1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
お内裏
2 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 12:48:53.84 ID:nm0xOA/YO
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 12:50:25.84 ID:nm0xOA/YO
―――――深い闇。
人が生存できない暗い星。
川 ゚ -゚)「名前だけだな、明るいのは。」
川 ゚ -゚)は死を賜るようです
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 12:52:16.27 ID:3rH+oIfVO
どらどら
5 :
死賜 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 12:53:05.43 ID:55s0CV/sO
( ^ω^)「乗っ取りktkr」
ξ゚听)ξノシ「
>>2、一話100レス×11話だよ、頑張ってね」
6 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 12:53:33.76 ID:nm0xOA/YO
―――人類は2X世紀末、核戦争により、人口の9割が死滅した。
残りの1割は地球外に逃れた。
川 ゚ -゚)「ふむ、あれが金星か」
窓をのぞくとひたすら闇が広がるなかに、いくつかの宇宙ステーションが点在していた。
7 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 13:00:48.11 ID:nm0xOA/YO
川 ゚ -゚)「ここが人類の新たな地球となるのか。」
何もない、闇。
太陽の光は周りの星屑に遮られ届くことはない。
こんなところで生きていけるのだろうか。
今まであれだけ自然に恵まれていた地球を放射能で汚しきった我々人類が。
機械は必要だ。しかし。自然も必要だ。どうやって人間は暮らせばいいのだ?
そんなことを考えながらクーは瞼をとじた。
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:10:25.88 ID:nm0xOA/YO
―――――夢を見ていた。
そこには何処までも続く海が広がっていて、緑豊かな森があった。
父の別荘があり、毎年夏になると家族全員で出掛けていった。
('∀`)「クー姉、お肉いただきッ!」
川#゚ -゚)「ぬぅ、せっかくウエルダンになるまでまっていたのに………」
('∀`)「BBQはレアが一番なんだよ〜。」
J('ー`)し「ほらほら二人ともお肉はたくさんあるから喧嘩しないの。」
('m`)「肉ばっか食べないで野菜も食えよ」
9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:12:14.78 ID:1W884qYgO
僕モナからパクったろ('m`)
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:15:48.32 ID:AEia4ModO
支援
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:18:43.49 ID:1W884qYgO
ウェルダンになった肉をレアが好きなドクオがなぜ取ったんだろうな
12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:19:42.96 ID:FCiCuJKF0
13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:20:26.65 ID:kcAtG9ce0
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:20:34.23 ID:+8QXErKB0
ウエルダンになるまで待っていたのであって、まだウエルダンになってなかった(レアだった)んでしょ
15 :
13:2008/02/20(水) 13:21:10.07 ID:kcAtG9ce0
16 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:24:29.21 ID:1W884qYgO
17 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 13:30:20.27 ID:nm0xOA/YO
―――アナウンス「御乗船ありがとうございました。まもなく当機は第二新東京ターミナルに到着します」。
川 ⊃-⊂)「ん」
どうやらついたみたいだ。。
船外に出て、ステーションの売店で昼食を買い、外にでた。
川 ゚ -゚)「これが第二新東京………」
ビルがやたら多く、渋滞を起こす程の量の車が走っていた。背広をきてせかせか歩いている人間が多く見られた。
地球とあまり変わらないんだな、とクーは思った。
川 ゚ -゚)「とりあえず昼食をとるか」
18 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 13:34:00.45 ID:nm0xOA/YO
ターミナル近くの公園のベンチに腰をかけ、弁当の蓋をあけた。
中身はサンドイッチだった。
川;゚ -゚)「なんで箸がついてるんだ………」
と、ぼやきながらサンドイッチを咀嚼していると、後ろから声をかけられた。
???「よぉ、彼女。お茶しない?」
川;゚ -゚) ブフォ
口からサンドイッチを盛大に吹き出してしまった。
いつの時代のDQNだ。ヤンキーってレベルじゃねーぞ。
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:37:46.53 ID:FCiCuJKF0
初めのシーンは宇宙船の中だったんだな
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:39:33.14 ID:/ZjlFfnfO
わっふるわっふる
21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:42:42.21 ID:4BFe5FFrO
川 ⊃-⊂)
\川 ゚ -゚)/
支援
22 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:44:57.86 ID:nm0xOA/YO
???# 「おいねーちゃん聞こえねーのかゴルァ!」
ム、なんだこいつ調子に乗りやがって。一発ビンタをお見舞いしてやろうか。
川#゚ -゚)「私の名前は素直クール!ねーちゃんじゃn……!!1」
そう言おうとして振り向いた時信じられない物を私はみてしまった―――
( ゚Д゚)「-------」
彼が何を言ってるかはよく聞き取れなかった。
それより私の頭は疑問で一杯になっていた。
――――――なんでお前が此処にいるんだ………
なぁ、ギコ………
川 ゚ -゚)は死を賜るようです
第一話 フェノメノン
終了
23 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 13:52:06.99 ID:nm0xOA/YO
これで
川 ゚ -゚)は死を賜るようです
第一話終了です。質問とかあればどうぞ。
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:53:44.14 ID:nm0xOA/YO
皆さん支援ありがとうございました。
第二話は明日にでも投下する予定です
25 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 13:54:48.09 ID:FCiCuJKF0
地球で核戦争が起こってから
どれほどの時間が経ってるんだ?
26 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 13:58:30.47 ID:nm0xOA/YO
>>25 一応、5年経っています。
人類が宇宙に進出したのは核戦争より前という設定なので、金星も早く発展させることができた、という感じです
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:04:07.02 ID:/ZjlFfnfO
まて、本当に乗っ取りか?面白いんだが……
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:05:02.48 ID:FCiCuJKF0
29 :
死賜 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:07:47.85 ID:55s0CV/sO
( ^ω^)ノシ
「おいすー」
ξ゚听)ξノシ
( ^ω^)「改めて、
>>1さん代理さんきゅ」
ξ゚听)ξ「乗っ取り終わったみたいなんで始めるわよ。
……素直に読んでみて面白かったからもっと続けて欲しかったけどね」
( ^ω^)「コホン、『川 ゚ -゚)は死を賜るようです』、新連載だお」
ξ゚听)ξ「現行? 何それ美味しいの?」
( ^ω^)「後でとやかく言われるとアレだから最初に言っておくけど、元ネタアリだお。
もし、途中で気付いてもネタバレはしないで欲しいお」
ξ゚听)ξ「因みに、この話は全11話の中編よ」
( ^ω^)「とはいえ、一話一話が長い上に第二話の書き貯めすら無いがな」
( ^ω^)ノシ
「見切り発車でハジマルヨー」
ξ゚听)ξノシ
30 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:08:46.84 ID:nm0xOA/YO
>>27 ありがとうございます。
非常に申し訳ありませんが、乗っ取りです。
31 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:10:35.55 ID:55s0CV/sO
童心に戻って、公園の片隅でひとり砂山を作りあげる。
ぼんやりと鼻歌いながら。
もう桜も散り始めてるいうのに。
私の肌を刺そうとするように、夜の空気は冷え込んでいく。
真っ暗な空に浮かぶ満面の星達が、その殺節な風景を照らしだす。
私はポカンと呆けながら、自然に湧いてくるその思いを口から紡いだ。
――涙とめどなく溢れくる
それは、破滅の序曲。
――ひとりすずかけの並木道
だが、同時に一筋の光が見えた。
――君と幸せになると信じてた
しかし、そんな風に考えてしまう汚れた自分が恨めしかった。
愛の灯火が 嗚呼 逃げてゆく
32 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 14:10:55.37 ID:nm0xOA/YO
>>29 申し訳ありませんでした。僕のせいで総合で嫌な思いをさせてしまって
本当にすみません
33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:12:32.30 ID:J95DYFdcO
34 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:13:00.12 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)は死を賜るようです
track-1「慕情」
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:13:18.45 ID:8fsCM0IVO
謝るくらいならのっとってんじゃねえよ
36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:14:50.03 ID:55s0CV/sO
>>32 意外に謙虚でビックリしたwww
自分が投下する度にその話投下してくれると嬉しゼ
37 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 14:17:49.01 ID:nm0xOA/YO
>>36 こんな私を許してくれるのですか………
わかりました。
全力でがんばります。
投下予定日は決まってますか?
38 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:18:15.89 ID:55s0CV/sO
もう四月になるというのに、吐き出す息が白くなる。
川*゚ー゚)「行ってきまーす!」
朝の澄んだ空の中へ、明るい少女の声が溶けてゆく。
lw´‐ _‐ノv「はい、行ってらっしゃい。
お父さんはもう先に行ったからね」
可愛らしい少女を見て、母親は優しく微笑む。
そんな、どこにでもある日常。
いつもと変わらない風景。
lw´‐ _‐ノv「クー、早くしないとキューに置いていかれるわよ」
わかってるさ、と小さく頷く。
ローファーの踵に突っ込んでいた靴べらを抜き取ると、瞬間、走り出す。
私の体は、朝日に照らされた景色の中に溶けていった。
39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:20:05.67 ID:LB5LOIVH0
レスより先に話を進めてくれ
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:20:30.16 ID:55s0CV/sO
>>37 >>29見ての通り全くメドがたっておりませんwwサーセンwwwwww
まぁ、スレ立ててるの見かけたら投下後とかに。
以下、ハイパー投下に専念タイム
41 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:22:46.95 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)o「ねぇお姉ちゃん、テスト勉強はかどってる?」
くたびれた通学路を共に歩いていると、隣りに並び歩く少女が声をかけてきた。
可愛らしい笑顔。
綺麗に手入れされた艶の出だ黒髪。
そのつぶらな瞳に、私の姿が映っている。
川 ゚ -゚)「……あぁ」
小さく頷いてみせる。
川*゚ー゚)「そっか〜、サスガだなお姉ちゃんは。
私なんか今度の国語が古文全然でさ〜」
少女は予想通り、私の動作を見るなり自身の事情を話す事にへと興味を移していく。
本当は、ここ最近は勉学よりも他の事で頭が一杯なのだが。
42 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:25:10.15 ID:55s0CV/sO
川*^ー^)o「でね〜、この間伊藤さんがね〜」
いつの間にか彼女は友人との身内話を始めていた。
その能天気な笑顔を見ていると、何故か細かい事はどうでも良い様に思えた。
彼女の名前は、キュー。
私の自慢の妹である。
私達姉妹は顔が良く似ている。
いわゆる『一卵性』の双子である。
小さい頃から同じ場所同じ時を過ごしてきた自分達は、お互いの事を良く理解している。
性格は違うように見えても根本的な所は同じで、例えば二人共自分の思っている事はハッキリ言う。
二人のただ一つ違う点と言えば、「姉」と「妹」という所だ。
43 :
¨ ◆Cn6bJfqbWU :2008/02/20(水) 14:25:17.04 ID:nm0xOA/YO
>>40 わかりました。そうさせていただきます。
本当にすみませんでした
44 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:28:21.72 ID:55s0CV/sO
4人家族の中、のびのびと明るく生きてきたキュー。
長女として将来我が家守るという責務がある、自分。
17のこの歳になるまでに、次第に物事を見る目が冷めていった。
川*^ー^)「〜〜」
天真爛漫な妹の表情を眺めていると、正直羨ましいくなってくる。
偶に、
「あぁ、母さんの中から先に頭を出したのが、私ではなくこの子だったら」
と思う事がある。
しかし、くだらぬ想像をする度に、私はしっかりと自分を戒める。
45 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:29:22.95 ID:55s0CV/sO
私はキューの姉だ。
もし妹に何かあったら、彼女を守るのはこの私なんだ。
川*゚ー゚)「……どうかしたの?」
私が自分の中で禊ぎを行っていると、妹が何か察知したのだろうか。
彼女は不思議そうにして、私の顔を覗き込んできた。
川 ゚ -゚)「……いや」
川*゚ー゚)「いや?」
キューが私の呟きを復唱する。
46 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:31:41.06 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……まぁ、逆子だったらしいからな」
川*゚ー゚)「へ?」
キューは私の戯れ言に感づく素振りをみせない。
一瞬ヒヤッとしたが、それが直ぐに苦笑となった。
つくづく、母さんには苦労をかける。
彼女はそれ程鋭くはない。どちらかと言うと、鈍い。
きっと私から向けられた憧れの眼差しなど、未だ気付いていないだろう。
私は静かに微笑むと、妹の先にへと歩み進んだ。
川*゚ー゚)、「あ、待ってよ〜」
私は自分を追いかけてきた妹と共に、アスファルトで舗装された道をゆっくりと歩いていった。
47 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:35:32.47 ID:55s0CV/sO
高校へと通う道は、最後まで徒歩だ。
私達姉妹が通う公立高校は、自宅から徒歩10分ほどで非常に近い。
色々と事情があるのだが、皆でこの高校に通うと決めた理由の一つはこれである。
川*´ー`)「は〜、なんかこんな時間からもう疲れてるよ〜」
川 ゚ -゚)「……夜更けまで携帯をいじくり回してるからだ」
……一応、こう見えて2人共に部活にも入っている。
妹はこの体たらくだが、彼女は剣道部、私は柔道部と共に運動系だ。
昔から近所の幼なじみとよく外で遊んでいたので、割と体は動ける方だった。
川*゚ー゚)「……あ」
道中、小さな交差点に行きあたったところで、疲れ顔だったキューの表情が再び活気を取り戻す。
48 :
◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:38:09.06 ID:55s0CV/sO
その瞳に映っているのは、「皆」で我が校に通う事を決めた、彼なのだろう。
川*^ー^)ノ「えへ〜、お〜い、どっく〜ん!」
キューは満面の笑みで、私の見知った男の元へと駆け寄っていった。
軽やかな足取りで、キューが彼の元へ駆け寄っていく。
私は相変わらずのマイペースで歩みを進めながら、その様子を静かに眺めていた。
('A`)「……おせーぞ、砂尾」
彼は私の顔を見ると、私の名字を口にした。
49 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:40:35.36 ID:55s0CV/sO
川*^ー^)、「ごめ〜ん、ちょっと遅れちゃった〜」
('A`)「……キュー、どーせあの後夜更かして寝坊したんだろ。
全く、ちゃんと早く寝ろって注意したのに……」
川*´ー`)「えへ、バレちゃったか」
どうやら、彼女の昨晩のメールの相手は、彼だったらしい。
信号機横にもたれかかって私達を待っていたのは、幼なじみのドクオ。
彼は「独毒男」という珍しい名前の持ち主である。
私達が幼い頃は、キューと一緒に彼の名を見て「異邦人」や「ベトベトン」などからかってたものだ。
だが、彼は歴とした純血の日本人だ。
本来なら私達が言えたものではない。
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:40:47.52 ID:4BFe5FFrO
川 ゚ー゚) 支援
51 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:43:08.31 ID:55s0CV/sO
彼は名前もそうだが、少し他人とは違う。
('A`)「ほら、こんな所で時間くってると遅刻するぞ。サッサと歩け」
川*゚ー゚)「あ、置いてかないでよ〜」
内向的というか卑屈というか。
自分の思っている事を素直に話さない。
そういう面では、私達姉妹とは180度趣が違ってくる。
彼にとっては、他人とは違う奇特な名前や、恵まれない体格を持った自己への保身の手段なのだろう。
しかし、根は真面目でイイ奴だ。
そうでなければ、いくら近所に住むからと言って10年以上も友達付き合いを続けてはいなかっただろう。
52 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:45:36.03 ID:55s0CV/sO
('A`)「……なにボーっとしてんだよ、砂尾」
キューの横に歩いていたドクオが、遅れている私の方へと振り返る。
川 ゚ -゚)「……いいや」
私は呟くと、直ぐに彼らの後を追う。
三人で、淡い花びらを咲かせた桜並木の坂道を、急ぎ足で登って行く。
坂の下から吹き上げてくる風にスカートをが捲れる。
川;゚ー゚)「キャッ!」
(;'3`)=゚・゚、「ブッ」
川 ゚ -゚)「……貴様」
(;'A`)「み、見てない! 砂尾のは見てない!!」
川 ゚ -゚)「……そういう問題じゃない」
彼の赤ら顔を軽くつねる。
憂鬱な今の気分では、彼の私の呼び名さえどうでも良く思えた。
53 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:48:20.99 ID:55s0CV/sO
学舎に着けば、もまた今日もつまらない一日が始まった。
/,' 3「……で、あるからにして……」
白髪の混じった爺が、何かもごもごと言いながら黒板に白墨をこすりつける。
教室の中は至って静かで、鉛筆の動く音しか聞こえない。
自分らの高校は地元ではそこそこの進学校であった。
その為、義務教育の頃とは違い、生徒の授業態度も良く、騒がしい雰囲気が苦手な私にはその点では良かった。
川*゚ -゚)(む〜)
まぁ、彼女には退屈以外の何者でもなかったようだが。
後ろの私の席より、少し離れた教卓の前で、キューが退屈そうに教科書を眺めている。
そんな彼女の不満そうな顔を眺めていると、私の心に溜まっている鬱憤が晴れていく。
いじらしい彼女の表情を眺めていると、この先の心配事さえ、どうでも良く思ってくるから不思議だった。
54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:48:30.53 ID:/ZjlFfnfO
どっちも期待だな
支援
55 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:50:44.99 ID:55s0CV/sO
/,' 3「それじゃあクーさん、ここを読んで下さい」
不意に、爺から指名される。
川 ゚ -゚)「……はい」
静かに返事をして、椅子から立ち上がる。
川*>ー<)ー☆「……!」
私の名が呼ばれたのを見て、キューが嬉しそうな顔をしてこちらに振り向いた。
きっと彼女は応援の意を込めてウインクをしているつもりなのだろう。
しかし、片方の目を閉じるものを両目を瞑ってしまっている。
川;>ー<)「〜っ! 〜っ!」
彼女が必死に片目を開けようとしているのが滑稽で、思わず笑い出しそうになってしまう。
そんな衝動を堪え、私は教科書に綴られたくたびれた文字達を読み上げる。
川 ゚ -゚)「……私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでも先生と書くだけで本名は打ち明けない。
これは世間を憚る遠慮と言うよりも、その方が私にとって自然だからである―――」
窓の外の空が、雲に覆われてゆくのが見えた。
56 :
◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:53:57.81 ID:55s0CV/sO
('A`)「……どうしたんだよ、そんな浮かない顔して」
昼休み。
隣のクラスからやって来たドクオが、パンを頬張りながら話しかけてきた。
川 ゚ -゚)「……」
私はドクオの問いかけに答えず、黙々と箸を口元にへと運び続ける。
川*゚ー゚)「……ほら、次はウチのクラス、体育なんだよ」
隣りに座っていたキューが、ほっぺたにご飯粒をつけながらもごもごと喋った。
('A`)「……あぁ、そっか。
お前らのクラスの体育担当って、長岡先生だっけ」
57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 14:56:00.27 ID:FCiCuJKF0
上から載ってるのは珍しいな
58 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:56:09.78 ID:55s0CV/sO
ドクオは私達の気落ちした顔を見て、黙り込む。
彼は私達が落ち込む理由を知っているから、それ以上は何も言及してこない。
( ^Д^)「なんだよ、気にする事ないじゃん。
先生が実のお父さんだからって」
昼食の輪の側に、プギャーが机を寄せてきた。
彼は私とキューのクラスメートで、クラスの中でも明るく目立った存在であった。
('A`)「……プギャー、あんまり大きい声でそれを言うな」
( ^Д^)「なんでだよ? 別にいいじゃん、本当の事なんだし」
59 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 14:59:12.19 ID:55s0CV/sO
ドクオがプギャーを見て顔をしかめた。
プギャーは私達が抱える問題を知らない。
川*゚ー゚)、「……プギャーくん。
他の人の目が気になるから、あまり長岡先生の事、私達の前で言わないで欲しいな」
はっきりと嫌悪感を示すドクオの横で、キューが優しく微笑みかける。
( ^Д^)「えー、何でだよ?
実の親なんだろ?
家族なんだから大切にしろよ!」
まぁ、プギャーの言う事は正論である。
我が身をこの世に繰り出してくれた父母には、子供が感謝するのは至極当然であり、責務である。
しかし、私達には父親に対してそれができない理由があった。
60 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:02:05.10 ID:55s0CV/sO
我々の高校の体育教師、長岡。
私とキューの遺伝的観念に基づいた実の父親である。
私の本名は、砂尾九。
かつての国民的スターから取ったというその名前を付けたのが、長岡である。
まぁ、そんな話はどうでもいい。
普通に考えれば解ると思う。
( ^Д^)「……」
しかし、このお調子者のお気楽な脳味噌では、その複雑な事情に気付けてないようだった。
61 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:03:40.53 ID:55s0CV/sO
私達双子と、父親の名字は違う。
私とキューの名字は母親の物である。
10年前、長岡とシュールは離婚した。
原因は父親の浮気らしい。当時から教師であった父が、実の教え子に手を出したようだ。
しかもその事実が発覚した後、学校とグルになって手を出した女性徒の家族に金を渡し、隠蔽したらしい。
普段物静かな母はその真相を知り、激昂した。
即座に離婚届を叩きつけ、長岡を家から叩き出したのだ、と、母から聞いた。
唐突に、昼休みの終わりを知らせる予鈴が鳴った。
62 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:05:51.11 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)「……そろそろ着替えにいかなきゃ。お姉ちゃん、いこ」
壁に掛けられた時計を見ながら、キューが呟く。
私は静かに頷き、使っていた机を元の場所にへと移動させた。
プギャーも私達の内に流れる重たい空気を知れない呑気な顔をして、のこのこと教室から出ていった。
('A`)「……クー」
先に出ていったキューの後を追おうとしたところ、ドクオの小さな声が耳に入ってきた。
川 ゚ -゚)「……なんだ」
63 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:11:21.82 ID:55s0CV/sO
('A`)「あんまり気にすんな。
プギャーが馬鹿なだけで他の奴らはみんな解ってるよ」
彼の口から放たれた言葉は、気休めの物であった。
いや、彼は精一杯私を励ましてくれているのだろう。
彼の言う通り、プギャー以外のクラスメートは私達の前で長岡の話をしようとはしなかった。
彼等なりの、私達への気遣いの仕方なのだろう。
川 ゚ -゚)「……解ってるさ」
しかし、私の心に広がるのは焦燥であった。
川 ゚ -゚)「しかし、あんな風に何の思慮も遠慮も無く言ってくれる奴がいると、少しはこっちも気が楽になるのさ」
64 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:12:53.56 ID:55s0CV/sO
精一杯の、笑顔を作る。
自分では見れないので解らない。
それを見ているドクオには、果たして自分の顔は果たしてどのように映っているだろうか。
川 ゚ -゚)「心配してくれて、ありがとう」
そう小さく言って、私は足早に人の少なくなった教室から去っていった。
私が運動場に着いた頃には、もう既に生徒達がランニングを行っていた。
65 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:16:31.81 ID:55s0CV/sO
( ゚∀゚)「……遅いぞ、クー」
砂の上に描かれたトラックの外側で、一人の男がこちらを見つめていた。
禿かかった頭で、いかにも好色そうな笑い顔をした中年男。
ジャージ着て出席簿を持った小太りのあの男が、長岡だ。
川 ゚ -゚)「すいません」
66 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:17:13.51 ID:55s0CV/sO
目を合わせずに、素っ気なく言い放つ。
すると案の定、彼は声を荒げた。
( ゚∀゚)「……おい。
テメェ、教師に向かって生意気な態度とってるんじゃねぇよ」
彼の戯れ言を聞き流しながら、私はしゃがんで靴紐を結び直した。
(#゚∀゚)「おい! 聞いてんのかテメェ!?」
冷静を装っている私を見て、視界の片隅に映る彼の醜悪な顔がどんどん赤くなっているのが解った。
川;゚ー゚)「お姉ちゃん!」
騒ぎを聞きつけて、ランニングをしていた集団の中からキューが飛び出してきた。
67 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:21:02.02 ID:55s0CV/sO
私の側に来たキューが、息を切らせながら長岡に頭を下げる。
川;-ー-)「す、スイマセン!
ほら、お姉ちゃんも謝って!!」
グランドの上を走っている生徒達の視線を感じる。
私は駆け寄ってきていきなり謝罪を促したキューに、不快感を感じた。
川 ゚ -゚)「何を謝れと言うのだ?
ちょっと遅刻しただけだろう、その事は既に謝っておいたさ」
川;-ー-)「お姉ちゃん!!」
(#゚∀゚)「クー……テメェ、調子に乗ってんじゃねーぞ!!」
私の素っ気ない態度を目前にして2人が声を荒げた。
68 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:23:00.57 ID:55s0CV/sO
私はそれを尻目に、何とも無いように上着をブルマの中から出した。
私は、この男が嫌いだ。
この男のせいで、あの真面目な母親が散々苦労した。
長岡と離婚した母は私達姉妹を抱えながら、生活保護を受ける事もなく必死に働いていた。
そんな様子の母を見たにもかかわらず、この男は母から私達の親権を剥奪しようと裁判をけしかけたしたらしい。
母は貧しさに喘ぐ傍ら、私達を守る為に必死に長岡と闘った。
それというのも、長岡が私達姉妹を取ろうとしたのが、己のテゴメにしようとしていたからだと解っていたからだ。
自分の生徒に手を出したこのロリコン男の欲望は底知れない。
この体操着だってそうだ。
体育教師兼、私達第二学年の学年主任として、職員会議でこの年からブルマを復活させようと提案したらしい。
長年この高校に勤めてきた彼の発言力は高い物らしく、すんなりとその要望は通された。
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 15:24:28.60 ID:NQxMKi33O
長岡短気すぎじゃね?異常にさ
70 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:26:37.11 ID:55s0CV/sO
全くもって、反吐が出る。
「長岡先生、どうかなさいましたか?」
私を凝視する2人を無視して、上着を翻えし去ろうとすると、ある人物と鉢合わせした。
( ゚∀゚)「……ああ、ナベちゃんか」
長岡は目前の初々しい体操着姿の少女を見て、尖らせていた唇を卑猥に歪めていった。
从'ー'从「クーちゃんもどうかしたの?」
今まで体育倉庫に行っていたのか、その手にはリレーで使うだろうバトンが数本握られていた。
71 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:28:37.05 ID:55s0CV/sO
彼女は私達のクラスの委員長、渡辺さんである。
川 ゚ -゚)「……いや、何でもないさ」
私が素っ気なく言って立ち去ろうとすると、長岡のうざったいどもり声が耳に入った。
( ゚∀゚)「ナベちゃ〜ん、聞いてくれよ〜!
この糞ッタレの倅が、俺に向かって生意気な態度とってくるんだよ。どうしたらいいかな?」
長岡が気持ちの悪いニヤケ面で渡辺さんに話しかけているのは振り向かなくてもわかる。
( ゚∀゚)「ホント、こんな事ならこいつら産まなきゃ良かったよ。
俺が偶々引っ掛けた女と寝た時にそいつが妊娠しやがってな。面倒な事になったもんだよ」
川*゚ー゚)「……」
キュー、こんな人間の戯れ言などそんな真面目に聞かなくていい。
人としての道を外し、恋人であった我が母にも見捨てられ、落ちるとこまで落ちた糞っ垂れだ。
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 15:31:27.56 ID:NQxMKi33O
長岡が色々ありえなさすぎてワロタ
支援
73 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:33:11.09 ID:55s0CV/sO
同情する余地も無い。
せめて、この学校という狭い空間の中でその滑稽な権力という物を揮ってればいいのさ……
( ゚∀゚)「ったく、あの腐れ女。
俺の金目当てでこいつら産みやがったな。どうしようもねぇ奴だ」
ぼそりと吐き出した長岡の言葉が、私の耳元に入った。
川;゚ー゚)「お、お姉ちゃん止めて!!」
74 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:35:01.04 ID:55s0CV/sO
川#゚ -゚)「……離せ」
私はとっさに、長岡に向かって拳を振り上げていた。
私の変容にいち早く気付いたキューが、私の体を抑え込む。
( ゚∀゚)「なんだよ、クー。教師に向かって暴力たぁ見上げた根性だな」
川#゚ -゚)「黙れ、ゲス野郎。
私達への文句ならいい、だが母さんへの悪口だけは許さん!」
この腐れ外道から母への苦言など言語道断。
極めて腹立たしい。
私の怒りは上限を越え、ただただこいつの呆けた顔面に一発を入れてやりたい欲望が為に、キューの拘束と格闘していた。
75 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:36:49.59 ID:55s0CV/sO
そんな様子を見て、渡辺さんが割って入ってきた。
从'ー'从「はいはい、喧嘩はそこまで。早くしないと授業時間が勿体無いですよ」
渡辺さんは私の視界を遮るように目前に立ちはだかると、長岡に振り返った。
从'ー'从「先生、それより今日の夕方空いてます?」
(*゚∀゚)「おっ、なんだいナベちゃん。デートのお誘いかな?」
川#゚ -゚)「調子に乗るn……」
川;゚ー゚)「お姉ちゃん、しーっ」
長岡の妄言を聞いて自然に吐き捨てそうになった言葉を、キューに遮られた。
76 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:39:26.51 ID:55s0CV/sO
从^ー^从「えへへ……デートじゃないんですが……
今度の文化祭で使う用具の買い出しに付き合って欲しいんです」
(*゚∀゚)「おぉ、そうか。なんてったってナベちゃんのお願いだ、先生喜んで引き受けるぞ〜」
渡辺さんが長岡と会話を始めた時。
不意に、渡辺さんが私達に向かってウインクした。
川 ゚ -゚)「……!」
その意図が私に伝わったのを確認すると、彼女は再び長岡と話しだす。
从'ー'从「それじゃあ、今日の四時半に昇降口の前で……」
川*゚ー゚)(渡辺さん……長岡先生の気を逸らしてくれたんだね)
隣りのキューの呟きが微かに聞こえた。
77 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:41:55.58 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)「……お姉ちゃん、今のうちに」
キューにエスコートされ、私は長岡達の元からさり気なく離れていった。
川 ゚ -゚)「……」
川*゚ -゚)「もう、あんまり学校で長岡先生といざこざ起こさないでよね」
無言で歩く私を見て、キューが苦言を漏らす。
私はそれに答えずに、黙々とグランドの上を歩き続けた。
何故、私達があの傍若無人な男に気を遣ってなければいけないのか。
一度、アイツを袋叩きにして懲らしめてやった方がいいのではないだろうか。
最近の私の頭の中には、いつもそんな思いが渦巻いていた。
しかし、我慢をしていればこの平穏な日常が保たる事も解っていた。
キューもそれは解っているのだろう。
彼女だって、長岡の母への悪口は頭に来ていたに違いない。
78 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:44:38.64 ID:55s0CV/sO
苦労して私達を育て上げてくれた母への悪口など、平気で聞いてられる訳がなかった。
だが、しかし。
それでも、この平凡な高校生活を送るのには、長岡の存在を我慢するしかないのだ。
川 ゚ -゚)「……彼女には借りが出来てしまったな」
長岡と明るく会話話をしている渡辺へと目をやる。
どうしてあの男とあんなに楽しそうに出来るのか不思議でしょうがないが、それも彼女なりの私達への気遣いなのだろうか。
どのみち、彼女に助けられたのは事実だ。
あのままでは、本気で殴り合いが勃発してもおかしくなかった。
今は心の中で、彼女に礼を述べた。
川*゚ー゚)「そうだね。後で御礼言っておかないとね」
キューが私を見てはにかんだ。
79 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:46:21.20 ID:55s0CV/sO
放課後。
私達姉妹は渡辺さんの元へ礼を述べに行った。
从'ー'从「ううん、気にしないでいいよ」
彼女は明るくそう言ってくれた。
クラスの委員長として、彼女は前から良く複雑な家庭環境の私達に気を遣ってくれていた。
そんな彼女には、とても言葉だけでは感謝しきれない。
容姿端麗で成績優秀。
クラスの委員長をやりながら新聞部の部長をも勤めるスーパーウーマン。
それでいて人格者というのだから、全くもって頭が上がらない。
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 15:52:01.97 ID:OQE+37GQ0
支援
81 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:52:44.99 ID:55s0CV/sO
('A`)「よぉ」
渡辺さんと別れた後、キューと一緒に廊下を歩いているとドクオが話しかけてきた。
川*゚ー゚)ノ「おーっす」
キューが明るく応えるのを尻目に、私は無言を貫く。
('A`)ノ「おーっす。キューは今日部活だっけか?」
川*゚ー゚)「うん、そうだよ。
今日は格技場で6時まで剣道部の練習があるから、お姉ちゃん達は先帰ってていいよ」
キューの言葉を聞いて、黙っていた私はポツリと呟いた。
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 15:53:13.24 ID:FViTxyeS0
83 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:54:46.77 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……いや、今日はお前を待ってるよ」
私はそう言って、ドクオを見据えた。
川*゚ー゚)「え? でも、まだ2時間もあるし……」
川 ゚ -゚)「ドクオと一緒にいつものゲーセンで待ってるさ」
そう言ってドクオを見つめる。
彼は、まんざらでもないような表情をしながら頭を掻いた。
f('A`)、「ん……まぁ、今日は俺らも部活無いし、別にいいよ」
84 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:56:21.56 ID:55s0CV/sO
キューを見送った後、ドクオと2人で通学路を歩く。
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「……」
お互いあまり話す方ではないし、特に語るべき事も無い。
ただ、黙々と歩みを進めていっていた。
ふと、私達が二番目の曲がり角にさし当たった時、ドクオが話しかけてきた。
('A`)「砂尾」
相変わらず私には名字で呼ぶドクオ。
しかし、それはいつもの事なので、大して気にもならない。
川 ゚ -゚)「なんだ」
素っ気なく、言葉を返した。
85 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 15:57:48.63 ID:55s0CV/sO
('A`)「お前……今日、長岡先生と喧嘩したのか?」
私は無表情で、言葉を返す。
川 ゚ -゚)「誰から聞いた?」
('A`)「プキャー」
川 ゚ -゚)「そうか」
味気ない質疑応答がなされる。
いつも私とドクオの間の会話は、こんなものであった。
幼なじみ三人でいつも皆の会話を引っ張っているのはキューなので、彼女がいないとどうも歯切れが悪い。
川 ゚ -゚)「……プキャーも相変わらずお喋りだな」
私は呟いて、小さく溜め息を吐いた。
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 15:59:53.90 ID:OQE+37GQ0
支援
87 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:01:43.68 ID:55s0CV/sO
('A`)「大丈夫だったのか?」
ドクオが私に話しかけ続けてくる。
いつもは私と同じであまり自分から話しかけない彼が、だ。
きっと心配してくれているのだろう。
彼は昔から私達家庭の事情を知っていた。
家が近所という事もあり、町内で流れる噂話は良く耳にするらしい。
私は話さないが、キューが良くドクオに相談しているというのもある。
気心の知れた彼であるからなのだろう。
最も、自分はキューのように他人に自分の弱みを躊躇いなく晒し出せる性格はしていなかったが。
88 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:02:32.82 ID:OQE+37GQ0
しえん
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:02:43.73 ID:a+GeMsbu0
90 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:03:48.40 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「あぁ、大丈夫だ。
ウチの委員長が仲裁してくれた」
私は無表情で彼の問いに答える。
('A`)「……そっか」
川 ゚ -゚)「あぁ」
彼は、私が"大丈夫"と言えば、それ以上何も言ってこない。
それは何故かと他人に聞かれても、上手く答えられない。
それは私達の間にある信頼関係がなせる物だ、と言えるかもしれない。
赤の他人との間にこのような会話の続かない空気が流れた時の気まずさといったら無いだろう。
しかし、私達の間でそのように感ずる事は無い。
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:04:45.31 ID:OQE+37GQ0
人がいない?
支援
92 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:06:54.03 ID:55s0CV/sO
これは幼なじみという極めて近い関係で共に長い時間を過ごしてきた私達だから成せる物である。
互いの性格を熟慮しているから、会話が続かなくても苦には感じない。
いつもの空気、いつもの雰囲気。
とても心地良く、のびのびとできる私達だけの空間。
しかし、最近何故かその空間が私にはこそばゆく思えていた。
私の言葉を信頼しきったように、顔色を変えないドクオ。
そんな彼の表情を見ていると、なんというか、煩わしかった。
そんなうやむやを抱えていたからか、私は思考の追いつかぬ内にドクオに話しかけていた。
93 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:09:37.76 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「ドクオ、お前はキューの事どう思ってるんだ」
('A`)「……へ?」
いきなりの私の問い掛けに、彼の表情は固まっていた。
川 ゚ -゚)「キューの事をどう思っているか、聞いてるんだ」
(;'A`)「いや、どうって……」
いきなり問い掛けてきたと思ったら、私の目から注がれる真剣な眼差し。
彼は戸惑いの色を隠せていなかった。
そんな彼のおどおどとした様子が愉快に思えてきた。
94 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:10:08.05 ID:OQE+37GQ0
支援
95 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:11:05.15 ID:55s0CV/sO
(;'A`)「べ、別に……キューは仲の良い幼なじみの友人だよ」
川 ゚ -゚)「本当に、それだけか?」
(;'A`)「何を言ってるんだお前は」
私達の歩く道すがら、途中にポツンと立っていた自販機の前で、ドクオの足が立ち止まる。
彼は制服のポケットから財布を取り出すと、自販機に小銭を入れた。
(;'A`)「……ほら、お前は何飲む?」
彼が話を逸らそうとしているのは見え見えである。
しかし、まぁ、タダで貰えるのなら貰っておこうではないか。
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:11:39.72 ID:OQE+37GQ0
ししええんん
97 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:13:55.31 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「エメラルドマウンテン」
('A`)「あいよ」
私が答えると、ドクオは自販機のボタンを押した。
ガコン、と音を鳴らして缶が落ちてきたのを見て、彼はそれを取り出し私に向かって差し出した。
川 ゚ -゚)「ありがとう」
('A`)「どういたしまして」
共に同じ銘柄のコーヒー缶を、一緒になって空ける。
喉にコーヒー豆の苦い味が染みていく。
川 ゚ -゚)「やっぱ仕事上がりはコーヒーに限るな」
('A`)「学生だけどな、俺ら」
98 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:15:47.50 ID:55s0CV/sO
空になった空き缶を自販機の側にあるゴミ箱にへと投げ入れる。
再び下りだした坂道の上で、なんとなしにドクオと会話を続ける。
川 ゚ -゚)「取りあえずなんかやり遂げた後のコーヒーは格別なんだ」
('A`)「まぁ、風呂上がりに飲むコーヒー牛乳と一緒だな」
川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな」
('A`)「あぁ、そうだ」
川 ゚ -゚)「あれは美味いよな」
('A`)「美味いな」
川 ゚ -゚)「キューの事大好きだよな」
('A`)「あぁ、大好きd」
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:17:42.88 ID:OQE+37GQ0
俺しかいないぽいけど支援
100 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:19:23.95 ID:55s0CV/sO
ドクオが冷や汗を垂らした。
(;'A`)「……って」
川 ゚ -゚)「ほう、やはりお前はキューの事そう思ってたんだな」
(;'A`)「孔明か――!!」
まんまと罠に引っかかったドクオを見て、笑いがこみ上げてくる。
川 ゚ ー゚)「いやいや、今言ってたじゃないか。"大好き"だって」
(;'A`)「ちょ、笑うな! ただの引っ掛けだろうが!!」
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:19:55.84 ID:2bKGTG6C0
もういい加減にしろよ、オナニーブーン小説
102 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:21:24.95 ID:55s0CV/sO
私がひとしきり笑った後、ドクオが溜め息を漏らした。
(;'A`)「……ったく、お前も本当にしつこいな」
川 ゚ -゚)「120円の缶コーヒー如きで私が釣られるとでも思ったか」
私が無表情に戻ったのを見て、彼はますます落胆する。
こうなれば、もうこっちのペースだ。
川 ゚ -゚)「お前もいい加減気付いてるはずだ。
キューはお前の事を好いている」
私の放った言葉を耳にして、ドクオは観念したかのように肩を落とした。
103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:21:46.02 ID:OQE+37GQ0
支援
104 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:25:40.82 ID:55s0CV/sO
('A`)「……自惚れじゃないが、確かに俺もそう思うよ」
ドクオはポツリと呟いて、ゆっくり歩き出した。
私はその後を追うようにそろそろとついて行く。
('A`)「最近、アイツから良くメールが来るんだ。
他愛も無い話だったり、買い出しや遊びの誘いが頻繁にな」
川 ゚ -゚)「お前と会う時も、最近キューは意識しているみたいだよ」
双子の姉として、妹の異変にはすぐに気付けた。
彼の前になると、最近になってからキューは頬を赤らめたり口調が穏やかになるのが増えているように思えた。
105 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:28:13.83 ID:55s0CV/sO
元々、仲の良い二人ではあった。
小さい頃から、近所の子供達と遊ぶ時はキューはドクオにベッタリであった。
その気が前からあるのはドクオも私も知っている。
ただ、最近になってその思いが進展しつつあるのが目に見えた形となって現れていた。
川 ゚ -゚)「どうする? この調子だと、いずれアイツはお前に告白しかねるぞ」
私は無表情を保ちつつ、ドクオに向かって一歩踏み込んだ問いを試みた。
彼は、そんな私の詰問にも、相変わらずの無表情を保っていた。
106 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:28:32.14 ID:OQE+37GQ0
しえん
107 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:30:35.78 ID:55s0CV/sO
('A`)「どうって言われてもな……なんて答えれば良いのか、解んねえよ」
力無く紡いだドクオの言葉を聞き、少し苛ついた。
川 ゚ -゚)「何故解らないんだ。正直に答えればいいだろう」
('A`)「いや……お前の言いたい事は解るが、こっちにも心の準備と言うものがある。
その気で無いのに適当な事なんて言え無いだろう」
少し声を荒げて言ったドクオを見て、私は黙り込む。
('A`)「……向こうがどう思ってるかは別として、俺は今現在キューに対してそんな感情を持ち合わせていない。
俺は今の幼なじみの友人という関係でありたいんだ」
108 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:31:16.63 ID:OQE+37GQ0
しえん
109 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:34:50.40 ID:55s0CV/sO
確かに、その通りである。
平和な現状には、それなりに満足はしている。
それを自ら進んで壊そうとするのを躊躇うのも、最近の私なら解らなくもなかった。
川 ゚ -゚)「……良い組み合わせだと思うんだがなぁ」
ドクオがはっきりと言い放ったのを見て、溜め息を漏らした。
('A`)「そう言うなって。
お前だって、俺が今、突然お前に告白したって躊躇うだろう?」
彼の言葉を聞き、一瞬私の時間が止まる。
彼が私に向かって告白する。
そうしたら私は、何と答えるだろう。
今の憂鬱な気分の私は、とっさに何と答えるのだろうか。
110 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:37:20.80 ID:55s0CV/sO
しかし、私は彼の言葉がただの例え話であることをすぐに悟った。
川 ゚ -゚)「さぁ、どうだかな。
……それよりホラ、ゲーセンに着いたぞ」
私達は、下り坂の通学路の突き当たりにある交差点にさしかかっていた。
私の指さした車通りの多い横断歩道の向こうに、煌びやかな電飾がなされた看板が目についた。
('A`)「おーし、じゃあ格ゲーでもやるか〜」
私の言葉の後に、脳天気な様子でドクオが声をあげる。
たった今私の内で起こった葛藤など、知りもしない。
そんな様子で。
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:38:51.76 ID:OQE+37GQ0
話のすじが良く分からない
支援
112 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:40:22.16 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……」
何となく、ドクオの態度に苛ついた。
その理由は、ドクオが冗談を言ったからだ。
なる程、面白い冗談である。
キューが彼を好きな事を自分で知っておいて、良くぬけぬけとそんな事が言えるものだ。
流石ドクオ、意地が悪い。
そんな彼への嘲笑である。
しかし、それとは別に私の心のどこかで何かが引っかかっているのも解っていた。
113 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:41:44.26 ID:55s0CV/sO
この気持ちは何だろう。
彼が言い放ったその台詞。
その言葉のどこかに、心の琴線が触れていた。
「突然お前に告白したって戸惑うだろう?」
彼の声が心の中に響き渡り、それが言霊となって私に取り憑く。
何故、私はこんなにも動揺しているのか――
('A`)「――おい、砂尾?」
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:42:11.84 ID:OQE+37GQ0
ジャンルは恋愛かね
支援
115 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 16:42:47.61 ID:55s0CV/sO
川;゚ -゚)「……っ!」
ドクオの呼び声で我に返る。
どうやら私は、物思いに耽っていたらしい。
ハッとして気がつけば、ドクオが怪訝な面持ちで私の表情を覗いていた。
('A`)「具合でも悪いのか?」
彼の言葉に少し心配そうな声色が混じる。
……全く、こっちの思いも知らずに。
お前に心配されるなど余計な世話だ。
116 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:48:46.72 ID:B8uCTytGO
面白い
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:59:23.45 ID:UhSuHl/SO
支援
118 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 16:59:38.66 ID:UhSuHl/SO
支援
119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:02:38.37 ID:OQE+37GQ0
さるか?
120 :
◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:03:25.29 ID:55s0CV/sO
さるった……
>>114 一応、恋愛を裏舞台で展開していくサスペンスです。
まだ話の流れわかりにくいけど、最後辺り読めば解るかも
まだ半分だけど投下再開スルヨ--
121 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:04:49.05 ID:55s0CV/sO
しかし、私の抱えるそんな不満は、何となく察知されたくなかった。
川 ゚ -゚)「……何でもない」
('A`)「そうか?
いきなり神妙な顔になったからどこか悪くなったのかと思ったよ」
ドクオは私を見ながら首を傾げる。
いつもは無愛想なドクオが今日は妙に御世話焼きだ。
川 ー )「そうだな、どこか悪いのかと言われたら、気分が悪い」
122 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:06:03.38 ID:UhSuHl/SO
支援の差し入れどぞー
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:06:12.45 ID:B8uCTytGO
支援
124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:06:20.18 ID:UhSuHl/SO
支援
125 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:06:36.76 ID:UhSuHl/SO
支援
126 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:06:52.65 ID:UhSuHl/SO
支援
127 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:07:03.82 ID:55s0CV/sO
('A`)「ほれ、言わんこっちゃない」
私の戯れ言を聞いてドクオが溜め息をつく。
川 ゚ ー゚)「あぁ、お前に言われてみたら更に悪くなった気がするよ」
私はドクオに向かって微笑んでみせた。
そんな私の様子に、ドクオの表情に緊張が走ったのが解った。
(;'A`)「……」
川 ゚ -゚)「気分転換にハイパーフルボッコタイムだな」
嫌らしく微笑んだ私の顔を見て、ドクオはまた大きく溜め息をつくのであった。
128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:07:06.65 ID:HWC8lGOBO
追いついた支援
129 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:07:08.51 ID:UhSuHl/SO
支援
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:07:24.70 ID:UhSuHl/SO
支援
131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:07:40.75 ID:UhSuHl/SO
支援
132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:07:56.84 ID:UhSuHl/SO
支援
133 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:08:01.53 ID:OQE+37GQ0
人増えたかと思ったら・・・
支援
134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:08:11.80 ID:UhSuHl/SO
支援
135 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:08:15.89 ID:55s0CV/sO
(;'A`)「ぶるあぁぁぁ!!」
川 ゚ -゚)「小足見てから昇竜余裕でした」
煙草の匂いが漂うゲームセンターの中に、ドクオの悲鳴が響いた。
(;'A`)「おま、ちょっとは手加減しろ!」
格闘ゲームの対戦台の向こうから、ドクオが顔を覗かせた。
川 ゚ -゚)「初心者イジメはやはり爽快だな」
(;'A`)「この野郎……」
136 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:08:27.37 ID:UhSuHl/SO
支援
137 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:09:46.95 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)「お姉ちゃんは女の子だから野郎じゃないよ〜」
突然、私の後ろからキューの声がした。
('A`)ノ「おぅ、おぃ〜っす」
川 ゚ -゚)「声が小さい」
川*゚ー゚)ノ「もいっちょおぃ〜っす」
3人で他愛も無くふざけてみせる。
私は気を取り直して、突然やってきたキューに話しかけた。
川 ゚ -゚)「部活はもう終わったのか?」
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:10:22.85 ID:B8uCTytGO
支援。一人絶倫がいるなw
139 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:11:15.45 ID:55s0CV/sO
川*´ー`)「うん、終わった〜。
今日は疲れたよ〜」
キューはそう言って、竹刀を包んだ棒状の袋を背負い直した。
('A`)「練習ご苦労さん。
さ、キューも来た事だしそろそろ帰りますか」
少し疲れた顔のキューを見て、ドクオが椅子から立ち上がった。
川 ゚ -゚)「なんだ、負け逃げか」
川*゚ー゚)「や〜い負け逃げ〜」
(;'A`)「うるせぇ馬鹿!」
140 :
支援d ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:14:26.86 ID:55s0CV/sO
私の冗談に戸惑うドクオ。
そんな彼を冷やかすキュー。
それを見て笑いがこみ上げてくる私。
三人の間に、気持ちの良い和やかな空気が流れている。
川 ゚ ー゚)「全く、ドクオもキューも本当に可笑しいな」
川*゚ぺ)「む〜、ドックンは兎も角私はまともだよ〜?」
(;'A`)「どうせ俺はいじられキャラですよ……」
141 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:17:11.68 ID:55s0CV/sO
私の呟きにそれぞれの反応を示す二人。
やはり自分の予想通りだったのが、笑える。
川*゚ー゚)「……もう、お姉ちゃん笑い過ぎ」
(;'A`)「どうせ俺はゲームで女に負けるダメ男ですよ……」
二人の言葉を聞いて、私の心の底に穏やかな温もりが広がったいくのが解る。
常に先を案じているその気分が、少しだけ晴れる。
私はその束の間の悦に浸りながら、やりかけのアーケード台を放置して席を立った。
142 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:18:53.91 ID:55s0CV/sO
日が沈みかけ、空が徐々に夜の闇に侵されていく。
家路へと続く薄暗い住宅路を、三人で並んで歩く。
その間、キューは常にドクオと会話をしていた。
川*^ー^)「それでねー、伊藤さんが間違えて靴下の左右間違えちゃったの」
('A`)「そりゃあ恥ずかしいわなww」
二人の楽しそうな声を聞きながら、私は黙々と歩き続ける。
学校等の帰り道は、昔からはこんなものである。
そんなに気にする事では無い。
ひとり物思いに耽りながら、ふとキューの顔を盗み見た。
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:20:24.05 ID:YoqPu9/Z0
支援
144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:21:37.17 ID:UhSuHl/SO
支援さるったからこれくらいでいいか
145 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:22:09.00 ID:55s0CV/sO
川*^ー^)
楽しそうに、ドクオと話している。
さしずめ、恋する乙女の表情といった所か。
やはり、私と会話をしている時とは違い、表情がイキイキとしている。
素直で可愛い彼女は、思い人を前にしてその気持ちが自然に現れてしまうのだ。
しかしそれは不思議でも何でもない。
誰でも、自分の好きな人物とたわいもない話をしてれば、自然と気分が高揚してくるのだ。
自分にそう、言い聞かせる。
146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:23:39.92 ID:B8uCTytGO
o川*゚ー゚)o支援
147 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:24:18.99 ID:UhSuHl/SO
支援
148 :
支援サルwwwマジでd ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:24:24.77 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)「……お姉ちゃん、どうかした?」
キューが私を見て声を掛けてきた。
('A`)「ん? クー、どうかしたのか?」
キューが突然会話を遮ったのを見て、ドクオが呆けた声を出した。
なる程、流石私の双子の妹である。
ドクオ等の他人には決して解らない、私の微妙な変化を察したのか。
川 ゚ -゚)「いや、何でもない」
私は三人で歩き始めてからずっと変わらない無表情で、短く答えた。
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:24:35.64 ID:UhSuHl/SO
支援
150 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:25:31.06 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)「そう? なら良いけど」
キューは私のハッキリとした返答を聞いて、何とも無かったように再びドクオと話し始めた。
そうだ、今はそんな事を考えている場合ではない。
私はこの日常を守らなければならない。
最近は常にその事で頭が一杯であった。
姉として、アイツの魔の手から家族を守らなければならない。
それが私の使命なのだから。
151 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:29:11.99 ID:55s0CV/sO
しかし、例えそれがほんの僅かでも、そんな私の思惑を知られたらいけない。
彼女達に心配は掛けたくない。
今後は私の思惑が皆に知られないよう、少し注意していかなければならない。
川*^ー^)「それでね〜、都村さんが伊藤さんにツッコミを入れた訳……」
川 ゚ -゚)「……」
キューの明るい顔をそっと見つめる。
私はこれから起こるであろう波瀾を思いながら、静かに決心をしたのであった。
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:30:31.06 ID:UhSuHl/SO
支援
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:31:02.98 ID:UhSuHl/SO
支援
支援
155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:36:59.90 ID:UhSuHl/SO
支援
156 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:37:16.53 ID:UhSuHl/SO
支援
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:37:31.98 ID:UhSuHl/SO
支援
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:37:48.11 ID:UhSuHl/SO
支援
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:42:50.22 ID:OQE+37GQ0
しえん
160 :
◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:46:31.82 ID:55s0CV/sO
なんか急にさる規制がキツくなってきたよ……
つなわけで、ちょっとゆっくり投下します
161 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:49:53.04 ID:55s0CV/sO
今朝にドクオと待ち合わせをした交差点に着くと、彼と別れた。
川*゚ー゚)「は〜。今日は一杯遊んだね〜」
川 ゚ -゚)「そうだな」
満足げな表情のキューを尻目に、軽く応答する。
ドクオと別れてからのキューは割と静かで、道中いくらか私と他愛も無い会話をするも、先程の勢いは感じられない。
そんな彼女の様子に、悪い気分は起こらない。
別に、彼女がドクオの事を好いていても私には関係の無い話だ。
それに、歩くに連れ自宅へと近づいて行く毎にキューの表情が段々と強張っている。
それは私も同じで、普通の感情を持つ人間ならどうしようも無い事なのだと解っていたからであった。
162 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:53:59.07 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……」
川*゚ -゚)「……」
とうとう自宅に着いた私達は、玄関の扉の前で無言のままに突っ立っていた。
川*゚ー゚)「……カギは……っと」
何となくよそよそしい態度のキューが、持っていた鞄を弄る。
次に彼女はその中にあった家の鍵を取り出し、ゆっくりと扉の施錠を外した。
川 ゚ -゚)「……」
カチャリ、と鍵が外れ、私は恐る恐るドアのノブに手を掛ける。
そして私もまたゆっくりと、静かにその扉を開いた。
163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:55:01.53 ID:OQE+37GQ0
しえん
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 17:57:49.14 ID:OQE+37GQ0
しえん
165 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 17:58:51.25 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)「……ただいま〜」
ドアを開けた私の後ろから、キューが中の様子を伺った。
キューが静かに声を出すが、中から応答は無い。
そんな小さな声で中の人間に聞こえる訳が無い。
まぁ、彼女がそうする理由も解ってはいたが……
川 ゚ -゚)「……」
私はゆっくりと視界を下に降ろす。
玄関の床の上に、靴が何足あるか、確かめる為である。
果たして私の目に映ったのは―――
166 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:00:26.94 ID:OQE+37GQ0
しししえええんんん
167 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:01:45.49 ID:55s0CV/sO
一足。
女性物の靴が一足だけである。
川 ゚ -゚)「……ふぅ」
思わず溜め息を漏らした。
川*゚ー゚)「……お父さん、まだ帰って来てないみたいだね」
私の溜め息を聞いてから、同じく安堵した様子でキューがぼそりと呟いた。
川 ゚ -゚)「あんな畜生、一生帰って来なくていいんだがな」
私は冷めた口調で話しながら、靴を脱いで家に上がる。
川*゚ー゚)「駄目だよ、そんな事言っちゃ。
あれでも一応、私達のお父さんなんだから……」
私と共に靴を脱ぎ捨て、キューは家に上がり込む。
しかしその口調は、やはり力は篭もってはいなかった。
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:03:35.30 ID:OQE+37GQ0
しえん
169 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:06:29.57 ID:55s0CV/sO
居間に入ると、テーブルの上で茶をすすっていた母がテレビを見ていた。
lw´‐ _‐ノv「あら、お帰りなさい」
川*゚ー゚)「ただいま、お母さん」
キューは母に軽く挨拶をすると、鞄をソファーの上に放り投げた。
次に彼女は、羽織っていたコートを椅子に掛けると、スタスタと冷蔵庫の前に歩いて行った。
川 ゚ -゚)「キュー、牛乳頼む」
川*゚ー゚)「おk、お姉ちゃん」
私はキューに話しかけながら、着ていたダッフルコートを壁のハンガーに掛けた。
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:07:36.47 ID:UhSuHl/SO
支援
171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:08:47.18 ID:OQE+37GQ0
しえん
172 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:10:09.49 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「アイツはまだ帰ってないのか?」
私は椅子に腰掛けると、テーブルを挟んで対面した母になんとなしに話しかけた。
lw´‐ _‐ノv「あぁ、お父さんならまだ帰って来てないよ。
夕方電話来て、なんか学校の用事で遅れるとか言ってたよ」
母の言葉を聞き、ふと昼間の出来事を思い出す。
私が長岡と口喧嘩をした時。
仲裁に入ってきた渡辺さんが、確かそんな事を言っていたような気がする。
まさか、彼女は本気で言っていたのか?
もしそうだったなら、彼女に感謝しなければならない。
173 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:14:00.13 ID:55s0CV/sO
川*゚ー゚)「はい、お姉ちゃんの分」
母と会話をしていると、キューが私の目の前にガラスのコップを置いた。
川 ゚ -゚)「ありがとう」
その容器なみなみに入れられた白い液体を、おちょぼ口で少しすする。
キューは私と違って、紙パックのジュースを飲んでいた。
彼女はストローをくわえながら、テーブルに座る私の後ろにある先ほど彼女の鞄を放り投げたソファーにへとその身を沈めていった。
川*´ー`)「うへぇ……疲れたぁ」
174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:14:50.51 ID:OQE+37GQ0
しえん
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:17:06.37 ID:NQxMKi33O
離婚したんじゃないっけか?あれ?
何かクーが長岡殺してドクオがそれ庇うかドクオが殺す展開が頭を掠める。
何かそんな話あったな
わくてかしてるよ
176 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:18:10.94 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……そう言いながら、携帯か」
彼女はソファーの上に寝転がって、携帯電話を弄くりまわしていた。
川*゚ー゚)「てへへ……」
キューは私の問いかけに答えるでも無いように、曖昧な返事をする。
そして、再び携帯のボタンを忙しなく打ち込む作業に没頭していった。
川*^ー^)「えへへ……。『今日は楽しかったね』、っと」
彼女の明るい表情をぼんやりと眺める。
恐らく、ドクオとメールでもしているのだろう。
177 :
175>もう少しでワカルヨ- ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:22:54.03 ID:55s0CV/sO
さっき会ったばかりで、よくもまぁそんな事が出来たものだ。
まぁ、それだけ彼の事が好きなのだろうが。
先程の帰り道でのドクオを前にしたキューの振る舞い。
それを見ていると、彼女が彼を慕っているのがよく解った。
彼と過ごす時間を目一杯楽しもうと、はやる気持ちが前へ前へとどんどん進んで行っていた。
一緒にいる間、このキューの姿勢には私と同じでマイペースなドクオには少し居心地の悪い物なのではないかろうか。
そう思った程。
それだけ、キューの体から発せられるオーラが凄かった。
恋する乙女というのは凄まじいものだ。
178 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:26:13.33 ID:55s0CV/sO
lw´‐ _‐ノv「……それじゃ、そろそろお夕飯の支度をするね」
しばらくしてから、母が椅子から立ち上がった。
川 ゚ -゚)「把握した」
私は母とアイコンタクトをする。
夕食が出来るまで、しばらく暇でも潰していよう。
私は椅子から立ち上がると、キューを尻目にしてソファーの前に座り、テレビのスイッチを入れた。
チャンネルを色々と変えてみるが、生憎に面白そうな番組が無かったので、ニュース番組に画面を掛け替える。
キューの寝転がるソファーを背にして、私はカーペットの敷かれた床の上にへと腰を下ろした。
『続いては、〇×市でありました殺人事件です……』
ぼんやりと画面を眺めていると、男性のニュースキャスターが神妙な面もちで原稿を読み始めた。
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:26:54.09 ID:OQE+37GQ0
きたか
180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:29:08.88 ID:NQxMKi33O
犯人はぺにさす
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:29:50.36 ID:OQE+37GQ0
犯人はブーン
182 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:31:24.19 ID:55s0CV/sO
(-_-)「先日無くなった、内藤文太さん無職26歳の男性が刃物で何者かに殺害された事件ですが……」
(-_-)「その交際相手の24歳の女性が、先日から行方不明との事です」
(-_-)「警察は何らかの事情を知っているとの見方をして、現在行方を追っています」
(*゚ー゚)「被害男性は全身を刃物で何ヶ所も刺された跡があり、その遺体は現在行方不明の女性のアパートの部屋から発見されました」
(-_-)「本日コメンテーターとして来て頂いている、警視庁の諸本さんに聞いてみようと思います。
諸本さん、事件をどう見ますか?」
(´・ω・`)「悲惨な事件ですね。
事情を知っているだろう交際相手の女性を早く見つけるよう、我々も努力します」
(-_-)「諸本さん、ありがとうございました」
(*゚ー゚)「それでは次は癒やし系動物コーナー、今日は何と銀色のクジラが……」
183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:32:32.00 ID:OQE+37GQ0
ブーン死んだわ・・・
184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:33:23.12 ID:NQxMKi33O
ぺにさすのぺの字さえ出なかったわ
185 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:35:11.71 ID:55s0CV/sO
不意に、頭の後ろで振動が起こる。
川*゚ー゚)「!」
私と一緒になってテレビを見ていたキューが、五月蝿いバイブ音を鳴らす携帯電話を取る。
少し間を置いてから、後ろからまたボタンをポチポチと押す音が聞こえてきた。
川 ゚ -゚)(……ドクオも良く続けられるな)
頭の中で、ひっきりなしに鳴る携帯電話を見て苦笑いするドクオを想像する。
キューの笑顔とは裏腹なその様子が、どこか滑稽で面白かった。
川 ゚ -゚)「〜〜」
私は組んだ手を天に突き上げ、大きく伸びをする。
186 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:35:39.84 ID:OQE+37GQ0
しかし長いな
187 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:36:28.41 ID:zwwTQ77J0
188 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:37:04.94 ID:55s0CV/sO
退屈な日常。
それはとても平和なものである。
普通の中流階級の家庭に流れるその空気が、私にはとても愛おしかった。
だらしなくソファーに寝転がって携帯を楽しむ妹。
まな板の上で野菜に包丁を入れ続ける母の後ろ姿。
テレビを見ながらのんびりとくつろぐ私。
それはここ最近味わっていなかった、穏やかな感覚であった。
189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:38:25.03 ID:OQE+37GQ0
しえん
190 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:39:13.86 ID:55s0CV/sO
lw´‐ _‐ノv「はい、ご飯できたよ」
ソファーの周辺でくつろぐ私達に向かって、母が声をかけた。
川 ゚ -゚)「把握した」
私はそう言って立ち上がると、テーブルの席に座る。
そのまま席に座り続けて数十秒。
川 ゚ -゚)「……キュー、飯だぞ」
いつまで経っても夕食の席に着こうとしないキューに苛立ちを覚え、私は彼女の方へ振り返った。
川*- -)「……」
191 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:39:32.00 ID:UhSuHl/SO
支援
192 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:40:59.67 ID:OQE+37GQ0
しえん
193 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:42:51.20 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……なんだ、寝てるのか?」
立ち上がり、彼女の側に近寄ってその体を揺すってみる。
しかし、彼女は何の反応もしない。
lw´‐ _‐ノv「今日部活だったから疲れてるんでしょ」
母が彼女の寝顔を見て優しく微笑む。
川 ゚ -゚)「どうする? 起こすか?」
lw´‐ _‐ノv「いや、可哀想だから寝かしといてあげましょう」
私の問いかけに直ぐに答えた母を見て、私はキューの体を担ぎ上げた。
川 ゚ -゚)「じゃ、キューの部屋のベッドに持って行くよ」
私は彼女の体を背中に背負い直すと、夕食の温かい香り漂う居間からゆっくりと歩き去っていった。
194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:45:36.00 ID:OQE+37GQ0
しえんしえん
195 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:47:47.56 ID:55s0CV/sO
私の目の前に、空になった皿が積まれていった。
川 ゚ -゚)「ごちそうさま」
lw´‐ _‐ノv「はい、おそまつさま」
私が手を合わして言ったのをみて、母がぼそりと呟いた。
lw´‐ _‐ノv「お風呂出来てるから、先に入ってきなさい」
シーシーと息を吐きながら爪楊枝を弄くっている私を見て母が言った。
川 ゚ -゚)「把握した」
私はそう母と短く会話を交えると、満腹の腹を抱えながら廊下へと出てゆき、居間のドアを閉めた。
196 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:48:42.46 ID:OQE+37GQ0
しえん
197 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:49:13.39 ID:UhSuHl/SO
支援
198 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:51:16.15 ID:55s0CV/sO
洗面所に入り、カーテンを掛ける。
今日は帰りが遅かっのでそのまま着ていた制服を、しわにならないように脱いだ後はハンガーに掛けておく。
ふと、洗面所の鏡に映る下着姿の自分が目に入った。
川 ゚ -゚)「……」
おもむろに、自分の胸を触る。
その感触はあまり心地よいものでは無く、寂しい。
川 ゚ -゚)「……」
自分の背中に、先程キューを背負った時の柔らかい感触が蘇る。
川 ゚ -゚)「一応、双子なんだがな……」
199 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:53:37.73 ID:55s0CV/sO
気を取り直し、下着を脱いで洗濯カゴに放ると、タオルを体に巻いて浴室に入った。
川;゚ -゚))「……寒い」
冬の冷えた浴室内の空気が肌を襲う。
私は急いで湯船の蓋を取り外した。
川 ゚ -゚)「おぉ……」
蓋をされその中に籠もっていた蒸気が、一斉に浴室の中へと広がっていく。
川 ゚ -゚)「生き返るな」
私は一人言を呟いて、椅子の上に腰を下ろした。
200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:54:07.65 ID:OQE+37GQ0
しえん
201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:55:36.45 ID:UhSuHl/SO
支援
202 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 18:57:06.72 ID:55s0CV/sO
さて、今から今日一日の体についた汚れを落としにかかる訳だが。
人前で風呂に入る女性は、タオルを体に巻いている事が多い。
体を洗う時も、人によってはそのまま中に手を入れて洗う。
が、私はそれが面倒臭い。
あまり器用でない私にとって、タオルを着たまま体を洗うのは至難の技であった。
本当は風呂に入る最初から、裸一貫で入りたいくらいだ。
川 ゚ -゚)「……まぁ、ここでは叶わん夢だがな」
私はまた一人言を呟き、体を洗い始める。
手の行方を阻む布に煩わしい思いをしながらも、念入りに全身をくまなくこする。
ついでのバストマッサージも欠かさない。
203 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:58:00.38 ID:OQE+37GQ0
この文はいらないと思う
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 18:59:57.09 ID:NQxMKi33O
いらんな
まさかバストに関係する何かが!?
205 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:01:49.31 ID:55s0CV/sO
体に付着した泡をお湯で洗い流す。
空になった桶を置くと、私は体を湯船の中にへと沈めた。
川 ゚ -゚)「……ふぅ」
思わず溜め息をつく。
温かい湯が全身を覆い、体の疲れをゆったりと溶かしていくようだ。
私はその気持ちの良い感覚を存分にと味わう。
私は風呂は長湯派であった。
湯船の中でのんびりとくつろぎながら、頭の片隅で物思いに耽っていた。
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:03:53.95 ID:OQE+37GQ0
しえん
207 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:05:44.46 ID:55s0CV/sO
風呂の湯気を浴びぼーっとする頭の中に浮かんでいたもの。
それは、いつの日か家族で行った、真夏の海。
あの時はまだぎくしゃくはしていたものの、母も父も子供の前ではそれなりに夫婦らしい態度をとっていた。
夏休みに入って皆のんびりとしていた頃、突然海に行きたいと言い出したキューの言葉がきっかけだ。
彼女の全力の押しに、渋々と父が車を出しのだった。
海に着くなり、はじけた胡桃のように車から飛び出していったキューの満面の笑顔は今も覚えている。
あれはもう、何年前の事だったろうか。
――浜辺に着くと、私とキューは彼を連れて無邪気に遊び出した
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:06:53.61 ID:OQE+37GQ0
しえん
209 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:09:19.56 ID:55s0CV/sO
私達が海に出かける事を知った近所の独家が、一緒に行こうと言い出した。
独家と砂尾家は以から交流があり、こういった提案も良くあることであった。
その家族ぐるみ付き合いの根元が、私達双子の姉妹と同い年の少年。
ドクオである。
彼とは確か、幼稚園の頃からの友達付き合いだ。
性別の違いはあれど、割と私達と彼は気があったので、昔からよく共に遊んだ。
クーとドクオは海に入って、小さい体が波にさらわれ度に無邪気に騒いでいた。
私はというと、そんな二人を尻目に一人黙々と砂山の製作に没頭していた。
途中、たまに顔を上げ、ぼんやりと彼らの楽しそうに遊ぶ様子を眺めていた。
今も、邪気のかけらも無いドクオとキューの笑顔が思い起こされる。
210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:11:07.85 ID:OQE+37GQ0
しえん
211 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:12:51.77 ID:55s0CV/sO
川 - )。・。「……」
湯船の中に顔を沈め、口から泡をたてる。
どうして私は今、こんな回想に耽っていたのだろか。
そんな事を心の中で呟きながら、頭を水面に上げる。
川 ゚ -゚)「……」
湯船から顔出し、シャワーの横にある鏡にへと目をやる。
鏡は湯気ですっかり曇っていたので、私の姿は良く見えない。
はたして今の私は、どんな表情をしているのだろうか。
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:13:47.95 ID:OQE+37GQ0
しえん
213 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:16:35.58 ID:55s0CV/sO
先程から頭の中がぼんやりとしている。
それは体が温まっているからだけではない。
頭の中で、あの言葉が繰り返し響き渡る。
「俺が今、突然お前に告白したって躊躇うだろう?」
今日、ドクオが私に言った台詞。
本人はほんの冗談のつもりだったのだろうか。
私には解らない。
だけど、一つだけ解っている事がある。
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:16:44.64 ID:UhSuHl/SO
支援
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:17:37.55 ID:OQE+37GQ0
しえん
216 :
◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:18:20.49 ID:55s0CV/sO
ちょっと夕飯喰ってきます
(・ω・)ノ
217 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:20:27.40 ID:OQE+37GQ0
小休憩か
思ったんだが無駄な文が多すぎやしないかい
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:27:42.44 ID:OQE+37GQ0
最後の保守
219 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:41:22.14 ID:UhSuHl/SO
保守兼支援
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:45:57.60 ID:ZYf6+uxtO
保守
221 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:48:24.80 ID:55s0CV/sO
きっと私は、彼の事が好きなのだろう。
昔からずっと、遠くから彼を眺めてきた。
別に彼が私にとって高嶺の花、という訳では無い。
そういった見方なら、むしろ立場は逆だろう。
私達は昔からの幼なじみとして、何の気持ちの弊害もなく互いに思い思いの言葉を言い合ってきた。
だが、私は彼に少し遠慮がちな部分があった。
222 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:51:04.03 ID:55s0CV/sO
はたしてそれは何なのか。
腹を割って話しあえる親友という関係が長すぎて、彼を男として見れないのだろうか。
恵まれない家庭環境で育ったが故、温かい独家を見てそれが妬ましかったのか。
それとも単に、私が恋愛ベタなだけなのか。
理由は解らない。
もしかしたら、それら全ての事情から今の感情が来ているのかもしれない。
ただ一つ、気になった存在がある。
双子の妹、キューだ。
223 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 19:57:31.93 ID:55s0CV/sO
彼女には私より遥かにドクオの存在が大きいようだ。
あの家族旅行の時だって、彼女はドクオが来る事を誰よりも楽しみにしていた。
性格もあるのだろうが、キューがドクオに対面した時、彼女のその喜び様は顔に出てくる。
彼女は昔からそんな感じだ。今も変わらない。
そんな思い人を目の当たりにした妹の様子を見ていれば、姉なら応援したくなるものだ。
例えその相手が自分が好感を持っていたとしても。
第一、彼女のその思いの強さに自分の気持ちが勝てる気がしなかった。
それが故、昔から一歩退いてしまっていたのだった。
224 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 19:58:17.32 ID:UhSuHl/SO
支援
225 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:02:37.05 ID:55s0CV/sO
ドクオはキューに友達以上の好意は持ってはいるものの、恋人にするとなるとその心情は微妙な様だった。
彼曰わく、今のままの関係でいたいそうだ。
私もその意見には、素直に賛成できた。
無理に前へ進もうとしなくてもいいのだ。
今は仲の良い友人関係のままで良いではないか。
別に、彼らの関係を妬んでいる訳でない。
今は互いに平和な日常を送る事が大事なのだ。
第一、今の私には……
「うぃ〜っく、タダイマ〜〜」
今の私には、そんな事を気にしてる暇など無かったから。
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:06:11.56 ID:jQ1VuZGRO
支援攻撃
227 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:07:04.55 ID:55s0CV/sO
浴室の向こうの廊下から響いてきた耳障りなかなきり声。
それを耳にした私に、嫌な予感が走る。
「ちょっと! まだクーが入ってます!」
「かなわねぇだろ〜。なんなら、久々の親子水いらずで一緒に風呂入るべ〜」
ドタバタと騒がしく音を鳴らしていたのがこちらに近づいてくる。
どうやら私の予感が的中したようだった。
川 ゚ -゚)「……ハァ」
私は溜め息を一つ吐いて、湯船から体を起こす。
それと同時に、洗面所で物音がしたかと思うと、突然浴室の扉が開いた。
228 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:12:02.49 ID:55s0CV/sO
(*゚∀゚)「おぅ、くー。いっひょにオレと流しっこしよu」
川#゚ -゚)ノ--ο「帰れ」
浴室に覗かせた間抜けな面目掛けて石鹸を投げつけた。
(#)∀-)「グハッ」
石鹸が赤みがかった顔にクリーンヒットする。
醜い顔を覗かせていた主が怯んでいるうちに浴室の扉を閉める。
次に私は、表から開けないように風呂場に用意しておいたつっかえ棒を扉の前に設置した。
(;゚∀゚)「なっ…!? オイ、クー! 開けろよ!!」
川#゚ -゚)「黙れ変態親父。帰れ」
(#゚∀゚)「アンだとこの野郎! ここは俺様の家だぞ!!」
229 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:17:00.94 ID:55s0CV/sO
ガタガタと扉を揺らす音がするのを尻目に、私はタオルを外してシャワーを浴び始めた。
タオルを纏っていた理由はこれである。
ここの家では、何時この変態親父が風呂場に押し寄せてくるかわからないからだ。
残念ながら、浴室の扉のカギはこの糞ッタレ親父が壊してしまった。
その為に、このいい年こいて自分の子供にまで欲情してくる獣から我が子を守ろうと母がつっかえ棒を用意してくれた。
こうなっては、もう浴室に侵入するのは不可能だった。
ケダモノが帰ってきた事もわかったし、鍵もしたので私はこれで存分に体を洗えるのだった。
やがて侵入を諦めたのか、扉を揺らす音が消えると、外から舌打ちが聞こえてきた。
230 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:23:41.37 ID:55s0CV/sO
( ゚∀゚)「……ちっ、覚えてろよクー。
明日の授業で目に物見せてやるからな」
いつもの捨て台詞だった。
しかし、あまり因縁を付けられても面倒なのでそれとなく話しかけてやった。
川 ゚ -゚)「言っとけ。
それより今日は珍しく帰りが遅かったじゃないか。まさか渡辺さんとデートでもしてたのか?」
肌にシャワーを当てながら、今日の帰宅時の様子を回想する。
少し遅めに帰ってきた私とキューが、そうっと玄関のドアを開く。
大きい声を出すとこの糞親父の機嫌が悪くなるので、キューの声が自然と小さくなる。
しかし、私が目を下に下ろすと、いつもある筈の薄汚れたスニーカーが無かったのだった。
(*゚∀゚)「……あぁ、そうだよ」
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:27:06.34 ID:UhSuHl/SO
支援
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:27:22.79 ID:UhSuHl/SO
支援
233 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:27:37.94 ID:UhSuHl/SO
支援
234 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:29:00.58 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……」
長岡の返答を耳にして、少し驚いた。
( ゚∀゚)「ナベちゃんはお前と違って凄いイイコだよ。
可愛いし、賢いし……なんたって従順だからな」
軽いジョークのつもりだったのだが。
まさかとは思ってはいた。
彼女も、何もそこまでする事なかろうに。
いつも私達姉妹と名字の違う実父の教師の間を取り繕うとしてくれるのには感謝はしているのだが……
(*゚∀゚)「ま、彼女は幼児体型だけどそれが良かったりするんだよね」
川 ゚ -゚)「……お前、彼女に手を出したらタダじゃ済まさんぞ」
扉越しにも想像がつくその醜いニヤケ面に対し、釘を刺した。
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:32:03.27 ID:NQxMKi33O
何かを守るため汚い事するのかな。
なんだっけか。限りなく広い青空?だかなんかの学校を守るエロゲ思い出した。
236 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:33:22.43 ID:55s0CV/sO
( ゚∀゚)「へっ、俺がどうしようが俺の勝手さ。
ま、いつまでも胸がペッタンコなお子ちゃまには過ぎた悩み事だ」
川 ゚ -゚)「……余計な世話だ」
私の返答を聞いて、長岡は「少し妹に分けて貰ったらどうだ」と言い捨てて去っていった。
私には心の平穏などは無かった。
まさしく恋愛事など夢物語で、いつもこのくだらない私の血について悩んでいた。
私の命が宿った時から、その運命から逃れられない。
宿命であった。
237 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:37:47.99 ID:55s0CV/sO
風呂から上がって、洗面所にある着替えの入ったタンスに手を伸ばす。
引き出しから自分の下着を取り出すと、私はそれに細い足をするりと通した。
こうしている間も、警戒は怠らない。
長岡がいつ、洗面所の外から襲ってくるか解らないからだ。
あの常に老若問わず女性の体に飢えている獣の事だ。
キューや私が風呂に入ってる間、洗面所の影に待ち伏せしている事もよくあった。
私が見られる分にはいい。
が、日頃からドクオを慕っているキューとなると、どうか。
純潔な彼女にもしもそんな事があったとなれば、そのショックは計り知れないだろう。
だから、キューとは交互に入浴し、長岡が近寄らぬよう互いに洗面所の前で警備にあたっていた。
本当に、今日は風呂場でめんどくさがらずにタオルを纏っていて良かった。
そんな私の思惑が意外にも外れ、私はパジャマに着替えると洗面所から出ていった。
238 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:42:16.02 ID:55s0CV/sO
だが、しかし。
何故、先程まで欲情していた長岡が待ち伏せていなかったのか。
その理由は、すぐに知れた。
川 ゚ -゚)「母さん、風呂上がったから……」
濡れたタオルを乾かそうと私が居間に入った時。
私の目に映ったもの。
それは、電灯の明かりが消された薄暗い部屋の床で、ごそごそと動いている二つの影だった。
lw´;‐ _‐ノv「クー!?」
239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:45:00.48 ID:NQxMKi33O
シューの顔がひどい
240 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 20:45:42.26 ID:55s0CV/sO
影の一つから、声がした。
その声に、どことなく疲れたような荒い溜め息が混じっていた。
あぁ、そう言う事だったのか、と。
私は瞬時に事態を理解した。
そして、自分の愚かさを悟った。
(* ∀ )「ハァ……ハァ……」
母の声がした影にかぶさっていた方のものから、身の毛の弥立つ声がした。
その光景が瞼の裏に焼き付かぬ内に、私は全速力でその場から立ち去った。
241 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:50:54.51 ID:B8uCTytGO
支援
242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:59:34.62 ID:UhSuHl/SO
支援
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 20:59:51.70 ID:UhSuHl/SO
支援
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:03:21.63 ID:7oWlJoPL0
支援
245 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:05:04.78 ID:55s0CV/sO
川 ゚ -゚)「……」
バタン、と豪快に音をたてて居間の扉を閉める。
私はそれにもたれかかって、へなへなと地べたに座り込んでしまった。
「どうしよう……クーに見られた……」
「なぁに、いつもの事だろ……
それよりお前、娘に見られて余計に濡れてるじゃねーか」
母さん、そいつの言う通りだよ。
母さんは知らないだろうけど。
母さんが私達の為に、ソイツの欲望のはけ口になっていたのはずっと前から知っていたよ。
何度も何度も。
こうやって、いつも扉の影で、中の様子に耳を済ませていたよ。
246 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:09:43.85 ID:55s0CV/sO
以前、母に向かって、その事を遠まわしに聞いてみた事があった。
川 ゚ -゚)「なぁ、母さん。
母さんは何故、あの男の言うがままにしているんだ」
そう言うと、母は苦笑いした。
lw´‐ _‐ノv「うん……、まぁね」
何度も何度も。
私が何回も同じ問いをしてみても、母は決まって、どこか遠い目をしながらこう答えるのであった。
lw´‐ _‐ノv「なんだかんだ言って、私はまだあの人を慕っているの」
247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:12:58.22 ID:B8uCTytGO
支援
248 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:16:25.65 ID:55s0CV/sO
母はそうとだけ言って、あとに続く私の質問には答えようとはしなかった。
その美しい表情をはにかませながら、ただ、
lw´‐ _‐ノv「あなた達には苦労させちゃて、ごめんなさいね」
そう言うだけだった。
私には、その心情が到底理解し難かった。
最初から、アイツに弄ばれ続けていた。
強姦まがいの行為で私とキューを孕まされた。
それを良い事に、その場限りと思っていたその考えをガラリと変え、勝手に夫となって母の貯蓄を食い潰した。
離婚してからも私達家族に執拗に近付いてきて。
挙げ句、裁判時にその手から離れたこの家を今更自分の物だと言いはって、勝手に居座った。
仕舞には私達姉妹に手を出そうとしているだけでなく、母にその毒牙を度々向けているのだ。
「や、やめて下さい……」
「へへ、嫌がってるワリには何とやら、ってか……」
249 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:18:48.38 ID:55s0CV/sO
母さん、私には解らないよ。
どうして、ここまでされておいて、奴の思うがままになっているんだ。
一度は決着が着いた筈だろう。
それが何故、再びこんな事をしているのか。
どうして、そんなどうしようもない男に慕情が抱けるのか。
私とキューの事、あなたはどう思っているのか。
あなたの幸せの形とは、それなのか。
そうやって、悦びに喘ぐのが、あなたの幸せなのか。
250 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:21:55.75 ID:55s0CV/sO
壁にもたれかかりながら、悔し涙に歯軋りする。
なんで、こんな事になってしまったのか。
母が長岡と離婚してから、一時期は平穏そのものであった。
一応、それなりに稼ぎのあった父親の存在を失って大変ではあった。
それでも、その閉塞的な日常からの解放感はそれはもう素晴らしいものであった。
それが何故、今更。
しかし、頭の隅では解ってはいた。
長岡はどうであれ、私の母、砂尾シュール。
本名スニャ・オ・シュールは、彼の事を愛している。
251 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:23:20.53 ID:7oWlJoPL0
支援
252 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:28:01.07 ID:55s0CV/sO
この国に無い名を持つ母が、まだ帰化したての頃。
彼女はこの地に慣れずに、右往左往としながら日々を送っていた。
そんな時、仕事先で出会った男が、優しく手を差しのばしてくれた。
それが長岡だった。
後にそれが偽りの物だったと解っても、彼女はその時の優しい彼を忘れられないでいるのだろう。
女として、その気持ちは解らなくもない。
となると、不適格な現状の病巣は自然に知れてくる。
長岡。
コイツさえ、いなければ。
253 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:29:14.36 ID:7oWlJoPL0
支援
254 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:32:58.70 ID:55s0CV/sO
この狂った日常を過ごしていくうちに、段々と心の底から湧いてきたもの。
何の気概も持つ必要が無い、生活。
今日、ずっと違和感を抱いていた、当たり前の生活風景。
それを、取り戻す為。
それを取り戻す為、長岡を殺す。
それは、明確な殺意。
255 :
「慕情」 ◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:35:48.24 ID:55s0CV/sO
だがしかし、行動に移せなかった。
それが普通だろう。
頭の中でそうは思っても、実行するとなると何だって難しい。
それに、事が事なだけに、行動に移す勇気が湧かなかった。
きっかけがあればまだ解らなくもない。
だが、壁越しに行われているその「行為」が、私の握り拳から力を奪っていくのである。
私の怒りを冷ますかのように。
なまめかしい嬌声が聞こえる度に。
ただただ、力が抜けていくのである。
〜track-1「慕情」 fin〜
256 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:35:57.46 ID:B8uCTytGO
_
(;゚∀゚) ゴクリ
257 :
◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 21:40:36.32 ID:55s0CV/sO
\(^o^)/ 投下オワタ
( ^ω^)「最初、スレ乗っ取られてどうなるかと思ったけど無事とうかしました」
ξ゚听)ξ「本編は30あたりから始まってるから適当に見てちょうだい」
( ^ω^)「昼の2時から投下してましたww長々とサーセンwwwwww」
ξ゚听)ξ「支援くれた方、ありがとう」
258 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:42:35.41 ID:B8uCTytGO
お疲れ様、面白かった
259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:46:35.80 ID:7oWlJoPL0 BE:102270825-2BP(123)
>>257 まとめさせていただきますが、構いませんか?
260 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:54:37.79 ID:55s0CV/sO
>>259 おkです。ありがとうございます。どこのまとめサイトさんでしょうか?
あと、まとめる際にお願いしたいのが、
>>31の「嗚呼 逃げいく」のところを「嗚呼 消えていく」に訂正して欲しいです
それと、投下中はスルーしてたりしてたんで、改めて質問や意見ある方、レス貰えると嬉しいです
261 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:59:17.15 ID:7oWlJoPL0 BE:368173049-2BP(123)
262 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 21:59:24.68 ID:NQxMKi33O
質問良い?
クーはそんなにも嫌いで、ドクオもそれを知ってるのに何で長岡のいる高校に行ったの?転校は無いの?
渡辺さんもどうして自分のクラスメイト、それも気にかけてる人が嫌なこと言われてるのにすぐ止めなかったの?俺的には怒鳴るのが普通だとおもうんだけど。
長岡も好意のある渡辺さんの前で何であんなに嫌なこと言えるの?自重しない?
シュールも子供の事好きなら裁判所なり警察なり行って被害を訴えるでしょ?
長岡が好きすぎて無理ならクーが行くところじゃない?
263 :
◆ZB7B4XJvSk :2008/02/20(水) 22:11:00.59 ID:55s0CV/sO
>>261 把握しました〜。ありがとうございます!
>>262 質問が鋭すぎて噴いたw
それに答えちゃうと核心に触れちゃうんで今は敢えて言えませんが、その回答がキーワードと思って貰って結構です。
クーが警察等に掛け合うのは後々出てきますよ〜
264 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 22:18:18.30 ID:NQxMKi33O
d
どうしても感情移入出来なくて共感も持てないのはそういう事か。
元ネタある?やっぱエロゲを思い出して悶々しちゃうんだが抜いてきて良い?
265 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/20(水) 22:25:25.73 ID:55s0CV/sO
>>264 元ネタあるよ〜
エロゲじゃないけどwww
ヒントはこの小説のジャンル
266 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
言い忘れてた乙
お互い頑張ろう。