yンレッドの心 玉置浩二

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736以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
蒸蟲 04_『かげろう』から『時にまかせて』までの間に kagero
『かげろう』が、まるで何処か、別の部屋で鳴っているかのように、耳に小さく届く。
不意打ちを喰って慌てる私を、少女は見逃さなかった。少し悪戯っぽく頬笑みながら、小さな舌先でちろりと、私の首筋を舐める。
湯上がりみたいに頬を染めて、この前のように健気に、それでいて、より大胆に。
あなたのほしい物なんて、私にはすぐわかると云わんばかりに・・・
「ちょっと・・・しょっぱい、かなぁ・・・」
そう云ってはにかむ彼女は、以前よりも幾分大人びて、美しく見えた・・・うららかな日の、かげろうのように。

彼女に対する堪らない想いを、抑えようとすればする程、それを少女に見透かされているような気分になる。
やはり蝶は変わってしまった、私の手によって。絡めとられ、捕らえられているのは多分、私の方なのだ。
「・・・シャワー、浴びよっか?」
まるで、精通したばかりの少年のような、間の抜けた、私のうわずった声が、妙に響く。
昂りを抑えきれていないのが分かって、我ながら、さすがに嫌になる。
「ん・・・でも、叔父さんの汗の匂い、嫌じゃない、よ?・・・あ、でも、えっとぉ・・・やっぱ、浴びよッ、かなぁ?」
俯き、さっきよりも頬を赤らめて、少しだけ困っている素振り・・・姪の、少女らしい初々しさは、何も変わっていない。
その様子に、自然と笑みがもれて、それとともに、少しだけ冷静さを取り戻せた。
昂りを抑えられないのなら、彼女も昂らせてしまえばいい、至極簡単なことだった。
少女の首筋に浮いた汗の雫を舐めとると、甘酸っぱい、若い匂いが舌先にひろがる。
「・・・浴びなくても、いい?」
二つに纏められていた、ひらひらの赤毛を、白いリボンから解放してやる。胸元の綺麗な赤いリボンも、上手に解いてあげよう。
「・・・叔父さんが、嫌じゃない、なら・・・いいや、ん・・・ッ」
シャツの上から、小さな胸の膨らみを撫でると、彼女の肩から力が抜けていくのが分かる。
今、聴こえてくるのは『時にまかせて』
「・・・やぁッ、ん・・・や、やっぱ・・・恥ずかしぃ・・・くすぐったい・・・」

この可憐で、羽化したばかりの幼い蝶を、ピンで額縁に止めようなどとは、思ってはいない。
時がくれば、私の元を飛び去るのだろうし、それで良いと思っている。
ただ今だけは、この狭い虫かごの中で静かに遊ばせておくのも、良いのではないか・・・ずる賢い私は、そんなことも考えている。

二宮ひかる[2006.05.18]_乱れる frenzy[397F 51.8M]+3F