( ^ω^)ブーンは宇宙船「SIX」の搭乗員のようです

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。

1.半クラッチの感覚掴めなくて車校\(^o^)/奴あつまれー!Part666 (690)

2コタロウ ◆Hi.KOtaRoU :2008/02/23(土) 20:45:28.34 ID:Q4a4klpz0
期待
3 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:46:34.83 ID:I2kyQ0n40
まさか本当に立つなんて……

・SFの皮を被ったカオス
・全部でパート3に分かれている
・計150レスほどだから、相当時間掛かるだろうね

4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 20:46:45.35 ID:KtJ6WPXoO
そうか創価
5 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:46:56.48 ID:I2kyQ0n40

・短編
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 20:47:32.32 ID:7EXn/qzAO
   *   *
 *   + うそです
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *
7 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:47:43.22 ID:I2kyQ0n40






( ^ω^)ブーンは宇宙船「SIX」の搭乗員のようです Part.One




8 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:48:42.19 ID:I2kyQ0n40




 
昏冥は永劫、沈黙していた。

絶対零度のその空間に、光芒が一つ駆けた。

その、暗闇の中を宇宙船は超光速のスピードで進んでいた。
人類の英知の結晶である宇宙船、「SIX」は惑星ニューソクから地球への帰還途中である。
ニューソクでの大惨事により、宇宙船の乗務員はタッタの三人になってしまった。
しかし、かの惑星の技術を輸送するには困らない人数である。




その宇宙船「SIX」の中、二人の男が言い争っていた。
一人は閉じ込められている。もう一人が閉じ込めた。
一人は鍵を弄んでいる。もう一人を閉じ込めた。
9 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:50:00.98 ID:I2kyQ0n40



「理不尽ですお!! 出してくださいお!!」


 「残念だけど無理だねえ。地球に着くまでのあと十年……ここでは一年か、まァとにかく、そこで過ごしておくれ」


「お、横暴だお……! ひどすぎるお!!!」


 「ショウガナイさ……だって混乱の種は、排除しておかないとねぇ」


10 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:51:20.42 ID:I2kyQ0n40
(;^ω^)「だから……だからって……ふざけんなお!」

ついに、青年は敬語を捨てて上官に楯突いた。
備え付けの簡易牢獄に囚われた青年、内藤は鉄格子を揺らして熱り立つも、
当の牢獄の鍵を持つ張本人、ショボン上官は何所吹く風といった表情を貫いている。



(´・ω・`)「それじゃ、そういうことで」

全く無視をしてから、ショボンはドアにゆっくりと向かっていく。
壁と同じ真っ白なドアは、ショボンの姿を探知すると自動で開き出す。
隙間がダンダンと大きくなり、やがて完全に開いた状態となる。


(#^ω^)「ふ……ふざけるなおッ!!」

「あと一年はそこで過ごしておくれ」。この言葉が急激に現実味を帯びていく。
本格的な危機を直感した内藤は。鉄格子を揺らす力を強めるだけでなく、上官に罵声を浴びせるに至ったのだが、
無情にも上官は鍵を持ったままドアから出て、通路へと足を踏み入れたのだった。

自動ドアが閉まる。


(´・ω・`)「フフ……じゃアね」

ドアが閉まりきる直前に、ショボンは不敵な笑みをブーンに贈った。
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 20:54:06.03 ID:EEoseYR5O
期待
12 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:54:35.22 ID:I2kyQ0n40
(#^ω^)「……どうしてこんな目に」

憎々しげに呟くと、先程までの状況を頭の中で今一度思い返すことにした。
ナゼ、こんな目に遭ったのか。
そもそも自分は何のために、自室を出たのかを、推敲するように確かめた。


・・ ・・・

・・・



ブーンが、超光速推進の燃料源である小型内蔵原子炉の計器チェックのついでに、
自分と同位の搭乗員の、恋仲のペニサスに会い、愛し合おうとしようと考えていたときのことである。

部屋近くの通路にて、ブーンは今現在、唯一の上司であるショボンとバッタリ鉢合わせとなったのであった。


      「マズイお……」



遭遇した瞬間、下唇を噛み締めた。
13 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:56:41.06 ID:I2kyQ0n40
その時、ブーンは直感で「危ない」と感じ取った。
何故なら、ショボンもまた、ペニサスを愛していると聞いていたからである。

ショボンはブーンに近寄ると、親しげに肩を叩いた。
ブーンが無理して笑顔を返したとき、ショボンは隠し持っていたスタンガンを、ブーンに中てつけた。

視界は瞬く間に溶暗し、崩れ落ちた。。。


目を覚ましたときには既に、プリズンルームの鉄格子の中に居た。
格子の向こうでシルバーのキーリングを弄んでいるショボンと目が合った瞬間、ブーンは全てを悟った。

「どうしてですかお!? 何故こんなことを!!」

 「困るんだよねぇ、規則には書いてないかもしれないが、過剰な淫行は秩序を妨げるのさ」

「……!」

罪状はほとんどでっち上げに近かったが、この密室世界では真実など役に立たない。
権力者が独裁を取れば、それ一色と化すのである。

「理不尽ですお! 出してくださいお!」


        残 念 だ け ど 無 理 だ ね え 。 地 球 に 着く までの あと 十   年  ……
14 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 20:58:24.46 ID:I2kyQ0n40
(#^ω^)「……くそっ!」

元々やることなど無かった。
精々、地球に帰還したときのことを考え、重力設定を上げた部屋でトレーニングをすることくらいだ。
いくら重力を作り出しても、筋肉の衰えは怠慢に進行していく。
そのため、日々の鍛錬を欠かすことは出来なかった。

特に、体感時間で僅か一年後に地球に帰還するのであれば、尚更怠けるわけにはいかない。

報告レポートも全て書き終え、暇を持て余していたブーンは、宇宙船の生活の大半を自室で過ごした。
地球を発つ際にトランクに詰め込んだ文庫本も全て読破し、携帯ゲーム、映画、ひいては生活にも飽きていた頃であったが、
それでもこの拘置は、到底納得のいくものではなかった。

備え付けトイレと、ハンモック、それにタオルケット以外何も無いこの部屋で一年過ごすなど、沙汰の限りとしか思えなかった。

気が狂う。
一年以上もここに閉じ込めれては、間違いなく気が狂う。
退屈なのもあるが、二人きりとなったショボンとペニサスについて、気になってどうしようもなくなるであろう。

ショボンがペニサスを狙っているということを知ったのは、惑星「ニューソク」に着陸する前であった。
今は亡き親友ドクオと、「ニューソク」の樹林を歩いていたときの会話で、ブーンは確信めいた気持ちになったのであった。……

・・・・・

・・・・
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 20:58:27.22 ID:xVLK59YA0
支援
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 20:58:28.54 ID:tFbgZZ6D0
期待
17訂正 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:00:05.68 ID:I2kyQ0n40
(#^ω^)「……くそっ!」

元々やることなど無かった。
精々、地球に帰還したときのことを考え、重力設定を上げた部屋でトレーニングをすることくらいだ。
いくら重力を作り出しても、筋肉の衰えは怠慢に進行していく。
そのため、日々の鍛錬を欠かすことは出来なかった。

特に、体感時間で僅か一年後に地球に帰還するのであれば、尚更怠けるわけにはいかない。

報告レポートも全て書き終え、暇を持て余していたブーンは、宇宙船の生活の大半を自室で過ごした。
地球を発つ際にトランクに詰め込んだ文庫本も全て読破し、携帯ゲーム、映画、ひいては生活にも飽きていた頃であったが、
それでもこの拘置は、到底納得のいくものではなかった。

備え付けトイレと、ハンモック、それにタオルケット以外何も無いこの部屋で一年過ごすなど、沙汰の限りとしか思えなかった。

気が狂う。
一年以上もここに閉じ込められていては、間違いなく気が狂う。
退屈なのもあるが、二人きりとなったショボンとペニサスについて、気になってどうしようもなくなるであろう。

ショボンがペニサスを狙っているかもしれないという話を聞いたのは、惑星「ニューソク」に着陸する前であった。
今は亡き親友ドクオと、「ニューソク」の樹林を歩いていたときの会話で、ブーンは確信めいた気持ちになったのであった。……

・・・・・

・・・・
18 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:01:20.56 ID:I2kyQ0n40
('A`)「っかし、ここは暑くてかなわんよなぁ〜」

歩きながら、進路を阻む蔦を払いのけ、サンサンと照りつく太陽を見上げながらドクオは呟いた。
同じく歩いているブーンは同意の頷きをし、シャツの袖を捲った。

(;^ω^)「まったく……ひどいもんだお」

地軸の傾きが地球と比べて著しいニューソクでは、季節による温度の変化が極端である。
ブーン達の居る此処、王都ホウは赤道付近であるため比較的まともな部類に入るのだが、
それでも熱帯である今は、地球の砂漠と遜色ない暑さを誇っている。

ブーン達の頭上で鳴き続ける鳥は"雷の樹"に停まると、羽繕いを始めた。
フィンチに似たその鳥は、ニューソクの熱帯にのみ生息する珍しい種で、層の薄いニューソクの空を、高度5000mまで飛ぶことが出来る。
モリのように、天上から獲物を突いて狩るというこの鳥の逸話を聞いたときには、ブーンは心底震え上がったものであった。
このフィンチ(に似た怪鳥)も、自分達を狙うのではと、ブーンは頭上に意識を集中させていたところ、ドクオが唐突に喋りだした。

('A`)「ショボンさんについて、だけどよ」

ぶっきら棒な切り出し方に、ブーンは些か戸惑ったものであったが、黙って促した。

('A`)「あー……なんだ、気をつけたほうがいいぞ、オマエ」

( ^ω^)「お?」

今度は唐突な、しかも抽象的な警告であった。
相変わらずこいつは話下手だな、とブーンはぼんやりと思った。
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:02:09.24 ID:xVLK59YA0
支援
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:02:10.04 ID:xt4TOGBeO
最初からか支援
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:02:55.74 ID:EEoseYR5O
支援
22 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:03:32.45 ID:I2kyQ0n40
('A`)「お前さ、ペニサスとその……あ〜、コイナカじゃん」

急にどぎまぎするドクオの様子が大変面白かったが、ブーンは黙って頷いた。
言わんとすることは充分理解していた。
ショボンもペニサスを愛しているという。
ブーンを妬んでいるという噂は、閉鎖空間の宇宙船では持ちきりの話であった。

( ^ω^)「そうだお」

ドクオの話は食傷気味なものであったため、ブーンは適当に返事する。
何度も、何人にも、言われたことであった。
この期に及んで本気になるつもりなどサラサラ無かった。

実際にショボンから危害らしきものを加えられたことなど、一度もない。
確かに態度は自分に対してのみ、素っ気無いような気もするが、せいぜいそれくらいである。
所詮、杞憂に過ぎなかった。

ブーンにしてみれば、ショボンのことよりも情勢不安定のニューソクの現状の方が心配であった。
現在、ニューソクは新型の兵器の出現により混乱状態に陥っていた。
そんな状況に飛来した地球人のことを迎え入れてくれたニューソク人達であったが、ヤガテは
目をギンギラにさせて、地球人など放っておくようになっていった。

('A`)「大丈夫なんか? なんか……ヤバいらしいじゃないか」

( ^ω^)「? ……何がだお? ……」

('A`)「ショボンさんだよ。最近狂気走ったとか……」

ドクオは半ば言いさすと、身体をブルリと戦かした。
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:04:57.20 ID:7ajle/GL0
このショボンは女好きなのか
支援
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:05:05.20 ID:xVLK59YA0
期待支援
25 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:05:06.43 ID:I2kyQ0n40
( ^ω^)「狂気……?」

初めて聞くことであった。
今現在、ショボンは外交に追われている身であり、ブーンはしばらくその姿を見ていなかった。
停留させた「SIX」の、ショボンの部屋に行くことなど皆無であったし、そもそも通路に足を運んですらいない。
そのためか、最近はブーンの意識から、ショボンのことは離れてしまっていた。

妙な噂を思い出させたドクオに苛立ったのは事実であったが、「狂気」という見慣れないワードに興味が差したのも事実であった。
些か、解せないところがある。ショボンは金星再テラフォーミングを初めとした、数々の業績を若き頃から立ち上げる程の才人である。

というわけで、続くドクオの話をジックリ聞いたのであったが、内容には驚かされるものが、幾つか含まれていた。
まず、ショボンの部屋の内装についてのものであった。

 ('A`)「どうも、話によれば部屋中をペニサスの写真で埋め尽くしてるとか……ダーツの的がお前の顔とか、聞くぜ」
 (;^ω^)「そんなバカな」
 ('A`)「いや、聞く限りじゃマジらしいぜ。あまりのヤバさっぷりに、目撃した奴はアウアウしたんだぜ?」
 ( ^ω^)「テラモエスwwwwwwwww」
 ('A`)「もう、ションベンちびりそうでさ」
 ( ^ω^)「前言撤回」

その他としては、ニューソクの密使に夜な夜な会っているなど、奇行についての話が主であった。
ニューソクの新型兵器に興味を示しているらしく、本来の国交に支障が出そうな程、取引にのめり込んでいるらしかった。
冗談を口にしてブーンは笑い飛ばしたのだが、心には千鈞の重みを感じていた。
ニューソクの情勢不安とまさかリンクするのではと、突拍子もないことを考えていた。


そうして、予感は的中したのであった。
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:06:46.04 ID:xVLK59YA0
支援
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:07:12.10 ID:sTcVugHQO
これ前に見たな
28 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:08:31.22 ID:I2kyQ0n40
ニューソク各地で暴動が発生し、とうとう世界大戦じみたものが勃発した。

外交どころでなくなったため、「SIX」は脇目も振らずニューソクを飛び立とうとしたのであったが、
クーデターに巻き込まれ、船員のほとんどが歿してしまった。
生き残ったのは、ブーン、ペニサス、ショボンの三人のみとなった。

ある意味ブーンにとって、最悪のパターンだといえた。

大概な損失を出しつつも、「SIX」はナントカ、宇宙空間に逃げ込むことが出来た。

その際、騒乱に乗じて、ショボンはニューソクの新型兵器、騒乱のキッカケである
「思想転移装置」をくすねたのであった。

大収穫といえる代物であった。
29 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:09:31.85 ID:I2kyQ0n40
飛び立つ際に送ったため、通信は未だ地球に行き届いていないが、
地球がこの事実を知れば、タチマチ三人を英雄と称えることは、疑いようがなかった。
だからこそ、ブーンは搭乗を続けた。

もし、たいした成果も得られずに帰還となったのならば、迷いもなくブーンは「SIX」から脱していただろう。

あれから、何十年――船内の相対感覚では何年であるが――経ったのだが、その間、
ショボンとの交流はほとんど無かった。
というのも、「SIX」は元々何十人もの搭乗員を乗せていただけあって、サイズは巨大であり、
また、船内活動もまるで違ったものだからである。

ペニサスと愛し合い、ショボンを避ける毎日を過ごしてきた。

それも、今日を持って終結となってしまったのだが。

・・・
・・

         
30 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:11:39.32 ID:I2kyQ0n40
(#^ω^)「………。 ……?」

視界がフっと暗闇に閉ざされた。消灯時間となったのだ。
窓の外は超光速移動の所為により、プリズムのような輝きを放っていた。
暗黒の中、流動的にオゾマシク光っている。
目に悪いような気がしたので、シャッターを下ろすと、ブーンはハンモックにゴロンと寝転がった。

( ^ω^)「………」

タチマチ不安に苛まされた。
この怒り、不満もヤガテは沈静化するのだろう。
だとすれば、次に訪れるものは、飽きであり、更に先には発狂が待ち構えているに違いない。

まだプリズナーとなって一日目であるが、この先娯楽が提供される見込みはまるで無いといえた。
ましてペニサスに会えることなど、万に一つもないだろう。
食事が提供されないことだって考慮に入れなくてはならない。
その気になれば、ショボンは暴君として振舞えるのだ。もはやブーンの命はショボンの掌の上で転がっている。
極端な話、可能性は低いにしろ、いきなりショットガンで弄り撃たれる可能性だってあるのだ。


( ^ω^)「…!」

部屋の外でロック解除の電子音が鳴り響いた。
真っ暗闇の中、扉が動くのが感じられた。
消灯時間のため、通路は鈍い緑色に薄く照らされているが、人物を確認するには至らない。

誰かが、この部屋に来る。 ……まさか、本当に、今からショボンが殺しにかかるのか……?
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:13:13.10 ID:xVLK59YA0
支援
32 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:13:33.90 ID:I2kyQ0n40
咄嗟に身構えたのだが、その声は想像とは裏腹に、

「……ブーン君……」

聞き覚えのある、可愛らしいか細いものであった。
ブーンは顔をパァっと輝かせた。
暗闇のため、声の主には分からないのだが、歓喜に満ちた顔をした。

( *^ω^)「ペニサス……」

声の主は最愛の人であった。
暗闇の中、シンとした空間の中、ヒタヒタ歩くか弱い足音が聞こえる。
自分に近づいてくる。感動が優しく震撼していった。
足音が、鉄格子の前にて止まった。その人が自分の目の前に居ることを、ブーンは実感した。

次第次第に、目の前の人間の造形が浮かび上がっていった。
夜目が利いてきたのだろう。僅かに漏れる緑の光が、手助けをしてくれる。

('、`*川「……大丈夫?」

( *^ω^)「大丈夫だお、元気が出たお」

鉄格子が鬱陶しかった。
今すぐペニサスと抱き合いたい。
喜びを分かち合いたかった。
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:15:58.20 ID:xVLK59YA0
これは裏切られるフラグ
34 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:16:19.80 ID:I2kyQ0n40
格子越しにでも、彼女の身体を抱え込もうとしたが、
そんなブーンの考えとは裏腹に、ペニサスは怪訝な動作を始めた。

身を屈め、鉄格子の錠部分を何やら弄くっているのだ。
カチャカチャカチャカチャと、耳障りな鉄音が部屋中に満ちた。
音は、軽い金属と金属とが擦れ合うような、気を引かせるようなものであった。
ペニサスの行動の意味がようやく理解出来た辺りで、「ガチャ」と手ごたえのある音がこだました。


開錠した音であった。

鷹揚な動作で、扉を開かせているためか、蝶番の軋みが断末魔のように聞こえる。
90°開扉しきったところで、部屋内の男女は見つめあった。

しばらく経った後に、二人は無言で抱擁し合った。
35 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:17:13.37 ID:I2kyQ0n40
委細構わずに互いの温もり、感触を味わうと、もう一度顔を見合わせた。
キスをしようと勢いづけたが、ブーンは考え改めて、色欲を自制した。

聞かねばならないことが残っている。このままの勢いでは、意識もなくセックスに着手しそうであった。

噛み締めるように、ペニサスに問いかけた。

( ^ω^)「一体、どうやったんだお……?」

('、`*川「鍵を盗んできたの」


彼女の利き手の方を見下ろすと、なるほど確かに鍵束が携えられている。

殆ど光源の無いこの部屋でも、リングの銀色の輝きは見て取れた。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:17:26.25 ID:9ZT1kXD40
2分×150=300分=5時間

覚悟はいいか?俺はできて・・・・・・ないかもしれない
37 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:19:26.81 ID:I2kyQ0n40
( ^ω^)「盗んできた……?」
('、`*川「うん、ショボンのサブルームで……」

確かに、ショボンがほぼ全ての「SIX」の管理を担っている。
だが、一体どのような手段で鍵束をくすねたのであろうか。
ペニサスにそれを尋ねたところ、ブーンにとって、ショックな答えが返ってきた。
言われてみれば、彼女の身体は全体的に汗ばんでいて、ホノカに官能めいた香りがする。
だとしても、だとしても。
ブーンは脳天に酷いダメージを食らった気分であった。
次に、深い羞恥と、侘びめいた嘆きが襲い掛かってきた。

自分のために、ペニサスはショボンに身体を捧げたのか……。
危険を冒して、辛い目に遭ってまで、尚その隙を突いてわざわざ書斎に行き、予備の鍵束を……。
ブーンはいつの間にか、涕涙していた。
一粒が、ペニサスの紅のささった頬に垂れ落ちた。
ブーンの悲しみを知ったペニサスは、ハっと身を縮こませようとしたが、ブーンは抱きしめている腕に力を込め、阻止した。

( ;ω;)「………!」

('、`*川「………」

程なくして二人は接吻を交わした。


唇を触れ合わせながら、『ショボンを殺そう』と無言のまま意見を一致させた瞬間でもあった。
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:19:32.75 ID:xVLK59YA0
覚悟はできているが愛機のPSP-1000がついてこない
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:20:09.98 ID:nsv4kGxE0
支援
40 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:20:50.53 ID:I2kyQ0n40
雪崩れるように、そのまま交合へと発展させたかったのが二人の本音であったが、
閑々しい宇宙船内で愛し合うのは、気味の悪いように思え、止すことにした。
万が一ショボンに見付かりでもすれば、ペニサスすら投獄されるであろう。

ディープキスに留めて、二人はとりあえず離れることに決めた。……

ペニサスのもたらした予備の鍵は、ブーンが隠し持つことにした。
ブーンは肌に残ったペニサスの感触を確かめながら、ハンモックに戻った。
ショボンへのアドヴァンテージは、若干ながらも取り返せた。

ブーンは一筋の光明を思い、眠りに就いた。

ペニサスと自分だけがこの宇宙船に住まえばいい。
ショボンなぞ、初めから不要な存在だったのだ。
憎き上官を殺害し、宇宙空間に遺体を放り投げてしまえば、あとはユートピアとなる。

そう考えながら。……



・・

・・ ・・・

・・・  ・・・・
41 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:22:25.85 ID:I2kyQ0n40
「SIX」内で、罪を犯す際に最も厄介な壁として立ちはだかるのは「マザー」の存在である。
マザーは、各連絡通路、部屋に設置された監視カメラの映像、部屋のその日の状態など、宇宙船内の流動的な情報を全て管理している。
地球に帰還すると、宇宙センターの者はまずマザーの解析に入る。
映像等に不備な点があれば、即座に船員に問い質す、尋問するといった具合である。
マザーの存在こそが、宇宙船内に法律を持ち込むシステムを確立しているのであった。

そして、マザーを破壊するという願望は夢想に等しい。
ロック・セキュリティーは厳重である。
例えば、マザーの鎮座するロイヤル・ルームへの扉にはフィフス・ロックが採用されている。
解錠する鍵は宇宙船内には無く、地球のセンターの者が所有している。

また、無理にピッキングをするのも難儀であった。
ロイヤル・システムは、シリンダーが回る際に鍵の電子番号を認証するのである。
もし、番号が符合していなければ、即座にシリンダーは固定され、何物も受け付けなくなる。
一日経たない限り、一切の動作を跳ね返すステートは解除されない。
そうでなくとも、ピッキングすることすら困難なのであるが。
万が一ピッキングに成功したとしても、五つのシリンダーのうちどれかは、解錠が逆であり、元々開け放しになっている。
つまり、全てのシリンダーに手を加えれば、どれかはロックされることとなり、閉ざされたままとなる。
ピッキングをし、電子番号をカモフラージュ出来たとしても、扉が開くことは、在り得ない。

ドアの耐久性も磐石之固としており、部屋を取り囲む壁も同様である。
密着されてTNTを爆発させられても、ビクともしないであろう。

当然のことながら、マザーは「SIX」の設計等、全ての情報を保有している。
他星との交流の際、悪用されないようにと、地球側は危惧していたのであった。
42 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:23:21.99 ID:I2kyQ0n40
「SIX」を完全粉砕するつもりでロイヤルルームの外壁を壊すとなると、別の問題が浮上する。

壁に内蔵されたチップが負傷すると、マザーはその瞬間に全ての動作を停止するのである。

また、ロイヤル・ルーム付近には、宇宙船のエネルギー動源となる小型内蔵原子炉が運用されている。
いくつか存在する動力源のうちの、一つの発電用のものである。
(その他は核エネルギー、燃料酸素等をそのまま用途するもの等)。

超改良型沸騰水型原子炉(NABWR)は、加速度運動をする際に重宝されている。

ニューソクから地球までの間には星間ガスの密集地が存在し、
そのまま通るのは危険であるため迂回をしなければならない。

また、この際に超光速運動は使用出来ない。(ほとんどの操作が利かないため)

そのエリアを過ぎた今は、超光速を躊躇いなく使用できた。
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:24:00.07 ID:xVLK59YA0
支援
44 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:24:14.10 ID:I2kyQ0n40
NABWRの自然の特性(固有の安全性)は保障されたものであるが、
付近で大爆発でもあった際はその限りではない。
内蔵された大量の放射性物質が、タチマチ外に放たれるであろう。

つまり、ブーンの今現在の状況では、打つ手は無いということになる。
マザーの筐体を目にすることすら不可能である。


半醒半睡の中、ブーンはボンヤリボンヤリ、そう考えてはフっと深い眠りに落下していった。……

・・

・・・

・・・・・
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:25:35.76 ID:nsv4kGxE0
支援
46 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:26:22.47 ID:I2kyQ0n40
( −ω−)「……ぉ…?」

ブーンは目覚めた。異物感を覚えたのである。
点灯時間となり、部屋イッパイに白色の光が満たされた。
目を擦りヤニを落として、ブーンは半身起こして大きく伸びをした。

この三十分後には第一食事の時間となる。
普段ならば、食堂で摂るか部屋で摂るかを選ぶのだが、投獄中はどういう手順で運ばれるのか、
ブーンは知らなかった。
最悪、食事抜きがあるかもしれないことも、前述の通り念頭に入れなければならない。

軽くストレッチしながら、ブーンは頭を回転させ続けた。

ショボンを殺害すれば、一応は平安が訪れる。
ペニサスと、いくらでも天国を作ることが出来る。
だが、地球に帰還すれば第一級の罪に問われるのは確実だ。
証拠であるマザーの破壊は、どう足掻いても無理な話である。

……ならば。

ブーンは思考に本腰を入れた。
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:26:43.09 ID:9ZT1kXD40
それと、さるや+αの時間も考えよう。
さるは文の重さ、kbにも関係するらしい(?)から、この作品には恐らく関わりそうだ。
支援という文字だけでは、さるを食い止められないかもしれない。

何が言いたかって、それでも支援しなきゃあかんね、と。
48 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:28:00.03 ID:I2kyQ0n40
このまま地球に帰還しないというのはどうだろうか。

今のところ、オート操作だが、超光速モードを解除し、
ショボンから鍵を奪えば手動等に切り替えられる。

ニューソクと地球を除いて、まともに住める星など無い。
だが、そもそも永住など必要なのだろうか。


「SIX」の搭乗員はウラシマ効果により、
地球離陸時から未だ十歳ほどしか年を取っていないが、地球の者は既に三世代は入れ替わっているはずだ。

親も、友達も既に居ないだろう。

生体技術が発達して延命させられているかもしれないが、
それでも年が離れてしまっているし、そもそも可能性は低い。
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:28:08.55 ID:xVLK59YA0
支援支援支援
50 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:29:07.83 ID:I2kyQ0n40
いっそ、宇宙船で一生を過ごしてもいいはずだ。
帰還の名誉はありがたいが、この獄中生活を何年も過ごして得るには薄過ぎる。

そもそも、地球に戻る前にショボンに殺害されることも充分ありうる。

ショボンも、マザーのことは考慮に入れているだろうが、狂気の気配が見え隠れしている今では危ういものだ。
愛する者を部下に取られ、変化の無い毎日を過ごしているのだ。

正気を喪失していたって、おかしくはない。
ブーンを投獄させたことも、地球に戻れば、事情聴取や裁判に掛けられる代物である。
正当な理由無く部下を拘束するのは、当然ながら越権行為である。

形振り構っていられないのかもしれない。
ブーンは身を震わせた。



他人の考えが見えないということは、なんと恐ろしいことだろうか。
      
51 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:30:02.08 ID:I2kyQ0n40
風呂入れ言われた……ゴメス。速攻で上がってくる
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:30:17.34 ID:9ZT1kXD40
支援
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:31:18.27 ID:xVLK59YA0
いてら
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:32:44.44 ID:7EXn/qzAO
こんなクソ小説に支援するなんてブーン系終わったな^^;
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:33:11.84 ID:ei2LhoLG0
>>47
なるほどな。
例えば俺が晩飯に寄せ鍋を食べたとする。
しかし久し振りに吉野家のコピペを見たらまた腹が減った北。

つまりはこういうことだろう。
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:35:21.83 ID:9ZT1kXD40
>>55
俺が言いたいのは、宇宙船SEXにしか見えない。
ただ、それだけだったんだよ・・・
57 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:39:37.52 ID:I2kyQ0n40
どうしようもなかったんで、朝のシャワーに全ての汚れを託すことにした

ところで、みんな、今ここでありがとうと言いたいです!

そして、もう一つ。

この作品は相当ぶっ壊れた作品だ!

だから、……覚悟してくれい

>>56
わはは
58 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:40:30.20 ID:I2kyQ0n40
狂人の存在も。
捨てる物を失った人間の存在も。

だが、それも杞憂に終わらせてやる。

ブーンは不安を吹き飛ばすように決意した。


こっちにだって、手は残されているんだ。
みすみす獲物になんか、なってやるもんか。


( ^ω^)「やられないお……」

59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:40:47.53 ID:EEoseYR5O
シエンヌ
60 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:41:59.08 ID:I2kyQ0n40
すると、コツコツと無機質に響く靴音が、通路の方から聞こえたため、ブーンはハっとしてドアを見やった。
ピタリと音が止まって暫くしてから、自動ドアがスライドしていく。

(´・ω・`)「……やぁ」

現れたのは、朝食の盆を持ったショボンであった。
銀のお盆には、デニッシュロール、トマト味の缶スープ、野菜サラダなどが並べられている。
お手拭やミルクの純白さには、不思議な違和感を覚えるほどだ。

(´・ω・`)「朝食……厳密には違うけど、持ってきてあげたよ」

( ^ω^)「……どうも」

鉄格子の、床スレスレの所には小さな切戸が取り付けられている。
そこに、ショボンは盆を押しやると、屈んでいた姿勢を元に戻して、ブーンと目を合わせた。
身長もほぼ同じの男の対峙であった。
私怨に満ちた関係であるというのに、不思議と怨恨めいた雰囲気は存在していなかった。
代わりに偽善じみた、仮面のお膳立てのような空気が満ちている。

(´・ω・`)「悪いね」

( ^ω^)「エッ。何がですかお?」

(´・ω・`)「こんなところに閉じ込めてしまって」

( ^ω^)「……ぁあ、」

心証のいい、しかし本音とそこまで離れていない言葉を、ブーンは慎重に選んでいく。
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:42:45.48 ID:xVLK59YA0
支援
62 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:43:19.31 ID:I2kyQ0n40
( ^ω^)「まぁ、一晩経っても……理不尽だと思いますお」

(´・ω・`)「だろうね……」

( ^ω^)「やっぱ、出してくれないんですかお?」

(´・ω・`)「悪いね」

これ以上は追求しないようにした。

( ^ω^)「……分かりましたお」

(´・ω・`)「すまないね、だが、これもしょうがないんだ……」

それだけ言うと、ショボンは何の惜しみも無く部屋を出た。
虚しく稼動する、コンプレッサーのような自動ドアの音が、嫌にブーンの耳にこびりついた。

ソっと盆を出っ張り机に載せると、静かに食事を進めた。……


・・ ・・・

 ・・・ ・・・・
63 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:44:25.84 ID:I2kyQ0n40
次に入浴の時間となり、手錠を掛けられてから、
ショボンの手によりシャワールームへと連れて行かれた。
さすがにシャワーの際には手錠は外されたが、
ショボンの監視の下であり、ブーンは安心することなど出来なかった。
警戒しつつ、流水やシャンプーで汚れを落としていくも、疲れだけは刻々と溜まった。

部屋に戻ると、またもショボンは何も言わずに出ていった。
ブーンはハンモックに寝転がると、隠していた鍵、束から外した格子の鍵を取り出してシゲシゲと眺めた。


これは予備の鍵だ。
今のところ、ショボンに勘付かれた様子はない。
だが、いつ気まぐれか何かで書斎の鍵束の有無の確認を取られたら、万事休すとなる。
もしそうなれば、まず狙われるのはペニサスに違いないだろう。
それに……ペニサスは今庇護の下に居らず、ショボンに強姦されても可笑しくはないのだ。


時間は無い。
チャンスを、見つけなければ。

ブーンは鍵を握り締めた。


 ・・ ・・・・
64 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:45:49.82 ID:I2kyQ0n40
だが、心情とは裏腹に、中々ブーンは行動に移さなかった。
ショボンの目を警戒するあまり、動くことが出来ないでいた。

それだけではなかった。

恐怖が、段々と薄らいできたのだ。
すると瞬く間に、退屈がブーンの身体を蝕みだした。
怠慢な感情に満たされていったのである。

変化の無い毎日を過ごしている。
変化が無いため、何がチャンスなのか何がピンチなのか、判断につきかねた。

何日も何日も消費されていく中、焦りはあるものの、
やはり警戒心が強いために脱出を実行に移すことはなかった。



(;^ω^)「………」

悶々としたジレンマに挟まれてしまった。
底知れぬショボンの存在に、ペニサスの存在……どれもが釣り合っていて、釣り合っていなかった。
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:46:25.03 ID:9ZT1kXD40
支援
66 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:47:27.35 ID:I2kyQ0n40
意識が不明瞭になる。

焦りと昂りが高まっていき、気分はドンドン削られていく。

食事も楽しみではなくなってきた。

蕾は正常に機能しているはずなのに、味が判別出来ない。

簡素な、毎回同じメニューには当初、憤りを覚えていたはずだが、今では何の感情も湧かない。

部屋に戻りたい、ブーンはそう考えて考えてばかりいた。

部屋には、全て読破したとはいえ大量の文庫本がある。それも、ほとんど一回しか読んでいない。

構成の巧い小説というのは、何回読んでも唸らされるものだ。

せめて日記だけでも欲しいと思った。

退屈で変化の無い毎日だとしても、何か物を書くということはストレス発散となる。

余りにも欲望が過ぎて、真っ白な壁が日記のページに映ってしまったこともある。……

筆記用具さえあれば物が書けるぞ! 

だが、それが見当たらない……。
67 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:48:39.33 ID:I2kyQ0n40



見当たらない。

見当たらないぞ。


  
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:49:12.33 ID:nsv4kGxE0
支援
69 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:50:20.85 ID:I2kyQ0n40
ブーンが我に返ったのは、尖った鍵の先端で自分の皮膚を傷つけようとする、まさにその瞬間であった。

リストカットと全く同じ動作で、ブーンは愕然とした。

血をインク代わりに使うつもりだったのか。


手首の青い血管の毒々しさが、不気味に映った。
あまりの気色悪さに、形振り構わず、手に持っていた鍵を壁に叩きつけた。

勢いある打撃音の後、鍵は呆気なく跳ね返されてハンモックの上で弾んだ。
鼓動はそれでも激しくなるばかりだった。
自分は確実に精神が蝕まれている。
ブーンは実感し、崩れるように床に倒れた。

早く、行動しなければ……。
でも……、でも……。

そんなことばかりが続いていた。
生きる気力さえ分からず、死の底が見えてきた頃であった。

     ・・ 
         ・・・
             ・・・・
70 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:52:30.61 ID:I2kyQ0n40
('、`*川「おはよう」

久しく姿を見ていなかったペニサスが、鉄格子の向こう側に立っていた。
声を聞いた瞬間、ブーンは興奮と驚きのあまり、ハンモックから飛び起きて向き合った。
変わらず、美貌を維持していた。
しかし、どこか、何かが違っていた。
表情であろうか、それとも雰囲気であろうか。


だが、ブーンはすぐに気にしなくなった。
目先の恋人に、全てを奪われてしまったのであった。
今まで下火であった性欲が、バックドラフトした。

( ^ω^)「ペニサス!!」

食事の盆を持っている、最愛の人間の名を叫んだ。
だが、ブーンの予想に反してペニサスの行動は至って冷静であった。
スっと腰を落とすと、ショボンと全く同じ動作で、食事を格子の先に追いやった。
目をパチクリさせているブーンを意に介すことなく立ち上がると、微笑を浮かばせる。

('、`*川「またね」

そう言って振り返ろうとするところを、ブーンは鋭く叫んで制した。
再びペニサスと目を合わせると、涌いた疑問を口にした。
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:52:58.94 ID:9ZT1kXD40
支援
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:53:03.97 ID:xVLK59YA0
支援
73 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:53:37.43 ID:I2kyQ0n40
( ^ω^)「どうして君が……」

('、`*川「ショボン司令官がね、気を利かせてくれたの」

やけに切り口上めいた口調で返すと、さらに続けて

('、`*川「食事運びは私担当になってね。そう、これからズットなの、ズットね」

( ^ω^)「ズット……」

('、`*川「そう」

( ^ω^)「・・・。」

ペニサスの微笑みは、どこから来るものなのか、非常に底知れぬ余裕を抱いていた。
ブーンはその事実をナントナク見抜いていたのだが、なにやら、計りかねてしまい、心が掻き立てられただけに過ぎなかった。
その不安感を吹き飛ばしたい一心で、ブーンは鉄格子のロックを解除し、身体を触れ合おうと、パンタロンのポケットを弄った。

だが、そんなブーンの様子をにべも無く見ていたペニサスは、さっさと身を翻して、ドアの前に立った。

('、`*川「じゃぁ、またね」

別れの言葉を言うと、そのままサッサト出て行ってしまった。
余韻も何もあったものではなかった。ブーンは眦を決してスライドするドアの稼動部を見ていた。
ようやく取り出した鍵のホルダーが、握った拳の指に引っ掛かりタランと垂れ下がった。
74 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:55:21.74 ID:I2kyQ0n40
( ^ω^)「……え……」

ブーンは鍵がズリ落ちてチャリンと軽快な音を立てたのに気付かないまま、ズット瞬かせた。
ハっと意識を取り戻して、落とした鍵を拾い上げながら、ブーンは訝しげに思った。

オカシイぞ……彼女ではないみたいだぞ……
まるで……彼女の仮面を被ったような……なんだ、あれは。
誰だ……?

疑惑がモクモク膨らんでいった。
行き場を失った性欲までもが、その駆り立てを手助けしていた。
立ち尽くすには収まらず、身体を動かしたくなった。

(;^ω^)「……」

ブーンの手が、鍵を持ったまま格子の間をすり抜けていく。
格子の錠に宛がうと、器用に鍵穴にはめ込み動かした。
『ガチャリ』と気前のいい音が鳴った。
ブーンは向こう側を渡ると、自動ドアの方へ進んだ。

センサーが感知してドアがスライドされる。

ブーンは、久方ぶりに自分の脚で通路に立った。
75 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 21:57:27.76 ID:I2kyQ0n40
左右に分かれた、緩いカーブを持つ通路を見まわした。
先は見えない。
ブーンが脱獄したことは、誰かがモニタールームにでも居ない限り、マザーしか知り得ないことだろう。

計器の配線が通路を駆け巡り、それらの幾つかはプラスティックのカヴァーに覆われている。
凹凸が盛んで陰が多数発生しているためか、本来は白であるはずの壁も何処か薄汚れている気がする。
床はオート・ウォークとして機能されるよう、黒の踏み台レーンが備え付けられている。
蛍光に照らされた通路であるが、不安感の滲む場所であった。

ブーンの心境も関係しているのだろう。
以前は、ここまで陰鬱ではなかったはずだ。

しばらく立ち尽くしていると、「何故僕はここに来たのだろう」という疑問が降ってきた。
不満を払拭させるために来たのだろうか。
はたまた、何か、自分でも知らないうちに無欠なプランでも打ち立てているのだろうか。
……馬鹿馬鹿しい。ブーンは一笑に付した。

少しばかり、センチメンタルな気分になっただけなんだろう。
変化が、何か変化が欲しかっただけだ……。ペニサスの変わり様が、ただ、トリガーとなっただけだ。

そう考えて、ブーンは部屋に戻ろうとスライドドアの方に向いた。
万が一発見でもされたら、取り返しのつかないことになる恐れがある。

( ^ω^)「……お…」

ドアの真横に、インターホンのような機械――「ルーム・スキャナー」が設置されていることに気付いた。
これは、その部屋の情報を管理する類のもので、真ん中の液晶画面から、確認が可能である。
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 21:59:19.14 ID:nsv4kGxE0
支援
77 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:00:02.24 ID:I2kyQ0n40
記載されている情報は、その日――消灯時間まで――のドアの開閉階数、室温、生体反応数などであり、
こういった情報も、例外なくマザーに送信され保存される。

目に過っただけのものであり、ブーンは気にも留めなかったのであるが、
牢獄に自ら入り、鍵を仕舞おうとした際に、愕然とした。

唐突に、頭の中の警鐘がグワン――グワン――と打ち鳴らされた。


背中にビッショリ冷や汗が垂れだして、呼吸が止まるほどショックを受けた。
その無呼吸の苦しみすら、ブーンには判然としなかった。
息を取り戻したのは、煮詰まった考えがようやく落ち着きを取り戻した頃であった。

(;゚ω゚)「っ……!」

だが、それでも動悸は激しくなるばかりであった。
ドアの方を振り向くことすら困難となってしまっていた。
身を前傾気味に縮こませながら、歩こうとしたが、足に力が入らずヘタリ込んでしまう。

 まさか……まさか・・・そんな・・・・!
 いや、落ち着け・・・そうすると、一致しない点が出てくる・・・・・・。

ブーンは目まぐるしい自らの思考に追いつこうと必死であった。
立ち上がり、ヨロケ、ハンモックに腰を下ろしてから、頭を抱え込んだ。
78 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:02:32.67 ID:I2kyQ0n40
(;^ω^)「…………」

大筋となる想像は毒々しく息づいている。

馬鹿馬鹿しいと破棄出来ない想像で、
たとえ無理に投げ捨てたとしても、万々一のフックが引っ掛かるであろう。
つまり、気付いてしまった以上、真偽の程を確信めくまで研磨しなければならない。

だが、考えをイクラ捏ね繰り回しても、必ずどこかに辻褄の合わぬ箇所が現れて来る。
「マルホランド・ドライヴ」という映画の解釈を努めていた際にも、似た感覚をおぼえたのを思い出す。

ブーンは考え抜いたが、やはり、一つの結論に辿り着かざるをえなかった。
経緯はどうであれ、時期はどうであれ、

 ・・・・・ショボンとペニサスは、入れ替わっている・・・。

あの、ニューソクを滅ぼした、例の「思想転移装置によって」・・・・・。

(;^ω^)「………!」


ブーンはそう思えてならなかったのである。
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:03:51.23 ID:EEoseYR5O
!?
80 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:04:35.55 ID:I2kyQ0n40
思想転移装置は、ヨーガの技術を主として成り立っている。

ニューソクでは、地球でいうヨーガの文化が発達しており、
脳の低酸素状態による軽度のトランスを味わうことなど、ニューソクの人間にとっては朝飯前であった。
そのため、達人の域に達した者も複数存在し、
彼らは「心身を分離させたまま何年も生きる」という業を可能にしている。

この技術を科学見地から分析し、また、メスを入れることにより、精神分離のメカニズムを見出したのであった。
加えて、雷等の強大な電気エネルギーの一閃が稀に行う人体入れ替えの謎までもを解明し、
科学ヨーガに取り入れた結果、思想転移装置の原型を創造したのであった。

「SIX」に輸送されている思想転移装置は、原型を小型サイズにさせたものであり、バージョン6と名称されている。
造形は割かし単純なもので、円筒状のコイルコンピューターと呼ばれる巨大な装置が主要となっている。
そこのアーム部分の外部スロットに接続した高圧用ヘルメットには、雷化された特殊なプラズマが放出される。
二つのヘルメットを被験者が被り、付属のストレッチャーに眠らされた状態で、プラズマを放つ……というのが基本的な手順である。
バージョン6は軽量化、また成功率のアップに成功し、実用化の目処を立てたものであるが、それこそが狂乱を招いたというのは言うまでもない。

持ち運びの際に、ショボンが心配したのは地球人にも適用できるのか、という問題であった。
ニューソク人と地球人の外見は酷似しているのだが、やはり生物学――DNA的に見れば全くの別種なのである。
だが、それもニューソクでの実験の際に、地球人でも使用可ということが証明され、杞憂に終わったのであった。
結果、記憶や人格などを脳髄に保存するという条件さえ合っていれば、どの宇宙人、生物でも可能と考えられた。
また、ニューソクではこの装置を応用し人格コピー……思想ダウンロードも可能にすることを視野に入れていた。

今現在、思想転移装置は格納庫に保存されているが、もし使用されたのであれば、場所が変わっていても不思議ではない。


(;^ω^)「どうすればいいんだお……」

苦悶気に呟いたが、答えが出るはずもなかった。……      
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:05:58.23 ID:EDxxNpIQ0
前に見たな
支援
82 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:06:43.42 ID:I2kyQ0n40
・・ ・・・

('、`*川「どうしたの?」

(;^ω^)「え、いや……何んでも無いお」

食事運びのときの、細々した会話にもメッキリ、力が入らなくなっていた。
当然である。
相手はかの暴君のショボンなのかもしれないのだから。

イツモ通りの作業を終えると、ペニサスはやはり、サッサト部屋を出てしまう。
ショボンの動作とほぼ同じであった。
また、シャワールームに連れて行かれる際の、ショボンの無表情には、
ブーンは閉口してしまうほどであった。
抜け殻のような彼の表情には、やはり、ペニサスの絶望が現れている気がしてならなかったのだ。

だが、やはり、人格転移したという証拠にはならなかった。
この、妄想の端くれに過ぎないような想像には、一つの大きな壁が立ちはだかっている。
すなわち、入れ替わった理由である。

何の利があって、転移が行われたのか。
ブーンは分からなかった。
疑惑は深まっていくばかりだが、根元がシッカリしておらず、
どうにも不安定なものであった。


ブーンが理由の推測に行き当たったのは、その次の日であった。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:06:43.71 ID:xVLK59YA0
支援
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:07:20.06 ID:9ZT1kXD40
支援
85 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:09:23.06 ID:I2kyQ0n40
('、`*川「それじゃ……マタね」

ホホホ、と蟲惑的な微笑、その吐息をブーンにマザマザ見せ付けてから、
イツモのようにペニサスは部屋を飛び出した。
ブーンの方は、後姿の目で追いつつ、自らの心臓の音のヤカマシサに驚いていた。

ドクン――ドクン――胸部のポンプが、身体全体を震わしていた。

(;^ω^)「………」

先刻のこと、ブーンはペニサスにこう尋ねた。
「君と二人ッキリでどこかへ行きたい」と。
この言葉は、ペニサスにとっては聞き飽きたものであろう。
何年も前から囁き続けたフレーズである。

だが、予想とは裏腹に、ペニサスの反応は異様であった。
ピクリと驚いたように硬直し、そうして、見る見る内に笑みを浮かべだしたのである。
さながら、「してやったり」といった風情であり、瞳の奥には確固たる悦びが見えていた。

目撃したブーンは、一瞬にして背筋を凍らされた。
普段のペニサスとは全く違う反応、動作にはショックを隠しきれなかった。
幸い、あちらの方はそんなブーンの様子には気付かなかったようであったが。
ランランと踊るようなペニサスの趣は、おぞましい悪魔以外の何者にも見えなかった。

彼女……はきっと、性的な悦びにも溢れているのだろうか。
ブーンはフトそう考えたが、吐き気を催しそうになった。
86 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:12:15.24 ID:I2kyQ0n40
ブーンは思索に耽った末、悪寒の走るような考えに到達した。
「ショボン司令官は、ペニサスではなく自分を愛していた」という、男色めいた、今では考えられないような代物であった。


 Offering Au Neant――そう名付けられた不気味な「薔薇」……
 その光る薔薇めいた、ドス黒いカオスティックな感情が押し寄せて来る。

(;^ω^)「………」

ホモの策略……言葉にしてみれば滑稽であり、非現実じみたものであったが、
緊迫したこの異常空間の中では、衆道など邪悪以外の何者でもなかった。

だが、そう考えると全ては合点がいく……或いは、こじつけることが可能なのである。
発端が誤解であったのだ。
もしくは、ショボン自らが触れ回ったのかもしれない。
虚構の恋物語を、「ショボン司令官がペニサスを想うあまりブーンを憎んでいる」という認識を。

真っ当に聞いた、ドクオの話を思い出す。
今になって考えてみれば、親友の話だからと、無意識のうちに重視してしまったのかもしれない。
しかし、あれは所詮"又聞き"である上に、元々の発信源が錯乱していたのである。
信憑性は薄いといわざるをえない。(
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:13:43.37 ID:xVLK59YA0
ホモの策略て…地味に怖いな
88 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:15:03.43 ID:I2kyQ0n40
そうして、ブーンの緊張を高めることに成功した後には、次のプランに移る。

すなわち、幽閉させることにより、潜在化された怒りや性欲といった激情を突出させるのである。
閉じ込めている間に、ある意味で"恋敵"のペニサスと成り代わり、
怒りの対象者から、愛情の対象者へとチェンジを果たすと、
頃合を見計らって"ショボンの身体"を殺害しこの
「SIX」で永劫仲良く、幸せに暮らす……。

空中楼閣のような話かもしれない。
だが、ショボンがそう計画を立てたと考えれば、
色々と不明瞭であった箇所々々を説明付けられるのである。

唐突なペニサスの変化や、ショボンの不気味さなどをである。
だとすれば、どうしてペニサスは思想転移装置の対象になることを甘んじて受け入れたのだろうか。

やはり、脅されたのかもしれない。
"今のショボン"に秘められた物言えぬ感情を読み取れば、
ナンラカによって喉元に刃を突きつけられたかもしれぬと考えられた。

                    
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:17:16.08 ID:9ZT1kXD40
支援
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:18:31.24 ID:GzKuWPgb0
支援
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:18:49.58 ID:xVLK59YA0
支援
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:19:10.56 ID:qmwXamuP0
http://venus.bbspink.com/test/read.cgi/hneta/1200057345/

このスレに
「ずれまくったAAとアンカーミスしまくりのはずかしいキモ山が発狂するスレはココでつかww」
ってカキコするとおっさんが発狂してワロスwww
オマエらでも100%釣れるぞww
93 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:19:27.86 ID:I2kyQ0n40
(;^ω^)「………!」

恐ろしい。同時に、怒りが込み上げて来る話だった。

一歩間違えていれば、まず策に翻弄されてマンマと引っ掛かっていただろう。

中身の摩り替わった恋人を、何も考えずに愛でる未来が、落とし穴のように待ち構えていた……。

だが、気付いた以上、そうなるべくもない。
暗視スコープを手に入れたも同然だ。
やられはしない。

ブーンは腹に決めると、腰を上げて格子を押し開いた。
キィと音を立てて難なく開いた隙間をすり抜けて、同時に自動ドアを進み、廊下に立つ。

躊躇は無かった。

慣れたわけではないが、「策に気付いた」という高揚感が、ブーンを行動させたのである。
94 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:21:22.68 ID:I2kyQ0n40
機械的な廊下を進む途中、目に「ルーム・スキャナー」がよぎる。
思想転移を行ったのでは、という仮説を立てた際の立脚となったキッカケである。
「ルーム・スキャナー」には数字化された情報が並んでいるが、問題は「ドアの開閉数」であった。

幽閉されて初日目のことである。
消灯時間が訪れてから、まずペニサスが尋ね、それからしばらくしてショボンが食事を運んできた。
つまり、ショボンが部屋に入る前には、既にスキャナーには「開閉数 1」と表示されていたはずである。



それを、あの男が見過ごすだろうか。



全てはこの疑問から始まったのである。


はじめは、幽閉されたその日から思想転移が行われたのではと訝しがったが、
辻褄の合わぬ点が出てくるので取りやめた。

  
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:22:33.19 ID:xVLK59YA0
正当オチかひぐらしオチか
96コタロウ ◆Hi.KOtaRoU :2008/02/23(土) 22:22:48.00 ID:Q4a4klpz0
保守
97 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:23:17.28 ID:I2kyQ0n40
だが、そんな思考のイザコザなど、今のブーンとってはどうでもいいものでしかなかった。

僕は今、逃亡しているのだ!

ブーンは浮き足立って仕様が無かった。
何をすべきか、未だ肝心の計画を練ってはいなかった。
そうなると、今までタイミングに固執していた自分が馬鹿に思えて笑えてきたのだった。

だが、やるべきことは必ず遂行するつもりであった。


ブーンの行き先は決まっていた。
まずは、欲を満たさねばならないと踏んだのである。
視界に食料庫のドアが入った。
ドアをあけると、勢いよく飛び込んで中を見回した。

床と同化された椅子や丸卓が中央に置かれている。
プラスティックで出来ており、赤くペイントされた椅子は、今でも近未来を思わせた。
だが、いきなり座るつもりはなかった。
戸棚の方に足を運び中を覗くと、食料や酒を、特に好物を漁った。
途中ウイスキーのラベルを目にし、嫌な気分に陥るものの、お目当てのモノを発見する。
98 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:24:42.23 ID:I2kyQ0n40
まずは食前酒を頂こうと考えた。
ブーンにとってのアペリティフは、やはりカクテルである。
それも、飛び切りにドライのマティーニに限る。
いざ作ろうと思ったのだが、生憎カクテル・ワゴンはここには置かれていない。
冷やすことすら億劫である。即興なものを作るしかなかった。
カクテル・グラスにベルモットを注ぎ込むと、一気にそれを飲み干す。
久しぶりのアルコールに、クラクラするような感覚に襲われたが、瞬く間に高揚感が漲ってきた。
いよいよ本腰のドライ・マティーニである。
内側がベルモットに濡れたカクテル・グラスにジンをステアする。
レモンも欲しくなった。しかし、今はしょうがなかった。
ドライ・マティーニが完成されると、ベルモットとは違い、丹念に味わう。
辛口が、涙を誘うほどに美味かった。
三口で飲み干すと、長い溜息をつく。
久しぶりに生力というものを取り戻せたような気がした。

グラスを流しに押し込んだあと、次に取り掛かったのは好みの軽食である。
エスカルゴの缶詰をシゲシゲと見つめる。
どうやら殻は既に取り除かれている、身だけしか入っていない。
少々残念がりながらも、缶を開いて漬けられたエスカルゴの集団と浸された汁とを空気に晒す。
オーヴンは無いかなと目をアチコチに配らせていくうちに、缶詰の表記を読み取った。
曰く、既に味付けが施されているとのことであった。
言われてみれば、缶詰を開けてからは、バターやパセリ、ブラックペッパーの匂いが立ち込めていたものだ。
フライパンで軽く炙り、エスカルゴに熱を持たせてから皿に移して口にする。
密閉されていたためか味付けは強かったが、エスカルゴ独特の旨みは健在であった。
保管されていた6つの缶を全て平らげてしまったせいで、満腹となった。
食後酒ということで、ブランデーでも頂こうかと考えたとき、ブーンは己をストップさせた。

何のために、ここに来たのだ。酒食のためではないぞ。そう自分にそう言い聞かせた。
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:25:50.23 ID:xVLK59YA0
狂気の匂いがしてまいりました支援
100 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:26:18.46 ID:I2kyQ0n40
欲望をそこそこ満たした辺りで、当面について考えなくてはならなくなった。
こうも食料を漁ったのだから、おそらく脱走したことは早かれ遅かれ気付かれるに決まっている。
もう、後には引けないのだ。
再認識した瞬間、ブルリと身の毛がよだつ感覚に襲われた。
自分が早々に決断を下してしまっていたという現実が末恐ろしかったのだ。


だが、こうなった以上、やるしかなかった。
つまり、ペニサスを元に戻してショボンを沈めるということである。

(;^ω^)「………」

出来るのか、自分に。
突拍子もない出で立ちのようなものなのだ。
まず、思想転移装置に二人を掛けて、元に戻さねばならない。
かなりの煩務な上、恐ろしい危険が付き纏うだろう。

エスカルゴの後片付けを進めながら、それでも迷っていた。
自分で立てた計画のくせして、自分が不案内なのである。当然かもしれなかった。
手に汗が滲んだ。拭っても拭っても次々に湿っていくので、もう放っておくことにした。

食料庫を出る。やはり人影は居らず、ホっとしてから歩みを始めた。
どこへ向かうか。
決めあぐねていたのであるが、右折した先に思想転移装置があることを思い出して、進路を決定させた。
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:27:35.80 ID:9ZT1kXD40
最近、食べ物という言葉を見るとカニバリズムを連想してしまう俺支援
102 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:28:27.28 ID:I2kyQ0n40
森閑とした船内を歩くことは、精神に負担を掛けた。
自らの足音が、コツコツという残響が、酷くウルサク思えるのである。
いつ何時襲撃を受けるのかも分からないのだ。
突如発砲されることだって、充分常識の内なのだ。
彼らは今どこで何をしているのだろう。どうしているのだろう。
と、ブーンは歩きながら考えた。
しかし、気を紛らわすためだったのに、効果はまるで無かった。

やがてそのうち、格納庫が見えてきた。
鍵が必要なのであるが、キーリングは予備を常備しているため問題はない。
横に取り付けた巨大なハッチのようなドアが開くのを眺めている間、スキャナーの存在をふっと思い出した。
部屋を行き来するたびに、カウントが増えていくのだ。

取り返しのつかないどころか、泥沼に突入しているのでは、と考えてしまう。
ええいと振り切っても、残滓がこびりついて不快になる。……


(;^ω^)「!!!」

格納庫に入った瞬間、驚愕してしまった。
無い。

思想転移装置が、やはり、移動させられていた……!

                       
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:30:01.36 ID:xVLK59YA0
支援
104 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:30:25.72 ID:I2kyQ0n40
(;^ω^)「やっぱり……」

あの二人は転移させられたのか。
これはもう、疑いようのないことだろう。
だとすれば、思想転移装置はどこに運ばれたのか。
推理しなければならないのだが、生憎、材料が揃っていなかった。

部屋をグルリと見渡したのだが、転移装置が消えた以外に変化は無いようだった。
木箱に入れたままの物資も数が減った様子はない。
ここに据え置かれたのは、基本的に船員達の、ニューソクでの日用品といったものばかりのため、重要度は高くなかった。
事実、ブーンがここを訪れたのは、ニューソクに着陸した際の一回のみである。
そのため、勝手はあまり把握していなかった。
だが、これからの事態に備えるためにも、武器らしきものは必要かもしれない。
ここでなるべく、火力の補充をしておきたいところだ。

とは考えたものの、それは難しい相談であった。
銃弾などの、本格的な武器は全て武器庫に保管されている。
せいぜい、アーミーナイフが関の山といったところであろう。

( ^ω^)「お……」

脇に横たわっている、黒い旅行ケースのようなものを発見した。
長方形で、横が長くないそれは、具に観察してみると、アーチェリーのケースだということが判明した。
ああ、とブーンは思い出した。
ニューソクは緑に満ちているため、フィールドアーチェリーが出来るのでは、と搭乗員の一人が持ち運んできたものであった。
結局は使用されることもなく、辺鄙なこの場所に安置されたままであったのだ。
ブーン自身、齧った程度ではあるが心得はあるため、武器として扱えるのではと考えた。
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:33:58.80 ID:mzqhQcuw0
支援
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:36:44.74 ID:2ZiDgVN3O
失せろ!さるめ!
107作者:2008/02/23(土) 22:37:14.91 ID:2ZiDgVN3O
あ、さるっちゃいました
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:38:00.41 ID:mzqhQcuw0
支援
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:38:22.47 ID:EEoseYR5O
支援
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:39:39.14 ID:GzKuWPgb0
作者たん 乙です。
続きお願いします。
111 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:40:27.42 ID:I2kyQ0n40
リカーヴボウとは、アーチェリーの弓の中でも特にメジャーな弓である。
その中でも、ブーンは所持していたのはテイクダウンとよばれるものである。
これは簡単に言えば、弓の胴体が幾つかの部品に分けることが出来るタイプのものである。
持ち手であるハンドル、弦を張るしなる部分であるリムなどに大別出来る。
そこに、タイミングを安定させるクリッカーなどを取り付けて、精密度を上昇させていくのである。
タブとは、指にはめる道具で、矢を引き絞る際に弦の硬さに指が傷つかないよう保護をするものである。

これらの道具を揃え、ブーンは往路を再び歩いていた。

ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――……計器の音が、緊張感を保たたせる。


ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――

ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――

ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――

ピッ――ピッ――ピッ――ピッ―ォン……ピッ――

ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――ピッ――ォォォオ――オ――ン


( ^ω^)「ッ……!」

今、計器音に紛れて、ドアの開く、唸るような音が聞こえた。
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:41:53.86 ID:bqB1ULP60
あー、これ読んだことあるな。
中断してた奴のつづき?
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:42:02.83 ID:9ZT1kXD40
sienn
114 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:42:41.71 ID:I2kyQ0n40
確かに、そうだ。間違いない。
たった今、ドアが開いた。

(;^ω^)「……」

来る……ダレダ……ダレガ、やってくる……?
ブーンは弓を手にした腕を上げ、クリッカー越しの弦の感触を確かめた。
足は止めたままであり、相手の出方を窺っている。
相手は知っているのだろうか。僕が脱走したことに。

ふとブーンは、もしペニサスが……つまり、ショボンの造形をした者と対峙したらどうしようと考えた。
矢のつがえを止め、共闘しようと持ちかけるべきか。
そうなると、ショボンを殺す確率はグンと上がるだろう。
だが、ペニサスは何もされていないのかもしれない。
人格転移を受けたということは、他にも色々な処置を施された余地も残るはずだ。

そのまま味方となるのだろうか。
いや、考えている暇などない。
"相手"の跫然が刻々とこちらへ向かってくるのだから。

目の前の、カーヴにより視界の遮られた箇所に視線を凝らす。
未だ気配は感じないが、何れその部分を通過することは間違いないのだ。
115 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:45:04.47 ID:I2kyQ0n40
にじり寄る緊張感を背に感じていた。
対象のスピードは遅いが、遭遇することは疑いようもない事実だ。
肩の筋肉が強張っているのを感じ取った。
ストリングを引き損ねそうになるが、ゆっくり、ユックリと精神統一を心がける。
弦を引いては戻し、引いては戻しを繰り返しながら懇望した。

どうか、ペニサスではありませんように……。
ショボンの思想が乗り移っているとはいえ、あの身体を傷つけることなど、出来るものか。

どうか、ショボンではありませんように……。
ペニサスを脅かして、あまつさえ危険に晒させるなど出来るものか。

なんと愚かな望みだと自嘲する。
戦いの嚆矢は、既に目前に迫っているというのに。

いや、戦いと呼ぶのは差し出がましい。
ただ、血と死が流れ飛ぶか、もしくは見当違いに終わるかのいずれかなのだから。


カーヴは通路全てに掛かっているため、少し進行するだけで死角はあっという間に後退する。
よって、ジリジリと後退を続けていけば、いくらかは回避出来る。
けれども、イツマデモそうしているわけにはいかない。
116 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:47:39.34 ID:I2kyQ0n40
だが、ブーンの予想に反して、地面を叩く足音は、
もう一度のドアの開閉音の発生以後ヒッソリ止んでしまい、

……辺りはそれ以降、ピッ――ピッ――という単音に尽きてしまった。
足音の奏で主は、どうやら何処かの部屋に入ったようであった。

ブーンは急いで前進すると、辺りをキョロキョロ見回して、どの部屋に入ったのか検討の付けようとした。
だが、ホテルのように等間隔にドアーの並ぶこの通路では、一見、何処が問題の部屋なのか判別出来ない。

そこでブーンは、ルームスキャナーの「開閉数表示」で調べようと考えた。
忍び足ながらも、一つずつしらみ潰しに追っていくと、基本は0なのに、とある部屋だけ2と表示されていることを発見した。

……この部屋だ、ブーンは汗で濡れた額を拭うと、正面立って、大きく深呼吸した。

……本当に、この部屋に入る意味などあるのだろうか。
ブーンは自問自答する。
このまま素通りすれば、わざわざ飛んで火にいる夏の虫、という状況にはなるまい。
だが、もう遅かれ早かれ自分の脱走は気付かれる、それはもはや決定されたことだ。

それに……こちらには武器がある。
相手は多くて二人なのだ。
まさか、勝ち目が全く無いというわけではあるまい。
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:48:19.68 ID:nsv4kGxE0
しえん
118 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:49:59.72 ID:I2kyQ0n40
そうとも、寧ろ、今の状況は立場の大逆転を行える絶好の機会でもあるのだ。
それに、武装(アーチェリーとはいえ)しながら通路を歩き、監視カメラに映ったことは、
先程の謎の高揚感で忘れていたことだが、取り返しの利かないことなのだ。

ブーンは苦虫を噛み潰したような顔になる。

もう、どうにでもなれ、だ。

不当拘束されたことに対しての過剰防衛……緊急避難とすれば、多少は情状酌量もされるだろう。

あちらが僕を攻撃することは確定しているに等しいのだ……ならば、先手必勝といくべきではないだろうか。


ブーンは結論を出すとドアーの前で「開け」と念じた。
「SIX」に組み込まれた自動ドアーのほとんどは、念じることによって開閉する。

念じることによる、運動前野の活動の微弱なゆらぎをセンサーがキャッチするというのが基本原理である。
指紋、耳紋といったものと同等の、脳波紋を感知するため、登録されていない人間がいくら念じても、扉は反応しない。

          
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:50:50.61 ID:bqB1ULP60
しえん
120 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:52:17.37 ID:I2kyQ0n40
ブーンはその部屋のプレートに目を通した。
「第二非常用小型宇宙船格納庫」……その名の通り、「SIX」に何かあった際の緊急用帰還船であるが、今まで使用されたことはなかった。
ふいにブーンは、ショボンが逃亡するのではと疑った。
だが、「SIX」が超光速移動モードを続けているため、外界とは遮断されている。
緊急帰還船を動かすには、超光速モードを解除しなくてはならない。

なら大丈夫だろうと気を取り戻して、ブーンも扉に念じた。
扉が周囲の壁に取り込まれていくようにして、部屋との繋がりが広がっていき、その間を通った。

弓を左手に持ち、弦と矢を摘んだタブを左手にしながら。

だが、真っ先に飛び込んできた視界に恟然としてしまった。

超光速モードが、解除されているのだ。
部屋は巨な四方で、扉のある部分を除いた「コ」の形に、窓ガラスが嵌め殺しになっている。
超光速モードに設定している場合、窓の外の景色は淀んだミルクのように不明瞭なものになる。
だが、今現在の景色は暗黒をバックに、万天の星空が煌めいていた。
モードが解除されて、等速直線運動に切り替わっているのだ。

そんな馬鹿な、そんな馬鹿な……。

運動モードを切り替えるには、大凡一日は掛かる。
まして、扱いの難な超光速モードでは尚更である。
ブーンの脱走する以前から切り替わっていたことは明白であった。
121 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:54:22.86 ID:I2kyQ0n40
光速モードでない限り、地球に辿り着くには膨大な年月が必要になる。
つまり、切り替えを行った人物には地球に着かせる意図がない。
切り替えを行えるとしたら、ショボンしかいないだろう。
自分とこの果てしない暗黒の中で浮き続けるつもりなのか……ブーンは思わず立ち尽くした。

だが、それ以外に目を引く物が安置されていた。
思想転移装置である。
広大な部屋の中、小型宇宙船とは離れてぽつねんとしていた。
使用されたかどうか、その形跡はブーンの目では判然しなかったが、
この場所に安置されたことがやはり気掛かりとなる。



そうして、付近に立ち尽くしてブーンの方を驚愕の目で見る男女も、気になる存在であった。

紛れもない、疑惑のショボンとペニサスの二人である。

まるで密会の現場に立ち会ったかのような気がしたブーンは、どこか誇らしげな感覚をおぼえると

ガチガチと震える歯を食い縛り、カーボンの矢を取り出すと、

つがい、キリキリとストリングを引いたのであった。。。。


                         
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:56:08.79 ID:EEoseYR5O
支援
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 22:57:41.68 ID:rM9KNeaR0
しえ
124 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 22:58:37.63 ID:I2kyQ0n40
真っ白の床、壁、ドアに囲まれている。
唯一の闇は窓越しから覗ける黒天鵞絨のみであった。

明確な白と黒に分かれた巨大なこの空間には、緊急帰還船、思想転移装置といった機械のほかに

ブーン、ショボン、ペニサスが三者三様見つめ合っていた。

ブーンは唯一敵意を剥き出しにし、他者に矢を向けていた。
残りの二人はタダ呆然としながら、まるで第三者かのように、事の成り行きを見守っているようであった。


ブーンはブーンで、現状の把握に思考を重ねていた。
何故、この二人が転移装置のある部屋に居るのだろう、
何故、この二人はまるで同じ表情をしているのだろう。と。

特に気掛かりなのは、ペニサスの"入った"と思われるショボンの表情であった。
驚いているのだが、まるで「驚きを作っている」ようにブーンには取れてしまうのだ。
どこか機械的な喜怒哀楽の一つを見せられて、

そう……まるで、自分自身を知らないような。。。

ブーンがその考えに行き当たったとき、ふとある情報を思い出した。

それは、ショボンが別に、マインドコントロールに通じているという記憶であった。
125 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:00:55.13 ID:I2kyQ0n40
そうだ……! あれだ……間違いない。

思い出した、まだ、ショボンは思想転移とは他の方法を持っていたはずだ。
装置ではない、手法だ。
いわゆるマインドコントロールと呼ばれる術だ。
あれをペニサスに使い、自分の駒として扱ってきたのではないのだろうか。
……間違いない。
あの、シャワールームに連れて行く際のあの陰鬱な顔は、それの作用によるものだったのか。

(#^ω^)「ッ……!」

ブーンは自分なりの結論を出した。
すると突然、今まで感じたこともない激怒の発作に襲われた。
身勝手な男への憤り、最愛の人への虚しさを一挙に受け止めていた。

怒りを露にしながら、ブーンはストリングスを引く腕……肩に、更なる力を込めた。
リムの曲がりが顕著になり、この状態ですら放せば殺傷能力は保っているはずである。

だが、このまま誰かをムヤミヤタラに傷つけてはいけない。
ストリングスへの力を込めながら、必死に自制を心がけた。

このままショボンの人格を殺したところで、愛するペニサスはどうなる。
己の身体を持たせてやらねばならないではないか。
そうだ。俺はもう一度、この二人を思想転移させてやらねばならない。
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:02:09.78 ID:kODBNbqG0
支援
127 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:03:34.64 ID:I2kyQ0n40
だが、実際に二人を並べ比べてみると、本当に人格転移したのだろうかという懸念が残った。
二人に弁解を求めるべきだろうか。
いや、今の反応からいって、仮に行ったとしても素人の自分に見分けがつくとは思えない。

……しかし、どっちがどっちか、分からないのであれば、
いよいよこの場は堂々巡りに陥ってしまうぞ……。

最善の手を早速、見失ってしまった。
今からどの行動を取ればよいのだろうか。
喉を鳴らしながら、考えあぐねた。

(;^ω^)「……とりあえず二人とも、手を上げるんだおッ!」

鋭く叫ぶと、二人は軽く頷いてから、言う通りに動いた。
とりあえず自分が現状で最も力を持っていることを確認する。
だが、それだけでは何もならない。
膠着状態をどう乗り切ればいいのか、そこが焦点だった。

ふいに、じっくり眺めていると、まるで自分がカップルを襲撃した強盗犯のように錯覚させられる。
事実、傍目から見ればそうとられるに違いないだろう。

鼻を鳴らして笑う。

そして同時に、自分の最も大切なことは何か、ぼやけてしまったような気がした。

ショボンを殺害することか、ペニサスと末長く暮らすのか、自分の自由を永遠のものにするものなのか。
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:04:00.27 ID:EEoseYR5O
破局に向かっている気がする……
支援
129 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:05:20.98 ID:I2kyQ0n40
ふと思い立つ。
この二人、本当にカップルなのではないだろうか、と。

馬鹿々々しい……そんなこと、あるわけないではないか。

だが、真偽の判定など僕には出来ないのだ。
まさか、僕を閉じ込めたのは、僕が憎かったからでも、占領したかったからでもない、
邪魔だったからではないだろうか。

僕を錯覚させているうちに、この二人は睦みあっていたのではないだろうか。


(;^ω^)「………」

ここに来て、そんな発想をするとは思わなかった。
しかし、充分有り得ることであった。


この二人が、僕の知らぬところで不倫していたかもしれないという……。


     
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:05:21.20 ID:bqB1ULP60
wktk
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:06:54.73 ID:TIfA5/sc0
これは怖いな
132 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:07:51.59 ID:I2kyQ0n40
いよいよ混乱してしまった。
現状打破を求めたブーンですら、迷宮に彷徨いこんでしまったのであった。

落ち着け。ブーンは自分に言い聞かせた。
自分を見失うな、何がどうであれ、今大切なのは、二人が思想転移されているかどうかだ。

見た限りでは、何度も思うが、まるで分からない。

(;^ω^)「……お前らに聞くお。"お前らは誰だお"?」

人間の中身を聞いた。
それで解決が務まるとは思えない、半ば儀式めいたものと自覚していた。

何拍かの沈黙の後に、二人は異口同音に返答した。



      (´・ω・`)「「私はペニサスよ」」('、`*川


  
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:08:51.16 ID:bqB1ULP60
うへへ
こういうの大好き
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:10:00.22 ID:TC+lKrRPO
wktkがとまらねえ
135 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:10:19.79 ID:I2kyQ0n40
(;^ω^)「なッ……」

ありえない。
聞いた一瞬、ブーンは甚く動揺したのだが、
すぐに「どちらかが」嘘をついているだけだ、と思い直す。
二人の顔色を見たのだが、やはり、判断のつけようがなかった。
……と思いきや、二人の表情は嫌な笑いを貼り付け、そうしてまた元に戻った。

……今のは何だったのであろうか?
どちらもペニサスと宣言するのはどういう意図があるのだろう。
ペニサス自身は問題ないとしても、ショボンはどういうつもりで嘘をついたのか。

ふと、女口調で喋っているショボンに気持ち悪さ、吐き気を覚えた。
そうして、すぐさま恐怖がやって来る。
勿論、生きるための手段に違いない……そう決め込んでも、
「ショボンは狂人に成り果てて、自分がペニサスだと本気で信じ込んでいる」
「ショボンは女になりたがっていた」
等々の囃し立てるような狂人伝が、溢れんばかりに生まれるのであった。

(;^ω^)「……どっちかが嘘をついてるんだお……」

当然のことを口にして、気を紛らわそうとした。
だが、無駄なことだった。

二人はブーンが思想転移装置の使用を考慮に入れていることを、充分理解した上で発言したようであった。

(´・ω・`)「「………」」('、`*川
136 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:12:34.56 ID:I2kyQ0n40
質問を、変えることにしてみた。
上手く行けば、この視点変更は有益となるかもしれなかった。

語気を強めて、感情任せに、

(;^ω^)「さっき……僕より前に入った奴がいるお。それはどっちだお?」

するとその言下に、ショボンの姿をする者が挙手し、ブーンと目を合わせてきた。

('、`*川「わたしよ」

声帯もイントネーションもまさしく女性のものであるが、中身がショボンである可能性は残されている。
ブルリと身体が自然に戦いた。
異常状態では、どんなコメディーもホラーショーと化すに違いない。

ブーンは両者の足元を見た。
二人ともクレプトシューズと呼ばれる、重力設定の補助機能を兼務している靴を履いている。
これは、重力設定での、電磁力による補いの他に、
身体への負担を減らすようドレンクロムという物質を体内へ送り込んでいる。
ドレンクロムを放出する際には、貴金属に囲まれたチューブを均等に振動させ、かつ化学反応を起こす必要がある。
そのため、「SIX」の床にはベロセットという特殊送電線を敷いている。

振動を効率よく行うために、クレプトシューズの底は良導体でなくてはならず、
足音は、ハイヒールよりも硬質な金属音となっている。
137 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:13:51.88 ID:I2kyQ0n40
男性と女性では、筋肉・脂肪の比率が違うために、チューブの体積が異なっている。
結果、両パターンの歩行による硬音には違いがみられる。
だが、その違いというのは日常生活を送っていれば、何ら気付くほどのものではない。

事実、ブーンは未だ確信が持てなかった。
通路で聞いたあの跫然が男性のものか、女性のものか……。
今しがたこの情報を思い出したばかりで、靴音についてはあやふやなままだった。

ペニサスが挙手した……あの通路での音は、女性用シューズのものだったか……
ブーンは静かに一二歩、確認のために後退した。
自分とショボンの身長はほぼ同じであり、靴のサイズも一緒だろうという推察から。

(;^ω^)「……」


同じだ。
この後退は幾らか静かなモーションであったが、それを加味しても、同様であると断言出来た。
通路で聞いたあの靴の音は、迷いもなくショボンの姿をした人間のものと言えた。

嘘をついた……。

ショボンどころか、この二人までも……。
ペニサスの表情に憂いや迷いは全く見受けられなかった。

二人は何か、隠し事をしている。
138 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:16:38.45 ID:I2kyQ0n40
だとしたら、理由は何であろうか。
果たしてこんな些細なことに、辻褄合わせを計画していたのだろうか。

だが、それよりもブーンの心に重く圧し掛かったのは、ペニサスが嘘をついたという事実であった。
何故庇った……もしくは庇われた……?
二人の表情には、相変わらず躊躇いのようなものは見えない。


やはり、ショボンにマインドコントロールされていたのか……?


(  ω )「分かってるお……嘘ついてんのは……わかってんだお……」

声は震えていたが、二人にも届いたはずだった。
だが、反応が返って来ない。
二人とも、さも当然といった風に身じろぎ一つしない。
数秒の沈黙の後に、ブーンは怒りを滾らせて、


(# ゚ω゚)「言えおッ! 何故嘘ついたんだおッ!! 黙ってねぇで喋ろッッ!!!」
139 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:19:18.24 ID:I2kyQ0n40
ブーンの心に幾らかあった、ペニサスへの庇護めいた可能性は全て吹き飛んでしまった。
もはや、ペニサスなど戦犯の一人にしか映らなかった。
ショボンと同等のように思われた。
ブーンにとって、黙っていることは、二人が恋仲であるとも意味していた。……

怒号を発しても、二人は無反応を貫いていた。
何も見ていないような、ロボットのような目つきをしていた。
ブーンはやがて辟易の感情に包まれそうになった。
だが、振り切るように、表情だけは厳つく保った。
睥睨しながらストリングスを引き絞る。
それでも二人の様子は変化しなかった。

しかし、この状態が続くと、まるで緊張の糸が切れたかのように、
ペニサスの表情にみるみる悄然の色が浮かんできた。
急激な顔色の変化で、治まる頃には泣きじゃくるようになっていた。

ブーンに後悔は無かった。


部屋に、ペニサスの咽び声だけが刻々と響いた。……
                     
140 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:22:24.83 ID:I2kyQ0n40
ブーンは無言のまま、照準をペニサスに向けた。
ペニサスの身体がビクリと震える。

小動物染みたその反応に悪意を感じられなかった。
ブーンはなんとなしに、照準を変更し、ショボンに移そうとした。
動かし、思想転移装置が途中、照準の先に入る。
全ての元凶であるこの機械を、タチマチ破壊してやりたくなる。

一寸、心を曇らせながら視線もショボンに移した。
見た途端、ブーンは驚きのあまり目を見開いた、ショボンが唇を噛んでいた。

下唇を、上下の前歯ですり潰し自虐しているらしい。
ショボンの唇は痛々しくささくれて、肉のような朱色が皮の向こうで見え隠れしている。
鮮血がタラリタラリと顎を伝い、小さな血溜まりを床に作っている。
それでも目は無感情を保っていた。
ブーンをただ見つめるその眼球は、黒いガラス珠を思わせた。

ハンドルを握る手が汗に塗れ、ネットリする。
タブ越しに引いているストリングを、迂闊にも放しそうになってしまう。

ブーンはショボンを強く睨み付けた。
しばらく続けているうちに、まるで石像と対峙している気分に陥った。
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:25:42.99 ID:nsv4kGxE0
支援
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:27:40.23 ID:9ZT1kXD40
sienn
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:28:02.99 ID:mzqhQcuw0
支援
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:31:42.30 ID:bqB1ULP60
しえ
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:33:14.18 ID:EEoseYR5O
支援
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:33:19.98 ID:ULWH0VOZ0
やぁ再開してたのか
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:34:12.24 ID:nsv4kGxE0
??サルかな?
148 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:34:56.39 ID:I2kyQ0n40
矢を向けられたショボンは身動ぎ一つせず、いつの間にかペニサスも涙を止めていた。
ブーンは立ち往生を余儀なくされた。

緊張感で心臓が爆発しそうだと、ブーンは本気で心配した。
二人の顔を目にするだけで、特大の震えが走った。
なんと異常な空間だろうと震撼していた。
焦りと恐怖が、時折視界を曇らせる……。

ブーンは腕を下ろし、弓を下げた。


(; ω )「………」


(´ ω `)「………」


( 、 *川「………」



三者三様、己の思考に身を沈めていた。
149 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:36:24.36 ID:I2kyQ0n40
又候、泥沼化が発展するかと思われた矢先、
ペニサスは両目を閉じ切ると、引き結んでいた口を緩めていった。

( 、 *川「"なんで嘘をついたの"……か。分からないかなァ? 私だって、幸せになりたかったんだよ。
      私だって、もうこんな呪縛とはオサラバしたかったんだよ」

(´・ω・`)「――!?」

ショボンが瞬間、顔色をサっと青冷めたものの、すぐさま元に戻る。
その表情の変化には、何やら驚愕めいた感情が大部分を占めていたなと、ブーンは脳裏で思った。
だが、今はそんなことを考えている場合ではない。
尚続くペニサスの独自に耳を傾けなければいけないのだ。

( 、 *川「そもそもさぁ。……君達は自分のことしか考えてないよ…・・・。
     私だって、考えてる。モノなんかじゃないし。
     私だって、疑ってんのに……」

五月雨式にペニサスは吐露していった。
声は重々しく、ブーンの心に引っ掛かりを与える。

( 、 *川「……そうだよ、ここに、味方なんかいないもの」
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:39:16.85 ID:vaxInxHO0
支援
151 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:39:27.91 ID:I2kyQ0n40
( 、 *川「……ブーン君とショボン司令官が、もし不倫してたら……もし、あの、ホモとかだったら……。
     もし二人とも、ああいう人種だったりして、私の裏でコッソリと……愛し合ってる
     のかもしれない……って。
     そんなことを考えると、バカバカしいなんて笑っちゃうけど、だって、賛同してくれる人なんか
     居ないじゃない? 当事者しかここにはいないし、なんだかんだで……ナンダカンダで、私は一人……。
     この「SIX」の外が莫大な宇宙だと思うと、途方もなく不安が込み上げてきて、それで……
     例の、二人があの……ホモなんじゃないのか、って疑惑とすぐに結びついちゃうの」

(;^ω^)「………!」

聞きながら、軽い衝撃を受けた気がした。
ペニサスがそんなことを考えていただなんて……僕を、信じてくれていなかっただなんて……。

だが、糾弾するつもりにはなれなかった。
この閉鎖空間での孤独感はブーン自身、よく体験していたことだし、
そして何より、このペニサスの中身は本人でない可能性も残されているからだ。

(´ ω `)「………」

ブーンは気付かなかったが、ショボンはペニサスの語りの最中、
しきりに口を窄めては唇の端を吊り上げてはを繰り返していた。
そうして、胸元のホルスターを盛んに見ていた。
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:39:29.29 ID:TC+lKrRPO
支援
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:39:33.12 ID:vaxInxHO0
支援
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:39:45.21 ID:9ZT1kXD40
支援
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:40:11.06 ID:vaxInxHO0
支援
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:40:46.32 ID:vaxInxHO0
支援

157 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:41:13.45 ID:I2kyQ0n40
( 、 *川「だって……三人になってから、私達は個人活動が多くなったじゃない。
     ブーン君やショボン司令官と会うのは、一日に数回……それも一時間もないってばかりで。
     おかしいと思うよ、……独りになると、いつも、あの、男色の妄想ばかりが膨れ上がっていくの。
     ……思想転移装置のせいかなぁ?
     この機械を見てたり、考えてたりするとさ、人が人なのかってわかんなくなっちゃうよ。
     だって、人が入れ替わっちゃうんだもんね?」

ペニサスの話はまだ続く。

( 、 *川「そんな……ことばっかりで……それで、この仕打ち?
     酷くないかなァ? だって……私だって……立派な被害者だし、"探偵"なんだし……。
     君達が勝手に容疑者扱いしてさ……さぁ……これって……酷い、よね」

ペニサスの面容は、いつの間にか激怒に満ち溢れていた。
ブーンは自分が弓を上げていることに気がついた。

(゚、゚#川「私だってアンタラを疑ってるんだ!! 蚊帳の外なんかじゃないッ!!!
     疑ってるッ……アンタラの関係を疑ってる!!
     私だって……! 私だって―――!!!」


ッ――――!!

ブーンの矢が放たれ、思想転移装置に激突した。
158 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:43:11.75 ID:I2kyQ0n40
完全に引き絞っておらず、集中も全くしていないため、
威力はほとんど無かったが、それでも装置の外装を傷つけるに至った。
カーボンの矢は激突の衝撃で二つに折れ、細かい破片とともに地面に散らばった。

(  ω )「………」     

(゚、゚ 川「っ……」

ペニサスは黙り、ブーンを凄まじい形相で睨みつける。
ブーン自身は射出する明確な意思は無かったが、心のどこかでは未必の故意を認めていた。
ペニサスの激昂の勢いを感じ、たまらず右手を離したのがキッカケであった。

ペニサスはそのままブーンに怒りを向け続けた。
その間、ブーンは何も考えることなく、新たな矢をセットする。

しばらく経つと、ペニサスの表情から激情がふいに失せ、気絶したような表情になった。
ブーンはその様子を見て、慌てたようにストリングを引こうとする。
だが、再び目を開けたペニサスは、先程と同じく能面のような面容を取り戻していた。


何が起きてるんだ。一体何なんだここは。
ブーンは葛藤した。
途方も無い現状の、解決の糸口を探そうとしていたのだが、もう、それすら諦めそうになる。
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:44:52.86 ID:GYCGe7EK0
気体?
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:44:58.50 ID:fbmlqLEzO
支援
161 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:45:41.50 ID:I2kyQ0n40
もう、どうでもいいや。
こんな人が人を疑いあう環境だなんて、不健全だし、鬱陶しい。
何もかも、もう、どうでもいいや。

ブーンは諦念に流されそうになった。
不気味な二人を射殺し、そして自決してしまおう。
唯一の解決法が、目前で煌びやかに輝く。


(´ ω `)「………フ……」

静寂を、ふいにショボンが破った。
発作のように笑いを一頻り上げると、身体が痙攣を起こす。

( ^ω^)「………?」


(´ ω `)「"なんで嘘をついたの"……か。やれやれ……もう、何もかもどうでもいいな。
      おれはもう、失敗したよ。フフ………失敗だァ。

      ……嘘ついた理由? ……単純だよ。何せ大切な身体だもんなァ!」

ショボンは悠然たる態度で語りだした。
162 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:47:05.95 ID:I2kyQ0n40
(´ ω `)「……どこから語ればいいのかな? ペニサスが人格不安定なところからかな?
      それとも、超光速モードを解除したところからかな? ん……?」

ショボンはブーンへ水を向ける。
ブーンはどうしようか迷ったが、「好きにしろ」と吐き捨てた。

(´ ω `)「OK……なら、順立てて話させて貰うよ。
      まずは、俺の異常性からでも切り出そうか……」

そこで一旦区切ると、ショボンは胸ポケットからアイリッシュ・ウイスキーの小瓶を取り出し、ラッパ飲みする。
高い度数を誇る乳白色の液体が、遠慮なくショボンの食道に流れ込んでいく。
何度か喉を鳴らして、瓶の中身を飲み尽くすと、手近に瓶を投げ捨てる。
つんざく音を立ててガラスの瓶は砕け、大小様々な欠片が落下地点付近に散布する。

その一部始終を見ていたブーンは、てっきりショボンが酔ったのかと思ったのだが、実際そうではないらしい。

胃から湧き上がるウイスキーの熱を堪能しているショボンは、実に楽しそうであり、悲しそうであった。

ペニサスは相変わらず目を閉じていたが、ショボンはお構いなしといった様子である。
163 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:49:02.84 ID:I2kyQ0n40
(´ ω `)「ではこれから、俺の人生でも並べさせてもらうよ。

清聴される皆様、ほんとご苦労様。僕の筋書きを、トンと聞いておくれ。……
     
ところで僕は、皆も今となっちゃUMAと同等の存在として扱われている、ホモ・セクシュアルなんだ……。
    
だが勘違いするなよ? 俺は決して異常者じゃあない……。確かに、普通とは掛け離れているが、
 
それは差別されるべきものではないし、持って生まれたどうしようもない存在なんだ……。
     
俺達が生まれる前では、ホモやレズというのはそれなりに社会に認められた存在であったらしい。

第三の性とも扱われ、男同士の結婚も、ついに世界の半分ほどで認められたほどだ。

だが……人々が太陽系を拠点として生き始めた辺りで、唐突にホモ、レズは激減した。

今となって判明したんだが、どうも宇宙線対策のサプリメントに、染色体への影響が現れるらしいんだ。

それも、赤ん坊にな。生まれる子供達はみな、健全健全ばかりなもんで あっと言う間に同性愛者は消えていった。

そうこうしているうちに、残った僅かの同性愛者は影に隠れるどころか、迫害されるような存在になっちまったんだ。

……赤ん坊の中には、そのサプリメントの影響を受けずに同性を愛する奴も、稀に居たというのに。……」
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:49:04.22 ID:bqB1ULP60
しえ
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:50:21.85 ID:TC+lKrRPO
支援
166 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:50:27.66 ID:I2kyQ0n40
(´ ω `)「テラ・フォーミングに失敗し、もはや流刑地となった金星に、残った同性愛者は追い遣られたそうだ。

だが、そこは犯罪者の巣窟だと言われている、流された同性愛者たちがどれほどの苦難を強いられてきたのか、

俺達の想像を絶するだろう。……そうして、どれほどの悲しみが、あの明星を渦巻いていたのかも……。

この話をする度に、俺の心は憤りで苛む。……だが、お前たち正常者からしてみれば、極悪人に叩かれ、蹴られ

眉間を潰され、挙句棍棒で頭を打ち砕かれ死んでいったという同性愛者の話というのは、とんだお笑い種なんだろう?

インターネットでは、この話は今でも逸話として語り継がれているし、未だ残っている僅かなゲイの発展場に忍び込む

レポートの話やら、そのホモ、レズ達を誑かし、騙しこんでイザ自らが正常者だ、やれお前らなど誰が好きになるものか、

と心を弄ぶというのがハヤリだそうじゃないか? ホモ、レズに近づいたというだけで話の種にし、

"危なかった、異常者に近づくのはやっぱ危険だねw"と、まるで獣の檻に忍び込んだような談をする者もいる。

同性愛者はもはやフリークとして扱われ、存在自体が恐怖と嘲笑の証となっていった。……

そうしてその環境の中で、俺はホモとして生まれたのさ。
167 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:51:38.17 ID:I2kyQ0n40
そのことを自覚し、自分は何なのだろうかと悩みながらも、

やがてインターネットで世界……太陽系の情報のやり取りを知るに至った。

だが……そこは俺の予想とは裏腹の世界だったよ。

前述の通りの、同性愛者を汚らわしいケダモノのように扱った話が蔓延した……虚ろな世界だ。

ショックだったよ。まるで俺自身を厄のように言われている気分だったし、見つけようとした

仲間が虐げられていることも悲しかったね。おれはどうすればいいのか、ディスプレイの前で頭を抱えた。……

だが、この俺じゃ電子世界上の悲痛や悪意だなんて封じることは出来ない。

どうすればいいのか、このやり場のない悲痛はどこに向けるべきなのか、俺は苦心惨憺したね。

身に余る負のエネルギーを……どうしようもなかったから、おれはそれを勉学に向けた。

幸い、そっちの方面には才能があったもんで、メキメキと学力は向上した。

それでも、俺の心が満たされることは無かった……。

俺の本性……ホモセクシュアルであることを知ったら、今、俺を褒め称えている大人や同級生達は

あっという間に手の平を返すだろうという、半ば確信めいたものがあったからだ。

そうさ……その事実を思うだけで、己の怒りが虚無に擲たれた気分に陥るのだ。
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:51:46.17 ID:8t6asKycO
http://same.u.la/test/r.so/yutori.2ch.net/news4vip/1203774772/l10
( ^ω^)がアルファベット武器に戦うようですやってるぞ!
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:52:02.67 ID:TC+lKrRPO
支援
170 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:53:16.78 ID:I2kyQ0n40
そのやり切れない思いは更に俺を勉学へ向けさせた。

とうとう、世界でもトップクラスの大学に合格し、それすらも主席で卒業した。

大学に通っている途中、俺はあることを思いついた。というのは、大学の門前にある銅像を見たことがキッカケなんだ。

これは妙案だと自画自賛した。その案とはつまり、

我が同胞の嘆きに満ちた、悲哀の薔薇を信仰する金星に、聖なるモニュメントを建ててやるということだ。

そうして、そこに同胞へのエピタフを刻み、嘆きの終止符を打ちたい……とな。

分かってるさ、これはただの、自己満足に過ぎん。

だが、これで同胞の無念が少しでも晴れてくれればと思うと、胸の内から強迫観念じみたモノが押し寄せ、

俺に「実行しろ、虚無への墓碑銘を刻め」と囁き続けたのだ。

今にして思えば、それは同胞の亡霊だったのかもしれないし、己のエモーショナルな一派だったのかもしれん。

しかし、そんなことは当時の俺にとって、どうでもいいことだった。

マックスウェル大学に通っていた、秀才だった当時の俺は、胸のうちのどうしようもない激情の煮え繰りに耐えながら

苦さをジッと噛み締め、自らの心にそう語りかけていたのだ。……
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:53:40.81 ID:TC+lKrRPO
支援
172 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:54:54.51 ID:I2kyQ0n40
金星に赴くために、俺は国連宇宙センターでの就職を希望した。

マンマとそこに入り込んだ後は、刻む詩の内容でも考えながら、昇級を待っていた。

そのうち、金星の粛正計画でも発表しようかと思ったが、幸運が舞い込んだ。

そう、「金星再テラフォーミング計画」だ。

この計画の視察派遣として選ばれた俺は、石碑を何処に建てるか考えながら、仕事を済ませ、

そうして最終計画の合間を縫って、とうとう人目を忍んでのモニュメントの建設に成功した。

……この成果は誰にも知られることなく始まり、そうして、終わった。

俺の人生までもが、その石碑に終止符を打たれたような気さえした。……

俺はやることを失った。悲哀の薔薇は虚無から引き戻され、墓碑銘を思い出すだけで、安堵の暖かみが胸イッパイに広がり、

そうして「もう役は済んだよ」と云う苦々しい思いが次に沸き起こるのだ。これから先、どう生きていけばいいのだろう。

仕事は順調に進んだが、心は水夫を失った船同様に流されていく。

いっそホモの進出でも大々的に打ちたてようかとか、ゲイバーに行ってみようだとか、

本格的な己の性欲の発散を考えたとしても、無気力感が投錨を無に還すのだ……。

そんな頃、ニューソク星への外交使節の司令官に抜擢された。

そうだ、この「SIX」の動く……今現在帰還中の、"これ"さ。
173 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/23(土) 23:56:39.33 ID:I2kyQ0n40
国連からしたら、まさに一世一代の大仕事とからしいが、そんなことはどうでもよかった。

ただ、虚空の宇宙に永く身を寄せるのも悪くないと思案しただけだ。

俺の心の闇。昏冥は永劫沈黙していたことだろう。

……だが、絶対零度のその空間に、光芒が駆けたのだ。

……分かるか? ……お前のことだよ、ブーン」


ここで一旦ショボンは区切ると、熱い視線をブーンに向けた。
ようやく酒気が回ったのか、ショボンの顔色は火照っていたが、他の理由は明白であった。

一瞬にして部屋は沈黙に引き返された。

ショボンはチラリとウイスキー瓶の残骸を見やってから、語りを再開しいた。


(´ ω `)「ブーンよブーン……、君を人目見た瞬間、僕の心にあった冷たい泥が一気に

身体の外に擲たれたのが分かったよ。僕の心を捕らえていた深い喪失感は雲散し、

光明が仄かに差し込んでいくのが分かった。……これを愛と理解するのに、時間は掛からなかった。
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/23(土) 23:59:40.38 ID:TC+lKrRPO
支援
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:00:19.55 ID:1KoS2ges0
珍しいタイプのksmsキャラだな
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:00:33.22 ID:MG3v6MeQ0
支援
177作者:2008/02/24(日) 00:01:52.17 ID:0NtLsOAqO
またさるだー
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:04:29.88 ID:1KoS2ges0
スレは逃げたりしないから
二、三分おきにゆっくり投下しなさいw
あんまり作者ががっつくと支援も間に合わないでしょ
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:04:57.85 ID:gZ+7TiJfO
厳しいさるですね。
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:05:58.14 ID:tc281h/60
しかしこいつは夢野好きだな
181 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:06:13.75 ID:mGMHnw6t0
搭乗員の一人に恋焦がれ、そうして地球を発った「SIX」での生活は、俺の新生であることは疑いなかったし、

実際、今の今までそう行動してきたんだ。……

船を自動操縦にし、他の船員ともあまり顔も合わせず、俺は自分の部屋に篭ってきた。

そうして、俺は夢と現実の間を彷徨し続けることにしたのだ。

ブーン。君が俺と同じホモだったいいな、とか、君が俺の恋人となり、この仄暗い情熱を満たしてくれる……

あらゆることを妄想し、俺は部屋でマスターベーションの類にフケ込んでいったのさ。

それにしても、人類の文明がここまで発展したというのに、思い人と一緒になれるのかは

未だ確実ではないとは、小僧の頃から疑問にしていた。

新言語の誕生、他星の移住……人類は言語の壁をなくし、

「フィネガンス・ウェイク」が人類共通の娯楽となったというのに、、

ロボットだけの移住区までもが誕生されたというのに……恋や愛やらは、未だ不完全だという……。

だが、だからこそ人間たらしめているのかもしれんな。

でもな……俺の妄想……果ては現実にまで邪魔をする者が現れた。

……そう、ご存知の通り、我らがペニサス嬢さ! 
        
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:07:41.67 ID:p5JLdWNU0
俺はプレセアを使い手なんだが相手が残念な事にジーニアスを使ってきたので「お前それで良いのか?」と言うと「何いきなり話かけて来てるわけ?」と言われた。
俺の弟がジーニアスの熟練者なのだがおれはいつも勝つから相手が気の毒になったので聞いただけなんだがむかついたので「お前緋焔滅焦陣でボコるわ・・」と
言って開始直後に仲間を二人殺して緋焔滅焦陣したら多分リアルでビビったんだろうな、、ガード固めてたからキャンセルしてカカッっとミラクルグミ使いながら緋焔滅焦陣したらかなり青ざめてた


おれは一気に空中にとんだんだけどジーニアスが硬直してておれの動きを見失ったのか動いてなかったから孤月閃でガードを崩した上についげきの緋焔滅焦陣でさらにダメージは加速した。
わざと距離をとり「俺はこのままタイムアップでもいいんだが?」というとようやく必死な顔してなんかけん玉のはしっこからインディグネイトジャッジメント出してきた。

おれはしゃがみバックステップで回避、これは一歩間違えるとカウンターで大ダメージを受ける隠し技なので後ろのギャラリーが拍手し出した。
俺は「うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取り」というとギャラリーは黙った
ジーニアスは必死にやってくるが、時既に時間切れ、バックステップで回避を固めた俺にスキはなかった
たまに来るバックステップでは防げない攻撃も「時は戻らない・・・それが自然の摂理・・・・」で撃退、終わる頃にはズタズタにされた青髪の雑魚がいた

「いつでも孤月閃でトドメは刺せた、あの時インディグなんとかをだそうとしたときにも実はズタズタに出来た、」とかいった
そしたら「いや今のハメでしょ?俺のシマじゃ今のノーカンだから」とかいったので俺がヒト睨みするとまた俺から視線を外した、2戦目は俺の緋焔滅焦陣を先読みしてたみたいでいきなりバックステッポで回避された

「ほう、経験が生きたな」と少し誉めるとスペクタクルズをおごってくれると言う約束をしたので空中で獅吼減龍閃を当てて一気にかけより緋焔滅焦陣とスペクタクルズの二択を迫り
5回くらいスペクタクルズしたら死を感じたのかガードしようとしたので近づいて「終わりです・・・塵と化しなさい・・・」をお見舞いしてやった、絶望でダウンしているところにギロチンのピコ破斬がダブルで入れた。
「今のがリアルでなくて良かったな、リアルだったらお前はもう時は戻らないぞ」というと想像して圧倒されたのか動きが鈍くなったのでアワーグラスで動きをコントロールしさらに時間までコントロールしていることにも気付かせずにタイムアップさせた。

そしたら「まただよ(笑)」とか負けたくせに言いワケ言ってたから「限られたルールの中で勝利条件を満たしただけ」といったら顔真っ赤にして3戦目はけっこう攻撃的だったけど挑発に軽々と乗ってくる馬鹿には確実な死が待っていた。
アワーグラスの恐怖が完全に摺り込まれている為思うように近づけないでいるようで空中来たら斧((((大爆笑))))でけん制し飛び込んできたら前烈破焔焦撃でいつの間にかガードゲージは光っていたから「下段でトドメさすよ」と言うとジーニアスは必死にガードしたから
狙い通り3段目くらいを地精陣にすると予想通り青ざめてガードしてたからアワーグラスwで硬直させたのち「時は戻らない・・・それが自然の摂理・・・」でトドメ。
あとはタイムアップまで粘った。俺の下段ガードは固く、隙を見せなかった。ジーニアスも下段ガードできない攻撃してきたけど反撃もここまで。残念ながら前半の遅れを取り戻す事が出来なかった。
183 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:08:21.99 ID:mGMHnw6t0
愛しの王子とペニサス嬢が船内で睦み合っていると聞いたとき、俺はああ、しまったと思った。

今にして思えば、おそらくウッカリしていたのだろう。考えれば当然のことなのにな。

そう、俺が愛するブーンは、普通に女性を愛し、そうしてセックスする奴だったということをな。

一瞬にして俺の心は深い井戸の底に突き落とされた。

通路を歩き、そのイチャつく当事者のカップルを見たとき、船員達の下卑た二人の噂を耳にしたとき、

俺は決まって自分の部屋に戻ると、鍵を掛けてからあらん限りに慟哭した。

流れた熱っぽい涙はマホガニーの机で熱っぽい水溜りを作った。

それをハンカチで拭うと、またタマラナク寂しさが雪崩れ込み、そうしてまた泣き伏せた。

どうすればいいのだろう。俺は何度自分にそう問いかけたことか?

俺がここまで愛しているというのに、俺は所詮蚊帳の外という、その事実こそが痛ましかった。

"俺は生まれるべきでなかったのかもしれん"……繰言して、チェイサー無しにウイスキーを暴飲した。

食道が焼けるような痛み、熱……口の中で残留する香り……身体を壊したのは、無論のことだ。

だが、そんな痛みなど、心の破綻を考えれば、安いものであったと思うがな……。

一層、目をギラリと光らせて俺は宇宙船での生活を歩むこととなった。

お前達の盛りのついた腕組みを、呪詛を掛ける勢いで睨み付けたことなど、お前たちは知らぬだろうがな。
184 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:09:53.92 ID:mGMHnw6t0
そのおかげで、どこぞの船員達が、俺が魔術に魅入られているとか、どうでもいいことを仄めかしていたくらいだ。

部屋に篭る頻度が上がった。誰にも合いたくなかったし、いつの間にか、誰かの目を怖れていたような気がする。

俺は他人からホモとして隔離されてしまうことを、無意識のうちに畏怖していたのかもしれない。

カンパリをグレイプフルーツジュースで割り、その美しい薔薇色を眺めて、俺は誓いに似た感情を抱いた。

我が恋心を必ず成就させてやろう。反吐の出るような常識など踏み外せ、

我らがカップルこそが、天に祝福され、冷たい虚空に陽光を差し込ませることが出来る、と。

金星のエピタフだけでは駄目なのだ。同胞の無念……それは俺が幸せになるということで、ヤット……ヤット、

開放されるのだろう! 決め付け、そうして理解した! 嗚呼、考えただけで心の臓は張り裂けるように

鼓動を強くさせ、打ち叩くように血流を身体に浸透させた。そうして実感する。

俺は生きている! 何でもやれる! 力を持っているのだと!!!

酒の入ったグラスを握り割って、己の激情を証明すると、ひとしきり狂笑した。

だが、すぐに現実に直面する。俺は「SIX」の中でも最も高位なる存在だし、自らを歯止めの利かぬ

狂人だと理解しているから、その気になれば無理にでもブーンを自分のものにすることは出来ると考えていた。

……しかし、それではブーンの心は俺のものとはならないだろう。

ただでさえ、ペニサス嬢の生涯の伴侶となろうとしていたのは必定に近かったのだから。
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:10:06.50 ID:1KoS2ges0
支援
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:11:33.05 ID:gZ+7TiJfO
>>182が入った事に違和感を感じなかったよ……。
支援
187 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:11:33.15 ID:mGMHnw6t0
なら、どうすればいいのか、俺は苦悩した。いくら輾転反側しようと、案は思い浮かばない。

そればかりか、その搾り粕とも言うべき不満ばかりが刻々と募っていくのだ。

人間の心を手に入れる方法など……分からなかった。いくら模索しても、大海撈針だなと気付かされただけだ。

純粋に自らの愛を打ち明けて、果たして成功するだろうか。失敗は許されないのだ。

俺にはそんな真似、出来ようはずもない。なんとしてでも、俺は自分の使命と欲を幸福に導いてやらねばならない。

悶々としていた。ジレンマがひしひしと俺の心身を痛めつけ、供養せねばという使命感はやがて、

俺が自殺すれば全て終結するだろうと云う結論にまで至った。だが……実際に睡眠薬と赤ワインを用意したとしても

ふと俺の頭の隅で何者かが喚き続けるのさ。曰く、"どうせ死ぬのなら俺達の無念を晴らせ"とな。

そして、心が揺り動かされたときを狙い、同じく脳裏で、我が臆病心が"死ねば全て終わる、そうさFALL OUTさ"と囁く。

俺はまるで電撃が脳髄を駆けたのかと思うような頭痛に襲われ、またも、涙に終わっていったんだ。……

理想と現実が俺を苛んでいく。精神が軋む音が、いつも身体の底から聞こえているような気がした。

もう駄目だと思った。俺は、ただ苦悩し続け、何をするにも亡霊に腕を掴まれ、結局、何も出来やしないんだと確信した。

この頃にはもう、正直言ってブーンのことは半分忘れかけていた。それほどまでに俺は磨り減っていた。

頭を抱え獣のように唸ってばかりだった。

俺はこうして死ぬのだろうと悟った。誰にも手を下されず、全うに死ねるなら、もう満足だと考えてしまうほどだった。
188 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:13:21.42 ID:mGMHnw6t0
そんな時だった。ニューソクからの光信号が届いた。それは、主にニューソクの生活や文化などを記した簡素なものだったが、

これこそが俺を救った、そうして同胞の無念すら救えると核心出来た鍵だった。

……お察しの通り、"思想転移装置"の情報を見たのさ。これを見て、俺は悪魔めいた何者かが俺の脳で計算をしているのを自覚した。

転移装置を使えば、俺はペニサスの身体に入り込める。そうして、愛の契りを持つことが出来るではないか。

ようやく曙光と対面できたのだが、一つの懸念が残ってしまった。

そう、……男の身体を捨てるのか、お前はホモだというのに、その身体で勝負しないのか、……という疑問だ。

だが……それが無理ということは、何度も苦心しているうちに悟った。

それでも尚囁く謎の声の主に、ようやく苛立ちを覚えたのもこの頃だった。

"うるさい、何が分かる? お前達は無念無念と拘泥するばかりで、俺のことなど、幸せなど何も分かっちゃいない。

誇りが何だ、無念が何だ、俺は、俺の幸せを探求する権利がある! もう苦悩などしない。俺はブーンと幸せになる"とな。

俺は光を見て、そうしてようやく自分を取り戻せたような気がした。暗雲は取り払われ、生きる目的を見出すことが出来た。

その頃から俺は、ペニサスの写真を自分の部屋に所狭しと貼っていた。いつかは自分のモノとなるであろう身体、面容。

いつかは我が物となるのだ。……と、煌々した顔の美貌を見ては目に焼き付けていたものだ。

ブーンの写真も一枚、愛を呼び戻せるように貼り付けた。

それを見て俺は、今までの苦悩で忘れかけていた情熱を再び燃え上がらせることが出来たのだ。……
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:14:16.04 ID:1KoS2ges0
俺もうっかり五行くらい普通に読んだ
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:14:20.34 ID:gZ+7TiJfO
支援
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:14:26.34 ID:CGSuEpVO0
支援
192 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:15:00.58 ID:mGMHnw6t0
……それからは、もう言うことは無いな。俺はニューソクに着くとすぐさま転移装置について交渉した。

暗礁に乗り上げたが、ニューソクの混乱をいいことに半ば強引に奪い去って、そうして要らぬ船員を

見殺しにしてから、「SIX」で計画を実行しただけだ。……

だが、正確に転移できず、ペニサスは二つの人格が混合した哀れな存在になってしまい、

俺はペニサスの人格に支配されず、そのままで居てしまっている。

……いわば、ペニサスに俺をコピーしただけに過ぎない……が、ここで俺は悲しき野望とやらに囚われてしまったのだ。

残された俺は、どうなる?

用済みの身体に取り残された俺は、これからどうすればいい? 自殺すべきなのか? おそらく、それが正解だろうな。

……だが、未練がましいことに、俺はその運命を潔しとせず、俺こそがブーンと結ばれるべき、不幸な者こそ幸せになるべきと考えたのだ……。

確かに既にペニサスには俺が入っている。だが、残された俺だって、生きているし、苦悩しているのだ。

一人だけが幸せになり、一人だけが責務を負って死ぬ……その事実に、俺はどうしても我慢ならなくなってしまった。

分かっている。こんなくだらぬ私情は今までの計画を水の泡にするし、たとえ俺が残ってもやはりブーンとは結ばれないのだ。……

それでも……俺は生きたかったし、幸せになりたかった。……」
                              
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:15:12.70 ID:0b/KZBI0O
どっかで見た酉だなぁ支援
194 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:16:43.98 ID:mGMHnw6t0
話を終えると、ショボンは一息ついた。
沈黙が再び部屋を覆い、狂熱はまた、取り戻されようとしていた。

(;^ω^)「………」

ブーンは為す術もなかった。
己に対する深い情熱を長々と浴びせられた今、言葉を発せられない。

しかし、ブーンが何かを言うつもりで口を開こうとしたところ、
ショボンが割って入るようにして、

(´゚ω゚`)「……超光速をとめた理由かい? 地球に戻る必要もなかったし、
      それに、危険な状態だからやめておいたのさ」

( ^ω^)「……危険な状態?」

(゚、゚ 川「アハハハハハハハッハハハァア゙ハハハ!!!」


遮るように、ペニサスの甲高い笑い声が飛び込む。

そうして、捲くし立てるような調子で話し始めた。
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:17:03.07 ID:gZ+7TiJfO
支援

>>193
綺麗な街
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:18:01.82 ID:0b/KZBI0O
>>195
あーそうだ!
スッキリしたありがと
197 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:18:50.25 ID:mGMHnw6t0
(;゚ω゚)「ッ!?」

燃料機関が壊れそう。あまりにもショッキングな一言だった。
この部屋に入ってから、立て続けに狂気の暴打を受け続けていたが、
今回のそれは、また違う種類の驚愕だった。

燃料機関とは即ち、原子炉のことなのだから。
壊れそうということは、今現在、放射能が漏れているかもしれないのだ。

(;゚ω゚)「な……なんでだおッ!」

(゚、゚ 川「チキンゲーム、チキンゲーム。もうやり過ぎてて退屈だよ」

「えへへ」とペニサスは笑うと、ワルツのようなものを踊りだした。
ブーンはワナワナと戦き、現実を直視しようと努力していた。
だが、もう不可能だと悟った。

何故ショボンは己の全てを曝け出したのか。
開始の言葉が、理由を告げている。


        「もう、何もかもどうでもいいな。
               おれはもう、失敗したよ。フフ………失敗だァ。」
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:21:09.41 ID:gZ+7TiJfO
支援
199 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:22:10.59 ID:mGMHnw6t0
………今のこの状況が、やっと、やっと、理解出来た気がする。
ペニサスを戻すなど、正気の沙汰でない。
もう、これは終結後の世界なのだったのだ。

いわば舞台裏のような、蛇足のような……そんな、シーンなのだと。



(´゚ω゚`)「もう終結した! FALL OUTさ!!」

叫んで、万歳をすると「アハハハハハ」と気の済むまで爆笑した。
ペニサスも未だ踊り狂い、そうして朗笑している。


(;゚ω゚)「……は、……はは、……は」

笑うしかなかった。
自分も笑うしかないだろう。
失意が強く心を突き動かした。
200 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:23:43.13 ID:mGMHnw6t0
自分は何に彷徨っていたのか、今、ようやく理解出来た気がする。
往々にして悩んでいた意味も、今、吹き飛んでしまったような気がする。

だが、それが何になるというのだ。何の解決になるというのだ。
ブーンは狂熱から冷めかけ、冷静な目で二人を観察していた。
そうして、後退り、早く逃げ延びたいという自分がいることを発見した。
しかしもう逃れられないということを、心のどこかでは受け止めている自分も。

呆れの感情に近い。ブーンは自分を分析した。
弓を手にしている自分が間抜けに思えて仕様が無かった。
恐ろしくインフォーマルな格好だ、たとえこんな場であったとしても。


ふいに、ショボンの叫びが飛んでくる。

(´゚ω゚`)「なぁッ! ゲームでもしないか!?」

ショボンの手には、いつの間にか拳銃が握られていた。
                          
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:27:36.72 ID:CGSuEpVO0
支援
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:27:51.94 ID:gZ+7TiJfO
支援
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:28:33.12 ID:0NtLsOAqO
セルフ支援とするか
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:29:53.93 ID:0NtLsOAqO
>>180
少女地獄おもしろいよね
205 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:33:08.41 ID:mGMHnw6t0
ブーンは返答しなかった。
何か言おうと思ったのだが、喉に何かが詰まったようで、声が出ない。
そんなブーンの状態を知ってから知らずか、ショボンは説明を続ける。

(´゚ω゚`)「ルールは簡単だよ、全員、飛び道具は持っているだろう?」

見れば、ペニサスも既に準備をしていた。銃の種類はショボンと同じ、古典的なリボルバーだった。
ブーンは自分の持つ弓が、"ゲーム"に使用されることをボンヤリ把握した。
ショボンの話は尚続く。
いよいよ、本題に入ろうとしている。

(´゚ω゚`)「カウントダウンをするんだ。……零になった瞬間、好きな相手を撃つ、三人同時に。
  
     簡単だろう?」

全員が、誰かを殺す。
つまりこの状況では、一人生き残るか――もしくは全滅の、二通りの悲劇が用意されることになる。
ブーンは二人を確認した。
どちらも、やる気を漲らせているらしく、目を妖しく光らせていた。

ブーンは吐息をついた。
やるしか、ないのだろうな。
ブーンは自分の冷静加減に、少なからず驚いていた。
どうして、はここまで冷静なんだろう。
まさか、あまりにショッキングすぎて感覚が鈍ったのか。もしくは死を望んでいるのか。よくわからない。
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:35:35.85 ID:gZ+7TiJfO
支援
207 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:35:53.01 ID:mGMHnw6t0
ブーンは弓の状態を軽くチェックし、無心で弦を引き絞った。
そうして視界を戻した頃には、ショボンとペニサスは殺傷メンテナンスを終わらせていた。


ブーンが何のアクションもしないうちに、二人は銃口を天井に向けた。
片腕どころか、両腕が天を仰ぐその姿は宗教めいた万歳を思わせる。

さすがに弓を天に向かせるのに躊躇っていると、ショボンは一言、ボソりと呟いた。

(´・ω・`)「……いつから、、道から外れてしまったんだろうな……生まれた時か?」


(;^ω^)「……ショ、ショボ……ン?」



(´゚ω゚`)「カウントダウンを始めるッ!!!」
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:35:59.03 ID:gZ+7TiJfO
支援
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:37:23.09 ID:gZ+7TiJfO
支援
210 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:38:11.67 ID:mGMHnw6t0
此の期に及んで、ブーンは窮地に立たされていることを思い知らされた。
先程までの、妙な悟りは一瞬で雲散してしまった。
「しまった」と考えたときには、カウントダウンはもう始まっていた。

(´゚ω゚`)「5………4………」

(´;ω゚`)「3…………2………」

(´;ω;`)「………1…」


「待て」「早まるな」

そんな言葉が喉まで出かかったが、実際に発せられることはなかった。
焦りのためか、恐怖のためか、余裕のためなのか。
ふと、ブーンはこの刹那、自分が謎の安心感を得ていることに気がついた。


カウントが零になり、二人の拳銃が振り下ろされる。
あるはずのないレーザーポインターが振り回されたように思えた。
二人はブーンを狙うことなく、互いの胸に目掛けて銃口を向けた。

そうして、凶弾が、放たれた。……

乾いた銃声が同時に鳴り響く。
211 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:40:24.66 ID:mGMHnw6t0
(; ω )「――――!」

目の前を、生暖かい血流が飛び交った。
カッと目を見開いた、マネキンのような表情になったショボンとペニサスは、胸から血を噴出していった。
互いが互いの心臓を打ち抜いたのであった。
弾みで手から離れた両銃が、宙を舞い、二人の身体は依然出血しながらも、棒切れのように倒れていった。

ブーンは結局射出することなく、傍観に徹しただけであった。
二人の身体が床に倒れ、僅かに弾み、その拍子に弾痕から血潮が吹いた頃になっても、
ブーンは冷静を保ったままであった。
しかし、その顔は狂気に引き攣っていた。
半笑いのように見えるその表情は、どこか、笑っているようにも取れた。
それでも、ブーンの仮面の下には冷静な心が潜んでいた。


この終末を理解しきっていたブーンが居た。
提案されたこのゲームの危害が結局、自分に及ばないことを知っているブーンが居た。
だが、それでも現状を理解出来ていないブーンが居た。
知らなければよかったと思うブーンも居たし、絶望しきったブーンも居る。


混乱と冷静が、糾える縄の如くブーンの心に積み重なっていた。
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:40:56.65 ID:HX5wagGY0
支援
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:41:43.28 ID:gZ+7TiJfO
支援
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:41:51.89 ID:1KoS2ges0
しえ
215 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:42:09.72 ID:mGMHnw6t0
ブーンは目前に広がる床を見下ろした。
一面血の海となった、凄惨なこの現場は見るに耐えられず、堪らず目を逸らそうとしたが、
引き戻すその一瞬、ショボンと目が合った。
死が傍に来ているようで、虚ろな光だったが、ブーンの瞳を捕らえると、途端に目を妖しく輝かせた。

そうして口をパクパク開閉した。
言葉を発そうとしているのだが、喉に力が入らず、口から零れるのは血だけであった。


(´;ω;`)「っ……! ……!」

涙も溢れ、一層ブーンへの思いを表していたのだが、
最後、とうとう最期になって、力を振り絞ると、こう言った。


く、る、し、め、、、、


(; ω )「………」

(´;ω;`)「……!    。」

ショボンはそうして、事切れた。
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:44:13.91 ID:gZ+7TiJfO
うわぁ……
217 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:44:19.28 ID:mGMHnw6t0
その時点から、啜り泣く声が響いた。
ブーンは横目でチラリとその声の主を見た。
ペニサスは涙を流し、死ぬ直前まで、瞬きすることが無かった。
恐怖に脅かされたような顔になり、歯を食い縛って痛苦を堪えている。

(; ω )「……ペニサス………」

(;、; 川「……! ……!」

( :ω;)「ペニサスっ……!」


だが、やがて糸が切れたように絶命した。

血の海は次第次第に勢力を拡大させていき、トウトウ、ブーンの足にまで及んだ。
靴先が赤く濡れそぼった。
血糊が靴の輪郭にまで行き渡る。

ブーンは動かなかった。
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:44:36.00 ID:1KoS2ges0
あーあー
219 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:45:29.10 ID:mGMHnw6t0




( :ω;)「………」



( :ω;)「どうして……どうしてだお……!」



( :ω;)「何が……何がっ……僕のせいなんかお……!?」

220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:46:33.03 ID:gZ+7TiJfO
支援
221 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:47:07.08 ID:mGMHnw6t0
ショボンの最期の一言が頭から離れなかった。
ペニサスの泣き顔が頭から離れなかった。
振り払おうと頭を抱え唸ったのだが、どうにもならない。

「ぅう……!」

弓を落とすと、膝を着いて、掌を着いた。
鮮血が身体の至る場所に付着したが、ブーンは今、構う余裕もなかった。
ヒクヒク痙攣し、息を震わせる。涙は既に乾いていた。
吐きたい気分だったが、何とか持ち直して血塗れになった弓を拾い、立ち上がった。
ストリングには血が全体的に滴り、ノックポイントはいつの間にか解けそうになっている。
幸い、セットしたカーボンの矢には、血糊が着いた以外、支障は無いようだった。

だが、ブーンはそれ以上動作を続けられる自信が無かった。
これから弓を引き絞り、クリッカーが鳴るのを待ち、射出するというプロセスが、途方もなく遠く思えた。
血糊の中で黒光りする、ショボンの拳銃が目に付いた。
弓を血の海の上に再び置くと、今度はそれを掬い上げた。

一頻り弄び、ある程度感触に慣れると、所定の持ち方に変える。
222 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:48:57.31 ID:mGMHnw6t0
無心でトリガーを引いて、凶弾を発射した。
狙いは思想転移装置であった。
この装置さえなければ、俺が、疑うこともなかったんだ……!

高音が残響し、装置の外装が著しく罅割れた。
ブーンは銃弾を発射し続ける。
何度も何度も弾丸は外装を傷つけた。

全ての弾を撃ち尽くし、硝煙も雲散していった頃には、ブーンは疲労困憊しきっていた。
転移装置は夥しい量の弾丸を埋め込まれ、至る所から電線らしきものが見え、その辺りから漏電が発生している。

ブーンは使い終わった銃を投げ捨てた。
ペニサスの銃も使おうと考えたが、ペニサスの泣き顔が幾度となくフラッシュバックするので、触る気になれなかった。

ブーンは思想転移装置を観察した。
今にも壊れそうな音を立てている装置は、不安感のメタファーのようだと、ブーンは思った。

ブーンは跪くと、自然に項垂れた。

自問が、底から涌き上がって来る。
223 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:50:42.60 ID:mGMHnw6t0
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
全ての原因は、何だったんだろう。
俺なのか?
いや、違う。
というか、もう、誰が悪いとか関係ないじゃないか。

ブーンは顔を上げようとしたが、直前になって止した。
更に頭を下げ、そうして両掌を床につけると、まるで土下座しているみたいだな。と、自嘲した。

泣く気も、叫ぶ気も、後悔する気にもなれなかった。
感情が、何の反応も示さない。

土下座の姿勢を解くと、ブーンは覚束ない足取りで部屋を後にした。

一先ず、シャワーを浴びたくなった。
一人だけの気ままなシャワーが恋しくなったのだ。
血の足跡を通路に付けながら歩く。

シャワールームに入ると、急いで服を脱いで浴室に向かった。

・・ ・・・
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:51:17.95 ID:gZ+7TiJfO
支援
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:51:49.23 ID:gZ+7TiJfO
支援
226 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:52:08.83 ID:mGMHnw6t0
( ^ω^)「………」

ブーンは再び、惨劇の部屋「第二非常用小型宇宙船格納庫」に舞い戻って来た。
血の海は、ほとんどが凝固しており、これ以上拡大する恐れはない。
死体の腐敗も、臭気等の心配などは要らなかった。

未だ漏電を続けている思想転移装置と、緊急脱出用小型宇宙船を交互に眺める。
その気になれば、いつでもこの忌まわしい「SIX」から脱することが可能だ。
だが、そのつもりには、まだなれない。


結論を、見つけていないのだ。
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:52:14.57 ID:gZ+7TiJfO
支援
228 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:53:39.73 ID:mGMHnw6t0
散々考えた末に、ブーンは、自分がまだ感情の整理を取れていないことに気がついた。
現状を理解しておらず、受け入れていない状態なのか。
もしくは、全てを理解した上で思考停止に入ったのか。

それは、まだ分からない。

もし、自分自身を把握出来れば、現実の率直な感想が言えるのだろう。
そして、自分が何をすべきなのか、何を望んでいるのかがハッキリするのだろう。


それが分かるまで、それが分かるまでは……ここにズット居るつもりだった。
暇を持て余している上に、トラウマがしがみ付いて離れないからだ。

だが、一生解決しないことかもしれない。

しかし、それでも、ブーンは苦とは思わなかった。
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:54:21.18 ID:gZ+7TiJfO
支援
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:55:21.67 ID:gZ+7TiJfO
支援
231 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:56:09.89 ID:mGMHnw6t0
とにかく、結論を知りたかった。

雄大な虚空を映す窓をバックに、安置された脱出の象徴と半壊した転移装置を見続ける。
そうして、二つの亡骸に目を向ける。
惨たらしさが前面に押し出されて見えて、胸の辺りが暗く篩えた。
この惨劇にどう自分は感想を言えばいいのだろうか。
ショボンの暗い情熱、ペニサスの消された思いに、どう応えればよかったのだろうか。
これからの最善策は何なのであろうか。
何を求めればよいのか。

地べたにそのまま座り込むと、散らばったカーボンの矢を一本々々ためつすがめつする。
曲がったり、折れたりした矢は発見しなかった。
矢を全てクイーバーに戻すと、次は拳銃をしげしげと眺める。
黒光りするデフォルメに感じる機能美を、味わうように楽しんだ。

小さなことに拘泥しているうちに、ふいに自分の使命を思い出す。
ブーンは、雄大な虚空を映す窓をバックに、安置された脱出の象徴と半壊した転移装置を見やった。
そうして、二つの亡骸に目を向ける。
惨たらしさが前面に押し出されて見えて、胸の辺りが重く疼いた。
この惨劇に、自分はどう感想をつければよいのだろう。
ショボンの暗い情熱、ペニサスの消された思いに、どう応えればよかったのだろう。
これからの最善策は何なのであろう?
何を求めれば、よいのか。

クイーバーから矢を一本々々取り出しながら、ブーンは思索に耽った。
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:57:14.77 ID:gZ+7TiJfO
支援
233 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:57:41.14 ID:mGMHnw6t0
座ったままで、カーボンの矢を一本々々点検する。
どうやら異常のある矢は無いようだった。
矢を全てクイーバーに戻すと、次は拳銃を。ためつすがめつする
黒光りするデフォルメや、鋭い機能美を、味わうように眺め続けた。

小さなことに拘っているうちに、自分の義務を思い出す。
ブーンは、雄大な虚空を映す窓をバックに、安置された脱出の象徴と半壊した転移装置を見やった。
そうして、二つの亡骸に視線を映した。
凄惨さが目に飛び込んできて、胸の辺りがズキンと響く。
この惨劇に、自分はどう感想を言えばいいんだろう。

ショボンの暗い情熱、ペニサスの細い愛に、どう応えればよかったんだ?

これからの最善策は何なんだ?


何を求めれば、いいんだよ?

あのとき、どうしていれば、よかったんだよ?

・・ ・・・
・・・

                      Part.One End 
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:58:18.02 ID:1KoS2ges0
しえん
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 00:59:00.80 ID:m547Syz60
ちょwwwwおまwwwww
これでまだ一章かよwwwwwwww

いや、面白いからいいんだけどさ。
がんばれ>>1
236 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 00:59:46.15 ID:mGMHnw6t0
とりあえずここでパート1……というか、大部分が終わり
パート2は正直、色々な意味で投下を躊躇いそうだが、もうやってしまおう
237 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:00:32.58 ID:mGMHnw6t0






( ^ω^)ブーンは宇宙船「SIX」の搭乗員のようです Part.Two







238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:01:23.80 ID:gZ+7TiJfO
2もあるのか。
239 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:01:52.36 ID:mGMHnw6t0
そのとき、宇宙に何かが過った。

無機質な暗黒空間を高速で宇宙船は突き進んでいたのだ。
いや、白の外装の宇宙船「SIX」は、確かに高速であったが、所詮、等速直線運動に則っているだけであった。

実際、ブーンは宇宙船「SIX」など居住性のある彗星と大差ないと考えていた。
血生臭さが残る「第二非常用小型宇宙船格納庫」にて、ブーンは佇み続けながら、そんなことばかりを考えていた。


( ^ω^)「………」


ショボンとペニサスが死に、罅の入った、怪しげな音を奏でる思想転移装置が安置されている
この巨大な空間にブーンはぽつねんと立っては、渦巻く思考に心を寄せてばかりいた。

どうすればいいのか、わからなかった。
あまりにも広大な宇宙空間を、タッタ一人に過ごしているという事実は、ブーンの精神を容赦なく蝕んでいた。
ショボンとペニサスが自分のために死んだという過去に、苛まされてしまい、何としても生きなくてはと強迫してしまっていた。

だが、死んだ二人の影で繰り広げられていた争いの所為で、超高速モードに設定することは不可能となってしまった。
現在の「SIX」の速度では、地球に帰還するには後何百年と掛かるだろう。

たった一人、ブーンは孤独の地獄に取り残されてしまった。。。
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:02:05.79 ID:Rgk/0kOI0
支援
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:02:07.28 ID:HX5wagGY0
うおおお
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:02:10.82 ID:gZ+7TiJfO
支援
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:03:02.97 ID:27Il8GJU0
劣化歩くみたいになってきたな
244 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:03:53.35 ID:mGMHnw6t0
Space Demencia...宇宙船員が時折掛かると言われている症状で、
あまりの宇宙の広さに、脳の処理が追い付かなくなり発狂、痴呆化するというものである。

( ^ω^)「………」

搭乗員の試験の際に、発症するかテストされ、搭乗中でも定期的に検査される。
だが、残った搭乗員までもが目の前で死んだショックに加え、唐突に訪れた孤独感は、
ブーンの精神を瞬く間に崩壊させていった。

最近、ブーンは宇宙船内を動き回らなくなった。
燃料室の傷つけられた、争いの痕跡を発見したときは、ブーンは二重の意味で恐れをなしてしまった。
ソレッキリ、ブーンは食料庫から有りっ丈の缶詰を持ち運び、「第二非常用小型宇宙船格納庫」で過ごすことにしたのであった。

腐敗する心配は無い為、ショボンとペニサスの死体はそのまま放置されていた。
思想転移装置も動かされておらず、小型宇宙船など微塵たりとも触れられていなかった。

( ^ω^)「………」

牢獄を脱出した先は、更に巨大な牢獄だった――そんな謳い文句がブーンの頭上に浮かんでは消滅した。

自分は悪くない、悪くないと言い聞かせ、結論を待つという自分の妥協姿勢にはもう疲れた、飽きた、磨り減ってしまった。
時々、ブーンは無心になってみることがある。
そのたびに、宇宙の虚無感が心に入り込み、深い絶望感に襲われてしまうのである。
だから、ブーンは何か、クダラナイことでも考えて過ごしてきたのだが、もう、それにも限界が訪れようとしていた。

発狂の兆しが見えてきた。
245 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:05:02.30 ID:mGMHnw6t0
( ^ω^)「………」



窓の方に目を向けても、星々は張り付いたように動かない。
死体が生き返ることもありえない。
思想転移装置は、不気味な音を鳴らすのみ。

マッハという科学者がこのようなことを述べた。


「時計がなかったら、時間というものは計れなくなるのだろうか。
 勿論、そんなことはなく、時間は時計に関係なく進行していく。

 では、この世のあらゆる物質が動かなかったらどうであろうか。

 変化のない宇宙には何の流れも存在しない。
 空っぽの宇宙には時間は流れないと考えることも出来るのではないだろうか」


これは「相対時間」という概念であるが、ブーンは気の遠くなるほどにこの言葉を噛み締めていた。

今のこの宇宙船の時は止まっていると、確信持って言えることが出来た。
246 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:07:39.78 ID:mGMHnw6t0
時間はブーンを磨り減らしていく。
もはや性根尽き果ててしまった。
変化のない物質に入り込んでしまいたいと考えていた。


もう、死ぬしかないのかな。。。ブーンはボソリと、声に出さず呟いた。
返答など期待していないが、行動するのは自分なのだから問題はない。

死ぬならどう死ねばいいのだろう、と思い立ったあたりで、
不意に、謎の音を聞きつけて、発信源の方を振り返った。

( ^ω^)「……!」

思想転移装置だ。
不気味な音を出しながら、細かく震えていた。
空気が振動しているのが感じ取れた。

――――危ない。
そう思ったとき、久しぶりに、心が激しく高揚したことに気が付いた。

思想転移装置が、危険な動作を続けている、暴走していることに、悦びを感じていた。
自らの生命の危機などお構いなしに、今にも爆発しそうな転移装置の変化が気になって仕様がなくなっていた。
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:08:00.01 ID:gZ+7TiJfO
支援
248 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:09:18.80 ID:mGMHnw6t0
震えていた、思想転移装置は久しく"変化"していた。
ブーンは見惚れてしまった。
危機感のスパイスが、久方ぶりのアクシデントを彩っていた。

ブーンは逃げなかった。
それどころか、覚束ない足取りながらも、思想転移装置に近づいていった。

ゥイ――ィイ……ィイ……イィ……ン――

パチパチと小さく爆ぜるような、電流の流れる音もし始める。
転移装置の表面に、高圧電流が纏わり付いていく。
振動も目に見えて大きくなり、「SIX」全体を動かしているのではと錯覚させる。

( ゚ω゚)「………」

歩みを止めることはなく、ただただ近づいた。


……そうしてついに、思想転移装置は爆発した。

249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:09:41.87 ID:gZ+7TiJfO
支援
250 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:10:22.58 ID:mGMHnw6t0
部屋全体を包み込む一閃がブーンの目を眩ました。
だが、爆発の規模自体は小規模であり、ブーンの身体を傷つけることはなかった。

一瞬が終わり、再び訪れた静寂の中、思想転移装置は半身を擡げたまま痙攣していた。
組み込まれた回路の、基板や歯車、電線などが露出になっている。

しかし、ブーンの目にそれが映ることはなかった。
先程の一閃、光こそが、ブーンの脳髄を深く呼び起こしたのである。


( ゚ω゚)「       」

目の前の光景など、見えてはいなかった。
思想転移装置の最後の光は、ブーンの澱んだ深層心理を露わにしようと、躍起になっていた。


そうしてブーンの脳裏には、捲りめく己のナニカがまるで映画のように開始されたのである。……


  ・・・  ・・・・・

    ・・・ ・・・・・・
251 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:12:48.00 ID:mGMHnw6t0
目の前に一枚の真っ白なキャンパスが現れた。
暗雲たる背景をバックにしたそれは、どこか清々しくて不気味である。

その無垢な白が唐突に変化していく。
線が描かれ、色が垂らされ、水にぬらされたかと思うと、
またも線が描かれ、色が垂らされ、水に濡らされていくのであった。
四季の変化のようにドンドンとカオスティックな抽象画となっていくのであるが、

やがて時間も経つと、具体的な絵画へと変貌したのであった。


「真っ黒な頭巾を被った集団が、両手を広げて天を仰いでいる。」


題名は「Fall Out」といい、作成者は近代芸術の象徴と揶揄された「ミサ・エイカー」である。
彼の作成した芸術は高く評価され、22世紀のピカソと言わしめたほどであるが、
突然の自殺により、更に価値が跳ね上がった。
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:13:09.98 ID:gZ+7TiJfO
なにりょく、と読んでしまい、変な考えが頭をよぎったぜ……。
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:13:33.92 ID:YdZlOi330
俺、眠れないような気がしてきた。
保守
254 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:14:03.33 ID:mGMHnw6t0
彼の死こそが芸術の死とも称えられ、事実、それ以降の時代に大成した芸術家は存在しなかった。
その彼も、芸術に終止符を打ったとされるが、彼の名前の由来を見ると、どうにも頷いてしまうのである。

ミサ・エイカー……Mass・Acre……Massacre(虐殺)……ソノ名に恥じぬ、
暗くメタファー的な絵を多く発表してきたのであるが、ソノ中でも、
「Fall Out」は大問題作として扱われた、彼の代表作である。

天を仰ぐ狂信者……その天には、UFOらしき物体が犇いている。
キュビズムの新解釈と評される新技法を編み出した作品でもあるが、
本作以降にその技法は使用されておらず(少なくとも、エイカー自身は)究極の一点主義とも言われている。


そこで、もう一度「Fall Out」を鑑賞してみる。

集団といっても、黒頭巾の者は三人であり、その中央にはバケツめいた物が置かれている。

生首を入れた、血を入れた、チュパカブラ信仰の象徴である……等々、専門家は指摘するのであるが、
今現在、最も有力な説は、紀元前五世紀中国北部の、「酢を味わう者〈ヴィネガー・テイスターズ〉」が元ネタであるというものである。
255 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:15:17.56 ID:mGMHnw6t0
「酢を味わう者」とは、古から伝わる中国の絵で、大きな桶を、三人の男が囲んでいるという構図だ。
桶には酢がナミナミと注がれており、そうして三人は、酢に指を浸してから味見をしているのだ。
一人々々の表情は異なっており、また、その者達は中国の三教の代表者なのである。

・孔子――儒教――は顔を酸っぱくさせている。
・仏陀――仏教――は顔を苦くさせている。
・老子――道教――は顔を微笑ませている。

それぞれの反応が三教の違いを表している。

この絵は特に道教での引用が多く、タオイズムにおいては重要な観点となっている。
一瞬一瞬をありのままに受け入れて、明日は別の日だと信じるという、重要なファクターである。

エイカーが何を考え、この絵を創作したのか――――今となっては、誰にも分からないのである。云々。


               
       ・・  ・・
              ・・・  ・・・


              第一の手紙     
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:16:08.20 ID:gZ+7TiJfO
支援
257作者:2008/02/24(日) 01:17:14.81 ID:0NtLsOAqO
またさるです
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:17:15.01 ID:gZ+7TiJfO
支援
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:18:23.67 ID:CGSuEpVO0
支援
260 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:25:19.03 ID:mGMHnw6t0
内藤ホライゾン様へ。 

搭乗員テスト前日。寮にて。            内藤ホライゾンより。


未来の自分よ。気分はどうだろう? 僕は、最悪だ。
今も、心臓が張り裂けてしまいそうで、これから眠るなんて出来ようもない。
明日のテストには体力測定も含まれているのだから、英気を養わなくちゃいけないのに……。

ホット・ウイスキーを飲んでも駄目だった。
本当はアルコールなんて摂りたくなかったけれど、眠るためだもの。
それでも駄目だった。

だからこうして、未来の自分に向けて手紙を書くことにしたんだ。
筆記テストもそういえば、明日あるらしいから、それの練習も兼ねられるかな、と思って。

ああ、大丈夫。
書いている現在、確かに夜中だけれど、ランプを点けているから、ルームメイトにはそう迷惑を掛けていないよ。
ブラインドタッチは得意だけれど、タイプ音を最小限に止めるのも得意なんだ。

でも、未来の自分なら、そういうこともキチンと覚えているよね……。
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:26:25.31 ID:gZ+7TiJfO
支援
262 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:27:12.20 ID:mGMHnw6t0
僕はこれを書くのに、正直言って、構成を考えていない。
ただ闇雲に、書きたいことを書いているから、起承転結もヘッタクレもないんだ。
思いをブッチャけたくって。ただ、それだけなんだ。

未来の自分はどうなっているんだろう?
テストに合格して、晴れて宇宙船の搭乗員になれたのかな?
今、太陽圏外を飛んでいる宇宙船は「FIVE」だから、僕が乗るのは「SIX」なのかな?

もし「SIX」なら、僕はまだ階級は低いんだろうね。
司令官や副司令官は誰なんだろう?
金星再テラフォーミングに大きく貢献したショボンさんや、「FOUR」の司令官だった●●●さんかな?

僕はその人達を尊敬している。
でも、たとえ尊敬できないような人……例えば●●●さんや、●●●さんだったら……。
それでも僕は、その人達を尊敬しなくちゃ。

さて、そろそろ眠くなってきたよ。
ここまで書いたお陰かな……?
それとも、ウイスキーが回ってきたのかもしれない。
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:28:40.70 ID:gZ+7TiJfO
支援
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:29:26.34 ID:gZ+7TiJfO
支援
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:29:36.67 ID:0NtLsOAqO
さるったんでセルフ支援
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:30:34.66 ID:0NtLsOAqO
もいっちょ
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:30:45.35 ID:gZ+7TiJfO
支援
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:31:13.91 ID:gZ+7TiJfO
ええい、俺がさるになるまで支援する
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:32:21.99 ID:0NtLsOAqO
ありがとう
開始は37分くらいだと
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:34:21.28 ID:CGSuEpVO0
今のうちの追いつこう支援
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:35:56.32 ID:0NtLsOAqO
今の進み的に二時台には完結出来るかな?
272 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:38:09.80 ID:mGMHnw6t0
              第二の手紙
         
内藤ホライゾン様へ。

搭乗員テスト終了後。レザールームにて。            内藤ホライゾンより。


僕よ、僕よ。
懺悔しなければいけない。
まさか、あんなことになってしまうだなんて……。

試験には合格しただろう。
だが、いや……もう、それすらどうでもよくなってしまいそうだ。
僕は十字架を背負って、これから職務を遂行するのだろうか。

どうしようもない。
これからの人生、僕は一生楽しめそうに無い。

ウイスキーのラベルを見るだけで、死にたい気持ちに駆られてしまう。
ジョニー・ウォーカーの名を聞くのも嫌だ……。
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:39:14.59 ID:gZ+7TiJfO
支援
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:39:16.24 ID:OtmHbzQ3O
就寝前の保守
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:39:40.32 ID:gZ+7TiJfO
支援
276 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:39:52.57 ID:mGMHnw6t0
              第三の手紙
         
内藤ホライゾン様へ。

研修中。タイタンの寮にて。            内藤ホライゾンより。


休憩時間のとき、礼拝堂に寄ったんだ。
そこはステンドグラスが煌びやかに輝いていて、土星の光を受けると、随分妖しく光る。
祭壇奥に飾られている絵は、「FALL OUT」というタイトルらしい。

とても不思議な絵で、観ているだけで、気持ちが燻っていくのが分かった。

過去の罪が、まるで流されていくかのよう……。

俺は頑張らなくてはならない。
そうだ、おそらく、俺が搭乗するのは「SIX」になりそうだ。

謂れを持つ、不気味な数だ。
そして、完全数でもある。

惑星ニューソクとの交流という話も出ている。
頑張らなくてはならない。
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:40:11.76 ID:gZ+7TiJfO
支援
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:40:33.30 ID:gZ+7TiJfO
支援
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:40:47.10 ID:1KoS2ges0
揶揄?
・・比喩?
280 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:42:20.61 ID:mGMHnw6t0
だけど、まだウイスキーは苦手だ。
タッタ今の、単語ですら、書いただけで胸が痛くなる。

これからも、ズットこのままなのだろうか。
正直言って、もう、俺は時効のような気がする……。
他人に言われるべきことなのだが、しかし、そう考えないとやっていけないのだ。

被害者のあの人も、もう、立ち直っているのかも……。
いや、確かにこれは俺の憶測に過ぎないけど……でも……。

……ああ、そうそう、そうだ、未来の俺よ。
研修の時、素晴らしい美女を見つけたんだ。
黒髪で、名前はまだ知らないが、絶世の美女だ。

未来の俺よ、俺とその美女との関係を教えてくれないか?
凄く気になるよ。


……ここまで書いて気がついた。
いつの間にか、一人称が俺になっている。
直すのも面倒くさいし、このままにしておくが、不思議だ。
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:42:40.36 ID:gZ+7TiJfO
支援
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:42:48.28 ID:CGSuEpVO0
支援
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:43:10.35 ID:gZ+7TiJfO
支援
284 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:43:47.65 ID:mGMHnw6t0
              第四の手紙
         
内藤ホライゾン様へ。

宇宙船「SIX」搭乗前日。センターにて。            内藤ホライゾンより。


未来の僕よ……。
この出だしにもそろそろ、飽きてきた頃だ。
時に僕は、いつも昔の自分から返答を求められていた気がする。

だから、今日は過去の手紙でも見返そうと思う。


第一の手紙へ

気分? まぁまぁいいよ。確かに緊張しているが、そこまでの程でもない。
何せ、搭乗前のミーティングを見る限り、みな、気の置けない奴らだったんだ。
これなら、絶対楽しめそうさ。まるで気分は遠足に行くかのよう。

司令官は、そう、想像通りショボンだった。いい人そうだった。でも、ちょっと不気味かな?
ジトっとした目がどうも好きになれない。やたら目が合うのも、なんだか気味悪かったし……。
だけれど、この人は凄い人らしいし、挨拶なんかでも威厳があって、頼れそうな人だった。

タイピングは更に速くなったぞ。書類関係の仕事はバッチシさ。
それに、階級は確かに低いが、待遇は悪くない。気に病んでいないよ。

……ウイスキーはやめてくれ。
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:44:36.09 ID:gZ+7TiJfO
支援
286 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:45:19.41 ID:mGMHnw6t0
第二の手紙へ

これを読んだとき、僕の心は胸が痛くなった。
破り捨てようと思ったが、過去を受け入れなければならない。
だから、応えよう。

君はまだ大丈夫だ。
一時の感傷に浸っているだけ……。

僕だって、まだ完全に立ち直れたわけじゃない。

……完全な懺悔とは、全てを告白することだ。

だけれど、告白した瞬間、僕はこの地位を追いやられてしまう。


……もう、忘れるしかないさ。
そうだ、今じゃ苦しんでいる人は居ないに違いない。もう立ち直っているはずさ。
僕だけが気にしているだけなんだよ。
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:45:22.93 ID:gZ+7TiJfO
支援
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:45:48.37 ID:gZ+7TiJfO
支援
289 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:47:08.42 ID:mGMHnw6t0
広大な宇宙や、素晴らしい惑星の数々が目の前に迫っている……。
あとはこのシガラミを、解き放つだけ。


ここまで書いて気がついた。
俺は、何で自分に向けて手紙なぞ送っているのだろう?
だって、正直言って、覚えていない。
キッカケを、覚えていない……。

(第一の手紙を読み返す)

ああそうだ、緊張で眠れなかったからだっけ……。
でも、あれ……なぜショボンさん以外の名前が抹消されているんだろう?

なら、今書いてるこの環境は……おかしいな。
チョット待てよ?

あれ?

……そもそも何故これを書いているんだ?
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:47:10.89 ID:qvb5GgSrO
よくわからんが支援
291 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:48:22.26 ID:mGMHnw6t0
              第五の手紙
         
ブーン様へ。

搭乗中。宇宙船「SIX」自部屋にて。            ブーンより。


前の手紙の際、返答出来なかった質問が残っていたので、ここで回答しておこうと思う。


第三の手紙へ

「SIX」は素晴らしい宇宙船だ。完全数とかはあまり考えていないが、
少なくとも、不吉であるはずなどない。

だが、「FALL OUT」というものはよく分からない。
何せ今、幸せの絶頂にいるのだからな。
忘れてしまったのかもしれない。そんな不吉なタイトルの絵など。
ウイスキーは今でも駄目だな。
もう、あのことなど忘却の彼方だが、今でも思い出すとズキンと心に響くよ。

そして自分よ、過去の僕よ、驚け、喜べ。
その美女はペニサスといい、なんと今では僕の恋人なのだ。
                      
292 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:50:11.52 ID:mGMHnw6t0
嬉しいことに、相思相愛なのだ。
あんな、素晴らしい才女とだよ?
だから、今の僕は幸せを実感している。

彼女の髪の毛、肌、柔らかな四肢、何もかもが僕に委ねられている。
永遠に広がる虚空の中で味わう温もりの、素晴らしいこと。
過去の僕に伝えられるとしたら、その僕が持っている、初恋めいた純真を、
今、取り囲むようにして妖艶な触手をうねくらせたいと懇望する。

そうしたならば、過去の僕が持っていた、ペニサス嬢への遠慮を取り払えることであろう。
会って瞬く間に逢引を進めることが可能であろう。
僕達は、更に仲を深め、心通わせられるに違いないのだ。

だが、タイムマシーンなど、未だ完成していないのだから、無理な話というのは当然承知だ。
特に、過去に戻るなど、素粒子がブランク時間、実験により「戻った可能性」があるというだけだ。
時空熱力学は専門外だから、知悉しているわけじゃないけれど。

まぁいい。
今の僕と彼女の親交を深ませられたら――だなんて絵空事は、止すことにしよう。
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:51:37.48 ID:qvb5GgSrO
支援
294 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:53:14.01 ID:mGMHnw6t0
そういえば僕は、感情が昂ると人称が変わるそうだね。
だが、そんな癖は誰もが持っていて可笑しいことではないし、どうでもいいことだ。……
不思議がる必要などない。



第四の手紙へ

過去を見返した手紙を更に見返す。
そうすると、まるで、進化しているような気分になるな。

第一の手紙へのレスポンスだが、ここで少し訂正しなければならない箇所がある。
ショボン司令官についてだ。
彼ほど、つまらなくて、陰気臭い人間は見たことがないよ。

たまに擦れ違うとき、挨拶をしても、アチラは身体を戦かすのみで、ギコチナイ動作なんだ。
極めつけは、ペニサスの身体をジトっとした湿っぽい目線で舐め回すのだ。
我慢ならないこの行動だが、上官とあっては、そうそう言えることではない。
加えて、彼は基本的に自分の部屋に居るらしいからな。

そうそう、彼は自分の部屋で時折泣いているそうだよ。
ホームシックにでもかかったのか知らないけれど、あまり、頼れそうにないな。
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:54:06.28 ID:gZ+7TiJfO
支援
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:54:24.54 ID:gZ+7TiJfO
よし、さる解除
297 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:55:33.04 ID:mGMHnw6t0
酒浸りだかナンダカ知らないけれど、目があうたびに、顔が赤らんでいるのを知る。
まぁ、手紙の中でくらい、彼の話題は止したいものだけどね。

第二の手紙へのレスポンスだが、こればっかりは訂正どころか削除をしなくてはならないだろう。
この頃の僕はまだ、感傷に浸っていたらしいね。
第二の手紙のときよりは随分マシらしいが、それでもまだ惨めクサくて、とても読み返せる代物じゃないよ。

なんてことだ。反省なんて。告白だなんて。
莫迦らしいし、沙汰の限りとしか言えないね。

なんだって、そんなことをしなくっちゃいけないんだろうか。
幸せが手中に収められた今、過去の罪だなんて奴は時効になっちまったのさ。

むしろ俺は莫迦にする。その被害者って奴をね。
僕がこうも栄光を抱いているというのに、彼は未だ幸せでないとするならば、これほど愉快なこともない。
騙されるほうが往々にして悪いことは、誰だって承知しているではないか。

愚かだなぁと見下してやれるし、弱肉強食だと足で踏ん付けてやれる。

なんにせよ、僕は反省などしてやんないよ。
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:55:48.27 ID:gZ+7TiJfO
支援
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:56:53.70 ID:gZ+7TiJfO
中々の変貌っぷりだな……。
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:57:13.00 ID:qvb5GgSrO
支援
301 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:57:18.75 ID:mGMHnw6t0
そうだ、僕はとある、面白い薔薇の存在を知った。
読書をしているときに、ね。

Offering Au Neantといってね、これは世にも珍しい、"光る薔薇"らしいんだ。
金星なんかで咲き誇る、「薔薇の革命」だなんて謳われたそうだ。

だが、真実は違う。
Offering Au Neantは決して光りなどしない、単なる紅い薔薇に過ぎないんだ。
光ると信じることこそが、意味をもたらすだなんてね。
そう、現実逃避の象徴でもあり、それこそがこの薔薇の名に相応しいことなんだけれども……。

金星といえば、あのゲイとかが集まってる、忌々しい流刑地じゃないか。
そんなところで、現実逃避だなんて虚無を崇めているという事実は、面白おかしいと思わないか。

ハッハッハッハ……笑えてきてしょうがないね。
しかし、これは現状や過去を考えれば、ある意味当然のことかもしれないけれどね。
だが、その当然こそが、面白くってタマラナイヤ……。

ハッハッハッハッハ……
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:57:31.33 ID:qvb5GgSrO
支援
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:57:47.56 ID:qvb5GgSrO
支援
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:58:17.17 ID:qvb5GgSrO
支援
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:58:26.98 ID:gZ+7TiJfO
中々の変貌っぷりだな……。
306 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 01:58:36.65 ID:mGMHnw6t0
何故これを書いているかって……?

ハッハッハッハッハ……


何もかもが愉快だ。笑えてきてしょうがないな。
ああ、僕は幸せだよ。
そろそろ「ニューソク」に着く。
友も居れば、美しい恋人も居る。




幸せ真っ只中の僕が、なんでシガラミなんかに囚われなくっちゃならないのさァ?


・・ ・・・・

・ ・・・



              第六の手紙
307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:58:51.76 ID:gZ+7TiJfO
しまった
308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 01:59:39.68 ID:gZ+7TiJfO
支援
309 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:00:12.36 ID:mGMHnw6t0
     改め、罪深き男による懺悔書。また、愚かな人生への供物。

皆様へ。

「SIX」にて。                       罪深き男、内藤ホライゾンより。


私は愚かな人間だ。今、どれほどまでに実感していることか。
この第一の手紙から第五の手紙まで読んでいけば、僕が、どれほど卑しい人物か見ることが出来るだろう。

自らの罪を償うどころか、己を正当化して他人を蔑視するに至った。
どれほど忌々しい行為、思考か、皆なら判断出来るだろう。

だから、ここで謝罪したいと思う。
そして、脳髄から垂れ流される神秘の毒薬にて、自害しようと思う。


だが、その前に聞いて欲しい。


この畜生以下の罪人の、愚かにも最後に空想したことを――――

310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:01:10.40 ID:gZ+7TiJfO
支援
311 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:02:07.23 ID:mGMHnw6t0
「目の前に一枚の真っ白なキャンパスが現れた。
暗雲たる背景をバックにしたそれは、どこか清々しくて不気味である。」……



「FALL OUT」という絵画についての話だ。
だが、実際には、こんな作品も、ミサ・エイカーなどという人物も存在しないのだ。
全て、虚空から生まれた産物であり、私の深い心の闇を象徴しているだろう。

それをあたかも真実のように語る、自分の嘘吐き加減にはほとほと呆れる。
どうしようもない、クズだ。
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:02:10.77 ID:gZ+7TiJfO
支援
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:02:35.43 ID:qvb5GgSrO
支援
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:02:51.69 ID:qvb5GgSrO
支援
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:03:01.85 ID:gZ+7TiJfO
ゴクリ……
316 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:03:14.55 ID:mGMHnw6t0
コンナ卑しいのだから、こんなにドス黒いのだから、「SIX」の惨劇が引き起こされたに違いないのだ。

ショボン司令官、ペニサス嬢、二人とも、善良なる搭乗員であった。
秩序を守り、任務を果たそうとしていたのだ。

だが……こんな俺が、「SIX」に乗ってしまったばかりに、搭乗員に選出されたばっかりに、
生まれてきたバッカリに、アンナ血みどろな現場が生まれたのであろう。

ウイスキーの蒸気で強かに濁らせた水を、テストの前に、ライバルに飲ませたばっかりに。
そうだ、配給された水の中にタラリと垂らしたばっかりに。

そもそも、生まれてきたばっかりに。


あんな、人類の恥ともいえる事態となったに違いないのだ。

だから俺は死のうと思う。
懺悔の念を心に抱きながら、泣き伏せて消え失せようと思う。
善良なる皆様よ、俺は死ぬ。

全ての幕を引こうと願っているのだ。
317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:03:23.13 ID:qvb5GgSrO
支援
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:03:39.85 ID:qvb5GgSrO
支援
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:03:56.92 ID:qvb5GgSrO
支援
320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:04:08.97 ID:gZ+7TiJfO
支援
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:04:12.71 ID:qvb5GgSrO
支援
322 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:04:42.13 ID:mGMHnw6t0
俺の記憶を抽出して作り上げた第一の手紙から第六の手紙であるが、これは思想転移装置のお陰に他ならない。
自分だけでは懺悔書も空前絶後の遺言状を執筆することも出来ないのだ。

見えない誰かに操られた気分であり、その者に千の感謝の念を示したいほどだ。

さようなら。俺は我が脳髄から垂れる毒薬により、自害しようと思う。

さようなら、今、断罪されようと思う。

さようなら、罪の無い人達よ。天国で末永く幸せになって欲しい。
      僕は地獄で永劫焼かれることを望む。


さようなら、さようなら。



昏冥は永劫、沈黙することにします。


さあ、しぬぞ。 アッハッハ……ァ。
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:06:07.70 ID:Y/v1deJ3O
10時から入試の俺が支援
324 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:06:29.33 ID:mGMHnw6t0







( ゜ω゜)「              」








325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:06:31.53 ID:gZ+7TiJfO
支援
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:08:12.56 ID:gZ+7TiJfO
支援
327 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:08:24.12 ID:mGMHnw6t0
為すすべも無く、ブーンはその場にうつ伏せて倒れ込んだ。
脳内で繰り広げられた、悪夢のような絵巻物に毒された所為である。
ブーンは硬直したように、白目を向いて阿鼻叫喚に耐えていたが、

堪えきれず、左手の小指一本を痙攣させた。

その刹那、ブーンの脳内にはまたも、第一の手紙から第六の手紙が繰り広げられたのであった。
吐き気を伴う頭痛が、ブーンに襲い掛かる。
涎を危うく口角から流し、汁が床に一滴、糸をつけながら垂れた。
垂れた瞬間に、ブーンは自身の身体に電撃が走ったような気がした。
思わず身体を僅かにエビ反らせると、第一の手紙から第六の手紙が再びリピートしてしまうのであった。

ブーンは意識を失った。
だが、心臓の鼓動が、胸と床が密着していることにより、ブーンの身体を動作させるに至った。

ブーンの薄れゆく自我の中で、「FALL OUT」から第六の手紙は躍動し続けるのであった。

ブーンの精神は、身体さえ動かさなければ、この悪夢から逃れられるということを悟った。
328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:10:08.76 ID:gZ+7TiJfO
支援
329 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:10:40.18 ID:mGMHnw6t0
「生きること」を止めればいい。

耐え難い頭痛の中で目を覚まし、やおら顎をしゃくってしまい
手紙地獄を繰り返したブーンは、その決定に異論を唱えなかった。
寂寥たる視界は朧ろいでいき、熱い血脈の鼓動は次第々々に沈静されていく。

この空間では死体の腐敗速度が極端に遅いと言えど、「SIX」が地球に帰還する二百六十年後には
完全に白骨化するであろう。

眼窩が露わになり、脳漿が形を失いさえすれば、動きは完全停止するであろう。
だが、腐肉になっても僅か僅かに痙攣めいた動作はする。
死骸となったとしても、この無限地獄から逃れられないのだろうか、
と危惧したが、もはや男に暇は残されていなかった。

徐々に抜け殻となっていく男の四肢、胴体はピクリとも震動しなかった。

男は絶命した。


最期に考えたことは、僕はこれから、死と云う昏冥の中で永劫、沈黙するしかないのだな。という悟りであった。

………。

                   FALL OUT.
                             Part.Two End
330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:12:31.84 ID:gZ+7TiJfO
あ〜……乙?
331 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:12:52.02 ID:mGMHnw6t0
ここでパート2が終了です……
パート3も、そんな長くないので、多分、3時前には。

あー、いよいよ本腰入れないとなぁ
332 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:14:19.27 ID:mGMHnw6t0
                  





( ^ω^)ブーンは宇宙船「SIX」の搭乗員のようです Part.Three








  
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:15:21.41 ID:gZ+7TiJfO
3もあるか
334 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:15:47.81 ID:mGMHnw6t0
1984年。夏の東京。


スクランブル交差点の前で停止していた人間の波が、信号機の移り変わりとともに蠢いた。
都会の喧騒は今日も変わらず、犇く足音と車の移動音が大部分を占めている。
正午を過ぎた辺りで、陽光は大変強く、歩くサラリーマンの大半はハンカチを手にしている。
日傘をさした婦人や、既に真っ黒に日焼けした若者などは、太陽を気にする様子もなく進んでいた。

交差点付近で乗用車がクラクションを鳴らした。
渡る人々は揃って嫌な顔をして、車の大群を睨みつける。
バスケシャツを着こなした若者集団などは、裏ピースを当て付けたり、唾を吐くなりしてストレスを発散させていた。

白線が所々に途切れたアスファルトの交差点は、通行人の足取りを一心に受け止めているだけでなく、
吸殻や千切れたビニールなどのゴミを塗されていた。
通行人は気にすることなく、煙草を吸い終わればその場に落とし、ガムを噛み終えればその場に吐き捨てる。

今、歩行者用の信号機が点滅をし、通行人に早く渡るよう促した。
途端に騒がしさが増して、夏の息詰まる感覚を強くさせた。

銀色の高層ビルは陽光を一心に受け止め、地上から見上げると、いつも以上に聳え立っているように映る。
そのビルが、周囲を阻むようにして建っているのだから、都会に慣れていない人間は、余計に息苦しさを覚えるのであった。
335以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:17:00.02 ID:gZ+7TiJfO
支援
336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:17:42.54 ID:gZ+7TiJfO
支援
337 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:17:52.01 ID:mGMHnw6t0
コンクリート・ジャングルを形成しているビルの一角の正面玄関から、群集が這うように出て来た。
その人波の表情は皆、一様にして気難しそうにしている。

夜が更ければネオンライトが煌びやかに光るであろう看板が屋上に聳えているこの建物は、都内でも有数の巨大な映画館であった。

今しがた、とある映画の上映が終了し、その客が皆出て来ているのであるが、映画を観た直後の顔にしてはやはり、どうにも優れない。
一組のカップルも、例外ではなかった。
青年は観た映画のパンフレットを脇に挟みながら、なにかに専心しているような面持ちで、対照的に
娘はハンドバッグを大事そうに抱えながら、眉を潜めて、不機嫌な感情を隠さなかった。

カップルは、人波に流されないように、街路の隅の常緑樹の下に寄ると、
何やら相談をしてから、再び往来を進み始めた。

二人が向かった先は、マクドナルドであった。
茹だるような暑さから逃れるようして入店する。
昼下がりであるため、店内は満杯かもしれないと危惧していたのだが、
幸いなことに想像以下の客足で、レジまでスムーズに進めそうであった。

カップルは同一のセットメニューを注文すると、二階席の窓際を陣取った。
サービスの水を、娘は一気飲みすると、大きく息をついた。
カランと氷が、涼しげな音を立てながら、グラスはテーブルに置かれた。

ξ゚听)ξ「何だったのよアレは!?」

口を尖らせながら、向かい合わせに座る青年に、早速食って掛かった。
338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:19:00.55 ID:gZ+7TiJfO
支援
339 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:19:10.35 ID:mGMHnw6t0
('A`)「まぁまぁ」

青年は宥めるように返すと、

('A`)「これから、何だったのか知ろうとするんじゃないか」

そう言って、映画のパンフレットをテーブルの中央にパサリと投げつけた。
娘はパンフレットの表紙を見ると、露骨に顔を顰めた。

ξ゚听)ξ「……分かる気がしないんだもの」

('A`)「そりゃこっちだってそうさ」

娘は再度、パンフレットに目を落とした。
今度は、題字を睨みつけるように見る。

題字には、こう書かれていた。



       『( ^ω^)ブーンは宇宙船「SIX」の搭乗員のようです』       
   


                  
340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:19:30.50 ID:gZ+7TiJfO
支援
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:20:59.83 ID:qvb5GgSrO
支援
342 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:21:01.38 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「大体、なんで久しぶりのデートがコレなわけ?」

娘の不満の大半は、その疑問に含まれているらしかった。

('A`)「だって、今年1984年はSFを観なくっちゃ!」

ξ゚听)ξ「なにそれ意味わかんない」

('A`)「ま、まぁ……な。でも、この映画の謎を解くのは、結構面白そうな気がするんだ」

ξ゚听)ξ「何言ってんだか」

娘は軽く一蹴したが、身体を乗り出すようにして、

ξ゚听)ξ「でも、謎解きとかは私の方が得意だしね〜」

優越感を隠さずに顔を綻ばせると、パンフレットを手に取り、パラパラと手繰った。
青年は黙ってその仕草を見つめていた。実際、謎解きなどを得意にしているのは娘の方であった。
推理小説やサスペンス・ドラマでも、立ち所に犯人を言い当てるのは娘である。
ミステリージャンルを趣味にしているのは、青年の方であるため、
青年は時折、娘の才能を本気で羨ましく思うのであった。
343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:21:08.83 ID:QdY/Lm5e0
今から実況開始wwwwwwwwwwwwwwwwww
ひとりかくれんぼ 人形でお呪い79体目
http://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/occult/1203265474/
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:21:14.25 ID:gZ+7TiJfO
支援
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:21:15.70 ID:qvb5GgSrO
支援
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:21:31.75 ID:qvb5GgSrO
支援
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:21:46.53 ID:qvb5GgSrO
支援
348 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:22:06.70 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「ふうん……」

娘は一旦、ページをめくる手を止めると、水に手を伸ばした。
飲みながら、どこか苛立ちを覚えているような表情を出している。
青年は妥協してるんだな、と推察した。
喉が渇いてしょうがないのに、頼んだアイスコーヒーがまだ来ないため、お冷で我慢しているのだろう。
青年はそんな娘の思考をありありと感じ取りながら、一言投げかけた。

('A`)「第一の手紙や、第二の手紙は『少女地獄』の『殺人リレー』からだと思うんだ」

ξ゚听)ξ「なぁにそれ」

('A`)「夢野久作の作品でね、『少女地獄』は書簡体形式の文体で書かれた短編集なんだ。
    『殺人リレー』はその中の一つで、六つの手紙で構成された話でね」

ξ゚听)ξ「話は似てるの?」

娘はページの文章に目を落としながら尋ねた。

('A`)「いや全然。『殺人リレー』は女性の心の揺れ動きとかがね……」

ξ゚听)ξ「じゃあ関係ないんじゃないの?」

娘はあっさりと撥ね付けた。
349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:22:15.78 ID:qvb5GgSrO
支援
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:22:17.55 ID:TshkrYMg0
なんという超展開・・・
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:22:39.97 ID:gZ+7TiJfO
支援
352 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:23:15.31 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「第六の手紙って、単純に宇宙船が『SIX』だからじゃないの?」

('A`)「でも、手紙の形式がちょっと似てるんだよ」

ξ゚听)ξ「製作者陣の趣味なんじゃないの?」

('A`)「う、うう〜ん」

ξ゚听)ξ「それより、あの手紙って誰の考えで構成したものなのかしら」

('A`)「はい?」

青年は抜けた声を出すと、諭すようにして、

('A`)「そりゃブーンだろ、作中にもそういう説明があったじゃん」

ξ゚听)ξ「はたしてそれはどうかな?」

傲慢ぶった声色で言うと、ニコリと笑ってから、

ξ゚听)ξ「キーワードは『FALL OUT』よ」
353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:23:31.52 ID:RPVl9Kdr0
ほんと夢野好きだなwwwwwww
354以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:23:51.70 ID:gZ+7TiJfO
支援
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:24:21.93 ID:v9UVqltNO
夢野今日古本屋で探したけどなかった支援
356 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:24:55.83 ID:mGMHnw6t0
すっかり彼女が乗り気になっているのをほくそ笑みながら、青年は聞き返した。

('A`)「『FALL OUT』……? そういや、英国のとあるd」

ξ゚听)ξ「全然違う! あのね、『FALL OUT』については、手紙のシーンで矛盾があるの」

切り込む口調になって、

ξ゚听)ξ「第五の手紙では存在を忘れて、第六の手紙では"存在しない"てハッキリ言ってるの。
      でもね、第三の手紙の記述には、はっきりと『FALL OUT』という絵を観たってあるの!」

('A`)「そ、そうなんだ。というかあの絵は絶対蛇足だろ……」

ξ゚听)ξ「そうよ、だから、手紙はブーンの記憶を練り上げて作られたモノでなくって、
      『真犯人』の手によってつくられた、いわば偽の懺悔書なのよ!」

迫力に気圧されたような顔になりながらも、青年は突っ込むようにして、

('A`)「しっかり観てたんじゃないか」

ξ゚听)ξ「だって暇だったもん」
357以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:25:55.13 ID:gZ+7TiJfO
支援
358 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:26:25.74 ID:mGMHnw6t0
('A`)「……。でも……真犯人って。これじゃ、ジャンルはミステリーじゃんか」

ξ゚听)ξ「きっと、実はそうなのよ!」

ここで、食事品を取りに来るようにと告げるアナウンスが店内に響いた。
青年と娘の頼んだメニューが完成したらしく、番号が一致している。
議論を一旦中断すると、二人は席を離れてレジカウンターに向かった。

・・ ・・・

セットメニューを乗せたトレイをいそいそと運びながら、二人は席に戻った。
それから二人は、議論を忘れたかのように食事に夢中になった。
青年は美味そうにビッグマックに齧りつき、娘は嬉しそうにガムシロップを入れたアイスコーヒーをかき回す。

議論が再開されたのは、青年がナゲットに手を出してからであった。

('A`)「真犯人だなんて言うけど、じゃあ犯人は誰なんだよ」

ξ゚听)ξ「まだ分かるわけないじゃない」

揚げたてのフライドポテトを頬張りながら、娘は返した。

ξ゚听)ξ「これから当ててやるの」
359以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:26:59.81 ID:gZ+7TiJfO
もうちょい手紙について考える時間が欲しかったな……。
360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:27:25.02 ID:RPVl9Kdr0
手紙どうしに矛盾があるといえば瓶詰地獄か
361 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:28:38.00 ID:mGMHnw6t0
('A`)「候補は誰なんだい」

ナゲットに伸ばす手を遅くしながら、青年は尋ねた。

ξ゚听)ξ「そうね〜、まあショボン、ペニサスは鉄板として、あとはブーンに出し抜かれた人かしら」

('A`)「最後の奴はナシだろ!」

('A`)「ノックスの第一項に反してるし、だいたい、名前すら出てきてないじゃないか」

ξ゚听)ξ「でも、そもそも犯人が居ること自体アヤフヤなこの物語にノックスの十戒なんてバカげてない?」

う、と青年は返す言葉も見付からないようで、黙りこくってコーラをストローで啜った。

('A`)「でね、気付いたんだけど、ペニサスだけ心情の吐露が少なすぎるのよ」

('A`)「ペニサス?」

ストローから口を離すと、青年は怪訝な声で、

('A`)「ショボンの独自の前にあったじゃん」

ξ゚听)ξ「だから、それが少ないっての」
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:28:56.31 ID:Rgk/0kOI0
支援
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:29:36.40 ID:YuJd3F3L0
おもしれーな支援
364 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:30:06.82 ID:mGMHnw6t0
念を押すような口調で言うと、続けて、

ξ゚听)ξ「ペニサスだって、充分に苦しんでたはずなのに、少な過ぎるよ」

('A`)「ふうん」

ξ゚听)ξ「何その反応? ……とにかく、更に第六の手紙で"誰かに操られているようだ"ってあるじゃない。
      きっと、その誰かってペニサスなんだよ」

('A`)「でも、う〜ん」

青年は認めづらい様子らしかったが、娘は畳み掛けるようにして、

ξ゚听)ξ「あの懺悔書ってのは、歪んだペニサスの怒りの吐露なんだわ。
      ホモかもしれないという疑惑が、一気に膨らんだ結果なのよ」

('A`)「じゃ、真犯人はペニサスってかい?」

ξ゚听)ξ「じゃないかなぁ?」

('A`)「……そういえば、思想転移装置の記述で、人格コピーが出来るってあったなぁ」

青年は思い出したように言う。
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:30:14.90 ID:v9UVqltNO
>>361
ドクヲがwww
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:30:48.22 ID:gZ+7TiJfO
支援
367361の訂正 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:31:41.38 ID:mGMHnw6t0
('A`)「候補は誰なんだい」

ナゲットに伸ばす手を遅くしながら、青年は尋ねた。

ξ゚听)ξ「そうね〜、まあショボン、ペニサスは鉄板として、あとはブーンに出し抜かれた人かしら」

('A`)「最後の奴はナシだろ!」

('A`)「ノックスの第一項に反してるし、だいたい、名前すら出てきてないじゃないか」

ξ゚听)ξ「でも、そもそも犯人が居ること自体アヤフヤなこの物語にノックスの十戒なんてバカげてない?」

う、と青年は返す言葉も見付からないようで、黙りこくってコーラをストローで啜った。

ξ゚听)ξ「でね、気付いたんだけど、ペニサスだけ心情の吐露が少なすぎるのよ」

('A`)「ペニサス?」

ストローから口を離すと、青年は怪訝な声で、

('A`)「ショボンの独自の前にあったじゃん」

ξ゚听)ξ「だから、それが少ないっての」
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:31:41.77 ID:gZ+7TiJfO
支援
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:32:52.97 ID:RPVl9Kdr0
カタカナの使い方が夢野なんだよな
支援
370 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:33:11.74 ID:mGMHnw6t0
('A`)「てことは、人格のバックアップは装置が持ってるってわけだ。
   ……ペニサスにショボンの人格が入り込んだのも、だからだろーし」

ξ゚听)ξ「……あれ……?」

娘が、フライドポテトに伸ばす手をピタリととめた。
口元をナプキンで拭きながら、娘は考えこみ始める。

('A`)「どした」

ξ゚听)ξ「……ほんとにペニサスにショボンの人格が入り込んだのかしら」

('A`)「へ?」

ξ゚听)ξ「あれこそが嘘で、ショボンの独自も、ペニサスが練り上げた『嘘』なんじゃ……」

('A`)「おいおい、まじかよ、てか、え」

青年は半ば呆れたように呟くと、付け加えるようにして、

('A`)「そこまで行くともう、堂々巡りじゃね?」
371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:33:25.80 ID:gZ+7TiJfO
支援
372以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:33:53.92 ID:RPVl9Kdr0
>>370
独自?
独白?
373以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:34:31.80 ID:gZ+7TiJfO
>>369
そうなのか、可笑しな使い方だな、とは思ってたが。
374 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:35:20.93 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「あれこそが嘘で、ショボンの独自も、ペニサスが練り上げた『嘘』なんじゃ……」

この独自を独白に訂正です。

やばい、今まで生きてきて、ズット勘違いしてたわ……
375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:36:46.19 ID:RPVl9Kdr0
うはwwww

gngrキレイwwwww
376 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:36:46.78 ID:mGMHnw6t0
('A`)「てか、ペニサスがそんなことして、どんなメリットがあんだ?」

ξ゚听)ξ「ええっと、それは……」

娘は視線を右側に逸らすと、しばらく黙り込んだ。
待つようにして青年がコーラを啜り、そろそろ容器が氷だけになってきた頃に、娘はようやく口を開いた。

ξ゚听)ξ「う〜……ショボンとブーンへの復讐じゃ陳腐だよね」

('A`)「まどろっこしくないか? だったらあの三人一気に殺すときにブーンをヤっちまやいいんだし」

ξ゚听)ξ「だよねえ……ショボンにペニサスが入ってるなら、そっちのが……」

('A`)「精神拷問ってのも、そもそも……あの装置が壊れたのってほとんど偶然だし」

青年は、会話をリードするようにして、

('A`)「転移装置に残留してた思想ってのが真犯人だとすれば、妥当に考えてショボンじゃね?」

ξ゚听)ξ「う〜ん、妥当すぎ」

('A`)「でも、苦しめって言ってんじゃん。ペニサスに思想コピーしたのなら、残留があってもおかしくない」
377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:37:40.70 ID:RPVl9Kdr0
支援
378 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:38:16.86 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「でもなぁー」

娘は納得しきっていない様子で、残ったフライドポテトを銜えて、

ξ゚听)ξ「それじゃやっぱ味気ないわよ」

('A`)「実際そんなもんさ。それより……」

青年は油で汚れた指をナプキンで拭きながら、

('A`)「問題はなぜ『FALL OUT』なのか、宇宙船の名前が『SIX』なのかだよ」

ξ゚听)ξ「そんなのノリでしょ」

('A`)「どうかな? まず、SIX……6には、結構意味ってのが含まれてるんだ」

青年は本調子になったようで、手振りを交えて語りだす。
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:39:01.84 ID:RPVl9Kdr0
支援
380以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:39:12.68 ID:gZ+7TiJfO
支援
381 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:39:42.15 ID:mGMHnw6t0
('A`)「まず数占い〈アリスマンシー〉じゃ、6ってのは調和的で愛情豊かな人なんだよ。
    また、同じく数占いでは完成を表す3の倍数なんだ。
    ……そういや、アルファベットじゃ6に当てはまる奴は「FOX」なんだよね」

ξ゚听)ξ「それは関係ないでしょ、というか、意味なんて4も5もコジツケれるじゃん」

('A`)「あと、第六感シックスセンスもだし、十二進数じゃ6は半分を表すんだ。
    1から9の数で、唯一ひっくり返すと別の数字になる数でもある。
    プーさん『わたしたちは6つ』も……」

ξ;゚听)ξ「ちょっとちょっと」

娘は慌てて制す。

ξ゚听)ξ「なんでプーさんまで飛躍しちゃうの」

('A`)「そこがポイントだ。プーさんには『タオのプーさん』という本がある。
    これはプーさんを使ってタオイズムを分かりやすく解説した本なんだけど、
    映画の中に出てくる『酢を味わうもの』は、『タオのプーさん』に出てくるんだよ」
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:40:07.49 ID:gZ+7TiJfO
あっ……。
383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:41:15.63 ID:TshkrYMg0
ッー
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:41:24.73 ID:gZ+7TiJfO
いっ……。
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:42:26.54 ID:RPVl9Kdr0
夢野にタオプーかwwwww
386 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:42:51.06 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「でもねぇ……」

('A`)「極めつけなのが、『FALL OUT』と6の関連するプリズ……」

ξ゚听)ξ「はっきり言うけど、それはコジツケだと思う!」

ピシャリと言うと、娘は息を吸ってから、

ξ゚听)ξ「やっぱり、キーワードはホモだと思う。
      だって、ショボンの独白や、手紙なんかでやたら出てくるし……。
      これをスルーするのは無理あるもん」
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:43:22.89 ID:gZ+7TiJfO
またさるか?
388以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:43:56.02 ID:gZ+7TiJfO
違った、スマソ
389以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:44:42.42 ID:RPVl9Kdr0
支援
390 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:44:47.26 ID:mGMHnw6t0
('A`)「あー、ホモとかよくわかんないんだよね」

ξ゚听)ξ「実はブーンも潜在的なホモで、実は愛憎劇が繰り広げられていたとか……」

('A`)「ちょっとまってくれ、それはいくらなんでも突飛すぎるし、自分の趣味出しすぎだろ」

ξ゚听)ξ「あらやだ」
391以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:46:14.60 ID:gZ+7TiJfO
支援
392 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:46:20.86 ID:mGMHnw6t0
('A`)「俺はやはり、暗示だと……英国の」

ξ゚听)ξ「それより、実はね」

娘は青年のサブカル趣味には、ほとほと呆れ果てていた。

ξ゚听)ξ「気になった部分がパンフに載ってたの」

そういって、机の端に寄せられていたパンフレットを摘み上げると、ペラペラと捲った。

('A`)「なんだよー、これから符丁あわせといくとこだったのに」

ξ゚听)ξ「製作者の後書き? みたいなのが書いてるの」

('A`)「へぇ」

ξ゚听)ξ「んっと……あったあった、ほらここ」

目的のページを見つけると、広げてテーブルの中央に置いた。
包装紙や空の紙コップだけを載せたトレーを端にやって、スペースを作ってから。……
                                      
393以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:46:46.34 ID:qvb5GgSrO
支援
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:47:01.73 ID:qvb5GgSrO
支援
395以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:47:17.83 ID:qvb5GgSrO
支援
396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:48:04.04 ID:gZ+7TiJfO
支援
397 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:48:08.94 ID:mGMHnw6t0
――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

これにて物語は終わります。
如何でしたでしょうか。
SFを書きたいなと思っていたのですが、いつの間にか捻じ曲がったのは今となってはいい思い出。

この話の構成には元ネタというか、影響を受けた部分があったりします。
とあるロックバンドの曲なのですが、8分超でパートが3つに分かれているんです。
初めのパートは至極まともなロックなのですが、
パート2に切り替わるとカオスティックな展開に。
パート3に至っては子守唄の印象を与えるという不思議な曲です。
プログレなのかな? よくわかんないけど、大好きなこの曲がモチーフだったりします。

展開については、とにかく詰め込み詰め込み、結果ここまで謎な作品となってしまいました。
鬱憤やら、何やらを半ばアドリブ的に押し込んだ的な感じだったり。まあいいや。(云々)
  

         ・・ ・・・
398 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:49:24.99 ID:mGMHnw6t0
――――――――――――――――――――――――――――――

('A`)「……ふむ」

ξ゚听)ξ「うーん、これは……」

後書きを一通り読んだ二人は、言葉を失った。
意味がよく分からなかったのであった。

('A`)「多分知らん曲だ」

ξ゚听)ξ「うん」

('A`)「それよりよく分からんのはパート3の存在だ」

ξ゚听)ξ「『宇宙船SIX』て全部でパート2だよね」

確認するように娘はパンフレットを手繰った。

ξ゚听)ξ「うん、やっぱそうだ」

('A`)「なら表記ミスか?」
399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:50:42.00 ID:gZ+7TiJfO
支援
400 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:50:58.44 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「そうかしら? 大事なパンフの後書きに誤字なんて」

('A`)「じゃ、パート3ってなんなんだ?」

ξ゚听)ξ「うぅ〜ん……」

娘がテンポを外した隙に、青年は自らの推理を語った。

('A`)「よし、ならば俺の結果を出そう。この話はつまり、全体主義に対する警告だな」

ξ゚听)ξ「全体主義?」

('A`)「そう、様々な暗号を検証したんだが、やっぱそうに違いない。1984年に公開という点も、ね。
    あの三人と思想転移装置は全体主義を形成していて、異端者だったブーンが処刑されるという」

ξ゚听)ξ「はぁ」

娘は興味ないように呟く。

('A`)「いや……今のは訂正だな。つまり、ショボンの嘆きやペニサス、ブーンの疑惑が
    思想転移装置という媒体を通して全体主義を作り上げていたんだよ」

ξ゚听)ξ「ごめん意味がよくわかんない」

('A`)「ああ、言ってて自分も分からんくなった、この案はナシ!」
401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:52:39.75 ID:RPVl9Kdr0
支援
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:53:01.99 ID:gZ+7TiJfO
支援
403 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:53:31.97 ID:mGMHnw6t0
('A`)「あとがきでアドリブって書いてんなら、もう意味なんかないとか……?」

ξ゚听)ξ「パート3ねぇ……」

娘は未だ、その単語に引っ掛かりを覚えているようであった。

('A`)「ないもんは無いじゃないか」

ξ゚听)ξ「いいえ、きっとコレが謎を解くキーワードなのよ」

娘は一歩も引かない様子で、

ξ゚听)ξ「私たちはまだ映画を全て見終わってないのよ。パート3を知って初めて、わかるんだわ」

('A`)「でも映画館出ちゃったじゃん……」
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:53:59.76 ID:gZ+7TiJfO
支援
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:54:58.41 ID:RPVl9Kdr0
支援
406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:55:02.02 ID:gZ+7TiJfO
支援
407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:55:27.99 ID:YuJd3F3L0
支援
408 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:56:41.52 ID:mGMHnw6t0
('A`)「でも、存在しないものをでっち上げて語るってのは変じゃね?」

ξ゚听)ξ「存在しないなんてまだ分からないじゃない!」

('A`)「雲の形を本気で何に似てるか、てレベルじゃないのかそれって……」

もう半ば諦めたような口調で、

('A`)「冤罪みたいなもんだと思うよ」

ξ゚听)ξ「そんなことないよ」

('A`)「いや、ほとんど一緒さ」

一呼吸してから、

('A`)「あの映画は、どう観ても、パート2で終わりだったんだし……」
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:57:13.09 ID:3z9cofu/0
支援
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:57:26.68 ID:gZ+7TiJfO
支援
411 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 02:58:05.27 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「それよ!」

威勢のよい娘の声が飛び込んだ。

ξ゚听)ξ「きっとそうよ、パート3の正体って……今なんだわ!」

(;'A`)「はァ!?」

突飛な娘の発言に、青年は本気で驚愕した。

(;'A`)「どういう意味だよ、それって」

ξ゚听)ξ「だから、私達が映画について考えてる今こそが、パート3なんじゃないのってこと」

('A`)「………」

('A`)「いや、いや、いや……」

('A`)「ねーよwwwww」
412以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:58:30.00 ID:RPVl9Kdr0
支援
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:58:50.74 ID:gZ+7TiJfO
支援
414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 02:59:54.34 ID:gZ+7TiJfO
支援
415 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:00:01.99 ID:mGMHnw6t0
ξ゚听)ξ「違うよ、全然違うよ」

('A`)「何が違うんじゃ」

娘は一呼吸すると、諭すような口調になって、

ξ゚听)ξ「私たちは今、あの映画の意味や顛末を知りたがってるでしょ?
      つまり、あの映画を解決編のない、いわば出題編として扱ってるようなものってこと。
      私たちが今、その解決編をここで作り上げてるの」

('A`)「それが、パート3……?」

ξ゚听)ξ「そ!」

('A`)「ねーよwww別にそーゆーことにしておいてもいいけどさwww」

ξ#゚听)ξ「そういうことって何!? そーゆーことって!」

('A`)「いや、なんでもナイッス。つまり、パート3はその解釈です」
416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:00:02.02 ID:1KoS2ges0
>>251
> 題名は「Fall Out」といい、作成者は近代芸術の象徴と揶揄された「ミサ・エイカー」である。
> 彼の作成した芸術は高く評価され、22世紀のピカソと言わしめたほどであるが、
> 突然の自殺により、更に価値が跳ね上がった。

「揶揄」はからかうとか侮辱するとかいう意味でしょ?
でもやたら評価されてるような描写が続くし、うん?と思って
417 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:00:40.98 ID:mGMHnw6t0
251訂正です!!

揶揄じゃなくて比喩でした!!
418 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:01:07.19 ID:mGMHnw6t0
誤字多いな……気をつけないと
419 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:01:54.75 ID:mGMHnw6t0
('A`)「しかしその解釈だと、何の解決にもならんじゃん」

青年はボソっと呟いた。
しかし、娘はその返答を予知していたかのように、

ξ゚听)ξ「『真犯人』は分かったわ」

(;'A`)「えッ!?」




ξ゚听)ξ「私とあなたよ」


   
420 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:03:57.79 ID:mGMHnw6t0
(;'A`)「ね、ねー……よ」

ξ゚听)ξ「私の大好きな小説からの引用みたいなもんだけどね。
      多分あなたは知らないだろうし、言っちゃうとネタバレになるから名前は伏せちゃうけど」

そういうと、娘は歌うようにして、語った。


『何か面白いことはないかなぁとキョロキョロしていれば、
 それに相応しい残酷な事件がいくらでも生まれてくる。
 今はそんな時代だが、その中で自分さえ安全地帯にいて、
 見物の側に回ることが出来たなら、
 どんな痛ましい光景でも喜んで眺めようという、


 それがお化けの正体なんだ』


              
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:04:02.49 ID:RPVl9Kdr0
近代芸術(笑)なら揶揄なんだよな

自殺で価値が跳ね上がったあたりも含めて
高く評価されたこと自体を否定的に捉えてるのかと
深読みしすぎたわ
422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:05:16.72 ID:gZ+7TiJfO
比喩、より、賞賛とかの方が良い気がする。
それもやり過ぎかな?
次の文で同じような事言ってるし。

強調するなら良いかも。

しかし、やはり普通に書くのが一番かなぁ。
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:05:20.87 ID:1KoS2ges0
あともっとゆっくり投下しなさい
またさる食らうよ
424 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:06:01.70 ID:mGMHnw6t0
('A`)「ふぅ……ん」

青年は面食らった様子で、

('A`)「どうとでも取っちゃう、解釈をする俺らが?」

ξ゚听)ξ「そ。そして物語をどうとでも婉曲して、別の解釈をすることが、パート3」

('A`)「ふぅーん」

青年は拍子抜けしたように、

('A`)「俺達が、そのパート3の、出演者?」

ξ゚听)ξ「製作者でもあるし、俳優でもあるってこと!」

娘はさも得意といった様子で言い切った。
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:06:15.57 ID:U2ZXaFlI0
なんか前に呼んだことある 修正バージョン?
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:06:39.50 ID:RPVl9Kdr0
支援
427 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:08:25.20 ID:mGMHnw6t0
('A`)「はぁ……」

青年は曖昧に笑顔を浮かべながら、

('A`)「まあ、Fall outのあとは舞台裏って感じらしいけど……」

('A`)「でもそれって、けっきょく屁理屈だよね」

ξ#゚听)ξ「超、正論じゃない!」

('A`)「どう考えても屁理屈です。本当にありがとうございました」

ξ#゚听)ξ「ムキー!!」

・・ ・・・
・ ・・

話題は映画のことから逸れて、現実の話へと移り変わっていった。
夏休みの宿題のことや、予備校の話、最近話した友達についてなど。
お互いににこやかな顔をして、談笑を続けた。

映画は、はやくも忘却の彼方に追いやられていきそうであった。
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:08:47.30 ID:gZ+7TiJfO
さるは大丈夫だ。
ペースは今のままがちょうど良かったし。
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:09:17.61 ID:1KoS2ges0
しえん
430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:09:41.83 ID:RPVl9Kdr0
支援
431以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:09:44.63 ID:gZ+7TiJfO
支援
432 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:10:42.73 ID:mGMHnw6t0
('A`)「宇宙は150億光年とか言われてるんだぜ? しかも光の速さで広がってるそうだ」

ξ゚听)ξ「あー、宇宙のことわかんないパスパス」

('A`)「ちゃんと聞けったらぁ。しかも、その宇宙の外には更に別の宇宙とかがあるらしいんだ」

ξ゚听)ξ「途方もないねぇ」

('A`)「だろ? だから、今もこの宇宙のどこかでは、宇宙船「SIX」みたいなことが……」

そこまで言って、青年は口を噤んだ。

('A`)「やっぱなんでもねぇ」

ξ゚听)ξ「気になるッ!」

('A`)「だってクサいもん……ちょうカッコつけてるみたいだし……」
433以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:11:22.60 ID:gZ+7TiJfO
支援
434 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:11:26.18 ID:mGMHnw6t0
432の前に一つレスを飛ばした、ごめん
435 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:12:14.74 ID:mGMHnw6t0
時は経ち、斜陽が地面を橙色に照らすようになった。
二人はマクドナルドを後にして、ビルの巨大な影の落ちた街道をブラブラと歩いた。
このままゲームセンターにでも行こうと青年は誘ったのだが、
あいにく、娘には七時から用事があるとのことで、今日はお開きとなった。

交差点でわかれることとなり、二人は分岐地点のそこに着くまでを駄弁って過ごした。
会話の内容も、初めはやはり他愛のないものであったが、そろそろ交差点が見えてきた辺りになると、
例の、謎めいた映画についてのことに切り替わった。

('A`)「今がパート3ねぇ……なら、人によってはパート2で終わってんだろうな」

ξ゚听)ξ「まー、寝てたらあたしもそうだったね」

('A`)「おれさ、なんか考えたんだけど……」

ξ゚听)ξ「なぁに?」

('A`)「この空を見ろよ」

太陽じかけのオレンジに満たされた空を、青年は目線だけ上げて見る。
娘もそれに続いた。
436以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:12:26.88 ID:gZ+7TiJfO
支援
437 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:13:17.76 ID:mGMHnw6t0
('A`)「宇宙は150億光年とか言われてるんだぜ? しかも光の速さで広がってるそうだ」

ξ゚听)ξ「あー、宇宙のことわかんないパスパス」

('A`)「ちゃんと聞けったらぁ。しかも、その宇宙の外には更に別の宇宙とかがあるらしいんだ」

ξ゚听)ξ「途方もないねぇ」

('A`)「だろ? だから、今もこの宇宙のどこかでは、宇宙船「SIX」みたいなことが……」

そこまで言って、青年は口を噤んだ。

('A`)「やっぱなんでもねぇ」

ξ゚听)ξ「気になるッ!」

('A`)「だってクサいもん……ちょうカッコつけてるみたいだし……」
438 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:14:21.22 ID:mGMHnw6t0
話はまたも変わり、宇宙の雄大さの話となった。
いま、どこかで「2001年宇宙の旅」と全く同じ状況が発生しているのかもしれない。
HALの暴走が、この広い虚空の何処かで行われていることも、否定は出来ないということを。

しょせん悪魔の証明であるが、若い二人には、想像を膨らませずにはいられない話だった。

「SIX」の惨劇もまた、宇宙のどこかで繰り広げられているのかもしれない。

そうして何れは、骸を乗せた宇宙船が地球に飛来するのかもしれない。
今まさに、
ショボンは呪いの言葉を吐き、ペニサスは涙を垂らし、ブーンが狂乱に追われているかもしれないのだ。……

交差点に着いた二人は、大手を振ってから道を別にした。

娘が横断歩道を渡りきり、雑踏に紛れて隠れきったことを確認してから、青年は帰路に着いた。
         
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:14:35.45 ID:gZ+7TiJfO
支援
440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:17:06.15 ID:RPVl9Kdr0
支援
441 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:17:39.14 ID:mGMHnw6t0
チノパンのかくしに両手を突込み、一人で街道を歩く。
娘が隣にいたときと比べると、若干姿勢が前傾になっていた。

陽光は紫を帯びて、夜の帳は近づこうとしていた。
青年は人と擦れ違うたびに顔を上げ、そしてその度に夜が近づいていることを知った。

電車に乗り、最寄り駅に降りたときには既に空は真っ暗であった。
上空の排ガスのせいか、星々はまるで確認できなかったが、それでも「宇宙」を感じ取ることは出来た。

宇宙は死の象徴だ。それが青年の考えであった。
子供の頃に鑑賞した番組での、
生と死は対等でなく、死が常に生を抱擁しているのだという言葉を根にしている。

無限に広がる宇宙は死の象徴に思え、ガスや隕石が集まり誕生し、そして崩壊する星は生の象徴に思えたのである。

宇宙船は「生」から「生」へと渡るために「死」の中を渡る。
そう考えるだけで、いかに宇宙船の搭乗員が優れているか察することが出来た気分になる。

自分には無理だろうなぁ。
青年は苦笑交じりに考えた。
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:19:36.21 ID:RPVl9Kdr0
支援
443 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:21:51.94 ID:mGMHnw6t0
住宅街に差し掛かり、もう家まで十分も掛からない地点となった。
ここまで行くと、暗闇でも周囲の判別がつく。

軽く握るだけで掌は汗で濡れるほど暑い夜だが、、
時折吹く秋を帯びた風が、どうしようもなく心地良く感じられる。

青年は吐息をついてから、また思索にふける。


どうも、宇宙船「SIX」が存在しているような気がしてならない。
自分もあの映画の俳優になってしまうという、娘の突飛な意見も、今なら頷いてしまいそうだった。


もしかしたら、この現代の人間の軌跡は、あの進歩した人類達の箱庭のようなものかもしれない。
莫迦らしいが、想像するのは嫌いではない。
                    
444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:22:33.28 ID:RPVl9Kdr0
支援
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:24:40.79 ID:Rgk/0kOI0
しえん
446 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:25:02.17 ID:mGMHnw6t0
青年は足を止めた。とうとう家の前に到着したのだ。
呼び鈴を鳴らしてから門を開けて敷地内へ滑り込む。

玄関に嵌められた曇りガラスからはオレンジ色の暖かな光が長方形に漏れている。
一拍ほどその光を見つめた後、青年はドアノブに手を掛け、そうして扉を開けた。

('A`)「ただいまー」

呟いてから玄関に足を踏み込む。
完全に、暖色に満ちた家の中に入ったところで、ドアノブから手を離した。

・・ ・・・

            
447以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:25:38.35 ID:RPVl9Kdr0
支援
448 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:26:10.73 ID:mGMHnw6t0
宇宙からの監視者が、青年の後姿をズット見つめていた。

青年を暖色の光に包み、招き入れた家のドアノブが、青年の手から離された。

扉は軋むような音を立てて、ひとりでに閉まっていき、

そして、一人の読者の背中を、今、全く隠し終わった。





                  
                       Part.Three End
449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:27:40.16 ID:YuJd3F3L0
450 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:28:01.83 ID:mGMHnw6t0

 




      「( ^ω^)ブーンは宇宙船「SIX」の搭乗員のようです」終










   
451以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:28:30.29 ID:RPVl9Kdr0
452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:29:02.22 ID:1KoS2ges0
うーん
こういうメタっぽいオチはそんなに好きじゃないんだが・・・

まあでも乙
前半は好きだった
453 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:29:05.44 ID:mGMHnw6t0
あとがき

これにて物語は終わります。
如何でしたでしょうか。
SFを書きたいなと思っていたのですが、いつの間にか捻じ曲がったのは今となってはいい思い出。

この話の構成には元ネタというか、影響を受けた部分があったりします。
とあるロックバンドの曲なのですが、8分超でパートが3つに分かれているんです。
初めのパートは至極まともなロックなのですが、
パート2に切り替わるとカオスティックな展開に。
パート3に至っては子守唄の印象を与えるという不思議な曲です。
プログレなのかな? よくわかんないけど、大好きなこの曲がモチーフだったりします。

展開については、とにかく詰め込み詰め込み、結果ここまで謎な作品となってしまいました。
鬱憤やら、何やらを半ばアドリブ的に押し込んだ感じだったり。まあいいや。

この話ですが、正直、投下寸前までパート3を含めるかずっと悩んでいました。
というのも、パート2までの物語を壊しかねない代物であるし、扱いが相当難しそうだと思っていたからです。
454 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:31:35.31 ID:mGMHnw6t0
だけど投下した今じゃ、パート3を入れてよかったなぁなんて。本当ゲンキンだな。

2001年宇宙の旅見て宇宙モノやりてぇななんて思ってた、ことのはじまりの正月が懐かしい。
ちなみに、アーチェリーとかなんか変な方向に進んだのは敬愛する貴志祐介先生みたいに、
知識を作品に詰め込みたいなぁーとか、好きな本を紹介したいなーとか思ったからだったり。

あと、この話は投下中のスレのみんなに励まされ、指摘されてで投下できた。
ほんとうに、一人じゃあ完走はムリだったと思う、誤字などの指摘は本当にありがとう。


以上です。ありがとうございました。3時に終わらせたかったのですが、ゴメス。
みんなおやすみ。
もっと頑張りたい
455以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:31:59.97 ID:RPVl9Kdr0
小説じゃなくて映画にすると
パート2をどう処理したのかが気になる
456 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:35:02.12 ID:mGMHnw6t0
>>452
ありがとう、前半は苦労した
ラストのメタは、一度やってみたかった

>>455
そこは……あーどうやるんだろ
457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:35:30.16 ID:RPVl9Kdr0
>>456
おまwwwwwwww
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:38:57.58 ID:3z9cofu/0
面白かったでよ
こういうの書くにはやっぱり本たくさん読まないとだめだね
459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:42:05.17 ID:8042EuqRO
不覚にも感心した…
人間って改めてすごいな
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 03:45:00.54 ID:YGfiL8YY0
追いついた乙!
461 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/24(日) 03:48:07.15 ID:mGMHnw6t0
みんなありがとう!
朝6時からバイトなのに俺は何故この時間まで起きてるんだ、はやくpc切らないといけない

映画はドグマグの奴があるらしいし、頑張ればなんとかなるだろう多分w
本は……あんまり読んでないけど、でも、若いうちに読まないとナァって強迫観念

じゃーねみんな! おやすみ! また会おう!!
462 ◆xmNFXyaAwA :2008/02/24(日) 03:50:26.61 ID:Rgk/0kOI0
花束です
まとめてもよろしいでしょうか?
463作者:2008/02/24(日) 03:53:23.64 ID:0NtLsOAqO
>>462
はい、ありがとうございます!
修正箇所が多く、迷惑かけます
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 05:49:53.91 ID:t0s0gSAaO
少し気になったけどブーンとホライゾンは同一人物だよな?
465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 06:12:51.86 ID:jeNYxuZ2O
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 06:52:45.11 ID:+5ZSCKtvO
独自?
独白じゃね?
467以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 09:37:47.68 ID:/XgGkogC0
よむほ
468以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 09:46:43.55 ID:fjtrgFna0
>>466
既出

469以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 10:56:17.11 ID:9BPoCYYc0
精液が便秘にきくらしい
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 11:42:08.00 ID:7hLYkn+YO
よむ
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 12:08:21.67 ID:5b5iByA90
これだけ伸びてるのに支援の少なさに泣いたwww
やっぱキレイはもうブーン系止めた方がいいよ
読者が付いてこない
ごくわずかな一部のMをのぞいて
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 12:23:19.56 ID:YGfiL8YY0
>>471
お前にそんなこという資格はない
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 12:25:44.68 ID:FTtsLIKG0
>>471   ハ,,ハ
  ( ゚ω゚ )   n
 ⌒`γ´⌒`ヽ( E) お断りします
 ( .人 .人 γ ノ
 ミ(こノこノ `ー´
 )にノこ(
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 12:26:34.82 ID:hsr0kc4l0
>>473
ずれてる
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 12:34:20.67 ID:oOVrhC0j0
おもしれかったよ
難しい言葉が多くて意味が分からないところが多かったけど
本とかいっぱい読めば分かるようになるのかな?
>>1は頭がいい人なんだね
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 13:05:33.50 ID:0NtLsOAqO
まだ残っていることに感動
>>464
そうです、ブーンは愛称みたいな
ウィリアムのリアム的な感じです
>>475
いや、駄目駄目です・・・独白とか、もっと頑張らなくっちゃいけないなぁ
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 13:08:11.91 ID:0NtLsOAqO
あと、工藤には負けない!
478以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 13:09:52.38 ID:YGfiL8YY0
ちょw
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 13:10:41.94 ID:mx9SpPU30
480以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 13:39:35.92 ID:XlJROkbUO
そうか創価
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 13:39:47.40 ID:gZ+7TiJfO
忘れてた、乙!
またさるにかかって、苛ついて書き込み連打したら、規制されちまったよ……。
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 13:57:38.82 ID:9BPoCYYc0
山崎ナオコーラ
483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 14:41:37.01 ID:9BPoCYYc0
金で買えないものを挙げてくスレ
484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 15:08:49.91 ID:mx9SpPU30
ブーン系小説
485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 15:20:15.34 ID:3E/htFZs0
今更だが乙
486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 15:57:17.34 ID:ryX9aLKNO
オプーナを買う権利
487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 16:03:57.40 ID:9BPoCYYc0
ラバーガールが出るまで待つスレ
488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/24(日) 16:11:09.49 ID:SfuuRjLo0
ラバー・・・・・・イケメン
489以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
努力の才能