝蒼とした森の深くで、五つのエンジン音が響いていた。
先程までの走りに喘ぐように、エンジンの放熱機関は熱い空気を吐いている。
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:28:23.78 ID:sG9oKHVf0
支援
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:30:04.33 ID:8xYbQGPX0
ぱんっ
77 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:30:25.21 ID:O0YNWcPZ0
.
川 ゚ -゚)「……よし、この辺りで降りておこうか」
その声に応じるように、五つあったエンジン音が一つずつ消えて行った。
代わりに、草を踏み締める音が増えて行く。
( ゚∀゚)「相変わらず、不気味な建物だねぇ」
言いつつ、肩にかけていたバッグを開いた。
そこから顔を出すのは、四本の爪を持つ橙色の奇妙な武器―――『尖鋭』。
(,,゚Д゚)「あぁ。見てて、どうも胸糞悪い。気に入らない」
( ^ω^)「……でもこの建物を見るのは、今日で最後だお。
僕達は明日から、学校生活にいっぱいいっぱいでこんなところには来れない。
―――そうだお?」
('A`)「だな。日常生活の中で、ここに来る事はないだろうから」
喋りながら、彼らも武器を装備する。
ギコの左手には、幅広の紅い刀身を持つ長剣。
ブーンの両手には、白銀に輝くガントレット。
ドクオのベルトに差し込まれたのは、黒と銀の二挺拳銃。
川 ゚ -゚)「……よし。準備は整ったな。
それじゃあ、私が合図したら四つに分かれて、それぞれの仕事場に付け。
私とドクオは、三十分後に突入する。お前達はその五分後に突入しろ」
控え目な、しかし気合いが込められた返事が返ってくる。
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:30:44.43 ID:v0K+A3Ub0
支援
79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:31:19.52 ID:9TXk4fs5O
支援
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:32:04.60 ID:sG9oKHVf0
支援
81 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:32:40.28 ID:9TXk4fs5O
支援
82 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:32:42.96 ID:O0YNWcPZ0
.
クーは眼を閉じ、大きく息を吸った。
軽く握った手は、胸に。
その姿は、何かに祈るかのようだ。
いや、実際に祈っているのだろう。
彼女の口は、音を発さずに『ファーザー』という言葉を紡いでいた。
まもなく、瞳が開かれる。
川 ゚ -゚)「……絶対に、勝とう。誰も死なないでくれ。
また、みんなで言葉を交わそうじゃないか」
川 ゚ -゚)「―――良いか、これは命令だ。己の全てを出しきって、生き残れ。
どのような手を使っても良い。これは戦いだ。勝って生きねば、意味がない。
“削除人”リーダー、クーが命ずる。死ぬ事は許さない。生きろ」
拳が堅く握られ、そして突き出された。
憎き敵の、雪色の基地に向かって。
川 ゚ -゚)「行け! 各々その“力”で、奴らを思う存分に蹂躙しろ!
容赦などはいらない! 己の理想と正義を、現実にするんだ!!」
返事は、なかった。
ある者は笑みを浮かべ、ある者は咆哮をあげて、ただ走る。
残ったのはクーとドクオのみ。
二人とも声は発さず、静寂が訪れた。
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:35:09.19 ID:Go4DrLg8O
支援
84 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:35:41.28 ID:O0YNWcPZ0
.
二人の視線は突き刺すような鋭さで、“管理人”の白い基地を捉えていた。
動きはない。
川 ゚ -゚)「……外には、いないようだな」
('A`)「あぁ。姿はないし、音もない。
奴らは中にいる。だが……」
川 ゚ -゚)「そうだな。きっと、気付かれている。
理由はないが、そんな感じがする」
('A`)「気付かれてるとすれば、舐められてんな。
まぁ、構わないがな。
俺達を舐めるっつーなら、その舌を引き千切ってやるだけだ」
川 ゚ -゚)「……あぁ。その通りだ」
('A`)「さて、俺達の突入は何分後だ?」
川 ゚ -゚)「む。……あと二十五分後だ」
('A`)「結構時間あるな。どうするか」
川 ゚ -゚)「今はただ、休むしかあるまい。
変に動いてしまっては、疲れてしまう。
ウォーミングアップは突入五分前からで十分だ」
('A`)「ん、そうか」
85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:35:45.80 ID:9TXk4fs5O
支援
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:37:05.66 ID:sG9oKHVf0
支援
87 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:38:43.99 ID:O0YNWcPZ0
.
短く答えると、ドクオは服の中に手を差し込んだ。
そこから現れたのは、彼が愛飲する缶コーヒーだ。
それを口に運び、ドクオは美味そうに眼を細める。
クーは、それを眉根を寄せて見詰めた。
川;゚ -゚)(……あんなもの、どこに入れていたんだ)
('A`)「ん? 何だ?」
川;゚ -゚)「ん。あぁ、いや。何でもないんだ」
('A`)「ん……あぁ、お前も飲みたいのか?」
川;゚ -゚)「いや、そういうわけじゃなくてだな」
('A`)「遠慮すんな。戦い前に、元気付けとけ」
言って、再度服の中に手を忍ばせた。
まもなく外に出た手には、またも缶コーヒーが握られている。
川;゚ -゚)(二本もどこに入れていた……っ?)
('A`)「ほれ」
クーは多少混乱しながらも、軽く投げられた缶コーヒーをキャッチする。
そしてまた、小さく驚愕した。
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:41:02.27 ID:sG9oKHVf0
支援
89 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:41:06.07 ID:O0YNWcPZ0
.
川;゚ -゚)(しかもホットだと!?)
('A`)「熱いのはダメだったか?」
川;゚ -゚)「あ、いや。そんな事はない。ありがたくいただこう」
答えつつ缶の蓋を開けると、豊かな香りが鼻をくすぐる。
クーはその香りを少し楽しむと、大きく一口飲み込んだ。
川 ゚ -゚)「……ふむ。やや甘いが、美味いな」
('A`)「百二十円のものにしちゃ、良いものだろ?」
川 ゚ -゚)「あぁ。落ち着く味がする」
そして、沈黙。
二人が発する音は、コーヒーを啜る静かな音だけ。
緩やかに吹く風は森を揺らし、二人の頬を撫でていく。
時折響く鳥の声は美しく、気持ちを落ち着かせた。
頭上に視線をやれば、一本の太い枝の上で二匹のリスが追いかけっこをしていた。
それは戦闘前とは思えないほど、穏やかな空間だった。
二人は喋る事もなく、ただただゆっくりとコーヒーを飲み続ける。
それは、時の流れをまるで気にしないかのように。
90 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:43:13.96 ID:9TXk4fs5O
支援
91 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:44:47.31 ID:O0YNWcPZ0
.
('A`)「ん…………」
缶を大きく傾け、最後の一滴を口に落とす。
そして後味を楽しむかのように大きく息を吐いて―――
その手に握られた缶が、凄まじい音を経ててひしゃげた。
缶を握り潰したその左手は、やはり、黒の異形。
('A`)「さて、クー。突入まで、あと何分だ?」
川 ゚ -゚)「残り……五分だ」
('A`)「よし」
手の形に潰れた缶を投げ捨て、ドクオは首を鳴らす。
そして調子を確かめるかのように左手を開閉すると、前の白い施設を睨みつけた。
('A`)「依然、相手側に動きはなし。
気付いてるのかどうか知らんが、少なくとも外には出ていない。
他の三チームは、しっかりと配置に着いたようだ」
川 ゚ -゚)「分かった」
短く応えて、彼女も右腕を解放する。
そして、モナーから受け取った青き刀『氷華』を鞘から抜くと、左手に握った。
川 ゚ -゚)「残り四分。そろそろ、行こうか」
('A`)「あいよ」
92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:45:49.93 ID:sG9oKHVf0
支援
93 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:47:29.89 ID:O0YNWcPZ0
.
ゆっくりと、歩み出す。
その歩みに、躊躇や恐怖などはない。
どこまでも冷静で、しかし力強い足取りだった。
('A`)「クー。気付かれてるとすりゃ、扉を破った瞬間に襲撃が来る可能性がある。
気を付けろよ? 流石にそこは、カバー出来ない」
言いつつ、ドクオはベルトからクロを抜き出し、右手に握る。
川 ゚ -゚)「分かってるさ」
('A`)「なら良いんだ。
さて、どうやって突入する?
二人一緒に? クーから? 俺から?」
川 ゚ -゚)「二人一緒に、だろうな。
正面入り口だ。敵が固まっている可能性が高い」
('A`)「OK。作戦なんかは?」
川 ゚ -゚)「ない。相手の出方がまったく分からない状況だ。
作戦を組まず、状況に応じて行動するのが一番だろう」
('A`)「OK」
話す間にも、二人と基地との間はどんどんと狭まって行く。
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:49:30.49 ID:sG9oKHVf0
支援
95 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:49:48.69 ID:O0YNWcPZ0
.
川 ゚ -゚)「残り二分」
小さな呟き。
速度は、変わらない。
川 ゚ -゚)「残り一分」
背の高い、鉄の柵に到達した。
足下に転がる鉄の残骸は、クックルに壊された巨大な鉄の門の名残だ。
眼の前に広がる巨大な前庭。
そこを割くようにして通る石畳の道を、足音高く歩む。
川 ゚ -゚)「……残り、三十秒」
そして、到達した。
門から数メートルの距離を置いて、二人は足を止める。
立ち位置はドクオを右に、クーを左に。
二人の瞳は鋭く細められ、四肢はすぐにでも動けるように力が込められていた。
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:49:48.59 ID:K4k0OzIhO
パンッ
97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:51:18.86 ID:i4QVSXg/O
支援
98 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:52:21.12 ID:O0YNWcPZ0
.
クーは刀を握り直し、ドクオはクロを手の中でくるくると回す。
そして、その回転が停まると同時。
('A`)「さ……行こうか」
川 ゚ -゚)「あぁ」
二人の足が、動いた。
まるで、滑るように。
解放部位を、それぞれ引き絞る。
ドクオは左腕を、クーは右腕を。
そして、振り抜いた。
甲高い音が鳴り響き、扉は凄まじい勢いで開け放たれる。
その音はまるで、開戦の合図のようだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:52:35.17 ID:sG9oKHVf0
支援
100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:52:48.80 ID:v0K+A3Ub0
しえん
101 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:55:41.97 ID:O0YNWcPZ0
.
木と木の間を縫うように走る、二つの影がある。
その瞳は横手の雪色の壁を見詰め、何かを見つけ出そうと揺らいでいた。
( ^ω^)「っ! ここだお!」
その壁に何を見付けたのか、ブーンはその場で急停止した。
彼の後ろの影―――ツンも、たたらを踏みつつ止まる。
ξ゚听)ξ「……あったの?」
( ^ω^)「ほら、あそこ」
鉄柵の向こうの、雪色の壁を指差す。
一見、そこには何もないように見えるが―――僅かに盛り上がっている箇所があった。
それこそが、モナーが発見した扉だった。
( ^ω^)「時間になったら、この柵を越えてあの扉から進入するお。
ツン、残り何分で突入だお?」
ξ゚听)ξ「……残り二十分よ」
( ^ω^)「おっ。まだ意外と時間あるみたいだおね」
ξ゚听)ξ「そんな事ないわ。二十分なんて、すぐよ。
特にこういう時は、時間の流れは早く感じてしまうものよ?」
( ^ω^)「戦いへの覚悟が出来てるなら、二十分は長いくらいだお。
ツンも、覚悟は決めてきたお?」
102 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 22:58:10.35 ID:O0YNWcPZ0
.
ξ゚听)ξ「そりゃあ、そうだけど」
( ^ω^)「だったら、やっぱり時間は十分にあるお。
そうだお?」
ξ゚听)ξ「……むぅ」
どこか納得がいかないように唸るツン。
それを横目に、ブーンは傍にあった大木に寄りかかった。
そして、腰を下ろす。
( ^ω^)「ふぅ」
ξ゚听)ξ「……随分とリラックスぶっこいてんじゃない」
( ^ω^)「二十分も気ぃ張ってたら、無駄に疲れちゃうお。
それに、慣れないバイクに乗って、疲れちゃったお。
休まなきゃ」
ξ゚听)ξ「…………………」
( ^ω^)「ツンも、バイクに乗って疲れたお?
休むべきだお。ほら」
自分の隣を指して、ブーンは微笑んだ。
ツンは呆れたように溜め息を吐き、しかしブーンの誘いに乗った。
大木まで歩み寄って、ブーンの隣に腰を下ろす。
その頬は、心なしか僅かに紅潮していた。
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:58:16.24 ID:9TXk4fs5O
支援
104 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:58:30.47 ID:v0K+A3Ub0
しえん
105 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:58:31.31 ID:sG9oKHVf0
支援
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:59:23.69 ID:9TXk4fs5O
支援
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 22:59:51.08 ID:daQfJu3SO
しえんる
108 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:00:43.79 ID:O0YNWcPZ0
.
( ^ω^)「ふぃー」
ξ゚ -゚)ξ「……ようやく、始まるのね」
( ^ω^)「そうだおね」
ξ゚听)ξ「戦うの、怖くないの?」
( ^ω^)「もう、覚悟したから。
まったく怖くないと言えば嘘になるけど、でもあまり怖くはないお。
今の僕にとって本当に怖いのは、敗けて全てを失ってしまう事だけだお」
ξ゚ -゚)ξ「……そう」
( ^ω^)「ツンは、怖いのかお?」
ξ゚听)ξ「ちょっぴり、ね。
いざ戦いとなれば平気なんだけど、戦う前は、やっぱり」
( ^ω^)「じゃあ、深呼吸すると良いお!」
ξ;゚听)ξ「え?」
( ^ω^)「深呼吸だお! 怖い時とか緊張する時は、深呼吸するのが良いんだお!
深呼吸すると、心が落ち着いて怖くなくなるお!」
ξ;゚听)ξ「そんな単純な……」
( ^ω^)「良いから!」
109 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:03:35.05 ID:O0YNWcPZ0
.
ξ゚ー゚)ξ「……プッ。
分かったわよ。するわよ」
口元に笑みを浮かべつつ、大きく息を吸った。
鼻孔を草木の香りが満たす。
吸った息を吐いてみると、少しだけ、恐怖は薄れているように感じた。
勿論、深呼吸のおかげではない。
ブーンの明るさが、彼女の緊張を解かしたのだ。
( ^ω^)「どうだお?」
ξ゚ー゚)ξ「少しだけ楽になった……かもねw」
( ^ω^)「おっ! それは良かったお!」
ξ゚听)ξ「……そういえば、ブーン。一つ、訊いて良い?」
( ^ω^)「おっ、何だお?」
ξ゚听)ξ「私達が初めて会った時―――私があなたを殺そうとした時。
何であなたは、私を殺そうとしなかったの? 何で私を敵として憎まなかったの?
何で私を助けたの? 放っておけば、死んだのに」
( ^ω^)「戦ってる時、ツンが哀しそうな顔をしてたからだお」
ξ゚听)ξ「え?」
110 :
◆onigiriJGU :2008/03/03(月) 23:05:28.10 ID:ListyE5QO
支援
111 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:06:28.74 ID:O0YNWcPZ0
.
( ^ω^)「そもそも、人は殺したくないお。殺さないでいられるなら、殺したくない。
あの時、僕は殺さないで良い状況にあったから殺さなかった。
君が哀しそうな顔をしたから、何だか助けたくなった。それだけだお」
(;^ω^)「……実際、僕もよく分かっていないし、覚えてないんだお。
あの時は無我夢中で、気付いたらああしていただけだから」
ξ゚听)ξ「……そう。でも、あの時はごめんね」
( ^ω^)「良いお。いや良くないけど。でももう、気にするなお。
君にとっては、やりたくなくてもやらなきゃいけない事だったんだから」
ξ゚ー゚)ξ「……何か、ごめんね。ありがと」
( ^ω^)「いえいえ」
ξ゚听)ξ「……ねぇ、ブーン。あなたは、この戦いに勝ったらどうするの?」
( ^ω^)「お? そりゃあ、あの日常に戻るだけだお。
異能者としての自分は忘れて、あの楽しい毎日に戻るんだお」
ξ゚听)ξ「あ、そっか」
( ^ω^)「ツンは?」
ξ゚听)ξ「……分からないなぁ。私、『こういう世界』しか知らないから。
生きる事と戦う事、殺す事に必死で。『そちらの世界』は、何も知らないの。
何をしようとか考えた事もないし、どうしたいとも思わなかった」
112 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:08:00.64 ID:sG9oKHVf0
支援
113 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:09:21.05 ID:O0YNWcPZ0
.
_, ,_
( ^ω^)「うーん……そうかお」
腕を組み、眉根を寄せて唸る。
そして何かに気付いたかのように声を漏らすと、笑顔で頷いた。
( ^ω^)「じゃあ、戦いが終わったら考えると良いお!」
ξ゚听)ξ「え?」
( ^ω^)「この平和な世界での、自分の未来を!
何かやりたい仕事を考えるでも良し、知らなかった世界を歩き回ってみるのも良し!
過去の事なんか全て忘れて、『この世界』で新しい自分の道を歩めば良いお!」
( ^ω^)「……そうだ、僕達の学校に来てみればどうだお?」
ξ;゚听)ξ「な、何を……」
( ^ω^)「みんな癖があるけど、良い奴ばっかりなんだお!
きっと気に入ると思うお! 来てみると良いお!
きっとツンだったら、すぐに友達が出来るお! 人気者になれるお!」
ξ;゚听)ξ「…………………」
あまりにも突然な提案に、絶句。
そして。
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:12:22.68 ID:sG9oKHVf0
支援
115 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:12:24.10 ID:O0YNWcPZ0
.
ξ゚ー゚)ξ「……プッ。
そうね、それも、考えておくわ」
おかしさに、笑ってしまった。
( ^ω^)「おっ! それが良いお!」
ブーンの笑顔を見て、ツンは少しだけ、自分の未来について考えてみる。
あちら側の世界は、何だか楽しそうだ。
あの世界に、私は行けるのだろうか。
行けるとするなら、私はあちらの世界で何をするのだろうか。
学校とやらに行ってみるのも、楽しいかもしれない、と。
( ^ω^)「……さて、ツン。残り何分で突入だお?」
ξ゚听)ξ「えっと……あっ。あと五分ってところよ。
思った以上に時間経ってるわね」
( ^ω^)「んじゃ、準備するかお」
ξ゚听)ξ「えぇ」
立ち上がる。
それからブーンは、声を漏らしつつ大きく伸びをした。
116 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:14:45.71 ID:O0YNWcPZ0
.
( ^ω^)「うー……ん。さて!」
ブーンの足元から、異音が響く。
まもなくその両足は異形のそれへと変化し、白銀の光を放った。
同時、ツンの背中から巨大な翼が広がる。
柔らかに風を撫ぜたその翼はブーンの“力”をコピーし、その翼もまた、白銀に輝いた。
ξ゚听)ξ「気、引き締めてよね」
( ^ω^)「分かってるお」
答えつつ、ブーンはガントレットをもう一度しっかりと装着し直す。
そして足を軽く動かすと、「よし」と笑った。
ξ゚听)ξ「今頃は姉さん達が突入してる頃ね。
……大丈夫かしら」
( ^ω^)「心配ないお。クーと、ドクオが組んでるんだから。
あの二人のタッグに勝てる奴なんてそうそういないお」
( ^ω^)「それよりも、僕達だお。
逃げ出してきた奴らの始末……僕らの動きは重要だお。
一人でも逃がしてしまえば、戦いはここで終わらなくなってしまう」
ξ゚听)ξ「……頑張らないとね」
( ^ω^)「だお」
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:15:18.29 ID:eQFCELH5O
パンッ
118 :
◆onigiriJGU :2008/03/03(月) 23:16:05.27 ID:ListyE5QO
支援
119 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:17:23.69 ID:O0YNWcPZ0
.
ツンは手首の時計に、ちらりと眼をやる。
そして、頷いた。
ξ゚听)ξ「ブーン」
( ^ω^)「行くかお」
ξ゚听)ξ「えぇ」
言葉と同時、二人の姿が地上から姿を消した。
二人の姿は、上空。
背の高い鉄柵の、更に上。
( ^ω^)「おぉっ!」
上空から、凄まじい勢いで着地する。
土煙が舞い上がり、着地したところの地面が少し陥没した。
ξ゚听)ξ「気を抜かないでね。
今この瞬間に、そこから現れるかもしれないんだから」
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:19:14.63 ID:RAzvDEzl0
121 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:19:30.27 ID:O0YNWcPZ0
.
ふわりと着地しながら、ツンは言う。
地面には、彼女の翼から抜け落ちた羽根が突き刺さっていた。
( ^ω^)「OKだお」
ξ゚听)ξ「……突入、三十秒前」
二人の瞳が細められ、身体に力が込められる。
その姿は、さきほどまでの二人とはまったく違うものだった。
ξ゚听)ξ「……突入っ!!」
( ^ω^)「おっ!!」
地を蹴り、扉に一瞬で接近。
そして、思い切り蹴り飛ばした。
扉はあちら側にひしゃげ、吹き飛んで行く。
ブーンはその勢いに乗ったまま、中へと突入していった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
122 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:22:21.39 ID:O0YNWcPZ0
.
基地の西側、鉄柵に沿って歩く二人。
その足取りは急ぐでもなく、その表情もまた、焦りなどは感じていないように見える。
( ´∀`)「ここだもな」
言って、唐突に足を止めた。
彼の後ろにいるジョルジュは、胡乱気に眉根を寄せる。
( ゚∀゚)「ここ? は? どこにあるってのさ」
( ´∀`)「あそこあそこ」
鉄柵の向こう側、雪色の壁を指差す。
そこにあるのはやはり、扉の形に薄らと盛り上がりのある壁だ。
( ゚∀゚)「おっ、あったあった。
それにしても、巧妙に隠したね。
ズルい事を考えるもんだねぇ、“管理人”も」
笑う。
その笑みは、既に鋭い。
驚くほどの鬼気が、その笑みには込められていた。
( ゚∀゚)「さて、モナーさん。あと何分で突入だい?」
( ´∀`)「あと十分だもな」
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:23:49.72 ID:Go4DrLg8O
支援
124 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:24:59.61 ID:O0YNWcPZ0
.
(;゚∀゚)「俺達、ゆっくりしすぎたんじゃね?
残り十分で突入とか、心の準備が!」
( ´∀`)「もう出来てるんだから、良いじゃないかもな」
( ゚∀゚)「うん、まぁ、確かにねー」
( ´∀`)「心の方の準備が出来てるんだから、後は装備の確認だけ。
実際は五分もあれば十分だったんだもな」
( ゚∀゚)「あ、そういえばさ、今回はどんな武器持ってきたの?」
( ´∀`)「メインは薙刀だもな」
( ゚∀゚)「あ、背負ってるその長いやつね。
……ん? メインはって?」
( ´∀`)「近接専用に、小太刀を二本。
それにナイフをいっぱいと、あと手榴弾とか」
(;゚∀゚)「……そんな物騒なもん、どこに隠し持ってんだか」
( ´∀`)「秘密だもなー」
( ゚∀゚)「む。……ま、良いや。それよりも、今日は頼むよー?
相棒として、頼りにしてんだかんねー?」
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:27:32.18 ID:9TXk4fs5O
支援
投下が来てたら支援するしかないじゃないかっ!
支援
127 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:28:35.25 ID:v0K+A3Ub0
支援
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:28:54.20 ID:aywzHg3c0
かっこよすぎる……。
支援
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:37:05.38 ID:v0K+A3Ub0
しえん
130 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:41:14.01 ID:O0YNWcPZ0
.
( ´∀`)「勘弁してほしいもな。
人間のおっさんである僕をこき使うのは良くないもな。
異能者であり若者である、君こそが働くべきだもな」
( ゚∀゚)「おっさんは物騒な武器を振り回したりしません。
それに、あんたに限っては人間も異能者もないでしょw
異能者相手に互角以上に戦う人間なんて、あんたくらいなもんだwww」
( ´∀`)「そんなことないもな! 探せば、きっともっといる筈だもな!」
( ゚∀゚)「はーいはい。ところで、さ。おっちゃん。
おっちゃんはさ、この戦いが終わったらどうすんだい?」
( ´∀`)「昔馴染みの友人のところに行くもな」
( ゚∀゚)「へぇ、良いじゃん! どこに住んでるんだい?」
( ´∀`)「大都会ガイドラインの、高ーい高ーいところにいるもな」
( ゚∀゚)「え? 何々? 偉い人なの?」
( ´∀`)「ふふーん。秘密だもな。
ジョルジュ君は?」
( ゚∀゚)「ん? そりゃ、前と同じく学校生活さ。
ただ……そうだね。以前よりも、素直に生きてみようかな」
( ´∀`)「それが良いもな。君は確かに、ちょっと自分を作り過ぎてたもな。
今は作ってないようだけど、あんな生き方だといつか息が詰まるもな」
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:42:43.51 ID:aywzHg3c0
支援
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:44:13.05 ID:pmEmUPfAO
あ ドクオが痛すぎて読むの断念した作品だ
133 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:45:15.93 ID:O0YNWcPZ0
.
(;゚∀゚)「……待って。作ってた事、気付いてたの?」
( ´∀`)「そりゃあね。世の中の兄貴舐めちゃいけないもな」
(;゚∀゚)「っちぃー……こりゃあ予想外だ」
( ´∀`)「もなもな。素直に生きるのが良いもな」
( ゚∀゚)「そうさせてもらうよ。……さて、そろそろ突入かな?」
( ´∀`)「えーっと……おおう。あと三分だもな」
( ゚∀゚)「よし、突入準備だね」
鉄柵に向かって、足を進める。
その右手は異音を発し―――まもなく橙色に色が変わった。
同時、その手は巨大な鉤爪を備えた異形の腕に変化。
鉄柵に辿り着くや否や、それは大きく振り抜かれた。
( ゚∀゚)「おりゃっ!!」
その腕に喰らいつかれた鉄柵は、耳障りな音を立てながら湾曲する。
鉄柵の一部はへし折れ、そこにはちょうど、人が一人通れるくらいの空間が出来上がった。
134 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:47:36.03 ID:O0YNWcPZ0
.
( ´∀`)「グレイト」
( ゚∀゚)「よーっし! 行こうか!」
発見した扉の前まで、のっしのっしと歩む。
モナーは薙刀を構え、ジョルジュは左手に装備した『尖鋭』を軽く一振り。
( ゚∀゚)「突入まであと何秒だい?」
( ´∀`)「あと十秒だもな」
( ゚∀゚)「よーっしゃ! 行くぞ!!」
( ´∀`)「もな!」
ジョルジュが走り出した。
まもなく扉に到達し、右腕を振るう。
硬い素材であるはずの扉はいとも簡単に引き裂かれ、そして蹴破られた。
扉の残骸を足蹴に、二人は基地の中へと突入していった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:47:48.11 ID:9TXk4fs5O
支援
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:48:02.31 ID:aywzHg3c0
しえん
137 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:50:46.10 ID:O0YNWcPZ0
.
ミ,,゚Д゚彡「残り時間は?」
(*゚ー゚)「あと十分」
ミ,,゚Д゚彡「妥当な時間だな。丁度一服出来る」
傍らに生える木に、寄りかかった。
そしてコートの中に手を差し込み、煙草を取り出す。
慣れた仕草で口に咥え、そして火をつけた。
(,,゚Д゚)「煙草、辞めろよ。身体に悪い」
ミ,,゚Д゚彡「うるせぇ。人の決めた生き方に口出すな」
(#゚Д゚)「……人が心配してやってるというのに」
ミ,,゚Д゚彡「無用な心配だ。大体な、煙草ってのは吸い始めたらもう遅ぇんだよ。
吸わせたくないってんなら、そうだな。
ずーっと昔にタイムスリップでもして、煙草を吸い始めようとしてる時の俺をどうにかしてこい」
(#゚Д゚)「出来るか!」
ミ,,゚Д゚彡「そりゃあな。出来たらバケモンだ」
(#゚Д゚)「こんの野郎……ッ!!」
(;゚ー゚)「こらこら、戦闘前から戦ってんじゃありません。
落ち着いて」
138 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:53:23.33 ID:O0YNWcPZ0
.
(,,゚Д゚)「……ちっ」
舌打ちして、ギコは左手に握った赤い刃『ロマネスク』を振るった。
風は鋭く切り裂かれ、ギコはその感触に満足げに頷く。
そしてもう一度振るおうとして―――
ミ,,゚Д゚彡「辞めておけ」
フサが、煙と共に言葉を吐き出した。
(,,゚Д゚)「お?」
ミ,,゚Д゚彡「無駄に体力を浪費するな。
この後、どれだけ戦うか分からないんだからな。
この十分で、出来得る限り体力を回復させておけ」
ミ,,゚Д゚彡「エンジンをかけるのは、もっと後で良い。
今はただ休んで、戦る気だけを練っていろ。
―――死にたくないなら、な」
口に咥えたままの煙草から立ち上る煙。
それをぼんやりとした眼で見詰めながら、彼は言った。
ミ,,゚Д゚彡「休憩は取れるところで取っとかないといけねぇもんだ。
十分……いや、一分程度の休憩が、後々大きく響く。
だから、休め。この後はずっと、殺し合いだ。休む事は出来なくなる」
139 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:56:32.73 ID:O0YNWcPZ0
.
それは、経験だ。
放浪していた時期、反異能者組織から逃亡していた時期に学習した、経験。
敵ばかりの世界で生き抜くために学習した、生存の為の知識。
対するギコは一瞬、きょとんとした顔で立ち竦む。
そして数秒後
(,,゚Д゚)「……あ、あぁ。分かった」
頷いて、ロマネスクを腰に下げた。
フサは「ふん」と鼻を鳴らし、煙草を大きく吸う。
しぃはそれを見て、笑った。
(*゚ー゚)「相変わらずだね、フサさんw」
ミ,,゚Д゚彡「…………………」
煙を吐きつつ、フサは顔を背ける。
その様子を見て、ギコは首を傾げた。
(,,゚Д゚)「何だ? 相変わらずって」
(*゚ー゚)「あぁ。あのね、フサさんはいつも……」
ミ,,゚Д゚彡「余計な事を言うんじゃないぞ」
(*゚ー゚)「……だってさ。ダメだって」
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/03(月) 23:56:45.83 ID:9TXk4fs5O
支援
141 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/03(月) 23:59:24.13 ID:O0YNWcPZ0
.
(,,゚Д゚)「いつも、何なんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「うるせぇ。黙って休んでろ」
(,,゚Д゚)「あーん? ……意味分からねぇな。畜生」
ミ,,゚Д゚彡「分からなくて良い。休んでろ。
―――いや」
そこで、一際大きく煙草を吸い込んだ。
そして、指先で短くなった煙草を弾き飛ばす。
ミ,,゚Д゚彡「残り三分。突入の準備をしろ」
煙を吐きつつ、言った。
ぼんやりとしていた筈のその瞳は、鋭い獣の眼へと変化していた。
(,,゚Д゚)「残り三分? ……何故分かる」
ミ,,゚Д゚彡「煙草一本、七分だ。不安なら、しぃに聞いてみろ」
(,,゚Д゚)「……どうなんだ?」
(*゚ー゚)「確かに、残り三分だよ」
ミ,,゚Д゚彡「という事だ。準備をしろ」
142 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:02:28.09 ID:syk5CFIh0
.
寄りかかっていた木から、背を離す。
そして、異音が三つ、重なった。
ギコの右腕は、龍のそれを思わす紅き異形へ。
しぃの左腕は、神々しいまでに黄金色に輝く異形へ。
そしてフサの両足は、禍々しい魔獣の両足に。
ギコは持ってきたバッグの中身を確認すると、腰に下げた『ロマネスク』を抜く。
しぃは胸に手を当てると、未来への希望を呟いて頷いた。
そしてフサは、新たな煙草を咥えて、火を付ける。
ミ,,゚Д゚彡「よし。じゃあ、しぃ」
(*゚ー゚)「おっけー」
異形の左腕を、鉄柵に向ける。
同時にその掌に光が集束し―――
(*゚ー゚)「はっ!」
そして甲高い音と共に飛び行ったのは、光線だ。
鉄柵は光線に蹂躙され、焼き切られる。
そしてまもなく、そこにはぽっかりと穴が開いた。
(*゚ー゚)「完了っ!」
ミ,,゚Д゚彡「上出来だ」
143 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:05:43.70 ID:syk5CFIh0
煙をたなびかせて、フサはその穴を通過する。
それにしぃが続き、ギコが続いた。
ミ,,゚Д゚彡「さて、しぃ。時間になったら、この扉にも穴をブチ開けてもらうわけだが……。
残りどれくらいだ?」
(*゚ー゚)「ん、もう一分ないね。……今、残り四十秒」
ミ,,゚Д゚彡「よし」
満足げに頷くと、フサは眼の前の雪色の施設を睨みつける。
そして、がちがちと歯を噛み合わせた。
僅かに赤い瞳、そして伸びた犬歯は、彼が『獣』であるという事を証明していた。
144 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:08:25.46 ID:syk5CFIh0
.
ミ,,゚Д゚彡「時間は?」
(*゚ー゚)「あと十秒」
ミ,,゚Д゚彡「準備は?」
(,,゚Д゚)「完璧だ」
ミ,,゚Д゚彡「覚悟は?」
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「「 決まってる 」」
ミ,,゚Д゚彡「よし、じゃあ―――行こうか」
高音。そして発射される光線。
扉はまるで紙のように焼き払われ、そして大穴が開けられる。
三人の戦士が、その穴に飛び込んで行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
145 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:11:21.85 ID:syk5CFIh0
.
最初に放たれた音は、風が切り裂かれる音。
それに間髪置かずに放たれる、連続した銃声。
そして、「伏せろ!!」というドクオの叫びだった。
伏せた二人の頭上、ちょうど首があった位置を『何か』が凄まじい勢いで斬り裂いて行った。
その内いくつかは壁に刺さり、火花をあげて動きを止める。
顔を上げたクーは、壁に刺さったそれを見て驚愕の呻きをあげた。
川;゚ -゚)「カード……だと!?」
('A`)「鉄のカードとか、そういったものだろ。
それより―――」
川 ゚ -゚)「あぁ、分かってる!」
声と同時、二人は弾かれたように横に転がる。
一瞬。二人が伏せていた位置が粉々に爆ぜた。
床を粉砕したのは不可視の刃。濃密な風で作られた刃だ。
二人は間を置かずに立ち上がる。
そして、クーは右腕を、ドクオは左腕を全力で振り抜いた。
響きは軽いものと、金属質の硬いもの。
クーが砕いた物は風の刃で、ドクオが弾いた物は金属のサイコロだ。
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:11:27.58 ID:rV9xw6nf0
支援
147 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:14:18.39 ID:syk5CFIh0
('A`)「……どうも。やってくれんじゃねぇか。ミンナ」
( ゚д゚ )「今回も殺すつもりでやったのだがな。
まだ、甘かったか」
('A`)「良いライン行ってたと思うぜ。
あの時の俺だったら、確実に死んでたからな」
( ゚д゚ )「なるほどな。短期間の内に、余計に厄介になったわけだ」
('A`)「そういう事だ」
クロでミンナに標準を合わせながら、ドクオは相手の人数を確認する。
相手は三人。ミンナに、流石兄弟の二人だ。
厄介な相手だ、と、内心で舌打ちをした。
148 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:16:55.91 ID:syk5CFIh0
( ´_ゝ`)「おや、『こちら側』は二人しかいないのか?」
川 ゚ -゚)「……他の四人はどこにいる」
( ´_ゝ`)「おいおい、私の質問は無視か?
まぁ、良いが」
川 ゚ -゚)「他の四人はどこだ? 答えろ!」
( ´_ゝ`)「そりゃあ、クー。決まっているだろう?」
兄者の口元が、邪悪に歪む。
( ´,_ゝ`)「お前のお仲間の相手をしているだろうさ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
149 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:19:35.85 ID:syk5CFIh0
.
突入した勢いが、停止した。
何故ならば。その理由は簡潔。
そこに敵が存在したからだ。
(;^ω^)「プギャー……!?」
( ^Д^)「……よぅ、ブーン」
廊下の真ん中に佇んで、静かに言うプギャー。
しかしブーンは、彼に尋常でない戦慄を覚えた。
ξ;゚听)ξ「……ブーン。あいつ」
(;^ω^)「分かってるお」
違う。
何かが違う。
ついこの前までのプギャーとは、何かが違う。
それは言うなれば、纏う雰囲気だろうか。
これは……以前のように、容易く圧倒出来るプギャーのものではない。
いや―――
人間が纏う雰囲気では、ない。
( ^Д^)「どうした? いつものように、突っ込んでくれば良いじゃないか」
プギャーは眼だけを笑みの形に歪ませて、両腕を広げた。
150 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:22:13.07 ID:syk5CFIh0
.
(;^ω^)「お前……何があったお?」
( ^Д^)「……へぇ、気付いたか?」
(;^ω^)「誰でも気付くお」
( ^Д^)「そうか。まぁ、良いや。
今は気にするなよ。お楽しみって奴さ」
異音が響く。
変化が起きる箇所は―――左腕のみ。
鎌へと変化した左腕を一閃して、プギャーは笑った。
( ^Д^)「まずは、これだけで相手してやるよ。
遠慮はいらねぇ。二人でかかってこい」
(;^ω^)「プギャー! お前……!」
( ^Д^)「俺に何があったか?
それは、戦って、俺を圧倒すりゃ分かる事だよ。
……否応にでも、な」
そして、プギャーが走り出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
151 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:24:11.57 ID:0k0XzRy+O
支援
152 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:25:28.37 ID:syk5CFIh0
.
( ゚∀゚)「……うん、いないね」
気合いを入れて突入したものの、しかしその通路には誰もいなかった。
モナーは胡乱気に眉根を寄せたが、しかし気は抜かないまま言う。
( ´∀`)「もしかしたら、今すぐにでもこの通路に現れるかもしれないもな。
気は抜かない方が良いもな」
( ゚∀゚)「そりゃ分かってるけどさ。……どうする?」
( ´∀`)「中央に向けて、進入するもな。
その際に敵が来たら、潰す」
( ゚∀゚)「おっけー」
全身の筋肉を撓めつつ、通路を先へと進む。
やはり敵は現れず、それどころか足音や声すら聞こえない。
( ゚∀゚)「どういう事かな?」
( ´∀`)「……不自然。いや、不可解だもな」
と、その時。
二人は同時に足を止めた。
( ゚∀゚)「……モナーさん」
( ´∀`)「うん。分かるもな」
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:26:44.38 ID:0k0XzRy+O
支援
154 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:29:06.70 ID:syk5CFIh0
.
( ゚∀゚)「ピアノの音……?」
聞こえてきたのは、軽やかなピアノの音だった。
首を傾げつつ、足を進める。
するとやがて、一つの部屋に辿り着いた。
ピアノの音は、そこからのもののようだ。
( ´∀`)「……開けるもなよ」
ジョルジュは頷きで返し、眼を細める。
そしてその眼は、ドアが開かれるのと同時に見開かれた。
眼に入るのは、様々な色だ。
多種のギターの、多種な色。
壁に立てかけられた巨大な鋏の、黒と銀。
ソファとテーブルの、橙。
そして、巨大なグランドピアノの黒と、それを弾く橙の頭髪だ。
ジョルジュ達が部屋に入っても、演奏は止まない。
その曲調はどこか物悲しいそれだ。
しばらくその演奏は続き―――そしてやがて、止んだ。
( ゚∀゚)「……おい、ハイン。どういうつもりだ?」
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:30:55.01 ID:0k0XzRy+O
支援
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:31:32.01 ID:8eYO3toEO
支援
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:33:25.24 ID:8eYO3toEO
支援
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:36:42.47 ID:rV9xw6nf0
支援
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:39:27.82 ID:0k0XzRy+O
支援
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:44:41.12 ID:8eYO3toEO
支援
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:46:20.05 ID:8eYO3toEO
支援
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:47:43.73 ID:8eYO3toEO
支援
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:49:34.84 ID:mS5YGUrFO
さる支援
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:51:30.40 ID:8eYO3toEO
支援
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:53:23.15 ID:8eYO3toEO
支援
166 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:55:49.20 ID:syk5CFIh0
从 ゚∀从「はっは。今の曲を、お前達への鎮魂歌にしてやろうかとな」
椅子から離れ、壁に立て掛けた鋏を手にする。
そしてそれを二つの歪剣に分けると、その刃をそれぞれジョルジュとモナーに向けた。
(;゚∀゚)「……やっぱり、戦り合うことになるわけだな。あんたとも」
从 ゚∀从「当り前まえだろ? ジョルジュ。
お前、何か勘違いしてんな」
嗤う。
それは楽しそうな―――しかしどこかに引っかかりのある笑みだ。
从 ゚∀从「私は“管理人”で、あんたはその敵だ。
前にあんたと色々あったっつっても、そこは変わらねぇんだよ。
今から私はあんたを殺しにかかる。あんたは私を殺しにかかる。それだけだ」
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:55:56.42 ID:0k0XzRy+O
支援
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 00:56:11.69 ID:8eYO3toEO
支援
169 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 00:59:30.38 ID:syk5CFIh0
(;゚∀゚)「くっ……」
歯を噛み締めて、ハインを睨みつけた。
ハインはそれを無視して、モナーに向かう。
从 ゚∀从「改めて―――ようこそ、“管理人”の家へ。
そして、さようならだ。あんた達は、ここで終わりだ」
( ´∀`)「終わるのはお前だもな、ハイン」
从 ゚∀从「っは。ほざいてろよ。
すぐにその目玉抉り出して、脳漿ぶちまけてやる」
そして、三人が同時に動き出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 01:02:46.71 ID:0k0XzRy+O
支援
171 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 01:03:59.62 ID:syk5CFIh0
.
ミ,,゚Д゚彡「……いないな」
突入したフサ達は、そこに敵がいない事を確認する。
(,,゚Д゚)「あぁ。どういう事だ?」
ミ,,゚Д゚彡「さぁな。ただ少なくとも、ここの近くに敵はいない。
鋭敏化したこの嗅覚が、敵の臭いを感じ取ってないからな」
(*゚ー゚)「……姉さん達のところに、敵全員が居るとかって事はないよね?
大丈夫だよね? ……私達はどうするべきなの?」
ミ,,゚Д゚彡「知らん。何にしても、足を進めるしかないんだ。
行くぞ。気は緩めるなよ」
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「「 了解 」」
慎重に、しかし迅速に足を進めた。
ややこしい造りをした“管理人”の基地を、しかし迷うことなく進んでいく。
心配からか、しぃの表情に余裕はない。
フサは何か嫌な予感を感じているのか、苦い顔だ。
ギコはといえば、戦る気に瞳を剣呑に輝かせるばかりだ。
172 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 01:05:19.07 ID:rV9xw6nf0
支援
173 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 01:07:01.13 ID:syk5CFIh0
.
そして、広めの部屋に三人が辿り着いた、その時だ。
「待ってたよ」
聞き覚えのある声が、三人の耳に届いた。
しぃとフサは緊張に身を硬め、どこからの声か特定しようと周囲を見渡す。
対してギコは一瞬、自分の耳を疑い、そして脳を疑った。
その顔から、表情が消える。
瞳の中の光は弱々しく揺らぎ、光を失くした。
全身の筋肉が弛緩し、喉からは掠れた息が漏れる。
( ゚Д゚)「今の声は……」
「やぁ、久し振り。……僕だよ、ギコ君」
果たして、部屋のあちら側に姿を現したのは―――
(´・ω・`)「ショボンだよ」
眼の前で死んだ筈の、あのショボンだった。
174 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 01:08:03.31 ID:syk5CFIh0
以上で、今回の投下を終えます。
夜遅くまで付き合ってくださったみなさま、まとめサイトさま、読者のみなさま。
ありがとうございました。
では、何か質問があれば答えさせていただきます
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 01:11:57.39 ID:rV9xw6nf0
乙
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 01:16:05.12 ID:wMAXkrx7O
文最初の点が気になる
177 :
◆tAdHw/rYVY :2008/03/04(火) 01:25:13.81 ID:syk5CFIh0
>>176 ちょっと事情がありまして……
今のVIPは長文規制がかかっておりまして、22行以上のレスが弾かれてしまいます。
これは最初の一行を詰める事で解決出来る(30行使って投下出来る)のですが、
しかしそうすると、まとめサイトさまがまとめてくださった際に、一行目がズレてしまうのです。
その理由は分かりません。
なので、文の最初に点を入れました。
すると、30行使って投下出来る上に、まとめてもらった際にもズレるのはその点だけなので、
この投下スタイルがベストなんじゃないかと、そう思いまして。
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 01:32:29.64 ID:wMAXkrx7O
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 01:33:38.16 ID:Em2iMUhOO
おつ
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 01:34:50.57 ID:w17yOAdcO
乙
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/04(火) 02:13:15.12 ID:rblo0aWAO
>>177 その点って空白→ を打つだけじゃダメなのか?
半角スペースは無理だが、全角ならいいかもな