( ^ω^)たちは柔の道で超えるようです

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1 ◆I40z/j1jTU
この小説は花束さんにまとめられています。
ありがとうございます。

ttp://bouquet.u-abel.net/judo/mokuji.html


では、予定時刻より早いですが投下します。
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 22:56:28.14 ID:eAKExUlO0
3 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 22:56:39.99 ID:kpI+WiRH0


      赤、VIP高校                    白、ラウンジ高校

先鋒   ドクオ    ○(一本勝ち:背負い投げ)●  モララー
次鋒   ギコ                         弟者
中堅   ジョルジュ                      クックル
副将   ブーン                        プギャー
大将   ショボン                       兄者



            〜階級〜


〜60キロ級  ドクオ(先鋒、VIP高校)、弟者(次鋒、ラウンジ高校)

〜66キロ級  ギコ(次鋒、VIP高校)

〜73キロ級  ジョルジュ(中堅、VIP高校)、モララー(先鋒、ラウンジ高校)

〜81キロ級  クックル(中堅、ラウンジ高校)

〜90キロ級  プギャー(副将、ラウンジ高校)

〜100キロ級  ブーン(副将、VIP高校)

〜100キロ超級  ショボン(大将、VIP高校)、兄者(大将、ラウンジ高校)

4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 22:56:43.30 ID:+HY5F0VeO
待ってました!
5 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 22:58:43.21 ID:kpI+WiRH0

柔道のルールのついて


一本 柔道において、一本となるとその場で勝利となる。
    1:投げ技で相手がきれいな形で背中から地面に落ちた時。
    (うつぶせの状態に相手を倒しても、無効)
    2:30秒押さえ込んだ時。
    3:技ありを2回取った時。

技あり 1:投げ技で、もう少しで「一本」となるような効果があったとき。
     (投げ方が不完全だと一本にはならない)
     2:25秒以上、30秒未満押さえ込んだとき。

     *「技あり」は2回とると「一本」となる。

有効 1:投げ技で、もう少しで「技あり」となるような効果があったとき。
    2:20秒以上、25秒未満おさえこんだとき。

    *有効を何度重ねても一本、もしくは技ありにはなりません。判定で有利になるだけです。

効果 もう少しで有効となるような場面があった場合、効果となる。
    10秒押え込んでも効果となるが、いくら効果を取っても、有効にはならない。判定で有利になるだけです。

かけ逃げ 柔道はずっと逃げてばかりいると反則を取られるので、
       判定上で優勢勝ちや引き分けを狙うため返し技をされない程度に浅くせこく技をかけるふりをする事。
       あまり露骨だと反則取られる場合もある。

6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:00:16.84 ID:Atuprb/w0
丁度一年前はバトロワ書いてたんだよな
そう考えると成長ってのは確かにあるもんだ
7 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:00:32.45 ID:kpI+WiRH0

誰よりも、強いと思っていた。


幼いころから、自分の邪魔になる者には暴力を振るった。
幼いころから、自分に歯向かうものにはもう二度と歯向かわぬようボッコボコにした。

気づけば、誰もが自分を恐れていた。気づけば、誰もが周りにいなかった。
昔から孤独であった。でも、自分より弱い者と一緒にいたいたくなかった。
自分より強い者は、いないと思っていた。



その考えが間違っていたことに気づいたのは、中学生になってからであった。

もはや俺のことを知らないは奴は校内にはいなく、廊下を歩けば誰もが道をどいた。
しかしそいつは、俺に道を譲らなかった。


(,,゚Д゚)「おい、お前いい度胸してるなぁ……」


いつもの調子で、ドスの効いた声を出す。それでも、そいつはどかない。
腹が立った俺は、有無を関わらず拳を振るおうとした。

でも、拳はそいつにはあたらなかった。目の前の世界が反転し、背中に衝撃が走る。
最初は、何をされたかわからなかった。見上げると、そいつは俺を見下していた。
他人から見下されたのは、初めてのことだった。

8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:01:42.37 ID:+HY5F0VeO
支援
9 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:03:08.92 ID:kpI+WiRH0
そして、そいつは何も言わずに歩いていく。俺なんて眼中にないといったように。
それが初めて他人に負けた、苦い思い出だ。

喧嘩では勝つことができなかった、柔道という武道。
ならば、こんどは俺が柔道という土俵に立って負かしてやろうという、単純な理由。
それが、柔道をやろうと思ったきっかけであった。


(,,゚Д゚)「俺も柔道部にいれろやゴルァ」


最初は、柔道部の連中は俺のことをどうせ三日坊主だろう思っていたらしい。
しかし、そんな周りを差し置いて俺は日々柔道を学び、精進していく。

そして一ヶ月後、俺はそいつに勝つことができた。
圧倒的な力の差を持っての、一本勝ち。

俺の目的はすぐに達成することができた。



(,,゚Д゚)(もっともっと強くなって、強いやつに会いたい)


目的を達成することができたが、柔道部をやめようと思わなかった。

全ては、自分より強い相手と出会い戦うため。
全ては、自分自身を高めていくため。

柔道を続ける理由は、それだけで十分であった。
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:03:38.10 ID:N/TosES30
支援
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:03:58.27 ID:jL87+9rBO
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:04:01.58 ID:jt5kV6inO
ktkr
支援
13 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:06:41.47 ID:kpI+WiRH0

それから数ヶ月が経ち、部内では俺に勝てる奴はいなくなった。
自分より弱い奴に教えてもらうことなどはない。それから独自で柔道を学び続けた。

蝿のように飛び回る戦闘機を、真っ向から戦い粉砕する爆撃機のような柔道。
そんな超攻撃的なスタイルが、俺の柔道であった。

周りからはあまりに凶暴で乱暴な柔道であったので、俺の柔道を喧嘩柔道と呼んだ。
喧嘩柔道。自分にあっていると思った。

三年生のときには、磨きに磨いた俺の柔道で全国に行くことができた。
結果は二回戦敗退。必ずまたこの舞台に戻ってくる。そう誓った。


高校は、柔道にあまり力を入れていないところに行くことにした。
理由は、顧問に俺の柔道に口を出されたくないから。

その点で、柔道部が新しくできようとしているVIP高校はうってつけであった。
柔道の歴史がまったくないVIP高校。ここでなら誰にも邪魔をされずに俺の柔道を貫けるだろう。



春、VIP高校に俺は入学した。

14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:07:40.84 ID:+HY5F0VeO
支援
15 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:08:54.11 ID:kpI+WiRH0
思ったとおり、入部希望者は俺を含め5人と少なかった。

しかし、そのなかに90キロ超級準優勝経験のあるショボンと、90キロ級3位のブーンがいたのは驚いた。
嬉しい誤算。ここでならもっと強くなれる、そう確信した。


(,,゚Д゚)「おいショボン!!打ち込みすんぞ!!」

(´・ω・`)「打ち込み……フヒヒ!!」

(;,,゚Д゚)「なに考えてるんだお前……ほらはやくしろ」

( ^ω^)「ギコ、掘られないように気をつけろおwwww」

(;,,゚Д゚)「おいなんだよ掘るって!!どこに行くんだよブーン!!」

(´・ω・`)「レッツトライ」

(,, Д )「アッー!!」



('A`)「ギコどうしちゃったの?」

( ゚∀゚)「大方ショボンにナニかやられたんだろう。さ、走りに行くか」


ずっと、一人で柔道をやると思っていた。ずっと、孤独でいると思っていた。
しかし、俺の周りにはこいつらがいた。初めてできた、仲間。
一人ではなく、みんなと一緒に強くなろう。そう想いを巡らせていた。
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:10:46.47 ID:+HY5F0VeO
支援
17 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:11:24.10 ID:kpI+WiRH0

初めて出たインターハイ予選では、ベスト8になることができた。
中学柔道とは全然違う、高校柔道。必ず、優勝してやる。俺の柔道で。

二年生では準優勝し、着実に進歩しているのが自分でもわかった。



そして、三年生のインターハイ予選直前。
最後の大会ということもあり、いつも以上に練習を励んでいた。

確実に強くなっていく自分。優勝以外ありえない。
そう思っていたときであった。ミルナ先生に呼ばれたのは。




( ゚д゚ )「お前の柔道では、勝つことはできない」




俺にとってその言葉は、事実上の死刑宣告と同じであった。

18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:12:41.09 ID:+HY5F0VeO
支援
19 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:13:52.43 ID:kpI+WiRH0

(;,,゚Д゚)「な、なにを言っているんだゴルァ……」

( ゚д゚ )「言葉の通りだ。お前の柔道では、勝つことができないのだ」

(;,,゚Д゚)「ふ、ふざけるなよ……。俺は、この柔道でここまで来たんだ!!
     それが勝てないってどういうことだゴルァ!!!!」


息が荒くなっていくのが、自分でもわかった。

指導者なんていらない、独自の柔道で行くと決めていた。
そのことを知っていたのか、必要以上に口を出さなかったミルナ先生。

俺にとって最高の関係だったのにも関わらず、最後の最後でこんなことを言うとは思わなかった。
前言を撤回して欲しい、お前なら勝てる、そう言って欲しかった。

声も出ないほど動転していた俺の前で、ミルナ先生はゆっくりと頭を下げる。


( ;д;)「すまない……俺のせいで………」


なぜ、泣いているんだ。やめてくれよ、先生。
泣きながら謝られることなんて初めてのことであった。ましてや年上の、先生に。
目の前が暗くなっていく。それは翼を?がれた、鳥のようであった。

20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:14:27.31 ID:N/TosES30
支援
21訂正 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:15:14.11 ID:kpI+WiRH0

(;,,゚Д゚)「な、なにを言っているんだゴルァ……」

( ゚д゚ )「言葉の通りだ。お前の柔道では、勝つことができないのだ」

(;,,゚Д゚)「ふ、ふざけるなよ……。俺は、この柔道でここまで来たんだ!!
     それが勝てないってどういうことだゴルァ!!!!」


息が荒くなっていくのが、自分でもわかった。

指導者なんていらない、独自の柔道で行くと決めていた。
そのことを知っていたのか、必要以上に口を出さなかったミルナ先生。

俺にとって最高の関係だったのにも関わらず、最後の最後でこんなことを言うとは思わなかった。
前言を撤回して欲しい、お前なら勝てる、そう言って欲しかった。

声も出ないほど動転していた俺の前で、ミルナ先生はゆっくりと頭を下げる。


( ;д;)「すまない……俺のせいで………」


なぜ、泣いているんだ。やめてくれよ、先生。
泣きながら謝られることなんて初めてのことであった。ましてや年上の、先生に。
目の前が暗くなっていく。それは翼をもがれた、鳥のようであった。

22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:15:35.68 ID:+HY5F0VeO
支援
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:15:58.69 ID:jL87+9rBO
しえ
24 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:16:45.35 ID:kpI+WiRH0

何秒経ったのだろうか。ようやく、先生は頭を上げ、涙を拭く。
そのころには俺も、幾分落ち着きを取り戻していた。


( ゚д゚ )「いまからでも遅くない。お前の柔道スタイルを、変えよう。
     俺でよかったら、練習はいつでも付き合う」


柔道スタイルを、変える。俺がいままで信じて、進み続けた柔道を変える。
インターハイ予選までもう一ヶ月もない。時間が、圧倒的に少ない。

いまさら変えるのは、無理なことなのは自分が一番わかった。


(,, Д )「先生、いまさらこのスタイルを変えるのは無理です。俺はこのままでいきます。
     たとえ勝てないとしても、いままで信じてきた自分の柔道を変えたくないんです」


それは、意地でもあった。たとえ勝てなくても、勝てるようにしてやるという、意地。
もう一ヶ月もないんだ。スタイルを変えるよりは伸ばすほうが断然いいだろう。


今度は俺が先生と同じように頭を下げ、その場をあとにした。
先生はいつまでも、俺の背中を見つめていた。

25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:18:00.65 ID:+HY5F0VeO
支援
26 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:18:52.92 ID:kpI+WiRH0

それから一ヶ月、練習を死ぬほどやった。
柔道だけではなく、走り込みや筋トレ、イメージトレーニング、食事管理。

自分にできることは、全てやったつもりだ。
自分でも、やりすぎではないかと思う。でも、全ては勝つために。
最強の男に出会うために。自分の柔道を貫くために。


そして、いよいよ66キロ級の個人戦の日となった。

最初は、不安があった。
本当に自分の柔道が通用しなかったらどうしようかという、不安。
しかし、徐々に勝ち進むにつれ、不安は消え去っていった。


向かわれた決勝戦。俺は自分の柔道で、優勝することができた。
これで、全国へ行ける。これで、最強の男と戦える。

賞状やトロフィーより、そっちの方が断然嬉しかった。
全国への切符が。


そして、今日。
団体戦でも無類の強さを見せつけ、仲間のなかでも俺だけが全勝をしていた。
このまま、団体戦でも勝ち続けてやる。俺の柔道を見せ付けてやる。


そう、思っていた。
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:20:15.96 ID:+HY5F0VeO
支援
28 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:21:08.10 ID:kpI+WiRH0

(;,,゚Д゚)「はぁ、はぁ、はぁ………」


今日は、いつも以上に身体が動く。コンディションは、良い。
これも全て、この一ヶ月のおかげ。自己管理の賜物であった。

だけど、なぜだ。
呼吸が休まることはなく、身体の疲れがたまっていく。
大量の汗が額を、頬を伝い流れていく。


スコアボードには、技あり判定がついていた。
それは自分のつけたものではなく、つけられたもの。

俺の団体戦での相手、ラウンジ校の弟者。
俺と同じく、全国への切符を手にした60キロ級の優勝者。
済ました顔で、俺のことをじっと見ていた。





(;^ω^)「う、うそだお……。ギコが、負けてるなんて……」

(;'A`)「ギコ、待ってるんじゃない、自分から仕掛けるんだ!!」

(;゚∀゚)「技をかけないと勝てないぞ!!」

29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:22:25.11 ID:+HY5F0VeO
支援
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:23:30.09 ID:jL87+9rBO
しえ
31 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:23:36.18 ID:kpI+WiRH0

( ゚д゚ )「仕掛けないんじゃない、仕掛けれないんだ」

(;^ω^)「ど、どういうことだお!?」

(´・ω・`)「ギコの顔を見てみるんだ。あの汗の量、尋常じゃないよ」

(;'A`)「でも、ギコがこれくらいでへばるなんて……」

(;゚∀゚)「ギコなら、それでもギコなら……」

( ゚д゚ )「………」


みな、ギコのことを見ている。だけど、応援はしていない。
その光景が、ギコのこの戦いが異常だということを物語っていた。

あんな姿をしたギコを、見たことがなかったから。
あんな姿をしたギコを、信じたくなかったから。


(´・ω・`)「ギコは、勝てるのでしょうか?」


ショボンが俺にだけ聞こえるように、ぽつりと呟く。
俺には、わからないとしか答えることができなかった。
かすかな希望も、消したくはなかったから。

32 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:25:14.31 ID:kpI+WiRH0

このままいけば、負けるのは目に見えている。

動かなければいけない。勝つためには。
まるで錘が足についているような感触を振り払い、背負い投げにいく。
しかし、技をかけている途中で引き手を離してしまった。


審判「赤、かけ逃げ指導!!」

(;,,゚Д゚)「ッな!!」


また、相手との差が開いてしまう。しかも、かけ逃げという自分の責任で。
もはや、両手からは力が感じられなかった。相手を倒せるだけの力が、俺にはない。
だけど、このまま無様に負けたくはない。


タイマーが刻々と時間を刻んでいく。
休んでいる暇は、ない。


(;,,゚Д゚)「オラァッ!!」


相手の釣り手と引手を無理やり掴む。
しかし相手の方が俺よりも早く、掴んでいた。

33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:25:31.27 ID:+HY5F0VeO
支援
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:26:38.60 ID:pFdC8FscO
ペドフィリア支援
35 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:27:45.18 ID:kpI+WiRH0
(´<_` )「可哀相に」


ふと、弟者の小さな口が動いた。そこから発せられた、可哀相という言葉。
俺のいったい、どこが可哀相なのか。


(;,,゚Д゚)「………なにがだゴルァ」

(´<_` )「指導者に恵まれなかったせいで、負けるのだから」

(;,,゚Д゚)「………てめぇッ!!」


もう力が沸いてこない。
だけど、表面上だけは負けたくない。あいつらに心配をかけさせたくない。
虚勢を張りながら、技をかける。びくとも動かない、弟者。


(;,,゚Д゚)「……ッ!?」

(´<_` )「どうやら66キロ級は、こんな奴も倒せない木偶の坊しかいないのか」

(;,,゚Д゚)「貴様ァ……!!」

(´<_` )「ふん、口だけは元気のようだな」


時間は、こうしている間にも過ぎていく。
流れるように、淡々と。
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:29:11.96 ID:+HY5F0VeO
ギコ・・・ッ
37 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:30:17.29 ID:kpI+WiRH0

(;'A`)「なんで……、なんで同じ優勝者なのにこんな差があるんだ……」

( ゚д゚ )「それは、実際に何回か弟者と戦ったことがある、お前が一番わかるのではないか?」

(;゚∀゚)「ど、どうなんだよドクオ!!」

(;^ω^)「もしかしたら、それでギコを助けられるかもしれないお……!!」

(;'A`)「たしかにありますけど……、ここまで差がつくとは…」

(´・ω・`)「ドクオ、君はギコが負けるかもしれないということがわかってたみたいだね」

(;'A`)「………」

( ゚д゚ )「たしかに、両者共に優勝し実力もそれに見合っている。
     だけど、決定的な点が違うのだ」

(;^ω^)「どういうことなんだお?」

( ゚д゚ )「彼らの違い。それは指導者と、柔道のスタイルだ」

38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:31:33.36 ID:+HY5F0VeO
支援
39 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:32:27.15 ID:kpI+WiRH0
(;゚∀゚)「指導者と、柔道のスタイル……?」

( ゚д゚ )「そうだ。弟者をみてみるんだ。彼の柔道は、高校生とは思えないほど完成している」


そう、弟者の柔道は高次元の域で完成されていた。
まったくといっていいほど、隙がない。
60キロ級でありながら、それ以上の重さを感じられる。


いま、ギコはそんな奴を目の前にして戦っているのだ。

勝てない戦いを、無理やりやらせれている者の疲労感は大きい。
なにもしてなくても、砂漠に零れた水のように体力が奪われていく。
足は、まるで泥沼に浸かっているような感触にいるだろう。

まるで、翼をもがれた鳥を見ているみたいであった。


(;^ω^)「でも、ギコの実力も負けてないお!!」

( ゚д゚ )「そう、ギコの実力も負けていない。むしろ、拮抗さえしている。
     負けているのは実力ではなく……」


いつのまにか、握り拳をつくっていた。
だけど、つくらざる終えなかった。


( д )「指導者なんだ………」
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:34:05.26 ID:+HY5F0VeO
支援
41 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:34:26.93 ID:kpI+WiRH0

(;゚∀゚)「ミルナ先生………」


そう、全ては俺の責任。
俺には彼を助ける力があるのにも関わらず、助けなかった。
自分の都合だけで見殺しにした罪が、自分にではなく彼に被さられていたのが、情けなかった。

指導者失格であった。


だから、せめてもの救いとして。それ以上傷つくことなく、休んで欲しい。
そう願うことしか、いまの俺にはできなかった。






(;,,゚Д゚)「ハァハァ……ハァ…」


中学のときに、全国を経験した。だけど、これほどの奴はいなかった。
俺がずっと会いたかった、最強の男が目の前にいる。
だけど、逃げ出したい気持ちでいっぱいであった。

42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:35:33.59 ID:+HY5F0VeO
支援
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:36:58.42 ID:/lOOTGty0
支援
44 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:36:59.55 ID:kpI+WiRH0

(´<_` )「お前の柔道は、強力だ。しかし、隙が大きすぎる。
      だから倒せない、だから逃げられる」

(;,,゚Д゚)「なにが、なにが言いたい………」

(´<_` )「お前にいい指導者がついていれば、その隙は間違いなく埋められた。
      お前の実力に見合った指導者と、出会わなかったことを恨め」

(;,,゚Д゚)「なに勝ったようなことを言ってるんだゴルァ!!!!」


相変わらずの虚勢。失われた体力が戻ってくることはない。
だけど、指導者……ミルナ先生を馬鹿にされて黙っていられるほど、俺は大人ではなかった。
弟者を揺さぶったあとにかける、払い越し。だけど、動かない。


(´<_` )「だから、俺にはその柔道は通用しないと言っているだろう?
      お前に染み付いた癖が取れないかぎりはな」

(;,,゚Д゚)「……ふ、今度は俺の柔道を馬鹿にするつもりか…」

(´<_` )「別に、馬鹿などしてはいないさ」


不意に、弟者の姿が一瞬見失ってしまう。どこにいるんだ?
その時間が、命取りになってしまった。

45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:38:08.07 ID:+HY5F0VeO
支援
46 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:38:22.28 ID:kpI+WiRH0

審判「有効!!」


(;^ω^)「しゃがみ背負いかお……」

(;'A`)「……ギコ…」

(´・ω・`)「このままじゃ……危ない」

(;゚∀゚)「な、なにが危ないんだよ」

(´・ω・`)「ギコの、精神面が」






俺の柔道が、まったく通用しない。
積み重ねてきたものが、無様にも風に吹かれ散り散りになっていく。
手で掴もうとするが、握られることなく彼方へ消えてしまう。

俺は、馬鹿だった。いままで、こんな相手と戦いたいと思っていたのか。
最強というものは、最も強い者に与えられる称号。
俺のような凡人が、叶うはずがなかった。

47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:39:22.46 ID:+HY5F0VeO
支援
48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:40:53.64 ID:jL87+9rBO
しえ
49 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:40:54.06 ID:kpI+WiRH0

全て、無駄だったということだったのか。

中学から、積み重ねてきた喧嘩柔道。
俺に見合った柔道を見つけられたと思ったのに、そのせいで負けてしまうというのか。

もし、普通の柔道をやっていたなら。もし、良い指導者がいたなら。


……もし、なんて幻想を使うほど俺は落ちぶれてしまっていたのか。

だいたい、素晴らしい指導者が俺の近くにいるじゃないか。
ミルナ先生という、立派な指導者が。

普段は頼りなく、基本的には俺たちに練習内容を決めさせるような先生だけど。
必要となれば丁寧に技を、自分の経験を俺たちに教えてくれたじゃないか。

俺は、自分主義でいたがためにその教えを使うことはなかった。
自分でやる柔道は自分で決めていたから、その引き出しを開くことはなかった。



ならば、いまここで開ければいいじゃないか。
俺の指導者から教えてもらった、柔道を。

大きく、息を吸う。少しでも体力が回復しますようにと願いながら。

じゃぁ、いっちょいきますか。
俺の、最後の技をかける。
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:42:18.41 ID:+HY5F0VeO
おおお支援
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:42:37.00 ID:Qq5bu8JZO
支援
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:43:02.22 ID:jt5kV6inO
支援
53 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:43:40.66 ID:kpI+WiRH0

釣り手と引き手を掴み、背負うようにしてしゃがみこむ。
そこまでは先ほどの弟者と一緒だ。


(´<_` )「俺に、しゃがみ背負いなんて通用しない」


知ってるさ。お前にしゃがみ背負いなんて効かない。
だけど、これはしゃがみ背負いなんてものじゃない。
しいていうならば。


(´<_`;)「……ッな!!」


しゃがみ払い腰。


弟者の右足に対し、普通の払い腰と同じように足を突き出す。
しゃがみ背負いだと思い、後ろに重心をかけている弟者。
その重心とは違う方向、横に力を加える。


(,,#゚Д゚)「ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


技ありの判定を出している審判に、倒れている弟者の姿。
やっと、俺の………ミルナ先生の柔道が通用した。
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:45:52.14 ID:+HY5F0VeO
ギコよくやった!
55 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:46:21.41 ID:kpI+WiRH0

寝技にはいかない。いける体力がもう残されていない。

審判が立ち上がり、開始線まで戻るよう指示を出す。
俺の目の前には、顔を紅潮させた弟者の姿があった。


審判「始め!!」


その声と同時に動き出し、俺の襟を掴む弟者。
次に聞こえた音は、一本という声。




負けてしまった。だけど、ただ負けたわけではない。
俺たちの柔道が通用するということを、証明することができたのだから。




最強の男と戦い本気を出させた充実感をかみ締め、次のジョルジュにバトンを託した。
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:48:12.54 ID:/lOOTGty0
支援
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:49:23.70 ID:+HY5F0VeO
ギコいいな支援
58 ◆I40z/j1jTU :2007/12/18(火) 23:50:12.29 ID:kpI+WiRH0
今日はこれでおしまいです。読んでくれた方ありがとうございました。

気がつけばブーン系を知って、ブーン系を書いて一年経ちました。
これも全て応援してくれた皆さんのおかげなのです。

そういえば俺が最初に読んだ作品もスポーツ物でした。
残り3話、精一杯がんばりますのでよろしくお願いします。
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:51:45.20 ID:jt5kV6inO
乙!
1年で凄い成長だなwwww
トライアングルの中で一番お前が好きだ
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/18(火) 23:52:04.25 ID:+HY5F0VeO
乙!これ好きだよ!
一年おめでとう!成長したな!
結婚してください!
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
乙!