40 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:29:56.26 ID:9fJO3cbc0
再び自転車にまたがって、住宅街を走り始める。
自転車を発明したヤツに、今は感謝したい。
縦に並んで座った今は、お互いの顔が見えないから。
多分きっと、酷い顔してるぜ、オレは。
ぶっさいくな顔を歪めて、眉を寄せて。
いや、ぶさいくはぶさいくなりに、必死に考えてるんだけどさ。
いきなり首筋に、冷たいものが押し当てられた。
川 ゚ -゚)「ほれ」
(;'A`)「ひゃぁっ!?」
冷たすぎていきなりすぎて、コケるかと思った。
弾くようにハンドルから両手を離してしまった。
自由になったハンドルが、アスファルトの凹凸とペダルを介して伝わる動力と慣性質量の複雑な合力でぐらっとよろめいて、
(;'A`)「っ!」
サドルに座るケツで車体を振り、一輪者の要領で、何とかバランスを持ち直した。
41 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:31:57.11 ID:9fJO3cbc0
(;'A`)「いきなり何すんだっ」
川 ゚ -゚)「暑いかなーと思ってな。暑い時は首筋を冷やすといいんだぞ」
で、いきなり他人の首筋にアイス押し当てるんかお前は。
(;'A`)「……気持ちはありがたいけどな、先に言ってくれそういうのは……」
川 ゚ -゚)「それはすまない」
くすくす、と笑う声が肩越しに聞こえた。
('A`)「って、確信犯かよっ!」
川 ゚ -゚)「すまない。でも可愛かったぞ、『ひゃぁっ』って。まるで女の子だ」
(;'A`)「……いい根性してるなお前……」
――ああもう、オレは何を思っていたんだっけ?
考えていたことの全部が全部、綺麗に吹き飛ばされてしまった。
ええっと、ええっと。
42 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:33:28.34 ID:9fJO3cbc0
あ、そうだ。
('A`)「……クーさ、どっか行きたいトコとかあるか?」
川 ゚ -゚)「行きたいところか」
('A`)「おうよ。なんかないのかよ、遊園地とか言われても困るけどな、金がないから」
川 ゚ -゚)「んー、そうだなー……」
かっこんかっこん、自転車をこぐ音が、しばらく。
いい加減沈黙が気まずくなってきた頃、唐突に口を開いてクーは、
川 ゚ -゚)「楽しいところ」
――うわぁ、それは難しいや。
43 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:35:33.22 ID:9fJO3cbc0
そして結局、自分が思いついたのは、タバコの匂いと耳がおかしくなりそうな音の渦巻く、ここだ。
川 ゚ -゚)「げーせん?」
('A`)「でございます」
なんつーつまんねー思考回路なんだ、とは自分でも思う。
なんかの本で読んだことがある気がする。女の子を誘う場所としてゲーセンは最悪だ、とかなんとか。
誰が書いたか知らないが、書いた奴に文句を言ってやりたい。
――うるせー、仕方ねーだろ、他に楽しいところ思いつかなかったんだからさぁ。
それにほら、見てみろよ。
川 ゚ -゚)+「これかわいいな」
クーは、クレーンゲームの景品の人形に、あられもなく目を輝かせてくれている。
なんだか知らないけど、バナナにやたら渋い顔が書いてある。グレートバナナ、らしい。
俺にはクーの感じた可愛さは理解できそうにも無いが。
(;'A`) 「……かわいいか? これ」
44 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:37:29.57 ID:9fJO3cbc0
川 ゚ -゚)+「とてもかわいいじゃないか」
そうかなぁ、と思う。どう見ても気色悪いのだけれど。
それが証拠にグレートバナナは、景品台に山と積まれてしまっている。余りモノなんだ、要するに。
そりゃそうだろうなぁ。多分きっと、今まで誰も取ろうと思わなかったんじゃな
いだろうか。
――でもまぁ。
('A`)「欲しいか?」
川 ゚ -゚)「え?」
目をキラキラさせながらクレーンゲームを覗き込んでいたクセに、クーはあからさまに遠慮した顔をした。
('A`)「これ。欲しけりゃ取るぞ。設定もえらいヌルそうだ」
川 ゚ -゚)「しかし、」
――押し切れ!
クーが全ての言葉を言い終える前に俺は言葉を続けた。
('A`)「ゲーセンに来て何もしないのもバカみたいだからな。いいよ、取るからさ」
45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 19:38:58.21 ID:LZUGP5agO
支援
46 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:39:13.11 ID:9fJO3cbc0
クーの返事は待たないで、コイン投入口に100円玉を突っ込む。
設定なんか確かめるまでもない、クレーンアームの強度も景品の置き方も、イージーモードにもほどがある。
案の定、テロテロテロテロ言いながら降下したクレーンアームは、あっさりとグレートバナナの1体を掴み取った。
でれーっでっでれっでれー。
チープで下品なファンファーレとともに、取り出し口に落ちてくる。
('A`)「……ま、こんなもんよ」
川 ゚ -゚)「……すごいな」
('A`)「すごかねーさ、こんな設定の台、誰でも取れちまう」
なんてことを言っちゃあみるが、内心は誇らしくてたまらない。
学校帰りにゲーセン通いしててよかった。ここでなら、自分はいくらでもカッコつけることができる。
('A`)「……ほい、やるよ」
さり気なく取り出し口からグレートバナナを引っ張り出して、なんでもない感じに差し出してみる。
周りで誰か見ていたらどういう風に見えているのだろうか。
何も無い空間に俺がバナナを差し出しているように見えるのだろうか?
川 ゚ -゚)「いいのか? 返さないぞ?」
47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 19:39:15.43 ID:G0LNOx9q0
好きだわ
48 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:41:01.47 ID:9fJO3cbc0
('A`)「ん。遠慮すんなって。もらえるものはミカンの皮でももらっとけ」
川*゚ -゚)「……かわいい」
それでもまだ遠慮がちにクーは手を伸ばして、愛しそうにバナナを撫でる。
うん、そんなことするあなたの方がよっぽどかわいいです。はい。
あと見ようによってはちょっとエロいよな、とか何とか。そんなことを思っていると、いきなりクーが俺の肩をつついて、
川 ゚ -゚)「よし。私もやる」
決心を込めた目だった。
(;'A`)「え? 2個欲しいのか?」
川 ゚ -゚)+「そうじゃない。
でも、さっきからアイスもバナナももらいっぱなしだ。お返ししないとな」
(;'A`)(えぇぇー……)
お返し、っていうのは、このグレートバナナをくれるんだろうか。
正直、こんな無駄に渋いバナナは要らないんだけどなぁ。
あと、
49 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:43:34.51 ID:9fJO3cbc0
('A`)「……金、持ってんの?」
川 ゚ -゚)「…………」
('A`)「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
('A`)「…………」
この沈黙の後さらに、
1
2
3
4
5秒後。
川 ゚ -゚)「すまない、貸してくれ……」
クーが申し訳無さそうに、頼んできた。
遠慮すること無いのに。
(;'A`)「はいはい」
50 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:45:24.40 ID:9fJO3cbc0
結局俺は100円玉を三枚財布から出し、クーに渡した。
俺に向かって礼を言うと、いきなり300円を突っ込んだ。
こうすれば、チャレンジ権を5回獲得できる。
多分きっと、クーは1回で景品を取ることはできないだろうと思ったから。
そう言ったらクーは、
川 ゚ -゚)「私をあまりナメるな。こんなの簡単だ、一発だ」
表情こそ崩さないが、口調は怒っていた。まぁ冗談程度なのだが。
いやまぁ、そうなんだよな。
クレーンゲームってのは、ハタで見てる分には簡単に見えるんだ。
てか、簡単で一発で取れるならいくつ欲しいんだよグレートバナナ。
川 ゚ -゚)「じゃ、やるぞ」
無意味に勢い込んで、まずは横軸を動かすボタンを押し込む。
真剣にクレーンを睨むその姿が、素人丸出しだ。
所詮は遊びなのだから、もっと気楽にやればいい。
川 ゚ -゚)「よし、ぴったり」
('A`)(いや、右にあと4センチだな……)
もちろん、口には出さない。
川 ゚ -゚) 「よし、縦もぴったりだ」
51 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:47:11.71 ID:9fJO3cbc0
テロテロテロテロ言いながらクレーンが降下して、グレートバナナの渋い顔を鷲掴みにして、
川*゚ -゚)+「やっ――、」
クーの顔が輝いた瞬間に、バナナは無情にもずるり、とずり落ちた。
重心も外しまくっていたし、何よりクレーンアームの力を信用しすぎる位置取りだった。
いかにイージーモードとはいえ、強度が最強近くまで高められているとはいえ、
見た目ほど強くはないんだ、アレは。
川 ゚ -゚)「…………」
('A`)「はっはっは。やっぱな。まーそんなもんだよ」
川 ゚ -゚)「……ドクオみたいにできたら、カッコよかったのに」
ゲームの筐体が、「ワンモアセッ!」と声をあげる。
クレーンを恨めしそうに睨んで、しかしクーはめげずに、
川 ゚ -゚) 「……次こそは」
と、意気込んでいた。
52 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:49:33.34 ID:9fJO3cbc0
結果から言うと、
5回のチャレンジ権をもってしても、クーは一つもグレートバナナを手に入れることができなかった。
始めはそんなものなのだが、クーは言葉を失っていた。
川 ゚ -゚)「……」
(;'A`)「あんまり落ち込むなよ、初心者ってのはそんなもんだ。それよりやるか? もう1回」
川 ゚ -゚)「何回やっても取れる気がしないぞ」
(;'A`)「そ、そうか? でもさ、練習すればさ」
川 ゚ -゚)「きっと私には無理だ」
('A`)「オレだって最初はそうだったよ。何日か通って練習すりゃ、こんなのはすぐだ」
だからそれはつまり、
('A`)「……ま、明日も来りゃいいよな?」
遠まわしにクーを誘っている訳だ。
ああ、さっきかららしくねぇな、とは我ながら思う。
自分はこんなことをサラッと言うヤツじゃなかったと思う。絶対。
川 ゚ -゚)「……そうだな」
54 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:51:52.45 ID:9fJO3cbc0
('A`)「よっしゃ。じゃあ次は何を――」
クーが頷いてくれたことが、つまり明日もこんな風にして一緒にゲーセンに来る約束をしたことが、どうしようもなく嬉しかった。
照れ隠しにヤケクソな声を張り上げて回れ右して、目の前にあわられたのは大きな顔。
| ^o^ |「…………」
(;'A`)「…………あんた、誰?」
| ^o^ |「ここの てんいん です」
('A`)「そ、そうですか」
| ^o^ |「そして あなたは そこのこうこうの せいと ですね?」
('A`)「はい、まぁ」
| ^o^ |「いまは まっぴるま です」
('A`)「そうですね」
ここまではニコニコした優しそうな顔で、ひらがなばかり話す少し変な人だと思っていた。
ちゃんと謝れば見逃してくれるだろう。
そんな甘い考えが頭の中で回っている間に、
| ゚o゚ |「真昼間から制服来てご来店って、ナメてんのかテメー。ちょっと裏に来い。ポリに突き出してやる」
目の前の人は先程までの人と同じ人とは思えない口調で俺を威圧してきた。
(;'A`)「……やべ」
55 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:54:00.19 ID:9fJO3cbc0
恐らく無理だと思うが、一つ提案をしてみる。
(;'A`)「……ここはヒトツ、穏便に見逃してもらうワケには」
| ゚o゚ |「いくかクソゆとりが。貴様らの怨嗟の声が、明日のオレ様の活力なんだよ。一名さま、警察署までご案内だ!」
一名さま。
あ、そうか。他のヤツにはクーが見えないんだっけ。
再確認したその事実が、不思議な勇気を与えてくれた。
そうだよな。今の自分は主人公なんだ。何の物語かは知らない、だけど、こんな店員Aとは格が違うんだ。
勇気がエネルギーに変わる。今は、どんな無茶だってやれるに違いなかった。
パァンッ!
| ; ゚o゚ |「ほ、ほあァ――っ!? ほあァ――――っ!?」
両手を店員の前に突き出して、思いっきり猫だましをしてやった。
ひとたまりもなく狼狽した店員に中指を突き立てて駆け出す。
('A`)「ズラかるぞ、クーっ!」
川;゚ -゚)「あ、え?」
クーの手を引いて。
56 :
>>53アフォで読んだ ◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:56:09.38 ID:9fJO3cbc0
| ゚o゚ |「あ、テメ待ちやがれ! クーって誰だ!? 仲間がいやがんのか!? 2人パックで地獄に送ってやるよボケがっ!」
メダルゲームのコーナーの椅子を蹴散らし、格ゲーの筐体に駆け上がって飛び越え、入り口の自動ドアをブチ破らん勢いで店を飛び出す。
何事か、と注目を集める観衆の一人一人にあかんべーをしてやりたいけれど、何しろ今は時間がない。
| ゚o゚ |「オイ! 器物破損だぞコラ! 殺す! もう殺す!」
今さら店員も飛び出てくるけれど、もう手遅れだ。ざまぁみろ。
自転車のハンドルを握る。
初速を得るために最初の5メートルは押して走って、ペダルに脚をかけて、脱兎のように、
('∀`)「ひゃっほぉ――――――っ!」
駆け出す。
川;゚ -゚)「あわっ!?」
あんまり運転が乱暴すぎて、振り落とされそうになったクーが身体にしがみついてくる。
最高だ。今は、今こそは、人生の最大瞬間風速だ。
どいつもこいつも間抜けヅラ並べた人波を掻き分けていく。
| ゚o゚ | 「顔覚えたからなぁ―――――っ! ぜってーサツガイしてやるからなテメ――――っ!」
ゲーセンの前でそんな風に吼える店員の声も、今は最高のBGMだった。
57 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 19:58:12.53 ID:9fJO3cbc0
ゲーセンから脱兎の如く駆け出し、少し遠くにある川へと向かった。
先程のような騒ぎになるといけないので、人が少ないような川。
ギラギラした、昼間と夕焼けの中間の太陽が、水面に写り込んでいる。
遠くで、子どもが水きり遊びをしている。
探せば、どこかにふやけたエロ本の1冊や2冊は絶対に落ちている、夏の河原に、
2人で並んで、腰を下ろしていた。
川 ゚ -゚)「……よかったのか? 怒られてしまったぞ」
('A`)「あー、いいんだよ。最高に気持ちよかったろ。何もゲーセンはあそこだけじゃねーしな」
川 ゚ -゚)「そうか……」
そう言うクーはどこか申し訳無なさそうだった。
自分に責任があるとでも思っているのだろうか。
その事を伝えるか迷っていると、
川 ゚ -゚)「ドクオの毎日は、いつもこんな感じなのか?」
どうやらものすごい勘違いをされてしまったらしい。
湧き出てくる苦笑いをかみ殺すのに苦労した。
そんなワケあるか。
いつもなら、そうだな。今ごろ、どこかのゴミ箱に捨てられている上履きの片方を探して、校舎をさまよっている頃だ。
――でも、今は。今日くらいは。いいよな、ちょっとだけ。
('A`) 「おうよ、まぁな」
58 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:00:29.21 ID:9fJO3cbc0
ちょっとだけ、見栄を張った。
いやちょっとなんてモンじゃないか。
あんなに大騒ぎしたのも、あんなにスカッとしたのも、多分一生ではじめてだったんだから。
本当の自分は、朝、クーと会話している時のアレだ。
あの人々の視線を恐れてみっともなく逃げ惑った、アレだ。
けど、
('A`)「あんなもんは序の口だな。手が出なかっただけマシな方だ。いつもなら乱闘になってると思う」
川;゚ -゚)「乱暴な日常を送ってるんだな……」
('A`)「ん、まぁな」
川 ゚ -゚)「じゃあ、アレか? やっぱりこう、30対30の学校同士の抗争とか……」
('A`)「ああ、去年の冬にあったよ。ありゃすごかった、血みどろのヤツが何人も出てさ」
言葉は、ウソは、次から次に出てくる。
いつも、そんな風になりたいと妄想していたことだから。
現実ではありえない、理想の自分。
('A`)「ま、弱いヤツはさ、まず腹だよ。腹に一発ブチ込めばさ、それで大体カタがつく」
川 ゚ -゚)「はぇー……」
ケンカの作法だって、幾らでも知ってる。
それが、自分の日常の中にある、というのも、あながちウソじゃあない。
やる方とやられる方、という違いはあれど。
59 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:03:32.04 ID:9fJO3cbc0
たとえば洋服だとか。ピアスだとか。髪を染めるだとか。
そういうことの意味が、自分には、今の今まで分からなかった。
それどころか、心の中で見下していた。
金をかけてまで下品な金髪にして、痛みを我慢して耳に穴を開けて、それがなんになるんだって、そう思ってた。
でも、意味はあったんだな。
どうしてもどうしても、カッコつけたい相手っていうのは、いるんだ。
姿が綺麗だから、とか、そういう理由じゃない。
――なんて言やぁ、そんなもんはウソに決まっていた。
綺麗だ。茜色の照り返しを受けて、少し影が深くかかったクーの顔は。とても。
でも、決してそれだけじゃあないのも、本当のことだ。
あのゲーセンで。店員に声をかけられたあの時。
自分の分のアイスをやった、駄菓子屋の前のあの時。
不思議と勇気が沸くんだ、クーといると。
そして何より、形はどうあれ、あの交差点の先にあったはずの、平凡な今日の一日から、手を引いて連れ出してくれたのは。
やっぱり、クーなんじゃないかな、と思う。
60 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:06:17.84 ID:9fJO3cbc0
('A`)「……クーはさ、」
川 ゚ -゚)「何だ?」
('A`)「クーは、何なんだ?」
川 ゚ -゚)「? 妖怪だ、ほらほら、スケルトン」
(;'A`)「いや……それは分かったんだけどさ。なんていうかさ。
あの時、現世に残ることを『選択した』って言ったろう。なら、残るなりの理由があったはずだ」
川 ゚ -゚)「……そうだな」
('A`)「もっと言や、滞在日数を稼ぐために驚かすだけなら、誰でもいいんだろ?
オレは驚かなかった。なら別のヤツを驚かしに行けばよかったはずだ。なのに、オレについてきた理由は、何だ?」
川 ゚ -゚)「…………」
川 ゚ -゚)「――広い世界を、見てみたかったんだ」
('A`)「広い、世界?」
川 ゚ -゚)「そうだ。なんていうか――壁の外の世界を。
私の世界の壁の外には、どんなものがあるんだろう、って。そう思った」
('A`)(――!)
61 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:08:55.54 ID:9fJO3cbc0
川 ゚ -゚)「最初は、あの交差点のときは、とにかく驚いてもらいたくて必死だった。
公園のときは、申し訳ないなぁって。正直、それだけだった」
俺は黙ってクーの話を聞く。
真剣な人の話はちゃんと聞け。って小さな頃から母親に言われ続けていたことだ。
川 ゚ -゚)「でも、なんていうか――空が、広かったんだ」
('A`)「そら?」
川 ゚ -゚)「空だ。ドクオの自転車の荷台から見た空が。
電信柱があって、電線が走ってて、家の屋根があって。それだけじゃない、すれ違う人がいて。垣根の上を猫が走ってて」
('A`)「…………」
川 ゚ -゚)「風が気持ちよくて、アイスおいしくて――ずっとここに座ってたら、もっともっと広い世界が見られるかな、って」
――なあ、クー。それはさ、別に、何も珍しいものじゃないぞ?
そんなものが、そんな当たり前のものが見たかったのか、お前は?
だとするなら、お前の世界というのは、どんなに狭いものだったんだ?
川 ゚ -゚)「迷惑、か?」
('A`)「――まさか」
まさか。
むしろ、
62 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:12:02.62 ID:9fJO3cbc0
('A`)「もっと見せてやるよ。色んなものを。オレの自転車の荷台から」
川 ゚ -゚)「……ありがとう」
同じなんだ。
クーと自分は。
あの時、クーが自分のことを、平凡から引っ張り出したのと同じに。
自分もまた、クーのことを引っ張り出していたのだ。恐ろしく狭い、彼女の世界の中から。
彼女の手を引いて、いろいろなものを見に行きたいと思う。
そのために食らう、校長訓告の1回や2回、調査書につく遅刻の10や20はなんでもない。
共犯者、という、平等で公平で対等な立場に、とんでもなく胸が躍る。
それからしばらくは、ただ河原に座って。
最後に、約束をした。
――また、明日。
――――第三話 終了
63 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:20:53.66 ID:9fJO3cbc0
自分が他人に特別劣っていると意識し始めたのは、いつからだったろう。
容姿。学力。体力。性格。
人を測るモノサシは数あれど、結局自分に合った基準はどこにもなかった。
子供の頃は、自分は何でも出来る。何にでもなれる。
そんな希望を抱いていた。
だけど、成長するにつれて理想の自分と、現実の自分との違いに気付き、ありのままの自分を受け入れるようになった。
理想と現実は違うんだと。
だから、閉じた。
だってそうだろう。自分が「外」に出る意味がどこにある?
別に、自分を笑う人々を恨むつもりはない。劣っているのは自分の方だから。
個が個を維持するためには区別が必要で、区別と差別の間の壁なんていうのは、
あってないようなものだから。
ただ、少しだけ。
――悲しかった、なぁ。
なんて、な。
('A`)ドクオは現世に残ったようです――第四話――
64 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:22:49.99 ID:9fJO3cbc0
案の定だ。
担任の教師は、実に職務に忠実に、無断欠席をした俺を「心配して」、家に電話をかけていた。
充分予想の範疇だ。
普段は、見て見ぬフリをするクセに。こんな時は、ヤツらは見逃してなんてくれない。
給料分の仕事だけしてろよ。馬鹿野郎。
J( 'ー`)し「……学校から電話来たよ。今日あんた、どこ行ってたの?」
('A`)「…………」
とびきり綺麗な女の妖怪と遊んでました。
なんて言えやしない。どうせ信じてもらえないし、信じてもらおうとも思わない。
J( 'ー`)し「別にどこだって怒りゃしないのよ。悪いところじゃなければね」
('A`)「…………」
母親の『悪いところ』が何処かなんて見当もつかない。
けど、タバコの匂いと耳がおかしくなりそうな音の渦巻くゲームセンターが『良いところ』とも思えない。
どちらかと言うと『悪いところ』だろう。
65 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:26:17.33 ID:9fJO3cbc0
J( 'ー`)し「かーちゃんね、ドクオが外に出てくれるようになっただけでも嬉しいの。ホントよ?
……だけど、ほら。こんな世の中でしょう? だから高校くらいは、ちゃんと出て頂戴な」
('A`)「…………」
毎日毎日いじめられるために行っているような高校。
そんなところを出て何になるって言うんだ。
ピアスを開け、髪を染めて、俺のことをいじめる奴より俺は頭が悪いんだ。
大体、こんな風に育ったのは――
J( 'ー`)し「……はぁ……」
そんな風にため息をつくな。
昼の余熱が、まだ胸のうちに残っていた。
外に出てくれるようになった。そんな風に言うな。
そんな風に気を使わないでくれ。そうじゃなくて、もっと、
66 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:28:55.61 ID:9fJO3cbc0
( A )「…………だろ」
J( 'ー`)し「ん? なんだい?」
( A )「そっ、そこはっ!」
――クーの与えてくれた熱だった。
浮遊感に近い、肋骨が浮くような焦燥があった。
壁一枚を乗り越えてしまえば、その先には地獄があることなど見えきっていた。
それでも、いつかは。
いつかは、言わなくちゃいけないことだったんだと思う。
(゚A゚)「そっ、そこはっ! そこはぁっ! そうじゃねえだろおっ!?」
言ってしまった。
みっともなくひっくり返って裏返る、情けない声だった。
ただ、それでも、俺が反抗した事は確かだった。
言ってしまおう。
クーがくれた勇気が冷めないうちに、日々の不満を言ってしまおう。
J(;'ー`)し「……え?」
67 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 20:30:20.84 ID:9fJO3cbc0
(゚A゚)「なんっ、なんで怒らないんだよ!? 信賞必罰は当たり前だろ!?」
J(; 'ー`)し「ど、ドッくん?」
(゚A゚)「ドッくんなんて呼ぶなっ! いつまでも子どもじゃないんだよぉっ!」
いまさら止まることなどできなかった。ブレーキは弾け飛んだ。
今まで決してしなかった母親への反抗。
心の内に秘めていた不満。
嫌なことから、親の言うことから逃げていただけの引きこもりの時には、絶対に言えなかった言葉。
あのころの俺とは違う。
そうだ。違うんだよ、かーちゃん。
俺は、もう、違うんだ。
だから、ジョーカーを切るよ。
俺は今から、言っちゃいけないことを言う。あなたを裏切る。
クーの前で、胸を張るために。
(゚A゚)「そもっ、そもそもっ! あんたがっ、」
――あんたが、そんな風に甘やかすから! オレはこんなに、ダメになっちまったんじゃないのか!?
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:37:23.36 ID:LZUGP5agO
支援
69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:58:51.99 ID:g3aa+HJC0
・・・あれ?保守?
70 :
さるga ◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:02:07.94 ID:9fJO3cbc0
J( ー )し「……ドッくん?」
(゚A゚)「オレっ、オレはぁっ! オレは、引きこもりのクズだったじゃないか! そんなヤツ、追い出せばよかったじゃないか!
どうしてそれをしなかった!? どうしてオレを甘やかしたんだよ!?」
言ってることの無茶は、百も承知だ。
ただ、俺は今、強くならなきゃいけないんだ。
クーの手を引いて、彼女に広い世界を見せるために。
そのためには、俺が変わらなくちゃいけない。
(゚A゚)「オレがこんなになっちまったのは、アンタのせいだ! オレがこんなに苦しいのは、アンタのせいだ!
全部全部、オレを生んだあんたのせいだ!」
J( - )し「ドッく……ドクオ……」
ことり、と、手がテーブルの上に置かれる。
しわがれた、ささくれきった、働く人間の手。
その意味は知ってるさ。
そうだよな。生きていくためには、そんな手にならなくちゃいけない。
俺が毎日、ろくに噛みもしないで飲み下すメシは、この手がもたらしてくれてる。
けど。
(゚A゚)「オレがどこにいようと! 何をしてようと! あんたが今更デカいツラして何か言う資格なんてねーんだよ!」
俺は止まらなかった。
71 :
さるがものすごい長い ◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:02:31.53 ID:9fJO3cbc0
J( ー )し「……ドッくん?」
(゚A゚)「オレっ、オレはぁっ! オレは、引きこもりのクズだったじゃないか! そんなヤツ、追い出せばよかったじゃないか!
どうしてそれをしなかった!? どうしてオレを甘やかしたんだよ!?」
言ってることの無茶は、百も承知だ。
ただ、俺は今、強くならなきゃいけないんだ。
クーの手を引いて、彼女に広い世界を見せるために。
そのためには、俺が変わらなくちゃいけない。
(゚A゚)「オレがこんなになっちまったのは、アンタのせいだ! オレがこんなに苦しいのは、アンタのせいだ!
全部全部、オレを生んだあんたのせいだ!」
J( - )し「ドッく……ドクオ……」
ことり、と、手がテーブルの上に置かれる。
しわがれた、ささくれきった、働く人間の手。
その意味は知ってるさ。
そうだよな。生きていくためには、そんな手にならなくちゃいけない。
俺が毎日、ろくに噛みもしないで飲み下すメシは、この手がもたらしてくれてる。
けど。
(゚A゚)「オレがどこにいようと! 何をしてようと! あんたが今更デカいツラして何か言う資格なんてねーんだよ!」
俺は止まらなかった。
72 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:06:10.12 ID:9fJO3cbc0
――――――
そして今、俺は、部屋のベッドの上で膝を抱えている。
かーちゃんは震えて泣いていた。
ただ一言、ごめんね、と言っていた。
母子家庭。女手一つで俺をここまで育ててくれた。
引きこもったときも、何も言わずにご飯を用意してくれた。
ガラスで心臓を貫かれたって、あんなに痛くないに決まってた。
ただ、
('A`)「ふへへ……言ってやった……言ってやったぜ……」
そういう、恐ろしく底の深い、温度のない、比重の高い満足があるのも、事実ではあった。
壁を打ち破った。
それは、閉塞していた箱庭の壁だ。
膝を抱える手に、力を込める。
そうだ。
俺は、ここにいる。
ここから先、俺は、俺の責任で動く。誰にも文句は言われない。
俺の手で、引いていくんだ。
あの綺麗な手を。
73 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:09:11.55 ID:9fJO3cbc0
――翌朝。
俺は堂々と私服で家を出たし、そんな俺に、カーチャンは何も言わなかった。
いや、言えなかった。の方が正しいのかな。
震える小さな肩に、心が痛まなかったわけはない。
お腹を痛めて産み、母親一人で育ててきた息子に『産まれたく無かった!』と叫ばれたのだから。
どれほどの悲しみか、俺にはわからない。
言い過ぎたかな、とは思うが、謝る気など無い。
今、考えれることはクーの事だけだ。
玄関に到着し、自転車の鍵を一旦ポケットに入れる。
靴を履いて玄関を出る。
駐輪所にあるはずの自分の自転車を探し出し、鍵を差し込む。
鍵を開けて、自転車にまたがったところで気が付いた。
('A`)「――待ち合わせ場所、どこだっけ?」
74 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:10:57.22 ID:qX5hdoF70
支援
75 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:11:23.13 ID:9fJO3cbc0
しばらく考えた挙句、初めて出会ったあの交差点以外にあり得ない、という結論に達した。
たちこぎで自転車をこぐ。
いつもと少し違ったルートで。ちょっとだけ遠回りをして。
向かっている途中に学校のチャイムが聞こえたが、無視した。
もう、チャイムは自分には関係ないのだから。
――そしてもちろん、
川 ゚ -゚)「や」
彼女は、そこにいた。
('A`)「よお」
お互いに軽く手を上げ、挨拶を交わす。
周囲の人間が少し、こちらを見てくるが、気にしない。
川 ゚ -゚)「……? 今日は私服なのか?」
('A`)「まぁな。学校、休みだから」
川 ゚ -゚)「さっきから、ドクオの高校の制服を着た生徒をたくさん見るんだが」
('A`)「オレだけ休みなんだよ。自主休講で」
川;゚ -゚)「そんな、単位ギリギリを目指す大学生じゃないんだから……」
76 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:15:04.19 ID:9fJO3cbc0
冗談を交えつつ進むクーとの会話。
壁を打ち破っただけでここまで変わるものなのか。と自分でも驚いた。
('A`)「それよりほら。乗れよ」
こんなに自分は積極的だったかと。
川 ゚ -゚)「……いいのか? ホントに?」
('A`)「構わねって。1日2日休んだだけじゃ、大したことにはならねーんだから」
川 ゚ -゚)「……そうか」
クーが、荷台にちょこんと座った。
今日は一応、それ用に座布団なんか巻いてみてるんだけれど、果たして意味はあるんだろうか。
なんて思いつつ、昨日ネットで調べた『女の子が楽しめるデートスポット』を参考にして、考え付いた場所をクーへと伝える。
('A`)「今日はさ、映画行こうと思うんだよ。今おもしれーのやってんだ」
川;゚ -゚)「わ、わたしお金ないぞ? それに……」
('A`)「……忘れてないか? 誰にも見えないんだから、金払う必要はないだろ」
「またお金を借りるわけには……」と言いたそうだったのでクーが全ての言葉を言い終わる前に言ってやった。
77 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:17:33.32 ID:9fJO3cbc0
川 ゚ -゚)「あ、そうか」
('A`)「よっし、出発だ」
ペダルをこいで、走り出す。
今まで馬鹿にしてきたが、案外ああ言う本は役に立つのかも知れない。
そんな事を思いながら。
交差点は渡らずに。商店街のはずれにある、映画館の方へと向かった。
クーと一緒の一日が始まる。
それは、彼女に広い世界を見せるための、夏の、平凡の外の一日だ。
閉塞した世界から抜け出した記念すべき一日だ。
78 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:20:02.74 ID:qX5hdoF70
支援
79 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:20:08.25 ID:9fJO3cbc0
数時間後。
俺たちは、パフェがうまいと評判の喫茶店で、差し向かいに腰を下ろしている。
男一人のご来店で、コーヒーといちごパフェという注文に、店員は首をひねっていたけれど。
店員がコーヒーとパフェが俺の目の前に並べた。相変わらず首をひねって。
「パフェは俺じゃないです」と言いそうになったが、クーは他の人には見えないことを思い出し、その言葉を飲み込んだ。
周りに誰も見てないか確認してから、クーはパフェを手に取った。
川 ゚ -゚)「もぐもぐ」
('A`)「……うまいか?」
川 ゚ -゚)「なかなか」
('A`)「そっか」
自分の顔よりもまだ巨大なパフェを、クーはごしゃごしゃ流し込んでいる。
一心不乱というか。悪く言えば欠食児童っぽいというか。
('A`)「ま、喜んでもらえてるならいいや」
川 ゚ -゚)「うん……もぐもぐ」
ああ、見るからに胃の容積より多そうなのになぁ。
腹壊さないのかな。いやそもそも、妖怪にそういう概念があるのかどうかはよく分からないけれど。
80 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:23:48.04 ID:9fJO3cbc0
('A`)「……どうだったよ、映画」
川 ゚ -゚)「ん、面白かったぞ」
('A`)「そっか。上映中、あんまり無反応なんでどうかな、と思ってたんだけどな」
川 ゚ -゚)「ああ、うん。昔からよく言われるんだ、ご飯をもっとうまそうに食べろとか、話をもっと面白そうに聞けとか」
('A`)「…………」
それは、そうかもしれない。
クーの無表情は、明確な二面性を持っている。
冷たさ、というのが。その一片には、確実にある。
話を聞く限り、過去になにかあった訳では無さそうだ。
('A`)「まずはさ、笑ってみたらどうかな」
川 ゚ -゚)「……うん、実は笑う練習をしたことはあるんだ」
('A`)「え、そうなのか? どんなの?」
川 ゚ -゚)「……無理だった」
('A`)「え……? どう言うこと?」
川 ゚ -゚)「……面白くも無いことや、興味も無いことで表情を崩すと言う事が無理だった」
81 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 21:27:03.73 ID:9fJO3cbc0
なるほどね。とは思う。
俺自身、そんな事は良くある。
けど、面白くなくても面白い、興味も無いことでもある振りをする。
嘘をつくことだってある。そんな事が必要な時もある。
嘘も方便と言うだろう。
だから、クーは喜怒哀楽が薄いんじゃない。
面白くないものは面白くない。興味が無いことは興味が無い。
他人に何を言われようが、自分の意思を言える。
クーは素直なんだ。
他人の顔色ばかり気にして生きていた自分には出来ない生き方。
正直、憧れる。
('A`)「いいんじゃない?」
川 ゚ -゚)「え?」
('A`)「クーはそのままでいいんだよ。無理に変わろうとする必要なんか無いさ」
川 ゚ -゚)「そうか……そうだな」
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:27:39.63 ID:g3aa+HJC0
支援
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:39:20.95 ID:nL0H6zixO
適当に驚いたフリをすれば滞在日数加算されるように原作はなってなかったっけ?
84 :
さる長い ◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 22:00:09.31 ID:9fJO3cbc0
ああ、そうだ。
クーの自然な表情は、ちょっとはにかむようなあの笑顔は、最高に綺麗だから。
('A`)(……なんてまぁ、言えるはずねーけどな)
川 ゚ -゚)「む?」
('A`)「ん?」
川 ゚ -゚)「どうしたんだ? こっち見て」
クーが綺麗だから見てました。
なんて言える筈も無く黙っていると、クーが何かを思いついたかのように口を開いた。
川 ゚ -゚)「……あ、食べたいのか、パフェ」
(;'A`)「え?」
どうやら俺がクーの食べるパフェを欲しそうに見ていた様に見えたらしい。
別に欲しくないのだけれど、クーは申し訳無さそうに、言葉を続けた。
川 ゚ -゚)「そうだな。ごめん、わたしばかり食べ過ぎた。ええっと、ちょっとまてよ……」
そう言って、クーは、柄の長いスプーンに器用にイチゴとクリームとスポンジを載せて、
――いやちょっと待て、これってまさか、
85 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 22:00:54.57 ID:9fJO3cbc0
川 ゚ -゚)「はい、あーん」
(;'A`)「マジっすか」
川 ゚ -゚)「どうしたんだ? バランスが難しいから、早くしないと落ちてしまうぞ」
('A`)「あ、あーん」
このやり取り、周囲の人にはどう見えているのだろう。
クーが触っているスプーンなのだから、周囲の人には見えない。
つまり、俺が向かい側の席に向かって口を開けている。と言う事なのか。
そう考えると、急に恥ずかしくなってきたのだが、
スプーンの先に乗ったスポンジが落ちないように必死にバランスを取っているクーを見るとどうでも良くなってしまった。
これ以上待たせると、パフェを落としてしまいそうだったので、
差し出されたスプーンの先に、イチゴやクリームが盛られたパフェを、口に入れた。
川 ゚ -゚)「うまいか?」
('A`)「…………」
恥ずかしさからなのか、現世の境目を超えたからか、
味なんて、分からなかった。
でも、
86 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:01:09.72 ID:g3aa+HJC0
しえ
87 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 22:02:08.06 ID:9fJO3cbc0
時間無いや。
どうせ見てる人もほとんど居ないから明日にします。
88 :
◆LbLtdVn9Cs :2008/02/03(日) 22:02:30.67 ID:9fJO3cbc0
支援。ありがとうございました。
89 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:
楽しみにしてるんだぞ!?