文才ないのに小説書くとかウケるwww

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,596秒
ここは筆力のある人・ない人がお題をもらって自由に小説を書き、それぞれの筆力を向上させるスレです
※※※お題をもらわないでの小説投下はスレの主旨と違いますのでご遠慮下さい※※※

各まとめ入口:http://bnsk.daa.jp/
まとめwikiコラム:http://bnsk.daa.jp/wiki/index.php?%A5%B3%A5%E9%A5%E0
初心者の方は上記のまとめwikiコラムの他、掲示板を一度ご覧下さい。
小説を書く際の禁則やテクニック等が具体例付で説明されています

(三行テンプレート)
1:お題をもらう(安価より「↓」を推奨)
2:もらったお題に沿った作品を書いて、完成させる。
3:「投下します」と宣言し、作品投下。メール欄は無記入、名前欄には「もらったお題」を表記する。タイトルは無くても可。

・1レスは30行、4096バイトまで、一行は全角128文字まで(読みやすさの為に50〜60文字推奨)
・書きながらの投下は禁止
・お題をもらっていない作品はたとえ投下されてもまとめサイトには掲載されません

詳細は>>2-3辺りをご覧下さい
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,936秒:2008/02/01(金) 20:51:55.03 ID:XEsBtFIt0
まずはお題をもらいましょう。基本的に過疎スレなので↓でもらうと良いです
→人のお題を使って書くのもありです。作品がたくさん投下されればスレも盛り上がります

▽投下の際の注意点
・投下宣言は「投下してもいいですか?」ではなく「投下します」。投下宣言が被らない限り、許可はいりません
・投下する人は最後に「終」「完」「了」など、投下完了の合図をお願いします
・名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』 (例:『BNSK(お題:文才) 1/5』)を書いて下さい
・まとめる際にコピペがしづらいので、メール欄は空にして投下してください。
・作品を投下する際は、テキストエディタで仕上げてから、完成品をまとめて投下して下さい

▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です
・落ちた場合は立てられる人が新スレを立てて下さい。人がいる時間を目安に

▽その他
・通常作品でもトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,936秒:2008/02/01(金) 20:52:10.23 ID:XEsBtFIt0
▲週末品評会
毎週木曜日の夜〜土曜日の午前中に、お題が出されます
作品は土曜日の0:00から日曜日の23:30までの間に投稿してください
その後それぞれに評価をして頂き、月曜日の0:00から火曜日の24:00まで投票を受け付けます

▽作品投稿
・ジャンルは自由、時間を過ぎての投稿も選考外ではありますがまとめサイトに掲載します
・スムーズな流れを保つため、メモ帳等の機能を使って全部書き終わってから投下するようにお願いします
・優勝時の本人確認のため、週末品評会参加者は出来れば酉を付けて下さい(酉は名前欄に#と自由な文字列)
→毎回同じコテや酉で出続けると周囲にわかりやすいです
・作品のタイトルは現在レス数/総レス数、酉を除いて、全角二十文字以内にしてください。

▽締め切り間際の作品投稿について
週末品評会では、投下締切時間の間際に集中的に投下が起こります。
それを無管理で放っておくと大変な事になるので、23時から「予約」という形を取り、運営の指示に従って順番に投下してもらいます。
予約締切は23:30で、以降は時間外の扱いになります

▽投票
・本スレへの書き込みでお願いします(複数選択可)
・ぜひ書き手の方も他の人への感想や投票を行って下さい
・簡単でよいので、感想、批評等書いて下さい。書き手の次への糧になります!
・投票は投票用テンプレを使うか、【投票】と書いて書き込んで下さい

▽優勝者特権
・投票で一番支持を得た作品の作者の方には、次回品評会のお題決定権が与えられます
・投票数が同数の場合は、気になった作品の投票数の差で決定します
・お題の発表時間は優勝者に一任されますが、遅くても土曜日の午前中には提示して下さい
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,707秒:2008/02/01(金) 20:52:36.63 ID:W+0JcDTP0
   _,,....,,_
-''":::::::::::::`''::..、
ヽ:::::::::::::::::::::::::::`'::.、
 |::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ
 |::::ノ   ヽ、ヽr-r'"´  (.__
_,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7
::::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `ヽ/`7
r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !  iヾ_ノ
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ  ,' ,ゝ
`!  !/レi' rr=-,   r=;ァ レ'i ノ    
,'  ノ   ! 〃 ̄    ̄" i .レ'     キャー、アリスにレイプされたスイーツ(笑) 
 (  ,ハ    'ー=-'   人!                                   完
,.ヘ,)、  )>,、 _____,,.イ ハ
 (  )',.イ ヽ、__ノ ヽレ'ヽノ
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,747秒:2008/02/01(金) 20:52:41.37 ID:XEsBtFIt0
609 名前: ◆Ms.BlueNHo [] 投稿日:2008/01/31(木) 02:15:43.55 ID:9rNQnQdu0
「守るべき者は、いますか?」

「護るべきモノは、ありますか?」

「戒律とは戒めでもあり、律法でもある。それは枷か、あるいは――」


第九十六回週末品評会

お題『ルール』




規則事項:5レス以内
投稿期間: 2008/2/2(土) 00:00〜2008/2/3(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
投票期間: 2008/2/4(月) 00:00〜2008/2/5(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票してください
※それ以外の方の投票、感想の投下も大歓迎です。
※蛇足かとは思いますが、『ルール』から連想される事を自由に書いてください。
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,707秒:2008/02/01(金) 20:55:34.01 ID:XEsBtFIt0
即死したらウケるwwww
おつかれさん
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,371秒:2008/02/01(金) 20:59:48.08 ID:GJVtTL5X0
乙!
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,371秒:2008/02/01(金) 21:01:13.63 ID:+Ok0sGYOO
一乙
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,371秒:2008/02/01(金) 21:01:36.25 ID:EopqKcb20
イチオッツ
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと810,026秒:2008/02/01(金) 21:03:00.84 ID:zIFUbjZg0
戒律とは戒めでもあり、律法でもある。それは>>1乙か、あるいは――
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと809,744秒:2008/02/01(金) 21:04:21.66 ID:pr1W0Fi30
なにこの痛々しいスレ
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと809,257秒:2008/02/01(金) 21:16:47.32 ID:bHx/f6WX0
幼女は何をしても許されるのである──あるいは、お仕置きが必要なのだ
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと808,371秒:2008/02/01(金) 21:29:45.92 ID:gmJeYvVK0
ところでID:+CEY37cL0の本のタイトルを早く教えてくれ
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと808,156秒:2008/02/01(金) 21:39:15.01 ID:zhESd5Yb0
今夜も感想一つは書くぜと思ったら作品が無かった。
16お題:躍動する少女、懐疑 0/4:2008/02/01(金) 21:45:06.77 ID:lAiAWVb40
投下します。
17お題:躍動する少女、懐疑 1/4:2008/02/01(金) 21:45:54.64 ID:lAiAWVb40
 季節は冬。日差しは淡く、空気は澄んで頬に痛い。
 時期が違えば待ち合わせ場所として盛況な駅前の時計の下に、いるのは少女が一人だけ。
 時計を見上げたり、ポケットから携帯を出したり、そわそわとした様子はどこか懐かしく微笑ましい。
 少女、茜は恋人と待ち合わせをしていた。待ち合わせ時間までは三十分ある。
 相手の男は時間に対してやたら几帳面だった。今まで待ち合わせに遅れたことなど一度も無い。そのかわり早く来たりもしない。
 茜が知る限り、彼が待ち合わせ三分以上前に来たことは一度も無かった。
 これって、デートだよね。茜は思う。
 付き合い始めてから半年。告白したのは茜の方だ。お互いの気持ちを確認した上でつきあっている……つもりだ。
 学校で昼御飯を一緒に食べたり、帰り道に一緒に帰ったり。休みの日にはこうして待ち合わせをして一緒に出かけている。
 確かに、料理はまだ修業中でお弁当を作ってあげたことは無いし、体を重ねたこともまだないけど……。
 そこまで考えて、茜は慌てて周りを見回した。
 口に出していたわけではないが、なんとなく恥ずかしい。
 周りから少し見えづらい柱の影にまわり、鞄から愛用の鏡を出して、笑ってみた。
 大丈夫。変じゃない……よね。
 改めて、時計の下で彼が来るだろう方向を向いて茜は立った。
 当然というか何というか、彼の姿は無い。かわりに、大きな鞄を背負って走る小学生の姿が目にうつった。
 電車に遅れそうなのだろう。茜にも経験がある。
 そういえば、最後にあんなふうに走ったりしたのはいつだろう。いつからこんな風に余裕を持つようになったのだろう。
18お題:躍動する少女、懐疑 2/4:2008/02/01(金) 21:46:25.50 ID:lAiAWVb40
 携帯をのぞく。後二十分ある。
 手袋をしていてもなんとなく手が寒い気がした。カイロを両手で包み込むように持つ。
 彼はいつも自転車でやってくる。そして、駅の駐輪場に自転車を停めて歩いてくるのだ。
 茜がいるのを見ても彼は走ったりはしない。
 待った? ううん、今来たとこ。
 そんな甘い会話を茜はしたことがなかった。
 彼の挨拶は三種類だけ。
 おはよう。こんにちわ。こんばんわ。
 そう言って、彼は自然と茜と合流する。
 彼が自分を大切にしていないとも思わない。
 彼はいつも茜のことを気にかけてくれていた。友人と喧嘩したとき、悲しいことがあったとき。彼は黙って傍にいてくれたり、愚痴を聞いてく
れたりした。
 茜が何か言い出すよりも先に、何かあったと気付いている。そんなそぶりすらあった。
 だったらさぁ。もう少し、こう、ねぇ。せめて連絡とかさ。
 そう思って、茜はポケットの中の携帯を握る。
 彼は携帯を持っていない。いつの時代の人間だ、と思ったのだけど持ってないものは仕方ない。
 それにこれはデートなのだ。待ち合わせの直前に、今どこかなんて聞くのも無粋な気がする。
 そう、だからこそ。茜は早く来るのだ。にも関わらず、彼は待ち合わせの時間を厳守する。なんとなく腹が立ってきた。

 時計を見上げる。もう自分でも何度目かわからない。待ち合わせ時間までまだ十分ある。
 どうせ彼はまだ来ない。
 茜はため息をついて、なんとなく周りを見る。
 土曜の昼過ぎ。人の数は少ないけれど絶え間ない。
 中年のサラリーマン。同い年くらいの学生達。塾へ向かう子供達。
 彼らから見て、自分はどんなふうに見えるんだろうか。自分は彼らにとって意味の無い景色の一部でしかないんじゃないだろうか。
 まるで自分が世界から取り残されたような気がした。
19お題:躍動する少女、懐疑 3/4:2008/02/01(金) 21:46:58.78 ID:lAiAWVb40
 突然、大きな音が響いた。一度だけじゃない。二度、三度と、何か大きなものが壊れる音がした。
 方向は、彼が来るほうだ。事故だろうか。茜がいるところからは見えなかった。
 なんとなく不安がよぎる。待ち合わせ時間まで後五分。彼が来てもおかしくない時間。
 そんなこと、あるはずない。
 あと数分もすれば、彼はいつもどおりやってくる。そしていつもどおり、見ていて憎たらしいほどに落ち着いた顔で「こんにちわ」と言うの
だ。
 茜は必死にそう思い込もうとした。
 にも関わらず、不安は止まらない。
 もしかしたら、彼が事故にあったのかもしれない。まきこまれたのかもしれない。
 やっぱり、意地を張らずに連絡すればよかったのだ。待ち合わせに早く来させて。携帯だって無理にでも持たせて。
 でも、今はどうしようもなかった。彼が来るのを待つしかない。私にはそれしか――
 視界の端で、さっきの子供達が走っていくのが見えた。
 走る。走っていく。
 そうだ。
 待つだけじゃない。
 待つのが嫌なら、こっちから行けばいいのだ。
 彼を迎えに行けばいいのだ。
 思いつくと同時に足が前に出た。
 走る。早く。もっと早く。
 心臓がバクバクいっている。呼吸がしんどい。腕と足が重い。コートが邪魔。こんなに走るのは大変なことだっただろうか。
 それでも腕と足を必死に振って走る。
 走るにつれて、景色が少しずつ変わる。
 まず、横転した車が見えた。飛び散ったガラスの破片。やっぱり事故だ。
 続いて、側面がひしゃげたトラック、そこに後ろからつっこんだ車、歪にゆがんで倒れた自転車。
 心臓が止まりそうだった。最悪の想像が頭に浮かぶ。それでも走り続けている自分の体がまるで別の誰かのもののように感じられた。
「あの、どう、したんですか!?」
 野次馬らしき男に声をかける。男は一瞬唖然とした表情を浮かべた。汗だくで、髪はぐちゃぐちゃ。多分、化粧が流れてひどいことになってい
るはずだ。
「あ、あぁ。事故だよ」
 そんなことはわかっている。
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと807,396秒:2008/02/01(金) 21:47:30.60 ID:hrnw9CWeO
お題 天才収容院
お願い
21お題:躍動する少女、懐疑 4/4:2008/02/01(金) 21:47:39.80 ID:lAiAWVb40
「男の子、自転車を運転してたのは男の子でしたか!?」
「いや、多分」
「茜」
 声がした。
 聞きなれた声。
 振り向くと、彼が、いた。
「こんにちわ」
 彼の、憎たらしい顔が、そこにあった。

 結局、茜の彼は事故とは関係なかった。
 言いたいことはたくさんあったが、泣いてすっきりしたし、謝り続ける彼を見て茜はどうでもよくなった。
「今度からはもっと早く行くようにするから」
 茜は首を振る。
 待ち合わせはしばらくやめだ。
「私、家まで迎えに行くから」
 茜は彼の驚いた顔をはじめて見た気がした。



22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと807,145秒:2008/02/01(金) 21:49:48.67 ID:Y0057bk90
お題ー
ください
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと807,003秒:2008/02/01(金) 21:51:25.88 ID:S72j2I2X0
ラグナロク
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと807,082秒:2008/02/01(金) 21:51:47.07 ID:Xqosxb4N0
>>22
月食
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと806,897秒:2008/02/01(金) 21:51:49.92 ID:zhESd5Yb0
>>22
80年代
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと806,879秒:2008/02/01(金) 21:57:03.29 ID:Y0057bk90
>>23-25
把握。
しかしラグナロクって何?
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 21:58:11.67 ID:BlX4t92C0
滅びに向かう黄昏の争いとかなんとか
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと806,359秒:2008/02/01(金) 22:01:53.79 ID:Y0057bk90
>>27
ありがとう。
えっ!?……ネトゲじゃないの??
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと806,359秒:2008/02/01(金) 22:05:06.19 ID:QKCy+Q8o0
ラグナロク (Ragnarok) は、北欧神話の世界の終末の日のことである。古ノルド語で「偉大なる神々の運命」を意味する。
13世紀のアイスランドの詩人スノリ・ストゥルルソン(ストゥルラの息子スノッリ)のエッダ(通称「新エッダ」)、
および、「詩のエッダ」の『ロキの口論』ではラグナロェックル (あるいはラグナロークル)(Ragnarokkr) 「力ある神々の闇」と呼ばれる。
もっとも、スノッリの『エッダ』では、ragnarokr と綴られることもあり、それは、「神々の黄昏」と解される。
一方、「詩のエッダ」『巫女の予言』、『フンディング殺しのヘルギ その2』、
『アトリの言葉』、『バルドルの夢』では、ragna rok と綴られ、こちらは「神々の運命」と解される。

wikipediaより
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと806,455秒:2008/02/01(金) 22:05:19.77 ID:EopqKcb20
FFシリーズ最強の剣のことかー!
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと805,876秒:2008/02/01(金) 22:08:57.19 ID:ommakz920
え、ラノベじゃ(ry

まあなんでもいいんじゃね?
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと805,859秒:2008/02/01(金) 22:10:59.93 ID:S72j2I2X0
いや、ここは右から読んでラグナロク→クロナグラ
名倉潤のことじゃね?
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 22:21:49.21 ID:BlX4t92C0
ロェックルって非常に発音しづらい
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと805,138秒:2008/02/01(金) 22:24:36.98 ID:6peIgXKn0
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 22:24:40.39 ID:E+S3u1Ta0
クチェックル
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと805,201秒:2008/02/01(金) 22:24:54.61 ID:+Ok0sGYOO
ロキの話とサトリ伝承って似てるよね
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと803,845秒:2008/02/01(金) 22:48:34.11 ID:bHx/f6WX0
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと803,431秒:2008/02/01(金) 22:49:44.97 ID:V2YvL4+T0
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:03:35.69 ID:3mmOWgpU0
お題ください
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:03:52.45 ID:EO/Sfx/JO
>>40
最初
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:04:14.63 ID:3mmOWgpU0
把握
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:05:48.20 ID:h1YFgENh0
今週のお題はルールかぁ……
このゲームには必勝法がある的なテクニカルな小説頻出だよな?
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:07:22.27 ID:ommakz920
尺が短いからなぁ…あんまり福本的なことはできないだろ
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:09:03.01 ID:drNETt/o0
いいアイデアを思い浮かんだと思った瞬間
それが消えたwwwwwwwwwワロチwwwwwwwwww
46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:10:38.18 ID:h1YFgENh0
>>44
ざわ…ざわ…
 ざわ…ざわ…
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:11:40.75 ID:Nec1G8zM0
投下いきまーす
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:11:40.51 ID:BlX4t92C0
三万で株で損をしない方法と言う本を買ったら「株を買うな」と書いてあった時を思い出す
49お題 双眼鏡 願い:2008/02/01(金) 23:12:27.87 ID:Nec1G8zM0
 危ないから太陽を見てはいけない。
 俺が昔、父にせがんで双眼鏡を買ってもらったときにした約束だ。
 高校三年のときに、俺はその約束を破った。


 夏休みも後半にさしかかったその日、俺は補習のために、久々に学校に来た。
 本当ならもっと早くに来るはずだったのだが、外に出るのがめんどくさくて、だ いぶひき延ばしてしまったいた。
 そのせいか日程表を見間違えて、1時間早く来てしまった。
 それに気づいたのは学校に着いてからだったので、今更あの太陽が照りつける道 を戻ろうという気分にはなれなかった。
 そこでとりあえず、図書室で時間をつぶすことにした。
50お題 双眼鏡 願い 2/4:2008/02/01(金) 23:13:35.06 ID:Nec1G8zM0
 快適な冷暖房、貼りなおされた白い壁紙、多種多様な蔵書。うち学校の図書室は 、公立校にしてはかなりいい方だろう。
 俺は少しの間、エアコンの前で涼んでから、近くにあった本棚から『星屑』とい う絵本をひっぱり出した。
 内容はいまいちだったけれど、最後の星に願いをたくすシーンはとてもきれいだ った。
 黒い背景から、浮き出るように描かれた星々と、それに願いをたくす少年、一つ 一つが輝いていた。こんな光景を一度は見てみたいなと思った。
 だからだろうか、絵本を読み終えた後、俺が外に目をやったのは。
 もちろん、昼に星がでているはずがない。そんなことは分かりきってたのに、俺 は目をやった。
 そして、なんとなく目線を下に移した。
 そこには、グラウンドで部活に励む同級生がいた。
 俺はそこから目をそらした。
 なぜそらしたのだろう。自分でも変なことをしていると思った、しかし本当に変 だったのはその後だった
51お題 双眼鏡 願い 3/4:2008/02/01(金) 23:14:22.72 ID:Nec1G8zM0
 俺は、ポケットから双眼鏡を取り出してもう一度グラウンドを見た。
 今、自分が見ている彼は、一生懸命にボールを追っている。たぶん、昨日は違う やつがあのグラウンドで一生懸命になにかを追いかけていたのだろう。一昨日も 、さらにその前もそうだっただろう。
 俺にはそんなに一生懸命になるものは無い。あったら今、ここでこんなことをし てはいない。
 もう、三年の夏休みも終わりだというのに、俺にはなにもないのか。
 後悔する気にもならない、ただただあきれるしかない。
 俺は双眼鏡から目を離して、大きく息をはいて、またのぞき込んだ。
 なにが見たかったのだろうか。今考えると、なにかを探していたような気がする 。
 しかしそれは見つからなくて、それでもやめられなくって、でたらめに上の方を 見上げた。
 そして、太陽を見た。
 そこからはよく覚えていない。ただ俺は焼きつくほどの光に、声を発することも できずにその場に倒れた。
 
52お題 双眼鏡 願い 4/4:2008/02/01(金) 23:14:55.81 ID:Nec1G8zM0
 あれからずいぶんと経った。
 俺は高校を卒業して、就職して、なんとか暮らしている。
 この生活に不安になることはあるが、昔ほどではない。
 子供の頃の俺は、先のことを考えていなかった。ただ、見ようとだけしていた。 でも、そんな、未来を見るなんてことできっこない。
 だからよく遠くを見ていた。その癖で高校生になっても双眼鏡を持ち歩いたりし ていた。
 そしてあの日、ついに見てはいけないものを見てしまった。
 あれが、俺が見たかったものなのかはわからない。
 しかし、あれ以来俺は同じようなことは考えなくなった。
 自分がなにも見つけることができないと諦めてしまったのだろうか?
 それともショックでおかしくなってしまったのだろうか?
 どちらも充分ありえる話だ。
 しかし、俺はそうではない、あのとき俺はなにかを願い、そして叶ったのだと。
 だからこうして今、空を見上げてあのとき本に見たような星空を見ることができ るのだと信じている。
  〔了〕
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:20:12.45 ID:h1YFgENh0
ガン=カタをレンタルしてきた
冒頭みたけど面白そうだww
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:21:25.82 ID:zhESd5Yb0
>>17
2008/02/01(金) 18:12:58.55のお題受理から、約3時間半で仕上げたわけだね。
最近マイブームな実況的感想でも書こうと思ったんだけど、粗が多くて止めた根性無しだ。すまん。
三人称は書き慣れてないのかな? 例えば冒頭を例に取るとさ
『季節は冬。日差しは淡く、空気は澄んで頬に痛い。
 時期が違えば待ち合わせ場所として盛況な駅前の時計の下に、いるのは少女が一人だけ。』
これ、2行目の日本語でおkを直したとしても、三人称としてはダメだと思う。
『空気は澄んで頬に痛い。』を主語述語などを意識して書き直すと例えばこんな感じになるかな?
→空気は澄んでいます。その空気を頬に痛いと、私は感じました。
この文章は、私の主観(体感)を強く意識させてしまう。読む人間に一体これは、誰が発した言葉だろう? と思わせるのだ。
誰が思ったとかじゃなくて、客観的な事実を説明したかった。のだったら、誰が?を意識させないように、たとえば
”空気は澄んで、人々は肌寒さに身を縮めている” とかにした方が良いと思う。

そうではなくて、一行目は茜が頬が痛いと思ったんだよ。ってのもおkだよ。そんときは1行目の直後にすかさず
”茜はそう思いながら” 等を入れてほしい。(これで1行目が茜の内面の描写になる)
だけど2行目は、遠くから見た駅前の時計と、その下に立つ茜の様子を描いている。
すると、さっきまで(1行目)茜の内面・気持ちを茜の中に入って見ていたはずなのに、
知らない間に茜の外に出ていて、茜を遠くから見ている。的な不思議なことが起こってしまう。

全般にこうした ”誰が” が意識されていない主語省略が過多な文章、
だから、誰かの内面描写なのか、それとも、地の文で事実を描写しているのかが不明確。

ちなみに、これまで長々と書いたのは、『視点がぶれている。』の一言でいいんだけどね。

で話の構成としては結構綺麗だけど、起承転結でいうと話の筋
・待ち合わせ来ない。むかつく。(起、承)
・事故!不安で駆け出す。あ、ただ待ってるんじゃなくて、逢いたいなら自分から行けばいいんだ。自転車が……彼は、、泣きそう。こんなことなら涙目(転)
・後ろから、「よう!」。よかった(結)
に対して、(起、承)が長いなぁと。気持ちの変化を追う筋は好き。
っていうかこう言うのは一人称の方が向いてる内容だと思うんだけど、練習のために三人称を挑戦してほしいな。
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:36:01.46 ID:39nK/qkr0
>>53
はまったら副音声の監督のコメント聞いてみ。
予算がなくて実は…の話が結構おもろい
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/01(金) 23:46:43.56 ID:EO/Sfx/JO

カオスってたら品評会ふたつできた
57 ◆BNSK/DqMrY :2008/02/02(土) 00:00:42.71 ID:h3Sd6VqW0
守るべきルールは、運営の指示には逆らうな――ただ、これだけだ。

第九十六回週末品評会 『ルール』

開始。
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:04:22.91 ID:c7U/viLK0
やべぇまだ50行しか書いてないけど余裕で5レス突破しそうだ。
今まで5レスギリギリに上手く収まって来たのに…
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:13:12.01 ID:/+m1mMuE0
さ、品評会書き始めるかw
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:22:29.68 ID:sSRivfW80
規制解除されてたらお題もらって品評会に組み込む
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:32:58.48 ID:a27tQtHtO
>>60
ゴリラ
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:42:44.36 ID:/YCsGG/R0
>>60
ラッパ
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:43:07.19 ID:h3Sd6VqW0
>>60
パセリ
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:43:13.50 ID:TINq91DR0
>>62
パンツ
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:47:48.06 ID:tF98LYumO
>>60
しりとり
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:52:52.94 ID:9PnsnFnT0
五時間で作品を仕上げるというものを実験的にやってみたので投下します
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:53:25.53 ID:9PnsnFnT0
ttp://www.uploda.org/uporg1229773.txt.html

ちょっと長めになってしまったのでまとめました
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:54:18.32 ID:h3Sd6VqW0
>>67
開いた瞬間に閉じた
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:54:51.81 ID:1qKqy0kf0
親切のつもりだったんだろうが、俺も開いた瞬間閉じた。
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:57:19.04 ID:9PnsnFnT0
やっぱり長いし見辛いですかw
申し訳ないwww
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 00:58:46.21 ID:+i7H+vCJ0
小説読まない俺にとっては拷問
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:00:33.33 ID:sSRivfW80
>>61-65
亀だけど把握。できない気しかしないけど。
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:09:46.17 ID:RhGczUChO
>>67
量自体は大したことないけど、横に長すぎる。
横にスクロールしないといけないような書き方は、ほとんど読んでもらえないから気をつけたほうが良い。
品評会でさえ、横に目いっぱいレス使ってあると、読みたくなくなるし。
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:13:17.66 ID:9PnsnFnT0
>>73
分かった。これから気をつけます
txtで縦書き出来ないかなぁ
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:18:08.33 ID:1qKqy0kf0
というかまぁ、普通にスレに書こうね。あんまり長いなら長編板だけど
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:21:15.41 ID:9PnsnFnT0
五時間はいき過ぎということですね。三時間くらいで今度やろう
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:28:09.38 ID:go3vQw930
時間はまったく関係ない。
普通にこのスレとかを読んでみて、
標準的な載せ方をすれば良い。

というか、さっきの奴も、きちんと改行して
ここに載せれば、読んでもらえると思うぞ。
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:51:57.11 ID:1qKqy0kf0
普段の自分が書かないような書き方したら、変な感じがした。
通常作投下ー。2日くらい前に貰ったお題だぜ。

お題:普通、絶望 レス数:3
79あべんじすぴりっと(お題:普通、絶望) 1/3:2008/02/02(土) 01:52:33.08 ID:1qKqy0kf0
「今日、私の兄貴は二十八階建てのビルの屋上から飛び降ります。
 そう、決まっています。私だけが、知っています」

        ◆

 何でも、まとまったお金が必要だったらしいですね。
 頑張って友達と起した会社も、経営が立ち行かなくなり、やがて多額の借金を背負いました。
責任感の強い兄貴は、自分だけが負債を被り、友人たちを守ったそうですね。
その為だけに、始めから社長という名目の場所に自分を据えていた、んでしたか。
失敗した時のことを始めから考えているのは、良い事なのでしょうか悪い事なのでしょうか。
 しかし両親を早くに無くし、親戚との繋がりもあまり無い私たちには、金銭的に頼るべき人も居ませんでした。
 兄貴は独りでお金を工面しようとしましたが、借りられるところも当然無く、
必然的にその身は破滅へと向かっていきました。それらの事を私に一切隠したまま。
 そして、もう、精神的にも限界だったのでしょうねぇ。
 闇金で借りたお金も返せず、兄貴は生命保険でそれを賄おうと考えました。いえ、そう誘導されたそうです。
「お前に迷惑かけてごめんな」と、全てを語ってから、兄貴は何度も何度も私にむけて口を開いてました。
許して欲しかったのでしょうか。止めて欲しかったのでしょうか。それとも──いえ、私は兄貴を信じていますよ。
 言ってみればこれは、ありふれた、普通の話です。誰にでも起こり得る、普通に不幸な話です。
兄貴のことを不幸だと、私にはそうは思えません。兄貴はただ、少し、いえ、絶望的に運が無かったのでしょうね。
 以上のことは全部、兄貴から聞いたことです。そうですよね?
 ……そして自ら遺書を書き、身の回りを整えた上で、兄貴はあの日家を出ました。
飛び降りるのは夕方だが、それまで独りで過ごしたい。そう、兄貴は言っていましたね。思うところも、当然あったのでしょう。
 私は遠い親戚が引き受けてくれることになっていると、それだけは、確約させたと、兄貴は言っていました。
私の事なんて、気にしなくて良いのに。あの時そう言ったら怒られたでしょうか。ねぇ、どう思います?
80あべんじすぴりっと(お題:普通、絶望) 2/3:2008/02/02(土) 01:52:49.37 ID:1qKqy0kf0

 さて。
 予定時刻は、午後五時ジャスト。
 そう兄貴が言っていたので、学校が終わってからゆっくり行っても間に合う寸法です。
ですが、放課と同時に私は教室を飛び出しました。学園前でバスを待つ時間が惜しかったです。
とりあえず街中までバスを乗り継いで行きました。それでもまだ四時くらいで、
これなら余裕で間に合うな、って私は思って。
 そして、ビルの前までゆっくりと十分くらいかけて私は歩いて行って、目的のビルを見つけて、
のんびりと階段で屋上まで上がることにしました。これでも体力には自信がある方ですから。
 一段一段、踏みしめるように私は階段を上ります。何でしょうか。些か不謹慎かもしれませんでしたが、
あの時のドキドキした気持ちは、とても心地よかったです。初めての気持ちでした。
 例えるならそう──何でしょう、死刑囚の気持ちでしょうか? 笑えませんね、ごめんなさい。
 そうして屋上についた私を、兄貴が笑って迎えてくれましたね。直接兄貴の顔を見るのはアレが最後でした。
今でもはっきりと覚えています。
 やがて私たちは話を始めました。少しづつ、両親が居た頃から、今へと順を追うように思い出を喋りました。
楽しかったこと、楽しかったこと、楽しかったこと。悲しい思い出なんて一つもありません。
両親が死んでしまったこと以外、私たちが悲しむことなんて何も無かった筈なんです。
 だから、この次に起きたことも、私が悲しむべきことじゃありません。
 落下防止用の柵の前に立ち、空を見上げていた私の背中を誰かが──兄貴が、押してきたことです。
 私は抵抗出来ませんでした。抵抗しませんでした。兄貴のその時の表情を見て、私は自分から命を手放してしまったのです。
 そのまま私は地面に衝突し、この世を去りました。痛いのは一瞬でしたよ、綺麗に頭から落ちましたし。
81あべんじすぴりっと(お題:普通、絶望) 3/3:2008/02/02(土) 01:53:00.07 ID:1qKqy0kf0

 ──ところで、ユーレイって信じます?
 基本的には恨み妬み嫉み、未練なんかが凝り固まって出来上がっちゃうものらしいんですが、
私にもよく分かりません。すみません、自分のことなのに適当で。
 私はとりあえず兄貴があの日、私を突き落とした理由を知りたくて、この世に留まりました。
そして、兄貴は自分じゃなくて私に生命保険をかけていたこととか、それで借金を返すだけじゃなく、
会社までも奇跡的に立ち直らせたとか、そういう事を知りました。良かったですね、全部上手くいって。
 私が兄貴を愛していた程、兄貴は私を愛してくれてはいなかったのは、正直言うとそりゃあショックですが、
それでも仕方のないことだとも思います。私が愛してるから貴方も愛せなんてのは、酷い話ですものね。
でも友達にちょっと吹き込まれたくらいで、本当に私を殺そうと考えるなんて思いも拠りませんでした。
痛かったんですよ? ぐちゃぐちゃになった自分を見るのは。視覚的な意味で。
 という訳で、ちょっとした私の疑問はそのまま絶望的な兄貴への恨みに変わりましてー、
その後ものうのうと普通に暮らしている兄貴の下へ、こうしてやってきたのですよ、っと。
「……た、たた、助け、タスケてくりゃ、きゃきゃ、か…………」
 何言ってるか分かりません。
 まぁ、これで、私が兄貴を呪う理由は説明復習し終えましたし、いつまでもこうしているのも嫌ですので、
手早く終わらせましょうか。兄貴、そんな絶望したような表情しなくても。ほら、私を殺したときみたいな顔して?
「ご、ごめんなさいごめんなさい許してゆるし」
 兄貴、往生際悪いですよ? …………笑えませんね、ごめんなさい。
 ぐちゃ。

                        終。
82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:53:24.45 ID:1qKqy0kf0
以上。多分、酷いと思う。
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:56:29.29 ID:ykIBtBSC0
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  前スレまでの通常作品、過去スレ、過去ログ、2月への移行態勢、全て編集完了致しました。
 |   長靴要求   .|
 |________|  総作品数:4214作品
   ∧,,∧ ||        .総スレ数 :410スレ
  (´・ω・)||        .現 在  :411スレ目
   /  づΦ       .備 考  :明日は節分ですね。今日のうちに豆を入手しておくと良いかも知れません。
84以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 01:59:33.40 ID:ggTT8iMp0
おつかれさまです><
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 02:01:24.02 ID:1qKqy0kf0
おつかれさまっす!!
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 02:16:41.40 ID:wWS2bZKyO
乙です
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 02:25:42.94 ID:WSDpeFFj0
編集乙!
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 02:27:44.46 ID:h3Sd6VqW0
明日が節分である前に。
今日は俺の誕生日。
さて、プレゼントなんて期待してないから、代わりにお題でももらおうか?↓
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 02:29:13.37 ID:DbBBgtJx0
おめでとう
っ「箱」

>>83
乙であります
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 02:29:30.95 ID:ggTT8iMp0
つ 14歳
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 02:43:53.42 ID:sSRivfW80
>>83
乙などという言葉では言い表せないが、とにかく感謝の念を抱いている。
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 03:06:31.44 ID:rcNy6hUO0
こんな議論は今までにあったと思うが、どうか怒らないで聞いてほしい。
保守ついでのものとして、聞き流してくれても構わない。

普段、俺はこのスレでよく「三点リーダーが多い」って言われるんだ。
自分でも自覚しているし、確かに反省している部分もある。
でも、ラノベって結構三点リーダー多くないか?
いや、別にラノベが悪いだとかの話じゃないんだ。俺はラノベ好きだし、正直所謂「純文学」よりも好きなんだ。
というか、ラノベを書きたいと思っている。だからといって「ラノベスレ行け」なんていわないでほしい。
ラノベ的な書き方を自分なりに見つけたくてこのスレにいるんだが、もしかして俺間違ってるのか?
ラノベでも読んだ事無い作品は一杯あるだろうし、中にはラノベっぽくないのもあるやもしれない。
最近読んでるのは「とらドラ!」なんだけど、結構そういうのが多いんだ、この作品。俺は凄く好きなんだけど。
作品云々じゃなくて、
「三点リーダーの効用と問題点」みたいな事を具体的に指摘出来る人はいるかな。出来れば教えてほしいんだ。
「このサイトに書いてあるから自分で勉強しろ」というものでも一向に構わない。
とにかく、最近割と真剣に悩んでいるんで解決したいんだ。
スレ汚しスマン。気に食わなかったりしたならスルーしてくれて構わない。自分でも色々調べているから。

あと、本屋で芥川賞受賞作ナナメ読みしたけど、行間空けすぎじゃね? ちょっと気になった。
93以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 03:12:22.18 ID:DbBBgtJx0
間違ってはないと思うよ 個人的には、だけど
らだラノベってそもそも定義が曖昧だよね
三点リーダやダッシュをほとんど遣ってない作品だってあるだろうし

んで、その「とらドラ!」って作品には三点リーダが多用されてるん?
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 03:15:48.39 ID:2Z0bMx3o0
気になることを一つ二つ。
市販されている、ある作品で使っていたから使っていいという見方はどうなんだろう。
プロが常に正しいわけではないし、読み手に読みやすく、描写をより具体的に、といった
大前提を間違えちゃいけない。
三点リーダーは、間を表現したり、その後に続く表現を強調したい時に使うものだと思う。
確かにそういう意味で重要だとは思うけど、それは表現手法の一種であり、
同じ単語を何度も使われると嫌気が差すのと同じように、三点リーダーの多用が気になる人も多いはず。
そういうマイナスを差し引いても、使わなければならないのなら使うべきだし、
そういうわけでもないのなら違う表現を使ったほうがいいと思う。
95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 03:28:13.50 ID:Uh9zarFpO
面白ければなんでも良いよ。三点リーダー多用してようが何だろうが
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 03:40:53.32 ID:RhGczUChO
>>95
同意。
そもそも、そういう細かい所を指摘されるってことは、内容に特筆すべき所が無いんだろ。
それに横書きだからってのもある。
横書きで文末に三点リーダーが並んでると読み辛いと思うし。
何も言われたく無いなら、面白いものを書けばいい。
面白ければ、多少読みづらかろうがスルー出来るし。
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 03:57:35.86 ID:rcNy6hUO0
 こんな時間にこんなにレスが帰ってくるとは。
 「とらドラ!」って作品に関しては、単に読んだ中でそう感じただけだから、あまり気にしないで
ほしい。感想は人それぞれだと思うから。俺は割と好きなんだけどね。
 まぁそれは置いといて、レス読ませて頂いたけど、やっぱり考えは人それぞれなんだな。確かにプ
ロを絶対だと思っていたところはあった。「自分もこんな面白い作品が書きたい」って思ってるから、
無意識に神格化?してしまっていたのかもしれない。その点については今後考えを改める。
 面白ければ何でもいいって言ってくれた人、ありがとう。なんだか気持ちが楽になった。勿論文法
はきちんと守るし、あからさまに変な表現は使わないように心掛けるつもりだ。でも何というか、も
っと自由に、自分なりの表現で書いていこうと思う。勿論面白い作品を書けるようになりたいしな。
物語の内容だけでなく、「こういう書き方があるのか」というのを見つけていきたいと思う。
 なんだか勝手に自己完結してしまったようですまない。貴重な時間を割いてくれてどうもありがと
う!品評会作品でも今書いた事を肝に銘じようと思う。夜遅くに悪かった。
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 04:10:35.40 ID:DAcN+171O
俺、この戦争が終わったら品評会作品書くんだ……
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 04:23:42.69 ID:sSRivfW80
>>98
目を覚ませ、お前がいるのは戦場なんかじゃなくてBNSKだ
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 05:10:55.89 ID:tS/PpbM20
ほっしゅするよー☆
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 05:46:24.87 ID:sSRivfW80
品評会書いたけど、投げっぱなしジャーマンだこれ……
一晩寝かせておいしくなーれ。

寝る前のテンション保守
102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 05:52:35.25 ID:go3vQw930
俺もいま書き終わったけど、一回寝て確認してから投下する。
眠すぎて絶対どっか間違ってる気がするw

おやすみ保守
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 06:46:35.81 ID:ZN0EY9K00
hoshu
104 ◆ecJGKb18io :2008/02/02(土) 07:00:09.32 ID:btqJaHNZ0
品評会用投下します
105【品評会用】コドモルール(1/5) ◆ecJGKb18io :2008/02/02(土) 07:01:08.15 ID:btqJaHNZ0
 世の中にはルールがある。小学六年生の僕らにだってルールがある。
 授業中に私語をしてはならない。漫画を持ってきてはならない。イジメをしてはいけ
ない。でも、ルールの中には破っていいルールもある。もちろん相応の罰を受けるのだ
けれど。僕らはその破って良いルールと破ってはならないルールを微妙な所で見極めて
いかなければならない。外れないように外れないようにと怯えながら。
「なあトイレ野球しようぜ」
 僕は持ってきた漫画を机の引き出しに隠してこっそりと読んでいた。
「やだよ。こないだも熊センセイに怒られただろ」
「びびってんのかよ」
「……わかったよ。やるよ」僕がそう言うと、「びびってんじゃねえよ」と言い残して
武本は他の面子を探しに行った。僕は机の上に散らばる教科書類と漫画を整理する。
 懲りない奴だ。つい三日前に怒られたばかりなのに。きっと今日だって、女子の誰か
が職員室に駆け込んで、僕らは怒られるに決まっているのだ。トイレットペーパーをグ
ルグル巻きにしたボールと、打ちすぎて散らかったほうきの毛を片付けるなんてみっと
もない。その上、凶暴な熊センセイにしごかれるのだからやる方が馬鹿なのだ。
トイレ野球が他のどんな遊びよりも楽しいのは事実だけれど。
「やめなさいよ!」
 昼休みで騒がしい教室に、その声は凛とした強さ持って突如響いた。
 規律に厳しい委員長こと安藤女史だ。整理の手を止め、声の方向を見ると、机に座る
一人の男子を挟むようにして武本を先頭に男子数人と安藤女史率いる女子数人が対峙し
ていた。
「うるせえな。お前は関係ねえだろ」
「関係あるわよ。佐藤くんをいじめないでよね」
 何の事はない。割とよくある光景だ。当の佐藤もいつもと同じく耳を真っ赤にして俯
いている。
「俺ら別にいじめてないし。何? お前こんな本の虫の事が好きなの?」
 男子の内の一人がそう言うと、安藤女史の取り巻きの数人が食ってかかるように反論
を撒き散らす。男子女子問わず、ああ言われたら誰だって動揺する。
「そうじゃないけど、あんた達いじめてたでしょ。先生呼ぶわよ」
 が、安藤女史はやはり違う。周りがざわつく中、ひとり整然と伝家の宝刀を抜くのだ。
106【品評会用】コドモルール(1/5) ◆ecJGKb18io :2008/02/02(土) 07:02:11.47 ID:btqJaHNZ0
 

 佐藤はクラスでも特に目立たない奴だった。いや、ある意味は目立っていたと言える。
常に席に座って本を読んでいるか、俯いているかの奴で、簡単に言うと彼は武本たちか
らいじめられていた。その度に安藤女史を筆頭に女子軍団が男子を非難し、口論になる。
ちょうど今のように。
 それからしばらくいつもの言い合いが続いたから僕は席に座ったまま漫画を読んでい
た。男子もセンセイを呼ばれるのは困るから強くは出られないし、かといって引き下が
るわけにもいかない。女子は女子で悪を見逃さない正義の執行人気取りだから、折り合
いがつかない。両者共に騒ぎに気付いた援軍が周りを囲むのだが、結局罵り合いになり、
輪の中心の佐藤は涙目になりつつも無視される。
 僕は男子軍から度々向けられる「支援せよ」という視線に気付かないふりをして黙々
と漫画を読みふけっていた。誰が自ら好んで危険地帯に足を運ぶものか。こういう態度
を取っていれば後で文句を言われるのは確実だけれど、幸い僕は何故かイジメを受ける
ような立場にはならないから、下校時の愚痴に適当に合わせていればルール違反にはな
らない。
「もういいわよ。後でセンセイに言うからね!」
 読んでいた漫画のページがちょうど半分に達した頃、安藤女史は男子に判決を言い渡
す裁判官のように大きな声で言い切った。が、法廷のように静かにはならない。むしろ
ざわつきは増していたが、それも昼休みの終わりを告げるチャイムによって消し去られ
た。チャイム席もまた僕らに課せられた一つのルールなのだ。


 いつもならこんな言い合いもその時だけで、後には引き摺らない。そもそも男子と女
子の対立など元からあるものだ。
 しかし、今日ばかりは違った。
「そこの三人と佐藤くん、まだ帰らないでね」
 帰りのホームルームが終わり、担任の熊センセイが教室を出て行ってから安藤女史は
言った。「そこの三人」はまるで授業中センセイに指名された時のように目を丸くし、
「佐藤くん」は顔を引きつらせていた。
107【品評会用】コドモルール(3/5) ◆ecJGKb18io :2008/02/02(土) 07:02:50.23 ID:btqJaHNZ0
 あえて熊センセイが帰ってから、という点に僕は安藤女史の怖さを感じた。どうやら
センセイに告げ口はせず、当事者同士で解決しようとしているらしい。真の当事者であ
る佐藤くんははた目にもびくびくと怯えているのが見て取れた。
 しかし「そこの三人」でも「佐藤くん」でもない僕には当然関係もない。他の生徒が
続々と教室を後にする中、僕も荷物をまとめて席を立った。
「神田。お前も残るよな」
 悪ガキ三人衆の内の一人であり、リーダー的存在の武本だった。昼休みにトイレ野球
をしようと持ち掛けてきたのもこいつだ。身体が大きく、坊主頭のそのいかつい顔は群
れの長になるために生まれてきたのだと思わせる。
「……僕も?」
「お前がもたもたしてたからこうなったんだろ」
 武本は鼻息荒げに「フンッ」と鳴らせて、腕を組んだ。全くの言い掛かりだけれど、
逆らうわけにもいかない僕は仕方なく鞄を机に置いて座り直した。僕と彼らの間にも破
る事の出来ないルールは存在する。それを破れば、自分の席で俯いている佐藤と同じよ
うな立場に追いやられるのだ。
「なんであんた達は佐藤くんをいじめるのよ」
 僕ら以外は誰も居なくなった教室で安藤女史は立ったまま言った。彼女は左右に二人
の女子を従えている。
「お前らに関係ないだろ。いじめてねえし」
 男子はそれぞれが自分の席に座っているという妙な距離感で、再び言い合いは始まっ
た。
 僕は何度も繰り返されるやりとりを聞きながら、ずっと佐藤の様子を窺っていた。僕
の席は窓側の一番後ろで、佐藤の席は廊下側の一番後ろだった。佐藤は終始俯きっぱな
しだったから表情を読み取る事は出来なかったけれど、居心地の悪さは軽く想像出来た。
女子に守られることが男子にとってどれほど屈辱的な事か。女子に悪意はないし、むし
ろ善意でやっているのは分かるが、それは犯してはならないルールなのだ。
「佐藤くんに謝りなさいよ」
「やだよ。バーカ」
108【品評会用】コドモルール(4/5) ◆ecJGKb18io :2008/02/02(土) 07:03:45.87 ID:btqJaHNZ0
 武本は譲らない。僕は自分に矛先が向いてこないかはらはらしていた。もし安藤女史
が「神田くんはどう思う?」などと訊ねてきたら何と答えたらいいのか分からなかった。
 ただ一つ分かるのは、武本率いる「仲間」を裏切ってはいけないというルールだけだ。
「馬鹿な事言ってないで謝ってよ。謝らなかったらセンセイに言うからね」
「出たよ、告げ口女」
 どうして佐藤はいじめられているのだろうか、と僕は考えた。いじめといっても軽く
小突いたり、からかったりと大したことではないけれど、佐藤がそういう標的になって
いるのは確かだ。佐藤が何か重大な欠陥を持っているのではない。ただ、「皆の輪に入
らなければならない」というルールを犯しただけだ。そうして、いつの間にか「佐藤に
話しかけてはならない」というクラスの暗黙のルールが出来たのだ。
「謝んなさいよ!」
「誰が謝るか!」
 安藤女史と武本の言い合いは最高潮に達していた。それまで傍観者を決め込んでいた
僕もいい加減仲裁しようかと思い始めた。このままじゃいつまで経っても帰られない。
 安藤女史も武本も譲らないだろう。そうなるといつかはセンセイに見つかって、下校
時間を守りなさいと怒られるに決まっている。僕はルールを破りたくないのだ。
「ねえ、いい加減に……」
 僕がそこまで言った時、不意にガンっという大きな音が教室内に響いた。
「もういいッ!」
 そう叫んで立ち上がったのは他でもない佐藤だった。誰もが想定していなかった事態
に教室内は静まり返り、椅子が倒れた音と佐藤の声の余韻だけが残る。
「お前らいい加減にしろよッ! お前もお前もお前もお前ももいい加減にしろッ!」
 佐藤は風呂上がりのように顔を耳まで赤くしてそう叫んだ。安藤女史も武本も他数人
も皆唖然としている。もちろん僕もだ。今まで見たことのない佐藤の変貌に僕らは誰一
人として言葉を発することが出来なかった。
「死ねッ!」
 佐藤は唾を吐き散らしながらそう言うと、鞄をひったくる様に取り教室から出て行っ
た。
 それからしばらく経っても僕らは黙ったままだった。
109【品評会用】コドモルール(5/5) ◆ecJGKb18io :2008/02/02(土) 07:05:14.43 ID:btqJaHNZ0
 

 翌日。少しだけれど、確実に僕らのルールは変化していた。
 相変わらず安藤女史はクラスの規律に目を光らせていたし、武本は休み時間になると
トイレ野球の面子揃えに勤しんでいる。昨日、僕らに覚醒を見せた佐藤だって普段と変
わらず一人黙って席に座って本を読んでいる。
 けれど、変わっているのだ。佐藤が変貌した時に居なかったクラスメイトだってどこ
か肌で感じている。ルールが変わったのだと。
「佐藤に話しかけてはならない」というルールに加えて「佐藤をいじめてはならない」
というルールが追加されたのだ。それは大したことのない変化かもしれないけれど、僕
は何故か気分が良かった。もしかしたら佐藤という奴は凄い奴なのではないだろうか、
という尊敬にも似た気持ちを持ち始めていた。佐藤はルールを破ったり作ったりする男
なのだ。
「なあトイレ野球しようぜ」
 武本は有無を言わせない調子で言う。だけど僕も言ってやる。
「やめとくよ。怒られるの嫌だし」
「またびびってんのかよ」
 お前もだろ、そう笑ってやりたかったけれど僕は堪えて席を立つ。残念ながら、僕に
はまだそこまでルール違反をする覚悟はない。
「びびってるよ」僕は言って、武本から離れる。チッという舌打ちが聞こえたがどうで
もよかった。
 そのまま廊下側の一番後ろの席を目指して歩く。
 なんて声を掛けたらいいのだろう。
 こんにちは。何してるの。遊ぼうか。どれもピンとこない。
「あのさ」
 僕はほんの少しだけルールを犯す。


「えーっと、何かおススメの本とかってあるかな?」
                                         <了>
110 ◆ecJGKb18io :2008/02/02(土) 07:06:06.67 ID:btqJaHNZ0
途中、(2/5)の所を(1/5)にしてしまいました。ごめんなさい。
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 07:43:29.47 ID:a27tQtHtO
救済スレに通常作品がきてる
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 08:53:29.87 ID:wWS2bZKyO
あいうえお
かきくけこ
さしすせそ
たちつてと
なにめねの
はひふへほ
まみむめも
や ゆ よ
らりるれろ
わをん
113(お題:14歳、箱)0/3 ◇czxS/EpN86 :2008/02/02(土) 09:26:39.18 ID:XeZ2pVWi0
救済スレから甜菜します。
3レス予定です。
114(お題:14歳、箱)1/3 ◇czxS/EpN86 :2008/02/02(土) 09:27:08.48 ID:XeZ2pVWi0
俺は14歳。
今は朝。
ここは土手。
あれに見えるはダンボール箱。
もしこれが俺以外の人間であるなら、気付かず通り過ぎていたか、興味も示さなかったであろう。
しかし、俺は、俺だけは見逃さない。
俺の思春期全開の脳が、皮膚が、あるいは第六感が告げている……。
間違いない……
あれは……あの中身は……
「メスの匂いが……プンプンしやがるぜ……くくく」
エ ロ 本 だ 。
俺はこの日、自らの境遇に初めて心から感謝した。
一刻も早く授業を切り上げ、女体達を我が物にせねばならぬ俺にとって、その任務を妨げかねない様々な
イベント、例えば……。
『もう、お兄ちゃん!今日は私と帰るって約束したよね!』
『いいや、今日はウチと帰りにクレープ食べるんや!』
というような学園生活の一コマも、
『せ、先輩、お疲れ様ですっ!はわわ、インターハイも頑張って下さい!』
『おいおい、ご両人見せつけてくれるなよ』
なんていう青春のキラメキも、
俺には存在しない。
それどころか友人まで俺にはいないのである。
しかし、俺は今日断言する、全ては、今日のために神が仕組んだ出来レース。
「おい、何アイツさっきからにやけてんだ……?」
「やだ…何か一人芝居してる……キモイ」
せいぜい今のうちに言っているがいいさ。
115(お題:14歳、箱)2/3 ◇czxS/EpN86 :2008/02/02(土) 09:27:32.02 ID:XeZ2pVWi0
 俺はドコも悪くなど無いというのに、担任は俺を心配し早退の手続きを取った。
なんという幸運だろう。これで俺は予想よりも早く女体の救出に参上できる。
幸運もここまで続けば神からの寵愛を受ける存在と言っても過言では無いだろう。
カバンを取る手ももどかしく、俺はひたすら、走……
「困った事があったら、いつでも言ってくれよ」
れなかった。
(この腐れ担任教師め。俺は今のお前が困ったちゃんなんだよ!)
にこやかな顔をこちらに向ける担任教師へと生じる、確かな殺意。
しかし、その殺意はこれから保護するであろう女神たちが優しく包み込んでくれるであろう。
「大丈夫です、俺はもう、一人で立てるんです」
決まった。
見事すぎて声を出す事も忘れてしまったのだろう。
驚愕の表情と共に黙り込んだ教師を尻目に、俺はゆっくりと約束の土手へと駆け出す。

時刻は、1時30分。
土手への距離を詰めていく度に、高鳴る鼓動、早くなる呼吸、熱を帯び硬化するもう一人の俺。
土手の方から、声が聞こえる。
嫌な予感がする。
「これは…」
唇を噛み締める俺。予感は確信となり、その名を告げる。
「小学生かっ!」
この時間帯は、奴らのテリトリー。
(くそっ、まずは戦況の把握だ!)
すでにダンボールの存在に気付いていたのだろう。一人が恐る恐るダンボールに近づき、
他数人が見守っているらしい。
(敵はまだ偵察段階……数は一人。これなら潰せる)
俺は息を大きく吸い込み、咆哮(ほ)える!
「先生に言いつけるぞぉぉぉぉ!!!!」
116(お題:14歳、箱)3/3 ◇czxS/EpN86 :2008/02/02(土) 09:28:01.11 ID:XeZ2pVWi0
 「ふはは、見ろ、ゴミのようだ!」
偵察していたガキはもとより、残りのガキまで一斉に逃げ始める。
これも俺が声変わりを済ませていなければ使えなかった技であろう。
ようやく保護できたダンボール箱。
箱ごと持ち帰りじっくりと戦果を確認すべきであろう。
持ち上げると、底の方がじっとりと濡れていた。
「はしたねえ女だ、もうこんなにしやがって」
ここまで濡らされては、じらすのもまた可哀想と言うものだ。
味見をしてやろう。
もう一人の俺は、これ以上刺激を与えるといけないくらいに膨張している。

箱が、ゆっくり、開けられた。

そうして、俺はそのままゆっくりと箱を閉じる。

明日からは……しばらくご飯食べられそうに無いな。

あれ以来、土手には行っていない。
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 09:28:43.76 ID:XeZ2pVWi0
以上です

>>105-109
まとめ済み
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:03:37.59 ID:XeZ2pVWi0
>>79-81
読みにくいよ! 幽霊かよ!
って思うのに、なんかそんなに嫌じゃない。
なんか不思議な作品だw
なのでどう感想書いたらいいのかわからんけど、いちおう。

最初の2行は最後の兄貴の死の事を言ってるのかな?
兄貴が飛び降りて死んだのかと理解するまでに時間かかった。
最後のとこの状況説明が少なすぎるのかも。
感の良い人ならすぐに気づくのかもしれないけど。
最初の2行が最後にかかってる事をもっと解りやすくしてくれると
もっと面白かったんじゃないかと思う。

>借りられるところも当然無く
とあるのに、通常のところではないにせよ
>闇金で借りたお金も返せず
と数行後には何の説明も無く、あっさりと借金してるのに違和感があった。
それとも、この借金はお金を工面しようとする前にしてた借金なんでしょうか?
どっちでも良さそうだけど、この借金に借金を重ねる過程をわかりやすくしてたら
話に入り込みやすかったように思う。

いやしかし、ほんとなんか不思議な作品だw
すまんこんなことしか言えなくて。
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:16:50.94 ID:XeZ2pVWi0
>>114-116
三点リーダーがどうとか、半角がどうとか言うのがバカらしくなるなw
確信犯的な感じがするので、お約束はスルーで。
意味がわからなければ、wikiのコラムでも読んでくれ。

なんか言うこと無いわw このままこの道を進んでくれw
面白かった。
強いて言うと、結局箱の中身がなんだったのかを知りたかった。
明確にする必要はないと思うけど、もう少しヒントが欲しかった。
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:44:27.14 ID:WSDpeFFj0
お題くれー↓
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:45:22.99 ID:ghSi+ZVt0
にしてもルールと聞くと23年のフランスのルール地方占領ばっかり脳に浮かぶ不思議!
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:46:32.75 ID:OciUKtCc0
お題ください>>126
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:47:48.83 ID:ghSi+ZVt0
>>120
すまん
ぬいぐるみ
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:48:28.07 ID:WSDpeFFj0
>>123
承知
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:52:17.15 ID:XeZ2pVWi0
なんだみんないるんじゃないかwww
俺一人かと思った

安価なら「ひとりぼっち」
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:54:19.40 ID:XeZ2pVWi0
つ図面
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 10:55:36.40 ID:OciUKtCc0
>>126
なぜ変えた・・・
図面把握
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 11:31:31.69 ID:rcNy6hUO0
hoshu
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 11:46:52.70 ID:9o3Ae6320
ようやく小説を書く暇ができたので、書いてみる。

ところで思うんだけど、固有名詞がテーマになると難しいものがあるね。
ジャポニカ学習帳なんて、そこからイメージが浮かばねえよ、うわああん
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 11:56:59.40 ID:WSDpeFFj0
よくジャポニカ学習帳の裏にある世界のなんたらみたいなコラムを頼りに進む探検隊

ジャポニカ学習帳の切れ端に書いてあった好きなあの子からの手紙

名前を書かれた人物は語尾に「ジャポ」とつけてしまう魔法のジャポニカ学習帳

ある日、ジャポニカ学習帳の隅に書いた「未来の自分へ」という手紙を偶然発見してしまう主人公

ジャポニカ学習帳を愛し、ついに法律の壁を破り結婚した女

ジャポニカ学習帳に描いた落書きが飛び出してきたー

ジャポニカ学習町にあるジャポニカ学習庁のジャポニカ学習長が渡したジャポニカ学習帳
131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 12:01:57.05 ID:wIB8Lnyx0
ぬいぐるみからどんなお話が出てくるか楽しみだなぁ
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 12:06:21.42 ID:9o3Ae6320
>>130

>名前を書かれた人物は語尾に「ジャポ」とつけてしまう魔法のジャポニカ学習帳
>ジャポニカ学習帳に描いた落書きが飛び出してきたー
>ジャポニカ学習町にあるジャポニカ学習庁のジャポニカ学習長が渡したジャポニカ学習帳

これは面白いな。そういう考えは全くなかったわ
133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 12:15:18.80 ID:P4uQ+Kf3O
ずんまぜんけど
いながもんのオラにお題くだせぃ↓
134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 12:16:25.96 ID:wIB8Lnyx0
塩焼き
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 12:18:53.44 ID:DS987BWu0
おだい
136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 12:19:13.97 ID:WSDpeFFj0
>>131
ハードルあげやがったなwww
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 12:19:46.87 ID:WSDpeFFj0
>>135
ハードル
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 13:02:27.84 ID:rcNy6hUO0
そして保守
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 13:12:07.57 ID:XgtQdJV1O
お題ちょうだい
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 13:17:39.58 ID:nlu50ZRC0
あんみつ
141(お題:ぬいぐるみ)1/4 ◆LBPyCcG946 :2008/02/02(土) 13:34:33.64 ID:WSDpeFFj0
 木曜の3、4時間目は図工の授業。これは私が、この小学校に通っていた時から変わらない。
 でもその内容は、20年前よりも大きく変わった。私は、新しく導入された機械の説明書に
目を通し始めた。
『ぬいぐるみプリンター取り扱い説明書』
 その文字の下にはずらずらと、但し書きの羅列。私はそれを読み飛ばして2ページ目を見た。
『1.ぬいぐるみプリンター本体と、印刷される画像ファイルのデータが入ったコンピューター
を付属のUSBケーブルで繋ぎます
 2.ぬいぐるみプリンター専用ソフトを起動し、[メニュー]から、[ファイルを開く]、印刷す
る画像ファイルを選び、[OK]ボタンをクリックしてください
 3.[メニュー]から[印刷]ボタンをクリックしてください。およそ1分程でぬいぐるみが出来
上がります』
 随分と簡単な操作だな、と思った。いわゆる親切設計という奴だろう。その後に、『内蔵の布、
綿が切れたら〜』とか、『印刷できる画像の〜』などの項目が続いたが、とりあえず読み飛ばし
た。細かい事は、操作している内に覚えればいい。
 私は説明書から目を上げて、教室内を見回した。私の頃よりも随分と子供が少なくなってしま
ったが、どの子も私の大事な生徒だ。皆一心不乱に、鉛筆やクーピーを使って絵を描いている。
職員会議で、この機械が導入されるという話になった時「図工の授業なのだから、子供達の手
で完成まで作らせなければ意味が無いだろう」という意見を出したのは、他でもない私自身だっ
た。だが、実際に機械が来てみて、子供達の絵がどういう風にぬいぐるみになるのだろうかと、
一番ワクワクしているのも私だった。
 私は教卓から立ち上がると、子供達の描く絵を見て回った。近頃「大人びた」と言われる小学
生とはいえ、1年生は流石にまだ子供らしい。絵の内容も、主に動物が中心だった。女の子はウ
サギ、男の子はライオン、そんな定番の物から、テレビアニメのキャラクター、あるいはその子
が一生懸命考えたであろうオリジナルのキャラクターなど。子供の絵は自由で良い。
142(お題:ぬいぐるみ)2/4 ◆LBPyCcG946 :2008/02/02(土) 13:35:04.24 ID:WSDpeFFj0
 教室の半分くらいを回った頃、教卓の方から声がした。どうやら1番乗りの生徒は、高橋君の
ようだ。
「先生ー! 先生ー!」
 と飛び跳ねながら言う高橋君。「はーい静かにねー」と呟きながら教卓に戻った。
「できたあああ」
 と絶叫する高橋君。いつの時代にも、こういう子はいるものだ。
「はいはい」と笑って、完成した絵を受け取る。
 そこには、人類共通、いや生物共通ともいえる、日常的に目にしなければならない、また自身
の健康度まで目測できる、そして小学生に大人気の物体が描かれていた。率直に言えば、大きい
ほうの排泄物。つまりうんこ。形の良い巻き糞である。
 私は苦笑いを浮かべながら、高橋君に尋ねた。
「……本当にこれでいいの?」
「うん! でへへ」
 お約束通り、彼の鼻からはキラリと光る物ががたれていた。……まあいいだろう。失敗しても
問題無いから、最初の作品にはうってつけだ。
 まずはスキャナーで、そのお上品な絵をパソコンに取り込んだ。最近のスキャナーはすごい。
絵を上に乗せただけで、即座に認識し、最適にデータ化にする。パソコンのモニターに、高画質
なあれが写る。高橋君を教卓に座らせ、マウスを握らせると、操作の指示をしていった。
「えーと、まずファイルから……」
 理解させるのに苦労したが、なんとか出来た。簡素な操作方法で助かった。
 少しばかりの騒音と共に、ぬいぐるみプリンターが動き始めた。教室から「お〜」という僅か
な歓声があがった。私も年甲斐無く、少しだけ声を漏らしてしまった。
 ピー、という音が鳴って、ぬいぐるみプリンターは作業を終えた。そして中からゴロン、と例
の形がこぼれた。その姿はまるでプリンターが排泄をしたかのようで、思わず笑ってしまった。
そして出てきたそれを高く掲げる高橋君に、子供達は万雷の拍手を送り、大きな声で笑う。
 それにしても良い出来である。平面の絵が元だというのに、きちんと奥行きまであって、それ
でいて高橋君の繊細なタッチを忠実に再現している。文系の私には、その仕組みはさっぱりわか
らないが、技術の進歩というものはすばらしい物だ。
143(お題:ぬいぐるみ)3/4 ◆LBPyCcG946 :2008/02/02(土) 13:35:34.82 ID:WSDpeFFj0
 私は教卓に座り、次の生徒を待った。何はともあれ高橋君のおかげで、他の子達にもやる気が
漲っているようだった。すぐに次の子が絵を持ってくる。女の子らしい、ドレスを着たかわいい
お姫様の絵だった。すぐに印刷に取り掛かる。高橋君の作品よりも少しだけ時間はかかったが、
それでも1分とかからずぬいぐるみが出来上がった。今度のも良い出来栄えだった。女の子はそ
れを抱え、スキップしながら自分の席に戻り、隣に座る友達に自慢を始めた。
 それからは作品達が雪崩れのようにやってきた。子供達が列を作り、今か今かと自分の番を待
つ。かっこいい戦闘機、私が小学生だった頃から大人気の黄色い電気ネズミ。おや、これはもっ
と歴史が長い。2本足で立つ赤いパンツのネズミだ。まあ子供の絵の出来ならば、訴えられる事
も無いだろう。
 ぬいぐるみプリンターはフル稼働だ。途中、布や綿が切れないかと少しだけ心配だったが、残
量を見る限り当分大丈夫そうだ。中で圧縮されているのだろうか。
 4時間目終了のチャイムが鳴った頃、教室の中はぬいぐるみだらけになっていた。それぞれが
それぞれのぬいぐるみを持って遊んでいる。その光景を見て私は、考えを改めさせられた。図工
の授業は、子供が楽しむのが第一なのだと。どんな形であれ、創作の喜びは、何物にも変えられ
ない大事な宝物となる。私は、そう思う。
 ふと教室を見回すと、1人の男の子がまだ絵を描いていた。彼は確か、今岡君だ。時計を見れ
ば、もうすぐ給食の時間。私はその男の子に近づいた。私が机の前に立っても、今岡君は何の反
応も示さない。よっぽど集中しているのだろう。私は今岡君の描いている絵を覗き込んだ。
 今岡君は、人の絵を描いていた。女の人だ。エプロンをかけて、おたまを持っている。私はそ
れを見た瞬間、ふいに胸が熱くなってしまった。今岡君のお母さんは、つい先月……。
 私はこみ上げてくるせつなさを飲み込んで、今岡君に尋ねた。
「まだ描きたかったら、印刷は今度にする?」
 今岡君は首を大きく横に振った。それ以上、声をかける事は出来なかった。私はすごすごと、
教卓の方へと退散した。
144(お題:ぬいぐるみ)4/4 ◆LBPyCcG946 :2008/02/02(土) 13:36:05.54 ID:WSDpeFFj0
 もう間もなく給食当番が教室に戻ってくるという時、ついに今岡君の絵が完成した。大事そう
に私に渡したその絵には、暖かい心がこもっているような気がした。今岡君が震える手でマウス
を握る。たどたどしい操作だったが、慎重に。
 そして[印刷]ボタンをクリックすると、ぬいぐるみプリンターが稼動した。なんとなく、機械
が悲しげに揺れていると感じるのは、きっと私の気のせいだろう。ぬいぐるみプリンターを見つ
める今岡君の瞳は、少しだけ滲んでいる。
 しばらくして、今岡君の描いた絵が、ぬいぐるみになって出てきた。今岡君は、素晴らしい出
来栄えのそれを両手で抱え込むと、私の腰あたりにその小さな体を寄り添わせた。微かに嗚咽が
聞こえる。私から注意するまでもなく、クラスメイト達の中にそれをからかう子は1人もいなか
った。
 さあ、給食の時間だ。


145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 14:01:48.54 ID:jTF6JSwV0
どんくらいで小説仕上げてんの?
マジレスたのむ
146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 14:05:17.13 ID:WSDpeFFj0
>>145
俺の場合は内容と長さによってだな
普通の内容なら4レスくらいで1時間ちょっととか
単純計算で1レス15分くらい。大体これまでの奴もそんな感じ
ちょっと書きなれてない文体使って、仕掛けのある話を書く時はもっとかかるけど
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 14:12:11.41 ID:jTF6JSwV0
>>146
なるほど、そんな感じなんだ
ありがとう、目安が分かったからそのうち書き手として来る
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 14:43:40.55 ID:n1xAGyC60
俺は3レスに一週間くらいかかるな
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:19:12.46 ID:oH6MvAM70
>>73

専用ブラウザーを使うと、自動で改行されて便利だよ。
janeが無料
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:26:08.61 ID:RhGczUChO
>>149
冗談だろ。
なんでそこまでしなきゃならないんだよ、面倒臭い。
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:28:41.75 ID:oH6MvAM70
>>150

そこまでする理由は便利で効率的だからですよ。とても楽でストレスが減ります。
2ch見るのにIEとかで見るのは非効率。
車に例えると、2chの閲覧をIEでやるのは軽自動車で走るような物で、
専用ブラウザを使うのはスポーツカーに乗るような物です。
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:29:22.79 ID:IHZExC2X0
ケータイ小説を目指せとな?
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:35:15.91 ID:RhGczUChO
>>151
基本的に2chは携帯でしか見ない。
車云々言ってるが、近所に買い物に行く時くらいしか車に乗らない人間にスポーツカーが必要か?
ガス代も安くつくし、軽のが良いに決まってるだろ。
まぁ、この例え自体がはっきり言って的を射てないけどな。
大体、何故読む側が読まれる側に気を使う必要があるんだ?
テンプレを読んだ書き方してる作品だけ読むのに、専ブラなんていらない。
読まなきゃいいだけ。
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:48:52.60 ID:h3Sd6VqW0
まぁそもそも専ブラとか言う以前に携帯だしなぁw
つか、むしろ携帯で横にスクロールする事なんてあるのか?w

いやごめん、煽りとかじゃなくてさw
俺も、読む側が気を使う必要は無いと思う方だけど、ちょっとそれだけ気になってw
携帯は携帯で専ブラあるよね。iMona。あれ便利。
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:49:27.89 ID:ibpIdgZi0
読み手が神様だとでも思ってるのかよ
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:51:34.99 ID:RhGczUChO
>>154
>>68を見てパソコンで開いた。
開いただけで閉じたくなるってどんなかなって気になったから。
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:55:17.59 ID:IHZExC2X0
404だったが
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:55:31.35 ID:h3Sd6VqW0
>>156
あぁ、そういうことね、了解了解。
てか>>68って俺じゃんw
あれ、って事はこの流れは元を糺せば俺が原因なのか。まぁいいけどw

>>155
読みたいものを読んでるだけで、神様はないだろw
書き手が偉いとか、読み手が偉いとか、そんな話ではないよ。多分。
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:56:04.41 ID:RhGczUChO
>>155
馬鹿か?
んなこと思ってるなんてどこに書いてある?
読み手には、読む作品に関して取捨選択の権利があるって言ってるだけだ。
書きたければ好きに書けば良い。
俺は読まないってだけ。
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 15:57:30.10 ID:h3Sd6VqW0
>>159
言いたい事はわかるけど少し落ち着けw
何か嫌な事でもあったのか? 俺が相談に乗ってやるよ。



もう出かけるけど。
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:00:43.17 ID:IHZExC2X0
このスレでは上から目線がデフォってレスを思い出し笑い。
俺様台詞がなかなか上手く書けねぇんだ、これが。
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:01:18.78 ID:n1xAGyC60
>>160
とりあえずお題が無くて困っています><
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:01:42.06 ID:RhGczUChO
>>160
ん?別にイラついてないよ?
ただ、こういう書き方がデフォってだけだ。
ムカつくなら遠慮なくNGしてくれていいと思う。
それも権利だしな。
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:02:20.42 ID:IHZExC2X0
>>162
お題くれってことか?
「唯我独尊」
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:02:28.79 ID:TINq91DR0
>>162
銀河の作り方
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:11:30.50 ID:oH6MvAM70
>>163
携帯でこのスレを見るだけって事は、書かないの?
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:14:09.13 ID:l2LK7MIE0
>>159
言いたいことはわかるが許容力が無さ杉。
取捨選択がどうこう言ってるが、自分が読みにくいって理由だけで選んでるのなら良い小説も楽しんで読めないぞ。

お題くれい
168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:15:10.38 ID:zx4Mp3/MO
>>161
俺様台詞なら任せとけ

>>163
あぁいやそれは失敬。
そちらの人格否定みたいになったね。
書きたいように書けばおk
ただまぁ、出来るだけ当たり障りなくってのが俺のスタンスなのさ。
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:15:42.43 ID:2q2m7pxb0
>>167
お代
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:21:01.57 ID:RhGczUChO
>>167
そういう読み方をしてるからこそ、無駄な小説を読まずにすんで時間を無駄にしないこともある。
勿論、そのせいで損をしてる面もあるかもしれないけど、それも俺の権利。
これは考え方の相違だから、別に気に食わなくてもいい。
そういう奴もいるんだ…くらいに考えてくれたらいいよ。
どのみち、直す気ないし。
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:21:01.18 ID:XeZ2pVWi0
横に長いから読まないってのも立派な感想だろうさ
反論者は感想ついてない作品に一言でも言ってから発言すべきだな
あんま説得力ないぞ。
最近スレ見てなかったけど、当たり前に作品スルーされてそうだな。
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:38:17.37 ID:IHZExC2X0
気分が乗ってきたら1レス一杯埋めた感想書く。一時間かけて。
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:42:55.31 ID:MO5+yeiu0
おだいを戴きとうございます
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:44:23.40 ID:N2oUXMj+O
>>173
MK5
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:44:40.60 ID:rOHLy/gG0
>>173
無制限
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:51:31.07 ID:MO5+yeiu0
>>174
>>175
把握

MK5は「マジで恋する5秒前」だっけ?
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 16:54:40.16 ID:N2oUXMj+O
>>176
確かそんな感じ
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 17:16:27.01 ID:N2oUXMj+O
179【品評会】ル・クインセグ 0/5 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/02(土) 17:24:28.91 ID:go3vQw930
品評会作品投下します。
レス数:5
180【品評会】ル・クインセグ 1/5 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/02(土) 17:25:23.29 ID:go3vQw930
「痛ッ!」
 山の麓に広がる草原、花を摘んでいた少年が声を上げた。指から血が流れる。草で切ったのかもしれない。
 少年は魔法を使い小さな傷を治し始めた。流れる血が止まり、傷が消えるのがわかる。けれども、心のモヤは晴れなかった。
妹を喜ばせるため、そう考えてここまで来たが、それは自分を納得させるための言い訳でしかない。
本当は、つらそうな妹の顔を見るのが嫌だった。
 どうしてここにいるんだろう? もっと他にやってあげられることがあるんじゃないだろうか? 
答えの出せない悩みに、少年は花を摘んでいた手を止め、顔を上げた。
 どこからか飛んできた矢が少年の顔をかすめる。背後で何かに刺さった音と、うめき声が響く。
驚いた少年の手から白く小さな花が落ちた。
 何が起こったのかわからず、あっけに取られた少年が振り返る。
そこには、眉間に矢の刺さった巨大な怪鳥が息絶え絶えで震えていた。
 混乱した少年が矢の放たれた方角を向くと、うっそうと茂る草木の間から
女が一人、出てきた。いや、一人ではない。足もとに四足の動物いる、犬だろうか?
 一人と一匹が少年に近づく。女にしては背が高い。肩に弓を掛け、腰の後ろから矢羽がはみ出している。
矢筒があるのだろう。突然、低くしゃがれた男の声が少年の耳に届いた。発したの女ではない。犬だ。
「大丈夫だったか? 何、ぼーっとしてんだよ。危うく喰われるところだったじゃねえか!」
「犬がしゃべった!」
「犬じゃねえ! 狼だ!」
 狼がしゃべることもおかしいと思ったが、そのことについては黙っていた。
「礼はないのか? こいつに襲われそうなところを助けてやっただろ?」
 少年が声を返さないことにいらついたのか、狼は既に事切れた怪鳥の死体を前足で叩きながら、早口で捲くし立てた。
「あ、ありが」
 少年の返事を遮って、女がパンと手を叩く。狼は鼻をクンクンと動かし、辺りを伺いながら言った。
「ち、もう来やがったか。礼はあとでまとめてしてくれ」
「何が来たんです?」
「こいつに群がるハイエナだよ」
 言うが早いか、狼が怪鳥の死体を足掛かりに、勢いよく駆け出した。女が弓に矢を番える。
狼の向かった先の茂みが揺れ、数頭のハイエナが跳び出した。
 女の手から矢が放たれ、先頭を走るハイエナの頭を射る。驚いたハイエナ達は迂回しつつ
近づこうとするが、狼が壁になり牽制した。二頭目、三頭目、矢が突き刺さる。狼がハイエナの喉を噛みちぎった。
181【品評会】ル・クインセグ 2/5 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/02(土) 17:26:19.31 ID:go3vQw930
 彼女たちの計算されたような連携に、ハイエナ達はみるみるうちに数を減らし、残ったものたちも四散した。
 初めは怯えていた少年も、危険が無いことを感じ、その光景を眺め茫然と立っていた。
「はい、いっちょあがり」
 狼が意気揚々と戻ってくる。少し血が出ていたが、全てかすり傷ようだ。
「お礼は? 二度も助けられて礼無しなんてことはねーよな?」
 狼が言った。けれども少年の耳に、その言葉は届かなかい。少年はもっと別のことを考えていた。
「助けてください!」
 目に涙を浮かべた少年が女に抱きつく。女の肩に掛かった弓が何かにぶつかりカランと鳴った。
それども、その女は口を開かず、代わりに狼が言った。
「俺か? 俺はそんなに怖いか?」
 震える少年の様子に少しショックを感じたらしい。前足の跡が他よりも少し強く残っていた。
「俺は狼だけど、肉、喰わないぜ」
 狼は、女に泣き付く少年をなだめように呟く。血の滴る口から発せられたその言葉には、あまり説得力は感じられない。
だだそのとき、少年の頭に浮かんでいるものは狼のことなどではなかった。
「違うんです。助けて欲しいのは妹なんです! 僕はオッド・フラックと言います。妹のイヴェンが……」
 オッドは勢いよく事情を話した。自分にはイヴェンという妹がいること。両親は既に死んでいて、二人きりの家族だということ。
そして今夜、その妹が村の掟で山の魔物への捧げ物にされることを。
「お願いします。イヴェンを助けてください。お礼もします。働いて、どれだけかかってもお金払います」
「良いよ。やってやるよ」
 狼が言った。女もうなずく。予想していなかった軽い返事に、少年は驚きつつ、大声を出す。
「ありがとうございます! あ、怪我治します。僕、少しなら魔法使えるんで」
 少年の手から白い光が溢れ狼の傷を癒す。気持の良さそうな狼はノビをしながら言った。
「俺は、スクエ・マイナ。で、こっちの無口な女が、イクァ・ル」
「スクエさんに、イクァさん……。イクァさんはしゃべれないんですか?」
「いや、しゃべれるけど、しゃべらない。一週間に一回ぐらい話せれば良い方かな? それと呼び捨てで良いぞ。
まったく、困っちゃうよ。相棒が無口だから、引っ込み思案の俺が頑張ってしゃべらなきゃならない」
 引っ込み思案なんて嘘だろう、元からお喋りに違いないと思っていたが、もちろん口には出さなかった。
 少年の考えていることがわかったのか、イクァが微笑んだ。無口なことには理由があって、元は明るい性格なのかもしれない。
「うちに案内します。着いてきてください」
182【品評会】ル・クインセグ 3/5 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/02(土) 17:27:01.43 ID:go3vQw930
 暗い山道の中、白装束を着た少女が老人に手を引かれゆっくりと歩いていた。
少女の名前はイヴェン・フラック。村の掟で今晩、魔物に捧げられることになっていた。
「もうすぐ着く」
 手を引く老人、イヴェン達の住むアルジェ村の村長が冷たく言う。
 イヴェンは不安だった。兄たちはちゃんと着いて来てくれているだろうか? これから何が起きるのか?
 さっきまではまったく怖くなかった。仕方がないことだと諦めていたから。でも、今は違う。
兄が連れてきた人たちが、自分を助けてくれると言った。希望があるからこそ、不安を感じている。
「着いたぞ」
 そこは大きな沼だった。この中に魔物がいるのだろうか? そうイヴェンが考えていると、
向こうから男が三人やってきた。三人の内の一人は普通の人間ではない背丈は二メートルほどの人狼だった。
「こいつが、今回の商品か」
 狼男が言った。今、聞いた言葉の意味が理解できないイヴェンは、村長に問いかける。
「商品って何のことですか? 村の掟は? 魔物はどこなんです?」
「いないよ。これから君は、この人たちに連れられて、どこかの金持ちのところへ売られて行く、それが掟だ」
 何をいまさらとでも言いたげな口調で村長が言った。男たちは、いやらしい笑い声をあげる。
「ふざけるな」
 茂みの影に隠れていたらしいオッドが飛び出してきた。スクエが前足を顔に当て、まだ早いと呟いた、オッドを追う。
イクァは落ち着いて矢を放った。一人倒れる。
「イヴェンがどれだけ悩んだと思ってるんだ!」
 オッドは泣きながら村長を殴った。当たりこそしたが、大人と子供、村長の反撃にオッドが怯む。
追いついたスクエは、オッドを殴る村長の腕に噛みついた。村長の耳障りな叫び声が響く。
 人狼の男が仲間に耳打ちをし、仲間は逃げだした。イクァが矢を撃つが、走る男には届かず、地面に刺さる。
「何なんだ、お前たち? お前らも売られたいのか?」
 下卑た笑い声とともに、狼男が言う。背中から大きな斧を取りだし、右手に構えた。
 イクァは黙って男を見る。口を開く気配は無い。
 返事を返さないイクァに怒ったのか、狼男は斧を地面に叩きつけた。土が粉々になって舞い上がる。男は言った。
「なんとか言いいやがれ! このアマ!」
 言葉を返さず、矢を放つ、イクァ。狼男は巨体に似合わない俊敏な反応でなんとか避けた。
「なめたことしてんじゃねえぞ!」
 狼男が詰め寄る。イクァは、足元を狙い、突進を止め、距離を保つ。
183【品評会】ル・クインセグ 4/5 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/02(土) 17:27:43.14 ID:go3vQw930
「助けなくって良いの?」
 イヴェンが、気絶した村長の上に乗るスクエに尋ねる。オッドは心配そうに、戦いを見ていた。
「ん? まあ、大丈夫だろ、あの程度の奴なら。狼男とか中途半端なんだよ、どっちかにしとけっての」
 スクエが、ちらりと人狼の男を見て笑う。心配そうなイヴェンを尻目にスクエは、村長を踏んで遊んでいた。
 弓に矢を番うイクァの元へ、狼男はまっすぐに突っ込んで行った。
 あの矢を撃てば、イクァの勝ちだと、イヴェンは思う。オッドも同じ気持ちのようだ。
だが、その通りにはいかなかった。狼男が空いた左手から火球を放つ。イクァは避けこそしたが、矢を落としてしまった。
「俺が魔法使うなんて思ってなかったか? 俺はジオメルの国の魔法兵団出身なんだよ!」
 イクァが右手を腰の後ろに回す。新しい矢を取ろうとしているのだろう。
「おせぇー!」
 男がイクァの前で、斧を振り上げた。もうダメだ! そう思ったイヴェンは目を閉じた。
直後に誰かの倒れる音がし、辺りは静まり返る。静寂を破るようにスクエの声が聞こえた。
「殺してないよ。二人とも、目、開けろって」
 死んでないではなく、殺してない。その言葉を不思議に思ったイヴェンがおそるおそる目を開けると、
イクァが馬乗りになって狼男を抑えつけていた。膝で手を抑え、左手の弓は首元、右手には短剣が握られ、
狼男の長く伸びた口の上、目に映るように構える。狼男はうめき声をあげることさえ苦しそうだった。
「どうなったの?」
 オッドがスクエに聞いた。イヴェンもスクエの方を向く。スクエが楽しそうにしゃべりだした。
「あいつが、近づいて来たとき、イクァは矢を取ろうとしたんじゃなくて、短剣を抜いたんだよ。矢筒の影に掛かってる鞘からさ。
んで、あいつの鼻先をかすめる。そうすると、アイツは首を引いて体重を後ろにかけるから、弓を首に当て、押し倒しておしまい。
馬鹿だねー。相手が弓使いだから近づけば勝てるとでも思ったんだろうけど、そんな子供でもわかるわかるような弱点を
そのままにするはずないっての。これだから狼男は、人や狼より知能が低いって馬鹿にされんだよ」
 高笑いするスクエ。そんなスクエの近くにどこからか火弾が落ちる。うめきながら狼男が言った。
「残念だったな。仲間が来たよう……だ」
 イクァが狼男の首を絞め、落とす。新たに現れた男たちは、仲間の上に乗るイクァではなく、
スクエと子供たちの方へ、魔法を撃った。無数の炎と雷が子供たちを襲う。逃げられない、イヴェンは思った。
 突然、スクエが跳び出し、魔法を受けた。炎がスクエを包み込む。オッドが叫んだ。
「スクエー!」
184【品評会】ル・クインセグ 5/5 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/02(土) 17:28:26.60 ID:go3vQw930
「何?」
 スクエが答える。平然と、まるで何もなかったかのように。体の周りを覆っていた炎も消えてしまった。
「言ってなかったっけ? 俺の主食は魔法だってさ」
 満足そうにスクエが言った。魔法を放った男たちは、状況を飲みこめないようだった。
「あー、ゲップでそう」
 スクエが男たちの方を向いて大きく吠えた。空気が震える。向こうでイクァが弓を構えたのが見えた。
「避けようとしても、無駄だから。今の咆哮に、あんたらの魔法を半分ほど載せといた。
体、熱くない? 足、痺れて動けないでしょ。じゃあね」
 必死で足を動かそうとする男たちにスクエが笑いながら言う。イクァが次々に矢を撃ち始めた。

 男たちと村長を縛り終え、オッドがイクァとスクエに聞いた。
「お礼はいくら払えば良いですか? 今は無いけど……絶対に払います!」
「いらないよ」
 イクァが答えた。いままで、一言も話さなかったイクァがしゃべった。
「そうだな、今は特に金に困ってるわけでもねえし」
 スクエは、突然、話だしたイクァにも慣れている様子で、動じず補足した。
「いつか、どこかで、困っている人を助けてくれれば、それで良い」
 イクァは、その言葉を最後にまた口を紡ぐ。そんな様子に固まっていたオッドとイヴェンに、スクエが笑いながら言った。
「あんまり、本気で気にするなよ。こいつの言葉には言霊ってのが憑いてて、マジになりやすいからな」
 言霊? イヴェンは自分の中に芽生えた不思議な気持ちはそのせいだろうかと思った。
イヴェンがオッドを見ると、オッドも同じようなことを考えている気がした。
「さあて、帰るか。お礼はいらないとは言ったが、一晩ぐらいは泊めてくれよな。
疲れちまったよ。久し振りの重労働で、なあ? イクァ」
 スクエの問いにイクァは無言で頷く。顔はやさしく笑っていた。

 あるところに、困っている人を助けることを目的に旅するコンビがいた。
 一人が弓の名手、もう一方は魔法の達人だという。
 少ない報酬で依頼をこなす彼女たちに、助けられた人たちが良く聞いていたらしい。
「なぜ、こんなに良くしてくれるのか? 何かの掟か? 戒めがあるのか?」
 聞かれる度にその兄妹は、笑って答えたという『約束だから』と……    <了>
185品評会】ル・クインセグ 6/5 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/02(土) 17:29:02.33 ID:go3vQw930
これでおしまいです。
ファンタジーを書きたかったんだが、うまくできなかったw
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 17:35:29.33 ID:9PnsnFnT0
少し出かけるのでその間に話を考えるためにお題くださいまし↓
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 17:36:58.61 ID:TINq91DR0
>>186
りんご飴が恐い
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 17:40:30.63 ID:XeZ2pVWi0
>>180-184
まとめ済み
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 17:43:41.34 ID:rOHLy/gG0
>>141
3行目で読むのをやめた。ぬいぐるみプリンタ、という機械の話。
ぬいぐるみをつくれるプリンター、という発想は、面白いと言えなくもない。けれど、物語としては
それが動くだけで精一杯で、そのまま終わってしまっている。母親を亡くした子が母親の
ぬいぐるみをつくる。一見、いい話っぽく仕立てようとしているのはわかるけれど、あまりにも
作り物めいた感情の動きには共感する事が出来なかった。

内容的にはとても違和感を感じる所が多かった。1行目〜3行目、まず、「20年前と変わらない
図工の授業のスケジュール」というものが想像出来ない。たまたま同じだった、という事が
言いたかったのかも知れないけれど、この書き方だと何かの必然があってそのスケジュールに
なっているように読める。最後まで読んでいっても図工の授業がこの時間になっている理由は
説明されていないので意味がわからない。おそらく、「給食の時間までおしてお母さんの
ぬいぐるみを仕上げる子供」というドラマをつくるためスケジューリングなのだとは思うけれど、
それは書き手にとっての必然なだけで、読み手にとっては必然とは思えない。もっと自然なやり方が
あるはず。「新しく導入された機械の説明書に……」に関して言えば、読み手はその機械がどこに導入
されたのかわかっていないので、違和感を持つ。13〜21行目。マニュアルを教室で授業中に読む、
授業で使うまでその機械を使ったことがない、という教師はまずあり得ない。同様に、普通であれば
糞とかつくるのは絵を描いてる段階でやめさせるのが通常だろうし。違和感を感じて引っかかる
所はとても多かった。
 ぬいぐるみプリンタ、という物の説明とデモで物語の大半が終わってしまっている。この
物語の問題点はそこにあるとおもう。現実には無い物だから、説明しないと、という気持ちに
書き手がなるのはわかるけれど、100行ない物語の中で、半分以上がプリンタの説明や
デモに費やされているのは冗長に過ぎるのじゃないだろうか。
 最終的にこの物語で何を読み手に伝えたかったのか、がさっぱりぼやけてしまっている。
新しい機械に戸惑う教師なのか、子供の無邪気さなのか、母を失った子供の想い、なのか。
このあたりが全部どうでもいいような配分で組み合わされているので、読んでも感情が動か
されるという事はなかった。アイデアは悪くはないと思うけれど、何を読み手に伝えたいか、
ということをもっと考えていかないと、文章が並んでいるだけになってしまう。短い時間で書こうが、
長い時間をかけて書こうが、読み手には関係がない。単に「面白い」「つまらない」と感じるだけだ。
その見方でいけば、とてもつまらなかった。
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 17:44:20.25 ID:N2oUXMj+O
まとめ乙です
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 17:48:32.23 ID:+7qiE+Lt0
>>189
誉める点は一つもない駄作ってことだな
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:04:40.95 ID:i1rtN4dkP
>>189
>3行目で読むのをやめた。
 嘘 を つ く な
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:05:25.08 ID:MO5+yeiu0
>>192
それは比喩だろ……
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:08:08.59 ID:i1rtN4dkP
>>193
突っ込み待ちの冗談かとオモタよ…
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:08:16.14 ID:QMlHUbGO0
>>141
惜しい。オチへの持っていき方はもう少し捻ったらもっと面白くなったと思う。
ぬいぐるみを作るプリンターっていう発想がすごく良かった分だけ残念。
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:09:03.36 ID:7xcgxuTa0
アイディアは誉めてるんじゃないかな。
そのアイディアをより活き活きと伝える工夫がされてないというだけで。

>3行目で読むのをやめた。
なんてのは、それを象徴した言葉だろうし。
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:11:31.59 ID:jl9c47j/0
アイディアは悪くないって、それは世辞だろ?
文章はよみやすいですの類
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:11:40.59 ID:7xcgxuTa0
よく分かった。算用数字が使われてる文章は引用符>つけないほうがいいんだな・・・余計なレス安価になっちまった
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:15:05.53 ID:p8C52J5N0
2ちゃんねらー死ねよゴミども^^
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:18:31.60 ID:OKZZIaCy0
たとえば「28行目で読むのをやめた」とかだったら批評も笑いに替えられたかも分からんね。
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:30:15.24 ID:a27tQtHtO

>>198
半角すぺえす あけたらどう
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:34:17.38 ID:TINq91DR0
品評会書いてみたけど、
改行の都合でレスの切れ目と段落の切れ目が一致しそうにないし、
70文字だと5レスで収まるけど、50~60だと6レスになっちゃう
描写を削ろうにも、今回はわりと描写を必要最小限に抑えたつもりだから、どう削ればいいか分からない
どうすればいいかな
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:37:57.70 ID:Kkkab/q00
無理やり変換したり、主語削ったり、接続詞を最小限にしたり
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:43:15.19 ID:7xcgxuTa0
>>201
>2 0 1 こ う で す か ? 分 か り ま せ ん > <
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:43:59.09 ID:TINq91DR0
>>203
ありがとう
そういう発想はなかったわ
試してくる
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:48:38.78 ID:i1rtN4dkP
> レスの切れ目と段落の切れ目が一致しそうにないし、
これは気にしないでいいんでない?
あとは会話の後の動作を改行せずに書くとかかね
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 18:49:11.53 ID:/K9eCOnl0
有名どころの話を解説してある本とかサイトってないかな?
読むほうの文才ないもんだから、どこがすばらしいのか分からない作品もちらほらあって…
「ここの伏線の張り方がうまい」「ここは〜の部分と関係していて〜」「ここの心情が〜」 とか
末尾に他の人の解説というかあとがきがついてる本もあるけど、それだけじゃ分からなくて

208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:06:01.76 ID:i1rtN4dkP
解説とは違うけど
芥川賞全集だったかな? そんなの読んだら選評が沢山ついてて面白かった
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:08:19.29 ID:i1rtN4dkP
全集じゃないな… 候補作が沢山載ってるやつ
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:26:53.81 ID:a27tQtHtO
>>204
わかれ
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:36:00.79 ID:a27tQtHtO
保守る
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:37:52.48 ID:oH6MvAM70
>>189

よう大天使長クラス。
あんたは3行目までにつかみを一つ用意しろって言いたいんだな。
エノク語が少し解りかけてきたぜw
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:39:25.11 ID:6P71Q6SH0
品評会作品少ないな
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:43:53.42 ID:go3vQw930
そのうちどっと来るだろ
昨日までに完成してた人も結構するみたいだし
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:44:41.25 ID:n3oFAlmm0
じゃあぼくがいまからかんがえるからまってて!
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:44:52.47 ID:a27tQtHtO
二個できてるよ。なんだかんだで二十はくると思う
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:46:45.25 ID:bqML8OdR0
今北なんだけど、お題頂けませんか
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:47:12.07 ID:6P71Q6SH0
そか。じゃあ今から全館の準備でもしとくかな。
後で一気に書こうとするから辛いんだよな
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:48:08.83 ID:jO8qpuIX0
>>217
花畑
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:48:17.95 ID:7PQHvOM10
>>217
気合い
221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:49:53.68 ID:bqML8OdR0
>>219>>220
把握
こういう場合って両方をテーマにするべきなの?
それとも二つ書くべきか
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:51:10.02 ID:jO8qpuIX0
どっちか選んで一つでもいいよ
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:51:29.54 ID:C+1t0MA60
規制解除きたよオトサーン
記念にお題
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:51:32.35 ID:h1jpTwVdO
>>207
批評って知ってる?
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:51:42.96 ID:bqML8OdR0
>>222
なるほど。了解です
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:55:01.23 ID:7PQHvOM10
>>221
良くある質問なわけだが、
もらったお題の全てを書こうが書くまいが自由だよ。決まりはない。
無かったことにしてもいい。そこらに転がってるお題を使ってもいい。
第一、お題もらったら全部書かなきゃならないルールだったら、
オレはこのスレからつまみ出されてるぜ。
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:55:33.29 ID:7PQHvOM10
>>223
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:56:11.05 ID:C+1t0MA60
>>227
把握
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:56:27.28 ID:Kkkab/q00
>>223
ジョンバール分岐点
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 19:57:35.85 ID:n3oFAlmm0
お前達は今までに貰ったお題の数を覚えているのか?
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:01:26.94 ID:IIEMykJoO
>>230
2つ。
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:10:31.26 ID:7PQHvOM10
ジョンバール分岐点ってなんだろと思ってぐぐった。ウィキペディアが一番目にヒットした。

『Q.E.D. 証明終了』(きゅーいーでぃー しょうめいしゅうりょう)は加藤元浩による少年漫画作品で、
マガジンGREAT(講談社)に連載されている推理漫画。
(中略)
ジョンバール分岐点 (第22話 『銀河の片隅にて』)
歴史的に重要な場面に干渉したとき、別の歴史が生まれるという理論を説明する際に使われるSF用語。
ジョンバール分岐点とは、その別世界が生まれる分岐となる瞬間である。
関連項目として、タイムパラドックスや平行世界などがある。


科学の言葉ではなくて、誰かが作った造語っぽいね。
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:14:06.65 ID:Yj46ZGfe0
じゃあ俺もお題お願いします。
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:15:54.99 ID:7PQHvOM10
>>233
三角合併
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:30:31.66 ID:+BkhE0jY0
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:36:22.65 ID:/eU1QCBu0
test
書き込めたならお題くれ
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:36:53.83 ID:TINq91DR0
>>236
新品のスニーカー
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 20:41:53.52 ID:/eU1QCBu0
>>237
把握
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 21:03:14.50 ID:WSDpeFFj0
>>189,195
批評あざーすww
240【品評会】神のいない世界で 0/2 ◆eYCc7/VuC2 :2008/02/02(土) 21:10:14.18 ID:Xtfwhd5B0
品評会作品投下します。
241【品評会】神のいない世界で 1/2 ◆eYCc7/VuC2 :2008/02/02(土) 21:11:24.71 ID:Xtfwhd5B0
 神がこの世界を見捨てたのは、数十年前のことだった。
 神の祝福を失った人間は、魔物に対し抵抗と言える抵抗もできなくなった。
 世界は魔王が支配する、いささか人間には住みにくいながらもそれなりに秩序ある世界となった。
 そんな話を酔客が語っているのを、離れたカウンター席で聞く男が居た。
 黒い髪に黒い瞳。長身の男であった。黒いローブを羽織ったその姿は、伝承にある死神とよく似ていた。
 男は酔客の話に特に興味を示す様子も無かった。この世界の歴史である。知らぬもののほうが少ない程だ。
「1年ぶりかな」
 酒とグラスをカウンターにおいて、宿の主人が男に声をかけた。
 人間だけでなく魔物ともうまく付き合うたくましい主人は、彼と古い付き合いだった。
「あぁ。漸く、なんとかなりそうなんだ」
「そうか……。あんたがこんなことをするなんて昔は信じられなかったが、今なら信じられる。あいつを、よろしく頼む」
「あぁ」
 主人の注いだ酒を男は一気にあおった。喉の奥を熱い液体が流れていくのを心地よく感じる。
 酔客の話は、魔王と神の祝福を失った勇者との最後の戦いにさしかかっていた。

 深夜、男は宿を出た。街道とは逆の方角にある山に入る。
 月の放つわずかな光の中であっても、男の歩みに迷いはない。男は既に幾度もこの地を訪れていた。
 獣道のような隘路を半刻程歩いた先に、開けた場所があった。
 男は更に足を進める。周囲より少し盛り上がった場所に、一振りの剣が刺さっていた。シンプルな飾り気のない剣である。どれだけ放置されて
いたのか、刀身は錆びきっていた。
 それは墓標であった。土の下に眠るのは、男が求めてやまない相手だ。
「長かった」
 男が呟く。
 暗がりの中で、その目は不自然に光っている。
 男は剣の周囲に幾つかのナイフや像、金貨といったものを置いていく。見るものが見れば、それらがどれも一つの国を丸ごと吹き飛ばせるほど
の力を持ったものであることがわかるだろう。
「これで漸く君を取り戻すことができる」
 男はそこにはいない相手に語りかける。その一方で、丁寧に作業を進めていく。
「約束は破られるために存在する。言葉にすることで約束は確かな形を持つが、同時に破られるという運命を背負う」
 男が行おうとしているのは、今や失われた魔術である。誰もが求めて止まない、しかし叶うことが許されない願い。それを叶える魔術。
242【品評会】シュガープラント・ルールズ 0/5 ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 21:12:04.95 ID:TINq91DR0
品評会投下、していいのかな
243【品評会】神のいない世界で 2/2 ◆eYCc7/VuC2 :2008/02/02(土) 21:13:29.20 ID:Xtfwhd5B0
「君は言った。自分は死なない、必ず戻ってくる、と。だから私は、信じてそれを待った。だが君は死んだ。戻ってこなかった。君は約束を破っ
 た」
 男には今でもつい先刻のことのように思い出せた。自分に向けられた最後の表情。全身血塗れで、白い顔で。それでも強い意志が宿っていた。
 男は体に力をこめる。ここ数十年出したことのないほどの魔力。それを纏め上げ、魔術を作り上げる。
「人との出会いなど些細なことだ。長い間生きていれば、同じ様な出会いは幾らでもある。それでも私が君に執着する理由を君はわかっていたの
 かな」
 魔術が始まった。失敗するかもしれないなど、男は一片も疑いはしない。それだけの準備を男はしていた。
「私には力がある。そのことにこれ程感謝したことはないよ。君に出会えたことも含めて、私は幸せ者だ。神に、感謝せねばな」
 男はクツクツと笑った。既に神と呼ばれる存在はこの世界にはいない。そのことをどれだけ呪ったことだろう。だが、今こうしているのは間違
いなく神のおかげだと男は思う。
 空間が震えはじめる。世界が起こるべきでないことを拒んでいるのだ。男はそれを魔力で押さえつける。世界の定めに隙間を作り、無理やりこ
じ開ける。
 魔術の名前は死者蘇生。神の奇跡とされる業。神が去るまでは容易に行われ、今となっては試みることでさえ禁じられた行為である。
「君は約束を破った。だから私は世界を壊す。死を覆らないものとした世界を壊す。……さぁ、目覚めの時間だ。私の愛しい人」
 激しい音がしていた。耳に聞こえない、魂に直接響いてくる音である。魔力も持たぬ人間がこの場に居れば、即座に発狂しているだろう。しか
し、男は静かにそれを受け止める。
 地面に置いた力を持つナイフや像が砕け散っていく。その度に歯車が回るような感覚が世界を駆け抜ける。
 永遠か。それとも一瞬か。男にも判然とはわからなかった。
 突然、世界は元の平穏を取り戻した。先程までの異常などはじめから無かったように。
 そして彼の目の前には、先程までとは違うものがあった。
 土に突き刺さった剣は消え、一人の少女が横たわっている。
 男はゆっくりと少女に近寄り、その体に手をあてた。
 暖かく、柔らかかった。生きている者のみが持てる感触だと男は思った。
 男は少女の肩にそっと手を当て、ゆする。
 少女の目蓋がゆっくりと開き、男の記憶通りの青い瞳が彼の顔を映した。
「魔王。どうしたんだ。ひどい顔だ」
「ふふ。君があまりにも寝ぼすけなものだから、たたき起こすのに苦労したんだよ……勇者様」
 神の業を行ったのだ。去った神が異変に気付いて戻ってくることも考えられる。そうすれば、二人はまた幾度も戦うことになるかもしれない。
 それでも構わないと、魔王は思った。
 魔王が居て、勇者が居る。それこそが彼が望む世界のルールであるのだから。 (完)
244【品評会】シュガープラント・ルールズ 1/5 ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 21:14:41.56 ID:TINq91DR0
 せめて自分のルールくらいは、自分で決めたい。こんな頼りないわたしでも、自分でものごとを判断し、意味を見いだし、行動する権利は与えられて
いるはず。十三歳ごろから、なんとなくそう思っていた。
 けれど実のところ、わたしの単純な頭ではそんな大それたことはできなかった。気がついたら、毎日私は誰かが定めた通りの規則に沿って生きてい
た。
 そんな風に四年間が過ぎ、いつしかその願望と諦観は膨らんでいた。
 それと同調するように、男の子と間違えられるくらいに短かった髪を同期生で一番長く伸ばすようになり、痩せっぽっちだった体も並みくらいに丸み
を増した。背は女としてはいくぶん高いけれど、それでも男子の真ん中あたりと同等だ。なんの取り柄もなかったわたしは、「女の子らしさ」という武
器を手にしたらしかった。先生も同級生も「女の子らしい」女の子というのは好きなものだ、ということにも自然と気づいた。
 なんて役立たずな武器なんだろう。こんなもので、わたしの悩みが解決されるべくもない。自分が占める空間の増加分だけ、包容力や忍耐力が増した
訳でもないし。
 せっかく手にしたものが役に立たないというのは、いらだちを増幅させるばかりだった。
「……という訳でだな、日本ブラジル間の移民の歴史の始まりは、えー、このように農村の貧困の打開、新天地への夢と希望という政府の謳い文句の裏
に、黄禍論に代表される人種差別のような、暗い側面も持っていてだな、えー、栽培するのはサトウキビでも、現実は砂糖のように甘くはないという訳
でだな……」
 こんな授業になんの意味があるんだろう。日系人について学んだって、自分の望み通りの生き方なんてできるはずがない。
 ただ話を聞くだけだというのに、ものすごく気だるく、疲れを感じる。窓の外に目をやっても、だだっ広いだけの校庭と、桜の古木しか見えるものは
なく、風景に刺激がまったくない。だから、体がゆっくりと眠気に包まれる。
 眠気自体は悪くはない。
 目を閉じると、柔らかく甘い微睡みがどこか違う場所へ誘なってくれる。そこにはなにもない。光も影もなく、わたし自身の輪郭も認識もどこにもな
い。休日の夜の砂糖工場の静けさ。
 ただ、目を覚ましたとき、たちどころに自己嫌悪に襲われてしまう。結局惰性で眠りに逃げ込み、アンニュイな悦びをむさぼるような、情けない人間
だ。
 目を覚ましたとき、たいてい真っ先に思い浮かぶのが双子の弟の友哉だ。わたしと顔立ちや背格好は近いのに、髪型と性格はまるで違う、あの極楽ト
ンボ。あいつの憎たらしい笑顔が、わたしをバカにしてくるように思えた。毎度のことながら、最低の目覚めだ。

 夕食のあと、友哉の部屋でゲームをした。ゲーム好きな野球部員の例に違わず、友哉もパワプロが好きなので、ゲームと言えば自然とパワプロにな
る。ふだんほとんど勝てないわたしだけれど、今回は冴えていて、二試合続けて勝ってしまった。そのころには二人ともすっかり飽きてしまい、コント
ローラーを投げ出してぶっ倒れた。友哉は「あーあ」と声に出しながら両腕を挙げて横になり、わたしはため息をつきながら腕を横に出して友哉に続
く。
「いって、なにすんだよ」
245【品評会】シュガープラント・ルールズ 2/5 ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 21:15:21.67 ID:TINq91DR0
 さすがに腕がバチンと当たったら怒るか。こんな細い腕でも。
 そのまま呆然と天井を見上げているうちに、ふと友哉に話してみようかと思った。わたしが抱えている悩みに対して、このくそ生意気なガキンチョが
どう反応するかという、純粋な好奇心。どうせ「ワケわからん」と一蹴されるんだろうけれど。
「ねぇ、友哉」
「ん、なんだよ。つかいいかげん腕どかせ」
「友哉は、自分で自分のルールを決めて、好きなように生きたいって、思ったことある?」
 友哉の要求を無視して、そのまま本題に入る。友哉の顔がこちらを向く。少しキョトンとしていたが、やがてこともなげに答えた。
「あるよ」
「うそ」
 意外な解答に驚く。
「つかむしろ、友恵はそう思ったことあんの?」
「ある」
「うっそだー」
 今度は友哉の驚く番らしかった。さんざん人のことをネクラ扱いしておきながら、こうなのだ。人の気も知らないで。
 そのままわたしは話を続けた。自分の生き方への不安や嫌悪感、学校生活の退屈さ、そういった話題に友哉は黙ったまま耳をかたむけ、時折うなずい
て見せた。わたしが話し終わると、友哉はため息まじりにこう言った。
「……やっぱり俺たち、双子だけあって、似たもんどうしだな」
 両手を床について身を起こすと、友哉はわたしに右手を差し出した。友哉に引っ張られて、わたしも立ち上がる。
「散歩、いかね?」
 いささか唐突な誘いではあった。けれど、まんざらでもない。なんとなく気分が変わりそうだった。
「いいよ」
 そう返すと、友哉はほんの少し微笑んだ。

「えー、友哉タバコ吸うんだ」
 十七年間生活を共にして初めて知る事実に、思わず大声を出してしまった。
「知らなかっただろ。散歩してくるって言ってた時、あれって、だいたいタバコ買いにいったり吸いにいったりだよ」
「うへぇ。高野連がなんというか」
「いいんだよ。俺ルール的には、タバコは問題なし」
 友哉がフーッと煙を吐き出すと、煙はたちまち冬の風に流され、夜闇にまぎれた。雪でも降りそうな、寒い曇りの夜だ。無人の公園はうら寂しく、わ
たし達の声と、風で木の枝がこすれる以外の音はほとんどしなかった。
246【品評会】シュガープラント・ルールズ 3/5 ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 21:15:54.54 ID:TINq91DR0
「友恵も一本どう? 気持ちが楽になると思うけど」
「わ、わたしは、いいよ」
「いいからいいから。きょうだいだろ、俺たち」
 強引に押し付けられるような形で一本渡される。仕方なく口にくわえると、友哉が火をつけてくれた。
「……なんか最近、野球を続けてるのがヤになってきたんだよな。オヤジが野球少年で息子にも野球をやって欲しいってだけで続けてても、楽しくねー
し。レギュラーも獲れないまま中途半端にやって、なんか意味あんのかな。正直言って、よく分かんね。なんか自由じゃないんだよ、今の俺は」
 どうやら友哉は友哉で、わたしの知らないところで同じもやもやを抱えながら、それを押し殺して、人の期待通りに振る舞っていたようだ。
「俺もやっぱり、もっと思い切った生き方がしてみたいって、ずっと思ってたんだ。人に言われた通りに生きて、気がついたら自分で自分のことを考え
て行動できなくなったらどうしようって、不安でさ」
「ゴホッ、ゴホッ」
 生まれて初めてのタバコと、友哉には不似合いなセリフのせいで、むせてしまった。
「ちょっと、だいじょうぶか、友恵」
「うっ、うん。……恥ずかしいセリフ禁止」
「悪かったな、俺はいたってマジで言ってるんだけど」
 それっきり、二人とも黙り込んでしまった。どうもわたしはタバコと相性が悪いらしいという事実ばかりが頭を支配する。
 やがて、友哉が再び口を開いた。
「友恵って、鎌田先輩とうまくいってないの?」
「な、なに、いきなり」
 いきなり鎌田さんの話を振られてひるむ。鎌田浩一さんは、友哉の野球部での先輩であり、わたしの交際相手でもある。
「ほら、鎌田先輩ってすっげぇ独占欲とか支配欲とか強いじゃん。それで、友恵が『自分のルールは自分で』なんてこと考えてるのを押し殺して、むり
に従順に振る舞ってるのかな、とか。そのせいで恋仲がうまくいってなくて、突然そんな相談を俺にしてきたんだって」
 確かに、カップルとしてはあまりうまくいっていないと思う。一緒にいて楽しくないということはないけれど、特別好意を持っている訳でもない。そ
もそもの始まりが友哉の仲介で鎌田先輩の方から告白され、断る理由もないからなんとなく付き合い始めたというだけのことだから、当然だろう。
「鎌田先輩ってあんな人だけど、友恵さ、もっとワガママ言ってもいいと思うんだよなー。ただでさえ大人しそうなのにハイハイ従ってるだけじゃ、ナ
メられるっつーか、なんつーか……。それにほら、ギャップ萌えっつーの? 大人しそうに見えて意外と芯がある、っつーのもいいんじゃねーの。それ
こそ、『自分のルールを自分で』って奴。友恵ネクラだけど、顔はけっこうきれいだし、もっと自分を出しても許してもらえるはずだよ」
 あまりにも大真面目な顔で友哉らしくもないフォローをしてくるので、思わず吹き出してしまった。それを受けて友哉がばつの悪そうな表情をしたの
がまたおかしくて、本格的に笑い出す。
「友哉って、やっぱりバカだよね」
「るせーな」
247【品評会】シュガープラント・ルールズ 4/5 ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 21:16:34.62 ID:TINq91DR0
「そんなのぜんぜん考えてなかったよ。それにわたし鎌田さんが好きって訳でもないし、ふつうに友達感覚だよ」
「あ、え、へー、そうなんだ」
 さっきの友哉の言葉と表情が脳裏をよぎる。そこに、今のうろたえぶりがくわわって、ツボに入ってしまう。
「ハハハ、ほんとに変な奴だよねぇ、友哉って。さっきから変なこと言ってばっかり」
「悪かったな、変な奴で」
「うん、ほんっとに変。だいたいあんたがわたしのことなんかほめるはずがないもん」
 十秒ばかり一人で笑って大爆笑していたが、友哉の様子に目がいって、笑うのをやめた。
 友哉は下を向いて、吸い終わったタバコの吸い殻をつま先でいじっていた。たぶんこの瞬間、とても暗い顔をしているのだろう。そんな気配がした。
「ほんとに、そう思う?」
 低い声で、呟くように友哉が問いかけてきた。
「友哉?」
「ほんとに、俺が友恵のことをなんとも思ってないと思う?」
「だって、わたしたち双子だし、顔も似てるから……。相手の顔をほめるのって、自分の顔をほめるのと同じようなことじゃない」
 友哉の言葉の真意を量りかねて、ためらいながらそう答える。
「……そんなことねーよ。自分の顔はそれなりに好きだよ。でもそれってやっぱり、俺が友恵に似てるから」
「違うよ。それは友哉がわたしを鏡として見てるってだけだよ。友哉がわたしの顔を通して、自分の外見に酔ってるだけ」
「違わねーよ! ……だって俺、辛かったもん。先輩と友恵を紹介するとき、どうしてこんなことしてるんだろうって思った。どうして友恵を人にやら
なくちゃいけないんだろう。どうして俺はなにかをこんなに必死に我慢してるんだろう。どうして」
「やめて」
 それ以上、友哉の言葉を聞く気はなかった。実のきょうだいが言うべきことではないこと、思っていたらまずいこと。そんなことばっかりが、友哉の
口から溢れてきそうな気がした。けれど、友哉はおかまいなしだった。
「なのに、好きでもねー相手と付き合ってるなんて、なんだよそれ。あの時のあれはなんだったんだよ。俺はずっと一人でバカみたいに踊らされてただ
けじゃん。そんなのありかよ! 俺だって変な決まりとかなかったら、ちゃんと自分の想いを伝えたいよ。俺だって……。俺だって、友恵のこと」
 パシーン。
 ほとんど無意識の動きだったのに、思ったよりも大きな音が響いた。外の寒さで肌が張っているせいもあるのだろう。口を開いたまま友哉はしばらく
動きを止め、それからはたかれた頬を手で押さえた。
「……あ、ごめん。そんなに強くやろうとした訳じゃ……」
 わたしの弁解に、友哉はなんの反応も示さなかった。それからの何秒かは時が止まってしまったかと思うくらい長く、気まずかった。
「……やっぱり、きょうだいでそういうのって、まずいと思うんだ。お父さんやお母さんにもし気づかれたら、いい顔しないだろうし……。でも、友哉
が嫌いだとか、そういうことじゃ、全然ないよ。ただ、友哉は双子の弟でしかなくて、それ以外の見方は、ちょっとできないよ」
248【品評会】シュガープラント・ルールズ 5/5 ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 21:17:11.96 ID:TINq91DR0
 そう言いながら、わたしは友哉がすすり泣く声を聞いた。昔から泣かない子だった友哉が、精一杯こらえながら、静かに嗚咽をもらしている。その事
実に少し衝撃を受け、わたしもほんの少しの間、泣きたくなった。でも、今はわたしが友哉を引っ張るべきなのだろうと思うと、泣けなかった。
「さ、友哉、そろそろ帰ろ。だいぶ寒くなってきたし、場所を変えて、気持ちを落ち着けようよ」

 散歩に出る前と同じ体勢で友哉の部屋の床に寝転がっていると、振り出しに戻ったような気分になった。二人とも冷静さを取り戻し、おとなしく体を
投げ出して次なる動きを待っている。
「どっか遠くに行けたら、自分の望み通りに生きられるのかな」
 おもむろに友哉がそう言う。
 どこか遠く。誰も自分を知らず、名前を持った個人として認識しない国。物理的に存在しても、概念的には剥がれ落ちてしまったような、「その他大
勢の登場人物」になれる場所。そこでは、誰からも期待も縛りも受けず、理想通りに自分のルールを自分で定められるのだろうか。
「どうなんだろ。少なくとも、わたしには無理かな。なんだかんだ言って、わたしも人の言うこと聞いて生きてるし、人の見る目を気にしてるから。
さっき気づいたけど、素直に世間や周りの人に従った方が楽だし、自立できる強さなんて、わたしにはないや」
 唐突に、その日の授業を思い出す。三限の世界史。南米移民の話。うとうとしていたわりには記憶に残っていたそれが、少し役に立ちそうだと感じ
た。
「でも、どこかに消えたいなら、ブラジルなんてどうかな」
「ブラジル?」
「うん。日本の真裏。みんなそれなりに希望を持って移っていったのに、現実はもっと厳しいんだねって。そういう場所。治安も悪いし、きっと自分勝
手に振る舞っても、警官にちょっとお金を渡せばだいじょうぶ」
「ハハッ、そいつはいいな」
「友哉、ちょっとこっち向いて」
 わたしと一緒に、友哉は顔の向きを変える。わたしは友哉に顔を寄せ、さっきひっぱたいた頬に手を添えて、友哉の唇に軽くわたしのくちびるを重ね
た。ほんの一瞬、だけれども確かに、わたし達は口づけた。
「な、なんだよ、いきなり」
 友哉が顔を赤くしながら慌てて距離を置く。
「『ブラジル体験』。明日の朝厳しい現実世界に戻る前に、かわいい弟につかの間の夢を見せてあげようかなって思って」
 柔らかな感触の残る自分の唇に、そっと指で触れる。
 実のところ、どうなんだろう。どこか違う場所に行けたら、わたしは友哉を違う風に思っただろうか。わたしは友哉の気持ちに応えただろうか。友哉
と、今以上のことをしただろうか。
 今いる場所に生まれてしまった以上、そういう仮定は無意味だ。わたしは友哉との血縁外の関係を拒んだし、それはごく常識的な判断であるはずだ。
 けれど、もし他の場所で友哉と生きていけたなら、悪い気はしないだろう。そんな気が、ほんのちょっとだけした。
249【品評会】シュガープラント・ルールズ ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 21:17:57.04 ID:TINq91DR0
以上
中二病っぽさが上手く出てるといいんだけどな
>>240
割り込みすみません
ボーッとしてて、気づかなかった
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 21:39:51.03 ID:vZcYtLxm0
251菜の花(お題:花畑) 0/4  ◆DgH2aSlK0w :2008/02/02(土) 21:41:05.59 ID:bqML8OdR0
気分が乗ってたもんで、あっという間に書きあがった。
「気合い」も入れる予定だったけど野暮ったくなるからやめた。ごめん。
252菜の花(お題:花畑) 1/4  ◆DgH2aSlK0w :2008/02/02(土) 21:41:35.17 ID:bqML8OdR0
 私の記憶の底に刻まれている風景は、鮮やかな黄金色です。
 僅かの間ながら、あなたと過ごした田舎町。
 ある日、何ともなく連れられて訪れたその広い菜の花畑は、私の目にはあまりに眩しすぎて、
それまでのモノクロの記憶を押しやり、私の頭の中に堂々と居座るようになってしまいました。
 私の真っ白いキャンバスに色を付けてくれたのは、あの黄金色の海と、あなたです。
253菜の花(お題:花畑) 2/4  ◆DgH2aSlK0w :2008/02/02(土) 21:41:56.90 ID:bqML8OdR0
 きっかけは、簡単でした。
 あなたと見たあの風景を、大切にしたい。決して忘れることなく、残しておきたい。
 そう思って、都会に戻ってすぐ、私が足を進めたのは画材屋でした。
 その頃の私は、絵などろくに書いたこともなければ、見たことすらありませんでした。
 学校の美術の授業も受けていませんでしたし、自分に絵の才能なんてまるでないと思っていました。
 今思えば、貯金をはたいてカメラでも買って、写真に収めれば済んだ話だったのかもしれません。
 でも、そのときの私は、画材屋で道具一式を買ってしまったのです。
 しかも、使い方すら分からなかったのに、油絵の具のセットを。

 その日から、私の生きがいは一枚の絵になりました。
 仕事が終わり家に帰ると、すぐに筆を手に取る。
 そして、書いては破り、書いては破り。
 毎日のように絵の具と、筆と、キャンバスとにらめっこしながら日々を消化していきました。
 それは信じられないほど充実した日々で、私はその虜になってしまっていました。
 あなたが私のキャンバスにこぼした黄色い絵の具は、あっという間に私を支配してしまったのです。

 数週間ほどして、一枚の絵が描き上がります。
 ですが、私の心にはまだもやがかかっていて、どこか満足できませんでした。
 ――いや、あの風景はこんなものではなかったはず。
 そう感じた私は、その絵を物置に放り込み、また新しいキャンバスを買ってきました。
 今度は、書き上げては放り出し、書き上げては放り出し。
 私の追求は限度を知りませんでした。
254菜の花(お題:花畑) 3.5/4  ◆DgH2aSlK0w :2008/02/02(土) 21:43:06.93 ID:bqML8OdR0
 ある日、バイト先の仕事仲間があまりにその絵を見たい、とせがむので、
今まで他人を部屋にあげたことのなかった私でしたが、ついに根負けしてその友人を招待しました。
 友人――加奈は、中学、高校と美術部に所属していて、金銭的に余裕のないフリーターとなった今でも月に一度は美術館に通うような、とても熱心な娘でした。
 そんな娘に自分の絵を見せるのはとても恥ずかしかったのですが、加奈の反応は予想外のものでした。
「信じられない」
「本当に絵を描き始めて5ヶ月なの? こんな臨場感のある絵は見たことないよ」
 物置にしまい込むはずだった失敗作の前で呆然と立ち尽くす加奈。
 その目が、書きかけの七枚目のキャンバスに移りました。彼女はその書きかけを品定めするかのように眺め、何か納得したかのようにうんうんとうなずいていました。
「彩、この絵が書き終わったら私に連絡ちょうだい。絶対だよ!」
 真剣な目でそう言う加奈の迫力に押され、私はうん、と返事をしてしまったのでした。

 それから一ヶ月かけ、書きかけの七枚目は完成しました。
 今までの作品を凌駕するような、最高の出来でした。
 やっと自分の絵に納得がいき、役目を果たし終えた晴れやかな気分でいたのですが、
とっさに加奈の事を思い出し、私は電話を手に取りました。
 連絡を受けて私の部屋にやってきたのは、加奈と、どこか品の良い老人でした。
 驚いたことに、その老人は加奈の通っていた美術館の館長で、私の絵を展示したいというのです。
 私は戸惑いました。この絵を展示するなんて、と。
 館長さんは「一ヶ月だけでいいから、お願いだ」と、頭を下げてまで頼み込んできました。
 どうにも断りきれず、私は絵を貸しました。
255菜の花(お題:花畑) 3.5/4  ◆DgH2aSlK0w :2008/02/02(土) 21:43:34.14 ID:bqML8OdR0
 『美術館放火  美術品計65点が焼失、被害総額7500万』
 一週間後、新聞の一面に躍った記事です。
 どうです、ひどいでしょう。
 あなたのために描いた絵なのに、あなたの前へ持っていくことすらできなかったんですから。
 私は物置の絵を見渡しましたが、どれも見劣りしてしまい、あなたに見せにいく気にはなれませんでした。
 また、新しく絵を描こうともしましたが、今まで湯水のように湧いていた意欲はいつの間にか枯れており、筆が進むことはありませんでした。
 自責の念にとらわれ、私はすべてにおいてのやる気をなくしかけたのですが、
あの日のあなたの言葉を思い出し、なんとか立ち直ることができたのです。
 不思議なものですね。絵が描けなくなったと分かるや否や、私は絵筆をペンに持ち替え、
今度はあなたへの手紙を書き始めました。
 私が費やした半年間を、あなたは笑うでしょうか、叱るでしょうか。
 でも、願わくば、「頑張ったな」と笑いながら私の頭を撫でてくれる、暖かなあなたの笑顔が見たいです。
256菜の花(お題:花畑) 4/4  ◆DgH2aSlK0w :2008/02/02(土) 21:44:04.12 ID:bqML8OdR0
 自分の書いた手紙を読み直し、ふうとため息をついた。
 ――読まなければよかった。
 これは、彼の元にだけ届けばいいのだ。ふいににじみ始める涙を拭き、私は手紙を封筒にしまった。

 私は、この手紙を書き終えた後、すぐにあの花畑に向かった。
 今はもう、木々が色づき始めるような時期。そこにはだだっ広い平地があるだけだった。
 私はその畑の持ち主を尋ねて事情を話し、畑に蒔く予定だった菜種を少し分けてもらった。

 その時もらった菜種は今、私の懐にある。
 私は小さなビンに入ったそれを取り出し、蓋を開けた。
 墓石の周りを囲む土に、そっと指で小さな穴を掘り、一粒一粒丁寧に種をうずめていく。
 この墓のそばにでも飾っておこうと思って描いたあの絵はもうない。
 でも、本物が見れるならきっと彼も満足するだろう。私も、毎年彼のそばでこの花が見れるならそれで満足だ。
 最初からこうすればよかったのなら、私のこの半年は遠回りだったのだろう。
 でも、なぜか遠回りしてしまった事に対する後悔は微塵もないのだ。
 むしろ、必要なことだったような気さえする。

 種蒔きを終えると、私は墓石の目の前にひときわ深い穴を掘り、そこに手紙を埋めた。
 せめて、私の思いだけでも彼のそばに。
 埋めた土に、ほのかな温もりを感じた。
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 21:57:18.47 ID:DbBBgtJx0
ほ?
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 21:57:35.56 ID:HTKu8mHQ0
ts
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:07:56.25 ID:QMlHUbGO0
>>252
花畑といえばやっぱり恋愛ものッスよね
構成のバランスのよさと、彼の影を引きづっている印象を与える主人公の独白はすごいと思います。
作者さんは女性じゃないかな? と思わず邪推してしまう、温かい感じの文の雰囲気も気に入りました。
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:23:25.96 ID:pS8Zx+oT0
保守
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:26:36.31 ID:bqML8OdR0
>>259
ありがとうありがとう
正直このままレス付かないんじゃないかとビビってた
なんだかもう途中で文字数制限引っかかるし分割しようとしてミスるし
俺空気読めなさすぎだろって軽く後悔の念に浸ってたとこです
そう言ってもらえてすごく嬉しかった。どもです

あ、ちなみに男なんだけどね。文体は少し意識して変えました
創作意欲湧いたらまた来ます
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:33:54.27 ID:1xeYXfrL0
保守
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:34:06.08 ID:DbBBgtJx0
>>105の作品読んでて思ったんだけどさ、
学校の教室って、大体右が廊下側で、左が窓側だよな
なんか決まりがあるんかな…
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:36:21.67 ID:2q2m7pxb0
>>263
うちのがっこは
真後ろに窓があったりしたが

窓の方向は全部東向きに統一されてたと思ったが

多分西日が入らない設計なんじゃないかね
しらんが
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:37:36.53 ID:1xeYXfrL0
>>263
日本人は右利きが多い
日光が右から来ると文字かいてるときに
右手で影つくっちゃって見にくいからとマジレス
266かき氷の季節(お題:氷、ジョンバール分岐点) 0/5:2008/02/02(土) 22:38:41.90 ID:E56AFbhS0
できたので投下しちゃう
267かき氷の季節(お題:氷、ジョンバール分岐点) 0/5:2008/02/02(土) 22:39:22.77 ID:E56AFbhS0
「かき氷が――食べたい」
 身を起こし、窓の外を見やる。
 そこには北国ならではの豪雪が降り続き、今朝のニュースでは積雪量は五十センチメートルにもなるとのこと。
 どうやら聞き間違いだったようだ。
 俺は再びこたつの上に上体をあずけ、
 年末年始特有のなぜか予想外のハプニングばかりが起こる(と司会者は主張している)生放送番組を見ながらみかんを貪る作業に戻った。
「聞かなかったことにしないで」
 こたつをはさんで向かい側、俺の妹の美咲から批判の声が上がった。
 彼女もまたこの尊い行いに従事する身だ。
「かき氷、食べたい」
 上体を起こすことにすら億劫になった俺は、頭だけを曲げて視線をわずかばかり上に向けた。
 俺から見て右側。ちょうど今、また一つ予想外のハプニングが起こる様をを映し出しているテレビのその上。
 そこにはカレン先生がいる。
 カレン先生はいつだって正確無比だ。
 彼女の実直さと誠実さ、そして仕事に対するひたむきさから、その業績は人々に大きく評価されている。
 俺はカレン先生に全般の信頼を置いていた。
 今日は水曜日、しかも年が明けて初めての水曜日ということであれば、その日付は限定される。
 カレン先生によると、今日は正月三が日の最終日、一月三日であるとのことだった。
 これらのことを踏まえるに、やはり俺の聞き間違いであることは明白であった。
「聞かなかったことにしないでってば」
 あわよくば、是非聞かなかったことにしたかったのだが、加えられた攻撃によってその道は閉ざされてしまった。
 迎撃しながらやむなく美咲に応えてやる。
「なに」
「かき氷、食べたい」
「勝手にしろ。誰も止めん」
「それには兄貴。貴様の協力が必要不可欠なのだ」
「過大評価だよ」
「そんなことはない」
268かき氷の季節(お題:氷、ジョンバール分岐点) 2/5:2008/02/02(土) 22:41:01.28 ID:E56AFbhS0
 言葉の上では穏やかなものだ。
 しかし。
 二人がだらしなく頭を預けるこたつ。板一枚をはさんだその下では、激しい攻防が繰り広げられていた。
「兄貴は少し自分を小さく見過ぎる」
 小競り合いから一転、距離をとってお互いの様子を窺う。
 何とも言えない緊張感が生まれた。
「確かに、そうかもしれない。兄貴はな、大した特技もなく取り柄もない。
 かといって人となりが良いかと聞かれればそういう訳でもなく。決して人様に自慢できるような人間ではない。それは確かだ」
 その時、戦況が動いた。
 美咲が攻勢に転じた。
 その攻撃は実に戦略的に優れ、先を読み最低限の手で敵を殲滅する。
 それはまさに、巧緻の極みであった。
「しかし、そんな陳腐な人間であるために。いや、そのような取るに足らない人間であるからこそできることもある。そうは思わないか?」
 水面下での戦いは激化していく。
 こうなれば俺も相手は女とて容赦はしない。
 もとより相手はあの美咲。手加減など不要だった。
 俺の全力を掛けた攻撃。しかし、美咲はそれらを軽々といなしていく。
 美咲の右足、そのかかとが俺の左すねをしたたかに打ち付けた。
 思わず呻く俺。
 無論美咲はその隙を見逃さなかった。
 華奢な両足で俺のそれらを絡め取り、四の時に固めた。
「再度言おう。私は……かき氷が食べたい」
 勝者のみに許された、余裕の笑み。傲慢さの象徴。
 
 数分後、敗者となった俺は庭にいた。
 周りには相変わらず質量を持った雪が降り続いている。
「ほいこれ」
 美咲から何か渡された。
 バールだった。
「そしてあれ」
269かき氷の季節(お題:氷、ジョンバール分岐点) 2/5:2008/02/02(土) 22:42:00.27 ID:E56AFbhS0
 美咲が指さしたのは庭の片隅にあるプレハブ小屋。
「自分で開けろよそれくらい」
「ドアが凍ってて開けられないの」
 なーにが「開けられないの」だ。ぶち殺すぞ。かわいいと思ってんのかカス。
 心の中では思っても、絶対口には出さない。それがこの家で生き残るコツだ。
 俺にも妹という存在にある種の幻想を抱いていた時期があった。
 だが、今あるのは純粋な憎しみだけだ。
 両親に甘やかされ、順調に生意気に育った妹。
 幼い頃には「にいたん、にいたん」舌っ足らずな声で俺を呼び、俺の後ろをカルガモの子供のようについて歩いた時もあった……。
 あのころはかわいかった……。
 できるならあのころに戻りたい。すごく戻りたい。
 そして再教育したい。
 俺はかつての栄華に思いをはせた。
 ……。
 …………。
 ………………。
「寝るな」
 はっ。
「ここはどこだ?」
 あまりの寒さに、一瞬我を忘れた。
 すぐすむからと言われ、着の身着のままで出てきたせいだ。
「ジョンバール分岐点だ」
「は?」
「今ここには、別々の未来に繋がる二つの選択肢がある。小屋を開けるか、死ぬか」
 事態は俺が思ってるより深刻なようだ。
 いきなりデッドオアアライブだった。
「小屋のドアと、貴様の頭。バールでどちらを打つかは自由だ」
 そんな自由はいらない。
 命には代えられないので、やむなくバーる。(バールで釘を抜く、何かを壊すの意)
 ドアは以外と簡単に開いた。
270かき氷の季節(お題:氷、ジョンバール分岐点) 2/5:2008/02/02(土) 22:43:45.94 ID:E56AFbhS0
 ……非力なやつめ。
 美咲は、俺に礼を言うでもなく、小屋の中を物色し始めた。
 目当てのものを見つけたのか、間もなく出てくる。
 美咲の胸に抱かれたもの。
 それは、ペンギンを象ったかき氷機だった。
 ……他に表現する言葉が見つからない。かき氷を作る機械だから、かき氷機だ。
 世の中も、きっとそれくらいシンプルな方がうまくいくだろう。
 意識がふと過去へ向かう。
 
 それは、俺が買ってやったものだった。
 いつだったか店先に置いてあったのを見て、美咲が欲しいとだだをこねたのだ。
 両親は家にもうあるものわざわざ買えないと言った。
 その頃は、まだ人並みに年長者的慈愛心に満ちあふれていた俺だったから、泣き出した美咲を見かねて買ってやったのだ。
 そこまで思い出して、苦笑する。
 美咲の傲慢さを助長させてしまったのは、俺だったのではないか、と。

 そんなほろ苦い思い出に浸っている間に美咲はすでにいない。
 庭にある雪をすくっていた。
 まだ人の足が入ってない所を、上だけすくうようにして。
「腹こわすぞ」
「馬鹿な」
 その自信はどこから来るのかと聞きたい。
 一瞬手伝ってやろうかとも思ったが、そこまで付き合う義理もなく。
 家の中に戻り、さきほどまでと同じ作業に戻ろうかと思ったときに、それは目に入った。
271かき氷の季節(お題:氷、ジョンバール分岐点) 2/5:2008/02/02(土) 22:45:29.09 ID:E56AFbhS0
 居間の西側に面するキッチン。そのテーブルの上に、あった。
 普通のかき氷機。何かの動物をあしらったコケティッシュなものではなく、遊び心とはまるで無縁な、無骨なものだ。
 まるでかき氷を生み出すためにだけ生まれてきたような洗練されたフォルム。
 氷を削り出すためのシャープな歯。
 その脚部は安定感のあるどっしりとした鉄製で、作業の円滑な進行を助ける。
 皿を置くために中心には円上の穴があり、そこには今まさに人々の夢をまとって舞い降りる、粉氷のその一粒一粒が見えるようであった。
 業務的にかき氷を作るためだけにあるもの。それはどこか、無機質な印象を人に与える。
 ザ・かき氷機とでも言うべき代物。
 ……俺は、それれがここにある意味を一瞬だけ考えた。
 そしてクローゼットからコートと手袋を取りだすと、それらを身にまとい、再び庭に出た。

 後日、美咲が体調をを崩した。
「だから言ったじゃないか。これに懲りたら、もう二度とこんなことをするんじゃないぞ」
 俺がそう言うと、布団の中で横になったまま肩をすくませて
「もうかき氷はこりごりだよ」
 と言った。

272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 22:49:38.78 ID:DbBBgtJx0
>>264-265
おお、なるほどなぁ
ありがとう!
273>>266:2008/02/02(土) 22:55:38.63 ID:LMzdqDJt0
名前欄の数字がめちゃくちゃになってる……
中の人ごめんなさい
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:02:02.09 ID:Y6VncuTz0
お題をください。ただし二つまでしかHAAKUできません
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:03:22.46 ID:6P71Q6SH0
>>274
ルーレット
276【品評会】シュガープラント・ルールズ ◆AOGu5v68Us :2008/02/02(土) 23:04:07.24 ID:TINq91DR0
>>274
メリーゴーランド
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:05:01.95 ID:/eU1QCBu0
>>276
名前外し忘れてるよ〜
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:06:58.17 ID:Y6VncuTz0
回転系HAAKU
279(お題:発射)1/3 ◇czxS/EpN86:2008/02/02(土) 23:18:37.93 ID:DbBBgtJx0
 放課後のトイレで、俺はひたすら悩んでいた。
 「どうすれば…どうすればいいんだ……! クソッ!」
別に便秘症な訳ではない。ついでにトイレとクソを掛けたわけでもない。
 「お前だけは……絶対に守ってやるからな」
 (うん……ありがと)
確かに、声が聞こえた気がした。


俺とコイツが出会って、今日でちょうど一年。
いつもは家でひたすら俺の帰りを待っているはずのコイツ。
(エヘヘ、付いてきちゃった)
文句一つ言わないこの娘だけど、もしかしたら寂しかったのかもしれない。
ヒョコッ、と顔を出した時のコイツのいつもと変わらないはずの笑顔が、何だかとても愛しくて……。

でも、俺はもっと早く気付くべきだったんだ……俺とコイツを引き裂く、周囲の偏見ってやつに……。

 突如現れたコイツの存在は、放課後には全校生徒に知れ渡っていた。
俺は必死に隠していたけど、噂の広がり方と言うのは凄まじいもので。
 「ほら、アイツだよアイツ」
 「うわ……マジありえないわ…近づきたくない」
すぐに心無い言葉が、俺たちを襲った。
コイツを教室にそのままにしておいたら、危険だ。
もう、この手を離すもんか。
 (ありがとう)
そう言ってくれた気がした。
280(お題:発射)2/3 ◇czxS/EpN86:2008/02/02(土) 23:19:15.38 ID:DbBBgtJx0
 「あ…あれだよ、ホラ」
うち何人かが、こちらを指差し、奇異の視線を向けてくる。俺には耐えれなかった。
 (あはは、そんなの気にすることないよ)
いつもと変わらぬ笑顔は、俺を慰めてくれた。だが、しかし……
 「おい、俺はいいけどなぁ、コイツまでバカにするのはやめろよ!」
つい言ってしまった一言。
俺はその男子生徒とケンカになった。
俺は誇らしかった。大切なものを守る為に戦って、何ら恥じる事などあるものか。

 「手を離しなさい!」
教師が俺とコイツを引き裂こうとする。だが俺は離す訳にはいかない。
 「嫌だ!俺は、俺はコイツを愛しているんだ!」
 「馬鹿な事をいうもんじゃない!」
俺はむりやり教師の手を振り解くと、そのままあても無く駆け出した。

 逃げ惑う俺に、周りのやつらが放つ容赦ない罵声。かまうもんか。
なおも追いすがる教師から身を隠す為、トイレに逃げ込み、俺はここにいる。
 「出てきなさい!」
この日初めて手に入れることができた安息も、そう長くはないらしい。
いよいよ最後の時が来た。
一緒にいる事はできないなら、せめてコイツだけは自由を手にして欲しい。
281(お題:発射)3/3 ◇czxS/EpN86:2008/02/02(土) 23:19:57.92 ID:DbBBgtJx0
 「ごめんな、俺のせいで」
 (ううん、いいの)
確かにそう言っているように俺は見えた。
俺は窓を開ける。途端冷たい風が流れ込んでくる。雪も降っているようだ。
 「ありがとう、ありがとうな……お前がいてくれて、俺は最高に幸せだったんだ……本当だ、本当だぞ」
もうコイツの笑顔からは何も読み取れない。
俺は、力いっぱい振りかぶり、できるだけ遠く、できるだけ空に届くように、それを窓の外に向け思い切り発射した。
「うおおぅ!」
その瞬間、突如として吹いた突風に煽られ、アイツは俺の視界から姿を消した。

降りしきる雪の中、トイレの窓からアイツは空に還っていった。


涙は出なかった。泣けないのが悔しかった。
やがてドアを蹴破った教師たちが、中になだれ込んできた。
俺の手には、アイツはもういない。

若い教師が聞いてきた。

「お前、さっきのギャルゲーはどうした?」
だから、俺はアイツがもう誰にも縛られないように、こう返すのだ。
「そんな物、俺は知りません」

また、会える日を信じて。

―了―
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:21:13.02 ID:DbBBgtJx0
306 名前:(お題:発射) ◆czxS/EpN86 [] 投稿日:08/02/02 23:15:11 ID:WL6qeYFV
以上になります。なお、今回のお題はまとめスレの
『お題ジェネレーター』で戴いた物を消化させていただきました。

転載、どうか宜しくお願いいたします。


以上転載終わり
転載する旨の宣言がなかった 失礼
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:24:18.02 ID:DAcN+171O
今から品評会作品書き始めるけどカオス前に上げられたら二票ぐらいもらえる
カオスになったらいつも通り空気
時間外ならお蔵入り
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:28:01.28 ID:jo7JydMj0
>>283
今から書くってことは、終戦したのかおめでとうw

俺はいつ上げても良くて1票だ。
285 ◆ETwWxomLBg :2008/02/02(土) 23:29:21.17 ID:EmxOfA+vO
品評会作品投下します
全3レス
286生類憐みの令 1/3 ◆ETwWxomLBg :2008/02/02(土) 23:30:28.54 ID:EmxOfA+vO
 初めて江戸に赴いた私が見たのは、噂に聞いたものとはかけ離れた不気味な有様だった。
 仕事終わりの町人達が屯しているはずの通りには、人の気配が全くない。
 夕刻と言えどまだ空は赤く、行き来があってもおかしくないはず。
 なのに人っ子ひとり見当たらず、代わりにそこには、野良犬が伸し歩いたのだ。
 しかも一匹だけではない、二匹、三匹……、まるで自分の庭の様に。

 私は江戸の町人が皆、犬になってしまったのかと思った。
 このまま江戸を進めば私も犬に成り代わってしまうのではと足が竦んだが、
傍のあばら屋から老婆がひとり、顔を出してくれたのが幸いだった。
 その老婆にこの有様について尋ねると、老婆は何故か陰鬱な表情で黙り込む。
 ますます不思議がって首を傾げていると、老婆は恐る恐る一言、呟いた。
「お犬様に手を出してはならねぇ、……絶対に」

 その言葉の意味が分かったのは、やっとの事で古くからの友の家に辿り着いた時だった。
 すっかり月は登ってしまっていて、江戸の町は闇に静まり返っている。
 私が家を訪ねると、友と友の家内はたいそう喜んで迎えてくれた。
 この二人に会うため、私は田舎の農村からこの江戸まで赴いたのだ。
 しばらく盃を交わしたあと、私は町の有様、老婆の言葉について二人に話した。
 すると二人は顔を見合わせ、老婆と同じように黙り込んでしまった。
 どうしたかと尋ねると、少し困ったような面持ちで、友の家内は話してくれた。

 半月ほど前、江戸の町に立て札が立てられた。
 その中身は要するに、生き物を尊び、特に犬は大事に扱え、というものだったらしい。
 聞くにはなんてことないものだが、実際にはそうはいかなかった。
 魚鳥を食い物として育てることを禁じられ、家畜もぞんざいに扱うことを許されなかったのだ。
 江戸は常に役人に見張られ、皆生き物に怯えながら暮らしていかなければならない。
 そして先日、誰もが恐れていたことが起こった。
 店の品を荒らした野良犬を蹴飛ばした店主が、役人に連れていかれてしまったのだ。
 翌日、店に帰ってきたのは店主の草鞋だけだったらしい……。
287生類憐みの令 2/3 ◆ETwWxomLBg :2008/02/02(土) 23:31:04.79 ID:EmxOfA+vO
「上様は狂ってしまわれたか」
 あまりのことに私が呟くと、友はため息と共に首を振った。
「分からない。しかし、それ以来誰も犬には近付けなくなってしまった」
「あの店の主人も気の毒なことでした」
 友の家内は着物の裾で目を拭う。
「幼い娘が居りましたのに」
 店主のことを思うと不憫でならない。
 妻と娘を遺して、死に際には一体何を思ったのだろうか。
「今の江戸には犬がはびこっている。もはや我々の居場所は無い」
 友はポツリと呟いた。
 あの寂しい町の情景もあの老婆の哀しみも、全てはひとつの法から、ひとりの死から始まった。
 江戸は華々しく活気に満ち溢れていると、旅人の噂に聞いた。
 良い町だと旅人は笑っていたのに、上様はなぜこのように変えてしまわれたのだろうか……。
「お二人、飲み過ぎですよ」
 友の家内は気遣うように笑って、酌を片付け始める。
 私は酔いを覚ましてくると断って家を出て、夜の江戸の町に出た。
288生類憐みの令 3/3 ◆ETwWxomLBg :2008/02/02(土) 23:31:51.95 ID:EmxOfA+vO
 広い通りに人の姿はなく、時折物陰から犬が顔を出している。
 これでは町の大きさを除けば、故郷の農村とあまり変わりない。
 不意に、何処からか泣き声が聞こえた。
 とある一角の家屋から、確かに幼子の泣き声がする。
 よく見れば屋根に看板が掛かっていた。
 あぁ、あの店なのか。
 主人を失った、哀れな妻子が住う店。
 店の奥に小さな灯を見て、私は踵を返した。
 幼子の泣き声はまだ大きく耳に響いている。
 上様はなぜあんな法をお作りになったのか。
 生き物を、犬を尊ぶ、あれはそんな法ではない。
 私には、その法があの幼子を泣かせるためのものに思えて仕方がない。
 店主の命を奪い、その妻を苦しめるためだけの法に思えて仕方がないのだ。
 そんな法があっていいものか、法とは何のためにあるのか。
 田舎者の私には分からない。
 ただ、胸の内に起こったこの感情は間違いではないと、それだけは断言できた。

 物陰から野良犬がこちらを覗いている。
 私は彼らに見せつけるように、通りのど真ん中を精一杯踏み締めて歩いた。   終
289 ◆ETwWxomLBg :2008/02/02(土) 23:32:24.43 ID:EmxOfA+vO
以上です
290お題:りんご飴怖い:2008/02/02(土) 23:35:01.11 ID:9PnsnFnT0
遅くなりましたが投下いたします
291お題:りんご飴怖い 1/5:2008/02/02(土) 23:35:32.16 ID:9PnsnFnT0
祭囃子が、たった一人の存在するサークル部屋に響く。私が淋しい人間だから一人なのではない。
そもそも祭りなどと言う浮ついた行事が気に食わないのだ。しかし屋台物は好きなので後輩に買いに行かせている。
ちゃんと私を慕う人間はいるし、祭りに行かない理由もある。たった一行で私が淋しい人間ではないことが証明された。
今から三年前、私がまだ女子高校生という人間ブランドを持っていた頃。私の中の乙女は、それは祭りが大好きであった。
だが、丁度今のような祭りの明かりがほわんと町を照らしていた夜。私の中の乙女は首を吊ってしまったのである。
かちゃり、と遠慮が滲んだ音で後輩が入ってくる。こいつは今年大学に入った一回生であり、私がサークルに入れた言わば玩具であった。
肩は物凄く上下しているのに、息は切らしていないような演技をしている。健気な奴だ。
両手いっぱいに袋を抱え、中からはソースの良いかほりがしていた。どうしてこうも屋台物はソースがかかる食い物が多いのか。
「ほれ、早く出せ」と私が言うと、待ての命を解かれた駄犬のようにせかせかと袋から何かを取り出した。
割り箸の先端に真っ赤な球体を差したそれを、まるで「可愛いでしょ」とでも言うかのような万遍の笑みで私に手渡す。
ぞわりと背骨が波打つ。私はそれを引っつかむと、後輩の右眼球めがけて投げつけた。「ぎゃああ」とのた打ち回る阿呆を見下ろしながら、今度は私が肩を荒ぶらせていた。
私は恋をしていた。無論今ではない。私の中の乙女がオロナミンCよろしく元気はつらつとしていた頃の話だ。
相手は先生である。先生といっても教職についた人間ではなく、私の実家の隣のアパートに住む大学生であった。
暇が出来たら、勉強を教えてもらうと言う口実を手土産に、私は先生の家のベルを鳴らした。
人良い笑顔で扉を開けてくれるのが好きである。耳良い声で「いらっしゃい」と言ってくれるのが好きである。
先生が入れた優しい色の紅茶が好きである。おおよそ先生の全てが私にとって愛おしかった。
先生の家の窓から、繁華街から漏れるほんわかとした明かりを見た。どうやら祭りの準備のために、電柱と言う電柱に電気式提灯を吊るしているらしい。
そうか、明日は祭りであったか。部屋いっぱいに広がるローズティのくすぐったくなる香りを胸八部程までに吸い、
私の中の乙女の勇気を呼び起こした。「明日一緒にお祭りに行きませんでしょうか」
中途半端に畏まった口調に恥じ、私は顔を赤くして俯いた。ふふ、と先生は軽く笑い、「よいでしょう」と言ってくれた。
そのときの嬉しさは筆舌に尽くしがたいものであった。顔が電球になったかのように、パァと明るくなり、
意気揚々と先生のアパートを後にした。母親にある相談を持ちかけるためである。
女である、もしくは女との交流がある男になら分かると思うが、私は明日浴衣が着たかったのであった。
さっそく家に上がり、全権を握る魔王のような存在の母に明日浴衣が着たいと告げた。
浴衣はあるが、どうせ着付けを手伝えと言うのだから駄目だと言われた。こちらとしても必死である。
愛しい人に最高の自分を見てもらいたいと言うのが乙女と言うものではないのだろうか。
そういう部分が既に死んでしまっている魔王には、私の心の一割すら理解できなかったのであろう。
しかし、それで諦めては乙女が廃る。三十分の力説及び半泣き落としにより、なんとか着付けを手伝ってもらえるよう取り付けた。
そのときの私はまさに有頂天。小一時間の小躍りで全身全霊喜びを表現した。その後すぐ疲れて寝た。
292お題:りんご飴怖い 2/5:2008/02/02(土) 23:36:27.04 ID:9PnsnFnT0
朝、ネロを迎えに来た天使たちの後光のように差し込む光で目を覚ました。今日の私は一味違う。
ピリリと胡椒を利かせつつも、甘く煮詰めた生粋の大和撫子であった。今日こそ思いの丈を先生に伝えるのだ。
時計を見る。まだ八時だ。有り余る興奮で睡眠と言う三大欲求を吹き飛ばしてしまったらしい。
約束の時間は午後六時。あと十時間もある。私は着付けの時間以外のほぼ全てを破廉恥なイケナイ妄想に費やしながら、熱を高めた。
仕上がった私は、花も首吊るほどの美少女になっていた。奥ゆかしいはずの私も思わずこんな表現をしてしまうほどである。
しかし、下着を着用していないので如何せんスースーと股下を風が通る。これは不味い動きは出来ないなと考えながら、玄関先に用意した飾り下駄を履いた。
ぬるま湯のような暖かさの塊が体に纏わりつく。まだまだ暑い、夏の夜であった。歩くたびに響いては消える小気味良い音が、私の乙女を喜ばせた。
先生の玄関のベルを鳴らす。スースーという感覚に思わずもじもじと内股をすり合わせてしまう。大昔の人間は毎日スースーライフだったと言うのに。
かちゃり、と優しい音をたてて扉が開く。いつもの通りのTシャツとジーンズ。私は何故かそれがとても嬉しかった。
先生は何も言わずに私の手を引く。あ、と声を出すと、「いやですか」とにっこりとされた。無論嫌なはずが無い。
だが感極まって上手く喋る事が出来ない。まこと、乙女とは難儀なものである。私は辛うじて首を縦に動かした。
繁華街内部に近づくにつれて、人が増え始める。そうして人が増えるごとに、私たちの距離は縮まった。
それははぐれない様にとの配慮であろうが、私の心臓は祭囃子の太鼓のようにドンドコドンドコ脈打った。
心臓が口から飛び出るとは言ったものであるが、むしろ私は肛門からのほうが適切であるように感じた。
緊張すると腹のほうのご調子がすこぶる悪くなる性質であるが故の比喩である。腸よ、今日だけは機嫌を損ねないでくれと私は切に祈った。
293お題:りんご飴怖い 3/5:2008/02/02(土) 23:36:57.76 ID:9PnsnFnT0
「私は金魚すくいというものが好きなのです」そういうと先生は、私の手を掴んだまま金魚すくいの屋台へと向かった。
股引き姿の親父に、ひょいと百円を渡すと、先生は半袖なのに腕まくりをしてポイを受け取った。
そしてお椀を反対の手のひらでがっちり掴み、すぅと金魚泳ぐ水槽にポイを浸した。そこからは当に神の業であった。
やはり金魚も先生の人柄に惹かれるのか、自らポイの上に乗り、掬い上げられる。浸すたびに乗るものだから、あっという間にお椀は金魚で溢れかえった。
正直そのお椀の中は気持ち悪いものであったが、小さな脳でも善悪を判断できるなんてすばらしい生き物だと私は感心していた。
先生は息を短く吐くと、「終わりにしますか」と言いながら、お椀を傾けた。だばばと金魚が水槽に戻る。
「キャッチアンドリリースです」そう言ってにっこりと笑った。もちろんそこに計二十五回目の惚れ直しをしたことは想像に難くないだろう。
しかし事件は起こってしまった。先生がりんご飴を買ってくれた直後である。殺人事件であった。私の中の乙女殺害事件である。
私のこの格好は、誘蛾灯のように害虫を引き寄せてしまっていたらしい。二人組の頭の悪そうな男に絡まれてしまった。
何とも古典的な台詞で、私の気を引こうとする。先生は早歩きになり、「ああいう阿呆は無視です」と私の手をキュッと握った。
だが阿呆の一年岩をも通す。その不逞の輩は無視されたことに逆上し、私の帯を掴んだ。
そのまま力ずくで引っ張ると、私の手は先生の手をするりと離れ(実は緊張で汗びっしょりであったため)、阿呆の胸に抱かれてしまった。
「嫌」と身を捩るが、下劣な笑いを上げるだけで一向に話そうとはしてくれなかった。先生は何を思ったか、完全に投球フォームを作り上げていた。
私が、はてと思うや否や先生の手から真っ赤な塊が放り出された。先ほどのりんご飴であった。ギュンギュンと血の色をした敵意の塊は加速し、
私を捕らえる阿呆ではなく、囚われの姫側である私の腹部に直撃した。「うっ」と唸り声を上げてしゃがみ込む私。
294お題:りんご飴怖い 4/5:2008/02/02(土) 23:37:28.36 ID:9PnsnFnT0
痛みはそれほどでもないが、衝撃が酷かった。先述した通り、私は緊張すると腹部が反逆する性質の持ち主である。
元々ギリギリの状況であったそれにりんご飴の一押しが加わって、完全に限界であった。
ザッと立ち上がった瞬間、私を上から覗き込んでいた阿呆の顎を、私の頭が打ち抜いた。そのまま敷石に倒れこみ動かなくなった。
しかしその頭部の衝撃が私の芯を貫き、更に腹部の反逆を煽った。先生は慌てて駆け寄ってきたが、もう駄目である。
先ほどのりんご飴投球と、完全なる限界も相まって私は拳で先生の顎を打ち付けると先の阿呆と同じように倒れる先生を尻目に家へと逃げ帰った。
神速で厠へと篭り、私は涙を流した。先生を誘惑するための浴衣も、ただ下着をつけていない事で暴発のタイムロスを無くすことにしか役立たなかったことになる。
今こう思い出しながら書くと実に馬鹿らしいが、私の中の乙女はこれによって死んでしまった。先生とは二度と顔を合わせることはなかった。
そして私は今でも祭と、それ以上にりんご飴に恐怖を覚えるようになった。全く持って阿呆である。だがトラウマとはそういうものだと後に知った。
右眼球を押さえながら後輩がよろよろと立ち上がった。何をするのかと講義してきたが、私はりんご飴を憎んでることを言うとすまなそうな顔をした。
こうやってコロコロと表情を変えるから、私に玩具として使われることを彼は理解していないだろう。
295お題:りんご飴怖い 5/5:2008/02/02(土) 23:37:59.99 ID:9PnsnFnT0
床に散乱した焼きそばのパックやらたこ焼きやらから、彼は一つを救い出す。袋に入ったタイプの綿菓子である。
これなら、と私に手渡した。綿菓子は良い。甘くてほんわりとしている。口を開き、その甘い雲をつまみ上げる。ゆっくりと口に運ぶと、思ったよりも唇にくっついた。
嬉しそうに笑う後輩に少し腹が立ったので、私はぶちゅりと彼に接吻をした。甘い味が移ったであろう。
シャットダウンから再起動までに五秒を要し、後輩の顔がみるみる紅くなった。それはまるでりんご飴のようで、私は今度は左眼球を拳で打ちぬいた。
ぎゃああと再度のたうち回る阿呆を見て、はやり接吻で乙女が蘇るなどとは夢の話であるのだ、と大きくため息をついた。



                                                  (完)
296お題:りんご飴怖い :2008/02/02(土) 23:38:37.00 ID:9PnsnFnT0
完全に配分を間違えました。一レス目に詰め込みすぎたw
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:53:33.52 ID:gUBByifJ0
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/02(土) 23:57:54.63 ID:jo7JydMj0
>>291-295

一番最初に5レス目の誤字がいきなり目に飛び込んできたり、文が積んでて挫けかけたけど、頑張った。

回想の筈なのに現在の事の様に描写されたり、
文の組み立てが甘い印象。最初3行でダメになる人多そう。
あと、主人公の考えが理解出来ない、悪い意味で。
特に5レス目のキスする意味が分かんなかった。伏線無いよね?w
比喩とか文のテンポは上手いかなと一瞬思ったけれど、それ以外が残念。誤字も結構あるよね。
299お題:りんご飴怖い :2008/02/03(日) 00:06:18.23 ID:dWxbtKlt0
>>298
誤字は二つ発見しました。一念岩を通すの所と、離す≠話すの所です。他にも教えていただけたら幸いです。
他の指摘は次の作品に生かそうと思います!
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:06:48.50 ID:Ky7aC2K3O
まさかの「江戸」ネタかぶりに俺涙目w
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:09:10.03 ID:T8igwc580
>>291
あー面白かった。というより悶えた。好きだなぁこういうほんわかなの。

>>298
>特に5レス目のキスする意味が分かんなかった。伏線無いよね?w
乙女なんですよ、はやり接吻なんですよ。
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:09:43.00 ID:xr7O44hQ0
おみくじ
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:12:08.83 ID:BZlscW/s0
>乙女なんですよ、はやり接吻なんですよ。
けしからん! まことにけしからんぞ!
昨日は接吻話ばっかではないか!
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:13:27.20 ID:wkTDcwmq0
みんな鬱憤たまってるんだよ
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:17:33.26 ID:mcJ4arF90
俺も接吻してえ
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:18:35.38 ID:dWxbtKlt0
そういえばここで書いたものは主人公は違えど話の場所はみんな同じ大学っていう設定なんですけど
そういう無駄な設定とか初めから読んでる人間ばかりでも無しに止めたほうがいいなと今気づいた
307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:20:34.85 ID:xO08Nqhy0
今日は節分じゃないか
308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:23:14.49 ID:eegSP0nFO
>>306
知ってなきゃいけない話さえ書かなければ自由じゃない?
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:31:11.06 ID:q0YFakOV0
>>306
そんなことを言ったら俺が死ぬ
主に俺の中のヒーローと小学生達が死ぬ。
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 00:54:42.93 ID:dWxbtKlt0
大学生活記として長編板に挑戦してみようかなとか考えながら保守
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:00:04.52 ID:T5a1lc0R0
せっかく品評会のネタ思いついたのに一発抜いたらどうでもよくなった保守
312ルール0/5 ◆ibD9/neH06 :2008/02/03(日) 01:05:14.63 ID:3Ou0UiC50
品評会作品を投下してしまいそうです
313ルール1/5 ◆ibD9/neH06 :2008/02/03(日) 01:06:05.72 ID:3Ou0UiC50
 全車両の空気が全て外へ抜けるような音を合図に、扉がゆったりと閉まっていく。
 隣の席に腰掛ける禿頭の老紳士は、背もたれ深くどっかり腰掛け、駅の売店で購入したと思しき文
芸誌を膝の上にのせて、早くも微かな寝息をたてていた。
 今朝から止まぬ暴風雪により、列車は予定時刻よりも十五分ほど遅れての発車となったため、箱中
に気だるい空気をより気だるくするお詫びのアナウンスが流れる。
 ガタリゴトリ。
 進行中だということを全身にまざまざと伝える祭囃子のような震動に嫌気がさした頃、私は窓外の
景色を見やってみる。
 それもまた面白みのない事だとは分かっていたのだが。
 雪化粧の施された郊外を走っているため、雪化粧の施された郊外の景色しか映らない。
 ただ見渡す限り、畑地が役割を担わず惰眠を貪っていた。
 雪の棘で殺されてしまったのかもしれない。当たり前のように音もたてず。
 当たり前のことが当たり前にあるという現実は、逆に規範を逸脱しているように感じる。
 そんな筋の通らない幼い思想が片隅に残っている。
 ガタリゴトリ。
 愚かだとは分かっているのだが、どうにもその思想を無下にはできない。
 私は疲労する心を座席に埋めるが如く、どっぷりと背もたれに身を任せ、閉じた瞼に冷えたタオル
を乗せた。
 簡易の闇が齎すまどろみを泳いでいると、俄かにおぼろな、それでいて馬鹿馬鹿しい過去へと逆行
するような感覚に捉われた。
 散文家を気取る者ならば、さしずめ記憶の発掘とでも無意味に肉付けして、偉そうに連呼するとこ
ろだろうか。
314ルール2/5 ◆ibD9/neH06 :2008/02/03(日) 01:06:42.05 ID:3Ou0UiC50
 大学時代からの友人が、警察の厄介になったと人づてに聞いて、出張ついでに見舞い品をぶら下げ、
彼の住むアパートを訪ねたことがある。
 地金が覗けていた、とでも言おうか。
 扉が開くとまず目に飛び込んできたのは、皮膚を突き破らんとする鎖骨とさんばら髪。色素の薄れ
た乾いた肌。目のふちは赤く爛れ、顔中の筋肉は緩み、値踏みするかのように澱んだ三白眼で睨んで
くる。これがかつて大学一の好色漢と謳われた友人だと、誰が信じれるだろう。まあ私ぐらいなもの
だ。
 部屋には生ごみや空のダンボールが密集しており、特に生ごみの袋内部では小さな羽虫が所狭しと
蠢いていた。
 なるだけ淡白な声で、どうしたんだねと尋ねると、いや、と笑ってかわされる。歯もぼろぼろで概
ね黄ばんでおり、歯茎と歯との合間に青黒い何かが付着している陰惨な映像が、今 でも記憶に熱く
焼きついている。
 いや、付着しているのではない。地金が覗けていたのだ。
「つまりそうだな……僕の神経は思いのほか繊細だったということかな」
 言葉尻に吐き出される、彼らしくもない諦念とも思える苦笑(まさしく吐き出すという表現がぴた
りと嵌るのである)。
「精神病か何かかね」
「んんや、その呼称は具体的でないな」
 少しは緊張の糸が解れたのか、彼はちびた煙草を咥えて膝を崩す。封を切っていないマイセンを勧
めたが、そんなの吸った気がしないと、にべもなく断られた。
 私が手を引っ込めると、彼は「ふぅ」と重い溜息を地面に転がし、心臓を毟り取るかのように、乱
暴に自分の胸に爪をたてた。
「恋わずらいだ」
315ルール3/5 ◆ibD9/neH06 :2008/02/03(日) 01:07:19.08 ID:3Ou0UiC50
 初恋だったのだという。
 大学を苦労もなく出た彼は、市内の高校で教鞭を執ることと相成った。生徒への人気取りにも成功
したらしい。
 だが常に世間を上空から見下ろしているような失敗しらずの彼にとって、我慢ならぬ事件が起こった。
 どうしても一人。いくら此方から話しかけても、目すらあわせようとすらしない女子生徒が居たら
しい。その娘は成績も悪く、なおかつ補習にすらも立ち向かってこない素行の悪さ。たいそうな不良
だった。
 彼は憤慨し、興奮した。
 憤慨しているんだから興奮して当たり前じゃないかと私が話を遮ると、それとは別種だよ馬鹿お前
昔から頭固いんだよ馬鹿と彼が二回馬鹿と蔑んで座布団を投げつけてきたから、お前こそなぜ座布団
投げるかこの馬鹿と(以下略)。
 気づいた頃には、彼はその生徒に夢中になっていた。
 かつて難攻不落と恐れられた絶世の美女を、一晩足らずで陥落させた経歴を持つ救いようのない男
の魔の手から、かの女子生徒は見事逃げ切ったためである。
 結果―――。
「純愛だった」
 愛しさ余ってなんとやら。友人は程無くしてピュアストーカーにジョブチェンジ。二年にわたる尾
行、潜入活動の末、干してある彼女の下着に鼻先を擦りつけているところを、近所にお住まいの鼻セ
レブ(まるでピノキオのような鼻だったと彼は語る)に通報され、逮捕へと繋がる。
 あまりに支離滅裂な言動に納得がいかない私は、とりあえず彼の薄汚れた顔めがけて座布団を投げ
つけたが、すぐさま倍の量のゴミ袋(生)を投げ返された。
「規則やルールを踏み越えれば自ずと違反になるのだ。仕方ないことなのだ。不平等な法律にしがみ
付いて妬むことしか出来ぬ劣悪な連中には分かるまい。生徒に恋することがそんなに愚行か! 体操
着姿の彼女を押し倒したいと思うことがそんなに不潔か! お前らはそんなことすら実行に移す度胸
もないくせに偽善を振りかざすな! 潜入捜査の中で僕は彼女の恥部を知って、ますます知りたくな
っただけだ。くそう、純愛なんだっ!」
「お前中盤以降わけわからないこと口走ってるぞ」
316ルール4/5 ◆ibD9/neH06 :2008/02/03(日) 01:07:48.52 ID:3Ou0UiC50
 ある程度形作られた常識やら規範が焼き付けられるより前、つまり物心つく前より、特殊な環境下
で育てられると、認識も同様に特殊に捻じ曲げられまま育つことが多い。
 イレギュラーな存在は往々にして弾かれやすい。社会では表面上はどうであれ多数決至上主義、少
数派の意見は聞き入れられず、多数派の生きやすいように構築されていく。いつしかそれが“普通の
ルール"として馴染んでいった。
 少数派の意見は黙殺されるため、いくら取り繕ったところで確執や隙間は残される。
 だからその箇所はルール違反として取り締まり、立ち入られぬようにしてしまう。
 異常という壁での遮断。
 だがその箇所こそが、真にあるべきものだと考える少数派は、消えることはない。
 そんな少数派に属する人間でも子供は作る。そして少数派の教育を施し、少数派の思想を宿した少
数派を作り上げる。
「その少数派の子供というのが、お前の惚れた女子生徒ということ、でいいのか」
「滅茶苦茶雑にまとめるとそうなる。どうやら父親の手……いや腰で、性教育とかも仕込まれている
らしかったが、もう確認するわけにもいかない。監視されているから。それにそういう育て方も、否
定できない。何が悪いのかと迫られたら、なんとも返せない。これだからやたら批判を繰り返すのは
危険なんだな」
 一通り話し終えたところで、持参した見舞いの饅頭を頬張り、温いビールを流し込んだ。
「さすがに餡とは合わない」
「合わないが、僕はさほど嫌いじゃない。というか好きだ」
「好きにしろ」
「好きにした」
 そうして彼は満足気に横になり、「いやあ実に純愛だった」と愚行を懐かしんでいた。
317ルール5/5 ◆ibD9/neH06 :2008/02/03(日) 01:08:36.96 ID:3Ou0UiC50
 目が覚めると、列車は未だに運転中。隣の老紳士は頻りに腕時計を確認し、「いかんな……これは
いかんな……」と幾分困った様子だ。そんなにいかんなと呟かれると、こちらまで困ってしまいそう
である。
 時計を確認して困ったと認識できることといえば、大体が列車の進行が遅れている場合などである。
 一応腕時計を覗いてみると、なるほど。もう目的地への到着予定時刻などとっくに過ぎている。
 おそらく私が寝ている間にまた風雪が強まり、途中の駅で足止めをくらったのだろう。
 列車側にとって、風雪などは逆賊であり、少数派の障害であるため、蹴散らしながら引かれたレー
ルを直走る。
 国から認められた道。多数派の道。正道である。
 それを覆そうと、少数派の風雪が吹き荒れる。
 勿論、頑なな列車を廃線に追い込むことは殆ど不可能。されど予定時刻をいくらか狂わせることは、
可能なのである。
 だがやはり皆、不毛なせめぎ合いだ。こういう類の青臭いテーマは十代の若者に突きつけるべきで
はないか。
 当たり前のものを当たり前に受け入れるぐらいが、今の私の狭量には丁度よいのかもしれない。
 なぜなら疲れるから。
 私はほころぶ口元をタオルで覆い隠しながら、また記憶の発掘へと取って返した。

〈了〉
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:09:22.40 ID:3Ou0UiC50
以上です。ありがとうございました
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:28:20.21 ID:fZYGWKac0
320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:32:37.31 ID:W2fToG2Q0
お題くれ
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:33:58.87 ID:OkctMFaY0
札幌
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:36:09.09 ID:W2fToG2Q0
あと2,3個ぷりーず
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:36:39.51 ID:FljJgRXw0
時計台
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:36:44.04 ID:wkTDcwmq0
那覇
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:37:01.57 ID:t6R0qSQa0
雪のなかのみで生きる透明な虫
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:37:21.65 ID:W2fToG2Q0
はあーく
327以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:37:25.04 ID:B9DeXpod0
>>322
唯一の方法
328以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:39:41.12 ID:W2fToG2Q0
>>327
も把握
329以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:40:32.44 ID:OkctMFaY0
札幌の時計台で発見された、雪の中のみで生きる透明な虫。
絶滅寸前の彼を助けるには、那覇に連れて行くこと以外助ける方法は無かった。

わけ分からんw
330以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:41:17.82 ID:OkctMFaY0
そして、二行目で日本語まで捩れた…orz
死のう…。
331以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:43:38.52 ID:t6R0qSQa0
急速な寒冷化により荒廃した世界。
かつて「札幌の時計台」として親しまれた建物の廃墟に住む少年は、壊れかけの無線機を通して、那覇に住む少女と交信する。
雪のなかにのみ住む透明な虫「ユキムシ」だけが友達の彼は、ユキムシを引き連れて少女の元へ……
だめだ、なんかオチが思いつかない
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:44:21.18 ID:t6R0qSQa0
あ、唯一の方法入れ忘れた
そうねー……
思いつかね
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 01:50:06.88 ID:dWxbtKlt0
札幌で発見された雪のなかにのみ住む透明な虫。奴らは毒を持って人間を苦しめ始めた!
主人公は何とかして時計塔に虫をおびき寄せ、唯一の撃退方法である、「那覇の空気に触れさせる」ために
時計塔をロケットに改造して那覇へと……
334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:00:07.98 ID:Ky7aC2K3O
雪の中でしか生きられないのに目的地が那覇ってどーなのよ?
335以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:05:07.97 ID:nwQn1Is40
お、なんか面白そうなことやってるな。
だが書く人のハードルはどんどん上がっていくという
336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:12:30.28 ID:FxMiLGVP0
札幌と那覇、遠く離れた場所で文通をする二人
病気で余命いくばくもない札幌の子のために、那覇の子が願いをかなえるという「雪のなかのみで生きる透明な虫」を探しに札幌へやってくる
彼を救うためにはこれが唯一の方法だったが、どこを探しても見つからず…

うん、やっぱ無理だなぁwww
337以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:13:37.42 ID:FxMiLGVP0
うはw時計台抜けてたwww
さあ>>328がんばれwwwww
338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:16:44.33 ID:t6R0qSQa0
やっぱりファンタジータッチなんだな……
雪のなか(ryと那覇の矛盾の解消がポイントでしょうか
変なお題出してごめんなさい
339以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:17:23.53 ID:OkctMFaY0
お笑い芸人を目指す少年は、雪の(中略)虫を見てあるギャグを思いつく。
これこそ売れるための唯一の持ち芸と判断した少年は、その足でオーディションに向かうのだった。
「札幌!時計塔!那覇那覇!」

うーん
340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:26:32.28 ID:mcJ4arF90
雪の中のみで生きる虫は札幌で時計塔で那覇、つまりはそういうことだったのだ。
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:27:26.62 ID:eegSP0nFO
ボーイズビーアンビシャス!
クラーク博士が指差していたのは実は那覇だった!?
雪の中で虫のようにウジウジした純粋培養のどさんこが札幌から一路那覇へ!!
「青春プレイバックじゃあああああ!!!1」
三郎じいさんの旅が始まるっ!
死亡フラグたちまくりADV「黄泉送り」今冬発売っ☆


よし死のう
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 02:58:46.42 ID:mcJ4arF90
あれ、品評会今日で終わりか
こりゃ無理だな。
343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 03:00:31.50 ID:2fq/eE4g0
>>342
まだあと20時間くらいありますよ
諦めたらそこで試合終了ですよ
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 03:04:14.37 ID:nwQn1Is40
今回のお題は結構面白い事なるな。
王道とそれ以外の比率がうまいことなりそうだ
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 03:05:12.81 ID:mcJ4arF90
俺がんばってみるよ
とりあえず10時間ほど睡眠取るわ
起きたら妖精さんが書いてくれてるはず
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 03:09:15.40 ID:2LYnLbV10
エスコン6やったら酔ってしまった。
文字打ってると画面が揺れるww
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:02:06.51 ID:22lwr5UB0
348 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:07:47.20 ID:rAWQQmU/0
品評会作品投下
349 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:10:50.32 ID:rAWQQmU/0
おっとなんか書き込めない。
今スレの調子おかしいんだっけ?
350家路1/4 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:13:32.21 ID:rAWQQmU/0
 こぼれ落ちる砂のように、誰も止められないままに僕たちの時間はすぎていく。だから、僕
たちはこの時間をどんなに守ろうとしても、卒業という差し迫った別れを必ず迎えることにな
るだろう。
 変わることを恐れないで、とイヤホンから響く歌が言うけれど、変わるのは嫌だ。僕は自転
車を精一杯の力でこぐ。川に反射した夕日がきらきらと瞬く。僕はそれを見ない振りをする。
それから歌が聞こえない振りをする。けれどもきっともうすぐ夜が訪れる。
 時間はすぎていく。それがこの世界の絶対のルール。

 川沿いの道を抜けるころ、終わらない歌を歌おう、とイヤホンから歌が響くが、終わらない
はずの歌はあたりまえのように終わり、夜が始まる。丸太に電球を取り付けただけの古い街灯
では水面が見えないが、川はきっと静かに流れている。
 イヤホンを外して、僕は世界の音を聞く。
 その間にも時間がすぎていく。自転車をこぎながら風や鳥や数多の音の中に体を晒している
と、単純に気持ちがいい。冬の空気の寒さも、積極的に味わおうとすれば、緩んだ身を締めて
くれるような心地よい感覚をもたらしてくれる。
 そしてせっかくの締まった体を再び緩ませたのはケータイのバイブ音だった。一緒に歌が聞
こえる。
――I can change the world
 メールの着信。やじーから。
「合格通知届いたよ!」
 僕は自転車を止めて、返事を送る。「おめでとう」

 イヤホンから歌が言う。変えられないものを受け入れる力、そして受け入れられないものを
351家路2/4 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:14:11.40 ID:rAWQQmU/0
変える力をちょうだいよ。
 僕は自転車をこいでいる。まだ家は遠い。冬の夜風はさすがにきつくて、僕は脱いでいたコ
ートをかごから出して羽織る。田んぼ道は街灯の間隔が遠く、その中間ほどの光の届かない暗
闇の中で黒いコートを羽織っても、見た目にはきっと何も変わらない。
 冬の田んぼには稲は生えていない。昼間ならば土や藁が見えるのだろうけど、暗くなって影
と化している遠くの山までの風景は、崩壊した世界のように何もない。
 光のグラデーションが車を呼び、猛スピードで僕を抜く。機械の轟音がした。あるいはガソ
リンの臭い。そして闇へのグラデーションと再び訪れる静寂。風に僕の羽織ったコートが揺れた。
 僕は世界に対して無力だ。知ってはいたけれど。

 機械を動かすには動力が必要で、原始的なものであればそれは人力だったりするのだが、僕
のMDプレイヤーを動かしているものはボタン電池だ。
 かつてMDの時代があった。それはウォークマンとiPodの二つの固有名詞をを繋ぐ、ほんの
わずかの期間であったけれども、確かに存在した。ミレニアムはMDの支配下にあった。
 僕が不安に思うのは、それを人々が忘れてしまうのではないかということだ。既にノスタル
ジックなアイテムとして、創作物の世界でカセットは価値を持っている。それに現代音楽史に
おいても、重要な素材であったことは間違いない。
 そうした現代における機能的価値や文化的価値を背負っていないMDはやがて人々の記憶か
ら消えていくのではないか。
 僕はこのMDプレイヤーを小学生のころサンタクロースからもらった。僕はまだサンタクロ
ースを信じている。そう言わせてくれ。
 ともかく、電池の尽きたMDプレイヤーからは何も聞こえない。
352家路4/4 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:15:53.85 ID:rAWQQmU/0
ことはないだろうし、もっと言えばこの自転車に乗ることももうなくなるかもしれない。
 だから僕は自転車をこぐのだ。

 峠の頂上で僕は止まった。迷っていたのだ。行こうか、引き返そうか。そのとき、何百キロ
も先の水平線が光った。毎日起きることを奇跡とは誰も呼ばないから、それは断じて奇跡では
なかったが、神聖さや荘厳さの範疇には、少なからずあった珍しい夜明けだった。
「友情は永遠だぜ」
 僕はやじーの言葉そのままにメールを送り返した。(笑)はつけなかった。
 朝日が僕を刺した。字は正しい。だから僕は坂を降りた。そのときMDプレイヤーがポケッ
トから落ちたことに僕は気づかない。
 MDプレイヤーは断末魔をあげた。

 Hello,Hello,can you hear me?
 Are your skies clear and sunny down there?
 Even in this rain,
 the breath of the breeze is reaching me here

イヤホンから漏れる音は誰にも聞こえない。
 僕は坂を下る。出したことのないスピードで、風を切っていく。冬の早朝の凍えた空気は、
もはや僕に快楽などもたらさず、ただただ頬や手を削ぐように、厳しく僕に襲いかかる。それ
でも僕はブレーキをかけない。
353 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:16:26.25 ID:rAWQQmU/0
以上です
354 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:17:28.65 ID:rAWQQmU/0
と思ったら3/4が書き込み反映されてねーじゃんか!
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:21:42.20 ID:xO08Nqhy0
えーと、さる?
356家路3/4 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:21:47.89 ID:rAWQQmU/0

 時刻は明日を迎えようとしている。家がまだ遠いのは、僕が帰ろうとしないからだ。僕はこ
の自転車でどこまでも行ける。たとえば海さえも。
 やじーからまたメールが来ていたのに僕は気づかなかった。気づかない振りをした家からの
着信に紛れていた。
「これで離れ離れ決定だな。けど友情は永遠だぜ(笑)」
 僕は山を登っている。峠を超すのだ。ママチャリではきついけれど、僕は立ってペダルをこ
いだ。
 僕には名付けようのない意思があった。誰も歌ってくれない今、僕は自分で歌うしかなかっ
た。
 せめて少しはカッコつけさせてくれ。寝た振りしてる間に出て行ってくれ。
 あーあー、と僕は熱唱する。
 暗い夜の帳の中へ。
 古い歌を僕は歌う。僕が生まれるより前に作られた歌を。

 抗う。と書いてあらがうと読む、と模試の回答例を見て知った。つまり僕はこの文字を読め
なかった。あらがうという言葉は知らないが、漢字が抵抗の抗であるからに、抵抗するという
意味で間違いないのではないか。
 僕は自転車をこぐ。坂道はきつく、歌など歌っている場合ではない。僕が今すべきことは自
転車をこぐことだけで。
 この自転車は中学に入学したときに通学のために親から買ってもらったものだ。あのころサ
ドルは一番低い状態で、だからこそ当時の僕に合うということで選んだ代物だったのだが、今
ではあのころと比べてサドルはずいぶんと高くなっている。しかしこれ以上サドルを高くする
357 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:25:07.23 ID:rAWQQmU/0
どうやら改行が一行目に来てたのがいけないらしい。
運営に迷惑かけそうだし、自分で俺のところまで転載してきます。
やったことないからなんか怖いけど。
358以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:29:10.28 ID:2LYnLbV10
運営さんにお願いした方がいいんじゃね?
いろいろとややこしくなりそうな予感。
359 ◆Gv599Z9CwU :2008/02/03(日) 04:35:15.96 ID:rAWQQmU/0
すでに二つ上の人の転載しちゃった
そしてミスったorz
360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:35:58.53 ID:xO08Nqhy0
酉がおかしなことになってましたね…
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:41:33.13 ID:Ccn9Epiw0
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |  お任せ下さい  |
 |________|
   ∧,,∧ ||
  (´・ω・)||
   /  づΦ
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:42:33.65 ID:2LYnLbV10
神降臨
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:42:50.39 ID:xO08Nqhy0
頼もしい人キタw
364359:2008/02/03(日) 04:46:49.22 ID:SLs+Z1/ZO
さるった。

>>361
すいませんお任せします。
次の人も一レスやってしまったがそこでやめておく。

本当に大変な作業をいつもありがとうございます。
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:47:03.74 ID:BZlscW/s0
キャー! カッコイイ!
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:47:09.64 ID:9vT2cSP60
よし。題よこせ
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:48:40.19 ID:xO08Nqhy0
>>366
縁の下の力持ち
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:50:56.04 ID:2LYnLbV10
>>366
「いつもありがとう」
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:52:45.77 ID:9vT2cSP60
はい。無理
370以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:56:45.93 ID:2LYnLbV10
>>369
ええええええええええ!?
371以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:57:52.38 ID:Ccn9Epiw0
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 | ここまでまとめ済 |
 | 皆さん寝てます? |
 | 徹夜は毒ですよ |
 |________|
   ∧,,∧ ||
  (´・ω・)||
   /  づΦ
372以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:58:16.25 ID:xO08Nqhy0
>>361
まさに
俺たちにできないことを平然とやってのけるッ
だなぁ
本当に乙であります

しかし、一度該当レス以降を破棄するって感じで
過去の1レスだけを変えるのは難しいんかな?
373以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:58:53.04 ID:BZlscW/s0
>>371
お疲れ様です。
374以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 04:59:05.57 ID:V6rts1vZ0
>>371おつ!!!!
375以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 05:00:49.45 ID:2LYnLbV10
>>371
乙です! いつもありがとう!
376以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 05:05:51.62 ID:OkctMFaY0
>>371
毎度思いますが、貴方の猫のAAは普通の猫より可愛いですねw
377以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 05:57:36.86 ID:EuJ5w8L2O
明日でテスト終わりだ…やっと復帰できるぜー、保守
378以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:17:05.60 ID:f7dJtzEQO
「毀れる(こわれる)」、という漢字を使いたいんですが、読めない人も多いと思うから、
最初の1レス使って説明(一、二行で)してもいいですか?
その1レスをあわせても、5レスになるんですが


>>371
おつ!!
379以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:25:37.16 ID:2LYnLbV10
>>378
説明するより、どうにかして文中で読み方なり意味を伝えた方がいいと思うよ。
……どうにかしてね、うん。


俺には方法が思い浮かばないよ
380以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:28:42.39 ID:Fm21fo1O0
「土の上に臼があった」
「ふむ」
「凡から点を取って又の上に乗っけた」
「臼どうした?」
「こわれた」
「そうか」

という会話を挟んでみたらどうだろう
381以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:30:07.07 ID:f7dJtzEQO
>>379
説明するっていうより、ルビをうちたいんですが(わかりにくい文章ですいません)、
自分がちょっとまえまで読めなかったから、読めない人もいるかもと思って。
382以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:38:30.03 ID:xO08Nqhy0
毀れる(こわれる)
と、このまま書くしかないんじゃない?
383以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:42:28.26 ID:eegSP0nFO
しゃー!できたー!!!1ひと眠りして推敲するぞー!
改めて一人称の楽さを感じた
384以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:43:04.98 ID:XAGvVxy90
30行以内に収めるようにって書いてあるけど
30行オーバーって起こらないよな
VIPって30行までのレスだし
385以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:43:26.10 ID:lO1a5h5p0
おはよう、と生活を朝方に切り替えた俺が言ってみる

品評会ってどんなもんなんだろって思って前回の優勝作品見て愕然とした
こんな猛者がいるのかこのスレには。とてもじゃないが一週間で仕上げたとは思えない……

>>381
毀れる(こわれる)って括弧内にルビ振っていいんじゃないかな
多用するとくどくなるから好きじゃないけど、場所が場所だし
386以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 06:43:33.09 ID:f7dJtzEQO
>>380
KITUI

>>382
やっぱそうかな。テキトーでいいか
387以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 07:02:36.27 ID:OkctMFaY0
>>385
前回は接戦だったし得票自体少なかったしそうでもない方だよ。
消去法で決まった感じ。
票数はあてにならないけど、圧倒的な作品があった回を読んできてみ。
俺の中では、79回と86回はダントツ。
388【品評会】毀れた乳母車が並ぶ自転車店 (0/4) ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:06:32.15 ID:f7dJtzEQO
投下します。

ルビ
毀れた(こわれた)
389【品評会】毀れた乳母車が並ぶ自転車店 (1/4) ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:07:55.03 ID:f7dJtzEQO
 或る森の近くに、小さな寂れた村があった。
村には十七人の老人しか住んでいなくて、
年金と、それぞれが仕事をして稼いだお金で生活していた。
村人は、しかし買物や年金の引き落としなど、生活のほとんどを近くの町に頼っていた。
 その村は、町に頼らなければ存在することができなかった。
 十七人の老人だけが住む村は、死に似た閉塞感がただよっていた。

 一人がいった。
『養子をもらって、この村でそだてよう』
村人は次々に賛成していった。
そして最後に、自転車店をひらいている爺さんが賛成して、村は養子をもらうことになった。
 そのあと村人達は、養子は一人しかもらわない、というルールを決めた。
それは、こんな未来のない村にくる子供は、不幸だと思ったからだった。
つまり、この村にもらわれるその一人は、村人達を慰めるための玩具――――いけにえに近かった。


 乳母車に乗せられて、村に来たのは女児だった。
 十六人の老人(一人は児と入れ替わるように死んだ)の中の、自転車店の爺さんが、
村にきた女児の子守りをすることになった。
この村では自転車に誰一人として乗らないので、彼が一番ひまだったのだ。
 彼は、どこからか毀れた(ルビ:こわれた)乳母車?
390以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 07:14:34.73 ID:f7dJtzEQO
すいません。なにかおかしなことになってるので、投下しなおします
391以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 07:18:22.40 ID:2LYnLbV10
さる?
392【品評会】毀れた乳母車が並ぶ自転車店 (1/4) ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:24:39.56 ID:f7dJtzEQO
 或る森の近くに、小さな寂れた村があった。
村には十七人の老人しか住んでいなくて、
年金と、それぞれが仕事をして稼いだお金で生活していた。
村人は、しかし買物や年金の引き落としなど、生活のほとんどを近くの町に頼っていた。
 その村は、町に頼らなければ存在することができなかった。
 十七人の老人だけが住む村は、死に似た閉塞感がただよっていた。

 一人がいった。
『養子をもらって、この村でそだてよう』
村人は次々に賛成していった。
そして最後に、自転車店をひらいている爺さんが賛成して、村は養子をもらうことになった。
 そのあと村人達は、養子は一人しかもらわない、というルールを決めた。
それは、こんな未来のない村にくる子供は、不幸だと思ったからだった。
つまり、この村にもらわれるその一人は、村人達を慰めるための玩具――――いけにえに近かった。


 乳母車に乗せられて、村に来たのは女児だった。
 十六人の老人(一人は児と入れ替わるように死んだ)の中の、自転車店の爺さんが、
村にきた女児の子守りをすることになった。
この村では自転車に誰一人として乗らないので、彼が一番ひまだったのだ。
 彼は、どこからか毀れた乳母車や毀れたオモチャを拾ってきては、
毀れたまま、児に与えた。
彼は児をあいしていた。とても愛していた。他の村人が、うとましくなるほどに。
393【品評会】毀れた乳母車が並ぶ自転車店 (2/4) ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:26:49.96 ID:f7dJtzEQO
 四年後に、一人の老人と一人の少女だけが住む廃村では(老人の九人が死に、
六人がこの村では暮らせないと言って町に出ていった)、
ところどころに毀れた乳母車や毀れたオモチャが散らばっていた。
 死んだ九人のうち七人は、自転車店の主人――村に残った爺さんが、殺したのだった。
村人達は、少し体調を悪くされただけですぐ死んだ。
ひとりを殺すたびに、彼には何かが変わる予兆みたいなものが込み上げてきた。
そして、それは、予兆のまま終わった。
 全く、老人ほど簡単に死ぬものはないのだった。

 ……もしかすると君は、勘違いをしているかもしれないが、
彼が殺人を犯したのは、少女を独り占めするためではなかった。
また、彼にとって、少女は希望ではなかった。逆だった。絶望、だっだ。
 彼には、少女がいい人間に育つとは思えなかった。
子を捨てるような親から生まれ、一人の子をいけにえにしてでも希望を見い出そうとする村に拾われ、
能無しで、しかも殺人まで犯してしまうような人間に育てられて、
いい人間に育つはずがないと思っていた。 

しかし、彼は少女のためにいきていた。たしかに生きていた。
彼は少女を愛していた。それは少女がなんであろうと、変わることのないことだった。

――――一つ、お願いがある。君には、この殺人を、ただ残虐な行為という一言で片付けて欲しくない。
人は、希望がなく、どうしようもない閉塞感の中では、死体となにも変わらない。
彼は、脳を圧迫しつづける閉塞感の中で、くらくらしながら、
なにかを変えようとしたのだから。
死へ向う村の、なにかをかえようと、もがいていたのだから。
394【品評会】毀れた乳母車が並ぶ自転車店 (3/4) ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:28:41.48 ID:f7dJtzEQO
 小学生になるまえに、少女にすこし勉強をさせておいた方がいい、と彼は思った。
 しかし、彼自身は小学校にさえいっていなくて、教師となって教えることはできず、
できることといえば、少女の同級生となっていっしょに勉強することだった。
 いっしょに勉強することは、少女はオモチャをもらうよりも喜んだ。
彼と少女は互いにおしえあいながら勉強した。
彼もすこしずつ勉強が判っていくのが楽しかった。
 彼は少女を愛していた。しかし、少女がいい人間に育つとは思えなかった。
けど、けれど、彼は少女にいい人間になって欲しかった。
いい人間になって欲しい――――彼はそう考えてからいつも思う。
『“いい人間”って、なんだろう』
そんなこと、誰にも判るはずはなかった。
判るはずがないことを考えて、考えて、考えぬいて、彼はいつも同じ結論を出す。
『もう少し、さんすうができるようになったら、少しくらいは判るようになるのだろうか』
 誰にも、判るはずのないことだった。


 ――少女は死んだ。なんの前触れも無く。それは老人達が死んだのと同じように、あっさりと。
 彼は彼の首あたりの、彼の頭を支えていたものがぽっきりと折れてしまったようなきがした。
彼はうずくまり、爪を立てた両手で顔を覆った。
確かに生きている彼が持つ頭蓋骨には、
生きている他の人間と同じように、悲しみの皮がこびりついて剥がれなかった。
 毀れた乳母車が並ぶ自転車店で、うずくまり、彼は、この村には自分一人しかいないことを感じていた……。
395【品評会】毀れた乳母車が並ぶ自転車店 (4/4) ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:29:42.33 ID:f7dJtzEQO
 一つの毀れた乳母車の中に、少女がいれられていた。
少女は、乳母車からすこし手足をはみ出していて、それは彼女の成長の証であったが、
これから迎える腐敗の証でもあった。
 彼は乳母車のなかの、毀れてしまった少女に話しかける。
(僕たちにんげんは、ぜつぼうすると、首の骨がぽきりとおれちゃうね。なんでだろうね。)
 少女は最初、乳母車に乗って、彼のもとにやってきた。
そして、しぬときは、毀れた乳母車に……。
(僕たちにんげんは、ぜつぼうすると、首の骨がぽきりとおれちゃうね。なんでだろうね。)
 彼は何処かへ出かける。


 彼は乳母車を押して、山道を進む。乳母車の車輪がぐるぐると廻っている。
そして、暗い絶叫のような森の中へ。
 土を踏む彼の靴の裏には、数匹の虫の死骸がへばりついている。
虫は、あの村人達と同じように死んでいた。
乳母車の車輪にも、虫の死骸がへばりついている。
虫も、老人や少女のようにいとも簡単に死んでしまうのだった。

 森の中。車輪と共に、赤や青や黄色の汁をしたたらせながら、数匹の虫の死骸が廻りつづけている。
 毀れた乳母車の中には、毀れてしまったちいさなにんげん。
 虚無を乗せた乳母車を押して、生きたまま壊れてしまった人間は、いったい何処まで行くのだろう。

まだ、さんすうの教科書も終わってないのに。
解きかけの問題も、残っているのに。

『いい人間って、なんだろう?』
その答えもまだ、出ていないのに。
396 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:30:30.63 ID:f7dJtzEQO
以上です。
ルビいれわすれました。

毀れる(こわれる)
です
397 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 07:34:02.56 ID:f7dJtzEQO
言い忘れた
さるありがとう。
てまどってすいません。

もう一作あるので、(推敲もうちょっとしてから)投下します。そのときもよろしくう
398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 07:52:57.81 ID:jdRAID6C0
>>392-395
完全素人目から見るとなんじゃこりゃなんだが。
文法はさておきすんげー答えが出てない感じだ。

↓お題 こいつはくせえーッ!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーッ!
399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 07:57:53.24 ID:2LYnLbV10
>>398
その世にも恐ろしい臭くて堪らないお題、俺が引き受けた。



後悔するなよ?
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 07:59:24.08 ID:jdRAID6C0
>>399
おう!期待してるぞ!
401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 08:16:49.03 ID:lO1a5h5p0
>>387
今すぐ読みたい気分だが用があるので晩に読む
なんかすごいwktk

>>392-395
なにかしら「壊れた」を「毀れた」にする必要があるのかと思ってたんだけどな。
ざっと読んだ感じでは特に必要性が感じられなかったり。
ストーリーはなんとなく判るけど、最後までモヤモヤが残る感じ。
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 08:32:56.08 ID:bIusIrXo0
知り合いが起きるまで暇なんでお題くださいまし
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 08:33:38.34 ID:Fm21fo1O0
爆睡
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 08:38:13.50 ID:bIusIrXo0
>>403
お題thx
405(0/2)  ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 08:45:18.53 ID:2LYnLbV10
お題 こいつはくせえーッ!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーッ!

さあ出来たぜ、準備はいいか、野郎共。
あぁ、最初に一つだけ言っておく。心して聞けよ?




暇人以外は絶対に読むな。後悔するぞ。あとフルボッコ禁止な?
406(1/2)  ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 08:45:48.23 ID:2LYnLbV10
この世の中が、この腐った世界が、俺は大嫌いだ。
いつもいつも、耳に入るのは下らない話題、目に入るのは下卑た卑しい笑い顔。
つまらない事で、よくもまぁ楽しめるもんだ。そんなに楽しいのかね、俺にはさっぱり分からない。
はみだし者とレッテルを貼られ、社会不適合者と罵られる、そんな毎日を俺は送っている。
くだらない人生だと馬鹿にするならするがいいさ、俺はそんな罵倒なんて気にしない。
せっかく社会というクソッたれな檻から抜け出したんだ、せいぜい自由にさせてもらうさ。
えげつない社会の裏側も、お高く纏った見せ掛けの世の中も、俺には関係ないのさ。
――見てろ、今に見返してやるさ……誰にも造れない俺だけの楽園――
っと、ちょっと熱くなっちまった。どんな時でも冷静に、冷めた視線で世の中を見下ろす。
it's cool.そう、クールにだ。冷静さを欠いては、大事な事を見落としてしまう。
407(2/2)  ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 08:46:21.84 ID:2LYnLbV10
ゲームセンターで時間を潰す。周りを見れば、これまた下らない人間が集団ではしゃいでいる。
ローゼンメイデンのキーホルダーが取れなかった俺は、少しばかり冷静さを失っていた。
以下にその後の出来事について、少しばかり回想してみよう。

下品な笑い声だな、そう俺は口にした。
のっぺらぼうみたいな顔をした男がこちらを振り向く。なんて凹凸の無い顔なんだ、笑えるぜ。
にかっとのっぺらぼうが笑う。口はあるみたいだな、じゃあ喋れるのか。
おい、とのっぺらぼうが話しかけてくる。臭い息だな、ちゃんと歯を磨けよ。
いい度胸だな、お前。
ガンをとばしてきた。周りの人間も俺を見ている。皆して特徴の無い顔だ。
プッと思わず吹き出してしまった。いやはや、没個性というのも時には笑えるもんだ。
ンダコラァ! とのっぺらぼう以下略達が怒声をあげる。
プッとまた吹き出してしまった。なんとも個性の無い、連中だ。台詞まで使い回しの様な陳腐なものだとは。
ンダコラァ! ……もういい、飽きた。
すぅっと一回、深く息を吸い込む。これ以上人の視線を浴びるのは嫌だ、イライラする。
ルールは無用、喧嘩にそんなものは必要ない。
ぜってー殺してやっからなぁ!! のっぺ(ryが殴りかかってきた。
ッ!! 左頬に痛みが走る。でもこれでいい。喧嘩にルールは無いが、俺なりの作法と言うものがある。
一つ、殴られるまで殴るな。
一つ、殴られるように相手をけしかけろ。
一つ、殴られたら殺す気で殴り返せ。
っと、しまった。また熱くなってしまっていた。これでは勝てるものも勝てない。
it's cool. 冷静に、熱くならず、淡々とこの腐った野郎共をぶちのめすのだ。


以上なんだぜ
408 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 08:46:56.35 ID:2LYnLbV10
後悔はしていない。反省はしている。
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:03:06.30 ID:jdRAID6C0
期待した俺が悪かった

↓お題 悪いな。この車3人乗りなんだ。
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:09:52.31 ID:Fm21fo1O0
じゃあそれもらうわ
411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:11:35.00 ID:eegSP0nFO
禁止:スネ夫
412以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:16:56.91 ID:2LYnLbV10
変な夢を見た。
すげえ変なお題貰って、何書こうっかなーって思ってたら、
何を血迷ったのか「立て読みにすればおもしろいんじゃね?」とか思いついて……
おかしいな、パソコンの電源入れっぱなしだ。寝る前には消したはずなのに。
それにしても恐ろしい夢だった。まさかな、俺があんな、小説とも言えない駄文を書くなんて……
書くなんて、ありえないんだ。
恐ろしい夢だった……夢だったんだ……
……夢なんだ、たとえ俺の酉で妙な文章が投下されていても、それは俺の与り知る所では無いんだ。
まったく、こんな朝っぱらから何を考えているんだ俺は。疲れているのだろうか。
さて、品評会作品も書き上げていないんだ、こんな事をしている場合じゃない。
さっさと書いて投下して、全感でも書くとしよう。

別酉で
413以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:22:10.91 ID:jdRAID6C0
すまない。ジョジョネタを知らないとは思わなかった。
414以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:29:56.43 ID:2LYnLbV10
いや、知ってたんだ。知ってたんだけど、ストレートでお題使うのもどうかと思ったんだ。
まったく、夢の中の俺はどうかしてるな。普段の俺ならあんなの書かねーよw
いや、俺じゃないな。俺ならもっとこう、ハードでボイルドな……
とにかく俺じゃないよ、あんなの。
俺じゃないんだ……
俺じゃない……
俺は……
orz
415以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:37:30.74 ID:ARg+/Nkr0
気にするなって、誰でもあることさ!
俺も最初はつらかったけど、今じゃスルーされることに快感すら覚え始めた

ということでお題
416以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:40:27.97 ID:t6R0qSQa0
那覇で積雪
417以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:41:12.38 ID:eegSP0nFO
オアシス
418以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:41:48.16 ID:ARg+/Nkr0
また那覇かよ、把握
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:42:18.73 ID:ARg+/Nkr0
>>417
それももらった
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:42:31.45 ID:gYSj6/5BO
お題ちょうだいよ
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:43:37.09 ID:t6R0qSQa0
>>420
札幌で猛暑
422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:44:22.00 ID:2LYnLbV10
>>415
ありがとう勇気出たちょっと吊ってくるお題くれ
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:46:54.82 ID:MyYKhYvs0
村八分
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 09:48:51.16 ID:2LYnLbV10
え? それお題? なんかすげえ不安になってくるNE!!
425(お題:悪いな。この車3人乗りなんだ。)1/2 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 09:58:05.68 ID:Fm21fo1O0
 耳鳴りのする轟音が静まった後、硝煙の臭いが辺りに立ち込めた。そしてまた、マシンガンの
けたたましい音が目立つようになった。私はずり落ちているヘルメットをあげ、崩れかかった窓
から少しだけ頭を出した。
「何をやっている! 頭を下げろ」
 そう怒鳴る軍曹殿の声を聞いて、私は急いで頭を引っ込めた。それと同時に、頭の上を銃弾が
掠め、背後の壁に当たって弾けた。
「衛生兵、衛生兵!」
 と叫ぶ兵士は、負傷した別の兵士を抱えている。その兵士の腹部からは、今も血がドクドクと
流れ、目はどこか遠くを見つめているように見える。
「こちらMJ-01部隊、応答せよ! 応答せよ!」
 無線機に向かって絶叫する通信兵。ガーガーと雑音を鳴らしながら、無線機からは一向に明確
な答えは返ってこない。
 まさにここは地獄だった。そして夢見た戦争は、最悪だった。私は胸に下げたロケットを開き、
中に入った妻の写真を見た。私が故郷を後にしてから半年。もうお腹の子供が生まれてもいい頃
だ。
「何をしている!? 直ちに弾薬を補充しろ!!」
 軍曹殿の強烈な激が飛ぶ。私はハッと我に返り、すぐに自分の仕事を始めた。憎き敵に向かっ
て届くように、祈りながらロケットランチャーに弾を装填した。軍曹殿はそれを抱え、敵のいる
茂みに向けて照準を合わせた。
 その時、軍曹殿の右肩に、敵の方から飛んできた鉛球が命中した。軍曹殿はそれを物ともせず
に撃った。命中したかどうかは、この位置からはわからないが、そのすぐ後に大きな爆発音が轟
いた。
 軍曹殿はその一発を撃った後、大きくよろめきながら尻餅をついた。息を漏らしながら、傷に
片手を宛がう。私が心配して駆け寄ると、軍曹殿は余った手で邪険に振り払う。
「構うな! 次の弾を装填しろ!」
 私は自分の愚鈍さに、心底愛想をつかしていた。この限界状況下で、故郷にいる妻と子を想う。
そしてそれが、自分の仕事に対する甘えになっていたのだ。軍曹殿がこうなったのも、私がもた
ついていたせいなのだ。
426(お題:悪いな。この車3人乗りなんだ。)2/2 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 09:58:36.12 ID:Fm21fo1O0
 その時、通信兵が身を屈めながら駆けてきた。軍曹殿に向かって敬礼した後、涙混じりの声で
言った。
「我が軍は、全面降伏を発表しました……!」
 軍曹殿の顔がみるみる変わる。怒っているような、嘆いているような、そんな複雑な表情だっ
た。
「つきまして、降伏の証として捕虜を何人か寄越せ、と敵軍の方から……」
 顔を向き直すと、そこにはいつもの、しかめっ面の軍曹殿がいた。
「……了解した。総員、射撃やめーーーーー!」
 軍曹殿が、掠れた声を振り絞りながらそう叫んだ。それまで騒がしかった音はすぐに止み、全
員が軍曹殿の方を向いた。
「すぐにジープを用意しろ。捕虜には私がなる。他に志願者はいないか?」
 捕虜になれば、いつ祖国に帰れるかわからない。というよりも、もう二度と祖国の土は踏めな
いかもしれない。それにも関わらず、兵士の内2人が手を挙げた。
「軍曹殿に付いていきます!」
 1人はそう言って、もう1人は黙って軍曹殿をじっと見つめていた。軍曹殿の人柄があったか
らこそだと思う。気づくと、私を含め兵士全員が、その2人と軍曹殿に向かって敬礼をしていた。
 ボロボロになったジープに、軍曹殿と2人の兵士が乗り込んだ。私はその光景に、いてもたっ
てもいられず、軍曹殿にこう言った。
「私も捕虜になります。連れて行ってください!」
 軍曹殿は私の顔を見た後、私が首にかけているロケットをチラリと見た。
「悪いな。この車、3人乗りなんだ」
 眉一つ動かさずに、軍曹殿はそう言った。軍曹殿からこんな冗談を聞いたのは、この部隊に所
属されてから初めての事だった。唖然とする私を尻目に、軍曹殿を乗せたジープは、敵軍の方に
向かって走り出した。

427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 10:02:52.08 ID:gYSj6/5BO
>>421
把握
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 10:36:58.36 ID:eegSP0nFO
長くても60文字の30行揃えなのになぜか途中で切れて投下されることがあるのが怖いんだよなぁ
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:09:55.31 ID:gYSj6/5BO
430 ◆Bf9IIj31BY :2008/02/03(日) 11:23:54.02 ID:hSdLPibWO
品評会作品投下
2レス頂きます
431三秒ルール 1/2 ◆Bf9IIj31BY :2008/02/03(日) 11:24:47.46 ID:hSdLPibWO
「あ、ちょっと今何したの」
 姉は箸を咥えたまま、食卓越しに俺を睨み付けた。
「なにが?」
「今。落ちた大根食べたでしょ」
 俺は目の前に置かれている山盛りのおでんと自分の箸に目を落とす。
 食卓には先程箸から滑り落ちた大根の痕跡が飛び散っていた。
「別にいいじゃん、食卓が汚いわけでもないし」
 布巾で痕跡を拭き取ると、白い布巾はおでんの汁色に染まった。
「卑しいヤツ。まだこんなにあるのに」
「失礼な。MOTTAINAIの精神は大切だよ、姉さん」
 おでんの山からコンニャクを探して箸で突き刺す。
 姉はまだ腑に落ちない様子で箸を咥えていた。
「三秒ルールって知らない?」
「アンタあんなつまんないもの信じてるの?」
 コンニャクの弾力を噛み締めながら、俺はハンペンに箸を伸ばす。
「信じる信じないの話じゃないね。あれは気持ちの問題」
 箸を突き刺すと、ハンペンからはジワリと汁が滲み出た。
 汁をこぼさずに口に運ばなくてはならない、緊張だ。
「なおさら馬鹿げてる。ただの卑しい欲望の具現じゃない」
 食卓にきらめくおでんの汁の粒を凝視しながら、ハンペンを咀嚼する。
 出汁が染みていてとても柔らかい。
「それ、ちゃんと拭いてね」
 目敏く指摘され、しぶしぶおでんの汁色の布巾を掴んだ。
 その間にも俺の右手はおでんの山に突っ込まれる。
「姉さんはそういうの嫌うタイプ?」
「うん、キライ」
 確かに姉はキレイ好きで、曖昧なことは嫌う性格の人間だ。
 しかも理屈っぽい。
 面倒臭い姉を持ったものだと、山から探し出したハンペンを口に運びながらしみじみと思った。
432三秒ルール 2/2 ◆Bf9IIj31BY :2008/02/03(日) 11:26:09.08 ID:hSdLPibWO
「あ、またこぼした」
 相変わらず目敏い。
 これを拭いたら布巾を洗ってきた方がいいかもしれない。
「ていうか、ハンペン食べ過ぎ!」
 俺が三枚目に手を出しているのに気付いて、姉が咥えていた箸を解き放った。
「あっ」
「あぁっ!」
 俺の箸と姉の箸が衝突し、ハンペンが箸の間をすり抜ける。
 出汁をに撒き散らしながら、ハンペンは盛大に食卓に張り付いた。
「あ、あー……」
 二人でハンペンを凝視する。
「最後のハンペン……」
 姉の視線が俺に向いたのが分かった。
 そういえば姉もハンペンが好きだったなぁ。
「……三秒ルール」
 ポソリと、呟く。
 途端、姉は真っ赤になった。
「アンタ、さいてー!」
「いーち」
「馬鹿、阿呆ーっ!」
 ハンペン一枚でムキになれるのは良い性格だ。
「別に故意じゃないんだから。にー」
 歯をガチガチ鳴らしながら俺を睨み付ける姉の姿は何だか面白い。
 きっと欲望とプライドの間で苦悩しているんだろう。
 さすがに可哀相かなと思い、俺はおでんの汁色に染まった布巾を取って立ち上がった。
 台所でこれを洗っている間にハンペンがどうなっているか、見物だ。
 消えてなくなっていたら面白いのに。
433 ◆Bf9IIj31BY :2008/02/03(日) 11:26:49.26 ID:hSdLPibWO
以上です
スレ汚し失礼
434二月の深雪(お題・村八分)0/4 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 11:42:28.82 ID:2LYnLbV10
出来たんで投下しますよっと。
今度は真面目に書いた、これで帳消しだ。
……?なに言ってんだ俺。帳消しって……?
435二月の深雪(お題・村八分)1/4 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 11:43:04.47 ID:2LYnLbV10
 深々と雪が降り積もる二月の夜、僕はその子を深雪と名付けた。
 ボロボロの布切れのみを身に纏い、行く当も無く彷徨っていたその子は、小さな子猫だった。正確
には、小さな子猫のようだった。寒さに身を震わせ、歯をカチカチと鳴らせながら、公園のベンチで
蹲っていた。
「どうしたの?」
 僕がそう話しかけても、その子は返事をしなかった。恐らく口が上手く動かないのだろう、何か言
いたげな視線を僕に向けてきた。
「うちに来る?」
 そう問いかけると、その子は三回、必死に首を縦に振った。僕は着ていたコートをその子に着せ、
両腕で抱きかかえると、ここからさほど遠くない僕の部屋へと連れ帰った。
 部屋に着いて、僕はまず風呂を暖めた。抱きかかえている途中、その子の身体はまるで雪像のよう
で、触れると冷たく、少しでも動かすと壊れてしまいそうなほどに凍っていた。風呂場に行って湯を
張り、その場しのぎの乾いたふかふかのバスタオルを女の子に渡した。ところが僕には思慮が足りな
かった。まず着替えさせるべきだったのだ。ぼろ切れの下は裸だったのだという事を、すっかり失念
していた。
 取り敢えずタオルを彼女に渡し、自分の部屋にいって適当な服を見繕った。たしか代えのパジャマ
があったはずだったので、それを貸そうと思った。サイズは合わないだろうが、そこはあまり気にし
ないで貰おう。
 箪笥の奥にあったグレーのスウェットを引っ張り出し、彼女のいる居間へ戻る。相変わらず冷え切
ったぼろ切れを纏ったままだ、このままでは風邪をひいてしまう。
「はい、これを着て。風呂は沸かしておいたから、まず先に入ってくるといい」
 スウェットを渡して、女の子に入浴を勧める。
「そこの扉を出ですぐ右手にあるから。トイレはその向かい側だよ」
 特別広い部屋に住んでいるわけではないが、一応説明をしておいた。女の子は着替えを受け取ると、
その布切れを纏ったまま、風呂場へと消えた。ボイラーの使い方を説明するのを忘れたが、別に知ら
なければ知らないでいいだろう。
 彼女が入浴している間、僕は夕飯の準備をしていた。彼女の好き嫌いはわからないので、適当に、
無難なおかゆを作った。冷えた身体にはこれが一番だろうという僕の判断だ。料理は得意な方だが、
これくらいしかおもてなしが出来ないというのも事実だ。せめて美味しいものを作ってやろうと息を
巻いた。
436二月の深雪(お題・村八分)2/4 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 11:43:45.13 ID:2LYnLbV10
「はい。こんなものしか用意できないけど、遠慮せずに食べて」
 風呂から上がり、パジャマに着替えた彼女を、僕はテーブルに誘った。独りしか住んでいないくせ
に四人用のテーブルなんて、と思ったときもあったが、こういうときに便利なものだと感心した。
 彼女は黙ってイスに座り、暫くテーブルに並べられた料理を見渡していたが、やがてレンゲを手に
取り、おかゆを啜り始めた。
「っ……!」
 レンゲを口につけた途端、彼女の身体がビクッと震えた。そしてコップを手に取り、中の水を一気
に飲み干した。
「もしかして、猫舌? ごめんね、熱すぎたかな」
 僕がそう言うと、彼女はふるふると首を横に振り、再びおかゆを食べ始めた。火傷しないように、
ふーふーと息で冷ましている様子を見て、やっぱり子猫みたいだなと思った。
 食事が終わって、僕は彼女に色々尋ねた。自分の事、家族の事。どうしてあんなところに、あんな
格好でいたのか。だが彼女は答えるどころか、一切の言葉を発しなかった。イエスかノーで答えられ
る質問、例えば、親はいるのかなどの質問については、首を振って答えた。因みに親は健在らしい。
 僕は困り果ててしまったが、詮索するのはやめておいた。質問に答えてくれなくても、出会ったと
きの状況が幾らか情報を与えてくれる。とりあえず、相当な理由があったのだろう。でなければあん
な格好で真冬の寒空、しかも夜に公園で震えているなんてないだろうから。
「まぁ、好きなだけここにいればいいよ。部屋は余っているし、一人増えたところで大した問題は無
いから」
 僕がそう言うと、彼女は小さく頷いた。
 それから二人の生活が始まった。相変わらず言葉を発することは無かったが、それでも意思の疎通
は出来るようになった。彼女の微妙な仕草の変化で、考えている事、感情の変化、僕に伝えたいこと
が、何となくではあるが理解できた。僕の裾を引っ張るのは食事がしたい、腕を掴むのは風呂に入り
たい。背中をつつく時は、なんとなく一緒にいてほしいらしかった。
 この子に懐かれるのは、とても心地よかった。まるで本当の子猫のように擦り寄ってくる少女に、
我が子のような愛情を抱くようになった。そんな僕の感情を読み取ったのか、時には一緒に寝るよう
にせがんでくる様になった。彼女もまた、僕の事を親のように思ってくれているらしかった。
 僕は彼女を、深雪と呼ぶことにした。呼びかけるだけでは味気ないと思ったからだ。彼女の本当の
名前を知らなかった僕だが、その名前を思いのほか彼女は気に入ってくれたので、そう呼ぶことにし
た。
437二月の深雪(お題・村八分)3/4 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 11:44:25.40 ID:2LYnLbV10
 深雪との生活が始まって一ヶ月ほど過ぎたある日の夜、深雪はいつに無く真剣な面持ちで僕の目の
前に立ち、両手を握ってきた。この仕草は今まで見たことが無く、何事かと思った。彼女は僕の手を
引くとテーブルのイスに座らせ、彼女もまた僕の向かいのイスに座った。
「どうしたの?」
 僕がそう聞くと、彼女は一枚の紙切れを僕によこした。手紙のようなものだが、彼女が書いたのだ
ろう。「深雪より」と最初に書かれていた。
 その手紙には、色々なことが書かれていた。
 深雪は生まれつき言葉が話せないこと、以前住んでいた場所は、それはもう田舎で閉鎖的で前時代
的で、いまでも村八分という習慣が執り行われているという事。言葉が話せない自分を災厄の種とし
て、皆が村から彼女を追い出した事。喋れないという理由で両親にすら相手にされず、友達すらいな
くて孤独な人生を歩んできた事。僕と出会ったあの日、本当はこのまま死んでしまおうと思っていた
事。でも死ぬのがとても怖くて泣きそうだった事。僕と出会う前、凄く怖い目に逢っていた事など、
色々書かれていた。
 そして最後に、
「おかゆ、とてもおいしかった。ありがとう」
 拙い、お世辞にも綺麗とは言いがたい文字で書かれていた。
 顔を上げると、深雪は泣いていた。自分の胸の内を打ち明けることが出来てホッとしているのか、
それともまた追い出されると考え、怖くて泣いているのか。目に溜まった涙が限界を迎え、遂には大
泣きしてしまった。声は出す事ができないが、それでも心の声が伝わった。声にならない叫びとはこ
の事を言うのだと思った。
「大丈夫だよ。僕は追い出したりしないから。だから泣かないで」
 それでも深雪は泣き止まなかった。必死に涙を拭い、泣き止もうとする努力も空しく、涙は溢れ続
けた。
「深雪」
 そう言って僕は深雪の頭を優しく撫で、
「僕が君のお父さんになるよ。世界中で一番優しい、君のお父さんになるから」
 そして、小さな頭を胸に抱き、
「だから、僕と一緒にいてほしいんだ。この部屋は、独りでいるにはもう広すぎるよ」
 この子の父親になると、そう誓った。
「っ……!」
438二月の深雪(お題・村八分)4/4 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 11:45:04.00 ID:2LYnLbV10
 深雪の涙が止まったように感じた。時間も何もかもが動きを止めたような、そんな沈黙が流れた。
時計の秒針の音も聞こえなくなって、本当に時間が止まってしまったように思えた。さらさらと耳に
響くのは、恐らく雪の積もる音だった。それが嫌に大きな音に感じた。
「ぅ……っ」
 その、雪に積もる音に埋もれてしまいそうな、小さな微かな音。それを僕は聞き逃さなかった。雨
音よりも澄んでいて、雪の音より軽やかな、綺麗な音だった。
「深雪……?」
 気のせいじゃない、今確かに深雪は……
「ぅあああああああああああああ!」
 大声を上げて、思いっきり、今までの人生の苦しみを吐き出すように、深雪は泣いた。
 その声はどうしようもなく大きな泣き声で、それでも、とても綺麗な音で。その涙は世界中のどん
な清流よりも清らかで、美しくて。
 僕は胸に抱いた深雪の頭を、暫く離そうとは思わなかった。
 この子が泣き止むまで、せめて今まで受けられなかった愛情を少しでも与えてあげようと、力一杯、
でも優しく、抱きしめた。

439二月の深雪(お題・村八分) ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 11:46:37.26 ID:2LYnLbV10
じゃあ、次のお題貰おうか。
440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:47:54.18 ID:TNW5DP4B0
>>439
五人組み
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:48:25.03 ID:t6R0qSQa0
>>439
ラブライフ
442二月の深雪(お題・村八分) ◆c3VBi.yFnU :2008/02/03(日) 11:48:41.70 ID:2LYnLbV10
把握した。
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:49:59.98 ID:TNW5DP4B0
お題をくれ
444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:54:40.44 ID:f7dJtzEQO
>>443
手帖
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:54:51.57 ID:2LYnLbV10
花びら
446以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:55:11.78 ID:TNW5DP4B0
>>444
把握
447以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 11:56:24.21 ID:EGe8qb7e0
448以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 12:21:56.65 ID:2LYnLbV10
保守だ。
449以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 12:27:08.21 ID:ZAdwKaId0
>>439ちょいと気になったとこをいくつか

>小さな子猫だった。正確 には、小さな子猫のようだった
この言い回しおかしくね?

>料理は得意な方だが、 これくらいしかおもてなしが出来ないというのも事実だ。
主人公は貧乏なの?

>火傷しないように、 ふーふーと息で冷ましている様子を見て、やっぱり子猫みたいだなと思った。
猫ってそんな食い方しないよね?雰囲気が猫っぽかったってこと?

>雨 音よりも澄んでいて
雨音って澄んでるか?

>「ぅあああああああああああああ!」
おもいっきり泣いてるけど結局のところ深雪が喋れなかったのは身体的理由?
それとも精神的理由?そこらへんが曖昧だたから泣いたときはちょと混乱した

あとは主人公の心理描写が弱い。普通の人間はしないような行動をしているわけだから
それなりの心の揺れを書くか、そういう行動をとってしまいかねないバックグラウンドを与えるかしてほしかった

こんなとこか。まあ俺の独断と偏見だからムカついても許してくれよwwww


450品評会いわない/友情/忘れたくはないんだ0/5 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 12:29:06.05 ID:f7dJtzEQO
投下します。全5レス
【品評会】
451品評会いわない/友情/忘れたくはないんだ1/5 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 12:30:01.23 ID:f7dJtzEQO
 ぼくはシンユーと二人で、二人だけのルールをきめた。
『ぜったいに、人の悪口はいわない』
 中一の夏、ぼくらはかっこいい大人になりたかった。


 ……それは、ある日の放課後、七八人で帰ってて、みんなが吉長の悪口を言ってもりあがってたあとだった。
シンユー以外はみんな言って、みんなわらってたあとだった。

「あんなの、かっこわるい」別れ道のあと、二人っきりになってからシンユーがいった。
「なあ、オレたち二人だけでも、悪口はいわないでおこう」
 ぼくはうなずいた。ぼくも(悪口に参加してたけど)、たしかに、かっこわるい、そうおもった。
そうおもって、二人で約束した。もう、ぜったいに人の悪口はいわないようにしよう、って。
 二人だけのルールをきめて、ぼくは、なんだかうれしかった。
 放課後になっててもあそんでたから、そのときにはもう夕方になっていて、
夕日にてらされた柿いろの帰り道で、僕らは、友情……っていう、
ことばにすると少し照れわらいしたくなるようなものを、かんじていた。
452品評会いわない/友情/忘れたくはないんだ2/5 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 12:31:06.53 ID:f7dJtzEQO
 ルールをきめてからはぼくは、誰かに嫌なことをされても陰口じゃなく直接いうようにした。
あと、みんなとしゃべってて、悪口のわだいになったときは、何もしゃべらないようにした
(ノリが悪いって、空気読めよって、言われたけど)。
 五ヶ月ぐらいいわないでいけて、ぼくは、うまくいくとおもってた。
ぼくさえ破らなければ、このルールは、ずっと破られることはない、っておもってた。

 ――けど、シンユーは悪口を言ったらしかった。しかもぼくの。
 ぼくは、悲しかった。
 悲しかったけれど、しかたがない、しかたがない、とおもった。
ぼくも、何度も言ってしまいそうになったし、空気が読めないっていわれるのはつらかった。
そのまえに、まず、あの『ルール』を、シンユーは思いつきでいっただけで、覚えていないのかもしれない。
 しかたがない。そう思った。同時に、シンユーのことを、かっこわるい、とおもった。
ぼくは、シンユーのことを、悪口を言わないかっこいいヤツだとおもってたから、
悪口を言ってるのは、かっこわるい、とおもった。
 ぼくは、シンユーに何かをいいたかった。
 それは、『ルール』を破ったからじゃない。
ぼくのことを、悪く言ったからじゃない。
何かをいわないと、いけないから。
いわないと、シンユーのことを、嫌いになってしまいそうだから。
453品評会いわない/友情/忘れたくはないんだ3/5 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 12:32:45.19 ID:f7dJtzEQO
『かっこわるいよ』帰り道、ふたりっきりになってから僕は言った。
シンユーは、ん? とこちらを向いた。
『人の悪口を言うなんて、かっこわるいよ。だから、カッちゃん、人の悪口はいっちゃだめだよ』
シンユー……カッちゃんは、オレはいってないよ、と言った。
ウソだ。ぼくは思った。ウソをつかない委員長の吉長から聞いたんだ。
『ウソだ』
「ウソじゃねえよ」
『ウソだ! 吉長からきいたんだ!』
「だからウソじゃねえよ!」
『ウソなんかつかないでよ!』だんだん声が大きくなってくる。
「なにいってんだよ。約束しただろ? 俺たち二人は、悪口をいわないって」
『もういいよ! しらねえ!』僕は叫ぶように言った。
約束をおぼえておきながら破って、しかもウソまでついた!
そう思うと、悲しさより怒りがこみあげてきた。
「こっちだってもうしらねえよ! わからずや!!」
 そういってからカッちゃんは速歩きになってぼくからはなれていった。ぼくは、そっちこそわからずやだ! と心のなか叫んだ。
 カッちゃんの背中が遠のいていくのがみえていて、急に『吉長が、かんちがいしたんじゃないか』ということが頭によぎった。
けど、もう一度、わからずや! と強くおもって、打ちけした。


 それから、ぼくはカッちゃんと話をしていない。
 ぼくは、仲直りをしたかった。けど、できなかった。ぼくには、ほんとうにカッちゃんが悪口を言ったのか、違うのか、判らなかった。
違うようなきがどんどんしてきて、罪悪感だけがふえていった。あやまりたかった。
 ぼくはそれから、カッちゃんがだれかの悪口を言っていたという話は聞かない。
また、ぼくも、誰の悪口もいわないでいる。
 それは、かっこいい大人になりたいとかじゃない。
もし言ってしまえば、もう、仲直りの言葉はいえないような気がして。
この『ルール』だけが、ぼくとカッちゃんを、つないでいるような気がして。
 ケンカをしてから、ぼくは一人で下校している。
454品評会いわない/友情/忘れたくはないんだ4/4 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 12:34:03.63 ID:f7dJtzEQO
 …………大学からの帰り、僕は小走りで電車に乗った。
席が空いていたので座って、ドアが閉まって、電車は走りだした。外は雪が降って寒くて、電車の中は暖かかった。
僕は、窓ごしに、遠のいていく乗車駅が夕日のなか小さくなっていくのを見ていて、
急に、カッちゃんの、あの小さくなっていく背中を思いだした。
電車はゆるやかにカーブして、駅は見えなくなった。
 あれから、いつの間にか僕はオトナになっていた。そして、二人で決めた『ルール』なんて忘れていた。
シンユーを、忘れていったのと同じように。
シンユーへの、罪悪感を忘れていったように。

 結局、『悪口を言ってしまえば、仲直りはできない』というぼくの予感は当たった。まだ、仲直りはできていなかった。
そして僕は、大学に入ってから、みんなと同じように数えきれないほどの悪口を言っていた。
 人がまばらな電車の席で、カッちゃんを思い出しながら夕日をみていると、なんだか、少し涙が溢れてきた。
寒い所に居たせいか、少し熱く感じる涙だった。
僕はうずくまる。落ち着こうとする。感傷的なのは、かっこわるい、とおもった。
うずくまった暗やみのなか、ぼんやりと見えるカッちゃんの背中は、小さくなっていって、すっ、とはじける。
涙は、冷たくなってくる。さめたなみだ。僕は涙を拭く。
“なんで、わすれてしまったんだろう”
 涙は乾いて、跡にも残らない。
 ガタゴトと単調な音だけが暗やみのなかで聞こえてた。


 電車は感傷的な夕焼けのなか走っていたが、やがて、真っ暗な地下へ潜り込み、その体を柿いろから真黒へ変えた。
 僕は少し目線をあげて、向こうの窓に広がる黒をみつめてた。

“ぼくらは”
僕は心のなかつぶやいた。
“なんで、わすれてしまうんだろう”

 僕には、感傷的に涙をながすだけで、またわすれてしまうことが、こわかった。
455 ◆/sLDCv4rTY :2008/02/03(日) 12:36:01.80 ID:f7dJtzEQO
以上です。すべて */4でした。すいません
456以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 12:40:38.83 ID:ZAdwKaId0
>>426臨場感があまり伝わらない。あとオチが読めた
なんだか物語の一部分を読まされた感じ。場景描写が拙すぎるし足りなすぎる。

457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 13:14:07.78 ID:Ky7aC2K3O
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 13:40:09.23 ID:6Pa1GFLX0
お題よろ
459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 13:40:48.36 ID:Bc3YJ+A+0
碁石
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 13:41:49.58 ID:CxcBREfYO
いま何作品くらい?
まだ一行も書いてないんだ
461以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 13:42:10.68 ID:6Pa1GFLX0
>>459
把握・・・なんともいやらしい
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 13:48:41.89 ID:mcJ4arF90
起きたぜ。
……ふう、終わったな
463以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 13:49:42.38 ID:9UcSfVzU0
碁石が墓石に見えた
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 14:11:15.01 ID:mD+RQUvX0
品評会作品投下するー。5レス
465【品評会】クロスウォーク 1/5 ◆p/4uMzQz/M :2008/02/03(日) 14:11:58.58 ID:mD+RQUvX0
 今日は、学校は四時間目まででした。
 いつもより早く帰れるのは嬉しいなぁ。私はお友達のゆうちゃんと、通学路を歩いて帰っていました。
「一昨日新しいゲーム買ってもらったのにさ、兄ちゃんがずっとやってて変わってくれねーんだよ……」
「ゆうちゃんのお兄さんって、中学生だっけ?」
 しょげた様に俯きながら歩くゆうちゃんの後ろを、私は付いて歩きます。前向かないと危ないんじゃないかなぁ。
「うん、そう。ていうか奈摘ー、俺のことゆうちゃんって呼ぶの止めろよ。何度も言ってんじゃん」
 でも呼びなれてるんだもん。ずっと昔からそう呼んでるから、もう直せないよ。
 私がそう言うと、ゆうちゃん更に落ち込んだみたいです。可愛いなー。
「何だよ……兄ちゃんも奈摘も全然言う事聞いてくれない……」
 可愛いなんて言ったら、ゆうちゃんは更に落ち込むだろうから口には出しません。
 そうして歩いていると、目の前に大きな道路が見えてきました。
学校から私たちの家のある団地までの間に一本だけある、結構大きな道路です。
信号が赤なのにゆうちゃんは止まりませんでした。私はその手をがっしりと掴みます。
「何すんだよ、今車来てないから渡ればいいじゃんか」
「だめだよ! 信号はちゃんと守らないと危ないんだから」
 これだからゆうちゃんは放って置けません。一人にしておくととても心配です。
「ふん……奈摘って、ウチの母ちゃんみたいにうるせーなホント!」
 そう言って、ゆうちゃんはちゃんと止まってくれました。良かったです。
「先生にもちゃんと言われてるじゃない、社会のルールは守りましょう、って」
「知らねぇよ、ルールルールって。何でそんなの守らなくちゃいけないんだよ」
 その時です。
「それはな、少年」
 急に私たちの後ろから声がしました。驚いて振り向くと、
そこにはびしっ、っとしたスーツを着た若いお姉さんが居ました。
「ルールはそもそも守るものなのだ。どうしてと言っても、そういうものなのだよ」
 眼鏡ごしにお姉さんが私たちをのぞき込んできます。とっても綺麗な人ですが、何だかニヤニヤ笑っています。
「敢えて言うなら守った方が自分にも周りにも結果的に都合が良いから、とでも言ったところか。
 まぁ、こうして色々言ったところで、今の君たちには分かるまい」
「な、なな、何だよお前! いきなり出てきて変なこと言って!」
466【品評会】クロスウォーク 2/5 ◆p/4uMzQz/M :2008/02/03(日) 14:12:09.38 ID:mD+RQUvX0
 ゆうちゃんがお姉さんに叫びます。私も、お姉さんの言うことはほとんど分かりませんでした。
 お姉さんはゆうちゃんの事は気にしてないみたいに、笑って私の頭を撫でてきました。黄帽の上からですが。
「君は良い子だなぁ。お友達がルールを破ろうとしたら、ちゃんと止めてあげた。
 中々出来ることじゃないんだよ、それは」
 よく分かりませんが、どうやら褒められているようです。
取り合えず私は、ありがとうございます、と頭を下げました。
「なに奈摘こんな変な奴と喋ってんだよ! そうだ、コイツ不審者だぞ! 奈摘!」
 ゆうちゃんの声で私は驚いて、戸惑いました。このお姉さんが、学校で言われたような不審者にはどうしても思えなかったからです。
 向こう側で信号待ちをしている犬を連れた人も、ゆうちゃんの声でこちらを向きました。
「あー、ストップストップ。そこの男の子ブザーから手ぇ離して。私もう消えるから」
 慌ててお姉さんは私の頭から手を離しました。やっぱり、危ない人じゃないみたいです。
「ゆうちゃん、止めてあげて」
「奈摘騙されんなよ! こいつ絶対危ないやつだ!」
「もう! ゆうちゃん!」
 だからごめんってー、と言いながら、お姉さんは私たちから離れます。
「私危ない人じゃないからね、ね。私も横断歩道渡りたいからここに居るけど、君たちに何もしないからね」
 お姉さんと私の間にゆうちゃんが立って、腕を広げて私を守るようにしてくれています。
止めてと私は言っていましたが、少し嬉しくもありました。
「もういいからね、ゆうちゃん。信号変わるよ」
「…………おう」
 変わらずゆうちゃんはお姉さんの方を睨みつけていますが、それでも私たちは信号を渡り始めました。
少し離れて、お姉さんも信号を渡っています。ちょっと落ち込んでいるみたいで、悪いことをした気分になりました。
「ねぇ、ゆうちゃん。やっぱりあのお姉さんに謝ったほうがいいよ」
 相変わらず後ろを睨みつけているゆうちゃん。前向かなきゃ危ないよ、って……。
『バウワウワウワウ!!』
「う、うわあぁっ!」
467【品評会】クロスウォーク 3/5 ◆p/4uMzQz/M :2008/02/03(日) 14:12:22.38 ID:mD+RQUvX0
 前から歩いてきていた人が連れている犬が、急にゆうちゃんに吼えかけました。
凄い勢いでゆうちゃんの方に飛びかかろうとしています!
「おいっ、タマっ、どうしたんだ急にっ!」
 その犬は私たちの体くらいあるかというくらい大きく、飼い主さんが必死に押さえますが
リードは手を離れ、ゆうちゃんに目掛けて飛び掛ります。
 必死に私も一緒に逃げますが、逆側に走り出そうとしたところで、車が一台こちらに曲がって来るのが見えました。
「「わ、わああぁ!!」」
 急ブレーキのけたたましい音が耳に飛び込んできます。私は目をキツく閉じてその場に倒れました。
何かが砕けるような音や、犬の鳴き声がした後、辺りは静かになりました。
 ……でも、いつまで待っても衝撃はきません。ゆっくり、目を開きました。
「──奈摘、大丈夫か」
 目の前にはゆうちゃんがいました。道路に倒れた私を庇うように、上に覆いかぶさっていました。
「ゆうちゃん! え、だ、大丈夫、ってぐえっ!?」
 私が驚いたのと同時に、ゆうちゃんが私に圧し掛かってきました。お、重い。
『バウワウワウワウ!』
 ふと上を見ると、私たち上にあの犬が見えました。どうりで重い訳です。
犬は楽しそうにゆうちゃんのランドセルにじゃれついています。襲おうとしたのではなかったみたいですね。
「君たち、だいじょーぶぅ?」
 犬が私たちから剥がされました。さっきのお姉さんです。
 私は服とランドセルの汚れを払いながら立ち上がりました。 
「えと、あ、あの……」
 辺りを見渡すと、車はすぐ手前で止まっていました。よく分かりませんが前の窓ガラスの一部に、クモの巣みたいなヒビが入っています。
映画で見た、銃で撃たれたような感じです。運転手さんは運転席に突っ伏していて、顔が見えません。
 車の横に犬の飼い主さんもいました。地面にへたれこんでいます。
「一体、どうなって……?」
 お姉さんは飼い主さんのところへ犬を連れて行って、何やらお話していました。
なんだか飼い主さんが、お母さんに怒られる時のゆうちゃんみたいな顔をしています。
468【品評会】クロスウォーク 4/5 ◆p/4uMzQz/M :2008/02/03(日) 14:12:34.02 ID:mD+RQUvX0
「おい、奈摘、どうしたんだこれ?」
 同じく立ち上がったゆうちゃんが尋ねます。でも、私もよく分かりません。
「まさか。あの姉ちゃんがやったのか」
 そう、なのでしょうか。
 そのお姉さんは今度は車の方へ歩いていきます。あれ?
なんだか歩き辛そうです。ヒールの片方が折れているみたいですね。
「──お前な! 横断者が居るかどうかくらい確認してから曲がれ! 最低限のルールだぞボケが!」
 今度は大きな声なので、お姉さんが言っていることが聞こえてきました。
運転手の人は青い顔をしています。でも、ちょっと言葉が汚いですね。
「次やったらお前自身をこの窓ガラスみたいにしてやるからな! 覚えとけ!!」
 最後に車を、ガン、と蹴ってから、お姉さんはこちらに歩いて来ました。
「お、おい奈摘、逃げようぜ」
 ゆうちゃんが私の手を引っ張ります。でも、私は動きませんでした。
「たいした怪我は──無さそうだね。良かった。君たちも気をつけるようにね」
 そう言ってお姉さんはまたニヤニヤと笑います。私は躊躇いながらも口を開きました。
「お姉さん、スカートずれてますよ……」「ってうわぁ!」
 気付いてなかったみたい。慌てて直しています。私はゆうちゃんの目を手で塞ぎながら笑いました。
 離せよ何だよ言ってるゆうちゃんは無視して、お姉さんに尋ねてみます。
「あの、お姉さん」「なぁに?」「あの」
 お礼よりまず、疑問が湧いてしまいました。
「お姉さんって、一体何なんですか?」
 その、ひょっとしたら失礼かもしれない質問に、お姉さんは笑ったまま答えました。
「正義の味方よ。あ、美人の、ね」
 ……格好良い。お姉さんが輝いて見えます。
 自分で言うなよ、とゆうちゃんが後ろで呟きました。ちょっと黙れ。
469【品評会】クロスウォーク 5/5 ◆p/4uMzQz/M :2008/02/03(日) 14:12:44.88 ID:mD+RQUvX0
 
 
 あの後お礼を言う私たちに「じゃあね、バイバイ」と言って、お姉さんは去って行きました。
名前は聞き忘れてしまいました。残念です。正直。
 あれから少し歩いたので、私たちもう団地の近くまで帰ってきていました。。
「ゆうちゃん、何でランドセルの中にこんなにコッペパン詰まってるの?!」
「給食の残り貰っただけだよ! 鳥の餌にしようと思って……」
 ゆうちゃんのランドセルの中を見て驚きました。犬は、これが目当てだったんでしょうか。
「それにしてもあの姉ちゃん。インチキだよ、正義の味方がスーツ着てる訳ねぇもん。パンツ見えてたし」
「そんな事無いよ、格好良かったじゃない」
 でも変だったじゃん、と言われたら否定出来ませんでしたが。
「兄ちゃんが言ってたぞ、ああいう変な危ない女の人を『ちじょ』って言うんだってよ」
「『ちじょ』かぁ。そうなんだ、ふぅーん……」
 喋っているうちに団地に帰り着きました。外のところに、お母さんたちが居ました。ゆうちゃんのお母さんも居ます。
「あら、祐二お帰りー。それになっちゃんもお帰りなさい」
「二人とも仲良しねー」
「ちっ、んなことねぇーよ! ふん!」
 そう言ってゆうちゃんは家に走っていってしまいました。私が、ありがとね、と言ったのは聞こえたでしょうか。
 溜め息をついて私は立ち尽くします。明日またお礼言わなきゃ。その時、お母さんが私の足を見て言いました。
「あら奈摘、足擦りむいてるじゃない。手当てしなきゃ」
「あ、それはいいのお母さん」
 忘れないうちに、言っておきたいことがありました。
「それよりね、私ね将来なりたいものが出来たの! えっとね──」
 良かったわねぇ、と言うお母さんに、私は大事なそれを、ちゃんと聞こえる様に大声で教えました。

                                    了。
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 14:13:40.66 ID:mD+RQUvX0
普段とは違う感じにしてみたがどんなもんやら。以上です。
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 14:38:57.33 ID:dLCOkwYf0
品評会向けに書いたが分かりづらくて没にしたものがあるんだ。品評会後にでも出しても大丈夫だろうか?

お題ください↓
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 14:43:47.14 ID:ae6IKrE10
>>471
どうせなら出しちゃえばいいと思う。
酷評されるかもしれんが、それで分かることもあるだろうし。


お題は雪景色
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 14:46:23.95 ID:dLCOkwYf0
>>472
2作目とかありなんだろうか?
その場合、酉一緒にしたらいいのかな?

お題把握
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:05:37.62 ID:q0YFakOV0
今回の品評会、「善悪(ルール)なんか関係ねぇ! 俺の(感情)ルールでお前を倒す!」
みたいな熱血作品はないのかい?
475以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:08:13.16 ID:ae6IKrE10
>>473
おk
酉は好きにしてもいいけど、酉変えると全感し辛くなるね。
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:08:46.49 ID:6Pa1GFLX0
お題もらったの投稿します。
碁石
ふらっとスレによっただけなので間違ってたらごめんぽ 4レス
477以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:09:08.13 ID:t6R0qSQa0
>>474
最初そんなの考えてたな
社会への復讐とか書こうかと
478碁石 1/4:2008/02/03(日) 15:09:17.00 ID:6Pa1GFLX0
「おい、あんたそりゃなんだい?」

 テーブルの上におかれた黒と白の石。
滑らかな石の玉を押しつぶしたような形をした、円盤のようなその石に興味を引かれた俺はつい声をかけた。
普段はそんなことはしない、旅先の安飯屋の隣テーブルの客に声をかけるなんてことは。
何故かわからないが俺はそれにすごく興味を感じたのだ、それにその時そうすることが当然のように感じた。

そいつは日が翳りだした店内の奥の席、暗がりが溜まりだした席に座り、フードをすっぽりとかぶり石を見つめていた。
俺の声が聞こえたのか、聞こえていないのか、それとも気にもしていないのか、じっと動かない。
普通ならそこで終わりだ、暗黙の了解、これ以上かかわってくるなという警告。
それが旅のルール、辺境を旅するものなら当然のルール、トラブルに巻き込まれないための鉄則だ。
だがそのときの俺はさっきも言ったが、どこがおかしかった。
479碁石 2/4:2008/02/03(日) 15:09:47.87 ID:6Pa1GFLX0
「それは・・・なんだい?」

 俺は大胆にもそいつの向かいのテーブルに勝手に座り込みながらたずねた。
なんだか夢を見てるような感覚、その石を見た瞬間から現実は遠のき、ふわふわと自分が体から抜け出ていくような感覚。
そいつは驚きもせず、俺のタブーを破る行動にも臆すこともなく、ゆっくりと呟いた。

「黒と白・・・」

女だった、普段の俺なら女がこんな辺境の安宿に一人でいることに驚くだろうし、当惑もするだろう。
何故かって?
今俺がこうやっている場所は未開地の辺境の入り口、屈強な男でもきびすを返して引き返す場所。
よっぽど頭がいかれてるか、俺みたいによっぽど追い詰められた奴じゃなければこのルートを目指さない。
そんな奴らがたまってるのがこの名も無き町だ。そんなとこに女が一人身でいるのがどれほど危険かわかるだろう。

「黒・・・白・・・」

俺も夢うつつに呟いた。
女なフードに手を掛けると、ゆっくりとフードを下げ、素顔を見せた。
美しい少女だった、透き通るように白い肌、しっとりと濡れ光るような唇、真っ黒な真珠のような瞳。
気が強そうな顔立ちではあるが、あどけない少女のようにもみえる、しかしどこが艶かしい雰囲気があった。

「私は黒・・・あなたは?」
480碁石 3/4:2008/02/03(日) 15:10:36.65 ID:6Pa1GFLX0
目だ、真っ黒に闇光る目が、この少女が見た目どおりのものではないことを物語る。

「俺は・・・」

「・・・黒?」

「そうだ、黒だ・・・」

少女にこりと笑い、黒い石を拾い上げると俺の手に握らせた。

「では後ほど・・・黒のマイマスター」

そういうと俺の手の甲に接吻し、俺の瞳をじっと見た。
何故だろう、俺はそのときその少女が泣いてるように見えた。
泣いて泣いて、最後の最後まで泣き続け、全ての涙を流しつくした者がいるとするならこんな目をしているんじゃないか。
俺は無性に悲しくなり、叫んだ。

「黒だ!」

俺は自分の声に驚き、目を覚ました。
暗くなった店内、マスターが一人グラスを拭きながら不振げな目でこちらを伺っている。

夢か・・・。
481碁石 4/4:2008/02/03(日) 15:12:34.13 ID:6Pa1GFLX0
いや、違う。
俺の手の中に円盤型の石の感触がある。
すべすべしてて、ずっしりと存在感を伝える石。
見なくても分かるそれは黒だろう。
そうだ、思い出した・・・遠い島国にある神々のゲームで使われる石がちょうどこんな石だったのではないか。
彼女は最後に"黒のマイマスター"といった。
俺は彼女と何を契約したのだろう・・・。


後書き
構想はできてるのですが、書き始めると量が半端じゃなくなりそうなのでここで終わっときます。
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:13:09.40 ID:yhvC3Fds0
お題くだされ↓
483碁石:2008/02/03(日) 15:13:15.13 ID:6Pa1GFLX0
以上です。
ファンタジーぽいと痛作品ぽいですかねww
484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:16:06.68 ID:Ky7aC2K3O
>>482
485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:17:31.23 ID:yhvC3Fds0
>>484
凶事、災難的な意味だったのね、そのままだと
頑張ってみる
486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:18:06.17 ID:q0YFakOV0
>>483
脳が痛くなりながら読んだ。
台詞の前後に空行入れるのはエロゲの影響かい? 短い作品の場合やめた方が無難だね
・・・は……とすると文才スレ的に突っ込まれにくくなるね
なんていうか、長編の一話を無理やり短編にぶった切って入れたみたいな印象
というか実際そう言ってるみたいね。
あとあとがきはいちいち入れないほうが無難
細かい突っ込みは他のきちんと深く読める人に任せた
487以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:22:46.68 ID:6Pa1GFLX0
>>486
そうですね、空白は邪魔でしたね・・・。
ついメモ帳で書いてると、把握しやすくてそののりであけてしまいました。
ちなみにエロゲはやったことねーす。興味はあるけどw
後書き悪かったですね、すいません。
脳が痛いのは、やっぱ厨ぽい世界観でしたかね?

コンセプトは短時間で、自分の書きたい世界観で、お題がもらって難しくても合わせてみるという感じでやりました。
一時間二十分かかったわりにはだめ短編で申し訳ない。
488以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:23:31.66 ID:yhvC3Fds0
ちょっと喪が死ぬかもしれないから、もう一個お題くださいな↓
検索かけないでいけそうなの頼む
489以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:25:30.55 ID:PvPEDD+i0
>>488
エンペラー
490 ◆zsc5U.7zok :2008/02/03(日) 15:26:03.03 ID:ae6IKrE10
品評会作品投下
491以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:26:28.37 ID:yhvC3Fds0
492以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:26:39.96 ID:yhvC3Fds0
把握

ミスッタ
493以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:26:58.17 ID:hSdLPibWO
わはは、お題くれやがれ
494【品評会】モンスター 1/5 ◆zsc5U.7zok :2008/02/03(日) 15:27:16.32 ID:ae6IKrE10
 突然ですが、皆様の好きな食べ物は何でしょうか?
 ハンバーグ? フムフム。
 ラーメン? ああ、美味しいですねぇ。
 納豆? 朝ご飯に出ると、幸せな気分になりますねぇ。
 クサヤ? これはまた個性的な……。
 しかし、この個性的というのは中々面白いものでございまして、万人が何故と疑問に思うような好み
をしている方も当然のごとくいらっしゃるわけです。
 ところで、私は長年ある怪物の生態について研究を重ねてきました。ここでは便宜上その怪物のこと
を『彼』と呼ばせていただきましょうか。
 彼の食生活は、およそどんな生物と比較しても、より個性的であると言って差し支えないほど異質な
ものでした。
 もともと、私が彼の研究を始めたのも、その変わった食の文化に強く興味を惹かれたからであります
が、私がこの場でいくら『変わっている』と申し上げたところで、皆様には伝わりづらいことも多いか
と思います。
 それ故、幾つかの実例を踏まえ、皆様にそのユニークな生態の一部をお目に掛けられればと思ってお
ります。
 では、まずその怪物の存在をいつ私が知覚したか、ということからお話いたしましょう。
 
 私は、実は大の野球ファンでありまして、幼少より父に連れられ幾度も球場に通ったものでした。た
だ、私には人並みほどの運動神経も備わってはおりませんでしたから、あくまで観戦専門でしたがね。
 とにかく、何度も球場に通っているうち、ある試合を観戦する機会に巡り会ったのです。
 九回の裏、三点リード、マウンドにはそれまで相手チームを完全に抑え込んできたエースが立ってお
りました。
 一人目、明らかなストライクコースをボール判定されての四球。二人目、際どい玉をまたもやボール
判定で四球。この後、三人目には死球を与え、四人目の打者に満塁ホームランを打たれ逆転サヨナラ負け。
 この試合、勝敗そのものは大して重要ではありません。まぁ当時の私は贔屓のチームが劇的な逆転負け
を喫したことで、多少落ち込むことは有りましたがね。
 この試合を私と共に球場で見ていた父は、満塁ホームランがスタンドに飛び込むのを見て幼い私の横で
こう言ったのです。
「あーあ。マモノに食われたな。」
495【品評会】モンスター 2/5 ◆zsc5U.7zok :2008/02/03(日) 15:27:58.25 ID:ae6IKrE10
 なるほど、確かに父の言ったことは、今の皆様の表情を見ても分かるように、単なる冗談あるいはジ
ンクスといった極めて非現実的なものでしょう。
 ただ、幼かった私には、この『マモノ』というのは、確かな存在として感じられたわけです。
 それ以来、私は劇的なドラマが現実に起こった時、その裏に常に『彼』の存在を意識するようになり
ました。子供時代の刷り込みというのは、全くもって恐ろしいものです。
 幾つかの事件を検証し、彼がどういったときにやってくるのかを調べるようになったのです。
 おっと、そういえば最も重要なことを説明しておりませんでした。
 彼が一体何を食べているか……今までの私の説明で分かったという勘の良い方もおられるかもしれま
せん。彼はありとあらゆる『ルール』を食べて生きているのです。

 ルールといっても形は様々でありまして、日常生活を送るうえで守っていくべき『マナー』、団体行
動を送る上で何よりも重視される『掟』、周囲に対して払うべき『礼儀』、人間が自らを律する為に作
った『法律』、スポーツ等でそれ自体を盛り上げる為の取り決めはそのまま『ルール』と申します。
 彼はその種類を問わず、ありとあらゆる『取り決めごと』を食べているのです。
 この食事がもたらす結果は様々です。
 例えば、件の試合では、彼が『ストライクゾーン』というルールを食べてしまった為に、劇的な大逆
転負けが生まれたわけですが、私はこのように彼の食事によって生まれる結果を、彼の『排泄物』と考
えることにしております。
 つまりは糞ですな。あ、下品な言い様になってしまったことはお詫びいたします。
 まぁ、とにかく彼の食事によって生まれる排泄物の中には、およそ日常とはかけ離れたような、ある
意味奇跡とも呼べるドラマも存在するわけです。
 その一例を挙げましょう。
 一九八六年六月二十二日、サッカーの世界において伝説とも言われるゴールが生まれました。そのゴ
ールを決めたのは齢二十六、選手としての絶頂期にあったディエゴ・マラドーナその人です。
後に『神の手』あるいは『悪魔の手』と呼ばれることとなるこのゴールは、彼がサッカーにおいて最も
シンプルかつ重要なルールである『手を使ってはいけない』というものを食べてしまったが故に生まれ
ることとなりました。
 このゴールをマラドーナ自身はこう振り返っております。
「あれは神の手と、マラドーナの頭から生まれたゴールだ」
 これを単なる審判のミスジャッジと評することは簡単かもしれません。
496【品評会】モンスター 3/5 ◆zsc5U.7zok :2008/02/03(日) 15:28:33.27 ID:ae6IKrE10
 しかし、こういったドラマには多くの場合、目に見えない大きな流れがあることもまた紛れも無い事実
なのです。
 目に見えない大きな流れ。
 これはとても卑怯な、そしていい加減過ぎる言い方なのかもしれません。
 そもそも、私が今皆さんに力説している怪物の存在も、正直な所立証する方法がありません。
 彼の姿は目に見えず、証拠も無いのですから。
 しかし、それでも私は彼の存在を断言したいわけです。
 次はその理由を説明いたしましょう。

 二〇〇一年九月十一日、アメリカ合衆国において非常に痛ましい事件が起きました。勿論ご存知の方も
多いでしょう。世に言う『9/11』です。
 アメリカにおいて行われたテロの中でも、もっとも大きな被害をもたらしたこの事件は、最終的に三千
人近い死者を出し、数え切れないほど多くの人々に影響を与えました。
 私は、この糞のような事件が、事実彼の糞であったと考えております。
 でなければ一体どんな人間が、どんな意思を持てばこのような犬畜生にももとる非道を行うことが出来
るでしょうか?
 私は、そんな悪を行える人間はいないと考えております。
 というよりも、信じたいと言うべきでしょうか。
 元来、人の心は弱いもの。ちょっとしたことで揺れ動くのです。
 彼はそうしたものを敏感に嗅ぎ付けやってきて、甘い誘惑の吐息をそっと吹きかけてやるだけでいい。
 それだけで、弱い心はルールを放棄し、それは瞬く間に彼の胃袋に納まってしまうでしょう。
 そして、彼はどんな糞尿よりも酷い悪臭を放つ、悪夢を世の中に排泄するわけです。
 今私が述べた事を、偽善者の戯言と切り捨てる方もいらっしゃるでしょう。そんな怪物の誘いが無くと
も、法律を破る者はいる……そう言われることもあります。
 ただ、そういった法を犯す者たちも、最初の一回すら躊躇はしなかったのでしょうか?
497【品評会】モンスター 4/5 ◆zsc5U.7zok :2008/02/03(日) 15:29:11.21 ID:ae6IKrE10
 大分、話が逸れてしまったようですね。
 どうやら、私の熱弁もそろそろ皆様の興味を引き続けるのは限界が近づいているようだ。
 おっと、慌てないで。もう少し私にお付き合い下さい。
 最後に、本当の戯言程度に、この怪物がやらかした最も大きな食事の話を聞いて欲しいのです。
 いきなり戯言などと言ってしまうと、皆様にまたかよ……などと思われることになりかねないのです
が。ただ、実の所私も今からする話に関しては、埒も無い妄想だと考えているのですよ。
 まぁ冗談程度に聞いていただきたい。
 
 もし私が、人間の今があるのは彼のお陰だ……と言ったら皆様はどう思うでしょうか?
 おや、驚いておられない?
 まぁ、ここまで私の話に付き合ってくれる皆様方ですから、当然といったところでしょうか。
 では、前置きはこの辺にして本題に入りましょう。
 私や皆様が日常、無意識に行う『思考』という行動……これを手に入れたのはまさに彼のお陰だとす
る文献が実在しているのです。
 もう分かった方もいらっしゃるようですね。そう、聖書です。
 旧約聖書、創世記第三章。後に、ジョン・ミルトンの手によって『失楽園』と名を変えたこの物語に
おいて、人間の祖であるアダムとイヴに最初の罪を犯させた者。
 蛇の誘惑という形をとってはいますが、これこそ彼が最初に行った食事でしょう。
 神はアダムとイヴに、楽園で暮らす上で唯一のルールを設けます。それが知恵の実を食べてはいけな
いということ。
 彼がこのルールを食べてしまったことで、人間には知恵がもたらされました。
 つまり、我々人間がこの地上の覇者でいられるのも、彼の排泄物のお陰だ……というわけですね。
 まぁ、その分何不自由なく楽園で暮らすことの出来る権利は失われてしまったわけですが。
498【品評会】モンスター 5/5 ◆zsc5U.7zok :2008/02/03(日) 15:30:09.62 ID:ae6IKrE10
 どうです? 少しは楽しんでいただけたでしょうか?
 単なるスポーツの話題から、よくもまぁここまで話が飛んだなぁ、と考えていらっしゃる方も多いこ
とでしょう。
 しかし、結局はどれも一緒なのです。
 ルールがある時は破られ、ある時は無視され、ある時は失われる。
 その度に生まれる様々な出来事を、彼は腹ごなしに見物しているのでしょう。
 最後の例はあくまで聖書に描かれている神話の類ではありますが、重要なのはその真偽ではありませ
ん。
 人間がルールを破る時、そこには決まって何か人以外のものの力が働いていたと、昔の人々も考えて
いたことが重要なのです。
 彼自身はただ囁き喰らうだけ。罪を犯すのは、またドラマを作るのは、あくまで人間なのですから。
 さて、そろそろ時間のようですね。結局、彼の食事に関することの一部しかお話しすることが出来ま
せんでした。
 今回の講演で、彼に興味を持たれた方は遠慮なく私の所にきてください。今までに採り溜めたデータ
が、野球だけでも百例以上ありますから。
 その一例一例を丁寧に説明いたしましょう。
 それでは、長くなりましたがこの辺で。
 今回はお集まりいただきありがとうございました。

499以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:30:59.72 ID:ae6IKrE10
投下完了
500以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:40:04.27 ID:FljJgRXw0
>>493
豪傑
501以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 15:42:47.52 ID:hSdLPibWO
>>500把握

>>494
もう少しで割り込むところだった
すみません
502以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:08:18.58 ID:FljJgRXw0
503【品評会】外へ(0/5) ◆otogi/VR86 :2008/02/03(日) 16:09:17.03 ID:eegSP0nFO
品評会作品投下します。全五レス
504【品評会】外へ(1/5) ◆otogi/VR86 :2008/02/03(日) 16:11:10.04 ID:eegSP0nFO
「いただきます」
「はい、いただきます」
 山の奥の奥、およそ外部の人間が立ち入ることのないような場所にその村はあった。木々が茂り、郷からは離れ、山を越えてもなぁ
んにもない。自慢の名物もなぁんにもない。ただし金目のものもなぁんにもないので、寂れていながらも平和な村であった。
 村のさらに外れに小さな小屋、その中には人影が二つ。片方はやや小柄な青年で真っ赤に焼けた肌を短く刈った髪がそっけ
なく飾る。いや、小柄というのはやや語弊がある。向かいに腰掛けたもうひとりの青年が並外れて大柄なのだ。
「なんで私だけ肉を食べてはいけないんだろうね」
 もうひとりの青年より赤い肌と、はるかに大きな体を持つ青年は、合わせた両手を解くと同時に疑問を口にした。彼にしてみれば
何度問うたか思い出すのも億劫なほど繰り返された質問である。
「はっはっは、お前は図体がでかいからな。腹一杯食われたら村の鶏という鶏を絞めにゃならん」
 小さい方の青年から見た目通りの快活な声が返ってくるが、彼は呆れたようなうんざりしたような、なんとも渋い顔をする。村中の
誰に聞いても似たようなことを言うのだ。返答がわかっていても続ける。
「なんで私だけ川に行ってはならないんだろうね」
 山菜の和え物に箸を伸ばす小さな青年に、固く手拭いが巻かれた頭をかきながら聞く。
「ああ、実はお前はさるご高名なお方の隠し子でな。そんな危ない真似はさせられんのだ」
 そこで初めて大柄な青年が笑う。それでこそだと言わんばかりだ。
「じゃあ何故にそのやんごとなきお方が田植えに腰を痛めてるのだろうね」
「実はお前は百姓の子でな。親の仕事を継いでるだけだ」
 昼に二人きりで飯を食っていることからわかるように両者ともに親がいない。小さい青年は幼いころに親を亡くした口だが、大柄な
方は赤子のころに村に捨てられた捨て子だ。小さい青年の親が引き取ったがすぐに亡くなったらしく、今も男の二人暮らしを続けている。
「川に行けんのはどうでもいいが、せめてこの手拭いくらいは自由に外してもいいんじゃないかね。頭が痒くてたまらん」
「今まで黙っていたが、実は俺はお前の世話係でな。お前の髪が傷むようなことがあれば俺の首が飛ぶんだ」
 もちろん二人とも大柄な青年の生まれがどこかなんて知らない。適当に答えているのも暗黙の了解だ。
505【品評会】外へ(2/5) ◆otogi/VR86 :2008/02/03(日) 16:12:15.85 ID:eegSP0nFO
 しかしこの奇妙な掟について村の者に聞いても「そういう掟なのだから仕様があるまい」としか言わない。だから歳近く、背丈が自
分の肩あたりまでしかない兄代わりの青年に聞いているのだ。どうせまともな答えがない、かつ聞かずにはおれぬ質問なのだ。少しで
も楽しみを感じた方が有意義である、と。
「さあ、飯を食い終わったら田植えの続きだ。お前もさっさと食べなさい」
 必死に魚の中骨を取っている小さい青年の前で、とっくに自分の飯を飲み下している大柄な青年は微笑んでいた。彼にとってはちょっ
と不便でとても理不尽なルールを改正することよりも、今の穏やかな生活が長く長く続いてくれた方が何倍も有り難いらしい。
 外は照りつける太陽とそれを反射する田んぼの水面でとんでもなく眩しい。二人の赤い肌はますます赤くなるだろう。

 田植えも終わり稲の虫対策のみで、暇とまでも行かないまでも多少の余裕ができたある日、村に久しぶりの来客が来た。とは言って
も行商人が寄っただけだが。まあ退屈な村にとって一大イベントであることには違いない。
「さあさあ皆さん、珍しいものが御座いますよ。東国の置物に都のかんざし、西国仕込みの調味料なども揃えております。」
 この村に特産品などはないし、金を持っている家も少ない。商人には気の毒だがろくに商売にならないだろう。冷やかしの見物人は
山ほど訪れるだろうが。
 その大勢の見物人の中にあの二人の姿があった。他の見物人と一緒になって珍しい品を見ては質問をし、質問をしては商品を漁る。
ずいぶんと節操のない品揃えで見ていて飽きないようだ。商人は予想以上の混雑ぶりを商機と見たのか商品のひとつを取り出した。
「さあさあ、これは私の売り物の中でも一番人気! 保存食ですが単なる保存食と一緒にしてもらっちゃあ困る。じっくり干した干物
だから噛めば噛むほど旨味が出て、放って置いても悪くならないよ! 今日今いる方々だけに試しに一口食べてもらいましょう」
 小さい切れ端をさらに細かくして見物人に配る。二人も受け取り、口に放り込もうとしたところで見物人のひとりが声を上げた。
「おっちゃん、こいつぁ何だい?」
「へい、豚でございます」
 その言葉を聞いた途端に小さい、周りと比べれば普通だが、青年が凄まじい速さで大柄な青年の口から強引に肉片を奪い取った。
「な、何をするんだ」
「さあ、油を売ってる暇はない。仕事に戻ろうか」
506【品評会】外へ(3/5) ◆otogi/VR86 :2008/02/03(日) 16:13:30.18 ID:eegSP0nFO
 ついさっきまでは珍しい商品を前に緩みきった顔をしていた小さい青年が、今はとても険しい顔をしている。大柄な青年はとぼとぼ
と後ろをついて行きながら、大好きな兄に叱られた気分になって黙り込んでしまった。ただ彼は自分でも気がつかぬ内に、ひたすら自
分の唇を舐めまわし、初めて口にした豚の味を求めていた。
 その晩彼は盗みを犯した。村の中ほどにある家から鶏を盗んだ。稲の上を駆ける風が、実に気持ちのいい晩だった。

 稲刈りもすっかり終わり村はすっかり落ち着きを取り戻したかと思いきや、そうでもなかった。以前からちょくちょくあった鶏泥棒
が夏ごろから急に増したのだ。質の悪いよそ者が近くに住み着いたのかと山狩りも数度行われたが成果は上がらず、ついに村の最後の
鶏までも姿を消してしまった。いくら小さい村と言っても全ての家の鶏となるとちょっとした量だ。犯人は四人か五人か……
 犯人が捕まるはずはない、身内を疑わぬ村の中に犯人がいるのだから。
「ついに最後の鶏もやられたらしいぞ」
 小さい青年が話しかけても生返事しかしない。あの質問も最近は全くしない。何より。
「ごめん、もう眠くなってしまった。先に床に入らせてもらうよ」
 村の誰よりも大食いだった大柄の青年が飯を残すようになった。むろん恋患いのようなかわいいものが理由ではない。
 彼の飢えは肉を食うことなしには収まらなくなっていた。
 初めて肉を食ったあの日からその欲求は日増しに強くなっていき、ついに昨晩、警戒の目をかいくぐってまでも最後の鶏を盗んだ。
例の質問をしなくなったのも「自分には生来この性質があり、少なくとも村長と兄者はそれを知っていたのだ」という彼なりの結論に
たどり着いたのだ。
 しばらくすると小さい青年も床に着いた気配がした。そして眠りに落ちたころを見計らって大柄の青年は家を出る。向かうは村長の
家。彼は、自分の導き出した解答の答え合わせがしたかった。

「こんな夜更けになんの用かの」
居間に座るなり村長が切り出した。大柄の青年の並々ならぬ気配に何かを感じているらしい。普段の好々爺然とした態度はなく、小さ
くともひとつの村の長であることを実感させる風格を醸し出している。
「まずは謝らせて下さい。昨今の鶏泥棒、私の仕業です」
 村長は最悪の事態に近いことになっていることを悟り、うなり声を上げた。
507【品評会】外へ(4/5) ◆otogi/VR86 :2008/02/03(日) 16:15:06.71 ID:eegSP0nFO
「村長、正直に答えていただきたい。私の肉食を禁じていたのは何故でしょうか。私が川に行くことを禁じていたのは何故でしょうか
。私の日焼けが秋を迎えても引かないのはなぜでしょうか」

「なにより、この頭に巻いた布の下には何があるのでしょうか」

 村長は何も答えない。残念ながら、彼のたどり着いた解答はあっているらしかった。
「失礼します、掟を破ります」
 幾重に巻かれた手拭いをひとつひとつゆっくりと解いていく。すっかり取り除くと彼は水瓶を覗き込んだ。彼が初めて見る自分の頭
には、人ならぬものの証拠が、二本の角があった。桃色にしては赤すぎる肌とあいまって大分小柄であろう赤鬼にしか見えなかった。
 いかほど時間が経っただろうか。村長も青年もじっと赤鬼を見つめていたが、ふいに話しだす。
「もうひとつお聞きしたいことがあります。……兄者の両親は戦で亡くなったと聞きましたが、このような小さく何もない村に戦乱の
波が届くでしょうか。何故ほぼ同じ頃合に鬼の赤子がこの村に捨てられたのでしょうか。もしや――」
「もういい、そうだ。お主が思っている通り、あれの両親はお主の両親が村を襲い、犠牲になった者の内の一部。困った我々は貢ぎ物
の酒に毒を混ぜた。まさか鬼に産まれたばかりの子がいるとは夢にも思わずにな」
 最初は殺すつもりだったが幼いころの人間の青年を含む一部の懇願で条件付きで難を逃れたらしい。その条件とはもちろん鬼の青年
に課せられていたものである。鬼であることを自覚させず、「鬼は人間を襲うもの」という不文律をできる限り抑えるために。なんだ
かんだ言ってもつまるところ、村長も何も知らぬ赤子を殺すのには抵抗があったのだ。
「村から出て行った者たちも少なくなかったがの」
 なぜ子供二人だけだったのかはまた他の事情があるのか、口を開くことはなかった。しかし鬼の青年にとってそんなことはどうでも
良かった。親の仇の子供に良くしてくれていた兄代わりの青年への感謝の涙を堪えるので精一杯のようだ。
「今までお世話になりました。私は朝までに村を出ます」
 鬼の青年はそれだけ絞り出すと村長の家を飛び出した。荷物なんていらない、身ひとつで出ても構いはしなかったが、ただ一言、た
った一言だけ礼が言いたい人がいた。
508【品評会】外へ(5/5) ◆otogi/VR86 :2008/02/03(日) 16:16:35.91 ID:eegSP0nFO
 明日からは他人の家になる建物に戻り、起こすことのないように慎重に人間の青年の寝床に向かう鬼の青年。彼はまず深々と頭を下
げる。そして仏でも拝むように手を合わせた。ありがとうありがとうと涙しながらゆっくりと思い返す。
 あのころは理由がわからなかったが、近所の子供にいじめられていたときに助けにきてくれた。力が強いことに調子をよくして暴れ
ていたことをたしなめてくれた。行儀が悪かったのをなお……して…………。
「食べ物を食べるのはどうしようもない人間の決まりみたいなものからな。だからせめてご飯を食べるときは食べ物に感謝して、いた
だきますって言うんだ。」

 鬼の青年のありがとうという言葉がふいに途絶えた。しばしの沈黙の後に、鬼の決まりに従った代わりの感謝の言葉が浮かぶ。
「……イタ……ダキマス」



がぶり

509以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:18:04.09 ID:eegSP0nFO
ミスないかな。投下オワタ
510以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:26:30.52 ID:Yq3q05980
お題をくれ
511以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:27:37.97 ID:iCgQxZUz0
羊水
512以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:28:00.28 ID:mD+RQUvX0
ミルクティー
513以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:31:35.31 ID:Yq3q05980
>>511
>>512
把握
514以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:49:01.65 ID:Yq3q05980
515以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:50:08.63 ID:f7dJtzEQO
>>398 >>401
見逃してた。感想どうもありがとう
いまは何も言わないつもり
516以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 16:58:20.35 ID:+gwCuag70
>>387
前回は時間外が票とりすぎで、他に回らなかったんじゃないか?
最近の品評会はわからなくなってる
517以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:04:36.08 ID:ae6IKrE10
>>516
あれが時間内だったら、どんだけ票とってたんだか…。
518以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:25:03.30 ID:Ky7aC2K3O
519以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:31:18.46 ID:SjeGFN6H0
とりあえずお題を求めてみる
520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:32:32.90 ID:Ky7aC2K3O
>>519
うわさ話
521以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:32:48.36 ID:O6v6DvAM0
貴方と過ごす日曜日
522以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:33:44.31 ID:SjeGFN6H0
了解
523以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:35:59.83 ID:05isred40
二回目の通常作投下なんだぜ。全レス軽めに書いて、4レス。

お題が脇役っぽくなっちゃったのは、お題をくれた相手に申し訳ないな。
他にも色々と自虐したい部分は有るが、黙って投下するんだぜ。
524お題:便箋 1/4:2008/02/03(日) 17:36:14.73 ID:05isred40
 今日、福岡に引っ越した。九州一の都会の中のワンルームマンションというのは、とても狭い。
見晴らしが良いことだけがこの部屋の唯一の取り柄だろうか。
窓から外を眺める。雲が広がる夜空には雪は降っていない。
昨日までとは全く違う雰囲気に慣れるのは、時間が掛かりそうだ。
やっと段ボールの整理がついたところで、腹が減っていることに気づく。
結局、料理は習わずじまいだ。パンでも買ってこようか。
──そういえば食べ残りのクッキーがまだ沢山有ったな。
鞄から底が長方形の大きな紙袋を探し出す。包み袋からして一人分の分量では無いことは明らかだった。
袋を開けて中から幾つか取り出す。もちろん航空機の中でも食べたのだが、あまり減っているようには見えない。
ちょうどいい焼け加減のチョコクッキーは美味しく、腹にたまった。
夜食を終えた後はベランダに出た。風に当たるためだ。やはり、それほど寒くはない。
──今頃向こうで、彼女は何をしているのだろう。
勉学のための、たった一人の寂しい生活。心機一転、それは理想論である。
携帯は解約して置いてきた。決意は既に後悔に変わっている。
また、クッキーを頬張る。今日はこれで乗り切れる。
明日からは当分インスタントだろう。
525お題:便箋 2/4:2008/02/03(日) 17:36:25.06 ID:05isred40
 クッキーは、まだ食べ終わっていない。
部屋に戻ってからもずっと食べ続けている。じょじょに減ってきた。
勉学に励むため、そのためだけにこんな故郷から遠く離れた場所に、来なくてはいけなかったのだろうか。
先ほどからの後悔の念が、心の中で成長していく。腹が減っていると気分が不安になるものだ。
またクッキーを口にする。
──今日中に食べきってしまおう。
静かな部屋の真ん中で、子供時代からお気に入りの机の上で、クッキーを食べる。
他には何もしない。明日は必需品の買い物で外出しなくてはならないから、疲れたくはない。
故郷の町並み、長い間一緒に生活した家族、馬鹿遊びをした親友……そしてクッキーをくれた相手。
使い古した机の上で、色々なことを思い出している。
後悔するから止めておけ、皆から言われていたことなのに、聞き入れようとはしなかった。
異郷の地での一年間は、非常に辛く、長いものになるだろう。
──後悔、しちゃってるよな。俺。
クッキーの袋は、まだ底をつかない。
526お題:便箋 3/4:2008/02/03(日) 17:36:35.00 ID:05isred40
 ようやく気分も落ち着いた時は、袋の四分の三以上を食べ終わっていた。
袋を横にして、クッキーを探しに手を中に差し込む。やっと底にまで手が届くようになった。
クッキーを探す手が底にある滑らかな物に当たる。中を見て、透明なプラスチックの板を発見する。
何のためなのかまだ分からないが、意味が無い事は、無いはずだ。
残っていた少しのクッキーを食べ終わって、そっとプラスチックの板を外す。
――何だろう。そこに、底に何があるのだろう。
果たして“そこ”には封筒が有った。
茶色の封筒には既に宛先が書いてあり、切手も張ってある。
封筒の中を開けて見る。女の子が使うような可愛らしい便箋が入っていた。
便箋の余白に何やらメッセージが書かれている。
『一年間頑張ってね』
もう一度封筒の宛先を良く見る。宛名は……クッキーの作り主。
――なるほど。俺の行動はお見通し、って訳か。
彼女は別れを後悔するに違いない俺のために、こんな物を用意していた。
527お題:便箋 4/4:2008/02/03(日) 17:36:55.68 ID:05isred40
 一時間ほど経って、クッキーの感想と彼女への感謝の気持ちを書き終わる。
文章を書くのはかなり苦手だ。字も下手だが、まぁ仕方ない。これから一年間で上手くなるだろう。
余白の一部が切り取られた便箋を封筒に入れる。もちろん封筒の裏側には新しい、俺の、住所を記している。
本当に今の時分に文通とは珍しい。しかし、彼女らしかった。
いてもたってもいられなくて外に出る。雪が少し降り始めている。
白い雪はどこで見てもきれいだ。ただこの量では、残念ながら積もらないだろう。
郵便ポストは以外と早く見つかった。封筒を投函し、ゆっくりと帰宅する。
事を終えると眠たくなった。食べ過ぎてしまったのだろう。クッキーの欠片はまだ口の中に残っている。
彼女のお陰でこれから一年間、なんだか頑張れそうな気がする。孤独では無くなった途端に元気が出てきた。
――明日の買い物では、便箋と封筒も買わなくちゃいけないな。
明日のことを考えながら寝床につく。一年間なんて、あっという間だ。

528 ◆7BJkZFw08A :2008/02/03(日) 17:45:21.72 ID:EQZaQ57R0
品評会投下
529定め 1/5  ◆7BJkZFw08A :2008/02/03(日) 17:46:01.11 ID:EQZaQ57R0
「なぜいけないのですか!?」
「それがお前のためだ。今までもお前のようなことを言うものは数多くあったが、誰一人として幸運に恵まれたものはいない」
 欝蒼と茂る森の奥。巧妙に隠された洞穴を抜けたその先に、妖精たちの集落がある。
大きな葉の影で、人の手首から指の先くらいまでしかない妖精が、二人で何やら言い合っている。
彼らのどちらも美しいが、纏う雰囲気の違いから一方が女性、一方が男性であることがわかる。
「でも、あなただって実際は知らないのでしょう? 人間の世界に出たものがどうなったか」
「私も直接は知らない。だが夕暮れ時に吹く風が教えてくれるのだ」
「風の言うことは信用できません。あれは真実も多く言いますが、嘘もそれ以上に多いです」
 風格のある男の妖精は少し困った顔をして、まだ若い女の妖精の顔を見つめた。
 しかし彼女の決意はその動かぬ眉と同じく、揺るがないものに見えた。
 深い溜息をひとつついて、男は言った。
「どうしても行くというなら、お前を止めることはできない。しかし、一度人の世界に行ったものはもう戻れはしないぞ」
「それが掟と言うのなら」
「掟ではない、我々は自由の民、我らに我らを縛る掟などは無いことを、お前も知っているだろう。
だが、これはそういうものなのだ。落ちた木の葉が再び色づくことのないように、人間達がいずれは老いて死ぬように、それは決まっていることなのだ」
 男は悲しそうな視線を向けながら言葉を紡ぐ。
「人間には、死がある。苦しみがある。憎しみがある。だが我らには無い。
この美しい池のほとりで風と共に歌い、月明かりの下で踊ることに、何の不満がある?
生きるために獣を殺し、草を刈り、時にはその手を血に染める……どうして人間になどなりたいと言うのか」
 わからない、と言った風に男は頭を振った。
「私は、見てみたいのです。人間を、我々の持たない、美しいものを。
あなたは人間の悪い面ばかり言いますが、人間は詩を紡ぎ、私たちとは違う歌を歌います。
それに、愛というものがあると聞きます。私たち妖精には無い、人間だけの……私はそれが知りたいのです」
 大きな目に情熱をみなぎらせ、彼女は言う。
「我々と人間は、違う。お前の想い焦がれるものが見られるかどうかわからぬし、それどころかひどい目に合わされるかもしれないぞ」
「だとしても、構いません」
 男は目をつぶってしばし黙したが、ついに首を縦に振った。
「……わかった、ならば教えよう。人間になる術を」
「三日の間月の光を浴びず、太陽の光だけを浴びよ。妖精の歌を歌わず、舞も舞うな。しかる後人間のパンと葡萄酒を飲めば、お前は人の姿になれる。
だが忘れるな。体が人間となり、あるいはいずれ心が人のものとなっても、お前の魂は妖精のまま。相容れぬのだ、人間とは……」
530定め 2/5  ◆7BJkZFw08A :2008/02/03(日) 17:46:48.02 ID:EQZaQ57R0
 それから彼女は三日間、男の言う通りにした。
 仲間達がかわるがわる彼女を引きとめに来たが、彼女は耳を貸さなかった。
 三日の後、男の元に行くと、一かけらのパンと、胡桃の殻に入った葡萄酒が用意されていた。
「我らは仲間の願いを阻むようなことはしない。だが、私はお前にこれを食べて欲しくはない。
今なら何の問題もなくここに留まることができる。今なお、お前は人の世界に行きたいと願うのか」
「はい」
 彼女の決意は揺るいでいなかった。
「そうか……ではこれを持って洞穴を通り、出たところでこれらを飲み、食べれば、それで良い」
 彼女は一かけらのパンと葡萄酒を両手に持ち、別れを告げた。
「ありがとう。あなたに月の祝福のあらんことを」
「叶わぬこととは思うが、吹く風の常に楽しき事を」

 別れを済ませると、洞穴を抜けて彼女は外に出た。
 そして早速パンと葡萄酒を口にする。初めて食べる人間の食べ物の味は誘惑的で、もっと、もう一つ食べたいと願わざるを得ないものだった。
それは欲望と言うものの芽生えであったが、彼女はそれに気づいてはいない。
人の食べ物をその身に入れた彼女の身体はみるみる大きくなり、そこらの娘と変わらないくらいになった。
 願い叶って人間になったとは言えこれからどうして良いかわからず、彼女はふらふらと森をさまよっていた。
なにやらガサガサと音のする方に近づいて行ってみると、突然若い男の姿が目の前に現れた。
「な!?」
 彼はどんな獣に出くわそうと驚かない自信があったが、この時ばかりはあまりの意外さに腰を抜かした。
「誰だ!? なぜこんなところに……いや、何者だ? お前は本当に人間か?」
 森には人ならぬものも数多く住むと言われている、と男は言葉を継いだ。目つきにさきほどの驚きは無く、相手をいぶかしむ様に鋭い。
 女は元は妖精であったから、誰かに敵意を向けられたことは今までなかった。そのためひどく怯えた。
 『ひどい目にあわせられるかもしれない』という男の妖精の言葉が脳裏をよぎる。
「答えろ、お前は人間か?」腰に差した剣を抜き、男が問う。
「はい」反射的に、そう答えた。怯えと震えを含んだ声が、男から敵意を抜いた。
「こんなところでどうしたのだ。服は……山賊にでも襲われたのか?」
 男は今更ながら相手が何も身にまとっていないことに気が付き、顔を赤らめながらそう尋ねた。
「はい」まだ何もわからぬ女としては、そう答えるしかない。
「身ぐるみ剥がされたのか」「はい」「乱暴は、されなかったか?」「はい」
531定め 3/5  ◆7BJkZFw08A :2008/02/03(日) 17:47:22.96 ID:EQZaQ57R0
 不思議な山賊もいたものだ、これほどの美しい娘を前に持ち物だけを奪い去っていくとは……、男は思った。
改めて見るとその美しさは思わず息を飲むほどである。しばし男は娘を見つめ、放心したまま立ちつくしていたが、すぐに我にかえってこう言った。
「とにかく僕と一緒に来てくれ。服くらいなら用意できる」
 自分のマントで娘を包むと、男は女の手を引いて歩きだした。娘は手を引かれるまま男について行った。
男は道すがら、自分はイラックという村の領主であり、今日は森に狩りに来たのだと、娘に事情を説明した。
しばらく歩くと男の従僕達が見えた。従僕達は姿を消した主人が見つかったことと、男の連れている美しい裸の娘を見たことでひどく驚いた。
「あんれ、若旦那が裸の娘っこ連れて来たぞ。うちの旦那は狩りが下手だと思ってたが、意外に大物を捕まえてくるもんだ」
 男は軽口を叩く従僕を戒め、娘に服を用意させるよう指示する。
「男ものだが、構わないな?」娘はこくんと頷いた。
「そういえば、君の名前は?」問われて娘は戸惑う。妖精に個々の名前は無かったからだ。
「名前がない、のか?」男が驚いてそう言った。娘はしばらく考え込んでいたが、
「私に名前を付けて下さいませんか」と、言ってみた。
 男は何やら事情があるのだろうと一人合点し、それ以上深くは訊かなかった。
「では、そうだな……アニス、アニスと言う名はどうだろう」
 娘は嬉しそうに「アニス」と呟くと、にっこりと微笑んだ。その笑顔の美しさに思わず男はどきりとしたが、気恥かしさからすぐに目をそらしてしまった。
「僕はベルグ、家名はあるが、ベルグで構わない」
彼はそう名乗った。

 その後アニスはベルグと一緒に彼の領地であるところの村へと行き、そこで暮らすこととなった。
アニスは身寄りのないある老婆の家に引き取られ、仮の娘ということになった。
彼女は気立ても良く美しかったので、皆が彼女の事を好いた。彼女も親切で楽しげな住人達と豊かなこの村を気に入った。
ここでの一日は、高らかな鶏の声とともに目覚め、地平から覗き出た太陽の白い光をいっぱいに浴びながら外へ出ることから始まる。
朗らかに吹く風や嬉しそうに囀りまわる小鳥達と一緒に、かつてとは違う歌を歌い、与えられた仕事をこなす。
空が焼ける頃になると道具を片づけ、外での仕事をやめる。
家に入る頃には老婆が夕食を並べていて、二人で神への祈りを済ませてからそれを食べる。
老婆は料理が上手く、出てくる食べ物はアニスにとってどれも素晴らしいごちそうだった。また料理などしたことのないアニスに、
老婆は親切に料理を教えてくれた。そのおかげで、アニスは既に簡単な料理なら難なくできるくらいになった。
そうして、たおやかに降り注ぐ月の光を眺めながら眠りにつく。アニスは幸せだった。
 時に村を訪れる旅芸人や詩人達から人間の踊りや詩の作り方を習い、それを踊ってみたり吟じてみたりもした。
人間の歌には妖精のものとは違う力強い響きや哀惜の調べを持つものもあり、アニスはそれらをとても素晴らしいものだと思った。
532定め 4/5  ◆7BJkZFw08A :2008/02/03(日) 17:47:50.57 ID:EQZaQ57R0
 ベルグはよくアニスを訪ねては、色々な話をした。
父が早くに亡くなったためにこの若さで領主をしていること。この村は恵まれてはいるが、争いには一度として巻き込まれたことのないことなど。
とりわけ彼はアニスの美しさを褒め、彼女の歌や踊りが何より好きだなどということを語った。
 アニスもまた彼に話をした。
月の光で花開き、一日経つと枯れてしまう不思議な花のこと、『昔いたところ』に伝わる歌や踊りの話、自分はその中のある歌がとてもうまかったこと……
 アニスは一度それとは言わず妖精の歌を歌ってみようとしたことがあったが、どうしても上手く歌えなかった。
しかし彼女はそれを悲しいとは思わなかった。彼女は人間の生活にすっかり満足していたのだ。
 ベルグと話しているとき、アニスは楽しかった。しかし、踊りを踊っている時や歌を歌う時とは違う、不思議な楽しさだった。
あるいはもっと別の、神に祈る時に覚える心地よさのような、そんな感覚があった。
逆にベルグが帰ってしまう時は、太陽が急に翳った時のような寂しい気持ちを覚え、次に来るのはいつだろうと心待ちにするようになった。

 そうしたある日、ベルグが勢い込んでアニスの元へやってきた。
いつも快活な雰囲気が体に漲っているようなベルグだが、この日はやけに緊張しているせいか、まるで熱気を帯びているかのように見えた。
アニスはいつもと少し違うベルグの雰囲気に驚いたが、彼の放った一言がさらに彼女を驚かせた。
「アニス、僕と結婚してくれないか!?」
 彼はここ最近、おせっかいな召使達から、いつ若旦那はあの娘と結婚するのかとひっきりなしに言われていた。
彼とて自分がアニスを好いていることはとうに自覚していたし、いつか結婚するなら彼女だと、心に決めていた。
しかし中には素性の知れないアニスを嫌うことはないまでも、領主の妻としてはいかがなものかと言う者もあったし、
アニスを慕っているものは多く、いつ誰に結婚を申し込まれることもあるやもしれないなどとベルグを煽る者もいた。
結果、いろいろ考えることが面倒になったベルグはさっさとアニスに結婚を申し込んでしまおうと考えたのだ。
アニスには彼の申し出を退けることなど思いもよらなかった。彼女は婚姻というものをよくわかってはいなかったが、
ずっとベルグと一緒にいられるのだということはわかっていたし、それを思うと心に花が咲いたようななんとも言えぬ喜びを覚えるのだった。
アニスは、自分の感じているこの喜びが愛と言うもので、自分は今愛を感じているのだと知った。
彼女の目から、嬉しさに涙がこぼれた。

 二人の結婚は村全体に祝福された。
後継ぎのいない若旦那ベルグに、早く妻を娶れとうるさく騒いでいた彼の家の老召使達など溢れんばかりに涙を零していたし、
アニスを密かに慕っていた村の百姓たちも、若旦那の嫁なら間違いないと素直に喜んでいた。
アニスの家の老婆も、お前は血は違えど本当に私の娘だ、若旦那をよく支えるんだよと、涙声を絞り出してアニスを祝福してくれた。
 二人の結婚式の日、教会にはイラックの村人のほぼ全員が詰めかけ、教会の外の広場まで人が埋め尽くすほどだった。
533定め 5/5  ◆7BJkZFw08A :2008/02/03(日) 17:48:28.87 ID:EQZaQ57R0
アニスは今日のために仕立てられた、輝くような純白のドレスでベルグの横に立っていた。
ベルグも彼の家に伝わる婚儀の礼装を立派に着こなし、胸を張ってアニスを見つめた。
教会の神父が厳かに儀式を進める。
「では両人とも、ここまでの誓いに嘘の無いことを、神に誓えますね?」
「はい」「ええ」
「よろしい、ではそれを神と互いに証明できるよう、誓いの口づけをお願いします」
 アニスは一瞬うろたえた。実のところ、彼女はこれまで一度も口づけを交わしたことが無かったから、彼女は口づけと言うのがいかなことかわからなかったのだ。
しかしベルグが小声で囁いてアニスに教えてくれ、そうして二人は唇と唇を触れ合わせた…………
 互いが唇を離したとき、不思議なことが起こった。
アニスの指の先から一筋の白い靄が立ち上り、靄が無くなった部分はその形を失っていた。
指の先から立ち上る靄は腕に上り、脚にまとわりついて、彼女の身体を蝕んだ。
ベルグは彼女の顔を見つめたが、靄に覆われよく見えない。彼は彼女を抱き締めたが、その腕で捕まえたのは空虚だけ。
音もなく、匂いもなく、彼女はその姿を消した。まるで一夜の夢のように。
ベルグの唇にはまだ夢の感触が残っていたが、今となっては主を失い崩れ落ちた虚ろなドレスとその感触だけが、彼女がここに存在していたという証だった――――

 風が悲痛な叫びをはらんで、夕暮れ時の空を駆けた。
それは当然、アニスと呼ばれた女性が妖精であった時の故郷である池のほとりにも届いた。
そして一つの呟きを紡ぐこととなった。
「あるいは人と交わり、その食べ物を食らうとしても、それだけならば良かったのかもしれない。
しかし人間と愛を結び、その交わりを結ぶことは魂が違うゆえ、許されない。
魂の違う者同士、ましてそれが陽光の世界に住む者と月光の世界に住む者とでは相容れるはずがないのだ。
世の定めとは、かくも哀しいものか……」
 その呟きもまた、風に吸い取られてどこかへ飛び去って行った。
どこか遠くの月明かりの下で、風は渦を巻いた。

534以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:48:56.95 ID:EQZaQ57R0
以上です
535以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:52:28.00 ID:+gwCuag70
>>524
面白くなくはないんだけど特別引き込まれるわけではない、良くも悪くもないといった感じ
便箋というよりはクッキーだあね、主になっているのは。
雰囲気はしっかりだせているし、文章も落ち着いている
ただ、ダッシュの使い方が気になった。これは多用のうちに入ると思う
536以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 17:52:31.25 ID:FxMiLGVP0
なんか今回品評会作品多くない?
なんか焦ってきたから今のうちに投下しよう
537品評会作品「キミョウな自分ルール」0/4 ◆ZetubougQo :2008/02/03(日) 17:54:37.96 ID:FxMiLGVP0
よし、それじゃあ準備できたんで投下します
品評会作品
お題:ルール
タイトル:キミョウな自分ルール
総レス数4
538品評会作品「キミョウな自分ルール」1/4 ◆ZetubougQo :2008/02/03(日) 17:55:26.10 ID:FxMiLGVP0
 おやどうしたんですか?
 ああ、お勘定で手持ちが足りない?
 いったいいくら?……ああ、そのくらいなら僕が払いましょう。
 え?見知らぬ人に払ってもらうわけにいかない?
 そんなの気にしない気にしない。
 あなたこの町に来たの初めてでしょ?ここじゃこういうのが普通ですよ?
 そんなに遠慮するならそう、ちょっと僕の話に付き合ってくださいよ。
 なに、そう時間は取らせませんよ。
 ちょうど話し相手がほしかったところだし、それでチャラってことでどうです?
 よしよし、じゃあ座った座った。

 自分ルールって知ってる?
 横断歩道で白いところ歩いたり、トイレットペーパーの端を三角に折ったりするあれですよ。
 エスカレーターの半分をあけておくとか、約束の場所へは5分前に着くとかっていうのも、一応自分ルールといえなくもないかな。
 人のものを盗らない、飲酒運転をしないというのは、もはや法規の粋か。
 ともかく、これから話すのは、すごい自分ルールを持った輩のハナシ。

 数年前まで、この町はごく平凡な町だった。
 たとえるならそう、スーパーでずらりと並ぶ形の整った野菜のような、そんな個性のない町だったんです。
 だったと付けたのは、今じゃあ違うと言うわけで、そしてそのきっかけを作ったのはたった一人の男。
 この町に越してきた彼は、時の移ろいを待たずして次の日からすぐに変わり者というレッテルを貼られた。
 たとえばこうだ。
 君が歩いてくる。
 向こうから彼がやって来る。
 彼は君を見つけるとまるでサイのように突進してきて、哀れその勢いに怖気づいて尻餅をついた君の一歩手前でピタリと止まるんだ。
 そして、満面の笑みで――そりゃあもう、宝くじが大当たりしてフラダンスを踊ってるおじさんのような、ある意味見る人をジリと後ずさりさせるようなほどの笑みでこう言うんだ。
「おっはよーうございますーっ!」
 僕も初めてその珍妙な洗礼を受けたときはあいた口が塞がらなかったよ。
 そのままポカンと口を開いたまま出社したらあの課長め、玉入れ合戦よろしく僕の口にケシゴム放り込みやがって……
 おっとっと、話がずれましたね。
539品評会作品「キミョウな自分ルール」2/4 ◆ZetubougQo :2008/02/03(日) 17:56:03.49 ID:FxMiLGVP0
 そんなわけで、それから毎日、そう彼の頭に休日という文字は存在しないのか、日々途切れることなく彼の奇声とも言うべき挨拶が朝の町に響き渡るわけです。
 こっちが気持ちよく惰眠を貪っているというのに、嗚呼なんと安眠妨害。
 しかも、通学帽をかぶってぞろぞろと団子になって歩く小学生にまで一人ひとりそれを繰り返すという、度し難いバカ丁寧さ。
 そんな訳で、近所のおばさま方が彼を見るとしかめ面をするのも無理もないこと。
 無論、それには僕も全面的に同意し、毎朝彼に見つからないよう回り道をして通勤する毎日。
 おお、僕の平穏な朝を返して!
 ところが、だ。
 そうやって僕たち賢明な大人たちが懸命になって避けている彼を、遊び盛りの子供たちは逆に追い掛け回してるようなのだ。
 男の行くほうへ行くほうへと先回りし、あの「おっはよーうございますーっ」をぶっ被る。
 なにが楽しいんだか最近の若いもんはなどと年甲斐もなく思いつつ、まあ所詮他人事ですし、そう気にも留めていなかった。
 しかしまあなんと、やつらはそれに飽き足らず、自分たちの間でまで「それ」を流行らせてしまったのだ。
 彼ひとりならまだしも、近所中の小学生が朝っぱらから雄鶏のように奇声を発するのは、温厚な(さすがに聖人君子とまではいきませんが、そうとうに気は長いつもりなのです)
 温厚な僕も我慢できなくなるのもまた、当然じゃあないでしょうか。
 僕は規律を重んじる賢明なる大人然と表に出ると、ちょうど目の前を走るがきんちょ、もとい子供を呼び止めた。
 しかしこのガキ、こちらが注意しようと口を開きかけたその顔面に「おっはよーうございますーっ」を叩きつけてきた。
 おかげで初めて聞いた日のように半開きの口で止まってしまったではないか。
 なんだか妙なデジャヴを感じつつもういちどそのガキの顔を見ると、彼と同じく笑いかけてきた。
 ……はずなのだが。
 若さだろうか逆年の功だろうか、その無邪気極まりない顔は、あの得体の知れないオッサンの笑い顔とは違い、なんともまあ愛らしくそれゆえ、叱ろうとした言葉を引っ込め、「ああ、うん、おはよう」などという間の抜けた言葉とトレードする羽目になったのだ。
 印象とは心の持ちよう一つでふらふら千鳥足の如く左右されるもので、あのガキ、いや子供の笑顔を見ると、それまであんなに迷惑千万だとストレスの原因になっていた挨拶の応酬もそれほど気になってくるから不思議だ。
 結局僕は頭をふりふり出てきたばかりの玄関へ逆戻りするのであった。
 その後知ったことではあるが、子供たちに毒気を抜かれ、宗旨替えした豹変家は僕だけでなく、住民漏れなく同上だったようだ。
 ううむ、恐るべきは若さか。
540品評会作品「キミョウな自分ルール」3/4 ◆ZetubougQo :2008/02/03(日) 17:56:43.25 ID:FxMiLGVP0
 そんなことを考えながら、今日もすし詰め電車に乗らんと家を出るとちょうどお隣さんもご出勤の様子。
 連れ立っていざ地獄に赴かんと声をかけようとしたのだが、その時あろうことか私の口を付いて飛び出してきたのは例によって例の如く。
「おっはよーうっ!……お、オハヨウゴザイマス……」
 なんということだ!穴があったら飛び込みたい。
 飛び込んで入り口を厚くセメントでふさぎたい。
 そんな私を見て、お隣さんはウメボシを頬張ったような口になりプーッと噴き出したではないかコンチクショウ!
 恥ずかしいやら腹立たしいやらで腹の中がぐるぐるする。
 しかもこんなときに限って飛び込むのにおあつらえ向きのマンホールが無い!
 かくなる上は自分で穴を掘って飛び込むしかないと墓穴まがいなことを思い巡らしていたのですが、
 ところが続けてその口から飛び出してきたのは、
「いやあ実は私も今朝家内にそれを言ってしまってね…」
 そう、つまり彼のあの毒気に当てられたのは僕だけではなかったのだ。
 皆がそうだと知ればもはや恥ずかしいもへったくれもない。
 かくしてこの妙ちきりんな挨拶は子供たちのあとに続いて我々賢明なる大人の間にも浸透し、第二次ブームを巻き起こしたのだ。
 しかもしかも、彼の所業はこれだけに留まらなかった。
 今度は道を横断するときに、まるでニューヨークの自由の女神になったかのように右手を掲げて歩くのが目撃されるようになった。
 しかもその伸ばした指先から次々ときれいな花々を取り出しながらだ!
 そして、道を渡り終えるころにはりっぱな花束になったそれを子供たちに配りながら去っていく。
 もらった子供たちはその珍妙不可思議な手品のタネを探そうと花をひねくりまわし、そして何事にも感化されやすい彼らはそれを真似するようになる。
 あとはもうご想像のとおり。
 一週間もたたぬうちに、道を横断する人は皆腕を突き上げて歩くようになったのだ。
 そんなこんなで、いつしか彼の新しい「自分ルール」が生まれるのを、町中の人が首をろくろっくびのように伸ばして待ち望むようになった。
 拾ったゴミを袋に詰めて振り回したり、物を尋ねられればオーバーアクションで丁寧に説明する。
 不可思議な口笛を吹きながら街路樹の剪定をし、奇天烈なダンスを踊りながら落し物を警官にパスする。
 そう、ここまでくればもう自ずと理解したでしょう。
 いつしか町からはゴミが消え、交通ルールは守られ、毎朝目の覚めるような元気な挨拶が町並みにこだまする。
 かくして、この町はびっくりするほどすばらしい町へと変貌を遂げたという嘘のような真のハナシ。
 ひとりの自分ルールが社会のルールを作ったハナシ。
 トイレットペーパーの先を折る手を目的地に五分前に着こうと時計を見る手に変え、飲酒運転しようとする輩を制する手に早がわりさせる愛すべき変人の物語。
541品評会作品「キミョウな自分ルール」4/4 ◆ZetubougQo :2008/02/03(日) 17:57:41.12 ID:FxMiLGVP0
 とまあ、こんな話なんだ。
 いやあ、おかげで本当に住みやすい町になって……え?その彼は今どこか?
 さあねえ、なんか、ちょっと前にふいっといなくなっちゃってね。
 またどっかでここみたいに自分ルールを広めてるんだろうさ。
 今では彼の影響で、この町の皆がそんな「いい自分ルール」を作って生活してるんだよ。
 ん?僕の自分ルール?
 それはね。
 一人でも多くの人に彼を知ってもらうために、この話をしまくることさ。

         -完-
542品評会作品「キミョウな自分ルール」5/4 ◆ZetubougQo :2008/02/03(日) 17:59:17.13 ID:FxMiLGVP0
終了です
慣れない文体に挑戦したこともあり、稚拙臭溢れるけど自虐はこの辺で我慢しておきます
543以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 18:09:24.78 ID:05isred40
>>535
>面白くなくはないんだけど特別引き込まれるわけではない、良くも悪くもないといった感じ
一作目もそんな感じのことを言われた。次はもっとよく考えて頑張ってみます。
>便箋というよりはクッキーだあね、主になっているのは。
一気に書いた後に直そうと思ったが無理だった。反省点ですね。
>ただ、ダッシュの使い方が気になった。これは多用のうちに入ると思う
一人称時の、心の中でのつぶやき、みたいなのを書くときに使ってましたが改めます。

感想ありがとう。
544以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 18:22:42.24 ID:mS127P14O
品評会出さんけどお題↓
545以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 18:26:03.80 ID:FljJgRXw0
蝙蝠
546以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 18:27:54.84 ID:mS127P14O
把握
547以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 18:28:08.06 ID:eegSP0nFO
蟷螂
548以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 18:36:39.34 ID:YAVJZR+x0
あと五時間かー。いけるかなあ
549【品評会】  歌が聞こえる  0/5  ◆SQvDZ46yqY :2008/02/03(日) 18:37:29.49 ID:V6rts1vZ0
品評会用作品を投下します。全5レス
550【品評会】  歌が聞こえる  1/5  ◆SQvDZ46yqY :2008/02/03(日) 18:38:29.60 ID:V6rts1vZ0
 道なりも建物も都会のそれとは少し違って、初めて見るこの風景は、
今の私を吹き飛ばして連れ去ってくれるような気がした。
まるで時間が止まった様な、時代錯誤でありながら一種の安心感を与えてくれる、
そんな雰囲気がここにはある。
 静かな町模様の中、私は目的の場所へと足を進めていた。
(ホントに素敵な所・・・)
少し細い通りを抜けると、海の見える防波堤に辿り着いた。
そこには一人の女性が、私の探している人がいた。
「亜紀・・・」
呼びかけに反応してこちらを振り向いた彼女は、亜紀そのものだった。
「あ、ありさちゃん。よくここが分かったね」
亜紀は私の方を向いて微笑んだ。私は小さく手を振ると、すぐさま隣へ座った。
「綺麗なところだね」
空を見上げては海を見下ろし、私は思ったことを素直に口に出した。
「うん、いいところでしょー。私が生まれた町、育った町。
たくさんの思い出が残ってるの、ありさちゃんと出会う前の―」
亜紀も遠くの空を見ながら語っていた。
「なんだか、急に戻ってきたくなっちゃったの。この景色が見たかったのかも」
心の底から幸せそうに笑う、私はそんな亜紀を見つめていた。
551【品評会】  歌が聞こえる  2/5  ◆SQvDZ46yqY :2008/02/03(日) 18:39:22.40 ID:V6rts1vZ0
 でも、側にいればいるほど心の奥底から何かが溢れてきて。
体育座りして組んだ手が僅かに震えているのが自分でも分かる。
(亜紀はこんなにも元気じゃない―)
今にも流れ落ちそうな涙はどうにか堪えた、つもりだった。
「どうしたの、ありさちゃん。泣いてるの・・・?」
亜紀がこっちを見ているのに気付き、あわてて涙を拭った。
「大丈夫・・・?」
そのやさしい声に一瞬心地よさを覚えるも、手がこちらへ伸びたのを見て慌てて立ち上がった。
取り繕うように、何かを押し殺すように、私は話し出した。
「そ、そうだ。私ね、亜紀の歌を聞きにきたの。
ほら、この前舞台で歌ってた歌。もう一度聞きたくなっちゃって」
両手を大きく広げて亜紀の方を向いた。
「え・・・恥ずかしいなあ」
そう言いながらも、亜紀は頭をかきながら静かに立ち上がった。
「やった。亜紀に期待の拍手ー。パチパチパチ」
急かすように拍手をすると、空と海を泳ぐ海鳥たちも一斉に歓声を上げた。
「えーと、僭越ながら、私、ありさちゃんのために歌わせていただきます!」
その時の小さく咳払いをする仕草がやけに可愛らしく見えた。
照れている亜紀に向かって、私は再び精一杯の拍手をした。亜紀が歌ってくれる。
静かなこの私たちだけの世界で、亜紀の歌声が遠くまで響く―。
552【品評会】  歌が聞こえる  3/5  ◆SQvDZ46yqY :2008/02/03(日) 18:39:59.75 ID:V6rts1vZ0
 天使―そう表現しても差し支えないその歌声は、いつも私を救ってくれる。
ずっとそう思っていた。そしていつか私のため"だけ"に歌ってくれるのではないかと。
亜紀が私のために歌い、私は亜紀の全てを受け入れる、そんな瞬間を夢見ていた。
二人きりの時に歌ってくれた事は何度もある。
それでも今日、今この時が、初めて訪れる世界であると感じた。
本当に幸せ、とても幸せ――だからこそ、だからこそもう耐えられなかった。
涙が止まらない。
 体に染み込むように聞こえてくる亜紀の声が、激しく鼓動する心臓をさらに揺り動かした。
自分でも何がなんだか分からなくなってしまって、もう後は感情だけが先走った。
「亜紀!お願い、私を・・・私を一人にしないで。私も連れて行って・・・!」
亜紀を両手でしっかりと抱きしめた。もう駄目だ私―。
「ど、どうしたの、ありさちゃん。急に・・・」
私は必死に顔を上げて亜紀の顔を見た。おそらくは、今の私はとてもひどい顔だったことだろう。
それでも、亜紀は私の背中に両手を回してくれた。
「ありさちゃん、私はちゃんとここにいるよ?」

遠くで鐘の音が聞こえた。

私は亜紀の頬を両手で包むと、
「一緒にいたいの。ね、お願い・・・」
「ありさちゃん・・・」
その柔らかい唇にゆっくりと顔を近づけた。
553【品評会】  歌が聞こえる  4/5  ◆SQvDZ46yqY :2008/02/03(日) 18:40:29.35 ID:V6rts1vZ0
 唐突に、私を残して全てが消えた。全て。否応にも現実を呼び起こされた。
私の世界が失われた。・・・世界を失った。

と同時に、あの声が響く。

 ここまで。それでなくとももう時間は残っていない。私は最初に告げた。
 死んだことに彼女はまだ気付いていない。
 だから、もし望むならば貴女は会うことができる。彼女のこの世における最後の姿に。
 ただし、彼女に触れてはならない。死者に触れてはならない。
 死者はこの世に生きるものとは離別すべき存在、相反する存在。
 だからこそ、貴女は触れてはならない。これが規律、掟。
 もし触れてしまったら、貴女は・・・

 どうでもいい―。本当にどうでもよかった。
 私の中では、数秒前の亜紀の声と姿が鮮明に残っていた。
思い返す事しかできない、今はもうどうしようもない光景が。
もう頭の中の声が消えていることにも、
いつのまにか病室に戻っていることにも、
泣いている自分自身の声が聞こえないことも、
もうどうでもよかった。

『亜紀といつまでも一緒にいたい・・・』
最後の想いも、もう紡ぎ出される事はない。
554【品評会】  歌が聞こえる  5/5  ◆SQvDZ46yqY :2008/02/03(日) 18:41:16.62 ID:V6rts1vZ0
資料:事件記録抜粋

二十日夕方、都内での公演リハーサル中、機器の発火による爆発発生。
意識不明の重体となりすぐさま病院へ搬送。
診断は全身の打撲・火傷及び内臓付近・頭部の致命的骨折。
搬送後に緊急オペを行うも、未明、心肺機能の停止を確認し、死亡。

未確認・複数の証言によるメモ
被害者が亡くなる直前に歌が聞こえたらしい。それはとても綺麗な歌声だったという。

<おわり>
555お題:雪景色 0/3:2008/02/03(日) 18:46:37.44 ID:K8N8ZDxN0
投下します
556お題:雪景色 1/3:2008/02/03(日) 18:47:14.73 ID:K8N8ZDxN0
 空は暗く、静まりかえっている。
 かと思えば、時折白い粉雪がふわりふわりと舞い落ちる。
 山に囲まれた村にある一軒の家の二階から、それを眺める少年が居た。
 名前は健一という。生まれも育ちもこの村で、先日十歳となったばかりである。
 テレビから流れる明日の天気予報に耳を傾けながら、健一はただただ空を眺めていた。
 明日は健一の三つ上の従姉妹が遊びに来る日であった。一年ぶりの再会である。
 健一は、この日を待ち続けていた。

 一年前のことである。
 従姉妹がいるとは聞いていたものの、小さい頃に一度か二度会ったことがあるだけで、健一は顔もほとんど覚えていなかった。辛うじて、早苗
という名前だけが記憶の片隅にあった。
 それでも、親に迎えに行けと言われれば行かざるを得ない。ぶつくさと言いながらも健一は家を出た。
 待ち合わせ場所はバス停。予定より少し遅れたものの、バスはちょうど来たところであった。
 予想に反して、健一はすぐに早苗のことを見つけることができた。というのも、降りたのは見知らぬ少女が一人と、顔見知りのお婆さんだけ
だったからだ。
 少女は物珍しげに辺りを見回している。なんと声をかけたものかと思いながら健一が近づくと、少女は健一を見て開口一番こう言った。
「健君、久しぶり」
 訛りのない言葉。淡い化粧。村の同世代の少女とは違う空気を健一は感じた。
557お題:雪景色 2/3:2008/02/03(日) 18:47:53.03 ID:K8N8ZDxN0
 早苗が来て五日が過ぎ、早苗が帰る前日となった。この五日間で、健一は早苗のことを好ましく思うようになっていた。
 それは恋と呼べるようなものではなく憧れに近いものであったが、健一にとっては初めての経験であった。
「ねぇ、雪降らないのかな?」
 縁側から空を眺めながら早苗が言った。
 思い返せば、確かにここ一ヶ月ほど暖かい日が続いており、積雪もなかった。
 村に住んでいる健一には雪など珍しいものではない。むしろ、雪かきなんかの仕事が増えて邪魔なくらいだったが、早苗は雪が見たいようだと
健一は思った。
「降るよ、明日」
 健一は、早苗の笑顔が見たい一心でそう言った。
「ほんと!?」
「うん。天気予報で言ってた」
 嘘ではなかった。朝の天気予報でそんなことを言っていたのを健一はなんとなく覚えていたのだ。
「たくさん降るかな」
 早苗は嬉しそうに言う。
「うん」
「楽しみだねぇ」
 雪合戦をしてみたいとか、かまくらに入ってみたいとか、早苗が顔を赤くして言うのを見て、健一は誇らしい気分になった。

 次の日、健一は朝起きて窓から外を眺め、頭を殴られたようなショックを受けた。
 確かに雪は降ったものの、たいした量ではなかったのだ。
 これでは雪合戦やかまくらどころか雪だるますら作れそうにないと、健一にはすぐわかった。
 早苗に合わせる顔がないと思った。
 隠れるようにして居間に行くと、まだ早苗は起きていないようで、健一はさっさと食事をとり、部屋に引きこもった。
 都合のいいことに、早苗は荷物の整理やなんかで急がしそうで、健一と話す暇もなさそうだった。
 健一は内心ほっとしていた。このまま早苗と顔を合わせずすむかもしれない。
558お題:雪景色 3/3:2008/02/03(日) 18:48:40.79 ID:K8N8ZDxN0
 早苗が帰る時間が来た。健一は自分が早苗のバス停までの見送りを請け負ったことを思い出していた。
 部屋に引きこもったままでいるわけにもいかず、健一は出来るだけ早苗の方を見ないようにして早苗とともに家を出た。
 さくさくと、踝までもない雪を踏みしめ、健一は無言だった。早苗も何も言わなかった。
 そのまま、バス停についた。まだ時間があったが、健一は下を向いたまま何も言うことができなかった。
 早苗に何かを言われるのがこわかった。
 嘘つきと言われるだろうか。こんなんじゃ雪合戦なんてできないと怒られるだろうか。健一はただただ、早苗に嫌われるのがこわかった。
「健君の言ったとおり、たくさん雪降ってるね」
 早苗の声に、健一ははっと顔をあげた。
 早苗は空を見上げている。いつの間にか、粉雪が降り始めていた。だけどそれは、積もるようなものではなく、ただ落ちて溶けるだけの
ものだった。
「すごいね。雪」
 違う、こんなもんじゃない。もっともっと降るのだ、と健一は叫びたいのを必死に我慢した。
 早苗が喜んでいるのを邪魔したくなかった。
「雪だるま、いっぱい作れるね」
 早苗は嬉しそうに笑う。
「……うん」
「かまくらも作れるんだよね」
「……うん」
「すごいね」
 口を開けば何か別の言葉が出てきそうで、早苗の言葉に健一はただ何度も頷いた。
 暫くしてバスが来た。簡単な別れの言葉しか、健一は言うことができなかった。
 健一は早苗のバスが見えなくなるまで見送っていた。

 その日から一年、健一は苦い思いを抱えてきたのだ。
 窓から見える空は、降り注ぐ雪で白く見えた。
 十年ぶりの大雪であると、テレビのアナウンサーが言っていた。
 今年こそ、本当の雪景色を見せてやるのだ。
 そう思うと健一は眠れなかった。

 稀に見る大雪で交通機関が止まり、早苗がこれなかったのはまた別の話である。            完
559以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 19:02:11.77 ID:hEu9B1CQO
保守
560以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 19:23:16.43 ID:FljJgRXw0
561 ◆CoNgr1T30M :2008/02/03(日) 19:40:51.02 ID:CxcBREfYO
品評会いくよ
久し振りだから駄目かも
562【品評会】規則破不1/4 ◆CoNgr1T30M :2008/02/03(日) 19:42:22.18 ID:CxcBREfYO
 まだ日差しの暑い午後。ようやく不破は約束の喫茶店に到着した。昨日、いきなり電話がかかりこの喫茶店に呼び出された。
 本来なら不躾なことだが電話の主があまりにも意外な人物で、その日は仕事も無かったこともあり、その申し出を了承した。
「久し振りだな不破」
 奥の席には学生時代を共にした城咲が座っていた。
「おお、久し振り。それより急にどうしたんだ」
 二人の再会は実に十年振り、その間二人に交流はなかった。
「ふふ、それよりお前今何してるんだ?」
 城咲の問い。これを不破は誇る様に返す。
「裁判官さ。お前はどうなんだよ?」
 不破は昔から正義感が強く努力家だった。そんな不破は昔から裁判官に憧れていたのだ。
「……いや、今は何も」
 渋い顔をする城咲。自分から仕事の話を振ってきたくせにプー太郎だなんて……。不破は内心呆れていた。
「で、今日は何さ?」
 城咲は学生時代、成績優秀だっただけに不破は期待外れ感を否めない。
「そうだ、本題なんだが。……この国を転覆させないか?」
 不破は意味が分からず惚ける。それを余所に城咲は語り始める。
563【品評会】規則破不2/4 ◆CoNgr1T30M :2008/02/03(日) 19:43:39.84 ID:CxcBREfYO
「不破よ、確かにこの国は豊かで平和で、世界的に見ても先進国だ。
けれどそれは聖者が唱える“真の豊か”ではないことは明白。例を出すなら国の沿岸には軍隊が常駐し敵襲に備え、貧民街は番地すら与えられず社会的に隠蔽され無法者の楽園と化し、都市の政治屋はこぞって汚職……。
それでも大多数の無知な国民は幸せに暮らしている。残りの国民はというと甘い汁を吸う官僚や高所得者、極貧の社会不適合者、そして疑問を持ちつつも力なき者たち。
お前もその疑問を持つ弱者のはずだ。この強者が弱者を搾取するという腐ったルールを変えないか?」
 演説じみた長い台詞は俺たちならできるという言葉で結ばれていた。
……。不破は呆れつつも少しだけ共感していた。確かに昔、城咲と一緒に正義に燃えていたため気持ちは分からないわけではない。
「なるほど……ところでそれだけ言うなら何か計画はあるのか?」
 城咲は不破のその言葉を是と受け取ったのか概要を話し始める。
「あぁ、もうすでに同志をレジスタンスとして組んでいる。さらに今夜、政治の中枢機関に突撃する予定だ。今夜、革命は成る」
 不破は疑問をそのまま口にした。
「そこまで準備が出来ているならなぜ俺に言う必要があるんだ? そこまでリスクを負って俺を引き入れる意味はあるのか?」
564【品評会】規則破不3/4 ◆CoNgr1T30M :2008/02/03(日) 19:45:03.19 ID:CxcBREfYO
 城咲は照れくさそうにこう答える。
「お前は優秀で懸命だ。お前が居てくれれば革命後の新政府はきっと成功する」
 城咲の目にはアツい何かがあった。
「けれど俺が警察とかだったらどうするつもりだったんだ?」
 不破は冗談混じりに言う。
「お、おうお前は優秀だったからそれも考えた。だから最初に職業を聞いたんだ」
 だから自分は無職にも関わらず、職を聞いてきたのかと不破は納得する。
「で、どうだ? やってくれるのか?」
「まぁ、そこまで言うならな。組織とかあるんだろ? それの連絡先っつーか教えてくれよ」
 ご丁寧に名刺を渡してくる城咲。本当に革命を起こせるのか心配になってきた。が、武力は申し分なく、国の警備くらいなら軽く破れるそうだ。
「うんうん、不破が居れば百人力。俺が大統領で不破が秘書。あっ、秘書って言っても俺の右腕みたいなもんだからさっ! それで二人っきりの部屋で……不破、好きだ付き合ってくれ」
 唐突すぎる告白。昔からホモっ気があるとは思っていたがまさかガチホモだなんて……年月は人を変えるなぁと思う不破。
565以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 19:47:15.69 ID:Xn82Bo8A0
さる?
566【品評会】規則破不4/4 ◆CoNgr1T30M :2008/02/03(日) 19:47:41.84 ID:CxcBREfYO
「実はこの計画にお前を誘ったのもこの為なんだ。さぁ、新天地へ行こうか不破」
 流石に尻の貞操が危ない。不破は魔法の呪文なる言葉を言い放つ。
「えー、城咲文哉。国家反逆罪で逮捕します。ついでに強姦未遂? とか諸々で」
 かしゃりと手錠をかける。城咲は釈然としない……むしろ驚きで惚けていた。
「あぁ、俺さ。実は秘密警察なんだ。工作機関みたいなモンなんだよ。だから逮捕ね。OK?」
 前代未聞の国家転覆の大革命計画は運の悪い男の恋心によって静かに幕を閉じた。

 ちなみに社会のルールを賢明に守った不破則規はその後、昇進し、美人の奥さんを貰い。人生の勝ち組としてマイホームを建て子供二人の計四人で幸せに暮らしたとさ。

567 ◆CoNgr1T30M :2008/02/03(日) 19:48:31.21 ID:CxcBREfYO
ふひん久し振りだから駄目駄目だぁ
568以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:01:46.47 ID:FljJgRXw0
569以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:07:38.41 ID:OWAK197a0
今回横長の多くてワロタw
570以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:12:43.27 ID:D8/XZ5450
絶賛まとめ中の人がんばれ!
571 ◆Cj7Rj1d.D6 :2008/02/03(日) 20:15:22.59 ID:ZAdwKaId0
ここまで書いた感想投下
No.01 コドモルール 1/5 ◇ecJGKb18io 氏
>小学六年生の僕らにだってルール
校則を僕らのルールと呼ぶところになんとなく違和感。
>安藤女史だ
女史……?小学生が同級生に使う言葉かこれ
>トイレ野球が他のどんな遊びよりも楽しいのは事実だけれど。
これ一般論じゃないよな当然。なんでそんなに楽しいんだろう
>お前こんな本の虫の事が好きなの?」
うーん……。なんとなくだけどここ気になった。本の虫て言葉は使わせる必要あったか?
>「神田。お前も残るよな」「神田くんはどう思う?」
二回しか主人公の名前は出てないけど個人的には名前なくてもよかったんじゃないかなっと思う
うん、面白かったよ
No.02 ル・クインセグ 1/5 ◇pxtUOeh2oI 氏
すごい消化不良。
本来ファンタジーっつーのは一つの世界を創ることだからすごく難しいジャンルだと思うんですよ。
んでこの物語なんだけど、色々詰め込んでる割にはそれなりに読めたんですそれなりに。
んでそれはきっと俺の脳が勝手にこの世界観を補完したからだと思うんですよね。
まあ、こういう書き方もあるんだろうけどどうなんすかね、読み手に依存するってーのは
No.03 神のいない世界で 1/2 ◇eYCc7/VuC2氏
だからn(ry
>「1年ぶりかな」
>酒とグラスをカウンターにおいて、宿の主人が男に声をかけた。
>人間だけでなく魔物ともうまく付き合うたくましい主人は、彼と古い付き合いだった。
>あぁ。漸く、なんとかなりそうなんだ」
>「そうか……。あんたがこんなことをするなんて昔は信じられなかったが、今なら信じられる。あいつを、よろしく頼む」
>「あぁ」
主人フランクだな。酒場なんかに来てるけどまがりなりにも世界の王だろ相手。
てかなんで主人は勇者と知り合いみたいな感じなんだ?ドラクエのオマージュ?
572 ◆Cj7Rj1d.D6 :2008/02/03(日) 20:16:23.34 ID:ZAdwKaId0
No.04 シュガープラント・ルールズ 1/5 ◇AOGu5v68Us
アリシアさんの結婚オチはないよね
話はありがち。どっかからチョッパってきたと言われても信じるほどアリガチ。
No.05 生類憐みの令 1/3 ◇ETwWxomLBg氏
起承転結の転が見事なまでに抜け落ちており、そのせいでひどく肩透かしな物語になってる感じがした
No.06 ルール 1/5 ◇ibD9/neH06氏
なんとなく森美ってこんな感じかなて思った
>憤慨しているんだから興奮して当たり前じゃないかと私が話を遮ると、それとは別種だよ馬鹿お前
昔から頭固いんだよ馬鹿と彼が二回馬鹿と蔑んで座布団を投げつけてきたから、お前こそなぜ座布団
投げるかこの馬鹿と(以下略)
ここワロタwwwww雰囲気の変え方がうまいね。ただ
>友人は程無くしてピュアストーカーにジョブチェンジ
ここは雰囲気を壊している、というか、空気を歪ませている台詞だと俺は感じた。
全体的には面白い
No.07 家路 4/4 ◇Gv599Z9CwU氏
わかんねえええええええええええええええええ
こういうのもいいんかもしれんけど、でも俺にはわからねえええええええええええ
ただちょっとイタイ感じがした
573 ◆Cj7Rj1d.D6 :2008/02/03(日) 20:17:16.01 ID:ZAdwKaId0
毀れた乳母車が並ぶ自転車店 (4/4)◆/sLDCv4rTY氏
結局なんで村人を殺したの?もちろんだろうけど作者は全部理解して書いているんだよな?
少女の存在はどうして絶望だったの?
>また、彼にとって、少女は希望ではなかった。逆だった。絶望、だっだ。
 彼には、少女がいい人間に育つとは思えなかった。
子を捨てるような親から生まれ、一人の子をいけにえにしてでも希望を見い出そうとする村に拾われ、
能無しで、しかも殺人まで犯してしまうような人間に育てられて、
いい人間に育つはずがないと思っていた。 

しかし、彼は少女のためにいきていた。たしかに生きていた。
彼は少女を愛していた。それは少女がなんであろうと、変わることのないことだった。

>彼は少女にいい人間になって欲しかった
矛盾してね?いい人間になってほしいと思えるってことはまだ望みを捨ててないってことだろ?
三秒ルール 1/2 ◆Bf9IIj31BY氏
あ?
いわない/友情/忘れたくはないんだ1/5 ◆/sLDCv4rTY氏
なんとも中途半端な作品。主人公は大学生になったのにさほど語彙力が上がっているようには感じられなかった。
漢字は増えたけど。
クロスウォーク 1/5 ◆p/4uMzQz/M氏
不覚にもオチにワロタw
ただ地の文がだるくて流し読みしたけど。
まあ面白かった
574 ◆Cj7Rj1d.D6 :2008/02/03(日) 20:18:11.17 ID:ZAdwKaId0
モンスター 1/5 ◆zsc5U.7zok氏
誰も彼もがついつい思ってしまうようなご高説をどうも
外へ(5/5) ◆otogi/VR86氏
オチへの運び方が急すぎる。なぜ急に食い物に見えてしまったのだろうか。
鬼っていうのは面白い
定め 1/5  ◆7BJkZFw08A氏
ロードオブザリングとなんか足して割った感じ。
キミョウな自分ルール」1/4 ◆ZetubougQo氏
面白かった。が、第二次ブームが来る前にもうワンクッションなんかあってもよかったかなとも思う

歌が聞こえる  5/5  ◆SQvDZ46yqY氏
なんすか、いったい。何者の仕業ですか。
お話は……まあ、こういうのありふれてるよね。
ありふれてるネタだからこそ作者の力量がわかっちゃうよね

規則破不2/4 ◆CoNgr1T30M氏
面白いぐらいオチが読めましたよっと
575以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:29:31.19 ID:eegSP0nFO
うおっ、はやっ
えーと今んとこ17?カオス考えたら25くらいになるんかな
576以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:32:12.58 ID:FxMiLGVP0
ぬおぅ!?光速の感想、乙です
この時期に面白いって言ってもらえるとすごく安心できるな
577以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:39:57.36 ID:ZAdwKaId0
感想が後半になるにつれて短くなっていくのは素がでているためです
全部しっかり読んでるよー
なっとくできねー!とか質問とかがあったら言ってください。
まあ一読者のあくまで感想なんで
578以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:43:14.47 ID:cQ6NeJrK0
久々に転載してみた。間違い見つけたら言えっつーの。いや申しつけてください。

No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店 1/4 ◇/sLDCv4rTY
No.09 三秒ルール 1/2 ◇Bf9IIj31BY
No.10 いわない/友情/忘れたくはないんだ 1/4 ◇/sLDCv4rTY
No.11 クロスウォーク 1/5 ◇p/4uMzQz/M
No.12 モンスター 1/5 ◇zsc5U.7zok
No.13 外へ 1/5 ◇otogi/VR86
No.14 定め 1/5 ◇7BJkZFw08A
No.15 キミョウな自分ルール 1/4 ◇ZetubougQo
No.16 歌が聞こえる 1/5 ◇SQvDZ46yqY
No.17 規則破不 1/4 ◇CoNgr1T30M
579以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 20:54:58.58 ID:eSFwV5J/0
580以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:01:21.20 ID:YAVJZR+x0
あああああと2時間とかwww無理だwww
581以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:03:56.85 ID:V6rts1vZ0
>>571あああ、ありがとう&乙。精進します
582以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:04:54.19 ID:eegSP0nFO
>>578
583以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:05:38.92 ID:EQZaQ57R0
>>578
お前のおかげで全感やる気になった。
早い段階で作品まとめが来るとすごく有難いんだぜ
584以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:19:48.79 ID:Xn82Bo8A0
俺も全感してみるか
これも練習になりそうだしな
585以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:24:17.67 ID:sNGlvDhl0
おみくじ
586以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:32:49.47 ID:+wALta4x0
てす
587以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:35:00.22 ID:p3/Gr+fd0
クッルックー
588以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:47:17.21 ID:nwQn1Is40
あと、一時間半くらいでカオスタイムですよ。
最近のカオスタイムは異常
589以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:47:21.44 ID:eegSP0nFO
>>577
ルール違反な気がするけどどうしても聞いておきたいんだが

NO.13の中の人なんだけど鬼ってのが第一の山のつもりなんですが、どこらへんで気付きましたでしょうか?それとも考えるのマンドクセだったでしょうか?
時節柄一レス目で気付かれてもいいやとややわざとらしく書きましたが、気になって夜しか眠れなさそうです
590以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:49:09.94 ID:q0YFakOV0
名の知れたハイレベルで優勝常連な奴がカオスタイム常連でもあるから
『カオスったって、いいじゃない』みたいな意識なんだ! みんなあいつが悪いんだ!
お前のことだお前のこと! うっかり順番間違えたりしたこともあるお前!
591以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:53:48.42 ID:561EvXH20
カオスかっこわるい
592以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:58:18.58 ID:nwQn1Is40
へへ・・・てことはカオスタイムにスレストさせれば優勝の可能性が上がるってこった・・・
593以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:59:08.72 ID:xO08Nqhy0
品評会諦めた俺に、いくつかお題くださいな
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:59:21.13 ID:q0YFakOV0
>>592
ちょwww
……やっちまうか、デストロイ★
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 21:59:38.57 ID:O6v6DvAM0
勇気の神様
596以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:01:04.28 ID:2N0z166Z0
>>593
酸素
597以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:01:04.34 ID:cQ6NeJrK0
>>593
自転車
598以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:01:20.14 ID:p3/Gr+fd0
>>594
それは止めておけ……救済スレがひどいことになるぞw
599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:01:37.00 ID:PvPEDD+i0
>>592

優勝しても何もメリットがない場所で、更に他人との協調戦略をとれないのは、
それはもうあなた精神病ですよ。
600以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:01:54.71 ID:xO08Nqhy0
把握!
601以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:04:05.03 ID:OWAK197a0
精神病は他者との関係性における病である
602以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:06:11.30 ID:PjGYbbQv0
カオスな通常作品書くからお題くれ
603以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:06:40.30 ID:q0YFakOV0
ブンスカー、僕はね、一度もカオスに参加したことがないというのを誇りにしているんだ。
だからと言ってカオスかっこ悪いとは言わないよ。
ただ、思っているだけだ。
604以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:06:41.01 ID:p3/Gr+fd0
月の上にボブとトム
605以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:07:05.43 ID:cQ6NeJrK0
>>602
賢者の医師
606以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:07:08.03 ID:OWAK197a0
>>602
品評会
607以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:09:37.74 ID:PjGYbbQv0
賢者の医師なのか? 賢者の石なのか? マジそれだけはっきりして
608以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:10:08.05 ID:PjGYbbQv0
それとも月の上にボブとトムなのか?
609以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:10:54.91 ID:p3/Gr+fd0
もういっそ、つきの上にボブとトムと賢者の医師でいいんじゃないw
610以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:12:20.30 ID:PjGYbbQv0
よしwカオスって来るw
611以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:13:23.63 ID:cQ6NeJrK0
>>607
IME様が「石」じゃ当たり前すぎてつまらんと言ってた。
だから、賢者の「医師」だよ。
612以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:15:02.54 ID:PjGYbbQv0
IME様ドSw
613 ◆hemq0QmgO2 :2008/02/03(日) 22:17:48.87 ID:oJhiLOrhO
スピードワゴンはクールに品評会投下するぜ!
4レス
614海とビールと傍観者(1/4) ◆hemq0QmgO2 :2008/02/03(日) 22:18:11.56 ID:+wALta4x0
 ごうごうとうなっていた旧式の乾燥機はがだんっ、と危なっかしい音を立てて、やがて止まった。
 乾いた洗濯物を紙袋にしまって、いつもより早く家路につく。
 八月の土曜日が暮れかけていた。銭湯に隣接するコインランドリーの外は長い影と橙色とに染められていて、
暑さもいくらか和らいできている。おばさんが駆る自転車のタイヤの音、ベルの音が耳に涼しい。
自宅のアパートの前につながる細い路地を抜けると、そう遠くないどこかからカレーの匂いがした。
 何もかもにまるでとりとめがなく、いかにも東京らしい、夏の夕だった。

 電話越しの真田の声はそわそわとして落ち着きがなく、少しばかりうわずってすらいた。
「あのさ、今週の土曜日、東京に行くことになったから泊めてほしいんだけど……」
 何か事情があるような口ぶりだったが特に追及はせず、俺は了承した。断る理由もない。
「一応言っとくけど俺んちクーラーないぜ。扇風機オンリー」
「マジで?」言葉とは裏腹に、真田の声はこのあたりでようやく落ち着いた。
「もちろん、マジで」
 真田は高校の同級生で、卒業後は地元の鵠沼から横浜の大学に通っている。東京の大学に進学した俺は
何度か催された同窓会に一度も出ず、帰省もしなかった。だから真田とは卒業以来、一年以上も会っていない。

 恥ずかしげもなく「文武両道」を掲げる県内有数の進学校の中にあって、俺は完全に劣等生だった。
部活動もせず、成績は常に学年で最低クラス、酒やタバコはもちろんのこと、
鵠沼海岸で楽しげに海水浴に興じていた同級生を殴って停学処分を下されたこともある。
 劣等生には劣等生なりの世界がある、と言ったのは色川武大だが、それはたしかにその通りだろう。
世界があれば構造があり、構造があれば倫理がある。それを乗り越えようとしてこそ、人は成長していく。
 俺は自分の世界を作るほどに劣等を徹底できなかった。屈託も苦悩もバカらしいと突き放して、
つまはじき者のくせに鵠沼やそこに住む人々を本気で憎むことができず、もちろん愛することもできなかった。
 やがて家族や友人と顔を合わせるのも面倒くさくなり、俺は逃げるように東京に上った。

 真田と、彼の「いとこ」の話をしよう。
 真田幸広は野球部員だった。二年生になった頃にサードのレギュラーを奪い、しかしその夏に腰を痛めて、
野球を断念せざるをえなくなる。スコアラーや伝令役として部に残るという選択肢もあったが、
真田はすぐに退部届けを提出した。「オレにとって野球とは」真田はいくらか冗談めかした口調で言う。
「オレにとって野球とは、補佐するものでも応援するものでもなく、プレーするものでなければならなかったんだ」
615海とビールと傍観者(2/4) ◆hemq0QmgO2 :2008/02/03(日) 22:18:38.65 ID:+wALta4x0
 真田と俺が初めて言葉を交わしたのは、彼が野球部を辞めた少し後、高校二年の秋頃だった。
 ある日曜日、俺はタバコを吸いながら海岸公園をあてもなくぶらついていた。
思い出すと、今でも笑ってしまう。よっぽどヒマで頭の悪い不良少年しかこんなことはしない。
 潮風の遊歩道に真田はいた。
 カメラを持って、何やらパシャパシャやっている。学校で何度か見たことのある顔だが、話したことはない。
名前も知らない。黙って脇を抜けようとするとこちらに気付いたらしく、声をかけてきた。
「おまえ、泉だろ? 二組の泉ハルオ」
 後で聞いた話では、鵠沼海岸での暴行事件以降、俺は学内でちょっとした有名人になっていたらしい。
「あのさ、よかったら一本くれない?」
 俺は無言でマイルドセブンとライターを差し出した。初めてなのか、なかなか火がつかない。
「息を吸いながら先っちょに火をかざすんだよ」
「ん、こうか? うっ」
 ごほごほと咳きこむ真田を見て、思わず笑ってしまった。煙が入ったらしく、しきりに目をこすっている。
「ああ畜生、しかしひどい味だな。こんなもん吸って何がしたいんだか」目が赤かった。
「俺はおまえが何をしたいのかわかんねえよ。つーか、誰さんだっけ?」
 すると真田は自己紹介をはじめた。野球部でレギュラーだったことや俺に話しかけた経緯、
最近は写真にハマっているということも含めて、必要以上に饒舌に、自慢げに語ってくれた。
「いやあ、泉って変わったヤツだって聞いてたからさ、ぜひ一度話してみたくて」
「俺はおまえの方がよっぽど変なヤツだと思うけど。ところで、一人で撮ってるのか?」
「いや、いとこと一緒に来たんだけど……あ、いた」
 真田の「いとこ」は、これもまた見たことのある顔だった。一年生のとき同じクラスだった、下川綾乃だ。
比べて眺めると、たしかにどこか面影がある。どちらも美男美女と言って差し支えない顔立ちだった。
「何やってんの幸広、って泉くんじゃん。知り合いだったの?」
「たった今知り合って、心の友になった」真田が軽口を叩く。
「そりゃ結構。昼ゴハンまだなら泉くんも一緒に行く? 私たちこれから行こうと思うんだけど」
「えー、こんなガラの悪いヤツと一緒にメシ食うなんて嫌だよ。オレ、綾乃と二人がいい」
「何言ってんの、心の友なんでしょ? ごめんね泉くん、昔からこーゆーヤツなのよ」
 話に割りこむ間すら与えてくれない。顔もそうだが、何より息の合った二人だな、と思った。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
616海とビールと傍観者(3/4) ◆hemq0QmgO2 :2008/02/03(日) 22:19:12.37 ID:+wALta4x0
 それからは学校の内外でたびたび二人に出くわした。しかし、会って何をするわけでもない。
学校では他愛のない世間話をし、俺はあまり口をはさまず、真田と下川のやりとりを見て笑っていた。
学校の外で会うと彼らは決まって写真を撮っていて、俺は「写真を撮る二人」をただ眺めていた。
 考えてみれば、俺はずっと、何もかもを眺めているだけだった。
 鵠沼の海を、藤沢駅前のざわめきを、二人の関係を、そしてどうしようもなくヘタレな自分自身を、
ただ眺めているだけで、結局何もしない。何もできない。それすらたまらなくなって逃げ出す始末だ。
 逃げ出す前に、大きな声で伝えるべきだった。他の誰でもなく、卑怯者の自分自身に。
「海岸公園で会うずっと前から、下川綾乃が好きだった」

 左の頬が不自然に腫れ上がった真田の顔を野方駅の改札前に認めたときは、さすがに驚いた。
「いずみー、オレ、もう、ダメかもしんない」真田は力なく笑う。
「ダメっておまえ、その顔どうしたんだよ」
「はは、ついさっき、綾乃の彼氏に、思いっきりぶん殴られました」
「はあ?」
 俺は混乱した。再会の喜びに浸る気持ちなんて環状七号線の果てまで吹き飛んでしまった。
 下川の彼氏って、真田、おまえじゃないのか?

 心身共にすり減らした真田を部屋に招き入れて、冷蔵庫からビールを取り出す。
こういう局面を打開するのは酒だ、などというマッチョ的な神話を、俺は愚直にも信じているのだ。
「ひでー部屋だな。ボロいし汚いし、クーラーはない。テレビもない」
「パソコンと冷蔵庫はある。扇風機もな。ほら、飲めよ。そんで経緯を説明してくれ」
「それよりさー、電車の中でな、みんながオレの顔をちらちら見るんだよ。なんか青春ど真ん中って感じ」
「ああ、それは来る途中に聞いた。そんで小学生に笑われたんだろ」俺は扇風機の振り子ロックを解いた。
「そう。なんで知ってんの?」
「だから来る途中に聞いたって」スイッチを入れて、風力を「強」に設定する。
 畳んだ布団の上にぐでんと横たわり、真田はタバコに火をつけた。窓を開けて、ぬるい風を部屋に送る。
「おまえ、いつから吸ってるんだ?」網戸の向こうの退屈な夜を一通り眺めて、振り向きざまに俺は言った。
「ついさっき。意外と悪くないな、これ」
 扇風機の「強」風に吹かれては消える煙を見ながら、よく冷えたビールを飲む。うまくもなんともない。
「マッチョな神話はあっけなく崩壊し、バカげたむなしさだけが残った」。そんな味だった。
617以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:19:34.75 ID:fYdg258P0
品評会行って良い?
618海とビールと傍観者(4/4) ◆hemq0QmgO2 :2008/02/03(日) 22:19:49.24 ID:+wALta4x0
「なーんか、しみったれてるなあ」つぶやいて、真田は身を起こした。
 そしてビールを二口ほど飲むと、弱々しくもおどけた声で「こと」の経緯を語りはじめた。

 真田は「いとこ」の下川と付き合ってはいなかった。互いに気持ちはわかっていたが、
どうしても「いとこ」という関係がぬぐえなかったそうだ。下川も地元の鵠沼から大学に通っていたが、
一年を待たずに辞めてしまう。その理由は真田も知らない。そして今年の春に上京し、
映像関係の専門学校に通いはじめた。聞くと野方からほど近い、高田馬場に住んでいるらしい。
「専門なんて横浜にだってあるだろうに、なんでわざわざ東京まで?」
「わかんねーけど、嫌だったんじゃないか? 鵠沼が」腫れた頬をさすりながら真田が言った。
 そして今日、真田は高田馬場の駅前で買った二千円の花束をぶらさげて下川に会いに行った。何のために?
「プロポーズに決まってんだろ。そんでおまえに結婚報告する予定だったんだよ」
「で、断られたと」俺は冷蔵庫から新しいビールを取り出した。
「『ふざけないでよ!』だってさ」ビールを受け取って、真田はへなへなと笑った。
「どーせふざけてたんだろ?」
「レヴィ=ストロースの構造主義、交差イトコ婚」
「は?」プルタブを引く指が止まった。
「親族の基本構造、偏在する『普遍の関係』。綾乃、オレと一緒に世界の構造を貫こう」
「おまえ、そんな意味不明な求婚したの?」
「そう、そしたらぶち切れて泣いちゃって、同じ下宿先の彼氏登場。ぼっこーん」
 真田はビールを飲んだ。「レヴィ=ストロースの構造は崩壊し、バカげた痛みだけが頬に残った」。
 そんな味だっただろう。たぶん。

 オレはおどけてないと本心を口に出せないんだ、と痛ましく笑いながら真田は言った。
「知ってるよ、そのくらい」
 真田はいつも本気だった。どんなに冗談めかしていても、どんなにバカげていても、何もかも本気だった。
わずらわしい世界を、倫理を、常識を、本気で乗り越えようとしていた。俺なんかとは大違いだ。
「わかってるよ。わかってるからさ、泣くなって」
 低いテーブルに突っ伏したまま肩を震わせる真田を眺めながら、俺はまたビールを飲んだ。
 どんなに注意深く舌を泳がせてみても、涙の味はしなかった。(了)
619以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:20:19.51 ID:fYdg258P0
◆hemq0QmgO2乙
割り込みすまん…
620 ◆hemq0QmgO2 :2008/02/03(日) 22:20:42.88 ID:oJhiLOrhO
クールに完了

まとめの方よろしくお願いします
621 ◆VZpO0svMyk :2008/02/03(日) 22:22:52.32 ID:fYdg258P0 BE:1816323089-2BP(1)
改めて品評会行きます。
622品評会作品:取替え子 1/4 ◆VZpO0svMyk :2008/02/03(日) 22:23:47.97 ID:fYdg258P0 BE:1210881986-2BP(1)
 女学校はいつも静かだった。生徒たちはお喋りせず押し黙って移動した。廊下を擦るようにゆっくり歩き、
やわらかな革靴は音を吸収した。彼女たちは厳しい規律の中で過ごしており、日々の生活から服装に
いたるまでことこまかく指定されていた。皆髪をかたく一つに結い上げ、毎日毎日同じ服を着ていた。
その服は入学時に一枚だけ支給されて、卒業するときまでそれを着続けることになるので、生地は
擦り切れないように分厚くゴツゴツしており、汚れの目立たないように濃い藍色で染められていたが、
毎日着続ければそれでも少しやわらかく色も落ちるもので、年長の者と年少の者は服装でそうと知れた。
 彼女たちは朝に夕に同じ文言を暗誦する。
 ……静寂をもって 和をなす
 わが心に問へば 自ずからその由明らかなり……
 入学して二年になる八木は自分の唇と喉が震えて言葉を紡ぎ、皆の声と唱和するのを耳で聞いていた。
それきり一日中、口を利くことは禁じられる。初めはその沈黙も辛かったが二年もすれば慣れて、今では
暗誦するときの自分の声を耳慣れないように思うくらいになった。
 だが斜め前に座っている、今年入ったばかりの少女は、八木がそうであったようにまだこの沈黙に慣れて
おらず無意識に足が揺れていた。眺めていると気付いた教官がやって来て、ピシリと少女の脇で床を一回
鞭打つことで「立て」と命じた。少女が立ち上がると教官は彼女の両足を鞭打ち、そしてまた床を打ち
座ることを許可した。彼女の足が徐々に蚯蚓腫れを浮かび上がってくるのが見える。泣いていなかったが、
彼女の肩はそれからしばらくの間ずっと震え続けていた。ここでは不注意は怠惰の罪として厳しく処された。
 教室の中だけでなく廊下でも監守たちがその行動を見張っている。決して音を立ててはいけない。彼女たちは
ゆっくり歩き、なるべく足音を立てないように靴底を廊下に擦り付ける。監守の前ではいつも緊張していたこと、
あるとき緊張のあまり転んでしまったことを思い出しながら八木が歩いていると、そのときピシリと音を立てて
鞭が鳴った。
 ハッと顔を上げると監守が立っていた。何のための処罰か分からず惑っていると、監守が鞭の先で八木の
左の革靴を指した。革靴の紐が解けていた。八木はしゃがみ靴紐を解き、靴と靴下を脱いだ。素足をさらすと
監守がそこに鞭打った。鞭の先が小指に当たり思わぬ痛さに声を漏らしてしまった。監守は八木の唇を
つねった。だがその後八木は沈黙を守り動かなかったので、懲罰はそれで終わった。監守は去り、八木は
ゆっくりと血のにじみ始めた素足に靴下を付け靴を履き靴紐を結び自室に戻った。自室に戻って靴下を
脱いで仔細に見ると指の爪が剥がれかけていた。その晩ゴツゴツとしたシーツとカバーのの陰でこっそり
八木は泣いた。
623品評会作品:取替え子 2/4 ◆VZpO0svMyk :2008/02/03(日) 22:24:16.65 ID:fYdg258P0 BE:1059521876-2BP(1)
 その明け方、まだ暗いうちに八木は目を覚まし、枕の上に一粒の砂を見つけた。それは八木が泣くと決まって
枕元に落ちているもので、何となく彼女はそれを集めていた。同室者を起こさないようにそっと机の引き出しを
開いて小さな瓶を取り出し、瓶を揺すると溜まった砂粒がさらさらと音を立てて崩れ、白々と明けてきた光を
受けて雲母のような光沢を放っていた。八木は今までこれが何か分からなかったが、もしかして涙が凝り
固まって出来た塩の粒ではないだろうかと思い舐めてみた。粒は果たして刺すような辛さの塩味を残して
舌の上で溶けた。
 ふと八木はぴちゃぴちゃという水音を聞いて寝台から立ち上がって部屋の外に出た。するとそこには
小さな森広がっていた。傍には池があり、ぴちゃぴちゃというのはその水が石にぶつかっては立てている音だった。
「誰かいるのかい?」
 女の声にはっとして八木が見遣るとそこには一人の若い女が立っていた。顔は日に焼けて赤く、体は
細身ながらしっかり肉が付き、目はすばしこかった。何より八木に奇妙に映ったのはその服装で厚手の
膨らみのあるスカートとエプロンも身に付け、履き古したブーツを履いていた。服は繕ってあるものの、
それでもあちこち破れたり染みや汚れがそのまま残ってあったりした。若い女は不思議そうにしげしげと
八木を見ていたが、やがて興味を失ったようで持っていた甕に水を汲み始めた。
「隣村から歩いて来たのかい? 随分変な格好だね。夜も近いんだ、凍えちまうよ」
「いいえ。私はそこから来たの」
 と八木は振り返って指さしたが、そこには鬱々とした森が広がっているだけだった。若い女は水を汲む
手を止め、八木に近付き、彼女が本物であるか確かめるように頬に触れた。女の手は荒れて乾いていた。
「本当に人の子かい? それともお前さんは違うところからやって来たのかい? もう日が暮れちまうよ。早くお帰り」
 女は八木の肩を叩いた。
「どうやって帰ったらいいか分からない」
「取替え子みたいなことを言う子だね、仕方ない、ついておいで」
 女は甕を持ち上げ歩き始めた。八木は立って見ていたが、何してんの、置いていくよという女の声に
彼女のあとについて歩き出した。
「あんた名前は何て言うの?」
「八木」
「ヤー……、ヤーグ? 変わった名前だね。私はサラだよ」
624品評会作品:取替え子 3/4 ◆VZpO0svMyk :2008/02/03(日) 22:24:39.59 ID:fYdg258P0 BE:908161766-2BP(1)
 森をしばらく歩くと急に視界が開けて、開墾された畑とまばらに家が建っていた。畑では一人の老人が何かを
植えており、サラを見ると声を掛けてきた。
「やあサラ、その子はどうしたんだい?」
「森で拾ったのさ」
「森の子かい?」
「そうさ」
 老人は笑って手を振りまた作業に戻った。
 サラはこじんまりとした家に入って行き夕食の準備を始めた。家には目の見えない老婆と口の利けない
子どもが一人いた。
「手伝ってくれるかい、ヤーグ?」
 そこで体験したことはすべて八木にとって驚くべきことだった。皆声高に喋り(サラはとてもお喋りだった)
彼らが歩くたびに靴底は床に当たってガタガタ音を立てた。食事はあたたかく、サラは「美味しいだろ?」と
八木に訊いてきた。子どもはスプーンをかちゃかちゃ鳴らし、最後には行儀悪く皿を舐めてサラに叱られた。
食事をしている間もその後も隣人たちが珍しがって八木を見に来た。そのたびにサラは自慢げに八木を
彼らに紹介した。
「森の池のところに突っ立ってたのさ。ヤーグっていうんだ」
「取替えっ子が帰って来たのかね」
「そうじゃないかい? だってこんな生っ白い子見たことないよ。地下かどこかに住んでたに違いない」
「何にしろ幸先がいいね、小さい人たちに贈り物をしないと」
「いやいや、そっとしておくのがいいよ。ヤーグは天からのプレゼントさ」
 八木は話を聞きながらテーブルの上でうとうとしていた。台所は騒がしかったがとても暖かかったからだ。
八木がうとうとしているのに気付くと、サラは彼女のごわごわした服の代わりに木綿の寝衣をチェストから
引っ張り出して着せ、子どもたち用の寝台で二人が分け合って眠れるように布団を重ねた。寝衣からも
布団からも薬草のような匂いがした。子どもは間もなくすやすやと寝息を立て始め、八木も眠りに就いた。
625品評会作品:取替え子 4/4 ◆VZpO0svMyk :2008/02/03(日) 22:25:24.40 ID:fYdg258P0 BE:1135201695-2BP(1)
 目を覚ますと八木はいつもの寝台の上にいた。脱いだはずのごわごわとした服が身を包み、あたりは静まり返って
灰色の壁がいつもより押し迫るように四方を囲んでいた。
 教室では今年入ったばかりの少女が今日も失敗を繰り返して鞭打たれていた。彼女は目に見えて怯えていた。
午後になって彼女は教官が横を通った際にびくりとして本を机から落とした。教官はこれまでと同じように床を
ピシリと鞭打ち立つように命じた。少女は身を震わせながら何とか立ち上がったが、既に幾筋も鞭打たれて
赤くなった両足を鞭打たれると膝をついた。教官はもう一度ピシリと床を鞭打って立つように命じ、彼女はついに
泣き始めた。
「教壇の前に立って背中を見せなさい」
 教官は彼女の服を脱がせると背中を鞭打った。初め彼女は脱いだ服を握り締めて耐えていたが
失禁してしまい、床に座り込んで泣きじゃくり始めた。教官は教室の外の監守を呼び少女を懲罰房に
入れるように言った。彼女は泣き喚きながら連れて行かれた。教官は手前に座っている生徒に尿に汚れた
床を掃除させ、空気を入れ替えさせた。八木は彼女のことを可哀想だと思わなかった、八木自身が通ってきた
道だからだ。おそらくこの学校にいる全ての人たち皆がそうだろう。懲罰房は八木も最初一度入れられたことが
あるが、思い起こすだけでぞっとする、もう二度と入りたくない場所だ。そこは狭い穴倉のような場所で、入ると
両肩が壁に触れ、足は完全に伸ばすことができない。不意にそのとき八木は塩粒の向こうのサラたちを
思い出して、久方感じたことのなかった怒りを感じた。おそらくサラたちは懲罰房に入ったことなどないだろう。
 その夜八木は机の中にしまっていた瓶を塵箱に捨てた。瓶が塵箱の底に当たってカチャンと砕ける音がした。
 そのとき塵箱からぴちゃぴちゃという水音が聞こえ始めた。塵箱から水が湧き出し、あっという間に部屋は
水浸しになった。水の勢いは留まるどころかますます激しくなる。八木は部屋を出ようとしたが、既に扉の
向こうも水に満ちてしまったのか、扉は開かなかった。八木は寝台に上り一番チェストに上がったが、
間もなく部屋は天井まで水で満たされてしまった。八木は窓が水圧で破れたことに気付いてそこから外に
泳ぎ出た。外も見る限り同じように水に満ちていた。八木は空高く光を目指して泳ぎ始めた。途中で
重くまとわりつく服を脱ぎ捨てた。
 やがて八木は水面に辿り着く。陸のようなものに夢中でしがみ付いてみるとそこはあの池のほとりだった。
八木がぼんやりとしていると木々の陰からサラが現れた。サラは甕を取り落とし、八木に駆け寄っで抱き寄せた。
「ヤーグ! また帰ってきたんだね、もう戻って来ないかと思ったよ」
 泣かないで、泣かないでとサラは繰り返して八木を揺さぶったので、八木はそのとき初めて自分がずっと
泣いていたことに気付いた。
 
 終わり
626品評会作品:取替え子 4/4 ◆VZpO0svMyk :2008/02/03(日) 22:25:39.46 ID:fYdg258P0 BE:302721326-2BP(1)
以上です。

改行なしですまん。
感動系でしめたけど、欝エンドの方がいいのかなあ。
627 ◆rmqyubQICI :2008/02/03(日) 22:28:41.06 ID:FljJgRXw0
かぶってなかったら品評会作品いきます。
628知恵の果実と楽園の境界 1/4 ◆rmqyubQICI :2008/02/03(日) 22:29:39.02 ID:FljJgRXw0
 夕暮れ時。夕日が木々の緑を赤く染め、ひぐらしの声がかなかなと響き渡る頃。
 少年はひとり、山道を歩んでいた。ただただ俯き加減で、踏み固められた土の上を延々
とゆく。その表情に浮かぶのは、十歳の少年にはどうしようもない、若い感情の波。芽生
え始めたささやかな反抗心、そして、ついに抱いてしまった社会への不信感が、彼をいつ
になく苛つかせていた。

 きっかけはごく些細なことだった。「元来、人間は自由なものです」という、彼の担当
教諭の言だ。
「そんなこと言ったって、俺たちが自由なわけないじゃないか。
 毎日制服を着て学校に来なきゃいけないし、授業中は席から動くこともできない。毎年
冬になったらマラソン大会なんかに出なきゃいけないし、給食を残すのも駄目。
 これのどこが自由だっていうんだ。大人は大嘘つきだ!」
 昼休み、熱弁をふるう彼に、クラスメイトたちは盛大な賛辞を送った。ある者は「その
通りだ!」と叫んで返し、ある者はうんうんと頷いて、またある者は激しく両手のひらを
打ち合わせる。そのとき彼の心につのったものは、一時の高揚感だけではなかったに違い
ない。
 帰宅後、少年は居間で書き置きを見つけた。彼は祖父と二人暮らしであるから、書き置
きの主はすぐにその人と分かる。二つ折りされたその紙には、祖父の文字でこう記されて
いた。
『今夜は遅くなる。夕飯には昨夜のカレーの残りを。くれぐれも柵の向こうへは行かない
ように』
 寡弁な彼の祖父らしい、いつも通りの書き置き。いつもならば少年のささやかな反抗心
は夕飯を食らう間に冷め、帰ってきた祖父をいつも通り笑顔で出迎えていただろう。しか
し、今日は違っていた。書き置きの紙をぐしゃぐしゃに丸めて床に叩きつけると、少年は
玄関から走り出したのだ。
 彼の行き先は始めから決まっていた。書き置きにもあった、日頃から決して越えるなと
言いつけられている柵のところだ。越えてはならない理由というのは、その向こうの山林
は大人でも迷いやすく、昔から幾人もの行方不明者を出しているため、ということだった。
629知恵の果実と楽園の境界 2/4 ◆rmqyubQICI :2008/02/03(日) 22:30:09.00 ID:FljJgRXw0
 もちろん、少年もそのことは知っていた。彼が気に食わないのは、どうして越えてはな
らないのかと尋ねたときの、祖父の返答だ。「お前のためだ」と、決まってその一言。大
人が不完全だと知ってしまった少年にとって、これは受け入れがたい言葉だった。
「自分の言うことが正しいと思い込んでいる大人に、一泡吹かせてやらなければならない」
 彼の反抗心は、声高にそう訴えた。そしてついに、彼はその声に従ってしまったのだ。

 三十分も歩き続けていた少年の足が、ようやく止まった。目の前には、まるで背の低い
鉄棒を並べたような、錆びついた鉄製の柵。
 今まで近づこうとすらしなかったそれを目の前にして、少年は強烈な違和感に見舞われ
た。触れられるほど近くまで寄ってみて初めて分かったのだが、その柵は、少年の腰ほど
までの高さしかなかったのだ。
「こんなに低かったのか……」
 意識するでもなく、少年の口からそんな言葉が洩れ出した。何年間も自分を阻んできた
ものが、こんなにも小さかったなんて。
 しばらくして、少年の口角が大きく吊り上がった。その柵の高さが、まるで、大人たち
の小ささを象徴しているかのように思えたのだ。彼は柵に手をかけて、軽くそれをまたぎ
越した。そして両足が『柵の向こう側』についたとき、少年は、ついに声を出して笑い始
めた。
 大人が決めたルールの、なんと脆弱なことか。これまで近づくことすらしなかった禁忌
が、まさかこれほど簡単に破れるものだったとは。
 ひとしきり笑ったあと、少年はゆっくりと後ろに向き直り、山林の奥へと歩き出した。
入れば命を落としかねないという、大人たちの『迷いの森』へと。


 少年が柵を越えてから数時間が経った。
 珍しい植物や虫はいないだろうかと、少年らしい好奇心に導かれて奥へ奥へと分け入る
うちに、気付けば辺りはもう暗くなり始めていた。
630知恵の果実と楽園の境界 3/4 ◆rmqyubQICI :2008/02/03(日) 22:30:49.47 ID:FljJgRXw0
「さすがにそろそろまずいかな……」
 少年の呟きと呼応するように、風が木々の葉をがさがさと揺らす。もう帰ろうと決心し
て、彼がくるりと進路を返したそのとき、後方の草むらががさりと音を立てた。小さく悲
鳴を洩らして振り返るも、姿はない。少年はごくりと唾を飲み込んだ。それから、集中し
て辺りの音を拾う。
 じりじりとうるさい虫の鳴き声。風で木の葉が揺れる音。そして、少し離れた川のせせ
らぎ。それら以外に目立った音がないことを確認して、少年はほっと胸を撫で下ろした。
 しかし薄気味悪いことに変わりはない。少年は来るときよりも歩調を早め、川のせせら
ぎが聞こえる方へと向かった。川を下流へと辿ってゆけば、家の近くに出ることを知って
いたからだ。
 川を見つけてから、少年はただ、ひたすら早足で歩き続けた。緩やかな下りの道を、あ
と何十分か歩けば家だ、と自分に言い聞かせながら。しかし、いくら歩いても一向につか
ない。もう何時間も歩き続けているようにすら感じられるというのに、周囲の風景はほと
んど変わらないのだ。
 ここに至って、彼の脳裏にいくつかの疑問が浮かんできた。
 本当にこれでいいのだろうか。本当にこれで帰れるのだろうか、と。
 がさり、と薮が立てた音に、少年は小さく飛び上がった。おずおずとそちらを見遣るも、
やはり姿はない。少年はぶるりと身を震わせた。そこに何か得体の知れないものがいるよ
うな気がして、恐ろしくなったのだ。
 早くここから出たい。少年は強く願ったが、彼の幼い体力は、そろそろ限界に近づいて
いた。足がどんどん重くなってくる。もう歩きたくない。そして、彼は考えてしまった。
もしここで歩けなくなったらどうなるのだろう、と。
 その瞬間、恐怖が彼の体を支配した。足から力が抜け、膝がかくんと折れる。力なく地
面に座り込んだ彼の目から、涙が筋になって溢れ出す。
 それでも、彼の反抗心はきっと、こう訴えたに違いない。
「それもこれも大人のせいだ。大人が嘘をつくからこんなところに来てしまったのだし、
ここから出られないのも奴らのせいだ」
 しかし、少年はこの状況でそんなことを考えられるほど肝が座っていなかったし、それ
ほど頭が弱くもなかった。
 本当に自分が間違っていないと思うのなら、あのとき担任に直接問い質しただろう。
631知恵の果実と楽園の境界 4/4 ◆rmqyubQICI :2008/02/03(日) 22:31:12.37 ID:FljJgRXw0
 祖父のことだって、絶対に自分が正しいと信じるなら、真っ向から論じ合えばよかった
のだ。
 少年はようやく、自分の弱さに気付いた。祖父の答えの正しさも、その優しさも、彼は
ついに理解した。
「じいちゃん、助けて!」
 力の限り、少年は叫んだ。助けて、助けて、と、祖父への謝罪にかえて、ただ素直に。
そして、助けを求める彼の泣き顔を、強い光が照らし出した。
 眩しい光に目を細めながら、少年は、確かにその影を見た。大型の懐中電灯を片手に、
こちらへ駆けてくる男の姿。安心でも涙は流れるものなのだと、このとき、少年は初めて
知った。


 少年は山道を歩んでいた。祖父の広い背に負われて、揺られながら。
「じいちゃん、ごめん」
 少年の謝罪に、祖父は無言で頷いた。そして短い沈黙のあと、少年がふたたび口を開く。
「先生がね、言ってたんだ。人間は自由なんだって」
 なのに、なんでルールなんてものがあるんだろう。そう続けようとした少年の言葉は、
祖父の言に遮られた。
「自由だからだ」
「自由だから……?」
「自由でなければ、お前はあんなところへ行けなかっただろう」
 祖父が言い終えて、ふたたび沈黙が訪れる。寡言を徳とする男のこと。少年に問われた
として、もう「自由だからだ」としか返さないだろう。だから少年はなにも聞かなかった。
それに、何を聞く必要もなかった。
 心地よい揺れが、少年を眠りへと誘う。彼をとりまくものの優しさを噛み締めながら、
少年は深いまどろみの底へと沈んでいった。


  了
632 ◆rmqyubQICI :2008/02/03(日) 22:32:24.75 ID:FljJgRXw0
終わり。
まとめてくれてた人に乙を。
633【品評会】コルネオのルール0/5 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 22:33:16.03 ID:Fm21fo1O0
品評会いきます
634【品評会】コルネオのルール1/5 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 22:33:47.49 ID:Fm21fo1O0
 先ほどまで座っていた女性が隣の席を立って、帰って来たのは若い男だった。整えられてない
赤い髪に、茶色の眼をしたチンピラのような風体。どこかで見た事があるような顔だったが、ど
こで見たのか思い出せない。
 私は不審げにその若者を見つめた。すると若者は、馴れ馴れしい口調でこう言った。
「よお、元気か?」
 私は睨みつけた。どうやらこの若者、空の上だというのに酒を煽っているようだ。頬が若干赤
く染まっている。
「飲むかい?」
 ポケットから瓶を取り出して、こちらに勧めてきたが、片手で断った。他人から出された飲み
物を平気で飲む程、私は命の安売りをしていない。
「飲んじゃいけない場所で飲む酒は格別だな」
 と言いながら更に一口飲む若者。やはり、ケチらずにファーストクラスにすべきだった。近く
に添乗員も見当たらず、この若者を追い払ってもらう事も出来ない。
「失礼だが、そこはご婦人の座っていた席だ。戻って来る前にどいてもらおうか」
「そいつはすまなかった。それじゃあ俺は、あんた側の席に座ろう。空の景色を眺めたい」
 若者のトボけた口調が、やけに勘に触ったが、騒ぎ立てる事は出来ない。こっちだって、叩け
ばホコリの出る身である事を思い出し、自戒する。どうやらここは、完全に無視を決め込むのが
正解のようだ。私は青年の視線を受け流し、窓に目をやった。女性が戻って来て、そっちで勝手
に解決してくれるのを待とう。
「1人旅か?」「結婚してるのか?」「合衆国は初めてか?」「それとも帰り?」「あんたポー
カーわかるか?」
 その全ての質問に、ことごとく聞いていないフリをしてやり過ごした。
「賭けようぜ」
 その言葉にだけには、私は意志と無関係に、少しだけ反応を示してしまった。ギャンブルには
目が無い。私の悪い癖だ。少しだけ青年の方を振り返ると、既にトランプを持って、シャッフル
し始めていた。
「おや? やる気になった?」
 私が返事をする前に、青年はカードを配り始めようとした。私の抱えたアタッシュケースの上
にカードを乗っけようとしたので、私は急いでアタッシュケースを青年とは反対側に置いた。
635以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:33:57.40 ID:cQ6NeJrK0
まとめしてくれた人
No.18 海とビールと傍観者 1/4 ◇hemq0QmgO2
>>614のレスの最後、閉じ括弧 ”」” が抜けてね?
636【品評会】コルネオのルール2/5 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 22:34:18.67 ID:Fm21fo1O0
「何か大事な物でも入ってるのか?」
「いや、大したもんじゃない」
「おいおい、覚せい剤2kgと言ったら十分大したもんだろうよ」
 反射的にスーツの内ポケットにやった手を、即座に止められた。それと同時に、ニッコリと笑
いながら「墜落させる気かよ」という台詞。
 そして青年は声の音量を落とし、呟くように言った。
「機内に銃まで持ち込んでるとは……一体何人抱え込んでるんだ? ん?」
「……お前誰だ?」
「コルネオって名前、俺は気に入ってるんだ。良い名前だろ?」
 それは、最近よく聞く名前だった。うちの組織と敵対する組織で、特に最近目立っているとい
う噂の若造だ。この若さで、組織のボスの右腕を勤めていると聞いた。1回だけ、私の部下から
顔写真を見せられた事を思い出した。
 私は訝しげに、コルネオを見た。この若造は、一体何を企んでるのだろうか。
「いや、何も通報しようって言うんじゃない。俺はあんたと、賭けポーカーがしたいだけさ」
 緊迫する空気を一瞬にして和らげるその場慣れした口調。噂は嘘という訳では無かったようだ。
 私は思考を張り巡らせた。私が捕まれば、当然組織にも影響が出る。つまり私に残るのは破滅
だけだ。かといって、ここでこの若造に鉛球をぶち込んでも何の解決にもならない。たった1人
で、ハイジャックが成功するはずがない。私はとりあえず、ゆっくりとした動作で、裏ポケット
に突っ込んだ手を出した。同時に、コルネオの手も離れる。
 私に今出来る事は、どうにかして平和的にコルネオを口封じする事だ。買収した空港の職員は
2人だけ。事は出来るだけ内密に運ばなければならない。
「コルネオとやら、物は相談なんだが」
 と切り出すと、コルネオはトランプをシャッフルしながら、私を見つめていた。そこにはすっ
かりと酔いが無く、底まで見透かされそうな、澄んだ瞳があった。
「取り引きだ。とか言うんだろ?」
 やはり見透かされていたようだ。
「もちろん、乗らせてもらうよ」
 続いた言葉は、少しだけ意外な物だった。
637【品評会】コルネオのルール3/5 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 22:34:49.86 ID:Fm21fo1O0
「あんたを潰してルートを消せってのがボスの命令なんだが。……まあ、ここだけの話」
 コルネオが声のトーンを更に落とした。
「近々、俺はこの業界から足を洗おうと思ってる」
 その言葉、真偽は不明だが、コルネオの方からそう言うとなると、交渉にも余地が出来る。つ
まり、コルネオが今欲する物は、
「金か?」
「ご名答」
 コルネオがカードを配り始めた。私の膝に5枚、自身に5枚。
「1つ賭けをしようじゃないか。見てたぜあんた、香港のカジノで随分でっかく儲けてたじゃな
いか。うらやましい限りだ」
 どうやら覚せい剤の工場に行く前から、私は後を付けられていたようだ。
「しかもあんた、それを銀行に預けてないな。そこから考えると、あんたのボスも相当セコいん
だろう。どこの組織もボスなんて似たようなもんだな」
 何が言いたいのか、私には分かる。
「……全部賭けてやる」
「ついでに、その腕時計もな」
 当然逆らえない。が、確証を取らなければならない事がある。
「その目は疑ってる目だ。俺が本当に言わないか、だろ? 後ろの席を見てみろ」
 言われた通り、注意しながら後ろの席を見ると、先ほどまで私の隣の席に座っていた女性が、
大きな口を開けながら寝ていた。
「一服盛らせてもらったよ。少なくともあと8時間は起きないだろう。強力な奴だから」
 そう軽々しく言い放ったコルネオの言葉には、なぜか妙な真実味がある。そして取り出したの
は、2粒の錠剤だった。
「もしこのゲーム。あんたが下りてくれるっていうんだったら、俺はこれを飲む。あんたは俺が
寝てる間に帰ればいい。こういうルールだ」
 その錠剤が確実に睡眠薬であるという証拠が無い。
「俺が寝てるかどうかは、飛行機から下りる時に確かめればいい」
 このコルネオという若造。読心術でも会得しているのだろうか。
「さあ、カードを取れよ」
638【品評会】コルネオのルール4/5 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 22:35:20.73 ID:Fm21fo1O0
 私は改めて考えた。この勝負、いや、このやりとり自体に、何か綻びは無かっただろうかと。
もしも事前に、空港の方へコルネオが密告しているとしたら? ……いや、それは無い。そうい
う通報があったのなら、既に買収した空港職員が、私の携帯電話に連絡をよこしているはずだ。
次に、コルネオに仲間がいる可能性。これも恐らく可能性は低い。尾行は普通、複数で行わない
のが鉄則だし、これで俺から金を巻き上げても、コルネオ自身の分け前が減る。それに噂によれ
ば、コルネオのボスは絶大な信頼を奴に寄せていると聞く。でなければ、右腕は勤められない。
 思えばコルネオは、最初から全て計算の上で、この取り引きまで持ってきたのだろう。酔っ払
いのフリをして親しげに話しかけ、私の好きなギャンブルを持ちかける。こっちの警戒心を解す
テクニックだ。私が銃まで携帯していたのは予想外だったようだが。
 しかし、私だって馬鹿ではない。馬鹿ではないが、どうする事も出来ないのもまた事実だ。不
運な事故にでもあったと思って、財布の中の札束と時計は潔く諦めよう。というよりむしろ、運
が良かったのかもしれない。コルネオがこの取り引きを持ちかける事なく、空港に通報していた
ならば、私はそのまま破滅していた。そう考えると、これは不幸中の幸いだといえるだろう。
「ゲームを下りれば、必ず薬を飲むんだな?」
「俺は自分の作ったルールは守るんだ。さて、勝負といこうじゃないか」
 私は配られたカードを手に取った。その時、手に汗をかいている自分に気づいた。目の前にい
るこの若造に、私は知らず知らずの内に恐怖心を抱いていたのだろう。湿った手をスーツで軽く
拭いて、形だけのポーカーが始まった。
 いざ手札を開けてみれば、スペードの10、J、Q、K、A。思わず私の頬が緩んだ。
「どうだ? イカサマうまいだろ?」
 笑顔のコルネオ。そういえば会話に気を取られて、コルネオがどういう風にシャッフルしてい
たのかなんて、全く見ていなかった。どうやらこの男は、私よりも何枚か上手なようだ。
「ロイヤルストレートフラッシュでゲームから下りる男が見てみたかったのさ」
 確かに、そんな奴はいるはずが無い。
「さあ、どうする?」
 その問いかけに、私はその幻の手札を裏向きに伏せる事で答えた。
「下りる」
 そう言って、財布から金を取り出し、コルネオに渡した。ダイヤのはめ込まれた腕時計もだ。
コルネオはそれをジーンズの後ろポケットにしまいこんだ。
639【品評会】コルネオのルール5/5 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 22:35:51.51 ID:Fm21fo1O0
「契約成立だな。安心してくれ。言ったはずだろ? 俺は自分で作ったルールは守るんだ。イカ
サマはするがね」
 そう言って錠剤を口に含むと、持ってきた酒の瓶を傾け、一気に飲んだ。シートベルトを閉め、
「じゃあおやすみ」
 それからしばらくすると、コルネオが寝息を立て始めた。飛行機も着陸態勢へ入った。一瞬、
金と時計を回収する事も考えたが、隣で寝ている男の尻のポケットをまさぐっていたら、余計な
疑惑を他の客に向けられるだろうと思い、やめた。周りの目を気にしながら、コルネオの瞼を右
手で開いた。どうやら、眠っているのは本当のようだ。後ろの女性も寝ているし、コルネオの言
った言葉に偽りは無かったようだ。私はいそいそと、飛行機から降りた。


 タラップを下り、空港に入ると、すぐに知った顔が見えた。3人の内、2人は買収した職員だ。
手はずでは、探知機が鳴り、職員が私にボディーチェックを行う。その時何があっても、職員は
見てみぬフリをする。そして荷物のチェックもスルーして、晴れて私は莫大な報酬を得る。
 まずは探知機が鳴る。すかさずチェック。異常なし。荷物の方も、異常なし。だがここで異常
事態が発生した。離れたゲートの方から、犬が駆け寄ってくる。
 そんなはずはない! アタッシュケースの中は三重に密閉し、念入りに洗浄した。それにこの
ゲートは麻薬探知犬から一番離れた位置にある。いくら優秀な麻薬探知犬とはいえ、反応できる
はずが……。犬が目の前で大きく吼え、私は焦る。全身から汗が噴出してくる。犬はどうやら、
私の右手に対し強く反応しているように見える。
 その時になって初めて、あのポーカーの本当の意味に、私は気づいた。コルネオは、決してお
遊びがしたかったんじゃない。あれは全て、私にカードを握らせるための仕掛けだったんだ。カ
ードを握った時のあの感触は、私の汗だけではなかった。覚せい剤の臭いを染み付けるために、
あらかじめカードに仕込んであった液体が混じっていたのだ。
 コルネオの言葉には、嘘は無かった。自身の作ったルール通りに、私から金を巻き上げ、自身
のボスへの忠誠も守って仕事をした。
 やがて、耳障りな足音と共に私に破滅がやってきた。

640【品評会】コルネオのルール5/5 ◆LBPyCcG946 :2008/02/03(日) 22:36:29.87 ID:Fm21fo1O0
以上!
おつかれさーーしゃーしたー
641以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:38:00.41 ID:N2Y9WvMU0
まあ、そう言わずお題でもくれよ
642以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:38:56.46 ID:O6v6DvAM0
初めて聞いた君の電話の声
643以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:39:41.13 ID:t6R0qSQa0
捨て美少女
644以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:40:52.97 ID:N2Y9WvMU0
これは良お題。二つともいただきっ
645以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:41:17.93 ID:PvPEDD+i0
>>641
エアコン
646以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:41:34.17 ID:2fq/eE4g0
あああ畜生5レスじゃ足りない。全然足りない
誰だ制限5レスとか設定したの! 俺だ!

間に合うか……?
647以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:43:02.93 ID:OWAK197a0
>>635
うわ、ごめん。ちょっと吊ってくるわ
タイトルとレス番の間のスペース忘れるてたし
慣れないことはするもんじゃないね
648以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:45:20.04 ID:cQ6NeJrK0
>>647
いやいやokok。こういうのはお互い様だろう。
じゃ直しいってくる。
649【品評会】アナザー・ワールド (0/5)  ◆Sound.UlVY :2008/02/03(日) 22:52:09.33 ID:p3/Gr+fd0
それじゃあ、品評投下します
650relatively 0/2 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 22:52:13.46 ID:XQSV2wPw0
投下します。
651relatively 0/2 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 22:52:33.20 ID:XQSV2wPw0
どうぞどうぞ
652以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 22:52:37.52 ID:OWAK197a0
そう言ってくれると救われます
乙です
653 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 22:52:46.74 ID:l1fVTVYF0
ならば2人のあとで。
654【品評会】アナザー・ワールド (1/5)  ◆Sound.UlVY :2008/02/03(日) 22:53:06.73 ID:p3/Gr+fd0
 俺はいつ壊れてもおかしくないぐらい錆びた階段を上がり、いつものように自分の部屋のドアを開けた。鍵な
どかけていない、どうせ取られて困るものなどこの部屋には何も無いのだ。
 二種類しかない靴の一つを豪快に脱ぎ捨てると、着ていた上着をハンガーにかけ、ベッドへと向かう。
 ベッドに倒れこもうとすると一匹の猫が俺の足元まで歩み寄り、かすれた声でニャアと鳴いた。
 「お前、また来たのか? ちょっと待ってろ、今牛乳を持ってきてやるから」
 俺はゆっくりと向きを変え、冷蔵庫のある台所へと向かった。
 さっきの猫は別に飼ってるわけではない。何日かに一度開けっ放しの窓から俺の家に勝手に上がり込み、その
度に食べ物を要求するという、なんともふてぶてしい野良猫なのだ。
 一見そんな猫に俺が食べ物をやる理由など無いように見えるが、小さい頃家の事情で猫を飼えなかったことが
ありそのせいか、なんとなく無視できないで餌をやってしまうのだ。
 牛乳を底の浅い皿に少し注ぎ込むと、それを猫の目の前にそっと置いてやる。
 それから俺は狭い部屋の大半を占領しているベッドへと倒れこんだ。
 枕の横にあった――いつからそこにあったのだろう――かなりの臭いを発している靴下を猫にかからないよう
に投げるとゆっくりと息を吐いた。
 今日も、いつもと何ら変わりない一日が終わりを告げる。まだ九時前なのだが、俺がやることはもう何もない。
あるとしても、それは天井を見つめながら今後の身の振り方を考えることぐらいだ。
 大学に通うも、これから何をしたいという大きな目標があるわけでもないし、母は専業主婦で父も普通のサラ
リーマンの間に生まれた俺には継がなければいけないような家業も無い。
 あと半年で大学生活も終わりを告げようとしている。どうしたものか?
 俺はなんとなく考えるのが嫌になって、残り少ない牛乳を熱心に舐めていた猫に声をかけた。
 「なー、お前もそう思うよな?」
 猫は顔を上げてこちらを向くとまるで返事をするかのように、またニャアと鳴いた
 俺はそれで満足する訳もなく、天井の方に顔を向け直した。
 「ああ、暇や退屈を感じない世界に行ってみたいよ……」
 誰に言うわけでもなく小さく呟くと、俺は部屋の電気を消し目を閉じた。俺の視界は闇に飲まれ、意識もだん
だん遠のいていく。
 ――声が聞こえた。その声は低く落ち着いていて、少しかすれていた。
 「お前は退屈しない世界へ行きたいか?」
 夢、か。俺は直感的にそう感じ取ると、顔も見えない声に向かって答える。
 「ああ、こんなつまらない日常を繰り返すのはもう飽きた」
655【品評会】アナザー・ワールド (2/5)  ◆Sound.UlVY :2008/02/03(日) 22:53:54.76 ID:p3/Gr+fd0
 「なら、その願い叶えてやろうか?」
 本当か? 俺がそう言う前に、また声が聞こえた。
 「ただし、この条件をのめばの話だが……」
 「条件?」
 どうせ夢なんだ、なら条件無しでいいじゃないか。どうして俺の頭はこうくだらないところでリアリティーを
求めるのだろう? 困ったものだな。
 俺の考えなど無視するかのように、かすれた声は続く。
 「悪魔みたいに魂を差し出せなんてことは言わない。そう、もっと簡単なことだ。
一つ、もう一つの世界に着いたとき、その世界の存在を疑わないこと。
一つ、『暇』『退屈』この二つの単語を口に出さないこと。
これだけだ。どうだ、簡単だろう? そうすれば、こことは違うもう一つの世界に連れて行ってやるよ」
 俺は迷うことなく返事をした。 
「ああそれぐらいの条件ならのむよ。どうすればそのもう一つの世界とやらに行けるんだ?」
 顔は見えないが、声の主がかすかに笑ったような気がした。
 それから声は聞こえなくなり、俺の意識は完全に途絶えた。
 ――まぶしい。カーテンのない窓から入り込んだ朝日が顔にあたっているのだろう。
 またあの汚い部屋が視界に入り、また退屈でくだらない日常が始まるのか。
 そう思い、俺は体を亀のように起こすと、重い瞼をゆっくりとあけた。
 しかし、視界に入り込んだのは想像していた景色ではなく、むしろ百八十度違うものだった。
 俺の部屋の三倍はゆうにあるであろう部屋。その床を全て覆いつくしている、クリーム色の絨毯。白い壁の大
部分を占める巨大な窓。その窓の両脇にある赤の布地に金色の糸で優雅な曲線が描かれているカーテン。部屋の
隅には今までに見たことのないような木で作られた漆黒の立派な机。よく見るとベッドも違う。いつものやつと
違い大人が四人乗ってもまだ余裕があるほどの広さを持つベッドへと変わっていたのだ。
 「おはよう。気分はどうだい? 旦那」
 あのかすれた声が聞こえた。声のした方を向くと、黒いスーツ姿で少し渋い顔の男が立っていた。
 「あ、ああ。いい気分だけど……あんたは何者だ? あれは」
 夢じゃなかったのか? その言葉を言おうとしたとき俺は彼の言った条件、つまり『ルール』を思い出し、
その言葉を飲み込んだ。
 その様子を見ていた男はにやりと笑った。
 「どうやら条件を忘れていないようだな。なら心配はない、この世界をたっぷりと楽しんでくれよ」
656【品評会】アナザー・ワールド (3/5)  ◆Sound.UlVY :2008/02/03(日) 22:54:48.13 ID:p3/Gr+fd0
 それだけ言うと、男は俺の呼びかけも無視し、背を向けてこの部屋に似つかわしい豪華な装飾が施された扉か
ら出ていった。その後、男と入れ替わるようにメイドの格好をしたかわいらしい女性が朝食らしきものをのせた
銀色のワゴンを押して部屋に入ってきた。
 俺がその女性と簡単に朝の挨拶をすると相手も簡単な挨拶を返し、朝食の準備をし始めた。聞いてみたところ
俺の朝食だそうだ。
 俺がその食事を食べ終わるまで先程の女性が微笑みながらすぐ隣に立っていたので、味はよくわからなかった
がおそらく、いつもの俺なら驚くほどの味がしたのだろう。
 俺が食事を食べ終わると、女性は食器を片づけ部屋を出て行ってしまった。
 その後も何回か人がこの部屋を出入りし、俺に服などを持ってきてくれた。
 その流れで俺にはわかったことは二つ。
 ここの人たちは俺のことを旦那と呼ぶこと。後はこの世界で俺は神のような存在であること。実際二人ぐらい拝
んで帰っていったしな。
 さて、どうしたものか?
 俺は部屋に置いていかれた服を着ながら考えた。しかし、いくら考えても答えは出てこない。
 服を全て着ると、俺はゆっくりと部屋を出た。考えるより、この目で確かめた方が早いと感じたからだ。
部屋の外に出てみるとそこは映画に出てくるお屋敷のようだった。白い壁に等間隔で設置されている燭台、部屋
とは違った朱色の絨毯が一杯に敷き詰められている廊下を俺はゆっくりと歩いていく。
 その間、何人かの使用人に深々と頭を下げられたのは言うまでもない。
 俺は屋敷を出ると、ゆったりと街を回る。空の色こそ青色だが、そこはあからさまに住み慣れた世界とは
違った。家はキノコの形をしており、道は若草色でふわふわしていて歩きにくい。街を歩く人は男女問わず信じ
られないほど綺麗な人ばかりで、思わず二度見してしまうほどだ。
 「あら旦那さん。お暇なの? なら私とゆっくりお茶しない?」
 など、人生に一度でも聞ければいいと思っていた言葉を何人もの女性から何度となく言われた。何回か
 「もちろん暇です! 何所までも一緒に行きましょう!」
 なんて言いそうになったが、すんでのところで男の言葉を思い出す。
 この世界で俺は『暇』と『退屈』は口にしてはいけない。彼女達といたら、会話の中で自然と使ってしまいそ
うなので、やんわりと断り続けている。もったいない気もするが、これがここで暮らすための『ルール』だ。
 「旦那、なかなかいい調子じゃないか」
 「あ、あんたか。まあ、何とかね」
 いつの間にか俺の横を歩いていたかすれた声の男が直ぐ左にある店を指差す。
657【品評会】アナザー・ワールド (4/5)  ◆Sound.UlVY :2008/02/03(日) 22:55:25.42 ID:p3/Gr+fd0
 「あの店の魚料理がうまいんだ。どうだ、一緒に食わないか?」
 時計がないのでどれほど時間がたったのかわからないが、正直腹は減っていない。俺が首を横に振ると男は肩
をすくめてみせた。それからまたしばらくすると男はふらりとどこかへ行き、棒に刺さった得体の知れない物を
二つ持ってきた。
 「なんだこの臭い?」
 「この世界の食べ物さ。においは最悪だが、一度食うと病み付きになるぞ」
 そう言うと男は俺に一つ渡してくれた。流石に断れないので、一口だけ食べることにした。
 俺は異様な臭いを発する食べ物にかぶりつく。一口で止める予定だったのに、予想以上にうまく結局俺はリン
ゴ一個ぐらいあったものをすっかり食べきってしまった。
 その様子を見ていた男は満足そうに言った。
 「どうだ? 食いだしたら止まらなくなっただろう?」
 俺が短く返事を返すと男は楽しそうに言った。
 「だろ? 『ルール』さえ守れば旦那はこの世界にずっといられる。この世界にいればずっとうまいものを
食べられる」
 「確かにそれはいいかもな。でも、あの臭いはひどいよな」
 俺は笑いながら続ける。これからもここで暮らせる、そう思うと笑いがこみ上げてきてしょうがなかった。
 「あの臭い、俺の部屋にあった靴下並みに臭かったもんな。『謎の食べ物対靴下』どっちが勝つかな?」
 俺の言葉を聞くと、男が急に歩くのを止めた。俺は不思議に思い男の方を見ると、男は複雑そうな顔をして
立っていた。
 あたりを見回すと、先程まで笑顔で歩いていた人たちも足を止め、俺の方をじっと見ている。
 まるで、先程の笑顔が嘘のように何の感情もない表情で……。 
 俺はもう一度、男の方を見た。男はゆっくりと口を開き、言った。
658【品評会】アナザー・ワールド (5/5)  ◆Sound.UlVY :2008/02/03(日) 22:56:04.32 ID:p3/Gr+fd0
 「……旦那は『ルール』を破った。もうこの世界にはいられない。残念だが、さよならだ」
 「お前、何言ってんだよ! いつ俺が約束を破った!?」
 そうだ、俺は『ルール』を破るようなことはしていない。これは何かの間違いだ。そう訴えようとした時俺の
足元の地面が急に沈みだし黒に染まりだした。足を抜こうにもすでに埋まってしまい、動かない。
 男は道に飲まれていく俺を見つめている。
 「いや、あんたは間違いなく『たいくつ』という言葉を口にした。もう一度自分の言ったことを思い出してみな」
 俺は体がすっかり道に飲まれると、薄れゆく意識の中で必死に考えた。
 俺がいつ、『ルール』を破った? いつ『退屈』なんて言葉を使った?
 しかし、考えても答えは出てこない。そうこうしているうちに、俺の意識は完全に闇にのまれた――。

 次に俺が目を覚ますと、そこにあったのはいつも通りの狭く、汚い部屋と、その片隅にこちらを見たまま座る
あのふてぶてしい野良猫だけだった。
 野良猫は俺が起きたのを見ると、かすれた声でニャアと鳴いた。

【完】
659relatively being0/2 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 22:56:51.05 ID:XQSV2wPw0
投下します
660 ◆Sound.UlVY :2008/02/03(日) 22:56:56.67 ID:p3/Gr+fd0
以上です

◆wb/kX83B4.氏 ◆/UzWoCdlY.氏
ありがとうございます。
661relatively being 1/2 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 22:59:07.48 ID:XQSV2wPw0
test
662relatively being 1/4 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 23:00:37.20 ID:XQSV2wPw0
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト

家の裏にある川縁で、かげろうをたくさん見つけたので、捕まえて虫かごに入れた。
家に戻ると、家族から余計な用事を言いつけられそうな雰囲気だったので、久しぶりに
街の方に出ることにした。面倒なことは相対的にイヤだからね。
街をほっつき歩いている方が相対的によりよい選択だ。

目の前には、いわゆる摩天楼。三日前に竣工したこのビルは、ビニールの被いもまだ取られていない。
300メートルという高さのこのビルは、街の名物になるだろうと言われている。
名物の価値なんてのも相対的なものだろう。

人々は言う、なんて高いビルだろう、こんな高いビルはこの町には無かった、と。
でも、僕には低いとしか思えなかった。まあ、相対的なものだ。

足を踏み込んで離すと、からだがどんどん上に上がってゆく。誰かが息をのむ声が聞こえた。
663relatively being 2/4 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 23:01:43.83 ID:XQSV2wPw0
書き込めない……
664 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 23:02:17.13 ID:XQSV2wPw0
避難所に投下します。
どなたか転載をお願いします。
665 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:02:31.37 ID:l1fVTVYF0
支援スレがあるぜ……と言ってる俺も支援スレ行きになったらワロチ
666 ◆0CH8r0HG.A :2008/02/03(日) 23:03:01.36 ID:ae6IKrE10
予約
667以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:03:22.43 ID:Ntt6cZk10
ハルヒを拷問するSSが書きたかったんだけどうまくいかなかった

1 :ふゆう ◆Huyuu..GNg :2008/02/03(日) 22:52:11.21 ID:mxbT6pcwO ?
ハルヒを鉄製の、鉄が剥き出しの椅子に縛り付けてやる。
「ちょっとアンタ! 何するのよ、今すぐこれをほどきなさーい!」
とか生きの良いことを言う強気すぎるハルヒ。これはこれでかわいい。
でも、これはやっぱり元気すぎるよね、よくないね、よくないよ。
だから、まずは力を見せるため、動けないハルヒの顔を殴ってやった。

http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1201866698/
668以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:04:09.62 ID:qMxAOb/l0
ん?IDが被った?
669以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:04:28.92 ID:Ccn9Epiw0
                豆まきは終わりましたでしょうか。23時を回りました。
  Λ,,Λ∩ ・゚。・      これ以降品評会作品を投下する方は、予約の上指示に従って投下して下さい。
  (´・ω・)彡 。 ・゚。・   予約条件は「レス区切りまで終わり、後は投下するだけ」の状態であること。
  | ⊃□彡        投下時、メール欄は空にして下さいね。
  しーJ           予約締切は23:30となっております。

                では少々お待ち下さい。
                あ、「書き込みました」と出たのに反映されていない方、行頭にスペースを入れてみてはいかがでしょうか。
670 ◆0CH8r0HG.A :2008/02/03(日) 23:05:08.10 ID:qMxAOb/l0
改めて予約
671以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:05:20.02 ID:9UcSfVzU0
最初が空行で、かつ22行以上だったっけかな。
そうすると次元の狭間に飛ばされるらしいよ。
672以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:05:33.16 ID:xO08Nqhy0
レスの1行目が改行で始まる場合は、スペースを入れるといいよ
673 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:06:08.76 ID:l1fVTVYF0
ところで僕は投下してもよろしいのでしょうか
674【品評会】relatively being 1/2 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 23:07:05.98 ID:XQSV2wPw0
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト

家の裏にある川縁で、かげろうをたくさん見つけたので、捕まえて虫かごに入れた。
家に戻ると、家族から余計な用事を言いつけられそうな雰囲気だったので、久しぶりに
街の方に出ることにした。面倒なことは相対的にイヤだからね。
街をほっつき歩いている方が相対的によりよい選択だ。

目の前には、いわゆる摩天楼。三日前に竣工したこのビルは、ビニールの被いもまだ取られていない。
300メートルという高さのこのビルは、街の名物になるだろうと言われている。
名物の価値なんてのも相対的なものだろう。

人々は言う、なんて高いビルだろう、こんな高いビルはこの町には無かった、と。
でも、僕には低いとしか思えなかった。まあ、相対的なものだ。

足を踏み込んで離すと、からだがどんどん上に上がってゆく。誰かが息をのむ声が聞こえた。
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト
ぼくはビルのてっぺんに立った。作業をしていたとおぼしきヘルメットを被った男性と目があった。
「どうもこんにちは。」
挨拶は基本だから言わなくてはならない。この基本とやらの価値も相対的だがね。

男性は目を見開いて、どうやってここに来たのかを聞いてきた。
なぜそれを不思議がるのかが僕には理解できない。
彼の顔をつかんで、目を近づけた。あくまでも相対的にだが。
こうすると、僕は彼になり、彼は僕になる。
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト
僕になった彼は、僕がどうしてここにいるのかを理解し、
彼になった僕は、彼が僕の存在を不思議がったのかを理解した。
世の中相対的なものしかないのだから理解し合えるに違いない。
疑問が解消した僕と彼は相対的に硬く握手した。
675【品評会】relatively being 2/2 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 23:08:08.12 ID:XQSV2wPw0
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト
僕は親方から言いつかった足場の部品のチェックを再開した。
彼はビルの端から飛び降りた。
立場なんてものは相対的なものだ。
作業が終わる頃、この恐ろしく高いビルの屋上に、中年の男が飛び上がってきた。
彼にとっては、このビルは相対的に低いのだろう。
だが、どうしてそんな事ができるのか不思議だった。
彼はぐっと僕を抱き寄せ、目を見つめた。
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト
ああ、そうだった。僕は彼で、彼は僕。僕が自分のかみさんと子供だと思っていたのは、
彼のそれだったのだ。関係も相対的なものだから、いくらでも入れ替わる。
相対的に固い握手を交わして、僕らは別れた。

僕がビルの下に降りた音は、相対的に大きかったのだろう。周りに人が集まってきた。
中から、紺色の制服に身を包んだ若い男が身を乗り出した。
若い男はなにやら威圧的な言辞を弄すると、僕に詰め寄った。相対的にね。
僕は彼に、彼は僕になり、お互いの疑問は無くなった。問題や法律も相対的なものだ。
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト
僕は彼を交番に連れて行き、彼が行った、ビルから飛び降りるという行為が如何に
危険で、法律をないがしろにするかを刻々と説諭した。あくまでも相対的な事ではあるが、
相対的に大事なのだ。
相対的にではあるが、未来のある若者のことなので、ここで彼に家へ電話させて、
両親に引き取ってもらうことにした。
彼に電話させたところ、両親が来るまで話し足りない事を話すのに十分な時間が必要だとの事
だったので、もう一度説諭した。
熱が入って、顔を相対的に近づけてしまう。
トワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワトワト
両親が迎えに来たので、両親に怒鳴られながら家に帰ることになった。相対的にだが、やかましい。
帰りに、かげろうを入れた虫かごが目にとまった。中のかげろうはみんな死んでいた。
相対的にではあるがなんと長生きなのだろう。1昼夜は生き延びたのだ。命も相対的なんだろう。
676【品評会】 ◆wb/kX83B4. :2008/02/03(日) 23:09:01.07 ID:XQSV2wPw0
以上です。
アドバイス、本当にありがとうございました。
次のかたどうぞ。
遅れさせて申し訳ありませんでした。
677以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:09:32.66 ID:CnHveBu60
このタイミングでお題くれ↓
678以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:10:21.45 ID:FljJgRXw0
ヒッグス粒子
679以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:10:42.85 ID:Ccn9Epiw0
書き込めない理由が予想通りで何よりでした。

お待たせ致しました。◆/UzWoCdlY.氏、どうぞ。

【順番】
◆0CH8r0HG.A
◆czxS/EpN86(規制者スレッドより)
680ウェストファリア 0/5 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:11:21.04 ID:l1fVTVYF0
それでは投下させていただきます。5レス予定
681ウェストファリア 1/5 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:12:11.62 ID:l1fVTVYF0
 歩きながらミシェルは父の手を強く握った。
 父は手を握り返して「大丈夫だよ、ミシェル」と言う。母だって横から同じように言う。ミシェルはあいまいにうなづいた。
 パパもママも言うなら大丈夫なのかもしれない。
 でも、とミシェルは思う。
 このマチは変だ。何か。みんな髪の毛は黒いし肌は妙に黄色いし、たまに髪の色が茶色いやつもいるけど、そういうのはとんでもなく似合ってない。
 おまけに、すごく人が多いし。
 駅の構内は大量の人でごった返していた。みんなやけに急いでいるふうだ。それに、とんでもなく音がうるさい。
 全てはいつものことなのだがミシェルが知る由もなかった。ただただミシェルは人の波を前に目を見開いている。
 歩く人の数を数えようとして、諦めた。ミシェルはひとり愚痴をもらす。
 スカートをはいてる年上の女の子たちが、みんな同じに見えちゃって。
 父が3人分の切符を買いに行き、ミシェルは母と手をつないだ。
「ねえママ」
 ミシェルは大きな声で言う。そうしないと聞こえないのだ。
 小さな声は全部、この騒音の中に飲み込まれてしまう。
「なあに?」
「あの人たち何やってるの?」
 目の前で、同じような服装の男の人同士が頭を下げあっていた。お互い何か声を掛けているみたいだが、ミシェルには言葉がわからない。もちろん、2人が笑いあっている理由もわからない。
 2人の男は何度も何度も頭を下げてから、別々の方向に歩き出した。
「へんなの」
 離れていく2人の背中をミシェルは交互に目で追う。歩き方だって、背格好だって2人はよく似ている。それに、髪型も。
 おまけに、2人とも同じカバンだ。ミシェルが気がついたとき、上から母の声が降ってきた。
「別れ際には頭を下げるのが、ここでのルールなのよ」
「ふうん」
 やっぱり、変なマチ。父が切符を持って戻ってくる。切符は硬くて裏側が真っ黒だった。
 ミシェルが読めたのは、280という数字だけだ。
「さあミシェル、まだ歩けるかい? もう少しの辛抱だぞ」
「だいじょうぶ」
 再び父に手を引かれ、人の合間を縫うようにして歩く。このマチにも地下鉄があるらしい。ミシェルは地下鉄があまり好きではない。何となく暗い感じがするからだ。おまけに、とミシェルは思う。
 こんな変なマチでさっきみたい人たちに囲まれて地下鉄に乗るなんて、サイテーな感じ。
「パパ」
682ウェストファリア 2/5 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:13:03.90 ID:l1fVTVYF0
「ん?」
「このマチの地下鉄って変なんでしょ? どのくらい変なの?」
「そうだな……」
 ミシェルは答えを予想する。こんなマチなんだから、とんでもなく変に決まってる。もう想像もできないくらいに。きっと変なんだ。どう変なのかはわからないけれど、きっと。
 父が腰を屈めて、ミシェルの耳もとでそっと囁いた。
「ここの地下鉄は音が全然しないんだ。もしかしたら……宙に浮いてるのかもしれないな」
 地下鉄が浮いてるなんて、やっぱり、変なマチ。

       ◇◇◇

 アキラの向かえには変な色の座席があった。3人くらい座れそうなのに誰も座ってない。
 他の座席は全て埋まっているのに、この地下鉄に乗ってくる人はみんなつり革につかまるのだ。
 隣に座る母が、「あれはお年寄りの席なのよ」と理由を教えてくれた。
「バスにもあるでしょ? あれと同じもの」
「ゆうせんせき?」
「そうそう、優先席」
 皆さんお年寄りには席を譲りましょう。アキラは小学校でそう習っていた。それがルールですよ、と。
 アキラの担任は定年退職間近のおばあちゃん先生で、アキラは、先生も席を譲ってほしいのかな、と思った。
 優先席もあって、おまけに席まで譲ってもらえるなんて、まったくおとしよりはぜいたくだ。
「おとしよりって、いくつからおとしより?」
「……そうねえ。お茶が好きになったらお年寄りかしら」
 母の答えに、なるほど、とアキラは思う。ぼくのおばあちゃんはいつもお茶飲んでるし、職員室に行けば先生の机にも必ずお茶がある。
 アキラは一度お茶を飲んだことがある。おばあちゃんの家だった。けれど苦くてダメだ、とそれ以来口をつけてない。
 逆に、一緒に置かれていた大福がおいしくて、今ではアキラの好物になっている。
 地下鉄が速度を落として駅に停まった。ドアが開いてガヤガヤと人が降り、入れ替わりに同じくらいの人が乗ってくる。
 席はきれいに埋まり、またしても優先席は空いた。ベルが鳴ってドアが閉まり始める。
 ぼくは、とアキラは思う。あの席に座れるようになるまでは、ずいぶん時間がかかりそうだ。
 そのとき、がたん、と音がした。
 急にドアが開いた音だった。
 メガホンから駅員の声が響く。「駆け込み乗車はおやめください!」。けれどアキラの耳にはその言葉はほとんど届かない。駆け込んできた人の姿に、アキラの目はあっという間に奪われた。
683ウェストファリア 3/5 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:13:53.51 ID:l1fVTVYF0
 女の子。
 金髪だった。
 女の子は周りをきょろきょろと見回して、それからアキラの向かえに座った。ゆうせんせきだ。
 女の子の傍には2人の男女がやれやれという面持ちで立っていて、アキラはこのときようやく、彼女の両親の存在に気づく。
「おかあさん、ゆうせんせきに座ったね」
 アキラは母に言った。女の子に聞かれちゃ嫌な気がしたから、小さな声で言った。
 母は女の子の方を見ながら、「そうね」とつぶやいただけだった。
「どうするの? ゆうせんせきだよ?」
 アキラが言うと、母は困ったような顔をした。女の子は足をぶらぶらさせて、真っ暗な中を時おり光が見えるだけの外を見ている。彼女の両親が何か話しているけれど、アキラには言葉がわからない。
「誰も注意しないね、おとしよりじゃないのにね」
「いいのよ、注意しなくても」
「なんで?」
「なんでって言われても……」
 そのとき女の子が、持っていたカバンから何かを取り出した。小さな丸い水筒だった。女の子は水筒に口をつけてこきゅこきゅと飲んで、それからカバンに水筒を仕舞った。
 そのとき、アキラは、あっと思った。
 そうか、だからあの子はゆうせんせきに座れるんだ。水筒の中身はお茶で、あの子はきっとお茶が好きなんだ。

       ◇◇◇

 わたしのことを見てるやつがいる。しかも目の前に。せっかく席が空いてたのに、向かえに変なやつがいるなんて思いもよらなかったじゃない。
 口に残ったオレンジジュースの匂いよりも、ミシェルには目の前の男の子が気になった。
「ねえパパ、あいつがじっとこっち見てる」
 傍に立つ父を見上げた。父は「あいつ?」と訊きかえし、ミシェルは「目の前」と言う。
 父は振り向かずに、「まあ、いいじゃないか」と諌めるように言った。
「ママ、見ず知らずの他人をじっと見つめるのもルール?」
「たぶん、違うんじゃないかしら」
 じゃああいつは何なんだ、と思う。視線を前に向けた。男の子はまだミシェルをじっと見つめている。ミシェルは心の中でひとりごちた。
 どうして? わたしの髪が金色だから? わたしの目が青いから?
 確かに、ここじゃ周りのやつらの髪は黒で目も黒だけど。確かにここじゃ、金髪はわたしたちだけだけれど。
 そう考えると妙に怒りがわいてきてミシェルは席を立ちたくなったけれど、他に空席が無いのを思い出してやきもきして、やり場のない怒りはどうしようもなく2本の足をぶらぶらさせた。
684 ◆/7C0zzoEsE :2008/02/03(日) 23:14:14.11 ID:BYchyTwo0
予約
685ウェストファリア 4/5 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:14:48.16 ID:l1fVTVYF0
 だって、変なのはそっちじゃないの。
 ミシェルは怒りと不満を胸いっぱいに抱えたまま、けれどそれらをぶつける術も男の子と交渉する術も持たなかった。時間だけがやみくもにすぎて、地下鉄は時間どおりに目当ての駅に着いた。
 父親が「降りるよ」とミシェルに言う。ミシェルは座席から跳ねるように立ち上がった。。
 向かえの席ではあの男の子も立ち上がろうとしている。一緒の駅だ。
 ミシェルが座っていた側のドアが開いた。さっさとあいつとはおさらばね。ミシェルはドアが開くとすぐに駆け出す。両親がミシェルを見失わないようについていく。
 パパは、今日泊まるホテルは料理がすごくおいしいって言っていた。どのくらいだろう、ママの料理よりおいしいのかな。クランベリーパイはメニューにあるのかな。
 改札が見えてきた。ミシェルは切符のことを思い出す。ポケットを探った。ない。たぶんカバンの中だ。水筒だけが顔を見せた。
 自分が切符を入れていそうな場所をもう一度探した。二度探した。三度目を探し終えたあとで、ミシェルは追いついてきた両親にこう言ったのだった。
「あのね、切符、なくしちゃった」

       ◇◇◇

 同じ駅で女の子が降りるそぶりを見せたとき、アキラは不思議とうれしくなっていた。なぜかはわからない。相手はゆうせんせきに座っていたんだし、たぶんお茶が好きなんだろう。
 けれどそれ以上に、金髪と青い目はアキラの脳裏に強烈に焼きついていた。いわゆる恋かもしれない。けれどアキラはその単語を知らない。
 目の前から走り去っていく女の子の背中を見ながらアキラは、もう一度会えたらいい、なんて思いながら、けれどそのチャンスは女の子がいた座席の上に、さりげなく転がっていた。

       ◇◇◇

 ミシェルは泣き出しそうになって両親がそれを慰めている。「大丈夫だよ、ミシェル」と父が言う。母だって横から同じように言う。
 ミシェルは首を横に振る。
 全然大丈夫じゃない。

       ◇◇◇

 アキラは走っている。改札までは一本道だ。たぶん急がなくても会えるだろう。手には切符を持っていて、落とさないように何度も何度も握りなおした。
 女の子がいた座席の上に転がっていた切符。
 改札が見えた。すぐに女の子も見つけた。両親が傍で何かを言っている。女の子はその間でうつむいている。たぶん泣いているんだろう。アキラはそう直感した。
 その瞬間、女の子の両親が話す意味のわからない言葉が耳に飛び込んできて、アキラは思わず立ちすくんでしまう。
 ところで、とアキラは思う。
 切符って、どう言うの?
686ウェストファリア 5/5 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:16:05.80 ID:l1fVTVYF0
       ◇◇◇

 ミシェルは涙の向こうに誰かがいるのを感じた。嫌な予感がした。ママはいつも言っている。オンナの勘は当たるのよ? だったらたぶん当たっている。
 おそるおそる、顔を上げた。一度まばたきした。二度目にまばたきしたとき男の子の輪郭を視界がはっきり捉えて、三度目のまばたきを待たずにミシェルは手で涙をぬぐう。
 やっぱり勘は当たっていた。
「何しに来たの!?」
 言ってから、何してんだろうわたし、と思う。男の子は戸惑ったままミシェルと両親を交互に見比べている。そして、手には何かを持っている。
 ミシェルはすぐに気づいた。
 あれは、わたしの切符。
 その瞬間さっきまでの感情がミシェルの中でぐにゃりと曲がった。怒り? 不満? 
 全部ぶつけるようにミシェルは男の子に歩み寄る。一歩、一歩、一歩。
 七歩目で男の子の前に立ったとき、ミシェルは、言葉が通じないことを思い出して、少しの間考えて、それから、決めた。
「ミシェル」
 自分の胸を指差しながら、もう一度繰り返した。「ミシェル」。わたしの名前。あんただって、名乗ることぐらいはできるでしょ? それが初対面のルールってもんじゃないの。
 男の子は繰り返した。「ミシェル」。発音は上手くない。けれど、かみしめるように言う。「ミシェル」。
 やがて切符を持った手がミシェルの方に伸びて、男の子は、もう片方の手を自分に向けてこう言った。
「アキラ」
 ミシェルは切符を受け取った。それから繰り返す。「アキラ」。アキラは笑っていた。でも言葉は続かない。
 だからミシェルは少し考えて、それからさっき見た男の人2人を思い出して頭を下げてみて、それを見たアキラが「あはは」なんて笑ったからミシェルは心の中だけで思った。
 やっぱり、変なやつ!


 <了>
687 ◆/UzWoCdlY. :2008/02/03(日) 23:16:53.30 ID:l1fVTVYF0
終わりました。中の人ご苦労さまです。次の方どうぞ。
688 ◆lDzk49E.e2 :2008/02/03(日) 23:17:54.53 ID:ZasVO8Kz0
よやく!
689 ◆Ms.BlueNHo :2008/02/03(日) 23:18:37.35 ID:2fq/eE4g0
予約します
690以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:18:43.13 ID:Ccn9Epiw0
お疲れ様でした。◆0CH8r0HG.A氏、どうぞ。

【順番】
◆czxS/EpN86(規制者スレッドより)
◆/7C0zzoEsE
◆lDzk49E.e2
691品評会:なみだ 1/4 ◆0CH8r0HG.A :2008/02/03(日) 23:20:05.14 ID:qMxAOb/l0
 昔々、ある山の中に鬼だけが暮らす村がありました。
 その村では、赤鬼、青鬼、角の沢山ある鬼、角が一本しかない鬼など、色々な鬼たちが仲良く暮ら
していました。
 しかし、そのなかにたったの一人、いつも仲間はずれにされている鬼がいたのです。
「やーい、えみぞう! お前、鬼のくせに人間に笑われてばっかりじゃないか。悔しかったら泣かせ
てみせろ」
 えみぞうは、一本角の青鬼でした。
 体が小さく、名前の通りいつでも笑っているような顔をしていたので、人間の前に出ていっても……
「なんだ、こいつ。鬼の癖に、にこにこ笑ってるから全然怖くないぞ。」
 こんな感じで、全く怖がってもらえません。
 それどころか、石をぶつけられていつも泣かされて帰ってくるのでした。
「えみぞうは泣いても笑った顔をしていやがる。こんなんじゃ、鬼失格だ」
 鬼たちは、みんな自分の姿を人間に見せ、どれだけたくさんの人を泣かせるか競争していたのです。
 ですが、もちろんえみぞうは人間を泣かせたことがありません。
 ある時、赤鬼の村長が言いました。
「えみぞうは人間に全く怖がられておらん。今まで人間を泣かせたことが無いのが何よりの証拠じ
ゃ。このままだと、人間が鬼を怖がらなくなるかもしれん。かわいそうだが、村の掟に従ってここを
出て行ってもらうしかないな」
 この村には、人間を泣かせることが出来る鬼しか住んではいけない、という掟がありました。
 村中の鬼は村長に賛成します。
「そんなぁ。俺はここを追い出されたら住むとこがねぇ。追い出すなんていわねぇでくれ。」
 えみぞうは泣きながら村長に頼みます。
 それを見て、さすがに少しだけかわいそうに思った村の鬼たちは、えみぞうにこう言いました。
「えみぞう、最後に一度だけチャンスをやろう。今から人間の村まで行って、どんな人間でもいいか
ら泣かしてこい。もし出来なかったなら、掟にしたがってお前はこの村を出て行くのだ。」
692品評会:なみだ 2/4 ◆0CH8r0HG.A :2008/02/03(日) 23:20:35.76 ID:qMxAOb/l0
 村を出て行きたくないえみぞうは、あわてて山のふもとにある人間の村まで下りて行きました。
 しかし、生まれてから今まで、誰にも怖がられたことのないえみぞうでしたから、どうすれば人を
泣かすことが出来るのか分かりません。
「どうすりゃいいんだぁ。俺の顔じゃぁだぁれも怖がってくれねぇよぉ」
 途方にくれたえみぞうは、また泣き出してしまいました。
「うわあああああああん。うわあああああああああん」
 えみぞうがひざを抱えて泣いていると、その泣き声を聞きつけて人間の子供たちが集まってきまし
た。
「おい、何だあれ。」
「お、角があるぞ? 鬼じゃないか?」
「でも鬼があんなにビービー泣くのか?」
 えみぞうを囲むと、その中の一人が言います
「おい、鬼! お前、鬼のくせに何で泣いてるんだ?」
「俺、このままだと鬼の村を追い出されちまうんだぁ。俺の顔は怖くないから、村にいちゃだめなん
だよぅ」
 えみぞうの泣き声は大きくなるばかり。
 困ってしまった子供たちは、えみぞうにこう言ったのです。
「よし、分かった。鬼の村に住めないなら、おらたち人間の村に住めばええ。しっかりと働くなら、
村長のじいちゃんに頼んでお前を村においてやる」
 えみぞうは、顔をあげます。
「え、ほ、ほんとか……? だって俺は鬼だぞ? 小さいし怖くないけど、鬼なんだぞ?」
 そう言うえみぞうの顔は、涙と鼻水だらけなのに笑っているように見えるので、とても変でした。
 子供達はそれを見て大笑い。
「あはははははははは! 変な顔! お前、面白いぞ。気にすることはねぇ。鬼が住んでる村なんて、
かっこいいじゃねぇか」
 子供たちに手を引かれ、えみぞうは人間の村に連れて行かれました。
693品評会:なみだ 3/4 ◆0CH8r0HG.A :2008/02/03(日) 23:21:15.68 ID:qMxAOb/l0
 子供たちの話を聞いた人間の村長は、えみぞうに言います。
「お前さんは、鬼のくせに全く怖くないのう。いいじゃろ。村においてやろう。ただし、しっかりと
働くんじゃぞ?」
 こうしてえみぞうは、人間の村で暮し始めました。
 毎朝、田んぼの草かりや洗濯、畑仕事などいろいろな仕事をいっしょうけんめいやりました。
 そして、お昼は子供たちと遊んですごしたのです。
「鬼の村にいてもいじめられるばっかりだったけど、ここでは楽しいことばっかりだぁ」
 えみぞうは、いつからか顔だけでなく心から笑うようになりました。
 村の人間たちも働きものの青鬼をだんだん好きになっていきました。
 
 そんなある日のことです。
 人間の村で鬼がくらしていると聞いて、鬼の村から怖い顔をした三匹の鬼が様子を見に来ました。
「ん、おい。あれはえみぞうじゃねぇか。いつまでも帰ってこないから、てっきり逃げ出したのかと
思えば、人間たちと仲良く暮してやがる」
「あのままにしておいたら、人間が鬼を怖がらなくなっちまうぞ」
「えみぞうを、ここから追い出さねぇと」
 そう決めると、三匹は村に入って怒鳴り声をあげます。
「鬼だ! 怖い、怖い鬼が来てやったぞ! もたもたしてると食っちまうぞ!」
「ここにちっこい青鬼がいるだろう! 食われたくなかったらここに連れてこい!」
 さけんで、暴れまわる三匹の鬼たち。
 村人たちは、怖がって逃げ回ります。
 見かねたえみぞうは、この三匹の鬼の前に出てきました。
「や、やめてくれ。なんでこんなことするんだぁ?」
 えみぞうは鬼たちに聞きました。
「何でだと? 鬼が人間に怖がられるのは当然だろうがぁ!」
「鬼の村を追い出されたからって人間と仲良くするとは、鬼の風上にもおけんやつだ」
「さっさとこの辺りから出て行けぇ! さもないと、この人間の村をぶっつぶすぞぉ!」
 怒鳴りかえしてくる鬼たちに、えみぞうは何も言えません。
「わかったよぅ。俺が出ていけば、お前たちもここから出て行くんだなぁ……?」
 えみぞうはまた大粒の涙をポロポロこぼしながら、村をでていこうとしました。
694品評会:なみだ 4/4 ◆0CH8r0HG.A :2008/02/03(日) 23:21:47.81 ID:qMxAOb/l0
 すると、それまで隠れていた子供たちが、次々にえみぞうの周りに集まってくるではありませんか!
「だめだよ、えみぞう! いっちゃやだぁ!」
「えみぞう、行かないで!」
 子供たちはみんな、えみぞうにすがりついて泣き出します。
 それを見て、村中の人間も涙を流しはじめたのです。
「えみぞうをどっかにやらねぇでくれ。こいつはもうおらたちの村の仲間なんだ!」
 ついには、鬼たちに頼むものまであらわれはじめたのです。
 これを見て、鬼たちはびっくりぎょうてん。
「お、おい。村中の人間が泣いちまったぞ? これって俺達が泣かせたわけじゃないよな?」
「あ、ああ。俺達がいくらおどかしてもほとんど泣かなかったのに、えみぞうを追い出そうとした
だけで、村中が泣き出しちまった」
「な、なぁ。もしかしてこれはえみぞうがやったんじゃねぇか?」
 鬼たちは、村人の中心にいる小さな青鬼を見つめました。
 鬼たちは困ってしまいます。
「村の掟では、人間を泣かせられない鬼は鬼の村にすんじゃいけない……んだよな?」
「ああ。だが、えみぞうは人間を怖がらせたわけでもない」
 迷ったあげく、鬼たちはえみぞうに言いました。
「おい、えみぞう。人間を泣かすって約束は果たしたみたいだから、もう追い出そうとはせん。ただ、
人間に怖がられていない鬼は鬼の村にはいらん。そのまま人間の村でくらすがいい」
 これを聞いて、うれしさのあまりさらに大きな声で泣き出すえみぞう。
 村中の泣き声も、つられてどんどん大きくなっていきました。
「こ、これはたまらん。なんてうるさいんだ」
「ああ、うるさい! もう帰ろう!」
「えみぞう! もう二度と鬼の村には入れんからな!」
 口々に言い残すと、鬼たちは山へと帰っていきました。
 
 その後、えみぞうは一層村人たちと仲良く、末永く幸せにくらしましたとさ。
めでたし、めでたし。

 おわり
695以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:22:10.79 ID:qMxAOb/l0
投下完了しました
696以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:23:23.28 ID:Ccn9Epiw0
 
669 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:04:28.92 ID:Ccn9Epiw0
  | ⊃□彡        投下時、メール欄は空にして下さいね。

お疲れ様でした。では、規制者スレッドより◆czxS/EpN86氏の作品を転載しますので少々お待ち下さい。

【順番】
◆/7C0zzoEsE
◆lDzk49E.e2
◆Ms.BlueNHo
697品評会:アウトローですか?1/3 ◇czxS/EpN86:2008/02/03(日) 23:24:54.30 ID:Ccn9Epiw0
 子供の頃、世界はいつもキラキラと輝いていて、およそ自分にできない事なんて、何にもないと思っていた。
教師だって、親だって、いつも俺たちにそう言っていた。
でも歳月が立ち、成長していくに連れて、あれは良くない、だとか、これは駄目だ、とか言われ始めて。
社会にはルールがある。だから俺たちも、それに従って生きなくてはならないと説かれるようになって。

 いつしか、サンタは父親だと言う事を知り。
 赤ちゃんは、こうのとりが運ぶわけではない事を知り。
 世の中には、できる事と出来ない事があることを知り。

夢を追う事を、馬鹿らしい、なんて思ってしまうような、つまらない人間になってしまった。
かつて自分の信じていた物を否定する事に、何の抵抗も感じなくなってしまった自分を、嘲りながら。
本当に、このまま生きていって、俺は満足なのか?
やりたかった事一つしないで、これで良かったなんて自分に嘘をつくつもりか?

俺の中ではとっくに答えなんて、決まってる。
置き忘れてきた、俺のささやかな夢。
 「ふくらみかけの……裸が見たい…!」
ロリコンとしての、ただ一つの夢を。

 「はぁはぁはぁ…クソッ、この辺だった…よなぁ…?」
上から下まで黒ずくめの完全武装。そして手ブレ補正つき一眼レフ。
やっぱり思い出は綺麗に残したいよね。
 「よし、ここだ、この壁の向こうが…女湯だ…!」
エベレストを征服する登山家ってのは、得てしてこんな気分なんじゃないだろうか。
 「目標を…銭湯に入れてウオッチ、目標を銭湯に入れてウオッチ……!」
苦しい、辛い、もう駄目だ。弱音が出そうになる……。
でも、きっと、素晴らしい世界が、俺を待ってるはずだから。
698品評会:アウトローですか?2/3 ◇czxS/EpN86:2008/02/03(日) 23:25:59.84 ID:Ccn9Epiw0
 (ええい、退けババァ、見えぬ!見えぬわ!)
大きな問題が二つほど発生していた。

苦労の末壁を征圧した俺、だが、目の前に見えるのは魚屋のおばちゃんみたいな熟女だけだったこと。
もう一つの大問題は、それを見てもう一人の俺がお元気になられた事だ。

特に後者なんて、ついさっきまで事実を認めたくなかったくらいの大失態である。
だがしかし、俺の指は無意識のうちにシャッターを切っている。
高精細画像で記録されていく、熟女From魚屋。
(湯煙が…またいい感じにチラリズムを……はっ!?)

 「目の前で見える物に満足するような……俺はそんな男だったのか…?」
いや、違う、俺は違いの分かる男なのだ……NOと言えちゃう日本人のはずだ。
お前が欲しかったのはあんな出荷できそうな肉体か?
否!断じて否!

 このままではいけない。
俺はポイントを変える事で、熟女が生み出す連鎖を断ち切ることにした。
 (……?)
異変はすぐに訪れた。
目の前には、少女の裸体。まさに生きる芸術。存在自体が奇跡のような、素晴らしい裸体だ。
なのに。
なのに。
どうしてこんなにも物足りないのだ…?
俺は変になってしまったのだろうか?熟女の方がいいだなんて、俺は変態になってしまったのか?
 「そうか…分かったぞ…! あの熟女…ただの熟女じゃない…!」
魅了〈チャーム〉の使い手だとか…。
実は変身キャンディで熟女に変装した小学生だったとか。
水につかると幼女に戻るとか!
699品評会:アウトローですか?3/3 ◇czxS/EpN86:2008/02/03(日) 23:26:57.59 ID:Ccn9Epiw0
こ れ だ !
俺はさきほどのポイントに戻る事にした。
これは是非最後まで見届けなくては。
悲鳴をあげる体に鞭を打って、なんとかさきほどのポイントに戻ることに成功した。
 「馬鹿な……!?」
先ほどまで熟女だったのが、少女に変わっているではないか。
 「そんな……こんなことが…?」
やはり、俺の推測は間違ってはいなかったのだ。
その時である。
変身を解除した少女が、こちらを見たのだ。
 (目が合った!)
「きゃぁーーーーーぁっ!!」
まずい!
逃げなければ、逃げなければ!
逃げ……。
ふわっ、と意識が遠のいた。


 目が覚めると、そこは警察署だった。
俺はどうやら、逃げ損なってよじ登っていた壁から落下し、そのまま気を失ってしまったらしい。
なんとも締まりの悪い事だ。
 落下のショックでカメラは壊れてしまったし、俺は警察に怒られ、銭湯のオヤジさんに怒られ、親に怒られ、
散々怒られまくった。

あの日、社会のルールを破った俺の前に現れた、変身魔法少女(推定)
結局、俺はあの熟女の手のひらで踊らされた、哀れなマリオネットに過ぎなかったのだ。
あれから数年たち、あの銭湯は潰れてしまった。
しかし、少女は今もどこかで、俺のような人間を懲らしめるため、戦っているのかもしれない。

―了―
700以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:28:09.76 ID:Ccn9Epiw0
お待たせ致しました。では◆/7C0zzoEsE氏、どうぞ。

【順番】
◆lDzk49E.e2
◆Ms.BlueNHo
701その汚く美しき青春 (1/5)  ◆/7C0zzoEsE :2008/02/03(日) 23:29:45.61 ID:BYchyTwo0
 伊藤由香が退学になるそうだ。
たくさんのクラスメートに囲まれて、彼女は本当に幸せそうな顔をしていた。
俺は遠目で、彼女が自分のお腹を優しく撫でる姿を眺めていた。

 十六歳で結婚できるこのご時勢で、妊娠すれば退学だなんて校則はナンセンスだと思う。
同じ様に考える生徒達の署名は、教師陣に受けいられなかった。
「ルールを破った生徒には、それ相応の罰が与えられる」
 なんてつまらないルールだ。吐き気がする。
 普段は「生徒達の味方だ」なんて豪語している担任も、関わろうとしない。
汚い、汚い、汚い。誰が? 教師が? 由香さんが?
 大抵の男子は嘆いていた。由香さんが去ることに対してじゃない。
由香さんが“汚れていた”ことに対してだ。
 小柄で華奢な体に被さった長い髪。抜けるような白い肌に映える琥珀の輝きを持つ瞳。
華やかだった。お淑やかな佇まいはお嬢様の印象を与えるが、
それでいて決して媚びない、凛とした女性だった。
 クラスにいる尻の軽い女子達とは全然違うと皆信じていた。
きっと、彼女でなければクラスの半分も署名は集まらなかったろう。
 名残を惜しむ女子、遠巻きに苦笑いの男子、中心で微笑む花びら。
 滑稽な様子だな。携帯電話の受信箱を開けると、ここにも滑稽なメールが残っている。
『どうしよう悠治……俺パパになっちゃった!』
 緊張感の欠片も無い、人のことをコケにするようなメール。
俺の親友は頭が悪かったらしい。
 一ヶ月ほど前のメール。親友――田中典弘は相当参っているようだった。
初めてそのメールを見た時は、天地が引っくり返ったのを覚えている。
702 ◆InwGZIAUcs :2008/02/03(日) 23:29:53.84 ID:sNGlvDhl0
予約
703その汚く美しき青春 (2/5)  ◆/7C0zzoEsE :2008/02/03(日) 23:30:20.07 ID:BYchyTwo0
『どうしよう……親父にぶん殴られたし、お袋は泣き出すし……勘弁してくれよ』
 勘弁して欲しいのはこっちだった。なぁ、俺は由香さんが好きだったのに。
世界中の不幸を背負ったかのような文面で愚痴られるのが辛かった。
『やっぱり責任とらなきゃいけないよなぁ……』
 セックスをするときにだってルールはあるさ。簡単明瞭明快、コンドームをつければいい。それだけだ。
お前はそんな短髪にして、校則は守れるのにどうして?
 どうして、そんなに頭が悪いんだよ。

 由香さんは、残り少ない学校生活を楽しむように、生き生きと登校していた。
それに引き換え典弘のやつは高野連がどうのって、野球部はやめるし。
いつも真っ青な顔をして、学校も休みがちになっていた。
 由香さんは決して相手の名前を言わないから、皆は純粋に典弘の妙な様子を心配していた。
誰が、今一番辛いのだろうか。彼? 彼女? 俺?
 典弘、お前は今幸せでいっぱいのはずだろ? 俺はお前を支えてやらないぜ?
俺の方が誰かの支えを欲しているはずだ。絶対。
 彼女の笑顔を見ているだけで、目眩がするんだぜ。
 下校時刻を知らせるチャイムが鳴り響いて、一人、また一人と由香さんの傍を離れる。
彼女も鞄の中に荷物を詰めている。
「由香さん? 一緒に帰ろうか。荷物持つよ」
 俺が話しかけると、彼女は「ありがとう」とふんわり微笑んだ。

「由香さんも大変だね」
 俺は両腕いっぱいに荷物を抱えて道路側を歩く。
彼女は心底不思議そうに尋ねた、
「何が?」
「いや、妊娠とか退学とか云々……」
 彼女はかんらかんらと笑って、僕の顔を覗き込む。
704その汚く美しき青春 (3/5)  ◆/7C0zzoEsE :2008/02/03(日) 23:31:43.36 ID:BYchyTwo0
「嬉しいことは大変じゃないよ、君なら分かってくれると思ったんだけどな」
 うん? と俺に聞き返してくる。その姿を見て、俺は胸を痛めた。
「でも、典弘君最近元気ないから。心配だなぁ」
「あいつも急に子供とかできて、色々不安なんだろ」
「そうかな……?」
「違いないよ」
 彼女は一瞬寂しそうな顔をした。そして、俺は彼女にそんな顔をさせる典弘のことが許せないのだ。
「でもね、私、君には感謝してるんだよ」
「急にどうしたの?」俺は笑って聞き返す。
「悠治君が私と典弘君を紹介してくれたでしょ?」
 そうだったか、あまりに前のことで忘れてしまった。今思うと、馬鹿なことをしたなと悔やんでならない。
「今でもそう、君は私の鞄を持って。いつでも親切にしてくれて……」
 彼女は目を瞑って、ゆっくりゆっくり繋ぎ合わせるように語る。
「一等、大切な友人だわ」
 その言葉を聞いた途端、胸が潰れるかと思った。動悸が激しくなるのを必死で抑える。
目の前にいる彼女を抱きしめて、連れ去りたい。そんな衝動に駆られる自分が嫌だった。
「なんでそんなお別れみたいに言うんだよ……」
「だって、もう退学しちゃうからかな?」
 別に退学してもいいじゃんかよ。俺は、典弘と君と赤ちゃんに会いに行くよ。ちょっと辛いけどさ。
「じゃあ、私道こっちだからね」
「送っていくよ?」
「いいよ、平気。ありがと」
 彼女が笑って手を振る。俺はそんな姿をみて。
――思わず手首を掴んでしまった。
「え……と。どうかした?」
「いや……、あの、ごめん」
 なんだか、遠く、知らないどこかへ去ってしまいそうな気がしたんだ。
705その汚く美しき青春 (4/5)  ◆/7C0zzoEsE :2008/02/03(日) 23:32:03.45 ID:BYchyTwo0
「じゃ、じゃあね」
 彼女はちょっと驚いたようだったが、それでも微笑んで別れを告げる。
「由香さん!」
 俺が少し声を張り上げると、ふんわりとこちらを振り返る。
「ま、またね」
 彼女はにっこり、「またね」と言い返した。
また会おうね。そういうニュアンスで、片手はお腹に添えたまま……。

 ああ、そしてどうしただろうか。可哀相な女の子と、その子に宿る命は。
どうして、可哀相な運命は強く歩む者を阻むのだろうか。

――彼女は死んだ
 花びらは散った。朝の連絡で担任は沈痛な面持ちで告げる。
クラスメートの嗚咽が耳障りだった。俺は、全く、意味が分からなくて。
だって、どうして、昨日まで一緒にいたのに。傍にいたのに。触れ合えたのに。
 俺はトイレの個室に駆け込んで吐いた。ひたすら、吐き続けた。可哀相な二つの命を想って、泣いた。
 残酷な車は命を奪った。青信号にも関わらず、速度を緩めずに彼女にぶつかった。
打ち所は悪かったわけじゃあ無い。ただ彼女の子供が“流れて”。それで、血も、流れて。
ぶつかってからも、彼女は両手でお腹の赤ん坊を庇おうと必死で――。

「災難だったよ」
男子トイレの中に生徒が入ってくるのが、足音で分かった。
俺は鼻を啜って、今日は早引けでもしようと思ってた頃。
「でもね、俺、酷い話が、ちょっと安心しちゃって」
 話し声が、途切れ途切れに耳に入ってきた。
“耳に入ってきた”が意識して聞こうとはしなかった。それが典弘の声だと気付くまでは。
「お前、それは不謹慎だろ」
「でもさ、だって十七歳でパパなんて言われても、よく分かんなかったし。無理だし」
706その汚く美しき青春 (5/5)  ◆/7C0zzoEsE :2008/02/03(日) 23:32:45.22 ID:BYchyTwo0
 そうか、俺が相談に乗らなかったから、他の奴に話してるのか。
何の相談? 一体、あいつは何の話をしているんだ?
「お袋も親父も何か肩の荷降りた感じみたいだし。俺、今夜葬式行くんだけどさ」
「お前、それ最悪……」
「仕方無いじゃん、お前も孕ませたら辛さが分かるって。あーあ、俺、彼女当分いらねえ」
「ちょ、お前、だれか個室入ってるからもうちょっと静かな声で……」
「でもよく考えたら、なあんか野球部やめ損じゃん。俺」
 俺は、そこで、個室のドアを蹴飛ばして。典弘に飛び掛った。
全体重をかけて、地面に転ばせて。その上から、馬乗りになる。
 典弘は目を丸くしていた。その連れ添いも。俺は、右腕に思い切り力を込めて、典弘の頬を殴りつける。
一発、二発、三発、四発。何度も何度も、繰り返し殴りつける。
 典弘は「止めてくれ」と懇願しているが聞く耳を持たなかった。連れ添いの奴も抑えかかってくるが、払いのけて、殴り続ける。
彼一人じゃ止められないことが分かったのか、教師でも呼びに走っていった。
 俺、どうして、こんなに泣いて。殴ってる手が痛くて。
あのとき、由香にこいつなんか紹介しなければ。
あのとき、先に告白していれば。
あのとき、無理にでも彼女を家まで送ってあげれれば。
あのとき、彼女を連れ去っていれば。
「ああああああああ!」
 振り払うように。何かから逃げるように。叫んで、泣いて、ぐしゃぐしゃになりながらも、殴る。
血と、涙と、汗と、涎が混じって。何にも見えなくなって。
 そうして、俺は殴り続ける。きっと誰かが止めに来るまで。
清閑なトイレの中で、殴り続ける音が無機質に響く。

 どうか、この音が天国の二人に届きませんように。
 どうか、こいつと由香さんの思い出の詰まった校舎から退学できますように。
                                        (了)
707以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:33:13.89 ID:BYchyTwo0
以上ッス。
お疲れ様です。
708以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:34:03.82 ID:Ccn9Epiw0
お疲れ様でした。では◆lDzk49E.e2氏、どうぞ。

【順番】
◆Ms.BlueNHo
◆InwGZIAUcs その時間帯、わざとでしょう?
−−−ここまでです−−−
709品評会:妖精さんのお仕事(1/4) ◆lDzk49E.e2 :2008/02/03(日) 23:34:33.98 ID:ZasVO8Kz0
 人間さんたちの世界にはいろいろなルールがありまして、そのひとつひとつにそれらを司る神様たちがいるのです。
 妖精さんであるわたしのお仕事は、ルールの神様たちが自分の役目を放り出してしまわないように、彼らのご機嫌を取ることなのです。
 だって彼らが逃げ出してしまうと、人間さんたちがそのルールを忘れてしまうというのだから、それはそれは大変な、失敗できないお仕事
なのですよ。
 
 
 さて、うららかな日差しを浴びながら、今日もわたしはお仕事にいそしみます。
 ふらふらと人間さんの世界を歩いていると、「妖精さん妖精さん」とどこかから声が聞こえました。
「あら、こんにちは、時速五十キロ制限さん」わたしは挨拶して、道路の端に立てかけられた標識を見上げます。「こんにちは」と返してく
れる彼は高いところにいるので、ちょっぴり首が痛むのでした。
「おこまりごとですか?」わたしがたずねると、「うん、最近ね。自分の存在意義がわからなくなっちゃって……」と彼はものすごく落ち込
んだ表情をしています。
 そんざいいぎ? とわたしはおばかなのでその言葉がわかりません。
「自分がここに立っている意味があるのかってことだよ」そう彼が教えてくれました。どうしてそんなことを思うのですか? とわたしはた
ずねます。「このあたりはあんまり車が混まないからね。みんな制限速度を破って走っていってしまうんだ」
 なるほど、とわたしはうなずいて、先を促します。
「それなら最初から私がいてもいなくっても、変わらないじゃないか。そう思わないかい?」
 彼はふてくされたように同意を求めます。そんなことないです、とわたしが言おうとしたその瞬間、ぶるるんと轟音をあげて車が走り去っ
ていきました。軽く80キロは出ていたように思います。「ほらね」と彼は撃沈しました。
「ち、ちがいますよ。あなたはきっと役に立っています!」そうわたしは口からでまかせを言ってしまいます。
「そんなわけないよ。今のを見ただろう。私は、誰からも必要とされてないんだ……」と彼はますます落ち込んでしまいました。
 時速五十キロ制限さんはデリケートな性格のようです。わたしは困ってしまって、う〜んと考えます。
「あ」としばらく経って、わたしはぴきーんとひらめきました。「そうですそうです。いちど、事故を起こしちゃえばいいんですよ」
 わたしがそう言うと、「ええー!?」と彼は驚いて顔を真っ青に染めました。「そ、そんなの危ないよ」
「そうですか? うーん、むずかしいですねえ」
「妖精さんは意外とバイオレンスなんだね」こどもはおそれを知らない、と彼はつぶやきます。
「人間さんは規則をへいきで破るわりにはおくびょうだから、とわたしの神様が言っていました。なのできっと成功すると思うのですが」
 わたしの神様? と彼はたずねてきます。「わたしにも神様がついているのですよ。とっても、えらい人なのです」
「そうなんだ。知らなかったよ。妖精さんの神様だなんて、それはすごいお人なのだろうね」
「そうです。すごいんです。このお仕事も神様にもらったんですよ」わたしはえへんと胸を張ります。「だから、間違いは言わないんです」
710品評会:妖精さんのお仕事(1/4) ◆lDzk49E.e2 :2008/02/03(日) 23:35:25.83 ID:ZasVO8Kz0
 しかし彼は首をかしげます。「でも、どうやって事故を起こせばいいのだろう」と。
 わたしはちょっぴり困りましたが、今度はすぐにひらめきました。「そうですそうです。うそをつけばいいんですよ」
「今度はうそをつくのかい?」彼はすこしいぶかしげですが、わたしは自信があります。
「うその仲間を作って、協力してもらうんですよ」
「よくわからないよ」と彼は首を振ります。
「あなたのそばに、『事故多発。速度を落として』というように、おっきな看板を置けばいいのです。そうすればきっとあなたを見て、五
十キロ以上で走ったら危ないんだなあと思って、制限速度を守るようになりますよ」
 わたしがそれを告げますと、彼はさきほどとは打って変わって「ああ、なるほど」とふかくうなずきました。「すごいよ、妖精さん」
 えへへ、そんなことを言われるとわたしは照れてしまいます。
「でも、どうやって看板を置けばいいのだろう」とまた問題が増えましたが、それは大丈夫です。わたしは自信を持って言います。
「わたしの神様はとーってもえらくてやさしい人なので、きっとわたしがたのめば置いてくれますよ」
「ほんとうかい? それはたすかるなあ」彼は安心したように微笑みます。
「ええ、まかせてください」わたしはどんと胸をたたいたあと、「それでも困ったらわたしがまた相談にのってあげますから、役目を放り出
しちゃダメですよ」そう彼に告げまして、次のお仕事に向かうのでした。
 ──はたして終わったころには、どっと疲れてしまいました。特に女子用トイレさんの愚痴はすさまじいものでした。
すこし休むためにふらり公園を立ち寄ったのですが、疲れを加速させるかのように大変なものを目撃してしまいました。なんと人間さんの
男性と女性が言い争っているのです。
 耳を傾けますと、「いいじゃんか〜ぐへへ」「ばか! こんなところでできるわけないじゃない!」などという言葉が聞こえてきました。
 あれがうわさの痴話げんかというものなのでしょうか。わたしがどきどきしながら眺めていますと彼らがこちらに気づいたようで、一瞥だ
けしてそそくさと逃げるように立ち去っていきました。
 ふと気配を感じて、わたしがその場所に近づくと、少年がベンチにおやま座りをして泣いていました。さきほどは確認できなかったので、
わたしは彼が神様なのだと気づきました。
「どうしたのですか?」わたしは顔を覗き込んでたずねます。初めて見る顔でした。「あなた、ルールの神様ですよね?」
 しばらく彼は泣き続けました。わたしは少年のとなりに座って返答を待ちます。数分の沈黙のあと、ようやく彼は顔をあげました。
「……わからない。でも、違うと思う。ぼくは、ルールになりきれなかった出来損ないなんだ」そうか細い声でつぶやきます。
「わたしのことは、わかりますか?」
「うん、妖精さんだろ」彼はこちらをちらりと見て答えました。そのとおり、とわたしは微笑みます。
「こまったことがあるのならば、ぜひわたしに聞かせてください」
 わたしがそう諭すと、彼は意を決したように唇をかみ締めました。
711品評会:妖精さんのお仕事(1/4) ◆lDzk49E.e2 :2008/02/03(日) 23:36:04.51 ID:ZasVO8Kz0
「人間たちは、ぼくを振り回してばかりなんだ。それも個人個人によってぼくは変質してしまうから、もう嫌になってしまうよ」
 彼はつらそうに言います。そういえば、と思い出します。わたしはたいへんなこと忘れていました。
「ごめんなさい。お名前、聞かせてもらっていいですか?」
「ぼくは、常識というんだ」彼は腕で涙をぬぐいながらつぶやきます。「ねえ、妖精さん。ぼくは、ルールなのかな?」
 
 
「かみさまあ〜」
 わたしはおうちに戻って開口一番、ばりばりとせんべいをむさぼるわたしの神様に泣きつきました。「おわっ、なんだなんだ」と神様は慌
てせんべいを落とします。
「こんな時間まで外に出て……今日もやってたのか」呆れたように神様が言います。「はい。お仕事ですからね」とわたしは胸を張ります。
そしてはっと気づいて、今度は落ち込みました。
「そうなんです。お仕事なのに、わたし職務放棄してしまいました……」
「あらま。そりゃあいけないことだ」
「はい、いけないことなんです。どうしましょうどうしましょう」
「まず落ち着け」床でごろごろ転がるわたしを神様が足でふんづけて止めます。
 話を聞かせろ、と尖ったせんべいの破片で脅されたので、わたしは正直にことの顛末を話します。
 いつものように仕事をしたこと。公園で常識さんに出会ったこと。わたしは彼がルールであるのかどうかわからず、そのまま逃げるように
帰ってしまったこと。
 神様はふんふんと頷いたあと、「まあお前には難しいだろうな」と言いました。
「わたしでは、彼の役には立てないのでしょうか」そうわたしはぼそぼそとたずねます。
「いや、そんなことはない。だってお前、常識って概念知らないだろ?」
「ええ、よくわかりません」
「それはしょうがないんだよ。あたしがまだ教えていないことなんだからな」
「あ」とわたしはこれまで神様に教えてもらったいろいろなもの中に常識が無かったことを思います。
「別に今から教えてやってもいいんだけど」神様はばつが悪そうに頭をかきました。「お前、ほんとうに聞きたいか?」
 この世の常識を知るというのは大事なことなんだけど、同時に大事なものを失うことがあるんだ。それでもいいのか?
 その言葉に、わたしはうなずきました。
 
 
712品評会:妖精さんのお仕事(4/4) ◆lDzk49E.e2 :2008/02/03(日) 23:36:39.39 ID:ZasVO8Kz0
 何年も経ちました。
 常識という概念を知ったあの日の夜、わたしはそのことを彼に伝えるために公園に行きました。しかし、彼はもうそこにいませんでした。
 それだけではないのです。次の日も、そのまた次の日も、わたしにはルールの神様すら見えなくなっていました。
 それはつまり、この世の常識でした。認識した瞬間、わたしは大事なともだちを失った気がしました。
 ぼんやりとするわたしを、いろいろなことをわたしに教えてくれた神様であるおかあさんは悲しそうな目で見ていました。
 そしてわたしは今、中学生です。ごくふつうの人間さんです。
 妖精さんのお仕事をしていたおかげで、ちょっぴり風紀にはうるさくなってしまいましたけど。 
 
 
「──常識さん、きこえていますか。あなたは大事なルールでもあり、束縛でもあるんですよ」
713 ◆lDzk49E.e2 :2008/02/03(日) 23:37:22.23 ID:ZasVO8Kz0
異常です。またあせって名前みs
714以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:38:19.88 ID:Ccn9Epiw0
お疲れ様でした。◆Ms.BlueNHo氏、どうぞ。

【順番】
◆InwGZIAUcs
−−−ここまでです−−−
715この醜くも美しい世界(1/5) ◆Ms.BlueNHo :2008/02/03(日) 23:38:44.99 ID:2fq/eE4g0
 世界は、規律に満ちている。

「……」
 何も変わらない、それこそある種のルールに則って行われているかのような高校の授業を、俺はいつものように聞き流していた。
 本来学生というものは、授業をマジメに聞いて勉学に励まなければならないらしい。
 それは尤もだ。勉強をしないでロクな大人になってしまっても、困るのは自分なのだから。
 しかし。だが、しかし、
「あんな大人になっちまうくらいなら、いっそ学ばない方がマシだよな」
 教壇に立ち、黒板に向かって気だるそうにテキストの数式を書き写している数学教師に聴こえないくらいの声で、俺は呟いた。
 端から見れば、どこにでもいる教師の、どこででも行われている授業風景だ。特別良い所も無いが、目に見えて悪い部分も無い。
 常人が、見る分には。
 視界に映る数学教師は、俺から見ればただの薄汚い、卑怯な人間の一人に過ぎない。
 教師だけではない。例えばこのクラス全体を見渡してみても、吐き気がするぐらい汚い人間が殆どだ。
 身なりではない。こいつらは性格が腐っている。
 何故そんな事が言えるかと言うと、決定的な証拠があるからだ。
 教師も、生徒も、誰も彼も。
 建物にも。きっと、この世界そのものにも。
 皆が皆、じゃらじゃらと煩そうに身体になにかを巻きつけている。

 それは、ルールと言う名の文字で編まれた、鎖の束だった。
716この醜くも美しい世界(2/5) ◆Ms.BlueNHo :2008/02/03(日) 23:39:26.91 ID:2fq/eE4g0
 俺がこの鎖に気付いたのは、物心ついた時。俺がこの鎖の意味を知ったのは、小学生の時。
 そして俺がこの鎖を侮蔑の対象と認識したのは、中学生の時だった。
 文字が幾重にも折り重なって編まれた鎖が、本人の体中に縛りついていた。しかし、当の本人はそれに気付く様子も無く、普段通りに生活している。
 この鎖一本一本は自らが定めたルールの条文で出来ていた。いわゆる、自分ルールと言う奴だ。
 落ちた食物は3秒まではセーフとかいうくだらないものから、自分より弱そうな奴はパシリに使えるという神経を疑いたくなるようなものまで、様々だ。
 そしてその鎖は、銀の光沢を放つものもあれば、錆色で今にも砕けそうなものもある。この違いの意味を、俺は最近になって知った。
 俺は、ちらりと隣の席に座っている男子生徒を見た。机に突っ伏してぐっすりと眠っている。
 その生徒の身体にも、例外無く鎖が巻き付いている。俺は意識を集中して、その鎖の条文を読み解いていく。
 どれもくだらない自分ルールばかりだったが、その中でも一際くだらない、お目当ての条文を発見した。
――自分ははこの授業中、気づかれる事無く寝通す事が出来る――
 出来たばかりのルールなので、その鎖は銀色に輝いていた。が、文字の密度が目に見えて薄い。今にも崩れ落ちそうなくらいスカスカだった。
 当たり前だ。その条文には、理由が無かった。こういう自分勝手な思い込みは得てして脆い。
「コラァ! そこの奴、何寝ているんだ!」
 案の定、教師の怒声が男子生徒に突き刺さった。男子生徒が慌てて飛び起きる。
 俺はその瞬間、鎖同士の攻防戦とも言えるものを目撃する。一瞬の事だが、何故かスローがかかったように鮮明に映るのだ。
 怒声の音波に乗るように、教師から男子生徒に向かって鎖が伸びる。
――不真面目な生徒は、廊下に立たせて説教しても良い――
 これはこの教師が長年使い続けてきたものなのだろう。錆が目立っていた。しかし、文字の鎖は太く、長い。
 伸びた鎖は男性生徒に直撃する。正確には、男子生徒の鎖に。
 激突は一瞬だった。男子生徒の鎖は倍速映像の様に急速に錆び始め、一瞬にして砕け散る。ルールが破られたのだ。
「廊下に立ってろ!」
 教師がそう言うと、男子生徒は顔を伏せながら退室する。
 どっちもどっちのくだらない自分ルールだったので、俺はいなくなった生徒の代わりに教師を睨みつけた。ああいう輩が一番嫌いなのだ。
「ん? 何だお前、何か言いたげだな。文句があるならお前も出て行くか?」
 最早難癖に近い理由だったが、それでも鎖は飛んできた。
 俺は席を立つ動作でその鎖を回避し、鞄を片手に教室の出口まで歩いていく。
「胸糞悪いんで、早退します。さようなら」
「……おい、待て。誰が帰って良いと言った!」
 教師の罵声を無視し、俺は教室を出た。
 廊下で律儀に突っ立っている男子生徒には目もくれず、俺は下駄箱へと急いだ。
717この醜くも美しい世界(3/5) ◆Ms.BlueNHo :2008/02/03(日) 23:40:02.48 ID:2fq/eE4g0
「くだらない、くだらない、くだらない、くだらない」
 一人校庭を横断し、俺は校門を目指して歩いていた。体育の授業は無かったので、校庭は静寂に満ちている。
 俺はあのルールで出来た鎖が大嫌いだった。見る鎖全てが欲望とエゴの塊で、長時間見ていると本気で吐き気がしてくるくらいだ。
 だから俺は、他人が嫌いだ。
 その内人そのものが嫌いになるかもしれない。特に、この学校という場所では。
 いつの間にか校門まで来ていた。俺は後ろを振り返り、校舎全体を視界に入れる。
 校舎は、無数に伸びる巨大な鎖が巻き付いていた。その鎖はまるで大蛇の様に、ギリギリと容赦無く校舎を締め付けている。
 学校という場所は、規格外にルールが多い。そしてその殆どが、自分勝手が生み出した負の産物だ。
 くだらない校則、不良達の暴権、教師の隠蔽。挙げだしたらキリがない。
「この鎖を解き外せば、ちっとはマシになるのかね……」
 これ以上この場に居合わせたくなかったので、俺は踵を返して家路に着こうとした。が、

「解き外すとは、また面白い言い回しですね。確かにこれは、知恵の輪の様です」
「……!?」

 独り言でついた悪態に返答され、俺は驚いて背後を見た。
 そこには、一人の女が立っていた。
 見知らぬ学校の制服を着ており、時間が時間だったので俺は少し戸惑った。
 しかし次の瞬間、女の全身を見回して、俺の顔が疑惑から衝撃へと変わる。
「こんな格好ですが、私、実は、天使なんです」
 女の発言など、聞こえては来なかった。いや、聞こえてはいたが、脳が理解を拒否した。
 
 女の身体には、あれほどまで忌み嫌っていたルールの鎖が、一本たりとも巻きついていなかったのだ。
718この醜くも美しい世界(4/5) ◆Ms.BlueNHo :2008/02/03(日) 23:40:33.50 ID:2fq/eE4g0
「お前っ! な、なんで……?」 
「やはり見えるのですね、鎖が。いや、見えるはずのものが見えないから驚いている、と」
 対称に、女は冷静だった。驚いているこっちがバカみたいになってくる。
 俺は何とか平静を取り戻し、改めて向き直る。
「先程も言いましたが、私は天使なのです。ロウ、つまり戒律を司る天使です。名前はありません」
「て、んし。天使……天使か」
 俺にとって、鎖が無いと言うだけで充分に人外と認識できる。ならば天使という事にしておいた方が理解が早くなる。
 そう思い、とりあえず信じておく事にする。今はこいつの正体より、鎖の話の方が重要だ。
 鎖に縛られない存在。目の前にいる天使は、俺が今まで追い求めてきた理想のモノだった。
「……羨ましそうですね、鎖が無いと言う事が」
「さすが天使、お見通しだな。そうさ、俺はお前が羨ましい。クソみたいなルールを纏わないその身体、夢みたいだ」
 若干テンションが上がっているのが自覚できた。しかし興奮するなという方が無理だ。
 俺は自由が欲しかった。鎖と言う束縛をを断ち切る高貴な存在に、憧れていたのだ。
「私は、貴方を探していました」
「俺を? 何でまた……いっ!?」
 俺が言葉を言い終わらぬ内に、女の手が俺の頭部に飛んできた。手を縦に構え、思いっきりチョップしてきたのだ。
「貴方は重大な勘違いをしています。と同時に、素晴らしい力を持っている。今日私は、貴方に忠告をしに来たのです」
「……はぁ?」
 痛む頭をさすりつつ、俺は女を睨んだ。
 勘違い? そんな事してるつもりは……無い。
「まず一つ。ルールの無い世界なんてありません。戒律という秩序があってこそ、世界は統制されています。貴方が望むルールの無い世界なんて、存在しない。いや、出来ないのです」
「馬鹿な! 世界にルールが必要だというなら、この鎖は何なんだ! どれもこれも馬鹿げてる、どうしようもないルールばかりじゃないか!」
「それが貴方の二つ目の勘違い。貴方の目は全てのルールが見える訳じゃない。存在してはいけない、負の条文だけが見える、限定的な能力なのです」
719この醜くも美しい世界(5/5) ◆Ms.BlueNHo :2008/02/03(日) 23:41:13.95 ID:2fq/eE4g0
 その言葉を聞いた瞬間、俺の頭には先程とは違った衝撃が走った。
 それは、絶望感。俺が生を受けてから今までの、鎖と共にあった風景は、全てマイナスの世界だった。
 俺は地面に膝をつき、悔いる。同時に視界が霞んでいくのがわかった。
「……何故、泣いているのですか?」
「何故? 何故だって? 俺はこの先一生、負の世界と共に生きていくからだ。光なんか無い、鎖で閉ざされた世界。こんな世界しか見えないなら、いっそ……」
「ちょっぷ」
 女は、また俺の頭に手刀を落としてきた。しかし先程とは裏腹に力は無く、手が頭に当たると同時にその掌で頭を軽く撫でてきた。
「……何をする」
「貴方こそ何を言っているのですか。その目があるからこそ、貴方が望む光ある世界が作られるのですよ?」
 俺は顔を上げて、女の顔を覗き上げる。
「その汚い世界から目を背けてはいけません。鎖があるのなら断ち切りなさい。切った鎖の数だけ、正しいルールが世界を包み込むのです」
 女は、優しく微笑んでいた。正午の光が頭上から差し込むその姿は、さながら聖母か、天使か。
「天使……様……」
「鎖を断ち切る方法は、もう貴方は知っているはずです。まずは身近な所から。そしてゆくゆくは、世界そのものを見てください。貴方には、それが出来る」
 女は俺の頭から手を離し、立ち上がった。
「貴方に会えて良かった。次に会う時は、貴方が少しでも変えたこの醜くも美しい世界について、語り合えるといいですね」
 そう言って、女の姿は徐々に消えていった。最後にもう一度優しく微笑むと、姿は完全に消えてなくなった。
「俺の出来る事、か……」
 俺は錆色の校舎を視界に収め、教室目指して走り出した。
 もう、逃げない。

『ただいまより、第71回、生徒総会を開始します』
 体育館で行われる年1回の生徒会行事は、時期生徒会長の選出から行われるのが通例だった。
『始めに、生徒会長立候補者の挨拶。1番の方、お願いします』
 アナウンスが途切れ、体育館が静寂に包まれる。壇上に設置されたマイクに向かって、俺は歩き出した。
 全校生徒を一望出来る特等席は、俺にとっては拷問に近い空間だった。
 が、今は違う。無数の鎖を視界に納め、心中で気合を入れる。俺は挨拶を開始した。

「――皆さんは、鎖を見る事が出来ますか?」
(完)
720 ◆Ms.BlueNHo :2008/02/03(日) 23:41:48.31 ID:2fq/eE4g0
以上です。次の方どうぞ
721以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:42:13.59 ID:Ccn9Epiw0
お疲れ様でした。最後に◆InwGZIAUcs氏、はりきってどうぞ。

【順番】
−−−−−−
722とある妖精と少年のお話1/5 ◆InwGZIAUcs :2008/02/03(日) 23:42:35.20 ID:sNGlvDhl0
 人里離れた森の真ん中に、太陽の日が降り注ぐ開けた場所があります。
 赤、青、緑、黄色。そこは彩り鮮やかな花々が咲き乱れるお花畑。
 今日も丸いキノコの椅子の上では、妖精たちが楽しそうにお喋りをしています。そう、ここは妖精学校。
 そこでは今、一際高い椅子に座ったマリー先生が笑顔で拍手をしていました。
「リリーナさん、おめでとう!」
 拍手は周りの生徒達にも伝わりとても賑やかです。 
 その中心にいるのは、ふんわりした緑色の髪の毛と、蒼い透き通る羽が良く似合う妖精リリーナ。
「あ、ありがとうございます」
 リリーナはにかんだ笑顔を浮かべ、ペコッと皆に頭を下げます。
「リリーさん。卒業試験を合格できた貴女には、人間界に行く許可が与えられます。じっくりと人間界を知ってきて下さい」
「はい。あの、その、人間界では何をすればいいのでしょうか?」
「ふふ、悪戯するも、人間の持ち物を持ち帰るのも、あなたの自由ですよ? だけどね、分かっていると思うけど、人間に姿を見られては駄目よ?」
「はい、見られた妖精は……妖精界を追放されてしまうんですよね?」
 緊張した面持ちで答えると、マリー先生は笑いながらリリーナの頭を撫でた。
「そう、愛に満ちたこの妖精界を追放された妖精は、やがて愛の恩恵を失って死んでしまう……」
「はい、大丈夫です。気をつけます」
「ふふ、いい子ね。行ってらっしゃいな」
 いつの間にかリリーナは同級生に囲まれていました。彼らは、人間界のお花を摘んできてくれ、やれ人間界の食べ物を持ってきてくれ、
などなど、リリーナに数え切れないお願いを託し、彼女を見送りました。
 そしてリリーナは、人間界へと旅立っていきました。


 目新しいモノで溢れた人間界。リリーナは夢中になって人間の町を飛び回りました。
 飽いたら次の街、次の街と、まるで渡り鳥のように飛び続けます。彼女の旅は、新しい知識と体験で埋め尽くされ、
それはそれは有意義な時間を送っていました。もちろん姿を見られたなんてこともありません。
「これが船、これが馬車、これがパン、あ、蜂蜜塗ってる」
 石造りの家の上に腰を掛け、リリーナは街の様子を伺います。
「私も少し頂こうかしら……」
 姿が見えないのを利用して、蜂蜜のパンをこっそり頂戴しようという魂胆を抱いその時、
「はれ?」
723とある妖精と少年のお話2/5 ◆InwGZIAUcs :2008/02/03(日) 23:44:16.85 ID:sNGlvDhl0
 彼女は家の上から落ちてしまいました。
「力が……入らない」
 リリーナは妖精界のある森から離れすぎてしまっていました。妖精の力の源である愛が枯渇している今、
遠く離れた森に戻る力は残っていません。
「このままじゃ私……消えちゃう」
 しばらくして、リリーナの横たわる路地の片隅に人間がやって来ました。ちょっと野性味のある男の子です。
「……なんだお前?」
 彼は偶々通りかかったようですが、リリーナを見据えそう言いました。
「え? 私の姿が見えるのですか?」
 いくら力が入らないとはいえ、姿は消しているつもりなのでリリーナは心底驚きました。
 どうやら姿を消すこともできなくなっているようです。
「弱っているのか……?」
 リリーナの雰囲気から察したのでしょう、男の子はリリーナを両手で包み込むように拾い上げました。
「あの、その……」
「とりあえず家に来なよ」
 男の子は、リリーナを家に連れ帰ることにしました。
 

「俺はライナっていうんだけど、お前は……?」
 小さな布で拵えたベッドに横たわるリリーナ。傍らでは、肘をついて彼女を眺める男の子、ライナがいます。
「私は、リリーナといいます……あの、私の事は内緒にして欲しいのですが……」
「ああ大丈夫だよ。ここは俺の部屋、俺以外こないよ」
 リリーナはとりあえず胸を撫で下ろしましたが、問題は山積みです。
 とりあえず、リリーナは力を取り戻さないといけません。
 しかしリリーナは、このような状況下で、一つだけ生き延びる術に心当たりがありました。
妖精学校では禁忌として、知識として与えられたものでしたが、まさか実践する日が来るとはリリーナ自信夢にも思っていませんでした。
「おい。リリーナ、おい、聞いてるのか?」
 ボーっと考え事をしていたリリーナはハッとして、ライナの言葉に耳を傾けます。
「ごめんなさい、もう一度お願いします」
「あのな……まあいいけどさ。要するに、リリーナが何者で、何でそんなに弱っているか聞いてたんだよ」
724とある妖精と少年のお話3/5 ◆InwGZIAUcs :2008/02/03(日) 23:45:33.61 ID:sNGlvDhl0
 リリーナは本当の事を言うかどうか迷いました。言えば、いや、言わなくても妖精界追放されるでしょう。
しかしひょっとすれば、ここで言わなければ、許してもらえるかもしれない……。しかし、力を取り戻す唯一の選択をするにのは、
事情を全て説明しないと不可能だと、リリーナは思いました。
「私は、その……妖精なんです。ここから遥か彼方、妖精界のある森からやってきました……」
 リリーナはこれまでの経緯をライナにゆっくりと説明しました。妖精学校の試験に合格したこと。人間界に降りる許可がでたこと。
その人間界が楽しすぎて、気づいたらここまで来てしまっていたことを……。
「そっかあ……じゃあその森まで送り届ければいいんだよな?」
「え、ええ……でも……」
「でもなんだよ」
「人間に見られた妖精は、妖精界を追放されてしまうのです……」
「へ? じゃあもう駄目じゃんか!」
 そう、リリーナはもう消える運命にあります。しかし、リリーナは最後の賭けに出ました。
「あの、その迷惑じゃなければ!」
(私をかくまってくれるこの人なら……)
「迷惑じゃなければ?」
 ライナは合いの手を入れる。
(無邪気な瞳を持つこの人なら……)
「私を、私を愛してもらえないでしょうか!」
「愛して? ……へ? 愛して?」
 コクっとリリーナは頷き、ライナは目を丸くします。
「それはどういう意味だよ? リリーナを好きになれってことか?」
 リリーナは顔を真っ赤にしながら頷きました。
「こう、必要に思ってくれるだけでいいんです。私はそれだけで存在しつづけることができる……」
「ちょっとまってくれ!」
 ライナはまだ十五歳。好きな女の子と手を握ったこともありません。そんな彼に、突然こんな小さな女の子を好きになれと
言うほうが無理な話です。それでも、リリーナは必死に訴えました。
「私もライナのこと知っていくつもりです……だから……」
 見た目麗しい妖精の少女。いくら小さくとも、その姿は花のように可憐で、そんな彼女の目に溜まる涙をみてライナは、
たじろぎ返す言葉を探します。
「あっと、その、とりあえず友達からでいいか? 俺その、愛する、とかよく分からなくて……」
725とある妖精と少年のお話4/5 ◆InwGZIAUcs :2008/02/03(日) 23:46:36.53 ID:sNGlvDhl0
「は、はい! よろしくお願いします」
 笑顔を取り戻したリリーナに、なんとなく鼻先を掻くライナ。二人は照れくさそうに笑いました。 
 人の愛で自分の存在を満たす。これこそがリリーナの生き延びる唯一の術であり、禁忌とされることでした。


 二人の出会った春が過ぎました。時は二人にとって、思いのほか早く進んでいるようです。
 夏を遊び、秋を感じ、冬で暖を取り合う。二人はいつの間にか、とても良い仲になっていました。
 寒い冬の日、床についたライナは隣で丸くなっているリリーナにふと話しかけました。
「なあ、もうすぐ一年経つけど……リリーナは妖精界に帰らなくてもいいのか?」
「うん……でも、帰ってもきっと妖精界を追放されて、行く当てをなくしてしまうわ……」
「そっかあ……一度見てみたかったなあ妖精界っての……ここからずっと西のほうにあるんだっけ?」
 リリーナは慌てて事の重大さをライナに説きました。
「ライナ! 人間が妖精界に行けばただでは済まないよ? 多分生きては帰れないと思う……妖精界に人間が来ることは、
決して許されないことなの……だから人間と関わりを持った妖精は、妖精界を追放されてしまうの……」
 そう言ったリリーナの表情は暗いものでした。ライナはなんとなくいたたまれなくなり、布団から出した手で、彼女の小さな頭をそっと撫でてやります。
「ありがとう、でも今はライナがいるから平気だよ? 私はラッキーなのです」
「そっか……変なこと言ってごめんな」
「うん」
 二人はその後、ゆっくりと眠りに落ちていきました。


 コンコンという窓の音に目を覚ましたリリーナ。誰かが呼んでいる声がします。
「リリーナ、リリーナ」
「ん……だれ?」
 リリーナが目を擦ると、開けていく視界の先には見覚えのある顔……心配そうに顔を歪ませたマリー先生でした。
「マリー先生! な、なんでここに!」
 リリーナは慌てて窓の外に飛び出ます。
「良かった……無事でしたね。貴女の帰りが余りにも遅いので、貴女の気を辿ってここまで来たのです」
「あの、先生私……」
「いいのです。分かっています。貴女がまだ無事ということは、禁忌とされているすべを使ったのですね……」
726とある妖精と少年のお話5/5 ◆InwGZIAUcs :2008/02/03(日) 23:48:33.42 ID:sNGlvDhl0
「はい……」
「幸いここは妖精界から遠い場所。人間がたどり着くことも無いでしょう……。妖精界の王様には私が口添えをしておきました。
あなたは妖精界に戻っても追放されることはなくなりました」
「ほ、本当ですか?」
「本当ですよ。戻ってきますね? もしこの機を逃せば、あなたはもう妖精界に戻ることはできないでしょう……」
 その言葉に、リリーナは酷く胸を痛めました。窓の中のライナを見みます。彼は幸せそうに眠っている……。
 ここで過ごした楽しい一年と、今まで過ごしてきた十数年の森……。
 夜明け前、リリーナは一つの決意をしました。


 翌朝、机の上にいるはずのリリーナの姿はなく、ライナ宛ての手紙が載っているだけでした。

――ライナへ。私は昨日の夜、妖精界の迎えがあり共に帰ることにしました。今を逃したら二度と帰られません。
本当に勝手でごめんなさい。またいつか必ず恩返しに来ます。その日までどうかお元気で。    リリーナ

 ライナは即座に手紙を破り捨てました。 
 彼は黙って朝食を終え、アルバイトで貯めた貯金を全て使い果たし、短剣に蝋燭、ロープに寝袋、保存食等を入れ、
港に飛んでいきました。目指すは西。
 人目も気にせず、海に向かって一人吼えます。
「勝手なやつめ! 愛せって言ったよな! お前の気持ちをその口から聞くまであきらめないぞ!
どこまでも追いかけるぞおおおおお!」
 たった一年で愛に目覚めた少年の旅立ちを、太陽だけが見守っていました。                  終わり
 
727以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:49:20.33 ID:sNGlvDhl0
異常ですotz 
ごめんなさい……もう……ごめんあさい……
728以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:49:25.63 ID:FljJgRXw0
No.01 コドモルール 0/5 ◇ecJGKb18iosi氏
No.02 ル・クインセグ 0/5 ◇pxtUOeh2oI氏
No.03 神のいない世界で 0/2 ◇eYCc7/VuC2氏
No.04 シュガープラント・ルールズ 0/5 ◇AOGu5v68Us氏
No.05 生類憐みの令 0/3 ◇ETwWxomLBg氏
No.06 ルール 0/5 ◇ibD9/neH06氏
No.07 家路 0/4 ◇Gv599Z9CwU氏
No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店 0/4 ◇/sLDCv4rTY氏
No.09 三秒ルール 0/2 ◇Bf9IIj31BY氏
No.10 いわない/友情/忘れたくはないんだ 0/4 ◇/sLDCv4rTY氏
No.11 クロスウォーク 0/5 ◇p/4uMzQz/M氏
No.12 モンスター 0/5 ◇zsc5U.7zok氏
No.13 外へ 0/5 ◇otogi/VR86氏
No.14 定め 0/5 ◇7BJkZFw08A氏
No.15 キミョウな自分ルール 0/4 ◇ZetubougQo氏
No.16 歌が聞こえる 0/5 ◇SQvDZ46yqY氏
No.17 規則破不 0/4 ◇CoNgr1T30M氏
No.18 海とビールと傍観者 0/4 ◇hemq0QmgO2氏
No.19 取替え子 0/4 ◇VZpO0svMyk氏
No.20 知恵の果実と楽園の境界 0/4 ◇rmqyubQICI民
No.21 コルネオのルール 0/5 ◇LBPyCcG946氏
No.22 アナザー・ワールド 0/5 ◇Sound.UlVY氏
No.23 relatively being 0/2 ◇wb/kX83B4.氏
No.24 ウェストファリア 0/5 ◇/UzWoCdlY.氏
No.25 なみだ 0/4 ◇0CH8r0HG.A氏
No.26 アウトローですか? 0/3 ◇czxS/EpN86氏
No.27 その汚く美しき青春 0/5 ◇/7C0zzoEsE氏
No.28 妖精さんのお仕事 0/4 ◇lDzk49E.e2氏
No.29 この醜くも美しい世界 0/5 ◇Ms.BlueNHo氏
No.30 とある妖精と少年のお話 0/5 ◇InwGZIAUcs氏
729以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:49:49.82 ID:cQ6NeJrK0
No.01 コドモルール 1/5 ◇ecJGKb18io
No.02 ル・クインセグ 1/5 ◇pxtUOeh2oI
No.03 神のいない世界で 1/2 ◇eYCc7/VuC2
No.04 シュガープラント・ルールズ 1/5 ◇AOGu5v68Us[
No.05 生類憐みの令 1/3 ◇ETwWxomLBg
No.06 ルール 1/5 ◇ibD9/neH06
No.07 家路 1/4 ◇Gv599Z9CwU
No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店 1/4 ◇/sLDCv4rTY
No.09 三秒ルール 1/2 ◇Bf9IIj31BY
No.10 いわない/友情/忘れたくはないんだ 1/4 ◇/sLDCv4rTY
No.11 クロスウォーク 1/5 ◇p/4uMzQz/M
No.12 モンスター 1/5 ◇zsc5U.7zok
No.13 外へ 1/5 ◇otogi/VR86
No.14 定め 1/5 ◇7BJkZFw08A
No.15 キミョウな自分ルール 1/4 ◇ZetubougQo
No.16 歌が聞こえる 1/5 ◇SQvDZ46yqY
No.17 規則破不 1/4 ◇CoNgr1T30M
No.18 海とビールと傍観者 1/4 ◇hemq0QmgO2
No.19 取替え子 1/4 ◇VZpO0svMyk
No.20 知恵の果実と楽園の境界 1/4 ◆rmqyubQICI
No.21 コルネオのルール 1/5 ◆LBPyCcG946
No.22 アナザー・ワールド 1/5 ◆Sound.UlVY
No.23 relatively being 1/2 ◆wb/kX83B4.
No.24 ウェストファリア 1/5 ◆/UzWoCdlY.
No.25 なみだ 1/4 ◆0CH8r0HG.A
No.26 アウトローですか? 1/3 ◆czxS/EpN86
No.27 その汚く美しき青春 1/5 ◆/7C0zzoEsE
No.28 妖精さんのお仕事 1/4 ◆lDzk49E.e2
No.29 この醜くも美しい世界 1/5 ◆Ms.BlueNHo
No.30 とある妖精と少年のお話 1/5 ◆InwGZIAUcs
730以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:50:22.12 ID:cQ6NeJrK0
あ、ごめん被った。転載したけど、間違いあったら言えよー。
731以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:50:28.77 ID:Ccn9Epiw0
お疲れ様でした。

現在、週末品評会96thの投票受付中です。今回の品評会お題は『ルール』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/bnsk/ -週末品評会96th- にてご覧頂けます。
投票期間は2008/02/05(火)24:00:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
毎回作品投稿数に対して投票数が少ないので、多くの方の投票をお待ちしております。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
ご協力ください。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

***********************【投票用紙】***********************
【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
               ―感想―
      <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
               ―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
********************************************************
携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。 
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書き途中の方は是非。

毎回思うんですが、投下完了後の一言、必須というわけではありませんよ?
732以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:50:30.74 ID:p3/Gr+fd0
中の人と>>728
乙様!
733以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:50:43.11 ID:EQZaQ57R0


おお、三十作品…
734以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:51:18.93 ID:FljJgRXw0
運営さん、まとめの方、乙でした。

>>729
あ、ごめんw
735以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:52:27.35 ID:3rPwfirR0
運営様超絶乙><
736以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:53:05.34 ID:Xn82Bo8A0
運営の人、乙!
737以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:53:06.08 ID:9UcSfVzU0
No.01 コドモルール ◆ecJGKb18io
No.02 ル・クインセグ ◆pxtUOeh2oI
No.03 神のいない世界で ◆eYCc7/VuC2
No.04 シュガープラント・ルールズ ◆AOGu5v68Us[
No.05 生類憐みの令 ◆ETwWxomLBg
No.06 ルール ◆ibD9/neH06
No.07 家路 ◆Gv599Z9CwU
No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店 ◆/sLDCv4rTY
No.09 三秒ルール ◆Bf9IIj31BY
No.10 いわない/友情/忘れたくはないんだ ◆/sLDCv4rTY
No.11 クロスウォーク ◆p/4uMzQz/M
No.12 モンスター ◆zsc5U.7zok
No.13 外へ ◆otogi/VR86
No.14 定め ◆7BJkZFw08A
No.15 キミョウな自分ルール ◆ZetubougQo
No.16 歌が聞こえる ◆SQvDZ46yqY
No.17 規則破不 ◆CoNgr1T30M
No.18 海とビールと傍観者 ◆hemq0QmgO2
No.19 取替え子 ◆VZpO0svMyk
No.20 知恵の果実と楽園の境界 ◆rmqyubQICI
No.21 コルネオのルール ◆LBPyCcG946
No.22 アナザー・ワールド ◆Sound.UlVY
No.23 relatively being ◆wb/kX83B4.
No.24 ウェストファリア ◆/UzWoCdlY.
No.25 なみだ ◆0CH8r0HG.A
No.26 アウトローですか? ◆czxS/EpN86
No.27 その汚く美しき青春 ◆/7C0zzoEsE
No.28 妖精さんのお仕事 ◆lDzk49E.e2
No.29 この醜くも美しい世界 ◆Ms.BlueNHo
No.30 とある妖精と少年のお話 ◆InwGZIAUcs
738以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:53:16.19 ID:qMxAOb/l0
運営さんおつー
739以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:53:17.87 ID:OWAK197a0
運営さんまとめさん参加者みんな乙です
740以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:53:32.92 ID:cQ6NeJrK0
>>731
中の人乙おつおつ。
741以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:54:06.00 ID:K8N8ZDxN0
運営の方、皆様、乙です
742以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:54:33.89 ID:4+z1t3AA0
      r;ァ'N;:::::::::::::,ィ/      >::::::::::ヽ
.      〃  ヽル1'´        ∠:::::::::::::::::i
       i′  ___, - ,. = -一   ̄l:::::::::::::::l
.      ! , -==、´r'          l::::::/,ニ.ヽ
      l        _,, -‐''二ゝ  l::::l f゙ヽ |、 ここはお前の日記帳じゃねえんだ
        レー-- 、ヽヾニ-ァ,ニ;=、_   !:::l ) } ト
       ヾ¨'7"ry、`   ー゙='ニ,,,`    }::ヽ(ノ  チラシの裏にでも書いてろ
:ーゝヽ、     !´ " ̄ 'l,;;;;,,,.、       ,i:::::::ミ
::::::::::::::::ヽ.-‐ ト、 r'_{   __)`ニゝ、  ,,iリ::::::::ミ
::::::::::::::::::::Vi/l:::V'´;ッ`ニ´ー-ッ-,、:::::`"::::::::::::::;゙ ,  な!
:::::::::::::::::::::::::N. ゙、::::ヾ,.`二ニ´∠,,.i::::::::::::::::::::///
:::::::::::::::::::::::::::::l ヽ;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /
::::::::::::::::::::::::::::::! :|.\;::::::::::::::::::::::::::::::/ /
743以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:54:34.76 ID:ZasVO8Kz0
おつかれsまでいsた
744以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/03(日) 23:54:56.27 ID:FxMiLGVP0
うはwちょうど真ん中w
745以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:02:51.36 ID:ItZuDT8L0
おみくじ


大経だね
746以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:05:24.58 ID:ExYWDDvQ0
書いた人、中の人、みんな乙!

>>731
投票用紙のテンプレを
******************【投票用紙】******************
【投票】: <<タイトル>>◆XXXXXXXXXX氏
               ―感想―
      <<タイトル>>◆YYYYYYYYYY氏
               ―感想―
気になった作品:<<タイトル>>◆ZZZZZZZZZZ氏
**********************************************
この長さにしてほしいのです…
747以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:07:20.28 ID:ucqbu2/F0
>>746
申し訳ありません。修正を失念しておりました。
すぐに変更しますね。
748以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:08:44.55 ID:aghd2OaI0
お題kださい
749以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:09:54.45 ID:AvczVD5B0
>>748
ディーラー
750以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:11:04.79 ID:bdMSKIv+0
>>748
検定試験
751以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:11:42.32 ID:WoN4eEBa0
皆お疲れ様ですー
752以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:11:53.92 ID:KNtV6UMZ0
>>748
落第
753以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:19:39.39 ID:5BoNxFr70
ポロロッカは変わらず訪れる
754以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:22:51.39 ID:YYRkvwpn0
>>748
靴下
755以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:22:53.94 ID:KU/dtCyK0
皆さんお疲れさまですー。

ところで品評会とは関係無いんですが、お題小説って、4096バイトに収めないといけないんでしょうか?
それとも1レスが4096バイトを超えてはいけないって事?
今書いてるんだけど……、とても4096バイトに抑えられない……。
教えて親切な人!
756以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:24:57.04 ID:aaljH9J30
どこまでが一作品かなんて機械に見分けられるわけないだろう常考
1レスまでの容量よ
757以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:29:45.29 ID:KU/dtCyK0
>>756
ありがとう!1レスの容量なのか!
じゃあモリモリ書いて、スレが落ち着いた頃にまた投稿するよ!!
758以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:48:18.47 ID:AvczVD5B0
ほすほす
759以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:49:24.73 ID:GqUBIe1y0
>>602だが
月の上にボブとトムと賢者の医師
書いたけどカオス過ぎるw
760月の上にボブとトムと賢者の医師0/3:2008/02/04(月) 00:53:00.96 ID:GqUBIe1y0
カオスだけど投下w
761月の上にボブとトムと賢者の医師1/3:2008/02/04(月) 00:54:44.18 ID:GqUBIe1y0
 子供の頃から、私には二人の相談相手が居た。
 彼らはいつも、夜、月に乗ってやって来るのだ。
「今宵も堕落と混沌が踊る艶冶な夜だ」とボブは言った。
「要するに良い夜だってことだね」とトムは言った。
「やあ、こんばんは」と私は言った。
「時運の為す逢遇には多謝万謝なり」とボブは言った。
「要するにこんばんはってことだね」とトムは言った。
「今日も訊きたいことがあるんだが」と私は言った。
「余輩の智嚢は蒼海の如し」とボブは言った。
「要するにどうぞってことだね」とトムは言った。
「人にとって金とは何であろうか? それは生きるために本当に必要なものなのだろうか?」と私は言った。
「腐食した黄金から芽ぐむ惰気は泥裏にのみ蕃殖し、軈て虚栄は崩潰す。
蓋し浅葱深碧に染まれども偽印に玉璽は務まらぬ。然れど――」

「――穀菽無くば命脈無し、それもまた真理」私は言った。
「どういった意味なのでしょうか」と弟子は言った。
「要するに金は多すぎてもいけないけど食べれないほどはダメってことだね」と私は言った。
「有難きお言葉です」と弟子は言って去っていった。

 毎晩のボブの言葉は私にとって新鮮なものだったが、それ以上の何かではなかった。
 いや、正直に言って、トムが要約しなければ何を言ってるのかさっぱり解らないものだった。
 しかしふとした時にボブの言葉を引用してから全てが変わった。
 程なく何人かが「弟子になりたい」と言いだし、その何人かがやがて何十人、何百人となった。
 そして私は賢者と呼ばれるようになった。
 実際、「賢者」の振りをするのは案外簡単だった。
 もし弟子が何か質問をすれば、「一晩自分で考えてみなさい」と言ってその晩ボブに同じ事を聞き、
 翌日ボブの難解な言葉とトムの要約を弟子にそのまま話せば良いのだから。
 やがて時が流れ弟子の寄付で大きな屋敷が建ち、私はそこに住むことになった。
 食事も衣服も弟子が用意してくれた。
 それは最高の生活だった。
762月の上にボブとトムと賢者の医師3/3:2008/02/04(月) 00:56:23.97 ID:GqUBIe1y0
「実は……」
 私はこの医師に正直に話した。月に乗った二人のこと。何もかも。
 医師は親身になって聞いてくれた。
 そのうちに、急激に熱中したためなのか、私は眠くなってしまった。
 私がその事を言うと
「大丈夫です、では寝てください」と医師は言った。
 横になった私を掛け布団が包むと、瞬く間に睡魔が襲ってきた――。


「どうですか、師は大丈夫でしょうか」幸福そうに眠っている師を見ながら弟子が訊ねた。
「統合失調症ですね」と医師は言った。

763以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 00:58:50.96 ID:pvT/JU1m0
2/3はどこに消えた!?
764月の上にボブとトムと賢者の医師:2008/02/04(月) 00:59:15.60 ID:GqUBIe1y0
あれれ?
765以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:00:25.20 ID:MTtJr6SI0
ごめん食った
766月の上にボブとトムと賢者の医師:2008/02/04(月) 01:01:07.01 ID:GqUBIe1y0
ん? 何故か書き込めないwどうしたw
767月の上にボブとトムと賢者の医師2/3:2008/02/04(月) 01:02:39.94 ID:GqUBIe1y0
 ――しかし、困ったことが起きた。
 ボブとトムが突然姿を見せなくなったのである。
 このままでは弟子との問答が出来ない。
 私は体調不全を理由に部屋に籠もらざるを得なくなってしまった。
「お体は大丈夫でしょうか、医者を連れてきました」弟子の一人が部屋のドアをノックした。
「医者はいいんだ、医者は」と私は言った。
「ですが、もう十日も体調が優れないと仰ってるじゃありませんか。お願いです、診てもらってください」弟子は懇願した。
 このままでは確かに良くない。どうせ、医者に診られたところで原因不明と診断されるだけだろう。
「そうだな、せっかく来てもらったんだ、診てもらおうか」と私は言った。
 ドアが開き、白衣を着た、何やら人当たりの良さそうな小太りの男が弟子とともに入ってきた。
「では、お願いします」と弟子はその医師に会釈をして去っていった。
「ウッズと言います、宜しくお願いします」と医師は言った。「ベッドから起きあがれますか」
 私が起きあがると医師は私の隣に座り、私の首筋を触ったり、舌を見たりした。しかしやがて大きな溜息を吐いた。
「どう診ても悪いところがないのですが」
「いや、ですが確かに体調が優れないんです」と私は言った。
「……」
 私の言葉を聞いた医師は長らく押し黙ったままだったが、暫くして何かを決意したように
「身体ではなく、心に何か不都合が起こっているのではないですか」と言った。
 図星を突かれた私は石のように固まってしまった。
「賢者と呼ばれる方にこのようなことを言うのは差し出がましいとは思いますが」
「……」
 言えるわけがない。ボブとトムのことは。
「立場上、心労が溜まることもあるでしょう。どうです、誰にも口外いたしませんので
心に溜まったものを話してみてはいかがですか」医師は言った。
「……」
「私を信じて、話して下さいませんか」医師は言った。
「……」
「私を信じて」医師は私の目を見て真剣な表情でそう言った。
768以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:03:01.96 ID:KNtV6UMZ0
769月の上にボブとトムと賢者の医師:2008/02/04(月) 01:03:29.30 ID:GqUBIe1y0
行頭に改行入ってると認識されない? もしかして
770以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:03:50.58 ID:KNtV6UMZ0
まちがった
>>672
771以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:03:50.48 ID:AvczVD5B0
1行目が空行で22行以上のレスはカキコミが反映されずに食われるのだ。
そういうときには慌てずに、空行を全角なり半角なりの空白だけ入れてみよう。
772以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:05:17.19 ID:AvczVD5B0
 
こういうように、だね。
773月の上にボブとトムと賢者の医師:2008/02/04(月) 01:06:47.87 ID:GqUBIe1y0
なるほど。勉強になりました。というわけで、

>> ――しかし、困ったことが起きた。

の前に本来改行入ります。まあ、もうどうでもいいか。
774以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:17:06.71 ID:klgSugTN0
ものすごいお題くれ
775以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:17:33.02 ID:MTtJr6SI0
宇宙戦争
776月の上にボブとトムと賢者の医師:2008/02/04(月) 01:18:00.06 ID:GqUBIe1y0
読み返してたんだがかなーり読みにくいな。
読みにくくてごめんなさい。
編集しにくくてごめんなさい。
777以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:18:36.19 ID:MTtJr6SI0
宇宙論争
778以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:20:17.87 ID:pvT/JU1m0
今、全感書いてる人っているのかなー
今夜中に全感投下なさそうならもう寝ちゃうんだけど
779以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:20:58.66 ID:klgSugTN0
>>775 >>777
壮大すぎるwww
はあく
780以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:21:30.63 ID:wUW/8kMF0
お題くれ
781以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:22:51.16 ID:AvczVD5B0
>>780
フランス人
782以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:29:07.42 ID:KNtV6UMZ0
>>780
ツールドフランンス
783以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:29:42.23 ID:hP5DliGx0
>>780
784以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:29:54.85 ID:MVb2Agbu0
785以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:29:55.77 ID:KNtV6UMZ0
最近タイポが多すぎるぜ
786以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:35:51.97 ID:GqUBIe1y0
もしかして「賢者の医師」の人じゃないよなw
787以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:38:25.93 ID:AvczVD5B0
>>761
気合いが足りなくて、バシッとした感想かけそうもないのがすまん。
冒頭のボブとトムと私の掛け合いは良いねぇ。特に解説役のトムの配置。
だってボブの台詞が読めない漢字だらけの文語体だろw合ってるか間違ってるか
わからんけど、超助かるwwwつかこういう引き出し持ってるなんてずるいなwww
2レス目が無くてもオチたと思ったから、ある意味2レス目が無駄多いかもしれない。
で、お題は綺麗に使われてるのな。ホント素直すぎるのにワロタ。あらすじ書くと
夜、頭の中に現れるボブとトム、そしていつしか賢者と呼ばれるようになった男。
医師が彼へ見立てた病状とは?ってことだしさ。
件の精神的に普通の人と異なっている人の中で、社会と上手く折り合い付けて
生きていける人達は、霊能力者、予言者の類として社会的機能を持つのかも
知れない。必要な存在なのだ云々。とか、まぁシャーマンとはなんぞやという話
とかを論述するまでもなく、別にこうした話自体は突飛な発想ではないんだ。
で、実際話を作るとなると、頭飛んでる中身を書けるかってのが難しいわけで、
そこを3人の掛け合いで成立させたのは偉いと思ったわけ。
788以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:41:41.99 ID:AvczVD5B0
>>786
あ、そのお題提出者オレwww
789以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:47:56.88 ID:u386kIkj0
>>761

>「腐食した黄金から芽ぐむ惰気は泥裏にのみ蕃殖し、軈て虚栄は崩潰す。
>蓋し浅葱深碧に染まれども偽印に玉璽は務まらぬ。然れど――」

面白かった。
漢文を勉強したらこんな文章が書けるようになるのか?
790以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:53:07.49 ID:GqUBIe1y0
>>787
感想マジサンクス。あらすじまで。
作り手的にもトム超助かったwボブだけだったら死んでたw
まあ、ぶっちゃけお題がかなりぶっ飛んでたんで
(採用したのは自分だが)
ぶっ飛んでる人を登場させるしかなかったw
まあでも、書くの楽しめたんでよかったかな。3時間ぐらいしかかけてないけどw

>>788
やっぱりかw
791以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 01:59:57.51 ID:GqUBIe1y0
>>789
漢文ではないっすな多分。いや絶対。
ある程度の言葉が頭にあれば、あとは無料国語、類語辞書でいけるw
792以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:02:05.05 ID:u386kIkj0
>>791

なるほど才能か。
793以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:04:16.74 ID:m7jv4QsF0
うん、品評会参加しようと思ったら今起きたんだ。
お題くれよぉ!!!
794以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:04:56.67 ID:AvczVD5B0
>>793
取り返しの付かない失敗
795以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:05:01.81 ID:kM337ixy0
三年寝太郎
796以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:05:52.50 ID:ollXLBzo0
久々に書きたくなった
お題plz
797以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:05:52.61 ID:m7jv4QsF0
把握したよ……
どうすっかなぁ、完全に夜型になっちまったよ……
798聖戦士 ◆9pb5CAjkfo :2008/02/04(月) 02:06:23.23 ID:EowhSc63O
オラオラVIPPERのカスども!!俺らモバイル2ちゃんねるの住人に詫びいれにこいや!
http://e.z-z.jp/?new2ch50
799以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:07:12.98 ID:AvczVD5B0
>>796
幻の一品
800以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:07:23.20 ID:LK5xI0Ob0
>>796
邂逅
801以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:08:55.35 ID:ollXLBzo0
>>799,800
把握
802以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:10:07.98 ID:KH6rbEYqO
んじゃま俺もお題募集すっかな。三つほどちょうだいな
803以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:10:29.77 ID:ollXLBzo0
>>802
縫合
804以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:10:31.75 ID:Z0gEHXomO
>>802
805以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:11:42.88 ID:u386kIkj0
ocnがまた規制されるらしい。
806以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:14:12.95 ID:AvczVD5B0
>>802
強欲
807以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:15:13.47 ID:KH6rbEYqO
>>803-806まで把握
808以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:15:13.96 ID:Fs3Ntq1I0
>>805
ちょwwwwまじかwwwwww
809以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:15:48.21 ID:m7jv4QsF0
>>805
またかよ…
810以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:16:37.86 ID:mTNt7QcS0
最近規制多過ぎだ。
dionもそうだし、eoも今年は規制されて無い日の方が少ない。
811以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:18:37.25 ID:LK5xI0Ob0


 , -―-、、
/::::::::::::::/⌒ヽ
l:::::::::::::( ^ω^) またシベリアさんとこのお世話になるのかお・・・
ヽ、:::::::::フづとノ'
  '〜|   |
    し---J        
812以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:34:15.89 ID:MTtJr6SI0
ええい!ハードボイルドな作品はまだか!
813以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:42:47.66 ID:m7jv4QsF0
>>812
後何個かお題貰ったら書いてみるよ?
全部ひっくるめた濃厚カオスなハードでボイルドな
814以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:44:08.79 ID:MTtJr6SI0
>>813
アルミホイル
815以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:45:29.42 ID:m7jv4QsF0
>>814
お前のハードボイルドは間違ってる!!
把握した
816以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:47:56.86 ID:MTtJr6SI0
アルミホイルをピンと張れば銃弾が防げるということを知らんのか
817以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:48:46.18 ID:m7jv4QsF0
mjd???
818以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 02:54:31.94 ID:mTNt7QcS0
残鉄剣で弾丸ぶった切る時、なんで破片が当たらないんだろうと不思議に思っていたあの頃。
819 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:18:41.56 ID:kM337ixy0
全感書き終わったぞおおおおおおおおおおおお――――――――――――!!
まじ疲れた。いつもやってくれてる人ありがとう。本当にありがとう。
さる支援頼む。
820以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:18:56.13 ID:WQlkOTCH0
さる
821 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:19:53.29 ID:kM337ixy0
No.01 コドモルール 1/5 ◆ecJGKb18io
小学生の一人称にしては、言葉が難しすぎる気がした。
女史、本の虫、伝家の宝刀、法定、裁判官、執行人とか。
話は結構、懐かしい感じがして良い。ただ最後に佐藤が、
すごい奴かもという流れは、どうだろう?
小学生なら、ただキレただけだと受け取るような気がする。


No.03 神のいない世界で 1/2 ◆eYCc7/VuC2
なんだろう? 魔王の望みが良くわからない。
秩序も保ててるらしいし、なんか結構、平和そうな感じがした。
勇者も魔王も争わずに普通に暮らせそうじゃないか?
神さまが悪いのか。

No.04 シュガープラント・ルールズ 1/5 ◆AOGu5v68Us
良く一緒にゲームするらしい双子が煙草吸ってることに気付かないだろうか?
吸わない者からすると、においでわかる気がする。細かすぎるか。
あと、男と女の双子ってことは、二卵性だよね?
それだと、普通の姉弟と一緒だから、顔はそんなに似ないはず。
話は特に何も思わなかった。悪いわけじゃないんだけどね。
異性でも血のつながりがあると、恋愛対象にならないという話を
いろんなところで聞いてるせいかもしれない。
それと、改行をしてくれ、横に広がって読みにくい。

No.05 生類憐みの令 1/3 ◆ETwWxomLBg
生類憐みの令がおかしいということは、
今の時代の人でも、当時の人でも、誰もがわかることだろうから、
それをただ「おかしい」と言うだけでは特に面白くないと思う。
せめて、それに反抗する様子がラスト一行以外にも、もう少し欲しかった。
別に犬は悪くないしね。
822 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:20:17.04 ID:kM337ixy0
No.06 ルール 1/5 ◆ibD9/neH06
1レス目がなんかもったいぶった感じで特に必要を感じなかった。
小説っぽいって言えば、ぽいけど。他にもそんな感じわかりにくいとこが多い。
たとえば、
>結果―――。
ここの上3行、意味がわかりにくい。なんで、「である」で〆てあるんだ?
後半になって「少数派だ、ルールだ」の話になっているが、
こういう流れにするなら、生徒と先生が相思相愛なのに、
無理やり別れさせられた話にした方が良かったんじゃない。
嫌われてるのに、ストーカーになるのは、ルール以前の問題だw

No.07 家路 1/4 ◆Gv599Z9CwU
状況がわからない。3レス目で「時刻は明日〜」となってて、
次のレスで夜明けの話になってるけど、6時間近く走り続けたの?
そもそも冬の峠をママチャリで登るのは無理だと思う。
MDで音楽聴きながらとかだと死ぬ危険もあるぞw
雰囲気を出す為の設定に、ちょっと無理があったんじゃなかろうか。

No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店 1/4 ◆/sLDCv4rTY
漢字をわざわざ毀れたにした意味がわからなかった。
じいさんが他の人を殺した理由がわからなかった。
じいさんが、誰も客がいないのに自転車店をやってる理由がわからなかった。
結局、いろいろわからなかった。
毀れたと殺したは漢字のつくりの部分が同じだが、何か意味があるのだろうかと思った。
作者はその辺のことを考えて“毀れた”にしたのかな

No.09 三秒ルール 1/2 ◆Bf9IIj31BY
落ちた場所、床じゃなくて、テーブルの上だよね?
ここはセーフだろ! 三秒とか関係ないよ!
布巾で拭くほうが糸くずとかつきそうじゃん!
823以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:20:18.72 ID:F686tPP30
さる
824 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:20:40.17 ID:kM337ixy0
No.10 いわない/友情/忘れたくはないんだ 1/5 ◆/sLDCv4rTY
小学生っぽさを、ひらがなで表現したのがイマイチだった。
>夕日にてらされた柿いろの帰り道で
小学生の使う言葉じゃねえよw
あと、大学生になってからの一人称が“僕”ってのもどうだろ。
これはプロ作品含めて他の一人称小説にも言えるけど、
中学生以上の男で一人称が“僕”って人いないと思うんだよね。
おっさんになって、また使いはじめる人もいることはいるけど。
特に今回の話は成長したってことを表すためにも、“俺”にした方が良かったんじゃなかろうか。

No.11 クロスウォーク 1/5 ◆p/4uMzQz/M
>今日は、学校は
“は”が2回使われてることにちょっとひっかかった。
1行目だしもったいない。
こういう正義感のある人には、あこがれるな。
ちょっとやりすぎな気がしないでもないが。

No.12 モンスター 1/5 ◆zsc5U.7zok
野球の話はプロの試合っぽいけど、
プロ野球ではあまりマモノって表現は使わないかな。
甲子園にした方が良いと思う。
あと、マラドーナがあれはハンドだったって認めたらしいよ、
つい2,3日前のニュースだけどw
まあ、どちらもマモノには違いないし、どうでも良いかな。
テロの話を入れたことには、個人的に嫌悪感みたいなのを感じた。
話に不満はない。良かった。
825以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:21:11.61 ID:AvczVD5B0
さる
826 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:21:12.15 ID:kM337ixy0
No.13 外へ 1/5 ◆otogi/VR86
改行を使おう。話は良い。最後にバッドエンドにしたのも、怖くて良かった。
生まれたときから、布、付けっぱはないだろうとか、
ちょっと気になるところもあるけど、
特に言うことは無い。

No.14 定め 1/5 ◆7BJkZFw08A
文章なんかは上手いと思うんだけど、
話にオリジナリティが感じられない。
人魚とか、狐とか良く聞く話だなと思った。
妖精と愛についての話は、No.30の人ともかぶってるしね。

No.15 キミョウな自分ルール 1/4 ◆ZetubougQo
ちょっと、都合が良すぎるかな。
面白かったけど。

No.16 歌が聞こえる 1/5 ◆SQvDZ46yqY
一緒に爆発事故にあった人が、
病院で死んだ人を思い出していた話ということで良いのかな?
歌声を思い出すのはわかるけど、行ったことのない
死者の故郷を想像するのは、おかしいと感じた。
はじめて彼女の歌声を聞いた場所とか、
思い出の場所とかの方が自然じゃない?

No.17 規則破不 1/4 ◆CoNgr1T30M
くだらねえw 俺も人に言われて気付いたことだけど、
こういう、読者を驚かすようなオチを用意するなら、
前半に少し伏線を用意した方が良いと思う。
たとえば、「言い寄る女に見向きもせず、成績優秀だった〜」とかみたいに。
バランスが難しいけどね。
827 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:21:34.97 ID:kM337ixy0
No.18 海とビールと傍観者 1/4 ◆hemq0QmgO2
文章のひとつひとつが、ただ青春小説を書きましたという感じしかしない。
あまり現実味が感じられなかった。
言葉がキツイのは、俺がこの手の話が嫌いだから違いない。
日本語的に気になるところはなかったです。

No.19 取替え子 1/4 ◆VZpO0svMyk
不思議な話。
不思議過ぎて何が言いたいのかわからなかった。
もう少し人が読むことを意識したらどうだろう?
楽しませたいとか怖がらせたいとかそういう気持ちが感じられなかった。
雰囲気とか、文章は良いだけに、頭に?が浮かんだまま
終わってしまったのが勿体ない。偉そうだがこんな感じ。

No.20 知恵の果実と楽園の境界 1/4 ◆rmqyubQICI
良いね。こういう話は好きだ。
不満も見つからないし、言うことは特にない。
姑のようないやらしい見かたで、少しだけ気になったところを書くと
>少年が柵を越えてから数時間が経った。
ちょっと元気良すぎかな。この後の
>気付けば辺りはもう暗くなり始めていた。
とも合わせると、学校から帰って数時間ってのが、ちょっとだけ気になった。
あとタイトルが、あまり話と合わないような気もする。
828以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:22:02.46 ID:F686tPP30
さる
829 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:22:07.87 ID:kM337ixy0
No.21 コルネオのルール 1/5 ◆LBPyCcG946
アタッシュケースを機内に持ち込む奴はいないんじゃね?
空港の警備甘すぎ。麻薬捜査犬にしても、三重の密閉ぐらいでスルーできるなら、
銃も買収もいらなかったんじゃね? と思った。
覚醒剤は金属探知器に反応しないし。
と不満を並べ立てたが、面白かった。

No.22 アナザー・ワールド 1/5 ◆Sound.UlVY
>母は専業主婦で父も普通のサラリーマンの間に生まれた俺には〜
ここちょっと日本語がおかしいかな、なんていうかリズムが。
オチは予想外で良かった。「あ、ついでに〜」って知ってる?
話にはまったく関係が無いことだが、猫に牛乳はダメだよ、おなか壊すから。

No.23 relatively being 1/4 ◆wb/kX83B4.
あ…相対的?
という冗談はヨシコさんにまかせるとして、
これにどう感想つけろって言うんだよw
俺は面白いと思ったよ、俺の隣で転がる犬のぬいぐるみが
思うことと比べて相対的に。

No.24 ウェストファリア 1/5 ◆/UzWoCdlY.
舞台はそれなりの都会みたいだけど、
そんなところを走る地下鉄の優先席って
普通、空いてなくない?
そこぐらいかな、気になったのは。
外国の人から見たルールの違いというのは良かった。
830以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:22:09.22 ID:AvczVD5B0
もう一回ぐらいで大丈夫だろ。さる。
831 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:22:27.10 ID:kM337ixy0
No.25 なみだ 1/4 ◆0CH8r0HG.A
オチが読めちゃったのが残念。
あと、最後の方で流れが都合良すぎる。
結局、鬼を怖がらない村になっちゃったしな。
それでもいい話だ。もうちょっと工夫があれば入れたかも。

No.26 アウトローですか? 1/3 ◆czxS/EpN86
変身魔法少女云々はいるかなあ?
それなしで、普通に変態男の話を書いた方が、
個人的には良かったかな。

No.27 その汚く美しき青春 1/5 ◆/7C0zzoEsE
>伊藤由香が退学になるそうだ。〜中略〜彼女は本当に幸せそうな顔をしていた。
しょっぱなここが理解できなかった。だからつまらなく感じてしまったのかもしれない。
子供ができて幸せってことかもしれないけど、現実は笑ってられないんじゃないかね。
それと、男の方はなんで退学の話になってないの?バレてるよね?
というかやっぱりまともな神経している人が、高校生で妊娠ってありえないとしか思えない。
なんというか難しいが、女の子の幸せそうな感じから、現実味が感じられなかった。
実際はどうなんだろう。友達の学校でそんな騒ぎがあったと聞いたが、
あまり幸せそうな話ではなかったような気がする。ひとそれぞれかな。
相手の男の方は、用意されたキャラにぴったりのキャラだった。

No.28 妖精さんのお仕事 1/4 ◆lDzk49E.e2
最後の4行いるかな? 俺の考え付かないところで必要なのかもしれないけど、
常識を知って、ルールがわからなくなったというところで切った方が良いかも。
発想が良いね。面白かった。
832 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:22:48.86 ID:kM337ixy0
No.29 この醜くも美しい世界 1/5 ◆Ms.BlueNHo
ルールの鎖が見えるのは面白い。
天使はどうだろ? そんなに必要ないというか、
もっと日常の中から、発見して欲しかった気がする。
超能力を持った主人公が、非現実の天使に諭されても、いまいち面白みがない。
いつも近くにいる人の、変わった一面からとかなら良かったかも。
最後に生徒会長に立候補するのもどうかと。
ラストのセリフで生徒会長に受かれるとは思えないw

No.30 とある妖精と少年のお話1/5 ◆InwGZIAUcs
No.14の人のところにも書いたけど、良くあるお伽話だなと思った。
最後は、他の似たような悲恋の話と違ってて、ちょっと面白かった。
アルバイトという単語に違和感があった。


総評:後半は良かったとか面白かったとかばっか言ってるな。
これはカオスまで粘った人のレベルが高いのか、俺が疲れて無抵抗で話しを
受け入れているのかどっちだろうか。
全体的にちょっと変わった発想の話が多かったのが面白い。
最初にお題が発表されたときは、平凡な日常を描く話が多いかなと
思ってただけに、意外だった。みんな平凡なルールから解き放たれたいのだろうか。
褒めてるのも、褒めてないのも、「これはすごい!」とか「読めるかクソッ!」
となるような作品はなかった。全体的に佳作ぞろいな感じでした。
まあ、俺はあまりくわしいことはわからないので、
ただの読書好きの男が読んでちょっと思ったことと受け取ってもらえば良い。
ボッコにしてないから、あまり有益な全感じゃなかったかもな。
833 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 03:23:44.95 ID:kM337ixy0
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.20 知恵の果実と楽園の境界 1/4 ◆rmqyubQICI氏

気になった作品:No.12 モンスター 1/5 ◆zsc5U.7zok氏
        No.23 relatively being 1/4 ◆wb/kX83B4.氏
        No.24 ウェストファリア 1/5 ◆/UzWoCdlY.
        No.28 妖精さんのお仕事 1/4 ◆lDzk49E.e2
**********************************************

全感No.2は自分のなんで抜かした
834以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:32:25.95 ID:KlP5inY/O
全館乙
始めは真面目にシリアスに戦闘シーンさえ入れようと思ってた
835以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:33:18.33 ID:WQlkOTCH0
全感と投票乙。
836以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:33:21.79 ID:KlP5inY/O
ちなみにNo.17
837以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:34:14.69 ID:AvczVD5B0
参加してないが全感乙
838以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:36:17.50 ID:LK5xI0Ob0
今回フルボッコされすぎワロタ
全館おつう
839以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:38:28.80 ID:F686tPP30
>>833
全感乙
840以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 03:42:13.20 ID:VAv8QKhrO
キキキ……全感……っ!全感乙……っ!
841以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 04:05:56.35 ID:Fs3Ntq1I0
一言でばっさりと切られたwww
ほんとはやいなー
全感乙でした
842 ◆cwf2GoCJdk :2008/02/04(月) 04:23:43.14 ID:jDnUdPAC0
注意:ただの感想です。

No.01 コドモルール ◆ecJGKb18io
子どもの世界にもルールがあるよという話。ふつうのネタにひねりのない展開とオチ。つまらない。

No.02 ル・クインセグ ◆pxtUOeh2oI
ルールがどこにもなく、タイトルが変。文体が嫌いなこともあり、内容は退屈でつまらない。

No.03 神のいない世界で ◆eYCc7/VuC2
お約束ごとの話。短すぎて、表面だけのネタを配置したようにしかみえない。

No.04 シュガープラント・ルールズ ◆AOGu5v68Us
いわゆる『自分ルール』の話。平凡な人間の日記がおもしろいはずもなく。

No.05 生類憐みの令 ◆ETwWxomLBg
現実のルールの話。大したことのないネタだけ。

No.06 ルール ◆ibD9/neH06
思想的なルールの話。類別するとNo01とおなじなのかな。つまらなくはないけど、うん、なんか惜しい。
たぶんテーマを書き切れていないのだろう。思索が浅い。いまのところは「雰囲気だけ」

No.07 家路 ◆Gv599Z9CwU
普遍的なものの話。くだらない思考の垂れ流し。

No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店 ◆/sLDCv4rTY
共同体の話かと思いきや。テーマが多重的になってるのかな。
批評はほかの人にまかせよう。なかなかおもしろい。

No.09 三秒ルール ◆Bf9IIj31BY
そのまま。ほとんど読み飛ばした。
843 ◆cwf2GoCJdk :2008/02/04(月) 04:24:12.34 ID:jDnUdPAC0
No.10 いわない/友情/忘れたくはないんだ ◆/sLDCv4rTY
種類はNo.04とおなじ。つまらない。

No.11 クロスウォーク ◆p/4uMzQz/M
ルールは守れという話。つまらん。

No.12 モンスター ◆zsc5U.7zok
ルールそのものの話。やりたいことはなんとなくわかるが、書けてない。言いかえるなら、ネタをおもしろくできていない。

No.13 外へ ◆otogi/VR86
共同体の話。つまんないから途中から読み飛ばすことにした。

No.14 定め ◆7BJkZFw08A
世界がちがうとルールもちがう、というような話。つまらなくはないが、退屈。

No.15 キミョウな自分ルール ◆ZetubougQo
種類はNo.04とおなじ。オチ以外はつまらない。

No.16 歌が聞こえる ◆SQvDZ46yqY
お題は? 展開が唐突でわけがわからない。読み込む気にもなれない。

No.17 規則破不 ◆CoNgr1T30M
No.11とおなじタイプか。わけがわからなくてつまらないのでどうしようもない。

No.18 海とビールと傍観者 ◆hemq0QmgO2
ほとんど読み飛ばした。

No.19 取替え子 ◆VZpO0svMyk
つまらない。
844 ◆cwf2GoCJdk :2008/02/04(月) 04:24:39.40 ID:jDnUdPAC0
No.20 知恵の果実と楽園の境界 ◆rmqyubQICI
ルールに反抗する話。悪くないが、結局二極的になったのはどうかと思う。

No.21 コルネオのルール ◆LBPyCcG946
ギャンブルの話。スーツのポケットに拳銃入れて飛行機に乗れるわけないだろう。そこでリアリティがなくなってるからオチもだめ。

No.22 アナザー・ワールド ◆Sound.UlVY
決められたルールを守れという話。タイプはNo.11とおなじだろう。
ネタの提示からが退屈。オチもつまらん。幽白でみたし、予想の範囲内だし。

No.23 relatively being ◆wb/kX83B4.
わけがわからない。理解する気にもなれない。

No.24 ウェストファリア ◆/UzWoCdlY.
視点が変わったところで読む気をなくした。

No.25 なみだ ◆0CH8r0HG.A
共同体の話。なかなかおもしろい。

No.26 アウトローですか? ◆czxS/EpN86
突然のロリコン宣言に笑った。わかりやすくて好きだよ。

No.27 その汚く美しき青春 ◆/7C0zzoEsE
粗はあるけど悪くない。後半の展開がやや気に入らない。

No.28 妖精さんのお仕事 ◆lDzk49E.e2
あたまの悪そうな語り口は読んでていらいらする。テーマ的にはNo.20に似てるのかな。てかラストが似てる。
ただ、悪いがほとんど読み飛ばした。
845 ◆cwf2GoCJdk :2008/02/04(月) 04:24:58.25 ID:jDnUdPAC0
No.29 この醜くも美しい世界 ◆Ms.BlueNHo
ルールへの反抗。ネタがつまらないほうにつまらないほうに。

No.30 とある妖精と少年のお話 ◆InwGZIAUcs
ファンタジー。冒頭は非常におもしろい。なんかもったいない、と思った。おもしろいのに、設定がすごくありきたりというかなんというか。

総感
話を考えましょう。以上。
846 ◆cwf2GoCJdk :2008/02/04(月) 04:25:30.21 ID:jDnUdPAC0
乗っかって勢いで投下
847 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 04:37:48.46 ID:kM337ixy0
No.2の作者だが
ルールは掟ということで使用した。
テーマとしてはほとんど使ってないけどな
848以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 04:39:09.43 ID:URku6qJE0
849以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 04:39:46.46 ID:F686tPP30
>>845


やりたいことをやりきれないってきついよなぁ…。
結局は腕不足ってことなんだが。
面白い話が書きたい…切に。
850以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 04:46:09.00 ID:Z0gEHXomO
前科Notes(全感乙)
851以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 04:56:21.28 ID:pvT/JU1m0
>>842
なんつーか、感想と暴言は違うんだぜ? と言いたい
852以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 04:59:36.94 ID:jDnUdPAC0
暴言のつもりはないんだけどなー
暴言だとしても、それすら感想だとも思うけどね
853以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:05:50.07 ID:Z0gEHXomO
>>851
読み飛ばされたけどそれはそれで参考になる(どんな文章なら飛ばされないんだろ、とか)し、
わざわざ時間を割いて読んで感想まで書いてくれてるのはありがたい
って思うのはダメかね?
854以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:06:05.78 ID:MpPMgpeHO
まとめの人も、運営の人も、全巻の人もみんな乙!
855以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:07:32.86 ID:kM337ixy0
まあ、それすらも感想だと言う考えは個人の考えだから良いけど。
せめて、どこがダメで、こうした方が良いとかアドバイスみたいな感じ
じゃないとあまりためにはならないな

つまらない、読み飛ばしたしか書いてないんじゃ
この感想読んでもしょうがないしw
俺は乙とは言わないぜw
856以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:07:47.67 ID:ExYWDDvQ0
全館乙!

面白くない、つまらない というのも感想だろうよ
ただ、どこかどうつまらなくて、どうすれば面白くなるのか がないと
このスレの意味が薄くなるんでない?
857以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:07:58.95 ID:AvczVD5B0
参加したのに他人のを読まないヤツもいる昨今だ。

”参 加 し て な い の に”←ここ強調!!
全部を読んだってだけでも偉いし、さらに各々に短評書いたのはスゲェよ。
じゃお前やれんのか?ってことさ。

まー文才もない素人が、ホンの数日中には数時間で書き上げたものだろ?
つまらんのは言うまでもないわけで、当たり前のことを言われたところで腹はたたんだろ。
858以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:08:45.39 ID:RICpE/WX0
確かに感想と暴言は違う
そして第三者からいわせてもらうと、ID:jDnUdPAC0乙

文責酉も出してるし、後はもう作者がどう受け取るかだけの問題だから、
余人が差し挟むところではないような
859以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:10:12.07 ID:jDnUdPAC0
>>855
だから「批評」じゃなく「感想」とわざわざ明記したわけだが
作者のためになにか書こうなんて、少なくとも今回はまったく思ってないよ
860以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:10:45.64 ID:NeHEQk1P0
読まなくてもつまらないってかけるけどね
861以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:11:54.87 ID:AvczVD5B0
>>860
うぇうぇうぇその発想は無かったwww
862以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:11:55.15 ID:F686tPP30
うん、この議論になると堂々巡りになるのは分かってるから、もうやめな。

感想を書く→読者の権利
感想の受け取り方を選ぶ→作者の権利

間違っても、オブラートに包む義務なんて存在しない。


というわけでお題下さい。
863以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:12:33.79 ID:AvczVD5B0
>>862
人情
864 ◆pxtUOeh2oI :2008/02/04(月) 05:12:34.66 ID:kM337ixy0
>>862
暴言?
865以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:14:24.30 ID:F686tPP30
>>863>>864
把握。
通常作品とか書いたことない、実はw
866以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:15:51.04 ID:VAv8QKhrO
こんな時間にも関わらずみんな元気だなぁ!
867以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:32:30.95 ID:LK5xI0Ob0
オブラートっていうか、言い方を考えるくらいの義務はあると思うぞ
無意味な自虐性とストイックさの方向がおかしい
暴言がここでいう感想だとはとても思えんよ
868以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:47:35.66 ID:9U/epuwbO
>>558
俺が出したお題を書いてくれたようで、ありがとうw
せっかくなんで、感想おば。
うん、読みやすい。
ただ、雪景色とか田舎の風景って、端的に言えば美しいものであると思うんだ。
君のこの書き方は少し淡々としすぎてると思う。
これでは、降ってくる粉雪であるとか、山に囲まれた村っていうシチュエーションが死んでしまう。
加えて、この話の核である女の子の描写が弱い。
ただ漠然と、垢抜けた子ってだけでは読者に伝わり辛いよ。
そして最後に、これは個人的な好みだけど、この流れなら再会させてあげてくれw
869以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 05:54:25.71 ID:m7jv4QsF0
権利と義務ってのは矛盾するもんなんだよ。
手には感想を書く権利があり、書き手には感想を選択する権利がある。
読み手はきちんと読んだ上で感想を書く義務があり、書き手には感想を受け止める義務がある。
つまりはそういうことを、どっちが正しいかで皆は議論しているんだろ?
一生答えなんて出ないさwww
でたらすげえよ、テンプレに乗せたらいいwww
870以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 06:57:17.00 ID:m7jv4QsF0
だれか保守しろよ!
人に頼ってばっかじゃダメなんだぜ?
871以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 06:57:39.79 ID:ejEakGWQ0
872以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 07:00:56.91 ID:/ybha4OJO
雪の降った後の朝陽はいつも以上に澄んでみえるな
おまいらおはよう
873以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 07:02:05.69 ID:m7jv4QsF0
人いるのかよ!?
874 ◆VZpO0svMyk :2008/02/04(月) 07:23:19.69 ID:WoN4eEBa0
全感乙ですー
>>827で質問があったので。
No.19 取替え子を書いたものですが、テーマは「ルールからの解放」で
厳格な学校から他の世界へ逃げ出す話として書きました。
目的は「え?これはどういうこと」不思議な雰囲気を
875 ◆VZpO0svMyk :2008/02/04(月) 07:25:06.36 ID:WoN4eEBa0
途中で書き込んでしまった…
目的は「え?これはどういうこと?」と二転三転する世界観で思わせたかったのと
不思議な雰囲気を楽しんでもらいたかった。
876品評会でのちょっとした裏話(0/2)お題・保守 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/04(月) 07:37:35.61 ID:m7jv4QsF0
暇だから書いてみた。いや、貰ったお題が上手く出来なくてね、
ついやっちゃったんだ。

※この物語は実在の俺、その他俺とは何の関係もないよ、ホントに。
 別に品評会時間外とかでもないです、保守です。ゴメン。
877品評会でのちょっとした裏話(1/2)お題・保守 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/04(月) 07:38:21.91 ID:m7jv4QsF0
「保守田(ほもた)てめえ死ねやコラァー!俺の鉄拳×3くらえそして死ねぇー!!」
「え、ちょ、文才夫(ぶさお)……ぐはぁっ!? ごふぉ!? ぷばっ!?」
「てめえ、なんで品評会参加しねえんだよぉー!」
「はぐっ!? おふっ!? んふっく!?」
「てめえが参加しねえから……!」
「ま、待て……×3って言ったじゃなぃ……」
「今回の品評会フルボッコできる相手が居ねえじゃねえかよぉぉおおお!!」
「ぶばぁがっっはぁ……!!」
 7comboHit! K.O! 
 保守田は力尽きた……

「……へんじがない ただの しかばねの ようだ」
「生きとるわボケェ!!」
「おお ほもたよ しんでしまうとは なさけない!」
「無視かよ!?」
 思えば俺は何でコイツに介抱されているんだっけ……ああそうだ、確か妙な言いがかりを付け
られて、そんでもって空中7コンボ決められて蛍光灯に頭から突っ込んだんだっけか、自宅で。
うん、よく生きてるな、偉いぞ俺! あとよく今までコイツの友達やってきたな、我慢するなよ
俺! そろそろ殺してもいい頃だ!
「で、何の用? さっさと帰って。録画しといた絶○先生見なきゃいけないから」
 テレビの電源を入れてテープをセットする。ゴメンねぇ、古くってさぁ!! 金がねえんだよ!
「んなもんいつでも見れるじゃんかよぉ〜。友達を無下に追い返すなよ〜」
「いや、俺今日限りでお前の友達やめるし。つーかもうやめたし」
「先週の品評会の話なんだけどさ、お前参加しなかったじゃん? なんでさ?」
 なんでさ、何でお前は人の話を聞かないのさ。なんでいつも唐突に脈絡の無い話題を振るのさ?
こっちの身にもなれ、正直辛いんだぞ……
「『ルール』だったっけ? お前得意そうじゃん、そういう広義のテーマ。どうとでもなりそう
だしさ」
「あ……クソッ、また動かねえよこのビデオデッキ!」
「……お前って、ホント人の話きかねえのな……」
878品評会でのちょっとした裏話(2/2)お題・保守 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/04(月) 07:38:57.89 ID:m7jv4QsF0
 何かもうグダグダな感じで会話が進んでますね。いいや、さっさとアニメ見て寝よう。ルール?
そんなの知ったこっちゃねえ! 何がルールだ……何が……
「クソッ……」
「保守田……お前、泣いてんのか……?」
「泣いてねえよ……ぐす……」
「なんだ、勘違いか。紛らわしい奴だなおまえ」
「泣いてるよ! なんだよ気付けよこのスカポンタン! おまえホントに俺の友達!?」
 こいつは天然の一言では片付けられない、人をムカつかせる何かを持っている。
「いや、俺お前に友達じゃないって言われたし」
 殺してしまおうかホントに。心の中で生き続けてもらおうか。
「まったく……で、何で泣いてるんだ?」
「……聞きたい?」
「別に」
「……でも言うわ。聞いたらとっとと帰って」
「それはどうかな?」
「……」
 俺は話した、品評会で俺の頭に舞い降りた作品の概要を。文才夫は帰っていった。何か、とて
も哀れな、それでいて「おまえ、それ投下したら勇者だったわ」と、少しばかり残念な表情を浮
かべながら駅に向った。行き先は恐らく秋葉原だろう。なんとなくあいつが買うものが予想でき
た。あれだよな、10008歳はやりすぎだよな。正直ありえない。天使とか妖精でもありえない。
つーか無理があるって!
 ルールってお題を忠実に守ったら、まったく新しいカオスなスポーツが出来てしまったのは内
緒だ。実話だ。これが俺の限界なんだ。書き終えて推敲して、全部消した。脳内からも一切削除
した、もう知らない。
 対象年齢12歳以下、女子専用のスポーツで、スク水少女達が身につけた尻尾とネコミミを奪い
合う水中騎馬戦なんて……制限時間を越えたら徐々に水着が溶けていくなんてベタな設定、俺は
考えていない!! これはただの保守ついでの作品で、現実の俺の思考とは一切関係ない!! 
やめろ! そんな目で俺を見るなぁぁあぁぁぁ!!
879品評会でのちょっとした裏話(2/2)お題・保守 ◆c3VBi.yFnU :2008/02/04(月) 07:39:37.44 ID:m7jv4QsF0
ちょっとコンビニ逝ってくる
880以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 07:54:57.97 ID:wriYIQbD0
逝ってらっしゃい保守
881以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:14:01.48 ID:Z0gEHXomO
>>879
なぜ品評会に参加しなかったんだバカ野郎!
ああもう参加してたら絶対投票したね俺は間違いないね
882 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:17:34.41 ID:ejEakGWQ0
さて全感想いっくよー
感想返し嬉しいなーけれど批判は悲しいなーそんな都合の良い僕なんて〜ららら〜
883 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:17:58.97 ID:ejEakGWQ0
マエガキ
今回書いたけど参加しなかった。でもまあ、愚痴くらい言わせてくださいよ。イヤなら読み飛ばせコノヤロウ
僕は読んだばかりの本の影響をスゴーく受けるんですね。今回書いたやつもそう。文体モロパクリw
ところが、「転」の部分になるとてんでダメで、いやあ僕の力のなさがよく分かる。トトロでいやあメイの迷子が描けない。
ラピュタでいやあ、かのムスカ大佐の名言も言わせられない。困った、こりゃあ困った。内容がないよう。って事で全感想
敬称略……ってもうあるじゃん。(いつも思うのですが、何で酉に氏をつけるんだろう?)

No.01 コドモルール 0/5 ◇ecJGKb18iosi氏
善と悪、そして主人公(と佐藤)の立場は中間地点。ただ、中間であるがゆえ、主人公の意思は無いに等しいのよね。要するに
説明的。でも三人称にしたら全く味がなくなるしなあ(描き方しだいか?)地の文にもっと口語を入れればよかったかも。
ストーリーはあっけらかんとして特に感慨なし。

No.02 ル・クインセグ 0/5 ◇pxtUOeh2oI氏
スピーディーな描写の割りに、文がたるいなあ。それとヒーローならヒーローらしく、もっとかっこよく描いて欲しい。
そんな事も、5レスいっぱいに使ってる人に言う事ではないか?でもその描写がキモなんだからなあ。ストーリーは良くも悪くも
勧善懲悪としか言えず。
いやあ、やはり役に立たないですよねぇ。こんな感想。どうも済みません。

No.03 神のいない世界で 0/2 ◇eYCc7/VuC2氏
これはなあ、世界か、人物の関係か、どっちを描いてるのだろう。世界にとって重要な二人を個人的に描いているのだけれど、
なーんかどっちも中途半端な感じ。「世界のルール」ねえ……。それをもっと掘り下げたらよかったかも。わからん。

No.04 シュガープラント・ルールズ 0/5 ◇AOGu5v68Us氏
「こんな授業になんの意味があるのだろう。」
……いやあ、それを言わせちゃお終いだろう。小説なんてそんな身も蓋もない事をギャグ以外で言ったらチンケになるだけじゃ。
以下それがずっと続き、いやそんな訳なかろう、一気に上がるんだろうなあと思って読んでみると、あーそういうオチ?
前半との整合性が取れてない気が。別になくていいけど、じゃあ前半のアレはなんだったの。
関係ないけど、身も蓋もない事書いてるのに面白いのが舞城王太郎だと思うのです。舞城はわからん。ホント。
884 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:18:17.15 ID:ejEakGWQ0
No.05 生類憐みの令 0/3 ◇ETwWxomLBg氏
単なる寓話なのが残念。何故ダメかと言うと、(これは僕個人の話ですよ?)僕は小説を読んで何かを感じたいから読んでいるのです。
この小説からは特に思うことも無く、ただ一文、「犬が町を牛耳った」と書いてあるのを読むのとさほど変わりないように思うのです。
そこにユーモアなり、残酷さなりを入れて、「犬が町を牛耳った。だから誰がどうこうした、思った、ひっくり返った」と続くと
良いんじゃないでしょうかね。エラソーな話ですが。

No.06 ルール 0/5 ◇ibD9/neH06氏
前半のだるーい文は良いんだけど、雰囲気出てて。けど(以下略)からおふざけに行っちゃって、以下「ルール」についての見解……
とホント滅茶苦茶に思いました。一レス目は良かった。けどその後が面白くない。

No.07 家路 0/4 ◇Gv599Z9CwU氏
なんとも感傷的な出だし。そして終わるまでずっと感傷的で、つまりこの小説世界が狭いのね。
僕個人でいや、そういうのはアリなんだけど、これは行きすぎ。客観的な視線が全く無いと言うのは、どうなのだろう。せっかく友人
という他人がいるのにそれすらも自分の心の一部として描いているのはなんとも惜しい感じ。
精神世界と言ったらエヴァよね。あれの最終回みたいな?「わかるけど、わかんない」あんな感じ。ああ、僕が言っている事も
よくわかんないな。つまりだね、カヲル殺すとこくらいがギリギリなんだよ。

No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店 0/4 ◇/sLDCv4rTY氏
おおー絶妙な描き方をしている。これは上手い。何にも明かされていない物語。そしてテーマすらも疑問で終わるか。
描写と謎のバランスが良い。ただ贅沢いうなら余韻に欠ける。仕方ないか?

No.09 三秒ルール 0/2 ◇Bf9IIj31BY氏
関係ないですけど三秒ルールって科学的にもアリらしいですね。うろおぼえですけど。
なーんかテンポがグダグダな感。それは会話主体なのに地の文がいちいち挟まるからかな?
いや、会話文だけにしろって訳じゃないですけど。あとこの指摘も確信ないですけど。参考程度に流してください。
内容については特になし。それは萌えも微笑ましくも感じなかったと言う事ね。
885 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:18:31.19 ID:ejEakGWQ0
No.10 いわない/友情/忘れたくはないんだ 0/4 ◇/sLDCv4rTY氏
これもそう。ナンバー7と同じ。前半はまあそうでもないけど、文体のせいで。
っていうか、俺の視野が狭いだけで、そんなのもアリなんだろうか。「感傷的なのも、かっこいい」んだろうか。
面白くない理由は他にもあるのだろうか。わからん。でも実際他人さえも主人公一人の心情に巻き込んでいてドラマが無いしなあ。

こっから以下独りよがりタイム。イヤなら見ないで。
まず普通に考えて他人の行動や、風景、自分の行動すらも「すべてに」何かを思う事はありえないんですよ。けどこの作品はどうして
そうなっているかっていうと、大事な部分しか拾っていないからじゃないか?結果主人公の思うことがモロに出て、それが世界を
狭めているのではないか?大切にしなきゃならないのは、「無駄ではないけど些細な事」なんじゃないだろうか?わからん。さっぱりわからん。
例えば僕は筒井康隆の「笑うな」という短編集が好きで、これはほとんどナンセンスギャグなのだけれど、中には素晴らしい余韻を残すような作品も
ある。僕がとりわけ好きなのは「座敷ぼっこ」だ。そしてこの短編集ではないが、他にも犬の行動をなぞっているだけなのに感動出来る「犬の町」と
いう作品もある。それらは、何処が良いか?と訊かれると僕は困ってしまうのだ。この作品の何が良いかなんてはっきり言えない。
けれど何故かいいのだ。それは多分、僕の想像力がかきたてられているからだと思う。もちろん何処が良いか、答えられる作品も良い。けど僕にとって
「何故か」方が魅力があるのだ。何故か?そんなこと分からない。「座敷ぼっこ」だって十分感傷的なのに……。
今思ったことだけれど、この作品は「友情」という普遍的なものを扱っているからだろうか。身近な例を出してみると、例えば魔法の回の優勝作「スノウ」だ。
あれも十分感傷的だ。(書き方はそうでもないけど描き方はそうだと思う。そしてこれも大事な事だと思う。)
あれは「不思議なもの」を通じて描いていた。先ほど挙げた「座敷ぼっこ」も妖怪的な伝説みたいな不思議があった。「笑うな」収録の「会いたい」
も僕は好きで、それは宗教的精神世界を扱っていた。
「愛」「友情」「別れの悲しみ」「生まれる喜び」等の普遍的なものを、直接描くんでは無くて、普遍的じゃないもの、例えばちょっとした不思議や
謎、あるいは不安感、客観的に見た人との関わり等を通して描くといいのだろうか?(今回の品評会で言うと8、18、19か。8はオカルトで終わってるっぽいが)
とするとこの作品では「ウソ」だ。しかしこの「ウソ」さえも感傷的に扱いすぎているのか?それとも最後の泣く行動がすでにダメなのか?
恐らくどっちもだろう。
独りよがりタイム終了。ごめんなさい、訳の分からんこと言って。
だいたいこれは方法論であって、「何故か」という本質的な事が一切ないのであまりアテにしないでね。
886 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:18:44.63 ID:ejEakGWQ0
No.11 クロスウォーク 0/5 ◇p/4uMzQz/M氏
嫌な世の中だ!……置いといて。特に思う事は無いなあ。かわいいとも思えないし。
悪い事はないけど、特徴がないのが惜しい。

No.12 モンスター 0/5 ◇zsc5U.7zok氏
多分作者は発想は思いついたがいいがオチがどうしても無理だったんだろうな。発想の一人勝ちだ。

No.13 外へ 0/5 ◇otogi/VR86氏
あーそういうオチ?そういうオチかー。なるほど単なる童話で終わらなかったけども、ダークに堕ちるのが唐突過ぎる感が。
こっちも「えっ」となって、終わった後味の悪さは特に感じなかった。うーん、よく出来てるとは思うのだけれど。

No.14 定め 0/5 ◇7BJkZFw08A氏
さあさあこれもどんな堕とし方をしてくれるかと期待したが普通の悲劇で終わってしまってがっくり。
でもまあ、引き込まれた事は引き込まれたんで○。良くも悪くもまとまり過ぎ。

No.15 キミョウな自分ルール 0/4 ◇ZetubougQo氏
良い世の中じゃないか!……これも置いといて。これもオチに期待したけどアッとくるオチは来ず。
こういうのはオチで唸らせてなんぼじゃないのかなあ。

No.16 歌が聞こえる 0/5 ◇SQvDZ46yqY氏
うーん……無機質な〆で余韻を残そうとしたのは分かるけど……。
うーん、うーん、どういえばいいか……まず序盤で置いてけぼりになったな。
で、最後の無機質さより、4レス目「それでなくとももう時間は残っていない。私は最初に告げた。死んだことに彼女はまだ気づいていない。」
の無機質さの方が好きだな。
887 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:18:57.69 ID:ejEakGWQ0
No.17 規則破不 0/4 ◇CoNgr1T30M氏
敢えて使ったのか知らんけど「プー太郎」という表現に何故か吹いた。ニートじゃあきませんのん。まあどうでもいいですわね。
まあこれはナンセンスな話。けどつまらない。無茶をすれば笑えるという訳ではないのね。どうせ無茶をするなら筒井レベルまで無茶苦茶にしてください。
なんか中途半端。最後綺麗に〆ちゃってるし。

No.18 海とビールと傍観者 0/4 ◇hemq0QmgO2氏
そう、こういうリズムが良いんだよね。分かりやすくて上手。特に面白い訳じゃないけど、僕の理想に近いから票候補。
いや、やっぱ撤回。面白いから票入れちゃう。

No.19 取替え子 0/4 ◇VZpO0svMyk氏
こーれはまたあなどれない作品が。僕自身の想像力がまるで及んでないのだけれど、「それっぽい」からとなんだかんだ言うと
「何言ってんだおめえ」と返されそうになるというねwこれは僕潰しの作品だなあ。え?自惚れだって?ハッハッハ。
八木のいる学校(!?)は絶望の世界なのに、何故かある種の心地良さがあるのだけれども。それは八木のあきらめから来ているんだろうね。
で、ヤーグと八木は三回替わった。どっちが本当の世界か?おそらくどっちもだろう。自由か、学校という縛られた社会か。社会には服従
しなければならないけども、それでもやっぱり打ちひしがれた女の子の話というのは深読みしすぎかな。なんとなく学校はルール(法律)の
メタファっぽいし。仮にそうだとすると「取替え子」というのは思春期の、迷いの中にいる子供達か。
3レス目「小さい人たち」がどうしてもくみ取れないけど。
いずれにせよ。がんじがらめだね。社会から追い出された(逃げ出した)んだから。救いが無い。あるいは救いを求めたのか。彼女はもう涙の砂を
集めなくて済んだのか。あるいは戻らなくちゃならんのか。悲惨なお話。
さて皆さんとか作者さんがここらで「何言ってんだおめえ」と言いそうなので、これにて失礼。全く、とんでもない作品を書くねえ。
自分に自信がないから投票もできねえ。私も瓶を捨てたいよ、全く。
まあホントのこと言うと、想像したからといって面白いとは限らない。満たされるのは、僕の自己満足だけ。
888 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:19:48.71 ID:ejEakGWQ0
No.20 知恵の果実と楽園の境界 0/4 ◇rmqyubQICI民
ナンバー19のあとでこれかw何かの運命を感じなくもない……もない。全く違うタイプだけれど。
これも戒めの話にしかなってないのが残念。少年の成長にしたって、想像できる余地がないからなんともかんとも。山中の描写は良かった。

No.21 コルネオのルール 0/5 ◇LBPyCcG946氏
至極単純で、分かりやすくオチもついた。好きではないと言えばそれまでだが、良く出来てるし……。まああらゆるツッコミはナンセンスだよね。
深く読み込んでないから、論理の「穴」があるかもわからないし……。もう一押し、かなあ?

No.22 アナザー・ワールド 0/5 ◇Sound.UlVY氏
くだんねえオチw言うことは特になし。

No.23 relatively being 0/2 ◇wb/kX83B4.氏
相対的に言って、面白くない。何故かというと、分かりずらいから。

No.24 ウェストファリア 0/5 ◇/UzWoCdlY.氏
文化の……というより価値観の違いによる問題提議(!?)ふーむ……。
とくに心に残った場面無し。

No.25 なみだ 0/4 ◇0CH8r0HG.A氏
ああ、そういう話ね。微笑ましい話。まあ、良く出来た童話。それだけ。

No.26 アウトローですか? 0/3 ◇czxS/EpN86氏
ああ……うん。まあ、好きな人は好きなんじゃない?流し読みで充分。こういうのに何言っても無駄じゃないかな。

No.27 その汚く美しき青春 0/5 ◇/7C0zzoEsE氏
アホの子だなあ……と微笑ましく読んでると、「彼女は死んだ」ええっ冗談だろう?いきなりで笑った。
これも感傷的に描きすぎてる感があります。金八先生だってアホを通じて絆を描いてると思うのです。
女王の教室は過激な教師で子供の成長(現代の教育問題)を描き。
これはアホを通じてなにを描いた?もしくは妊娠を通じてアホを描いたのか。何がしたいのか分からなかった。
889 ◆ZRkX.i5zow :2008/02/04(月) 08:20:14.44 ID:ejEakGWQ0
No.28 妖精さんのお仕事 0/4 ◇lDzk49E.e2氏
よくわからん。

No.29 この醜くも美しい世界 0/5 ◇Ms.BlueNHo氏
うーん、鎖ねぇ……。俺から鎖を取ったら馬鹿が残るな。人間悪どいくらいが丁度良いや。
この少年はやがて真の絶望を知ることになるのだろう、フハハハハ。

No.30 とある妖精と少年のお話 0/5 ◇InwGZIAUcs氏
うーむなんというご都合主義。悪いとは言わないけど。
オチもなんだか中途半端。

アトガキ
妖精とか天使とか多すぎ!
……さて皆さんお疲れさまでした。ナンバー10への感想で、さて自分の作品の参考になるやもしれんと過去作を
見直そうとしても酷すぎて無理だったです。おのれにっくき品評会……もとい己の過去のふがいなさ。
最近理想ばかり高くて自分で自分を恥じております。
さて投票ですが、18が一番安定してたので。
ナンバー19は、僕の無理やり深読みで自己満足したので勝手に関心票。8はまあ、良い余韻だったので。
関心候補に14、21。これらはもう一押し。

******************【投票用紙】******************
【投票】:No.18 海とビールと傍観者◇hemq0QmgO2氏

気になった作品:
No.08 毀れた乳母車が並ぶ自転車店◇/sLDCv4rTY氏
No.19 取替え子◇VZpO0svMyk氏
**********************************************
890以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:21:06.77 ID:ejEakGWQ0
あと皆さんいろいろありがとうね、ではでは
891以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:25:04.49 ID:VAv8QKhrO
全感早いな
家出る上げ
892以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:25:41.80 ID:ExYWDDvQ0
全館乙
893以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:27:04.91 ID:m7jv4QsF0
全感乙!
894以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:29:02.96 ID:wriYIQbD0
全感乙ー。俺特徴無いのか……だめだなぁ
895以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:34:52.69 ID:n288Rib1O
お題ちょうだい
896以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:37:30.67 ID:VAv8QKhrO
船出
897以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 08:39:13.32 ID:n288Rib1O
把握
898 ◆Cj7Rj1d.D6 :2008/02/04(月) 09:00:20.34 ID:dskYF6Jq0
>>589主人公が鬼だといつわかったかってこと?いや鬼ってのは明らかにされるまで俺はわからんかったよ

さて、残りの感想やっつけてくるか
899以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 09:09:52.02 ID:KU/dtCyK0
ちょっと通常作品書き上げたら11レスぐらいに長くなったんだけど、うpして良いもんの?
900以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 09:33:52.98 ID:O9XPwx3x0
いいけど
面白くないと最後まで読んでもらえないかも
901以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 09:38:28.00 ID:zjHkNbYC0
誰かが俺に御題をくれるとくれないとか
902以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 09:40:45.30 ID:NeHEQk1P0
903以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 09:43:21.30 ID:zjHkNbYC0
うむ アリガト アリガト
904以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 10:12:42.67 ID:XS/KI4+4O
お題くれよ
905以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 10:16:22.42 ID:zjHkNbYC0
黒豹
906以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 10:19:06.67 ID:XS/KI4+4O
>>905
なんかカコイイお題だな
ありがと
907以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 10:36:59.87 ID:KlP5inY/O
俺にもお題くれよ
908以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 10:44:29.97 ID:9mJxQFOT0
パチンコ
909以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 10:58:35.90 ID:hP5DliGx0
>>907
仏様
910以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 11:04:27.07 ID:ItZuDT8L0
ご都合主義ばんざーーーーーい!!
911以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 11:13:31.94 ID:WAdBq3hT0
皆全感早いね
912以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/02/04(月) 11:19:25.78 ID:Y7AMvLEz0
皆様、全館乙です。
自分の表現力の無さに凹みながらそれをばねにしようと思う。
お題求む。
913以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
>>912
トカゲの尻尾